JP2007028804A - 誘導電動機制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】駆動信号の波形形状に係わらず、インバータ回路が発生する交流信号に高調波成分を注入することが可能な誘導電動機制御装置を提供すること。
【解決手段】、コントローラ50は、インバータ回路20を構成する各スイッチング素子21A,21B,22A,22B,23A,23BをPWM信号によって駆動する。このPWM信号のキャリア周波数は、コントローラ50によって、回転磁界を発生させるためにモータ30の各固定子巻線に与える交流信号の励磁周波数に応じて制御される。これにより、交流信号に、所望の周波数の高調波成分を注入することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、誘導電動機制御装置に関するものである。
回転速度検出器を用いることなく、誘導電動機の回転速度を精度良く算出することが可能な回転速度推定手段を備えた誘導電動機制御装置が、例えば、特許文献1に記載されている。この特許文献1の誘導電動機制御装置では、周波数を変えながら、指定する周波数の高調波電圧を生成しつつ、その周波数に対応する高調波電流を検出する。この高調波電流が最小になるとき、指定する周波数が誘導電動機の回転周波数となるので、その指定周波数から誘導電動機の回転周波数を推定できる。
特許文献1では、指定する周波数の高調波電圧成分を発生すべく、キャリア周波数正弦波変調を利用している。具体的には、まず、以下の数式1に従って、キャリア周波数の変調を行う。なお、数式1において、Aは正弦波変調の幅、fS0は平均キャリア周波数、fΔは、正弦波変調の周波数である。
(数1) f(t)=fS0+Acos2πfΔ
この場合、誘導電動機の入力高調波成分は次の数式2のようになる。但し、f1は誘導電動機の入力基本周波数である。
(数2) vf±nfS0±μfΔ
基本波の付近の高調波の分布は、v=1、n=0、μ=1であるため、次の数式3のようになる。
(数3) f−fΔ
従って、正弦波変調周波数fΔの選択によって基本波の付近で任意に指定する周波数(f1−fΔ)の高調波成分を発生させることができる。
特開平11−41999号公報
しかしながら、特許文献1のように、キャリア周波数正弦波変調を利用して、高調波電圧成分を発生させる場合、その適用対象は、インバータ回路の各スイッチング素子に正弦波形の駆動信号を与えるものに限られるとの問題がある。換言すれば、インバータ回路の各スイッチング素子を矩形波形の駆動信号によって駆動しようとした場合、上記技術によって、高調波電圧成分を発生させることができない。
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、駆動信号の波形形状に係わらず、インバータ回路が発生する交流信号に高調波成分を注入することが可能な誘導電動機制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の誘導電動機制御装置は、
複数相の固定子巻線に、インバータ回路が発生する交流信号を通電して固定子を励磁することにより、誘導電動機を回転駆動するものであって、
インバータ回路を構成する各スイッチング素子に、駆動信号としてのPWM信号を与えるとともに、当該PWM信号のキャリア周波数を上記交流信号の励磁周波数に応じて制御する制御手段を備え、
PWM信号による各スイッチング素子の駆動によって、交流信号に高調波を注入することを特徴とする。
上述したように、インバータ回路を構成する各スイッチング素子にPWM信号を与えて駆動する際に、そのPWM信号のキャリア周波数を、インバータ回路が発生する交流信号の励磁周波数に応じて制御することにより、その交流信号に、所望の周波数の高調波成分を注入することができる。
請求項2に記載したように、制御手段は、インバータ回路において、複数相の固定子巻線に通電する交流信号をそれぞれ生成する各スイッチング素子に、位相及び周波数が同じPWM信号を与えることが好ましい。これにより、複数相の固定子巻線に通電する各々の交流信号に同じ周波数の高調波成分を注入することができる。
請求項3に記載したように、制御手段は、交流信号の1周期中において、PWM信号のキャリア周波数及びデューティ比を一定に保つようにすると、狙いとする周波数の高調波成分以外の高調波成分の注入を防止することができる。
