請求項1に記載の電力線搬送通信装置は、電力線に信号を重畳し、サブキャリアを用いて送信を行う電力線搬送通信装置であって、前記信号からビット列を生成し、前記ビット列を前記サブキャリアの複素領域上の信号点に写像する信号点写像部と、前記信号点写像部により写像された前記信号点をウェーブレット逆変換するウェーブレット逆変換部と、他の電力線搬送通信装置から受信したデータに関するエラーに基づいて、前記ビット列を写像するべき前記信号点の複素領域上における配置を変更する配置制御部と、を備える電力線搬送通信装置とした。
請求項1に記載の電力線搬送通信装置によれば、OFDM伝送方式で必要であったガードインターバルという冗長な信号部分が必要でなくなり、周波数利用効率を向上することができ、また、複素演算を必要とするフーリエ変換を実部の演算のみで行うウェーブレット変換で実現しているので、演算量を削減することができ、回路規模を低減することができるという作用を有する。また、伝送速度劣化の要因となるガードインターバルを排除しても通信が可能であり、各国の電波法規制に応じて通信に利用する周波数帯域を限定し、回路規模増大の要因となる帯域阻止フィルタを設置することなしに既存システムの使用帯域において十分な減衰量を得ることができる。
また、他の電力線搬送通信装置から受信したデータに関するエラーに基づいて、ビット列を写像するべき信号点の複素領域上における配置を変更することで、通信中に生じるエラーを低減することができる。
請求項2に記載の電力線搬送通信装置は、電力線に重畳された信号を受信する電力線搬送通信装置であって、前記信号を複素領域上の信号点にウェーブレット変換するウェーブレット変換部と、前記複素領域上の信号点を前記ビット列に逆写像する信号点逆写像部と、前記信号に関するエラーに基づいて、前記ビット列を逆写像するべき前記信号点の複素領域上の配置を変更する配置制御部と、を備える電力線搬送通信装置とした。
請求項2に記載の電力線搬送通信装置によれば、OFDM伝送方式で必要であったガードインターバルという冗長な信号部分が必要でなくなり、周波数利用効率を向上することができ、また、複素演算を必要とするフーリエ変換を実部の演算のみで行うウェーブレット変換で実現しているので、演算量を削減することができ、回路規模を低減することができるという作用を有する。また、伝送速度劣化の要因となるガードインターバルを排除しても通信が可能であり、各国の電波法規制に応じて通信に利用する周波数帯域を限定し、回路規模増大の要因となる帯域阻止フィルタを設置することなしに既存システムの使用帯域において十分な減衰量を得ることができる。
また、電力線に重畳された信号に関するエラーに基づいて、ビット列を逆写像するべき信号点の複素領域上の配置を変更することで通信中に生じるエラーを低減することができる。
請求項3に記載の電力線搬送通信装置は、請求項1記載の電力線搬送通信装置であって、更に、前記配置制御部で変更された前記信号点の複素領域上における配置を前記他の電力線搬送通信装置に通知する通知部を備える電力線搬送通信装置とした。
請求項3に記載の電力線搬送通信装置によれば、配置制御部で変更された信号点の複素領域上における配置を他の電力線搬送通信装置に通知することにより、他の電力線搬送通信装置が電力線に頂上された信号を受信する際に生じるエラーを低減することができる。
請求項4に記載の電力線搬送通信装置は、請求項2記載の電力線搬送通信装置であって、更に、前記ビット列を逆写像するべき前記信号点の複素領域上の配置を検知する検知部を備える電力線搬送通信装置とした。
請求項4に記載の電力線搬送通信装置によれば、ビット列を逆写像するべき信号点の複素領域上の配置を検知することにより、電力線に重畳された信号を受信する際に生じるエラーを低減することができる。
請求項5に記載の電力線搬送通信装置は、請求項1または2記載の電力線搬送通信装置であって、前記配置制御部は、前記信号に関するエラーが所定の値を超えた場合に、前記信号点の複素領域上の配置を変更する電力線搬送通信装置とした。
請求項5に記載の電力線搬送通信装置によれば、電力線に重畳された信号に関するエラーが所定の値を超えた場合に、信号点の複素領域上の配置を変更することにより、通信において生じるエラーを低減することができる。
請求項6に記載の電力線搬送通信装置は、電力線に信号を重畳し、サブキャリアを用いて送信を行う電力線搬送通信装置であって、前記信号からビット列を生成し、前記ビット列を前記サブキャリアの複素領域上の信号点に写像する信号点写像部と、前記信号点写像部により写像された前記信号点をウェーブレット逆変換するウェーブレット逆変換部と、他の電力線搬送通信装置から受信したデータに関するエラーに基づいて、電力線搬送通信装置に使用する前記サブキャリアを他のサブキャリアに変更するサブキャリア変更部と、を備える電力線搬送通信装置とした。
請求項6に記載の電力線搬送通信装置によれば、OFDM伝送方式で必要であったガードインターバルという冗長な信号部分が必要でなくなり、周波数利用効率を向上することができ、また、複素演算を必要とするフーリエ変換を実部の演算のみで行うウェーブレット変換で実現しているので、演算量を削減することができ、回路規模を低減することができるという作用を有する。また、伝送速度劣化の要因となるガードインターバルを排除しても通信が可能であり、各国の電波法規制に応じて通信に利用する周波数帯域を限定し、回路規模増大の要因となる帯域阻止フィルタを設置することなしに既存システムの使用帯域において十分な減衰量を得ることができる。
また、他の電力線搬送通信装置から受信したデータに関するエラーに基づいて、電力線搬送通信装置に使用するサブキャリアを他のサブキャリアに変更することにより、他の電力線搬送通信装置との通信中に生じるエラーを低減することができる。
請求項7に記載の電力線搬送通信装置は、電力線にサブキャリアを用いて重畳された信号を受信する電力線搬送通信装置であって、前記信号を複素領域上の信号点にウェーブレット変換するウェーブレット変換部と、前記複素領域上の信号点をビット列に逆写像する信号点逆写像部と、前記信号に関するエラーに基づいて、電力線搬送通信に使用する前記サブキャリアを他のサブキャリアに変更するサブキャリア変更部と、を備える電力線搬送通信装置とした。
請求項7に記載の電力線搬送通信装置によれば、OFDM伝送方式で必要であったガードインターバルという冗長な信号部分が必要でなくなり、周波数利用効率を向上することができ、また、複素演算を必要とするフーリエ変換を実部の演算のみで行うウェーブレット変換で実現しているので、演算量を削減することができ、回路規模を低減することができるという作用を有する。また、伝送速度劣化の要因となるガードインターバルを排除しても通信が可能であり、各国の電波法規制に応じて通信に利用する周波数帯域を限定し、回路規模増大の要因となる帯域阻止フィルタを設置することなしに既存システムの使用帯域において十分な減衰量を得ることができる。
また、電力線に重畳された信号に関するエラーに基づいて、電力線搬送通信に使用する前記サブキャリアを他のサブキャリアに変更することにより、電力線に重畳された信号を受信する際に生じるエラーを低減することができる。
