本発明者は、近年特に問題となっているシックハウス症候群による健康被害に対して、家屋等の建造物の内装材を漆喰に代えることで、その被害を十分に抑えることができると考えた。
漆喰施工は、現在その施工単価が著しく高い。それは、漆喰職人が少なくなっていることも原因の一つではあるが、主因は、現場塗布の手間にある。漆喰を鏝で塗って仕上げ、その都度自然乾燥に頼る施工要領では、その施工期間の長期化が余儀なくされる。そのため、漆喰施工は、非常に高価なものとなり、現在は身近な建築では余り見られなくなっている。
日本のように四季の移ろいがはっきりして、寒暖の差、湿度の差等が周期的に変化する住環境では、漆喰の本来有する調湿作用等の機能的な面に目を向けることが必要であると考えた。アルミサッシ等の気密性のある建具が普及した現在では、室内外の空気の出入りがシャットアウトされ、その分、自然の通気に基づく調湿作用が失われた。その結果、家の中には湿気がこもりやすく、カビ等が発生する事態となった。
かかる場合に、壁面が調湿作用や防カビ性を有する漆喰壁面であれば、湿気の防止、カビ等の防止が図れ、併せてカビ等が原因のアレルギー性疾患等の健康被害をも防止できる筈と考えた。
また、漆喰は本来耐火性を有する物質である。古来、漆喰は土蔵等の壁塗りに用いられており、その耐火性が優れていることについてはよく知られているところである。日本の建築物は、その耐火性という観点からは、基本的には木材を多用しているため、コンクリート建造物等に比べて劣っている。このような中、漆喰は、建築物に対する耐火性付与という観点からも見直されてよい建材であると、本発明者は考えた。
コンクリート建造物は、その耐火性という点では確かに優れているが、打ちっ放しの壁面はいかにも寒々として、住いという環境には相応しくないと思われる場面も見かける。
漆喰の醸し出す日本の風土に合った優しい壁面には、コンクリート壁面には適わない趣がある。
また、コンクリート壁面にクロス貼り等の仕上げを施しても、湿気でクロス表面あるいは裏面の接着部分にカビが発生し易い。かかる点は、鉄筋コンクリート造りのマンションの例等でよく知られるところである。さらに、コンクリート壁面にクロスを貼るための合成接着剤が、アレルギー性疾患の原因になるとも言われている。
このように、コンクリート建造物では、漆喰本来の有する調湿性、防カビ性等という機能的な面は持ち合わせていない。漆喰を使用することで、クロス貼りの仕上げも必要なく、クロス貼りに使用する合成接着剤に関わる健康被害も無くすことができるのである。
そこで、本発明者は、漆喰本来の有する調湿作用等の特性を生かしつつ、現場塗布の手間が省ける技術開発が必要であると考えた。かかる施工の簡易化を図ることで、漆喰本来の有する優れた特性を維持しながら、漆喰を建材として以前よりも低価格で提供することができる筈である。
このようにして建材としての漆喰の普及を促すことができれば、新建材特有のシックハウス症候群等による健康被害の防止が図れると考えた。併せて、建築物への耐火性の付与にも役立つと考えた。
現状の漆喰施工の単価が高くなる原因については、前述の通り現場施工を行う点が第一に挙げられる。従って、漆喰施工の単価低減を図るには、かかる現場施工を無くすことで施工面での改善を図ること必要である。現場施工を無くす技術としては、いくつかの方法が考えられるが、かかる技術の内、施工箇所に取り付け可能なボードに工場生産で漆喰を塗布する方式が最も好ましいと思われる。漆喰ボードとして提供することができれば、施工時にはその漆喰ボードを取り付ければよく、簡易な施工で建築物の漆喰壁面等を完成させることができる筈である。
しかし、漆喰に関しては、予めボードに漆喰を塗布して、漆喰ボードとして提供する技術は未だ提案されていない。主成分の消石灰が大量に入っている塗れ性の悪い本来の漆喰に関しては、ボード面への予め塗布に関する技術は十分に開発されていないのが現状である。
一方、消石灰を少量に抑えることで塗れ性等の向上を追求した漆喰系塗料については、本来の漆喰とは異なり、素人でも簡単にローラで壁面に塗布することが可能である。そのため、施工の手間という観点からは、少なくともボードに予め塗布して漆喰系塗料ボードとして提供する必要性は余り感じられない。
漆喰系塗料では、上記の如く消石灰を少量に抑えることで、容易に塗れるようにしているが、しかし、逆にそのことが、本来の漆喰が有する特性を十分に発揮することができない原因ともなっている。このように漆喰系塗料と漆喰とでは、その呼称が紛らわしい程に酷似はしているものの、その性質、機能等においては、似て非なるものがあるのである。
また、漆喰系塗料では、塗れ性を良くして塗りやすくする目的で、上記の如く消石灰の含有量を少なく抑えているが、その分、有機合成材を比較的に多めに含有させている。しかし、かかる多めの有機合成材を含有させることが、また漆喰本来の有する壁面での呼吸機能を失わせ、その調湿作用等を喪失させることに繋がっている。あるいは喪失しないまでもその機能が十分に発揮できなくしているのである。さらに、耐火性の面でも、中に含まれる多めの有機合成材が、火災時にどのような挙動をとるかについては懸念が残るのである。
