JP2007020563A - 糖尿病網膜症発症及び/又は進展リスクの診断方法 - Google Patents

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直子 岩崎
Chikako Nakamura
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Hideharu Funatsu
英陽 船津
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滋彦 北野
Naoyuki Kamatani
直之 鎌谷
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Abstract

【課題】糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病発症及び/または進展リスクの診断方法、及び糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病発症に対する治療方法の提供。
【解決手段】糖尿病患者の白血球より得た、ヒトゲノムDNAの血管新生促進因子(VEGF)遺伝子多型SNP−2578のアレルを測定することによる、糖糖尿病網膜症及び/または、これに併発する疾病の発症及び/または進展リスクの診断方法。糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病に対して、抗VEGF抗体を有効成分として含有する組成物を投与する。
【選択図】なし

Description

本発明は糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクの診断方法に関する。さらに詳しくは、ヒトゲノムDNAのVEGF遺伝子多型SNP-2578のアレルを測定することによる糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクの診断方法に関する。
また、この診断方法又は判定方法において、糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクが高いとされた患者に対し、抗VEGF抗体を有効成分として含有する組成物を治療薬とする糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の治療方法、及びその治療薬に関する。
糖尿病の眼合併症には、白内障、網膜症、黄斑症、屈折・調節異常、角膜症、視神経症、神経障害(眼筋麻痺を含む)、緑内障(血管新生緑内障を含む)、ぶどう膜炎などがある。中でも網膜症及び/又はこれに併発する疾病は最も重症であり、糖尿病患者の30〜60%に併発している(例えば、非特許文献1参照)。この割合は罹病期間の延長とともに増加し、罹病期間5年で10%、10年で30%、15年で50%、20年では70%以上の患者に認められ、高血糖に晒される罹病期間と関連する。
一方で罹病期間が長期でかつ血糖コントロールが不良であっても網膜症を発症しない者、逆に罹病期間が短いにも関わらず網膜症及び/又はこれに併発する疾病を合併している者も明らかに存在する。ピマインディアンにおいても2型糖尿病の罹病期間の長期化に伴い一定の割合の者に網膜症が生じるが、逆に長期間の観察によっても網膜症を発症しない者が存在することが報告されている。従って、糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症には、罹病期間に限らず遺伝的素因も大きく関与すると示唆されている。
網膜症の発症に関する病態としては糖代謝異常による(1)ポリオール代謝経路の活性亢進、(2)蛋白質への非酵素的糖化反応の蓄積、(3)プロテインキナーゼCβの活性化、(4)活性酸素・過酸化脂質の産生亢進、などがあり、これらの異常が相互作用しながら網膜血管内皮細胞、周皮細胞、神経細胞、グリア細胞を障害し、網膜症を発症・進展させる。さらに、上述の代謝異常がVEGF、interleukin-6(IL-6)、renin-angiotensin system(RAS)を活性化し、網膜症の病態に深く関与していることが示されるようになった(例えば、非特許文献2参照)。
増殖網膜症及び/又はこれに併発する疾病の病態の中心は血管新生であるが、糖尿病による網膜毛細血管の閉塞が網膜虚血・低酸素状態を引き起こし、血管新生へとつながる病態が明らかにされつつある。すなわち、網膜虚血に伴う眼内血管新生の過程には血管新生促進因子と抑制因子のバランスが関与し、血管新生促進因子としてはVEGFが重要である(例えば、非特許文献3参照)。VEGFは血管新生における4つのステップすなわち、(1)基底膜の分解、(2)内皮細胞の遊走、(3)内皮細胞の増殖・索状組織形成、(4)内皮細胞による管腔形成、のすべての段階において促進的に作用する強力な血管新生促進因子であり、低酸素状態によって発現が亢進する。さらに、活動性の高い増殖網膜症患者の眼内液中でVEGF濃度が有意に増加していたことなどから(例えば、非特許文献4参照)、VEGFは糖尿病網膜症の最も重要な候補遺伝子のひとつであると考えられている。
