JP2007156506A - 音声処理装置及び音声を処理する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】もとの広い帯域幅で得られる特性を良く模倣する、融通のきく方法で周波数帯域の拡張を行う、音声復号器と音声復号化の方法を実現する。
【解決手段】音声復号器は、線形予測符号化された音声信号を、第1サンプリング・レートを有し第1周波数帯域を表す第1サンプル・ストリームに変換する復号器103と、入力信号を第2サンプリング・レートを有し第2周波数帯域を表す第2サンプル・ストリームに変換するボコーダ105と、処理された形式で第1及び第2のサンプル・ストリームを合成する合成手段107と、更に第1周波数帯域で復号器により使用される第1線形予測フィルタに基づいて、第2周波数帯域でボコーダにより使用される第2線形予測フィルタを生成する手段301も含む。無限インパルス応答フィルタによる外挿は第2線形予測フィルタを生成する好ましい方法である。
【選択図】図3

Description

本発明は一般にディジタル的に符号化されている音声を復号化する技術に関する。特に、本発明は、狭周波数帯域符号化された入力信号から広周波数帯域復号化された出力信号を生成する技術に関する。
ディジタル電話システムは、従来、任意に選択された送信装置-受信装置対間での両立性を保証するために固定されたサンプリング・レートでの標準化された音声符号化及び復号化手順に基づいている。第2世代ディジタル・セルラー・ネットワーク及びそれらの機能的に強化された端末装置の発展は、サンプリング・レートに関する完全な1対1両立性が保証され得ない、即ち送信端末装置の音声符号器が該端末装置の音声復号器の出力サンプリング・レートとは異なる入力サンプリング・レートを使用することがある、という状況をもたらした。また、複雑さの制限の故に実際の入力信号より狭い周波数帯域を有する信号で元の音声信号の線形予測即ちLP分析が実行されることがある。高度な受信端末装置の音声復号器は、分析に使用されるそれよりも広い周波数帯域を伴うLPフィルタを生成し、狭帯域入力パラメータから広帯域出力信号を作ることができなければならない。存在する狭帯域情報からの広帯域LPフィルタの生成は広く応用されることができる。
図1は、狭帯域の符号化された音声信号を、高サンプリング・レートでの音声合成に使用され得る広帯域の復号化されたサンプル・ストリームに変換する公知の原理を示している。送信端において、元の音声信号はブロック101で低域通過フィルタリング(LPF)されている。結果として生じた低周波数サブバンドの信号は狭帯域符号器102で符号化されている。受信端において、符号化された信号は狭帯域復号器103に供給され、その出力は、比較的低いサンプリング・レートの低周波数サブバンドを表すサンプル・ストリームである。サンプリング・レートを高めるために、該信号はサンプリング・レート補間回路104に入力される。
信号から無くなっている高周波数は、ブロック103からLPフィルタ(別個には示されていない)をとり、それを使って、白色雑音信号をその入力として使用するボコーダ105の一部分としてLPフィルタを実現することによって推定される。換言すると、低周波数サブバンドにおけるLPフィルタの周波数応答曲線が、合成的に作られる高周波数サブバンドの生成時により広い周波数帯域を含むように周波数軸の方向に伸ばされる。白色雑音の電力は、ボコーダ出力の電力が適切となるように調整される。ボコーダ105の出力は、低周波数サブバンドの実際の音声信号と過度に重なり合うことを防ぐためにブロック106で高域通過フィルタリング(HPF)される。低周波数及び高周波数のサブバンドは加算ブロック107で合成され、その合成は、最終の音響出力信号を生成するために音声合成器(図示されていない)に送られる。
音声信号の元のサンプリング・レートが12.8kHzで復号器の出力でのサンプリング・レートが16kHzとなるべき典型的な状況を考察することができる。0〜6400Hzまで、即ちゼロから、元のサンプリング・レートの半分のナイキスト周波数までの周波数についてLP分析が実行されている。従って狭帯域復号器103は、その周波数応答が0から6400HzまでにわたるLPフィルタを実現する。高周波数サブバンドを生成するために、該LPフィルタの周波数応答は0から8000Hzまでの周波数帯域に及ぶようにボコーダ105において伸ばされ、そこでの上限は今は所望のより高いサンプリング・レートに関してナイキスト周波数である。
