JP2007069176A - 塗布フィルムの製造方法、光学補償フィルム、偏光板、および液晶表示装置 - Google Patents

塗布フィルムの製造方法、光学補償フィルム、偏光板、および液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】塗布フィルムを繰り返し大量製造する際の製造ばらつきを抑制するための製造方法を提供すること。また当該製造方法にて光学補償フィルムを製造し、該光学補償フィルムを使用した偏光板、液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】有機溶媒に溶解した液晶性化合物を支持体上に塗布し乾燥固化する塗布フィルムの製造方法において、該液晶性化合物層の塗布液の含水率を所定の値以下に制御管理すること。該製造方法で製造した光学補償フィルムおよび画像表示装置。
【選択図】 なし

Description

本発明は、液晶性化合物を支持体上に塗布してなる塗布フィルムの製造方法、該製造方法により製造する光学補償フィルム、該光学補償フィルムを使用した偏光板および液晶表示装置に関する。
ワードプロセッサやノートパソコン、パソコン用モニターなどのOA機器、携帯端末、テレビなどに用いられる表示装置としては、CRT(Cathode Ray Tube)がこれまで主に使用されてきた。近年、液晶表示装置が、薄型で、軽量、また消費電力が小さいことからCRTの代わりに広く使用されてきている。
液晶表示装置は、液晶セル、偏光板からなる。偏光板は保護膜と偏光膜からなり、ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光膜をヨウ素にて染色し、延伸を行い、その両面を保護膜にて積層して得られる。透過型液晶表示装置では、この偏光板を液晶セルの両側に取り付け、さらには一枚以上の光学補償シートを配置することもある。反射型液晶表示装置では、反射板、液晶セル、一枚以上の光学補償シート、偏光板の順に配置する。液晶セルは、液晶分子、それを封入するための二枚の基板および液晶分子に電圧を加えるための電極層からなる。液晶セルは、液晶分子の配向状態の違いで、ON、OFF表示を行い、透過型、反射型および半透過型のいずれにも適用できる、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、STN(Super Twisted Nematic)のような表示モードが提案されている。
光学補償シートは、画像着色を解消したり、視野角を拡大するために、様々な液晶表示装置で用いられている。光学補償シートとしては、延伸複屈折ポリマーフィルムが従来から使用されていた。(なお、延伸複屈折ポリマーフィルムを用いたもののなかには、ポリマーからなる一軸延伸フィルムの一対を面内の遅相軸方向が直交するように積層してなる積層位相差板や、高分子フィルムにテンターによる横延伸又は二軸延伸を施してなる単層の位相差板のような、二軸位相差板も知られている。(特許文献1、特許文献2参照)
延伸複屈折フィルムからなる光学補償シートに代えて、透明支持体上に低分子あるいは高分子液晶性化合物から形成された光学異方性層を有する光学補償シートを使用することが提案されている。液晶性化合物には多様な配向形態があるため、液晶性化合物を用いることで、従来の延伸複屈折ポリマーフィルムでは得ることができない光学的性質を実現することが可能になった。さらに偏光板の保護膜としても機能する。
光学補償シートの光学的性質は、液晶セルの光学的性質、具体的には上記のような表示モードの違いに応じて決定する。液晶性化合物を用いると、液晶セルの様々な表示モードに対応する様々な光学的性質を有する光学補償シートを製造することができる。液晶性化合物を用いた光学補償シートでは、様々な表示モードに対応するものが既に提案されている。
例えば、TNモード液晶セル用光学補償シートは、電圧印加により液晶分子がねじれ構造が解消しつつ基板面に傾斜した配向状態の光学補償を行い、黒表示時の斜め方向の光漏れ防止によるコントラストの視角特性を向上させる。
光学補償の代表例としては、位相差の同じ延伸フィルムを直交に積層し、面内レターデーションを0に近づけたフィルムの組を上下偏光板と液晶セルの間に各々配置する(特許文献3参照)。
しかし、液晶セル中の分子は電界印加時に完全に基板に対して垂直配向せず、基板近傍では平行配向のままである。一方基板中央部の液晶分子は垂直配向しており、その間の液晶分子は連続的に傾斜配向している。このような液晶セルの配向状態を光学補償するには、光学補償シートも同じような光学性能にすればよい。
このような光学補償シートとしては液晶性化合物をハイブリッド配向させてフィルム状にする技術があり、液晶性化合物に円盤状液晶性化合物を使用したり(特許文献4参照)、棒状液晶性化合物を使用した例がある(特許文献5参照)。
特開平3−33719号公報 特開平3−24502号公報 特開平4-162018号公報 特開平6-214116号公報 特開平10-186356号公報
そして、従来、液晶性化合物を支持体上に塗布することにより、液晶ディスプレイ用の光学補償フィルムの製造がなされてきた。この方法は、重合性の液晶性化合物を支持体上に塗布し、液晶性化合物が液晶相に転移する温度で配向熟成をおこない、紫外線開始重合により架橋固化させるものであり、熟成中に液晶化合物が所望の光学特性を実現するよう配向を制御する必要がある。近年の液晶ディスプレイパネルの高性能化に伴い、光学補償フィルムの性能向上が求められており、所望の光学特性を安定的に大量製造する必要が出てきた。フィルムの大量製造においては、ロット間もしくはロット内での光学特性のばらつきが生じ、得率を下げる原因となっていた。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、前述の塗布フィルムを繰り返し大量製造する際の製造ばらつきを抑制するための製造方法を提供することであり、また当該製造方法にて光学補償フィルムを製造し、該光学補償フィルムを使用した偏光板、液晶表示装置を提供することにある。
発明者らは、有機溶剤系塗布液中の含水量が、塗布フィルムの光学的特性(例えば後述のReレターデーション値、Rthレターデーション値およびチルト角)と相関すること、および、塗布フィルムの製造工程中における様々な要因で該含水量が変化しうることを発見し、有機溶剤系塗布液の含水量をできる限り小さい範囲に制御することにより、繰り返しの大量製造時における光学特性のばらつきを抑制することが可能であることを見出した。また、この効果は、親疎水性を制御する機能を有する添加剤を該塗布液が含有する場合に顕著であることを見出した。
すなわち、下記構成の塗布フィルムの製造方法、光学補償フィルム、偏光板及び画像表示装置により達成された。
(1) 有機溶媒に溶解した液晶性化合物を支持体上に塗布し乾燥固化する塗布フィルムの製造方法において、該液晶性化合物溶解液が該塗布時に含有する水分量を1.0質量%以下のあらかじめ設定された所定の含水率以下に制御することを特徴とする塗布フィルムの製造方法。
(2) 上記所定の含水率が0.7質量%以下であることを特徴とする(1)に記載の塗布フィルムの製造方法。
(3) 上記液晶性化合物溶解液が、水酸基、エーテル基、カルボニル基、エステル基及びアミノ基のうち少なくともいずれか一つの官能基を含むフッ素化合物を含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の塗布フィルムの製造方法。
(4) 上記支持体がプラスチックフィルム上に配向膜を塗布したものであることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の塗布フィルムの製造方法。
(5) 上記塗布時の温度Tc、上記乾燥時の最高温度Td、上記液晶性化合物のネマチック相転移温度TN及び等方相転移温度TISOが、下記関係式(I)を満足することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の塗布フィルムの製造方法。
関係式(I) Tc < TN < Td < TISO
(6) (1)乃至(5)のいずれかに記載の塗布フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする光学補償フィルム。
(7) (6)に記載の光学補償フィルムを使用したことを特徴とする偏光板。
(8) (6)に記載の光学補償フィルム又は(7)に記載の偏光板を使用したことを特徴とする液晶表示装置。
本発明の製造方法によって製造した本発明の光学補償フィルムは、製造ロット内およびロット間の光学特性ばらつきが小さく、結果として得率を向上させることが可能となった。
以下、本発明の塗布フィルムの製造方法、および該製造方法によって製造する光学補償フィルムの構成について説明する。
なお、本発明の塗布フィルムの製造方法では、塗布液が塗布時に含有する水分量を特定質量%以下のあらかじめ設定された所定の含水率以下に制御するが、このような製造方法は、他の光学機能性フィルム、例えば反射防止フィルムやハードコートフィルムであっても適用可能と考えられる。以下、本発明の光学補償フィルムについて説明する。
図1は、本発明の光学補償フィルムを用いた楕円偏光板の一実施形態の模式図であり、偏光膜202の片側には、液晶性化合物を支持体204上に塗布して光学異方性層205が形成された光学補償フィルム203が配置され、もう一方の側には、偏光板保護フィルム201が配置されている。