請求項8に記載の電力線搬送通信装置は、請求項6記載の電力線搬送通信装置であって、更に、電力線搬送通信装置に使用する前記他のサブキャリアを前記他の電力線搬送通信装置に通知する通知部を備える電力線搬送通信装置とした。
請求項8に記載の電力線搬送通信装置によれば、電力線搬送通信に使用する他のサブキャリアを他の電力線搬送通信装置に通知することにより、他の電力線搬送通信装置が電力線に重畳された信号を受信する際に生じるエラーを低減することができる。
請求項9に記載の電力線搬送通信装置は、請求項7記載の電力線搬送通信装置であって、更に、電力線搬送通信装置に使用する前記他のサブキャリアを検知する検知部を備える電力線搬送通信装置とした。
請求項9に記載の電力線搬送通信装置によれば、電力線搬送通信装置に使用する前記他のサブキャリアを検知することにより、電力線に重畳された信号を受信する際に生じるエラーを低減することができる。
請求項10に記載の電力線搬送通信装置は、請求項6または7記載の電力線搬送通信装置であって、前記サブキャリア変更部は、前記信号に関するエラーが所定の値を超えた場合に、電力線搬送通信に使用する前記サブキャリアを他のサブキャリアに変更する電力線搬送通信装置とした。
請求項10に記載の電力線搬送通信装置によれば、電力線に重畳された信号に関するエラーが所定の値を超えた場合に、電力線搬送通信に使用する前記サブキャリアを他のサブキャリアに変更することにより、通信中に生じるエラーを低減することができる。
請求項11に記載の電力線搬送通信装置は、電力線に信号を重畳し、サブキャリアを用いて送信を行う電力線搬送通信装置であって、前記信号からビット列を生成し、前記ビット列を前記サブキャリアの複素領域上の信号点に写像する信号点写像部と、前記信号点写像部により写像された信号点をウェーブレット逆変換し、所定の周波数帯域を有した信号を出力するウェーブレット逆変換部と、前記所定の周波数帯域を変更する周波数変更部と、を備える電力線搬送通信装置とした。
請求項11に記載の電力線搬送通信装置によれば、OFDM伝送方式で必要であったガードインターバルという冗長な信号部分が必要でなくなり、周波数利用効率を向上することができ、また、複素演算を必要とするフーリエ変換を実部の演算のみで行うウェーブレット変換で実現しているので、演算量を削減することができ、回路規模を低減することができるという作用を有する。また、伝送速度劣化の要因となるガードインターバルを排除しても通信が可能であり、各国の電波法規制に応じて通信に利用する周波数帯域を限定し、回路規模増大の要因となる帯域阻止フィルタを設置することなしに既存システムの使用帯域において十分な減衰量を得ることができる。
また、信号の周波数帯域を変更することが可能になるので、例えば、宅内と宅外で使用できる周波数帯が各国で異なる場合についても容易に対応することができ、ベースバンド伝送方式のみで対応するよりも、回路規模をさらに抑えることができるという作用を有する。
請求項12に記載の電力線搬送通信装置は、電力線に重畳され、所定の周波数帯域を有した信号を受信する電力線搬送通信装置であって、前記所定の周波数帯域を変更する周波数変更部と、前記周波数変更部により周波数帯域が変更された信号を複素領域上の信号点にウェーブレット変換するウェーブレット変換部と、前記複素領域上の信号点をビット列に逆写像する信号点逆写像部と、を備える電力線搬送通信装置とした。
請求項12に記載の電力線搬送通信装置によれば、OFDM伝送方式で必要であったガードインターバルという冗長な信号部分が必要でなくなり、周波数利用効率を向上することができ、また、複素演算を必要とするフーリエ変換を実部の演算のみで行うウェーブレット変換で実現しているので、演算量を削減することができ、回路規模を低減することができるという作用を有する。また、伝送速度劣化の要因となるガードインターバルを排除しても通信が可能であり、各国の電波法規制に応じて通信に利用する周波数帯域を限定し、回路規模増大の要因となる帯域阻止フィルタを設置することなしに既存システムの使用帯域において十分な減衰量を得ることができる。
また、信号の周波数帯域を変更することが可能になるので、例えば、宅内と宅外で使用できる周波数帯が各国で異なる場合についても容易に対応することができ、ベースバンド伝送方式のみで対応するよりも、回路規模をさらに抑えることができる。
請求項13に記載の電力線搬送通信装置は、請求項11記載の電力線搬送通信装置であって、前記周波数変更部は、SSB変調器である電力線搬送通信装置とした。
請求項13に記載の電力線搬送通信装置によれば、周波数変更部としてSSB変調器を用いることにより、信号の周波数帯域を変更することが可能になるので、例えば、宅内と宅外で使用できる周波数帯が各国で異なる場合についても容易に対応することができ、ベースバンド伝送方式のみで対応するよりも、回路規模をさらに抑えることができる。
請求項14に記載の電力線搬送通信装置は、請求項11記載の電力線搬送通信装置であって、前記周波数変更部は、直交変調器である電力線搬送通信装置とした。
請求項14に記載の電力線搬送通信装置によれば、周波数変更部として直交変調器を用いることにより、信号の周波数帯域を変更することが可能になるので、例えば、宅内と宅外で使用できる周波数帯が各国で異なる場合についても容易に対応することができ、ベースバンド伝送方式のみで対応するよりも、回路規模をさらに抑えることができる。
請求項15に記載の電力線搬送通信装置は、請求項12記載の電力線搬送通信装置であって、前記周波数変更部は、SSB復調器である電力線搬送通信装置とした。
請求項15に記載の電力線搬送通信装置によれば、周波数変更部としてSSB復調器を用いることにより、信号の周波数帯域を変更することが可能になるので、例えば、宅内と宅外で使用できる周波数帯が各国で異なる場合についても容易に対応することができ、ベースバンド伝送方式のみで対応するよりも、回路規模をさらに抑えることができる。
請求項16に記載の電力線搬送通信装置は、請求項15記載の電力線搬送通信装置であって、前記SSB復調器は、前記周波数帯域をベースバンド帯域に変更する電力線搬送通信装置とした。
請求項16に記載の電力線搬送通信装置よれば、SSB復調器が電力線に重畳された信号の周波数帯域をベースバンド帯域に変更することにより、例えば、宅内と宅外で使用できる周波数帯が各国で異なる場合についても容易に対応することができ、ベースバンド伝送方式のみで対応するよりも、回路規模をさらに抑えることができる。
請求項17に記載の電力線搬送通信装置は、請求項12記載の電力線搬送通信装置であって、前記周波数変更部は、直交復調器である電力線搬送通信装置とした。
請求項17に記載の電力線搬送通信装置よれば、周波数変更部として直交復調器を用いることにより、信号の周波数帯域を変更することが可能になるので、例えば、宅内と宅外で使用できる周波数帯が各国で異なる場合についても容易に対応することができ、ベースバンド伝送方式のみで対応するよりも、回路規模をさらに抑えることができる。
