JP2007073390A - 異方性導電膜およびその製造方法 - Google Patents

異方性導電膜およびその製造方法 Download PDF

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秀之 佐藤
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Abstract

【課題】クッション性、膜厚方向の導通信頼性に優れた異方性導電膜およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】膜厚方向に貫通した多数の孔部を有し、孔部はハニカム状に配列されるとともに孔部の内壁面は外側方向に湾曲されている、高分子よりなる多孔質膜12と、孔部の内壁面に形成された無電解めっき層14と、孔部内に充填された電解めっき部16とを備えた異方性導電膜とする。上記電解めっき部16は、少なくとも一方の孔部開口端面よりも内側に凹んだ凹状部16aを有していると良い。この異方性導電膜は、上記多孔質膜12の一方表面および孔部の内壁面に無電解めっき層14を形成した後、孔部内に電解めっき部16を充填するとともに、多孔質膜12の一方表面に形成された無電解めっき層上に電解めっき部と連続する電解めっき層を形成後、多孔質膜の一方表面上にある無電解めっき層および電解めっき層を除去することにより得ることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、異方性導電膜およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、半導体素子などの電子部品の機能検査や感圧センサなどに好適に用いることが可能な異方性導電膜およびその製造方法に関するものである。
従来、膜厚方向に導電性を示し、かつ、膜面方向に絶縁性を示す異方性導電膜(Anisotropic Conductive Film:ACF)が知られている。この種のACFは、例えば、半導体素子などの電子部品の機能検査や感圧センサなどに用いられている。
例えば、非特許文献1には、図9に示すように、樹脂膜100の厚さ方向に銅柱102を貫通して配列させたACF104が記載されている。このACF104は、電子部品106とテスト基板108との間に挟み込まれた後、厚さ方向に加圧されることにより、導通テストなどの各種検査に供される。
また、例えば、非特許文献2には、図10(a)に示すように、ゴムシート110の厚さ方向に金属粒子112を配列させたACF114が記載されている。このACF114は、図10(b)に示すように、厚さ方向に加圧されると、金属粒子112同士が接触して異方導電性を示すものであり、感圧センサに用いられる。
一方、非特許文献3および非特許文献4には、ACFではないが、ハニカム状に配列した孔部を有する高分子製の多孔質膜が記載されている。
山口美穂,浅井文輝,「検査用異方導電性フィルム Cupil−T」,日東技報,2002年5月,第40巻,第1号,p.17−p.20 "コードスイッチ(加圧導電ゴム製感圧センサ)",[online],株式会社ブリヂストン,[平成17年8月18日検索],インターネット<http://www.bridgestone-dp.jp/dp/ip/switch/code_sw/code_sw02.html> 下村政嗣,「高分子材料の自己組織化によるナノ・メゾホール構造の形成と機能化」,機能材料,株式会社シーエムシー出版,2003年10月,vol.23,No.10,p.18−p.26 下村政嗣,「自己組織化によるパターン形成とマイクロ加工技術への展開」,まてりあ,社団法人日本金属学会,2003年,第42巻,第6号,p.457−p.460
通常、電子部品の検査や感圧センサなどの用途に用いられるACFは、繰り返し使用されることから、それに耐え得るクッション性が要求される。
しかしながら、非特許文献1のACFは、膜の表裏面から銅柱が多数突出した構造を有しているので、膜厚方向の導通は確保しやすいが、その構造上、クッション性を確保するのは難しい。
また、非特許文献2のACFは、シート材としてゴムを用いているので、その材料面上、クッション性を確保しやすいと考えられる。ところが、このACFは、金属粒子同士が点接触することにより膜厚方向の導通を得ている。そのため、膜厚方向の導通信頼性が低い。
さらに、このACFのように、孔部内に金属粒子を整列して配置することは困難である。また、上記問題点は、孔部が狭ピッチ化されるほど、膜厚が薄くなるほど顕著になる。
一方、非特許文献3および非特許文献4には、ハニカム状に孔部が配列した高分子製の多孔質膜を、細胞を培養する基材などに用いる点記載されている。
しかしながら、これら文献には、この多孔質膜を異方性導電膜の材料に用いる点については、全く開示も示唆もなされていない。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、クッション性、膜厚方向の導通信頼性に優れた異方性導電膜およびその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る異方性導電膜は、膜厚方向に貫通した多数の孔部を有し、上記孔部はハニカム状に配列されるとともに上記孔部の内壁面は外側方向に湾曲されている、高分子よりなる多孔質膜と、上記孔部の内壁面に形成された無電解めっき層と、上記孔部内に充填された電解めっき部とを備えたことを要旨とする。
この際、上記電解めっき部は、少なくとも一方の孔部開口端面よりも内側に凹んだ凹状部を有していると良い。
また、上記無電解めっき層を構成する金属と、上記電解めっき部を構成する金属とは、エッチングレートがほぼ同一であると良い。
また、上記多孔質膜は、疎水性および揮発性を有する有機溶媒と、この有機溶媒に可溶な高分子と、両親媒性物質とを少なくとも含む高分子溶液、または、疎水性および揮発性を有する有機溶媒と、両親媒性高分子とを少なくとも含む高分子溶液をキャストした支持体を相対湿度50%以上の雰囲気下に存在させることにより形成されうるものであると良い。
一方、本発明に係る異方性導電膜の製造方法は、膜厚方向に貫通した多数の孔部を有し、上記孔部はハニカム状に配列されるとともに上記孔部の内壁面は外側方向に湾曲されている、高分子よりなる多孔質を形成する工程と、上記多孔質膜の一方表面および上記孔部の内壁面に無電解めっき層を形成する工程と、上記内壁面に無電解めっき層が形成された孔部内に電解めっき部を充填するとともに、上記多孔質膜の一方表面に形成された無電解めっき層上に、上記電解めっき部と連続する電解めっき層を形成する工程と、上記多孔質膜の一方表面上にある無電解めっき層および電解めっき層を除去する工程とを有することを要旨とする。
この際、上記無電解めっき層および電解めっき層の除去は、研磨および/またはエッチングにより行うと良い。
また、上記多孔質膜の形成は、疎水性および揮発性を有する有機溶媒と、この有機溶媒に可溶な高分子と、両親媒性物質とを少なくとも含む高分子溶液、または、疎水性および揮発性を有する有機溶媒と、両親媒性高分子とを少なくとも含む高分子溶液をキャストした支持体を相対湿度50%以上の雰囲気下に存在させることによると良い。
上記異方性導電膜によれば、その内壁面が外側方向に湾曲した孔部を多数有する多孔質膜を用いているので、その構造上、膜厚方向のクッション性に優れる。また、孔部の内壁面に形成された無電解めっき層のみならず、孔部の内部にも電解めっき部が充填されているので、膜厚方向の導通信頼性に優れる。
また、この異方性導電膜は、膜厚方向に貫通する孔部を形成するのに、レーザーなどの高価な孔開け手法を必要としない。加えて、膜厚方向の導通を得るのに、安価なめっき手法を用いている。そのため、従来に比較して、製造コストを安価にすることができる。
この際、上記電解めっき部が、少なくとも一方の孔部開口端面よりも内側に凹んだ凹状部を有している場合には、膜厚方向のクッション性を損ないにくい上、膜厚方向に加圧された場合に導通が得られる。そのため、検査用途、感圧センサ用途などに利用しやすくなる。
また、上記無電解めっき層を構成する金属および電解めっき部を構成する金属のエッチングレートがほぼ同一である場合には、生産性に優れる。
