JP2007046759A - 転がり支持装置及びその構成部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 苛酷な潤滑条件下で使用された場合であっても、優れた耐久性を有する転がり支持装置を提供する。
【解決手段】 タペットローラ軸受を構成するローラ6及び支持軸5を、鋼からなる素材を所定形状に加工した後、窒化処理を含む熱処理を施すことにより作製する。そして、ローラ6の内周面(摺接面)6aをなす表層部において、硬さをHv650以上とするとともに、支持軸5の外周面5a(摺接面)をなす表層部において、N含有率を3.0質量%以上とし、硬さをHv700以上とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 タペットローラ軸受を構成するローラ6及び支持軸5を、鋼からなる素材を所定形状に加工した後、窒化処理を含む熱処理を施すことにより作製する。そして、ローラ6の内周面(摺接面)6aをなす表層部において、硬さをHv650以上とするとともに、支持軸5の外周面5a(摺接面)をなす表層部において、N含有率を3.0質量%以上とし、硬さをHv700以上とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、転がり軸受、ボールねじ、リニアガイド等の転がり支持装置と、その構成部材の製造方法に関する。
転がり軸受の一例であるタペットローラ軸受は、エンジン内部での摩擦低減により、燃焼消費率を低減させることを目的として、クランクシャフトと同期したカムシャフトの回転を給気弁及び排気弁の往復運動に変換する動弁機構内に組み込まれて使用されている。 このタペットローラ軸受は、カムシャフトに固定されたカムに対して対向配置されたロッカーアーム(タペット)に設けられ、支持軸に回転自在に支持されたローラの外周面がカムの外周面に当接されて、運動時にロッカーアームとカムとの間に働く摩擦力が低減されるようになっている。
このようなタペットローラ軸受では、通常、カムの外周面とローラの外周面との間や、支持軸の外周面とローラの内周面との間をエンジンオイルにより潤滑させている。しかしながら、このタペットローラ軸受は、潤滑油が十分に供給され難い潤滑環境下で使用されることが多く、エンジンの始動時にはさらに潤滑油が供給され難い苛酷な潤滑環境下で使用されるため、互いに摺接する構成部材の各摺接面で摩耗や焼付き等の損傷が生じる場合がある。特に、支持軸とローラとの摺接面には潤滑油がさらに供給され難いため、それらの摺接面では摩耗や焼付き等の損傷が生じ易くなっている。
そこで、互いに摺接する構成部材の摺接面での潤滑が不十分であった場合でも、それらの摺接面に上述した損傷を発生し難くするための手段として、支持軸やローラは高炭素クロム軸受鋼(例えば、SUJ2)で構成し、カムを含むカムシャフトはSUJ2又は鋳鉄で構成する等、構成部材を耐摩耗性に優れる素材で構成することが提案されている。
また、上述した損傷を発生し難くするための他の手段として、特許文献1〜特許文献3では、損傷が生じ易い摺接面に表面処理を施すことが提案されている。
また、上述した損傷を発生し難くするための他の手段として、特許文献1〜特許文献3では、損傷が生じ易い摺接面に表面処理を施すことが提案されている。
特許文献1では、ローラの内外周面に軟窒化処理や酸化処理等の表面処理を施すことが提案されている。
特許文献2では、互いに対向するローラの内周面と支持軸の外周面とのうち、少なくとも一方に、摩擦を低減する表面処理層を形成することが提案されている。
特許文献3では、摺動部品の母材上に窒化処理を施して、拡散層と所定深さの化合物層とを形成し、この化合物層の一部を残すように、化合物層の最外層部のみを薄く処理することが提案されている。
特開昭59−183007号公報
特開平8−74526号公報
特開2002−97563号公報
特許文献2では、互いに対向するローラの内周面と支持軸の外周面とのうち、少なくとも一方に、摩擦を低減する表面処理層を形成することが提案されている。
特許文献3では、摺動部品の母材上に窒化処理を施して、拡散層と所定深さの化合物層とを形成し、この化合物層の一部を残すように、化合物層の最外層部のみを薄く処理することが提案されている。
