JP2006521819A - 小分子、タンパク質、及び核酸の細胞内輸送 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アミノ酸配列Arg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg (配列番号:1)は、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)として機能し、小分子、タンパク質、及び核酸を細胞の細胞内区画に輸送することができる。アミノ末端リシンリンカーは、PTDの効率を改良する。核局在シグナルは、PTDを細胞の核に向けるために用いることができる。PTDは、細胞を可逆的に不死化することができ、また、培養中の細胞の生存度を上昇することができる、PTD-カーゴ部分複合体中で用いることができる。
Description
アミノ酸配列Arg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg (配列番号:1)を有するタンパク質導入ドメインを有するポリペプチドは、細胞膜を通過し、カーゴ部分を細胞の細胞内区画に輸送可能であるという、予想外の性質を有する。配列番号:1は、WO 01/15511の「内部移行化ペプチド(internalizing peptide)」として確認されている、Arg-Arg-Gln-Arg-Arg-Thr-Ser-Lys-Met-Lys-Arg (配列番号:25)の逆異性体である。
本発明のPTDsは、ペプチド合成の技術において知られている任意の方法によって産生されることができる。例えば、PTDsは、化学的に合成されることができ、また、組替え的に生産されることができる。
PTDsは、例えば、Fmoc又はtBOC化学(Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85, 2149-2154, 1963; Roberge et al., Science 269, 202-204, 1995)を用いて、固相又は液相で合成されることができる。ペプチド合成は、手動技術を用いて、又は自動操作によって行われることができる。自動合成は、例えば、アプライド・バイオシステムズ431Aペプチド合成機(Perkin Elmer)を用いて行うことができる。
ペプチドは、該ペプチドのコーディング配列をクローニングし、それをインビトロで発現させることによって組換え的に生産されることができる。PTDをコードする任意のポリヌクレオチド配列が使用可能である。ポリヌクレオチド配列は、例えば、ホスホロアミジト化学を用いてインビトロで合成されることができる。核酸合成は、手動技術を用いて、又は、自動操作によって行われることができる。自動合成は、例えば、アプライド・バイオシステムズ3900DNA合成機(Perkin Elmer)を用いて行うことができる。
PTDをコードする配列を発現するために、種々の発現システムが利用可能である。そのようなシステムの例は、これに限られないが、細菌、酵母、昆虫、植物及び動物の細胞系を含む。細菌は、組換えバクテリオファージ、発現プラスミド、又はコスミド発現ベクターで形質転換されることができる。酵母は、酵母発現ベクターで形質転換されることができる。昆虫細胞は、発現ベクターで形質移入されることができ、或いは、組換え昆虫ウイルス(例えば、バキュロウイルス)で形質導入されることができる。植物細胞は、組換え植物ウイルス(例えば、カリフラワーモザイクウイルス又はタバコモザイクウイルス)で形質導入されることができる。動物細胞は、発現ベクター(例えば、pcDNA3又はpCMV-Sport)で形質移入されることができ、或いは、組換えウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、又はセムリキフォレストウイルス)で形質導入されることができる。宿主細胞を形質転換する方法、形質移入する方法、又は形質導入する方法は、当該分野で周知であり、任意の適切な方法を用いることができる。
PTDは、無細胞発現系において、PTDコーディング配列を転写及び翻訳することによって製造されることもできる。PTDのコーディング配列は、当該分野で周知の方法によって、適切な転写及び翻訳制御因子に結合されることができる。そのような方法の例には、PCR、制限酵素消化及びライゲーション、及び化学合成が含まれる。そのような技術は、例えば、サンブルックら(Sambrook et al.(1989) )及びアウスベルら( Ausubel et al. (1989))に開示されている。無細胞転写及び翻訳は、例えば、プロメガコーポレーションのような商業的な供給者によるキットで入手可能である、ウサギ網状赤血球又はコムギ胚芽抽出物の成分を用いて、達成することができる。
