JP2007020341A - がいし被害判定装置およびプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】 雷事故時の送電線のがいし被害状況を分析して出力するがいし被害判定装置を提供することである。
【解決手段】
情報入力処理手段11は雷に関する情報を収集し入力して記憶部12に記憶する。推定手段13は記憶部12に記憶された雷に関する情報に基づいて送電用のがいしに被害が発生しているか否かを推定する。例えば、がいし間電圧ががいし沿面で放電する臨界通絡電圧値より大きいときや、アーク電流およびアーク電流継続時間が予め定められたがいし破損限界値を逸脱したときには、がいしに被害が発生している可能性ありと判断する。入出力処理手段14は、入力装置17からの指令に基づき、推定手段13での推定結果や推定手段13の演算に必要な情報を表示装置18に出力する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、落雷が発生した場合に電線と鉄塔とを絶縁するがいしに発生する被害を推定するためのがいし被害判定装置およびプログラムに関する。
例えば、送電線の鉄塔への落雷があると鉄塔の電圧が上昇し、電力線と鉄塔との間を絶縁しているがいし間で絶縁が一時的に破れて逆フラッシオーバが発生することがある。この逆フラッシオーバが発生すると、瞬間的に鉄塔と電線との間で通電状態となり地絡電流が流れることになる。
保護継電器は、この地絡電流を検出して故障点を含む故障区間を一時的に遮断し、所定の時間経過後に自動再閉路する。そして、再閉路が成功すれば運転が再開されるが、もし再閉路が失敗した場合は停電となり電力供給に支障が生ずる。
そこで、落雷による送電線事故が発生し再閉路失敗の場合には、送電線の保守部門では、速やかに落雷箇所(地絡故障点)の現場に出向し、故障原因を調査すると共に復旧作業を行うようにしている。また、再閉路に成功した場合であっても事故巡視を実施し、落雷によるがいし等への設備被害の有無を現場で目視確認するようにしている。
ここで、落雷位置を標定するとともに、その落雷の雷撃電流を評価するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。また、アーク電流とアーク電流継続時間とから、がいしの耐アーク特性を評価し、がいし破損限界値を定めるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
25th International Conference on Lightning Protection, ICLP2000 Rhodes-Greece 18-22 September 2000 電気共同研究第34巻第2号、昭和53年9月13日発行、電気共同研究会P76〜P77
しかし、落雷による送電線事故が発生した場合には、再閉路に成功した場合であっても事故巡視を実施し、落雷によるがいし等への設備被害の有無を現場で目視確認するようにしているので、発雷頻度が多い地域においては、設備被害確認のための事故巡視に掛ける時間が多くなっている。すなわち、雷が発生するたびに事故巡視を実施することは負担が大きく、また、雷は自然現象であるので事故巡視作業は事前計画を立てにくい。
一方、送電設備の絶縁設計は雷サージではなく開閉サージにより絶縁設計されており、内部過電圧(開閉サージ)では絶縁破壊をさせないが、落雷などの外部過電圧(雷サージ)での絶縁破壊は許容している。
この場合、雷サージで絶縁破壊となってもがいしが破損しないように、保護装置であるアークホーンが設置されており、がいしの沿面放電によるがいしの破損を防止している。また、がいし自体についても、普通素地がいしから沿面放電に対して強化された耐アークがいしへ変更されつつあり、耐雷対策が強化されている。
このように、耐アークがいしの採用やアークホーンの設置等で、落雷により受ける設備被害は極めて少ないのが現状であり、雷が発生しても設備被害が発生しない場合には事故巡視を省略しても差し支えない状況である。従って、設備被害がないことが予め判断できれば、事故巡視を回避することができ、業務の効率化や簡素化が図れることを期待できる。
