(関連出願の相互参照)
本出願は、2001年8月13日に出願された、同時に継続する米国特許出願第09/928,385号の一部継続出願であり、ここに参照してその全体が本明細書に組み込まれる。
(政府による支援)
本研究は、米国保健社会福祉省/国立衛生研究所の授与番号GM50514によって支援された。米国政府は本発明における一定の権利を保有する。
(配列表)
配列表の書面の写しおよび同一の配列表のコンピュータ読み取り可能な形式のものを以下に添付し、そして参照して本明細書に組み込まれる。米国特許法施行規則第1.821条第(f)項に基づいて、コンピュータ読み取り可能な形式のものに記録された情報は、書面による配列表と同一である。
(発明の分野)
本発明は、全般に、ルミネセンスシグナル強度の変化によって、または検出可能な標識の検出によって、特定のタンパク質、因子および化学リガンド、特に配列特異的核酸結合因子ならびにそれらの補調節因子を検出し定量するバイオセンサーおよび方法に関する。本発明は、核酸結合因子の活性測定またはその補調節因子の活性測定が求められるあらゆる用途に用いられる。
特定の薬物および特定の化学的な部分、特に核酸結合因子およびそれらの補調節因子を検出し定量する能力は、基礎研究および臨床応用において極めて重要である。特定のタンパク質またはその他の生体分子のレベルを測定することは、生物医学研究および分子診断において最も有用かつ重要な実験方法の一つである。特定のタンパク質または因子の細胞内レベルは、多くの疾患についての診断マーカーとして広く用いられている。
タンパク質−核酸相互作用は、細胞内で見られる、極めて重要かつ生理学的に関連するタイプの高分子の接触である。原核細胞、真核細胞、およびウイルスにおける多数のプロセスを調節する際に重要な役割を果たす多くのタンパク質は、生来の配列特異的核酸結合活性を有する。これらのタンパク質としては、転写因子、クロマチンリモデリング因子およびDNA維持酵素が挙げられる。核酸結合因子の総説については、参照して本明細書に組み込まれるベンジャミン・レビン(Benjamin Lewin)、遺伝子VII(Genes VII)、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)、ニューヨーク、2000を参照すること。
転写因子は、特定の同族の核酸エレメントと結合し、プロモーターエレメント、エンハンサーエレメントおよびサイレンサーエレメントが含まれる。細胞の状況によって、これらはアクチベーターでもよく、リプレッサーでもよく、またはその両方でもよく、そしてこれらのレベルは遺伝子発現にとって重要である。従って、これらのタンパク質の多くは疾患の進行および疾患の診断において重要である。たとえば、いくつかの転写因子(過剰にまたは不適切に発現する場合)は発ガン遺伝子である。これらの発ガン性転写因子としては、myc、myb、fos、jun、relおよびerbが挙げられる。別のガン関連転写因子であるp53は、多くのガンの発生に関与する(コ、エル・エルおよびプリベス、シー(Ko,L.L.and Prives,C.)、Genes Dev.10,1054−1072,1996)。
クロマチンリモデリング因子も、遺伝子発現の調節に重要である。一般に、クロマチンが高度に凝縮した領域(ヘテロクロマチンと呼ばれる)は、能動的に転写されない遺伝子を含むが、クロマチンが解放された領域または凝縮していない領域(ユークロマチンと呼ばれる)は、能動的に転写される遺伝子を含む。細胞分化、ガン化転換および正常な生理的ホメオスタシスの間に、クロマチンが再構築され得る。即ち、ある染色体領域は、転写因子およびRNAポリメラーゼが接近できないようになるが、その他の領域は接近できるようになる。いくつかの核酸結合因子は、ヌクレオソームタンパク質(ヒストンなど)、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ、アミノ酸メチルトランスフェラーゼ、DNAメチルトランスフェラーゼ、ヌクレオプラスミン、HMGタンパク質、リプレッサー複合体タンパク質、ポリコーム関連因子およびトリソラックス関連因子を含み、この動的プロセスに関与する。
DNA維持酵素は、損傷したDNAの修復、DNAの正確な複製および組み換えの間の遺伝情報の交換に必要な核酸結合因子である。いくつかのタイプのガンやその他の疾患・症候群は、DNA維持酵素の欠陥の結果である。たとえば、色素性乾皮症(恐ろしい遺伝病であって、それによる患者は皮膚ガンに罹りやすい)は、ヌクレオチド除去修復酵素の欠陥が原因である。遺伝性非ポリポーシス結腸直腸ガンの大部分は、ミスマッチ修復酵素の欠陥によって生じる。遺伝性乳ガンのいくつかの形態は、相同組み換え酵素の欠陥が原因である。ゲノムの維持システムとガンにおけるそれらの役割の総説については、参照して本明細書に組み込まれるヘイジマーカーズ、ジェイ・エイチ・ジェイ(Hoeijmakers,J.H.J.)、Nature 411,366−374,2001を参照すること。従って、核酸結合因子の核酸結合活性およびそれらの補調節因子を検出、監視および/または定量するための使いやすく正確な方法は、かなりの興味が持たれている。
配列特異的核酸結合活性を示すタンパク質を検出するために採用される最も一般的なアプローチは、ゲルシフトアッセイおよび種々の核酸フットプリントアッセイである(フリード、エム・ジーおよびクローザーズ、ディー・エム(Fried,M.G.,and Crothers,D.M.)、Nucleic Acids Res.9,6505−6525,1981;ゲイラス、ディー・ジェイおよびシュミッツ、エイ(Galas,D.J.,and Schmitz,A.)、Nucleic Acids Res.5,3157−3170,1978)。これらの方法は煩雑で時間を要する方法であり、一般に危険で高価な放射性同位体を用いる必要がある。さらに、これらの方法は一般的に高処理アッセイの形式に適合できない。ゲルシフトアッセイおよび核酸フットプリントアッセイの欠陥を克服するために、核酸結合因子を検出し研究するための異なる蛍光に基づく方法論が展開されてきた。
蛍光によって分子を検出することには、代替の検出法と比較していくつかの利点がある。蛍光を用いて単一の分子を検出することによって実証されるように(バイス、エス(Weiss,S.)、Science 283,1676−1683,1999)、蛍光では検出感度が不揃いである。特定の励起波長と発光波長とを選択することによって、蛍光の検出、蛍光強度の変化または発光スペクトルの変化を容易に実現させることができる。蛍光によって、プロセスのリアルタイムでの監視や顕微鏡によるリアルタイムでの細胞の画像化を可能とするリアルタイムシグナルが与えられる(参照して本明細書に組み込まれるラコビッツ、ジェイ・アール(Lakowicz,J.R.)、蛍光分光法の原理(Principles of Fluorescence Spectroscopy)、クルーワー・アカデミック/プレナム・プレス(Kluwer Academic/Plenum Press)、ニューヨーク、1999を参照すること)。さらに、蛍光シグナルを高処理検出するための十分に確立された方法および計測器が、この分野に存在している。
溶液中の核酸結合因子を蛍光を用いて検出するための現行の方法は、次の現象の一つに頼っている:(i)タンパク質−核酸複合体形成時のプローブの微小環境の乱れの結果としての、タンパク質または核酸上の蛍光色素(フルオロフォアまたは蛍光プローブもしくは蛍光標識とも呼ばれる)の蛍光強度の変化(この変化はタンパク質上または核酸上のいずれかに存在する);(ii)結合していない核酸分子またはタンパク質分子と比較しての、タンパク質−核酸複合体の分子サイズの増加の結果としての、蛍光色素の蛍光偏光の変化(この変化はタンパク質上または核酸上のいずれかに存在する);ならびに(iii)タンパク質−核酸複合体における核酸とタンパク質とが近接している結果としての、核酸に存在する蛍光色素と、タンパク質に存在する別の蛍光色素または蛍光クエンチャーとの間の共鳴エネルギー転移。蛍光シグナル検出を検出する方法に関する総説については、参照して本明細書に組み込まれるヒル、ジェイ・ジェイおよびロイヤー、シー・エイ(Hill,J.J.,and Royer,C.A.)、Methods in Enzymol.278,390−416(1997)を参照すること。タンパク質または核酸に取り付けられた蛍光色素を用いての、タンパク質−核酸複合体の検出に対する蛍光色素の蛍光強度の変化の応用例を、参照して本明細書に組み込まれる次の技術文献に見出すことができる(シャ、エム、フェリードアマール、バーレイ、エス・ケイおよびゴス、ディー・ジェイ(Sha,M.,Ferre−D’Amare,Burley,S.K.,and Goss,D.J.)、J.Biol.Chem.270,19325−19329,1995;リードストーム、アール・ジェイ、ブラウン、エム・ピー、グリロ、エイ、ローエン、ディーおよびロイヤー、シー・エイ(Reedstrom,R.J.,Brown,M.P.,Grillo,A.,Roen,D,and Royer,C.A.)、J.Mol.Biol.273,572−585,1997;エリクソン、ジー・エイチおよびダクシス、ジェイ(Erickson,G.H,and Daksis,J.)、WO 00/40753号)。
別のタイプの蛍光に基づく検出アッセイ(蛍光偏光と呼ばれる)も、タンパク質−核酸複合体形成の検出に用いられてきた(参照して本明細書に組み込まれるハイドック、ティーおよびリー、ジェイ・シー(Heyduk,T.,and Lee,J.C.)、Proc.Natl.Acad.Sci USA 87,1744−1748,1990を参照すること)。このアプローチの物理学的な原理は、蛍光色素で標識された高分子の蛍光偏光シグナルが高分子のサイズに依存するということである(ラコビッツ、ジェイ・アール、蛍光分光法の原理、クルーワー・アカデミック/プレナム・プレス、ニューヨーク、1999、参照して本明細書に組み込まれる)。従って、タンパク質成分と核酸成分とからタンパク質−核酸複合体が形成されると同時に、より大きな分子的実体が生じ、このものの蛍光の特徴が変化する。タンパク質−核酸複合体を検出するために蛍光偏光を利用することは、参照して本明細書に組み込まれるロイヤー(1998年、米国特許第5,756,292号)に記載されている。
タンパク質−核酸複合体形成を検出するための第三の蛍光に基づくアッセイは、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)である(参照して本明細書に組み込まれるストライヤー、エル(Stryer,L.)、Ann.Rev.Biochem.47,819−846,1978)。FRETは、蛍光色素(蛍光ドナー)からの放射光のエネルギーがアクセプター分子(蛍光アクセプター)に転移することに基づく。アクセプター分子は蛍光色素であってもよい。核酸−タンパク質の結合事象を検出するのに用いられるように、FRET法は、結合事象が発生した時に、DNA結合タンパク質に取り付けられた蛍光色素と、同族のDNA結合エレメントに取り付けられた蛍光色素とがより接近することに基づく。いくつかの公表された報告では、タンパク質−核酸相互作用を検出し研究するためにこのアプローチを用いることが説明されている(参照して本明細書に組み込まれるケイン、エス・エイ、フリーナー、シー・エイ、チャン、ワイ・エス、デイビス、エル・ジェイ、マッセルマン、エイ・エルおよびファン、ピー・エス(Kane,S.A.,Fleener,C.A.,Zhang,Y.S.,Davis,L.J.,Musselman,A.L.,and Huang,P.S.)、Anal.Biochem.278,29−39,2000を参照すること)。
要約すれば、ルミネセンスまたは蛍光に基づくアッセイシステムは、核酸結合タンパク質を検出するための魅力ある手段である。本発明者は、本明細書にて、配列特異的核酸結合因子もしくはその補調節因子を検出するための方法であって、汎用性が高く、あまり高価でなく、単純で、多色もしくは単色の蛍光法、ルミネセンス法、X線撮影法、重量測定法または比色法について説明する。これらの方法は高処理検出の形式に適合する。
本発明は、核酸結合因子が、核酸結合エレメントの2以上の「部分的部位」すなわち構成部分の間の相互作用を安定化させることができるという概念に基づくものであり、ここで、2以上の構成部分は一緒になって、同族の核酸結合因子と会合し得る完全な結合部位を作り上げる。従って、サンプルにおける核酸結合因子または核酸結合因子の補調節因子の活性を測定するための(即ち、存在または量を検出するための)「バイオセンサー」として、本発明を用いることができる。サンプルにおける核酸結合因子を検出するためには、そのサンプルを核酸構成部分とともに単に混合するか、または核酸構成部分に添加する。サンプルにおける補調節因子を検出するためには、そのサンプルを核酸構成部分および同族の核酸結合因子とともに単に混合するか、または核酸構成部分および同族の核酸結合因子に添加する。ここでは、補調節因子によって結合因子の活性が仲介される。結合因子は、補調節因子によって活性化または失活する。それによって、核酸構成部分の完全な結合部位への会合が間接的に仲介される。本発明を実施する際は、多数の異なる変更または実施態様を用いてもよい(図1)。
ありとあらゆる公知の検出方法および検出可能な標識が、核酸構成部分の会合または解離の検出に使用でき得る。当業者であれば、本発明の実施において役立つあらゆる検出方式を合理的に予想できるであろうが、本発明の実施においては少なくとも4種の主な検出方式を用いることができる。第一の検出方式は近接性に基づく検出法を基礎とするものであり、たとえば、蛍光共鳴エネルギー転移、蛍光消光などが挙げられる(図1A、CおよびD)。第二の方式は、一致に基づく検出方法を基礎とするものであり、たとえば、蛍光相互相関分光法などが挙げられる(図1B)。第三の方式は、検出可能な標識を固体支持体に捕らえることを基礎とするものであり、たとえば、フローサイトメトリー(ここでは、核酸構成部分はビーズに取り付けられているか、または標識核酸構成部分が細胞の内部に置かれている)、オートラジオグラフィーなどが挙げられる(図1E)。第四の方式は、センサー表面に生じる質量濃度の変化を検出する方法を基礎とするものであり、たとえば、表面プラズモン共鳴の検出などが挙げられる(図1F)。