請求項18に記載の電力線搬送通信装置は、請求項17記載の電力線搬送通信装置であって、前記直交変調器は、前記周波数帯域をベースバンド帯域に変更する電力線搬送通信装置とした。
請求項18に記載の電力線搬送通信装置よれば、直交復調器が電力線に重畳された信号の周波数帯域をベースバンド帯域に変更することにより、例えば、宅内と宅外で使用できる周波数帯が各国で異なる場合についても容易に対応することができ、ベースバンド伝送方式のみで対応するよりも、回路規模をさらに抑えることができる。
請求項19に記載の電力線搬送通信装置は、請求項1乃至18いずれか一項記載の電力線搬送通信装置であって、前記ウェーブレット逆変換部と前記ウェーブレット変換部は、完全再構成あるいは疑似完全再構成の重複直交変換機能または一般化重複直交変換機能を有する電力線搬送通信装置とした。
請求項19に記載の電力線搬送通信装置によれば、ウェーブレット変換を実現するフィルタバンク回路の全フィルタに対して直線位相特性を持たすことができるので、フィルタバンクに必要な乗算器の個数を半分にすることができ、回路規模を小さくすることができる。また、各サブキャリアの周波数特性をメインローブを中心に急峻に設計できるので、受信時において他のサブキャリアからの干渉や帯域外の雑音による影響を低減することができる。
請求項20に記載の電力線搬送通信装置は、請求項1乃至18いずれか一項記載の電力線搬送通信装置であって、前記ウェーブレット逆変換部と前記ウェーブレット変換部は、変調重複変換機能または拡張変調重複変換機能を有する電力線搬送通信装置とした。
請求項20に記載の電力線搬送通信装置によれば、サブキャリアのサイドローブ周波数特性をメインローブを中心に更に急峻に設計できるので、電力線搬送通信装置において既存システムに影響を与えないようにする目的で従来は必要であった帯域阻止フィルタを必要とせず、受信時において他のサブキャリアからの干渉や帯域外の雑音による影響を低減することができる。
請求項21に記載の電力線搬送通信装置は、請求項1乃至20いずれか一項記載の電力線搬送通信装置であって、前記ウェーブレット逆変換部と前記ウェーブレット変換部は、ポリフェーズフィルタバンク回路によって構成する電力線搬送通信装置とした。
請求項21に記載の電力線搬送通信装置によれば、変調時と復調時における重複直交変換の際の演算を低レートで実行することができ、動作クロック周波数を低くすることができるので、回路の消費電力を低減することができる。また、動作クロック周波数を低くすることができることにより、演算器を流用することができ、回路規模を小さくすることができる。
請求項22に記載の電力線搬送通信装置は、請求項1乃至20いずれか一項記載の電力線搬送通信装置であって、前記ウェーブレット逆変換部と前記ウェーブレット変換部は、ラティス構造のフィルタバンク回路によって構成する電力線搬送通信装置とした。
請求項22に記載の電力線搬送通信装置によれば、変調時と復調時における重複直交変換の際の演算を低レートで実行することができ、動作クロック周波数を低くすることができるので、回路の消費電力を低減することができる。また、高速DCTなどを併用することによって演算量も低減できるので、回路の消費電力および回路規模を小さくすることができる。
請求項23に記載の電力線搬送通信装置は、請求項1、6または11いずれか一項記載の電力線搬送通信装置であって、更に、前記サブキャリアの信号電力対雑音電力に基づいて前記サブキャリアの出力を変更する出力制御部を備える電力線搬送通信装置とした。
請求項23に記載の電力線搬送通信装置によれば、サブキャリアの信号電力対雑音電力に基づいて当該サブキャリアの出力を変更するので、電力線上のノイズレベルを抑えることができ、電力線上のノイズレベルが低く通信エラーが発生しない場合には、送信に必要な電力を抑えることが可能になる。
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図24を用いて説明する。
(実施の形態1)
まず、フーリエ変換とウェーブレット変換による変復調の相違点について、図1、図2を用いて説明する。図1(a)はウェーブレットの時間波形の概念説明のためのグラフであり、図1(b)はウェーブレットの周波数スペクトルの概念説明のためのグラフ。図2(a)は直交変換におけるデータの流れを示す説明図、図2(b)は重複直交変換におけるデータの流れを示す説明図である。
フーリエ変換を用いた変復調においては、互いに直交する複数の三角関数に矩形波の窓関数を乗算して各サブキャリアを構成し、その時の周波数特性はSinc関数(Sinx/x関数)となる。一方、ウェーブレット変換を用いた変復調においては、各サブキャリアが互いに直交する複数のウェーブレットによって構成される。ここでいうウェーブレットとは、図1に示すように時間領域でも周波数領域でも局在する波形のことである。
また、フーリエ変換は、図2(a)に示すように変換過程において入力信号のサンプル値を重複せずにブロック化する。図2(a)における例では、分割数2の場合における入力信号のブロック化の流れを示している。一方、ウェーブレット変換は図2(b)に示すように各変換過程において入力信号のサンプル値を分割数だけシフトさせた形で重複させてブロック化する。図2(b)における例では、分割数2、重複度2の場合における入力信号のブロック化の流れを示している。両者の比較から1回の変換過程におけるフィルタ長が同じ分割数でも異なることが分かる。すなわち、フーリエ変換は分割数に対して一意的にサブキャリア波形の形状および時間長が決定されるが、ウェーブレット変換においては、入力信号の重複度によって形状および時間長を変化させることができるという自由度がある。
図3は、本発明の実施の形態1による電力線搬送通信装置を示すブロック図である。
図3において、101は送信部、111は受信部である。送信部101は、信号点写像器102と、ウェーブレット逆変換器103と、D/A変換器104と、送信用増幅器105と、帯域通過フィルタ106とを備える。また、受信部111は、帯域通過フィルタ112、増幅度制御器113と、A/D変換器114と、ウェーブレット変換器115と、シンボル判定器116とを備える。電力線搬送通信装置100は、送信部101と、受信部111と、電力線結合回路121と、制御部122とから構成される。
このように構成された電力線搬送通信装置の動作について、図4と図5を用いて説明する。図4は電力線搬送通信装置の送信部101の動作を説明するための説明図であり、図5は電力線搬送通信装置の受信部111の動作を説明するための説明図である。なお、ウェーブレット変換過程におけるサブキャリア数Nとフィルタ長Mには自由度があり、サブキャリアの数Nは2のべき乗、フィルタ長Mはサブキャリアの数Nの任意の整数倍の値をとることが可能である。しかし、本実施の形態では、説明を簡単にするため、使用周波数帯域を4分割するウェーブレットを使用する。すなわち、通信に使用するサブキャリア数Nを4本として説明する。また、ウェーブレットを構成する各フィルタはサブキャリア数Nの2倍のフィルタ長を有し、2つの信号点データを用いて変換を行うものとする。
