JP2006518997A - 新規アシルコエンザイムa:モノアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−3(mgat3)をコードするポリヌクレオチドおよびその用途 - Google Patents

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Abstract

本発明は、MGAT3ポリペプチドをコードする新規ポリヌクレオチド、その断片およびホモログを提供する。また、ベクター、宿主細胞、抗体、ならびに前記ポリペプチドを製造するための組換え法および合成法も提供する。さらに本発明は、これらの新規MGAT3ポリペプチドを、これらのポリペプチドに関係する様々な疾患および/または障害(例えば肥満)の診断、処置および/または予防に応用するための診断方法および治療方法に関する。さらに本発明は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストを同定するためのスクリーニング方法に関する。

Description

本願は、2003年1月21日に出願された米国仮特許出願第60/441,567号の利益を主張し、当該仮特許出願は参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。
本発明は、モノアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ-3(「MGAT3」)ポリペプチドをコードする新規ポリヌクレオチド、その断片およびホモログを提供する。また、ベクター、宿主細胞、抗体、ならびに前記ポリペプチドを製造するための組換え法および合成法も提供する。さらに本発明は、これらの新規MGAT3ポリペプチドを、これらのポリペプチドに関係する様々な疾患および/または障害の診断、処置および/または予防(特に肥満の処置)に応用するための診断および治療方法に関する。さらに本発明は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストを同定するためのスクリーニング方法に関する。
真核生物の燃料貯蔵に重要な分子であるトリアシルグリセロール(TAG)は、2つの主要経路、すなわちグリセロール3-リン酸経路とモノアシルグリセロール経路とによって合成される。グリセロール3-リン酸経路は全組織に存在するが、モノアシルグリセロール経路は小腸の腸細胞に限定される(Bell,R.M.およびR.A.Coleman,Annu.Rev.Biochem.(1980)49: 459-87)。モノアシルグリセロール経路は、キロミクロンリポタンパク質粒子への食事脂肪のパッケージングにとって極めて重要であると考えられている(Levy,E.,Can.J.Physiol.Pharmacol.(1992)70(4): 413-9)。
アシルコエンザイムA:モノアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(「MGAT」)(EC2.3.1.22)は、モノアシルグリセロール経路の第1段階の開始にそれが果たす役割によって最もよく知られている酵素である(Lehner,R.およびA.Kuksis,Prog.Lipid Res.(1996)35(2): 169-201)。TAGなどの不溶性食事脂肪が腸によって吸収されるには、まず、食事脂肪分子が膵リパーゼによって可溶性遊離脂肪酸と2-モノアシルグリセロールとに消化されなければならない。これらの生成物は腸細胞に素早く吸収され、小腸の管腔にそれらが出現してから数分以内に、MGATがこれらの分子を基質にしてジアシルグリセロール(DAG)を形成させる。さらにDAGは、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)によってアシル化されて、TAGを再形成する。次に、新たに形成されたTAG分子は、他の複合脂質、例えばコレステロールエステル、リン脂質および少量のタンパク質と共にパッケージングされ、キロミクロンと呼ばれる丸いリポタンパク質粒子を形成する。その90%がTAGから構成されるキロミクロンは、リンパ中に素早く分泌され、そこで身体へのエネルギー供給源として役立つ(Lehner,R.およびA.Kuksis,前掲)。
他の神経脂質合成タンパク質と同様に、MGATも内在性膜タンパク質であり、今のところ、まだどの由来源からも均一には精製されていない。腸MGATをコードする遺伝子の分子的アイデンティティは捉えがたいものであった。MGAT酵素活性を持つことが示された最初のcDNAクローン(MGAT1と名付けられた)は、Yenらによって同定された(Yen,C.L.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2002)99(13): 8512-7)。しかしMGAT1は胃、腎臓、白色脂肪組織および褐色脂肪組織では発現されるものの、小腸では発現されない。したがってMGAT1は、脂肪吸収の生理機能にとって重要な、高い腸MGAT酵素活性の説明にはなりえない(Yen,C.L.ら,前掲)。
食事脂肪の吸収を阻害する薬物は肥満の処置に有効でありうることが知られている(Zhi,J.ら(1995)J.Clin.Pharmacol.,35(11): 1103-8、Lucas,K.H.およびB.Kaplan-Machli(2001)Ann.Pharmacother.,35(3): 314-28)。しかし、そのような薬物の機序には膵リパーゼの阻害が含まれ、これは便失禁という望ましくない副作用につながる(Kolanowski,J.(1999)Drug Saf.,20(2): 119-31)。これに代わるアプローチは、腸内で脂肪を脂肪酸に消化させてから、キロミクロン粒子への脂肪酸の取り込みまたはパッケージングを阻止することである。
腸MGATはこの経路にとって極めて重要な酵素なので、MGAT腸酵素活性を担う遺伝子、したがって食指脂肪の吸収を担う遺伝子を同定することが求め続けられている。そのような遺伝子の調整は、肥満の処置方法になるだろう。本発明はそのような要求に向けられた発明である。
(発明の概要)
本発明は、図1A〜Bに示すアミノ酸配列(配列番号2)またはATCC受託番号PTA-4454およびPTA-4803としてそれぞれ2002年6月12日および2002年11月14日に寄託された少なくとも1つのMGAT3 cDNAクローンがコードするアミノ酸配列を持つMGATタンパク質をコードする、モノアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ-3(以下「MGAT3」)と名付けられた新規cDNAに向けられる。MGAT3は、図1A〜1Bに記載のポリヌクレオチド配列(配列番号1)または2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれATCC受託番号PTA-4454およびPTA-4803として寄託された少なくとも1つのMGAT3 cDNAクローンのポリヌクレオチド配列を持つ。
MGAT3は、バイオインフォマティクス的方法を使って同定され、分子技術を使ってクローン化された。MGAT3は食事脂肪の吸収を担うMGATとしての基準を満たす。ヒトMGAT3の発現プロファイルは消化管に著しく限定されている。脂肪吸収の防止は体重減少を引き起こす確実な方法の一つであるので、腸MGAT阻害は抗肥満処置への1つのアプローチになる。したがってMGAT3は肥満および関連疾患状態の処置にとって重要な標的である。
本発明は、本発明の単離された核酸分子を含む組換えベクター、およびその組換えベクターを含有する宿主細胞、ならびにそのようなベクターおよび宿主細胞を製造する方法、そして組換え技術を使ったMGATタンパク質またはMGATペプチドの製造におけるそれらの使用も包含する。本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを製造するための合成方法を提供する。また、MGATポリペプチドおよびMGATポリヌクレオチドに関連する疾患、障害および/または状態を検出するための診断方法、ならびにそのような疾患、障害および/または状態を処置するための治療方法も提供する。さらに本発明は、前記ポリペプチドの結合パートナーを同定するためのスクリーニング方法、特に本発明の新規MGATポリペプチドの活性化剤および阻害剤を同定するためのスクリーニング方法に関する。
一態様として、本発明は、配列番号1のヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドからなる単離された核酸分子に向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、(a)配列番号1のポリヌクレオチド断片または2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるcDNA配列のポリヌクレオチド断片であって配列番号1にハイブリダイズできるもの、(b)配列番号2のポリペプチド断片、または2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるcDNA配列であって配列番号1にハイブリダイズできるものによってコードされているポリペプチド断片、をコードするポリヌクレオチド、(c)配列番号2のポリペプチドドメイン、または2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるcDNA配列であって配列番号1にハイブリダイズできるものによってコードされているポリペプチドドメイン、をコードするポリヌクレオチド、(d)配列番号2のポリペプチドエピトープ、または2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるcDNA配列であって配列番号1にハイブリダイズできるものによってコードされているポリペプチドエピトープ、をコードするポリヌクレオチド、(e)配列番号1の相補配列(アンチセンス)に相当するポリヌクレオチド、および(f)(a)〜(e)に記載したポリヌクレオチドのいずれか1つにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする能力を持つポリヌクレオチドであって、A残基のみまたはT残基のみのヌクレオチド配列を持つ核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズしないもの、からなる群より選択されるヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子に向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、ポリヌクレオチド断片がMGAT3をコードするヌクレオチド配列からなる、上記核酸分子のいずれかに向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、上記単離された核酸分子のいずれかを含む組換えベクターに向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、任意の上記組換えベクターを含む組換え宿主細胞に向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、(a)配列番号2、または2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるコードされた配列、のポリペプチド断片、(b)配列番号2、または2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるコードされた配列、のポリペプチドドメイン、(c)配列番号2、または2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるコードされた配列、のポリペプチドエピトープ、および(d)配列番号2、または2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるコードされた配列、の完全長タンパク質、からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドに向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、完全長タンパク質がそのC末端またはN末端からの連続するアミノ酸配列の欠失を含む、上記単離されたポリペプチドに向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、上記単離されたポリペプチドに特異的に結合する単離された抗体に向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、上記単離されたポリペプチドを発現させる組換え宿主細胞に向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、単離されたポリペプチドを製造する方法であって、(a)上記組換え宿主細胞を前記ポリペプチドが発現するような条件下で培養すること、および(b)前記ポリペプチドを回収することを含む方法に向けられる。本発明はそのような方法によって製造されるポリペプチドも包含する。
もう一つの態様として、本発明は、ある医学的状態を予防、処置または改善する方法であって、哺乳動物対象に治療有効量の上記ポリペプチドまたはその調整物質を投与するステップを含む方法に向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、肥満を処置する方法であって、肥満した哺乳動物対象に治療有効量の上記ポリペプチドまたはその調整物質を投与するステップを含む方法に向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、対象における病理学的状態または病理学的状態に対する感受性を診断する方法であって、(a)上記ポリヌクレオチドにおける突然変異の有無を決定すること、および(b)その突然変異の有無に基づいて病理学的状態または病理学的状態に対する感受性を診断することを含む方法に向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、対象における病理学的状態または病理学的状態に対する感受性を診断する方法であって、(a)生物学的試料における上記ポリペプチドの存在または発現量を決定すること、および(b)そのポリペプチドの存在または発現量に基づいて病理学的状態または病理学的状態に対する感受性を診断することを含む方法に向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、(a)配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、(b)2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454またはPTA-4803の一方に含まれるcDNAによってコードされるポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド、および(c)配列番号1の相補配列(アンチセンス)に相当するポリヌクレチド、からなる群より選択されるヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドからなる単離された核酸分子に向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、ポリヌクレオチドがMGAT3をコードするヌクレオチド配列を含む、上記単離された核酸分子に向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、上記単離された核酸分子を含む組換えベクターに向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、上記組換えベクターを含む組換え宿主細胞に向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、(a)配列番号2の完全長タンパク質、(b)2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454またはPTA-4803の一方に含まれるcDNAによってコードされるポリペプチド、からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる単離されたポリペプチドに向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、ある病理学的状態を診断する方法であって、前記状態が異常なMGAT活性に関係する障害、例えば肥満、および胃腸障害、例えばクローン病である方法に向けられる。
もう一つの態様として、本発明は、ある医学的状態を予防、処置または改善する方法であって、前記状態が異常なMGAT活性に関係する障害、例えば肥満、および胃腸障害、例えばクローン病である方法に向けられる。
(発明の詳細な説明)
本発明の好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明および本明細書に記載の実施例を参照すれば、本発明がより容易に理解されるだろう。
本発明は、既知のアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ酵素に対して実質的な相同性を持つ、モノアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ-3(以下「MGAT3」)と名付けられた新規cDNAに向けられる。MGAT3はDGA-CおよびDGA-3とも呼ばれている。MGAT3は、図1A〜Bに示すアミノ酸配列(配列番号2)または2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれATCC受託番号TPA-4454およびPTA-4803として寄託されたMGAT3 cDNAクローンによってコードされるアミノ酸配列を持つMGATタンパク質をコードしている。MGAT3は図1A〜Bに記載のポリヌクレオチド配列(配列番号1)または2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれATCC受託番号TPA-4454およびPTA-4803として寄託されたMGAT3 cDNAクローンのポリヌクレオチド配列を持つ。MGAT3は、バイオインフォマティクス的方法を使って同定され、分子技術を使ってクローン化された。MGAT3は食事脂肪の吸収を担うMGATとしての基準を満たす。ヒトMGAT3の発現プロファイルは消化管に著しく限定されている。脂肪吸収の防止は体重減少を引き起こす確実な方法の一つであるので、腸MGAT阻害は抗肥満処置への1つのアプローチになる。したがってMGAT3は肥満および関連疾患状態の処置にとって重要な標的である。
本発明は、本発明の単離された核酸分子を含む組換えベクター、およびその組換えベクターを含有する宿主細胞、ならびにそのようなベクターおよび宿主細胞を製造する方法、そして組換え技術を使ったMGATタンパク質またはMGATペプチドの製造におけるそれらの使用も包含する。本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを製造するための合成方法を提供する。また、MGATポリペプチドおよびMGATポリヌクレオチドに関連する疾患、障害および/または状態を検出するための診断方法、ならびにそのような疾患、障害および/または状態を処置するための治療方法も提供する。さらに本発明は、前記ポリペプチドの結合パートナーを同定するためのスクリーニング方法、特に本発明の新規MGATポリペプチドの活性化剤および阻害剤を同定するためのスクリーニング方法に関する。
MGAT3は食事脂肪の吸収を担うMGATとしての基準を満たす。ヒトMGAT3の発現プロファイルは消化管に著しく限定されている。具体的に述べると、回腸では、MGAT3転写物が、消化器系以外の組織の大半に観察される量より約45,000倍多く見いだされる。組換えMGAT3をバキュロウイルス昆虫細胞系で発現させると、強いMGAT酵素活性が生成する。重要なことに、組換えMGAT3は、他の立体異性体との比較で2-モノアシルグリセロールのアシル化に対して優れた基質特異性を持つが、これは本物の腸MGATが満たさなければならない要件である。
臨床的には、クローン病はカロリーの吸収を損なう腸障害であると診断される(Kastin,D.A.およびA.L.Buchman(2002)Curr.Opin.Clin.Nutr.Metab.Care,5(6): 699-706)。その結果、患者は成長が遅延し、続いて限局性腸炎が起こる(Hendrickson,B.A.,R.GokhaleおよびJ.H.Cho(2002)Clin.Microbiol.Rev.,15(1): 79-94)。本発明では、クローン病患者の回腸ではMGAT3 mRNAの定常状態レベルが有意に低下することを実証する。そのような欠乏の帰結は遊離脂肪酸の蓄積である。脂肪酸が腸内で催炎物質として作用しうること、および脂肪酸の食事管理がクローン病を含む様々な炎症性腸疾患の処置に対する治療的アプローチであることは、文献で十分に裏付けられている(Aldhous,M.C.ら(2001)Proc. Nutr. Soc.,60(4): 457-61)。MGAT3発現の喪失はこれらの観察結果と合致する。
またMGAT3は染色体7q22.1上の腸muc3A遺伝子座に位置する。この領域は以前に、クローン病と潰瘍性大腸炎の両方について、感受性遺伝子座であると表示されている(Satsangi,J.ら(1996)Nat.Genet.,14(2): 199-202)。これらの知見は、腸脂肪吸収におけるMGAT3の生理学的意義をさらに強調し、MGAT3機能を補充するための治療的アプローチがクローン病の矯正に役立ちうることを示している。また、MGAT3発現の喪失を監視することは、疾患進行の生体マーカーとして、そして早期診断のツールとして役立ちうる。
本発明において、「単離された」という用語は、元の環境(例えばその物質が自然界に存在する場合は自然環境)から取り出された物質を指し、したがってこの物質は「人の手によって」その自然状態から改変されている。例えば、単離されたポリヌクレオチドは、ベクターまたは組成物の一部である場合や、ある細胞内に含まれている場合もあるが、そのような場合でも、そのベクター、組成物または特定細胞が当該ポリヌクレオチドの元の環境ではないという理由で、「単離された」ということができる。「単離された」という用語は、ゲノムまたはcDNAライブラリー、全細胞調製物または全mRNA調製物、ゲノムDNA調製物(電気泳動によって分離され、ブロットに移されたものを含む)、剪断された全細胞ゲノムDNA調製物、または本発明のポリヌクレオチド/配列の顕著な特徴が技術上証明されない他の組成物を指さない。
本明細書にいう「ポリヌクレオチド」は、配列番号1に含まれる核酸配列、または2002年6月12日および2002年11月14日に寄託されたそれぞれATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803(「寄託クローン」)の一方を持つMGAT3クローン内に含まれるcDNAを指す。MGAT3クローンは、米国バージニア州20110-2209ユニバーシティ・ブールバード10801に所在するAmerican Type Culture Collection(「ATCC」)に寄託された。本発明でなされたATCC寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条項に従って行われた。一例に過ぎないが、本ポリヌクレオチドは、5'および3'非翻訳配列、シグナル配列付きまたはシグナル配列無しのコード領域、分泌タンパク質コード領域を含む完全長cDNA配列のヌクレオチド配列を含有することができると共に、その核酸配列の断片、エピトープ、ドメインおよび変異体も含有することができる。さらに、本明細書にいう「ポリペプチド」とは、広義のポリヌクレオチドから生成する翻訳されたアミノ酸配列を持つ分子を指す。
本発明の「ポリヌクレオチド」には、配列番号1に含まれる配列、その相補鎖、またはATCCに寄託されたクローン内のcDNAに、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイスする能力を持つポリヌクレオチドも包含される。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/ml変性剪断サケ精子DNAを含有する溶液中、42℃で終夜インキュベートした後、フィルターを0.1×SSC中、約65℃で洗浄することを指す。
ストリンジェンシーの低いハイブリダイゼーション条件下で本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸分子も考えられる。ハイブリダイゼーションおよびシグナル検出のストリンジェンシーの変更は、主に、ホルムアミド濃度(ホルムアミドのパーセンテージを下げるとストリンジェンシーが低下する)、塩条件、または温度の操作によって達成される。例えば、ストリンジェンシーの低いハイブリダイゼーション条件には、6×SSPE(20×SSPE=3M NaCl、0.2M NaH2PO4、0.02M EDTA、pH7.4)、0.5%SDS、30%ホルムアミド、100μg/mlサケ精子ブロッキングDNAを含む溶液中、37℃で終夜インキュベートした後、1×SSPE、0.1%SDSを使って50℃で洗浄することが含まれる。また、さらに低いストリンジェンシーを達成するために、ストリンジェントなハイブリダイゼーションに続いて行なう洗浄を、より高い塩濃度(例えば5×SSC)で行なうこともできる。
上述した条件の変更は、ハイブリダイゼーション実験におけるバックグラウンドを抑制するために使用される代替ブロッキング試薬の投入および/または代用によって達成できることに注意されたい。典型的なブロッキング試薬には、例えばデンハート試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNA、および市販の専売製剤などがある。特定のブロッキング試薬を投入するには、適合性の問題から、上述したハイブリダイゼーション条件の変更が必要になることもありうる。
もちろん、ポリA+配列(例えば配列表に示すcDNAの3'末端ポリA+領域)または相補的な一連のT(もしくはU)残基だけにハイブリダイズするポリヌクレオチドは、「ポリヌクレオチド」の定義には含まれないだろう。というのも、そのようなポリヌクレオチドは、ポリ(A)区間またはその相補鎖を含有する任意の核酸分子(例えばプライマーとしてオリゴdTを使って作製された実質上任意の二本鎖cDNAクローン)にハイブリダイズするだろうからである。
本発明のポリヌクレオチドは任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドからなることができ、それらは無修飾RNAまたは無修飾DNAであっても修飾RNAまたは修飾DNAであってもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖領域と二本鎖領域との混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、一本鎖領域と二本鎖領域との混合物であるRNA、DNAとRNA(これらは一本鎖でもあってもよいし、より典型的には二本鎖または一本鎖領域と二本鎖領域との混合物であってもよい)とを含むハイブリッド分子からなることができる。また、本ポリヌクレオチドは、RNAもしくはDNAまたはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域からなることもできる。また、本ポリヌクレオチドは、1以上の修飾塩基を含有するか、または安定性を得るためもしくは他の理由で修飾されたDNA主鎖もしくはRNA主鎖を含有してもよい。「修飾」塩基には、例えばトリチル化塩基、およびイノシンなどの異常塩基が包含される。DNAおよびRNAには様々な修飾を施すことができるので、「ポリヌクレオチド」には、化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態も包含される。
本発明のポリペプチドは、ペプチド結合または修飾ペプチド結合(すなわちペプチドアイソスター)によって互いに連結されたアミノ酸からなることができ、ポリヌクレオチドがコードする20種類のアミノ酸以外のアミノ酸を含有してもよい。本ポリペプチドは翻訳後プロセシングなどの自然過程による修飾、または当技術分野で周知の化学修飾技術による修飾を受けうる。そのような修飾は基本的教科書に詳しく説明されており、モノグラフならびに膨大な研究文献には、さらに詳しく記載されている。修飾は、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖およびアミノ末端またはカルボキシ末端を含めて、ポリペプチド中のどこにでも存在することができる。同じタイプの修飾が、与えられたポリペプチドの数カ所に、同じ程度にまたは様々な程度に存在しうることは理解されるだろう。また、与えられたポリペプチドは多くのタイプの修飾を含みうる。ポリペプチドは、例えばユビキチン結合などの結果として分岐していてもよいし、分岐を持つまたは分岐を持たない環状ポリペプチドであってもよい。環状、分岐および分岐環状ポリペプチドは翻訳後の自然過程の結果として生じる場合もあるし、合成法によって製造することもできる。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合性架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、糖鎖付加、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、PEG化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、トランスファーRNAによるタンパク質へのアミノ酸の付加、例えばアルギニル化、およびユビキチン結合が含まれる(例えばT.E.Creighton「Proteins-Structure and Molecular Properties」第2版,W.H.Freeman and Company,ニューヨーク(1993)、B.C.Johnson編「Posttranslational Covalent Modification of Proteins」Academic Press,ニューヨーク,1〜12頁(1983)、Seifterら,Meth Enzymol 182: 626-646(1990)、Rattanら,Ann NY Acad Sci 663: 48-62(1992)などを参照されたい)。
「生物学的活性を持つポリペプチド」とは、特定の生物学的アッセイで測定した場合に、成熟型を含む本発明ポリペプチドの活性に類似する(同一であるとは限らない)活性を、用量依存的にまたは用量非依存的に示すポリペプチドを指す。用量依存性が存在する場合、それは本ポリペプチドと同一である必要はなく、本発明のポリペプチドと比較して、所定の活性の用量依存性が実質的に類似していればよい(すなわち候補ポリペプチドは、本発明のポリペプチドよりも高い活性を示すか、または本発明のポリペプチドと比較して約25分の1を下回らない、好ましくは約10分の1を下回らない、最も好ましくは約3分の1を下回らない活性を示すだろう)。
MGAT3の機能または活性に調整を加えるべきまたは影響を及ぼすべき細胞におけるMGAT3の機能または活性に影響を及ぼすことができるMGAT3の調整物質を提供することが、本発明のもう一つの態様である。さらに、MGAT3の調整物質は、細胞中のMGAT3によって調整される下流の系および分子または細胞中のMGAT3と相互作用する下流の系および分子に影響を及ぼすことができる。MGAT3の調整物質には、MGAT3の機能および/または活性を拮抗、阻害、軽減、遮断、抑制、減少、または排除する化合物、物質、薬剤、薬物などが包含される。そのような化合物、物質、薬剤、薬物などは「アンタゴニスト」と総称することができる。もう一つの選択肢として、MGAT3の調整物質には、細胞におけるMGAT3機能をアゴナイズ、増進、増加、増強、または増幅する化合物、物質、薬剤、薬物なども包含される。そのような化合物、物質、薬剤、薬物などは「アゴニスト」と総称することができる。
本明細書で使用する「調整する(modulate)」という用語は、特定の活性、DNA、RNA、またはタンパク質の量、質または効果の増減を指す。本明細書で使用する「調整」の定義には、特定の活性、DNA、RNAまたはタンパク質のアゴニストおよび/またはアンタゴニストが包含されるものとする。
本明細書にいう用語「生物」は、本明細書に挙げる任意の生物を包含するが、好ましくは真核生物を、より好ましくは哺乳動物を、最も好ましくはヒトを指すものとする。
本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、本発明のポリヌクレオチドに対応する完全長cDNAおよび/またはゲノムDNAを同定および単離するためのプローブとして、新規関連DNA配列をハイブリダイズし、発見するためのプローブとして、この配列または関連配列のポジショナルクローニング用のプローブとして、他の新規ポリヌクレオチドを発見する過程で既知配列を「差し引き(subtract-out)」するためのプローブとして、遺伝子発現量を定量するためのプローブとして、そしてマイクロアレイ用のプローブとして、有用である。
さらに、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、1、2、3、4、5、6、7、8個以上の膜ドメインを含みうる。
また、好ましい実施形態として、本発明は、本発明のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの生物学的機能をさらに精密化する方法も提供する。
具体的に述べると、本発明は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを使って、本発明のオルソログ、ホモログ、パラログ、変異体、および/または対立遺伝子変異体を同定する方法を提供する。また、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを使って、本発明の全コード領域、本発明の非コード領域、本発明の調節配列、および本発明の分泌型、成熟型、プロ型、プレプロ型を適宜、同定する方法も提供する。
好ましい実施形態として、本発明は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチド中の固有の糖鎖付加部位を同定し、次いで、例えばタンパク質フォールディングの強化、タンパク質凝集の阻害、細胞小器官への細胞内輸送の調節、タンパク質分解に対する耐性の増加、タンパク質抗原性の調整、および細胞間接着の媒介などを含むいくつかの望ましい特徴が得られるように、当該部位の改変、欠失および/または付加を行う方法を提供する。
さらなる好ましい実施形態として、望ましい構造的、機能的および/または物理的特徴を持つ新規変異体を作出し同定することを目指して、分子進化技術を使って本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを進化させる方法も提供する。
さらに本発明は、機能の割当てに現在利用することができる他の実験方法および実験手法にも対応する。これらの手法には、例えばアレイへのクローンのスポッティング、マイクロアレイ技術、PCRに基づく方法(例えば定量PCR)、アンチセンス法、遺伝子ノックアウト実験、およびクローンからの配列情報を使ってプライマーまたはハイブリッドパートナーが構築することができるような他の手法などが含まれるが、これらに限るわけではない。
DGAT遺伝子ファミリーのメンバーに対する強い相同性から考えて、MGAT3ポリペプチドは少なくとも何らかの生物学的活性を、そのようなファミリーメンバーと共有していると予想される。MGAT3の組織分布を、DGAT遺伝子ファミリーに対する強い相同性およびそれらに付随する機能と合わせて考えると、MGAT3ポリヌクレオチドおよびMGAT3ポリペプチドは、クローン病を含む炎症性腸疾患などの様々な病理学的状態に関与することが示唆される。
本発明のMGAT3ポリヌクレオチドおよびMGAT3ポリペプチドは、そのアゴニストおよび/または断片を含めて、炎症(例えば哺乳動物の腸内の炎症)の調整を含む用途を持つ。本発明のMGAT3ポリヌクレオチドおよびMGAT3ポリペプチドは、そのアゴニストおよび/または断片を含めて、肥満を含む胃腸疾患または胃腸障害の診断、処置、予後判定および/または予防に役立ちうる。
DGAT遺伝子ファミリーメンバーに対する強い相同性を、腸での顕著な局在化した発現と併せて考えると、MGAT3ポリヌクレオチドおよびMGAT3ポリペプチドは、胃腸疾患および/または胃腸障害、例えば肥満、潰瘍、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、下痢、旅行者下痢、薬物関連下痢、ポリープ、吸収障害、便秘、憩室炎、腸の血管疾患、腸閉塞、腸内感染、潰瘍性大腸炎、細菌性赤痢、コレラ、クローン病、アメーバ症、腸熱、ウィップル病、腹膜炎、腹腔内膿瘍、遺伝性ヘモクロマトーシス、胃腸炎、ウイルス性胃腸炎、食中毒、腸間膜虚血、腸間膜梗塞、ならびに代謝性疾患および/または代謝性障害などの処置、診断、予後判定および/または予防に役立ちうることが示唆される。さらに、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、その断片および/またはアンタゴニストを含めて、以下の胃腸感染症(ただし以下に限定されない)を、直接的または間接的に、処置し、予防し、診断し、そして/またはそれらの胃腸感染症に対する感受性を予測することを含む用途も持つ:サルモネラ感染、大腸菌感染、大腸菌O157:H7感染、志賀毒素産生性大腸菌感染、カンピロバクター感染(例えばカンピロバクター・フィタス(Campylobacter fetus)、カンピロバクター・ウプサリエンシス(Campylobacter upsaliensis)、カンピロバクター・ヒオインテスチナリス(Campylobacter hyointestinalis)、カンピロバクター・ラリ(Campylobacter lari)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・コンサイサス(Campylobacter concisus)、カンピロバクター・ムコサリス(Campylobacter mucosalis)、カンピロバクター・スプトルム(Campylobacter sputorum)、カンピロバクター・レクツス(Campylobacter rectus)、カンピロバクター・クルブス(Campylobacter curvus)、カンピロバクター・スプトルム(Campylobacter sputorum)など)、ヘリコバクター感染(例えばヘリコバクター・シナジ(Heliobacter cinaedi)、ヘリコバクター・フェネリエ(Heliobacter fennelliae)など)、腸炎エルシニア感染、ビブリオ属感染(例えばビブリオ・ミミカス(Vibrio mimicus)、ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、ビブリオ・フルビアリス(Vibrio fluvialis)、ビブリオ・フルニッシイ(Vibrio furnissii)、ビブリオ・ホリセ(Vibrio hollisae)、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、ビブリオ・アルギノリチカス(Vibrio alginolyticus)、ビブリオ・メチニコフィイ(Vibrio metschnikovii)、ビブリオ・ダムセラ(Vibrio damsela)、ビブリオ・シンシナチエンシス(Vibrio cincinnatiensis)など)、エロモナス感染(例えばエロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、エロモナス・ソビラ(Aeromonas sobira)、エロモナス・カビエ(Aeromonas caviae)など)、プレジオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelliodes)感染、ジアルジア感染(例えばランブル鞭毛虫など)、クリプトスポリジウム感染、リステリア感染、赤痢アメーバ感染、ロタウイルス感染、ノーウォークウイルス感染、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)感染、クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostriudium perfringens)感染、ブドウ球菌感染、バチルス感染、ならびに上に挙げた原因微生物または本明細書の他のどこかで挙げる原因微生物に関係する他の任意の胃腸疾患および/または胃腸障害。
MGAT3ポリヌクレオチドおよびMGAT3ポリペプチドは、その断片および/またはアンタゴニストを含めて、MGAT3機能の調整物質の同定、例えば抗体(検出用または中和用)、自然界に存在する調整物質および小分子調整物質などの同定を含む用途を持ちうる。MGAT3タンパク質のドメイン(本明細書に記載のMGAT3エピトープを含む)に対する抗体は、患者における胃腸障害の診断剤として使用することができるだろう。
MGAT3ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、MGAT3プローブを使ってMGAT3遺伝子中の突然変異を同定するか、MGAT3タンパク質もしくはMGAT3 mRNAの発現レベルを決定することによって、MGAT3タンパク質の過剰発現または過少発現に関係する疾患を診断するのに役立つ。MGAT3ポリペプチドは、同タンパク質の活性に影響を及ぼす化合物のスクリーニングにも役立つ。
MGAT3のグリセロールリン脂質ドメインは、アシルトランスフェラーゼ反応にとって極めて重要であると考えられる。この活性部位ドメインの構造(特に予想触媒アミノ酸)およびDGAT遺伝子ファミリーの他の機能ドメイン(例えば活性部位ドメイン結合ポケット)を分子遺伝子操作すれば、テーラーメード活性を持つMGAT3を製造することが可能になる。したがって、MGAT3ポリペプチドおよびその断片は、その構造の遺伝子操作によって得られる任意の相同産物と共に、MGAT3生物学的活性およびDGAT全般の調整物質をNMRに基づいて設計するのに役立つ。
MGAT3ポリペプチドおよびMGAT3ポリヌクレオチドは、プローブとしてMGAT3配列を使用してMGAT3ポリヌクレオチド配列中の突然変異を同定することによって、またはMGAT3タンパク質もしくはMGAT3 mRNAの発現レベルを決定することによって、MGAT3の過剰発現および/または過少発現に関係する疾患を診断することを含む用途も持つ。MGAT3ポリペプチドは、同タンパク質の活性に影響を及ぼす化合物をスクリーニングするのに役立ちうる。MGAT3ペプチドは、特異抗体を生成させるために使用することや、MGAT3と特異的に相互作用するタンパク質を見つけるために酵母ツーハイブリッドスクリーニングにおけるベイトとして使用することもできる。
MGAT3ポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、その断片およびアゴニストを含めて、肥満およびクローン病などの疾患および障害の検出、診断、処置、改善および/または予防を含む用途を持ちうる。
コードされているポリペプチドは少なくとも一部の生物学的活性をDGATファミリーメンバーと共有しうると考えられるが、このクローンの正確な生物学的機能を決定するいくつかの方法は、当技術分野で知られているか、本明細書の他の項で説明する。簡単に述べると、このクローンの機能はマイクロアレイ法を応用することによって、決定することができる。MGAT3ポリヌクレオチドに対応する核酸、ならびに本発明の他のクローンを、発現プロファイリング用のマイクロチップ上に配置することができる。どのポリヌクレオチドプローブを使ってスライドにハイブリダイズさせるかにより、ある特定遺伝子の発現の変化から、研究対象である状態に基づいて、その遺伝子の機能に関する追加の洞察を得ることができる。例えば、使用するポリヌクレオチドプローブが患部腸組織に由来する場合に観察される正常腸組織と比較した発現レベルの増減は、例えば腸機能を調整する機能を示すのかもしれない。
また、例えば定量PCR法を応用して、タンパク質の機能を評価することもできる。リアルタイム定量PCRにより、例えばMGAT3遺伝子の発現を全発生過程を通して追跡することが可能になるだろう。定量PCR法では、発生上重要な各段階から微量の組織を得るだけで、そのような実験を遂行することができる。したがって、定量PCR法を応用してこのポリペプチドの生物学的機能を精密化することは、本発明に包含される。MGAT3の場合は、正常組織におけるMGAT3のmRNA発現レベルを疾患組織(特に患部腸組織)と比較することにより、MGAT3に関係する疾患相関を解析することができる。患部組織におけるMGAT3発現レベルの有意な増減は、MGAT3が疾患の進行に役割を果たすこと、そしてMGAT3ポリペプチドに対するアンタゴニストがその疾患の処置、予防および/または改善に治療上役立つであろうことを示唆する。あるいは、患部組織におけるMGAT3発現レベルの有意な増減は、MGAT3が疾患の進行に対して防御的役割を果たすこと、そしてMGAT3ポリペプチドのアゴニストが、その疾患の処置、予防および/または改善に治療上役立ちうることを示唆しうる。配列番号1(図1A〜B)に記載のポリヌクレオチド配列に対応する定量PCRプローブも、本発明に包含される。
タンパク質の機能は酵母における補完アッセイ(complementation assay)によって評価することもできる。例えば、MGAT3の場合であれば、MGAT活性が欠損している酵母を形質転換し、それらの生育能を評価することにより、MGAT3ポリペプチドがMGAT活性を持つことを示す説得力のある証拠を得ることができるだろう。当技術分野では、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの機能を評価する際に使用することができるアッセイ条件およびアッセイ方法が他にも知られており、それらの一部は本明細書の他の項に開示する。
あるいは、マウスおよび/またはラットにおけるこのポリペプチドのホモログを破壊し、その結果生じる表現型を観察することによって、コードされているポリペプチドの生物学的機能を決定することもできる。そのようなノックアウト実験は当技術分野では知られており、それらの一部は本明細書の他の項に開示する。
さらに、アンチセンス法および/またはセンス法を応用してトランスジェニックマウスおよび/またはトランスジェニックラットを作出することにより、このポリペプチドの生物学的機能を決定することもできる。トランスジェニックマウスまたはトランスジェニックラットで、特定の遺伝子をセンス方向またはアンチセンス方向に発現させると、その特定遺伝子の発現レベルの、それぞれ上昇または低下が起こりうる。ある遺伝子の内因的発現レベルを変化させることで、特定の表現型を観察することができ、次にそれを使って、その遺伝子の機能に関する指標を引き出すことができる。遺伝子は、強い遍在性プロモーターを使って、その生物の全細胞で、常時、過剰発現または過少発現させたり、十分に特徴付けられた組織特異的プロモーターを使って、その生物の1以上の離散した部分で発現させたり、または誘導性プロモーターおよび/または発生段階に応じて調節されるプロモーター(developmentally regulated promoter)を使って、発生の特定の時点で発現させたりすることができる。
MGAT3トランスジェニックマウスまたはMGAT3トランスジェニックラットの場合、通常の生育条件では表現型が明白でないなら、疾患状態にある生物を観察することが、その遺伝子の機能の理解につながる場合もある。したがって、トランスジェニックマウスまたはトランスジェニックラットの作出にアンチセンス法および/またはセンス法を応用し、よって本ポリペプチドの生物学的機能を精密化することは、本発明に包含される。
好ましい実施形態として、本発明は、以下のN末端MGAT3欠失ポリペプチドを包含する:配列番号2のM1-I341、G2-I341、V3-I341、A4-I341、T5-I341、T6-I341、L7-I341、Q8-I341、P9-I341、P10-I341、T11-I341、T12-I341、S13-I341、K14-I341、T15-I341、L16-I341、Q17-I341、K18-I341、Q19-I341、H20-I341、L21-I341、E22-I341、A23-I341、V24-I341、G25-I341、A26-I341、Y27-I341、Q28-I341、Y29-I341、V30-I341、L31-I341、T32-I341、F33-I341、L34-I341、F35-I341、M36-I341、G37-I341、P38-I341、F39-I341、F40-I341、S41-I341、L42-I341、L43-I341、V44-I341、F45-I341、V46-I341、L47-I341、L48-I341、F49-I341、T50-I341、S51-I341、L52-I341、W53-I341、P54-I341、F55-I341、S56-I341、V57-I341、F58-I341、Y59-I341、L60-I341、V61-I341、W62-I341、L63-I341、Y64-I341、V65-I341、D66-I341、W67-I341、D68-I341、T69-I341、P70-I341、N71-I341、Q72-I341、G73-I341、G74-I341、R75-I341、R76-I341、S77-I341、E78-I341、W79-I341、I80-I341、R81-I341、N82-I341、R83-I341、A84-I341、I85-I341、W86-I341、R87-I341、Q88-I341、L89-I341、R90-I341、D91-I341、Y92-I341、Y93-I341、P94-I341、V95-I341、K96-I341、L97-I341、V98-I341、K99-I341、T100-I341、A101-I341、E102-I341、L103-I341、P104-I341、P105-I341、D106-I341、R107-I341、N108-I341、Y109-I341、V110-I341、L111-I341、G112-I341、A113-I341、H114-I341、P115-I341、H116-I341、G117-I341、I118-I341、M119-I341、C120-I341、T121-I341、G122-I341、F123-I341、L124-I341、C125-I341、N126-I341、F127-I341、S128-I341、T129-I341、E130-I341、S131-I341、N132-I341、G133-I341、F134-I341、S135-I341、Q136-I341、L137-I341、F138-I341、P139-I341、G140-I341、L141-I341、R142-I341、P143-I341、W144-I341、L145-I341、A146-I341、V147-I341、L148-I341、A149-I341、G150-I341、L151-I341、F152-B41、Y153-I341、L154-I341、P155-I341、V156-I341、Y157-I341、R158-I341、D159-I341、Y160-I341、I161-I341、M162-I341、S163-I341、F164-I341、G165-I341、L166-I341、C167-I341、P168-I341、V169-I341、S170-I341、R171-I341、Q172-I341、S173-I341、L174-I341、D175-I341、F176-I341、I177-I341、L178-I341、S179-I341、Q180-I341、P181-I341、Q182-I341、L183-I341、G184-I341、Q185-I341、A186-I341、V187-I341、V188-I341、I189-I341、M190-I341、V191-I341、G192-I341、G193-I341、A194-I341、H195-I341、E196-I341、A197-I341、L198-I341、Y199-I341、S200-I341、V201-I341、P202-I341、G203-I341、E204-I341、H205-I341、C206-I341、L207-I341、T208-I341、L209-I341、Q210-I341、K211-I341、R212-I341、K213-I341、G214-I341、F215-I341、V216-I341、R217-I341、L218-I341、A219-I341、L220-I341、R221-I341、H222-I341、G223-I341、A224-I341、S225-I341、L226-I341、V227-I341、P228-I341、V229-I341、Y230-I341、S231-I341、F232-I341、G233-I341、E234-I341、N235-I341、D236-I341、I237-I341、F238-I341、R239-I341、L240-I341、K241-I341、A242-I341、F243-I341、A244-I341、T245-I341、G246-I341、S247-I341、W248-I341、Q249-I341、H250-I341、W251-I341、C252-I341、Q253-I341、L254-I341、T255-I341、F256-I341、K257-I341、K258-I341、L259-I341、M260-I341、G261-I341、F262-I341、S263-I341、P264-I341、C265-I341、I266-I341、F267-I341、W268-I341、G269-I341、R270-I341、G271-I341、L272-I341、F273-I341、S274-I341、A275-I341、T276-I341、S277-I341、W278-I341、G279-I341、L280-I341、L281-I341、P282-I341、F283-I341、A284-I341、V285-I341、P286-I341、I287-I341、T288-I341、T289-I341、V290-I341、V291-I341、G292-I341、R293-I341、P294-I341、I295-I341、P296-I341、V297-I341、P298-I341、Q299-I341、R300-I341、L301-I341、H302-I341、P303-I341、T304-I341、E305-I341、E306-I341、E307-I341、V308-I341、N309-I341、H310-I341、Y311-I341、H312-I341、A313-I341、L314-I341、Y315-I341、M316-I341、T317-I341、A318-I341、L319-I341、E320-I341、Q321-I341、L322-I341、F323-I341、E324-I341、E325-I341、H326-I341、K327-I341、E328-I341、S329-I341、C330-I341、G331-I341、V332-I341、P333-I341、A334-I341、および/またはS335-I341。
これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列も提供する。本発明は、本明細書の他の項で説明する免疫原エピトープおよび/または抗原エピトープとしての、これらN末端MGAT3欠失ポリペプチドの使用も包含する。