近接性に基づくルミネセンスの転移を基礎とする、核酸結合因子およびその補調節因子を検出し定量する方法が開示される。本発明の一つの実施態様において、二つの二本鎖オリゴヌクレオチドを結合させることによって、オリゴヌクレオチドの接合点にまたがって一つの完全な核酸エレメントが形成されるように(図1Aを参照すること)、二つの二本鎖オリゴヌクレオチドを合成するかまたは単離する。核酸結合エレメントは、核酸結合因子の結合のための同族の配列を含む。第一のオリゴヌクレオチドは蛍光色素で標識される。本明細書では、この蛍光色素を「蛍光ドナー」と称する。そして第二のオリゴヌクレオチドは蛍光消光分子で標識される。本明細書では、この蛍光消光分子を「蛍光アクセプター」と称する。ここで、当該消光分子は第一の蛍光色素よりも励起波長が短い別の蛍光色素でもよい。蛍光標識オリゴヌクレオチドをサンプルと混合する。このサンプルは核酸結合因子を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。存在するのであれば、混合と同時に核酸結合因子がその同族の核酸エレメントの構成部分の両方と会合し、その結果、二つの構成部分の会合が安定化する。二つの構成部分が極めて近い状態にある場合、第一核酸構成部分の蛍光ドナーの放射光エネルギーが第二核酸構成部分の蛍光アクセプターに転移し、その結果蛍光ドナーからの放射光が消光する。技術的に周知な、標準的な分光学的方法または蛍光分析的方法を用いて、蛍光を測定する。蛍光シグナルの消光は、同族核酸エレメントへの核酸結合因子の会合と相関する。
蛍光および蛍光の消光の正確かつ高精度な測定がごく普通に行えるならば、蛍光波長もしくは蛍光強度の変化を測定することによって、サンプルにおける核酸結合因子の量もしくは比活性の定量に、その同族結合エレメントとの核酸結合因子の解離定数もしくは親和性の定量に、またはサンプルにおける核酸結合因子の定量もしくはその存在の検出に本発明を用いることができ得よう。
別の実施態様において、核酸結合エレメントを含む標識核酸構成部分(またはオリゴヌクレオチドの「部分的部位」)は溶液状態であり、そしてあらゆる方向に自由に拡散することができる。別の実施態様において、当該核酸構成部分を、たとえば、マルチウェルプレート、マイクロアレイスライド、メンブレン、ミクロスフェア、もしくはライトガイドのチップ、光ファイバー、導電性材料またはバイオセンサーデバイスなどの固相の基質に貼付する。別の実施態様において、マッチしたオリゴヌクレオチドのペアまたはセットのそれぞれを、リンカー分子を介して結合させる。ここで、それぞれのオリゴヌクレオチドの末端に取り付けられたリンカー分子を介して、第一のオリゴヌクレオチドを第二のオリゴヌクレオチドに結合させ、そしてこの末端は、核酸結合エレメントまたはそれぞれのオリゴヌクレオチドの蛍光標識末端から離れた位置にある。結合したオリゴヌクレオチドのペアを、(1)マルチウェルプレート、メンブレン、マイクロアレイデバイス、ライトガイドのチップ、光ファイバー、導電性材料もしくはバイオセンサーデバイス、またはミクロスフェアなどの固相の基質に貼付してもよく、(2)自由に拡散することができる溶液状態としてもよく、または(3)細胞内(細胞は原核細胞でも真核細胞でもよい)に送達してもよい。
別の実施態様において、一つのポリヌクレオチドの二箇所を標識する。ここで、第一の箇所を蛍光ドナーで、および第二の箇所を蛍光アクセプターで標識し、そして一方の蛍光標識と他方の蛍光標識との間隔を、架橋用の核酸結合因子が存在しない場合に分光学的に相互作用しない程度の十分な間隔とする。この実施態様の一つの側面において、核酸エレメントの一部(構成部分)は第一の箇所の近傍に配置し、および同一の核酸エレメントの別の一部(構成部分)は第二の箇所の近傍に配置する。核酸結合因子が当該核酸エレメントの両方の部分に結合するのと同時に、第一の箇所が第二の箇所に接近し、それによって蛍光ドナーと蛍光アクセプターとの間の分光学的な相互作用を促進するか、または安定化させる。この実施態様の別の側面において、第一の完全な核酸エレメントは第一の箇所またはその近傍に配置し、そして第二の完全な核酸エレメントは第二の箇所またはその近傍に配置する。一つの核酸結合因子または核酸結合因子の複合体(たとえばエンハンセオソームの状態のような)が第一のおよび第二のエレメントに結合すると同時に、第一の箇所が第二の箇所に接近し、それによって蛍光ドナーと蛍光アクセプターとの間の分光学的な相互作用を促進するか、または安定化させる。その結果、蛍光エネルギーの転移または消光がもたらされ測定可能な程度の蛍光の変化が生じる。
本発明においては、近接性に基づくまたは一致に基づくルミネセンス検出のあらゆる方法が用いられる。その実施態様としては、蛍光エネルギー転移、ルミネセンス共鳴エネルギー転移、蛍光相互相関分光法、フローサイトメトリー、直接消光、基底状態の複合体の形成、ケミルミネセンスエネルギー転移、バイオルミネセンスエネルギー転移およびエキサイマー形成が挙げられるが、これらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明を考慮してまたは本発明の方法に基づいて、技術的に公知の、本発明に適用でき得る代替的な検出方法を認識できるであろうことは理解でき、従ってそのようなものは本発明に包含される。
本発明において、蛍光ドナーまたは蛍光アクセプターとしてあらゆる蛍光色素を用いてもよい。しかしながら、アクセプターの励起波長がドナーの発光波長と適合することが好ましい。別の実施態様において、蛍光アクセプターとしてクエンチャー分子を用いてもよく、この場合、励起時にクエンチャーから光が放射されることはない。蛍光色素および蛍光クエンチャーの具体例としては、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)430、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)647、Alexa Fluor(登録商標)660、Alexa Fluor(登録商標)680、7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸、フルオレセイン、Oregon Green 488、Oregon Green 514、テトラメチルローダミン、ローダミンX、Texas Red色素、QSY 7、QSY 33、Dabcyl、BODIPY FL、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、BODIPY TMR−X、BODIPY TR−X、ジアルキルアミノクマリン、Cy5.5、Cy5、Cy3.5、Cy3、DTPA(Eu3+)−AMCAおよびTTHA(Eu3+)−AMCAからなる群が挙げられる。当業者であれば、適合性を有するあらゆる蛍光ドナー/アクセプターのペアが本発明において役立つことを認識できるということ、ならびに上記の蛍光色素および蛍光クエンチャーは例示であってこれに制限されないことが理解される。
別の実施態様において、ルミネセンスに基づく近接性の測定法に加えて、フローサイトメトリーに基づく測定法および比色分析用の酵素に基づく測定法を用いて、核酸結合因子の同族の核酸エレメントへの結合を検出してもよい。蛍光による補助を受けたセルソーティングにおいて、一つの核酸構成部分を一つのビーズまたはミクロスフェアと結合させ、その他の核酸構成部分をルミネセンス分子または蛍光色素と結合させる。
別の実施態様において、標識された核酸構成部分を原核細胞または真核細胞などの細胞内に挿入してもよい。ここで、この細胞は核酸結合因子またはその補調節因子を含む。当該細胞から発せられる検出可能なシグナルの変化は核酸結合事象を示すものであろう。
別の実施態様において、患者から得られるサンプル中の種々の診断に用いる核酸結合因子の活性の概要を調べることによって、病気の状態を診断およびまたは特徴を調べることに、本発明は用いられる。ある病気は核酸結合因子の異所性発現に伴って生じる。たとえば、あるガンはc−myc、c−fos、c−jun、relまたはerbAなどの転写因子の過剰発現に伴って生じ(レビンによるGenes IV,p.890を参照すること)、一方、あるタイプの乳ガンまたは結腸直腸ガンなどのその他のガンでは、DNA修復酵素の発現が過少である。この実施態様において、生検サンプルを、本明細書の上記のような標識オリゴヌクレオチドまたは標識核酸構成部分と混合し、特定の核酸結合因子の存在、欠如または比活性について測定する。
別の実施態様において、本発明は、サンプルにおける細胞調節因子を検出する方法および/または定量する方法を対象とする。ここで、当該細胞調節因子は、核酸結合因子が同族の核酸エレメントに会合することを促進するかまたは抑止する補調節因子として機能する。調節因子を含み得る試験サンプルを、本発明の標識オリゴヌクレオチドまたは標識ポリヌクレオチドおよび同族の核酸結合因子を含む混合物もしくはキットと混合する。ここで、核酸結合因子の核酸結合活性は、この補調節因子の有無に完全にまたは部分的に左右される。同族の核酸エレメントと結合するために、核酸結合因子が補調節因子の存在を必要とする場合、調節因子がサンプル中に存在すれば、蛍光エネルギーの転移または消光が生じることになる。同様に、補調節因子が、核酸結合因子のその同族核酸エレメントへの結合に干渉する場合、蛍光エネルギーの転移または消光は生じない。
別の実施態様において、本発明は核酸結合因子が核酸エレメントに結合することに影響する薬剤、薬物、夾雑物または汚染物質を特定する方法を示す。これらの薬剤、薬物、夾雑物または汚染物質も核酸結合因子の補調節因子であると考えられる。(上記の)サンプルにおける細胞調節因子または補調節因子の検出方法および/または定量方法と類似の状況において、予想される薬剤、薬物、夾雑物または汚染物質を、同族の核酸エレメントを含有する、核酸結合因子および標識オリゴヌクレオチドまたは標識核酸構成部分の種々のセットと混合する。薬剤、薬物、夾雑物または汚染物質が、核酸結合因子の完全な核酸エレメントとの相互作用を抑制するかまたは混乱させる場合、蛍光の変化は測定されない。薬剤、薬物、夾雑物または汚染物質が、核酸結合因子の完全な核酸エレメントとの結合を促進させる場合、蛍光エネルギー転移の増加または蛍光の変化が測定される。
別の実施態様において、本発明は、固体マトリックスに固定されているか、または溶液中に懸濁した標識オリゴヌクレオチドの複数のペアを含む、直線状形式または多次元形式の状態のアレイデバイスに向けられている。標識核酸構成部分の同族ペア(それぞれの構成部分は、核酸結合因子に対する結合部位である完全な核酸エレメントの一部を含み、および第一の標識は蛍光ドナー分子、ケミルミネセンス基質または比色分析用基質であり、および第二の標識は蛍光アクセプターまたはケミルミネセンス基質もしくは比色分析用基質の触媒である)は、固体基質上の特定の位置に固定されるか、またはマルチウェルプレートの特定のウェル内にて懸濁している。固体基質は、たとえば、それ自体この目的に適合する、ニトロセルロース、ナイロンもしくはポリビニルジフルオリド(「PVDF」)などのメンブレン、マルチウェルプレート、またはライトガイドのチップ、光ファイバー、導電性材料もしくはバイオセンサーデバイスなどの別の都合の良い基質であってもよい。この実施態様の別の側面において、構成部分の同族ペアのそれぞれを、それぞれのオリゴヌクレオチドの標識から離れた位置の末端に固定されたリンカー分子を介して、互いに結合する。結合したオリゴヌクレオチドのペアを、特定のアレイ形式における固体のマトリックスに固定するか、またはマルチウェルプレートの特定のウェル内に置く。この実施態様の別の側面において、このアレイデバイスはアレイ形式の状態に並べられたいくつかの核酸構成部分を含んでおり、ここで、それぞれのポリヌクレオチドは一つまたはいくつかの標識核酸エレメントを含み、そして第一の標識は蛍光ドナー分子、ケミルミネセンス基質または比色分析用基質であり、および第二の標識は蛍光アクセプターまたはケミルミネセンス基質もしくは比色分析用基質の触媒である。特異的なポリヌクレオチドのそれぞれは、(上記の)オリゴヌクレオチドのペアについて記載したように、固体基質上の特定の位置に固定されているか、またはマルチウェルプレートの特定のウェル内で懸濁している。
本発明は、核酸結合因子およびその補調節因子を検出するためのバイオセンサー、および近接性に基づかない検出方法を用いる核酸結合因子およびその補調節因子の検出方法にも向けられている。本発明者は、ただ一つの核酸構成部分だけが検出可能な標識に取り付けられていることを想定している。このような標識は、たとえば、蛍光色素、発色団、酵素、ビオチンやHRPOなどのリンカー分子、または放射性核種といった検出可能なあらゆる標識であってよい。たとえば、検出可能な標識が蛍光色素である場合、上記の蛍光消光または蛍光偏光によって結合事象を検出してよい。検出可能な標識がビオチンである場合、アビジン−ペルオキシダーゼ発色システムを用いることによって結合事象を検出してよい。別の実施態様において、第一核酸構成部分は、ビーズ、スライドガラス、メンブレンまたはマルチウェルプレートなどの固体基質に取り付けられ、そして第二核酸構成部分は検出可能な標識に取り付けられる。結合事象が陽性の場合、標識核酸構成部分は固体基質に取り付くようになり、このことによって、次に、検出可能な標識の用いられるタイプによって、比色分析用の染色、蛍光検出またはオートラジオグラフィーを行うことができる。
さらに、結合因子が完全な結合エレメントと会合することによって、表面に会合したものの全体の質量の変化が生じるように、第一核酸構成部分がバイオセンサーの表面に取り付けられることも想定している。バイオセンサー表面から発する反射光の変化、たとえば表面プラズモン共鳴の変化によって、この質量の変化を検出してもよい。
上記の要旨では、本発明の好ましい実施態様を簡単に記載したものであり、本発明の範囲を、記載されたこれらの実施態様に制限するという意図ではない。当業者であれば、その他に考えられる本発明の実施態様が存在すること、そしてかかる実施態様は二つの核酸構成部分の会合を促進する核酸結合因子の原則を利用し、それぞれの構成部分が完全な核酸結合エレメントの一部を含むことを認識する。
定義
本発明を実施または検証する際には、本明細書に記載されたものと類似のまたは同一のあらゆる方法および材料を用いることができるが、好ましい材料および方法は記載されている。本発明を実施する目的で、次の用語を下記のように定義する。
本明細書で用いられるような「標識」、「検出可能な標識」または「プローブ」という用語は、ヌクレオチド、ヌクレオチドポリマー、または核酸結合因子に取り付けられたあらゆる化学的な部分を表す。ここで、取り付けは共有的でもまたは非共有的でもよい。標識は、検出可能であって、上記ヌクレオチドまたはヌクレオチドポリマーを本発明を実施する者に検出可能にするものが好ましい。検出可能な標識としては、ルミネセンス分子、ケミルミネセンス分子、蛍光色素、蛍光消光剤、有色分子、放射性同位体またはシンチラントが挙げられる。検出可能な標識としては、あらゆる有用なリンカー分子(ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、HRPO、プロテインA、プロテインG、抗体もしくはその断片、Grb2、ポリヒスチジン、Ni2+、FLAGタグ、mycタグなど)、重金属、酵素(たとえばアルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼおよびルシフェラーゼが挙げられる)、電子供与体/受容体、アクリジニウムエステル、色素および比色分析用基質も挙げられる。さらに、表面プラズモン共鳴の検出のように、質量の変化を検出可能な標識とみなしてもよいことも想定されている。当業者であれば、上記にはない、有用な検出可能な標識を容易に認識する。このような標識を本発明の実施の際に採用してもよい。
