JP2007002322A - スリーブ用銅合金材及びその製造方法並びにスリーブ - Google Patents

スリーブ用銅合金材及びその製造方法並びにスリーブ Download PDF

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Abstract

【課題】 切削性が良好で、且つ摺動特性における熱安定性が優れたスリーブ用銅合金材及びその製造方法並びにスリーブを提供する。
【解決手段】 Ni含有量を7乃至25質量%、Feを8乃至35質量%を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成の原料を、溶解鋳造した後、950乃至1100℃で5乃至10時間均質化処理し、更に異径圧延等冷間加工を行う。次に、950℃の温度条件下で30分間の溶体化処理を施した後、所定の径になるように引抜き加工を行い、熱膨張係数が10乃至15ppm、ビッカース硬度(Hv)が100乃至260で、固溶体からなる銅合金材とする。そして、この銅合金材を切削加工することにより、スピンドルモータ等の流体軸受装置用のスリーブとする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、スピンドルモータ等の流体軸受装置のスリーブに使用される銅合金材及びその製造方法、並びにこの銅合金材により製造されたスリーブに関し、特に、ステンレス鋼製のシャフトを使用した流体軸受装置のスリーブ用銅合金材及びその製造方法並びにスリーブに関する。
スピンドルモータ等の流体軸受装置の摺動部材は、一般に、摺動時の摩耗を低減するため、シャフト(軸)がステンレス等の鋼材により形成され、スリーブ(軸受)が黄銅(Cu−Sn合金)等の比較的軟らかい金属材料により形成されている。しかしながら、黄銅の熱膨張係数は純銅に近く約20ppmであるのに対し、ステンレス鋼材の熱膨張係数は例えばSUS300系の場合で約13ppmであるため、従来のスピンドルモータには、シャフトの熱膨張係数がスリーブの熱膨張係数よりも小さく、高速回転によってスリーブ及びシャフトの温度が変化すると、これらの摺動特性が不安定になるという問題点がある。
この問題点は、スリーブの熱膨張係数をシャフトの熱膨張係数以下にすることによって解決することができ、例えばステンレス鋼よりも熱膨張係数が小さい材料としては、Fe−42Ni系合金材、Cu−W系合金材、Cu−Mo系合金材及びCu−CuO系合金材等がある。しかしながら、例えば、スリーブをシャフトと同様にステンレス等の鋼材により形成すると、摺動時に摩耗が発生する。また、スピンドルモータのスリーブ等のように製造工程において高精度な加工を行う摺動部材に使用される材料には、熱膨張係数が低いだけでなく、優れた加工性が求められるが、鋼材及びFe−Ni系合金材等の鉄系の材料は、難削性であるため、切削加工時に刃先に炭化物が焼き付く等の問題があり、高精度に切削加工することは困難である。一方、Cu−W系合金材、Cu−Mo合金材及びCu−CuO合金材は、熱膨張係数が低く、熱伝導性も良好であるが、これらの合金材は粉末法で作製しなければならず、更に材料も高価であるため、製造コストが高く、また、完全な合金化が困難であるため、切削性に問題がある。
そこで、従来、加工性を低下させずに、温度変化に伴う摺動特性の変化を抑制するため、スリーブ本体をFe−Ni合金(インバー)及びFe−Ni−Co合金(スーパーインバー)により形成し、その内側面に加工層として、Cu、Cu−Sn合金、Cu−Ni合金、Cu−Zn合金若しくはCu−Zn−Sn合金等からなるめっき層又は蒸着層を形成するか、又は、Cu、Cu−Al系合金、Cu−Sn合金、Cu−Sn−P系合金、Cu−Si−Sn系合金、Cu−Ni−Zn系合金、Cu−Ni−Fe系合金、Cu−Be系合金若しくはCu−Zn系合金等からなる管状部材を嵌合した軸受装置が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載の軸受装置は、スリーブ本体を鋼材よりも熱膨張係数が低いFe−Ni合金又はFe−Ni−Co合金により形成することにより摺動特性の変化を抑制し、更に、切削加工される内側面にCu又はCu合金からなる加工層を設けることにより、加工性を向上させている。