PTDに対する抗体は、例えば、ハーロウら(Harlow et al., USING ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1998.)の方法に従って得ることができる。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであってよい。「抗体」という語は、無傷の免疫グロブリン又はそれらの断片を意味する。断片の例は、Fab、F(ab')2、及びFvを含む。抗体カラムクロマトグラフィーによるPTDの精製のための抗体カラムは、当該分野で周知の技術と試薬を用いて製造され使用されることができる。例えば、ピアス者のIgGオリエンテーションキットを使用することができる。
本発明のPTDsは、保存された置換、即ち、一つのアミノ酸を他の類似の性質を有するものに交換する置換を含むことができる。保存された置換の例には、これに限定されないが、1)グリシン及びアラニン;2)バリン、イソロイシン、及びロイシン;3)アスパラギン酸及びグルタミン酸;4)リシン及びアルギニン;5)アスパラギン及びグルタミン;及び6)セリン及びスレオニンが含まれる。
本発明のPTDsは、N-末端又はC-末端に付着するリンカーを有することもできる。該リンカーは、通常0,1,2,3,4,又は5のアミノ酸の長さであり、通常、グリシン、システイン、セリン又はスレオニンのような、小さい中性極性即ち無極性のアミノ酸である。好ましいリンカーは、アミノ酸配列Lys-Xaa-Xaaを有し、ここでXaaは、小さい中性極性即ち無極性アミノ酸である。好ましいXaaは、グリシンである。リシンリンカーを有する好ましいPTDは、アミノ酸配列Lys-Gly-Gly-Arg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg (配列番号:2)を有する。
本発明のPTDsは、一以上の核局在シグナルを含むこともできる。好ましい核局在シグナルは、アミノ酸配列Lys-Lys-Lys-Arg-Lys-Val(配列番号:3)を有する。核局在シグナルは、PTDのアミノ末端又はカルボキシ末端に位置することができる。核局在シグナルを含むPTDは、さらに、リシンリンカーを含むこともできる。核局在シグナルは、リシンリンカーの上流又は下流に位置することができる。好ましくは、リシンリンカーを含むPTD、並びに核局在シグナルは、ペプチドのカルボキシ末端に位置する。リシンリンカー及び核局在シグナルを有する好ましいPTDは、アミノ酸配列Lys-Gly-Gly-Arg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg-Lys-Lys-Lys-Arg-Lys-Val (配列番号:4)を有する。リシンリンカーを有する他の好ましいPTDは、二つの核局在シグナルを含む。一つの核局在シグナルは、好ましくはリシンリンカーの下流のアミノ末端に位置し、第二の核局在シグナルは、好ましくはカルボキシ末端に位置する。リシンリンカー及び二つの核局在シグナルを有する好ましいPTDは、アミノ酸配列Lys-Gly-Gly-Lys-Lys-Lys-Arg-Lys-Val-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg-Lys-Lys-Lys-Arg-Lys-Val (配列番号:5)を有する。
カーゴ部分は小分子、ポリペプチド、核酸、又はウイルスである。これらのカーゴ部分の何れも、医薬品であり得る。小分子は、例えば、放射性核種、蛍光マーカー、又は染料であってよい。本発明に従ったポリペプチドは、二以上のアミノ酸残基を含むアミノ酸のポリマーであり、ペプチド及びタンパク質を含む。該ポリペプチドは、例えば、不死化タンパク質(例えば、SV40ラージT抗原及びテロメラーゼ)、抗アポトーシスタンパク質(例えば、突然変異体p53及びBclxL)、抗体、発癌遺伝子(例えば、ras, myc, HPV E6/E7, 及び アデノウイルス Ela)、細胞サイクル調節タンパク質(例えば、サイクリン及びサイクリン依存性キナーゼ)、又は酵素(例えば、緑色蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、及びクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)であってよい。