「検出方法」または「検出する方法」という表現は、核酸結合因子の完全な核酸結合エレメントとの会合を視覚化する方法を表す。検出方法は、検出可能な標識の性質と密接不可分である。たとえば、第二核酸構成部分が33Pなどの放射性核種に取り付けられ、そして第一核酸構成部分がナイロンメンブレンなどの固体基質に取り付けられた場合、検出方法は、オートラジオグラフィーまたはラジオシンチグラフィーを介してβ粒子を検出することでもよい。第一核酸構成部分がマルチウェルプレートのウェルに取り付けられ、および第二核酸がビオチンに取り付けられた場合、検出方法は、アビジン−ペルオキシダーゼキットまたはアビジン−アルカリホスファターゼ検出キット(このようなキットは市販されており、この分野で周知である)でもよい。次いで、マルチウェルプレートの比色分析をプレートリーダーで行ってもよい。第一核酸エレメントが蛍光ドナーに取り付けられ、および第二核酸が蛍光アクセプターに取り付けられた場合、検出方法は、FRETなどの近接性に基づく測定法でもよい。この検出方法には、表面プラズモン共鳴によるような質量変化の検出を含み得る。たとえば、核酸結合因子の会合によってセンサーチップ表面の質量の変化を導き、その結果としてセンサーチップ表面の光学共鳴を変化させるように、一つまたはすべての核酸構成部分をセンサーチップ表面に取り付けてもよい。表面プラズモン共鳴については、エイブリー、ジェイ(Abery,J.)、「分子を結ぶ結合の検出(Detecting the Molecular Ties that Bind)」、Modern Drug Discovery 4:34−36(2001)で検討されており、参照して本明細書に組み込まれる。上記の検出方法は、実例としての機能を果たすためだけのものであり、本発明をこれらの検出方法にのみ制限することを意図するものではない。その他の有用な検出方法(本発明の実施の際に採用してもよい方法)は、当業者が周知している。
本明細書で用いられるような「ルミネセンス」または「ルミネセンスの」という用語は、蛍光、リン光、シンチレーション、ケミルミネセンスおよびバイオルミネセンスを含む光の放射のあらゆるプロセスを意味する。
本明細書で用いられるような「蛍光色素」という用語は、放射する光よりも短波長の光によって励起された直後に光を放射する蛍光性化合物を表す。「蛍光ドナー(fluorescent donor)」または「蛍光ドナー(fluorescence donor)」という用語は、本発明に説明された測定法によって測定される光を放射する蛍光色素を表す。より具体的には、蛍光ドナーは蛍光アクセプターによって吸収される光を提供する。「蛍光アクセプター(fluorescent acceptor)」または「蛍光アクセプター(fluorescence acceptor)」という用語は、蛍光ドナーから放射される光を吸収する第二の蛍光色素または消光分子のいずれか一方を表す。第二の蛍光色素は蛍光ドナーから放射される光を吸収し、そして蛍光ドナーによって放射された光よりも長波長の光を放射する。消光分子は蛍光ドナーによって放射された光を吸収する。
本発明の実施においては、あらゆるルミネセンス分子、好ましくは蛍光色素および/または蛍光クエンチャーを用いてもよく、たとえば、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)430、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)647、Alexa Fluor(登録商標)660、Alexa Fluor(登録商標)680、7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸、フルオレセイン、Oregon Green 488、Oregon Green 514、テトラメチルローダミン、ローダミンX、Texas Red色素、QSY 7、QSY 33、Dabcyl、BODIPY FL、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、BODIPY TMR−X、BODIPY TR−X、ジアルキルアミノクマリン、Cy5.5、Cy5、Cy3.5、Cy3、DTPA(Eu3+)−AMCAおよびTTHA(Eu3+)−AMCAが挙げられる。
本明細書で用いられるような「ケミルミネセンス」、「ケミルミネセンスの」または「ケミルミネセンス基質」という用語は、化学反応の結果として光を生産する化学薬品を表す。広く用いられるケミルミネセンス基質としては、たとえば、ルミノール(5−アミノ−2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン)、ロフィン(2,4,5−トリフェニルイミダゾール)、ルシゲニン(ビス−N−メチルアクリジニウム)、その他のアクリジニウムエステルおよびルシフェリン−ルシフェラーゼが挙げられる。たとえば、当分野で認識されているアマシャム社(Amersham Co.)のECL(商標)検出システムにおいて、ホースラディシュペルオキシダーゼによってアクリジニウム基質が酸化され、アクリジニウムエステルが産出される。このものは、過剰の過酸化物とアルカリ性のpHで反応し、430nmの可視ケミルミネセンスを産する。
本明細書で用いられるような「比色分析用の」または「比色分析用基質」という用語は、有色生成物を産生させる化学反応の結果として、光吸収特性の変化を生じさせる化学薬品を表す。一つのこの分野で理解された例において、p−ニトロフェニルホスファートを、アルカリホスファターゼの存在下で加水分解するとp−ニトロフェノールが生じ、p−ニトロフェノールは405nm(黄色)の光を吸収する。別の例において、ペルオキシダーゼおよび過酸化物の存在下で、p−フェニレンジアミンにカテコールを加えると、濃い茶色の生成物が生じる。
本明細書で用いられるような「核酸」という用語は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを表し、ここで、このオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは修飾されていてもよく、または修飾塩基を含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドは、2から60ヌクレオチドを含むヌクレオチドの一本鎖ポリマーである。ポリヌクレオチドは、二つ以上のヌクレオチドを含むヌクレオチドのポリマーである。ポリヌクレオチドはいずれかの二本鎖DNAでもよく、第二の鎖が第一のオリゴヌクレオチドとは逆向きの相補的配列を有するオリゴヌクレオチドであるところのアニールされたオリゴヌクレオチド、デオキシチミジンを含む一本鎖核酸ポリマー、一本鎖RNA、二本鎖RNAまたはRNA/DNAヘテロ二本鎖が含まれる。
本明細書で用いられるような「核酸構成部分」とは、一般的に、核酸結合エレメントの一部を含む、相補的一本鎖オリゴヌクレオチドのアニールされたペアを表し、ここで、二つの核酸構成部分の組み合わせの結果として、完全な核酸結合エレメントが形成される。核酸構成部分とは、核酸結合エレメントの一部を含むポリヌクレオチドのそのような一部も表し、ここで、二つの核酸構成部分の組み合わせの結果として、完全な核酸結合エレメントが形成される。従って、一つのポリヌクレオチドが第一および第二の核酸構成部分の両方を含んでもよい。本明細書で用いられるような「核酸構成部分のセット」とは、第一核酸構成部分と第二核酸構成部分とが適合したセットを意味し、当該第一および第二の核酸構成部分が会合した直後に、これらは一緒に一つの完全な核酸結合エレメントを含む。たとえばDNA修復酵素またはRNAスプライシング因子を検出するように設計されたバイオセンサーの場合のように、核酸構成部分のセットは三つ以上の構成部分を含んでもよい。
「完全な核酸結合エレメント」は、核酸結合因子に安定して結合するのに十分な長さと配列を有する核酸配列を表す。本発明のある実施態様において、核酸構成部分は、核酸構成部分のセットが協調的に機能する二つ以上の核酸結合エレメントを含むような、単一の完全な核酸結合エレメントを含んでもよい。このような実施態様において、転写因子またはその他の核酸結合因子の存在下で、一つ以上の核酸エレメントと結合する核酸結合因子を検出してもよい。核酸構成部分のいくつかのセットを組み合わせて、複数の異なる核酸結合因子を検出してもよい。さらに、核酸構成部分の複数のセットを一つのアレイ内に取り付けて、次いでこのものを用いて、複数の異なる核酸結合因子または核酸結合タンパク質補調節因子のスクリーニングを行ってもよい。本明細書で用いられるような「核酸結合エレメント」または「核酸エレメント」という用語は、タンパク質またはその他の部分と結合するヌクレオチド配列を表す。核酸エレメントは、同族の核酸結合タンパク質または因子と結合する特異的なヌクレオチド配列であることが好ましい。「同族」という用語は、二つの化学的実体の間の特定の認識を意味し、たとえば、リガンドとその同族受容体、または酵素とその同族基質がある。核酸結合エレメントの具体例としては、プロモーター、オペレーター、エンハンサーおよびサイレンサー、ならびにその一部が挙げられる。
本明細書で用いられるような「アレイ」という用語は、直線状、二次元状または三次元状の、特有な第一核酸構成部分のまたは核酸構成部分のセットのディスプレイを意味する。アレイは、固体基質に不連続のパターンにて取り付けられた第一核酸構成部分または核酸構成部分のセットを含んでもよく、ここで、「固体基質」とは、固体、半固体または過冷却液体の表面、基質またはマトリックスという意味である。固体基質の具体例としては、メンブレン、プラスチック製のマルチウェルプレート、スライドガラス、または繊維、チップ、ライトガイドのチップ、光ファイバー、導電性材料、バイオセンサーデバイス、またはミクロスフェアが挙げられる。アレイが、マルチウェルプレートの不連続のウェル内に核酸構成部分のセットを溶液状で含んでもよいことも想定されている。
本明細書で用いられるような「核酸結合因子」という用語は、核酸に結合する化学的実体を表す。好ましい実施態様において、核酸結合因子は、同族の核酸結合エレメントと結合するタンパク質、ポリペプチドまたはポリペプチドの断片であり、従って「核酸結合タンパク質」と称される。最も好ましい実施態様において、核酸結合因子は、特定の同族DNA配列と直接結合する能力を有する配列特異的核酸結合タンパク質である。その他の好ましい実施態様において、核酸結合タンパク質または因子は、タンパク質、ポリペプチド、ポリペプチドの断片、または核酸エレメントと間接的に結合する能力を有するか、もしくはその他の核酸結合因子と会合して、その他の核酸結合因子の機能を促進するかもしくは抑止する能力を有するその他の化学構造でもよい。転写アクチベーター、転写リプレッサー、またはその他のエンハンセオソームの成分(これらは核酸に直接結合することはないが、遺伝子活性に影響を与えるその他の核酸結合因子に結合する能力を有する)も、この定義の範囲内に含まれる。
別の実施態様において、核酸結合因子および核酸結合タンパク質補調節因子は、被検体から採取されたサンプル内に含まれる。被検体としては、ある種のガンまたはその他の遺伝子の不安定性の病気を患うヒトの患者が好ましく、この場合において、DNA修復酵素活性の減少が病気の進行の一因であり得る。被検体は動物でも、植物でも、微生物でもまたは細胞でもよい。サンプルとしては「細胞性成分の抽出物」が好ましく、このものは核酸結合因子を含み、および核酸結合エレメントに干渉したり、または競合するものを欠いているため、好ましい。
核酸結合因子としては、数あるなかでも転写因子、クロマチンリモデリング因子およびゲノム維持酵素が挙げられる。いくつかのタイプの核酸結合因子の簡単なリストと説明が、ベンジャミン・レビン、遺伝子VII、オックスフォード大学出版局、ニューヨーク、2000に記載されており、参照してその全体が本明細書に組み込まれる。
転写因子は、プロモーターエレメント、エンハンサーエレメントおよびサイレンサーエレメントなどの特定の同族の核酸エレメントと結合し、遺伝子発現の調節を担当する。転写因子としては、細胞内の状況によって、転写アクチベーターでも、転写リプレッサーでもまたはその両方でもよい。転写因子としては、たとえば、p53、c−myc、c−jun、c−myb、c−fos、c−rel、c−erbA、E2F、β−カテニン、cAMP受容体タンパク質(「CAP」)、Lacリプレッサー(「LacR」)、ステロイド受容体、ホメオドメインタンパク質、POUドメインタンパク質、ヘリックス・ターン・ヘリックス転写因子、塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス転写因子(「bHLH」)、塩基性ロイシンジッパー転写因子(「bZip」)、ジンクフィンガー転写因子および核内ホルモン受容体が挙げられる。
エンハンセオソームの成分は、転写因子のサブセットを含む。本明細書で用いられるような「エンハンセオソーム」という用語は、いくつかの転写因子が協調的にエンハンサーの多重結合部位に結合したものから組み立てられる、巨大な核タンパク質複合体を表す。エンハンセオソームの重要な成分の一つは、DNAの副溝に結合してDNAの屈曲を促進する核酸結合因子であるHMG−1である。エンハンセオソームタンパク質としては、たとえば、DNA屈曲タンパク質、HMG box含有タンパク質、SRY、LEF−1、HMG−1、HMG−2、転写因子および基本転写因子が挙げられる。
本明細書で用いられるような「基本転写因子」という用語は、RNAポリメラーゼIIおよびそれに関連する因子を表し、これらのものはこの分野において広く知られている。基本転写因子としては、RNAポリメラーゼII、TFIID、TFIIA、TATA結合タンパク質、TFIIB、TFIIF、TFIIE、TATA結合タンパク質関連因子、NTF−1およびSp1が挙げられる。
クロマチンリモデリング因子は、ヘテロクロマチン(またはその他の転写的に不活性な遺伝子の領域)およびユークロマチン(またはその他の転写的に活性な遺伝子の領域)の維持に関与する。これらは、染色体伸長の全体的なサイレンシングや遺伝子刷り込みなどの現象にも関与する。クロマチンリモデリングタンパク質としては、たとえば、ヌクレオソームタンパク質(ヒストンなど)、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(「HAT」)、ヒストンデアセチラーゼ(「HDAC」)、アミノ酸メチルトランスフェラーゼ(アルギニンメチルトランスフェラーゼなど)、DNAメチルトランスフェラーゼ、ヌクレオプラスミン、高移動度群(HMG)タンパク質、リプレッサー複合体タンパク質、ポリコーム関連因子およびトリソラックス関連因子、SWI/SNF複合体成分、Sin3リプレッサー複合体成分、RSC複合体成分、NURF複合体成分、Pc−G複合体成分、trxG複合体成分、CpGメチラーゼ、MeCP1ならびにMeCP2が挙げられる。
