以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、本発明の施錠装置は、人が携行可能な程度の物品であれば施錠が可能であるが、実施の形態1および2では、傘を施錠対象物として説明する。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図1から図29を用いて説明する。
先ず、図1〜図4を用いて、本発明の実施の形態1におけるダイヤル錠1の概観及び概
要を説明する。
図1は、本発明の実施の形態1におけるダイヤル錠1の概観を示す斜視図である。図1に示すダイヤル錠1は、本発明の施錠装置の一例であり、物品をバンドで締め付けて施錠するバンド式錠である。バンド式錠とは、バンドで物品を締め付けながら、そのバンドをロックすることで施錠する施錠装置のことである。
図1に示すように、ダイヤル錠1は、ダイヤル錠1の構成の中心となる錠本体100と、傘に巻きつけ傘を開かせないためのバンドであるバンド400と、バンド400を錠本体100から抜き挿しできないようにロックするリングであるロック用ダイヤルリング200と、ロック用ダイヤルリング200を錠本体100に回転可能に取り付け、ロック用ダイヤルリング200の回転軸となる軸300とから構成されている。
図1に示す例では、ロック用ダイヤルリング200は3つあり、それぞれのロック用ダイヤルリング200の半径方向外側の表面に0〜9の10個の番号が等間隔に付されている。それら3つのロック用ダイヤルリング200を回転させ、開錠のための3桁の番号を形成させることにより、バンド400を錠本体100から抜き挿し可能な状態にできる。
なお、バンド400、及び、後述するその他のバンドのそれぞれは本発明の施錠装置における係止部材の一例である。また、図1に示すような軸が1本の構成のダイヤル錠を、以下ダイヤル錠1という。
ここで、バンド式錠についてロック部位の構造について分類すると、ダイヤル錠、シリンダ錠、カード式錠などがある。
ダイヤル錠は、ダイヤルリングを回転させてダイヤルリングの決まった位置に限りロック解除となる施錠装置である。シリンダ錠は、鍵をシリンダに差込み、ある決まった方向に回すとバンドの係止部を係止する部材がバンドの係止部から離れて開錠状態となり、シリンダを反対に回すとバンドの係止部を係止する部材がバンドの係止部を係止して施錠状態となる施錠装置である。カード式錠は、カードを差込むとバンドの係止部を係止する部材がバンドの係止部から離れて開錠状態となり、カードを抜くとバンドの係止部を係止する部材がバンドの係止部を係止して施錠状態となる施錠装置である。また、カード式錠という場合、プレート式錠と呼ばれるプレート状の鍵を差し込むことにより施錠または開錠が可能な錠も含む。
上述のバンド式錠のダイヤル錠とシリンダ錠とカード式錠とを比較した場合、最も構成材数が少なく、構造が単純で、部材の製造コストが安価で、使用者が簡単にバンド部材以外の構成部材の交換が可能であるのはダイヤル錠であると考えられる。なぜなら、シリンダ錠の構成部材やカード式錠の構成部材は複雑で部材数も多く、使用者による分解・組み立ては難しく、ある構成部材を交換する場合、その構成部材を含む部分をまとめて交換することが必要となり、交換費用が高くなるからである。
つまり、バンド式錠の内で構成部材の交換に最もコスト面で有利なものはダイヤル錠であると言うことが出来る。
また、製造コストの削減と同時に重要となるのが、バンド式錠の維持費を抑えることである。バンド部材が傷んだからといって、その都度、バンド式錠全体の買い換えが必要となることは大きな問題点となる。その為、バンド式錠がダイヤル錠であろうとシリンダ錠であろうとカード式錠であろうとバンド部材の交換を使用者が簡単に行えるようにしてバンド部材を安価に提供することが必要となってくるが、これは実現可能である。
更に、バンド以外の構成部材の交換が可能であり、それら構成部材を安価で製造できれば、錠の維持費がより削減出来る。
バンド以外の構成部材について考えると、従来、例えば、バンド以外の部材であるダイヤルリングについては、ダイヤルリングの分解・組み立ては、組み合わせ番号の変更を主目的として考えられ、ダイヤル部分の磨耗や損傷などの際における部材の交換の為ではなかった。そのため、分解せずに組み合わせ番号が変更できる錠が考案されてからはあまりダイヤル錠のダイヤル部分の分解・組み立ては重要視されないようになったと考えられる。
同様に、係止部材の交換についても、チェーンやワイヤなどの係止部材の強度を上げれば、係止部材の交換が必要ない。つまり、係止部材の交換が必要にならないように係止部材の強度を上げるという考えが主流であったと思われる。
しかし、係止部材の任意の位置でロックできるバンド式錠においては、バンドに柔軟性を持たせることが重要である。そのため、特定の部位でロックするチェーン式ダイヤル錠と同程度に、頑強に作製することは非常に困難であると考えられる。
バンド式錠の耐久性能と、製造および構成部材の交換に関するコストについて以下に述べる。まず、バンド式錠の頻回使用による磨耗や損傷などに関する耐久性能についてであるが、バンド式錠の形態上、特に耐久性能に問題が生じやすいであろうと思われる部材がバンド部分である。
ここで、バンド部分の剛性を上げるために製造コストを掛けるより、他の部材の剛性をバンドの強度に見合うまで下げることにより製造コストを下げ、更に開錠時に限り分解・組み立てを可能とすることにより、痛んだ部材だけの交換が出来るようにして、コストパフォーマンスを上げる方が重要であると思われる。
つまり、錠としての強度は一番弱い部分できまり、係止部材の任意の位置でロックできるバンド式錠の強度はバンドの強度に依存すると考えられる。そのため、バンド以外の部材の強度を上げる為に作製コストをかけることは無駄であると思われる。従って、バンド以外の部材の強度を、バンドの強度よりやや強度に勝る程度にすることによりバンド以外の部材の作製コストを抑えることが出来るのであれば、作製コストを抑える方を優先するべきであると考えられる。その結果、バンド以外の構成部分においても、磨耗や損傷が問題となってくるが、開錠時に限り、痛んだ部材の交換を可能にさえ出来れば日常使用による磨耗や損傷といった問題を解決できると考えられる。
なお、本発明の施錠装置は、傘などの携行可能な物品を施錠することを目的としているが、一般的に施錠装置はその使用状況、使用目的に見合った、または耐え得る強度さえあれば使用価値が存在する。例えば、剛性が高くても使用方法が限られる為、施錠したい物品に利用出来ない錠は、その状況下では施錠装置としての価値がない。
また、任意の位置で施錠可能なバンド式錠は物品を締め付けて施錠可能な構造である為、狭窄部位に施錠可能という点では特に優れている。また、任意の位置で施錠可能であるため、ある程度の範囲の大きさの物品に施錠可能である。そのため、傘などの置き引きや商品などの万引き防止の為の利用価値が非常に高い。
ところがバンド式錠は剛性(強度)が他のU字棒式錠やチェーン式錠やワイヤ式錠に比べて弱い。また、バンド部分の強度を増そうとしても限界があり、他の施錠装置と比べ強
度面でおとり、その強度面での問題により、ほとんど、注目されて来なかった。つまり、バンド式錠を製造販売したとしても、購入価格に見合う利用価値、施錠効果がないであろうから、購入する人がほとんどいないであろうと考えられていたと思われる。
しかしながら、バンド式錠の利用対象物や利用状況をある程度限定することにより、バンド式錠の剛性についてはある程度妥協出来ると考えられる。つまり、バンド式錠の提供を安価で行い、構成部材の交換を簡単に安価で行えるようにすることにより、バンド式錠の産業上の利用性を向上させることができる。言い換えると、バンド式錠は、使用状況によってはそれほど構造上の強度を上げる必要がなく、その製造コストを下げることがバンド式錠の普及に関して最も重要である。
例えば、傘などの置き引きや商品の万引きは出来心で行なわれることが多い。例えば、傘の置き引きは、突然雨が降り始めたことを理由に行われることが多く、ペンチやカッターなどの道具が使用されることは少ない。そのため、施錠しているという状態(例えば不動物にワイヤで連結したバンド式錠で傘や商品を施錠しているという状態)、を見せるだけでも、置き引きや万引きをしようという出来心をある程度抑制できると考えられる。
そして、バンド式錠が手で容易に破壊されない強度で有りさえすれば、錠として十分に使用価値があると思われる。そこで、ダイヤル錠1を構成する上記各部品は、手で引きちぎられない程度の強度を最低条件とし、プラスティックで作成されるものとする。よって、以下に示すダイヤル錠1を構成する各部品については、特に記載のない限りプラスティック製である。
上述のように、本発明の実施の形態1のダイヤル錠1は、バンド式錠であり、バンドをロックする部位はダイヤル錠である。図1に示したダイヤル錠1の組み立て前の各部品の概観を後述する図5に示すが、ダイヤル錠1を構成する部材の点数は少なく、各部品はそれぞれ独立しており、交換可能である。また、開錠時にのみ、繰り返し分解、組み立てが可能である。この特徴は、特に記載する場合を除き、以下に説明する、本発明の実施の形態1、2およびそれぞれの応用例、変形例のダイヤル錠でも同様である。
なお、本発明の施錠装置は、バンド以外の係止部材を用いることも可能である。バンド以外の係止部材を用いる場合については後述する。
図2は、図1に示すダイヤル錠1の正面、正面斜め上、及び上面の概観を示す図である。図2(a)は、ダイヤル錠1の正面の概観図であり、図2(b)は、ダイヤル錠1の正面斜め上からの概観図であり、図2(c)は、ダイヤル錠1の上面の概観図である。なお、以下、「正面」とは、図2(a)に示す面のことを意味し、以下「上面」とは、図2(c)に示す面のことを意味する。
図3は、図1に示すダイヤル錠1の側面の概観を示す図である。図3(a)は、ダイヤル錠1の左側面の概観図であり、図3(b)は、ダイヤル錠1の右側面の概観図である。なお、ダイヤル錠1の「右側面」とは、図2(a)に示すダイヤル錠1の正面を基準とした場合の右側の側面である。また、ダイヤル錠1の「左側面」も、同様に、図2(a)に示すダイヤル錠1の正面を基準とした場合の左側の側面である。
図4は、ダイヤル錠1を傘に取り付けた状態、つまり、ダイヤル錠1により傘を施錠した状態の一例を示す図である。傘には、親骨と受骨とを連結するためのジョイントや、露先をまとめるための玉留などがあるため、閉じた状態の傘の中棒の軸方向に垂直な断面の外径は一定ではなく、外径が上下より細くなっている部分が存在する。
そのため、図1に示すバンド400と錠本体100とで形成される環状部分の中に、閉じた傘の上記外径が上下より細くなっている部分が来るようにして、傘を絞る方向にバンド400を引っ張りながらロックすれば、ダイヤル錠1は容易には上下させることができない。つまり、ダイヤル錠1を開錠しなければ傘を開くことができない。
また、バンド400の有する複数の凸部401は、後述するロック用ダイヤルリング200の形状との関係により、バンド400がロック用ダイヤルリング200にロックされるための部位であるが、ダイヤル錠1を傘に取り付けた際に、傘布等に食い込むことにより、ダイヤル錠1を上方向に抜きにくくする効果も併せ持つ。
特に、傘の露先からやや石突方向へ寄った傘布の断端上にダイヤル錠1を上面・下面を逆にして、つまり、凸部401が傘の石突方向へ向く状態で傘を施錠すると、凸部401が傘布の断端に食い込み、ダイヤル錠1は石突方向へは極めて抜けにくくなる。この施錠方法は、傘の盗難防止として有効な施錠方法の1つである。その他の施錠方法の例は図9の説明の中で詳述する。
なお、ダイヤル錠1を傘に取り付けるだけでなく、傘と他の物品、例えば、傘立ての柱や格子棒等と傘とをまとめてバンド400で縛りつけてもよい。これによって、より盗難が防止され得る。
次に図5〜図7を用いて、ダイヤル錠の構造について説明する。
図5は、ダイヤル錠1を構成する、錠本体100、軸300、ロック用ダイヤルリング200及びバンド400の概観を示す斜視図である。
図5に示すように、錠本体100には、錠本体100にバンド400を取り付けるための孔であるバンド取付孔101と、錠本体100に軸300を取り付けるための孔である錠本体側軸孔102a、錠本体側軸孔102b、錠本体側軸孔102c及び錠本体側軸孔102dと、錠本体100にロック用ダイヤルリング200を取り付けるための空間であるダイヤル取付部105とを有する。
なお、ダイヤル取付部105は、錠本体100の左右方向に等間隔に3つ設けられている。よって、ダイヤル取付部105に配置される3つのロック用ダイヤルリング200は等間隔に配置されることとなる。
また、錠本体側軸孔102a〜102dには、バンドを通過させるための溝である錠本体側バンド溝104がそれぞれ設けられており、錠本体側軸孔102aには、軸300が差し込まれた際に、軸300の周方向の位置を定めるためのガイド用切欠部103が設けられている。なお、4つある錠本体側バンド溝104は、錠本体側軸孔102aから錠本体側軸孔102dへ見通した場合、直線状に並んでいる。
ロック用ダイヤルリング200は、図5に示すように、全体として筒状の構造をしており、軸300を通すための孔であるリング側軸孔201と、番号を表示するための番号表示部203とを有する。また、リング側軸孔201にはバンドを通過させるための切欠部であるリング側バンド溝202が設けられている。
なお、リング側軸孔201に軸300が通された場合、ロック用ダイヤルリング200は、軸300を回転軸として軸300の周方向に回転させることができる。また、ロック用ダイヤルリング200は、開錠番号を使用者が設定できるように2重構造になっている。ロック用ダイヤルリング200の詳細については図6を用いて後述する。
軸300は、図5に示すように、全体として軸方向に溝が設けられた円筒形状をしており、錠本体100に取り付けられる際に、周方向の位置を定めるためのガイド301と、バンドを通過させるための溝である軸側バンド溝302とを有する。なお、図5に示す軸300の軸方向の手前側、つまり、ガイド301が存在する軸の端部を以下、軸後部といい、軸後部と逆側の端部を以下、軸頭部という。また、軸側バンド溝は本発明の施錠装置における軸側溝の一例である。軸側溝は、軸部材の、バンド等の係止部材が挿入される溝であり、図58を用いて後述するように、複数の軸側溝が存在する場合もある。
バンド400は、バンド400がロック用ダイヤルリング200によって錠本体100にロックされるために一定間隔で備えられた複数の凸部401と、バンド400を錠本体100のバンド取付孔101から差し込んだ際に、バンド400をバンド取付孔101の出口方向に抜けないようにするためのストッパ403とを有する。
なお、バンド400において、隣接する凸部401間には凹部が存在することになり、バンド400は、一定間隔で備えられた複数の凹部を有する、ともいうことができる。
また、バンド400の、ストッパ403とは逆側の端部を以下、バンド頭部といい、バンド400のストッパ403以外の部分を以下、バンド本体という。また、バンド本体の凸部401以外の部分を以下、バンド基本部という。バンド400は、バンド頭部から錠本体100のバンド取付孔101に差し込まれ、錠本体100の右側面からバンド頭部を引っ張り出すことができる。また、バンド400のストッパ403は、錠本体100の右側面にあるバンド取付孔101の出口より大きくなっているため、錠本体100を貫通することはできない、つまり、バンド400は、ストッパ403によりバンド取付孔101の内部で係止され、バンド頭部方向に対しては固定される。
また、係止部材は軸を貫通しており、ダイヤルリングは軸を回転軸としている。これにより、使用者が開錠した時にのみ分解可能とすることができ、かつ、簡易な構成であるため、使用者が組み立てることが可能である。
また、バンド400は図示の都合上U字型に図示されているが、これはU字型に固定されるわけではない。バンド400は湾曲可能なプラスティックやゴム等の素材で作成され、ダイヤル錠1で傘を施錠するための柔軟性を持ち合わせている。
軸300は軸頭部が錠本体側軸孔102aから差し込まれ、軸頭部が錠本体100の3つのダイヤル取付部105のそれぞれに一つずつ置かれた3つのロック用ダイヤルリング200と、錠本体側軸孔102bと錠本体側軸孔102cとを通過し、錠本体側軸孔102dに軸頭部が固定されるまで差し込まれる。軸頭部が錠本体側軸孔102dに固定されることにより、軸300は錠本体100に固定される。軸300の軸頭部と錠本体側軸孔102dとの関係は図7を用いて後述する。また、上述のように、3つのロック用ダイヤルリング200のそれぞれは、軸300の周方向に回転させることができる。
また、軸300を錠本体100に差し込んだ際、軸300のガイド301と錠本体側軸孔102aのガイド用切欠部103とが係合することで、錠本体100に対し、軸300は周方向の位置が固定される。この固定された位置とは、直線状に並んだ4つの錠本体側バンド溝104の真下に軸300の軸側バンド溝302が来る位置である。
この状態で、3つのロック用ダイヤルリング200のリング側バンド溝202のそれぞれを、錠本体100にある4つの錠本体側バンド溝104と直線をなすように回転させる、つまり、軸300の軸側バンド溝302の真上にリング側バンド溝202が来る位置ま
で回転させると、1つの軸側バンド溝302と、4つの錠本体側バンド溝104と、3つのリング側バンド溝202とで、バンド400のバンド本体を通過させることのできるバンド通過孔を形成することとなる。
つまり、この状態で、ダイヤル錠1は開錠された状態であり、ダイヤル錠1の使用者は、バンド本体を錠本体100から抜き挿しできることとなる。以下、この状態を「開錠状態」という。例えば図5に示すロック用ダイヤルリング200の場合、それぞれのロック用ダイヤルリング200を、手前から「1」、「8」、「6」が軸300の軸側バンド溝302の真上に一列に並ぶように回転させる、つまり、「1」、「8」、「6」に合わせることで、ダイヤル錠1を開錠状態にすることができる。この開錠状態にするための番号の列を以下、「開錠番号」という。
また、開錠状態で、図1に示すように、図の手前方向からバンド400のバンド本体を通し、バンド本体の凸部401の位置が、ロック用ダイヤルリング200のリング側バンド溝202内にない位置であれば、ロック用ダイヤルリング200を回転させることができる。つまり、隣接する凸部401の間隔は、ロック用ダイヤルリング200の軸方向の幅より広い。
ここで、バンド400の複数の凸部401は上述のように等間隔で並ぶが、この間隔は、等間隔に配置される3つのロック用ダイヤルリング200の間隔と同一である。なお、凸部401の間隔の基準は、凸部401のバンドの長手方向の幅の中心を通り、長手方向に垂直な断面とする。また、ロック用ダイヤルリング200の間隔の基準は、ロック用ダイヤルリング200の軸方向の幅の中心を通り、軸方向に垂直な断面とする。
つまり、少なくとも1つのロック用ダイヤルリング200を開錠番号となる番号以外に合わせると、バンド400のバンド本体には、凸部401がロック用ダイヤルリング200の回転軸と垂直な側面、と当接するように設けられており、バンド400のバンド本体は係止され、錠本体100から抜き挿しすることができない。つまり、バンド400のバンド本体がロック用ダイヤルリング200によりロックされる。
図6は、ロック用ダイヤルリング200の構造の一例を示す図である。図6(a)は、ロック用ダイヤルリング200の左側面図であり、図6(b)は、ロック用ダイヤルリング200の正面図であり、図6(c)は、ロック用ダイヤルリング200の右側面図であり、図6(d)は、ロック用ダイヤルリング200のA−A断面図であり、図6(e)は、ロック用ダイヤルリング200のB−B断面図である。
ロック用ダイヤルリング200は、上述のように2重構造になっており、図6を用いてロック用ダイヤルリング200の構造を説明する。
図6(a)〜図6(e)に示すように、ロック用ダイヤルリング200は、リング内部材210とリング外部材220とから構成される。つまり、ロック用ダイヤルリング200は、リング内部材210とリング外部材220との2重構造になっている。
リング内部材210はリング側軸孔201とリング側バンド溝202と変形用切欠部204とを有し、リング外部材220は番号表示部203を有する。
リング内部材210は、図6(a)に示すように、10個の変形用切欠部204を有する。変形用切欠部204は、図6(a)に示す左側面から図6(c)に示す右側面方向への切れ込みである。図6(d)のA−A断面図に示すように、変形用切欠部204は、リング内部材210の厚みの約半分、つまり、図6(d)のA−A断面図の左右幅の約半分
の幅だけ切れ込まれた部分である。
図6(d)に示すリング外部材220の右側から、変形用切欠部204が左側に来るようにしてリング内部材210を押し込むと、リング内部材210の周に、半径方向内向きの力が作用し、変形用切欠部204の周方向の幅が縮小する。図6(d)のA−A断面図に示すように、リング外部材220の断面は中央が山型になっているが、変形用切欠部204は変形用切欠部204の周方向の幅が縮小することにより、その山を越え、復元力で元に戻る。つまり、リング外部材220にリング内部材210が組み込まれ、ロック用ダイヤルリング200が完成する。
また、ロック用ダイヤルリング200を組み立てた後、組み立て時とは逆に、図6(b)に示すリング外部材220の左側からリング内部材210を押すと、組み立て時と同様に変形用切欠部204の周方向の幅が縮小することにより、リング内部材210をリング外部材220から取り外すことができる。
また、リング内部材210には、図6(c)に示すように、リング外部材220に対してその周方向の位置を定めるための、10個の内側嵌合部205がリング内部材210の周方向に等間隔で存在する。リング外部材220には、それら10個の内側嵌合部205に対応する形で、10個の外側嵌合部206がリング外部材220の周方向に等間隔で存在する。
リング外部材220においては、10個の外側嵌合部206の半径方向外側の番号表示部203に、それぞれ番号が付されている。つまり、図6に示すロック用ダイヤルリング200の番号表示部203には、10個の番号が付されている。また、図6(c)に示すように、リング内部材210においては、リング側バンド溝202の半径方向外側には、1つの内側嵌合部205が存在する。
リング側バンド溝202の半径方向外側の番号表示部203の番号は、図5の説明で述べたように、開錠番号の1つとなる番号である。つまり、ダイヤル錠1の使用者は開錠番号となる番号を選択して、番号表示部203のその番号の半径方向内側にリング側バンド溝202が来るように、リング外部材220にリング内部材210を組み込む。このようにして、選択された番号が開錠番号の一つとなるロック用ダイヤルリングを組み立てることができる。
ロック用ダイヤルリング200は上述のように、ダイヤルリングを、開錠のための切欠部のある内部材と外周部分の外部材とに分け、分解・組み立てを可能としている。この構造は、ダイヤルリングの分解・組み立てによる部材の交換の際、開錠番号を変更可能とする点で便利である。また、開錠番号を変更するために、新たなダイヤルリングに買い換える必要がなく、使用者のダイヤル錠の維持に関わるコストの削減が更に可能である。
また、ロック用ダイヤルリング200は、二重構造の分解・組立式の構造として、ダイヤルリングを構成する内部材が変形しながら外部材に装填され復元力により嵌合する構造を有している。これにより、内部材と外部材とを結合させるための部材が必要なくなる。さらに、錠本体とダイヤルリングと軸の分解・組立時にダイヤルリングが意図せずに内部材と外部材が外れてしまうことを防ぐことが出来る。
さらに、図6に示す外部材220のように、外部材を単純形状にすることにより、ダイヤルリングの外部材の製造コストの削減が可能となれば、数字以外の文字・記号・絵などを記した色々なバリエーションの外部材を作製して、外部材を単体で安価に提供する事が可能となる。従って、開錠の為の合わせ数字である開錠番号では開錠番号を忘れてしまう
人であっても、ダイヤルリングの開錠の為の組み合わせ番号や文字や記号や絵を使用者が自由に選択して組み立て可能となるので、開錠の為のダイヤルの組み合わせを忘れにくく出来る。また、錠の使用間隔が空いても忘れにくくなる効果もある。
図7は、錠本体100を正面から見た場合の透視図である。上述のように、軸300は、軸頭部が錠本体側軸孔102dによって固定されることにより錠本体100に固定される。図7を用いて、軸300の軸頭部と錠本体側軸孔102dとの関係を説明する。
図7に示すように、錠本体側軸孔102a、錠本体側軸孔102b及び錠本体側軸孔102cの内径はr1である。また、錠本体側軸孔102dの左側の内径はr1であるが右側の内径はr2であり、r1>r2の関係にある。
ここで、軸300のガイド301及び軸側バンド溝302を含まない形状は円筒であり、内径はr1である。つまり、錠本体100には、図7の左側方向より軸300を押し込んだ場合、軸300の軸頭部は、錠本体側軸孔102a、錠本体側軸孔102b及び錠本体側軸孔102cを通り抜けることができ、錠本体側軸孔102dに入ることができる。しかしながら、錠本体側軸孔102dの右側の内径が軸300の外径より小さいため、軸300を錠本体100に打ち込むと、軸頭部は錠本体側軸孔102dの壁面より、半径方向内向きの圧力を受ける。そのため、その圧力による軸頭部の周と錠本体側軸孔102dの壁面との間に摩擦力が生じ、軸頭部は錠本体側軸孔102dに固定される。これにより、軸300は錠本体100に固定される。
なお、軸300は錠本体100に摩擦力で固定されるため、錠本体100を軸300に組み込んだ後、図7に示す錠本体100の右側より、例えば、棒と木槌を使い、軸300を錠本体100から打ち出すことができる。しかしながら、傘を施錠している状態では、バンド400のバンド本体が軸300の軸側バンド溝302を貫通し、締められた状態でロックされているため、軸300を取り外すことはできない。
上述のように、本発明の実施の形態1におけるダイヤル錠1は、バンド400の傘を施錠する部分の長さが調節可能であるため、傘の大きさ、形状に関わらず、図4に示すように、閉じられた傘をダイヤル錠1によって施錠することができる。
つまり、他人は傘を開くことができず、傘を使用することができない。そのため、傘を使用することを目的として行なわれる傘の盗難を防止する効果を有する。
また、傘と傘立ての柱や格子棒等の物体との位置関係が、まとめてバンド400で縛りつけることが可能な位置関係をとり得る場合、傘と傘立て等とをまとめてバンド400で縛りつけることができる。このことにより、より盗難が防止され得る。
また、ダイヤル錠1は簡易な構造をしており、錠本体100、ロック用ダイヤルリング200、軸300、及びバンド400を供給された使用者は簡単に組み立てることができる。
また、ロック用ダイヤルリング200は2重構造になっており、使用者が選択した番号を開錠のための番号としたロック用ダイヤルリング200を作成できる。つまり、自分が覚えやすい番号など、所望する番号を開錠番号としたダイヤル錠1を組み立てることができる。
また、ダイヤル錠1を組み立てた後に、軸300を錠本体100から取り外すことができるため、開錠番号を変更したい場合はいつでも変更可能である。
ここで、軸300は、ダイヤル錠1を傘に取り付けた状態では、上述のように、錠本体100から取り外すことができないため、開錠番号を知るダイヤル錠1の使用者のみが軸300を錠本体100から取り外すことができる。
つまり、本発明の実施の形態1のダイヤル錠1は、開錠時にのみ分解可能であり、かつ、繰り返し組み立て直しが可能である。また、組み立てに必要な部材の数も少なく、簡易な構造である。従来のダイヤル錠においては、組み立てに必要な部材の多さや、組み立ての難しさ、製作コストなどの問題が存在していたが、ダイヤル錠1においてはそれら問題が解決されている。
また、バンド・ダイヤルリング・軸・錠本体を分解・組み立て可能とする事により、使用状況に応じて錠の構成部材を選択し変える事が可能となる。例えば、バンドの強度・長さ・形状を変える事も可能であるし、ダイヤルリングや軸や錠本体の強度・形状を変える事も可能となる。
つまり、使用者は、想定される使用状況に応じて部品を買い揃えて組み立てればよく、プラスティックや木材や陶器やガラスや金属など様々な素材の物を組み合わせることが可能である。これにより、極めて安価にバリエーションに富んだバンド式ダイヤル錠を提供する事が出来る。
なお、ダイヤル錠1には、伸縮可能なコイル状ワイヤを取り付けることが可能である。コイル状ワイヤは例えばドアの取っ手や階段の手すりなどの固定物に一端を取り付けることが可能であり、つまり、ダイヤル錠1により施錠された傘と、固定物とを連結させることができる。
図8は、ダイヤル錠1にコイル状ワイヤを取り付け、ダイヤル錠1と固定物であるドアの取っ手とがコイル状ワイヤにより連結された状態の一例を示す図である。
図8に示す例では、ダイヤル錠1は、コイル状ワイヤ20をダイヤル錠1に取り付けるために、錠本体100はU字型の部材であるワイヤ取付部110を有している。また、コイル状ワイヤ20は、その一方の端に、ダイヤル錠1に取り付けるためのリング21を有し、他方の端に、ドアの取っ手等の固定物に取り付けるためのリング22を有している。ダイヤル錠1に取り付けるためのリング21は、コイル状ワイヤ20自身をくぐらせることができる大きさであり、ドアの取っ手等の固定物に取り付けるためのリング22は、ダイヤル錠1をくぐらせることのできる大きさである。
ワイヤ取付部110の中を通されたリング21の中に、リング22を通すことにより、コイル状ワイヤ20をダイヤル錠1に取り付けることができる。その状態で、図7に示すドアの取っ手にリング22を通し、そのリング22の中に、ダイヤル錠1を通すことにより、ダイヤル錠1とドアの取っ手とが連結され、図8に示す状態となる。
このように、ダイヤル錠1にコイル状ワイヤ20を取り付けることにより、ダイヤル錠1を他の固定物と連結させることが可能となる。結果的に、傘自体を固定物に連結させることができ、他人は、ダイヤル錠1を取り付けられた傘を使用できないだけではなく、その傘を連結された場所から持ち去ることはできない。
つまり、ダイヤル錠1にコイル状ワイヤ20を取り付けることにより、ダイヤル錠1による傘の盗難防止効果を向上させることができる。
なお、傘など施錠対象物の狭窄部位に施錠することで、上述のように、傘を開かせないなど、その施錠対象物を使用できなくする効果はある。しかしながら、施錠するだけでは施錠対象物ごと持ち去られる可能性がある。また、例えば、傘などの長尺の物品を施錠する場合、バンドを、手すりなどの不動物に通して施錠した場合、傘などの長尺の物品をねじることで、バンドをねじ切られる恐れがある。
そこで、図8に示すコイル状ワイヤ20のような、施錠対象物を締め付けるバンド以外の物で錠本体を不動物に連結する方法が有効である。不動物に閉じた環状部位があれば錠に連結されたワイヤを利用することで錠を不動物に連結可能に出来る。
ここで、図8に示すコイル状ワイヤ20のリング22の大きさは、開錠時にようやくダイヤル錠1自身をその中を通せることができ、かつ、物品を施錠している場合には通すことが出来ない大きさであれば良い。
もちろん、施錠対象物が大きければ大きいほどリング22の大きさは大きくても不動物に連結後、施錠対象物を含むダイヤル錠1を中に通すことが不可能となる。しかしながら、より多くの種類の物品に対し、コイル状ワイヤ20の有する盗難防止効果を発揮させるためには上述の大きさが最適である。即ち、施錠対象物の大きさに関わらず、開錠時にバンドを本体から直線状に伸ばした状態では錠本体がその中を通せるが、バンドをロックしてバンドが環状になった状態では錠の最小径が大きくなる為、その中を通すことが出来なくなるリング22の大きさが最適である。
図9は、コイル状ワイヤ20が取り付けられたダイヤル錠1により傘とドアの取っ手とが連結される例を示す図である。
図9(a)に示す長傘は、図4に示したダイヤル錠1の傘への取り付け例と同様に、閉じられた傘の本体部分にダイヤル錠1が取り付けられているが、図9(b)に示すように、コイル状ワイヤ20のリング22側を、折り畳み傘のストラップに取り付け、ダイヤル錠1をドアの取っ手に取り付けることで、折り畳み傘をドアの取っ手と連結させることも可能である。
また、コイル状ワイヤ20を利用したその他の施錠方法として、コイル状ワイヤ20のリング22側を、傘の中棒に取り付ける方法もある。例えば、傘を開いた状態で、傘の中棒の下ロクロと石突との間の部分に、コイル状ワイヤ20のリング22側を取り付け、コイル状ワイヤ20とダイヤル錠1とを傘の外側に出す。この状態で傘を閉じ、ダイヤル錠1をドアの取っ手に取り付ける。
傘の中棒の下ロクロと石突との間の部分にコイル状ワイヤ20のリング22側を取り付け、ダイヤル錠1をドアの取っ手等の固定物に取り付けた場合、コイル状ワイヤ20は、中棒の下ロクロ方向及び石突方向のどちらからも取り外すことはできないため、この方法で施錠された傘を持ち去ることはできない。また、コイル状ワイヤ20のリング22側をドアの取っ手に取り付け、ダイヤル錠1を傘の中棒の下ロクロと石突との間の部分に取り付けても同様の効果がある。
上述の、傘の中棒の下ロクロと石突との間の部分を利用する施錠方法は、外径が上下より細くなっている部分がない、又は見つけにくい傘を施錠する場合に有効である。
また、閉じられた傘に補助具を用い、施錠するための部分となるような膨らみを作り出してもよい。例えば、傘の玉留と同程度の外径と、中棒が入る程度の大きさの孔を持つドーナツ状の円盤に、半径方向外側から孔まで達する切れ込み又は切欠きを入れたものを補
助具とする。この補助具である円盤を、傘の中棒の下ロクロと石突との間の部分に、中棒が円盤の孔に入るように取り付ける。これにより、傘を閉じた場合に、下ロクロと石突との間に瘤状の膨らみを作り出すことができる。つまり、閉じられた状態の傘の下ロクロと瘤状の膨らみとの間に、中棒に垂直な断面の外径が、上下より細くなる部分をつくりだすことができる。この補助具による膨らみと下ロクロとの間の細い部分に、傘を締め付けるようにしてダイヤル錠1を取り付けることで、ダイヤル錠1は、傘から抜くことはできない。また、上記補助具を複数用いて複数の瘤状の膨らみを傘に作り出してもよい。なお、補助具は、本発明の径大部形成部材の一例である。
この補助具を使用した施錠方法は、親骨と受骨とを連結するためのジョイントにほとんど隆起がなく、傘を閉じた場合、露先から石突までの部分に施錠を可能にするための凹部が存在しない、つまり2箇所以上の明らかな凸部がない傘の場合などに有効な施錠方法となる。
なお、図8では、錠本体100に取り付けられたワイヤ取付部110にコイル状ワイヤ20を取り付けている。しかしながら、別の方法で、コイル状ワイヤ20をダイヤル錠1に取り付けてもよく、例えば、錠本体100に、コイル状ワイヤ20を取り付けるための孔をあけ、その孔にコイル状ワイヤ20を取り付けてもよい。
また、コイル状ワイヤ20を使用していないときのために、コイル状ワイヤ20を係留しておくためのワイヤ係留部を設けてもよい。
図10は、錠本体100に、ワイヤ取付孔111とワイヤ係留部112とを設けた場合の、ダイヤル錠1の正面の概観を示す図である。
図10に示すように、錠本体100にワイヤ取付孔111を設けることにより、コイル状ワイヤ20を取り付けることができ、またワイヤ係留部112を設けることにより、コイル状ワイヤ20を使用していない際にコイル状ワイヤ20のリング22を係留しておくことができる。なお、ワイヤ係留部112は、錠本体100に設けられた窪みであるが、リング22を係留できれば窪みでなくてもよい。例えば突起でもよい。
また、コイル状ワイヤ20の素材は、弾性のある金属以外に、プラスティックやゴム素材などでもよく、また、コイル状ではなく直線状でもよい。つまり、コイル状ワイヤ20が有するダイヤル錠1と固定物とを連結させることができる機能を備えるものであればよい。
また、錠本体100は、図5などに示した形以外でもよく、例えば、錠本体100の傘と接触する面を平面にした形や、錠本体100を湾曲させた形などでもよい。
図11は、錠本体100の変形例を示す図である。図11(a)に示す錠本体120は、錠本体100の傘と接触する面を平面にした錠本体の一例であり、図11(b)に示す錠本体130は、錠本体100の形状全体を湾曲させた錠本体の一例である。
なお、錠本体120及び錠本体130は、錠本体100が有するバンド取付孔101等のダイヤル錠1を構成するための部位を有しており、錠本体100とは形状が異なるだけである、また、錠本体120は、軸300はそのまま使用することができるが、錠本体130は、軸も湾曲している必要がある。
図12は、錠本体100の代わりに上述の錠本体120及び錠本体130を使用したダイヤル錠1の上面の概観を示す図である。図12(a)は、錠本体120を使用したダイ
ヤル錠1の上面の概観を示し、図12(b)は、錠本体130を使用したダイヤル錠1の上面の概観を示す。
錠本体120のように、傘と接触する面を平面にすることにより、例えば、傘と接触する面を曲面加工する必要がなく錠本体120の作成が容易になる。また、錠本体130のように、錠本体全体を湾曲させることにより、バンド400と、軸310の軸側バンド溝312とが曲面で接する部分が多くなり、傘に施錠した場合にバンド400にかかる力を分散させることができる、つまり、バンド400の耐用寿命を延ばすことができる。
更に、以下に述べるように、ロック用ダイヤルリングの切欠部であるリング側バンド溝の位置を錠本体の外部から覗き見ることができないようにすることができる。これによりダイヤル錠が不正に開錠されることを防ぐことができる。
図13(a)は、錠本体130に取り付けるための軸の一例を示す図である。図13(a
)に示すように、軸310は、錠本体130に差し込まれるため湾曲しており、軸300と同様に、ガイド311と軸側バンド溝312とを有している。また、軸300と同様に、ロック用ダイヤルリング200の回転軸となる。
このように、軸は、錠本体の形状に合わせ、図13(a)の様に湾曲させてもよく、軸側溝も湾曲させてもよい。これにより、軸側溝を介しては、ロック用ダイヤルリングを視認不可能とすることができる。軸側溝を介しては、ロック用ダイヤルリングを視認不可能であるということは、ロック用ダイヤルリングの切欠部であり、開錠のための部位であるリング側バンド溝の位置を錠本体の外部から覗き見ることができないということである。
なお、軸が存在しない施錠装置の場合であっても、錠本体のバンドが通過する孔などにより形成されるバンドの通路が同様に湾曲していれば、同じく、開錠のための部位の覗き見を防止することができる。また、湾曲ではなく、屈曲させることによっても同じ効果が発揮される。
要するに、施錠装置において、軸や錠本体の溝や孔等で形成されるバンド等の係止部材の通路が、その通路を介してはダイヤルリングを視認不可能なほどに湾曲または屈曲していれば、上記のような、ダイヤルリングの開錠のための部位の覗き見を防止する効果が発揮される。
従って係止部材に鍔や膨大部のようなのぞき防止のための部位・部材がない施錠装置においても、係止部材用孔の錠外側面に開口する開口部から最も近いダイヤルリングまでの経路が視認不可能なほどに湾曲または屈曲することにより、のぞいての不正開錠を防止することができる。
図13(b)および図13(c)は、それぞれ外部からの不正な覗き見を防止するための従来の施錠装置の構造の一例を示す図である。
図13(b)および図13(c)における施錠装置はともに、係止部材が決まった位置でロックされる構造である。また、図13(b)における鍔779aおよび図13(c)における膨大部779bはともに、係止部材の挿入口から内部がのぞけないようにすることができる。また、例えば、図13(c)に示す施錠装置において、膨大部779bは施錠装置の分解を出来ないようにダイヤルリングを施錠装置から取り外せないようにするためのリテーナやピンを保護している。
ここで、本実施の形態のダイヤル錠のように、係止部材が任意の位置でロックされる施
錠装置においては、鍔779aおよび膨大部779bのような係止部材に固定された、覗き見防止のための構造を有することは実質的に不可能である。
しかしながら、上述のように、軸側溝を湾曲または屈曲させることにより、外部からの覗き見を防止することが可能となる。また、この構造による覗き見防止の効果は、当然に係止部材が決まった位置でロックされる施錠装置においても発揮される。
図13(d)および図13(e)はそれぞれ、軸側溝が湾曲しているダイヤル錠の構造の概要を示す図である。図13(f)および図13(g)はそれぞれ、軸側溝が屈曲しているダイヤル錠の構造の概要を示す図である。
図13(d)に示すように、バンド494aが錠本体131を貫通せず、決まった位置でロックされる施錠装置であっても、係止部材用通路131aが湾曲していることにより、ロック用ダイヤルリングの開錠のための部位を外部から覗き見されることがない。
また、図13(e)に示すように、バンド494aが錠本体131を貫通し、任意の位置でロックされる施錠装置であっても、係止部材用通路131cが湾曲していることにより、開錠のための部位を外部から覗き見されることがない。
また、上述のように、係止部材用通路が湾曲ではなく屈曲している場合も同じ効果を発揮する。例えば、図13(f)に示すように、係止部材用通路132aが錠本体132を貫通しておらず、係止部材が固定された位置でロックされる施錠装置であっても、係止部材用通路が屈曲していることにより、開錠のための部位を外部から覗き見されることがない。
また、図13(g)に示すように、係止部材用通路132bが錠本体132を貫通しており、係止部材が任意の位置でロックされる施錠装置であっても、係止部材用通路132bが屈曲していることにより、ダイヤルリングの開錠のための部位を外部から覗き見されることがない。
この様に、係止部材用通路が湾曲または屈曲することにより、その通路を介しては、ダイヤルリングを視認不可能とすることができる。つまり、ダイヤルリングの開錠のための部位の覗き見を防止することができる。なお、係止部材用通路とは、バンド等の係止部材が挿入される、軸側溝、軸側孔、本体側溝または本体側孔によって形成される通路である。
つまり、軸が存在していなくても、係止部材用通路が、図13(d)〜図13(g)に示すように湾曲または屈曲していることにより、係止部位の外部からの覗き見を防止することができる。