まず、図4を用いて、送信部101のデータの流れについて説明する。
信号点写像器102は、まず、送信するデータ(送信ビット系列)を適当な長さのビット列を複数生成する。例えば、「0001111010110100」というデータを、「00」、「01」、「11」、「10」、「10」、「11」、「01」、「00」のように2ビットずつに分割して各サブキャリアに割り当てるビット列を生成する。次に、信号点写像器102は、この生成した「00」、「01」、「11」、「10」の各ビット列をそれぞれ「+1」、「+3」、「−3」、「−1」といったパルス振幅変調(Pulse Amplitude Modulation、PAM)に相当する信号点に写像する。そして、このPAM信号点データをウェーブレット逆変換器103の入力部にT1のように割り当てる。ウェーブレット逆変換器103は、T1のように割り当てられた2つの信号点データを用いて、ウェーブレット逆変換を行い、1シンボル期間における時間軸上の送信波形のサンプル値を出力する。D/A変換器104は、この時間サンプル値(時間波形系列データ)を一定のサンプリング時間で出力する。送信用増幅器105は、この送信波形を送信信号レベルまで増幅し、帯域通過フィルタ106は、不要な周波数成分を除去する。電力線結合回路121は、帯域通過フィルタ106によって波形整形された信号を電力線通信用信号として電力線110に出力する。以上が、送信時におけるデータの流れの説明である。
次に、図5を用いて受信部111のデータの流れについて説明する。
まず、電力線結合回路121は、電力線110から電力線通信用信号を抽出する。帯域通過フィルタ112は、電力線結合回路121によって抽出した信号から帯域外の雑音信号を除去して増幅度制御器113に出力する。増幅度制御器113は、A/D変換器114のダイナミックレンジ内に収まるように信号レベルを調整し、A/D変換器114は、この信号波形を送信側のサンプリング・タイミングと同タイミングでサンプリングしてディジタル化する。ウェーブレット変換器115は、この波形データをウェーブレット変換し、サブキャリア毎の信号点データを得る。シンボル判定器116は、この信号点データを逆写像し、最も近いと思われるビット列に復元し、受信データを得る。以上が、受信時におけるデータの流れの説明である。
なお、本実施の形態では、送信データを、順番に複数のサブキャリアに割り当てることで高速な通信を可能としているが、同じデータを同時に異なる複数のサブキャリアに割り当てて送信することにより、より信頼性の高いデータ通信も可能になる。
上述したような構成により、OFDM伝送方式で必要であったガードインターバルという冗長的な信号部分が必要でなくなり、伝送効率を向上することが可能となる。また、複素演算を必要とするフーリエ変換を実部だけの演算のみで行うウェーブレット変換で実現しているため、演算量を削減することができ、回路規模を低減することができる。
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2による電力線搬送通信装置を示すブロック図である。本実施の形態では、実施の形態1におけるベースバンド信号を任意の搬送波を中心とする帯域信号に拡張する場合について説明する。
図6において、101は送信部、111は受信部である。送信部101は、信号点写像器102と、ウェーブレット逆変換器103と、送信用周波数変換器としてのSSB(Single Side Band、片側帯域)変調器107と、D/A変換器104と、送信用増幅器105と、帯域通過フィルタ106とを備える。また、受信部111は、帯域通過フィルタ112と、増幅度制御器113と、A/D変換器114と、受信用周波数変換器としてのSSB復調器117と、ウェーブレット変換器115と、シンボル判定器116とを備える。電力線搬送通信装置100は、送信部101と、受信部111と、電力線結合回路121と、制御部122とから構成される。
このように構成された電力線搬送通信装置の動作について、図4と図5を用いて説明する。なお、本実施の形態では、説明を簡単にするため、使用周波数帯域を4分割するウェーブレットとし、ウェーブレットを構成する各フィルタはサブキャリア数Nの2倍のフィルタ長を有するものとする。また、本実施の形態における動作は、実施の形態1を周波数シフトする以外は同様である。
まず、図4を用いて、送信部101のデータの流れについて説明する。信号点写像器102は、まず、送信するデータ(送信ビット系列)を適当な長さのビット列を複数生成する。例えば、「0001111010110100」というデータを、「00」、「01」、「11」、「10」、「10」、「11」、「01」、「00」のように2ビットずつに分割して各サブキャリアに割り当てるビット列を生成する。次に、信号点写像器102は、この生成した「00」、「01」、「11」、「10」の各ビット列をそれぞれ「+1」、「+3」、「−3」、「−1」といったパルス振幅変調(PAM)に相当する信号点に写像する。そして、このPAM信号点データをウェーブレット逆変換器103の入力部にT1のように割り当てる。ウェーブレット逆変換器103は、T1のように割り当てられた2つの信号点データを用いて、ウェーブレット逆変換を行い、1シンボル期間における時間軸上の送信波形のサンプル値を出力する。SSB変調器107は、この送信サンプル系列を周波数シフトする。D/A変換器104は、周波数シフトされた時間サンプル値を一定のサンプリング時間で出力する。送信用増幅器105は、この送信波形を適当なレベルに増幅し、帯域通過フィルタ106は、不要な周波数成分を除去する。電力線結合回路121は、帯域通過フィルタ106によって波形整形された信号を電力線通信用信号として電力線110に出力する。以上が、送信時におけるデータの流れの説明である。
次に、図5を用いて受信部111のデータの流れについて説明する。
まず、電力線結合回路121は、電力線110から電力線通信用信号を抽出する。帯域通過フィルタ112は、電力線結合回路121によって抽出した信号から帯域外の雑音信号を除去して増幅度制御器113に出力する。増幅度制御器113は、A/D変換器114のダイナミックレンジ内に収まるように信号レベルを調整し、A/D変換器114は、この信号波形を送信側のサンプリング・タイミングと同タイミングでサンプリングしてディジタル化する。SSB復調器117は、このディジタル信号をベースバンド帯域にダウンコンバートする。ウェーブレット変換器115はこの波形データをウェーブレット変換し、サブキャリア毎の信号点データを得る。シンボル判定器116は、この信号点データを逆写像し、最も近いと思われるビット列に復元し、受信データを得る。以上が、受信時におけるデータの流れの説明である。
