JP2006525371A - 免疫応答を減少させる方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、治療的レベルで発現された場合にトランスジーン産物に対する免疫応答を減少させるために十分な量および期間で投与される、トランスジーンの発現を一時的に阻害または減少させる小さい干渉リボ核酸(siRNA)分子を同時投与することによって、哺乳類におけるトランスジーン産物に対する免疫応答を減少させる方法に関する。本発明はさらに、酵素置換療法において用いられる酵素のような免疫原性タンパク質に対する免疫応答を減少させるために哺乳類にsiRNAを投与することに関する。
Description
発明の分野
本発明は、治療的レベルで発現された場合にトランスジーン産物に対する免疫応答を減少させるために十分な量および期間で投与される、トランスジーンの発現を一時的に阻害または減少させる小さい干渉リボ核酸(siRNA)分子を同時投与することによって、哺乳類におけるトランスジーン産物に対する免疫応答を減少させる方法に関する。本発明はさらに、酵素置換療法において用いられる酵素のような免疫原性タンパク質に対する免疫応答を減少させるために哺乳類にsiRNAを投与する方法に関する。なお、本出願は、その本文が参照として本明細書に組み入れられる、2003年5月5日に提出された米国特許出願第60/468,229号および2003年6月4日に提出された米国特許出願第60/476,216号に関連し、その提出日の恩典を主張する。
本発明は、治療的レベルで発現された場合にトランスジーン産物に対する免疫応答を減少させるために十分な量および期間で投与される、トランスジーンの発現を一時的に阻害または減少させる小さい干渉リボ核酸(siRNA)分子を同時投与することによって、哺乳類におけるトランスジーン産物に対する免疫応答を減少させる方法に関する。本発明はさらに、酵素置換療法において用いられる酵素のような免疫原性タンパク質に対する免疫応答を減少させるために哺乳類にsiRNAを投与する方法に関する。なお、本出願は、その本文が参照として本明細書に組み入れられる、2003年5月5日に提出された米国特許出願第60/468,229号および2003年6月4日に提出された米国特許出願第60/476,216号に関連し、その提出日の恩典を主張する。
発明の背景
治療物質に対する中和抗体の発生は、遺伝子治療およびライソゾーム蓄積症を治療するために用いられる治療のような酵素注入治療において重要な問題として認識されている。液性反応の発生(すなわち、中和抗体の産生)は、特に遺伝子治療または置換酵素治療の治療効果を減少することが示されている。Nishikawaら、Biol. Pharm. Bull. 25(3):275〜283(2002);Rosenbergら、Blood 93(6):2081〜2088(1999)。
治療物質に対する中和抗体の発生は、遺伝子治療およびライソゾーム蓄積症を治療するために用いられる治療のような酵素注入治療において重要な問題として認識されている。液性反応の発生(すなわち、中和抗体の産生)は、特に遺伝子治療または置換酵素治療の治療効果を減少することが示されている。Nishikawaら、Biol. Pharm. Bull. 25(3):275〜283(2002);Rosenbergら、Blood 93(6):2081〜2088(1999)。
トランスジーン産物に対する中和抗体反応の程度は、発現されるトランスジーンの量、トランスジーン産物が異物として認識されるか否か、トランスジーン産物が分泌されるか否か、およびトランスジーンが発現される細胞のタイプのような多くの要因に依存する。組織および細胞特異的プロモーターを有するベクターは、非抗原提示細胞への発現を制限し、抗体反応の発生が起こる可能性はより低い。Wangら、Mol. Therapy 1(2):154〜158(2000)。
さらに、抗体反応はベクターのタイプおよび輸送法に依存する。例えば、流体力学的輸送は、それによってトランスジーン産物の高レベル発現が得られることから、肝臓にトランスフェクトするために選択される方法である。しかし、この初回発現レベルが高いために、典型的に中和抗体反応が引き起こされる。さらに、この技法は、肝臓に損傷を与え、その結果炎症を引き起こす。次に、炎症反応はトランスジーン産物に対する抗体反応を悪化させる。
治療産物に対して免疫応答を誘導する問題を克服する努力には、以下が含まれる:(1)免疫抑制剤、例えばFK506、シクロホスファミド、デオキシスペルグアリン、MR1(抗CD40リガンド)、およびCTLA4-Igを同時投与すること;(2)薬物誘導型プロモーターを用いること;ならびに(3)組織特異的プロモーターを用いること。残念なことに、これらの努力はそれぞれが別の一連の問題に関連する。
例えば、免疫応答の抑制は、例えば、免疫系を抑制する薬物によって哺乳類のような宿主生物を処置することによって得られる可能性があると報告されている。Jooseら、Human Gene Therapy 7:1555〜1566(1996);Yangら、J. Virol. 70:6370〜6377(1996);Zieglerら、Human Gene Therapy 10:1667〜1682(1999)。同様に、トランスジーン産物に対する免疫応答を減少させる努力において、テトラサイクリンまたはラパマイシンによって調節されるプロモーターのような、薬剤誘発型プロモーターを用いてトランスジーンの発現を調節することに関する研究が行われている。Rendahlら、Nature Biotechnology 16:757〜761(1988);およびYeら、Science 283:88〜91(1999)。しかし、誘導型プロモーターを制御するために用いられる免疫抑制剤および薬剤は、患者に対して有意な有害な副作用を有する。その上、誘導型プロモーターは、実際には、免疫応答の問題を解決せず、むしろその発症を遅らせるように思われる。Abruzzeseら、Human Gene Therapy 10:1499〜1507(1999)。
組織特異的プロモーターは、中和抗体の発生を回避または減少する努力において、非免疫細胞に対するトランスジーンの発現を制限するために用いられている。Wangら、上記。しかし、これらのプロモーターは、発現の調節能を提供しないものの、それでもこのように、中和抗体反応を産生するために十分に高い発現レベルが得られることもあれば、トランスジーン産物の治療レベルを提供するには低すぎる発現レベルが得られることもある。
発明の概要
本発明は、哺乳類において免疫原性である産物をコードするトランスジーンを含むベクターを哺乳類に投与すること、およびトランスジーンの発現を一時的に阻害するsiRNAを同時または連続的に投与することを含む、哺乳類、特にヒトにおけるトランスジーンの産物に対する免疫応答を減少させる方法を提供する。本発明の方法において、siRNAは、治療レベルで発現された場合に免疫原性トランスジーン産物に対する如何なる免疫応答も減少させるために十分な量および期間で投与される。
本発明は、哺乳類において免疫原性である産物をコードするトランスジーンを含むベクターを哺乳類に投与すること、およびトランスジーンの発現を一時的に阻害するsiRNAを同時または連続的に投与することを含む、哺乳類、特にヒトにおけるトランスジーンの産物に対する免疫応答を減少させる方法を提供する。本発明の方法において、siRNAは、治療レベルで発現された場合に免疫原性トランスジーン産物に対する如何なる免疫応答も減少させるために十分な量および期間で投与される。
本発明は、疾患状態を治療または予防する免疫原性産物をコードするトランスジーンを含むベクターを患者に投与すること、およびトランスジーンの発現を一過性に存在するsiRNAを同時または連続的に投与することを含む、患者における疾患状態を治療または予防する方法をさらに提供する。siRNAは、治療レベルで発現された場合に、産物に対する如何なる免疫応答も減少させるために十分な量および期間で投与される。
本発明のもう一つの局面は、ライソゾーム蓄積症を有する哺乳類において欠損している酵素をコードするトランスジーンを含むベクターを投与すること、および酵素をコードするトランスジーンの発現を一過性に阻害するsiRNAを同時または連続的に投与することを含む、哺乳類におけるライソゾーム蓄積症を治療する方法を提供する。siRNAは、治療レベルで発現された場合に、酵素に対する免疫応答を減少させるために十分な量および期間で投与される。
本発明はさらに、免疫原性産物をコードするトランスジーンを含むベクターを哺乳類に投与すること、および免疫原性産物に対する免疫応答を減少させるために十分な量および期間で投与される、トランスジーンの発現を一過性に阻害するsiRNAを同時または連続的に投与することを含む、哺乳類における免疫原性産物に対する免疫応答を減少させる方法を提供する。本方法は、そうでなければ置換酵素の投与によって免疫応答が誘発されるであろうライソゾームヒドロラーゼのような酵素の欠損症によって引き起こされた疾患を治療するために特に有用である。
発明の詳細な説明
本発明がより容易に理解されるように、特定の用語をまず定義する。さらなる定義は詳細な説明の中で述べられる。
本発明がより容易に理解されるように、特定の用語をまず定義する。さらなる定義は詳細な説明の中で述べられる。
「流体力学的注射」という用語は、血管腔および/または内在する実質器官内に上全身圧を生成するために十分な速度および容量で静脈内注射を指す。流体力学的輸送は、米国特許第6,265,387号に記述される。
「阻害する」および「中和する」という用語は、もう一つの化合物の生物活性を減少させる、またはもう一つの化合物の生物活性の量を減少させる特定の反応を妨害する化合物の能力を指す。「生物活性」という用語は、機能または一連の機能、またはそれに対して機能が帰属し、インビボまたはインビトロであってもよい生物系における分子によって行われる効果を指す。阻害は、当技術分野で既知のまたは実施例に記述される方法を用いて測定することができる。
