特許文献1に開示されたICカードにおいては、接続端子を露出させる凹部が切削によって、ICカード用基材に形成されている。そして、凹部内に露出した接続端子とICモジュールとが電気的に接続されている。このため、この方法においては、切削手段による削り込み量の精度を少なくとも接続端子の厚さ未満にしなければならない。しかしながら、接続端子の厚みが非常に薄いことから、接続端子を露出させる凹部を正確に形成することは困難である。
一方、特許文献2に開示されたICカードにおいては、接続端子(ICカード用基材)の厚さ方向に延び接続端子を貫通する孔がICカード用基材に形成されている。そして、孔内に充填された導電性材料を介し、孔内に露出した接続端子とICモジュールとが電気的に接続されている。この方法によれば、接続端子を露出させる孔を容易に形成することができるが、上述したように接続端子の厚さが非常に薄いため、孔内に露出する接続端子の表面積は非常に小さくなる(図4(b)参照)。したがって、ICモジュールとアンテナとの接続抵抗値が非常に大きくなってしまう。また、孔内に導電性材料を充填する際、孔内に空気が残留し、この空気によってICモジュールとアンテナとを電気的に接続させることができない場合すらある。
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、ICモジュールとアンテナとを低接続抵抗値で電気的に接続させることができるとともに容易かつ安価に製造することができるICカード、ICカードの製造方法、ICカードの製造装置、ICカード用基材、ICカード用基材の製造方法、およびICカード用基材の製造装置を提供することを目的とする。
本発明によるICカードは、ICモジュールと、接続端子を有するアンテナを内蔵したICカード用基材であって、ICモジュールを収納する凹部と接続端子を貫通する孔とを形成されたICカード用基材と、孔内に設けられICモジュールとアンテナとに電気的に接続した導電性材料と、を備え、孔は、孔の底側端に向けて先細りする部分を有し、この先細り部分において接続端子を貫通していることを特徴とする。
このような本発明によれば、孔内に露出する接続端子の表面積が大きくなり、アンテナとICモジュールとを低接続抵抗値で電気的に接続させることができる。また、孔が先細り部分において接続端子を貫通していることから、孔内に導電性材料を充填する際に、接続端子が露出したこの先細り部分に空気が残留しにくくなり、孔内に残留した空気によってアンテナとICモジュールとが絶縁されてしまうこと、または接続抵抗値が大きくなってしまうことを抑制することができる。さらに、このような孔を切削工具等によって形成することができ、この場合、切削工具等の切り込み量は比較的大きな許容範囲を有する。したがって、このようなICカードは容易かつ安価に製造され得る。
本発明によるICカードにおいて、孔が、前記先細り部分として、断面視において略三角形状を有する底部を有し、この底部において接続端子を貫通するようにしてもよい。このような本発明によれば、孔の底側端の位置が接続端子の厚み方向に多少ずれたとしても、接続端子が比較的大きな一定の表面積で孔内に露出する。また、孔内に充填される導電性材料は底側端から堆積していくので、孔内に空気が残留することを格段に抑制することができる。
あるいは、本発明によるICカードにおいて、孔が、前記先細り部分として、断面視において略半円形状を有する底部を有し、この底部において接続端子を貫通するようにしてもよい。このような本発明によれば、孔の底側端が接続端子に近接している場合、露出した接続端子の表面積が非常に大きくなる。また、孔内に充填される導電性材料は底側端から堆積していくので、孔内に空気が残留することを格段に抑制することができる。
また、本発明によるICカードにおいて、孔が平面視において線状に延びる溝状孔からなるようにしてもよい。このような本発明によれば、孔内に露出した接続端子の表面積を非常に大きくすることができる。これにより、アンテナとICモジュールとをより低い接続抵抗値で電気的に接続させることができる。
本発明によるICカードの製造方法は、接続端子を有するアンテナを内蔵したカード状部材に、ICモジュールを収納するための凹部を形成する工程と、接続端子を有するアンテナを内蔵したカード状部材に、底側端に向けて先細りする部分を有しこの先細り部分において接続端子を貫通する孔を形成する工程と、形成された孔内に導電性材料を充填する工程と、形成された凹部内にICモジュールを配置して、導電性材料を介してICモジュールをアンテナに電気的に接続させる工程と、を備えたことを特徴とする。
このような本発明によれば、孔内に露出した接続端子の表面積が大きくなり、アンテナとICモジュールとを低接続抵抗値で電気的に接続させることができる。また、例えば、先端に向けて先細りする部分を有した切削工具を、回転させながら接続電極の厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材へ切り込ませることによって、このような孔を形成することができ、この場合、切削工具等の切り込み量は比較的大きな許容範囲を有する。さらに、孔が先細り部分において接続端子を貫通していることから、孔内に導電性材料を充填する工程において、接続端子が露出したこの先細り部分に空気が残留しにくくなり、孔内に残留した空気によってアンテナとICモジュールとが絶縁されてしまうこと、または接続抵抗値が大きくなってしまうことを抑制することができる。これらのことから本発明によれば、ICモジュールとアンテナとを低接続抵抗値で電気的に接続させた高品質のICカードを容易かつ安価に製造することができる。なお、本発明において、凹部を形成する工程および孔を形成する工程については、いずれの工程を先に行ってもよい。
本発明によるICカードの製造方法において、孔を形成する工程中に、断面視において略三角形状を有する底部を前記先細り部分として有し、この底部において接続端子を貫通する孔が形成されるようにしてもよい。このような孔は、例えば、前記先細りする部分としての先端部分が断面視において略三角形状を有する切削工具を、回転させながら接続電極の厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材へ切り込ませることによって形成することができる。この場合、接続端子の厚さ方向に沿った切削工具の切り込み量は、比較的大きな許容範囲を有し、孔の底側端の位置が接続端子の厚み方向に多少ずれたとしても、接続端子は比較的大きな一定の表面積で孔内に露出する。したがって、孔を容易に形成することができるとともに、形成された孔内に接続端子を比較的大きな表面積で露出させることができる。さらに、孔内に充填される導電性材料は底側端から堆積していくので、孔内に空気が残留することを格段に抑制することができる。
