JP2007122265A - アニメーション編集システム - Google Patents
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Abstract
従来のCGアニメーションのデータでは変移値と時間が不可分であり、時間に対する操作に制限があった。また、従来技術ではアニメーションデータの再利用に専用の仕組みを使用しており、概念や操作が複雑で難しかった。また、従来のデータでは関節等の構造と名称が不可分であったため、名称が構造に制限され、自然言語の名称のように自由に概念を構築することができなかった。
【解決手段】
この発明では、時間と変化要素を独立させ、直接グループ化し、再利用等を最小のデータ構造の中で可能にし、編集効率を改善する。なお、キーフレーム補間に必要なチャンネルは動的に生成する。また、部位名称も同様に独立させることで、名称を使った概念を自由に構築でき、アニメーションの利用効率を改善する。
これらはアニメーションの基本要素のグループ化という共通の手法により実現される。
【選択図】図1
Description
図1で示すシステムはアニメーションの三大基本要素(以下、三大要素)である「領域、時間、動作要素」、すなわち「どこを、何時、どう動かすか」を基本にデータを整理するシステムである。それぞれをグループ化するためのデータ構造と、それらを連携させてアニメーションデータを作り出すエンジン部を中心に構成される。このシステムでは三大要素を「Region、Timing、Movement」と呼ぶ。
以下で基本データ構造を詳細に述べる。
Regionとは、仮想空間上の表示対象物や領域に名称や属性を付与する「ラベル」のようなものとして位置付けられる。3Dモデルの領域を示すためのデータが含まれるが、それ以上の構造的な意味を直接含まない。モーションを付ける対象を示すと共に、モーションデータの再利用などの際に検索キーとしても使用する。
Regionは従来の3D-CGソフトウェアのボーン(あるいはスケルトン、ジョイント等と呼ばれる同種のシステム)からモデルの物理的な骨格構造を取り除いたものである。骨格情報を持たないので、図4のように、「関節」に注目するか「骨」に注目するか、気にすることなく自由に名称をつけることができる。また、これまで困難だった「上腕、前腕、手」を含む「腕」といった定義が可能になり、人の概念に近い取り扱いが可能になる。このことにより言語処理との親和性が向上する。「Regionのグループ化」のメリットとしては他に、従来から変移値は「部位を表すボーン」に関連付けられており、それと同様に複数の部位のモーションをまとめて再利用する場合にも、図5のように、該当部位の「集合」に「モーション」を関連付けられるようにするとわかりやすいことがあげられる。
なお、取り除かれた骨格構造の座標値及び親子関係は別のデータ構造に含まれる。「座標値」は「表示対象物」に、「親子関係」は「変移値」として、後で述べるMovementに含まれる。
Regionには特殊化された「Character」「Prop」「Stage」なども含まれる。なお領域の定義が途中で変化する場合はMovementを特殊化した「動的領域」として扱う。特殊化の概要は以下の通り。
「Character」
個性・性格を持つ単位として主に人間を想定した属性を持つ。(年齢、性別等)
「Prop」
道具として独立した領域を示す。
「Stage」
場面全体を示す領域で他のRegion(及びその派生)は、この中に含まれる。
Timingは時間を抽象化・グループ化する。図6に示すように従来のキーフレームを「時間」と「変移値」に分割し、変移値が直接時間を持たないようにし、変移値は実行されるタイミングを参照する形で持つ。これにより変移値は自分が実行されるタイミングについて一切の責任を負わないこととなり、「Timing」側で自由に時間をコントロールできることになる。以下のように、この方式には6つの主なメリットがある。
1.偶然同じ時間に来ているだけのタイミングと、動作の連係上常に同じでなければならないタイミングを明示的に分けることができる。タイミングの抽象化とは「何時何分に○○値に変化する」という情報を持つのではなく、「AというタイミングにBという変移値が割り当てられている」として、Aの時間やBの値は好きに変えられるということを指す。時間は好きに決めてよいのだから2つのタイミングの時間が同じということも当然ありうる。タイミングの抽象化(シンボル化)を行っておけば再編集を行った時に両者のタイミングがずれた場合にでも簡単に修正を行うことができる。
2.キーフレームのタイミングを操作するたびに膨大なキーフレームデータに検索をかけなくてよい。通常、同時刻に複数のオブジェクトに対してキーが打たれており、それは時として数十個、数百個となる。つまりタイミングの数はキーの数に比べて圧倒的に少ないため高速に処理することが可能である。
3.タイミングがモーションデータから独立しているため、タイミングだけの再利用が可能である。例えば「歩く」モーションの「タイミング群」は体格の違う他のキャラクタに対しても変更無しに適用できる。