また、上記高分子溶液をキャストした支持体を相対湿度50%以上の雰囲気下に存在させる手法により多孔質膜が形成されておれば、比較的簡単かつ安価に上記孔形態が得られるので、より安価な異方性導電膜とすることができる。
一方、上記異方性導電膜の製造方法によれば、クッション性、膜厚方向の導通信頼性に優れた上記構成を備えた異方性導電膜を得ることができる。
また、上記無電解めっき層および電解めっき層の除去を、研磨および/またはエッチングにより行った場合には、とりわけ、少なくとも一方の孔部開口端面よりも内側に凹んだ凹状部を有する電解めっき部を得やすくなる。
また、上記高分子溶液をキャストした支持体を相対湿度50%以上の雰囲気下に存在させる手法により多孔質膜を形成した場合には、比較的簡単かつ安価に上記孔形態を有する多孔質膜が得られる。そのため、より安価に異方性導電膜を製造することができる。
以下、本実施形態に係る異方性導電膜およびその製造方法について詳細に説明する(以下、本実施形態に係る異方性導電膜を「本ACF」と、本実施形態に係る異方性導電膜の製造方法を「本製造方法」ということがある。)。
1.本ACF
図1に例示するように、本ACF10は、多孔質膜12と、無電解めっき層14と、電解めっき部16とを基本的構成として備えている。以下、各構成について順に説明する。
1.1 多孔質膜
本ACFにおいて、多孔質膜は、高分子よりなり、特定の孔形態からなる孔部を多数有している。
ここで、上記高分子は、基本的には、多孔質膜の形成に支障がないものであれば、何れの種類であっても用いることができる。例えば、柔軟性、耐熱性などを考慮して適宜選択することができる。
上記高分子としては、具体的には、例えば、熱可塑性エラストマー、ゴム、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
上記熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
上記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、例えば、ハードセグメントとして、ポリスチレンなど、ソフトセグメントとして、ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエン、水素添加ポリイソプレン、ポリ(エチレン・ブチレン)、ポリ(エチレン・プロピレン)などを用いたものなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
上記オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとして、ポリエチレン、ポリプロピレンなど、ソフトセグメントとして、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体などを用いたものなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
上記ウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとして、ポリウレタンなど、ソフトセグメントとして、ポリエステル、ポリエーテルなどを用いたものなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
上記エステル系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとして、ポリエステルなど、ソフトセグメントとして、ポリエステル、ポリエーテルなどを用いたものなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
上記アミド系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとして、ポリアミドなど、ソフトセグメントとして、ポリエステル、ポリエーテルなどを用いたものなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
上記シリコーン系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとして、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂など、ソフトセグメントとして、シリコーン系重合体などを用いたものなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
上記フッ素系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとして、フッ素樹脂など、ソフトセグメントとして、フッ素ゴムなどを用いたものなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
上記ゴムとしては、具体的には、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、クロルスルホン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
上記ポリイミドとしては、より具体的には、例えば、シロキサン成分を重合成分として含むポリイミドなどを例示することができる。また、上記ポリアミドイミドとしては、より具体的には、例えば、シロキサン成分を重合成分として含むポリアミドイミドや、環式炭化水素基(脂環式炭化水素基および/または芳香族炭化水素基)を有するジイソシアネート成分またはジアミン成分と、酸無水物、多価カルボン酸、酸クロリドなどの酸成分とを重合成分として含むポリアミドイミド、このポリアミドイミドにポリカプロラクトンなどのポリエステルなどが共重合されたものなどを例示することができる。
これらのうち、膜材料の側面からもクッション性を向上させることができるなどの観点から、熱可塑性エラストマー、ゴムを好適に用いることができる。さらに、クッション性に加え、機械的特性、耐熱性、ハニカム性などにも優れるなどの観点から、スチレン系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、フッ素系エラストマー、ブタジエンゴムなどをより好適に用いることができる。なお、耐熱性が要求される一例としては、具体的には、加熱状態でICチップの導通を検査するバーンイン試験などに本ACFが供される場合などを例示することができる。
また、上記多孔質膜は、膜厚方向に貫通した多数の孔部を有しており、その孔部はハニカム状に配列されるとともに、孔部の内壁面は外側方向に湾曲された孔形態を有している。
この多孔質膜の孔形態につき、図を用いてより具体的に説明する。図2(a)に示すように、この多孔質膜12は、膜厚方向に貫通した多数の孔部12aを有している。また、これら孔部12aの内壁面12bは、外側方向に向かって略球面状に湾曲されている。また、図2(b)に示すように、これら孔部12aは、ハニカム状に配列されており、隣接する各孔部12a同士は、隔壁12cにより離間されている。また、隔壁12cは、隣接する各孔部12aの内壁面12b同士が最も隣接する付近に、膜表面付近よりも肉厚の薄いくびれ部12dを有している。
このような多孔質膜は、例えば、水と混ざらず、揮発する有機溶媒中に高分子を溶かし、この高分子溶液をキャストした支持体を高湿度雰囲気下に存在させる方法などを用いて形成することができる。詳しくは、本ACFの製造方法の項にて後述する。
また、上記多孔質膜における孔部の径および間隔については、被接続物が有する複数の導体(例えば、検査対象物であるICチップの突起電極など)の幅や間隔、圧力変化を電気抵抗の変化として検知(感知)する検知領域(感知領域)の大きさなどを考慮して決定すれば良い。
もっとも、本ACFを検査用途に用いる場合には、膜面方向の絶縁性を確実なものとし、高い接続信頼性を得るなどの観点から、孔部の径は、被接続物が有する複数の導体の間隔のうち、最も狭いものよりも小さく、かつ、孔部の間隔は、被接続物が有する複数の導体の幅のうち、最も狭いものよりも小さいことが望ましい。
好ましくは、孔部の径は、被接続物が有する複数の導体の間隔のうち、最も狭いものの1/2以下、かつ、孔部の間隔は、被接続物が有する複数の導体の幅のうち、最も狭いものの1/2以下とするのが良い。
