JP2007127642A - 結合したリガンドを有するエバネッセント波センサー - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、β−ヒドロキシリンカー成分を介してセンサー基材に結合したリガンドを備えるエバネッセント波センサーを提供する。
【解決手段】かかるエバネッセント波センサーを製造する方法は、エポキシ環成分を有する第1の反応性成分を、アミノ成分若しくはチオール成分を有する第2の反応性成分と接触させることを包含する。本発明はまた、かかるエバネッセント波センサーを試料に接触させ、試料中の検体がセンサーに結合するのをエバネッセント波検出により判定する方法も提供する。本発明はまた、かかる方法を実施するためのキット及びシステムも提供する。
【選択図】なし
【解決手段】かかるエバネッセント波センサーを製造する方法は、エポキシ環成分を有する第1の反応性成分を、アミノ成分若しくはチオール成分を有する第2の反応性成分と接触させることを包含する。本発明はまた、かかるエバネッセント波センサーを試料に接触させ、試料中の検体がセンサーに結合するのをエバネッセント波検出により判定する方法も提供する。本発明はまた、かかる方法を実施するためのキット及びシステムも提供する。
【選択図】なし
Description
本発明は、概して、検体を検出するためのセンサーに関する。より詳細には、本発明は、センサー表面にリガンドの結合したエバネッセント波センサーに関する。
分子間相互作用を検出するための感度のよい正確な方法は、薬剤の発見、環境試験、診断、遺伝子発現解析、ゲノミクス解析、プロテオミクスをはじめとする広範な種々の用途において非常に望ましく、また、互いに結合することが知られている2つの分子の結合を特性付けるために非常に望ましい。表面での分子間相互作用を測定するための、エバネッセント場の波動現象に基づいたいくつかの光学的手法が開発されている。
用いられる手法の1つは、表面プラズモン共鳴(以下、SPRという)である。SPR現象はよく知られており、例えば、Homola, Jらによる、Sensors and Actuators B 54: 3-15 (1999);Welford, K., Opt. Quant. Elect. 23:1 (1991);Raether, H., Physics of Thin Films 9: 145 (1977)において概説されている。
典型的に、SPRは、光学的に透明な物質(例えば、ガラス)と金属薄膜(通常、銀又は金)との間の界面から特定の角度にて反射される特定波長に関する光強度の減衰(dip)として測定され、金属表面近傍の媒体の屈折率に依存する。金属表面への物質の吸収又は結合などによる金属表面における複素屈折率の実数部の変化は、SPRが起こる角度(いわゆるSPR角)に、相応のシフトをもたらす。特定の入射角では、SPRは、特定波長の光の強度減衰(SPRが起こる波長に相応のシフトをもたらす屈折率の実数部の変化)として観察される。典型的な構成では、金属表面近傍の媒体は試料を含んでおり、この試料は、その組成に応じて金属表面近傍の媒体の屈折率を変化させる。
3種の択一的な構成を用いて、SPRが生じるように光を界面にカップリングさせ得る。これらの方法としては、金属回折格子(metallized diffraction grating)(H. Raetherの”Surface Polaritons”, Eds. Agranovich and Mills, North Holland Publ. Comp., Amsterdam, 1982を参照)、金属蒸着ガラスプリズム(クレッチマン配置)、又はガラス基材の金属蒸着面に密着したプリズム(オット配置)の使用が挙げられる。SPR系アッセイでは、例えば、金属表面にリガンドを結合させて、この検知表面と該表面に接している溶液中の検体との相互作用をモニタする。
SPRに類似する他の光学的手法は、ブルースター角反射率測定法(BAR)及び臨界角反射率測定法(CAR)である。光が、2つの異なる透明な誘電体媒体間の境界に、屈折率の大きい媒体から小さいほうへと入射すると、内部反射率は、入射角によって、s−偏光成分及びp−偏光成分の両方に関して変化する。反射したs−偏光成分は、入射角と共に増大し、p−偏光成分は、特定の角度(ブルースター角)で最小の反射率を示す。s−及びp−偏光の両方が完全に内部反射される角度を臨界角と定義する。臨界角より大きい全ての入射角では、内部全反射(TIR)が起こる。
SPRに類似する他の光学的手法は、Azzam, R. M. A.による、Surface Science 56: 126-133 (1976)に記載のエバネッセント波偏光解析法である。エバネッセント波偏光解析法では、界面から反射した光の強度及び楕円偏光(polarization ellipse)を、入射角、波長又は時間の関数としてモニタし得る。定常状態条件下では、波長及び入射角の関数としての測定値により、界面近傍の媒体の分子構成及び分子組織に関する基本情報が提供され得る。動的な時変状況 (dynamic time-varying situation)では、時間の関数としての測定値によって、特定の表面変化の動力学が決定され得る。
生化学的検知用途において用いられるエバネッセント波センサーは、典型的には、界面若しくはその近傍に結合している1つ又は複数のリガンドを有する。当該リガンドは、所望の検体に選択的に結合することができる。検体へのリガンドの結合は、界面近傍の媒体の屈折率をシフトさせ、それによって、検出可能なエバネッセント波の変化をもたらす。エバネッセント場の波動は、界面近傍の媒体内のほんの短い距離しか入り込まないため、エバネッセント波センサーのための条件は、バルクの媒体(界面から遠位)における変化については比較的感度が低い。これは、選択的なリガンド−検体相互作用に基づいた、検体の非常に選択的な検知の可能性をもたらす。
界面若しくはその近傍にリガンドを結合させるために多くの方法が知られている。代表的な方法は、例えば、Homola, J.らによる、Sensors and Actuators B 54: 3-15 (1999); Bergstromらによる米国特許第5,242,828号(1993);及びThirstrupらによる米国特許第6,738,141号(2004)に記載されている。
重要な他の文献としては、Nessらによる米国特許第6,027,890号(2000);PCR公開公報WO97/27331号;米国特許公開公報2002−0117659号;並びに以下の論文:Olejnikらによる、Proc. Natl. Acad. Sci. 92:7590-94;Olejnikらによる、Meth. Enzymol. 291:135-154 (1998); Zhaoらによる、Anal. Chem. 74:4259-4268 (2002); Sanfordらによる、Chem. Mater. 10:1510-20 (1998); Guillierらによる、Chem. Rev. 100:2091-2157 (2000); Fongらによる、Analytica Chimica Acta 456:201-208 (2002); Ogataらによる、Anal. Chem. 74:4702-4708 (2002);Baiらによる、Nucl. Acids Res. 32:535-541 (2004); Cooperによる、Anal. Bioan. Chem 337:843-842 (2003); Homola, J.らによる、Anal. Bioan. Chem 337:528-539 (2003); Schultzによる、Curr. Opin. Biotechnol. 14:13-22 (2003); McDonnellによる、 Curr. Opin. Chem. Bio. 5:572-577 (2001):Borchらによる、Anal Chem 76:5243-5248 (2004);及びCuiらによる、Science 293:1289-1292 (2001)が挙げられる。
所望の検体に特異的なセンサーを提供するさらなる方法及び当該センサーの使用方法に依然として必要とされている。
本発明は、当技術分野における前述の欠点に取り組むものであり、目的とする検体に特異的に結合するリガンドを備えたセンサーを製造するための新規な方法、並びに当該センサーを用いる方法及び装置を提供する。
特定の実施の形態において、本発明は、β−ヒドロキシリンカー成分を介してセンサー基材に結合したリガンドを含んで成るエバネッセント波センサーを提供する。主題のエバネッセント波センサーを製造する方法も提供され、当該方法は、以下の構造
を有する第1の反応性成分を、以下の構造
R2−X1Hm
を有する第2の反応性成分と、構造
R2−X1Hm
を有する第2の反応性成分と、構造
を有する化合物がもたらされるのに十分な条件下で接触させることを包含する。
式中、
R1又はR2の一方は、センサー基材であり;
R1又はR2の他方は、リガンド、リガンドに結合された連結基、リガンドに結合させるための官能基又はリガンドに結合させるための官能基に結合された連結基から選択され;
X1は、N又はSから選択され;
X1がNのとき、mは1であり、X1がSのとき、mは0である。
R1又はR2の一方は、センサー基材であり;
R1又はR2の他方は、リガンド、リガンドに結合された連結基、リガンドに結合させるための官能基又はリガンドに結合させるための官能基に結合された連結基から選択され;
X1は、N又はSから選択され;
X1がNのとき、mは1であり、X1がSのとき、mは0である。
本発明はまた、表題のエバネッセント波センサーを試料と接触させ、試料中の検体のセンサーへの結合をエバネッセント波検出によって評価する方法も提供する。本発明はまた、本発明の方法を行なうためのキット並びにシステムも提供する。
本発明の他の目的、効果及び新規な特徴については、一部は以下の説明並びに実施例に記載されており、また一部は、以下の明細書を検討すれば当業者に自明となるか、又は本発明の実施により習得することができる。本発明の目的及び効果は、添付の特許請求の範囲において明記した装置、組合せ、組成物及び方法によって実現、達成され得る。
本発明のこれらの特徴及び他の特徴は、図面と共に、本明細書記載の方法に係る代表的な実施形態及び当該方法を実施するための例示的な装置の開示から理解されよう。
理解を容易にするため、添付の図面では、各図面にわたって共通する構成要素に関しては、同一の符号を用いて示した。図の構成要素は、縮尺通りに描かれていないことに留意されたい。
本発明を詳細に説明する前に、別途指示のない限り、本発明が、特定の材料、試薬、反応材料、製造方法等に限定されないことを理解されたい。何故なら、それらは、或る程度変更し得るからである。また、本明細書で用いる用語は、専ら特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、本発明を限定する意のないことを理解されたい。本発明の方法に関しては、以下に記載する順序にて諸工程を実施することが好ましいが、論理的に可能な異なる順序で実施することも可能である。
或る範囲の値を提示する場合、別途明確に指示のない限り、その範囲の上限と下限の間にある各値、並びに任意の他に記載する値若しくはその記載した範囲にある値が本発明に包含されることを理解されたい。これらの比較的狭い範囲の上限及び下限は、記載の範囲から限界値が除外される旨記載のない限り、前記狭い範囲内に包含することができ、これらもまた、本発明に包含される。記載する範囲に限界値の一方又は両方が含まれる場合、それらの含まれる限界値のいずれか又は両方を除外する範囲もまた本発明に含まれる。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、別途明確に指示のない限り、複数形の指示対象物を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「リガンド(a ligand)」という場合、複数のリガンドが包含される。さらに、特許請求の範囲は、いかなる任意選択の構成要件も排除するように作成し得ることに留意されたい。即ち、当該記載は、請求項の構成要件の列挙に関して、「単独で(solely)」、「単一で/のみ(only)」等の排他的な用語の使用、又は「ネガティブな」限定の使用に対する先行詞の基礎としての役割を果たす意がある。本明細書及び以下の特許請求の範囲では、別途明確に指示のない限り、用語は以下の意を有するものと定義される。
ここで用いるとき、用語「試料(サンプル)」は、典型的には(必ずしもそうでないが)、対象とする1つ又は複数の成分を含有する流体状(例えば、水溶液や溶液)の物質又は物質の混合物を表す。試料は、食品、環境物質、生物学的試料(例えば、個体から単離された組織又は体液等(例えば、限定はしないが、血漿、血清、髄液、精液、リンパ液、皮膚、気道、腸管、及び尿生殖器管の分泌物(external section)、涙、唾液、乳汁、血球、腫瘍、器官)、in vitro細胞培養物試料(例えば、限定はしないが、細胞培養培地中での細胞の成長から得られる培養上清、ウイルス感染していると推定される細胞、組換え細胞及び細胞成分))のような種々の供給源から得られる。
本明細書では、用語「検体」は、検体とリガンドが特異的結合対を構成するならば、基材表面上のリガンドに特異的に結合する試料の既知成分又は未知成分を指す。一般に、検体は、対象とする化学分子、例えば生体高分子(即ち、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、抗体等のオリゴマー若しくはポリマー)である。この場合、「検体」とは、基材に結合している「リガンド」によって検出されることになる、移動相(典型的には流体)中の成分を指す。ここで、「検体」及び「リガンド」に関しては、その一方は他方によって評価することができる(従って、一方は、他方が結合するによって評価される検体(例えば、ポリペプチド)の未知混合物とし得る)。
