JP2007054278A - 人工骨用ペースト - Google Patents
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Abstract
【課題】臨床現場で求められている、骨との接着能力を維持しながら、複雑な箇所への注入に適した流動性を有する、高分子を基材とした人工骨材料を提供すること。
【解決手段】本発明は、カルボキシル基を含有する多糖類又はカルボキシル基を含有するポリペプチドからなる高分子を含む流動性の溶液と、有機高分子のゲル微粒子を混合して得られる人工骨用ペーストである。ペーストにカルシウムイオンが添加されていると、流動性がより良いものが得られる。また、ペーストに骨粗鬆症治療用薬剤等を混合しても良いし、更に、ペーストの硬さを調節するために、CaOやSiO2等の無機物の粉末を添加混合しても良い。
【選択図】図1
【解決手段】本発明は、カルボキシル基を含有する多糖類又はカルボキシル基を含有するポリペプチドからなる高分子を含む流動性の溶液と、有機高分子のゲル微粒子を混合して得られる人工骨用ペーストである。ペーストにカルシウムイオンが添加されていると、流動性がより良いものが得られる。また、ペーストに骨粗鬆症治療用薬剤等を混合しても良いし、更に、ペーストの硬さを調節するために、CaOやSiO2等の無機物の粉末を添加混合しても良い。
【選択図】図1
Description
本発明は、ペーストの形で提供され、骨欠損部に注入されると注入初期には骨欠損部を充填して支持し、骨の治癒に合わせて徐々に吸収される、骨修復材料として用いられる人工骨用ペーストに関する。
骨の欠損部を修復するための素材として、水酸アパタイト、リン酸三カルシウム、ケイ酸カルシウム系セラミックスなどが開発され臨床使用されている。これらは、生体内で骨と異物反応無く直接結合できる特徴を有し、生体活性セラミックスと総称されている(例えば、非特許文献1参照)。一方、複雑な欠損部を修復するために、初期にはペースト状を呈し、体内で硬化して水酸アパタイトを析出する注入型人工骨が開発されている(例えば、特許文献1参照)。これら注入型人工骨の利用は、切開を少なくして骨の修復を実現できるので、骨粗鬆症などの治療にも有効と期待される技術である。
T. Kokubo, H.-M. Kim, M. Kawashita, 「Novel bioactive materials with differentmechanical properties」Biomaterials, 24, 2161-2175 (2003) 特開2000−245823号公報
T. Kokubo, H.-M. Kim, M. Kawashita, 「Novel bioactive materials with differentmechanical properties」Biomaterials, 24, 2161-2175 (2003)
しかし、これら人工骨はセラミックス単体から構成されるので、高い荷重をかけたときに脆性破壊を生じる恐れがあり、しかも天然の骨に比較して弾性率が高いため、力学的なミスマッチにより周囲の骨の成長を妨げる問題点がある。骨は水酸アパタイトが有機のコラーゲン繊維で補強された構造をとっていることから、生体活性セラミックスに有機高分子を複合化した素材の開発がなされてきた。その中で小久保らは、カルボキシル基を含む多糖類のゲルをカルシウムイオンで架橋させた人工骨用材料を提案している(特許文献2及び非特許文献2参照)。このゲルは、生体内の体液、あるいは体液とイオン濃度を等しくした擬似体液に接触すると、表面に水酸アパタイトを沈着し、このアパタイト被膜を介して骨組織と接着するする特性を持つ。しかし、これら人工骨用材料は、固形体、繊維、フィルムあるいはバルク状での使用を想定しており、患部へ簡便に注入できるペースト状の形態として用いるための最適化はなされていない。即ち、これらゲルをそのまま患部に注射器などを用いて注入しようとしても、流動性に欠けるため良好に患部を充填し難い。
特開2000−79160号公報
M. Kawashita, M. Nakao, M. Minoda, H.-M. Kim, T. Beppu, T. Miyamoto,T. Kokubo and T. Nakamura, 「Apatite-forming ability of carboxyl group-containing polymer gels ina simulated body fluid」 Biomaterials, 24, 2477-2484 (2003)
本発明の課題は、臨床現場で求められている、骨との接着能力を維持しながら、複雑な箇所への注入に適した流動性を有する、高分子を基材とした人工骨材料を提供することにある。
本発明のうち請求項1記載の発明は、カルボキシル基を含有する多糖類又はカルボキシル基を含有するポリペプチドからなる高分子を含む流動性の溶液と、有機高分子のゲル微粒子を混合して得られる人工骨用ペーストである。