本発明で用いられる光学補償フィルムおよび楕円偏光板は、TNモード、OCBモード、VAモード等、多くの液晶表示装置に対して有効である。
<塗布フィルム>
本発明において、塗布フィルムとはフィルム状の支持体に塗布膜を塗設したものをいい、あらかじめ支持体A上に塗布したものを別のフィルム状の支持体Bに転写するものも含む。また、支持体Aへの塗布性を向上させる目的で、下塗り・ケン化・放電・光照射などの加工をあらかじめ施したものでも構わない。更に、あらかじめ1層もしくは多層の塗布層を有している支持体上に塗設するものでも構わない。
<液晶性化合物溶解液>
本発明の製造法において、塗布に用いる液晶性化合物溶解液の溶媒は有機溶媒であり、メチルエチルケトンやベンゼン、アセトンなど公知の溶媒を適宜選択して構わない。また、液晶性化合物は、光学補償シートとして用いる場合の例を後に詳述するが、棒状液晶、円盤状液晶など、公知のいかなる液晶性化合物でもかまわない。重合性基を有する化合物が好ましく用いられる。
<公知の製造法における塗布液の含水率変動>
有機溶媒に溶解した液晶性化合物を支持体上に塗布し乾燥固化する塗布フィルム製造法において、塗布液の水分量を意図的に制御することについて、公知ではない。通常に用いられる塗布フィルムの製造方法においては、塗布液たる液晶性化合物の有機溶媒への溶解液をあらかじめ調製し、これを後述する方法、例えばロッドコーティングなどの方法にて支持体上へ塗布するが、このとき、塗布液は例えば次のような要因で含水率が変動することがわかった。
1)塗布液を調製した後、塗布するまでの経時による吸湿
2)塗布液の密度調整において追添補充する有機溶媒にあらかじめ含まれている水分の蓄積
このうち2)について詳述する。塗布液は調製後溶媒の蒸発により密度が上昇することが一般的であり、通常の製造においては、塗布膜の厚さを一定に保つために塗布液に使用しているのと同じ溶媒を適宜補充することにより密度調整をすることが広く行われている。しかしながら、多くの有機溶媒は、あえて脱水したものを用いない限り、わずかながら水分を不純物として含んでいる。そして水は有機溶媒よりも一般に蒸発しにくいため、溶媒不純物由来の水が塗布液中に蓄積していく。塗布液中への蓄積量は密度調整の程度や頻度に依存し、例えば夏場など溶媒が蒸発しやすいときには密度調整のために追添する有機溶媒の量が冬場より多くなるため水分がより蓄積しやすくなる。また、塗布液を調製した直後の塗布液と、同じバッチの塗布液でも塗布フィルムの製造がある程度進行した後の塗布液とでは、水分の蓄積量が異なることになる。
<含水率の塗布フィルムの性能への影響>
本発明の製造法によって製造する塗布フィルムは光学補償の機能を有する。含水率の変化により、光学補償機能に変動が現われることを発明者らは見出した。例えば、円盤状液晶化合物をセルロースアシレートフィルム上に塗布することによって製造したTN型液晶モニタ用光学補償フィルムにおいては、円盤状液晶化合物および添加剤からなる塗布液の含水率が高くなるにつれ、KOBRA 21ADH(王子計測機器製)によって測定・算出されたチルト角が減少し、一方で同機器で測定・算出されたRe、Rthレターデーション値が上昇する傾向が確認された。
<含水率の制御>
したがって、塗布液の含水率をある一定の範囲に保つことにより、塗布液の経時吸湿や季節変化による蒸発補償分の水分蓄積の影響を除去することが可能である。品質管理上、含水率はできる限り低くすることが効果的であり、好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.7質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下に設定した所定の含水率以下となるよう管理基準を定めて管理する。この範囲に含水率を保つためには、考えられ得るいかなる方法をとってもかまわない。例えば、塗布用に調製した液を密封した容器内でのみ取り扱うことにより、経時による吸湿を避けることができるし、追添用の溶媒にあらかじめモレキュラーシーブを添加しておき、水分を除去する方法も効果的である。また、調製後の塗布液にモレキュラーシーブを入れておいても構わない。
<含水率の測定>
なお、塗布液の含水率は、カールフィッシャー法など公知の方法でおこなうことができ、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出する。実際の製造時の運用においては、連続的に監視することが好ましいが、30分おきや1時間おきなど、適当な間隔で塗布液をサンプリングして都度含水率を測定する方法でも構わない。
<含水率を制御する段階>
本発明において、塗布液含水率は塗布する時点の値をもって定義するが、実施にあたっては、本発明の意図が実現できるいかなる方法を用いてもかまわない。実質的に含水率が塗布部とほとんど変わらない箇所、例えば塗布部への密封系での送液部での値を用いても構わないし、リザーバタンク様の容器に塗布液を充填しているのであればタンク内での値で管理しても構わない。
<光学補償シート>
光学補償シートは、光学的に透明な支持体上に、液晶性化合物から形成された光学異方性層が備えられてなる。この光学補償シートを液晶表示装置に用いることで、副作用なしに液晶セルを光学的に補償する。本発明の塗布フィルムの製造方法は、光学補償シートの製造にあっては、光学異方性層を塗設する際に好ましく用いられる。
以下、光学補償シートに必要な構成材料について説明する。
[支持体]
本発明において塗布時に用いる支持体は、ガラス又は透明なポリマーフィルムであることが好ましい。
支持体は、光透過率(400〜700nm)が80%以上、ヘイズが2.0%以下であることが好ましい。更に好ましくは光透過率が86%以上、ヘイズが1.0%以下である。
ポリマーフィルムを構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースのモノ乃至トリアシレート体)、ノルボルネン系ポリマーおよびポリメチルメタクリレートが含まれる。市販のポリマー(ノルボルネン系ポリマーでは、アートン及びゼオネックス(いずれも商品名))を用いてもよい。又、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても、国際公開第00/26705号パンフレットに記載のように、分子を修飾することで複屈折の発現性を制御すれば、本発明の光学フィルムに用いることもできる。
[セルロースアシレートフィルム]
上記ポリマーフィルムとしては、セルロースアシレートフィルムが好ましい。
用いられるセルロースアシレートフィルムの原料のセルロースとしては、綿花リンター、ケナフ、木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)等があり、何れの原料セルロースから得られるセルロースエステルでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
本発明においては、セルロースからエステル化してセルロースアシレートを作製するが、特に好ましい前述のセルロースがそのまま利用できる訳ではなく、リンター、ケナフ、パルプを精製して用いられる。
本発明においてセルロースアシレートとは、セルロースの総炭素数2〜22のカルボン酸エステルのことである。
本発明の光学フィルムに用いられるセルロースアシレートの炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族アシル基でも芳香族アシル基でもよく、特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、シクロアルキルカルボニルエステル、あるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ヘプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、シクロヘキサンカルボニル、アダマンタンカルボニル、フェニルアセチル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、(メタ)アクリロイル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、より好ましいアシル基は、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、シクロヘキサンカルボニル、(メタ)アクリロイル、フェニルアセチルなどである。
セルロースアシレートの合成方法は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行 発明協会)p.9に詳細に記載されている。
本発明に好適に用いられるセルロースアシレートとしては、セルロースの水酸基への置換度が下記数式(1)および(2)を満足するものが好ましい。
数式(1):2.3≦SA’+SB’≦3.0
数式(2):0≦SA’≦3.0
