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Description
本発明は半導体ウェハ或いは半導体装置の製造工程における加工履歴や製品管理等に用いられるドットマークのマーク形態と、同マーク形態を形成する微小マーキング方法に関し、更に詳しくは半導体ウェハ及びデバイス製造工程において以降の読み取り精度に最も影響が少なく、且つウェハ自体の電気的特性にも影響を与えない領域に形成され、しかも所望の情報量が確保され、読み取りが可能なレーザ照射による微細で特異な形態をもつドットマーク形態とそのマーキング方法に関する。
例えば、半導体製造工程にあっては、各工程ごとに多様で且つ厳密な製造条件を設定する必要があり、これらを管理するために、半導体ウェハの一部表面に数字、文字或いはバーコードなどからなるマークがドット表示される。しかして、半導体の製造工程数は100工程以上にもおよび、しかも各工程において多数の素子形成処理や平坦化処理がなされる。これらの処理には、例えばレジスト塗布、レジスト上へのパターンの縮小投影やレジスト現像、或いは銅配線などにより発生するギャップの埋め込みのために絶縁膜や金属膜などの各種の成膜による平坦化がある。
一方、上記ドット形態のマークは、通常、連続パルスレーザビームを光学系を介して半導体ウェハの一部表面に照射することにより形成される。しかも、そのためのマーキングは一回に限らず、各製造工程の履歴特性を知るためにも、各製造工程にて必要最小限の履歴データをマーキングすることが多い。しかしながら、半導体ウェハにおけるマーキング領域は極めて狭い領域に限られているため、マーキングされるドットの大きさ及び数にも制限があり、そのマーキング領域、ドットの大きさ、ドット数がSEMI規格などにより規定されている。
ドットマーキングがなされた半導体ウェハは、例えば特開平2−299216号公報に開示されている如く、He−Neレーザのレーザビームの照射による反射率の変化、或いは通常のレーザビームの熱波の振動の変化として読み取られ、その読み取られた情報に基づき、以降の製造工程における各種の製造条件が設定される。従って、前述の読み取りが正確になされず、誤った情報として読み取る場合には、偶然を除くと全てが不良品となる。その読み取り不良の原因の大半はドットマーキングによるマークの不鮮明さに基づいている。この不鮮明さの1つの要因としては、マークを形成するドットの形態がある。
一般的には、マークの読み取りにあたってはドットの深さによる影響が大きいとされ、所要のドット深さを得ようとして、例えば特開昭60−37716号公報に開示されているように、通常は1回の大エネルギーのレーザビーム照射により半導体ウェハの一部をスポット状に溶融除去してドットを形成しているが、この場合に溶融除去された溶融物がドット周辺に高く堆積し、或いは飛散してその飛散物がドットの周辺部に付着し、素子形成を不可能にしたりして品質に大きな影響を与える。更には、YAGレーザによるドットマーキングの場合には、YAGレーザの特殊性により、或いはそのQスイッチ操作のためレーザ出力に変動が生じやすく、ドットの深さや大きさにバラツキが生じる。
かかる不具合を解消すべく、例えば特開昭59−84515号公報、特開平2−205281号公報によると、比較的小さいエネルギーのパルスレーザビームを同一ポイントに重複して照射するものがある。前者にあっては、1個のドットマークを形成するにあたり各パルスごとに順次ドット径を小さくして、同一ポイントに複数回重複して照射し、ドットの孔径を順次小さくしながら深いドットを形成しており、後者にあっては、1回目のレーザパルス照射を1KHZ 以下の周波数とし、続いて照射されるレーザパルスの周波数を2〜5KHZ の高繰り返し周波数として、0.5〜1.0μm或いは1.0〜1.5μmの深さのドットを形成している。
一方、前述のごときマーキング法によると塵芥の発生を阻止し得ないとして、視認性にも優れ、且つ塵芥の発生の少ないレーザマーキング方法が、例えば特開平10−4040号公報により提案されている。この公報の開示によれば、パルスレーザビームを照射して液晶マスクパターンを半導体材料表面に投影し、ドットマークを刻印するレーザマーキング方法にあって、エネルギー密度を18〜40J/cm2 とすると共に、パルス幅を0.05〜0.40msに選定して、パルスレーザビームを半導体材料表面に照射し、半導体材料表面が溶融、再結晶化する過程でレーザ照射領域に多数の微小突起部を発生させている。
このマーキング方法によれば、1画素単位を通過するレーザビームの照射により、被マーキング物品の表面には高さが略1μm以下で、直径が0.5〜1.0μm、相互の間隔が略1.5〜2.5μm、密度が1.6〜4.5×107 個/cm2 の多数の微小突起部が形成され、この多数の微小突起部による光の乱反射により、視認性に優れたドットマーク形態となり、しかもその刻印時に塵芥の発生が抑えられるというものである。
しかして、上記ドットに対する読み取りの不鮮明さ(以下、視認性という。)の原因の一つとしては上述の深さにあることも確かではあるが、ドットの深さが深くされていても、その開口部の径が大きい場合には、例えば所要の深さを得るに十分なレーザビームを照射したときに、そのエネルギー密度は一般にガウシアン分布であるため、全体としては緩かな斜面からなる滑らかな曲面となってしまい、上述の如き読み取り手段では周辺との差を判別しがたい場合が生じる。上記特開平2−205281号公報にはドット深さについて上述の如く0.5〜1.0μm或いは1.0〜1.5μmである旨が具体的に記載されているが、その径については何ら記載がなく、またそのドット形状についてもガウシアン形状であると紹介されているに過ぎない。
また、上記特開昭59−84515号公報の開示によれば、第1回目のドットの開口径が100〜200μmに対して深さが1μm以下とあり、具体的には4回のレーザビーム照射がなされることが記載されていることから、この場合のドット深さはせいぜい3〜4μmである。また同公報の図面から、1回に形成されるドット形状もガウシアン形状に近似している。
従って、これらの公報に開示されたマーキング方法によっても、所要のドット深さ及びある程度の均整な大きさのドットが形成されるとは考えられるが、形成されたドット形状は従来の形状に近く、深さに対する径が大きくなり、上記視認性の点では相変わらず確実性に欠けているといわざるを得ない。また、形成されるドットの大きさ(径)についてみても、これを微小にするという点について格別の開示がなされていないことから、従来の寸法である50〜150μmを変更するものではなく、従って現時点における、例えばSEMI規格で規定された数値を踏襲しているに過ぎず、ドット数及びドット形成領域についても実質的には大幅な増加が期待できないばかりでなく、多様な情報をマーキングすることが難しい。