ところで、装置の製造コストを考慮すると、表面硬化処理として窒化処理や軟窒化処理を施すことが好ましい。しかしながら、窒化処理で形成された表面処理層は非常に硬くなるため、処理が施された構成部材には優れた耐摩耗性が付与されるが、この処理が施された構成部材と摺接する相手側の構成部材には摩耗が生じ易くなるという問題がある。
すなわち、上述した特許文献1〜特許文献3に記載の技術では、損傷が生じ易い構成部材(例えば、ローラ)の耐久性は向上できるが、その相手側の構成部材(例えば、支持軸)の耐久性が不足して、結果として、転がり支持装置全体に優れた耐久性を付与できない場合がある。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、苛酷な潤滑条件下で使用された場合であっても、優れた耐久性を有する転がり支持装置を提供することを課題としている。
すなわち、上述した特許文献1〜特許文献3に記載の技術では、損傷が生じ易い構成部材(例えば、ローラ)の耐久性は向上できるが、その相手側の構成部材(例えば、支持軸)の耐久性が不足して、結果として、転がり支持装置全体に優れた耐久性を付与できない場合がある。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、苛酷な潤滑条件下で使用された場合であっても、優れた耐久性を有する転がり支持装置を提供することを課題としている。
このような課題を解決するために、本発明は、互いに対向する軌道面を有する第一部材及び第二部材と、前記第一部材及び前記第二部材の間に転動自在に配設される複数の転動体と、を備え、前記転動体が転動することにより前記第一部材及び前記第二部材のうち一方が他方に対して相対運動する転がり支持装置において、互いに摺接する前記第一部材又は前記第二部材と前記転動体とのうち一方の構成部材は、鋼からなる素材を所定形状に加工した後、窒化処理を含む熱処理が施されて得られ、その摺接面をなす表層部は、硬さがHv650以上となっているとともに、他方の構成部材は、鋼からなる素材を所定形状に加工した後、窒化処理を含む熱処理が施されて得られ、その摺接面をなす表層部は、N含有率が3.0質量%以上で、硬さがHv700以上となっていることを特徴とする転がり支持装置を提供する。
本発明では、互いに摺接する二つの構成部材(第一部材と転動体や、第二部材と転動体)の相互バランスを考慮して、各摺接面をなす表層部のN含有率や硬さを特定したことにより、両摺接面に摩耗や焼付き等の損傷が生じ難くなる。
ここで、各構成部材において摺接面をなす表層部の硬さはHv800以上とすればより優れた耐摩耗性が得られるが、各構成部材において摺接面をなす表層部の硬さがそれぞれ本発明範囲よりも小さいと、優れた耐摩耗性が得られなくなる。また、各構成部材の摺動面をなす表層部の硬さをHv800以上とするためには、炭素含有率が0.7〜1.2質量%、より好ましくは0.8〜1.1質量%の鋼(例えば、高炭素クロム軸受鋼)を用いることが好ましい。
ここで、各構成部材において摺接面をなす表層部の硬さはHv800以上とすればより優れた耐摩耗性が得られるが、各構成部材において摺接面をなす表層部の硬さがそれぞれ本発明範囲よりも小さいと、優れた耐摩耗性が得られなくなる。また、各構成部材の摺動面をなす表層部の硬さをHv800以上とするためには、炭素含有率が0.7〜1.2質量%、より好ましくは0.8〜1.1質量%の鋼(例えば、高炭素クロム軸受鋼)を用いることが好ましい。
また、他方の構成部材において摺接面をなす表層部のN含有率を3.0質量%よりも少なくすると、比較的低温(例えば、750℃以下)での焼入れが困難になり、熱処理後に寸法変化が生じ易くなる。しかし、他方の構成部材において摺動面をなす表層部のN含有率が多過ぎると、Ms点が過度に低下して十分な焼入れ硬さが得られなくなるため、他方の構成部材の表層部のN含有率は7質量%以下とすることが好ましい。
なお、本発明における転がり支持装置とは、転がり軸受、ボールねじ、及びリニアガイド等を指す。ここで、転がり支持装置が転がり軸受の場合には、第一部材及び第二部材は内輪及び外輪を指し、転がり支持装置がボールねじの場合には、第一部材及び第二部材はねじ軸及びナットを指し、転がり支持装置がリニアガイドの場合には、第一部材及び第二部材は案内レール及びスライダを指す。
また、本発明における表層部とは、表面から所定深さ(例えば、0.05m)までの部分を指す。さらに、本発明における摺接面とは、二つの構成部材が互いに摺接する面を指し、例えば第一部材と転動体との摺接面や、第二部材と転動体との摺接面を指す。