なお、図2(b)に示すように、孔部の径とは、膜表面または裏面に表れる孔部の開口部分の直径Rを測定して平均した値をいう。一方、孔部の間隔とは、膜表面または裏面に表れる孔部の開口部分と隣接する孔部の開口部分との間の距離Lを測定して平均した値をいう。また、上記直径Rおよび距離Lは、多孔質膜表面の電子顕微鏡写真、光学顕微鏡写真などにより測定することができる。
また、上記多孔質膜の膜厚は、特に限定されるものではなく、要求されるクッション性、機械的強度、耐電圧性などを考慮して適宜決定すれば良い。一般的には、膜厚の好ましい上限値としては、100μm、50μmなどを例示することができる。一方、これら好ましい上限値と組み合わせ可能な好ましい下限値としては、1μm、5μmなどを例示することができる。
1.2 無電解めっき層
図3に拡大して示すように、本ACFにおいて、無電解めっき層14は、上記多孔質膜12の孔部12aの内壁面12bに形成されている。
この無電解めっき層は、膜厚方向の導通を確保する機能以外に、孔部内に電解めっき部を充填するための下地めっきとしての機能を有している。したがって、無電解めっき層は、これを電極として孔部内に電解めっき部を充填できる範囲内で形成されておれば良い。このような観点から、無電解めっき層は、孔部の内壁面の全体を覆うように形成されていても良いし、孔部の内壁面を部分的に覆うように形成されていても良い。
また、無電解めっき層の厚さは、特に限定されるものではなく、少なくとも下地めっきとして機能を発揮できる厚さであれば良い。また、無電解めっき層の厚さは、めっきされた全域に亘ってほぼ同じ厚さであっても良いし、部分的に異なっていても良い。
また、図3などでは、無電解めっき層14が、1層からなる場合について例示しているが、特に限定されることはなく、複数層からなっていても良い。無電解めっき層が複数層からなる場合、各層は、同一または異なる金属種または組成から構成されていても良い。
上記無電解めっき層を構成する金属(合金含む、以下省略)は、基本的には、自己触媒型の無電解めっきが可能なものであれば、何れのものであっても用いることができる。無電解めっき層を構成する金属としては、具体的には、例えば、銅、ニッケル、銀、金、白金、パラジウム、コバルトなどの金属、またはこれらを1種または2種以上含む合金などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
これらのうち、無電解めっき層を構成する金属としては、銅、ニッケル、または、これらを1種または2種以上含む合金などを好適に用いることができる。比較的安価である、導通性が良い、浴安定性に優れ実用性がある、エッチング液によりエッチングしやすいなどの利点があるからである。
1.3 電解めっき部
図3に拡大して示すように、本ACFにおいて、電解めっき部16は、無電解めっき層14が形成された孔部12a内に充填されている。この電解めっき部は、主として、膜厚方向の導通信頼性を向上させる役割を有している。
ここで、上記電解めっき部は、孔部の両開口端面側に、開口端面とほぼ同一面内となるように平坦状に形成された平坦部を有していても良いし、孔部の両開口端面側の何れか一方側または両側に、孔部開口端面よりも内側に凹んだ凹状部を有していても良い。好ましくは、加圧された際に導通が確保されるなどの観点から、電解めっき部は、少なくとも一方の孔部開口端面側に凹状部を有していると良い。
なお、図3では、電解めっき部16が、一方の孔部開口端面側に凹状部16aを有しており、他方の孔部開口端面側に平坦部16bを有している場合を例示している。
上記凹状部の凹み量は、本ACFに加えられる圧力、製造条件などを考慮して適宜調節することができる。もっとも、凹み量が過度に多くなると、膜厚方向の導通信頼性が低下する傾向が見られる。そのため、凹み量の選択には、この点に留意すると良い。
上記電解めっき部を構成する金属(合金含む、以下省略)は、基本的には、電解めっきが可能なものであれば、何れのものであっても用いることができる。電解めっき部を構成する金属としては、具体的には、例えば、銅、ニッケル、銀、金、白金、パラジウム、コバルト、亜鉛、インジウム、スズ、クロム、鉛、鉄などの金属、またはこれらを1種または2種以上含む合金などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
これらのうち、電解めっき部を構成する金属としては、銅、ニッケル、または、これらを1種または2種以上含む合金などを好適に用いることができる。比較的安価である、導通性が良い、浴安定性に優れ実用性がある、エッチング液によりエッチングしやすいなどの利点があるからである。
この際、この電解めっき部を構成する金属は、上述した無電解めっき層を構成する金属とエッチングレートがほぼ同一であると良い。この理由については、詳しくは、本ACFの製造方法の項にて後述する。
本ACFにおいて、電解めっき部を構成する金属と無電解めっき層を構成する金属とのエッチングレートをほぼ同一にするためには、両者の金属種または組成が同じになるようにすれば良い。
なお、上記構成を備えた本ACFは、多孔質膜の全ての孔部が、無電解めっき層および電解めっき部を有していても良いし、無電解めっき層および/または電解めっき部を有していない孔部が部分的に存在していても良い。すなわち、被接続物が有する導体と対向する孔部、あるいは、検知(感知)領域内の孔部のうち、少なくとも1つ以上の孔部が無電解めっき層および電解めっき部を有しておれば良い。
2.本製造方法
本製造方法は、基本的には、多孔質膜を形成する工程、無電解めっき層を形成する工程、電解めっき部および電解めっき層を形成する工程、不要な無電解めっき層および電解めっき層を除去する工程とを含んでいる(以下、順に、「膜形成工程」、「無電解めっき工程」、「電解めっき工程」、「めっき層除去工程」ということがある。)
2.1 膜形成工程
本製造方法において、膜形成工程は、上述した孔形態を有する多孔質膜を形成する工程である。
ここで、上記多孔質膜の形成手法としては、水と混ざらず、揮発する有機溶媒中に高分子を溶かし、この高分子溶液をキャストした支持体を、高湿度雰囲気下に存在させる手法などを好適に用いることができる。以下、この手法について詳細に説明する。
この手法では、概ね以下の原理によって上記多孔質膜が自発的に形成される。
すなわち、支持体上に、所定濃度、所定塗布厚でキャストされた高分子溶液は、有機溶媒が蒸発する際に潜熱を奪われる。そのため、温度が下がった高分子溶液の表面には、雰囲気中の水蒸気が凝結して形成された微小な水滴群が付着する。付着した水滴群は、潜熱によって高分子溶液内に生じた対流やキャピラリーフォースなどにより輸送、集積され、最終的には最密充填される。その後、水滴群が蒸発すると、自己組織化的に配列した水滴群を鋳型として、図2に示した孔形態を有する多孔質膜が形成される。
このような多孔質膜を形成する具体的な手法としては、例えば、疎水性および揮発性を有する有機溶媒と、この有機溶媒に可溶な高分子と、両親媒性物質とを少なくとも含む高分子溶液をキャストした支持体を相対湿度50%以上の雰囲気下に存在させる手法などを例示することができる。この手法によれば、比較的簡単かつ安価に上記孔形態を有する多孔質膜が得られるので、より安価に異方性導電膜を製造することができる。
この手法において、上記疎水性および揮発性を有する有機溶媒としては、具体的には、例えば、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化物、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、メチルエチルケトン(MEK)、アセトンなどのケトン類などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
また、上記有機溶媒に可溶な高分子としては、具体的には、例えば、上記熱可塑性エラストマー、ゴム、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、シロキサン成分を重合成分として含むポリイミド、シロキサン成分を重合成分として含むポリアミドイミド、環式炭化水素基(脂環式炭化水素基および/または芳香族炭化水素基)を有するジイソシアネート成分またはジアミン成分と、酸無水物、多価カルボン酸、酸クロリドなどの酸成分とを重合成分として含むポリアミドイミド、このポリアミドイミドにポリエステルなどが共重合されたものなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