4. 図7のように、時間の流れを先行して決めることができる。全体の時間の流れを先行して決定することは「ストーリー」作りの観点から見ると有用である。
5.タイミング同士をどのようにグループ化しようとアニメーションには何の影響もなくなるため、タイミング同士を好きに組み合わせてグループを作ることができる。
6.実際の時間と、人の認識には「微妙にずれ」があり、例えば図8のように、腕の様にいくつもの稼動部が連結されているものだと同時に動いているようでも実際に各関節が動くタイミングはそれぞれずれている。複数のタイミングをグループ化し1つのタイミングとしても扱えるようにすることで、こうした差異を吸収することができる。
Timingには特殊化された「Tempo(タイミング群)」等も含まれる。
Tempoは時間方向に長さを持つタイミングのグループである。Tempo自身は変移値を持たないので直接「動き」を持つわけではないが動きが時間と変化量で表される以上、動きの一部である。少なくとも「動き」をコントロールすることができる。実際アニメーション作成時に行う「タイミング」の調整は、動きの調節のかなりの部分に相当する。
Tempoには主に3つのタイプがある。1つは単に名前をつけて再利用や編集がしやすいように括ったもの。2つ目は「手拍子」の概念をデータ構造にしたものであり、基準になるタイミングの間に動きのキーとなるタイミングが複数配置される。3つ目は「手拍子」の内、他のTempoを流用して自分自身は「タイミング」を持たない繰り返し専用のものである。
Tempoはレイヤーのように重ねることができる。レイヤーのように扱えることで複数の動きをブレンドさせることが可能になる。
Movementは動作を記述するシステムの核となるデータ群である。Movementはアニメーション用のキーフレームデータをチャンネルに格納する前に、自分たち自身の中でグループ化してしまうための構造である。これによりグループ化や再利用が一つのデータ構造の中で可能となり、操作が容易になる。CGアニメーションにおいては全てのものが変化する可能性を持っており、Movement(=変移値)ではCGで扱う全てのデータ要素を取り扱う可能性がある。なお、全てのアニメーション要素はMovementを特殊化したものである。
主な動作要素の意味は以下のとおり。
「Movement」
Region(1つか2つ)とTempo(1つ)への参照を持つ。Movement自身は他のデータを格納してグループ化するだけのためのデータである。
他のクラスオブジェクトをグループ化できるためモーションの再利用のための重要なキーとなる。また、属性にRepeat属性を持つ。この属性値に他のMovementが指定されていると、自分自身は中身を持たなくても他のMovementからそこにアニメーションを持ってくることが可能である。
「Key」
最も使用頻度の高いアニメーション用データである。従来ソフトウェアのアニメーションデータのほとんどはこの中に格納される。具体的は、「移動(Translate)」、「回転(Rotate、クォータニオン)」、「拡大縮小(Scale)」それに「マトリックス」が格納可能である。こうした様々なデータをひとえに格納できるようにしてあるのは違う種類同士の相互補間が可能な様にするためである。例えば回転のさせ方には様々な順序ややり方があるがそれらは同列に扱えた方が便利である。
「Link」
2つのRegionへの参照を持ち、従来システムではボーンが受け持っていたパーツ間の階層付けを行う。アニメーションの途中でも変更可能で、従来システムではParentコンストレインツが受け持っていた機能もLink一つで受け持つ。
IK(インバースキネマティクス)
Linkと組み合わせて使用し、インバースキネマティック(逆運動学)という、連続した関節構造の位置を末端側から計算する仕組みを実現する。
「Aim」
指定されたオブジェクトの方角を見続ける。
「動的領域(Regionプロキシ)」
Movemnetを特殊化したものでありながら、Regionとして振舞う。これはRegionがアニメーションの途中で変更されるのに使用される。RegionプロキシはPhysicalクラスに格納されているオブジェクトを呼び出したり、Regionと同じ機能を持つ。
アニメーション三大要素を個別にグループ化するために、本システムではTree構造を使用する。これはTree構造用のノードベースコンテナにより実現される。これに要求される機能はListコンテナとほぼ同様である。ただし、兄弟間の行き来しかできない「一つの階層限定」の反復子が必要である。本システムでは同階層内限定の操作が多いため、この反復子を多用する。
実例を図7に示す。
