JP2007151290A - 誘導電動機のトルク制御装置 - Google Patents

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小林  孝
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Abstract

【課題】2次抵抗を補正することにより、精度の高いトルク制御が実現できる誘導電動機のトルク制御装置を得る。
【解決手段】誘導電動機4の1次電流を2次導体に鎖交する磁束成分と、これに直交するトルク分に分離し、トルク指令値に従って制御するものにおいて、トルク基準からトルク指令値の実効値を演算するトルク実効値演算手段101と、電動機の放熱係数を設定する熱定数設定手段102と、前記放熱係数とトルク実効値と周囲温度から熱平衡時の2次導体温度を演算する温度演算手段103と、前記熱平衡時の2次導体温度演算値から熱遷移時の過渡温度を演算する一次遅れ演算手段104と、前記過渡温度から2次導体の抵抗値を演算する抵抗値演算手段105とを備える。
【選択図】図1

Description

この発明は、誘導電動機のベクトル制御に係わり、特に温度変化による2次抵抗値変化を補償するようにした誘導電動機のトルク制御装置に関するものである。
従来の誘導電動機のトルク制御装置においては、電動機の1次導体温度を検出し、運転状態に応じた所定の関数演算により、1次導体温度検出値から2次導体温度を推定する方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、電動機のトルク電流指令値から2次導体の損失を算出し、2次導体温度を、2次導体損失に対し1次遅れ系として演算する方式が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開昭57−80284号公報 特開昭58−172987号公報
特許文献1に記載された従来の方法によれば、温度検出する為に、電動機側に温度検出器を内蔵しなければならない。また電動機の温度検出器の特性と、制御装置の温度検出増幅器の特性を整合する必要がある。このため、電動機または制御装置の一方のみを更新する場合、特性が整合しない機器同士では更新ができないなどの問題点がある。
また、特許文献2に記載された2次導体損失から温度上昇を推定する従来の方法によれば、温度上昇と周囲温度の差による放熱効果の差などが考慮されていないため、正確な温度検出が難しいという問題点がある。
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、誘導電動機の2次導体温度を電動機の温度検出器から求めるのに代え、電動機の熱モデルを利用することにより2次導体温度を求め、この温度検出値から2次抵抗を補正することにより、精度の高いトルク制御が実現できる誘導電動機のトルク制御装置を提供することを目的とする。
この発明に係る誘導電動機のトルク制御装置においては、誘導電動機の1次電流を2次導体に鎖交する磁束成分と、これに直交するトルク分に分離し、トルク指令値に従って制御するものにおいて、トルク基準からトルク指令値の実効値を演算するトルク実効値演算手段と、電動機の放熱係数を設定する熱定数設定手段と、前記放熱係数とトルク実効値と周囲温度から熱平衡時の2次導体温度を演算する温度演算手段と、前記熱平衡時の2次導体温度演算値から熱遷移時の過渡温度を演算する一次遅れ演算手段と、前記過渡温度から2次導体の抵抗値を演算する抵抗値演算手段と、を備えたものである。
この発明によれば、電動機の放熱係数と周囲温度とトルク指令実効値から熱平衡状態における電動機2次導体温度を演算し、さらに熱遷移状態の過渡温度を熱平衡状態温度と熱時定数を用いて演算することにより、2次導体温度を精度良く演算できる結果、高精度のトルク制御を実現できる。
さらに、これらはトルク指令値ならびに周囲温度を用いて演算する為、電動機の導体温度を検出する必要がない。このため、電動機導体温度を用いて2次抵抗を補償する方式のベクトル制御インバータに、この発明の温度演算手段の出力信号を電動機温度信号の代わりに入力することにより、電動機は温度検出器が不要となり、電動機とインバータの組合せの自由度が増すという効果がある。
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1における誘導電動機のトルク制御装置を図1に基づいて説明する。図1において、1はトルク電流基準値Iを発生するトルク基準発生手段、2はベクトル演算手段、3は電力変換手段、4は誘導電動機、5は速度検出手段、6は誘導電動機4の周囲温度を検出する温度検出手段、10はこの発明による2次導体抵抗値演算手段である。この発明による2次導体抵抗値演算手段10は、トルク基準からトルク指令値の実効値を演算するトルク実効値演算手段101と、誘導電動機4の放熱係数を設定する熱定数設定手段102と、前記放熱係数とトルク実効値と周囲温度から熱平衡時の2次導体温度を演算する温度演算手段103と、前記熱平衡時の2次導体温度演算値から熱遷移時の過渡温度を演算する一次遅れ演算手段104と、前記過渡温度から2次導体の抵抗値を演算する抵抗値演算手段105とから構成されている。