本発明の転がり支持装置は、例えば、タペットローラ軸受やプラネタリーギア軸受のように、エンジンからの動力を受けて回転する軸を支持するための転がり軸受として好適に用いることができる。
本発明の転がり支持装置は、例えば、タペットローラ軸受やプラネタリーギア軸受のように、エンジンからの動力を受けて回転する軸を支持するための転がり軸受として好適に用いることができる。
本発明はまた、互いに対向する軌道面を有する第一部材及び第二部材と、前記第一部材及前記第二部材の間に転動自在に配設される複数の転動体と、を備え、前記転動体が転動することにより前記第一部材及び前記第二部材のうち一方が他方に対して相対運動する転がり支持装置の前記第一部材、前記第二部材、及び前記転動体を製造する方法において、互いに摺接する前記第一部材又は前記第二部材と前記転動体とのうち一方の構成部材を、鋼からなる素材を所定形状に加工した後、窒化処理を含む熱処理を施すことにより、その摺接面をなす表層部において、硬さをHv650以上とするとともに、他方の構成部材を、鋼からなる素材を所定形状に加工した後、窒化処理と、680℃以上750℃以下で加熱保持した後に冷却する焼入れ処理と、サブゼロ処理と、焼戻し処理と、をこの順で含む熱処理を施すことにより、その摺接面をなす表層部において、N含有率を3.0質量%以上とし、硬さをHv700以上とすることを特徴とする転がり支持装置の構成部材の製造方法を提供する。
以下、本発明で用いる熱処理について詳細に説明する。
<一方の構成部材の熱処理について>
まず、鋼からなる素材を、鍛造、切削、又は研削加工により所定形状に加工した後、混合ガス(例えば、RXガス+アンモニアガスや、RXガス+アンモニアガス+エンリッチガス)雰囲気下で、A1 変態点以下の比較的低温度(例えば、500〜590℃、より好ましくは550〜590℃)で所定時間加熱保持することにより、窒化処理を行う。
<一方の構成部材の熱処理について>
まず、鋼からなる素材を、鍛造、切削、又は研削加工により所定形状に加工した後、混合ガス(例えば、RXガス+アンモニアガスや、RXガス+アンモニアガス+エンリッチガス)雰囲気下で、A1 変態点以下の比較的低温度(例えば、500〜590℃、より好ましくは550〜590℃)で所定時間加熱保持することにより、窒化処理を行う。
一方の構成部材の摺動面をなす表層部に必要な窒化物を得るためには、摺動面をなす表層部のN含有率を3質量%以上とすることが好ましく、5質量%以上とすることがより好ましい。また、前記表層部に脆い相が発生するのを抑制するために、一方の構成部材の摺動面をなす表層部のN含有率を8質量%以下とすることが好ましい。この窒化処理では、比較的低温で行っているため、熱処理後に構成部材の寸法変化が生じ難くなる。
また、一方の構成部材に対する窒化処理は、処理時間を短縮したり、他方の構成部材の摩耗を抑制したりするために、軟窒化処理とすることが好ましく、環境への影響を考慮して、ガス軟窒化処理とすることがより好ましい。さらに、一方の構成部材に対する窒化処理後は、他方の構成部材の摩耗を抑制するために、焼入れや研削仕上げを行わないことが好ましい。このような熱処理は、特に、タペットローラ軸受のインナーローラに適用した場合により顕著である。
<他方の構成部材の熱処理について>
まず、鋼からなる素材を、鍛造、切削、又は研削加工により所定形状に加工した後、混合ガス(例えば、RXガス+アンモニアガスや、RXガス+アンモニアガス+エンリッチガス)雰囲気下で、A1 変態点以下の比較的低温度(例えば、500〜590℃、より好ましくは550〜590℃)で所定時間加熱保持することにより、窒化処理を行う。
まず、鋼からなる素材を、鍛造、切削、又は研削加工により所定形状に加工した後、混合ガス(例えば、RXガス+アンモニアガスや、RXガス+アンモニアガス+エンリッチガス)雰囲気下で、A1 変態点以下の比較的低温度(例えば、500〜590℃、より好ましくは550〜590℃)で所定時間加熱保持することにより、窒化処理を行う。
他方の構成部材に対する窒化処理は、構成部材の摺動面をなす表層部のN含有率が本発明の範囲内となるような条件で行う。この窒化処理では、比較的低温で行っているため、熱処理後に構成部材の寸法変化が生じ難くなる。
