JP2007036608A - ヘッドホン装置 - Google Patents

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多伸 近藤
Takuro Sone
卓朗 曽根
Satoshi Sekine
聡 関根
Hideki Sakanashi
英樹 阪梨
Jun Yamada
潤 山田
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Abstract

【課題】 周囲音に含まれる不要な雑音を低減しつつ、目的音、必要な周囲音及び周囲音の発生方向を鮮明に聴取させることができるヘッドホン装置を提供すること。
【解決手段】 ヘッドホン装置は、左側スピーカ11L、右側スピーカ11R、複数の指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL,14RR、左耳近傍マイクロホン15L、右耳近傍マイクロホン15R及び制御ユニット16を備える。制御ユニットは、音楽プレーヤ12及び携帯電話13からの信号に基づく音を所定位置に定位させ、且つ、複数の指向性マイクロホンにより収音された音をその音の発生方向に定位させる信号SL,SRを左右のスピーカに出力する。更に、制御ユニットは、左耳近傍マイクロホン及び右耳近傍マイクロホンから得られた雑音の位相をANC16dL及びANC16dRにより反転させ、その信号(−NL、−NR)を信号SL,SRに重畳させて、雑音を低減する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、ヘッドホンの装着者である聴取者に対し、周囲の音に含まれる不要な雑音を低減しつつ、音楽等の目的の音及び周囲の音を鮮明に聴取させることができるヘッドホン装置に関する。
従来から、周囲の音(以下、「周囲音」と称呼する。)を収音して得られた信号の逆相信号を生成し、この逆相信号を音楽プレーヤなどからの目的の音(以下、「目的音」と称呼する。)を表す信号に加算合成して合成音信号を生成し、その合成音信号に基づいてヘッドホンのスピーカを駆動することにより、ヘッドホン装着者に目的音を鮮明に聴取させることができるヘッドホン装置が多数知られている(例えば、特許文献1、2を参照。)。このような周囲音を表す信号の逆相信号を生成することによってヘッドホン装着者に聞こえる周囲音を低減する技術は、能動雑音制御(ANC;Active Noise Control)と呼ばれている。
特開平9−93684号 実開平5−36991号
しかしながら、上記従来の装置によると、周囲音の総てが消されてしまうので、ヘッドホン装着者は周囲の状況を音に基づいて把握することができないという問題がある。かかる問題は、例えば、自動二輪車用のヘルメットに上記ヘッドホン装置を搭載した場合において、そのヘルメットを装着した運転者は運転にとって重要な周囲の状況を音により察知し難いという問題に繋がる。
一方、周囲音を表す音信号のうち、特定周波数(例えば、人間の話声の周波数)の音を表す信号を抽出し、この抽出された音信号を上記合成音信号に更に加算して出力するという技術も考えられている。しかしながら、この場合においても、聴取者は特定周波数以外の音を聴取できないので、上記問題の根本的な解決策とはならない。
本発明は、上記課題に対処するためになされたものであって、周囲音に含まれる不要な雑音を低減しつつ、必要な周囲音及び目的音を鮮明に聴取させることができるヘッドホン装置を提供することを目的の一つとしている。
かかる目的を達成する本発明によるヘッドホン装置は、
入力信号に応答して音を発生する左側スピーカ及び入力信号に応答して音を発生する右側スピーカを有するヘッドホンと、
所定の目的音を生成するための音源信号を発生する音源と、
複数の指向性マイクロホンを有し同複数の指向性マイクロホンにより前記ヘッドホンの周囲にて発生した周囲音を同ヘッドホンに対する同周囲音の発生方向を特定することができるように収音し同収音した音を表す周囲音信号を生成する周囲音信号生成手段と、
前記音源信号及び前記周囲音信号に基づいて、前記音源信号に基づく音像を所定の仮想音源位置に定位させるとともに前記周囲音信号に基づく音像を前記周囲音の発生方向の所定位置に定位させる左側スピーカ用信号及び右側スピーカ用信号を生成し、同左側スピーカ用信号及び同右側スピーカ用信号を前記左側スピーカ及び前記右側スピーカにそれぞれ出力する音源定位手段と、
を備える。
これによれば、ヘッドホンの周囲にて発生した音(周囲音)を表す周囲音信号が、各周囲音がヘッドホンに対してどの方向にて発生したか識別可能な状態にて生成される。そして、目的音を生成するための音源信号に基づく音像が所定の仮想音源位置に定位させられるとともに、周囲音信号に基づく音像が周囲音の発生方向の所定位置に定位させられる。従って、ヘッドホン装着者は、例えば、音楽の聴取や携帯電話による通話などを行いながらも周囲音がどの方向にて発生したかを確実に認識することができる。
更に、本発明によるヘッドホン装置は、
前記左側スピーカの近傍に配置され前記ヘッドホンの外部から同左側スピーカ近傍に到達した音を収音することにより左耳近傍の音を表す左耳近傍音信号を生成する左耳近傍マイクロホンと、
前記右側スピーカの近傍に配置され前記ヘッドホンの外部から同右側スピーカ近傍に到達した音を収音することにより右耳近傍の音を表す右耳近傍音信号を生成する右耳近傍マイクロホンと、
前記左耳近傍音信号の逆相信号である左耳近傍音逆相信号を生成するとともに同生成した左耳近傍音逆相信号を前記左側スピーカ用信号に重畳させ、前記右耳近傍音信号の逆相信号である右耳近傍音逆相信号を生成するとともに同生成した右耳近傍音逆相信号を前記右側スピーカ用信号に重畳させるノイズ低減手段と、
を備える。
これにより、ヘッドホン装着者の左耳の近傍における周囲音(即ち、左耳に聞こえる不要な雑音)が左耳近傍逆相信号により消去される。同様に、ヘッドホン装着者の右耳の近傍における周囲音(即ち、右耳に聞こえる不要な雑音)が右耳近傍逆相信号により消去される。従って、例えば、自動二輪車の運転者が当該ヘッドホン装置を備えたヘルメットを装着している場合、自動二輪車の走行に伴う風切り音等の雑音が低減されるので、運転者は目的音及び周囲音を明瞭に聴取することができる。更に、前述したように、周囲音信号に基づく音像が周囲音の発生方向の所定位置に定位されているから、運転者はどの方向にて警報等の周囲音が発生したかを明瞭に認識することができる。
本発明による他のヘッドホン装置は、上記ヘッドホン装置において、目的音用のスピーカと雑音除去用のスピーカとを別のスピーカにしたものである。
これによっても、左右の目的音用スピーカによって、目的音を生成するための音源信号に基づく音像が所定の仮想音源位置に定位させられ、周囲音信号に基づく音像が周囲音の発生方向の所定位置に定位させられる。従って、ヘッドホン装着者は、例えば、音楽の聴取や携帯電話による通話などを行いながらも周囲音がどの方向にて発生したかを確実に認識することができる。また、左右の雑音除去用スピーカによって、ヘッドホン装着者の耳に到達する雑音が消去される。従って、例えば、自動二輪車の運転者が当該ヘッドホン装置を備えたヘルメットを装着している場合、自動二輪車の走行に伴う風切り音等の雑音が低減されるので、運転者は目的音及び周囲音を明瞭に聴取することができるとともに、周囲音の発生方向を明瞭に認識することができる。
この場合、前記音源定位手段は、
前記周囲音信号に含まれる特定周波数の振幅スペクトルを増大することにより同周囲音信号を修正し、同修正した周囲音信号に基づいて前記左側スピーカ用信号及び前記右側スピーカ用信号を生成するように構成されることが好適である。
これによれば、例えば、救急車等の緊急車両や踏み切りの警報音等に含まれる特定周波数(特定の周波数領域)の音が強調されるので、ヘッドホン装着者は周囲状況を確実に認識することが可能となる。
また、前記音源定位手段は、
前記周囲音信号の中から各周囲音信号の振幅スペクトルに基づいて特定の周囲音信号を抽出するとともに、同抽出した周囲音信号に基づく音の大きさが大きくなるように前記左側スピーカ用信号及び前記右側スピーカ用信号を生成してもよい。
この場合、抽出された周囲音信号に基づく音の大きさ自体を増大させればよく、そのような音の増大の結果、その周囲音信号に基づく音の大きさが他の周囲音信号に基づく音の大きさよりも小さくてもよい。勿論、抽出された周囲音信号に基づく音が、抽出されなかった周囲音信号に基づく音より大きくなるように、同抽出された周囲音信号を修正してもよい。
