多くの技術的アプリケーションにおいて、高速電子デバイスへの電気信号とそこからの電気信号を結合する必要がある。特定のアプリケーションの1つは、高周波信号又は非常に短いパルスで駆動される、半導体レーザダイオードへの電気信号の結合である。これらのデバイスは、インピーダンスが低く、反射の問題を軽減するために、例えば50Ωの外部ケーブルに対するインピーダンス・マッチングが取られる必要がある。高速フォトダイオードは同様な問題を提示する。効率及び時間的応答性能を向上させるためには、例えば、広帯域インピーダンス変換器を使用して、フォトダイオードの比較的高いインピーダンスと外部負荷の低いインピーダンスとのマッチングを取る必要がある。
異なるインピーダンス値のマッチングのためのいくつかの解決策が従来より存在する。マイクロ波技術におけるほとんどの場合で、例えば、所与の長さのスタブを有する狭帯域共振構造が構成される。広帯域の解決策のほとんどで共通なのは、インピーダンス−マッチング・デバイスが、その両端の間で漸次的に変化するインピーダンスを創成しようとすることである。その漸次的変化は、例えば、伝送線路の寸法、伝送線路とグランド部分の間の誘電体材料のいずれか、グランド部分の形状又は誘電体材料の誘電定数を変化させることによって達成される。
しかしながら、複雑な付加的要件又は制限が存在する。最近のアプリケーションの多くでは、デバイスは一般的には50Ωと3Ωとの間でインピーダンスのマッチングを取ることが要求され、ある場合には377Ωから3Ω程度まで下げることが要求される。その上、短いパルスが使用される場合、インピーダンス・マッチングは大きな帯域幅内で機能する必要がある。接続されるデバイスの多くは小さいので、デバイスのサイズも重要な関心事である。例えば、レーザダイオードの場合、全長が約1−2cmを越えないようにするのが好ましい。
その上、分散、高次のモード及びエネルギー損失のような付加的影響に十分に注意する必要がある。最後に、そのようなインピーダンス−マッチング・デバイスは、製造するのが容易で高価でないことも必要である。上記で検討した要件により、十分に機能するインピーダンス−マッチング・デバイスの設計は実際に非常に困難になる。従来技術にはいくつかの提案が存在するが、それぞれが関連する欠点を有している。
従来技術から分かるインピーダンス・マッチング構造に影響を与える問題が、特許文献1に提案された伝送線路変換器(TLT;transmission line transformer)と共に例示される。この構造は、レーザダイオードの入力抵抗を50Ωにマッチングさせ、フォトダイオードの入力抵抗を低いインピーダンス(〜3Ω)にマッチングさせるように設計されており、半導体デバイスの効率及び時間的応答をかなり改善させる。インピーダンス−マッチング・カップリング・デバイスは、中央に位置決めされ、2つのグランド・プレーンが並んで配置された導電ストリップによって形成される、同一平面上の伝送線路を上側表面で支持する、均一な厚さの誘電体スラブを備えている。デバイスの特性インピーダンスは、横方向及び中央の導体間の間隔の漸次的変化によって、並びに導体の幅の変化によって値が漸次的に変化する。スラブの下側表面は別の導電性グランド・プレーンを支持し、全てのグランド・プレーン導体は、デバイスの両端、並びにストラップ又はワイヤを短くすることによって、いくつかの中間点で電気的に結合されている。誘電定数が非常に高いバルク基板を使用することによって、TLTのサイズをかなり縮小することができる。しかしながら、得られる横方向の物理的寸法要件が、変換インピーダンス・レベルを50Ωから8Ω程度までに制限することがシミュレーションにより示されている。このTLTの構成において、線路のいずれかの側の接地されたセミプレーンとのギャップは、1.07mmから10μmまで変化する。この非常に狭いギャップでさえも、低い方のインピーダンスは8Ω未満とならない。非常に小さい形状のそのようなインピーダンス整合器の製造は非常に困難である。特許文献1に記載されたTLTの付加的欠点は、マイクロ波の周波数で損失が低く、誘電定数が非常に高い基板材料を入手するのが困難なことである。この構造の更に別の欠点は、高い誘電定数のバルク基板は、リンギングの問題を引き起こす、大きな分散をもたらすことである。その上、この構造は高次モードの出現により、25GHzを越えて応答しないことが報告されている。
2つの伝送線路のインピーダンス・マッチングの問題の別の解決策が、特許文献2に開示されている。インピーダンス・マッチング・ネットワークは、2層の誘電体基板を備えている。中央の導体は、2つの層の間に配置されている。グランド・プレーンは、中央の線路の側面に対向する基板の表面に位置決めされ、その構造に沿ったグランド・プレーンの金属化部分の幅は、テーパー状の導体形状を形成することによって変化する。
