JP2007018031A - 筋骨格モデル作成方法、プログラム、記録媒体および筋骨格モデル作成装置 - Google Patents

筋骨格モデル作成方法、プログラム、記録媒体および筋骨格モデル作成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】人体をコンピュータ上において表現する筋骨格モデルをコンピュータ上において作成する技術において、現実の人体の体型の変化をより精度よく反映しつつより効率よく筋骨格モデルをスケーリングする。
【解決手段】筋骨格モデルは、各骨を表現する各剛体セグメントごとに、関節の位置を定義する関節点Cと、筋が各骨に付着する付着位置を定義する付着点Aと、筋が各骨の付着位置から別の骨に向かって延びる筋走行を規定する経由点Bとを有する。人体についての特定の体型のもとに予め作成された筋骨格モデルをマスタモデルとして、入力されたスケーリング倍率kのもとに座標変換することにより、別の体型の人体を表現する筋骨格モデルを作成するために、関節点および付着点の各座標値に対しては、入力されたスケーリング倍率のもとに、座標変換(狭義のスケーリング)を行い、経由点の座標値に対しては、その座標変換とは異なる座標変換(関節点と一体的な並進運動)を行う。
【選択図】図26

Description

本発明は、人体をコンピュータ上において表現する筋骨格モデルを作成する技術に関するものであり、特に、筋骨格モデルをスケーリングする技術に関するものである。
人体の挙動をコンピュータ上において表示したり解析する技術が既に存在する。この技術は、例えば、特許文献1に開示されているように、車両衝突時に乗員に生ずる変形をコンピュータ上においてシミュレーションによって解析するために実施される。
いずれにしても、人体の挙動をコンピュータ上において表示したり解析するために、人体を、全体的であるか局部的であるかを問わず、コンピュータ上において表現する人体モデルが使用される。
この種の人体モデルの一例として、筋骨格モデルが既に存在する。この筋骨格モデルは、人体をコンピュータ上において表現するための人体モデルである。人体においては、複数の骨が関節において回動可能に互いに連結されるとともに、その関節を跨いで延びる筋によってそれら複数の骨が回動可能に互いに結合されている。
この筋骨格モデルは、一般に、人体における複数の骨をそれぞれ表現する複数の剛体セグメントを含むように作成される。この筋骨格モデルは、一般に、さらに、各剛体セグメントごとに、各剛体セグメントに付随する複数の定義点が設定されるように作成される。それら定義点は、一般に、関節の位置を定義する関節点と、筋が各骨に付着する付着位置を定義する付着点と、筋が各骨の付着位置から別の骨に向かって延びる筋走行を規定する経由点とを含んでいる。
特開2002−149719号公報
この種の筋骨格モデルをコンピュータ上において作成するために、筋骨格モデル作成方法がコンピュータによって実行される。一方、筋骨格モデルは、人体の唯一の体型について唯一存在すれば常に足りるとは限らず、例えば、各体型ごとに筋骨格モデルが必要である場合がある。例えば、各体型ごとに人体の挙動を表示したり解析することが必要である場合があるからである。
各体型ごとに筋骨格モデルを作成可能とするために、筋骨格モデル作成方法の一形式によれば、人体についての特定の体型のもとに予め作成された筋骨格モデルがマスタモデルとされ、そのマスタモデルが、入力されたスケーリング倍率のもとに座標変換され、それにより、別の体型を有する人体を表現する別の筋骨格モデルが作成される。
この形式の筋骨格モデル作成方法によれば、各体型ごとに最初から筋骨格モデルを作成する形式の筋骨格モデル作成方法を実行する場合より、目標とする体型を有する人体を表現する筋骨格モデルを効率よく作成することが容易となる。
この形式の筋骨格モデル作成方法の一具体例によれば、マスタモデルが各剛体セグメントごとにスケーリングされる。そのスケーリングにおいては、各剛体セグメントごとに、各剛体セグメントに付随する複数の定義点が、互いに共通する規則に従ってそれぞれ座標変換される。
この具体例においては、各剛体セグメントが、対応する剛体基準座標系によって記述される。各剛体セグメントには、剛体基準位置(例えば、各剛体セグメントの重心位置に一致する。)が設定されており、その剛体基準位置と一致する原点位置を有するように上記剛体基準座標系が定義される。
この具体例においては、各定義点の位置が、対応する剛体セグメントの剛体基準座標系の原点を起点として、その剛体基準座標系の各軸方向に、指定されたスケーリング倍率のもとに、原点に対して接近または離間させられる。これにより、各定義点の位置が、剛体基準座標系上においてスケーリングされる。
しかしながら、本発明者らは、この具体例では、マスタモデルのスケーリングを、現実の人体の体型の変化を正確に反映するように行うことが困難であることに気がついた。以下、具体的に説明する。
現実の人体においては、それの体型が変化すると、それに伴って骨の大きさ(例えば、長さ)が変化し、ひいては、その骨に固定的に設定される関節点および付着点のそれぞれの位置が変化する。したがって、この具体例であっても、関節点および付着点の位置については、現実の人体の体型の変化を正確に反映するように筋骨格モデルを作成することが容易である。
この具体例においては、筋骨格モデルにおける経由点の位置が、関節点と同じ規則に従ってスケーリングされるため、経由点の、関節点に対する相対位置が、スケーリングの有無によって変化する。
ところで、筋骨格モデルにおいては、経由点の、関節点に対する相対位置の変化は、それら経由点と関節点との距離、すなわち、その経由点を通過する筋と関節の回転軸との距離に影響を及ぼす。それら筋と関節の回転軸との距離は、一般に、筋モーメントアームと称され、筋に作用する筋力(軸力)を原因として関節に作用する関節トルクを人体モデルを用いて精度よく解析するために重要な物理量である。
けだし、筋力の大きさが同じであっても、筋モーメントアームの長さが変化すれば、関節トルクの大きさが変化するというように、関節トルクは、筋力のみならず筋モーメントアームにも依存するからである。このことは、関節トルクが、経由点の、関節点に対する相対位置に依存することを意味する。
実験的には、この筋モーメントアームという物理量は、現実の人体の体型が変化しても、関節点および付着点ほどに敏感に変化しない。この筋モーメントアームは、現実の人体の体型の変化範囲が通常の範囲(例えば、成人についての一般的な体型の変化可能範囲)にある限り、むしろほとんど変化しない物理量であるといえる。
それにもかかわらず、この具体例によれば、筋骨格モデルにおいて経由点の位置が、関節点および付着点と同じ規則に従ってスケーリングされ、その結果、経由点の、関節点に対する相対位置が変化する。そのため、この具体例では、関節角度に対する筋モーメントアームの変化の傾向が、現実の人体の体型の変化にかかわらず、ほとんど変化しないという現実を精度よく表現するように、経由点の位置をモデル化することが困難である。
以上説明した事情を背景として、本発明は、人体をコンピュータ上において表現する筋骨格モデルを作成する技術であって、現実の人体の体型の変化をより精度よく反映しつつより効率よく筋骨格モデルをスケーリングする技術を提供することを課題としてなされたものである。
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
(1) 複数の骨が関節において回動可能に互いに連結されるとともにその関節を跨いで延びる筋によって前記複数の骨が回動可能に互いに結合されて成る人体をコンピュータ上において表現する筋骨格モデルを作成するためにコンピュータによって実行される筋骨格モデル作成方法であって、
前記筋骨格モデルは、前記複数の骨をそれぞれ表現する複数の剛体セグメントを含むとともに、各剛体セグメントごとに、各剛体セグメントに付随する複数の定義点が設定され、かつ、それら定義点は、前記関節の位置を定義する関節点と、前記筋が各骨に付着する付着位置を定義する付着点と、前記筋が各骨の付着位置から別の骨に向かって延びる筋走行を規定する経由点とを含み、
当該筋骨格モデル作成方法は、前記人体についての特定の体型のもとに予め作成された筋骨格モデルをマスタモデルとして、入力されたスケーリング倍率のもとに座標変換することにより、別の体型の人体を表現する筋骨格モデルを作成するために前記コンピュータによって実行され、
当該筋骨格モデル作成方法は、
前記スケーリング倍率を入力する倍率入力工程と、
前記関節点の座標値に対し、前記入力されたスケーリング倍率のもとに、第1の座標変換を行う第1座標変換工程と、
前記経由点の座標値に対し、前記第1の座標変換とは異なる第2の座標変換を行う第2座標変換工程と、
前記付着点の座標値に対し、前記入力されたスケーリング倍率のもとに、前記第1の座標変換と同じ第3の座標変換を行う第3座標変換工程と
を含む筋骨格モデル作成方法。
この方法においては、マスタモデルのスケーリングが、各剛体セグメントごとに、関節点の位置と、経由点の位置と、付着点の位置とについて行われる。具体的には、関節点の座標値と付着点の座標値とに対してはそれぞれ、入力されたスケーリング倍率のもとに、互いに共通する規則に従って座標変換が行われる。これに対し、経由点の座標値に対して、それら関節点および付着点の座標値に対する座標変換とは異なる座標変換が行われる。
したがって、この方法によれば、マスタモデルのスケーリングにおいて経由点の位置が変更される際にその位置が従うべき規則を、関節点および付着点の位置が変更される際にその位置が従うべき規則から独立して設定することが可能となる。よって、この方法によれば、経由点の位置に依存する筋モーメントアームの如き、筋骨格モデル上の物理量が現実の人体の特性をより正確に反映するように、筋骨格モデルを作成することが可能となる。
なお付言するに、本項に係る方法は、上述の座標変換を含むスケーリングがマスタモデルに対してのみ行われる態様で実施したり、マスタモデルがスケーリングされた別の筋骨格モデルに対しても行われる態様で実施することが可能である。
(2) 前記複数の骨は、前記筋により、前記関節の回転軸まわりに回動可能に互いに結合されており、
前記第2の座標変換は、前記関節の回転軸と前記筋走行との距離として定義される筋モーメントアームの長さが、前記スケーリング倍率の大小を問わず、実質的に維持されるように行われる(1)項に記載の筋骨格モデル作成方法。
この方法によれば、前記第2の座標変換が、前記関節点の位置に対し、前記関節の回転軸と前記筋走行との距離として定義される筋モーメントアームの長さが、前記スケーリング倍率の大小を問わず、実質的に維持されるようにするように行われる。
したがって、この方法によれば、現実の人体においてそれの体型の変化にかかわらず筋モーメントアームがほとんど変化しないという性質がより正確に反映されるように、マスタモデルにおける経由点の位置を変更して別の筋骨格モデルを作成することが可能となる。
(3) 前記複数の剛体セグメントは、各剛体セグメントごとに、剛体基準位置を割り当てられるとともに、その剛体基準位置を原点とする剛体基準座標系によって記述されており、
前記第1の座標変換は、前記入力されたスケーリング倍率のもとに、前記関節点を、前記剛体基準位置を起点として、前記剛体基準座標系の各軸方向に、前記剛体基準位置に対して接近または離間させるために実行され、
前記第2の座標変換は、前記経由点を、前記関節点と一体的に、その関節点の移動方向に実質的に平行な方向に移動させるために実行され、
前記第3の座標変換は、前記入力されたスケーリング倍率のもとに、前記付着点を、前記剛体基準位置を起点として、前記剛体基準座標系の各軸方向に、前記剛体基準位置に対して接近または離間させるために実行される(2)項に記載の筋骨格モデル作成方法。
この方法においては、マスタモデルのスケーリングのために、関節点および付着点がいずれも、前記入力されたスケーリング倍率のもとに、対応する剛体セグメントの剛体基準位置を起点として、前記剛体基準座標系の各軸方向に、前記剛体基準位置に対して接近または離間させられる。
このことは、関節点については、マスタモデルのスケーリングにより、入力されたスケーリング倍率のもとに、剛体基準位置から放射して関節点を通過する一放射線に沿って関節点が移動させられることを意味し、一方、付着点については、入力されたスケーリング倍率のもとに、剛体基準位置から放射して付着点を通過する一放射線に沿って付着点が移動させられることを意味する。
本項に係る方法においては、さらに、マスタモデルのスケーリングのために、経由点が、関節点と一体的に、その関節点の移動方向に実質的に平行な方向に移動させられる。このことは、マスタモデルのスケーリングのために、経由点が、関節点と一体的に並進運動させられることを意味する。
一般に、1つの関節を跨いで延びる筋の経路すなわち筋走行は、その関節の位置を表す関節点から離間した2つの経由点によって規定される。筋走行は、それら2つの経由点を通過するように、関節を跨いで延びている。
それら2つの経由点と1つの関節点とは、1つの三角形の3つの頂点にそれぞれ該当する。その三角形を構成する3辺のうち、それら2つの経由点を通過する1つの辺と、その三角形の3つの頂点のうち1つの関節点に一致する1つの頂点との距離(その頂点を通過して上記辺と交わる垂線の長さ)が、前述の筋モーメントアームの長さに相当する。
本項に係る方法によれば、それら2つの経由点がいずれも、それらに共通する1つの関節点と一体的に、その関節点の移動方向(前述の第1の座標変換による関節点の移動方向)に移動させられる。このことは、関節点の移動に伴い、上述の三角形が、変形を伴うことなく、並進移動させられることを意味し、このことは、関節点の移動の前後を通じて、上述の三角形の上述の垂線の長さが一定であることを意味する。
したがって、本項に係る方法によれば、マスタモデルのスケーリングの前後を通じて、筋モーメントアームの長さが維持されるように、経由点が移動させられて筋骨格モデルが作成される。
(4) 前記関節点は、関節点座標系によって記述され、その関節点座標系に対して前記第1の座標変換が行われることにより、前記関節点に対して前記第1の座標変換が行われ、
前記第2座標変換工程は、
前記剛体基準座標系を、前記第1の座標変換が行われる前における前記関節点座標系に変換するために、前記剛体基準座標系によって記述される任意の位置ベクトルに作用させられる座標変換行列をスケーリング前座標変換行列として算出する第1の工程と、
前記剛体基準座標系を、前記第1の座標変換が行われた後における前記関節点座標系に変換するために、前記剛体基準座標系によって記述される任意の位置ベクトルに作用させられる座標変換行列をスケーリング後座標変換行列として算出する第2の工程と、
前記算出されたスケーリング前座標変換行列とスケーリング後座標変換行列とを、前記第2の座標変換前における前記経由点の位置を表す変換前経由点位置ベクトルに作用させることにより、前記第2の座標変換後における前記経由点の位置を表す変換後経由点位置ベクトルを算出する第3の工程と
を含む(3)項に記載の筋骨格モデル作成方法。
この方法によれば、前記(3)項における「第2座標変換工程」の一具体的態様が提供される。
この方法における「第3の工程」の一具体的態様においては、前記算出されたスケーリング前座標変換行列と、前記算出されたスケーリング後座標変換行列の逆行列との積が、変換前経由点位置ベクトルに作用させられることにより、変換後経由点位置ベクトルが算出される。
(5) さらに、
前記複数の骨が前記関節において成す関節角度を入力する関節角度入力工程と、
その入力された関節角度に基づき、前記経由点の位置を変更する位置変更工程と
を含む(1)ないし(4)項のいずれかに記載の筋骨格モデル作成方法。
この方法によれば、同じ筋骨格モデルにおいて、ある関節の関節角度に基づいて経由点の位置が変更されるように、筋骨格モデルが作成される。
したがって、この方法によれば、同じ筋骨格モデルにおいて、ある関節の関節角度に基づいて筋モーメントアームの長さを変化させることが可能となる。
(6) 前記経由点は、前記関節角度に依存しない基準位置を有し、
前記位置変更工程は、前記経由点の、前記基準位置からの移動量を、前記入力された関節角度に基づいて変更することにより、前記経由点の位置を変更する移動量変更工程を含み、
前記第2座標変換工程は、前記第2の座標変換を、前記基準位置に対して行う一方、前記移動量に対しては行わない基準位置座標変換工程を含む(5)項に記載の筋骨格モデル作成方法。
この方法においては、経由点の位置を関節角度に基づいて変更するために、経由点の位置の成分が、基準位置と、その基準位置からの移動量とに分解されて定義される。基準位置は、関節角度とは無関係に決定されるのに対し、移動量は、関節角度に基づいて変更するように決定される。
このように、この方法においては、経由点の位置の成分が、基準位置と移動量とに分解されて定義されたうえで、それら基準位置と移動量とのうち基準位置に対してのみ第2の座標変換が行われる。
その結果、この方法によれば、筋骨格モデルにおける関節角度に対する筋モーメントアームの変化が、関節角度に対する移動量の変化のみによって実現され、その移動量は、スケーリングの影響を受けない。
したがって、この方法によれば、筋骨格モデルにおいて、関節角度に対する筋モーメントアームの変化が、スケーリングの有無を問わず、同じ特性を有するように表現される。
(7) (1)ないし(6)項のいずれかに記載の筋骨格モデル作成方法を実施するためにコンピュータによって実行されるプログラム。
このプログラムがコンピュータにより実行されれば、前記(1)ないし(6)項のいずれかに係る方法におけると基本的に同じ原理に従い、同様な作用効果が実現され得る。
本項に係るプログラムは、それの機能を果たすためにコンピュータにより実行される指令の組合せのみならず、各指令に従って処理されるファイルやデータをも含むように解釈することが可能である。
また、このプログラムは、それ単独でコンピュータにより実行されることにより、所期の目的を達するものとしたり、他のプログラムと共にコンピュータにより実行されることにより、所期の目的を達するものとすることができる。後者の場合、本項に係るプログラムは、データを主体とするものとすることができる。
(8) (7)項に記載のプログラムをコンピュータ読取り可能に記録した記録媒体。
この記録媒体に記録されているプログラムがコンピュータにより実行されれば、前記(1)ないし(6)項のいずれかに係る方法と同じ作用効果が実現され得る。
この記録媒体は種々な形式を採用可能であり、例えば、フレキシブル・ディスク等の磁気記録媒体、CD、CD−ROM等の光記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、ROM等のアンリムーバブル・ストレージ等のいずれかを採用し得る。
(9) 複数の骨が関節において回動可能に互いに連結されるとともにその関節を跨いで延びる筋によって前記複数の骨が回動可能に互いに結合されて成る人体をコンピュータ上において表現する筋骨格モデルを作成する筋骨格モデル作成装置であって、
前記筋骨格モデルは、前記複数の骨をそれぞれ表現する複数の剛体セグメントを含むとともに、各剛体セグメントごとに、各剛体セグメントに付随する複数の定義点が設定され、かつ、それら定義点は、前記関節の位置を定義する関節点と、前記筋が各骨に付着する付着位置を定義する付着点と、前記筋が各骨の付着位置から別の骨に向かって延びる筋走行を規定する経由点とを含み、
当該筋骨格モデル作成装置は、前記人体についての特定の体型のもとに予め作成された筋骨格モデルをマスタモデルとして、入力されたスケーリング倍率のもとに座標変換することにより、別の体型の人体を表現する筋骨格モデルを作成し、
当該筋骨格モデル作成装置は、
前記スケーリング倍率を入力する倍率入力部と、
前記関節点の座標値に対し、前記入力されたスケーリング倍率のもとに、第1の座標変換を行う第1座標変換部と、
前記経由点の座標値に対し、前記第1の座標変換とは異なる第2の座標変換を行う第2座標変換部と、
前記付着点の座標値に対し、前記入力されたスケーリング倍率のもとに、前記第1の座標変換と同じ第3の座標変換を行う第3座標変換部と
を含む筋骨格モデル作成装置。
この装置によれば、前記(1)項に係る方法におけると基本的に同じ原理に従い、同様な作用効果が実現され得る。
この装置は、前記(2)ないし(6)項のいずれかに記載の特徴的技術と組み合わせて実施することが可能である。
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態の一つを図面に基づいて詳細に説明する。
図1には、本発明の一実施形態に従う筋骨格モデル作成方法を含む操作性評価方法を実施するのに好適な操作性評価装置10のハードウエア構成が概念的にブロック図で表されている。