また、従来、シャフトをステンレス鋼により形成すると共に、スリーブをアルミニウムシリコン合金により形成することにより、シャフトの線熱膨張係数よりもスリーブの線熱膨張係数を小さくしたスピンドルモータが提案されている(特許文献2参照)。更に、シャフトに接する部分を、炭素粒子を含有するポリエーテル芳香族ケトン樹脂により形成して、製造時における加工性を確保し、摺動性の向上を図ったモータ用軸受もある(特許文献3参照。)。
特開平9−177767号公報 特開2004−104982号公報 特開2002−115718号公報
しかしながら、前述の従来の技術には以下に示す問題点がある。即ち、特許文献1に記載の軸受装置は、スリーブの内側面に加工層を形成しているため、工程数が増加し、製造コストが増加するという問題点がある。また、特許文献1に記載の軸受装置の場合、スリーブ本体を形成しているFe−Ni合金材及びFe−Ni−Co合金材の熱膨張係数は1.0乃至4.2ppmと低いが、加工層を形成している銅又は銅合金の大部分は熱膨張係数が17ppm程度と高く、スリーブ本体と加工層との熱膨張係数の差が大きいため、従来のスピンドルモータと同様に、摺動時の温度変化により、シャフトとスリーブの隙間(クリアランス)が変化し、摺動特性が低下するという問題点がある。特に、Fe−Ni−Co合金材を使用した場合、熱膨張係数が約1.0ppmと低すぎるため、温度変化によるクリアランスの変化が大きくなり、摺動特性が不安定になるという問題点もある。
また、特許文献2に記載のスピンドルモータのスリーブに使用されているアルミニウムシリコン合金材は、通常の技術では製造できないため、コストが大幅に増加するという問題点がある。また、仮に製造できたとしても、合金材中に極めて硬いSiの初晶が存在しているため、加工性が悪く、また、スリーブに加工できても使用中にシャフトを傷付ける可能性が高いという問題点もある。更に、特許文献3に記載されている炭素粒子を含有するポリエーテル芳香族ケトン樹脂によりスリーブを形成した場合、この材料は熱膨張係数ではなく、炭素のすべり性を利用したものであるため、摩耗が始まると耐久性が急激に低下するという問題点がある。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、切削性が良好で、且つ摺動特性における熱安定性が優れたスリーブ用銅合金材及びその製造方法並びにスリーブを提供することを目的とする。
本願第1発明に係るスリーブ用銅合金材は、Ni:7乃至25質量%及びFe:8乃至35質量%を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有し、熱膨張係数が12乃至15ppm、ビッカース硬度(Hv)が100乃至260であり、鋳造又は粉末熱間押出により作製された成形体を溶体化処理した固溶体であることを特徴とする。
本発明においては、Cu−Ni−Fe系合金材を、Ni及びFeの含有量を最適化すると共に、熱膨張係数を12乃至15ppmと従来のスリーブ用材料よりも低くしているため、温度変化による摺動特性の変化を抑制することができる。また、ビッカ−ス硬さ(Hv)を100乃至260にすると共に、固溶体としているため、切削性が優れている。そして、本発明の銅合金材は、鋳造又は粉末熱間押出により作製された成形体を溶体化処理することにより製造することができる。
この銅合金材は、Cu含有量が45乃至75質量%であってもよい。また、Fe含有量を8.5質量%以上にしてもよい。これにより、切削性を維持しながら、熱膨張係数をより低下させることができる。
本願第2発明に係るスリーブ用銅合金材の製造方法は、Ni:7乃至25質量%及びFe:8乃至35質量%を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成の原料を、鋳造又は粉末熱間押出して成形体を得る工程と、前記成形体を溶体化処理して、熱膨張係数が12乃至15ppm、ビッカース硬度(Hv)が100乃至260であり、固溶体からなる銅合金材を得る工程と、を有することを特徴とする。
本発明においては、Ni:7乃至25質量%及びFe:8乃至35質量%を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成の原料を、鋳造又は粉末熱間押出により成形した後、その成形体を溶体化処理して、熱膨張係数が12乃至15ppm、ビッカース硬度(Hv)が100乃至260であり、固溶体からなる銅合金材としているため、ステンレス鋼製のシャフトを使用した流体軸受装置用として、切削性が良好で、且つ摺動特性における熱安定性が優れたスリーブ用銅合金材が得られる。