次に動作について説明する。先ず、ベクトル演算手段2について説明する。ベクトル演算手段2は、トルク基準発生手段1より出力したトルク電流Iと図1には図示していない励磁電流発生基準より出力した励磁電流Iから、一次電流値I、トルク電流と励磁電流との位相角θ、すべり周波数ωsを次式に基き算出する。
Figure 2007151290
ただし、R2は電動機の2次抵抗値、L2は2次インダクタンスである。
さらにすべり周波数ωsと速度検出手段5の出力である速度検出値ωnを加算し、1次角周波数ω0を求める。電力変換手段3は、1次電流I1と位相角θと1次角周波数ω0から一次電流I、I、Iを求め、この電流指令に従って誘導電動機4に電力を供給する。
以上のようなベクトル制御において、誘導電動機4の温度上昇により2次導体の抵抗値が変化すると、(数1)で明らかなようにすべり周波数の変動となり、ひいては1次電流の位相ずれとなり正確なベクトル制御ができなくなる。そこで、この発明では次に示す方法により2次導体の温度上昇を演算し、正確な2次抵抗値を求める。
ここで、2次導体の温度上昇はそのほとんどが2次銅損Qによるものであり、2次抵抗Rと2次電流Iを用いて次のように表される。
Figure 2007151290
ただし、αは2次導体Rの温度係数(Ω/°K)、Tmは2次導体温度(°K)である。
次に、誘導電動機4の放熱量は次式で表される。
Figure 2007151290
ただし、Hは放熱係数(W/deg)、Taは周囲温度(°K)である。放熱係数は、強制風冷の場合定数となり、自冷の場合電動機回転数の関数で表される。
2次電流Iが一定で十分時間が経過した熱平衡状態では、Q=Q0となるので(数2)(数3)より2次導体温度Tmは次のように表される。
Figure 2007151290
ここで熱平衡状態が崩れ、導体温度Tの状態から、次の熱平衡状態へ遷移する過渡温度T(t)は次式となる。
Figure 2007151290
ただし、τは熱時定数(°K/sec)である。
通常、電動機電流、周囲温度等の条件は常に変動しており、変動の履歴によって電動機温度が決まる。このため、この発明では2次導体抵抗値演算手段10の演算動作を、電動機熱時定数の1/100〜1/1000程度の間隔で演算を繰り返し、かつ前回の温度演算結果を基に次回の温度変化を求めることにより、条件変動の履歴を演算結果に反映できる。2次導体抵抗値演算手段10の動作を以下に説明する。
2次導体抵抗値演算手段10の演算間隔をΔt、演算タイミングをt1、t2、‥tnとし、まずt=t1における演算を次のように行なう。
トルク実効値演算手段101にて、演算間隔Δt間のトルク実効値を演算し、温度演算手段103に入力する。温度演算手段103では、トルク実効値と熱定数設定手段102で設定した放熱係数と温度検出手段6で検出した周囲温度を用い、(数4)に基づき平衡温度Tm1を求める。次に、1次遅れ演算手段104で過渡温度T(t1)を求める。過渡温度T(t1)は、(数5)にTm=Tm1、T0=Ta、t=Δtを代入し求める。そして抵抗値演算手段105にて、(数2)に基づき2次導体の抵抗値に換算する。
次に、t=t2にタイミングでは、実効値演算手段101にてt1からt2までのトルク実効値を求め、この値と放熱係数ならびに周囲温度を用い温度演算手段103にて平衡温度Tm2を求める。このとき(数5)のパラメータとして、T0には前回の演算値Tm1を代入する。
同様に演算を繰り返すことにより、各タイミングにおける2次抵抗値を推定でき、この値をベクトル制御に使うことにより、精度の高いトルク制御を実現することができる。
この発明の実施の形態1における誘導電動機のトルク制御装置を示すブロック構成図である。
符号の説明
1 トルク基準発生手段
2 ベクトル演算手段
3 電力変換手段
4 誘導電動機
5 速度検出手段
6 温度検出手段
10 2次導体抵抗値演算手段
101 トルク実効値演算手段
102 熱定数設定手段
103 温度演算手段
104 一次遅れ演算手段
105 抵抗値演算手段

Claims (1)

  1. 誘導電動機の1次電流を2次導体に鎖交する磁束成分と、これに直交するトルク分に分離し、トルク指令値に従って制御する誘導電動機のトルク制御装置において、
    トルク基準からトルク指令値の実効値を演算するトルク実効値演算手段と、電動機の放熱係数を設定する熱定数設定手段と、前記放熱係数とトルク実効値と周囲温度から熱平衡時の2次導体温度を演算する温度演算手段と、前記熱平衡時の2次導体温度演算値から熱遷移時の過渡温度を演算する一次遅れ演算手段と、前記過渡温度から2次導体の抵抗値を演算する抵抗値演算手段とを備えたことを特徴とする誘導電動機のトルク制御装置。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010149944A (ja) * 2008-12-24 2010-07-08 Hitachi Ltd エレベータの制御装置

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