低周波数サブバンドと高周波数サブバンドとの間の或る程度の重なりは通常、必要ではないけれども、望ましい。その重なりは最適の主観的オーディオ品質を達成するのに役立つことがある。10%(即ち800Hz)の重なりを目指すと仮定しよう。このことは、狭帯域復号器103においては該LPフィルタの0から6400Hzまで(即ち、サンプリング・レートFs=12.8kHzとして、0-0.5Fs、)の全周波数応答が使用され、ボコーダ105においては該LPフィルタの5600から8000Hzまで(即ち、サンプリング・レートFs=16KHzとして、0.35Fs-0.5Fs)の周波数応答だけが実効的に使用されるということを意味する。ここで「実効的に」は、高域通過フィルタ106の故に、周波数応答の下端が上側信号処理ブランチの出力に対して影響を及ぼさないことを意味する。5600から8000Hzまでの範囲の広帯域LPフィルタの周波数応答は、4480から6400Hzまでの範囲の狭帯域LPフィルタの周波数応答の引き伸ばされたコピーである。
従来技術構成の欠点は、狭帯域LPフィルタの周波数応答がその上側領域に元のナイキスト周波数に近いピークを有する状況において顕著になってくる。図2はその様な状況を示している。細い曲線201は、サンプリング・レート16kHzでの音声信号の分析に使用される0〜8000HzLPフィルタの周波数応答を表す。太い曲線202は、図1の構成が生成する合成周波数応答を表す。4480Hz及び6400Hzにおける破線203及び204は、狭帯域LPフィルタの周波数応答の、コピーされて、ボコーダで実現される広帯域LPフィルタの5600Hzから8000Hzまでの区間に引き伸ばされる部分をそれぞれ画定する。狭帯域周波数応答の約4400Hzにおけるピークと、そこから周波数帯域の上限に向かう連続的な下り坂とは、合成周波数応答曲線202を理想的広帯域LPフィルタの周波数応答201とは顕著に異ならしめる。
上記の欠点を克服するために図1の原理を補完する種々の従来技術構成が知られている。特許刊行物US5,978,759は、コードブックまたはルックアップ・テーブルを用いることにより狭帯域音声を広帯域音声に拡張するための装置を開示している。狭帯域LPフィルタを特徴づけるパラメータの集合が抽出されて、対応する広帯域LPフィルタの特性パラメータを該ルックアップ・テーブル中の一致するまたはほぼ一致する項目から読み出すことができるように、ルックアップ・テーブルに対する探索キーとして使用される。同様の解決策が特許刊行物番号JP10124089Aから知られている。僅かに異なるアプローチが特許刊行物番号US5,455,888から知られており、この場合には、より高い周波数がフィルタバンクを使用することにより生成されるが、それは一種のルックアップ・テーブルを使用することにより選択される。特許刊行物番号US5,581,652は、信号の波形特徴が利用されるようにコードブックを使用することによる狭帯域音声からの広帯域音声の復元を提案している。更に、刊行された国際特許出願番号WO99/49454A1においては、音声信号を周波数領域に変換する方法が開示されており、その周波数領域信号の特性的ピークが識別され、変換テーブルに基づいて広帯域フィルタ・パラメータの集合が選択される。
適当な広帯域フィルタの特性を捜すときのルックアップ・テーブルの使用は、図2に示されている種類の災難を避けるのに役立つかも知れないけれども、それは同時に相当な程度の硬直性を伴う。限られた数の可能な広帯域フィルタを実現できるか、さもなければ非常に大きなメモリーをこの目的だけのために割り当てなければならない。選択されるべく記憶された広帯域フィルタ構成の数を増やすと、それらのうちの正しい一つを捜して設定するために割り当てなければならない時間も増えるが、それは音声電話のような実時間動作には望ましくない。
米国特許第5978759号明細書 特開平10-124089号公報 米国特許第5455888号明細書 米国特許第5581652号明細書 国際公開第99/49454号パンフレット 国際公開第98/57436号パンフレット 特開平08-123495号公報
本発明の目的は、計算的に経済的で、もともと広い帯域幅を使用することにより得られる特性を良く模倣する融通のきく方法で周波数帯域の拡張を行う、音声復号器と音声を復号化する方法とを提供することである。
本発明の目的は、狭帯域LPフィルタの極におけるある規則性に基づいて外挿が利用されるように狭帯域LPフィルタから広帯域LPフィルタを生成することにより達成される。
本発明に従って音声処理装置は、
第1周波数帯域を表す線形予測符号化された音声信号を受信するための入力と、