ところで、上述のごときドットマークに対する視認性に関しては、マークとその周辺における光の反射方向及びその反射量に大きな差がある場合に視認性が高くなる。従って、既述したとおり穴が開口径との関係において相対的に深い場合には視認性が高くなることは、一定の入射角度で入射された穴内部における反射光はその反射方向が一律ではなく乱反射するため、穴の開口から外部に出射して来る反射光が少なくなり、一方で穴周辺部が平滑面であることを前提とすれば、その周辺部における反射光は一定方向に反射することから明度が高くなる。その明暗の差が大きい場合に視認性は高くなるといえる。
しかるに、特開平10−4040号公報に開示されたマーキング方法により形成される微小突起部は余りにも微小過ぎて個々の突起部を観察することができず、またそれらの突起部の集合面である乱反射面の乱反射光量と平滑面の反射光量との差が少なく、乱反射面と周辺の平滑面との区別がしにくく、相変わらず視認性の点では劣るといわざるを得ない。また、この微小突起部の集まりからなる1ドットマークの大きさについても格別の記載がないところから、従来のドットの大きさと同じであると考えられ、ドットマークの刻印領域が限られてしまう。また仮りに、得られる1ドットの大きさが微小である場合を含むとしても、その場合には1ドット中に複数の微小突起部が分散することになり、1ドットごとの視認性は一層低下することになる。
一方、近年の情報産業の発達による情報関連機器の種類も増え、その需要が増加に伴って半導体装置も大量に製造されて、多分野に跨がって多様な種類の機器に搭載されている。その結果、これらの機器には様々な原因による故障も多発するようになってきている。その故障が半導体装置、殊にその回路チップに起因する場合も多い。仮りに、故障原因が回路チップにある場合、その故障原因が回路チップの製造工程における如何なる段階で生じたかを知る術がないのが現状である。
何となれば、既述したとおり半導体ウェハの製造工程にあっても、カセット単位で加工履歴等がマーキングにより記録されるだけであり、ましてや現状では回路チップ単位での加工履歴を詳細に記録することは不可能である。従って、故障製品たる回路チップが回収されたとしても、そのウェハから回路チップとなるまでの加工履歴を探り出すこともできない。しかして、同回路チップは一枚の半導体ウェハから製造される多数の回路チップのうちの一つに過ぎず、同回路チップの故障原因が、例えばウェハの製造工程に起因する場合には、同様の欠陥チップが多数の機器に搭載されている可能性が高いにも関わらず、回収して点検することも不可能である。このことは、単にウェハの問題に止まらず回路チップについても同様である。
また最近は、半導体ウェハの大型化とユーザーの要求とが相まって、単一の半導体ウェハ上に異種の半導体装置を製造するケースが多くなってきている。例えば、回路チップの製造にあって、ある工程までは共通の回路を製造し、途中から2つの異なる回路の製造に振り分けざるを得ないときは、前記半導体ウェハを振り分けに必要な領域で切断されることになる。こうした場合に、2種類の異なる集積回路をもつチップは、振り分けられるまで同一の加工履歴を有しており、以降の工程、並びに最終製品の組立終了までは互いに異なる加工履歴を有することになる。
しかしながら、前述のごとく微小で且つ確実に読取りが可能な形態を有するマークを刻印する技術が確立されていない現状にあっては、回路チップの製造工程から最終組立工程に到る各工程における加工履歴を回路チップ単位で克明に記録されることはないため、仮りに回路チップに欠陥が存在していることが判明しても、その欠陥がいつの時点で或いはどの加工段階で発生したものかを探り出すことはできない。
本発明は、これらの課題を解決すべくなされたものであり、その具体的な目的は半導体ウェハ及び半導体の製造工程における全ての加工履歴や、ウェハID、チップID、製品番号等を知ることが可能な微小なドットマーク形態とそのマーキング方法を提供することにある。
前記目的を達成すべく、本発明者等は従来のこの種のドットマーキング装置、マーキング方法及び形成されるドット形態について改めて詳しい検討及び分析を行ったところ、微小であるにも関わらず視認性を確実にする要因は主にドット形態にあり、その理想的な形状を得るためには従来のマーキング装置及び方法では実現が不可能であることを知った。
すなわち、例えば図2に示し、上記特開平2−205281号公報にも開示されているように、従来のマーキング装置によれば、先ず半導体ウェハに印字するための文字入力、マーキングモードが入力部21で設定される。マーカーコントローラ22は、設定されたマーキングモードに従って所定の深さをもつドットをウェハWにマーキングするため、超音波Qスイッチ素子23、内部シャッタ24、外部シャッタ25、アッテネータ(光減衰器)26及びガルバノミラー27を制御し、1個のドットに対して1回のQスイッチパルスでマーキングする。なお、同図中の符号11は全反射鏡、12は内部アパーチャ(モードセレクタ)、13はランプハウス、14は出力鏡、15はアパーチャ、16はレベリングミラー、17はガリレオ式エキスパンダ、18はアパーチャ、19はf−θレンズ、20はYAGレーザ発振器である。
かかる一般的なマーキング方式によると、既述したとおり半導体ウェハ表面に照射されるレーザビームのエネルギー密度分布はガウシアン形状を呈しているため、ウェハ表面に形成されるドットもそのエネルギー密度分布に影響されてドット内面が緩かな曲面をなす。これらのマーキング方式は米国特許第4,522,656号の発明に基づいている。この特許の特徴は、マーキングするドット径の1.5〜6.5倍の径をもつレーザビーム径をウェハ表面に照射することで、周囲への熱伝導を防止し、エネルギーを効果的に利用して、照射ポイントの中央部を溶融して穴を形成することにある。
つまり、レーザビームが有するガウシアン形状に分布されたエネルギー密度を有効に利用する方法であって、前記エネルギー密度分布形状の裾野にあたるレーザ強度の低い部分のエネルギーを穴加工部の周辺に照射することによって穴周辺部を暖め、穴中央部からの熱伝導による熱エネルギーの損失を防ぎ、中央部に効果的に穴加工を実現しようとするものである。しかしながら、レーザエネルギーの一部が直接穴加工に使われず消費されることになり効率が低いばかりでなく、穴の周囲へのレーザ照射により穴周辺部に熱履歴が残り、そのため製品に悪い影響を与えかねない。しかも、既述したとおりこの方式によるマーキングではドット径が大きく深さの小さいドットマークしか形成できない上に、穴の周辺が盛り上がり、更に視認性を低下させている。
本発明者等は、様々な検討中にたまたま突起物とその周辺に光を斜め上方から照射し、その照射面の乱反射光を受像器にて受像したところ、前記突起物の頂点部分が周辺部分と比較すると極端に輝度が高くなっていることを知った。この現象から、従来の孔形態からなるドットマークにコヒーレントな平行光を照射して、その反射光からドットマークを読み取ろうとすると、中央の穴部分が黒く、その周辺がリング状の明るい部分から更に明るい部分へと連続的に変化しており、更には穴周辺のリング状の膨出部の存在により、同膨出部の影ができたりして、その明暗の差によりドットを認識することが難しいことが多いのに対して、光照射面の隆起するドットマークに光を照射して、その散乱光によりドットマークを読み取るようにすると、同ドットマークの頂点部分が一点を中心として高輝度に輝き、その周辺との明暗の差が極めて大きくなり、如何に微小なマークであろうともドットマークの存在を確実に認識し得ることを知った。
