JP2007170984A - 試料セル及び該試料セルを用いた分光光度計 - Google Patents

試料セル及び該試料セルを用いた分光光度計 Download PDF

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Abstract

【課題】ごく微量の液体試料の透過分光測定を簡便に行う。
【解決手段】試料セルは、平板状の基台2に底辺が上辺より短い断面台形形状の溝3が形成されてなる試料保持部1と、その上面に載せられる平板状の押さえ板7と、から成る。水平に保持された試料保持部1の溝3の所定位置にピペットPで微量の液体試料を滴下し、その上に押さえ板7を降下させて試料保持部1の上に載せる。すると、余分の液体試料は溝3の長手方向に拡がり、所定位置においては溝3と押さえ板7の下面との間の空間に保持される。この液体試料Sに対し真上から測定光を照射し、下方に出射された透過光を分光分析する。
【選択図】図3

Description

本発明は、液体試料に光を照射してその透過光を測定するために使用される試料セル及び該試料セルを用いた分光光度計に関し、さらに詳しくは、微量の液体試料の透過特性を測定するのに好適な試料セル及び分光光度計に関する。
紫外可視分光光度計等の分光光度計において、液体試料の透過率や吸光度などの透過特性を測定する際には、液体試料を収容する角形状或いは円筒形状のキュベットセルを用いるのが一般的である。一般的なキュベットセルの内容積は数mL以上であり、これを満たすために十分な量の液体試料を用意する必要がある。
近年、蛋白質やDNAの定量などの生化学分野で紫外可視分光光度計が利用されることが多くなっているが、こうした際に分析対象とされる液体試料はその量が極めて少ないことが多い。特にDNA関連の分析においては、試料が貴重で且つ高価であるため、数μL以下の液体試料で分析を行う必要がある場合もある。こうした微量の液体試料を分析する目的では上記のようなキュベットセルは使用できない。そこで、こうした微量な液体試料を分光測定するために適した容器が従来より知られている(例えば特許文献1など参照)。
従来よく知られている微量液体試料測定用セルとしては毛細管現象を利用して液体試料を吸い上げて保持するキャピラリセルがある。しかしながら、キャピラリセルの場合でも、一般に数μL以上の液量が必要であり、これよりも少ない液量の液体試料の分析には対応できない。また、キャピラリセルではセルへの液体試料の注入が面倒であったり、測定後の洗浄に手間が掛かったりするという問題もある。
これに対し、1μL程度のごく微量な液体試料の分光測定を可能とした装置として、米国ナノドロップテクノロジーズ社が販売している分光光度計ND-1000が知られている(非特許文献1参照)。この分光光度計では、図5に示すように、上下に対向させて所定距離離間して設けた上部側基部50と下部側基部52との間の空間に表面張力によって液体試料54を上下方向に橋架し、上部側基部50内に設けた投光側光ファイバ51から出射した測定光を液体試料54中に通過させ、下部側基部52内に設けた受光側光ファイバ53で受ける構成としている。液体試料中の光路長は1mm程度に設定されており、1〜2μL程度のごく微量の液体試料の分析が可能であるとされている。
しかしながら、この分光光度計では、1つの試料の測定を終了した後に次の試料の測定を行う際に、投光側・受光側の両方の光ファイバ端面をクリーニングする(非特許文献1の記載によれば「ラボペーパーで拭う」)必要があり、手間が掛かる。また、直前に測定した試料液の影響を完全に除去するにはラボペーパーでの払拭だけでは不十分であって水や有機溶媒で洗浄を行うことが望ましいが、こうした洗浄作業はかなり面倒である。また、1つの試料測定毎にこうした作業が必要とされることもあって、多数の試料を自動的に交換しながら測定することができず分析効率が悪い。さらにまた、装置の一部に液体試料が直接接触する構成となっているため、その接触部分に傷や取れない汚れが付着し易く、その場合に分析性能が低下する。また、そうしたことを回避するには頻繁な装置の保守・点検が必要となり、手間とコストとが掛かる。さらにまた、液体試料が測定中にも外気に晒されるため、試料中の成分の蒸発や逆に大気中の成分の溶解などの影響を受け易い。
特開平5−302893号公報 「ナノドロップND-1000 オーバービュー (NanoDrop ND-1000 Overview)」、[online]、米国ナノドロップ・テクノロジーズ社 (NanoDrop Technologies)、[平成17年12月16日検索]、インターネット<URL : http://www.nanodrop.com/nd-1000-overview.html>
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、1〜2μL程度或いはそれ以下のごく微量の液体試料の透過測定を簡便な構成且つ手軽な操作で以て行うことができる微量液体試料用の試料セル及び分光光度計を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明は、測定光に対する液体試料の透過特性を測定するために用いられる試料セルであって、光を透過可能な平板状部材であって上面に底面が平面である溝が形成された試料保持部と、前記試料保持部の溝に滴下された液体試料の上に該溝の底面に平行な界面を形成するように該試料保持部上に載置される押さえ板と、から成り、前記試料保持部の溝と前記押さえ板の下面とで囲まれる空間に液体試料を保持させた状態でその上方向又は下方向から測定光を照射して下方向又は上方向に透過した光を測定することを特徴としている。