線形予測符号化された音声信号から、第1周波数帯域に関連する第1線形予測フィルタを表わす情報を抽出するための手段と、
入力信号を第2周波数帯域を表す出力信号に変換するためのボコーダと、を含んでおり、
その音声処理装置において第1線形予測フィルタを表わす情報に基づいて第2周波数帯域でボコーダにより使用されるべき第2線形予測フィルタを生成するための手段を含むことを特徴とする。
本発明は、上記の種類の音声処理装置を少なくとも一つ含むことを特徴とするディジタル無線電話機にも適用される。
更に本発明は音声復号化方法にも適用され、その方法は、
線形予測符号化された音声信号から、第1周波数帯域に関連する第1線形予測フィルタを表わす情報を抽出するステップと、
入力信号を第2周波数帯域を表す出力信号に変換するステップと、を含んでおり、
その音声復号化方法において、第1周波数帯域に関連する第1線形予測フィルタを表わす抽出された情報に基づいて入力信号の出力信号への変換に使用されるべき第2線形予測フィルタを生成するステップを含むことを特徴とする。
LPフィルタには幾つかの良く知られた表現形式がある。特に、いわゆる周波数領域表示が知られており、その場合、LPフィルタをLSF(線スペクトル周波数)ベクトルまたはISF(イミッタンス・スペクトル周波数(Immittance Spectral Frequency))ベクトルで表示することができる。周波数領域表示には、サンプリング・レートと無関係であるという利点がある。
本発明に従って狭帯域LPフィルタは外挿により広帯域LPフィルタを構成するための基礎として動的に使用される。特に本発明は、狭帯域LPフィルタをその周波数領域表示に変換し、狭帯域LPフィルタのそれを外挿することによって広帯域LPフィルタの周波数領域表示を形成することを含む。狭帯域LPフィルタを特徴づける規則性を利用するために充分に高い次数のIIR(無限インパルス応答)フィルタがその外挿に好ましくは使用される。広帯域LPフィルタの次数は、広帯域及び狭帯域のLPフィルタ次数の比が広帯域及び狭帯域のサンプリング周波数の比と本質的に等しくなるように好ましくは選択される。IIRフィルタには係数のある集合が必要である。それらは、狭帯域LPフィルタのベクトル表示における隣り合う要素間の差を反映する差ベクトルの自己相関を分析することにより好ましくは得られる。
広帯域LPフィルタがナイキスト周波数の近くで過度の増幅を生じさせないことを保証するために、広帯域LPフィルタのベクトル表示の最後の要素にある制限を課すのが好適である。特に、サンプリング周波数に比例した、ベクトル表示の最後の要素とナイキスト周波数との差はおおよそ同じにとどまるべきである。これらの制限は、ベクトル表示中の隣り合う要素間の差が制御されるように差分規定により容易に規定される。
本発明の特徴と考えられる新規な特徴は特に請求項において提示されている。しかし、本発明自体は、その構成及びその動作方法の両方に関して、その付加的な目的及び利点と共に、添付図面と関連させて特定の実施例についての次の記述から最善に理解されるであろう。
図1及び2は従来技術の説明において記述されているので、本発明とその好適な実施例とについての以下の記述は図3(a)〜6に集中する。図面において同様の部分には同じ参照符が使用される。
図3(a)は、抽出ブロック310で狭帯域LPフィルタのパラメータを抽出するための狭帯域入力信号の使用を示している。狭帯域LPフィルタ・パラメータは外挿ブロック301に入力され、ここで対応する広帯域LPフィルタのパラメータを作るために外挿が使用される。それらは、何らかの広帯域信号をその入力として使用するボコーダ105に入力される。ボコーダ105は、該パラメータから広帯域LPフィルタを生成し、それらを使用して広帯域入力信号を広帯域出力信号に変換する。抽出ブロック310も出力を与えることができ、それは狭帯域出力である。
図3(b)は、図3(a)の原理を、他の点に関しては公知の音声復号器にどの様に適用できるかを示している。図1と図3(b)との比較は、狭帯域の符号化された音声信号を広帯域の復号化されたサンプル・ストリームに変換するための、他の点では公知の原理への、本発明によりもたらされる付加を示す。本発明は送信端に影響を及ぼさない。元の音声信号はブロック101で低域通過フィルタリングされ、その結果として得られた低周波数サブバンドの信号は狭帯域符号器102において符号化される。また受信端の下側ブランチも同じであって良い。符号化された信号は狭帯域復号器103に供給され、その低周波数サブバンド出力のサンプリング・レートを高めるために該信号はサンプリング・レート補間回路104に入力される。しかし、ブロック103で使用される狭帯域LPフィルタは、ボコーダ105に直接入力されるのではなくて外挿ブロック301に入力され、ここで広帯域LPフィルタが生成される。