ゲノム維持酵素は、損傷したDNAの修復、DNAの正確な複製および組み換えの間の遺伝情報の交換に有用な核酸結合因子およびその他のタンパク質である。これらには、たとえば、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、塩基除去修復酵素、ヌクレオチド除去修復酵素、相同組み換え酵素、末端結合酵素、ミスマッチ修復酵素、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、二重鎖切断修復酵素、一重鎖切断修復酵素、転写共役修復酵素、連結酵素、損傷横断合成酵素およびテロメアの代謝に関与する酵素が含まれる。本発明を実施する目的で、p53は、細胞周期チェックポイント遺伝子の産物として、その機能の故に、転写因子と、またゲノム維持酵素と考えられる。
本明細書で用いられるような「核酸結合因子の活性」という用語は、サンプル中の核酸結合因子の完全な核酸結合エレメントについての比活性、量または親和性を包含し、および、核酸構成部分のセットまたは完全な核酸結合エレメントを含む核酸構成部分のペアの会合の調節を包含するように意図された用語である。
本明細書で用いられるような「リンカー」または「リンカー分子」という用語は、核酸構成部分のセットに取り付けられるあらゆるポリマーを表し、ここで、核酸構成部分のセットは完全な核酸結合エレメントを含み、この取り付けは共有的でも非共有的でもよい。リンカーはアミノ酸、ヌクレオチドなどのポリマーでもよい。好ましいリンカー分子は柔軟性があり、および核酸結合因子が核酸構成部分のセットに結合することに干渉しないものである。好ましいリンカー分子は、12の部分から構成されるSpacer 18 phosphoramidate(グレン・リサーチ社(Glen Research)、スターリング、バージニア州)であり、その構造を図11Bに示す。
本明細書で用いられるような「核酸結合タンパク質補調節因子」という用語は、一般に、小さな調節化合物(リガンド)、薬物、汚染物質、重金属、夾雑物、毒素、あらゆる化学的な部分(イオンでもまたは分子化合物でもよい)、翻訳後修飾などの細胞イベントまたはアミノ酸ポリマーを表す。即ち、核酸結合因子の核酸エレメントとの会合を本質的に仲介することができる任意のものである。核酸結合タンパク質補調節因子としては、たとえば、カルシウムイオン、cAMP、一酸化窒素(NO)およびIP3などの二次メッセンジャー分子も挙げられるが、これらに限定されるものではない。核酸結合タンパク質補調節因子のその他の具体例としては、抗生物質およびその他の薬物、S−アデノシルメチオニン、ステロイド、レチノイン酸化合物、甲状腺ホルモン、ビタミンD、亜ヒ酸塩ならびに転写補調節因子が挙げられる。核酸結合タンパク質補調節因子のさらなる具体例については、クラックソン、ティー(Clackson,T.)、「小分子による哺乳動物遺伝子の発現の調節(Controlling mammalian gene expression with small molecules)」、Curr.Opin.Chem.Biol 1:210−218(1997)、マナビック(Mannervik)ら、「発生における転写補調節因子(Transcriptional coregulators in development)」、Science 284:606−609(1999)および「遺伝子VII」、ベンジャミン・レビン、オックスフォード大学出版局を参照することであり、これは参照してその全体が本明細書に組み込まれる。核酸結合タンパク質補調節因子には、リン酸化、脂質化もしくはその他の翻訳後修飾などの細胞イベント、アダプター分子との会合もしくはアダプター分子からの解離、または核酸結合因子の核酸エレメントへの結合に影響を与えるかもしくはそれを仲介するタンパク質分解事象も挙げられる。核酸結合タンパク質補調節因子としては、細胞イベントに影響を与えるこれらの酵素および部分が挙げられる。核酸結合タンパク質補調節因子とは、核酸結合因子が核酸エレメントに会合することを仲介するあらゆる薬物、薬剤、試薬、見込みのある薬物、見込みのある薬剤または見込みのある試薬も表す。「仲介」または「会合の仲介」とは、核酸結合因子が同族の核酸エレメントに結合することを、部分的にまたは完全に乱す、または部分的にまたは完全に促進するという意味である。補調節因子は、たとえば、当該補調節因子が(1)核酸結合因子をその同族結合エレメントと結合させる(ここで、当該補調節因子が存在しない場合、結合因子は同族のエレメントと結合しない)または(2)その同族結合エレメントから核酸結合因子を解離させる(ここで、当該補調節因子が存在しない場合、結合因子はその同族エレメントと結合する)のいずれかの場合、核酸結合因子の活性を仲介している、または核酸結合因子のその同族核酸エレメントとの会合を仲介していると言われる。
本明細書で用いられるような「核酸結合タンパク質補調節因子活性」という用語は、サンプル中の補調節因子の比活性または量を含み、ここで、「活性」には、同族の核酸結合エレメントに対する核酸結合因子の親和性の増加、同族の核酸結合エレメントに対する核酸結合因子の結合の促進、同族の核酸結合エレメントに対する核酸結合因子の親和性の減少、または同族の核酸結合エレメントに対する核酸結合因子の結合の抑止を含む。
本明細書で用いられるような「バイオセンサー」または「バイオセンサー測定法」という用語は、核酸、ポリペプチド、炭水化物、脂質、ステロイドなどの生体分子を基礎とするあらゆるデバイスまたは構成を表す。このものは、核酸結合因子の活性に影響を与える細胞イベントおよび翻訳後修飾を含めた、核酸結合エレメントもしくはその断片、核酸結合因子または核酸結合タンパク質補調節因子の活性の検出、定量、または測定に用いられる。
本発明の実施態様の説明
核酸結合因子およびその補調節因子の活性を測定するための新規なバイオセンサーおよび方法が開示される。本明細書で説明する新規なバイオセンサーおよび方法は、現存する技術を超える明確な利点と利益とを有する。これらの利益としては、数ある中で、高感度、シグナルに対するノイズの低い比および複数を検出する形式が挙げられ、この複数を検出する形式は、本発明を実行する者が、彼らの当面のスクリーニング系に組み込めるように検出形式をカスタマイズして採用することが可能にする。同族タンパク質結合部位に対応する配列が二つの核酸分子の間で分割されるように、これらの二つの核酸分子を調製するという着想が本発明に密接に関連している。この二つの核酸分子(本明細書では核酸構成部分と称する)は、核酸構成部分がいくらか会合する傾向を持つように、短い相補的なオーバーハングを含んでいてもよいが、この傾向は小さく設計されるため、タンパク質が存在しない場合は核酸構成部分間の会合はほとんど生じない。二つの核酸構成部分間の会合によってタンパク質についての同族結合部位が再形成されるので、タンパク質が存在する場合はその同族の核酸結合部位に対するタンパク質の親和性によって、二つの核酸構成部分の会合が完成する方向に促進される。核酸−タンパク質複合体の形成を検出することは、二つの核酸構成部分のそれぞれを、ルミネセンスプローブ、蛍光色素、ケミルミネセンス基質または比色分析用基質で標識することによって成し遂げられる。核酸−タンパク質複合体における二つの核酸断片間が物理的に近接することによって、蛍光シグナルの変化についてのメカニズム、または核酸−タンパク質複合体の形成に関連する比色分析用/ケミルミネセンス生成物形成のメカニズムが提供される。さらに、特にDNA修復酵素の活性を測定するために本発明を適合化する場合、単一のバイオセンサーにおいて三つ以上の核酸構成部分を用いてもよい。
本発明の別の実施態様において、核酸構成部分の一つが固体基質のビーズ(ミクロスフェア)に取り付けられてもよく、その他の核酸構成部分が、ルミネセンスプローブまたは蛍光プローブなどの検出可能な標識で標識されてもよい。同族の核酸結合因子が存在する場合、ビーズまたはミクロスフェアが検出可能な標識で標識されるように、核酸−タンパク質複合体が形成される。蛍光活性化セルソーティングまたはフローサイトメトリーデバイスなどの技術的に認められた方法を用いて、標識ビーズまたは標識ミクロスフェアを検出してもよい。本実施態様は、一致に基づくルミネセンスシグナルの検出方法の代表的なものである。
本発明を実施する際に、核酸構成部分(その核酸構成部分の一以上が検出可能な標識に取り付けられていてもよい)を原核細胞内または真核細胞内に置くことができることは、当業者には明白である。核酸およびその他の生体分子を細胞内に導入する方法は、この分野において十分理解されており、エレクトロポレーション、カチオン性脂質に基づくトランスフェクションなどの方法が挙げられる。細胞が、核酸結合因子もしくはその補調節因子をありのままに発現しても、または修飾して発現してもよいことが想定されている。細胞のルミネセンスの変化を測定することによって、核酸結合事象を測定してもよい。
FRET(ストライヤー、エル、Ann.Rev.Biochem.47,819−846,1978)、蛍光相互相関分光法(「FCCS」)(マイチ(Maiti)ら、Proc.Nat’l Acad Sci USA 94,11753−11757,1997)、フローサイトメトリー(ノーランおよびスカラー(Nolan and Sklar)、Nature Biotechnology 16:633−638,1998)、シンチレーション近接(「SPA」)(ハートおよびグリーンワルド(Hart and Greenwald)、Molecular Immunology 16:265−267,1979;米国特許第4,658,649号)、ルミネセンス共鳴エネルギー転移(LRET)(マティス、ジー(Mathis,G.)、Clin.Chem.41,1391−1397,1995)、直接消光(チャギ(Tyagi)ら、Nature Biotechnology 16,49−53,1998)、基底状態の複合体の形成(パッカード、ビー・ゼット、トプチギン、ディー・ディー、コモリヤ、エイおよびブランド、エル(Packard,B.Z.,Toptygin,D.D.,Komoriya,A.,and Brand,L.)、Biophys.Chem.67,167−176,1997)、ケミルミネセンスエネルギー転移(CRET)(キャンベル、エイ・ケイおよびパーテル、エイ(Campbell,A.K.,and Patel,A.)、Biochem.J.216,185−194,1983)、バイオルミネセンス共鳴エネルギー転移(BRET)(シュー、ワイ、ピストン、ディー・ダブリュ、ジョンソン(Xu,Y.,Piston D.W.,Johnson)、Proc.Natl.Acad.Sci.,96,151−156,1999)、またはエキサイマー形成(ラコビッツ、ジェイ・アール、蛍光分光法の原理、クルーワー・アカデミック/プレナム・プレス、ニューヨーク、1999)などの、ルミネセンスシグナルを検出するための、近接性に基づくまたは一致に基づくあらゆる方法は、本アッセイの設計に適合する。さらに、たとえば、この分野において理解されているアルカリホスファターゼ−NBT/BCIPシステムなどのあらゆるケミルミネセンス分析または比色分析を本発明に用いてもよいことが想定されている。本発明は、あらゆる核酸結合タンパク質に適用することができる。何故ならば、本発明は、定められたタンパク質についての特定の特徴に基づくものではなく、そのような核酸結合因子のすべての一般的な性質に基づくものだからである。本発明は、シグナル検出方式と用いる蛍光プローブの種類について、極めて高い自由度を提供する。多色検出も容易に実施できる。
上記の本発明によると、FCCS検出では、二つの核酸構成部分を含むサンプル中の蛍光強度シグナルの変動を測定する必要があり、ここで、それぞれの核酸構成部分は異なる発光波長を有する蛍光色素で標識される。同族の核酸結合因子タンパク質の存在下での、蛍光色素で標識された二つの核酸構成部分の会合を、二つの蛍光色素に対応するそれぞれのシグナル間の相互相関性を検出することによって測定してもよい。二つの異なる蛍光色素で標識された二種の高分子間の会合を検出するためにFCCSを利用することは、リッペ、ケイ(Rippe,K.)、「二色蛍光相互相関分光法によって研究される、二つの二本鎖DNAのNtrC−エンハンサー複合体との同時結合(Simultaneous Binding of Two DNA duplexes to the NtrC−Enhancer complex Studied by Two−Color Fluorescence Cross−Correlation Spectroscopy)」、Biochemistry 39,2131−2139,2000に記載されており、参照して本明細書に組み込まれる。
上記の本発明によると、フローサイトメトリーを用いて、ルミネセンスまたは蛍光で標識された核酸構成部分の、「標的」核酸構成部分との会合を検出してもよく、この標的核酸構成部分はミクロスフェアの表面上に固定される。類似の状況でフローサイトメトリーを用いることが、ノーラン、ジェイ・ピーおよびスカラー、エル・エイ、「分子の相互作用を鋭敏でリアルタイムに測定するためのフローサイトメトリーの登場(The emergence of flow cytometry for sensitive,real−time measurements of molecular interactions)」、Nature Biotechnology 16,633−638,1998に記載されており、参照して本明細書に組み込まれる。一つの実施態様において、一つの核酸構成部分がミクロスフェアに取り付けられており、当該核酸構成部分は一つの蛍光色素で標識されていても、または標識されていなくてもよく、そしてミクロスフェアとしては直径が数マイクロメートルのものが好ましい。第二核酸構成部分は蛍光色素で標識されてもよく、ミクロスフェアが取り付けられた核酸構成部分も標識されている場合、この蛍光色素は別の色とする。同族の核酸結合因子の存在下で、フローサイトメトリーを用いて、二つの核酸構成部分の会合を測定してよい。ここで、粒子の蛍光の変化として、または核酸構成部分の両者が蛍光色素で標識されている場合では二種の異なる色の蛍光間の比率の変化として測定される。
上記の本発明によると、シンチレーション近接アッセイ(「SPA」)を用いて、核酸結合因子活性を測定してもよい。一つの実施態様において、一つの核酸構成部分が固体のシンチラントを含むミクロスフェアに取り付けられ、およびその他の核酸構成部分が放射性同位体、好ましくはトリチウムで標識されている。同族の核酸結合因子の存在下で、放射性同位体標識がシンチラントを含むミクロスフェアに接近し、それによってシンチラントから光を放射させる。この分野において認められているシンチレーションを検出する手段によって、この光を検出してもよい。SPAの方法は、ハートおよびグリーンワルド、Molecular Immunology 16:265−267,1979および米国特許第4,658,649号に記載されており、参照して両方が本明細書に組み込まれる。
