JP2007063342A - 耐磨耗性難燃樹脂組成物及び絶縁電線 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、自動車用の電線などに用いて、有用な耐磨耗性難燃樹脂組成物を提供するものである。
【解決手段】 かゝる本発明は、破断点伸び500%以上、メルトマスフローレート(MFR)0.5g/10min(230℃、2.16Kg)以下のホモポリプロピレン(PP)60〜95質量部と、破断点伸び500%以上、MFR0.25g/10min(190℃、2.16Kg)以下の低密度ポリエチレン5〜40質量部の範囲で混合されるベース樹脂100質量部と、シリコン処理した金属水酸化物80〜120質量部と、酸化防止剤0.5〜4.0質量部と、銅害防止剤0.25〜2.0質量部とからなり、電子線照射により架橋させる耐磨耗性難燃樹脂組成物にあり、これにより、より優れた特性、即ち、耐熱性、耐磨耗性、難燃性、適度の柔軟性などが得られる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、例えば自動車用の電線などに用いて有用な耐磨耗性難燃樹脂組成物及びこれを用いた絶縁電線に関するものである。
近年、自動車用の電線(ケーブルも含む)では、耐熱性、耐磨耗性、難燃性などの特性が要求されてきている。従来、ポリエチレン(PE)系樹脂組成物を主に用いた自動車用電線の場合、コスト面や難燃性などの諸特性において優れているという理由から幾つかの種類のものが提案されている。しかし、PE系樹脂組成物を用いた電線では、耐熱性、耐磨耗性の点において不十分なため、近年ポリプロピレン(PP)系樹脂組成物を用いた自動車用の電線が使用され始めてきている。例えば、PP系樹脂を樹脂成分の一部として重合させた組成物(プロピレン−エチレンブロックコポリマー)を用いた自動車用電線の被覆材料も提案されている(引用文献1)。
特開2000−86858号公報
ところが、近年の自動車用電線に対する要求仕様は厳しく、上記したブロックコポリマーを用いた自動車用電線の被覆材料の特性では、上記要求仕様を十分満たせない状況となってきている。さらに、自動車用電線に対する要求仕様には、良好な耐熱性、耐磨耗性、難燃性などの他に、配線時の取り扱いにおいて、適度の柔軟性も必要とされる。特に、後述するように、ホモPP系樹脂成分が含まれる樹脂組成物の場合、剛性が高く、柔軟性が損なわれ易い傾向となるからである。
そこで、本発明者等が、良好な耐熱性、耐磨耗性、難燃性などと共に、適度の柔軟性を有する自動車用電線の被覆材料を求めて、種々の試験を行った。
その結果、特定の特性を有する、ホモポリプロピレン(ホモPP)系樹脂60〜95質量部と、特定の特性を有する、低密度ポリエチレン(LDPE)5〜40質量部の範囲で混合されるベース樹脂100質量部に対して、シリコーン処理された金属水酸化物の難燃剤80〜120質量部と、酸化防止剤0.5〜4.0質量部と、銅害防止剤0.25〜2.0質量部とからなり、電子線照射により架橋させることにより、所望な特性の耐磨耗性難燃樹脂組成物が得られることを見い出した。特に酸化防止剤と銅害防止剤の併用添加により、電線被覆として用いた場合、高温下でも樹脂の変色や劣化が抑制できるようになり、結果として、耐熱性の向上が得られることが分った。勿論、この耐磨耗性難燃樹脂組成物を被覆することにより、上記所望の仕様を満たした自動車用の電線が得られることも分かった。
本発明は、このような観点に立ってなされたもので、基本的には、ホモPP系樹脂とLDPEからなるベース樹脂に対して、所定量の難燃剤と酸化防止剤と銅害防止剤とを添加することにより、優れた特性の耐磨耗性難燃樹脂組成物を提供し、また、これを用いた絶縁電線(ケーブルも含む)を提供するものである。
請求項1記載の本発明は、破断点伸び500%以上、メルトマスフローレート(MFR)0.5g/10min(230℃、2.16Kg)以下のホモポリプロピレン(PP)60〜95質量部と、破断点伸び500%以上、MFR0.25g/10min(190℃、2.16Kg)以下の低密度ポリエチレン5〜40質量部の範囲で混合されるベース樹脂100質量部と、シリコン処理した金属水酸化物80〜120質量部と、酸化防止剤0.5〜4.0質量部と、銅害防止剤0.25〜2.0質量部とからなり、電子線照射により架橋させることを特徴とする耐磨耗性難燃樹脂組成物にある。