このように漆喰系塗料では、本来の漆喰とは異なり、上記の如く、塗れ性は良好で予めボード表面へ塗布しておく必要性は感じられないが、しかし、漆喰はその塗れ性が悪いために現場施工がネックとなっており、ボード表面への予めの塗布が必要と本発明者は考えた。
漆喰に関しては、前述の如く塗れ性が極めて悪く、本発明者の実験では、ボードへの漆喰系塗料の技術をそのまま転用することはできなかった。すなわち、ボードへの漆喰系塗料の塗布において、漆喰系塗料の代わりに漆喰を用いることはできないのである。漆喰のボード面への塗布については、別途、新たな技術の開発が必要であると考えた。
本発明の目的は、漆喰を、現場塗布を行わずに使用できるようにすることにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
本発明者は、上記問題点を鋭意検討する中、漆喰とボードとの組み合わせを種々試してみた。その結果、建材としての使用性を満足することができるものとして、例えば石膏ボード等への塗布も考えられるが、しかし、建材としては重過ぎ、適用できる箇所は限られてしまう。軽量なボード素材に、漆喰の予めの塗布が行えればよい。そうすれば、天井等の軽量性が求められる箇所にも十分に使用することができる筈である。
種々試す中で、軽量化の点では、有機合成材としての繊維系ボードが好ましいことが分かった。しかし、かかる有機合成材としての繊維系ボードでは、漆喰との馴染みが良くない。さらに検討する中、表面をアルカリ性にすることで、漆喰との馴染みの問題を解消できることが分かった。
すなわち、現時点では、漆喰を塗布するボードとしては繊維系ボードが好ましく、さらにはその繊維系ボードの塗布面がアルカリ性を有していることが必要であることまでは判明した。漆喰を塗布する下地材を繊維系ボードに限定し、その塗布面を漆喰と馴染みの良いアルカリ性に限定すればよいのである。かかる方法により、施工箇所に取り付け可能なボードに漆喰を予め塗布しておくことができるのである。
また、繊維系ボードにおいては、有機合成繊維のボードが好ましい。これは石綿等に代表される無機繊維系では健康被害が懸念され、消費者が安心して日常的に暮らす住いに用いるには相応しくないと考えた。施工性、現場への搬入性を考慮すれば、前記の如く軽量性が特に重視されるが、かかる軽量性の点においても上記の如く有機合成繊維系のボードは優れている。
本発明の漆喰ボードは、施工箇所への取り付け可能な難燃性の有機合成材としての繊維系ボードに、前記施工箇所への取り付け前に漆喰が塗布されていることを特徴とする建材用漆喰ボードである。かかる構成において、前記繊維系ボードへの難燃性付与は、前記繊維系ボードを難燃処理することにより行われていることを特徴とする。また、本発明の建材用漆喰ボードは、施工箇所への取り付け可能なアルカリ性の塗布面を有する有機合成材としての繊維系ボードの表面に、前記施工箇所への取り付け前に漆喰が塗布されていることを特徴とするとも言える。かかる構成において、前記塗布面へのアルカリ性付与は、前記繊維系ボードを難燃処理することにより行われていることを特徴とする。難燃処理には、ケイ酸ソーダ溶液で処理することができる。
以上いずれかの構成において、前記漆喰は、日本漆喰協会が制定した化学物質放散自主認定制度による判定基準値以下の化学物質放散速度を有していることを特徴とする。以上いずれかの構成において、前記漆喰は、消石灰が60重量%以上、80重量%未満の範囲で含まれていることを特徴とする。あるいは、前記漆喰は、消石灰が30重量%以上、90重量%未満の範囲で含まれていることを特徴とする。
以上いずれかの構成において、前記繊維系ボードでは、前記漆喰の塗布方向に対して繊維が交差方向に配向されていることを特徴とする。以上いずれかの構成において、前記繊維系ボードは、ポリエステル繊維のボードであることを特徴とする。以上いずれかの構成において、前記繊維系ボードは、エンセップ(ENCEP)社製のエンフリソニック(EnFREE(登録商標) Sonic)が使用されていることを特徴とする。以上いずれかの構成において、前記漆喰は、日本プラスター社製のカルヌーヴォ(登録商標)であることを特徴とする。
また、本発明は、建材用漆喰ボードの製造方法としても把握され、前記建材用漆喰ボードは、以上いずれかの構成の建材用漆喰ボードであり、前記繊維系ボードへの前記漆喰の塗布は、塗布装置により行われることを特徴とする建材用漆喰ボードの製造方法である。かかる構成において、前記繊維系ボードへの前記漆喰の塗布は、前記繊維系ボードへ直接行われることを特徴とする。以上いずれかの構成において、前記漆喰の前記繊維系ボードへの直接の塗布は、前記塗布装置の前記漆喰の吹きつけ方向を、前記繊維系ボードの繊維配向方向に対面する方向に向けて行うことを特徴とする。
