JP2007160485A - 物品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】直接的な加工によって、所望の面粗度を有する物品、特に金属製品(典型的には金型)、を製造する方法を提供すること。
【解決手段】加工液に分散した加工粒を介在させながら、製造する物品の一部の形状を反転させた形状の加工面を有する工具を被削材の被加工面近傍において超音波振動させて、被削材の被加工面を精密加工する鏡面精密加工工程を含む方法によって物品を製造する。
【選択図】図1
【解決手段】加工液に分散した加工粒を介在させながら、製造する物品の一部の形状を反転させた形状の加工面を有する工具を被削材の被加工面近傍において超音波振動させて、被削材の被加工面を精密加工する鏡面精密加工工程を含む方法によって物品を製造する。
【選択図】図1
Description
本発明は、物品の製造方法に関し、特に金属製品の製造方法に関する。
物品、例えば金属製品、は、使用目的に応じて所定の面粗度を有することが求められる。その例として、リフレックスリフレクタの成型に利用される金型について以下に説明する。
リフレックスリフレクタは、自動車、自転車、道路標示等において反射プリズム(反射器)として使用されており、他にも工場等においてセンサーの反射器等として使用されている。リフレックスリフレクタが自動車等の道路交通の分野で使用される場合、リフレックスリフレクタの反射性等は、安全性の観点から日本工業規格(JIS)並びに国際規格により規定されている。例えば、日本においては、自動車に使用されるリフレックスリフレクタは、JIS D1619の規格に基づいて測定された反射性能がJIS D5500の規格を満たさなければ使用することはできない。
自動車等において使用されるリフレックスリフレクタは、一般に樹脂から形成され、図7に示すように、小さな面がそれぞれ直交して形成された反射素子を多数配列することによって構成されている。ここで、JIS規格等を満足するリフレックスリフレクタを得るためには、高精度の面粗度及び面角度が要求される。一般に、リフレックスリフレクタは金型成型によって製造されているので、JIS規格を満足するリフレックスリフレクタを得るためには、その金型の各面の面粗度及び面角度が重要となる。特に、金型の成型面が鏡面であることが要求される。
従来、このリフレックスリフレクタ製造用の金型を機械加工によって直接的に作製すると、JIS規格を満足するリフレックスリフレクタを得ることができないでいた。その理由は、通常の切削加工では十分な面粗度を得ることができないためである。それに加えて、通常の研削加工ではリフレックスリフレクタ製造用金型に必要とされる、三面がそれぞれ直交する凹面の加工ができないためである。そのため、この金型は、高精度の面粗度(鏡面)及び面角度を有するピンを用いた電鋳によって製造されている。そこで、リフレックスリフレクタ製造用金型の従来の製造方法において使用するピンについてまず説明する。図8は、ピンの平面図であり、図8(a)はピン21の軸側面から見た正面図、図8(b)は、ピン21の軸方向から見た上面図である。ピン21は、通常正六角形の軸断面を有し、金型が電鋳される側の端部は、面取りされたように3つの加工面21aによって錘状体を形成している。3つの加工面21aは、直方体の角部分のようにそれぞれ直交していると同時に、鏡面仕上げされている。複数のピン21は、図9に示すように、金型を製造するための原型を作製するために、束ね合わせられる。図9は、ピン21を隙間無く配列したときの上面図であり、図10は、図9のA−A断面図である。
次に、ピン21を用いて金型及びリフレックスリフレクタを製造する従来の方法を説明する。図11(A)〜(E)は、金型及びリフレックスリフレクタの製造方法を説明するための工程図である。まず、図11(A)の工程において、図9に示すように複数のピン21を束ね合わせて原型を作製する。図11(A)は、ピン21一列分の断面図である。次に、図11(B)の工程において、電気鋳造によりピン21の上に厚さ約10mmのメッキ層22を形成する。次に、図11(C)の工程において、メッキ層22をピン21から取り外し、金型の台座23に嵌め込むことによって金型24を形成する。次に、図11(D)の工程において、金型24を使用して樹脂を成型し、リフレックスリフレクタ25を得る(図11(E))。