そこで、更に視認性に優れたドットマークの形態の作成につき検討を重ねた結果、後述するごとくレーザビームのパルス幅及びエネルギー密度を所定の範囲に設定すると共に、エネルギー密度分布を制御することにより、被マーキング物品の表面に照射されるレーザビーム単位ごとに形成されるドットマークの形態が、従来では知られていない中央部が隆起した特異な形態を呈し、その視認性についても従来のレーザマーキングにより形成される凹陥状の穴形態を有するドットマーク形態と比較して、単一の微小なドットマークであるにも関わらず、より優れたものとなることが確認された。
しかるに、かかる微小で且つ特異な形態をもち、視認性に優れるドットマークであっても、そのドットマークの形成面によって視認性に限界があると考え、その形成面の表面粗さについても探究を進めた。その結果、前述のごとき中央部が隆起した特異な形態を有するドットマークのため、たとえ微小ではあっても回路チップの回路面以外の加工面にあっては全ての領域で視認性が確保できることが判明し、以下のごとき発明に到った。
すなわち、本件請求項1に係る発明は、レーザを光源として被マーキング物品の表面にマーキングされるドットマーク形態であって、レーザ照射点ごとの単一のドットマークからなり、同マークの中央部が被マーキング物品の表面から上方に隆起する隆起部を有するとともに、同隆起部の周囲が凹んでおり、各ドットマークの被マーキング物品の表面に沿った長さが1.0〜15.0μmであり、前記隆起部の高さが0.01〜5.0μmであることを特徴とするレーザビームによる微小ドットマーク形態にある。
かかる特異な形態をもつドットマークの形成原理は明らかではないが、現時点において考えられる代表的な形成原理としては次のように考えられる。
すなわち、1つ1つのドット形成領域にレーザビームが照射されると、その照射された個所の被マーキング物品表面が溶融し、溶融した同物品材料の池(以下、溶融池という。)ができる。このとき、溶融した材料は、溶融池の岸に近いほど温度が低く、中央部の方の温度が高くなる。この温度勾配により表面張力に分布が生じ、溶融材料に移動が起こる。そして、パルス照射の停止と同時に冷却が始まり、凝固に到る。なお、材料が溶融した状態では、溶融池の中央部は自由界面であり、溶融池の岸は固定端に相当し、周縁を固定した膜と同様の状態にある。この状態で、表面張力が働き、溶融池の中央部において膜振動と同様の動的な運動をする。
すなわち、1つ1つのドット形成領域にレーザビームが照射されると、その照射された個所の被マーキング物品表面が溶融し、溶融した同物品材料の池(以下、溶融池という。)ができる。このとき、溶融した材料は、溶融池の岸に近いほど温度が低く、中央部の方の温度が高くなる。この温度勾配により表面張力に分布が生じ、溶融材料に移動が起こる。そして、パルス照射の停止と同時に冷却が始まり、凝固に到る。なお、材料が溶融した状態では、溶融池の中央部は自由界面であり、溶融池の岸は固定端に相当し、周縁を固定した膜と同様の状態にある。この状態で、表面張力が働き、溶融池の中央部において膜振動と同様の動的な運動をする。
膜振動モードにおける1振幅長さは、材料に特有の粘性や表面張力によりほぼ決定される。そのため、溶融池の径が大きいほど振動数が多くなり、例えばシリコンの場合には1振幅長さが3〜5μm程度であるため、微小領域で効果的な高低差をもつ微小なドット形態が得られる。また、重力の影響を殆ど受けることなしに微小領域においてドットマークを形成することが可能であることも実験により確認されている。
レーザ照射パターンが、方形状の場合には溶融池も方形状となり、円形状の場合には溶融池も円形状を呈する。また、膜と同様の振動についても方形状、円形状に相当するモードで運動するようになる。図12〜図21は方形状と円形状の膜振動モードを模式的に示している。各振動モードは高次になるほど振動波数が増加し、凹パターンと凸パターンとの間を往復動する。この溶融池の運動形態は膜振動と強い相関のあることは、後述する実験結果によっても理解できる。
図12は被マーキング物品の表面から上方に湾曲面をもって膨出している状態にある円形状の膜振動モードを示している。図13は図12とは逆に被マーキング物品の表面から下方に湾曲面をもって凹陥している状態にある円形状の膜振動モードを示している。図14は被マーキング物品の表面にリング状の凹陥部とその中央から上方に略円錐状に突出している状態にある円形状の膜振動モードを示している。図15は被マーキング物品の表面にリング状の膨出部とその中央から下方に湾曲面をもって凹んでいる状態にある円形状の膜振動モードを示している。図16は被マーキング物品の表面にリング状の膨出部とその中央から上方に略円錐状に突出している状態にある円形状の膜振動モードを示している。図17は被マーキング物品の表面にリング状の凹陥部を最外縁部として同心円上に膨出部と凹陥部とを交互に配した状態にある円形状の膜振動モードを示している。
また、図18〜図21は、それぞれ上記図12〜図15に対応する方形状の膜振動モードを示している。この場合の図21は単純なリング状の膨出部ではなく方形状の角部において膨出が大きい波打ち状の膨出部となっている点が特異点である。
しかして、かかる膜振動モードの態様による特異なドットマーク形態は、数多くの実験の結果、従来とは比較にならない程の微小な大きさをもち、上述のごとくそのマーキング条件がレーザビームのパルス幅及びエネルギー密度を所定の範囲に設定すると共に、エネルギー密度分布を制御することにより得られることが判明した。
勿論、以上の説明も一つの推論に過ぎず、更に実験を重ねた結果から、本発明における隆起形態をもつ上述の微小なドットマークは「無重力化の自由液面から生じる微小液滴の発生メカニズム」により形成されるとも考えることができる。
すなわち、液体材料の表面張力エネルギーは、常に最小になるがごとき方向に働いている。表面張力エネルギーは、その液体材料の表面積に比例するため、常に表面積が小さくなる方向に材料が移動し、液面に形状変化が生じる。更に、微小体積にあっては重力の影響が無視でき、液体材料が移動のために働く力は表面張力エネルギーが支配的となる。
その結果、無重力化の液面は、表面張力エネルギーが大きな表面状態から、球面へと移行するように働き、結果として、表面から盛り上がる過程を経て、液滴が発生することになると考えられる。重力下であっても、微小な液面領域では同様の減少が発生し得る。ただし、レーザ照射で発生したシリコン溶融液面においては、液面から液滴が離れる過程で凝固してしまうため、液滴分離現象の全過程を終了することはない。ちょうど、液滴表面が盛り上がっている過程において液体が全て固体化する。その結果として、中央が隆起する凸型のドットが形成される。