画面上でパーツを選択するとその部分にワイヤーフレームが上書きされ、表示画面上の任意の点でドラッグしポーズを変えることでモーションを編集する。そのほかの表示には「アニメーション表示。アニメーション用時刻での状態を表示する」「既存Timingでの状態表示。すでに変移値を持つものと変移値を持たないものの表示に別れる」「選択Timingでの状態表示。先の編集用表示とそうでないものに別れる」がある。なお、各表示物を選択することでパーツの選択と同時にTimingの選択も行われるから「選択Timing状態表示」のうち編集用でないものの表示は「既存Timing状態表示」と同じでよい。また、アニメーション表示を選択した場合は最寄のTimingが選択される。この最寄Timingを常に選択するオプションを設定することもできる。
なお、アニメーションの再生中でもポーズの変更は可能であり、これにより実際に再生している状態で確認しながらのアニメーション付けが可能になる。
実例を図8に示す。データの詳細表示には、「Tree表示」を使用するとメモリー上に展開されているデータの状態がそのまま表示されるため、デバッグや、システムの仕組みを理解するのには最適である。
Movementを定義するためにはRegionとTimingが必要であることから、原則としてRegionとTimingから作成する。すなわち、シーンに登場するキャラクタや小道具類を決め、シーン全体の時間の流れを先行して決める。全体の時間の流れを先行して決定することは「ストーリー」作りの観点から見ると有効な手順だが、従来のCGアニメーション編集では困難だったため本システムの特徴といえる。
このシステムではアニメーションの再生方法について何の制限も持たない。言い換えれば、既存のいかなるアニメーション再生方法も実装し、再現することができる。ただし、キーフレーム補間によるアニメーションを優先する。
TempoにしてもMovementにしてもモーションの一部を切り出してグループ化する。グループ同士を重ね合わせることも可能である。その点では従来の流用可能モーション(以下、モーションクリップ)と同等のものである。しかしながらモーションクリップは個々が完全に独立しており、継ぎ目をぼかすためにはその為の処理が必要であった。TempoやMovementは、本来はフラットで連続していたモーションの区間をわかり易くするために便宜的に括るためのものであり、例えTempoやMovementが続いていない区間があってもアニメーションは連続的に続いて行かなくてはならない。このため以下の6つの条件を満たす。
1.Movementでグループ化した場合もグループ化前と同じアニメーションが再生できなくてはならない。
2.グループ間に完全に他の変化要素が途絶えている区間がある場合、グループ同士の合い間をキーフレーム補間すること。
3.Timingのグループ化は原則アニメーションには影響してはならない。
4.前項にて影響が許されるのはTempoの属性であるScaleが1以外の値を持つときのみである。
5.以前、他の場所で滑らかに補間されていたMovementの端は他の場所に持ってきた時にも自動的に滑らかに保管されなければならない。
6.「永続化」が指定されている変移値が最後にあった場合そのままの値を維持し続けること。
また、本システムでは従来システムのチャンネルを一度除外しているため、キーフレーム補間のために「動的チャンネル」という新しいチャンネルシステムを構築する。
ユーザがアニメーションを作る際に操作するのは「タイミングと変移値」である。チャンネルはコンピュータが最終的なポーズを求めるためにキーフレーム間補間を行う際に使用するものであって、普段、人間が見たり操作したりする必要は無い。そのため極力チャンネルの生成を遅らせ、後から動的にチャンネルを生成する。
変移値にはTimingやRegionへの参照を持っている。また、「Key、Link」など種類も明確である。図9に示すように、この変移値を「参照しているRegionごと」、「変移値の種類ごと」に分類し、「時間順」でソートし直すと、チャンネルと同じ状態に整理される。この分類ごとの「始点終点のイテレータ」を保持したオブジェクトを作成すれば実際の動的チャンネルとなる。動的チャンネルにはMovementの種類に対応したチャンネルが実装されておりMovement同様、継承による多態性を持つ。例えばKeyに対してはKeyChannel、Linkに対してはLinkChannelが実装される。
動的チャンネルシステムは操作の必要が無いため、ユーザインタフェースを持たなくて良い。動的チャンネルシステムが変移値の整列、キーフレーム補間に使用する変移値の選出、補間値の計算まで、アニメーション表示を背後で支えているおかげで、アニメーション三大要素に対して階層化などの操作を自由に行うことができる。
この実施形態によれば、人の感覚に近い「名称付け」や「グループ化」が可能で、日常使用している自然言語の概念に即した名称を使用することができる。これにより、データ構造だけでも従来型アニメーションデータの冗長性を大幅に改善でき、編集効率や再利用性の向上が期待できる。
また、名称を文字列ではなくシンボルとして他のデータ構造から利用することで、両者の独立性を保ちながら連携した処理を可能にする。例えばキーフレームデータでは変更すべき部位を識別することができ、モーションデータを管理するソフトウェアからは同じ部位の「名称」をキーワードとして、領域の階層構造と関連付けてモーションデータを格納することができる。