また、例えば、図19(a)〜図19(c)に示すように、係止部材が錠本体を2回通過する場合、係止部材用通路の幅を広くする必要がある。この場合、係止部材用通路が直線状であり、2回通過させず1回だけ通過した状態で係止部材をロックすると、隙間から、ダイヤルリングの開錠のための部位が容易に見えてしまう恐れがある。しかしながら、上述のように係止部材用通路を湾曲または屈曲させることにより、係止部位の状態を見られることが防止できる。
この湾曲形状または屈曲形状はダイヤルリングの外周で係止部材を係止するダイヤル錠の係止部材用通路においても同様に、不正開錠を防止する効果がある。
なお、図11(b)に示す錠本体130の錠本体側バンド溝134は、軸310が有する軸側バンド溝312と同様に湾曲している。また、錠本体130と軸310とを用い、ダイヤル錠1を組み立てる場合、ロック用ダイヤルリング200のリング側バンド溝202も、軸310が有する軸側バンド溝312と同様に湾曲したものを使用する。
また、図6を用いて説明したロック用ダイヤルリング200は、リング内部材210の軸方向の幅と、リング外部材220の軸方向の幅が同一であったが、リング内部材210の半径方向内側の軸方向の幅をリング外部材220の軸方向の幅より狭くしてもよい。
図14は、図6に示したロック用ダイヤルリング200の変形例であるロック用ダイヤルリング230の概観を示す図である。図14(a)は、ロック用ダイヤルリング230の左側面図であり、図14(b)は、ロック用ダイヤルリング230の右側面図であり、図14(c)は、ロック用ダイヤルリング230のC−C断面図であり、図14(d)は、ロック用ダイヤルリング230のD−D断面図である。
図14(c)に示すように、リング内部材210の半径方向内側の軸方向の幅であるW1と、リング外部材220の幅であるW2とは、W1<W2の関係になっている。
こうすることで、ロック用ダイヤルリング230を用いてダイヤル錠1を組み立てた際に、ロック用ダイヤルリング230の横の隙間から、リング側バンド溝202が見えにくくなる。
上述のように、リング側バンド溝202の半径方向外側の番号表示部203に付された番号は、開錠のための番号となるため、リング側バンド溝202を外部から見えにくくすることは、他人にダイヤル錠1の開錠番号が漏れることを防ぐこととなる。
なお、ロック用ダイヤルリング200及びロック用ダイヤルリング230は、上述のように、リング内部材210とリング外部材220とに分離できるものとしたが、一体型であってもよい。リング内部材210とリング外部材220とに分離できることの利点は、開錠のための番号を使用者が決定し、その番号のロック用ダイヤルリングを作成できることにある。
しかしながら、一体型であっても、例えば、0〜9の10個の番号が開錠のための番号となるロック用ダイヤルリング、つまり、10種類の一体型ロック用ダイヤルリングを使用者に供給すれば、使用者は必要な番号の一体型ロック用ダイヤルリングを入手することで、使用者の選択した番号が開錠番号となるダイヤル錠1を作成可能である。
また、図6に示したリング内部材210の変形用切欠部204は、リング内部材210の厚みの約半分だけ切り込まれた部分であるとしたが、リング内部材210の切れ込みの深さは、厚みの約半分でなくてもよく、リング内部材210及びリング外部材220の弾性や強度等を考慮し、リング外部材220にリング内部材210を組み込むことが可能であり、かつ、容易には外れない深さであればよい。また、リング内部材210は変形用切欠部204を10個有するとしたが、リング内部材210が変形してリング外部材220に挿入可能であれば、変形用切欠部204の個数は10個以外でも構わない。
また、内側嵌合部205と外側嵌合部206は共に10個としたが、互いに対応可能であれば、それぞれ10個以外でも構わない。例えば、内側嵌合部205と外側嵌合部206が共に5個や20個であっても作製可能であり、内側嵌合部205が5個に対し外側嵌合部206が10個であっても構わない。つまり、凸状である内側嵌合部205の個数が外側嵌合部206の個数よりも少なければ作製可能である。
また、ロック用ダイヤルリング200は、その側面にバンド400の凸部401が当接することにより、バンド400のバンド本体をロックしている。しかしながら、側面以外で、400のバンド本体をロックしてもよい。
図15は、ロック用ダイヤルリングの内側の面でバンド本体をロックするタイプの一例であるロック用ダイヤルリング250の概観を示す図である。図15(a)は、ロック用ダイヤルリング250の側面図であり、図15(b)は、ロック用ダイヤルリング250のE−E断面図であり、図15(c)は、ロック用ダイヤルリング250のF−F断面図である。
図15に示すように、ロック用ダイヤルリング250は、ロック用ダイヤルリング200と同様にリング側軸孔251と、リング側バンド溝252とを有しており、ロック用ダイヤルリング200と同様に、ダイヤル錠1を構成する部品としてダイヤル錠1に組み込み、使用することができる。
なお、ロック用ダイヤルリング250も、ロック用ダイヤルリング200又はロック用ダイヤルリング230同様の2重構造型とすることも可能であり、一体型とすることも可能である。2重構造型であっても一体型であっても、ロック用ダイヤルリング250の有するバンド本体をロックする機能には影響しない。
図15(b)及び図15(c)に示すように、ロック用ダイヤルリング250は、軸側の面にのこぎり刃状のリング側係合部253を有しており、リング側係合部253に対応する係合部を有するバンド本体をロックすることができる。
図16は、上記リング側係合部253に対応するバンド本体を有するバンドの一例であるバンド410の概観を示す図である。バンド410は、図16に示すように、バンド側係合部411とストッパ413とを有する。なお、バンド400と同様に、以下に述べるバンドのストッパを除く部分をバンド本体という。
バンド側係合部411は、ロック用ダイヤルリング250のリング側係合部253と同様の形状をした凹凸部である。これらロック用ダイヤルリング250とバンド410とを用いてダイヤル錠1を組み立てた場合、バンド側係合部411が、ロック用ダイヤルリング250のリング側係合部253と係合することで、バンド本体がロックされる。
なお、ロック用ダイヤルリング200とバンド400との関係と同様に、バンド410のバンド本体の真上に、全てのロック用ダイヤルリング250のリング側バンド溝252が来た場合は、リング側係合部253が存在しないため、バンド本体を錠本体から抜き挿しできる。
上述のように、リング側係合部253とバンド側係合部411との係合によりバンド本体をロックすることにより、ダイヤル錠1により傘を施錠する際、バンド400とロック用ダイヤルリング200とを用いた場合より、傘を施錠する部分のバンドの長さをより細かく調整できる。
また、バンド側係合部411は、バンド410を用いたダイヤル錠1を傘に取り付けた際に、傘布等に食い込むことにより、ダイヤル錠1を上方向へ抜けにくくする効果を持つ。
また、ダイヤル錠1に用いるバンドは、上述のバンド400及びバンド410以外の形
状でもよく、ロック用ダイヤルリング200又はロック用ダイヤルリング250により、バンド本体がロックされる形状であればよい。
図17は、ロック用ダイヤルリング200又はロック用ダイヤルリング250に対応するバンドの例を示す図である。図17(a)〜図17(c)に示すバンドは、ロック用ダイヤルリング200に対応するバンドであり、上述のバンド400の変形例である。図17(d)に示すバンドは、ロック用ダイヤルリング250に対応するバンドであり、上述のバンド410の変形例である。
図17(a)に示すバンド420は、上述のバンド400と同様の凸部421をバンド本体の上辺に有し、更に底辺にのこぎり刃状の滑り防止部422を有する。滑り防止部422は、ダイヤル錠1を傘に取り付けた際に、傘布等に食い込むことにより、ダイヤル錠1が下方向へ抜けにくくする効果を持つ。
図17(b)に示すバンド430は、上述のバンド400と同様に凸部431をバンド本体の上辺に有するが、バンド400の凸部401とは形状が異なっており、隣接する凸部431間が曲線で構成されている。こうすることで、バンド本体が凸部431の付け根部分から裂けにくくなる。
図17(c)に示すバンド440は、バンド本体の上辺は図17(b)に示すバンド430と同様の形状の凸部441を有し、バンド本体が凸部441の付け根部分から裂けにくくなる。更に、バンド本体の底辺に滑り防止部442を有するが、バンド440の滑り防止部442は、バンド420の滑り防止部422とは形状が異なっており、隣接する突起の頂点間が曲線で構成されている。こうすることで、バンド本体が滑り防止部442の付け根部分から裂けにくくなる。また、上述のように、ダイヤル錠1を傘に取り付けた際に滑り防止部442が傘布等に食い込むことにより、ダイヤル錠1が下方向へ抜けにくくなる。
図17(d)に示すバンド450は、図16に示すロック用ダイヤルリング250用のバンド410と同様に、バンド本体の上辺にバンド側係合部441を有する。しかしながら、バンド450のバンド側係合部451は、バンド410のバンド側係合部411と形状が異なっており、バンド側係合部451の隣接する突起の頂点間が曲線で構成されている。こうすることで、バンド本体が側係合部451の付け根部分から裂けにくくなる。
なお、これらの形状は複合させてもよく、例えば、バンド450が、バンド440が有する滑り防止部442を、バンド本体の底辺に有してもよい。
また、上述のバンド400等は、ダイヤル錠1により傘を施錠するための柔軟性を持ち合わせているプラスティック等の素材で作成されるとしたが、バンドを構成する素材は、プラスティックに限られず、例えば金属製のバンドでもよい。
図18は、ダイヤル錠1に用いることのできる金属製のバンドの一例であるバンド460を示す図である。図18(a)に示すように、バンド460は、腕時計のベルトのように複数の鋼板がつなぎ合わされた形状をしており、バンド400と同様に凸部461を有する。また、図18(b)に示すように、隣接する鋼板同士がピン462で屈曲可能に結合された形状をしている。
バンド460は金属性であるが、ピン462で結合された鋼板同士は、ピン462を軸とした周方向に自由度を持ち、図18(b)に示すように、傘を巻くのに十分な柔軟性を持つ。
なお、図18に示すバンド460は、凸部461を有し、ロック用ダイヤルリング200に対応するバンドであるが、凸部461の代わりに、バンド410が有するバンド側係合部411を備えることで、ロック用ダイヤルリング250に対応することもできる。
バンド460のように、金属のような強固な素材をバンドに使用することで、例えば、傘の盗難目的でバンド部分を破壊されることを防ぐことが出来る。また、バンドの耐用寿命を延ばすことができる。
また、図18に示す形状を、セラミック等の他の素材に適用することも可能である。また、バンド460のようにバンドの素材として金属を用いた場合、腐食しにくい非鉄金属や、表面に非金属のコーティングを施した金属等を用いてもよい。こうすることで、バンドの耐用寿命がより延長され、また、施錠される傘に錆びなどが付着することがない。
また、屈曲可能に結合される単位をより細かなものにしてもよい。
図18(c)は、複数の板状の部材が帯状に屈曲可能につなぎあわされている係止部材の一例を示す図である。図18(c)に示すバンド463は、部材463aおよび部材463aがピン462により屈曲可能につなぎ合わせられている。これら、部材463aおよび部材463aのように、ピン462により屈曲可能につなぎ合わせられる部材の、バンドの長手方向の長さを短くすることにより、例えば、施錠時の施錠対象物品に対する密着度を向上させることができる。
更に、ロック用ダイヤルリングに係止される凹凸部が、図18(a)に示すバンド460に比べ、凹凸部全体としてより柔軟に湾曲または屈曲することができる。従って、図13(d)〜図13(g)に示すような、係止部材用通路が湾曲または屈曲している施錠装置においても使用することが可能となる。結果として、外部からの開錠のための部位の覗き見を防止できる施錠装置においても、金属性のような、より強固な係止部材を使用することが可能となる。
また、上述のダイヤル錠1においては、バンド400は、図1及び図2に示すように、バンド400のストッパ403を錠本体100のバンド取付孔101に係止させ、バンド頭部を錠本体100に差し込み、ロック用ダイヤルリング200でバンド本体をロックする、という使い方をしている。ダイヤル錠1を構成する各部品を、図1に示した各部品以外の組み合わせ、例えば、錠本体130とロック用ダイヤルリング250と軸310とバンド410という組み合わせであっても同様である。
しかしながら、バンドの使い方は上記のような使い方に限られず、例えば、バンド本体が錠本体の中を2回通過する使い方でもよい。
図19は、バンド本体がダイヤルリングの中を2回通過するバンドの使い方の一例として、バンド本体が錠本体120の中を2回通過するバンドの使い方の例を示す図である。その他、ダイヤル錠1を構成する部品として、ロック用ダイヤルリング200と軸300とを使用しているものとする。また、図19(a)及び図19(b)は、バンド400を使用した例を示す図であり、図19(c)は、図20に示すバンド470を使用した例を示す図である。なお、いずれの図もダイヤル錠1により傘を施錠した状態を上面から見た際の概観を示す図である。
図19(a)に示す例では、バンド頭部を左側から錠本体120に差し込み、錠本体120右側から出てくるバンド頭部を再び錠本体120の左側から差し込んでいる。更に、
錠本体120右側から出てくるバンド頭部を図19(a)の矢印方向へ引っ張り、傘を適切に締めながらロック用ダイヤルリング200を回転させロックしている。
図19(b)に示す例では、バンド頭部を左側から錠本体120に差し込み、錠本体120右側から出てくるバンド頭部を再び錠本体120の右側から差し込んでいる。更に、錠本体120左側から出てくるバンド頭部を図19(b)の矢印方向へ引っ張り、傘を適切に締めながらロック用ダイヤルリング200を回転させロックしている。
ここで、図19(a)及び図19(b)に示す例では、バンド400がバンド取付孔に係止されることなく、バンド400を使用しているが、ストッパ403が錠本体120に入り込めないため、バンド頭部を引っ張ってもバンド400が抜けることはない。
図19(c)に示す例では、図20に示すバンド470を使用している。図20に示すように、バンド470は、バンド400からストッパ403をなくし、両端をバンド頭部とした形状、つまり双頭形状をしている。また、バンド400と同様に凸部を有している。
図19(c)に示す例では、バンド470の両端を錠本体120の左側から差し込み、錠本体120右側から出てくる両端を図19(c)の矢印方向へ引っ張り、傘を適切に締めながらロック用ダイヤルリング200を回転させロックしている。
図19(c)に示す例では、図19(a)及び図19(b)に示す例と異なり、最終的にロックする際にバンドの両端を引っ張っている。また、図20に示すバンド470は、両端がバンド頭部となる双頭形状をバンド400に適用したものであるが、この双頭形状はバンド400に限らず、他のバンドにも適用できる。また、図19に示す各例において、バンド400の差し込み方向は一例であり、左右逆でも施錠は可能である。
このように、バンドの使い方にバリエーションを持たせることにより、例えば、ダイヤル錠1の使用者の好みに合ったバンドの使い方でダイヤル錠1を使用することができる。また、例えば、図19に示す例では、錠本体120がバンド取付孔を備える必要がなく、錠本体120作成時のコストダウンを図ることができる。
また、例えば、バンド400の厚みと、軸300の軸側バンド溝の軸方向と垂直方向の幅などとの関係から、更にバンド400を錠本体120に通すことが可能な場合、バンドを複数本使用することも可能である。
例えば、1本のバンド400を図1に示す方法で錠本体120に通し、もう1本のバンド400を図19(b)に示す方法で同じ錠本体120に使う。こうすることで、例えば一方のバンド400で傘を締め、他方のバンド400は、手すり等の固定物に通して締めるといった使い方が可能である。つまり、上述の、コイル状ワイヤ20を使用して傘と固定物とを連結することと同様の盗難防止効果を生ずる。
また、上述の各種バンドでは、いずれも、バンド本体が有する凸部401等がロックされることにより、バンド本体がロックされるとした。しかしながら、バンド自身がバンド本体をロックする機能を有していてもよく、その機能に応じたバンドの使い方でダイヤル錠1を使用してもよい。
図21は、バンド自身がバンド本体をロックする機能を有するバンドの一例であるバンド480及び使用方法を示す図である。
図21(a)は、バンド480の概観を示す図である。バンド480は、バンド400と同様の凸部485を有し、更に、留孔481と、通過孔付ストッパ483とを有する。また、通過孔付ストッパ483は、通過孔482と留板484とを有している。図21(a)に示すように留孔481はバンド本体に複数個並んでいる。
図21(b)は、バンド480の下面図である。図中の点線は、留孔481、通過孔482、及び留板484の存在を示している。
通過孔482は、図21(c)に示すように、バンド本体を通過させることができ、留板484は、留孔481に差し込むことができる。
図21(d)は、バンド480をダイヤル錠1に使用する方法を示す概観図である。バンド480をダイヤル錠1に使用する際は、図21(d)に示すように、留板484の先が錠本体に入る程度の凹部を錠本体の右側に作成する。例えば、錠本体100において、錠本体側軸孔102dの存在する錠本体の右側部分をこの凹部が作成できる程度に伸ばした上で凹部を作成する。この凹部が作成された錠本体100を、以下、錠本体10とする。また、錠本体10には、軸300に3つのロック用ダイヤルリング200とが組み込まれているものする。
なお、軸300は、軸頭部と錠本体10の錠本体側軸孔102dとの摩擦力により、錠本体10に固定される。
図21(e)は、バンド480が錠本体10にロックされた状態を示す概観図である。図21(d)に示す状態から、バンド480を図21(c)に示す形状にし、バンド480を錠本体10に適切に押し込み、ロック用ダイヤルリングを回転させることでバンド480の凸部485がロックされる。
バンド400をダイヤル錠1に用いた場合には、バンド400のバンド本体がロック用ダイヤルリング200によってロックされることにより、錠本体100にロックされた。つまり、傘を適切に締めるのに必要なバンド本体の長さがダイヤルリングのロック位置で決定されていた。
しかしながらバンド480では、傘を適切に締めるのに必要なバンド本体の長さが決定されるのは、バンド480の留板484が差し込まれるバンド本体の留孔481の位置である。更に、バンド480の凸部485が錠本体10内部でロックされることにより、バンド480全体をダイヤル錠1に対して右に移動させることが出来ない。
つまり、留板484の先端を錠本体10から外に出すことが出来ないため、留孔481から留板484を抜くことができない。このようにして、バンド480を用いたダイヤル錠1により傘を施錠することができる。
また、バンド自身がバンド本体をロックする機能を有するバンドは別の形状でもよい。
図22は、バンド自身がバンド本体をロックする機能を有するバンドの別の一例であるバンド490及びその使用方法を示す図である。
図22(a)は、バンド490の概観を示す図である。バンド490は、バンド400と同様の凸部495と、突起491と、通過孔付ストッパ493とを有し、通過孔付ストッパ493は通過孔492を有している。図22(a)に示すように、突起491はバンド本体に複数個存在している。
図22(b)は、バンド490の下面図である。図中の点線は、通過孔492の存在を示している。通過孔492は、図22(c)に示すように、バンド本体を通過させることができる。
図22(d)は、バンド490が錠本体10にロックされた状態を示す概観図である。バンド490を錠本体10に右から差し込み、バンド490を図22(c)に示す状態にし、バンド490を錠本体10に適切に押し込み、ロック用ダイヤルリングを回転させることでバンド490の凸部495がロックされる。
図22(d)に示すように、ロックされた状態では、突起491が通過孔492の右側の辺に当たり、バンド本体を抜くことはできない。また、バンド480と同様に、バンド490の凸部495が錠本体10内部でロックされることにより、バンド490全体をダイヤル錠1に対して右に移動させることが出来ない。
このようにして、バンド490を用いたダイヤル錠1により傘を施錠することができる。
上述のように、バンド480及びバンド490は、バンドをロックする際に、バンドを引っ張りながらロックするのではなく、通過孔付ストッパ483または通過孔付ストッパ493を錠本体10に適切に押し込んで、適切な位置でロックすることになる。つまり、使用者にダイヤル錠1の別の施錠手順を提供をすることができる。
また、バンド480は、バンド本体の留孔481を有する部分と、それ以外の部分に分離できてもよい。
図23は、バンド480を、バンド本体の留孔481を有する部分と、それ以外の部分とに分離できる構成にしたバンドの一例を示す図である。
図23(a)に示すバンド500は、バンド本体部501とバンド尾部503とから構成される。バンド本体部501は、留孔502を有する。バンド尾部503は、凸部508と本体固定板507と通過孔付ストッパ505とを有し、通過孔付ストッパ505は、通過孔504と、留板506とを有する。
バンド500は、図21に示したバンド480と同様の外観をしており同様の機能を有する。つまり、バンド500を用いたダイヤル錠1により傘を施錠することができる。
図23(b)は、図23(a)に示すバンド500のG−G断面図である。図23(b)に示すように、バンド尾部503の本体固定板507はバンド本体部501と接する面に複数の鋭利な突起を有し、更に、バンド尾部503の本体固定板507に相対する面にも、バンド本体部501と接する面に複数の鋭利な突起を有する。つまり、バンド本体部501は、上下から複数の鋭利な突起に挟まれることにより、バンド尾部503と固着される。
図23(c)に示すように、本体固定板507は、バンド尾部503の凸部508とは反対の辺に所定の手段で開閉可能に取り付けられている。つまり、使用者により、バンド本体部501とバンド尾部503とは分離することができる。
こうすることで、例えば、バンド本体部501が痛んだ際に、バンド本体部501のみを取り替えることができる。また、バンド尾部503は傘に巻かれることはない部分であ
り、柔軟性は要求されない。つまり、金属等の強度と耐久性を備える素材で作成することができる。
なお、図22に示したバンド490も、バンド500と同様に、バンド本体部とバンド尾部に分離できる形状にすることができる。
また、バンド尾部503は、バンド本体部501以外のバンドを利用することができる。
図24は、バンド尾部503と、バンド本体部501以外のバンドとを錠本体10に使用して施錠する方法を示す概念図である。
図24(a)に示すバンド510は、数珠形状をしており、紐と複数の球体とで構成される。
図24(b)は、バンド尾部503とバンド510とを錠本体10に使用する場合を示す概念図である。なお図21に示した錠本体10と同様に軸300とロック用ダイヤルリング200とが組み込まれており、錠本体10にバンド尾部503をロックすることは可能な状態である。
バンド尾部503は図23(a)に示したように通過孔付ストッパ505部分に通過孔504を有しており、図24(b)は、通過孔504にバンド510の両端が通されたバンド尾部503が、錠本体10にロックされている状態を示している。バンド尾部503がロックされている状態では、バンド510の有する球体は、通過孔504を通り抜けることができない。
また、バンド510の1端のみを通過孔504に通して使用することもできる。
図24(c)は、バンド510の1端のみが通過孔付ストッパ505の通過孔504に通され、バンド尾部503がロックされている状態を示す概念図である。
この場合、錠本体10には、図24(d)に示す錠本体10の後面の概観図が示すように、バンド510の球体が通過できる程度の円形のバンド取付孔106を設ければよい。バンド510は、バンド取付孔106から差し込まれた場合、終端が結索されることで、図24(c)に示す状態であっても錠本体10から抜け落ちることはない。
上述のように、図24(b)及び図24(c)の概念図に示される方法により、傘をバンド510で締める、つまり、バンド尾部503とバンド510とを用いたダイヤル錠1により傘を施錠することができる。もちろん、図23のバンド本体部501と同様の形状を持つバンドを用いて図24(b)に示す施錠方法で傘を施錠することも可能である。例えば、錠本体10のバンド取付孔106を、錠本体100のバンド取付孔101と同様の形状にすれば、図31を用いて後述するバンド600を用いて図24(c)の様に施錠することができる。
なお、バンド510と同様の機能を有するバンドを使用者が作成することも可能である。例えば、紐に一定間隔で結索による瘤を作ることにより、バンド510と同様の機能を有するバンドを作成することができる。
また、図24(c)の概念図に示される施錠方法を、バンド尾部503と、図22に示したバンド490の通過孔付ストッパ493の形状を持つバンド尾部との両方に適用させ
るためのバンドを作成することもできる。
図25は、1本の紐で作成されたバンドが、バンド尾部503の通過孔付ストッパ505及びバンド490の通過孔付ストッパ493の両方に対応できることを示す概念図である。
図25に示すように、錠本体10に2つのバンド取付孔106を設け、2つのバンド取付孔106のそれぞれから紐の両端を差し込む。そして、錠本体10から出てくる紐の両端同士を一定間隔で結索し、瘤と、2本の紐で形成される輪とが繰り返される形状のバンド520を作成する。
こうすることで、通過孔付ストッパ493の場合は、バンド520の瘤によりバンド520をロックすることができ、通過孔付ストッパ505の場合は、バンド520の瘤だけでなく輪によってもバンド520をロックすることができる。 つまり、上述のように、錠本体10に両端を通した紐を一定間隔で結策することにより、図24(c)の概念図に示した施錠方法を、バンド尾部503と、図22に示したバンド490の通過孔付ストッパ493の形状を持つバンド尾部との両方に適用させるためのバンドを作成できる。バンド520は紐を一定間隔で結策するだけであり、使用者が作成することは容易である。
なお、バンド尾部503を図24に示す施錠方法に用いる場合は、図23(c)に示した本体固定板507等のバンド本体部501と結合するための部位は不要である。また、バンド尾部503を通過孔504の存在する方向とは反対側に延長した形状にして、バンド尾部503を錠本体10に差し込んだ状態で、バンド尾部503の通過孔504の存在しない側の先端部分を折り曲げる、又は、通過孔504の存在しない側の先端部分に金属製のリングを取り付けるなどして、開錠してもバンド尾部503が錠本体10から抜け落ちないようにしてもよい。
また、バンド尾部503の通過孔504にバンド体部501を通し、留孔502に留板506を差し込み、バンド尾部503を錠本体10に押し込み、ロック用ダイヤルリングを回転させることでロックするとした。しかしながら、バンド本体がバンド尾部に通されずに、バンド本体がバンド頭部に存在する係止部を通すための孔である貫通孔を複数有し、バンド本体の貫通孔を通したバンド頭部に存在する係止部を錠本体に押し込み、ロック用ダイヤルリングを回転させることでロックしてもよい。
図26は、バンド体部に係止部が差し込まれる孔を複数有するバンド530と、バンド530を用いるためのダイヤル錠1の概要を示す図である。
図26(a)は、バンド530を用いるための錠本体140等の概観を示す図であり、バンド530に対応する軸320と、全体として円筒形の形状を有する錠本体140とが用いられている。
軸320は、図26(b)に示すバンド530をダイヤル錠1に使用するため軸である。バンド530のバンド頭部に存在する係止部532の断面は、図26(c)に示すように、凸部531を除くと円形であり、そのため、係止部532が差し込まれる側である軸320も円形の穴と凸部531が通る溝(円柱状の溝)が設けられ、係止部532を差し込むことができる。
なお、図26(a)に示す錠本体140の形状は円筒形であるが、錠本体の形状のバリエーションの1つとしての形状であり、錠本体140の代わりに錠本体100や錠本体120等を用いてもよい。
図26(b)に示すように、バンド530のバンド本体は係止部532を通すための孔である貫通孔531aを複数有する。バンド530は、上述のバンド480及びバンド490と同様に、バンド自体がバンド本体をロックするバンドであり、係止部532がいずれかの貫通孔531aに通された後、つまり、バンド本体がバンド530自身にロックされた後、図26(a)に示す軸320に差し込まれ、図26(d)に示す形態で係止部532が錠本体140にロックされる。
つまり、バンド本体が傘を適切に締める状態になるように、係止部532がいずれかの貫通孔531aに通された後に、錠本体140に差し込まれ、錠本体140内でロックされる。このことにより、係止部532が貫通孔531aから抜けることはなく、傘を施錠することができる。
また、バンド530のバンド本体に、バンド420と同様の滑り防止部を設けるなどの変形を行なってもよく、図27A(a)および図27A(b)は、バンド530の変形例を示す図である。
図27A(a)に示すバンド540は、バンド530のバンド本体の上下に、バンド420と同様の滑り防止部を有するバンドである。滑り防止部であるのこぎり刃状の突起が傘布等に食い込むことにより、バンド530が用いられたダイヤル錠1を傘から上下方向に抜きにくくする効果を持つ。
図27A(b)に示すバンド550は、バンド530の貫通孔531aの直角部分に丸みを持たせた貫通孔551を有するバンドである。こうすることで、バンド550のバンド本体が貫通孔551から裂けにくくなる。
また、係止部材の一端がダイヤル錠本体に係止されるダイヤル錠においても係止部材のダイヤルリングに係止される係止部が、係止部材自体を貫通する係止部材の構造を用いて、施錠対象物を締め付けて、不動物体の閉鎖環状部に施錠することが可能である。
図27A(c)に示すバンド560および図27A(d)に示すバンド570とは図5に示すバンド400と同様に、係止部材が錠本体の取付孔や取付溝を通り抜けることが出来ない大きさの尾部を有している。また、バンド560およびバンド570のそれぞれは、一端がダイヤル錠本体に着脱可能な係止部材であって、係止部材のダイヤルリングに係止される係止部が係止部材自体を貫通する係止部材である。また、バンド560およびバンド570は、その係止部材の互いに異なる形状を示す例である。
図27A(c)および図27A(d)に示すバンドと、例えば、図1または図12に示した錠本体を使用して、係止部材のダイヤルリングで係止される係止部が貫通可能な孔が数多く係止部材自体に存在するダイヤル錠を作製することが可能である。
図27A(c)に示すバンド560は錠本体のバンド取付孔またはバンド取付溝に着脱可能なストッパ563を備えている。更に、係止部の特定の決まった位置でダイヤル錠のダイヤルリングでロックされる係止部562と係止部562に形成された凸部561および係止部562が貫通する貫通孔561aを複数有している。
このバンド560を取り付け可能なバンド取付孔またはバンド取付溝を有するダイヤル錠本体を用いての施錠手順を述べる。まず、バンド560をダイヤル錠本体のバンド取付孔またはバンド取付溝に取り付け、施錠対象物の狭窄部位にバンド560を巻きつけるようにして、係止部562を最適な位置にある貫通孔561aに通す。更に、係止部562
をダイヤル錠本体に差込み、ダイヤルリングを回してロックする。なお、係止部562をダイヤル錠本体に差込む前にダイヤル錠本体を不動物体の閉鎖環状部に通してから、係止部562をダイヤル錠本体に差込み、ダイヤルリングを回してロックすると、施錠対象物を不動物体の閉鎖環状部に施錠することも可能である。
図27A(d)に示すバンド570は錠本体のバンド取付孔またはバンド取付溝に着脱可能なストッパ573を備え、係止部の任意の位置でダイヤル錠のダイヤルリングでロックされる係止部572と係止部572に形成された多数の凸部571および係止部572が貫通する貫通孔571aを複数有している。
このバンド570を取り付け可能なバンド取付孔またはバンド取付溝を有するダイヤル錠本体を用いての施錠手順を述べる。まず、バンド570をダイヤル錠本体のバンド取付孔またはバンド取付溝に取り付け、施錠対象物の狭窄部位にバンド570を巻きつけるようにして、係止部572を最適な位置にある貫通孔571aに通す。更に、係止部572をダイヤル錠本体に差込み、錠本体を貫通して錠本体から出て来た係止部572を錠本体から引き抜く様にして施錠対象物を締め付けてからダイヤルリングを回してロックする。この様にすれば、バンド560を用いた場合より更に締め付けてからの施錠が可能となる。
なお、係止部572をダイヤル錠本体に差込む前にダイヤル錠本体を不動物体の閉鎖環状部に通してから、係止部572をダイヤル錠本体に差込み、ダイヤルリングを回してロックすると、施錠対象物を不動物体の閉鎖環状部に施錠することも可能である。
もちろん、ストッパが存在せず、係止部材が錠本体に固定され、ストッパがないこと以外はバンド560とバンド570と構造が同じである着脱不可能な錠も作製可能である。しかしながら、その場合、係止部材が損傷を受けると、錠自体が使用不可能になってしまうので、係止部材が錠本体から着脱可能で交換可能なバンド560とバンド570の様な係止部材を用いるダイヤル錠の方が維持費も安く優れていると考えられる。
なお、以上に記載した、バンド560とバンド570の構造上の特徴は、後述する図63、図67、図68、図69、図70、図78に示すダイヤル錠にも応用可能である。
また、バンド570のストッパ573を取り付け可能なバンド取付孔またはバンド取付溝を有するダイヤル錠本体のバンド取付孔またはバンド取付溝にストッパ573を取り付けなくても、施錠対象物の狭窄部位にバンド570を巻きつけるようにして、係止部572を最適な位置にある貫通孔571aに通してから、ダイヤル錠本体に差込み、錠本体を貫通して錠本体から出て来た係止部572を錠本体から引き抜く様にして施錠対象物を締め付けてからダイヤルリングを回してロックすることが可能である。この場合不動物の閉鎖環状部への施錠には、施錠対象物とまとめて締め付ける必要があり、難があるが、傘を開かない様にすることは可能である。このことから、バンド570はストッパ部分がなくても利用可能な構造で、ストッパ部分がないバンド570を利用する場合にはダイヤル錠本体にバンド取付孔やバンド取付溝が必要ない。
図27A(e)は、バンド尾部であるストッパがなく貫通孔が複数存在するバンドの一例を示す図である。図27A(e)に示すバンド574は、複数の貫通孔575aが長手方向に並ぶ第1端部と、複数の凸部575が長手方向に並ぶ第2端部とで構成される。
貫通孔575aは、凸部575を有する第2端部が貫通可能な大きさである。また、第1端部は錠本体を貫通する必要がないため、第1端部の長手方向に垂直な幅、つまり、図27A(e)における上下方向の第1端部の幅を、錠本体のサイズに関係なく大きくする
ことができる。
また、図27A(d)に示すバンド570は、複数の貫通孔571aを有しているが、貫通孔は1つでもよい。
図27A(f)は、貫通孔が1つだけ存在するバンドの一例を示す図である。図27A(f)に示すバンド576は、ストッパ578と1つの貫通孔577aが存在する第1端部と、複数の凸部577が長手方向に並ぶ第2端部とで構成される。
貫通孔577aは、凸部577を有する第2端部が貫通可能な大きさである。また、ストッパ578により錠本体に係止される。
また、図27A(e)に示すバンド574は、複数の貫通孔575aを有しているが、ストッパのないバンドであっても貫通孔は1つでもよい。
図27A(g)は、ストッパがなく貫通孔が1つだけ存在するバンドの一例を示す図である。図27A(g)に示すバンド579は、1つの貫通孔580aが存在する第1端部と、複数の凸部580が長手方向に並ぶ第2端部とで構成される。
貫通孔580aは、凸部580を有する第2端部が貫通可能な大きさである。また、バンド574と同様に、第1端部は錠本体を貫通する必要がないため、第1端部の長手方向に垂直な幅を、錠本体のサイズに関係なく大きくすることができる。
このように、貫通孔の数やバンド尾部であるストッパの有無の組み合わせによる複数種のバンドをダイヤル錠で使用可能であり、具体的な施錠形態を図27B(a)〜図27B(d)を用いて説明する。
図27B(a)は、図27A(d)に示すバンド570または図27A(f)に示すバンド576を使用した施錠形態の一例を示す図である。
図27B(a)に示す施錠形態は、傘を施錠し、かつ、施錠された傘と、点線で示される領域にある物品とを連結する場合の施錠形態を示している。
例えば、バンド570を使用する場合、(1)錠本体に係止されたバンド570の、凸部571を有する第2端部を1つの貫通孔571aに貫通させることにより、バンド570のみによる環状領域を形成する。(2)バンド570と錠本体との間の領域、例えば、図27B(a)における点線の円内に、例えば手すりの一部等が存在する位置関係において、第2端部を錠本体の軸に貫通させる。(3)バンド570のみによる環状領域に例えば傘を配置する。(4)第2端部を、バンド570が軸部材を貫通している方向と同じ方向に引っ張ることにより、傘をバンド570で締め付ける。(5)複数のロック用ダイヤルリングの回転位置をバンド570が軸から挿抜できない位置にする。つまり施錠位置にする。
上記(1)〜(5)の手順により、傘を施錠でき、また、施錠された傘と不動物である手すりとを連結することができる。
図27B(b)は、図27A(e)に示すバンド574を使用した施錠形態の一例を示す図である。
図27B(b)に示す施錠形態は、傘を施錠し、かつ、施錠された傘と、点線で示され
る領域にある物品とを連結する場合の施錠形態を示している。
バンド574を使用する場合、(1)点線の円内にある、例えば手すりの一部をバンド574で巻きつけるようにして、バンド574の第2端部を1つの貫通孔575aに貫通させることにより、手すりの一部が存在するバンド574のみの環状領域を形成する。(2)第2端部を、手順(1)で貫通した方向とは逆向きに他の貫通孔575aに貫通させることにより、別の環状領域を形成する。(3)第2端部を錠本体の軸に貫通させる。(4)手順(2)で形成された環状領域に傘を配置する。(5)第2端部を、バンド574が軸を貫通している方向と同じ方向に引っ張ることにより、傘をバンド574で締め付ける。(6)複数のロック用ダイヤルリングの回転位置をバンド574が軸から挿抜できない位置にする。つまり施錠位置にする。
上記(1)〜(6)の手順により、傘を施錠でき、また、施錠された傘と不動物である手すりとを連結することができる。なお、バンド574ではなく、例えば図27A(d)に示すバンド570を使用して上記手順により同じ施錠形態をとることができる。この場合、バンド574のストッパ573は使用されない。
図27B(c)は、図27A(e)に示すバンド574または図27A(g)に示すバンド579を使用し傘を施錠する場合の施錠形態の一例を示す図である。
例えば、バンド574を使用する場合、(1)バンド574の第2端部を1つの貫通孔575aに貫通させることによりバンド574のみによる環状領域を形成する。(2)第2端部を錠本体の軸に貫通させる。(3)手順(1)で形成された環状領域に傘を配置する。(4)第2端部を、バンド574が軸を貫通している方向と同じ方向に引っ張ることにより、傘をバンド574で締め付ける。(5)複数のロック用ダイヤルリングの回転位置をバンド574が軸から挿抜できない位置にする。つまり施錠位置にする。
上記(1)〜(5)の手順により傘を施錠できる。なお、バンド574またはバンド579ではなく、例えば、図27A(d)に示すバンド570または図27A(f)に示すバンド576を使用して上記手順により同じ施錠形態をとることができる。この場合、それぞれのバンドのストッパは使用されない。
図27B(d)は、図27A(e)に示すバンド574または図27A(g)に示すバンド579を使用した施錠形態の一例を示す図である。
図27B(d)に示す施錠形態は、傘を施錠し、かつ、点線で示される領域にある物品と連結する場合の施錠形態を示している。また、この施錠形態は、図27B(b)を用いて説明した手順とほぼ同じ手順で実現できる。手順で異なる部分は、手順(2)において、第2端部を他の貫通孔575aに貫通させるのではなく、手順(1)でバンドの第2端部を貫通させた貫通孔575aと同じ貫通孔575aに貫通させる部分である。
上記手順により、傘を施錠でき、また、施錠された傘と不動物である手すりとを連結することができる。なお、バンド574またはバンド579ではなく、例えば、図27A(d)に示すバンド570または図27A(f)に示すバンド576を使用して上記手順により同じ施錠形態をとることができる。この場合、それぞれのバンドのストッパは使用されない。
上述の図27B(a)〜図27B(d)に示す施錠形態は、図27A(d)〜図27A(g)に示すバンドを使用しており、これらバンドは、全て、自身の第2端部を貫通させることのできる貫通孔を有している。図27B(a)〜図27B(d)に示す施錠形態で
は、この貫通孔にバンドの第2端部を貫通させることで、1つまたは2つの閉じた領域を形成することができる。従って、バンドをロックする際に、最終的に軸を貫通し錠本体外部に出た第2端部を強く引っ張りながらロックすることで、1つ以上の物品を同時に強く締め付けながらロックすることができる。このことは、防犯効果の向上にとって非常に有意なことである。
また、施錠対象物品の大きさや形状等に応じ、1つの閉じた領域に複数の物品を配置し施錠が可能であることは当然である。
また、図27B(a)、図27B(b)、および図27B(d)に示す施錠形態において、傘と手すりとを連結するとしたが、同時に2つのものを施錠してもよい。例えば、バンドのみ、またはバンドと錠本体とで形成される2つの閉じた領域のそれぞれに1つずつ傘を配置し、同時に2本の傘を施錠してもよい。上述のように、バンドの、自身の第2端部を通過させる貫通孔の効果により、同時に2つの傘を強く締め付けることができるため、2つの傘を同時に施錠することが可能である。