本発明に係る試料セルにおいて、溝は平板状の基台の上面を切削することにより形成してもよいが、平板状基台の上面に2枚の平板状部材を所定距離離間して貼着し、その間に溝を形成するようにしてもよい。
本発明に係る試料セルに液体試料をセットする際には、略水平に設置された試料保持部の溝の長手方向の所定の目標位置に例えばピペット等で液体試料を微量滴下する。滴下された液体試料は液体の表面張力によって溝内で盛り上がった液滴状となる。その後、その液滴の上を覆うように押さえ板を降下させて試料保持部の上面に接触させると、溝内に保持されている液体試料のうちの盛り上がった余分な試料は押されて溝の長手方向に拡がる。そして、目標位置近傍では溝と押さえ板下面の間に形成された空間に液体試料が満ち、その上面は液体試料と押さえ板との界面、下面は液体試料と試料保持部との界面となる。このように試料セルに用意された試料に対し、その上方から真下に又は下方から真上に測定光を照射し透過光を測定すればよい。
本発明に係る試料セルによれば、溝内に保持されるごく微量の液体試料を分析するので、1〜2μL程度又はそれ以下の液量で済む。したがって、生体試料等の微量液体試料の分析に好適である。また、試料の準備として試料保持部の溝の目標位置に液体試料を滴下すればよいので、分析に関わる作業が非常に簡単で手間が掛からない。また、測定時に液体試料が外気に晒されにくいので、試料中の溶媒が蒸発したり逆に外気中の成分が液体試料に入り込みにくく、測定の正確性を維持し易い。さらにまた、試料保持部の溝は上面が開放されているので、洗浄作業も簡単に行えるし乾燥もし易い。また、装置本体には液体試料が接触しないので、高価な装置本体に傷を付けたり汚したりしにくく、保守・点検の負担が増加することもない。
なお、本発明に係る試料セルにおいて、前記試料保持部の溝の断面形状は底辺が上辺より短い台形状であるものとするとよい。これによれば、洗浄の際に溝内に試料が残留しにくく、試料の拭き取りや洗浄を容易に行うことができる。また同様の理由により、溝の長手方向の端面の少なくとも一方を開放状態にしておくとよい。
また本発明に係る試料セルにおいて、好ましくは、前記試料保持部の下面には遮光性の膜層が設けられ、前記溝中の液体試料を滴下する目標位置の下方において前記膜層は光透過用の開口を有する構成とするとよい。この構成によれば、不要な散乱光などの迷光が透過光に混じることを軽減できるので、測定の正確性を向上させることができる。
また本発明に係る試料セルを用いた分光光度計として、
a)前記試料保持部を略水平に保持するとともに、前記押さえ板を該試料保持部の上方で上下動自在に保持する試料セル保持手段と、
b)前記試料セル保持手段に保持されている試料セルの溝中の液体試料に対し上方向又は下方向から測定光を照射するとともに、該液体試料を通過した光を受ける測定光学系と、
を備える構成とすることができる。
この構成の分光光度計によれば、上述したような試料セルに保持した液体試料について高い精度で以て吸光度や透過率などの透過特性を測定することができる。
まず本発明に係る試料セルの一実施例について図2、図3により説明する。図2はこの実施例による試料セルの試料保持部の上面平面図(a)、A−A’矢視線端面図(b)及び正面平面図(c)であり、図3はこの試料セルの使用方法を説明するための概略図である。この実施例の試料セルは、図3(a)に示すように、試料保持部1とその上に載せられる押さえ板7との2つの部材から成る。
図2に示すように、試料保持部1は、光の透過性が良好である材料、例えば石英ガラスなどから成る薄い平板状の基台2の上面に、底辺が上辺よりも短い断面台形状の溝3が形成されてなる。この例では、溝3はその一端が基台2の前端面まで達して開放されているが、必ずしもそうである必要はない。一例として、溝3の断面の台形の上辺(つまり溝開口幅)は2mm、底辺(つまり溝底部幅)は1mm、高さ(溝深さ)は1mmとすることができる。この溝3が液体試料を収容して保持する部分であるが、ピペットで液体試料を溝3中に滴下する際にその位置が容易に定まるように、ピペット先端を保持する上面三角形状の窪みであるピペットガイド4が所定位置に形成されている。即ち、このピペットガイド4で示される位置が試料滴下位置である。
一方、この基台2の下面には、光を透過しない、つまり遮光性を有する材料から成る薄い遮光膜層5が形成され、その遮光膜層5には溝3の中の上記試料滴下位置の真下において遮光膜層が除去された開口が光束透過開口6として形成されている。遮光膜層5は例えば金属などを用いればよく、耐久性を有することが好ましいため、一例としては白金などを用いることができる。金属を用いる場合、蒸着により遮光膜層5を形成することができるが、金属箔や金属板を基台2に貼り付けるようにしてもよい。また、基台2の下面にあって少なくとも光束透過開口6となっている部分は光学研磨面とするとよい。これにより、光がこの界面を通過する際の散乱などによる損失を少なくすることができる。
押さえ板7は基台2と同様に光の透過性が良好である材料、例えば石英ガラスなどから形成された平板状部材であり、その上面及び下面にあって少なくとも後述するように光が通過する範囲は、上記理由により光学研磨面とするとよい。
上記構成の試料セルへの液体試料のセットは次のようにして行う。即ち、図3(a)に示すように略水平に保持された試料保持部1のピペットガイド4にマイクロピペットPの先端を合わせて溝3内に規定量の液体試料Sを滴下する。溝3が上述したようなサイズである場合、滴下する液量は1〜2μL程度で十分である。滴下された液体試料は表面張力によって溝3の長手方向にはあまり流れず、球形状に近い液滴となって盛り上がって溝3の試料滴下位置付近に保持される。