低周波数サブバンドにおけるLPフィルタの周波数応答曲線はより広い周波数帯域に及ぶように単純に伸ばされるのではない。また狭帯域LPフィルタ特性も、前に生成された広帯域LPフィルタのライブラリーに対する探索キーとして使用されるのでもない。ブロック301で実行される外挿は、唯一の広帯域LPフィルタを生成することを意味し、単に選択肢の集合の中から最も近いものを選択することを意味しない。それは、適当な外挿アルゴリズムを選択することによって各狭帯域LPフィルタ入力と対応する広帯域LPフィルタ出力との固有の関係を保証することが可能であるという意味において真に適応的な方法である。外挿法は、入力情報として遭遇される狭帯域LPフィルタに関して前もって殆ど何も知られていないときでも作用する。これはルックアップ・テーブルに基づく全ての解決策より明らかに好適であるが、その理由は、その様なテーブルは狭帯域LPフィルタがどのカテゴリーに属するか或る程度は知られているときに限って作成され得るに過ぎないことである。更に、本発明の外挿法は、アルゴリズム自体を記憶させておく必要があるだけなので、限られた量のメモリーを必要とするに過ぎない。
合成的に作られる高周波数サブバンドの生成におけるブロック301から得られる広帯域LPフィルタの使用は、それ自体としては従来技術から知られるパターンに従うことができる。高周波数サブバンドを表すサンプル・ストリームを作るのに広帯域LPフィルタを使用するボコーダ105に白色雑音が入力データとして供給される。白色雑音の電力は、ボコーダ出力の電力が適切となるように、調整される。ボコーダ105の出力はブロック106で高域通過フィルタリングされ、低周波数サブバンド及び高周波数サブバンドが加算ブロック107で合成される。その合成は、最終の音響出力信号を生成するために音声合成器(図示されていない)に入力される準備ができている。
図4は、外挿ブロック301を実現する典型的な方法を示している。LPからLSFへの変換ブロック401は、復号器103から得られた狭帯域LPフィルタを周波数領域に変換する。実際の外挿は、外挿回路ブロック402により周波数領域で行われる。その出力は、ブロック401で行われるのと比べると逆の変換を実行するLSFからLPへの変換ブロック403に結合される。更にブロック403の出力とボコーダ105の制御入力との間に利得コントローラ・ブロック404が結合されており、そのタスクは広帯域LPフィルタの利得を適当なレベルに調整することである。
図5は、外挿回路402を実現する典型的方法を示している。その入力はLPからLSFへの変換ブロック401の出力に結合されていて、外挿回路402への入力として狭帯域LPフィルタのベクトル表示fnが得られる。外挿を実行するために、フィルタ生成器ブロック501でベクトルfnを分析することにより外挿フィルタが生成される。該フィルタはベクトルで表わされることもでき、それはここでベクトルbとして表示される。ブロック501で生成されたフィルタを使用することにより、狭帯域LPフィルタのベクトル表示fnはブロック502で広帯域LPフィルタのベクトル表示fwに変換される。最後に、広帯域LPフィルタが高いサンプリング・レートに関してナイキスト周波数付近に過度の増幅を含まないことを保証するために、広帯域LPフィルタのベクトル表示fwは、LSFからLPへの変換ブロック403へ渡される前に、ブロック503である制限機能にかけられる。
ここで、図4及び5に関して上で紹介されたいろいろな機能ブロックで実行される動作について詳細な分析を与える。復号器103が、狭帯域音声信号を復号化する過程でLPフィルタを実現し利用することは事実だと解される。このLPフィルタは狭帯域LPフィルタと称され、それはLPフィルタ係数の集合により特徴づけられる。同様に、実際上全ての高品質音声復号器(及び符号器)がLPフィルタ係数を量子化するためにLSFまたはISFベクトルとして知られたあるベクトルを使用することも事実であり、従って機能的には図4でブロック401として示されているLPからLSFへの変換は復号器103の一部分であることもできる。この記述の全体にわたって一貫性のためにLSFベクトルに関して述べるが、この記述をISFベクトルの使用に適用することは当業者にとっては簡単なことである。
