JP2007091928A - インク組成物、並びに、これを用いた画像形成方法および記録物 - Google Patents

インク組成物、並びに、これを用いた画像形成方法および記録物 Download PDF

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Abstract

【課題】記録後に活性エネルギー線を照射して重合硬化が可能なインク組成物において、脆性および密着性に優れたインク組成物、並びに該インク組成物を用い被記録材に画像を形成する画像形成方法および記録物を提供する。
【解決手段】脂環式エポキシ基含有化合物及び/又はオキセタン基含有化合物と、光カチオン重合開始剤とを含有するインク組成物であって、一般式R(O−L)nOH(式中、Rは炭素数2以上のアルキル基、アリール基又はアシル基を表し、Lは−CH2CH2−または−CH2CH(CH3)−を表し、nは2以上の整数を表し、−(O−CH2CH2)−と−(O−CH2CH(CH3))−は混在していてもよい。)で表される化合物を含有するインク組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、インク組成物、並びに、これを用いた画像形成方法および記録物に関し、詳しくは、記録後の重合硬化が可能なインク組成物、並びに、これを用いた画像形成方法および記録物に関する。
褪色耐性等を有するインクとして、紫外線(UV)照射により硬化し、それ自体UV遮光性を有するUVインクが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなインクを用いた場合の硬化は、モノマー成分のラジカル重合を利用した系が汎用されている(例えば、特許文献2〜6参照)。
前記インク組成物において記録後の硬化は、活性エネルギー線を照射させ重合させることにより行うが、活性エネルギー線のエネルギーが小さくても硬化させられることが好ましい。すなわち、活性エネルギー線に対するインク組成物の感度が高いことが好ましい。高感度とすることにより、活性エネルギー線の光源としてUVランプではなく、比較的低エネルギーの発光ダイオードを効率的に使用することができる。
ところで、硬化性を重視して多官能モノマーをインク組成物に含有させると、脆性や密着性が悪くなるという問題があった。
特開2003−221528号公報 特開2003−246818号公報 特開2003−292855号公報 特開平9−183927号公報 特開2004−91556号公報 特開2004−43634号公報
本発明は、前記課題を解決すべく、記録後に活性エネルギー線を照射して重合硬化が可能なインク組成物において、脆性および密着性に優れたインク組成物、並びに該インク組成物を用い被記録材に画像を形成する画像形成方法および記録物を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、インク組成物中に、硬化性の早い脂環式エポキシ基含有化合物及び/又はオキセタン基含有化合物と光カチオン重合開始剤に加えて、一般式R(O−L)nOH(式中、Rは炭素数2以上のアルキル基、アリール基又はアシル基を表し、Lは−CH2CH2−または−CH2CH(CH3)−を表し、nは2以上の整数を表し、−(O−CH2CH2)−と−(O−CH2CH(CH3))−は混在していてもよい。)で表される化合物を含有させることで、硬化性を悪化させることなくインク組成物の脆性および密着性を改善できることを見い出した。本発明はこのような知見に基づきなされるに至ったものである。
本発明の課題は、下記の手段によって解決された。
(1)脂環式エポキシ基含有化合物及び/又はオキセタン基含有化合物と、光カチオン重合開始剤とを含有するインク組成物であって、一般式R(O−L)nOH(式中、Rは炭素数2以上のアルキル基、アリール基又はアシル基を表し、Lは−CH2CH2−または−CH2CH(CH3)−を表し、nは2以上の整数を表し、−(O−CH2CH2)−と−(O−CH2CH(CH3))−は混在していてもよい。)で表される化合物を含有することを特徴とするインク組成物。
(2)前記一般式において、Rがアルキル基であることを特徴とする(1)項に記載のインク組成物。
(3)前記一般式において、Rで表される基の炭素数が6以上20以下であることを特徴とする(1)又は(2)項に記載のインク組成物。
(4)着色剤として、顔料又は油溶性染料を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のインク組成物。
(5)インクジェット記録に用いられることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のインク組成物。
(6)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のインク組成物を吐出するインクジェット記録によって画像を記録する画像記録工程を含むことを特徴とする画像形成方法。
(7)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のインク組成物を用いて被記録材に画像を記録する画像記録工程と、
前記画像記録工程において前記被記録材に記録された画像に活性エネルギー線を照射して硬化させる画像硬化工程と、
を含むことを特徴とする画像形成方法。
(8)前記活性エネルギー線の照射光源として発光ダイオードを用いることを特徴とする(7)項に記載の画像形成方法。
(9)前記活性エネルギー線の中心波長が365±20nmであることを特徴とする(7)又は(8)項に記載の画像形成方法。
(10)前記画像硬化工程により硬化した画像の厚みが2〜30μmであることを特徴とする(7)〜(9)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
(11)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のインク組成物を用いて形成されたことを特徴とする記録物。
本発明のインク組成物は、記録後に衝撃を与えても塗膜が割れて剥がれることがなく、脆性および密着性に優れる。
以下、本発明のインク組成物、並びにこれを用いた画像形成方法および記録物について、詳細に説明する。
<インク組成物>
本発明のインク組成物は、R(O−L)nOH(式中、Rは炭素数2以上のアルキル基、アリール基又はアシル基を表し、Lは−CH2CH2−または−CH2CH(CH3)−を表し、nは2以上の整数を表し、−(O−CH2CH2)−と−(O−CH2CH(CH3))−は混在していてもよい。)で表される化合物と、脂環式エポキシ基含有化合物及び/又はオキセタン基含有化合物と、光カチオン重合開始剤とを含有することを特徴とする。
本発明のインク組成物は、被記録材への画像記録後、活性エネルギー線の照射によって記録画像の硬化が可能なように構成されている。
また、本発明のインク組成物は、一般式R(O−L)nOH(式中、Rは炭素数2以上のアルキル基、アリール基又はアシル基を表し、Lは−CH2CH2−または−CH2CH(CH3)−を表し、nは2以上の整数を表し、−(O−CH2CH2)−と−(O−CH2CH(CH3))−は混在していてもよい。)で表される化合物、脂環式エポキシ基含有化合物及び/又はオキセタン基含有化合物、および光カチオン重合開始剤を含有すればよく、着色剤を含まない無色インク組成物であってもよいが、着色剤を含むインク組成物構成が好ましい。また、本発明のインク組成物は、必要に応じて各種添加剤等の他の成分を用いて構成することができる。
(前記一般式で表される化合物)
本発明のインク組成物は、前記一般式R(O−L)nOHで表される化合物を含有する。該化合物をインク組成物中に含有させることで、脂環式エポキシ基含有化合物及び/又はオキセタン基含有化合物の良好な硬化性を悪化させることなくインク組成物の脆性および密着性を改善できる。
前記式中、Rが表すアルキル基は、直鎖状・分岐状・環状であってもよく、無置換でも、他の置換基で置換されていてもよく、炭素数2以上30以下が好ましく、炭素数2以上20以下がより好ましく、炭素数6以上20以下が更に好ましく、具体的には、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、n−オクチル、n−ノニル、ラウリル、ベンジル、フェニルエチル、トリチルなどが挙げられる。また、Rが表わすアリール基は、炭素数2以上30以下が好ましく、炭素数2以上20以下がより好ましく、特に好ましくは炭素数6以上20以下である。具体的には、フェニル、ジスチリルフェニルトリベンジルフェニルなどが挙げられる。また、Rが表すアシル基は、直鎖状・分岐状・環状であってもよく、無置換でも、他の置換基で置換されていてもよく、炭素数2以上30以下が好ましく、炭素数2以上20以下がより好ましく、特に好ましくは炭素数6以上20以下である。具体的にはアセチル、ベンゾイルなどが挙げられる。
nは2よりも大きい整数を表し、好ましくは2〜200、より好ましくは3〜30である。
前記一般式で表される化合物の中で好ましいものは、Rが炭素数2以上30以下のアルキル基もしくはアシル基で、より好ましくはアルキル基である。前記一般式で表される化合物の具体例として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等が挙げられるが本発明はこれらに限定されない。
前記一般式で表される化合物はノニオン系界面活性剤として知られている。市販の化合物を使用することもでき、例えば花王(株)製エマルゲン102KG、103、104P、105、106、108、109P、120、123P、147、150、130K、210P、220、306P、320P、350、404、408、409P、409PV、420、430、705、707、709、1108、1118S−70、1135S−70、1150S−60、4085、2020G−HA、2025G、LS−106、LS−110、LS−114、MS−110、A−60、A−90、A−500、B−66、エマノーン1112、3199V、3299V、3299RV、4110(いずれも商品名)等を使用することもできる。