この操作性評価装置10は、車両において人間である操作者が対象物(例えば、ブレーキペダル)を操作する挙動をコンピュータ20上で表現し得る人間物理モデルを用いることにより、その操作者による対象物の操作性を数値解析し、その結果を利用して設計者による対象物の設計を支援するために設けられている。
人体においては、複数の骨が関節において回動可能に互いに連結されるとともに、その関節を跨いで延びる筋によってそれら複数の骨が回動可能に互いに結合されている。このように構成された人体をコンピュータ上において表現するのが、人間物理モデルすなわち人体モデルである。
図1に示すように、この操作性評価装置10は、コンピュータ20に入力装置22と出力装置24とが接続されることによって構成されている。コンピュータ20は、よく知られているように、プロセッサ30とストレージ32とがバス34によって互いに接続されて構成されている。コンピュータ20においては、必要なプログラムがストレージ32から読み出されてプロセッサ30によって実行され、その際、その実行に必要なデータがストレージ32から読み込まれるとともに、その実行結果を表すデータが必要に応じてストレージ32に格納されて保存される。
入力装置22は、例えば、図示しないが、ポインティング・デバイスとしてのマウスとキーボードとを含むように構成される。出力装置24は、図示しないが、文字、図形等の画像を画面上に表示するモニタを含むように構成される。
図1に示すように、ストレージ32には、プログラムメモリ40とデータメモリ42とが設けられている。プログラムメモリ40には、骨格モデル作成プログラム、筋骨格モデル作成プログラム、操作性解析プログラムおよび設計支援プログラムを始めとする各種プログラムが予め記憶されている。データメモリ42には、コンピュータ20上において人体全身を3次元的に表現する複数種類の人間物理モデルを定義するためのモデルデータがストアされる。このデータメモリ42には、さらに、前記対象物を表現する対象物物理モデルを定義するためのモデルデータもストアされる。
それら複数種類の人間物理モデルは、有限要素人体モデルと、多関節剛体セグメントモデルである骨格モデルと、同じく多関節剛体セグメントモデルである筋骨格モデルとを含んでいる。
有限要素人体モデルは、人体を複数の有限要素(以下、単に「要素」という。)に分割することにより、人体を近似的に再現するためのモデルである。この有限要素人体モデルは、そもそも、人体の挙動を有限要素法によってシミュレーション解析するために用いられるが、本実施形態においては、骨格モデルを0からではなく、有限要素人体モデルを利用して作成することにより、骨格モデルの作成効率向上および作成時間短縮を目的にして有限要素人体モデルが利用される。
この有限要素人体モデルに対し、骨格モデルおよび筋骨格モデルとしての多関節剛体セグメントモデルは、機構モデルともいわれ、複数の剛体セグメントが複数の関節まわりに回動可能に連結されることにより、人体の形状よりむしろその動作を再現するためのモデルである。
有限要素人体モデルにおいては、人体の各組織が複数の要素によって表現されており、各要素の形状、密度、材料物性値等、属性が定義されている。各要素を構成する複数の節点の位置(幾何学量の一例)や材料物性値などの物理量は、すべて唯一のグローバル座標系において定義されている。
この有限要素人体モデルにおいては、人体全身が骨格組織のみならず靭帯、腱、筋肉等の結合組織に関してもモデル化されることにより、人体全身が、それの解剖学的な形状と構造と特性とに関して忠実に表現されている。その結果、各部位の、外力に対する物理的な応答が精度よく表現されている。
さらに、この有限要素人体モデルは、それの少なくとも1つの部位の形状、位置、機構学的特性および力学的特性の少なくとも1つを定義する可変パラメータを有するものとされており、その可変パラメータが、操作性解析に先立ち、ユーザである設計者または解析者により特定される。
図2には、有限要素人体モデルが、人体の下肢部のみに関し、斜視図で示されている。図2に示すように、この有限要素人体モデルは、人体の骨格のみならず筋および皮膚等の軟組織をも再現している。この有限要素人体モデルにおける下肢部は、腰部100と、左右の大腿部102,102と、左右の脛部104,104と、左右の足部106,106とに分割されている。
図3には、骨格モデルが、有限要素人体モデルのうち図2に示す部分に対応する部分に関し、斜視図で示されている。図3に示すように、この骨格モデルは、人体のうち骨格のみを再現している。この骨格モデルにおける下肢部は、腰骨110と、左右の大腿骨112,112と、左右の脛骨114,114と、左右の腓骨116,116と、左右の足骨118,118とに分割されている。各足骨118は、細かい骨の結合体である。
この骨格モデルにおいては、人体の各組織が複数の剛体セグメントによって表現され、それら剛体セグメントが関節において回動可能に互いに連結されている。それら剛体セグメントは、腰骨110と、左右の大腿骨112,112と、左右の脛骨114,114と、左右の腓骨116,116と、左右の足骨118,118とを含んでいる。
各剛体セグメントの形状の表面は、ポリゴンによって構成されている。ポリゴン上における複数個の頂点は、そのポリゴンのベースとなった複数の要素上における複数個の節点によって構成される。よって、各剛体セグメントの形状は、対応するポリゴンデータによって表されている。各剛体セグメントごとにローカル座標系が割り当てられており、そのローカル座標系において、対応する剛体セグメントの質量、慣性モーメントおよびポリゴンの位置が定義される。
図4には、筋骨格モデルが、骨格モデルのうち図3に示す部分に対応する部分に関し、斜視図で示されている。図4に示すように、この筋骨格モデルは、図3に示す骨格モデルに筋がワイヤ要素(図4において太い実線で示す。)として付加されて構成されることにより、人体のうち骨格および筋のみを再現している。すなわち、この筋骨格モデルは、上述の骨格モデルと、ワイヤ要素として構成される筋モデル(筋要素モデル)とが合成されたものなのである。
この筋骨格モデルにおいては、各筋が、対応する骨への付着点(骨に対する相対移動が阻止される位置であり、図4において黒丸で示す。)と、対応する骨に貼り付けられる際に各筋が付着点間の途中において経由する点(骨に対し、筋の延びる方向における相対移動は許容されるが、それと交差する方向における相対移動は阻止される位置であり、図4において黒丸で示す。)とに関して定義される。解剖学的には、筋が骨の表面に付着させられるため、各筋モデルも同様に、各剛体モデル(骨要素モデル)の表面に付着させられる。
図5には、操作性評価装置10が、それによって実現される機能に着目してブロック図で概念的に表されている。この操作性評価装置10は、人間物理モデル作成手段200と対象物物理モデル作成手段202と操作性解析手段204と設計支援手段205とを含んでいる。
図5には、操作性解析手段204が、それによって実現される機能に着目してブロック図で概念的に表されており、図6には、この操作性解析手段204が、さらに詳しくブロック図で概念的に表されている。図6には、さらに、設計支援手段205も、それによって実現される機能に着目してブロック図で概念的に表されている。
ただし、図6には、説明の便宜上、操作性解析手段204が、人間および対象物のいずれについても、剛性と粘性とのうちの剛性のみを解析する態様で示されており、また、設計支援手段205が、対象物の剛性と粘性とのうちの剛性のみにつき、設計者による対象物の設計を支援する態様で示されている。
図7には、互いに機械的に接触する人間と対象物(例えば、機械)との間に存在する複数の座標空間が概念的に表されている。それら座標空間は、人間から対象物に向かって、人間の筋が存在する筋空間、人間の挙動(例えば、変位q、変位速度、変位加速度等)を表す一般化座標が存在する人間一般化座標空間、人間のうち、対象物との接触点が存在する人間接触点空間、仮想空間である接触伝達空間、対象物のうち、人間との接触点が存在する対象物接触点空間、および対象物の挙動(例えば、変位q、変位速度、変位加速度等)を表す一般化座標が存在する対象物一般化座標空間である。
図7には、さらに、互いに隣接した座標空間間において座標変換を行うための行列J,Hおよびが示されている。それら記号の定義は後に詳述する。例えば、行列Jは、図7(a)に示すように、筋空間と人間一般化座標空間との間において、筋長(=筋の変位)lと、人間の挙動の一種である人間変位qとを物理的に互いに関連付ける(l=J)。また、行列Jは、図7(b)に示すように、筋空間と人間一般化座標空間との間において、筋長変化速度(=筋の変位速度)dl/dtと、人間の挙動の一種である人間変位速度dq/dtとを物理的に互いに関連付ける(dl/dt=Jdq/dt)。
図7(a)には、各座標空間ごとに、変位と力/トルクとを剛性(弾性)という物理特性によって互いに物理的に関連付けられる様子も示されている。具体的には、筋空間においては、筋の変位lと筋力fとが筋剛性(人間剛性)Kによって互いに物理的に関連付けられる。人間一般化座標空間においては、人間の変位qと一般化力τとが、関節の受動特性に基づく剛性Kj0によって互いに物理的に関連付けられる。
また、人間接触点空間においては、接触点の変位cと接触力τとが剛性によって互いに物理的に関連付けられる。対象物接触点空間においては、接触点の変位cと接触力τとが剛性によって互いに物理的に関連付けられる。対象物一般化座標空間においては、対象物の変位qと一般化力τとが対象物剛性Kによって互いに物理的に関連付けられる。
それら各種用語および各種記号のうち、「変位」は、ある物体の並進運動の位置と回転運動の位置とを一般化して包括的に表現する用語である。具体的には、人間の変位qは、人間一般化座標空間において、人間のある点の並進運動の位置と回転運動の位置とを包括的に表現し、対象物の変位qは、対象物一般化座標空間において、対象物のある点の並進運動の位置と回転運動の位置とを包括的に表現する。以上、「変位」の定義を説明したが、この説明は、後述の「変位速度」および「変位加速度」に準用される。
また、「一般化力τ」は、ある物体に作用する並進力とトルクまたはモーメントとを一般化して包括的に表現する用語である。具体的には、一般化力τは、人間一般化座標空間(関節を定義する関節空間でもある。)において人間の関節に作用する並進力およびトルクを意味する。その一般化力τと同様に人間に作用する力に分類される物理量として筋力fが存在するが、この筋力fは、筋空間において筋に作用する並進力(圧縮力)を意味する。また、一般化力τは、対象物一般化座標空間において対象物に作用する並進力およびトルクを意味する。
また、接触力τは、人間と対象物との接触点に作用する一般化力を意味しており、その接触点に作用する並進力とモーメントとを一般化して包括的に表現する用語である。図7に示すように、接触力τは、人間接触点空間にも対象物接触点空間にも存在するが、それら2つの接触力τは、大きさが同じで向きが互いに逆であるという関係を有する。
以上、図7に示す各種用語および各種記号を部分的に説明したが、他の用語および記号は後に詳述する。
図7(b)には、各座標空間ごとに、速度と力/トルクとを粘性という物理特性によって互いに物理的に関連付けられる様子も示されている。具体的には、筋空間においては、筋長の変化速度dl/dtと筋力fとが筋粘性(人間粘性)Bによって互いに物理的に関連付けられる。人間一般化座標空間においては、人間の変位速度dq/dtと一般化力τとが、関節の受動特性に基づく粘性Bj0によって互いに物理的に関連付けられる。
また、人間接触点空間においては、接触点の変位速度dc/dtと接触力τとが粘性によって互いに物理的に関連付けられる。対象物接触点空間においては、接触点の変位速度dc/dtと接触力τとが粘性によって互いに物理的に関連付けられる。対象物一般化座標空間においては、対象物の変位速度dq/dtと一般化力τとが対象物粘性Bによって互いに物理的に関連付けられる。
図5に示す人間物理モデル作成手段200は、後にその実行内容をフローチャートを参照して経時的に詳細に説明するが、概略的には、前記対象物を操作する人間である操作者の人体物理特性を含む人間物理モデルを、人体の剛体セグメントモデル(例えば、骨格モデル、筋骨格モデル等)または有限要素モデル(例えば、有限要素人体モデル)という形態で作成する。
本実施形態における人間物理モデルは、さらに具体的に説明するに、人体の各部をn個の剛体または弾性体である要素によって表現する。この人間物理モデルにおいては、それら要素がn個の関節によって拘束あるいは連結されることにより、骨格系または筋骨格系が形成されている。さらに、この人間物理モデルにおいては、n本の筋および腱が、人体各部に対する付着点位置および経由点位置を用いて表現されている。
この人間物理モデルの自由度nは、図8において式(1)で表されている。したがって、人間物理モデルの挙動は、n次元の一般化座標qを用いて表現される。
この人間物理モデルが持っている物理特性は、人体各部については、寸法、重心位置、主慣性モーメント、関節位置、皮膚表面の粘弾性等である。また、関節については、種類、粘弾性等であり、筋については、骨への付着点位置、途中の経由点位置、後述の最大筋力fmaxおよびペネーション角度、自然長、剛性(弾性)K、粘性B等である。
この人間物理モデル作成手段200は、本実施形態においては、前述のように、有限要素モデルとしての有限要素人体モデルから第1の剛体セグメントモデルとしての骨格モデルを作成し、その作成された骨格モデルに、付着点と経由点とによって幾何学的に定義される筋要素モデルを付加することにより、第2の剛体セグメントモデルとしての筋骨格モデルを作成する。
対象物物理モデル作成手段202は、人間によって操作される対象物(例えば、操作装置)の物理特性を含む対象物物理モデルを、対象物の剛体セグメントモデルまたは有限要素モデルという形態で作成する。
本実施形態における対象物物理モデルは、さらに具体的に説明するに、対象物を構成するm個の各部品を剛体または弾性体の要素によって表現する。この対象物物理モデルにおいては、それら要素がm個のジョイントによって拘束あるいは連結されることにより、対象物が表現されている。
この対象物物理モデルの自由度mは、図8において式(2)で表されている。したがって、対象物物理モデルの挙動は、m次元の一般化座標qを用いて表現される。
この対象物物理モデルが持っている物理特性は、各部品については、寸法、重心位置、主慣性モーメント、ジョイント位置、表面の粘弾性等であり、また、各ジョイントについては、種類、粘弾性等である。
図5に示す操作性解析手段204は、それら作成された人間物理モデルと対象物物理モデルとを用い、かつ、人間と対象物との間の拘束条件・接触条件を含む解析条件のもとに、人間による対象物の操作性を解析する。ここに、「拘束条件」とは、人間または対象物が外部環境によって拘束される条件を意味し、また、「接触条件」とは、人間と対象物とが互いに接触する条件(例えば、一体的に結合するように接触するか、面接触するか)を意味する。
図5に示すように、この操作性解析手段204は、解析条件設定手段206と逆力学解析計算手段208と人間粘弾性テンソル算出手段210と対象物粘弾性テンソル算出手段212と合成粘弾性テンソル算出手段214とを含んでいる。
解析条件設定手段206は、操作性解析のために解析条件を設定する。その解析条件は、人間が対象物を操作する際のその人間と外部環境(対象物以外の物体)との間の拘束条件および外力、対象物と外部環境(人間以外の物体)との間の拘束条件および外力、それら人間と対象物との間の接触条件および外力、互いに接触する人間および対象物から成る人間−対象物系(人間−機械系)において操作性が解析されるべき少なくとも一つの評価位置等を含んでいる。以下、解析条件をさらに具体的に説明する。
本実施形態においては、操作中に人間が外部環境から受けるn個の拘束が、ヤコビ行列Gと人間挙動(変位速度)dq/dtとを用いることにより、図8における式(3)によって表現される。また、人間によって操作される対象物が外部環境から受けるm個の拘束が、ヤコビ行列Gと対象物挙動(変位速度)dq/dtとを用いることにより、図8における式(4)によって表現される。それら式(3)および(4)はいずれも、拘束条件を記述する拘束条件式である。
人間と対象物との間にk個の接触点が存在する場合には、それら接触点のうち、i番目の接触点cにおける拘束が、図9における式(5)によって表現される接触拘束行列Hによって表現される。k個の接触点のすべてにおける拘束は、図9における式(6)によって表現される全体接触拘束行列H(図7参照)によって表現される。この全体接触拘束行列Hの一具体例は後述する。
対象物粘弾性のみならず人間粘弾性をも考慮したうえで対象物の操作性すなわち人間−機械系動特性を求めたい評価位置rは、人間を表現している剛体もしくは弾性体、または対象物を表現している剛体もしくは弾性体上に定義される。また、評価位置rに関する可動方向が、可動方向行列Pによって記述される。例えば、評価位置rに原点を持つ6自由度xyz座標系のx軸およびy軸にのみ動く場合には、その行列Pは図9における式(7)で表現される。
図5に示す操作性解析手段204は、図6に示すように、前述の人間物理モデル、すなわち、人間筋特性(例えば、最大筋力fmax、筋剛性パラメータとして機能する、筋長lの関数g、筋粘性パラメータとして機能する、筋長変化速度の関数h、筋の自然長等)、人体の幾何学的特徴、人間の外部環境から受ける拘束を表す人間拘束条件G、人間の関節が持つ受動特性に基づく剛性である人間関節特性Kjo等を反映したモデルを用い、人間が対象物を操作する際のその人間の挙動(以下、人間の変位位置、変位速度および変位加速度を含み得る広義の概念として使用する。)と、前述の評価位置rとに基づき、人間剛性を取得する人間剛性取得部204aを有する。
図29において式(101)で表すように、人間における各筋ごとに、最大筋力fmaxと、筋長lの関数gと、筋長変化速度の関数hとが定義されれば、各筋の筋力fが誘導される。すなわち、本実施形態においては、その式(101)が、人間物理モデルを構成する各筋要素モデルを記述する式の一例なのである。
この人間剛性取得部204aは、入力手段216と、人間直交射影算出手段218と、人間のために逆力学解析を行う人間用逆力学解析手段220と、筋活性度推定手段222と、筋剛性算出手段224と、人間剛性座標変換手段226とを含んでいる。
入力手段216は、前述の人間筋特性(人間の物理特性)、人間挙動、人間拘束条件、人間関節特性等を入力する。この入力手段216によって入力すべき人間の挙動(変位q等)は、例えば、現実の挙動をモーションキャプチャ等を用いて計測することによって取得したり、現実の挙動を想定することによって取得することが可能である。この入力手段216は、入力装置22と、コンピュータ20のうち、該当する情報を入力するために実行される部分との組合せによって構成されている。
人間直交射影算出手段218は、人間拘束条件Gから、人間に対する拘束Gの零空間への直交射影行列(後述)Pを算出する。人間用逆力学解析手段220は、入力手段216から供給された人間挙動および人間関節特性と、人間直交射影算出手段218から供給された直交射影行列Pと、後述の対象物用逆力学解析手段232から供給される、人間が対象物から受ける接触力τとに基づき、公知の逆力学解析手法により、前述の一般化力τ(図7参照)を算出する。
筋活性度推定手段222は、入力手段216によって入力された人間筋特性および人間挙動と、人間用逆力学解析手段220から供給された一般化力τとに基づき、後述の最適化手法により、各筋ごとに筋活性度αを推定する。筋剛性算出手段224は、入力手段216によって入力された人間筋特性と、筋活性度推定手段222から供給された筋活性度αとに基づき、図29において式(102)で表される関係に従い、各筋の剛性Kを算出する。その剛性Kは、図7に示すように、筋空間において定義される。
人間剛性座標変換手段226は、図7に示す筋空間から、人間一般化座標空間と対象物一般化座標空間との間においてユーザによって指定される評価位置rが存在する評価点空間(図16(a)および図17(a)参照)への座標変換により、筋剛性算出手段224から供給された筋剛性(人間剛性)Kを、その筋剛性Kがその評価位置rまで伝達された等価人間剛性(図16(a)および図17(a)参照)に変換する。この人間剛性座標変換手段226は、具体的には、上述の座標変換により、筋空間における人間剛性Kを、入力手段216から供給された直交射影行列Pを含む拘束条件を考慮して、後述の式(22−1)を用いることにより、評価点空間における等価人間剛性に変換する。
図5に示す操作性解析手段204は、図6に示すように、前述の対象物物理モデル、すなわち、対象物の剛性K、対象物の外部環境から受ける拘束を表す対象物拘束条件G等を反映したモデルを用い、人間が対象物を操作する際のその対象物の挙動(以下、対象物の変位位置、変位速度および変位加速度を含み得る広義の概念として使用する。)と、前述の評価位置rとに基づき、対象物剛性を取得する対象物剛性取得部204bを有する。