好ましい実施形態として、本発明は、以下のC末端MGAT3欠失ポリペプチドを包含する:配列番号2のM1-I341、M1-F340、M1-T339、M1-L338、M1-C337、M1-T336、M1-S335、M1-A334、M1-P333、M1-V332、M1-G331、M1-C330、M1-S329、M1-E328、M1-K327、M1-H326、M1-E325、M1-E324、M1-F323、M1-L322、M1-Q321、M1-E320、M1-L319、M1-A318、M1-T317、M1-M316、M1-Y315、M1-L314、M1-A313、M1-H312、M1-Y311、M1-H310、M1-N309、M1-V308、M1-E307、M1-E306、M1-E305、M1-T304、M1-P303、M1-H302、M1-L301、M1-R300、M1-Q299、M1-P298、M1-V297、M1-P296、M1-I295、M1-P294、M1-R293、M1-G292、M1-V291、M1-V290、M1-T289、M1-T288、M1-I287、M1-P286、M1-V285、M1-A284、M1-F283、M1-P282、M1-L281、M1-L280、M1-G279、M1-W278、M1-S277、M1-T276、M1-A275、M1-S274、M1-F273、M1-L272、M1-G271、M1-R270、M1-G269、M1-W268、M1-F267、M1-I266、M1-C265、M1-P264、M1-S263、M1-F262、M1-G261、M1-M260、M1-L259、M1-K258、M1-K257、M1-F256、M1-T255、M1-L254、M1-Q253、M1-C252、M1-W251、M1-H250、M1-Q249、M1-W248、M1-S247、M1-G246、M1-T245、M1-A244、M1-F243、M1-A242、M1-K241、M1-L240、M1-R239、M1-F238、M1-I237、M1-D236、M1-N235、M1-E234、M1-G233、M1-F232、M1-S231、M1-Y230、M1-V229、M1-P228、M1-V227、M1-L226、M1-S225、M1-A224、M1-G223、M1-H222、M1-R221、M1-L220、M1-A219、M1-L218、M1-R217、M1-V216、M1-F215、M1-G214、M1-K213、M1-R212、M1-K211、M1-Q210、M1-L209、M1-T208、M1-L207、M1-C206、M1-H205、M1-E204、M1-G203、M1-P202、M1-V201、M1-S200、M1-Y199、M1-L198、M1-A197、M1-E196、M1-H195、M1-A194、M1-G193、M1-G192、M1-V191、M1-M190、M1-I189、M1-V188、M1-V187、M1-A186、M1-Q185、M1-G184、M1-L183、M1-Q182、M1-P181、M1-Q180、M1-S179、M1-L178、M1-I177、M1-F176、M1-D175、M1-L174、M1-S173、M1-Q172、M1-R171、M1-S170、M1-V169、M1-P168、M1-C167、M1-L166、M1-G165、M1-F164、M1-S163、M1-M162、M1-I161、M1-Y160、M1-D159、M1-R158、M1-Y157、M1-V156、M1-P155、M1-L154、M1-Y153、M1-F152、M1-L151、M1-G150、M1-A149、M1-L148、M1-V147、M1-A146、M1-L145、M1-W144、M1-P143、M1-R142、M1-L141、M1-G140、M1-P139、M1-F138、M1-L137、M1-Q136、M1-S135、M1-F134、M1-G133、M1-N132、M1-S131、M1-E130、M1-T129、M1-S128、M1-F127、M1-N126、M1-C125、M1-L124、M1-F123、M1-G122、M1-T121、M1-C120、M1-M119、M1-I118、M1-G117、M1-H116、M1-P115、M1-H114、M1-A113、M1-G112、M1-L111、M1-V110、M1-Y109、M1-N108、M1-R107、M1-D106、M1-P105、M1-P104、M1-L103、M1-E102、M1-A101、M1-T100、M1-K99、M1-V98、M1-L97、M1-K96、M1-V95、M1-P94、M1-Y93、M1-Y92、M1-D91、M1-R90、M1-L89、M1-Q88、M1-R87、M1-W86、M1-I85、M1-A84、M1-R83、M1-N82、M1-R81、M1-I80、M1-W79、M1-E78、M1-S77、M1-R76、M1-R75、M1-G74、M1-G73、M1-Q72、M1-N71、M1-P70、M1-T69、M1-D68、M1-W67、M1-D66、M1-V65、M1-Y64、M1-L63、M1-W62、M1-V61、M1-L60、M1-Y59、M1-F58、M1-V57、M1-S56、M1-F55、M1-P54、M1-W53、M1-L52、M1-S51、M1-T50、M1-F49、M1-L48、M1-L47、M1-V46、M1-F45、M1-V44、M1-L43、M1-L42、M1-S41、M1-F40、M1-F39、M1-P38、M1-G37、M1-M36、M1-F35、M1-L34、M1-F33、M1-T32、M1-L31、M1-V30、M1-Y29、M1-Q28、M1-Y27、M1-A26、M1-G25、M1-V24、M1-A23、M1-E22、M1-L21、M1-H20、M1-Q19、M1-K18、M1-Q17、M1-L16、M1-T15、M1-K14、M1-S13、M1-T12、M1-T11、M1-P10、M1-P9、M1-Q8、および/またはM1-L7。
これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列も提供する。本発明は、本明細書の他の項で説明する免疫原エピトープおよび/または抗原エピトープとしての、これらC末端MGAT3欠失ポリペプチドの使用も包含する。
もう一つの選択肢として、本発明の好ましいポリペプチドは、例えば配列番号2のMGAT3ポリペプチドの内部領域(例えばN末端MGAT3ポリペプチド欠失とC末端MGAT3ポリペプチド欠失との任意の組み合わせ)に相当するポリペプチド配列を含んでもよい。例えば、内部領域は式:アミノ酸NX-アミノ酸CXで定義することができるだろう[式中、NXはMGAT3(配列番号2)の任意のN末端欠失ポリペプチドアミノ酸を表し、CXはMGAT3(配列番号2)の任意のC末端欠失ポリペプチドアミノ酸を表す]。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明は、本明細書の他の項で説明する免疫原エピトープおよび/または抗原エピトープとしての、これらポリペプチドの使用も包含する。
Motifアルゴリズム(Genetics Computer Group,Inc.)により、本発明のMGAT3ポリペプチドは、アミド化部位を1つ含むことが示されている。C末端アミド化されるホルモンおよび他の活性ペプチドの前駆体は、常に、アミド基を提供するグリシン残基が直後に続いており、さらに、ほとんどの場合、少なくとも2つの連続する塩基性残基(ArgまたはLys)が続いていて、これらは一般に活性ペプチド前駆体切断部位として機能する。どのアミノ酸でもアミド化されうるが、ValまたはPheなどの中性疎水性残基は良い基質であり、一方、AspまたはArgなどの荷電残基ははるかに反応性が低い。アミド化部位のコンセンサスパターンは次のとおりである:xG(R,K)(R,K)[式中「x」はアミド化部位を表す]。アスパラギン糖鎖付加に関する追加情報は、参照により本明細書に組み込まれる以下の刊行物に見いだすことができる:Kreil G.(1984)Meth.Enzymol. 106: 218-223、およびBradbury A.F.,Smyth D.G.(1987)Biosci.Rep. 7: 907-916。
好ましい実施形態として、以下のアミド化部位ポリペプチドが本発明に包含される:DTPNQGGRRSEWIR(配列番号25)。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明は、本明細書の他の項で説明する免疫原エピトープおよび/または抗原エピトープとしての、このMGAT3アミド化部位ポリペプチドの使用も包含する。
Motifアルゴリズム(Genetics Computer Group,Inc.)に基づいて、本発明のMGAT3ポリペプチドはいくつかのリン酸化部位を含んでいることが確認された。これらの部位のリン酸化は、MGAT3ポリペプチドの何らかの生物学的活性を調節しうる。例えば、特定部位でのリン酸化は、他の分子(例えばタンパク質、リガンド、基質、DNAなど)に会合または結合するという本タンパク質の能力の調節に関与しうる。
MGAT3ポリペプチドは、2つのPKCリン酸化部位を含んでいることが、Motifアルゴリズム(Genetics Computer Group,Inc.)を使って予想された。インビボではプロテインキナーゼCがセリン残基またはスレオニン残基のリン酸化に対する選択性を示す。PKCリン酸化部位は次のコンセンサスパターンを持つ:(S,T)x(R,K)[式中、SまたはTはリン酸化部位を表し、「x」は介在アミノ酸残基を表す]。
PKCリン酸化部位に関する追加情報は、Woodget J.R.ら(1986)Eur.J.Biochem. 161: 177-184、およびKishimoto A.ら(1985)J.Biol.Chem. 260: 12492-12499に見いだすことができ、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。好ましい実施形態として、以下のPKCリン酸化部位ポリペプチドは、本発明に包含される:LQPPTTSKTLQKQ(配列番号13)および/またはHWCQLTFKKLMGF(配列番号14)。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明は、本明細書の他の項で説明する免疫原エピトープおよび/または抗原エピトープとしての、これらMGAT3 PKCリン酸化部位ポリペプチドの使用も包含する。
MGAT3ポリペプチドは3つのカゼインキナーゼIIリン酸化部位を含んでいることが、Motifアルゴリズム(Genetics Computer Group,Inc.)を使って予想された。カゼインキナーゼII(CK-2)は、環状ヌクレオチドおよびカルシウムに依存しない活性を持つタンパク質セリン/スレオニンキナーゼである。CK-2は多種多様なタンパク質をリン酸化する。この酵素の基質特異性は次のように要約することができる:(1)同等な条件下ではThrよりもSerを好む、(2)酸性残基(AspまたはGlu)がリン酸基受容部位のC末端から3残基目に存在しなければならない、(3)+1、+2、+4、および+5位の追加酸性残基はリン酸化速度を増加させる。生理的基質の大半はこれらの位置に少なくとも1つの酸性残基を持っている、(4)酸性決定基の供与体としてはGluよりもAspの方が好ましい、そして(5)受容部位のN末端にある塩基性残基はリン酸化速度を低下させるが、酸性残基ならリン酸化速度が増加する。
カゼインキナーゼIIリン酸化部位のコンセンサスパターンは次のとおりである:(S,T)x2(D,E)[式中、「x」は任意のアミノ酸を表し、SまたはTはリン酸化部位である]。
カゼインキナーゼIIリン酸化部位に特有の追加情報は、以下の刊行物に参照すれば見いだすことができる:Pinna L.A.(1990)Biochim.Biophys.Acta 1054: 267-284(この文献は参照によりそのまま本明細書に組み込まれる)。
好ましい実施形態として、以下のカゼインキナーゼIIリン酸化部位ポリペプチドは、本発明に包含される:LVPVYSFGENDIFR(配列番号4)、QRLHPTEEEVNHYH(配列番号5)、および/またはHALYMTALEQLFEE(配列番号6)。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明は、本明細書の他の項で説明する免疫原エピトープおよび/または抗原エピトープとしての、このカゼインキナーゼIIリン酸化部位ポリペプチドの使用も包含する。
Motifアルゴリズム(Genetics Computer Group,Inc.)により、MGAT3ポリペプチドは1つの糖鎖付加部位を含むことが示されている。本明細書でさらに詳しく論じるように、タンパク質の糖鎖付加は、タンパク質フォールディングの強化、タンパク質凝集の阻害、細胞小器官への細胞内輸送の調節、タンパク質分解に対する耐性の増加、タンパク質抗原性の調整、および細胞間接着の媒介を含む様々な機能を果たすと考えられる。
アスパラギン糖鎖付加部位は以下のコンセンサスパターンを持つ:N-(P)(S,T)-(P)[式中、Nは糖鎖付加部位を表す]。しかし、潜在的N-糖鎖付加部位がコンセンサス配列Asn-Xaa-Ser/Thrに特異的であることはよく知られている。しかし、N-糖鎖付加の調節にはタンパク質のフォールディングが重要な役割を果たすので、アスパラギン残基が糖鎖付加されると結論するには、コンセンサストリペプチドの存在だけでは十分でない。AsnとSer/Thrとの間にプロリンが存在するとN-糖鎖付加が阻害されることが示されている。糖鎖付加部位に関する最近の統計解析は、これを裏付けると共に、Ser/ThrのC末端側にプロリンを持つ部位の約50%は糖鎖付加されないことも示している。アスパラギン糖鎖付加に関する追加情報は、参照により本明細書に組み込まれる以下の文献を参照すれば見いだすことができる:Marshall R.D.(1972)Annu.Rev.Biochem.,41: 673-702、Pless D.D.,Lennarz W.J.(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A. 74: 134-138、Bause E.(1983)Biochem.J. 209: 331-336、Gavel Y.,von Heijne G.(1990)Protein Eng.,3: 433-442、およびMiletich J.P.,Broze G.J.Jr.(1990)J.Biol.Chem.,265: 11397-11404。
好ましい実施形態として、以下のアスパラギン糖鎖付加部位ポリペプチドは、本発明に包含される:TGFLCNFSTESNGF(配列番号3)。このポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明は、本明細書の他の項で説明する免疫原エピトープおよび/または抗原エピトープとしての、このMGAT3アスパラギン糖鎖付加部位ポリペプチドの使用も包含する。
MGAT3ポリペプチドは5つのN-ミリストイル化部位を含むことが、Motifアルゴリズム(Genetics Computer Group,Inc.)を使って予想された。かなりの数の真核タンパク質が、そのN末端残基へのアミド結合を介したミリスチン酸(C14飽和脂肪酸)の共有結合付加によってアシル化される。この修飾を担う酵素ミリストイルCoA:タンパク質N-ミリストイルトランスフェラーゼ(NMT)の配列特異性は、既知のN-ミリストイル化タンパク質の配列および合成ペプチドを使った研究から導き出されている。その特異性は以下のとおりであると思われる:i)N末端残基はグリシンでなければならない、ii)2位には非荷電残基が許される、iii)荷電残基、プロリンおよび大きい疎水性残基は許されない、iv)3位および4位には、全ての残基ではないにしても、ほとんどの残基が許される、v)5位には、小さい非荷電残基が許される(Ala、Ser、Thr、Cys、AsnおよびGly)。セリンが好まれる、そしてvi)6位には、プロリンは許されない。
N-ミリストイル化のコンセンサスパターンは次のとおりである:G-(E,D,R,K,H,P,F,Y,W)x2(S,T,A,G,C,N)-(P)[式中、「x」は任意のアミノ酸を表し、GはN-ミリストイル化部位である]。
N-ミリストイル化部位に特有の追加情報は、以下の刊行物を参照すれば見いだすことができる:Towler D.A.ら(1988)Annu.Rev.Biochem. 57: 69-99(1988)およびGrand R.J.A.(1989)Biochem.J. 258: 625-638(これらの文献は参照によりそのまま本明細書に組み込まれる)。
好ましい実施形態として、以下のN-ミリストイル化部位ポリペプチドは、本発明に包含される:MGVATTLQPPTT(配列番号7)、DTPNQGGRRSEWIRNR(配列番号8)、GAHPHGIMCTGFLCNF(配列番号9)、VIMVGGAHEALYSVPG(配列番号10)、IFWGRGLFSATSWGLL(配列番号11)、および/またはHKESCGVPASTCLTFI(配列番号12)。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明は、本明細書の他の項で説明する免疫原エピトープおよび/または抗原エピトープとしての、これらN-ミリストイル化部位ポリペプチドの使用も包含する。
本発明は、MGAT3ポリペプチドの免疫原エピトープおよび/または抗原エピトープも包含する。
MGAT3は推定グリセロールリン脂質ドメイン(GenBankアクセッション番号PS50239、Coleman,R.A.ら(1978)J.Biol.Chem.,253(20): 7256-61)を含んでいる。これは、図1Aでは太字で示されており、好ましくはアミノ酸F152〜アミノ酸R239付近である。
本発明は、種ホモログ、対立遺伝子変異体および/またはオルソログも提供する。当業者は、本明細書に開示する配列またはATCCに寄託されたクローンから得られる配列に依拠して、当技術分野で周知の手法を使って、配列番号1、配列番号2または少なくとも1つの寄託クローンに対応する遺伝子の完全長遺伝子(完全長コード領域を含むが、これに限定されない)、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、オルソログおよび/または種ホモログを取得することができるだろう。例えば、本明細書に記載する配列の5'領域、3'領域、または内部領域に対応する適切なプローブまたはプライマーを作製し、対立遺伝子変異体および/または所望するホモログに適した核酸源をスクリーニングすることにより、対立遺伝子変異体および/または種ホモログを単離し、同定することができる。
本発明のポリペプチドは任意の適切な方法で製造することができる。そのようなポリペプチドには、単離された天然ポリペプチド、組換え生産されたポリペプチド、合成的に製造されたポリペプチド、またはこれらの方法を組み合わせて製造されたポリペプチドが包含される。そのようなポリペプチドを製造する手段は、当技術分野ではよく知られている。
本ポリペプチドはタンパク質の形態をとるか、または、さらに大きいタンパク質(例えば融合タンパク質)の一部であることができる。分泌配列もしくはリーダー配列、プロ配列、または精製を助ける配列(例えば複数のヒスチジン残基)を含有する追加アミノ酸配列、あるいは組換え生産中の安定性を得るための追加配列を含めると、有利である場合が多い。
本発明のポリペプチドは好ましくは単離された形で提供され、そして好ましくは実質的に精製される。組換え生産型のポリペプチドは、本明細書に記載する技術または当技術分野で知られる他の技術を使って(例えばSmithおよびJohnson,Gene 67: 31-40(1988)に記載されている一段階法などによって)、実質的に精製することができる。本発明のポリペプチドは、本明細書に記載するプロトコールまたは当技術分野で知られる他のプロトコール(例えば完全長型タンパク質に対して産生させた本発明の抗体など)を使って、天然、合成または組換え供給源から精製することもできる。
本発明は、本明細書に開示する本発明のポリヌクレオチドの配列に相補的な配列を持つポリヌクレオチドを包含する。そのような配列は、配列番号1として開示する配列、寄託物に含まれる配列、および/または配列番号2として開示する配列をコードする核酸に相補的であることができる。
本発明は、本明細書に記載するポリヌクレオチドに、好ましくはストリンジェンシーの低い条件下で、より好ましくはストリンジェントな条件下で、最も好ましくは高度にストリンジェントな条件下で、ハイブリダイズする能力を持つポリヌクレオチドも包含する。ストリンジェンシー条件の例を下記表1に示す。高度にストリンジェントな条件は、例えば条件A〜Fと少なくとも同程度にストリンジェントな条件であり、ストリンジェントな条件は、例えば条件G〜Lと少なくとも同程度にストリンジェントであり、ストリンジェンシーの低い条件は、例えば条件M〜Rと少なくとも同程度にストリンジェントである。
Figure 2006518997

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‡:「ハイブリッド長」とは、ハイブリッド形成ポリヌクレオチドのハイブリダイズ領域について予想される長さである。配列未知のポリヌクレオチドをハイブリダイズさせる場合、そのハイブリッドは、本発明のハイブリッド形成ポリヌクレオチドのハイブリッドであると仮定する。配列既知のポリヌクレオチドをハイブリダイズさせる場合は、ポリヌクレオチドの配列を整列して、最適な配列相補性を持つ1以上の領域を同定することにより、ハイブリッド長を決定することができる。2以上のポリヌクレオチド配列を整列する方法および/または2つのポリヌクレオチド間の一致率を決定する方法は、当技術分野ではよく知られている(例えばDNAStarプログラムスイートのMegAlignプログラムなど)。
†:ハイブリダイゼーションバッファーおよび洗浄バッファー中のSSC(1×SSCは0.15M NaClおよび15mMクエン酸ナトリウムである)は、SSPE(1×SSPEは0.15M NaCl、10mM NaH2PO4、および1.25mM EDTA、pH7.4)で置き換えることができる。ハイブリダイゼーションが完了した後、洗浄を15分間行なう。ハイブリダイゼーション液および洗浄液は、さらに5×デンハート試薬、0.5〜1.0%SDS、100μg/ml変性断片化サケ精子DNA、0.5%ピロリン酸ナトリウム、および50%までのホルムアミドを含みうる。
Tb〜Tr:長さが50塩基対未満と予想されるハイブリッドの場合は、ハイブリダイゼーション温度を、そのハイブリッドの融解温度Tmより5〜10℃低くするべきであり、その場合、Tmは次の等式に従って決定される。長さが18塩基対未満のハイブリッドの場合は、Tm(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)。長さが18塩基対〜49塩基対のハイブリッドの場合は、Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na])+0.41(%G+C)-(600/N)[式中、Nはハイブリッド中の塩基数であり、[Na]はハイブリダイゼーションバッファー中のナトリウムイオン濃度(1×SSCの場合[Na]=0.165M)である。
±:本発明は、PNAまたは修飾ポリヌクレオチドによる、任意の1以上のDNAまたはRNAハイブリッドパートナーの置換を包含する。そのような修飾ポリヌクレオチドは当技術分野では既知であり、本明細書には項を改めてさらに詳しく説明する。
ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションに関するストリンジェンシー条件のさらなる例は、参照により本明細書に組み込まれるSambrook,J.,E.F.FritschおよびT.Maniatis「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」(1989,Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)の第9章および第11章、ならびにF.M.Ausubelら編「Current Protocols in Molecular Biology」(1995,John Wiley and Sons,Inc.)の2.10節および6.3〜6.4節などに記載されている。
このようなハイブリッド形成ポリヌクレオチドは、それらがハイブリダイズする本発明のポリペプチドと少なくとも70%の配列一致度(より好ましくは少なくとも80%の一致度、最も好ましくは少なくとも90%または95%の一致度)を持つことが好ましく、配列一致度は、オーバーラップおよび一致度が最大になると同時に配列ギャップが最小になるように整列させた時のハイブリッド形成ポリヌクレオチドの配列を比較することによって決定される。一致度の決定は当技術分野では周知であり、本明細書では項を改めてさらに詳しく説明する。
本発明は、本発明のポリヌクレオチド配列、ATCCに寄託されたクローン、および/または本発明のポリペプチドをコードするcDNAに対する、PCR法の応用を包含する。核酸を増幅するためのPCR技術は米国特許第4,683,195号およびSaikiら,Science,239:487-491(1988)に記載されている。PCRは例えば以下のステップを含みうる:テンプレート核酸の変性(二本鎖の場合)、標的に対するプライマーのアニーリング、および重合。増幅反応でプローブされる核酸またはテンプレートとして使用される核酸は、ゲノムDNA、cDNA、RNA、またはPNAであることができる。PCRは、ゲノムDNA中の特定配列、特定のRNA配列、および/またはmRNAから転写されたcDNAを増幅するために使用することができる。具体的な方法パラメーターを含むPCR技術の一般使用法に関する参考書には、例えばMullisら,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.,51: 263(1987)、Ehrlich編「PCR Technology」(Stockton Press,ニューヨーク,1989)、Ehrlichら(1991)Science,252: 1643-1650、およびInnisら編「PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications」(Academic Press,ニューヨーク,1990)などがある。
本発明は、配列番号2のポリペプチド配列、配列番号1として記載するポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、および/または少なくとも1つの寄託クローン中のcDNAによってコードされるポリペプチド配列を含むポリペプチドの成熟型、あるいは同ポリペプチド配列からなるポリペプチドの成熟型も包含する。本発明は、本発明の成熟型をコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号1のポリヌクレオチド、および/または少なくとも1つの寄託クローンのcDNA中に提供されるポリヌクレオチド配列なども包含する。
シグナル仮説によれば、真核細胞によって分泌されるタンパク質はシグナル配列または分泌リーダー配列を持ち、この配列は、成長中のタンパク質鎖が粗面小胞体を横切って輸出され始めると、成熟タンパク質から切り離される。ほとんどの真核細胞は同じ特異性で分泌タンパク質を切断する。しかし、分泌タンパク質の切断が完全には均一でないために、あるタンパク質の成熟分子種が2以上生じる場合もある。さらに、分泌タンパク質の切断特異性は、最終的には、完全なタンパク質の一次構造によって決まること、すなわちそのポリペプチドのアミノ酸配列に固有であることが、古くから知られている。
あるタンパク質がシグナル配列を持つかどうかを予測する方法ならびにその配列の切断点を予測する方法を利用することができる。例えば、McGeoch,Virus Res. 3: 271-286(1985)の方法では、完全(未切断)タンパク質の短いN末端荷電領域およびそれ以降の非荷電領域から得られる情報を利用する。von Heinje,Nucleic Acids Res. 14: 4683-4690(1986)の方法では切断部位周辺の残基、典型的には残基-13〜+2(+1は分泌タンパク質のアミノ末端を示す)から得られる情報を利用する。これらの各方法では、既知哺乳類分泌タンパク質の切断点の予測精度は、75〜80%の範囲にある(von Heinje,前掲)。しかし、ある与えられたタンパク質に関して、これら2つの方法によって予想される切断点は、常に同じというわけではない。
シグナル配列の位置およびそれらの切断部位を同定するための確立された方法は、Henrik Nielsenら,Protein Engineering 10: 1-6(1997)によって開発されたSignalPプログラム(v1.1)であった。このプログラムは、予測精度を上げるための追加パラメーターが用意されているものの、von Heinjeが開発したアルゴリズムに依拠している。
最近になって、隠れマルコフモデルが開発され(H.Neilsonら,Ismb 1998; 6: 122-30)、最近のSignalP(v2.0)には、このモデルが組み込まれている。この新しい方法は、シグナルペプチドと未切断シグナルアンカーとを識別することによって、切断部位同定能力を高める。本発明は、本明細書に開示する方法を、本発明の任意のポリペプチド配列に応用して、切断部位を含むシグナルペプチド位置を予測することを包含する。
しかし、当業者には理解されるであろうように、切断部位は生物ごとに異なる場合があり、絶対確実な予測をすることはできない。したがって、本発明のポリペプチドは、シグナル配列を含有する可能性がある。シグナル配列を含む本発明のポリペプチドは、予想切断点の5残基以内(すなわち±5残基、好ましくは−5、-4、-3、-2、-1、+1、+2、+3、+4、または+5残基)で始まるN末端を持つ。同様に、分泌タンパク質からのシグナル配列の切断は完全には均一でないので、2以上の分泌種が生じる場合があることも理解される。これらのポリペプチドおよびそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本発明に包含される。
さらに、上記の解析によって同定されるシグナル配列は、必ずしも天然のシグナル配列を予測していないかもしれない。例えば、天然のシグナル配列は、予想シグナル配列のさらに上流にあるかも知れない。しかし予想シグナル配列は分泌タンパク質をERに導く能力をおそらく持っているだろう。それでもなお、本発明は、哺乳類細胞(例えば後述のCOS細胞)における配列番号1のポリヌクレオチド配列および/または少なくとも1つの寄託クローンのcDNAに含まれるポリヌクレオチド配列の発現によって生成する成熟タンパク質を提供する。本発明では、これらのポリペプチドおよびそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが考えられる。
本発明は、本明細書の配列番号1に開示するポリヌクレオチド配列、その相補鎖、および/または少なくとも1つの寄託クローンに含まれるcDNA配列の変異体(例えば対立遺伝子変異体、オルソログなど)も包含する。
本発明は、配列番号2に開示するポリペプチド配列および/またはその断片、配列番号1のポリヌクレオチド配列がコードするポリペプチド、および/または少なくとも1つの寄託クローン中のcDNAがコードするポリペプチドの変異体も包含する。
「変異体」とは、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドとは異なるが、その基本的性質は保持しているポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。一般に、変異体は、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドに、全体として酷似しており、多くの領域で同一である。
したがって、本発明の一態様は、(a)配列表に示すアミノ酸配列を持つMGAT3関連ポリペプチドをコードする、配列番号1に記載のヌクレオチド配列、または2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるcDNA、(b)配列表に示すアミノ酸配列を持つ成熟MGAT3関連ポリペプチドをコードする、配列番号1に記載のヌクレオチド配列、または2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるcDNA、(c)配列表に示すアミノ酸配列を持つMGAT3関連ポリペプチドの生物学的に活性な断片をコードする、配列番号1に記載のヌクレオチド配列、または2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるcDNA、(d)配列表に示すアミノ酸配列を持つMGAT3関連ポリペプチドの抗原性断片をコードする、配列番号1に記載のヌクレオチド配列、または2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるcDNA、(e)配列番号1に含まれるヒトcDNAプラスミドまたは2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるcDNAがコードする完全アミノ酸配列を含むMGAT3関連ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、(f)配列番号1に含まれるヒトcDNAプラスミドまたは2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるcDNAがコードするアミノ酸配列を持つ成熟MGAT3関連ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、(g)配列番号1に含まれるヒトcDNAプラスミドまたは2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるcDNAがコードするアミノ酸配列を持つMGAT3関連ポリペプチドの生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列、(h)配列番号1に含まれるヒトcDNAプラスミドまたは2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるcDNAがコードするアミノ酸配列を持つMGAT3関連ポリペプチドの抗原性断片をコードするヌクレオチド配列、(i)上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、または(h)に記載のヌクレオチド配列のいずれかに相補的なヌクレオチド配列、からなる群より選択されるヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドを含む、あるいは同ポリヌクレオチドからなる、単離された核酸分子を提供する。
本発明は、例えば上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、または(h)に記載のヌクレオチド配列のいずれかと、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%一致するポリヌクレオチド配列を含む、あるいは同ポリヌクレオチド配列からなる、ポリヌクレオチド配列にも向けられる。これらの核酸分子によってコードされるポリヌクレオチドも本発明に包含される。もう一つの実施形態として、本発明は、ストリンジェントな条件下で、あるいはストリンジェンシーの低い条件下で、上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、または(h)に記載のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、あるいは同ポリヌクレオチドからなる、核酸分子を包含する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、あるいはストリンジェンシーの低い条件下でこれらの核酸分子の相補鎖にハイブリダイズするポリヌクレオチドは、これらのポリペプチドがコードするポリペプチドと同様に、本発明に包含される。
本発明は、限定を意図しない以下の例と、少なくとも約80%、95%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%一致するアミノ酸配列を含む、あるいは同アミノ酸配列からなる、ポリペプチド配列を包含する:配列番号2として明記するポリペプチド配列、少なくとも1つの寄託クローン中に提供されるcDNAがコードするポリペプチド配列、および/または本明細書に記載するポリペプチドのいずれかのポリペプチド断片。これらの核酸分子がコードするポリヌクレオチドも、本発明に包含される。もう一つの実施形態として、本発明は、ストリンジェントな条件下で、あるいはストリンジェンシーの低い条件下で、上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、または(h)に記載のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、あるいは同ポリヌクレオチドからなる、核酸分子を包含する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、あるいはストリンジェンシーの低い条件下で、これらの核酸分子の相補鎖にハイブリダイズするポリヌクレオチドは、これらのポリペプチドがコードするポリペプチドと同様に、本発明に包含される。
本発明は、例えば配列番号2に示すポリペプチド配列、配列番号1のヌクレオチド配列がコードするポリペプチド配列、2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるcDNAがコードするポリペプチド配列、および/またはこれらポリペプチドのいずれかのポリペプチド断片(例えば本明細書に記載する断片)などと、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%一致するアミノ酸配列を含む、あるいは同アミノ酸配列からなる、ポリペプチドにも向けられる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、あるいはストリンジェンシーの低い条件下で、これらのポリペプチドをコードする核酸分子の相補鎖にハイブリダイズするポリヌクレオチドも、これらのポリヌクレオチドがコードするポリペプチドと同様に、本発明に包含される。
本発明の基準ヌクレオチド配列と少なくとも例えば95%「一致する」ヌクレオチド配列を持つ核酸とは、その核酸のヌクレオチド配列が、ポリペプチドをコードする基準ヌクレオチド配列の100ヌクレオチドにつき5つまでの割合で点突然変異を含みうる点以外は、基準配列と一致することを意味する。言い換えると、基準ヌクレオチド配列と少なくとも95%一致するヌクレオチド配列を持つ核酸を得るには、基準配列中のヌクレオチドの5%までを欠失させるか、別のヌクレオチドで置換することができ、あるいは基準配列中のヌクレオチド総数の5%までのヌクレオチド数を基準配列中に挿入することができる。
実際問題として、ある特定核酸分子または特定ポリペプチドが、本発明のヌクレオチド配列と少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%一致するかどうかは、常法により、既知のコンピュータープログラムを使って決定することができる。問い合わせ配列(本発明の配列)と対象配列との全体にわたる最適な一致を決定するための好ましい方法(グローバル配列アラインメントともいう)は、Higgins,D.G.ら,Computer Applications in the Biosciences (CABIOS),8(2): 189-191(1992)のアルゴリズムに基づくCLUSTALWコンピュータプログラム(Thompson,J.D.ら,Nucleic Acids Research,2(22): 4673-4680(1994))を使って決定することができる。配列アラインメントでは問い合わせ配列と対象配列はどちらもDNA配列である。RNA配列はUをTに変換することによって比較することができる。ただし、CLUSTALWアルゴリズムは、RNA配列をDNA配列と比較する場合には、自動的にUをTに変換する。このグローバル配列アラインメントの結果は一致率で表される。ペアワイズアラインメントによって一致率を計算するためにDNA配列のCLUSTALWアラインメントで使用される好ましいパラメーターは次のとおりである:行列(Matrix)=IUB、k-タプル(k-tuple)=1、トップ・ダイアゴナルの数(Number of Top Diagonals)=5、ギャップ・ペナルティ(Gap Penalty)=3、ギャップ・オープン・ペナルティ(Gap Open Penalty)=10、ギャップ・エクステンション・ペナルティ(Gap Extension Penalty)=0.1、スコアリング法(Scoring Method)=パーセント(Percent)、ウィンドウ・サイズ(Window Size)=5または対象ヌクレオチド配列の長さのどちらか短い方。多重アラインメントの場合は以下のCLUSTALWパラメータが好ましい:ギャップ・オープニング・ペナルティ(Gap Opening Penalty)=10、ギャップ・エクステンション・パラメータ(Gap Extension Parameter)=0.05、ギャップ・セパレーション・ペナルティ・レンジ(Gap Separation Penalty Range)=8、エンド・ギャップ・セパレーション・ペナルティ(End Gap Separation Penalty)=オフ(Off)、アラインメント・ディレイのための一致率(% Identity for Alignment Delay)=40%、残基特異的ギャップ(Residue Specific Gaps)=オフ、親水性残基ギャップ(Hydrophilic Residue Gap)=オフ、およびトランジション・ウェイティング(Transition Weighting)=0。上述したCLUSTALWに関するペアワイズアラインメントおよび多重アラインメントのパラメータは、AlignXソフトウェアプログラム(Vector NTIプログラムスイート、バージョン6.0)に用意されているデフォルトパラメータに相当する。
本発明は、内部欠失ではなく5'欠失または3'欠失が原因で、対象配列が問い合わせ配列よりも短い場合に、一致率の結果に手作業による補正を加えることを包含する。ローカルペアワイズ一致率だけが必要な場合は、手作業による補正は必要ない。しかし、手作業による補正を加えて、グローバルポリヌクレオチドアラインメントからグローバル一致率を決定してもよい。グローバルポリヌクレオチドアラインメントに基づく一致率の計算は好ましいことが多い。なぜならそれらは、局所的一致ポリヌクレオチドだけでなく、ポリヌクレオチド分子全体間の(すなわちオーバーラップしている領域だけでなく、ポリヌクレオチド突出部も含めた)一致率を反映するからである。CLUSTALWプログラムは一致率を計算する際に対象配列の5'トランケーションおよび3'トランケーションを考慮しないので、グローバル一致率の決定には、手作業による補正が必要である。問い合わせ配列と比較して5'末端または3'末端が欠けている対象配列の場合は、対象配列の5'側および3'側にあって一致/整列していない問い合わせ配列の塩基数を、問い合わせ配列の総塩基数のパーセントとして計算することによって、一致率を補正する。あるヌクレオチドが一致/整列しているかどうかは、CLUSTALW配列アラインメントの結果によって決定する。次に、このパーセンテージを、指定したパラメータを使って上記CLUSTALWプログラムによって計算された一致率から差し引くことにより、最終的な一致率スコアを得る。この補正されたスコアは本発明の目的に使用することができる。一致率スコアを手作業で調節する目的には、CLUSTALWアラインメントで表示した場合に問い合わせ配列と一致/整列していない、対象配列の5'塩基および3'塩基の外側にある塩基だけを計算する。
例えば、90塩基の対象配列を100塩基の問い合わせ配列と整列させて、一致率を決定する。欠失は対象配列の5'末端にあるため、CLUSTALWアラインメントは5'末端にある最初の10塩基の一致/整列を示さない。これら10個の不対塩基は配列の10%(5'末端および3'末端の非一致塩基数/問い合わせ配列中の塩基の総数)に相当するので、CLUSTALWプログラムによって計算された一致率スコアから、10%を差し引く。仮に残りの90塩基が完全に一致していたとすると、最終一致率は90%になるだろう。もう一つの例として、90塩基の対象配列を100塩基の問い合わせ配列と比較する。今度は、欠失が内部欠失であって、対象配列の5'側または3'側には、問い合わせ配列と一致/整列していない塩基はないものとする。この場合は、CLUSTALWによって計算された一致率を、手作業で補正しない。この場合も、対象配列の5'側および3'側にあって、問い合わせ配列と一致/整列していない塩基だけが、手作業による補正の対象となる。本発明の目的には、他の手作業による補正は必要ない。
本発明の問い合わせアミノ酸配列と少なくとも例えば95%「一致する」アミノ酸配列を持つポリペプチドとは、対象ポリペプチド配列が問い合わせアミノ酸配列の100アミノ酸につき5つまでの割合でアミノ酸変異を含みうる点以外は、対象ポリペプチドのアミノ酸配列が問い合わせ配列と一致することを意味する。言い換えると、問い合わせ配列と少なくとも95%一致するアミノ酸配列を持つポリペプチドを得るには、対象配列中のアミノ酸残基のアミノ酸残基の5%までを挿入したり、欠失させたり、または別のアミノ酸で置換したりすることができる。基準配列のこれらの変異は、基準アミノ酸配列のアミノ末端位もしくはカルボキシ末端位、またはこれら末端位間の任意の位置に、基準配列中の残基間に個別に点在するか、または基準配列内に1以上の連続的な群として存在しうる。
実際問題として、ある特定ポリペプチドが、例えば配列番号2に記載のアミノ酸配列または少なくとも1つの寄託クローンに含まれるcDNAによってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%一致するかどうかは、常法により、既知のコンピュータープログラムを使って決定することができる。問い合わせ配列(本発明の配列)と対象配列との全体にわたる最適な一致を決定するための好ましい方法(グローバル配列アラインメントともいう)は、Higgins,D.G.ら,Computer Applications in the Biosciences (CABIOS),8(2): 189-191(1992)のアルゴリズムに基づくCLUSTALWコンピュータプログラム(Thompson,J.D.ら,Nucleic Acids Research,2(22): 4673-4680(1994))を使って決定することができる。配列アラインメントでは問い合わせ配列と対象配列はどちらもアミノ酸配列である。このグローバル配列アラインメントの結果は一致率で表される。ペアワイズアラインメントによって一致率を計算するためにDNA配列のCLUSTALWアラインメントで使用される好ましいパラメーターは次のとおりである:行列(Matrix)=BLOSUM、k-タプル(k-tuple)=1、トップ・ダイアゴナルの数(Number of Top Diagonals)=5、ギャップ・ペナルティ(Gap Penalty)=3、ギャップ・オープン・ペナルティ(Gap Open Penalty)=10、ギャップ・エクステンション・ペナルティ(Gap Extension Penalty)=0.1、スコアリング法(Scoring Method)=パーセント(Percent)、ウィンドウ・サイズ(Window Size)=5または対象ヌクレオチド配列の長さのどちらか短い方。多重アラインメントの場合は以下のCLUSTALWパラメータが好ましい:ギャップ・オープニング・ペナルティ(Gap Opening Penalty)=10、ギャップ・エクステンション・パラメータ(Gap Extension Parameter)=0.05、ギャップ・セパレーション・ペナルティ・レンジ(Gap Separation Penalty Range)=8、エンド・ギャップ・セパレーション・ペナルティ(End Gap Separation Penalty)=オフ(Off)、アラインメント・ディレイのための一致率(% Identity for Alignment Delay)=40%、残基特異的ギャップ(Residue Specific Gaps)=オフ、親水性残基ギャップ(Hydrophilic Residue Gap)=オフ、およびトランジション・ウェイティング(Transition Weighting)=0。上述したCLUSTALWに関するペアワイズアラインメントおよび多重アラインメントのパラメータは、AlignXソフトウェアプログラム(Vector NTIプログラムスイート、バージョン6.0)に用意されているデフォルトパラメータに相当する。
本発明は、内部欠失ではなくN末端欠失またはC末端欠失が原因で、対象配列が問い合わせ配列よりも短い場合に、一致率の結果に手作業による補正を加えることを包含する。ローカルペアワイズ一致率だけが必要な場合は、手作業による補正は必要ない。しかし、手作業による補正を加えて、グローバルポリペプチドアラインメントからグローバル一致率を決定してもよい。グローバルポリペプチドアラインメントに基づく一致率の計算は好ましいことが多い。なぜならそれらは、局所的一致ポリペプチドだけでなく、ポリペプチド分子全体間の(すなわちオーバーラップしている領域だけでなく、ポリペプチド突出部も含めた)一致率を反映するからである。CLUSTALWプログラムは一致率を計算する際に対象配列のN末端トランケーションおよびC末端トランケーションを考慮しないので、グローバル一致率の決定には、手作業による補正が必要である。問い合わせ配列と比較してN末端およびC末端が欠けている対象配列の場合は、対象配列のN末端側およびC末端側にあって一致/整列していない問い合わせ配列の残基数を、問い合わせ配列の総塩基数のパーセントとして計算することによって、一致率を補正する。ある残基が一致/整列しているかどうかは、CLUSTALW配列アラインメントの結果によって決定する。次に、このパーセンテージを、指定したパラメータを使って上記CLUSTALWプログラムによって計算された一致率から差し引くことにより、最終的な一致率スコアを得る。この最終一致率スコアは、本発明の目的に使用しうるものである。一致率スコアを手作業で調節する目的には、対象配列のN末端側およびC末端側にあって、問い合わせ配列と一致/整列していない残基だけ、すなわち対象配列の最もN末端および最もC末端にある残基の外側にある問い合わせ残基位置だけを考慮する。
例えば、90アミノ酸残基の対象配列を100残基の問い合わせ配列と整列させて、一致率を決定する。欠失は対象配列のN末端にあるため、CLUSTALWアラインメントはN末端にある最初の10残基の一致/整列を示さない。これら10個の不対残基は配列の10%(N末端およびC末端の非一致残基数/問い合わせ配列中の総残基数)に相当するので、CLUSTALWプログラムによって計算された一致率スコアから、10%を差し引く。仮に残りの90残基が完全に一致していたとすると、最終一致率は90%になるだろう。もう一つの例として、90残基の対象配列を100残基の問い合わせ配列と比較する。今度は、欠失が内部欠失であって、対象配列のN末端側またはC末端側には、問い合わせ配列と一致/整列していない残基はないものとする。この場合は、CLUSTALWによって計算された一致率を、手作業で補正しない。この場合も、CLUSTALWアラインメトで表示した時に対象配列のN末端およびC末端より外側にあって、問い合わせ配列と一致/整列していない残基位置だけが、手作業による補正の対象となる。本発明の目的には、他の手作業による補正は必要ない。
2以上のポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列を整列し、整列した配列に関して一致率の値を得る上記の方法に加えて、場合によっては、整列させる配列の既知の構造上の特徴、例えば各配列に関するSWISS-PROT名などを考慮するCLUSTALWアルゴリズムの修正版を利用することが望ましいこともあるだろう。そのような修正版CLUSTALWアルゴリズムの結果は、2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列に関して、より正確な一致率の値を与えうる。そのようなCLUSTALWの修正版に関するサポートは、CLUSTALWアルゴリズム内に用意され、バイオインフォマティクスの当業者には容易に理解されるだろう。
変異体は、コード領域、非コード領域、またはその両者に改変を含むことができる。サイレントな置換、付加または欠失をもたらすが、コードされるポリペプチドの特性または活性を変化させない改変を含有するポリヌクレオチド変異体は、特に好ましい。遺伝コードの縮重ゆえにサイレントな置換によって生成するヌクレオチド変異体は好ましい。さらに、5〜10、1〜5、または1〜2個のアミノ酸が任意の組み合わせで置換、欠失または付加されている変異体も好ましい。ポリヌクレオチド変異体は、様々な理由で、例えばコドン発現をある特定宿主に最適化するため(mRNA中のコドンを大腸菌などの細菌宿主が好むコドンに変化させるため)に、製造することができる。
天然の変異体は「対立遺伝子変異体」と呼ばれ、ある生物のある染色体上の所定の座位を占める遺伝子のいくつかの代替的形態の一つを指す(Lewin,B.編「Genes II」John Wiley & Sons,ニューヨーク(1985))。これらの対立遺伝子変異体はポリヌクレオチドレベルおよび/またはポリペプチドレベルで異なることができ、それらは本発明に包含される。あるいは、突然変異誘発技術または直接合成によって、非天然変異体を製造してもよい。
タンパク質工学および組換えDNA技術の既知の方法を使って変異体を作製することにより、本発明のポリペプチドの特徴を改善または改変することができる。例えば、生物学的機能を実質的に喪失させることなく、1以上のアミノ酸を、本タンパク質のN末端またはC末端から欠失させることができる。Ronら,J.Biol.Chem. 268: 2984-2988(1993)の著者らは、3、8または27個のアミノ末端アミノ酸残基を欠失させた後でもヘパリン結合活性を持っている変異型KGFタンパク質を報告した。また、インターフェロンガンマは、このタンパク質のカルボキシ末端から8〜10個のアミノ酸残基を欠失させると、最高で10倍高い活性を示した(Dobeliら,J.Biotechnology 7: 199-216(1988))。
さらに、変異体が、多くの場合、天然タンパク質の生物学的活性と類似する生物学的活性を保っていることは、豊富な証拠によって証明されている。例えば、Gayleとその共同研究者ら(J.Biol.Chem.,268: 22105-22111(1993))は、ヒトサイトカインIL-1aの包括的な突然変異解析を行なった。彼らはランダム突然変異誘発法を使って、分子の全長にわたって1変異体あたり平均2.5個のアミノ酸が変化しているIL-1a突然変異体を3,500個以上作製した。考え得る全てのアミノ酸位置で、複数の突然変異を調べた。この研究者らは「この分子の大半は変化させても[結合活性または生物学的活性に]ほとんど影響がない」ことを見いだした。実際、調査した3,500を越えるヌクレオチド配列のうち、わずかに23種類のアミノ酸配列が、野生型とは有意に異なる活性を持つタンパク質をもたらすに過ぎなかった。
さらに、あるポリペプチドのN末端またはC末端から1以上のアミノ酸を欠失させることによって、1以上の生物学的機能の修飾または喪失がたとえ起こったとしても、他の生物学的活性は依然として保たれうる。例えば、タンパク質の残基の過半数未満をN末端またはC末端から除去しても、当該タンパク質を認識する抗体を誘導しそして/またはその抗体を結合するという欠失変異体の能力は、おそらく保たれるだろう。あるタンパク質のN末端残基またはC末端残基を欠く特定のポリペプチドがそのような免疫原活性を保っているかどうかは、本明細書に記載する常法や、当技術分野で知られている他の常法により、容易に決定することができる。
あるいは、そのような本発明ポリペプチドのN末端欠失またはC末端欠失は、実際には、ポリペプチドの生物学的活性の1以上を有意に増加させることもありうる。例えば、多くのポリペプチドの生物学的活性は、一端または両端にある調節ドメインの存在によって支配されている。そのような調節ドメインは、活性化事象(例えばコグネイトリガンドまたはコグネイト受容体への結合、リン酸化、タンパク質分解プロセシングなど)の代わりに、それらのポリペプチドの生物学的活性を効果的に阻害している。したがって、あるポリペプチドの調節ドメインを除去することにより、そのポリペプチドを、活性化事象の不在下で、効果的に、生物学的に活性な状態にすることができる。