「生体高分子」とは、1つ又は複数の種類の繰り返し単位から成る高分子化合物であり、それは供給源に関係しない(例えば、生物学的なもの(例えば、天然のもの、細胞系の組換え発現系から得られるもの等)であっても合成物であってもよい)。生体高分子は、生物学的システムにおいて見出だされるものであり、詳細には、アミノ酸、ヌクレオチド又はその混合物を含む化合物をはじめとするポリペプチド及びポリヌクレオチドが挙げられる。
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書中では互換的に用いられ、少なくとも2つのアミノ酸が共有結合しているものを意味し、それには、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド及びペプチドが含まれる。ポリペプチドは、天然アミノ酸、ペプチド結合、合成ペプチド類似構造(合成ペプチドミメティック構造)、又はその混合物から構成することができる。従って、本明細書で用いるとき、「アミノ酸」や「ペプチド残基」には、天然アミノ酸及び合成アミノ酸の両方が包含される。例えば、ホモフェニルアラニン、シトルリン及びノルロイシンは、本発明の目的において、アミノ酸とみなす。「アミノ酸」にはまた、プロリン及びヒドロキシプロリン等のイミノ酸残基が含まれる。側鎖は、立体配置がD配置又はL配置のいずれであってもよい。用語「ポリペプチド」は、従来型の主鎖が、非天然主鎖又は合成主鎖で置き換えられたポリペプチド、並びに従来型のアミノ酸の1個以上が非天然アミノ酸又は合成アミノ酸で置き換えられたペプチドを包含する。用語「融合タンパク質」又は文言上等価の用語は、典型的に天然状態では結合しないが、各々のアミノ末端とカルボキシ末端とがペプチド結合により連結して単一の連続したポリペプチドを形成する複数のポリペプチド成分から構成されたタンパク質を指す。融合タンパク質は、2種、3種、又はさらに4種以上の異なるタンパク質の組み合わせとし得る。ポリペプチドという用語には、限定はしないが、非相同アミノ酸配列を有する融合タンパク質、非相同リーダー配列及び相同リーダー配列を有する融合体(N末端メチオニン残基を有するもの又は有さないもの)をはじめとする融合タンパク質;免疫学的に標識化されたタンパク質;検出可能な融合パートナーを有する融合タンパク質(例えば、融合パートナーとして蛍光タンパク質、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ等を含む融合タンパク質)が含まれる。
一般に、生体高分子(例えば、ポリペプチド又はポリヌクレオチド)は、任意の長さとし得、例えば、長さは、2個より多い単量体、4個より多い単量体、約10個より多い単量体、約20個より多い単量体、約50個より多い単量体、約100個より多い単量体、約300個より多い単量体、通常、約500、1000若しくは10,000個まで又はそれ以上の単量体から構成され得る。「ペプチド」及び「オリゴヌクレオチド」は、一般的に、長さが、2個より多い単量体、4個より多い単量体、約10個より多い単量体、約20個より多い単量体、通常、約10、20、30、40、50又は100個までの単量体から構成されるものである。特定の実施形態では、ペプチド及びオリゴヌクレオチドは、5〜30のアミノ酸長である。
用語「リガンド」及び「捕捉剤」は、本明細書において互換的に使用され、検体に結合し且つ種々の検体の均一な混合物から当該検体を分離濃縮させ得るのに充分な相互作用によって検体に結合する薬剤を指す。この結合の相互作用は、典型的には、リガンドの親和性領域によりもたらされる。典型的なリガンドは、検体に特異的に結合し得る任意の成分を含む。ある特定の実施形態では、ポリペプチド(例えば、モノクローナル抗体又はペプチド)、ポリヌクレオチド(例えば、DNA又はRNA)、多糖、又は他の生体高分子を用いることができる。リガンドは、通常、1種以上の検体に「特異的に結合する」。従って、「リガンド」は、検体に特異的に結合することのできる(例えば、検体に、約10−4M未満、典型的には約10−5M未満、より典型的には約10−6M未満の解離定数KDにて他の標的に結合することなく特異的に結合する)分子又は多分子複合体を指す。
用語「特異的に結合する」とは、種々の検体から成る均一な混合物中に存在する特定の検体に優先的に結合するリガンドの能力をいう。典型的には、特異的結合相互作用により、試料中の所望の検体と所望でない検体とが、典型的には、約10倍〜100倍以上(例えば、約1000倍又は10,000倍以上)で区別される。典型的には、リガンドと検体との間の親和性は、これらが特異的に結合してリガンド/検体複合体になる場合は、約10−4M、10−5M、10−6M、10−7M、10−8M、10−9M、又は10−10M未満若しくはさらに小さいKD(解離定数)により特徴付けられる。
用語「リガンド/検体複合体」とは、リガンドと検体、即ち「結合パートナーのペア」の特異的結合により生じる複合体である。本明細書で用いるとき、「結合パートナー」及び等価物は、リガンド/検体複合体において見い出すことのできる、互いに特異的結合を示し得る分子のペアを指す。リガンド及びこのリガンドに対する検体は、通常、「特異的結合に適した条件」(「特異的結合条件」ともいう)下で互いに特異的に結合する。この場合、かかる条件は、溶液中で、リガンドと検体との間の結合が生じるのを可能にする(塩濃度、pH、洗浄剤、タンパク質濃度、温度等に関する)条件である。かかる条件は、特にタンパク質及び核酸に関して、当技術分野で周知である(例えば、Harlow及びLaneによるAntibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989) 並びにAusubelらによる、Short Protocols in Molecular Biology, 5th ed., Wiley & Sons, 2002を参照)。特異的結合に適した条件は、典型的には、約10−6M未満の解離定数KDを有するリガンドと標的とのペアが互いに結合するのを許容するが、他のリガンド又は標的との結合は許容しない。ポリヌクレオチドに関していう「ハイブリダイズする」と「結合する」とは、互換的に使用される。
語句「表面結合リガンド」は、固体基材の表面に固定化されたリガンドを指す。かかる「表面結合リガンド」は、基材に直に結合されていてもよく、例えば、1つ以上の介在成分(例えば、連結基及び/又はβ−ヒドロキシリンカー成分)及び/又は介在物質(例えば、ゲル物質)の層を介して基材に間接的に結合されていてもよい。ある特定の実施形態では、本明細書中で用いられるリガンドは、同じ基材(例えば、表題のセンサー)の表面上に存在する。
用語「所定の」とは、その素性がその使用前に既知である成分をいう。例えば、「所定の検体」とは、リガンドへの結合前にその素性が既知である検体を指す。成分は、名称、配列、分子量、その機能又は任意の他の特性若しくは識別子が既知であり得る。いくつかの実施形態では、用語「所望の検体」又は「対象とする検体」(即ち、対象とする既知の検体)は、用語「所定の検体」と同義的に用いられる。
用語「抗体」及び「免疫グロブリン」は、本明細書において互換的に使用され、抗体の少なくともエピトープ結合ドメインを有するリガンドをいう。これらの用語は、当業者に充分理解されており、抗原に特異的に結合する1つ又は複数のポリペプチドを含有するタンパク質を指す。抗体の一形態は、抗体の基本構造単位を構成する。この形態は、四量体であり、2つの同一の抗体鎖の対(各対は、1つの軽鎖及び1つの重鎖を有する)からなる。各対において、軽鎖及び重鎖の可変領域は、共に抗原への結合をつかさどり、定常領域は、抗体のエフェクター機能をつかさどる。抗体イソタイプ、モノクローナル抗体及びその抗原結合断片(例えば、Fab、Fv、scFv及びFd断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体等)をはじめとする種々の型の抗体は当分野で周知であるため、さらに詳細に記載することはしない。
「アレイ」としては、特定の化学成分(例えば、生体高分子(ポリヌクレオチド配列又はオリゴヌクレオチド配列(核酸)、ポリペプチド(例えば、タンパク質)、炭水化物、脂質等))を有するアドレス指定可能な領域の任意の一次元、二次元又は実質的に二次元(及び三次元)の配列が挙げられる。広義には、好ましいアレイは、高分子結合剤から成るアレイであり、当該高分子結合剤は、ポリペプチド、タンパク質、核酸、多糖、かかる生体高分子結合剤の合成類似体等の何れかとし得る。目的とする実施形態の多くでは、アレイは、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、cDNA、mRNA、その合成類似体等をはじめとする核酸のアレイである。アレイが核酸アレイである場合、核酸は、核酸鎖の任意の位置でアレイに結合され得るが、一般的に、その末端の一方(例えば、3’又は5’末端)にて結合される。いくつかの場合では、アレイは、ポリペプチド(例えば、タンパク質又はその断片)のアレイである。
任意の所与の基材を用いて、基材表面上に、1、2、4個又はそれ以上のアレイを担持することができる。用途に応じて、アレイのいずれか又は全てが、同じであっても互いに異なっていてもよく、且つ各々のアレイは多数のスポット又はフィーチャーを含み得る。典型的なアレイは、20cm2未満若しくは10cm2未満のエリアに、10より多い、100より多い、1、000より多い、10、000より多い、さらには100、000より多いフィーチャーを含むことができる。例えば、フィーチャーは、10μm〜1.0cmの範囲の幅(即ち、円形スポットでは直径)を有し得る。他の実施形態では、各フィーチャーは、1.0μm〜1.0mm、通常5.0μm〜500μm、さらに通常は10μm〜200μmの範囲の幅を有し得る。円形以外のフィーチャーは、前述の幅(直径)範囲を有する円形フィーチャーに相当するエリア範囲を有し得る。フィーチャーの少なくとも一部又は全部は異なる組成を有する(例えば、各フィーチャー組成の重複を排除する場合には、残りのフィーチャーは、フィーチャー総数の少なくとも5%、10%又は20%を占める)。ポリヌクレオチド(又はフィーチャーを構成する他の種類の生体高分子や化学成分)が全く担持されていないエリア(即ち、フィーチャー間エリア)が、典型的には(必須ではないが)存在する。このフィーチャー間エリアは、典型的には、試薬の滴下付着 (drop deposition)を含むプロセスによってアレイを形成する場合に存在するが、例えば、フォトリソグラフィーアレイ製造プロセスを用いる場合には存在しない。とはいえ、フィーチャー間エリアは、存在する場合は、種々の寸法並びに構成をとり得ることは理解されよう。
各アレイは、100cm2未満、さらには50cm2、10cm2又は1cm2未満のエリアを被覆し得る。多くの実施形態において、1つ又は複数のアレイを担持する基材は、一般的には、4mmより大きく1m未満の、通常4mmより大きく600mm未満の、さらに通常は400mm未満の長さ;4mmより大きく1m未満の、通常500mm未満の、さらに通常は400mm未満の幅;及び0.01mmより大きく5.0mm未満の、通常0.1mmより大きく2mm未満の、さらに通常は0.2mmより大きく1mm未満の厚さを有する長方体の形状である(しかしながら、他の形状ともし得る)。蛍光を検出することによって読み取りを行なうアレイに関しては、基材は、励起光を照射する際に、少ない蛍光を発する材料から構成することができる。加えて、このような状況下では、基材は、比較的透明であり、それによって、集光レーザービームが領域を伝播するのが非常に遅い際に、入射する照射レーザー光の吸収及びその結果生じる発熱が低減される。例えば、基材は、表面に入射する照射光のうち少なくとも20%又は50%(さらに少なくとも70%、90%又は95%)を透過させることができ、これは、照射光の全スペクトルにわたって、あるいは532nm又は633nmにおいて測定され得る。
アレイは、in situ製造の場合には、いずれかの前駆体成分(例えば、アミノ酸又はヌクレオチド単量体)をパルスジェットすることよる液滴付着を利用して、又は事前に得たポリマーから製造することができる。当該方法は、例えば、米国特許第6,242,266号、米国特許第6,232,072号、米国特許第6,180,351号、米国特許第6,171,797号、米国特許第6,323,043号、米国特許出願第09/302,898号(1999年4月30日にCarenらにより出願)をはじめとする文献並びにこれらにおいて引用された文献に詳細に記載されている。当分野で既知の他の液滴付着法を用いてアレイを製造することもできる。また、液滴付着法の代わりに、フォトリソグラフィーアレイ製造法を用いることもできる。フィーチャー間エリアは、アレイをフォトリソグラフィー法で製造する場合は、存在する必要はない。
アレイは、アレイ上の特定の所定の位置(即ち、「アドレス」)にある領域(即ち、アレイの「フィーチャー」又は「スポット」)が特定の標的(ターゲット)若しくは標的群を検出する(但し、フィーチャーは、標的以外のものを偶発的に検出することもあるが)ように、異なる成分から成る多数の領域(例えば、異なるポリヌクレオチド配列)を有する際に「アドレス指定可能」である。アレイフィーチャーは、典型的には(必要とはされないが)、その間に空間を置いて隔置されている。アレイに関して用いるとき、用語「標的(ターゲット)」とは、基材の種々の領域に結合しているプローブ(「標的プローブ」)により検出されることになる、移動相(典型的には流体)中の成分を指す。ここで、「標的」及び「標的プローブ」に関しては、一方が他方によって評価されるような対とし得る(従って、一方は、他方が結合することによって評価されるポリヌクレオチドの未知の混合物とし得る)。「スキャン領域」とは、対象とするアレイスポット又はアレイフィチャーが存在する連続的な(好ましくは、長方形の)エリアを指す。スキャン領域は、照射された全エリアを指し、標的とプローブの結合が検出、記録される部分である。本発明の目的のためには、スキャン領域には、たとえ対象とするフィーチャーが存在しない介在エリアが存在したとしても、対象とする最初のフィーチャーと最後のフィーチャーとの間の、スライドのスキャンされたエリア全体が含まれる。「アレイレイアウト」とは、基材上のフィーチャー位置、1つ又は複数のフィーチャー寸法及び所与の位置における成分の表示のような、フィーチャーに関する1つ又は複数の特性を指す。「ハイブリダイズする」及び「結合する」は、ポリヌクレオチドに関して互換的に使用される。
