JP2007095434A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】酸化剤ガス流量計測装置に故障が発生した場合であっても、酸化剤ガス流量に不足を生じさせることがないように適切に酸化剤ガス流量を制御できるようにする。
【解決手段】酸化剤ガス流量計測装置であるエアフロメータの正常/異常を判定し、エアフロメータが正常のときは、エアフロメータの計測値のフィードバックにより基本制御用パラメータを補正したフィードバック補正後制御用パラメータを用いてエアコンプレッサの動作を制御し、エアフロメータが異常のときは、補正係数を用いて基本制御用パラメータを増量補正した係数補正後制御用パラメータを用いてエアコンプレッサの動作を制御する。
【選択図】図2

Description

本発明は、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給により発電する燃料電池を備えた燃料電池システムに関し、特に、酸化剤ガスの流量を適切に制御するための技術に関する。
燃料電池には、固体高分子電解質膜の両側にアノードとカソードとを備え、アノードに供給される水素などの燃料ガスと、カソードに供給される空気などの酸化剤ガスとの酸化還元反応にかかる化学エネルギを直接電気エネルギとして抽出するようにしたものがある。この種の燃料電池を備えた燃料電池システムは、燃料電池のカソードに空気を供給するために、エアコンプレッサなどの回転式の空気供給装置を用いている。そして、空気を供給している流路にエアフロメータなどの空気流量計測装置を設け、この空気流量計測装置の計測値に応じて、例えば燃料電池に要求される発電量に見合った空気が燃料電池のカソードに供給されるように、空気流量の制御を行うようにしているのが一般的である。
また、このような燃料電池システムにおいて、燃料電池のアノードに水素を供給する水素供給系としては、水素の利用効率を上げるために、水素循環方式のものを採用することが多い。水素循環方式は、燃料電池のアノードから排出される水素をエゼクタや水素ポンプなどを利用して循環し、水素タンクなどの水素供給源から新たに供給される水素と混合して燃料電池のアノードに再度供給するものである。このとき、水素の循環を繰り返すことでアノード系内にカソードからの透過窒素などの不純物が徐々に蓄積されていくことになるが、このアノード系内の不純物濃度が高くなると燃料電池の発電を阻害して、セル電圧の低下を招くという問題がある。そのため、水素循環方式を採用した燃料電池システムでは、所定のタイミングで水素パージを行って、アノード系内に蓄積された窒素などの不純物を水素とともに外部に放出するようにしている。
また、水素パージを行う際には水素を十分に希釈した状態で外部に放出することが求められるため、例えば特許文献1に記載されているような水素希釈装置などを用いて、空気供給装置から供給される空気で水素を十分に希釈させた後に、外部に放出するようにしている。したがって、水素循環方式を採用した燃料電池システムでは、水素パージを行うときには空気供給装置から十分な流量の空気が供給されるように、空気流量の制御を行う必要がある。
ところで、以上のような燃料電池システムにおいて、上述したようにエアフロメータなどの空気流量計測装置の計測値に応じて空気流量の制御が行われるため、何らかの原因で空気流量計測装置が故障した場合には、適切な流量の空気を燃料電池のカソードに供給できなくなる虞がある。このような観点から、特許文献2に記載の燃料電池システムでは、空気流量計測装置に故障が発生していないかどうかを監視して、空気流量計測装置の故障を検知した場合には、空気供給装置に対する回転数指令値を用いて空気流量を推定し、この推定結果に応じて空気流量の制御を行うようにしている。
特開2003−132915号公報 特開2004−179127号公報
しかしながら、前記特許文献2に記載の燃料電池システムのように空気供給装置に対する回転数指令値を用いて空気流量を推定するようにした場合、回転数指令値には空気供給装置の性能のばらつきなどは考慮されないため、十分な精度で空気流量を推定することは難しく、その推定結果に応じて空気流量の制御を行うようにしても、空気流量の不足が生じる場合がある。特に、上述した水素循環方式の燃料電池システムにおける水素パージ時のように、水素を希釈させるために十分な大流量の空気の供給が求められるような状況においては、空気供給装置に対する回転数指令値を用いた空気流量の推定では推定誤差が大きくなり、水素を希釈させるのに十分な流量の空気が確保できなくなる虞がある。
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みて創案されたものであって、酸化剤ガス流量計測装置に故障が発生した場合であっても、酸化剤ガス流量に不足を生じさせることがないように適切に酸化剤ガス流量を制御することができる燃料電池システムを提供することを目的としている。
本発明に係る燃料電池システムは、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給により発電する燃料電池と、燃料電池に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給装置と、酸化剤ガス供給装置から燃料電池へと供給される酸化剤ガスの流量を計測する酸化剤ガス流量計測装置と、酸化剤ガス供給装置の動作を制御する制御装置とを備えるものである。このような燃料電池システムにおいて、本発明では、前記目的を達成するために、制御手段が、制御用パラメータ算出手段、第1の制御用パラメータ補正手段、第2の制御用パラメータ補正手段、故障判定手段、動作制御手段の各手段を有する構成としている。