したがって、本発明はさらに、実質的な生物学的活性を示すポリペプチド変異体を包含する。そのような変異体は、当技術分野で知られる一般則に従って、活性に対する影響がほとんど無いように選択される欠失、挿入、逆位、反復、および置換を含む。例えば、表現型上サイレントなアミノ酸置換の作製方法に関する指針はBowieら,Science 247: 1306-1310(1990)に記載されている。この文献で、著者らは、変化に対するアミノ酸配列の許容度を研究するには、2つの主要戦略があることを示している。
第1の戦略では、進化の過程で起こる自然淘汰によるアミノ酸置換の許容を利用する。異なる種のアミノ酸配列を比較することにより、保存されたアミノ酸を同定することができる。これらの保存されたアミノ酸は、タンパク質機能にとって、おそらく重要だろう。これに対し、自然淘汰が置換を許容しているアミノ酸位置は、これらの位置がタンパク質機能にとって不可欠ではないことを示している。したがって、アミノ酸置換を許容する位置は、そのタンパク質の生物学的活性を保ったまま、改変することができるだろう。
第2の戦略では、遺伝子工学を利用して、クローン化遺伝子の特定の位置にアミノ酸変異を導入することにより、タンパク質機能にとって重要な領域を同定する。例えば、部位指定突然変異誘発法またはアラニンスキャニング突然変異誘発法(分子中のあらゆる残基に単アラニン突然変異を導入する方法)を使用することができる(CunninghamおよびWells,Science 244: 1081-1085(1989))。次に、得られた突然変異体分子を、生物学的活性について試験することができる。
著者らが述べているように、これら2つの戦略により、タンパク質はアミノ酸置換に対して驚くほど寛容であることが明らかになった。さらに著者らは、タンパク質中のあるアミノ酸位置で、どのアミノ酸変異が許容されそうであるかも示している。例えば(タンパク質の三次元構造内に)埋没したアミノ酸残基は、そのほとんどが、無極性側鎖を必要とするが、表面側鎖の特徴は一般にほとんど保存されない。
本発明は、一致度は低いが十分な類似性を持つので本発明のポリペプチドが発揮する機能と同じ機能を1以上発揮するポリペプチドを包含する。類似性は保存的アミノ酸置換によって決定される。そのような置換は、ポリペプチド中の与えられたアミノ酸を、類似する特徴(例えば化学的性質)を持つ別のアミノ酸に置き換える置換である。前掲のCunninghamらによれば、そのような保存的置換は表現型上サイレントであると思われる。どのアミノ酸変化が表現型上サイレントでありそうかに関するさらなる指針は、Bowieら,Science 247: 1306-1310(1990)に記載されている。
本発明の許容される保存的アミノ酸置換には、脂肪族または疎水性アミノ酸Ala、Val、LeuおよびIle同士の置換、ヒドロキシル残基SerおよびThr同士の置換、酸性残基AspおよびGlu同士の置換、アミド残基AsnおよびGln同士の置換、塩基性残基Lys、ArgおよびHis同士の置換、芳香族残基Phe、TyrおよびTrp同士の置換、ならびに小サイズアミノ酸Ala、Ser、Thr、MetおよびGly同士の置換が含まれる。
さらに本発明は、下記表2に記載の保存的置換も包含する。
Figure 2006518997
上記の用途の他に、そのようなアミノ酸置換はタンパク質またはペプチドの安定性も増加させうる。本発明は、例えば、タンパク質配列またはペプチド配列中に1以上の非ペプチド結合(ペプチド結合の代わりをするもの)を含有するアミノ酸置換を包含する。また、天然のL-アミノ酸以外のアミノ酸残基、例えばD-アミノ酸または非天然アミノ酸もしくは合成アミノ酸、例えばβ-またはγ-アミノ酸を含む類似体も包含される。
一致度および類似度はどちらも、以下の刊行物を参照することにより、容易に計算することができる:Lesk,A.M.編「Computational Molecular Biology」(Oxford University Press,ニューヨーク,1988)、Smith,D.W.編「Biocomputing:Informatics and Genome Projects」(Academic Press,ニューヨーク,1993)、Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編「Informatics Computer Analysis of Sequence Data, Part 1」(Humana Press,ニュージャージー,1994)、von Heinje,G.「Sequence Analysis in Molecular Biology」(Academic Press,1987)ならびにGribskov,M.およびDevereux,J.編「Sequence Analysis Primer」(M Stockton Press,ニューヨーク,1991)。
さらに本発明は、あるアミノ酸置換が機能の保存をもたらす確率に基づいたアミノ酸の置換も包含する。そのような確率は、関連する機能を持つ複数の遺伝子を整列し、適正な遺伝子機能に対する各置換の相対的ペナルティーを評価することによって決定される。そのような確率はしばしば行列の形で記載され、いくつかのアルゴリズム(例えばBLAST、CLUSTALW、GAPなど)により、類似率の計算に利用される。この場合、類似度とは、機能の喪失を伴わずにあるアミノ酸を別のアミノ酸の代わりに使用することができる度合いを指す。そのような行列の一例はPAM250またはBLOSUM62行列である。
上記の、規範にかなった化学的に保存された置換だけでなく、本発明は、一般的には保存的置換に分類されないが、一定の状況では化学的に保存されていると言える置換も包含する。例えばプロテアーゼ類の酵素触媒作用の解析により、いくつかの酵素の活性部位内にある一定のアミノ酸は、活性部位のユニークな微小環境ゆえに、強い摂動を受けたpKaを持つ場合があることが示されている。pKaがそのような摂動を受けることにより、一部のアミノ酸は、酵素の構造と機能を保存したまま、他のアミノ酸の代わりを務めることができるようなる。摂動を受けたpKaを持つことが知られているアミノ酸の例は、リゾチームのGlu-35残基、キモトリプシンのIle-16残基、パパインのHis-159残基などである。機能の保存は、摂動を受けていない標準的なpKaと比較して、それらのアミノ酸が変則的なプロトン化または変則的な脱プロトン化を起こすことに関係する。pKaの摂動により、これらのアミノ酸は、酵素活性部位内のユニークなイオン化環境による一般酸塩基触媒作用に、積極的に参加することができるようになりうる。したがって、酵素の活性部位または活性キャビティの微小環境において、野生型のアミノ酸と同じ能力または類似する能力で一般酸または一般塩基として働くことができるアミノ酸による置換は、事実上保存的アミノ置換として役立つだろう。
保存的アミノ酸置換の他に、本発明の変異体には以下の物質も含まれるが、これらに限るわけではない:(i)1以上の非保存的アミノ酸残基による置換(置換アミノ酸残基は遺伝暗号によってコードされるものでも、遺伝暗号によってコードされないものでもよい)、または(ii)置換基を持つ1以上のアミノ酸残基による置換、または(iii)成熟ポリペプチドともう一つの化合物、例えばポリペプチドの安定性および/または溶解性を増加させる化合物(ポリエチレングリコールなど)との融合物、または(iv)ポリペプチドと追加アミノ酸、例えばIgG Fc融合領域ペプチド、またはリーダーもしくは分泌配列、または精製を容易にする配列などとの融合物。このような変異体ポリペプチドは、本明細書が教示する内容からして、当業者の技術範囲内であると考えられる。
例えば、荷電アミノ酸が他の荷電または中性アミノ酸で置換されているポリペプチド変異体は、改善された特徴を持つタンパク質、例えば凝集性が低下したタンパク質などをもたらしうる。医薬製剤の凝集は活性を低下させると共に、凝集物の免疫原活性により、クリアランスを増加させる(Pinckardら(1967)Clin.Exp.Immunol. 2: 331-340(1967)、Robbinsら,Diabetes 36: 838-845(1987)、Clelandら,Crit.Rev.Therapeutic Drug Carrier Systems 10: 307-377(1993))。
さらに本発明は、配列番号1として開示するポリヌクレオチド、寄託物に含まれる状態で提出されたクローンの配列、および/または配列番号2として開示するポリペプチドをコードするcDNAに、分子進化(「DNAシャフリング」)法を適用することによって作出されるポリペプチド変異体も包含する。そのようなDNAシャフリング技術は当技術分野では既知である。
本発明のさらにもう一つの実施形態は、少なくとも1つのアミノ酸置換を含有するが、含まれるアミノ酸置換が50個を越えない、より好ましくは含まれるアミノ酸置換が40個を越えない、より一層好ましくは含まれるアミノ酸置換が30個を越えない、さらに好ましくは含まれるアミノ酸置換が20個を越えないアミノ酸配列を持つ本発明のアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。もちろん、ペプチドまたはポリペプチドは、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個を越えない少なくとも1つのアミノ酸置換を含有する本発明のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を持つことが、極めて好ましく、その好ましさは上記の順に増加する。具体的実施形態として、本発明のアミノ酸配列またはその断片(例えば本明細書に記載する成熟型および/または他の断片)中の付加、置換および/または欠失の数は、1〜5、5〜10、5〜25、5〜50、10〜50、または50〜150であり、保存的アミノ酸置換が好ましい。
本発明は、本発明ポリヌクレオチドのポリヌクレオチド断片、ならびに前記ポリヌクレオチドおよび/または断片がコードしているポリペプチドに向けられる。
本発明において「ポリヌクレオチド断片」とは、少なくとも1つの寄託クローンに含まれる核酸配列の一部もしくは少なくとも1つの寄託クローン中のcDNAによってコードされているポリペプチドをコードする核酸配列の一部である核酸配列、または配列番号1に示す核酸配列の一部もしくは配列番号1の相補鎖の一部である核酸配列、または配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の一部である核酸配列、を持つ短いポリヌクレオチドを指す。本発明のヌクレオチド断片は好ましくは少なくとも約15nt、より好ましくは少なくとも約20nt、さらに好ましくは少なくとも約30nt、より一層好ましくは少なくとも約40nt、少なくとも約50nt、少なくとも約75nt、または少なくとも約150ntの長さである。例えば「少なくとも20nt長」の断片とは、少なくとも1つの寄託クローンに含まれるcDNA配列または配列番号1に示すヌクレオチド配列から選択される20個以上の連続する塩基を含むものとする。この場合、「約」は、具体的に記載した値、および一端または両端が数ヌクレオチド(5、4、3、2、または1ヌクレオチド)大きいまたは小さい値を包含する。これらのヌクレオチド断片は、本明細書で論じる診断プローブおよびプライマーとしての用途を含む(ただしこれらに限らない)用途を持っている。もちろん、さらに大きい断片(例えば50、150、500、600、2000ヌクレオチド)は好ましい。
構造ドメインまたは機能ドメインによって特徴づけられるポリペプチドおよびポリヌクレオチド断片、例えばアルファヘリックスおよびアルファヘリックス形成領域、ベータシートおよびベータシート形成領域、ターンおよびターン形成領域、コイルおよびコイル形成領域、親水性領域、疎水性領域、アルファ両親媒性領域、ベータ両親媒性領域、可撓領域、表面形成領域、基質結合領域、および高抗原指数(high antigenic index)領域を含む断片なども好ましい。保存されたドメインに含まれる配列番号2のポリペプチド断片は、特に、本発明に包含される。さらに、これらのドメインをコードするポリヌクレオチドも考えられる。
他の好ましいポリペプチド断片は、生物学的に活性な断片である。生物学的に活性な断片は、本発明のポリペプチドと類似する活性であるが必ずしも同一ではない活性を示す断片である。断片の生物学的活性は、改善された望ましい活性、または低下した望ましくない活性を含みうる。これらのポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチドも、本発明に包含される。
好ましい実施形態として、本発明のポリヌクレオチド断片によってコードされるポリペプチドが示す機能的活性は、本発明の完全長ポリペプチドに典型的に付随する1以上の生物学的活性でありうる。これらの生物学的活性の具体例としては、完全長タンパク質に結合する抗体と同じ抗体の少なくとも1つに結合する断片の能力、完全長タンパク質に結合するタンパク質と同じタンパク質の少なくとも1つと相互作用する断片の能力、完全長タンパク質が誘発する免疫応答と同じ免疫応答の少なくとも1つを誘発する断片の能力(すなわち同じエピトープに特異的な抗体を免疫系に生成させる能力など)、完全長タンパク質が結合するポリヌクレオチドと同じポリヌクレオチドの少なくとも1つに結合する断片の能力、完全長タンパク質のリガンドに結合する断片の能力、および完全長タンパク質と多量体を形成する断片の能力などが挙げられる。しかし、一部の断片が、完全長タンパク質の生物学的活性とは直接的には関係のない望ましい生物学的活性を持ちうることも、当業者には理解されるだろう。本発明のポリペプチド(その断片、変異体、誘導体および類似体を含む)の機能的活性は、当業者が利用できる数多くの方法によって決定することができ、その一部については、本明細書に項を改めて説明する。
本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を持つポリペプチドのエピトープ、または2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれるポリヌクレオチド配列がコードするポリペプチド配列のエピトープ、または上に定義したストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下もしくはストリンジェンシーの低いハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1の配列の相補鎖または2002年6月12日および2002年11月14日にそれぞれ寄託されたATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の一方に含まれる配列の相補鎖にハイブリダイズするポリヌクレオチドがコードするポリペプチド配列のエピトープを含む、あるいは同エピトープからなる、ポリペプチドを包含する。さらに本発明は、本発明のポリペプチド配列のエピトープをコードするポリヌクレオチド配列(例えば配列番号1に開示する配列など)、本発明のエピトープをコードするポリヌクレオチド配列の相補鎖のポリヌクレオチド配列、および上に定義したストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下またはストリンジェンシーの低いハイブリダイゼーション条件下で、前記相補鎖にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列も包含する。
本明細書で使用する「エピトープ」という用語は、ポリペプチドのうち、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトにおいて、抗原活性または免疫原活性を持つ部分を指す。好ましい態様として、本発明は、エピトープを含むポリペプチド、ならびにそのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを包含する。本明細書で使用する「免疫原エピトープ」という用語は、タンパク質のうち、当技術分野で知られる任意の方法、例えば後述する抗体の作製方法によって決定した場合に、動物の体内で抗体応答をで誘発する部分と定義される(例えばGeysenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81: 3998-4002(1983)などを参照されたい)。本明細書で使用する「抗原エピトープ」という用語は、タンパク質のうち、当技術分野で周知の任意の方法、例えば本明細書に記載する免疫アッセイなどによって決定した場合に、抗体がその抗原を免疫特異的に結合できる部分と定義される。非特異的結合は免疫特異的結合から除外されるが、他の抗原との交差反応性は必ずしも免疫特異的結合から除外されない。抗原エピトープは必ずしも免疫原性である必要はない。
エピトープとして機能する断片は、任意の通常手段によって製造することができる(例えばHoughten,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82: 5131-5135(1985)などを参照されたい。米国特許第4,631,211号にはさらに詳しく記載されている)。
本発明では、抗原エピトープは、好ましくは少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、より好ましくは少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、最も好ましくは約15〜約30個の一続きのアミノ酸を含有する。免疫原エピトープまたは抗原エピトープを含む好ましいポリペプチドは、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100アミノ酸残基またはそれ以上の長さである。非排他的な他の好ましい抗原エピトープとしては、本明細書に開示する抗原エピトープ、ならびにその一部分が挙げられる。抗原エピトープは、例えば、そのエピトープを特異的に結合する抗体(モノクローナル抗体を含む)を産生させるのに役立つ。好ましい抗原エピトープとしては、本明細書に開示する抗原エピトープ、ならびに2、3、4、5個またはそれ以上のこれら抗原エピトープの任意の組み合わせが挙げられる。抗原エピトープは免疫アッセイにおける標的分子として使用することができる(例えばWilsonら,Cell 37: 767-778(1984)、Sutcliffeら,Science 219: 660-666(1983)を参照されたい)。
同様に、免疫原エピトープを使って、当技術分野で周知の方法により、抗体を誘導することもできる(例えばSutcliffeら,前掲、Wilsonら,前掲、Chowら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82: 910-914、およびBittleら,J.Gen.Virol. 66: 2347-2354(1985)を参照されたい)。好ましい免疫原エピトープとしては、本明細書に開示する免疫原エピトープ、ならびに2、3、4、5個またはそれ以上のこれら免疫原エピトープの任意の組み合わせが挙げられる。抗体応答を誘発するには、1以上の免疫原エピトープを含むポリペプチドを、アルブミンなどの担体タンパク質と共に、動物系(ウサギまたはマウスなど)に提示することができ、ポリペプチドが十分な長さ(少なくとも約25アミノ酸)を持つのであれば、そのポリペプチドを担体なしで提示することもできる。しかし、8〜10アミノ酸しか含まない免疫原エピトープでも、最低限、(例えばウェスタンブロット法などで)変性ポリペプチド中の線状エピトープに結合する能力を持つ抗体を産生させるのには、十分であることが示されている。
本発明のエピトープ保有ポリペプチドは、例えばインビボ免疫法、インビトロ免疫法、ファージディスプレイ法などを含む当技術分野で周知の方法に従って抗体を誘導するために使用することができる。例えばSutcliffeら,前掲、Wilsonら,前掲、およびBittleら,J.Gen.Virol.,66: 2347-2354(1985)を参照されたい。インビボ免疫法を使用する場合は、動物を遊離のペプチドで免疫してもよいが、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)または破傷風トキソイドなどの高分子担体にペプチドをカップリングすることによって、抗ペプチド抗体価を増強することもできる。例えばシステイン残基を含有するペプチドは、マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)などのリンカーを使って担体にカップリングすることができ、他のペプチドは、より一般的な連結剤(グルタルアルデヒドなど)を使って担体にカップリングすることができる。ウサギ、ラットおよびマウスなどの動物を、遊離のペプチドまたは担体とカップリングしたペプチドで、例えば約100μgのペプチドまたは担体タンパク質とフロイントアジュバントまたは免疫応答を刺激することで知られている他の任意のアジュバントとを含むエマルジョンの腹腔内および/または皮内注射などによって、免疫する。例えば固体表面に吸着させた遊離のペプチドを使用するELISAアッセイなどによって検出することができる有用な力価の抗ペプチド抗体を得るには、数回の追加免疫注射を、例えば約2週間の間隔で行なう必要があるかもしれない。免疫した動物から得られる血清中の抗ペプチド抗体の力価は、例えば当技術分野で周知の方法に従って、固体支持体上のペプチドへの吸着などによる抗ペプチド抗体の選択と、選択された抗体の溶出とを行なうことによって、増加させることができる。
当業者には理解されるであろうように、そして上で論じたように、免疫原エピトープまたは抗原エピトープを含む本発明のポリペプチドは、他のポリペプチド配列に融合させることができる。例えば本発明のポリペプチドを免疫グロブリン(IgA、IgE、IgG、IgM)の定常ドメイン、またはその一部分(CH1、CH2、CH3またはその任意の組み合わせおよびその一部分)に融合して、キメラポリペプチドを得ることができる。そのような融合タンパク質は、精製を容易にしたり、生体内半減期が延ばしたりしうる。このことは、ヒトCD4ポリペプチドの最初の2つのドメインと、哺乳類免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の定常領域の様々なドメインとからなるキメラタンパク質に関して示されている。例えばEP394,827、Trauneckerら,Nature,331: 84-86(1988)などを参照されたい。上皮障壁を横切って起こる抗原の免疫系への送達の増進が、IgGまたはFc断片などのFcRn結合パートナーにコンジュゲートされた抗原(例えばインスリン)に関して、実証されている(例えばPCT公開WO96/22024およびWO99/04813参照)。IgG部分のジスルフィド結合ゆえにジスルフィドで連結された二量体構造を持つIgG融合タンパク質は、単量体型ポリペプチドまたはその断片だけの場合より、効率よく他の分子を結合および中和することも見いだされている。例えばFountoulakisら,J.Biochem.,270: 3958-3964(1995)を参照されたい。発現されたポリペプチドの検出および精製を助けるために、上記のエピトープをコードする核酸を、エピトープタグ(例えばヘマグルチニン(「HA」)タグまたはフラグ(flag)タグ)として、興味ある遺伝子と組換えることもできる。例えば、Janknechtらが記載した系では、ヒト細胞株中で発現させた非変性融合タンパク質を容易に精製することが可能である(Janknechtら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88: 8972-897)。この系では、興味ある遺伝子を、その遺伝子のオープンリーディングフレームが6つのヒスチジン残基からなるアミノ末端タグに翻訳時に融合されるように、ワクシニア組換えプラスミド中にサブクローニングする。このタグは当該融合タンパク質のマトリックス結合ドメインとして役立つ。この組換えワクシニアウイルスに感染させた細胞から得られる抽出物を、Ni2+ニトリロ酢酸-アガロースカラムに負荷し、ヒスチジンタグを持つタンパク質をイミダゾール含有バッファーで選択的に溶出させることができる。
遺伝子シャフリング、モチーフシャフリング、エクソンシャフリング、および/またはコドンシャフリング(これらを総称して「DNAシャフリング」という)の技術により、本発明のさらなる融合タンパク質を作製することができる。DNAシャフリングは本発明ポリペプチドの活性を調整するために使用することができ、そのような方法を使って、変化した活性を持つポリペプチドならびに当該ポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストを作製することができる。一般論としては、例えば、米国特許第5,605,793号、第5,811,238号、第5,830,721号、第5,834,252号および第5,837,458号、ならびにPattenら,Curr.Opinion Biotechnol. 8: 724-33(1997)、Harayama,Trends Biotechnol. 16(2): 76-82(1998)、Hanssonら,J.Mol.Biol. 287: 265-76(1999)、LorenzoおよびBlasco,Biotechniques 24(2): 308-13(1998)を参照されたい(これらの特許および刊行物は参照によりそのまま本明細書に組み込まれる)。一実施形態として、配列番号1に相当するポリヌクレオチドおよびこれらのポリヌクレオチドがコードするポリペプチドの改変を、DNAシャフリングによって達成することができる。DNAシャフリングでは、相同組換えまたは部位特異的組換えによって2以上のDNAセグメントを集合させて、ポリヌクレオチド配列中に変異を生成させる。もう一つの実施形態として、組換えに先だって、エラープローン(error-prone)PCR、ランダムヌクレオチド挿入、または他の方法によるランダム突然変異誘発処理にかけることにより、本発明のポリヌクレオチドまたはコードされているポリペプチドを変化させてもよい。もう一つの実施形態として、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの1以上の成分、モチーフ、セクション、部分、ドメイン、断片などを、1以上の異種分子の1以上の成分、モチーフ、セクション、部分、ドメイン、断片などと組換えてもよい。
本発明のさらなるポリペプチドは(特異的抗体-抗原結合をアッセイするための当技術分野で周知の免疫アッセイによって決定した場合に)配列番号2のポリペプチド、ポリペプチド断片もしくは変異体および/または本発明のエピトープを免疫特異的に結合する抗体およびT細胞抗原受容体(TCR)に関する。本発明の抗体には、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一価抗体、二重特異性抗体、ヘテロコンジュゲート(heteroconjugate)抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化またはキメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、F(ab')断片、Fab発現ライブラリーが産生する断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)、ならびに上述した抗体のエピトープ結合性断片などが含まれるが、これらに限るわけではない。本明細書で使用する「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原を免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を指す。本発明の免疫グロブリン分子は、どのタイプ(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、どのクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはどのサブクラスの免疫グロブリン分子であってもよい。さらに、「抗体」(Ab)または「モノクローナル抗体」(Mab)という用語は、完全な分子だけでなく、タンパク質に特異的に結合する能力を持つ抗体断片(例えばFabおよびF(ab')2断片など)も包含するものとする。FabおよびF(ab')2断片は完全な抗体のFc断片を欠き、完全な抗体よりも迅速に動物または植物の循環から消失すると共に、非特異的組織結合も少ないだろう(Wahlら,J.Nucl.Med. 24: 316-325(1983))。したがって、これらの断片は、FABまたは他の免疫グロブリン発現ライブラリーの産物と同様に、好ましい。さらに本発明の抗体には、キメラ、一本鎖およびヒト化抗体も包含される。
抗体は、最も好ましくは、本発明のヒト抗原結合性抗体断片であり、これには、例えばFab、Fab'およびF(ab')2、Fd、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、およびVLドメインまたはVHドメインを含む断片などが含まれる。一本鎖抗体を含む抗原結合性抗体断片は、可変領域を単独で、またはヒンジ領域、CH1、CH2およびCH3ドメインの全部もしくは一部と組み合わせて含みうる。また、可変領域とヒンジ領域、CH1、CH2およびCH3ドメインとの任意の組み合わせも含む抗原結合性断片も、本発明に包含される。本発明の抗体は、鳥および哺乳動物を含むどの動物に由来してもよい。抗体は、好ましくは、ヒト、ネズミ(例えばマウスおよびラット)、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリの抗体である。本明細書にいう「ヒト」抗体にはヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を持つ抗体が包含され、後述するように、そして例えばKucherlapatiらが米国特許第5,939,598号に記載しているように、ヒト免疫グロブリンライブラリーから単離された抗体、または1以上のヒト免疫グロブリンに関してトランスジェニックであって、内因性免疫グロブリンを発現させない動物から単離された抗体などが含まれる。
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性、またはそれ以上の多重特異性を持ちうる。多重特異性抗体は、本発明ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であるか、または本発明のポリペプチドと異種エピトープ(例えば異種ポリペプチドまたは固形支持材料など)との両方に特異的であることができる。例えばPCT公開WO93/17715、WO92/08802、WO91/00360、WO92/05793、Tuttら,J.Immunol. 147: 60-69(1991)、米国特許第4,474,893号、第4,714,681号、第4,925,648号、第5,573,920号、第5,601,819号、Kostelnyら,J.Immunol. 148: 1547-1553(1992)などを参照されたい。
本発明の抗体は、それらが認識するまたは特異的に結合する本発明ポリペプチドのエピトープまたはその一部分との関連で、説明または特定することができる。エピトープまたはポリペプチド部分は、本明細書に記載するように、例えばN末端位置およびC末端位置によって、もしくは連続するアミノ酸残基数で表したサイズによって特定するか、または表および図に列挙することができる。本発明の任意のエピトープまたはポリペプチドを特異的に結合する抗体を除外することもできる。したがって本発明は、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体を包含すると共に、それらの除外にも対応する。
本発明の抗体は、その交差反応性との関連で、説明または特定することもできる。本発明ポリペプチドの他のどの類似体、オルソログまたはホモログも結合しない抗体は、包含される。本発明のポリペプチドと少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、および少なくとも50%一致するポリペプチド(本明細書に記載する当技術分野で既知の方法を使って計算)を結合する抗体も、本発明に包含される。具体的実施形態として、本発明の抗体は、ヒトタンパク質のマウス、ラットおよび/またはウサギホモログおよびその対応するエピトープと交差反応する。本発明のポリペプチドとの一致度が(本明細書に記載する当技術分野で既知の方法で計算して)95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、および50%未満であるポリペプチドを結合しない抗体も、本発明に包含される。具体的一実施形態として、上記の交差反応性は、単一の特異抗原ポリペプチドもしくは特異免疫原ポリペプチド、または本明細書に開示する2、3、4、5個以上の特異抗原ポリペプチドおよび/または特異免疫原ポリペプチドの組み合わせに関する交差反応性である。さらに、(本明細書に記載の)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドがコードするポリペプチドを結合する抗体も、本発明に包含される。本発明の抗体は、本発明のポリペプチドに対するそれらの結合親和性との関連で、説明または特定することもできる。好ましい結合親和性としては、解離定数、すなわちKdが、5×10-2M、10-2M、5×10-3M、10-3M、5×10-4M、10-4M、5×10-5M、10-5M、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8M、10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、10-13M、5×10-14M、10-14M、5×10-15M、または10-15M未満であるものが挙げられる。
本発明は、競合的結合を決定するための当技術分野で既知の任意の方法、例えば本明細書に記載の免疫アッセイで決定した場合に、本発明のエピトープに対する抗体の結合を競合的に阻害する抗体も提供する。好ましい実施形態として、この抗体は、エピトープに対する結合を、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%、競合的に阻害する。
本発明の抗体は、本発明ポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用しうる。例えば本発明は、本発明ポリペプチドとの受容体/リガンド相互作用を部分的または完全に破壊する抗体を包含する。本発明の抗体は、好ましくは、本明細書に開示する抗原エピトープまたはその一部を結合する。本発明は、受容体特異抗体と、リガンド特異抗体を、どちらも特徴とする。本発明は、リガンド結合は妨げないが、受容体活性化を妨げる受容体特異抗体も特徴とする。受容体の活性化(すなわちシグナル伝達)は、本明細書に記載する技術または当技術分野で知られる他の技術によって決定することができる。例えば受容体活性化は、受容体またはその基質のリン酸化(例えばチロシンまたはセリン/スレオニン)を、免疫沈降とそれに続くウェスタンブロット解析とで(例えば上述のように)検出することによって、決定することができる。具体的実施形態として、リガンド活性または受容体活性を、当該抗体が存在しない場合の活性の少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%阻害する抗体を提供する。
本発明は、リガンド結合と受容体活性化の両方を妨げる受容体特異抗体、ならびに受容体-リガンド複合体を認識し、好ましくは未結合の受容体または未結合のリガンドを特異的に認識しない抗体も特徴とする。また、リガンドを結合してリガンドが受容体に結合するのを妨げる中和抗体、ならびにリガンドを結合することによって受容体活性化を妨げるが、リガンドが受容体を結合するのは妨げない抗体も、本発明に包含される。さらに、受容体を活性化する抗体も、本発明に包含される。これらの抗体は、例えば受容体の二量化を誘導することなどによって、受容体アゴニストとして作用しうる(すなわちリガンドが媒介する受容体活性化の生物学的活性の全部または一部を増強もしくは活性化しうる)。これらの抗体は、本明細書に開示する本発明ペプチドの特異的な生物学的活性を含む生物学的活性に関するアゴニスト、アンタゴニストまたはインバースアゴニストと特定することができる。例えばPCT公開WO96/40281、米国特許第5,811,097号、Dengら,Blood 92(6): 1981-1988(1998)、Chenら,Cancer Res. 58(16): 3668-3678(1998)、Harropら,J.Immunol. 161(4): 1786-1794(1998)、Zhuら,Cancer Res. 58(15): 3209-3214(1998)、Yoonら,J.Immunol. 160(7): 3170-3179(1998)、Pratら,J.Cell.Sci. 111(Pt2): 237-247(1998)、Pitardら,J.Immunol.Methods 205(2): 177-190(1997)、Liautardら,Cytokine 9(4): 233-241(1997)、Carlsonら,J.Biol.Chem. 272(17): 11295-11301(1997)、Tarymanら,Neuron 14(4): 755-762(1995)、Mullerら,Structure 6(9): 1153-1167(1998)、Bartunekら,Cytokine 8(1): 14-20(1996)を参照されたい(これらは全て参照によりそのまま本明細書に組み込まれる)。
本発明の抗体は、例えば、インビトロおよびインビボでの診断および治療方法を含む、本発明ポリペプチドの精製、検出およびターゲティングなど(ただしこれらに限らない)に使用することができる。例えば本抗体は、生物学的試料中の本発明ポリペプチドのレベルを定性的および定量的に測定するための免疫アッセイに役立つ。例えばHarlowら「Antibodies: A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2版,1988)を参照されたい(この刊行物は参照によりそのまま本明細書に組み込まれる)。
本発明の抗体は、単独で、または他の組成物と組み合わせて使用することができる。本抗体はさらに、異種ポリペプチドにN末端またはC末端で組換え的に融合するか、ポリペプチドまたは他の組成物に化学的に結合(共有結合および非共有結合によるコンジュゲーションを含む)することができる。例えば、本発明の抗体は、検出アッセイにおけるラベルとして有用な分子、および異種ポリペプチド、薬物、放射性核種または毒素などのエフェクター分子に、組換え的に融合またはコンジュゲートすることができる。例えばPCT公開WO92/08495、WO91/14438、WO89/12624、米国特許第5,314,995号、およびEP396,387を参照されたい。
本発明の抗体には、修飾された誘導体、すなわちその抗体が抗イディオタイプ応答を引き起こすのを妨げないような形で何らかのタイプの分子をその抗体に共有結合することによって修飾された誘導体が包含される。例えば抗体誘導体には、糖鎖付加、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などによって修飾されている抗体が含まれるが、これらに限るわけではない。数多くの化学修飾はいずれも、例えば特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などを含む(ただしこれらに限らない)既知の技術によって行なうことができる。さらに誘導体は、1以上の非古典的アミノ酸を含有してもよい。
本発明の抗体は、当技術分野で知られる任意の適切な方法によって製造することができる。
本発明の抗体はポリクローナル抗体を含みうる。ポリクローナル抗体の製造方法は当業者に知られている(Harlowら「Antibodies: A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2版,1988)および「Current Protocols」の第2章;これらの文献は参照によりそのまま本明細書に組み込まれる)。好ましい方法では、MGAT3タンパク質の調製物を製造し精製することにより、天然夾雑物を実質的に含まない状態にする。次に、高い比活性を持つポリクローナル抗血清が産生されるように、その調製物を動物に導入する。例えば、本発明のポリペプチドを様々な宿主動物、例えばウサギ、マウス、ラットなど(ただしこれらに限らない)に投与して、その抗原に特異的なポリクローナル抗体を含有する血清の産生を誘導することができる。本発明のポリペプチドの投与には、免疫剤と、所望によりアジュバントとを、1回以上注射する必要がありうる。免疫学的応答を増加させるために、宿主の種に応じて、様々なアジュバントを使用することができ、それらのアジュバントには、例えばフロイントの(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(bacille Calmette-Guerin)およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)などの潜在的に有用なヒトアジュバントなどがあるが、これらに限るわけではない。そのようなアジュバントも当技術分野ではよく知られている。本発明において「免疫剤」とは、本発明のポリペプチド(その断片、変異体および/または誘導体を含む)ならびに異種ポリペプチドとの融合物および本明細書に記載する他の形態のポリペプチドと定義しうる。
典型的には、免疫剤および/またはアジュバントを、複数の皮下または腹腔内注射によって、哺乳動物に注射するが、筋肉内注射および/または静脈内注射によって投与してもよい。免疫剤には、本発明のポリペプチドまたはその融合タンパク質もしくは変異体を含めることができる。ポリペプチドの性質(すなわち疎水性率、親水性率、安定性、正味の電荷、等電点など)に応じて、免疫する哺乳動物の体内で免疫原性を示すことが知られているタンパク質に免疫剤をコンジュゲートすることが有益であるかもしれない。そのようなコンジュゲーションには、本発明のポリペプチドと免疫原タンパク質との両方に対して、共有結合が形成されるように活性な化学官能基を誘導体化することによる化学的コンジュゲーション、または融合タンパク質に基づく方法もしくは当業者に知られる他の方法によるコンジュゲーションが含まれる。そのような免疫原タンパク質の例には、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、および大豆トリプシンインヒビターなどがあるが、これらに限るわけではない。免疫学的応答を増加させるために、宿主の種に応じて、様々なアジュバントを使用することができ、それらのアジュバントには、例えばフロイントの(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(bacille Calmette-Guerin)およびコリネバクテリウム・パルブムなどの潜在的に有用なヒトアジュバントがあるが、これらに限るわけではない。使用することができるアジュバントの他の例として、MPL-TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。免疫プロトコールは、当業者であれば、甚だしい実験を行なわなくても選択しうる。
本発明の抗体はモノクローナル抗体を含みうる。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、例えばKohlerおよびMilstein,Nature,256: 495(1975)ならびに米国特許第4,376,110号、Harlowら「Antibodies: A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2版,1988)、Hammerlingら「Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas」(Elsevier,ニューヨーク,563〜681頁,1981)、Koehlerら,Eur.J.Immunol. 6: 511(1976)、Koehlerら,Eur.J.Immunol. 6: 292(1976)に記載されているもの、または当業者に知られる他の方法を使って、製造することができる。モノクローナル抗体の製造に使用することができる方法の他の例として、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosborら,1983,Immunology Today 4: 72、Coleら,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80: 2026-2030)およびEBVハイブリドーマ技術(Coleら,1985,「Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy」(Alan R.Liss,Inc.)の77〜96頁)などが挙げられるが、これらに限るわけではない。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含むどの免疫グロブリンクラスであってもよく、そしてそれらのどのサブクラスであってもよい。本発明のmAbを産生するハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養することができる。インビボでは抗体価の高いmAbが産生されるので、現在のところ、これが好ましい製造方法になっている。
ハイブリドーマ法では、典型的には、マウス、ヒト化マウス、ヒト免疫系を持つマウス、ハムスターまたは他の適当な宿主動物を免疫剤で免疫することにより、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生する、または同抗体を産生する能力を持つ、リンパ球を誘導する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫してもよい。
免疫剤は、典型的には、本発明のポリペプチドまたはその融合タンパク質を含むだろう。好ましくは、免疫剤はMGAT3ポリペプチドからなり、より好ましくはMGAT3ポリペプチド発現細胞と一致する。そのような細胞は任意の適切な組織培養培地中で培養しうるが、10%ウシ胎仔血清(約56℃で不活化)を添加し、かつ約10g/lの非必須アミノ酸、約1,000U/mlのペニシリン、および約100μg/mlのストレプトマイシンを添加したアール変法イーグル培地で、細胞を培養することが好ましい。一般に、ヒト由来の細胞が望ましい場合は末梢血リンパ球(「PBL」)を使用し、非ヒト哺乳類細胞源が望ましい場合は脾細胞またはリンパ節細胞を使用する。次に、適当な融合剤、例えばポリエチレングリコールなどを使って、リンパ球を不死化細胞株と融合することにより、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding「Monoclonal Antibodies: Principles and Practice」(Academic Press,1986)の59〜103頁)。不死化細胞株は通常、形質転換哺乳類細胞、特に齧歯類、ウシおよびヒト由来の骨髄腫細胞である。通常はラットまたはマウスの骨髄腫細胞株が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは融合していない不死化細胞の成長または生存を阻害する1以上の物質を含有する適切な培養培地中で培養することができる。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を持っていない場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の成長を妨げる物質ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含むだろう(「HAT培地」)。
好ましい不死化細胞株は、効率よく融合し、選択した抗体産生細胞による抗体の安定な高レベル発現を支持し、HAT培地などの培地に対して感受性を示すものである。より好ましい不死化細胞株は、例えばSalk Institute Cell Distribution Center(カリフォルニア州サンディエゴ)およびAmerican Type Culture Collection(バージニア州マナッサス)などから入手することができるネズミ骨髄腫株である。ATCCから提供される親骨髄腫細胞株(SP2O)は、さらに好ましい。本明細書全体から推察されるように、ヒト骨髄腫細胞株およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の産生用として記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133: 3001(1984)、Brodeurら「Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications」(Marcel Dekker,Inc.,ニューヨーク,1987)の51〜63頁)。
次に、ハイブリドーマ細胞を培養している培養培地を、本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞が産生するモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降、または放射免疫アッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などのインビトロ結合アッセイによって決定する。そのような技術は当技術分野では知られており、当業者の技術範囲内である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunsonおよびPollart,Anal.Biochem.,107: 220(1980)のスキャッチャード解析などによって決定することができる。
望ましいハイブリドーマ細胞を同定した後、それらのクローンを限界希釈法によってサブクローニングし、標準的方法(Goding,前掲)によって、そして/またはWandsら(Gastroenterology 80: 225-232(1981))に従って、増殖させることができる。この目的に適した培養培地には、例えばダルベッコ変法イーグル培地およびRPMI-1640などがある。あるいは、ハイブリドーマ細胞をインビボで哺乳動物の腹水として増殖させてもよい。
サブクローンが分泌するモノクローナル抗体は、通常の免疫グロブリン精製法、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーなどによって、培養培地または腹水から単離または精製することができる。
当技術分野には様々なモノクローナル抗体製造法が存在するので、本発明がハイブリドーマにおけるそれらの製造だけに限定されないことは、当業者には理解されるだろう。例えば、モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載されているような組換えDNA法によって製造することができる。この場合、「モノクローナル抗体」という用語は、単一の真核クローン、ファージクローン、または原核クローンに由来する抗体を指す。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、通常の方法を使って(例えば、ネズミ抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子、またはヒト由来源、ヒト化由来源もしくは他の由来源から得られるそのような鎖をコードする遺伝子に、特異的に結合する能力を持つオリゴヌクレオチドプローブを使用することなどによって)、容易に単離し、配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい由来源として役立つ。DNAが単離されたら、それを発現ベクターに入れ、次にその発現ベクターを、本来なら免疫グロブリンタンパク質を産生しないサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞に導入して、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を達成することができる。また例えば、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を相同なネズミ配列の代わりに使用すること(米国特許第4,816,567号、Morrisonら,前掲)または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部または一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することなどによって、DNAを改変してもよい。そのような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに使用するか、またはキメラ二価抗体を作製するために本発明抗体の一方の抗原結合部位の可変ドメインの代わりに使用することができる。
抗体は一価抗体でありうる。一価抗体の製造方法は当技術分野では周知である。例えばある方法では、免疫グロブリン軽鎖および改変重鎖を組換え発現させる。重鎖は一般に、Fc領域中の任意の点で、重鎖の架橋が起こらないように切断される。別法として、架橋が起こらないように、関連システイン残基を別のアミノ酸残基に置き換えるか、または欠失させる。
インビトロ法も一価抗体の製造に適している。抗体の消化によるその断片、特にFab断片の製造は、当技術分野で知られる常法によって達成することができる。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え技術、およびファージディスプレイ技術の使用、またはそれらの組み合わせを含む、当技術分野で既知の多種多様な技術を使って、製造することができる。例えばモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術、例えばHarlowら「Antibodies: A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2版,1988)、Hammerlingら「Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas」(Elsevier,ニューヨーク,1981)の563〜681頁などに記載されている当技術分野で既知のハイブリドーマ技術を使って、製造することができる(前記の刊行物は参照によりそのまま本明細書に組み込まれる)。本明細書で使用する「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術によって製造される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、単一のクローン、例えば真核クローン、原核クローンまたはファージクローンなどに由来する抗体を指しているのであって、それを製造する方法を指しているのではない。
ハイブリドーマ技術を使って特異抗体を作製しスクリーニングする方法は、当技術分野では日常的かつ周知であり、本明細書では実施例で詳しく論じる。限定を意図しない例として、本発明のポリペプチドまたはそのようなペプチドを発現させる細胞で、マウスを免疫することができる。免疫応答が検出されたら、例えば抗原に特異的な抗体がマウスの血清に検出されたら、そのマウスの脾臓を収集し、脾細胞を単離する。次に、その脾細胞を、任意の適切な骨髄腫細胞、例えばATCCから入手することができる細胞株SP20由来の細胞に、周知の技術によって融合する。限界希釈法によってハイブリドーマを選択し、クローニングする。次に、当技術分野で知られる方法により、本発明のポリペプチドを結合する能力を持つ抗体を分泌する細胞に関して、ハイブリドーマクローンをアッセイする。陽性ハイブリドーマクローンでマウスを免疫することにより、一般に高レベルの抗体を含有する腹水を産生させることができる。