この銅合金材の製造方法においては、前記溶体化処理した後、引抜き加工することもできる。これにより、容易に所望の直径の銅合金線材が得られる。また、前記原料は、Cu含有量を45乃至75質量%とすることができる。また、前記原料は、Fe含有量が8.5質量%以上であってもよい。
本願第3発明に係るスリーブは、ステンレス鋼製のシャフトを使用した流体軸受装置のスリーブであり、前述の銅合金材により製造されたことを特徴とする。
本発明においては、Ni:7乃至25質量%及びFe:8乃至35質量%を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有し、熱膨張係数が12乃至15ppm、ビッカ−ス硬さ(Hv)が100乃至260であり、鋳造又は粉末熱間押出により作製された成形体を溶体化処理した固溶体である銅合金材を使用しているため、摺動時に加熱されても摺動特性の変化が少なく、熱安定性が優れている。また、製造時の切削性が優れているため、高精度に切削加工を施すことができる。
本発明によれば、Cu−Ni−Fe合金材中のNi及びFe含有量を規定すると共に、鋳造又は粉末熱間押出により成形した成形体を溶体化処理することにより固溶体とし、更に、熱膨張係数を12乃至15ppm、ビッカ−ス硬さ(Hv)を100乃至260としているため、温度変化による摺動特性の変化を抑制することができると共に、良好な切削性が得られる。
以下、本発明の実施の形態に係る銅合金材について具体的に説明する。本実施形態の銅合金材は、鋳造又は粉末熱間押出により成形した成形体を溶体化処理した固溶体であり、Niを7乃至25質量%、Feを8乃至35質量%含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成で、熱膨張係数は12乃至15ppm、ビッカース硬さ(Hv)は100乃至260である。この銅合金材は、例えば、スピンドルモータのスリーブに加工される。なお、本実施形態の銅合金材の組成において、より好ましくは、Cu含有量が45乃至75質量%であり、Fe含有量が8.5質量%以上である。
従来、Cu−Ni−Fe合金材は、磁気スケール等の磁性材として使用されており、一般に、ガスアトマイズ法又はメカニカルアロイングにより形成した粉末を熱間押出することにより製造されている(例えば、特開平9−15770号公報、特開平10−53822号公報、特開平10−223465号公報及び特開2000−256766号公報参照)。しかしながら、磁性材は、通常、時効処理を行ってγ相を強磁性のγ相と非磁性のγ相とに分離する必要があり、このような従来の方法で製造されたCu−Ni−Fe合金材には、硬いFe−Ni−rich(強磁性γ)相が存在するため、切削加工性が低く、スリーブのような摺動部材には不向きである。一方、本実施形態の銅合金材は、鋳造法又は粉末熱間押出法により得られた成形体に対して、溶体化処理及び引抜き加工を行って製造されたものであり、時効処理を施していないため、各成分を完全に固溶状態とすることができ、切削性が優れている。なお、本実施形態の銅合金材は、強磁性で硬いFe−Ni−rich(強磁性γ)相が存在せず、固溶体で構成されている。
また、Cu−Ni−Fe合金材は、Ni含有量とFe含有量との比、並びに、Cu含有量とNi及びFeの総含有量との比を変えることにより、種々の熱膨張係数をとりうる。図1はCu−Ni−Fe合金材の熱膨張係数の分布を示す三元状態図である。図1に示すように、Cu−Ni−Fe合金材は、Ni含有量及びFe含有量を変えることにより熱膨張係数が変化し、Cu、Ni及びFeの含有量を領域1の範囲内にすることにより、その熱膨張係数を12乃至15ppmとすることができる。そして、この銅合金材をスピンドルモータのスリーブに加工し、シャフトを現在一般に使用されているステンレス鋼(Fe−18Cr−8Ni合金,熱膨張係数:17.3ppm)により形成した場合、スリーブとシャフトとの熱膨張差が2.3乃至5.3ppmとなり、従来のスピンドルモータに比べて摺動特性における熱安定性を向上させることができる。
以下、本実施形態の銅合金材における数値限定理由について説明する。
Ni:7乃至25質量%