また、他方の構成部材に対する窒化処理は、処理時間を短縮するために、軟窒化処理とするのが好ましく、環境への影響を考慮して、ガス軟窒化処理とすることがより好ましい。
また、他方の構成部材に対する窒化処理は、処理時間を短縮するために、軟窒化処理とするのが好ましく、環境への影響を考慮して、ガス軟窒化処理とすることがより好ましい。
次に、680℃以上750℃以下で焼入れ処理を行う。この時、焼入れ温度が750℃以下で加熱保持することにより、表層部の窒素拡散層のみでマルテンサイト変態が十分に生じ、芯部ではマルテンサイト変態が少ししか生じないため、熱応力を低減でき、熱処理後の寸法変化を抑制できる。また、窒化処理後に焼入れ処理を行うことにより、単に窒化処理を行う場合よりも、深く硬化させることが可能となる。一方、加熱保持時に表層部の窒素拡散層で十分にマルテンサイト変態を生じさせるために、焼入れ温度は680℃以上とする。
次に、−210〜−60℃でサブゼロ処理を行う。これにより、上述した窒化処理により表層部に残存した残留オーステナイト量を低減させる。
この時、サブゼロ時の温度が−210℃よりも低くなると、冷却剤として液体窒素を用いることが出来なくなるので、コストの上昇を招く。一方、サブゼロ時の温度が−60℃よりも高くなると、焼入れ時に生成した残留オーステナイトがマルテンサイトに変態されなくなるため、十分な硬さが得られなくなる。
次に、160〜180℃で2時間保持することにより、焼戻し処理を行う。そして、研削仕上げ加工を施して、他方の構成部材を完成させる。
この時、サブゼロ時の温度が−210℃よりも低くなると、冷却剤として液体窒素を用いることが出来なくなるので、コストの上昇を招く。一方、サブゼロ時の温度が−60℃よりも高くなると、焼入れ時に生成した残留オーステナイトがマルテンサイトに変態されなくなるため、十分な硬さが得られなくなる。
次に、160〜180℃で2時間保持することにより、焼戻し処理を行う。そして、研削仕上げ加工を施して、他方の構成部材を完成させる。
本発明の転がり支持装置によれば、互いに摺接する二つの構成部材の相互バランスを考慮して、それらの摺接面をなす表層部のN含有率や硬さを特定したことにより、互いに摺接する二つの構成部材間で摩耗や焼付き等の損傷が生じ難くなる。よって、本発明の転がり支持装置は、例えば、タペットローラ軸受やプラネタリーギア軸受のように、苛酷な潤滑条件下で使用される転がり支持装置として好適に用いることができる。
以下、本発明の転がり支持装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の転がり支持装置の一例としてタペットローラ軸受の一構成を示す図であり、(a)は横断面図、(b)は図1(a)のA−A断面図である。
本実施形態のタペットローラ軸受(転がり支持装置)は、図1に示すように、エンジンのクランクシャフト(図示せず)に同期して回転するカムシャフト1に固定したカム(第一部材)2に対向配置され、カム2の回転に対応して揺動するロッカーアーム3に設けられている。
図1は、本発明の転がり支持装置の一例としてタペットローラ軸受の一構成を示す図であり、(a)は横断面図、(b)は図1(a)のA−A断面図である。
本実施形態のタペットローラ軸受(転がり支持装置)は、図1に示すように、エンジンのクランクシャフト(図示せず)に同期して回転するカムシャフト1に固定したカム(第一部材)2に対向配置され、カム2の回転に対応して揺動するロッカーアーム3に設けられている。
ロッカーアーム3の端部には、一対の支持壁部4,4が互いに間隔を空けて設けられている。この一対の支持壁部4,4の間には、中空の支持軸(第二部材)5が掛け渡されている。支持軸5の両端部は、支持壁部4,4にそれぞれ設けられた貫通孔4aの内周面に加締めにより固定されており、支持軸5の外周面(摺接面)5aには、ローラ(転動体)6が回転自在に支持されている。ローラ6は、回転抵抗を小さくするために、支持軸5の外周面5aと摺接する内周面(摺接面)6aを有するインナーローラ61と、カム2の外周面(摺接面)2aと摺接する外周面(摺接面)6bを有するアウターローラ62と、からなる二重構造となっている。
支持軸5は、以下に示す手順で作製されたものを用いた。
まず、SUJ2からなる素材を所定形状に加工した後、図2に示す熱処理を施した。次に、前工程の熱処理時に形成された窒素拡散層を残留させる程度の研削取り代で、外周面5aに仕上げ加工を施した。これにより、支持軸5の外周面5aをなす表層部(表面から0.05mmの深さまでの部分)は、硬さがHv700以上で、N含有率が3.0質量%以上となっている。
