JP2007077487A - アルミニウム合金発泡体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 エネルギ吸収部材として用いられるアルミニウム合金発泡体が、Zn:1.0〜20.0%、Ca:0.1〜5.0%、Ti:0.1〜5.0%、Mg:0.1〜5.0%を各々含有するアルミニウム合金を発泡させてなり、相対密度が0.1以上であり、粒径が0.5nm以上で、50nm以下の析出物粒子が体積分率で1.0%以上分散し、かつXAFS解析法によるZnのK吸収端XANESスペクトルにおいて、規格化吸収量が最大値を示すX線の光子エネルギが、9.660keV以上、9.680keV以下の範囲であるとともに、9.67keV近傍において最大値を示す組織とする。
【選択図】 図1
Description
本発明では、密度を上げずに(軽量化効果を損なわずに)、エネルギ吸収量を向上できる。しかし、そうは言っても、アルミニウム合金発泡体に必要なエネルギ吸収量を得るためには、発泡体がある程度の相対密度を有することが前提となる。
アルミニウム合金発泡体の前記エネルギ吸収量を得るためには、アルミニウム合金発泡体の発泡径(発泡あるいは気泡の粒径)は微細なほど好ましい。本発明における上記微細な析出物粒子とクラスターとを合わせて有する組織としても、平均発泡径(発泡の平均粒径)が粗大化した場合、アルミニウム合金発泡体の6.0kJ/kg以上の前記エネルギ吸収量が得られない可能性がある。
本発明では、密度を上げずに、エネルギ吸収量を向上させるために、先ず、アルミニウム合金発泡体の組織を、粒径が0.5nm以上で、50nm以下の析出物粒子が体積分率で1.0%以上分散した組織とする。
本発明では、密度を上げずに、エネルギ吸収量を向上させるために、更に、上記微細析出物規定に加えて、アルミニウム合金発泡体の組織を、XAFS解析法によるZnのK吸収端XANESスペクトルにおいて、規格化吸収量が最大値を示すX線の光子エネルギを上記特定の範囲とした組織とする。
ただ、これら微細なクラスターは、ナノレベル以下の微細さであり、SEM、TEMなどを含む通常の組織観察手段では、直接、その存在を検出できない。これに対して、本発明では、XAFS解析法によるZnのK吸収端XANESスペクトルにおける、規格化吸収量が最大値を示すX線の光子エネルギの波形の特徴によって、間接的ではあるが、その存在を検出した。
XAFS解析法による材料の構造解析の原理を以下に説明する。X線の光子エネルギを増加させながら、材料の吸収率を測定すると、X線の光子エネルギの増加に対応して減少する。しかし、材料に特定なあるX線の光子エネルギ(X線吸収端)においてその吸収率が急激に増加するX線の光子エネルギが存在する。この際、X線の吸収によって発生した光電子の一部が、複数の原子による散乱と干渉によって、X線の吸収量に対して構造情報として反映される。したがって、材料のX線の吸収量をモニタすれば、材料の原子構造乃至組織中のクラスターに関する情報が得られる。
このような吸収端の光子エネルギで現れる微細構造を、XAFSの中でも、X線吸収端近傍微細構造(XANES:X-ray Absorption Near Edge Structure)と言い、この微細構造のX線吸収スペクトルをXANESスペクトルと言う。そして、蛍光X線収量法によるXAFS測定では、このようなZn原子の吸収端のXANESスペクトルを選択的に測定することができる。
図1に、アルミニウム合金発泡体のXAFS解析法によるZnのK吸収端XANESスペクトルにおけるX線光子エネルギの(吸収)スペクトルを示す。図1において、Aが発明例(後述する実施例表2における発明例1)、Bが発明例(後述する実施例表2における発明例2)の実測されたX線光子エネルギのスペクトルである。
(財)高輝度光科学研究センター、大型シンクロトロン放射光実験施設SPring−8の産業用専用ビームライン建設利用共同体のサンビームBL16B2のXAFS実験装置にて、透過法による測定を行った。2結晶分光器にはSi( 111) 結晶を採用し、常温でZnのK吸収端測定を行った。
アルミニウム合金発泡体の、エネルギ吸収部材として必要強度やエネルギ吸収能などの特性を満たすとともに、発泡の均一性にも関わる、発泡用アルミニウム合金組成を以下に説明する。
Znは、Zn単体で析出するほか、Mgと共存して、上記析出物粒子の主体であるZn−Mg化合物を形成する。また、クラスター形成による強度向上にも有効な元素でもある。更に、凝固収縮する作用があり、セル壁の一部に膜厚の薄い部分を形成させ、圧縮変形能を高める作用がある。これらの作用を発揮させるためには、1.0%以上の含有が必要である。しかし、20.0%を超えて過度に含有すると、粗大なZn−Mg化合物を形成し、却って、エネルギ吸収量を低下させる。また、発泡アルミニウムの気泡粒径の安定化を阻害し、気泡が粗くなってしまい、圧縮強度を低下させる。従って、Znの含有量は1.0〜20.0%の範囲とする。
Mgは、Znと共存して、上記析出物粒子の主体であるZn−Mg化合物を形成する。また、クラスター形成による強度向上に有効な元素であり、更に、Znと共同して発泡アルミニウムの製造時に、溶湯の粘性を増加させ、かつ気泡を安定化させて、発泡体を均質にする作用を有する。その効果を得るためには、Mgを少なくとも0.1%以上含有する必要がある。一方、5.0%を超えて過度に含有すると、粗大なZn−Mg化合物を形成し、却って、エネルギ吸収量を低下させる。また、溶湯の粘性を過度に高め、溶湯の流動性を著しく低下させ、発泡剤の分散が困難となり、却って、発泡の微細化、均一性が阻害され、圧縮強度を低下させる。したがって、Mg含有量は0.1〜5.0%の範囲とする。