これによれば、例えば、特にヘッドホン装着者に喚起を促すべき周囲音(例えば、特定周波数の振幅スペクトルを含む緊急車両や踏み切りの警報音等)のレベル(音量、ボリューム)が大きくされるので、ヘッドホン装着者は周囲状況に関する重要な情報を音によって一層確実に認識することが可能となる。
また、前記音源定位手段は、
前記周囲音信号の中から各周囲音信号の振幅スペクトルに基づいて特定の周囲音信号を抽出するとともに、同抽出した周囲音信号に基づく音の高周波数成分の振幅スペクトルを増大することにより同周囲音信号を修正し、同修正した周囲音信号に基づいて前記左側スピーカ用信号及び前記右側スピーカ用信号を生成するように構成されることも好適である。
これによれば、例えば、特にヘッドホン装着者に喚起を促すべき周囲音(例えば、特定周波数の振幅スペクトルを含む緊急車両や踏み切りの警報音等)の高周波数成分が強調されるので、ヘッドホン装着者は周囲状況に関する重要な情報を音によって一層確実に認識することが可能となる。
以下、本発明によるヘッドホン装置の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
(装置の構成)
第1実施形態に係るヘッドホン装置は、図1に示したように、自動二輪車BYの運転者用ヘルメット10に適用されている。ヘルメット10は、フルフェイス型である。このヘッドホン装置は、ヘルメット10の内部に装備されたヘッドホン11を備えている。
ヘッドホン11は、図2及び図3に示したように入力信号に応答して音を発生する左側スピーカ11L及び入力信号に応答して音を発生する右側スピーカ11Rを含んでいる。左側スピーカ11Lは、ヘルメット10を装着した運転者(ヘルメット装着者)の左耳近傍に位置されるようにヘルメット10の内側左方部に配設されている。右側スピーカ11Rは、ヘルメット10を装着した運転者の右耳近傍に位置されるようにヘルメット10の内側右方部に配設されている。
ヘッドホン装置は、更に、音楽プレーヤ12、携帯電話13、複数(本例では4本)の指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL,14RR、左耳近傍マイクロホン15L、右耳近傍マイクロホン15R及び制御ユニット16を備えている。
音楽プレーヤ12(例えば、MP3プレーヤ等)は、音楽データを内部に格納している。音楽プレーヤ12は、制御ユニット16に接続されていて、格納している音楽データに基づいて音楽を再生するための信号(以下、「音楽信号」と称呼する。)を制御ユニット16に出力するようになっている。
携帯電話13は、一般に使用される携帯電話である。携帯電話13は、制御ユニット16に接続されていて、着信音及び通話相手の音声等の音を生成するための信号(以下、「着信通話信号」と称呼する。)を制御ユニット16に出力するようになっている。音楽プレーヤ12及び携帯電話13は、所定の目的音を生成するための音源信号(音楽信号及び着信通話信号)を発生する音源を構成している。このような音源としては、音声ナビゲーション装置、ラジオ、或いは、自動二輪車BYの同乗者からの音声を無線により伝達する同乗者会話装置等が含まれる。
複数の指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL及び14RRは、ヘルメット10の外側の上部であって、左前方位置、右前方位置、左後方位置及び右後方位置にそれぞれ配設されている。指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL及び14RRは、主としてヘルメット10(ヘッドホン11)の左前方、右前方、左後方及び右後方において発生した音をそれぞれ収音し、収音した音を表す信号(以下、「周囲音信号」と称呼する。)を生成するようになっている。複数の指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL及び14RRのそれぞれは、制御ユニット16に独立して接続されていて、周囲音信号を制御ユニット16に出力するようになっている。
左耳近傍マイクロホン15Lは、左側スピーカ11Lの近傍に配置されるとともに、制御ユニット16に接続されている。左耳近傍マイクロホン15Lは、ヘッドホン11の外部から左側スピーカ11Lの近傍に到達した音(左側雑音)を収音することにより左耳近傍の音を表す左耳近傍音信号を生成し、生成した信号を制御ユニット16に出力するようになっている。
右耳近傍マイクロホン15Rは、右側スピーカ11Rの近傍に配置されるとともに、制御ユニット16に接続されている。右耳近傍マイクロホン15Rは、ヘッドホン11の外部から右側スピーカ11Rの近傍に到達した音(右側雑音)を収音することにより右耳近傍の音を表す右耳近傍音信号を生成し、生成した信号を制御ユニット16に出力するようになっている。
制御ユニット16は、携帯可能な大きさの筐体と同筐体内部に収容された以下に述べる電子回路とからなり、運転者に保持されるようになっている。制御ユニット16は、図3に示したように、レベル検出回路16a、音源位置決定装置(音像位置決定装置)16b、音源定位装置(音源定位手段)16c、左側能動雑音制御装置(ANC)16dL、右側能動雑音制御装置(ANC)16dR、左側遅延音量コントローラ16eL、右側遅延音量コントローラ16eR及び加算器16f〜16iを備えている。
レベル検出回路16aは、複数の指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL,14RRのそれぞれと接続されている。レベル検出回路16aは、複数の指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL,14RRからの信号に基づいて、各マイクロホン14FL,14FR,14RL,14RRから入力された信号のレベル(大きさ)を検出し、検出した大きさを表す信号(以下、「周囲音レベル信号」と称呼する。)を音源位置決定装置16bに出力するようになっている。即ち、レベル検出回路16aは、指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL,14RRからの信号のそれぞれと所定の閾値Sthとを比較し、所定の閾値Sthよりレベルの大きい信号に対して「1」、閾値Sthよりレベルの小さい信号に対して「0」の信号を周囲音レベル信号として生成するようになっている。更に、レベル検出回路16aは、音源位置決定装置16b及び音源定位装置16cと接続されている。レベル検出回路16aは、複数の指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL,14RRからの信号を増幅した信号(増幅された周囲音信号)を音源位置決定装置16b及び音源定位装置16cに出力するようになっている。
音源位置決定装置16bは、レベル検出回路16a、音楽プレーヤ12、携帯電話13及び音源定位装置16cと接続されている。音源位置決定装置16bは、周囲音レベル信号と、増幅された複数の指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL,14RRからの信号と、を入力するようになっている。また、音源位置決定装置16bは、音楽プレーヤ12からの音楽信号及び携帯電話13からの着信通話信号を入力するようになっている。
そして、音源位置決定装置16bは、音楽信号、着信通話信号、増幅された複数の指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL,14RRからの信号及び周囲音レベル信号に基づいて、音楽信号、着信通話信号及び増幅された複数の指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL,14RRからの信号のそれぞれに基づく音像の位置(以下「仮想音源位置」と称呼する。)を決定し、その決定した仮想音源位置に関する情報(以下、「仮想音源位置情報」と称呼する。)を音源定位装置16cに出力するようになっている。なお、仮想音源位置とは、ある音源があたかも仮想音源位置に存在しているかのようにヘッドホン装着者(運転者)に聴かせることができる音源の仮想的な位置である。