ここで、SA’はセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基の置換度、またSB’はセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基の置換度を表す。なお、SAはセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基を表し、SBはセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基を表す。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(各位それぞれ100%のエステル化は置換度1)を意味する。本発明では、SAとSBの置換度の総和(SA’+SB’)は、より好ましくは2.6〜3.0であり、特に好ましくは2.80〜3.00である。また、SAの置換度(SA’)はより好ましくは1.4〜3.0であり、特には2.3〜2.9である。
更に、下記数式(3)を同時に満足することが好ましい。
数式(3):0≦SB”≦1.2
ここで、SB”はセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3または4のアシル基を表す。
さらにSB”はその28%以上が6位水酸基の置換基であるのが好ましく、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位のSA’とSB”の置換度の総和が0.8以上であり、さらには0.85以上であり、特には0.90以上であるセルロースアシレートフィルムも好ましいものとして挙げることができる。これらのセルロースアシレートフィルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。
尚、置換度はセルロース中の水酸基に結合した脂肪酸の結合度を測定し、計算によって得られる。測定方法としては、ASTM−D817−91、ASTM−D817−96に準拠して測定することができる。また、水酸基へのアシル基の置換の状態は、13C NMR法によって測定される。
上記セルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に前記の数式(1)、(2)および(3)を満足するセルロースアシレートからなることが好ましい。「実質的に」とは、全ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。セルロースアシレートは単独若しくは2種類以上の併用であってもよい。
セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。又、セルロースアシレートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0乃至5.0であることが好ましく、1.0乃至3.0であることがさらに好ましい。
ポリマーフィルムを光学補償シートに用いる場合、ポリマーフィルムは、所望のレターデーション値を有することが好ましい。本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、本発明の支持体としては、光学的に負の複屈折性を示すものが好ましい。
ポリマーフィルムのレターデーション値は光学補償フィルムが用いられる液晶セルやその使用の方法に応じて好ましい範囲が異なるがReレターデーション値は0〜200nmであり、そして、Rthレターデーション値は0〜400nm範囲に調節することが好ましい。液晶表示装置に二枚の光学的異方性層を使用する場合、ポリマーフィルムのRthレターデーション値は70乃至250nmの範囲にあることが好ましい。液晶表示装置に一枚の光学的異方性層を使用する場合、基材のRthレターデーション値は150乃至400nmの範囲にあることが好ましい。
尚、基材フィルムの複屈折率(Δn:nx−ny)は、0乃至0.020の範囲にあることが好ましい。また、セルロースアセテートフィルムの厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、0乃至0.04の範囲にあることが好ましい。
ポリマーフィルムのレターデーションを調整するためには延伸のような外力を与える方法が一般的であるが、又、光学異方性を調節するためのレターデーション上昇剤が、場合により添加される。セルロースアシレートフィルムのレターデーションを調整するには、芳香族環を少なくとも二つ有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用することが好ましい。また、二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。例えば、欧州特許出願公開第0911656号明細書、特開2000−111914号、同2000−275434号公報等記載の化合物等が挙げられる。
ポリマーフィルムに添加する上記した添加剤或は種々の目的に応じて添加できる添加剤(例えば、紫外線防止剤、剥離剤、帯電防止剤、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン、赤外吸収剤等)は、固体でもよく油状物でもよい。また、フィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。これらの詳細は、上記の公技番号2001−1745号の16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。これらの添加剤の使用量は、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されないが、ポリマーフィルム全組成物中、0.001〜25質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
[ポリマーフィルムの製造方法]
ポリマーフィルムは、ソルベントキャスト法によりを製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、ポリマー材料を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時及び又は逐次共流延してもよい。
上記のような二層以上の複数のセルロースアシレート溶液を共流延する方法としては、例えば、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させる方法(例えば、特開平11−198285号公報記載の方法)、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延する方法(特開平6−134933号公報記載の方法)、高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出す方法(特開昭56−162617号公報記載の方法)等が挙げられる。本発明ではこれらに限定されるものではない。
これらのソルベントキャスト方法の製造工程については、前記の公技番号2001−1745号の22頁〜30頁に詳細に記載され、溶解、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される。
本発明のフィルムの厚さは、15〜120μmであることが好ましく、更には30〜80μmが好ましい。
[支持体のポリマーフィルムの特性]
[フィルムの吸湿膨張係数]
更には、本発明の支持体として用いるセルロースアシレートフィルムの吸湿膨張係数を30×10-5/%RH以下とすることが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10-5/%RH以下とすることが好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。
この吸湿膨張係数を調節することで、光学補償シートの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇(歪みによる光漏れ)を防止することができる。
吸湿膨張係数の測定方法について以下に示す。作製したポリマーフィルムから幅5mm、長さ20mmの試料を切り出し、片方の端を固定して25℃、20%RH(R0)の雰囲気下にぶら下げた。他方の端に0.5gの重りをぶら下げて、10分間放置し長さ(L0)を測定した。次に、温度は25℃のまま、湿度を80%RH(R1)にして、長さ(L1)を測定した。吸湿膨張係数は下式により算出した。測定は同一試料につき10サンプル行い、平均値を採用した。
吸湿膨張係数[/%RH]={(L1−L0)/L0}/(R1−R0
ポリマーフィルムの吸湿による寸度変化を小さくするには、疎水基を有する化合物或は微粒子等を添加することが好ましい。疎水基を有する化合物としては、分子中に脂肪族基や芳香族基のような疎水基を有する可塑剤や劣化防止剤の中で該当する素材が特に好ましく用いられる。これらの化合物の添加量は、調整する溶液(ドープ)に対して0.01乃至10質量%の範囲にあることが好ましい。又、ポリマーフィルム中の自由体積を小さくすればよく、具体的には、後述のソルベントキャスト方法による成膜時の残留溶剤量が少ない方が自由体積が小さくなる。セルロースアシレートフィルムに対する残留溶剤量が、0.01乃至1.00質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。
[フィルムの力学特性]
(フィルムの機械的特性)