請求項2記載の本発明は、前記電子線照射により、破断点伸び150%以上(引っ張り速度200mm/min)で、45°傾斜燃焼試験による難燃性に合格し、かつ、耐磨耗性試験のスクレープ回数が150回以上であることを特徴とする請求項1記載の耐磨耗性難燃樹脂組成物にある。
請求項3記載の本発明は、前記金属水酸化物が水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1又は2記載の耐磨耗性難燃樹脂組成物にある。
請求項4記載の本発明は、前記ベース樹脂100質量部に架橋助剤を5質量部以下添加することを特徴とする請求項1、2又は3記載の耐磨耗性難燃樹脂組成物。にある。
請求項5記載の本発明は、前記請求項1、2又は3記載の組成物を、被覆したことを特徴とする絶縁電線にある。
本発明によると、上記した構成により、良好な耐熱性、耐磨耗性、難燃性などと共に、適度の柔軟性を有する優れた耐磨耗性難燃樹脂組成物が得られる。従って、また、これを電線被覆材料に用いれば、優れた絶縁電線、特に自動車用の電線が得られる。
本発明で用いるホモポリプロピレン(ホモPP)系樹脂は、ランダムPPやブロックPPに比較して、より剛性の高い樹脂であり、具体的に用いるものの特性として、破断点伸び500%以上(引っ張り速度200mm/min)、MFR0.5g/10min(230℃、2.16Kg)以下のものが好ましい。このようなホモPP系樹脂の市販品としては、例えば、三井化学社製、E111G(商品名)などが挙げられる。
本発明で用いる低密度ポリエチレン(LDPE)は、高密度ポリエチレン(HDPE)に比較して、柔らかい樹脂であり、具体的に用いるものの特性として、破断点伸び500%以上(引っ張り速度200mm/min)、MFR0.25g/10min(190℃、2.16Kg)以下のものが好ましい。このようなホモPP系樹脂の市販品としては、例えば、宇部興産社製、UBEC150(商品名)などが挙げられる。
このLDPE添加の目的は、ベース樹脂の柔軟化が期待できる他に、この添加により、ベース樹脂の難燃剤、即ち、金属水酸化物に対する相溶性の向上にある。
本発明では、上記ホモPP系樹脂60〜95質量部に対して、LDPEを5〜40質量部の範囲で混合して、ベース樹脂100質量部を得ている。この理由は、LDPEの添加量が5質量部未満では、所望の柔軟化効果が得られず、逆に、40質量部を超えるようになると、ホモPP系樹脂量が相対的に減少するため、所望の剛性による良好な耐熱性、耐磨耗性などが得られなくなるからである。
本発明で用いる難燃剤としては、金属水酸化物が挙げられ、特にシリコーン処理された金属水酸化物の使用が好ましい。シリコーン処理されたものの場合、シリコーン無処理のものに比較して、所望の難燃効果を得るにおいて、金属水酸化物の添加量が少なくて済む。このため、添加量の多いことによる弊害、例えば、機械的特性の低下などを抑制することができる。
本発明では、この難燃剤を、ベース樹脂100質量部に対して、80〜120質量部としてある。通常シリコーン無処理の金属水酸化物を難燃剤として用いた場合、所望の難燃性を得るためには、ベース樹脂100質量部に対して、120質量部を超える量を添加する必要があるが、これに比較して、少ない添加量ということができる。その理由としては、シリコーン処理効果による相乗効果が挙げられる。
しかし、80質量部未満では、所望の難燃性が得られず、下限の添加量を80質量部とした。一方、添加量が多くなるほど、樹脂組成物の機械的特性などが低下するようになるから、その上限値を120質量部とした。
この難燃剤の金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができるが、水酸化マグネシウム、特にシリコーン処理された水酸化マグネシウムの使用が好ましい。この市販品としては、例えば、キスマ5P(商品名、協和化学社製)を挙げることができる。
本発明では、特に酸化防止剤と銅害防止剤とを併用している。その理由は、上述したように、この併用添加により、電線被覆として用いた場合、高温下でも樹脂の変色や劣化が抑制できるようになり、結果として、耐熱性の向上が得られるようになるからである。