LSFベクトルは、該ベクトルが実際にはLSP(線スペクトル対)ベクトルと称される余弦領域で表示されるか、或いは周波数領域で表示されるかのいずれかである。余弦領域表示(LSPベクトル)はサンプリング・レートに左右されるけれども周波数領域表示はそうではないので、例えば復号器103がLSPベクトルを入力情報として外挿ブロック301に提供するだけの或る種のストック(stock)音声復号器であるならば、該LSPベクトルを始めにLSFベクトルに変換するのが好ましい。その変換は公知の式、
Figure 2007156506
に従って容易に行われ、ここで下付き文字nは一般に「狭帯域」を意味し、fn(i)は狭帯域LSFベクトルのi番目の要素であり、qn(i)は狭帯域LSPベクトルのi番目の要素である。Fs、nは狭帯域サンプリング・レートであり、nnは狭帯域LPフィルタの次数である。LSP及びLSFベクトルの規定に従って、nnは狭帯域LSP及びLSFベクトルの要素の数でもある。
図3(b)、4及び5に示されている実施例においては、実際の外挿は、ブロック501で生成されたL次外挿フィルタを使用することによりブロック502で行われる。さし当たり、単にブロック501はフィルタ・ベクトルbをブロック502に提供するとしておく。後にフィルタ・ベクトルの生成に戻る。広帯域LSFベクトルfwを生成するための好適な式は、
Figure 2007156506
であり、ここで下付き文字wは一般に“広帯域"を意味し、fw(i)は広帯域LSFベクトルのi番目の要素であり、kは加算指数であり、Lは外挿フィルタの次数であり、b((i-1)-k)は外挿フィルタ・ベクトルの((i-1)-k)番目の要素である。換言すると、狭帯域LSFベクトル中にあったのと同数の要素が広帯域LSFベクトルの始めにおいて、正に同じある。広帯域LSFベクトルの残りの要素は、各々の新しい要素が広帯域LSFベクトルの前のL個の要素の加重和となるように計算される。重みは、外挿フィルタ・ベクトルの畳み込み順の要素であるので、fw(i)を計算するとき、その和に寄与する最も遠い前の要素である要素fw(i-L)にはb(L-1)の重みが付けられ、該和に寄与する最も近い前の要素である要素fw(i-1)には重みb(0)が付けられる。
外挿公式(2)は,nwの値、即ち広帯域LPフィルタの次数、を制限しない。外挿の精度を保つために、
Figure 2007156506
となるようにnwの値を選択するのが好適であり、これはLPフィルタの次数がサンプリング周波数の相対的大きさに従って調整されるということを意味する。
ナイキスト周波数0.5FS,Wに近い周波数で広帯域LPフィルタが過度の増幅を生じるべきでないという要件は各LPフィルタ・ベクトルの最後の要素と対応するナイキスト周波数との差異の助けを借りて公式化されることができ、ここでその差異は更に公式
Figure 2007156506
に従って、サンプリング周波数で制限される。
広帯域LPフィルタに対する上記の制限(3)及び(4)は、nwの選択と外挿フィルタの規定とを限定する。正確にそれらの限定がどの様に実現されるか決まりきった作業場実験の問題である。一つの好適なアプローチは、
Figure 2007156506
のように差分ベクトルを規定すると共に、例えば差分ベクトルDのどの要素D(k)も所定制限値より大きくてはならないこと、または差分ベクトルDの自乗された要素(D(k))2の合計が所定制限値より大きくてはならないことを要求することによって、該差分ベクトルを制限することである。LPフィルタは通常は帯域通過フィルタや帯域阻止フィルタの特性ではなくて低域通過フィルタ特性または高域通過フィルタ特性のいずれかを有する。該所定制限値は、もし狭帯域LPフィルタが低域通過フィルタ特性を有するならば該制限値が大きくされることとなるように、この事実と関係を有することができる。これに反して、もし狭帯域LPフィルタが高域通過フィルタ特性を有するならば、該制限値は小さくされる。差分ベクトルDに関連する他の適用可能な制限事項は当業者によって容易に考案される。
次に、フィルタ・ベクトルbを生成する好適な方法を説明する。LPフィルタの極の場所は、その要素が隣り合うLPベクトル要素間の差を表わす差分ベクトルDがある規則性を有するように互いにある相関を持つ傾向を有する。自己相関関数
Figure 2007156506
を計算することができ、ここで
Figure 2007156506
であって、その最大値を、即ち最高度の自己相関を生じさせる指数kの値を見出すことができる。指数kのこの値をmと表示することができる。すると、フィルタ・ベクトルbを規定する好適な方法は
Figure 2007156506
である。