特許文献2における解決策の1つの問題は、2つの誘電体基板の間のエアー・ギャップを回避するのが困難なことである。従って、誘電体間の接触を促進するために、ストリップライン状の構造に柔軟な基板が一般的に使用される。そのような柔軟な基板は通常、誘電定数が比較的低い。これはインピーダンス−マッチング・デバイスの幾何学的大きさを大きくすることとなる。この解決策は、関係する範囲におけるインピーダンスにマッチさせるのに、横方向寸法が大きくなるという欠点も引き起こす。特許文献2による典型的な実施形態は、350MHzから1.5GHzの周波数範囲において、それぞれ27及び50Ωのインピーダンスをマッチさせる。最近のアプリケーションの多くでは、これは完全に不十分である。有用な周波数及びインピーダンス範囲の制限は、バルク基板内で生じる分散、低い誘電定数の値及びサイズの制限によるものである。
特許文献3には、別のインピーダンス−マッチング・デバイスが開示されている。このデバイスは、対向する表面間の厚さが変化する誘電体を含んでいる。2つの端子間のインピーダンス変換は、誘電体の厚さの変化に比例する。
先に検討した解決策についてと同様な欠点に加え、後者のデバイスは製造の要望に良好には適応しない。誘電体の厚さの変化は、硬い誘電体材料で実現するのは容易ではない。その上、このタイプのデバイスでも、高い周波数での深刻な分散が存在する。更に、くさび形の誘電体部分の狭端部において、並列線路及びグランド・プレーンの横方向延長部は誘電体部分の幅に比べて大きく、生成される電磁界のより高次のモードでの問題を誘発する。
特許文献4には、誘電体スラブによってグランド・プレーンから分離されたテーパー状の導体を備える、インピーダンス−マッチング・デバイスが開示されている。例えば、低インピーダンスのストリップライン端部で5Ωのインピーダンスを有するテーパー状の線路部は、εr=10及び0.635mmの厚さのPTFE基板のスラブが使用されるとき、7mmの最大幅と5cmより大きい全長を必要とする。このような寸法は、光電子デバイスのパッケージの小さな寸法と相容れない。
従って、従来技術のインピーダンス−マッチング・デバイスの一般的な問題は、使用できる帯域幅が制限されていること、低い周波数で高次のモードが出現すること、分散により様々な周波数でのデバイスの応答が異なること、要求される公差のために製造が困難で高価となること、あるいはサイズが大きすぎてパッケージに収容できないことである。
米国特許第5,200,719号明細書
米国特許第5,119,048号明細書
米国特許第5,140,288号明細書
米国特許第3,419,813号明細書
添付図面と共に以下の説明を参照することによって、本発明が、その更なる目的及び効果と共に最も良く理解されるであろう。
例えば、SrTiO3,BaxSr1−xTiO3,またはKTaO3のような強誘電体セラミックなどの誘電定数の高い材料では、誘電定数の低い材料と比較して、特定の周波数の波長がかなり低減される。良好に動作するインピーダンス−マッチング・デバイスは通常、使用される周波数の典型的な波長と比較してサイズが大きいので、これが高い周波数での反射係数を増大させずにより小さなデバイスを構成するための第1歩である。従って、インピーダンス−マッチング・デバイスにおける誘電定数の高い材料の使用は、インピーダンス変換器の寸法と、例えば、パッケージ化されたレーザダイオードの寸法との互換性を可能とする。
インピーダンス−マッチング・デバイスで誘電定数の高い材料を使用する可能性は、誘電定数の高い材料の薄膜及び厚膜のデポジションにおける最近の進歩によって増大している。例えば、Spartak S. Geovorgian及びEric Ludvig Kollberg,"Do We Really Need Ferroelectrics in Paraelectric Phase Only in Electrically Controlled Microwave Devices?",IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques,Vol. 49, No. 11, 2001年11月、を参照せよ。図1は、本発明によるインピーダンス−マッチング・カプラ1の実施形態を示している。伝送線路が基板10の上に作られている。伝送線路は、センターストリップ12、センターストリップ12の上に設けられた誘電層14、及び誘電層14の上にある電気的にグランド接続された層16,18を備えている。