トランスジーンの発現に関連して用いられる「阻害」という用語は、トランスジーンによって発現されるタンパク質および/またはmRNA産物のレベルが認めることができる程度に減少することまたは存在しないことを指す。本発明の方法において、トランスジーン発現は、mRNAまたはタンパク質レベルで完全または部分的に阻害されてもよい。または、トランスジーン発現は、トランスジーン産物に対する免疫応答を減弱させるために十分な程度に限って減少してもよい。
「免疫原性産物」という用語は、その宿主への流入によって、宿主において免疫応答を誘発する、例えば免疫原性産物に対して特異的な抗体の合成を誘発する任意の分子を指す。
「免疫応答」という用語は、宿主の体内で抗原に対する免疫系の反応を指し、これには、抗原特異的抗体の産生および/または細胞性細胞障害反応が含まれる。この用語は、免疫原性産物に対する感受性が誘導された疾患に至る免疫系の反応をさらに意味する。最初の抗原の曝露に対する免疫応答(主に免疫応答)は、典型的に、数日から2週間の潜伏期間の後に検出可能となる;同じ抗原によるその後の刺激に対する免疫応答(二次免疫応答)は、一次免疫応答の場合より急速である。トランスジーン産物に対する免疫応答には、トランスジーンによってコードされる免疫原性産物に対して誘発される可能性がある液性(例えば、抗体反応)および細胞性(例えば、細胞障害性T細胞反応)免疫応答の双方が含まれてもよい。免疫応答のレベルは、当技術分野で既知である、または実施例において記述される方法によって(例えば、抗体力価を測定することによって)測定することができる。
トランスジーンの投与後の免疫応答レベルに関連して用いられる「減少」という用語は、その少なくとも一つがトランスジーンの他にsiRNAを投与される二つまたはそれ以上の宿主のあいだの免疫応答のレベルにおいて認められうる差を指す。免疫応答レベルの統計学的に有意な差は、当技術分野で既知の任意の適当な方法によって決定することができる。例えば、Steelら、「Principles and Procedures of Statistics、A Biometrical Approach」(McGraw-Hill、1980)を参照されたい。「阻害」という用語はまた、免疫応答の開始の予防または遅延を指す。
「ライソゾーム蓄積症」という用語は、ライソゾームヒドロラーゼの欠損またはライソゾームの物質輸送に関係するタンパク質の欠損に関連した障害を指す。代表的なライソゾーム蓄積症および関与する欠損酵素を表1に記載する。
「治療レベル」という用語は、トランスジーンを投与される宿主においてその治療的または有用な効果を付与するために十分なトランスジーン産物の量またはトランスジーン産物の活性レベルを指す。トランスジーンの発現レベルまたはトランスジーン産物の活性レベルは、当技術分野において公知の、または実施例に記述される方法を用いてタンパク質またはmRNAレベルで測定することができる。
「トランスジーン」という用語は、組織または臓器の細胞に導入されて、適当な条件下で発現されうる、またはそうでなければ細胞に有益な特性を付与することができるポリヌクレオチドを指す。トランスジーンは、所望の治療転帰に基づいて選択される。トランスジーンは例えば、対象ホルモン、酵素、受容体、または他のタンパク質をコードしてもよい。
「トランスジーン産物」という用語は、トランスジーンによってコードされ、細胞に有益な特性または所望の治療転帰を付与する任意の分子を指す。この用語には、RNA転写物、例えばmRNAおよびタンパク質が含まれるがこれらに限定されない。
組成物および方法
本発明に至る実験において、正常マウスおよびα-ガラクトシダーゼ欠損マウス(ファブリー病モデル)に、α-ガラクトシダーゼトランスジーンを含むプラスミドDNAを流体力学的注射によって投与した。本発明は、ベクターおよびトランスジーン特異的siRNAを同時投与することによって、α-ガラクトシダーゼの最初の治療量を上回る発現が可逆的に抑制されるという発見に一部基づいている。本発明はさらに、siRNA効果が逆転された場合にトランスジーンを治療レベルで発現させながら、siRNAによる抑制がα-ガラクトシダーゼに対する中和性の宿主免疫応答を減少させるという発見および証明に一部基づいている。
本発明に至る実験において、正常マウスおよびα-ガラクトシダーゼ欠損マウス(ファブリー病モデル)に、α-ガラクトシダーゼトランスジーンを含むプラスミドDNAを流体力学的注射によって投与した。本発明は、ベクターおよびトランスジーン特異的siRNAを同時投与することによって、α-ガラクトシダーゼの最初の治療量を上回る発現が可逆的に抑制されるという発見に一部基づいている。本発明はさらに、siRNA効果が逆転された場合にトランスジーンを治療レベルで発現させながら、siRNAによる抑制がα-ガラクトシダーゼに対する中和性の宿主免疫応答を減少させるという発見および証明に一部基づいている。
本発明は、トランスジーンおよびトランスジーン特異的siRNAの同時投与によってトランスジーン産物に対する免疫応答を減少させる方法を提供する。本発明の方法は、トランスジーンが治療レベルで発現された場合に、トランスジーン特異的免疫応答が減少する、トランスジーンの最初の治療量を上回る発現を減少させるために十分な量および期間で、哺乳類にトランスジーン特異的siRNAを投与すること、およびその後治療量でトランスジーンを発現させることを含む。または、本発明の方法は、別の経路によって投与されるか、または遺伝子治療によって再投与される、そうでなければ免疫原性の産物を哺乳類において免疫寛容を誘導するために用いてもよい。
siRNAは通常、長さが21〜23ヌクレオチド(これより長くても短くてもよい)であり、それに対して相同であるmRNAの転写後沈黙化を引き起こす。RNA干渉またはRNAiは、特定の遺伝子の沈黙化を引き起こしうる小さい干渉RNAに基づく方法である。RNAiは、mRNAを破壊する配列特異的多成分ヌクレアーゼであって短いRNAを含む、RNA誘導沈黙化複合体またはRISCによって媒介されることが示されている。ハイブリダイズして二本鎖構造を形成するsiRNAの相補的部分は典型的に、実質的または完全な同一性を有する。二本鎖構造は、一つの自己相補的RNA鎖または二つの相補的RNA鎖によって形成されてもよい。本発明のsiRNAは一つまたはそれ以上の鎖の重合化リボヌクレオチドを含んでもよく、燐酸-糖骨格またはヌクレオシドのいずれかに対する改変を含んでもよい。同様に、RNAの編集において役割を果たす酵素である酵素アデノシンデアミナーゼの活性を遮断するように、塩基を改変してもよい。RNA二本鎖形成は、標的遺伝子発現の有効な阻害または減少を得るために、宿主生物または細胞に投与前または投与後のいずれかに開始することができる。一つの局面において、標的遺伝子はトランスジーンである。好ましい態様において、トランスジーンは遺伝子治療ベクターによって輸送される。
本発明の方法において、siRNAは特定のmRNAの特定の部分、例えば標的遺伝子またはトランスジーンに対して相補的である。siRNAは、siRNAを同じ細胞または同じ宿主生物にトランスジーンとして投与した場合に発現の阻害能を有する。
本発明のsiRNAの配列は、トランスジーンの長さ全体、またはトランスジーンの一部のみに対応しうる。一つの態様において、siRNAの長さ、すなわち二本鎖構造の個々の鎖の長さと共に二本鎖の長さは、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチドを含む。もう一つの態様において、siRNAの長さは約25〜50ヌクレオチドである。さらにもう一つの態様において、siRNAの長さは50ヌクレオチドより大きい。
本明細書において用いられるように、「遺伝子治療ベクター」は、遺伝子治療において用いるために、それが連結しているもう一つの核酸分子を輸送することができる核酸分子を指す。本発明に従う一つの態様において、遺伝子治療ベクターは、治療産物をコードするトランスジーンを投与するために用いられる。本明細書において用いられる「ベクター」にはプラスミド、ファージミド、およびウイルスが含まれるがこれらに限定されない。トランスジーンを免疫コンピテント宿主生物に輸送するために用いることができる様々なベクターの例には、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、サイトメガロウイルス(CMV)ベクター、ヘルペスウイルスベクターおよびレトロウイルスベクターが含まれる。本明細書において用いられる遺伝子治療ベクターには、現在既知の遺伝子治療ベクターと共に、一般的に用いられる治療ベクターのさらなる改変および変化形、ならびにエクスビボ遺伝子治療応用のために用いられるベクターを含む、遺伝子治療のために宿主生物にトランスジーンを輸送するために今後開発される新規ベクターが含まれると理解される。
トランスジーンは、トランスジーンを含むベクターが投与されて、トランスジーンの発現が細胞、組織、臓器、臓器系、生物、またはその細胞が一部である細胞培養物に対して予防的または治療的に有用である細胞または生物において発現させることができる。一つの態様において、トランスジーンは、哺乳類、例えばヒトにおいてその予防的または治療効果を付与する。トランスジーンは、mRNAまたはタンパク質のレベルでその効果を発揮することができる。典型的に、トランスジーンは免疫原性産物、例えばタンパク質をコードする。
本発明の方法において、トランスジーンを含む遺伝子治療ベクターは、トランスジーンによってコードされるタンパク質に対する如何なる免疫応答も減弱させるために、トランスジーンの発現を阻害または減少することができるsiRNAと共に、哺乳類に投与される。トランスジーンを含むベクターは、トランスジーンの発現を一時的に減少または阻害することができるsiRNAと同時に、宿主生物に投与することができる。または、トランスジーンを含むベクターはまた、トランスジーンの発現を一時的に減少または阻害することができるsiRNAと連続的に投与することができる。一つの態様において、siRNAはトランスジーンを含む遺伝子治療ベクターを投与する前に免疫コンピテント宿主細胞に投与される。もう一つの態様において、siRNAは、トランスジーンを含む遺伝子治療ベクターを投与した後に、免疫コンピテント宿主細胞に投与される。