以上のように構成される本発明に係る燃料電池システムでは、制御用パラメータ算出手段により、酸化剤ガス供給装置を制御するための基本となる制御用パラメータである基本制御用パラメータが算出される。また、第1の制御用パラメータ補正手段により酸化剤ガス流量計測装置の計測値のフィードバックにより基本制御用パラメータが補正されてフィードバック補正後制御用パラメータが算出され、第2の制御用パラメータ補正手段により、補正係数を用いて基本制御用パラメータが増量補正されて係数補正後制御用パラメータが算出される。また、故障判定手段により、酸化剤ガス流量計測装置の正常/異常が判定されて、酸化剤ガス流量計測装置が正常のときは、動作制御手段により、第1の制御用パラメータ補正手段によって算出されたフィードバック補正後制御用パラメータを用いて酸化剤ガス供給装置の動作が制御され、酸化剤ガス流量計測装置が異常のときは、動作制御手段により、第2の制御用パラメータ補正手段によって算出された係数補正後制御用パラメータを用いて酸化剤ガス供給装置の動作が制御される。
本発明に係る燃料電池システムによれば、酸化剤ガス流量計測装置の正常/異常を判定して、酸化剤ガス流量計測装置が正常であれば、酸化剤ガス流量計測装置の計測値のフィードバックにより基本制御用パラメータを補正したフィードバック補正後制御用パラメータを用いて酸化剤ガス供給装置の動作を制御し、酸化剤ガス流量計測装置が異常であれば、補正係数を用いて基本制御用パラメータを増量補正した係数補正後制御用パラメータを用いて酸化剤ガス供給装置の動作を制御するようにしているので、酸化剤ガス流量計測装置に故障が発生した場合であっても、酸化剤ガス流量に不足を生じさせることがないように適切に酸化剤ガス流量を制御することができる。
以下、本発明を適用した燃料電池システムの具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の燃料電池システムの全体構成を示すシステム構成図である。本実施形態の燃料電池システムは、水素及び空気の供給により発電を行う燃料電池スタック1と、この燃料電池スタック1に燃料ガスである水素を供給するための水素供給系と、燃料電池スタック1に酸化剤ガスである空気を供給するための空気供給系と、燃料電池スタック1から排出される水素を空気で希釈する水素希釈装置(排燃料ガス処理装置)2と、燃料電池スタック1からの電力の取り出しを制御する電力制御装置3と、当該燃料電池システムにおける動作を統括的に制御するコントロールユニット(制御装置)4とを備える。
燃料電池スタック1は、燃料ガスである水素が供給されるアノード1aと酸化剤ガスである空気が供給されるカソード1bとが電解質を挟んで重ね合わされて発電セルが構成されるとともに、複数の発電セルが多段積層されたスタック構造を有しており、水素と空気中の酸素とを基にした電気化学反応により化学エネルギを電気エネルギに変換するものである。この燃料電池スタック1の各発電セルでは、アノード1aに供給された水素が水素イオンと電子とに分離される反応が起き、水素イオンは電解質を通り、電子は外部回路を通って電力を発生させ、カソード1b側にそれぞれ移動する。カソード1bでは、供給された空気中の酸素と電解質を通って移動した水素イオン及び電子が反応して水が生成され、外部に排出される。
燃料電池スタック1の電解質としては、高エネルギ密度化、低コスト化、軽量化等を考慮して、固体高分子電解質膜が用いられる。固体高分子電解質膜は、例えばフッ素樹脂系イオン交換膜等、イオン(プロトン)伝導性の高分子膜からなるものであり、飽和含水することによりイオン伝導性電解質として機能する。このため、燃料電池スタック1には図示しない加湿機構によって水分が供給されており、この水分で固体高分子電解質膜の適度な加湿状態が保たれている。
水素供給系は、例えば、水素供給源である水素タンク5、水素調圧弁6、水素供給配管7を備えており、水素タンク5から供給される高圧の水素を水素調圧弁6で減圧し、水素供給配管7を介して燃料電池スタック1のアノード1aに送り込む構成となっている。また、この水素供給系は水素循環方式として構成されており、エゼクタ8や水素循環配管9を備えている。水素循環方式の水素供給系では、燃料電池スタック1で消費されずに残った水素(燃料電池1のアノード1aから排出される水素)が、水素循環配管9を通ってエゼクタ8により循環され、新たに水素タンク5から供給される水素と混合されて、再び燃料電池1のアノード1aに供給される。
また、燃料電池1のアノード1a出口側の水素排気配管10には、水素パージ弁11が設けられている。この水素パージ弁11は、水素を循環させることに起因して燃料電池スタック1のアノード1a内部や水素循環配管9の内部に蓄積された窒素等の不純物を水素と共に排出する、水素パージ時に開放されるものである。パージ弁11下流側の水素排気配管10は水素希釈装置2に接続されており、水素パージ時に水素パージ弁11の開放によって排出される水素は、水素希釈装置2において空気供給系からの空気によって十分に希釈された状態で、外部に放出される。
また、水素供給系においては、水素供給配管7の中途部に水素入口温度センサ12や水素入口圧力センサ13や設けられており、燃料電池スタック1のアノード1aに供給される水素の温度や圧力がこれらのセンサにより検出できるようになっている。これらのセンサの検出値は、コントロールユニット4に読み込まれ、コントロールユニット4による水素供給系の動作制御に用いられる。
空気供給系は、例えば、酸化剤ガス供給装置としてのエアコンプレッサ14と、空気供給配管15とを備えており、エアコンプレッサ14によって外気を吸入して圧縮し、空気供給配管15を介して燃料電池スタック1のカソード1bに送り込む構成となっている。また、燃料電池1のカソード1b出口側には空気排気配管16が接続され、燃料電池スタック1で消費されなかった酸素及び空気中の他の成分は、この空気排気配管16を通じて排出される。また、空気排気配管16には空気調圧弁17が設けられており、燃料電池スタック1のカソード1bに供給される空気の圧力は、この空気調圧弁17の開度を調整することによって制御される。空気調圧弁17下流側の空気排気配管16は水素希釈装置2に接続されており、この空気排気配管16を通じて水素希釈装置2に供給される空気により、水素パージ時に排出される水素が希釈される。