この対象物剛性取得部204bは、入力手段228と、対象物直交射影算出手段230と、対象物のために逆力学解析を行う対象物用逆力学解析手段232と、対象物剛性座標変換手段234とを含んでいる。
入力手段228は、前述の対象物挙動、対象物拘束条件、対象物剛性等を入力する。この入力手段228によって入力すべき対象物の挙動(変位q等)は、例えば、現実の挙動をモーションキャプチャ等を用いて計測することによって取得したり、現実の挙動を想定することによって取得することが可能である。この入力手段228は、入力装置22と、コンピュータ20のうち、該当する情報を入力するために実行される部分との組合せによって構成されている。
対象物直交射影算出手段230は、対象物拘束条件Gから、対象物に対する拘束Gの零空間への直交射影行列(後述)Pを算出する。対象物用逆力学解析手段232は、入力手段228から供給された対象物挙動および対象物剛性と、対象物直交射影算出手段230から供給された直交射影行列Pとに基づき、公知の逆力学解析手法により、人間が対象物から受ける接触力τを算出する。その算出された接触力τは、前述のように、人間用逆力学解析手段220に供給される。
対象物剛性座標変換手段234は、図7に示す対象物一般化座標空間から前述の評価点空間への座標変換により、入力手段228または後述の対象物剛性更新手段238から供給された対象物剛性Kを、その対象物剛性Kが評価位置rまで伝達された等価対象物剛性(図16(a)および図17(a)参照)に変換する。この対象物剛性座標変換手段234は、具体的には、上述の座標変換により、対象物一般化座標空間における対象物剛性Kを、入力手段228から供給された直交射影行列Pを含む拘束条件を考慮して、後述の式(31−1)を用いることにより、評価点空間における等価対象物剛性に変換する。
すなわち、本実施形態においては、入力手段216および228と人間直交射影算出手段218と対象物直交射影算出手段230とが互いに共同して、図5に示す解析条件設定手段206を構成し、人間用逆力学解析手段220と対象物用逆力学解析手段232とが互いに共同して、図5に示す逆力学解析計算手段208を構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、筋活性度推定手段222と筋剛性算出手段224と人間剛性座標変換手段226とが互いに共同して、図6に示す人間粘弾性テンソル算出手段210を構成し、対象物剛性座標変換手段234が図6に示す対象物粘弾性テンソル算出手段212を構成しているのである。
図6に示すように、操作性解析手段204は、さらに、合成剛性算出手段235を含んでおり、その合成剛性算出手段235は、図5に示す合成粘弾性テンソル算出手段214を構成している。
合成剛性算出手段235は、人間剛性座標変換手段226から供給された等価人間剛性と、対象物剛性座標変換手段234から供給された等価対象物剛性とを数学的に互いに合成する。それにより、この合成剛性算出手段235は、操作中における対象物の、前述の評価位置rにおける剛性が、その対象物単独の剛性のみならず、その対象物を操作している人間の剛性をも考慮して取得される。この合成剛性算出手段235は、それら等価人間剛性および等価対象物剛性と、その他必要なパラメータとに基づき、後述の式(21−1)または(30−1)を用いることにより、合成剛性hmを算出する。
図6に示すように、設計支援手段205は、入力手段236と、剛性誤差算出手段237と、対象物剛性更新手段238とを含んでいる。
入力手段236は、上記算出された合成剛性hm(合成剛性hmの計算値)との比較のため、合成剛性hmの目標値を入力する。剛性誤差算出手段237は、合成剛性hmの計算値の、その入力された目標値に対する誤差を算出する。対象物剛性更新手段238は、その算出された誤差が許容値を超える場合に、対象物剛性Kであって、図6に示すように、入力手段228を経て対象物剛性座標変換手段234に供給されるものを更新する。この対象物剛性更新手段238により、操作者による対象物の操作性を改善する観点から、対象物剛性Kを最適化することが容易となる。
ここで、人間粘弾性テンソル算出手段210において人間粘弾性テンソルが誘導される論理を説明する。
人間粘弾性テンソル算出手段210は、前記作成された人間物理モデルと、前記拘束条件と、操作中の人間の挙動またはその挙動と内力との組合せを用いることにより、人間単独の剛性と粘性との少なくとも一方を含む人間粘弾性テンソルを算出する。
その人間粘弾性テンソルのうちの人間剛性テンソルは、筋の剛性Kと、関節が持つ受動特性に基づく剛性Kj0と、筋空間と、人間の挙動を表す一般化座標qが張る空間である人間一般化座標空間との間のヤコビ行列Jとを用い、かつ、図11において式(13)ないし(15)で表される直交射影行列Pによって表される前述の拘束条件を考慮することにより、図10において式(8)および(9)で表される。剛性Kと剛性Kj0とはそれぞれ、拘束条件を考慮する前の剛性である。剛性Kj0は、前述の人間物理モデルによって定義される既知のパラメータである。
また、上述の人間粘弾性テンソルのうちの人間粘性テンソルは、筋肉の粘性Bと、関節が持つ受動特性に基づく粘性Bj0と、筋空間と人間一般化座標空間との間のヤコビ行列Jとを用い、かつ、上述の直交射影行列Pによって表される拘束条件を考慮することにより、図10において式(10)および(11)で表される。粘性Bと粘性Bj0とはそれぞれ、拘束条件を考慮する前の粘性である。粘性Bj0は、前述の人間物理モデルによって定義される既知のパラメータである。
ヤコビ行列Jは、物理的には、関節に働く筋のモーメントアームに相当する。本実施形態においては、その筋モーメントアームが適宜調整されると、それに連動してヤコビ行列J中の該当要素が変更されるようになっている。このヤコビ行列Jは、操作中に人間の各関節に働く一般化力τおよび操作中に人間の筋に働く筋力fとの間に、図10において式(12)で表される関係を有する。
以下、人間に対する拘束条件を考慮した剛性および粘性を人間粘弾性テンソル(図においてアルファベットに上線を付して示すことにより、拘束条件を考慮した粘弾性テンソルであることを示す。このことは、他のパラメータについても同じとする。)というが、その人間粘弾性テンソルは、人間の姿勢や内力によってその値が変化するため、事前に取得された人間の挙動や内力(前述の一般化力を含む。)を用いて、人間粘弾性テンソルの操作中における変化が考慮される。
ここで、対象物粘弾性テンソル算出手段212において対象物粘弾性テンソルが誘導される論理を説明する。
対象物粘弾性テンソル算出手段212は、前記作成された対象物物理モデルと、前記拘束条件と、操作中の対象物の挙動またはその挙動と内力との組合せを用いることにより、対象物単独の剛性と粘性との少なくとも一方を含む対象物粘弾性テンソルを算出する。
その対象物粘弾性テンソルのうちの対象物剛性テンソルは、拘束条件を考慮する前の対象物の剛性Kを用い、かつ、図11において式(18)ないし(20)で表される直交射影行列Pによって表される前述の拘束条件を考慮することにより、図11において式(16)で表される。剛性Kは、前述の対象物物理モデルによって定義されている特性から求めることができる。
また、上述の対象物粘弾性テンソルのうちの対象物粘性テンソルは、拘束条件を考慮する前の対象物の粘性Bを用い、かつ、上述の直交射影行列Pによって表される拘束条件を考慮することにより、図11において式(17)で表される。粘性Bは、前述の対象物物理モデルによって定義されている特性から求めることができる。
以下、対象物に対する拘束条件を考慮した剛性および粘性を対象物粘弾性テンソルというが、その対象物粘弾性テンソルは、対象物の姿勢や内力によってその値が変化するため、事前に取得された対象物の挙動や内力を用いて、対象物粘弾性テンソルの操作中における変化が考慮される。
ここで、合成粘弾性テンソル算出手段214において合成粘弾性テンソルが誘導される論理を説明する。
合成粘弾性テンソル算出手段214は、前記算出された人間粘弾性テンソルおよび対象物粘弾性テンソルと、事前に設定された拘束条件および評価位置rとを用いることにより、それら人間粘弾性と対象物粘弾性とを合成した合成粘弾性を表す合成粘弾性テンソルを算出する。その合成粘弾性テンソルは、合成剛性テンソルと合成粘性テンソルとを含んでいる。以下、それら合成剛性テンソルと合成粘性テンソルとを説明するが、評価位置rが対象物上にある場合と、操作者である人間上にある場合とに分けて、それらの順に説明する。
1.評価位置rが対象物上にある場合
(1)合成剛性テンソルの誘導
評価位置rが対象物上にある場合には、図12において式(21−1)で示すように、評価位置rにおける合成剛性テンソルが、
(a)図11において式(16)で表される対象物剛性テンソルと、
(b)図12において式(22−1)で表される等価人間剛性テンソルと、
(c)図12において式(23)を用いて説明されるヤコビ行列と、
(d)評価位置rにおいて対象物が持つ剛性テンソルと、
(e)図11において式(18)ないし(20)を用いて説明される直交射影行列Pと、
(f)図9において式(7)で例示される可動方向行列P
を用いることにより、記述される。
等価人間剛性テンソルは、前述の人間剛性テンソルを評価位置rまで伝達したものであり、ヤコビ行列は、評価位置rと対象物一般化座標qとの間のヤコビ行列である。
その等価人間剛性テンソルは、図12において式(22−1)で示すように、
(a)図10において式(8)で表される人間剛性テンソルと、
(b)図13において式(24)、(25−1)および(25−2)で表されるヤコビ行列と、
(c)図14において式(28−1)で表される、接触点cにおいて人間表面が持つ剛性テンソルcjから成る行列と、
(d)図11において式(13)ないし(15)を用いて説明される直交射影行列Pと、
(e)図9において式(5)および(6)で表される接触拘束行列Hと、
(f)図14において式(29−1)で表される、接触点cにおいて対象物表面が持つ剛性テンソルcjから成る行列と、
(g)図13において式(26)および(27)で表される座標系変換行列
を用いることにより、記述される。
表記について補足するに、図14における式(28−1)および(29−1)における「diag{ }」は、「{ }」内に記載された行列のうちの対角成分を抽出することを意味するオペレータである。このことは、式(28−2)および(29−2)についても同様である。
図16(a)には、剛性に関し、筋空間と対象物一般化座標空間との間に存在する複数の座標空間であって、図7(a)に示す複数の座標空間に対して、評価位置rが存在する評価点空間が追加されたものが示されている。図16(a)には、等価人間剛性テンソルと、座標系変換行列と、ヤコビ行列とが、評価点空間に関連付けて示されている。
(2)合成粘性テンソルの誘導
評価位置rが対象物上にある場合には、図15において式(21−2)で示すように、評価位置rにおける合成粘性テンソルが、
(a)図11において式(17)で表される対象物粘性テンソルと、
(b)図12において式(22−2)で表される等価人間粘性テンソルと、
(c)図12において式(23)を用いて説明されるヤコビ行列と、
(d)評価位置rにおいて対象物が持つ粘性テンソルと、
(e)図11において式(18)ないし(20)を用いて説明される直交射影行列Pと、
(f)図9において式(7)で例示される可動方向行列P
を用いることにより、記述される。
等価人間粘性テンソルは、前述の人間粘性テンソルを評価位置rまで伝達したものであり、ヤコビ行列は、評価位置rと対象物一般化座標qとの間のヤコビ行列である。
その等価人間粘性テンソルは、図12において式(22−2)で示すように、
(a)図10において式(10)で表される人間粘性テンソルと、
(b)図13において式(24)、(25−1)および(25−2)で表されるヤコビ行列と、
(c)図14において式(28−2)で表される、接触点cにおいて人間表面が持つ粘性テンソルcjから成る行列と、
(d)図11において式(13)ないし(15)を用いて説明される直交射影行列Pと、
(e)図9において式(5)および(6)で表される接触拘束行列Hと、
(f)図14において式(29−2)で表される、接触点cにおいて対象物表面が持つ粘性テンソルcjから成る行列と、
(g)図13において式(26)および(27)で表される座標系変換行列
を用いることにより、記述される。
図16(b)には、粘性に関し、筋空間と対象物一般化座標空間との間に存在する複数の座標空間であって、図7(b)に示す複数の座標空間に対して、評価位置rが存在する評価点空間が追加されたものが示されている。図16(b)には、等価人間粘性テンソルと、座標系変換行列と、ヤコビ行列とが、評価点空間に関連付けて示されている。
2.評価位置rが人間である操作者上にある場合
(1)合成剛性テンソルの誘導
評価位置rが対象物上にある場合には、図15において式(30−1)で示すように、評価位置rにおける合成剛性テンソルが、
(a)図10において式(8)で表される人間剛性テンソルと、
(b)図15において式(31−1)で表される等価対象物剛性テンソルと、
(c)図15において式(32)を用いて説明されるヤコビ行列と、
(d)図11において式(13)ないし(15)を用いて説明される直交射影行列Pと、
(e)評価位置rにおいて人間が持つ剛性テンソルと、
(f)図9において式(7)で例示される可動方向行列P
を用いることにより、記述される。等価対象物剛性テンソルは、前述の対象物剛性テンソルを評価位置rまで伝達したものであり、ヤコビ行列は、評価位置rと人間一般化座標qとの間のヤコビ行列である。
その等価対象物剛性テンソルは、図15において式(31−1)で示すように、
(a)図11において式(16)で表される対象物剛性テンソルと、
(b)図15において式(33)および(34)で表されるヤコビ行列と、
(c)図14において式(28−1)で表される、接触点cにおいて人間表面が持つ剛性テンソルcjから成る行列と、
(d)図9において式(5)および(6)で表される接触拘束行列Hと、
(e)図14において式(29−1)で表される、接触点cにおいて対象物表面が持つ剛性テンソルcjから成る行列と、
(f)図13において式(26)および(27)で表される座標系変換行列
を用いることにより、記述される。
図17(a)には、剛性に関し、筋空間と対象物一般化座標空間との間に存在する複数の座標空間であって、図7(a)に示す複数の座標空間に対して、評価位置rが存在する評価点空間が追加されたものが示されている。図17(a)には、等価人間剛性テンソルと、座標系変換行列と、ヤコビ行列とが、評価点空間に関連付けて示されている。
(2)合成粘性テンソルの誘導
評価位置rが対象物上にある場合には、図15において式(30−2)で示すように、評価位置rにおける合成粘性テンソルが、
(a)図10において式(10)で表される人間粘性テンソルと、
(b)図15において式(31−2)で表される等価対象物粘性テンソルと、
(c)図15において式(32)を用いて説明されるヤコビ行列と、
(d)評価位置rにおいて人間が持つ粘性テンソルと、
(e)図9において式(7)で例示される可動方向行列P
を用いることにより、記述される。等価対象物粘性テンソルは、前述の対象物粘性テンソルを評価位置rまで伝達したものであり、ヤコビ行列は、評価位置rと人間一般化座標qとの間のヤコビ行列である。
その等価対象物粘性テンソルは、図15において式(31−2)で示すように、
(a)図11において式(16)で表される対象物粘性テンソルと、
(b)図15において式(33)および(34)で表されるヤコビ行列と、
(c)図14において式(28−2)で表される、接触点cにおいて人間表面が持つ粘性テンソルcjから成る行列と、
(d)図9において式(5)および(6)で表される接触拘束行列Hと、
(e)図14において式(29−2)で表される、接触点cにおいて対象物表面が持つ粘性テンソルcjから成る行列と、
(f)図13において式(26)および(27)で表される座標系変換行列
を用いることにより、記述される。
図17(b)には、粘性に関し、筋空間と対象物一般化座標空間との間に存在する複数の座標空間であって、図7(b)に示す複数の座標空間に対して、評価位置rが存在する評価点空間が追加されたものが示されている。図17(b)には、等価人間粘性テンソルと、座標系変換行列と、ヤコビ行列とが、評価点空間に関連付けて示されている。
ここで、人間と対象物とのうち人間を例にとり、粘弾性テンソルを算出する際に拘束Gを考慮する手法を説明するために、図13において式(25−2)が誘導される論理を、図18ないし図20を参照して説明する。
図13においては、式(25−1)により、接触点の変位速度と、人間の変位速度とが、ヤコビ行列によって互いに関連付けられている。そのヤコビ行列は、図18に概念的に表すように、人間の変位速度を、人間一般化座標空間から人間接触点空間にマッピングするための行列である。
図8においては、式(3)により、人間の変位速度と、拘束点空間において人間が動かないことを表す零行列0とが、ヤコビ行列Gによって互いに関連付けられている。そのヤコビ行列Gは、図18に概念的に表すように、人間の変位速度を、人間一般化座標空間から拘束点空間にマッピングするための行列である。
ここに「拘束点空間」は、人間または対象物のうち外部環境によって拘束される各拘束点ごとに定義される空間である。例えば、人間が、それの骨盤において外部環境としてのグラウンドに拘束され、かつ、対象物としてのブレーキペダルがそれの回転軸において外部環境としてのグラウンドに拘束される場合には、人間については、骨盤に第1の拘束点が設定されて、そこに第1の拘束点空間が定義される一方、対象物については、回転軸に第2の拘束点が設定されて、そこに第2の拘束点空間が定義されることになる。
図11においては、式(13)により、ヤコビ行列Gと、拘束点空間において人間が動かないことを表す零行列0とが、直交射影行列Pによって互いに関連付けられている。その直交射影行列Pは、図19に概念的に表すように、その零空間を、拘束点空間から人間一般化座標空間にマッピングするための行列である。その人間一般化座標空間にマッピングされた零空間は、人間一般化座標空間のうち、人間が拘束Gを満たし、かつ、動くことが許容される部分的な空間を意味している。
したがって、拘束Gを考慮した人間一般化座標空間から接触点空間へのマッピングは、図13において式(25−2)で表すことができるとともに、図20に概念的に図示することができる。よって、直交射影行列Pを適切に設定すれば、拘束Gが適切に考慮されて人間粘弾性テンソルが誘導されることになる。
同様にして、図11の式(18)に示す直交射影行列Pを適切に設定すれば、図8の式(4)に示す拘束Gが適切に考慮されて対象物粘弾性テンソルが誘導されることになる。ひいては、それら人間粘弾性テンソルと対象物粘弾性テンソルとから、合成粘弾性テンソルが適切に誘導されることになる。
以上のようにして誘導された合成粘弾性テンソルは、人間による対象物の操作性を反映する物理量であるため、その操作性の解析・評価に用いたり、その操作性が改善されるように対象物を設計するために用いたり、その対象物またはその操作性を、例えば車両走行中に、操作者の好みに応じて適応的に制御するために用いることが可能である。
図21には、人間物理モデル作成手段200が、それによって実現される機能に着目してブロック図で概念的に表されている。この人間物理モデル作成手段200は、有限要素人体モデル読出手段240と、骨格モデル作成手段242と、筋骨格モデル作成手段244とを備えている。
有限要素人体モデル読出手段240は、前述の有限要素人体モデルを表すデータをデータメモリ42から読み出し、その読み出された有限要素人体モデルは骨格モデル作成手段242に供給される。有限要素人体モデルは、前述のように、人体を複数の有限要素によって表現する有限要素モデルであって、人体を構成する複数の部位と複数の有限要素との帰属関係が予め設定されたモデルである。
その骨格モデル作成手段242は、後に詳述するが、その供給された有限要素人体モデルを用いることにより、前述の骨格モデルを作成する。この骨格モデル作成手段242においては、その有限要素人体モデルを構成する複数の有限要素が前記帰属関係に従って分類されて結合されることにより、人体を構成する複数の部位が、複数の剛体セグメントとして、それら複数の剛体セグメントが関節まわりに回動可能であるように表現される。このようにして作成された骨格モデルは筋骨格モデル作成手段244に供給される。
その筋骨格モデル作成手段244は、前述の有限要素人体モデルにおける複数の有限要素のうち、全体における複数の筋を表現するものに従い、前記供給された骨格モデル上に、それら複数の筋をそれぞれワイヤとして表現するワイヤ要素を、各筋の各剛体セグメントに対する付着点および途中の経由点の位置と共に定義する。それにより、筋骨格モデルが作成される。