本発明の目的は、雷事故時の送電線のがいし被害状況を分析して出力するがいし被害判定装置およびプログラムを提供することである。
請求項1の発明に係わるがいし被害判定装置は、雷に関する情報を収集し入力する情報入力処理手段と、前記情報入力処理手段で収集した雷に関する情報に基づいて送電用のがいしに被害が発生しているか否かを推定する推定手段と、前記推定手段での推定結果や前記推定手段の演算に必要な情報を入出力処理する入出力処理手段とを備えたことを特徴とする。
請求項2の発明に係わるがいし被害判定装置は、請求項1の発明において、前記推定手段は、雷に関する情報のうち少なくとも鉄塔への雷撃電流に基いて雷サージによるがいし間電圧を演算し、得られたがいし間電圧ががいし沿面で放電する臨界通絡電圧値より大きいときは、がいしに被害が発生している可能性ありと判断することを特徴とする。
請求項3の発明に係わるがいし被害判定装置は、請求項1または2の発明において、前記推定手段は、雷に関する情報のうちがいしへのアーク電流およびアーク電流継続時間が予め定められたがいし破損限界値を逸脱したときは、がいしに被害が発生している可能性ありと判断することを特徴とする。
請求項4の発明に係わるがいし被害判定装置は、請求項3の発明において、前記推定手段は、雷に関する情報のうちの事故様相が複数の電力線の地絡を示す場合、落雷した鉄塔の接地抵抗が所定値以上の場合、または落雷した雷の極性が正極性の場合に、がいしに被害が発生している可能性ありと判断することを特徴とする。
請求項5の発明に係わるがいし被害判定プログラムは、コンピュータを、雷に関する情報を収集し入力する手段と、雷に関する情報のうちの少なくとも鉄塔への雷撃電流に基いて雷サージによるがいし間電圧を演算する手段と、得られたがいし間電圧ががいし沿面で放電する臨界通絡電圧値より大きいときはがいしに被害が発生している可能性ありと判断する手段と、雷に関する情報のうちがいしへのアーク電流およびアーク電流継続時間が予め定められたがいし破損限界値を逸脱したときはがいしに被害が発生している可能性ありと判断する手段と、雷に関する情報のうちの事故様相が複数の電力線の地絡を示す場合にがいしに被害が発生している可能性ありと判断する手段と、落雷した鉄塔の接地抵抗が所定値以上の場合にがいしに被害が発生している可能性ありと判断する手段と、落雷した雷の極性が正極性の場合にがいしに被害が発生している可能性ありと判断する手段として機能させる。
本発明によれば、落雷の大きさや事故停電の概要および設備実態などを基に、がいし被害状況を分析判断して、その判断結果を出力する。これにより、明らかにがいしに被害が生じないと判断できる場合には、事故巡視に行かなくても済むので、事故巡視回数を低減できる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の実施の形態に係わるがいし被害判定装置のブロック構成図である。本発明の実施の形態に係わるがいし被害判定装置10は、例えば、演算制御装置CPUとメモリとで構成されるマイクロコンピュータ、あるいはパーソナルコンピュータであり、雷に関する情報を収集し入力する情報入力処理手段11と、情報入力処理手段11で収集した雷に関する情報を記憶する記憶部12と、記憶部12に記憶された雷に関する情報に基づいて送電用のがいしに被害が発生しているか否かを推定する推定手段13と、推定手段13での推定結果や推定手段13の演算に必要な情報を入出力処理する入出力処理手段14とから構成される。
情報入力処理手段11は落雷位置標定システム15から雷に関する情報を入力する。落雷位置標定システム15は、落雷位置、雷撃電流、雷の正負の極性等を標定するものであり、落雷位置標定システム15で標定された落雷位置や雷撃電流は、がいし被害判定装置10の情報入力処理手段11に入力され記憶部12に記憶される。