この際、上記ポリイミド、ポリアミドイミドにおいて、シロキサン成分や、環式炭化水素基を有するジイソシアネート成分またはジアミン成分などを重合成分として含んでいるのは、主に、上記有機溶媒への溶解性を向上させるためである。
なお、環式炭化水素基を有するジイソシアネート成分またはジアミン成分と、酸成分とを重合成分として含むポリアミドイミドの重合は、例えば、ジイソシアネート(ジアミン)成分と、酸成分とから、イソシアネート法または酸クロリド法などの方法を用い、任意に触媒を存在させ、アミド系溶剤などの極性溶剤中で行えば良い。また、このポリアミドイミドにポリエステルなどを共重合させる場合には、溶液重合法、溶融重合法、これらを組み合わせた方法などを用いることができる。例えば、ポリアミドイミドを溶液重合した溶液に、予め溶融重合したポリエステルなどを加えて重合する方法などを例示することができる。
また、上記両親媒性物質とは、いわゆる、界面活性剤のことであり、疎水的な部位と親水的な部位とを合わせ持った化合物をいう。この両親媒性物質は、主として、高分子溶液の表面上に付着する水滴群を安定化させるなどの目的で添加される。
このような両親媒性物質としては、具体的には、例えば、親水性のアクリルアミドポリマーを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基、親水性側鎖としてラクトース基もしくはカルボキシル基を併せもつポリマー、または、ヘパリンやデキストラン硫酸などのアニオン性多糖と4級の長鎖アルキルアンモニウム塩とのポリイオン性錯体などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
この際、上記高分子溶液に含まれる高分子の濃度としては、好ましい上限値として50重量%、10重量%などを例示することができ、これら好ましい上限値と組み合わせ可能な好ましい下限値としては、0.05重量%、0.1重量%などを例示することができる。
また、上記高分子溶液に含まれる両親媒性物質の割合としては、上記高分子に対し、好ましい上限値として20重量%、10重量%などを例示することができ、これら好ましい上限値と組み合わせ可能な好ましい下限値として0.01重量%、0.05重量%などを例示することができる。
他にも、上記膜の形成手法において、上述した高分子溶液に代えて、疎水性および揮発性を有する有機溶媒と、両親媒性高分子とを少なくとも含む高分子溶液を用いても、上記孔形態を有する多孔質膜を比較的簡単かつ安価に形成することができる。
ここで、両親媒性高分子とは、疎水的な部位と親水的な部位とを合わせ持った高分子をいう。
このような両親媒性高分子としては、具体的には、主鎖および/または側鎖に−SOH基、−COOH基などの親水性基を導入したポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどの高分子とカチオン性脂質とのポリイオン性錯体、例えば、ポリアミック酸とカチオン性脂質とのポリイオン性錯体などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
上記において、ポリアミック酸とは、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを極性溶媒中で重合させて得られる樹脂組成物である。
上記ポリアミック酸としては、3,3’4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’4,4’−ビフェニルエ−テルテトラカルボン酸、3、3’4、4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、3、3’4、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2、2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、1、1、1、3、3、3−ヘキサフルオロ−2、2−ビス(3、4ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3、4ジカルボキシフェニル)テトラメチルジシロキサンなどのビフェニル構造を有するテトラカルボン酸およびこれらの二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸、1、2、3、4−シクロペンタンテトラカルボン酸、2、3、4、5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸、1、2、4、5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3、4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸、3、4−ジカルボキシ−1、2、3、4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸などの脂環式テトラカルボン酸およびこれらの二無水物、ピロメリット酸、2、3、6、7−ナフタレンテトラカルボン酸、1、2、5、6−ナフタレンテトラカルボン酸、1、4、5、8−ナフタレンテトラカルボン酸、2、3、6、7−アントラセンテトラカルボン酸、1、2、5、6−アントラセンテトラカルボン酸、2、3、4、5、−ピリジンテトラカルボン酸、2、6−ビス(3、4−ジカルボキシフェニル)ピリジンなどの芳香族テトラカルボン酸およびこれらの二無水物、ピロメサート酸、トリメリート酸などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
また、上記ジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2、5−ジアミノトルエン、2、6−ジアミノトルエン、4、4−ジアミノビフェニル、3、3’−ジメチル−4、4’−ジアミノビフェニル、3、3’−ジメトキシ−4、4’−ジアミノビフェニル、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエ−テル、2、2’−ジアミノジフェニルプロパン、ビス(3、5−ジエチル4−アミノフェニル)メタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノナフタレン、1、4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1、4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、9、10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、1、3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4、4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2、2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2、2’−トリフルオロメチル−4、4’−ジアミノビフェニル、4、4’−ビス(4−ジアミノフェノキシ)オクタフルオロビフェニルなどの芳香族ジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、ジアミノシロキサンなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
また、カチオン性脂質としては、炭素数4以上の脂肪族アンモニウム塩化合物、脂環式アンモニウム塩化合物などを例示することができる。
