JP2007076936A - 脆性材料の割断方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 レーザビーム照射による加熱と冷却液噴霧による冷却によって惹起される熱応力に起因して、表面層にスクライブ面を発生させたガラスなどの脆性材料において、高い位置精度やカレット発生のないクリーンな状態を維持したまま、材料の全厚みにわたってブレークを行うこと。
【解決手段】 ブレークを同予定線にわたって同時に行うのでなく、ブレーク開始点においては印加応力を材料の破壊靭性応力を超えた値にしてブレークを開始させる。その後は、ブレークである亀裂発生先端における応力拡大値が同靭性応力を超えるように応力印加を続行し、ブレークを進行させる。こうした方法によれば、第一にブレークに所要の応力値を低下できるし、第二にブレーク現象そのものを安定化することができる。
【選択図】 図8
【解決手段】 ブレークを同予定線にわたって同時に行うのでなく、ブレーク開始点においては印加応力を材料の破壊靭性応力を超えた値にしてブレークを開始させる。その後は、ブレークである亀裂発生先端における応力拡大値が同靭性応力を超えるように応力印加を続行し、ブレークを進行させる。こうした方法によれば、第一にブレークに所要の応力値を低下できるし、第二にブレーク現象そのものを安定化することができる。
【選択図】 図8
Description
本発明は脆性材料、なかんずくガラスなどの脆性材料の割断方法及び同用装置に関する。
本出願では特にガラスを対象とした説明を行っているが、ガラスの他にも石英、セラミック、半導体などの脆性材料一般に適用が可能である。
本出願では特にガラスを対象とした説明を行っているが、ガラスの他にも石英、セラミック、半導体などの脆性材料一般に適用が可能である。
脆性材料は、従来はダイアモンドチップなどの超硬バイトを使用した機械的方法で切断してきた。ガラスに対するこの方法の適用は、過去1世紀以上の長期間にわたって使用されてきた方法でもある。
ところがこうした機械的方法には、次に述べるような欠点が存在する。第一は、切断時にカレットと呼ばれる小破片が発生し、ワーク表面を汚すことである。第二は、切断面付近にマイクロクラックが発生し、それを起点としてワークが割れる危険があることである。第三は、最小でも数百ミクロン程度の切り代が存在し、ワークサイズが際限なく微小化していく現在、この切り代の存在が無視できなくなることである。この他にも、加工速度の限界、消耗品である工具コストなど、産業上無視できない欠点がある。
窓ガラスの切断などは従来技術で問題ないが、液晶表示器やプラズマ表示器などに使用するファイン・ガラス切断の場合、マイクロクラック対策のために切断面を研磨し、その後洗浄を行うなどの後工程が必要である。
それに対して、レーザ割断には次に述べるような特徴がある。第一に、質量損失がゼロ(カレット発生なし)で、洗浄などの後工程が不要である。第二に、割断面付近にマイクロクラックなどの破壊欠陥が発生せず高強度断面が得られるので、研磨などの後工程が不要である。第三に、面粗さが1μm以下の鏡面が得られる。第四に、製品外形精度が+−25μm以下である。第五に、ガラス板厚0.2mmまでの薄さに使用でき、今後の液晶TV用に使用できる。
ガラスに高エネルギー密度のCO2レーザビームを照射すると、一般的には照射スポットにおいてレーザビームの吸収が起こり、急激な加熱の結果放射状にクラックが発生してしまい、進行方向のみに切断を進行させることは出来ない。しかしながら、レーザビームのエネルギー密度をこうしたクラックを発生させるものより十分低いものに設定すると、ガ
ラスは加熱されるだけで、溶融もクラック発生も起こらない。この時ガラスは熱膨張しようとするが、局所加熱なので膨張ができず、照射点を中心としてその周辺には圧縮応力が発生する。この局所加熱源を割断したい方向に移動させるのである。加熱後に冷却液を噴霧することによって冷却を行うと、今度は逆に引っ張り張力が発生する。図1に示すようにレーザビームの断面形状を適当なものに成形すると、光の移動方向と直交する方向のみに、引っ張り張力が発生する。同図において、1は加熱レーザビーム、2はガラス内部の圧縮応力、3は冷却液、4はガラス内部の引っ張り張力である。この引っ張り張力の作用で亀裂5が生じる。図2に示すガラス板6において、始点に機械的方法によるトリガークラック8をつけておくと、亀裂5はこのトリガークラックから発生し、レーザビームの移動方向7に沿って進行させることができる。こうした現象が理想的に発生するためには、照射レーザビームのエネルギー分布が、こうした張力を生じるために最適である必要がある。種々のガラスの割断において、こうした最適分布が研究されている。図1および図2に示す加熱レーザビーム1は、この最適化がなされたものである。