図11に示す工程においては、平板状のリフレックスリフレクタの製造方法を示したが、自動車において使用されるリフレックスリフレクタでは、曲面を有するものも必要とされることがある。その場合、図9〜図11に示すような方法で曲面を形成するためには、ピン21を束ねる際に、図12に示すようにピン21を段階的に上下にずらして配置しなければならない。しかしながら、そのような配置にすると、鏡面仕上げされていないピン21の側面21bが露出すると共に、側面21bと隣接するピンの加工面21aとの交角が90°にならないので、このような原型からリフレックスリフレクタを製造しても十分な反射性能を得ることはできない。そこで、ピン自体を楔状に形成することによって曲面を形成するもの(例えば、特許文献1参照)やピンの間に楔状のスペーサを配置することによって曲面を形成するもの(例えば、特許文献2参照)が知られている。
リフレックスリフレクタ用の金型の製造においては、規格を満たすリフレックスリフレクタを得るために、金型は、直接的に加工することができず、電気鋳造により製造されていた。図11に示す工程のようにピン21を用いてリフレックスリフレクタ25を製造する場合、リフレックスリフレクタ25の反射性は、ピン21の小面(鏡面)21aの面粗度及び面角度に依存することになる。そのため、ピン21は高精度でなければならず、束ね合わせる複数(通常1000本以上)のピン21の製造で約1ヶ月を要する。さらにピン21を組み合わせた原型から電気鋳造によりメッキ層22を作製するのに約3ヶ月を要する。したがって、ピン21の製作からリフレックスリフレクタ25の製造までは、およそ4ヶ月以上を要することになり、自動車業界においては、リフレックスリフレクタの製造スピードが、自動車のモデルチェンジの対応に大きな影響を及ぼす。特に、自動車メーカーにおいて開発スピードが高速化しており、リフレックスリフレクタの製造の所要時間が重要な要素となっている。
また、先に述べたように、自動車等において使用されるリフレックスリフレクタは、JIS規格等を満たさなければならないが、配光試験に合格できない場合は、また数ヶ月かけてピン又は金型(メッキ層)からリフレックスリフレクタを作製し直さなければならなくなる。
デザイン面に関しても、ピンの束から曲面を有する場合、曲面に対してピンの角度を任意に配置することは困難であるばかりか、配光性能を出すことも難しくなる。したがって、自動車のリフレックスリフレクタのデザインは単純な形状にするしかなく、ピンの束からの金型製作はデザイン性の観点からも好ましくない。
環境面に関しても、従来の電気鋳造を使用する製造方法では、電気鋳造に製造時間が必要とされるだけではなく、クロム等を含有する有害な廃液が大量に排出される。したがって、環境問題、廃棄物処理コストの面からも電気鋳造の使用を避けることが望まれている。
したがって、リフレックスリフレクタ製造用金型のような所定の面粗度、特に鏡面、を必要とする物品においては、形状や大きさによらず直接的に加工することができる製造方法が望まれている。
本発明の目的は、直接的な加工によって、所望の面粗度を有する物品、特に金属製品、を製造する製造方法を提供することである。
本発明の主たる特徴は、工具を超音波振動させることによって、工具の加工面形状を被削材に転写させることにある。
本発明の第1視点によれば、加工液に分散した加工粒を介在させながら、製造する物品の一部の形状を反転させた形状の加工面を有する工具を被削材の被加工面近傍において超音波振動させて、被削材の被加工面を精密加工する鏡面精密加工工程を含む物品の製造方法を提供する。
上記第1視点の好ましい形態によれば、鏡面精密加工工程により、工具の加工面の形状を被削材の被加工面に転写形成する。別の好ましい形態によれば、工具の超音波振動は、工具の加工面から加工粒に対し、加工粒が被削材の被加工面に対し加工仕事を成すに十分な振動を与えるよう伝達される。別の好ましい形態によれば、鏡面精密加工工程において、工具の一軸方向に工具を超音波振動させる。別の好ましい形態によれば、鏡面精密加工工程において、工具の加工面と被削材の被加工面との間隔は、工具の加工面が被削材の被加工面に最も接近したときにおいて、加工粒の平均粒径の0.5倍〜0.9倍である。別の好ましい形態によれば、加工粒は、被削材を鏡面精密加工するが工具の加工面を保持しうる硬度を有する。
上記第1視点の好ましい形態によれば、加工粒は、結晶性乱層構造窒化硼素を含む。さらに好ましい形態によれば、加工粒は、結晶性乱層構造窒化硼素である。さらに好ましい形態によれば、結晶性乱層構造窒化硼素は、水性加工液に分散含有され、鏡面精密加工工程において、水性加工液を被削材の被加工面に供給することにより結晶性乱層構造窒化硼素を介在させる。さらに好ましい形態によれば、水性加工液における結晶性乱層構造窒化硼素の濃度は、0.02質量%〜20質量%である。さらに好ましい形態によれば、結晶性乱層構造窒化硼素の一次粒子の平均粒径は0.5μm以下である。