このように、網膜症とVEGFの関連は広く認識されているものの、VEGF遺伝子多型と糖尿病網膜症の関連については、VEGF遺伝子多型SNP-634のC/G多型が網膜症発症の有意な危険因子として検出されたとする報告(例えば、非特許文献5参照)及び、SNP-460のC/T多型が増殖網膜症への進展の独立した因子として検出されたとする報告(例えば、非特許文献6参照)のみである。さらに、このうちSNP-634のC/G多型に関して、本発明者らが再度検討を行ったところ、網膜症との有意な関連は追認できなかった。
医療の現場において、糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクの早期の診断によって、それぞれの患者にあった検査、治療等を行うことが望まれている。そのためには、糖尿病網膜症に関する遺伝的素因を明確にし、それを用いた診断方法を確立することが課題となっている。
船津英陽、須藤史子、堀 貞夫ほか:糖尿病眼合併症の有病率全身因子.日本内科学会雑誌97:947-954,1993 船津英陽、山下英俊:糖尿病網膜症・進展の分子生物学.日本臨床(60巻増刊号10):162-166,2002 山下英俊:血管閉塞後の血管新生のメカニズム.Practical Opthalmology 85:164-167,2002 船津英陽:糖尿病合併症(血管病変)の分子メカニズム.pp11-13 新糖尿病眼科学一日一課. 総ページ数210. 堀 貞夫、山下俊英、加藤 聡編,メディカル葵出版,東京,2004年 Awata T, Inoue K, Kurihara S, Ohkubo T, Watanabe M, Inukai K, Inoue I, Katayama S.:A common polymorphism in the 5'-untranslated region of the VEGF gene is associated with diabetic retinopathy in type 2 diabetes. Diabetes. 51:1635-9, 2002 Ray D, Mishira M, Ralph S, Read I, Davies R, Brenchley P.: Association of the VEGF gene with proliferative diabetic retinopathy but not proteinuria in diabetes. Diabetes 53:861-864, 2004
本発明は、糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクの診断方法を提供することを課題とする。より具体的には、糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病に関する遺伝的素因を明確にし、それを用いた糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクの診断方法の提供を課題とする。
また、この診断方法又は判定方法において、糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクが高いとされた患者に対する治療方法、及びその治療薬の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、糖尿病患者のうち短い罹病期間で網膜症を発症する群(短期罹病網膜症あり群)と長い罹病期間でも網膜症を発症しない群(長期罹病網膜症なし群)とに分けて、両群の遺伝背景を比較することで、ヒトゲノムDNAのVEGF遺伝子多型SNP-2578の遺伝子型がAA型であることが、ヒトにおける糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病に関する遺伝的素因であることを見出した。そして、このVEGF遺伝子多型SNP-2578のアレルを測定することにより、糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクの診断方法を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
さらにこの診断方法又は判定方法において、糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクが高いとされた患者に対し、抗VEGF抗体を有効成分として含有する組成物を治療薬とすることで、糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の治療方法及びその治療薬も提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は次の(1)〜(10)の糖尿病網膜症発症及び/又は進展リスクの診断方法に関する。
(1) ヒトゲノムDNAのVEGF遺伝子多型SNP-2578のアレルを測定することを特徴とする糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクの診断方法。
(2) 糖尿病網膜症が増殖網膜症である上記(1)に記載の糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクの診断方法。