具体的には、オクチルアミン、デシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、ドコシルアミン、シクロヘキシルアミンなどの第一アミン類の塩、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジステアリルアミン、ジドコシルアミン、N−メチルオクチルアミン、N−メチル−n−デシルアミン、N−メチル−n−テトラデシルアミン、N−メチル−n−ヘキサデシルアミン、N−メチル−n−オクタデシルアミン、N−メチル−n−エイコシルアミン、N−メチル−n−ドコシルアミン、N−メチル−n−シクロヘキシルアミンなどの第2アミン類の塩、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチル−n−デシルアミン、N,N−ジメチル−n−テトラデシルアミン、N,N−ジメチル−n−ヘキサデシルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチル−n−エイコシルアミン、N,N−ジメチル−n−ドコシルアミン、N,N−ジメチル−n−シクロヘキシルアミンなどの第3アミン類の塩、ジメチルジオクチルアミン、ジメチルジデシルアミン、ジメチルジテトラデシルアミン、ジメチルジヘキサデシルアミン、ジメチルジオクタデシルアミン、ジメチルジエイコシルアミン、ジメチルジドコシルアミン、ジメチルジシクロヘキシルアミンなどの第4アミン類の塩などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
上記ポリアミック酸とカチオン性脂質とのポリイオン性錯体は、ポリアミック酸を塩基により中和したものを含む溶液にカチオン性脂質、または、上記アミック酸の重合に用いることができる有機溶媒に溶解させたカチオン性脂質の溶液を配合することなどにより得れば良い。
また、ポリアミック酸とカチオン性脂質とのポリイオン性錯体を用いた場合には、膜形成後、その形成された膜を、既知の手法によりイミド化するのが好ましい。ポリアミック酸を閉環してポリイミドからなる多孔質膜とするためである。
この際、上記高分子溶液に含まれる両親媒性高分子の濃度は、好ましい上限値として50重量%、10重量%などを例示することができ、これら好ましい上限値と組み合わせ可能な好ましい下限値として0.05重量%、0.1重量%などを例示することができる。
なお、疎水性および揮発性を有する有機溶媒については、上述したものと同様であるので説明は省略する。
上記高分子溶液をキャストする支持体の材料は、上記高分子溶液による液膜の形成に影響を及ぼさない一方、当該溶液に含まれる有機溶媒や各種の添加剤などにより、変質したり、腐食したりしない材料であれば、特に限定されるものではない。支持体の材料としては、具体的には、例えば、ガラス、金属、シリコンウェハーなどの無機材料、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルケトン、フッ素樹脂などの高分子材料、水、流動パラフィンなどの液体などを例示することができる。
また、上記支持体の形状は、特に限定されるものではなく、上記高分子溶液による液膜をその表面で安定して保持できるような形状であれば良い。通常は、基板状のものを好適に用いることができる。
また、上述した高分子溶液を支持体上にキャストする際の塗布厚は、例えば、高分子の濃度、溶液の粘度などを考慮して、水滴群が貫通孔を形成できるように適宜調節すれば良い。その塗布厚としては、具体的には、例えば、好ましい上限値として3500μm、2000μmなどを例示することができ、これら好ましい上限値と組み合わせ可能な好ましい下限値として50μm、150μmなどを例示することができる。
また、高分子溶液をキャストした支持体は、相対湿度50%〜95%の気体雰囲気下に存在させることが望ましい。相対湿度が50%未満では、結露が不十分となる傾向などが見られ、95%を越えると、環境の制御が難しくなる傾向などが見られるからである。
なお、上記膜の形成手法では、相対湿度50%〜95%の雰囲気下中で高分子溶液を支持体上にキャストしても良いし、予め高分子溶液をキャストした支持体を相対湿度50%〜95%の雰囲気下に置いても良い。また、相対湿度50%〜95%の気体を高分子溶液に吹きかけるなどしても良い。この際、雰囲気中の気体、吹きかける気体としては、具体的には、例えば、空気や、アルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガスなどを例示することができる。好ましくは、コスト的に有利な空気(大気)を用いると良い。
また、有機溶媒の蒸発や、水滴群の蒸発を促進させるため、多孔質膜の形成に影響を及ぼさない程度で加熱、乾燥などを行っても良い。
ここで、上述した原理を用いて多孔質膜を形成した場合、任意付加的な処理として、多孔質膜の形成後、膜を形成する高分子のガラス転移温度近傍まで膜を加熱しても良い。
上述した原理によれば、多孔質膜において、隣接する各孔部同士の間に位置する隔壁は、隣接する水滴同士の隙間に入り込んだ高分子溶液により形成される。
そのため、水滴と水滴とが最も近接するくびれ部付近では、特に、隔壁が薄くなる傾向がある。場合によっては、隣接する孔部同士が部分的に連通してしまうこともある。
したがって、上記手法により形成した多孔質膜をそのまま用い、孔部の内壁面に無電解めっき層を形成した場合には、くびれ部に存在することがある膜面方向の連通孔を介して、隣接する孔部の無電解めっき層同士が導通し、異方性導電膜の膜面方向の絶縁性が低下することも考えられる。
ところが、膜形成後、その膜を形成する高分子のガラス転移温度近傍までさらに加熱した場合には、多孔質膜の隔壁のうち、肉厚の薄いくびれ部がいち早く軟化・溶融し、くびれ部に存在することがある連通孔が潰される。そのため、隣接する各孔部間の独立性が増大する。その後、この孔部同士の独立性を向上させた多孔質膜の孔部内壁面に無電解めっき層を形成すれば、得られる異方性導電膜の膜面方向の絶縁性を一層確実なものにすることができる。
この際、上記において「ガラス転移温度近傍」と規定しているのは、多孔質膜の隔壁のうち、くびれ部が軟化・溶融されることにより、くびれ部に存在することがある膜面方向の連通孔を潰すことができる温度範囲に多孔質膜が加熱されれば良いという趣旨である。
したがって、上記趣旨が損なわれない範囲で、膜を形成する高分子のガラス転移温度を中心にして、その前後の温度範囲まで多孔質膜を加熱することが可能である。
もっとも、多孔質膜を形成する高分子のガラス転移温度より過度に高温であると、多孔質膜自体が溶けてしまうなど、膜の立体構造がくずれてしまう場合がある。一方、多孔質膜を形成する高分子のガラス転移温度より過度に低温であると、くびれ部に存在することがある膜面方向の連通孔が十分に潰されない場合がある。したがって、多孔質膜を加熱する場合には、これらに留意すると良い。
また、多孔質膜を加熱する時間は、上記温度範囲などとの兼ね合いで、適宜調節することが可能である。加熱時間が過度に長すぎると、膜の立体構造がくずれてしまう場合がある。一方、加熱時間が過度に短すぎると、くびれ部に存在することがある膜面方向の連通孔が十分に潰されない場合がある。したがって、多孔質膜を加熱する場合には、これらに留意すると良い。
多孔質膜を加熱する方法は、接触式、非接触式の何れの加熱方法であっても良く、特に限定されるものではない。
具体的な加熱方法としては、例えば、多孔質膜を形成する高分子が、そのガラス転移温度近傍の温度となるように調温された加熱源と、多孔質膜とを一定時間当接させる方法などを例示することができる。より具体的には、所定温度に調温されたホットプレートなどの加熱源上に、一定時間多孔質膜を載置する方法などを例示することができる。
また例えば、当該加熱源と多孔質膜とを近接させる方法や、多孔質膜をマイクロ波により加熱する方法や、多孔質膜のくびれ部周辺をレーザなどで加熱する方法などを例示することができる。
また、上述したように膜形成後、多孔質膜を任意で加熱する場合、さらに、膜厚方向に多孔質膜を任意で加圧しても良い。
上述した原理によれば、高分子溶液の表面上に結露した水滴は、浮島状に密集する。そして、この浮島状に密集した水滴群が輸送、集積されると、水滴群同士がぶつかり合った境界近辺に、膜厚方向の段差ないし凹凸が生じやすい。