上記第1視点の好ましい形態によれば、鏡面精密加工工程において、工具の振動周波数は20kHz〜100kHz、工具の振幅は0.01μm〜100μmである。
上記第1視点の好ましい形態によれば、鏡面精密加工工程において使用する工具は柱状体を有し、柱状体の端部は、2以上の加工面から構成され、各加工面は互いに所定の交角で交わっており、鏡面精密加工工程において、工具の端部の形状が被削材の被加工面に転写される。さらに好ましい形態によれば、工具の加工面は、単結晶ダイヤモンドを有する加工面を成すか、複数のダイヤモンド粒子を含む加工面を成すか、又はダイヤモンド被膜を有する加工面を成す。
上記第1視点の好ましい形態によれば、本発明の物品の製造方法は、鏡面精密加工工程の後に、レーザを用いて被削材の表面を表面処理する仕上げ工程をさらに含む。
本発明の物品、特に金属製品(例えば金型)、の製造方法によれば、複雑な形状を有するリフレックスリフレクタ用金型のような所定の面粗度を必要とする物品であっても、直接的な加工により製造することができる。これにより、例えばリフレックスリフレクタ製造用金型のような物品の場合、製造時間の短縮、製造コストの削減、有害物質排出量の削減及びデザイン性の拡張を可能にする。詳細には、原型(例えばピン)の製作及び電気鋳造が不要となるので、物品の製造に要する時間を大幅に短縮することができる。物品(例えばリフレックスリフレクタ製造用金型)の製造時間の短縮によって、該物品及び該物品を使用して製造される製品(例えばリフレックスリフレクタ)の製造コストを削減することができると共に、該製品及び該製品を使用するその他の製品(例えば自動車)等の開発スピードを向上することができる。また、有害な廃液を排出する電気鋳造を行わないことにより、有害物質の使用・排出量、及び廃棄物処理費を抑えることもできる。さらに、工具の角度を被削材に対して任意に設定できる、すなわち曲面の中心方向から加工することができるので、電気鋳造による製造方法では困難であった曲面を有する物品(例えばリフレックスリフレクタ製造用金型)であっても容易に製作することができる。これにより、該物品を使用する製品(例えばリフレックスリフレクタ)のデザインの幅を広げることができる。
本発明の物品の製造方法は、金属材料(単体、合金、焼結体)、セラミックス等の非金属無機材料(焼成体、焼結体)、サーメット等の金属とセラミックスの複合材料等、さらにはプラスチック材料及びその複合材料等、種々の無機、有機又はこれらの複合材料(物品)に適用することができる。
本発明の物品の製造方法は、主として2つの工程を含む。第1工程は、物品(被削材)を所定の形状に粗加工する粗加工工程である。そして、第2工程は、所望の面粗度及び面角度を出すように物品(被削材)の粗加工面を精密加工する鏡面精密加工工程である。
第1工程の粗加工工程においては、被削材を所望の形状に荒削り可能なものであれば、いずれの切削加工法を使用しても良い。例えば、ミーリング加工によって被削材を加工することができる。第1工程においては、被削材の被加工面の面粗度が、算術平均高さRa(算術平均粗さ)において好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下になるように加工する。
第2工程の鏡面精密加工工程においては、製造する物品の一部の形状を有する加工部を有する工具を使用し、その工具を超音波振動させることによって、工具の加工部の形状を被削材に転写させると共に、被削材の被加工面を鏡面加工する。図1に、鏡面精密加工工程の模式図を示す。図1においては、例として、加工部に1つの平面を有する工具を示している。工具1は、所定の形状及び面粗度を有する加工面1aを有し、被削材2は、粗加工工程において所定の形状及び面粗度まで加工された被加工面2aを有する(図1(a))。工具1と被削材2との間に、加工粒3aを含有する加工液3を供給しながら、工具1を軸方向(図1においては縦方向)に超音波振動させて、被加工面2aを加工する(図1(b))。加工後、被削材2は、工具1の加工面1aの形状を有することになり、その被加工面2aは所定の面粗度、好ましくは鏡面状、になっている。図1においては、工具1の加工面1aを平面にしてあるが、本発明においては、工具の加工面の形状は平面に限定されること無く、複数の面を有するものや角部や曲面を有する種々の形状に適用することができる。