本発明のインク組成物における前記一般式で表される化合物の含有量は、感度と脆性との兼ね合いおよび未反応による泣き出しの観点から、インク組成物の全質量に対し、2〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。
(オキセタン基含有化合物およびエポキシ基含有化合物)
本発明に用いられるオキセタン基含有化合物およびエポキシ基含有化合物は、光重合開始剤から発生される活性種により重合反応を生起し、硬化するカチオン重合性化合物である。本発明では、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のオキセタン基含有化合物およびエポキシ基含有化合物を使用することができ、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているものを用いることができる。
本発明のインク組成物は、少なくとも一種のオキセタン基含有化合物および/または少なくとも一種のエポキシ基含有化合物を含有することが好ましく、少なくとも1種のオキセタン基含有化合物と少なくとも1種のエポキシ基含有化合物とを含むことが更に好ましい。これらの化合物は、後述する光重合開始剤の作用によって活性エネルギー線の照射時に重合してそれ自体硬化し、しかも硬化反応を短時間で行い得るため、光褪色しやすい染料の硬化(重合反応)時および硬化後の画像での褪色防止に特に効果的であり、色合い(色相)や色濃度、鮮明性に優れ、顔料並みの耐光性を有する画像を形成することができる。
オキセタン基含有化合物(p)とエポキシ基含有化合物(q)とを併用する場合、硬化後の画像の耐光性をより効果的に向上させ得る点で、含有比(質量比)p/qを50/50〜95/5の範囲とすることが好ましく、67/33〜90/10の範囲とすることが特に好ましい。
〈オキセタン基含有化合物〉
前記オキセタン基含有化合物は、分子内に少なくとも1つのオキセタン基(オキセタニル基)を含む化合物の中から適宜選択することができる。
例えば、分子中に1つのオキセタン基を有する化合物としては下記一般式(1−a)で表される化合物が好適であり、分子中に2つ以上のオキセタン基を有する化合物としては下記一般式(1−b)で表される化合物が好適である。
以下、前記一般式(1−a)または(1−b)で表されるオキセタン基含有化合物の好ましい具体例〔例示化合物1〜37並びに(a)〜(f)〕を列挙する。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。
Figure 2007091928
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前記のオキセタン基含有化合物の合成は、(1)H.A.J.Curless,“Synthetic Organic Photochemistry”,Plenum,NewYork(1984)、(2)M.Braun,Nachr.Chem.Tech.Lab.,33,213(1985)、(3)S.H.Schroeter,J.Org.Chem.,34,5,1181(1969)、(4)D.R.Arnold,Adv.Photochem.,6,301(1968)、(5)“Heterocyclic Compounds with Three- and Four-membered Rings”,Part Two,Chapter IX,Interscience Publishers,John Wiley&Sons,NewYork(1964)、(6)Bull.Chem.Soc.Jpn.,61,1653(1988)、(7)Pure Appl.Chem.,A29(10),915(1992)、(8)Pure Appl.Chem.,A30(2&3),189(1993)、(9)特開平6-16804号公報、(10)ドイツ特許第1,021,858号、等を参照することができる。
なお、前記一般式(1−b)で表されるオキセタン基含有化合物もまた、一種単独で用いる以外に、二種以上を併用することもできる。
前記のオキセタン基含有化合物のうち、例示化合物(a)、例示化合物(b)、例示化合物(d)、例示化合物(f)が好ましい。
〈エポキシ基含有化合物〉
前記エポキシ基含有化合物は、分子内に、下記エポキシ環を有する少なくとも1つのエポキシ基(オキシラニル基)を含む化合物、具体的にはエポキシ樹脂として通常用いられているものの中から適宜選択することができ、モノマー、オリゴマーおよびポリマーのいずれであってもよい。
前記エポキシ基含有化合物の具体例としては、従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。ここで、エポキシ樹脂とは、モノマー、オリゴマー、またはポリマーをいう。
前記芳香族エポキシ樹脂としては、好適なものとしては、少なくとも1つの芳香族核を有する多価フェノールまたはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ−またはポリ−グリシジルエーテルが挙げられる。例えば、ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジ−またはポリ−グリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジ−またはポリ−グリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂などである。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、またはプロピレンオキサイド等が挙げられる。
前記脂環族エポキシ樹脂としては、好適なものとしては、少なくとも1つのシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等である。
前記脂肪族エポキシ樹脂としては、好適なものとしては、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジ−またはポリ−グリシジルエーテル等が挙げられる。例えば、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、または1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジ−またはトリ−グリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等である。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、またはプロピレンオキサイド等が挙げられる。
前記エポキシ基含有化合物としては、上述の化合物以外に、分子内に1つのエポキシ環を有するモノマーである脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾールまたはこれらのアルキレンオキサイド付加体のモノグリシジルエーテル等も挙げられる。
なお、前記エポキシ基含有化合物は、一種単独で用いる以外に、二種以上を併用することもできる。
以下、前記エポキシ基含有化合物の好ましい具体例(例示化合物(i)〜(viii))を列挙する。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。
Figure 2007091928
前記のエポキシ基含有化合物のうち、前記例示化合物(i)および例示化合物(v)が好ましい。
本発明においては、前記のオキセタン基含有化合物とエポキシ基含有化合物との両方を組み合わせて併用した場合が好ましいが、その組合せの態様としては、例えば例示化合物(a)と例示化合物(i)とを組合せた態様や、例示化合物(b)と例示化合物(v)とを組合せた態様、が耐光性をより効果的に向上させ得る点で特に好ましい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、光カチオン重合性化合物としてビニルエーテル化合物を含有してもよい。前記ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ−若しくはトリ−ビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
本発明のインク組成物におけるカチオン重合性化合物の含有量は、重合反応性に基づく感度とインク組成物の粘度との観点から、インク組成物の全質量に対し、98〜50質量%が好ましく、95〜60質量%がより好ましく、更に好ましくは90〜70質量%の範囲である。
(光カチオン重合開始剤)
本発明のインク組成物は、前記カチオン重合性化合物(オキセタン基含有化合物またはエポキシ基含有化合物)を重合硬化させる光カチオン重合開始剤を含有する。光重合開始剤は、活性エネルギー線の波長領域に吸収を有し、活性エネルギー線に曝されたときに既述の重合性化合物に作用して重合硬化を促進し得るものであり、活性エネルギー線の作用または増感色素の電子励起状態との相互作用を経て化学変化を生じ、酸を生成する光酸発生剤を包含するものである。
本発明において、「活性エネルギー線」は、光重合開始剤からラジカルまたはカチオンを生じさせる活性線であり、紫外線(UV光)、可視光線、γ線、α線、X線その他電子線が含まれる。具体的な光源としては、例えば、LD、LED(発光ダイオード)、蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ケミカルランプなどを適用することができる。好ましい光源には、LED、高圧水銀灯、メタルハライドランプが挙げられる。
