JP2007057977A - 平版印刷版原版 - Google Patents

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Abstract

【課題】 感度と現像ラチチュード及びそれらの経時的安定性に優れたダイレクト製版用の赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】 支持体上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂、環状酸無水物及びカルボン酸類を有機溶剤に溶解した塗布液を塗布することで形成された下層、及び、アルカリ可溶性樹脂及び現像抑制剤を含有し、露光によりアルカリ水溶液に対する溶解性が増大するポジ型記録層を、有することを特徴とする。カルボン酸類は、2塩基酸であることが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は平版印刷版原版に関するものであり、特にコンピュータ等のデジタル信号から直接製版できる、いわゆるダイレクト製版用の赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版に関する。
近年におけるレーザの発展は目ざましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザ・半導体レーザは高出力かつ小型の物が容易に入手できる様になっている。コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザは非常に有用である。
赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版は、アルカリ水溶液可溶性のバインダー樹脂と、光を吸収し熱を発生する赤外線吸収染料(IR染料)等とを必須成分とし、IR染料等が、非露光部(画像部)では、バインダー樹脂との相互作用によりバインダー樹脂の溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働き、露光部(非画像部)では、発生した熱によりIR染料等とバインダー樹脂との相互作用が弱まりアルカリ現像液に溶解して平版印刷版を形成する。
しかしながら、このような赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料では、様々な使用条件における非露光部(画像部)の現像液に対する耐溶解性と、露光部(非画像部)の溶解性との間の差が未だ十分とは言えず、使用条件の変動による現像過剰や現像不良が起きやすいという問題があった。また、取扱い時に表面に触れる等によりわずかに表面状態が変動した場合にも、現像時に非露光部(画像部)が溶解してキズ跡状となり、耐刷の劣化や着肉性不良を引き起こすという問題があった。
このような問題は、赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料とUV露光により製版するポジ型平版印刷版材料との製版メカニズムの本質的な相違に由来する。すなわち、UV露光により製版するポジ型平版印刷版材料では、アルカリ水溶液可溶性のバインダー樹脂と、オニウム塩やキノンジアジド化合物類とを必須成分とするが、このオニウム塩やキノンジアジド化合物類は、非露光部(画像部)でバインダー樹脂との相互作用により溶解阻止剤として働くだけでなく、露光部(非画像部)では、光によって分解して酸を発生し、溶解促進剤として働くという二つの役割を果たすものである。
これに対し、赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料におけるIR染料等は、非露光部(画像部)の溶解阻止剤として働くのみで、露光部(非画像部)の溶解を促進するものではない。従って、赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料において、非露光部と露光部との溶解性の差を出すためには、バインダー樹脂として、あらかじめアルカリ現像液に対する溶解性の高いものを使用せざるを得ず、現像前の状態が不安定なものとなる。
さらに、このような平版印刷版原版では、親水性支持体上にインク受容性の記録層を形成するため、支持体界面における記録層の密着性が不安定となり、未露光部(画像部)の耐刷性にも影響を及ぼすという問題があった。
以上の問題を解決するため種々の提案がなされている。例えば、画像のディスクリミネーションの改良をするため膜中の赤外吸収剤を偏在化させる方法が提案されているが(例えば、特許文献1参照。)、これによりディスクミリネーションの改良は見られるものの、記録層表面における耐傷性の問題を解決するには至っていない。また、スルホンアミド系のアクリル樹脂を含む下層と、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂及び光熱変換剤を含み露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増大する上層と、からなる記録層を設けた平版印刷版原版が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この平版印刷版原版は、露光領域において記録層が除去されると、アルカリ可溶性に優れた下層が露出することになり、アルカリ現像液により、所望されない残膜などが速やかに除去されるという効果や、該下層が断熱層として機能し、支持体への熱拡散が効果的に抑制されるという効果を奏するものである。また、さらに、下層にポリマーをブレンドして耐薬品性を持たせる方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかし、これら重層構造を形成するためには、両層に用いる樹脂として互いに特性の異なるものを選択せざるを得ず、これらの相互作用性が低下するという問題、或いは、下層の現像性が良好であることに起因して、現像時において画像部における下層部の両端部に所望されない溶解が生じて耐刷性や画像再現性に影響を及ぼすという懸念があり、重層構造の利点を十分に生かすためには、なお改良の余地があった。
特開2001−281856公報 特開平11−218914号公報 国際公開第01/46318号パンフレット
本発明の目的は、感度と現像ラチチュード及びそれらの経時的安定性に優れたダイレクト製版用の赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版を提供することにある。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、支持体上に、特定の酸と酸無水物とを有機溶剤に溶解させて共存させてなる下層を設けることにより、上記問題点を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂(以下、適宜、単に「アルカリ可溶性樹脂」と称する)、環状酸無水物及びカルボン酸類を有機溶剤に溶解した塗布液を塗布することで形成された下層、及び、アルカリ可溶性樹脂及び現像抑制剤を含有し、露光によりアルカリ水溶液に対する溶解性が増大するポジ型記録層を、有することを特徴とする。
ここで、下層に含まれるカルボン酸類としては、2塩基酸であることが好ましく、さらに、カルボン酸類が、下層中に共存する環状酸無水物の加水分解物と同じ構造を有することが好ましい態様である。また、下層には赤外線吸収剤を含有することが好ましい。
本発明の平版印刷版原版では、支持体上に、「下層」と「ポジ型記録層」とを、この順に有することを要するが、所望により他の層、例えば、表面保護層、下塗り層、バックコート層などを本発明の効果を損なわない限りにおいて設けることができる。
本発明において「下層」に含有されるカルボン酸類は、低分子化合物であり、その分子量としては600以下の化合物が好ましく、さらに好ましくは300以下である。
下層の好ましい態様としては、前記カルボン酸類と環状酸無水物とを有機溶剤に溶解し、さらに、必須成分であるアルカリ可溶性樹脂と赤外線吸収剤とを加えて調製した下層塗布液を、支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される態様が挙げられる。
本発明の作用は明確ではないが、以下のように推定される。
環状無水物は、アルカリ現像液に対する溶解スピードが小さく、下層に添加すると未露光部の耐現像性に優れ、現像ラチチュードの向上には有用であるものの、感度向上効果は期待できない。しかしながら、下層塗布後2ヶ月程度経過すると、下層に含まれる水分で加水分解された状態となり、徐々に感度が向上する。他方、環状酸無水物が加水分解した構造を有するカルボン酸類は記録層中においてその酸基により高感度化を計れるが、経時的に記録層中の有機溶剤の量が減少するに従い低感度化する。このため、下層中に両者を、有機溶剤に溶解させて均一に共存させることで、双方の利点が複合され、高感度化、現像ラチチュードの向上、経時的な感度や現像ラチチュードの安定性が達成されるものと考えられる。