また、空気供給系においては、空気供給配管15の中途部に空気入口温度センサ18や空気入口圧力センサ19や設けられており、燃料電池スタック1のカソード1bに供給される空気の温度や圧力がこれらのセンサにより検出できるようになっている。また、空気供給配管15の中途部には、酸化剤ガス流量計測装置としてのエアフロメータ20が設けられており、エアコンプレッサ14から吐出されて燃料電池スタック1のカソード1bへと供給される空気の流量が、このエアフロメータ20によって計測されるようになっている。これら空気入口温度センサ18や空気入口圧力センサ19の検出値やエアフロメータ20の計測値は、コントロールユニット4に読み込まれ、コントロールユニット4による空気供給系の動作制御に用いられる。
電力制御装置3は、例えば昇圧型のDC/DCコンバータよりなり、燃料電池スタック1と図示しない電気負荷との間に配置されて、燃料電池スタック1からの電力の取り出しを制御する。すなわち、燃料電池スタック1からの取出電流値や電圧値は電流センサ21や電圧センサ22によって検出され、コントロールユニット4に読み込まれる。コントロールユニット4はこれらのセンサ検出値をもとに燃料電池スタック1の状態を把握し、それに応じて電力制御装置3に対して動作指令を出力する。そして、電力制御装置3が、コントロールユニット4からの動作指令に基づいて、所望の電力が燃料電池スタック1から取り出せるように、燃料電池スタック1からの電力の取り出しを制御する。
コントロールユニット4は、CPUやROM、RAMなどを備えたマイクロコンピュータを中心に構成され、予めマイクロコンピュータのROMなどに記憶された制御用のプログラムを実行してCPUで各種の演算処理を行うことで、燃料電池システムにおける各部の動作を制御するための各種制御機能を実現する。特に、本発明を適用した燃料電池システムにおけるコントロールユニット4は、水素供給系のエアコンプレッサ14の動作を制御するための制御機能として、図2に示すように、制御用パラメータ算出手段101、第1の制御用パラメータ補正手段102、第2の制御用パラメータ補正手段103、故障判定手段104、動作制御手段105の各制御機能を実現する。
制御用パラメータ算出手段101は、エアコンプレッサ14の動作を制御するための基本となる制御用パラメータである基本制御パラメータを算出する。ここで、エアコンプレッサ14の動作を制御するための制御用パラメータとしては、例えば、エアコンプレッサ14に対して要求する目標空気流量や、この目標空気流量を達成するためにエアコンプレッサ14を動作させるための実際の指令値である目標回転数(目標操作量)などが挙げられるが、本実施形態では、目標回転数(目標操作量)を制御用パラメータとして扱う場合について説明する。なお、このような制御用パラメータは、燃料電池スタック1での発電に必要な空気流量と、水素希釈装置2での処理に必要な空気流量とに基づいて設定される。すなわち、制御用パラメータは、燃料電池スタック1での発電に必要な空気流量(以下、発電用空気流量という。)が、上述した水素供給系で水素パージを行う際に排出される水素を十分に希釈するために必要とされる空気流量(以下、希釈空気流量という。)よりも多ければ、発電用空気流量に基づいて設定され、発電用空気流量よりも希釈空気流量の方が多ければ希釈空気流量に基づいて設定される。
第1の制御用パラメータ補正手段102は、エアフロメータ20の計測値のフィードバックにより制御用パラメータ算出手段101で算出した基本制御用パラメータを補正して、フィードバック補正後制御用パラメータを算出する。すなわち、基本制御用パラメータを用いてエアコンプレッサ14の動作を制御して、エアコンプレッサ14から所望の流量の空気を吐出させようとしたとしても、エアコンプレッサ14のコンディショニングや性能のばらつきなどに起因して、所望の空気流量が得られない場合がある。そこで、本実施形態の燃料電池システムでは、空気供給用配管15にエアフロメータ20を設置して、エアコンプレッサ14から吐出されて燃料電池スタック1のカソード1bへと供給される空気の実際の流量をこのエアフロメータ20で計測し、所望の空気流量と実際の空気流量との差分に基づくフィードバック制御を行うことで、所望の空気流量を安定的に燃料電池スタック1のカソード1bに供給できるようにしている。第1の制御用パラメータ補正手段102は、このようなフィードバック制御によって基本制御用パラメータを補正して、フィードバック補正後制御用パラメータを算出するものである。
第2の制御用パラメータ補正手段103は、補正係数を用いて制御用パラメータ算出手段101で算出した基本制御用パラメータを増量補正して、係数補正後制御用パラメータを算出する。ここで、係数補正後制御用パラメータは、エアフロメータ20に故障が生じて、第1の制御用パラメータ補正手段102で算出されるフィードバック補正後制御用パラメータが信頼性の低いものとなったときに、このフィードバック補正後制御用パラメータを代替する制御用パラメータとして用いられるものである。なお、フィードバック補正後制御用パラメータが信頼性の低いものとなったときには、基本制御用パラメータで代替することも考えられるが、基本制御用パラメータでフィードバック補正後制御用パラメータを代替することはフィードバック制御を行わないことを意味し、上述したようなエアコンプレッサ14のコンディショニングや性能のばらつきなどに起因した空気流量不足が生じる可能性があり、特に、水素供給系の水素パージ時に要求される希釈空気流量が発電用空気流量よりも多いような状況では、空気流量不足が顕著となることが想定される。そこで、本実施形態の燃料電池システムでは、第2の制御用パラメータ補正手段103で補正係数を用いて基本制御用パラメータを増量補正した係数補正後制御用パラメータを算出し、エアフロメータ20に故障が生じてフィードバック補正後制御用パラメータが信頼性の低いものとなったときは、係数補正後制御用パラメータでフィードバック補正後制御用パラメータを代替するようにしている。このような観点から、係数補正後制御用パラメータの算出に用いる補正係数は、エアコンプレッサ14のコンディショニングや性能のばらつきなどに起因する吐出空気流量の不足を補える値に設定される。具体的には、この補正係数は、事前に実験などを繰り返し行って、エアコンプレッサ14のコンディショニングが最低条件の場合や、エアコンプレッサ14として下限性能のものを用いた場合でも、基本制御用パラメータに基づく理想的な空気流量を確保できる値を当該エアコンプレッサ14の流量特性に基づいて求めて、その値に設定される。