ラスは加熱されるだけで、溶融もクラック発生も起こらない。この時ガラスは熱膨張しようとするが、局所加熱なので膨張ができず、照射点を中心としてその周辺には圧縮応力が発生する。この局所加熱源を割断したい方向に移動させるのである。加熱後に冷却液を噴霧することによって冷却を行うと、今度は逆に引っ張り張力が発生する。図1に示すようにレーザビームの断面形状を適当なものに成形すると、光の移動方向と直交する方向のみに、引っ張り張力が発生する。同図において、1は加熱レーザビーム、2はガラス内部の圧縮応力、3は冷却液、4はガラス内部の引っ張り張力である。この引っ張り張力の作用で亀裂5が生じる。図2に示すガラス板6において、始点に機械的方法によるトリガークラック8をつけておくと、亀裂5はこのトリガークラックから発生し、レーザビームの移動方向7に沿って進行させることができる。こうした現象が理想的に発生するためには、照射レーザビームのエネルギー分布が、こうした張力を生じるために最適である必要がある。種々のガラスの割断において、こうした最適分布が研究されている。図1および図2に示す加熱レーザビーム1は、この最適化がなされたものである。
このガラス割断へのレーザ応用は、これから需要が急増するファイン・ガラス全般の加工において、必要不可欠のものであるといえる。
CO2レーザビーム照射によるガラスの熱応力割断においては、図3に示すようにCO2レーザビームはガラス表面層だけで吸収され、ガラスの全厚さにわたって透過しない。レーザによる亀裂(レーザスクライブと称する)の深さは、通常100μm程度である。同図において、9がレーザスクライブ面である。同面をこれより深くするためには、深さ方向への熱伝導によって深部における温度変化を発生させねばならない。この場合加工速度は著しく減少するので、通常は行わない。図4に示す機械的スクライブ面も、通常は同程度の深さである。さてガラスは脆性が強いので、このスクライブ線にあわせて機械的に割断することが容易である。このプロセスをブレークと称する。
従来は、機械スクライブとブレークの組み合わせでガラス割断を行っている。機械スクライブの場合、図4に示すようにスクライブ線付近にはマイクロクラックが多量存在するので、ブレークは比較的容易である。ただし同図12に示すように、機械スクライブ後のブレーク面は必ずしもガラス表面に直交する一平面を構成しない。機械スクライブの場合
には、ブレーク後に割断面を研磨洗浄するので、ブレーク自体には高品質は要求されないのである。
には、ブレーク後に割断面を研磨洗浄するので、ブレーク自体には高品質は要求されないのである。
ところが、レーザスクライブの場合、スクライブ面付近にマイクロクラックが存在しないので、同一のスクライブ深さに対してブレークは、より困難になる。また、ブレークが最終工程でありその後に研磨洗浄を行わないので、ブレーク面の位置精度、角度精度、清浄さが要求される。カレットが付着していることも許されない。このために、機械スクライブ後のブレーク技術として開発された従来の方法は、レーザスクライブの場合使用できない。本発明は、レーザスクライブに併用できる最適のブレーク技術に関する。これらの条件が満たされると、レーザスクライブ後のブレーク面は図3の10に示すようにガラス表面に直交する一平面になり、理想的である。
ガラスのような脆性材料に亀裂発生後のブレークを安定に発生させる応力印加法として、図5に示すダブルトーション法と称する荷重負荷法がある。これは、ガラス板6をスクライブ面9が拡がる方向に曲げる方法で、できるだけ小さな荷重でブレークを行わせる方法である。スクライブ面から離れた位置での上面から下向きの印加応力13および131を、またスクライブ面近傍の下面から上向きの印加応力14および141を加える。本発明も基本的にはこの原理を利用している。
本発明によれば、レーザスクライブとブレークの両工程からなるガラス割断を常に最適条件下で行うことができる。レーザによるガラス割断は、多くのすばらしい技術上の利点がありながら、いまだに過去1世紀にわたって使用されてきたダイアモンドカッター方式を置換できないでいる。その主たる原因は、ブレークが容易にできないことであった。そのために、実際の生産現場で使用されるには至っていなかった。
本発明は、こうした事態の解決を可能にしている。その直接の効果として、次に挙げるものがある。
1)割断位置精度が高い。
2)割断面が鏡面で、面粗さが良好である。
3)割断面傾きが高精度である。
4)割断面にカレットの付着がなく、清浄である。
5)スクライブ、ブレークともに自動化ができる。
6)スクライブ、ブレークともに高速度で行える。
7)研磨、洗浄などの後工程が省略できる。
1)割断位置精度が高い。
2)割断面が鏡面で、面粗さが良好である。
3)割断面傾きが高精度である。
4)割断面にカレットの付着がなく、清浄である。
5)スクライブ、ブレークともに自動化ができる。