ここで、本件請求項1に係る発明のドットマーク形態を形成するために使用されるレーザマーキング装置の好適な例を挙げると、例えば本発明者等が先に提案した特願平9−323080号に開示されたレーザマーキング装置がある。その詳細な構成は同出願の明細書に説明されているため、ここでは簡単な説明に止める。
図1の符号1はレーザを光源として被マーキング物品の表面に文字、バーコード、2Dコードなどをマーキングするマーキング装置を示し、同マーキング装置1は、レーザ発振器2と、前記レーザ発振器2から照射されるレーザビームのエネルギー分布を平滑化するビームホモジナイザ3と、パターンの表示に合わせて前記レーザビームを透過/非透過駆動される液晶マスク4と、前記液晶マスク4の1画素に対応レーザビームのエネルギー密度分布を所要の分布形状に成形変換するビームプロファイル変換手段5と、前記液晶マスク4の透過ビームをドット単位で半導体ウェハ表面に結像させるレンズユニット6とを備えてなり、前記液晶マスク4の1ドットの最大長さが50〜2000μmであり、前記レンズユニット6による1ドットの最大長さが1〜15μmである。
そして、かかる形状の微小ドットを形成するには、1ドット単位に照射されるレーザビームの質及び量に対する高精度な制御が必要である。そのため、請求項7に係る発明のような、パルスレーザ発振器から照射されるレーザビームにより被マーキング物品の表面にドット状のマークを形成するマーキング方法であって、前記レーザ発振器から照射されるレーザビームのエネルギー分布をビームホモジナイザにより平滑化すること、1画素単位の最大長さが50〜2000μmである液晶マスクを駆動制御して所望のパターンを形成し、前記ビームホモジナイザにより均整化されたレーザビームを前記液晶マスクに照射すること、前記液晶マスクを通過して分割されたレーザビームのエネルギー密度を、そのマーキング面において1.0〜15.0J/cm 2 に設定すること、共焦点方式で被マーキング部品の表面の高さ計測を行い、この値からレンズの縦方向の微小位置決め機構にフィードバックさせて、自動的に焦点の位置決めを行うこと、及び前記液晶マスクを透過した1ドットごとの各レーザビームを、レンズユニットにより1ドットの最大長さが1.0〜15.0μmとなるように縮小して前記被マーキング物品の表面に結像させることを特徴とするレーザビームによる微小マーキング方法を採用することが有利である。
更に、請求項8に係る発明のごとく、前記液晶マスクの画素マトリックスに対応する同一サイズのドットマトリックスにて構成され、レーザビームのエネルギー密度分布を所要の分布形状に成形変換するビームプロファイル変換手段を、前記液晶マスクの前後いずれかに配することが好ましい。
大きなビーム径のレーザビームから本発明でいう微小径のレーザビームを得るには、高品質で高出力のレーザビームが必要であるが、高出力レーザによる回析現象のため、これ以上小さく絞ることは困難であり、また仮に小さく絞れたとしても、レンズの射出角が大きくなり、焦点深度が極めて小さくなって、実加工ができるとは考えがたい。また、解像度などの点からも超精密のレンズ系が要求される。かかるレンズ系を装備させる場合には、その設備費が一段と高騰し、経済性の観点からも適用は不可能である。
そこで、通常のレンズ系をもってドットマークの微小化を実現するには、レーザ発振器2から出射されるレーザビーム自体を1ドットのマーキングに必要且つ十分なエネルギーをもつ小径のレーザビームに分割変換するとともに、各ドット単位のレーザビームのエネルギー密度分布を上述のドット形態に加工するに相応しいプロファイルに変換することが必要である。そして、かかる好適で且つ均整なプロファイルを成形するには、その前段階にて前記変換される以前の各ドット単位のレーザビームにおけるエネルギー密度分布を平滑化しておく必要がある。
前記微小化のための光源を得るには、中央制御部に書き込まれた各種データに基づいて液晶マスク4の各液晶単位で任意に光の透過・非透過を駆動制御できる液晶がマトリックス状に配列された液晶マスク4を採用することが合理的である。
また、前述のごとくガウシアン形状のエネルギー密度分布をもつレーザ発振器から出射されるレーザビームを、ビームホモジナイザ3を用いて、例えばトップハット形状に類似する平滑化された形状に変換することが必要である。このビームホモジナイザ3としては、例えばフライアイレンズやバイナリーオプティクス、シリンドリカルレンズを使用したマスク面上を一括して照射する方式や、ポリゴンミラー、ミラースキャナなどのアクチュエータによりミラー駆動してマスク面上をビーム操作する方式がある。
前述のビームホモジナイザ3によりエネルギー密度分布が平滑化されたレーザビームを、上述の好適なドット形態を得るために好適なエネルギー密度分布のプロファイルに再変換する必要があるときは、更にビームプロファイル変換器5が使われる。このビームプロファイル変換器5としては、例えば回析光学素子、ホログラフィック光学素子、吸収/透過領域を備えた開口マスク或いは液晶マスク、凹型又は凸型のマイクロレンズアレイなどが挙げられる。なお、本発明のドットマーク形態を得るには、このビームプロファイル変換手段は必ずしも必要としない。
ここで、本発明における加工対象としての被マーキング物品である半導体基材Wとは、半導体ウェハや回路チップ自体であり、その被マーキング面は半導体ウェハや回路チップのあらゆる切断又は切削面が対象となる。また、ここで前記半導体ウェハとは、シリコンウェハそれ自体である場合が代表的ではあるが、その他にウェハ表面に酸化膜(SiO2) や窒化膜(SiN) が形成されたもの、更にはエピタキシャル成長させたウェハ、ガリウム砒素、インジウムリン化合物が表面に形成されたウェハをも含むものである。
本発明により視認できる微小なドットマーク形態寸法は、既述したとおり、半導体ウェハWの表面に沿った最大幅が1〜15μmであり、隆起部の高さが0.01〜5μmである。これは、各種の実験結果からもたらされた現在の光学的センサによる視認性の限界とマーキング領域の選択自由度とを確保するために必要な最小限と最大限の大きさの範囲である。
本発明にあって、前記ドットマークの光反射面からの反射光を対物レンズを介して受像器で受けることが好ましい。光源からの光は光学系を経てドットマーク形成面に照射される。この照射された光は、前記ドットマークの反射面にて反射し、隆起形態をもつドットマークの頂点部の散乱光を収束して受像器に捕らえる。そのときの受像器の受光量の分布を見ると、ドットマークからの散乱光量はマーク周辺からの反射光量とは比較にならないほど大きい。従って、その後の画像処理においても十分に他の反射光と区別ができ、正確にドットマークを読み取ることを可能にする。