音源定位装置16cは、音楽信号、着信通話信号及び増幅された複数の指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL,14RRからの信号のそれぞれに基づく音像を上記仮想音源位置情報により表される仮想音源位置に定位させる信号(左側スピーカ用信号SL及び右側スピーカ用信号SR)を生成し、その左側スピーカ用信号SL及び右側スピーカ用信号SRを左側スピーカ11L及び右側スピーカ11Rにそれぞれ出力するようになっている。
ここで、音源定位装置16cの構成について図4を参照しながら説明する。音源定位装置16cは、A/D変換装置161、先行音用のゲイン乗算器162、マルチプレクサ163、ディレイライン164、バンドパスフィルタ165、後行音用のゲイン乗算器166、FIR(Finite Impulse Response)フィルタ167、加算器168、D/Aコンバータ(DAC)169等を備えている。なお、音源定位装置16c及び音源位置定位方法(ヘッドホンを使用して複数の音の音像を三次元において定位する音像定位方法)は、例えば、特開2002−44796号公報及び特開平10−23600号公報等により周知である。
A/D変換装置161は、前述した複数の音源(音楽プレーヤ12、携帯電話13)及びレベル検出回路16aの出力線のそれぞれに接続された複数のA/Dコンバータ(ADC)を有している。各ADCは、各出力線上のアナログ信号をデジタル信号に変換して出力するようになっている。
ゲイン乗算器162は、上記複数の音源及びレベル検出回路16aからA/D変換装置161に入力される信号数と同数のゲイン乗算器セットからなっている。各ゲイン乗算器セットは、第1チャンネルCh1乃至第8チャンネルCh8に対応する合計8個の増幅器を備えている。各ゲイン乗算器セットの8個の増幅器は、各ADCに接続されている。ゲイン乗算器162は、音源位置決定装置16bにも接続されている。ゲイン乗算器162は、各ゲイン乗算器セットの増幅器のゲインを、音源位置決定装置16bから出力される仮想音源位置情報に基づいて変更するようになっている。
マルチプレクサ163の各チャンネルの入力端は、ゲイン乗算器162の各増幅器と接続されている。マルチプレクサ163の各チャンネルの出力端は、第1チャンネルCh1乃至第8チャンネルCh8のFIRフィルタ167(実際には、左耳用FIRフィルタ167L及び右耳用FIRフィルタ167R)のそれぞれに接続されている。マルチプレクサ163の出力端からFIRフィルタ167の入力端に直接入力される信号は、「先行音」と称呼される。マルチプレクサ163は、ゲイン乗算器162の複数のゲイン乗算器セットのうちの一つを音源位置決定装置16bから出力される仮想音源位置情報に基づいて選択し、選択したゲイン乗算器セットの増幅器からの各チャンネルの信号を出力端から出力するようになっている。
ディレイライン164は、複数のシフトレジスタを直列接続した多段シフトレジスタを第1チャンネルCh1乃至第8チャンネルCh8のチャンネル毎に備えている。ディレイライン164は、各チャンネルの多段シフトレジスタの所定のレジスタとその所定のレジスタに続くレジスタとの間にタップを設けるようになっている。ディレイライン164の各チャンネルの入力端は、マルチプレクサ163の各チャンネルの出力端と接続されている。このマルチプレクサ163の出力端からディレイライン164の入力端に入力され、且つ、所定の時間だけディレイされて前記タップから取り出される信号は、「後行音」と称呼される。ディレイライン164は、音源位置決定装置16bにも接続されている。ディレイライン164は、前記各チャンネルのタップの位置を、音源位置決定装置16bから出力される仮想音源位置情報に基づいて変更するようになっている。
ディレイライン164の各チャンネルの前記タップは、バンドパスフィルタ165の各チャンネルの入力端に接続されている。なお、図4において「8」が付されたラインは、8本のラインである。
後行音用のゲイン乗算器166は、第1チャンネルCh1乃至第8チャンネルCh8に対応する合計8個の増幅器を備えている。各チャンネルの増幅器の入力端は、バンドパスフィルタ165の各チャンネルの出力端に接続されている。ゲイン乗算器166の各チャンネルの増幅器の出力端は、図4及び表1に示したように、各チャンネルのFIRフィルタ167の入力端とマルチプレクサ163の各チャンネルの出力端との間に設けられた加算器の何れか一つに接続されている。これにより、先行音及び後行音(バンドパスフィルタ165及び後行音用のゲイン乗算器166を通過した後行音)は、各加算器にて加算されてからFIRフィルタ167に入力される。
Figure 2007036608
第1チャンネルCh1のFIRフィルタ167Lは、音が図5の#1の方向から聴取者の左耳に聞こえてくる場合の周波数特性を頭部伝達関数(Head Related Transfer Function; HRTF)によりシミュレートするようになっている。即ち、第1チャンネルCh1のFIRフィルタ167Lは、音が図5の#1の方向から聴取者の左耳に聞こえてくる場合の音の伝達特性である頭部伝達関数により、入力される信号を畳み込み演算するフィルタである。
なお、図5においては、聴取者(運転者)の頭部は#1〜#8の位置により規定される立方体の中央部に存在し、聴取者は#1、#2、#6及び#5の位置により構成される面に正対している(この面の垂直方向を向いている)。#1乃至#4の位置により形成される面は聴取者の下方の面、#5乃至#8の位置により形成される面は聴取者の上方の面である。この立方体の向きは、聴取者の頭部の向き(運転者用ヘルメット10の前後方向前方の向き)の変化に伴って変化する。
第1チャンネルCh1のFIRフィルタ167Rは、音が図5の#1の方向から聴取者の右耳に聞こえてくる場合の周波数特性を頭部伝達関数によりシミュレートするようになっている。即ち、第1チャンネルCh1のFIRフィルタ167Rは、音が図5の#1の方向から聴取者の右耳に聞こえてくる場合の音の頭部伝達関数により、入力される信号を畳み込み演算するフィルタである。
同様に、第2チャンネルCh2乃至第8チャンネルCh8のFIRフィルタ167L及びFIRフィルタ167Rは、それぞれ図5の#2乃至#8の方向から聴取者の左右の耳への音の伝達を頭部伝達関数によりシミュレートするようになっている。各チャンネルのFIRフィルタ167L及びFIRフィルタ167Rは、音源位置決定装置16bにも接続されていて、音源位置決定装置16bから出力される音源位置情報に基づいて、各フィルタの係数を変更するようになっている。
各チャンネルのFIRフィルタ167L,167Rは、加算器168(実際には、左耳用加算器168L及び右耳用加算器168R)の入力端に接続されている。これにより、各チャンネルのFIRフィルタ167L,167Rから出力された信号は、加算器168により加算合成される。
加算器168(左耳用加算器168L及び右耳用加算器168R)の出力端は独立してDAC169の入力端に接続されている。これにより、各加算器168から出力された信号はアナログ信号に変換される。以上により、左耳用加算器168Lからの信号に基づく左側スピーカ用信号SL及び右耳用加算器168Rからの信号に基づく右側スピーカ用信号SRが生成される。
ところで、一般に、聴取者が先行音及び後行音のように互いに同一の2つの音を時間差をもって受聴した場合、聴取者は、より先に到達した音及び/又はよりレベルの大きい方の音の方向に、その音の音源が存在すると知覚する。この効果は、先行音効果(ハース効果)と呼ばれるよく知られた効果である。そこで、後行音を、先行音により定位される仮想音源の位置の聴取者に関する点対称の位置に定位させると、先行音効果により先行音による定位位置を誤って聴取者に認識させることなく、先行音の方向感を一層強調することができる。
このことから、音源定位装置16cにおいては、後行音ゲイン乗算器166の各チャンネルの増幅器の出力端は、マルチプレクサ163とFIRフィルタ167とを結ぶ先行音の各チャンネルの聴取者に関して点対称(反対側)となるチャンネルに加算器を介して接続される(表1を参照。)。
しかしながら、先行音と後行音との時間差及びレベル差が極端に小さいと、音像は頭内に定位してしまい、方向感が失われる。逆に、時間差が過大となると聴取者は受聴音を2つの別の音として知覚してしまう。また、レベル差が過大となると、前述した後行音の効果(先行音の方向感を強調する効果)が失われる。