具体的には、筋骨格モデル作成手段244は、図21に示すように、筋の付着点および経由点の位置を定義する位置定義手段250と、筋の配置を定義する配置定義手段252と、筋の物理量を定義する物理量定義手段254と、筋の内部の粘弾性特性を定義する粘弾性特性定義手段256とを含むように構成されている。
図22には、共通の関節の回転軸まわりに互いに回動可能に連結された2本の骨に1本の筋がそれら2本の骨に跨って付着されている様子が示されている。その筋は、それの一端部において、一方の骨に付着点Pにおいて付着させられる一方、その他端部において、他方の骨に付着点Qにおいて付着させられている。
図22に示すように、その筋は、それの中間部においては、いずれの骨にも付着させられていないが、2個の付着点P,Q間を通過する際に経由する2個の経由点A,Bが規定されている。経由点Aは、2本の骨のうち、付着点Pが属するものに力学的に支持され、経由点Bは、付着点Qが属する骨に力学的に支持される。
このようなジオメトリのもとに2本の骨が1本の筋によって連結されているため、その筋に張力が発生すると、それら2本の骨には関節の回転軸まわりの関節トルクが発生する。その関節トルクの大きさは、筋に発生する筋力の大きさに依存することはもとより、その筋力の作用直線と回転軸との距離、すなわち、筋モーメントアームにも依存する。すなわち、筋力が同じでも、筋モーメントアームが長いほど、関節トルクが大きくなるのである。
したがって、関節トルクを精度よく算出するためには筋モーメントアームを正確に定義することが重要である。筋モーメントアームは、図22に示すように、回転軸に対する2個の経由点A,Bの相対位置に依存するため、筋モーメントアームの正確な定義にはそれら経由点A,Bの位置の正確な定義が必要である。
しかしながら、それら経由点A,Bの位置を正確に定義するためには工夫が必要である。
例えば、本実施形態においては、前述の有限要素人体モデルが、標準体型を有する人体というように、特定の体型を有する人体を代表的に表現するように作成される。そのため、その有限要素人体モデルを基礎として作成される骨格モデルおよび筋骨格モデルも、標準体型の人体を代表的に表現するように作成される。したがって、その筋骨格モデルを用いれば、標準体型を有する人間が前述の対象物を操作する際の操作性を精度よく評価することが可能である。
しかしながら、標準体型以外の体型を有する人間についても、その操作性を精度よく評価したいというニーズがある。このようなニーズに応えるべく、複数種類の体型について個々に有限要素人体モデルを予め作成しておくことは理論的には可能であるが、このことは十分に実用的であるとはいい難い。
これに対し、特定の体型を有する人間を表現する有限要素人体モデルしか用いないにもかかわらず、任意の体型を有する人体を表現する筋骨格モデルを作成することが可能であれば、体型に関する筋骨格モデルの自由度が向上する。その結果、実用性を損なうことなく、操作性評価に対する種々のニーズに応えることが可能となる。
そこで、本実施形態においては、図21に示すように、筋骨格モデル作成手段244が、さらに、スケーリング手段257を含むように構成されている。このスケーリング手段257は、後に詳述するが、前述の位置定義手段250、配置定義手段252、物理量定義手段254および粘弾性特性定義手段256の協働によって作成された、標準体型を有する人体を表現する筋骨格モデルをマスタモデルとして用いる。このスケーリング手段257は、さらに、そのマスタモデルを、与えられるスケーリング倍率のもとに変形し、それにより、任意の体型を有する人体を表現する筋骨格モデルを作成する。
そのマスタモデルは、人体における複数の骨をそれぞれ表現する複数の剛体セグメント(骨格モデルに相当する)と、複数の筋をそれぞれ表現する複数の筋モデルとを含んでいる。
このマスタモデルにおいては、後に詳述するが、各剛体セグメントの幾何学量が、各剛体セグメントごとのローカル座標系上において、数値、関数等によって定義される。さらに、このマスタモデルにおいては、後に詳述するが、各筋の物理量および粘弾性特性が、数値、関数等によって定義される。
このマスタモデルは、さらに、各関節の位置を表す関節点、各筋が骨に付着する位置を表す付着点、および各筋がある骨から別の骨に向かって延びる際に通過する位置(筋走行の折れ曲がり位置)を表す経由点を含んでいる。それら関節点、付着点および経由点は、対応する剛体セグメントに付随しており、その剛体セグメントと一体的に運動するように、定義されている。
具体的には、各剛体セグメントごとに、それの剛体基準位置(例えば、各剛体セグメントの重心位置)に原点を有するローカルなxyz座標系が、剛体基準座標系として設定されている。同様にして、各関節点ごとに、その中心を原点とするローカルなxyz座標系が関節点座標系として設定されている。同様にして、各付着点ごとに、その中心を原点とするローカルなxyz座標系が付着点座標系として設定されている。同様にして、各経由点ごとに、その中心を原点とするローカルなxyz座標系が経由点座標系として設定されている。
それら関節点座標系、付着点座標系および経由点座標系については、対応する剛体基準座標系との空間的な相対位置関係が既知であるため、その剛体基準座標系の、グローバル座標系上における位置および姿勢(向き)が決まれば、それら関節点座標系、付着点座標系および経由点座標系のそれぞれの位置および姿勢が、対応する剛体基準座標系に対して相対的に一義的に決まる。
以上説明したように構成されたマスタモデルに対する全体スケーリング処理のうち、特に、関節点、付着点および経由点に対するそれぞれの個別スケーリング処理に注目すると、それら関節点、付着点および経由点に対して、互いに共通する規則に従って、個別スケーリング処理を行う手法がまず考えられる。具体的には、対応する剛体セグメントを記述する剛体基準座標系上において、それら関節点の位置、付着点の位置および経由点の位置を、与えられたスケーリング倍率のもと、拡大または縮小する手法が考えられる。
図23には、図22と同様に、人体における第1および第2の骨が1本の筋によって互いに結合される結合組織が示されている。ただし、図22には、その結合組織が、有限要素人体モデルを用いて表現されているのに対し、図23には、その結合組織が、簡略化された筋骨格モデルを用いて表現されている。
具体的には、図23には、それら第1および第2の骨がそれぞれ2個の剛体セグメント(左側および右側の剛体セグメント)として表現され、それら2個の剛体セグメントは、関節点において、紙面に直角な回転軸まわりに回動可能に互いに連結されている。
さらに、図23に示すように、それら2個の剛体セグメントは、1本の筋を表現するワイヤ要素によって互いに結合されている。そのワイヤ要素は、それの両端において、左側の剛体セグメントの表面上における付着点と、右側の剛体セグメントの表面上における付着点とにそれぞれ付着させられている。
さらに、そのワイヤ要素は、それら2個の付着点を、それら2個の剛体セグメントの表面から離れた経路すなわち筋走行を経て、互いに連結している。その筋走行は、幾何学的に、それら2個の付着点の位置と、そのワイヤ要素が通過する2個の経由点の位置とによって一義的に定義される。
その筋走行のうち、2個の経由点によって挟まれる部分と関節点との距離が、前述の筋モーメントアームの長さに等しい。
図24には、図23に示す結合組織に対してスケーリングを行うために採用し得る手法の一例が、本実施形態との比較例として示されている。
この比較例においては、2個の剛体セグメントに対して互いに異なるスケーリング倍率が設定されているが、これは、現実の人体の幾何学に矛盾するものではない。
例えば、目標とする筋骨格モデルが、標準体型を有する人体より身長が低い体型を有する人体を表現する場合であっても、それら2種類の人体の間において、対応する骨同士の長さの比率が、すべての骨間で共通しないのが普通である。図24に示すように、この比較例においては、左側の剛体セグメントは、もとの大きさより拡大されるのに対し、右側の剛体セグメントは、もとの大きさより縮小される。
いずれにしても、この比較例においては、図24に示すように、関節点の位置が、剛体基準位置を原点とする剛体基準座標系上において、与えられたスケーリング比率のもとに、移動させられる。同様にして、各付着点の位置も、対応する剛体基準座標系上において、与えられたスケーリング比率のもとに、移動させられる。
この比較例においては、さらに、各経由点の位置も、対応する剛体基準座標系上において、与えられたスケーリング比率のもとに、移動させられる。図24において、関節点から延びる2本の矢印の先端位置は、スケーリング前における2個の経由点の位置をそれぞれ示している。
図24に示すように、この比較例においては、スケーリングに伴う各経由点の移動により、筋モーメントアームが変化する可能性がある。
一方、本発明者らは、その研究により、次のような事実に気がついた。すなわち、現実の人体においては、関節点および付着点の位置が体型(例えば、人体の大きさ)に強く依存するのに対し、筋モーメントアームの長さはそれほどには強く依存しないという事実に気がついたのである。
さらに、本発明者らは、人体モデルにおける筋モーメントアームは、その人体モデルによって表現される人体の体型がそれほど大きく変化しない範囲(例えば、成人である範囲)内においては、体型の変化とは無関係に一定であるように定義するほうが、その人体モデルを用いた関節トルクの計算精度を向上させるためにむしろ有利であるという事実にも気がついた。
以上説明した知見に基づき、本実施形態においては、図25に示すように、筋骨格モデルのスケーリングに際し、関節点の位置と付着点の位置とはそれぞれ、図24に示す比較例と同様に、対応する剛体基準座標系上において、与えられたスケーリング倍率のもとに変換されるのに対し、経由点の位置は、図24に示す比較例とは異なり、対応する剛体基準座標系上において、それら関節点および付着点のための変換規則とは異なる規則に従って変換される。
以下、図26および図27を参照することにより、筋骨格モデルのスケーリングに際して経由点の位置に対して行われる変換の規則をさらに詳細に説明する。
図26には、1個の剛体セグメントが代表的に、スケーリング前の状態とスケーリング後の状態とでそれぞれ示されている。スケーリング前の剛体セグメントには、図示しない筋(ワイヤ要素)がその剛体セグメントの表面に付着する付着点Aと、その筋が通過する経由点Bと、図示しない別の剛体セグメントと連結する関節点Cとが、設定されている。同様にして、スケーリング後の剛体セグメントには、付着点Aがスケーリングされた付着点A’と、経由点Bがスケーリングされた経由点B’と、関節点Cがスケーリングされた関節点Cとが、設定されている。
図26において、「a」、「b」および「c」は、剛体基準座標系上において、付着点A、経由点Bおよび関節点Cの位置をそれぞれ記述する代数ベクトル(4×1のマトリクス)である。いずれの代数ベクトルa、bおよびcも、剛体基準位置から延びている。同様に、「a’」、「b’」および「c’」は、剛体基準座標系上において、付着点A’、経由点B’および関節点C’の位置をそれぞれ記述する代数ベクトル(4×1のマトリクス)である。いずれの代数ベクトルa’、b’およびc’も、剛体基準位置から延びている。
関節点cは、前述のように、関節点座標系上において定義され、この関節点座標系と上述の剛体基準座標系との相対位置関係は既知である。
剛体基準座標系を座標変換して関節点座標系を再現するために、その座標変換の規則を同次変換行列Rc(4×4のマトリクス)によって記述する。関節点cの位置は、剛体基準座標系の剛体基準位置に同次変換行列Rcを適用することにより、誘導される。
経由点Bは、代数ベクトルbを用いる限り、剛体基準座標系の剛体基準位置からは観察(数学的に定義)できるが、関節点座標系の関節点Cの位置からは観察できない。しかしながら、同次変換行列Rcを用いれば、経由点Bの位置を、関節点Cの位置から観察することが可能となる。具体的には、経由点Bの位置は、関節点座標系においては、同次変換行列Rcと代数ベクトルbとの積として定義される。
ここで、図28および図29を参照することにより、同次変換行列Rという行列を説明する。
説明の便宜上、互いに異なる2つの座標系P,Qが定義され、かつ、座標系P(出発座標系)をある量だけ回転させてできた座標系(中間座標系)P’をある量だけ並行移動させることによって座標系(最終座標系)Qが得られる例を仮定する。
この例においては、座標系P−回転−座標系P’−並行移動−座標系Qというように、変換が成立する。この例においては、基本的には、回転を行うための演算(回転行列を掛け算する)と、並行移動を行うための演算とにより、座標系Pから座標系Qへの変換が定義される。
座標系PからP’への回転を行うために用いる回転行列をG(3×3のマトリクス)と定義し、座標系P’から座標系Qへの並行移動距離を表すベクトルをs(3×1のマトリクス)と定義する。
回転行列は、3×3のマトリクスであり、x軸、y軸およびz軸のそれぞれにつき、各軸まわりの回転を回転角度によって定義する。回転行列は、x軸、y軸およびz軸についてそれぞれ存在し、いずれの回転行列も、任意のベクトルに左から掛け算されるが、それら回転行列が掛け算される順序が、各軸まわりの回転が行われる順序によって決まる。そ結果、複合的な回転が定義される。
図28に示すように、同次変換行列Rは、回転行列Gの全要素と、ベクトルsの全要素と、複数の定数要素とを含むように構成された4×4のマトリクスである。この同次変換行列Rを用いると、回転と並行移動とが複合されて成る変換のための演算を、1回の演算として完了することが可能となる。
座標系P上においてある点の位置は、代数ベクトルt(3×1のマトリクス)={tx,ty,tz}によって定義される。この代数ベクトルtを便宜的に拡張することにより、ベクトルt’(4×1のマトリクス)={tx,ty,tz,1}を定義する。このベクトルt’に左から上述の同次変換行列Rを掛け算すると、ベクトルu’(4×1のマトリクス)={ux,uy,uz,1}が得られる。
このベクトルu’の4個の要素のうち最初の3個の要素により、ベクトルu(3×1のマトリクス)={ux,uy,uz}が作成される。このベクトルuが、座標系Pによって定義される代数ベクトルtが座標系Qに変換されたものに相当し、それらベクトルt,uは、互いに異なるローカル座標系上においてそれぞれ定義されるものの、それらローカル座標系に共通のグローバル座標系上において互いに同じ位置を表す。
以上の説明から明らかなように、同次変換行列Rを用いれば、座標系の変換を容易化することが可能となる。
剛体セグメントをスケーリング倍率kのもとにスケーリングするために、図26および図27の式(50)に示すように、付着点Aについては、代数ベクトルaにスケーリング倍率kが掛け算されることにより、代数ベクトルa’が、スケーリング後の付着点A’の位置を表す代数ベクトルとして算出される。同様に、関節点Cについては、代数ベクトルcにスケーリング倍率kが掛け算されることにより、代数ベクトルc’が、スケーリング後の関節点C’の位置を表す代数ベクトルとして算出される。
これに対し、経由点Bについては、それら付着点Aおよび関節点Cとは異なる規則に従ってスケーリングが行われる。具体的には、図26に示すように、まず、前述の同次変換行列Rc(4×4のマトリクス)と、剛体基準座標系を、スケーリング後の関節点C’に付随する関節点座標系に変換するための同次変換行列Rc’(4×4のマトリクス)とが算出される。
次に、図27に式(51)として示すように、代数ベクトルbに左から同次変換行列Rcが掛け算され、さらに、その値に左から、同次変換行列Rc’の逆行列が掛け算される。その結果、スケーリング後の経由点B’の位置を、剛体基準座標系上において表す代数ベクトルb’が誘導される。
すなわち、本実施形態においては、経由点Bについては、代数ベクトルbと同次変換行列Rcと同次変換行列Rc’とを図27の式(51)に代入して代数ベクトルb’を算出することによって、スケーリングが行われるのであり、この式(51)により、経由点Bをスケーリングする規則が定義されている。
この式(51)の両辺にそれぞれ、左から同次変換行列Rc’を掛け算すると、式(52)が誘導される。この式(52)において、左辺は、スケーリング後の関節点C’から観察される、スケーリング後の経由点B’を表す一方、右辺は、スケーリング前の関節点Cから観察される、スケーリング前の経由点Bを表している。
したがって、この式(52)は、スケーリング後の関節点C’から観察される、スケーリング後の経由点B’の位置と、スケーリング前の関節点Cから観察される、スケーリング前の経由点Bの位置とが互いに一致することを示している。それら位置が互いに一致するということは、経由点の、関節点に対する相対位置が、スケーリングの前後を通じて、一定であることを意味し、このことは、筋モーメントアームの長さも、スケーリングの前後を通じて一定であることを意味する。
このように、本実施形態によれば、スケーリングの前後を通じて筋モーメントアームの長さが一定であるが、以下、その理由をさらに具体的に説明する。
本実施形態においては、図23および図25から明らかなように、マスタモデルのスケーリングのために、経由点が、関節点と一体的に、その関節点の移動方向に平行な方向に移動させられる。このことは、マスタモデルのスケーリングのために、経由点が、関節点と一体的に並進運動させられることを意味する。
一般に、1つの関節を跨いで延びる筋の経路すなわち筋走行は、その関節の位置を表す関節点から離間した2つの経由点によって規定される。筋走行は、それら2つの経由点を通過するように、関節を跨いで延びている。
それら2つの経由点と1つの関節点とは、1つの三角形の3つの頂点にそれぞれ該当する。その三角形を構成する3辺のうち、それら2つの経由点を通過する1つの辺と、その三角形の3つの頂点のうち1つの関節点に一致する1つの頂点との距離(その頂点を通過して上記辺と交わる垂線の長さ)が筋モーメントアームの長さに相当する。
本実施形態によれば、それら2つの経由点がいずれも、それらに共通する1つの関節点と一体的に、その関節点の移動方向(前述の第1の座標変換による関節点の移動方向)に移動させられる。このことは、関節点の移動に伴い、上述の三角形が、変形を伴うなうことなく、並進移動させられることを意味し、このことは、関節点の移動の前後を通じて、上述の三角形の上述の垂線の長さが一定であることを意味する。
したがって、本実施形態によれば、マスタモデルのスケーリングの前後を通じて、筋モーメントアームの長さが維持されるように、経由点が移動させられる。
図26には、経由点Bを、付着点Aおよび関節点Cと共通する規則に従ってスケーリングすることによって得られる経由点B”が破線で示されている。この経由点B”は、ベクトルb上に位置しており、関節点C’から観察される位置は、関節点Cから観察される位置とは異なる。
本実施形態においては、以上説明した手法でマスタモデルのスケーリングを行うため、図21に示すスケーリング手段257が、図29に示すように、スケーリング倍率を入力するスケーリング倍率入力手段330と、マスタモデルを入力するマスタモデル入力手段332とを含んでいる。
スケーリング手段257は、さらに、その入力されたマスタモデルから関節点の情報を抽出する関節点抽出手段334と、同次変換行列Rc,Rc’を算出する座標系変換行列算出手段336と、関節点の位置を、入力されたスケーリング倍率kのもとに座標変換する関節点変換手段338とを含んでいる。
その座標変換が、第1の座標変換である。この第1の座標変換は、関節点を、入力されたスケーリング率kのもとに、対応する剛体セグメントの剛体基準位置(剛体基準座標系の原点位置と一致する。)を起点として、その剛体基準座標系の各軸方向(x,yおよびz軸方向)に、その剛体基準位置に対して接近(スケーリング倍率k<1)または離間(スケーリング倍率k>1)させるために実行される。
すなわち、この第1の座標変換は、関節点を、対応する剛体セグメントの剛体基準位置から放射してその関節点(スケーリング前の関節点)を通過する一放射線に沿って移動させるために実行されるのである。
スケーリング手段257は、さらに、入力されたマスタモデルから経由点の情報を抽出する経由点抽出手段342と、経由点の位置を、算出された同次変換行列Rc,Rc’を用いて座標変換する経由点変換手段344とを含んでいる。
その座標変換が、第2の座標変換である。この第2の座標変換は、スケーリングの前後を通じて筋モーメントアームが維持されるように、経由点を、上述の関節点と一体的に、その関節点の移動方向に対して平行に移動させるために実行される。したがって、この第2の座標変換は、上述の第1の座標変換とは規則が異なる。