あるいは、本発明によるICカードの製造方法において、孔を形成する工程中に、断面視において略半円形状を有する底部を前記先細り部分として有し、この底部において接続端子を貫通する孔が形成されるようにしてもよい。このような孔は、例えば、前記先細りする部分としての先端部分が断面視において略半円形状を有する切削工具を、回転させながら接続電極の厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材へ切り込ませることによって、このような孔を形成することができる。この場合、接続端子の厚さ方向に沿った孔の底側端の位置は、比較的大きな許容範囲を有し、また、孔の底側端が接続端子に近接している場合、露出した接続端子の表面積は非常に大きくなる。したがって、孔を容易に形成することができるとともに、形成された孔内に接続端子を比較的大きな表面積で露出させることができる。また、孔内に充填される導電性材料は底側端から堆積していくので、孔内に空気が残留することを格段に抑制することができる。
また、本発明によるICカードの製造方法の孔を形成する工程において、先端に向けて先細りする部分を有した切削工具を、回転させながら接続電極の厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材へ切り込ませて接続端子を貫通させ、その後、切り込んで接続端子を貫通した切削工具を回転させながら、さらに、接続端子の厚さ方向に直交する方向に移動させるようにしてもよい。このような本発明によれば、孔内に露出する接続端子の表面積を格段に大きくすることができる。これにより、アンテナとICモジュールとを非常に低い接続抵抗値で電気的に接続させたICカードを製造することができる。
本発明によるICカードの製造装置は、接続端子を有するアンテナを内蔵したカード状部材を切削して、ICモジュールを収納するための凹部を形成する手段と、接続端子を有するアンテナを内蔵したカード状部材を切削して、底側端に向けて先細りする部分を有しこの先細り部分において接続端子を貫通する孔を形成する手段と、形成された孔内に導電性材料を充填する手段と、形成された凹部内にICモジュールを配置して、導電性材料を介してICモジュールをアンテナに電気的に接続させる手段と、を備えたことを特徴とする。
このような本発明によれば、孔内に露出した接続端子の表面積が大きくなり、アンテナとICモジュールとを低接続抵抗値で電気的に接続させることができる。また、孔を形成する手段が先端に向けて先細りする部分を有した切削工具を有するようにし、この切削工具を回転させながら接続電極の厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材へ切り込ませて孔を形成するようにしてもよい。この場合、切削工具等の切り込み量は比較的大きな許容範囲を有するようになるので、このような孔を容易かつ安価に形成することができる。さらに、孔が先細り部分において接続端子を貫通していることから、孔内に導電性材料を充填する際に、接続端子が露出したこの先細り部分に空気が残留しにくくなり、孔内に残留した空気によってアンテナとICモジュールとが絶縁されてしまうこと、または接続抵抗値が大きくなってしまうことを抑制することができる。これらのことから本発明によれば、ICモジュールとアンテナとを低接続抵抗値で電気的に接続させたICカードを容易かつ安価に製造することができる。
本発明によるICカードの製造装置において、孔を形成する手段が、前記先細りする部分としての先端部分が断面視において略三角形状を有する切削工具を有し、この切削工具を回転させながら接続電極の厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材へ切り込ませることよって、孔を形成するようにしてもよい。このような本発明によれば、断面視において略三角形状を有する底部を前記先細り部分として有し、この底部において接続端子を貫通する孔を形成することができる。この場合、接続端子の厚さ方向に沿った切削工具の切り込み量は、比較的大きな許容範囲を有し、孔の底側端の位置が接続端子の厚み方向に多少ずれていたとしても、接続端子は比較的大きな一定の表面積で孔内に露出する。したがって、孔を容易に形成することができるとともに、形成された孔内に接続端子を比較的大きな表面積で露出させることができる。さらに、孔内に充填される導電性材料は底側端から堆積していくようになるので、孔内に空気が残留することを格段に抑制することができる。
あるいは、本発明によるICカードの製造装置において、孔を形成する手段が、前記先細りする部分としての先端部分が断面視において略半円形状を有する切削工具を有し、この切削工具を回転させながら接続電極の厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材へ切り込ませることよって、孔を形成するようにしてもよい。このような本発明によれば、断面視において略半円形状を有する底部を前記先細り部分として有し、この底部において接続端子を貫通する孔を形成することができる。この場合、接続端子の厚さ方向に沿った孔の底側端の位置は、比較的大きな許容範囲を有し、また、孔の底側端が接続端子に近接している場合、露出した接続端子の表面積は非常に大きくなり、形成された孔内に接続端子を比較的大きな表面積で露出させることができる。さらに、孔内に充填される導電性材料は底側端から堆積していくようになるので、孔内に空気が残留することを格段に抑制することができる。
本発明によるICカード用基材は、ICモジュールと電気的に接続されてICカードを構成するICカード用基材であって、内蔵され接続端子を有するアンテナを備え、ICモジュールを収納する凹部と、底側端に向けて先細りする部分を有した孔であって、この先細り部分において接続端子を貫通する孔と、が形成されていることを特徴とする。
このような本発明によれば、孔内に露出する接続端子の表面積を大きくすることができる。また、このような孔を切削工具等によって形成することができ、この場合、切削工具等の切り込み量は比較的大きな許容範囲を有する。したがって、このようなICカード用基材は容易かつ安価に製造され得る。
本発明によるICカード用基材において、孔が、前記先細り部分として、断面視において略三角形状を有する底部を有し、この底部において接続端子を貫通するようにしてもよい。このような本発明によれば、孔の底側端の位置が接続端子の厚み方向に多少ずれたとしても、接続端子が比較的大きな一定の表面積で孔内に露出する。
あるいは、本発明によるICカード用基材において、孔が、前記先細り部分として、断面視において略半円形状を有する底部を有し、この底部において接続端子を貫通するようにしてもよい。このような本発明によれば、孔の底側端が接続端子に近接している場合、露出した接続端子の表面積が非常に大きくなる。
本発明によるICカード用基材において、孔が平面視において線状に延びる溝状孔からなるようにしてもよい。このような本発明によれば、孔内に露出する接続端子の表面積を非常に大きくすることができる。
本発明によるICカード用基材の製造方法は、上述したICカード用基材を製造する方法であって、接続端子を有するアンテナを内蔵したカード状部材に、ICモジュールを収納するための凹部を形成する工程と、接続端子を有するアンテナを内蔵したカード状部材に、底側端に向けて先細りする部分を有しこの先細り部分において接続端子を貫通する孔を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
