JP2007169244A - ピルビン酸及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】酒石酸を乾留して製造されるピルビン酸において、臭気を低減させることができるピルビン酸及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ブドウ酒残渣を原料として生産される酒石酸を乾留して製造されるピルビン酸の製造方法において、乾留は大豆油等の食用油が満たされるオイルバスを用いて加熱される。
【選択図】なし
【解決手段】ブドウ酒残渣を原料として生産される酒石酸を乾留して製造されるピルビン酸の製造方法において、乾留は大豆油等の食用油が満たされるオイルバスを用いて加熱される。
【選択図】なし
Description
本発明は、ピルビン酸及びその製造方法に係り、さらに詳しくは乾留工程を経ることにより製造されるピルビン酸及びその製造方法に関する。
一般に、ピルビン酸は回糖系又はアルコール発酵等の中間代謝物として生体にとって重要な成分の一つであることが知られている。また、それ以外に特許文献1に記載されるようにピルビン酸を摂取することにより、代謝の促進及び脂肪の利用促進等の効果による持久力の向上や体脂肪の減少等の生理効果を有することが知られている。また、特許文献2に記載されるように心疾患の患者にピルビン酸を投与することにより心送血量及び一回拍出量を増加させ、患者の心拍数及び酸素需要量を減少させるという薬理作用も知られている。このようにピルビン酸は、医薬品の原料、健康補助食品等への応用が期待されている。
ところで、従来よりピルビン酸は非特許文献1に記載されるように酒石酸を原料として製造されることが知られている。また、酒石酸は非特許文献2に記載されるように天然物としてのブドウ酒残渣を原料とした製造方法が知られている。天然物を原料としてピルビン酸を製造する場合、ブドウ酒残渣を原料として生産される酒石酸に触媒を添加した後、乾留することにより粗ピルビン酸を得ることができる。従来より、非特許文献1に記載されるように乾留時における酒石酸の加熱はオイルバスを介して行われ、一般に沸点の高く引火しにくく入手が容易な潤滑油等の石油精製油が使用されている。
特表平11−509560号公報
特表平9−500144号公報
Howard, Fraser, Org. Syn. Coll. Vol.1 :475-476(1941)
Process Biochemistry 1988-2: 2-4(1988)(Figure 3)
ところが、粗生成されたピルビン酸においてオイルバス由来の石油精製油の匂いが付着するという問題が生じた。かかる臭気は粗ピルビン酸をさらに蒸留等により精製しても残留した。かかる製造されたピルビン酸への臭気の付着は、安全性等に問題はなくとも使用者に不快感を生じされるおそれがあった。一方、単にオイルバスと気化したピルビン酸を冷却する冷却器を離間する構成又は密閉性を高める構成等を採用することは製造コストの上昇を招くおそれがあった。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、酒石酸を乾留して製造されるピルビン酸において、臭気を低減させることができるピルビン酸及びその製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明のピルビン酸の製造方法は、ブドウ酒残渣を原料として生産される酒石酸を乾留して製造されるピルビン酸の製造方法において、前記酒石酸の乾留時における加熱は生体成分由来の油性成分を介して行われる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のピルビン酸の製造方法において、前記生体成分由来の油性成分は、食用油である。
請求項3記載の発明は、請求項2記載のピルビン酸の製造方法において、前記食用油は、大豆油、玄米胚芽油及び米油から選ばれる少なくとも一種である。
請求項3記載の発明は、請求項2記載のピルビン酸の製造方法において、前記食用油は、大豆油、玄米胚芽油及び米油から選ばれる少なくとも一種である。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項記載のピルビン酸の製造方法により製造されたピルビン酸である。