同様に、情報入力処理手段11は総合記録装置16から送電線事故に関する情報も入力する。総合記録装置16は、送電線の鉄塔への落雷による電力線と鉄塔との間の地絡事故、電力線の断線事故、電力線の短絡事故等の事故の種別、事故が発生した電力線の数等の事故の様相、事故点を含む事故区間、永久故障か否か(再閉路の成功か否か)、事故電流、事故電流の継続時間等の測定データを記録する装置であり、これら総合記録装置16で測定された事故情報は、がいし被害判定装置10の情報入力処理手段11に入力され記憶部12に記憶される。
また、入力装置17から送電線の設備情報が入力される。例えば、雷サージによるがいし間電圧を演算する際に必要な設備情報が入力装置17から入出力処理手段14に入力され記憶部12に記憶される。入力装置17から入力される設備情報は、送電線の鉄塔の高さ、鉄塔接地抵抗、地線半径、地線条数、がいし装置の種別(懸垂か耐張か)、がいし連数、がいし素地等である。
推定手段13は、がいしに被害が発生した可能性があるか否かを推定するものであり、以下の3個の判断基準を有している。
(1)判断基準1
雷サージによるがいし間電圧が臨界通絡電圧値を超えたか否か
(2)判断基準2
アーク電流とアーク電流継続時間ががいし破損限界値を逸脱したか否か
(3)判断基準3
(a)事故様相は複数の電力線の地絡か否か
(b)鉄塔接地抵抗は所定値以上か否か
(c)雷の極性は正極性か否か
推定手段13は、これら判断基準1〜判断基準3のいずれかを満たしている場合には、がいしに被害が発生している可能性ありと判断する。推定手段13での推定結果は、記憶部に記憶され、入力装置17からの指令に基づき必要に応じて入出力処理手段14を介して表示装置18に出力され監視員に報知する。監視員は推定手段13の推定結果に基づき事故巡視を行うかどうかを判断することになる。
図2は、がいし被害判定装置10の推定手段13の詳細ブロック図である。がいし間電圧演算手段19およびがいし間電圧判定手段20により判断基準1が成立するか否かを判断する。また、アーク電流判定手段21により判断基準2が成立するか否かを判断する。さらに、事故様相判定手段22、鉄塔接地抵抗判定手段23、雷極性判定手段24により判断基準3が成立するか否かを判定する。そして、これらの判断結果は記憶部12に出力される。
<判断基準1>
まず、判断基準1について説明する。判断基準1は、雷サージによるがいし間電圧Vが臨界通絡電圧値V0を超えたか否かである。臨界通絡電圧値V0は、がいしの両端に設けられたアークホーンへの逆フラッシオーバ(通路)から、がいし沿面への通路へ移行する境界の電圧値であり、がいし間電圧Vがこの臨界通絡電圧値V0を超えるとがいし沿面を通路とする放電経路が形成され、がいしに損傷が起こり得る状態となる。従って、がいし間電圧Vが臨界通絡電圧値V0を超えたときは、がいし沿面を通路とする放電経路が形成されるので、がいしに被害が発生している可能性ありと判断する。
判断基準1による判断に当たっては、雷サージによるがいし間電圧Vを求める必要があることから、がいし間電圧演算手段19により雷撃電流に基き雷サージによるがいし間電圧Vを求める。がいし間電圧Vを求めるにあたっては、過渡現象解析プログラムEMTPを用いて精度良く計算することも可能であるが、ここでは以下に述べる簡易計算で求める場合について説明する。
がいし間電圧Vは、(1)式に示すように、鉄塔への雷サージ電圧V1と、架空地線と電力線との間の誘導による電力線の電圧V2との差分で求められる。
V=V1−V2 …(1)
次に、鉄塔25への雷サージ電圧V1と、落雷時の電力線電圧V2とを求めるにあたり、鉄塔25に落雷した場合の電気的特性を考える。図3は鉄塔25に落雷した場合の電気的特性を示す説明図である。
いま、鉄塔25の塔頂部に落雷したとすると、雷撃電流Iは架空地線26と鉄塔25とに分流して流れる。架空地線26に分流して流れるそれぞれの雷撃分流電流をIa、鉄塔25に流れる雷撃分流電流をIbとすると、(2)式が成立する。また、架空地線26のサージインピーダンスをZ0、鉄塔25の特性インピーダンスをZ1としたとき、架空地線26への雷撃分流電流Iaは(3)式で示される。