本発明は、建材用漆喰ボードを用いた建築物としても把握され、前記建材用漆喰ボードは、上記いずれかの構成の建材用漆喰ボードが使用されていることを特徴とする。あるいは、前記建材用漆喰ボードは、前記いずれかの構成の建材用漆喰ボードの製造方法により製造されていることを特徴とする。
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
本発明では、漆喰が繊維系ボードに予め塗布されているため、建築現場等での現場塗布の手間が省ける。
本発明では、漆喰の繊維系ボードへの塗布が予め工場等で行えるので、建築現場等で現場塗布を行う場合に比べ、漆喰仕上げ等に関しての品質管理が十分に行える。
本発明で使用するボードは有機合成材としての繊維系ボードであるため、軽量でその施工性に優れ、また石綿等の無機繊維系の場合とは異なり消費者の健康被害に対する懸念を払拭することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
本発明は、漆喰を有機合成材としての繊維系ボードに塗布したものである。漆喰を施工しようとする現場での塗布を行わずに、予め用意した漆喰ボードを取り付けることで、漆喰壁面等を簡単に施工できるようにしたものである。取り付け前に、例えば、工場等で、事前に繊維系ボードの表面に漆喰を塗布して、漆喰仕上げを施しておけばよい。
本願で述べる漆喰は、前述の如く、漆喰系塗料とは異なるもので、本願では漆喰と漆喰系塗料とを、次のように区別する。但し、漆喰と漆喰系塗料との境は従来より明確ではなく、業界等でも様々な解釈があった。そこで、本発明では、漆喰の特性を最も好ましい状態で享受できる範囲から、漆喰の特性を最低限確保できる範囲までを、複数範囲に分けて漆喰と漆喰系塗料との区別を行った。
漆喰とは、最も好ましい態様では、消石灰(水酸化カルシウム)を少なくとも60重量%以上、80重量%未満含むものを言うものとする。
しかし、漆喰の消石灰の含む量に関しては、その含有量の下限を下げて、少なくとも40重量%以上、あるいは30重量%以上として、漆喰系塗料と区別することもできる。但し、漆喰の調湿性等の特性は、消石灰の含有量が少なくなるに従い落ちるため、また有機合成材の混入量も多くなる虞があるため、少なくとも30重量%は必要で、漆喰の特性を享受できる最低限度と見做した。より好ましくは、少なくとも40重量%にすれば良い。かかる40重量%以上であれば、有機合成材の含有量、漆喰の特性等の点での比較的に品質上安定していると言える。
また、消石灰の含有量の上限は、上記の如く80重量%未満の場合が最も好ましいが、塗れ性がさらに悪くなることを厭わなければ、最大で90重量%未満を限度として漆喰系塗料と区別しても構わない。
このように、消石灰を、下限が30重量%以上、あるいは40重量%以上、あるいは60重量%以上で、上限が90重量%未満、あるいは80重量%未満含む漆喰は、一般的には約15〜20重量%程度しか消石灰を含まない従来の漆喰系塗料とは、組成的に異なっている。
また、漆喰は、調湿性(吸放湿性)の面からも漆喰系塗料とは、区別することができる。例えば、漆喰においては、60g/m2以上の調湿性を有しているものとすることもできる。
さらに、漆喰には、その材料構成上、漆喰施工上のそれぞれの目的において、有機合成材が含まれている可能性も否定し得ないが、しかし、かかる有機合成材が含まれたとしても、厚生労働省が定めた化学物質の室内濃度の指針値以下となるよう含有されているものとする。これ以外のものは、漆喰系塗料に属するものとする。
また漆喰は、ホルムアルデヒドの発散に関しては、2003年7月改正の建築基準法に記載のF☆☆☆☆以下の発散速度を満たすものとし、それ以外のものは漆喰系塗料に属するものとする。
さらに好ましくは、日本漆喰協会が認定した化学物質放散自主認定制度に示す認定基準満たすものとする。かかる化学物質放散自主認定制度に示す認定基準を満たすものであれば、建材として使用しても、現在問題となっている建材等に含まれる有機物等から発生するVVOCガス、VOCガス等によるシックハウス症候群の健康被害を未然に防ぐことができる。
尚、かかる化学物質放散自主認定制度に示す認定基準を満たすものとしては、認定基準合格品は勿論のこと含まれるが、しかし、必ずしも認定制度における合格品である必要はない。例えば、合格品でなくても、認定制度を活用すれば、かかる判定基準を満たすことで合格するであろうものも含めて把握して構わない。
以上のように、漆喰は、最も好ましい組成としては、主成分としての消石灰が少なくとも60重量%以上、80重量%未満含むものを言い、消石灰の含有量が60重量%に満たないものは漆喰系塗料に含めるものとする。また、消石灰を80重量%以上含むものも、漆喰とは別のものとして区別する。消石灰を含むものの調湿性が60g/m2未満のものは、当然に漆喰とは異なるものとして扱い、本明細書では便宜上漆喰系塗料に含め、漆喰には含めないものとする。