本発明によれば、酒石酸を乾留して製造されるピルビン酸において、臭気を低減させることができる。
以下、本発明のピルビン酸の製造方法を具体化した一実施形態について詳細に説明する。
本実施形態において、ピルビン酸はブドウ酒残渣から得られる酒石酸を所定条件下で乾留することにより生成される。ブドウ酒残渣を原料として生産される酒石酸は、市販のものを使用してもよく、また次に例示される方法により製造してもよい。酒石酸は、ブドウ酒を製造する際に副産される生酒石(アゴール)を原料とする。生酒石は、主成分として酒石酸水素カリウムを含有する。まず、生酒石を蒸気で加熱するとともに撹拌しながら炭酸カルシウムを加えることにより酒石酸カリウムと酒石酸カルシウムを生成させる。さらに、塩化カルシウム溶液又は硫酸カルシウムを加えて酒石酸カリウムから酒石酸カルシウムを生成させる。次に、酒石酸カルシウムに硫酸を添加することにより酒石酸を遊離させ、ろ過等により沈殿した硫酸カルシウムと分離することによりろ液を回収する。得られたろ液を濃縮して析出・乾燥させることにより酒石酸を製造することができる。
本実施形態において、ピルビン酸はブドウ酒残渣から得られる酒石酸を所定条件下で乾留することにより生成される。ブドウ酒残渣を原料として生産される酒石酸は、市販のものを使用してもよく、また次に例示される方法により製造してもよい。酒石酸は、ブドウ酒を製造する際に副産される生酒石(アゴール)を原料とする。生酒石は、主成分として酒石酸水素カリウムを含有する。まず、生酒石を蒸気で加熱するとともに撹拌しながら炭酸カルシウムを加えることにより酒石酸カリウムと酒石酸カルシウムを生成させる。さらに、塩化カルシウム溶液又は硫酸カルシウムを加えて酒石酸カリウムから酒石酸カルシウムを生成させる。次に、酒石酸カルシウムに硫酸を添加することにより酒石酸を遊離させ、ろ過等により沈殿した硫酸カルシウムと分離することによりろ液を回収する。得られたろ液を濃縮して析出・乾燥させることにより酒石酸を製造することができる。
上記のように入手された酒石酸は、粉砕され、所定の大きさのフラスコ、反応釜、反応タンク等に充填される。酒石酸の乾留は、触媒として硫酸塩を添加・混合することが好ましい。硫酸塩の配合量は酒石酸1モルに対し、0.5〜3モル、好ましくは1〜2モルである。硫酸塩の具体例としては、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム等が挙げられる。乾留時における加熱は、オイルバスを介して酒石酸が充填される容器を170〜220℃、好ましくは175〜185℃に加熱することにより行なわれる。オイルバスの温度が170℃未満の場合、ピルビン酸の生成及びピルビン酸の気化に時間がかかり、ピルビン酸の生成効率の低下を招く。一方、220℃を超える場合、オイルバスに使用する油性成分の劣化速度の上昇を招くおそれがある。また、油性成分の気化の上昇及びそれに伴う粗ピルビン酸溶液への混入を招くおそれがある。また、乾留は好ましくは減圧機等を用いて充填容器内を減圧又は真空条件下にすることにより行なわれる。オイルバスに満たされる油性成分は、生体成分由来の油性成分が使用される。生体成分として油性成分を使用することにより、加熱により油性成分が気化し、粗ピルビン酸溶液に混入したとしても匂いが付着するおそれがない。
油性成分としては、植物性油及び動物性油等の生体成分由来の油性成分が使用され、安全性等の観点より食用油が好ましく使用される。具体的な油性成分としては、オリーブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、シア脂、マカデミアナッツ油、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、米油、玄米胚芽油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、アルガン油、ウォールナッツ油、かやの実油、からし油、キャノーラ油、しそ油、月見草油、パーム油、パンプキンシード油、紅花油等の植物性油、牛脂、肝油、ミンク油、卵黄油等の動物性油が挙げられる。これらの中で、安全性及び熱伝導性が高く入手が容易な大豆油、米油、玄米胚芽油が好ましく使用される。また、油性成分は、単独種類で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