ここで、前記対物レンズの開口数は小さければ小さいほど像の焦点深度が大きくなり、位置決めが容易にできるが、あまりに小さすぎると多量の照明光を必要とするため、実用上は0.1近傍、若しくはそれより少し小さめであることが望ましい。一方、前記対物レンズの開口数が0.13に近づくと視野が広くなり、読み取り対象領域の位置合わせはしやすくなるが、多少画像処理の精度が低下する。しかし、本発明に適用される特異な形態をもつドットマークであれば、周辺との明暗差が極めて大きく、ドットマークの中心位置に集中する光輝点を読み取るには実用上に格別の不具合はない。また、前記対物レンズの開口数が0.1 より小さく、焦点深度が大きくなりすぎたとしても、読み取り対象物の表面の反射光とドットマーク表面からの散乱光との明暗差が大きいため、通常の量の照明光によっても広い範囲でドットマークの十分な認識が可能となる。
したがって、上記ドットマークの読み取りにあたっては、照射面に対して斜め上方又は直上から照射する光による散乱光を受像する。このときの受像器による受像は目視による場合と同じである。このため、受像器の焦点は通常のビデオカメラと同様に、ほぼ照射面上に合わせればよく、従来のごとく精密な焦点合わせの必要がなく、前記ドットマークの特異な形態により同マークの中心部分だけが高輝度で輝いて見えるため、ドットマークを単一の輝点として確実に認識し得るものである。
そして、前記照射光としてインコヒーレント光を採用すると、照射面の全面に平均化された光が方向性をもって照射され、コヒーレント光を採用する場合と較べてドットマークの影が生じかたが少ないため有利である。しかし、照射光としてコヒーレント光をも採用でき、特にドットマークの直上から照射する場合にはコヒーレント光の方が有利である。上記ドットマークの最大幅を15μmであると規定している。かかる微小なドットマークであれば、ドットマークの形成領域の広狭による制約を受けることなく、所要の情報を書き込むことができ、その選択の自由度が増加する。
上述のごとく本発明によるドットマークは、その特異な形態と微小であるがために、通常では予測し得ないような狭小な領域への十分な情報量をもつドットマークの書き込みができるばかりでなく、その読み取りも可能である。本発明におけるドットマークは、請求項2〜6に規定するように、前記ドットマークを半導体ウェハの周面部、特にその周面部に形成されるノッチ部の内面は言うに及ばず、驚いたことには半導体ウェハや回路チップの切断(破断)面及び研削面に形成することが可能となる。
すなわち、ドットマークの形成面に光を照射し、その反射光を受像器で受け、同受像器からの画像を画像処理して前記ドットマークを読み取る方法であって、中央部が上方に隆起しているドットマークを付した半導体ウェハのマーク形成面に斜め上方から又は直上から照射光学系を介して光を照射する。このときの照射光は、平行光でなく自然光に近い光が好ましく所要の面積をもつ照射面に一斉照射するものである。
光が照射された光照射面にあって、その表面から隆起するドットマークの周辺は、通常、鏡面加工がなされており、法線に対してθの角度で入射された光は同一角度θをもって反射する。一方、前記ドットマーク表面に入射された光はその殆どが多方向へと散乱する。従って、照射面に対して斜め方向から、或いは直上から照射される光をドットマークの直上又は斜め上方で受光すると、ドットマークの周辺における反射光は受像器によって受光されず、ドットマークの表面で反射する散乱光の一部がある断面積の範囲内の光束として受光される。この光束を光学系を通して収束して光像とすれば、その周辺と極めて大きなの輝度差をもって光像が得られることになり、たとえ微小なドットマークであっても確実に認識できる。
前記形成面に照射する光がインコヒーレント光である場合には、受像面において干渉縞が発生せず、しかも照射角度に関わらず所定領域の照射面にほぼ均等に照射されるため、ドットマークの影などの発生も防ぐことができ、鮮明な画像が得られるため好ましい。
前述の微小で特異な形態をもつ上記ドットマークを半導体基材Wの切断面又は切削面に形成するに好適なマーキング方法は、前記レーザ発振器2から照射されるレーザビームのエネルギー分布を、既述したごとくビームホモジナイザ3により平滑化すること、1画素単位の最大長さが50〜2000μmである液晶マスク4を駆動制御して所望のパターンを形成し、前記ビームホモジナイザ3により均整化されたレーザビームを前記液晶マスク4に照射すること、及び前記液晶マスクを透過した1ドットごとの各レーザビームを、レンズユニット6により1ドットの最大長さが1〜15μmとなるように縮小して前記被マーキング物品の表面に結像させることを含んでいる。
本発明者等は、本発明の特異な形態を有する上記ドットマークを形成するには、レーザビームの波長、同エネルギー密度及び同パルス幅が如何に影響するかについて具体的に実験を繰り返した。その結果、波長については半導体ウエハに対する吸収率に差異が生じるだけで、その値による他の形態に関して同様の傾向を示した。しかるに、半導体ウエハの材料としてシリコンを例にとると、本発明のドットマーク形態を得るには、ドット形態が小さくなるほどシリコンへの浸透深さも適度に小さくする必要があるため、532nm程度が最も良好な結果が得られる。ただし、波長については被マーキング物品の材質により異なるため、一概には規定できない。
一方、パルス幅に関しては、エネルギー密度の許容範囲を適当に大きく取れ、レーザの出力自身も極力抑えることができる範囲を模索したところ、本発明のドットマークを形成するには10〜500nsの範囲が効果的であることを知った。特に好ましくは、50〜120nsである。なお、500ns以上の場合にはエネルギー密度が大きくなりすぎて、所望のドットマークの形態が得にくく、レーザ発振器自体も大型下せざるを得ない。また、psの領域のレーザによる加工では、蒸散が著しく発生し、許容できるエネルギー密度範囲が極端に狭くなる。
前記マーキング条件に加えて、更に前記液晶マスク4の画素マトリックスに対応する同一サイズのドットマトリックスにて構成され、レーザビームのエネルギー密度分布を所要の分布形状に成形変換するビームプロファイル変換手段5を、前記液晶マスク4の前後いずれかに配することを含んでいる。このビームプロファイル変換手段は、照射パターンドット内の熱分布を調整することで、ドットマークの隆起部高さが調整される。
ここで、液晶マスクの1画素単位の最大長さを50〜2000μmに規定しているのは、液晶マスク4を透過したレーザビームがレンズ系により1ドットの最大長さを1〜15μmとなるように縮小して前記被マーキング物品の表面に結像させるためには、現状のレンズ系における解像度の限界であるがためである。また、1ドットの最大長さ(径)が1μmより小さい場合には、現在の光学系のセンサでは1ドットごとに読み取ることが困難であり、15μmを超えると充分な量の情報をマーキングすることができないばかりでなく、そのマーキング領域にも制限される。これらの値は、例えば現在のSEMI規格で許容されるドットマーク寸法の最大限の値である100μmと比較すると、3/20〜1/100であって、如何に微小な寸法であるかが理解できる。このようなミクロン単位のマーキングを複数のウェハ表面に均一に形成しようとする場合には、そのマーキング面と集光レンズとの間の距離や光軸合わせをミクロン単位で調節する必要がある。本発明では、自動的に焦点の位置決めをするため、焦点検出をレーザ顕微鏡などで一般に使用されている共焦点方式で高さ計測を行い、この値からレンズの縦方向の微小位置決め機構にフィードバックさせている。