酸化防止剤の添加量を、ベース樹脂100質量部に対して、0.25〜2.0質量部とし、銅害防止剤の添加量を、ベース樹脂100質量部に対して、0.5〜4.0質量部としたのは、それぞれの下限値未満では、所望の効果が得られず、また、それぞれの上限値を上記のように定めたのは、ブルームの問題やコスト上昇などの問題が生じるようになるからである。
酸化防止剤の市販品としては、例えば、フェノール系酸化防止剤である、イルガノックス1010(商品名、チバスペシャルティ・ケミカルズ社製)などが挙げられる。また、銅害防止剤の市販品としては、例えば、トリアゾール系の銅害防止剤である、CDA−1(商品名、旭電化工業社製)などが挙げられる。
このような配合からなる本発明の樹脂組成物の場合、例えば、絶縁電線の絶縁体などとして被覆する際には、電子線照射により架橋させる。電子線照射は大気圧中で行ってもよいが、より好ましくは、適当な密閉手段を講じて窒素雰囲気中で行うのが望ましい。そして、その照射強度は、例えば、絶縁体の被覆厚を0.2mmとした場合、0.5Mrad程度とするのが好ましい。この電子線照射による架橋により、組成物特性の向上が得られる。また、電子線照射を窒素雰囲気中で行った場合、電子線照射によって生じる酸素ラジカル(大気中酸素及び溶存酸素)による樹脂の劣化を防ぐことが可能となる。
この電子線照射による架橋にあたって、好ましくは架橋助剤を添加するとよい。この架橋助剤としては、特に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)の使用が望ましい。このとき、少量のハイドロキノン(HQ)を併用するとよい。HQはTMPTが熱により自己重合するのを抑制する働きがある。TMPTの市販品としては、例えば、新中村化学工業社製のNKエステルTMPT(商品名)が挙げられる。
そして、架橋助剤の添加量としては、ベース樹脂100質量部に対して、5質量部以下、好ましくは2〜5質量部とするとよい。あまり少量であると、架橋促進効果が得られず、逆に5質量部を超えるようになると、ブルーム(樹脂からの染み出し)が問題となるからである。また、HQの併用添加量としては、特に限定されないが、TMPTに対して25000ppm程度とするのが望ましい。
また、本発明では、上記組成物に対して、必要により、適宜その他の添加剤を添加することができる。例えば白化防止用の水素添加したゴム材料、顔料などである。
〈実施例、比較例〉
表1〜表2に示した配合からなる、本発明の耐磨耗性難燃樹脂組成物(実施例1〜10)と、本発明の条件を欠く樹脂組成物(比較例1〜9)により、サンプルの絶縁電線を製造した。なお、サンプルの絶縁電線は、外径φ0.9mmの導体上に厚さ0.2mmの絶縁体として、上記各組成物を押出被覆し(被覆外径φ1.3mm)、窒素雰囲気中で電子線照射を行った。電子線照射の強度は0.5Mradであった。また、表中の配合材料の数値は質量部数を示す。なお、用いたホモPP系樹脂は三井化学社製のE111G(商品名)、LDPEは宇部興産社製のUBEC150(商品名)、難燃剤はシリコーン処理された金属水酸化物の水酸化マグネシウムである、キスマ5P(商品名、協和化学社製)、酸化防止剤は、イルガノックス1010(商品名、チバスペシャルティ・ケミカルズ社製)、銅害防止剤は、CDA−1(商品名、旭電化工業社製)、架橋助剤は25000ppmのHQを併用したTMPTである、NKエステルTMPT(商品名、新中村化学工業社製)である。
このようにして得られた各サンプルの絶縁電線に対して、以下のような物性評価、即ち、「耐磨耗性」、「破断点伸び」、「難燃性」、「架橋助剤の染み出しの有無」、「銅テープによる樹脂の変色・劣化の有無」、及び「酸化防止剤のブルームの有無」を行い、その結果を、同表1〜表2に併記した。
「耐磨耗性」、これはISO6722の耐磨耗試験のブレード往復法に準じて行った。ここで、φ0.45mmのニードル径、荷重720gである。そして、繰り返し試験を行い、被覆が剥離されて導体との導通が生じるまでのスクレープ回数が150回以上を合格とし、150回未満は不合格とした。
「破断点伸び」、これは引っ張り試験(JIS−C3005の引っ張り試験に準拠)により、引っ張り速度200mm/minとして、絶縁体及びシースの破断点伸びを求めた。そして、破断点伸びが150%以上の場合を合格とし、「○」で表示し、破断点伸びが150%未満の場合を不合格とし、「×」で表示した。