乾留による加熱で酒石酸が脱炭酸及び脱水されることによりピルビン酸が生成される。生成されたピルビン酸は熱により気化され、公知の冷却機、水道水を用いた冷却管等を使用することにより液化・捕捉される。酒石酸から生成されるとともに液化されたピルビン酸は粗ピルビン酸としてさらに精製される。粗ピルビン酸の精製方法は、公知の有機化合物精製方法が適用され得るが、好ましくは蒸留により行なわれる。蒸留は例えば、1回目に70〜80℃の減圧又は真空条件下において、2回目に90〜100℃の減圧又は真空条件下において行なわれる。蒸留されたピルビン酸は、さらに活性炭による処理、脱水、脱酢酸等の処理を適宜行なってもよい。精製されたピルビン酸は各分野に適用することができる。
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態において、乾留時に生体成分由来の油性成分を介して加熱処理を行なった。したがって、乾留直後の粗ピルビン酸溶液及び最終的に精製されるピルビン酸溶液のいずれにおいても臭気を低減させることができる。また、ピルビン酸溶液の安全性も一層向上させることができる。
(1)本実施形態において、乾留時に生体成分由来の油性成分を介して加熱処理を行なった。したがって、乾留直後の粗ピルビン酸溶液及び最終的に精製されるピルビン酸溶液のいずれにおいても臭気を低減させることができる。また、ピルビン酸溶液の安全性も一層向上させることができる。
(2)さらに、オイルバスと気化したピルビン酸を冷却する冷却器(冷却管)を離間する構成及び密閉性を高める構成を採用する必要がなく、製造コストの上昇を抑制することができる。
(3)本実施形態において、ピルビン酸の製造原料としてブドウ酒残渣を原料として生産される酒石酸を使用した。原料として天然物を使用するため、安全性が必要とされる医薬品原料、食品分野へ容易に適用することができる。
(4)本実施形態において、乾留に使用されるオイルバスの油として大豆油、玄米胚芽油を使用した場合、安全性及び熱伝導性が高く容易に入手することが可能である。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、精製されたピルビン酸が適用され得る用途は特に限定されない。例えば、食品原料、化成品原料、医薬品原料及び農薬原料等の分野に適用され、好ましくは食品原料、医薬品原料等の分野に適用される。
・上記実施形態において、酒石酸から精製された粗ピルビン酸を精製工程を経ることなく各用途に適用してもよい。
・上記実施形態において、乾留の際、酒石酸と触媒である硫酸塩を一度に混合して加熱処理を行なった。しかしながら、両成分を少量ずつ配合しながら反応させてもよい。かかる構成により効率よく触媒を酒石酸の脱炭酸・脱水反応に使用することができる。
・上記実施形態において、乾留の際、酒石酸と触媒である硫酸塩を一度に混合して加熱処理を行なった。しかしながら、両成分を少量ずつ配合しながら反応させてもよい。かかる構成により効率よく触媒を酒石酸の脱炭酸・脱水反応に使用することができる。
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。
実施例1及び比較例1のピルビン酸を次の方法により調整し、生成したピルビン酸の臭気を官能試験により評価した。実施例1及び比較例1のピルビン酸の原料となる酒石酸はブドウ酒残渣を原料として生産される酒石酸を使用した。まず、乾留装置として反応容器及び反応容器を加熱するためのオイルバスを準備する。実施例1においてはオイルバスとして玄米胚芽油(オリザ油化社製)を使用し、比較例1においてはオイルバスとして潤滑油(エクソンモービル社製、Mobil Drive Clean Oil)を使用した。各反応容器を加熱しながら触媒としての硫酸水素カリウムを少量ずつ投入するとともに原料としての酒石酸も少量ずつ投入した。反応はそれぞれ175〜185℃の条件下で行なわれ、蒸気となって発生したピルビン酸を水道水を用いた冷却管で液化回収することにより粗ピルビン酸を得た。各粗ピルビン酸の臭気を官能試験により評価した結果、実施例1は標準品としてのピルビン酸(和光純薬工業製)と同様の臭気であった。一方、比較例1は潤滑油の臭気を感じた。