この構成により、本発明における実施の形態1と同様にOFDM伝送方式で必要であったガードインターバルという冗長的な信号部分が必要なくなり、周波数利用効率を向上することが可能となる。また、複素演算を必要とするフーリエ変換を実部だけの演算のみで行うウェーブレット変換で実現しているため、演算量を削減でき、回路規模を低減することができる。さらに、任意の周波数帯へのシフトが可能となるため、例えば宅内と宅外で使用できる周波数帯が各国で異なる場合についても容易に対応することができ、ベースバンド伝送方式のみで対応するよりも回路規模をさらに抑えることが可能となる。
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3による電力線搬送通信装置を示すブロック図である。
図7において、101は送信部、111は受信部である。送信部101は、信号点写像器102と、ウェーブレット逆変換器103と、直交変調器108と、D/A変換器104と、送信用増幅器105と、帯域通過フィルタ106とを備える。また、受信部111は、帯域通過フィルタ112、増幅度制御器113と、A/D変換器114と、直交復調器118と、ウェーブレット変換器115と、シンボル判定器116とを備える。電力線搬送通信装置100は、送信部101と、受信部111と、電力線結合回路121と、全体制御部122とから構成される。
このように構成された電力線搬送通信装置の動作について、図8と図9を用いて説明する。図8は電力線搬送通信装置の送信部101の動作を説明するための説明図であり、図9は電力線搬送通信装置の受信部111の動作を説明するための説明図である。なお、本実施の形態では、説明を簡単にするため、使用周波数帯域を4分割するウェーブレットを使用し、ウェーブレットを構成する各フィルタはサブキャリア数Nの2倍のフィルタ長を有するものとする。
まず、図8を用いて、送信部101のデータの流れについて説明する。
信号点写像器102は、まず、送信するデータ(送信ビット系列)を適当な長さのビット列を複数生成する。例えば、「0001111010110100」というデータを、「00」、「01」、「11」、「10」、「10」、「11」、「01」、「00」のように2ビットずつに分割して各サブキャリアに割り当てるビット列を生成する。次に、信号点写像器102は、この生成した「00」、「01」、「11」、「10」の各ビット列を直交振幅変調(Quardrature Amplitude Modulation、QAM)に対応する複素領域の信号点に写像する。そして、このQAM信号点データをウェーブレット逆変換器103の入力部にT2のように割り当てる。このとき、複素信号点データを実部と虚部に分けて割り当てる。ウェーブレット逆変換器103は、T2のように割り当てられた2つの信号点データによって、実部、虚部それぞれに対してウェーブレット逆変換を行い、1シンボル期間における時間軸上の送信波形のサンプル値を出力する。このとき、送信波形のサンプル値は複素数のままである。直交変調器108は、この複素信号を直交変調することにより、任意の搬送波帯域に周波数シフトする。D/A変換器104は、周波数シフトした時間サンプル値を一定のサンプリング時間で出力する。送信用増幅器105は、この送信波形を適当なレベルに増幅し、帯域通過フィルタ106は、不要な周波数成分を除去する。電力線結合回路121は、帯域通過フィルタ106によって波形整形された信号を電力線通信用信号として電力線110に出力する。以上が、送信時におけるデータの流れの説明である。
次に、図9を用いて受信部111のデータの流れについて説明する。
まず、電力線結合回路121は、電力線110から電力線通信用信号を抽出する。帯域通過フィルタ112は、電力線結合回路121によって抽出した信号から帯域外の雑音信号を除去して増幅度制御器113に出力する。増幅度制御器113は、A/D変換器114のダイナミックレンジ内に収まるように信号レベルを調整し、A/D変換器114は、この信号波形を送信側のサンプリング・タイミングと同タイミングでサンプリングしてディジタル化する。直交復調器118は、波形データをベースバンド帯域にダウンコンバートし、複素ベースバンド信号に変換する。ウェーブレット変換器115はこの複素波形データをウェーブレット変換し、サブキャリア毎の複素信号点データを得る。シンボル判定器116は、この信号点データを逆写像し、最も近いと思われるビット列に復元し、受信データを得る。以上が、受信時におけるデータの流れの説明である。
この構成により、OFDM伝送方式で必要であったガードインターバルという冗長的な信号部分が必要でなくなり、周波数利用効率を向上することが可能となる。また、直交変復調により複素領域の信号点データを使用できるため、さらに周波数利用効率が向上する。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4による電力線搬送通信装置の構成は、図3、図6または図7に示す構成である。本実施の形態では、ウェーブレット逆変換器103およびウェーブレット変換器115を一般化重複直交変換(Generized Lapped orthogonal Transform、GLT)によって構成する場合について説明する。GLTは重複直交変換(Lapped Orthogonal Transform、LOT)の構成をフィルタのタップ数に関して一般化したものである。
図10(a)は4分割の完全再構成のGLTを実現するフィルタバンク回路の各フィルタのインパルス応答の例を示すグラフであり、図10(b)は4分割の完全再構成のGLTを実現するフィルタバンク回路の各フィルタの周波数応答の例を示すグラフである。
なお、本実施の形態では、GLTを実現するフィルタバンク回路をFIRフィルタ群で構成したが、ポリフェーズフィルタやラティス構造によっても構成可能である。また、完全再構成のGLTを実現するフィルタバンク回路の例を示したが、疑似完全再構成のフィルタバンク回路も適用可能である。疑似完全再構成とすることにより、完全再構成の場合よりもさらに、各サブキャリアにおけるサイドローブを小さくすることが可能となる。
図10のようなフィルタバンク回路を構成することにより、ウェーブレット変換を実現するフィルタバンク回路の全フィルタに対して直線位相特性を持たすことが可能となる。全てのフィルタが直線位相特性をもつので、フィルタバンクに必要な乗算器の個数を半分にすることができ、回路規模を小さくすることができる。また、各サブキャリアの周波数特性をメインローブを中心に急峻に設計できるため、受信時において、他のサブキャリアからの干渉や帯域外の雑音による影響を低減することが可能となる。
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5による電力線搬送通信装置の構成は、図3、図6または図7に示す構成である。本実施の形態では、ウェーブレット逆変換器103およびウェーブレット変換器115を拡張変調重複直交変換(Extended modulated Lapped Transform、ELT)によって構成する場合について説明する。ELTはMLT(Modulated Lapped Transform)の構成をフィルタのタップ数に関して一般化したものである。
図11(a)は4分割のELTを実現するフィルタバンク回路の各フィルタのインパルス応答の例を示すグラフであり、図11(b)は4分割のELTを実現するフィルタバンク回路の各フィルタの周波数応答の例を示すグラフである。