本明細書で用いるとき、用語「混合物」は、結合剤や検体等の成分の組み合わせであって、散在しており、特定の整然とした状態ではないものを指す。混合物は、均質であり、その種々の構成成分へと空間的に分離することはない。成分の混合物の例としては、いくつかの異なる成分が同じ水溶液中に溶解しているもの、又は固体支持体にランダムに(即ち、異なる成分が特定の整然とした状態ではなく空間的に識別できない状態で)いくつかの異なる要素が結合しているものが挙げられる。換言すると、混合物は、アドレス指定可能ではない。詳細には、当分野で周知のリガンドのアレイは、リガンド種が空間的に識別でき、且つアレイがアドレス指定可能であるため、リガンドの混合物ではない。
「単離された」又は「精製された」とは、一般的に、物質(化合物、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、ポリペプチド組成物)の単離であって、当該物質が、それが含まれる試料において有意な割合(例えば、2%より多い、5%より多い、10%より多い、20%より多い、50%より多い、又はそれ以上、通常、約90%〜100%まで)を占めるまで単離することをいう。ある特定の実施形態では、実質的に精製された成分は、試料の少なくとも50%、80%〜85%又は90%〜95%を占める。目的のポリヌクレオチド及びポリペプチドを精製するための手法は、当分野では周知であり、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー及び密度による沈降が挙げられる。一般的に、或る成分が試料中の他の成分に対して、もともとは存在しない程度に多い量にて存在する際に、その成分は精製されているといえる。
用語「評価する(assessing)」は、任意の形態の測定を含み、成分が存在するか否かの判定を含む。「決定する」、「測定する」、「判定する」、「評価する」及び「アッセイする」は、互換的に使用され、定量的及び/又は定性的測定を含み得る。評価は、相対的又は絶対的であり得る。「存在を評価する」とは、存在している或るものの量の測定及び/又はそれが存在するか否かの判定を含む。
センサー「パッケージ」は、センサーのみを含むものであってもよいが、当該パッケージは、他の構造(例えば、チャンバを備えた筐体等)も含み得る。また、本明細書において、「上面」、「上部」及び「下部」等の語は、相対的な意味において用いているにすぎないことを理解されたい。
「コンピュータシステム」とは、データや他の情報を本発明に従って解析するために用いられるハードウェア手段、ソフトウェア手段、及びデータ記憶手段を指す。コンピュータシステムの最小限のハードウェアは、典型的には、中央演算処理装置(CPU)、入力手段、出力手段及びデータ記憶手段から構成される。当業者は、現在利用可能な任意のコンピュータシステムが、本発明の実施形態において使用するのに好適であることを容易に理解できよう。データ記憶手段には、上記のような情報の記録を実施する任意の製品、又はかかる製品にアクセスし得るメモリアクセス手段を含み得る。データ、プログラミング又は他の情報をコンピュータ可読媒体に「記録する」とは、当分野で既知の任意の方法を用いて情報を記憶させるプロセスを指す。記憶された情報にアクセスするのに使用される手段に応じて、任意の都合のよいデータ記憶構造体を選択することができる。記憶には、種々のデータプロセッサプログラム及びフォーマット、例えば、ワードプロセッシングテキストファイル、データベースフォーマット等を用いることができる。「プロセッサ」とは、必要とされる機能を果たす任意のハードウェア及び/又はソフトウェアの組合せを指す。例えば、本明細書のプロセッサには、電子制御装置、大型汎用コンピュータ、サーバー又はパーソナルコンピュータ(デスクトップ又はポータブル)の形態で利用可能なプログラム可能なデジタルマイクロプロセッサを用いることができる。プロセッサがプログラム可能である場合は、適切なプログラミングを離れた場所からプロセッサへと送信したり、又はコンピュータプログラム製品(例えば、ポータブル又は固定のコンピュータ可読記憶媒体等であって、磁気、光学又は固体状デバイス系のもの)に事前に保存することができる。例えば、磁気媒体又は光学ディスクにプログラムを格納することができ、対応する各プロセッサに接続された適切な読取機を用いて読み取ることができる。
或る組成物が他の組成物に「結合」しているという場合、これらの組成物は、互いに直に接触している必要はない。即ち、結合は、直接的であっても間接的であってもよく、従って、2つの組成物(例えば、基材とリガンド)が互いに結合している場合、これらの組成物間に少なくとも1つの他の組成物(例えば、別の層)があってもよい。本明細書に記載する任意の2つの組成物間の結合は、共有結合であっても非共有結合であってもよい。用語「結合した」及び「連結された」は、本明細書において互換的に使用される。化学構造に関していう場合、「結合した」は、2つの成分を直につなぎ合わせるか、又は2つの成分を間接的につなぎ合わせる(例えば、連結基を介して)化学結合の存在を示す。化学結合は、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用又は疎水結合(hydrophobic stacking)とし得、複数のタイプの化学結合特性を示すものであってもよい。或る場合には、「結合した」には、結合が直接的である実施形態が含まれ、また結合が間接的である実施形態も含まれる。
「プリズム」とは、平行でない2つ以上の平面を含む構造体であり、光線を屈折若しくは分散させるために用いられる。プリズムという用語には、円形、円柱面レンズ(例えば、半円柱状体)及び互いに接触している複数のプリズムが包含される。プリズムは、典型的に、光透過性材料から構成される。
本明細書で用いるとき、用語「アルキル」は、別途指示のない限り、飽和直鎖状、分枝鎖状又は環状の、炭素数1〜24(典型的には、1〜12)の炭化水素基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル及び2,3−ジメチルブチル)を指す。用語「低級アルキル」は、炭素数1〜6のアルキル基の意であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル及び2,3−ジメチルブチルが挙げられる。用語「シクロアルキル」は、環状アルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロへプチル及びシクロオクチル)を指す。
用語「修飾アルキル」は、炭素数1〜24のアルキル基であって、エーテル−、チオ−、アミノ−、ホスホ−、オキソ−、エステル−及びアミド−から選択される1つ又は複数の連結部(linkage)等の付加基をさらに有するアルキル基、及び/又は低級アルキル、アリール、アルコキシ、チオアルキル、ヒドロキシル、アミノ、スルホニル、チオ、メルカプト、イミノ、ハロ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、カルボキシ、スルフィド、スルホン、スルホキシ、ホスホリル、シリル、シリルオキシ及びボロニルをはじめとする1つ又は複数の付加基で置換されたアルキル基を指す。用語「修飾低級アルキル」は、炭素数1〜6の基であって、エーテル−、チオ−、アミノ−、ホスホ−、ケト−、エステル−及びアミド−から選択される1つ又は複数の連結部等の付加基をさらに有する基、及び/又は低級アルキル、アリール、アルコキシ、チオアルキル、ヒドロキシル、アミノ、スルホニル、チオ、メルカプト、イミノ、ハロ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、カルボキシ、スルフィド、スルホン、スルホキシ、ホスホリル、シリル、シリルオキシ及びボロニルをはじめとする1つ又は複数の基で置換された基を指す。本明細書で用いるとき、用語「アルコキシ」は、置換基−O−R(式中、Rは上記規定のアルキル基である)を指す。用語「低級アルコキシ」は、上式中のRが低級アルキルであるような基をいう。本明細書で用いるとき、用語「チオアルキル」は、置換基−S−R(式中、Rは上記規定のアルキルである)を指す。
本明細書で用いるとき、用語「アルケニル」は、別途指示のない限り、分枝鎖状、非分枝鎖状又は環状(例えば、C5及びC6の場合)の、炭素数2〜24(典型的には、2〜12)であって、少なくとも1つの二重結合を含む炭化水素基(例えば、エテニル、ビニル、アリル、オクテニル、デセニル等)を指す。用語「低級アルケニル」は、炭素数2〜6のアルケニル基の意であり、具体的には、ビニル及びアリルが挙げられる。用語「シクロアルケニル」は、環状のアルケニル基を指す。
本明細書で用いるとき、用語「アルキニル」は、別途指示のない限り、分枝鎖状又は非分枝鎖状の、炭素数2〜24(典型的には、2〜12)であって、少なくとも1つの三重結合を含む炭化水素基(例えば、アセチレニル、エチニル、n−プロピニル、イソプロピニル、n−ブチニル、イソブチニル、t−ブチニル、オクチニル、デシニル等)を指す。用語「低級アルキニル」は、炭素数2〜6のアルキニル基の意であり、例えば、アセチレニル及びプロピニルが挙げられる。用語「シクロアルキニル」は、環状のアルキニル基を指す。
本明細書で用いるとき、用語「アリール」は、縮合あるいは連結している1つ〜5つの芳香族環を含む芳香族種であって、未置換であるか、又は典型的には、低級アルキル、アリール、アラルキル、低級アルコキシ、チオアルキル、ヒドロキシル、チオ、メルカプト、アミノ、イミノ、ハロ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、カルボキシ、スルフィド、スルホン、スルホキシ、ホスホリル、シリル、シリルオキシ及びボロニル;並びに低級アルキル、アルコキシ、チオアルキル、ヒドロキシル、チオ、メルカプト、アミノ、イミノ、ハロ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、カルボキシ、スルフィド、スルホン、スルホキシ、ホスホリル、シリル、シリルオキシ及びボロニルから選択される1つ又は複数の基で置換された低級アルキルから成る群から選択される1つ又は複数の置換基で置換されている芳香族種を指す。典型的なアリール基は、1つ〜3つの縮合芳香族環を含有し、より典型的には、アリール基は、1つの芳香族環又は2つの縮合芳香族環を含有する。本明細書における芳香族基は、複素環であっても、そうでなくてもよい。用語「アラルキル」は、アルキル種とアリール種の両方を含有する成分であって、典型的には約24個未満の炭素原子(より典型的には約12個未満の炭素原子)を当該成分のアルキルセグメント内に含有し、典型的には、1つ〜5つの芳香族環を含有する成分を表す。用語「アラルキル」は、通常、アリール置換アルキル基を指すために用いられる。用語「アラルキレン」は、同様に、アルキレン種とアリール種の両方を含有する成分をいい、典型的には約24個未満の炭素原子をアルキレン部分に、1〜5つの芳香族環をアリール部分に含有する成分を指すために使用され、典型的にはアリール置換アルキレンを指すために使用される。例示的なアラルキル基は、構造−(CH2)j−Ar(式中、jは1〜24、より典型的には1〜6の範囲の整数であり、Arは単環式アリール成分である)を有する。
「成分」及び「基」は、典型的には特定の機能的若しくは構造的特徴を有する分子の部分を指すために用いられ、例えば、連結基(分子の一部であって、該分子の他の2つの部分を連結する部分)、又はエチル部分(エタンに密接に関連する構造を有する分子の一部)である。
本明細書でもちいるとき、「連結部」は、2つの他の成分に結合した第1の成分を指し、これらの2つの他の成分は、この第1の成分を介して連結される。典型的な連結部としては、エーテル(−O−)、オキソ(−C(O)−)、アミノ(−NH−)、アミド(−N−C(O)−)、チオ(−S−)、ホスホ(−P−)、エステル(−O−C(O)−)が挙げられる。
本明細書でいう「β−ヒドロキシリンカー成分」は、以下の構造を有する連結基を指す。
式中、
X1は、N又はSから選択され;
X1がNのとき、mは1であり、X1がSのとき、mは0であり;
破線は結合を示し、β−ヒドロキシリンカー成分により連結される分子の他の成分は、それを介してβ−ヒドロキシリンカー成分に結合している。本発明において、「β−ヒドロキシリンカー成分により連結される分子の他の成分」とは、典型的には、センサー基材、リガンド、リガンドに結合された連結基、リガンドに結合させるための官能基又はリガンドに結合させるための官能基に結合された連結基、及び本発明の開示から自明の他の基を挙げることができる。これらの基は、リンカーに直に結合させても、間接的に(即ち、1つ又は複数の介在基を介して)結合させてもよい。
X1は、N又はSから選択され;
X1がNのとき、mは1であり、X1がSのとき、mは0であり;