すなわち、未露光部では、カルボン酸由来の酸基は下層においてマトリックスを形成するアルカリ可溶性樹脂との間で相互作用を形成し、耐アルカリ現像性が向上し、特にサイド側からの浸透が効果的に抑制されることで画像部のアルカリ水溶液によるダメージを抑えることができ、露光部においては、このような相互作用が解除され、酸基に起因する優れたアルカリ現像性が発現するが、本発明においては、下層中にカルボン酸類と環状酸無水物とを共存させることで、反応に関与するカルボン酸由来の酸基の量が安定し、現像ラチチュードと感度の経時的な安定性が達成される。この特性は、特に、画像面積の狭い高精細画像において顕著であり、本発明の平版印刷版原版は、近年のCTP化に伴い使用が増加しているFMスクリーンなどの高精細画像に特に有用である。本発明における高精細画像としては、210線以上のAMスクリーン、30μm以下の単位画素で構成されるFMスクリーン〔市販のFMスクリーンとしては、例えば、Staccato(商品名:Creo社製)、FAIRDOT、Randot(商品名:大日本スクリーン社製)、Co−Reスクリーン(商品名:富士写真フイルム製)などが挙げられる。〕、前記AMスクリーン、FMスクリーンのハイブリッドスクリーンなどが挙げられ、これらのスクリーンによる画像形成に、本発明の技術が好適に用いることができる。
本発明によれば、感度と現像ラチチュードに優れ、且つ、感度と現像ラチチュードが経時的に低下しない、安定性に優れたダイレクト製版用の赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂、赤外線吸収剤、環状酸無水物及びカルボン酸類を有機溶剤に溶解した塗布液を塗布することで形成された下層、及び、アルカリ可溶性樹脂及び現像抑制剤を含有し、露光によりアルカリ水溶液に対する溶解性が増大するポジ型記録層を、有することを特徴とする。
以下、本発明の平版印刷版原版の層構成ついて詳細に説明する。
<下層>
本発明における下層は、(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂、(C)環状酸無水物及び(D)カルボン酸類を含有し、(C)環状酸無水物及び(D)カルボン酸類を有機溶剤に溶解して調製した下層用塗布液を塗布することで形成される。また、下層には、(B)赤外線吸収剤を含むことが好ましい。
〔(C)カルボン酸類〕
まず、下層の特徴的な成分である(C)カルボン酸類について説明する。
本発明に使用しうるカルボン酸類は、有機カルボン酸であり、モノカルボン酸でも、ジカルボン酸でもよい。また、カルボキシ基が連結している有機基の部分は、環構造を有するものが好ましい。
カルボン酸類としては、具体的には、例えば、トリフルオロ酢酸、トリクロル酢酸、2,6−ジクロル安息香酸、ピクリン酸、安息香酸、イソフタル酸、蓚酸、マレイン酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロフタル酸、テトラクロルフタル酸、マレイン酸、クロルマレイン酸、α−フェニルマレイン酸、コハク酸、ピロメリット酸、3−ヒドロキシフタル酸、3−メチルフタル酸、3−フェニルフタル酸、トリメット酸、フェニルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、ジクロロマレイン酸、クロロマレイン酸、1,4−シクロヘキセン−2,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸などが挙げられ、なかでも本発明の効果を高める観点から、2塩基酸類であるフタル酸などが好ましい。
下層塗布液には、カルボン酸類は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。下層に含まれるカルボン酸類は、固形分換算で0.3〜15質量%の範囲であることが、効果の観点から好ましく、さらに好ましくは1〜10質量%の範囲である。
〔(D)環状酸無水物〕
次に、(D)環状酸無水物について説明する。
(D)環状酸無水物は、分子内に環状構造を有する化合物であり、そのカルボニル基の安定性を増すことで分解速度を制御し、保存経時において適当な速度で分解して酸を発生する機能を有する。本発明に使用しうる環状酸無水物としては、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている化合物を用いることができる。具体的には、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸、3−ヒドロキシ無水フタル酸、3−メチル無水フタル酸、3−フェニル無水フタル酸、無水トリメット酸、フェニル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸、ジクロロ無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸等が挙げられ、なかでも加水分解速度の観点から、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸が好ましい。
下層塗布液には、環状酸無水物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。下層に含まれる環状酸無水物は、固形分換算で0.1〜25質量%の範囲であることが好ましい。
両者の好ましい組合せについていえば、(C)カルボン酸類が、共存する(D)環状酸無水物の加水分解物と同じ構造を有するカルボン酸であること、例えば、(D)成分として無水フタル酸を用いた場合には、(C)成分としてフタル酸を用いることが好ましく、同様に、(D)無水マレイン酸と(C)マレイン酸、(D)無水コハク酸と(C)コハク酸、(D)無水ピロメリット酸と(C)ピロメリット酸、などの組合せが好ましく挙げられる。
両者の比率は、(C)カルボン酸類の含有量:(D)環状酸無水物の含有量が、1:9〜7:3の範囲であることが好ましく、また、下層中におけるカルボン酸類と環状酸無水物の合計は、固形分換算で、0.4〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がさらに好ましく、最も好ましくは5〜15質量%の範囲である。
前記(C)カルボン酸類と(D)環状酸無水物とを下層に含有させるにあたっては、下層の塗布液として(D)環状酸無水物と(C)カルボン酸類の両方を有機溶剤に溶解した塗布液を調整し、これを支持体上に塗布する方法をとる。
下層用塗布液の調製に用いられる有機溶剤としては、メチルエチルケトン、1−メトキシ-2-プロパノール、γ−ブチロラクトン、エタノール、ジメチルスルホキシド、1−メトキシ−2−プロピルアセテートなどが好ましく挙げられる。
下層用塗布液の調製にあたっては、上記(C)成分、(D)成分とともに、以下に詳述する下層の必須成分である(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂及び(B)赤外線吸収剤を同時に配合することができる。
〔(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂〕
本発明に係る(A)アルカリ可溶性樹脂は、側鎖又は主鎖にアルカリ可溶性基を有する樹脂であれば、特に制限はなく、これらを適宜選択して用いることができる。
アルカリ可溶性樹脂の例としては、下記(1)〜(6)に挙げる酸性基を高分子の主鎖及び/又は側鎖中に有するものが挙げられる。
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
(4)カルボン酸基(−CO2H)
(5)スルホン酸基(−SO3H)
(6)リン酸基(−OPO32
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂の中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基および(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく、特に、(1)フェノール基または(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が、アルカリ性現像液に対する溶解性、現像ラチチュード、膜強度を十分に確保する点から最も好ましい。