したがって本発明は、本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞(このハイブリドーマは、好ましくは、本発明の抗原で免疫したマウスから単離された脾細胞を骨髄腫細胞と融合し、次に、その融合の結果生じたハイブリドーマを、本発明のポリペプチドを結合することができる抗体を分泌するハイブリドーマクローンに関してスクリーニングすることによって作製される)を培養することを含むモノクローナル抗体の製造方法、ならびにその方法によって製造された抗体を提供する。
特異的エピトープを認識する抗体断片は、既知の技術によって製造することができる。例えば本発明のFab断片およびF(ab')2断片は、パパイン(Fab断片を製造する場合)またはペプシン(F(ab')2断片を製造する場合)などの酵素を使った免疫グロブリン分子のタンパク質分解的切断によって、製造することができる。F(ab')2断片は可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含む。
例えば、本発明の抗体は、当技術分野で知られている様々なファージディスプレイ法を使って作製することができる。ファージディスプレイ法では、機能的抗体ドメインをコードするポリヌクレオチド配列を保持しているファージ粒子の表面に、それら機能的抗体ドメインがディスプレイされる。具体的一実施形態として、そのようなファージを利用することにより、(例えばヒトまたはネズミの)レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリーから発現した抗原結合ドメインをディスプレイすることができる。興味ある抗原を結合する抗原結合ドメインを発現させるファージは、抗原を使って(例えば標識抗原または固体表面もしくはビーズに結合もしくは捕捉した抗原などを利用して)、選択または同定することができる。これらの方法で使用されるファージは、典型的には、fdおよびM13を含む繊維状ファージであり、結合ドメインは、Fab、Fvまたはジスルフィド安定化Fv抗体ドメインがファージ遺伝子IIIタンパク質またはファージ遺伝子VIIIタンパク質に組換え的に融合された状態で、ファージから発現される。本発明の抗体を作製するために利用することができるファージディスプレイ法の例には、Brinkmanら,J.Immunol.Methods 182: 41-50(1995)、Amesら,J.Immunol.Methods 184: 177-186(1995)、Kettleboroughら,Eur.J.Immunol. 24: 952-958(1994)、Persicら,Gene 187: 9-18(1997)、Burtonら,Advances in Immunology 57: 191-280(1994)、PCT出願PCT/GB91/01134、PCT公開WO90/02809、WO91/10737、WO92/01047、WO92/18619、WO93/11236、WO95/15982、WO95/20401、ならびに米国特許第5,698,426号、第5,223,409号、第5,403,484号、第5,580,717号、第5,427,908号、第5,750,753号、第5,821,047号、第5,571,698号、第5,427,908号、第5,516,637号、第5,780,225号、第5,658,727号、第5,733,743号および第5,969,108号などに開示されている方法があり、これらの文献はそれぞれ参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。
上記の文献に記載されているように、ファージ選択後は、例えば以下に詳述するように、そのファージから抗体コード領域を単離し、それを使って、ヒト抗体を含む抗体全体または他の任意の望ましい抗原結合断片を作製し、例えば哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母および細菌などの任意の望ましい宿主で、それらを発現させることができる。例えば、PCT公開WO92/22324、Mullinaxら,BioTechniques 12(6): 864-869(1992)、Sawaiら,AJRI 34: 2634(1995)、およびBetterら,Science 240: 1041-1043(1988)(これらの文献は参照によりそのまま本明細書に組み込まれる)に開示されているような当技術分野で既知の方法を使って、Fab、Fab'およびF(ab')2断片を組換え生産するための技術を利用することもできる。一本鎖Fvおよび一本鎖抗体を製造するために利用することができる技術の例には、米国特許第4,946,778号および第5,258,498号、Hustonら,Methods in Enzymology 203: 46-88(1991)、Shuら,PNAS 90: 7995-7999(1993)、ならびにSkerraら,Science 240: 1038-1040(1988)に記載の技術などがある。
一部の用途、例えばヒトにおける抗体のインビボ使用およびインビトロ検出アッセイなどには、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体を使用することが、好ましいだろう。キメラ抗体は、例えばネズミモノクローナル抗体に由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とを持つ抗体など、抗体の異なる部分が異なる動物種に由来している分子である。キメラ抗体を製造する方法は当技術分野では知られている。例えば、参照によりそのまま本明細書に組み込まれるMorrison,Science 229: 1202(1985)、Oiら,BioTechniques 4: 214(1986)、Gilliesら(1989)J.Immunol.Methods 125: 191-202、Cabillyら,Taniguchiら,EP171496、Morrisonら,EP173494、Neubergerら,WO8601533、Robinsonら,WO8702671、Boulianneら,Nature 312: 643(1984)、Neubergerら,Nature 314: 268(1985)、米国特許第5,807,715号、第4,816,567号および第4,816,397号などを参照されたい。ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1以上の相補性決定領域(CDR)とヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域とを持つ、所望の抗原を結合する非ヒト種由来の抗体分子である。抗原結合性を改変(好ましくは改善)するために、ヒトフレームワーク領域中のフレームワーク残基は、しばしば、CDR供与抗体由来の対応残基で置換されるだろう。これらのフレームワーク置換は、当技術分野で周知の方法によって、例えばCDRとフレームワーク残基との相互作用のモデリングによって抗原結合にとって重要なフレームワーク残基を同定すること、および配列比較によって特定位置にある異常フレームワーク残基を同定することなどにより、同定される(例えば、参照によりそのまま本明細書に組み込まれるQueenらの米国特許第5,585,089号およびRiechmannら,Nature 332: 323(1988)を参照されたい)。抗体は、例えばCDR移植(EP239,400、PCT公開WO91/09967、米国特許第5,225,539号、第5,530,101号および第5,585,089号)、ベニアリング(veneering)またはリサーフェイシング(resurfacing)(EP592,106、EP519,596、Padlan,Molecular Immunology 28(4/5): 489-498(1991)、Studnickaら,Protein Engineering 7(6): 805-814(1994)、Roguskaら,PNAS 91: 969-973(1994))、および鎖シャフリング(米国特許第5,565,332号)などといった、当技術分野で既知の様々な技術を使って、ヒト化することができる。一般に、ヒト化抗体には、ヒト以外の由来を持つ1以上のアミノ酸残基が導入されている。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート(import)」残基と呼ばれ、典型的には「インポート」可変ドメインから採用される。ヒト化は、基本的にWinterとその共同研究者らの方法(Jonesら,Nature,321: 522-525(1986)、Riechmannら,Nature,332: 323-327(1988)、Verhoeyenら,Science,239: 1534-1536(1988))に従って、齧歯類のCDRまたはCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することによって行なうことができる。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、完全なヒト可変ドメインよりもかなり小さい部分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されているキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、一部のCDR残基と、場合によっては一部のFR残基とが、齧歯類抗体中の類似する部位に由来する残基で置換されているヒト抗体である。
一般に、ヒト化抗体は、CDR領域の全てまたは実質上全てが非ヒト免疫グロブリンの同領域に一致し、FR領域の全てまたは実質上全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の同領域である、少なくとも1つ(典型的には2つ)の可変ドメインの実質上全てを含むだろう。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)(典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域)の少なくとも一部も含むだろう(Jonesら,Nature,321: 522-525(1986)、Riechmannら,Nature 332: 323-329(1988)、およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2: 593-596(1992))。
ヒト患者の治療的処置には、完全にヒト抗体である抗体が、特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを使った上述のファージディスプレイ法を含む、当技術分野で知られる様々な方法によって、製造することができる。米国特許第4,444,887号および第4,716,111号、ならびにPCT公開WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735およびWO91/10741も参照されたい。これらの文献はそれぞれ参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。ヒトモノクローナル抗体の製造には、Coleらの技術およびBoerderらの技術も利用することができる(Coleら「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」Alan R.Riss(1985)およびBoernerら,J.Immunol.,147(1): 86-95(1991))。
ヒト抗体は、機能的な内因性免疫グロブリンを発現させる能力はないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現させることができるトランスジェニックマウスを使って製造することもできる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体をランダムに、または相同組換えによって、マウス胚幹細胞に導入することができる。別法として、ヒト可変領域、定常領域および多様性領域(diversity region)を、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子と共に、マウス胚幹細胞に導入してもよい。マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えによるヒト免疫グロブリン座の導入とは別個に、またはそれと同時に、非機能的にすることができる。特に、JH領域のホモ接合型欠失は、内因性抗体産生を妨げる。改変された胚幹細胞を増殖させ、胚盤胞に顕微注入することにより、キメラマウスを作出する。次に、キメラマウスを交配して、ヒト抗体を発現させるホモ接合型子孫を作出する。そのトランスジェニックマウスを、選択した抗原、例えば本発明ポリペプチドの全部または一部で、通常どおりに免疫する。その抗原に対するモノクローナル抗体は、免疫したトランスジェニックマウスから、通常のハイブリドーマ技術を使って取得することができる。トランスジェニックマウスが保持しているヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化中に再配列し、次いでクラススイッチおよび体細胞突然変異を受ける。したがって、このような技術を使って、治療的に有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を製造することができる。このヒト抗体製造技術の概要については、LonbergおよびHuszar,Int.Rev.Immunol. 13: 65-93(1995)を参照されたい。このヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体製造技術ならびにそのような抗体を製造するためのプロトコールに関する詳細な議論は、例えばPCT公開WO98/24893、WO92/01047、WO96/34096、WO96/33735、欧州特許第0598877号、米国特許第5,413,923号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,569,825号、第5,661,016号、第5,545,806号、第5,814,318号、第5,885,793号、第5,916,771号および第5,939,598号など(これらの文献は参照によりそのまま本明細書に組み込まれる)を参照されたい。また、上記の技術と同様の技術を使って、選択した抗体に対するヒト抗体が提供されるように、Abgenix,Inc.(カリフォルニア州フリーモント)、Genpharm(カリフォルニア州サンホゼ)およびMedarex,Inc.(ニュージャージー州プリンストン)などの企業と契約することもできる。
同様に、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に非働化されているトランスジェニック動物、例えばマウスに、ヒト免疫グロブリン座を導入することによって、ヒト抗体を製造することもできる。抗原投与すると、遺伝子再配列、アセンブリ、および抗体レパートリーの生成を含めて、あらゆる点でヒトに見られるものと極めて類似したヒト抗体産生が観察される。このアプローチは、例えば米国特許第5,545,807号、第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,661,106号、および以下の科学文献に記載されている:Marksら,Biotechnol.,10: 779-783(1992)、Lonbergら,Nature 368: 856-859(1994)、Fishwildら,Nature Biotechnol.,14: 845-51(1996)、Neuberger,Nature Biotechnol.,14: 826(1996)、LonbergおよびHuszer,Intern.Rev.Immunol.,13: 65-93(1995)。
選択したエピトープを認識する完全にヒト抗体である抗体は「誘導選択(guided selection)」と呼ばれる技術を使って作製することができる。このアプローチでは、選択した非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体を使って、同じエピトープを認識する完全にヒト抗体である抗体の選択を誘導する(Jespersら,Bio/technology 12: 899-903(1988))。
さらに、今度は本発明のポリペプチドに対する抗体を利用し、当業者に周知の技術を使って、本発明のポリペプチドを「模倣(mimic)」する抗イディオタイプ抗体を作製することもできる(例えばGreenspanおよびBona,FASEB J. 7(5): 437-444(1989)およびNissinoff,J.Immunol. 147(8): 2429-2438(1991)を参照されたい)。例えば、本発明のポリペプチドに結合し、ポリペプチドの多量体化および/またはリガンドへの本発明ポリペプチドの結合を競合的に阻害する抗体を使用することにより、ポリペプチドの多量体化および/または結合ドメインを「模倣」し、その結果として、ポリペプチドおよび/またはそのリガンドに結合し、それらを中和する抗イディオタイプを生成させることができる。そのような中和抗イディオタイプまたはそのような抗イディオタイプのFab断片は、ポリペプチドリガンドを中和するための治療的措置に使用することができる。例えば、そのような抗イディオタイプ抗体は、本発明ポリペプチドを結合することおよび/またはそのリガンド/受容体を結合することによって、その生物学的活性を遮断するために使用することができる。
MGAT3ポリペプチドに結合する能力を持つそのような抗イディオタイプ抗体は二段階法で製造することができる。そのような方法では、抗体が抗原そのものであり、それゆえに第二の抗体に結合する抗体を取得することができるという事実を利用する。この方法では、タンパク質特異抗体を使って、動物、好ましくはマウスを免疫する。次に、そのような動物の脾細胞を使ってハイブリドーマ細胞を作製し、そのハイブリドーマ細胞をスクリーニングして、当該タンパク質特異抗体に結合するという能力を当該ポリペプチドによって遮断することができる抗体を産生するクローンを同定する。そのような抗体は、当該タンパク質特異抗体に対する抗イディオタイプ抗体を含み、動物を免疫してさらなるタンパク質特異抗体の形成を誘導するために使用することができる。
本発明の抗体は二重特異性抗体であってよい。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル(好ましくはヒトまたはヒト化)抗体である。本発明では、結合特異性の一方を本発明のポリペプチドに対する特異性とし、他方を他の任意の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質、受容体、受容体サブユニット、組織特異抗原、ウイルス由来のタンパク質、ウイルスがコードするエンベロープタンパク質、細菌由来のタンパク質、または細菌表面タンパク質などに対する特異性とすることができる。
二重特異性抗体を製造する方法は当技術分野では知られている。従来より、二重特異性抗体の組換え生産は、2対の免疫グロブリン重鎖/軽鎖の同時発現に基づいており、この場合、2つの重鎖は異なる特異性を持つ(MilsteinおよびCuello,Nature,305: 537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな取り合わせにより、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、潜在的に10種類の抗体分子の混合物を産生し、そのうちの1つだけが正しい二重特異性構造を持つ。正しい分子の精製は、通常は、アフィニティークロマトグラフィーステップによって行われる。同様の手法が、WO93/08829(1993年5月13日公開)およびTrauneckerら,EMBO J.,10: 3655-3659(1991)に開示されている。
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を持つ抗体可変ドメインを、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合することができる。この融合は、ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常領域との融合であることが好ましい。軽鎖結合に必要な部位を含有する第1重鎖定常領域(CH1)が融合物の少なくとも1つに存在することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物をコードするDNAと、要すれば、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAとを、別々の発現ベクターに挿入し、それらを使って適切な宿主生物を同時形質転換する。二重特異性抗体の作製に関するさらなる詳細については、例えばSureshら,Methods in Enzym. 121: 210(1986)を参照されたい。
ヘテロコンジュゲート抗体も本発明に包含される。ヘテロコンジュゲート抗体は、共有結合された2つの抗体から構成される。そのような抗体は、例えば望ましくない細胞に免疫系細胞をターゲティングする目的で(米国特許第4,676,980号)、そしてまたHIV感染症を処置する目的で(WO91/00360、WO92/00373、EP03089)、提案されている。これらの抗体は、例えば架橋剤を使用する方法など、合成タンパク質化学の既知の方法を使って、インビトロで製造することができると考えられる。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を使って、またはチオエーテル結合を形成させることによって、構築することができる。この目的に適した試薬の例には、イミノチオラートおよびメチル-4-メルカプトブチルイミデート、ならびに例えば米国特許第4,676,980号などに開示されている試薬などがある。
さらに本発明は、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドおよびその断片も提供する。本発明は、例えば上に定義したようなストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下またはストリンジェンシーの低いハイブリダイゼーション条件下で、好ましくは本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体、好ましくは配列番号2のアミノ酸配列を持つポリペプチドに結合する抗体をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドも包含する。
これらのポリヌクレオチドは、当技術分野で知られる任意の方法によって取得し、そのヌクレオチド配列を決定することができる。例えば、抗体のヌクレオチド配列がわかっている場合は、その抗体をコードするポリヌクレオチドを、化学合成オリゴヌクレオチドから(例えばKutmeierら,BioTechniques 17: 242(1994)に記載されているように)組み立てることができる。簡単に述べると、この方法では、抗体をコードする配列の一部分を含有するオーバーラップしたオリゴヌクレオチドを合成し、それらのオリゴヌクレオチドをアニーリングし、ライゲートした後、ライゲートしたオリゴヌクレオチドをPCRによって増幅する。
別法として、抗体をコードするポリヌクレオチドを、適切な核酸源に由来する核酸から生成させてもよい。特定の抗体をコードする核酸を含むクローンを入手することはできないが、その抗体分子の配列がわかっている場合は、その免疫グロブリンをコードする核酸を化学合成するか、または適切な核酸源(例えば抗体cDNAライブラリー、またはその抗体を発現させる任意の組織もしくは細胞、例えば本発明の抗体を発現させるように選択されたハイブリドーマ細胞などから作製されたcDNAライブラリー、またはそのような組織もしくは細胞から単離された核酸、好ましくはポリA+ RNA)から、その配列の3'末端および5'末端にハイブリダイズすることができる合成プライマーを使ったPCR増幅によって、またはその遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使ったクローニングを行なって、例えばその抗体をコードするcDNAクローンをcDNAライブラリーから同定することによって、取得することができる。その場合は、PCRによって生成した増幅核酸を、当技術分野で周知の方法を使って、複製可能なクローニングベクターにクローニングすることができる。
抗体のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列が決定されたら、当技術分野で周知のヌクレオチド配列操作方法、例えば組換えDNA技術、部位指定突然変異誘発、PCRなど(例えばSambrookら「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」(第2版,Cold Spring Harbor Laboratory, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー,1990)およびAusubelら編「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons,ニューヨーク,1998)などに記載の技術を参照されたい)を使って、抗体のヌクレオチド配列を操作することにより、異なるアミノ酸配列を持つ抗体を作製して、例えばアミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を生じさせることができる。
具体的一実施形態として、当技術分野で周知の方法により、例えば他の重鎖および軽鎖可変領域の既知のアミノ酸配列と比較して、配列超可変領域を決定することにより、重鎖および/または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を検査して、相補性決定領域(CDR)の配列を同定することができる。定型的な組換えDNA技術を使って、1以上のCDRをフレームワーク領域内に、例えばヒトフレームワーク領域中に挿入して、上述のように非ヒト抗体をヒト化することができる。フレームワーク領域は天然またはコンセンサスフレームワーク領域、好ましくはヒトフレームワーク領域であってよい(ヒトフレームワーク領域の一覧については、例えばChothiaら,J.Mol.Biol. 278: 457-479(1998)などを参照されたい)。フレームワーク領域とCDRの組み合わせによって作製されたポリヌクレオチドは、好ましくは、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体をコードする。好ましくは、上述したように、1以上のアミノ酸置換をフレームワーク領域内に施すことができ、それらのアミノ酸置換は、好ましくは、抗体のその抗原に対する結合を改善する。また、そのような方法を使って、鎖間ジスルフィド結合に参加する1以上の可変領域システイン残基のアミノ酸置換または欠失を施すことにより、1以上の鎖間ジスルフィド結合が欠けている抗体分子を作製することもできる。ポリヌクレオチドに対する他の改変も技術上可能であり、本発明に包含される。
また、適当な抗原特異性を持つマウス抗体分子由来の遺伝子を適当な生物学的活性を持つヒト抗体分子由来の遺伝子と接合することによって「キメラ抗体」を製造するために開発された技術(Morrisonら,Proc.Natl.Acad.Sci.,81: 851-855(1984)、Neubergerら,Nature 312: 604-608(1984)、Takedaら,Nature 314: 452-454(1985))も使用することができる。上述したように、キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来している分子、例えばネズミmAbに由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とを有するもの、例えばヒト化抗体である。
あるいは、一本鎖抗体の製造に関して記載された技術(米国特許第4,946,778号、Bird,Science 242: 423-42(1988)、Hustonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85: 5879-5883(1988)、およびWardら,Nature 334: 544-54(1989))を一本鎖抗体の製造に適合させることもできる。一本鎖抗体は、Fv領域の重鎖断片と軽鎖断片とをアミノ酸架橋によって連結して一本鎖ポリペプチドにすることによって形成される。大腸菌中で機能的Fv断片をアセンブルする技術も使用することができる(Skerraら,Science 242: 1038-1041(1988))。
本発明の抗体をコードするクローンは、より好ましくは、本明細書の実施例に記載する方法に従って取得することができる。
本発明の抗体は、当技術分野で知られる任意の抗体合成法によって、特に、化学合成による方法か、好ましくは組換え発現技術による方法によって、製造することができる。
本発明の抗体またはその断片、誘導体もしくは類似体(例えば本発明の抗体の重鎖もしくは軽鎖または本発明の一本鎖抗体)の組換え発現には、その抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを構築する必要がある。本発明の抗体分子、あるいは本発明の抗体の重鎖もしくは軽鎖またはその一部(好ましくは重鎖または軽鎖可変ドメインを含有するもの)をコードするポリヌクレオチドが得られたら、組換えDNA法により、当技術分野で周知の技術を使って、抗体分子製造用のベクターを製造することができる。したがって本明細書には、抗体をコードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドを発現させることによってタンパク質を製造する方法を記載する。抗体をコードする配列と適当な転写および翻訳制御シグナルとを含有する発現ベクターを構築するには、当業者に周知の方法を使用することができる。これらの方法には、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝子組換えなどが含まれる。したがって本発明は、プロモーターに作動可能な形で連結された本発明の抗体分子またはその重鎖もしくは軽鎖または重鎖もしくは軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターを提供する。そのようなベクターは抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含んでもよく(例えばPCT公開WO86/05807、PCT公開WO89/01036および米国特許第5,122,464号を参照されたい)、重鎖または軽鎖全体を発現させるために、そのようなベクターに抗体の可変ドメインをクローニングしてもよい。
発現ベクターを通常の技術によって宿主細胞に導入した後、トランスフェクトされた細胞を通常の技術で培養することにより、本発明の抗体を産生させる。したがって本発明は、異種プロモーターに作動可能な形で連結された、本発明の抗体またはその重鎖もしくは軽鎖または本発明の一本鎖抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を包含する。二本鎖抗体の発現に関する好ましい実施形態として、後に詳述するように、重鎖および軽鎖をコードするベクターを宿主細胞中で同時発現させて、免疫グロブリン分子全体を発現させることができる。
本発明の抗体分子を発現させるために様々な宿主-発現ベクター系を利用することができる。そのような宿主-発現系は、興味あるコード配列を作製し、次いでそれを精製するために使用することができる媒体を表すが、さらに、適当なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトされると、本発明の抗体分子をその場で(in situ)で発現させうる細胞も表す。これらには、微生物、例えば抗体コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば大腸菌、枯草菌)、抗体コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えばサッカロミセス、ピキア)、抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系、抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルスCaMV、タバコモザイクウイルスTMV)に感染させた植物細胞系、もしくは抗体コード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換された植物細胞系、または哺乳類細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えばメタロチオネインプロモーター)もしくは哺乳類ウイルスに由来するプロモーター(例えばアデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現コンストラクトを保持する哺乳類細胞系(例えばCOS、CHO、BHK、293、3T3細胞)などがあるが、これらに限るわけではない。組換え抗体分子の発現には、好ましくは大腸菌などの細菌細胞、より好ましくは真核細胞(特に組換え抗体分子全体を発現させる場合)を使用する。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳類細胞を、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中初期(intermediate early)遺伝子プロモーター配列などのベクターと組み合わせると、有効な抗体用発現系になる(Foeckingら,Gene 45: 101(1986)、Cockettら,Bio/Technology 8: 2(1990))。
細菌系では、発現させる抗体分子の用途に応じて、いくつかの発現ベクターを有利に選択することができる。例えば、抗体分子の医薬組成物を製造するために、そのようなタンパク質を大量に製造すべき場合は、精製が容易な高レベルの融合タンパク質産物を発現させるベクターが望ましいだろう。そのようなベクターには、例えば、融合タンパク質が産生されるように抗体コード配列をlacZコード領域と読み枠を合わせてベクターに個別にライゲートすることができる大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherら,EMBO J. 2: 1791(1983))、pINベクター(InouyeおよびInouye,Nucleic Acids Res. 13: 3101-3109(1985)、Van HeekeおよびSchuster,J.Biol.Chem. 24: 5503-5509(1989))などがあるが、これらに限るわけではない。pGEXベクターを使用して、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させることもできる。一般にこのような融合タンパク質は可溶性であり、溶解した細胞から、マトリックスグルタチオン-アガロースビーズへの吸着および結合と、それに続く遊離グルタチオン存在下での溶離によって、容易に精製することができる。pGEXベクターはトロンビン切断部位またはXa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計されているので、クローン化標的遺伝子産物をGST部分から遊離させることができる。
昆虫系では、外来遺伝子を発現させるためのベクターとして、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)を使用することができる。このウイルスはスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞中で生育する。抗体コード配列をこのウイルスの非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝子)中に個別にクローニングして、AcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くことができる。
哺乳類宿主細胞では、ウイルスに基づくいくつかの発現系を利用することができる。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合は、興味ある抗体コード配列をアデノウイルス転写/翻訳制御複合体(例えば後期プロモーターおよびトリパータイトリーダー配列)にライゲートすることができる。次に、このキメラ遺伝子を、インビトロ組換えまたはインビボ組換えによってアデノウイルスゲノムに挿入することができる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えばE1またはE3領域)への挿入により、感染した宿主中で抗体分子を発現させる能力を持つ生存可能な組換えウイルスが生成することになる(例えばLoganおよびShenk,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81: 355-359(1984)を参照されたい)。挿入された抗体コード配列の効率のよい翻訳には、特異的開始シグナルが必要かもしれない。これらのシグナルにはATG開始コドンおよび隣接配列が含まれる。さらに開始コドンは、インサート全体が確実に翻訳されるように、所望のコード配列の読み枠と位相が一致していなければならない。これらの外来翻訳制御シグナルおよび開始コドンは様々な起源を持つことができ、天然由来であっても、合成物であってもよい。発現効率は、適当な転写エンハンサー要素、転写ターミネーターなどを含めることによって向上させることができる(Bittnerら,Methods in Enzymol. 153: 51-544(1987)参照)。
さらに、挿入された配列の発現を特定の望ましい形で調整する宿主細胞株、または遺伝子産物を特定の望ましい形で修飾およびプロセシングする宿主細胞株を選択することもできる。そのようなタンパク質産物の修飾(例えば糖鎖付加)およびプロセシング(例えば切断)は、タンパク質の機能にとって重要であるかもしれない。宿主細胞はタンパク質の翻訳後プロセシングおよび翻訳後修飾に関してそれぞれに特徴的で特異的な機構を持っている。発現された外来タンパク質が確実に正しく修飾およびプロセシングされるように、適当な細胞株または宿主系を選択することができる。この目的を達成するために、1次転写物のプロセシング、遺伝子産物の糖鎖付加およびリン酸化を適正に行うための細胞機構を有する真核宿主細胞を使用することができる。そのような哺乳類宿主細胞には、例えばCHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、WI38、そして特に、例えばBT483、Hs578T、HTB2、BT20およびT47Dなどの乳癌細胞株、ならびに例えばCRL7030およびHs578Bstなどの正常乳腺細胞株などがあるが、これらに限るわけではない。
組換えタンパク質の長期高収量生産には、安定な発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定に発現させる細胞株を設計することができる。ウイルス複製起点を含有する発現ベクターを使用する代わりに、適当な発現制御要素(例えばプロモーター、エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)によって制御されるDNAおよび選択可能マーカーで、宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAの導入後に、操作された細胞を栄養強化培地で1〜2日間生育させてもよく、次いで、選択培地に切り替える。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞がプラスミドをその染色体中に安定に組み込んで増殖巣を形成するまで成長することを可能にし、そしてそれらを細胞株にクローン化して、増殖させることができる。この方法は、抗体分子を発現させる細胞株の作製に、有利に利用することができる。そのような操作された細胞株は、抗体分子と直接または間接的に相互作用する化合物のスクリーニングおよび評価に、とりわけ役立ちうる。
いくつかの選択系を使用することができる。例えば、単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wiglerら,Cell 11: 223(1977))、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(SzybalskaおよびSzybalski,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48: 202(1992))、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowyら,Cell 22: 817(1980))を、それぞれtk、hgprtまたはaprt細胞で使用することができるが、これらに限るわけではない。また、代謝拮抗物質耐性を、以下の遺伝子に関する選択の根拠として使用することもできる:メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr(Wiglerら,Natl.Acad.Sci.USA 77: 357(1980)、O'Hareら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78: 1527(1981))、ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(MulliganおよびBerg,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78: 2072(1981))、アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与するneo(Clinical Pharmacy 12: 488-505、WuおよびWu,Biotherapy 3: 87-95(1991)、Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol. 32: 573-596(1993)、Mulligan,Science 260: 926-932(1993)、MorganおよびAnderson,Ann.Rev.Biochem. 62: 191-217(1993)、May,1993,TIB TECH 11(5): 155-215)、およびハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerreら,Gene 30: 147(1984))。所望する組換えクローンの選択には、組換えDNA技術の技術分野で広く知られている方法を、型どおりに応用することができ、そのような方法は、例えば参照によりそのまま本明細書に組み込まれるAusubelら編「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons,ニューヨーク,1993)、Kriegler「Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual」(Stockton Press,ニューヨーク,1990)、Dracopoliら編「Current Protocols in Human Genetics」(John Wiley & Sons,ニューヨーク,1994)の第12章および第13章、Colberre-Garapinら,J.Mol.Biol. 150: 1(1981)などに記載されている。
抗体分子の発現レベルはベクター増幅によって増加させることができる(概要については「DNA cloning」第3巻(Academic Press,ニューヨーク,1987)のBebbingtonおよびHentschel著「The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells(哺乳類細胞でクローン化遺伝子を発現させるための遺伝子増幅に基づくベクターの使用)」を参照されたい)。抗体を発現させるベクター系中のマーカーが増幅可能である場合は、宿主細胞の培養中に存在する阻害剤のレベルを増加させると、マーカー遺伝子のコピー数が増加することになる。増幅される領域は抗体遺伝子と関係しているので、抗体の産生量も増加するだろう(Crouseら,Mol.Cell.Biol. 3: 257(1983))。
宿主細胞には、一方のベクターが重鎖由来ポリペプチドをコードし、他方のベクターが軽鎖由来ポリペプチドをコードする2つの本発明発現ベクターを、同時にトランスフェクトしてもよい。これら2つのベクターには、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの発現量が等しくなるように、同じ選択可能マーカーを含有させることができる。別法として、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方をコードし、それらを発現させる能力を持つ単一のベクターを使用することもできる。そのような場合は、有毒な遊離重鎖が過剰にならないように、軽鎖を重鎖の前に置くべきである(Proudfoot,Nature 322: 52(1986)、Kohler,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77: 2197(1980))。重鎖および軽鎖のコード配列はcDNAまたはゲノムDNAを含みうる。
本発明の抗体分子が動物によって産生されるか、化学合成されるか、または組換え発現されたら、それを、当技術分野で知られる任意の免疫グロブリン分子精製法によって、例えばクロマトグラフィー(例:イオン交換、アフィニティー、特にプロテインA後の特異抗原に対する親和性によるもの、およびサイズ分画カラムクロマトグラフィーなど)、遠心分離、分別溶解、または他の任意の標準的タンパク質精製技術によって、精製することができる。さらに、精製が容易になるように、本発明の抗体またはその断片を、本明細書に記載するまたは当技術分野で知られる異種ポリペプチド配列に融合することもできる。
本発明は、本発明のポリペプチド(またはその一部、好ましくは本ポリペプチドの10、20、30、40、50、60、70、80、90または100アミノ酸)に組換え的に融合または化学的にコンジュゲート(共有結合によるコンジュゲーションと非共有結合によるコンジュゲーションの両方を含む)されて融合タンパク質を形成している抗体を包含する。融合は必ずしも直接的融合である必要はなく、リンカー配列を介した融合であってもよい。抗体は本発明のポリペプチド(またはその一部、好ましくは本ポリペプチドの10、20、30、40、50、60、70、80、90または100アミノ酸)以外の抗原に特異的であってもよい。例えば、特定の細胞表面受容体に特異的な抗体に本発明のポリペプチドを融合またはコンジュゲートすることにより、インビトロまたはインビボで本発明のポリペプチドを特定の細胞タイプにターゲティングするために、抗体を使用することができる。本発明のポリペプチドに融合またはコンジュゲートした抗体を、当技術分野で知られる方法を使ったインビトロ免疫アッセイおよび精製方法に使用してもよい。例えば、参照によりそのまま本明細書に組み込まれるHarborら(前掲)およびPCT公開WO93/21232、EP439,095、Naramuraら,Immunol.Lett. 39: 91-99(1994)、米国特許第5,474,981号、Gilliesら,PNAS 89: 1428-1432(1992)、Fellら,J.Immunol. 146: 2446-2452(1991)などを参照されたい。
さらに本発明は、可変領域以外の抗体ドメインに融合またはコンジュゲートされた本発明のポリペプチドを含む組成物を包含する。例えば、抗体Fcドメインまたはその一部分に、本発明のポリペプチドを融合またはコンジュゲートすることができる。本発明のポリペプチドに融合される抗体部分は、定常領域、ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン、またはドメイン全体もしくはその一部分の任意の組み合わせを含みうる。本ポリペプチドを上記の抗体部分に融合またはコンジュゲートして、多量体を形成させてもよい。例えば、本発明のポリペプチドに融合したFc部分は、Fc部分間のジスルフィド結合によって二量体を形成することができる。ポリペプチドをIgAおよびIgMの一部分に融合することにより、さらに高度な多量体型を作製することができる。抗体部分に本発明のポリペプチドを融合またはコンジュゲートする方法は、当技術分野では知られている。例えば米国特許第5,336,603号、第5,622,929号、第5,359,046号、第5,349,053号、第5,447,851号、第5,112,946号、EP307,434、EP367,166、PCT公開WO96/04388、WO91/06570、Ashkenaziら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88: 10535-10539(1991)、Zhengら,J.Immunol. 154: 5590-5600(1995)、およびVilら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89: 11337-11341(1992)を参照されたい(これらは、参照によりそのまま本明細書に組み込まれる)。
上述のように、配列番号2のポリペプチド、ポリペプチド断片、または変異体に相当するポリペプチドは、そのポリペプチドの生体内半減期を延長するために、または当技術分野で既知の方法を使った免疫アッセイで使用するために、上記抗体部分に融合またはコンジュゲートすることができる。さらに、配列番号2に相当するポリペプチドは、精製を容易にするために、上記抗体部分に融合またはコンジュゲートすることもできる。報告された例の一つに、ヒトCD4ポリペプチドの最初の2つのドメインと、哺乳類免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の定常領域の様々なドメインとからなるキメラタンパク質が記載されている(EP394,827、Trauneckerら,Nature 331: 84-86(1988))。また(IgGにより)ジスルフィド結合した二量体構造を持つ抗体に融合またはコンジュゲートされた本発明のポリペプチドは、単量体型の分泌タンパク質またはタンパク質断片単独よりも効率よく、他の分子を結合し中和する可能性がある(Fountoulakisら,J.Biochem. 270: 3958-3964(1995))。多くの場合、融合タンパク質中のFc部分は治療および診断に有益であり、例えば薬物動態学的特性の改善をもたらすことができる(EP A 232,262)。また、融合タンパク質を発現させ、検出し、精製した後に、Fc部分を削除することが望ましい場合もあるだろう。例えば、融合タンパク質を免疫化の抗原として使用する場合には、Fc部分が治療および診断を妨げるかもしれない。創薬においては、例えば、hIL-5のアンタゴニストを同定するためのハイスループットスクリーニングアッセイを目的として、hIL-5などのヒトタンパク質がFc部分と融合されている(Bennettら,J.Molecular Recognition 8: 52-58(1995)、Johansonら,J.Biol.Chem. 270: 9459-9471(1995))。
さらに、本発明の抗体またはその断片は、マーカー配列、例えば精製を容易にするためのペプチドなどに融合することもできる。好ましい実施形態では、マーカーアミノ酸配列が、ヘキサヒスチジンペプチドである。これは、pQEベクター(QIAGEN,Inc.,カリフォルニア州91311チャッツワース・イートンアベニュー9259)をはじめとするベクター(その多くは市販されている)に用意されているタグである。例えば、Gentzら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86: 821-824(1989)に記載されているように、ヘキサヒスチジンを使用すると、融合タンパク質の精製が簡便になる。精製に役立つ他のペプチドタグには、例えば、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来のエピトープに相当する「HA」タグ(Wilsonら,Cell 37: 767(1984))や、「flag」タグなどがあるが、これらに限るわけではない。
さらに本発明は、診断剤または治療剤に結合した抗体またはその断片も包含する。抗体は、例えばある処置方法の効力を決定するための臨床試験法の一部として腫瘍の発生または進行をモニターするためなどの目的で、診断的に使用することができる。抗体を検出可能な物質にカップリングすることにより、検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、種々の陽電子断層撮影法を用いる陽電子放出金属、非放射性常磁性金属イオンなどが挙げられる。検出可能な物質は、当技術分野で既知の技術を使って、抗体(またはその断片)に直接的に、または中間体(例えば当技術分野で既知のリンカーなど)を介して間接的に、カップリングまたはコンジュゲートすることができる。例えば、本発明に従って診断薬として使用される抗体に結合させることができる金属イオンについては、米国特許第4,741,900号などを参照されたい。適切な酵素の例としてはセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、適切な補欠分子族複合体の例としてはストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ、適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィロエリトリンが挙げられ、発光物質の例としてはルミノールが挙げられ、生物発光物質の例としてはルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられ、適切な放射性物質の例としては、125I、131I、111In、または99Tcなどが挙げられる。
さらに、抗体またはその断片を、細胞毒(例えば細胞増殖抑制剤または殺細胞剤)、治療薬、または放射性金属イオン、例えば213Biなどのアルファ放射体などといった治療成分にコンジュゲートしてもよい。細胞毒または細胞毒性剤には、細胞にとって有害な任意の薬剤が包含される。例としては、パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ならびにピューロマイシンおよびその類似体もしくはホモログが挙げられる。治療薬には、例えば代謝拮抗物質(例えばメトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロルエタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(かつてはダウノマイシンと呼ばれていた)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(かつてはアクチノマイシンと呼ばれていた)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに有糸分裂阻害剤(例えばビンクリスチンおよびビンブラスチン)などがあるが、これらに限るわけではない。