破線は結合を示し、β−ヒドロキシリンカー成分により連結される分子の他の成分は、それを介してβ−ヒドロキシリンカー成分に結合している。本発明において、「β−ヒドロキシリンカー成分により連結される分子の他の成分」とは、典型的には、センサー基材、リガンド、リガンドに結合された連結基、リガンドに結合させるための官能基又はリガンドに結合させるための官能基に結合された連結基、及び本発明の開示から自明の他の基を挙げることができる。これらの基は、リンカーに直に結合させても、間接的に(即ち、1つ又は複数の介在基を介して)結合させてもよい。
β−ヒドロキシリンカー成分は、X1がNのとき、β−ヒドロキシ−アミンリンカー成分と称すことができ、また、X1がSのとき、β−ヒドロキシ−チオールリンカー成分と称すことができる。
「官能化」とは、物質を修飾して、該物質に特定の成分を結合させるプロセス(例えば、特定の成分を有するように分子又は基材を修飾すること)を指し、このように修飾された物質(例えば、分子又は支持体)を官能化された物質(例えば、官能化された分子又は官能化された支持体)と称する。
用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、その従来の意味で使用され、クロロ、ブロモ、フルオロ又はヨード置換基を指す。
用語「置換された」は、化学構造、基又は成分を説明するために用いられ、1つ又は複数の置換基を含有する化学構造、基又は成分を指す。本明細書において、第1の基が第2の基「で置換されている」という場合、第2の基は第1の基に結合しており、それによって第1の基の一部(典型的には、水素)が第2の基で置き換えられている。
「置換基」は、化学構造内の他の基と置き換わる基を示す。典型的な置換基としては、
非水素原子(例えば、ハロゲン)、官能基(例えば、限定はしないが、アミノ、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、シリル、シリルオキシ、ホスフェート等)、ヒドロカルビル基、及び1つ又は複数のヘテロ原子で置換されたヒドロカルビル基が挙げられる。例示的な置換基としては、アルキル、低級アルキル、アリール、アラルキル、低級アルコキシ、チオアルキル、ヒドロキシル、チオ、メルカプト、アミノ、イミノ、ハロ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、カルボキシ、スルフィド、スルホン、スルホキシ、ホスホリル、シリル、シリルオキシ、ボロニル及び修飾低級アルキルが挙げられる。
非水素原子(例えば、ハロゲン)、官能基(例えば、限定はしないが、アミノ、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、シリル、シリルオキシ、ホスフェート等)、ヒドロカルビル基、及び1つ又は複数のヘテロ原子で置換されたヒドロカルビル基が挙げられる。例示的な置換基としては、アルキル、低級アルキル、アリール、アラルキル、低級アルコキシ、チオアルキル、ヒドロキシル、チオ、メルカプト、アミノ、イミノ、ハロ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、カルボキシ、スルフィド、スルホン、スルホキシ、ホスホリル、シリル、シリルオキシ、ボロニル及び修飾低級アルキルが挙げられる。
「基」には、置換された形態と未置換の形態の両方が包含される。典型的な置換基としては、1つ又は複数の低級アルキル、修飾アルキル、任意のハロゲン、ヒドロキシ、又はアリールが挙げられる。典型的に、反応収率に実質的に悪影響を及ぼさないように(例えば、特定の置換基又は置換基の組合せを用いずに得られる収率に対し20%(又は10%又は5%又は1%)よりも大きくは低下させないように)、任意の置換基を選択する。
本明細書では、ハイフン又はダッシュは、結合を示すために種々の箇所で使用されており、例えば、2つの指定した基が文面においてダッシュに直に隣接している場合、これは、これらの2つの指定した基が互いに結合していることを表す。同様に、一連の指定した基が文面においてこれらの指定した基の各々の間にダッシュを伴う場合は、これらの指定した基が、示された順で互いに結合していることを表す。また、単一の指定した基が文面においてダッシュに隣接している場合は、この指定した基が、何か他の未指定の基に結合することを表す。幾つかの実施形態では、ダッシュで表される結合は、例えば、隣接する指定した基の間の共有結合であり得る。他の幾つかの実施形態では、ダッシュは、間接的な結合、即ち、指定した基の間に介在する基のあることを表す。本明細書全体の種々の箇所で、基は、隣接するダッシュを伴って、又は伴わずに示す場合があり(例えばアミド又はアミド−、さらに、例えばアルキル又はアルキル−、またさらに、例えばLnk、Lnk−又は−Lnk−)、この場合、その基が他の基に結合している(又は結合する可能性がある)ことを意味する。かかる場合において、基の素性は、その基の名称によって表す(隣接するダッシュの有無にかかわらず)。単一の基を2つ以上の他の基に結合させ得ること(例えば、連結基のような連結部)に留意されたい。
「任意選択の」又は「任意選択で」は、続いて記載される状況が、起こっても起こらなくてもよいことを意味し、その結果、その記載は、該状況が起こる場合と起こらない場合を含む。例えば、語句「任意選択で置換された」は、非水素置換基が存在しても存在しなくてもよいことを意味し、従って、その記載は、非水素置換基が存在する構造及び非水素置換基が存在しない構造の両方を包含する。本明細書において種々の箇所で、成分がゼロ又はそれ以上にて存在するように記載する場合があるが、これは、その成分が任意選択であることに相当し、当該成分が存在する実施形態及び存在しない実施形態の両形態を包含する。任意選択の成分が存在しない(構造内にゼロにて存在する)場合、任意選択の成分により連結されると記載された隣接する基は、互いに直に連結される。同様に、ある成分が、(1)2つの隣接する基を連結する基、又は(2)2つの隣接する基を連結する結合のいずれかであると記載する場合があるが、これは、その成分が任意選択であることに相当し、該成分が存在する実施形態及び存在しない実施形態の両方を包含する。任意選択の成分が存在しない(構造内にゼロにて存在する)場合、任意選択の成分により連結されると記載された隣接する基は、互いに直に連結される。
他の用語の定義に関しては、本明細書中に示す。
特定の実施形態において、本発明は、β−ヒドロキシリンカー成分を介してセンサー基材に結合したリガンドを含むエバネッセント波センサーを提供する。また、以下の構造
を有する第1の反応性部分と、以下の構造
R2−X1Hm
を有する第2の反応性部分を、以下にさらに記載するように接触させることで、表題のエバネッセント波センサーを製造する方法も提供する。
R2−X1Hm
を有する第2の反応性部分を、以下にさらに記載するように接触させることで、表題のエバネッセント波センサーを製造する方法も提供する。
本発明はまた、表題のエバネッセント波センサーを試料に接触させて、試料中の検体のセンサーへの結合をエバネッセント波を検出することによって評価する方法も提供する。本発明はまた、表題の方法を行なうためのキット及びシステムも提供する。本発明は、検体を検出することが望ましい種々の用途、例えば、創薬、環境適用及び診断適用、翻訳後修飾及び点突然変異の検出、エピトープマッピング並びに他の用途において利用することができよう。
より詳細に本発明を記載するにあたり、表題のエバネッセント波センサーをまず説明し、次いで表題のエバネッセント波センサーを用いる検体検出システムを説明する。その後、表題のエバネッセント波センサーを用いて検体を検出する方法について論じる。最後に表題の方法を行なうためのキットを説明する。
エバネッセント波センサー
上記のように、本発明は、β−ヒドロキシリンカー成分を介して基材に結合されたリガンドを有するエバネッセント波センサーを提供する。図1を参照すると、表題のセンサー100が図示されており、これは、β−ヒドロキシリンカー成分106を介してセンサー基材104に結合したリガンド102を含む。センサー基材104は、光透過性支持体110を含む。センサー基材104は、1つ又は複数の任意選択の物質を結合させることのできる表面を有する。典型的な実施形態では、かかる任意選択の物質としては、金属層112、金属酸化物層114、自己組織化分子層116及びポリマー層118が挙げられる。1つ又は複数の任意選択の物質は、存在する場合は、図1に示す順に光透過性支持体に結合させることができ、又は機能的なエバネッセント波センサーをもたらす任意の他の順にて存在させることができる。典型的に、1つ又は複数の任意選択の物質が存在する実施形態においては、β−ヒドロキシリンカー成分106は、1つ又は複数の任意選択の物質を介してセンサー基材104の光透過性支持体110に結合される。典型的には、β−ヒドロキシリンカー成分106は、センサー基材104の光透過性支持体110に、金属酸化物層114、ガラス層又はポリマー層118から選択される少なくとも1つの層を介して結合され、また、特定の実施形態では、光透過性支持体110に金属層112及び/又は自己組織化分子層(SAM)116を介して結合させることができる。
エバネッセント波センサー
上記のように、本発明は、β−ヒドロキシリンカー成分を介して基材に結合されたリガンドを有するエバネッセント波センサーを提供する。図1を参照すると、表題のセンサー100が図示されており、これは、β−ヒドロキシリンカー成分106を介してセンサー基材104に結合したリガンド102を含む。センサー基材104は、光透過性支持体110を含む。センサー基材104は、1つ又は複数の任意選択の物質を結合させることのできる表面を有する。典型的な実施形態では、かかる任意選択の物質としては、金属層112、金属酸化物層114、自己組織化分子層116及びポリマー層118が挙げられる。1つ又は複数の任意選択の物質は、存在する場合は、図1に示す順に光透過性支持体に結合させることができ、又は機能的なエバネッセント波センサーをもたらす任意の他の順にて存在させることができる。典型的に、1つ又は複数の任意選択の物質が存在する実施形態においては、β−ヒドロキシリンカー成分106は、1つ又は複数の任意選択の物質を介してセンサー基材104の光透過性支持体110に結合される。典型的には、β−ヒドロキシリンカー成分106は、センサー基材104の光透過性支持体110に、金属酸化物層114、ガラス層又はポリマー層118から選択される少なくとも1つの層を介して結合され、また、特定の実施形態では、光透過性支持体110に金属層112及び/又は自己組織化分子層(SAM)116を介して結合させることができる。
特定の実施形態では、表題のセンサー100は、プリズム120(図1に図示)又は光透過性支持体110に対して動作可能な関係に配設される格子を備える。光透過性支持体110は、プリズム120を通過した光を受けるために、プリズム120のエッジに直に隣接して配置することができる。周知のように、典型的に、光透過性支持体110とプリズム120との間には、屈折率の同じ組成物132(例えば、オイル又はゲル)が、かかる配置で配される。ある特定の実施形態では、光透過性支持体をプリズム形状に形成し、そしてリガンド102を、β−ヒドロキシリンカー成分106及び図1に示した前述の任意選択の物質のいずれかを介して、プリズム形状に形成された光透過性支持体に結合させる。特定の実施形態では、センサー基材104は、プリズムを含まず、プリズムのエッジに隣接して配設され、典型的に、屈折率の同じ組成物(例えば、オイル又はゲル)をセンサー基材104とプリズムとの間に、かかる配置で配する。
光透過性支持体110は、センサー基材の意図される使途に適合する種々の形状及び/又は寸法を有し得る。光透過性支持体110は、典型的には、少なくとも1つの平面を有し、特定の実施形態では、複数の平面を有し得る。一実施形態では、光透過性支持体110は、互いに平行な2つの平面を含み、例えば、光透過性支持体110は、ガラススライド等の平面支持体を含み得る。種々の実施形態において、光透過性支持体は、例えば、シート、環状体、糸状体、パッド、薄片、フィルム、細片、円板として存在し得る。光透過性支持体は、通常、平坦であるが、代替的な他の表面構造をとり得る。
光透過性支持体110は、光を透過させる1つ又は複数の物質から構成される。従って、光透過性支持体110は、典型的には、ガラス、石英、シリカ、高分子材料(例えば、アクリル系ポリマー、環状オレフィン、ポリオレフィン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメチルアクリレート及び/又はポリカーボネート)から選択される1つ又は複数の物質から構成され、かかる物質は、該物質を通して光を透過させる。ある特定の実施形態では、光透過性支持体は、この光透過性支持体上に入射する光の少なくとも約2%を透過させ得る特性を有し、典型的には、光透過性支持体上に入射する光の少なくとも5%、10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%又は95%を透過させ得る特性を有する。これに関し、「光透過性支持体上に入射する光」は、センサー基材の動作に適するように選択された波長(又は波長範囲)を有する。特定の実施形態において、光透過性支持体は、可視域の波長(即ち、約400nm〜約700nmの範囲から選択される波長)を有する光に対して透過性である。幾つかの実施形態では、光透過性支持体は、UV域の波長(例えば、約280nm〜約400nmの範囲から選択される波長)やIR域の波長(例えば、約0.7μm〜約5μmの範囲から選択される波長)の光に対して透過性である。これに関し、「光透過性支持体」は、詳細には、光が光透過性支持体内で反射される実施形態、光が反射されずに光透過性支持体を透過する実施形態、及び一部の光は光透過性支持体内で反射され、一部の光は反射されずに透過する実施形態を含む。ある特定の実施形態では、光透過性支持体は、表題のセンサーを利用する検体の検出に使用される波長の光に対して透過性である誘電体材料で作製することができる。
