JP2006523119A - 長期的な腫瘍停留を示す光増感剤を用いた多回投与プロトコールによる光線力学療法の改善された効果及び安全性 - Google Patents

長期的な腫瘍停留を示す光増感剤を用いた多回投与プロトコールによる光線力学療法の改善された効果及び安全性 Download PDF

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Abstract

【課題】照射の前に光増感剤(PS)の連続的な多回投与を用いて、癌、乾癬及び関節炎を含む、疾患を生じた過剰増殖性組織を治療するために、光線力学療法のより安全で改善された方法を提供する。
【解決手段】光増感剤は、正常組織におけるよりも長い時間、疾患組織中に停留することによって特徴付けられる。投与の間の間隔は、正常組織のPS含量が、次の投与の前及び照射の前に基線値又は無視し得るレベルまで低下するのに十分な期間であるように選択される。その時点で、疾患組織のPS含量はまだ高く、最後のPS投与後の初期含量の2分の1以上である。このようにして、疾患組織に対するより良好な選択性を有するPDTが達成される。連続的なPS投与により、正常組織へのPS負荷は低いままに保持できるので、副作用、例えば日光又は明るい屋内人工照明による皮膚の損傷、を軽減することができる。PS投与の間及び場合により照射との間の正確な期間は治療によって異なり、個人的なベースで決定される。本発明と共に使用するための好ましいPSは、腫瘍組織において高く且つ長期的な局在を有する。これらの品質を備えた好ましいPSはフェオホルビドaである。

Description

本発明は、疾患組織において選択的に蓄積する光増感剤を使用した、細胞増殖亢進を伴う悪性腫瘍又は疾患組織の光線力学療法に関する。特に、本発明は、疾患組織における光感受性(効果)を改善し、正常組織のための安全性を高めるために疾患組織における光増感剤の蓄積を促進するための光増感剤の時間を分けた多回投与に関する。
光線力学療法(PDT)は、癌及び他の過剰増殖性疾患の治療のための周知の方法である。そのような他の過剰増殖性疾患は、皮膚疾患である乾癬、並びに関節の慢性炎症性疾患である関節炎を含む。
PDTでは、光増感剤(PS)が生物に適用され、疾患が生じた過剰増殖性組織では正常組織よりも大きな度合で光増感剤が蓄積すると予想される。この弁別的蓄積はいくつかの因子に帰せられる。血液中では、PSは様々な度合で血漿タンパク質に結合する。これらの血漿タンパク質の1つは低密度リポタンパク質(LDL)である。LDLは、正常細胞よりも高い度合で腫瘍細胞又は過剰増殖性疾患における他の細胞によって取り込まれ得る。それ故、より高い量のPSが腫瘍細胞又は他の過剰増殖性組織に送達される。さらなる因子は、毛細管の透過性上昇を導く、悪性組織における変化した毛細管構造であると考えられる。さらに、腫瘍組織は正常組織よりも低いpHを有し得る。低いpHは、カルボキシル基を有するPSの蓄積を促進する。これらの基は陽子に結合し、それによって荷電PSよりも容易に生体膜を透過することができる無電荷PS分子を導くからである。もう1つの因子は悪性細胞におけるPSの低い代謝である。
PSの弁別的蓄積は、PDTの間の照射によって、又は特に皮膚の場合は通常の日光又は屋内の人工照明によって、加えられる損傷から正常細胞及び組織を保護することを助けるので、PDTのための方法を開発する上で極めて望ましい目標である。これまでのところ公知のPSはすべて、活性化されたとき、それらに近接する健常細胞と疾患細胞の両方に損傷を生じさせる。それ故、PSが正常組織に比べて疾患組織において選択的に蓄積する能力は、PDTによる有益な治療の重要な要素である。理想的には、PDTの間に悪性細胞だけが破壊されるべきである。周辺の正常で健康な細胞の機能が変化しないこと及び無傷の結合組織線維の存在が持続することは、PDTによる良好な機能的及び構造的(及び多くの場合良好な美容的)結果のための基礎である。弁別的PS蓄積が存在しなければ、悪性細胞の選択的照射の必要性が生じる。これは、しかしながら、満足し得る治療のためには一般に不可能である。PDTにおける腫瘍の照射範囲は、すべての末梢癌細胞が破壊されるのを確実にするために腫瘍の周囲を余分に含まねばならない。さらに、組織におけるPDTの作用を正確に腫瘍の深さに制限することは不可能である。その場合も、やはり安全な余裕が必要である。