I=2Ia+Ib …(2)
Ia=[I/{(Z0/2)+Z1}]・(Z1/2) …(3)
また、架空地線26のサージインピーダンスZ0は、鉄塔25の高さをh、架空地線26の電線の半径をrとしたとき、下記の(4)式で示される。
Z0=60{ln(2h/r)} …(4)
次に、鉄塔25に分流した雷撃分流電流Ibの一部は大地へ透過し、他の一部は反射して鉄塔25に反射電流Icとして流れ込む。大地の反射係数θは、鉄塔25の特性インピーダンスをZ1、鉄塔25の接地抵抗をZ2としたとき(5)式で示され、また、そのときの反射電流Icは(6)式で示される。さらに、落雷時の反射電流Icを考慮に入れると、落雷時において鉄塔25に流れる電流Idは(7)式で示される。
θ=(Z2−Z1)/(Z2+Z1) …(5)
Ic=Ib・θ
=Ib・(Z2−Z1)/(Z2+Z1) …(6)
Id=Ib+Ic(1−2h/c) …(7)
ここで、(7)式の(1−2h/c)は反射波の遅れ分を示しており、hは鉄塔25の高さ、cは光速である。
鉄塔25への雷サージ電圧V1は下記(8)式で示され、落雷時の電力線電圧V2は下記(9)式で示される。なお、(9)式の結合率は、例えば66kVの送電線では0.2程度である。
V1=Id・Z1 …(8)
V2=Ia・Z0・結合率 …(9)
従って、(8)式に(7)式を代入して鉄塔25への雷サージ電圧V1を求め、(9)式に(3)式および(4)式を代入して落雷時の電力線電圧V2を求めることができる。そして、(8)式および(9)式を(1)式に代入して雷サージによるがいし間電圧Vが求められる。
なお、(8)式の架空地線26に分流して流れる雷撃分流電流Ia、および(9)式の落雷時において鉄塔25に流れる電流Idは、雷撃電流Iの関数で表されるので、がいし間電圧演算手段19は、雷撃電流Iに基いて雷サージによるがいし間電圧Vを求めることになる。この場合、雷撃電流Iは、落雷位置標定システム15で標定された推定電流を予め定めた雷撃電流との換算式に代入して求めることになる。
がいし間電圧演算手段19で演算して求められた雷サージによるがいし間電圧Vは、がいし間電圧判定手段20に入力され、予め定められた臨界通絡電圧V0を超えているか否かが判定される。がいし間電圧Vがこの臨界通絡電圧値V0を超えると、がいし沿面を通路とする放電経路が形成されるので、がいしに損傷が起こり得る状態となる。このような状態が発生するときは、がいし間電圧判定手段20は、がいしに被害が発生している可能性ありと判断する。
ここで、臨界通絡電圧V0は、がいしのアークホーン効率(Y/Y0)と臨界通絡電圧値V0との関係から求める。図4は、がいしのアークホーン効率(Y/Y0)と、臨界通絡電圧V0/50%雷インパルスフラッシオーバ電圧V50(%)との関係を示した特性図である。S1は耐雷ホーンが懸垂である場合、S2は耐雷ホーンが耐張である場合の特性図である。また、アークホーン効率(Y/Y0)は、アークホーン間隔Yとがいし連長Y0との比であり、一般にアークホーン効率は75%が適用されている。また、50%負極性雷インパルスフラッシオーバ電圧V50は(10)式から求められることから、これらより臨界通絡電圧V0が算出できる。
V50=580Y+190 …(10)
すなわち、臨界通絡電圧値V0は、図4のアークホーン効率75%と耐雷ホーン懸垂S1や耐雷ホーン耐張S2がクロスする臨界通絡電圧V0/50%雷インパルスフラッシオーバ電圧V50[%]を求める。その結果、耐雷ホーン懸垂S1では、V0/V50は350%倍、耐雷ホーン耐張S2では、V0/V50は260%倍となる。一方、(10)式においてYにアークホーン間隔の値を代入して、50%負極性雷インパルスフラッシオーバ電圧V50を求め、V0/V50から耐雷ホーン懸垂S1の場合の臨界通絡電圧V0および耐雷ホーン耐張S2の場合の臨界通絡電圧V0をそれぞれ求める。