このような観点に基づき、ディレイライン164及びゲイン乗算器166は、音源位置情報に応じて、上記時間差(タップ位置)及びレベル差(後行音に対するゲイン)を適切な値にそれぞれ設定するようになっている。
ここで、仮想音源位置が、上述した基本となる方向#1〜#8の間の方向である場合について説明する。今、仮想音源位置を、図6の(A)乃至(C)に示した空間上の任意の点Ptgtに設定するべきであると仮定する。この場合、仮想音源Ptgtは聴取者の左右の耳の中央の点Dから見て、#1、#2、#6及び#5から形成される正方形内にある。なお、図6の(B)及び(C)は、それぞれ図6の(A)の立方体の上面図及び側面図である。
ここで、点Dと点Ptgtとを通る直線Lと、#1、#2、#6及び#5の位置により形成される面と、の交点を交点Crと称呼する。この場合、交点Crは横方向(水平方向、即ち、#1−#2又は#5−#6に沿った方向)において、辺#1−#2(図5及び図6の(A)に示した立方体の水平方向の一辺)をa:bにて内分した位置P1に存在している。更に、交点Crは縦方向(鉛直上下方向、即ち、#1−#5又は#2−#6に沿った方向)において、辺#1−#5(図5及び図6の(A)に示した立方体の鉛直上下方向の一辺)をc:dにて内分した位置P2に存在している。また、点Dから仮想音源Ptgtまでの距離L1は、点Dから交点Crまでの距離L2のx倍(音源距離比x=L1/L2)であるとする。
このとき、音源位置決定装置16bは、第1チャンネルCh1、第2チャンネルCh2、第5チャンネルCh5及び第6チャンネルCh6の各先行音に対するゲイン乗算器162の各増幅器のゲインを、チャンネル間距離比(スピーカ間距離比a:b,c:d)及び音源距離比xから求められるゲインに設定する。具体的には、各チャンネルのゲインは、チャンネル間距離比a:b、c:dに逆比例し、音源距離比xの2乗に反比例するように定めれば良い。即ち、第nチャンネル(nは、1、2、5、6)の先行音に対するゲインkChnは、下記(1)式乃至(4)式により決定される。また、第mチャンネル(mは、3、4、7、8)の先行音に対するゲインkChmは、「0」に設定される。
Figure 2007036608
後行音の仮想音源Ptgt’は、前述したように、先行音により定位される仮想音源Ptgtの点Dに関する点対称の位置に定位される。後行音は、先行音に対して一定量の減衰量(ゲイン)とディレイ量(時間差)を有するように発音される。ディレイ量はディレイライン164により与えられる。第mチャンネル(mは、3、4、7、8)のゲインkCh’mは、上記先行音に対するゲインに応じて下記の(5)式乃至(8)式に基いて決定される。なお、係数pは先行音に対する減衰量を決定する係数であり、後行音ゲイン乗算器166により与えられる。減衰量及びディレイ量は、音源位置には依存せず、聴取者の聴覚特性及び嗜好等に基づいて設定される。なお、第nチャンネル(nは、1、2、5、6)の後行音に対するゲインkCh’nは、「0」となる。
Figure 2007036608
運転者用ヘルメット10の向き(運転者用ヘッドホン11の向き)及び/又は仮想音源位置である点Ptgtが変化すると、点Ptgtと運転者用ヘッドホン11のなす角度も変化する。この場合においても、点Dと点Ptgtとを通る直線Lと、#1乃至#8の位置により形成される立方体の何れかの面とが交差し、その面上にて交点Crが求められる。
従って、音源定位装置16cは、その交点Crとその面を規定する#1乃至#8の位置のうちの4つの位置から、上述したチャンネル間距離比a:b,c:d及び音源距離比xを求め、各チャンネルの先行音ゲイン乗算器162の各増幅器のゲイン及び後行音ゲイン乗算器166の各増幅器のゲインを、これらの比により定まるゲインに設定する。この結果、ヘッドホン11の向きにかかわらず、仮想音源位置を点Ptgtに常に定位させることができる。
音源位置決定装置16bは、定位すべき音源を選択するようにマルチプレクサ163に指示信号を送出するとともに、その選択する音源に対する仮想音源位置を先行音用のゲイン乗算器162、ディレイライン164、後行音用のゲイン乗算器166及びFIRフィルタ167に出力する。このような音源の選択が総ての音源信号に対して実行されることにより、総ての音源信号に基づく音像が定位される。
再び、図3を参照すると、左側能動雑音制御装置(ANC)16dLは、左耳近傍マイクロホン15Lと接続されていて、左耳近傍マイクロホン15Lからの信号を入力するとともに、その入力信号の位相を反転させた信号を出力するようになっている。
左側遅延音量コントローラ16eLは、音源定位装置16c(DAC170)に接続されていて、音源定位装置16cから出力される左側スピーカ用信号SLを入力するようになっている。左側遅延音量コントローラ16eLは、入力した左側スピーカ用信号SLを所定時間だけ遅延させるとともに、遅延した信号に所定のゲインk(k<1)を乗じた信号を生成し出力するようになっている。
加算器16fは、左側能動雑音制御装置16dL及び左側遅延音量コントローラ16eLに接続されていて、これらからの出力信号を加算合成した信号を出力するようになっている。加算器16gは、音源定位装置16c(DAC170)、加算器16f及び左側スピーカ11Lに接続されている。加算器16gは、音源定位装置16cからの信号SL及び加算器16fからの出力信号を加算合成した信号を、左側スピーカ11Lに出力するようになっている。
同様に、右側能動雑音制御装置(ANC)16dRは、右耳近傍マイクロホン15Rと接続されていて、右耳近傍マイクロホン15Rからの信号を入力するとともに、その入力信号の位相を反転させた信号を出力するようになっている。
右側遅延音量コントローラ16eRは、音源定位装置16c(DAC170)に接続されていて、音源定位装置16cから出力される右側スピーカ用信号SRを入力するようになっている。右側遅延音量コントローラ16eRは、入力した右側スピーカ用信号SRを所定時間だけ遅延させるとともに、遅延した信号に所定のゲインk(k<1)を乗じた信号を生成し出力するようになっている。
加算器16hは、右側能動雑音制御装置16dR及び右側遅延音量コントローラ16eRに接続されていて、これらからの出力信号を加算合成した信号を出力するようになっている。加算器16iは、音源定位装置16c(DAC170)、加算器16h及び右側スピーカ11Rに接続されている。加算器16iは、音源定位装置16cからの信号SR及び加算器16hからの出力信号を加算合成した信号を、右側スピーカ11Rに出力するようになっている。
(作動)
次に、上記のように構成されたヘッドホン装置の作動の概要について説明する。音源位置決定装置16bの機能は、実際にはマイクロコンピュータのCPUが図7のフローチャートにより示した処理を一定時間の経過毎に行うことにより達成される。また、音源定位装置16cの機能は、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)が図8のフローチャートにより示した処理を一定時間の経過毎に行うことにより達成される。
音源位置決定装置16bは、音楽プレーヤ12からの信号(音楽信号)及び携帯電話13からの信号(着信通話信号)、並びに増幅された複数の指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL,14RRからの信号(増幅された各マイクロホンからの周囲音信号)に基づいて、それぞれの信号に基づく音像の位置(仮想音源位置)を決定するため、図7のステップ100から処理を開始し、ステップ110にて音楽信号があるか否かを判定する。
いま、音楽プレーヤ12からの音楽信号があり、且つ、携帯電話13からの着信通話信号があるとして説明を続ける。この場合、音源位置決定装置16bは、ステップ110にて「Yes」と判定してステップ115に進み、着信通話信号があるか否かを判定する。この場合、音源位置決定装置16bは、ステップ115にて「Yes」と判定してステップ120に進み、音楽信号の音像をヘッドホン装着者の前方下部に定位させる定位情報を生成するとともに、続くステップ125にて着信通話信号の音像をヘッドホン装着者の前方正面に定位させるための定位情報を生成する。その後、音源位置決定装置16bは、ステップ145に進む。