「難燃性」、これはISO6722の45°傾斜燃焼試験に準じて行った。試験は全てのサンプルについて5回行い、70秒以内に自己消化のときの本数を分子で表した。そして、5本中5本全てで70秒以内に自己消化したとき合格(5/5)とし、それ以外のときは不合格(1/5〜4/5)とした。
「架橋助剤の染み出しの有無」、これは各サンプルを目視により観察した。そして、5本中5本全て染み出し異常なしのときを合格(5/5)とし、それ以外のときは不合格(1/5〜4/5)とした。
「銅テープによる樹脂の変色・劣化の有無」、これは各サンプルを銅テープに接触させ、この状態で恒温槽(140℃)中に投入し、625時間放置した。そして、難燃樹脂組成物の被覆と導体の接触部分を目視により観察した。そして、5本中5本全て変色や劣化のない場合を合格とし、「○」で表示し、いずれかのもので変色や劣化がある場合を不合格とし、「×」で表示した。
「酸化防止剤のブルームの有無」、これは各サンプルを目視により観察した。そして、5本中5本全て染み出し異常なしのときを合格(5/5)とし、それ以外のときは不合格(1/5〜4/5)とした。
Figure 2007063342
Figure 2007063342
上記表1から、本発明に係る耐磨耗性難燃樹脂組成物を用いた絶縁電線(実施例1〜10)にあっては、すべての特性、即ち、耐磨耗性、破断点伸び、難燃性、架橋助剤の染み出しの有無、銅テープによる樹脂の変色・劣化の有無、及び酸化防止剤のブルームの有無について、良好な結果が得られていることが判る。
これに対して、表2から、本発明の要件を欠く絶縁電線(比較例1〜9)では、いずれかの特性において問題があることが判る。なお、比較例1はLDPE無添加のない場合、比較例2はLDPEの添加量が多い場合(50質量部)、比較例3は金属水酸化物の添加量が少ない場合(60質量部)、比較例4は金属水酸化物の添加量が多い場合(150質量部)、比較例5は架橋助剤のTMPTが多い場合(7質量部)、比較例6は酸化防止剤が少ない場合(0.3質量部)、比較例7は銅害防止剤が少ない場合(0.1質量部)、比較例8は酸化防止剤が多い場合(6質量部)、比較例9は銅害防止剤が多い場合(3質量部)である。

Claims (5)

  1. 破断点伸び500%以上、メルトマスフローレート(MFR)0.5g/10min(230℃、2.16Kg)以下のホモポリプロピレン(PP)60〜95質量部と、破断点伸び500%以上、MFR0.25g/10min(190℃、2.16Kg)以下の低密度ポリエチレン5〜40質量部の範囲で混合されるベース樹脂100質量部と、シリコン処理した金属水酸化物80〜120質量部と、酸化防止剤0.5〜4.0質量部と、銅害防止剤0.25〜2.0質量部とからなり、電子線照射により架橋させることを特徴とする耐磨耗性難燃樹脂組成物。
  2. 前記電子線照射により、破断点伸び150%以上(引っ張り速度200mm/min)で、45°傾斜燃焼試験による難燃性に合格し、かつ、耐磨耗性試験のスクレープ回数が150回以上であることを特徴とする請求項1記載の耐磨耗性難燃樹脂組成物。
  3. 前記金属水酸化物が水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1又は2記載の耐磨耗性難燃樹脂組成物。
  4. 前記ベース樹脂100質量部に架橋助剤を5質量部以下添加することを特徴とする請求項1、2又は3記載の耐磨耗性難燃樹脂組成物。
  5. 前記請求項1、2又は3記載の組成物を、被覆したことを特徴とする絶縁電線。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN103554651A (zh) * 2013-09-11 2014-02-05 浙江世博新材料有限公司 一种含氨基羧酸型抗铜剂聚丙烯复合材料及其制备方法
CN114388175A (zh) * 2020-10-05 2022-04-22 矢崎总业株式会社 双绞线和包括该双绞线的电缆

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