まず、SUJ2からなる素材を所定形状に加工した後、図2に示す熱処理を施した。次に、前工程の熱処理時に形成された窒素拡散層を残留させる程度の研削取り代で、外周面5aに仕上げ加工を施した。これにより、支持軸5の外周面5aをなす表層部(表面から0.05mmの深さまでの部分)は、硬さがHv700以上で、N含有率が3.0質量%以上となっている。
インナーローラ61は、潤滑性及び耐摩耗性を向上させるために、以下に示す手順で作製されたものを用いた。
まず、SUJ2からなる素材を所定形状に加工した後、図2と同様のガス窒化処理を施した。これにより、インナーローラ61の内周面6aをなす表層部は、硬さがHv650以上で、N含有率が3〜8質量%となっている。
まず、SUJ2からなる素材を所定形状に加工した後、図2と同様のガス窒化処理を施した。これにより、インナーローラ61の内周面6aをなす表層部は、硬さがHv650以上で、N含有率が3〜8質量%となっている。
そして、アウターローラ62やカム2はいずれも、SUJ2からなる素材を所定形状に加工した後、820〜860℃で0.5〜1時間加熱保持した後冷却する焼入れ処理と、160〜180℃で2時間加熱保持した後に冷却する焼戻し処理とを施すことにより、その芯部硬さがHv650〜800となっているものを用いた。
このようなタペットローラ軸受によれば、支持軸5とローラ6をそれぞれ本発明の構成(熱処理方法、摺接面の硬さ及びN含有率)としたことによって、支持軸5とローラ6との両方に優れた耐摩耗性が付与されるため、支持軸5とローラ6の各摺接面5a,6aで異常摩耗が生じることなく、優れた耐久性が得られた。
このようなタペットローラ軸受によれば、支持軸5とローラ6をそれぞれ本発明の構成(熱処理方法、摺接面の硬さ及びN含有率)としたことによって、支持軸5とローラ6との両方に優れた耐摩耗性が付与されるため、支持軸5とローラ6の各摺接面5a,6aで異常摩耗が生じることなく、優れた耐久性が得られた。
なお、本実施形態では、タペットローラ軸受の支持軸5とローラ6との間の摺接面5a,2aに対して本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、タペットローラ軸受のローラ6とカム2との間の摺接面に本発明を適用してもよい。
また、本実施形態では、支持軸5を、一対の支持壁部4,4間に加締めにより固定したが、これに限らず、例えば、一対の支持壁部4,4間にピン止めにより固定してもよい。
また、本実施形態では、支持軸5を、一対の支持壁部4,4間に加締めにより固定したが、これに限らず、例えば、一対の支持壁部4,4間にピン止めにより固定してもよい。
次に、本発明の効果を、以下に示す実施例に基づいて検証した。
まず、SUJ2からなる棒状素材(棒材)を用意して、表1に示す窒化処理と、表1に示す各温度で0.5〜1時間保持した後に冷却する焼入れ処理と、160〜180℃で2時間保持した後に急冷する焼戻し処理と、をこの順で施した後、仕上げ加工を施した。
なお、表1に示す窒化処理「ガス軟窒化」とは、上述した図2に示す熱処理と同様の条件で行った窒化処理を指す。また、表1に示す窒化処理「ガス窒化」とは、混合ガス(アンモニアガス+窒素ガス)の雰囲気下、500〜590℃で20〜30時間加熱保持することで行った窒化処理を指す。
まず、SUJ2からなる棒状素材(棒材)を用意して、表1に示す窒化処理と、表1に示す各温度で0.5〜1時間保持した後に冷却する焼入れ処理と、160〜180℃で2時間保持した後に急冷する焼戻し処理と、をこの順で施した後、仕上げ加工を施した。
なお、表1に示す窒化処理「ガス軟窒化」とは、上述した図2に示す熱処理と同様の条件で行った窒化処理を指す。また、表1に示す窒化処理「ガス窒化」とは、混合ガス(アンモニアガス+窒素ガス)の雰囲気下、500〜590℃で20〜30時間加熱保持することで行った窒化処理を指す。
次に、得られた棒材のうち破壊検査用のサンプルを用いて、棒材の外周面(摺接面)をなす表層部(表面から0.05mm深さまでの部分)の硬さ及びN含有率を測定した。なお、前記表層部の硬さは、公知のビッカース硬さ試験法を用いて測定した。また、前記表層部のN含有率は、EPMA(電子線マイクロアナライザ)を用いて測定した。これらの結果は、表1に併せて示した。