Ni含有量が7質量%未満であると、切削性は良好になるが、熱膨張係数が大きくなる。一方、Ni含有量が25質量%を超えると、熱膨張係数は小さくなるが、切削性が劣化する。よって、Ni含有量は7乃至25質量%とする。
Fe:8乃至35質量%
Fe含有量が8質量%未満であると、切削性は良好になるが、熱膨張係数が大きくなりすぎる。一方、Fe含有量が35質量%を超えると、熱膨張係数は小さくなるが、切削性が劣化する。よって、Fe含有量は8乃至35質量%とする。なお、Fe含有量が8.5質量%未満の場合、Ni含有量によっては熱膨張係数が15ppmを超えてしまうことがある。このため、Fe含有量は8.5質量%以上とすることが好ましい。これにより、熱膨張係数を12乃至15ppmの範囲で安定させることができる。
熱膨張係数:12乃至15ppm
スピンドルモータ等の流体軸受装置の摺動部材においては、スリーブとシャフトとの熱膨張係数の差は、2乃至5ppmとすることが望ましく、例えばシャフトがステンレス鋼(Fe−18Cr−8Ni合金;熱膨張率17.3ppm)により形成されている場合は、スリーブ用材料の熱膨張係数は12乃至15ppmとする。銅合金材、即ち、スリーブの熱膨張係数が12ppm未満であると、スリーブとシャフトとの間のクリアランスが大きくなりすぎて回転が不安定になるため、摺動特性が不安定になる。また、切削加工により、スリーブとシャフトとの間のクリアランスは確保されているが、スリーブ及びシャフトの熱膨張係数が同じであると、温度変化によりこれらが完全にロックしてしまう。そこで、本実施形態の銅合金材においては、温度変化が生じでもスリーブとシャフトとの間のクリアランスが確保できるように、その熱膨張係数を、シャフトの熱膨張係数よりも若干小さくしておく。具体的には、本実施形態の銅合金材においては、熱膨張係数の上限値を15ppmとする。銅合金材の熱膨張係数が15ppmを超えるとスリーブとシャフトとの熱膨張係数の差が小さくなり、温度変化に伴ってロック等のトラブルが発生する。
硬さ(Hv):100乃至260
ビッカース硬さ(Hv)が100未満の場合、軟らかすぎて、切削加工し難い。また、ビッカース硬さ(Hv)が260を超えると難削性となるため、切削加工する際に使用するバイトの刃が負ける等の問題が生じる。従って、本実施形態の銅合金材の硬さ(Hv)は100乃至260とする。これにより、切削加工に使用するバイトの刃先に適した硬さが得られ、高精度に切削加工することができる。一方、前述したように、磁性材として使用されているCu−Ni−Fe合金材は、製造工程において時効処理が施されているため、強磁性で硬いFe−Ni−rich(強磁性γ)相が存在し、またその硬さ(Hv)も260を超えることがある。このため、磁性材用のCu−Ni−Fe合金材は、強磁性γがなく、固溶体である本実施形態の銅合金材に比べて切削性が悪い。
なお、本実施形態の銅合金材においては、Cu含有量を45乃至75質量%とすることが好ましい。これにより、加工性及び熱安定性が優れた銅合金材が得られる。一方、Cu含有量が45質量%未満であると、熱膨張係数を12ppmよりも低くすることができるが、加工性が低下することがある。また、Cu含有量が75質量%を超えると、熱膨張係数が15ppmよりも高くなって、摺動特性の熱安定性が低下することがある。
また、Cu−Ni−Fe合金材は、その製造方法によって、その機械的特性が変化し、切削性が変化する。そこで、本実施形態の銅合金材においては、前述の組成だけでなく、製造方法についても最適化している。以下、本実施形態の銅合金材の製造方法について説明する。本実施形態の銅合金材は、鋳造又は粉末熱間押出により成形した成形体を溶体化処理することにより製造することができる。例えば、本実施形態の銅合金材を鋳造法により作製する場合、Cu、Fe及びNi等の原料を高周波溶解法により溶解して鋳造する。そして、例えば950乃至1100℃の温度条件下で、例えば5乃至10時間の均質化処理を施した後、異径圧延等の冷間加工を行って、直線状等の所定の形状に成形する。更に、この成形体に、例えば950℃の温度条件下で、例えば1時間の溶体化処理を施した後、引抜き加工を行い所望の直径の直線材とする。
また、前述の鋳造法では成形体にクラックが発生する又は添加元素の分散が悪い等の問題がある場合は、粉末焼結法により製造することもできる。その場合、先ず、アトマイズ法等により上述の組成の原料粉末を作製する。そして、この原料粉末を熱間押出加工により丸棒状にした後、例えば950乃至1100℃の温度条件下で、例えば5乃至10時間熱処理を施し、更に、引抜き等の冷間加工を行って直線状等の所定の形状にする。