この様にして、フィルタ・ベクトルbは狭帯域LPフィルタの規則性に従う。外挿された広帯域LPフィルタの新しい要素も、外挿手順におけるフィルタbの使用によりこの特徴を受け継ぐ。
当然に、自己相関関数(6)が明瞭な最大値を持たないこともあり得る。それらの場合を考慮して、外挿フィルタ・ベクトルbは狭帯域LPフィルタの全ての規則性をそれらの重要性に応じてモデル化しなければならないと規定することができる。自己相関は、例えば公式
Figure 2007156506
に従って、その様な規定の媒体として使用されることができる。
より一般的な規定(9)は、もし自己相関関数に明瞭な最大ピークがあるならば、上記のより単純な規定(8)に向かって収束する。
広帯域LPフィルタのLSFベクトル表示は、サンプリング・レートFS,Wを有する信号を処理するために使用され得る実際の広帯域LPフィルタに変換され得る状態にある。広帯域LPフィルタのLSPベクトル表示が好ましい場合には、式
Figure 2007156506
に従ってLSFからLSPへの変換を実行することができる。
余弦領域への変換(10)が行われるところのその余弦領域は0.5FS,Wにナイキスト周波数を有し、余弦領域から狭帯域変換(1)が行われるところのその余弦領域域はナイキスト周波数0.5FS,W を持っていたことに注意するべきである。
得られた広帯域LPフィルタの総利得は、それ自体としては従来技術解決策から知られている方法で調整されなければならない。利得を調整することは図4にサブブロック404として示されている外挿ブロック301で行われることができ、或いはそれはボコーダ105の一部分であって良い。図1の従来技術解決策との差異として、本発明に従って生成された広帯域LPフィルタの総利得は従来技術の広帯域LPフィルタのそれより大きくなっても良いことに注意することができ、その理由は、図2に示されているそれのような、理想的周波数応答からの大きな逸脱は発生しそうもなく、また守られる必要もないことである。
図6は、本発明に従って外挿することにより生成される広帯域LPフィルタで得ることのできる典型的周波数応答601を示している。周波数応答601は、サンプリング・レート16kHzでの音声信号の分析に使用される0〜8000HzのLPフィルタの周波数応答を表す理想的曲線201を極めてきっちりとたどる。外挿アプローチは振幅スペクトルのより大きなスケール傾向を極めて正確にモデル化し、周波数応答のピークを正しく局限する傾向がある。図1及び2に示されている従来技術構成との対比での本発明の重要な利点は、広帯域LPフィルタの周波数応答が連続的であること、即ちそれが従来技術広帯域LPフィルタの周波数応答における5600Hzでのそれのような大きさの瞬間的変化を何ら持たないことである。
本発明の精神を、人間のユーザーが考えられる利点に変換するためには音声復号器だけでは不充分である。図7はディジタル無線電話機を示しており、そこではアンテナ701が双方向フィルタ702に結合され、これは無線インターフェースを介してディジタル的に符号化されている音声を受信し送信するために受信ブロック703及び送信ブロック704の両方に結合されている。受信ブロック703と送信ブロック704とは、共に、受信された制御情報と送信されるべき制御情報とをそれぞれ伝えるためにコントローラ・ブロック707に結合されている。更に受信ブロック703と送信ブロック704とは、受信された音声と送信されるべき音声とをそれぞれ処理するためのベースバンド周波数機能を含むベースバンド・ブロック705に結合されている。ベースバンド・ブロック705とコントローラ・ブロック707とはユーザーインターフェース706に結合されており、それは典型的にはマイクロホン、スピーカー、キーパッド及びディスプレイ(図7には特に示されていない)から成る。
ベースバンド・ブロック705の一部分が図7により詳しく示されている。受信ブロック703の最後の部分はチャネル復号器であり、その出力はチャネル復号化された音声フレームから成り、それらに対しては音声復号化及び合成が行われなければならない。該チャネル復号器から得られた音声フレームは一時的にフレーム・バッファー710に蓄積され、そこから実際の音声復号器711に読み出される。後者は、メモリー712から読み出された音声復号化アルゴリズムを実行する。本発明に従って、音声復号器711は、入ってくる音声信号のサンプリング・レートを高めるべきであることを見出すと、前述のLPフィルタ外挿法を使用して、合成的に作られる高周波数サブバンドの生成に必要な広帯域LPフィルタを作る。