導電材料のセンターストリップ12、すなわち導電ストリップは、本実施形態では一定の幅を有し、本実施形態ではバルクセラミック基板である誘電体基板10の上側表面13に印刷されている。(「上側」、「下側」、「上」及び「底」という表現は、図に関連した説明を容易にするためにだけ用いられており、本発明の範囲を制限するものではない。)センターストリップ12は第1の端部20及び第2の端部22の間に伸びており、これら端部はインピーダンスのマッチングが取られる部品への接続点である。導電ストリップ12が関連する電子部品に接続されるので、ストリップの幅は好ましくは一般的なコネクタ配置と互換性のある範囲にある。使用される標準的接続の最小のものは幅120μmに合わされており、そのため導電ストリップ12は好ましくは同じ大きさ程度の幅を有している。導電ストリップ12の厚さは略1μm程度であり、高い周波数においても良好な接触を保証するために十分に大きくすべきである。
誘電体基板10は、他方の下側面11には金属化部分を何ら有する必要は無い。換言すれば、基板10の底面は、絶縁体、半導体又は非導電性の異なる種類の流動体のような、実質的に非導電性又は半導体の物体と接触状態となるのに非常に都合がよい。しかしながら、金属化は除外されないが、デバイスのインピーダンス特性に与える影響は小さいであろう。基板10を形成する誘電層の厚さは一般的に0.2から1mm程度である。基板材料の典型的な例は、アルミナ又はガラスである。これらの材料の誘電定数は、一般に5−10の範囲である。以下で更に説明する好適な製造方法に関しては、誘電体基板10が、好ましくは特性や形状の劣化なしに600−1000度に加熱されるよう管理する。
誘電層、本実施形態では非常に高い誘電定数を有する誘電体膜14は、伝送線路12を覆って形成され、誘電体基板10の少なくとも一部もカバーする。基板10に直接形成することで、異なる部品間のエアギャップを回避し、伝送線路12並びに基板10に対する良好な付着力を保証する。このため基板10及び誘電体膜14は、断面図において一緒に伝送線路12を取り囲む。膜14内の誘電体材料は、通常80を越える誘電定数を有している。このように誘電体膜14は、誘電体基板よりもかなり高い誘電定数を有している。実際には、これはデザインにおける非対称性をもたらし、デバイスの基板側のデザインはインピーダンス特性にほとんど無視できる影響しか有さない。
金属層16,18は誘電体膜14の最上面、すなわち、導電ストリップ12と接触している面と反対の面上に印刷される。金属層16,18の外側面23及び24、すなわち金属層16,18のデバイスの中央から外側に面する面は、電気的にグランド接続されている。本実施形態の金属層16,18は、金属層を2つのグランド・プレーン16及び18に分離している、伝送線路12と実質的に並列な中央スロット17を有している。中央スロット17は、第1端部20及び第2端部22の間全体に延在している。中央スロット17は、好ましくは伝送線路12に関して対称的である。その場合、金属層16,18は互いにミラーイメージとなる。しかしながら、例えば一方の側だけに金属層を有するような非対称の構成も実現可能である。中央スロット17は、好ましくは伝送線路12の幅を超える平均幅を有している。デバイスの特性インピーダンスは、スロットの長さに沿って、すなわち第1端部20と第2端部22の間で、スロット17の幅が漸次的に変化することによって、値が漸次的変化を被る。パラメータを適切に選択することで、低インピーダンス側端部、すなわち第2の端部22で5Ω未満のインピーダンスが達成可能である。換言すると、スロット17はテーパー形状であり、あるいは同様に、グランド・プレーン16及び18はテーパー形状である。
本実施形態が一定幅の導電ストリップ12を備えていたとしても、本発明はそれに限定されるものではない。インピーダンス・カプラの長さに沿った様々な中央の導電ストリップを含む他の実施形態、並びにインピーダンスを変更する他の従来技術の手段を付加的に含む実施形態も可能である。
図2は、図1の実施形態を断面で示している。
本発明による利点を説明するために、図1及び2に従う第1の多層構造を分析し、その性能を様々な従来技術のデバイスと比較した。シミュレーションした第1のテスト・デバイスは、εr=140で、伝送線路上での厚さ1μmで成膜された薄い誘電体膜から成る。伝送線路12は、基板10上に幅120μm及び厚さ2μmで印刷されている。このテスト・デバイスにおける基板10は、厚さ635μmで誘電定数9.8のアルミナによって構成されている。第1のテスト・デバイスは、長さ1.6cmであり、εrの高い膜の上にテーパー状のスロット17が、第1の側での300μmから他方の側での118μmまで変化するように印刷され、チェビシェフタイプの反射係数となるような形状を有している。このデバイスの対応するインピーダンスは、市販のソフトウエアであるHigh Frequency Structure Simulator HFFS を用いた数値的シミュレーションで、第1の側で50Ωであり第2の側で3.5Ωとなった。
