JP2006516473A - 液体二酸化炭素による洗浄法 - Google Patents

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Abstract

本発明は洗浄容器内で対象物を液体二酸化炭素によって洗浄する方法に関する。洗浄容器は少なくとも部分的に洗浄液で満たされる。洗浄操作前及び/又は洗浄操作中に洗浄容器内の圧力が対応蒸気圧よりも高い圧力値に昇圧される。二酸化炭素以外の付加ガスが洗浄容器に導入され、洗浄操作の少なくとも一部はこの付加ガスの導入後に実行される。

Description

本発明は、洗浄容器内で対象物を液体二酸化炭素によって洗浄するに際し、洗浄容器を少なくとも部分的に洗浄液で満たし、洗浄操作前及び/又は洗浄操作中に洗浄容器内の圧力を対応蒸気圧よりも高い圧力値に昇圧しておく方式の洗浄法に関するものである。
液体二酸化炭素を用いたドライクリーニングは、衣料品などの繊維製品だけでなく金属や機械或いは工作加工物などの各種部品類から汚れを除去する用途に利用できる好適な洗浄特性をもつ環境に優しい洗浄技術として知られている。また、二酸化炭素ドライクリーニングの洗浄能力は液体二酸化炭素を過冷することによって改善できることも知られている。
この種の方法は、例えば特許文献1によって公知である。特許文献1によれば、洗浄対象物を装入した圧力容器は加圧状態で部分的又は完全に液体二酸化炭素で満たされる。洗浄操作は、二酸化炭素の臨界温度未満及び臨界圧力未満で行われる。洗浄工程の一部について液体二酸化炭素を過冷却する目的で液体の温度を一定に維持しながら圧力が増加される。
米国特許第5759209号明細書
また、化学溶剤や化学洗剤が洗浄効果を高めることができるのは周知である。更に、機械的な精錬剤も洗浄工程を改善する目的で使用されることもある。
本発明の目的は、洗浄効果が改善された液体二酸化炭素による洗浄法を提供することである。
この目的は、洗浄容器内の対象物を液体二酸化炭素により洗浄するに際し、洗浄容器を少なくとも部分的に洗浄液で満たし、洗浄操作前及び/又は洗浄操作中に洗浄容器内の圧力を対応蒸気圧よりも高い圧力値に昇圧しておくことにより解決される。この場合、二酸化炭素以外の付加ガスを洗浄容器に導入し、洗浄操作の少なくとも一部をこの付加ガスの導入後に実行する。
本発明によれば、洗浄容器内の圧力は洗浄操作前及び/又は洗浄操作中に対応蒸気圧よりも高い圧力値に昇圧される。即ち、洗浄操作の少なくとも一部に亘って液体二酸化炭素の温度は気相圧力の平衡温度より低く、従って洗浄は或る種の過冷状態で行われる。
本発明は、洗浄容器内の圧力を液体二酸化炭素の対応蒸気圧よりも昇圧することにより洗浄能力を向上できるという知見に基づくものである。以下において、液体二酸化炭素の対応蒸気圧以上に昇圧するプロセスを液体二酸化炭素の過冷と称することにする。この過冷により液中の気泡の量が減少し、それによって液体二酸化炭素中の添加剤や洗剤を洗浄対象の機械部品類や衣料品に良好に浸透させることが可能となる。
更に、二酸化炭素以外の付加ガスを導入すると気相の密度が変化する。二酸化炭素ガスよりも低密度の付加ガスを加えると気相の密度が低下し、これにより液相と気相との密度差が減少する。この密度差は、洗浄容器内で何らかの機械的攪拌が伴う場合、液体二酸化炭素と洗浄対象物との相互作用に直接影響を与える。例えば回転ドラムを使用して対象物を攪拌する場合、対象物は少なくとも部分的に液相と気相の間を循環することになる。このような機械的攪拌の作用は、液相と気相との密度差に多少なりとも比例する。
従って、二酸化炭素ガスより密度の低い付加ガスを導入して液体二酸化炭素を過冷する方法は、二つの肯定的な効果、即ち、第1には液中の気泡の量が減少することにより洗浄対象物と液体二酸化炭素及び場合によっては更に添加される洗剤との間の化学的相互作用が本質的に改善される効果と、第2には気相と液相との密度差が増加することにより機械的攪拌作用が改善される効果とをもたらすものである。
低密度の付加ガスとしては、水素や希ガス、例えばヘリウムやアルゴンを洗浄容器に導入することが好ましい。このような付加ガスを二酸化炭素に加えると洗浄能力が明らかに改善されることが確認されている。特にヘリウムを使用すると良好な洗浄結果を示した。ガス状態における二酸化炭素とヘリウムとの混合物は高い洗浄能力を備えた均質な気体混合物を形成する。
これらの低密度の付加ガス、例えばヘリウムは、洗浄容器内の圧力が1〜10バール、好ましくは1〜5バールだけ昇圧されるような量で洗浄容器内に導入することが有利である。最良の洗浄効果を達成するには、ヘリウムガスは二酸化炭素ガスの1/50〜1/5の範囲内の量とする。
機械部品類を洗浄する場合、洗浄容器内の圧力は平衡圧力よりも2〜10バールだけ昇圧することが好ましく、更に好ましくは4〜7バールだけ昇圧するとよい。部品類や工作加工物の洗浄においては、良好な洗浄能力に到達させるために圧力差を充分に高める必要がある。これは、特に洗浄プロセスに例えば超音波洗浄を併用する場合に該当する。このような場合には洗浄容器内の圧力を100バール以上に昇圧してもよい。
このような「過冷」はまた、昇圧に代えて液相を冷却することで達成することも可能である。液温に関しては、液体二酸化炭素を1〜30Kだけ過冷することが好適である。これらの条件は、「過冷」に要する付加的なコストと洗浄能力の向上との両立の面から最適な条件であることが確認されている。
液体二酸化炭素を冷却するには、冷却機を使用すること、即ち液体二酸化炭素の温度を例えば液体窒素等の冷媒による間接熱交換で下げることが好ましい。また、より低温の液体二酸化炭素を添加することによって液体二酸化炭素を冷却することも好適である。
洗浄サイクルを高速化するには、液体二酸化炭素を冷却すると同時に気相圧力を昇圧する。液相温度の低下と気相温度の上昇を同時に果たすことにより「過冷状態」に達する前までの所要時間が短くなる。これにより全体の洗浄操作を加速でき、洗浄サイクルタイムが短縮化できる。
経済的な観点からは、洗浄容器内に低密度の付加ガスを導入した後に二酸化炭素ガスで洗浄容器内を昇圧することが好ましい。即ち、先ず初めに洗浄容器内を少なくとも部分的に液体二酸化炭素で満たし、その後、本発明に従って二酸化炭素以外の付加ガスの導入を実行し、最後に洗浄容器内を二酸化炭素ガスで充分に昇圧する。これらの導入ガスの供給源には、ガスボンベなどの標準的なガス貯留機器を用いることができる。
昇圧は、圧力が洗浄機の動作圧力まで加圧されることを意味し、この動作圧力は好ましくは50バール以上で且つ二酸化炭素の臨界圧力未満である。前述の通り、洗浄操作の少なくとも一部は液体二酸化炭素の対応蒸気圧を超える圧力で実行される。この圧力は、洗浄操作の開始前又は洗浄中に昇圧可能である。
実際の二酸化炭素ドライクリーニングでは、二酸化炭素は洗浄操作が完了した後に回収される。従って、汚染物質で汚れた洗浄液は洗浄容器から排出されて回収システムに導かれる。
驚くべきことに、本発明による二酸化炭素と付加ガスとの混合物は均質な混合気体を形成し、これが二酸化炭素だけを回収するのに常用されている既存の回収システムを介して回収可能であることが確認されている。付加ガスを含有する洗浄流体は洗浄容器から取り出されて既存の回収システムに導入され、そこで汚染物質と不純物が分離されて高圧貯留タンクへ導かれる。回収された洗浄流体、即ち二酸化炭素と付加ガスの混合物は、次の洗浄サイクルで使用可能である。このようにして、ガス損失が最小とされる。付加ガスとしてヘリウムを用いた試験洗浄では、付加ヘリウムの僅か4〜10%が各洗浄サイクルで失われるに過ぎないことが確認された。従って、本発明による洗浄法は経済的に極めて価値のあるものである。
洗剤、界面活性剤、酵素その他の添加剤を液体二酸化炭素に添加することは好ましいことである。過冷により液体二酸化炭素の沸騰が抑制され、従ってそれによる液中の気泡の数が本質的に減少する。従って、洗浄液及び添加剤と洗浄対象物との接触が強まることになる。
加えて、洗浄対象物は洗浄能力を改善するために攪拌可能である。この攪拌は、洗浄容器内に配置された回転ドラムに洗浄対象物を装入して行うとよい。好適には、洗浄操作全体を本発明による洗浄容器内への付加ガスの導入後に実行する。即ち、先に洗浄容器内へ付加ガスを導入し、その後に洗浄操作を開始する。
幾つかの応用例ではクリーニングサイクルの一部のみに付加ガスを導入することが有利な場合もある。この場合、洗浄操作の一部が本発明による付加ガスの導入で実行され、別の一部は従来方式で実行される。
本発明は機械部品類及び繊維製品の洗浄に特に有効であることが確認されている。更には、多数の洗浄試験から、本発明による方法は例えば金属表面や電子部品などの金属部品類の洗浄にも好適であることが判明している。特にオイル類やグリース類などの有機残留物は過冷液体二酸化炭素を用いて簡単に除去可能である。