本発明のコンジュゲートは、与えられた生物学的応答を改変するために使用することができる。治療剤部分または薬物部分は古典的な化学療法剤に限定されると解釈すべきでない。例えば、薬物部分は、望ましい生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドであることができる。そのようなタンパク質としては、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、もしくはジフテリア毒素などの毒素、またはタンパク質、例えば腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノゲン活性化因子、アポトーシス剤、例えばTNF-アルファ、TNF-ベータ、AIM I(国際公開番号WO97/33899参照)、AIM II(国際公開番号WO97/34911参照)、Fasリガンド(Takahashiら,Int.Immunol. 6: 1567-1574(1994))、VEGI(国際公開番号WO99/23105参照)、血栓剤(thrombotic agent)もしくは抗血管新生剤、例えばアンギオスタチンもしくはエンドスタチン、または生物学的応答調整剤、例えばリンフォカイン、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、もしくは他の成長因子などを挙げることができる。
抗体は固形支持体に結合することができ、これらは標的抗原の免疫アッセイまたは精製に、とりわけ有用である。そのような固形支持体には、例えばガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンなどがあるが、これらに限るわけではない。
そのような治療部分を抗体にコンジュゲートする技術は周知である。例えばReisfeldら編「Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy」(Alan R.Liss,Inc.,1985)の243〜56頁に記載されているArnonら著「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy(癌治療における薬物の免疫ターゲティングのためのモノクローナル抗体)」、Robinsonら編「Controlled Drug Delivery」(第2版,Marcel Dekker,Inc.,1987)の623〜53頁に記載されているHellstromら著「Antibodies For Drug Delivery(薬物送達のための抗体)」、Pincheraら編「Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications」(1985)の475〜506頁に記載されているThorpe著「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review(癌治療における細胞毒性剤の抗体担体:概説)」、Baldwinら編「Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy」(Academic Press,1985)の303〜16頁に記載されている「Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy(癌治療における放射性標識抗体の治療的使用の解析、結果および将来の展望)」、ならびにThorpeら「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates(抗体-毒素コンジュゲートの製造および細胞毒性)」Immunol.Rev. 62: 119-58(1982)などを参照されたい。
あるいは、参照によりそのまま本明細書に組み込まれる米国特許第4,676,980号にSegalが記載しているように、抗体を第2の抗体にコンジュゲートして、抗体ヘテロコンジュゲートを形成させることもできる。
単独で投与される抗体、あるいは細胞毒性因子および/またはサイトカインと組み合わせて投与される抗体は、治療部分が結合されているものも、治療部分が結合されていないものも、治療薬として使用することができる。
本発明は本発明のポリペプチドに対する合成抗体の作製も包含する。合成抗体の一例は、Radrizzani,M.ら,Medicina,(Aires),59(6): 753-8(1999)に記載されている。最近、新しい種類の合成抗体が記載され、モレキュラーインプリントポリマー(MIP)と呼ばれている(Semorex,Inc.)。抗体、ペプチドおよび酵素は、しばしば、化学的および生物学的センサーに、分子認識要素として使用される。しかし、これらは安定性に欠け、シグナル伝達機構を持たないので、検知装置としてのその効用には限界がある。モレキュラーインプリントポリマー(MIP)は、生物学的受容体の機能を模倣する能力を持つが、安定性の制約は少ない。このようなポリマーにより、優れた熱安定性および機械的安定性を保ちながらも、高い感度および選択性を得ることができる。MIPは、小分子に結合する能力、ならびに有機物およびタンパク質などの分子をターゲティングする能力を持ち、その効力は天然の抗体と同じかそれ以上である。これらの「スーパー」MIPは、標的に対してより高い親和性を持つので、より低い濃度で有効な結合を達成することができる。
MIPは、標的分子(例えばポリペプチド、抗体など)そのもの、または極めて類似した構造を持つ物質を、その「プリント」または「テンプレート」として使用することにより、合成中に、選択した標的に対して相補的なサイズ、形状、電荷および官能基を持つようにインプリントされる。MIPは、抗体に対する試薬と同じ試薬で修飾することができる。例えば、蛍光「スーパー」MIPをビーズまたはウェルにコーティングして、高感度な分離もしくはアッセイに、またはタンパク質のハイスループットスクリーニングに、使用することができる。
さらに、本発明ポリペプチドの構造に基づくMIPは、本発明のポリペプチドに結合する化合物のスクリーニングに役立ちうる。そのようなMIPは、本ポリペプチドの未変性構造を模倣することにより、合成「受容体」の役割を果たすだろう。事実、合成受容体の役割を果たすMIPの能力は、エストロゲン受容体について既に実証されている(Ye,L.,Yu,Y.,Mosbach,K.,Analyst.,126(6): 760-5(2001)、Dickert,F.L.,Hayden,O.,Halikias,K.P.,Analyst.,126(6): 766-71(2001))。合成受容体はそのままの形で(例えばタンパク質全体として)模倣させてもよいし、タンパク質に相当する一連の短いペプチドとして模倣させてもよい(Rachkov,A.,Minoura,N.,Biochim.Biophys.Acta.,1544(1-2): 255-66(2001))。このような合成受容体MIPは、本明細書の他の項で説明する任意の1以上のスクリーニング法で使用することができる。
MIPは、模倣した分子の存在の「検知」に役立つことも示されている(Cheng,Z.,Wang,E.,Yang,X.,Biosens.Bioelectron.,16(3): 179-85(2001)、Jenkins,A.L.,Yin,R.,Jensen,J.L.,Analyst.,126(6): 798-802(2001)、Jenkins,A.L.,Yin,R.,Jensen,J.L.,Analyst.,126(6): 798-802(2001))。例えば、本発明のポリペプチドを使って設計されたMIPは、試料中の当該ポリペプチドのレベルを同定し、場合によっては定量するために計画されたアッセイで使用することができる。そのようなMIPは、本発明が提供するアッセイまたはキット(例えばELISAなど)に記載されている成分の代用品として使用することができる。
特定の受容体、リガンド、ポリペプチド、ペプチド、有機分子に対するMIPを作製するには、いくつかの方法を使用することができる。Estebanらは、J.Anal.Chem.,370(7): 795-802(2001)(この報文はそこに引用されている文献と共に参照によりそのまま本明細書に組み込まれる)に、好ましい方法をいくつか記載している。例えば、参照によりそのまま本明細書に組み込まれるHart,B.R.,Shea,K.J.,J.Am.Chem.Soc.,123(9): 2072-3(2001)およびQuaglia,M.,Chenon,K.,Hall,A.J.,De,Lorenzi,E.,Sellergren,B.,J.Am.Chem.Soc.,123(10): 2146-54(2001)などといった他の方法も、当技術分野では知られており、本発明に包含される。
本発明の抗体は様々な用途を持っている。例えばそのような抗体は、試料中の本発明ポリペプチドの存在を検出するか、または試料中の本発明ポリペプチドを定量するための診断アッセイに使用することができる。そのような診断アッセイには、少なくとも2つの工程が含まれうる。第1に、試料を抗体にさらす。この場合、試料は、組織(例えばヒト、動物などの組織)、生物学的液体(例えば血液、尿、喀痰、精液、羊水、唾液など)、生物学的抽出物(例えば組織ホモジネートまたは細胞ホモジネートなど)、タンパク質マイクロチップ(例えばArenkov P.ら,Anal Biochem.,278(2): 123-131(2000)などを参照されたい)、またはクロマトグラフィーカラムなどである。そして第2ステップでは、基質に結合した抗体の定量を行なう。あるいは、本方法はさらに、抗体を固形支持体に共有結合的に、また静電気的に、または可逆的に結合させる第1ステップと、結合させた抗体を、上に定義し本明細書の他の項で定義する試料にさらす第2ステップとを含んでもよい。
当技術分野では、例えば不均一相または均一相で実施される競合結合アッセイ、直接または間接サンドイッチアッセイ、および免疫沈降アッセイなどといった、種々の診断アッセイ技術が知られている(Zola「Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques」(CRC Press,Inc.,1987)のl47〜158頁)。診断アッセイに使用される抗体は、検出可能部分で標識することができる。検出可能部分は、検出可能なシグナルを直接的または間接的に生成する能力を持つべきである。例えば、検出可能部分は、2H、14C、32P、もしくは125Iなどの放射性同位体、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、もしくはルシフェリンなどの蛍光または化学発光化合物、あるいはアルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質もしくはセイヨウワサビペルオキシダーゼなどの酵素であることができる。抗体を検出可能部分にコンジュゲートする方法であって当技術分野で知られているものは、Hunterら,Nature,144: 945(1962)、Dafvidら,Biochem.,13: 1014(1974)、Painら,J.Immunol.Metho.,40: 219(1981)、およびNygren,J.Histochem.And Cytochem.,30: 407(1982)に記載されている方法を含めて、どれを使用してもよい。
本発明のポリペプチドに対する抗体は、そのようなポリペプチドを組換え細胞培養物または天然供給源からアフィニティー精製するのに役立つ。この方法では、当技術分野で周知の方法を使って、特定のポリペプチドに対する抗体を、適当な支持体、例えばセファデックス樹脂または濾紙などに固定化する。次に、固定化された抗体を、精製すべきポリペプチドを含む試料と接触させ、次いで、固定化された抗体に結合している所望のポリペプチド以外の、試料中に存在する実質上全ての物質を除去するのに適した溶媒で、支持体を洗浄する。最後に、所望のポリペプチドを抗体から遊離させるのに適した別の溶媒で、支持体を洗浄する。
本発明の抗体は、細胞株および生物学的試料のイムノフェノタイピングに利用することができる。本発明の遺伝子の翻訳産物は細胞特異的マーカーとして、さらに具体的には、特定の細胞タイプの様々な分化段階および/または成熟段階で差次的に発現される細胞マーカーとして、役立ちうる。特異的なエピトープまたはエピトープの組み合わせに対するモノクローナル抗体は、マーカーを発現させる細胞集団のスクリーニングを可能にするだろう。様々な技術を利用することにより、モノクローナル抗体を使って、マーカーを発現させる細胞集団のスクリーニングを行なうことができる。そのような技術としては、抗体被覆磁気ビーズを使った磁気分離、固形マトリックス(すなわちプレート)に結合した抗体による「パンニング」、およびフローサイトメトリーなどが挙げられる(例えば米国特許第5,985,660号、およびMorrisonら,Cell,96: 737-49(1999)を参照されたい)。
これらの技術により、特定の細胞集団のスクリーニング、例えば血液悪性腫瘍に付随して見いだされるかもしれない細胞集団(すなわち急性白血病患者における微小残存病変(MRD))のスクリーニング、および移植片対宿主疾患(GVHD)を予防するための、移植における「非自己」細胞のスクリーニングなどが可能になる。あるいは、これらの技術により、ヒト臍帯血に見いだされるかもしれないような、増殖および/または分化を起こす能力を持つ造血幹細胞および前駆細胞のスクリーニングも可能になる。
本発明の抗体は、当技術分野で知られる任意の方法により、免疫特異的結合についてアッセイすることができる。使用することができる免疫アッセイとして、例えばウェスタンブロット、放射免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイ、その他の技術を使った競合アッセイ系および非競合アッセイ系が挙げられるが、これらに限るわけではない。そのようなアッセイは日常的アッセイであり、当技術分野ではよく知られている(例えば、参照によりそのまま本明細書に組み込まれるAusubelら編「Current Protocols in Molecular Biology」(第1巻,John Wiley & Sons,Inc.,ニューヨーク,1994)などを参照されたい)。代表的な免疫アッセイを以下に簡単に説明する(ただしこれらは限定を目的とする説明ではない)。
免疫沈降プロトコールでは、一般に、細胞集団を、例えばプロテインホスファターゼおよび/またはプロテアーゼ阻害剤(例えばEDTA、PMSF、アプロチニン、バナジン酸ナトリウムなど)を添加したRIPAバッファー(1%NP-40またはトリトンX-100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、0.15M NaCl、0.01Mリン酸ナトリウム、pH7.2、1%トラジロール)などの溶解バッファー中で溶解し、興味ある抗体を細胞溶解液に添加し、一定時間(例えば1〜4時間)4℃でインキュベートし、プロテインAおよび/またはプロテインGセファロースビーズを細胞溶解液に添加し、4℃で約1時間以上インキュベートし、ビーズを溶解バッファーで洗浄し、ビーズをSDS/試料バッファーに再懸濁する。特定の抗原を免疫沈降させる興味ある抗体の能力は、例えばウェスタンブロット解析によって評価することができる。抗体の結合を増加させバックグラウンドを減少させるために調整することができるパラメータ(例えばセファローズビーズによる細胞溶解液の予備清澄化など)に関して、当業者は精通しているだろう。免疫沈降プロトコールに関するさらなる議論については、例えばAusubelら編「Current Protocols in Molecular Biology」(第1巻,John Wiley & Sons,Inc.,ニューヨーク,1994)の10.16.1などを参照されたい。
ウェスタンブロット解析では、一般に、タンパク質試料を調製し、そのタンパク質試料をポリアクリルアミドゲル(例えば抗原の分子量に応じて8%〜20%SDS-PAGE)で電気泳動し、タンパク質試料をポリアクリルアミドゲルからニトロセルロース、PVDFまたはナイロンなどのメンブレンに転写し、そのメンブレンをブロッキング溶液(例えば3%BSAまたは脱脂乳を添加したPBS)でブロックし、洗浄バッファー(例えばPBS-Tween 20)でメンブレンを洗浄し、ブロッキングバッファーに希釈した一次抗体(興味ある抗体)でメンブレンをブロックし、洗浄バッファーでメンブレンを洗浄し、酵素基質(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)または放射性分子(例えば32Pまたは125I)にコンジュゲートした二次抗体(一次抗体を認識するもの、例えば抗ヒト抗体)をブロッキングバッファーに希釈したものでメンブレンをブロックし、洗浄バッファーでメンブレンを洗浄し、抗原の存在を検出する。検出されるシグナルを増加させバックグラウンドノイズを低下させるために調整することができるパラメータに関して、当業者は精通しているだろう。ウェスタンブロットプロトコールに関するさらなる議論は、例えばAusubelら編「Current Protocols in Molecular Biology」(Vol.1, John Wiley & Sons,Inc.,ニューヨーク, 1994)の10.8.1などを参照されたい。
ELISAでは、抗原を調製し、96ウェルマイクロタイタープレートのウェルを抗原でコーティングし、酵素基質(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)などの検出可能な化合物にコンジュゲートした興味ある抗体をウェルに加えて一定時間インキュベートし、抗原の存在を検出する。ELISAでは、興味ある抗体を検出可能な化合物にコンジュゲートする必要があるわけではなく、そうする代わりに、検出可能な化合物にコンジュゲートした二次抗体(興味ある抗体を認識するもの)をウェルに加えてもよい。さらに、ウェルを抗原でコーティングする代わりに、抗体をウェルにコーティングしてもよい。この場合は、コーティングされたウェルに興味ある抗原を添加した後に、検出可能な化合物にコンジュゲートした二次抗体を加えることができる。検出されるシグナルを増加させるために調整することができるパラメータならびに当技術分野で知られるELISAの他の変法に関して、当業者は精通しているだろう。ELISAに関するさらなる議論は、例えばAusubelら編「Current Protocols in Molecular Biology」(第1巻,John Wiley & Sons,Inc.,ニューヨーク,1994)の11.2.1などを参照されたい。
抗原に対する抗体の結合親和性および抗体-抗原相互作用の解離速度(off-rate)は、競合結合アッセイによって決定することができる。競合結合アッセイの一例は、標識した抗原(例えば3Hまたは125I)を興味ある抗体と共に、増加する一連の量の非標識抗原の存在下でインキュベートし、標識抗原に結合した抗体を検出する放射免疫アッセイである。特定の抗原に対する興味ある抗体の親和性および結合解離速度は、スキャッチャードプロット解析により、データから決定することができる。第二の抗体との競合も、放射免疫アッセイを使って決定することができる。この場合は、抗原を、標識した化合物(例えば3Hまたは125I)にコンジュゲートした興味ある抗体と共に、増加する一連の量の非標識第二抗体の存在下でインキュベートする。
本発明はさらに、ここに開示する疾患、障害、または状態の1以上を処置するために本発明の抗体を動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトの患者に投与することを含む、抗体に基づく治療法に向けられる。本発明の治療化合物としては、例えば本発明の抗体(本明細書に記載するその断片、類似体および誘導体を含む)および本発明の抗体をコードする核酸(本明細書に記載するその断片、類似体および誘導体ならびに抗イディオタイプ抗体を含む)が挙げられるが、これらに限るわけではない。本発明の抗体は、本発明ポリペプチドの異常な発現および/または活性に関係する疾患、障害または状態(本明細書に記載する疾患、障害または状態の任意の1以上を含むが、これらに限らない)の処置、抑制または予防に使用することができる。本発明ポリペプチドの異常な発現および/または活性に関係する疾患、障害または状態の処置および/または予防には、例えばそれらの疾患、障害または状態に関係する症状の緩和が包含されるが、これに限るわけではない。本発明の抗体は、当技術分野で既知のまたは本明細書に記載の医薬的に許容できる組成物に入れて提供することができる。
本発明の抗体を治療的に使用する方法を要約すると、体内で局所的にまたは全身的に本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを結合すること、または例えば補体によって(CDC)もしくはエフェクター細胞によって(ADCC)媒介される抗体の直接的細胞毒性による方法が挙げられる。これらのアプローチのいくつかについて、以下にさらに詳しく説明する。本明細書が教示する内容を利用すれば、当業者は、甚だしい実験を行なわずに、本発明の抗体を診断、モニタリングまたは治療目的に使用する方法を知ることになる。
本発明の抗体は、他のモノクローナル抗体またはキメラ抗体と組み合わせて、あるいは例えば抗体と相互作用するエフェクター細胞の数またはその活性を増加させる働きをするリンホカインまたは造血成長因子(例えばIL-2、IL-3およびIL-7など)と組み合わせて、有利に利用することができる。
本発明の抗体は単独で投与してもよいし、他のタイプの処置(例えば放射線療法、化学療法、ホルモン療法、免疫療法および抗腫瘍剤)と組み合わせて投与してもよい。一般に、患者と同じ種に由来する産物または患者と同じ種反応性(抗体の場合)を持つ産物を投与することが好ましい。したがって好ましい一実施形態として、ヒト抗体、断片、誘導体、類似体または核酸を、治療または予防のためのヒト患者に投与する。
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド(その断片を含む)に関する免疫アッセイと、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド(その断片を含む)に関係する障害の治療には、どちらにも、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドまたはその断片もしくは領域に対して親和性が高くかつ/またはインビボで強力な阻害作用および/または中和作用を持つ抗体を使用することが好ましい。そのような抗体、断片または領域は、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド(その断片を含む)に対して親和性を持つだろう。好ましい結合親和性としては、解離定数すなわちKdが、5×10-2M、10-2M、5×10-3M、10-3M、5×10-4M、10-4M、5×10-5M、10-5M、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8M、10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、10-13M、5×10-14M、10-14M、5×10-15M、および10-15M未満であるものが挙げられる。
本発明のポリペプチドに対する抗体は、動物におけるアレルギー反応の阻害に役立つ。例えば、治療的に許容できる用量の1以上の本発明抗体、もしくは本抗体のカクテルを投与するか、またはそれらを様々な供給源から得た他の抗体と組み合わせて投与することにより、動物は抗原に対するアレルギー反応を誘発しなくなるかもしれない。
また、ある生物の体内でアレルギーおよび/または免疫応答を誘発する潜在能力を持つ本発明のポリペプチドに対する抗体をコードする遺伝子をクローニングし、その抗体遺伝子が発現されるように、その抗体遺伝子でその生物を(例えば構成的に、または誘導的に)形質転換することも考えられる。このようにして、その生物は、免疫/アレルギー反応性ポリペプチドの摂取または存在に起因するアレルギー反応に対して、効果的に抵抗性を持つようになるだろう。さらに、そのような本発明抗体の使用は、自己免疫疾患および/または障害の予防および/または改善にとりわけ有効でありうる。というのも、そのような状態は、典型的には、抗体が内在性タンパク質に対して向けられる結果だからである。例えば、本発明のポリペプチドが自己抗原に対する免疫応答の調整を担っている場合は、本明細書に開示するプロモーターまたは当技術分野で知られる他のプロモーターのいずれかと、本発明のポリペプチドに対する抗体をコードするポリヌクレオチドとを含むコンストラクトで、その生物および/または個体を形質転換することにより、その生物が自己抗原に対する免疫応答を誘発するのを効果的に阻害することができるだろう。治療および/または遺伝子療法への本発明の応用については、本明細書に項を改めて詳細に説明する。
別法として、本発明の抗体を植物で産生させ(例えば本発明のポリペプチドに対する抗体の遺伝子をクローニングし、植物内での前記抗体の構成的発現に適した、前記遺伝子を含むベクターで植物を形質転換する)、次に、その植物を動物に摂取させることにより、前記抗体が標的とする特異抗原に対する一時的免疫をその動物に付与することもできるだろう(例えば米国特許第5,914,123号および第6,034,298号参照)。
もう一つの実施形態として、本発明の抗体、好ましくはポリクローナル抗体、より好ましくはモノクローナル抗体、最も好ましくは一本鎖抗体を、ヒト、哺乳動物および/または他の生物における1以上の特定遺伝子の遺伝子発現を阻害する手段として使用することができる。例えばDow Agrosciences LLCの国際公開第00/05391号(2000年2月3日公開)を参照されたい。本発明の抗体へのこのような方法の応用は当技術分野では知られており、本明細書の他の項でさらに詳しく説明する。
さらにもう一つの実施形態として、本発明の抗体は、本発明のポリペプチドを多量体化するのにも役立ちうる。例えば、ある種のタンパク質は、多量体状態になると、生物学的活性が増加することがある(すなわち、当該タンパク質の有効濃度が増加して、局所的に、より多くのタンパク質を利用できるようになるために、そのような活性の増加が起こりうる)。
具体的一実施形態では、本発明ポリペプチドの異常な発現および/または活性と関係する疾患または障害を遺伝子治療によって処置、抑制または予防するために、抗体またはその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸を投与する。遺伝子治療とは、発現された核酸または発現可能な核酸の対象への投与によって行なわれる治療法を指す。本発明のこの実施形態では、核酸は、それらがコードしている、治療効果を媒介するタンパク質を産生する。
当技術分野で利用することができる遺伝子治療の方法はいずれも本発明に従って使用することができる。代表的方法を以下に説明する。
遺伝子治療の一般概論については、Goldspielら,Clinical Pharmacy 12: 488-505(1993)、WuおよびWu,Biotherapy 3: 87-95(1991)、Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol. 32: 573-596(1993)、Mulligan,Science 260: 926-932(1993)、ならびにMorganおよびAnderson,Ann.Rev.Biochem. 62: 191-217(1993)、May,TIBTECH 11(5): 155-215(1993)を参照されたい。組換えDNA技術分野で広く知られている、使用することが可能な方法は、Ausubelら編「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons,ニューヨーク,1993)およびKriegler「Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual」(Stockton Press,ニューヨーク, 1990)に記載されている。
好ましい一態様では、本化合物が抗体をコードする核酸配列を含み、前記核酸配列は、適切な宿主中で抗体またはその断片またはキメラタンパク質または重鎖もしくは軽鎖を発現させる発現ベクターの一部である。特に、そのような核酸配列は、抗体コード領域に作動可能な形で連結されたプロモーターを持ち、前記プロモーターは誘導性または構成的であって、所望により、組織特異的である。もう一つの具体的実施形態では、抗体コード配列および他の望ましい配列の両側に、ゲノム内の所望の部位での相同組換えを促進する領域が配置されており、そのために抗体コード核酸の染色体内発現が可能になるような核酸分子を使用する(KollerおよびSmithies,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86: 8932-8935(1989)、Zijlstraら,Nature 342: 435-438(1989))。ある具体的実施形態では、発現される抗体分子が一本鎖抗体である。あるいは、核酸配列は、抗体の重鎖と軽鎖の両方またはそれらの断片をコードする配列を含む。
患者への核酸の送達は、直接的に(この場合は患者を核酸または核酸運搬ベクターに直接曝露する)、または間接的に(この場合は、まずインビトロで細胞を核酸で形質転換した後、その細胞を患者に移植する)行なうことができる。これら2つのアプローチは、それぞれインビボ遺伝子療法またはエクスビボ遺伝子療法と呼ばれている。
具体的一実施形態では、核酸配列を直接インビボ投与し、それをインビボで発現させることにより、コードされている産物を産生させる。これは、当技術分野で知られている数多くの方法のいずれかによって、例えばそれらを適当な核酸発現ベクターの一部として構築し、それらが細胞内に入るように投与すること(これは例えば、欠損レトロウイルスもしくは弱毒化レトロウイルスまたは他のウイルベクター(米国特許第4,980,286号参照)によって、または裸のDNAの直接注入によって、または微粒子ボンバードメント(例えば遺伝子銃、Biolistic(Dupont))を使って、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクト剤によるコーティング、リポソーム、微粒子もしくはマイクロカプセルへの封入によって、または核内に進入することが知られているペプチドに連結して投与することによって、または受容体を介したエンドサイトーシスを受けるリガンドに連結して投与すること(例えばWuおよびWu,J.Biol.Chem.,262: 4429-4432(1987))(この方法はその受容体を特異的に発現させる細胞タイプをターゲティングするために使用することができる)などによって行なわれる)などによって、達成することができる。もう一つの実施形態として、リガンドがエンドソームを破壊する融合誘導性ウイルスペプチドを含んでいて、核酸がリソソームによる分解を回避することを可能にするような核酸-リガンド複合体を形成させることもできる。さらにもう一つの実施形態として、特異的受容体をターゲットにすることにより、細胞特異的な取り込みおよび発現が起こるように、核酸をインビボでターゲティングすることができる(例えばPCT公開WO92/06180、WO92/22635、WO92/20316、WO93/14188、WO93/20221などを参照されたい)。別法として、核酸を細胞内に導入し、相同組換えによって宿主DNA内に組み込んで、発現させることもできる(KollerおよびSmithies,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86: 8932-8935(1989)、Zijlstraら,Nature 342: 435-438(1989))。
具体的一実施形態では、本発明の抗体をコードする核酸配列を含有するウイルスベクターを使用する。例えばレトロウイルスベクターを使用することができる(Millerら,Meth.Enzymol. 217: 581-599(1993)参照)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムの正しいパッケージングと宿主細胞DNAへの組込みに必要な成分を含有している。遺伝子治療に使用される抗体をコードする核酸配列は、患者への遺伝子の送達を容易にする1以上のベクター中にクローニングされる。レトロウイルスベクターに関するさらなる詳細は、Boesenら,Biotherapy 6: 291-302(1994)に見いだすことができる。この文献には、化学療法に対する抵抗性が高まった幹細胞を作出するために、レトロウイルスベクターを使って造血幹細胞にmdrl遺伝子を送達することが記載されている。遺伝子治療におけるレトロウイルスベクターの使用を例示している他の文献には、Clowesら,J.Clin.Invest. 93: 644-651(1994)、Kiemら,Blood 83: 1467-1473(1994)、SalmonsおよびGunzberg,Human Gene Therapy 4: 129-141(1993)ならびにGrossmanおよびWilson,Curr.Opin.in Genetics and Devel. 3: 110-114(1993)がある。
アデノウイルスも、遺伝子治療に使用することができるウイルスベクターである。アデノウイルスは、呼吸上皮に遺伝子を送達するための媒体として、とりわけ魅力的である。アデノウイルスは元来、呼吸上皮に感染し、そこで軽い疾患を引き起こす。アデノウイルスに基づく送達系の呼吸上皮以外の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、および筋肉である。アデノウイルスには、非分裂細胞に感染する能力を持っているという利点がある。KozarskyおよびWilson,Current Opinion in Genetics and Development 3: 499-503(1993)には、アデノウイルスに基づく遺伝子治療が概説されている。Boutら,Human Gene Therapy 5: 3-10(1994)は、アデノウイルスベクターを使ったアカゲザル呼吸上皮への遺伝子の導入を実証した。遺伝子治療におけるアデノウイルスの他の使用例は、Rosenfeldら,Science 252: 431-434(1991)、Rosenfeldら,Cell 68: 143-155(1992)、Mastrangeliら,J.Clin.Invest. 91: 225-234(1993)、PCT公開WO94/12649、およびWangら,Gene Therapy 2: 775-783(1995)に見いだすことができる。好ましい一実施形態では、アデノウイルスベクターを使用する。
アデノ関連ウイルス(AAV)を遺伝子治療に使用することも提案されている(Walshら,Proc.Soc.Exp.Biol.Med. 204: 289-300(1993)、米国特許第5,436,146号)。
遺伝子治療へのもう一つのアプローチでは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム法によるトランスフェクション、またはウイルス感染などの方法によって、遺伝子を組織培養中の細胞に導入する。通常、この導入方法には、当該細胞への選択可能マーカーの導入が含まれる。次に、細胞に選択圧をかけて、導入した遺伝子を取り込んでそれを発現させている細胞を単離する。次に、それらの細胞を患者に送達する。
この実施形態では、核酸を細胞に導入した後で、得られた組換え細胞をインビボ投与する。そのような導入は、当技術分野で知られる任意の方法によって、例えばトランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、上記核酸配列を含有するウイルスまたはバクテリオファージベクター、細胞融合、染色体による遺伝子導入、マイクロセルによる遺伝子導入、スフェロプラスト融合など(ただしこれらに限らない)によって行なうことができる。細胞に外来遺伝子を導入する技術は当技術分野では数多く知られており(例えばLoefflerおよびBehr,Meth.Enzymol. 217: 599-618(1993)、Cohenら,Meth.Enzymol. 217: 618-644(1993)、Cline,Pharmac.Ther. 29: 69-92m(1985)などを参照されたい)、受容細胞の必要な発育機能および生理的機能が破壊されない限り、本発明でも使用することができる。この技術は、核酸が細胞によって発現され、好ましくは遺伝されて、その細胞子孫によって発現されるように、細胞に核酸を安定に導入することができるべきである。
得られた組換え細胞は、当技術分野で知られる様々な方法によって、患者に送達することができる。組換え血液細胞(例えば造血幹細胞または造血前駆細胞)は、好ましくは、静脈内投与される。予想される細胞の使用量は、所望する効果、患者の状態などに依存し、当業者であれば決定することができる。
遺伝子治療のために核酸を導入することができる細胞には、任意の望ましい入手可能な細胞タイプが包含され、例えば上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋細胞、肝細胞、血液細胞、例えばTリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球、種々の幹細胞または前駆細胞、特に造血幹細胞または造血前駆細胞、例えば骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝臓などから得られるものが挙げられるが、これらに限るわけではない。
好ましい一実施形態では、遺伝子治療に使用される細胞が、患者にとって自己である。
組換え細胞を遺伝子治療に使用する一実施形態では、抗体をコードする核酸配列を、それらが当該細胞またはその子孫によって発現されるように細胞に導入し、次にその組換え細胞をインビボ投与して、治療効果を得る。具体的一実施形態では、幹細胞または前駆細胞を使用する。本発明のこの実施形態では、単離してインビトロで維持することができる任意の幹細胞および/または前駆細胞を潜在的に使用することができる(例えばPCT公開WO94/08598、StempleおよびAnderson,Cell 71: 973-985(1992)、Rheinwald,Meth.Cell Bio. 21A: 229(1980)、ならびにPittelkowおよびScott,Mayo Clinic Proc. 61: 771(1986)などを参照されたい)。
具体的一実施形態では、遺伝子治療のために導入される核酸が、適当な転写誘導物質の有無を制御することによって核酸の発現が制御されるように、コード領域に作動可能な形で連結された誘導性プロモーターを含む。
本発明の化合物または医薬組成物は、ヒトでの使用に先だって、所望の治療活性または予防活性に関して、好ましくはインビトロで試験した後に、インビボで試験される。例えば、化合物または医薬組成物の治療上または予防上の有効性を証明するためのインビトロアッセイには、細胞株または患者組織試料に対する化合物の効果が含まれる。細胞株および/または患者組織試料に対する化合物または組成物の効果は、当業者に既知の技術、例えばロゼット形成アッセイおよび細胞溶解アッセイなどを利用して決定することができる。本発明では、特定化合物の投与が適応となるかどうかを決定するために使用することができるインビトロアッセイとして、患者組織試料を培養増殖し、化合物に曝露するか、または他の形で化合物を投与し、組織試料に対するその化合物の効果を観察するインビトロ細胞培養アッセイが挙げられる。
本発明は、有効量の本発明化合物または本発明医薬組成物、例えば本発明の抗体を対象に投与することによる処置、抑制および予防方法を提供する。好ましい一態様では本化合物が実質的に精製されている(例えばその効果を制限する物質または望ましくない副作用を引き起こす物質を実質的に含まない)。対象は、好ましくは動物、例えばウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなど(ただしこれらに限らない)の動物であり、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
化合物が核酸または免疫グロブリンを含んでいる場合に使用することができる製剤および投与方法については上述した。他の適切な製剤および投与経路を以下に記載するものから選択することもできる。
例えばリポソーム、微粒子、またはマイクロカプセルへの封入、本化合物を発現させる能力を持つ組換え細胞、受容体を介したエンドサイトーシス(例えばWuおよびWu,J.Biol.Chem.,262: 4429-4432(1987))、レトロウイルスまたは他のベクターの一部として核酸を構築することなど、様々な送達システムが知られており、それらを本発明の化合物を投与するために使用することができる。導入方法としては、例えば皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路などが挙げられる(ただしこれらに限らない)。本化合物または本組成物は任意の好都合な経路によって、例えば注入もしくはボーラス注射によって、または上皮もしくは皮膚粘膜ライニング(例えば口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を通した吸収によって投与することができ、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与することができる。投与は全身投与または局所投与であることができる。さらに、本発明の医薬化合物または医薬組成物を、脳室内および髄腔内注射を含む適切な経路によって、中枢神経系に導入することが望ましい場合もある。脳室内注射は、例えばOmmayaレザバーなどのレザバーに接続した脳室内カテーテルによって、容易にすることができる。例えば吸入器または噴霧器とエアゾル化剤を含む製剤とを使った肺投与も使用することができる。
具体的一実施形態として、本発明の医薬化合物または医薬組成物を、処置を必要とする領域に局所的に投与することが望ましい場合がある。これは、例えば手術中の局所注入によって、または手術後に創傷被覆材などと組み合わせた局所外用によって、または注射によって、またはカテーテルを使って、または坐剤を使って、またはシラスティック膜などの膜または繊維を含む多孔性、非多孔性またはゲル状の材料でできたインプラントによって行なうことができる(ただしこれらに限らない)。本発明のタンパク質(抗体を含む)を投与する場合は、好ましくは、そのタンパク質が吸収されない材料を使用するように注意しなければならない。
もう一つの実施形態として、本化合物または本組成物は小胞、特にリポソームに入れて送達することができる(Langer,Science 249: 1527-1533(1990)、Lopez-BeresteinおよびFidler編「Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer」(Liss,ニューヨーク,1989)の353〜365頁(Treatら著)、同上の317〜327頁(Lopez-Berestein著)を参照されたい。総論についても同書を参照されたい)。
さらにもう一つの実施形態として、本化合物または本組成物を制御放出系に入れて送達することもできる。一実施形態として、ポンプを使用することができる(Langer,前掲、Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng. 14: 201(1987)、Buchwaldら,Surgery 88: 507(1980)、Saudekら,N.Engl.J.Med. 321: 574(1989)参照)。もう一つの実施形態として、ポリマー材料を使用することもできる(LangerおよびWise編「Medical Applications of Controlled Release」(CRC Pres.,フロリダ州ボカラトン,1974)、SmolenおよびBall編「Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance」(Wiley,ニューヨーク,1984)、RangerおよびPeppas,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem. 23: 61(1983)参照、またLevyら,Science 228: 190(1985)、Duringら,Ann.Neurol. 25: 351(1989)、Howardら,J.Neurosurg. 71: 105(1989)も参照されたい)。さらにもう一つの実施形態として、制御放出系を治療標的、すなわち脳の近傍に置いて、必要量を全身投与量の一部分だけにすることもできる(例えば前掲の「Medical Applications of Controlled Release」第2巻,115〜138頁(Goodson著)(1984)など)。
他の制御放出系は、Langerによる総説(Science 249: 1527-1533 (1990))で論じられている。
本発明の化合物がタンパク質をコードする核酸である具体的一実施形態では、その核酸がコードしているタンパク質の発現を促進するために、当該核酸を適当な核酸発現ベクターの一部として構築し、例えばレトロウイルスベクターの使用によって(米国特許第4,980,286号参照)、または直接注入によって、または微粒子ボンバードメント(例えば遺伝子銃、Biolistic(Dupont))の使用によって、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクト剤でコーティングすることによって、または核に進入することが知られているホメオボックス様ペプチドに連結した状態で投与すること(例えばJoliotら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88: 1864-1868(1991))などによって、細胞内に核酸が導入されるように投与することにより、当該核酸をインビボ投与することができる。別法として、核酸を細胞内に導入し、相同組換えによって宿主DNA内に組み込んで発現させることもできる。
本発明は医薬組成物も提供する。そのような組成物は、治療有効量の化合物と、医薬的に許容できる担体とを含む。具体的一実施形態では、「医薬的に許容できる」という用語が、連邦政府または州政府の規制機関によって承認されていること、または米国薬局方もしくは他の一般に認められた薬局方に動物用、特にヒト用として記載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療薬と一緒に投与される希釈剤、佐剤、賦形剤またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は滅菌された液体、例えば水、および石油、動物由来もしくは植物由来の油または合成油を含む油、例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などであることができる。医薬組成物を静脈内に投与する場合、水は好ましい担体である。食塩溶液ならびにデキストロース水溶液およびグリセロール水溶液も液体担体として、特に注射用溶液に使用することができる。適切な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、コメ、穀粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどがある。本組成物は、所望により、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤をさらに含むことができる。これらの組成物は溶液、懸濁液、乳液、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形態を取ることができる。本組成物は、伝統的な結合剤および担体、例えばトリグリセリドなどを使って、坐剤として製剤化することができる。経口製剤は、標準的な担体、例えば医薬用のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含むことができる。適切な医薬担体の例は「Remington's Pharmaceutical Sciences」にE.W.Martinが記載している。そのような組成物は、治療有効量の本化合物(好ましくは精製されたもの)を、患者に適正な投与を行なうための剤形が得られるように、適切な量の担体と共に含有するだろう。製剤は投与形式に適していなければならない。
好ましい実施形態では、本組成物は、常法に従って、ヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物として製剤化される。通例、静脈内投与用組成物は滅菌等張水性バッファー溶液である。必要に応じて、本組成物は可溶化剤と、注射部位の痛みを和らげるためのリグノカインなどの局所麻酔剤も含みうる。一般に、諸成分は個別に、または一つに混合されて、単位剤形、例えば活性剤の量を表示したアンプルまたは分包などの密封された容器に入った凍結乾燥粉末または無水濃縮物などとして供給される。組成物を注入によって投与する場合は、滅菌された医薬用水または医薬用食塩水が入っている注入ビンを使って調合することができる。組成物を注射によって投与する場合は、投与前に諸成分を混合することができるように、注射用滅菌水または注射用食塩水のアンプルを用意することができる。
本発明の化合物は、中性型または塩型として製剤化することができる。医薬的に許容できる塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するアニオンによって形成されるもの、および水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するカチオンによって形成されるものが含まれる。
本発明ポリペプチドの異常な発現および/または活性に関係する疾患または障害の処置、抑制および予防に有効であるだろう本発明化合物の量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。また、要すれば、最適用量範囲の確認が容易になるように、インビトロアッセイを利用してもよい。製剤中に使用される正確な用量は投与経路および疾患または障害の深刻さにも依存するだろうから、医師の判断と各患者の状況に応じて決定されるべきである。有効量はインビトロまたは動物モデル試験系で得られる用量反応曲線から推定することができる。
抗体の場合、患者への投与量は典型的には患者の体重1kgあたり0.1mg〜100mgである。患者への投与量は、好ましくは、患者の体重1kgあたり0.1mg〜20mg、より好ましくは患者の体重1kgあたり1mg〜10mgである。一般に、人体では、外来ポリペプチドに対する免疫応答ゆえに、ヒト抗体の方が他の種に由来する抗体よりも長い半減期を持つ。したがって、多くの場合、ヒト抗体では、用量と投与頻度を減らすことが可能である。さらに、本発明抗体の用量および投与頻度は、例えば脂質付加などの修飾によって抗体の取り込みおよび組織浸透性(例えば脳への浸透性)を増加させることにより、減らすことができる。
本発明は、本発明医薬組成物の成分の1以上で満たされた1以上の容器を含む医薬パックまたは医薬キットも提供する。要すれば、そのような容器には、医薬品または生物学的製剤の製造、使用または販売を規制する政府機関によって指定された形式で、ヒトへの投与を目的とする製造、使用または販売に関する当局の認可を反映した表示を添付することができる。
抗体による診断および画像化
興味あるポリペプチドに特異的に結合する標識抗体ならびにその断片および類似体は、本発明ポリペプチドの異常な発現および/または活性に関係する疾患、障害および/または状態を検出、診断またはモニターするために、診断目的で使用することができる。本発明によれば、(a)ある個体の細胞または体液における興味あるポリペプチドの発現を、興味あるポリペプチドに特異的な1以上の抗体を使ってアッセイすること、および(b)その遺伝子発現のレベルを標準的な遺伝子発現レベルと比較することを含む、興味あるポリペプチドの異常な発現の検出が可能である。この場合、標準的発現レベルと比較して、アッセイされたポリペプチド遺伝子発現レベルの増加または減少は、異常な発現を示す。
本発明は、ある障害を診断するための診断アッセイであって、(a)ある個体の細胞または体液における興味あるポリペプチドの発現を、興味あるポリペプチドに特異的な1以上の抗体を使ってアッセイすること、および(b)その遺伝子発現のレベルを標準的な遺伝子発現レベルと比較することを含み、標準的発現レベルと比較した場合の、アッセイされたポリペプチド遺伝子発現レベルの増加または減少が、特定の障害を示す診断アッセイを提供する。癌の場合、ある個体から得た生検組織中に相対的に多量の転写物が存在することは、その疾患の発症に対する素因を示すか、または実際に臨床症状が出現する前にその疾患を検出するための手段になりうる。このタイプのより確定的な診断により、医療従事者は、予防措置または積極的処置をより早く実施し、よって癌の発症またはさらなる進行を防止することが可能になりうる。
本発明の抗体は、当業者に知られている古典的な免疫組織学的方法による生物学的試料中のタンパク質レベルのアッセイに使用することができる(例えばJalkanenら,J.Cell.Biol. 101: 976-985(1985)、Jalkanenら,J.Cell.Biol. 105: 3087-3096(1987))。タンパク質遺伝子発現の検出に有用な、抗体に基づく他の方法には、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および放射免疫アッセイ(RIA)などの免疫アッセイなどがある。適切な抗体アッセイラベルは当技術分野では知られており、例えばグルコースオキシダーゼなどの酵素ラベル、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(112In)およびテクネチウム(99Tc)などの放射性同位体、ルミノールなどの発光ラベル、フルオレセインおよびローダミンなどの蛍光ラベル、ならびにビオチンなどが挙げられる。
本発明の一態様は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトにおける、興味あるポリペプチドの異常な発現に関係する疾患または障害の検出および診断である。一実施形態として、診断は、a)興味あるポリペプチドに特異的に結合する有効量の標識分子を対象に投与(例えば非経口投与、皮下投与、または腹腔内投与)すること、b)前記標識分子を、前記ポリペプチドが発現している対象内の部位に優先的に濃縮させるため(そして未結合標識分子をバックグラウンドレベルまで除去するため)に、投与に続いて、ある期間待つこと、c)バックグラウンドレベルを決定すること、およびd)対象内の標識分子を検出することを含み、バックグラウンドレベルを上回る標識分子の検出は、その対象が、興味あるポリペプチドの異常な発現に関係する特定の疾患または障害を持っていることを示すようになっている。バックグラウンドレベルは、例えば検出された標識分子の量を特定の系に関して先に決定された標準値と比較することなど、様々な方法によって決定することができる。
診断画像を得るのに必要な撮像成分の量が、対象のサイズおよび使用する撮像システムによって決まることは、当技術分野では理解されるだろう。放射性同位体成分を使用する場合、注射される放射能の量は、ヒト対象では、通常、99mTc約5〜20ミリキュリーの範囲になるだろう。標識された抗体または抗体断片は、次いで、特異的タンパク質を含む細胞部位に優先的に蓄積するだろう。インビボ腫瘍撮像法については、S.W.BurchielおよびB.A.Rhodes編「Tumor Imaging: The Radiochemical Detection of Cancer」(Masson Publishing Inc.,1982)の第13章、S.W.Burchielら著「Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments(放射性標識抗体およびその断片の免疫薬物動態学)」に記載されている。
標識分子を対象内の部位に優先的に濃縮させ、未結合標識分子をバックグラウンドレベルまで除去するための投与後の期間は、使用するラベルの種類および投与方法を含むいくつかの変数に依存して、6〜48時間または6〜24時間または6〜12時間である。もう一つの実施形態では、投与後の期間が5〜20日または5〜10日である。
ある実施形態では、疾患または障害のモニタリングが、その疾患または障害の診断方法を、例えば最初の診断の1ヶ月後、最初の診断の6ヶ月後、最初の診断の1年後などに繰り返すことによって行われる。
患者における標識分子の存在は、当技術分野で知られているインビボスキャニング法を使って検出することができる。これらの方法は使用する標識のタイプに依存する。当業者は、特定の標識を検出するのに適した方法を決定することができるだろう。本発明の診断方法で使用することができる方法および装置には、例えばコンピュータ断層撮影(CT)、ならびに陽電子断層撮影(PET)、磁気共鳴撮像法(MRI)および超音波撮像法などの全身スキャンなどがあるが、これらに限るわけではない。