なお、図27B(a)〜図27B(d)に示す施錠形態を実現するための手順は、それぞれ上記の順番どおりでなくてもよい。例えば、図27B(a)に示す施錠形態は、(3)傘を配置してから、(2)バンド570の第2端部を錠本体の軸に貫通させても実現される。
また、各施錠形態を実現するためのバンドは、図27A(d)〜図27A(g)に示すバンドと同一の形状でなくてもよく、貫通孔の数やストッパの有無などは、錠本体の形状や、施錠対象物の大きさなどで変化させてもよい。要するに、少なくとも一部が湾曲または屈曲が可能であり、ダイヤル錠で係止される部位を有する端部が貫通可能な孔を対向する端部に有しているバンドであればよい。
以上のように、バンドが、係止される部位である自身の第2端部を貫通させることのできる貫通孔を有することにより、よりしっかりと施錠できる、施錠対象物品を不動物と連結させることができる等の効果があり、防犯効果をより向上させることができる。
更に、図27B(a)、図27B(b)および図27B(d)を応用して、3つ以上の環状領域を作り、3つ以上のものを施錠することも可能である。
また、図7を用いて述べたように、ダイヤル錠1に軸300と錠本体100とを用いて組み立てた後で、軸300を錠本体100から抜くことは可能である。つまり、ダイヤル錠1を組み立て直すことが可能である。しかしながら、例えば、最初に開錠番号を決定し組み立てた後に開錠番号を変更することはないと考える使用者のために、ダイヤル錠1を組み立て直し不可な構成にしてもよい。
図28は、ダイヤル錠1を組み立て直し不可な構成とする錠本体100の一例を示す図である。
例えば、図28に示すように、錠本体100の錠本体側軸孔102aの左側の内径をr3とし、錠本体側軸孔102aの右側の内径をr1とした場合、r3<r1の関係となるようにしておく。
この場合、軸300の外径をr1とし、軸300の長さを錠本体100の横幅よりわずかに短くしておく。この状態で、錠本体側軸孔102aの左側から差し込まれた軸300は、錠本体側軸孔102aの左側の内径を押し拡げながら、かつ102aの左側を通過す
る為に軸側バンド溝302の軸300の軸方向に対して垂直方向となる幅が狭まる様に変形して軸300の外径が小さくなり102aの左側を通過して、錠本体100に押し込まれる。更に、軸300の軸頭部が錠本体100の右側面と同一平面状に到達すると、錠本体側軸孔102aの左側の内径は復元力で元の内径であるr3に戻り、軸300の軸後部の外径も復元力で元の外径であるr1に戻る。
こうすることで、軸300は錠本体100から抜くことができなくなり、例えば、上述のように、最初に開錠番号を決定し、ダイヤル錠1を組み立てた後に開錠番号を変更することはないと考える使用者は、ダイヤル錠1をより安定した施錠装置として使用することができる。
また、上述のバンド400等は、柔軟性を有し湾曲可能であったが、バンドの代わりに湾曲しない固定形状の金属等をダイヤル錠1に用いてもよい。
図29は、バンドの代わりにU字型の棒体を用いてダイヤル錠1を構成した場合の概要を示す図である。図29(a)は、U字型の棒体であるU字棒800と、軸330と、錠本体150と、ロック用ダイヤルリング200とでダイヤル錠1を構成する際の組み立て方の一例を示す図である。
U字棒800は、本発明の施錠装置における係止部材の別の一例である。図29(b)は、図29(a)に示すU字棒800の下面図であり、図29(b)に示すように、U字棒800はロック用ダイヤルリング200と係合するための凸部801を有する。
図29(c)は、ロック用ダイヤルリング200を除く錠本体150の断面図であり、図29(c)に示すように錠本体150は軸330を挿入可能な空間と、U字棒800の凸部801が存在しないU字部分の一端を固定するための固定孔153を有する。また、図29(a)に示すようにロック用ダイヤルリング200を収めるためのダイヤル取付部151を有する。
使用者は、使用者が所望する開錠番号となるように、3つのロック用ダイヤルリング200のそれぞれを組み立て、錠本体150の3つのダイヤル取付部151のそれぞれにロック用ダイヤルリング200を入れる。
更に、軸330を錠本体150に挿入すると、軸330の軸頭部にあるガイド突起331と、錠本体150が有するガイド切欠152とが係合し、軸330の周方向が図29(a)に示す方向に固定される。
上記状態で、ロック用ダイヤルリング200のそれぞれを開錠番号に合わせ、つまり図29(a)に示すそれぞれのダイヤル取付部151の中央正面に開錠番号がくるようにダイヤルを回す。こうすることで、U字棒800を錠本体150に挿入された軸330に差し込むことができる。
U字棒800が軸330に差し込まれた状態でロック用ダイヤルリング200を開錠番号以外になるように回転すると、U字棒の凸部801がロック用ダイヤルリング200によって係止され、U字棒800は、錠本体150から抜くことはできない。
なお、図29(b)に示すように、U字棒800は凸部801を5つ有しており、3つあるロック用ダイヤルリング200とは、2つの異なる位置でロックされることとなる。しかしながら、U字棒800は凸部801をより多く有していてもよい。こうすることで、U字棒800をロックできる位置が多くなり、施錠の対象の傘のサイズに応じU字棒8
00をロックする位置を変更できる。この場合、軸330及び錠本体150の軸方向の長さなど必要なサイズ変更を行なえばよい。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2のダイヤル錠2を、図30〜図51を用いて説明する。
図30は、実施の形態2のダイヤル錠2の構成の概要を示す図である。ダイヤル錠2は、上述の実施の形態1のダイヤル錠1と異なり、2本の軸を有するダイヤル錠である。
なお、図30に示すような軸が2本の構成のダイヤル錠を、以下ダイヤル錠2とする。
図30(a)は、ダイヤル錠2の内部構造を示す概観図であり、図30(a)に示すように、ダイヤル錠2は、軸340及び軸350の2本の軸を有する。
ダイヤル錠2は、ダイヤル錠2の構成の中心となる錠本体160と、軸340が通された3つの歯車付きダイヤルリング260と、軸350が通された3つの歯車付き周部ロック用リング270と、バンド600とから構成される。
歯車付きダイヤルリング260のそれぞれは、軸340を回転軸とし回転させることができ、歯車付き周部ロック用リング270のそれぞれは軸350を回転軸として回転させることができる。また、歯車付きダイヤルリング260と歯車付き周部ロック用リング270とは互いの歯車が嵌合し、歯車付きダイヤルリング260を回転させることにより、歯車付き周部ロック用リング270を回転させることができる。
図30(b)は、歯車付き周部ロック用リング270の右側面の概観を示す図であり、上述のように歯車を有している。また、バンド通過用切欠部271を有し、外周形状は一部を直線で切り取られた円形をしている。上述のように、歯車付きダイヤルリング260を回転させることにより歯車付き周部ロック用リング270は回転する。
図30(c)は、歯車付きダイヤルリング260の左側面の概観を示す図であり、上述のように歯車を有している。上述のロック用ダイヤルリング200と同じく、周方向外側表面には番号表示部を有し(図示せず)施錠するための番号が等間隔で表示される。また、ロック用ダイヤルリング200とは異なり、バンド等をロックするための切欠部等は持たない。歯車付きダイヤルリング260は、使用者が施錠及び開錠するために、歯車付き周部ロック用リング270を回転させるためのダイヤルリングである。
なお、歯車付き周部ロック用リング270は、本発明の施錠装置における係止用リングの一例であり、歯車付きダイヤルリング260は、本発明の施錠装置における位置合わせ用リングの一例である。
図30(d)は、図30(a)に示すダイヤル錠2の別の形態を示す図である。図30(d)に示すダイヤル錠2は、軸340、軸350ともに、係止部材であるバンド600が挿入される軸側溝または軸側孔を有している。また、それぞれの軸側溝または軸側孔は、錠本体に対するそれぞれの軸の挿抜方向とは異なる方向に形成されている。図30(d)に示すように、これら2本の軸の軸側溝または軸側孔にバンド600が貫通している場合、軸340、軸350ともに錠本体から抜き出すことはできない。つまり、開錠時にのみ、軸を抜き出すことが可能となる。
図31は、バンド600の概観を示す図である。図31に示すように、バンド600はバンド本体に、歯車付き周部ロック用リング270によってバンド本体がロックされるた
めの切欠部であるスリット孔601を複数有し、また、バンド600を錠本体160に係止するためのストッパ603を有する。スリット孔601は、歯車付き周部ロック用リング270の周縁部の一部が差し込まれて係合する大きさである。
また、スリット孔601はバンド本体の長手方向に並べられており、バンド本体上の長手方向に凹凸を形成していることになる。つまり、バンド本体における隣接するスリット孔601の間の部分は本発明の施錠装置における係止部材の凸部の別の一例である。
図30(a)に示すように、バンド600は錠本体160のバンド取付孔161から差し込まれた状態で、バンド本体が錠本体160の左側から挿入される。また、図30(a)に示すように、バンド600と、3つの歯車付き周部ロック用リング270とは、歯車付き周部ロック用リング270の周縁部の一部がバンド600のスリット孔601に差し込まれる位置関係にある。
つまり、歯車付き周部ロック用リング270が軸350を回転軸として回転させられ、バンド通過用切欠部271が、バンド600のスリット孔601の位置以外にあるときには、歯車付き周部ロック用リング270の周縁部の一部がバンド600のスリット孔601に差し込まれる。このことにより、バンド600のバンド本体は、歯車付き周部ロック用リング270によりロックされる。
ここで、上述の実施の形態1のダイヤル錠1は軸を1本有し、その軸を回転軸とするリングが、バンド本体を係止、つまりロックする機能と、使用者がロックする回転位置に合わせることのできる機能とを有していた。これに対し、図30(a)に示すダイヤル錠2は、歯車付き周部ロック用リング270がバンド本体をロックする機能のみを有し、歯車付きダイヤルリング260が、使用者がバンド本体をロックする回転位置に合わせることのできる機能のみを有している。更に、歯車を利用し、使用者が歯車付きダイヤルリング260を回転させることにより歯車付き周部ロック用リング270を回転させ、バンド600のバンド本体をロックし、またロックを解除できるようにしている。
また、ダイヤル錠1と同様に、ダイヤル錠2はダイヤル錠2の使用者が組み立て可能であり、3つのバンド通過用切欠部271がバンド600のスリット孔601の位置に来る状態で、3つの歯車付きダイヤルリング260を、使用者が所望する開錠番号を形成するように軸340とともに組み込む。つまり、ダイヤル錠2も、使用者が所望する番号を開錠番号として持つように組み立てることができる。
このように組み立てられたダイヤル錠2は、図30に示すように、バンド600と錠本体160とで形成される環状部分を有し、その環状部分で傘を縛る、つまり施錠することができる。
なお、ダイヤル錠2は2本の軸を有するが、2本の軸のうち、図30(a)の下方向に存在する軸を、以下、前軸とし、上方向に存在する軸を、以下、後軸とする。つまり、図30(a)において前軸は軸340であり、後軸は軸350である。
図32は、軸340の概観を示す図である。軸340は軸340を錠本体160に固定するための突起341を有する。また、突起341が存在する軸後部は外径がその他の部分より僅かに太くなっており、軸340が錠本体160に叩き込まれると、図32に示す軸後部にある溝が狭まりながら、錠本体160に挿入される。更に、狭められた溝の復元力よる突起341及び軸後部の周と錠本体160との間の摩擦力により軸340が錠本体160に固定される。
なお、軸350は、軸340より細長い形状であるが、図32に示す軸340と同様の構造をしており、図示は省略する。また、軸350も、軸340と同様に錠本体160に固定される。
図33は、錠本体160の構造の概要を示す図である。錠本体160は、錠本体下部168と錠本体上部169とから構成される。
図33(a)は、錠本体下部168の上面の概観を示す図である。図33(a)に示すように、錠本体下部168は、バンド取付孔161と、前軸挿入孔162と、後軸挿入孔163と、ロック用バンド孔164と、バンド出口165とを有する。
なお、前軸挿入孔162及び後軸挿入孔163の向側にはそれぞれ前軸及び後軸を支える孔が存在する。
また、錠本体下部168には錠本体下部168と錠本体上部169とを結合させるための係合孔910を有する。
図33(b)は、錠本体上部169の上面の概観を示す図である。図33(b)に示す錠本体上部169は、3つのダイヤル窓部166を有し、使用者はダイヤル窓部166に現れる歯車付きダイヤルリング260の周方向外側表面を上下方向に動かすことにより、歯車付きダイヤルリング260を回転させることができる。つまり、歯車付きダイヤルリング260の回転軸である軸340は、錠本体160において、歯車付きダイヤルリング260の歯車と歯車付き周部ロック用リング270の歯車と嵌合させ、使用者が窓部166から歯車付きダイヤルリング260を回転させることのできる位置に配置されている。
また、錠本体上部169は、その裏面に、図示しない係合突起911を有し、図33(c)に示すように錠本体下部168の係合孔910に、錠本体上部169の係合突起911を嵌入することにより、錠本体下部168と錠本体上部169とを結合させることができる。なお、契合突起の911の先端にある拡径部の作用により、係合突起911を係合孔910嵌入した場合、係合孔910から係合突起911を抜くことはできない。
上述のように、錠本体下部168に、歯車付き周部ロック用リング270と、軸350と、歯車付きダイヤルリング260と、軸340とを組み込み、錠本体上部169を錠本体下部168と結合するように上から嵌め込む。更に、バンド取付孔161からバンド600を差し込み、ダイヤル錠2が完成する。つまり、上記手順により、使用者がダイヤル錠2を組み立てることができる。
また、ダイヤル錠2も、上述のダイヤル錠1と同様に、リングの軸をバンド本体が貫通し、軸内でバンド本体がロックされる構造とすることもできる。
図34は、軸内でバンド本体がロックされるダイヤル錠2の構成の概要を示す図である。図34(a)に示すダイヤル錠2は、歯車付きダイヤルリング260と軸340と、歯車付きロック用リング280と、軸300と、錠本体170と、バンド400とで構成される。
図34(b)は、歯車付きロック用リング280の右側面の概観を示す図である。歯車付きロック用リング280は、歯車付き周部ロック用リング270と同様に歯車を有し、ロック用ダイヤルリング200と同様に、リング側軸孔281と、バンドを通過させるための切欠部であるリング側バンド溝282とを有する。
図5に示したバンド400の凸部401が、歯車付きロック用リング280のリング側バンド溝282以外の側面と当接することにより、バンド400のバンド本体がロックされる。
錠本体170は、構造的には図33に示した錠本体160と同様の構造をしているが、後軸を支える部分が軸300を支えるための構造をしている。
また、ダイヤル錠2は、上述のように前軸と後軸の2本の軸を有し、それぞれの軸にはリングが取り付けられているが、それら2本の軸のリングによりバンド本体がロックされる構造とすることもできる。
図35は、2本の軸にそれぞれ取り付けられたリングによりバンド本体がロックされるダイヤル錠2の構成の概要を示す図である。
図35(a)に示すように、ダイヤル錠2に通されたバンド620のバンド本体が、3つの歯車付き周部ロック用リング270と、3つの歯車付きロック用ダイヤルリング290とでロックされる。
図35(b)は、歯車付きロック用ダイヤルリング290の左側面の概観を示す図である。歯車付きロック用ダイヤルリング290は、図30(c)に示した歯車付きダイヤルリング260と同様の歯車を有し、ロック用ダイヤルリング200と同様に、リング側軸孔291と、バンドを通過させるための切欠部であるリング側バンド溝292とを有する。また、周方向外側表面には図示しない番号表示部を有している。歯車付きロック用ダイヤルリング290は、本発明の施錠装置における位置合わせ用リングが有する機能、及び係止用リングが有する機能を兼ね備えるリングの一例である。
つまり、歯車付きロック用ダイヤルリング290は、歯車付きダイヤルリング260が有している機能、つまり、使用者が歯車付き周部ロック用リング270でロックする回転位置に合わせることのできる機能に加え、バンド本体をロックする機能も有している。
なお、歯車付きロック用ダイヤルリング290は、図6に示したロック用ダイヤルリング200と同様の2重構造とすることもでき、そうすることで、使用者が決定する番号を開錠のための番号となる歯車付きロック用ダイヤルリング290を作成できる。
また、歯車付きロック用ダイヤルリング290は一体型の構造でもよく、例えば、0〜9の10個の番号が開錠のための番号となる、10種類の歯車付きロック用ダイヤルリング290を使用者に供給すれば、使用者は必要な番号の歯車付きロック用ダイヤルリング290を入手することで、使用者の選択した番号が開錠番号となるダイヤル錠2を作成可能である。
図35(c)は、バンド620の概観を示す図である。バンド620は、歯車付きロック用ダイヤルリング290によりロックされるための凸部621と、歯車付き周部ロック用リング270によりロックされるためのスリット孔622とをそれぞれ複数有している。また、錠本体180に設けられたバンド取付孔181で係止されるためのストッパ623を有する。
なお、錠本体180は、構造的には図33に示した錠本体160と同様の構造をしているが、バンド取付孔が、錠本体160と異なり、後部左側に設けられている。
このように、2つの軸のそれぞれのリングでバンド本体がロックされることにより、図
35(a)に示すように、バンド本体と錠本体180とで形成される環状部分が2箇所できることとなる。
この2つの環状部分を利用し、例えば、一方の環状部分で傘を施錠し、他方の環状部分をドアの取っ手等の固定物に取り付けることができ、傘と固定物とを連結できる。つまり、図8に示したコイル状ワイヤ20をダイヤル錠2に取り付けた場合と同様に、他人が傘を開くことができないだけでなく、固定物と連結された傘を持ち去ることができなくなる。
また、ダイヤル錠2は、前軸と後軸の両方に軸300を用い、それぞれに歯車付きロック用ダイヤルリング290を取り付けた構成としてもよい。
図36は、前軸と後軸の両方に軸300を用い、それぞれに3つの歯車付きロック用ダイヤルリング290を通した状態のダイヤル錠2の構成の概要を示す図である。
この場合、歯車付きロック用ダイヤルリング290にロックされるためのバンド本体を有するバンド400が用いられる。また、歯車付きロック用ダイヤルリング290は上述のように半径方向外側の表面に番号表示部を有しており、後軸の3つの歯車付きロック用ダイヤルリング290を開錠のためのダイヤルリングとしてもよい。
上述のように、本発明の実施の形態2のダイヤル錠2は前軸及び後軸の2本の軸を持っており、図30(a)に示すダイヤル錠2のように、一方の軸をロック用のリングを回転させるための軸とし、他方の軸を開錠番号を合わせるめのダイヤルリングを回転させるための軸とすることができる。
更に、ロック用のリングの回転とダイヤルリングの回転とを歯車で同期させることができ、ロック用のリングを開錠状態にした状態で、ダイヤルリングを使用者が所望する開錠番号に合わせて組み込むことができる。
つまり、上述の実施の形態1のダイヤル錠1で用いたロック用ダイヤルリング200のように、開錠番号に合わせてダイヤルリング自体を組み立てるのではなく、3つのダイヤルリングを使用者が所望する開錠番号となるように、回転方向の位置をそろえて、ダイヤル錠2に組み込むことになる。
また、図35(a)又は図36に示すダイヤル錠2のように、2本の軸のそれぞれを回転軸とするリングを、共にバンド本体をロックする機能を有するリングとすることもできる。こうすることで、2つの施錠可能な環状部分を有することとなり、例えば、傘と固定物とを連結させることで、より強固に傘を盗難から守ることができる。この場合は、少なくとも一方の軸を回転軸とするリングは、バンド本体をロックする機能と、使用者がロックする回転位置に合わせることのできる機能とを有するリングである。
なお、ロック用のリングとは、例えば、歯車付き周部ロック用リング270であり、ダイヤル用のリングとは、例えば、歯車付きダイヤルリング260であり、バンド本体をロックする機能と使用者がロックする回転位置に合わせることのできる機能とを備えるリングとは、例えば、歯車付きロック用ダイヤルリング290である。
また、ダイヤル錠2は、図19に示したダイヤル錠1におけるバンドの使用方法と同様に、バンドを錠本体に係止させず、錠本体に2回貫通させて使用することもできる。
図37は、ダイヤル錠2において、バンドを錠本体に係止させず、錠本体に2回貫通さ
せて使用する方法を示す図である。
図37(a)は、図35(a)に示すダイヤル錠2において、歯車付きロック用ダイヤルリング290の代わりに歯車付きロック用ダイヤルリング295が用いられた場合のダイヤル錠2を示す図である。図37(a)に示すように、前軸である軸300の左側よりバンド620のバンド本体が差し込まれ、更に、後軸後方の右側からバンド本体が差し込まれている。
バンド620のバンド本体は、3つの歯車付きロック用ダイヤルリング295、及び3つの歯車付き周部ロック用リング270のそれぞれでロックされる。
なお、歯車付きロック用ダイヤルリング295は、図35(b)に示した歯車付きロック用ダイヤルリング290と同様の機能を有しており、歯車付きロック用ダイヤルリング290と比べて、図37(b)に示すように歯車の直径が外径よりも小さくなっているだけである。こうすることで、例えば、歯車が外部に露出することがなく、歯車に埃等が付着しにくくなる。
図37(c)は、図36に示すダイヤル錠2において、歯車付きロック用ダイヤルリング290の代わりに歯車付きロック用ダイヤルリング295が用いられた場合のダイヤル錠2を示す図である。図37(c)に示すように、前軸である軸300の左側よりバンド400のバンド本体が差し込まれ、更に、後軸である軸300の右側からバンド本体が差し込まれている。
バンド400のバンド本体は、前軸の3つの歯車付きロック用ダイヤルリング295、及び後軸の3つの歯車付きロック用ダイヤルリング295のそれぞれでロックされる。
上述のように、錠本体を2回貫通させたバンドがロックされることにより、図37(a)及び図37(c)に示すように、錠本体の右側に錠本体とバンドとで環状部分が形成される。つまりこの環状部分で傘を施錠できる。
また、図37(a)及び図37(c)に示す各例において、バンドの差し込み方向は一例であり、左右逆でも施錠は可能である。
また、図35(a)に示すダイヤル錠2のように、3つの歯車付き周部ロック用リング270を有するダイヤル錠2を組み立てる場合、3つのバンド通過用切欠部271が揃えられた状態で、開錠番号に揃えられた3つのダイヤルリングを組み込む必要がある。そこで、3つのバンド通過用切欠部271が揃えられた状態で保持するための道具を用いてもよい。
図38は、歯車付き周部ロック用リング270の回転を防止する回転ストッパ275を利用し、図30に示すダイヤル錠2を組み立てる様子を示す図である。
回転ストッパ275を利用し、ダイヤル錠2を組み立てるには、まず、回転ストッパ275を錠本体下部168のロック用バンド孔164に差し込み、バンド通過用切欠部271が回転ストッパ275に接するように歯車付き周部ロック用リング270を錠本体下部168に入れる。この状態では、図38(b)に示すように、歯車付き周部ロック用リング270はバンド通過用切欠部271が回転ストッパ275に当接し、回転することができない。
次に、歯車付き周部ロック用リング270用の軸350を錠本体下部168の後軸挿入
孔163に挿入し、錠本体上部169を錠本体下部168に、図33(c)に示す係合孔910と係合突起911とを利用し結合させる。なお、図38(a)では図示の都合上、軸350と錠本体上部と係合孔910は省略している。
この状態で、3つの歯車付きダイヤルリング260を、それらの番号(図示せず)が、ダイヤル錠2の上面に開錠番号を形成するように、図示する場所へ置く。更に、左から軸340を差し込むことで、ダイヤル錠2の基本部分が完成する。
上記の回転ストッパ275のように、ダイヤル錠2の組み立てを補助する道具を提供することで、使用者はより容易にダイヤル錠2を組み立てることができる。
また、上述のバンド600等の他に様々な形状のバンドをダイヤル錠2に用いることができる。
図39は、ダイヤル錠2に使用可能な双頭形状のバンドの一例を示す図である。図39に示すバンド630は、図35(c)に示したバンド620に、両端がバンド頭部となる双頭形状を適用したバンドである。バンド630は凸部631とスリット孔632とをそれぞれ複数有し、図37(a)に示す、歯車付き周部ロック用リング270と歯車付きロック用ダイヤルリング295とを有するダイヤル錠2等に使用することができる。
図40は、ダイヤル錠2での双頭形状のバンドの使用方法を示す図である。
図40(a)は、歯車付き周部ロック用リング270と歯車付きロック用ダイヤルリング295とを有するダイヤル錠2でのバンド630の使用方法を示す図である。また、図40(b)は、歯車付きロック用ダイヤルリング295のみを有するダイヤル錠2でのバンド470の使用方法を示す図である。
バンド470は、図20に示した、凸部471のみを複数有する双頭形状のバンドである。図40(b)に示すダイヤル錠2ではバンド本体をロックするのは歯車付きロック用ダイヤルリング295のみであるため、凸部471のみを複数有するバンド470を使用することができる。
また、図40(a)及び図40(b)において、それぞれのバンドは左方向から両端が錠本体に差し込まれ、適切な位置でバンド本体がロックされる。つまり、図40(a)及び図40(b)に示す方法で傘を施錠することができる。なお、バンドの差し込み方向は一例であり、左右逆でも施錠は可能である。
このように、バンドの使い方にバリエーションを持たせることにより、例えば、ダイヤル錠2の使用者の好みに合ったバンドの使い方でダイヤル錠2を使用することができる。また、例えば、図40(a)に示す例では、錠本体160がバンド取付孔を備える必要がなく、錠本体160作成時のコストダウンを図ることができる。
また、図19に示したダイヤル錠1の使い方と同様に、ダイヤル錠2においても、同じ軸に2回バンドを通過させてロックする使い方も可能である。また、複数のバンドを一つのダイヤル錠2に用いることも可能であり、例えば、図40(a)に示すダイヤル錠2にもう1本のバンド630をダイヤル錠2の右側から差し込んで使用することも可能である。また、その他の形状のバンドもダイヤル錠2に用いることができる。
図41は、バンド600及びバンド620の変形例を示す図である。
図41(a)に示すバンド640は、バンド620のバンド本体の底部に滑り防止部644を有する形状をしている。その他はバンド620と同様に凸部641と、スリット孔642とをそれぞれ複数有し、ストッパ643を有する。滑り防止部644であるのこぎり刃状の突起が傘布等に食い込むことにより、バンド640が用いられたダイヤル錠2を傘の下方向へ抜きにくくする効果を持つ。
図41(b)に示すバンド650は、バンド620のバンド本体の上部に凸部ではなく、図16に示したバンド410と同様のバンド側係合部651を有する形状をしている。
こうすることで、バンド650は、図15(a)に示した、ロック用ダイヤルリング250と同様の内部形状を持つロック用ダイヤルリングをダイヤル錠2に使用した場合に用いることができる。
具体的には、図37(a)に示すダイヤル錠2の歯車付きロック用ダイヤルリング295の軸300と接する面に、図15(b)及び図15(c)に示すのこぎり刃状の凹凸を設けることで、バンド650を使用することができる。
図41(c)に示すバンド660は、バンド600のスリット孔601を楕円形に変形させたバンドである。こうすることで、バンド本体がスリット孔661から裂けにくくなる。
また、歯車付き周部ロック用リング270は、上述のように、バンド通過用切欠部271を有し、バンド通過用切欠部271以外の周縁部の一部がバンドのスリット孔に差し込まれることにより、バンド本体がロックされる。
しかしながら、歯車付き周部ロック用リング270でバンドがロックされるために、スリット孔ではなく突起を有していてもよい。
図42は、歯車付き周部ロック用リング270でバンド本体がロックされるための突起を有するバンドの例を示す図である。
図42(a)に示すバンド670は、複数のロック用突起671と、錠本体160等に係止されるためのストッパ673とを有する。図42(b)はバンド670の下面図であり、図42(b)が示すように、ロック用突起671は一定の高さを有する突起である。
また、複数のロック用突起671はバンド本体の長手方向に並べられており、バンド本体上の長手方向に凹凸を形成していることになる。つまり、複数のロック用突起671は本発明の施錠装置における係止部材の凸部の別の一例である。
バンド600の場合は、スリット孔601に歯車付き周部ロック用リング270の周縁部の一部が差し込まれることによりバンド本体がロックされるが、バンド670は、ロック用突起671と歯車付き周部ロック用リング270の周縁部の一部とが係合することにより、バンド本体がロックされる。
また、歯車付き周部ロック用リング270が回転させられ、ロック用突起671の位置にバンド通過用切欠部271が来た場合は、ロック用突起671は係合するものがなくなり、歯車付き周部ロック用リング270の回転軸方向に移動させることができる。
上述のロック用突起671と歯車付き周部ロック用リング270との関係は、下記のロック用突起を有するバンドにおいても同様である。
図42(c)に示すバンド680は、バンド620と同様に凸部681を複数有し、バンド620とは異なりスリット孔ではなくロック用突起682を複数有する。また、錠本体160等に係止されるためのストッパ683を有する。
バンド680は、バンド620と同様に、図37(a)に示すダイヤル錠2に用いることができ、歯車付き周部ロック用リング270と、歯車付きロック用ダイヤルリング295とにより、バンド本体がロックされる。
図42(d)に示すバンド690は、バンド680と同様に凸部691とロック用突起692とをそれぞれ複数有し、錠本体160等に係止されるためのストッパ693を有する。更に、バンド本体の底部にのこぎり刃状の滑り防止部694を有する。
バンド690はバンド680と同様に、図37(a)に示すダイヤル錠2に用いることができる。また、滑り防止部694であるのこぎり刃状の突起が傘布等に食い込むことにより、バンド690が用いられたダイヤル錠2を傘の下方向へ抜きにくくする効果を持つ。
図42(e)に示すバンド700は、バンド650と同様にバンド側係合部701を有し、バンド650とは異なりスリット孔ではなくロック用突起702を複数有する。また、錠本体160等に係止されるためのストッパ703を有する。
バンド700は、バンド650と同様に、歯車付き周部ロック用リング270と、図15(b)及び図15(c)に示すのこぎり刃状の凹凸を軸と接する側に有する歯車付きロック用リングとを有するダイヤル錠2に使用することができる。
図42(f)に示すバンド710は、バンド700を双頭形状にしたバンドの一例であり、バンド側係合部711と、複数のロック用突起712とを有する。
また、双頭形状であるため、例えば、錠本体の左側から、バンド710の両端を、前軸と後軸のそれぞれに一端ずつ差し込むことで、錠本体の左側に傘を施錠することができる環状部分を形成するようにして使用する。
また、歯車付き周部ロック用リング270によりバンド本体がロックされるための形状は、上述のスリット孔及びロック用突起に限られず、例えば球体であってもよい。
図43は、複数の球体をバンド本体に有する形状のバンドの一例を示す図である。図43(a)は、図24(a)に示したバンド510であり、このバンド510に図43(b)に示すストッパ723を取り付けることにより、図43(c)に示すバンド720を作成する。
具体的には、このバンド510の一端の球体を、ストッパ723が有する2つの取付孔724が挟み込む形で図43(b)に示す状態のストッパ723の左右を閉じる。更に、ストッパ723の互いに接する面を所定の手段で接着することにより、図43(c)に示すように、バンド本体に球体を有し、錠本体に係止させるためのストッパ723を有するバンド720を作成することができる。
図44は、バンド720のバンド本体が歯車付き周部ロック用リング270によりロックされる様子を示す図である。
図44(a)は、3つの歯車付き周部ロック用リング270のバンド通過用切欠部271が、バンド720の球体の左右方向への移動を制限しない位置にあり、つまり開錠状態の位置にある場合を示している。
この状態から歯車付きダイヤルリング260を回転させることにより、3つの歯車付き周部ロック用リング270が回転し、図44(b)に示すように、3つの歯車付き周部ロック用リング270の周縁部の一部がバンド720の球体と球体との間に入り込み、球体は左右の移動ができない。つまり、バンド720のバンド本体がロックされる。
図45は、ダイヤル錠2にバンド720を用いた場合の概観の一例を示す図である。図45(a)は、ダイヤル錠2の上面図であり、図45(b)は、錠本体190の後面図であり、図45(c)は、錠本体190の左側面図であり、図45(d)は、錠本体190の右側面図である。
図45(a)に示す錠本体190は、錠本体160と同様の内部構造をしており、その後部分のみを湾曲させたものである。
ダイヤル錠2が開錠状態にされた後、バンド720のバンド頭部は、図45(b)に示す錠本体190後部のバンド取付孔191より差し込まれ、図45(d)に示す錠本体190の右側面の第1バンド出口192から錠本体190の外部に出てくる。更に、バンド頭部は、図45(c)に示す錠本体190の左側面のロック用バンド通過孔193から錠本体190内に差し込まれ、図45(d)に示す錠本体190の右側面の第2バンド出口194から錠本体190の外部に出てくる。
このようにして、図45(a)に示すダイヤル錠2の状態になる。つまり、図45(a)に示すダイヤル錠2の上部に形成される環状部分で傘を施錠することができる。
また、図29において、U字型の棒体をダイヤル錠1に用いた場合を示したが、U字型の棒体をダイヤル錠2に用いることも可能である。
図46A(a)〜図46A(g)のそれぞれは、バンドの代わりにU字型の棒体を用いてダイヤル錠2を構成した場合の概要を示す図である。図46A(a)〜図46A(g)に示されるそれぞれのダイヤル錠2は、U字型の棒体と、ダイヤルリングの回転軸との位置関係により、施錠時にはその回転軸を抜くことができず、開錠時にはその回転軸を抜き出すことが可能な構造をしている。また、この構造を実現するためのピン等の部材を必要としていない。つまり、簡易な構造であり、かつ、開錠時にのみダイヤルリングの取り出しを可能とし、例えば、開錠番号の変更を行うことができる。
図46A(a)〜図46A(g)に示されるそれぞれのダイヤル錠2の構成は、図30(a)に示したダイヤル錠2と同様であり、歯車付き周部ロック用リング270と、軸350と、歯車付きダイヤルリング260とを共通に備えている。また、各ダイヤル錠2よって異なる軸と錠本体とを備えている。なお、図46A(b)〜図46A(g)では、これら共通して備える部材の符号は省略している。
更に、各ダイヤル錠2は、係止部材として使用されるU字型の棒体であるU字棒810、U字棒811、またはU字棒812を備えている、これら各U字棒は、U字部分の開き方は異なるが、それぞれ3つの凹部を有している。各ダイヤル錠2においてそれら凹部が、歯車付き周部ロック用リング270の周縁部の一部と係合することにより、U字棒がロックされ開錠することができない。つまり、図46A(a)〜図46A(g)の各図は施錠された状態を示している。以下、個別の図について説明する。
図46A(a)のダイヤル錠2は、歯車付きダイヤルリングの回転軸である軸342が挿入された軸孔は錠本体を貫通している。施錠時にはU字棒810が妨げになり、錠本体900から軸を抜去できない。しかし、開錠時にはU字棒810の妨げがなくなり、軸頭部を押すことにより、錠本体から軸342を抜去して、歯車付きダイヤルリングの開錠番号を変更できる。
図46A(b)のダイヤル錠2は、歯車付きダイヤルリングの回転軸である軸343が挿入された軸穴は錠本体901を貫通していないが、軸346には軸を引き出すための鍔が付いている。施錠時にはU字棒810が妨げになり、錠本体901から軸343を抜去できない。しかし、開錠時にはU字棒810の妨げがなくなり、鍔を引くことにより、錠本体901から軸343を抜去して、歯車付きダイヤルリングの開錠番号を変更できる。
図46A(c)のダイヤル錠2は、図46A(a)のダイヤル錠2と同様に、歯車付きダイヤルリングの回転軸である軸344が挿入された軸孔は錠本体900を貫通しており、また、軸344には軸を引き出すための鍔が付いている。施錠時にはU字棒810が妨げになり、錠本体900から軸344を抜去できない。しかし、開錠時にはU字棒810の妨げがなくなり、軸頭部を押すこと、または鍔を引くことにより、錠本体900から軸344を抜去して、歯車付きダイヤルリングの開錠番号を変更できる。
図46A(d)のダイヤル錠2は、歯車付きダイヤルリングの回転軸である軸345の後端部に、U字棒811の端が挿入可能な陥凹部が存在する。また、軸345が挿入された軸孔は錠本体902を貫通している。施錠時にはU字棒811が妨げになり、錠本体902から軸345を抜去できない。しかし、開錠時にはU字棒811の妨げがなくなり、軸頭部を押すことにより、錠本体902から軸345を抜去して、歯車付きダイヤルリングの開錠番号を変更できる。
図46A(e)のダイヤル錠2は、歯車付きダイヤルリングの回転軸である軸346の後端部に、U字棒811の端が挿入可能な陥凹部が存在する。また、軸345が挿入された軸穴は錠本体903を貫通していないが、軸346には軸346を引き出すための鍔が付いている。施錠時にはU字棒811が妨げになり、錠本体903から軸346を抜去できない。しかし、開錠時にはU字棒811の妨げがなくなり、鍔を引くことにより、錠本体903から軸346を抜去して、歯車付きダイヤルリングの開錠番号を変更できる。
図46A(f)のダイヤル錠2は、歯車付きダイヤルリングの回転軸である軸347の後端部に、U字棒811の端が挿入可能な陥凹部が存在する。また、軸347が挿入された軸孔は錠本体902を貫通しており、軸347には軸347を引き出すための鍔が付いている。施錠時にはU字棒811が妨げになり、錠本体902から軸347を抜去できない。しかし、開錠時にはU字棒811の妨げがなくなり、軸頭部を押すこと、または鍔を引くことにより、錠本体902から軸347を抜去して、歯車付きダイヤルリングの開錠番号を変更できる。
図46A(g)のダイヤル錠2は、歯車付きダイヤルリングの回転軸である軸348の後端部に、U字棒812の端の一部が挿入可能な陥凹部が存在する。また、軸348が挿入された軸孔は錠本体904を貫通している。施錠時にはU字棒812が妨げになり、錠本体904から軸348を抜去できない。しかし、開錠時にはU字棒812の妨げがなくなり、軸頭部を押すことにより、錠本体904から軸348を抜去して、歯車付きダイヤルリングの開錠番号を変更できる。
このように、図46A(a)〜図46A(g)に示す、U字棒を備える各ダイヤル錠2
において、位置合わせ用リングである歯車付きダイヤルリングの回転軸の少なくとも一部の外径は、軸孔の一部の内径よりも大きいために、または軸穴が錠本体を貫通していないために、軸孔または軸穴に回転軸が挿入される方向とは逆方向にのみ回転軸を抜き出し可能である。
また、錠本体に対する回転軸の抜き出し方向は、U字棒が係止状態から解放された場合に、引き出される方向と同じであり、軸孔または軸穴は、施錠時にU字棒が妨げとなって回転軸を抜き出すことはできない位置に存在している。
従って、図46A(a)〜図46A(g)のダイヤル錠2は、施錠時に回転軸を錠本体から抜き出されることはなく、開錠時にのみ回転軸を抜き出すことが可能となる。つまり、開錠時にのみ、歯車付きダイヤルリングを取り出すことが可能となり、開錠番号を変更することができる。また、開錠時にのみ歯車付きダイヤルリングの取り出しを可能とするために、ピン等の部材を別途要せず、物品を施錠するのに必要な部材だけで構成されている。
また、軸と錠本体とをネジ式に結合させることにより、より安定性の高い施錠装置を提供することができる。
図46B(a)〜図46B(d)に示す各ダイヤル錠2は、図46A(a)、図46A(b)、図46A(d)、および図46A(e)に示すダイヤル錠2を、ダイヤルリングの回転軸と錠本体とをネジ式に結合させる構造にした場合の内部構造の概要図である。
図46B(a)のダイヤル錠2は、図46A(a)のダイヤル錠2に対応し、錠本体900aと軸342aとはネジ式に結合している。
図46B(b)のダイヤル錠2は、図46A(b)のダイヤル錠2に対応し、錠本体901aと軸343aとはネジ式に結合している。
図46B(c)のダイヤル錠2は、図46A(d)のダイヤル錠2に対応し、錠本体902aと軸345aとはネジ式に結合している。
図46B(d)のダイヤル錠2は、軸後部に鍔が存在しないこと以外は、図46A(e)のダイヤル錠2に対応し、錠本体903aと軸346aとはネジ式に結合している。また、軸後部端には図示されない溝が存在する。そのため、硬貨、マイナスドライバーまたはプラスドライバーなどを使用して、開錠時に限り、錠本体903aから軸346aをねじり出し、錠本体903aと軸346aと歯車付きダイヤルリングを分解することが可能である。
図46B(a)〜図46B(d)に示す各ダイヤル錠2は、それぞれに対応するダイヤル錠と同じく、施錠時にはU字棒が妨げになり、錠本体から軸を抜去できない。また、開錠時にはU字棒の妨げがなくなり、錠本体から軸をねじ回して抜去することができる。これにより、歯車付きダイヤルリングを錠本体から取り外すことができ、歯車付きダイヤルリングの開錠番号を変更できる。さらに、回転軸と錠本体とがネジ式に結合されているため、例えば、開錠時において、不意に回転軸が錠本体から落下してしまうことを防ぐことができる。