本発明では、光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)として任意のものを使用することができ、例えばBruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993).や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A :Chemistry,73,81(1993).や、J.P.Faussier,“Photoinitiated Polymerization-Theory and Applications” :Rapra Review vol.9,Report,Rapra Technology(1998).や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996).に多く記載されている。また、有機エレクトロニクス材料研究会編,「イメージング用有機材料」,ぶんしん出版(1993年),187〜192頁に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が多く記載されている。さらには、F.D.Saeva,Topics in Current Chemistry,156,59(1990).,G.G.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,1(1993).,H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(1990).,I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(1980).等に記載されているような、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
また、市販の化合物を使用することもでき、例えばチバ・スペシャルティー・ケミカルズ製Irgacure250、1870(いずれも商品名)等を使用することもできる。
好ましい光重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。
上記(a)〜(j)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
Figure 2007091928
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さらに、下記の化合物を用いることもできる:ビス(4−ヘキシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート;(4−ヘキシルフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート;ビス(4−オクチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート;(4−オクチルフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート;ビス(4−デシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート;(4−イソブチルフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート;ビス(4−イソブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート;(4−ドデシルフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート;(2−ヒドロキシドデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート;(2−ヒドロキシテトラデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ビス(4−デシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート。
本発明は、また、(4−イソブチルフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファートの、特にプロピレンカーボナートに溶解した形態で用いることが好ましい。
特定の場合、本発明の組成物に、このようなヨードニウム塩型光カチオン重合開始剤の2個以上の混合物を使用することが有利であり得る。
光重合開始剤のインク組成物中における含有量としては、既述のカチオン重合性化合物(オキセタン基含有化合物またはエポキシ基含有化合物)に対して、2〜12質量%の範囲が好ましく、3〜6質量%の範囲がより好ましい。該含有量を特に前記範囲とすることで、十分な増感効果を得ることができる。
−アントラセン化合物−
本発明のインク組成物には、さらに、重合硬化を促進させる増感剤として、アントラセン化合物を含有させてもよい。該アントラセン化合物としては、置換基を有していてもよいアントラセンが挙げられる。
前記アントラセンが置換基を有する場合、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、などが挙げられ、中でも特に、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。また、アントラセンの置換基の個数は、1〜4個であることが好ましく、1〜2個であることがより好ましい。特に、1置換の場合の置換基の位置としては9位であることが好ましく、2置換の場合の置換基の位置としては9,10位であることが好ましい。この中でも特に、2置換の場合の9,10位である、9,10−置換アントラセン化合物であることが好ましい。
以下にアントラセン化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されることはない。
Figure 2007091928
Figure 2007091928
以上のアントラセン化合物の含有量は、光カチオン重合開始剤の35〜100質量%であることが好ましく、40〜80質量%であることがより好ましく、44〜70質量%であることがさらに好ましい。
[界面活性剤]
本発明のインク組成物には、公知の界面活性剤を含有させることが好ましい。公知の界面活性剤としては、例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。具体的には、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記公知の界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)および固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
(着色剤)
本発明のインク組成物は、着色剤を添加することで、可視画像を形成することができる。本発明のインク組成物に用いることのできる着色剤は、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の色材、(顔料、染料)を適宜選択して用いることができる。例えば、耐候性に優れた画像を形成する場合には、顔料が好ましい。また、染料としては、水溶性染料および油溶性染料のいずれも使用できるが、油溶性染料が好ましい。
<顔料>
先ず、本発明における着色剤として好ましく使用される顔料について述べる。
前記顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料および無機顔料、または顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、或いは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
本発明において使用できる有機顔料および無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとしては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
赤またはマゼンタ色を呈するものとしては、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
青またはシアン色を呈する顔料としては、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
緑色を呈する顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
黒色を呈する顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
顔料の分散には、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、ルーブリゾール社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
インク組成物において、顔料などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、本発明のインク組成物は、放射線硬化型のインクであり、インクを被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、重合性化合物を用い、中でも、最も粘度が低いカチオン重合性モノマーを選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
顔料粒子の体積平均粒径は、0.02〜0.60μmであることが好ましく、最大粒径は3μm以下が好ましく、さらに好ましくは1μm以下となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
<染料>
次に、本発明における着色剤として好ましく使用される染料について述べる。
染料としては、従来公知の化合物(染料)から適宜選択して使用することができる。具体的には、特開2002−114930号公報の段落[0023]〜[0089]に記載されている染料などが挙げられる。