勿論、漆喰の調湿性等の特性が低下し、塗れ性が悪くなることに配慮した上で、消石灰の含有量の下限を30重量%以上、あるいは40重量%以上、上限を90重量%未満と設定する場合には、消石灰が30重量%未満、あるいは40重量%未満しか含まないもの、また消石灰を90重量%以上含むものを漆喰系塗料として、漆喰と区別しても構わない。
因みに、当初から消石灰を全く含まず、炭酸カルシウムを含有するものは「漆喰風」とか、「漆喰調」とかが冠せられて呼ばれるものであり、かかるものは消石灰を含まないため、漆喰や漆喰系塗料とは全く異質のものとして区別する。
漆喰は、伝統的には、主成分の消石灰(例えば、60重量%以上、80重量%未満)と、角又等の鏝塗りの作業性、乾燥後の結合固着性付与のための海藻糊と、すさ等と呼ばれる落下防止、亀裂防止材等から構成されている。その他に、油、あるいはとんぼ等のような物がさらに付け加えられて用いられる場合もある。
また、近年の漆喰には、最小限度で、樹脂等の合成材をごく微量添加して、例えば、その固化等を促進させるような助剤等に構成したものがある。かかる場合にも、粉体の組成物として消石灰が例えば60重量%以上、80重量%未満等、上述の各種漆喰の定義の範疇に入るものは、漆喰として取り扱って構わない。
一方、漆喰系塗料は、消石灰を60重量%未満、あるいは40重量%未満、あるいは30重量%未満、一般的には多くても15〜20重量%程度の消石灰に、海藻糊等の代わりに、あるいは海藻糊等と共に有機合成材のバインダー等を用いる等して塗れ性、接着性等を良くし、その作業性の向上等を図ったものである。作業性、乾燥性等は、確かに漆喰に比べて良好ではあるものの、その有機合成材の使用により、漆喰の本来有する調湿性、耐火性等の所謂壁面の呼吸性等の性質が失われている。併せて、含有されている有機合成材の種類、有機合成材の含有量等によっては、シックハウス症候群の健康被害が懸念される。
そこで、前述の如く、本願ではかかる漆喰系塗料の使用を全面的に排除し、上記定義の漆喰と呼べる性質を有するものを使用することにした。かかる漆喰は、前述の如く、漆喰系塗料とは異なり、シックハウス症候群の健康被害の懸念等がなく、漆喰本来の有する特性を備えたものである。
より好ましくは、日本漆喰協会が認定した化学物質放散自主認定制度による認定基準以下のもので、下記の化学物質の室内への放散速度(μg/m2h)が、次の規定値以下であるものである。すなわち、ホルムアルデヒドが5以下、アセトアルデヒドが15以下、トルエンが13以下、キシレンが43以下、エチルベンゼンが190以下、スチレンが11以下、パラジクロロベンゼンが12以下、テトラデカンが16以下の基準を満たすものである。かかる認定基準を満たすものであれば好ましい。
かかる漆喰としては、例えば、日本プラスター社製のカルヌーヴォ(登録商標)等が挙げられる。カルヌーヴォは、勿論、上記認定基準合格品の漆喰である。本願発明の以下に説明する実施の形態では、かかるカルヌーヴォを使用した場合を例示した。勿論、前記漆喰の範疇に入り、漆喰としての本来の特性を有しているものであれば、カルヌーヴォ以外のものも使用することができることは言うまでもない。
本願発明では、上記漆喰を塗布するボードには、あえて繊維系のボードを選択した。これまで珪藻土等を塗布した建材として使用されるボードには、木質ボード、石膏ボード等があるが、本願発明では、軽量で施工し易いこと、施工時の取付けがし易いこと、予めの加工がし易いこと等から、敢えて有機合成材としての繊維系ボードを採用した。
かかる繊維系ボードの中では、前述の如く、無機繊維系のボードでは、多大の健康被害が現実となった石綿繊維系のボードも含まれるため、敢えて有機合成材としての繊維系ボードを選択して、かかる点への懸念を完全に払拭した。実際の施工時を考慮すれば、木質系、石膏系等に比べて格段に軽量で、現場への搬入、取付け時等の持ち運びが容易である。
ここで有機合成材としての繊維系ボード10とは、図1(a)に示すように、繊維を所定密度に規定することで、所望の硬度が得られるようにした板状部材である。かかる繊維系ボード10では、漆喰の塗布面に対して、繊維が交差方向に配向されていることが好ましい。繊維が交差方向に配向されている状態とは、斜めに立ち上げられていたり、あるいは垂直に立ち上げられていたり等、全ての繊維の配向方向が必ずしも同一方向に揃えられていなくても構わない。
かかる交差方向に配向されている繊維11は、少なくとも漆喰を塗布する塗布面側、すなわちボード面S側に設けられていればよく、必ずしも繊維系ボード10の内面までもがそのように構成されていることまでは必要ではない。図1(b)にその様子を部分拡大図として模式的に示した。