故障判定手段104は、エアフロメータ20が正常に動作しているか、或いは異常が生じているかを判定する。この故障判定手段104による判定は、例えば、エアフロメータ20で検出される信号電圧の値をモニタリングすることによって実現できる。すなわち、エアフロメータ20は、一般的に、正常時には0・5Vから4.5Vの範囲の信号電圧を出力するのに対し、信号送信系に故障が生じた場合には5Vのみしか出力しなくなり、また、電源系に故障が生じた場合には0Vしか出力しなくなる。したがって、このようなエアフロメータ20から出力される信号電圧がどのような値となっているかをモニタリングすることで、エアフロメータ20が正常に動作しているか、或いは異常が生じているかを判定することが可能となる。
動作制御手段105は、故障判定手段104による判定結果に応じて、第1の制御用パラメータ補正手段102によって算出されたフィードバック補正後制御用パラメータと、第2の制御用パラメータ補正手段103によって算出された係数補正後制御用パラメータとの何れかを選択的に用いて、エアコンプレッサ14の動作を制御する。具体的には、故障判定手段104によってエアフロメータ20が正常に動作していると判定されたときには、第1の制御用パラメータ補正手段102によって算出されたフィードバック補正後制御用パラメータの信頼性が高いと判断できるので、動作制御手段105は、このフィードバック補正後制御用パラメータを用いて、エアコンプレッサ14の動作を制御する。一方、故障判定手段104によってエアフロメータ20に異常が生じていると判定されたときには、第1の制御用パラメータ補正手段102によって算出されたフィードバック補正後制御用パラメータの信頼性が低くなっていることが想定されるので、動作制御手段105は、このフィードバック補正後制御用パラメータの代わりに、第2の制御用パラメータ補正手段103によって算出された係数補正後制御用パラメータを用いて、エアコンプレッサ14の動作を制御する。
図3は、以上のような各制御機能を有するコントロールユニット4によって、実際にどのようにエアコンプレッサ14の動作を制御するかを、より具体的なかたちで例示したものである。なお、この図3に示す例では、エアコンプレッサ14に対して指令する目標回転数を制御用パラメータとして扱っており、エアフロメータ20の計測値のフィードバックによる補正や補正係数による補正は、目標回転数を対象として行っている。また、この図3に示す例では、エアフロメータ20の故障時に、補正係数を用いて基本制御用パラメータを増量補正した係数補正後制御用パラメータでエアコンプレッサ14の動作を制御するのを、発電用空気流量よりも希釈空気流量の方が多くなる状況のみに限定し、発電用空気流量が希釈空気流量よりも多くなる状況では、エアフロメータ20の故障時には基本制御用パラメータを用いてエアコンプレッサ14の動作を制御するようにしている。これは、空気流量の不足が顕著になるのが水素パージ時に発電用空気流量よりも多い流量の希釈空気流量が要求される場合であることを考慮したものであるが、勿論、発電用空気流量が希釈空気流量よりも多くなる状況においても、エアフロメータ20の故障時には係数補正後制御用パラメータを用いてエアコンプレッサ14の動作を制御するようにしてもよい。
本実施形態の燃料電池システムにおけるコントロールユニット4は、図3に示すように、まず、水素供給系で水素パージを行う際に排出される水素を水素希釈装置2において十分に希釈するために必要とされる空気流量である希釈空気流量を求め、例えば、図4に示すようなエアコンプレッサ14の回転数とエアコンプレッサ14によって吐出される空気流量との関係を記載した制御マップを用いて、希釈空気流量を実現するためにエアコンプレッサ14に指令するための第1目標回転数を算出する。なお、図4に示すような制御マップは、実際にエアコンプレッサ14を使用した実験などを事前に行うことで作成される。
ここで、コントロールユニット4は、エアフロメータ20の故障判定を行って、エアフロメータ20に異常が生じていると判定した場合には、第1目標回転数に補正係数を乗じて第1目標回転数を増量補正する一方で、エアフロメータ20が正常であると判定した場合には、第1目標回転数に1を乗じて第1目標回転数の補正は行わない。
また、コントロールユニット4は、燃料電池スタック1で電気負荷などから要求される電力を発電するために必要な空気流量である発電用空気流量を求め、例えば、図4に示したようなエアコンプレッサ14の回転数とエアコンプレッサ14によって吐出される空気流量との関係を記載した制御マップを用いて、発電用空気流量を実現するためにエアコンプレッサ14に指令するための第2目標回転数を算出する。
そして、コントロールユニット4は、第1目標回転数と第2目標回転数とを比較して、何れか数値の大きい方の目標回転数を選択し、この選択した目標回転数をエアコンプレッサ14に対する回転数指令値とする。このとき、コントロールユニット4は、上述したエアフロメータ20の故障判定によりエアフロメータ20が正常であると判定していれば、選択した目標回転数にフィードバック制御補正値を加算した値を回転数指令値とする一方で、エアフロメータ20に異常が生じていると判定していれば、選択した目標回転数をそのまま回転数指令値とする。なお、エアフロメータ20の正常時に目標回転数に加算するフィードバック制御補正値は、上述した希釈空気流量と発電用空気流量の何れか大きい方の値と、エアフロメータ20によって計測された実際の空気流量との差から求められる。