図47は、図46A(a)に示すダイヤル錠2を組み立てる前の錠本体900の内部構造の概要を示す図である。
U字棒810は、U字部分の先端が錠本体900から抜けた状態であり、錠本体900の外側に向いている。これに伴い、金属棒810の凹部もU字部分の先端と向き合う方向にある。また、歯車付き周部ロック用リング270のバンド通過用切欠部271は、3つともU字棒810の方向にある。
この状態では、U字棒810の錠本体900の内部にある棒部分が、図38(a)に示した回転ストッパ275と同様の役割を果たし、歯車付き周部ロック用リング270が自由に回転することはできない。
つまり、図46A(a)に示すダイヤル錠2は、図47に示す状態で使用者に供給され、使用者は図48に示す手順で、歯車付きダイヤルリング260を錠本体900に取り付ける。このようにして、図46A(a)に示すダイヤル錠2の組み立てが完了する。
なお、図46A〜図47において、錠本体の、U字棒の直線部分が挿入されている部位は、図47に示すような錠本体を貫通しない穴でなくてもよく、錠本体900を貫通する孔でもよい。また、この穴および孔は棒穴および棒孔という。
図48は、図46A(a)に示すダイヤル錠2を組み立てる手順を示す図である。
図48(a)は、図47に示す錠本体900に、歯車付きダイヤルリング260を取り付ける様子を示す図である。
図48(a)に示す状態は、開錠状態であり、錠本体900に設けられた3つのダイヤル取付窓905のそれぞれから、歯車付きダイヤルリング260を錠本体900に差し込み、使用者が所望する開錠番号がダイヤル取付窓905の中央部に形成される状態で、軸340を錠本体900に差し込む。
上記手順で、使用者が所望する開錠番号を持つダイヤル錠2を組み立てることができる。
また、錠本体900内部に予め歯車付きダイヤルリング260が備えられた状態で使用者に供給されてもよく、この場合は、ダイヤル取付窓905のサイズを小さくすることにより、歯車付きダイヤルリング260が錠本体900から飛び出さないようにすればよい。
図48(b)は、内部に予め歯車付きダイヤルリング260が備えられた状態の錠本体900に軸340を差し込む様子を示す図である。
ダイヤル取付窓906は、長辺方向が、図48(a)に示すダイヤル取付窓905より短くなっており、錠本体900内部にある歯車付きダイヤルリング260が外に飛び出すことがない。しかしながら、錠本体900内部にある歯車付きダイヤルリング260の周辺には、歯車付きダイヤルリング260の歯車と、歯車付き周部ロック用リング270の歯車とが嵌合せずに、歯車付きダイヤルリング260を回転させることのできるスペースが存在する。そのため、使用者は、開錠番号がダイヤル取付窓905の中央部に形成される状態になるように、歯車付き周部ロック用リング270を回転させることなく、3つの歯車付きダイヤルリング260を回転させることができる。
上記方法で、開錠番号を形成するようにロック用ダイヤルリング260を回転させ、軸340を錠本体900に差し込むことにより、歯車付きダイヤルリング260の歯車と、歯車付き周部ロック用リング270の歯車とが嵌合するようになり、図46A(a)に示
すダイヤル錠2の組み立てが完了する。
なお、U字棒810は凹部を有しているが、隣接する凹部間は凹凸の凸にあたり、例えば、図1に示すダイヤル錠1におけるバンド400の凸部401と同様の効果を有している。
また、図46Aおよび図46Bに示すダイヤル錠2は、U字棒のU字部分で傘に施錠することができるが、U字棒810の凹部が3つ以上あってもよい。こうすることで、複数の位置でU字棒810がロックされることになり、例えば、様々な大きさの傘に施錠できる。この場合、U字棒810が複数の位置でロックされるために、錠本体900の各部位に、軸方向の長さの変更等を行なえばよい。
また、図48(b)を用いて説明した、錠本体900内部に存在するダイヤルリング260が外部に出ないようにする方法は、他のダイヤル錠2にも適用できる。例えば、図33(b)に示した錠本体上部169のダイヤル窓部166の長辺の長さをロック用ダイヤルリング260が通り抜けることができない程度の長さにすることで、図30(a)に示すダイヤル錠2に錠本体上部169を取り付ける。
こうすることで、図30(a)に示すダイヤル錠2は、軸340を抜いても、ロック用ダイヤルリング260は錠本体160から飛び出すことはない。この状態で、ロック用ダイヤルリング260を回転させ、開錠番号を変更した後に再び軸340を差し込むことで、図30(a)に示すダイヤルリング2の開錠番号の変更を行なうことができる。
錠本体160は、錠本体下部168と錠本体上部169とから構成され、錠本体下部168と錠本体上部169とは、図33(c)に示すように、係合孔910と係合突起911とにより、再び分離することができない状態で結合される。しかしながら、上述のように、組み立て完了後においても、錠本体160を分離することなく、軸340を抜くことにより開錠番号の変更が可能なダイヤル錠2を作成することが可能である。
また、上述の実施の形態1におけるダイヤル錠1、及び実施の形態2におけるダイヤル錠2に用いたバンド400等のバンドや、錠本体100や錠本体160等の錠本体の素材はプラスティックであるとした。
これは、バンドへの他人の破錠行為に対する耐久性能を向上させるためにバンドの剛性を上げるには限界がある。そのため、剛性を上げることに重点をおくより、錠の使用状況を制限し、製造コストをかけないようにすることにより利用価値がおおいに見込めると思われるからである。
しかしながら、本発明の施錠装置が利用できるバンドは、プラスティック製に限られることはない。例えば、図18に示した、腕時計の金属性バンドのように金属板などの剛性の高い部材をつなげたキャタピラ式バンドはプラスティック以外の素材のバンドの一例である。また、それ以外にも、バンド自体を形状変化に優れる金属で作製することや、バンドの基本素材はプラスティックであっても、ワイヤを封入することでバンドの強度を向上させることが可能である。勿論、錠本体やダイヤルリングや軸なども金属などの剛性の高い材質で作製が可能であり、こうすることで、より頑強な施錠装置を提供することが可能である。
図49は、ダイヤル錠1に用いられるバンドにワイヤを封入し補強する例を示す図である。なお、以下の図49〜図51に示す各バンド内部の実線はワイヤを表している。
図49(a)は、バンド400にワイヤを封入し補強する例を示す図であり、図49(b)は、バンド420にワイヤを封入し補強する例を示す図であり、図49(c)は、バンド410にワイヤを封入し補強する例を示す図であり、図49(d)は、バンド430にワイヤを封入し補強する例を示す図であり、図49(e)は、バンド440にワイヤを封入し補強する例を示す図であり、図49(f)は、バンド450にワイヤを封入し補強する例を示す図である。
図49(a)〜図49(f)に示すように、バンド本体、及びロック用ダイヤルリング200等と係合する凸部など、施錠した際に力のかかる部分及び方向を補強する形で、各バンドにワイヤを封入する。
図50は、ダイヤル錠2に用いられるバンドであるバンド600にワイヤを封入し補強する例を示す図である。
バンド600は、スリット孔601を複数有するため、バンド本体がそれらスリット孔601から裂けることを防ぐようにワイヤを封入する必要がある。
しかしながら、複数あるスリット孔601のそれぞれを取り囲むように複数の輪状のワイヤを封入することは、手間及びコストの面で最適な方法ではない。そこで、少ないワイヤの本数でスリット孔601を複数有するバンド600を補強する手順を、図50を用いて説明する。
図50(a)及び図50(b)に示すように、全てのスリット孔601のそれぞれを囲むように、また、右端のストッパを補強するようにワイヤを封入することで、ワイヤは図50(c)に示す形状になる。
図50(c)に示す形状にワイヤを封入されたバンド600に、更に、図50(d)に示す形状、つまり、バンド600の長手方向に加えられる引っ張り力に対抗する形でワイヤを封入する。
図50(e)は、図50(c)と図50(d)とに示す形状でワイヤを封入した結果を示す図である。図50(f)は、図50(e)に示す状態のバンド600を下から見た場合の、ワイヤの配置状態を示す図である。
このように、スリット孔等の孔が開けられたバンドは、その孔の周辺を補強することにより、その孔から裂けることを防ぐことができる。また、図50に示す方法でワイヤを封入することにより効率よくワイヤを封入できる。また、バンド670のように、ロック用突起を有するバンドをワイヤで補強することも可能である。
図51は、バンド670にワイヤを封入し補強する例を示す図である。
図51(a)に示すように、バンド670のロック用突起671を含む全体をワイヤで補強している。図51(b)は、図51(a)に示す状態のバンド670を下から見た場合のワイヤの配置状態を示す図である。また、図51(c)は、図51(a)に示す状態のバンド670を左から見た場合のワイヤの配置状態を示す図である。
図51(b)及び図51(c)に示すように、ロック用突起671に入り込む形でワイヤが封入されている。ロック用突起671は、バンドの長手方向に力がかかるため、ロック用突起671に入り込む形でワイヤを封入することは、バンド670を補強する上で効果的である。
なお、各バンドに封入するワイヤは、バンドの補強となり得ることができ、かつ、バンドの柔軟性を失わない程度の強度を持つ金属や化学繊維などを素材とすればよい。
また、ダイヤル錠2に用いられるバンドをダイヤル錠1に用いてもよく、例えば、図35(c)に示したバンド620を、図1に示すダイヤル錠1のバンド400の代わりに用いてもよい。バンド620は、ロック用ダイヤルリング200にロックされるための凸部621を有しており、ロック用ダイヤルリング200を構成部品として含むダイヤル錠1に用いることができる。
つまり、リングが有する切欠部などのロックするための形状と、バンドのバンド本体が有する凸部などのロックされるための形状が一致する組み合わせであれば、ダイヤル錠1またはダイヤル錠2を構成することができる。
こうすることで、例えば、ダイヤル錠1及びダイヤル錠2の使用者は、1本のバンドを
ダイヤル錠1とダイヤル錠2の両方に用いることができ、経済的である。
また、図29、図46A、および図46Bに示したU字棒800及びU字棒810等のU字棒は、同様の形状をしていれば金属製でなくてもよく、手で破壊できない程度の強度を持つ強化プラスティックやセラミックなどの素材であってもよい。こうすることで、製作時の素材選択の幅が増える。
また、バンド自体を錠本体内部に備えてもよい。例えば、巻き取り式のバンドリールを錠本体内部に備え、バンドの未使用時には錠本体外部から巻き取れるようにしておけばよい。また、バンドリールは、ばねの弾性を利用してバンドを巻き取ることのできるものでもよく、バンドの未使用時には、ばねの弾性により錠本体内部にバンドが巻き取られ、必要なときに引き出して使用する仕組みであってもよい。
バンドリールを利用する場合、例えば、バンドリールからバンドを引き出せないようにするリールストッパを備えておき、リールストッパは所定の方向に押されることによりバンドリールをバンドが引き出される方向に回転することができないようにしておく。また、錠本体はバンド頭部が錠本体を貫通しない形状にしておく。更に、引き出されたバンドのバンド頭部が錠本体に所定の位置まで差し込まれた場合に、バンド頭部がリールストッパを押すようにしおく。
こうすることで、例えば、バンドを紛失することがない。また、リールストッパにより、施錠された状態のバンドを引き出すことができないため、傘からはずされることもない。また、上述のバンドリールや、リールストッパも部品として供給すれば、使用者が組み立てることも可能である。
また、ダイヤル錠2において、歯車付き周部ロック用リング270はバンド本体に対してその片側に存在し、スリット又はロック用突起と、周部ロック用リング270の周縁部の一部とが係合することによりバンド本体をロックしている。
しかしながら、複数の歯車付き周部ロック用リング270を、バンド本体を間に挟むようにして配置し、バンド本体の両側からロックする構造であってもよい。
図52は、対向して存在する2本の軸に取り付けられた歯車付き周部ロック用リング270で、1本のバンドのバンド本体を両側からロックするダイヤル錠の概要を示す図である。
図52に示すダイヤル錠は、バンド730を挟むようにして、図30に示すダイヤル錠2が向き合う形で配置された構造をしている。つまり、軸340が通された3つの歯車付きダイヤルリング260と、軸350が通された3つの歯車付き周部ロック用リング270とを、バンド730を挟んで両側にそれぞれ有している。
また、バンド730は、複数の凸部をバンドの長手方向の両辺にそれぞれ有しており、バンドの長手方向の両側からロックされる構造になっている。
図52においてバンド730の下側に存在する3つの周部ロック用リング270と、上側に存在する3つの周部ロック用リング270とは、それぞれに接して存在する歯車付きダイヤルリング260の回転により非同期で回転する。また、上下の計6つの周部ロック用リング270が同時に開錠状態になったときにのみ、バンド730は自由に抜き挿しできる。
なお、バンド本体の両側に配置される歯車付き周部ロック用リング270の個数は自由であり、例えば、1つの周部ロック用リング270をバンド本体の一方の側に配置し、2つの歯車付き周部ロック用リング270を他方の側に配置し、開錠番号が3桁となるダイヤル錠を作成することも可能である。
このように、バンド本体を挟むように、バンド本体をロックする構成部品を配置することにより、例えば、バンドの長手方向に錠本体を伸ばすことなく、より多くの桁数を有するダイヤル錠を作成することができる。また、ダイヤル錠を作成する際のデザインの自由度を向上させることができる。
また、図7に示したように、錠本体100は、錠本体側軸孔102dの右側の内径が狭まっていることにより、摩擦力で軸300を固定するとしたが、別の方法で軸300を固定してもよい。
例えば、錠本体側軸孔102d自体の内径を軸300の外径より細くしておき、軸300の軸頭部を先細り形状にしておけば、同様に摩擦力で軸300を固定できる。
つまり、軸300と、錠本体100の錠本体側軸孔102a〜錠本体側軸孔102dとの形状を、少なくとも一箇所だけ、軸300を錠本体100に固定するのに必要な摩擦力が生じる形状にしておけばよい。この軸300と錠本体100との関係は、他の軸と錠本体との関係であっても同様である。
こうすることで、軸を錠本体で固定する部分に関する形状の選択肢が増え、例えば、軸又は錠本体を製作する際に、軸のバリエーションと錠本体のバリエーションとの組み合わせの都合や、製作コストの最適化などを考慮した上で軸および錠本体の製作が行なえる。
なお、図7に示すように、錠本体の軸孔が先細りの形状をしており、くさびを打ち込むように軸が錠本体へ挿入された場合、摩擦力で軸が錠本体に固定されるとともに、挿入方向と逆方向にしか抜き出すことができない。しかし、施錠時においては、傘などの物品を締め付けた状態の係止部材が軸を貫通しているため、その逆方向にも抜くことができない。例えば、図1に示すダイヤル錠1において、バンド400で傘を締め付けて施錠した場合、軸300を手前側に抜くことはできない。
また、開錠時においては、軸の挿入方向と逆方向に軸を抜き出すことができるため、施錠装置を分解し、組み立てなおすことができる。この組み立て直しは繰り返し行うことが
できる。
このように、本発明の施錠装置は、軸と錠本体とが独立している場合であっても、軸が錠本体から抜き出されることを防ぐための部品を別途用いる必要がない。つまり、使用者は、分解、組み立てを簡単に行うことができる。また、分解、組み立て時に施錠装置を構成する部品を逸失する可能性が低い。更に、施錠装置の製造コストを抑えることができる。
図53〜図57を用い、軸を錠本体に固定するための部品を要せず、開錠時にのみ施錠装置の組み立て直しを可能とする軸および錠本体の形状の例を説明する。各図は軸および錠本体の位置関係を示す関係図である。なお、バンド等の係止部材、ダイヤルリング等の他の要素の図示は省略している。また、各軸はバンド等の係止部材用の軸側溝または軸側孔を有している。
図53は、軸が摩擦力により錠本体に固定される場合における軸と錠本体との関係を示す図である。図53(a)は、軸が錠本体を貫通する軸孔に一方向にのみ抜き出し可能な状態で固定されている状態を示す図である。図53(b)は、鍔付きの軸が錠本体を貫通する軸孔に一方向にのみ抜き出し可能な状態で固定されている状態を示す図である。図53(c)は、鍔付きの軸が錠本体を貫通しない軸穴に一方向にのみ抜き出し可能な状態で固定されている状態を示す図である。
図53(a)および図53(b)に示すように、軸が先細り形状である場合、摩擦力により軸を錠本体に固定することが可能である。また、この場合、左側からのみ挿入可能であり、右側から軸を抜き出すことはできない。軸を錠本体から抜き出すときは右側から左側に押し出せばよい。
更に、図53(b)に示す場合、軸は鍔303を軸後部に有している。使用者は鍔303をつまむことにより軸を左側に引き出すことができる。また、この鍔303によっても、軸が錠本体の右側から抜き出されることはない。
図53(c)に示す場合、図53(a)及び図53(b)と同様に、軸は錠本体に固定される。また、軸を錠本体の右側から押し出すことはできないが、鍔303を利用し、軸を左側に抜き出すことができる。
なお、図53(c)に示すように軸を固定する部分が、錠本体を貫通しない軸穴であっても、係止部材が通過する孔を錠本体に設ければ、任意の位置で係止できる係止部材の使用も可能である。以下に示す図においても同様である。
図54は、ねじ山を有する軸がねじ溝を有する錠本体に固定される場合における軸と錠本体との関係を示す図である。図54(a)は、ねじ山を有する軸が錠本体を貫通する軸孔に固定された状態を示す図である。図54(b)は、ねじ山を有する軸が錠本体を貫通しない軸穴に固定された状態を示す図である。
図54(a)及び図54(b)において、軸は錠本体の左側からねじ回されながら挿入される。また、挿入時と逆向きにねじ回されることで錠本体の左側から抜き出される。
また、軸を先細り形状とし、錠本体の軸孔を対応する形状にすることにより、軸をしっかりと錠本体に固定することが可能となる。さらに、錠本体の右側から軸を抜き出すことを不可能にすることができる。
なお、軸および錠本体の軸孔の形状を先細りではなく、円筒形状にした場合においても、施錠時に、係止部材を軸と錠本体にまたがって存在させることにより、軸を回転させることはできなくなる。これにより、軸を錠本体の右側からも左側からも抜き出すことはできない。
また、開錠時に軸を挿入または抜き出す際、軸が有する軸側溝を利用することができる。例えば、マイナスドライバーを軸後部の軸側溝に差し込み、軸を回すことができる。また、軸を回転させるための切れ込みを軸に別途設けてもよい。
図55は、軸後部が錠本体に固定される場合における軸と錠本体との関係を示す図である。
図55(a)は、径大部を有する軸が錠本体を貫通する軸孔に挿入された状態を示す図である。図55(b)は、鍔および径大部を有する軸が錠本体を貫通する軸孔に挿入された状態を示す図である。図55(c)は、鍔および径大部を有する軸が錠本体を貫通しない軸穴に挿入された状態を示す図である。
なお、軸の径大部とは錠本体側軸孔の口径より大きな外径を有する膨らみである。形状は球形や楕円形でもよく、それ以外の形状でもよい。
図55(a)、図55(b)及び図55(c)において、軸は径大部304aを有している。径大部304aは切欠部304bが狭まりながら錠本体に挿入される。また錠本体は径大部304が収まる空間を有している。径大部304aは、その空間に挿入されると切欠部304bの存在する後端部の復元力により元の形状に戻る。また、径大部304aはその空間を越えて右へ移動することはできない。つまり、軸は右側に抜き出されることはない。
また、図55(a)及び図55(b)において、錠本体の軸孔は貫通しているため、軸を右側から左側へ押し出すことができる。図55(b)及び図55(c)においては、軸は更に鍔303を有しており、上述のように、鍔を利用し、軸を左側に抜き出すことができる。
図55(d)は、弾性体を軸孔内に有する錠本体に、軸が挿入された状態を示す図である。
図55(d)に示すように、錠本体は、軸孔内に向かい合うように2つの弾性体390を有している。また、軸は弾性体390に対応する形状の窪み390aと、鍔303を有している。図55(d)において、錠本体に軸が挿入されると、弾性体390は軸によって押し広げられ、最終的には、軸の窪み390aが弾性体390の位置に来ると、弾性体390は元の形状に復元することで、軸の窪み390aと嵌合し、軸は錠本体に固定され、鍔303によって、軸が錠本体の右側から抜き出されることはない。
また、軸の挿入方向とは逆向きに軸の軸頭部が押されるか、鍔303がつまんで引かれるかすると、弾性体390は軸が挿入された際と同じように変形し、軸は錠本体から抜き出される。
また、図55(d)では、錠本体に弾性体390が2つ存在するとしたが、軸を固定する為の弾性体は1つであっても、3つ以上であっても構わない。錠本体に軸が固定されれば問題はない。
図55(e)は、軸孔の一部の直径が小さくなっている錠本体に、軸が挿入された状態を示す図である。
図55(e)に示すように、錠本体は、軸孔内の一部に、内径を小さくする凸部391aを有している。また、軸は凸部391aによって固定されるための窪み391bを有している。図55(e)において、錠本体に軸が挿入されると、軸は、バンド等の係止部材が挿入される軸側溝を縮めるようにして挿入され、最終的には、軸の弾性により、凸部391aと窪み391bが嵌合する位置で錠本体に固定される。
また、軸後部の鍔が引っ張られることにより、軸側溝は軸が挿入された際と同様に変形し、軸は錠本体から抜き出される。
また、図55(e)の軸側溝は軸の錠本体に対する挿抜方向と同方向に描かれているが、後述する図58(f)〜図58(i)などの様に、軸側溝は軸の錠本体に対する挿抜方向と異なる方向に形成されていても構わない。
このように、軸が径大部を持つのではなく、錠本体の軸孔内に、軸の直径より小さな部分を持ち、錠本体または軸のいずれかの側が復元可能に変形することにより、着脱可能に軸を錠本体に組み込むことができる。
なお、上述の図53(c)、図55(c)および図55(e)に示す錠本体において、軸が錠本体を貫通しない軸穴に挿入されている場合、軸に設けられた鍔を利用し、挿入方向とは逆方向に抜き出すとした。しかしながら、錠本体に、軸を押し出すための孔を設けてもよい。
図56は、図53(c)に示す軸および錠本体において、軸の鍔を除いたものを加え、錠本体に軸を押し出すための孔が設けられた場合を示す図である。
図56(a)に示すように、軸に鍔がなく、軸が錠本体を貫通しない軸穴に挿入されている場合であっても、錠本体の軸の挿入方向側に押出孔305を設けることで、軸を挿入方向とは逆向きに押し出すことができる。押し出すための押出棒306を付属させてもよい。
また、図56(b)に示すように、押出孔305を軸の挿入方向に対して斜めとなる位置に設けてもよい。
また、軸が鍔303を有する場合であっても、図56(c)に示すように押出孔305を軸の挿入方向と平行に設けてもよく、図56(d)に示すように押出孔305を軸の挿入方向に対して斜めとなる位置に設けてもよい。
軸と錠本体との間の摩擦力が大きく、鍔303を利用し軸を引き抜くことができない場合に、押出孔305を錠本体に設けられていれば、押出棒306等により軸を押し出すことができる。
図57は、図55(c)に示す軸および錠本体において、軸の鍔を除いたものを加え、錠本体に軸を押し出すための孔が設けられた場合を示す図である。
図57(a)に示すように、軸に鍔がなく、軸が錠本体を貫通しない軸穴に挿入されている場合であっても、錠本体の軸の挿入方向側に押出孔305を設けることで、径大部304aを有する軸を挿入方向とは逆向きに押し出すことができる。
また、図57(b)に示すように、押出孔305を軸の挿入方向に対して斜めとなる位置に設けてもよい。
また、径大部304aを有する軸が更に鍔303を有する場合であっても、図57(c)に示すように押出孔305を軸の挿入方向と平行に設けてもよく、図57(d)に示すように押出孔305を軸の挿入方向に対して斜めとなる位置に設けてもよい。
上述のように、軸を先細り形状にすることにより、軸にねじ山を設けることにより、又は、軸に径大部を設けることにより、軸を錠本体に固定することができる。更に、軸が挿入方向と同じ方向に抜き出されることを不可能とすることができる。なお、錠本体と軸と係止部材との関係を、後述する図58(b)〜図58(m)、図59および図60の様にすることにより、施錠時には、錠本体から軸を挿入方向とは逆方向にも抜き出すことはできなくなる。つまり、開錠時にのみ施錠装置の分解が可能となる。
また、軸が錠本体から抜き出されることを防ぐための部品を別途用いる必要がない。また、摩擦力や、ねじの原理等を利用して軸を錠本体に固定するため、分解、組み立てを繰り返し行うことができる。
なお、傘などの施錠対象物がバンドによりゆるく締められた状態でバンドがロックされた場合を想定すると、図54に示したねじ山を有する軸を用いた施錠装置であれば、特定の場合を除き、軸を抜かれることはない。一方、図53及び図55に示した、先細り形状の軸、及び軸後部に径大部を有する軸を用いた施錠装置では、軸を軸の挿入方向とは逆に抜き出される可能性はある。しかしながら、施錠対象物が適度に締め付けられた状態でバンドがロックされた場合は、軸は抜き出されることはない。ここで、上記の特定の場合とは、ねじ山を有する軸において、バンドが軸内をらせん状にねじれて通過しており、そのねじれの周期とねじ山のピッチとが同期している場合である。その場合、軸を回しながら抜き出される可能性はある。しかしながら、ねじれの周期とねじ山のピッチとが同期しないように設計することで、軸が抜き出されることを不可能とすることができる。
また、本発明の施錠装置は、上述のねじ山を有する軸を使用する以外の図53、図55〜図57に示された軸と錠本体の関係において、バンドがゆるく締められた状態であってもバンドの(通過)経路を工夫することにより、軸を錠本体から抜き出すことができない構造とすることもできる。
図58〜図60を用い、バンドなどの係止部材がゆるく締められた状態であっても軸を錠本体から抜き出すことができないダイヤル錠の構造の例を説明する。なお、各図はバンド等の係止部材、軸および錠本体の位置関係を示す関係図である。ダイヤルリング等の他の要素の図示は省略している。
図58は、開錠時にダイヤルリングの切欠部が存在する方向から見た軸および錠本体に対するバンドなどの係止部材の経路の違いを示す図であるが、各図の説明においては係止部材をバンドとして説明を行う。なお、図58(a)〜図58(m)の各図はダイヤル錠の上面図であり、図中の矢印を先端に有する線分はバンドを表す。また、3つのダイヤルリングを貫通する2本の細い点線に挟まれた領域は軸を表しており、その軸内にある太い点線部分つまりバンドが存在する部分にはバンドが挿入される軸側溝または軸側孔が存在する。具体的には、3つのダイヤルリングを貫通する太い点線部分には、軸側溝が存在し、それ以外の太い点線部分には、軸側溝または軸側孔が存在する。後述する図59においても同じである。
なお、これら施錠形態は、例えば、錠本体120、バンド400、3つのロック用ダイヤルリング200、および、軸側溝の少なくとも一部が、錠本体に対する軸の挿抜方向とは異なる方向に形成されている軸、例えば図81を用いて後述する軸380により構成される施錠装置で実施可能である。この場合、錠本体120において、本体側溝は、本体側溝と軸380の軸側溝とにより一つの通路が形成される位置に存在するものとする。
図58(a)は、バンドが、軸方向と平行に軸を貫通しているダイヤル錠を示す図である。例えば、図1に示すダイヤル錠1はこのタイプである。
図58(b)〜図58(e)は、バンドが錠本体と軸との境界を貫通するダイヤル錠を示す図である。図58(b)に示すタイプは、バンドが軸後部付近で錠本体を一度通過している。図58(c)に示すダイヤル錠は、バンドが軸頭部付近で錠本体を一度通過している。図58(d)に示すダイヤル錠は、バンドが軸後部付近および軸頭部付近で錠本体を2度通過している。図58(e)に示すダイヤル錠は、バンドが軸後部付近および軸頭部付近で錠本体を2度通過している。また、軸に対して、バンドが挿入された側と反対側にバンドが出ている。
ここで、上述の図58(b)〜図58(e)に示す各ダイヤル錠においては、少なくとも一箇所において、軸と錠本体との境界をバンドが横切るように存在している。この状態であれば、バンドがゆるく締められた状態であっても、バンドがロックされている場合は、軸を錠本体から抜き出すことはできない。
更に、開錠時においても、軸側溝の全範囲に渡ってバンドが存在する状態では、軸を錠本体から抜き出すことはできない。ただし、図58(b)、図58(d)、図58(e)に示す各ダイヤル錠においてはバンドが完全に軸から抜け切っていない状態であれば、軸を錠本体から抜き出すことはできない。
図58(f)〜図58(i)は、軸と錠本体との境界をバンドが横切らず、境界の端から端まで(全長に渡り)バンドが移動でき、貫通可能な経路が存在するタイプのダイヤル錠を示す図である。
図58(f)に示すダイヤル錠は、バンドの通路の軸後部付近に曲線部を有し、図58(g)に示すダイヤル錠は、バンドの通路の軸頭部付近に曲線部を有する。また、図58(h)に示すタイプは、バンドの通路の軸頭部付近および軸後部付近に曲線部を有する。図58(i)に示すダイヤル錠は、バンドの通路は、軸方向に対し斜めの直線である。
ここで、軸を抜き出すことが可能な方向は錠本体の軸孔の方向であり、各図において、軸の長軸方向に平行である。しかしながら、図58(f)〜図58(i)の各図においては、軸のバンドが通過する溝である軸側溝は、軸方向とは平行でない部分が存在する。
そのため、バンドがロックされた状態で、軸が錠本体から抜き出される場合、軸は、軸側溝内の軸方向とは平行でない部分にあるバンド本体を、軸方向とは垂直な方向である錠本体の前または後方向へ移動させながら抜き出される必要がある。しかしながら、錠本体には、軸側溝と向かい合うように、錠本体のバンドが通過する溝である本体側溝が存在する(例えば、図5参照)。つまり、各錠本体は、各図のバンドを表す点線に沿って軸の上部に本体側溝を有している。
従って、バンド本体を錠本体の前後方向に移動させようとしても、バンド本体の凹凸部を有する辺が本体側溝内に存在しているため、バンド本体は錠本体の前後方向へ移動することができない。また、軸側溝は、ダイヤルリング付近において、バンド本体の凹凸部の
凹部が溝からはみ出るとダイヤルリングが回転できなくなるので、凹部が溝からはみ出ない様に形成される必要があり、軸側溝は軸の曲面に存在するので、軸の錠本体に対する挿抜方向とは異なる方向に形成されている軸側溝部分では、軸側溝の底部が同一平面状にあり、ねじれていない場合には、当然、軸側溝の溝が浅くなってしまい、バンド本体の凹凸部の凹部が溝からはみ出ることになる。つまり、バンド本体の凹凸部を有する辺とは反対の辺であるバンドの下面へ反るまたは反っているバンドを使用し、軸側溝を一定の深さのねじれ形状にしない限り、係止部材は、凸部分でない部分でも軸側溝からはみ出す部分が生じ、係止部材の凸部分でない部分でも軸側溝と本体側溝にまたがって存在することになる。
従って、図58(f)〜図58(i)に示す各ダイヤル錠において、バンドがロックされた場合、バンドがゆるく締められた状態であっても、軸を錠本体から抜き出すことはできない。
更に、開錠時であっても、軸側溝の全範囲に渡ってバンドが存在する状態では、本体側溝の軸方向とは平行でない部分にバンド本体の凹凸部を有する辺が存在することになる。
そのため開錠時であっても、軸側溝の全範囲に渡ってバンドが存在する状態では、軸を錠本体から抜き出すことはできない。ただし、図58(f)、図58(h)、図58(i)はバンドが完全に軸から抜け切っていない状態であれば、軸を錠本体から抜き出すことはできない。
上述のように、軸の形状によらず、バンドが軸および錠本体を通過する通路、つまり、軸および錠本体のバンドが通過するための溝または孔の形状により、開錠時にのみ、軸を抜き出すことができる施錠装置を作成することが可能である。また、軸が錠本体から抜き出されることを防ぐための部品を別途用いる必要がない。
例えば、本発明の施錠装置に、後述する図81に示す様な軸が円筒形であり錠本体のどちら側からでも挿抜可能な軸を用いた場合であっても、図58(b)〜図58(i)に示す様にバンドの通路を作製することにより、開錠時にのみ分解が可能とすることができる。
なお、図58(b)と図58(d)、および図58(f)と図58(h)に示すダイヤル錠では、バンドで傘など締め付けて施錠する際に、バンドと、軸または錠本体と曲面で接する部分が多くなり、図58(e)と図58(i)では図58(a)と比べてバンドの湾曲が緩やかな状態で錠本体に挿入されるので、バンドにかかる力を分散させることができる、つまり、図12(b)に示した、錠本体および軸が全体的に湾曲したダイヤル錠1と同様に、バンドの耐用寿命を延ばすことができる。
図58(j)および図58(k)は、ダイヤルリングによるバンド係止のための軸側溝の他に、もう一つの軸側溝(以下、「副軸側溝」という。)が存在するタイプのダイヤル錠を示す図である。なお、それぞれのダイヤル錠において存在する2つの軸側溝は、互いに交わらない位置に存在している。
なお、ダイヤルリングによるバンド係止のための軸側溝は、上述のように、図においては、3つのダイヤルリングを貫通する軸内の太線部分に存在する溝であり、軸内のそれ以外の太線部分に存在するのが副軸側溝である。ここで、ダイヤルリングによるバンド係止のための軸側溝以外のバンドが挿入される部位は、溝ではなく孔でもよい。この場合、例えば、図58(j)において、軸には、3つのダイヤルリングを貫通する軸側溝と、3つのダイヤルリングを貫通しない軸側孔とが存在することになる。
3つのダイヤルリングを貫通しない軸側溝、つまり、副軸側溝と上述の軸側孔とは、係止部材が挿入されることにより、軸の錠本体からの抜き出しを不可能とする効果においては同じであり、以下、図中の3つのダイヤルリングを貫通しない軸内の太い点線部分は溝、つまり副軸側溝であるとして説明するが、軸側孔であっても効果は同じである。
図58(j)に示すダイヤル錠は、係止部材が軸をねじれの位置で2度通過している。また、図58(k)に示すダイヤル錠のように、副軸側溝を、ダイヤルリングによるバンド係止のための軸側溝とねじれの位置でなく軸に存在させ、係止部材に軸を横切らせることも可能である。
図58(j)および図58(k)に示すダイヤル錠の副軸側溝はともに、錠本体に対する軸の挿抜方向とは異なる方向に形成されている。従って、バンドの通路は錠本体に対する軸の挿抜方向とは異なる方向に形成されることとなり、副軸側溝にバンドが存在している状態では、軸はバンドにより錠本体にロックされる。
図58(l)は、湾曲した軸に対し、バンドが直線で貫通するタイプのダイヤル錠を示す図である。
図58(l)に示すダイヤル錠において、錠本体に対する軸の挿抜方向は、軸の湾曲に沿った曲線上に存在する。それに対し、バンドは軸を直線で貫通している。つまり、図58(l)に示すダイヤル錠のバンドの通路は、錠本体に対する軸の挿抜方向とは異なる方向に形成されていることになる。従って、軸はバンドによりロックされることになる。
つまり、図58(b)〜図58(e)および図58(j)〜図58(l)の様に、係止部材用通路が錠本体と軸の境界を、軸側面の位置で、錠本体に対する軸の挿抜方向とは異なる方向で横切り、その境界を横切る部分に係止部材が存在する場合には、本体側溝の有無に関わらず、軸を錠本体から引き抜くことができなくなる。
また、図58(f)〜図58(i)および図58(m)の様に、係止部材用通路が錠本体と軸の境界を、軸側面の位置で横切っていない場合でも、本体側溝が存在し、軸側溝と本体側溝とで形成される孔または穴の一部を、錠本体に対する軸の挿抜方向とは異なる方向に形成することによって、軸の挿抜方向とは異なる方向に形成されている軸側溝部分に存在する係止部材が、本体側溝にまたがって存在、または、軸の挿抜方向とは異なる方向に形成されている軸側溝部分より、軸の抜き出し側の軸側溝部分に存在する係止部材が、本体側溝にまたがって存在することにより軸を錠本体から引き抜くことができなくなる。
図58(m)は、バンドの一部分が屈曲して軸を貫通するタイプのダイヤル錠を示す図である。
つまり、図58(m)に示すダイヤル錠において、バンドの通路の一部が錠本体に対する軸の挿抜方向とは異なる方向に形成されていることになる。この場合においても、その屈曲した一部にバンドが軸側溝と本体側溝にまたがって存在する場合、軸はバンドによりロックされることになる。
また、軸側に、係止部材が貫通する溝または孔が、図58(j)、図58(k)、または後述する図59(g)のように存在すれば、錠本体に軸部材が回転しない様にロックできるので、錠本体に対する係止部材の方向性は軸側溝により定めることが可能である。また、係止部材の凹凸部の係止はダイヤルリングによるもので、錠本体が直接関与している訳ではない。そのため、本体側溝は必ずしもダイヤル錠の構造上必要な要素ではないと言
うことができる。
また、本体側溝がなく、例えば、軸側溝上で複数のダイヤルリングが存在する範囲に、軸部材の抜き出し方向と異なる部分がある場合、係止部材がダイヤルリングでロックされている状態では、係止部材の変形能がなければ、錠本体からの軸部材の抜き出しは不可能である。
従って、係止部材の通路を形成する最小要素である軸側溝または軸側孔の形状により、開錠時にのみ分解・組み立て可能な施錠装置を実現することができる。
具体的には、係止部材の通路を形成する軸側溝または軸側孔の少なくとも一部が、錠本体に対する軸部材の挿抜方向とは異なる方向に形成され、係止部材の通路が軸側面の位置で軸部材を横切っていることにより、軸側溝が軸部材を貫通していても、係止部材をダイヤルリングでロックするとダイヤルリングの軸部材が錠本体にロックされる。さらに、ダイヤルリングによる係止部材のロックを解除して、係止部材を軸側溝または軸側孔から抜去すると錠本体に対する軸部材のロックを解除することが出来る構造となる。
また、本体側溝が存在する場合は、軸側溝と本体側溝とにより形成される孔または穴の少なくとも一部が、錠本体に対する軸部材の挿抜方向とは異なる方向に形成され、軸部材の挿抜方向とは異なる方向に形成されている軸側溝部分に存在する係止部材が、本体側溝にまたがって存在、または、軸部材の挿抜方向とは異なる方向に形成されている軸側溝部分より、軸部材の抜き出し側の軸側溝部分に存在する係止部材が、本体側溝にまたがって存在することにより、軸部材を抜き出すことはできない。つまり、本体側溝という簡易な仕組みで、係止部材の通路が軸側面の位置で軸部材を横切っていなくても施錠時には分解不可能な安全な施錠装置を構成することができる。
また、本発明の施錠装置は、図26(a)に示したダイヤル錠のように、バンド等の係止部材のロック用ダイヤルリングに係止される部分(以下、「係止部」という。)が軸または錠本体を貫通しない形態とすることもできる。
そこで、係止部材の係止部が軸または錠本体を貫通しない施錠装置において、開錠時にのみ分解を可能とする構造について、図59を用いて説明する。
図59は、係止部材の係止部が軸または錠本体を貫通しないダイヤル錠の、軸および錠本体に対するバンドの経路の違いを示す図である。なお、図59(a)〜図59(h)の各図はダイヤル錠の上面図で、開錠時にダイヤルリングの切欠部が存在する方向から見た図であり、図中の軸または錠本体に存在する点線は係止部材の係止部を表す。
図59(a)および図59(b)に示すダイヤル錠は、一箇所において、軸と錠本体との境界を係止部が横切るように存在している。また、図59(a)に示すタイプは係止部が軸を貫通しておらず、図59(b)に示すタイプは係止部が軸を貫通している。図59(c)に示すタイプは、二箇所において、軸と錠本体との境界を係止部が横切るように存在している。また、係止部が軸を貫通している。
なお、係止部材の係止部の頭部が、軸を貫通した後に差し込まれている錠本体の部位を差込部という。また、差込部は、軸の周上にある軸側溝の端部に続く位置に存在する。
これら図59(a)〜図59(c)に示すダイヤル錠は、上述の図58(b)等に示すタイプと同様に、少なくとも一箇所において軸と錠本体との境界を係止部が横切るように存在している。つまり、係止部が軸側溝とそれに続く差込部にまたがって存在している。
そのため、施錠時には軸を錠本体から抜き出すことはできない。また、開錠時であっても、係止部が軸から抜けきっていない場合では軸を錠本体から抜き出すことはできない。
図59(d)および図59(e)に示すダイヤル錠は、係止部が錠本体のみに存在している部分はなく、軸側溝と本体側溝に係止部が存在している。また、図59(d)に示すタイプは係止部が軸を貫通しておらず、図59(e)に示すタイプは軸側溝が軸を貫通している。
これら図59(d)および図59(e)に示すダイヤル錠は、上述の図58(f)等に示すタイプと同様に、軸側溝および本体側溝が軸方向と平行ではく、係止部材が軸側溝と本体側溝にまたがって存在する箇所が存在するため、施錠時には軸を錠本体から抜き出すことはできない。また、開錠時であっても、係止部が軸から抜けきっていない場合では軸を錠本体から抜き出すことはできない。
上述のように、係止部が軸または錠本体を貫通していない施錠装置においても、開錠時にのみ分解を可能とする構造とすることができる。つまり、実施の形態1のダイヤル錠1および実施の形態2のダイヤル錠2のように、係止部材の任意の位置でロックする施錠装置ではなく、特定の位置で係止部材をロックする施錠装置においても、図59(a)〜図59(e)に示すダイヤル錠の構造を採用することにより、開錠時にのみ分解・組み立てを可能とすることができる。
また、図59(a)〜図59(e)に示すダイヤル錠のように係止部材の係止部が直線ではない場合であっても、開錠時にのみ分解・組み立てが可能な施錠装置を実現することができる。
図59(f)は、係止部材用通路が湾曲しているダイヤル錠を示す図である。具体的には、特定の位置で係止される係止部材用の軸側溝が湾曲し、係止部材の係止部が湾曲した状態で軸側溝に挿入され、係止部の先端が錠本体の差込部に差し込まれている。