このような本発明によれば、孔内に露出する接続端子の表面積を大きくすることができる。また、例えば、先端に向けて先細りする部分を有した切削工具を、回転させながら接続電極の厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材へ切り込ませることによって、このような孔を形成することができ、この場合、切削工具等の切り込み量は比較的大きな許容範囲を有する。したがって、このようなICカード用基材を容易かつ安価に製造することができる。なお、本発明において、凹部を形成する工程および孔を形成する工程については、いずれの工程を先に行ってもよい。
本発明によるICカード用基材の製造方法において、孔を形成する工程中に、断面視において略三角形状を有する底部を前記先細り部分として有し、この底部において接続端子を貫通する孔が形成されるようにしてもよい。このような孔は、例えば、前記先細りする部分としての先端部分が断面視において略三角形状を有する切削工具を、回転させながら接続電極の厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材へ切り込ませることによって形成することができる。この場合、接続端子の厚さ方向に沿った切削工具の切り込み量は、比較的大きな許容範囲を有し、孔の底側端の位置が接続端子の厚み方向に多少ずれたとしても、接続端子は比較的大きな一定の表面積で孔内に露出する。したがって、孔を容易に形成することができるとともに、形成された孔内に接続端子を比較的大きな表面積で露出させることができる。
あるいは、本発明によるICカード用基材の製造方法において、孔を形成する工程中に、断面視において略半円形状を有する底部を前記先細り部分として有し、この底部において接続端子を貫通する孔が形成されるようにしてもよい。このような孔は、例えば、前記先細りする部分としての先端部分が断面視において略半円形状を有する切削工具を、回転させながら接続電極の厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材へ切り込ませることによって、このような孔を形成することができる。この場合、接続端子の厚さ方向に沿った孔の底側端の位置は、比較的大きな許容範囲を有し、また、孔の底側端が接続端子に近接している場合、露出した接続端子の表面積は非常に大きくなる。したがって、孔を容易に形成することができるとともに、形成された孔内に接続端子を比較的大きな表面積で露出させることができる。
また、本発明によるICカード用基材の製造方法の孔を形成する工程において、先端に向けて先細りする部分を有した切削工具を、回転させながら接続電極の厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材へ切り込ませて接続端子を貫通させ、その後、切り込んで接続端子を貫通した切削工具を回転させながら、さらに、接続端子の厚さ方向に直交する方向に移動させるようにしてもよい。このような本発明によれば、孔内に露出する接続端子の表面積を格段に大きくすることができる。
本発明によるICカード用基材の製造装置は、上述したICカード用基材を製造する装置であって、接続端子を有するアンテナを内蔵したカード状部材を切削して、ICモジュールを収納するための凹部を形成する手段と、接続端子を有するアンテナを内蔵したカード状部材を切削して、底側端に向けて先細りする部分を有しこの先細り部分において接続端子を貫通する孔を形成する手段と、を備えたことを特徴とする。
このような本発明によれば、孔内に露出した接続端子の表面積を大きくすることができる。また、孔を形成する手段が先端に向けて先細りする部分を有した切削工具を有するようにし、この切削工具を回転させながら接続電極の厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材へ切り込ませて孔を形成するようにしてもよい。この場合、切削工具等の切り込み量は比較的大きな許容範囲を有するようになるので、このような孔を容易かつ安価に形成することができる。さらに、孔が先細り部分において接続端子を貫通していることから、孔内に導電性材料を充填する際に、接続端子が露出したこの先細り部分に空気が残留しにくくなり、孔内に残留した空気によってアンテナとICモジュールとが絶縁されてしまうこと、または接続抵抗値が大きくなってしまうことを抑制することができる。したがって、このようなICカード用基材を容易かつ安価に製造することができる。
本発明によるICカード用基材の製造装置において、孔を形成する手段が、前記先細りする部分としての先端部分が断面視において略三角形状を有する切削工具を有し、この切削工具を回転させながら接続電極の厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材へ切り込ませることよって、孔を形成するようにしてもよい。このような本発明によれば、断面視において略三角形状を有する底部を前記先細り部分として有し、この底部において接続端子を貫通する孔を形成することができる。この場合、接続端子の厚さ方向に沿った切削工具の切り込み量は、比較的大きな許容範囲を有し、孔の底側端の位置が接続端子の厚み方向に多少ずれていたとしても、接続端子は比較的大きな一定の表面積で孔内に露出する。したがって、孔を容易に形成することができるとともに、形成された孔内に接続端子を比較的大きな表面積で露出させることができる。
あるいは、本発明によるICカード用基材の製造装置において、孔を形成する手段が、前記先細りする部分としての先端部分が断面視において略半円形状を有する切削工具を有し、この切削工具を回転させながら接続電極の厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材へ切り込ませることよって、孔を形成するようにしてもよい。このような本発明によれば、断面視において略半円形状を有する底部を前記先細り部分として有し、この底部において接続端子を貫通する孔を形成することができる。この場合、接続端子の厚さ方向に沿った孔の底側端の位置は、比較的大きな許容範囲を有し、また、孔の底側端が接続端子に近接している場合、露出した接続端子の表面積は非常に大きくなり、形成された孔内に接続端子を比較的大きな表面積で露出させることができる。
本発明によれば、ICカードのICモジュールとアンテナとを低接続抵抗値で電気的に接続させることができる。また、このようなICカードを容易かつ安価に製造することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図9は本発明によるICカード、ICカードの製造方法、およびICカードの製造装置、並びに、ICカード用基材、ICカード用基材の製造方法、およびICカード用基材の製造装置の一実施の形態を示す図である。
<ICカード、ICカード用基材>
