JP2007028739A - 負荷需要変化に対応する適応的発電機起動停止計画作成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 前日にその翌日の負荷需要を予測して発電計画を作成する発電機起動停止計画作成方法において、当日における実需要が予測値と差異が生じた場合に、予め決めた学習日のうちから当日における実需要に需要パターンが類似する類似日を選択し、選択した類似日の需要に基づいてその後の負荷需要予測を修正し、新しい予測値に基づいて発電機起動停止計画を修正する。
【選択図】 図1
Description
また、電力会社は系統運用において同時同量供給の義務があり、PPSの不足電力は同時同量運転を困難にする要因となる。
従来のUCPに関する研究は、負荷需要が予測通りに実現されることを前提として、種々の負荷需要に対する最適な発電機起動停止スケジュールを生成するための解法を提示するものが多い。
実際の負荷需要は種々の要因で時々刻々変化することから、正確な負荷需要を例えば前日に予め把握することは困難である。このため、たとえば非特許文献1では、ニューラルネットワーク(NN:Neural Network)を利用し現時点における実績値に基づいて数時間後の負荷需要を正確に予測する研究が開示されている。
しかし、これらの研究には、負荷需要が予測からずれたときの対応方法について示唆するものがなかった。
優先リスト法による解は基本的に発電コストの安い発電機から起動させているので、コスト高な発電機は停止状態でコスト安な発電機は起動状態という大まかな枠組が決定される。ヒューリスティック手法は、反復的探索を行うため、演算対象の個数が増えると幾何級数的に演算時間が増大する性質を有する。
本開示発明は、優先リスト法を用いてより高速にかつ簡便に複数個の初期解を求め、数に制限のある初期解に幾つかのヒューリスティック手法を適用するので、演算負荷が軽減し演算時間が大幅に短縮できる。
電力貯蔵装置を考慮するためのアルゴリズムは、負荷のボトム付近で運転している発電機の余剰電力を制約を考慮しながら電力貯蔵装置に可能な限り充電し、充電終了時に電力貯蔵装置の下限電力量に達しないと予測される場合は、さらに停止している発電機も優先リストの順に起動するように計画を修正するものである。また、負荷ピーク時間帯において積極的に電力貯蔵装置から電力を供給し、ピーク時間帯で運転するコスト高な発電機を優先リストと逆の順に停止させて、総コストの削減をする。
開示された装置は、深夜に余剰の火力発電機で揚水上池の水位を持ち上げて、負荷の重い昼間の時間帯に発電して系統電力を補充する揚水発電機に適用するものである。したがって、複数の発電機が接続されている系統において経済的運用を実現するためにいずれの発電機をいつ発停するのがよいかという問題の解決に利用できるものではない。
また、不足電力が生じれば、即応性のあるガスタービンや小型発電機を用いて対処してきたが、これらの発電機は燃料消費率が悪いので、効率的な運用を達成することが難しい。
このため、負荷需要が予測に反して変化する場合を考慮した発電機起動停止計画が必要となる。
また、類似日は、同時間帯における学習日の負荷実績値と当日の負荷実績値もしくは負荷予測値との差、負荷実績値もしくは負荷予測値の変動の差、および温度実績値もしくは温度予測値の差がそれぞれ小さいことを条件として判定することが好ましい。
また、ニューラルネットワークを用いて数時間先の電力需要を推定することにより、次の時間帯における負荷予測値および温度予測値を順次求めるようにしても良い。
図1は本実施例に係る発電機起動停止計画作成方法のフローチャート、図2は数時間先予測のための類似日選択手順を表わすフローチャート、図3は負荷需要予測を行うニューラルネットワークのモデルを表わす線図、図4は発電機起動停止スケジュール決定の手順を表わすフローチャート、図5は優先リストの例を示す表、図6は本実施例に使用する遺伝的アルゴリズムにおける知的突然変異を説明する図面、図7は本実施例における優先起動オペレータを説明する図面、図8はGAパラメータを例示する表である。