本発明に用いるポリマーフィルムの幅方向のカール値は−7/m〜+7/mであることが好ましい。長尺で広幅のポリマーフィルムに対し行う際に、透明保護フィルムの幅方向のカール値が前述の範囲内にあると、フィルムのハンドリングの支障や、フィルムの切断が起きることが無く、また、フィルムのエッジや中央部などで、フィルムが搬送ロールと強く接触することからくる発塵や、フィルム上への異物付着が少なくなり、本発明の光学補償シートの点欠陥や塗布スジの頻度が許容値を超えることがなく、好ましい。また、偏光膜貼り合せ時に気泡が入ることを防ぐことができて好ましい。
カール値は、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASCPH1.29−1985)に従い測定することができる。
本発明に用いるポリマーフィルムの残留溶媒量は、1.5質量%以下とすることでカールを抑制できるので好ましい。さらに0.01〜1.0質量%以下であることがより好ましい。これは、前述の溶液流延製膜方法による成膜時の残留溶媒量を少なくすることで自由体積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
セルロースアシレートフィルムの引き裂き強度は、そのJIS K−7128−2:1998の引裂き試験方法(エルメンドルフ引裂き法)に基づく引裂き強度が、2g以上であるのが、前記の膜厚においても膜の強度が充分に保持できる点で好ましい。より好ましくは、5〜25gであり、更に好ましくは6〜25gである。また60μm換算では、8g以上が好ましく、より好ましくは8〜15gである。具体的には、試料片50mm×64mmを、25℃、65%RHの条件下に2時間調湿した後に軽荷重引裂き強度試験機を用いて測定できる。
また、引掻き強度は2g以上であることが好ましく、5g以上であることがより好ましく、10g以上であることが特に好ましい。この範囲とすることにより、フィルム表面の耐傷性、ハンドリング性が問題なく保持される。引掻き強度は、円錐頂角が90゜で先端の半径が0.25mのサファイヤ針を用いて透明保護フィルム表面を引掻き、引掻き跡が目視にて確認できる荷重(g)をもって評価することができる。
(支持体フィルムの平衡含水率)
本発明のセルロースアシレートフィルムの平衡含水率は、光学補償シートを偏光板の一方の透明保護フィルムとして用いる際、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、25×80%RHにおける平衡含水率が、0〜4質量%であることが好ましい。0.1〜3.5質量%であることがより好ましく、1〜3質量%であることが特に好ましい。平衡含水率が該上限値以下であれば、セルロースアシレートフィルムを偏光板の透明保護フィルムとして用いる際にレターデーションの湿度変化による依存性が大きくなりすぎることがないので好ましい。
支持体の含水率の測定法は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料7mm×35mmを、水分測定器“CA−03”および試料乾燥装置“VA−05”[共に三菱化学(株)製]を用いてカールフィッシャー法により測定した。含水率は、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出する。
(支持体フィルムの透湿度)
本発明の支持体用セルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS規格JIS Z−0208をもとに、温度60℃、湿度95%RHの条件において測定し、得られた値を膜厚80μmに換算したものである。該透湿度は400〜2000g/m2・24h、さらには500〜1800g/m2・24h、特には600〜1600g/m2・24hの範囲であることが好ましい。透湿度が該上限値以下であれば、フィルムのレターデーション値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超えることが少ないので好ましい。また、本発明のセルロースアシレートフィルムに光学異方性層を積層して成る光学補償フィルムにおいて、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超えることが少ないので好ましい。またこのような光学補償シート付き偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合には、色味の変化や視野角の低下などの不具合を引き起こすことがほとんどないので好ましい。一方、該透湿度が該下限値以上であれば、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースアシレートフィルムにより接着剤の乾燥が妨げられて接着不良を引き起こすなどの不具合が生じにくいので好ましい。
セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求める。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、本発明のセルロースアシレートフィルム試料70mmφを25℃、90%RHおよび60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置[“KK−709007”東洋精機(株)製]にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後質量−調湿前質量で求める。
[ポリマーフィルムの表面処理]
ポリマーフィルムは、表面処理を施すことが好ましい。表面処理には、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理および紫外線照射処理が含まれる。これらについては、詳細が前記の公技番号2001−1745号の30頁〜32頁に詳細に記載されている。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
アルカリ鹸化処理は、鹸化液中に浸漬、鹸化液を塗布する等何れでもよいが、塗布方法が好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法(エクストルージョンコーティング法、スライドコーティング法、押し出しコーティング法)、グラビアコーティング法、バーコーティング法等を挙げることができる。アルカリ鹸化処理液は、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は、0.1〜3.0Nの範囲にあることが好ましい。更に、アルカリ処理液として、フィルムに対する濡れ性が良好な溶媒(例、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、メタノール、エタノール等)、界面活性剤、湿潤剤(例えば、ジオール類、グリセリン等)を含有することで、鹸化液の透明支持体に対する濡れ性、鹸化液の経時安定性等が良好となる。具体的には、例えば、特開2002−82226号公報、国際公開第02/46809号パンフレット、特開2003−43673号公報等に内容の記載が挙げられる。
表面処理の代わりに、表面処理に加えて下塗り層(特開平7−333433号公報記載)、或いは疎水性基と親水性基との両方を含有するゼラチン等の樹脂層を一層のみ塗布する単層法第1層として高分子フィルムによく密着する層(以下、下塗第1層と略す)を設け、その上に第2層として配向膜とよく密着するゼラチン等の親水性の樹脂層(以下、下塗第2層と略す)を塗布する所謂重層法(例えば、特開平11−248940号公報記載)の内容が挙げられる。
[光学異方性層]
液晶性化合物からなる光学異方性層の好ましい態様について詳細を記述する。
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するように設計することが好ましい。黒表示における液晶セル中の液晶化合物の配向状態は、液晶表示装置のモードにより異なる。この液晶セル中の液晶化合物の配向状態に関しては、IDW’00、FMC7−2、P411〜414に記載されている。
液晶性化合物を含む光学異方性層の配向において、チルト角、捩れ角などを厳密に制御することは一般に非常に困難である。また、目的の配向となっているかを検証することも同様に困難な場合が多い。
そこで本明細書においては、円盤状化合物や棒状化合物を配向させた光学異方性層において、光学異方性層の一方の面におけるチルト角(円盤状化合物または棒状化合物における物理的な対象軸が光学異方性層の界面となす角度をチルト角とする)θ1および他方の面のチルト角θ2を、直接的にかつ正確に測定することは困難であることに鑑み、θ1及びθ2を、以下の手法で算出する。本手法は本発明の実際の配向状態を正確に表現していないが、光学フィルムのもつ一部の光学特性の相対関係を表す手段として有効である。
本手法では算出を容易にすべく、下記の2点を仮定し、光学異方性層の2つの界面におけるチルト角とする。
1.光学異方性層は円盤状化合物や棒状化合物を含む層で構成された多層体と仮定する。さらに、それを構成する最小単位の層(円盤状化合物または棒状化合物のチルト角は該層内において一様と仮定)は光学的に一軸と仮定する。
2.各層のチルト角は光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化すると仮定する。
具体的な算出法は下記のとおりである。