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−、またはm−/p−混合のいずれでもよい)とホルムアルデヒドとの縮重合体等のノボラック樹脂、およびピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。さらに、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を挙げることもできる。或いは、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を用いることもできる。
フェノール基を有する化合物としては、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、またはヒドロキシスチレン等が挙げられる。
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物が挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基、またはビニロキシ基と、置換あるいはモノ置換アミノスルホニル基または置換スルホニルイミノ基と、を分子内に有する低分子化合物が好ましく、例えば、下記一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2007057977
〔式中、X1、X2は、それぞれ独立に−O−または−NR7を表す。R1、R4は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R2、R5、R9、R12、及び、R16は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R7、及び、R13は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6、R17は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10、R14は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R11、R15は、それぞれ独立に単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Y1、Y2は、それぞれ独立に単結合又はCOを表す。〕
一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物のうち、本発明の重層感材型印刷版原版に用いられる樹脂組成物では、特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、活性イミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、下記構造式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物を挙げることができる。
Figure 2007057977
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
(4)カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
(5)スルホン酸基を有するアルカリ可溶性高分子としては、例えば、スルホン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げることができる。
(6)リン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、リン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
前記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する最小構成単位は、特に1種類のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最小構成単位を2種以上、または異なる酸性基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
前記共重合体は、共重合させる(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する化合物が共重合体中に10モル%以上含まれているものが好ましく、20モル%以上含まれているものがより好ましい。10モル%未満であると、現像ラチチュードを十分に向上させることができない傾向がある。
前記酸性基を有する重合性モノマーと共重合させるモノマー成分としては、例えば、下記(m1)〜(m12)に挙げるモノマーを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(m10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(m12)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
本発明における(A)アルカリ可溶性樹脂の好ましい例としては、(1)フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、又は(3)活性イミド基を有する重合性モノマーの単独重合体或いは共重合体が好ましく挙げられ、特にm−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等の、スルホンアミド基を有する重合性モノマーの単独重合体或いは共重合体のものが好ましい。
(A)アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は2,000以上、数平均分子量が500以上のものが好ましい。更に好ましくは、重量平均分子量が5,000〜300,000で、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものが挙げられ、アルカリ可溶性樹脂がフェノールホルムアルデヒド樹脂、クレゾールアルデヒド樹脂等の樹脂である場合には、重量平均分子量が500〜20,000であり、数平均分子量が200〜10,000のものが好ましい。
これらアルカリ可溶性樹脂は、それぞれ1種類或いは2種類以上を組合せて使用してもよく、下層全固形分中、50〜95質量%、好ましくは55〜90質量%、特に好ましくは65〜85質量%の範囲で用いられる。
〔(B)赤外線吸収剤〕
本発明におけるポジ型記録層或いは下層に、赤外線を吸収して熱を発生させるための(B)赤外線吸収剤を用いることが必要である。赤外線吸収剤はポジ型記録層、下層のいずれに含有されても、その双方に含有されてもよいが、効果の観点からは、少なくとも下層に赤外線吸収剤を含有することが好ましい。ここで用いうる赤外線吸収剤としては、光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に吸収波長域の制限はなく用いることができるが、入手容易な高出力レーザへの適合性の観点から、波長700nm〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料として知られる種々の染料又は顔料が好ましく挙げられる。下層に赤外線吸収剤を含むことにより、下層に隣接して形成されるポジ型記録層の感度を向上させ、また、下層自体に未露光部における溶解抑制能、露光部における溶解抑制解除性が発現し、現像ラチチュード向上の観点から好ましい。
このような赤外線吸収剤としては、公知の種々の顔料や染料等が好適に挙げられる。前記顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
前記顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
前記顔料は、表面処理をせずに用いてもよく、表面処理をほどこして用いてもよい。該表面処理の方法には樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。前記表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
前記顔料の粒径としては、0.01〜10μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましく、0.1〜1μmが特に好ましい。前記顔料の粒径が、0.01μm未満の場合には、分散物の感光層塗布液中での安定性の点で好ましくないことがあり、一方、10μmを超える場合には、感光層の均一性の点で好ましくない。
前記顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。前記分散には、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等の分散機が用いられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