(S1)事前予測
発電計画を必要とする日の前日に翌日の負荷需要を予測する。なお、予測日は前日に限らず任意の日であってもよく、代表的に前日を選択しただけである。
(S2)GAによるUCP
次に、翌日負荷需要予測に対して遺伝的アルゴリズム(GA)を用いて発電機起動停止計画問題(UCP)を解く。
(S3)気温の急変判定
気温が予測値と大きく異なるか否かを判定し、変化が少なければ手順は終了し、差異が大きく実負荷と予測負荷需要が一致しなければS4に進む。
(S4)予測修正
気象予測誤差および負荷需要予測誤差が発生した時間帯をn時とすると、その後のその日の時間帯n+1時〜24時における負荷需要を予測する。
(S5)GAによるUCP
1時〜n時の経過した時間帯における発電機起動停止スケジュールを初期値として代入し、S4で得られた新しい負荷需要予測値に対して再度GAを用いてUCPを解いて手順は終了する。
したがって、負荷需要予測に用いるNNの学習を行うため、まず、適当な過去の日々から類似日を選択する必要がある。なお、本実施例では、選択範囲である学習日を、予測開始日前日の過去45日と予測開始日の1年前の日の前後45日とした。
D=((ω1ΔLt)2+(ω2ΔLs)2+(ω3ΔTt)2)1/2 (1)
ただし、
ΔLt=Lnt−Lpt (2)
ΔLs=(Lnt−Lnt−1)−(Lpt−Lpt−1) (3)
ΔTt=Tnt−Tpt (4)
なお、重みωは、(5)式の重回帰モデルを用いて最小二乗法により決定する。
Lt+1=ω0+ω1Lt+ω2Ls+ω3Tt (5)
(S11)予測開始時刻tにおける実績負荷値と実績気温を用いて、(1)式で与えられるDの値が小さくなるような類似日を数個選択する。
(S12)S11で選択された類似日の時刻t+1における負荷データを平均し、それを時刻t+1の予測負荷L t+1とする。
(S13)S12で得られた予測負荷値を実績負荷値とみなして、(1)式のDに代入して、類似日選択を行い、S12と同様にして時刻t+2における予測負荷L t+2を算出する。
(S14)S12とS13を繰り返して、時刻t+h−1の予測値を算出して実績負荷値と見なし、時刻t+hにおけるh時間先負荷予測のための類似日選択を行う。
ニューラルネットワークは、学習日の時刻tにおける負荷Lt、時刻t+jにおける類似日平均負荷L t+j(j=1〜h)、予測対象日の最高気温Tmaxと最低気温Tmin、予測対象日の曜日Wを入力して、時刻t+hの予測負荷L t+hを出力する。
最大1000回まで繰り返すBP法によりニューロンの結合係数を調整して学習し、学習終了後のNNに予測開始日の入力データを入力することにより、予測負荷需要を出力させることができる。
UCPとは、与えられた負荷需要に対して発電機の運転停止状態と各発電機の出力を最適化する問題である。
以下、本実施例におけるUCPの定式化、およびGAを用いたUCPの解法を説明する。
本実施例では、特許文献2や特許文献3に詳しく説明されているものと同様に、全発電機について発電機出力Pi(t)と起動費用SCi(t)を加えた総運用コストTCを目的関数として、これを最小化するような解を見出すものである。
TC=Σ(t=1〜T)Σ(i=1〜N)[Fi(Pi(t))+SCi(t))] (6)
ただし、
Fi(Pi(t))=ai+bi・Pi(t)+ci・(Pi(t)i)2 (7)
SCi(t)=h-costi :Tioff≦Xioff≦Hioff または
c-costi :Xioff>Hioff (8)
Hioff=Tioff+c-h-costi (9)
(i)電力需給バランス制約
D(t)=Σ(i=1〜N)Pi(t) (10)
(ii)運転予備力制約
Σ(i=1〜N)Ii(t)・Pimax≧D(t)+Rt (11)
(iii)発電機出力上下限制約
Pimin ≦Pi(t)≦Pimax (12)
(iv)発電機最小運転・停止時間制約
Tion≦Xion
Tioff≦Xioff (13)
N :発電ユニットの総数
T :スケジューリング期間
i :発電ユニットのインデックス(i=1,2,・・・N)