後に詳述するように、本実施形態においては、経由点の位置の成分が、関節角度に依存しない基準位置と、関節角度に依存する移動量であって、経由点の位置を求めるためにその基準位置から移動させられる移動量とに分解されている。上述の第2の座標変換は、基準位置に対しては行われるが、移動量に対しては行われない。
スケーリング手段257は、さらに、入力されたマスタモデルから付着点の情報を抽出する付着点抽出手段346と、付着点の位置を、入力されたスケーリング倍率kのもとに座標変換する付着点変換手段348とを含んでいる。
その座標変換が、第3の座標変換である。この第3の座標変換は、第1の座標変換と同様に、付着点を、対応する剛体セグメントの剛体基準位置(剛体基準座標系の原点位置と一致する。)を起点として、その剛体基準座標系の各軸方向(x,yおよびz軸方向)に、その剛体基準位置に対して接近(スケーリング倍率k<1)または離間(スケーリング倍率k>1)させるために実行される。
すなわち、この第3の座標変換は、上述の第1の座標変換と同様に、付着点を、対応する剛体セグメントの剛体基準位置から放射してその付着点(スケーリング前の関節点)を通過する一放射線に沿って移動させるために実行されるのである。
以上説明した関節点、経由点および付着点の座標変換は、各剛体セグメントごとに行われ、人体を構成するすべての剛体セグメントについてその座標変換が終了すると、必要に応じ、それら剛体セグメントが互いに繋ぎ合わせられる。
例えば、複数個の関節点のうち、空間的に一致する(位置および姿勢が一致する)関節点同士が抽出される。それら関節点同士は、互いに異なる剛体セグメントにそれぞれ帰属するが、現実の人体における1個の関節を表現する点で互いに共通する。その後、それら関節点同士が空間的に互いに一致するように、対応する剛体セグメントが配置される。複数個の剛体セグメントが互いに連鎖させられることにより、マスタモデルがスケーリングされた筋骨格モデルが完成する。
なお付言するに、本実施形態においては、マスタモデルのスケーリングに際し、関節点、経由点および付着点のスケーリングは行われるが、各剛体セグメントの幾何学的特性(形状等)および物理的特性(質量、慣性モーメント等)のスケーリングは行われない。ただし、後者のスケーリングも併せて行われる態様で本発明を実施することが可能である。
後に図40を参照して詳細に説明するが、現実の人体においては、筋モーメントアームの長さが関節角度に依存する種類の関節が存在する。この種の関節を筋骨格モデル上において精度よく再現するためには、関節角度に応じて筋モーメントアームが変化するように筋骨格モデルを作成することが必要である。また、筋モーメントアームを関節角度に依存させるためには、例えば、経由点の位置を関節角度に依存させればよい。
そのような知見に基づき、本実施形態においては、図21に示すように、スケーリング手段257によってスケーリングされた筋骨格モデル(またはスケーリング前の筋骨格モデルであるマスタモデル)を筋モーメントアームに関して調整する筋モーメントアーム調整手段258を備えている。
この筋モーメントアーム調整手段258においては、複数の骨が関節において成す関節角度が入力され、その入力された関節角度に基づき、経由点の位置が変更される。
本実施形態においては、経由点は、関節角度に依存しない前述の基準位置を有しており、マスタモデルおよびスケーリングされた筋骨格モデルにおいては、各経由点の位置が、その基準位置(初期位置)と一致するように、定義されている。
筋モーメントアーム調整手段258においては、経由点の、基準位置からの移動量が、入力された関節角度に基づいて変更され、それにより、経由点の位置が変更される。前述の第2の座標変換は、基準位置に対して行われる一方、移動量に対しては行われない。
その結果、本実施形態においては、筋骨格モデルにおける関節角度に対する筋モーメントアームの変化が、関節角度に対する移動量の変化みのによって実現され、その移動量は、スケーリングの影響を受けない。
したがって、本実施形態においては、関節角度に対する筋モーメントアームの変化が、スケーリングの有無を問わず、同じ性質を有するように、筋骨格モデルにおいて再現される。
図30に示すように、筋モーメントアーム調整手段430は、関節角度入力手段432と、基準位置算出手段434と、移動量算出手段436と、経由点位置算出手段438と、筋モーメントアーム算出手段440とを含むように構成されている。
後に図56を参照して詳述するが、関節角度入力手段432は、設計対象筋の関節角度を入力する。基準位置算出手段434は、各経由点の基準位置(移動前の位置)を算出する。移動量算出手段436は、各経由点の位置の移動量を算出する。
経由点位置算出手段438は、それら算出された基準位置および移動量に基づき、各経由点の最適位置を算出する。筋モーメントアーム算出手段440は、その算出された最適位置と、設計対象筋の関節の位置とに基づき、筋モーメントアームを算出する。
図31には、本実施形態に従う操作性評価方法の概略であってコンピュータ20によって実施されるものが工程図で示されている。コンピュータ20は、前述のように、入力装置22および出力装置24と共同して操作性評価装置10を構成している。
図31に示すように、この操作性評価方法の各回の実行時には、まず、ステップS1(以下、単に「S1」で表す。他のステップについても同じとする。)において、有限要素人体モデルが各要素ごとに、データメモリ42からストレージ32内の別の記憶領域であるワーキングエリア(図示しない)に順次読み出される。正確には、有限要素人体モデルを表すモデルデータが、各要素を表す要素データごとに、順次読み出される。すなわち、コンピュータ20のうちこのS1を実行する部分が、図21における有限要素人体モデル読出手段240を構成しているのである。
次に、図31のS2において、読み出された各要素が分類されて他の要素と結合されることにより、骨格モデルが作成される。この骨格モデルは、人体の動作解析を行うために使用される。このS2の詳細は、骨格モデル作成プログラムとして図32にフローチャートで概念的に表されている。これについては後述する。すなわち、コンピュータ20のうちこのS2を実行する部分が、図21における骨格モデル作成手段242を構成しているのである。
続いて、図31のS3において、その作成された骨格モデルに筋が前述のワイヤ要素として付加されることにより、骨格モデルをベースとして筋骨格モデルが作成される。このS3の詳細は、筋骨格モデル作成プログラムとして図33にフローチャートで概念的に表されている。これについては後述する。すなわち、コンピュータ20のうちこのS3を実行する部分が、図21における筋骨格モデル作成手段244を構成しているのである。
その後、図31のS4において、操作者である人間による対象物の操作性が解析される。このS4の詳細は、操作性解析プログラムとして図46にフローチャートで概念的に表されている。これについては後述する。すなわち、コンピュータ20のうちこのS4を実行する部分が、図5における操作性解析手段204を構成し、また、S1ないしS3を実行する部分が、人間物理モデル作成手段200を構成しているのである。
続いて、図31のS5において、その操作性の解析結果が対象物および/またはその対象物が設置される車両の設計にフィードバックされることにより、設計者による車両設計が支援される。このS5の詳細は、設計支援プログラムとして図47にフローチャートで概念的に表されている。これについては後述する。すなわち、コンピュータ20のうちこのS5を実行する部分が、図5における設計支援手段205を構成しているのである。
以上で、この操作性評価方法の一回の実行が終了する。
ところで、本実施形態においては、上述の操作性解析プログラムの実行により、作成された筋骨格モデルにおける各筋の筋活性度αが算出される。現実の人間であれば、衝突時には、身構えるなどして各部位の筋に能動的に筋力が発生し、人間の緊張度が高いほど、筋活性度αが上昇する。筋活性度αが上昇すると、筋の剛性Kおよび粘性Bも上昇するため、人間の緊張度が高いほど、筋の硬直度が上昇する。
したがって、人間物理モデルを用いて衝突時に人間の挙動を精度よく解析するためには、人間の複数の筋のそれぞれについて筋活性度αを推定し、その結果を考慮して人間の挙動を解析することが重要である。一方、人間物理モデルの要素(有限要素)を単位とするのではなく、同じ部位に属する複数の有限要素が互いに剛体的に結合されて成る剛体セグメントを単位としたうえで、人間の動作を解析し、さらに、その解析された動作から各筋の活性度αを筋モデルや最適化手法を採用することにより、筋活性度αを推定することが可能である。
以上説明した知見を背景にして、この操作性解析プログラムにおいては、要素数が多い有限要素人体モデルではなく、それより少数の剛体セグメントを有する骨格モデルと筋骨格モデルとのいずれか一方、または、場合によっては両方を用いることにより、各筋ごとに筋活性度αが推定される。この操作性解析プログラムのうち、その筋活性度αを推定するために実行される部分が、筋活性度推定プログラムとして図48にフローチャートで概念的に表されている。これについては後述する。
ここで、図32を参照することにより、前記骨格モデル作成プログラムを具体的に説明する。
この骨格モデル作成プログラムの実行時には、まず、S101において、有限要素人体モデルを構成する複数の要素(有限要素)のうち人体の骨を表現するものが、人体を構成する複数の部位にそれぞれ分類される。有限要素人体モデルを構成する複数の要素のうち、骨以外の組織、すなわち、皮膚、肉等を表現するものは、その分類対象から除外されている。
有限要素人体モデルにおいては、各要素ごとに、それが属する部位が予め定められている。すなわち、要素と部位との関係を規定するデータが、有限要素人体モデルを表すデータに予め組み込まれており、そのデータを用いて各要素の各部位への分類が行われる。各部位ごとに、それに分類された複数の要素が互いに結合されることによって、1個の剛体セグメントが構成される。
次に、S102において、人体の複数の部位のうち隣り合った2個の部位間に関節位置となる点が定義される。その点は、有限要素人体モデルにおける複数個の点のいずれかと一致するように定義される。その点は、隣り合った2個の剛体セグメント間の関節位置を表している。
続いて、S103において、各部位ごとに、それに属する複数の要素に関する属性情報(形状、密度、材料物性値等)から、重心位置、質量および慣性モーメントが算出される。それら重心位置、質量および慣性モーメントを算出する際には、有限要素人体モデルを構成する複数個の要素のうち骨を表現するもののみならず、皮膚、肉等、骨以外の組織部分を表現するものも考慮される。その結果、骨格モデルにおける各剛体セグメントは、その形状に関しては、骨の表面を反映するが、各剛体セグメントの重心位置、質量および慣性モーメントに関しては、各部位を構成するすべての組織部分を反映する。
その後、S104において、各剛体セグメントごとにローカル座標系が定義される。各ローカル座標系は、それの原点において各剛体セグメントの重心位置に一致する。各ローカル座標系は、x座標軸とy座標軸とz座標軸とを有しており、それら座標軸の向きは、各剛体セグメントの複数の慣性主軸の向きにそれぞれ一致する。ただし、それら座標軸は、それら慣性主軸に、慣性モーメントの値の大きい順にそれぞれ割り当てられる。各ローカル座標系は、右手系となるように、各座標軸の符号の向きが調整される。
続いて、S105において、各剛体セグメントの幾何学量(位置、方向等)が記述される座標系が、有限要素人体モデルが定義されているグローバル座標系から、各剛体セグメントに対応するローカル座標系に変換される。すなわち、座標変換が行われるのである。各剛体セグメントの幾何学量には、例えば、形状、重心位置、慣性モーメント情報、関節の位置、関節の可動方向等がある。
その後、S106において、各要素の複数の属性情報のうち、骨格モデルを用いて人間の動作を解析する際に使用されないもの(例えば、各要素の材料物性値)が、後述の有限要素解析に備えて、ストレージ32の特定の記憶領域に保存される。
続いて、S107において、各部位に分類された複数個の要素が互いに結合されることにより、剛体セグメントが構成される。各剛体セグメントの運動中、それを構成する複数の要素が互いに一体的に運動する。さらに、各々そのようにして構成された複数の剛体セグメントが、対応する関節において、互いに回動可能に連結される。
その後、S108において、各関節ごとに、関節が受動的に運動させられる際の抵抗トルク(関節角度に応じて構造的に発生するトルク)が関節受動抵抗トルクとして定義される。この関節受動抵抗トルクは、関節角度の関数を定義する関数式やマップテーブルとして表現することが可能である。
以上で、この骨格モデル作成プログラムの一回の実行が終了する。
次に、図33を参照することにより、前記筋骨格モデル作成プログラムを具体的に説明する。
この筋骨格モデル作成プログラムの実行時には、まず、S201において、先に作成された骨格モデルの各剛体セグメントに付着させるべき各筋につき、各筋が各剛体セグメントの表面に付着させられるべき複数の付着点の位置と、それら付着点間の経由点であって各筋が各剛体セグメントに沿って延びる際に経由する点の位置とが定義される。それら付着点の位置と経由点の位置とは、各剛体セグメントのローカル座標系において定義される。
すなわち、コンピュータ20のうちこのS201を実行する部分が、図21における位置定義手段250を構成しているのである。
次に、図33のS202において、付着点位置と経由点位置とが定義された各筋が各剛体セグメントに沿って延びる際の経路すなわち複数の付着点および少なくとも一つの経由点を各筋が通過する順序が定義される。これにより、各筋が骨格モデル上に配置される。
すなわち、コンピュータ20のうちこのS202を実行する部分が、図21における配置定義手段252を構成しているのである。
続いて、図33のS203において、その配置された各筋の物理量が定義される。その物理量には、各筋の生理断面積、各筋において筋繊維と腱との成すペネーション角度等がある。ペネーション角度は、図34に示されている。それら生理断面積およびペネーション角度は、後述するが、各筋の最大筋力を算出するために利用される。
各筋の最大筋力は、定数k(約5ないし10)を用いた次式によって算出することが可能である。
最大筋力=k×生理断面積[cm]×COS(ペネーション角度[rad])
すなわち、コンピュータ20のうちこのS203を実行する部分が、図21における物理量定義手段254を構成しているのである。
その後、図33のS204において、筋モデルとして例えばHillモデルを用いることにより、各筋の内部の粘弾性特性が定義される。Hillモデルによれば、各筋の筋力は、図35の式(101)によって算出することができる。この式は、各筋の筋力Fが、筋活性度αと、最大筋力fmax と、筋長lの関数gと、筋長変化速度d(l)/dtの関数hとの積として推定されることを表している。
したがって、各筋の粘弾性特性を定義するために、具体的には、筋長の関数gと筋長変化速度の関数hとが定義されることになる。
すなわち、コンピュータ20のうちこのS204を実行する部分が、図21における粘弾性特性定義手段256を構成しているのである。
続いて、図33のS205において、前述のマスタモデルが、スケーリング倍率kのもとにスケーリングされる。このS205の詳細がスケーリングプログラムとして図36に概念的にフローチャートで表されている。
このスケーリングプログラムは、マスタモデルを構成する複数の剛体セグメントについて順に実行される。このスケーリングプログラムが今回の剛体セグメントについて実行されると、まず、S231において、今回の剛体セグメントについてスケーリング倍率kが入力される。スケーリング倍率kは、例えば、すべての剛体セグメントについて一律にユーザによって指定することが可能であるが、通常は、各剛体セグメントごとに個別にユーザによって指定される。
すなわち、コンピュータ20のうちこのS231を実行する部分が、図29におけるスケーリング倍率入力手段330を構成しているのである。
次に、図36のS232において、図1に示すデータメモリ42から、マスタモデルとしての筋骨格モデルを表すデータが読み出され、それにより、マスタモデルが入力される。すなわち、コンピュータ20のうちこのS232を実行する部分が、図29におけるマスタモデル入力手段332を構成しているのである。
続いて、図36のS233において、入力されたマスタモデルを表すデータから、各関節点の位置を表すデータが抽出される。すなわち、コンピュータ20のうちこのS233を実行する部分が、図29における関節点抽出手段334を構成しているのである。
その後、図36のS234において、前述の、スケーリング前の同次変換行列Rcが、今回の剛体セグメントを定義する剛体基準座標系の剛体基準位置および姿勢(マスタモデルにおいて定義されている。)と、スケーリング前の関節点Cの位置および姿勢(対応する関節点座標系の原点の位置および姿勢であって、これもマスタモデルにおいて定義されている。)との相対位置関係に基づいて算出される。
具体的には、前述のように、剛体基準座標系から関節点座標系を得るために剛体基準座標系に対して行うことが必要である回転と並進移動とが求められ、それらに基づき、前述のようにして、同次変換行列Rcが算出される。
続いて、S235において、図27の式(50)に、スケーリング前の関節点Cの位置ベクトルcと、前記入力されたスケーリング倍率kとを代入することにより、スケーリング後の関節点C’の位置ベクトルc’が算出される。
すなわち、コンピュータ20のうちこのS235を実行する部分が、図29における関節点変換手段338を構成しているのである。
その後、図36のS236において、前述の、スケーリング後の同次変換行列Rc’が、今回の剛体セグメントを定義する剛体基準座標系の剛体基準位置および姿勢と、スケーリング後の関節点Cの位置および姿勢(対応する関節点座標系の原点の位置および姿勢)との相対位置関係に基づいて算出される。
すなわち、コンピュータ20のうちS234およびS236を実行する部分が、図29における座標系変換行列算出手段336を構成しているのである。
続いて、図36のS237において、入力されたマスタモデルを表すデータから、各経由点の位置を表すデータが抽出される。すなわち、コンピュータ20のうちこのS237を実行する部分が、図29における経由点抽出手段342を構成しているのである。
その後、図36のS238において、図27の式(51)に、スケーリング前の経由点Bの位置ベクトルb(正確には、スケーリング前の経由点Bの基準位置を表す位置ベクトル)と、スケーリング前の同次変換行列Rcと、スケーリング後の同次変換行列Rc’とを代入することにより、スケーリング後の経由点B’の位置ベクトルb’(正確には、スケーリング後の経由点Bの基準位置を表す位置ベクトル)が算出される。
すなわち、コンピュータ20のうちこのS238を実行する部分が、図29における経由点変換手段344を構成しているのである。
続いて、図36のS239において、入力されたマスタモデルを表すデータから、各付着点の位置を表すデータが抽出される。すなわち、コンピュータ20のうちこのS239を実行する部分が、図29における付着点抽出手段346を構成しているのである。
続いて、S240において、図27の式(50)に、スケーリング前の付着点Aの位置ベクトルaと、前記入力されたスケーリング倍率kとを代入することにより、スケーリング後の関節点A’の位置ベクトルa’が算出される。
すなわち、コンピュータ20のうちこのS240を実行する部分が、図29における付着点変換手段348を構成しているのである。
以上で、図36に示すスケーリングプログラムの一回の実行が終了し、その後、図33のS206に移行する。
このS206においては、前述のようにして、筋モーメントアームの調整が行われる。このS206の詳細は、筋モーメントアーム調整プログラムとして図37にフローチャートで概念的に表されている。これについては後に詳述する。すなわち、コンピュータ20のうちこのS206を実行する部分が、図21における筋モーメントアーム調整手段258を構成しているのである。
以上で、図33に示す筋骨格モデル作成プログラムの一回の実行が終了する。
図35には、さらに、各筋の剛性Ku,iが、各筋の筋力fを筋長lに関して微分することによって算出されることが式(102)によって表されている。したがって、各筋の筋力fと筋長lとの関係が判明すれば、各筋の剛性Ku,iが誘導されることになる。
次に、図37を参照することにより、前記筋モーメントアーム調整プログラムを具体的に説明する。
この筋モーメントアーム調整プログラムは、筋骨格モデルを構成する複数の筋(または剛体セグメントないしは関節)について順に実行される。説明の便宜上、それら複数の筋のうち、この筋モーメント調整プログラムの実行対象を設計対象筋と称する。