前記染料としては、市販の染料および文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが挙げられ、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料などの染料が挙げられる。前記顔料、又は染料のうち赤外光、又は近赤外光を吸収する顔料・染料が、赤外光又は近赤外光を発光するレーザでの利用に適する点で、特に好ましい。
前記赤外光、又は近赤外光を吸収する顔料としては、カーボンブラックが好適に用いられる。また、前記赤外光、又は近赤外光を吸収する染料としては、例えば特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、前記染料としては、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物が好ましく、市販品としては、エポリン社製のEpolight III−178、EpolightIII−130、Epolight III−125、EpolightV−176A等が特に好ましく用いられる。
また、前記染料として、特に好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。さらに、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい一つの例として下記一般式(i)で示されるシアニン色素が挙げられる。
Figure 2007057977
一般式(i)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。Xa-は後述するZ1-と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
Figure 2007057977
1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Z1-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(i)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZ1-は必要ない。好ましいZ1-は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオ
ンである。
この下層における(B)赤外線吸収剤の添加量としては、感度と現像性とのバランスの観点から、下層を構成する全固形分に対し0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。前記染料の場合には、0.5〜10質量%が特に好ましく、顔料の場合には、0.1〜10質量%が特に好ましい。
<ポジ型記録層>
次に、ポジ型記録層について説明する。ポジ型記録層は、(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂、及び、該樹脂のアルカリ可溶性を抑制する溶解抑制剤を含み、赤外線レーザ露光により溶解抑制能が解消し、露光領域におけるアルカリ現像液に対する可溶性が増大することで画像形成する。
[(A)アルカリ可溶性樹脂]
本発明において、ポジ型記録層に使用される水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂は、高分子中の主鎖および/または側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体またはこれらの混合物を包含する。
本発明におけるポジ型記録層に使用されるアルカリ可溶性樹脂は、従来公知のものであれば特に制限はなく、先に下層成分として説明した(A)アルカリ可溶性樹脂と同様のものを好適に使用することができる。好ましい例もまた同様である。
(A)アルカリ可溶性樹脂は、それぞれ1種類或いは2種類以上を組合せて使用してもよい。アルカリ可溶性樹脂の含有量としては、ポジ型記録層全固形分中、30〜99質量%が好ましく、40〜95質量%であることがより好ましく、特に好ましくは50〜90質量%の範囲である。アルカリ可溶性樹脂の添加量が上記範囲において、記録層の耐久性と感度のいずれも好ましいものが得られる。
〔(E)溶解抑制剤〕
本発明に係るポジ型記録層には、記録層中に含まれるアルカリ可溶性樹脂における特定の官能基や他の配合成分との間で相互作用を形成し、未露光部においてアルカリ可溶性樹脂のアルカリ現像液に対する溶解が抑制される機能を有する溶解抑制剤を用いることが必要である。
なかでも、アルカリ可溶性樹脂との間に相互作用を形成しうる赤外線吸収剤、例えば、オニウム塩型構造を有する赤外線吸収剤、具体的には、シアニン色素、ピリリウム塩を、用いることが好ましい。これらの化合物は、赤外線吸収剤としての機能と溶解抑制剤としての機能を併せ持つ化合物であり、シアニン色素を赤外線吸収剤として用いる場合には、特に他の溶解抑制剤を添加する必要はない。
また、赤外線吸収剤として溶解抑制能を有しない他の染料、顔料などを用いる場合、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ水可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる他の溶解抑制剤を用いる。さらに、赤外線吸収剤としてシアニン色素などの溶解抑制能を有する化合物を用いた場合でも、画像部と非画像部との溶解性の差異をさらに増大させる目的で、これらの溶解抑制剤を併用することができる。
溶解抑制剤の添加により、画像部の現像液への溶解阻止性が向上されるとともに、この化合物を添加することにより赤外線吸収剤としてアルカリ可溶性樹脂との間に相互作用を形成しないものを用いることも可能となる。オニウム塩としてはジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等を挙げる事ができる。
以下に、赤外線吸収剤以外の溶解抑制剤について説明する。
(オニウム塩)
本発明において溶解抑制剤として用いられるオニウム塩として、好適なものとしては、例えば S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Baletal,Polymer,21,423(1980)、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3−140140号の明細書に記載のアンモニウム塩、D.C.Neckeretal,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wenetal,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivelloetal,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第5,041,358号、同第4,491,628号、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、
J.V.Crivelloetal,PolymerJ.17,73(1985)、J.V.Crivelloetal.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Wattetal,J.PolymerSci.,PolymerChem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivelloetal,PolymerBull.,14,279(1985)、J.V.Crivelloetal,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivelloetal,J.PolymerSci.,PolymerChem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同4,491,628号、同5,041,358号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivelloetal,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivelloetal,J.PolymerSci.,PolymerChem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wenetal,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等があげられるS。