鏡面精密加工工程においては、加工粒が被削材の被加工面に対し加工仕事を成すように、工具の超音波振動が、工具の加工面から加工粒に対し十分に伝達されるようにする。すなわち、被削材の被削面の粗さに応じて、工具の加工面と被削材の被加工面との間隔、加工粒の種類・粒径、超音波振動の周波数及び振幅等を適宜設定するようにすると好ましい。工具の加工面と被削材の被加工面との間隔は、超音波振動によって工具の加工面が被加工面に最も接近したときにおいて、好ましくは加工粒の平均粒径の0.5倍〜0.9倍、より好ましくは0.6倍〜0.8倍、さらに好ましくは0.65倍〜0.75倍になるようにする。
加工粒は、工具の加工面を保持する硬度を有することが好ましい。この場合、工具の材質の選択、加工面の保護、加工粒の選択等によって、工具の加工面を保持するようにする。こうすれば、仮に工具の加工面が少し加工されたとしても、鏡面加工を継続することができる。
工具は、一軸方向に超音波振動させるようにする。例えば、端部に加工面を有する柱状体の工具を使用する場合、工具の長手方向(軸方向)に工具を超音波振動させる。工具の振動周波数は、好ましくは20kHz〜100kHz、より好ましくは30kHz〜50kHz、さらに好ましくは25kHz〜45kHzである。工具は、好適には軸方向に振動させるようにし、その振幅は好ましくは0.01μm〜100μm、より好ましくは0.1μm〜20μm、さらに好ましくは0.5μm〜10μmである。また、工具は、ミーリング加工のように軸回転させながら超音波振動させることもできる。
工具と被削材との間に介在させる加工粒は、ダイヤモンド、窒化硼素系、アルミナ系、炭化珪素系、酸化珪素系、酸化鉄系、酸化クロム系等、様々な種類の加工粒から選択することができる。これらの加工粒としては、例えば、ダイヤモンド、立方晶窒化硼素、六方晶窒化硼素、乱層構造窒化硼素、アルミナ、炭化珪素、炭化硼素、酸化鉄、酸化クロム、コランダム、エメリー、ガーネット、スピネル、珪藻土、ドロマイト、トリポリ、浮石粉等が挙げられる。
加工粒は、結晶性乱層構造窒化硼素(以下、「結晶性t−BN」と表記する)を含有すると好ましい。加工粒中の結晶性t−BNの含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。ここで、以下に結晶性t−BNについて説明する。
窒化硼素には複数の結晶構造が知られており、例えば、六方晶系窒化硼素(以下、「h−BN」と表記する)、非晶質(無定形)窒化硼素(以下、「a−BN」と表記する)、立方晶系窒化硼素(c−BN)、菱面体晶系窒化硼素(r−BN)等が知られている。h−BNは、硼素と窒素とから構成された発達した六角網目層が…aa’aa’aa’…のパターンで積層した結晶構造を有しているものであるが、本発明でいう結晶性t−BNは、長周期的にこの六角網目層の積層パターンに規則性のないものである。また、a−BNは、硼素と窒素の六角網目層が発達しておらず、さらにこの未発達の六角網目層の積層パターンにも規則性のないものである。図2〜図4に、結晶性t−BN、h−BN及びa−BNの各粉末X線回折パターンを示す。図4に示すa−BNの粉末X線パターンは、2つの大きなブロードなピークからなるが、このような粉末X線回折パターンを有する窒化硼素又は1000℃以下の加熱温度で製造された窒化硼素を文献によっては乱層構造窒化硼素(t−BN)と表記しているものもある(例えば、資源・素材学会誌Vol.105(1989)No.2、P201〜204参照)。しかしながら、このような窒化硼素は、a−BN(非晶質ないし無定形)と表記することが適切であり、本発明でいう結晶性t−BNとは異なるものである。
図2に示す結晶性t−BNの粉末X線パターンに言及すると、図3に示すh−BNの粉末X線パターンにおいては002ピーク、100ピーク、101ピーク、102ピーク及び004ピークが顕著に現れているが、図2に示す結晶性t−BNの粉末X線パターンにおいては、h−BNの粉末X線パターンの101ピークに対応するピークがブロードになって、100ピークに対応するピークと高角側で一部ないし大部分重なっている。また、h−BNの粉末X線パターンの102ピークに対応する結晶性t−BNのピークは、非常に弱くなってブロードの低いピークとなっているか、ピークの存在を認められない程弱くなっている。さらに、h−BNの粉末X線パターン004ピークに対応する結晶性t−BNのピークはシャープになっている。本発明においては、h−BNの粉末X線パターンの004ピークに対応するピークの回折角(2θ)の半値幅が0.6°以下であり、h−BNの粉末X線パターンの100ピーク、101ピーク及び102ピークに対応する各ピークの占める面積(ピークの強度を意味する)S100、S101及びS102の間にS102/(S100+S101)≦0.02の関係を満たす窒化硼素を結晶性t−BNというものとする。