次に、マイクロピペットPを取り除いて上方から押さえ板7を降下させて、溝3の上に被せるように基台2上面に載せる。すると、押さえ板7に押されて上述したように盛り上がっている余分な液体試料は溝3の長手方向(図3では手前側と向こう側)に拡がるように流れる。そして、試料滴下位置つまり光束透過開口6の直上では、図3(b)に示すように、溝3と押さえ板3の下面との間に形成される断面台形状の空間に液体試料Sが満ちた状態となる。以上が本実施例の試料セルの液体試料セット方法である。
上記のように準備された液体試料Sの吸光度や透過率などの透過特性を測定する際には、液体試料Sに上方から垂直下方に向けて測定光を照射する。この測定光の光軸Cは図3(b)に示すように光束透過開口6の中心近傍を通過するように設定されており、溝3と押さえ板7の下面とで囲まれる空間に満ちた液体試料S中を通過した透過光が光束透過開口6から真下に抜ける。したがって、溝3の深さが液体試料Sの光路長Lとなり、最初に滴下された液体試料の量に依存せずに光路長は一義的に決まる。
次に、上記試料セルを使用して液体試料の透過特性を測定する分光光度計の一実施例である紫外可視分光光度計について、図3(b)に加えて図1を参照して説明する。図1は本実施例の紫外可視分光光度計の概略構成図である。
図1において、光源11から出射された光はレンズ12で平行光化された後に反射鏡13、14でそれぞれ反射され、レンズ15により集光されて測定光として分析対象である液体試料Sにほぼ真上から照射される。液体試料Sは上述したように、試料保持部1の溝3と押さえ板7の下面との間の断面台形状の空間に保持されている。ここでは、試料保持部1はケーシング10上に水平に保持され、押さえ板7は押さえ板ホルダ16により上下動自在に保持されている。即ち、押さえ板7を上げた状態で試料保持部1の溝3に前述したように分析対象である液体試料を滴下し、その後に押さえ板ホルダ16により押さえ板7を下降させて溝3との間に液体試料を保持することができる。
こうして用意された液体試料Sに対し図3(b)に示したように、測定光が液体試料Sを通過する過程で該試料S中の試料成分に応じた波長成分が吸収を受け、透過光として光束透過開口6から下方に出射する。また、散乱光などの不要な光の多くは遮光膜層5で遮られるため、下方に出射しない。透過光はケーシング10に設けられた測定窓17を通過し、スリット18で光域が制限された後に回折格子19に導入される。この回折格子19で透過光は波長分散され、その波長分散光は例えばCCDリニアセンサ等であるマルチチャンネル型の検出器20によりほぼ同時に検出される。
検出器20による検出信号はA/D変換器21でデジタルデータに変換されてデータ処理部22に送られる。データ処理部22では入力されたデータに基づいて例えば各波長毎に液体試料Sによる吸光度を算出し、所定波長範囲の吸光度スペクトルを作成して表示部24の画面上に表示する。一般的にデータ処理部22の実体は汎用のパーソナルコンピュータであり、このパーソナルコンピュータで所定の制御・処理プログラムを動作させることでデータ処理部22としての機能を達成することができる。
このように本実施例の紫外可視分光光度計によれば、ごく微量の液体試料の吸光度や透過率等の透過分光測定を簡便に行うことができる。また、試料セルは構造が単純であるため洗浄が容易であり、クロスコンタミネーションを防止することができるとともに、繰り返し使用によってランニングコストを抑えることができる。
次に、本発明の他の実施例による試料セルについて図4により説明する。図4はこの実施例による試料セルの試料保持部31の上面平面図(a)、B−B’矢視線端面図(b)及び下面平面図(c)である。試料保持部31の上に載せられる押さえ板は上記実施例と同じであるので説明を省く。
試料保持部31は、光の透過性が良好である材料、例えば石英ガラスなどから成る薄い平板状の基台32の上面に、遮光性を有する材料から成る平板状の2枚のスペーサ33が所定間隔離して接着されてなる。この2枚のスペーサ33の間に、上記実施例における溝3に代わる凹形状の溝34が形成される。さらに、この基台32の下面には、上記実施例と同様に遮光性を有する材料から成る薄い遮光膜層35が形成され、その遮光膜層35には溝34の中の試料滴下位置の真下において遮光膜層が除去された開口が光束透過開口36として形成されている。但し、この構成では、溝34を形成するスペーサ33自体が遮光性を有しているため、溝34の幅方向の光通過領域はスペーサ33の間隔で決まり、溝34の長手方向の光通過領域は光束透過開口36の長さで決まる。
もちろん、上記2つの実施例の形態に限らず、本発明に係る試料セルは各種の形態が可能である。また、本発明に係る試料セルを用いた分光光度計の構成についても、適宜に変更や修正、追加を行うことができる。
本発明の一実施例である試料セルを用いた紫外可視分光光度計の概略構成図。 本発明の一実施例である試料セルの試料保持部の上面平面図(a)、A−A’矢視線断面図(b)及び正面平面図(c)。 本実施例の試料セルの使用方法を説明するための概略図。 本発明の他の実施例による試料セルの試料保持部の上面平面図(a)、B−B’矢視線断面図(b)及び下面平面図(c)。 従来の微量液体試料の保持方法の説明図。
符号の説明
1、31…試料保持部
2、32…基台
3、34…溝
4…ピペットガイド
5、35…遮光膜層
6、36…光束透過開口
7…押さえ板
33…スペーサ
10…ケーシング
11…光源
12、15…レンズ
13、14…反射鏡
16…押さえ板ホルダ
17…測定窓
18…スリット
19…回折格子
20…マルチチャンネル型検出器
21…A/D変換器
22…データ処理部
24…表示部