なかでもジアゾニウム塩が特に好ましい。また、特に好適なジアゾニウム塩としては特開平5−158230号公報記載のものがあげられる。
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
(キノンジアジド類)
好適なキノンジアジド類としてはo−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。
本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト センシティブ・システムズ」(John Wiley & Sons.Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物あるいは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステルまたはスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120 号および同第3,188,210 号に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
さらにナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものをあげることができる。
o−キノンジアジド化合物の添加量は、好ましくは各記録層の全固形分に対し、1〜50質量%、更に好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜30質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
o−キノンジアジド化合物以外の溶解抑制剤の添加量は、好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜30質量%である。
〔赤外線吸収剤〕
本発明に係るポジ型記録層には、溶解抑制剤として、或いは、溶解抑制剤に加えて、光熱変換機能を発現する構成成分である赤外線吸収剤を含有することができる。この赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有しており、レーザ走査により相互作用の解除、現像インヒビターの分解、酸の発生等が起こり、現像液に対する溶解性が大きく増加する。また、この赤外線吸収剤自体が、アルカリ可溶性樹脂と相互作用を形成し、アルカリ可溶性を抑制させる場合もある。
本発明においてポジ型記録層に使用される赤外線吸収剤としては、先に下層の構成成分として説明した(B)赤外線吸収剤と同様のものが挙げあれ、好ましい例も同様である。
なお、記録層に用いるさらなる赤外線吸収剤の例として、特願平10−237634号に記載のアニオン性赤外線吸収剤を挙げることができる。このアニオン性赤外線吸収剤は、実質的に赤外線を吸収する色素の母核にカチオン構造が無く、アニオン構造を有するものを指す。
例えば、(a−1)アニオン性金属錯体、(a−2)アニオン性フタロシアニンが挙げられる。
ここで、(a−1)アニオン性金属錯体とは、実質的に光を吸収する錯体部の中心金属および配位子全体でアニオンとなるものを指す。
(a−2)アニオン性フタロシアニンは、フタロシアニン骨格に、置換基としてスルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸基等のアニオン基が結合し、全体としてアニオンとなっているものを指す。
さらに特願平10−237634号の[0014]ないし[0105]に記載の[Ga-−M−Gb]mm+で示されるアニオン性赤外線吸収剤〔Ga-はアニオン性置換基を表し、Gbは中性の置換基を表す。Xm+は、プロトンを含む1〜m価のカチオンを表し、mは1ないし6の整数を表す。〕を挙げることができる。
ポジ型記録層に用いられる赤外線吸収剤としては、染料であることが好ましく、好適な例として、特開平11−291652号公報の段落番号[0018]ないし[0034]に記載のオニウム塩構造を有する赤外線吸収剤が挙げられる。
本発明に係るポジ型の記録層には、さらに感度および現像ラチチュードを向上させる目的で、上記のシアニン色素、ピリリウム塩、アニオン系色素などの溶解抑制能を発現する赤外線吸収剤と、それ以外の染料または顔料等を併用することもできる。
赤外線吸収剤として用いられる顔料又は染料の添加量としては、ポジ型記録層全固形分に対し0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。前記染料の場合には、0.5〜10質量%が特に好ましく、顔料の場合には、0.1〜10質量%が特に好ましい。この含有量において記録層の良好な感度、現像性と、記録層の均一性、耐久性が達成される。
本発明の平版印刷版原版のポジ型記録層には、上記の各構成成分の他、目的に応じて種々の公知の添加剤を併用することができる。複数の記録層のうち、下層には分散相を形成する必要があるが、その他の添加剤は、下層、その他の記録層ともに同様のものを用いることができる。
(フッ素含有ポリマー)
本発明の各記録層には、画像部領域の耐現像性を向上させる目的でフッ素ポリマーを添加することが好ましい。画像記録層に使用されるフッ素含有ポリマーとしては、特開平11−288093号公報、特開2000−187318号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体が挙げられる。
好ましい具体例としては、特開平11−288093号公報に記載されているP−1〜P−13のフッ素を含有するアクリル系ポリマーや特開2000−187318号公報に記載されているA−1〜A33のフッ素を含有するアクリル系モノマーを任意のアクリルモノマーと共重合して得られたフッ素含有ポリマーなどを挙げることが出来る。
以上に挙げたフッ素含有ポリマーの分子量としては、重量平均分子量が2000以上、数平均分子量が1000以上のものが好ましく用いられる。更に好ましくは重量平均分子量が5000〜300000、数平均分子量が2000〜250000である。
また、フッ素含有ポリマーとして、前記好ましい分子量を有する化合物である、市販のフッ素系界面活性剤を用いることもできる。具体例として、大日本インキ化学工業(株)製、メガファックF−171、F−173、F−176、F−183、F−184、F―780、F−781(いずれも商品名)を挙げることができる。
これらフッ素含有ポリマーは1種類用いても良いし、2種以上を併用することもできる。
添加量としては、画像記録層固形分に対し1.4質量%以上であることが本発明の要件として必要である。好ましい添加量は、1.4〜5.0質量%である。1.4質量%を下回る場合は、フッ素含有ポリマーの添加目的である画像記録層の現像ラチチュード向上効果が十分に得られない。なお、5.0質量%を越えて添加しても現像ラチチュードの改善効果は向上せず、却ってフッ素含有ポリマーの影響により画像記録層表面の難溶化が進み、感度を低下させる懸念がある。
また、画像のディスクリミネーションの強化や表面のキズに対する抵抗力を強化する目的で、特開2000−87318明細書に記載されているような、分子中に炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を2又は3個有する(メタ)アクリレート単量体を重合成分とする重合体を併用することが出来る。
(感度向上剤)
また、更に感度を向上させる目的で、ポジ型記録層には、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することもできる。環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、トラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4'−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4',4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4',3",4"−テトラヒドロキシ−3,5,3',5'−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755 号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類およびカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−メトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。上記の環状酸無水物、フェノール類および有機酸類の印刷版材料中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