ところが、膜形成後、多孔質膜を加熱・加圧した場合には、多孔質膜表面に生じた段差ないし凹凸が均一化される。そのため、ICチップ、指などにより異方性導電膜を加圧した場合に、膜厚方向に均一な導通が得られやすくなる。また、くびれ部に存在することがある膜面方向の連通孔も潰されやすくなるので、隣接する各孔部間も独立化されやすく、異方性導電膜の膜面方向の絶縁性をより確実なものにすることができる。
多孔質膜を加圧する方法としては、平坦面を有する板状部材により多孔質膜を挟持し、この状態を保持したまま、公知の加圧装置により直接あるいは介在物を介して間接的に加圧する方法などを例示することができる。
また、多孔質膜を加圧する圧力は、その膜を形成する高分子の硬さ、くびれ部の肉厚、膜の加熱時間などを考慮して種々調節すれば良い。すなわち、膜形成過程において生じた段差を平坦にすることができる圧力であれば良い。多孔質膜を過度に加圧すると、膜の立体構造がくずれてしまう場合がある。一方、多孔質膜に対する加圧力が過度に少ないと、段差を平坦にし難い。したがって、多孔質膜を加圧する場合には、これらに留意すると良い。
また、多孔質膜を加圧する場合、この加圧は、多孔質膜の加熱とほぼ同時に行っても良いし、加圧した多孔質膜を加熱しても、加熱した多孔質膜を加圧しても良い。すなわち、多孔質膜に対して少なくとも所望の熱および圧力が掛かった状態が得られれば、何れのタイミングで加圧しても良い。
また、上記多孔質膜は、基本的に疎水性を示す高分子より形成されている。そのため、後工程におけるめっき処理などで使用される、めっき液などの親水性の液体との濡れ性を改善するなどの目的で、多孔質膜に対して、予めUV照射、コロナ処理、プラズマ処理などの親水化処理を施しておいても良い。
2.2 無電解めっき工程
本製造方法において、無電解めっき工程は、無電解めっきにより無電解めっき層を形成する工程である。
ここで、図4に示すように、無電解めっき層14は、多孔質膜12の一方表面と、孔部12aの内壁面12bとに形成される。この無電解めっき工程では、この図4に示すように無電解めっき層を形成することができれば、何れの方法であっても用いることが可能である。具体的には、例えば、以下のような方法を例示することができる。
すなわち、先ず、膜支持体上に多孔質膜を載置し、固定する。膜支持体の材質としては、具体的には、例えば、ガラスなどの無機材料、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などのフッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの有機材料などを例示することができる。
また、多孔質膜の固定方法は、位置ずれしないように膜支持体上に多孔質膜を固定できれば、何れの物理的・化学的な固定方法であっても用いることができる。多孔質膜の固定方法としては、具体的には、例えば、膜支持体上に多孔質膜を吸着させる方法、膜支持体上に形成した粘着層により多孔質膜を固定する方法などを例示することができる。
次に、多孔質膜の一方表面および孔部の内壁面に、無電解めっきが適切になされるように必要に応じて予め前処理を施す。前処理としては、具体的には、例えば、油分などを取り除くための脱脂処理、膜基材と金属めっきとの密着性を向上させるための表面粗化(エッチング)処理、無電解めっき反応を起こさせるのに必要な触媒を付与する触媒付与処理などが挙げられる。
なお、上記脱脂処理に用いる脱脂剤は、酸性脱脂剤、アルカリ性脱脂剤(例えば、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基、界面活性剤などから構成される)の何れであっても良く、適宜選択して用いれば良い。
また、上記表面粗化処理に用いる粗化処理液としては、具体的には、例えば、塩酸、硫酸などの無機酸、KOH、NaOHなどのアルカリ金属水酸化物などを含む溶液などを例示することができる。
また、上記触媒付与処理により付与される触媒としては、具体的には、例えば、パラジウム、銀などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合された状態で付与されていても良い。
また、触媒付与方法としては、具体的には、例えば、スズ−パラジウムコロイドなどを含むキャタリスト液(触媒付与液)に多孔質膜を浸漬し、触媒付与面にスズ−パラジウムコロイドを吸着させ、その後、硫酸、フッ化物などを含む酸性溶液であるアクセレーター液に浸漬してスズを除去し、パラジウムを触媒活性化させるなどといった「キャタリスト/アクセレーター法」、塩化スズなどの塩酸溶液からなるセンシタイザー液に多孔質膜を浸漬し、触媒付与面にスズイオンを吸着させ、その後、塩化パラジウムなどの塩酸溶液からなるアクチベーター液に浸漬してパラジウムと置換させるなどといった「センシタイザー/アクチベーター法」、パラジウムイオン錯体などからなるアルカリキャタリスト液(触媒付与液)に多孔質膜を浸漬し、触媒付与面にパラジウムイオン錯体を吸着させ、その後、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を含む還元液に浸漬して金属パラジウムに還元させるなどといった「アルカリキャタリスト法」などを例示することができる。これら触媒付与方法は、多孔質膜を形成する高分子材料の種類などを考慮して適宜選択すれば良い。
以上の各前処理は、各処理の目的が達せられるように処理温度、処理時間などの条件を適宜設定して行えば良い。
次に、無電解めっき層を構成する金属成分を少なくとも含んだ無電解めっき浴中に、膜支持体により支持された状態の多孔質膜を浸漬し、多孔質膜の一方表面および孔部の内壁面に無電解めっき層を形成する。
上記無電解めっき浴としては、具体的には、例えば、無電解銅めっき浴、無電解ニッケル−リンめっき浴、無電解ニッケル−ホウ素めっき浴などを例示することができる。
この際、無電解めっき浴の温度、浸漬時間などの無電解めっき条件は、一般に、用いる無電解めっき液の組成などにより異なる。基本的には、後工程において、孔部内に電解めっき部を充填する際の下地めっきとしての機能を少なくとも発現できる程度まで、孔部の内壁面に無電解めっき層を形成できれば、本工程の目的は達せられる。そのため、これを考慮して、無電解めっき浴の温度、浸漬時間などの条件を適宜設定すれば良い。
なお、上記方法によれば、多孔質膜の他方表面側は、その表面に接触している膜支持体がマスク材として機能するため、マスキングされた状態にある。そのため、多孔質膜の他方表面に前処理や無電解めっきがなされることはなく、ほぼ多孔質膜の一方表面および孔部の内壁面にだけ無電解めっきをすることができる。また、多孔質膜の支持とマスキングとを同時にすることができるので、生産性の向上にも寄与する。
また、上記無電解めっき層の形成は、1回の処理で行っても良いし、複数回の処理で行っても良い。
2.3 電解めっき工程
本製造方法において、電解めっき工程は、電解めっきにより電解めっき部および電解めっき層を形成する工程である。
ここで、図5に示すように、電解めっき部16は、無電解めっき層14が内壁面12bに形成されている孔部12a内に充填される。一方、電解めっき層16cは、多孔質膜12の一方表面に形成されている無電解めっき層14上に、電解めっき部16と繋がった状態で形成される。
この電解めっき工程では、上記形態を有する電解めっき部および電解めっき層を形成することができれば、何れの方法であっても用いることが可能である。具体的には、例えば、以下のような方法を例示することができる。
すなわち、上記無電解めっき工程の後、膜支持体上に固定されている多孔質膜を、この状態を保ったまま、電解めっき部(層)を構成する金属成分を少なくとも含んだ電解めっき浴中に浸漬し、電解めっきを行う。
上記電解めっき浴としては、具体的には、例えば、電解銅めっきの場合には、硫酸銅浴、ピロリン酸銅浴などを例示することができる。この際、硫酸銅浴を用いる場合には、レベリング性に優れた、いわゆるビアフィリングタイプのものを用いると良い。レベリング性を付与する添加剤を含んだ硫酸銅浴を用いると、孔部内に優先的に銅めっきを充填しやすいからである。レベリング性を付与する添加剤の種類、含有量などについては、多孔質膜の孔径、膜厚(孔の深さ)などを考慮して適宜選択すれば良い。また、電解ニッケルめっきの場合には、ワット浴、スルファミン酸浴などを例示することができる。