その他の実施態様において、本発明は、解離定数などの核酸−タンパク質の複合体形成の物理パラメータを迅速に測定するための手段を提供する。本発明は、さらに種々の核酸結合エレメントに対する核酸結合因子の親和性を測定するための手段も提供する。この実施態様において、種々の核酸結合エレメントを含む核酸を核酸結合因子およびその同族の標識核酸構成部分と混合する。核酸結合因子を得ようと競合するこれらの種々の核酸結合エレメントは、対照と比較すれば、ルミネセンスシグナルの出力に影響を与える。
さらに、多数のタンパク質の核酸結合活性が、その他の分子、またはcAMPもしくはIP3などの核酸結合タンパク質補調節因子によって調節されていることを考えれば、本発明によって、これらのその他の分子または核酸結合タンパク質補調節因子を検出することができる。同様に、新規の薬剤、その他の核酸結合タンパク質補調節因子および分子、または核酸−タンパク質相互作用を仲介する薬物を特定するための基盤として、本発明を用いてもよい。さらに、本発明を用いてエンハンセオソーム構造または過剰なクロマチン構造を含むタンパク質を特定してもよく、ここで、このタンパク質はDNAと直接的に結合することはなく、むしろその他の核酸結合因子と直接的にまたは間接的に結合する。
図1Aは、本発明において記載されているように、配列特異的核酸結合因子を検出するための基本的な概念を説明する図である。本発明の好ましい実施態様において、二つの核酸構成部分を調製する。ここで、それぞれの構成部分は、タンパク質についての同族結合部位に対応する核酸配列の一部を含む。当業者は、本発明を実施する際に、このような核酸構成部分を設計するためのいくつかの異なる可能性が存在することを認識しよう。本発明の一つの側面において、二つの核酸構成部分は短い相補的なオーバーハングを含み、これによって二つの構成部分がアニールするためのいくらかの親和性が提供される。本発明の代替的な側面において、短いDNA配列(すなわち10塩基対(bp)以下のもの)に効率的に結合することができるタンパク質にとって有用であると想定されるものは、二本鎖核酸の二つの一本鎖構成部分に対応する二つの核酸構成部分である。「一本鎖」オーバーハングの長さが、同族タンパク質が存在しない場合での二つの核酸構成部分が会合する傾向を決定し、そしてその長さは、測定時に用いられる核酸構成部分の濃度での自発的な再アニーリングの能力が極めて小さくなるように選ばれる。従って、同族タンパク質が存在しない場合、二つの核酸分子間の会合はほとんど生じない。同族タンパク質が存在する場合、核酸に対するタンパク質の親和性によって二つの核酸構成部分のアニーリングが促進され、そして特定の核酸−タンパク質複合体が形成される。核酸構成部分の再アニーリングによって二つの標識または蛍光色素が接近させられることになり、そしてこのタンパク質によって誘導される接近を利用して、ルミネセンスシグナルの変化または有色生成物の生成を生じさせる。その結果、このことは核酸−タンパク質複合体の形成を示すものとなる。
本発明の好ましい実施態様の物理的な根拠は、核酸−タンパク質複合体が形成するための自由エネルギー(ΔG0)と、与えられた任意のタンパク質および核酸の濃度において形成される核酸−タンパク質複合体の量を記述する結合平衡定数(K)との間の基礎的な関係である。
タンパク質がその同族の核酸部位と結合するための自由エネルギーをΔG0とすると、同族結合部位を図1Aに示されるような二つの別個の核酸構成部分を持つ二つの「部分的部位」に分割することは、部分的部位に結合する自由エネルギーがおおよそΔGの1/2という結果になる。平衡定数(K)と自由エネルギー(ΔG0)とは対数の関係にあるので(式1)、結合自由エネルギーを半減させると結合定数は数桁小さくなる。従って、タンパク質がその同族の完全な部位に効率的に結合する条件下では、タンパク質が部分的部位に検出可能な程度に結合するはずがない。部分的部位と比べた完全な部位に対するタンパク質の親和性のこの大きな違いは、タンパク質が存在する場合での、二つの核酸部分的部位が再アニーリングする原動力である。
本発明は理論的な考察によって束縛されていないが、次の反応スキームで図1で示される検出システムの作用を説明する。
ここで、DNA−Aはアクセプター標識されたDNAの部分的部位であり、DNA−Dはドナー標識されたDNAの部分的部位であり、Pは核酸結合因子であり、K
1はDNA−A成分とD−DNA成分のアニーリングについての平衡定数であり、そしてK
Dは同族の核酸結合部位に対するタンパク質Pの結合についての平衡定数である。異なる長さを持つ二種の相補的なオーバーハングについて計算した結果を、図2に示す。ここでは、オーバーハングの長さがK
1の値を左右している。これらのシミュレーションから、本明細書で説明され、図1で示された本発明の基本設計の実現可能性が実証され、そして容易に測定することができる観測可能なシグナルの変化(シグナルのその変化が蛍光エネルギーの転移によるものであろうと、またはケミルミネセンスもしくは有色生成物の生成によるものであろうと)を、通常観察される核酸結合因子についての広範囲の平衡定数と共に検出できるということが実証される。従って、本発明をあらゆる核酸結合因子に対して一般的に適用することは、すべての核酸結合因子の一般的な性質(この一般的な性質とは完全な同族結合部位への結合についての高い親和性である)に基づいたことと、そして相互作用の自由エネルギーと結合平衡定数との間の一般的な熱力学的対数関係に基づいたことの結果である。
本発明によって、種々のルミネセンス分析用または比色分析用プローブを用いる場合での、核酸分子内に当該プローブを取り付けるための部位を選択する場合での、およびシグナルの発生と検出のための特定の方法を選択する場合での広範囲の自由度が提供される。オリゴヌクレオチドを自動的に合成している間に、市販の試薬によって、オリゴヌクレオチドの5’末端内、3’末端内または内部位置に種々のプローブを組み込むことが可能である。従って、オリゴヌクレオチド合成の間にプローブを組み込んでもよく、または反応性のアミノ基または反応性のチオール基で誘導体化されたオリゴヌクレオチドの合成後修飾を経て、プローブをオリゴヌクレオチドに取り付けてもよい。プローブがタンパク質−核酸複合体の形成に干渉しない限り、本発明がプローブの性質および位置に関して何らかの制限を負わせることはない。代替的な標識核酸構成部分のいくつかの実施態様が考えられる。たとえば、ある種のタンパク質に関して、そのタンパク質についての結合部位の範囲内にプローブを置き、従って、タンパク質の結合に潜在的に干渉する恐れがある設計を採用することができないであろう。このような場合において、一つの選択肢は、タンパク質結合部位の外側にプローブを置くという設計を採用する。
別の実施態様において、本質的にアミノ反応性またはチオール反応性の、任意の発光スペクトルを示すあらゆるルミネセンスプローブを用いて、オリゴヌクレオチドを標識することができる。従って、応用例の具体的な必要性に応じて、測定におけるルミネセンスまたは蛍光シグナルの色を選択することができる。このような能力の結果として、核酸構成部分の混合物、または異なるタンパク質を認識するように設計され、かつ異なる発光スペクトルを示すルミネセンスプローブで標識された構築物の混合物を用いる一つの測定キット内で、二種以上のタンパク質を同時に特定することができる。
本発明を利用する核酸結合因子の検出感度は、少なくとも二つの因子によって影響を受ける。すなわち、ルミネセンスシグナルの検出感度および核酸結合部位に対するタンパク質の親和性である。本発明の検出感度がシグナル検出の感度によって制限される可能性は高くない。というのは、特に蛍光検出の場合では、市販の計測器は、ピコモル濃度の蛍光色素にて蛍光を検出できるのが普通であるからである。さらに、シグナル検出における最近の進歩の結果、蛍光色素のただ一つの分子を十分に検出できる程度の感度となった。従って、検出感度は核酸結合部位に対するタンパク質の親和性に左右される可能性がより高い。従って、核酸結合因子の検出範囲は、同族の核酸結合部位に対する核酸結合因子の親和性の範囲内となる。この範囲は、タンパク質の濃度として低ピコモル濃度から高ナノモル濃度となるのが普通である。
本発明はまた、検出アッセイに用いられる核酸分子の設計において高い柔軟性を提供する。たとえば、核酸分子の長さに制限はなく、および追加の要素を核酸分子内に組み込んでもよい。一つの実施態様において、第二タンパク質についての代わりの結合部位を、核酸構成部分のうちの一つのものの中に組み込んでもよい。ここで、測定されるタンパク質と共に、第二タンパク質は核酸との結合に協力する。次いで、この第二タンパク質の存在下でアッセイを行って、またはこの第二タンパク質の存在下および非存在下でアッセイを行って、第二タンパク質の存在によって誘導される、研究対象のタンパク質の活性の違いを検出してもよい。
別の実施態様において、このアッセイに用いられる核酸構成部分を固体支持体の表面に取り付ける。核酸を固体支持体に取り付けるための方法はこの分野において周知であり、文献に記載されている(ロジャーズ、ワイ・エイチ(Rogers,Y.H.)ら、Anal.Biochem.266,23−30,1999;ジョース、ビー(Joos,B.)ら、Anal.Biochem.247,96−101,1997;ランニング・ジェイエーおよびウルデア・エムエス(Running JA,and Urdea MS)、BioTechniques 8:276277,1990;これらは参照して本明細書に組み込まれる)。このようにして、固体支持体の表面から発するシグナルをモニタリングすることによって、タンパク質の検出が達成される。異なるタンパク質を認識するように設計された複数のDNA構築物を、多数の核酸結合因子を同時に検出することができるアレイをもたらすように固体表面に取り付けてもよい。固体支持体は、ニトロセルロース、PVDFもしくはナイロンなどのメンブレン、ライトガイドのチップ、光ファイバー、導電性材料もしくはバイオセンサーデバイス、プラスチック製の組織培養皿、またはマルチウェルプレートであり得る。
別の実施態様において、このアッセイに用いられる核酸構成部分は単一の核酸分子を含んでもよく、ここで、それぞれの核酸構成部分を核酸の長さによって区分する。このことによって、核酸構成部分が近接できるように、完全な核酸を屈曲させることが可能となる。このような形式を用いて、たとえば高次クロマチン構造またはエンハンセオソーム構造を含む核酸結合因子を検出しても特定してもよい。
別の実施態様において、柔軟性に富むリンカー分子を介して、このアッセイに用いられる核酸構成部分を互いに結合させてもよい。核酸構成部分の結合によって、タンパク質と同族の核酸結合部位との相互作用が促進されることになり、そして相互作用の動態をより速くすることが可能となる。本明細書に記載されているように、柔軟性に富むリンカー分子としては、spacer−18−phosphoramidate部分のポリマーが好ましい。
本発明の格別の長所は、操作が簡単で、アッセイ溶液を単に混合することと、その後に短時間のインキュベーションとシグナルの検出だけが求められることである。このアッセイ溶液には試験溶液と共に核酸構成部分が含まれ、試験溶液は核酸結合因子、核酸結合タンパク質補調節因子、またはクロマチン構造もしくはエンハンセオソーム構造に関係するその他のタンパク質成分を含む。リン光、シンチレーションなどのこの分野において知られている方法を介して、シグナルを増強してもよい。
別の実施態様において、本発明は、患者または被検体の病気を診断する方法を対象とし、ここで、その病気は核酸結合因子によって、または同族の核酸結合エレメントにおける突然変異によって仲介されるものである。患者または被検体はヒトでもその他の動物でもよい。この病気は、たとえば乳ガンなどの改変された核酸結合因子を原因とするものであってもよい。乳ガンは、DNA修復酵素のBRCA1またはBRCA2の活性の変化に起因する。病気およびその分子面の根拠のその他の例を、表1に記載する(参照して本明細書に組み込まれるヘイジマーカーズ、ジェイ・エイチ・ジェイ、Nature 411:366−374,2001を参照すること)。表1に示された病気および症候群は、本発明を用いて診断し得る病気の小さなサブセットを表す。表1に示された情報は例示を目的とするものであり、従って、制限するものとして解釈することはできない。
タンパク質またはその他の核酸結合タンパク質補調節因子は、患者より得られるサンプルから、標準的な抽出プロトコールを用いて抽出してもよい。このようなプロトコールはこの分野において十分理解されている。生検組織、血液細胞、皮膚細胞、毛包細胞、組織栓、口腔前庭から得られる上皮細胞、またはその他の組織の供給源から、サンプルを得てもよい。サンプルとしては、植物組織や微生物または真核細胞の培養液を含めてもよい。本明細書に記載されているように、次いで、抽出されたサンプルを本発明の核酸構成部分と混合し、核酸結合活性、核酸結合活性の促進または核酸結合活性の抑止について測定する。
本発明を用いて、異常な核酸結合因子が同族の核酸エレメントに結合することを仲介する薬剤、薬物、リガンド、夾雑物、汚染物質またはその他の核酸結合タンパク質補調節因子を、あるいは逆に正常な核酸結合因子が異常な核酸エレメントに結合することを仲介するそれらのものを特定してもよい。別の実施態様において、本発明を用いて、異常な核酸結合因子が同族の核酸エレメントに結合することを妨害する薬剤、薬物、リガンド、夾雑物、汚染物質またはその他の核酸結合タンパク質補調節因子を、あるいは逆に正常な核酸結合因子が異常な核酸エレメントに結合することを妨害するそれらのものを特定してもよい。「異常」という用語は、患者内で見出される核酸またはタンパク質の常軌を逸した形態または突然変異した形態を表す。このものは、もはや生理的に正常なやり方でそれぞれの相手と結合することはできない。
別の実施態様において、本発明はサンプルにおける核酸結合因子の活性または核酸結合タンパク質補調節因子の活性を検出すること、定量することまたは測定することを示し、ここで、第一核酸構成部分は固体基質に取り付けられ、および第二核酸構成部分は検出可能な標識に取り付けられている。固体基質の具体例としては、ライトガイドのチップ、光ファイバー、導電性材料もしくはバイオセンサープローブ、ガラス製のプレート、皿、スライドガラスまたはビーズ;ポリスチレン、アクリルアミド、アガロースなどのあらゆる種類のビーズ;ポリビニルジフルオリド、ナイロン、ニトロセルロースなどのメンブレン;および組織培養形式のプレート;マルチウェルプレートなどが挙げられる。本発明者は、第一核酸構成部分/固体基質の部分を、検出可能な標識に取り付けられている第二核酸構成部分、ならびに(1)同族の核酸結合因子および核酸結合タンパク質補調節因子を含むサンプル、または(2)核酸結合因子を含むサンプルのいずれか、と混合することを想定している。核酸結合因子と、第一核酸構成部分および第二核酸構成部分(共に核酸結合エレメントを含む)との間の陽性の相互作用は、固体基質に取り付けられている検出可能な標識をもたらす。固体基質上での検出可能なシグナルは、核酸結合因子と核酸結合エレメントとの間の陽性の相互作用を示すものと判断される。この実施態様によると、検出可能なシグナルは、上記のようにFRETなどの近接性に基づく検出測定法には必ずしも必要ではないであろうが、単一の検出可能な標識は必要であろう。