(着色剤)
本発明に係る各記録層には例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として添加することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)、アイゼンスピロンブルーC−RH(保土ヶ谷化学(株)製)等、及び特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。
これらの染料を添加することにより、画像形成後、画像部と非画像部の区別が明瞭となるため、添加する方が好ましい。なお、添加量は、記録層全固形分に対し0.01〜10質量%の範囲が好ましい。
(界面活性剤)
また、本発明における画像記録層中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、EP950517公報に記載されているようなシロキサン系化合物、特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素モノマー含有の共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業(株)製)等が挙げられる。シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として、(株)チッソ社製(株)チッソ社製DBE−224、DBE−621、DBE−712、DBP−732、DBP−534、独国Tego社製Tego Glide100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることが出来る。
上記非イオン界面活性剤および両性界面活性剤の印刷版材料中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
(焼き出し剤)
本発明における画像記録層材料中には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。
具体的には、例えば、特開昭50−36,209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号および同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せが挙げられ、かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。その他の光酸放出剤としては、特開昭55−62444号公報に記載されている種々のo−ナフトキノンジアジド化合物;特開昭55−77742号公報に記載されている2−トリハロメチル−5−アリール−1,3,4−オキサジアゾール化合物;ジアゾニウム塩などを挙げることができる。
(可塑剤)
更に本発明の画像記録層、下層塗布液中には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸またはメタクリル酸のオリゴマーおよびポリマー等が用いられる。
本発明の平版印刷版原版は、通常上記各成分を溶媒に溶かした下層塗布液、さらには、ポジ型記録層塗布液を、適当な支持体上に順次塗布することにより製造することができる。
下層、画像記録層を塗布するにおいて適切な溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等をあげることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
なお、該下層(下層)および上層(その他の記録層)は、原則的に2つの層を分離して形成することが好ましい。
2つの層を分離して形成する方法としては、例えば、下層に含まれる成分と、上層に含まれる成分との溶剤溶解性の差を利用する方法、または、上層を塗布した後、急速に溶剤を乾燥、除去させる方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
下層に含まれる成分と上層に含まれる成分との溶剤溶解性の差を利用する方法としては、上層用塗布液を塗布する際に、下層に含まれるアルカリ可溶性樹脂を溶解しない溶剤を用いる方法が挙げられる。これにより、二層塗布を行っても、各層を明確に分離して塗膜にすることが可能になる。例えば、下層成分として、上層成分であるアルカリ可溶性樹脂を溶解するメチルエチルケトンや1−メトキシ−2−プロパノール等の溶剤に不溶な成分を選択し、該下層成分を溶解する溶剤系を用いて下層を塗布・乾燥し、その後、アルカリ可溶性樹脂を主体とする上層をメチルエチルケトンや1−メトキシ−2−プロパノール等で溶解し、塗布・乾燥することにより二層化が可能になる。
なお、上層用塗布液を塗布する際に、下層に含まれるアルカリ可溶性樹脂を溶解しない溶剤を用いる方法をとるとき、上層用塗布溶剤として、下層に含まれるアルカリ可溶性樹脂を溶解する溶剤と溶解しない溶剤とを混合して用いてもよい。両者の溶剤の混合比率を変えることにより、上層と下層との層間混合を任意に制御することができる。下層のアルカリ可溶性樹脂を溶解する溶剤の比率が多くなると、上層を塗布する際に下層の一部が溶け出し、乾燥後、上層中に粒子状成分として含有され、この粒子状成分により上層表面に突起ができて耐キズ性が良化する。一方、下層成分が上層に溶け出すことで下層の膜質が低下し、耐薬品性は低下する傾向にある。このように、それぞれの物性を考慮して、混合比率の制御を行なうことで、種々の特性を発現させることができ、さらに、後述する層間の部分相溶なども生起させることができる。
本発明の効果の観点からは、上層の塗布溶剤として上記のような混合溶剤を用いる場合、下層のアルカリ可溶性樹脂を溶解する溶剤は上層塗布溶剤の80質量%以下であることが耐薬品性の観点から好ましく、耐キズ性の観点を加味すれば、10〜60質量%の範囲であることが好ましい。
次に、2層目(上層)を塗布後に、極めて速く溶剤を乾燥させる方法としては、ウェブの走行方向に対してほぼ直角に設置したスリットノズルより高圧エアーを吹きつけることや、蒸気等の加熱媒体を内部に供給されたロール(加熱ロール)よりウェブの下面から伝導熱として熱エネルギーを与えること、あるいはそれらを組み合わせることにより達成できる。
本発明において画像記録層などの各層を塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
特に、上層塗布時に下層へのダメージを防ぐため、上層塗布方法は非接触式である事が望ましい。また接触型ではあるが溶剤系塗布に一般的に用いられる方法としてバーコーター塗布を用いる事も可能であるが、下層へのダメージを防止するために順転駆動で塗布する事が望ましい。
本発明の平版印刷版原版における下層の乾燥後の塗布量は、耐刷性確保と現像時における残膜発生抑制の観点から、0.5〜1.5g/m2の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.7〜1.0g/m2の範囲である。
また、画像記録層(上層)の乾燥後の塗布量は、0.05〜1.0g/m2の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.07〜0.7g/m2の範囲である。なお上層が2層以上の場合、その合計量を示す。
これら各記録層においては、一般的に、塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、現像ラチチュード、皮膜特性は低下する傾向にある。特に記録層の膜厚が厚過ぎる場合、深部において熱拡散の影響を受けやすく、支持体近傍での画像形成性が低下する懸念がある。
本発明における下層又はその他の記録層の塗布液中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、塗布液全固形分の0.01〜1質量%さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
〔支持体〕
本発明に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルム等が含まれる。
本発明に用いる支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理および中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部にキズが付き易くなって、印刷時にキズの部分にインキが付着するいわゆる「キズ汚れ」が生じ易くなる。
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。