請求項4に記載したように、制御手段は、PWM信号のキャリア周波数を、交流信号の励磁周波数の3N±1倍(Nは整数)に制御することが好ましい。インバータ回路の各スイッチング素子をPWM信号によって駆動すると、公知のAM変調と同様に、交流信号は(励磁周波数)、(励磁周波数)+(キャリア周波数)、(励磁周波数)−(キャリア周波数)の3つの周波数成分を含むことになる。ここで、PWM信号のキャリア周波数を、交流信号の励磁周波数の3N±1倍(Nは整数)に制御すれば、(励磁周波数)+(キャリア周波数)と(励磁周波数)−(キャリア周波数)との一方の周波数成分が、複数相の交流信号によって相互に打ち消され、他方の周波数成分のみが残る。この結果、交流信号に注入される高調波成分を、単一の周波数成分に限定することが可能となる。
請求項5に記載の誘導電動機制御装置は、コンバータ回路によって発生される直流電圧を電源として、インバータ回路が発生する交流信号を複数相の固定子巻線に通電して固定子を励磁することにより、誘導電動機を回転駆動するものであって、
コンバータ回路は、スイッチング素子と、リアクトルと、平滑コンデンサとからなり、スイッチング素子をスイッチングさせて、リアクトルを介して平滑コンデンサを充電することにより、所望の直流電圧を発生するものであり、
コンバータ回路のスイッチング素子に、駆動信号としてパルス信号を与えるとともに、当該パルス信号によるスイッチング周波数を交流信号の励磁周波数に応じて制御する制御手段を備え、
パルス信号によるスイッチング素子の駆動によって、上記直流電圧にリプル電圧を発生させ、もって交流信号に高調波を注入することを特徴とする。
上述したように、直流電圧を発生するコンバータ回路がスイッチング素子を含む場合、そのスイッチング素子をパルス信号によってスイッチングさせ、そのスイッチング周波数を交流信号の励磁周波数に応じて制御することにより、当該交流信号に所望の高調波成分を注入することが可能になる。
請求項6及び請求項7の作用効果に関しては、上述した請求項3及び請求項4における「PWM信号のキャリア周波数」を「パルス信号のスイッチング周波数」と読み替えた場合とほぼ同様であるため、説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係わる誘導電動機制御装置について説明する。図1は、モータを含む誘導電動機制御装置の全体構成を示すブロック図である。
図1において、モータ30は、固定子鉄心及び3相(U相、V相、W相)の固定子巻線からなる固定子と、積層鉄心の溝にアルミ合金を鋳込んだかご型回転子とからなる誘導電動機である。
インバータ回路20は、公知のように複数のスイッチング素子(パワートランジスタ、GTOサイリスタ、IGBT,サイリスタ等)21A,21B,22A,22B,23A,23Bを有し、当該スイッチング素子がオンオフされることによって、120°位相のずれた交流信号であるU相,V相,W相電圧を生成し、モータ30の各相の固定子巻線に供給する。これにより、モータ30の各相の固定子巻線に電流が流れて回転磁界が形成され、この回転磁界によってモータ30のかご型回転子が回転する。
コンバータ回路10は、リアクトル11、スイッチング素子12A,12B、及び平滑コンデンサ15を有する。本実施形態においては、モータ30が車両に搭載された機器(電動過給装置等)のアクチュエータとして用いられるので、コンバータ回路10は、車載バッテリ1から供給される直流電圧を昇圧もしくは降圧して、目標とする直流電圧を平滑コンデンサ15において発生する。
コンバータ回路10の昇圧動作及び降圧動作について、簡単に説明する。まず、バッテリ電圧を昇圧する際には、図1において上側に配置された上側スイッチング素子12Aと、下側に配置された下側スイッチング素子12Bとをそれぞれ、パルス信号によって交互にオンオフする。この場合、下側スイッチング素子12Bをオン(上側スイッチング素子12Aはオフ)しているとき、オフしているときと比較して、リアクタ11に大きな電流が流れて、大きな磁気エネルギーが蓄えられる。従って、下側スイッチング素子12Bがオンからオフ(上側スイッチング素子12Aはオフからオン)に変化すると、そのリアクタ11に蓄えられた磁気エネルギーが電気エネルギーとして放電されて、平滑コンデンサ15の充電電圧は、バッテリ電圧よりも高い電圧まで昇圧される。
一方、バッテリ電圧を降圧する際には、下側スイッチング素子12Bをオフした状態で、上側スイッチング素子12Aをパルス信号によってオンオフする。これにより、平滑コンデンサ15の充電電圧は、バッテリ電圧よりも低い電圧に降圧される。
なお、コンバータ回路10における目標直流電圧は、モータ30の回転数に応じて、コントローラ50が決定する。