核酸結合タンパク質補調節因子についてのバイオセンサー
本明細書に上述されているように、近接性に基づく、核酸結合タンパク質補調節因子の活性を測定する方法に加えて、本発明は、核酸結合の補調節因子についての、または翻訳後修飾および効果的な酵素などの核酸結合因子活性に影響を与える細胞イベントについてのバイオセンサーのより広範囲の実施態様を含む。本明細書に上述されているように、核酸結合タンパク質補調節因子についてのバイオセンサーは、「分割した」核酸結合エレメント−プラス−核酸結合因子の技術を利用している。しかし、補調節因子を検出する方法は、近接性に基づく検出方法に限定されるものではなく、ありとあらゆる分子の検出方法を採用してもよい。
「分子の検出方法」としては、たとえば、蛍光、蛍光偏光、蛍光消光、放射能の検出、ラジオシンチグラフィー、リン光、電気化学的な変化、酸化還元電位の変化、ケミルミネセンス、比色分析用基質の検出およびその他のこの分野において理解されている方法が挙げられる。分子の検出方法は、ゲーリー・シー・ハワード(Gary C.Howard)による「生体系における非放射性物質の検出方法(Methods in Nonradioactive Detection in Biological System)」、アップルトン・アンド・ラング(Appleton and Lange)社、1993年において全般的に検討されており、参照して本明細書に組み込まれる。たとえば、一般的な応用例では一つの核酸構成部分だけが標識され、ここで、たとえば、蛍光分子、放射性核種、あらゆる有用なリンカー分子(ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、プロテインA、プロテインG、抗体もしくはその断片、Grb2、ポリヒスチジン、HRPO、Ni2+、FLAGタグ、mycタグなど)、重金属、酵素(たとえばアルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼおよびルシフェラーゼが挙げられる)、電子供与体/受容体、アクリジニウムエステル、および比色分析用基質などの標識が、検出可能で有用な任意のマーカーとなり得る。当業者であれば、上記にはないが有用で検出可能な標識を容易に認識し、本発明の実施の際に、これらを採用することができる。
一つの核酸構成部分は検出可能な標識に取り付けられている一方、その他の核酸構成部分はビーズ、メンブレン、スライドガラス、プレート、ライトガイド、光ファイバー、導電性材料、バイオセンサーチップ、プローブなどの固体基質に固定されていてよい。しかしながら、本発明を順調に実施するためには、全部の核酸を固体基質に取り付ける必要はない。
サンプル中の核酸結合タンパク質補調節因子の活性を測定するために、そのサンプルを一つまたはそれ以上の核酸結合因子、第一核酸構成部分および第二核酸構成部分、と共に混合する。核酸結合因子が同族の核酸結合エレメントと結合する能力は、核酸結合タンパク質補調節因子の活性によって仲介されなければならない。ここで「仲介される」という用語は、本明細書では、核酸結合因子が同族の核酸エレメントに結合することを、部分的にもしくは完全に抑止するか、または部分的にもしくは完全に促進することと定義される。
第一核酸構成部分が固体基質に取り付けられ、および第二核酸構成部分が検出可能な標識に取り付けられるというシナリオによると、サンプルが核酸結合因子を直接的にまたは間接的に活性化する核酸結合タンパク質補調節因子を含む場合、活性化された核酸結合因子は、それぞれの核酸構成部分の間の相互作用を安定化させる。その結果、標識核酸構成部分は固体基質に取り付けられることとなり、そして検出可能な標識も同様に固体基質に取り付けられることとなり、次いで検出されるようになり得る。本発明者は、核酸結合因子が固体基質に固定され、したがって第一および第二核酸が固体基質に取り付けられなくともよいことも想定している。この実施態様において、核酸構成部分の一方または両方が検出可能な標識に取り付けられてもよい。
さらに別の実施態様において、第一核酸構成部分または核酸結合因子は固体基質に取り付けられず、および第二核酸構成部分または核酸結合因子が検出可能な標識に取り付けられている(この標識は、この例における説明として、蛍光色素としてもよい;図1A、図Bまたは図Cを参照すること)。活性化された核酸結合因子と「完全な」同族の核酸結合エレメントとの間の陽性の相互作用は、検出可能な事象(たとえば、検出可能な標識が蛍光色素であるシナリオにおける蛍光偏光または消光事象)をもたらす。
上で検討したように、原核細胞および真核細胞の両方における細胞のプロセスを調節することにおいて中心的な役割を果たす多数の核酸結合因子は、リガンド依存性の配列特異的核酸結合活性を有する(リガンド依存性という用語は、補調節因子依存性という用語と交換可能に用いられる。本明細書で用いられるような「リガンド」という用語は、全ての意図および目的において「補調節因子」という用語と同等である。)。これらの核酸結合因子の重要な特徴の一つは、これらの多くが、環境中に存在する特定の化学物質に対応して特異的に遺伝子発現を調節するよう進化してきたことである。この能力の実例が最近の学術論文で教示されており(ブレスラー(Bresler)ら、Applied and Environ.Microbiol.66:904−908,2000)、ここでは細菌の株の淘汰が記載されており、この株は、周囲の植物がコカインを生産する土壌中に見出され、この株はコカインを代謝することができる。この株は、コカインの代謝を可能とするタンパク質のセットを発展させてきたようであり、ここでタンパク質のセットはリガンド依存性の核酸結合因子を含んでいよう。従って、毒素、薬物、アルカロイド、汚染物質などを含むありとあらゆる分子が核酸結合タンパク質補調節因子として機能することができ、そしてこのようにして、本発明のバイオセンサーを用いてこれらの分子を検出することができる。
核酸結合タンパク質補調節因子の活性を測定するバイオセンサーおよび方法は、対応する天然の核酸結合因子が存在しない補調節因子の分子の検出または定量に適応することができる。そのような補調節因子の分子を認識する、人為的な因子または改変された因子を作製することができる。本発明者は、核酸結合因子を改変して、選択された任意の化学リガンドによってそれが調節され得るように工作できること、すなわち、バイオセンサーが望まれる、ありとあらゆる化学物質に対応することができる核酸結合因子を開発することを想定している。従って、本発明は、現在のところ対応する天然の受容体が知られていないありとあらゆる化学リガンドを検出するバイオセンサーおよび方法を対象とする。当業者は、技術的に高いレベルの能力を考慮して、この実施態様を首尾よく実施できることを予想しよう。たとえば、修飾されたリガンド結合ドメインを転写活性化ドメインと融合することによって、改変されたリガンド依存性の核酸結合因子を生み出すことができる。参照して本明細書に組み込まれるベールリ(Beerli)ら、「化学的に調節されるジンクフィンガー転写因子(Chemically regulated zinc finger transcription factors)」、J.Biol.Chem.275:32617−32627(2000)およびそこに挙げられた参考文献を参照すること。改変されたリガンド依存性の核酸結合因子も、インビトロでの酵素進化法を用い、そしてそれに続けて特異的なリガンド結合活性を検索するためのスクリーニングによって生み出すことができる。参照して本明細書に組み込まれるコーエン(Cohen)ら、「インビトロでの酵素進化:何百万の中から一つのものを単離するスクリーニングの挑戦(In vitro enzyme evolution:the screening challenge of isolating the one in a million)」、TRENDS in Biotechnology,19:507−512 (2001)およびそこに挙げられた参考文献を参照すること。さらに、細菌は環境に適合し、その環境内に存在する新たな化学物質を処理するという顕著な能力を発揮するので、着目のリガンドに抵抗性を示す細菌を選択することによって、改変されたリガンド依存性核酸結合因子を生み出すこともできる。次いで、リガンド特異的でリガンド依存性の核酸結合因子および同族の核酸エレメントを、これらのリガンド抵抗性細菌株から単離することができ、リガンド特異的バイオセンサーに用いることができよう。参照して本明細書に組み込まれるブレスラーら、Applied and Environ.Microbiol.66:904−908(2000)を参照すること。ここには、コカインに対する受容体を産生するコカイン抵抗性の細菌を単離したことが記載されており、この受容体は核酸結合因子である可能性が高い。本明細書で検討される「リガンド」は、本発明の目的に関して、核酸結合タンパク質の「補調節因子」と同義である。
核酸結合タンパク質補調節因子を検出するための、この核酸結合因子に基づくバイオセンサーを操作する好ましい方法は、実施例9および10に詳述されており、そこでは近接性に基づく蛍光測定法の使用を示している。ここで、両方の核酸構成部分は蛍光標識に取り付けられており、蛍光偏光測定では一つの核酸構成部分のみが蛍光色素に取り付けられ、ならびに比色分析では第一核酸構成部分が固体基質に、および第二核酸構成部分が有用なリンカー分子に取り付けられている。
上記の開示では本発明の好ましい実施態様のいくつかが記載されており、これらは本発明の範囲を制限するものではない。本発明を実施する際、当業者は、本明細書に明記されていない本発明のその他の実施態様を認識するであろう。さらに本発明を、以下に記載の実施例によって説明する。これらの実施例は本発明を説明するように意図されたものであり、本発明の範囲を制限するものとは解釈されない。
大腸菌に由来する配列特異的核酸結合タンパク質であるcAMP受容体タンパク質(CAP)の検出
CAPは細菌転写アクチベーターであり、配列特異的な様式でKd=約0.1nMにてDNAと結合する(バスビー、エスおよびエブライト、アール・エイチ(Busby,S.,and Ebright,R.H.)、J.Mol.Biol.293,199−213,1999)。コンセンサスCAP部位(エブライト、アール・エイチ、エブライト、ワイ・ダブリュおよびガナサケラ、エイ(Ebright,R.H.,Ebright,Y.W.and Gunasakera,A.)、Nucleic Acids Res.17,10295−10305,1989)に対応する38bpのDNA配列を、CAPアッセイ試薬を調製するために必要なオリゴヌクレオチドを設計するための基礎として用いた。図1Aに説明されたスキームに従って調製した。図3は、用いた設計の詳細を示す。標準的なホスホルアミダート自動化オリゴヌクレオチド合成を用いて、次の四種のオリゴヌクレオチドを合成した(F=dT−フルオレセイン;D=dT−dabcyl)。
市販のdT−フルオレセインおよびdT−dabcyl(グレン・リサーチ社、スターリング、バージニア州)(ここで、dTとはデオキシチミジンを表す)を用いて、蛍光ドナー(フルオレセイン)および蛍光アクセプター(dabcyl)をDNA断片内に導入した。既に記述されているように(ハイドック、イーおよびハイドック、ティー(Heyduk,E.,and Heyduk,T.)、Anal.Biochem.248,216−227,1997)、RPCカラム(ファルマシア(Pharmacia)社)での逆相クロマトグラフィーを利用して、オリゴヌクレオチドを精製した。オリゴヌクレオチドを含む画分を真空遠心濃縮装置で乾燥させ、続けて50μLの水に溶かした。400μLに希釈した原液の少量のアリコートのUV−VIS吸収スペクトルを記録することによって、オリゴヌクレオチドの原液の濃度を測定した。CAP1オリゴヌクレオチド(配列番号1)をCAP4オリゴヌクレオチド(配列番号4)とハイブリッド形成させて二本鎖のCAP1/CAP4を作製し、そしてCAP2オリゴヌクレオチド(配列番号2)をCAP3オリゴヌクレオチド(配列番号3)とハイブリッド形成させて二本鎖のCAP2/CAP3を作製した。ハイブリッドを形成させるために、100μLの50mMのTris/HCl(pH8.0)、100mMのNaCl、1mMのEDTA中で、適切なオリゴヌクレオチドを10μMの濃度で混合し、95℃で1分間加熱し、次いで25℃で1時間冷却した。その後に、200μLの50mMのTris/HCl(pH8.0)、100mMのNaCl(または指示がある場合は50mMのNaCl)、1mMのEDTA、0.1mg/mLのBSA、および200μMのcAMP中で、25℃にてすべての蛍光測定を実施した。ここでは石英キュベットとAminco−Bowman Series 2蛍光光度計を用いた。励起波長を490nmとし、500nmから650nmの発光を記録した。
図4Aは、50nMの二本鎖のCAP2/CAP3のスペクトル(曲線1)と、50nMの二本鎖のCAP1/CAP4が存在する場合での50nMの二本鎖のCAP2/CAP3のスペクトル(曲線2)を示す。二本鎖のCAP1/CAP4が存在する場合でも、二本鎖のCAP2/CAP3の蛍光に有意な変化は見られなかった。このことは、CAPタンパク質が存在する場合でも、二本鎖のCAP2/CAP3と二本鎖のCAP1/CAP4との間の会合はほとんど生じないことを示唆する。図4Bは、CAPタンパク質の添加後に見られる蛍光の変化を示す。50nMの二本鎖のCAP1/CAP4のスペクトルと、50nMの二本鎖のCAP2/CAP3のスペクトルを記録した(曲線1)。CAPタンパク質を75nMで添加し、そしてインキュベーションから15分後にスペクトルを記録した(曲線2)。対照シグナル強度の約50%という主要な蛍光消光が見られた。このことは、CAPタンパク質が存在する場合では二本鎖のCAP1/CAP4と二本鎖のCAP2/CAP3との間の会合が促進され、および二本鎖のCAP2/CAP3中に存在するフルオレセイン(蛍光ドナー)が二本鎖のCAP1/CAP4中に存在するdabcyl(蛍光アクセプター)のごく近くにまで接近するとフルオレセインとdabcylとの間のFRETに起因する蛍光消光が生じる、という予想と一致する。
観察された蛍光消光の特異性を調べるために、cAMPが存在しない状態で図4Bで示された実験を繰り返した。CAPの配列特異的結合にはcAMPが存在する必要があり、およびcAMPが存在しない場合は、非特異的な弱い親和性での核酸結合が見られるのみである。cAMPが存在しない場合、CAPの添加後の蛍光の変化は見られなかった(図4C)。このことはさらに、本アッセイの特異性を示している。無関係の核酸結合タンパク質(すなわちTrpリプレッサー(「TrpR」))を高濃度(400nM)で添加した場合でも、蛍光の変化は見られなかった(図4D)。