一方、音楽プレーヤ12からの音楽信号はあるが、携帯電話13からの着信通話信号がない場合、音源位置決定装置16bは、ステップ110にて「Yes」と判定するとともにステップ115にて「No」と判定してステップ130に進み、音楽信号の音像をヘッドホン装着者の前方正面に定位させるための定位情報を生成する。その後、音源位置決定装置16bは、ステップ145に進む。
他方、音楽プレーヤ12からの音楽信号はないが、携帯電話13からの着信通話信号がある場合、音源位置決定装置16bは、ステップ110にて「No」と判定してステップ135に進み、着信通話信号があるか否かを判定する。この場合、音源位置決定装置16bは、ステップ135にて「Yes」と判定してステップ140に進み、着信通話信号の音像をヘッドホン装着者の前方正面に定位させるための定位情報を生成する。その後、音源位置決定装置16bは、ステップ145に進む。
また、音楽信号及び着信通話信号の何れもがない場合、音源位置決定装置16bは、ステップ110及びステップ135の両ステップにて「No」と判定し、直接ステップ145に進む。以上により、音楽信号に基づく音像と着信通話信号に基づく音像とを、それらの有無に応じた位置に定位させるための定位情報が生成される。
次いで、音源位置決定装置16bは、ステップ145〜ステップ180に進み、以下に記載した処理を行う。
ステップ145及びステップ150:マイクロホン14FLからの信号に対する周囲音レベル信号が「1」である場合、マイクロホン14FLからの信号に基づく音像をヘッドホン装着者の左前方の所定位置(ヘッドホン11から所定距離だけ左前方の位置)に定位させるための定位情報を生成する。
ステップ155及びステップ160:マイクロホン14FRからの信号に対する周囲音レベル信号が「1」である場合、マイクロホン14FRからの信号に基づく音像をヘッドホン装着者の右前方の所定位置(ヘッドホン11から所定距離だけ右前方の位置)に定位させるための定位情報を生成する。
ステップ165及びステップ170:マイクロホン14RLからの信号に対する周囲音レベル信号が「1」である場合、マイクロホン14RLからの信号に基づく音像をヘッドホン装着者の左後方の所定位置(ヘッドホン11から所定距離だけ左後方の位置)に定位させるための定位情報を生成する。
ステップ175及びステップ180:マイクロホン14RRからの信号に対する周囲音レベル信号が「1」である場合、マイクロホン14RRからの信号に基づく音像をヘッドホン装着者の右後方の所定位置(ヘッドホン11から所定距離だけ右後方の位置)に定位させるための定位情報を生成する。
その後、音源位置決定装置16bはステップ185に進み、今までに生成した定位情報を仮想音源位置情報として音源定位装置16cに出力し、ステップ195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、音源定位装置16cのDSPは、図8に示したルーチンの処理を一定時間の経過毎にステップ200から開始し、ステップ210に進んで「CPUが出力している仮想音源位置情報」に基づいて各信号(音楽信号、着信通話信号及び周囲音レベル信号が「1」である増幅された周囲音信号)の仮想音源位置に対するゲイン乗算器162の各チャンネルの増幅器のゲイン、ディレイライン164のタップ位置、ゲイン乗算器166のゲイン(上述の係数p)及びFIRフィルタ167の係数を決定する。なお、以下においては、音楽信号、着信通話信号及び周囲音レベル信号が「1」である増幅された周囲音信号を「発生源信号」と総称し、各発生源信号を出力している装置を発生源と総称する。
次いで、DSPはステップ220に進み、音源位置情報に基づいて、現時点において発生源信号を発生している発生源の一つを指定する信号をマルチプレクサ163に出力し、その指定された発生源からの信号(発生源信号)であってA/D変換装置161によりデジタル信号に変換されている信号をゲイン乗算器162に入力する。次に、DSPはステップ230に進み、ステップ220にて指定した発生源(発生源信号)に対するタップ位置をディレイライン164に出力する。
その後、DSPはステップ240に進み、ステップ220にて指定した発生源(発生源信号)に対するゲイン乗算器162の各チャンネルの増幅器のゲイン、ゲイン乗算器166の各チャンネルの増幅器のゲイン及びFIRフィルタ167の係数を、それぞれに出力する。以上によって、ステップ220にて指定した発生源信号を、その発生源信号に対する仮想音源位置に定位する左側スピーカ用信号SL及び右側スピーカ用信号SRが生成される。
次に、DSPはステップ250に進み、現時点において音源信号を発生している音源の総てに対して上記ステップ220乃至ステップ240の処理が完了したか否か(1サイクルが完了したか否か)を判定し、完了していなければステップ220に戻る。また、DSPは、1サイクルが完了していれば、ステップ295に進んで本ルーチンを一旦終了する。以上によって、現時点における発生音信号に基づく音像の総てを、音源位置情報に従う仮想音源位置に定位する信号(左側スピーカ用信号SL及び右側スピーカ用信号SR)が生成される。
一方、周囲の雑音は以下のようにして低減させられる。なお、以下においては、左側スピーカ11Lからの出力による雑音低減のための作動についてのみ説明するが、右側スピーカ11Rからの出力も左側スピーカ11Lと同様に制御される。
先ず、図3に示したように、左耳近傍マイクロホン15Lは、外部から左側スピーカ11Lの近傍に到達した音(左側雑音)を収音し、左耳近傍音信号NLを生成する。
また、左側スピーカ11Lは左側スピーカ用信号SLに応じた音を出力している。従って、左側スピーカ11Lが発生した音の一部が漏れ、その漏れた音が左耳近傍マイクロホン15Lに収音される。従って、左耳近傍マイクロホン15Lにより生成される信号には、左側スピーカ11Lからの漏れ(回り込み)による音に応じた信号k・SL(k<1)が含まれる。即ち、左耳近傍マイクロホン15Lは、信号NL+k・SLを生成する。この信号NL+k・SLは、左側能動雑音制御装置16dLにより位相反転せしめられ、信号−(NL+k・SL)に変換される。この信号−(NL+k・SL)は、加算器16fに入力される。
一方、左側遅延音量コントローラ16eLは、左側スピーカ用信号SLを所定の遅延時間だけ遅延するとともに遅延した信号をk倍した信号k・SLを出力している。ところで、左側能動雑音制御装置16dLから出力される信号−(NL+k・SL)に含まれる信号SLは、音源定位装置16cから出力される左側スピーカ用信号SLよりも所定時間だけ遅延している。従って、左側遅延音量コントローラ16eLは、音源定位装置16cから出力された左側スピーカ用信号SLをこの所定時間だけ遅延させる。左側遅延音量コントローラ16eLからの信号k・SLは、加算器16fに入力される。
加算器16fは、入力された信号−(NL+k・SL)と信号k・SLを加算合成する。この結果、加算器16fは、信号−NLを加算器16gに出力する。加算器16gは、音源定位装置16cからの左側スピーカ用信号SLと、加算器16fからの信号−NLを加算して左側スピーカ11Lに出力する。通常、左耳近傍音信号に含まれる左側スピーカ11Lからの回り込みによる音に応じた信号k・SLは、周囲から左側スピーカ11Lの近傍に到達する音に応じた信号NLに比べて非常に小さい(即ち、kは0に近い値である。)。従って、左耳近傍音信号は実質的に信号NLであると言うことができるので、加算器16gは左耳近傍音信号NLの逆相信号である左耳近傍音逆相信号−NLを、音源定位装置16cからの左側スピーカ用信号SLに実質的に重畳させていることになる。
以上により、左側スピーカ11Lは信号SL−NLに対応した音を発生する。この結果、ヘッドホン装着者の左耳には、ヘッドホン11の外部から左耳近傍に到達している音(左耳近傍音信号NLにより表される音)と加算器16gからの信号SL−NLに応じた音とを加えた音、即ち、左側スピーカ用信号SLに応じた音が到達する。このようにして、ヘッドホン装着者の左耳の近傍における周囲音(即ち、左耳に聞こえる不要な雑音)が左耳近傍逆相信号−NLにより消去されるので、ヘッドホン装着者は、それぞれ仮想音源位置に定位された音楽信号、着信通話信号及び増幅された複数の指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL,14RRからの信号に基づく音を明瞭に聴取することができる。