コントローラ50は、例えば、公知のようにCPU、ROM及びRAM等を備えたマイクロコンピュータからなり、上述したように、コンバータ回路の各スイッチング素子12A,12Bを制御するための制御信号(パルス信号)に加え、インバータ回路20の各スイッチング素子21A,21B,22A,22B,23A,23Bに対して、スイッチング制御信号(PWM制御信号)を出力する。
ここで、コントローラ50から、インバータ回路20の各スイッチング素子21A,21B,22A,22B,23A,23Bに対して出力されるPWM制御信号の一例について、図2(a),(b)に基づいて説明する。なお、図2(a)は、モータ30における、固定子巻線の結線状態を模擬的に示すものであり、図2(b)は、各スイッチング素子21A,21B,22A,22B,23A,23Bに出力されるPWM制御信号、及びそれによって生じるU相電圧を示すものである。
図2(b)に示す例では、U相、V相、W相に対応する上側スイッチング素子21A,22A,23Aには、それぞれ、120度ずつ位相のずれたPWM制御信号が与えられる。それらのPWM制御信号は、PWM信号を出力する出力期間とPWM信号の出力を停止する停止期間とを交互に繰り返すものであり、その出力期間と停止期間とによって、各相の励磁信号の1周期が規定される。なお、PWM制御信号において、PWM信号の出力期間と停止期間は、ほぼ等しく設定されている。
一方、U相、V相、W相に対応する下側スイッチング素子21B,22B,23Bには、それぞれの上側スイッチング素子21A,22A,23Aと180°位相がずれたPWM制御信号が与えられる。
このようなPWM制御信号を、上側スイッチング素子21A,22A,23A及び下側スイッチング素子21B,22B,23Bに与えることにより、図2(b)において、代表例としてのU相電圧によって示されるように、正負に変化する交流信号である相電圧を発生することができる。
このU相電圧波形の生成について、より詳細に説明する。U相に対応した上側スイッチング素子21AのPWM信号出力期間においては、励磁電流がU相からV相及び/又はW相に向かって流れる。この向きに励磁電流が流れる場合の電圧を正の電圧とする。そして、U相からV相及びW相の両方に励磁電流が流れる場合、U相の固定子巻線に印加される電圧が最も高くなり(最大電圧の印加)、U相とV相及びW相の一方とから、V相及びW相の他方へと電流が流れる場合に、U相の固定子巻線には、最大電圧の約半分の電圧が印加される。
逆に、V相及び/又はW相からU相に向かって励磁電流が流れる場合の電圧を負の電圧とする。この場合も、V相及びW相の両方からU相に励磁電流が流れる場合と、V相及びW相の一方から、U相とV相及びW相の他方へと励磁電流が流れる場合とで、U相に印加される電圧が変化する。この結果、図2(b)に示すような、全体として正弦波に近似したU相電圧を発生させることができる。
ここで、本実施形態では、上述したように、インバータ回路20を構成する各スイッチング素子21A,21B,22A,22B,23A,23BをPWM信号によって駆動している。このPWM信号のキャリア周波数は、コントローラ50によって、回転磁界を発生させるために各固定子巻線に与える交流信号の励磁周波数に応じて制御される。これにより、交流信号に、所望の周波数の高調波成分を注入することができる。
特に、本実施形態では、コントローラ50は、インバータ回路20において、U相、V相、W相の各相の固定子巻線に対する交流信号を生成する各スイッチング素子21A,21B,22A,22B,23A,23Bに、位相及び周波数が同一のPWM信号を与えて駆動している。これにより、U相、V相、W相の各相の固定子巻線に与える各々の交流信号に同じ周波数の高調波成分を注入することができる。
さらに、コントローラ50は、交流信号の1周期中において、PWM信号のキャリア周波数及びデューティ比を一定に保つようにしている。その結果、狙いとする周波数の高調波成分以外の高調波成分の注入を防止することができる。U相、V相、W相の各相の固定子巻線に与えられる交流信号の励磁周波数が変化する場合には、U相、V相、W相のいずれかを基準として、PWM制御信号におけるPWM信号のキャリア周波数を、その励磁周波数の変化に応じて変化させ、その後、他の相のPWM制御信号におけるPWM信号のキャリア周波数も同様に変化させる。
コントローラ50は、PWM信号のキャリア周波数を、各固定子巻線に与える交流信号の励磁周波数に応じて制御する場合、PWM信号のキャリア周波数が交流信号の励磁周波数の3N±1倍(Nは整数)の関係を維持するように、PWM信号のキャリア周波数を制御する。インバータ回路20の各スイッチング素子21A,21B,22A,22B,23A,23BをPWM信号によって駆動すると、公知のAM変調と同様に、励磁信号である交流信号は、(励磁周波数)、(励磁周波数)+(キャリア周波数)、(励磁周波数)−(キャリア周波数)の3つの周波数成分を含むことになる。例えば、U相電圧は次の数式4によって表される。