siRNAは、遺伝子治療ベクターを含む細胞、例えば細胞培養物または宿主生物あたりsiRNA少なくとも1コピーを輸送することができる量で投与してもよい。siRNAのより高用量、例えば細胞あたり少なくとも5、10、100、500、または1000コピーのsiRNAを、細胞がトランスジーンの一つまたはそれ以上を含む、培養物における細胞、または組織、臓器、臓器系、もしくは生物全体における細胞に投与すると、細胞あたりsiRNAのより低いコピー数の場合に得られる阻害と比較して、トランスジーン発現のより有効な阻害が得られる可能性がある。
本発明の一つの態様に従って、トランスジーン発現の減少または阻害の結末は、宿主生物の外向きの特性、例えばトランスジーンタンパク質産物に対する免疫応答の症状の緩和、またはトランスジーン発現を阻害するsiRNAの非存在下で認められるであろうトランスジーン産物に対する免疫応答が存在しないことを調べることによって確認することができる。トランスジーンのmRNAまたはタンパク質産物を検出するために、RNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノザンブロットハイブリダイゼーション、逆転写、マイクロアレイによる遺伝子発現のモニタリング、抗体結合、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ウェスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、他のイムノアッセイ、免疫蛍光、および蛍光活性下細胞分析(FACS)のような、生化学的技術も同様に用いることができる。
トランスジーン発現の阻害はまた、トランスジーンを含むベクターおよび対応するsiRNAを投与した培養物における細胞において測定することができる。したがって、一つの態様において、siRNAによって付与されるトランスジーン発現の減少を、最初に細胞において、例えばインビトロで細胞培養においてアッセイしてから、そのようなsiRNAをインビボで免疫コンピテント宿主生物に投与する。
トランスジーンに対するsiRNAの特異性は、細胞の他の遺伝子に対して明白な影響を与えることなくトランスジーン発現をsiRNAが阻害できるか否かによって反映される。細胞株または生物全体における遺伝子発現は、レポーターまたは薬物耐性遺伝子を用いることによってモニターすることができる。例えば、レポーター遺伝子を、その発現が阻害されることが望ましいトランスジーンに連結させることができる。本発明の方法に従って用いてもよいレポーター遺伝子には、例えば、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)、アルカリホスファターゼ(AP)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(GUS)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ルシフェラーゼ(Luc)、ノパリンシンターゼ(NOS)、オクトピンシンターゼ(OCS)、およびその誘導体が含まれるがこれらに限定されない。多数の選択マーカーも同様にトランスジーン発現をアッセイするために利用可能である。そのようなマーカーは典型的に、一つまたはそれ以上の薬剤、例えばアンピシリン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ヒグロマイシン、カナマイシン、リンコマイシン、メソトレキセート、ホスフィノトリシン、ピューロマイシン、およびテトラサイクリンに対する抵抗性を付与する。これらの薬剤耐性マーカーは、宿主生物または細胞株に対してsiRNAを投与後のトランスジーン発現、またはトランスジーン発現の阻害をアッセイするために用いることができる。
宿主生物または宿主細胞にsiRNAを投与した場合のトランスジーン発現の阻害の程度は、本明細書に記述の一つまたはそれ以上のアッセイによってインビトロまたはインビボで定量することができる。トランスジーン発現の阻害は、mRNAレベルと共にタンパク質レベルでアッセイすることができる。例えば、mRNAまたはタンパク質レベルでのトランスジーン発現の阻害の程度は、siRNAの非存在下でのトランスジーン発現と比較して少なくとも2、5、10、15、20、25、30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、92、95、97、98、または99%となりうる。一つの態様において、トランスジーン発現の阻害の程度は、トランスジーンによってコードされるタンパク質に対する免疫応答と相関する。したがって、トランスジーン発現のより高い程度の阻害によって、トランスジーンによってコードされるタンパク質に対するより減少した免疫応答が起こると期待される。トランスジーン発現の阻害の程度は、例えばトランスジーンのmRNAの半減期、トランスジーンのタンパク質の半減期、阻害のために用いられるsiRNAの用量および量、ならびにsiRNAが投与される期間に依存するであろう。siRNAの用量および量は次に、siRNAのインビボ半減期およびトランスジーンに対するsiRNAのモル比に依存する可能性がある。トランスジーン発現がsiRNAによって減少または阻害される期間は、トランスジーンが哺乳類に投与される時から少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20日であってもよい。
トランスジーン発現の阻害効率は、細胞における遺伝子産物の量を評価することによって決定してもよい。例えば、mRNAは、siRNAに関して用いられる領域外でヌクレオチド配列を有するハイブリダイゼーションプローブによって検出してもよく、または翻訳されたポリペプチドを抗体によって検出してもよい。
トランスジーンの一部と同一であるヌクレオチド配列を含むsiRNAは、トランスジーン発現の阻害にとって好ましく、それによって宿主生物においてトランスジーンによってコードされる免疫原性タンパク質に対する免疫応答の減弱が起こる。しかし、トランスジーンまたは標的遺伝子配列と比較して挿入、欠失、および点突然変異を有するRNA配列も同様に、阻害のために有効であることが判明している。このように、本発明は、遺伝子変異、系の多形、または進化的多様性のために予想される配列の変化に認容できる長所を有する。
siRNAと、その発現が阻害されることが望ましいトランスジーンとの配列同一性は、配列比較および当技術分野で既知のアラインメントアルゴリズムによって最適にしてもよい(Gribskov and Devereux、「Sequence Analysis Primer」、Stockton Press、1991を参照されたい)。ヌクレオチド配列間の差の割合は、例えば、BESTFITソフトウェアプログラムにおいてデフォルトパラメータを用いて実行されるSmith-Watermanのアルゴリズムによって計算することができる(ウィスコンシン大学遺伝子計算グループを参照されたい)。siRNAとトランスジーンの一部とのあいだに約90%より大きい配列同一性、または100%配列同一性が一般的に望ましい。しかし、siRNAとトランスジーンのあいだの完全な配列同一性は本発明を実践するために必要ではない。または、siRNAの二本鎖領域は、例えばストリンジェントなハイブリダイゼーション条件(例えば、400 mM NaCl、40 mM PIPES、pH 6.4、1 mM EDTA、および50℃または70℃でのハイブリダイゼーションを12〜16時間;その後洗浄)で、標的遺伝子またはトランスジーン転写物の一部とハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列として定義してもよい。
本発明の組成物および方法において用いられるsiRNAの配列を最適にするために、当技術分野で周知である配列アラインメントアルゴリズムを用いることができるが、siRNAはまた、本明細書に記述の一つまたはそれ以上のアッセイにおいてsiRNAのトランスジーン発現阻害能をアッセイすることによって、単純に同定または定義してもよい。
siRNAは、インビボまたはインビトロで産生することができる。そのようなRNAは、酵素的または部分/全有機合成によって合成することができ、如何なる改変リボヌクレオチドもインビトロ酵素または有機合成によって導入することができる。細胞の内因性のRNAポリメラーゼは、インビボでsiRNAの転写を媒介する可能性があり、またはクローニングされたRNAポリメラーゼは、インビボもしくはインビトロでsiRNAの転写のために用いることができる。本発明に従う一つの態様において、トランスジーン発現を減少させることによって、トランスジーンによってコードされるタンパク質に対する免疫応答を減弱させるために用いられるsiRNAは、ベクターを用いて輸送される。例えば、特定のsiRNAをコードするトランスジーンを含むベクターを、その発現が減少または阻害されることが望ましいトランスジーンと同時または連続的に宿主生物に投与してもよい。インビボでのトランスジーンからの転写または発現構築物からの転写の場合、調節領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、スプライスドナーおよびアクセプター、ポリアデニル化部位)を用いて、RNA鎖(または複数の鎖)を転写してもよい。本発明のsiRNAは、細胞RNAポリメラーゼまたはバクテリオファージRNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7、SP6)によって合成してもよい。化学合成またはインビトロで酵素的に合成される場合、siRNAは、細胞または宿主生物に導入する前に精製してもよい。例えば、siRNAは溶媒または樹脂による抽出、沈殿、電気泳動、クロマトグラフィー、またはその組み合わせによって混合物から精製することができる。または、siRNAは、試料の処理による損失を回避するために精製せずに、または最小量の精製によって用いてもよい。siRNAは、保存のために乾燥させてもよく、または水溶液に溶解してもよい。溶液は、二本鎖のアニーリング、および/または安定化を促進するために緩衝液または塩を含んでもよい。