[特許文献1]は、より大きな腫瘍面積を覆うために腫瘍塊へのPSの直接の単一又は多数局所投与を述べている。多数投与については、特定容積の腫瘍が光増感剤に暴露されるように、各々の投与は空間的に分けられる。この特許は、有効なPDT治療を達成するために、大きな容積の疾患組織にわたって光増感剤の所望レベルを確立し、維持するためにほぼ同時の空間的に分けられた多数投与を用いる。しかし、正常組織のための安全性を維持又は改善しながら疾患組織における感受性を高めるための指針は提供されていない。
米国特許第4,957,481号
PSの反復投与を含むもう1つの方法は[特許文献2]に述べられており、この特許は、特に平滑筋細胞において結合部位への増殖因子のアクセスをブロックすることによって再狭窄を予防するために、心臓血管疾患の治療のための補助又は単独手法としての光線力学療法(PDT)の使用を開示している。この方法は、いかなる光線療法とも無関係に結合部位をブロックするために光増感剤と筋細胞の間の物理的又は化学的相互作用を利用する、光線療法を伴う又は伴わない薬物動態療法に基づく。この方法では、光増感剤は手術又は介入処置の前に投与され、その後、時間を経て細胞から清掃又はウォッシュアウトされた光増感剤を置き換えて、結合部位をブロックするのに十分なレベルの光増感剤濃度を維持するために処置後に再投与される。この方法は、いかにして正常組織のための安全性を維持又は改善しながらPDT治療の効果を高めるかは対象としていない。
米国特許第5,298,018号
[特許文献3]に関連する方法が、血管形成術後の内部過形成の発現を阻止するための[特許文献4]に述べられている。その方法は、基本的に血管形成術と同時に又は血管形成術後に緑色ポルフィリンを被験者に投与することから成る。緑色ポルフィリンの照射活性化はこの方法の一部ではない。この方法は、それ故、光線力学療法の治療を対象としていない。そのため、いかにして正常組織のための安全性を維持又は改善しながらPDT治療の効果を高めるかは取り上げられていない。
米国特許第5,298,018号 米国特許第5,422,362号
2回の光増感剤投与プロトコールを特徴とする、光増感剤Foscan(登録商標)の組織吸収の試験が実施された。[非特許文献1];[非特許文献2]この試験は、Foscan(登録商標)として知られる、メタ−テトラヒドロキシフェニルクロリン(mTHPC)に限定され、「PDT損傷の限度までの光増感剤Foscanについての薬物動態及び薬力学的パラメータ」に関する。マウスにおけるFoscanの分布をFoscanの単回及び2回注射後に測定し、腫瘍及び癌細胞のPDT応答を測定した。血漿中の濃度の変化は単回注射と2回注射に関して有意に異ならず、また皮膚と腫瘍組織における相対濃度も単回注射又は2回注射後で有意差がなかった。それ故、これらの論文は、基本的に光増感剤Foscanの多回投与は単回投与と比較してFoscanのPDT作用を変化させないことを明らかにしている。
治療の有効性を高めるため及び健常組織を損傷からより有効に保護するために、過剰増殖性又は疾患組織における光増感剤の濃度及び蓄積の選択性を高める方法が求められている。本発明はこの需要に応えるものである。
癌、乾癬、関節炎及び前癌性病変を含む、疾患を生じた過剰増殖性組織のための、改善された効果と安全性を伴う光線力学療法の治療を提供することが本発明の1つの目的である。
先行技術の方法によって可能であるよりも、疾患を生じた組織におけるPSのより高く且つより選択的な濃度を生じさせる光線力学療法の治療方法を提供することが本発明のさらなる目的である。
簡単に述べると、本発明は、照射の前に光増感剤(PS)の連続的な多回投与を用いて、癌、乾癬及び関節炎を含む、疾患を生じた過剰増殖性組織を治療するためのより安全で改善された方法を提供する。好ましい光増感剤は、正常組織におけるよりも長い時間、疾患組織中に停留することによって特徴付けられる。投与の間の間隔は、正常組織のPS含量が、次の投与の前及び照射の前に基線値又は無視し得るレベルまで低下するのに十分な期間であるように選択される。その時点で、疾患組織のPS含量はまだ高く、最後のPS投与後の初期含量の2分の1以上である。このようにして、疾患組織に対するより良好な選択性を有するPDTが達成される。連続的なPS投与により、正常組織へのPS負荷は低いままに保持できるので、副作用、例えば日光又は明るい屋内人工照明による皮膚の損傷、を軽減することができる。PS投与の間及び場合により照射との間の正確な期間は治療によって異なり、個人的なベースで決定される。本発明と共に使用するための好ましいPSは、腫瘍組織において高く且つ長期的な局在を有する。これらの品質を備えた好ましいPSはフェオホルビドa(pheophorbide a)である。