図5は、非標識二本鎖DNAの添加がアッセイに与える影響を調べた実験を示す。次のオリゴヌクレオチドを用いて、二つの30bpの非標識二本鎖DNAを調製した。
30bpの二本鎖のものを調製するために、上記のCAPオリゴヌクレオチドについて記載されたようにして、オリゴヌクレオチドのSP1およびNSP1をそれぞれの相補的一本鎖オリゴヌクレオチドとハイブリッド形成させた。SP1・DNA(配列番号5)はCAPタンパク質についてのコンセンサス結合部位を含むのに対して、NSP1・DNA(配列番号6)はランダムなDNA配列に相当する。最初に、50mMのTris/HCl(pH8.0)、50mMのNaCl、1mMのEDTA、0.1mg/mLのBSA、および200μMのcAMP中に50nMのCAPが存在する場合での50nMのCAP2/CAP3のスペクトルと50nMのCAP2/CAP3のスペクトルとを記録した(曲線1、図5Aおよび5B)。次いで、濃度を高めた二本鎖のSP1(図5A)または二本鎖のNSP1(図5B)の存在下での測定を繰り返した。それぞれの二本鎖について次の濃度のものを用いた:19.6nM(曲線2)、39.1nM(曲線3)、58.7nM(曲線4)、97.6nM(曲線5)および194.2nM(曲線6)。これらの条件のそれぞれで見られた蛍光消光を、図5Cにプロットする。CAP結合部位を含む二本鎖DNAは、CPAタンパク質の検出を効果的に妨害できたのに対して、ランダムな配列を含む二本鎖のものはCAPの検出に何らの影響をも与えなかった。従って、図5に示す結果から、CAPを特異的に検出することについてのさらなる証拠が提供され、および種々の核酸分子に対するタンパク質の相対的な結合親和性を評価する際にこのような競合アッセイを用い得ることも示される。
図6は、本測定法において、CAPタンパク質の量を増やして添加した後に見られる蛍光の変化を示す。上記の実験および図4での実験と同じ条件下で実験を行った。約150nMのタンパク質で生じるシグナルの飽和まで、CAP濃度の上昇に比例して蛍光消光が強くなった。この結果は、このアッセイはサンプル中の核酸結合タンパク質の濃度を測定するために用い得ることを示す。
CAPに誘導される蛍光消光の動力学についても検討し、測定が完了するのに必要な時間を求めた(図7)。この実験において、励起波長を490nmに設定し、50nMのCAP2/CAP3と50nMのCAP2/CAP3の520nmでの蛍光強度を時間の関数として監視した。図7中の矢印で示した時点で、100nMのCAPタンパク質を添加して蛍光シグナルの監視を再開した。このデータによれば、この反応は約15分間で完了する。このことは、本測定法の完了には15分から30分間のインキュベーション時間で十分であることを示す。
異なる発光スペクトルを示す蛍光色素と蛍光シグナル検出の異なる方式とを用いての実証。
標準的なホスホルアミダート自動化オリゴヌクレオチド合成を用いて、次のオリゴヌクレオチド(それぞれCAP2およびCAP4と同一の配列を持つ)を合成した。ここでは、Xはアミノ−dTを表す:
オリゴヌクレオチドCAP2およびCAP4のそれぞれにおいて既に用いられたフルオレセイン−dTおよびdabcyl−dTが組み込まれた位置に相当する位置に、Amino−Modifier C2 dT(グレン・リサーチ社、スターリング、バージニア州)を組み込んだ。Amino−Modifier C2 dTは、あらゆるアミノ反応性蛍光プローブと共有結合させるために用いることができる反応性脂肪族アミノ基を含む。オリゴヌクレオチドのCAP5(配列番号7)およびCAP6(配列番号8)を、7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸のスクシニミジルエステルで修飾した。この蛍光色素は433nmで励起し、そして最大発光は475nmで生じることから、異なる発光色でアッセイを行うという可能性を与えるものである。蛍光色素を修飾するために、約20nmolのオリゴヌクレオチドを50μLの50mMのNaHCO3(pH8.3)中に溶かし、そして50nmolの乾燥7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸のスクシニミジルエステル(モレキュラー・プローブズ(Molecular Probes)社、ユージーン、オレゴン州)を添加した。反応混合物のインキュベーションを室温で一晩行った。結合しなかった過剰の色素をG−25スピンカラム(アマシャム・ファルマシア・バイオテック(Amersham Pharmacia Biotech)社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)で除去し、および既に説明したように、逆相クロマトグラフィーによって、標識オリゴヌクレオチドをさらに精製した。蛍光色素標識オリゴヌクレオチドを含む画分を真空遠心濃縮装置で乾燥させ、続けて50μLの水に溶かした。400μLに希釈した原液の少量のアリコートのUV−VIS吸収スペクトルを記録することによって、オリゴヌクレオチドの原液の濃度を測定した。7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸標識CAP5オリゴヌクレオチドをCAP3オリゴヌクレオチドとハイブリッド形成させて二本鎖のCAP5/CAP3を作製した。7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸標識CAP6オリゴヌクレオチドをCAP1オリゴヌクレオチドとハイブリッド形成させて二本鎖のCAP6/CAP1を作製した。ハイブリッドを形成させるために、100μLの50mMのTris/HCl(pH8.0)、100mMのNaCl、1mMのEDTA中で、適切なオリゴヌクレオチドを10μMの濃度で混合し、95℃で1分間加熱し、次いで25℃で1時間冷却した。
最初の実験(図8)では、二本鎖核酸のCAP5/CAP3とCAP4/CAP1とのペアをCAPアッセイにおける成果について試験した。この形式において、二本鎖のCAP5/CAP3中に存在する標識の7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸は蛍光ドナーとして機能し、および二本鎖のCAP4/CAP1中に存在する標識のdabcylは蛍光アクセプターとして機能する。50mMのTris/HCl(pH8.0)、100mMのNaCl、1mMのEDTA、0.1mg/mLのBSA、および200μMのcAMP中で、25℃にて実験を行った。図8の曲線1は、CAPタンパク質が存在しない場合での、CAP5/CAP3プラスCAP4/CAP1の50nMの溶液の蛍光スペクトルを示している。100nMのCAPを添加すると、蛍光シグナルの劇的な消光(約70%)という予想通りの結果になる(図8、曲線2)。
二番目の実験(図9)では、二本鎖核酸のCAP6/CAP1とCAP2/CAP3とのペアをCAPアッセイにおける成果について試験した。このアッセイ形式において、二本鎖のCAP6/CAP1中に存在する7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸は蛍光ドナーとして機能し、および二本鎖のCAP2/CAP3中に存在するフルオレセインはアクセプターとして機能する。この場合、ドナーならびにアクセプターの両方が蛍光を発する。50mMのTris/HCl(pH8.0)、100mMのNaCl、1mMのEDTA、0.1mg/mLのBSA、および200μMのcAMP中で、25℃にて実験を行った。図9の曲線1は、CAP6/CAP1プラスCAP2/CAP3の50nMの溶液の蛍光スペクトルを示している。励起波長を433nmとした。従って、主要な発光のピークを475nmで観察した。これは、7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸についての最大発光である。約520nmで見られる肩は、フルオレセインの残存発光が原因である。フルオレセインは433nmでも若干励起する。CAPの量を0nMから150nMの範囲で変化させて添加すると(曲線2から9)、際立った消光のピークが475nmに、および際立った増強のピークが520nmに観察される。フルオレセインの最大発光が520nmであることを思い出すこと。このデータから、475nmでの蛍光消光または520nmでの蛍光の増強のいずれかによって、CAPタンパク質またはあらゆる同族の核酸結合タンパク質の検出を達成してもよいことが示される。図9の挿入図にも示されているように、520nmの蛍光強度と475nmの蛍光強度との比率を用いて核酸結合タンパク質の濃度を測定してもよい。シグナル検出をこのような比率で測定する方式は特に有用かもしれない。というのは、些細な誤差(ピペット使用時の誤差、測定サンプル中に存在するいくつかの無関係の化合物による一般的な消光など)をより小さくする傾向があるからである。総合すれば、この実施例で提示されたデータは、本発明において記載されるアッセイ方法は、使用する蛍光プローブの性質、プローブの発光スペクトル、および蛍光シグナルの検出方式の点で極めて高い自由度を提供することを示している。
cAMPなどの核酸結合タンパク質補調節因子の検出。
多くの核酸結合タンパク質の活性は、小さな分子、その他のタンパク質または細胞イベント(リン酸化など)によって調節されている。従って、本発明を用いてこれらの調節分子または調節性の細胞イベントを特定してもまたは検出してもよい。
CAPタンパク質は、マイクロモル濃度の親和性をもってcAMPとcGMPの両方に結合する(タカハシ、エム、ブレイジー、ビーおよびバウドラス、エイ(Takahashi,M.,Blazy,B.,and Baudras,A.)、Biochemistry 19,5124−30)。従って、cAMPを特異的に検出するための試薬としては、CAPタンパク質それ自身は有効ではない。しかしながら、CAPの、その同族の核酸結合配列に対する高い親和性は、選択的にcAMPに依存しており、cGMPには依存していない。cAMPだけが熱力学的に配列特異的核酸結合に結合できるので、CAP結合部位を含むDNAが存在する場合、cAMPに対するCAPの親和性は約1000倍程度高くなる。それに対してcGMPに対する親和性は変わらないままである。従って、CAP結合部位を含むDNAが存在する場合、CAPは鋭敏かつ選択的なcAMPのセンサーとなる。
図4Cにおいて既に示されたように、cAMPの不存在下において、CAPタンパク質は蛍光シグナル強度を変化させることはない。CAPアッセイを用いるcAMPの検出を示すために、75nMのCAPを含む50mMのTris/HCl(pH8.0)、50mMのNaCl、1mMのEDTA、0.1mg/mLのBSA中のCAP1/CAP4プラスCAP2/CAP3の50nMの溶液の蛍光強度を、0nMから100mMの範囲の異なる濃度のcAMPにて測定した。図10は、予想通り、cAMPの濃度に比例した蛍光消光が、約5μMのcAMPで生じるシグナルの飽和を伴って、見られたことを示す。従って、本発明は、cAMP、または核酸結合を可能とするその他の任意の薬剤もしくはイベントについての鋭敏な検出器として用い得る。
このアッセイの設計の自由度(これは本発明の格別の長所である)によって、感度、蛍光発光の色および/または蛍光シグナルの検出方式に関して、アッセイの最適化が可能となる。本実施例ではcAMPを検出するために本発明を用いることについて図示している一方、本発明はcAMPの検出に限定されるものではないことを想定している。その存在が、核酸結合タンパク質によるDNAに対する親和性の変化に関連している可能性があるあらゆる分子を、本発明を用いて検出し得る。より一般的には、核酸結合タンパク質のDNAに対する親和性に影響を与えるあらゆるプロセスを、本発明を用いて分析し得る。
長い柔軟性リンカーで連結されたDNAを用いる変形アッセイ。
図1に示された測定法の特性は、核酸構成部分の全濃度に依存する。長い柔軟性リンカーによって、二つの二本鎖DNA−すなわち測定法の構成部分−を共有的に連結することにより、蛍光シグナルの検出が可能な範囲内であって、タンパク質が効果的に結合するのに必要な濃度の範囲内において、このアッセイはDNAの濃度に左右されないものとなる。図11は、CAPを検出するためのアッセイの変形の設計を示す。オリゴヌクレオチドを合成している間にSpacer 18 phosphoramidate(グレン・リサーチ社、スターリング、バージニア州)の12の部分を導入することによって、このアッセイの核酸構成部分を共有的に連結した。Spacer 18 phosphoramidateの構造を図11Bに示す。Spacer 18の12ユニットを追加した結果、連結されたオリゴヌクレオチド間の間隔は約270Åとなる。次のオリゴヌクレオチドを調製した(F=dT−フルオレセイン、D=dT−dabcyl、X=Spacer 18)。
既に記述されているようにして(ハイドック、イーおよびハイドック、ティー、Anal.Biochem.248,216−227,1997)、RPCカラム(アマシャム・ファルマシア・バイオテック社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)での逆相クロマトグラフィーを利用して、オリゴヌクレオチドを精製した。オリゴヌクレオチドを含む画分を真空遠心濃縮装置で乾燥させ、続けて50μLの水に溶かした。400μLに希釈した原液の少量のアリコートのUV−VIS吸収スペクトルを記録することによって、オリゴヌクレオチドの原液の濃度を測定した。二本鎖CAP7/CAP8/CAP9(図11A)を作製するために、100μLの50mMのTris/HCl(pH8.0)、100mMのNaCl、1mMのEDTA中で、オリゴヌクレオチドCAP7、CAP8およびCAP9(それぞれ配列番号9、10および11)を10μMの濃度で混合し、95℃で1分間加熱し、次いで25℃で1時間冷却した。
本発明のこの実施態様のさらなる長所は、シグナルの発生に必要なインキュベーション時間が短縮されることである。なぜなら、核酸構成部分が結合されると、図11Aに示されるように、それぞれの構成部分が相対的に近接することが原因で核酸構成部分間の会合反応の速度が上昇するからである。核酸構成部分を固体支持体に取り付けることが望まれている場合、本発明のこの変形は好ましい。反応性アミノ基がリンカーに含まれてもよいことが想定されており、完全な核酸構築物を固体支持体に取り付けるために用いられる。