siRNAの様々な投与方法と共に、トランスジーンの宿主細胞または宿主生物への輸送を用いることができる。
siRNAは、細胞に直接導入してもよく、または哺乳類の腔、間質腔、もしくは循環中に導入してもよい。siRNAはまた、口腔内に導入してもよく、またはsiRNAを含む溶液中に生物を浴することによって導入してもよい。siRNAの経口導入法には、siRNAを生物の食物と直接混合することと共に、食物として用いられる種がsiRNAを発現するように操作されて、その後、治療されることが望ましい宿主生物に食物として与えられる遺伝子操作アプローチが含まれる。核酸を導入する物理的方法には、例えば細胞または生物にRNAを直接注射することが含まれる。血管または血管外循環、血液またはリンパ系、および脳脊髄液は、siRNAを導入してもよい宿主生物内の部位のいくつかである。核酸を導入する物理的方法には、遺伝子治療ベクターと共にsiRNAを含む溶液の注射、遺伝子治療ベクターおよびsiRNAによって覆われた粒子による衝突、siRNA溶液への細胞もしくは生物の浸漬、または遺伝子治療ベクターとsiRNAとの存在下での細胞膜の電気穿孔が含まれる。いくつかの態様において、siRNAは、流体力学的注射を用いて特定の臓器、例えば肝臓に輸送することができる。
脂質媒介担体輸送、燐酸カルシウムのような化学物質媒介輸送等のような、核酸を細胞に導入するために当技術分野において公知の他の方法を用いてもよい。
本発明はまた、トランスジーンを含む遺伝子治療ベクターの投与と同時または投与後に哺乳類に投与することができるsiRNAを含む組成物を提供する。一つの態様において、本発明のsiRNA組成物は、宿主生物、例えば遺伝子治療を必要とするヒト患者に投与するための薬学的組成物として調製される。したがって、本明細書において用いられるsiRNAを含む薬学的組成物は、組成物を宿主細胞に投与するために適するように、薬学的に許容される担体を含んでもよい。
本明細書において用いられる薬学的に許容される担体には、任意のまたは全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤等が含まれる。如何なる通常の媒体または物質も、それが本発明の組成物または方法と不適合でない限り、用いてもよいと理解される。
本発明において用いられるsiRNAのデザインは、阻害のために標的化されるトランスジーンから発現されたmRNAの二次元構造に基づくことができる。siRNAは、典型的に転写開始部位の少なくとも50〜100ヌクレオチド下流に存在するトランスジーンの一部と相補的である。siRNA配列には典型的に、21〜25ヌクレオチドのいずれかが含まれる。長さが21ヌクレオチドのsiRNAの場合、少なくとも10〜11ヌクレオチドがGまたはCであることが望ましい;しかし、三つまたはそれ以上のGの鎖は一般的に配列のいずれにおいても望ましくない。さらに、RNAの3'末端での2ヌクレオチドの突出末端が好ましい。mRNAの二次元構造を決定するために利用可能なコンピュータープログラム、例えばGenebee(商標)RNA二次予測プログラム(Genebee Molecular Biology Package for Biopolymer Structure Analysis、1992)を用いてもよい。mRNAの二次元構造には典型的にいくつかのループ構造が含まれる。siRNAをデザインするために用いられる理想的なループ構造は、二次元構造の辺縁部に存在し、これにはループの片面に少なくとも10個の対応のないヌクレオチド、およびループのもう片方の面に少なくとも3個の対応のないヌクレオチドが含まれる。さらに、siRNA配列を、既知の遺伝子およびタンパク質配列に関するデータベースに対して検索して、これがトランスジーンに対して特異的であることを保証することができる。実施例において用いられるaGAL-siRNA-3をデザインするために選択されたmRNAループ構造を図1に示す。
siRNAは、適当に保護されたリボヌクレオチドホスホロアミダイトおよび通常のDNA/RNAシンセサイザーを用いて化学合成してもよい。siRNA二本鎖の各鎖は、個別に合成することができる。siRNAは、哺乳類に投与する前にインビトロで、またはインビボでそれぞれの一本鎖を哺乳類に投与した後に二本鎖にすることができる。siRNA二本鎖はまた、鎖とその相補体からなるステムループまたはヘアピン構造として合成することができる。siRNAはまた、市販の多様なRNA販売元、例えばDharmacon Reserch(ラファイエット、コロラド州)、Pierce Chemical(ロックフォード、イリノイ州)、Glen Research(スターリング、バージニア州)、ChemGenes(アシュランド、マサチューセッツ州)、およびXeragon, Inc.(バレンシア、カリフォルニア州)から容易に得てもよい。
siRNAは、トランスジーンによってコードされるタンパク質に対する免疫応答を減弱させるために免疫コンピテント宿主生物に投与する前に、細胞、例えば細胞培養においてトランスジーン発現の阻害に関してアッセイすることができる。培養細胞にsiRNAをトランスフェクトする場合、Lipofectamine(商標)、またはOligofectamine(商標)(Invitrogen、カールスバッド、カリフォルニア州)のようなトランスフェクション試薬を用いることができる。トランスフェクション効率および用いる試薬の量は、細胞タイプのみならず、細胞培養のコンフルエンシーの程度および継代された細胞の回数に依存する。トランスジーン発現の阻害をアッセイするために用いてもよい細胞の例には、CHO、HEK293、NIH3T3、およびHeLaが含まれるがこれらに限定されない。
一つの例において、細胞培養プレートを異なる四つの組に分割する。一つの組にsiRNA単独を加える;第二の組にsiRNA+阻害されるトランスジーンを加える;第三の組にsiRNA+対照DNAまたはトランスジーンを有しないベクターを加える;そして第四の組にトランスジーンまたはトランスジーンを含むベクターのみを加える。siRNAまたはsiRNAとDNAの混合物を細胞にトランスフェクトする場合、siRNA単独、阻害されることが望ましいトランスジーンと併用したsiRNA、対照DNAと併用したsiRNA、またはトランスジーンDNA単独を、1本の試験管において細胞培養培地と混合する。もう一つの試験管において、トランスフェクション試薬を細胞培養培地と混合する。
siRNA単独、トランスジーンもしくは対照DNAのいずれかであるDNAと併用したsiRNA、またはトランスジーンDNA単独のいずれかを含む各溶液をトランスフェクション試薬/細胞培養培地混合物と混合する。二つの溶液を合わせて混合して、室温で20〜25分間インキュベートする。混合物をその後培養細胞に加える。各組の細胞を、siRNAまたはsiRNAとDNAとの併用を細胞に加えた後異なる時点、例えば24、36、48、72、96、または120時間で回収する
トランスジーン発現の阻害に及ぼすsiRNAの効果は、mRNAレベルまたはタンパク質レベルのいずれかでアッセイすることができる。例えば、トランスジーンの阻害に特異的なsiRNAによって、トランスフェクション後のトランスジーンのmRNAの減少または完全な消失が起こるであろう、しかし、そのような阻害は一時的であり、トランスジーンのmRNAの発現は、トランスジーンDNA単独をトランスフェクトした細胞、すなわちsiRNAを含まない細胞において予想されるレベルまで増加し始めると期待される。
トランスジーンの発現に及ぼすsiRNAの効果はまた、例えば、トランスフェクトした細胞を総蛋白質のために回収して、タンパク質に対して特異的な抗体を用いて、例えばウェスタンブロット分析を用いてトランスジーンによってコードされるタンパク質の量を検出することによって、タンパク質レベルでアッセイすることができる。または、タンパク質は、免疫蛍光のような技術を用いて観察してもよい。
したがって、阻害されることが望ましいトランスジーンまたは標的遺伝子に対して特異的なsiRNAは、当技術分野で公知のおよび本明細書に記述される標準的な技術を用いてデザインすることができ、そのようなsiRNAは免疫コンピテント宿主生物にそれらを投与する前に、細胞培養において阻害効率に関して試験することができる。
さらなる態様において、本発明の方法は、精製タンパク質を患者に直接注入することを必要とする酵素置換療法(ERT)と共に用いてもよい。ERTは、ライソゾーム蓄積症、例えばゴーシェ病およびファブリー病を治療するために用いられて成功しているが、精製酵素の投与はしばしば、置換酵素に対する免疫応答を引き起こし、治療の有効性を減少させる。本発明の方法をERTの前に用いると、患者は置換酵素に対して免疫寛容を獲得して、それによって酵素をERTにおいて投与した場合の免疫応答を減少させるまたは消失させる。免疫原性産物に対する免疫寛容を誘導する方法は、免疫原性産物をコードするトランスジーンを含むベクターを哺乳類に投与すること、ならびにsiRNAが免疫原性産物に対する免疫応答を減少させるために十分な量および期間で投与される、トランスジーンの発現を一時的に阻害するsiRNAを哺乳類に投与することを含む。寛容を誘導するために、トランスジーン産物は、治療レベルで発現される必要はないが、発現されてもよいと理解されるであろう。
本発明の方法によって、そうでなければ患者に対して免疫原性である治療物質を投与することができる。方法には、例えば表1に記載の酵素のような置換酵素の投与が含まれてもよい。いくつかの態様において、免疫原性産物は、酵素置換療法において用いられる酵素、例えば、α-ガラクトシダーゼAまたはグルコセレブロシダーゼである。