このデバイスの挙動は論理的に調べられ、その結果を従来技術のデバイスから得られた結果と比較した。図4は、上記で説明したテスト・デバイスの有効誘電定数に対する周波数分散曲線を表している。曲線104は、第1の側のポート、すなわち50Ωのポートに対応し、曲線106は、第2の側のポート、すなわち、テーパーの低インピーダンス端に対応している。本発明による多層構造は、少なくとも40GHzまでは非常に小さな分散を示しており、これは非常に短いパルスの実質的な歪のない伝播を可能とする。比較として、曲線105,107は、εr=80のバルク基板を有する特許文献1による伝送線路インピーダンス変換器の2つのポートでの周波数分散を表している。分散が大きいことが分かるであろう。
図5には、第1のテスト・デバイスの短い電圧パルスに対する算出された応答が示されている。50ps(半値全幅)のガウスパルスから成る入力パルス108が用いられている。検討されているテーパーのシミュレートされた出力が、破線の曲線110で表されている。本発明による多層の第1のテスト・デバイスの応答は、その大きな使用可能な帯域幅によりわずかな歪だけをもたらす。50psよりも高速なパルスであっても、このテスト・デバイスと共に使用できるであろう。比較として、上述の特許文献1による従来技術の伝送線路インピーダンス変換器の出力応答を、点線の曲線112で示している。分散によるリンギングが明らかであり、本発明によるインピーダンス・マッチング・カプラの性能はかなり改善されている。
分散の影響を考慮するとき、バルク材料は大きな分散を付与し、膜は小さな分散を付与するであろう。従って、誘電層として厚さ100μm未満の誘電体膜14を使用するのが好ましい。誘電定数の高い材料の厚膜(5−100μm)及び薄膜(5μm未満)を製造することは、近年の進歩に従って厚膜技術及び薄膜技術それぞれで可能である。例えば、上記Spartak S. Geovorgian及びEric Ludvig Kollberg,"Do We Really Need Ferroelectrics in Paraelectric Phase Only in Electrically Controlled Microwave Devices?",IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques,Vol. 49, No. 11, 2001年11月及びその中での参照文献を参照せよ。分散の挙動だけを検討するときには、低い分散を保証するために出来るだけ薄い膜を選択するのが最適であろう。しかしながら、以下で更に述べるように、別の方向から製造の点でより正確に検討する。
図3は、本発明によるテスト・デバイスの推定した入力リターンロスを表す曲線100を示している。40GHzまでの調べた周波数範囲の全体に渡って、リターンロスが略−20dB程度の大きさであったことが分かるであろう。調べた範囲においては周波数で応答が大きく劣化していない。比較として、曲線102は、εr=80のバルク基板を有する特許文献1による伝送線路インピーダンス変換器のリターンロスを表している。高次モードの出現により、この構造では25GHzを越えて応答しないことが分かるであろう。
このように高次モードの出現は、使用可能な周波数範囲に対して重大な脅威となる。蒸気の検討で用いたテスト・デバイスについて考えると、非常に薄い誘電体膜を使用することで、デバイスの好適な挙動が、グランド・プレーン16,18に関する導電ストリップ12の幾何学的なサイズ及び位置決めに強く依存することが実現可能となる。グランド・プレーン16,18間のスロットが、導電ストリップ12の幅と比較して大きいとき、位置決めにおける小さな誤差はインピーダンスの有意な変化に影響しない。しかしながら、スロットの狭い側、すなわち端部22(図1)に近い側では、グランド・プレーン16,18の内部のエッジは導電ストリップ12のエッジに非常に近くなる。小さな位置合わせ誤差又はスロット幅の不正確性によって、この側でのインピーダンスはかなり変化するであろう。一定の終端インピーダンスを保証するために、製造は非常に注意深く行われるべきである。しかしながら、このレベルの精度での製造は非常に困難で高価である。