本工程では、電解めっきが進むにつれて、めっき液と接触している孔部内壁面の無電解めっき層には、金属めっきが析出してくる。これが成長することにより、最終的には、金属めっきで孔部内が充填され、電解めっき部が形成される。
この際、多孔質膜の一方表面は膜支持体などにより覆われていないので、多孔質膜の一方表面に形成されている無電解めっき層上にも、金属めっきが析出する。これが成長することにより、孔部内に充填されている電解めっき部と繋がった電解めっき層が、無電解めっき層上に形成される。
また、多孔質膜の他方表面は膜支持体により覆われているので、図5に示すように、電気めっき部16における、多孔質膜12の他方表面の孔部12aの開口端面側には、平坦部16bが形成される。
なお、上記方法によれば、多孔質膜の他方表面は、その表面に接触している膜支持体がマスク材として機能するため、マスキングされた状態にある。そのため、多孔質膜の他方表面に電解めっきがなされることはない。
また、電解めっき浴の温度、電流密度、通電時間などの電解めっき条件は、一般に、用いる電解めっき液の組成などにより異なる。基本的には、電解めっき部を孔部内に充填できれば、本工程の目的は達せられる。そのため、この点などを考慮して、各種電解めっき条件を適宜設定すれば良い。
2.4 めっき層除去工程
本製造工程において、めっき層除去工程は、多孔質膜の一方表面上にある無電解めっき層および電解めっき層(以下、これらをまとめて単に「めっき層」ということがある。)を除去する工程である。
すなわち、図5に示される状態のままでは、多孔質膜12の一方表面上にある無電解めっき層14および電解めっき層16cと、電解めっき部16とは導通している。そのため、このままでは、膜面方向の絶縁性が確保されていない。そこで、本工程では、多孔質膜12の一方表面上にある無電解めっき層14および電解めっき層16cを除去することにより、図1に示すように、隣り合う孔部12a内の電解めっき部16をそれぞれ独立化させ、膜面方向の絶縁性および膜厚方向の導通性を確保するのである。
この際、上記めっき層の除去は、特に限定されるものではなく、種々の除去方法を用いることができる。めっき層の除去方法としては、具体的には、例えば、機械研磨などによる研磨、化学エッチング、イオンエッチング、プラズマエッチング、ブラスト処理などを例示することができる。これらは適宜組み合わせて用いても良い。
ここで、上記めっき層を除去するにあたって化学エッチングを用いる場合、無電解めっき層を構成する金属と電解めっき部を構成する金属とのエッチングレートがほぼ同一とされている場合には、一回のエッチングにより、上記めっき層を除去することができるので、生産性を向上させることができる。
もっとも、エッチングレートが異なる場合には、電解めっき層を先にエッチングして除去した後、次いで、多孔質膜上の無電解めっき層をエッチングして除去すれば良い。
また、本工程において用いるエッチング液の組成、エッチング時間、エッチング温度、エッチング方法(浸漬、スプレーなど)などのエッチング条件については、基本的に、無電解めっきの金属と電解めっきの金属との組み合わせ、無電解めっき層の厚みなどにより異なる。そのため、各種エッチング条件については、これらを考慮して適宜設定すれば良い。
また、上記めっき層の除去は、電解めっき部における、多孔質膜の一方表面の孔部の開口端面側が、開口端面とほぼ同一面内にある平坦状になるように行っても良いし、開口端面よりも内側に凹んだ凹状になるように行っても良い。
上記めっき層の除去を、図3に示すように、電解めっき部16の上部に凹状部16aが形成されるように行った場合には、加圧された際に導通が得られる異方性導電膜が得られる。
以上、本ACF、本製造方法について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、以下では、上記実施形態における部材と同一機能を有する部材については、同一の番号を付している。
1.実施例に係る異方性導電膜の作製
クロロホルムにポリブタジエンゴム(JSR製、「RB820」)を0.5[wt%]の濃度で溶解した液に、両親媒性物質として、ドデシルアクリルアミドとカプロン酸との共重合体をポリブタジエンゴムに対して10[wt%]添加し、高分子溶液を調製した。
次いで、この高分子溶液を、相対湿度50%の空気を連続的に吹き付けているシャーレ(φ90[mm])に塗布膜厚780[μm]でキャストし、クロロホルムを揮発させた。その結果、膜厚方向に貫通する多数の孔部を有し、孔部がハニカム状に配列するとともに、孔部の内壁面が外側方向に湾曲されている、ポリブタジエンゴムよりなる多孔質膜が得られた。なお、多孔質膜の孔部の孔径は、5μmであった。
次いで、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体フィルム(以下、「FEPフィルム」という。)上に多孔質膜を載置、吸着させ、これを一対のガラス基板により挟持した。次いで、これを、ホットプレート上に載置するとともに、ゴムシートを介して加圧装置によりガラス基板上面を加圧することにより、孔部の独立性を確実なものとした。なお、この時の加熱・加圧条件は100℃×1分間×6Paとした。
次いで、ガラス基板を取り外し、FEPフィルム上の多孔質膜に対して、254nmのUV光を10分間照射し、多孔質膜の一方表面(FEPフィルムと接している側と反対側の表面)および孔部の内壁面に親水処理を施した。なお、このUV光の照射により、多孔質膜を形成するポリブタジエンゴムは架橋されている。
次に、このようにして得られた、FEPフィルム上に載置、固定された多孔質膜(孔径5μm、深さ2μm)の一方表面および孔部の内壁面に対して、アルカリ脱脂剤(奥野製薬工業(株)製、「エースクリーン850」)を用いて40℃で1分間脱脂処理を行った。
次いで、触媒付与剤(奥野製薬工業(株)製、「OPC−50インデューサー」)を用いて40℃で5分間触媒吸着処理を行い、多孔質膜の一方表面および孔部の内壁面にパラジウムイオンを吸着させた。
次いで、還元剤(奥野製薬工業(株)製、「OPC−150クリスター」)を用いて25℃で5分間還元処理を行い、多孔質膜の一方表面および孔部の内壁面に吸着されたパラジウムイオンを金属パラジウムに還元し、触媒を活性化させた。これにより、多孔質膜の一方表面および孔部の内壁面にパラジウム触媒を付与した。
次いで、一方表面および孔部の内壁面に触媒が付与された多孔質膜を、FEPフィルム上に載置、固定したままの状態で、35℃の無電解銅めっき液(奥野製薬工業(株)製、「ATSアドカッパーIW」)中に6分間浸漬し、無電解銅めっきを行った。これにより、図6に示すように、多孔質膜12の一方表面および孔部12aの内壁面12bに厚み0.1μmの無電解銅めっき層14を形成した。なお、多孔質膜12の他方表面は、FEPフィルム18によりマスキングされているので、パラジウム触媒が付与されることなく、また、無電解銅めっき層も形成されていない。
次に、ビアフィリングタイプの硫酸銅めっき浴中に、上記FEPフィルムに固定された多孔質膜(図6の状態の多孔質膜)を浸漬し、陰極電流密度0.5A/dmにて5分間電解銅めっきを行った。その結果、図7に示すように、無電解銅めっき層14が形成されている孔部12a内に電解銅めっき部16が充填された。この際、電解めっき部16の下部には、FEPフィルム18に沿う形で平坦にされた平坦部16bが形成された。
また同時に、多孔質膜12の一方表面に形成されている無電解銅めっき層14上に、電解銅めっき部16と繋がった電解銅めっき層16cが形成された。この際、多孔質膜の一方表面に形成されている無電解銅めっき層と電解銅めっき層との合計の厚みは1μmであった。
なお、上記ビアフィリングタイプの硫酸銅めっき浴は、硫酸銅200g/L、硫酸50g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(奥野製薬工業(株)製、「トップルチナα」)8.5g/Lを混合して調製したものである。
次に、多孔質膜の一方表面に形成されている無電解銅めっき層、その上に形成されている電解銅めっき層をエッチングにより除去した。