例えば、アークホーン間隔YがY=0.56mであるときは、V50=514kVとなる。以上から臨界通絡電圧V0は、懸垂装置では514kV・3.5倍≒ 1700kV、耐張装置では、514・2.6倍≒ 1,300kVとなる。
懸垂装置と耐張装置とでは、臨界通絡電圧V0が違っているが、懸垂装置は両側にアークホーンが設置されており、がいしへの沿面放電が起こりにくいことから電圧値が高いが、耐張装置はアークホーンが片側のみに設置されていることから、懸垂装置よりも沿面放電が起こりやすいことによる。
図5は、本発明の実施の形態における判断基準1を実際の送電線雷事故に適用した判定結果のグラフである。縦軸はがいし間電圧Vであり横軸は雷撃電流Iである。グラフ中の白丸は被害あり黒丸は被害無しである。本発明の実施の形態における判断基準1は、雷サージによるがいし間電圧Vが臨界通絡電圧V0(1300kV)よりも大きい場合に、がいしへの被害の可能性ありと判断する。
事故総数178件のうち、がいしへの被害の可能性ありと判別できるのは3件であり、その他の場合には判別できない。図5に示すように、雷サージによるがいし間電圧Vが臨界通絡電圧V0(1300kV)よりも小さい値でも設備被害が発生している。これは、落雷位置標定システム15での推定電流値にばらつきが多く雷撃電流値の予測式にも誤差があり雷撃電流値の信頼性が落ちること、臨界通絡電圧V0を50%フラッシオーバ電圧V50を用いて算出しているのでばらつきがあること等が考えられる。一方、雷サージによるがいし間電圧Vが臨界通絡電圧V0(1300kV)よりも大きい値でも設備被害が発生していない場合がある。これは、がいしで沿面放電しても必ずしもがいしが損傷するとは限らないこと等が考えられる。
従って、がいし間の臨界通絡電圧V0だけでは必ずしも精度の良い判定は困難であるが、臨界通絡電圧V0(1300kV)よりも小さい値での設備被害のほとんどは絶縁低下に問題のないアーク痕の軽微な被害であるので、がいし間の臨界通絡電圧V0を絶縁低下が生じるがいしへの被害の判定基準として用いることができる。
<判断基準2>
次に、判断基準2について説明する。判断基準2は、アーク電流とアーク電流継続時間ががいし破損限界値を逸脱したか否かであり、アーク電流とアーク電流継続時間との関係による判定である。がいしが沿面放電してもがいしが必ずしも被害を受けないことから、がいしの破損は雷撃によりがいし間に逆フラッシオーバが発生し、その後にがいし沿面に流れる続流が原因であると考えられる。
そこで、アーク電流およびアーク電流継続時間が予め定められたがいし破損限界値を逸脱したときは、がいしに被害が発生している可能性ありと判断することとした。この場合のがいしの被害はがいしの笠欠けの発生であるので、がいし破損限界値は、がいし笠欠け境界曲線によって定めることとした。また、アーク電流値は総合記録装置16からの故障電流(零相電流値I0または短絡電流値)を適用し、アーク電流継続時間は、事故継続時間Ftを適用する。
すなわち、アーク電流判定手段21は総合記録装置16から記憶部12に記憶された故障電流(零相電流値I0または短絡電流値)および事故継続時間Ftを入力し、故障電流(零相電流値I0または短絡電流値)をアーク電流とし、事故継続時間Ftをアーク電流継続時間として、アーク電流とアーク電流継続時間とががいし破損限界値を逸脱したか否かを判定する。
図6は、本発明の実施の形態における判断基準2を耐アークがいしに適用した判定結果のグラフである。縦軸はアーク電流であり横軸はアーク電流継続時間Ftである。グラフ中の白丸は被害あり黒丸は被害無しである。また、S3はがいしの笠欠け境界曲線(がいし破損限界値)である。本発明の実施の形態における判断基準2では、アーク電流とアーク電流継続時間Ftとの交点が笠欠け境界曲線S3以下の領域E1以外であるときに、がいしへの被害の可能性ありと判断する。実際に、がいしの被害があったのは白丸の8件であり、領域E1以外の領域で5件であった。領域E1内で3件であった。