図59(g)は、係止部材の係止部は軸を貫通せず、係止部材のほかの部分が軸を貫通するダイヤル錠を示す図である。
図59(h)に示すダイヤル錠は、係止部材の係止部は軸を貫通せずの通路の一部が屈曲しているダイヤル錠を示す図である。
つまり、図59(f)〜図59(h)に示すダイヤル錠は、係止部材の通路を形成する軸側溝または軸側孔の少なくとも一部が、錠本体に対する軸部材の挿抜方向とは異なる方向に形成されている。従って、図59(f)〜図59(h)に示すダイヤル錠も、係止部材を、その軸側溝または軸側孔から抜去すると錠本体に対する軸部材のロックを解除することができる構造である。
なお、上述の図58(b)〜図58(m)および図59(a)〜図59(h)に示すダイヤル錠の各タイプは、係止部が軸内において、一部または全部が軸方向とは並行でない形態である。そのことにより、軸を抜き出す際に軸の移動を制限する専用の部材が存在しない場合であっても錠本体から軸は抜去不可能で、開錠時にのみ施錠装置を分解可能としていた。また、軸が錠本体から抜き出されることを防ぐための部品を別途用いる必要がなく、分解後の組み立て直しも容易である。
しかしながら、本発明の施錠装置において、係止部が軸と平行に軸内に存在する構造であっても、開錠時にのみ分解可能とすることができる。
図60は、係止部が軸と平行に軸内に存在するダイヤル錠であっても、リテーナやピンを使用せずに開錠時に限り、分解および組み立て直しを可能とする錠本体と軸とおよび係止部の関係を示す図である。図60(a)〜図60(c)に示すダイヤル錠は、係止部が軸を貫通していないタイプである。これらのタイプのダイヤル錠では、係止部が軸を貫通していないため、軸を係止部の挿入方向と逆方向に抜き出す場合、必ず係止部の移動を伴うこととなる。しかし、施錠時、つまり、係止部がダイヤルリングにロックされた状態であれば、係止部は移動できず、軸は、係止部の挿入方向と逆方向に抜き出されることがない。
図60(a)は、錠本体の軸孔が錠本体を貫通しているダイヤル錠を示す図である。この場合は、軸を先細り形状とし、錠本体の軸孔も対応する形状にすることにより、軸が係止部の挿入方向に抜き出されることを防ぐことができる。
図60(b)は、錠本体の軸穴が錠本体を貫通していないダイヤル錠を示す図である。軸穴が錠本体を貫通していないため、軸が係止部の挿入方向に抜き出されることはない。また、軸に鍔をつけることにより、開錠時に軸を抜き出し易くすることができる。
図60(c)は、図60(b)に示す錠本体に軸を押し出すための孔が設けられたダイヤル錠を示す図である。開錠時に、この孔から棒などで軸を押し出すことができる。また、この孔以外は、図60(b)に示すダイヤル錠と同じ構造であり、施錠時には軸を抜き出すことができない。
図60(d)〜図60(f)に示すダイヤル錠は、係止部が軸を貫通しているタイプである。これらのタイプのダイヤル錠では、係止部が軸を貫通しているため、軸を係止部の挿入方向と逆方向に抜き出す場合、係止部の移動を伴わない。つまり、係止部がダイヤルリングにロックされた状態であっても、軸を錠本体から抜き出される可能性がある。
図60(d)は、軸孔が錠本体を貫通し、係止部に軸の抜き出しを防止するための鍔が備えられたダイヤル錠を示す図である。この場合は、軸を先細り形状とし、錠本体の軸孔も対応する形状にすることにより、軸が係止部の挿入方向に抜き出されることを防ぐことができる。また、係止部に備えられた鍔により、係止部がダイヤルリングにロックされた状態では、軸は、係止部の挿入方向とは逆方向には抜き出すことはできない。
図60(e)は、軸穴が錠本体を貫通せず、係止部に軸の抜き出しを防止するための鍔が備えられたダイヤル錠を示す図である。軸穴が錠本体を貫通していないため、軸が係止部の挿入方向に抜き出されることはない。また、係止部に備えられた鍔により、係止部がダイヤルリングにロックされた状態では、軸は、係止部の挿入方向とは逆方向には抜き出すことはできない。係止部のロックが解除されると、つまり開錠時には、軸は軸に備えられた鍔を利用し錠本体から抜き出すことができる。
図60(f)は、図60(e)に示す錠本体に軸を押し出すための孔が設けられたタイプを示す図である。開錠時にこの孔から棒などで軸を押し出すことができる。また、この孔と軸に鍔がないこと以外は、図60(e)に示すダイヤル錠と同じ構造であり、施錠時には軸を抜き出すことができない。
上述のように、本発明の施錠装置は、係止部が軸と平行に軸内に存在する構造であっても、開錠時にのみ分解可能とすることができる。また、軸が錠本体から抜き出されることを防ぐための部品を別途用いることを要せず、組み立て直しも容易である。
なお、ダイヤル錠を上から見た場合に、バンド等の係止部材が、軸方向に平行であっても、ダイヤル錠を正面から見た場合に、軸方向に平行でない形態も考えられる。
例えば、軸の軸側溝が、軸の挿入方向に対して下に傾いている場合や、軸側溝が途中から軸方向から下に離れていく形状である場合に、バンドを緩く締めてロックすると錠本体から軸が抜き出される可能性があるが、係止部が決まった位置でロックされるダイヤル錠の場合には図60に示す構造にすることによりロック時には軸を錠本体から分解出来ない様にできる。また、任意の位置でロックできるバンド式ダイヤル錠の場合と共に、後述する図114〜図117の様にリテーナやピン以外の軸留部材を用いることにより開錠時に限り分解および組み立て直し可能な構造にすることができる。
また、本発明の施錠装置におけるダイヤルリング等を用い、ダイヤル錠を軸が存在しない構造とすることも可能である。例えば、図1に示すダイヤル錠1において軸300をなくすことが可能である。バンド400がダイヤル錠1においてロックされるのは、バンド400の凸部401と、ロック用ダイヤルリング200の回転軸と垂直な側面が当接するためである。
ダイヤル錠1から軸をなくす場合、例えば、バンド400が差し込まれていない状態でも、ロック用ダイヤルリング200が錠本体100からはずれないように、ロック用ダイヤルリング200をその周で回転可能に支える部材を錠本体100が備えればよい。
また、ロック用ダイヤルリング200をバンド400のバンド本体を軸として回転させ易くするために、バンド400のバンド本体の長手方向に垂直な断面が、図26(c)に示した係止部532の断面のように丸みを帯びていてもよい。
図61Aは、ダイヤル錠1から軸をなくし、開錠時に限り分解、組み立て直しを可能にするダイヤル錠の一例を示す図である。図61A(a)は、そのダイヤル錠の構造および組み立ての手順を示す図であり、図61A(b)は、組み立て後のダイヤル錠の側面および上面を示す図である。また、図61A(c)は、軸がなく、開錠時に限り分解、組み立て直しが可能なダイヤル錠において、バンド本体が錠本体を貫通しない場合のダイヤル錠の構造を示す図である。なお、各図中の点線は、各部材の内部構造を示すための線である。
図61A(a)に示すように、ダイヤル錠は錠本体920と、3つのロック用ダイヤルリング231と副部材921とにより組み立てられる。錠本体920は、複数のダイヤルリングを格納するための空間である1つの格納部を有している。また、3つのロック用ダイヤルリング231は、図14に示すロック用ダイヤルリングのように、中心に近い部分の厚みが、周側の厚みより薄くなっている。図61A(a)の上部に示す図は、ロック用ダイヤルリング231の側面図であり、ドットが存在する中心に近い部分は、その周りの部分より奥に存在する。
副部材921にはねじ山が存在し、錠本体920の左側には、副部材921の形状に適合する空間と副部材921がねじ入れられるためのねじ溝とが存在する。
まず、(1)3つのロック用ダイヤルリング231を錠本体920の左側から挿入する。(2)副部材921を回転させながら錠本体920の左側からねじ入れる。以上の手順により、ダイヤル錠が組み立てられる。
図61A(b)は、上記手順により完成したダイヤル錠の概要を示す図であり、左から左面図、上面図、右面図である。
上面図に示すように、3つのロック用ダイヤルリング231の内側にバンドを係止するための凹凸が形成される。また、軸は存在しないが、3つのロック用ダイヤルリング231のそれぞれは、錠本体920によりその周で回転可能に支えられる。
この状態で、バンド本体が副部材921を貫通している状態では、副部材921は錠本体920に対して回転できない。そのため、錠本体920から副部材921を取り外すことはできない。副部材921は、3つのロック用ダイヤルリング231を錠本体920から取り出せないようにするための蓋の役割をしている。そのため、ロック用ダイヤルリング231も錠本体から取り出すことはできない。
従って、図61A(b)に示すダイヤル錠も、開錠時に限り分解、組み立て直しが可能なダイヤル錠である。
なお、錠本体は図61A(c)の錠本体920aのように、バンド本体が錠本体を貫通しない構造でもよい。図61A(c)において差込穴920bは、錠本体920aの内部の穴であり、この穴にバンド頭部が差し込まれる。また、差込穴920bは錠本体920aの右側まで到達していない。このような構造のダイヤル錠においても、開錠時に限り分解、組み立て直しが可能である。
副部材921のような、ダイヤルリングが外れないようにネジ式で錠本体に回しこんで蓋をする部材は、ダイヤルリングの軸がないタイプで作製可能なだけでなく、軸が錠本体と一体となっているタイプや錠本体に軸が組み入れられるタイプでも作製可能である。
つまり、ダイヤルリングの錠本体への挿入方向と同じ方向から、軸が錠本体に挿入され、図53〜図57に示した関係で、軸の一部だけが錠本体の軸挿入孔または軸挿入穴に挿入されて固定される構造であれば、軸は錠本体の左側へは通過不可能な為、軸を錠本体へ挿入した後、ダイヤルリングを軸に通して、蓋をする部材を錠本体へネジ込んで組み立てることにより、軸がない図61Aと同様に、係止部材が蓋をする部材を貫いて、ダイヤルリングにロックされる構造にすると、開錠時に限り分解、組み立て直しが可能となる。また、ダイヤル錠2のような、2軸タイプのダイヤル錠にも応用可能であり、ネジ式の蓋をする部材の内側に軸が嵌合する陥凹部を作製しておけば軸の安定が更によくなる。
また、ダイヤル錠2においても、ダイヤル錠2を構成するリングをリングの周で回転可能に支える部材を錠本体に用いることで、または錠本体がリングをリングの周で回転可能に支えることで、軸をなくすことは可能である。
図61Bは、ダイヤル錠1から軸をなくし、開錠時に限り分解、組み立て直しを可能にするダイヤル錠の別の例を示す図である。
図61B(a)は、ネジ式の副部材を備え、かつ、バンドの通路が湾曲しているダイヤル錠の構造の概要を示す図である。
図61B(a)に示すダイヤル錠は、図61A(a)および図61A(b)に示すダイヤル錠と同様に、副部材921を備えている。しかし、図61A(a)および図61A(b)に示すダイヤル錠とは異なり、副部材921が有する、バンドを貫通させる副孔921aが湾曲している。また、錠本体920のバンドが貫通する貫通孔920cも湾曲している。
また、副孔921aおよび貫通孔920cは、それぞれの孔を介しては、ダイヤルリン
グを視認不可能なほどに湾曲している。従って、図13(d)〜図13(g)を用いて説明したように、バンドの通路である副孔921aおよび貫通孔920cを介しては、ダイヤルリングの開錠のための部位である切欠部の位置を覗き見することができない。これにより不正開錠を防止することができる。
なお、図61A(a)〜図61A(c)および図61B(a)に示すダイヤル錠において、副部材がねじ山を有し、錠本体がねじ溝を有している。しかしながら、副部材がねじ溝を有し、錠本体がねじ山を有していてもよい。これは、副部材と錠本体との関係に限らず、例えば、図46B(a)〜図46B(d)に示すダイヤル錠における軸と錠本体でも同じである。つまり、2つの部材がネジ式に結合するためには、一方がねじ山を有し、他方がそのねじ山に対応する形状のねじ溝を有していればよい。
図61B(b)は、ねじ式ではなく、差し込み式の副部材を備える施錠装置の構成の概要を示す図である。図61B(b)の左図は、錠本体922の左側面図である。ドット部分は、錠本体を左から見たときに奥に見える貫通孔922aを含む部分である。
副部材923は、図の矢印に示すように錠本体922の前面から錠本体922に差し込まれる。錠本体922には、副部材923が差し込まれるための係合溝または係合凸部を有し、副部材923は、その係合溝または係合凸部に対応する係合部を有している。
図61B(c)は、副部材923の形状の概要を示す図である。右図のドット部分は、密なほど奥に位置する面であることを表している。
また、副部材923は、係止部材を貫通させる副孔を有しており、副孔から挿入される係止部材は、図示しないダイヤルリングを貫通し、錠本体922の貫通孔922aから錠本体の外部に出てくる。また、係止部材は任意の位置でダイヤルリングにロックされる。
この状態では、副部材923は錠本体から取り出すことができない。つまり、副部材923が錠本体922に差し込まれる方向が、錠本体923に対する係止部材の挿抜方向とは異なるためである。
このように、施錠時には、副部材923を取り外すことができないが、開錠時には、副部材923を取り外すことができ、ダイヤルリングも錠本体922から取り出すことができる。
このように、ネジ式の副部材でなく、差し込み式の副部材であっても、開錠時にのみ分解・組み立てが可能な施錠装置を実現することができる。
また、差し込み式の副部材を用いた場合であっても、図61B(a)のダイヤル錠と同様に、バンドの通路を、その通路を介してはダイヤルリングを視認不可能なほどに湾曲させることにより、不正開錠防止効果を持たせることができる。
図61B(d)は、差し込み式の副部材を備えるダイヤル錠の別の構成の概要を示す図である。図61B(d)に示すように、副部材923の副孔923aと、錠本体の貫通孔922bとは湾曲しており、副孔923aまたは貫通孔922bを介しては、ダイヤルリングの切欠き部を覗き見ることはできない。
図61Cは、差し込み式の副部材を備える、特定の位置で係止部材が係止されるダイヤル錠の構造の概要を示す図である。
図61C(a)に示すダイヤル錠は、錠本体924と係止部材925と、3つのロック用ダイヤルリング231と、差し込み式の副部材926とを備えている。
このダイヤル錠は、(1)3つのロック用ダイヤルリング231が錠本体924に装填され、(2)副部材926が錠本体924に差し込まれることにより組み立てられる。
図61C(b)は、錠本体924の左側面図であり、図中のドットが密なほど奥に位置する面であることを表している。図61C(c)は、副部材926の形状の概要を示す図であり、右図のドットは密なほど奥に位置する面であることを表している。図61C(c)に示ように、副部材926は、係止部材を貫通させる副孔を有している。
また、錠本体924と副部材926とは、図61B(b)に示す錠本体922と副部材923と同様に、係合溝等により着脱可能に結合される。副部材926を錠本体924に取り付ける際の差し込み方向は、錠本体924に対する係止部材925の挿抜方向とは異なっている。これにより、係止部材925が、錠本体924に差し込まれた状態の副部材926を貫通している場合、副部材926を錠本体924から取り外すことはできない。更に、係止部材925は後端に鍔を有しており、施錠時には、副部材926の副孔が鍔により覆い隠されるため、副孔からダイヤルリングの切欠部を覗き見ての不正開錠を防止できる。
また、副部材926は、ロック用ダイヤルリング231が錠本体924の外部へ移動しないように錠本体に蓋をする役目を有している。そのため、図61C(a)に示すダイヤル錠は、開錠時にのみ分解可能な施錠装置である。
図61C(e)に示すダイヤル錠は、錠本体924と、軸927と、係止部材929と、3つのロック用ダイヤルリング231と、差し込み式の副部材928とを備えている。つまり、図61C(a)に示すダイヤル錠とは異なり、ロック用ダイヤルリング231の回転軸である軸927を備えている。
このダイヤル錠は、(1)錠本体の軸927を取り付けるための部位に軸927が挿入され、(2)3つのロック用ダイヤルリング231が、軸927を中に通しながら錠本体924に装填される。さらに(3)副部材928が錠本体924に差し込まれることにより組み立てられる。
図61C(f)は、副部材928の形状の概要を示す図であり、右図のドットは密なほど奥に位置する面であることを表している。図61C(f)に示ように、副部材928は、係止部材を貫通させる副孔を有している。また、軸927は、係止部材929が差し込まれ、かつ、軸を貫通しない軸側溝を有している。
また、錠本体924と副部材928とは、61C(a)に示すダイヤル錠と同様に、係合溝等により着脱可能に結合される。また、副部材928を錠本体924に取り付ける際の差し込み方向は、錠本体924に対する係止部材929の挿抜方向とは異なっている。これにより、係止部材929が、錠本体924に差し込まれた状態の副部材928を貫通している場合、副部材928を錠本体924から取り外すことはできない。
また、副部材928は、ロック用ダイヤルリング231が錠本体924の外部へ移動しないように錠本体に蓋をする役目を有している。そのため、図61C(e)に示すダイヤル錠も、開錠時にのみ分解可能な施錠装置である。更に、係止部材929は後端に鍔を有しており、施錠時には、副部材928の副孔が鍔により覆い隠されるため、副孔からダイヤルリングの切欠部を覗き見ての不正開錠を防止できる。
図61C(g)は、軸頭部にねじ山を有する軸927を示す図である。この様に、軸927がねじ山を有する場合、錠本体の軸927を取り付けるための部位に、そのねじ山に対応する形状のねじ溝を有していれば、軸927を錠本体924にねじ入れて結合させることができる。これにより、錠本体924に軸927がしっかりと固定され、ロック用ダイヤルリング231は、更に安定して回転可能となる。更に、軸927と錠本体924に、係止部材が貫通できる溝および孔を作れば、任意の位置で係止可能な長尺状の係止部材を係止することが可能なダイヤル錠となる。この場合にも、係止部材用通路を十分に湾曲または屈曲させることにより、通路の端からダイヤルリングの切欠部を覗き見ての不正開錠を防止でき、開錠時に限り分解可能な施錠装置となる。
また、図61C(e)において、軸927と錠本体924は別々の部材としたが、錠本体が軸を有していても構わず、係止部材929は後端に鍔を有しており、施錠時には、副部材928の副孔が鍔により覆い隠されるため、副孔からダイヤルリングの切欠部を覗き見ての不正開錠を防止できる。更に、軸付錠本体に、係止部材が貫通できる溝および孔を作れば、任意の位置で係止可能な長尺状の係止部材を係止することが可能なダイヤル錠となる。この場合にも、係止部材用通路を十分に湾曲または屈曲させることにより、通路の端からダイヤルリングの切欠部を覗き見ての不正開錠を防止でき、開錠時に限り分解可能な施錠装置となる。
図62は、ダイヤル錠2から軸をなくした場合のダイヤル錠2の内部構造の一例を示す図である。図62(a)は軸が存在しないダイヤル錠2の開錠時を示す図であり、図62(b)は軸が存在しないダイヤル錠2の施錠時を示す図である。なお、係止部材として、例えば、図31に示すバンド600や図41に示すバンド650を用いることができる。歯車付き周部ロック用リング270と、歯車付きロック用ダイヤルリング295とは、錠本体930のダイヤルリングを収めるために設けられた収納部に、回転可能にその周を支えられている。
また、図示の都合上、錠本体930と離れて図示されているが、錠本体後部745は、錠本体930の一部であり、錠本体後部745と錠本体930との間を係止部材が通ることとなる。
このように、ダイヤル錠から軸をなくすことで、ダイヤル錠を構成する部品を少なくすることができ、ダイヤル錠を組み立てるために必要なコストと手間を削減できる。
また、軸に係止部を備え、軸がダイヤルリングによりロックされる構造としてもよい。この場合、ダイヤルリングによりロックされた軸がバンド等の係止部材をロックする構造としてもよい。
図63は、係止部を備える軸を用いたダイヤル錠の構造の概要を示す図である。なお、以下の記載において参照する図63、図67(a)、図67(b)、図68(a)、図68(b)、図69(a)、図69(b)、図70(a)、図70(b)はそれぞれ、ダイヤル錠の内部構造を説明するための図であり、各錠本体は、軸、バンド等の係止部材が見えるように図示されている。
図63(a)は、係止部を備える軸(以下、「係止部付軸」という。)を用いたダイヤル錠の構造を上面から見た場合の図である。図63(a)に示すように、錠本体940に挿入された係止部付軸360は、係止部として3つの凸部を備え、3つのロック用ダイヤルリングに係止される。
図63(b)は、係止部付軸360の概観を示す図である。係止部付軸360は径大部304aを備える。径大部304aは切欠部304bが狭まりながら錠本体940に挿入される。図63(b)の上図は係止部付軸360の後面図であり、図63(b)の右図は径大部304aを右から見た場合の図である。この後面図に示すように、係止部付軸360の軸後部にはバンドが貫通する孔が設けられている。この孔はバンドを係止する形状になっている。以下、軸に設けられたバンド等の係止部材を係止するための孔を「係止孔」という。
図63(c)は、ダイヤル錠を施錠状態にする際の手順を示す図である。まず、(1)バンド本体を係止部付軸360の係止孔に通し、適切な位置までバンド頭部を引っ張る。(2)係止部付軸360を錠本体940に押し込み、ロック用ダイヤルリングを回し、係止部付軸360をロックする。なお、バンドは、例えば、図5に示すバンド400等の凸部を有するバンドを用いればよい。また、ロック用ダイヤルリングは、例えば、図5に示すロック用ダイヤルリング200を用いればよい。
また、錠本体940の軸穴にバネ941を備えてもよい。こうすることで、ダイヤル錠を開錠状態にすると、バネ941の反発力により係止孔が錠本体940の外部に出され、バンド本体を係止孔から挿抜する際に便利である。
図63(d)は、施錠状態にあるダイヤル錠の構造を示す図である。この状態においてバンド本体は係止孔から抜き出すことはできない。また、開錠状態においては、バンド本体を係止孔から抜き出すことができ、更に、係止部付軸360の軸後部をつまみ、切欠部304bを狭めることにより、係止部付軸360を錠本体940から抜き出すことができる。つまり、開錠時にのみダイヤル錠は分解可能となる。
図64は、錠本体940の形状を示す図である。図64(a)は、錠本体940の上面図および右面図である。図64(b)は、錠本体940のA−A断面図であり、図64(c)は、錠本体940のB−B断面図である。A−A断面図に示すように、錠本体940には係止部付軸360の軸部分が挿入される軸穴と、軸穴の上部に、係止部付軸360の凸部が通過するための溝とが設けられている。また、のB−B断面図に示すように、錠本体940には係止部付軸360の径大部304aを収めるための空間が設けられている。
図65は、係止部付軸360の形状を示す図である。図65(a)は、係止部付軸360の上面図である。図65(b)は、係止部付軸360のC−C断面図であり、図65(c)は、係止部付軸360のD−D断面図である。D−D断面図は、径大部304aおよび切欠部304bが存在する部分の断面図であり、図64(c)の錠本体940のB−B断面図によって示される径大部304aを収めるための空間の断面形状に対応する形状である。
図66は、上述の係止部を備える軸を用いたダイヤル錠を組み立てる際の手順を示す図である。図66に示すように、(1)錠本体940のダイヤルリングを備えるための空間のそれぞれにロック用ダイヤルリングを差し込み、(2)係止部付軸360を錠本体940に挿入する。この手順によりダイヤル錠は完成し、図63(c)に示した施錠のための手順により、傘などの物品をバンドにより締め付けながら施錠することができる。
また、上述の係止部付軸360は、ロック用ダイヤルリングを回転可能に支えるための軸としての機能と、ロック用ダイヤルリングによりロックされる機能とを備えていたが、それぞれの機能を別の部材に持たせてもよい。
図67(a)は、ロック用ダイヤルリングを回転可能に支える軸と、バンドをロックす
るための係止孔を備える係止プレートとを備えるダイヤル錠の構成の一例を示す図である。なお、この場合、係止プレートとともに用いられるバンドは、本発明の施錠装置における主係止部材の役割を果たす。
図67(a)に示すように、軸370には、係止プレート740を差し込むための溝が存在する。係止プレート740は凸部を有している。係止プレート740を軸370に差し込み、係止孔にバンド本体を通す。係止孔にバンド本体が通された状態で、ロック用ダイヤルリングを回すことで係止プレート740がロックされる。図67(b)は、図67(a)に示すダイヤル錠の施錠状態の内部構造を示す図である。
また、図67(a)に示すダイヤル錠を、バンド本体が、軸と係止プレートとを貫通する構造としてもよい。
図68(a)は、バンド本体が、軸と係止プレートとを貫通する構造を有するダイヤル錠を施錠状態にする手順を示す図である。なお、軸371は、図67(a)に示す軸370より長くなっている。また、軸371の軸後部には、軸方向とは垂直方向にバンド本体が貫通するための孔であるバンド貫通孔が設けられている。
図68(a)に示すように、(1)軸371に係止プレート740を挿入する。(2)バンド本体を、軸371のバンド貫通孔と係止プレート740の係止孔の中に通し、ロック用ダイヤルリングを回し、係止プレート740をロックする。
図68(b)は、図68(a)に示す手順により施錠状態になったダイヤル錠の内部構造を示す図である。この施錠状態においては、バンド本体は係止プレート740の係止孔から抜き出すことはできず、軸371を錠本体940から抜き出すことはできない。
なお、図67(b)および図68(b)に示すダイヤル錠の場合、施錠時にはバンド本体の一部が係止プレート740の係止孔に左側に引っ張られることとなる。この場合、図67(b)に示すダイヤル錠は、バンド本体の、係止孔の上下の部分が係止孔に引っ張られる方向と逆方向に跳ね上がることも考えられる。この状態を何度も繰り返すと、バンド本体が傷んでしまう。しかし、図68(b)に示すダイヤル錠は、軸371を貫通する途中で係止孔を貫通しているため、バンド本体が跳ね上がることはない。つまり、バンドを痛めることがなく、バンドの耐用寿命を延ばすことができる。
また、図1に示したダイヤル錠1は、バンド400のバンド本体が、軸300および錠本体100を、軸方向に貫通している。しかしながら、ダイヤル錠は、バンド本体が、軸方向とは垂直に軸および錠本体を貫通する構造であってもよい。図68(b)に示すように、施錠時に、バンドが軸371に貫通していることにより、バンド本体の係止プレート740の係止孔によりロックされた部分が左側に引っ張られることとなる。
図69(a)は、バンド本体が、軸方向とは垂直に軸および錠本体を貫通する構造のダイヤル錠を施錠状態にする手順を示す図である。図69(a)に示すダイヤル錠は、基本的な構成は、図63(a)に示すダイヤル錠と同じであるが、バンド本体が錠本体を貫通している点が異なる。また、錠本体946にはバンドが貫通する孔であるバンド貫通孔946aが設けられている。係止部付軸361は係止部付軸360と比べて、後端が長くなっている。
図69(a)に示すように、(1)バンド本体を、錠本体のバンド貫通孔946aと係止部付軸361とに通す。(2)係止部付軸361を錠本体946側に押し込み、ロック用ダイヤルリングを回し、係止部付軸361をロックする。
図69(b)は、図69(a)に示す手順により施錠状態になったダイヤル錠の内部構造を示す図である。この施錠状態においては、バンド本体は係止部付軸361の係止孔から抜き出すことはできず、係止部付軸361を錠本体946から抜き出すこともできない。
また、図68(a)に示すダイヤル錠を、バンド本体が、軸方向と垂直に錠本体と軸と係止プレートとを貫通する構造としてもよい。
図70(a)は、バンド本体が、軸方向とは垂直に錠本体と軸と係止プレートとを貫通する構造のダイヤル錠を施錠状態にする手順を示す図である。図70(a)に示すダイヤル錠は、基本的な構成は、図68(a)に示すダイヤル錠と同じであるが、バンド本体が錠本体を貫通している点が異なる。また、錠本体947にはバンドが貫通する孔であるバンド貫通孔が設けられている。係止プレート741は係止プレート740と比べて、後端が長くなっている。
図70(a)に示すように、バンド本体を、錠本体のバンド貫通孔と係止プレート741の係止孔とに通す。(2)係止プレート741を錠本体947側に押し込み、ロック用ダイヤルリングを回し、係止プレート741をロックする。
図70(b)は、図70(a)に示す手順により施錠状態になったダイヤル錠の内部構造を示す図である。この施錠状態においては、バンド本体は係止プレート741の係止孔から抜き出すことはできず、係止プレート741がロック用ダイヤルリングによりロックされていることから、軸372を錠本体947から抜き出すこともできない。
上述のように本発明の施錠装置は、係止部付軸または係止プレートがロック用ダイヤルリングにロックされ、ロックされた係止部付軸または係止プレートにより係止部材であるバンドがロックされる形態であってもよい。これらの形態の施錠装置であっても、開錠時にのみ分解が可能であり、組み立て直しを繰り返し行うことが可能である。
また、係止部付軸360および係止部付軸361自体を分解可能としてもよい。
図71(a)は、分解可能な係止部付軸360の構成の一例を示す図であり、図71(b)は、分解可能な係止部付軸361の構成の一例を示す図である。係止部付軸は、係止部としての役割を果たすための凸部を有する。凸部はロック用ダイヤルリングに繰り返し係止されることにより変形、亀裂などの損傷を受ける可能性が高い。そこで、図71(a)および図71(b)に示すように、係止部付軸の凸部を有する部分と、それ以外の部分とに分解が可能とすることにより、凸部が損傷を受けた場合に、凸部を有する部分を交換することができる。更に、径大部が分割されて、別々に錠本体へ挿入可能となるので、錠本体に挿入しやすくなる。なぜなら、径大部が分割可能でない場合には、径大部のある軸後部を変形させて径大部付近の径を小さくしても、錠本体の軸孔または軸穴の挿入孔の内径に対して十分には小さくならず、挿入孔を径大部が通過しにくい場合が想定されるが、径大部が分割可能であれば、挿入孔を、分割された径大部が別々に通過することが出来るからである。
また、係止部付軸360および係止部付軸361は、バンド400等の凸部を係止するための係止孔を有している。しかしながら、係止孔の形状を変更することにより、他のバンドのバンドを係止することができる。
図72(a)は、明らかな凸部を有するバンド以外の係止部材を係止するための係止部
付軸362の上面図である。図72(b)は、図72(a)に示す係止部付軸362の軸後部を正面から見た場合の拡大図である。図72(c)は、図72(a)に示す係止部付軸362の軸後部の上から見た場合拡大図である。図72(b)および図72(c)に示すように、係止部付軸362の軸後部の係止孔の周部に、複数の細かな突起からなる突起部363が備えられている。
係止部付軸362は、突起部363により、例えば、細かな凹凸を有する係止部材を係止することができる。
図73(a)は、係止部付軸362に対応するバンドの一例を示す図である。図73(a)に示すバンド760は、表面が網の目状になっている。つまり、表面に網目による凹凸部が形成されている。この凹凸部は、突起363に対応する形状であり、バンド760は突起363により係止される。
図73(b)、図73(c)、図73(d)および図73(e)は、それぞれ、A−A断面図、B−B断面図、C1−C1(C2−C2)断面図、およびD−D断面図である。各断面図が示すように、バンド760は全体として円筒形をしている。
図73(f)は、係止部付軸362の突起部363と、バンド760の断面との関係を示す図である。なお、図73(f)に示すバンド760の断面は、突起部363を周部に備える係止孔の中の斜線部分である。この斜線部は、C1−C1(C2−C2)断面図を表している。
図73(f)に示すように、係止部付軸362の係止孔は楕円形をしており、その周部に突起部363を有している。そのため、円形の断面を持つバンド760表面の網の目は突起部363によりしっかりと係止される。また、実質的に任意の位置でバンド760を係止することが可能である。つまり、係止部付軸362とバンド760とを用いた施錠装置において、より細かく使用者の所望する位置でバンド760をロックすることができる。
また、係止部付軸362の係止孔の形状を変更することにより、他の形状のバンドを係止することができる。
図74(a)は、係止部付軸362の係止孔の形状を変更したものに対応するバンドの別の一例を示す図である。図74(a)に示すバンド761は、バンド760と同じく表面が網の目状になっている。
図74(b)、図74(c)、図74(d)および図74(e)は、それぞれ、A−A断面図、B−B断面図、C1−C1(C2−C2)断面図、およびD−D断面図である。各断面図が示すように、バンド761は、図5に示すバンド400と同様に、長手方向に垂直な断面は、長方形である。
図74(f)は、バンド761を係止するための係止孔の形状を示す図である。図74(f)に示すように、係止孔を矩形とし、突起部363を矩形の一辺に配置することにより、バンド761はしっかりと係止される。
また、係止部付軸362の係止孔に突起部363を設けず、バンド等の係止部材の凹凸を利用してその係止部材を係止してもよい。
また、係止部付軸362に係止される係止部材として、図73(a)に示すバンド76
0のような、網の目状の表面を持つ係止部材以外の部材を用いてもよい。例えば、ゴム等の弾性を有する係止部材であれば、係止孔または係止孔の突起部363が係止部材の表面に陥入することにより、係止部材を係止することができる。
図75(a)は、係止孔に突起部363を有しない係止部付軸364の上面図である。
図75(b)は、図75(a)に示す係止部付軸364の軸後部の正面の拡大図である。
図75(a)に示すように、係止部付軸364の係止孔は、係止部付軸362の係止孔と同様に楕円系をしているが、突起部363は備えられていない。
図76(a)は、係止部付軸364に対応するバンドの一例である。図76(a)に示すバンド762は、それぞれ異なる外径を有する2種類の円筒762bと円筒762cとが繰り返す形状をしている。また、ストッパ762aと、結合部材762dとを有している。
図76(b)は、バンド762の構成を示す図である。図76(b)に示すように、バンド762は、複数の円筒762bと円筒762cとを貫通し、結合部材762dによってストッパに結合される芯材762eも構成要素として備えている。
図76(b)の点線で囲まれた部分に示すように、ストッパ762aはねじ溝を有し、結合部材762dは、そのねじ溝に対応するねじ山を有している。また、結合部材762dは、芯材762eに食い込んで保持するための爪762fを有している。円筒762bと円筒762cとが交互に通された芯材762eは、さらに取付部材762dの孔に通される。この状態で結合部材762dがストッパ762aにねじ入れられると、結合部材762dの孔はその内径を縮め、爪762fが芯材762eに食い込む。このようにして結合部材762dは、芯材762eとストッパ762aとを結合することができ、バンド762が組み立てられる。
バンド762は、例えば、図1に示すダイヤル錠1に、バンド400の換わりに用いることができる。図76(c)は、バンド762に対応する錠本体100の側面図及びロック用ダイヤルリング200の側面図である。
図76(c)に示すように、錠本体の錠本体側バンド溝104と、軸300の軸側バンド溝302とにより、バンド762のバンド本体を通過させることのできる円筒を形成するようにそれらの形状を変更する。また、ロック用ダイヤルリング200のリング側バンド溝202も、バンド762のバンド本体の形状に合わせて円弧上に変更する。こうすることで、図1に示すダイヤル錠1にバンド762を用いることができる。また、そのダイヤル錠1により、傘などの物品を施錠することができる。
また、図69(a)に示すダイヤル錠において、錠本体946には、バンドが軸方向とは垂直に錠本体946を貫通するためのバンド貫通孔946aが設けられているとした。しかしながら、錠本体946に、バンドが錠本体946を貫通するための孔の換わりに、溝を設けてもよい。
図77(a)は、図69(a)に示すダイヤル錠の正面図である。図77(b)は、図77(a)に示すダイヤル錠の右側面図である。図77(a)に示すように、ダイヤル錠を正面から見ると、バンド貫通孔946aのバンド頭部の出口が見える。図77(b)に示すように、バンド貫通孔946aは錠本体946の後部から正面にかけての“孔”であ
るため、右側面からその存在を認識することはできない。
図77(c)は、図77(a)に示すダイヤル錠のA−A断面図である。図77(c)に示すように、バンド貫通孔946aは錠本体946の後部から正面にかけて、軸方向とは垂直に存在している。
図78(a)は、バンド貫通孔946aに換えてバンド貫通溝946bを備える錠本体を用いたダイヤル錠の正面図である。図78(a)に示すように、ダイヤル錠を正面から見ると、バンド貫通溝946bのバンド頭部の出口が見える。また、バンド貫通孔946aとは異なり、その出口は閉じた形状ではなく開口部が存在する。
図78(b)は、図78(a)に示すダイヤル錠の右側面図である。図78(b)に示すように、バンド貫通溝946bは、右側からその存在を認識することができる。
図78(c)は、図78(a)に示すダイヤル錠のA−A断面図である。図78(c)に示すように、バンド貫通溝946bは錠本体946の後部から正面にかけて、軸方向とは垂直に存在している。
図78(a)〜図78(c)に示すように、バンド貫通溝946bは“溝”であるが、ダイヤル錠に用いられるバンドがバンド貫通溝946bから外れないように、バンド貫通溝946bの開口部の幅を決定すればよい。
上述のように、錠本体に、バンドが錠本体を貫通するたには孔ではなく溝でもよい。これにより、例えば、製作者は、錠本体を製作する際に、製作コスト等に応じて孔または溝を選択することができる。
なお、図69(a)と図70(a)と図78(c)について、バンドが軸方向とは垂直に軸および錠本体を貫通する構造としたが、バンドの錠本体部分の貫通する経路はバンドの負荷を減らす為に、湾曲や傾斜していても構わない。つまり、軸付近の経路が軸方向とは垂直に近い構造であれば錠本体中の経路が真っ直ぐでなくても構わない。
また、図69(a)等に示すダイヤル錠では、バンドは、ロック用ダイヤルリングによっては直接係止されず、ロック用ダイヤルリングによって係止される部材により係止される。
しかしながら、バンドを係止する部材はダイヤルリング以外でもよい。例えば、錠本体に他の施錠装置を備え、その施錠装置がバンドを係止する部材を係止してもよい。
図79は、ダイヤル錠以外の施錠装置がバンドを係止する部材を係止する構造の施錠装置の例を示す図である。
錠本体948aは、シリンダ錠1100を備える。バンドを係止している部材であるバンド係止用部材365は、係止穴365aを有し、係止穴365aにシリンダ錠1100の突起が挿入されることにより、シリンダ錠1100によって係止される。バンドはバンド係止用部材365によって係止される。なお、シリンダ錠上面の縦長の長方形はシリンダ錠1100の鍵穴である。
錠本体948bは、錠本体948aと同じくシリンダ錠1100を備えているが、錠本体948aのシリンダ錠とは設置された角度が異なる。錠本体948bの場合、シリンダ錠1100の鍵穴は、錠本体948bの左側面に存在する。
錠本体948cは、カード錠1101を備える。バンド係止用部材365はカード錠1101によって係止される。バンドはバンド係止用部材365によって係止される。なお、カード錠1101の横長の長方形はカード錠1101のカード挿入穴である。
錠本体948dは、シリンダ錠としての機能を有するバンド係止用部材1102を備える。錠本体は係止穴948eを有する。係止穴948eにバンド係止用部材1102の突起が挿入されることにより、錠本体948dはバンド係止用部材1102を係止する。
また、施錠装置に、例えば、ダイヤルリングとシリンダ錠とを用いて、防犯性能を高めてもよい。
錠本体948fは、シリンダ錠の機能を備える軸である、シリンダ錠付軸367と3つのダイヤルリングとを備える。シリンダ錠付軸367は、ダイヤルリングにより係止され、シリンダ錠付軸367の突起を錠本体948fの係止穴948gに挿入することにより、錠本体948fに係止される。
上述のように、ダイヤル錠以外の施錠装置がバンド係止用部材を係止することが可能である。なお、バンド係止用部材を係止する施錠装置は、上述のシリンダ錠およびカード錠以外の施錠装置であってもよい。
また、実施の形態1および2において、錠本体にはダイヤルリングを取り付けるための空間が、取り付けられるダイヤルリングの数だけ存在する。例えば、図5に示すダイヤル錠1の錠本体100は、ダイヤル取付部105を3つ有しており、そのそれぞれにロック用ダイヤルリング200が軸300により取り付けられるとした。しかしながら、それぞれの空間を分けずに1つにしてもよい。
図80(a)は、複数のダイヤルリングを取り付けるための1つの空間を有する錠本体の一例を示す図である。図80(a)に示すように、複数のロック用ダイヤルリング235を接触させて錠本体950に取り付けることができる。そのため、ロック用ダイヤルリング235の幅(x2)を、例えば、図5に示すロック用ダイヤルリング200と同じにすると、錠本体950の幅(x1)を、図5に示す錠本体100の軸方向の長さより短くすることが可能となる。この場合、ロック用ダイヤルリング235の内側の幅(図14(c)に示すW1に相当する幅)を外側の幅(図14(c)に示すW2に相当する幅)より短くする。更に、使用するバンドの凹凸間隔を、複数のロック用ダイヤルリング235を並べた場合に形成される、ロック用ダイヤルリング235の内側の凹凸間隔に合わせればよい。こうすることで、例えば、よりコンパクトなダイヤル錠を提供することができる。
図80(b)は、複数のダイヤルリングを取り付けるための1つの空間を有する錠本体の別の一例を示す図である。図80(b)に示すように、錠本体951の幅(x3)を、例えば、図5に示す錠本体100の軸方向の長さと同じにすると、使用できるロック用ダイヤルリング236の幅(x4)は、図5に示すロック用ダイヤルリング200の幅よりも長くすることが可能となる。