(1)各層のチルト角が光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化する面内で、光学異方性層への測定光の入射角を変化させ、3つ以上の測定角でレターデーション値を測定する。測定および計算を簡便にするためには、光学異方性層に対する法線方向を0°とし、−40°、0°、+40°の3つの測定角でレターデーション値を測定することが好ましい。このような測定は、KOBRA−21ADHおよびKOBRA−WR(王子計測器(株)製)、透過型のエリプソメーターAEP−100((株)島津製作所製)、M150およびM520(日本分光(株)製)、ABR10A(ユニオプト(株)製)で行うことができる。
(2)上記のモデルにおいて、各層の常光の屈折率をno、異常光の屈折率をne(neは各々すべての層において同じ値、noも同様とする)、及び多層体全体の厚みをdとする。さらに各層におけるチルト方向とその層の一軸の光軸方向とは一致するとの仮定の元に、光学異方性層のレターデーション値の角度依存性の計算が測定値に一致するように、光学異方性層の一方の面におけるチルト角θ1および他方の面のチルト角θ2を変数としてフィッティングを行い、θ1およびθ2を算出する。
ここで、noおよびneは文献値、カタログ値等の既知の値を用いることができる。値が未知の場合はアッベ屈折計を用いて測定することもできる。光学異方性層の厚みは、光学干渉膜厚計、走査型電子顕微鏡の断面写真等により測定数することができる。
また、光学異方性層の配向状態を厳密に調整する目的は、液晶セルを通過した光の偏光状態に合わせ有効に光学補償するためであり、従って光学補償シートの特性も複屈折特性、即ちレターデーションの角度依存性を調整することが、有効にコントラスト視野角を向上させる簡便かつ最も接的な方法であると考えられる。
そのため、本発明の光学補償シートの光学的構成要素としては、前述のように負の複屈折性を有する透明支持体フィルムとその上に塗設された、傾斜配向した光学異方性層より成り、かつ該光学異方性層のフィルム法線方向から測定したレターデーション値:Reが40nm以上であり、かつ配向方向を含むフィルムに直交する面内においてフィルム法線から40°傾斜した方向から測定したレターデーション値:Re(40)と、Reとの:比Re(40)/Reが2.0未満であり、さらに配向方向を含むフィルムに直交する面内においてフィルム法線から−40°傾斜した方向から測定したレターデーション値:Re(−40)と、Reとの比:Re(−40)/Reが0.4以上であるように調整する事で、液晶表示装置のコントラスト視野角を非常に向上させる事が可能となる。本発明の光学補償シートは、特にノーマリーホワイトのTN配向セルに対して有効である。
本発明の光学補償シートは、上記のように表面処理したポリマー基材と、その上に設ける光学異方性層との間に、配向膜を設けることが好ましい。
[配向膜]
配向膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。従って、配向膜は本発明の好ましい態様を実現する上では必須である。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して本発明の偏光板を作製することも可能である。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。
本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができし、これらの組み合わせを複数使用することができる。
ポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報明細書中の段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。
ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖は、一般に疎水性基を官能基として有する。具体的な官能基の種類は、液晶性分子の種類および必要とする配向状態に応じて決定する。
例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基としては、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報明細書中段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。
配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。
架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤を含む透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行なって良い。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法(エクストルージョンコーティング法、スライドコーティング法、押し出しコーティング法)、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。とりわけ、後述するスロットダイコーティング法が最も好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1乃至10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
配向膜は、透明支持体上又は上記下塗層上に設けられる。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
次に、配向膜を機能させて、配向膜の上に設けられる光学異方性層の液晶性分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させる。
配向膜の膜厚は、0.1乃至10μmの範囲にあることが好ましい。
〔液晶性分子〕
光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
[棒状液晶性分子]
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性分子として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001乃至0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、ラジカル重合性不飽基或はカチオン重合性基が好ましく、具体的には、例えば特開2002−62427号公報明細書中の段落番号[0064]〜[0086]記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
[円盤状液晶性分子]
円盤状(ディスコティック)液晶性分子には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
円盤状液晶性分子としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。円盤状液晶性分子から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物が円盤状液晶性分子である必要はなく、例えば、低分子の円盤状液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。円盤状液晶性分子の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、円盤状液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
円盤状液晶性分子を重合により固定するためには、円盤状液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことが出来る。例えば、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0151]〜「0168」記載の化合物等が挙げられる。
ハイブリッド配向では、円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)と偏光膜の面との角度が、光学異方性層の深さ方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に減少することが好ましい。さらに、角度の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加及び減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度は、角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。さらに、角度は連続的に変化することが好ましい。
偏光膜側の円盤状液晶性分子の長軸の平均方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)の円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー及びポリマーなどを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
「光学異方性層の他の組成物」