特定の実施形態では、光透過性支持体は、約1.3〜約2.3(例えば、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1又は約2.2)の屈折率(n)を有する材料で作製することができるが、他の実施形態では、光透過性支持体は、上記に示した値より大きい、又は小さい屈折率を有する材料で作製することができる。特定の実施形態では、光透過性支持体の屈折率は、表題の方法を用いて解析される試料のそれに対応しており、他の実施形態では、光透過性支持体の屈折率は、解析対象の試料のそれと異なり得、例えば、解析対象の試料のものより大きいか、又は小さい場合がある。さらに、存在するならば、約300nm〜600nmの厚さ(例えば、400nm)の誘電体材料(例えば、TiO2又はSiO2等)の層は、金属層112と光透過性支持体110との間に存在させ得る。かかる誘電体材料及びそのエバネッセント波センサーにおける使用は、当分野で周知であり、本発明においても用いることで、共鳴ピークをシャープにしたり、接着層としての機能を果たしたり、作製中に金属層を保護したりすることができる。
上記のように、センサー基材104は、1つ又は複数の任意選択の物質を結合させることのできる表面を有する。典型的な実施形態では、かかる任意選択の物質には、金属層112、金属酸化物層114、自己組織化分子層116及びポリマー層118が含まれる。センサー基材104の表面は、金属(通常、銅、銀、アルミニウム又は金等の自由電子金属であるが、白金、パラジウム、クロム、ニオブ、ロジウム及びイリジウムから選択される他の金属又はその他の金属も使用可)の層112において被覆することができる。当分野で周知のように、異なる金属は異なる共鳴効果に帰着するため、所望の共鳴効果に応じて金属を選択する。この金属コートは、既知の方法、例えば、スパッタリング又はコーティング法を用いて作製することができる。特定の実施形態では、金属層の厚さは、約20nm〜約60nmの範囲、典型的には約20nm〜約120nmの範囲とし得るが、幾つかの実施形態では、金属層は、これらの範囲外の厚さとし得る。特定の実施形態では、基材は金でコートされ、これは、表面プラズモン共鳴検出器ではよく知られている。一部の表面プラズモン共鳴法で一般に使用されている金属格子を表題のセンサーに存在させることもできる。ある特定の実施形態では、2つ以上の金属が金属層に存在し、例えば、金属層は、或る金属から成る第1層及び他の金属から成る第2層を含み得る。
センサー基材104は、上記のように、TiO2又はSiO2層等の金属酸化物層114を含み得る。他の実施形態では、金属酸化物は、金属層を構成する金属の酸化物である(例えば、クロム金属層上には酸化クロム層)が、他の実施形態では、金属酸化物は、金属層114を構成する金属の酸化物である必要はなく、代わりに、任意の金属酸化物を用いることができる。特定の実施形態では、金属酸化物層は、図1に図示したように、金属層上に堆積される。金属酸化物層は、金属層を、センサー基材104の使用時、試薬又は試料への曝露から保護する機能を果たすことができ、また、任意の他の理由のために配される。特定の実施形態では、金属酸化物層は、さらなる物質との結合のための官能基を提供する。例えば、ガラス又はSiO2層を含むセンサー基材を提供することができ、それによって、ガラス表面に結合させるための周知の方法(例えばシラン化学反応)を利用することができる。このガラス又はSiO2層は、典型的には、約50nm未満の厚さ、例えば、約40nm、30nm、20nm、10nm未満の厚さであり、典型的には、少なくとも約2nmの厚さであるが、ある特定の実施形態では、この層は、示した値の範囲外の厚さを有する。このガラス層は、光透過性支持体とは区別される(異なる)ことに留意されたく、例えば、典型的な実施形態では、当該ガラス層は、光透過性支持体上に配設された金属層上に配設される。幾つかの実施形態では、センサー基材は、金属層に加え、光透過性支持体に結合された窒化ケイ素層(例えば、約50nm〜約500nm厚さ)を含む。
センサー基材の形成に関しては、光透過性支持体に結合される物質の層(例えば、金属層及び/又は金属酸化物層)は、エバポレーション法又はスパッタリング法を用いて、真空チャンバ内での薄膜蒸着により形成され得る。かかる方法は、例えば、真空蒸着、プラズマ増速化学気相成長法又は他の手段により、金属の薄膜を光透過性支持体上に堆積させるために用いることができる。又は、物質の層を堆積させるために任意の他の方法を用いることができる。金属及び酸化物の膜は、表面に、例えば、浸漬もしくは噴霧等の液相反応により、又は、例えば、スパッタリング、エバポレーション、化学蒸着及びプラズマ増速化学気相成長法等の制御された雰囲気に基づくプロセスにおいて施され得る。これらの方法は、本明細書において教示するセンサー基材に存在し得る金属層及び酸化物層の形成において有用であり得る。金属酸化物を含有する薄膜を基材上に反応性スパッタリングによって形成するための方法の一例は、Iwataらによる米国特許第5,827,409号に記載されており、この方法は、堆積されるべき金属を含有するターゲットを含むカソード周囲の空間内に気体アルゴン及び気体酸素を導入するステップ、及びターゲットの前面に基材を平行移動させつつ、前記金属の金属酸化物を含有する薄膜を該基材上に堆積させるステップを包含する。また、金属酸化物層の形成は、金属層表面の金属の一部を金属酸化物に化学的酸化法により変換することによっても達成し得る。例えば、米国特許第6,635,435号には、クロム層を堆積させること、及びこれを酸化環境に曝露することにより酸化クロム層を形成することが示されている。
センサー基材は、光透過性支持体とリガンドとの間に、光透過性支持体上に存在する表面修飾層をさらに含み得る。かかる表面修飾層としては、自己組織化分子層(SAM)116及び/又はポリマー層118を挙げることができる。ある特定の実施形態では、センサー基材104は、その表面をSAM116への結合あるいはポリマー層118への結合に一層適するものにするために、例えばヒドロキシ基、アミノ基、又はSAM116もしくはポリマー層118との結合に適する他の化学基などの特定の表面官能基(表面上の化学基又は化学物質成分)をもたらすために、当分野で既知の方法により修飾することができる(直に、あるいは連結基を介するなどして間接的に)。SAMは、典型的に、単一の分子単位の厚さ(例えば、SAMを形成するのに使用されるモノマー単位1つ分の厚さ)を有し、従って、光透過性支持体に結合された実質的に二次元の膜とみなすことができる。ポリマー層は、一般的に、SAMよりも厚く、典型的な実施形態では、透過性(浸透性)である(それによって、溶液分子、例えば、検体を含有する試料溶液は、ポリマー層内へと拡散することができる)。ポリマー層は、このように、光透過性支持体に結合された実質的に三次元のマトリックスとみなすことができる。従って、特定の実施形態では、ポリマー層は、リガンドの三次元マトリックスを提供し、リガンドは、ポリマー層内の各サイトにおいてβ−ヒドロキシリンカー成分を介して結合される。
金属酸化物表面を官能化するための既知の手順では、アミノアルキルシラン誘導体(例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン等のようなトリアルコキシ3−アミノプロピルシラン)が用いられる。APSは、金属表面及びシリコン表面上の酸化物及び/又はシロキシ基と容易に反応する。APSは、センサー基材104の表面をさらに修飾するために用いることのできる第一級アミンをもたらす。かかる官能化手順は、欧州特許特許第0 173 356(Β1)号に記載されている。他のオルガノシランカップリング剤を用いてセンサー基材表面を官能化する方法は、例えば、Arkinsによる、Silane Coupling Agent Chemistry, Petrarch Systems Register and Review, Eds. Anderson et al. (1987)及び米国特許第6,258,454号に記載されている。DNAアレイのin situ合成に最適な表面は、米国特許第6,258,454号に記載されている。支持体の表面を処理するための他の方法は、本明細書の教示から明らかとなろう。
ポリマー層は、ヒドロゲル、ゾル−ゲル、有機系ポリマー及び/又は他のポリマーを含むことができるが、センサー基材の使用が意図されている設計及び条件に依存する。用い得るポリマーとしては、ヒドロゲル、例えばアガロース、デキストラン、カラギーナン、アルギン酸、デンプン、セルロースのような多糖、又はカルボキシメチル誘導体のようなそれらの誘導体等が挙げられる。ある特定の実施形態では、用い得るポリマーとしては、有機系ポリマー、例えば、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド及びポリエチレングリコール等が挙げられる。架橋デキストランヒドロゲルをセンサー表面上に形成する方法は、米国特許第5,242,828号、及びFongらによる、Analytica Chimica Acta 456: 201-208 (2002)に記載されているように、既知である。存在するならば、ポリマーマトリックス又はヒドロゲル層は、典型的には少なくとも約10nmの厚さ、例えば、少なくとも約20nmの厚さ、典型的には少なくとも約30nmの厚さ、より典型的には少なくとも約40nmの厚さ、さらにより典型的には少なくとも約50nmの厚さを有し、典型的には約800nm未満の厚さ、典型的には1000nm未満の厚さ、典型的には約1500nm未満の厚さ、典型的には約2000nm未満の厚さを有するが、ある特定の実施形態では、ポリマー層又はヒドロゲル層は、これらの範囲外の厚さを有し得る。ポリマー層は、例えば、センサー基材の製造時に、表面上におけるモノマー重合によりその場で形成することができる。他の方法としては、スピンキャスティング、コーティング、モールディングによるポリマー層の付着、又は当分野において利用可能な任意の他の方法が挙げられる。
従って、本発明は、エバネッセント波センサーの製造方法を提供し、特定の実施形態では、当該方法は、光透過性支持体を入手するステップ、金属層、金属酸化物層、自己組織化分子層及びポリマー層から選択される1つ又は複数の層を付着させてセンサー基材をもたらすステップ、次いで、本明細書に記載の方法に従ってリガンドをセンサー基材に結合させるステップを含む。
再度図1を参照するが、表題のセンサー100が図示されており、これは、Β−ヒドロキシリンカー成分106を介してセンサー基材104に結合したリガンド102を含む。Β−ヒドロキシリンカー成分は、以下の構造(I)を有する:
式中、
X1は、N又はSから選択され;
X1がNのとき、mは1であり、X1がSのとき、mは0であり;
破線は、構造(I)の構造に置換基を結合させることのできるサイトを示している。本発明の実施形態では、Β−ヒドロキシリンカー成分は、(1)センサー基材(任意選択で、連結基を介して)、(2)リガンド又はリガンドに結合するための官能基(この場合も、任意選択で連結基を介して)、並びに本開示から自明の他の基、と結合される。これらの基は、Β−ヒドロキシリンカー成分に直に結合させても、又は間接的に(即ち、1つ又は複数の介在基を介して)結合させてもよい。これらの成分がΒ−ヒドロキシリンカー成分に結合する構造(I)中の特定のサイトは、以下の、特に、構造(II)に関する記載から明らかとなろう。
X1は、N又はSから選択され;
X1がNのとき、mは1であり、X1がSのとき、mは0であり;
破線は、構造(I)の構造に置換基を結合させることのできるサイトを示している。本発明の実施形態では、Β−ヒドロキシリンカー成分は、(1)センサー基材(任意選択で、連結基を介して)、(2)リガンド又はリガンドに結合するための官能基(この場合も、任意選択で連結基を介して)、並びに本開示から自明の他の基、と結合される。これらの基は、Β−ヒドロキシリンカー成分に直に結合させても、又は間接的に(即ち、1つ又は複数の介在基を介して)結合させてもよい。これらの成分がΒ−ヒドロキシリンカー成分に結合する構造(I)中の特定のサイトは、以下の、特に、構造(II)に関する記載から明らかとなろう。
本発明によれば、β−ヒドロキシリンカー成分は、以下の構造
を有する第1の反応性部分と、以下の構造
R2−X1Hm
を有する第2の反応性部分との反応から生じ得る。
R2−X1Hm
を有する第2の反応性部分との反応から生じ得る。
従って、本発明の特定の実施形態では、エバネッセント波センサーの製造方法を提供するが、当該方法は、以下の構造
を有する第1の反応性部分を、以下の構造
R2−X1Hm
を有する第2の反応性部分と、β−ヒドロキシリンカー成分を介してR1のR2との共有結合が生じるのに十分な条件下で接触させることを包含する。
R2−X1Hm
を有する第2の反応性部分と、β−ヒドロキシリンカー成分を介してR1のR2との共有結合が生じるのに十分な条件下で接触させることを包含する。
式中、R1又はR2の一方は、センサー基材であり;
R1又はR2の他方は、リガンド、リガンドに結合された連結基、リガンドに結合させるための官能基、又はリガンドに結合させるための官能基に結合された連結基から選択され;
X1がNのとき、mは1であり、X1がSのとき、mは0である。
R1又はR2の他方は、リガンド、リガンドに結合された連結基、リガンドに結合させるための官能基、又はリガンドに結合させるための官能基に結合された連結基から選択され;
X1がNのとき、mは1であり、X1がSのとき、mは0である。
従って、第1の反応性成分を第2の反応性成分と接触させる上記反応の生成物は、以下の構造(II)を有する:
式中、R1、R2、X1及びmは、先述した通りである。
以下の構造