なお、本実施の形態では、ELTを実現するフィルタバンク回路をFIRフィルタ群で構成したが、ポリフェーズフィルタやラティス構造によっても構成可能である。
図11のようなフィルタ係数をもつフィルタバンク回路を構成することにより、実施の形態4に記載のLOTあるいはGLTよりも、さらに各サブキャリアのサイドローブを低減することが可能となる。各サブキャリアの周波数特性をメインローブを中心に急峻に設計できるため、電力線搬送通信装置100において既存システムに影響を与えないようにする目的で従来方式では必要となる帯域阻止フィルタを必要とせず、受信時において他のサブキャリアからの干渉や帯域外の雑音による影響を低減することが可能となる。
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6では、図3、図6、図7の電力線搬送通信装置100を構成するウェーブレット逆変換器103およびウェーブレット変換器115をポリフェーズフィルタによって構成する場合について、図12、図13を用いて説明する。図12(a)は一般的なFIRフィルタで構成した帯域合成フィルタバンク回路を示すブロック図であり、図12(b)は一般的なFIRフィルタで構成した帯域分割フィルタバンク回路を示すブロック図、図13(a)はポリフェーズフィルタで構成した帯域合成フィルタバンク回路を示すブロック図、図13(b)はポリフェーズフィルタで構成した帯域分割フィルタバンク回路を示すブロック図である。
まず、一般的なFIRフィルタで構成したフィルタバンク回路の構成について、図12を用いて説明する。図12において、201は信号のサンプリング・レートをN倍にするアップサンプラ、202はFIRフィルタ、203は互いに直交する複数のFIRフィルタ202を組み合わせたFIRフィルタ群、204は2入力加算器である。以上より、ウェーブレット逆変換器103としての帯域合成フィルタバンク回路200が構成される。
また、211はFIRフィルタ、212は互いに直交する複数のFIRフィルタ211を組み合わせたFIRフィルタ群、213はサンプリング・レートを1/Nにするダウンサンプラである。以上により、ウェーブレット変換器115としての帯域分割フィルタバンク回路210が構成される。
なお、ウェーブレット逆変換器103のFIRフィルタ群203とウェーブレット変換器115のFIRフィルタ群212とを構成する各FIRフィルタ202、211は、ウェーブレット変換器115に対する入力信号とウェーブレット変換器115の出力信号とが遅延を除いて一致するように構成されている。例えば、この条件を満たすフィルタ係数としては、(表1)、(表2)が挙げられる。
(表1)、(表2)に示したフィルタ係数は帯域を4分割するフィルタバンク回路の一例である。ここで、hは一般的なFIRフィルタを示す。このFIRフィルタは、入力データを遅延する縦続接続の7個の遅延素子と、この遅延素子の出力データおよび上記入力データに係数を乗算する8個の乗算器と、この乗算器の出力データを入力側から順次に加算して累積値を得る7個の加算器とから成る。tapは上記乗算器を示し、αは上記乗算器の係数を示す。またαMNのMはフィルタ番号、Nはタップ番号を示す。
次に、ポリフェーズフィルタで構成したフィルタバンク回路について、図13を用いて説明する。図13において、301はポリフェーズフィルタ、302は信号のサンプリング・レートをN倍にするアップサンプラ、303は2入力加算器、304は1サンプリング分遅延させる遅延素子(レジスタ)である。以上より、ウェーブレット逆変換器103としての帯域合成フィルタバンク回路300が構成される。
また、311は1サンプリング分遅延させる遅延素子、312はサンプリング・レートを1/Nにするダウンサンプラ、313はポリフェーズフィルタである。以上により、ウェーブレット変換器115としての帯域分割フィルタバンク回路310が構成される。
図14は、図13のポリフェーズフィルタ301、313を示すブロック図である。図14において、321はフィルタ、322は2入力加算器である。なお、ポリフェーズフィルタ301とポリフェーズフィルタ313とを構成する各フィルタは、帯域合成フィルタバンク回路300に対する入力信号と帯域分割フィルタバンク回路310の出力信号とが遅延を除いて一致するように構成されている。例えば、(表1)、(表2)とのフィルタ係数による演算結果と同一にするためには各ポリフェーズフィルタを(表3)〜(表10)のように構成すればよい。
図12のフィルタバンク回路と図13のフィルタバンク回路との間の相違点は、サンプリング・レートを変更する箇所が異なる点である。帯域合成フィルタバンク回路200、300において、図12では、フィルタに入力する前に信号をアップサンプリングするが、図13では、フィルタ演算の後にアップサンプリングする。一方、帯域分割フィルタバンク回路210、310においては、図12では、フィルタ演算の後にダウンサンプリングして、図13では、フィルタ演算の前にダウンサンプリングする。つまり、図13におけるフィルタ演算は図12よりも遅い速度で実行できる。
なおこの実施の形態では、帯域合成フィルタバンクのフィルタ出力のタイミング制御部をアップサンプラ302、2入力加算器303、遅延素子304を用いて構成したが、マルチプレクサによっても構成可能である。
したがって、この構成により、変調と復調時における重複直交変換の際の演算を低レートで実行することが可能となる。すなわち、動作クロック周波数を低くできるため回路の消費電力を低減することができる。また、このことは単位時間当たりの演算量が低減されるという観点から見ると、演算器を流用することが可能となり、回路規模を小さくすることも可能となる。
(実施の形態7)
図15(a)は図3、図6、図7の電力線搬送通信装置100のウェーブレット逆変換器103としての帯域合成フィルタバンク回路を示すブロック図であり、図15(b)は図3、図6、図7の電力線搬送通信装置100のウェーブレット変換器115としての帯域分割フィルタバンク回路を示すブロック図であり、フィルタバンク回路として、ラティス構造のELTフィルタバンク回路を示す。すなわち、本実施の形態では、ウェーブレット逆変換器103およびウェーブレット変換器115をラティス構造のフィルタバンク回路によって構成する場合について説明する。
図15において、401はタイプIVの離散コサイン変換(Discrete Cosine Transform、DCT)器、402は1サンプリング分遅延させる遅延素子、403は平面回転演算器、404は2サンプリング分遅延させる遅延素子、405は信号のサンプリング・レートをN倍にするアップサンプラ、406は2入力加算器、407は1サンプリング分遅延させる遅延素子である。以上より、帯域合成フィルタバンク回路400が構成される。一方、411は1サンプリング分遅延させる遅延素子、412はサンプリング・レートを1/Nにするダウンサンプラ、413は2サンプリング分遅延させる遅延素子、414は平面回転演算器、415は1サンプリング分遅延させる遅延素子、416はタイプIVの離散コサイン変換器である。以上より、帯域分割フィルタバンク回路410が構成される。なお、平面回転演算器403と414は、図16に示す平面回転演算回路を複数組み合わせて構成したものである。図16は平面回転演算回路を示す機能ブロック図である。