次に、以上のような本実施形態の燃料電池システムにおいて、コントロールユニット4がエアコンプレッサ14に対して回転数指令値を出力するまでの一連の処理について、図5のフローチャートを用いてより詳細に説明する。なお、この図5に示す処理フローは、所定の時間周期(例えば10msec周期)でコントロールユニット4により繰り返し実行されるものである。
図5の処理フローが開始されると、コントロールユニット4は、まず、ステップS101において、例えば、図6に示すような燃料電池スタック1の出力と目標運転圧力との関係を記載した制御マップを用いて、燃料電池スタック1で電気負荷などから要求される電力を発電するために必要な燃料電池スタック1の目標運転圧力を算出する。なお、図6に示すような制御マップは、実際に燃料電池スタック1を使用した実験などを事前に行うことで作成される。
次に、コントロールユニット4は、ステップS102において、以下に示す手順に従って水素パージ時における排水素量を推定する。
手順(1):水素パージ弁11を通過する全排ガスの流量の推定。
手順(2):水素パージ弁11を通過する排ガスの水蒸気分圧の算出。
手順(3):水素パージ弁11を通過する全排ガス中における排水素量の算出。
まず、手順(1)において、下記式(1)を用いて、水素パージ弁11を通過する全排ガスの流量Q1を推定する。なお、下記式(1)において、A1は水素パージ弁11の絞り開口面積、ρcは水素循環配管9内および燃料電池スタック1のアノード1a内にある水素ガスの密度、Pcは水素循環配管9および燃料電池スタック1のアノード1aの内圧、Paは水素パージ弁11下流の圧力(ほぼ大気圧とみなせる。)である。ただし、水素パージ弁11が閉じているときには、全排ガス流量Q1は0となる。
Q1=A1×(2×ρc×(Pc−Pa))1/2 ・・・(1)
次に、手順(2)において、温度変化に対する飽和水蒸気圧の変化を示す飽和水蒸気圧線図(Cox線図など)を用いて、水素入口温度センサ12で検出された温度に応じて、水素パージ弁11を通過する排ガスの水蒸気分圧PH20を求める。
次に、手順(3)において、下記式(2)を用いて、手順(1)で求めた全排ガス流量Q1と手順(2)で求めた排ガスの水蒸気分圧PH20とから、水素パージ弁11を通過する全排ガス中における排水素量Qhを求める。なお、この排水素量Qhは、水素パージ弁11が閉じているときには0となる。
Qh=Q1×(1−(PH20/Pc)) ・・・(2)
次に、コントロールユニット4は、ステップS103において、下記式(3)で示すように、ステップS102で求めた排水素量Qhに所定の係数K1を乗じて、希釈空気流量Qair1を算出する。なお、下記式(3)において、係数K1は、水素希釈装置2より排出される水素と酸素の混合ガスが、水素の燃焼可能下限濃度(例えば4%)以下になるような値に設定すればよい。
Qair1=Qh×K1 ・・・(3)
次に、コントロールユニット4は、ステップS104において、例えば、図4に示したようなエアコンプレッサ14の回転数とエアコンプレッサ14によって吐出される空気流量との関係を記載した制御マップを用いて、ステップS103で算出した希釈空気流量Qair1を実現するために必要なエアコンプレッサ14の回転数である第1目標回転数R1を算出する。
次に、コントロールユニット4は、ステップS105において、例えば、図7に示すような燃料電池スタック1の出力とその出力を確保するために必要な空気流量との関係を記載した制御マップを用いて、燃料電池スタック1で電気負荷などから要求される電力を発電するために必要な空気流量である発電用空気流量Qair2を算出する。なお、図7に示すような制御マップは、実際に燃料電池スタック1を使用した実験などを事前に行うことで作成される。
次に、コントロールユニット4は、ステップS106において、例えば、図4に示したようなエアコンプレッサ14の回転数とエアコンプレッサ14によって吐出される空気流量との関係を記載した制御マップを用いて、ステップS105で算出した発電用空気流量Qair2を実現するために必要なエアコンプレッサ14の回転数である第2目標回転数R2を算出する。
次に、コントロールユニット4は、ステップS107において、例えば、エアフロメータ20で検出される信号電圧の値に基づいて、エアフロメータ20に異常が生じているか否かを判定する。そして、エアフロメータ20に異常が生じていると判定した場合には、コントロールユニット4は、次のステップS108において、下記式(4)で示すように、ステップS104で算出した第1目標回転数R1に所定の係数K2を乗じて増量補正し、係数補正後第1目標回転数R1’を算出して、ステップS109へと進む。なお、下記式(4)において、係数K2は、エアコンプレッサ14の個体差などにより、入力した回転数に対して吐出される空気流量が一番少ないエアコンプレッサ14であってもステップS103で算出した希釈空気流量Qair1が得られるような値を事前に実験などで求めて、その値に設定すればよい。
R1’=K2×R1 ・・・(4)
一方、コントロールユニット4は、ステップS107でエアフロメータ20が正常であると判定した場合には、ステップS108の処理を行うことなくステップS109に移行する。
次に、コントロールユニット4は、ステップS109において、ステップS104で算出した第1目標回転数R1(ステップS107でエアフロメータ20に異常が生じていると判定された場合はステップS108で増量補正された係数補正後第1目標回転数R1’)とステップS106で算出された第2目標回転数R2とを比較して、何れか大きい方の数値を目標回転数Rとして選択する。