核酸は、例えば、RNA、DNA、又はcDNAであってよい。核酸配列は、コーディング配列又は非コーディング配列(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)であってよい。ウイルスは、ウイルス全体又はウイルス核酸を含むウイルスのコア(即ち、ウイルスエンベロープのない、パッケージされたウイルス核酸)であってよい。輸送されることができるウイルス及びウイルスコアの例は、これに限定されないが、パピローマウイルス、アデノウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルスコア、及びセムリキウイルスコアを含む。
カーゴ部分は、特定のカーゴ部分に適切な、当該分野で周知の任意の方法によってPTDに複合化されることができる。熟練した技術者は、カーゴ部分のPTDとの複合体化に適した方法を選択できるであろう。そのような方法の例は、これに限定されないが、化学的架橋結合、遺伝子融合、及び橋かけ(bridging)を含む。
ホモ二官能性クロスリンカー又はヘテロ二官能性クロスリンカーの何れかを、PTDとカーゴ部分との架橋結合のために用いることができる。ホモ二官能性又はヘテロ二官能性のクロスリンカーは、PTDが細胞膜を横切ってカーゴ部分を輸送した後に、PTDのカーゴ部分からの分離を促進するために切断可能である。ホモ二官能性クロスリンカーは、少なくとも二つの同じ反応基を有する。ホモ二官能性クロスリンカー剤の使用は、結果として自己接合、分子内架橋結合及び/又は重合になり得る。ホモ二官能性クロスリンカーは、第一に、一級アミン-反応性(例えば、イミドエステル、N-スクシンイミジルエステル、イソチオシネート、カルボキシル酸、及び塩化スルフォニル)又はスルフヒドリル反応性(例えば、2-ピリジルジチオ、3-ニトロ-2-ピリジルジチオ、マレイミド、ビニルスルホン、ハロゲン化アリール、ジニトロフルオロベンゼン、有機水銀化合物、p-クロロ水銀ベンゾエート、ビスマレイミドへキサン、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン、及び1,4-ジ-(3’−(2’-ピリオイルジチオ)-プロピオンアミド)ブタン)である。ホモ二官能性イミドエステルの例は、これに限定されないが、ジメチルアジピイミデート(dimethyladipimidate)、ジメチルスベリミデート(dimethylsuberimidate)、及びジチオビスプロピオンイミデートを含む。ホモ二官能性NHSエステルの例は、これに限定されないが、ジスクシンイミジルグルタラート、ジスクシンイミジルスベレート、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)、及びジスクシンイミジルタルタレート(tartarate)を含む。
遺伝子融合は、インフレームのPTDのコーディング配列を、ポリペプチドカーゴ部分のコーディング配列と結合することによって生成されることができる。当該分野には、コーディング配列を互いに結合させるための多くの方法が存在する。代表的な方法は、これに限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、ステッチPCR、並びに、制限エンドヌクレアーゼ消化及びライゲーションを含む。例えば、PTDコーディング配列は、カーゴ部分の選択のためのPCRプライマーの5’-末端に付加されて良い;PCR後、PTDのコーディング配列とポリペプチドカーゴ部分は、互いに結合されている。熟練した技術者には、PTDのリーディングフレーム及びカーゴ部分を確実にフレーム内にする方法、並びに、転写制御配列(例えば、開始コドン及び終止コドン)をどこに置くべきであるかということは周知であろう。プロテアーゼ切断サイトは、PTD及びカーゴ部分の間に含まれることができる。そのようなプロテアーゼ切断サイトの例は、これに限定されないが、因子Xaタバコエッチ(etch)ウイルス(TEV)プロテアーゼを含む。