(3) 糖尿病患者由来のヒトゲノムDNAを診断に用いる上記(1)又は(2)のいずれかに記載の診断方法。
(4) 糖尿病患者の白血球より得たヒトゲノムDNAを診断に用いる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の診断方法。
(5) VEGF遺伝子多型SNP-2578の遺伝子型がAA型であるヒトが糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクが高いと判断する糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクの判定。
(6) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載の診断方法又は判定方法において、VEGF遺伝子多型のアレルを測定するためのゲノムDNAの増幅に用いる配列表配列番号1又は配列番号4に記載のプライマー。
(7) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載の診断方法又は判定方法を用いて、糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクが高いとされた患者に対し、抗VEGF抗体を有効成分として含有する組成物を投与する糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の治療方法。
(8) 糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の治療方法であって、抗VEGF抗体を有効成分として含有する組成物を投与する糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の治療方法。
(9) 抗VEGF抗体を有効成分として含有する組成物である糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の治療薬。
本発明により確立された糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクの診断方法を利用することにより、糖尿病網膜症の発症リスクを早期に診断することを可能とし、これによって、それぞれの患者にあった検査等を行うことが可能となる。
また、本発明の診断方法により、糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクが高いとされた患者に対する治療方法、及びその治療薬を利用することで糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の治療を行うことが可能となる。
本発明の糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症リスクとは、糖尿病の患者の遺伝素因による、その患者が合併症である網膜症及び/又はこれに併発する疾病を併発する可能性を有する危険性のことをいう。糖尿病網膜症に併発する疾病としては、血管新生緑内障等が挙げられる。
本発明の糖尿病網膜症の進展リスクとは、糖尿病網膜症を発症した後、単純網膜症、前増殖網膜症を経て、その患者の症状が悪性の血管新生が起こる増殖網膜症に進む危険性のことをいい、その危険性には、血管新生緑内障等を併発する危険性も含む。
本発明の糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクの診断方法とは、診断の対象となるヒトより得たゲノムDNAを用い、VEGF遺伝子多型SNP-2578の遺伝子型がAA型であることを検出することでそのヒトが糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクが高いか否かを判定し、診断することをいう。
この診断にあたり、必要に応じて得られたゲノムDNAをPCRによって増幅し、得られた増幅産物を診断の試料として用いることもできる。
上記の本発明の糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクを診断するためには、VEGF遺伝子多型SNP-2578の遺伝子型を判定の基準とする。これは、糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病に関する遺伝的素因を明確にするために、本発明の実施例に示すように、糖尿病網膜症患者のゲノムDNAを調べ、統計解析したことにより得られたものである。
本発明では、この遺伝子型の統計解析にはχ二乗検定、Mann-Whitney検定及び多変量解析を用い、統計ソフトはSPSSを使用している。また、ハプロタイプの推定にはアルゴリズムPenhaploを用いることができるとしているが、これら以外の解析方法によっても、VEGF遺伝子多型SNP-2578の遺伝子型の有意性を示すことができる。