勿論、例えば、繊維11の配向方向が、図1(a)の丸で囲んだ部分を図1(c)の部分拡大図等に模式的に示すように、漆喰を塗布するボード面Sに対して、例えば、ほぼ垂直に揃えられているような構成でも構わない。すなわち、漆喰の塗布方向に対して、垂直等の交差方向に配向するように構成されていればよい。この場合には、繊維11が、繊維系ボード10の内面側を通して厚さ方向の全体に、配向方向が塗布面に対して交差方向に揃えられている。尚、漆喰塗布が行われない側では、繊維11の配向性は特に問題としなくても構わない。
あるいは、漆喰の塗れ性は劣るものの、図1(d)に模式的に示すように、ボード面Sに対してほぼ平行方向に、繊維11の配向方向を揃えるようにしても構わない。さらには、平行に構成するに際しては、繊維11の位相を例えば90度変えるようにして複数層が交差するように積層しても構わない。繊維長は、ボード面Sの長さと同等でも構わないし、あるいはそれよりも短く構成されていても構わない。
繊維11の材質については、所定密度で建材としての必要な硬度が得られるものであれば、どのような材質でも構わない。例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド系繊維のナイロン繊維、ポリオレフィン系繊維のポリプロピレン繊維等々の使用が考えられる。
因みに、建材としての用途だけに限定しなければ、例えば、繊維としては、ポリウレタン系繊維、ポリ尿素系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリスチレン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリフッ化エチレン系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリシアン化ビニリデン系繊維、セルロース系繊維、炭素繊維、羊毛繊維等の繊維に対しても適宜使用可能である。
かかる繊維系ボード10では、漆喰との馴染みが良好となるように、少なくともボード表面がアルカリ性となるように処理が施されている。アルカリ処理溶液をボード表面に吹き付けたり、ボード自体をアルカリ処理溶液に浸漬したりすればよい。あるいは、繊維系ボード10を構成する繊維11自体をアルカリ処理溶液で処理することで、繊維表面をアルカリ性の被膜で覆うようにしても構わない。
かかる表面のアルカリ性は、アルカリ処理溶液で処理した後の状態で、pHが10以上、13以下であることが好ましい。
さらに、かかるアルカリ処理溶液は、単にアルカリ性付与のためだけではなく、他の機能をも有していればより好ましい。例えば、本願発明は建材としての使用目的を有するものであるため、耐火性、難燃性等がそのアルカリ処理により付与できるように、アルカリ性の難燃処理溶液を使用した。
例えば、かかるアルカリ処理溶液としては、ケイ酸ナトリウムの懸濁溶液を用いることができる。表面にアルカリ性を付与するとともに、繊維系ボード10のポリエステル繊維から構成されたボードに難燃性を付与することができる。
(実施の形態1)
本実施の形態1では、本発明に係る建材用漆喰ボードについて説明する。本発明の建材用漆喰ボードAは、図2に示すように、繊維系ボード10の表面に漆喰20が塗布されている。図2に示す場合には、繊維系ボード10の片面に塗布されている場合を示す。かかる漆喰20としては、例えば、日本プラスター社製のカルヌーヴォ20aを使用することができる。
カルヌーヴォ20aは、粉体組成で、消石灰60重量%以上、80重量%未満を含み、他に炭酸カルシウム等を40重量%以下含み、全体が100重量%となるように構成されている。さらに、水との混合に際して樹脂分を少量含ませることで、伝統的な漆喰の海藻糊等を使用した場合におけるひび割れ等の障害を未然に防いでいる。
因みに、カルヌーヴォ20aの場合には、その調湿性に関しては、塩ビクロスの4倍の吸湿性、12倍の放湿性を示す。化学物質吸引性については、例えばホルムアルデヒドの場合には、人の居住できない高濃度の16ppmのホルムアルデヒドを3時間で吸着し、国内安全基準である0.08ppm以下とすることができる。かかる吸着は、化学的な吸着であるため、安定的した吸着で再放出による健康被害の懸念はない。また防カビ性の点でも優れており、JIS Z 2911に基づく防カビ試験では、28℃、7日間培養後でもカビの発生は見られない。
かかる漆喰20の塗布に際しては、図3(a)に示すように、両面塗布でも構わない。また、図2の片面塗布において、図3(b)に示すように、小口面にも塗布しても一向に構わない。さらには、かかる漆喰20では、図3(c)に示すように、繊維系ボード10の全表面を漆喰20で覆うように構成しても構わない。