これらの微小で且つ隆起する形態を有するドットマークであっても、そのマーク形成面の表面粗さによっては読み取りが不可能となる。読み取りを可能にするには、微小で且つ特異な形態をもつ前記ドットマークを形成する被マーキング面の表面粗さが前記ドットマークの隆起高さよりも低くすることが好ましい。
ここで表面粗さRとは、粗さ曲線により囲まれる上下の面積が等しくなる直線を中心線として、その中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分における前記中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸として、粗さ曲線をY=f(X) で表したとき、次式により求められる値μmで表す。
すなわち、表面粗さR(μm)は、
R={X=0からLまでの積分f(X) }÷L
である。
すなわち、表面粗さR(μm)は、
R={X=0からLまでの積分f(X) }÷L
である。
こうして求められる表面粗さRについて、半導体ウェハの、例えばスクライブラインにおける切断面(研削面と破断面)を対象としてその値を求めたところ、通常のスクライバーによりスクライブラインに沿って切断(切削)した切削面と同切断線に沿って破断した破断面の全ての表面粗さRが、本発明におけるドットマークの隆起高さの最大値である5μm以下であることが確認された。
以下、本発明の好適な実施の形態を、その比較形態と共に添付図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は本発明の微小ドットマーキングを形成するためのレーザマーキング装置を模式的に示した説明図である。
同図において、符号2はレーザ発振器、3はビームホモジナイザ、4は液晶マスク、5はビームプロファイル変換器、6は結像レンズユニット、Wは被マーキング物品である。ここで、本実施例では半導体基材Wとして半導体ウェハを例示している。なお、本実施例にあって前記半導体ウェハWとは、シリコンウェハのみならず、同ウェハ表面に酸化膜や窒化膜が形成されたもの、更にはエピタキシャル成長させた半導体ウェハ、ガリウム砒素、インジウムリン化合物などにより成膜された半導体ウェハ一般を総称するものである。また、半導体基材としては前記半導体ウェハの他にも、同半導体ウェハを基材として製造される各種の半導体デバイスがある。
図1は本発明の微小ドットマーキングを形成するためのレーザマーキング装置を模式的に示した説明図である。
同図において、符号2はレーザ発振器、3はビームホモジナイザ、4は液晶マスク、5はビームプロファイル変換器、6は結像レンズユニット、Wは被マーキング物品である。ここで、本実施例では半導体基材Wとして半導体ウェハを例示している。なお、本実施例にあって前記半導体ウェハWとは、シリコンウェハのみならず、同ウェハ表面に酸化膜や窒化膜が形成されたもの、更にはエピタキシャル成長させた半導体ウェハ、ガリウム砒素、インジウムリン化合物などにより成膜された半導体ウェハ一般を総称するものである。また、半導体基材としては前記半導体ウェハの他にも、同半導体ウェハを基材として製造される各種の半導体デバイスがある。
例えば、本発明におけるドットマークを半導体ウェハの、例えば裏面の研削面や切断面に形成するには、本発明者等が先に提案した特願平9−323080号に開示されたレーザマーキング装置1にあって、レーザ発振器2から出射されるガウシアン形状のエネルギー密度分布を有するレーザビームを、まずビームホモジナイザ3を通して、尖頭値がほぼ均一なトップハット型のエネルギー密度分布形状に成形する。こうしてエネルギー密度分布が均一に成形されたレーザビームは、次いで液晶マスク4の表面に照射される。このとき、液晶マスク4は広く知られているように所要のマーキングパターンをマスク上に駆動表示することが可能であり、前記レーザビームは同パターン表示領域内の光透過可能な状態にある画素部分を透過する。この各画素ごとに分割されて透過したのちの各透過光のエネルギー密度分布も、前記ビームホモジナイザ3により成形された形状と同一であって均一に分布されている。
上記ビームホモジナイザ3は、例えばガウシアン形状のエネルギー密度分布をもつレーザ光を、平滑化されたエネルギー密度分布の形状に成形するための光学部品を総称する。この光学部品としては、例えばフライアイレンズやバイナリーオプティクス、シリンドリカルレンズを使用して、そのマスク面上に一括照射するか或いはポリゴンミラーやミラースキャナなどのアクチュエータによるミラー駆動によってマスク面上を走査させる方式がある。
本実施例にあって、前記液晶マスク4に1回で照射する領域は、ドット数で10×11個であり、これをレーザビームをもって一括照射するが、かかるドット数では必要とする全てのドットマーク数を満足し得ないことが多いため、マークパターンを数区画に分割して順次液晶マスクに表示させ、これを切り換えながら組み合わせて全体のマークパターンをウェハ表面に形成するようにすることもできる。この場合、ウェハ表面に結像させるときはウェハ又は照射位置を当然に制御移動させる必要がある。かかる制御手法としては従来から公知とされている様々な手法が採用できる。
本実施例にあっては、上記液晶マスク4を通過したドット単位のレーザビームを、続いてビームプロファイル変換器5に照射する。このビームプロファイル変換器5は前記液晶マスク4のマトリックス状に配された個々の液晶に対応して同じくマトリックス状に配列されている。従って、液晶マスク4を透過したレーザビームは、1対1に対応してドットごとに前記ビームプロファイル変換器5を通過して、ビームホモジナイザ3によりそれぞれに平滑化されたエネルギー密度分布のレーザビームが本発明特有の微小な穴形状を形成するに必要なエネルギー密度分布形状へと変換される。本実施例では前述のごとく液晶マスク4を通過した後のレーザビームを、ビームプロファイル変換器5を通過させて、そのエネルギー密度分布形状を変換しているが、ビームプロファイル変換器5によるエネルギー密度分布のプロファイルを変換させることなく、次のレンズユニット6に直接導入することもある。
ビームプロファイル変換器5を通過したレーザビームはレンズユニット6により絞られ、半導体ウェハWの裏面の所定の位置に照射され、同表面に必要なドットマーキングがなされる。本実施例にあっては、前記液晶の画素単位の最大長さを50〜2000μmとして、これを前記レンズユニット6により半導体ウエハWの表面に1〜15μmにまで絞られる。ここで、ミクロン単位のマーキングを複数のウェハ表面に均一に形成しようとする場合には、そのマーキング面と集光レンズとの間の距離や光軸合わせをミクロン単位で調節する必要がある。本実施例によれば、焦点検出はレーザ顕微鏡などで一般に使用されている共焦点方式で高さ計測を行い、この値からレンズの縦方向の微小位置決め機構にフィードバックさせて、自動的に焦点の位置決めがなされる。また、光軸合わせや光学構成部品の位置決め及び調整は、一般的に知られた方法が採用され、例えばHe−Neレーザなどのガイド光を通じて、予め設定されている基準スポットに適合させるべくネジ調整機構などによって調整する。この調整は組立時に一回だけ行えばよい。