Claims (5)

  1. 測定光に対する液体試料の透過特性を測定するために用いられる試料セルであって、
    光を透過可能な平板状部材であって上面に底面が平面である溝が形成された試料保持部と、前記試料保持部の溝に滴下された液体試料の上に該溝の底面に平行な界面を形成するように該試料保持部上に載置される押さえ板と、から成り、
    前記試料保持部の溝と前記押さえ板の下面とで囲まれる空間に液体試料を保持させた状態でその上方向又は下方向から測定光を照射して下方向又は上方向に透過した光を測定するようにしたことを特徴とする試料セル。
  2. 前記試料保持部の溝の断面形状は底辺が上辺より短い台形状であることを特徴とする請求項1に記載の試料セル。
  3. 前記試料保持部の溝は、平板状基台の上面に所定距離離間して貼着された2枚の平板状部材の間に形成されるものであることを特徴とする請求項1に記載の試料セル。
  4. 前記試料保持部の下面には遮光性の膜層が設けられ、前記溝中の液体試料を滴下する目標位置の下方において前記膜層は光透過用の開口を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の試料セル。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の試料セルを用いた分光光度計であって、
    a)前記試料保持部を略水平に保持するとともに、前記押さえ板を該試料保持部の上方で上下動自在に保持する試料セル保持手段と、
    b)前記試料セル保持手段に保持されている試料セルの溝中の液体試料に対し上方向又は下方向から測定光を照射するとともに、該液体試料を通過した光を受ける測定光学系と、
    を備えることを特徴とする分光光度計。

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