ダイヤルリングの幅を長くすることで、その表面に刻印、印字などを行い易くなる。
また、上述のように、複数のダイヤルリングを接触させて取り付けることができる錠本体の場合、様々な幅のダイヤルリングと、そのダイヤルリングに適合するようにバンド本体の凹凸の間隔を変えたバンドを提供することにより、ダイヤル錠の使用者は、錠本体と軸とを換えることなく、ダイヤルリングを2連、3連、4連・・と自由に変更することが
可能となる。
また、ダイヤルリングを取り付ける空間が一つだけである錠本体であっても、図58(b)〜図58(k)および図58(m)に示したバンドと軸および錠本体との位置関係により、バンドがゆるく締められた状態であっても軸を錠本体から抜き出すことができないダイヤル錠を構成させることは可能である。
図81(a)は、ダイヤルリングを取り付ける空間が1つだけである錠本体951および軸380の概観を示す図である。図81(a)に示すように、錠本体951には、軸の周方向の位置を固定するためのガイド951aが備えられている。また、軸380は全体として円柱の形状をしており、ガイド951aに対応するガイド用溝380aが軸方向に存在する。なお、図示の簡素化のため、錠本体951および軸380の軸側バンド溝の図示は省略している。
軸380のガイド用溝380aが軸方向の全幅に渡り存在しているため、錠本体951の左右どちらからも挿入、抜き出しが可能である。また、これはダイヤルリングを取り付ける空間が複数に分れていても同様である。しかしながら、図81(b)に示すように、軸側バンド溝380bと、錠本体側バンド溝951bとを、軸方向に平行にならないように、軸380および錠本体951に設けた場合、つまり、図58(b)〜図58(i)に示したバンド経路をとった場合、上述のように、施錠時において、バンドがゆるく締められた状態であっても、軸を錠本体の左右どちらにも抜き出すことはできない。更に、開錠時であっても、バンドが軸380から抜けきっていない場合には、軸を錠本体の左右どちらにも抜き出すことはできない。
上述のように、ダイヤルリングを取り付ける空間が一つだけである錠本体を用いた場合であっても、軸が錠本体から抜き出されることを防ぐための部品を別途用いることなく、開錠時にのみ分解可能であり、繰り返し組み立て直しが可能な施錠装置を構成させることができる。
また、ダイヤルリングを取り付ける空間が一つだけである錠本体の場合、その一部が軸を形成する錠本体である軸付錠本体を用い、開錠時にのみ分解可能であり、繰り返し組み立て直し可能なダイヤル錠を作成することが可能である。
図82は、軸付錠本体を用いた分解・組み立て可能なダイヤル錠の構成の概要を示す図である。図82に示すように、軸付錠本体952に3つのロック用ダイヤルリングを差し込み、副部材953を、軸の左側面を覆うように軸付錠本体952に差し込む。これにより、3つのロック用ダイヤルリングを備えるダイヤル錠が完成する。
このダイヤル錠にバンド本体を通して施錠状態にすると、バンド本体が副部材953と軸を連続して通過するため、副部材953を手前に引き出せないので、左側へも移動できず、副部材953を、錠本体からは取り外すことはできない。つまり、緩く締めて施錠しても、分解不可能な構造となる。
つまり、図82に示すダイヤル錠は、開錠時にのみ分解可能であり、繰り返し組み立て直しが可能である。
ここで、図5および図80(a)に示すダイヤル錠の構造のように、錠本体と軸とが独立している場合であっても、図82に示すダイヤル錠の構造のように、錠本体の一部が軸を形成している場合であっても、バンドなどの係止部材が軸を貫通していることが、開錠時にのみ分解が可能であることにとって重要である。
以下に、係止部材が軸を貫通していることの重要性を、錠本体と軸とが独立している場合と、錠本体の一部が軸を形成している場合とに分けて述べる。
(i)錠本体と軸とが独立している場合
錠本体には、錠本体のダイヤルリングの装填部位にダイヤルリングの回転軸の挿入方向と垂直となる方向から、ダイヤルリングを装填可能である。加えて、その装填部位に一部のダイヤルリング(図5参照)、または全てのダイヤルリング(図80(a)参照)を装填すると、軸や係止部材がなくても、装填されたダイヤルリングの装填方向に対する垂直方向(つまり、軸が存在する場合の軸方向)への移動が、錠本体の軸の支持部位が壁となり制限される。
上述の条件を満たす錠本体を用いた場合、任意の位置でロックされる係止部材がダイヤルリングの回転軸を貫通する構造にすることが、開錠時に限りダイヤル部分を分解・組み立てを可能にする上で、重要な構造上の要件となる。
つまり、錠本体と軸が独立している場合には、上述のように軸を止めるためのピンやリテーナなどの部材を別途要することなく開錠時に限り分解・組み立てを可能にすることができる。これは以下に示す理由による。
錠本体と軸との関係が図53、図55〜図57および図81に示す関係の場合に、図58(b)〜図58(i)に示す経路で係止部材が軸および錠本体を貫通すると、軸は係止部材と無関係には錠本体内で軸方向に移動することはできない。この状態で、ダイヤルリングを回転させ施錠すれば係止部材が錠本体にロックされるとともに軸が錠本体にロックされることとなる。
これにより、錠本体に軸を止める部材を無くすことが出来き、錠本体と軸とダイヤルリングの最少構成部材でダイヤルリング部分を成立させることが可能である。
更に、錠本体と軸の関係が図54に示す関係の場合には図58(b)〜図58(i)に示す経路だけでなく、図58(a)に示す経路で係止部材が軸および錠本体を貫通しても、ダイヤルリングを回転させて係止部材が錠本体にロックされれば、軸が錠本体に対して回転出来なくなるので、軸も錠本体にロックされることになる。
また、図53、図55〜図57に示す軸と錠本体との関係において、図58(a)に示す経路で係止部材が軸および錠本体を貫通した場合に、錠本体から軸を抜き出せなくする為には、施錠時にバンドをたるみなく締め付けて施錠する必要があるが、実際に施錠する際に、軸を抜かれるほどたるませて施錠することはなく、現実的な問題ではない。また、これら図53、図55〜図57に示す軸と錠本体との関係が成立して、図58(a)に示すバンド経路以外の、上述の軸と錠本体の関係における各バンド経路では、バンドが緩んだ状態で施錠されても錠本体から軸を抜き出されることはない。
結果として、構成部材数の減少により、製造コストの削減と、分解・組立にかかる手間・所要時間の抑制、部材紛失のリスクの軽減が可能となる。その上、開錠時に限り錠本体と軸とダイヤルリングを分解・組立可能な構造にも出来る。
このように、錠本体・軸・ダイヤルリング・係止部材以外の部材を錠の構造に一切使用せずに、開錠時に限り、錠本体とダイヤルリングとダイヤルリングの回転軸を分解・組立可能とすることが可能である。
また、係止部がダイヤル錠本体に差し込まれて決まった位置でロックされる場合には図59の様に開錠時にダイヤルリングの切欠部が存在する方向から見て、係止部が軸に斜めに挿入されロックされることが、リテーナやピンなしで開錠時に限り、錠本体とダイヤルリングと軸を分解、組み立て直しを可能とする為の構造上の特徴となる。もちろん、斜めでなくても軸方向に平行以外、例えば弧状などの曲線状であっても同等の効果が得られると考えられ、軸と錠本体の境界を係止部が横切るように錠本体に挿入されれば、更に施錠時には分解し難くなる構造となる。
また、図5に示すバンド400のように、係止部材の後部の形状を本体部分より大きな形状にし、錠本体自体に係止部材の取り付けの為の貫通孔や溝を作製する。これにより、係止部材の本体部分がロックされた状態では係止部材の先端を貫通孔や溝から抜き出す不可能となるので、係止部材を錠本体に止める部材が無くても施錠時には係止部材を錠本体から分解出来ない。なお、上記貫通孔および溝については、図96および図97を用いて後述する。
このように、錠本体と係止部材の最少構成部材で錠本体と係止部材の接続を成立させることが可能である。構成部材数の減少により、製造コストの削減と、分解・組立にかかる手間・所要時間の抑制、部材紛失のリスクの軽減が可能となる。その上、開錠時に限り錠本体と係止部材を着脱可能な構造にも出来る。
係止部材が開錠時に錠本体から脱落紛失することを防ぐ為には、図98を用いて後述する構造を係止部材または錠本体が有することで可能である。しかしながら、開錠したまま放置さえしなければ、係止部材の後部が貫通孔や溝に単に係止されている状態でも問題はない。
もちろん、錠本体自体ではなく付属部材が貫通孔や溝を形成しても開錠時に限り、錠から係止部材を着脱可能とする構造にすることは可能である。
(ii)錠本体の一部が軸を形成している場合
図82に示す錠本体のように、錠本体の一部が軸を形成している場合、任意の位置でロック出来るバンド式ダイヤル錠ではピンやリテーナなどのダイヤルリングを軸にとどめておくための部材を用いても、バンドがその部材を覆うことにより、常にその部材を外されないようにすることは不可能である。バンドは柔軟性があり、かつ、任意の位置でロックされるため、バンド本体とダイヤル錠との位置関係が一定ではないためである。
そこで、バンドが軸を貫通することが、開錠時に限りダイヤル部分を分解・組み立てを可能にする上で、重要な構造上の要件となる。つまり、錠本体と軸が一体の場合には図82に示す副部材953のようにダイヤルリングを軸にとどめておくための部材1つだけで開錠時に限り分解・組み立てを可能にすることができる。
図82に示すように、副部材953を錠本体に差し込んでから、バンドを軸に貫通させる。この場合にはゆるく締めて施錠しても分解不可であり、副部材953は軸付錠本体952から取り外すことはできない。これにより、最少の部材で、開錠時に限り分解・組み立て可能で部材の交換が可能なバンド式ダイヤル錠が作製可能となる。なお、係止部材の錠本体への着脱を可能にする構造は、上述の、錠本体と軸とが独立している場合についての説明の中で述べた構造と同じで良い。
また、ダイヤル錠を用いて傘を施錠する際に、ドーナツ状の円盤形状をした補助具を用い、閉じた状態の傘の一部に瘤状の膨らみを作り出すことができるとした。しかしながら補助具は円盤状でなくてもよい。
図83は、補助具の複数の例を示す図である。なお、以下に示す補助具のそれぞれは、本発明の径大部形成部材の一例である。
図83に示す補助具50〜補助具55を傘の中棒の下ロクロと石突との間の部分に、中棒が補助具の中心に入るように取り付ける。これにより、閉じられた状態の傘の下ロクロと石突との間に瘤状の膨らみを形成させることができる。結果として閉じられた状態の傘の下ロクロと石突との間に、中棒に垂直な断面の外径が、上下より細くなる部分をつくりだすことができる。この細くなる部分をバンドで締め付けるようにしてダイヤル錠で施錠することにより、ダイヤル錠は傘の上下方向に抜くことはできなくなる。また、下ロクロ部分の中棒に垂直な断面の外径が他の部分に比較してあまり大きくなく、バンドを締め付けて施錠してもバンドが抜けやすい場合には、補助具を複数使用し、取り付けた補助具の間の傘の細くなった部分にバンドを締め付けて施錠することも可能である。
補助具50は、ドーナツ形状の物体に、傘の中棒に取り付けるための切れ込みが入った形状をしている。補助具51は、補助具50に切欠部を設け、傘の中棒に取り付け易くした形状である。
補助具52は、膨らみを有する筒状物体に、傘の中棒に取り付けるための切れ込みが入った形状をしている。補助具53は、補助具52に切欠部を設け、傘の中棒に取り付け易くした形状である。また、補助具52および補助具53の膨らみ部分は1つだけではなく、上下に2箇所存在しても構わない。その場合、2箇所の膨らみの間にあたる傘の上からバンドを締め付けて施錠できる。
上述の補助具50〜補助具53は、上から見た場合、全体として円形である。しかしながら補助具は、上から見た場合、多角形など直線により構成された形状であってもよい。
補助具54は、上から見た場合、6角形の形状であり、補助具55は補助具54に切欠部を設け、傘の中棒に取り付け易くした形状である。
また、補助具の中心部分を形成する形状は曲線で構成されていなくてもよく、中棒が補助具の中心部分に入る形状であればよい。
図84は、補助具の別の複数の例を示す図である。図84に示す補助具56および補助具57はそれぞれ上から見た場合の図である。補助具56は、補助具の中心部分が直線により構成されている。また、切欠部が外側に開いた形状をしており、傘の中棒に取り付け易くなっている。補助具57は、中心部分は補助具56と同じ形状であるが、外側の形状が直線で構成されている。
補助具60は、弾性のある素材、例えばプラスティックでできた渦巻状の補助具であり、端部から傘の中棒等を渦巻きの中心に入れることができる。また、適当な場所で切り取ることにより、外径の大きさを調節できる。補助具61は、表面に面ファスナーのフックを有しており、面ファスナーのループを有する帯部材61aと結合することができる。なお、図84において補助具61表面の網掛け部分が、フックであり、帯部材61aのドット部分がループである。また、フックとループとが逆でもよい。また、帯部材61aは、裏面にはフックを有している。
この補助具61に帯部材61aを巻きつけることにより、補助具62が形成される。また、帯部材61aが巻きつけられると、表面に帯部材62の裏面のフックが現れるため、さらに帯部材61aを巻きつけることができる。補助具63は、2つの帯部材61aが重
ねて巻きつけられた状態の補助具である。このように、帯部材61aを複数重ねることができることにより、外径の大きさを調節できる。
補助具64は、周に複数の窪みを有する形状の補助具である。補助具64の切れ込み部64aから傘の中棒を中の孔に入れ、補助具64を石突方向へ持っていくと、傘の複数の親骨が複数の窪みのそれぞれに入る。この状態で傘が閉じられても補助具64が傘の親骨に掛ける負担は少ないものになる。つまり、補助具64は傘に負担を掛けずに傘に径大部を作ることができる。
また、傘の中棒において、補助具64の取付位置が石突に近すぎる場合、窪みがあったとしても傘が閉じられると、親骨に負担を掛けることになる。そのため、例えば、バネを補助具64に取り付けることが考えられる。
補助具65は、補助具64の石突方向に来る部位にバネ64bを取り付けたものである。このバネの長さを調節することにより、傘に負担を掛けず、かつ、施錠に最適な位置に補助具64が位置するように設置することができる。更に、傘を開く時には下ロクロが石突に接近するが、バネ64bが縮むことにより、傘が十分に開かなくなることを防止することができる。
補助具66は、球体66aを1つ有する補助具であり、補助具67は球体67aを2つ有する補助具である。それぞれ、球体の両側に切れ込みのあるリングを有している。この2つのリングの中に、傘の中棒、親骨、または受骨を入れることにより、傘に取り付けることができる。
補助具66を用いた場合、1つの球体66aにより傘に径大部を1つ形成させることができ、補助具67を用いた場合、2つの球体67aにより、傘に径大部を2つ形成させることができる。そのため、補助具67を用いた場合、傘の径大部間、つまり、閉じられた状態の前記傘の長手方向に垂直な断面の外径が、補助具により、長手方向において上下より小さくなっている部分は、補助具67上に存在することになる。つまり、補助具67を用いた場合、バンド等の係止部材が巻きつけられる位置は、傘布を挟んで補助具67の上である。
補助具67は、2つの球体67aを有しているため、必ず上記径大部間を形成させることができる。
なお、補助具50〜補助具57のように、切れ込みまたは切欠部を有するリング状の物体でなくてもよく、補助具58のようにバネ状の物体でもよい。素材がゴムや弾性のある金属等であれば傘の中棒に取り付けることは可能である。
また、補助具を中棒の代わりに親骨に取り付けてもよい。傘が閉じられた状態では傘の親骨の、下ロクロと石突との間に位置する部分に取り付ければ、有意な径大部を形成させることができる。さらに、親骨の受骨とのジョイントと石突の間に補助具を取り付ければ、傘を閉じた状態では傘から補助具を取り出せないので、中棒に取り付けた場合と同様の効果がある。特に1つの補助具に2つの膨らみが存在する場合には補助具が中棒の軸方向に長くなり、中棒へ取り付けた場合には傘の開閉に支障を来たす可能性があるが、親骨に取り付ければ問題とならない。
また、補助具は、傘の中骨または親骨ではなく、受骨に取り付けても良い。要するに、閉じた状態の傘布の内部であり、施錠時には外部に取り出せず、かつ、傘に径大部を形成できる位置であればどこに取り付けても良い。また、中棒等に取り付ける場合、そのため
の孔等の空間は、中棒等を中に通すことが可能な大きさまたは形状であればよい。
また、補助具は、閉じた状態の傘に膨らみを形成することができるものであれば、傘の中棒を取り付けるための空間を有していなくてもよい。補助具59は、球状の物体であり、傘の下ロクロと石突との間の部分に入れてその傘を閉じることができる大きさであればよい。
また、補助具を、例えばダイヤル錠1とワイヤなどにより繋ぐことにより、補助具を無くすことがなく便利である。
なお、図84には、補助具59がワイヤによりダイヤル錠1に繋がれた図が示されているが、この図は、ダイヤル錠1の大きさと補助具59の大きさの比を示すものではない。
上述のように、本発明の施錠装置における径大部係止部材の一例である補助具は、傘に取り付けた場合に、傘を閉じることができる大きさであり、閉じた状態の傘の一部に膨らみを作り出すことのできるものであれば、形状が制限されるものではなく、自由にデザインが可能である。
また、補助具は、ダイヤル錠以外の、シリンダ錠、カード式錠などの施錠装置との組み合わせでもその効果を発揮することができる。傘を外から締め付けるようにして施錠することができる施錠装置であればよい。
また、補助具64や補助具65の様な補助具を、予め組み込んだ傘の作製も容易であり、親骨に補助具66や補助具67の様な瘤状形状を持たせることも容易である。勿論、親骨と受骨のジョイント部分を十分に大きくすれば、施錠に有効な径大部を作り出すことが可能である。
また、ダイヤル錠に、他のダイヤル錠のバンド本体を貫通させる孔を設け、2つのダイヤル錠により物品を施錠してもよい。
図85A(a)は、他のダイヤル錠のバンド本体を貫通させる孔が設けられた錠本体を用いたダイヤル錠の一例である。
図85A(a)に示すように、錠本体960は、結合孔961を有している。結合孔961は、他のダイヤル錠のバンド本体を貫通させることにより、他のダイヤル錠と結合するための孔である。
図85A(b)は、図85A(a)に示すダイヤル錠を2つ用いて物品を施錠する方法を示す図である。ダイヤル錠Aの結合孔をダイヤル錠Bのバンド本体が貫通しており、ダイヤル錠Bの結合孔をダイヤル錠Aのバンド本体が貫通している。この図85A(b)の様な物の縛り方は結束バンドなどを用いても可能である。すなわち、二つの結束バンドなどに自身のバンド部分が通過出来る孔と他の結束バンドなどのバンド部分が通過出来る別の結合孔をもうけて、図85A(b)の様に縛ることが可能である。つまり、自身のバンドやひも状のものを係止出来る孔と他のバンドやひも状のものを通す結合孔が存在する二つの道具で物体を図85A(b)の様に締め付ける方法は、特に締め付けた部位が内陥しやすい物体、例えば新聞紙や雑誌などを束ねて縛った後に緩みにくい方法であると考えられる。
更に、自身のバンド部分が貫通する孔以外の結合孔にもバンド部分が一方向にしか通過(移動)出来ない機能をもたせることも可能である。この状態で図85A(b)の様に緩
みなく強く縛ると結合孔部分でも一方向にしか移動できなくなるので、縛る対象物が固くてバンド部分が食い込まない場合には、対象物の凹凸形状を考慮して、結合孔部分で相手のバンド部分が移動しても凸状部分で移動が止まるように縛れば利用価値がある方法であると考えられる。
図85A(b)に示すように、2つのダイヤル錠のバンドにより、物品を前後、左右、上下から締め付けるように施錠することが可能である。例えば、個人的な日記や、書籍、人の目に触れさせたくないファイルなどを施錠することができる。
なお、図85A(a)および図85A(b)において、結合孔は、錠本体の軸方向に対して垂直に貫通するように錠本体に備えられている。しかしながら、結合孔は、錠本体の軸方向に対して平行以外の角度で貫通するように錠本体に備えられていればよい。施錠対象物の大きさや形状などに応じて決定すればよい。
また、結合孔において、他のダイヤル錠のバンド本体をロックしてもよい。例えば、図85A(b)において、ダイヤル錠Aを実施の形態2の2軸構造の錠とし、ダイヤル錠Bのバンド本体にダイヤル錠Aの歯車付き周部ロック用リングが差し込まれる大きさの孔を開けておく。また、ダイヤル錠Aの歯車付き周部ロック用リングの周が結合孔に達する位置に、結合孔を設けておく。こうすることで、ダイヤル錠Aの歯車付き周部ロック用リングの周が、ダイヤル錠Bのバンド本体の孔に差し込まれ、ダイヤル錠Aにより、ダイヤル錠Bのバンド本体がロックされる。更に、ダイヤル錠Aとダイヤル錠Bを両方2軸構造とすることにより、結合孔で互いに相手のバンドをロックすることが出来る。
また、他の施錠装置と結合するために、結合孔ではなく結合溝を有してもよい。
図85A(c1)は、結合溝を有する錠本体の一例を示す図であり、図85A(c2)は、結合溝を有する錠本体の別の一例を示す図である。
図85A(c1)に示す錠本体960は、図85A(a)に示す錠本体960に、外面から結合孔961にいたる溝961aを設けた形状をしている。つまり、結合孔961と溝961aとにより、他の施錠装置を結合するための結合溝が形成されている。また、図85A(c2)に示す錠本体960も同様に、結合孔961と溝961bとにより、他の施錠装置を結合するための結合溝が形成されている。
図85A(c1)に示す錠本体960は、錠本体の後面から、他の施錠装置のバンド等の係止部材が結合溝に差し込まれる。また、図85A(c2)に示す錠本体960は、錠本体の側面から、他の施錠装置のバンド等の係止部材が結合溝に差し込まれる。
つまり、図85A(c1)または図85A(c2)の錠本体を有する施錠装置は、他の施錠装置が、物品を施錠している状態であっても、他の施錠装置のバンド等の係止部材を結合溝に通すことができる。つまり、予め2台の施錠装置をクロス状に結合させておく必要がなく、一方の施錠装置で予め仮施錠した上で、結合溝を有する施錠装置を結合させて施錠し、それぞれの施錠装置を適切に締め直して施錠することができるので、クロス状に施錠する手順を変えることが可能となる。
また、このクロス状に物品を施錠する方法は、例えば、物品を結束するための結束具を2つ用いて、クロス状に物品を結束する方法に適用することができる。
従来、結束具について、例えば、結束部の強度を向上させるため技術も開示されている(例えば実開平6−6999号公報)。しかしながら、従来の結束具を用いた場合、1つ
の結束具は、物品を1方向にのみ結束することしかできない。そのため、ある物品をしっかりと結束するために、2つの結束部を用い、図85A(b)に示すようなクロス状の結束を行う場合、一方の結束具で結束した後に、他方の結束具で結束することになる。この場合、少なくとも、後から物品を結束した結束具は、最初に物品を結束した結束具からは移動上の制限を受けないこととなる。これにより、例えば、後から結束した結束具が少し緩んだ状態である場合、後から結束した結束具は簡単に物品から外れてしまうことも考えられる。つまり、十分な結束の効果を得ることができない。
そこで、上述のクロス状に物品を施錠する方法を応用することで、簡易かつ効果的な結束を実施することができる。また、クロス状に物品を施錠するための施錠装置の構造を結束具に応用することで、簡易かつ効果的な結束のための結束具を作成することができる。
つまり、本発明は、上述のクロス状に物品を施錠する方法を応用することで、簡易かつ効果的な結束方法およびその結束方法に用いる結束具を提供することを目的とすることもできる。
なお、結束具は、長尺状の係止部材と係止部材を係止するための係止機構部とから構成されている。
図85Bは、クロス状に物品を結束するための結束具およびその構成部品の例を示す図である。
図85B(a)は、クロス状に物品を結束するための結束バンド463の構造の概要を示す図であり、図85B(b)は結束バンド463の下面図である。結束バンドとは係止部材としてバンドを用いたものである。
図85B(a)および図85B(b)に示すように、結束バンド463は、他の結束具と結合するための結合孔463cと、複数の凸部463aと、凸部463aと噛合する爪463bとを有する。爪463bはバンド部を貫通させるための孔の内面に存在している。この爪463bを内面に有する孔の存在する部分が結束バンド463における係止機構部である。
結束バンド463は、爪463bを内面に有する孔に挿入され、凸部463aと爪463bとが噛合した場合、バンド部は、噛合部463bを内面に有する孔から抜き取ることはできない。
図85B(c)は、クロス状に物品を結束するための結束ベルト464の構造の概要を示す図である。結束ベルトとは、係止部材としてベルトを用いたものである。図85B(c)に示すように、結束ベルト464は、他の結束具と結合するための結合孔464cと、複数の孔464aと、孔464aに挿入することで孔464を含むベルト部を係止する部位である係止部464bとを有する。つまり、衣服に使用するベルトと同様の構造に加え、結合孔464cを有する構造である。また、係止部464bを備えるバックル部分が結束ベルト464における係止機構部である。
図85B(d)は、クロス状に物品を結束するための結束ベルト465の構造の概要を示す図である。図85B(d)に示すように、結束ベルト465は、他の結束具と結合するための結合孔465bと、ベルト部を挟み込んで係止する係止部465aとを備えている。結束ベルト465も、衣服に使用するベルトと同様の構造に加え、結合孔465bを有する構造である。また、係止部465aを備えるバックル部分が結束ベルト465における係止機構部である。
図85B(e)は、図85B(d)に示す結束ベルト465において複数の結合孔が設けられた場合の構造の概要を示す図である。実際には、ベルト部分がもっと長くても構わない。図85B(e)に示す結束ベルト465は、2つの結合孔465cを有している。また、図85B(d)に示す結束ベルト等の結束具における結合孔の方向は、おおよそ結束具の長手方向に垂直、かつ、結束の際に結束具が形成する環を含む平面に垂直な方向であるのに対し、結合孔465cの方向は、おおよそ結束具の長手方向に垂直、かつ、結束の際に結束具が形成する環を含む平面に平行な方向である。ここで、結束具において、ベルト部や、上述のバンド部および結束バンド等は、物品を結束するために十分な柔軟性を備えている。そのため、結合孔465cがこのような方向に形成されていても、他の結束具とともにクロス状に物品を結束することができる。要するに、結合孔または結合溝の方向は、結束具における係止部材の長手方向と平行でなければよい。
また、結束ベルトにおいて、係止部材であるベルト部と、係止機構部である、係止部を備えるバックルは一体でなくてもよく、バックルがベルト部に着脱可能に取り付けられていてもよい。
図85B(f)〜図85B(h)のそれぞれは、クロス状に物品を係止する結束ベルトのためのバックルの一例である。
図85B(f)および図85B(g)のそれぞれに示すバックルは、図85B(d)および図85B(e)に示す結束ベルト465のバックルと同じタイプのバックルであり、ベルト部を挟みこむようにして係止部465aで係止するバックルである。また、ともに、ベルト部に取り付けるための取付部465dを有している。図85B(f)のバックルは、取付部465dの後端がベルト部に食い込むことによりベルト部に取り付けられる。また、図85B(g)のバックルは、取付部465dの先端がベルト部に食い込むことによりベルト部に取り付けられる。
また、図85B(f)に示すバックルは、図85B(e)に示す結束ベルト465と同じく、おおよそ結束具の長手方向に垂直、かつ、結束の際に結束具が形成する環を含む平面に平行な方向に形成された結合孔465cを有している。
図85B(g)に示すバックルは、結合孔ではなく、結合溝465eを有している。結合溝465eを有することにより、図85A(c1)および図85A(c2)を用いて説明したように、他の結束具により物品が結束された後に、その結束具と結合させることができ、クロス状にその物品を結束することができる。
図85B(h)に示すバックルは、図85B(c)に示す結束ベルト464のバックルと同じタイプのバックルであり、係止部464bをベルト部の孔に挿入することによりベルト部を係止することができる。また、ベルト部に取り付けるための取付部464dと、図85B(f)の結合孔465cと同じ方向に形成された貫通孔464eとを有している。図85B(h)のバックルは、取付部464dの後端がベルト部に食い込むことによりベルト部に取り付けられる。
このように、物品をクロス状に結束するための結束ベルトにおいて、バックルは着脱可能にベルト部に取り付けられてもよい。これにより、例えば、バンドまたはベルトが傷んだ場合、交換することができる。バックルが傷んだ場合も同様である。
なお、他の結束具と結合するための結合孔または結合溝は、バックルなどの係止機構部ではなく、ベルトやバンド部に存在していてもよい。要するに、結束具が、他の結束具と
結合するための孔または溝を有していればよい。
また、物品をクロス状に結束するための結束具およびその部品は、図85B(a)〜図85B(h)に示すもの以外の構造のものでもよい。
図85Cは、クロス状に物品を結束するための結束具およびその部品の別の例を示す図である。
図85C(a)は、チェーンを利用して物品を結束する結束チェーンの留め具の一例を示す図である。結束チェーンは係止部材としてチェーンを用いたものであり、留め具は結束チェーンにおける係止機構部である。
図85C(a)に示すように、留め具466は、他の結束具と結合するための1つの結合孔466bと、チェーンを係止するための2つの係止部466aとを備える。
2つの係止部466aのうちの一方は、結束する前にチェーンを取り付けるために使用され、他方は結束する際に、チェーンを係止するために用いられる。
係止部466aは、図に示すように、閉じられた孔を有し、孔の周の一部にはスライド式の開閉部が存在する。また、通常、開閉部はばねの力で閉じられている。チェーンを取り付ける場合および係止する場合、開閉部を開け、チェーンを構成する複数の環状部材のうちの1つの環状部材に係止部466aの周部を貫通させる。また、開閉部はばねの力で閉じられる。
図85C(b)は、結束チェーンの構造の概要を示す図である。図85C(b)に示す結束チェーンは、留め具467とチェーン468とで構成されている。
留め具467は、図85C(a)に示す留め具466と形状は異なるが同じ機能を有している。つまり、1つの結合孔467bと、チェーンを係止するための2つの係止部467aとを備えている。
チェーン468は複数の環状部材がつなぎ合わされて形成されている。また、一端が留め具467の一方の係止部467aに取り付けられている。この結束チェーンを用いて物品を結束する場合、留め具467への取り付けに用いられている環状部材以外のいずれかの環状部材が、他方の係止部467aに係止される。
環状部材の素材としては、金属、プラスティック、ゴムなど、物品の結束に十分な強度を有するものが用いられる。また、複数の環状部材がつなぎ合わされて形成されるため、個々の環状部材の柔軟性は必要とされない。
また、上述した図85A(a)、図85B(c)、図85B(d)、図85B(f)、図85B(h)、図85C(a)、図85C(b)などの結合孔に466aの様な開閉機能を持たせてもよい。
これら、結束バンド、結束ベルトおよび結束チェーンなどの結束具を2つ用いて物品をクロス状に結束する場合、例えば、以下の手順で実施される。なお、2つの結束具のそれぞれを、結束具A、結束具Bとする。
(1)結束具Aの係止部材を結束具Bの結合孔または結合溝に貫通させる。(2)結束具Bの係止部材を結束具Aの結合孔または結合溝に貫通させる。(3)結束具Aと結束具
Bとの間に物品を配置する。(4)結束具Aの係止部材を、結束具Aの係止機構部に貫通させる。(5)結束具Bの係止部材を、結束具Bの係止機構部に貫通させる。(6)結束具Aの係止部材と、結束具Bの係止部材とにより、互いに異なる方向へ物品を締め付ける。(7)結束具Aの係止部材を結束具Aの係止機構部から挿抜できないように係止させる。(8)結束具Bの係止部材を結束具Bの係止機構部から挿抜できないように係止させる。
以上の手順により、2つの結束具を用い、物品をクロス状に結束することができる。
なお、上記手順は一例であり、その順番は上記手順どおりでなくてもよい。例えば、上述のように、結束具が結合溝をする場合、他の結束具が物品を結束した後で、その結束具と結合してその物品を結束できる。
また、係止機構部は、結束バンドや結束ベルトのように、係止部材を単純に係止するのではなく、開錠可能に施錠する機能を有する施錠部であってもよい。例えば、図85A(a)に示すダイヤル錠は、結束具として用いることができる。
また、互いに異なる種類の結束バンドを2つ用いて結束してもよく、結束バンドと結束チェーンとで、物品をクロス状に結束してもよい。
なお、2つの施錠装置で物品をクロス状に締め付けながら施錠する施錠方法、または、2つの結束具で物品をクロス状に結束する結束方法を実施した場合、貫通孔または貫通溝を貫通している係止部材は、貫通孔または貫通溝に対して、その貫通方向および逆方向に移動可能である。そのため、無理な力が加わると、それぞれの結束具の係止機構部にそれぞれの係止部材が通されて作られる閉鎖環状部が大きさを保ったまま、物品上を回転やスライドし、かつ、それぞれの結合孔または結合溝が物品をはさんで対峠したまま物品上をスライドすると、物品に対してずれを起こし、物品から外れる可能性もある。つまり、結束具が物品に対して回転やスライドすると物品から外れる恐れがある。そこで、より確実に施錠または結束するために、係止部材の物品と接触する面に凹凸または吸盤を備えることも考えられる。また、係止部材を物品により密着させることも考えられる。そうすることにより、結束具が物品に対して回転やスライドしにくくなる。
図85C(c)は、図85B(a)に示す結束バンド463が結束対象の物品に接触する面に凸部463dを備えた場合を示す図である。物品を結束した際に、この凸部463dが物品に食い込むことにより、または、物品の角ばった部分と係合することにより、物品との間でずれを起こしにくくなる。また、貫通している貫通孔または貫通溝の中でも滑りにくくなる。
図85C(d)は、結束ベルトの係止部材として使用可能な、キャタピラ状のベルトを示す図である。図85C(d)に示すベルト469は、図18(a)〜図18(c)に示す係止部材と同じく、板状の部材が帯状に屈曲可能につなぎ合わされており、また、係止機構部であるバックルに係止されるための、複数の孔469aを有している。なお、図85B(f)〜図85B(h)のいずれのバックルを取り付けてもよく、係止ベルトとして使用可能である。
また、個々の板状の部材は柔軟性を持つ必要がないため、例えば金属で作成してもよい。金属で作成した場合であっても、屈曲可能であるため、しっかりと結束するのに十分な物品への密着度を確保できる。
図85C(e)は、結束ベルトの係止部材として使用可能であり、物品に接触する面に
吸盤472bを備えたベルトを示す図である。図85C(e)に示すバンド472が備える吸盤472bは、物品を結束した際に、物品に吸い付くことにより物品との間でずれを起こしにくくなる。また吸盤472自体が凸部としての機能を有するため、吸盤が吸い付き不可能な表面を有する物品であっても、物品との間、および貫通孔または貫通溝の中でのずれを起こし難くする効果がある。
また、図85C(d)に示すバンド469と同じく、係止されるための複数の孔472aを有し、図85B(f)〜図85B(h)のいずれのバックルを取り付けてもよく、係止ベルトとして使用可能である。
これら、図85C(c)〜図85C(e)に示すバンドおよびベルトの凹凸や吸盤等の構造は、当然に、施錠装置における係止部材に適用可能である。
また、バンドおよびベルトは、上記以外の形状のものでもよい。要するに、物品を結束するのに十分なサイズ、柔軟性および強度を備えていればよい。
以上のように、2つの施錠装置または結束具を用いて物品をクロス状に施錠、または結束することができる。このクロス状の施錠または結束のための施錠装置または結束具は、クロス状に施錠、または結束するための特別な他の部材を加える必要がなく、他の施錠装置または結束具と結合するための結合孔または結合溝により実現される。
また、結合孔や結合溝が、上述のダイヤル錠と同様に、係止機能を備えてもよい。例えば図85B(a)の結合孔463cが爪463bを備えてもよい。この場合、結合孔463cの大きさを調整し、係止機構部と同形状にすればよい。そうすることにより、上述の施錠装置と同様に、結合孔部分でも一方向にしか移動できなくなるので、縛る対象物が固くてバンドやベルト部分が食い込まない場合には、対象物の凹凸形状を考慮して、結合孔部分で相手のバンド部分が移動しても凸状部分で移動が止まるように縛れば利用価値がある方法であると考えられる。
また、図85B(e)の結束ベルト465においては、結合孔465cが2つあるため、他の2つの結束具ともに物品の周囲を3方向から締め付けながら結束することができる。つまり、結束具は、2つ以上の複数の結合孔または結合溝を有していても構わない。
図85D(a)は結束具を3つ使用して結束した場合の概略図である。具体的に説明すると、図85D(a)の様にして、3つの結束具を使用して物品を結束する結束方法であって、前記結束具は、長尺状の係止部材と、前記係止部材を貫通させ、かつ任意の位置で係止する係止機構部と、他の結束具と結合するための2つ以上の結合孔または結合溝とを備え、前記3つの結束具のそれぞれの各結合孔または各結合溝は、それぞれの前記結束具における係止部材の長手方向とは平行ではなく、他の結束具を一つだけ結合可能で、前記結束方法は、前記3つの結束具のそれぞれの結合孔または結合溝を各2つずつ使用し、前記3つの結束具のそれぞれが、結合孔または結合溝以外で交差しない様にして、第1の結束具の係止部材を第2の結束具の係止機構部側とは反対側寄りの結合孔または結合溝に貫通させるステップと、第1の結束具の係止部材を第3の結束具の係止機構部側寄りの結合孔または結合溝に貫通させるステップと、前記第2の結束具の係止部材を前記第3の結束具の係止機構部側とは反対側寄りの結合孔または結合溝に貫通させるステップと、前記第2の結束具の係止部材を前記第1の結束具の係止機構部側寄りの結合孔または結合溝に貫通させるステップと、前記第3の結束具の係止部材を前記第1の結束具の係止機構部側とは反対側寄りの結合孔または結合溝に貫通させるステップと、前記第3の結束具の係止部材を前記第2の結束具の係止機構部側寄りの結合孔または結合溝に貫通させるステップと、前記一の結束具と、前記第2の結束具と、前記第3の結束具との間に前記物品を配置す
るステップと、前記第1の結束具の係止部材を、前記第1の結束具の係止機構部に貫通させるステップと、前記第2の結束具の係止部材を、前記第2の結束具の係止機構部に貫通させるステップと、前記第3の結束具の係止部材を、前記第3の結束具の係止機構部に貫通させるステップと、前記第1の結束具の係止部材と、前記第2の結束具の係止部材と、前記第3の結束具の係止部材とにより、互いに異なる方向へ前記物品を締め付けるステップと、前記第1の結束具の係止部材を前記第1の結束具の係止機構部から挿抜できないように係止させるステップと、前記第2の結束具の係止部材を前記第2の結束具の係止機構部から挿抜できないように係止させるステップと、前記第3の結束具の係止部材を前記第3の結束具の係止機構部から挿抜できないように係止させるステップとを含む結束方法を用いて物品を結束してもよい。なお、上記手順は一例であり、その順番は上記手順どおりでなくてもよい。また、係止機構部が施錠機能を備えても構わない。
また、図85D(b)は結束具を4つ使用して結束した場合の概略図である。具体的に説明すると、図85D(b)の様にして、4つの結束具を使用して物品を結束する結束方法であって、前記結束具は、長尺状の係止部材と、前記係止部材を貫通させ、かつ任意の位置で係止する係止機構部と、他の結束具と結合するための2つ以上の結合孔または結合溝とを備え、前記4つの結束具のそれぞれの各結合孔または各結合溝は、それぞれの前記結束具における係止部材の長手方向とは平行ではなく、他の結束具を一つだけ結合可能で、前記結束方法は、前記4つの結束具のそれぞれが、結合孔または結合溝以外で交差しない様にして、第1の結束具の係止部材を第3の結束具の結合孔または結合溝に貫通させるステップと、第1の結束具の係止部材を第4の結束具の結合孔または結合溝に貫通させるステップと、前記第2の結束具の係止部材を前記第3の結束具の結合孔または結合溝に貫通させるステップと、前記第2の結束具の係止部材を前記第4の結束具の結合孔または結合溝に貫通させるステップと、前記第3の結束具の係止部材を前記第1の結束具の結合孔または結合溝に貫通させるステップと、前記第3の結束具の係止部材を前記第2の結束具の結合孔または結合溝に貫通させるステップと、前記第4の結束具の係止部材を前記第1の結束具の結合孔または結合溝に貫通させるステップと、前記第4の結束具の係止部材を前記第2の結束具の結合孔または結合溝に貫通させるステップと、前記第1の結束具と、前記第2の結束具と、前記第3の結束具と、前記第4の結束具との間に前記物品を配置するステップと、前記第1の結束具の係止部材を、前記第1の結束具の係止機構部に貫通させるステップと、前記第2の結束具の係止部材を、前記第2の結束具の係止機構部に貫通させるステップと、前記第3の結束具の係止部材を、前記第3の結束具の係止機構部に貫通させるステップと、前記第4の結束具の係止部材を、前記第4の結束具の係止機構部に貫通させるステップと、前記第1の結束具の係止部材と、前記第2の結束具の係止部材と、前記第4の結束具の係止部材と、前記第4の結束具の係止部材とにより、前記物品を締め付けるステップと、前記第1の結束具の係止部材を前記第1の結束具の係止機構部から挿抜できないように係止させるステップと、前記第2の結束具の係止部材を前記第2の結束具の係止機構部から挿抜できないように係止させるステップと、前記第3の結束具の係止部材を前記第3の結束具の係止機構部から挿抜できないように係止させるステップと、前記第4の結束具の係止部材を前記第4の結束具の係止機構部から挿抜できないように係止させるステップとを含む結束方法を用いて物品を結束してもよい。なお、上記手順は一例であり、その順番は上記手順どおりでなくてもよい。また、物品に隆起部分がある場合には、上記結束方法において、4つの結合孔または結合溝を頂点とし、4つの異なる結束具を辺としてできる四角形の中に隆起部分を位置させて縛り上げると、結束具のスライドが物品に隆起部分によって止められる為に、結束が物品から外れなくなる。更に、物品に隆起部分がない場合には、中央付近に隆起部分がある板状の補助部材を用いると、書籍などが確実に結束でき、係止機構部が施錠機能を有する場合には、書籍を確実に施錠することが可能となる。