まず、主に図1乃至4を用いて、本実施の形態におけるICカード10およびICカード用基材20について説明する。
ここで、図1はICカード10を示す斜視図であり、図2は図1のII−II線に沿った断面図であり、図3はICカード用基材20を示す斜視図であり、図4はICカード用基材20に形成された孔36の部分断面図である。
図1乃至4に示すように、ICカード10は、ICモジュール11と、接続端子34aを有するアンテナ34を内蔵したICカード用基材20であって、ICモジュール11を収納する凹部22と凹部22内に設けられ接続端子34aを貫通する孔36とを形成されたICカード用基材20と、孔36内に充填されICモジュール11とアンテナ34とに電気的に接続した導電性材料19と、を備え、孔36は孔36の底側端37に向けて先細りする部分(先細り部分)38を有し、この先細り部分38において接続端子34aを貫通している。このようなICカード10は、図示しない外部装置(リーダ・ライタ等)とアンテナ34を介し非接触で通信することができ、外部装置からICモジュール11に記憶された情報を読み取ったり、ICモジュール11へ新たな情報を書き込んだりすることができるようになっている。なお、後述するように、本実施の形態においては、ICモジュール11に外部端子13aが設けられており(図1および図2)、この外部端子13aを介した接触状態で、ICカード10と外部装置との間における情報の送受信を行うことも可能となっている。
このうち本実施の形態におけるICカード用基材20は、図2に示されているように、第1板状部材40と、第1板状部材40の上側に積層された第2板状部材30と、第2板状部材30の上側に積層された第3板状部材46と、を有しており、第2板状部材30には予めアンテナ34が形成されている。各板状部材40,30,46の積層は、種々の方法を用いることができる。本実施の形態においては、図2から理解されるように、各板状部材40,30,46間にポリエステル系の熱可塑性樹脂からなる接着層25,28を設け、熱圧着処理を施すことにより、各板状部材40,30,46が隣接する板状部材に対して接着固定されている。しかしながら、このような態様は一例であり、当然にこれに限定されるものではない。
第1乃至第3の板状部材40,30,46は、一般的に、白色系のPETや紙等からなり、非導電性である。一方、アンテナ34は、外部装置と非接触状態で通信する際のアンテナとして機能するものであり、銅やアルミニウム等の導電性の材料から構成されている。
次に、アンテナ34について説明する。アンテナ34は、図3に示されているように、コイル状アンテナの形式をとっており、コイル状アンテナの両端部に設けられた薄板状部分によって一対の接続端子34a,34aが形成されている。また、図2および図4に示されているように、アンテナ34は、予め第2板状部材30の下側面に接着層24を介して接着されている。このようなアンテナ34は、例えば、まず、第2板状部材30に接着層24を介して銅やアルミニウム等の導電性金属箔を積層し、次に、金属箔をエッチングにより所望の形状にパターニングすることにより、得られる。ここで接着層24としては、例えば、エポキシ系の熱硬化性樹脂を用いることができる。
このような接続端子34aを含むアンテナ34の厚みは40μm程度であり、これに対し、ICカード用基材20の厚みは0.76mm程度である。
ところで、第2板状部材30の上側面にも接着層24が設けられている(図2および図4)。アンテナ34を形成するにあたり、アンテナ34のコイル部分を短絡しないよう、必要に応じて、銅やアルミニウム等の導電性金属からなるブリッジ部(図示せず)が設けられる。ブリッジ部は、例えば、図3における、アンテナ34のコイル部分を横切って接続端子34a(図3において右側に配置されている接続端子34a)まで延びる部分に設けられる。第2板状部材30の上側面に設けられた接着層24は、このようなブリッジ部を上述した方法と同様にして第2板状部材30の上側面に形成する際、金属箔を接着するために用いられるものである。なお、形成されたブリッジ部は、例えば、第2板状部材30を貫通する穴を設け、この穴を導電性材料(例えば、銀ペースト)で埋めることにより第2板状部材30の下側面のアンテナ34と電気的に接続される。なお、ブリッジ部の構成は、上述した態様に限定されるものではなく、例えば、非導性接着剤を介して導電性材料(金属箔等)をアンテナ34の所望の場所に貼り付ける等、種々の方法で形成することができる。
また、本実施の形態において、アンテナ34がコイル状アンテナからなる例を示したが、これに限られない。非接触状態での通信に用いられる電磁波によっては、例えば、ダイポールアンテナとして機能する、一対の略棒状の導電体によってアンテナが構成されることもある。この場合、略棒状の導電体の一部が、ICモジュール11との接続用の接続端子34aを構成することになる。
上述したように、ICカード用基材20には凹部22が形成されている(例えば、図3)。後に図6を用いて説明するように、凹部22は、それぞれ切削加工によって形成される第3板状部材46の貫通孔48、第2板状部材30の貫通孔32、および第1板状部材40の開口孔42によって構成される。そして、図2に示されているように、第3板状部材46の貫通孔48、第2板状部材30の貫通孔32、および第1板状部材40の開口孔42は組み合わさってICモジュール11を収納することができるような形状となっている。
また、上述したように、凹部22内には、底側端37に向けて先細りする先細り部分38を有し、この先細り部分38において接続端子34aを貫通する孔36が、一対の接続端子34aに対応して2つ形成されている。そして、この一対の孔36内には、例えば、銀ペースト等からなる導電性材料19がそれぞれ充填されている。
本実施の形態において、孔36は、断面視(図2)において底側端37に向けて凸となった略二等辺三角形状を有する底部を有し、この底部が先細り部分(先細りする部分)38を構成するようになっている。図2に示すように、孔36が接続端子34aを貫通することによって、孔36内に接続端子34aが露出している。図4(a)に示すように、孔36内に露出した接続端子34aの露出面35は、接続端子34aの厚さ方向に対し傾斜した略平面を含むようになる。そして、この露出面35を介し、接続端子34aと孔36内に充填された導電性材料19とが電気的に接続されるようになる。この場合、図4(b)に示すような先細り部分38が設けられていない孔、すなわち、接続端子34aを貫通する部分において接続端子34aの厚さ方向と略平行に延びている孔と比べ、孔36内に露出する接続端子34aの露出面35を広くすることができる。とりわけ、本実施の形態によれば、孔36が底側端37に向けて突出する断面略二等辺三角形状の底部38を有しており、この底部38の頂角38aが大きくになるに連れて、露出面35の表面積を大きくすることができる。したがって、本実施の形態においては、図4(b)に示すようなICカード用基材と比べ、接続端子34aと孔36内に充填される導電性材料19とをより低い接続抵抗値により電気的に接続させる(導通させる)ことができる。