従って、本発明に係る微小なドットマークとは最大長さが1〜15μmの寸法範囲にあり、その隆起部の周辺が僅かに凹んでいる場合も考慮して、その凹凸寸法を0.01〜5μmとしている。このような寸法のドットマークを形成するには、縮小レンズユニットの解像度などによる半導体ウェハWの表面の照射ポイントにおける結像に崩れを生じさせないようにするため、上記液晶マスク4の1ドット当たりの1辺長さが50〜2000μmであることが必要である。更には、前記ビームプロファイル変換器5と前記液晶マスク4との配置間隔が余り大き過ぎても或いは小さ過ぎても、周辺の光線の影響を受け或いは光軸の不安定さの影響を受けて、半導体ウェハ表面の結像に乱れが生じやすい。そこで、本実施例にあっては、前記ビームプロファイル変換器5と前記液晶マスク4との配置間隔Xを前記液晶マスク4の1画素単位の最大長さYの0〜10倍に設定している。かかる範囲で前記配置間隔を設定することにより、ウェハ表面に照射される結像が鮮明なものとなる。
上記ビームプロファイル変換器5は、前記ビームホモジナイザ3により平滑化されたエネルギー密度分布を本発明に特有のドット形状を得るために最適なエネルギー密度分布の形状に変換させるための光学部品であり、回析現象、屈折現象或いはレーザ照射ポイントにおける光透過率を任意に異ならせるなどして、入射レーザ光のエネルギー密度分布のプロファイルを任意の形状に変換するものである。その光学部品としては、例えば回析光学素子、ホログラフィック光学素子、凸型のマイクロレンズアレイ、或いは液晶自体が挙げられ、それらをマトリックス状に配置してビームプロファイル変換器5として使用する。
図3及び図4は、本発明方法により形成されるドットマークの典型的な形状例と配列状況とを示している。なお、同図はAFMにより観察した立体図であり、図4は同じくAFMにより観察した断面図である。同図によれば、半導体ウエハWの表面に結像される各ドットマークは3.6μmの方形であり、各ドットの高さは略333nm、ドット間隔は4.5μmである。これらの図からも理解できるように、半導体ウエハWの表面には液晶マスク4の各画素に対応して分割されたレーザビームごとの略円錐状のドットマークが形成され、しかも、そのドットマークは11個×10個に整然と並んでおり、それぞれの高さもほぼ揃っている。これは、液晶マスク4に照射されるレーザビームのエネルギー分布をビームホモジナイザ3により均一に平滑化されたがためである。
かかる形態と寸法からなるドットマークに対して、鏡面加工がなされたウェハ表面とダイサーによるウェハ切断面との表面粗さRを求めたところ、図5及び図6に示すごとく、前者の最大隆起高さが4.54nm、後者の最大隆起高さが114.87nmであって、切断面にあっても上記ドットマークを十分に読み取ることが可能である。
図7〜図10は、本実施例により採用された上記レーザマーキング装置1により.本発明方法の条件下で形成される本発明に特有のドットマーク形態と、同装置1による他の条件下で形成されるドットマーク形態とを示している。前記レーザマーキング装置1の仕様は、
レーザ媒質:Nd,YAGレーザ
レーザ波長:532nm
モード :TEM00
平均出力 : 4W @ 1KHz
パルス幅 :100ns @ 1KHz
である。
レーザ媒質:Nd,YAGレーザ
レーザ波長:532nm
モード :TEM00
平均出力 : 4W @ 1KHz
パルス幅 :100ns @ 1KHz
である。
ここで、本発明の実施にあたりレーザビームの波長について次のような予備実験を行っている。すなわち、レーザビームの波長を、355nm、532nm、1064nmの3通りとし、後述する本発明の実施例とその比較例のごとく、エネルギー密度を0.14〜3.1J/cm2 、パルス幅を10〜700nm及び20psの範囲で様々な予備実験を行ったところ、レーザビームの波長については、532nmと1064nmとでは、シリコンの吸収率に差異はあるものの、全体的には同じ傾向が観測された。しかし、532nmの波長の方がシリコンへの浸透深さが小さく、特にドットが微小になるに従って良好な結果が得られた。
一方、レーザビームの波長を355nmにすると、シリコンへの浸透深さが小さ過ぎ、シリコン表面での蒸散が生じやすい。そこで、本実施例ではレーザビームの波長を532nmとしている。ただし、本発明においてレーザビームの波長は一律に規定されるものではない。
一方、レーザビームの波長を355nmにすると、シリコンへの浸透深さが小さ過ぎ、シリコン表面での蒸散が生じやすい。そこで、本実施例ではレーザビームの波長を532nmとしている。ただし、本発明においてレーザビームの波長は一律に規定されるものではない。
また、本実施例において使用するレーザビームとしては、YAGレーザ発振装置、YV04レーザ発振装置の第2高調波、チタンサファイヤレーザ発振装置等により発振されるレーザビームを挙げることができる。
図7〜図9は上記マーキング条件に加えて、表1に示す半導体ウエハWの表面に照射される1ドットのドット径、レーザビームのエネルギー密度、及びそのパルス幅を変更したときの実施例1及び2並びに比較例1及び2に対応するドット形態と各寸法を示している。
図7及び図8は、上記実施例1及び2の各マーキング条件にて半導体ウエハWの表面にドットマーキングを施したときのドットマーク形態とその寸法を示している。同図によれば、上方に高く隆起した略円錐状の隆起部を備えている。このドット形態にあっても、その周辺との明暗差は大きく、充分な視認性が確保される。
図9に示す比較例1では、上記実施例1及び2と同一のドット長さ(方形の一辺長さが7.2μm)であるにも関わらず、エネルギー密度が0.96(<10)J/cm2 であるため、中央部には大きな凹陥部を有すると共に、その凹凸の高低差も上記実施例よりも大幅に少なくなり、視認性に劣る。
図10に示す比較例2は、表1にも示したように、そもそもが本発明の対象とするドットマークの長さ(半導体ウエハWの表面に沿った最大長さ)1〜15μmを越えているため、その形態の如何に関わらず本発明の実施例とはいえないが、中央部に大きな凹陥部を有すると共に、特に前記中央部の周辺に多重の浅い環状凹陥部が形成され、周辺の平坦部との間のコントラストが小さく、大きなドットマークである場合であればともかくとして、視認性に劣る。
なお、多くの実験から次のことが判明している。
(1) ドットマークの径(最大長さ寸法)が小さくなるほど隆起部が形成されやすい。またドットマークの径が小さいほど自由界面長さが小さくなり、シリコン溶液の粘性は温度が一定である場合には一定となるため、結果的により低次の振動モードが支配的になるといえる。
(1) ドットマークの径(最大長さ寸法)が小さくなるほど隆起部が形成されやすい。またドットマークの径が小さいほど自由界面長さが小さくなり、シリコン溶液の粘性は温度が一定である場合には一定となるため、結果的により低次の振動モードが支配的になるといえる。