この構成により、実施の形態6で説明したポリフェーズフィルタで構成した場合と同様に、変調と復調時における重複直交変換の際の演算レートを低減することが可能となる。さらに、高速DCTなどを併用することによって演算量も低減できるため、回路の消費電力および回路規模を低減することができる。
(実施の形態8)
本発明の実施の形態8では、図3、図6、図7の電力線搬送通信装置100のウェーブレット逆変換器103と図3、図6、図7の電力線搬送通信装置100のウェーブレット変換器115において、重複係数に応じたフィルタ係数を複数パターン用意しておき、そのフィルタ係数を変更する方法について説明する。
まず、送信部101のウェーブレット逆変換器103と受信部111のウェーブレット変換器115に対して、重複係数に応じたフィルタ長の異なるフィルタ係数を複数パターン用意しておく。そして、送信部101および受信部111の各制御部122よりウェーブレット逆変換器103およびウェーブレット変換器115に対して、フィルタのパターン番号を指定することにより、パターン番号に合わせてフィルタバンク回路内のフィルタ係数を変化させる。この時、フィルタのパターン番号は制御信号などを使用して送信側および受信側で一致させる必要がある。また、フィルタ係数を変更する基準としては、送信部101から送信される電力線通信信号や、伝送路の変動、受信レベル等が考えられる。例えば、S/N(信号電力対雑音電力比)を用いる場合、受信時においてS/Nが大きい場合は、各サブキャリアから見て帯域外の雑音が小さいため、フィルタ長の短いフィルタによって復調動作を行い、S/Nが小さい場合は、他の帯域からの雑音の影響を受けにくくするため、フィルタ長の大きいフィルタ係数を使用する。
この制御により、伝送路の雑音状態が良好な場合の演算量を低減することができ、受信時の消費電力を削減することが可能となる。また、雑音状態が劣悪な場合においても、安定した受信を行うことが可能となる。
(実施の形態9)
本発明の実施の形態9では、図3、図6、図7のウェーブレット逆変換器103とウェーブレット変換器115とをラティス構造で構成した場合において、重複係数に応じた平面回転角パラメータを複数パターン用意しておき、その平面回転角パラメータを変更する方法について説明する。
まず、送信部101のウェーブレット逆変換器103と受信部111のウェーブレット変換器115は実施の形態7のようにラティス構造で構成する。そして、送信部101のウェーブレット逆変換器103と受信部111のウェーブレット変換器115に対して、重複係数に応じた平面回転角パラメータを複数パターン用意しておく。そして、送信部101および受信部111の各制御部122よりウェーブレット逆変換器103とウェーブレット変換器115に対して、平面回転角パラメータのパターン番号を指定することにより、そのパターン番号に合わせてフィルタバンク回路内の平面回転角パラメータを変化させる。この時、平面回転角パラメータのパターン番号は制御信号などを使用して送信機および受信機で一致させる必要がある。また、平面回転角パラメータを変更する基準としては、送信部101から送信される電力線通信信号や、伝送路の変動、受信レベル等が考えられる。例えば、S/Nを用いる場合、受信時においてS/Nが大きい場合は、各サブキャリアから見て帯域外の雑音が小さいため、重複係数が小さい平面回転角パラメータによって復調動作を行い、S/Nが小さい場合は、他の帯域からの雑音の影響を受けにくくするため、重複係数が大きい平面回転角パラメータを使用する。
この制御により、伝送路のノイズ環境が良好な場合の演算量を低減することができ、受信時の消費電力を削減することが可能となる。また、雑音状態が劣悪な場合においても、安定した受信を行うことが可能となる。さらに、実施の形態8のようにフィルタ係数を複数パターン用意するのに比べ、記憶容量を減らすことができる。
(実施の形態10)
図17は、本発明の実施の形態10による電力線搬送通信装置の制御方法(すなわち図3、図6または図7の制御部122の動作)を説明するための説明図であり、本実施の形態では、特定のサブキャリアのみを出力する場合について説明する。なお、説明を簡単にするため、サブキャリア数を4本としている。
図17において、102は信号点写像、103はウェーブレット逆変換器、122は制御部である。
まず、信号点写像器102において、「+1」、「+3」、「−3」、「−1」、「+1」、「+3」、「−3」、「−1」の順で信号点写像されたデータが出力されたとする。このとき、制御部122が信号点写像器102に対して、使用しないサブキャリア番号を指定することにより、指定した番号のサブキャリア部分に対してデータを入力しないようにする。すなわち、ゼロを挿入する。例えば、1番目と4番目のサブキャリアを出力しないようにする場合は、1番目と4番目のサブキャリアを出力するフィルタの入力部分にはゼロを挿入して、写像された信号点データは2番目と3番目のサブキャリアの入力部分に入れる。そして、ウェーブレット逆変換器103は、各々の入力データに基づきウェーブレット逆変換を行う。
このように制御することにより、出力するサブキャリアを容易に選択することができ、特定の周波数にのみ信号を出力することが可能になる。つまり、国別の法規制によって各国毎に使用可能な周波数帯が異なる場合であっても、容易に対応することが可能となる。
さらに、本実施の形態による電力線搬送通信装置の有効性を、図18、図19、図20を用いて分かりやすく説明する。図18は電力線搬送通信に認可された周波数スペクトルの例を示すグラフであり、図19はOFDM伝送を用いた場合の送信周波数スペクトルを示すグラフ、図20は電力線搬送通信装置の送信周波数スペクトルを示すグラフである。
例えば、ある国の法規制による周波数割り当てが図18に示すようであったとする。従来のOFDMを用いた電力線搬送通信装置による送信信号は図19に示すようになり、図18の規制を満足するためには、別途帯域阻止フィルタが必要となる。すなわち、国毎に異なる帯域阻止フィルタのフィルタ係数を用意しておく必要がある。一方、本実施の形態による電力線搬送通信装置は、本実施の形態における動作のみで図20に示すような送信信号スペクトラムを得ることができるので、帯域阻止フィルタを必要としない。このことから、本実施の形態による電力線搬送通信装置は、各国で異なる法規制に柔軟に対応することができる。
(実施の形態11)
図21は、図3、図6、図7の電力線搬送通信装置の制御方法(すなわち本発明の実施の形態11による電力線搬送通信装置の制御部122の動作)を説明するための説明図である。本実施の形態では、電力線上のノイズレベルを検出する方法について説明する。
図21において、115はウェーブレット変換器、116はシンボル判定器、122は制御部である。