本発明の前記及び他の目的、特徴及び利点は、付属の図面と合わせて以下の詳細な説明を読むことから明らかになる。
原則的に悪性腫瘍の光線力学療法(PDT)は1つの治療選択肢となってきた。しかし、Photofrin及びそのプロドラッグ5−ALAなどの現在使用可能な承認済み光増感剤は、幾分かは満足がいかない。本発明は、正常組織と比較して腫瘍組織において極めて長期的な停留を示す光増感剤(PS)によるPDTの改善を述べる。照射に先立つそのようなPSの連続的な多回投与がいかにして正常組織に比べて腫瘍中のPSの高濃度を導き得るか、あるいは正常組織におけるピークPS濃度を最低限に抑え、それによってPDTの副作用を軽減し得るかを述べる。この方法はまた、健常組織への副作用が比較的少ないPDT治療を提供するために、腫瘍又は他の疾患を生じた過剰増殖性組織におけるPSの高度選択的局在化を達成するためにも有効である。この方法は、それ故、これまでのPDT方法よりも安全で有効なPDT治療である。
本発明は、PDTにおける照射が疾患組織に厳密に限定できない場合、例えば体内の腫瘍の間隙PDT(interstitial PDT)の場合、光送達ファイバーの設置が困難である場合、又はすべての疾患細胞が破壊されるのを確実にするために腫瘍の周囲を越えた照射が必要である場合に、特に価値がある。高い選択性はまた、健常組織中に保持されるPSがより低い又は無視しうる量であるため、副作用を低下させるためにも有益である。これは、全身適用後、特に治療後長期にわたって皮膚が日光又は明るい屋内照明による損傷を受けやすくなる皮膚の全身適用後の光感作を低減するために重要である。健常組織におけるより低い濃度は、治療期間中及び治療後の健常組織へのより少ない損傷を意味する。
多くのPSは、正常組織と疾患組織において同様の蓄積率を有する。PSは、しかしながら、これら2種類の組織において異なる蓄積率を示すこともある。これは、そのPSの細胞代謝が腫瘍細胞又は過剰増殖性組織の細胞においてはるかに低い場合に特に起こり得る。その場合腫瘍細胞のPS含量の低下は正常細胞より遅れる。そのような場合、疾患組織と正常組織の間のPS蓄積の差はPSの反復投与によってさらに上昇し得る。PSの最初の適用後、健常組織、例えば皮膚、におけるPSレベルが基線値又は無視しうる値に達する間、一定期間を経過させる。そのとき腫瘍のPS含量はまだ高いままである。この時点で2回目のPS投与を実施する。腫瘍PS含量はかなり上昇し、健康な正常組織に比べて高いままであるが、正常組織ではPS含量は時間の経過と共に再び基線又は無視しうるレベルに戻る。その時点で再びPSを投与することができ、腫瘍PS含量をさらに上昇させる。腫瘍又は他の異常細胞において長期的な局在を有する適切なPSによる反復投与は、これらの非正常細胞においてはなはだしく高い含量を得るため、又はPDT治療における効果のために十分な疾患組織中の濃度を有しながら、正常な健康細胞においてはなはだしく低い含量を得るために使用することができる。後者の場合、例えば皮膚のPS濃度は低いままであり得るので、日光又は明るい人工照明による皮膚損傷の危険度が低減する。
本発明と共に使用するのに適したPSは、正常組織が既にPSを大部分排除して、低い基線PS含量に達した後、腫瘍濃度にほとんど変化を示さないことによって特徴付けられる。反復投与によって非正常組織における高い弁別的蓄積を可能にする、非正常細胞において長期的な停留を有する適切なPSの一例は、フェオホルビドaである。フェオホルビドaは、周辺の健常組織と比較して腫瘍において高く且つ長期的な局在を達成することができ、それ故ここで述べる多回投与プロトコールに適する。適切な種類のPSのもう1つの例は、同じく疾患組織において比較的高い長期的な局在を達成することができる、バクテリオフェオホルビドである。