を有する第1の反応性部分は、本明細書に記載の例示的な方法、及びより大きな構造体の一部としてエポキシ成分をもたらす既知の他の方法によって得ることができる。例示的な一実施例では、95%エタノール中の(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(United Chemical Technologies(ブリストル)から市販されている、PA #G6720)等のシラン化合物の2〜5%溶液を用いて、光透過性支持体に結合したエポキシ成分を有する修飾シラン層を得ることができる(例えば、この光透過性支持体に結合している金属層に結合されたSiO2層を介して)。ある特定の実施形態では、上記の第1の反応性成分は、後にアジドベンジルエステルに変わるカルボキシシランから得ることができる。グリシジルエーテルポリマーへのアジドの光分解カップリング(アルドリッチで見つかった多くの例、例えば、ポリ(エチレン−コ−グリシジルメタクリレート、#430862))によって、エポキシ成分を透過性支持体に結合させることができる。出発材料の選択は、所望のリガンド及び/又はセンサー基材の素性及び性質に依存し、本明細書の開示を考慮することで明らかとなろう。
以下の構造
R2−X1Hm
を有する第2の反応性成分は、本明細書に記載する例示的な方法によって、及びより大きな構造体の一部としてアミノ又はチオール成分をもたらす他の既知の方法によって得ることができる。例示的な一実施形態では、R2は、−X1Hm成分を固有に有するリガンド(例えば、1つ又は複数の利用可能なアミノ基及び/又はチオール基を有するタンパク質リガンド等)である。特定の実施例では、第2の反応性構造R2−X1Hmは、既知のアミノ酸の末端基及びイプシロン−アミノ基等の、目的とする典型的な生物学的構造に見られる。他の実施形態では、リガンドは、アミン等の求核成分でさらに修飾されるカルボキシ基又はヒドロキシ基を有し得る。これらの場合、カルボン酸がエチレンジアミンと共にアミドを容易に形成し、フリー求核アミン成分を発生することができる。あるいはまた、ヒドロキシ基は、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)で修飾され、続いてジアミンで修飾されてアミン成分を生成する。出発材料の選択は、所望のリガンド及び/又はセンサー基材の素性及び性質に依存し、本明細書の開示を考慮することにより明らかとなろう。
R2−X1Hm
を有する第2の反応性成分は、本明細書に記載する例示的な方法によって、及びより大きな構造体の一部としてアミノ又はチオール成分をもたらす他の既知の方法によって得ることができる。例示的な一実施形態では、R2は、−X1Hm成分を固有に有するリガンド(例えば、1つ又は複数の利用可能なアミノ基及び/又はチオール基を有するタンパク質リガンド等)である。特定の実施例では、第2の反応性構造R2−X1Hmは、既知のアミノ酸の末端基及びイプシロン−アミノ基等の、目的とする典型的な生物学的構造に見られる。他の実施形態では、リガンドは、アミン等の求核成分でさらに修飾されるカルボキシ基又はヒドロキシ基を有し得る。これらの場合、カルボン酸がエチレンジアミンと共にアミドを容易に形成し、フリー求核アミン成分を発生することができる。あるいはまた、ヒドロキシ基は、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)で修飾され、続いてジアミンで修飾されてアミン成分を生成する。出発材料の選択は、所望のリガンド及び/又はセンサー基材の素性及び性質に依存し、本明細書の開示を考慮することにより明らかとなろう。
本発明のある特定の実施形態では、エバネッセント波センサーを製造する方法が提供され、当該方法は、エポキシ成分を有する第1の反応性成分を、チオール又はアミノ成分を有する第2の反応性部分と接触させることを包含する。この反応の典型的な条件は、β−ヒドロキシリンカー成分をもたらすような条件であり、当該条件としては、還流溶媒(40〜100℃)中において生成物がもたらされるのに充分な時間(例えば、1〜3時間)にて第1の反応性成分と第2の反応性成分とを反応させることが含まれる。一般的な実施形態では、β−ヒドロキシ−アミンリンカー成分を有する生成物は、エポキシ含有化合物に求核構造(R2−NHm)を、具体的構造に応じて1〜20時間、4℃〜100℃の温度にて付加することにより形成される。特定の実施形態では、当該反応は、水性溶媒中にて行うことができる。他の特定の実施形態では、当該反応は、有機溶媒中にて行うことができる。
上記の構造(I)、(II)の構成要素である連結基には、本明細書に記載のセンサーの製造及び使用に適合する、即ち、センサーの製造及び使用に支障を来さない任意の連結基を用いることができる。例えば、当該連結基は、炭素数3〜12の非反応性アルキル鎖を含み得る。上記のように、「リガンドに結合された連結基」は、典型的に構造−Lnk−Ligを有し〔式中、Lnkは連結基であり、Ligはリガンドである〕、リガンドは連結基を介してΒ−ヒドロキシリンカー成分に結合される。同様に、「リガンドに結合させるための官能基に結合された連結基」とは、構造−Lnk−Fnを有し〔式中、Lnkは連結基であり、Fnはリガンドに結合させるための官能基である〕、リガンドに結合させるための官能基は、連結基を介してβ−ヒドロキシリンカー成分に結合される。特定の実施形態では、リガンドに結合させるための官能基は、例えば、化学反応して共有結合を形成することによってリガンドをセンサー基材に結合させる任意の成分である。従って、本発明は、β−ヒドロキシリンカー成分を介してセンサー基材にリガンドが結合するような条件下で、β−ヒドロキシリンカー成分を介して官能基が結合されているセンサー基材をリガンドと接触させることによって、リガンドをβ−ヒドロキシリンカー成分に結合させる方法を提供する。官能基の特性は、本発明に重要ではなく、センサー基材に適合する任意の既知のカップリング剤(即ち、センサー基材の崩壊をもたらさないもの)を用いて、リガンドにカップリング(結合)させることができる。センサー基材上の官能基を用いて基材にリガンドを結合させる方法は当分野において種々知られており、本発明の方法においてそれらを有利に用いることができる。典型的な方法では、リガンド上に相補的な反応基(例えば、上記「リガンドに結合させるための官能基」に対して相補的なもの)が必要とされたり、又はリガンド上に既に存在する成分(例えば、ペプチドのアミノ基)に基づいて方法を選択したりすることができる。
リガンドは、検体に結合し、且つ種々の検体の均一な混合物から対象とする検体を濃縮させ得るのに充分な相互作用でもって検体に特異的に結合するような任意の成分であり得る。この結合相互作用は、典型的には、リガンドの親和性領域によってもたらされる。リガンドは、典型的には、所望の検体に結合するその能力に基づいて選択され、例えば、リガンドとしては、食料品、環境物質、及び生物学的試料(例えば、個体から単離された組織又は体液等(例えば、限定はしないが、血漿、血清、髄液、精液、リンパ液、皮膚、気道、腸管、尿生殖器管の分泌物(external section)、涙、唾液、乳汁、血球、腫瘍、器官)、及びin vitro細胞培養物試料(例えば、限定はしないが、細胞培養培地中での細胞の成長から得られる培養上清、ウイルス感染していると推定される細胞、組換え細胞及び細胞断片))の1つ又は複数に結合し得る成分を用いることができる。ある特定の実施形態では、リガンドは、食料品、環境物質、及び生物学的試料(例えば、個体から単離された組織又は体液等(例えば、限定はしないが、血漿、血清、髄液、精液、リンパ液、皮膚、気道、腸管、尿生殖器管の分泌物(external section)、涙、唾液、乳汁、血球、腫瘍、器官)、及びin vitro細胞培養物試料(例えば、限定はしないが、細胞培養培地中での細胞の成長から得られる培養上清、ウイルス感染していると推定される細胞、組換え細胞及び細胞断片))から単離された成分とし得る。
特定の実施形態では、リガンドは、生体高分子である。ある特定の実施形態では、リガンドは、ポリペプチド、例えば、抗体、ペプチド、タンパク質、酵素、若しくはそれらの断片とし得る。ある特定の実施形態では、リガンドは、ポリヌクレオチド、例えば、RNA断片、DNA断片、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの合成類似物(例えば、ペプチド核酸「PNA」又は当分野で周知の他の修飾核酸)であり得る。ある特定の実施形態では、リガンドは抗原又は抗体であり得る。幾つかの実施形態では、リガンドは、細胞、細胞断片、細菌、胞子、ウイルス又はビリオンであり得る。幾つかの実施形態では、リガンドには、検体に特異的に結合することが知られている薬物化合物又は有機化合物を用いることができる。特定の実施形態では、複数の異なるリガンドがセンサー基材上に存在し得、この場合、リガンドは、本明細書に記載のリガンドの任意の種から選択することができる。幾つかの実施形態では、リガンドに、アビジン又はビオチン成分を用いることができ、第2のリガンドによるセンサー基材の更なる官能化が可能となる。かかる実施形態では、第2のリガンドは、β−ヒドロキシリンカー成分に、ビオチン/アビジン結合を介して結合することができ、これは、例えば、アビジンに結合させた第2のリガンドを、センサー基材にβ−ヒドロキシリンカー成分を介して結合させたビオチンと接触させ、第2のリガンドをセンサー基材にビオチン/アビジン結合及びβ−ヒドロキシリンカー成分を介して結合させることにより達成し得る。かかる実施形態では、第2のリガンドは、機能的なセンサーをもたらす限りにおいて、リガンドについて前述した考えられ得るものの何れともすることができる。かかる実施形態の潜在的な利点の1つは、例えばアビジン成分によって官能化されたセンサー基材を、例えば一群のビオチン修飾第2リガンドと組合せて供給することができ、それによってエンドユーザーがどの第2リガンドを用いるかを選択し得ることである。あるいはまた、例えばアビジン成分によって官能化されたセンサー基材を、第2リガンドを修飾するためのキット(例えば、ポリペプチドをビオチン化するためのキット)と共に供給することができる。種々の代替的な実施形態は、本発明の開示内容から明らかとなろう。特定の実施形態では、アビジンに相当する成分、例えば、ストレプトアビジン等、又はビオチンに容易に結合する他の既知の等価物を、アビジンの代わりに用いることができる。一例としては、ビオチン化リガンドを、ストレプトアビジン若しくはアビジンの結合したセンサー基材に接触させ、適切な時間(例えば、15〜30分)、バッファー中で穏やかに混合しながら、インキュベートすることができる。それによって、ビオチン化リガンドは、ストレプトアビジンに結合した状態となる。結合したリガンドは、リン酸緩衝生理食塩水(PΒS)又は他の適切なバッファー中で洗浄することができ、次いで、得られたリガンド結合センサー基材を、試料中の検体を検出するために、エバネッセント波検出法において用いることができる。
当業者には認識されようが、リガンドには、予め作製されたもの(例えば、供給源から単離したもの、機械によって合成したもの、又は組換え手段によって作製したもの)を用いることができ、次いで、これをセンサー基材にΒ−ヒドロキシリンカー成分を介して結合させることができる。あるいはまた、リガンドをセンサー基材上にてin situで作製することもでき、かかる実施形態では、Β−ヒドロキシリンカー成分を介して活性基(例えば、ヌクレオチドモノマー成分)をセンサー基材に結合させ、完全なリガンドのin situ合成のための開始サイトとして機能させる。オリゴヌクレオチド合成のin situ方法は当分野で既知であり、例えば、WO98/41531及びそこで引用された文献;Caruthersによる (1985) Science 230: 281-285;Itakuraらによる、Ann. Rev. Βiochem. 53: 323-356; Hunkapillarらによる (1984) Nature 310: 105-110;並びに“Synthesis of Oligonucleotide Derivatives in Design and Targeted Reaction of Oligonucleotide Derivatives”, CRC Press, Βoca Raton, Fla., 100頁以下参照;米国特許第4,458,066号;米国特許第4,500,707号;米国特許第5,153,319号;米国特許第5,869,643号;EP0294196等に記載されている。
特定の実施形態では、センサー基材は、その表面上に、β−ヒドロキシリンカー成分を介して異なるリガンドが結合している複数のサイトを有する。かかる実施形態では、表題のエバネッセント波センサーは、リガンドのアレイをもたらす。当該アレイは、複数のフィーチャーを有し、該複数のフィーチャーの各々は、センサー基材に結合したリガンドを有し、且つ該複数のフィーチャーの各々は、センサー基材上の各サイトにアドレス指定可能な状態で位置する。特定の検体に対して特異的に反応する異なるリガンドから構成されたアレイを用いることによって、試料中の多数の異なる検体のモニタリングを実施することができる。リガンドは、例えば、センサー基材上の金属膜表面にβ−ヒドロキシリンカー成分を介して結合される。ある特定の実施形態では、リガンドは、例えば、金属膜をコーティングしている数百ナノメートルの厚さ(例えば、約100nm〜約1500nm、典型的には約200nm〜約1000nmの範囲)の適切なポリマー層(例えば、ヒドロゲル)に、共有結合によってβ−ヒドロキシリンカー成分を介して結合させることができる。リガンドは、生物学的、生化学的若しくは化学的認識成分、又はこれらの成分の組合せとし得る。用途に応じて、種々のリガンド−検体相互作用が報告されており、それらとしては、抗体−抗原反応、DNAハイブリダイゼーション解析用のcDNAライブラリー由来のオリゴヌクレオチドアレイ若しくはプローブアレイ、分子インプリンティング技術、イオノフォア及びクロモイオノフォアのイオン性相互作用、並びに金属膜が2つの電極(陰極又は陽極)の一方の機能を果たすような電気化学的相互作用、が挙げられる。これらのリガンドは大きく異なるものの、これらは全て、表面若しくは界面において高感度の生化学的相互作用を利用するという固有の性質を有し、これらの相互作用は、エバネッセント波検出スキームにより定量的にモニターすることができる。このようなセンサー基材に結合されたリガンドアレイは、任意の既知の方法、例えばインクジェット付着法等の液滴付着法を用いて、本明細書に記載の方法に従ってリガンド含有溶液をセンサー基材上に付着させることによって作製することができる。