イエロー染料としては、例えば、カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類、開鎖型活性メチレン化合物類を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料、例えば、カップリング成分として開鎖型活性メチレン化合物を有するアゾメチン染料、例えば、ベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料、例えば、ナフトキノン染料、アントラキノン染料等のキノン系染料などがあり、これ以外の染料としては、キノフタロン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げられる。
マゼンタ染料としては、例えば、カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類、ピラゾロトリアゾール類、閉環型活性メチレン化合物類(例えば、ジメドン、バルビツール酸、4−ヒドロキシクマリン誘導体)、電子過剰ヘテロ環(例えば、ピロール、イミダゾール、チオヘン、チアゾール誘導体)、を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料、例えば、カップリング成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類を有するアゾメチン染料、例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、オキソノール染料のようなメチン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料、例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのキノン系染料、例えばジオキサジン染料などのような縮合多環系染料等を挙げることができる。
シアン染料としては、例えば、インドアニリン染料、インドフェノール染料のようなアゾメチン染料、シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料のようなポリメチン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料、アントラキノン染料、例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピロロピリミジン−オン、ピロロトリアジン−オン誘導体を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料、インジゴ・チオインジゴ染料を挙げることができる。
上述の各染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてイエロー、マゼンタ、シアンの各色を呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンは、アルカリ金属やアンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機カチオンであってもよく、更にそれらの部分構造を有するカチオンポリマーであってもよい。
本発明に用いることのできる染料は、油溶性のものが好ましい。「油溶性」とは、具体的に、25℃での水への溶解度(水100gに溶解する色素の質量)が1g以下であるものを意味し、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下である。従って、所謂、水に不溶性の油溶性染料が好ましく用いられる。
本発明に用いられる染料は、インク組成物に必要量溶解させるために前記記載の染料母核に対して油溶化基を導入することも好ましい。
前記油溶化基としては、長鎖・分岐アルキル基、長鎖・分岐アルコキシ基、長鎖・分岐アルキルチオ基、長鎖・分岐アルキルスルホニル基、長鎖・分岐アシルオキシ基、長鎖・分岐アルコキシカルボニル基、長鎖・分岐アシル基、長鎖・分岐アシルアミノ基、長鎖・分岐アルキルスルホニルアミノ基、長鎖・分岐アルキルアミノスルホニル基およびこれら長鎖・分岐置換基を含むアリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリールアミノカルボニル基、アリールアミノスルホニル基、アリールスルホニルアミノ基等が挙げられる。
また、カルボン酸、スルホン酸を有する水溶性染料に対して、長鎖・分岐アルコール、アミン、フェノール、アニリン誘導体を用いて油溶化基であるアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基に変換することにより染料を得てもよい。
前記油溶性染料としては、融点が200℃以下のものが好ましく、融点が150℃以下であるものがより好ましく、融点が100℃以下であるものが更に好ましい。融点が低い油溶性染料を用いることにより、インク組成物中での色素の結晶析出が抑制され、インク組成物の保存安定性が良くなる。
また、退色、特にオゾンなどの酸化性物質に対する耐性や硬化特性を向上させるために、酸化電位が貴である(高い)ことが好ましい。このため、本発明で用いる油溶性染料として、酸化電位が、飽和カロメル電極に対する値として測定した場合に1.0V以上(1.0Vよりも貴)であるものが好ましく用いられる。酸化電位は高いほうが好ましく、1.1V以上のものがより好ましく、1.15V以上のものが特に好ましい。
イエロー色の染料としては、特開2004−250483号公報の記載の一般式(Y−I)で表される構造の化合物が好ましい。
特に好ましい染料は、特開2004−250483号公報の段落番号[0034]に記載されている一般式(Y−II)〜(Y−IV)で表される染料であり、具体例として特開2004−250483号公報の段落番号[0060]〜[0071]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(Y−I)の油溶性染料はイエローのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
マゼンタ色の染料としては、特開2002−114930号公報に記載の一般式(3)、(4)で表される構造の化合物が好ましく、具体例としては、特開2002−114930号公報の段落[0054]〜[0073]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0084]〜[0122]に記載されている一般式(M−1)〜(M−2)で表されるアゾ染料であり、具体例として特開2002−121414号公報の段落番号[0123]〜[0132]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(3)、(4)、(M−1)〜(M−2)の油溶性染料はマゼンタのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
シアン色の染料としては、特開2001−181547号公報に記載の式(I)〜(IV)で表される染料、特開2002−121414号公報の段落番号[0063]〜[0078]に記載されている一般式(IV−1)〜(IV−4)で表される染料が好ましいものとして挙げられ、具体例として特開2001−181547号公報の段落番号[0052]〜[0066]、特開2002−121414号公報の段落番号[0079]〜[0081]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0133]〜[0196]に記載されている一般式(C−I)、(C−II)で表されるフタロシアニン染料であり、更に一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料が好ましい。この具体例としては、特開2002−121414号公報の段落番号[0198]〜[0201]に記載の化合物が挙げられる。尚、前記式(I)〜(IV)、(IV−1)〜(IV−4)、(C−I)、(C−II)の油溶性染料はシアンのみでなく、ブラックインクやグリーンインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
−酸化電位−
本発明における染料の酸化電位の値(Eox)は、当業者が容易に測定することができる。この方法に関しては、例えばP.Delahay著“New Instrumental Methods in Electrochemistry”(1954年,Interscience Publishers社刊)や、A.J.Bard他著“Electrochemical Methods”(1980年、John Wiley & Sons社刊)、藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)に記載されている。
具体的に酸化電位は、過塩素酸ナトリウムや過塩素酸テトラプロピルアンモニウムといった支持電解質を含むジメチルホルムアミドやアセトニトリルのような溶媒中に、被験試料を1×10-2〜1×10-6モル/リットル溶解して、ボルタンメトリー装置により、作用極として炭素(GC)を、対極として回転白金電極を用いて酸化側(貴側)に掃引したときの酸化波を直線で近似して、この直線と残余電流・電位直線との交点と、直線と飽和電流直線との交点(またはピーク電位値を通る縦軸に平行な直線との交点)とで作られる線分の中間電位値をSCE(飽和カロメル電極)に対する値として測定する。この値は、液間電位差や試料溶液の液抵抗などの影響で、数10ミルボルト程度偏位することがあるが、標準試料(例えばハイドロキノン)を入れて電位の再現性を保証することができる。また、用いる支持電解質や溶媒は、被験試料の酸化電位や溶解性により適当なものを選ぶことができる。用いることができる支持電解質や溶媒については藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)101〜118ページに記載がある。
なお、前記の測定溶媒とフタロシアニン化合物試料の濃度範囲では、非会合状態の酸化電位が測定される。
Eoxの値は試料から電極への電子の移りやすさを表し、その値が大きい(酸化電位が貴である)ほど試料から電極への電子の移りにくい、言い換えれば、酸化されにくいことを表す。