請求項2記載の発明は、ペーストにカルシウムイオンが添加されている請求項1記載の人工骨用ペーストである。
請求項3記載の発明は、ペーストに骨粗鬆症治療用薬剤、骨形成能を示すタンパク又は合成ポリペプチドから選ばれた1種以上の物質を混合した請求項1又は2記載の人工骨用ペーストである。
そして、請求項4記載の発明は、CaO、SiO2、P2O5、MgO、K2O、Na2O,TiO2,ZrO2,Ta2O5,Nb2O5からなる群から選ばれた2種以上の化合物を主成分とする無機物の粉末を混合した請求項1〜3のいずれか1項記載の人工骨用ペーストである。
現在、わが国には、骨粗鬆症患者はその予備軍を含めて約1,000万人存在するといわれている。骨粗鬆症患者には高齢者が多数を占めるので、骨粗鬆症が骨折やそれに伴う寝たきりの直接の原因になることも多い。従って、切開の少ない簡便な手技により、骨粗鬆症の治療や予防が実現できる技術の開発は、高齢化社会を維持する上でも急務の課題である。本発明により、骨接着性に優れ、しかも力学的性質においても骨とのミスマッチが少ない、ぺ−スト状人工骨が開発できれば、高齢者のQOLの向上に寄与できる意義深い基盤技術の確立が期待される。
本発明は、カルボキシル基を含有する多糖類又はカルボキシル基を含有するポリペプチドからなる高分子を含む流動性の溶液と、有機高分子のゲル微粒子を混合して得られる人工骨用ペーストであるが、かかるペーストは、図1に例示するようなやり方で、骨欠損部の治療に用いられることが望ましいが、これに限定されるものではない。本発明のペーストを構成する有機高分子のゲル微粒子の成分は、ゲルを形成し得る高分子であって、生体に対して毒性の少ないものであれば、合成、天然を問わない。骨との接着性の向上のためには、有機高分子の側鎖にカルボキシル基を含有しており、このカルボキシル基の一部がカルシウムイオンで架橋されているものが望ましい。例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルキチン、ジェランガム、ペクチン酸、ペクチン、アルギン酸、ヒアルロン酸、ポリリンゴ酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸等の多糖類や、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、絹セリシン、グルテン、ゼイン等の酸性アミノ酸を含むポリペプチドを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。特にカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルキチン、ペクチン、ポリグルタミン酸などが好適に用いられる。注入操作の簡便性を考慮した際、微粒子の流径は10〜500ミクロンであることが望ましい。
一方、高分子を含む流動性の溶液は、カルボキシル基を含有する多糖類又はカルボキシル基を含有するポリペプチドあるいはこれら高分子の混合物の水性液を意味し、水溶液だけでなくエマルジョンや懸濁液も含む。高分子の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルキチン、ジェランガム、ペクチン酸、ペクチン、アルギン酸、ヒアルロン酸、ポリリンゴ酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸等の多糖類や、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、絹セリシン、グルテン、ゼイン等の酸性アミノ酸を含むポリペプチドが挙げられる。特にカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルキチン、ペクチン、ポリグルタミン酸などが好適に用いられる。この高分子溶液の配合比は、有機高分子のゲル微粒子に対して100質量%以下、好ましくは20〜50重量%が適当である。
ペーストに混合される骨粗鬆症治療用薬剤、骨形成能を示すタンパク又は合成ポリペプチとしては、例えば、公知のビスフォスフォネート製剤、カルシウム製剤、エストロゲン製剤、活性型ビタミンD3製剤、ホルモン製剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、注入時のペーストの硬さを調整するために、CaO、SiO2、P2O5、MgO、K2O、Na2O,TiO2,ZrO2,Ta2O5,Nb2O5からなる群から選ばれた2種類以上の化合物を主成分とする無機物、例えば、無機ゲル、ガラスあるいはセラミックスの粉末を混合しておいても良い。この場合,高分子溶液の配合比は、有機高分子のゲル微粒子と無機物の粉末の重量の総和に対して100質量%以下、好ましくは20〜50重量%である。