本発明のヒトゲノムDNAは、診断の対象となるヒトから得たゲノムDNAのことをいい、ヒトの血液、血清、白血球、硝子体液などからフェノール・クロロホルム法等の一般的な抽出方法を用いて得ることができ、特に末梢血白血球などから得ることが好ましい。得られたヒトゲノムDNAが本発明の診断に十分な量であればそのまま用いることもできるが、必要であればPCRなどで増幅し、得られた増幅産物をヒトゲノムDNAとして用いることもできる。
本発明のヒトゲノムDNAの増幅には、PCR等の一般的な増幅方法を用いて行うことができる。PCRを行う場合には、増幅の対象となるVEGF遺伝子多型SNP-2578を含む箇所を増幅できればプライマー、増幅機器、増幅反応条件等は特に問わない。
例えば、配列表配列番号1及び2に記載のプライマーを用い、はじめに95℃で30秒間denatureを行い、続いてannealingは58℃で30秒間、extensionは72℃で30秒間を合計30サイクル行い、最後に72℃、10分間final extensionを行うというようなPCRの条件で増幅することもできる。
本発明のプライマーとしては、VEGF遺伝子多型のアレルを測定するためにゲノムDNAの増幅できるプライマーであればいずれのプライマーも用いることができるが、配列の特異度がより高くなるように設計されたプライマーを用いることが好ましく、例えば米国National Center for Biotechnology Information (NCBI)のBLASTサーチを用い、ヒトのVEGF以外にはほとんどマッチする配列が存在しないように設計されたプライマーを用いることができる。本発明の実施例では特に、発明者が独自に設計した配列表配列番号1又は配列番号4等に記載のプライマーを用いることが好ましい。
本発明の遺伝子型の決定には、DNAシークエンサーによるシークエンスや、PCR-RFLP法等の一般的な方法を用いることができる。本発明では、これらによって得られたVEGF遺伝子多型SNP-2578において遺伝子型がAA型をあることが検出された場合に、そのゲノムDNAを有するヒトが糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクが高いと判断する判定方法により、糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクを診断することができる。
すなわち、本発明の診断方法では、遺伝子型がCC型またはCA型である、言い換えればCアレルを有することが検出されたヒトは糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクが低いが、遺伝子型がAA型である、言い換えればAアレルのみを有することが検出されたヒトは糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクが高いとする判定方法が用いられる。
なお、本発明の診断方法の対象は、ヒトであれば可能であるが、糖尿病患者、糖尿病予備軍を対象とすることができる。また、本発明の診断方法は、成人検診などに用いることができることから、さらに広域のヒトを対象とすることもできる。
本発明の治療方法は、本発明の診断方法又は判定方法において、糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクが高いとされた患者以外に、一般的な診断方法等で糖尿病網膜症の発症及び/又は進展リスクが高いとされた患者や糖尿病網膜症及び/又はその合併症の患者も治療の対象とすることができる。
本発明の治療方法は、抗VEGF抗体を有効成分として含有する組成物を治療薬として、患者に投与することで行うことができる。本発明の治療方法に用いる治療薬は抗VEGF抗体を有効成分として含有する組成物であり、人体に投与できればいずれのものも用いることができ、市販の物を用いてもよい。また、その形態は特に問わない。
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
<対象>
東京女子医科大学第三内科学(糖尿病センター)に通院中であり、糖尿病センター眼科で眼科専門医によって眼底検査が実施された2型糖尿病患者749名(M/F=431/318)を対象とした。なお、本実施例は大学の遺伝子解析研究に関する倫理審査委員会の審議により許可を得た上で、患者の書面による同意を得て実施されたものである。
網膜症の評価基準はDavis分類に従った。糖尿病罹病期間は糖尿病と診断された時点から最新の網膜症評価を行った日とし、血圧、体重、血糖値、HbA1c値、生化学データは網膜症評価を行った日に最も近いデータを採択した。この検討では網膜症なし群の罹病期間が平均16.7年、あり群のそれは21.9年であり(p<0.001)、両群とも網膜症が発症するのに十分な罹病期間を得ている。
患者背景を表1に示した。2型糖尿病749名中、網膜症なし群(306名)と網膜症あり群(443名)を比較すると、あり群では糖尿病診断時年齢が有意に若く、罹病期間が有意に長く、肥満度が有意に大であった。また、収縮期血圧が有意に高く、総コレステロールは有意に低く、中性脂肪は有意に高値であった。表1で網膜症あり群のうち、さらに網膜症の病期によって、非増殖網膜症性群(264名)と増殖網膜症群(179名)に分けて患者背景を示した。
<ゲノムDNA増幅反応>