(数4) V=(Vcm+Vpmcosωt)cosωt
=Vcmcosωt+Vpm/2{cos(ω+ω)t+cos(ω−ω)t}
ただし、ωは界磁角周波数、ωはPWM信号のキャリア周波数、Vcmは相電圧の振幅、VpmはPWM信号の振幅である。
同様に、V相とW相の相電圧は、以下の数式5及び数式6によって表される。
(数5) V=Vcmcos(ωt+2π/3)
+Vpm/2[cos{(ω+ω)t+2π/3}+cos{(ω−ω)t−2π/3}
(数6) V=Vcmcos(ωt−2π/3)
+Vpm/2[cos{(ω+ω)t−2π/3}+cos{(ω−ω)t+2π/3}
ここで、例えば、ω=29ωとして、第30次(上側波帯)と第28次(下側波帯)の調波成分について考察する。第30次では、U相、V相、W相の各相によって相殺されるので、回転磁界及び高調波成分は発生しないが、第28次では、U相、V相、W相の各相によって回転磁界が発生するので、高調波成分が発生する。
以上のように、PWM信号のキャリア周波数を、交流信号の励磁周波数の3N±1倍(Nは整数)に制御すれば、(励磁周波数)+(キャリア周波数)と(励磁周波数)−(キャリア周波数)との一方の周波数成分が、U相、V相、W相の各相によって相互に打ち消され、他方の周波数成分のみが残る。この結果、交流信号に注入される高調波成分を、単一の周波数成分に限定することが可能となる。
本実施形態では、U相、V相、W相の各相に与える交流信号の励磁周波数を可変してモータ30の回転速度を制御する。そのため、モータ30の実回転速度を検出して、コントローラ50に出力する回転速度検出装置40を備えている。これにより、コントローラ50は、モータ30の実回転速度が目標回転速度に一致するように、フィードバック制御を行うことが可能になる。また、このモータ30の回転速度は、コンバータ回路10における目標直流電圧の決定にも用いられる。
以下、回転速度検出装置40について説明する。本実施形態における回転速度検出装置40は、インバータ回路20によって注入された高調波成分によって発生する回転子溝周波数を用いてモータ30の回転速度を検出する。そこで、まず、回転子溝周波数及び回転子溝周波数を用いた回転速度の検出原理について、図3及び図4を用いて簡単に説明する。なお、図3は、モータ30の断面を模式的に示す模式図であり、図4は、回転子の周囲の磁束密度Bを示すグラフである。
上述したように、モータ30は、積層鉄心33の溝にアルミ合金32を鋳込んだかご型回転子31を備えているため、その回転子31の透磁率は、鉄心部分とアルミ合金部分とで異なる。このため、固定子巻線34により回転磁界が形成されるとき、その空隙部の磁束は、アルミ合金が鋳込まれた溝の数に応じた変調を受ける。この様子を示したのが、図4のグラフである。図4に示すように、上述した変調に起因して回転子溝高調波成分が生じ、空隙部の磁束密度Bの基本波成分に、この回転子溝高調波成分が重畳される。また、本実施形態のように、交流信号に高調波を注入した場合、励磁周波数と同様に、その高調波の周波数によっても回転子溝高調波成分fsh_high1が発生する。
そして、上述した回転子溝高調波成分による磁束の変調の影響は、固定子巻線34の各相電圧に現れる。より詳細には、モータ30の各相電圧は、インバータ回路20が発生する交流信号の周波数(励磁周波数)成分、交流信号に注入された高調波成分、通電方式に起因する高調波成分、磁束飽和に起因した高調波(特に3次高調波)成分、さらに、回転子溝高調波成分が含まれる。
この内、交流信号に注入された高調波成分による回転子溝周波数である回転子溝高調波成分fsh_high1を検出することにより、回転子31の回転速度を求めることができる。すなわち、交流信号の励磁周波数fに同期して回転子31が回転していると仮定した場合における、高調波成分によって発生する回転子溝周波数fsh_high0と、実際に検出した回転子溝周波数fsh_high1との差からすべり周波数fslが求まる。すると、励磁周波数fからすべり周波数fslを減算することによって、回転子31の回転周波数fを算出することができる。
回転速度検出装置40は、電圧加算器41を備える。この電圧加算器41は、U相,V相,W相の各相の入力電圧を検出するとともに、その検出した各相電圧を加算するものである。このように各相電圧を加算することにより、上述した励磁周波数成分及び3次高調波成分等が相殺されて、それらの周波数成分が低減される。