本発明の人工骨用ペーストは、擬似体液に接触させるとアパタイトの沈着を生じるという特徴がある。擬似体液(SBF)とは、ヒトの細胞外液とほぼ等しい無機イオン濃度を有する液である。接触させる擬似体液としては、カルシウムイオンを0.1〜100mmol/L、好ましくは1〜15mmol/L、並びにリン酸イオンを0.1〜100mmol/L、好ましくは0.1〜5mmol/L含む様な体液類似の水溶液が適当である。
市販のペクチン酸、かんきつ由来ペクチン、ならびにりんご由来ペクチンをゲル合成の出発原料とした。これらを超純水中に分散し、適量の水酸化ナトリウム水溶液を加えて溶解させ、10質量%の溶液とした。これをポリスチレン製容器に移し、1mol/Lの塩化カルシウム水溶液を噴霧して1日保持した後、同溶液を上から流延した。これを4℃で4日間保持したところ、ペクチン酸についてはピンセットで保持しても崩壊しがたい硬いゲルが得られた。これに対し、かんきつ由来ペクチン及びりんご由来ペクチンについては軟らかいゲルが得られた。
これらのゲルを、ヒトの細胞外液とほぼ等しい無機イオン濃度(Na+ 142.0, K+ 5.0, Mg2+ 1.5, Ca2+
2.5, Cl- 147.8, HCO3 -
4.2, HPO4 2- 1.0 and SO4 2- 0.5 mmol/L)を有する水溶液(擬似体液)に接触させたところ、いずれのゲルにおいても水酸アパタイト粒子の沈着が認められ、特にりんご由来ペクチンについてはその度合いは顕著であった。りんご由来ペクチンの表面に、水酸アパタイト粒子が沈着した状態を示す写真を、図2に示した。
2.5, Cl- 147.8, HCO3 -
4.2, HPO4 2- 1.0 and SO4 2- 0.5 mmol/L)を有する水溶液(擬似体液)に接触させたところ、いずれのゲルにおいても水酸アパタイト粒子の沈着が認められ、特にりんご由来ペクチンについてはその度合いは顕著であった。りんご由来ペクチンの表面に、水酸アパタイト粒子が沈着した状態を示す写真を、図2に示した。
これらのゲルを乳鉢で粉砕し、シリンジに充填して押し出したところ、流動性に乏しかった。これに対して、1%ポリグルタミン酸水溶液をゲルに対して25質量%となるよう添加したところ、きわめて流動性のよいペーストが得られた。
実施例1で得られた各種ペクチンゲルに、塩化カルシウムを0.1mol/Lとなるように添加した1%ポリグルタミン酸水溶液を、ゲルに対して25質量%となるよう添加したところ、極めて流動性の良いペーストが得られた。
実施例1で得られた各種ペクチンゲルに,CaO 50mol%-SiO2 50mol%の組成のガラス粉末を同じ質量加えて混合粉末を得た。この混合粉末に、1%ポリグルタミン酸水溶液を混合粉末に対して50質量%となるよう添加したところ、きわめて流動性のよいペーストが得られた。
Claims (4)
- カルボキシル基を含有する多糖類又はカルボキシル基を含有するポリペプチドからなる高分子を含む流動性の溶液と、有機高分子のゲル微粒子を混合して得られる人工骨用ペースト。
- ペーストにカルシウムイオンが添加されている請求項1記載の人工骨用ペースト。
- ペーストに骨粗鬆症治療用薬剤、骨形成能を示すタンパク又は合成ポリペプチドから選ばれた1種以上の物質を混合した請求項1又は2記載の人工骨用ペースト。
- CaO、SiO2、P2O5、MgO、K2O、Na2O,TiO2,ZrO2,Ta2O5,Nb2O5からなる群から選ばれた2種以上の化合物を主成分とする無機物の粉末を混合した請求項1〜3のいずれか1項記載の人工骨用ペースト。
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JP2005242904A JP2007054278A (ja) | 2005-08-24 | 2005-08-24 | 人工骨用ペースト |
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Citations (2)
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---|---|---|---|---|
JP2000079160A (ja) * | 1998-09-06 | 2000-03-21 | Japan Science & Technology Corp | 人工骨用高分子材料 |
JP2005510268A (ja) * | 2001-10-25 | 2005-04-21 | ユニヴァーシティー オブ コネティカット | 生物活性材料、生物活性材料の製法およびその使用方法 |
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2005
- 2005-08-24 JP JP2005242904A patent/JP2007054278A/ja active Pending
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