2型糖尿病患者の末梢血白血球よりゲノムDNAを抽出した。該ゲノムDNAより、7種類の本遺伝子の多型、SNP -2578、SNP -1203、SNP -1190、SNP -1179、SNP -1154、SNP -634、SNP 936の各変異部位を含むDNA領域をPCR(polymerase chain reaction)により増幅を行った。
各SNPに対し、表2(配列表配列番号1〜8)に示したプライマーを用い、増幅を行った。これらのプライマーのうち、配列番号1及び4は配列の特異度がより高くなるように独自に設計したプライマーであった。
DNA増幅反応は総量25μlの系で行い、2.5μlのEx buffer(宝酒造)、0.2μlのEx Taq(宝酒造)、3.0μlの4mM dNTP、10mMのプライマー各々1μlずつ用いた。PCRの条件は、はじめに95℃で30秒間denatureを行い、続いてannealingは58℃で30秒間、extensionは72℃で30秒間を合計30サイクル行い、最後に72℃、10分間final extensionを行った。なお、SNP-1203,-1190,-1179, -1154については66℃でannealingを行った。
<遺伝子型の決定>
該PCRにより増幅した産物は、直接塩基配列決定法を用いて両方向のシークエンスを行い、遺伝子型を決定した。タイピングの誤りを防ぐため、予め塩基配列が確認できているDNAをすべての実験に用いてタイピングの精度管理を行った。
<統計学的処理>
アレル、遺伝子型の集団における比較には統計解析にはχ二乗検定、Mann-Whitney検定及び多変量解析を用い、統計ソフトはSPSSを使用した。ハプロタイプの推定にはアルゴリズムPenhaploを用いた。
解析では以下のように各SNPのアレルを数に変換して用いた。SNP-2578ではCを1、Aを2とした。SNP-1203ではCを1、Tを2とした。SNP -1190ではGを1、Aを2とした。SNP-1179ではAを1、Cを2とした。SNP -1154ではGを1、Aを2とした。SNP -634ではGを1、Cを2とした。SNP936ではCを1、Tを2とした。
<VEGF遺伝子多型と糖尿病網膜症の関連の検討1>
罹患期間の影響を含む2型糖尿病患者の全対象について、7種類の遺伝子多型 (SNPs;-2578, -1203,-1190,-1179,-1154,-634,936)のアレル頻度及び遺伝子型頻度を表3に示すように、糖尿病網膜症あり群となし群について比較したところ、表4に示すように、いずれのSNPにおいても糖尿病網膜症との関連は認められなかった。結果の一部を表4に示した。
<VEGF遺伝子多型と糖尿病網膜症の関連の検討2>
上記参考例で得られた対象のうち、網膜症を有する群をさらに、非増殖網膜症性群(Non-PDR)と増殖網膜症群(PDR)に分けて、対照群と比較検討した。その結果、表5に示すように増殖網膜症と対照の比較において、VEGF(-2578)のアレル頻度に有意の差を認めた(p=0.036)。これより、SNP-2578がAA型である場合に増殖網膜症になりやすいことが示された。
<対象>
実施例1の対象全体を用いた解析から、さらに罹病期間の影響を排除して網膜症の発症と遺伝子多型との関連を検討するために、罹病期間が長いにも関わらず網膜症を合併しない群と短い罹病期間で網膜症を合併した群に分けてサブ解析を行った。具体的には罹病期間が15年未満で網膜症を合併した群(短期罹病網膜症あり群)と20年以上で網膜症を認めない群(長期罹病網膜症なし群)を選び、両群間の比較検討を行った。
この検討に用いた患者の背景を表6に示した。両群の罹病期間は、短期罹病網膜症あり群では10.7±3.1年(mean±SD)、長期罹病網膜症なし群では24.6±5.8年であった(p=0.001)。他にBMI、総コレステロール、中性脂肪に有意差が認められた。
遺伝子多型の検討は実施例1と同様に行った。その結果表7及び表8に示したように、短期罹病網膜症あり群と、長期罹病網膜症なし群について比較すると、前者においてSNP-2578においてAA遺伝子型の頻度(cc/ca/aa;42/30/11 vs 56/34/3,χ2=6.27,p=0.043)が有意に高かった。さらに、網膜症の中でより進行した増殖網膜症のみを選んで対照群と比較すると、SNP-2578において前者においてAA遺伝子型の頻度が有意(p=0.043)に高かった。
従って、VEGF遺伝子多型SNP-2578がAA型であることは、2型糖尿病網膜症の発症のリスクとなることが確認され、そのオッズは4.6(p<0.014)であった。さらに増殖網膜症の進展のリスクを、オッズ比で比較した場合に、AA型である場合はそうでない場合の7.5倍(p<0.002)となることが確認された。
VEGF(-2578)多型における、血清VEGF濃度の増加、腫瘍への血管濃度の増加及びVEGF遺伝子のmRNA発現レベルについては、非小細胞肺癌(NSCLC)患者および腹膜透析患者において、AアレルはCアレルと比較して有意に亢進させること(AA+CA vs CC)が報告されている(例えば、参考文献1,2参照)。しかし、これらにおいてAA型のみが有意であるという検討がされていない。これは、対象が135人または36人と少なく、また、糖尿病網膜症を対象としていないことが関係していると示唆される。