PTDs及びカーゴ部分は、橋かけ分子の対を用いて複合体化されることができる。そのような対の例は、これに限定されないが、(a)ストレプトアビジン及びビオチン、(b)グルタチオン及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ、及び(c)ポリヒスチジン及び親和性クロマトグラフィー試薬(例えば、四座ニトリロ三酢酸(NTA)又はイミノ二酢酸(IDA))(これはNi+2のようなイオンを介して相互作用する)を含む。PTDは、その対のどちらに結合されてもよく、カーゴはもう一方の橋かけ分子に結合される。例えば、PTDがグルタチオン-S-トランスフェラーゼに結合された場合、カーゴはグルタチオンに結合される。PTDがストレプトアビジンに結合され、カーゴがビオチンに結合されることが好ましい。PTD及びストレプトアビジンは、ペプチドと橋かけ分子を結合するための、当該分野で周知の任意の方法によって結合されることができる。そのような方法の例は、これに限定されないが、化学的架橋結合又は遺伝子融合を含む。PTD及びストレプトアビジンは、遺伝子融合によって結合されることが好ましい。カーゴは、小分子、タンパク質、又は核酸のビオチン化のために、当該分野で周知の任意の方法、例えば化学的架橋結合によって、ビオチンに結合される。PTDカーゴ部分複合体は、PTD-ストレプトアビジンをビオチン化カーゴ部分と接触させることによって形成されることができる。
PTD及びカーゴ部分は、PTD又はカーゴ部分の機能性を破壊しない限り、PTD又はカーゴ部分の何れかの任意の位置で、化学的に或いは橋かけ分子の対を用いることによって、複合体化されることができる。例えば、架橋剤は、アミノ末端又はカルボキシ末端(例えばタンパク質の)に位置する適切な官能基と、5’末端又は3’末端(例えば核酸の)に位置する適切な官能基と、或いは、分子を介して反応する。熟練した技術者は、PTD-カーゴ部分複合体のそれぞれの部分が生物活性を保持するかどうかを決定できる。PTDは、それがカーゴを細胞内に輸送できる場合、生物活性を保持する。輸送活性は、例えばPTDカーゴ部分複合体を細胞に加えることによって、また、カーゴ部分が細胞膜を横切って輸送されたかどうかを判定するために細胞をアッセイすることによって、確認されることができる。当該分野の技術者は、カーゴが細胞内に位置するかどうかを、当該分野で周知の方法を用いて測定することができる(例えば、免疫組織化学的染色)。カーゴ部分は、カーゴ部分のタイプに適格の方法を用いて活性をアッセイされることができる(例えば、酵素のための酵素アッセイ、腫瘍性タンパク質のための形質転換アッセイ、抗アポトーシスタンパク質のための抗アポトーシスアッセイ、及び、不死化タンパク質のための不死化アッセイ)。これらのアッセイは、当該分野で周知であり、サンブルックら(Sambrook et al., 1989 and Ausubel et al., 1989.)に開示されている。
本発明のPTDsは、カーゴ部分を、種々の哺乳類、両生類、爬虫類、鳥類、又は昆虫の細胞に輸送できる。細胞は、一次細胞又は細胞株であってよい。哺乳類細胞は、例えば、ヒト、サル、ラット、マウス、イヌ、ウシ、ブタ、ウマ、ハムスター、及びウサギであってよい。両生類の細胞の例には、これに限定されないが、カエル及びサンショウウオが含まれる。爬虫類の細胞には、これに限定されないが、ヘビ及びトカゲが含まれる。鳥類の細胞の例には、これに限定されないが、ニワトリ、ウズラ、およびカモが含まれる。昆虫細胞は、例えば、ショウジョウバエおよび鱗翅目(例えば、フォールヨトウムシ(fall army worm)であってよい。哺乳類からの一次細胞は、これに限定されないが、脂肪細胞、星状細胞、心筋細胞、軟骨細胞、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞、神経節細胞、腺性細胞、グリア細胞、造血性細胞、肝細胞、ケラチノサイト、筋芽細胞、神経細胞、骨芽細胞、卵巣細胞、膵臓ベータ細胞、腎臓細胞、平滑筋細胞、および横紋筋細胞を含む。細胞株には、182-PF-SK、184A1、2H-11、2F-2B、293、27FR、28SC、3B-11、4T1、7F2、A172、A375.S2、A-253、A-431、ARH-77、AHH-1、AML-193、A-10、BS-C-1、BHK-21、BE(2)-117、BCE、BJ、B16-F0、BT-20、BT-474、BLP-1、BRL-3A、BLO-11、CTX-TNA2、C8-D30、C8-S、CPAE、CPA47、CHO-K1、CV-1、C6、CHP-212、C8-B4、C166、C-211、CCD-25Sk、C32、CTPS、C1-S1、C127、CF41-Mg、CMMT、CAMA-1、C5/MJ、C3A、C2C12、COS-1、COS-7、Dempsey、Detroit 