表題のエバネッセント波センサーは、特定のタイプの検出方法(例えば、表面プラズモン共鳴法)にて使用されるように適合させることができ、従って、意図する方法に適する寸法並びに適する材料にて作製することができる。多くのエバネッセント波検出法は、一般的に当分野で周知であるため(表面プラズモン共鳴、回折格子(grating coupler)表面プラズモン共鳴、マッハツェンダー干渉計を用いた共鳴ミラーセンシング及び導波管センサー干渉分光法若しくは偏光分析、並びに直接若しくは間接エバネッセント波検出方法)、当業者であれば、過度の負担無く、本発明のセンサーを特定の方法に適合させることができよう。例えば、Homola, J.らによる、Sensors and Actuators Β 54: 3-15 (1999); Welford, K.による、Opt. Quant. Elect. 23:1 (1991); Raether, H.による、Physics of Thin Films 9: 145 (1977); Myszka, J.による、 Mol. Rec. 12:390-408 (1999);及びΒiomolecular Sensors, Eds. Gizeli and Lowe. Taylor & Francis (2002)を参照されたい。例示的な表面プラズモン共鳴法については以下により詳細に記載するが、かかる方法が、本明細書の記載内容に基づいて、過度の負担なく、SPR以外のエバネッセント波検出技術に適合させ得ることを理解されたい。
検体検出システム
上記のように、特定の実施形態では、本発明は、検体検出システムを提供する。図2に示す例示的な実施形態を参照すると、当該システムは、光学的検出システム130に操作可能な関係にて配設された表題のエバネッセント波センサー100を含む。先に詳細に記載したように、エバネッセント波センサー100は、光透過性支持体110に結合された金属層112、並びに光透過性支持体110に結合された1つ又は複数の追加の層113を任意選択的に含む。特定の実施形態では、かかる任意選択の追加の層は、金属酸化物層、ガラス層又はポリマー層、又はそれらの組み合わせから選択される。リガンド102は、Β−ヒドロキシリンカー成分106を介して光透過性支持体に結合している。エバネッセント波センサー100は、プリズム120に隣接して配設されており、エバネッセント波センサー100とプリズム120と間には、屈折率が同等の組成物132(例えば、オイル又はゲル)が配設されている。筐体134は、流体密封チャンバ136を画定し、その内部においてリガンド102は露出している。試料は、流体入口138からチャンバ136内に導入され、流体出口140からチャンバ136を出ていく。流体入口138及び流体出口140は、典型的には、適切な流体供給源、並びにチャンバ136に流入及び流出する液体試料の流れを制御するバルブと流体連通しており、それによって、リガンドの洗浄が容易となり、且つ望ましくない物質をチャンバから除去したり、システムのフラッシング等が可能となる。検体検出システムの設計に応じて、筐体134は、センサー基材との一体化部分とすることも、又はセンサー基材に取り付け、ユニットとしてセンサー基材及び筐体の交換が可能となる他の構成とすることもでき、これらは、本明細書の記載内容から明らかであろう。
検体検出システム
上記のように、特定の実施形態では、本発明は、検体検出システムを提供する。図2に示す例示的な実施形態を参照すると、当該システムは、光学的検出システム130に操作可能な関係にて配設された表題のエバネッセント波センサー100を含む。先に詳細に記載したように、エバネッセント波センサー100は、光透過性支持体110に結合された金属層112、並びに光透過性支持体110に結合された1つ又は複数の追加の層113を任意選択的に含む。特定の実施形態では、かかる任意選択の追加の層は、金属酸化物層、ガラス層又はポリマー層、又はそれらの組み合わせから選択される。リガンド102は、Β−ヒドロキシリンカー成分106を介して光透過性支持体に結合している。エバネッセント波センサー100は、プリズム120に隣接して配設されており、エバネッセント波センサー100とプリズム120と間には、屈折率が同等の組成物132(例えば、オイル又はゲル)が配設されている。筐体134は、流体密封チャンバ136を画定し、その内部においてリガンド102は露出している。試料は、流体入口138からチャンバ136内に導入され、流体出口140からチャンバ136を出ていく。流体入口138及び流体出口140は、典型的には、適切な流体供給源、並びにチャンバ136に流入及び流出する液体試料の流れを制御するバルブと流体連通しており、それによって、リガンドの洗浄が容易となり、且つ望ましくない物質をチャンバから除去したり、システムのフラッシング等が可能となる。検体検出システムの設計に応じて、筐体134は、センサー基材との一体化部分とすることも、又はセンサー基材に取り付け、ユニットとしてセンサー基材及び筐体の交換が可能となる他の構成とすることもでき、これらは、本明細書の記載内容から明らかであろう。
光学的検出システム130は、典型的には、マイクロプロセッサ146及び適切なソフトウェアと連動し且つその制御下にある光源142及び光学検出器144を備える。マイクロプロセッサ146は、コンピュータシステムの一部とし得る。システムを動作させるためのプログラミングは、システムにロードさせたり、又はコンピュータ及び/又はマイクロプロセッサに予めプログラムすることによって、実行することができる。光源142には、波長可変レーザー、又はエバネッセント感知用途に使用するための当分野で典型的に知られている他の光源を用いることができる。本発明の方法に使用する場合、光源は、典型的には、約400nm〜約2.0μmの波長を有する光をもたらす。特定の実施形態では、用いる光の波長は、約0.6〜約1.2μmであり、例えば、約0.7μm〜約1.0μmである。ある特定の実施形態では、用いる光は単色光であり、光は偏光することもでき、ある特定の実施形態では、用いる光の波長は変化し得る、即ち、センサーの読取中に「変化(sweep)」し得る。即ち、幾つかの実施形態では、用いる光は、一定の波長を有さなくてもよい。典型的な実施形態では、波長は、約100nm、約200nm、約300nm、もしくは約400nm、又はそれ以上離れた2つの異なる波長間で変化し得、低い方の波長は、上記に列挙した波長の何れかとし得る。
使用に関しては、光線150は、一般的に、コリメータをはじめとする種々の光学要素を用いて、プリズム120の方へと誘導される。光線は、光透過性支持体110内を通過し、金属層112で反射される。反射した光152は、光学検出器144によって収集され、対応する信号がマイクロプロセッサ146(信号に関するデータを収集する)に送られる。チャンバ136内において露出しているリガンド102が試料と接触すると、試料中の検体と結合することができ、それによって反射する光152に変化をもたらし、これを、光学的検出システム130によって検出することができる。このようにして、当該検体検出システムを用いてエバネッセント波を検出することで、リガンドに対する検体の結合を検出することができる。ある特定の実施形態では、さまざまな波長の光のコリメートビーム(平行光線)を用いることができ、相補型金属酸化物半導体(CMOS)イメージセンサ又は電荷結合素子(CCD)イメージセンサを、反射光のコリメート(平行化)及び対応する信号の生成に用いることができる。このようにして、センサー全体のデータ又はセンサーの選択したセクションのデータを同時に収集することができる。
検体の検出方法
本発明のエバネッセント波センサーは、検体の検出方法において用いることができ、この場合、検体は、本発明のエバネッセント波センサーに検体が結合することによって検出される。多くの実施形態において、この方法は、a)試料を本発明のエバネッセント波センサーと接触させること、及びβ)センサーに結合した検体の存在を、エバネッセント波を検出することによって評価することを包含する。使用に関しては、本発明の検体検出システムは、センサー基材上のリガンドへの検体の結合に基づいて検体を検出するために、採用することができる。より詳細には、本発明は、a)試料を、エバネッセント波センサーのセンサー基材に結合したリガンドと接触させること(ここで、リガンドは、検体に特異的に結合し得るものである)、及びb)センサー基材上の検体の存在をエバネッセント波を検出することによって評価することを包含する、試料中の検体の存在を評価するための方法を提供する。
検体の検出方法
本発明のエバネッセント波センサーは、検体の検出方法において用いることができ、この場合、検体は、本発明のエバネッセント波センサーに検体が結合することによって検出される。多くの実施形態において、この方法は、a)試料を本発明のエバネッセント波センサーと接触させること、及びβ)センサーに結合した検体の存在を、エバネッセント波を検出することによって評価することを包含する。使用に関しては、本発明の検体検出システムは、センサー基材上のリガンドへの検体の結合に基づいて検体を検出するために、採用することができる。より詳細には、本発明は、a)試料を、エバネッセント波センサーのセンサー基材に結合したリガンドと接触させること(ここで、リガンドは、検体に特異的に結合し得るものである)、及びb)センサー基材上の検体の存在をエバネッセント波を検出することによって評価することを包含する、試料中の検体の存在を評価するための方法を提供する。
一般に、本発明の方法は、本発明のセンサーを試料と特異的結合条件下で接触させるステップ、及びセンサーのリガンドと試料中の検体との結合をエバネッセント波検出によって評価するステップを含む。ある特定の実施形態では、エバネッセント波は、金属層にて光を反射させ、反射した光の角度及び/又は強度を検出することによって検出することができる。他の実施形態では、センサー表面のグラフィック画像を作成することができる。センサー基材上に存在するリガンドへの検体の結合は、反射した光の角度及び/又は強度の変化、又は、例えばグラフィック画像の変化を評価することによって検出することができる。
対象とする具体的検体検出用途としては、核酸リガンドを用いたハイブリダイゼーションアッセイ、及びポリペプチドリガンド(例えば、抗体又はペプチド)を用いたタンパク質結合アッセイが挙げられる。これらのアッセイでは、まず試料を調製し、試料調製後、試料を本発明のセンサーと特異的結合条件下で接触させる。それによって、センサー基材に結合したリガンド(例えば、核酸プローブ配列)に標的核酸若しくは標的ポリペプチド(又は他の分子)が特異的に結合し、複合体が形成される。次いで、この複合体の存在を、例えばSPR法又は他のエバネッセント波検出法を用いて検出する。
特定の実施形態では、本発明のセンサーは、表面プラズモン共鳴(SPR)法において使用することができる。SPRアッセイを行なうためのプロトコルは、当業者には周知であり、ここでさらに詳細に記載することはしない。一般に、対象の検体を含有すると思われる試料を、検体がセンサー上の各リガンドと結合するのに充分な条件下で、本発明のセンサーに接触させる。こうして、対象の検体が試料中に存在する場合は、センサーの相補的リガンドがあるサイトに結合し、複合体がセンサー表面上に形成される。次いで、センサー表面上のこの検体/リガンド結合複合体の存在を、SPRを用いて検出する。
SPRは、入射面に平行に直線偏光されたレーザー光が、金属薄膜(金属層)で被覆されたプリズム上に衝突する際に生じるエバネッセント波を用いることによって達成し得る。SPRは、プリズムの臨界角を超えると内部全反射する光の変化として最も容易に観察される。この最小反射率の角度(SPR角と示される)は、物質が金属層に吸着すると、より大きい角度へとシフトする。この角度のシフトを、フレネル積分(complex Fresnel calculation)を用いることにより、吸着若しくは付加した物質の厚さの測定値に変換することができ、金属層表面上のリガンドに結合した検体の存在又は非存在を検出することに用いることができる。よく知られていることであるが、SPRは、表面格子(surface grating)(プリズムに加えて)を用いて、又は用いずに行うことができる。従って、本発明のセンサーは、格子を含むことができ、本明細書に詳細に明記した方法以外の他のSPR法においても使用することができる。
薬剤間の結合を試験するためにSPRを用いる際は、プリズムを通して、レーザー光源からの光線を、光透過性支持体を含む本発明のセンサー上に誘導する。光透過性支持体は、金属の薄膜で被覆された外表面を1つ有し、これには、検体に結合するリガンドが結合されている(上記のとおり)。SPR角は、検体がリガンドに結合すると変化する。SPR角の位置又はSPR角近傍の固定角(fixed angle)における反射率のどちらかをモニターすることにより、試料中の検体の存在又は非存在を検出することができる。
生物学的物質又は生化学的物質、若しくは化学的物質のバイオセンサーにSPRを使用するための種々のタイプの機器が当分野において既知であり、(及びLiedβergらによる、 (1983) Sensors and Actuators 4:299、欧州特許出願第0305108号及び米国特許第5,374,563号等に記載されており)、回折格子システム、光学導波管システム及びプリズム回折減衰全反射システムが挙げられる。