結晶性t−BNの一次粒子の平均粒径は1μm以下、より好ましくは0.6μm以下、さらに好ましくは0.4μm以下である。また、結晶性t−BNの粒径範囲は、80%以上、好ましくは90%以上、の粒子が、平均粒径の3分の1〜平均粒径の3倍の範囲にあると好ましい。
なお、結晶性t−BNの性状、製造方法等は特開平10−203807号公報に詳細に記載されており、本発明においては結晶性t−BNに関する事項は当該公報を援用することとする。
結晶性t−BNは、加工液(潤滑剤又は水)に含有させて使用すると好ましい。加工液は、水性であっても非水性であってもよいが、水性加工液のほうが好ましい。特に、水性加工液は、潤滑油を乳化させているものが好ましく、乳化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、腐敗防止剤、防錆剤、油性向上剤、消泡剤等を適宜含有させることができる。結晶性t−BNを水性加工液に含有させる場合、結晶性t−BNの濃度は、好ましくは0.02質量%〜20質量%、より好ましくは0.05質量%〜5質量%、さらに好ましくは0.2質量%〜2質量%である。結晶性t−BN含有水性加工液の組成は、工具、被削材、加工条件等に応じて適宜調整する。例えば、潤滑油としてマシン油を30質量%〜60質量%、乳化剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを2質量%〜15質量%、水を30質量%〜60質量%、結晶性t−BNを0.1質量%〜5質量%、そして数種の添加剤を混合して作製した水性加工油剤、又は当該水性加工油剤をさらに水又は別の水性加工剤で希釈して作製した水性加工油剤を使用することができる。結晶性t−BN含有水性加工液の供給方法は、ポンプ圧によってノズルから被加工面に供給することが好ましく、その供給量は、好ましくは0.1L/分〜30L/分、より好ましくは0.2L/分〜5L/分、さらに好ましくは0.3L/分〜1L/分である。結晶性t−BN含有水性加工液に使用する材料(成分)や調整方法は、特開2004−182879号公報及び特開2005−126730号公報に記載されており、本発明においてはこれらの文献を援用する。また、結晶性t−BN含有非水性加工液については、特開平10−330775号公報に記載されており、本発明においてはこの文献を援用する。
第2工程の鏡面精密削り工程において使用する工具の加工部は、製造する物品の一部の形状を反転させた形状を有する。この工具を超音波振動させることにより、工具の加工部の形状を被削材に転写形成させる。工具は、好ましくは、柱状体を有し、加工部となる柱状体の端部は、1以上の加工面から構成される。工具が2以上の加工面を有する場合、加工面は、製造する物品の形状に対応する交角で交わっている。また、工具の加工面の面粗度は、製造する物品の所定の面粗度に対して好ましくは8倍以下、より好ましくは4倍以下、さらに好ましくは2倍以下、さらに好ましくは1倍以下である。
工具の材質は、被削材の材質や加工条件に応じて、炭素鋼、合金鋼、高速度鋼、超硬合金、セラミック、サーメット、ダイヤモンド等、適宜選択することができる。工具の加工面の面粗度は、所望の面粗度を有する金型が得られるように調整する。金型等の金属製品を加工する場合、少なくとも工具の加工面は、ダイヤモンド又はc−BNを有していると好ましい。工具の加工面にダイヤモンド又はc−BNを形成する方法としては、単結晶ダイヤモンドの接合、ダイヤモンド粒子又はc−BN粒子の電着金属による固着、ダイヤモンド粒子又はc−BN粒子の焼結体の固着、又は化学蒸着ないし物理蒸着によるダイヤモンド膜又はc−BN膜の形成等の方法が挙げられる。
工具の加工面にダイヤモンド粒子を分散含有させる場合、工具加工面に電着させた金属によって付着させてもよいし、またはダイヤモンド焼結体を工具に結合させても良い。被削材の被加工面を鏡面加工するために、ダイヤモンド粒子の粒径は、好ましくは♯50〜♯5000、より好ましくは♯100〜♯3000、さらに好ましくは♯250〜♯2000である。ダイヤモンド粒子を付着させる工具の材質は、硬質のもの、例えば金属、高速度鋼、超硬合金、セラミックス等を使用することができ、特に電着付着させる場合、SK材、ステンレススチール(SUS等)又は超硬合金が好ましい。