Claims (10)

  1. 洗浄容器内で対象物を液体二酸化炭素によって洗浄するに際し、洗浄容器を少なくとも部分的に洗浄液で満たし、洗浄操作前及び/又は洗浄操作中に洗浄容器内の圧力を対応蒸気圧よりも高い圧力値に昇圧しておく方式の洗浄法において、二酸化炭素以外の付加ガスを洗浄容器に導入し、洗浄操作の少なくとも一部をこの付加ガスの導入後に実行することを特徴とする洗浄法。
  2. 付加ガスとして水素又は希ガス又はヘリウムを洗浄容器に導入することを特徴とする請求項1に記載の洗浄法。
  3. 付加ガスの導入により洗浄容器内の圧力を1〜10バール、特に4〜7バールだけ昇圧することを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄法。
  4. 洗浄容器に付加ガスを導入した後に二酸化炭素ガスで洗浄容器内を加圧することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄法。
  5. 洗浄操作前及び/又は洗浄操作中に液体二酸化炭素を冷却することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗浄法。
  6. 液体二酸化炭素を冷却機又は冷媒との間接熱交換で冷却することを特徴とする請求項5に記載の洗浄法。
  7. 液体二酸化炭素をそれよりも低温の二酸化炭素の添加により冷却することを特徴とする請求項5に記載の洗浄法。
  8. 洗浄容器内の二酸化炭素と付加ガスの混合物を部分的に回収することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の洗浄法。
  9. 洗浄対象物又は液体二酸化炭素を洗浄容器内で機械的に攪拌することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の洗浄法。
  10. 衣料品、繊維製品、工作加工物、又は機械部品類を洗浄することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の洗浄法。
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