フェオホルビドaは、葉緑素から誘導される、天然に生じるポルフィリン化合物である。フィチル側鎖と中央のマグネシウムイオンを除去することによって葉緑素から生成される。フェオホルビドa含量は、化学的に誘導したラット皮膚腫瘍において投与後48時間まで高いままであり、一方正常皮膚のフェオホルビドa含量は投与後24時間までに基線値に達し、腫瘍のフェオホルビドa含量の10分の1であった[非特許文献3]。ヌードマウスにおける異種移植ヒト膵腫瘍のフェオホルビドa含量は、投与後4−48時間の間低下せず、一方正常皮膚のPS含量は24時間後に低い基線値に達した[非特許文献4]。正常膵臓のフェオホルビドa含量は24時間後には低い一定値に達したが、膵腫瘍の含量は少なくとも48時間高いままであった[非特許文献5]。ラット下垂体腫瘍のフェオホルビドa含量は投与後6時間にわたってゆっくりと低下し、一方正常下垂体の含量は4時間後に基線値に達した[非特許文献6]。
Maeda et al,"Pheophorbide a phototoxicity and its application to photoradiation therapy of cancer",Photomedicine and Photobiology 1987,9,45−49 Hajri et al,"Human pancreatic carcinoma cells are sensitive to photodynamic therapy in vitro and in vivo",British Journal of Surgery 1999,86,899−906 Aprahamian et al,"Distribution of pheophorbide a in normal tissues and in an experimental pancreatic cancer in rats",Anti−Cancer Drug Design 1993,8,101−114 Yano et al, "Photodynamic therapy for rat pituitary tumor in vitro and in vivo using pheophorbide a and white light",Lasers in Surgery and Medicine 1991,11,174−182
好ましい実施形態では、PS製剤を静脈内投与するが、より局所的な投与も考慮される。例えば皮膚腫瘍又は乾癬などの治療のためには、ここで述べる投与を局所的に実施することができ、その場合、PSをクリーム又は軟膏に組み込んで、罹患領域に塗布することができる。一般に、本発明の恩恵(改善された効果及び安全性)は静脈内又は経口投与されるPS製剤に関して最大である。しかし、局所投与は一般にPSを投与する上でより大きな特異性を可能にするが、本発明はまた、局所PDTの有効性も改善する。例えば、検出されない疾患細胞又は疾患領域を光増感剤に暴露し、光増感剤が吸収されるのを確実にするために、腫瘍の面積よりも大きな面積にPSを適用することがしばしば望ましい。多くの先行技術のPDT適用では、これは健常組織を損傷する危険度を上昇させる。本発明は、それがもたらす高い特異性及び照射の時点での健常組織におけるPSの低濃度の故に、健常組織への重大な損傷を引き起こすことなくより大きな面積にわたる適用を可能にする。
PSの投与の間の間隔は、正常組織のPS含量が、次の投与の前及び場合により照射の前に基線値まで低下することが可能であるように選択される。基線値は、PS含量のさらなる低下が投与後の初期低下よりもはるかに緩やかであり、好ましくはPDTの間に実施される照射による組織損傷が無視しうる程度である値を意味する。その時点で、疾患組織のPS含量はまだ高いはずであり、例えば最後のPS投与後の初期含量の2分の1以上である。このようにして、疾患組織に対するより良好な選択性を有するPDTが達成される。連続的なPS投与により、正常組織におけるPS濃度は低いままに保持できるので、副作用、例えば日光又は明るい屋内人工照明による皮膚の損傷、を軽減することができる。
多回投与プロトコールによるPDTを開始する前に、投与する適切な用量を最初に選択しなければならない。用量は、組織型、疾患及び使用する光増感剤などのパラメータに従って異なり、投与後のPSの濃度が健常組織においてそのピークに達したときに起こる副作用によって制限される。用量はまた、腫瘍又は他の疾患組織のPS取込み能力によっても制限される。