工具の加工面にダイヤモンド膜を形成する場合、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)などの公知の方法で行うことができる。化学蒸着法は、炭化水素などの炭素含有ガスと水素ガスを原料としてダイヤモンド膜を形成するものであり、熱フィラメント法、マイクロ波プラズマCVD法、高周波プラズマCVD法、直流プラズマCVD法などが好適である。また、物理蒸着法は、イオンを基板に衝突させてダイヤモンドを形成するものであり、イオンビーム法、イオン化法、イオンビームスパッタ法、イオン注入法などが使用できる。ダイヤモンド被覆する工具の材質は、硬質かつ熱膨張係数が小さいものが適している。例えば、タングステン、チタン、クロル、ニッケル、ジルコニウム、バナジウム、アルミニウム、モリブデン、レニウム、ニオブ、タンタル、ハフニウム、鉄、銅、銀、金、白金、マンガン、サーメット、ステンレス鋼などの金属もしくはこれらの合金、又は窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素などのセラミックス、などから選択することができる。硬度及び熱膨張係数の観点からすると、タングステンカーバイト、チタンカーバイト、タンタルカーバイトもしくはモリブデンカーバイト、又はこれらの複合物を主成分とする超硬合金が好ましい。ダイヤモンド被膜の厚さは、好ましくは0.5μm〜100μm、より好ましくは1μm〜50μm、さらに好ましくは2μm〜10μmである。
第2工程の鏡面精密加工工程においては、被削材の被加工面の面粗度が、算術平均高さRa(算術平均粗さ)において好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、さらに好ましくは0.01μm以下になるように加工する。例えば、リフレックスリフレクタ製造用金型の場合には、被加工面の面粗度Raは、0.05μm以下になると好ましい。
本発明の物品の製造方法は、第2工程の鏡面精密加工工程の後に、被削材の被加工面をさらに表面処理する第3工程をさらに含むことができる。第3工程としては、例えば、レーザ処理、めっき処理等が挙げられる。レーザ処理としては、例えば、被削材の被加工面にフェムト秒レーザをアブレーション閾値近傍の低エネルギー密度で照射するものがある。レーザ処理工程を行う場合、鏡面精密加工に使用した工具部分をレーザ加工ユニットに取り替えるか、又は切り替えるなどして、第2工程後の被削材を位置・姿勢制御ステージに装着及び固定したまま、追加のレーザ処理加工を行うことができる。また、めっき処理は、被削材の表面にニッケルめっき等の処理を施し、被削材表面を保護することができる。また、めっき処理は、レーザ処理工程の後に施しても良い。
次に、物品(例えば金型)の製造装置について説明する。当該製造装置は、上記において説明した物品の製造方法を適用するものであり、上記で説明した工具及び工具を超音波振動させる超音波振動部を備える。さらに、当該製造装置は、物品の被加工面を精密加工するために、工具の加工面と被削材の被加工面との相対的位置関係を1μm以下、好ましくは1nm以下、の精度で制御する制御部を備える。特に、制御部は、工具の加工面と被削材の被加工面との間隔を1μm以下、好ましくは1nm以下、の精度で制御する。超音波振動部は、上記で説明したような形態で工具を超音波振動させることができるものである。また、制御部は、リニアモータによって駆動されると好ましい。さらに、当該製造装置は、この他に、鏡面精密加工工程の工具と取替ないし切替可能な切削ユニット、研削ユニット等の加工ユニットやCCDカメラ計測ユニット等の計測ユニットをさらに備えると好ましい。これらの種々のユニットは、被削材の位置・姿勢を変えることなく取替ないし切替可能であることが好ましい。これにより、鏡面精密加工工程を中断して、または鏡面精密加工工程後において、被削材の切削加工や計測を行うことが可能となる。
さらに当該製造装置は、第1工程の粗加工工程を行う切削部、及び/又は第3工程の仕上げ工程を行うレーザ部をさらに備えると好ましい。切削部は、ミーリング加工等の被削材の粗加工が可能なものであり、レーザ部は、上記で説明したようなレーザを被削材に対して照射可能なものである。また、当該製造装置は、加工粒を含有する水又は加工液を被加工面に供給する加工液供給部をさらに備えると好ましい。