t :時間のインデックス(t=1,2,・・・T)
Ii(t) :時間tにおける発電ユニットiの起動停止状態
(0:停止、1:運転)
h-costi :発電ユニットiをホットスタートさせるときのコスト
c-costi :発電ユニットiをコールドスタートさせるときのコスト
c-h-costi :発電ユニットiのボイラ冷却時間
Pi(t) :時間tにおける発電ユニットiの出力
Pimax :発電ユニットiの最大出力
Pimin :発電ユニットiの最小出力
D(t) :時間tにおける需要電力
Rt :時間tにおける運転予備力(たとえば、D(t)の10%)
Tion :発電ユニットiの最小運転時間
Tioff :発電ユニットiの最小停止時間
Xion :時間tにおける発電ユニットiの運転時間
Xioff :時間tにおける発電ユニットiの停止時間
Hioff :発電ユニットiが冷却しきるまでの時間
SCi(t) :発電ユニットiの起動コスト
Fi(Pi(t)) :発電ユニットiの燃料コスト
TC :総コスト
である。
本実施例では、GAを用いてUCPを解く。GAは遺伝オペレータにより、組み合わせ問題における大域解の中から最適解を探索するので、種々の負荷需要曲線に対して最適解を与えることができる。UCPに対してGAを適用して得られた決定変数は、運転状態を1、停止状態を0として表現することができる。
図4は、発電機起動停止スケジュールを決定するための手順を表わすGAを用いたUCPの解法のフローチャートである。図4に示された手順は以下の工程を含む。
HRi=Fi(Pimax)/Pimax (14)
ここで、HRiは各ユニットのHRを示す。
なお、本実施例でモデルとして使用される設備は10個のユニットを有するが、ユニット8〜10はバックアップ電源として用いるため、図5の優先リストにはユニット1〜7までしか記載されていない。
(S23)終了条件を満たしているかを検証し、満たす場合は演算を終了し、満たさない場合はS24に進む。ここで、終了条件とは、最終世代のことであり、本実施例ではたとえば500回とする。
次に列挙する遺伝オペレータなどが使われる。
(i)交叉(Crossover)
各ユニットの個体のスケジュールを入れ換えることにより、全体のスケジュールを変更する。各ユニットは、たとえば10基の同じ仕様を持つ個体発電機で構成される。
(ii)シフトオペレータ(Shift operator)
あるユニットの各個体の運転状態を1時間先に進める。
(iii)複写(Copy)
エリート選択を採用しているため、最良の個体は無条件で次世代に保存される。しかし、最良個体も遺伝オペレータを適用して進化させることでより良い個体を生成することができる。
(iv)突然変異(Mutation)
停止から運転、または運転から停止に変わる時間を見つけ出し、停止または運転の状態に変化させる。
(v)知的突然変異(Intelligent mutation)
図6に示すように、余分に運転しているユニット(excess units)の停止、または不足している部分のユニット(deficient units)の起動を行う。ただし、最小運転・停止時間制約および運転予備力制約に違反するようになるなら元に戻す。
(vi)優先起動オペレータ(Priority start operator)
図7に示すように、運転状態が優先リスト順になっていないユニットを見つけ出して、優先リスト順の運転状態に修正する。
ΔL=Lact(h)−Lfor(h) (15)
ここで、hは時間を表わし、Lact(h)は時間hにおける実負荷、Lfor(h)は時間hにおける予測負荷需要を表わす。
バックアップ発電機は、他のユニットと比較してHRが高いため、バックアップ電源の使用は目的関数に対してペナルティとなる。
図9はシミュレーションに使用する発電機ユニットの仕様を示す表、図10は負荷需要予測シミュレーションで用いた気温データのグラフ、図11と図12は負荷需要予測シミュレーションの結果を示す図、図13は各ケースにおける負荷需要予測絶対誤差を比較する表、図14と図15は発電機起動停止計画に従ったときの総コスト比較表、図16と図17はユニットの稼働状況を示す図面である。