次に、電力線上のノイズレベル検出動作について説明する。
まず、ウェーブレット変換器115は、電力線110上のノイズの周波数分布を検知するために、サブキャリア毎の信号点データに復調する。次に、シンボル判定器116は、サブキャリア毎の信号点データに基づき、どの信号点付近に存在するノイズ成分が大きいかを測定する。このとき、雑音が全くない場合には、各サブキャリアにおける信号点データはすべて0になる。したがって、このデータの値が0からどれだけずれたかによってノイズ量を推定する。そして、シンボル判定器116は、所望値よりもノイズが大きなサブキャリアを判定して、そのサブキャリア番号を制御部122に対して通知し、そのサブキャリアを制御部122は使用できないようにする。
なお、本実施の形態では、電力線上に信号を重畳しない状態でのノイズレベル検出方法について説明したが、送受信間で既知の信号を使用しても同様な方法で実現することができる。すなわち、通信状態においてもノイズ検出を行える。
このような制御を行うことにより、電力線上のノイズ状態を把握することができ、使用可能なサブキャリアを選択することができる。制御部122において、あらかじめ大きなノイズ成分が存在する周波数位置を避けるようにサブキャリアを選定することにより、より信頼性の高い通信が可能となる。
(実施の形態12)
本発明の実施の形態12による電力線搬送通信装置における制御方法として、伝送速度を指定する速度に変更する制御方法について、図3と図4を用いて説明する。
まず、制御部122は、外部から指定された伝送速度を実現するために必要な信号点の個数やサブキャリアの数を算出し、その算出結果と実施の形態11による使用可能サブキャリアの判定結果に基づき、サブキャリアの選択を行う。次に、制御部122は、信号点写像器102に対して、使用するサブキャリア番号と信号点の個数とを指定する。信号点写像器102は、その設定値に従って信号点写像、サブキャリアへのデータ配置処理を対応させる。
例えば、外部から必要な伝送速度が指定され、制御部122において指定された伝送速度に合うように算出された結果が、キャリア数2、信号点の個数が4であるとする。また、実施の形態11による判定で、使用できるサブキャリアが2番目のサブキャリア以外の3本であるとする。このとき、制御部122は、例えば、1番目と3番目のサブキャリアを選択することができる。また、他の使用しないサブキャリア(この例では4番目のキャリア)は、別の通信に利用することができる。
このように制御することにより、伝送速度を指定する速度に容易に変更することができ、また、指定された伝送速度を実現する以外のサブキャリアを別の通信に利用することができるため、帯域の利用効率を向上することが可能となる。
(実施の形態13)
図22は、本発明の実施の形態13による電力線搬送通信装置の制御部122の動作を示すフローチャートである。本実施の形態では、通常の通信中に受信データにエラーが発生した場合、送信する周波数位置をずらし、ノイズの影響を回避しながら、電力線搬送通信装置1(例えば自装置)と電力線搬送通信装置2(例えば相手装置)の間の通信手順を合わせる方法について説明する。なお、電力線搬送通信装置1と電力線搬送通信装置2の構成は図3の構成とする。
図22において、最初の状態(S11、S21)では、電力線搬送通信装置1と電力線搬送通信装置2の間の通信はキャリアパターン1で通信している。そして、電力線搬送通信装置1で、エラー数があるしきい値以上になった場合(S12)には、エラー数があるしきい値を越えているサブキャリアを検知し(S13)、変更するサブキャリアの番号あるいは位置を仮に設定する(S14)。なお、このとき変更したキャリアパターンをキャリアパターン2とする。その後、設定したキャリアパターン2の内容を、現在の通信に利用しているキャリアパターン1で電力線搬送通信装置2へ送信する(S15)。その後、電力線搬送通信装置1は、自分のキャリアパターンをキャリアパターン2に変更する。なお、キャリアパターンは1つのサブキャリアまたは複数のサブキャリアの組からなるものである。
キャリアパターン1でキャリアパターン2の内容を受信した電力線搬送通信装置2では、キャリアパターン変更であるか否かの判別を行い(S22)、変更でなければ通常処理(S21)に戻り、変更であれば受信部111で重複直交変換をかける周波数位置をキャリアパターン2に変更し(S23)、さらにキャリアパターンを変更したことをキャリアパターン2で変調して電力線搬送通信装置1へ返送する(S24)。
電力線搬送通信装置1では、この完了通知の内容が正しく送られたことを判別する(S16)。そこで、変更完了通知を正しく受け取れた場合には通常処理(S11)へ移るが、変更完了通知を受け取れなかった場合には、S/Nのしきい値を変更して(S17)、再度キャリアパターンの選定処理(S13)に移る。そして、再度キャリアパターンの変更のシーケンスを行う。この一連のシーケンスをエラー数が少なくなるまで繰り返す。
ここで、上記シーケンスは、通常の通信時のみではなく、初期のインストール時の設定としても利用できる。
なお、本実施の形態では、使用するサブキャリアを変更することにより、受信エラー数を減少させたが、信号点写像器の信号点配置を変更することによってエラー数を減少さることも可能である。例えば、図23に示すように、4値の信号点配置から2つの配置方法へ変更しても良く、通信上の整合性は本実施の形態におけるシーケンスと同様の手段で実現することができる。ここで、図23(a)、(b)は電力線搬送通信装置の信号点写像器102の信号点数の変化を示す説明図である。
このように本実施の形態によれば、誤り率の小さいサブキャリアから優先的に通信に使用するようにしたので、受信エラー数を減少させることができる。
(実施の形態14)
図24は、本発明の実施の形態14による電力線搬送通信装置の動作を示すフローチャートであり、電力線搬送通信装置2(例えば相手装置)の受信結果に基づき、電力線搬送通信装置1(例えば自装置)の送信出力レベルを変更する動作を示す。なお、電力線搬送通信装置1と電力線搬送通信装置2の構成は図3の構成である。
図24において、初期状態(S31)では、電力線搬送通信装置1はある出力レベルで送信している。電力線搬送通信装置2では、電力線搬送通信装置1の信号を受信して(S41)、サブキャリア毎にS/Nを測定する(S42)。次に平均S/N値に基づいて電力線搬送通信装置1に出力レベルの変更要求を行う(S43)。
このS/N値と変更要求とを受け取った電力線搬送通信装置1では、変更要求の有無を判別し(S32)、このS/N値から逆算して(S33)出力レベルを決定(S34)し、そのレベルで電力線搬送通信装置2に再度送信する。
この動作により、電力線上のノイズレベルが低く、通信エラーが発生しない場合には、出力レベルを低下させることにより、送信に必要な電力を削減することが可能になる。
このように本実施の形態によれば、電力線上のノイズレベルが低く通信エラーが発生しない場合には出力レベルを低下させることができるので、送信に必要な電力を削減することができる。