本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、前記下層およびポジ型記録層の少なくとも2層を積層して設けたものであることを特徴とする。以下、本発明に係る中間層について説明する。
上記のようにして作成されたポジ型平版印刷版原版は、通常、像露光、現像処理を施される。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。またg線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
レーザービームとしてはヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、KrFエキシマレーザー等が挙げられる。
本発明においては、特に近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源により露光されることが好ましく、具体的には、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光されることが好ましい。
本発明の平版印刷版原版は、露光後に水又はアルカリ現像液による現像処理が行なわれる。現像処理は露光後すぐに行ってもよいが、露光工程と現像工程の間に加熱処理を行ってもよい。加熱処理をする場合その条件は、60℃〜150℃の範囲内で5秒〜5分間行うことが好ましい。加熱方法としては、従来公知の種々の方法を用いることができる。例えば、パネルヒーターやセラミックヒーターにより記録材料と接触しつつ加熱する方法、及びランプや温風による非接触の加熱方法等が挙げられる。この加熱処理により、レーザ照射時、記録に必要なレーザエネルギーを減少させることができる。
本発明の平版印刷版の製版に用いられる現像液及び補充液としては従来公知のアルカリ水溶液が使用できる。
本発明の平版印刷版原版の現像処理に適用することのできる現像液は、pHが9.0〜14.0の範囲、好ましくは12.0〜13.5の範囲にある現像液である。現像液(以下、補充液も含めて現像液と呼ぶ)には、従来公知のアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウムおよび同リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤が挙げられる。これらのアルカリ水溶液は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
更に、非還元糖と塩基からなるアルカリ水溶液を使用することもできる。非還元糖とは遊離性のアルデヒド基やケトン基を持たないために還元性を有しない糖類を意味し、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体、糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類される。本発明ではこれらのいずれも好適に用いられる。
トレハロース型少糖類としては、トレハロース型少糖類には、サッカロースやトレハロースがあり、配糖体としては、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体などが挙げられる。また糖アルコールとしてはD,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシットおよびアロズルシットなどが挙げられる。更に二糖類の水素添加で得られるマルチトールおよびオリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)が好適に用いられる。これらの中で特に好ましい非還元糖は糖アルコールとサッカロースであり、特にD−ソルビット、サッカロース、還元水あめが適度なpH領域に緩衝作用があることと、低価格であることで好ましい。
これらの非還元糖は、単独もしくは二種以上を組み合わせて使用でき、それらの現像液中に占める割合は0.1〜30質量%が好ましく、更に好ましくは、1〜20質量%である。
非還元糖に組み合わせる塩基としては従来公知のアルカリ剤が使用できる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウムなどの無機アルカリ剤が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。
これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いられる。これらの中で好ましいものとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。その理由は、非還元糖に対する添加量を調整することにより、広いpH領域においてpH調整が可能となるためである。また、リン酸三ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等もそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。
自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量のPS版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。現像液および補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤があげられる。更に現像液および補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。上記現像液および補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の平版印刷版原版を印刷版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化および標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽およびスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
本発明の感熱性平版印刷版原版の処理方法について説明する。画像露光し、現像し、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行なわれる。このような消去は、例えば特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行なう方法が好ましいが、特開平5−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、あるいは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥質量)が適当である。整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(たとえば富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施こすことができるが水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
以下、本発明を実施例に従って説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
(実施例1〜11)
[基板の作成]
Si:0.06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0.014質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理およびろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作成した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ0.24mmのアルミニウム板に仕上げた。このアルミニウム板を幅1030mmにした後、以下に示す表面処理に供した。
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(j)の各種処理を連続的に行うことにより行った。なお、各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)間の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
(b)アルカリ剤によるエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板をカセイソーダ濃度2.6質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を10g/m2溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。