6)スクライブ、ブレークともに高速度で行える。
7)研磨、洗浄などの後工程が省略できる。
このようにガラス割断が、ダイアモンドカッター使用のような従来の機械的方法に比較して、著しく進歩することになる。レーザを用いたガラス割断が普及すれば、加工速度、加工品質、経済性、難易度の克服などにおいて、その効果にははかり知れないものがある。
ここではテレビ、携帯電話、パーソナルコンピュータ、カーナビなどに用いられるフラットパネルディスプレイ用ガラスの割断を想定して最良の形態を説明する。微細ワークの場合や、割断チップ数が極めて多数の場合など、異なったケースにおいては最良の形態が変化するが、本発明技術の本質は変わらない。
また、レーザスクライブだけでなく、従来方法である機械的スクライブを行ったワークに対しても、十分実用性を持つものである。
材料に引っ張り応力を印加してブレークするためには、印加応力は同材料の破壊靭性を超えたものでなければならない。しかしながら、一旦ブレークが開始すると材料破壊工学の教えるところにより、亀裂先端では印加応力が拡大される。したがって、ブレークを全長にわたって同時に行うのでなく、亀裂を徐々に進行させることで行わせることにより、第一にブレークに必要とされる応力値が低下するし、第二にブレークがすでに存在するスクライブ面に沿って誘導されるという現象が発生する。本発明では、こうした原理を用いてブレーク予定線であるスクライブ面に沿ってブレークを安定に行うのである。
図6に、本発明の第一の実施例を示す。ワーク支持台15の上に、レーザスクライブを行ったガラス板6を、スクライブ面9が下側に来るように設置する。ただし、ワーク支持台表面とガラス板下面の間には、スペーサ16,161を設置する。両スペーサ間の間隔は、ブレーク開始点で広く、同終了点に向かって徐々に狭くなっている。
ワーク支持台の表裏面間には、複数の排気孔17、171、172、ーーー、177が設けられており、裏面から排気するとガラス板は下方にひきつけられ、ガラス板は上側にそるように変形する。その結果スクライブ面9が広がる方向に引っ張られるので、ガラスは同面に沿ってブレークされる。
このブレークは、ブレーク予定線に沿って同時に発生するのではない。ブレーク開始点でスペーサ間隔が最大であるので、「てこの原理」によってスクライブ面に印加される応力はブレーク予定線上同位置で最大であり、そこで最初にブレークが発生し、同ブレークは徐々にガラス板の他端に向かって進行する。前記した理由により、この場合同時ブレークに比較して、所要応力も小さくてすみ、動作も安定である。
図7に、本発明の第二の実施例を示す。図6の実施例との違いはこの場合ガラス板のスクライブ面9が上側に位置し、排気力によるガラスの変形が下側にそることである。この場合もスクライブ面9は広がる方向に引っ張られるのでガラス板は同面に沿ってブレークされる。スペーサは前記の場合と異なりスペーサ面真下の1枚だけであるが、この場合もブレーク開始点で印加応力が最大になるようスペーサ幅が最小であって、ガラス他端に向かって同幅が拡大する。その機能は前記したものに等しい。
図8に、本発明の第三の実施例を示す。この場合は、図6に示す第一の実施例と同様の機構において、軟らかいシート19をガラス板上に掛けてある。排気を開始すると同時に、同シートはシート下側の体積が最小になるように変形し、ガラス板、スペーサ、ワーク支持台などに密着する。こうして排気時の空気漏れを防止し、排気効果を改善する。前記したガラス板のブレークは、さらに改善した状態で実現できる。
図9に、本発明の第四の実施例を示す。この場合は、図7に示す第二の実施例と同様の機構に、軟らかいシート19を併用する方式であってその効果は前記したものに等しい。
以上説明したのは本発明の機能を実現する若干の例であって、本発明の精神はその他の多くの方法で実現可能であることは言をまたない。
液晶ディスプレィ、プラズマディスプレィなどのフラットパネルデスプレィ、モバイルやカーナビ用表示器、光学装置用IRフィルターなどに用いる平面ガラスの切断が、現在はダイアモンドカッターで行われており、切断後の洗浄工程の必要性や、マイクロクラックの存在などの問題を呈している。レーザ割断で、こうした問題を解決することができる。ICチップカバーガラスなど微小チップの加工にも、本発明は応用できる。大型ワークの場合よりも切断長が大きいので、本発明の効果は大きい。
このように、ガラス割断を改善するレーザ技術の出現は、現代社会に要求されている種々の課題への解決である。
1 加熱レーザビーム
2 ガラス内部の圧縮応力
3 冷却液
4 ガラス内部の引っ張り張力
5 ガラスに生じる割断亀裂
6 ガラス板
7 レーザビームの移動方向
8 トリガークラック
9 レーザスクライブ面
10 レーザスクライブ後のブレーク面
11 機械スクライブ面
12 機械スクライブ後のブレーク面