532、Daudi、EBTr(NBL4)、EOMA、EJG、E Derm、EB、EM-9、FBHE、FL、F98、G-361、GK-5、GDM-1、G-7、G-8、HIG-82、H9c2(2-1)、HUV-EC-C、HeLa、HaK、HEp-2、HT-1080、HG-261、HEL-299、H2.35、HEp-G2、H4、HAAE-1、HAAE-2、HUVE-12、Hs27、Hs68、HL-60、H4TG、Hepal-6、IMR-32、IP-1B、J1-31、J2 3T3、JC、JHK3、KB、K-562、KG-1、L-132、LLC-MK2、LA7、LMH、L8、MDBK、M059K、Mar Vin、MM5MTC、MCF7、MoB、MOLT-3、MH1C1、NIH 3T3、Neuro-2a、NB41A3、NIE-115、NMVMG、NMU、OV-90、P19、PFSK-1、PC-12、PaCa-2、PANC-1、QM-7、RF/6A、RK13、ratl、rat2、RG2、RT101、RBA、Rn2T、RBL-1、Swiss SFMF、SK-N-AS、SH-SYSY、SfiEp、SW-13、SW-527、SK-BR-3、SNU449、SK-Hepl、Snyder、Sf9、Sf21、T98G、TH-1、Toledo、UV41、Vero、WS6、WR-21、XP17BE、Y-1、ZR-75-1、およびZR-75-30が含まれる。
通常の健康な細胞は、それらが老化する前にのみ固定された数の分裂を経験し、そしてそれ以上は複製しない。不死化タンパク質は、細胞の老化を防ぐタンパク質である。例には、これに限定されないが、SV40ラージT抗原およびテロメラーゼが含まれる。不死化された細胞は、しかしながら、それらの相対物の通常の老化の後にも多くの回数分裂できる。
PTDおよび抗-アポトーシスタンパク質の複合体は、細胞生存度を上昇させるために用いられることができる。好ましくは、PTDはアミノ酸配列Arg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg (配列番号:1)、Lys-Gly-Gly-Arg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg (配列番号:2)、Lys-Gly-Gly-Arg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg-Lys-Lys-Lys-Arg-Val (配列番号:4)、又はLys-Gly-Gly-Lys-Lys-Lys-Arg-Val-Arg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg-Lys-Lys-Lys-Arg-Val (配列番号:5)を有する。細胞は、インビトロで複合体と接触されることができる。PTDカーゴ部分複合体は、細胞培養培地に加えられることもでき、又は、細胞に供給される培地に含まれることもできる。該複合体は、約1 nMのPTDより多い量で存在することが好ましい。例えば、該複合体は、約10 nM〜約1000 nM (即ち、10, 20, 30, 40, 50, 100, 200, 300, 400, 500, 600, 700, 800, 900, 又は1000 nM)のPTD、好ましくは約10 nM〜約500 nM, より好ましくは約10 nM〜約100 nM,およびさらに好ましくは約10 nM〜約50 nM のPTDの量で存在できる。PTDは、細胞膜を横切って抗-アポトーシスカーゴ部分を輸送し、アポトーシスを阻害することによって細胞生存度を上昇させる。該複合体の存在下で培養され続ける限り、細胞は上昇された生存度を有する。抗-アポトーシス剤は、これに限定されないが、p53及びBclxLを含む。
PTD及びカーゴ部分は、キット中で供給されることができる。PTDは、好ましくはPTD-ストレプトアビジン融合タンパク質であり、該ストレプトアビジンは、PTDのカルボキシ末端に位置することが好ましい。PTDは、好ましくは、アミノ酸配列Arg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg (配列番号:1)、Lys-Gly-Gly-Arg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg (配列番号:2)、Lys-Gly-Gly-Arg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg-Lys-Lys-Lys-Arg-Val (配列番号:4)、又はLys-Gly-Gly-Lys-Lys-Lys-Arg-Val-Arg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg-Lys-Lys-Lys-Arg-Val (配列番号:5)を有する。