この筋モーメントアーム調整プログラムが今回の設計対象筋について実行されると、まず、S3001において、今回の設計対象筋について関節角度が入力される。今回の設計対象筋につき、関節角度が時系列的に変化する場合には、時系列的に並んだ複数個の関節角度が一連の関節角度列として入力される。このS3001が実行されるごとに、同じ設計対象筋につき、関節角度が1個ずつ順に入力されると仮定する。
すなわち、コンピュータ20のうち、このS3001を実行する部分が、図30に示す関節角度入力手段432を構成しているのである。
次に、図37のS3002において、今回の設計対象筋に対応する2個の経由点のそれぞれにつき、基準位置(Px,Py,Pz)を表すデータが前述の筋骨格モデルから抽出され、それにより、その基準位置(Px,Py,Pz)が算出される。
この基準位置(Px,Py,Pz)は、現在のスケーリング倍率kが1ではない限り、マスタモデルにおける各経由点の基準位置に対して前述の第2の座標変換を行うことによって算出される。
本実施形態においては、その基準位置(Px,Py,Pz)が、今回の設計対象筋を記述するローカル座標系(剛体基準座標系)に、関節角度に依存しないように、固定されている。関節角度に応じて筋モーメントアームが変化するようにするために、関節角度に応じて、各経由点の、その基準位置(Px,Py,Pz)からの移動量が決定され、その結果、関節角度に応じて各経由点の位置が変化させられる。
すなわち、コンピュータ20のうち、このS3002を実行する部分が、図30に示す基準位置算出手段434を構成しているのである。
続いて、図37のS3003において、今回の設計対象筋に対応する2個の経由点のそれぞれの位置の、その算出された基準位置(Px,Py,Pz)からの移動量(各移動方向x,y,zごとにスカラーとしての移動量Δx,Δy,Δzを表すベクトル)が算出される。各経由点の移動量(Δx,Δy,Δz)は、前記入力された各関節角度ごとに、移動量マップを参照することによって算出される。
この移動量マップ(「関数」、「テーブル」または「データベース」ともいう。)は、説明の便宜上、図38に表形式で表すように、関節角度と、移動方向ごとの移動量との間に成立する関係を記述する。この移動量マップは、各経由点ごとに、各経由点の、基準位置(Px,Py,Pz)からの移動量Δx,Δy,Δzを、関節角度に応じて、離散的に定義する。この移動量マップは、後に図39を参照して詳述する移動量マップ作成プログラムの実行によって作成され、図1に示すデータメモリ42に保存される。
すなわち、コンピュータ20のうち、このS3003を実行する部分が、図30に示す移動量算出手段436を構成しているのである。
その後、図37に示すS3004において、今回の設計対象筋に対応する2個の経由点のそれぞれの最適位置(Qx,Qy,Qz)が、対応する基準位置(Px,Py,Pz)および移動量(Δx,Δy,Δz)に基づき、算出される。具体的には、各経由点を基準位置(Px,Py,Pz)から移動量(Δx,Δy,Δz)だけ移動させることによって到達する位置が、最適位置(Qx,Qy,Qz)として算出される。その算出された最適位置(Qx,Qy,Qz)は、データメモリ42に、筋骨格モデルに割り当てられた領域において、各経由点に関連付けて保存される。
すなわち、コンピュータ20のうち、このS3004を実行する部分が、図30に示す経由点位置算出手段438を構成しているのである。
続いて、図37のS3005において、今回の設計対象筋に対応する関節につき、対応する関節の回転軸の位置と、対応する2個の経由点の最適位置(Qx,Qy,Qz)を通過する一直線との間の距離が、筋モーメントアームとして算出される。その算出された筋モーメントアームは、データメモリ42に、筋骨格モデルに割り当てられた領域において、各関節に関連付けて保存される。
すなわち、コンピュータ20のうち、このS3005を実行する部分が、図30に示す筋モーメントアーム算出手段440を構成しているのである。
以上で、この筋モーメントアーム調整プログラムの一回の実行が終了する。
ここで、図39を参照することにより、上述の移動量マップ作成プログラムを詳細に説明する。
この移動量マップ作成プログラムがコンピュータ20によって実行されると、まず、S4001において、人体を構成する複数の筋であって人間物理モデルを構成する複数の剛体セグメントにそれぞれ対応するもののうちのいずれかが、この移動量マップ作成プログラムの今回の実行対象として、入力装置22を用いて指定される。そのように指定された筋を対象筋という。
このS4001においては、さらに、今回指定された対象筋に対応する2個の経由点が、この移動量マップ作成プログラムの今回の実行対象として、入力装置22を用いて指定される。
次に、S4002において、今回の対象筋に対応する関節において回動可能に連結された2本の骨がその関節において成す関節角度が、入力装置22を用いてコンピュータ20に入力される。それら2本の骨の関節角度は、上限値と下限値との間の定義範囲内において離散的に変化する。このS4002の今回の実行においては、その定義範囲内に離散的に存在する複数個の関節角度のうちのいずれかが、今回の関節角度として入力される。
続いて、S4003において、今回の関節角度に対応する参照モーメントアームが、入力装置22を用いてコンピュータ20に入力される。
各筋の筋モーメントアームの実際値は、対応する関節の関節角度に依存する。図59は、その事実を確認するために、人体の大腿四頭筋の筋モーメントアームの離散的な複数個の実験値を、膝関節の屈曲角度(関節角度)に関連付けて、点グラフで表している。これにより、筋モーメントアームの実際値が関節角度に依存する性質があることが分かる。
本実施形態においては、筋モーメントアームの離散的な複数個の実験値が、関節角度に関連付けて、図1に示すデータメモリ42に、参照モーメントアームマップ(「関数」、「テーブル」または「データベース」ともいう。)として、予め記憶されている。
図39に示すS4003においては、具体的には、上述の参照モーメントアームマップのもと、入力された関節角度に対応する筋モーメントアームの実験値が、今回の参照モーメントアーム(筋モーメントアームの目標値)として、決定される。
さらに具体的には、このS4003においては、入力された関節角度の値にちょうど一致する関節角度に関連付けて実験値が参照モーメントアームマップに記憶されている場合には、その実験値がそのまま、今回の参照モーメントアームとして参照モーメントアームマップから読み出される。
これに対し、入力された関節角度の値にちょうど一致する関節角度に関連付けて実験値が参照モーメントアームマップに記憶されていない場合には、最も近似する少なくとも2個の実験値が参照モーメントアームマップから読み出される。さらに、それら少なくとも2個の実験値に対して補間(線形補間、曲線補間等)が行われ、それにより、今回の関節角度に対応する実験値が算出される。今回は、その算出された実験値が、今回の関節角度に対応する参照モーメントアームである。
本実施形態においては、入力された関節角度の値にちょうど一致する関節角度に関連付けて実験値が参照モーメントアームマップに記憶されていない場合には、最も近似する2個の実験値に対して線形補間が行われることにより、今回の関節角度に対応する実験値が近似的に算出される。
離散的な複数個の実験値に対して線形補間を行うことは、図40に実線グラフで示すように、それら複数個の実験値をそれぞれ示す複数個のプロット点を折れ線によって互いに連結し、それによって、それら複数個の実験値を連続値化することを意味する。
また、今回の関節角度が、参照モーメントアームマップに記憶されている複数個の関節角度が包含される前述の定義範囲から逸脱している場合には、その定義範囲の上限値と下限とのうち今回の関節角度に近いものに対応する実験値が、今回の参照モーメントアームとして、参照モーメントアームマップから読み出される。
このようにしてS4003において参照モーメントアームが今回の関節角度に関連付けて入力されると、S4004において、今回の経由点につき、その入力された参照モーメントアームを達成するために、今回の経由点を基準位置(Px,Py,Pz)から移動させることが適当である移動量(Δx,Δy,Δz)が算出される。
このS4004の詳細が図41に移動量算出ルーチンとして概念的にフローチャートで表されているが、これについては後述する。
その後、図39に示すS4005において、この移動量マップ作成プログラムの実行が、今回の対象筋に対応する複数個の関節角度のすべてについて終了したか否かが判定される。この移動量マップ作成プログラムが未だ実行されていない関節角度が存在する場合には、このS4005の判定がNOとなり、S4002に戻り、別の関節角度が入力される。
これに対し、この移動量マップ作成プログラムが未だ実行されていない関節角度が存在しない場合には、S4005の判定がYESとなり、以上で、この移動量マップ作成プログラムの、今回の対象筋および今回の2個の経由点についての実行が終了する。
ここで、図41を参照することにより、移動量算出ルーチンを説明する。
この移動量算出ルーチンにおいては、まず、S4101において、今回の設計対象筋に対応する2個の経由点のそれぞれにつき、前述の基準位置が初期位置としてデータメモリ42または図示しないワークエリアに保存される。
例えば、図42に示す例においては、同図において左側に示す第1の骨と、右側に示す第2の骨とがそれぞれ、設計対象筋として指定される。第1の骨には経由点Aが関連付けられており、それの位置は、(x,y,z)として定義される。第2の骨には経由点Bが関連付けられており、それの位置は、(x,y,z)として定義される。
次に、図41のS4102において、今回の設計対象筋につき、今回の関節角度のもと、各経由点の位置を参照することにより、筋モーメントアームr(i:関節角度の番号)が計算される。筋モーメントアームrは、例えば、同じ関節に関連付けて指定された2個の経由点を通過する一直線(力の作用直線)と、その関節の回転軸の中心との距離として計算される。
その後、S4103において、図39に示すS4003において入力されてデータメモリ42に保存された参照モーメントアームが、そのデータメモリ42から読み出される。
図43(a)および(b)には、図42に示す例につき、2本の骨間に張られた1本の筋が、初期状態すなわち筋モーメントアームが未だ調整されていない状態と、後述の最適化計算において筋モーメントアーム誤差が収束した収束状態すなわち筋モーメントアームの調整が完了した状態とについてそれぞれ正面図で示されている。図44には、筋モーメントアームが関節角度に応じて変化する様子がグラフで表されている。
続いて、図41のS4104において、S4102において設計対象筋について計算された筋モーメントアームrの、その入力された参照モーメントアームからの偏差が設計対象筋モーメントアーム誤差eとして計算される。その設計対象筋モーメントアーム誤差eは、今回の関節角度についての個別モーメントアーム誤差として計算される。
その後、S4105において、計算された設計対象筋モーメントアーム誤差eが許容値e以下であるか否かが判定される。許容値e以下である場合には、その判定がYESとなり、S4113において、各経由点の初期位置と収束位置(今回は、初期位置と一致する)との差から、各移動方向ごとに移動量が算出される。今回は、収束位置が初期位置と一致するため、いずれの移動方向についても、各経由点の移動量が0となる。
続いて、S4114において、今回の関節角度と移動量の算出値とが前述の移動量マップに追加される。以上で、この移動量算出ルーチンの一回の実行が終了する。
図44には、その移動量マップの内容が、説明の便宜上、3種類のグラフで表されている。具体的には、同じ経由点につき、x座標軸方向における移動量と、y座標軸方向における移動量と、z座標軸方向における移動量とがそれぞれグラフで表されている。
計算された設計対象筋モーメントアーム誤差eが許容値eを超える場合には、図41のS4105の判定がNOとなり、S4106に移行する。
このS4106においては、設計対象筋の各経由点に摂動が摂動量dで与えられ、その結果、複数個の摂動点が作成される。図42に示す例においては、経由点Aと経由点Bとについてそれぞれ、3個ずつの摂動点が作成される。具体的には、経由点Aについては、摂動点Ax(x+d,y,z)と、摂動点Ay(x,y+d,z)と、摂動点Az(x,y,z+d)とである。また、経由点Bについては、摂動点Bx(x+d,y,z)と、摂動点By(x,y+d,z)と、摂動点Bz(x,y,z+d)とである。
続いて、図41のS4107において、それら作成された複数個の摂動点を用いて複数本の仮想筋が作成される。図42に示す例においては、前述のように、経由点Aに関する3個の摂動点Ax,Ay,Azのそれぞれともとの経由点Bとを通過する3本の仮想筋と、経由点Bに関する3個の摂動点Bx,By,Bzのそれぞれともとの経由点Aとを通過する3本の仮想筋とが作成される。
その後、図41のS4108において、S4102と同様にして、各仮想筋ごとに、筋モーメントアームが計算される。その後、S4109において、S4104と同様にして、各仮想筋ごとに個別モーメントアーム誤差が計算される。以下、各個別モーメントアーム誤差を下記のように表記する。
Ax−B:摂動点Axともとの経由点Bとを通過する仮想筋の個別モーメントアーム誤差
Ay−B:摂動点Ayともとの経由点Bとを通過する仮想筋の個別モーメントアーム誤差
Az−B:摂動点Azともとの経由点Bとを通過する仮想筋の個別モーメントアーム誤差
A−Bx:もとの経由点Aと摂動点Bxとを通過する仮想筋の個別モーメントアーム誤差
A−By:もとの経由点Aと摂動点Byとを通過する仮想筋の個別モーメントアーム誤差
A−Bz:もとの経由点Aと摂動点Bzとを通過する仮想筋の個別モーメントアーム誤差
その後、S4110において、誤差のヤコビアンJが計算される。このヤコビアンJは、仮想筋の数と同数の成分を有する行列であり、本実施形態においては、1×6の行列である。図45には、そのヤコビアンJの計算手法の一例が式(202)で表されている。この例においては、そのヤコビアンJのうち、各仮想筋に対応する成分が、設計対象筋モーメントアーム誤差eから各仮想筋の個別モーメントアーム誤差を差し引いた値を摂動量dで割り算した値を有している。このヤコビアンJにおいては、各成分が、対応する経由点の複数の座標値のうち対応するものの、摂動量dで与えられる摂動に対する増減傾向すなわち応答を表している。
続いて、図41のS4111において、各経由点ごとに、経由点位置の更新量Δが、上記計算されたヤコビアンJを用いて計算される。この更新量Δは、仮想筋の数と同数の成分を有する行列であり、本実施形態においては、6×1の行列である。
図45には、その更新量Δの計算手法の一例が式(203)で表されている。この例においては、更新量Δが、主に設計対象筋モーメントアーム誤差eと、ヤコビアンJの逆行列の一例である疑似逆行列Jとに基づいて計算され、具体的には、それらの積と、学習係数と称される定数λとの積として計算される。
ここで、式(203)およびこれに用いられる各種変数をさらに具体的に説明する。
ヤコビアンJは、設計変数(経由点の位置を表す。)の微小変化量と誤差の変化量との関係を表すマトリクスである。この関係は、
「誤差の変化量」=J・「設計変数の微小変化量」
なる式(203−1)で表現することができる。一方、最適化計算においては、現在の誤差の大きさに応じて、設計変数の値が変更される。本実施形態においては、その設計変数の変更量が、最終的に求めるべき物理量である経由点位置の更新量Δである。
上記の式(203−1)の両辺にそれぞれ、ヤコビアンJの疑似逆行列Jを左から掛けると、この式は、
・「誤差の変化量」=「設計変数の微小変化量」
なる式(203−2)に書き換えられる。ここに、ヤコビアンJの逆行列J−1ではなく、疑似逆行列Jを用いるのは、ヤコビアンJは、必ずしも正方行列になるとは限らないし、また、必ずしも逆行列を有するとは限らないからである。
上記の式(203−2)は、
・「現在の誤差の大きさ」=「誤差を減らすことができる設計変数の変更量」
なる式(203−3)として把握することが可能である。
以上説明した知見に基づき、本実施形態においては、図45に式(203)で示すように、疑似逆行列Jに現在の設計対象筋モーメントアーム誤差e(疑似逆行列Jと同数の要素を有するベクトル)を掛けることにより、設計変数の変更量、すなわち、経由点位置の更新量Δが計算されるようになっている。
その後、図41のS4112において、その計算された更新量Δを用いて各経由点位置が更新される。図45には、各経由点位置の更新のための計算手法の一例が式(204)で表されている。この例においては、経由点Aのx座標値xは、更新量Δを表す行列のうち、その座標値xに対応する成分Δの加算によって更新される。経由点Aのy座標値yは、更新量Δを表す行列のうち、その座標値yに対応する成分Δの加算によって更新される。経由点Aのz座標値zは、更新量Δを表す行列のうち、その座標値zに対応する成分Δの加算によって更新される。経由点Bについての各座標値x,y,zについても同様にして更新される。
続いて、図41のS4102ないしS4104が、前回の場合と同様にして、更新された経由点位置によって定義される設計対象筋について実行される。それらステップおよびS4106ないしS4112は、S4105の判定がYESとなり、設計対象筋モーメントアーム誤差eが、十分に小さい値となって収束したであろうと予想される状態に至るまで、繰返し実行される。
必要回数の反復的実行の結果、S4105の判定がYESとなれば、S4113において、前述のようにして、各経由点の初期位置(データメモリ42に保存されている。)と収束位置(S4112において更新された最終的な経由点位置)との差から、各経由点の、初期位置からの移動量が算出される。
その後、S4114において、今回の関節角度と移動量の算出値とが移動量マップに追加される。以上で、この移動量算出ルーチンの一回の実行が終了する。
次に、図46を参照することにより、前記操作性解析プログラムを具体的に説明する。
この操作性解析プログラムにおいては、まず、S281において、後述のS287における逆力学解析に必要な人間物理モデルが定義される。具体的には、このS281においては、データメモリ42から人間物理モデルの一例である筋骨格モデルが読み込まれる。
このS281においては、さらに、その読み込まれた筋骨格モデルにつき、該当する物理パラメータが定義される。例えば、図35の式(101)における関数gと関数hとが定義される。関数gは、筋剛性を定義する関数であり、一方、関数hは、筋粘性を定義する関数である。最適化されるべき物理パラメータとしては、それら関数gおよび関数hや、筋の自然長が存在する。
図49には、そのようにして定義された筋骨格モデルの一例が、それの下肢部のみに関して斜視図で示されている。図49には、筋骨格モデルが、後述のブレーキペダルと共に示されている。この例においては、人間の下肢部が7個の剛体セグメントと6個の関節を用いて表現されている。股関節は3自由度の回転関節を持ち、膝関節は1自由度の回転関節を持ち、足首関節は3自由度の関節を持っている。骨盤は、6自由度のフリージョイントを介してグラウンドに連携させられている。この例は、合計20自由度を持っており、また、70個の筋を表現している。
次に、図46のS282において、後述のS286における逆力学解析に必要な対象物物理モデルが定義される。この対象物物理モデルは、有限要素モデルとして定義することも、剛体セグメントモデルとして定義することも可能である。このS282においては、さらに、その読み込まれた対象物物理モデルにつき、該当する物理パラメータが定義される。そのような物理パラメータに対象物剛性Kが存在する。この対象物剛性Kの一例は、後述の回転ブレーキジョイントのばね特性を反映する。
図50には、その対象物物理モデルの一例として、車両において運転者によって右足で踏み込まれて操作されるブレーキ操作部材としてのブレーキペダルを対象物の一例として、そのブレーキペダルを剛体セグメントで表現するモデルが側面図で示されている。この例においては、ブレーキペダルが、1個の剛体として表現されるとともに、1自由度を持つ回転ブレーキジョイントを介してグラウンド(例えば、車両のうち剛体部分)に連携させられている。
図50に示す対象物物理モデルの例においては、操作者によるブレーキペダルの踏込みに対抗する力を弾性的に発生させる回転ブレーキジョイントが存在する。図51には、この回転ブレーキジョイントの一例が線形ばね特性を有することがグラフで表されている。この例においては、図51に示すように、回転ブレーキジョイントに作用するトルクが回転ブレーキジョイントの回転角度に対して比例的に変化する。
続いて、図46のS283において、それら人間および対象物について解析条件が設定される。この解析条件には、例えば、前述の拘束条件や前述の評価位置r(人間および対象物のうち、ユーザが操作性を評価する際の注目部位の位置)が含まれる。