ある特定の実施形態では、光源(典型的には単色光源)は、プリズム/金属層にSPR角近傍の入射角にて照光するために用いられ、反射した光を固定角においてCCDカメラを用いて検出し、SPR画像を作成する。SPR画像は、センサー基材の種々の部分からの反射光の強度のばらつきによって生成され、これらのばらつきは、有機物膜の厚さのあらゆる変化又はリガンド結合金属表面上での吸着により生じる屈折率の変化によって生じる。SPRイメージングは、表面近傍の分子に対してのみ感度がよく、従って、溶液中に残留する非結合分子は、in situ測定に支障を来さない。
ある特定の実施形態では、入射角及び反射角は共に共鳴角に応じて「変化」し、光強度は、角度の関数としてモニターされる。共鳴角に非常に近いと、反射光は強く吸収され、反射光は大きく低下する。他の実施形態では、光源と検出器の角度は、初期波長における共鳴角付近に固定され、波長が変化すると固定角を経て共鳴点(共鳴位置)へと達する。光線をコリメート(平行化)し、基材の全体画像を記録する。
本方法の一実施形態は、図2に示す実施形態を参照して記載することができる。上記のように、リガンド102は、チャンバ136内のセンサー基材104に結合されている。対象とする液体試料をチャンバ136内に導入する。検体の移動を点線矢印160で示す。試料中の検体は、この検体に特異的結合を示すリガンド102に結合する。より多数の検体分子がこれに結合した状態になると、その質量濃度が増大し、反射光152に検出可能なシフトがもたらされ、これは、典型的には、光強度の変化及び/又は光の反射角「θ」(このとき、光強度は、最大か最小になるか又は変動する)の変化として検出される。反射光152は光学検出器144内に収集され、対応する信号がマイクロプロセッサ146(シグナルに関するデータが収集される)に送られる。センサー読取装置を用いることで本発明のセンサーからデータを得ることができるが、当該読取装置は、当分野で一般的に周知である(例えば、米国特許第6,466,323号参照)。次いで、データを解析し、試料中の検体の存在を評価する。
本発明のセンサーの読取結果は、未加工の結果とすることも、又は、飽和率を読値に適用して、所定の閾値より上又は下の読値を排除することによって得られるもののような加工された結果及び/又は結果から導き出された結論(特定の検体が試料中に存在するかどうか等)とすることもできる。読取結果(加工されたもの又はされていないもの)は、必要であれば、さらなる使用(さらなる処理等)のために遠隔地に転送(通信等によって)され受信される。別途指示のない限り、ある特定の代替形態では、本発明の方法は、さらなる評価及び/又は使用のために、遠隔地にデータを送信する工程を包含し得る。データの送信には、任意の簡便な電気通信手段(例えば、ファクシミリ、モデム、インターネット等)を用いることができる。あるいはまたさらに、結果を提示するデータは、既知のように、任意の種々のコンピュータ可読媒体に記憶させることができる。かかる情報を保持することは、当業者に認識されるあらゆる種々の理由で有用である。
キット
また、本発明は、上記の本発明の方法を実施するためのキットを提供する。ある特定の実施形態では、本発明のキットは、少なくとも、第1の反応性成分又は第2の反応性成分のいずれか一方が結合したセンサー基材と、第1の反応性成分又は第2の反応性成分の他方を有するリガンドの官能化をもたらすための試薬とから構成され、ここで、第1の反応性成分はエポキシ環成分を有し、第2の反応性成分はチオール又はアミノ成分を有する。また、当該キットは、リガンドを官能化させ、次いで官能化されたリガンドとセンサー基材とを反応させて、Β−ヒドロキシリンカー成分を介してリガンドをセンサー基材に結合させる一連の反応に関する説明書を含むことができる。ある特定の実施形態では、本発明のキットは、センサー基材、及び既にセンサー基材にΒ−ヒドロキシリンカー成分を介して結合されたリガンドを含み得る。特定の実施形態では、本発明のキットはまた、センサー基材と共に使用するための試料及び/又は屈折率が同等の組成物を調製するのための試薬を含むことができる。当該キットはまた、1つ又は複数の対照検体混合物(例えば、キットを試験する際に使用するための2種以上の対照検体)を含むことができる。必要で有れば、キットを構成する種々の要素を独立した容器内に存在させることができ、また、特定の適合性のある複数の要素を単一の容器内で予め混合させておくこともできる。
キット
また、本発明は、上記の本発明の方法を実施するためのキットを提供する。ある特定の実施形態では、本発明のキットは、少なくとも、第1の反応性成分又は第2の反応性成分のいずれか一方が結合したセンサー基材と、第1の反応性成分又は第2の反応性成分の他方を有するリガンドの官能化をもたらすための試薬とから構成され、ここで、第1の反応性成分はエポキシ環成分を有し、第2の反応性成分はチオール又はアミノ成分を有する。また、当該キットは、リガンドを官能化させ、次いで官能化されたリガンドとセンサー基材とを反応させて、Β−ヒドロキシリンカー成分を介してリガンドをセンサー基材に結合させる一連の反応に関する説明書を含むことができる。ある特定の実施形態では、本発明のキットは、センサー基材、及び既にセンサー基材にΒ−ヒドロキシリンカー成分を介して結合されたリガンドを含み得る。特定の実施形態では、本発明のキットはまた、センサー基材と共に使用するための試料及び/又は屈折率が同等の組成物を調製するのための試薬を含むことができる。当該キットはまた、1つ又は複数の対照検体混合物(例えば、キットを試験する際に使用するための2種以上の対照検体)を含むことができる。必要で有れば、キットを構成する種々の要素を独立した容器内に存在させることができ、また、特定の適合性のある複数の要素を単一の容器内で予め混合させておくこともできる。
上記の成分に加え、本発明のキットは、典型的に、キットの構成要素を用いて本発明の方法を実施するための指示書をさらに含む。本発明の方法を実施するための指示書は、一般的に、適切な記録媒体に記録されている。例えば、指示書は、紙又はプラスチック等の媒体に印刷されたものとし得る。従って、指示書は、キット内の添付文書や、キット又はその成分の容器のラベル(即ち、包装又は副包装に付随するもの)等として存在する。他の実施形態では、指示書は、適切なコンピュータ可読記録媒体(例えば、CD−ROM、ディスケット等)に格納された電子記録データファイルとして存在する。さらに他の実施形態では、指示書はキット内に存在せず、リモートソース(例えばインターネット)から指示書を入手する手段が提供される。かかる実施形態の一例は、指示書を閲覧できる及び/又は指示書をダウンロードできるウェブアドレスを含むキットである。指示書に関して、指示書を入手するこのような手段は、キット内に含まれる適切な媒体に記録されている。
本発明を実施する際は、特に指示のない限り、当分野の技術の範囲内にある、合成有機化学、生化学、分子生物学等の従来の手法を用いる。かかる手法は、文献に充分に説明されている。
以下の実施例は、当業者に対して、本明細書に開示し且つ特許請求の範囲に示す方法をどのようにして行ない、組成物をどのようにして使用するかに関して、完全な開示及び説明を提供するために示す。数値(例えば、量、温度等)に関しては、正確性を確保するように努めたが、ある程度の誤差及び偏差のあることを考慮されたい。特に指示のない限り、部は重量部であり、温度は℃であり、気圧は大気圧又はその付近である。標準温度及び標準気圧は20℃及び1気圧と規定する。
エポキシコートスライドの調製
金コートガラススライド(50オングストローム(Å)のチタン接着層及び460Åの蒸着金)を、プラズマ増速化学気相成長法(PECVD)を用いて、およそ2800Åの窒化ケイ素、続いて150Åの二酸化ケイ素の蒸着層によりさらに処理した。この誘電体コートスライドを、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(G6720、United Chemical Technologies, Inc)の2%エタノール溶液中に12時間置いた。このスライドを乾燥エタノールで洗浄し、窒素気流下で乾燥させ、さらに、これを90℃で2時間硬化させた。
エポキシコートスライドへのリガンドの結合
適切な求核性の基(−NH2、−SH)を有するリガンド化合物をアルカリ水溶液(0.1Mの炭酸ナトリウム、pH9〜10)中に入れ、そして前記エポキシコートスライド上に注いだ。室温で20時間ゆっくりと攪拌して反応を進行させた。次いで、スライドを脱イオン水で十分に洗浄し、窒素下で乾燥させた。
エポキシコートスライドの調製
金コートガラススライド(50オングストローム(Å)のチタン接着層及び460Åの蒸着金)を、プラズマ増速化学気相成長法(PECVD)を用いて、およそ2800Åの窒化ケイ素、続いて150Åの二酸化ケイ素の蒸着層によりさらに処理した。この誘電体コートスライドを、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(G6720、United Chemical Technologies, Inc)の2%エタノール溶液中に12時間置いた。このスライドを乾燥エタノールで洗浄し、窒素気流下で乾燥させ、さらに、これを90℃で2時間硬化させた。
エポキシコートスライドへのリガンドの結合
適切な求核性の基(−NH2、−SH)を有するリガンド化合物をアルカリ水溶液(0.1Mの炭酸ナトリウム、pH9〜10)中に入れ、そして前記エポキシコートスライド上に注いだ。室温で20時間ゆっくりと攪拌して反応を進行させた。次いで、スライドを脱イオン水で十分に洗浄し、窒素下で乾燥させた。
本発明の完全な開示を目的としてこれまで本発明の各実施形態をかなり詳しく説明してきたが、当業者であれば、本発明の趣旨及び原理から逸脱することなく、これらの実施形態に多くの変更をなし得ることは明らかであろう。本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。
本明細書で挙げた全ての特許、特許出願及び刊行物は、参照することでその内容の全てを本明細書に取り入れることとするが、定義において矛盾が生じる場合には、本明細書に明記した定義が優先されるものとする。
Claims (24)
- 前記リガンドが、抗体、抗原、タンパク質、ポリヌクレオチド、細胞、細胞断片、細菌、胞子、ウイルス又はビリオンから選択される、請求項1に記載の方法。
- 前記センサー基材が、光透過性支持体を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記センサー基材が、前記光透過性支持体に結合された金属層を含む、請求項3に記載の方法。
- 前記金属層が、銅、銀、アルミニウム、金、白金、パラジウム、クロム、ニオブ、ロジウム又はイリジウムから選択される金属を含む、請求項4に記載の方法。
- 前記センサー基材が、前記金属層に結合されたガラス層を含む、請求項4に方法。
- 前記センサー基材が、前記光透過性支持体に結合された金属酸化物層を含む、請求項3に記載の方法。
- 前記センサー基材が、前記光透過性支持体に結合された自己組織化分子層を備える、請求項3に記載の方法。
- 前記センサー基材が、前記光透過性支持体に結合されたポリマー層を含む、請求項3に記載の方法。
- 前記光透過性支持体が、ガラス、石英、シリカ、高分子材料、アクリル高分子、環状オレフィン、ポリオレフィン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメチルアクリレート、及びポリカーボネートから選択される1つ又は複数の物質を含む、請求項3に記載の方法。
- 前記リガンドが、抗体、抗原、タンパク質、ポリヌクレオチド、細胞、細胞断片、細菌、胞子、ウイルス、ビリオン、薬物化合物、有機化合物から選択される、請求項13に記載のエバネッセント波センサー。
- 前記センサー基材に複数の異なるリガンドが結合しており、前記複数の異なるリガンドの各々が、前記センサー基材の異なるサイトに結合している、請求項13に記載のエバネッセント波センサー。
- 前記エバネッセント波センサーが、複数のフィーチャーを有するアレイを含み、前記複数のフィーチャーの各々が、前記センサー基材に結合しているリガンドを有し、且つ前記複数のフィーチャーの各々が、アドレス指定し得るように前記センサー基材上の各サイトに位置する、請求項13に記載のエバネッセント波センサー。
- 前記センサー基材が、光透過性支持体を含む、請求項13に記載のエバネッセント波センサー。
- 前記センサー基材が、前記光透過性支持体に結合された金属層をさらに含む、請求項17に記載のエバネッセント波センサー。
- 前記金属層が、銅、銀、アルミニウム、金、白金、パラジウム、クロム、ニオブ、ロジウム又はイリジウムから選択される金属を含む、請求項18に記載のエバネッセント波センサー。
- 前記センサー基材が、前記金属層に結合されたガラス層を含む、請求項18に記載のエバネッセント波センサー。
- 前記センサー基材が、前記光透過性支持体に結合された金属酸化物層を含む、請求項17に記載のエバネッセント波センサー。
- 前記センサー基材が、前記光透過性支持体に結合された自己組織化分子層を含む、請求項17に記載のエバネッセント波センサー。
- 前記センサー基材が、前記光透過性支持体に結合されたポリマー層を含む、請求項17に記載のエバネッセント波センサー。
- 前記センサー基材が、連結基をさらに含み、前記連結基を介して前記光透過性支持体が前記リガンドと結合している、請求項17に記載のエバネッセント波センサー。
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