本発明の方法は、糖尿病、血友病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、家族性高コレステロール血症、嚢胞性線維症、およびライソゾーム蓄積症のような、遺伝子治療に対して感受性がある疾患の治療において特に有用である。
いくつかの態様において、本発明は、ファブリー病および表1に記載の他の疾患のようなライソゾーム蓄積症の治療のための方法および組成物を提供する。ファブリー病は、α-ガラクトシダーゼAの欠損に起因するX染色体連鎖劣性障害である。精製α-ガラクトシダーゼAの投与を必要とするERTが現在、患者の治療のために評価中である;しかし、精製酵素は通常、循環中での半減期が短く、酵素に対する免疫応答のために急速に消失する。Zieglerら、Hum. Gene Ther. 10:1667〜1682(1999)を参照されたい。この免疫応答は酵素に関する無効変異を有する患者では特に問題である。しかし、α-ガラクトシダーゼAをコードするトランスジーンを投与すること、およびα-ガラクトシダーゼAトランスジーンの発現を一時的に現象または阻害するsiRNAを同時または連続的に投与することを含む本発明の方法によって、酵素の発現が治療レベルに回復した場合にα-ガラクトシダーゼAに対する免疫応答の減少が起こる。
以下の実施例は、本発明の態様の説明を提供する。当業者は、様々な改変および変更を行ってもよく、それらも本発明の趣旨または範囲を変化させないことを認識するであろう。そのような改変および変更は本発明の範囲に含まれる。実施例はいずれにせよ本発明を制限しない。
実施例
実施例1:siRNAおよびプラスミドの構築
全ての実験において用いられるsiRNAは、Xeragon, Inc.(バレンシア、カリフォルニア州)から購入した。対照CAT-siRNAおよびaGAL-siRNA-3(siRNA-3とも呼ばれる)の配列を下記に示す:
実施例1:siRNAおよびプラスミドの構築
全ての実験において用いられるsiRNAは、Xeragon, Inc.(バレンシア、カリフォルニア州)から購入した。対照CAT-siRNAおよびaGAL-siRNA-3(siRNA-3とも呼ばれる)の配列を下記に示す:
pGZBDC190sHAGAプラスミドは以下のように構築した。ヒトプロトロンビンエンハンサー2コピーを含むプラスミドpSV2DC190HAGAを、ヒト血清アルブミンプロモーター(肝細胞特異的プロモーター)の上流に配置して、これをClaIによって消化して、平滑末端にクレノウポリメラーゼを結合させ、その後SpeIによって消化した。pGZBのプラスミド骨格は、Yewら、Mol. Therapy、5(6):731〜8(2002)によって既に記述されている。簡単に説明すると、pZGBは、合成サイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子エンハンサー/プロモーター、合成ハイブリッドイントロン、合成ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、最小の複製開始領域、および合成カナマイシン抵抗性遺伝子を含む。プラスミドpGZBをPmeIおよびXbaIによって消化して、合成プロモーターを除去し、仔ウシ腸アルカリホスファターゼ(CIAP)によって処置して、平滑末端SpeI DC 190断片にライゲーションして、pGZDC190を産生した。合成ヒトα-ガラクトシダーゼcDNA(sHAGA)断片を、SfiIおよびEcoRIの後にクレノウポリメラーゼを平滑末端に結合させることによってプラスミドpGZBsHAGAから単離した。pGZDC190をその後SfiIによって消化して、クレノウポリメラーゼを平滑末端に結合させて、CIAPによって処置して、平滑末端sHAGA cDNA断片にライゲーションさせてpGZBDC190sHAGAを生成した。pGZDC190sHAGA、pGZBDC190-shAGAL、pGZDC190-shaGAL、またはpDC190-agalとも呼ばれるベクターの略図を図2に示す。
プラスミドpGZCUBIHAGAの特徴は、Yewら、Mol. Therapy 4(1):75〜82(2001)に既に記述されている。このプラスミドは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子エンハンサー、ヒトユビキチンプロモーター、ヒトα-ガラクトシダーゼA遺伝子、ウシ成長ホルモン遺伝子のポリアデニル化シグナル、最小の複製開始領域、および合成カナマイシン抵抗性遺伝子を含む。
pGZBsHAGAプラスミドを作製するために、合成1.3 kbヒトα-ガラクトシダーゼA cDNAを、Entelechon(レーゲンスブルグ、ドイツ)社が合成したオリゴヌクレオチドから構築した。例えば、Kimら、Gene 199:293〜301(1997)に記述されるように、まれなコドンを除去して、高度に発現されたヒト遺伝子において選択的に用いられるコドンを組み入れることによって、cDNA配列をヒト細胞における発現に関して最適化した。さらに、プラスミドの免疫原性を減少させるために、全てのCpGジヌクレオチド配列を消失させた。Entelechonから受領したライゲーション産物を、最初にpCR2.1-TOPOプラスミド(Invitrogen、カールスバッド、カリフォルニア州)にクローニングして、プラスミドpCR2.1TOPO-sHAGAを作製した。その後部位特異的変異誘発を行って配列における誤りを修正した。プラスミドをEcoRIおよびSfiIによって消化して、HAGA断片をpGZBのEcoRIおよびSfiIクローニング部位にライゲーションすることによってプラスミドpGZBsHAGAを得た。pGZB-shaGALとも呼ばれるpGZB-sHAGAベクターの略図を図3に示す。
プラスミドpGZB-sSEAPは以下のように構築した。ヒト胎盤アルカリホスファターゼ(SEAP)の分泌型をコードする1.6 kb合成cDNA断片は、Entelechon(レーゲンスブルグ、ドイツ)社が合成した。配列を、哺乳類細胞における発現のためにコドンを最適化した。さらに、全てのCpGジヌクレオチドを消失させたがアミノ酸配列は変化させなかった。EcoRI部位をcDNAの5'末端に付加して、SfiI部位を3'末端に付加した。断片を、pGZB(Yewら、Mol. Ther. 5:731〜8、2002)のEcoRIおよびSfiI部位に挿入して、pGZB-sSEAPを作製した。
実施例2:siRNAはトランスジーン発現を可逆的に減少させる
BALB/cマウス(Jackson Laboratory、バーハーバー、メイン州)3群に、以下を含む生理食塩液溶液2 mlを流体力学的に注射した:(1)pGZDC190sHAGA 10μg;(2)pGZDC190sHAGA 10μg+aGAL-siRNA-3 10 μg;(3)pGZDC190sHAGA 10μg+対照CAT-siRNA 10μg。注射は、Zhangら、Human Gene Therapy 10:1735〜37(1999)に記述される流体力学的輸送プロトコールに従って、末梢尾静脈から27ゲージ針によって7〜120秒間かけて行った。
BALB/cマウス(Jackson Laboratory、バーハーバー、メイン州)3群に、以下を含む生理食塩液溶液2 mlを流体力学的に注射した:(1)pGZDC190sHAGA 10μg;(2)pGZDC190sHAGA 10μg+aGAL-siRNA-3 10 μg;(3)pGZDC190sHAGA 10μg+対照CAT-siRNA 10μg。注射は、Zhangら、Human Gene Therapy 10:1735〜37(1999)に記述される流体力学的輸送プロトコールに従って、末梢尾静脈から27ゲージ針によって7〜120秒間かけて行った。
Zieglerら、Hum. Gene Ther. 10:1667〜82(1999)に記述される酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)によってヒトα-ガラクトシダーゼタンパク質(haGAL)を測定するために、眼窩後方出血により血漿を採取した。簡単に説明すると、96-マイクロタイタープレート(Corning、コーニング、ニューヨーク州)を、0.1 M NaHCO3、pH 9.5において抗体(1.5μg/ml)を含む溶液と共に、プレートを37℃で1時間インキュベートすることによって、ウサギポリクローナル抗α-ガラクトシダーゼ抗体によってコーティングした。プレートを5%脱脂粉乳(Bio-Rad、ハーキュルズ、カリフォルニア州)のTBST(0.05 Mトリス塩酸、0.1 M NaCl、0.05%ツイーン20、pH 7.5)溶液において4℃で少なくとも1時間ブロックしてから、モデル1575 Immunowash(登録商標)プレートウォッシャー(Bio-Rad、ハーキュルズ、カリフォルニア州)を用いて、ELISAプレート洗浄緩衝液(300 μl/ウェル;NEN Life Sciences、ボストン、マサチューセッツ州)によって3回洗浄した。試料を5%脱脂粉乳のTBST溶液によって希釈してこれをプレートにローディングし、37℃で1時間インキュベートした後、ELISA緩衝液によって6回洗浄した。試料をビオチン結合抗α-ガラクトシダーゼ抗体(1.25μg/ml)(ビオチン化はPierce、ロックフォード、イリノイ州のEZ-link-sulfo-NHS-LCビオチン化キットを用いて行った)と共に37℃で1時間インキュベートした。ELISAプレート洗浄緩衝液によってさらに6回洗浄後、プレートを1μg/mlストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Pierce、ロックフォード、イリノイ州)と共に37℃で30分間インキュベートした。プレートをELISAプレート洗浄緩衝液によってさらに6回洗浄して、基質緩衝液(240 mMクエン酸、520 mM Na2PO4、pH 5.0)において100 mg/ml濃度の3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン二塩酸を含む溶液と共に室温の暗所で30分までインキュベートすることによって展開した。2 M H2SO4 100 μlを各ウェルに加えることによって反応を停止させて、450 nmでの吸光度をBio-Radモデル450プレートリーダーを用いて決定した。濃度は、精製組換え型ヒトα-ガラクトシダーゼA(1000 pg/ml)を用いて作製した標準曲線から計算した。