(2) 同一高さの隆起部を形成するには、ドットマークの径が小さいほど大きなエネルギー密度を必要とする。つまり、膜振動振幅を同一に保ったまま、固定端間の距離を小さくしていく場合に相当し、固定端間の距離が短い程、大きな外力(パルス照射による温度分布=表面張力)を必要とする。
(3) ある大きさのドットマークでは、必ず隆起部を有する低次の振動モードとなる。例えば、ドットマークの径が3.6μmの場合には、その形態はともかくとして全てが隆起部を有している。
(4) ある大きさ以上のドットでは、必ず凹形の振動モードになる。つまり、凸形が支配的な場合と凹形が支配的な場合との偏極点が、20〜30μmのドットマーク径の間に存在する。これはシリコン溶液の粘性と溶融池の深さ、溶融池の大きさ(ドットマーク径)から一義的に決定される値である。
以上のことからも明らかなように、本発明に係るドットマークは、半導体ウェハ表面の各ドット単位ごとの領域に正確に且つ整然と従来の3/20〜1/100の大きさの均一な形態をもつ単一の微小なドットマークを形成することができる上に、そのドットマーク形態が従来にない中央部が隆起した特異な形態を有しているため、その視認性に優れ、2Dコードとしても充分に機能するマーク形態となる。
図11は最も表面粗さが大きいと考えられるVノッチの切断面に本発明のドットマークを形成したときの平面図を示している。この図からも理解できるように、本発明によれば半導体ウェハWの全ての切断面及び研削面に形成される微小なドットマークであっても、その隆起形態から十分な視認性を確保することができる。
また、本発明のドットマークが前述のごとく従来のドットマークの大きさよりも大幅に微小化され、しかも隣接するドットマークとの境界が判然と区別できるため、同一領域に多くのドットマークが形成でき、そのマーキング領域も大幅に増大するばかりでなく、同時にマーキング領域の選定にも自由度が増える。
すなわち、
(1) 任意の時期にウエハ表面にマーキングを施すことができる。
例えばシリコンメーカ出荷時に、納入先のデバイスメーカの用途に影響されることなく、ウエハの出荷検査データなどをマーキングすることができる。また同様に、デバイスメーカにおいては、任意の工程中に検査データのみならず、デバイスメーカ独自のウエハIDマークを刻印することができる。更には、ウエハ単位で出荷する際には、各チップの検査データ、独自のウエハID、チップIDをノッチやオリフラ部の角にマーキングすることができ、マークが小さく探し難いといった懸念が一切不要となる。
(1) 任意の時期にウエハ表面にマーキングを施すことができる。
例えばシリコンメーカ出荷時に、納入先のデバイスメーカの用途に影響されることなく、ウエハの出荷検査データなどをマーキングすることができる。また同様に、デバイスメーカにおいては、任意の工程中に検査データのみならず、デバイスメーカ独自のウエハIDマークを刻印することができる。更には、ウエハ単位で出荷する際には、各チップの検査データ、独自のウエハID、チップIDをノッチやオリフラ部の角にマーキングすることができ、マークが小さく探し難いといった懸念が一切不要となる。
(2) 特に、本発明では前記ドットマークを半導体ウェハの切断面に形成することが可能であるため、半導体製造における全ての工程においてマーキングが可能となり、最終のチップ単位でウェハから最終製品に到るまでの加工履歴を知ることが可能となる。
(3) 一枚のウエハからより多くのチップが得られる。
従来は、ノッチであってもマーキング領域を確保すべく、円弧状にウエハを区切ってチップ設計をする必要があった。これに対して、本発明によればマーキングのための専用領域をウェハ表面から排除できるため、チップ有効領域を拡大できる。この結果、ウエハの歩留りの向上に直接寄与することができる。
従来は、ノッチであってもマーキング領域を確保すべく、円弧状にウエハを区切ってチップ設計をする必要があった。これに対して、本発明によればマーキングのための専用領域をウェハ表面から排除できるため、チップ有効領域を拡大できる。この結果、ウエハの歩留りの向上に直接寄与することができる。
(4) 設計負担を軽減する。
本発明にとって好都合であることは、ウエハの切断面や研削面の全てにマーキングが可能なため、それらの被マーキング面は当然にベアウエハの状態にある。従って、チップの設計段階からマーキング領域を一切考慮する必要がないため、設計者が自由にチップをレイアウトできる。
本発明にとって好都合であることは、ウエハの切断面や研削面の全てにマーキングが可能なため、それらの被マーキング面は当然にベアウエハの状態にある。従って、チップの設計段階からマーキング領域を一切考慮する必要がないため、設計者が自由にチップをレイアウトできる。
1 レーザマーキング装置
2 レーザ発振器
3 ビームホモジナイザ
4 液晶マスク
5 ビームプロファイル変換器
6 縮小レンズユニット
2 レーザ発振器
3 ビームホモジナイザ
4 液晶マスク
5 ビームプロファイル変換器
6 縮小レンズユニット
Claims (2)
- パルスレーザ発振器から照射されるレーザビームにより被マーキング物品の表面にドット状のマークを形成するマーキング方法であって、前記レーザ発振器から照射されるレーザビームのエネルギー分布をビームホモジナイザにより平滑化すること、1画素単位の最大長さが50〜2000μmである液晶マスクを駆動制御して所望のパターンを形成し、前記ビームホモジナイザにより均整化されたレーザビームを前記液晶マスクに照射すること、前記液晶マスクを通過して分割されたレーザビームのパルス幅を10〜500nsに設定すること、共焦点方式で被マーキング部品の表面の高さ計測を行い、この値からレンズの縦方向の微小位置決め機構にフィードバックさせて、自動的に焦点の位置決めを行うこと、及び前記液晶マスクを透過した1ドットごとの各レーザビームを、レンズユニットにより1ドットの最大長さが1.0〜15.0μmとなるように縮小して前記被マーキング物品の表面に結像させること、を特徴とするレーザビームによる微小マーキング方法。
- 前記液晶マスクの画素マトリックスに対応する同一サイズのドットマトリックスにて構成され、レーザビームのエネルギー密度分布を所要の分布形状に成形変換するビームプロファイル変換手段を、前記液晶マスクの前後いずれかに配することを含んでなることを特徴とする請求項1記載の微小マーキング方法。
Priority Applications (1)
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JP2006311234A JP4719131B2 (ja) | 2006-11-17 | 2006-11-17 | レーザビームによる微小マーキング方法 |
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2006
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