上記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することが出来る。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられるが、水酸基、エーテル基、カルボニル基、エステル基及びアミノ基のうち少なくともいずれか一つの官能基を含むフッ素化合物を含む疎水性ポリマーを用いると、より塗布液の含水率の影響を受けやすくなることが判明した。
円盤状液晶性分子とともに使用するポリマーは、円盤状液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
[光学異方性層の形成]
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
円盤状液晶性分子のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度もしくは棒状液晶性分子を用いる場合のネマティック液晶層−固相転移温度は,70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい(TNとあらわす)。塗布時の温度(Tc)はTNより低い温度,すなわちネマティック液晶状態にはならない状態が好ましく,乾燥中の温度(Td)はディスコティックネマティック液晶相をとる温度であることが好ましい。これにより,液晶性化合物分子が所望の配向状態をとるようになる。
本発明の製造法においては、ここで用いる溶媒をあらかじめモレキュラーシーブによって脱水しておくことが好ましい。また塗布液を調製後も常にモレキュラーシーブによる脱水層を循環させておくことにより、塗布時の塗布液含水率を1.0質量%以下、好ましくは0.7質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下に制御する。
塗布液の塗布は、従来公知の方法により実施でき、前記の配向膜で記載の内容のものが挙げられる。
光学異方性層の厚さは、0.1乃至20μmであることが好ましく、0.5乃至15μmであることがさらに好ましく、1乃至10μmであることが最も好ましい。
[液晶性分子の配向状態の固定]
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01乃至20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5乃至5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2乃至50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20乃至5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100乃至800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
[偏光膜]
本発明の製造方法によって製造された光学補償シートは、偏光板と貼り合せるか、偏光板の保護フィルムとして使用することで、その機能を著しく発揮する。
光学異方性層(複数の光学異方性層を設ける場合、最も偏光膜側の第1光学異方性層)は、偏光膜上に直接液晶性分子から形成するか、もしくは配向膜を介して液晶性分子から形成することが好ましい。具体的には、上記のような光学異方性層用塗布液を偏光膜の表面に塗布することにより光学異方性層を形成する。その結果、偏光膜と光学異方性層との間にポリマーフィルムを使用することなく、偏光膜の寸度変化にともなう応力(歪み×断面積×弾性率)が小さい薄い偏光板が作成される。本発明に従う偏光板を大型の液晶表示装置に取り付けると、光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い画像を表示する。
偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜、もしくはバインダーと、ヨウ素または二色性色素からなる偏光膜が好ましい。
偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏向性能を発現する。ヨウ素および二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。
現在、市販の偏光子は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。
市販の偏光膜は、ポリマー表面から4μm程度(両側合わせて8μm程度)にヨウ素もしくは二色性色素が分布しており、十分な偏光性能を得るためには、少なくとも10μmの厚みが必要である。浸透度は、ヨウ素もしくは二色性色素の溶液濃度、同浴槽の温度、同浸漬時間により制御することができる。
上記のように、バインダー厚みの下限は、10μmであることが好ましい。厚みの上限は、液晶表示装置の光漏れの観点からは、薄ければ薄い程よい。現在市販の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下が好ましく、20μm以下がさらに好ましい。20μm以下であると、光漏れ現象は、17インチの液晶表示装置で観察されなくなる。
偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。
架橋しているバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーを用いることができる。官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入して得られるバインダーを、光、熱あるいはpH変化により、バインダー間で反応させて偏光膜を形成することができる。
また、架橋剤によりポリマーに架橋構造を導入してもよい。
架橋は一般に、ポリマーまたはポリマーと架橋剤の混合物を含む塗布液を、透明支持体上に塗布したのち、加熱を行なうことにより実施される。最終商品の段階で耐久性が確保できれば良いため、架橋させる処理は、最終の偏光板を得るまでのいずれの段階で行なっても良い。
偏光膜のバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。ポリマーの例としては、前記の配向膜で記載のポリマーと同様のものが挙げられる。
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号および同9−316127号の各公報に記載がある。
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールは、二種以上を併用してもよい。
バインダーの架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1乃至20質量%が好ましい。偏光素子の配向性、偏光膜の耐湿熱性が良好となる。
配向膜は、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をある程度含んでいる。但し、残存する架橋剤の量は、配向膜中に1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このようにすることで、偏光膜を液晶表示装置に組み込み、長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、偏光度の低下を生じない。
架橋剤については、米国再発行特許23297号明細書に記載がある。また、ホウ素化合物(例、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。
二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。
二色性色素の例としては、例えば、発明協会公開技法公技番号2001−1745号、58頁(発行日2001年3月15日)に記載の化合物が挙げられる。
液晶表示装置のコントラスト比を高めるためには、偏光板の透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30乃至50%の範囲にあることが好ましく、35乃至50%の範囲にあることがさらに好ましく、40乃至50%の範囲にあることが最も好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90乃至100%の範囲にあることが好ましく、95乃至100%の範囲にあることがさらに好ましく、99乃至100%の範囲にあることが最も好ましい。
偏光膜と光学異方性層、あるいは、偏光膜と配向膜を接着剤を介して配置することも可能性である。接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基による変性ポリビニルアルコールを含む)やホウ素化合物水溶液を用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。接着剤層の厚みは、乾燥後に0.01乃至10μmの範囲にあることが好ましく、0.05乃至5μmの範囲にあることが特に好ましい。
[偏光板の製造]
偏光膜は、複数のローラー間で連続的に延伸する方法が最も一般的な方法であるが、歩留まりの観点から、バインダーを偏光膜の長手方向(MD方向)に対して、10乃至80度傾斜して延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。