次に、コントロールユニット4は、ステップS110において、エアフロメータ20に異常が生じているか否かを再度確認し、エアフロメータ20に異常が生じている場合には、ステップS111において、ステップS109で選択した目標回転数Rを回転数指令値としてエアコンプレッサ14に対して出力する。一方、エアフロメータ20が正常であれば、コントロールユニット4は、ステップS112において、下記式(5)を用いて、ステップS109で選択した目標回転数Rにフィードバック制御補正値を加算し所定の係数K3を乗算して、フィードバック補正後目標回転数R’を求めてステップS111に進み、このフィードバック補正後目標回転数R’を回転数指令値としてエアコンプレッサ14に対して出力する。なお、下記式(5)において、Qair3は希釈空気流量Qair1と発電用空気流量Qair2のうちで何れか大きい方の空気流量、Qair4はエアフロメータ20によって計測された実際の空気流量である。また、係数K3は、Qair3とQair4との差が所定時間内に収束する値を事前に実験などで求めて、その値に設定すればよい。
R’=R+(Qair3−Qair4)×K3 ・・・(5)
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態の燃料電池システムによれば、エアフロメータ20の故障判定によりエアフロメータ20が正常と判定されたときには、エアフロメータ20の計測値のフィードバックにより制御用パラメータとしての目標回転数を補正してフィードバック補正後目標回転数を求め、このフィードバック補正後目標回転数を回転数指令値としてエアコンプレッサ14に対して出力し、エアフロメータ20に異常が生じていると判定されたときには、補正係数を用いて制御用パラメータとしての目標回転数を補正して係数補正後目標回転数を求め、この係数補正後目標回転数を回転数指令値としてエアコンプレッサ14に対して出力するようにしているので、エアフロメータ20に故障が発生した場合であっても、エアコンプレッサ14から供給する空気流量に不足を生じさせることがないように適切に空気流量を制御することができる。
また、本実施形態の燃料電池システムによれば、制御用パラメータとしての目標回転数を増量補正するための補正係数を、エアコンプレッサ14のコンディショニングが最低条件の場合やエアコンプレッサ14として下限性能のものを用いた場合でも、当該エアコンプレッサ14の流量特性から基本制御用パラメータに基づく理想的な空気流量を確保できるような値に設定するようにしているので、例えば、エアコンプレッサ14の個体差などにより、使用するエアコンプレッサ14の性能が下限性能のものであったとしても、空気流量不足が生じる不都合を確実に防止することができる。
また、本実施形態の燃料電池システムによれば、燃料電池スタック1での発電に必要な空気流量である発電用空気流量と、水素パージ時に排出される水素を十分に希釈するために必要とされる空気流量である希釈空気流量とのうち、何れか大きい方の空気流量に基づいて制御用パラメータとしての目標回転数を求めるようにしているので、水素パージ時の前後においてエアコンプレッサ14の回転数を急激に変化させる必要がなく、このエアコンプレッサ14の急激な操作に起因して過渡的に空気流量不足が生じたり、エアコンプレッサ14に過度に負担がかかるといった問題を有効に回避することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明を適用した第2の実施形態の燃料電池システムについて説明する。本実施形態の燃料電池システムは、上述した第1の実施形態と同様の構成を有し、コントロールユニット4が制御用パラメータを用いてエアコンプレッサ14の動作を制御するにあたって、エアフロメータ20の故障判定を行い、エアフロメータ20が正常であれば当該エアフロメータ20の計測値のフィードバックにより基本制御用パラメータを補正したフィードバック補正後制御用パラメータを用いてエアコンプレッサ14の動作を制御し、エアフロメータ20に異常が生じていれば補正係数を用いて基本制御用パラメータを増量補正した係数補正後制御用パラメータを用いてエアコンプレッサ14の動作を制御するようにしている点も、上述した第1の実施形態と同様である。
ただし、上述した第1の実施形態の燃料電池システムでは、エアコンプレッサ14を動作させるための実際の指令値である目標回転数(目標操作量)を制御用パラメータとして扱うようにしているのに対して、本実施形態の燃料電池システムでは、エアコンプレッサ14に対して要求する目標空気流量を制御用パラメータとして扱うようにしている。したがって、本実施形態の燃料電池システムにおいては、エアフロメータ20の計測値のフィードバックによる補正や補正係数による補正は、目標空気流量を対象として行われることになる。
以下、上述した第1の実施形態と同様の内容については重複した説明を省略し、本実施形態に特徴的なコントロールユニット4の処理内容についてのみ、具体的な例を挙げながら説明する。
図8は、コントロールユニット4によるエアコンプレッサ14の動作制御の概要を具体的なかたちで例示したものである。なお、この図8に示す例では、エアフロメータ20の故障時に、補正係数を用いて基本制御用パラメータを増量補正した係数補正後制御用パラメータでエアコンプレッサ14の動作を制御するのを、発電用空気流量よりも希釈空気流量の方が多くなる状況のみに限定し、発電用空気流量が希釈空気流量よりも多くなる状況では、エアフロメータ20の故障時には基本制御用パラメータを用いてエアコンプレッサ14の動作を制御するようにしているが、勿論、発電用空気流量が希釈空気流量よりも多くなる状況においても、エアフロメータ20の故障時には係数補正後制御用パラメータを用いてエアコンプレッサ14の動作を制御するようにしてもよい。
本実施形態の燃料電池システムにおけるコントロールユニット4は、図8に示すように、まず、水素供給系で水素パージを行う際に排出される水素を水素希釈装置2において十分に希釈するために必要とされる空気流量である希釈空気流量を求める。
ここで、コントロールユニット4は、エアフロメータ20の故障判定を行って、エアフロメータ20に異常が生じていると判定した場合には、希釈空気流量に補正係数を乗じて希釈空気流量を増量補正する一方で、エアフロメータ20が正常であると判定した場合には、希釈空気流量に1を乗じて希釈空気流量の補正は行わない。