繊維系ボード10には、例えば、大韓民国のエンセップ(ENCEP)社製の難燃性が付与されたポリエステル繊維系ボードのエンフリソニック(EnFREE(登録商標)Sonic)10aが使用されている。エンフリソニック10aは、例えば、ボード面Sに沿うように横方向に繊維を配向して、その状態で繊維方向とは交差する方向、例えばボード面Sに垂直な方向から多数のパンチングを行って、その後圧縮等して製造されたものである。かかる製造による繊維系ボード10のエンフリソニック10aでは、内部側ではパンチングにより繊維の配向性が無秩序に構成されているが、ボード面S側では、短い繊維が板面にほぼ交差方向に形成されている。すなわち、漆喰の塗布方向に対して、交差方向に配向されているのである。
かかるエンフリソニック10aは、ポリエステルボードを難燃処理した製品で、難燃性能が優れている。難燃性は、例えば、ケイ酸ソーダの55重量%〜75重量%の溶液で処理されている。かかる処理は、例えばポリエステル繊維をケイ酸ソーダ溶液に浸漬したり、あるいはポリエステル繊維に吹きつけたりして行われている。
因みに、難燃性は、例えば、エンフリソニック10aでは、KSF2271規定による難燃性2級性能試験(韓国防災試験研究院)に合格した製品である。
かかるケイ酸ソーダの溶液処理は、上記の如く難燃性付与の役目をも有しているが、併せてエンフリソニック10aの漆喰塗布表面にアルカリ性を付与するアルカリ処理溶液としての役目をも有している。ボード表面のpHが10以上、13以下で、漆喰20であるカルヌーヴォ20aとの馴染みを良好にして、カルヌーヴォ20aと繊維系ボード10であるエンフリソニック10aとの接着性を高める効果をも担っている。
さらに、繊維系ボード10であるエンフリソニック10aをケイ酸ソーダ溶液で処理することで、エンフリソニック10aを硬くする効果をも有している。所定の繊維密度に設定することでボードの所定硬度は得られるが、さらにケイ酸ソーダ溶液によるアルカリ性の難燃性処理後に乾燥させることで、表面を硬化させることもできる。
かかる繊維系ボード10では、上記繊維密度とケイ酸ソーダによる表面処理とで所定の硬度を有しているが、基本構成は所定密度の繊維が集合されている構成であるため、ある程度の衝撃緩和性を有している。かかる衝撃緩和性が、ボード表面に塗布する漆喰のひび割れ防止に効果を有しているものと思われる。
かかる繊維系ボード10であるエンフリソニック10aの表面に、漆喰20であるカルヌーヴォ20aが、例えば2mmの層厚で塗布されている。塗布に際しては、1回塗りでも、あるいは2回以上の複数回塗りでも一向に構わない。
層厚は、0.5mm以上、5mm以下であれば十分塗布可能である。0.5mm未満の場合には、薄すぎて漆喰塗布の効果が十分に発揮されない場合も想定される。また、逆に5mmを超える場合には層厚が厚すぎて、漆喰20の内部まで乾燥させるのに時間がかかる場合がある。より好ましくは、2mm以上、3mm以下である。層厚が5mm以下であれば、少なくともひび割れは、発生しない。
また、かかる図2に示す漆喰20の塗布に際しては、工場で、繊維系ボード10の表面に、塗布装置を用いて機械的に塗布すればよい。しかし、場合よっては、鏝跡、刷毛跡等を表面の模様として捉える等の場合には、建材用漆喰ボードAの漆喰塗布に際して、手作業により鏝塗り、刷毛塗り等を行っても構わない。
かかる漆喰20の塗布に際しては、繊維系ボード10であるエンフリソニック10aの塗布面と、漆喰20であるカルヌーヴォ20aとの接着性が良好なため、エンフリソニック10aの表面には下地材等の下塗りが不要である。すなわち、繊維系ボード10のエンフリソニック10aの表面に、図2に示すように、直接に漆喰20のカルヌーヴォ20aを塗布すればよい。このように、下地材の下塗りを不要とすることができるため、極めて作業効率がよい。勿論、下地塗りを施しても一向に構わない。
また、繊維系ボード10の表面へのカルヌーヴォ20a等の漆喰20の塗布に際しては、図2に示すように、片面に漆喰20を塗布すると、乾燥後に反る心配がある。かかる反りに対しては、裏面に塗膜等を形成する等の裏面処理を施すことで対処することができる。建材用漆喰ボードAの使用状況によっては、表裏同様に漆喰20を塗布した方がよい場合も発生するが、かかる場合には反りに対する心配は不要である。
さらには、例えば、繊維系ボード10の繊維密度が300kg/m3以上で、その厚さが9mm以上であれば、片面塗布でも漆喰塗布における反りの心配はない。
また、本発明では、漆喰との塗れ性に関しての馴染みの良さ、建材として使用する際の軽量性等に着目してエンフリソニック10aを採用したが、エンフリソニック10aには、グラスウールやウレタンホーム等にはない環境特性をも有している。再活用との観点からはエンフリソニック10aは再使用可能で環境に優しいと言えるが、グラスウールやウレタンホームでは、再使用、焼却等が困難で対環境という点ではエンフリソニック10aより劣っている。
(実施の形態2)
本実施の形態では、繊維系ボード10の表面に漆喰20を、塗布装置を用いて塗布することで、建材用漆喰ボードAを製造する場合について説明する。施工手順については、図4のフロー図に示した。使用する塗布装置の概略構成は、図5に示した。