前記着色剤はインク組成物中、インク組成物の全質量に対して0.05〜20質量%添加されることが好ましく、0.2〜10質量%がより好ましい。着色剤として油溶性染料を用いた場合には、インク組成物の全質量(溶媒を含む)に対して、0.2〜6質量%が特に好ましい。
(添加物)
本発明のインク組成物には、各必須成分に加え、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。これらの任意成分について説明する。
−増感色素−
本発明おいては、光カチオン重合開始剤の感度を向上させる目的で、アントラセン化合物に加えてさらに、増感色素を添加することができる。以下、増感色素について説明する。
本発明に係る前記増感色素としては、以下に列挙する化合物類に属しており、且つ350nm〜450nmの波長領域に吸収波長を有するものが挙げられる。
例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル、等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン、等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン、等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー、等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン、等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン、等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム、等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、等)、等が挙げられる。
本発明における増感色素としては、下記一般式(vi)〜(x)で表される化合物が好適に挙げられる。
Figure 2007091928
一般式(vi)中、A1は硫黄原子またはNR50を表し、R50はアルキル基またはアリール基を表す。L1は隣接するA1および隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表す。R51およびR52は、それぞれ独立に、水素原子または一価の非金属原子団を表し、R51およびR52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子または硫黄原子を表す。
一般式(vii)中、Ar1およびAr2は、それぞれ独立にアリール基を表し、L2による結合を介して連結している。L2は−O−または−S−を表す。Wは一般式(vi)に示したものと同義である。
一般式(viii)中、A2は硫黄原子またはNR59を表し、R59はアルキル基またはアリール基を表す。L3は隣接するA2および炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表す。R53、R54、R55、R56、R57およびR58は、それぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表す。
一般式(ix)中、A3およびA4は、それぞれ独立に、−S−、−NR62−、または−NR63−を表し、R62およびR63は、それぞれ独立に、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表す。L4およびL5は、それぞれ独立に、隣接するA3、A4および隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表す。R60およびR61は、それぞれ独立に、水素原子または一価の非金属原子団を表す。R60とR61とは互いに結合して脂肪族性または芳香族性の環を形成してもよい。
一般式(x)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表す。A5は酸素原子、硫黄原子または−NR67−を表す。R64、R65およびR67はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表す。R67とR64、およびR65とR67とは、それぞれ互いに結合して脂肪族性または芳香族性の環を形成してもよい。
一般式(vi)〜(x)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2007091928
Figure 2007091928
Figure 2007091928
本発明のインク組成物における前記増感色素の含有量は、インクの着色性の観点から、インク組成物の全質量に対し、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、更に好ましくは0.5〜10質量%の範囲である。
前記増感色素は、一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記増感色素と前記光重合開始剤とのインク組成物中における含有比としては前記光重合開始剤の分解率向上と照射した光の透過性の観点から、質量比で、a/c=100〜0.5が好ましく、a/c=50〜1がより好ましく、a/c=10〜1.5が更に好ましい。
−共増感剤−
本発明のインク組成物には更に、共増感剤として、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を加えてもよい。
共増感剤の例としては、アミン類、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
共増感剤の別の例としては、チオールおよびスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
また、共増感剤の別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特願平6−191605号記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の総量(全質量)に対して、0.01〜10質量%程度である。
−重合禁止剤−
本発明のインク組成物は、重合禁止剤の少なくとも一種を含有することができる。
前記重合禁止剤としては、フェノール系水酸基含有化合物、およびキノン類、N−オキシド化合物類、ピペリジン−1−オキシルフリーラジカル化合物類、ピロリジン−1−オキシルフリーラジカル化合物類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン類、およびカチオン染料類からなる群より選択される化合物が好適に挙げられる。
具体的には、ハロイドキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、レゾルシノール、カテコール、t−ブチルカテコール、ハイドロキノンモノアルキルエーテル(例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル等)、ベンゾキノン、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよびその誘導体、ジ−t−ブチルニトロキシド、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシドおよびその誘導体等、ピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−マレイミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−ホスホノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、3−カルボキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン 1−オキシルフリーラジカル、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、クリスタルバイオレット、メチルバイオレット、エチルバイオレット、およびビクトリアピュアブルーBOH等が挙げられる。
前記のうち、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル等のハイドロキノンモノアルキルエーテル、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のヒンダートフェノールが好ましい。
重合禁止剤のインク組成物中における含有量としては、インク組成物の総量(全質量)に対して、50〜30000ppmが好ましく、100〜10000ppmがより好ましく、100〜3000ppmがより好ましい。
−紫外線吸収剤−
本発明のインク組成物には、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を添加することができる。
前記紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の総量(全質量)に対して、0.01〜10質量%程度である。
−酸化防止剤−
本発明のインク組成物には、安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の総量(全質量)に対して、0.01〜10質量%程度である。
−褪色防止剤−
本発明のインク組成物には、各種の有機系および金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式および化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の総量(全質量)に対して、0.01〜10質量%程度である。
−導電性塩類−
本発明のインク組成物には、射出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
−溶剤−