ある具体的実施形態では、分子を放射性同位体で標識し、患者内の分子を放射線応答性手術器具(Thurstonら,米国特許第5,441,050号)を使って検出する。もう一つの実施形態では、分子を蛍光化合物で標識し、患者内の分子を蛍光応答性走査装置を使って検出する。もう一つの実施形態では、分子を陽電子放出金属で標識し、患者内の分子を陽電子断層撮影法を使って検出する。さらにもう一つの実施形態では、分子を常磁性ラベルで標識し、患者内の分子を磁気共鳴撮像法(MRI)を使って検出する。
本発明は上記の方法で使用することができるキットを提供する。ある実施形態では、キットは、1以上の容器に入った本発明の抗体、好ましくは精製された抗体を含む。ある具体的実施形態では、本発明のキットは、キットに含まれる抗体と特異的に免疫応答するエピトープを持つ実質的に単離されたポリペプチドを含む。好ましくは、本発明のキットは、さらに、興味あるポリペプチドとは反応しない対照抗体を含む。もう一つの具体的実施形態では、本発明のキットは、興味あるポリペプチドに対する抗体の結合を検出する手段を含む(例えば抗体を検出可能な基質、例えば蛍光化合物、酵素基質、放射性化合物もしくは発光化合物とコンジュゲートするか、または第1抗体を認識する第2抗体を検出可能な基質にコンジュゲートすることができる)。
本発明のもう一つの具体的実施形態では、キットが、増殖性および/または癌性ポリヌクレオチドおよびポリペプチドに対して特異的な抗体を含む、血清スクリーニング用の診断キットである。そのようなキットは興味あるポリペプチドとは反応しない対照抗体を含んでもよい。そのようなキットは、少なくとも1つの抗ポリペプチド抗原抗体と特異的に免疫応答するエピトープを含む実質的に単離されたポリペプチド抗原を含むことができる。さらに、そのようなキットは、前記抗体の抗原への結合を検出するための手段を含む(例えば抗体を、フローサイトメトリーによって検出することができるフルオレセインまたはローダミンなどの蛍光化合物とコンジュゲートすることができる)。具体的実施形態として、本キットは、組換え生産または化学合成されたポリペプチド抗原を含みうる。本キットのポリペプチド抗原は固形支持体に取付けることもできる。
さらに具体的な一実施形態として、上述したキットの検出手段は、前記ポリペプチド抗原が取付けられた固形支持体を含む。そのようなキットはさらに、取付けられていないレポーター標識抗ヒト抗体を含んでもよい。この実施形態では、ポリペプチド抗原に対する抗体の結合を、前記レポーター標識抗体の結合によって検出することができる。
さらなる一実施形態として、本発明は、本発明ポリペプチドの抗原を含む、血清スクリーニング用の診断キットを包含する。この診断キットは、ポリペプチド抗原またはポリヌクレオチド抗原と特異的に免疫応答する実質的に単離された抗体、および前記抗体に対する前記ポリヌクレオチド抗原またはポリペプチド抗原の結合を検出する手段を含む。ある実施形態では、抗体は固形支持体に取付けられる。具体的一実施形態として、抗体はモノクローナル抗体であってよい。本キットの検出手段は、第2の標識されたモノクローナル抗体を含みうる。これに代えて、またはこれに加えて、検出手段は標識された競合抗原を含んでもよい。
診断的構成の一つでは、試験血清を、本発明の方法によって得られる表面結合抗原を持つ固相試薬と反応させる。特異抗原を使って抗体を試薬に結合させ、未結合の血清成分を洗浄によって除去した後、試薬をレポーター標識抗ヒト抗体と反応させることにより、固形支持体に結合した抗抗原抗体の量に比例してレポーターを試薬に結合させる。結合していない標識抗体を除去するために試薬を再び洗浄し、試薬に結合しているレポーターの量を決定する。レポーターは、典型的には、適切な蛍光、発光または発色基質(Sigma,ミズーリ州セントルイス)の存在下で固相をインキュベートすることによって検出される酵素である。
上記の固体表面試薬は、ポリマービーズ、浸漬試験片、96穴プレートまたはフィルター材料などの固形支持体材料にタンパク質材料を取付けるための既知の技術によって製造される。これらの取付け方法は、一般に、支持体へのタンパク質の非特異的吸着、および固形支持体の化学反応性基(例えば活性化されたカルボキシル、ヒドロキシル、またはアルデヒド基)への、典型的には遊離のアミノ基を介したタンパク質の共有結合が含まれる。別法として、ストレプトアビジン被覆プレートをビオチン化抗原と一緒に使用することもできる。
したがって本発明は、この診断方法を行なうためのアッセイ系またはアッセイキットを提供する。本キットは一般に、組換え抗原が表面に結合している支持体と、表面に結合した抗抗原抗体を検出するためのレポーター標識抗ヒト抗体とを含む。
本発明のポリペプチドはいずれも融合タンパク質の作製に使用することができる。例えば、本発明のポリペプチドは、第2のタンパク質に融合した場合、抗原タグとして使用することができる。本発明のポリペプチドに対して産生させた抗体を使って本ポリペプチドに結合させることにより、前記第2タンパク質を間接的に検出することができる。さらに、ある種のタンパク質は、輸送シグナルに基づいて細胞位置をターゲティングするので、他のタンパク質に融合した場合は、本発明のポリペプチドをターゲティング分子として使用することもできる。
本発明のポリペプチドに融合することができるドメインの例には、異種シグナル配列だけでなく、他の異種機能領域も含まれる。融合は必ずしも直接的融合である必要はなく、リンカー配列を介した融合であってもよい。
さらに、本発明ポリペプチドの特徴が改善されるように、融合タンパク質を設計してもよい。例えば、宿主細胞からの精製時またはその後の取り扱い時および貯蔵時の安定性および持続性が改善するように、追加アミノ酸、特に荷電アミノ酸からなる一領域をポリペプチドのN末端に付加することができる。精製を容易にするためにペプチド部分をポリペプチドに付加してもよい。そのような領域は当該ポリペプチドの最終製造工程前に、除去することができる。また、そのようなペプチド部分の間にペプチド切断部位を導入することもでき、これをさらにプロテアーゼ活性にさらすことにより、本発明のタンパク質から前記ペプチドを除去することができるだろう。ポリペプチドの取り扱いを容易にするためのペプチド部分(ペプチド切断部位を含む)の付加は当技術分野ではよく知られており、日常的な技術である。
さらに、本発明のポリペプチド(断片、特にエピトープを含む)は、免疫グロブリン(IgA、IgE、IgG、IgM)の定常ドメインの構成要素またはその一部(ドメイン全体およびその一部分を含む、CH1、CH2、CH3、およびそれらの任意の組み合わせ)と組み合わせて、キメラポリペプチドにすることもできる。これらの融合タンパク質は精製を容易にし、増加した生体内半減期を示す。報告された一例では、ヒトCD4ポリペプチドの最初の2つのドメインと哺乳類免疫グロブリンの重鎖または軽鎖定常領域の様々なドメインとからなるキメラタンパク質が記載されている(EP A 394,827、Trauneckerら,Nature 331: 84-86(1988))。(IgGにより)ジスルフィド結合した二量体構造を持つ融合タンパク質は、単量体型の分泌タンパク質またはタンパク質断片だけの場合よりも効率よく、他の分子を結合および中和することもできる(Fountoulakisら,J.Biochem. 270: 3958-3964(1995))。
同様に、EP-A-O 464 533(対応カナダ特許第2045869号)には、免疫グロブリン分子の定常領域の様々な部分と、別のヒトタンパク質またはその一部とを含む融合タンパク質が開示されている。多くの場合、融合タンパク質中のFc部分は治療および診断に有益であり、例えば薬物動態特性(EP-A 0232 262)などの向上をもたらすことができる。あるいは、融合タンパク質を発現させ、検出し、精製した後で、Fc部分を欠失させることが望ましいだろう。例えば、融合タンパク質を免疫処置用の抗原として使用する場合は、Fc部分が、治療および診断の障害となりうる。例えば創薬では、hIL-5などのヒトタンパク質が、ハイスループットスクリーニングアッセイのためにFc部分に融合されて、hIL-5のアンタゴニストの同定に使用されている(D.Bennettら,J.Molecular Recognition 8: 52-58(1995)およびK.Johansonら,J.Biol.Chem,270: 9459-9471(1995)を参照されたい)。
さらに、本発明のポリペプチドをマーカー配列(「タグ」ともいう)に融合することもできる。そのような「タグ」に特異的な抗体を入手することができるため、本発明のポリペプチドに特異的な抗体は必要でなくなり、それゆえに、本発明の融合タンパク質の精製および/またはその同定がかなり容易になる。そのような精製は、抗タグ抗体、またはエピトープタグに結合する別のタイプのアフィニティーマトリックス(例えば流液カラムのマトリックスに取付けられた抗タグ抗体)を用いるアフィニティー精製の形を取ることができる。好ましい実施形態では、マーカーアミノ酸配列がヘキサヒスチジンペプチドである。これは、pQEベクター(QIAGEN,Inc.,カリフォルニア州91311チャッツワース・イートンアベニュー9259)をはじめとするベクター(その多くは市販されている)に用意されているタグである。例えばGentzら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86: 821-824(1989)に記述されているように、ヘキサヒスチジンにより、融合タンパク質の精製が便利になる。「HA」タグはインフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに相当する(Wilsonら,Cell 37: 767(1984))。
本発明ポリペプチドの精製および/または同定に関して上述したタグの代わりに容易に使用することができる他の「タグ」が存在することは、当業者にはわかるだろう(Jones C.ら,J Chromatogr A.707(1): 3-22(1995))。例えばc-mycタグおよびそれに対する8F9、3C7、6E10、G4m B7および9E10抗体(Evanら,Molecular and Cellular Biology 5: 3610-3616(1985))、単純疱疹ウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体(Paborskyら,Protein Engineering 3(6): 547-553(1990))、Flag-ペプチド、すなわちオクタペプチド配列DYKDDDDK(配列番号24)(Hoppら,Biotech. 6: 1204-1210(1988)))、KT3エピトープペプチド(Martinら,Science 255: 192-194(1992))、α-チューブリンエピトープペプチド(Skinnerら,J.Biol.Chem. 266: 15136-15166(1991))、T7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ(Lutz-Freyermuthら,Proc.Natl.Sci.USA 87: 6363-6397(1990))、FITCエピトープ(Zymed,Inc.)、GFPエピトープ(Zymed,Inc.)、およびローダミンエピトープ(Zymed,Inc.)などが挙げられる。
本発明は、最大9残基の反復する一連のアルギニンアミノ酸をコードする最大9コドンの、本発明ポリヌクレオチドのコード領域への結合も包含する。また本発明は、最大9残基の反復する一連のアルギニンアミノ酸による、本発明ポリペプチドの化学的誘導体化も包含する。このようなタグは、ポリペプチドに結合すると、さらなる誘導体化または操作を行なわなくても、化合物を細胞内部に進入させる普遍的パスとして働くことが最近明らかにされている(Wender,P.ら,未公表データ)。
本発明のポリペプチド(その断片および/または変異体を含む)が関わるタンパク質融合物は、限定を意図しない以下の例に使用することができる:タンパク質の細胞内局在、免疫沈降によるタンパク質-タンパク質相互作用の決定、アフィニティークロマトグラフィーによるタンパク質の精製、タンパク質の機能的および/または構造的特徴づけ。本発明は、エピトープ融合タンパク質に関して上述した任意の用途へのハプテン特異抗体の応用も包含する。例えば、本発明のポリペプチドを化学的に誘導体化して、ハプテン分子(例えばDNP(Zymed,Inc.))を取付けることができる。このようなハプテンに対して特異的なモノクローナル抗体を入手することができるので、本タンパク質は例えば免疫沈降法などによって容易に精製することができるだろう。
本発明のポリペプチド(その断片および/または変異体を含む)ならびにそのようなポリペプチド、断片および/または変異体に対する抗体は、いくつかある既知の毒素および今後決定される毒素、例えばリシン、サポリン(Mashiba Hら,Ann.N.Y.Acad.Sci. 1999; 886: 2335)、またはHC毒素(Tonukari NJら,Plant Cell.2000 Feb; 12(2): 237-248)などのいずれにも融合することができる。そのような融合物は本発明のポリペプチドに結合する能力を持つリガンドまたはタンパク質が存在する所望の組織に当該毒素を送達するために使用することができるだろう。
本発明は、細胞内の特定位置、特定組織、および/または特定の種に毒素を送達するための、本発明のポリペプチド(その変異体および断片を含む)に対する抗体と前記毒素との融合物を包含する。そのような二機能性抗体は当技術分野では知られているが、P.J.Hudson,Curr.Opp.In.Imm. 11: 548-557(1999)には、他にも有利な融合物が、製造方法に関する引用を含めて記載されており、この刊行物は、そこに引用されている文献と共に、参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。この場合、「毒素」という用語は、任意の異種タンパク質、小分子、放射性核種、細胞毒性薬、リポソーム、接着分子、糖タンパク質、リガンド、細胞または組織特異リガンド、酵素、生物活性剤、生物学的応答調整因子、抗真菌剤、ホルモン、ステロイド、ビタミン、ペプチド、ペプチド類似体、抗アレルギー剤、抗結核剤、抗ウイルス剤、抗生物質、抗原虫剤、キレート剤、放射性粒子、放射性イオン、X線造影剤、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体および遺伝物質を含むと広義に解釈しうる。本明細書に照らせば、当業者は、ある特定の「毒素」を本発明の化合物に使用することができるかどうかを決定することができるだろう。上に挙げた適切な「毒素」の例は単なる典型例であって、本発明で使用することができる「毒素」を限定するものではない。
これら上記の融合物はいずれも本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを使って製造することができる。
また本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含有するベクター、宿主細胞、および組換え技術によるポリペプチドの製造に関する。ベクターは、例えばファージ、プラスミド、ウイルス、またはレトロウイルスベクターであってよい。レトロウイルスベクターは複製能力を持っていてもよいし、複製欠損性であってもよい。後者の場合、ウイルス増殖は一般に補完宿主細胞内だけで起こるだろう。
ポリヌクレオチドは、宿主内で増殖させるために選択可能マーカーを含有するベクターに接合することができる。一般に、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物などの沈殿物として導入するか、または荷電脂質との複合体として導入する。ベクターがウイルスである場合は、適当なパッケージング細胞株を使ってインビトロでパッケージングした後、宿主細胞に形質導入することができる。
ポリヌクレオチドインサートは、例えばファージラムダPLプロモーター、大腸菌lac、trp、phoAおよびtacプロモーター、SV40初期および後期プロモーター、ならびにレトロウイルLTRのプロモーターなど(ただしこれらに限らない)といった適当なプロモーターに作動可能な形で連結すべきである。他の適切なプロモーターは当業者にはわかるだろう。発現コンストラクトはさらに転写開始部位と終結部位を含み、転写される領域には翻訳のためのリボソーム結合部位を含むだろう。これらのコンストラクトが発現させる転写物のコード部分は、好ましくは、最初に翻訳開始コドンを含み、翻訳されるポリペプチドの最後に適切に配置された停止コドン(UAA、UGAまたはUAG)を含むだろう。
上記のように、発現ベクターは、好ましくは、少なくとも1つの選択可能マーカーを含むだろう。そのようなマーカーには、真核細胞培養の場合はジヒドロ葉酸レダクターゼ、G418またはネオマイシン耐性遺伝子、大腸菌および他の細菌で培養する場合は、テトラサイクリン、カナマイシンまたはアンピシリン耐性遺伝子などがある。適当な宿主の代表例には、大腸菌(E.coli)、ストレプトミセス(Streptomyces)およびネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)細胞などの細菌細胞、酵母細胞(例えばサッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris:ATCC受託番号201178))などの真菌細胞、ショウジョウバエ(Dorosophila)S2細胞およびスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞などの昆虫細胞、CHO、COS、293、ボーズ(Bowes)メラノーマ細胞などの動物細胞、ならびに植物細胞などがあるが、これらに限るわけではない。上述の宿主細胞に適した培養培地および培養条件は当技術分野では知られている。
細菌用として好ましいものには、QIAGEN,Inc.から入手することができるpQE70、pQE60、およびpQE9、Stratagene Cloning Systems,Inc.から入手することができるpBluescriptベクター、Phagescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A、ならびにPharmacia Biotech,Inc.から入手することができるptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5などがある。好ましい真核ベクターには、Stratageneから入手することができるpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、およびpSG、ならびにPharmaciaから入手することができるpSVK3、pBPV、pMSG、pSVLなどがある。酵母系での使用に好ましい発現ベクターには、pYES2、pYD1、pTEF1/Zeo、pYES2/GS、pPICZ、pGAPZ、pGAPZalph、pPIC9、pPIC3.5、pHIL-D2、pHIL-S1、pPIC3.5K、pPIC9K、およびPA0815(いずれもInvitrogen(カリフォルニア州カールスバッド)から入手可能)などがあるが、これらに限るわけではない。他の適切なベクターは当業者には明白だろう。
宿主細胞へのコンストラクトの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストランによるトランスフェクション、カチオン脂質によるトランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染、その他の方法によって達成することができる。そのような方法は、Davisら「Basic Methods In Molecular Biology」(1986)など、多くの標準的実験書に記載されている。本発明のポリペプチドは実際には組換えベクターを持たない宿主細胞によって発現される場合もあると考えられる。
本発明のポリペプチドは、硫酸アンモニウム沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含む周知の方法によって、組換え細胞培養から回収し、精製することができる。最も好ましくは高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を使って精製する。
本発明のポリペプチド、好ましくはその分泌型は、以下のものから回収することもできる:直接単離されたものであるか、培養されたものであるかにかかわらず、体液、組織および細胞などの天然供給源から精製された産物、化学合成法の産物、ならびに組換え技術によって原核宿主または真核宿主、例えば細菌、酵母、高等植物、昆虫、および哺乳類細胞などから産生される産物。組換え生産法に使用する宿主に依存して、本発明のポリペプチドは糖鎖付加される場合もあるし、糖鎖付加されない場合もある。また本発明のポリペプチドは、場合によっては宿主によるプロセスの結果として、最初に修飾メチオニン残基を含んでもよい。例えば、どの真核細胞での翻訳後にも、翻訳開始コドンがコードするN末端メチオニンは一般に高い効率で除去されることが、当技術分野ではよく知られている。大半のタンパク質のN末端メチオニンは大半の原核生物でも効率よく除去されるが、一部のタンパク質の場合は、N末端メチオニンが共有結合しているアミノ酸の性質に依存して、この原核生物除去プロセスが不十分である。
一実施形態として、酵母ピキア・パストリスを使って、本発明のポリペプチドを真核生物系で発現させる。ピキア・パストリスはメタノールを唯一の炭素源として代謝することができるメチロトローフ酵母である。メタノール代謝経路における主要ステップは、O2を使ったメタノールのホルムアルデヒドへの酸化である。この反応は酵素アルコールオキシダーゼによって触媒される。メタノールを唯一の炭素源として代謝するために、ピキア・パストリスは、一つにはO2に対するアルコールオキシダーゼの親和性が比較的低いこともあって、高レベルのアルコールオキシダーゼを産生しなければならない。したがって、主要炭素源としてメタノールに依存する成長培地では、2つのアルコールオキシダーゼ遺伝子の一方(AOX1)のプロモーター領域の活性が著しく高い。メタノールの存在下でAOX1遺伝子から産生されるアルコールオキシダーゼはピキア・パストリスの全可溶性タンパク質の最高約30%を占める。Ellis,S.B.ら,Mol.Cell.Biol. 5: 1111-21(1985)、Koutz,P.J,ら,Yeast 5: 167-77(1989)、Tschopp,J.F.ら,Nucl.Acids Res. 15: 3859-76(1987)参照。したがって、AOX1調節配列の全部または一部の転写調節を受ける異種コード配列、例えば本発明のポリヌクレオチドは、メタノールの存在下で生育するピキア酵母では、並はずれて高レベルに発現される。
一例として、プラスミドベクターpPIC9Kを使って、本明細書に記載の本発明のポリペプチドをコードするDNAを、基本的にD.R.HigginsおよびJ.Cregg編「Pichia Protocols: Methods in Molecular Biology」(The Humana Press,ニュージャージー州トトワ,1998)に記載されているように、ピキア酵母系で発現させる。この発現ベクターは、マルチクローニングサイトの上流に位置するピキア・パストリスアルカリホスファターゼ(PHO)分泌シグナルペプチド(すなわちリーダー)に連結された強力なAOX1プロモーターによる本発明タンパク質の発現および分泌を可能にする。
当業者はすぐにわかるだろうが、pPIC9Kの代わりに、他の多くの酵母ベクター、例えばpYES2、pYD1、pTEF1/Zeo、pYES2/GS、pPICZ、pGAPZ、pGAPZalpha、pPIC9、pPIC3.5、pHIL-D2、pHIL-S1、pPIC3.5K、およびPAO815なども、転写、翻訳、(所望により)分泌などのシグナル(必要に応じてインフレームのAUGを含む)が適切な位置にある限り、使用することができる。
もう一つの実施形態として、異種コード配列、例えば本発明のポリヌクレオチドなどの高レベル発現は、本発明の異種ポリヌクレオチドを、例えばpGAPZまたはpGAPZalphaなどの発現ベクターにクローニングし、酵母培養物をメタノールの不在下で生育させることによって達成することもできる。
本発明は、本明細書で論じるベクターコンストラクトを持つ宿主細胞を包含するだけでなく、内因性遺伝物質(例えばコード配列)が欠失するようにまたは置換されるように操作され、そして/または、本発明のポリヌクレオチドと作動可能な形で結合した、内因性ポリヌクレオチドを活性化、改変および/または増幅する遺伝物質(例えば異種ポリヌクレオチド配列)を含むように操作された、脊椎動物由来の、特に哺乳動物由来の、1次、2次および不死化宿主細胞も包含する。例えば、当技術分野で知られている技術を使って、異種制御領域(例えばプロモーターおよび/またはエンハンサー)と内因性ポリヌクレオチド配列とを相同組換えによって作動可能な形で結合して、新しい転写単位を形成させることができる(例えば1997年6月24日発行の米国特許第5,641,670号、1998年3月31日発行の米国特許第5,733,761号、1996年9月26日公開の国際公開第96/29411号、1994年8月4日公開の国際公開第94/12650号、Kollerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86: 8932-8935(1989)、およびZijlstraら,Nature 342: 435-438(1989)などを参照されたい。各刊行物は参照によりそのまま本明細書に組み込まれる)。
また、本発明のポリペプチドは、当技術分野で知られる技術を使って化学合成することもできる(例えばCreighton「Proteins: Structures and Molecular Principles」(W.H.Freeman & Co.,ニューヨーク,1983)およびHunkapillerら,Nature,310: 105-111(1984)などを参照されたい)。例えば、本発明のポリペプチド配列の断片に相当するポリペプチドは、ペプチド合成装置を使って合成することができる。さらに、所望により、非古典的アミノ酸または化学的アミノ酸類似体をポリペプチド配列中に置換または付加として導入することもできる。非古典的アミノ酸には、例えば一般的アミノ酸のD-異性体、2,4-ジアミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアミン、β-アラニン、フルオロアミノ酸、β-メチルアミノ酸などのデザイナー(designer)アミノ酸、Ca-メチルアミノ酸、Na-メチルアミノ酸、およびアミノ酸類似体全般が含まれるが、これらに限るわけではない。さらに、アミノ酸はD(右旋性)でもL(左旋性)でもよい。
本発明は、翻訳中または翻訳後に、例えば糖鎖付加、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解的切断、抗体分子または他の細胞リガンドへの結合などによって、弁別的に修飾されるポリペプチドを包含する。数多くの化学修飾はいずれも、例えば臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4による特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、酸化、還元、ツニカマイシンの存在下での代謝的合成など(ただしこれらに限らない)の既知の方法で行なうことができる。
本発明に包含される他の翻訳後修飾には、例えばN結合型またはO結合型糖質鎖、N-末端またはC末端のプロセシング、アミノ酸主鎖への化学部分の結合、N結合型またはO結合型糖質鎖の化学修飾、および原核宿主細胞発現の結果として起こるN末端メチオニン残基の付加または欠失などがある。ポリペプチドは、タンパク質の検出および単離を可能にする酵素、蛍光、同位体ラベル、アフィニティーラベルなどの検出可能なラベル、エピトープタグ付ペプチド断片(例えばFLAG、HA、GST、チオレドキシン、マルトース結合タンパク質など)の付加、ビオチンおよび/またはストレプトアビジンなどのアフィニティータグの結合、アミノ酸主鎖への化学部分の共有結合、ポリペプチド末端のNまたはC末プロセシング(例えばタンパク質分解プロセシング)、N末端メチオニン残基の欠失などによって修飾することもできる。
本発明は、ポリペプチドの可溶性、安定性および循環時間の増加、または免疫原性の低下など、新たな利点を持つ本発明ポリペプチドの化学修飾誘導体も提供する(米国特許第4,179,337号参照)。誘導体化のための化学部分は、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーから選択することができる。ポリペプチドは分子内のランダムな位置で修飾するか、分子内の所定の位置で修飾することができ、ポリペプチドには1、2、3個またはそれ以上の化学部分を結合させることができる。
本発明はさらに、好ましくは化学部分が親水性ポリマー残基である、本発明ポリペプチドの化学誘導体を包含する。代表的親水性ポリマー(誘導体を含む)として、反復単位が1以上のヒドロキシ基を含有するポリマー(ポリヒドロキシポリマー)、例えばポリ(ビニルアルコール)、反復単位が1以上のアミノ基を含むポリマー(ポリアミンポリマー)、例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質およびリポタンパク質、例えばアルブミンおよび天然リポタンパク質など、反復単位が1以上のカルボキシ基を含むポリマー(ポリカルボキシポリマー)、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸およびその塩、例えばアルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸カルシウム、グリコサミノグリカンおよびその塩、例えばヒアルロン酸の塩、糖質のリン酸化および硫酸化誘導体、遺伝物質、例えばインターロイキン-2およびインターフェロン、およびホスホロチオエートオリゴマー、ならびに反復単位が1以上の糖部分を含むポリマー(多糖ポリマー)、例えば糖質などを挙げることができる。
親水性ポリマーの分子量は様々であってよく、一般的には約50〜約5,000,000であり、約100〜約50,000の分子量を持つポリマーが好ましい。ポリマーは分岐していても分岐していなくてもよい。より好ましいポリマーは約150〜約10,000の分子量を持ち、200〜約8,000の分子量はさらに好ましい。
ポリエチレングリコールの場合、取り扱いと製造が容易という点で、好ましい分子量は約1kDa〜約100kDaである(「約」という用語は、ポリエチレングリコールの調製物中で、一部の分子は表示した分子量よりも重く、一部の分子は表示した分子量より軽いことを示している)。所望する治療プロフィール(例えば所望する徐放の持続時間、もしあれば生物学的活性に対する効果、取り扱いの容易さ、抗原性の程度または欠如、ポリエチレングリコールが治療用タンパク質または類似体に及ぼす他の既知の影響)によって、他のサイズも使用してよい。
本発明のポリペプチドを誘導体化するために使用することができる他の好ましいポリマーには、例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリオキソマー、ポリソルベートおよびポリ(ビニルアルコール)などがあり、PEGは特に好ましい。PEGポリマーの中では、約100〜約10,000の分子量を持つPEGポリマーが好ましい。より好ましくは、PEGポリマーは約200〜約8,000の分子量を持ち、それぞれ2,000、5,000および8,000の分子量を持つPEG2,000、PEG5,000およびPEG8,000はさらに好ましい。上に例示したものに加えて、他の適切な親水性ポリマーも、本明細書に基づけば、当業者には明白だろう。一般に、使用するポリマーには、アルキル化またはアシル化反応によって本発明のポリペプチドを取付けることができるポリマーを含めることができる。
ポリエチレングリコール分子(または他の化学部分)は、タンパク質の機能ドメインまたは抗原ドメインに対する影響を考慮して、タンパク質に取付けるべきである。当業者は多くの取付け方法を利用することができる。例えば参照により本明細書に組み込まれるEP 0 401 384(G-CSFへのPEGのカップリング)や、Malikら,Exp.Hematol. 20: 1028-1035(1992)(トレシルクロリドを用いたGM-CSFのPEG化)を参照されたい。例えば、ポリエチレングリコールは、遊離アミンまたはカルボキシル基などの反応性基により、アミノ酸残基を介して共有結合することができる。反応性基は、活性化ポリエチレングリコール分子を結合させることができる基である。遊離のアミノ酸を持つアミノ酸残基としては、例えばリジン残基およびN末端アミノ酸残基を挙げることができ、遊離のカルボキシル基を持つものとしては、例えばアスパラギン酸残基、グルタミン酸残基およびC末端アミノ酸残基を挙げることができる。スルフヒドリル基も反応性基としてポリエチレングリコール分子の取付けに利用してよい。治療目的には、N末端またはリジン残基への取付けなど、アミノ基への取付けが好ましい。
N末端を化学修飾したタンパク質が特に望まれる場合もあるだろう。本組成物の実例としてポリエチレングリコールを用いる場合は、様々なポリエチレングリコール分子(分子量、分岐度などによる)、反応混合物中のポリエチレングリコール分子とタンパク質(ポリペプチド)分子の比率、実施するPEG化反応の種類、および選択したN末端PEG化タンパク質を取得する方法から選択することができる。N末端PEG化調製物を取得する方法(すなわち必要に応じてこの部分を他のモノPEG化部分から単離する方法)として、PEG化タンパク質分子の集団からN末端PEG化物質を精製することによる方法を挙げることができる。N末端での選択的なタンパク質化学修飾は、特定タンパク質において誘導体に関与しうる異なるタイプの1級アミノ基(リジン対N末端)の反応性の差異を利用する還元的アルキル化によって達成することができる。適当な反応条件下では、カルボニル基含有ポリマーによる実質上選択的なN末端でのタンパク質の誘導体化が達成される。
上に例示した種々のポリマーがそうであるように、ポリマー残基は、例えば本発明ポリペプチドへのポリマー残基の連結に典型的に関与する官能基の他にも官能基を含む場合があると考えられる。そのような官能基には、例えばカルボキシル、アミン、ヒドロキシおよびチオール基などがある。ポリマー残基上のこれらの官能基は、所望により、そのような官能基と一般に反応し、体内の特定組織、例えば患部組織などへのターゲティングに役立ちうる物質と、反応させることができる。さらなる官能基と反応させることができる代表的物質には、例えばタンパク質(抗体を含む)、糖質、ペプチド、糖タンパク質、糖脂質、レクチン、およびヌクレオシドなどがある。
親水性ポリマーの残基の他にも、本発明のポリペプチドを誘導体化するために使用する化学物質として、糖残基を挙げることができる。誘導することができる代表的な糖類には、例えば、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、フルクトース、ソルビトール、マンニトールおよびセドヘプツロースなどの単糖または糖アルコール(好ましい単糖はフルクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、マンニトールおよびソルビトールである)、ならびにラクトース、ショ糖、マルトースおよびセロビオースなどの二糖などがある。他の糖類には、例えばイノシトールおよびガングリオシド頭部などがある。上に例示したものだけでなく、他の適切な糖類も、本明細書に基づけば、当業者には明白だろう。一般に、誘導体化に使用することができる糖類には、アルキル化またはアシル化反応によって本発明のポリペプチドに取付けることができる糖類が含まれる。
さらに本発明は、例えば脂質(カチオン性、アニオン性、重合、荷電、合成、飽和、または不飽和脂質、およびそれらの任意の組み合わせを含む)、安定化剤などによる本発明ポリペプチドの誘導体化も包含する。
本発明は、例えば安定化機能を果たしうる(例えば溶解した状態でのポリペプチドの半減期を増加させる、ポリペプチドの水溶性を高める、ポリペプチドの親水性または疎水性を増加させるなどの働きをする)化合物による本発明ポリペプチドの誘導体化を包含する。安定化物質として有用なポリマーは、天然物、半合成物(修飾天然物)または合成物であってよい。代表的な天然ポリマーとしては例えば以下に述べるような天然多糖が挙げられる:アラビナン、フルクタン、フカン(fucans)、ガラクタン、ガラクチュロナン、グルカン、マンナン、キシラン(例えばイヌリンなど)、レバン、フコイダン、カラギーナン、ガラクトカロロース(galatocarolose)、ペクチン酸、ペクチン、例えばアミロース、プルラン、グリコーゲン、アミロペクチン、セルロース、デキストラン、デキストリン、デキストロース、グルコース、ポリグルコース、ポリデキストロース、プスツラン、キチン、アガロース、ケラチン、コンドロイチン、デルマタン、ヒアルロン酸、アルギン酸、キサンチンガム、デンプンおよび他の様々な天然ホモポリマーまたはヘテロポリマー、例えば以下のアルドース、ケトース、酸またはアミンの1以上を含有するもの:エリトース(erythose)、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、デキストロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、ショ糖、トレハロース、マルトース、セロビオース、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルクロン酸、グルコン酸、グルカル酸、ガラクチュロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミンおよびノイラミン酸、ならびにそれらの天然誘導体。したがって、適切なポリマーとしては、例えばアルブミンなどのタンパク質、ポリアルギネート、およびポリラクチドコグリコリドポリマーなどが挙げられる。代表的半合成ポリマーには、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、およびメトキシセルロースなどがある。代表的合成ポリマーには、例えばポリホスファゼン、ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイトポリマー、ポリエチレン(例えばポリエチレングリコール(例えばBASF(ニュージャージー州パーシッパニー)から販売されているPluronic(登録商標)と呼ばれる種類の化合物を含む)およびポリエチレンテレフタレート)、ポリプロピレン(例えばポリプロピレングリコールなど)、ポリウレタン(例えばポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル、およびポリビニルピロリドンなど)、ナイロンを含むポリアミド、ポリスチレン、ポリ乳酸、フッ化炭化水素ポリマー、フッ化炭素ポリマー(例えばポリテトラフルオロエチレンなど)、アクリレート、メタクリレート、およびポリメチルメタクリレート、およびその誘導体などがある。安定化化合物としてポリマーを利用する本発明の誘導体化ポリペプチドを製造する方法は、本明細書の内容を、当技術分野で知られている情報、例えば参照によりそのまま本明細書に組み込まれるUngerの米国特許第5,205,290号などに記載され言及されているような情報と合わせて考慮すれば、当業者には明白だろう。
さらに本発明は、本発明ポリペプチドの追加修飾を包含する。そのような追加修飾は当技術分野では知られており、参照によりそのまま本明細書に組み込まれる米国特許第6,028,066号に、誘導体化の方法などと共に詳述されている。
本発明のポリペプチドは単量体でも多量体(すなわち二量体、三量体、四量体およびそれ以上の高次多量体)でもよい。したがって本発明は、本発明ポリペプチドの単量体および多量体、それらの製造、およびそれらを含有する組成物(好ましくは治療薬)に関する。具体的実施形態として、本発明のポリペプチドは単量体、二量体、三量体または四量体である。さらなる実施形態として、本発明の多量体は少なくとも二量体、少なくとも三量体、または少なくとも四量体である。
本発明が包含する多量体はホモマーでもヘテロマーでもよい。本明細書で使用するホモマーという用語は、配列番号2のアミノ酸配列または少なくとも1つの寄託クローンに含まれるcDNAがコードしているアミノ酸配列(本明細書に記載するこれらのポリペプチドに相当する断片、変異体、スプライス変異体、および融合タンパク質を含む)だけを含有する多量体を表す。これらのホモマーは同一のアミノ酸配列または異なるアミノ酸配列を持つポリペプチドを含みうる。具体的一実施形態では、本発明のホモマーは、同一のアミノ酸配列を持つポリペプチドだけを含有する多量体である。もう一つの具体的実施形態では、本発明のホモマーは、異なるアミノ酸配列を持つポリペプチドを含有する多量体である。具体的実施形態として、本発明の多量体はホモ二量体(例えば同一のアミノ酸配列または異なるアミノ酸配列を持つポリペプチドを含むもの)またはホモ三量体(例えば同一のアミノ酸配列および/または異なるアミノ酸配列を持つポリペプチドを含むもの)である。さらなる実施形態として、本発明のホモ多量体は少なくともホモ二量体、少なくともホモ三量体、または少なくともホモ四量体である。
本発明で使用するヘテロマーという用語は、本発明のポリペプチドに加えて1以上の異種ポリペプチド(すなわち異なるタンパク質のポリペプチド)を含む多量体を表す。具体的一実施形態として、本発明の多量体はヘテロ二量体、ヘテロ三量体またはヘテロ四量体である。さらなる実施形態として、本発明のヘテロ多量体は、少なくともヘテロ二量体、少なくともヘテロ三量体、または少なくともヘテロ四量体である。
本発明の多量体は疎水結合、親水結合、イオン結合および/または共有結合の結果であることができ、かつ/または例えばリポソーム形成などによって間接的に連結される場合もある。したがって一実施形態として、本発明の多量体、例えばホモ二量体またはホモ三量体などは、本発明のポリペプチドが溶解した状態で互いに接触すると形成される。もう一つの実施形態として、本発明のヘテロ多量体、例えばヘテロ三量体またはヘテロ四量体などは、本発明のポリペプチドが溶解した状態で本発明のポリペプチドに対する抗体(本発明の融合タンパク質中の異種ポリペプチド配列に対する抗体を含む)と接触すると形成される。別の実施形態として、本発明の多量体は、本発明ポリペプチドとの共有結合および/または本発明ポリペプチド間の共有結合によって形成される。そのような共有結合には、ポリペプチド配列(例えば配列表に挙げたもの、または寄託されたクローンがコードするポリペプチドに含まれるもの)に含まれる1以上のアミノ酸残基が関与しうる。一例として、この共有結合は、天然(すなわち自然界に存在する)ポリペプチド中で相互作用するポリペプチド配列内のシステイン残基間の架橋である。もう一つの例では、共有結合が化学的操作または組換え操作の結果である。あるいは、そのような共有結合には、本発明の融合タンパク質中の異種ポリペプチド配列に含まれる1以上のアミノ酸残基が関与してもよい。
ある例では、共有結合が、本発明の融合タンパク質に含まれる異種配列の間にある(例えば米国特許第5,478,925号などを参照されたい)。具体的一実施形態では、共有結合が(本明細書に記載する)本発明のFc融合タンパク質に含まれる異種配列の間にある。もう一つの具体例では、本発明の融合タンパク質の共有結合が、共有結合した多量体を形成する能力を持つもう一つのタンパク質、例えばオステオプロテゲリン(例えば参照によりそのまま本明細書に組み込まれる国際公開第98/49305号を参照されたい)などに由来する異種ポリペプチド配列の間にある。もう一つの実施形態として、2以上の本発明ポリペプチドをペプチドリンカーを介して接合する。例として、米国特許第5,073,627号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載のペプチドリンカーが挙げられる。ペプチドリンカーによって隔てられた複数の本発明ポリペプチドを含むタンパク質は、通常の組換えDNA技術を使って製造することができる。
本発明の多量体ポリペプチドを製造するもう一つの方法では、ロイシンジッパーまたはイソロイシンジッパーポリペプチド配列に融合した本発明のポリペプチドを使用する。ロイシンジッパーおよびイソロイシンジッパードメインは、それらのドメインを含むタンパク質の多量体化を促進するポリペプチドである。ロイシンジッパーは最初はいくつかのDNA結合タンパク質に同定されたが(Landschulzら,Science 240: 1759(1988))、それ以来、多種多様なタンパク質に見いだされている。既知のロイシンジッパーには、二量体化または三量体化する天然ペプチドおよびその誘導体がある。本発明の可溶性多量体タンパク質を製造するのに適したロイシンジッパードメインの例は、参照により本明細書に組み込まれるPCT出願WO94/10308に記載されているものである。溶解した状態で二量体化または三量体化するポリペプチド配列に融合された本発明のポリペプチドを含む組換え融合タンパク質を適切な宿主細胞で発現させ、得られた可溶性多量体融合タンパク質を、当技術分野で知られる技術を使って培養上清から回収する。
本発明の三量体ポリペプチドにより、生物学的活性の増加という利点が得られる場合がある。好ましいロイシンジッパー部分およびイソロイシン部分は、優先的に三量体を形成するものである。一つの例は、参照により本明細書に組み込まれるHoppeら(FEBS Letters 344: 191(1994))および米国特許出願第08/446,922号に記載されている肺サーファクタントタンパク質D(SPD)由来のロイシンジッパーである。本発明の三量体ポリペプチドの製造には、天然三量体タンパク質に由来する他のペプチドを利用してもよい。
もう一つの例では、本発明のタンパク質が、Flag(登録商標)ポリペプチド配列を含有する本発明の融合タンパク質に含まれるFlag(登録商標)ポリペプチド配列間の相互作用によって会合する。さらにもう一つの実施形態では、本発明の会合タンパク質が、本発明のFlag(登録商標)融合タンパク質に含まれる異種ポリペプチド配列と抗Flag(登録商標)抗体との相互作用によって会合する。
本発明の多量体は、当技術分野で知られる化学技術を使って製造することができる。例えば、本発明の多量体に含めようとするポリペプチドを、リンカー分子および当技術分野で知られるリンカー分子長最適化技術を使って、化学的に架橋することができる(例えば参照によりそのまま本明細書に組み込まれる米国特許第5,478,925号などを参照されたい)。さらに本発明の多量体は、当技術分野で知られる技術を使って、多量体に含めようとするポリペプチドの配列内にあるシステイン残基間に1以上の分子間架橋を形成させることによって、製造することもできる(例えば参照によりそのまま本明細書に組み込まれる米国特許第5,478,925号などを参照されたい)。さらに本発明のポリペプチドは、常法により、ポリペプチドのC末端またはN末端へのシステインまたはビオチンの付加によって修飾し、当技術分野で知られる技術を応用して、これら修飾ポリペプチドの1以上を含有する多量体を生成させることもできる(例えば参照によりそのまま本明細書に組み込まれる米国特許第5,478,925号などを参照されたい)。また、当技術分野で知られている技術を応用して、本発明の多量体に含めようとするポリペプチド成分を含有するリポソームを製造してもよい(例えば参照によりそのまま本明細書に組み込まれる米国特許第5,478,925号などを参照されたい)。
別法として、当技術分野で知られる遺伝子操作技術を使って、本発明の多量体を製造することもできる。ある実施形態では、本発明の多量体に含まれるポリペプチドを、本明細書に記載のまたは当技術分野で知られる他の融合タンパク質技術を使って組換え生産する(例えば参照によりそのまま本明細書に組み込まれる米国特許第5,478,925号などを参照されたい)。具体的一実施形態では、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を、リンカーポリペプチドをコードする配列にライゲートし、さらに、そのポリペプチドの翻訳産物を、元のC末端からN末端(リーダー配列を除く)に向けて逆向きにコードする合成ポリヌクレオチドにライゲートすることにより、本発明のホモ二量体をコードするポリヌクレオチドを作製する(例えば参照によりそのまま本明細書に組み込まれる米国特許第5,478,925号などを参照されたい)。もう一つの実施形態では、本明細書に記載のまたは当技術分野で知られる他の組換え技術を応用して、膜貫通ドメイン(または疎水ペプチドもしくはシグナルペプチド)を含有し、膜再構成技術によってリポソームに組み込むことができる本発明の組換えポリペプチドを製造する(例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,478,925号などを参照されたい)。
さらに、本発明のポリヌクレオチドを、「人工」またはキメラプロモーターおよび転写因子に、作動可能な形で連結することもできるだろう。具体的には、人工プロモーターは、トランス作用転写因子によって認識されるシス作用DNA配列要素の任意の組み合わせを含むか、あるいはそのような組み合わせからなることができるだろう。シス作用DNA配列要素およびトランス作用転写因子は哺乳動物で作動できることが好ましい。さらに、そのような「人工」プロモーターのトランス作用因子は、それ自体が「人工」またはキメラ設計であってもよく、前記「人工」プロモーターに対して活性化因子または抑制因子として作用することができるだろう。
本明細書に記載する各ポリヌクレオチドは、試薬として、数多くの方法で使用することができる。以下の説明は代表例であると見なすべきであり、既知の技術を利用する。
本発明のポリヌクレオチドは染色体同定に役立つ。現在利用できる実際の配列データ(繰り返し多型)に基づく染色体マーキング試薬はほとんどないので、新しい染色体マーカーは、今現在も必要とされている。本発明の各ポリヌクレオチドは染色体マーカーとして使用することができる。
簡単に述べると、配列番号1に示す配列からPCRプライマー(好ましくは15〜25bp)を作製することにより、配列を染色体にマッピングすることができる。コンピュータ解析を使ってプライマーを選択することにより、そのプライマーがゲノムDNA中の2以上の予想エクソンにまたがらないようにすることができる。次に、これらのプライマーを、個々のヒト染色体を含有する体細胞雑種のPCRスクリーニングに使用する。配列番号1に相当するヒト遺伝子を含有する雑種だけが増幅断片を与えるだろう。
また、体細胞雑種は、ポリヌクレオチドを特定染色体にPCRマッピングする迅速な方法を提供する。1台のサーマルサイクラーを使って1日に3個以上のクローンを割り当てることができる。さらに、ポリヌクレオチドのサブローカリゼーション(sublocalization)も、特定染色体断片のパネルを使って達成することができる。使用することができる他の遺伝子マッピング法には、インサイチューハイブリダイゼーション、フローソーティングされた標識染色体によるプレスクリーニング、および染色体特異的cDNAライブラリーを構築するためのハイブリダイゼーションによる予備選択などがある。
ポリヌクレオチドの正確な染色体位置も、中期染色体スプレッドの蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)を使って得ることができる。この技術ではわずか500〜600塩基程度のポリヌクレオチドを使用するが、2,000〜4,000bpのポリヌクレオチドが好ましい。この技術の概要については、Vermaら「Human Chromosomes:A Manual of Basic Techniques」Pergamon Press,ニューヨーク(1988)を参照されたい。
染色体マッピングには、ポリヌクレオチドを個別に使用するか(単一の染色体またはその染色体上の単一の部位をマークするため)、またはパネルとして使用することができる(複数の部位および/または複数の染色体をマークするため)。好ましいポリヌクレオチドはcDNAの非コード領域に相当する。なぜならコード配列の方が遺伝子ファミリー内で保存されている可能性が高いため、染色体マッピング中にクロスハイブリダイゼーションが起こる可能性が高くなるからである。
ポリヌクレオチドが正確な染色体位置にマッピングされたら、そのポリヌクレオチドの物理的位置を連鎖解析に使用することができる。連鎖解析により、染色体位置と特定疾患の表出との同時遺伝が確定される。疾患マッピングデータは当技術分野では知られている。マッピング解像度が1メガ塩基で、20kbにつき1遺伝子であると仮定すると、疾患に関係するある染色体領域に正確に局在するcDNAは、50〜500個の潜在的原因因子の一つでありうる。
したがって、同時遺伝が確定されたら、罹患生物と非罹患生物の間で、ポリヌクレオチドおよび対応する遺伝子の相違を調べることができる。まず、染色体中の目に見える構造変化、例えば欠失または転座などを、染色体スプレッドで、PCRによって調べる。構造変化が存在しない場合は、点突然変異の存在を確かめる。罹患生物の一部または全部に観察されるが、正常生物には観察されない突然変異は、その突然変異が疾患の原因であるかもしれないことを示す。しかし、その突然変異を多型と区別するには、ポリペプチドおよび対応する遺伝子の完全な配列決定が必要である。新しい多型が同定されたら、この多型ポリペプチドを、さらなる連鎖解析に使用することができる。
非罹患生物と比較した罹患生物における遺伝子発現の増加または減少を、本発明のポリヌクレオチドを使って評価することができる。これらの変化(発現の変化、染色体再編成、または突然変異)はいずれも診断マーカーまたは予後マーカーとして使用することができる。
したがって本発明は、障害の診断に役立つ診断方法であって、細胞または体液における本発明ポリヌクレオチドの発現レベルを測定し、測定された遺伝子発現レベルを標準的レベルのポリヌクレオチド発現レベルと比較することを含み、標準と比較した場合の遺伝子発現レベルの増加または減少が障害を示す方法も提供する。
「本発明ポリヌクレオチドの発現レベルを測定する」とは、第1生物学的試料中の本発明ポリペプチドのレベルまたは本ポリペプチドをコードするmRNAのレベルを直接的に(例えば絶対タンパク質レベルまたはmRNAレベルを決定または推定することなどによって)、または相対的に(例えば第2生物学的試料中のポリペプチドレベルまたはmRNAレベルと比較することによって)、定性的または定量的に測定または推定することを意味する。好ましくは、第1生物学的試料中のポリペプチドレベルまたはmRNAレベルを測定または推定し、標準的なポリペプチドレベルまたはmRNAレベルと比較する。標準は、当該障害を持たない個体から得た第2の生物学的試料から採用するか、障害を持たない生物の集団から得られるレベルを平均することによって決定される。当技術分野では理解されるであろうように、標準的なポリペプチドレベルまたはmRNAレベルがわかったら、比較にはそれを標準として繰り返して使用することができる。
「生物学的試料」とは、本発明のポリペプチドまたはmRNAを含む生物、体液、細胞株、組織培養または他の供給源から得られる任意の生物学的試料を意味する。上述のように、生物学的試料には、本発明のポリペプチドを含む体液(例えば喀痰、羊水、尿、唾液、母乳、分泌物、間質液、血液、血清、脊髄液などが挙げられるが、これらに限らない)、および本発明のポリペプチドを発現させることがわかった他の組織供給源が含まれる。生物から組織生検および体液を得る方法は当技術分野ではよく知られている。生物学的試料がmRNAを含むべき場合、組織生検は好ましい供給源である。