また、本実施の形態における孔36は、図8(a)に示す平面視において、凹部22内を凹部22の輪郭に沿って接続端子34a上を線状に延びる溝状孔からなっている。したがって、接続端子34aがこの溝状孔36に沿って設けられている本実施の形態においては、孔36内に露出する接続端子34aの露出面35を広くすることができる。このことからも、本実施の形態においては、接続端子34aと導電性材料19とを低接続抵抗値により電気的に接続させる(導通させる)ことができる。
次に、図2を用いてICモジュール11について説明する。
本願におけるICモジュール11とは、アンテナ34と接続されて外部装置と非接触状態で情報の送受信を行うことができる機能を有した要素であり、本実施の形態におけるICモジュール11はこのような機能を達成することができる回路を書き込まれたICチップ15を有している。また、図2に示すように、ICモジュール11は、導電性材料19,19を介し線状に延びる溝状孔36に対面する一対の接続電極18,18と、上述した外部端子13aが表面に設けられ、外部端子13aをICチップ15に接続させて外部装置との接触状態における通信を可能にするための基板13と、をさらに有している。図2に示すように、基板13は、外部端子13aをICカード10の外部に露出させるよう、ICチップ15の一側に設けられている。また、接続電極18は基板13の外部端子13aが設けられた面と反対側の面に設けられている。接続電極18は、線状に延びる溝状孔36、および溝状孔36内に充填された導電性材料19に沿って延びている。そして、一対の接続電極18,18は、それぞれ対面する一対の導電性材料19,19と接触し、これにより、接続電極18と導電性材料19とが導通した(電気的に接続した)状態となっている。
また、図2に示されているように、ICモジュール11をICカード用基材20の凹部22内に堅固に固定するため、凹部22内における隙間が、接着剤49によって埋められていることが好ましい。この場合、ICカード10の使用中等において、ICモジュール11がICカード用基材20の凹部22から外れてしまうこと、さらにはICモジュール11とアンテナ20との電気的接続が損なわれてしまうことを格段に抑制することができる。
このような構成からなるICカード10によれば、通信用の電磁波を発する外部装置にICカード10を接近させることにより、あるいは、外部装置にICカード10を物理的に接触させることにより、情報の送受信、例えば、ICカード10の所有者の認証等を行うことができる。また、ICカード10を外部装置のスロットに挿入し、外部端子34aを介して電気的に接触(接続)した状態で、情報の送受信、例えば、データの書き込みや修正を行うことができる。
以上のように本実施の形態によれば、孔36内に露出した接続端子34aの露出面354は接続端子34aの厚さ方向に対し傾斜した平面を含むようになるので、孔36内に露出した接続端子34aの表面積が大きくなる。したがって、接続端子34aと導電性材料19とを大面積で接触させることができ、これにより、アンテナ34とICモジュール11とを低接続抵抗値で電気的に接続させることができる。
また、本実施の形態によれば、孔36が、底側端37に向けて先細りする部分38として、断面視略三角形状を有する底部を有しており、この底部38において接続端子34aを貫通している。この場合、接続端子34aの厚さ方向に沿った孔36の底側端37の位置は、比較的大きな許容範囲を有する。また、孔36の底側端37の位置が接続端子34aの厚み方向に多少ずれていたとしても、接続端子34aが比較的大きな一定の表面積で孔36内に露出する。したがって、形成された孔36内に接続端子34を安定して比較的大きな表面積で露出させることができる。
さらに、本実施の形態によれば、孔36は平面視において線状に延びる溝状孔からなっており、接続端子34aをこの溝状孔36に沿って細長く広い範囲で露出させることができ、孔36内に露出した接続端子34aの表面積は非常に大きくなる。したがって、接続端子34aと導電性材料19とをより大面積で接触させることができ、これにより、アンテナ34とICモジュール11とをより低い接続抵抗値で電気的に接続させることができる。
<ICカードの製造装置および製造方法>
次に、主に図5乃至9を用いて、本実施の形態におけるICカードの製造装置50および製造方法、並びに、ICカード用基材の製造装置52および製造方法について説明する。
ここで図5はICカードの製造装置50、ICカードの製造方法、ICカード用基材の製造装置52、およびICカード用基材の製造方法を示す概略構成図であり、図6はICカード用基材20に用いられるカード状部材21を製造する工程を説明する図であり、図7は凹部を形成する工程および凹部を形成する手段66を説明する図であり、図8および図9は孔を形成する工程および孔を形成する手段70を説明する図である。
[ICカードの製造装置50および製造方法の概略構成]
まず、ICカードの製造装置50および製造方法の概略構成について説明する。
図5に示すように、ICカードの製造方法は、接続端子34aを有するアンテナ34を内蔵したカード状部材21を製造する工程と、ICモジュール11を収納するための凹部22をカード状部材21に形成する工程と、底側端37に向けて先細りする部分38を有しこの先細り部分において接続端子34aを貫通する孔36をカード状部材21に形成する工程と、形成された孔36内に導電性材料19を充填する工程と、形成された凹部22内にICモジュール11を配置して、導電性材料19を介してICモジュール11をアンテナ34に電気的に接続させる工程と、を備えている。
一方、ICカードの製造装置50は製造方法に対応して、接続端子34aを有するアンテナ34を内蔵したカード状部材21を製造するカード状部材の製造装置60と、カード状部材21を切削して、ICモジュール11を収納するための凹部22をカード状部材21に形成する手段(凹部形成手段とも呼ぶ)66と、カード状部材21を切削して、底側端37に向けて先細りする部分38を有しこの部分38において接続端子34aを貫通する孔36を形成する手段(孔形成手段とも呼ぶ)70と、形成された孔36内に導電性材料19を充填する手段76と、形成された凹部22内にICモジュール11を配置して、導電性材料19を介してICモジュール11をアンテナ34に電気的に接続させる手段(配置接続手段とも呼ぶ)88と、を備えている。
以下、各工程について詳述していくが、ICカード用基材の製造装置52および製造方法は、ICカードの製造装置50および製造方法から、形成された孔36内に導電性材料19を充填する工程およびその手段76と、形成された凹部22内にICモジュール11を配置して導電性材料19を介してICモジュール11をアンテナ34に電気的に接続させる工程およびその手段88と、を除いたものであり、ICカードの製造装置50および製造方法の一部としてこれに含まれる。以下、ICカードの製造装置50および製造方法を説明することによって、ICカード用基材の製造装置52および製造方法についても説明したこととする。
[カード状部材を製造する工程]