また、コントロールユニット4は、燃料電池スタック1で電気負荷などから要求される電力を発電するために必要な空気流量である発電用空気流量を求める。そして、コントロールユニット4は、希釈空気流量(エアフロメータ20に異常が生じている場合には増量補正した希釈空気流量)と発電用空気流量とを比較して、何れか数値の大きい方の空気流量を選択し、この選択した空気流量をエアコンプレッサ14に対して要求する目標空気流量とする。このとき、コントロールユニット4は、上述したエアフロメータ20の故障判定によりエアフロメータ20が正常であると判定していれば、選択した空気流量にフィードバック制御補正値を加算した値を目標空気流量とする一方で、エアフロメータ20に異常が生じていると判定していれば、選択した空気流量をそのまま目標空気流量とする。なお、エアフロメータ20の正常時に空気流量に加算するフィードバック制御補正値は、上述した希釈空気流量と発電用空気流量の何れか大きい方の値と、エアフロメータ20によって計測された実際の空気流量との差から求められる。
次に、コントロールユニット4は、例えば、図4に示したようなエアコンプレッサ14の回転数とエアコンプレッサ14によって吐出される空気流量との関係を記載した制御マップを用いて、目標空気流量を実現するためにエアコンプレッサ14に指令するための目標回転数を算出し、算出した目標回転数をエアコンプレッサ14に対する回転数指令値として出力する。
次に、以上のような本実施形態の燃料電池システムにおいて、コントロールユニット4がエアコンプレッサ14に対して回転数指令値を出力するまでの一連の処理について、図9のフローチャートを用いてより詳細に説明する。なお、この図9に示す処理フローは、所定の時間周期(例えば10msec周期)でコントロールユニット4により繰り返し実行されるものである。
図9の処理フローが開始されると、コントロールユニット4は、まず、ステップS201において、例えば、図6に示したような燃料電池スタック1の出力と目標運転圧力との関係を記載した制御マップを用いて、燃料電池スタック1で電気負荷などから要求される電力を発電するために必要な燃料電池スタック1の目標運転圧力を算出する。
次に、コントロールユニット4は、ステップS202において、第1の実施形態で説明した手順に従って水素パージ時における排水素量Qhを推定し、ステップS203において、第1の実施形態で示した式(3)を用いて、ステップS202で推定した排水素量Qhに所定の係数K1を乗じて、希釈空気流量Qair1を算出する。
次に、コントロールユニット4は、ステップS204において、例えば、エアフロメータ20で検出される信号電圧の値に基づいて、エアフロメータ20に異常が生じているか否かを判定する。そして、エアフロメータ20に異常が生じていると判定した場合には、コントロールユニット4は、次のステップS205において、下記式(6)で示すように、ステップS203で算出した希釈空気流量Qair1に所望の係数K4を乗じて増量補正し、係数補正後希釈空気流量Qair1’を算出して、ステップS206へと進む。なお、下記式(6)において、係数K4は、エアコンプレッサ14の個体差などにより、入力した回転数に対して吐出される空気流量が一番少ないエアコンプレッサ14であってもステップS203で算出した希釈空気流量Qair1が得られるような値を事前に実験などで求めて、その値に設定すればよい。
Qair1’=Qair1×K4 ・・・(6)
一方、コントロールユニット4は、ステップS204でエアフロメータ20が正常であると判定した場合には、ステップS205の処理を行うことなくステップS206に移行する。
次に、コントロールユニット4は、ステップS206において、例えば、図7に示したような燃料電池スタック1の出力とその出力を確保するために必要な空気流量との関係を記載した制御マップを用いて、燃料電池スタック1で電気負荷などから要求される電力を発電するために必要な空気流量である発電用空気流量Qair2を算出する。
次に、コントロールユニット4は、ステップS207において、ステップS203で算出した希釈空気流量Qair1(ステップS204でエアフロメータ20に異常が生じていると判定された場合はステップS205で増量補正された係数補正後希釈空気流量Qair1’)とステップS206で算出した発電用空気流量Qair2とを比較して、何れか大きい方の数値を目標空気流量Qairとして選択する。
次に、コントロールユニット4は、ステップS208において、エアフロメータ20に異常が生じているか否かを再度確認し、エアフロメータ20に異常が生じている場合には、ステップS209において、例えば、図4に示したようなエアコンプレッサ14の回転数とエアコンプレッサ14によって吐出される空気流量との関係を記載した制御マップを用いて、ステップS207で選択した目標空気流量Qairを実現するために必要なエアコンプレッサ14の回転数である目標回転数Rを算出する。
一方、エアフロメータ20が正常であれば、コントロールユニット4は、ステップS210において、下記式(7)を用いて、ステップS207で選択した目標空気流量Qairにフィードバック制御補正値を加算し所定の係数K5を乗算して、フィードバック補正後目標空気流量Qair’を求めてステップS209に進み、このフィードバック補正後目標空気流量Qair’を実現するために必要なエアコンプレッサ14の回転数である目標回転数Rを算出する。なお、下記式(7)において、Qair4はエアフロメータ20によって計測された実際の空気流量である。また、係数K5は、目標空気流量Qairと空気流量の実測値であるQair4との差が所定時間内に収束する値を事前に実験などで求めて、その値に設定すればよい。
Qair’=Qair+(Qair−Qair4)×K5 ・・・(7)