電圧加算器41から出力される加算電圧信号は、アナログ信号である。A/D変換器42は、所定のサンプリング周期ごとに、加算電圧信号をサンプリングして、アナログ値からデジタル値に変換する。加算電圧信号のデジタルデータは、A/D変換器42からデジタル信号処理部43に入力される。
デジタル信号処理部43は、バンドパスフィルタとしてのフーリエ変換部(FFT)44、回転子溝周波数検出部45、及び回転速度算出部46から構成される。
フーリエ変換部44は、A/D変換器42から出力される加算電圧信号のデジタルデータを保存し、そのデータ数が所定数となったときに、フーリエ変換処理を行う。これにより、所定の周波数分解能で、各周波数成分ごとの強度を示す周波数スペクトルデータが得られる。
図5は、フーリエ変換部44が算出する周波数スペクトルデータの一例を示すものである。図5に示すように、加算電圧信号には、励磁周波数成分f、3次高調波成分fの他、励磁周波数成分による回転子溝周波数fsh1及び注入された高調波成分による回転子溝周波数fsh_high1などが含まれている。
バンドパスフィルタとしてのフーリエ変換部44は、これらの各周波数成分の内、注入された高調波成分による回転子溝周波数fsh_high1が含まれるとみなされる周波数帯域を設定し、この周波数帯域に含まれる各周波数成分の強度データを回転子溝周波数検出部45に出力する。
ここで、フーリエ変換部44における周波数帯域の設定方法について説明する。フーリエ変換部44は、各固定子巻線34に与えられる交流信号の励磁周波数fに同期して回転子31が回転していると仮定した場合における、注入した高調波成分によって発生する回転子溝周波数fsh_high0を基準として、実際の回転子溝周波数fsh_high1を抽出するための周波数帯域を設定する。そのため、フーリエ変換部44は、コントローラ50から、高調波成分に関する情報を入力し、その周波数に基づいて、周波数帯域の設定を行う。
従って、コントローラ50がモータ30の回転速度を可変制御するため、交流信号の励磁周波数fを変化させた場合には、その交流信号に注入される高調波成分も変化するので、フーリエ変換部44における、実際の回転子溝周波数fsh_high1を抽出するための周波数帯域も変化することになる。
このフーリエ変換部44が、このようにして、注入された高調波成分による回転子溝周波数fsh_high1を抽出する場合、図5に示すように、励磁周波数の高調波成分(f等)とは周波数帯が大きく離れることになるので、回転子溝周波数fsh_high1を抽出するための周波数帯域を広く設定できる。この結果、モータ30のすべりが大きくなっても、回転子溝周波数fsh_high1を確実に抽出することができる。
回転子溝周波数検出部45は、フーリエ変換部44から出力された、上記周波数帯域に含まれる各周波数成分の強度データに基づいて、高調波成分による回転子溝周波数fsh_high1を検出する。具体的には、最も強いピーク強度を持つ周波数成分の周波数を、回転子溝周波数fsh_high1として検出する。
回転子溝周波数検出部45によって検出された回転子溝周波数fsh_high1は、回転速度算出部46に与えられ、その回転子溝周波数fsh_high1に基づいて、回転子の回転速度が算出され、コントローラ50に出力される。
以上、説明した本実施形態によれば、交流信号の励磁周波数と、PWM信号のキャリア周波数とが所定の関係を維持するように、PWM信号のキャリア周波数を制御することにより、交流信号に高調波成分を注入している。従って、その交流信号に、所望の周波数の高調波成分を注入することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係わる誘導電動機制御装置について説明する。本実施形態に係わる誘導電動機制御装置は、上述した第1実施形態に係わる誘導電動機制御装置と同様に構成されるため、構成に関する説明は省略する。
上述した第1実施形態では、各相の固定子巻線に与えられる交流信号を生成するインバータ回路20の各スイッチング素子がPWM信号によって駆動されることにより、交流信号に所望の周波数の高調波成分を注入した。
しかしながら、コンバータ回路10の各スイッチング素子12A,12Bをパルス信号によってスイッチングすることによってもリプル電圧が発生し、結果として、コンバータ回路10が発生する直流電圧に高調波成分が注入される。従って、コンバータ回路10において注入される高調波成分を用いて、その高調波成分による回転子溝周波数を検出することも可能である。