マウスにおけるhaGALの発現レベルを、pGZDC190sHAGAプラスミドの注射後様々な時点で測定した。代表的な実験の結果を図4に示す。図4に示されるように、pGZDC190sHAGAトランスジーンベクターからのhaGALの初回発現は、hGAL-特異的siRNAであるaGAL-siRNA-3の同時投与によって特に減少した。pGZDC190sHAGAおよびaGAL-siRNA-3を注射したマウスは、pGZDC190sHAGA単独、またはpGZDC190sHAGAおよび対照siRNA(CAT-siRNA)を注射したマウスと比較してhaGAL血漿タンパク質レベルの100倍減少を示した。21日目に、特異的aGAL-siRNA-3を処置したマウスにおけるhaGAL発現レベルは、対照マウスのレベルと同等のレベルまで増加した。
実施例3:siRNAはトランスジーン発現を用量依存的に阻害する
BALB/cマウスに、以下を含む生理食塩液溶液2 mlを流体力学的に注射した:(1)pGZB-shaGal 4 μg;(2)pGZB-shaGal 4 μg+CAT-siRNA 5 μg;(3)pGZB-shaGal 4 μg+aGAL-siRNA-3[siRNA-3とも呼ばれる]5μg;または(4)pGZB-shaGal 4 μg+aGAL-siRNA-3 0.5μg。血漿を様々な時点で回収して、haGALレベルを実施例2に記述するようにELISAによって測定した。さらに、抗α-ガラクトシダーゼ(haGAL)抗体力価も同様に、Liら、Mol. Therapy 5(6):745〜754(2002)に記載されるアッセイを用いて注射後84、99、および112日目に測定した。簡単に説明すると、96ウェルプレートを高度精製組換え型ヒトα-ガラクトシダーゼタンパク質によってコーティングした。様々な時点でマウスからの血清の連続希釈液を加えた。結合したタンパク質抗体を西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)-結合ヤギ抗マウスIgG/IgM/IgA(Pierce、ロックフォード、イリノイ州)を用いて検出した。力価は、0.1より小さい、または0.1に等しいOD490を生じる血清の最高希釈の逆数として定義した。
BALB/cマウスに、以下を含む生理食塩液溶液2 mlを流体力学的に注射した:(1)pGZB-shaGal 4 μg;(2)pGZB-shaGal 4 μg+CAT-siRNA 5 μg;(3)pGZB-shaGal 4 μg+aGAL-siRNA-3[siRNA-3とも呼ばれる]5μg;または(4)pGZB-shaGal 4 μg+aGAL-siRNA-3 0.5μg。血漿を様々な時点で回収して、haGALレベルを実施例2に記述するようにELISAによって測定した。さらに、抗α-ガラクトシダーゼ(haGAL)抗体力価も同様に、Liら、Mol. Therapy 5(6):745〜754(2002)に記載されるアッセイを用いて注射後84、99、および112日目に測定した。簡単に説明すると、96ウェルプレートを高度精製組換え型ヒトα-ガラクトシダーゼタンパク質によってコーティングした。様々な時点でマウスからの血清の連続希釈液を加えた。結合したタンパク質抗体を西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)-結合ヤギ抗マウスIgG/IgM/IgA(Pierce、ロックフォード、イリノイ州)を用いて検出した。力価は、0.1より小さい、または0.1に等しいOD490を生じる血清の最高希釈の逆数として定義した。
図5に示すように、haGALの初回発現は、haGAL-特異的siRNA、aGAL-siRNA-3の同時投与によって特異的に減少した。haGAL発現レベルの減少は用量依存的であり、例えばaGAL-siRNA-3 0.5μgを投与したマウスは、10倍減少を示したのに対し、用量5 μgを投与したマウスでは100倍減少した。
実施例4:siRNAは特異的抗体力価を減少させる
マウスを実施例3に記述したように処置した。抗haGAL抗体力価はまた、Liら、上記に記述されるアッセイを用いて注射後84、99、および112日目に測定した。簡単に説明すると、96ウェルプレートに高度精製組換え型ヒトα-ガラクトシダーゼタンパク質をコーティングした。様々な時点でマウスの血清の連続希釈液を加えた。結合したタンパク質抗体を西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)-結合ヤギ抗マウスIgG/IgM/IgA抗体(Pierce、ロックフォード、イリノイ州)を用いて検出した。力価は、0.1より小さい、または0.1に等しいOD490を生じる血清の最高希釈の逆数として定義した。
マウスを実施例3に記述したように処置した。抗haGAL抗体力価はまた、Liら、上記に記述されるアッセイを用いて注射後84、99、および112日目に測定した。簡単に説明すると、96ウェルプレートに高度精製組換え型ヒトα-ガラクトシダーゼタンパク質をコーティングした。様々な時点でマウスの血清の連続希釈液を加えた。結合したタンパク質抗体を西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)-結合ヤギ抗マウスIgG/IgM/IgA抗体(Pierce、ロックフォード、イリノイ州)を用いて検出した。力価は、0.1より小さい、または0.1に等しいOD490を生じる血清の最高希釈の逆数として定義した。
図5および表2は、行った数回の実験の結果を提供する。これらの結果から、aGAL-siRNA-3の投与によって、対照siRNA(CAT-siRNA)およびsiRNAなしと比較して抗haGAL抗体力価の持続的な減少が起こることが示された。この結果は、haGAL発現レベルに関して予想外であり(実施例2および3を参照されたい)、すなわちaGAL-siRNA-3を処置したマウスにおけるhaGAL発現レベルは、約20日目に開始した対照と同等であった。より高用量のaGAL-siRNA-3(5 μg)を投与したマウスは、評価した如何なる時点でも有意な抗haGAL-抗体力価を示さなかった。aGAL-siRNA-3のより低用量(すなわち、0.5 μg)を投与したマウス5匹中1匹のみが、測定可能であるが弱い抗haGAL抗体力価を示した。
実施例6:ファブリーマウスにおけるα-ガラクトシダーゼのトランスジーンの発現
ファブリー(-/-)マウス[Wangら、Am. J. Human Genetics、59:A208(1996)]をGenzyme Corp.(フラミンガム、マサチューセッツ州)において飼育して、使用前少なくとも4ヶ月齢まで成熟させた。マウスにpGZCUBIHAGA(非組織特異的ユビキチンプロモーター)10 μgを含む生理食塩液溶液2 mlを流体力学的に注射した。臓器を様々な時点でマウスから回収した。簡単に説明すると、臓器を摘出する前に動物に燐酸緩衝生理食塩液(PBS)を環流して、これをドライアイスにおいて凍結してさらに処理する準備ができるまで-80℃で保存した。注射後の様々な時点で、ヘパリン加マイクロヘマトクリット毛細管を用いて麻酔下で眼窩静脈叢から採血した。組織の重量を測定して、溶解緩衝液(27 mMクエン酸、46 mM燐酸水素ナトリウム、1%Triton X(登録商標)-100、および1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Boehringer Mannheim、インジアナポリス、インジアナ州)、pH 4.6)においてホモジナイズして、最終濃度を溶解緩衝液1 mlあたり組織250 mgの濃度に調節した。ホモジナイズした試料に急速な凍結融解サイクルを3回行った後-80℃で保存した。分析の場合、凍結したホモジネートを融解して10,000×gで、4℃で10分間遠心した。
ファブリー(-/-)マウス[Wangら、Am. J. Human Genetics、59:A208(1996)]をGenzyme Corp.(フラミンガム、マサチューセッツ州)において飼育して、使用前少なくとも4ヶ月齢まで成熟させた。マウスにpGZCUBIHAGA(非組織特異的ユビキチンプロモーター)10 μgを含む生理食塩液溶液2 mlを流体力学的に注射した。臓器を様々な時点でマウスから回収した。簡単に説明すると、臓器を摘出する前に動物に燐酸緩衝生理食塩液(PBS)を環流して、これをドライアイスにおいて凍結してさらに処理する準備ができるまで-80℃で保存した。注射後の様々な時点で、ヘパリン加マイクロヘマトクリット毛細管を用いて麻酔下で眼窩静脈叢から採血した。組織の重量を測定して、溶解緩衝液(27 mMクエン酸、46 mM燐酸水素ナトリウム、1%Triton X(登録商標)-100、および1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Boehringer Mannheim、インジアナポリス、インジアナ州)、pH 4.6)においてホモジナイズして、最終濃度を溶解緩衝液1 mlあたり組織250 mgの濃度に調節した。ホモジナイズした試料に急速な凍結融解サイクルを3回行った後-80℃で保存した。分析の場合、凍結したホモジネートを融解して10,000×gで、4℃で10分間遠心した。
α-ガラクトシダーゼAレベルは血漿、肝臓、脾臓、心臓、肺、および腎臓において注射後1、14、28、および42日目に測定した。上清におけるα-ガラクトシダーゼAの量は、Zieglerら、上記に記述されるように決定した。簡単に説明すると、α-ガラクトシダーゼAの量は、pH 4.4の117 mM N-アセチルガラクトサミンの存在下で5 mM 4-メチルウンベリフェリル-α-D-ガラクトピラノシド(4MU-α-Gal)を用いて、または実施例2に記述されるようにELISAによって決定した。