次に、投与の間の適切な時間間隔を選択する。この間隔は、正常組織におけるPS含量が低い又は無視し得るレベルに戻るのに十分な長さでなければならない。これらのレベルは、これらの組織におけるピークPS濃度に比べて低い、例えばピークの濃度の20%未満でなければならない。さらに、間隔は、その後24時間のうちに濃度がさらに大きく低下しない、例えば50%以下に低下しないような間隔であるべきである。言い換えると、前記間隔は、健常組織における光増感剤濃度が低く、濃度の低下が実質的に横ばい状態になった時点で停止すべきである。PDTにおいて照射される健常組織におけるPSレベルは無視しうる程度であるはずなので、正常組織は光線力学療法の間にごくわずかしか有害な光線力学作用を受けない。そのようなわずかな有害作用は、治療する医師にとって許容される、正常組織への作用である。類推による一例では、わずかな有害作用は、水疱形成又は永続的な毒性作用を伴うことがあるより重症の日焼けと異なり、皮膚の発赤及び場合により黒化をもたらす、軽度の日焼けの皮膚科学的所見において見られるものである。
一部の場合は、照射される健常組織中のPSレベルが光線力学作用についての閾値以下である間隔を選択することができるので、照射の間健常組織においては全く作用が起こらない。照射される健常組織におけるPS濃度は、好ましくはそのような閾値以下であるレベルに達するべきである。
適切な間隔が選択され、経過した後、PSの2回目の用量を投与する。PSの3回目の投与は、所望する場合、健常組織、例えば疾患組織の周囲の健常組織におけるPS含量が、2回目のPS投与の直前と同じレベルに戻ったときに実施すべきである。これが起こらない場合は、3回目の投与は、少なくともPS濃度が健常組織において低レベルであるときに実施すべきである。一例では、3回目の投与の時点でのPS濃度は、2回目の投与の直前の健常組織における濃度の150%以下であるべきである。2回目と3回目のPS投与の間隔は、疾患組織と健常組織の間でPS濃度に有意に大きな差が生じるように選択すべきである。例えば疾患組織と健常組織のPS濃度の差は、3回目のPS投与の直前の差よりも少なくとも50%高くなければならない。フェオホルビドaが光増感剤である実施形態では、典型的な投与間隔は24時間である。
投与は数回反復することができ、好ましくは、少なくとも疾患組織中のPS濃度対健常組織中のPS濃度の40:1という比率を生じさせる。
これらの光増感剤用量及び光増感剤投与の間隔の薬物動態パラメータは、例えば適切な動物モデルを用いて決定することができ、そしてヒト試験で確認することができる。皮膚又は一部の内臓の上皮表面のような組織を治療するとき、PS組織レベルの測定はまた、例えば光ファイバーを用いた蛍光測定によって、個々の患者において実施することができる。
これが不可能である場合、例えば間隙光線送達で治療される体内の腫瘍の場合は、多回PS投与プロトコールについての適切なパラメータは、治療する腫瘍の適切なモデルを用いて、動物実験から得られる。
多くの好ましい実施形態では、投与の間の時間間隔、最終投与と照射の間の時間間隔、及びPSの各々の用量は一定のままである。しかし、組織におけるPSの一貫しない吸収又は低下によるか又は他の理由のために、時間間隔又は用量を変化させる場合がありうる。これらの変数は、疾患組織における最適濃度と最適PS濃度比を得るために個々の治療に基づいて決定される。一定でない時間間隔又は用量が有用でありうる場合は、PS濃度を絶えず又は定期的に測定することが可能である場合である。
PS濃度を決定する方法は確立されており、本発明に関して容易に使用できる。例えば一定波長と一定の濃度パーセンテージで蛍光を示す光増感剤が知られている。蛍光励起照射は、速やかに種々の身体領域におけるPSの濃度を明らかにすることができる。あるいは、比較的小量の発光分子を投与に含めることができる。例えば、血漿中の光増感剤は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)蛍光検出によって検出することができ、PS濃度は、光伝動装置及び皮膚の上に置いたとき反射光を測定する蛍光計を用いて皮膚において測定することができる。
多回PS投与PDT治療を調節するための治療システムも本発明において提供される。このシステムは、放射線源及び放射線を治療領域に適用するための装置、治療を観測し、好ましくは、入力されたプロトコールに基づいて照射があらかじめ定められた時点で起こるように放射線の賦活を制御するための調節装置、及び場合により光増感剤を全身的又は局所的に投与するための投与装置を含む。