図7は、本発明の実施の形態における判断基準2を普通素地がいしに適用した判定結果のグラフである。図6と同様に、縦軸はアーク電流であり横軸はアーク電流継続時間Ftである。グラフ中の白丸は被害あり黒丸は被害無しである。また、S3はがいしの笠欠け境界曲線(がいし破損限界値)である。本発明の実施の形態における判断基準2では、アーク電流とアーク電流継続時間Ftとの交点が笠欠け境界曲線S3以下の領域E2以外であるときに、がいしへの被害の可能性ありと判断するので、領域E2以外の領域のものは、すべて被害ありと判定する。実際に、がいしの被害があったのは白丸の3件であり、いずれも領域E2以外の領域であった。
以上のように、笠欠け境界曲線S3を超過または笠欠け境界曲線S3の範囲外となった雷事故において、がいし被害の判別ができる。従って、アーク電流とアーク電流継続時間との関係により、笠欠け境界曲線を用いてがいし被害の判定基準とすることができる。
<判断基準3>
判断基準3について説明する。判断基準3は、雷に関する情報のうちの事故様相が複数の電力線の地絡を示す場合、落雷した鉄塔の接地抵抗が所定値以上の場合、または落雷した雷の極性が正極性の場合に、がいしに被害が発生している可能性ありと判断するようにしたものであり、判断基準1、2を補充するために設けたものである。
(a)事故様相
判断基準1によるがいし間電圧Vの臨界通絡電圧V0による判定において、計算に用いた雷撃電流Iは落雷位置標定システム15で標定した推定電流を換算式を用いて計算しているので、ばらつきが大きく、必ずしも実際の雷撃電流を推定しているとはいえない。従って、落雷位置標定システム15で得られた推定電流が小さい場合でも実際の雷撃電流が大きい場合がある。そこで、実際に発生した事故様相が複数の電力線で地絡している場合には、雷撃電流が大きいことに着目し、雷撃電流が大きいほど地絡した電力線数が多くなることから、複数の電力線が地絡した場合にはがいし被害の可能性ありと判定することとした。
すなわち、事故様相判定手段21は記憶部12に記憶された総合記録装置16からの事故様相を入力し、複数の電力線が地絡を示す場合にはがいし被害の可能性ありと判定する。例えば、鉄塔25において並行2回線(6線の電力線)を支持している場合、一回線三線のうちの三線が地絡するような雷事故の場合や、その6線の電力線のうちの複数の電力線が地絡するような雷事故の場合には、送電線路に臨界通絡電圧V0を超過する電圧が加わる可能性がある。従って、判断基準1で雷撃電流Iが小さく演算された場合であっても、複数の電力線が地絡している場合にはがいし被害の可能性ありと判定することとした。
(b)鉄塔接地抵抗
鉄塔接地抵抗Z2は、判断基準1によるがいし間電圧Vの臨界通絡電圧V0による判定において計算に用いており、鉄塔接地抵抗Z2が大きい場合には、がいし間電圧Vが高くなる傾向にある。そこで、鉄塔接地抵抗Z2が所定値、例えば10Ω以上の鉄塔25については、その鉄塔25に落雷した場合には、がいし間電圧Vへの影響が大きいため、がいし被害の可能性ありと判定することとした。
鉄塔接地抵抗判定手段23は、落雷の発生した鉄塔25の鉄塔接地抵抗Z2を記憶部12から取り出し、その鉄塔接地抵抗Z2が所定値を超えるか否かを判定する。そして、落雷の発生した鉄塔25の鉄塔接地抵抗Z2が所定値を超えるときは、がいし被害の可能性ありと判定する。
(C)落雷の極性
落雷の極性には正極性と負極性とがあり、正極性の落雷は一般に電荷量が大きいため、がいしが破損する懸念がある。そこで、正極性である場合には、がいし被害の可能性ありと判定することとした。雷極性判定手段24は、落雷位置標定システム15から入力され記憶部12に記憶された落雷の極性を入力し落雷の極性を判定する。そして、正極性である場合には、がいし被害の可能性ありと判定する。
なお、上述した実施の形態において記載した手法は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、記憶媒体に記憶し各装置に応用したり、通信媒体により伝送して各種装置に適用することも可能である。