通常の傾斜角度は45゜である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45゜でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
延伸法の場合、延伸倍率は2.5乃至30.0倍が好ましく、3.0乃至10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5乃至5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0乃至10.0倍が好ましい。延伸工程は、斜め延伸を含め数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。斜め延伸前に、横あるいは縦に若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度)を行ってもよい。
延伸は、二軸延伸におけるテンター延伸を左右異なる工程で行うことによって実施できる。上記二軸延伸は、通常のフィルム製膜において行われている延伸方法と同様である。二軸延伸では、左右異なる速度によって延伸されるため、延伸前のバインダーフィルムの厚みが左右で異なるようにする必要がある。流延製膜では、ダイにテーパーを付けることにより、バインダー溶液の流量に左右の差をつけることができる。
以上のように、偏光膜のMD方向に対して10乃至80度斜め延伸されたバインダーフィルムが製造される。
ラビング法では、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されているラビング処理方法を応用することができる。すなわち、膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維を用いて一定方向に擦ることにより配向を得る。一般には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布を用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
ロール自身の真円度、円筒度、振れ(偏芯)がいずれも30μm以下であるラビングロールを用いて実施することが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1乃至90゜が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360゜以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。
長尺フィルムをラビング処理する場合は、フィルムを搬送装置により一定張力の状態で1〜100m/minの速度で搬送することが好ましい。ラビングロールは、任意のラビング角度設定のためフィルム進行方向に対し水平方向に回転自在とされることが好ましい。0〜60゜の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40乃至50゜が好ましい。45゜が特に好ましい。
偏光膜の光学異方性層とは反対側の表面には、ポリマーフィルムを配置する(光学異方性層/偏光膜/ポリマーフィルムの配置とする)ことが好ましい。
ポリマーフィルムは、その最表面が防汚性及び耐擦傷性を有する反射防止膜を設けてなることも好ましい。反射防止膜は、従来公知のいずれのものも用いることが出来る。
[液晶表示装置]
各液晶モードにおける光学異方性層の好ましい形態について、以下で説明する。
(TNモード液晶表示装置)
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(OCBモード液晶表示装置)
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(VAモード液晶表示装置)
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
(その他液晶表示装置)
ECBモードおよびSTNモードの液晶表示装置に対しては、上記と同様の考え方で光学的に補償することができる。
以下に本発明の実施例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
[実施例1]
〔セルロースアシレートフィルムの作製〕
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、30℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
(セルロースアセテート溶液組成)
セルロースアセテート溶液組成(質量部) 内層 外層
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100 100
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8 7.8
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9 3.9
メチレンクロライド(第1溶媒) 293 314
メタノール(第2溶媒) 71 76
1−ブタノール(第3溶媒) 1.5 1.6
シリカ微粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
0 0.8
下記レターデーション上昇剤 1.5 0
Figure 2007069176
得られた内層用ドープ及び外層用ドープを、三層共流延ダイを用いて、0℃に冷却したドラム上に流延した。残留溶剤量が70質量%のフィルムをドラムから剥ぎ取り、両端をピンテンターにて固定して搬送方向のドロー比を110%として搬送しながら80℃で乾燥させ、残留溶剤量が10%となったところで、110℃で乾燥させた。その後、140℃の温度で30分乾燥し、残留溶剤が0.3質量%のセルロースアシレートフィルム(外層:3μm、内層:74μm、外層:3μm)を作製した。得られたセルロースアシレートフィルムの幅は1340mmであり、厚さは80μmであった。
得られたセルロースアシレートフィルムのRe(630)は8nm(流延方向に遅相軸)、Rth(630)は80nmだった。
〔鹸化処理〕
上記ロールフィルムの片面を温度60℃の誘電式加熱ロール上を通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、下記の組成のアルカリ溶液をバーコーターを用いて、14ml/m2塗布し、110℃に加熱したスチーム式遠赤外線ヒーター((株)ノリタケカンパニー製)の下に10秒間滞留させた後、同じくバーコーターを用いて純水を3ml/m2塗布した。このときのフィルム温度は40℃であった。次いでファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返して後に、70℃の乾燥ゾーンに2秒滞留させて乾燥した。
(アルカリ溶液組成)
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.7質量部
イソプロパノール 64.8質量部
プロピレングリコール 14.9質量部
1633O(CH2CH2O)10H(界面活性剤) 1.0重量部
〔配向膜の形成〕
その後さらに、下記の組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28mL/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。次に、形成した膜に、セルロースアシレートフィルムの流延方向と平行な方向に配向するようにラビング処理を実施した(即ち、ラビング軸はセルロースアシレートフィルムの流延方向と平行であった)。
(配向膜塗布液組成)
下記変性ポリビニルアルコール 20質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 1.0質量部
Figure 2007069176
〔光学異方性層の形成〕
(本発明):光学補償シート1
セルロースアシレートフィルムを用いた配向膜上に、下記光学異方性層形成用塗布液を、#4のワイヤーバーを1080回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、30m/分で搬送されている上記ロールフィルムの配向膜面に室温(25℃)で連続的に塗布した。調製後の塗布液はリザーバタンクに蓄積してあり、モレキュラーシーブにて脱水したメチルエチルケトンを随時添加する工程を含む循環配管を経由して一定の液密度をフィードバック制御により随時保持した。またリザーバタンク内は低速で攪拌しており、タンク内に脱水目的のモレキュラーシーブが入ったメッシュ状の容器を固定した。室温から100℃に連続的に加温する工程で、溶媒を乾燥させ、その後、ディスコティックネマティック相をとる135℃の乾燥ゾーンで、ディスコティック液晶化合物層にあたる膜面風速がフィルム搬送方向に平行に1.5m/secとなるようにし、約90秒間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させ、ディスコティック液晶化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の形態にした。以上により光学補償シート1を作製した。