好ましい実施形態では、前記調節装置は、放射線源に接続されたデスクトップコンピュータ又は放射線源の一部としての、適切なソフトウエアを伴うマイクロプロセッサーシステムの形態である。そのようなシステムはまた、治療過程を表示し、治療についての情報を提供するためのディスプレイスクリーン及び入力キーボードを特徴とする。治療に先立って、適切な用量レベル、投与の回数、及び投与と照射の間の間隔を決定する。次にこの情報を制御装置に入力する。1回目の投与を実施し、その投与が自動的に検出されるか又は使用者が、第1回投与が実施されたことを制御装置に指示する。あらかじめ定められた間隔後、制御装置は使用者に、2回目の投与を実施する時間であるという警報を発することができ、その時点で使用者は2回目の投与を実施する。最後の投与が実施されるまでこれが継続する。あらかじめ定められた間隔後、制御手段は放射線源を賦活させ、先に入力されたプロトコールに従って照射を実施する。
もう1つの実施形態では、制御装置は、指定された期間の満了前に放射線源が賦活することを防ぐ安全性シャッターを特徴とする。この特徴は、健常組織における光増感剤濃度が低い又は基線レベルになる前に放射線が適用されないことを確実にすることにより、付加的な安全性を提供し、それによって不慮の照射による損傷から健常組織を保護する。もう1つの好ましい実施形態では、特に全身投与において及び投与の間隔が比較的短い場合の治療において、制御装置は使用者に代わって自動的に光増感剤を投与しうる。
適切な放射線送達装置は当技術分野において公知であり、放射線源に接続することができる数多くの装置が存在する。そのような送達装置は、ディフューザーチップを伴う又は伴わない光ファイバー、光ファイバープローブ及び非コヒーレントランプを含むが、これらに限定されない。投与装置は、医療従事者によって使用可能であるか又は自動PS投与のための制御装置に接続されうる、全身投与のための注射器を含む。
図1は、癌組織におけるフェオホルビドaの用量の投与の間の好ましい間隔を例示する。図に示すように、1回目の投与後、フェオホルビドaの濃度は最初高く、緩やかに低下する。健常組織における濃度は速やかに低下して横ばい状態となり、24時間目には健常組織における濃度は非常に低く、濃度が非常に緩やかに低下する点に達した。最初の24時間の間隔後、腫瘍中の濃度は健常細胞における濃度の17倍である。同じ作用がフェオホルビドaの2回目の投与後に認められる。その結果として、4回の投与全体及び合計96時間後、健常組織におけるフェオホルビドaの濃度は非常に低いままであり、腫瘍中の濃度は68倍高い。
ひとたび選択された間隔後に適切な回数の用量が投与されれば、治療領域を、光増感剤を賦活するのに適した波長の放射線に暴露する。放射線を適用する方式は限定されず、治療のタイプと位置に依存して異なる。放射線源の例は、高出力ランプ、ダイオードレーザー、発光ダイオード、及びコヒーレント及び非コヒーレント光の他の線源を含む。本発明における光増感剤濃度のより大きな選択性のゆえに、照射の領域は腫瘍領域に厳密に限定される必要はない。これは、周囲の健常組織を有意に傷つけることなく末梢の付近にある疾患又は癌細胞を破壊することができ、それによって治療の有効性を高め、疾患の再発を予防するのに役立つという付加的な利点である。
本発明を以下の実施例によってさらに例示するが、本発明はそれらによって限定されない。
膵癌のPDT
PSフェオホルビドaの製剤を、体重キログラム当りPS約2−20mgの範囲の用量で、前述したように4回静脈内投与し、癌におけるPS含量対周囲の健常膵組織中のPS含量の少なくとも50:1の比を達成する。画像誘導下に光誘導ファイバーを腫瘍内に設置する。腫瘍を、約100mW/cmの出力密度で、疾患組織を壊死させるのに十分なエネルギー密度、好ましくは100−200J/cmで照射する。周囲の組織は、その組織中の光増感剤濃度が照射時の光線力学作用についての閾値以下にとどまるので、無傷のままである。
皮膚遮光手段にコンプライアントでない患者における皮膚腫瘍のPDT
各々の投与後に正常皮膚において小さなピークPS濃度だけが達成されるようにPS投与を4回の投与に分け、より良好な光耐性を実現する。
付属の図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態を述べたが、本発明が厳密な実施形態に限定されないこと、及び特許請求の範囲において定義される本発明の範囲又は精神から逸脱することなく当業者によって様々な変更及び修正が実施されうることは明白である。
フェオホルビドaの反復投与の間の、腫瘍及び正常組織、例えば皮膚における経時的なPS濃度のグラフ表示。

Claims (22)