また、図10に示すように「動作要素のグループ化」と「動的チャンネル」の組み合わせにより、「ユーザが入力を行う部分」と「コンピュータが自動処理する部分」を明確に分けることが可能になり、効率的に作業できるようになる。
システムはアプリケーションソフトウェアとしてだけではなく、他ソフトウェアから利用するためにライブラリとして供給してもよい。
「領域、時間、変化要素(変移値含む)」を扱っていれば、例えば「Part、Tempo、Motion」などの「Region、Timing、Movement」以外の名称でも良い。
グループ化に用いるのは「Tree」だけでなく「Graph」など他のデータ構造でも良い。
図3の実施形態では、データの詳細表示は「Tree表示」であったが、他の実施形態では、時間軸を「横軸」とし部位やチャンネルを縦軸として、変化要素を配置した「タイムライン表示」でも良い。
仮想三次元空間を使用したCGアニメーションだけでなく二次元平面上のCGアニメーションでも良い。
Claims (20)
- アニメーション用キーフレームデータから実時間を切り離し、「時間」をシンボル化することで「時間」の編集をしやすくしたことを特徴とするCGアニメーション用データ構造。
- 前記、アニメーション用キーフレームデータと、時間データを別途編集可能な請求項1を利用したCGアニメーション用編集システム。
- 前記、「時間」をキーフレームの作成とは切り離し、事前に複数の「時間」(タイミング)を準備することを特徴とする、請求項1を利用したCGアニメーション作成手法。
- 前記、「時間」をグループ化することにより、複数の「時間」を1つの「時間」として扱えることを特徴とする請求項1のCGアニメーション用データ構造。
- 前記、「時間」をグループ化することにより、複数の時間を1つの時間として編集可能な請求項4を利用したCGアニメーション用編集システム。
- キーフレーム自身に自己の種類を明記することでチャンネルを後から自動生成することを特徴とするCGアニメーション用データ構造。
- キーフレーム自身に自己の種類を明記することでチャンネルを後から自動生成することを特徴とする請求項6を利用したCGアニメーション用編集システム。
- 前記、チャンネルを後から自動生成することにより、キーフレームを任意のグループに格納できることを特徴とする請求項6記載のCGアニメーション用データ構造。
- 前記、チャンネルを後から自動生成することにより、キーフレームを任意のグループに格納できることを特徴とする請求項8を利用したCGアニメーション用編集システム。
- 前記、キーフレームを任意のグループに格納できることにより、任意の意味を持つグループを作成でき、アニメーションの編集及び再利用が容易となることを特徴とする請求項8記載のCGアニメーション用データ構造。
- 前記、任意の意味を持つグループを作成できることにより、アニメーションの編集及び再利用が容易となることを特徴とする請求項10を利用したCGアニメーション用編集システム。
- 表示内容を示すデータと名称の概念を切り離したことを特徴とするCGアニメーション用データ構造。
- 前記、表示内容を示すデータと名称の概念を切り離したことで、部位名称の利用方法を広げたことを特徴とする請求項12を利用したCGアニメーション用編集システム。
- 前記、アニメーション用データを、部位名称を使用して管理することを特徴とする請求項12記載のCGアニメーション用データ構造。
- 前記、アニメーション用データを、部位名称を使用して管理することを特徴とする請求項14を利用したCGアニメーション用編集システム。
- 前記、表示内容を示すデータと名称の概念を切り離したことで、部位名称を独自にグループ化でき、アニメーション用データの管理効率が向上することを特徴とする請求項14のCGアニメーション用データ構造。
- 前記、部位名称を独自にグループ化できることで、アニメーション用データの管理効率を向上させることを特徴とする請求項16を利用したCGアニメーション用編集システム。
- アニメーションの基本要素「領域、時間、変化要素」をそれぞれ個別にグループ化できるようにしたうえで、「変化要素」を「領域、時間」と組み合わせてアニメーションの基本単位とし、編集効率を高めたことを特徴とするCGアニメーション用データ構造。
- 前記、アニメーションの基本要素「領域、時間、変化要素」を個別にグループ化可能としたうえで、「変化要素」を「領域、時間」と組み合わせてアニメーションの基本単位とし、編集効率を高めたことを特徴とする請求項18を利用したCGアニメーション用編集システム。
- 前記、アニメーションの基本要素」を個別にグループ化可能にした請求項18を使用し、「変化要素」グループ化した後にチャンネルの自動生成を行うことで、編集作業の入力と自動処理を明確に分離し、編集効率を高めたことを特徴とするCGアニメーション編集手法。
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