図4に示すように、ステップS100で繊維系ボード10を用意する。例えば、ポリエステルの短繊維が、漆喰20の塗布方向に対して交差方向に配向するように形成された繊維系ボード10を用意する。かかる繊維系ボード10としては、例えば、矩形平板状に形成されたエンフリソニック10aを用いればよい。
ステップS200で、漆喰20を用意する。例えば、漆喰20として、カルヌーヴォ20aを使用すればよい。カルヌーヴォ20aは、消石灰が60重量%以上80重量%未満含まれた粉体の成分混合調整済のものを、固形分に対して水55重量部以上、100重量部以下の範囲で適宜加えて混合する。かかる混合には、勿論手作業でも構わないが、現実的にはミキサー等で機械的に混合すればよい。泡立たないように、注意して混合する。混合状態は、鏝塗りで使用する場合とは異なり機械塗布が可能な程度に緩く混合調製しておけばよい。
ステップS300で、漆喰20であるカルヌーヴォ20aを、繊維系ボード10であるエンフリソニック10aに対して、その表面に塗布する。塗布は、例えば、片面に行う。
塗布に際しては、例えば、フローコータ30aに構成した塗布装置30を用いて行えばよい。図5にフローコータ30aに構成した塗布装置30を、模式的に示した。ステップS200で用意したスラリー状の漆喰20を、塗布装置30の塗布液供給槽31に入れる。塗布液供給槽31に入れた漆喰20は、塗布ノズル32のシャワーヘッド32aから所定の巾でカーテン状に噴射させられるようになっている。
かかるシャワーヘッド32aの吹き出し方向は、繊維系ボード10の塗布面に対して向けられている。繊維系ボード10の塗布面では、図示はしないが、繊維11が塗布方向に対して交差方向に配向され、上記シャワーヘッド32aの漆喰20の吹き出し方向が、繊維11の配向方向に対面するように向けられている。そのため、シャワーヘッド32aから噴射された漆喰20は、繊維系ボード10の塗布面の繊維11に対して、繊維11の間にも入り込み、絡み付くように吹きつけられることとなる。繊維表面側とのかかる漆喰20の絡み付きの度合いが少ない場合に比べて、表面アルカリ性の兼ね合いと相まって、漆喰20との接着性を高めることができる。
シャワーヘッド32aを繊維11の配向方向に対抗するようにして、吹きつける漆喰20と繊維系ボード10の上記繊維11との絡み付きの状態が維持できるように姿勢を保持した状態で、繊維系ボード10をシャワーヘッド32aに対してコンベア33上で平行移動させる。移動速度を調節することで、塗布厚を調整して、漆喰20の均一塗布を行う。塗布作業が手作業の場合に比べて、装置による塗布であるため、塗布状態の品質管理が行いやすい。
このようにして繊維系ボード10であるエンフリソニック10aの表面に下地塗りを施すことなく、直接に漆喰20であるカルヌーヴォ20aを塗布することができる。繊維11との絡み付きに関わる塗布状態の前記効果は、繊維系ボード10への直接塗布の場合に発揮される。そのため、繊維系ボード10に対する表面への直接の漆喰20の塗布は、かかる塗布装置30により行うことが好ましい。複数回塗りの場合における2回目以降の漆喰塗りでは、かかる効果は期待できない。
しかし、繊維系ボード10の表面の繊維11の足の長さを、漆喰塗布の複数回塗りに合わせて長くしておくことで、複数回塗りの場合でも、その繊維11と漆喰20との絡み付きを確保できるようにしても構わない。
ステップS400で、繊維系ボード10に対して塗布した漆喰20を乾燥させる。乾燥させるに際しては、塗布した状態の繊維系ボード10を、自然乾燥させてもよいが、現実的には、例えば、100℃以上、140℃以下の温度で、例えば、かかる温度の熱風で乾燥させればよい。
乾燥後の熱がさめた状態で、必要に応じて、再度漆喰20の塗布を行う。乾燥後に熱を冷ますためには、例えば、風を吹きつける等の除熱装置を使用すればよい。
さらに、複数回塗りを施す場合には、上記ステップS400で、1回目のステップS300の塗布を乾燥させた後、ステップS500で2回目の漆喰20の塗布、ステップS600で2回目の漆喰20の乾燥を行えばよい。必要回数、ステップS500、S600を繰り返して、所要の回数の複数回塗りを施せばよい。
例えば、2回塗りの場合には、塗布装置30で、漆喰20の1回目の塗布を、塗布厚さ1mmで行い、2回目の塗布も塗布層厚1mmで行う。このようにして、トータルの塗布層厚2mmの建材用漆喰ボードAを製造することができる。
本実施の形態では、例えば、2回に分けて塗りが施されている場合を説明したが、かかる塗布は、1回塗りでも、あるいは3回以上の複数回塗りでも一向に構わない。