  1. a.あらかじめ選択された用量の光増感製剤を投与し、前記光増感剤が治療部位の過剰増殖性疾患組織によって吸収され、正常な健康組織に比べて前記疾患組織において選択的に保持されること;
    b.前記光増感剤が、前記疾患組織では高いままであるが、正常組織では基線値に回復することができるあらかじめ選択された第一期間待つこと;
    c.前記のあらかじめ選択された第一期間後に前記治療部位に少なくとも1つの付加用量の前記光増感剤を投与し、前記光増感剤の濃度の低下を許容するように各々の付加用量の間にもう1つ別のあらかじめ定められた期間を経過させること;及び
    d.最終投与用量後にさらなる期間が経過した後、前記治療部位を照射すること
    を含む、癌、乾癬及び関節炎を含む過剰増殖性疾患組織の治療のより安全で改善された光線力学的治療方法。
  2. 前記第一用量と前記少なくとも1つの付加用量が等しい量であり、各々の投与の間の期間と最終投与と照射の間の期間が等しい請求項1記載の方法。
  3. 前記光増感剤を投与する工程が、静脈内及び局所投与から成る群より選択される方法によって実施される請求項1記載の方法。
  4. 正常組織における前記光増感剤の濃度が各々の投与後に同じ基線値に回復し、及び疾患組織における前記光増感剤の濃度は高いままであって、各々の投与によるさらなる上昇を可能にし、その結果疾患組織における前記光増感剤の濃度対健常組織における光増感剤の濃度の比率が各々の投与と共に上昇する請求項1記載の方法。
  5. 前記基線レベルが、前記正常組織が照射の間光線力学的作用を受けないレベルである請求項4記載の方法。
  6. 前記基線レベルが、前記正常組織が照射の間ごくわずかだけ有害な光線力学的作用を受けるレベルである請求項4記載の方法。
  7. 前記比率が少なくとも40:1である請求項4記載の方法。
  8. 前記光増感剤がフェオホルビドaである請求項1記載の方法。
  9. 前記光増感剤がバクテリオフェオホルビドである請求項1記載の方法。
  10. 前記照射工程が、少なくとも1つの光ファイバーを前記治療領域内に置くことによって実施される請求項1記載の方法。
  11. 組織中の前記光増感剤の濃度を定期的に又は連続的に測定する請求項1記載の方法。
  12. 前記測定が、
    HPLC蛍光検出;及び
    あらかじめ選択された量の発光材料を前記光増感剤と共に投与し、その後前記組織における前記発光材料の濃度を検出し、投与した前記発光材料と前記光増感剤の相対的量に基づいて前記光増感剤の濃度を決定すること
    から成る群より選択される方法によって実施される請求項11記載の方法。
  13. 前記期間の各々が、前記治療中に前記光増感剤の最適濃度を確実にするように選択される請求項11記載の方法。
  14. 前記のあらかじめ選択された用量及び期間が、ヒト又は動物被験体において選択された光増感剤の弁別的取込み/停留を観察する工程を追加することによって治療の前に決定される請求項1記載の方法。
  15. 放射線源;
    放射線を前記線源から治療領域に送達するための手段;及び
    あらかじめ定められたパラメータに基づいて多数の光増感剤用量の投与を調節し、前記放射線送達手段を調節するための手段
    を含み、前記パラメータが、光増感剤投与の回数、光増感剤投与の間の期間及び最終の光増感剤投与と照射の間の期間を含む、
    癌を含む過剰増殖性疾患組織の多回光増感剤投与光線力学療法のための装置。
  16. 前記調節手段が、前記期間が満了し、前記光増感剤投与が完了しようとするときに使用者に警報を発する請求項15記載の装置。
  17. 光増感剤を前記治療領域に投与するための手段をさらに含む請求項15記載の装置。
  18. 前記のあらかじめ定められたパラメータが、光増感剤用量、放射線量及び照射期間をさらに含む請求項15記載の装置。
  19. 前記調節手段が、マイクロプロセッサと適切なソフトウエアを含む請求項15記載の装置。
  20. 前記マイクロプロセッサと適切なソフトウエアが、自動的に前記光増感剤の用量を投与し、前記放射線を送達する請求項19記載の装置。
  21. 前記組織における前記光増感剤の濃度を測定するための手段をさらに含む請求項15記載の装置。
  22. 前記測定手段が、健常組織と前記疾患組織の両方における前記濃度を測定することができる請求項21記載の装置。
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