上述の方法は、好ましくは、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドが固形支持体に取付けられている診断方法および/またはキットに応用することができる。代表的な一方法として、支持体は、米国特許第5,837,832号、第5,874,219号および第5,856,174号に記載の.「遺伝子チップ」または「生物学的チップ」であることができる。さらに、本発明のポリヌクレオチドが取付けられているそのような遺伝子チップは、試験対象から単離したポリヌクレオチドを使ってポリヌクレレオチド配列間の多型を同定するために使用することができる。そのような多型(すなわちそれらの位置ならびにそれらの存在)に関する知見は、増殖性の疾患および状態を含む多くの障害の疾患座位の同定に有益だろう。そのような方法は米国特許第5,858,659号および第5,856,104号に記載されている。上述の米国特許は参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、化学的に合成された、またはペプチド核酸(PNA)として再現された、または当技術分野で知られる他の方法によって再現された、本発明のポリヌクレオチドを包含する。ポリヌクレオチドを固形支持体または遺伝子チップ上に組み込む場合、PNAの使用は、好ましい形態として役立つだろう。本発明において、ペプチド核酸(PNA)とは、ポリアミド型のDNA類似体であり、アデニン、グアニン、チミンおよびシトシンのモノマー単位が市販されている(Perceptive Biosystems)。DNAの特定の成分、例えばリン、酸化リン、またはデオキシリボース誘導体は、PNA中には存在しない。P.E.Nielsen,M.Egholm,R.H.BergおよびO.Buchardt,Science 254,1497(1991)、ならびにM.Egholm,O.Buchardt,L.Christensen,C.Behrens,S.M.Freier,D.A.Driver,R.H.Berg,S.K.Kim,B.NordenおよびP.E.Nielsen,Nature 365,666(1993)に開示されているように、PNAは相補的DNA鎖に特異的かつ強固に結合し、ヌクレアーゼによって分解されない。実際、PNAはDNAそのものよりも強くDNAに結合する。これはおそらく、静電気的反発が2つの鎖間になく、ポリアミド主鎖の方が可撓性に富むからだろう。このため、PNA/DNA二本鎖は、DNA/DNA二本鎖よりも広範囲にわたるストリンジェンシー条件で結合し、マルチプレックスハイブリダイゼーションを行ないやすくする。PNA:DNAハイブリッドの結合特性は強くなっているので、DNAの場合よりも小さいプローブを使用することができる。また、PNA/DNAハイブリダイゼーションでは一塩基ミスマッチを決定することができる可能性が高いと思われる。なぜなら、PNA/DNA15マー中にミスマッチが一つあると融点(Tm)は8℃〜20℃低下するのに対して、DNA/DNA15マー二本鎖の場合はこの低下が4℃〜16℃だからである。また、PNAには荷電基が存在しないことから、ハイブリダイゼーションを低イオン強度で行ない、解析中に起こりうる塩の干渉を減らすことができる。
上記に加えて、三重らせん形成またはアンチセンスDNAもしくはRNAによる遺伝子発現の制御に、ポリヌクレオチドを使用することもできる。アンチセンス技術は、例えばOkano,J.Neurochem. 56: 560(1991)、「Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression」(CRC Press,フロリダ州ボカラトン,1988)などで論じられている。三重らせん形成は、例えばLeeら,Nucleic Acids Research 6: 3073(1979)、Cooneyら,Science 241: 456(1988)、およびDervanら,Science 251: 1360(1991)などで論じられている。どちらの方法も、相補的DNAまたはRNAへのポリヌクレオチドの結合に頼っている。これらの技術では、好ましいポリヌクレオチドは通常20〜40塩基長であり、転写に関与する遺伝子の領域(三重らせん−Leeら,Nucl.Acids Res. 6: 3073(1979)、Cooneyら,Science 241: 456(1988)、およびDervanら,Science 251: 1360(1991))またはmRNA自体(アンチセンス−Okano,J.Neurochem. 56: 560(1991)、「Oligodeoxy-nucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression」(CRC Press,フロリダ州ボカラトン,1988))に相補的である。三重らせん形成は、最適には、DNAからのRNA転写を遮断し、一方、アンチセンスRNAハイブリダイゼーションは、mRNA分子がポリペプチドに翻訳されるのを遮断する。どちらの技術もモデル系で有効であり、疾患を処置または予防するための努力として、アンチセンスまたは三重らせんポリヌクレオチドを設計するために、本明細書に開示する情報を利用することができる。
本発明は、本発明のオリゴヌクレチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんオリゴヌクレオチド、リボザイム、PNAオリゴヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドのいずれかの5'末端もしくは3'末端または任意の位置に作動可能な形で連結される核局在化シグナルの付加を包含する。例えば、参照により本明細書に組み込まれるG.Cutronaら,Nat.Biotech.,18: 300-303(2000)を参照されたい。
本発明のポリヌクレオチドは遺伝子治療にも役立つ。遺伝子治療の目標の一つは、遺伝的欠陥を矯正する試みとして、欠陥遺伝子を持つ生物に正常な遺伝子を挿入することである。本発明に開示するポリヌクレオチドは、そのような遺伝的欠陥を極めて正確にターゲティングする手段となる。もう一つの目標は、宿主ゲノムには存在していなかった新しい遺伝子を挿入し、よって宿主細胞に新しい形質を与えることである。一例として、本発明のポリヌクレオチド配列を使って、その配列に相当するキメラRNA/DNAオリゴヌクレオチドであって、例えば全身注射すると、ある生物において宿主細胞ミスマッチ修復機構を誘導するように特別に設計されたものを構築することができる(Bartlett,R.J.ら,Nat.Biotech,18: 615-622(2000)、この論文は参照によりそのまま本明細書に組み込まれる)。このようなRNA/DNAオリゴヌクレオチドは、ある種の宿主株の遺伝的欠陥が矯正されるように、そして/またはその宿主に所望の表現型が導入(例えば、本発明のポリヌクレオチドに相当する内因性遺伝子に、疾患症状および/または障害の改善および/または防止をもたらしうる特定多型が導入)されるように設計することができるだろう。もう一つの選択肢として、本発明のポリヌクレオチド配列を使って、その配列に相当する二重鎖オリゴヌクレオチドであって、ある種の宿主株における遺伝的欠陥が矯正されるように、そして/またはその宿主に望ましい表現型が導入(例えば、本発明のリヌクレオチドに相当する内因性遺伝子に、疾患症状および/または障害の改善および/または防止をもたらしうる特定多型が導入)されるように、特別に設計されたものを構築してもよい。そのような二重鎖オリゴヌクレオチドの使用方法は当技術分野では知られており、本発明によって包含される(参照によりそのまま本明細書に組み込まれるEP1007712を参照されたい)。
本ポリヌクレチドはわずかな生物学的試料から生物を同定するためにも役立つ。例えば米国軍はその人員の同定に制限断片長多型(RFLP)を利用することを検討している。この技術では、個人のゲノムDNAを1以上の制限酵素で消化し、サザンブロット上でプローブして、人員を同定するためのユニークなバンドを得る。この方法には、失われたり、入れ替わったり、盗まれたりして肯定的な同定が困難になる可能性がある現行の「認識票(Dog Tag)」の弱点がない。本発明のポリヌクレオチドは新たなRFLP用DNAマーカーとして利用することができる。
本発明のポリヌクレオチドは、ある生物のゲノムの選択した部分の実際のDNA配列を塩基単位で決定することによって、RFLPの代替物として使用することもできる。これらの配列は、選択した上記DNAを増幅し単離するためのPCRプライマーの作製に使用することができ、そのようにして得られたDNAを配列決定することができる。各生物はユニークなDNA配列セットを持つだろうから、この技術を使って、生物を同定することができる。ある生物に関してユニークなIDデータベースが確立されたら、その生物が生きていようと死んでいようと、極めて小さい組織試料から、その生物の肯定的な同定を行なうことができる。同様に、本発明のポリヌクレオチドは、形質転換または非形質転換細胞および/または組織の同定の他、多型マーカーとしても使用することができる。
特定組織の供給源を同定することができる試薬も必要とされている。そのような必要は、例えば由来のわからない組織が与えられた時などに生じる。適当な試薬は、例えば本発明の配列から作製された特定組織に特異的なDNAプローブまたはプライマーを含むことができる。そのような試薬のパネルを使って、種および/または器官タイプによる組織の同定を行なうことができる。同様にして、これらの試薬を使って、組織培養物を汚染に関してスクリーニングすることもできる。さらに、上述のように、そのような試薬は、形質転換および/または非形質転換細胞および/または組織をスクリーニングおよび/または同定するためにも使用することができる。
少なくとも、本発明のポリヌクレオチドは、サザンゲルでの分子量マーカーとして、また特定の細胞タイプにおける特定mRNAの存在に関する診断プローブとして、また新規ポリヌクレオチドを発見する過程で既知配列を「差し引く(subtract-out)」ためのプローブとして、また「遺伝子チップ」または他の支持体に取付けるためのオリゴマーを選択し作製するために、またDNA免疫技術を使って抗DNA抗体を生じさせるために、また免疫応答を誘発するための抗原として、使用することができる。
本明細書に記載する各ポリペプチドは数多くの方法で使用することができる。以下の説明は代表例であると見なすべきであり、既知の技術を利用する。
本発明のポリペプチドは、抗体に基づく技術を使って生物学的試料中のタンパク質レベルをアッセイするのに利用することができる。例えば、組織におけるタンパク質発現は、古典的な免疫組織学的方法で研究することができる(Jalkanen,M.ら,J.Cell.Biol. 101: 976-985(1985)、Jalkanen,M.ら,J.Cell.Biol. 105: 3087-3096(1987))。タンパク質遺伝子発現の検出に有用な、抗体に基づく他の方法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および放射免疫アッセイ(RIA)などの免疫アッセイが挙げられる。適切な抗体アッセイラベルは当技術分野では知られており、例えばグルコースオキシダーゼなどの酵素ラベル、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(112In)およびテクネチウム(99Tc)などの放射性同位体、フルオレセインおよびローダミンなどの蛍光ラベル、ならびにビオチンなどが挙げられる。
生物学的試料中のタンパク質レベルのアッセイに加えて、撮像法によって生体内でタンパク質を検出することもできる。タンパク質のインビボ撮像用の抗体ラベルまたはマーカーとしては、X線撮影法、NMR、またはESRによって検出することができるものが挙げられる。X線撮影法の場合は、適切なラベルとして、検出可能な放射線を放出するが測定対象に明白な害は及ぼさないバリウムまたはセシウムなどの放射性同位体が挙げられる。NMRおよびESRに適したマーカーとしては、検出可能な特徴的スピンを持ち(例えば重水素)、関連ハイブリドーマに与える栄養素を標識することによって抗体中に組み込むことができるものが挙げられる。
適当な検出可能撮像成分、例えば放射性同位体(131I、112In、99mTcなど)、放射線不透過性物質、または核磁気共鳴法によって検出できる物質などで標識されたタンパク質特異的抗体または抗体断片を、哺乳動物に(例えば非経口的投与、皮下投与または腹腔内投与によって)導入する。診断画像を得るのに必要な撮像成分の量が、対象のサイズおよび使用する撮像システムによって決まることは、当技術分野では理解されるだろう。放射性同位体成分を使用する場合、注射される放射能の量は、ヒト対象では、通常、99mTc約5〜20ミリキュリーの範囲になるだろう。標識された抗体または抗体断片は、次いで、特異的タンパク質を含む細胞部位に優先的に蓄積するだろう。インビボ腫瘍撮像法については、S.W.BurchielおよびB.A.Rhodes編「Tumor Imaging: The Radiochemical Detection of Cancer」(Masson Publishing Inc.,1982)の第13章、S.W.Burchielら著「放射性標識抗体およびその断片の免疫薬物動態学(Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments)」に記載されている。
したがって本発明は、(a)ある個体の細胞または体液における本発明ポリペプチドの発現をアッセイし、(b)その遺伝子発現のレベルを標準的な遺伝子発現レベルと比較することを含み、標準的発現レベルと比較した場合の、アッセイされたポリペプチド遺伝子発現レベルの増加または減少が、障害を示すという方法を提供する。癌の場合、ある個体から得た生検組織中に比較的多量の転写物が存在することは、その疾患の発症に対する素因を示すのかもしれない。あるいは、そのような存在は、実際に臨床症状が出現する前にその疾患を検出するための手段になるかもしれない。より確定的なこのタイプの診断により、医療従事者は、予防措置または積極的処置をより早く施し、よって癌の発症またはさらなる進行を防止することが可能になるだろう。
同様に、本発明のポリペプチドに対する抗体も、疾患の処置、予防および/または診断に使用することができる。例えば、本発明のポリペプチドに対する抗体を投与することにより、ポリペプチドを結合し、ポリペプチドの過剰産生を減少させることができる。また、抗体の投与により、例えば膜に結合したポリペプチド(受容体)への結合などによって、ポリペプチドを活性化することもできる。
少なくとも、本発明のポリペプチドは、当業者に周知の方法により、SDS-PAGEゲルまたはモレキュラーシーブゲル濾過カラムで、分子量マーカーとして使用することができる。ポリペプチドは抗体を産生させるためにも使用することができ、その抗体を使って、宿主細胞の形質転換を評価する一方法として、組換え細胞からのタンパク質発現を測定することができる。さらに、本発明のポリペプチドは、下記の生物学的活性を試験するためにも使用することができる。
本発明のもう一つの態様は、障害、疾患および状態を処置または予防するための遺伝子治療法に関する。本遺伝子治療法は、本発明のポリペプチドを発現させるための、動物への核酸(DNA、RNAおよびアンチセンスDNAまたはRNA)配列の導入に関する。この方法には、プロモーターおよび標的組織による本ポリペプチドの発現に必要な他の任意の遺伝要素に作動可能な形で連結された、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが必要である。そのような遺伝子治療および遺伝子送達技術は当業者には知られており、例えば参照により本明細書に組み込まれるWO90/11092などを参照されたい。
したがって、例えば、患者から得た細胞を、エクスビボで、本発明のポリヌクレオチドに作動可能な形で連結されたプロモーターを含むポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)を使って操作し、次に、操作された細胞をそのポリペプチドで処置しようとする患者に与えることができる。そのような方法は当技術分野では周知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるBelldegrunら,J.Natl.Cancer Inst.,85: 207-216(1993)、Ferrantiniら,Cancer Research,53: 107-1112(1993)、Ferrantiniら,J.Immunology 153: 4604-4615(1994)、Kaido,T.ら,Int.J.Cancer 60: 221-229(1995)、Oguraら,Cancer Research 50: 5102-5106(1990)、Santodonatoら,Human Gene Therapy 7: 1-10(1996)、Santodonatoら,Gene Therapy 4: 1246-1255(1997)、ならびにZhangら,Cancer Gene Therapy 3: 31-38(1996)などを参照されたい。ある実施形態では、操作される細胞が、動脈細胞である。動脈細胞は動脈もしくは動脈を取り巻く組織への直接注射によって、またはカテーテル注入によって患者に再導入することができる。
以下に詳述するように、ポリヌクレオチドコンストラクトは、動物の細胞に注射可能な物質を送達する任意の方法によって、例えば組織(心臓、筋、皮膚、肺、肝臓など)の間質腔への注射などによって送達することができる。ポリヌクレオチドコンストラクトは、医薬的に許容できる液体または水性担体に入れて送達することができる。
ある実施形態では、本発明のポリヌクレオチドを、裸のポリヌクレオチドとして送達する。「裸の」ポリヌクレオチド、DNAまたはRNAという用語は、細胞への進入を補助し、促進し、または容易にする作用を果たす送達ビヒクル、例えばウイルス配列、ウイルス粒子、リポソーム製剤、リポフェクチンまたは沈殿剤などを含まない配列を指す。しかし、本発明のポリヌクレオチドは、当業者に周知の方法で製造することができるリポソーム製剤およびリポフェクチン製剤などに入れて送達することもできる。そのような方法は、例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,593,972号、第5,589,466号、および第5,580,859号に記載されている。
遺伝子治療法で使用される本発明のポリヌクレオチドベクターコンストラクトは、好ましくは、宿主ゲノムに組み込まれず、複製を可能にする配列も含まないコンストラクトである。適当なベクターには、Stratageneから入手できるpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1およびpSG、Pharmaciaから入手できるpSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVL、ならびにInvitrogenから入手できるpEF1/V5、pcDNA3.1、およびpRc/CMV2などがある。他の適切なベクターは当業者には明白だろう。
当業者に知られている強力なプロモーターはいずれも本発明ポリヌクレオチド配列を発現させるために使用することができる。適切なプロモーターには、アデノウイルス後期プロモーターなどのアデノウイルスプロモーター、またはサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターなどの異種プロモーター、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)プロモーター、MMTプロモーター、メタロチオネインプロモーターなどの誘導性プロモーター、熱ショックプロモーター、アルブミンプロモーター、ApoAIプロモーター、ヒトグロビンプロモーター、単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼプロモーターなどのウイルスチミジンキナーゼプロモーター、レトロウイルスLTR、β-アクチンプロモーター、およびヒト成長ホルモンプロモーターなどがある。プロモーターは本発明のポリヌクレオチドの天然プロモーターであってもよい。
他の遺伝子治療技術とは異なり、裸の核酸配列を標的細胞に導入することの一つの大きな利点は、細胞におけるポリヌクレオチド合成の一過性である。非複製DNA配列を細胞に導入して、所望のポリペプチドを最高6ヶ月の期間にわたって産生させうることが、研究によって示されている。
本発明のポリヌクレオチドコンストラクトは、筋、皮膚、脳、肺、肝臓、脾臓、骨髄、胸腺、心臓、リンパ、血液、骨、軟骨、膵臓、腎臓、胆嚢、胃、腸、精巣、卵巣、子宮、直腸、神経系、眼、腺、および結合組織などを含む動物内組織の間質腔に送達することができる。組織の間質腔には、細胞間液、器官組織の格子線維内のムコ多糖マトリックス、管壁または房壁の弾性線維、線維組織のコラーゲン線維、または筋細胞を包む結合組織内もしくは骨の陥凹内の同マトリックスが含まれる。またこれは、循環系の血漿およびリンパ管のリンパ液によって占められた空間でもある。筋組織の間質腔への送達は、以下に述べる理由から好ましい。本発明のポリヌクレオチドコンストラクトは、これらの細胞を含む組織への注射によって、便利に送達することができる。本発明のポリヌクレオチドコンストラクトを、好ましくは、分化した永続的非分裂細胞に送達し、そこで発現させる。ただし、送達と発現は、非分化細胞または不完全に分化した細胞、例えば血液の幹細胞または皮膚線維芽細胞などでも達成することができる。インビボ筋細胞はポリヌクレオチドを取り込んで発現させる能力が特に高い。
裸の核酸配列を注射する場合、有効量のDNAまたはRNAは、約0.05mg/kg体重〜約50mg/kg体重の範囲だろう。好ましくは、投与量は約0.005mg/kg〜約20mg/kg、より好ましくは約0.05mg/kg〜約5mg/kgの範囲だろう。もちろん、この投与量が注射する組織部位によって変動することは、当業者には理解されるだろう。核酸配列の適切で有効な用量は当業者が容易に決定することができ、処置される状態および投与経路に依存するだろう。
好ましい投与経路は、組織の間質腔への注射という非経口経路による投与である。しかし、例えば肺または気管支組織、喉または鼻の粘膜への送達には、特にエアゾル製剤の吸入など、他の非経口経路も使用することができる。さらに、裸のDNAコンストラクトは、血管形成術中に、手術に使用しているカテーテルによって、動脈に送達することもできる。
裸のポリヌクレオチドは、例えば送達部位への直接針注射、静脈内注射、局所投与、カテーテル注入、いわゆる「遺伝子銃」を含む(ただしこれらに限らない)、当技術分野で知られる任意の方法によって送達される。
コンストラクトは、ウイルス配列、ウイルス粒子、リポソーム製剤、リポフェクチン、沈殿剤などの送達ビヒクルを使って送達してもよい。そのような送達方法は当技術分野では知られている。
一部の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドコンストラクトをリポソーム調製物中で複合体化させる。本発明で使用されるリポソーム調製物には、カチオン性(正に荷電)、アニオン性(負に荷電)および中性調製物が含まれる。しかし、カチオン調製物は特に好ましい。なぜなら、カチオン性リポソームとポリアニオン性の核酸との間に、強固な荷電複合体を形成させることができるからである。カチオン性リポソームは、機能的な形態のプラスミドDNA(Felgnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84: 7413-7416(1987)、この論文は参照により本明細書に組み込まれる)、mRNA(Maloneら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86: 6077-6081(1989)、この論文は参照により本明細書に組み込まれる)、および精製された転写因子(Debsら,J.Biol.Chem.,265: 10189-10192(1990)、この論文は参照により本明細書に組み込まれる)の細胞内送達を媒介することが示されている。
カチオン性リポソームは容易に入手できる。例えば、N[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリエチルアンモニウム(DOTMA)リポソームは特に有用であり、GIBCO BRL(ニューヨーク州グランドアイランド)からリポフェクチン(Lipofectin)の商標で販売されている(参照により本明細書に組み込まれるFelgnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84: 7413-7416(1987)も参照されたい)。他の市販のリポソームには、トランスフェクテイス(transfectace)(DDAB/DOPE)およびDOTAP/DOPE(Boehringer)などがある。
他のカチオン性リポソームは、容易に入手できる物質から、当技術分野で周知の技術を使って製造することができる。例えば、DOTAP(1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン)リポソームの合成については、PCR公開第WO90/11092号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。DOTMAリポソームの製造は文献に説明されている。例えば、参照により本明細書に組み込まれるFelgnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84: 7413-7417を参照されたい。同様の方法を使って、他のカチオン性脂質材料からリポソームを製造することもできる。
同様に、アニオン性および中性リポソームも、例えばAvanti Polar Lipids(アラバマ州バーミングハム)などから容易に入手できるか、または容易に入手できる材料を使って容易に製造することができる。そのような材料には、例えばホスファチジルコリン、コレステロール、ホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)などがある。これらの材料はDOTMAおよびDOTAP出発物質と適当な比率で混合することもできる。これらの材料を使ってリポソームを製造する方法は当技術分野ではよく知られている。
例えば市販のジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を様々な組み合わせで使用して、コレステロールが添加されたまたはコレステロールが添加されていない通常のリポソームを製造することができる。したがって、例えば、DOPG/DOPC小胞は、各50mgのDOPGおよびDOPCを、超音波処理バイアルへの窒素気流下で乾燥させることによって製造することができる。この試料を減圧ポンプ下に一晩置いた後、翌日脱イオン水で水和する。次に、倒立カップ型(槽タイプ)プローブ(inverted cup (bath type) probe)を装着したHeat Systems350型ソニケーターを使用し、最大の設定で、槽を15ECで循環しながら、その試料を蓋付きバイアル中で2時間超音波処理する。もう一つの選択肢として、負に荷電した小胞を、マルチラメラ小胞を得るために超音波処理なしで製造するか、または離散したサイズを持つユニラメラ小胞を得るためにヌクレオポア膜を通した押出によって製造することもできる。当業者には他の方法も知られており、利用することができる。
リポソームは、マルチラメラ小胞(MLV)、小さいユニラメラ小胞(SUV)または大きいユニラメラ小胞(LUV)からなることができ、SUVが好ましい。当技術分野で周知の方法を用いて、様々なリポソーム-核酸複合体が調製される。例えば、参照により本明細書に組み込まれるStraubingerら,Methods of Immunology,101: 512-527(1983)を参照されたい。例えば、核酸を含むMLVは、ガラス管の壁にリン脂質の薄層を沈着させた後、封入しようとする物質の溶液でそれを水和することによって製造することができる。SUVは、MLVの超音波処理を延長して、ユニラメラリポソームの均一な集団を得ることによって製造される。予め形成しておいたMLVの懸濁液に、封入しようとする物質を添加した後、超音波処理する。カチオン性脂質を含むリポソームを使用する場合は、乾燥脂質薄膜を適当な溶液に、滅菌水または等張バッファー(例えば10mM Tris/NaCl)などに再懸濁し、超音波処理した後、予め形成されたリポソームをDNAと直接混合する。正に荷電したリポソームがカチオン性DNAに結合するため、このリポソームとDNAとは極めて安定な複合体を形成する。SUVは小さい核酸断片に役立つ。LUVは当技術分野で知られる数多くの方法によって製造される。一般に使用される方法には、Ca2+-EDTAキレート化(Papahadjopoulosら,Biochim.Biophys.Acta,394: 483(1975)、Wilsonら,Cell,17: 77(1979))、エーテル注入(Deamerら,Biochim.Biophys.Acta. 443: 629(1976)、Ostroら,Biochem.Biophys.Res.Commun.,76: 836(1977)、Fraleyら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76: 3348(1979))、洗剤透析(Enochら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76: 145(1979))、および逆相エバポレーション(REV)(Fraleyら,J.Biol.Chem.,255: 10431(1980)、Szokaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75: 145(1978)、Schaefer-Ridderら,Science,215: 166(1982))などがあり、これらの論文は参照により本明細書に組み込まれる。
一般に、DNAとリポソームの比は約10:1〜約1:10だろう。好ましくは、この比は約5:1〜約1:5だろう。より好ましくは、この比は約3:1〜1:3だろう。さらに好ましくは、この比は約1:1だろう。
米国特許第5,676,954号(参照により本明細書に組み込まれる)には、カチオン性リポソーム担体と複合体化した遺伝物質のマウスへの注射に関する報告がなされている。米国特許第4,897,355号、第4,946,787号、第5,049,386号、第5,459,127号、第5,589,466号、第5,693,622号、第5,580,859号、第5,703,055号、および国際公開第94/9469号(これらは参照により本明細書に組み込まれる)には、DNAを細胞および哺乳動物にトランスフェクトする際に使用されるカチオン性脂質が記載されている。米国特許第5,589,466号、第5,693,622号、第5,580,859号、第5,703,055号、および国際公開第94/9469号(これらは参照により本明細書に一部を構成する)には、DNA-カチオン性脂質複合体を哺乳動物に送達する方法が記載されている。
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドをコードする配列を持つRNAを含んでいるレトロウイルス粒子を使って、細胞を、エクスビボまたはインビボで操作する。レトロウイルスプラスミドベクターを得ることができるレトロウイルスには、例えばモロニーネズミ白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、テナガザル白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、および乳癌ウイルスなどがあるが、これらに限るわけではない。
レトロウイルスプラスミドベクターを使って、産生細胞株が形成されるように、パッケージング細胞株の形質導入を行なう。トランスフェクトすることができるパッケージング細胞の例には、参照によりそのまま本明細書に組み込まれるMiller,Human Gene Therapy,1: 5-14(1990)に記載されているPE501、PA317、R-2、R-AM、PA12、T19-14X、VT19-17-H2、RCRE、RCRIP、GP+E-86、GP+envAml2、およびDAN細胞株などがあるが、これらに限らない。ベクターは、当技術分野で知られる任意の手段によって、パッケージング細胞に形質導入することができる。そのような手段には、例えばエレクトロポレーション、リポソームの使用、およびCaPO4沈殿などがあるが、これらに限らない。これに代わる一方法として、レトロウイルスをリポソームに封入するか脂質にカップリングし、それを宿主に投与してもよい。
産生細胞株は、本発明のポリヌクレチドを含む感染性レトロウイルスベクター粒子を産生する。次に、そのようなレトロウイルスベクター粒子を使って真核細胞の形質導入を、インビトロで、またはインビボで、行なうことができる。形質導入された真核細胞は本発明のポリペプチドを発現させるだろう。
他の一部の実施形態では、アデノウイルスベクターに含まれた本発明のポリヌクレオチドを使って、細胞を、エクスビボで、またはインビボで操作する。アデノウイルスは、本発明のポリペプチドをコードし、それを発現させるように、また同時に、正常な溶解性ウイルス生活環で複製する能力に関して不活化されるように、操作することができる。アデノウイルス発現は宿主細胞染色体へのウイルスDNAの組込みを伴わずに起こるので、挿入突然変異誘発に関する懸念が軽減される。さらに、アデノウイルスは長年にわたって生経腸ワクチンとして使用され、優れた安全性プロファイルを示している(Schwartzら,Am.Rev.Respir.Dis.,109: 233-238(1974))。最後に、アデノウイルスが媒介する遺伝子導入は、コトンラットの肺へのアルファ-1-アンチトリプシンおよびCFTRの導入を含む数多くの例で実証されている(Rosenfeldら,Science,252: 431-434(1991)、Rosenfeldら,Cell,68: 143-155(1992))。さらに、アデノウイルスがヒト癌の原因物質であることを証明しようと試みた広範囲にわたる研究はいずれも陰性だった(Greenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76: 6606(1979))。
本発明に役立つ適切なアデノウイルスベクターは、例えば参照により本明細書に組み込まれるKozarskyおよびWilson,Curr.Opin.Genet.Devel.,3: 499-503(1993)、Rosenfeldら,Cell,68: 143-155(1992)、Engelhardtら,Human Genet.Ther.,4: 759-769(1993)、Yangら,Nature Genet.,7: 362-369(1994)、Wilsonら,Nature,365: 691-692(1993)、ならびに米国特許第5,652,224号などに記載されている。例えば、アデノウイルスベクターAd2は有用であり、ヒト293細胞中で生育することができる。これらの細胞はアデノウイルスのE1領域を含み、E1aおよびE1bを構成的に発現させる。発現されたE1aおよびE1bは、ベクターから削除されているこれらの遺伝子の産物を提供することにより、欠損アデノウイルスを補完する。Ad2だけでなく、アデノウイルスの他の変異体(例えばAd3、Ad5およびAd7)も本発明に役立つ。
好ましくは、本発明で使用されるアデノウイルスは、複製欠損性である。複製欠損性アデノウイルスは、感染性粒子を形成するのに、ヘルパーウイルスおよび/またはパッケージング細胞株の助けを必要とする。得られたウイルスは細胞に感染する能力を持ち、プロモーターに作動可能な形で連結された興味あるポリヌクレオチドを発現させることができるが、ほとんどの細胞で、複製することができない。複製欠損性アデノウイルスは、以下の遺伝子の全部または一部の1つまたは複数に欠失を持ちうる:E1a、E1b、E3、E4、E2a、またはL1〜L5。
他の一部の実施形態では、アデノ関連ウイルス(AAV)を使って、細胞を、エクスビボで、またはインビボで操作する。AAVは感染性粒子の産生にヘルパーウイルスを必要とする天然の欠損ウイルスである(Muzyczka,Curr.Topics in Microbiol.Immunol.,158: 97(1992))。また、非分裂細胞にそのDNAを組み込みうるいくつかのウイルスの一つでもある。300塩基対しかないAAVを含むベクターは、パッケージされ、組み込まれうるが、外因性DNAのためのスペースは約4.5kbに限られている。そのようなAAVを製造し、使用する方法は、当技術分野では知られている。例えば米国特許第5,139,941、第5,173,414、第5,354,678、第5,436,146、第5,474,935号、第5,478,745号、および第5,589,377号などを参照されたい。
例えば、本発明での使用に適したAAVベクターは、DNA複製、キャプシド形成、および宿主-細胞統合に必要な全配列を含むだろう。本発明のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドコンストラクトは、例えばSambrookら「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Press(1989))に記載されている方法など、標準的クローニング法を使ってAAVベクターに挿入される。次に、任意の標準的技術、例えばリポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法などを使って、その組換えAAVベクターをパッケージング細胞にトランスフェクトし、それをヘルパーウイルスに感染させる。適切なヘルパーウイルスとしては、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、またはヘルペスウイルスが挙げられる。パッケージング細胞をトランスフェクトし感染させたら、それらは本発明のポリヌクレオチドコンストラクトを含む感染性AAVウイルス粒子を産生するだろう。次に、これらのウイルス粒子を使って、エクスビボでまたはインビボで、真核細胞の形質導入を行なう。形質導入された細胞は、そのゲノムに組み込まれたポリヌクレオチドコンストラクトを含み、所望の遺伝子産物を発現させるだろう。
もう一つの遺伝子治療法では、異種制御領域と内因性ポリヌクレオチド配列(例えば興味あるポリペプチド配列をコードするもの)とを相同組換えによって作動可能な形で結合させる(例えば、1997年6月24日に発行された米国特許第5,641,670号、1996年9月26日に公開された国際公開第96/29411号、1994年8月4日に公開された国際公開第94/12650号、Kollerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86: 8932-8935(1989)、およびZijlstraら,Nature,342: 435-438(1989)を参照されたい)。この方法では、標的細胞中に存在するがその細胞では通常発現しないかまたは所望のレベルより低いレベルでしか発現しない遺伝子の活性化が起こる。
ターゲティング配列に挟まれたプロモーターを含有するポリヌクレオチドコンストラクトは、当技術分野で知られる標準的技術を使って作製される。適切なプロモーターは本明細書に記載するものである。ターゲティング配列は、内因性配列に対して、プロモーター-ターゲティング配列と内因性配列との相同組換えが可能になるほど十分な相補性を示す。ターゲティング配列は所望の内因性ポリヌクレオチド配列の5'末端に十分に近いので、相同組換えが起こるとプロモーターが内因性配列に作動可能に連結されるだろう。
プロモーターおよびターゲティング配列はPCRを使って増幅することができる。増幅されたプロモーターは、好ましくは、5'末端および3'末端に異なる制限酵素部位を含む。好ましくは、第1ターゲティング配列の3'末端は、増幅されたプロモーターの5'末端と同じ制限酵素部位を含み、第2ターゲティング配列の5'末端は増幅されたプロモーターの3'末端と同じ制限部位を含む。増幅されたプロモーターおよびターゲティング配列を消化し、一つにライゲートする。
プロモーター-ターゲティング配列コンストラクトは、裸のポリヌクレオチドとして、または上に詳述したトランスフェクション促進剤、例えばリポソーム、ウイルス配列、ウイルス粒子、全ウイルス、リポフェクション、沈殿剤などと組み合わせて、細胞に送達される。Pプロモーター-ターゲティング配列は、例えば直接針注射、静脈内注射、局所投与、カテーテル注入、粒子加速装置など、任意の方法で送達することができる。これらの方法を以下に詳しく説明する。
プロモーター-ターゲティング配列コンストラクトは細胞に取り込まれる。コンストラクトと内因性配列との間で相同組換えが起こり、内因性配列は前記プロモーターの制御下に置かれる。そして当該プロモーターが内因性配列を発現させることになる。
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、血管由来のタンパク質をコードする他のポリヌクレオチドと共に投与することができる。血管由来のタンパク質には、例えば酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子、VEGF-1、VEGF-2(VEGF-C)、VEGF-3(VEGF-B)、表皮増殖因子アルファおよびベータ、血小板由来内皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、腫瘍壊死因子アルファ、肝細胞増殖因子、インスリン様増殖因子、コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、および酸化窒素シンターゼなどがあるが、これらに限るわけではない。
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、好ましくは、そのタンパク質の分泌を促進する分泌シグナル配列を含む。通例、シグナル配列は、発現させようとするポリヌクレオチドのコード領域中、コード領域の5'末端近く、またはコード領域の5'末端に置かれる。シグナル配列は興味あるポリヌクレオチドに対して同種でも異種でもよく、またトランスフェクトされる細胞に対して同種でも異種でもよい。さらにシグナル配列は、当技術分野で知られる方法を使って、化学合成することができる。
上記のポリヌクレオチドコンストラクトはいずれも、結果として1以上の分子が治療効果をもたらすのに十分な量で発現する限り、どのような投与法で投与してもよい。これらの方法には、例えば直接針注射、全身注射、カテーテル注入、バイオリスティック・インジェクター(biolistic injector)、粒子加速装置(すなわち「遺伝子銃」)、ゲルフォームスポンジデポー、他の市販デポー材料、浸透圧ポンプ(例えばAlzaミニポンプ)、経口用または坐剤用固形(錠剤または丸剤)医薬製剤、および手術中のデカンティング(decanting)または局所適用などがある。例えば、ラット肝臓およびラット脾臓への裸のリン酸カルシウム沈殿プラスミドの直接注射、または門脈へのタンパク質被覆プラスミドの直接注射により、ラット肝臓での外来遺伝子の遺伝子発現が起こっている(Kanedaら,Science,243: 375(1989))。
好ましい局所投与法は直接注射による方法である。好ましくは、送達ビヒクルと複合体化した本発明の組換え分子を動脈の当該領域に直接注射によって、または当該領域内に局所的に投与する。動脈の当該領域内に局所的に組成物を投与するとは、動脈内の数センチメートル、好ましくは数ミリメートルの領域に組成物を注射することを表す。
もう一つの局所投与法は、手術創傷中または手術創傷付近で、本発明のポリヌクレオチドコンストラクトを接触させることである。例えば、患者に手術を施し、創傷内部の組織の表面をポリヌクレオチドコンストラクトで覆うか、または創傷内部の組織の領域にコンストラクトを注射することができる。
全身投与に役立つ治療組成物には、本発明の標的送達ビヒクルに複合体化した本発明の組換え分子が含まれる。適切な全身投与用送達ビヒクルには、ビヒクルを特定部位にターゲティングするためのリガンドを含むリポソームが含まれる。
好ましい全身投与法には、静脈内注射、エアロゾル、経口および経皮(局所)送達が含まれる。静脈内注射は当技術分野で標準的な方法を使って行なうことができる。エアロゾル送達も当技術分野で標準的な技術を使って行なうことができ(例えば、参照により本明細書に組み込まれるStriblingら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,189: 11277-11281(1992)を参照されたい)。経口送達は、本発明のポリヌクレオチドコンストラクトを、動物の腸内の消化酵素による分解に耐えることができる担体に複合体化することによって行なうことができる。そのような担体の例には、当技術分野で知られているようなプラスチックカプセルまたは錠剤がある。局所送達は、本発明のポリヌクレオチドコンストラクトを、皮膚に浸透することができる親油性試薬(例えばDMSO)と混合することによって行なうことができる。
送達しようとする物質の有効量の決定は、例えばその物質の化学構造および生物学的活性、その動物の年齢および体重、処置を必要としている正確な状態およびその重症度、ならびに投与経路などを含む数多くの要因に依存しうる。処置の頻度は、1回に投与するポリヌクレオチドコンストラクトの量、投与対象の健康状態および病歴など、数多くの要因に依存する。正確な量、投与回数および投与時期は、担当の医師または獣医が決定することになる。本発明の治療組成物は、どのような動物にも投与することができ、好ましくは哺乳動物および鳥類に投与することができる。好ましい哺乳動物としては、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ウシ、ウマおよびブタが挙げられ、ヒトは特に好ましい。
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、または本発明のアゴニストもしくはアンタゴニストは、1以上の生物学的活性について試験するためのアッセイに使用することができる。これらのポリヌクレオチドおよびポリペプチドが特定のアッセイで活性を示す場合、それらの分子はその生物学的活性に関係する疾患に関与しているかもしれない。したがって、そのポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、その関連する疾患を処置するために使用することができるだろう。
さらに、本発明のポリペプチドの活性を調整する分子を選別するために、本発明のポリペプチドまたはこれらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを使用することも考えられる。そのような方法では、本発明のポリペプチドを、アンタゴニストまたはアゴニスト活性を持つと疑われる選択した化合物と接触させ、結合後のこれらポリペプチドの活性をアッセイする。
この発明は、本発明のポリペプチドまたはその結合性断片を使って、様々な薬物スクリーニング技術のいずれかで行なわれる治療化合物のスクリーニングに、とりわけ有用である。そのような試験で使用されるポリペプチドまたは断片は、固形支持体に固定されていてもよいし、細胞表面に発現していてもよいし、溶解した遊離の状態にあってもよいし、細胞内に位置してもよい。薬物スクリーニングの一方法では、上記ポリペプチドまたは断片を発現させる組換え核酸で安定に形質転換された真核または原核宿主細胞を利用する。薬物は、そのような形質転換細胞に対して、競合結合アッセイでスクリーニングされる。例えば、被験薬剤と本発明のポリペプチドとの複合体の形成を測定することができる。
したがって、本発明は、本発明のポリペプチドによって媒介される活性に影響を及ぼす薬物または他の任意の薬剤をスクリーニングする方法を提供する。これらの方法は、そのような薬剤を本発明のポリペプチドまたはその断片と接触させること、およびその薬剤とポリペプチドまたはその断片との複合体の存在を、当技術分野で周知の方法によってアッセイすることを含む。そのような競合結合アッセイでは、選別する薬剤を通例、標識する。インキュベーション後に、結合型として存在するものから遊離の薬剤を分離する。遊離のラベルまたは複合体化していないラベルの量は、特定薬剤の、本発明ポリペプチドに結合する能力の尺度となる。
もう一つの薬物スクリーニング技術は、本発明のポリペプチドに対して適切な結合親和性を持つ化合物のハイスループットスクリーニングを可能にするものであるが、この技術は、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願84/03564(1984年9月13日公開)に詳細に説明されている。簡単に述べると、多数の異なる小ペプチド試験化合物を、固形基材、例えばプラスチックピンまたは他の何らかの表面上で合成する。ペプチド試験化合物を本発明のポリペプチドと反応させ、洗浄する。次に、結合したポリペプチドを当技術分野で周知の方法によって検出する。精製されたポリペプチドを、上述の薬物スクリーニング技術に使用されるプレート上に直接コーティングする。また、非中和抗体を使ってペプチドを捕捉し、それを固形支持体上に固定化することができる。
本発明では、本発明のポリペプチドを結合する能力を持つ中和抗体がポリペプチドまたはその断片への結合に関して試験化合物と特異的に競合する競合薬物スクリーニングアッセイを使用することも考えられる。この方法では、抗体を使って、本発明のポリペプチドと共通する1以上の抗原エピトープを持つ任意のペプチドを検出する。
本発明のヒトMGAT3ポリペプチドおよび/またはペプチド、またはその免疫原性断片もしくはオリゴペプチドは、種々の薬物スクリーニング技術で治療薬または化合物をスクリーニングするために使用することができる。そのようなスクリーニングアッセイで使用される断片は、溶解した遊離の状態にあってもよいし、固形支持体に固定されていてもよいし、細胞表面に担持されていてもよいし、細胞内に存在してもよい。本イオンチャネルタンパク質と被験薬剤との結合複合体形成の活性の減少または消滅を測定することができる。したがって本発明は、複数の化合物を、本発明のMGAT3ポリペプチドまたは結合性ペプチド断片との特異的結合親和性に関して、スクリーニングまたはアッセイする方法であって、複数の化合物を用意し、MGAT3ペプチドまたは結合性ペプチド断片を複数の化合物のそれぞれと、適切な条件下で、結合を可能とするのに十分な時間にわたって混合し、上記複数の試験化合物のそれぞれに対するMGAT3ポリペプチドまたはペプチドの結合を検出し、よってMGAT3ポリペプチドまたはペプチドに特異的に結合する化合物を同定することを含む方法を提供する。
本発明は、新規ヒトMGAT3ポリペプチドおよび/またはペプチドの活性を調整する化合物を同定する方法を提供する。この方法では、MGAT3の生物学的活性の潜在的または候補化合物または薬物モジュレーターを、MGAT3ポリペプチドまたはペプチド、例えば配列番号2に記載のMGAT3アミノ酸配列と混合し、MGAT3ポリペプチドまたはペプチドの生物学的活性に対する候補化合物または薬物モジュレーターの効果を測定する。そのような測定可能な効果には、例えば、物理的結合相互作用、適切な基質を切断する能力、天然およびクローン化MGAT3発現細胞株に対する効果、およびモジュレーターの効果、またはMGAT3が媒介する他の生理学的尺度などがある。
本発明の新規MGAT3ポリペプチドの生物学的活性を調整する化合物を同定するもう一つの方法では、MGAT3の生物学的活性の潜在的または候補化合物または薬物モジュレーターを、MGAT3ポリペプチドを発現させる宿主細胞と混合し、MGAT3ポリペプチドの生物学的活性に対するその候補化合物または薬物モジュレーターの効果を測定する。宿主細胞は、例えば誘導性発現によってMGAT3ポリペプチドを発現させるように誘導することができる細胞であってもよい。MGAT3ポリペプチドに対する、与えられたモジュレーター候補の生理学的効果を測定することもできる。したがって、特定のMGAT3モジュレーターに関する細胞アッセイは、MGAT3ポリペプチドの物理的生物学的活性の直接的な測定または定量であってもよいし、あるいは生理学的効果の測定または定量であってもよい。そのような方法では、好ましくは、本明細書に記載のMGAT3ポリペプチドを使用するか、本明細書に記載の発現ベクターを含有し、MGAT3ポリペプチドが発現され、過剰発現され、またはアップレギュレートされた発現をする適切な宿主細胞中で、過剰発現された組換えMGAT3ポリペプチドを使用する。
本発明のもう一つの態様は、MGAT3ポリペプチドの生物学的活性を調整する能力を持つ化合物に関するスクリーニングを行なう方法であって、MGAT3ポリペプチドまたはその機能的ペプチドもしくは一部をコードする核酸配列を持つ発現ベクターを含有する宿主細胞を用意すること、発現したMGAT3ポリペプチドの生物学的活性を、モジュレーター化合物の不在下で決定すること、細胞をモジュレーター化合物と接触させて、発現したMGAT3ポリペプチドの生物学的活性をモジュレーター化合物の存在下で決定することを含む方法を包含する。そのような方法では、モジュレーター化合物の存在下でのMGAT3ポリペプチドの活性と、モジュレーター化合物の不在下でのMGAT3ポリペプチドの活性との相違が、その化合物の調整効果を示す。
本発明のアッセイでは、基本的にあらゆる化学化合物を、潜在的モジュレーターまたはリガンドとして使用することができる。MGAT3モジュレーターとして試験される化合物は、任意の小さい化学化合物または生物学的物体(例えばタンパク質、糖、核酸、脂質)であることができる。試験化合物は典型的には小さい化学化合物およびペプチドであるだろう。一般に、潜在的モジュレーターとして使用される化合物は、水溶液または有機(例えばDMSO系)溶液に溶解することができる。アッセイは、アッセイステップを自動化し、任意の便利な供給源から化合物を用意することにより、大きな化合物ライブラリーをスクリーニングするように設計される。アッセイは典型的には、例えばロボットアッセイにより、マイクロタイタープレートでのマイクロタイター形式で、並行して行なわれる。化学化合物の供給者は、例えばSigma(ミズーリ州セントルイス)、Aldrich(ミズーリ州セントルイス)、Sigma-Aldrich(ミズーリ州セントルイス)、Fluka Chemika-Biochemica Analytika(スイス・ブックス)など、数多く存在する。また化合物は当技術分野で知られる方法によって合成してもよい。
本明細書に記載する新規MGAT3ポリヌクレオチドおよびポリペプチドのモジュレーターの検出には、特にハイスループットスクリーニング法が考えられる。そのようなハイスループットスクリーニング法では、通例、多数の潜在的治療化合物(例えばリガンドまたはモジュレーター化合物)を含むコンビナトリアル化合物またはペプチドライブラリーを用意する。次に、そのようなコンビナトリアル化合物ライブラリーまたはリガンドライブラリーを、1以上のアッセイでスクリーニングすることにより、所望の特徴的活性を示すこれらのライブラリーの構成要素(例えば特定の化学種またはサブクラス)を同定する。そのようにして同定された化合物は通常のリード化合物として役立ちうるか、またはそれら自体を潜在的なまたは現実の治療薬として使用することができる。
コンビナトリアル化合物ライブラリーは、化学合成または生物学的合成により、数多くの化学構成単位(すなわちアミノ酸などの試薬)を組み合わせることによって製造された多様な化学化合物の集合である。一例として、線状コンビナトリアルライブラリー、例えばポリペプチドまたはペプチドライブラリーは、一組の化学構成単位を、与えられた化合物の長さ(すなわちポリペプチドまたはペプチド化合物中のアミノ酸数)に関して考え得る全ての方法で組み合わせることによって形成される。このような化学構成単位のコンビナトリアルな混合により、何百万という化学化合物を合成することができる。