カーゴ部分は小分子(例えば、放射性核種、蛍光マーカー、染料、又は医薬品)、タンパク質(例えば、不死化剤、抗-アポトーシス剤、酵素、腫瘍性タンパク質、細胞サイクル調製タンパク、又は抗体)、核酸(例えば、RNA、DNA、及びcDNA)、又はウイルス(例えば、パピローマウイルス、アデノウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルスコア、又はセムリキウイルスコア)であってよい。カーゴ部分は好ましくはビオチン化される。PTD及びカーゴ部分は、一回の又は分割された一定分量で、一つの又は分割された容器で供給されることができる。PTD-カーゴ部分複合体を構築するため、及び/又は複合体を使用するための、説明書を含めることができる。その説明書は、ラベル又は容器に書かれて良い。この説明書は、単に読み手に、ウェブサイト又は他の情報源のような他のありかを紹介させるものであってもよい。
PTD形質導入効率に及ぼすビオチン位置の影響
形質導入効率に及ぼすビオチン位置の影響を測定するために、ビオチンを3つのPTDのアミノ末端又はカルボキシ末端の何れかに加えた。(Gly)3リンカーをN-末端ビオチン化ペプチドのアミノ末端に加えた。C-末端のビオチン化のために、C-末端リンカーの最後のGlyをリシンで置換した。リシンの側鎖を、ビオチン基の付加のために使用した。無視できる形質導入活性を有するペプチド(Mi et al., Mol. Ther., 2:339-347, 2000)(配列番号:6)をネガティブコントロールとして用いた。PTDのアミノ酸配列及び試験されたビオチン位置を表1に示した。PTD及びβ-ガラクトシダーゼを、ストレプトアビジン-ビオチン架橋と共に複合体化した。
一次細胞へのペプチド形質導入
β-ガラクトシダーゼをヒト一次(HUVEC)細胞中に転位置する、PTDの能力を調査した。PTD-β-ガラクトシダーゼに曝露される時間の関数として、形質導入効率を分析した。
形質導入効率における温度の影響
PTD-β-ガラクトシダーゼ複合体の活性を、4℃、室温(RT)、及び37℃で比較し、形質導入効率における温度の影響を分析した。HUVEC細胞は例2に記載したように培養し、PTD-β-ガラクトシダーゼ複合体(例1に記載した)は50 nM最終濃度で培養物に加えた。PTD-β-ガラクトシダーゼ複合体の添加に続いて、細胞を特定の温度で30分間インキュベートした。細胞を、上記のように洗浄して溶解した。溶解反応を停止させ、405 nmでの吸光度を測定した。その結果を図4に示す。図4は、PTDの形質導入活性が温度に依存することを示している。
PTDの逆転異性体の形質導入効率
N-末端ビオチン化定方向(direct)及び逆転(inverted)異性体を、PTDの逆転異性体の形質導入効率を測定するために比較した。表2には、用いたPTDの配列を一覧にした。PTD及びβ-ガラクトシダーゼをストレプトアビジン-ビオチン架橋と共に複合体化した。NIH 3T3細胞を96ウェルプレートに播種し上記のようにインキュベートした。PTD-β-ガラクトシダーゼ複合体を形成し(例1で記載したように)、最終濃度12.5 nMで添加した。この細胞を上記のように37℃で1時間インキュベートして溶解させた。この溶解反応を停止させ、405 nmでの吸光度を測定した。結果を図5に示す。逆転異性体の形質導入活性は、定方向PTDの形質導入活性よりも強い。
形質導入効率に及ぼすアミノ末端リシンの影響
2PTDの活性を比較して、ビオチン部分に並列されたリシン残基の導入が形質導入活性に影響するかどうかを測定した。ペプチドのアミノ酸配列は表2に示してある。ペプチドの対は、ビオチンペプチドリンカー内のグリシンからリシンへの置換によって異なる。PTD及びβ-ガラクトシダーゼは、ストレプトアビジン−ビオチン架橋と共に複合体化された。NIH 3T3細胞は、上記のように播種した。PTD-β-ガラクトシダーゼ複合体を20 nMの最終濃度で添加し、細胞を37℃で1時間インキュベートした。インキュベーションに続いて、細胞をPBSで3回洗浄し、上記のように溶解した。溶解反応を停止させ、405 nmでの吸光度を測定した。結果を図6に示す。ビオチンに並列されたリシン残基の存在は、形質導入活性を約2倍増強させた。