ベースバンド・ブロック705は典型的には比較的大きなASIC(特定用途向け集積回路)である。特にいろいろな予め計算された広帯域LPフィルタを蓄積しておくために大きなルックアップ・テーブルを使用する従来技術解決策と比べると、音声復号器を使用するために限られた量のメモリーと少数のメモリー・アクセスとを必要とするに過ぎないので、本発明の使用はASICの複雑さと電力消費量とを減少させるのに役立つ。上記の計算は割合に実行しやすいので、本発明は、ASICの性能に過度の要件を課さない。
公知の音声復号器を示す図である。 公知の広帯域LPフィルタの好適でない周波数応答を示す図である。 (a)は本発明の原理を示す図であり、(b)は(a)の原理の音声復号器への適用を示す図である。 図3(b)の構成の詳細を示す図である。 図4の構成の詳細を示す図である。 本発明に従うLPフィルタの好適な周波数応答を示す図である。 本発明の実施例のディジタル無線電話機を示す図である。
符号の説明
101 低域通過フィルタ
102 狭帯域符号器
103 狭帯域復号器(復号器)
104 サンプリング・レート補間回路
105 ボコーダ
106 高域通過フィルタ
107 加算ブロック(合成手段)
301 外挿ブロック(外挿回路、第2線形予測フィルタを生成する手段)
310 抽出ブロック

Claims (17)

  1. 音声処理装置であって、
    第1周波数帯域を表す線形予測符号化された音声信号を受信するための入力と、
    前記線形予測符号化された音声信号から、前記第1周波数帯域に関連する第1線形予測フィルタを表わす情報を抽出するための手段(103,310)と、
    入力信号を第2周波数帯域を表す出力信号に変換するためのボコーダ(105)と、を含む音声処理装置において、
    前記第1線形予測フィルタを表わす前記情報に基づいて前記第2周波数帯域で前記ボコーダ(105)により使用されるべき第2線形予測フィルタを生成するための手段(301)を含むことを特徴とする音声処理装置。
  2. 第1線形予測フィルタを表わす情報を周波数領域の第1パラメータ表示に変換するための手段(401)と、
    前記第1パラメータ表示を外挿して周波数領域の第2パラメータ表示にするための手段(402)と、
    前記第2パラメータ表示を前記第2線形予測フィルタに変換するための手段(403)と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の音声処理装置。
  3. 前記第1パラメータ表示を外挿して周波数領域の第2パラメータ表示にするための前記手段(402)が無限インパルス応答フィルタ(502)を含むことを特徴とする請求項2に記載の音声処理装置。
  4. 前記第1パラメータ表示から前記無限インパルス応答フィルタのベクトル表示を得るための手段(501)を含むことを特徴とする請求項3に記載の音声処理装置。
  5. 前記第2パラメータ表示を制限するための手段(404,503)を含むことを特徴とする請求項2に記載の音声処理装置。
  6. 線形予測符号化されている音声信号を第1サンプリング・レートを有し第1周波数帯域を表す第1サンプル・ストリームに変換するための復号器(103)と、
    入力信号を第2サンプリング・レートを有し第2周波数帯域を表す第2サンプル・ストリームに変換するためのボコーダ(105)と、
    処理された形式で前記第1及び第2のサンプル・ストリームを合成するための合成手段(107)と、
    前記第1周波数帯域で前記復号器(103)により使用される第1線形予測フィルタに基づいて、前記第2周波数帯域で前記ボコーダ(105)により使用されるべき第2線形予測フィルタを生成するための手段(301)と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の音声処理装置。
  7. 前記復号器(103)と前記合成手段(107)との間に結合されたサンプリング・レート補間回路(104)と、
    前記ボコーダ(105)と前記合成手段(107)との間に結合された高域通過フィルタ(106)と、を含むことを特徴とする請求項6に記載の音声処理装置。
  8. 請求項1の音声処理装置(711)を含むことを特徴とするディジタル無線電話機。
  9. ディジタル的に符号化された音声を処理する方法であって、
    線形予測符号化された音声信号から、第1周波数帯域に関連する第1線形予測フィルタを表わす情報を抽出するステップ(103)と、
    入力信号を第2周波数帯域を表す出力信号に変換するステップ(105)と、を含む音声を処理するための方法において、