図5および図6に示すように、カード状部材の製造装置60は、各板状部材40,30,46を積層して積層体21を製造する積層手段61を有している。
図5および図6に示すように、カード状部材21を製造する工程においては、積層手段61を用い、第1板状部材40と、アンテナ34を形成された第2板状部材30と、第3板状部材46とが、接着層25,28を介して熱圧着され、カード状部材21が製造される。
具体的には、まず、一対の接続端子34a,34aを有するアンテナ34が形成された第2板状部材30を準備する。このような第1板状部材30は、上述したように、第1板状部材30上に接着層24を介して導電性箔を接着し、次に、エッチングにより導電性箔を所望形状にパターニングすることによって、得られ得る。
次に、アンテナ34を挟むようにして第1板状部材40を第2板状部材30に重ね合わせるとともに、第3板状部材46を第2板状部材30の第1板状部材40が設けられていない側に重ね合わせる。また、各板状部材40,30,46間には、例えば、熱可塑性樹脂からなる液体状またはシート状の接着剤が供給される。
図5に示すように、このようにして重ね合わされた第1乃至第3の板状部材40,30,46が、積層手段61へ供給される。本実施の形態において、積層手段61は、各板状部材40,30,46間に供給される接着剤が熱可塑性接着剤であることに対応し、熱圧着機から構成されている。熱圧着機は、第1乃至第3の板状部材40,30,46を加熱しながら押圧する。これにより、各板状部材30,40,46間に設けられた接着剤は一旦溶融し、その後、温度の低下にともなって各板状部材同士をそれぞれ融着させる接着層25,28を形成するようになる(図2)。
このようにしてカード状部材21が製造され、製造されたカード状部材21は、第2板状部材30と、第2板状部材30に積層された第1板状部材40と、第2板状部材30と第1板状部材40との間に設けられた接続端子34aを有するアンテナ34と、を備えている。
なお、本実施の形態におけるICカードの製造方法および製造装置50に、カード状部材の製造方法および製造装置60が組み込まれるものとして説明してきたが、これに限られない。製造済みのカード状部材21を入手し、これを投入することにより、ICカードの製造方法および製造装置50からカード状部材の製造方法および製造装置60を省くことも可能である。
[凹部を形成する工程]
次に、図5および図7に示すように、凹部形成手段66によって、カード状部材21に凹部22が形成される。
本実施の形態において、凹部形成手段66は、切削工具としてのエンドミル67が取り付けられたフライス盤68から構成されている。このエンドミル67は略平坦な端部を有しており、このエンドミル67を用いてフライス加工を行った場合、図7(b)に示すように、凹部22の底面を略平らにすることができる。
エンドミル67は、接続端子34aを基準として、第2板状部材30側のカード状部材21表面から切削を開始する。すなわち、図7(b)に示すように、本実施の形態においては、エンドミル67が、カード状部材21の第3板状部材46側から切削を開始して削り込んでいき、第3板状部材46に貫通孔48が形成され、第2板状部材30に貫通孔32が形成され、さらに第1板状部材に開口孔42が形成される。
このようにして凹部22が形成されるが、本実施の形態においては、図7(a)および(b)に示されているように、凹部22内に段差を構成する肩部22aが形成されている。この肩部22aは、用いられるICモジュール11の形状に対応したものであって、ICモジュール11の基板13を受けるようになっている(図2)。
以上のようにして、カード状基材21にICモジュール11を収納するための凹部22が製造される。なお、図7(b)は、凹部22が形成されたカード状部材21を示す平面図である。
[孔を形成する工程]
次に、図5、図8、および図9に示すように、孔形成手段70によって、カード状部材21に孔36が形成される。
本実施の形態において、孔形成手段70は切削工具としてエンドミル72を取り付けられたフライス盤71から構成されている。図8(b)に示すように、エンドミル72は、先端73に向けて先細りし断面視において略二等辺三角形状を有する先端部分(先細り部分)74を有している。このエンドミル72を回転させながらカード状部材21に切り込んでいくと、エンドミル72の進行方向に沿った孔36が形成され、孔36の底側端37はエンドミル72の先端部分74の形状に対応し、底側端37に向けて凸の断面略二等辺三角形状を有するようになる。
本実施の形態において、エンドミル72は、接続端子34aを基準として、第2板状部材30側のカード状部材21表面から切削を開始する。すなわち、図8(b)に示すように、本実施の形態においては、エンドミル72が、接続端子34a上方におけるカード状部材21の第3板状部材46側から切削を開始する。そして、エンドミル72は、回転しながら、接続電極34aの厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材21へ切り込んでいく。
その後、エンドミル72の先端部分74が接続電極34aを貫通したところで、エンドミル72の切り込みが停止する。これにより、図8(b)や図4に示されているような、断面視において略三角形状を有する底部38を有し、この底部38において接続端子34aを貫通する孔36がカード状基材21に形成される。
ところで、特許文献1に開示されているように、凹部形成手段66により、接続端子34を凹部22内に直接露出させる場合と、接続端子34aを厚く切削し過ぎると、言い換えれば、残存する接続端子の厚みが薄くなり過ぎると、面接触する凹部形成手段66の切削工具67の通過にともなって接続端子34aがめくれあがり、接続端子34aがカード状部材21から剥離してしまう、といった不具合が生じる。このような不具合を考慮すると、この特許文献1に開示された方法を用いた場合、接続端子34aの厚さ方向に沿った切削工具67の切り込み精度の許容範囲は、接続端子34aの厚みよりも狭い範囲となる。
一方、本実施の形態によれば、このような方法に比べ、切削工具72の切り込み精度の許容範囲は広くなる。例えば、図4に示すような場合には、孔36の底側端37が図示する長さLだけ上方に配置されていたとしても、先細り部分38で接続端子34aを貫通することになり、またこの長さLは接続端子34aの厚みWよりも大きい値とすることができる。そして、この長さLの範囲で孔36の位置がずれたとしても、言い換えれば、この長さLだけエンドミル72の切り込み量がずれたとしても、接続端子34aを比較的大きな一定の表面積で孔36内に露出することができる。
また、上述したように、孔36の底部38(すなわち、これに対応してエンドミル72の先端部分74)の頂角38aが大きくになるに連れて、露出面35の表面積を大きくすることができるが、その一方で、この頂角38aを小さくすることで、接続端子34aの厚さ方向に沿った切削工具67の切り込み精度の許容範囲を広くすることができる。したがって、用いられるフライス盤等の精度、用いられるカード状部材21の接続端子34aの厚み、製造対象となるICカード10に望まれている品質等に応じて、孔36の底部38の頂角38aを決定するエンドミル72を適宜選択することにより、適切な製造条件で一定以上の品質のICカード10またはICカード用基材20を安価かつ容易に製造することができる。