参考文献1;Szeto CC, Chow KM, Poon P, Szeto C YK, Wong T YH, Li P KT. Genetic
polymorphism of VEGF: Impact on longitudinal change of peritoneal transport and
survival of peritoneal dialysis patients. Kidney International 65:1947-1955, 2004
参考文献2;Koukourakis MI, PapazoglouD, Giatromanolaki A,Bougioukas G, Maltezos E, Siviridis E. VEGF gene sequence variation defines VEGF gene expression status and angiogenic activity in non-small cell lung cancer. Lung Cancer 46:293-298, 2004
糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクの診断
糖尿病患者の末梢血白血球よりゲノムDNAを抽出し、配列表配列番号1及び配列番号2に記載のプライマーを用いてPCRを行い、得られた増幅産物を、直接塩基配列決定法を用いて両方向のシークエンスを行い、遺伝子型を決定した。得られた遺伝子型より、VEGF遺伝子多型SNP-2578の遺伝子型がAA型である患者は糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症リスク及び/又は進展リスクを有すると診断した。
この診断方法によって、糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症リスク及び/又は進展リスクを有すると診断された患者に対し、抗VEGF抗体を有効成分として含有する組成物を治療薬として、患者に投与することで治療を行った。
本発明方法を利用することにより、糖尿病における網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクの早期の診断を可能とする。これによって、それぞれの患者にあった検査や、進展をとめるための血糖のコントロールなどを早期に行うことができる。また、抗VEGF抗体を有効成分として含有する組成物を治療薬として、治療に用いることができる。このように、真に必要な検査や治療のみを行うことで診察時間の短縮や医療費の節約にもつながる。

Claims (9)

  1. ヒトゲノムDNAのVEGF遺伝子多型SNP-2578のアレルを測定することを特徴とする糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクの診断方法。
  2. 糖尿病網膜症が増殖網膜症である請求項1に記載の糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクの診断方法。
  3. 糖尿病患者由来のヒトゲノムDNAを診断に用いる請求項1又は2のいずれかに記載の診断方法。
  4. 糖尿病患者の白血球より得たヒトゲノムDNAを診断に用いる請求項1〜3のいずれかに記載の診断方法。
  5. VEGF遺伝子多型SNP-2578の遺伝子型がAA型であるヒトが糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクが高いと判断する糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクの判定方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の診断方法又は判定方法において、VEGF遺伝子多型のアレルを測定するためのゲノムDNAの増幅に用いる配列表配列番号1又は配列番号4に記載のプライマー。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の診断方法又は判定方法を用いて、糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の発症及び/又は進展リスクが高いとされた患者に対し、抗VEGF抗体を有効成分として含有する組成物を投与する糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の治療方法。
  8. 糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の治療方法であって、抗VEGF抗体を有効成分として含有する組成物を投与する糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の治療方法。
  9. 抗VEGF抗体を有効成分として含有する組成物である糖尿病網膜症及び/又はこれに併発する疾病の治療薬。






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