図52には、図49に示す筋骨格モデルとしての人間物理モデルと、図50に示す対象物物理モデルとが、外部環境としてのグラウンド(例えば、車両のうちの剛体部分)に関連付けて配置される一例が示されている。
この例においては、人間物理モデルによって表現される人間の骨盤が、前述の外部環境としてのグラウンドとの連結点において、そのグラウンドから1個の拘束Gを受ける。さらに、対象物物理モデルによって表現されるブレーキペダルが、それの回転ブレーキジョイントのうちグラウンドとの連結点において、そのグラウンドから1個の拘束Gを受ける。
この例においては、さらに、人間がそれの右足先においてブレーキペダルに面接触するため、図53に斜視図で示すように、それら人間とブレーキペダルとの間に1個の接触点cが存在する。その接触点cは、拘束点であり、この拘束点に拘束点座標空間が設定されている。この拘束点座標空間は、図53に示すように、接触点cに原点を持つとともにブレーキペダルのパッド面の法線方向と一致するようにz方向を有するxyz座標系によって定義される。
その接触点cにおける拘束は、図54において式(301)で表現される接触拘束行列Hによって表現される。その接触拘束行列Hは、拘束の数と同数である4つの行と、各部位の自由度n,m(x軸方向並進、y軸方向並進、z軸方向並進、x軸まわり回転、y軸まわり回転およびz軸まわり回転)の数と同数である6つの列とによって構成される。
図54に示す式(301)で表現される接触拘束行列Hにおいては、要素が「1」であることが、その要素の位置に対応する運動方向において力が伝達されること、すなわち、その運動方向において運動が拘束されることを意味する。したがって、この接触拘束行列Hは、人間とブレーキペダルとの間に、x軸方向、y軸方向およびz軸方向の自由並進およびz軸まわりの自由回転は阻止されるが、x軸まわりおよびy軸まわりの自由回転は許容されること、すなわち、面接触状態を表現している。
この例においては、さらに、評価位置rが回転ブレーキジョイントの回転軸に設定されている。ブレーキペダルがその評価位置rにおいて有する自由度rは6である。図50に示すように、ブレーキペダルに設定された対象物一般化座標空間のxyz座標系は、回転ブレーキジョイントの回転軸上に原点を持つとともにその回転軸の方向にy方向が一致するように定義されている。したがって、図9に示す式(7)で表される可動方向行列Pは、図54において式(302)で表すように、ブレーキペダルが評価位置rにおいてy軸まわりの自由回転が可能であることを表現している。
その後、図46のS284において、後述の逆力学解析に必要な各種情報が入力される。この各種情報には、図6を参照して前述したように、人間筋特性(人体の物理特性)、人間挙動(人間変位q等)、対象物挙動(対象物変位q等)、人間拘束条件(拘束G等)、対象物拘束条件(拘束G等)、人間関節特性(剛性Kj0等)および対象物物理特性(対象物剛性K等)の他、例えば、可動方向行列Pを含んでいる。
それら情報のうち、例えば、対象物挙動は、操作者による対象物の操作中に対象物の変位が示す経時的変化を表す複数個の対象物挙動データ(個別データ)の系列として入力される。同様にして、人間挙動は、操作者による対象物の操作中に操作者の変位が示す経時的変化を表す複数個の人間挙動データ(個別データ)の系列として入力される。それら複数個の対象物挙動データと、それら複数個の人間挙動データとが、時間に関連付けて1対1に互いに対応させられている。
すなわち、コンピュータ20のうち、このS284を実行する部分が、入力装置22と共同することにより、図6に示す入力手段216および228を構成しているのである。
その後、図46のS285において、S284において入力された拘束条件から直交射影行列が算出される。具体的には、図11において式(13)ないし(15)で表すように、入力された拘束Gから直交射影行列Pが生成される。また、図11において式(18)ないし(20)で表すように、入力された拘束Gから直交射影行列Pが生成される。すなわち、コンピュータ20のうち、このS285を実行する部分が、図6に示す人間直交射影算出手段218および対象物直交射影算出手段230を構成しているのである。
続いて、図46のS286において、通常の運動方程式を用いた逆力学解析手法により、前記入力された対象物挙動および対象物物理特性と、前記算出された直交射影行列Pとに基づき、対象物が人間から受ける接触力(人間が対象物から受ける接触力と等しい。)τが計算される。前述のように、対象物挙動を表すデータは、複数個の対象物挙動データの系列として入力されるため、接触力τは、各対象物挙動データごとに計算され、最終的には、複数個の接触力データの系列として計算される。すなわち、コンピュータ20のうち、このS286を実行する部分が、図6に示す対象物用逆力学解析手段232を構成しているのである。
その後、図46のS287において、通常の運動方程式を用いた逆力学解析手法により、上記計算された接触力τと、前記入力された人間挙動および人間関節特性と、前記算出された直交射影行列Pとに基づき、人間に働く一般化力τが計算される。前述のように、人間挙動を表すデータは、複数個の人間挙動データの系列として入力されるため、一般化力τは、各人間挙動データごとに計算され、最終的には、複数個の一般化力データの系列として計算される。すなわち、コンピュータ20のうち、このS287を実行する部分が、図6に示す人間用逆力学解析手段220を構成しているのである。
図55および図56には、人間物理モデルと対象物物理モデルとの組合せが、図49および図40に示す例につき、人間がブレーキペダルを初期位置から10度回転する位置まで踏み込んだ状態と、20度回転する位置まで踏み込んだ状態とでそれぞれ、側面図で示されている。
続いて、図46のS288において、各筋ごとに、上記計算された一般化力τと、前記入力された人間筋特性および人間挙動とに基づき、筋活性度αが推定される。前述のように、人間挙動を表すデータは、複数個の人間挙動データの系列として入力されるため、筋活性度αは、各筋ごとに、かつ、各人間挙動データごとに推定され、最終的には、各筋ごとに、複数個の筋活性度データの系列として推定される。すなわち、コンピュータ20のうち、このS288を実行する部分が、図6に示す筋活性度推定手段222を構成しているのである。このS288の詳細が、筋活性度推定プログラムとして図48にフローチャートで概念的に表されている。これについては後述する。
その後、図46のS289において、S288において推定された筋活性度αと、前記入力された人間筋特性とに基づき、図35に示す式(102)を用いることにより、筋剛性Kが算出される。上述のように、筋活性度αは各筋ごとに、複数個の筋活性度データの系列として推定されるため、筋剛性Kは、各筋ごとに、かつ、各筋活性度データごとに計算され、最終的には、各筋ごとに、複数個の筋剛性データの系列として計算される。すなわち、コンピュータ20のうち、このS289を実行する部分が、図6に示す筋剛性算出手段224を構成しているのである。
続いて、図46のS290において、その算出された筋剛性Kと、前記算出された直交射影行列Pとに基づき、図12に示す式(22−1)を用いることにより、評価点空間における等価人間剛性が算出される。上述のように、筋剛性Kは各筋ごとに、複数個の筋剛性データの系列として推定されるため、等価人間剛性は、各筋ごとに、かつ、各筋剛性データごとに計算され、最終的には、各筋ごとに、複数個の等価人間剛性データの系列として計算される。すなわち、コンピュータ20のうち、このS290を実行する部分が、図6に示す人間剛性座標変換手段226を構成しているのである。
その後、図46のS291において、前記入力された対象物剛性Kと、前記算出された直交射影行列Pとに基づき、図15に示す式(31−1)を用いることにより、評価点空間における等価対象物剛性が算出される。すなわち、コンピュータ20のうち、このS291を実行する部分が、図6に示す対象物剛性座標変換手段234を構成しているのである。
続いて、図46のS292において、それら算出された等価人間剛性および等価対象物剛性に基づき、図12に示す式(21−1)または図15に示す式(30−1)を用いることにより、合成剛性hmが算出される。評価位置rが対象物上に設定された場合には、式(21−1)、操作者である人間上に設定された場合には、式(30−1)が用いられることにより、合成剛性hmが算出される。この合成剛性hmは、前述の各人間変位データまたは各対象物変位データごとに算出され、最終的に、複数個の合成剛性データの系列として算出される。すなわち、コンピュータ20のうち、このS292を実行する部分が、図6に示す合成剛性算出手段235を構成しているのである。
その後、図46のS293において、その算出された合成剛性hmが、後続する前記設計支援プログラムの実行に備えてデータメモリ42にストアされる。
以上で、この操作性解析プログラムの一回の実行が終了する。
次に、図47を参照することにより、前記設計支援プログラムを具体的に説明する。
この設計支援プログラムにおいては、まず、S401において、合成剛性hmの目標値が入力される。この合成剛性hmの目標値は、例えば、前述の複数個の人間挙動データに関連付けられた複数個の目標値データの系列として入力される。すなわち、コンピュータ20のうち、このS401を実行する部分が、図6に示す入力手段236を構成しているのである。
次に、図47のS402において、データメモリ42から合成剛性hmの計算値が読み込まれる。この合成剛性hmの計算値は、上述の目標値と同様にして、例えば、前述の複数個の人間変位データに関連付けられた複数個の計算値データの系列として読み込まれる。
続いて、S403において、その読み込まれた合成剛性hmの計算値の、前記入力された合成剛性hmの目標値に対する誤差Eが算出される。この誤差Eは、例えば、図45に示す式(201)に相当する式を用いて算出することが可能である。
すなわち、コンピュータ20のうち、それらS402およびS403を実行する部分が、図6に示す剛性誤差算出手段237を構成しているのである。
その後、図47のS404において、その算出された誤差Eが許容値E以下であるか否かが判定される。許容値E以下である場合には、その判定がYESとなり、S405において、合成剛性hmの最終値が、上記読み込まれた計算値(最新の計算値)と等しい値に確定される。
以上で、この設計支援プログラムの一回の実行が終了する。
これに対し、今回は、前記算出された誤差Eが許容値E以下ではないと仮定すれば、S404の判定がNOとなり、S406に移行する。
このS406においては、対象物剛性Kの現在値(今回は初期値)のための更新量Δが決定される。この更新量Δは、例えば、予め設定された固定値として定義したり、前記算出された誤差Eに応じて変化する可変値として定義することが可能である。続いて、S407において、その決定された更新量Δで、対象物剛性Kの現在値が更新される。前記操作性解析プログラムのその後の実行においては、その更新された対象物剛性Kを用いて合成剛性hmの計算値が取得される。
その後、S408において、その操作性解析プログラムの最新回の実行による合成剛性hmの最新値の計算が完了するのが待たれる。その計算が完了したならば、S408の判定がYESとなり、S402に戻る。
その後、S402ないしS404が、合成剛性hmの最新の計算値について実行される。その最新の計算値についての誤差Eが許容値E以下であれば、S404の判定がYESとなり、S405を経てこの設計支援プログラムの一回の実行が終了する。これに対し、その最新の計算値についての誤差Eが許容値E以下でなければ、S404の判定がNOとなり、S406およびS407において、対象物剛性Kが再度、更新される。
S402ないしS408の実行が必要回数繰り返された結果、合成剛性hmの最新の計算値について誤差Eが許容値E以下となれば、S404の判定がYESとなり、S405を経てこの設計支援プログラムの一回の実行が終了する。
すなわち、コンピュータ20のうち、S404ないしS408を実行する部分が、図6に示す対象物剛性更新手段238を構成しているのである。
次に、図48を参照することにより、前記筋活性度推定プログラムを具体的に説明する。
この筋活性度推定プログラムの実行時には、まず、S301において、前記作成された筋骨格モデルに対し、前述の人間挙動が入力される。具体的には、筋骨格モデルに対して、各関節ごとに、変位(関節の角度を含む。)、変位速度(関節の回転角速度を含む。)および(関節の回転角加速度を含む。)が人間挙動データとして入力される。
次に、S302において、前記計算された一般化力τが入力される。この一般化力τは、操作中に人間が、それの特定の部位(例えば、手または足)において対象物(例えば、ブレーキペダル)に接触している状態においてそれら人間と対象物との間に作用する接触力に相当する。この一般化力τは、人間に対する外力である。この一般化力τが筋骨格モデルに対して入力される位置は、該当する剛体セグメントに割り当てられたローカル座標系によって定義される。
続いて、S303において、それら入力されたデータに基づき、通常の運動方程式を用いた逆力学解析手法により、各関節に作用するみかけ関節トルクが算出される。みかけ関節トルクは、実関節トルク(人間が実際に発揮した関節トルク)と、関節受動抵抗トルクとの和に等しい。
その後、S304において、各関節ごとに、S301において入力された人間変位(例えば、関節角度)が、予め定義された関節受動抵抗トルクの関数に代入されることにより、関節受動抵抗トルクが算出される。
続いて、S305において、各関節ごとに、S303において算出されたみかけ関節トルクから、S304において算出された関節受動抵抗トルクが引き算されることにより、実関節トルクが算出される。
その後、S306において、前記作成された筋骨格モデルのもと、前記入力された関節角度、角速度および角加速度が実際に人間に発生させられた場合にその人間の各筋の筋長および筋長変化速度が算出される。
続いて、S307において、最適化計算により、各筋ごとに筋活性度が算出される。このS307の詳細は、最適化計算プログラムとして図57にフローチャートで概念的に表されている。この最適化計算プログラムについては後述する。
以上説明したS301ないしS307は、予め定められたタイムステップをおいて反復され、その結果、解析対象期間中における全時刻分反復される。それにより、その解析期間中、人間の実質的な連続動作が解析される。それらS301ないしS307は、特定の時刻について関節角度、角速度、角加速度、接触力、筋長および筋長変化速度をそれぞれ表すデータが存在すれば、その特定の時刻以後の人間挙動を解析するために反復的に実行することが可能である。
次に、図57を参照することにより、上記最適化計算プログラムを具体的に説明する。
まず、この最適化計算プログラムの目的を概略的に説明するに、人間が能動的に出力した関節トルクは、筋力の結果生じたものであるため、関節トルクの算出値から、それに応じた筋力が算出される。しかし、ある関節トルクを実現する筋力の組み合わせは一般に無限に存在する。これは、関節の自由度よりも筋の数の方が多いからである。そこで、この最適化計算プログラムにおいては、筋力を一意に求めるために、ある目的関数を設定して、最適化手法を用いて解が探索的に求められる。
この最適化計算プログラムの実行時には、まず、S1001において、設計変数が筋活性度に設定される。筋活性度に代えて筋力を設計変数に設定することは可能であるが、この場合には、後述の解析における制約条件の定式化が複雑になり易い。
次に、S1002において、図58において式(401)で表す目的関数が設定される。この目的関数中の変数ベクトルF(α)が同図において式(402)で表されている。
その変数ベクトルは、各筋につき、重み係数wと筋活性度αとの積で表される要素を含んでいる。目的関数は、注目すべきすべての筋につき、重み係数wと筋活性度αとの積の合計値が最小になる筋活性度αが最適化計算によって算出されるように設定されている。
ただし、それら合計値をそれぞれ複数の成分の単純和として計算したのでは、その計算値がそれら複数の成分の符号に依存してしまう。そこで、本実施形態においては、そのような事態を回避すべく、注目すべきすべての筋につき、重み係数wと筋活性度αとの積の二乗和を最小化する筋活性度αが最適化計算によって算出されるように目的関数が設定されている。
その後、図57のS1003において、最適化計算において考慮される制約条件が設定される。制約条件としては、人間の関節に作用する一般化力(関節トルクを含む。)τと筋力fとの関係式と、筋活性度αの変域(0以上で1以下)とがある。この制約条件が成立するように後述の最適化計算が行われれば、上記一般化力τと筋力fとの間に力のつりあいが実質的に成立するように筋活性度αが推定されることが保証される。
図59には、上記一般化力τと筋力fとの関係式が式(403)として示されている。この式(403)は、上記一般化力τが、ヤコビ行列Jと筋力fとの積として誘導されることを表している。
ヤコビ行列Jは、筋空間から人間一般化座標空間(関節空間)への座標変換のための行列であり、図7には、それの転置行列J と共に示されている。ヤコビ行列Jは、筋骨格モデルの姿勢すなわち関節角度に依存する。筋力fは、筋活性度αの関数である。
続いて、図57のS1004において、前記設定された目的関数および制約条件のもとに最適化計算が行われ、それにより、各筋ごとに筋活性度αが算出される。その算出のために参照されるパラメータは、重み係数wと、最大筋力fmaxと、筋長および筋長変化速度と、筋長の関数gと、筋長変化速度の関数hと、ヤコビ行列が依存する関節角度と、上記一般化力τとを含んでいる。
その最適化計算は、一般に「制約付き最適化」と呼ばれ、これの一般的な手法としては、「逐次2次計画法」や「修正実行可能方向法」が既に知られている。最適化計算の具体的な手法は、種々の用途に応じて適宜変更することが可能である。
以上で、この最適化計算プログラムの一回の実行が終了する。
ここで、図60ないし図63を参照することにより、本実施形態に従う操作性評価方法によって対象物の設計が支援される様子を、その対象物が前述のブレーキペダルである場合を例にとり、2つの具体的な応用例に関して、具体的に説明する。
図60(a)には、前述の回転ブレーキジョイントの回転角度(以下、「ブレーキジョイント角度」という。)とその回転ブレーキジョイントに作用するトルク(以下、「ブレーキジョイントトルク」という。)との関係がグラフで表されている。同図(b)には、ブレーキジョイント角度とブレーキペダルの剛性(以下、「対象物の剛性」ともいう。)Kとの関係がグラフで表されている。
図60(c)には、ブレーキジョイント角度と人間の等価剛性(人間剛性Kが評価位置rまで伝達されたもの)との関係がグラフで表されている。同図(d)には、ブレーキジョイント角度と、対象物の剛性Kと人間の等価剛性とが合成された合成剛性hmとの関係がグラフで表されている。同図(d)には、さらに、ブレーキジョイント角度と対象物の剛性Kとの関係と、ブレーキジョイント角度と人間の等価剛性との関係とがそれぞれ、グラフで表されている。
以上、図60を例にとり、図面におけるグラフの構成を代表的に説明したが、図61ないし図63も、図60と共通するグラフの構成を有している。
図60および図61は互いに共同して、この操作性評価方法の第1の応用例を説明する。図60(a)ないし(d)は、ブレーキペダルおよび人間の動特性を、そのブレーキペダルの設計変更前について示している。一方、図61(a)ないし(d)は、ブレーキペダルおよび人間の動特性を、そのブレーキペダルの設計変更後については実線で、その設計変更前については、比較の便宜上、破線でそれぞれ示している。
この第1の応用例においては、図60(b)および(c)に示すように、対象物の剛性Kが人間の等価剛性より低い状況が想定されている。さらに、この第1の応用例においては、合成剛性hmが、図60(d)に示すように、対象物の剛性Kと人間の等価剛性との和と等しくなるように定義されている。
図60(c)に示すように、人間の等価剛性は、ブレーキジョイント角度が小さい領域においては、一定であるが、大きい領域においては、次第に低下する。このような傾向が存在する理由は、ブレーキジョイント角度が大きいほど、人間の脚部が膝において折れ曲がる角度が減少してその脚部の直線性が増し、その直線性が増すほど、関節の受動剛性の低下が支配的になることであると考えられる。
このような傾向が存在するため、図60(d)に示すように、合成剛性hmが、ブレーキジョイント角度が小さい領域においては、一定であるが、大きい領域においては、次第に低下する。
この第1の応用例においては、上述のように加算的に定義された合成剛性hmに着目することにより、ブレーキペダルの剛性Kが最適化され、ひいては、前述のブレーキジョイント角度とブレーキジョイントトルクとの関係であるブレーキ操作フィーリング特性が最適化される。具体的には、合成剛性hmが、図61(d)に示すように、ブレーキジョイント角度の変域全体において一定であるようにするために、対象物の剛性Kの設計値が、同図(b)に示すように、ブレーキジョイント角度が小さい領域においては、一定であるが、大きい領域においては、次第に増加するように、変更される。