この後、接続端子34aの厚さ方向への切り込みを停止したエンドミル72は、図9に示すように、回転しながら、接続端子34aを貫通したままで接続端子34a上を接続端子34aの厚さ方向に直交する方向に移動する。本実施の形態において、エンドミル72は、凹部22内の肩部22aに沿って移動する。
このようにして、カード状部材21に接続端子34aを露出させる孔36が形成され、ICカード用基材20が得られる。また、形成された孔36は、図8(a)に示すように、平面視(上面視)において線状に延びる溝状孔となっている。したがって、接続端子34aは溝状孔36内に周状に延びる露出面35を有することになり、露出面35の表面積は非常に大きくなる。
なお、孔を形成する工程において、2つの孔36が形成されるが、別個の切削工具72により2つの孔36が同時に形成されてもよいし、2つの孔36が順に形成されるようにしてもよい。
[導電性材料を充填する工程、ICモジュールを配置してアンテナへ接続する工程]
次に、図5に示すように、ICカード用基材20の2つの孔36内に充填手段76によって導電性材料19が充填される。充填された導電性材料19と孔36内に露出した接続端子34aとが互いに接触し、互いと電気的に接続されるようになる。充填手段76は、例えば、図5に示されたディスペンサ78や、スクリーン印刷機等から構成され得る。
このとき、孔36内に、例えば、粘性の強い銀ペーストが充填されるとしても、接続端子34aを貫通する孔36の底部38は断面視において底側端37に向けて先細りする略二等辺三角形状を有していることから、導電性材料19は底側端37から堆積していく。このため、孔36内に導電性材料19を充填する工程において、孔36の接続端子34aが露出した部分に空気は残留しにくくなっている。したがって、孔36内に残留した空気によって導電性材料19と接続端子34aとが絶縁されてしまうこと、あるいは残留した空気によって導電性材料19と接続端子34aとの間の接続抵抗値が高くなってしまうことを抑制し、導電性材料19とアンテナ34とを低い接続抵抗値により電気的に接続させることができる。
[ICモジュールを配置してアンテナへ接続する工程]
次に、ICカード用基材20の凹部22内にICモジュール11が配置される。図5に示すように、本実施の形態において、ICカード用基材20の凹部22内にICモジュール11を配置し、接続端子34aを介してICモジュール11をアンテナ回路34に接続させる配置接続手段88は、ICカード用基材20の凹部22内に接着剤49を供給する接着剤供給装置90と、ICモジュール11を吸着して搬送する吸着ノズル89と、を有している。
まず、ICカード用基材20の凹部22内の接続端子34a上に、接着剤供給装置90から接着剤49が供給される(図5)。この接着剤49は、凹部22内にICモジュール11を固定するとともに、凹部22内の隙間を埋めるためのものである。したがって、形成された凹部22の形状および用いられるICモジュール11の形状を考慮して、凹部22内の隙間が形成されると予想される部分周辺に接着剤49を供給することが好ましい。なお、接着剤供給装置90は、図5に示されたディスペンサや、スクリーン印刷機等から構成され得る。
この動作に併せて、吸着ノズル89は、順次供給されるICモジュール11を1つずつ吸着してICカード用基材20の凹部22上まで搬送する。その後、吸着ノズル89が降下し、接着剤48を供給されたICカード用基材20の凹部22内にICモジュール11を押圧して嵌め込む。
このとき、ICモジュール11の一対の接続電極18が、一対の孔36内にそれぞれ充填された導電性材料19と、各々対面するようにして、ICモジュール11はICカード用基材20の凹部22内に配置される。そして、ICモジュール11の接続電極18と、これに対面する導電性材料19とが接触し、ICモジュール11と導電性材料19とが電気的に接続される。これにより、ICモジュール11とアンテナ34とが導電性材料19を介して互いに電気的に接続されるようになる。その後、凹部22内の隙間であってICモジュール11とICカード用基材20との間に介在する接着剤49を硬化し、ICモジュール11とアンテナ34とが電気的に接続された状態で、ICモジュール11とICカード用基材20とが互いに固定される。
なお、上述したように、孔36内に露出する接続端子34aが表面積の大きい露出面35を有しており、また、孔36内に空気(気泡)が残留しにくくなっていることから、アンテナ34と導電性材料とは低い接続抵抗値により電気的に接続されている。この結果。アンテナ34とICモジュール11とが低い接続抵抗値により電気的に接続されるようになる。
以上のようにしてICカード10が製造され、製造されたICカード10は、ICモジュール11と、接続端子34aを有するアンテナ34を内蔵したICカード用基材20であって、ICモジュール11を収納する凹部22と凹部22内に設けられ接続端子34aを貫通する孔36とを形成されたICカード用基材20と、孔36内に設けられICモジュール11とアンテナ34とに電気的に接続した導電性材料19と、を備えており、孔36は、孔36の底側端37に向けて先細りする部分38を有し、この部分38において接続端子34aを貫通している。
<作用効果>
以上にように本実施の形態によれば、接続端子34aを有するアンテナ34を内蔵したカード状部材21に、先端73に向けて先細りする部分74を有した切削工具72を、回転させながら接続電極34aの厚さ方向と平行な方向に沿って切り込ませることにより、底側端37に向けて先細りする部分38を有しこの先細り部分38において接続端子34aを貫通する孔36を形成している。その後、形成された孔36内に導電性材料19を充填し、この充填された導電性材料19を介してICモジュール11とアンテナ34とが電気的に接続されるようになっている。このような本実施の形態によれば、孔36内に露出した接続端子34aの露出面35は、接続端子34aの厚さ方向に対し傾斜した平面または曲面を含むようになるので、孔36内に露出した接続端子34aの表面積が大きくなる。したがって、接続端子34aと導電性材料19とを大面積で接触させることができ、これにより、アンテナ34とICモジュール11とを低い接続抵抗値で電気的に接続させることができる。
また、孔36が底側端37に向けて先細りする部分38を有しこの部分38において接続端子34aを貫通しているため、孔36内に導電性材料19を充填する際、孔36の接続端子34aが露出した部分に空気が残留しにくくなっている。したがって、孔36内に残留した空気によって、アンテナ34とICモジュール11との接続抵抗値が大きくなってしまうこと、および、アンテナ34とICモジュール11とが絶縁されてしまうこと、を抑制することができる。