上述の如く、本実施形態の銅合金材は、Ni及びFe含有量及び製造条件を最適化することにより、熱膨張係数をステンレス鋼材に対して摺動する摺動部材として最適な範囲、即ち、12乃至15ppmに調節すると共に、ビッカース硬さ(Hv)が100乃至260としているため、切削性及び摺動特性における熱安定性が優れている。
以下、本発明の実施例の効果について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。先ず、下記表1に示すNo.1乃至6の組成の原料を、夫々溶解鋳造した後、950乃至1100℃で5乃至10時間均質化処理し、更に、冷間加工(異径圧延)を行い、直径が13mm、長さが500mmの直線に加工した。そして、これらの直線に、950℃の温度条件下で30分間の溶体化処理を施した後、直径が10mmになるように引抜き加工して実施例1、実施例2及び比較例1乃至4の銅合金線材を作製した。また、下記表1に示すNo.1及びNo.2の組成の原料を、夫々溶解鋳造した後、950乃至1100℃で5乃至10時間均質化処理し、更に、冷間加工(異径圧延)を行い、直径が10mmの直線に加工した。そして、この直線に、950℃の温度条件下で30分間の溶体化処理を施し、実施例3及び4の銅合金線材を作製した。更に、前述の実施例1乃至4の銅合金線材に対して、550℃の温度条件下で3時間の時効処理を施し、比較例5乃至8の銅合金線材を作製した。なお、実施例1乃至4及び比較例1乃至8の各銅合金線材の長さは、切断加工により400mmに揃えた。また、従来例として、電磁軟鉄及び高力黄鋼からなり、直径が10mm、長さが400mmの市販の線材を用意した。各線材の製造方法、張熱膨張係数、ビッカース硬さ(Hv)及び相分離の有無を下記表2に示す。なお、下記表2に示す熱膨張係数は、20乃至100℃の温度範囲においてリガク社製 THEROFLEX TMA5140Cにより測定した値であり、ビッカース硬さ(Hv)は中京試験機社製 HARDNESS TESTERにより測定した値である。また、相分離の有無については、理研電子製BHトレーサーにより、各銅合金線材の保持力Hcを測定して評価した。具体的には、γ相が強磁性のγ相と非磁性のγ相とに分離すると保持力Hcが生じるため、保持力Hcが0の場合を相分離無、保持力Hcが0よりも大きかった場合を相分離有とした。
Figure 2007002322
Figure 2007002322
次に、実施例1乃至4及び比較例1乃至8の銅合金線材、従来例1の電磁軟鉄線材及び従来例2の高力黄銅線材の切削性及び摺動特性について評価した。切削性は、ダイヤモンドバイトを使用し、切削油を使用せずに、各線材を直径が8mm、高さが5mmの円柱状に連続して加工したとき、加工面の平均表面粗さRaを0.25μm以下に維持できる個数により評価した。その際、加工条件は、回転数を3000回転/分、刃物送り速度を0.02mm/revとした。なお、切削加工により得られた円柱の平均表面粗さRaは、東京精密製 サーフコムにより測定した。
また、摺動特性は、各線材を切削加工することによりスリーブを作製して評価した。図2は摺動特性の評価方法を模式的に示す断面図である。図2に示すように、本実施例においては、シャフト11は、100℃における熱膨張係数が17.3ppmであるステンレス鋼(Fe−18Cr−8Ni合金)材を使用し、その直径rは5mmとした。また、スリーブ12は、実施例1乃至4、比較例1乃至8、従来例1及び2の各線材を、前述の切削性評価と同様の条件で300個ずつ切削加工して、外径rを8mm、長さLを10mmとした後、夫々300個目に加工したものを内径がシャフト11の直径r(5mm)よりも3μm大きくなるように穴あけ加工を施して使用した。そして、スリーブ12に形成された穴にシャフト11を挿通させると共に、シャフト11とモータ13の回転軸13aを連結部材15により結合し、更に、シャフト11とスリーブ12との間には潤滑油14を充填した。そして、シャフト11及びスリーブ12を恒温槽16内に設置し、シャフト11を常温で一定時間回転させた後、恒温槽16の温度を上昇させてシャフト11及びスリーブ12の温度を100℃まで上昇させ、100℃における摺動状態を確認した。このとき、シャフト11の回転数は8000回転/分とした。その結果を下記表3に示す。なお、下記表3においては、摺動特性が良好であったものを○、僅かに異常がみられたものを△、不具合が生じたものを×とした。以上の結果を下記表3にまとめて示す。