以上、説明したように、本発明の第1実施形態に係るヘッドホン装置は、
入力信号に応答して音を発生する左側スピーカ(11L)及び入力信号に応答して音を発生する右側スピーカ(11R)を有するヘッドホン(11)と、
所定の目的音を生成するための音源信号(音楽信号、着信通話信号)を発生する音源(12,13)と、
複数の指向性マイクロホン(14FL,14FR,14RL,14RR)を有し同複数の指向性マイクロホンにより前記ヘッドホンの周囲にて発生した周囲音を同ヘッドホンに対する同周囲音の発生方向を特定することができるように収音し同収音した音を表す周囲音信号を生成する周囲音信号生成手段(14FL,14FR,14RL,14RR、制御ユニット16及びそれらの間の接続)と、
前記音源信号及び前記周囲音信号に基づいて、前記音源信号に基づく音像を所定の仮想音源位置に定位させるとともに前記周囲音信号に基づく音像を前記周囲音の発生方向の所定位置に定位させる左側スピーカ用信号SL及び右側スピーカ用信号SRを生成し、同左側スピーカ用信号SL及び同右側スピーカ用信号SRを前記左側スピーカ11L及び前記右側スピーカ11Rにそれぞれ出力する音源定位手段(16b、16c)と、
左耳近傍音信号(NL)を生成する左耳近傍マイクロホン(15L)と、
右耳近傍音信号(NR)を生成する右耳近傍マイクロホン(15R)と、
前記左耳近傍音信号(NL)の逆相信号である左耳近傍音逆相信号(−NL)を生成するとともに同生成した左耳近傍音逆相信号を前記左側スピーカ用信号(SL)に重畳し、前記右耳近傍音信号(NR)の逆相信号である右耳近傍音逆相信号(−NR)を生成するとともに同生成した右耳近傍音逆相信号を前記右側スピーカ用信号(SR)に重畳するノイズ低減手段(16dL、16eL、16f、16g、16dR、16eR、16h、16i)と、を備えている。
従って、目的音を生成するための音源信号に基づく音像が所定の仮想音源位置に定位させられ、周囲音信号に基づく音像が周囲音の発生方向の所定位置に定位させられる。この結果、ヘッドホン装着者は、例えば、音楽の聴取や携帯電話による通話などを行いながらも周囲音がどの方向にて発生したかを確実に認識することができる。
更に、ヘッドホン装着者の左右の耳の近傍における周囲音(即ち、左右の耳に聞こえる不要な雑音)が消去される。従って、自動二輪車の運転中における風切り音等の雑音が低減されるので、ヘッドホン装着者である運転者は目的音及び周囲音を明瞭に聴取することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るヘッドホン装置について図9を参照しながら説明する。以下において、第1実施形態に係るヘッドホン装置と同一構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第2実施形態に係るヘッドホン装置は、第1実施形態に係るヘッドホン装置と同様、自動二輪車BYの運転者用ヘルメット10に適用され、ヘッドホン11に代わるヘッドホン11’を備えている。
ヘッドホン11’は、入力信号に応答して音を発生する左側スピーカ11L及び入力信号に応答して音を発生する右側スピーカ11Rを含んでいる。第2実施形態における左側スピーカ11L及び右側スピーカ11Rは、目的音(音楽信号に基づく音、着信通話信号に基づく音及び増幅された周囲音信号)のみを発生するので、目的音用左側スピーカ11L及び目的音用右側スピーカ11Rとそれぞれ称呼される。
ヘッドホン11’は、更に、雑音除去用左側スピーカ17L及び雑音除去用右側スピーカ17Rを備えている。雑音除去用左側スピーカ17Lは、目的音用左側スピーカ11Lの近傍(ヘルメット10を装着した運転者の左耳近傍)に位置されるようにヘルメット10の内側左方部に配設されている。同様に、雑音除去用右側スピーカ17Rは、目的音用右側スピーカ11Rの近傍(ヘルメット10を装着した運転者の右耳近傍)に位置されるようにヘルメット10の内側右方部に配設されている
左耳近傍マイクロホン15Lは、左側能動雑音制御装置16dLの入力端子に接続されている。左側能動雑音制御装置16dLの出力端子は雑音除去用左側スピーカ17Lに接続されている。同様に、右耳近傍マイクロホン15Rは、右側能動雑音制御装置16dRの入力端子に接続されている。右側能動雑音制御装置16dRの出力端子は雑音除去用右側スピーカ17Rに接続されている。なお、第2実施形態においては、目的音用左側スピーカ11L及び目的音用右側スピーカ11Rから発生された音が実質的に漏れることがないようにヘッドホン11が構成されている。
更に、このヘッドホン装置は、第1実施形態のヘッドホン装置と同様に、レベル検出回路16a、音源位置決定装置16b、音源定位装置16cを備えている。レベル検出回路16aには、複数の指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL,14RRが接続されている。音源位置決定装置16b及び音源定位装置16cには、音楽プレーヤ12及び携帯電話13が接続されている。レベル検出回路16a、音源位置決定装置16b及び音源定位装置16c間の接続関係は、第1実施形態のヘッドホン装置と同一である。
次に、このように構成された第2実施形態に係るヘッドホン装置の作動について説明する。このヘッドホン装置は、第1実施形態に係るヘッドホン装置と同様に、音源定位装置16cが左側スピーカ用信号SL及び右側スピーカ用信号SRを生成する。そして、左側スピーカ用信号SL及び右側スピーカ用信号SRは、目的音用左側スピーカ11L及び目的音用右側スピーカ11Rにそれぞれ入力される。
この結果、目的音用左側スピーカ11L及び目的音用右側スピーカ11Rから発生された音により、音楽信号及び着信通話信号と、周囲音信号(周囲音レベル信号が「1」である増幅された周囲音信号)と、に基づく音像が所定の仮想音源位置に定位させられる。
一方、左耳近傍マイクロホン15Lにより生成された「ヘッドホン装着者の左耳近傍にヘッドホン装置の外部から到達している音」を表す左耳近傍音信号NLは、左側能動雑音制御装置16dL(左側雑音除去信号発生手段)によって位相反転されて信号−NLに変換された後、雑音除去用左側スピーカ17Lに入力される。この結果、ヘッドホン装着者の左耳には、左耳近傍に到達している音(左耳近傍音信号NLにより表される音)が雑音除去用左側スピーカ17Lが発生する信号−NLに応じた音により消去される。
同様に、右耳近傍マイクロホン15Rにより生成された「ヘッドホン装着者の右耳近傍にヘッドホン装置の外部から到達している音」を表す右耳近傍音信号NRも、右側能動雑音制御装置16dR(右側雑音除去信号発生手段)によって位相反転されて信号−NRに変換された後、雑音除去用右側スピーカ17Rに入力される。この結果、ヘッドホン装着者の右耳には、右耳近傍に到達している音(右耳近傍音信号NRにより表される音)が雑音除去用右側スピーカ17Rが発生する信号−NRに応じた音により消去される。
従って、ヘッドホン装着者は、それぞれ仮想音源位置に定位された音楽信号、着信通話信号及び増幅された複数の指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL,14RRからの信号に基づく音を明瞭に聴取することができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係るヘッドホン装置について説明する。このヘッドホン装置は、音源定位装置16cが図8に代わる図10及び図11のフローチャートにより示した処理を行う点のみにおいて、第1実施形態に係るヘッドホン装置と相違している。従って、以下、係る相違点を中心に説明する。なお、図10において、図8に示したステップと同一ステップには同一の符号が付されている。
第3実施形態の音源定位装置16cは、所定時間の経過毎に図10のステップ300から処理を開始し、上述したステップ210に進んで各ゲイン及び係数等を決定する。次いで、音源定位装置16cはステップ310に進んで定位すべき発生源信号を指定(選択)し、その指定した信号が増幅された周囲音信号である場合、図11に示した処理を実行することにより増幅された周囲音信号の強調処理を行う。
即ち、音源定位装置16cは、図11のステップ400からステップ410に進み、上記ステップ310にて指定した「増幅された周囲音信号」に対してFFT(Fast Fourier