    第1周波数帯域に関連する第1線形予測フィルタを表わす抽出された情報に基づいて前記入力信号の前記出力信号への変換に使用されるべき第2線形予測フィルタを生成するステップ(301)を含むことを特徴とする音声を処理する方法。
  10. 線形予測符号化された音声信号を、第1サンプリング・レートを有し第1周波数帯域を表す第1サンプル・ストリームに変換するステップ(103)と、
    入力信号を第2サンプリング・レートを有し第2周波数帯域を表す第2サンプル・ストリームに変換するステップ(105)と、
    処理された形式で前記第1及び第2のサンプル・ストリームを合成するステップ(107)と、を含む請求項9に記載の方法において、
    前記第1周波数帯域で前記復号器により使用される第1線形予測フィルタに基づいて、前記第2周波数帯域で前記ボコーダにより使用されるべき第2線形予測フィルタを生成するステップ(301)を含むことを特徴とする方法。
  11. 前記第1線形予測フィルタを周波数領域の第1パラメータ表示に変換するステップ(401)と、
    前記第1パラメータ表示を外挿して周波数領域の第2パラメータ表示にするステップ(402)と、
    前記第2パラメータ表示を前記第2線形予測フィルタに変換するステップ(403)と、を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
  12. 前記第1パラメータ表示を外挿して周波数領域の第2パラメータ表示にするステップ(402)が、無限インパルス応答フィルタで前記第1パラメータ表示をフィルタリングするサブステップ(502)を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
  13. 前記第1パラメータ表示において観察される規則性から前記無限インパルス応答フィルタについてのベクトル表示を計算するステップ(501)を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
  14. 前記第1パラメータ表示を外挿して周波数領域の第2パラメータ表示にするステップ(402)が、前記第2パラメータ表示の値を
    Figure 2007156506
    として決定するサブステップ(502)を含んでおり、ここでfw(i)は前記第2パラメータ表示のi番目の値であり、kは加算指数であり、Lは前記無限インパルス応答フィルタの次数であり、b((i-1)-k)は前記無限インパルス応答フィルタについてのベクトル表示の((i-1)-k)番目の要素であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
  15. 請求項14に記載の方法において、
    Figure 2007156506
    であるように前記無限インパルス応答フィルタについてのベクトル表示を計算するサブステップ(501)を含んでおり、mは自己相関関数
    Figure 2007156506
    の最大値を生じさせる指数kの値であり、ここで
    Figure 2007156506
    であり、
    fn(i)は前記第1パラメータ表示のi番目の要素であり、
    nnは前記第1パラメータ表示の要素の数であることを特徴とする方法。
  16. 請求項14に記載の方法において、
    Figure 2007156506
    であるように前記無限インパルス応答フィルタについてのベクトル表示を計算するサブステップ(501)を含んでおり、
    ここで
    Figure 2007156506
    であり、
    fn(i)は前記第1パラメータ表示のi番目の要素であり、
    nnは前記第1パラメータ表示の要素の数であることを特徴とする方法。
  17. 請求項14に記載の方法において、条件
    Figure 2007156506
    及び
    Figure 2007156506
    を満たすように前記第2ベクトル表示を制限するステップ(503)を含んでおり、ここで
    nwは前記第2パラメータ表示の要素の数であり、nnは前記第1パラメータ表示の要素の数であり、Fs,wは第2サンプリング周波数であり、Fs、nは第1サンプリング周波数であり、fn(i)は前記第1パラメータ表示のi番目の要素であり、fw(i)は前記第2パラメータ表示のi番目の要素であることを特徴とする方法。
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