図6に示されるように、α-ガラクトシダーゼを発現するプラスミドの流体力学的輸送によって、肝臓において最高レベルの酵素が発現されたが、他の全ての臓器および血漿における発現レベルはより低かった。42日目においても、他の臓器における発現レベルは減少したが、肝臓における発現はなおも高いままであった。これらの結果は、肝臓が流体力学的注射後の貯蔵臓器として作用したことを示唆している。
実施例7:トランスジーン産物はファブリーマウスにおける病態を緩和する
実施例6に記載した通りにファブリーマウスを処置して、試料を採取した。グロボトリアオシルセラミド(GL-3)はファブリーマウスの様々な臓器に蓄積して、同様にファブリー疾患を有する人においても蓄積した。ファブリーマウスの臓器におけるGL-3のレベルをpGZCUBIHAGAの流体力学的輸送後1、14、28、および42日目に測定した。組織を0.1 ml/mg湿組織の比でクロロホルム-メタノール(2:1)においてホモジナイズした。試料(30 μl)を、クロロホルム-メタノール(2:1 v/v)0.6 mlによってボルテックスミキサーによって混合することによって抽出した。揺り動かす台の上で37℃で15分間インキュベートした後、試料を遠心して、細胞の破片を除去し、1/5容積の水を組織5 mgまたは血漿25 μlの同等物に加えた。4℃で24時間、相を分離させた後、遠心して完全に分離させた。下相(クロロホルム)をきれいなガラス試験管に移して、窒素下で乾燥させた。グリコスフィンゴリピッドを精製するために、乾燥した脂質をクロロホルム1 mlに懸濁させて、0.5 ml同等物を500 mg Lichrolut RP-18カラム(EM Sciences、ギブスタウン、ニュージャージー州)に適用した。クロロホルムによって洗浄後、中性のグリコスフィンゴリピッドをアセトン-メタノール(9:1 v/v)によってカラムから溶出させて、窒素下で乾燥させた後、エタノールに懸濁した。GL-3の定量は、大腸菌ベロ毒素Bサブユニット(VTB)に関するGL-3の親和性に依存する、Zieglerら(上記)に記述されるようにELISAを用いて行い、GL-3を定量した。簡単に説明すると、脂質のエタノール溶液(12.5〜100 μg組織または血漿2.5 μlに相当)を96ウェルPolySorp(商標)プレート(VWR Scientific Products、ブリッジポート、ニュージャージー州)に適用して、37℃でインキュベートすることによって完全に乾燥させた。5%ウシ血清アルブミンのトリス緩衝生理食塩液(TBS)溶液によって37℃で1時間ブロックした後、ウェルをVTB(400 ng/ml)、VTBに対するモノクローナル抗体(1 μg/ウェル)、およびアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIgG抗体に連続的に反応させた。ウェルをp-ニトロフェニルホスフェート(1 mg/ml)の10%ジエタノールアミン、pH 9.6の溶液において室温で展開した。5%EDTA 100 μlによって反応を停止させて、Bio-Rad 450プレートリーダーにおいて405 nmで読み取った。標準曲線は、ブタGL-3(Matreya、プレザントギャップ、ペンシルバニア州)5〜100 ng/ウェルを用いて作製した。
実施例6に記載した通りにファブリーマウスを処置して、試料を採取した。グロボトリアオシルセラミド(GL-3)はファブリーマウスの様々な臓器に蓄積して、同様にファブリー疾患を有する人においても蓄積した。ファブリーマウスの臓器におけるGL-3のレベルをpGZCUBIHAGAの流体力学的輸送後1、14、28、および42日目に測定した。組織を0.1 ml/mg湿組織の比でクロロホルム-メタノール(2:1)においてホモジナイズした。試料(30 μl)を、クロロホルム-メタノール(2:1 v/v)0.6 mlによってボルテックスミキサーによって混合することによって抽出した。揺り動かす台の上で37℃で15分間インキュベートした後、試料を遠心して、細胞の破片を除去し、1/5容積の水を組織5 mgまたは血漿25 μlの同等物に加えた。4℃で24時間、相を分離させた後、遠心して完全に分離させた。下相(クロロホルム)をきれいなガラス試験管に移して、窒素下で乾燥させた。グリコスフィンゴリピッドを精製するために、乾燥した脂質をクロロホルム1 mlに懸濁させて、0.5 ml同等物を500 mg Lichrolut RP-18カラム(EM Sciences、ギブスタウン、ニュージャージー州)に適用した。クロロホルムによって洗浄後、中性のグリコスフィンゴリピッドをアセトン-メタノール(9:1 v/v)によってカラムから溶出させて、窒素下で乾燥させた後、エタノールに懸濁した。GL-3の定量は、大腸菌ベロ毒素Bサブユニット(VTB)に関するGL-3の親和性に依存する、Zieglerら(上記)に記述されるようにELISAを用いて行い、GL-3を定量した。簡単に説明すると、脂質のエタノール溶液(12.5〜100 μg組織または血漿2.5 μlに相当)を96ウェルPolySorp(商標)プレート(VWR Scientific Products、ブリッジポート、ニュージャージー州)に適用して、37℃でインキュベートすることによって完全に乾燥させた。5%ウシ血清アルブミンのトリス緩衝生理食塩液(TBS)溶液によって37℃で1時間ブロックした後、ウェルをVTB(400 ng/ml)、VTBに対するモノクローナル抗体(1 μg/ウェル)、およびアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIgG抗体に連続的に反応させた。ウェルをp-ニトロフェニルホスフェート(1 mg/ml)の10%ジエタノールアミン、pH 9.6の溶液において室温で展開した。5%EDTA 100 μlによって反応を停止させて、Bio-Rad 450プレートリーダーにおいて405 nmで読み取った。標準曲線は、ブタGL-3(Matreya、プレザントギャップ、ペンシルバニア州)5〜100 ng/ウェルを用いて作製した。
GL-3のレベルは注射後1、14、28、および42日目に、無処置マウスの対応する臓器におけるGL-3レベルの百分率として測定した(「%無処置」として示す)。図7に示すように、pGZCUBIHAGAを投与したマウスにおけるGL-3レベルは1日目で全ての臓器において高かったが、注射後14、28、および42日目に測定すると減少し始めた。これらの結果は、α-ガラクトシダーゼAがファブリーマウスにおける蓄積症の緩和において有効であったことを示している。
実施例8:ファブリーマウスはα-ガラクトシダーゼに対する抗体を産生する
雌性ファブリーマウスにpGZCUBIHAGA 10 μgを含む生理食塩液2 mlを流体力学的に注射した。血漿を注射後1、14、28、および42日目に採取して、抗haGAL抗体力価を、実施例3に記述するように注射後1、14、28、および42日目に測定した。代表的な実験の結果を図8に示す。図8に示されるように、ファブリーマウスは抗haGAL抗体を産生し、その力価は、1〜42日目まで一貫して増加した。
雌性ファブリーマウスにpGZCUBIHAGA 10 μgを含む生理食塩液2 mlを流体力学的に注射した。血漿を注射後1、14、28、および42日目に採取して、抗haGAL抗体力価を、実施例3に記述するように注射後1、14、28、および42日目に測定した。代表的な実験の結果を図8に示す。図8に示されるように、ファブリーマウスは抗haGAL抗体を産生し、その力価は、1〜42日目まで一貫して増加した。
実施例9:siRNAはファブリーマウスにおける特異的抗体力価を減少させる
雌性ファブリー(-/-)マウスに、以下を含む生理食塩液2 mlを流体力学的に注射した:pGZB-sHAGA 10μg;pGZB-sHAGA 10μg+aGAL-siRNA-3 10μg;またはpGZB-sHAGA 10μg+CAT-siRNA 10μg。1、7、14、21、および42日目に、実施例2において先に記述したようにELISAによってhaGAL発現レベルを測定するために、眼窩後方からの採血によって血漿を採取した。
雌性ファブリー(-/-)マウスに、以下を含む生理食塩液2 mlを流体力学的に注射した:pGZB-sHAGA 10μg;pGZB-sHAGA 10μg+aGAL-siRNA-3 10μg;またはpGZB-sHAGA 10μg+CAT-siRNA 10μg。1、7、14、21、および42日目に、実施例2において先に記述したようにELISAによってhaGAL発現レベルを測定するために、眼窩後方からの採血によって血漿を採取した。
図9Aに示されるように、haGALの初回発現は、haGAL-特異的siRNA、aGAL-siRNA-3の同時投与によって特異的に減少した。特に、pGZB-sHAGAに対してaGAL-siRNA-3の200倍過剰量によって、対照と比較してhaGAL発現レベルが99%減少した。haGALの発現は約3週間で対照と同等のレベルまで戻った。さらに、図9Bに示されるように、aGAL-siRNA-3の同時投与によって、siRNAを投与しなかった群または対照siRNA(CAT-siRNA)群と比較して42日目で抗haGAL抗体力価の全体的な減少が起こった。
実施例10:siRNAはファブリーマウスにおいて特異的抗体力価を減少させる
ファブリー(-/-)マウスに、以下を含む生理食塩液2 mlを流体力学的に注射した:(1)pGZBDC190-shAGL(組織特異的プロモーター)10μg;(2)pGZBDC190-shAGAL 10μg+CAT-siRNA 10 μg;(3)pGZDC190-shaGAL 10μg+aGAL-siRNA-3 10μg。血漿を経時的に採取して、haGAL発現レベルを実施例2において先に記述したように測定した。