次に、本発明の物品の製造方法を使用して、リフレックスリフレクタ製造用金型を製造するための工具(以下「金型製造用工具」という)について説明する。金型製造用工具の斜視図を図5に、上面及び側面を示す三面図を図6に示す。また、一般的なリフレックスリフレクタの模式図を図7に示す。リフレックスリフレクタ11は、通常、図7に示すように、3つの反射面12が互いに直交して1つの反射素子を形成し、当該反射素子が連続的に配列することによって形成されている。工具1は、このようなリフレックスリフレクタ11を成型するための金型の製造(特に鏡面精密加工)に適したものである。工具1は、柱状であり、その端部に加工部を有する。加工部は、3つの加工面1a(1)〜(3)を有し、各面1a(1)〜(3)が互いに直交して錐体状(直方体の角部のような形状)、すなわち、従来の金型の電気鋳造に使用されていたピンの先端形状になっている。すなわち、加工面1aの形状がリフレックスリフレクタ11の反射面12の形状に対応しており、工具1の加工部は、3つの反射面12によって形成されたリフレックスリフレクタ11の凸部の形状を有している。3つの加工面1a(1)〜(3)の各交角は、好ましくは89°〜91°であり、より好ましくは89.5°〜90.5°、さらに好ましくは89.8°〜90.2°である。さらに、各加工面1a(1)〜(3)は、単結晶ダイヤモンド、複数のダイヤモンド粒子又はダイヤモンド被膜を有すると好ましい。各加工面1a(1)〜(3)のダイヤモンドは、上記で説明したような単結晶体の接合、粒子の電着、焼結体の固着、CVD又はPVD等で形成する。また、加工面1aの面粗度は、算術平均高さ(算術平均粗さ)Raにおいて、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、さらに好ましくは0.01μm以下である。上記金型製造用工具を用いて本発明の物品の製造方法から製造された金型を使用して樹脂成型することによって、リフレクタを製造することができる。
面粗度(算術平均高さRa)が0.2μmである40mm×50mmの無酸素銅からなる被削材を鏡面精密加工した。使用する工具は、超硬合金の工具基部に棒状の単結晶ダイヤモンドを接合したものである。加工部の形状は円板状であり、その加工面は工具の軸と直交し、被削材の被加工面に対して平行になっている。単結晶ダイヤモンドの加工面の寸法はφ0.5mm、その算術平均高さRaは0.1μmであった。
工具の加工面と被削材の被加工面との距離は2.7μmに設定し、工具は振動数46kHz、振幅5μm(振れ幅±2.5μm)で振動させた。被加工面には、加工粒として平均粒径0.3μmの結晶性t−BNを含有する水性加工液を5L/分で、工具の刃先近くに位置するクーラントノズルから工具刃先に直接供給した。水性加工液は、結晶性t−BNを2質量%、マシン油を40質量%、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを7質量%、水を40質量%、残部にその他の成分を含有する。
以上の条件で、被削材の中央部分の5mm×10mmの領域を約7分かけて鏡面加工した。詳細には、被削材の長手方向に送り速度0.46mm/秒で10mm送り、その送り速度のままで、横方向に0.25mmずらして10mm戻る、を1行程として、横方向に0.25mmずらしながら合計9.5行程行った。その結果、被削材の被加工面は、面粗度(算術平均高さRa)0.05μmの鏡面になった。
本発明の物品の製造方法は、金型の製造に限定されることなく、種々の金属製品を含む物品の製造に利用することができる。
1 工具
1a 加工面
1b 側面
2 被削材
2a 被加工面
3 加工液
3a 加工粒
11 リフレックスリフレクタ
12 反射面
21 ピン
21a 加工面
21b 側面
22 メッキ層
23 台座
24 金型
25 リフレックスリフレクタ
1a 加工面
1b 側面
2 被削材
2a 被加工面
3 加工液
3a 加工粒
11 リフレックスリフレクタ
12 反射面
21 ピン
21a 加工面
21b 側面
22 メッキ層
23 台座
24 金型
25 リフレックスリフレクタ
Claims (15)
- 加工液に分散した加工粒を介在させながら、製造する物品の一部の形状を反転させた形状の加工面を有する工具を被削材の被加工面近傍において超音波振動させて、前記被削材の前記被加工面を精密加工する鏡面精密加工工程を含むことを特徴とする物品の製造方法。
- 前記鏡面精密加工工程により、前記工具の前記加工面の形状を前記被削材の前記被加工面に転写形成することを特徴とする請求項1記載の物品の製造方法。
- 前記工具の超音波振動は、前記工具の前記加工面から前記加工粒に対し、前記加工粒が前記被削材の前記被加工面に対し加工仕事を成すに十分な振動を与えるよう伝達されることを特徴とする請求項1又は2記載の物品の製造方法。