Transform)による周波数分析を実施し、時間領域において表現されている「増幅された周囲音信号」を周波数領域において表現する。これにより、「増幅された周囲音信号」の振幅スペクトル及び位相スペクトルが取得される。
次いで、音源定位装置16cはステップ420に進み、特定周波数(例えば、緊急車両のサイレンに含まれる特定周波数)に対する振幅スペクトルのみを増大することにより周囲音信号を修正する。そして、音源定位装置16cは、ステップ430にて逆FFTを実施し、「増幅された周囲音信号」であって特定周波数の振幅スペクトルが増大された信号(修正された周囲音信号)を時間領域における表現に戻し、ステップ495を経由して図10のステップ315へと進む。
音源定位装置16cは、ステップ315にて上記ステップ310にて指定した発生源信号(修正された周囲音信号を含む。)であってA/D変換装置161によりデジタル信号に変換されている信号をゲイン乗算器162に入力する。その後、音源定位装置16cは、上述したステップ230及びステップ240の処理を行う。これにより、ステップ310にて指定した発生源信号を、その発生源信号に対する仮想音源位置に定位する左側スピーカ用信号SL及び右側スピーカ用信号SRが生成される。
以上、説明したように、第3実施形態のヘッドホン装置によれば、周囲音信号に含まれる特定周波数の振幅スペクトルが増大せしめられ、その結果得られた信号に基づいて左側スピーカ用信号SL及び右側スピーカ用信号SRが生成せしめられる。
従って、例えば、救急車等の緊急車両や踏み切りの警報音等に含まれる特定周波数の音が強調されるので、ヘッドホン装着者は周囲状況をより確実に認識することが可能となる。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係るヘッドホン装置について説明する。このヘッドホン装置は、音源定位装置16cが図11に代わる図12のフローチャートにより示した処理を行う点のみにおいて、第3実施携形態に係るヘッドホン装置と相違している。従って、以下、係る相違点を中心に説明する。なお、図12において、図11に示したステップと同一ステップには同一の符号が付されている。
第4実施形態の音源定位装置16cは、図10に示したステップ310に進んだ場合、指定(選択)した信号が増幅された周囲音信号であれば、図12に示した処理を実行することにより、その増幅された周囲音信号の強調処理を行う。
即ち、音源定位装置16cは、図12のステップ500からステップ410に進み、上記ステップ310にて指定した「増幅された周囲音信号」に対してFFTによる周波数分析を実施し、時間領域において表現されている「増幅された周囲音信号」を周波数領域において表現する。これにより、「増幅された周囲音信号」の振幅スペクトル及び位相スペクトルが取得される。
次いで、音源定位装置16cはステップ510に進み、上述した特定周波数に対する振幅スペクトルが所定値(所定の閾値)以上であるか否かを判定する。このとき、特定周波数に対する振幅スペクトルが所定値以上であれば、音源定位装置16cはステップ510にて「Yes」と判定してステップ520に進み、指定した信号に基づく音のレベル(音量)を増大するために同指定した信号を更に増幅し、ステップ595を経由して図10のステップ315に進む。
一方、音源定位装置16cは、ステップ510にて「No」と判定した場合、直接ステップ595を経由して図10のステップ315に進む。
その後、音源定位装置16cは、ステップ315、ステップ230及びステップ240の処理を実行し、左側スピーカ用信号SL及び右側スピーカ用信号SRを生成する。以上によって、ステップ310にて指定(選択)した信号又はステップ310にて強調処理がなされた信号がその信号に対する仮想音源位置に定位される。
以上、説明したように、第4実施形態のヘッドホン装置は、周囲音信号の中から各周囲音信号の振幅スペクトルに基づいて特定の周囲音信号を抽出する、即ち、周囲音信号の中から特定周波数の振幅スペクトルが所定値より大きい値を有する周囲音信号を抽出するとともに、同抽出した周囲音信号に基づく音の大きさが大きくなるように左側スピーカ用信号SL及び前記右側スピーカ用信号SRを生成する。
これによれば、特にヘッドホン装着者に喚起を促すべき音(例えば、特定周波数の振幅スペクトルを含む緊急車両や踏み切りの警報音等)のレベル(音量、ボリューム)が大きくされるので、ヘッドホン装着者は周囲状況に関する重要な情報を音によって一層確実に認識することが可能となる。
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態に係るヘッドホン装置について説明する。このヘッドホン装置は、音源定位装置16cが図11に代わる図13のフローチャートにより示した処理を行う点のみにおいて、第3実施携形態に係るヘッドホン装置と相違している。従って、以下、係る相違点を中心に説明する。なお、図13において、図11に示したステップと同一ステップには同一の符号が付されている。
第5実施形態の音源定位装置16cは、図10に示したステップ310に進んだ場合、指定(選択)した信号が増幅された周囲音信号であれば、図13に示した処理を実行することにより、その増幅された周囲音信号の強調処理を行う。
即ち、音源定位装置16cは、図13のステップ600からステップ410に進み、上記ステップ310にて指定した「増幅された周囲音信号」に対してFFTによる周波数分析を実施し、時間領域において表現されている「増幅された周囲音信号」を周波数領域において表現する。これにより、「増幅された周囲音信号」の振幅スペクトル及び位相スペクトルが取得される。
次いで、音源定位装置16cはステップ610に進み、特定周波数に対する振幅スペクトルが所定値(所定の閾値)以上であるか否かを判定する。このとき、特定周波数に対する振幅スペクトルが所定値以上であれば、音源定位装置16cはステップ610にて「Yes」と判定してステップ620に進み、所定周波数(前記特定周波数であってもよい)以上の周波数に対する振幅スペクトルを増大し、ステップ430に進む。即ち、音源定位装置16cは、指定した信号の高周波数領域を強調する処理を施す。一方、特定周波数に対する振幅スペクトルが所定値以上でなければ、音源定位装置16cはステップ610にて「No」と判定してステップ430に直接進む。
そして、音源定位装置16cは、ステップ430にて逆FFTを実施し、「増幅された周囲音信号」又は「増幅された周囲音信号であってステップ620にて高周波数領域が強調された周囲音信号」を時間領域における表現に戻し、ステップ695を経由して図10のステップ315に進む。
その後、音源定位装置16cは、ステップ315、ステップ230及びステップ240の処理を実行し、左側スピーカ用信号SL及び右側スピーカ用信号SRを生成する。以上によって、ステップ310にて指定(選択)した信号又はステップ310にて強調処理がなされた信号がその信号に対する仮想音源位置に定位される。
以上、説明したように、第5実施形態のヘッドホン装置は、周囲音信号の中から各周囲音信号の振幅スペクトルに基づいて特定の周囲音信号を抽出する、即ち、周囲音信号の中から特定の周波数の振幅スペクトルが所定値(所定の閾値)より大きい周囲音信号を抽出する(ステップ610)とともに、同抽出した周囲音信号に基づく音の高周波数成分の振幅スペクトルを増大する(ステップ620)ことにより同抽出した周囲音信号を修正し、その修正した周囲音信号に基づいて左側スピーカ用信号SL及び右側スピーカ用信号SRを生成する。
これによれば、特にヘッドホン装着者に喚起を促すべき音(即ち、特定周波数の振幅スペクトルを含む緊急車両や踏み切りの警報音等)の音の高周波数成分が強調されるので、ヘッドホン装着者は周囲状況をより確実に認識することが可能となる。
以上、説明したように、本発明の各実施形態に係るヘッドホン装置によれば、ヘッドホン装着者の左耳の近傍に外部から到達する周囲音(即ち、左耳に聞こえる不要な雑音)が左耳近傍逆相信号により消去され、ヘッドホン装着者の右耳の近傍に外部から到達する周囲音(即ち、右耳に聞こえる不要な雑音)が右耳近傍逆相信号により消去される。更に、目的音及び周囲音は、適切な仮想音源位置に定位させられる。従って、ヘッドホン装着者である運転者は、どの方向にて警報等の周囲音が発生したかを明瞭に認識することができる。