実施例1及び比較例1のピルビン酸を次の方法により調整し、生成したピルビン酸の臭気を官能試験により評価した。実施例1及び比較例1のピルビン酸の原料となる酒石酸はブドウ酒残渣を原料として生産される酒石酸を使用した。まず、乾留装置として反応容器及び反応容器を加熱するためのオイルバスを準備する。実施例1においてはオイルバスとして玄米胚芽油(オリザ油化社製)を使用し、比較例1においてはオイルバスとして潤滑油(エクソンモービル社製、Mobil Drive Clean Oil)を使用した。各反応容器を加熱しながら触媒としての硫酸水素カリウムを少量ずつ投入するとともに原料としての酒石酸も少量ずつ投入した。反応はそれぞれ175〜185℃の条件下で行なわれ、蒸気となって発生したピルビン酸を水道水を用いた冷却管で液化回収することにより粗ピルビン酸を得た。各粗ピルビン酸の臭気を官能試験により評価した結果、実施例1は標準品としてのピルビン酸(和光純薬工業製)と同様の臭気であった。一方、比較例1は潤滑油の臭気を感じた。
実施例1と比較例1の各粗ピルビン酸について一次蒸留として70〜80℃条件下において真空蒸留を行なった。さらに二次蒸留として100℃条件下において真空蒸留を行なうことにより各精製ピルビン酸を得た。各精製ピルビン酸の臭気を官能試験により評価した結果、実施例1は標準品としてのピルビン酸(和光純薬工業製)と同様の臭気であった。一方、比較例1は粗ピルビン酸の臭気よりは低いがわずかに潤滑油の臭気を感じた。
尚、純度測定等のために使用されるピルビン酸の測定方法は、HPLCを用いてACRカラム、UV212nm、40℃の条件下で行なった。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(a)前記酒石酸の乾留は、触媒として硫酸塩が配合されて行なわれるピルビン酸の製造方法。
(b)前記硫酸塩の配合量は、酒石酸1モルに対し、0.5〜3モル配合されるピルビン酸の製造方法。したがって、この(a)及び(b)に記載の発明によれば、効率よくピルビン酸を生成させることができる。
(b)前記硫酸塩の配合量は、酒石酸1モルに対し、0.5〜3モル配合されるピルビン酸の製造方法。したがって、この(a)及び(b)に記載の発明によれば、効率よくピルビン酸を生成させることができる。
(c)前記乾留工程において生成したピルビン酸をさらに蒸留処理を施すことにより精製されるピルビン酸。したがって、(c)に記載の発明によれば、粗ピルビン酸に臭気が付着していないため、蒸留によりさらに精製されたピルビン酸においてもオイルバス由来の臭気が付着するおそれがない。
Claims (4)
- ブドウ酒残渣を原料として生産される酒石酸を乾留して製造されるピルビン酸の製造方法において、前記酒石酸の乾留時における加熱は生体成分由来の油性成分を介して行われるピルビン酸の製造方法。
- 前記生体成分由来の油性成分は、食用油である請求項1記載のピルビン酸の製造方法。
- 前記食用油は、大豆油、玄米胚芽油及び米油から選ばれる少なくとも一種である請求項2記載のピルビン酸の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項記載のピルビン酸の製造方法により製造されたピルビン酸。
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JPS6222615A (ja) * | 1985-07-22 | 1987-01-30 | 森 武志 | 流体状の汚物の臭気遮断方法 |
JPH0533054A (ja) * | 1991-07-25 | 1993-02-09 | Nippon Steel Corp | 鏡面方向性珪素鋼帯の製造方法 |
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2005
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