そして、コントロールユニット4は、ステップS211において、ステップS209で算出した目標回転数Rを回転数指令値としてエアコンプレッサ14に対して出力する。
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態の燃料電池システムによれば、エアフロメータ20の故障判定によりエアフロメータ20が正常と判定されたときには、エアフロメータ20の計測値のフィードバックにより制御用パラメータとしての目標空気流量を補正してフィードバック補正後目標空気流量を求め、このフィードバック補正後目標空気流量に基づいて算出した目標回転数を回転数指令値としてエアコンプレッサ14に対して出力し、エアフロメータ20に異常が生じていると判定されたときには、補正係数を用いて制御用パラメータとしての目標空気流量を補正して係数補正後目標空気流量を求め、この係数補正後目標空気流量を回転数指令値としてエアコンプレッサ14に対して出力するようにしているので、エアフロメータ20に故障が発生した場合であっても、エアコンプレッサ14から供給する空気流量に不足を生じさせることがないように適切に空気流量を制御することができる。
以上、本発明に係る燃料電池システムの具体的な実施形態について詳細に説明したが、以上の各実施形態は本発明の一適用例を例示したものであり、本発明の技術的範囲は、以上の各実施形態の説明で開示した内容に限定されるものではなく、これらの開示から容易に導き得る様々な代替技術も含まれることは勿論である。
本発明を適用した燃料電池システムの全体構成を示すシステム構成図である。 本発明を適用した燃料電池システムにおいて、コントロールユニットにより実現される制御機能を示す機能ブロック図である。 第1の実施形態の燃料電池システムにおいて、コントロールユニットによるエアコンプレッサの動作制御の概要を説明するための説明図である。 エアコンプレッサの回転数とエアコンプレッサによって吐出される空気流量との関係を記載した制御マップを示す図である。 第1の実施形態の燃料電池システムにおいて、コントロールユニットがエアコンプレッサに対して回転数指令値を出力するまでの一連の処理の流れを示すフローチャートである。 燃料電池スタックの出力と目標運転圧力との関係を記載した制御マップを示す図である。 燃料電池スタックの出力とその出力を確保するために必要な空気流量との関係を記載した制御マップを示す図である。 第2の実施形態の燃料電池システムにおいて、コントロールユニットによるエアコンプレッサの動作制御の概要を説明するための説明図である。 第2の実施形態の燃料電池システムにおいて、コントロールユニットがエアコンプレッサに対して回転数指令値を出力するまでの一連の処理の流れを示すフローチャートである。
符号の説明
1 燃料電池スタック
2 水素希釈装置
4 コントロールユニット
11 水素パージ弁
14 エアコンプレッサ
20 エアフロメータ
101 制御用パラメータ算出手段
102 第1の制御用パラメータ補正手段
103 第2の制御用パラメータ補正手段
104 故障判定手段
105 動作制御手段

Claims (5)

  1. 燃料ガス及び酸化剤ガスの供給により発電する燃料電池と、前記燃料電池に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給装置と、前記酸化剤ガス供給装置から前記燃料電池へと供給される酸化剤ガスの流量を計測する酸化剤ガス流量計測装置と、前記酸化剤ガス供給装置の動作を制御する制御装置とを備える燃料電池システムにおいて、
    前記制御装置が、
    前記酸化剤ガス供給装置を制御するための基本となる制御用パラメータである基本制御用パラメータを算出する制御用パラメータ算出手段と、
    前記酸化剤ガス流量計測装置の計測値のフィードバックにより前記基本制御用パラメータを補正してフィードバック補正後制御用パラメータを算出する第1の制御用パラメータ補正手段と、
    補正係数を用いて前記基本制御用パラメータを増量補正して係数補正後制御用パラメータを算出する第2の制御用パラメータ補正手段と、
    前記酸化剤ガス流量計測装置の正常/異常を判定する故障判定手段と、
    前記酸化剤ガス流量計測装置が正常のときは前記第1の制御用パラメータ補正手段によって算出されたフィードバック補正後制御用パラメータを用いて前記酸化剤ガス供給装置の動作を制御するとともに、前記酸化剤ガス流量計測装置が異常のときは前記第2の制御用パラメータ補正手段によって算出された係数補正後制御用パラメータを用いて前記酸化剤ガス供給装置の動作を制御する動作制御手段とを有することを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記制御用パラメータが、前記酸化剤ガス供給装置を動作させるための目標操作量であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記制御用パラメータが、前記酸化剤ガス供給装置に対して要求する目標酸化剤ガス流量であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  4. 前記燃料電池から排出される排燃料ガスを前記酸化剤ガス供給装置からの酸化剤ガスを用いて処理する排燃料ガス処理装置をさらに備え、
    前記制御装置は、前記燃料電池での発電に必要な酸化剤ガス流量と、前記排燃料ガス処理装置での処理に必要な酸化剤ガス流量とに基づいて、前記制御用パラメータを設定することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  5. 前記第2の制御用パラメータ補正手段での補正に用いる補正係数は、前記酸化剤ガス供給装置の性能が下限性能である場合の流量特性に基づいて定めた値であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
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