コンビナトリアル化合物ライブラリーの作製およびスクリーニングは当業者にはよく知られている。コンビナトリアルライブラリーには、例えばペプチドライブラリー(米国特許第5,010,175号、Furka,1991,Int.J.Pept.Prot.Res.,37: 487-493、およびHoughtonら,1991,Nature,354: 84-88など)があるが、これらに限るわけではない。化学的多様性ライブラリーを作製するために他の化学も使用することができる。化学的多様性ライブラリー化学の例には、ペプトイド(PCT公開第WO91/019735号)、コードされたペプチド(PCT公開第WO93/20242号)、ランダムバイオオリゴマー(PCT公開第WO92/00091号)、ベンゾジアゼピン類(米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン類、ベンゾジアゼピン類およびジペプチドなどのダイバーソマー(diversomer)(Hobbsら,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90: 6909-6913)、ビニル性ポリペプチド(Hagiharaら,1992,J.Amer.Chem.Soc.,114: 6568)、グルコーススキャフォールドを持つ非ペプチドペプトイドミメティック(Hirschmannら,1992,J.Amer.Chem.Soc.,114: 9217-9218)、小化合物ライブラリーの類似有機合成(Chenら,1994,J.Amer.Chem.Soc.,116: 2661)、オリゴカルバメート(Choら,1993,Science,261: 1303)および/またはペプチジルホスホネート(Campbellら,1994,J.Org.Chem.,59: 658)、核酸ライブラリー(Ausubel、BergerおよびSambrook,全て前掲)、ペプチド核酸ライブラリー(米国特許第5,539,083号)、抗体ライブラリー(例えばVaughnら,1996,Nature Biotechnology,14(3): 309-314およびPCT/US96/10287)、糖質ライブラリー(例えばLiangら,1996,Science,274-1520-1522および米国特許第5,593,853号)、小有機分子ライブラリー(例えばベンゾジアゼピン類、Baum C&EN,Jan.18,1993,33頁、および米国特許第5,288,514号、イソプレノイド類、米国特許第5,569,588号、チアゾリジノン類およびメタチアザノン類、米国特許第5,549,974号、ピロリジン類、米国特許第5,525,735号および第5,519,134号、モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号など)があるが、これらに限るわけではない。
コンビナトリアルライブラリーを作製するための装置は市販されている(例えばAdvanced Chem Tech(ケンタッキー州ルイビル)の357MPS、390MPS、Rainin(マサチューセッツ州ウォーバン)のSymphony、Applied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティ)の433A、Millipore(マサチューセッツ州ベッドフォード)の9050Plus。また、コンビナトリアルライブラリーも数多く市販されている(例えばComGenex(ニュージャージー州プリンストン)、Asinex(ロシア・モスクワ)、Tripos,Inc.(ミズーリ州セントルイス)、ChemStar,Ltd.(ロシア・モスクワ)、3D Pharmaceuticals(ペンシルバニア州エクストン)、Martek Biosciences(メリーランド州コロンビア)など)。
一実施形態として、本発明は、イオンチャネルを発現させる細胞または組織が固相基材に取付けられているハイスループット形式の固相型インビトロアッセイを提供する。そのようなハイスループットアッセイでは、数千種類までのモジュレーターまたはリガンドを一日でスクリーニングすることが可能である。具体的には、マイクロタイタープレートの各ウェルを使って、選択した潜在的モジュレーターに対して個別のアッセイを行なうか、または濃度もしくはインキュベーション時間の影響を観察すべき場合には、5〜10ウェル毎に1つのモジュレーターを試験することができる。したがって、1枚の標準的マイクロタイタープレートでは、約96個のモジュレーターをアッセイすることができる。1536ウェルプレートを使用すれば、1枚のプレートで約100〜約1500種類の化合物を容易にアッセイすることができる。1日あたり数枚の異なるプレートをアッセイすることができるので、記載の統合システムを使用すれば、例えば約6000〜20000種類までの化合物のアッセイスクリーニングが可能である。
もう一つの態様として、本発明は、与えられたタンパク質、すなわちMGAT3ポリペプチドまたはペプチドに結合することができる小分子の検出または同定を伴うスクリーニングおよび小分子(例えば薬物)検出アッセイを包含する。ハイスループットスクリーニング法に適したアッセイは特に好ましい。
そのような結合型検出、同定またはスクリーニングアッセイでは、機能アッセイは通例、必要でない。必要なのは、標的タンパク質(好ましくは実質的に精製されたもの)と、タンパク質標的への結合に関してスクーニングもしくはアッセイしようとする化合物ライブラリーもしくは化合物パネル(例えばリガンド、薬物、小分子)または生物学的物体だけである。好ましくは、標的タンパク質に結合するほとんどの小分子は、タンパク質上の機能領域または機能部位への選択的な、より親和性の高い結合ゆえに、何らかの形で活性を調整するだろう。
そのようなアッセイの一例は、Pantolianoらの米国特許第6,020,141号および第6,036,920号に記載されている蛍光に基づく熱シフトアッセイ(3-Dimensional Pharmaceuticals,Inc.(3DP)、ペンシルバニア州エクストン)である。J.Zimmerman,2000,Gen.Eng.News,20(8)も参照されたい。このアッセイでは、発現された、そして好ましくは精製されたイオンチャネルポリペプチドに結合する小分子(例えば薬物、リガンド)を、タンパク質-薬物またはリガンド複合体の熱アンフォールディング曲線の解析による結合親和性の決定に基づいて検出することが可能である。所望により、この技術によって決定される薬物または結合分子を、本明細書に記載するような方法によってさらにアッセイして、その分子が標的タンパク質の機能もしくは活性に影響を及ぼすかどうか、または標的タンパク質の機能もしくは活性を調整するかどうかを決定することができる。
生物学的結合またはリガンド結合活性を測定するためのMGAT3ポリペプチドまたはペプチドの精製には、標準的プロテアーゼ阻害剤の存在下で連続的に凍結融解サイクル(例えば1〜3回)を行なうことによって調製することができる全細胞溶解物を供給源とすることができる。MGAT3ポリペプチドは標準的なタンパク質精製法、例えば後述する特異抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーによって、またはやはり本明細書に記載する組換えMGAT3ポリペプチド分子に組み込まれたエピトープタグに特異的なリガンドによって、部分精製または完全精製することができる。次に、結合活性を記載のとおりに測定することができる。
本明細書に記載の方法によって同定される、本発明のMGAT3ポリペプチドの生物学的活性または生理機能を調整または調節する化合物は、本発明の好ましい一実施形態である。そのような調整化合物は、処置を必要とする個体に、本明細書に記載の方法で同定された化合物の治療有効量を投与することによって、新規MGAT3ポリペプチドが媒介する状態を処置するための処置および治療方法に使用することができると考えられる。
さらに、本発明は、本発明のMGAT3ポリペプチドによって媒介される疾患、障害または状態の処置を必要とする個体を処置する方法であって、本明細書に記載の方法によって同定されるMGAT3調整化合物の治療有効量を、その個体に投与することを含む方法を提供する。
具体的実施形態として、本発明のアンタゴニストは、配列番号1に含まれる配列またはその相補鎖および/または少なくとも1つの寄託クローンに含まれるヌクレオチド配列に相当する核酸である。ある実施形態では、アンチセンス配列が、当該生物によって体内で生成され、もう一つの実施形態では、アンチセンス配列が別途投与される(例えばO'Connor,Neurochem.,56: 560(1991)、「Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression」(CRC Press,フロリダ州ボカラトン,1988))。アンチセンス技術は、アンチセンスDNAもしくはRNAによる、または三重らせん形成による遺伝子発現の制御に使用することができる。アンチセンス技術は、例えばOkano,Neurochem.,56: 560(1991)、「Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression」(CRC Press,フロリダ州ボカラトン,1988)などで論じられている。三重らせん形成は、例えばLeeら,Nucleic Acids Research,6: 3073(1979)、Cooneyら,Science,241: 456(1988)、およびDervanら,Science,251: 1300(1991)などで論じられている。これらの方法は相補的DNAまたはRNAへのポリヌクレオチドの結合に基づいている。
例えば、c-mycおよびc-mybアンチセンスRNAコンストラクトを使った非リンパ球性白血病細胞株HL-60および他の細胞株の成長の阻害が、先に記載されている(Wickstromら(1988)、Anfossiら(1989))。これらの実験は、細胞をオリゴヌクレオチドと共にインキュベートすることにより、インビトロで行なわれた。インビボ用の同様の手法はWO91/15580に記載されている。簡単に述べると、与えられたアンチセンスRNAに関して、一対のオリゴヌクレオチドを、以下のように作製する。オープンリーディングフレームの最初の15塩基に相補的な配列に、5'端側にはEcoR1部位を、また3'端側にはHindIII部位を隣接させる。次に、オリゴヌクレオチド対を90℃で1分間加熱し、2×ライゲーションバッファー(20mMトリスHCl、pH7.5、10mM MgCl2、10mMジチオスレイトール(DTT)および0.2mM ATP)中でそれらをアニールさせ、レトロウイルスベクターPMV7(WO91/15580)のEcoR1/HindIII部位にライゲートする。
例えば、本発明の成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの5'コード部分を使って、長さが約10〜40塩基対のアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを設計することができる。転写に関係する遺伝子の一領域に相補的になり、よって受容体の転写および産生が妨害されるように、DNAオリゴヌクレオチドを設計する。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドはインビボでmRNAにハイブリダイズし、そのmRNA分子が受容体ポリペプチドに翻訳されるのを妨げる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは一本鎖でも二本鎖でもよい。二本鎖RNAはPaddisonら,Proc.Nat.Acad.Sci.,99: 1443-1448(2002)ならびに国際公開番号WO01/29058およびWO99/32619(これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる)の記載に基づいて設計することができる。
一実施形態として、本発明のアンチセンス核酸は、外因性配列からの転写によって、細胞内で産生される。例えば、ベクターまたはその一部は転写されて、本発明のアンチセンス核酸(RNA)を生成する。そのようなベクターは、本発明のアンチセンス核酸をコードする配列を含むだろう。そのようなベクターは、転写されて所望のアンチセンスRNAを産生する限り、エピソームの状態に留まっても、染色体に組み込まれてもよい。そのようなベクターは、当技術分野では標準的な組換えDNA技術の方法によって構築することができる。ベクターは、脊椎動物細胞での複製と発現に使用されるプラスミド、ウイルス、または当技術分野で知られる他のベクターであることができる。本発明のポリペプチドまたはその断片をコードする配列の発現は、脊椎動物細胞、好ましくはヒト細胞で作用することが技術上知られている任意のプロモーターによることができる。そのようなプロモーターは誘導性であっても構成的であってもよい。そのようなプロモーターには、例えばSV40初期プロモーター領域(BernoistおよびChambon,Nature,29: 304-310(1981))、ラウス肉腫ウイルスの3'長末端反復配列(Yamamotoら,Cell,22: 787-797(1980))、ヘルペスチミジンプロモーター(Wagnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,78: 1441-1445(1981))、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら,Nature,296: 39-42(1982))などがあるが、これらに限るわけではない。
本発明のアンチセンス核酸は、興味ある遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部に相補的な配列を含む。しかし、絶対的な相補性は、好ましくはあるが、必要ではない。本明細書にいう「RNAの少なくとも一部に相補的な」配列とは、RNAとハイブリダイスして安定な二重鎖を形成させる能力を持つのに十分な相補性を有する配列を意味し、本発明の二本鎖アンチセンス核酸の場合は、二本鎖DNAの一方の鎖を調べるか、または三重鎖形成をアッセイすることができる。ハイブリダイズする能力は、相補性の程度にも、アンチセンス核酸の長さにも依存するだろう。一般に、ハイブリダイズする核酸が大きいほど、本発明のRNA配列とのミスマッチをより多く含んでも、安定な二重鎖(場合によって三重鎖)を形成することができる。当業者は、ハイブリダイズした複合体の融点を決定する標準的な方法を使って、許容できるミスマッチの程度を確かめることができる。
メッセージの5'末端、例えば5'非翻訳配列からAUG開始コドンまで(AUG開始コドンを含む)に相補的なオリゴヌクレオチドは、最も効率よく翻訳を阻害するはずである。しかし、mRNAの3'非翻訳配列に相補的な配列も、同様にmRNAの翻訳を効果的に阻害することが示されている。一般論としてWagner,R.,Nature,372: 333-335(1994)を参照されたい。したがって、本発明のポリヌクレオチド配列の5'非翻訳非コード領域または3'非翻訳非コード領域に相補的なオリゴヌクレオチドをアンチセンス法に使用して、内因性mRNAの翻訳を阻害することができるだろう。mRNAの5'非翻訳領域に相補的なオリゴヌクレオチドは、AUG開始コドンの相補鎖を含むべきである。mRNAコード領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、あまり効率のよい翻訳阻害剤ではないが、本発明で使用することはできるだろう。mRNAの5'領域、3'領域またはコード領域のいずれにハイブリダイズするように設計したにせよ、アンチセンス核酸は、少なくとも6ヌクレオチドの長さを持つべきであり、6〜約50ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドであることが好ましい。具体的態様として、本オリゴヌクレオチドは少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、または少なくとも50ヌクレオチドである。
本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖のDNAもしくはRNAまたはそのキメラ混合物もしくは誘導体もしくは修飾型であることができる。本オリゴヌクレオチドは、例えばその分子の安定性、ハイブリダイゼーションなどを改善する目的で、塩基部分、糖部分、またはリン酸エステル主鎖部分を修飾することができる。本オリゴヌクレオチドには、他の基、例えばペプチド(インビボで宿主細胞受容体を標的とするため)または細胞膜(例えばLetsingerら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,86: 6553-6556(1989)、Lemaitreら,Proc.Natl.Acad.Sci.,84: 648-652(1987)、1988年12月15日に公開されたPCT公開第W088/09810号参照)または血液脳関門(例えば1988年4月25日に公開されたPCT公開第W089/10134号参照)を横切る輸送を容易にする薬剤、ハイブリダイゼーション誘発性切断剤(例えばKrolら,BioTechniques,6: 958-976(1988)参照)または挿入剤(例えばZon,Pharm.Res.,5: 539-549(1988)参照)などが付加されていてもよい。この目的を達成するために、オリゴヌクレオチドをもう一つの分子、例えばペプチド、ハイブリダイゼーション誘発性架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発性切断剤などと結合することができる。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルキューオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6-ジアミノプリンなど(ただしこれらに限るわけではない)を含む群から選択される少なくとも1つの修飾塩基部分を含んでもよい。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えばアラビノース、2-フルオロアラビノース、キシルロース、およびヘキソースなど(ただしこれらに限るわけではない)を含む群から選択される少なくとも1つの修飾糖部分も含んでよい。
さらにもう一つの実施形態として、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミドチオエート、ホスホルアミデート、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、およびホルムアセタールまたはその類似体など(ただしこれらに限るわけではない)を含む群から選択される少なくとも1つの修飾リン酸エステル主鎖を含む。
さらにもう一つの実施形態として、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、α-アノマーオリゴヌクレオチドである。α-アノマーオリゴヌクレオチドは、相補的RNAとの間に、通常のβ-ユニットとは対照的に、鎖が互いに並行に走る特殊な二本鎖ハイブリッドを形成する(Gautierら,Nucl.Acids Res.,15: 6625-6641(1987))。本オリゴヌクレオチドは、2-O-メチルリボヌクレオチド(Inoueら,Nucl.Acids Res.,15: 6131-6148(1987))またはキメラRNA-DNA類似体(Inoueら,FEBS Lett. 215: 327-330(1987))である。
本発明のポリヌクレオチドは、当技術分野で知られる標準的方法により、例えば自動DNA合成装置(例えばBiosearch、Applied Biosystemsなどから市販されているもの)を使って合成することができる。例えば、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、Steinらの方法(Nucl.Acids Res.,16: 3209(1988))によって合成することができ、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは、コントロールドポアガラスポリマー支持体を使って製造することができる(Sarinら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85: 7448-7451(1988))。
本発明のコード領域配列に相補的なアンチセンスヌクレオチドを使用することはできるだろうが、転写非翻訳領域に相補的なものが最も好ましい。
本発明の潜在的アンタゴニストには触媒的RNA、すなわちリボザイムも包含される(例えば1990年10月4日に公開されたPCT国際公開WO90/11364、Sarverら,Science,247: 1222-1225(1990)を参照されたい)。特異的認識配列でmRNAを切断するリボザイムを使って本発明のポリヌクレオチドに相当するmRNAを破壊することはできるが、ハンマーヘッドリボザイムの使用が好ましい。ハンマーヘッドリボザイムは、標的mRNAと相補的塩基対を形成する隣接領域によって決まる部位でmRNAを切断する。唯一の必要条件は、標的mRNAが、2つの塩基からなる次の配列、すなわち5'-UG-3'を持つことである。ハンマーヘッドリボザイムの構築と製造は当技術分野ではよく知られており、HaseloffおよびGerlach,Nature,334: 585-591(1988)に詳述されている。配列表に開示した各ヌクレオチド配列には極めて多数の潜在的ハンマーヘッドリボザイム切断部位が存在する。好ましくは、切断認識部位が本発明のポリヌクレオチドに相当するmRNAの5'末端近くに位置するように、すなわち効率が向上し、非機能的mRNA転写物の細胞内蓄積が最小限に抑えられるように、リボザイムを設計する。
アンチセンス法の場合と同様に、本発明のリボザイムは(例えば安定性、ターゲティング性などが改善されるように)修飾オリゴヌクレオチドからなることができ、インビボで本発明のポリヌクレオチドを発現させる細胞に送達されるべきである。リボザイムをコードするDNAコンストラクトは、アンチセンスコードDNAの導入に関して上述した方法と同じ方法で細胞に導入することができる。好ましい送達法では、トランスフェクト細胞が内因性メッセージを破壊し翻訳を阻害するのに十分な量のリボザイムを産生するように、強力な構成的プロモーター、例えばpolIIIまたはpoIIプロモーターなどの制御下にリボザイムを「コード」しているDNAコンストラクトを使用する。リボザイムはアンチセンス分子とは異なり触媒分子であるので、アンチセンス分子より低い細胞内濃度でも有効である。
アンタゴニスト/アゴニスト化合物は、新生物細胞および新生組織に対する本発明ポリペプチドの細胞成長および細胞増殖効果(すなわち腫瘍の血管新生の刺激)を阻害し、よって例えば腫瘍形成または腫瘍成長における異常な細胞成長および細胞増殖を遅延または防止するために、使用することができる。
本アンタゴニスト/アゴニストは、過剰血管疾患を防止し、水晶体嚢外白内障手術後の上皮水晶体細胞の増殖を防止するためにも使用することができる。本発明ポリペプチドの有糸分裂促進活性の防止は、バルーン血管形成術後の再閉塞などの場合にも望ましいかもしれない。
本アンタゴニスト/アゴニストは、創傷治癒中の瘢痕組織の成長を防止するためにも使用することができる。
本アンタゴニスト/アゴニストは、本明細書に記載の疾患を処置、予防、および/または診断するためにも使用することができる。
したがって本発明は、(a)本発明のポリヌクレオチドに対するアンチセンス分子および/または(b)本発明のポリヌクレオチドに対するリボザイムを患者に投与することによって、本発明のポリヌクレオチドの過剰発現に関係する疾患、障害および/または状態、例えば本願明細書に列挙した疾患、障害および/または状態など(ただしこれらに限らない)を処置または予防する方法を提供する。
以下の項では本発明で利用する材料と方法について説明する。
材料と方法
A.バイオインフォマティクス解析によるヒトMGAT3の同定
サッカロミセス・セレビシェScDGAT2配列(アクセッション番号YOR245C、Lardizabal,K.D.ら(2001)J.Biol.Chem.,276(42): 38862-9)を使って、ヒトゲノム配列に対して、包括的BLAST検索を行った。その結果得た配列を既存ESTの捕捉に使用した。次に、そのEST情報とGenscanプログラムを使って、候補遺伝子のコード配列を予測した。以下の基準を使ってこれらの候補をさらにふるい分けた。すなわち当該遺伝子産物は、1)新規でなければならない、2)30〜40kDaタンパク質をコードしなければならない、3)少なくとも1つの膜貫通領域を含有すべきであるが、シグナル配列は含有しない、4)ScDGAT2との間でアミノ酸配列が高度に保存されていなければならない。これらの基準を全て満たす候補遺伝子の組織発現パターンを、TaqMan(商標)定量PCRを使ってプロファイリングした。
図8に示すように、小腸で高度に発現することがわかった候補遺伝子の一つ(MGAT3と命名)を選んで、さらに詳しく調べることにした。MGAT3とその類縁タンパク質の間で配列比較を行うために、GCGプログラム中のGapを使って、配列一致率および配列類似率を計算した。多重配列アラインメントはVectorNTIプログラム中のClustalWアルゴリズムを使って行った。
ヒトMGAT3染色体局在のマッピングを行うために、Biotique Local Integration System(BLIS)プログラム中のMega-Blast/Sim4法を使って、MGAT3 cDNA配列(配列番号1)をヒトゲノム(NCBIヒトゲノムバージョン29)にマッピングした。
B.ヒトMGAT3 cDNAのクローニング
バイオインフォマティクス解析によって得た予想配列を使って、5'末端にビオチンを持ち以下の配列を有するアンチセンスオリゴ(オリゴAと命名)を設計した:5'-ビオチン-GCCCACTGCTTCTAGATGCTGCTTCTGCAAGGTTTTGGAAGTGGTTGGGGGCTGCAGGGTTGTGGCAACTCCCATTGCAG-3'(配列番号15)。この配列とハイブリダイズする一本鎖cDNAを濃縮するために、0.2ngのオリゴAを、50%ホルムアミド中で、いくつかの一本鎖共有結合閉環cDNAライブラリー(Life Technologies,メリーランド州ロックビル)の混合物6μgと混合した。その混合物を95℃で2分間加熱し、50%ホルムアミド、0.75M NaCl、0.02M NaP04(pH7.2)、2.5mM EDTA、0.1%SDS中、42℃で26時間ハイブリダイズさせた。オリゴA/cDNAハイブリッドをストレプトアビジン磁性体と共に、10mMトリス-HCI(pH7.5)、0.5M NaCl、1mM EDTAを含有するバッファー(pH8.0)中で、5分ごとに撹拌しながら60分間インキュベートした。磁石を使って溶液からビーズを取り出し、200μlの0.1×SSPE、0.1%SDS中、45℃で3回洗浄した。0.1N NaOHと共に10分間インキュベートすることにより、オリゴA/ストリプトアビジン磁気ビーズ複合体から、濃縮された一本鎖cDNAを放出させた。放出された一本鎖cDNAをエタノール沈殿し、以下のオリゴ対を用いるPCRによって、二本鎖に変換した:
フォワード:5'-GAGCTTCTGCAATGGGAGTT-3'(配列番号16)
リバース:5'-TGAGCACATATTGGTAGGCG-3'(配列番号17)。
次にその二本鎖cDNAを大腸菌DH12S細胞に導入した。正しい予想サイズを持つ形質転換体を配列決定した。ヒトゲノム配列との比較によってその配列忠実度が確認され、オープンリーディングフレーム全体を含有すると予想される配列を持つクローンの1つ(ヒトMGAT3と命名)を選んで、さらに調べることにした。
C.ヒトMGAT3のTaqMan(商標)定量PCR解析
TriZolプロトコール(Invitrogen)を使って全RNAを単離し、OD260で定量した。ここに記載するどの実験についても、RNAの完全性を確保するために、変性ゲル電気泳動によって、rRNA 18sバンドおよび28sバンドを評価した。リアルタイムPCR用のプライマーおよびプローブはABIから入手した。まず、ヒトMGAT3配列を、GenBank中に見いだされる類縁遺伝子と整列して、配列が有意に相違する領域を同定した。次に、小さいレプリコン(150塩基対以下)を増幅するために、ABI Primer Expressソフトウェアを使って、ヒトHGAT3プライマーおよびプローブを設計した。また、標的特異性を確保するために、全てのプライマー配列およびプライマー配列をGenbankデータベースに対して検索した。オリゴ配列は:
フォワードプライマー:ACTCTGGCCCTTCTCTGTTTTTT(配列番号18)
リバースプライマー:AACGCCTTCCACCTTGGTT(配列番号19)
プローブ:TCCCAGTCCACATAGAGCCACACCAAG(配列番号20)。
試料を72℃に2時間加熱した後、55℃に30分間冷却することにより、100ngのDNアーゼ処理全RNAを、5.5mM MgCl2の存在下で、2.5μMのリバースプライマーにアニールさせた。MuLv逆転写酵素(1.25U/μl)およびdNTP類(各500μM)を37℃で30分間反応液に加えた。次に、酵素を変性させるために、試料を90℃に5分間加熱した。逆転写した反応混合物に2.5μMのフォワードプライマーおよびリバースプライマー、2.0μMのプローブ、500μMのdNTP類、バッファーならびに5UのAmpliTaq Gold(商標)を加えることにより、定量的配列検出をABI PRISM 7700で行った。次に、そのPCR反応液を94℃に12時間保ってから、94℃で15秒および60℃で30秒を40サイクル行った。これを実行し終えた後、最低発現組織の閾サイクル(Ct)を発現のベースラインとして使用した。他の組織の発現レベルは全て、Ct値の相違を計算する事により、前記組織に対する相対量として表した。ベースラインと他の組織との差の倍率は、2ΔCtとして計算される。
D.昆虫細胞における組換えヒトMGAT3の発現
ヒトMGAT3の予想コード配列をNH2末端FLAGエピトープ(MGDYKDDDDG(配列番号21)エピトープに下線)と融合し、Bac-to-Bac(商標)キット(Life Technologies)を製造者の使用説明書に従って使用することにより、スポドプテラ・フルギペルダ(Sf9)昆虫細胞中で発現させた。対照として組換えFLAG-ヒト-DGAT2を同じように発現させた。一般に細胞はウイルス(MOI>3)に2日間感染させた。収集後、細胞をPBSで洗浄し、次に、ホモジナイゼーションバッファー(10mMトリス-HCl(pH7.4)、250mMスクロース、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル[Roche])中でプローブ型超音波処理装置を使ってホモジナイズした。酵素アッセイに使用するまで膜画分(100,000×gペレット)を−80℃で保存した。免疫ブロット解析のために、膜タンパク質を2μgずつSDS-PAGEに負荷し、抗FLAG M2 IgG(Sigma)でプローブした。
E.MGAT酵素アッセイ
Colemanのプロトコール(Coleman,R.A.(1992)Methods Enzymol. 209: 98-104)に変更を加えて、MGAT活性を、200μlの最終体積中、37℃で5〜10分間アッセイした。各反応液は、アッセイバッファー(100mMトリス-HCl(pH7.5)、5mM MgCl2、1.25mg/ml BSA、250mMスクロース、800μMホスファチジルコリンリポソーム)中に、10μlの膜タンパク質を含有した。一般に、50μMのアシルコエンザイムAと、200μM sn-2-モノアシルグリセロール(アセトンに入れて搬送、最終アセトン濃度<2%)を使用した。タンパク質の添加によって反応を開始させ、クロロホルム/メタノール(2/1,v/v)の添加によって反応を停止させた。抽出した脂質を乾燥し、ヘキサン/酢酸エチル/酢酸(85/15/0.5,v/v/v)による薄層クロマトグラフィー(TLC)で分離した。
トリアシルグリセロール(TAG)、ジアシルグリセロール(DAG)、モノアシルグリセロール(MAG)、遊離脂肪酸(FFA)および他の脂質は、ヨウ素蒸気による染色後に、脂質標品(Sigma)で検証した。酵素比活性は、[14C]オレオイル-CoA(20,000dpm/nmol)またはsn-2-[3H]モノオレオイルグリセロール(20,000dpm/nmol)の組込みを測定する事によって、トレースした。STORM PhosphoImagerを使ってクロマトグラムも解析した。
バイオインフォマティクスおよびMGAT3のcDNAクローニング
上述の「材料と方法」を使用することにより、MGAT3のcDNAは、図1および配列番号1に示すポリヌクレオチド配列を持ち、図1および配列番号2に記載の341アミノ酸タンパク質をコードすることがわかった。
疎水性解析(図3)から、予想MGAT3タンパク質は最大5つの潜在的膜貫通ドメインを含有するが、そのNH2末端に古典的シグナル配列を含有しないことが示唆される。MGAT3はDGAT2遺伝子ファミリーのメンバーと相同であることがわかった(図2)。配列比較により、MGAT3はDGAT2に対して49%の一致度および60%の類似度を持ち、MGAT1に対して44%の一致度および51%の類似度を持つことが示される。したがって、MGAT3はDGAT2遺伝子ファミリーの新規メンバーである(DGAT2遺伝子ファミリーの議論については、Cases,S.ら(2001)J.Biol.Chem.,276(42): 38870-6)を参照されたい)。
昆虫Sf9細胞における組換えヒトMGAT3の発現
上述の「材料と方法」を使って、組換えヒトMGAT3を昆虫Sf9細胞中で発現させた。MGAT3異種発現タンパク質の検出を容易にするために、NH2末端に1コピーのFLAGエピトープを読み枠を合わせて融合した。3つの独立したMGAT3組換えバキュロウイルス株を樹立したところ、予備的結果により、それらは全て同じタンパク質を発現させることが示された。無作為に1つを選択して、さらなる試験を行うことにした。
組換えMGAT3ウイルスに感染させると、Sf9細胞膜抽出物は、SDS-PAGEゲル上に、抗FLAG IgGによって検出される36kDaのバンドを生じた(図4A、レーン2)。このタンパク質のサイズはヒトMGAT3の予想分子量と一致する。このバンドは野生型ウイルスにはなく、ヒトDGAT2とは異なる(図4、レーン1およびレーン3)。小分けした膜画分を使用し、放射性[14C]オレオイル-CoAをトレーサーとして用いるMGATアッセイを行った。TLCクロマトグラムは、外来2-モノオレオイルグリセリルを添加すると、組換えMGAT3膜が1,2-および1,3-ジアシルグリセロール(DAG)に相当する2本のバンドを生じることを示している(図4B、レーン5)。野生型ウイルスまたはDGAT2ウイルスに感染させた膜を使用した場合、これらのDAG産物は認められなかった(図4B、レーン4およびレーン6)。
外から加えたMGAT3膜およびDGAT2膜はどちらもトリアシルグリセロール(TAG)バンドを生じた(図4B、レーン5およびレーン6)。しかし野生型ウイルスはどんなTAG標識バンドも生じさせることができなかった(図4B、レーン4)。考えうる説明は、内在性昆虫細胞膜タンパク質がバックグラウンドレベルのMGAT活性を持ち、組換えDGAT2はそのDAG産物を基質として使用して、TAGを生成させることができるというものである。MGAT3がDGAT活性も持っている可能性を検証するために、レーン7〜9(図4B)では、外因性DAGを直接アッセイした。実際、DGAT2と同様に、MGAT3膜はDAGをアシル化してTAGを直接生成させることができた。
組換えMGAT3活性を定量的に評価するために、標識DAGおよびTAGバンドをTLCシートから切り出し、液体シンチレーション計数にかけた(図5B)。抗FLAG IgGによって検出されるMGAT3特異バンドの出現に付随して(図5A)、Sf9細胞膜中に発現される比活性は、DAGについては22.8nmol/分/mgまで、そしてTAGについては9.3nmol/分/mgまで上昇する。時間経過の全体にわたって、野生型ウイルスの感染は、DAGについては0.5nmol/分/mg、TAGについては0.2nmol/分/mgというバックグラウンドレベルの活性しか生じなかった。
これらの結果により、MGAT3 cDNAは二重MGATおよびDGAT活性を持つ膜タンパク質をコードしていることが証明される。
組換えヒトMGAT3の酵素的特徴の特性づけ
上述の「材料と方法」を使って、組換えヒトMGAT3の酵素的特徴を特性づけた。MGATアッセイ条件を最適化するために、基質濃度を滴定した(図6)。オレオイル-CoAの至適濃度は50μMであり(図6A)、2-モノオレオイルグリセロールの至適濃度は200μMである。2-モノオレオイルグリセロールの濃度がさらに増加すると、DAG合成はその濃度が1mMに達するまでは増加し続けたが、TAG合成は減少した。
MAG立体異性体特異性を評価するために、sn-1-モノオレオイルグリセロール(1-MAG)、sn-2-モノオレオイルグリセロール(2-MAG)およびsn-3-モノパルミトイルグリセロール(3-MAG)をアッセイした(図7A)。その結果は、MGAT3が、DAGを合成するための基質として2-MAGを好むことを示している(図7Aのレーン5をレーン2およびレーン8と比較されたい)。どのタイプのMAGを使用しても、合成されたTAGの量には変化がなかった。内在性昆虫細胞膜が持つバックグラウンドMGAT活性はMAGに関して立体特異性を持たない可能性がある。バックグラウンドレベルのDAGが産生されると、MGAT3によってコードされているDGAT活性がそれを使ってTAGを生成させる。
この可能性を直接検証するべく、比較のためにSf9細胞の感染には並行してDGAT2ウイルスも使用した(図7A、レーン3、6および9)。実際、組換えDGAT2膜は、3種類のMAG立体異性体を使って、同じような量のTAGを合成することができた。さらに、組換えDGAT2によって合成されたTAGの量は、MGAT3によるものと同等だった。
アシル-CoAに関する基質最適性を評価するために、放射性sn-2-[3H]モノオレオイルグリセロールをトレーサーとして使用し、様々なアシル-CoAを使用した。図7Bに示すように、パルミトイル-CoA(C16:0)およびオレオイル-CoA(C18:1)は、MGAT3の最もよい基質である。
ヒトMGAT3の組織発現プロファイル
上述の「材料と方法」を使って、ヒトMGAT3の組織発現プロファイルを解析した。図8に示すように、TaqMan(商標)定量PCRによるヒトMGAT3の解析は、この遺伝子が消化系で選択的に発現されることを明らかにしている。最も高い発現レベルをもつ組織は回腸であり、その転写物は消化管以外の組織の大半に観察されるレベルより約45,000倍高いことがわかった。2番目に高い発現レベルを持つ組織は下部GIの残りの部分、すなわち空腸、十二指腸、結腸、盲腸および直腸を構成している。転写物は、とりわけ、胃ならびに食道および気管には見いだされない。
感知しうる発現を示す他の唯一の非GI関連組織は肝臓である。これらのデータは、MGAT3が、その発現が高レベルな腸MGAT酵素活性の原因となる、捉えがたいMGAT遺伝子であることを示している。
MGAT3の相対的定常状態発現レベルを、クローン病回腸から単離したRNAと、正常対照から単離したRNAとで比較した(図9)。これらのデータは、クローン病患者から得られる回腸RNAでは、正常者から単離されたものよりも、MGAT3発現の定常状態レベルが有意に低いことを実証している。
ヒトMGAT3の染色体局在
MGAT3遺伝子はヒト染色体7Q22.1に位置する(図10)。この領域は、クローン病と潰瘍性大腸炎の両方の感受性遺伝子座を含有する(Satsangi,J.ら(1996)Nat.Genet.,14(2): 199-202)。
N末端欠失突然変異対およびC末端欠失突然変異体を作製する方法
本明細書の他の項で述べるように、本発明は、本発明のMGAT3ポリペプチドに対応するN末端欠失突然変異体およびC末端欠失突然変異体の作製、ならびにそのN末端欠失体およびC末端欠失体の任意の組み合わせを包含する。そのような突然変異体の作製には、当業者はいくつかの方法を利用することができる。そのような方法には、PCR増幅と遺伝子クローニング法の併用を含めることができる。分子生物学分野の当業者は本明細書に記載または言及する内容を利用して、かつ/または当技術分野で標準的方法として知られている他の技術を利用して、本発明の各欠失突然変異体を容易に作製することができるだろうが、代表的な方法を以下に説明する。
代表的なPCR増幅条件を以下に示すが、効率のよい増幅には他の条件が必要になる場合もあることは、当業者には理解されるだろう。テンプレートDNA(MGAT3のcDNAクローン)10ng、4種類のdNTP 200μM、プライマー1μM、Taq DNAポリメラーゼ(PE)0.25U、および標準Taq DNAポリメラーゼバッファーを使って、100μlのPCR反応混合物を調製することができる。典型的なPCRサイクリング条件は次のとおりである:
20〜25サイクル:
45秒、93℃
2分、50℃
2分、72℃
1サイクル:
10分、72℃。
PCRの最終伸長ステップ後に、5Uのクレノウ断片を加え、30度で15分間インキュベートすることができる。
NotIおよびSalI制限酵素で断片を消化した後、その断片を、同様に消化しておいた適当な発現および/またはクローニングベクター(例えばpSort1など)にクローニングすることができるだろう。他のプラスミドも同様に代用することができ、他のプラスミドが望ましい場合もありうることは、当業者には理解されるだろう。次に、消化した断片とベクターとを、DNAリガーゼでライゲートし、それを使って、本明細書に記載の方法および/または当技術分野で知られる他の方法により、コンピテント大腸菌を形質転換する。
他の任意のN末端欠失突然変異体を増幅するための5'プライマー配列は、次式を参照して決定することができる:
(S+(X×3))−((S+(X×3))+25)
[式中、「S」はMGAT3遺伝子(配列番号1)の開始コドンのヌクレオチド位置に相当し、「X」は意図するN末端欠失突然変異体の最もN末端にあるアミノ酸に相当する]。第1項は5'プライマーの開始5'ヌクレオチド位置を与え、第2項は配列番号1のセンス鎖に相当する5'プライマーの末端3'ヌクレオチド位置を与えることになる。プライマーの対応するヌクレオチド位置を決定したら、例えばその配列の5'末端に、適用可能な制限酵素部位を付加することによって、最終ヌクレオチド配列を作製することができる。本明細書で言及するように、5'プライマーに他の配列(例えばコザック配列など)を付加することが望ましい場合もある。
他の任意のN末端欠失突然変異体を増幅するための3'プライマー配列は、次式を参照して決定することができる:
(S+(X×3))−((S+(X×3))−25)
[式中、「S」はMGAT3遺伝子(配列番号1)の開始コドンのヌクレオチド位置に相当し、「X」は意図するN末端欠失突然変異体の最もC末端にあるアミノ酸に相当する]。第1項は3'プライマーの開始5'ヌクレオチド位置を与え、第2項は配列番号1のアンチセンス鎖に相当する3'プライマーの3'ヌクレオチド位置を与えることになる。プライマーの対応するヌクレオチド位置を決定したら、例えばその配列の5'末端に、適用可能な制限酵素部位を付加することによって、最終ヌクレオチド配列を作製することができる。本明細書で言及するように、3'プライマーに他の配列(例えば停止コドン配列など)を付加することが望ましい場合もある。PCR増幅を最適化するには、上記のヌクレオチド位置の改変が必要になる場合もあることは、当業者には理解されるだろう。
上記と同じ一般式は、本発明の任意のC末端欠失突然変異体を増幅するための5'プライマー配列および3'プライマー配列の同定にも使用することができる。さらに、上記と同じ一般式は、N末端欠失とC末端欠失とを合わせもつ本発明の欠失突然変異体を増幅するための5'プライマー配列および3'プライマー配列の同定にも使用することができる。PCR増幅を最適化するには、上記のヌクレオチド位置の改変が必要になる場合もあることは、当業者には理解されるだろう。
本発明をその具体的実施形態に関して説明し終えたが、さらなる変更も可能であること、そして本願が、一般に本発明の原理に従う任意の変形、用途または適合(例えば、本発明に関係する技術分野で既知または慣例の実施範囲に含まれるような本明細書からの逸脱、そして上述した基本的特徴に当てはまりうるような本明細書からの逸脱、本願請求項の範囲に記載するような本明細書からの逸脱)を包含するものであることは、理解されるだろう。本明細書で言及した参考文献は、特に、そのまま本明細書に組み込まれる。
図1A〜BはヒトMGAT3 cDNA配列(配列番号1)およびヒトMGAT3の予想アミノ酸配列(配列番号2)を示す図である。予想されるオープンフレームの開始コドンおよび終止コドンを斜体で表す。MGAT3は、アミノ酸F152〜アミノ酸R239付近に、太字で示す推定グリセロールリン脂質ドメインも含んでいる。 予想ヒトMGAT3アミノ酸配列(配列番号2)と、ヒトMGAT1アミノ酸配列(配列番号23;GenBankアクセッション番号AF384163)およびヒトDGAT2アミノ酸配列(配列番号22;GenBankアクセッション番号AF384161)との整列を示す図である。この多重配列整列は、VectorNTIプログラム中のClustalWアルゴリズムを使って行った。全メンバー間で同一なアミノ酸を黒枠で囲み、類似残基には影を付けてある。 予想ヒトMGAT3の疎水性解析を示す図である。解析はKyte-Doolittleアルゴリズム(Kyte,J.およびR.F.Doolittle(1982)J.Mol.Biol.,157(1): 105-32)を使って行った。正のスコアは疎水性度に比例する。 Sf9昆虫細胞における組換えヒトMGAT3の発現を示す図である。0日目に、Sf9細胞を5×106細胞/フラスコの密度で25cm2フラスコに準備した。1日目に、細胞を野生型バキュロウイルス、MGAT3組換えウイルスまたはDGAT2組換えウイルスに、それぞれMOI>3で感染させた。3日目に、細胞を収集し、膜画分(100,000×gペレット)を調製した。A.抗FLAG IgGによる免疫ブロット。各2μg/レーンの膜タンパク質をSDS-PAGEにかけ、ブロットを2μg/mlの抗FLAG IgGでプローブした。B.TLC MGAT酵素アッセイ。各10μgの膜タンパク質を37℃で6分間のMGAT酵素アッセイにかけた。外来基質として200μM sn-2-モノオレオイルグリセロールおよび50μM [14C]オレオイルコエンザイムA(20,000dpm/nmol)を膜抽出物と共にインキュベートした。脂質抽出物をTLCによって分離し、そのクロマトグラムをSTORM PhosphoImagerに12時間露出した。DAG=ジアシルグリセロール;TAG=トリアシルグリセロール;FFA=遊離脂肪酸;MAG=モノアシルグリセロール、非特異バンド**として表す;未知物質=化学的性質が分からない他の非特異バンド、バンドとして表す。 組換えヒトMGAT3発現の時間経過を示す図である。図4の場合と同様にSf9細胞を準備し、野生型ウイルスまたは組換えMGAT3ウイルスに感染させた。様々な感染後時間の細胞から膜抽出物を調製した。膜画分の一部を、A)抗FLAG IgGによる免疫ブロット解析、またはB)TLC酵素アッセイにかけた。基質として200μM sn-2-モノオレオイルグリセロールおよび50μM [14C]オレオイルコエンザイムA(20,000dpm/nnmol)を、10μgの膜画分と共に、37℃で6分間インキュベートした。TLC分離後に、DAGバンドおよびTAGバンドをTLCから切り出し、シンチレーション計数にかけた。活性をnmol/分/mgタンパク質として表した。値は二重に行った決定の平均であり、標準偏差は平均の10%未満だった。 組換えヒトMGAT3に関する基質濃度滴定を示す図である。図4の場合と同様にSf9細胞を準備し、野生型ウイルスまたは組換えMGAT3ウイルスに感染させた。感染の2日後に細胞を収集し、膜画分を調製し、膜の一部を様々な基質濃度を使ったMGAT酵素アッセイにかけた。Aの場合は200μM sn-2-モノオレオイルグリセロールおよび様々な量の[14C]オレオイルコエンザイムA(20,000dpm/nmol)を、そしてBの場合は50μM [14C]オレオイルコエンザイムA(20,000dpm/nmol)および様々な量のsn-2-モノオレオイルグリセロールを、10μgの膜画分と共に、37℃で10分間インキュベートした。TAGおよびDAGに相当する脂質バンドをTLCシートから切り出し、シンチレーションカウンターで計数した。活性は、野生型膜の値を差し引いた組換え膜の補正値とした。アッセイは二重に行った。標準偏差は平均の10%未満だった。 MGAT3の基質特異性を示す図である。図4の場合と同様にSf9細胞を準備し、野生型ウイルス、組換えMGAT3ウイルスまたはDGAT2ウイルスに感染させた。A)MAG立体異性体特異性およびB)脂肪酸アシル-CoAの選択性を決定するために、膜画分の一部(10μg)をMGATアッセイにかけた。Aの場合は50μM [14C]オレオイルコエンザイムA(20,000dpm/nmol)および200μMのsn-1-モノオレオイル(1-MAG)、sn-2-モノオレオイルグリセロール(2-MAG)、またはsn-3-モノパルミトイルグリセロール(3-MAG)を、そしてBの場合は200μM sn-2-[3H]モノオレオイルグリセロール(20,000dpm/nmol)および50μMの様々なアシル-CoAを、10μgの膜画分と共に、37℃で10分間インキュベートした。C2=アセチル-CoA;M=マロニル-CoA;C4:0=ブチリル-CoA;C12:0=ラウロイル-CoA;C16:0=パルミトイル-CoA;C18:0=ステアロイル-CoA;C20:0=アラキドイル-CoA;C18:1=オレオイル-CoA;C18:2=リノレオイル-CoA;C20:4=アラキドノイル-CoA。 種々の正常ヒト組織におけるMGAT3のTaqMan(商標)定量PCR解析を示す図である。 正常ヒト標本と比較したクローン病患者回腸におけるMGAT3発現のTaqMan(商標)定量PCR解析を示す図である。 ヒトMGAT3の染色体局在を示す図である。Biotique Local Integration System(BLIS)プログラムのMega-Blast/Sim4法を使って、MGAT3 cDNA配列(配列番号1)をヒトゲノム(NCBIヒトゲノムバージョン29)にマッピングした。MGAT3の位置を赤い括弧で示す。

Claims (16)

  1. (a)配列番号1のポリヌクレオチド断片、またはATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の少なくとも一方に含まれるcDNA配列のポリヌクレオチド断片であって配列番号1にハイブリダイズできるもの、
    (b)配列番号2のポリペプチド断片、またはATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の少なくとも一方に含まれるcDNA配列であって配列番号1にハイブリダイズできるものによってコードされているポリペプチド断片、をコードするポリヌクレオチド、
    (c)配列番号2のポリペプチドドメイン、またはATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の少なくとも一方に含まれるcDNA配列であって配列番号1にハイブリダイズできるものによってコードされているポリペプチドドメイン、をコードするポリヌクレオチド、
    (d)配列番号2のポリペプチドエピトープ、またはATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の少なくとも一方に含まれるcDNA配列であって配列番号1にハイブリダイズできるものによってコードされているポリペプチドエピトープ、をコードするポリヌクレオチド、
    (e)MGAT活性を持つ、配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の少なくとも一方に含まれるcDNA配列であって配列番号1にハイブリダイズできるもの、
    (f)配列番号1の変異体であるポリヌクレオチド、
    (g)配列番号1の対立遺伝子変異体であるポリヌクレオチド、
    (h)配列番号1のヌクレオチド171〜1190を含む単離されたポリヌクレオチドであって、前記ヌクレオチドが開始メチオニンを除く配列番号2のアミノ酸2〜341に対応するポリペプチドをコードするもの、
    (i)配列番号1のヌクレオチド168〜1190を含む単離されたポリヌクレオチドであって、前記ヌクレオチドが開始コドンを含む配列番号2のアミノ酸1〜341に対応するポリペプチドをコードするもの、
    (j)配列番号1の相補配列(アンチセンス)に相当するポリヌクレオチド、および
    (k)(a)〜(j)に記載したポリヌクレオチドのいずれか1つにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする能力を持つポリヌクレオチドであって、A残基のみまたはT残基のみのヌクレオチド配列を持つ核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズしないもの、
    からなる群より選択されるヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子。
  2. 前記請求項1の単離された核酸分子を含む組換えベクター。
  3. 前記請求項2の組換えベクターを含む組換え宿主細胞。
  4. (a)配列番号2、またはATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の少なくとも一方に含まれるコードされた配列、のポリペプチド断片、
    (b)MGAT活性を持つ、配列番号2、またはATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の少なくとも一方に含まれるコードされた配列、のポリペプチド断片、
    (c)配列番号2、またはATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の少なくとも一方に含まれるコードされた配列、のポリペプチドメイン、
    (d)配列番号2、またはATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の少なくとも一方に含まれるコードされた配列、のポリペプチドエピトープ、
    (e)配列番号2、またはATCC受託番号PTA-4454もしくはPTA-4803の少なくとも一方に含まれるコードされた配列、の完全長タンパク質、
    (f)配列番号2のアミノ酸2〜341を含むポリペプチドであって、前記アミノ酸2〜341が開始メチオニンを除く配列番号2のポリペプチドを含むもの、および
    (g)配列番号2のアミノ酸1〜341を含むポリペプチド、
    からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
  5. 完全長タンパク質がそのC末端またはN末端からの連続するアミノ酸配列の欠失を含む、請求項4の単離されたポリペプチド。
  6. 前記請求項4の単離されたポリペプチドに特異的に結合する単離された抗体。
  7. 前記請求項4の単離されたポリペプチドを発現させる組換え宿主細胞。
  8. 単離されたポリペプチドを製造する方法であって、
    (a)前記請求項7の組換え宿主細胞を前記ポリペプチドが発現されるような条件下で培養すること、および
    (b)前記ポリペプチドを回収すること
    を含む方法。
  9. 請求項8によって製造されるポリペプチド。
  10. 医学的状態を予防、処置、または改善する方法であって、治療有効量の前記請求項4のポリペプチドまたはその調整物質を哺乳動物対象に投与するステップを含む方法。
  11. 前記医学的状態が異常なMGAT3活性に関係する、請求項10の方法。
  12. 前記医学的状態が肥満および胃腸障害からなる群より選択される、請求項10の方法。
  13. 前記胃腸障害がクローン病である、請求項12の方法。
  14. 対象における病理学的状態または病理学的状態に対する感受性を診断する方法であって、
    (a)前記請求項1のポリヌクレオチドにおける突然変異の有無を決定すること、および
    (b)前記突然変異の有無に基づいて病理学的状態または病理学的状態に対する感受性を診断すること
    を含む方法。
  15. 対象における病理学的状態または病理学的状態に対する感受性を診断する方法であって、
    (a)胃腸組織試料における前記請求項4のポリペプチドの存在または発現量を決定すること、および
    (b)前記ポリペプチドの存在または発現量に基づいて病理学的状態または病理学的状態に対する感受性を診断すること、
    を含む方法。
  16. クローン病を処置する方法であって、その必要がある患者に、MGAT3ポリペプチドまたはその調整物質を投与することを含む方法。
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