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記ヘッドホン装置は、ヘルメットに装備されていたが、ヘルメットに装備されていない通常のヘッドホン装置であってもよい。また、周囲音を収音する指向性マイクロホンは、少なくとも2本あればよく、4本以上であってもよい。
また、増幅された周囲音信号をFFTにより周波数領域において表現しておき、その振幅スペクトルの形状(包絡線)と予めデータベースに蓄積しておいた形状とを比較し、両者が近い場合に、その増幅された周囲音信号を上記第3乃至第5実施形態にて示した強調処理を行う周囲音信号として抽出してもよい。また、音源位置決定装置16bは、指向性マイクロホン14FL,14FR,14RL,14RRから得られた周囲音信号を分析し、その分析に基づいてこれらのマイクロホンからの信号に基づく音像の定位位置を決定するように構成されてもよい。
本発明の第1実施形態に係るヘッドホン装置の概略構成図である。 図1に示したヘッドホン装置の拡大概略構成図である。 図1及び図2に示したヘッドホン装置のブロック図である。 図3に示した音源定位装置のブロック図である。 図1乃至図3に示したヘッドホン装置による音像定位方法を説明するための図である。 図1乃至図3に示したヘッドホン装置による音像定位方法を説明するための図である。 図2及び図3に示した音源位置決定装置が行う処理手順を示したフローチャートである。 図2及び図3に示した音源定位装置が行う処理手順を示したフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係るヘッドホン装置のブロック図である。 本発明の第3乃至第5実施形態に係るヘッドホン装置の音源定位装置が行う処理手順を示したフローチャートである。 本発明の第3実施形態に係るヘッドホン装置の音源定位装置が強調処理を行う際に実行する処理手順を示したフローチャートである。 本発明の第4実施形態に係るヘッドホン装置の音源定位装置が強調処理を行う際に実行する処理手順を示したフローチャートである。 本発明の第5実施形態に係るヘッドホン装置の音源定位装置が強調処理を行う際に実行する処理手順を示したフローチャートである。
符号の説明
10…運転者用ヘルメット、11…運転者用ヘッドホン、11R…右側スピーカ(目的音用右側スピーカ)、11L…左側スピーカ(目的音用左側スピーカ)、12…音楽プレーヤ、13…携帯電話、14FL,14FR,14RL,14RR…指向性マイクロホン、15R…右耳近傍マイクロホン、15L…左耳近傍マイクロホン、16…制御ユニット、16a…レベル検出回路、16b…音源位置決定装置、16c…音源定位装置、16dL…左側能動雑音制御装置、16dR…右側能動雑音制御装置、16eR…右側遅延音量コントローラ、16eL…左側遅延音量コントローラ、16f〜16i…加算器、17R…雑音除去用右側スピーカ、17L…雑音除去用左側スピーカ、161…AD変換装置、162…先行音ゲイン乗算器、163…マルチプレクサ、164…ディレイライン、165…バンドパスフィルタ、166…後行音ゲイン乗算器、167…FIRフィルタ、167L…左耳用FIRフィルタ、167R…右耳用FIRフィルタ、168…加算器、168R…右耳用加算器、168L…左耳用加算器、169…D/Aコンバータ。

Claims (5)

  1. 入力信号に応答して音を発生する左側スピーカ及び入力信号に応答して音を発生する右側スピーカを有するヘッドホンと、
    所定の目的音を生成するための音源信号を発生する音源と、
    複数の指向性マイクロホンを有し同複数の指向性マイクロホンにより前記ヘッドホンの周囲にて発生した周囲音を同ヘッドホンに対する同周囲音の発生方向を特定することができるように収音し同収音した音を表す周囲音信号を生成する周囲音信号生成手段と、
    前記音源信号及び前記周囲音信号に基づいて、前記音源信号に基づく音像を所定の仮想音源位置に定位させるとともに前記周囲音信号に基づく音像を前記周囲音の発生方向の所定位置に定位させる左側スピーカ用信号及び右側スピーカ用信号を生成し、同左側スピーカ用信号及び同右側スピーカ用信号を前記左側スピーカ及び前記右側スピーカにそれぞれ出力する音源定位手段と、
    前記左側スピーカの近傍に配置され前記ヘッドホンの外部から同左側スピーカ近傍に到達した音を収音することにより左耳近傍の音を表す左耳近傍音信号を生成する左耳近傍マイクロホンと、
    前記右側スピーカの近傍に配置され前記ヘッドホンの外部から同右側スピーカ近傍に到達した音を収音することにより右耳近傍の音を表す右耳近傍音信号を生成する右耳近傍マイクロホンと、
    前記左耳近傍音信号の逆相信号である左耳近傍音逆相信号を生成するとともに同生成した左耳近傍音逆相信号を前記左側スピーカ用信号に重畳させ、前記右耳近傍音信号の逆相信号である右耳近傍音逆相信号を生成するとともに同生成した右耳近傍音逆相信号を前記右側スピーカ用信号に重畳させるノイズ低減手段と、
    を備えたヘッドホン装置。
  2. 入力信号に応答して音を発生する目的音用左側スピーカ及び入力信号に応答して音を発生する目的音用右側スピーカを有するヘッドホンと、
    所定の目的音を生成するための音源信号を発生する音源と、
    複数の指向性マイクロホンを有し同複数の指向性マイクロホンにより前記ヘッドホンの周囲にて発生した周囲音を同ヘッドホンに対する同周囲音の発生方向を特定することができるように収音し同収音した音を表す周囲音信号を生成する周囲音信号生成手段と、
    前記音源信号及び前記周囲音信号に基づいて、前記音源信号に基づく音像を所定の仮想音源位置に定位させるとともに前記周囲音信号に基づく音像を前記周囲音の発生方向の所定位置に定位させる左側スピーカ用信号及び右側スピーカ用信号を生成し、同左側スピーカ用信号及び同右側スピーカ用信号を前記目的音用左側スピーカ及び前記目的音用右側スピーカにそれぞれ出力する音源定位手段と、
    前記目的音用左側スピーカの近傍に配置されるとともに入力信号に応答して音を発生する雑音除去用左側スピーカと、
    前記目的音用左側スピーカの近傍に配置され前記ヘッドホンの外部から同目的音用左側スピーカ近傍に到達した音を収音することにより左耳近傍音信号を生成する左耳近傍マイクロホンと、
    前記左耳近傍音信号の逆相信号である左耳近傍音逆相信号を生成し同左耳近傍音逆相信号を前記雑音除去用左側スピーカに出力する左側雑音除去信号発生手段と、
    前記目的音用右側スピーカの近傍に配置されるとともに入力信号に応答して音を発生する雑音除去用右側スピーカと、
    前記目的音用右側スピーカの近傍に配置され前記ヘッドホンの外部から同目的音用右側スピーカ近傍に到達した音を収音することにより右耳近傍音信号を生成する右耳近傍マイクロホンと、
    前記右耳近傍音信号の逆相信号である右耳近傍音逆相信号を生成し同右耳近傍音逆相信号を前記雑音除去用右側スピーカに出力する右側雑音除去信号発生手段と、
    を備えたヘッドホン装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のヘッドホン装置において、
    前記音源定位手段は、
    前記周囲音信号に含まれる特定周波数の振幅スペクトルを増大することにより同周囲音信号を修正し、同修正した周囲音信号に基づいて前記左側スピーカ用信号及び前記右側スピーカ用信号を生成するように構成されたヘッドホン装置。
  4. 請求項1又は請求項2に記載のヘッドホン装置において、
    前記音源定位手段は、
    前記周囲音信号の中から各周囲音信号の振幅スペクトルに基づいて特定の周囲音信号を抽出するとともに、同抽出した周囲音信号に基づく音の大きさが大きくなるように前記左側スピーカ用信号及び前記右側スピーカ用信号を生成するヘッドホン装置。
  5. 請求項1又は請求項2に記載のヘッドホン装置において、
    前記音源定位手段は、
    前記周囲音信号の中から各周囲音信号の振幅スペクトルに基づいて特定の周囲音信号を抽出するとともに、同抽出した周囲音信号に基づく音の高周波数成分の振幅スペクトルを増大することにより同周囲音信号を修正し、同修正した周囲音信号に基づいて前記左側スピーカ用信号及び前記右側スピーカ用信号を生成するように構成されたヘッドホン装置。
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