本発明のインク組成物には、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
−高分子化合物−
本発明のインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、または「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
この他にも、本発明のインク組成物には、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
前記タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などが挙げられる。
〔インク組成物の好ましい物性〕
本発明のインク組成物は、インクジェット記録に適用する場合、吐出性を考慮し、吐出時の温度におけるインク粘度が、5〜30mPa・sであることが好ましく、7〜20mPa・sが更に好ましい。このため、前記範囲になるように適宜組成比を調整し決定することが好ましい。
また、室温(25〜30℃)でのインク組成物の粘度は、7〜120mPa・sが好ましく、10〜80mPa・sが更に好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を防ぎ、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となり、更にインク液滴着弾時のドット滲みを抑えることができ、その結果として画質を改善することができる。
本発明のインク組成物の表面張力は、20〜40mN/mであることが好ましく、20〜30mN/mであることが更に好ましい。また、本発明のインク組成物を、ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲みおよび浸透の観点から、前記表面張力は20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点では30mN/m以下であることが好ましい。
本発明のインク組成物は、インクジェット記録用のインクとして好適に用いることができる。インクジェット記録方式には特に制限はなく、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出する電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出する音響型インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、発生した圧力を利用するサーマル型インクジェット方式、等のいずれであってもよい。なお、前記インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
前記のうち、ピエゾ素子を用いたドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)のインクジェット記録用インクとして好適である。
<画像形成方法およびその記録物>
本発明のインク組成物は、該インク組成物を吐出するインクジェット記録によって被記録材に画像を記録する画像記録工程を含む画像形成方法や、本発明のインク組成物を用いて被記録材に画像を記録する画像記録工程と、前記画像記録工程において前記被記録材に記録された画像に活性エネルギー線(活性線)を照射して硬化させる画像硬化工程とを含む画像形成方法に用いることができる。
即ち、本発明の画像記録方法は、インクジェット記録によって画像を形成する画像記録工程のみを含む方法であってもよいし、これに画像硬化工程を組み合わせた方法であってもよい。更には、画像記録工程においてインクジェット記録以外の方法で画像を記録し、これに画像硬化工程を組み合わせた方法であってもよい。
本発明における画像硬化工程においては、画像硬化工程において活性エネルギー線を利用し、画像記録工程で被記録材に画像記録した後、記録された画像に活性エネルギー線を照射することによって、画像化に寄与する重合性化合物の重合硬化が進行し、良好に硬化され堅牢性の高い画像を形成することができる。
前記画像硬化工程においては、インク組成物の有する感応波長に対応する波長領域の活性エネルギー線を発する光源を用いて重合硬化を促進する露光処理を行なうことができる。光源、露光時間および光量は、本発明に係る重合性化合物の重合硬化の程度に応じて適宜選択すればよい。
画像硬化工程において硬化した画像の厚みは、2〜30μmであることが好ましい。ここで、「画像の厚み」とは、インク組成物により形成された画像を硬化した硬化物の厚みのことである。該画像の厚みが2〜30μmであることで、低濃度から高濃度の画像を表現することができる。
前記画像硬化工程においては、インク組成物の有する感応波長に対応する波長領域の活性エネルギー線を発する光源を用いて重合硬化を促進する露光処理を行なうことができる。具体的には、250〜450nm、好ましくは365±20nmの波長領域に属する活性線を発する光源、例えば、LD、LED(発光ダイオード)、蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ケミカルランプなどを用いて好適に行なうことができる。好ましい光源には、LED、高圧水銀灯、メタルハライドランプが挙げられる。
ラジカル重合により硬化させる場合、酸素により重合が阻害されるため、酸素濃度の低い状態、すなわち窒素等のガス雰囲気下で露光させることにより低エネルギーで硬化させることができる。
このインクにより得られた記録物は、画像部が紫外線などの放射線照射により硬化しており、画像部の強度に優れるため、例えば、平版印刷版のインク受容層(画像部)としても用いることができる。
前記記録工程においては、インクジェットプリンタによるインクジェット記録方法を適用するのが好ましい。具体的には、前記画像記録工程は、前記インク組成物を吐出するインクジェット記録によって前記画像を記録することが好ましい。
〔インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置〕
次に、本発明の画像記録方法に好適に採用され得るインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置について、以下説明する。
・システム
インクを吐出するインクジェット記録システムとしては、特開2002−11860号公報に示すような形態が一例としてあげられるが、これに限定されるものではなく、他の形態であってもよい。
・インク保持手段
インクを保持する手段としては、公知のインクカートリッジに充填することが好ましく、特開平5−16377号公報に開示されるように変形可能な容器に収納し、タンクとなすことも可能である。また特開平5−16382に開示されるように、サブタンクを有するとインクをヘッドへの供給が更に安定する。また特開平8−174860号公報に開示されるように、インク供給室の圧力が低下した場合に、弁の移動によりインクを供給する形態のカートリッジを用いることも可能である。これらのインク保持手段でヘッド内のメニスカスを適切にたもつための負圧付与方法としては、インク保持手段の高さすなわち水頭圧による方法、またインク流路中にもうけたフィルタの毛細管力による方法、また、ポンプ等により圧力を制御する方法、また、特開昭50−74341号公報に開示されるようにインクをインク吸収体に保持し、この毛細管力により負圧を付与する方法等が適切である。
・インク供給路
インクをこれらインク保持手段からヘッドに供給する方法として、ヘッドユニットに直接保持手段を連結する方法でもよいし、チューブ等の流路により連結する方法でもよい。これらインク保持手段および流路は、インクに対して良好な濡れ性を持つような素材であること、もしくは表面処理が施されていることが好ましい。
・ヘッド
インクを打滴する方法としては、特開平5−104725号公報に開示されるように、連続的にインク滴を吐出させ、画像に応じて滴を偏向して被記録材に着弾させるか、させないかを選択制御する方法であってもよいし、所謂オンデマンド方式を呼ばれる、画像として必要な部分にのみインク滴を吐出させる方式であってもよい。オンデマンド方式は、特開平5−16349に開示されるように、圧電素子等を用いて構造体の変形によりインク圧を発生させ、吐出させる方式であってもよいし、特開平1−234255に開示されるように、熱エネルギーによる気化にともなう膨張により発生する圧力で吐出する方式であってもよい。また特開2001−277466号公報に開示されるように、電界により被記録材への吐出を制御する方式であってもよい。
インクジェット記録方法においては、本発明のインク組成物を用いて被記録材に画像記録を行なうが、その際に使用するインク吐出ノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ノズルはたとえば特開平5−31908号公報に記載されるような形態が適用可能である。なお、このとき複数色のインクを吐出させるため、ノズルは特開2002−316420号公報に記載されるように、複数列に構成されることにより、高速にカラー画像を形成することが可能となり、さらに複数のノズル列を有するヘッドユニットを複数配置することにより更に高速化が可能である。
さらにノズルを特開昭63−160849号公報に記載されるように画像の幅と同等以上の幅分配置し、所謂ラインヘッドとなし、これらのノズルからの打滴と同時に被記録材を移動させることにより、高速に画像を形成することが可能となる。
またノズルの表面は、特開平5−116327号公報に開示されるような表面処理を施すことにより、ノズル表面へのインク滴の飛沫の付着、およびインク滴の付着を防ぐことが可能となる。
このような処理を施しても、なお汚れが付着する場合があり、このため、特開平6−71904号公報に開示されるように、ブレードにより清掃を行うことが好ましい。
また、ノズルから各色のインクが均等に吐出されるとは限らず、特定のインクは長時間吐出されない場合もありうる。このようなときに、メニスカスを安定に保つために、特開平11−157102号公報に開示されるように、画像領域外で適宜インクを吐出させ、ヘッドに新しいインクを補給することにより、インク物性を適性値に維持することが好ましい。