本発明における記憶媒体としては、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク(CD−ROM、CD−R、DVDなど)、光磁気ディスク(MOなど)、半導体メモリなど、プログラムを記憶でき、かつコンピュータが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式はいずれの形態であっても良い。また、ここで記憶媒体とは、コンピュータと独立した媒体に限らず、LANやインターネットなどにより伝送されたプログラムをダウンロードして記憶または一時記憶した記憶媒体も含まれる。
本発明の実施の形態に係わるがいし被害判定装置のブロック構成図。 本発明の実施の形態に係わるがいし被害判定装置の推定手段の詳細ブロック図。 鉄塔に落雷した場合の電気的特性を示す説明図。 がいしのアークホーン効率(Y/Y0)と、臨界通絡電圧V0/50%雷インパルスフラッシオーバ電圧V50(%)との関係を示した特性図。 本発明の実施の形態における判断基準1を実際の送電線雷事故に適用した判定結果のグラフ。 本発明の実施の形態における判断基準2を耐アークがいしに適用した判定結果のグラフ。 本発明の実施の形態における判断基準2を普通素地がいしに適用した判定結果のグラフ。
符号の説明
10…がいし被害判定装置、11…情報入力処理手段、12…記憶部、13…推定手段、14…入出力処理手段、15…落雷位置標定システム、16…総合記録装置、17…入力装置、18…表示装置、19…がいし間電圧演算手段、20…がいし間電圧判定手段、21…アーク電流判定手段、22…事故様相判定手段、23…鉄塔接地抵抗判定手段、24…雷極性判定手段、25…鉄塔、26…架空地線、27…大地

Claims (5)

  1. 雷に関する情報を収集し入力する情報入力処理手段と、前記情報入力処理手段で収集した雷に関する情報に基づいて送電用のがいしに被害が発生しているか否かを推定する推定手段と、前記推定手段での推定結果や前記推定手段の演算に必要な情報を入出力処理する入出力処理手段とを備えたことを特徴とするがいし被害判定装置。
  2. 前記推定手段は、雷に関する情報のうち少なくとも鉄塔への雷撃電流に基いて雷サージによるがいし間電圧を演算し、得られたがいし間電圧ががいし沿面で放電する臨界通絡電圧値より大きいときは、がいしに被害が発生している可能性ありと判断することを特徴とする請求項1記載のがいし被害判定装置。
  3. 前記推定手段は、雷に関する情報のうちがいしへのアーク電流およびアーク電流継続時間が予め定められたがいし破損限界値を逸脱したときは、がいしに被害が発生している可能性ありと判断することを特徴とする請求項1または2記載のがいし被害判定装置。
  4. 前記推定手段は、雷に関する情報のうちの事故様相が、複数の電力線の地絡を示す場合、落雷した鉄塔の接地抵抗が所定値以上の場合、または落雷した雷の極性が正極性の場合に、がいしに被害が発生している可能性ありと判断することを特徴とする請求項3記載のがいし被害判定装置。
  5. コンピュータを、雷に関する情報を収集し入力する手段と、雷に関する情報のうちの少なくとも鉄塔への雷撃電流に基いて雷サージによるがいし間電圧を演算する手段と、得られたがいし間電圧ががいし沿面で放電する臨界通絡電圧値より大きいときはがいしに被害が発生している可能性ありと判断する手段と、雷に関する情報のうちがいしへのアーク電流およびアーク電流継続時間が予め定められたがいし破損限界値を逸脱したときはがいしに被害が発生している可能性ありと判断する手段と、雷に関する情報のうちの事故様相が複数の電力線の地絡を示す場合にがいしに被害が発生している可能性ありと判断する手段と、落雷した鉄塔の接地抵抗が所定値以上の場合にがいしに被害が発生している可能性ありと判断する手段と、落雷した雷の極性が正極性の場合にがいしに被害が発生している可能性ありと判断する手段として機能させるためのがいし被害判定プログラム。
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