Caは、発泡アルミニウムの製造時におけるアルミニウム合金溶湯の粘性を増加させ、かつ気泡を安定化させて、発泡体を均質にするとともに、発泡の微細化、均一性を達成するための、発泡作用を有する。その効果を得るためには、少なくとも0.1%以上の含有が必要である。一方、5.0%を超えて過度に含有すると、溶湯の粘性を過度に高め、溶湯の流動性を著しく低下させ、発泡剤の分散が困難となり、却って、発泡の微細化、均一性が阻害され、圧縮強度を低下させる。従って、Caの含有量は0.1〜5.0%の範囲とする。
Tiは、発泡アルミニウムの強度向上に有効な元素である。その効果を引き出すためには、少なくとも0.1%以上の含有が必要である。一方、5.0%を超えて過度に含有すると、溶湯の流動性を低下させ、晶出することにより、アルミニウムを脆くする。したがって、Tiの含有量は0.1〜5.0%の範囲とする。
次に、本発明発泡アルミニウムを製造するための、好ましい製造条件について以下に説明する。本発明では、発泡アルミニウムの製造工程自体は、従来と同様である。
溶体化処理は400℃以上の温度とする。この温度が400℃未満と低過ぎると、溶体化処理効果が無く、溶体化処理をしない場合と同様となり、アルミニウム合金発泡体組織に、微細なクラスターを存在させることができない。このため、後述する熱処理を行なわなければ、微細な析出物粒子も存在させることができずに、従来のアルミニウム合金発泡体と同じとなる。したがって、XAFS解析法によるZnのK吸収端XANESスペクトルにおいて、規格化吸収量が最大値を示すX線の光子エネルギが、9.660keV以上、9.680keV以下の範囲にはならない。
溶体化処理および水冷後に、100℃以上の温度で保持する熱処理(時効処理)を行なう。保持時間は、この温度範囲で3時間以上、100時間程度以下程度保持する。熱処理温度の上限は150℃とする。
上記試料の平均発泡径を前記した断面測定法により測定し、これら試料の相対密度も前記した方法で求めた。そして、これら試料の発泡セル壁の硬さも、マイクロビッカース硬度計にて、50gの荷重を加えて5箇所行い、それらの平均値として各々求めた。
試料の前処理として、上記試料の発泡セルの一部から、Φ3mmの薄膜試料を切り出し、この試料を、硝酸による化学研磨および機械研磨により200μmまで薄くした後、硝酸アルコール液による電解研磨による更なる薄膜化を行った。これを明視野法によるTEM観察で、前記した方法で、粒径が0.5nm以上で、50nm以下の析出物粒子の体積分率を測定した。測定部位は5箇所とし、体積分率はその平均とした。なお、これら析出物粒子の組成を前記した方法で確認したところ、主体は、Zn−Mg化合物とZn単体であった。
上記試料を用いて、前記したXAFS実験装置にて、透過法により、ZnのK吸収端XANESスペクトル測定と、前記した方法にて解析を行った。そして、この規格化吸収量が最大値を示すX線の光子エネルギが、9.660keV以上、9.680keV以下の範囲であるとともに、9.67keV近傍において最大値を示すものを○、最大値を示すX線の光子エネルギが上記範囲内ではあるが、9.67keV近傍において最大値を示さないものを△、最大値を示すX線の光子エネルギが範囲外であるものを×として評価した。
前記アルミニウム合金発泡体から、機械加工にて高さ50mm×幅50mm×長さ50mmを切り出し、インストロン社製万能圧縮試験機を用いて、発泡体の長手方向に静的に圧縮試験した際の50%エネルギ吸収量を求めた。これらの結果も表2に示す。
Claims (3)
- エネルギ吸収部材として用いられるアルミニウム合金発泡体であって、質量%で、Zn:1.0〜20.0%、Ca:0.1〜5.0%、Ti:0.1〜5.0%、Mg:0.1〜5.0%を各々含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を発泡させてなり、相対密度が0.1以上であり、粒径が0.5nm以上で、50nm以下の析出物粒子が体積分率で1.0%以上分散し、かつXAFS解析法によるZnのK吸収端XANESスペクトルにおいて、規格化吸収量が最大値を示すX線の光子エネルギが、9.660keV以上、9.680keV以下の範囲であるとともに、9.67keV近傍において最大値を示す組織であることを特徴とするアルミニウム合金発泡体。
- 前記アルミニウム合金発泡体が単体としてエネルギ吸収部材に用いられる請求項1に記載のアルミニウム合金発泡体。
- 請求項1乃至2のいずれかのアルミニウム合金発泡体を製造する方法であって、アルミニウム合金溶湯に対して、水素化チタンを添加して発泡させて、質量%で、Zn:1.0〜20.0%、Ca:0.1〜5.0%、Ti:0.1〜5.0%、Mg:0.1〜5.0%を各々含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金発泡体を得、このアルミニウム合金発泡体を400℃以上の温度で溶体化処理後に水冷し、その後100〜150℃の温度範囲で熱処理を行なうことを特徴とするアルミニウム合金発泡体の製造方法。
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