また、このような処置を施してもなお気泡がヘッド内に侵入もしくはヘッド内で発生することがある。このような場合は、特開平11−334092号公報に記載されるように、ヘッド外より強制的にインクを吸引することにより、物性の変化したインクを廃棄するとともに、気泡もヘッド外に排出することができる。更に長時間打滴しない場合は特開平11−138830号公報に開示されるように、キャップでノズル表面を覆うことによりノズル表面を保護することができる。これらの措置を講じてもなお吐出しない場合がありうる。
ノズルの一部が吐出しない状態で画像をプリントすると、画像にムラが発生する等の問題が発生する。このようなことを避けるため、特開平2000−343686号公報に開示されるように、吐出しないことを検出して処置をとることが有効である。
ヘッドユニットを特開平6−115099号公報に記載されるように機械的に移動させ、これと同期させて被記録材を直交方向に間欠的に移動させることにより重畳打滴を行うと、被記録材の間欠的な移動の精度不良にともなうムラを見えにくくする効果があり、高画質を実現することが可能となる。このとき、ヘッドの移動速度、被記録材の移動量、ノズル数の関係を適宜設定することにより、画質と記録速度の関係を好ましい関係に設定することが可能となる。
また、逆にヘッドを固定し、被記録材を機械的に所定方向に往復移動するとともに、それと直交方向に間欠移動させることにより、同様の効果を得ることが可能である。
・温度制御
インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましく、一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。
インクジェット記録方法においては、上記インク組成物を40〜80℃に加熱して、インク組成物の粘度を30mPa・s以下、好ましくは20mPa・s以下に下げた後、射出することが好ましく、この方法を用いることにより高い射出安定性を実現することができる。一般に、放射線硬化型インク組成物では、概して水性インクより粘度が高いため、印字時の温度変動による粘度変動幅が大きい。このインク組成物の粘度変動は、そのまま液滴サイズ、液滴射出速度に対して大きな影響を与え、これにより画質劣化を引き起こすため、印字時のインク組成物温度はできるだけ一定に保つことが必要である。このためにはインク温度検出手段と、インク加熱手段、および検出されたインク温度に応じて加熱を制御する制御手段を有することが好ましい。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンタ立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
あるいは、インク温度に応じてインクを吐出させる手段への印加エネルギーを制御する手段を有することも好適である。
インク組成物温度の制御幅は設定温度±5℃とすることが好ましく、より好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
・露光
光源としては、前記したように、一般的に用いられる水銀灯、メタルハライドランプ等を用いてもよいし、発光ダイオード、半導体レーザ、蛍光灯等を用いることができる。また熱陰極管、冷陰極管、電子線、X線等、インクの重合反応が進行する光源、電磁波等を用いることが出来る。
メタルハライドランプを用いる場合、ランプは10〜1000W/cmのものを使用し、被記録材面で1mW/cm2〜100W/cm2の照度であることが好ましい。
また、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等では放電にともない、オゾンが発生するため、排気手段を有することが好ましい。排気手段は、インク吐出時に発生するインクミストの回収を兼ねるべく配置してあることが好適である。
次に活性エネルギー線の好ましい照射条件について述べる。基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間をおいて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。WO99/54415号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明においては、これらの照射方法を用いることが可能である。
硬化させるための活性エネルギー線がインク吐出ノズルに照射されると、ノズル面表面に付着したインクミスト等が固化し、インク吐出の妨げとなる可能性があるため、ノズルへの照射を最小限にとどめるため、遮光等の措置を施すことが好ましい。具体的には、ノズルプレートへの照射を防止する隔壁を設ける、あるいは迷光を低減するべく被記録材への入射角を限定するための手段を設ける等が好適である。
また本発明では、着弾から照射までの時間を0.01〜0.5秒とすることが望ましく、好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒後に放射線を照射することにある。このように着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、着弾インクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留を抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。上記説明したインクジェット記録方法と本発明のインク組成物とを併せて用いることにより、大きな相乗効果をもたらすことになる。このような記録方法を取ることで、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことが出来、画質が向上する。
・システムパラメータ
画像を形成するうえで、被記録材上でのインク着弾径は10〜500μmの間にあることが好適であり、このためには吐出時のインク滴の直径は5〜250μmであることが好ましく、このときのノズル径は15〜100μmであることが好ましい。
画像を形成するためには1インチあたりの画素数が50〜2400dpiであることが好ましく、そのためには、ヘッドのノズル密度は10〜2400dpiであることが好ましい。ここで、ヘッドのノズル密度は低くとも、被記録材の搬送方向に対して傾ける、あるいは複数のヘッドユニットを相対的にずらして配置することにより、ノズル間隔の大きいヘッドで高密度の着弾を実現することが可能である。また上記のようにヘッドもしくは被記録材の往復移動により、低ノズルピッチでヘッドが移動するごとに被記録材を所定量搬送させ、インク滴を異なる位置に着弾させることにより、高密度の画像記録を実現することができる。
被記録材へのインク打滴量としては、良好な階調を表現するためには0.05〜25g/m2の間で任意量に制御できることが好適であり、これを実現するためにヘッドからの吐出インク滴の大きさ、およびまたは数量を制御することが好ましい。
ヘッドと被記録材の間隔に関しては、広すぎるとヘッドもしくは被記録材の移動に伴う空気の流れでインク滴の飛翔が乱れ、着弾位置精度が低下する。逆に間隔が狭いと、被記録材の凹凸、搬送機構に起因する振動等によりヘッドと被記録材が接触する危険性があり、0.5〜2mm程度に維持されることが好ましい。
・インクセット
インクは単色であってもよいし、シアン、マゼンタ、イエローのカラーであってもよいし、さらにブラックを加えた4色、あるいはさらに特色と呼ばれるこれら以外の特定色のインクを用いてもよい。色材は、染料であってもよいし、顔料であってもよい。これらのインクの打滴順は、明度の低い順に着弾するように打滴させてもよいし、明度の高い順に着弾させてもよいし、画像記録品質上好適な順に打滴させることが好ましい。
明度の高い色から順に重ねていくと、下部のインクまで活性エネルギー線が到達しやすく、硬化感度の阻害、残留モノマーの増加および臭気の発生、密着性の劣化が生じにくい。また、照射は、全色を射出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
記録するべき画像信号は、たとえば特開平6−210905号公報に記載されるように、良好な色再現を得るべく信号処理を施すことが好ましい。
また、本発明のインク組成物は、インクジェット記録用途以外に、三次元造形用途などにも利用可能であり、缶印刷用途や食品用途にも利用できる。これらの用途については公知の方法を利用して画像形成することができ、例えば特許第2679586号明細書などの記載を参照することができる。
[被記録材]
本発明のインク組成物を用いて記録される被記録媒体としてはインク浸透性の被記録媒体、および、インク非浸透性の被記録媒体をともに使用することができる。インク浸透性の被記録媒体は、普通紙、インクジェット専用紙、コート紙、電子写真共用紙、布、不織布、多孔質膜、高分子吸収体等が挙げられる。これらについては特開2001−1891549号公報などに「被記録材」として記載されている。
前記インク非浸透性の被記録媒体としては、アート紙、合成樹脂、ゴム、樹脂コート紙、ガラス、金属、陶器、木材等が挙げられる。加えて各機能を付加する為に、これら材質を複数組み合わせ複合化した基材を使用することもできる。
前記合成樹脂としてはいかなる合成樹脂も用いることができるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、および、ポリブタジエンテレフタレート等のポリエステル;ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、および、ポリプロピレン等のポリオレフィン;並びに、アクリル樹脂、ポリカーボネート、および、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等や、ジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、セロハン、および、セルロイド等が挙げられる。