図9に、このシミュレーションに使用した発電機の仕様を示す。なお、表中、initial stateはスケジューリング期間の始期における発電機の状態を示すもので、正値はそれまでの作動時間、負値はそれまでの停止時間を意味する。なお、優先リストは図5に示す通りである。
なお、負荷需要の再予測は、予測気温と実気温が大きく異なった場合に再度予測を行うものとし、本シミュレーションでは12時以降の予測気温が正確であると仮定して、実気温データを使用して行った。
負荷需要の予測精度は、(16)式で定義する負荷需要予測絶対誤差(ALFE:Absolute Load Forecasting Error)により評価することができる。
ALFE=Σ(h=n+1〜24)|Lact(h)−Lfor(h)| (16)
図13は、気象予測誤差が発生した後のALFEを比較した表である。再負荷需要予測におけるALFEの値が最も小さく、負荷需要の再予測を行うことでALFEが改善されることが分かる。
図14と図15は比較結果を示す表である。
図14は優先起動オペレータがなく優先リストを用いない場合、図15は優先起動オペレータを使用した場合を示す。図14と図15を比較すると、全てのケースにおいて図15の方がコストが低い。すなわち、優先リストを使用することがコスト削減に効果があることが分かる。
また、Case1からCase4の全てのケースにおいて、当日負荷需要を再度予測する方が総コストを削減できていることが確認される。すなわち、気象予測誤差が発生したときに再度複需要予測を行うことが有効であることが証明された。
たとえば17時から21時について見ると、図16に示した前日のスケジュールに従う場合は、ユニット3が運転状態でありユニット8からユニット10のバックアップ電源を使用する頻度は少ない。これに対して、図17に示した再予測を行う場合は、バックアップ電源の使用頻度が大きくなり、代りに最大出力が大きいユニット3が停止状態になる。その結果、総コストは図17の再予測を行う場合の方が小さくなっている。
本発明の手法を採用することにより、PPSは30分3%の原則を達成するためのコスト高な電力購入を回避することができるようになり、電力会社にとっても同時同量を低コストで容易に達成することができるようになる。
Claims (5)
- 前日に翌日の負荷需要を予測して発電計画を作成する発電機起動停止計画作成方法において、当日における実需要が予測値と差異が生じた場合に、予め決めた学習日のうちから当日における実需要に需要パターンが類似する類似日を選択し、選択した類似日の需要に基づいてその後の負荷需要予測を修正し、新しい予測値に基づいて発電機起動停止計画を修正することを特徴とする発電機起動停止計画作成方法。
- 前記翌日の需要予測に基づく発電機起動停止計画および修正した負荷需要予測に基づく発電機起動停止計画は、燃料消費率の低い順に並べた発電機の優先リストを使い遺伝的アルゴリズムを用いて作成することを特徴とする請求項1記載の発電機起動停止計画作成方法。
- 前記類似日の判定は、同時間帯における学習日の負荷実績値と当日の負荷実績値もしくは負荷予測値との差、負荷実績値もしくは負荷予測値の変動の差、および温度実績値もしくは温度予測値の差がそれぞれ小さいことを条件として行うことを特徴とする請求項1または2記載の発電機起動停止計画作成方法。
- 前記選択された複数の類似日における負荷実績値および温度実績値を用いて、次の時間帯における実績値を平均した値を、当日の次の時間帯における負荷予測値および温度予測値とすることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の発電機起動停止計画作成方法。
- 前記負荷需要予測の修正は、ニューラルネットワークを用いた数時間先電力需要予測法により行うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の発電機起動停止計画作成方法。
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