(光学異方性層形成用塗布液の組成)
下記の組成物を、107質量部のメチルエチルケトンに溶解して塗布液を調製した。
(光学異方性層2の塗布液組成)
下記ディスコティック液晶性化合物 41.01質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 4.06質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製) 0.34質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB531−1、イーストマンケミカル社製) 0.11質量部
下記フルオロ脂肪族基含有ポリマー1 0.03質量部
下記フルオロ脂肪族基含有ポリマー2 0.23質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 1.35質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.45質量部
Figure 2007069176
Figure 2007069176
Figure 2007069176
光学補償シート1は、同一の工程条件により、1ロットあたり40,000mの塗布をおこない、これを4ロット製造した。塗布フィルム製造中に、30分ごとにサンプリングした塗布液の含水率をカールフィッシャー法により定量すると、0.10質量%から0.48質量%の範囲で分布していた(暫時増加ではなく、上下に変動)。更に1ロット分は経時変化を観察するために調製後30日間保管した後に塗布をおこなった。保管中はタンク内に先述のモレキュラーシーブを適宜交換し、1日あたり平均1時間低速攪拌することにより、常に含水率が0.7質量%以下となるよう管理し保管した。この経時液を用いて40,000mの塗布フィルム製造をおこなったが、塗布開始時の含水率は0.6質量%であり終了時の含水率は0.8質量%であった。
(比較例):光学補償シート2
リザーバタンク内および循環配管内のモレキュラーシーブを除去して塗布液の含水率を管理しなかったこと以外は光学補償シート1と同様に光学補償シート2を作製した。光学補償シート2も、同一の工程条件により、1ロットあたり40,000mの塗布をおこない、これを4ロット製造した。この際、塗布液の含水率を30分ごとに測定すると、調液直後の含水率は4ロットの平均で0.15質量%であったが、塗布を継続していくにつれ(調液後の時間が経過するにつれ)含水率が上昇し、40,000m塗布時の含水率は平均1.1質量%となっていた。また、更に1ロット分は30日間室温にて保管したのちに40,000mの塗布をおこなった。塗布開始時の含水率は1.3質量%であり終了時の含水率は1.8質量%であった。
(ムラの観察)
光学異方性層のディスコティック液晶性化合物は、支持体から距離が増すにつれて、その円盤面と支持体面のなす角度が増加するようにハイブリッド配向していた。
偏光板をクロスニコル配置とし、得られた光学補償シート1及び光学補償シート2のムラを観察したところ、全ロット・全ロールのいずれにおいても正面、および法線から60度まで傾けた方向から見ても、ムラは検出されなかった。
(光学補償シートの光学特性測定)
各光学補償シートの全ロット、全ロールについて、ディスコティック液晶性化合物からなる光学異方性層の光学特性値をKOBRA21ADH(王子計測機器(株)製)により測定した。表1に示す結果のとおり、本発明の製造方法である、含水率を一定範囲内に保つことにより、ReおよびRthならびに平均チルト角βのロット内変動およびロット間変動が有意に抑制される効果が明らかとなった。ここに平均チルト角βは、光学異方性層の一方の面におけるチルト角(円盤状化合物または棒状化合物における物理的な対象軸が光学異方性層の界面となす角度をチルト角とする)θ1および他方の面のチルト角θ2の平均値である。また、調製後30日を経時した液を用いた製造(第5ロット)においても、他ロットとの差およびロット内のReおよびRthならびに平均チルト角βの変動幅が小さくなっており、本発明の効果が明らかとなった。
Figure 2007069176
[実施例2]
(偏光板の作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
全ロット・全ロールの光学補償シート1及び光学補償シート2を1.5モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
前記のように鹸化処理を行った各光学補償シートを、同じく鹸化処理を行った市販のセルロースアシレートフィルムと組合せて前記の偏光膜を挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せ偏光フィルム1及び偏光フィルム2を全ロット・全ロールについて同様に得た。ここで市販のセルロースアシレートフィルムとしてはフジタックTF80UL(富士写真フイルム(株)製)を用いた。このとき、偏光膜および偏光膜両側の保護膜はロール形態で作製されているため各ロールフィルムの長手方向が平行となっており連続的に貼り合わされる。従って光学補償シートロール長手方向と偏光子吸収軸と平行な方向となった。
(TN液晶セルでの評価)
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(Syncmaster172X、三星電子(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに上記の作製した各偏光フィルムから切り出して得られる偏光板を、光学補償シートが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に貼り付けた。該偏光板の偏光フィルムからの切り出しにおいては,偏光フィルムの幅方向で中央付近を,偏光板の吸収軸方向に対して45°の方向を長軸もしくは短軸として長方形に切り出した。貼り付けにあたっては,もともと貼ってあった偏光板と吸収軸の向きが同じようになるように貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までで視野角を測定した。左右で、コントラスト比(白透過率/黒透過率)が10以上の領域を視野角として求めた。各ロットの測定結果を表2に示すとおり、ロット間ばらつきが本発明により抑制されていることが明らかであった。
Figure 2007069176
以上、実施例にて開示したように、本発明の製造方法によって製造した本発明の光学補償フィルムは、製造ロット内およびロット間の光学特性ばらつきが小さく、結果として得率を向上させることが可能となった。
本発明の光学補償フィルムを用いた楕円偏光板の一実施形態の模式図である。
符号の説明
201 偏光板保護フィルム
202 偏光膜
203 光学補償フィルム
204 透明支持体フィルム
205 光学異方性層

Claims (8)

  1. 有機溶媒に溶解した液晶性化合物を支持体上に塗布し乾燥固化する塗布フィルムの製造方法において、該液晶性化合物溶解液が該塗布時に含有する水分量を1.0質量%以下のあらかじめ設定された所定の含水率以下に制御することを特徴とする塗布フィルムの製造方法。
  2. 上記所定の含水率が0.7質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の塗布フィルムの製造方法。
  3. 上記液晶性化合物溶解液が、水酸基、エーテル基、カルボニル基、エステル基及びアミノ基のうち少なくともいずれか一つの官能基を含むフッ素化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布フィルムの製造方法。
  4. 上記支持体がプラスチックフィルム上に配向膜を塗布したものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塗布フィルムの製造方法。
  5. 上記塗布時の温度Tc、上記乾燥時の最高温度Td、上記液晶性化合物のネマチック相転移温度TN及び等方相転移温度TISOが、下記関係式(I)を満足することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の塗布フィルムの製造方法。
    関係式(I) Tc < TN < Td < TISO
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の塗布フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする光学補償フィルム。
  7. 請求項6に記載の光学補償フィルムを使用したことを特徴とする偏光板。
  8. 請求項6に記載の光学補償フィルム又は請求項7に記載の偏光板を使用したことを特徴とする液晶表示装置。
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JP2012012465A (ja) * 2010-06-30 2012-01-19 Sumitomo Chemical Co Ltd 液晶ポリエステル液状組成物

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