Figure 2007002322
上記表3に示すように、実施例1乃至4の線材は、切削性及び摺動特性が共に良好であった。これに対して、Ni含有量が7質量%未満であり、熱膨張係数が本発明の範囲を超えている比較例1の線材は、切削性は良好であったが、摺動中に不具合が生じた。一方、Ni含有量が25質量%を超えており、熱膨張係数が本発明の範囲よりも小さく、更に硬さ(Hv)が本発明の範囲を超えている比較例2の線材は、摺動性は僅かに異常が見られた程度であったが、切削性が悪かった。また、Fe含有量が8質量%未満であり、熱膨張係数が本発明の範囲を超えている比較例3の線材は、切削性は良好であったが、摺動中に不具合が生じた。一方、Fe含有量が35質量%を超えており、熱膨張係数が本発明の範囲よりも大幅に小さく、更に硬さ(Hv)が本発明の範囲を超えている比較例4の線材は、摺動性は僅かに異常が見られた程度であったが、切削性が悪かった。
更に、引抜き加工後に時効処理を施した比較例5及び6の線材並びに、溶体化処理後に時効処理を施した比較例7及び8の線材は、組成、熱膨張係数及び硬さ(Hv)のいずれも本発明の範囲内であったが、比較例5及び7の線材は保持力Hcが650Oe、比較例6及び8の線材は保持力Hcが550Oeであり、いずれも時効処理により合金成分が2相に分離していた。このため、これらの線材は、保持力Hcが0であった実施例1乃至4の線材に比べて、切削性が悪かった。更にまた、従来例1の線材は、摺動性は良好であったが、切削性が著しく悪いため、精度よく加工することが困難であった。更にまた、従来例2の線材は、切削性は良好であったが、高温下における摺動特性が悪く、回転中にロックしてしまった。
Cu−Ni−Fe合金材の熱膨張係数の分布を示す三元状態図である。 本発明の実施例における摺動特性の評価方法を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1;領域 11;シャフト 12;スリーブ 13;モータ 13a;回転軸 14;潤滑油 15;連結部材 16;恒温槽

Claims (8)

  1. Ni:7乃至25質量%及びFe:8乃至35質量%を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有し、熱膨張係数が12乃至15ppm、ビッカース硬度(Hv)が100乃至260であり、鋳造又は粉末熱間押出により作製された成形体を溶体化処理した固溶体であることを特徴とするスリーブ用銅合金材。
  2. Cu含有量が45乃至75質量%であることを特徴とする請求項1に記載のスリーブ用銅合金材。
  3. Fe含有量が8.5質量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスリーブ用銅合金材。
  4. Ni:7乃至25質量%及びFe:8乃至35質量%を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成の原料を、鋳造又は粉末熱間押出して成形体を得る工程と、前記成形体を溶体化処理して、熱膨張係数が12乃至15ppm、ビッカース硬度(Hv)が100乃至260であり、固溶体からなる銅合金材を得る工程と、を有することを特徴とするスリーブ用銅合金材の製造方法。
  5. 前記溶体化処理した後、引抜き加工することを特徴とする請求項4に記載のスリーブ用銅合金材の製造方法。
  6. 前記原料は、Cu含有量が45乃至75質量%であることを特徴とする請求項4又は5に記載のスリーブ用銅合金材の製造方法。
  7. 前記原料は、Fe含有量が8.5質量%以上であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載のスリーブ用銅合金材の製造方法。
  8. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の銅合金材により製造されたことを特徴とする流体軸受装置用スリーブ。
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