この場合、コンバータ回路10の各スイッチング素子12A,12Bのスイッチング制御信号は、上述した第1実施形態におけるPWM制御信号と同様にして、その周波数等が設定される。また、交流信号の1周期中において、スイッチング周波数及びデューティ比が一定に保たれることも、第1実施形態におけるPWM制御信号と同様である。
なお、第2実施形態では、インバータ回路20において、高調波成分を注入するために各スイッチング素子をPWM駆動しても良いし、しなくても良い。
第1実施形態に係わる、モータを含む誘導電動機制御装置の全体構成を示すブロック図である。 (a)は、モータ30における、固定子巻線の結線状態を模擬的に示す模式図であり、(b)は、インバータ回路20の各スイッチング素子21A,21B,22A,22B,23A,23Bに出力されるPWM制御信号、及びそれによって生じるU相電圧を示す波形図である。 モータ30の断面を模式的に示す模式図である。 固定子巻線によって回転磁界が形成された場合の、回転子31の周囲の磁束密度Bの分布を示すグラフである。 フーリエ変換部44が算出する周波数スペクトルデータの一例を示すグラフである。
符号の説明
10 コンバータ回路
20 インバータ回路
30 モータ
40 回転速度検出装置
50 コントローラ

Claims (7)

  1. 複数相の固定子巻線に、インバータ回路が発生する交流信号を通電して固定子を励磁することにより、誘導電動機を回転駆動する誘導電動機制御装置において、
    前記インバータ回路を構成する各スイッチング素子に、駆動信号としてのPWM信号を与えるとともに、当該PWM信号のキャリア周波数を前記交流信号の励磁周波数に応じて制御する制御手段を備え、
    前記PWM信号による前記各スイッチング素子の駆動によって、前記交流信号に高調波を注入することを特徴とする誘導電動機制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記インバータ回路において、前記複数相の固定子巻線に通電する交流信号をそれぞれ生成する各スイッチング素子に、位相及び周波数が同じPWM信号を与えることを特徴とする請求項1に記載の誘導電動機制御装置。
  3. 前記制御手段は、前記交流信号の1周期中において、前記PWM信号のキャリア周波数及びデューティ比を一定に保つことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の誘導電動機制御装置。
  4. 前記制御手段は、前記PWM信号のキャリア周波数を、前記交流信号の励磁周波数の3N±1倍(Nは整数)に制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の誘導電動機制御装置。
  5. コンバータ回路によって発生される直流電圧を電源として、インバータ回路が発生する交流信号を複数相の固定子巻線に通電して固定子を励磁することにより、誘導電動機を回転駆動する誘導電動機制御装置において、
    前記コンバータ回路は、スイッチング素子と、リアクトルと、平滑コンデンサとからなり、前記スイッチング素子をスイッチングさせて、前記リアクトルを介して前記平滑コンデンサを充電することにより、所望の直流電圧を発生するものであり、
    前記コンバータ回路のスイッチング素子に、駆動信号としてパルス信号を与えるとともに、当該パルス信号によるスイッチング周波数を前記交流信号の励磁周波数に応じて制御する制御手段を備え、
    前記パルス信号による前記スイッチング素子の駆動によって、前記直流電圧にリプル電圧を発生させ、もって前記交流信号に高調波を注入することを特徴とする誘導電動機制御装置。
  6. 前記制御手段は、前記交流信号の1周期中において、前記パルス信号のスイッチング周波数及びデューティ比を一定に保つことを特徴とする請求項5に記載の誘導電動機制御装置。
  7. 前記制御手段は、前記パルス信号のスイッチング周波数を、前記交流信号の励磁周波数の3N±1倍(Nは整数)に制御することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の誘導電動機制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110915131A (zh) * 2017-07-19 2020-03-24 三菱电机株式会社 马达驱动装置以及使用马达驱动装置的热泵装置及制冷空调装置

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