- 前記鏡面精密加工工程において、前記工具の一軸方向に前記工具を超音波振動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の物品の製造方法。
- 前記鏡面精密加工工程において、前記工具の前記加工面と前記被削材の前記被加工面との間隔は、前記工具の前記加工面が前記被削材の被加工面に最も接近したときにおいて、前記加工粒の平均粒径の0.5倍〜0.9倍であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の物品の製造方法。
- 前記加工粒は、前記被削材を鏡面精密加工するが前記工具の前記加工面を保持しうる硬度を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の物品の製造方法。
- 前記加工粒は、結晶性乱層構造窒化硼素を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品の製造方法。
- 前記加工粒は、結晶性乱層構造窒化硼素であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の物品の製造方法。
- 前記結晶性乱層構造窒化硼素は、水性加工液に分散含有され、
前記鏡面精密加工工程において、前記水性加工液を前記被削材の前記被加工面に供給することにより前記結晶性乱層構造窒化硼素を介在させることを特徴とする請求項7又は8記載の物品の製造方法。 - 前記水性加工液における前記結晶性乱層構造窒化硼素の濃度は、0.02質量%〜20質量%であることを特徴とする請求項8に記載の物品の製造方法。
- 前記結晶性乱層構造窒化硼素の一次粒子の平均粒径は0.5μm以下であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の物品の製造方法。
- 前記鏡面精密加工工程において、前記工具の振動周波数は20kHz〜100kHz、前記工具の振幅は0.01μm〜100μmであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の物品の製造方法。
- 前記鏡面精密加工工程において使用する前記工具は柱状体を有し、
前記柱状体の端部は、2以上の加工面から構成され、
各前記加工面は互いに所定の交角で交わっており、
前記鏡面精密加工工程において、前記工具の前記端部の形状が前記被削材の前記被加工面に転写されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の物品の製造方法。 - 前記工具の前記加工面は、単結晶ダイヤモンドを有する加工面を成すか、複数のダイヤモンド粒子を含む加工面を成すか、又はダイヤモンド被膜を有する加工面を成すことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の物品の製造方法。
- 前記鏡面精密加工工程の後に、レーザを用いて前記被削材の表面を表面処理する仕上げ工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の物品の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005362989A JP2007160485A (ja) | 2005-12-16 | 2005-12-16 | 物品の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005362989A JP2007160485A (ja) | 2005-12-16 | 2005-12-16 | 物品の製造方法 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2005362989A Withdrawn JP2007160485A (ja) | 2005-12-16 | 2005-12-16 | 物品の製造方法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2007160485A (ja) |
-
2005
- 2005-12-16 JP JP2005362989A patent/JP2007160485A/ja not_active Withdrawn
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