13 下向きの印加応力
131 同
14 上向きの印加応力
141 同
15 ワーク支持台
16 スペーサ
161 同
17 排気孔
171 同
172 同
173 同
174 同
175 同
176 同
177 同
18 別種のスペーサ
19 軟らかいシート
2 ガラス内部の圧縮応力
3 冷却液
4 ガラス内部の引っ張り張力
5 ガラスに生じる割断亀裂
6 ガラス板
7 レーザビームの移動方向
8 トリガークラック
9 レーザスクライブ面
10 レーザスクライブ後のブレーク面
11 機械スクライブ面
12 機械スクライブ後のブレーク面
13 下向きの印加応力
131 同
14 上向きの印加応力
141 同
15 ワーク支持台
16 スペーサ
161 同
17 排気孔
171 同
172 同
173 同
174 同
175 同
176 同
177 同
18 別種のスペーサ
19 軟らかいシート
Claims (6)
- 表面に傷を形成したガラス、石英、セラミック、半導体などの脆性材料において、傷の一端に材料の破壊靭性応力を超えた応力印加を行い亀裂を発生させ、その後は同亀裂先端における応力拡大値が同靭性応力を超えるように応力を印加しながら、亀裂発生を徐々に進行させることを特徴とする脆性材料の割断方法ならびに装置。
- 請求項1において、レーザスクライブによって傷を形成させたもの。
- 請求項1において、機械的方法によって傷を形成させたもの。
- 請求項1において、材料に傷の両側に設置した支点間領域において、真空力その他の力を傷の存在方向に垂直に印加し、傷を広げることによって割断を行う機構において、割断開始点において支点間距離が最大で、割断方向に向かって同距離が減少するもの。
- 請求項1において、材料に傷の下部に設置した支点両側において、真空力その他の力を傷の存在の反対方向に垂直に印加し、傷を広げることによって割断を行う機構において、割断開始点において支点幅が最小で、割断方向に向かって同幅が増大するもの。
- 請求項4および5において、材料を軟らかいシートで覆い、排気時の気密性を増大させたもの。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005264725A JP2007076936A (ja) | 2005-09-13 | 2005-09-13 | 脆性材料の割断方法及び装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005264725A JP2007076936A (ja) | 2005-09-13 | 2005-09-13 | 脆性材料の割断方法及び装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2007076936A true JP2007076936A (ja) | 2007-03-29 |
Family
ID=37937607
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005264725A Pending JP2007076936A (ja) | 2005-09-13 | 2005-09-13 | 脆性材料の割断方法及び装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2007076936A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009242184A (ja) * | 2008-03-31 | 2009-10-22 | Nippon Electric Glass Co Ltd | 脆性板状物の切断方法及び切断装置 |
CN111470764A (zh) * | 2020-04-11 | 2020-07-31 | 东莞市裕莱机械有限公司 | 平板玻璃开料喷涂一体机 |
-
2005
- 2005-09-13 JP JP2005264725A patent/JP2007076936A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009242184A (ja) * | 2008-03-31 | 2009-10-22 | Nippon Electric Glass Co Ltd | 脆性板状物の切断方法及び切断装置 |
CN111470764A (zh) * | 2020-04-11 | 2020-07-31 | 东莞市裕莱机械有限公司 | 平板玻璃开料喷涂一体机 |
CN111470764B (zh) * | 2020-04-11 | 2022-03-04 | 东莞市裕莱机械有限公司 | 平板玻璃开料喷涂一体机 |
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