前記合成樹脂を用いた基材の形状(厚み)は、フィルム状でもよいし、カード状またはブロック状でもよく、特に限定されることなく所望の目的に応じて適宜選定することができる。また、これら合成樹脂は透明であってもよいし、不透明であってもよい。前記合成樹脂の使用形態としては、いわゆる軟包装に用いられるフィルム状で用いることが好ましい態様の一つであり、各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができる。各種プラスチック製のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、二軸延伸ナイロン(ONy)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、および、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを挙げることができる。
前記樹脂コート紙としては、例えば、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルム、および、紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体が挙げられ、前記紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体が特に好ましい。
以上のように、本発明のインク組成物を用いた画像記録によると、脆性および密着性に優れた画像を得ることができ、得られた記録物、すなわち本発明の記録物は、脆性および密着性に優れるのである。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例ではインク組成物の一例としてインクジェット記録用のインクを作製した例を示す。
<顔料分散体の作製>
まず、表1に示す顔料と分散剤をボールミルに入れて、直径0.6mmのジルコンビーズを使用して、16時間分散して顔料分散体を得た。顔料分散体の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)で測定した。測定結果を表1に示す。
Figure 2007091928
(試料No.1の作製)
以下の成分を撹拌混合し、5.0μmのメンブランフィルターでろ過してシアンインクを得た。
<インク組成物成分>
・モノマー:オキセタン基含有化合物 23.3g
(OXT−221、商品名、東亜合成製)
・モノマー:脂環式エポキシ基含有化合物 70g
(セロキサイド3000、商品名、ダイセルUCB製)
・アルキルポリオキシエチレンエーテル 20g
(エマルゲン103、商品名、花王製)
・顔料分散体−1 9.5g
(GLVO(商品名、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)/Solsperse28000(商品名、ルーブリゾール社製)/OXT221(商品名、東亜合成製)=20/6/74)
・光重合開始剤 6.0g
(Irgacure250、商品名、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)
・増感剤:イソプロピルチオキサントン(ITX) 3.0g
(DAROCUR ITX、商品名、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)
・界面活性剤(BYK−307、商品名、ビックケミー製) 0.1g
(試料No.2〜8の作製)
アルキルポリオキシエチレンエーテルの種類及び添加量を表2に記載したように変更したこと以外は試料No.1と同様にしてシアンインクを得た。表2に記載の添加量の単位はgである。
(試料No.9の作製)
アルキルポリオキシエチレンエーテルを添加しなかったこと以外は試料No.1と同様にしてシアンインクを得た。
(試料No.10及び11の作製)
アルキルポリオキシエチレンエーテルの代わりにエタノール5g又は2−ブトキシエタノール5gに変更したこと以外は試料No.1と同様にしてシアンインクを得た。
<評価>
1.印字、露光テスト
上記で得られた試料No.1〜11のインクをピエゾ方式のヘッドを用いて打滴を行った。ヘッドは25.4mmあたり150のノズル密度で、318ノズルを有しており、これを2個ノズル列方向にノズル間隔の1/2ずらして固定することにより、メディア上にはノズル配列方向に25.4mmあたり300滴打滴される。
ヘッドおよびインクは、ヘッド内に温水を循環させることにより吐出部分近辺が50±0.5℃となるように制御されている。
ヘッドからのインク吐出は、ヘッドに付与されるピエゾ駆動信号により制御され、一滴あたり6〜42plの吐出が可能であって、本実施例ではヘッドの下1mmの位置でメディアが搬送されながらヘッドより打滴される。搬送速度は50〜200mm/sの範囲で設定可能である。またピエゾ駆動周波数は最大4.6kHzまでが可能であって、これらの設定により打滴量を制御することができる。本実施例では、搬送速度90mm/s、駆動周波数1.9kHzとすることにより、48plにインク吐出量を制御し20g/m2の打滴を行い、ベタ印字画像を得た。
メディアは打滴された後、露光部に搬送され紫外発光ダイオード(UV−LED)により露光される。本実施例ではUV−LEDは日亜化学製NCCU033(商品名)を用いた。本LEDは1チップから波長365nmの紫外光を出力するものであって、約500mAの電流を通電することにより、チップから約100mWの光が発光される。これを7mm間隔に複数個配列し、メディア表面で0.3W/cm2のパワーが得られる。打滴後露光されるまでの時間、および露光時間はメディアの搬送速度およびヘッドとLEDの搬送方向の距離により変更可能である。本実施例では着弾後、約0.5秒後に露光される。
メディアとの距離および搬送速度の設定に応じて、メディア上の露光エネルギーを0.01〜15J/cm2の間で調整することができる。本実施例では搬送速度により露光エネルギーを調整した。
これら露光パワー、露光エネルギーの測定にはウシオ電機製スペクトロラディオメータURS−40D(商品名)を用い、波長220〜400nmの間を積分した値を用いた。
本実施例ではメディアとして厚み50μmのPETフィルムを使用し、印字及び露光テストは23℃、R.H.60%の環境で実施した。硬化した画像の厚みは19μmであった。
2.密着性評価
50μmPETに印刷したサンプルの印刷面を、カッターナイフを用いて2mm間隔で25個の升目状に切り込みをいれ、透明テープを貼ったのち、テープを60°の角度で剥がした場合のサンプル表面状態を観察し、以下の基準で評価した。
○:升目が剥がれない。
△:一部剥がれる。
×:完全に剥がれる。
3.脆性評価
175μmPETに印刷したサンプルを2穴パンチ(MAX社製TypeC、商品名)で打ち抜き、打ち抜かれた円状表面の状態を観察し、以下の基準で評価した。
ランク5:全くはがれが認められず。
ランク4:一部、周囲が欠ける。
ランク3:周囲が一部剥がれる。
ランク2:周囲が剥がれる。
ランク1:表面のインクがぼろぼろに剥がれる。
Figure 2007091928
Figure 2007091928
表2の結果から明らかなように、比較例の試料No.9〜11は密着性が悪く脆性も劣った。これらに対し、本発明例の試料No.1〜8のインク組成物はいずれも脆性および密着性に優れることがわかった。

Claims (11)

  1. 脂環式エポキシ基含有化合物及び/又はオキセタン基含有化合物と、光カチオン重合開始剤とを含有するインク組成物であって、一般式R(O−L)nOH(式中、Rは炭素数2以上のアルキル基、アリール基又はアシル基を表し、Lは−CH2CH2−または−CH2CH(CH3)−を表し、nは2以上の整数を表し、−(O−CH2CH2)−と−(O−CH2CH(CH3))−は混在していてもよい。)で表される化合物を含有することを特徴とするインク組成物。
  2. 前記一般式において、Rがアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
  3. 前記一般式において、Rで表される基の炭素数が6以上20以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインク組成物。
  4. 着色剤として、顔料又は油溶性染料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインク組成物。
  5. インクジェット記録に用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインク組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のインク組成物を吐出するインクジェット記録によって画像を記録する画像記録工程を含むことを特徴とする画像形成方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のインク組成物を用いて被記録材に画像を記録する画像記録工程と、
    前記画像記録工程において前記被記録材に記録された画像に活性エネルギー線を照射して硬化させる画像硬化工程と、
    を含むことを特徴とする画像形成方法。
  8. 前記活性エネルギー線の照射光源として発光ダイオードを用いることを特徴とする請求項7に記載の画像形成方法。
  9. 前記活性エネルギー線の中心波長が365±20nmであることを特徴とする請求項7又は8に記載の画像形成方法。
  10. 前記画像硬化工程により硬化した画像の厚みが2〜30μmであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の画像形成方法。
  11. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のインク組成物を用いて形成されたことを特徴とする記録物。
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