PTDを形質導入された細胞の割合
レポータータンパク質を受け取った細胞の割合に基づいて、形質導入の効率を測定するために、レポータータンパク質の組織化学的な染色を行って、細胞をアッセイした。この実験の目的は、全細胞可溶化液におけるβ-ガラクトシダーゼ活性が、細胞培養プレートのプラスチック表面に沈降したPTD複合体から生じるものではないということを保証することである。
PTD複合体の細胞内局在
複合体の細胞内局在を測定するために、細胞をストレプトアビジンで免疫染色した。24ウェル組織培養プレートにNIH 3T3細胞を播種し、一晩インキュベートした。細胞を、配列番号:14に示すポリペプチド配列及びストレプトアビジン結合β-ガラクトシダーゼを含む、20 nMのPTD-カーゴ部分複合体で、37℃で1時間処理した。細胞をPBSで3回洗浄し、室温で正常なヤギの血清で30分間インキュベートして、非特異的結合をブロックした。マウスの抗ストレプトアビジンモノクローナル抗体(Monosan, Catalog No. 5043)を、20%の正常なヤギ血清を含むPBSで1μg/mlに希釈した。希釈されたモノクローナル抗体を細胞に加え、細胞を室温で1時間インキュベートした。
PTD形質導入によるアルカリホスファターゼの輸送
上記の結果がβ-ガラクトシダーゼレポータータンパク質に限定されるという可能性を除外するために、代替のレポータータンパク質の形質導入を分析した。アルカリホスファターゼをPTD(表2)のC末端に、ストレプトアビジン-ビオチン架橋によって複合体化し、上記の方法を用いてNIH 3T3細胞に形質導入した。洗浄及び溶解の後、アルカリホスファターゼ活性を測定した。図10に、アルカリホスファターゼも効率的に細胞中へ輸送されることが示されている。
細胞増殖におけるPTDの細胞毒性
PTDsが細胞毒性であるかどうかを測定するために、PTDs(配列番号:7及び10)を、カーゴ部分の非存在下において、最終濃度範囲0〜1000 nMでNIH 3T3培養物に加えた。NIH 3T3細胞を、播種して一晩インキュベートし、ペプチドを培養物に加えた。細胞を48時間インキュベートし、細胞生存度をアラマルブルー(Alamar blue)アッセイを用いて測定した。
PTD-カーゴ部分複合体の核局在
核局在シグナルの導入がPTD-カーゴ部分複合体の転座に影響するかどうかを測定するために、PTDsの輸送活性を比較した。PTDsのアミノ酸配列を表3に示す。カーゴ部分は、ストレプトアビジン結合β-ガラクトシダーゼであった。カーゴ部分は、ストレプトアビジン結合β-ガラクトシダーゼであった。ペプチドは、核局在シグナルの位置によって異なった。核局在化シグナルは、アミノ末端(リシンリンカーの下流)又はカルボキシ末端に位置した。NIH 3T3細胞は上記のように播種した。それぞれのPTD複合体を、20 nMの最終濃度で加え、細胞を37℃で1時間インキュベートした。インキュベーションに続いて、細胞をPBSで3回洗浄し、β-ガラクトシダーゼの核局在をアッセイした。β-ガラクトシダーゼ活性は比色アッセイにおいて405 nmで測定した。
Claims (30)
- Arg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg (配列番号:1)を含む、タンパク質導入ドメイン(PTD)を有する単離及び精製されたポリペプチド。
- 請求項1のポリペプチドであって、そのアミノ末端にLys-Xaa-Xaaをさらに含み、該Xaaが小さい中性極性即ち非極性のアミノ酸であるポリペプチド。
- 請求項2のポリペプチドであって、前記アミノ酸配列がLys-Gly-Gly-Arg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg (配列番号:2)であるポリペプチド。
- Arg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg (配列番号:1)をコードする、単離及び精製されたポリヌクレオチド。
- 請求項4のポリヌクレオチドを含むベクター。
- 請求項5のベクターを含む宿主細胞。
- カーゴ部分に結合されたPTDを有するポリペプチドを含む複合体であって、前記PTDがArg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg (配列番号:1)を含む複合体。