前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、液温80℃であった。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗を行った。
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
(g)陽極酸化処理
二段給電電解処理法の陽極酸化装置(第一および第二電解部長各6m、第一および第二給電部長各3m、第一および第二給電電極長各2.4m)を用いて陽極酸化処理を行った。第一および第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度170g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度43℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
(h)アルカリ金属ケイ酸塩処理
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を、温度50℃のメタケイ酸ソーダの4.4質量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
(i)中間層の形成
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、下記組成の中間層塗布液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m2であった。
<中間層塗布液組成>
・酸基含有ポリマー(No.1) 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
Figure 2007057977
得られた基板に以下の下層用塗布液を塗布量が0.85g/m2になるよう塗布したのち、TABAI社製、PERFECT OVEN PH200にてWind Controlを7に設定して140度で50秒間乾燥し、その後、上部記録層用塗布液を塗布量が0.22g/m2になるよう塗布したのち、120℃で1分間乾燥し、平版印刷版原版1〜11を得た。
〔下層用塗布液〕
・N−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル
/メタクリル酸メチル〔(A)成分〕 1.92g
(36/34/30:重量平均分子量100000、酸価2.65meq/g)
・m−クレゾール/p−クレゾールノボラック樹脂〔(A)成分〕 0.195g
(モル比;60/40、重量平均分子量4500、未反応クレゾール0.8質量%)
・シアニン染料A(下記構造)〔(B)成分〕 0.109g
・カルボン酸類〔(C)成分〕(表1記載の化合物) 0.126g
・環状酸無水物〔(D)成分〕(表1記載の化合物) 0.190g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・4,4'−ビスヒドロキシフェニルスルホン 0.050g
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミン
ヘキサフルオロホスフェート 0.030g
・エチルバイオレットの対イオンを
6−ヒドロキシナフタレンスルホンに変えたもの 0.10g
・塗布面状改良フッ素系界面活性剤B(下記構造) 0.012g
・メチルエチルケトン 24.38g
・1−メトキシ−2−プロパノール 13.0g
・γ−ブチロラクトン 14.2g
Figure 2007057977
Figure 2007057977
〔ポジ型記録層用塗布液〕
・m,p−クレゾールノボラック 0.2846g
・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量
4500、未反応クレゾール0.8質量%含有 Tg75℃) 0.35g
・アクリル系樹脂C(下記構造) 0.042g
・シアニン染料A(前記構造) 0.019g
・アンモニウム化合物D(下記構造) 0.004g
・フッ素系界面活性剤B 0.0045g
・フッ素系界面活性剤E(下記構造) 0.0033g
・メチルエチルケトン 10.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 20.0g
Figure 2007057977
(比較例1)
実施例1において、下層用塗布液に(C)成分であるテトラヒドロフタル酸を添加せず、(D)成分であるシス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸を0.316gにした以外は実施例1と同様にして比較用平版印刷版原版1を得た。
(比較例2)
実施例1において、下層用塗布液に(D)成分であるシス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸を添加せず、(C)成分であるテトラヒドロフタル酸を0.316gにした以外は実施例1と同様にして比較用平版印刷版原版2を得た。
(比較例3)
実施例1の下層用塗布液の(C)成分、(D)成分を添加しなかった以外は実施例1と同様にして比較用平版印刷版原版3を得た。
[平版印刷版原版の評価]
〔感度の評価〕
得られた本発明の平版印刷版原版1〜11及び比較例の平版印刷版原版1〜3を作製後1日経過してからCreo社製Trendsetterにて露光エネルギーを変えて、テストパターンを画像状に描き込みを行った。
その後、富士写真フイルム(株)製現像液DT−2(希釈して、電導度43mS/cmとしたもの)で現像し、この現像液で非画像部が現像できる露光エネルギーを測定し、感度とした。数値が小さいほど高感度であると評価する。結果を前記表1に併記する。
〔感度の経時安定性〕
前記の[感度の評価]において、平版印刷版原版を作製してから2ヶ月後にまったく同様な方法で感度を評価した。作製後1日にて測定した値との差が少ないものを経時安定性が良いと評価する。
〔現像ラチチュードの評価〕
得られた本発明の平版印刷版原版1〜11及び比較例の平版印刷版原版1〜3を作製後1日経過してからCreo社製Trendsetterにてビーム強度9w、ドラム回転速度150rpmでテストパターンを画像状に描き込みを行った。
まず、上記の条件で露光した平版印刷版原版1〜11を、富士写真フイルム(株)製現像液DT−2の希釈率を変えたものを仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー940HIIを用い、液温を30度に保ち、現像時間12sで現像した。この時、現像不良の記録層残膜に起因する汚れや着色がないかを確認し、良好に現像が行えた現像液の電導度を測定した。
結果を前記表1に併記する。上限値と下限値との差が大きいものを現像ラチチュードに優れると評価する。
〔現像ラチチュード経時安定性の評価〕
前記の[現像ラチチュードの評価]において、平版印刷版原版を作製してから2ヶ月後にまったく同様な方法で感度を評価した。作製後1日にて測定した値との差が少ないものを現像ラチチュードの経時安定性が良いと評価する。
表1の結果より明らかなように、下層に特定成分を含有する実施例1〜12は、高感度で記録可能であり、現像ラチチュードに優れ、且つ、記録感度、現像ラチチュードの経時安定性に優れていた。一方、(C)カルボン酸類を含有しない下層を有する比較用平版印刷版原版1は、経時で感度が上昇して感度の安定が劣り、現像ラチチュードも経時で劣化し、(D)環状酸無水物を含有しない下層を有する比較用平版印刷版原版2は、経時で感度が低下し、現像ラチチュードも経時で劣化した。また、(C)カルボン酸類および(D)環状酸無水物を含有しない下層を有する比較用平版印刷版原版3は、極めて低感度であった。

Claims (3)

  1. 支持体上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂、環状酸無水物及びカルボン酸類を有機溶剤に溶解した塗布液を塗布することで形成された下層、及び、アルカリ可溶性樹脂及び現像抑制剤を含有し、露光によりアルカリ水溶液に対する溶解性が増大するポジ型記録層を、有することを特徴とする平版印刷版原版。
  2. 前記カルボン酸類が、2塩基酸である請求項1に記載の平版印刷版原版。
  3. 前記カルボン酸類が、下層中に共存する環状酸無水物の加水分解物と同じ構造を有するカルボン酸である請求項1に記載の平版印刷版原版。
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