また、書類などを綴じるバインダーにバンド等の係止部材を取り付け、ダイヤル錠によ
り施錠可能なバインダーとしてもよい。
図86は、ダイヤル錠により施錠可能なバインダーの一例を示す図である。図86に示すバインダー750は、両扉にバンドを備えている。また、図19(a)に示すように、実施の形態1のダイヤル錠1は両側から挿入されたバンドをロックすることが可能である。よって、バインダー750の2つのバンドをダイヤル錠1の両側から挿入し、バインダー750を施錠することが可能である。また、図36に示すように実施の形態2も、両側から挿入されたバンドをロックすることが可能であり、バインダー750を施錠することが可能である。
図87(a)は、ダイヤル錠を備えるバインダーの一例を示す図である。図87(a)に示すバインダー751は、片方の扉の先端に、軸およびロック用ダイヤルリングを含む錠本体が取り付けられ、他方の扉にバンドが取り付けられている。この構成により、図87(a)の右図に示すようにバインダーは施錠される。
図87(b)は、ダイヤル錠を備えるバインダーの他の一例を示す図である。図87(b)に示すバインダー752は、バインダーの片方の扉の先端にバンドの挿入口がくるように、軸およびロック用ダイヤルリングを含む錠本体が取り付けられ、他方の扉にバンドが取り付けられている。この構成により、図87(b)の右図に示すようにバインダーは施錠される。
図88(a)は、ダイヤル錠を着脱可能に取り付けることができるバインダーの一例を示す図である。図88(a)に示すように、バインダー753は、片側の扉にダイヤル錠の錠本体を取り付けるための取付部754を有しており、錠本体965が備える取付部966を取付部754に差し込むことにより、錠本体965をバインダー753に取り付けることができる。
図88(b)は、バインダー753のバンドを取り付ける側の扉の構造を示す図である。図88(b)に示すように、バインダー753は取付部755を有しており、例えば、バンド400をバインダー753に取り付けることができる。同様に図86および図87(a)のバンドも同様に着脱可能にすることができる。
また、バインダーが備える、錠本体を取り付けるための部位は、取付部754のような溝形状でなくてもよく、孔または穴でもよい。
図88(c)は、錠本体を取り付けるための孔を有する取付部756の構造の概要を示す図である。取付部756は、図に示すように、貫通する孔を有しており、錠本体965は、その孔に対応する形状の取付部967を有している。錠本体965の取付部967がバインダーの取付部756の孔に差し込まれることにより、錠本体965はバインダーに着脱可能に取り付けられる。
図88(d)は、錠本体を取り付けるための穴を有する取付部757の構造の概要を示す図である。取付部757は、図に示すように、貫通しない穴を有している。錠本体は、図88(c)に示す取付部967と同様の形状であり、取付部757の穴のサイズに応じた大きさの取付部を有していれば、取付部757に取り付けることができる。
なお、図98を用いて後述するように、バンドの尾部または、バンド取付部が弾性による変形・復元能をもたせることにより、開錠時にバインダーの取付部からバンドが脱落しないようにすることができる。
このように、図88(a)〜図88(d)に示す構成により、バインダー753は施錠されることが可能である。
なお、バインダーに綴じる書類の枚数が大きく変化する場合、ある程度の長さを有するバンドを用いたダイヤル錠は、任意の位置で施錠可能であるため有用である。また、綴じる書類の枚数がほぼ一定であり、バインダーの幅がほとんど変化しない場合は、バンドの長さを、バインダーの幅に対応する長さがあればよい。また、バンドではなく、剛性の高い形状変化を伴わない部材や、ワイヤの先端に係止部を取り付けたものなどでも構わない。つまり、バインダーに閉じる書類の枚数に応じ、ダイヤル錠に用いる係止部材の長さや形状などを変更してもよい。
また、図24(b)に錠本体10と、通過孔付ストッパ505とにより環状にしたバンドがロックされる状態について述べた。この場合、通過孔付ストッパ505が有する通過孔504が、バンド510の凹凸を係止する構造であった。しかしながら、凹凸を有するバンドではなく、孔を有するバンドを、係止部と錠本体とによりロックしてもよい。
図89は、複数の孔を有する双頭形状のバンドの一例を示す図である。図89に示すバンド770は、楕円の孔を複数有する。また、バンド400におけるストッパ403のようなストッパを有しない双頭形状のバンドである。
図90は、バンド770を用いて傘などを施錠するダイヤル錠の構成の例および施錠手順を示す図である。図90に示すダイヤル錠は、3つのロック用ダイヤルリングを含む錠本体と係止部771とがワイヤで繋がれている。また、係止部771は後部に鍔のついたバンド保持部772を有している。このダイヤル錠を用い、以下の手順により、傘などを施錠することができる。
(1)バンド770により施錠対象物を締め付ける状態にし、バンド保持部772をバンド770の重ねられた孔に挿入する。(2)バンド770の孔に通された係止部771を錠本体に挿入し、ロック用ダイヤルリングを回して施錠する。
上記手順で施錠した場合、バンド保持部772に鍔が存在するため、バンド770は緩められることはない。
図90に示すダイヤル錠は、例えば、錠本体と係止部771とをつなぐワイヤにより自転車を施錠することが可能である。つまり、このダイヤル錠とバンド770とを用いることにより、例えば、自転車と傘とを同時に施錠できることとなる。
図91は、係止部771に取り付けるキャップの例を示す図である。図91に示すキャップ773は、先端が先細りになっており、係止部771に取り付けることにより、係止部771をバンド770の孔に通し易くなる。
また、バンド保持部772の形状は、図90に示す形状でなくてもよい。施錠時に、バンド770を緩めることができない形状であればよい。
図92は、バンド保持部772の別の形状の例を示す図である。図92に示すバンド保持部774は、点線部に示すように鍔と同程度の大きさの径を持つ円筒系の部材である。バンド保持部774は、バンド770の孔の中に挿入できない大きさであるが、施錠時には、バンド770が緩められることのない大きさであり、バンド保持部772の有する鍔の役割を果たす。場合により、バンド保持部774をバンド770の孔に緩みなく挿入できる形状にし、錠本体まで続くワイヤもバンド770の孔に緩みなく挿入できる形状にす
れば、バンド770が施錠時に緩まないようにすることが可能となる。
また、バンド保持部は錠本体が有していてもよい。
図93は、バンド保持部を有する錠本体を含むダイヤル錠の構成の例および施錠手順を示す図である。
図93に示すように、ダイヤル錠の構成は図90に示すダイヤル錠とほぼ同じ構成である。しかしながら、係止部771の後部に鍔775が備えられており、錠本体にバンド保持部776が備えられている。このダイヤル錠を用い、以下の手順により、傘などを施錠することができる。
(1)バンド770により施錠対象物を締め付ける状態にし、錠本体に備えられたバンド保持部776をバンド770の重ねられた孔に挿入する。(2)係止部771を錠本体に挿入し、ロック用ダイヤルリングを回して施錠する。
上記手順で施錠した場合、係止部771の後部に鍔775が存在するため、バンド770は緩められることはない。
また、図93に示すダイヤル錠も、例えば自転車と傘とを同時に施錠することができる。
また、図90および図93に示すダイヤル錠にバンド770以外形状のバンドを用いてもよい。
図94は、図90に示したダイヤル錠に用いることのできるバンドの2つの例を示す図である。
バンド770aは、バンド770と同じ孔と、バンド770aのバンド本体を通すことのできるスリットとを有している。バンド770aを用い、傘などの物品を締め付けるようにしてバンド頭部をスリットの中に通す。その状態のバンド770aの孔にバンド保持部772を通し、係止部771を錠本体に挿入る。挿入後、ロック用ダイヤルリングを回して施錠する。
また、傘などの物品を締め付けるようにしたバンド770bの孔に、バンド770cを通し、図94に示すように、バンド770bが緩まないようにする。バンド770cはバンド770の孔と同じ形状の孔を複数有している。その状態のバンド770cの孔にバンド保持部772を通し、係止部771を錠本体に挿入する。挿入後、ロック用ダイヤルリングを回して施錠する。
なお、図94は、図90に示すダイヤル錠を用いた場合を示したが、図93に示すダイヤル錠であっても、バンド770aおよびバンド770bとバンド770cとを用いることができる。
また、係止部771をバンドの孔に通すことなく、孔を有するバンドを用いて傘などを施錠してもよい。
図95は、係止部をバンドの孔に通すことなく、傘などを施錠することのできるダイヤル錠の構成の一例を示す図である。
図95に示すように、係止部771の両脇に、ピン771aが備えられている。また、ピン771aを差し込むことができる差込穴778が、2つのピン771aに対応するように、錠本体と錠本体の軸とにより形成されている。また、バンド777も、2つのピン771aに対応する孔を複数有している。このダイヤル錠を用い、以下の手順により、傘などを施錠することができる。
(1)バンド777により施錠対象物を締め付ける状態にし、係止部771の両脇の備えられたピン771aを、バンド777の孔に挿入する。(2)係止部771を錠本体に挿入し、ロック用ダイヤルリングを回して施錠する。以上の手順により傘などの物品を施錠することが可能である。
上述のように、錠本体に繋がれた係止部と、複数の孔を有するバンドを用い、傘などの物品を施錠することができる。また、錠本体と係止部とがワイヤで繋がれていることにより、例えば自転車などを施錠することができる。これにより、例えば自転車と傘とを同時に施錠することができる。
上述のバンド770、バンド770a、およびバンド770bとバンド770cとは、従来の自転車を施錠するためのチェーン錠、ワイヤ錠等でも利用可能である。つまり、チェーン錠で自転車を施錠し、バンド770を用いて同時に傘を施錠することができる。また、自転車の施錠装置として幅広く用いられている馬蹄型錠にも同様に上記バンドを用いることができる。なお、馬蹄型錠とは、円弧状の中空本体内に収納された円弧状の金属が、施錠時には中空本体内から出てくることにより、車輪の回転を阻止する形式の施錠装置のことである。
また、図5に示す錠本体100におけるバンド取付孔101ように、錠本体は、バンドのストッパを通すことができない孔を有することにより、バンドを1方向にのみ抜き出し可能に係止することができる。しかしながら、バンドを1方向にのみ抜き出し可能に係止することができれば、“孔”でなくてもよく、“溝”でもよい。
図96(a)は、図12(a)に示した錠本体120およびバンド400の概観を示す図である。図96(a)に示すように、錠本体はバンド取付孔101を有する。
図96(b)は、錠本体120の右側面図および、バンド400が取り付けられた状態の錠本体120の右側面図である。図96(c)は、錠本体120の後面図および、バンド400が取り付けられた状態の錠本体120の後面図である。
図97(a)は、バンドを取り付けるための溝であるバンド取付溝107を有する錠本体120の右側面図および、バンド400が取り付けられた状態のその錠本体120の右側面図である。図97(b)は、図97(a)に示す錠本体120の後面図および、バンド400が取り付けられた状態のその錠本体120の後面図である。
図97(a)および図97(b)に示すように、バンド取付溝107の形状をバンドが、施錠時に、バンド取付溝107からは外されることのない形状にしておく。こうすることで、バンド取付孔と同じ役割を果たすことができる。
なお、バンド取付孔であっても、バンド取付溝であっても、ダイヤル錠を開錠し、バンド本体を錠本体のロック部位から抜き出した場合、錠本体の後部を下にすると、バンドはバンド取付孔またはバンド取付溝から自然に抜け落ちる可能性がある。そこで、バンドのストッパ部分が自然落下を防止する構造であってもよい。また、バンド取付孔およびバンド取付溝がバンドの自然落下を防止する構造を有していてもよい。
図98は、自然落下防止機能を有するバンドのストッパの複数の例を示す図である。なお、図98において、錠本体120については、バンドのストッパに関わる部分である、バンド取付孔の部分のみを抜き出して図示している。また、自然落下防止機能を説明するために、バンド取付孔の部分は断面図として図示されている。
図98に示す、ストッパ780〜ストッパ782はそれぞれ、ストッパの両側に凸部を有しており、錠本体120のバンド取付孔には、その凸部に対応する凹部を有している。
ストッパ780は、両側に孔が開けられておりそれぞれの孔により、ストッパ780の両側に弾性を有する凸部780aが形成されている。また、両側の孔が繋がり一つの孔を形成していても構わない。
ストッパ781には、バンド取付孔の狭部を通過する際にしなって傾くことが可能な凸部781aが両側に形成されている。
ストッパ782は、その断面図が図示されている。その断面図に示すように、ストッパ782は両側に、弾性のある部材が埋め込まれており、その部材により凸部782aが形成されている。
上記ストッパ780〜ストッパ782が有するそれぞれの凸部は、弾性を有しているため、バンド取付孔に差し込まれる際、ストッパの横幅を狭めるように縮むこと、または傾くことができる。差し込まれた後は復元力により、バンド取付孔の内部で元の形状に戻る。これにより、これらストッパを有するバンドは、バンド取付孔から自然に落下することはない。
図98の中段右に示すストッパ785は、両側に凸部785aを有しており、両側の凸部785aの間には切欠部785cが形成されている。ストッパ785がバンド取付孔に差し込まれる際、ストッパの横幅を狭めるように切欠部785cが狭まり、ストッパ785の幅も狭まる。差し込まれた後は、ストッパの復元力により、バンド取付孔の内部で元の形状に戻る。これにより、ストッパ785を有するバンドも、バンド取付孔から自然に落下することはない。
図98の下段左に示す錠本体120は、バンド取付部の内部に、弾性のある凸部120aを有している。2つの凸部120aはストッパ783の両側となる位置に存在する。このため、ストッパ783はバンド取付孔に挿入されることが可能であり、かつ、バンド取付孔から自然に抜け落ちることはない。
図98の下段右に示す錠本体は、弾性のある部材の一部がバンド取付孔の壁面内に埋め込まれている。この部材により、バンド取付孔内部のストッパ784の両側となる位置に凸部120bが形成されている。このため、ストッパ784はバンド取付孔に挿入されることが可能であり、かつ、バンド取付孔から自然に抜け落ちることはない。
なお、図98を用い、バンドのストッパがバンド取付孔に挿入される場合について説明した。しかしながら、バンド取付溝であっても、上述のバンドの自然落下防止機能はバンド取付孔の場合と同様に有効である。
つまり、バンド取付孔であっても、バンド取付溝であっても、錠本体にバンドを着脱可能に取り付けることができる。具体的には、バンド取付孔またはバンド取付溝の入口側の一部に、バンドの尾部であるストッパより狭く弾性を有する狭窄部が形成されていれば、
弾性による変形・復元能により、バンドを容易に着脱でき、かつ脱落を防止するように係止することができる。
また、バンド取付孔またはバンド取付溝に上述のような弾性を有する狭窄部が形成されていなくてもても、バンドのストッパが弾性を有しており、バンド取付孔またはバンド取付溝の内部形状がそのストッパの形状に対応していれば、バンドを容易に着脱でき、かつ脱落を防止するように係止することができる。
また、図88(a)〜図88(d)に示す、施錠可能なバインダーの説明でも述べたとおり、バインダーの、バンド等の係止部材を取り付けるための取付部の内部、または、係止部材の尾部に上述のような弾性を持たせることにより、バインダーに係止部材を容易に着脱でき、かつ係止部材がバインダーから落下することを防ぐことができる。
また、図11(a)および図11(b)などを用い、錠本体は様々な形状とすることが可能であることを示したが、錠本体に、アダプタを装着することで、錠本体の形状を変化させてもよい。
図99(a)は、アダプタを装着することが可能な錠本体の一例を示す図である。図99(a)は錠本体970の上面図である。なお、図99および図101に示す錠本体においてアダプタが取り付けられる側面が後面であり、その反対側の側面、つまりダイヤルリングが存在する側が正面である。また、左右は正面から見た場合を基準にする。
図99(b)は、アダプタ装着孔971を有する錠本体970の右側面図である。図99(b)に示すように、錠本体970の上部から下部にかけて貫通するアダプタ装着孔971が存在する。アダプタ装着孔971は、図85A(a)に示すダイヤル錠における結合孔961としての役割も兼用することができる。
図99(c)はアダプタ装着溝972を有する錠本体970の右側面図である。図99(c)に示すように、アダプタ装着溝972はアダプタ装着孔971とは異なり、錠本体970を貫通していない。
図99(d)は、図99(b)に示す錠本体970の後面図であり、図99(e)は、図99(c)に示す錠本体970の後面図である。なお、図99(a)〜図99(c)は錠本体970にダイヤルリングが取り付けられた状態の図である。図99(d)、図99(e)ではダイヤルリングの図示は省略されている。
図100(a)は、図99(a)〜図99(e)に示す錠本体970に装着可能なアダプタ980の上面図である。なお、曲面が存在する方がアダプタの後面であり、後面の反対側が正面である。また、左右は正面から見た場合を基準にする。図100(b)は、アダプタ980の右側面図であり、図100(c)は、アダプタ980の後面図である。
図100(b)に示すように、アダプタ980は、錠本体970にアダプタ980を取り付けるための返し部981を有している。返し部981は、アダプタ980の上下に位置し、錠本体970の、アダプタ装着孔971およびアダプタ装着溝972に適合する形状である。
図101(a)は、アダプタ980が装着された錠本体970の上面図である。図101(b)は、アダプタ980が装着された、アダプタ装着孔971を有する錠本体970の右側面図である。図101(c)は、アダプタ980が装着された、アダプタ装着溝972を有する錠本体970の右側面図である。図101(a)に示すように、後面が平ら
であった錠本体970が、アダプタ980を装着することにより、後面が曲面になっている。
図101(d)は、バンドの一端を係止する係止孔を有するアダプタ980が装着された錠本体970の上面図である。図101(d)に示すように、アダプタ980はバンドを係止するための係止孔980aを有しており、この係止孔980aを通り抜けることができない大きさの尾部をもつバンドを使用できる。また錠本体970は、本体側孔970aを有し、本体側孔970aは、本体側孔970aと係止孔980aとにより1つの通路が形成される位置に存在している。
係止孔980aからバンドが差し込まれると、バンドの尾部と対向する位置にある頭部は、本体側孔970aを貫通し錠本体970の外部へ出される。さらに、バンド頭部が錠本体970の、バンドをロックするための位置に差しこまれ、ダイヤルリングによってバンドが係止される。
このように、バンドがアダプタ980と錠本体970とを貫通し、バンド尾部がアダプタ980を貫通できない状態であり、かつ、バンドに緩みがない状態で施錠された場合、アダプタ980は、錠本体970からの取り外し方向に関わらず、錠本体970から外れることはない。また、バンドに緩みがある状態であっても、少なくとも、アダプタ980を失うようなことはない。
また、アダプタ980は、図100(b)に示すように、上下の返し部981が、錠本体の後面の上下を挟むようにして錠本体に装着される。しかしながら、アダプタは、錠本体に差し込むようにして装着されてもよい。
図102(a)は、後面にアダプタの差し込み口を有する錠本体の右側面を示す図である。図102(b)は、図102(a)の錠本体の後面を示す図である。
図102(a)および図102(b)に示す錠本体990は、後面にアダプタ差込穴991を有しており、アダプタを装着することが可能である。図102(a)および図102(b)に示すように後面は平面である。なお、図102(a)は錠本体990にダイヤルリングが取り付けられた状態の側面図である。図102(b)はダイヤルリングの図示は省略されている。
図103(a)は、錠本体990に装着可能なアダプタ992の上面図である。図103(a)に示すように、アダプタ992は、錠本体の後面を曲面に変えるためのアダプタである。また、返し部993を有しており返し部993が錠本体990のアダプタ差込穴991に差し込まれることによって錠本体990に、アダプタ992が装着される。
図103(b)は、アダプタ992の右側面図である。図103(c)は、アダプタ992の後面図である。図103(b)および図103(c)に示すように、返し部993はアダプタ992の中央部の上下に存在する。
図103(d)は、返し部993およびつまみ部994で構成される部分のみの外観を示す図である。図103(d)において、右図は、左図の楕円で囲まれた部分を斜め後ろから見た図である。
アダプタ992の錠本体990への装着は、以下の手順で行われる。まず、上下の返し部993はつまみ部994がつままれ、上下の返し部993の間隔が狭められながら、錠本体990のアダプタ差込穴991に差し込まれる。差し込まれた後、つまみ部994が
開放されると、復元力で元の位置に戻り、アダプタ992は錠本体990に固定される。
図104は、アダプタ992が装着された錠本体990の上面図である。錠本体の、平面であった後面が、アダプタが装着されることにより曲面になっている。
なお、上述のアダプタ980およびアダプタ992は、後面が平らな錠本体に装着し、後面を曲面に変えるための部材である。しかしながら、図5に示す錠本体100のように、後面が曲面である錠本体に装着し、後面を平面に変えるためのアダプタの作成も可能である。
錠本体の後面は、施錠対象物と接触する面であるため、錠本体を取り替えることなく施錠対象物の形状にあわせて錠本体の後面を変更できることは、ダイヤル錠の使用者にとって有用である。
例えば、普段は、ダイヤル錠を、表面が平らな日記帳を施錠するために用いているが、傘を施錠する際には、曲面を有するアダプタを錠本体に装着することで、錠本体をより傘に密着させて施錠を行うことができる。
また、錠本体の施錠対象の物品と接する面に凹凸があってもよく、また、ゴム等の滑りにくい素材を貼ってもよい。この凹凸およびゴム等の滑りにくい素材は錠本体の後面に存在していてもよく。アダプタの後面に存在していてもよい。
こうすることで、施錠した物品からダイヤル錠を抜きにくくなり、盗難防止効果を向上させることができる。
また、実施の形態1および2のダイヤル錠を用い、バンドで物品を締め付けながら施錠する場合、締め付けた位置で、バンドを保持し、ダイヤルリングを開錠位置以外に回す必要がある。
しかしながら、例えば、バネなどの弾性体を使用し、引っ張ったバンドから手を離しても、バンドが後戻りしない構造を、ダイヤル錠に適用してもよい。
図105(a)は、バンドが後戻りしない構造を有するダイヤル錠の内部構造の一例を示す図である。なお、ダイヤル錠の内部の部材の説明のために、図105(a)において、錠本体946は内部構造が見えるように図示されている。
図105(a)に示すダイヤル錠は、錠本体946と、係止部付軸368と、バネ941と、バンド763と、3つのロック用ダイヤルリングとで構成されている。なお、ロック用ダイヤルリングとして、例えば、図5に示すロック用ダイヤルリング200が用いられる。
図105(a)に示すダイヤル錠は施錠状態であり、バネ941は、押し縮められた状態である。係止部付軸368はバネ941の反発力により右側に押し返す力を受けている。軸368は径大部368aを有し、図63に示した係止部付軸360と同様の形状をしているが、軸後部の係止孔の構造が異なっている。
軸368は、係止孔368bの軸頭部方向の側面に、斜めになったテーパ部368cを有する。バンド763は、複数の戻り防止部763aを有しており、錠本体946の、バンド貫通孔946aと係止孔368bに通されている。軸368のテーパ部368cは、バンド763に複数備えられた戻り防止部763aと接する部分である。
図105(b)は、係止部付軸368の軸後部およびバンド763の戻り防止部763aの形状を説明するための図である。
図105(b)において、上図は、係止部付軸368の軸後部を錠本体の後面側から見た図である。中図は、係止部付軸368の軸後部を錠本体の上面側から見た図である。下図は、係止部付軸368の軸後部を錠本体の正面側から見た図である。
なお、各部材の形状の説明のため、戻り防止部763aは係止孔368bの中心付近に位置しているが、実際には、戻り防止部763aは、その側面がテーパ部368cに接する位置に来る。
図105(b)に示すように、戻り防止部763aの側面は、下向きの円錐形状をしている。また、係止部付軸368の軸頭部には、図105(a)に示すように、バネ941が存在する。従って、戻り防止部763aが係止孔368bの上から下へ移動しようとする際、戻り防止部763aの側面とテーパ部368cとが接することにより、係止部付軸368を左側に押し戻す力が働く。つまり、戻り防止部763aはテーパ部368cを左側に押しやりながら、テーパ部368cを越えることができる。
戻り防止部763aがテーパ部368cを越えた後、係止部付軸368はバネ941の反発力により右側へ押し戻される。この状態で、戻り防止部763aが係止孔368bの下から上へ戻ろうとすると、戻り防止部763aのバンド763の長手方向に垂直な面が、テーパ部368cの下の係止部付軸368の面と平行に接することとなる。そのため、戻り防止部763aは、係止孔368bの下から上へ戻ることができない。
図106は、図105(a)に示すダイヤル錠が施錠状態になる際の各部材の動きを示す図である。
まず、(1)バンド763のバンド頭部が下に引っ張られると、戻り防止部763aとテーパ部368cとが接することにより、(2)係止部付軸368は左方向への力を受け、左方向へ移動し始める。(3)更にバンド763のバンド頭部が下に引っ張られると、(4)係止部付軸368はさらに左方向へ移動する。
上記動作の後、戻り防止部763aがテーパ部368cの下に抜けると、バネ941の反発力により、係止部付軸368は右に押し戻され、図105(a)に示す状態へ戻る。なお、開錠する際には、係止部付軸368を左に押し込みながら、バンド763のバンド本体を緩める、または錠本体946から抜き出せばよい。
このように、バネの反発力を利用し、一旦、バンド本体を係止する部材を越えた後、バンド本体を後戻りできないようにする構造をダイヤル錠に持たせることが可能である。
また、図105(a)に示すダイヤル錠は、バネの反発力を利用していたが、図105(a)に示すダイヤル錠と同様の構造で、バネの引っ張り力を利用するダイヤル錠を作成こともできる。
図107(a)は、バンドが後戻りしない構造を有するダイヤル錠の内部構造の別の一例を示す図である。なお、ダイヤル錠の内部の部材の説明のために、図107(a)において、錠本体946は内部構造が見えるように図示されている。
図107(a)に示すダイヤル錠は、錠本体946と、係止部付軸369と、バネ94
1aと、バンド763と、3つのロック用ダイヤルリングとで構成されている。なお、ロック用ダイヤルリングとして、例えば、図5に示すロック用ダイヤルリング200が用いられる。
図107(a)に示すダイヤル錠は施錠状態であり、バネ941は、伸ばされた状態である。係止部付軸369はバネ941の引っ張り力により左側に側に引き戻される力を受けている。係止部付軸369は、図105(a)に示す係止部付軸368とは異なり、係止孔369bの軸後部方向の側面に、斜めになったテーパ部369cを有する。
図107(b)は、係止部付軸369の軸後部およびバンド763の戻り防止部763aの形状を説明するための図である。
図107(b)において、上図は、係止部付軸369の軸後部を錠本体の後面側から見た図である。中図は、係止部付軸369の軸後部を錠本体の上面側から見た図である。下図は、係止部付軸369の軸後部を錠本体の正面側から見た図である。
なお、各部材の形状の説明のため、戻り防止部763aは係止孔368bの中心付近に位置しているが、実際には、戻り防止部763aは、その側面がテーパ部369cに接する位置に来る。
戻り防止部763aが係止孔368bの上から下へ移動しようとする際、戻り防止部763aの側面とテーパ部369cとが接することにより、係止部付軸368を右側に押し、移動させる力が働く。つまり、戻り防止部763aはテーパ部368cを右側に押しやりながら、テーパ部369cを越えることができる。
戻り防止部763aがテーパ部369cを越えた後、係止部付軸369はバネ941aの引っ張り力により左側へ引き戻される。この状態で、戻り防止部763aが係止孔369bの下から上へ戻ろうとすると、戻り防止部763aのバンド763の長手方向に垂直な面が、テーパ部369cの下の係止部付軸369の面と平行に接することとなる。そのため、戻り防止部763aは、係止孔369bの下から上へ戻ることができない。
図108は、図107(a)に示すダイヤル錠が施錠状態になる際の各部材の動きを示す図である。
まず、(1)バンド763のバンド頭部が下に引っ張られると、戻り防止部763aとテーパ部369cとが接することにより、(2)係止部付軸369は右方向への力を受け、右方向へ移動し始める。(3)更にバンド763のバンド頭部が下に引っ張られると、(4)係止部付軸369はさらに右方向へ移動する。
上記動作の後、戻り防止部763aがテーパ部369cの下に抜けると、バネ941aの引っ張りにより、係止部付軸369は左に引き戻され、図107(a)に示す状態へ戻る。なお、開錠する際には、係止部付軸369を右に引っ張りながら、バンド763のバンド本体を緩める、または錠本体946から抜き出せばよい。
このように、バネの引っ張り力を利用し、一旦、バンド本体を係止する部材を越えた後、バンド本体を後戻りできないようにする構造をダイヤル錠に持たせることが可能である。
また、図105(a)に示すダイヤル錠および図107(a)に示すダイヤル錠は、ともに、施錠時には、軸を錠本体から抜き出すことはできない。しかしながら、開錠時には
、軸を錠本体から抜き出すことができる。つまり、これらのダイヤル錠は開錠時にのみ分解が可能であり、かつ、繰り返し組み立て直しが可能である。
また、実施の形態2のダイヤル錠2のように、軸を2本備えるダイヤル錠も、開錠時にのみ分解可能であり、かつ、組み立て直しが可能な構造とすることができる。
図109は、開錠時にのみ分解可能であり、かつ、組み立て直しが可能な構造を有する、軸を2本備えるダイヤル錠の構造および組み立て手順の一例を示す図である。
図109に示すダイヤル錠は、ダイヤルリングを回転可能にささえる軸を2本有している。またそれら軸は錠本体と一体化され、軸付錠本体954を形成している。また、副部材955は、各軸にダイヤルリングが通された後に、軸付錠本体954に取り付けることができる。
なお、各軸には3つずつダイヤルリングが取り付けられるが、図30(a)または図34(a)に示すダイヤル錠2のように、どちらか一方の軸に、バンド等の係止部材を係止するためのダイヤルリングを備えていればよい。また、図36に示すダイヤル錠2のように、双方の軸にバンドを係止するためのダイヤルリングを備えてもよい。また、図109において、バンド等の係止部材が軸付錠本体954および副部材955を貫通する孔または溝についての図示、およびバンド取付孔についての図示は省略している。
図110(a)は、副部材955の右側面図であり、図110(b)は軸付錠本体954の左側面図である。なお、図110(a)および図110(b)において、ドットが付されていない面が最も手前にある面であり、密なドットが付された面がもっとも奥にある面である。粗いドットが付された面は、その間に存在する面である。
図109に示すように、このダイヤル錠を組み立てる手順は、(1)各軸に3つずつダイヤルリングを通し、(2)副部材955を左から右へ向かって軸の左側面に押し当ててから、軸付錠本体954の左側面の前から後ろへ向かってスライドさせる。この動作により、軸付錠本体954の左後部にある凹954aに、副部材955の凸部955aが差し込まれる。また同時に、それぞれ2つずつある、軸の先端近くの凹954bと、副部材955が有する凸部955bとが嵌合する。以上の手順により組み立てが完了する。
このダイヤル錠において、例えば、任意の位置でロック出来る係止部材であっても、特定の決まった位置でロック出来る係止部材であっても、係止部材が副部材955と少なくともどちらか一方の軸との境界を貫いている場合、副部材955は、手前にスライドさせることはできない。つまり、開錠状態であっても、副部材955を軸付錠本体954から取り外すことはできず、ダイヤル錠を分解することはできない。この状態で係止部をダイヤルリングでロックすると副部材955を軸付錠本体954にロックできる。
しかしながら、開錠状態であれば、バンド等の係止部材を副部材955および軸付錠本体954から抜き出すことで、副部材955を軸付錠本体954から取り外すことができる。つまり、図109に示すダイヤル錠も、開錠時にのみ分解可能であり、かつ、組み立て直しが可能なダイヤル錠である。
なお、副部材を軸付錠本体にスライドさせながら取り付ける方法を、軸が1本のダイヤル錠に適用してもよい。
図111は、軸が1本のダイヤル錠で、副部材を軸付錠本体にスライドさせながら取り付けることのできる点では図82と同じであるが、副部材が錠本体と軸に、図82に示し
た錠よりもしっかりと嵌合する構造にした錠であり、その構造および組み立て手順の一例を示す図である。
図111に示すダイヤル錠は、1本の軸を有する軸付錠本体956と、副部材957と、3つのダイヤルリングとで構成される。なお、3つのダイヤルリングは、例えば、図5に示すロック用ダイヤルリング200を用いればよい。なお図111において、バンド等の係止部材が軸付錠本体956および副部材957を貫通する孔または溝についての図示、およびバンド取付孔についての図示は省略している。
図112(a)は、副部材957の右側面図であり、図112(b)は軸付錠本体956の左側面図である。なお、図112(a)および図112(b)において、ドットが付されていない面が最前にある面であり、密なドットが付された面がもっとも奥にある面である。粗いドットが付された面は、その間に存在する面である。
図111に示すように、このダイヤル錠を組み立てる手順は、(1)軸に3つのダイヤルリングを通し、(2)副部材957を左から右へ向かって軸の左側面に押し当ててから、軸付錠本体956の左側面の前から後ろへ向かってスライドさせる。この動作により、軸付錠本体956の左後部にある凹956aに、副部材957の凸部957aが差し込まれる。また同時に、軸の先端近くの凹956bと、副部材957が有する凸部957bとが嵌合する。以上の手順により組み立てが完了する。
図111に示すダイヤル錠も、図109に示すダイヤル錠と同様に開錠時にのみ分解可能であり、かつ、組み立て直しが可能なダイヤル錠である。
また、図82、図109および図111のように、軸付錠本体と副部材とで構成されるダイヤル錠の場合、バンド取付孔の構造により、副部材を軸付錠本体から取り外せないようにすることができる。なお、以下の説明は図113を用いて行うが、2軸構造の場合も同様である。
図113(a)は、錠本体の右後部にバンド取付孔が存在するダイヤル錠の構造を示す図である。この構造は、例えば、図1のダイヤル錠1で採用されている。図113(a)に示すように、ダイヤルリングの中にバンド本体を通すことで、同時に、副部材957と軸付錠本体956とをバンド本体が貫通する。これにより、副部材957を軸付錠本体956から取り外すことができない。
上記構造に対し、図113(b)はバンド本体がリングの中を通っていない場合であっても、副部材を軸付錠本体から取り外すことができない構造である。
図113(b)は、バンド取付孔が軸付錠本体と副部材との境界を貫くようにして設けられているダイヤル錠の構造を示す図である。図113(b)に示すように、軸付錠本体956後部の副部材957に近い場所からバンドが挿入され、副部材957の左側面からバンドが出されている。この場合、バンドのストッパが、軸付錠本体956と副部材957とにまたがって形成されたバンド取付孔で係止される。これにより、副部材957を手前にスライドさせることはできず、副部材957を軸付錠本体956から取り外すことができない。
また、副部材にのみバンド取付孔を設けることにより、開錠時であってもバンドが錠本体から抜け落ちることを防止することができる。
図113(c)は、副部材にのみバンド取付孔が設けられているダイヤル錠の構造を示
す図である。図113(c)に示すように、副部材957にバンド取付孔が存在する。そのバンド取付孔に、副部材957の右側面から、バンドのストッパがバンド取付孔で係止されるまでバンドを挿入する。その状態の副部材957を、軸付錠本体956に取り付ける。
図113(c)に示すように、バンドの後端は、副部材957のバンド取付孔からは抜け落ちることはない。また、バンド本体ダイヤルリングの中に通し、ダイヤルリングによりロックされることにより、副部材957は、軸付錠本体956から取り外すことはできない。
上述の、図113(a)〜図113(c)に示す構造を有するダイヤル錠に用いられる係止部材は、任意の位置でロック可能なバンドでなくてもよい。特定の位置のみでロックされる係止部材であってもよい。また、いずれの構造を有するダイヤル錠であっても、開錠時にのみ分解可能であり、かつ、組み立て直しが可能である。
1軸構造のダイヤル錠と2軸構造のダイヤル錠について、軸が錠本体と一体になっている構造を元に、図111と図109を用いて、開錠時に限り分解、組み立て直しが可能なことを説明してきた。しかしながら、ダイヤルリングの軸への挿入方向と同じ方向から、軸が錠本体に挿入され、図53〜図57に示した関係で、軸の一部だけが錠本体の軸挿入孔または軸挿入穴に挿入されて固定される構造であれば、軸は錠本体の左側へは通過不可能な為、軸を錠本体へ挿入した後、ダイヤルリングを軸に通してから、副部材を錠本体外より、軸方向に軸とダイヤルリングを押さえる様にしてから、錠本体に差し込んで組み立てることにより、軸が錠本体と一体になっている構造と同様に開錠時に限り分解、組み立て直しが可能となる。
つまり、ダイヤルリング部分の組み立て完了後、係止部材が副部材と軸の境界を貫いて存在している状態で、係止部がダイヤルリングにロックされる構造にすると、係止部のロック状態では、副部材、ダイヤルリング、軸の全てが錠本体から分解不可能となる。しかし、開錠して係止部材を副部材と軸の境界に架からない様にすると、錠本体から副部材、ダイヤルリング、軸が分解可能となり、分解後には再度組み立て直し可能となる。この様に、軸と錠本体が一体ではなく、組み立て・分解を可能とすることにより部材を単純形状にできるので、製造コストを下げることが可能である。
また、軸が錠本体から抜き出されることを防ぐための部品を別途用いるダイヤル錠であっても、開錠時にのみ分解可能であり、かつ、組み立て直しが可能である構造にすることができる。
軸が錠本体から抜き出されることを防ぐための部品(以下、「軸留部材」という。)を用いた場合、施錠時に、軸留部材を錠本体または軸自体から取り外せないようにすることが必要である。そのために一つの方法として、軸留部材を施錠時に覆い隠すことが考えられる。
しかしながら、錠本体に任意の位置でロックされるバンドを用いる場合、ロックされる位置は一定ではない。そのため、例えば、バンドがロックされる位置により軸留部材が外部に露出することが考えられる。
そこで、軸留部材に、バンド等の係止部材が挿入される孔、穴または溝を設けることにより、施錠時には、軸留部材を錠本体から抜き出すことを不可能とする方法が有効な方法として考えられる。
図114(a)は、軸留部材を用いるダイヤル錠の構造および組み立て手順の一例を示す図である。図114(a)に示すように、このダイヤル錠は、錠本体958と、軸381と、軸留部材959と、3つのダイヤルリングとから構成される。
なお、ダイヤルリングは、例えば、図5に示すロック用ダイヤルリング200を用いればよい。
このダイヤル錠を組み立てる手順は以下の通りである。(1)3つのダイヤルリングを錠本体958のダイヤルリング取付部に挿入する。(2)軸381を左側から挿入する。(3)軸留部材959を、錠本体958に挿入する。なお、図中において、錠本体958の軸留部材959が挿入される部位は錠本体958を貫通していない穴であるが、錠本体958を貫通する孔であってもよい。
図114(b)は、軸381の形状を示す図である。軸381の上面図の左にある図は軸381の左面図であり、上面図の下にある図は軸381の正面図である。図114(b)に示すように、軸381は、バンドが貫通する溝である軸側溝の他に、軸留部材959が差し込まれる溝である軸留溝381aを有する。錠本体958内で、この軸留溝381aに軸留部材959が差し込まれることにより、軸381は錠本体から抜き出すことはできない。
図114(c)は、軸留部材959の左側面図である。図114(c)に示すように、軸留部材959は、バンドが貫通し、軸留部材を錠本体に拘束する孔である、係止孔959aと、軸留部材959を錠本体から引き出すときに爪などを引っ掛けるため溝959bとを有する。
錠本体958内で、この係止孔959aにバンド本体が通されることより、軸留部材959は錠本体958から抜き出すことはできない。