さらに、先端73に向けて先細りする部分74を有した切削工具72を、回転させながら接続電極34aの厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材21へ切り込ませることによって、このような孔36を形成することができる。そして、この場合、切削工具72等の切り込み量は比較的大きな許容範囲を有するようになる。したがって、このような孔36を容易かつ安価に形成することができる。
これらのことから、本実施の形態によれば、ICモジュール11とアンテナ34とが低い接続抵抗値で電気的に接続された高品質のICカード10を容易かつ安価に製造することができる。
また、とりわけ本実施の形態によれば、断面視において先端に向けて凸の略二等辺三角形状を有する先端部分を上述した先細り部分74として有する切削工具72を、回転させながら接続端子34aの厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材21へ切り込ませることによって、断面視において略三角形状を有する底部を先細り部分38として有し、この底部38において接続端子34aを貫通する孔36を形成している。この場合、接続端子34aの厚さ方向に沿った切削工具の切り込み量が比較的大きな許容範囲を有するとともに、孔36の底側端37の位置が接続端子34aの厚さ方向に多少ずれていたとしても、接続端子34aを比較的大きな一定の表面積で孔内に露出させることができる。したがって、孔36を容易に形成することができるとともに、形成された孔36内に接続端子34aを比較的大きな表面積で露出させることができる。さらに、孔36の底部38は断面視において底側端37に向けて先細りする略三角形状を有しているので、孔36内に充填される導電性材料19がより底側端37から堆積しやすくなり、孔36内に空気が残留することを格段に抑制することができる。
さらに、本実施の形態によれば、カード状部材21に所定の位置まで切り込み接続端子34aを貫通した切削工具72を、さらに、回転させながら、接続端子34aを貫通したままで接続端子34a上を接続端子34aの厚さ方向に直交する方向に移動させ、線状に延びる溝状孔36を形成するようになっている。したがって、接続端子34aは孔36の底部38を周状に延びる大面積の露出面35を有するようになる。また、溝条孔39に導電性材料19が充填されるとともに、接続電極18はこの導電性材料に沿って延びている。これにより、アンテナ34とICモジュール11とを非常に低い接続抵抗値で電気的に接続させたICカード10を製造することができる。
<変形例>
上記の実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。以下、変形例の一例について説明する。
[孔についての変形例]
上述した実施の形態において、先端部分(先細り部分)74が断面視において略三角形状を有する切削工具72を、回転させながら接続電極34aの厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材21へ切り込ませることによって、断面視において略三角形状を有する底部(先細り部分)38を有しこの底部38において接続端子34aを貫通する孔36を形成する例を示した。しかしながら、形成される孔36が、孔36の底側端35に向けて先細りする部分38を有し、先細り部分38において接続端子34aを貫通する限りにおいて、特に限定されない。
例えば、図10に示すように、孔36が、断面視において略半円形状を有する底部(先細り部分)38を有し、この底部38において接続端子34aを貫通するようにしてもよい。図11に示すように、孔を形成する手段70が、断面視において先端に向けて凸の略半円形状を有する先端部分を先細り部分38として有したエンドミル(切削工具)72を取り付けられたフライス盤68によって構成され、このエンドミル72を回転させながら接続電極34aの厚さ方向と平行な方向に沿ってカード状部材21に切り込ませることにより、図10に示す孔36を形成することができる。なお、先端部分38が略半円形状を有するエンドミル(切削工具)72として、例えば、「ボールエンドミル」と呼ばれ、広く出回り安価に入手可能な工具を用いることができる。
このような変形例によれば、接続端子34aの厚さ方向に沿った孔36の底側端37の位置は、比較的大きな許容範囲を有する。また、孔36の底側端37が接続端子34aに近接している場合、露出した接続端子34aの表面積は非常に大きくなる。したがって、孔36を容易に形成することができるとともに、また、形成された孔36内に接続端子34aを比較的大きな表面積で露出させることもできる。さらに、孔36の底部38は断面視において底側端37に向けて先細りする略半円形状を有しているので、孔36内に充填される導電性材料19は底側端37から堆積するようになり、孔36内に空気が残留することを格段に抑制することができる。さらに、上述したように、切削工具72を安価に入手することができるので、結果として、ICカード10およびICカード用基材20をより安価に製造することができる。
なお、図10および図11に示す変形例は、孔36および切削工具72の構成が異なるのみであり、他は図1乃至図9を用いて説明した実施の形態と略同一である。図10および図11において、図1乃至図9に示す実施の形態と同一部分には同一符号を付すとともに、重複する詳細な説明は省略する。
[凹部形成する工程と孔を形成する工程についての変形例]
また、上述した実施の形態においては、まず、カード状部材21に凹部22を形成し、その後、孔36を形成する例を示したが、これに限定されず、まず、カード状部材21に孔36を形成し、その後、凹部22を形成するようにしてもよい。
[ICカード用基材の構成についての変形例]
さらに、上述した実施の形態においては、ICカード用基材20が、3枚の板状部材40,30,46とアンテナ34とを有する例を示したが、これに限られず、種々の変更が可能である。また、ICカード用基材(カード状部材)の製造方法についても、種々変更することができる。例えば、2枚または4枚以上の板状部材を用いてICカード用基材20を作製してもよいし、断面略コ字状または断面略L字状を有する板状部材からICカード用基材20を作製してもよいし、アンテナのコイル部分をコイル巻きにした導線から構成してもよいし、スクリーン印刷機から塗布される銀ペーストによってアンテナを形成してもよい。
[ICモジュールの構成についての変形例]
さらに、上述した実施の形態において、ICモジュール11が外部端子13aを有し、製造されたICカード10が非接触状態だけでなく接触状態でも外部装置と通信することができるようになっている例を示したが、これに限られない。外部端子13aを有さないICモジュール11に対しても、すなわち、得られたICカード10が非接触状態でのみ外部装置と通信することができるようなICモジュール11に対しても、本発明を適用することができる。
また、上述した実施の形態において、ICモジュール11の接続電極18が、基板13の下面から突設された例を示したが、これに限られず、例えば、接続電極18がICチップ15の下側面に突設されるようにしてもよい。