ファブリー(-/-)マウスに、以下を含む生理食塩液2 mlを流体力学的に注射した:(1)pGZBDC190-shAGL(組織特異的プロモーター)10μg;(2)pGZBDC190-shAGAL 10μg+CAT-siRNA 10 μg;(3)pGZDC190-shaGAL 10μg+aGAL-siRNA-3 10μg。血漿を経時的に採取して、haGAL発現レベルを実施例2において先に記述したように測定した。
図10Aに示すように、haGAL特異的siRNA、aGAL-siRNA-3の同時投与によってpGZBDC190-shAGALベクターからのhaGALの初回発現は特異的に減少した。haGALの発現は約3週間で対照と同等のレベルまで回復した。さらに、図10Bに示すように、aGAL-siRNA-3の同時投与によって、対照siRNA(CAT-siRNA)と比較して98日で抗haGAL抗体の全体的な減少が起こった。
実施例11:ファブリーマウスにおけるファブラザイムに対する寛容の誘導
ファブリー(-/-)マウスに、以下を含む生理食塩液2 mlを流体力学的に注射した:(1)pDC190-agalと呼ばれるpGZBDC190-shAGL 10μg;(2)pGZBDC190-shAGAL 10μg+CAT-siRNA 10 μg;(3)pGZBDC190-shAGAL 10μg+aGAL-siRNA-3 10μg;(4)pGZB-sSEAP 10μg。血漿を経時的に採取して、haGAL発現レベルを実施例2において先に記述したように測定した。
ファブリー(-/-)マウスに、以下を含む生理食塩液2 mlを流体力学的に注射した:(1)pDC190-agalと呼ばれるpGZBDC190-shAGL 10μg;(2)pGZBDC190-shAGAL 10μg+CAT-siRNA 10 μg;(3)pGZBDC190-shAGAL 10μg+aGAL-siRNA-3 10μg;(4)pGZB-sSEAP 10μg。血漿を経時的に採取して、haGAL発現レベルを実施例2において先に記述したように測定した。
最初の流体力学的注射の16週間後、ファブリーマウスにファブラザイム(精製α-ガラクトシダーゼA)をチャレンジして、α-ガラクトシダーゼに対する免疫寛容がいずれかの治療群において得られているか否かを決定した。チャレンジは、フロイントの完全アジュバント(CFA)と共にファブラザイムをマウスに腹腔内注射することによって行った。群は(1)0週目に流体力学的注射を行わずに、16週目にファブラザイムをCFAと共に注射する[無処置+Fab];(2)pGZBDC190-shaGAL注射後に16週目にファブラザイムをCFAと共に注射[pDC190+Fab];(3)0週目にpGZBDC-190-shaGAL注射+aGAL-siRNA-3の注射後に、16週目にファブラザイムをCFAと共に注射[pDC190/aGal-siRNA+Fab];(4)pGZB-sSEAP注射後に16週目にファブラザイムをCFAと共に注射[pGZB-sSEAP+Fab];(5)0週目にpGZB-sSEAP注射後に16週目にCFAのみの注射[pGZB-sSEAP+CFA];および(6)0週目で流体力学的注射を行わずに16週目でCFAのみの注射[無処置+CFA]。
図11Aに示すように、pGZBDC190-shaGALからのhaGALの初回発現は、haGAL特異的siRNA、aGAL-siRNA-3の同時投与によって特異的に減少した。特に、aGAL-siRNA-3とpGZBDC190-shaGALとの同時投与によって、対照と比較してhaGAL発現レベルは99%減少した。haGALの発現は約3週間で対照と同等レベルに回復した。
図11Bに示すように、16週の時点で(W16)、haGAL発現のこの最初の減少は、対照CAT-siRNA(データは示していない)またはsiRNAなし[pDC190-agal+Fab]のいずれかを投与したマウスと比較して、pGZBDC190-shaGAL/aGAL-siRNA-3処置マウス[pDC190-agal/aGal-siRNA+Fab]において抗haGAL抗体力価の減少を媒介した。さらに、pGZBDC190-shaGAL+aGAL-siRNA-3によって処置したマウス[pDC190-agal/aGal-siRNA+Fab]のみが、ファブラザイムの腹腔内チャレンジ後3週間(W19)目に認識可能な抗haGAL抗体力価を産生できなかった(図11Bおよび11Cを参照されたい)。1)0日目にプラスミドを投与しなかった[無処置+Fab];2)0日目にsiRNAの非存在下でpGZBDC190-shaGALのみを投与した[pDC190+Fab];または3)0日目にpGZB-sSEAPのみを投与した[pGZB-sSEAP+Fab]マウスは全て、ファブラザイムチャレンジに対して強い抗体反応を示した。したがって、ファブラザイムに対する免疫寛容は、α-ガラクトシダーゼをコードするベクターを、α-ガラクトシダーゼトランスジーン発現を一時的に阻害するsiRNAと同時投与することによって産生された。
本明細書は、本明細書において引用した参考文献の教示に照らして最も十分に理解される。本明細書における態様は、本発明の態様の説明を提供するのであって、本発明の範囲を制限すると解釈してはならない。当業者は、他の多くの態様が本発明に含まれることを容易に認識するであろう。本開示において引用された参考文献および特許は、その全内容物が参照として本明細書に組み入れられる。参照として組み入れられる材料が本明細書と矛盾するまたは一致しない場合、本明細書が如何なるそのような材料にも優先するであろう。本明細書において引用した如何なる参考文献の引用も、そのような参考文献が本発明の先行技術であることを認めたわけではない。
特に明記していなければ、請求の範囲を含む本明細書において用いられる成分、細胞培養、処置条件等の量を表す数値は全て、全ての場合において「約」という用語によって改変されていると理解すべきである。したがって、その反対であることを特に明記していなければ、数値パラメータは近似値であり、本発明によって得られることが求められる望ましい特性に応じて変化する可能性がある。特に明記していなければ、一連の要素の前に存在する「少なくとも」という用語は、連続したあらゆる要素に言及すると理解されるであろう。当業者は、単なる通常の実験を用いて、本明細書に記述の本発明の特定の態様に対する多くの同等物を認識する、または確認することができるであろう。そのような同等物は以下の請求の範囲に含まれると意図される。
Claims (19)
- 以下を含む、哺乳類におけるトランスジーンの産物に対する免疫応答を減少させる方法:
a)哺乳類において免疫原性である産物をコードするトランスジーンを含むベクターを哺乳類に投与する段階;および
b)治療レベルで発現された場合に免疫原性トランスジーン産物に対する免疫応答を減少させるために十分な量および期間で投与される、トランスジーン発現を一時的に阻害する小さい干渉リボ核酸(siRNA)を哺乳類に投与する段階。 - ベクターが遺伝子治療ベクターである、請求項1記載の方法。
- ベクターがプラスミドDNAベクターである、請求項2記載の方法。
- 遺伝子治療ベクターがアデノウイルスベクターである、請求項2記載の方法。
- 哺乳類がヒトである、請求項1記載の方法。
- ベクターおよびsiRNAが同時投与される、請求項1記載の方法。
- ベクターがsiRNAの前に投与される、請求項1記載の方法。
- siRNAがベクターの前に投与される、請求項1記載の方法。
- ベクターおよびsiRNAが流体力学的輸送によって投与される、請求項1記載の方法。
- siRNAの長さが少なくとも20ヌクレオチドである、請求項1記載の方法。
- siRNAの長さが20〜25ヌクレオチドである、請求項1記載の方法。
- siRNAの長さが少なくとも25ヌクレオチドである、請求項1記載の方法。
- 以下の段階を含む、患者における疾患状態を治療または予防する方法:
(a)疾患状態を治療または予防する免疫原性産物をコードするトランスジーンを含むベクターを患者に投与する段階;および
(b)治療レベルで発現された場合に産物に対する免疫応答を減少させるために十分な量および期間で投与される、トランスジーンの発現を一時的に阻害する小さい干渉RNA(siRNA)を患者に投与する段階。 - 以下を含む、哺乳類におけるライソゾーム蓄積症を治療する方法:
(a)ライソゾーム蓄積症を有する哺乳類において不十分なまたは欠損している酵素をコードするトランスジーンを含むベクターを投与する段階;
(b)治療レベルで発現された場合に酵素に対する免疫応答を減少させるために十分な量および期間で投与される、哺乳類において酵素をコードするトランスジーンの発現を一時的に阻害するsiRNAを哺乳類に投与する段階。 - ライソゾーム蓄積症がファブリー病である、請求項14記載の方法。
- トランスジーンがα-ガラクトシダーゼタンパク質をコードする、請求項14記載の方法。
- siRNAがα-ガラクトシダーゼの発現を阻害または減少する配列番号:3の配列またはその変種を含む、請求項14記載の方法。
- 以下の段階を含む、哺乳類における免疫原性産物に対する免疫応答を減少させる方法:
a)免疫原性産物をコードするトランスジーンを含むベクターを哺乳類に投与する段階;および
b)免疫原性産物に対する免疫応答を減少させるために十分な量および期間で投与される、トランスジーン発現を一時的に阻害する小さい干渉リボ核酸(siRNA)を哺乳類に投与する段階。 - 免疫原性産物が、酵素置換療法において用いられる酵素である、請求項18記載の方法。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2012524777A (ja) * | 2009-04-22 | 2012-10-18 | マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー | 長いrna分子の反復送達を可能にする自然免疫抑制 |
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