すなわち、卓上エッチング機((株)山縣機械製、「YCE−85R」)を用いて、エッチング液(メック(株)製、「メックブライト VE−7100」)を、スプレー圧0.2MPa、液温35℃で30秒間、多孔質膜の表面に噴霧した。
その結果、図7および図8に示すように、多孔質膜12の一方表面に形成されていた無電解銅めっき層14と電解銅めっき層16cとがエッチングにより除去された。また、このエッチングにより、電解めっき部16の上部には、多孔質膜12の孔部12aの開口端面よりも内側に凹んだ凹状部16aが形成された。
その後、FEPフィルムを剥離することにより、図1に示す構成を備えた実施例に係る異方性導電膜を得た。
2.異方導電性の評価
次に、上記作製した実施例に係る異方性導電膜につき、膜厚方向の導通性能および膜面方向の絶縁性能を評価することにより異方導電性の評価を行った。
(1)膜厚方向の導通性能の評価
膜厚方向の導通性能の評価は、以下のように行った。すなわち、実施例に係る異方性導電膜を、ピッチ=30μm、L/S(ライン/スペース)=15μmのくし型電極(隣り合う電極が、絶縁基材により互いに絶縁されて配置されているくし状の電極)上に載置した。次いで、この異方性導電膜におけるくし型電極と接触している表面とは反対側の表面に、ガラス板上に積層した銅板を接触させた。
次いで、この状態のまま、1[MPa]の圧力を加え、テスター(AND社製、AD5522)で導通性能を評価した。なお、本評価では、試料数は、N=10[個]とした。
本評価の結果、実施例に係る異方性導電膜は、10/10[個]の試料において、くし型電極間の抵抗値が0[Ω]となった。この結果から、実施例に係る異方性導電膜は、膜厚方向の導通が十分に確保されていることが確認できた。
(2)膜面方向の絶縁性能の評価
膜面方向の絶縁性能の評価は、以下のように行った。すなわち、実施例に係る異方性導電膜を、上記と同様のくし型電極上に載置した。次いで、この異方性導電膜におけるくし型電極と接触している表面とは反対側の表面に、ガラス板を接触させた。
次いで、この状態のまま、1[MPa]の圧力を加え、100[V]の直流電圧を印加したときの電流値[A]から膜面方向の抵抗を算出することにより絶縁性能を評価した。なお、本評価では、試料数は、N=10[個]とした。また、測定装置には、KEITHLEY社製 237 HIGH VOLTAGE SOURCE MEASURE UNITを使用した。
本評価の結果、実施例に係る異方性導電膜は、10/10[個]のサンプルにおいて、くし型電極間の抵抗値が10[Ω]以上になった。この結果から、実施例に係る異方性導電膜は、膜面方向の絶縁性が十分に確保されていることが確認できた。
以上より、本実施例に係る異方性導電膜によれば、その内壁面が外側方向に湾曲した孔部を多数有する多孔質膜を用いているので、その構造上、膜厚方向のクッション性に優れる。また、多孔質膜を構成する高分子としてポリブタジエンゴムを用いているので、その材料面からもクッション性に優れる。
また、孔部の内壁面に形成された無電解銅めっき層のみならず、孔部の内部まで電解銅めっき部が充填されているので、膜厚方向の導通信頼性に優れる。また、上記電解めっき部が凹状部を有しているので、膜厚方向のクッション性を損ないにくい上、膜厚方向に加圧された場合に確実に導通が得られる。
また、実施例に係る異方性導電膜の製造では、無電解めっき、電解めっきの金属として同じ銅を用いているので、不要な無電解銅めっき層および電解銅めっき層をエッチングにより一度に除去することができる。そのため、生産性も向上する。
本ACFの断面図である。 本ACFに用いる多孔質膜の一例を模式的に示した図であり、(a)が多孔質膜の断面図、(b)が多孔質膜の平面図である。 孔部内に、最終的に無電解めっき層および電解めっき層が形成された状態の一例を模式的に示した拡大図である。 本製造方法における無電解めっき工程において、無電解めっき層が形成された状態の一例を模式的に示した拡大図である。 本製造方法における電解めっき工程において、孔部内に電解めっき部が充填されるとともに、多孔質膜の一方表面に形成された無電解めっき層上に、電解めっき部と連続する電解めっき層が形成された状態の一例を模式的に示した拡大図である。 実施例において、FEPフィルム上に載置、固定した多孔質膜の一方表面および孔部の内壁面に無電解銅めっき層を形成した状態の一例を模式的に示した図である。 実施例において、無電解銅めっき層が形成されている孔部内に電解銅めっき部を充填するとともに、多孔質膜の一方表面に形成されている無電解銅めっき層上に、電解銅めっき部と連続する電解銅めっき層を形成した状態の一例を模式的に示した図である。 実施例において、多孔質膜の一方表面に形成されている無電解銅めっき層および電解銅めっき層を除去するとともに、電解銅めっき部に凹状部を形成した状態の一例を模式的に示した図である。 電子部品の検査時に使用される従来の異方性導電膜を模式的に示した図である。 感圧センサ用途に用いられる従来の異方性導電膜を模式的に示した図である。
符号の説明
10 異方性導電膜
12 多孔質膜
12a 孔部
12b 内壁面
12c 隔壁
12d くびれ部
14 無電解めっき層
16 電解めっき部
16a 凹状部
16b 平坦部
16c 電解めっき層
18 FEPフィルム(膜支持体)

Claims (9)

  1. 膜厚方向に貫通した多数の孔部を有し、前記孔部はハニカム状に配列されるとともに前記孔部の内壁面は外側方向に湾曲されている、高分子よりなる多孔質膜と、
    前記孔部の内壁面に形成された無電解めっき層と、
    前記孔部内に充填された電解めっき部とを
    備えたことを特徴とする異方性導電膜。
  2. 前記電解めっき部は、少なくとも一方の孔部開口端面よりも内側に凹んだ凹状部を有していることを特徴とする請求項1に記載の異方性導電膜。
  3. 前記無電解めっき層を構成する金属と、前記電解めっき部を構成する金属とは、エッチングレートがほぼ同一であることを特徴とする請求項1または2に記載の異方性導電膜。
  4. 前記多孔質膜は、疎水性および揮発性を有する有機溶媒と、この有機溶媒に可溶な高分子と、両親媒性物質とを少なくとも含む高分子溶液をキャストした支持体を相対湿度50%以上の雰囲気下に存在させることにより形成されうるものであることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の異方性導電膜。
  5. 前記多孔質膜は、疎水性および揮発性を有する有機溶媒と、両親媒性高分子とを少なくとも含む高分子溶液をキャストした支持体を相対湿度50%以上の雰囲気下に存在させることにより形成されうるものであることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の異方性導電膜。
  6. 膜厚方向に貫通した多数の孔部を有し、前記孔部はハニカム状に配列されるとともに前記孔部の内壁面は外側方向に湾曲されている、高分子よりなる多孔質を形成する工程と、
    前記多孔質膜の一方表面および前記孔部の内壁面に無電解めっき層を形成する工程と、
    前記内壁面に無電解めっき層が形成された孔部内に電解めっき部を充填するとともに、前記多孔質膜の一方表面に形成された無電解めっき層上に、前記電解めっき部と連続する電解めっき層を形成する工程と、
    前記多孔質膜の一方表面上にある無電解めっき層および電解めっき層を除去する工程とを有することを特徴とする異方性導電膜の製造方法。
  7. 前記無電解めっき層および電解めっき層の除去は、研磨および/またはエッチングにより行うことを特徴とする請求項6に記載の異方性導電膜の製造方法。
  8. 前記多孔質膜の形成は、疎水性および揮発性を有する有機溶媒と、この有機溶媒に可溶な高分子と、両親媒性物質とを少なくとも含む高分子溶液をキャストした支持体を相対湿度50%以上の雰囲気下に存在させることによることを特徴とする請求項6または7に記載の異方性導電膜の製造方法。
  9. 前記多孔質膜の形成は、疎水性および揮発性を有する有機溶媒と、両親媒性高分子とを少なくとも含む高分子溶液をキャストした支持体を相対湿度50%以上の雰囲気下に存在させることによることを特徴とする請求項6または7に記載の異方性導電膜の製造方法。
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