そして、得られた棒材のうち耐久試験用のサンプルを、図3に示す耐久試験機に組み込んで、この棒材をタペットローラ軸受の支持軸として利用することを想定した以下に示す条件で耐久試験を行った。
そして、得られた棒材のうち耐久試験用のサンプルを、図3に示す耐久試験機に組み込んで、この棒材をタペットローラ軸受の支持軸として利用することを想定した以下に示す条件で耐久試験を行った。
この耐久試験機は、図3に示すように、試験体10である棒材が、その軸方向中央部にローラ30を配設し、その軸方向両端部に一対の転がり軸受20,20を配設した状態で配置されるように構成されている。そして、試験体10を、一対のプーリ50,50間に掛け渡されたベルト60とジョイント70とを介して、電動モータ40により回転駆動させるように構成されている。なお、この耐久試験では、ローラ30として、SUJ2からなる素材を所定形状に加工した後、上述した図2に示す軟窒化処理と同様の条件で軟窒化処理のみが施され、その内周面をなす表層部においてN含有率を3質量%以上とし、硬さをHv800以上としたものを用いた。
この耐久試験は、ローラ30にラジアル荷重を負荷した状態で、試験体10を300時間回転させて行い、300時間回転させた後の試験体10において外周面の摩耗量を測定し、この摩耗量の大小により棒材の耐久性を評価した。この結果は、No.8の棒材における外周面の摩耗量を1.0とした時の比として、表1に併せて示す。
<耐久試験条件>
棒材の外径:10mm
ローラの内径:10.5mm
ローラの外径:30mm
棒材の回転速度:3000min-1
ラジアル荷重:650N(66kgf)
潤滑油:エンジンオイル(SE級 10W−30)
<耐久試験条件>
棒材の外径:10mm
ローラの内径:10.5mm
ローラの外径:30mm
棒材の回転速度:3000min-1
ラジアル荷重:650N(66kgf)
潤滑油:エンジンオイル(SE級 10W−30)
表1に示すように、外周面をなす表層部の硬さ及びN含有率が本発明の範囲内である棒材No.1〜No.7では、本発明の範囲外である棒材No.8〜No.12と比べて、いずれも摩耗量が少なく、優れた耐久性が得られていた。
表1に示す結果に基づいて、棒材の外周面をなす表層部の硬さと、棒材の外周面における摩耗量との関係を示す図4のグラフを作成した。
図4に示すように、棒材の外周面をなす表層部の硬さをHv700以上とすると、棒材の外周面における摩耗量が大幅に少なくなり、No.8の0.5倍以下の摩耗量となっていることが分かる。
表1に示す結果に基づいて、棒材の外周面をなす表層部の硬さと、棒材の外周面における摩耗量との関係を示す図4のグラフを作成した。
図4に示すように、棒材の外周面をなす表層部の硬さをHv700以上とすると、棒材の外周面における摩耗量が大幅に少なくなり、No.8の0.5倍以下の摩耗量となっていることが分かる。
以上の結果より、棒材の外周面をなす表層部の硬さ及びN含有率を本発明の範囲内とすることで、摺接する相手部材であるローラの外周面をなす表層部に高硬度の窒化物層が形成されている場合であっても、優れた耐久性が得られることが分かった。すなわち、本発明例であるNo.1〜No.7の棒材を上述した図1に示すタペットローラ軸受の支持軸として用いることにより、タペットローラ軸受に優れた耐久性が得られることが確認できた。
1 カムシャフト
2 カム(第一部材)
2a 外周面(摺接面)
3 ロッカーアーム
4 支持壁部
4a 貫通孔
5 支持軸(第二部材)
5a 外周面(摺接面)
6 ローラ(転動体)
61 インナーローラ
62 アウターローラ
6a 内周面(摺接面)
6b 外周面(摺接面)
10 試験体
20 転がり軸受
30 ローラ
40 電動モータ
50 プーリ
60 ベルト
70 ジョイント
2 カム(第一部材)
2a 外周面(摺接面)
3 ロッカーアーム
4 支持壁部
4a 貫通孔
5 支持軸(第二部材)
5a 外周面(摺接面)
6 ローラ(転動体)
61 インナーローラ
62 アウターローラ
6a 内周面(摺接面)
6b 外周面(摺接面)
10 試験体
20 転がり軸受
30 ローラ
40 電動モータ
50 プーリ
60 ベルト
70 ジョイント
Claims (3)
- 互いに対向する軌道面を有する第一部材及び第二部材と、前記第一部材及び前記第二部材の間に転動自在に配設される複数の転動体と、を備え、前記転動体が転動することにより前記第一部材及び前記第二部材のうち一方が他方に対して相対運動する転がり支持装置において、