- 前記カーゴ部分が、小分子、核酸、及びポリペプチドから成る群から選択される、請求項7の複合体。
- 請求項8の複合体であって、前記カーゴ部分が小分子であり、該小分子が、放射性核種、蛍光マーカー、染料、及び医薬品から成る群から選択される複合体。
- 請求項8の複合体であって、前記カーゴ分子がポリペプチドであり、該ポリペプチドが、不死化タンパク質、抗アポトーシスタンパク質、及び抗体から成る群から選択される複合体。
- 請求項10の複合体であって、前記ポリペプチドが不死化タンパク質であり、該不死化タンパク質が、SV40ラージT抗原及びテロメラーゼから成る群から選択される複合体。
- 請求項10の複合体であって、前記ポリペプチドが抗アポトーシスタンパク質であり、該抗アポトーシスタンパク質が、突然変異体p53及びBclxLから成る群から選択される複合体。
- 前記複合体が融合タンパクである、請求項7の複合体。
- ポリペプチドカーゴ分子に結合されたArg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg (配列番号:1)を含む融合タンパクをコードするポリヌクレオチド。
- 請求項14のポリヌクレオチドを含むベクター。
- 請求項15のベクターを含む宿主細胞。
- 以下の工程を具備する、カーゴ部分を培養細胞の細胞内区画に輸送する方法:
細胞をインビトロで、カーゴ部分に結合されたPTDを有するポリペプチドを含む複合体と接触させること、ここにおいて、該PTDはArg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg (配列番号:1)を含み、それによって、前記カーゴ部分が前記細胞の細胞内区画に輸送される。 - 以下の工程を具備する、培養中の細胞を可逆的に不死化する方法:
細胞をインビトロで、カーゴ部分に結合されたPTDを有するポリペプチドを含む複合体と接触させること、ここにおいて、前記PTDはArg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg (配列番号:1)を含み、前記カーゴ部分が不死化タンパク質であり、それによって前記細胞が可逆的に不死化される。 - 前記複合体を、前記細胞培養培地から除去して不死化を逆転させる工程をさらに具備する、請求項18の方法。
- 前記細胞は一次細胞である、請求項18の方法。
- 前記一次細胞が、脂肪細胞、星状細胞、心筋細胞、軟骨細胞、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞、神経節細胞、腺性細胞、グリア細胞、造血性細胞、肝細胞、ケラチノサイト、筋芽細胞、神経細胞、骨芽細胞、卵巣細胞、膵臓ベータ細胞、腎臓細胞、平滑筋細胞、及び横紋筋細胞から成る群から選択される、請求項20の方法。
- 前記不死化タンパク質がSV40ラージT抗原及びテロメラーゼから成る群から選択される、請求項18の方法。
- 請求項18の方法によって可逆的に不死化された細胞。
- 以下の工程を具備する、培養中の細胞の生存度を上昇させる方法:
細胞をインビトロで、カーゴ部分に結合されたPTDを有するポリペプチドを含む複合体と接触させること、ここで、前記カーゴ分子は抗アポトーシスタンパク質である。 - 前記抗アポトーシスタンパク質は、突然変異体p53及びBclxLから成る群から選択される、請求項24の方法。
- 前記細胞が一次細胞(primary cell)である、請求項24の方法。
- 前記PTDが、Arg-Lys-Met-Leu-Lys-Ser-Thr-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg (配列番号:1)を含む、請求項24の方法。
- 前記一次細胞が、脂肪細胞、星状細胞、心筋細胞、軟骨細胞、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞、神経節細胞、腺性細胞、グリア細胞、造血性細胞、肝細胞、ケラチノサイト、筋芽細胞、神経細胞、骨芽細胞、卵巣細胞、膵臓ベータ細胞、腎臓細胞、平滑筋細胞、及び横紋筋細胞から成る群から選択される、請求項26の方法。
- 化学的クロスリンカーをさらに含む、請求項1のポリペプチド。
- 前記化学的クロスリンカーは、マレイミドまたは3-ニトロ-2-ピリジルジチオ基である、請求項29のポリペプチド。
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