また、必要に応じて、複数回塗りでは、カルヌーヴォ20aの粘度等の流動性の調整を回数ごとに変えるようにしても構わない。特に、1回塗りと、2回塗り以降とでは、カルヌーヴォ20aの塗布面の状態が異なるため、かかる適用が有利な場合もある。すなわち、初回塗り(1回塗り)は繊維系ボードの表面への塗布であり、2回目以降の塗布は初回(1回)で塗布されたカルヌーヴォ20aへの重ね塗りであり、塗れ性の点で異なっている。
そこで、例えば、初回(1回塗り)は、繊維系ボード10の表面の凹凸が最小限隠れる程度の平滑面となるような低い粘度の漆喰で塗布し、2回目以降の塗布で所定厚となるように粘度の高い漆喰で1回目の塗布より厚塗りするようにしても構わない。
塗布に際しては、所定形状の例えば矩形の繊維系ボード10に対して、一枚ごとに塗布装置30を用いて機械的塗布を行えばよい。あるいは、矩形形状等の所定形状の繊維系ボード10が複数枚とれる大形状のボード面に漆喰塗布を行い、その後に裁断して所定形状の建材用漆喰ボードAを製造しても構わない。かかる場合には、裁断線に相当する箇所には、漆喰20を塗らないようにしておけば、より裁断が行いやすい。
また、2枚のボードを、漆喰20の塗布面を外側に向けて、背中合わせにし、その状態で液状、あるいはスラリー状の漆喰20の中に浸漬する浸漬方法で行っても構わない。かかる場合には、漆喰20の粘度を低くして、漆喰20がボード表面を流れる等のように構成しておけばよい。かかる場合には、漆喰20の塗布回数を増やすようにして漆喰20の所定層厚が確保されるようにすればよい。
あるいは、かかる浸漬方法とフローコータ30a等の塗布装置30との併用でも構わない。初回塗りと、2回目以降の塗りとのいずれかを、上記浸漬方法で行い、他方をフローコータ30aで塗布すればよい。
尚、前記説明では、繊維系ボード10をシャワーヘッド32aから噴射される漆喰20のカーテン下を平行に移動させる構成としたが、場合によっては、漆喰20を吹きつけながらシャワーヘッド32aを塗布方向に対して平行移動させても構わない。あるいは、繊維系ボード10、シャワーヘッド32aの双方を、相互に対向方向に平行移動させることで、塗布効率の向上を図るようにしても構わない。特に、繊維11の配向方向が、塗布面に対して垂直方向ではなく寝ている方向の場合には、この方法が好ましい。
また、上記説明では、フローコータ30aに塗布装置30を構成した場合を示したが、ロールコータ、カーテンコータ等に構成しても一向に構わない。
(実施の形態3)
本実施の形態では、前記実施の形態1で説明した建材用漆喰ボードを用いた建築物について、その構成について説明する。
前記説明の建材用漆喰ボードAは、例えば、室内の壁面を構成するのに使用することができる。室内の壁面に用いる場合には、現場に搬入して施工箇所に取り付ければよい。取り付けに際しては、エアタッカー等を使用して適宜ステーブルで止めればよい。あるいは、接着剤を使用しても構わない。さらには、アイジャクリ継ぎ、サネ継ぎ等の継ぎ様式を活用しても構わない。場合によっては、予め、釘用あるはねじ止め用等の取り付け代を建材用漆喰ボードAに構成しておき、かかる取り付け代で取付け基板面に取り付けるようにしても構わない。
壁面に用いる建材用漆喰ボードAは、使い易さの観点からは、ボードの大きさは、例えば、厚さ4mm以上50mm以下で、密度が100kg/m3以上500kg/m3以下、横幅2000mm以下、縦幅3000mm以下であればよい。より好ましくは、例えば厚さ7mm以上15mm以下で、密度が200kg/m3以上350kg/m3で、横幅1000mm以下、縦幅2000mm以下であればよい。
取り付けに際しては、前述のように、エアタッカー等を用いた種々の取付け方法で行えばよい。あるいは、予め、取り付け枠を形成しておき、この枠内に建材用漆喰ボードAを設けるように構成することで、建材用漆喰ボードAの目地部分の始末をするようにしても構わない。
かかる構成の建材用漆喰ボードAは、例えば、室内の内壁面に用いる場合には、居間、寝室等の居室壁面、台所、洗面所等の水周りの壁面等に用いることができる。さらには上階に上り下りで使用する階段の壁面等にも使用することができる。
また、本発明の建材用漆喰ボードAは、軽量であるため、天井にも使用することができる。天井に取り付けるに際しては、壁面に取り付ける際と同様の手法で取り付けることができる。
天井に使用する場合には、建材用漆喰ボードAは使いやすさの観点から、ボードの大きさとして、厚さ4mm以上50mm以下で、密度が100kg/m3以上500kg/m3以下、横幅が2000mm以下、縦幅が3000mm以下であればよい。より好ましくは厚さが9mm以上12mm以下、密度が200kg/m3以上350kg/m3で、横幅が1000mm以下、縦幅が1000mm以下であればよい。
因みに、本発明の漆喰ボードは、外壁面にも使用することができる。外壁面として使用する場合には、前記繊維系ボード10に塗工する漆喰20に油を混ぜる等して、耐候性をもたせればよい。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。