互いに摺接する前記第一部材又は前記第二部材と前記転動体とのうち一方の構成部材は、鋼からなる素材を所定形状に加工した後、窒化処理を含む熱処理が施されて得られ、その摺接面をなす表層部は、硬さがHv650以上となっているとともに、
他方の構成部材は、鋼からなる素材を所定形状に加工した後、窒化処理を含む熱処理が施されて得られ、その摺接面をなす表層部は、N含有率が3.0質量%以上で、硬さがHv700以上となっていることを特徴とする転がり支持装置。 - エンジンからの動力を受けて回転する軸を支持するための転がり軸受として用いられることを特徴とする請求項1に記載の転がり支持装置。
- 互いに対向する軌道面を有する第一部材及び第二部材と、前記第一部材及前記第二部材の間に転動自在に配設される複数の転動体と、を備え、前記転動体が転動することにより前記第一部材及び前記第二部材のうち一方が他方に対して相対運動する転がり支持装置の前記第一部材、前記第二部材、及び前記転動体を製造する方法において、
互いに摺接する前記第一部材又は前記第二部材と前記転動体とのうち一方の構成部材を、鋼からなる素材を所定形状に加工した後、窒化処理を含む熱処理を施すことにより、その摺接面をなす表層部において、硬さをHv650以上とするとともに、
他方の構成部材を、鋼からなる素材を所定形状に加工した後、窒化処理と、680℃以上750℃以下で加熱保持した後に冷却する焼入れ処理と、サブゼロ処理と、焼戻し処理と、をこの順で含む熱処理を施すことにより、その摺接面をなす表層部において、N含有率を3.0質量%以上とし、硬さをHv700以上とすることを特徴とする転がり支持装置の構成部材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005234634A JP2007046759A (ja) | 2005-08-12 | 2005-08-12 | 転がり支持装置及びその構成部材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005234634A JP2007046759A (ja) | 2005-08-12 | 2005-08-12 | 転がり支持装置及びその構成部材の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2007046759A true JP2007046759A (ja) | 2007-02-22 |
Family
ID=37849734
Family Applications (1)
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JP2005234634A Pending JP2007046759A (ja) | 2005-08-12 | 2005-08-12 | 転がり支持装置及びその構成部材の製造方法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2007046759A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010133526A (ja) * | 2008-12-05 | 2010-06-17 | F C C:Kk | 従動側回転体、同従動側回転体を備えたクラッチ装置、同従動体回転装置の製造方法および同従動側回転体を備えたクラッチ装置の製造方法 |
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2005
- 2005-08-12 JP JP2005234634A patent/JP2007046759A/ja active Pending
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JP2010133526A (ja) * | 2008-12-05 | 2010-06-17 | F C C:Kk | 従動側回転体、同従動側回転体を備えたクラッチ装置、同従動体回転装置の製造方法および同従動側回転体を備えたクラッチ装置の製造方法 |
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