従って、そのような製造の検討は、わずかに厚い膜の使用を必要とする。このため、厚膜(5−100μm)の使用が好まれ、10−70μmの範囲の厚膜が特に好都合である。上記で調べたテスト・デバイスのものよりも厚さが大きいことの影響は、分散の挙動を大きく変えるものではないと考えられており、厚さ10−70μmの膜を用いたデバイスの予期される特性は、図3,4及び5のグラフの曲線で非常に良く表されている。
図1及び図2において、グランド・プレーン16,18のテーパー化は線形のものとして示されている。しかしながら、ベッセル、チェビシェフ又は指数関数タイプの反射係数をもたらす、グランド・プレーンのテーパー化に他の幾何学的形状を有する様々な実施形態も可能である。例えば、チェビシェフタイプのテーパー形状を有するデバイスに基づいた、図3−5に示したシミュレーションは、本例では線形、ベッセル又は指数関数タイプよりも幾分良好な結果をもたらす。そのような線形でないテーパー化の例が例えば図7に示されている。ここで中央のスロットの漸次的変化は狭い端部で次第に鈍くなる。その上、グランド・プレーンのエッジは両端部で導電ストリップに並行である。そのような構成は、デバイスの一方の側から他方の側への漸次的インピーダンス変化をゆるやかにし一層均一にするよう働く。
本発明は従来技術のデバイスと比較していくつかの利点を提供する。
薄膜及び厚膜は、ゾル−ゲル法、レーザアブレーション、マグネトロン・スパッタリング、化学蒸着法(CVD)、エアロゾル、スクリーン印刷又は焼結ベースの技術などの様々な方法で成膜されてもよく、それらの相対的誘電定数は非常に高くなり得る。本発明を用いることによって、伝送線路は断面が単純で非常に満足できる横方向寸法となり、製造が安上がりとなる。本発明による多層構造は、大きな帯域幅及び小さな分散を提供する。市販の無線周波数コネクタの寸法と互換性のある、120μmの一定のストリップ幅を有するテーパーの低インピーダンス端部での値を3.5Ω程度まで低くできることが、シミュレーションにより示された。本発明によるデバイスの入力リターンロスの調査により、略50Hzまでの単一モードの動作及び非常に小さな分散が示されたが、これは非常に短いパルスの実質的に歪の無い伝播を可能とする。
基板、誘電層の材料及び膜のデポジション技術の特定の選択により、基板と誘電層との間の十分な付着を達成するのに小さな問題があるかもしれない。そのような付着問題を低減する考えられる方法の1つは、ブリッジ材料の非常に薄い層を成膜することである。ブリッジ材料は一般には単層(monolayer)の厚さとすべきであり、例えば、チタニウム、インジウム又はクロムのような金属を含んでいても良い。ブリッジ層は、誘電体材料の成膜の前に基板に直接成膜される。成膜された強誘電体セラミックの、次に基板に結合される単層金属ブリッジ層への化学的結合は、付着力の増大を可能とする。金属の単層は電気的に導体ではなく、インピーダンス・マッチング・デバイスの性能に大きく影響することはない。
このタイプの多層構造における誘電定数の高い材料の使用は、成膜技術の利用により可能である。異なる誘電層の構成要素を元の基板上に形成することにより、付着の問題は従来技術の多層での解決策についてと同じ程度では生じない。図6は、本発明によるインピーダンス−マッチング・デバイスの製造方法の実施形態を示している。この手法はステップ200で開始する。ステップ202で、その上に多層が形成されるべき最初の基板として誘電体基板が提供される。ステップ204で導電ストリップが第1の誘電層の上に配置され、伝送線路を形成する。この配置は好ましくは、周知の従来技術の印刷技術に従って、要求される幾何学的大きさを有する金属膜の印刷として実行される。ステップ206で、非常に高い誘電定数を有する誘電層が導電ストリップの上に形成される。これにより導電ストリップは、誘電体基板と誘電層の2つの誘電体エンティティによって取り囲まれることとなる。誘電層は好ましくは厚膜であり、デポジションは好ましくは厚膜技術により実行される。導電ストリップ及び第1の誘電層の上への第2の誘電層の形成により、良好な付着特性がもたらされる。ある実施形態では、誘電層の形成は、有機溶剤と混合された誘電体物質の導電ストリップ及び誘電体物質の少なくとも一部の上への成膜と、その後の熱処理とを含んでいる。加熱する間、あらゆる有機溶剤成分は除去され、残った誘電体物質が誘電層を形成する。最後に、ステップ208で、誘電層の一部が金属化され、テーパー状のグランド・プレーンを形成する。これは好ましくは金属膜の印刷によって実行される。この手法はステップ210で終了する。
本発明は特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなしに、様々な変形や修正が可能であることは当業者には理解されるであろう。