図114(d)は、軸381と軸留部材959とが挿入された錠本体958の左側面図である。図114(d)に示すように、錠本体958の左側面から挿入されたバンド本体は、軸留部材959の係止孔959aを貫通する。この状態では、軸留部材959は錠本体958から抜き出すことはできない。軸留部材959は、軸381と錠本体958とにまたがって存在し軸381を錠本体958に拘束している。従って、軸留部材959を錠本体958から抜き出すことができなければ、軸381を錠本体958から抜き出すことはできない。
従って、図114(a)に示すダイヤル錠は開錠時にのみ分解が可能であり、かつ、繰り返し組み立て直しが可能である。
また、係止孔959aを有する軸留部材959の換わりにバンドが貫通し、軸留部材を錠本体に拘束する溝である係止溝を有する軸留部材を用いてもよい。
図115(a)は、バンドが貫通する溝を有する軸留部材の一例を示す図である。図115(a)に示す軸留部材995は、バンドが貫通する溝である係止溝995aを有する。
図115(b)は、軸留部材995が挿入された錠本体958の左側面図である。この状態で、バンド本体が錠本体958の左側面から挿入された場合、そのバンド本体は、軸留部材995の係止溝995aを貫通する。そのため、軸留部材995は錠本体958から抜き出すことはできない。これにより、軸381も錠本体958から抜き出すことはで
きない。
また、図114(a)に示すように、軸留部材959は錠本体958の前面より挿入されるとしたが、軸留部材959を錠本体958に挿入する方向は前面からに限られない。
図116は、錠本体958の上面から軸留部材959が挿入される様子を示す図である。図116に示すように、軸留部材959を錠本体958の上面から挿入する場合であっても、施錠時には、軸留部材959を錠本体958から抜き出すことはできず、これにより、軸381も錠本体958から抜き出すことはできないことに変わりはない。
図117は、錠本体958の後面から軸留部材を挿入される様子を示す図である。図117に示す軸留部材996は、錠本体958の後面から軸を貫通するための長さが必要であり、軸留部材959より長くなっている。なお、軸留部材996も、軸留部材959と同様に、軸381を貫通する。また、軸留部材959における係止孔959aや軸留部材995における係止溝995aと同様にバンド本体を貫通させる孔や溝を有している。従って、施錠時には、軸留部材996を錠本体958から抜き出すことはできず、これにより、軸381も錠本体958から抜き出すことはできない。
図118は(a)は、軸留部材959を前面から挿入する形態のダイヤル錠の上面図である。また、軸留部材995を用いた場合も同様の図になる。
図118(b)は、軸留部材959を上面から挿入する形態のダイヤル錠の上面図であり、図118(c)は、軸留部材996を後面から挿入する形態のダイヤル錠の上面図である。
図118(c)に示すダイヤル錠において、バンド取付孔は軸留部材996を横切るように錠本体958に設けられている。つまり、バンドが軸留部材996を2度貫通している。
こうすることで、開錠時であっても、バンドを錠本体と軸留部材996の境界を横切って存在している場所から完全に抜き出さない限り、軸留部材996を、錠本体958から抜き出すことが不可能となる。従って、バンドを錠本体と軸留部材996の境界を横切って存在している場所から完全に抜き出さない限り、ダイヤル錠を分解することができない。
図118(a)〜図118(c)に示されるいずれの形態のダイヤル錠においても、施錠時には、軸留部材を錠本体から抜き出すことは不可能である。軸留部材は軸を貫通しており、軸留部材を錠本体から抜き出すことができなければ、軸を錠本体から抜き出すことはできない。
つまり、いずれの形態のダイヤル錠においても、開錠時にのみ分解が可能であり、かつ、繰り返し組み立て直しが可能である。
この軸留部材は係止部が特定の決まった位置でロックされるダイヤル錠で、ダイヤルリングの回転軸が存在し、係止部がダイヤルリング内でロックされるタイプにも応用可能である。
つまり、軸留部材が錠本体内でダイヤルリングの回転軸の一部と嵌合し、ダイヤルリングで係止される係止部が、軸留部材の錠本体内への挿抜方向とは異なる方向で、軸留部材を嵌合する構造であれば、錠本体にダイヤルリングを軸で固定してから軸留部材を錠本体
外から挿入して、軸に嵌合させた後に係止部を錠本体および軸に挿入し、ダイヤルリングで係止部をロックすると軸留部材と軸とダイヤルリングは錠本体から分解不可能となり、開錠時に限っては分解・組み立て直し可能となる。
なお、軸は、軸留部材が挿入される溝(例えば、図114(b)の軸留溝381a)ではなく、軸留孔または軸留穴を有していても良い。要するに、これら、軸留部材が挿入される軸留孔、軸留穴または軸留溝の少なくとも一部が、錠本体に対する軸部材の挿抜方向とは異なる方向に形成されており、それら軸留孔等に軸留部材が挿入されている状態では、軸は錠本体から抜き出すことはできない。
また、軸留部材は、係止部材が挿入される孔(例えば、図114(c)の係止孔959a)また溝(例えば、図115(a)の係止溝995a)ではなく、穴を有していても良い。例えば、軸において、係止部材が挿入される軸側溝が軸を貫通しておらず、軸側溝の終端付近に軸留部材が挿入される軸留溝、軸留孔または軸留穴が存在する場合、施錠時に係止部材の頭部が存在する位置に、その頭部が差し込まれる穴を軸留部材が有していれば、施錠時には係止部材の頭部が軸留部材の穴に差し込まれることになる。
従って、軸留部材の、係止部材が挿入される孔、穴または溝の少なくとも一部が、前記錠本体に対する前記軸留部材の挿抜方向とは異なる方向に形成されており、それら孔等に係止部材が挿入されている状態では、軸留部材は軸から抜き出すことはできない。
また、ダイヤル錠に、図100および図103に示すようなアダプタを取り付けた場合、アダプタに係止部材を貫通させることにより、施錠時にはアダプタを錠本体から取り外せないようにしてもよい。
図119(a)は、上下にスライドさせて着脱可能なアダプタおよびそのアダプタに対応する錠本体の形状の一例を示す図である。なお、図119(a)は、錠本体975およびアダプタ976の上面図であり、錠本体975には3つのダイヤルリングが取り付けられている。
なお、図119(a)〜図120(b)に示す錠本体においてアダプタが取り付けられる面が後面であり、その反対側の面、つまりダイヤルリングが存在する側が正面である。また、左右は正面から見た場合を基準にする。
図119(a)に示すように、錠本体975には、アダプタ976の2つの突起に対応する溝が設けられている。また、図中の点線は、バンドを取り付けるためのバンド取付孔となる孔を表している。つまり、錠本体975にアダプタ976が取り付けられた状態では錠本体975とアダプタ976との境界を貫くように、1つのバンド取付孔が形成される。
図119(b)は、アダプタ976の錠本体975への取り付け方の一例を示す図である。図119(b)に示すように、アダプタ976は、錠本体975に対し下方から上方へ向かってスライドさせながら錠本体975に取り付けられる。なお、同様に、錠本体975の上方から下方へ向かってからスライドさせながら取り付けることもできる。
図119(c)は、アダプタ976が取り付けられた状態の錠本体975の上面図である。上述のように、錠本体975とアダプタ976との境界を貫くように、1つのバンド取付孔が形成されている。このバンド取付孔にバンドが差し込まれ、バンドがバンド取付孔を貫通している状態では、バンドを錠本体975とアダプタ976との境界を横切って存在している場所から完全に抜き出さない限り、アダプタ976を錠本体975に対して
上下にスライドさせることはできない。
もちろん、バンドの通路であるバンド取付孔が、錠本体へのアダプタの取り付けおよび取り外し方向と同じであり、かつ、バンドがダイヤルリングにより係止されていなければ、バンドごとアダプタを錠本体から引き離すことは可能である。
しかし、上述のように、錠本体へのアダプタの取り付けおよび取り外し方向は、錠本体に対して上下方向であり、バンドの通路の方向は、錠本体に対しておおよそ前後方向である。
つまり、バンドの通路は、錠本体へのアダプタの取り付けおよび取り外し方向とは異なる方向に形成されている。これにより、上述のように、バンドを錠本体とアダプタとの境界を横切って存在している場所から完全に抜き出さない限り、アダプタを錠本体に対して上下にスライドさせることはできない。つまり、アダプタを錠本体から取り外すことはできない。
従って、図119(a)〜図119(c)に示す錠本体975およびアダプタ976の場合、施錠時にはもちろんのこと、開錠時であっても、バンドを錠本体975とアダプタ976との境界を横切って存在している場所から完全に抜き出さない限り、アダプタ976を錠本体975から取り外すことはできない。
なお、バンドが錠本体975とアダプタ976を貫通する通路は孔でなくてもよく、溝であってもよい。つまり、バンドの、錠本体975およびアダプタ976内に存在する部分の一部が錠本体975およびアダプタ976外から見えるような構造であってもよい。要するに、バンドが挿入された孔または溝の入口以外からはバンドを取り出せない形状であればよい。
また、バンドが錠本体975とアダプタ976を貫通する通路は図119(c)に示す場所以外でもよく、例えば、図119(d)または図119(e)に示す位置にあってもよい。
図119(d)に示すダイヤル錠は、係止部材であるバンドが錠本体975に予め連結されている。また、アダプタ976は、曲面部分の端にバンドを貫通させる孔を有しており、物品を施錠した際に、アダプタ976の曲面部分のほぼ全面が物品に密着することができる。
また、錠本体975の、アダプタ976の孔から続く位置にある孔は、そのまま、ダイヤルリング内部へ繋がるように位置しており、外部からアダプタ976の孔に挿入されたバンドの頭部は、錠本体975の孔に入り、3つのダイヤルリングを貫通し、錠本体975の外部へ出てくる。
図119(e)に示すダイヤル錠は、図119(d)に示すダイヤル錠と同様に、錠本体975の、アダプタ976の孔から続く位置にある孔は、そのまま、ダイヤルリング内部へ繋がるように位置している。また、錠本体975はさらに、バンドを取り付けるための孔も有しており、この孔に続く位置にアダプタ976にも孔が存在する。つまり、この図において錠本体975の左側面の孔から差し込まれたバンドは、錠本体975とアダプタ976とを貫通し一旦外部へ出てくる。そして、施錠対象物品を巻くようにして、アダプタ976の右側にある孔に挿入され、錠本体975と3つのダイヤルリングを貫通し外へ出てくる。
なお、図119(e)に示すダイヤル錠においても、アダプタ976に存在するバンドが貫通するための2つの孔は、アダプタ976の曲面部分の両端に開口している。そのため、物品を施錠した際に、曲面部分のほぼ全面が物品に密着することができる。
このように、バンドが錠本体およびアダプタを貫通する通路が、錠本体へのアダプタの取り付けおよび取り外し方向とは異なる方向に形成されていれば、バンドによりアダプタが錠本体にロックされる効果を生じさせることができる。また、この通路は、上記の方向の条件を満たす限り、施錠形態やデザイン等に応じて変更可能であり、変更した場合であっても、上記効果は失われることはない。
また、図119(d)において、係止部材が特定の位置で係止される場合には、係止部材がアダプタ976を貫通する必要はあるが、錠本体975を貫通する必要はなく、この形態でも、施錠時にはアダプタ976を錠本体975から分解できなくすることができる。
また、アダプタ976は、錠本体の後面を平面から曲面に変換する形状であるが、錠本体の後面を曲面から平面に変換する形状であってもよい。また、そのような形状のアダプタであっても、上述のように、錠本体とともに1つのバンド取付孔を形成させてもよい。
図120(a)は、上下にスライドさせて着脱可能なアダプタであって、錠本体の後面を曲面から平面に変換するためのアダプタおよびそのアダプタに対応する錠本体の形状の一例を示す図である。図120(a)は、錠本体977およびアダプタ978の上面図であり、錠本体977には3つのダイヤルリングが取り付けられている。
図120(a)に示すように、錠本体977の後面は曲面であり、アダプタ978を取付可能とする溝が2つ設けられている。また、アダプタの後面は平面になっている。
また、図119(a)に示す場合と同様に、錠本体977にアダプタ978が取り付けられた状態では錠本体977とアダプタ978との境界を貫くように、1つのバンド取付孔が形成される。
アダプタ978は、図119(b)に示すアダプタ976の錠本体975への取り付け方と同じく、錠本体977に対し下方から上方に向かってスライドさせながら錠本体977に取り付けられる。なお、下方から上方に向かってスライドさせながら錠本体977に取り付けることもできる。
図120(c)は、アダプタ978が取り付けられた状態の錠本体977の上面図である。上述のように、錠本体977とアダプタ978との境界を貫くように、1つのバンド取付孔が形成されている。
つまり、錠本体977およびアダプタ978を構成要素として持つダイヤル錠においても、バンドを、錠本体977とアダプタ978との境界を横切って存在している場所から完全に抜き出さない限り、アダプタ978を錠本体977に対してスライドさせることはできない。つまり、施錠時はもちろんこのと、開錠時であっても、バンドを、錠本体977とアダプタ978との境界を横切って存在している場所から完全に抜き出さない限り、アダプタ978を錠本体977から取り外すことはできない。
このように、バンドを、アダプタと錠本体との境界を横切るように存在させることで、アダプタを錠本体から取り外すことを不可能とすることができる。
具体的には、図119(c)のダイヤル錠の説明において述べたように、バンドが錠本体およびアダプタを貫通する通路が、錠本体へのアダプタの取り付けおよび取り外し方向とは異なる方向に形成されていれば、施錠時にはもちろんのこと、開錠時であっても、バンドを錠本体とアダプタとの境界を横切って存在している場所から完全に抜き出さない限り、アダプタを錠本体から取り外すことはできない。
また、アダプタの錠本体への取り付け方は、錠本体に対し下方から上方に向かいスライドさせるか、上方から下方に向かいスライドさせるとしたが、アダプタと錠本体の取り付け部分の突起と溝の方向を変えることで、左右からスライドして取り付けることも、斜め方向にスライドして取り付けることも可能であり、アダプタと錠本体は組み立てが可能であればどちら側に突起があっても溝があっても構わない。係止部材がアダプタと錠本体の境界にまたがって存在し、その方向がアダプタと錠本体の着脱方向と異なれば、施錠時にアダプタと錠本体が分解不可能となる構造にできる。
また、ダイヤル錠を開錠時にのみ分解可能とする構造について、例えば、図61A(a)に示すダイヤル錠では、錠本体のダイヤルリングを格納する格納部にネジ式の蓋となる副部材を取り付けることにより可能としていた。しかし、他の構造でダイヤル錠を開錠時にのみ分解可能としてもよく、例えば、軸部材と錠本体を、施錠時に限り外せない様に連結し、軸部材の後端部に備えられたダイヤルリングの抜け止め用の鍔と、錠本体の壁とにより、ダイヤルリングの軸方向の移動を制限することにより、開錠時にのみ分解可能である施錠装置を構成してもよい。
図121は、係止部材用通路が、錠本体と軸部材との境界を、軸側面の位置で、錠本体に対する軸部材の挿抜方向と異なる方向で横切ることにより、軸部材と錠本体を連結し、軸部材に備えられた鍔と、錠本体の壁とにより、ダイヤルリングの軸方向の移動を制限するダイヤル錠の構造の複数の例を示す図である。
図121(a)に示すダイヤル錠は、鍔付軸355と、3つのロック用ダイヤルリング200と、錠本体357とを備える。また、錠本体357は鍔付軸355が貫通する孔を有している。これら部材を組み合わせることで、図において矢印の右側に示すような構造のダイヤル錠となる。
図121(b)に示すダイヤル錠は、鍔付軸356と、3つのロック用ダイヤルリング200と、錠本体358とを備える。また、錠本体358は鍔付軸356が挿入される穴を有している。これら部材を組み合わせることで、図において矢印の右側の図に示すような構造のダイヤル錠となる。
図121(a)および図121(b)に示すダイヤル錠のそれぞれは、軸部材と錠本体を施錠時には外せない様に連結している状態では、錠本体の左側の面が壁となり、ロック用ダイヤルリング200は右方向へは移動できず、鍔付軸の鍔により、左方向へも移動できない。なお、図121(a)および図121(b)において、鍔付軸355および鍔付軸356が有する軸側溝等の他の構造についての図示は省略している。また、各ダイヤル錠において鍔付軸は錠本体に保持されている。また、各図は開錠時にロック用ダイヤルリングの切欠部が存在する方向から見た場合のダイヤル錠の構造の概要を表している。
図121(c)〜図121(l)は、図121(b)に示すダイヤル錠における錠本体と鍔付軸とを連結し、施錠時には分解不可能とする為の、錠本体と鍔付軸の境界を、軸側面の位置で、錠本体に対する軸部材の挿抜方向とは異なる方向で横切る係止部材用通路のバリエーションを示す図である。なお、各ダイヤル錠が3つ備えるダイヤルリングは、ロック用ダイヤルリング200である。また、図121(c)〜図121(j)のダイヤル
錠では、係止部材は錠本体358の係止部材取付溝または係止部材取付孔から挿入され、係止部材の尾部は錠本体358のその係止部材取付溝または係止部材取付孔で係止される。また、図121(k)および図121(l)のダイヤル錠では、係止部材は鍔付軸356の鍔部分から挿入され、係止部材の尾部は鍔部分のその係止部材取付溝または係止部材取付孔で係止される。
図121(c)に示すダイヤル錠には、錠本体358と、鍔付軸356の錠本体内358に存在する部分とを貫通する通路(以下、「結合用通路」という。)が存在する。また、結合用通路は図121(c)〜図121(j)において、錠本体358と、鍔付軸356の錠本体内358に存在する部分との境界を、軸側面の位置で横切る通路となっている。その通路から出た係止部材は、鍔付軸356の鍔部分から挿入され、鍔付軸356を貫通せずに、3つのロック用ダイヤルリングによって係止される。つまり、3つのロック用ダイヤルリングを貫通する軸側溝(以下、「係止用軸側溝」という。)は鍔付軸356を貫通していない。
係止部材は、結合用通路に存在し、結合用通路は、錠本体358に対する鍔付軸356の挿抜方向とは異なる方向に形成されている。従って、少なくとも施錠時には錠本体358と鍔付軸356とを分離することはできない。また、開錠時には、係止部材を、結合用通路の錠本体358と鍔付軸356とにまたがって存在する部分から抜き取ることにより、錠本体358と鍔付軸356とを分離することができ、ダイヤル錠は分解される。つまり、開錠時にのみ分解可能なダイヤル錠である。
図121(d)に示すダイヤル錠は、図121(c)に示すダイヤル錠とほぼ同様の構造であり、同様の位置および形状の結合用通路を有している。しかし、鍔付軸356の係止用軸側溝が鍔付軸356を貫通しており、さらに、錠本体はその係止用軸側溝に続く位置に係止部材を貫通させる孔を有している。
図121(d)に示すダイヤル錠においても、結合用通路により、少なくとも施錠時には錠本体358と鍔付軸356とを分離することはできない。また、開錠時には、係止部材を、結合用通路の錠本体358と鍔付軸356とにまたがって存在する部分から抜き取ることにより、錠本体358と鍔付軸356とを分離することができ、ダイヤル錠は分解される。つまり、開錠時にのみ分解可能なダイヤル錠である。
図121(e)に示すダイヤル錠は、図121(c)に示すダイヤル錠と同じく、鍔付軸356を貫通しない係止用軸側溝を有している。また、図121(c)に示すダイヤル錠の結合用通路の形状とは異なる位置および形状の結合用通路が存在する。しかし、この結合用通路も、錠本体358に対する鍔付軸356の挿抜方向とは異なる方向に形成されているため、開錠時にのみ分解可能とするダイヤル錠となる。
図121(f)に示すダイヤル錠は、図121(d)に示すダイヤル錠と同じく、鍔付軸356を貫通する係止用軸側溝を有しており、さらに、錠本体はその係止用軸側溝に続く位置に係止部材を貫通させる孔を有している。また、図121(e)に示すダイヤル錠と同様の位置および形状の結合用通路が存在する。なお、この結合用通路と、係止用軸側溝を含む通路とはねじれの位置にあり交わってはいない。この結合用通路により、開錠時にのみ分解可能なダイヤル錠となる。
図121(g)に示すダイヤル錠は、結合用通路に通された係止部材が、錠本体358の軸頭部側から挿入され、鍔付軸356の軸頭部から軸内に挿入されている。また係止用軸側溝は鍔付軸356を貫通していない。このように、鍔付軸356の鍔部分側からではなく、錠本体358側から係止用軸側溝に係止部材を挿入しても、係止部材のロック用ダ
イヤルリングによる係止は可能である。また、結合用通路が、錠本体358に対する鍔付軸356の挿抜方向とは異なる方向に形成されていることにより、開錠時にのみ分解可能とするダイヤル錠となる。
図121(h)に示すダイヤル錠は、図121(g)に示すダイヤル錠と同様の位置および形状の結合用通路を有している。また、図121(g)に示すダイヤル錠と同じく、結合用通路に通された係止部材が、錠本体358の軸頭部側から挿入されている。更に、挿入された係止部材は、錠本体358と鍔付軸356とを貫通している。このように係止用軸側溝が鍔付軸356を貫通している場合であっても、図121(g)に示すダイヤル錠と同様、係止部材のロック用ダイヤルリングによる係止部材の係止は可能である。また、結合用通路により、開錠時にのみ分解可能とするダイヤル錠となる。
なお、図121(d)の係止部材取付溝または係止部材取付孔の構造を、その両端のどちらから係止部材を挿入しても、係止部材の取り付けを可能とすることにより、図121(h)と同じ形状で施錠することが可能となる。つまり、係止部材取付溝または係止部材取付孔を工夫することにより、同一のダイヤル錠で図121(d)と図121(h)の異なる形態での施錠が可能となる。
図121(i)に示すダイヤル錠は、図121(d)に示すダイヤル錠と同様に、結合用通路に通された係止部材が、鍔付軸356の鍔部分から係止用軸側溝に挿入され、鍔付軸356と錠本体358とを貫通している。しかし、係止用軸側溝を含む通路の両端が湾曲している。この湾曲により、図13(d)〜図13(g)を用いて説明したように、この通路を介しての開錠のための部位の覗き見を防止する効果が発揮される。また、結合用通路が、錠本体358に対する鍔付軸356の挿抜方向とは異なる方向に形成されていることにより、開錠時にのみ分解可能とするダイヤル錠となる。
図121(j)に示すダイヤル錠は、図121(i)に示すダイヤル錠と同様に、係止用軸側溝を含む通路の両端が湾曲しており、開錠のための部位の覗き見を防止することができる。また、図121(h)のダイヤル錠と同様に、結合用通路に通された係止部材が、錠本体358の軸頭部側から挿入され、錠本体358と鍔付軸356とを貫通している。この形態においても、結合用通路により、開錠時にのみ分解可能とするダイヤル錠となる。
なお、図121(i)と図121(j)に示したそれぞれの結合用通路と係止用軸側溝を含む通路は、全く同一にすることも可能である。つまり、同一のダイヤル錠において、結合用通路を出た係止部材を、軸頭部側の錠本体358から挿入して施錠することも、鍔付軸356の鍔部分から挿入して施錠することも可能にできる。
更に、ダイヤル錠以外の錠であっても、任意の位置で施錠可能な長尺状の係止部材を用いる施錠装置においては、係止部材用通路が施錠装置を貫通している場合には、通路の両端のどちらから係止部材を挿入しても施錠可能な構造にできる。また、特定の位置で施錠される係止部材であっても、係止部材用通路が両端共に施錠装置の外側面に開口していれば、通路の両端のどちらから係止部材を挿入しても施錠可能な構造にすることができる。
図121(k)に示すダイヤル錠は、図121(c)〜図121(j)に示すダイヤル錠とは異なり、係止部材は、まず、鍔付軸356の鍔部分を通され、係止部材の尾部は鍔部分で係止される。また、錠本体と鍔付軸の境界を、軸側面の位置で、錠本体に対する軸部材の挿抜方向とは異なる方向で横切る係止部材用通路が形成され、係止部材がその境界を横切る部分にまたがって存在している状態でダイヤルリング200に係止される。つまり、係止用軸側溝の一部が、錠本体に対する軸部材の挿抜方向とは異なる方向で形成され
ている。なお、係止用軸側溝は鍔付軸356を貫通していない。
ここで、図121(k)の様に、係止部材用通路が錠本体358と鍔付軸356の境界を、軸側面の位置で、錠本体358に対する鍔付軸356の挿抜方向とは異なる方向で横切り、その境界を横切る部分に係止部材が存在する場合には、本体側溝の有無に関わらず、鍔付軸356を錠本体358から引き抜くことができなくなる。
また、係止部材用通路が錠本体358と鍔付軸356の境界を、軸側面の位置で横切っていない場合でも、本体側溝が存在し、係止用軸側溝と本体側溝とで形成される孔の一部を、錠本体358に対する鍔付軸356の挿抜方向とは異なる方向に形成することによって、鍔付軸356の挿抜方向とは異なる方向に形成されている係止用軸側溝部分に存在する係止部材が、本体側溝にまたがって存在、または、鍔付軸356の挿抜方向とは異なる方向に形成されている係止用軸側溝部分より、軸部材の抜き出し側の係止用軸側溝部分に存在する係止部材が、本体側溝にまたがって存在することにより鍔付軸356を錠本体358から引き抜くことができなくなる。
つまり、図121(k)に示すダイヤル錠も、開錠時にのみ分解可能なダイヤル錠である。また、係止用軸側溝を含む通路の、錠本体358側の端部が湾曲していることにより、開錠のための部位の覗き見を防止することができる。
なお、上述の、係止部材用通路が錠本体と軸部材の境界を、軸側面の位置で、錠本体に対する軸部材の挿抜方向とは異なる方向で横切り、その境界を横切る部分に係止部材が存在することによる効果と、係止部材用通路が錠本体と軸部材の境界を、軸側面の位置で横切っていない場合でも、本体側溝が存在し、係止用軸側溝と本体側溝とで形成される孔の一部を、錠本体に対する軸部材の挿抜方向とは異なる方向に形成することによって、軸部材の挿抜方向とは異なる方向に形成されている係止用軸側溝部分に存在する係止部材が、本体側溝にまたがって存在、または、軸部材の挿抜方向とは異なる方向に形成されている係止用軸側溝部分より抜き出し側の係止用軸側溝部分に存在する係止部材が、本体側溝にまたがって存在することによる効果は、図121(c)〜図121(j)の各ダイヤル錠においても適用可能であり、長尺状の係止部材を有する他のダイヤル錠における、軸部材が挿入される孔や穴を有する部材全てにおいても適用可能である。
図121(l)に示すダイヤル錠は、図121(k)に示すダイヤル錠と同様の構造をしており、係止用軸側溝の一部が、錠本体358に対する鍔付軸356の挿抜方向とは異なる方向に形成されている。さらに、係止用軸側溝は鍔付軸356を貫通している。また、係止用軸側溝を含む通路の両端が湾曲している。
従って、図121(k)に示すダイヤル錠と同様に、開錠のための部位の覗き見防止効果とを有している。また、図121(k)のダイヤル錠と同じく、係止部材に緩みがある場合や、開錠時であっても、係止部材を、錠本体358と軸部材356の境界から抜き出さない限り、錠本体358と鍔付軸356と分離することはできない。
また、図121(k)および図121(l)の係止部材は、軸頭部側から挿入されているが、鍔付軸356の鍔側から挿入され、係止用軸側溝が軸頭部側で湾曲や屈曲しても、開錠時に限り分解可能なダイヤル錠となる。
また、図121(c)〜図121(l)は、図121(b)に示すダイヤル錠においての係止部材用通路のバリエーションを示す図であるが、図121(a)においても同様の
バリエーションが考えられ、開錠時に限り分解可能となる。
なお、図121(a)〜図121(l)に示す各ダイヤル錠において、3つのロック用ダイヤルリングを除くと、鍔付軸355と錠本体357、または鍔付軸356と錠本体358とで構成されているとした。しかしながら、軸のない鍔と、軸付の錠本体とで構成されていてもよい。例えば、係止部材の尾部を係止する部材を錠本体とすると、図121(k)および図121(l)のダイヤル錠は、軸付の錠本体と、その軸に取り付け可能な鍔または副部材等で構成されているということができる。
要するに、ロック用ダイヤルリングが軸の両端から抜け落ちないための部材が軸の両端にあり、その両端にある2つの部材の少なくとも一方が、開錠時にのみ取り外し可能な構造であればよい。この開錠時にのみ取り外し可能な構造は、上述の軸側溝の方向や、結合用通路の存在により実現可能である。
また、図121(a)〜図121(l)に示す各ダイヤル錠の構造において、開錠時にのみ分解可能なダイヤル錠とするために、結合用通路に換えて、もしくは、結合用通路に加えて、開錠時にのみ分解可能とする構造を備えても良い。
図122は、軸部材に備えられた鍔と、錠本体の壁とにより、ダイヤルリングの軸方向の移動を制限し、かつ、ネジ式に軸と錠本体とを結合する構造を有するダイヤル錠の複数の例を示す図である。
図122(a)に示すダイヤル錠は、図121(a)に示すダイヤル錠に対応し、図122(b)に示すダイヤル錠は、図121(b)に示すダイヤル錠に対応する。
図122(a)に示すダイヤル錠は、軸頭部にねじ山を有する鍔付軸355aと、3つのロック用ダイヤルリングと、鍔付軸355aのねじ山に対応する形状のねじ溝を有する錠本体357aとを備える。錠本体357aは鍔付軸355aが貫通する孔を有しておりこの孔の内面にねじ溝は存在している。これらの部材を組み合わせることで、図において矢印の右側に示すような構造のダイヤル錠となる。
図122(b)に示す各ダイヤル錠は、軸頭部にねじ山を有する鍔付軸356aと、3つのロック用ダイヤルリングと、鍔付軸356aのねじ山に対応する形状のねじ溝を有する錠本体358aとを備える。錠本体358aは鍔付軸356aが挿入される穴を有しておりこの穴の内面にねじ溝は存在している。これらの部材を組み合わせることで、図において矢印の右側に示すような構造のダイヤル錠となる。
図122(a)および図122(b)に示すダイヤル錠のそれぞれは、錠本体の左側の面が壁となり、ロック用ダイヤルリングは右方向へは移動できず、鍔付軸の鍔により、左方向へも移動できない。また、錠本体と鍔付軸とはネジ式に結合されており、錠本体と鍔付軸とを分離するためには、錠本体を回転させる必要がある。
なお、以下で、「錠本体を回転させる」という場合、鍔付軸に対して錠本体を回転させることであり、相対的には錠本体または鍔付軸のいずれか一方のみを回転させることと同じことである。
なお、図122(a)および図122(b)において、鍔付軸355aおよび鍔付軸356aが有する軸側溝等の他の構造についての図示は省略している。また、各図は開錠時にロック用ダイヤルリングの切欠部が存在する方向から見た場合のダイヤル錠の構造の概要を表している。また、図122(h)に示すダイヤル錠以外のダイヤル錠は、結合用通路を有していない。
図122(c)に示すダイヤル錠は、錠本体358aの係止部材取付溝または係止部材取付孔から出た係止部材が、鍔付軸356aの鍔部分から係止用軸側溝に挿入される。係止用軸側溝は、鍔付軸356aを貫通していない。この状態で係止部材が3つのロック用ダイヤルリングで係止された場合、係止部材の係止用凸部が本体側溝に存在するために、錠本体358aは回転させることはできず、錠本体358aと鍔付軸356aとを分離することができない。つまり、開錠時にのみ分解可能なダイヤル錠である。
図122(d)に示すダイヤル錠は、図122(c)に示すダイヤル錠と同様の構造をしているが、係止用軸側溝は、鍔付軸356aを貫通している。この状態で係止部材が3つのロック用ダイヤルリングで係止された場合、係止部材が、係止用軸側溝を含む通路上で錠本体358aを貫通しているため、錠本体358aは回転させることはできず、錠本体358aと鍔付軸356aとを分離することができない。つまり、開錠時にのみ分解可能なダイヤル錠である。
図122(e)に示すダイヤル錠は、錠本体358aの係止部材取付溝または係止部材取付孔から出た係止部材が、錠本体358aをさらに貫通し、係止用軸側溝に挿入されている。また、係止用軸側溝は鍔付軸356aを貫通していない。
このような形態であっても、係止部材が、係止用軸側溝を含む通路上で錠本体358aを貫通しているため、錠本体358aは回転させることはできず、錠本体358aと鍔付軸356aとを分離することができない。つまり、開錠時にのみ分解可能なダイヤル錠である。
図122(f)に示すダイヤル錠は、図122(e)に示すダイヤル錠と同様の構造をしているが、係止用軸側溝は、鍔付軸356aを貫通している。このような形態であっても、図121(e)に示すダイヤル錠と同じく、開錠時にのみ分解可能なダイヤル錠である。
図122(d)と図122(f)に示すダイヤル錠も、図121(d)と図122(h)の関係と同様に、係止部材取付溝または係止部材取付孔の構造を、その両端のどちらから係止部材を挿入しても、係止部材の取り付けを可能とすることにより、同一のダイヤル錠で図122(d)と図122(f)の異なる形態での施錠が可能となる。
また、図122(d)において係止部材を軸頭部側の錠本体358a側から挿入して施
錠すること、および、図122(f)において係止部材を鍔付軸356aの鍔側から挿入
して施錠することは容易である。
図122(g)に示すダイヤル錠は、図122(d)に示すダイヤル錠と同じく、錠本体358aの係止部材取付溝または係止部材取付孔から出た係止部材は、鍔付軸356の鍔部分から係止用軸側溝に挿入され、鍔付軸356と錠本体358aとを貫通している。
さらに、図122(g)に示すダイヤル錠は、係止用軸側溝を含む通路の両端が湾曲している。これにより、上述のように、この通路を介した開錠のための部位の覗き見を防止することができる。また、このような形態であっても、係止部材が、係止用軸側溝を含む通路上で錠本体358aを貫通しているため、錠本体358aは回転させることはできず、錠本体358aと鍔付軸356aとを分離することができない。つまり、開錠時にのみ分解可能なダイヤル錠である。
図122(h)に示すダイヤル錠は、図122(c)に示すダイヤル錠とよく似た通路を有しているが、図122(c)に示すダイヤル錠とは異なり、結合用通路を有している
。つまり、係止用軸側溝を含まず、かつ、鍔付軸356aと錠本体358aとを貫通する通路を有している。この、結合用通路に係止部材が存在することにより、錠本体358aは回転させることはできず、錠本体358aと鍔付軸356aとを分離することができない。つまり、開錠時にのみ分解可能なダイヤル錠である。
図122(i)および図122(j)に示すダイヤル錠は、図121(k)および図121(l)に示すダイヤル錠と同じく、係止部材は、まず、鍔部分を通され尾部が係止されている。
図122(i)に示すダイヤル錠において、鍔部分を通され尾部が係止されている係止部材は、錠本体358aを貫通し、係止用軸側溝に軸頭部側から挿入される。また、係止用軸側溝は、鍔付軸356aを貫通していない。
このような形態であっても、係止部材が、係止用軸側溝を含む通路上で錠本体358aを貫通しているため、錠本体358aは回転させることはできず、錠本体358aと鍔付軸356aとを分離することができない。つまり、開錠時にのみ分解可能なダイヤル錠である。
図122(j)に示すダイヤル錠は、図122(i)に示すダイヤル錠と同様の通路を有しており、さらに、係止用軸側溝が鍔付軸356aを貫通している。
このような形態であっても、係止部材が、係止用軸側溝を含む通路上で錠本体358aを貫通しているため、錠本体358aは回転させることはできず、錠本体358aと鍔付軸356aとを分離することができない。つまり、開錠時にのみ分解可能なダイヤル錠である。
また、図122(j)においては、係止部材が軸頭部側の錠本体から挿入されるとしたが、係止部材は軸頭部側の錠本体から挿入されずに、軸後部の鍔側から挿入される構造でも施錠時には分解可能な構造となる。
図122(k)に示すダイヤル錠は錠本体にネジ山を有する凸部を有し、軸部材にネジ溝を有する凹部が存在する構造である。
つまり、図122(b)では、錠本体にネジ溝を有する凹部が有り、軸の外周面にネジ山があり、軸自身がねじの凸部を形成していたが、図122(k)に示す錠本体358bの様に、錠本体にネジ山を有する凸部を有し、鍔付軸356bの様に、軸部材にネジ溝を有する凹部が存在する構造であっても、軸部材に錠本体のネジ山を有する凸部がねじ込まれれば、軸部材に備えられた鍔と、錠本体の壁とにより、ダイヤルリングの軸方向の移動を制限する構造のダイヤル錠にできる。
また、図122(c)〜図122(j)は、図122(b)に示すダイヤル錠においての係止部材用通路のバリエーションを示す図であるが、図122(a)および図122(k)においても同様のバリエーションが考えられ、開錠時に限り分解可能であり、施錠時には、錠本体と軸を分解不可能にすることが可能である。
また、ダイヤルリングの回転軸を別部材としては持たず、ネジ山がある凸部を有する鍔や副部材と、ネジ溝がある凹部を有する軸付の錠本体で構成されるダイヤル錠においても、図122(c)〜図122(j)と同様の係止部材用通路を形成することにより、施錠時には、錠本体と軸を分解不可能にすることが可能である。
なお、図122(a)〜図122(k)に示す各ダイヤル錠においても、図121(a)〜図121(l)に示すダイヤル錠と同様に、軸付の錠本体と、軸に取り付け可能な鍔または副部材等の部材とで構成されていてもよい。
このように、軸部材に備えられた鍔と、錠本体の壁とにより、ダイヤルリングの軸方向の移動を制限する構造のダイヤル錠であっても、錠本体と軸部材の境界を軸側面の位置で、係止部材用通路を錠本体に対する軸部材の挿抜方向とは異なる方向で横切らせたり、係止用軸側溝と本体側溝とで形成される孔の一部を錠本体に対する軸部材の挿抜方向とは異なる方向に形成したり、ダイヤル錠を構成する部材をネジ式に結合させることなどにより、開錠時にのみ分解が可能なダイヤル錠とすることができる。
なお、ダイヤル錠の施錠対象となる物品として、傘や書類などを挙げたが、施錠する対象はその他の物品でもよい。
例えば、外径が上下より細くなっている部位があるものには、施錠可能である。例えば、ギター・ゴルフクラブなどにも施錠でき、錠本体に図8に示したコイル状ワイヤ20を装着することで、固定物と連結できる。つまり、盗難されることを防止することができる。
また、コイル状ワイヤ20を長くすれば、例えば、ゴルフ用品販売店では、商品であるゴルフクラブを顧客が自由に手に取って見ることができる上、万引き等に対する防犯効果もある。また、ダイヤル錠1、又は図48(b)を用いて説明した錠本体を開けることなく開錠番号の変更が行なえるダイヤル錠2であれば、定期的に開錠番号の変更を行なうことが出来、防犯効果を向上させることができる。同様に、バンドやコイル状ワイヤの形状を工夫することで、例えば、車のハンドルとチェンジレバーやドアの取っ手などとを縛り付けることが可能となり、車の盗難防止に役立てることができる。
また、実施の形態1、2およびそれらの応用例、変形例のダイヤル錠およびそれらダイヤル錠を構成する部材については、他の使用形態、使用方法であってもよい。例えば、図8に示すワイヤ、図83、図84に示す補助具、図98に示す構造のストッパを有するバンド、および図100および図103に示すアダプタは、本発明の実施の形態に係るダイヤル錠のみならず、バンド式のシリンダ式錠、カード式錠など、他の構成を有する施錠装置とともに使用しても、ワイヤ、補助具、バンドおよびアダプタの有する機能、効果は失われない。
また、例えば、図85A(a)に示す、2つのダイヤル錠を用いて書籍等を施錠するための、ダイヤル錠の構造上の特徴および施錠方法、および図86〜図88に示す、バインダーを施錠するためのダイヤル錠の使用方法は、本発明の実施の形態に係るダイヤル錠のみならず、バンド式のシリンダ式錠、カード式錠など、他の構成を有する施錠装置においても適用が可能である。
また、例えば、図5に示す錠本体100のように、施錠対象物との接触面が円弧状であることにより、密着して施錠対象物を施錠できる効果なども、バンド式のシリンダ式錠、カード式錠など、他の構成を有する施錠装置においても有効である。
以上述べたように、本発明の施錠装置は、任意の位置でバンドを係止可能なバンド式ダイヤル錠の形態を利用し、開錠時に限り分解・組み立てが可能である。さらに、錠の構成部材の交換が可能である。また、これら構造上の特徴を利用・応用・アレンジすることにより、係止部の決まった場所でロックする従来から良く使用されるチェーン式ダイヤル錠・ワイヤ式ダイヤル錠・U字棒式ダイヤル錠などの施錠装置において、ダイヤルリングや
軸などを留めるためのリテーナやピンなどの専用部材を省略することが出来る。これら従来の施錠装置においても、部材を減らし、開錠時における分解・組み立てを簡略化し、製造コストを削減することにより、安価での提供が可能となる。
なお、ダイヤル錠1及びダイヤル錠2は、傘等に施錠する施錠装置として使用するだけでなく、他の用途で使用してもよい。
図6の説明の中で、ダイヤルリングに番号以外の記号や絵を付したダイヤルリングを供給することにより、使用者に開錠位置を覚え易いダイヤルリングを提供できるとした。このように、ダイヤルリングに番号以外の記号や絵を付すことにより、ダイヤル錠が別の用途で使用されてもよい。
例えば、アクセサリーやブレスレットとして使用することも可能である。番号の代わりにアルファベットや平仮名などを付したロック用ダイヤルリング200を供給することにより、自分や恋人などの名前や、名前のイニシャル等を開錠番号としたダイヤル錠を作成することができる。また、例えば、番号の変わりにアニメーションのキャラクターなどを付したロック用ダイヤルリング200を供給することにより、子供向けの玩具としても使用可能である。
また、錠本体の上面などに、例えば時計を備えることにより、普段は腕時計として使用し、傘等を施錠する際には、施錠装置として使用してもよい。
また、ダイヤル錠1及びダイヤル錠2は、3個のダイヤルリングを備え、3桁の開錠番号を有するとしていたが、ダイヤルリングの個数は2個または4個以上でもよい。例えば、図1に示すダイヤル錠1において、ロック用ダイヤルリング200がバンド400のバンド本体をロックする構造は、それぞれのロック用ダイヤルリング200において独立しており、4つ以上のロック用ダイヤルリング200を有するダイヤル錠1を作成することは可能である。
こうすることで、例えば、開錠番号となる番号の組み合わせ数を増加させることができ、盗難防止効果を向上させることができる。