図62および図63は互いに共同して、この操作性評価方法の第2の応用例を説明する。図62(a)ないし(d)は、ブレーキペダルおよび人間の動特性を、そのブレーキペダルの設計変更前について示している。一方、図63(a)ないし(d)は、ブレーキペダルおよび人間の動特性を、そのブレーキペダルの設計変更後については実線で、その設計変更前については、比較の便宜上、破線でそれぞれ示している。
この第2の応用例においては、図62(b)および(c)に示すように、対象物の剛性Kが、上述の第1の応用例とは異なり、人間の等価剛性より高い状況が想定されている。さらに、この第2の応用例においては、合成剛性hmが、上述の第1の応用例とは異なり、図62(d)に示すように、対象物の剛性Kから人間の等価剛性を引いた値と等しくなるように定義されている。
図62(c)に示すように、人間の等価剛性は、ブレーキジョイント角度が小さい領域においては、一定であるが、大きい領域においては、次第に上昇する。このような傾向が存在する理由は、上述のように、ブレーキジョイント角度が大きいほど人間の脚部の直線性が増して関節の受動剛性の低下が支配的になるのであるが、対象物の剛性Kが人間の等価剛性より高い場合には、上述の第1の応用例におけるより大きな力を対象物に付加することが人間に要求され、そのような力が、筋活性度の上昇により、関節の受動剛性に打ち勝つように生成されることであると考えられる。
このような傾向が存在するため、図62(d)に示すように、合成剛性hm(=K)が、ブレーキジョイント角度が小さい領域においては、一定であるが、大きい領域においては、次第に低下する。
この第2の応用例においては、上述のように減算的に定義された合成剛性hmに着目することにより、ブレーキペダルの剛性Kが最適化され、ひいては、前述のブレーキジョイント角度とブレーキジョイントトルクとの関係であるブレーキ操作フィーリング特性が最適化される。具体的には、合成剛性hmが、図63(d)に示すように、ブレーキジョイント角度の変域全体において一定であるようにするために、対象物の剛性Kの設計値が、同図(b)に示すように、ブレーキジョイント角度が小さい領域においては、一定であるが、大きい領域においては、次第に増加するように、変更される。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、図36に示すスケーリングプログラムがコンピュータ20によって実行される方法が、前記(1)項に係る「筋骨格モデル作成方法」の一例を構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、図36におけるS231が前記(1)項における「倍率入力工程」の一例を構成し、S233ないしS235が互いに共同して、同項における「第1座標変換工程」の一例を構成し、S234ないしS238が互いに共同して、同項における「第2座標変換工程」の一例を構成し、S239およびS240が互いに共同して、同項における「第3座標変換工程」の一例を構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、図36における同次変換行列Rcが前記(4)項における「スケーリング前座標変換行列」の一例を構成し、S234が同項における「第1の工程」の一例を構成し、同図における同次変換行列Rc’が同項における「スケーリング後座標変換行列」の一例を構成し、S235およびS236が互いに共同して、同項における「第2の工程」の一例を構成し、S238が同項における「第3の工程」の一例を構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、図37におけるS3001が前記(5)項における「関節角度入力工程」の一例を構成し、S3002あにしS3004が互いに共同して、同項における「位置変更工程」の一例を構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、図37におけるS3003が前記(6)項における「移動量変更工程」の一例を構成し、図36におけるS238が同項における「基準位置座標変換工程」の一例を構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、図36に示すスケーリングプログラムが、前記(7)項に係る「プログラム」の一例を構成し、そのスケーリングプログラムを予め記憶しているプログラムメモリ40が前記(8)項に係る「記録媒体」の一例を構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、操作性評価装置10のうち筋骨格モデル作成プログラムの実行に関連する部分が、前記(9)項に係る「筋骨格モデル作成装置」の一例を構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、コンピュータ20のうち図36におけるS231を実行する部分(図29におけるスケーリング倍率入力手段330)が、前記(9)項における「倍率入力部」の一例を構成し、S233ないしS235を実行する部分(図257に示すが、同項における「第1座標変換部」の一例を構成し、S234ないしS238を実行する部分が、同項における「第2座標変換部」の一例を構成し、S239およびS240を実行する部分が、同項における「第3座標変換部」の一例を構成しているのである。
以上、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これは例示であり、前記[発明の開示]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
本発明の一実施形態に従う筋骨格モデル作成方法を含む操作性評価方法を実施するのに好適な操作性評価装置10のハードウエア構成を概念的に表すブロック図である。 図1における有限要素人体モデルのうちの下肢部を示す斜視図である。 図1における骨格モデルのうちの下肢部を示す斜視図である。 図1における筋骨格モデルのうちの下肢部を示す斜視図である。 図1における操作性評価装置10を概念的に表す機能ブロック図である。 図5における操作性解析手段204および設計支援手段205を概念的に表す機能ブロック図である。 互いに機械的に接触する人間と対象物との間に存在する複数の座標空間を概念的に表す図である。 図5における人間物理モデル作成手段200によって作成される人間物理モデルおよび対象物物理モデル作成手段202によって作成される対象物物理モデルを複数の式を用いて説明する図である。 人間と対象物との接触を定義する手法を複数の式を用いて説明する図である。 前記実施形態に従う操作性評価方法において人間による対象物の操作性を評価する理論を複数の式を用いて説明する図である。 前記実施形態に従う操作性評価方法において人間による対象物の操作性を評価する理論を複数の式を用いて説明する別の図である。 前記実施形態に従う操作性評価方法において人間による対象物の操作性を評価する理論を複数の式を用いて説明するさらに別の図である。 前記実施形態に従う操作性評価方法において人間による対象物の操作性を評価する理論を複数の式を用いて説明するさらに別の図である。 前記実施形態に従う操作性評価方法において人間による対象物の操作性を評価する理論を複数の式を用いて説明するさらに別の図である。 前記実施形態に従う操作性評価方法において人間による対象物の操作性を評価する理論を複数の式を用いて説明するさらに別の図である。 筋空間と対象物一般化座標空間との間に存在する複数の座標空間を評価位置が対象物上に設定された場合について説明するための図である。 筋空間と対象物一般化座標空間との間に存在する複数の座標空間を評価位置が人間上に設定された場合について説明するための図である。 粘弾性テンソルを算出する際に拘束Gを考慮する手法を説明するための図である。 粘弾性テンソルを算出する際に拘束Gを考慮する手法を説明するための別の図である。 粘弾性テンソルを算出する際に拘束Gを考慮する手法を説明するためのさらに別の図である。 図5における人間物理モデル作成手段200を概念的に表す機能ブロック図である。 図21におけるスケーリング手段257および筋モーメントアーム調整手段258を説明するために人間の2本の骨およびそれら骨を互いに結合する筋を示す正面図である。 図21におけるスケーリング手段257の作用を説明するために、人間の2本の骨をそれぞれ表す2個の剛体セグメントと、それら骨を互いに結合する筋を表すワイヤ要素とを、スケーリング前の状態で示す正面図である。 図21におけるスケーリング手段257との比較例を説明するために、人間の2本の骨をそれぞれ表す2個の剛体セグメントと、それら骨を互いに結合する筋を表すワイヤ要素とを、その比較例によるスケーリング後の状態で示す正面図である。 図21におけるスケーリング手段257の作用を説明するために、人間の2本の骨をそれぞれ表す2個の剛体セグメントと、それら骨を互いに結合する筋を表すワイヤ要素とを、そのスケーリング手段257によるスケーリング後の状態で示す正面図である。 図21におけるスケーリング手段257の作用を説明するために、人間の1本の骨を表す1個の剛体セグメントと、その剛体セグメントに付随する付着点、経由点および関節点とを、そのスケーリング手段257によるスケーリングの前の状態と後の状態とで示す正面図である。 図21におけるスケーリング手段257の作用を複数の式を用いて説明する図である。 図27における同次変換行列Rの構成を説明する図である。 図21におけるスケーリング手段257を概念的に表す機能ブロック図である。 図21における筋モーメントアーム調整手段258を概念的に表す機能ブロック図である。 前記実施形態に従う操作性評価方法を示す工程図である。 図31におけるS2の詳細を骨格モデル作成プログラムとして概念的に表すフローチャートである。 図31におけるS3の詳細を筋骨格モデル作成プログラムとして概念的に表すフローチャートである。 図33におけるS203の実行内容を説明するために人間の筋および腱を力の作用方向に着目して示す平面図である。 図33におけるS204の実行内容を説明するために、数値解析モデルとしての筋モデルを式(101)および(102)で示す図である。 図33におけるS205の詳細をスケーリングプログラムとして概念的に表すフローチャートである。 図33におけるS206の詳細を筋モーメントアーム調整プログラムとして概念的に表すフローチャートである。 図37におけるS3003において参照される移動量マップを概念的に表形式で表す図である。 図38に示す移動量マップを作成するためにコンピュータによって実行される移動量マップ作成プログラムを概念的に表すフローチャートである。 図39におけるS4003を説明するために、関節角度と筋モーメントアームとの関係の一例を表すグラフである。 図39におけるS4004の詳細を移動量算出ルーチンとして概念的に表すフローチャートである。 図41に示す移動量算出ルーチンを説明するために人間の2本の骨とそれら骨を互いに結合する設計対象筋および仮想筋とを簡略的に示す正面図である。 図41に示す移動量算出ルーチンを説明するために2本の骨およびそれら骨を互いに結合する筋を初期状態と収束状態とについてそれぞれ示す正面図である。 図39に示す移動量マップ作成プログラムの実行によって作成される移動量マップの一例を表すグラフである。 図41に示す移動量算出ルーチンにおいて筋の経由点位置を更新する理論を複数の式を用いて説明する図である。 図31におけるS4の詳細を操作性解析プログラムとして概念的に表すフローチャートである。 図31におけるS5の詳細を設計支援プログラムとして概念的に表すフローチャートである。 図46におけるS288の詳細を筋活性度推定プログラムとして概念的に表すフローチャートである。 図46に示す操作性解析プログラムの実行により、車両の運転者によるブレーキペダルの操作性を解析して評価するために用いられる人間物理モデルのうちの下肢部を、ブレーキペダルを表現する対象物物理モデルと共に示す斜視図である。 図49における対象物物理モデルを拡大して示す側面図である。 図50に示す対象物物理モデルによって表現されるブレーキペダルの動特性をブレーキジョイント角度とブレーキジョイントトルクとの関係として表すグラフである。 図49に示す人間物理モデルおよび対象物物理モデルに関する評価位置、接触および拘束を説明するための側面図である。 図52に示す人間物理モデルと対象物物理モデルとのうち、それらが互いに接触する領域を拡大して示す斜視図である。 図52における接触および評価位置に関する複数の条件を定義する手法を複数の式を用いて説明するための図である。 図52に示す人間物理モデルおよび対象物物理モデルが示す挙動の一例を示す側面図である。 図52に示す人間物理モデルおよび対象物物理モデルが示す挙動の別の例を示す側面図である。 図48におけるS307の詳細を最適化計算プログラムとして概念的に表すフローチャートである。 図57におけるS1004における最適化計算において用いられる目的関数を式(401)および(402)で示す図である。 図57におけるS1004における最適化計算において用いられる制約条件を式(403)で示す図である。 前記実施形態に従う操作性評価方法によって対象物の設計が支援される第1の応用例を説明するための複数のグラフである。 上記第1の応用例を説明するための別の複数のグラフである。 前記実施形態に従う操作性評価方法によって対象物の設計が支援される第2の応用例を説明するための複数のグラフである。 上記第2の応用例を説明するための別の複数のグラフである。
符号の説明
10 操作性評価装置
20 コンピュータ
40 プログラムメモリ
257 スケーリング手段
258 筋モーメントアーム調整手段
330 スケーリング倍率入力手段
334 関節点抽出手段
336 座標系変換行列算出手段
338 関節点変換手段
342 経由点抽出手段
344 経由点変換手段
346 付着点抽出手段
348 付着点変換手段

Claims (9)

  1. 複数の骨が関節において回動可能に互いに連結されるとともにその関節を跨いで延びる筋によって前記複数の骨が回動可能に互いに結合されて成る人体をコンピュータ上において表現する筋骨格モデルを作成するためにコンピュータによって実行される筋骨格モデル作成方法であって、
    前記筋骨格モデルは、前記複数の骨をそれぞれ表現する複数の剛体セグメントを含むとともに、各剛体セグメントごとに、各剛体セグメントに付随する複数の定義点が設定され、かつ、それら定義点は、前記関節の位置を定義する関節点と、前記筋が各骨に付着する付着位置を定義する付着点と、前記筋が各骨の付着位置から別の骨に向かって延びる筋走行を規定する経由点とを含み、
    当該筋骨格モデル作成方法は、前記人体についての特定の体型のもとに予め作成された筋骨格モデルをマスタモデルとして、入力されたスケーリング倍率のもとに座標変換することにより、別の体型の人体を表現する筋骨格モデルを作成するために前記コンピュータによって実行され、
    当該筋骨格モデル作成方法は、
    前記スケーリング倍率を入力する倍率入力工程と、
    前記関節点の座標値に対し、前記入力されたスケーリング倍率のもとに、第1の座標変換を行う第1座標変換工程と、
    前記経由点の座標値に対し、前記第1の座標変換とは異なる第2の座標変換を行う第2座標変換工程と、
    前記付着点の座標値に対し、前記入力されたスケーリング倍率のもとに、前記第1の座標変換と同じ第3の座標変換を行う第3座標変換工程と
    を含む筋骨格モデル作成方法。
  2. 前記複数の骨は、前記筋により、前記関節の回転軸まわりに回動可能に互いに結合されており、
    前記第2の座標変換は、前記関節の回転軸と前記筋走行との距離として定義される筋モーメントアームの長さが、前記スケーリング倍率の大小を問わず、実質的に維持されるように行われる請求項1に記載の筋骨格モデル作成方法。
  3. 前記複数の剛体セグメントは、各剛体セグメントごとに、剛体基準位置を割り当てられるとともに、その剛体基準位置を原点とする剛体基準座標系によって記述されており、
    前記第1の座標変換は、前記入力されたスケーリング倍率のもとに、前記関節点を、前記剛体基準位置を起点として、前記剛体基準座標系の各軸方向に、前記剛体基準位置に対して接近または離間させるために実行され、
    前記第2の座標変換は、前記経由点を、前記関節点と一体的に、その関節点の移動方向に実質的に平行な方向に移動させるために実行され、
    前記第3の座標変換は、前記入力されたスケーリング倍率のもとに、前記付着点を、前記剛体基準位置を起点として、前記剛体基準座標系の各軸方向に、前記剛体基準位置に対して接近または離間させるために実行される請求項2に記載の筋骨格モデル作成方法。
  4. 前記関節点は、関節点座標系によって記述され、その関節点座標系に対して前記第1の座標変換が行われることにより、前記関節点に対して前記第1の座標変換が行われ、
    前記第2座標変換工程は、
    前記剛体基準座標系を、前記第1の座標変換が行われる前における前記関節点座標系に変換するために、前記剛体基準座標系によって記述される任意の位置ベクトルに作用させられる座標変換行列をスケーリング前座標変換行列として算出する第1の工程と、
    前記剛体基準座標系を、前記第1の座標変換が行われた後における前記関節点座標系に変換するために、前記剛体基準座標系によって記述される任意の位置ベクトルに作用させられる座標変換行列をスケーリング後座標変換行列として算出する第2の工程と、
    前記算出されたスケーリング前座標変換行列とスケーリング後座標変換行列とを、前記第2の座標変換前における前記経由点の位置を表す変換前経由点位置ベクトルに作用させることにより、前記第2の座標変換後における前記経由点の位置を表す変換後経由点位置ベクトルを算出する第3の工程と
    を含む請求項3に記載の筋骨格モデル作成方法。
  5. さらに、
    前記複数の骨が前記関節において成す関節角度を入力する関節角度入力工程と、
    その入力された関節角度に基づき、前記経由点の位置を変更する位置変更工程と
    を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の筋骨格モデル作成方法。
  6. 前記経由点は、前記関節角度に依存しない基準位置を有し、
    前記位置変更工程は、前記経由点の、前記基準位置からの移動量を、前記入力された関節角度に基づいて変更することにより、前記経由点の位置を変更する移動量変更工程を含み、
    前記第2座標変換工程は、前記第2の座標変換を、前記基準位置に対して行う一方、前記移動量に対しては行わない基準位置座標変換工程を含む請求項5に記載の筋骨格モデル作成方法。
  7. 請求項1ないし6のいずれかに記載の筋骨格モデル作成方法を実施するためにコンピュータによって実行されるプログラム。
  8. 請求項7に記載のプログラムをコンピュータ読み取り可能に記録した記録媒体。
  9. 複数の骨が関節において回動可能に互いに連結されるとともにその関節を跨いで延びる筋によって前記複数の骨が回動可能に互いに結合されて成る人体をコンピュータ上において表現する筋骨格モデルを作成する筋骨格モデル作成装置であって、
    前記筋骨格モデルは、前記複数の骨をそれぞれ表現する複数の剛体セグメントを含むとともに、各剛体セグメントごとに、各剛体セグメントに付随する複数の定義点が設定され、かつ、それら定義点は、前記関節の位置を定義する関節点と、前記筋が各骨に付着する付着位置を定義する付着点と、前記筋が各骨の付着位置から別の骨に向かって延びる筋走行を規定する経由点とを含み、
    当該筋骨格モデル作成装置は、前記人体についての特定の体型のもとに予め作成された筋骨格モデルをマスタモデルとして、入力されたスケーリング倍率のもとに座標変換することにより、別の体型の人体を表現する筋骨格モデルを作成し、
    当該筋骨格モデル作成装置は、
    前記スケーリング倍率を入力する倍率入力部と、
    前記関節点の座標値に対し、前記入力されたスケーリング倍率のもとに、第1の座標変換を行う第1座標変換部と、
    前記経由点の座標値に対し、前記第1の座標変換とは異なる第2の座標変換を行う第2座標変換部と、
    前記付着点の座標値に対し、前記入力されたスケーリング倍率のもとに、前記第1の座標変換と同じ第3の座標変換を行う第3座標変換部と
    を含む筋骨格モデル作成装置。
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