図12は、図11に示された本発明の変形の性能が強化されたことを示す。図12Aの曲線1は、50mMのTris/HCl(pH8.0)、50mMのNaCl、1mMのEDTA、0.1mg/mLのBSAおよび200μMのcAMP中の、50nMのCAP7/CAP8/CAP9構築物のスペクトルを示す。75nMのCAPタンパク質を添加した結果、蛍光シグナルの約70%が消光した。このことは、このアッセイ形式によって、核酸結合タンパク質を簡単に検出でき得ることを示すものである。CAP誘導蛍光消光の動力学についても検討し、測定が完了するのに必要なインキュベーション時間を求めた(図12B)。この実験において、励起波長を490nmに設定し、50nMのCAP7/CAP8/CAP9構築物の520nmでの蛍光強度を時間の関数として監視した。図12B中の矢印で示した時点で、75nMのCAPタンパク質を添加して蛍光シグナルの監視を再開した。CAPタンパク質の添加に要した時間の範囲内(約20秒以内)で、反応は基本的に完了した。従って、核酸構成部分を連結した結果、蛍光シグナルの変化が起こるのに必要な時間が劇的に減少した。
Lacリプレッサータンパク質(LacR)の検出。
任意の核酸結合タンパク質を検出し、特定しまたは定量するという本発明の汎用能力を示すために、次のオリゴヌクレオチド(このものはLacリプレッサー結合エレメントを含む。)を合成した(F=dT−フルオレセイン、D=dT−dabcyl)。
既に記述されているようにして(ハイドック、イーおよびハイドック、ティー、Anal.Biochem.248,216−227,1997)、RPCカラム(アマシャム・ファルマシア・バイオテック社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)での逆相クロマトグラフィーを利用して、オリゴヌクレオチドを精製した。オリゴヌクレオチドを含む画分を真空遠心濃縮装置で乾燥させ、続けて50μLの水に溶かした。400μLに希釈した原液の少量のアリコートのUV−VIS吸収スペクトルを記録することによって、オリゴヌクレオチドの原液の濃度を測定した。LAC1オリゴヌクレオチド(配列番号12)をLAC4オリゴヌクレオチド(配列番号15)とハイブリッド形成させてLAC1/LAC4構築物を作製し、そしてLAC2オリゴヌクレオチド(配列番号13)をLAC3オリゴヌクレオチド(配列番号14)とハイブリッド形成させてLAC2/LAC3構築物を作製した。ハイブリッドを形成させるために、100μLの50mMのTris/HCl(pH8.0)、100mMのNaCl、1mMのEDTA中で、適切なオリゴヌクレオチドを10μMの濃度で混合し、95℃で1分間加熱し、次いで25℃で1時間冷却した。その後に、50mMのTris/HCl(pH8.0)、100mMのNaCl、1mMのEDTA、および0.1mg/mLのBSA中で、25℃にてすべての蛍光測定を実施した。ハイブリッド形成にて得られた二本鎖核酸構築物を図13に図示する。この二本鎖は、二つの二本鎖構築物のそれぞれの間で分離されたLacオペロン配列に由来するLacR結合部位(下線の配列)を含む。
LacRの不存在下で(図14、曲線1)、および0nMから200nMの範囲でのLacRの存在下で(図14、曲線2から7)、50nMのLAC1/LAC4プラスLAC2/LAC3の蛍光スペクトルを記録した。蛍光シグナルの消光は、約150nMのLacRで生じる飽和を伴って(図14、挿入図)、反応混合物に添加したLacRの量に比例していた。5mMのIPTG(これはLacRに選択的に結合してその核酸結合活性を低下させる)をアッセイ混合物に添加することによって、LacR検出の特異性を確認した。
Trpリプレッサータンパク質(TrpR)の検出。
あらゆる核酸結合タンパク質を検出するという本発明の汎用能力をさらに示すために、次のオリゴヌクレオチド(このものはTrpリプレッサー結合エレメントを構成する)を合成した(F=dT−フルオレセイン、D=dT−dabcyl)。
既に記述されているようにして(ハイドック、イーおよびハイドック、ティー、Anal.Biochem.248,216−227,1997)、RPCカラム(アマシャム・ファルマシア・バイオテック社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)での逆相クロマトグラフィーを利用して、オリゴヌクレオチドを精製した。オリゴヌクレオチドを含む画分を真空遠心濃縮装置で乾燥させ、続けて50μLの水に溶かした。400μLに希釈した原液の少量のアリコートのUV−VIS吸収スペクトルを記録することによって、オリゴヌクレオチドの原液の濃度を測定した。TRP1オリゴヌクレオチド(配列番号16)をTRP4オリゴヌクレオチド(配列番号19)とハイブリッド形成させてTRP1/TRP4構築物を作製し、およびTRP2オリゴヌクレオチド(配列番号17)をTRP3オリゴヌクレオチド(配列番号18)とハイブリッド形成させてTRP2/TRP3構築物を作製した。ハイブリッドを形成させるために、100μLの50mMのTris/HCl(pH8.0)、100mMのNaCl、1mMのEDTA中で、適切なオリゴヌクレオチドを10μMの濃度で混合し、95℃で1分間加熱し、次いで25℃で1時間冷却した。その後に、10mMのリン酸カリウム(pH7.6)、50mMのNaCl、0.1mMのEDTA、4mMのトリプトファン、10%のグリセリン、0.01%のアジ化ナトリウムおよび1.0mg/mLのBSA中で、15℃にてすべての蛍光測定を実施した。ハイブリッド形成にて得られた二本鎖核酸構築物を図15に示す。この二本鎖は、二つの二本鎖構築物のそれぞれの間で分離されたTrpR結合部位(下線の配列)を含む。
TrpRの不存在下で(図16A、曲線1)、および0nMから800nMの範囲で変化するTrpRの存在下で(図16A、曲線2から5)、250nMのTRP1/TRP4の蛍光スペクトルと300nMのTRP2/TRP3の蛍光スペクトルを記録した。蛍光シグナルの消光は、約150nMのLacRで生じる飽和を伴って(図16B)、反応混合物に添加したTrpRの量に比例していた。LacRタンパク質の検出のために用いた核酸構成部分を含む反応混合物にTrpRを添加することによって、TrpR検出の特異性を確認した(図16A、挿入図、曲線1および2)。
二色の検出プロトコールを用いての二つのタンパク質の同時検出。
本発明にて説明されたアッセイは、異なる波長で発光する種々の蛍光プローブと適合性があるため、二つ以上のタンパク質を同時に検出してもよい変形を設計することが可能である。検出されるタンパク質のそれぞれに特異的な核酸構築物を、異なる波長にて発光するプローブで標識し得る。この例において、反応混合物は、CAPタンパク質を検出するための7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸で標識された核酸構築物(実施例2に記載されている)、およびTrpRタンパク質を検出するためのフルオレセインで標識された核酸構築物(実施例6に記載されている)を含んでいた。具体的に言えば、100nMの二本鎖のCAP5/CAP3、120nMの二本鎖のCAP1/CAP4、100nMの二本鎖のTRP2/TRP3、および120nMの二本鎖のTRP1/TRP4が反応混合物内に存在していた。
図17は、この可能性を明らかにする実験結果を示す図である。10mMのリン酸カリウム(pH7.6)、50mMのNaCl、0.1mMのEDTA、4mMのトリプトファン、200μMのcAMP、10%のグリセリン、0.01%のアジ化ナトリウムおよび1.0mg/mLのBSA中で、15℃にてすべての蛍光測定を実施した。タンパク質が存在しない場合(曲線1)、CAPのみの存在下で(曲線2)、TrpRのみの存在下で(曲線3)、およびCAPとTrpRの両者の存在下で(曲線4)、433nmで励起する蛍光スペクトル(7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸の励起、図17A)および490nmで励起する蛍光スペクトル(フルオレセインの励起、図17B)を記録した。CAPのみの存在下では、フルオレセインシグナルに変化はなかった(図17B、曲線2)のに対して、7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸シグナルの約60%の消光が観察された(図17A、曲線2)。TrpRのみの存在下では、7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸シグナルに変化はなかった(図17A、曲線3)のに対して、フルオレセインシグナルの約60%の消光が観察された(図17B、曲線3)。最後に、CAPおよびTrpRの両者の存在下では、両者の発光スペクトルの消光が観察された(図17AおよびB、曲線4)。図17Cはこれらの結果を棒グラフの形式でまとめたものであり、ここでは、塗りつぶした棒が、CAPの検出についての色で見られた消光に相当し、そして斜線付きの棒が、TrpRの検出についての色で見られた消光に相当する。本実施例で示されるデータから、本発明に説明されたアッセイを利用して、二つ以上の核酸結合タンパク質補調節因子を複数の色で同時に検出することを実現でき得ることが明白である。
p53タンパク質の検出。
p53タンパク質における突然変異は、多数の腫瘍の発生にとって決定的であり、この場合の腫瘍の大部分は、このタンパク質の突然変異体を含んでいる(コ、エル・エルおよびプリベス、シー、Genes Dev.10,1054−1072,1996)。さらに、機能し得るp53タンパク質を欠く腫瘍は、放射線療法に対して抵抗性を示す。p53タンパク質は配列特異的な様式で二本鎖DNAと結合し、そしてその核酸結合活性はその機能に不可欠である。ヒトの腫瘍から単離されたp53の突然変異体の大部分は、核酸結合活性を欠いている。従って、p53の存在と比活性を対象とする機能アッセイによって、ガンの特定と治療に用いられる重要な診断手段が提供される。
p53タンパク質を検出するためのアッセイの能力を示すために、次のオリゴヌクレオチド(このものは同族p53結合エレメントを構成する)を合成した(F=dT−フルオレセイン、D=dT−dabcyl)。
既に記述されているようにして(ハイドック、イーおよびハイドック、上掲)、RPCカラムでの逆相クロマトグラフィーを利用してオリゴヌクレオチドを精製した。オリゴヌクレオチドを含む画分を真空遠心濃縮装置で乾燥させ、続けて50μLの水に溶かした。400μLに希釈した原液の少量のアリコートのUV−VIS吸収スペクトルを記録することによって、オリゴヌクレオチドの原液の濃度を測定した。P1オリゴヌクレオチド(配列番号20)をP4オリゴヌクレオチド(配列番号23)とハイブリッド形成させて二本鎖のP1/P4構築物を作製し、およびP2オリゴヌクレオチド(配列番号21)をP3(配列番号22)オリゴヌクレオチドとハイブリッド形成させて二本鎖のP2/P3構築物を作製した。ハイブリッドを形成させるために、100μLの50mMのTris/HCl(pH8.0)、100mMのNaCl、1mMのEDTA中で、適切なオリゴヌクレオチドを10μMの濃度で混合し、95℃で1分間加熱し、次いで25℃で1時間冷却した。その後のすべての蛍光測定を、100nMの30bpの非特異的二本鎖DNAをさらに含む50mMのリン酸カリウム(pH7.5)、50mMのNaCl、および0.5mg/mLのBSA中で、25℃にて実施した。ハイブリッド形成にて得られた二本鎖DNAを図18に示す。この二本鎖は、二つの二本鎖DNA間で分離された10bpのPuPuPuC(A/T)(T/A)GPyPyPy(配列番号24)モチーフの繰り返しを含む。この配列(配列番号24)は、p53認識コンセンサス配列として特定されている(エル−デイリー、ダブリュ・エス、ケルン、エス・イー、ピーテンポール、ジェイ・エイ、キンヅラー、ケイ・ダブリュおよびフォーゲルスタイン、ビー(El−Deiry,W.S.,Kern,S.E.,Pietenpol,J.A.,Kinzler,K.W.,and Vogelstein,B.)、Nature Genetics,1,45−49,1992)。このアッセイにおいて用いられるp53タンパク質は、細菌で発現されたヒト全長タンパク質組み換え体であった(キャスリーン・エス・マシューズ(Kathleen S.Matthews)博士からの贈与品;参照して本明細書に組み込まれるニコルス、エヌ・エヌおよびマシューズ、ケイ・エス(Nichols,N.M.,and Matthews,K.S.)、Biochemistry 40,3847−3858,2001)。
p53タンパク質の不存在下で(図19A、曲線1)、および0nMから130nMの範囲で変化するp53の存在下で(図19A、曲線2から6)、25nMのP1/P4プラス30nMのP2/P3の蛍光スペクトルを記録した。観察された蛍光シグナルの消光は、アッセイ混合物に添加したp53タンパク質の量に比例していた(図19B)。核酸構築物のCAP1/CAP4プラスCAP2/CAP3を含む反応混合物にp53タンパク質を添加すると蛍光消光が起こらなくなることを示すことによって、p53を検出するためのこの独特の検出法の特異性を確認した(図19A、挿入図、曲線1は、p53が存在しない場合のシグナルに相当し、それに対して曲線4から5は、1nMから90nMのp53を添加した時に見られたシグナルに相当する)。総合すれば、この実施例は、本発明をあらゆる核酸結合タンパク質(哺乳動物の重要な腫瘍抑制タンパク質、たとえばp53を含む)に一般的に応用できることを示す。
近接性に基づく検出方法および近接性に基づかない検出方法の両方を用いる核酸結合タンパク質補調節因子の検出
生物においては多数の配列特異的核酸結合因子が進化していて、環境の刺激に応じて遺伝子発現を調節している。これらの因子の多くの核酸結合活性は、小さな補調節因子または翻訳後修飾による、核酸結合因子の、直接的なまたは間接的な相互作用を介して仲介されている。これらの補調節因子の多くは、環境科学(一般的な汚染物質)、法医学および毒物学におけるそれらの役割の理由から、興味の対象となっている。これらの補調節因子の多くは、細胞の代謝産物か、または細胞内でのシグナリングもしくは調節の役割を果たす分子である。従って、これらの検出は、臨床化学および医学的診断において関心事である。
補調節因子で調節される多数の核酸結合因子は、天然においては、それらの補調節因子それぞれの活性を検出するための手段および方法を必要として、存在している。このような補調節因子と、それらに対応する(これらの補調節因子によってその核酸結合活性が調節されているところの)核酸結合因子の具体例としては、cAMPとcAMP受容体タンパク質(バスビー、エスおよびエブライト、アール・エイチ、J.Mol.Biol.293,199−213[1999])、S−アデノシルメチオニン(SAM)とMetJタンパク質(フィリップス、ケイおよびフィリップス、エス・イー・ブイ(Philllips,K.,and Philips,S.E.V.)、Structure 2,309−316[1994])、または亜ヒ酸塩とArsRタンパク質(ウー、ジェイおよびローゼン、ビー・ピー(Wu,J.,and Rosen,B.P.)、J.Biol.Chem.268,52−58[1992])が挙げられる。cAMPは、真核細胞における主要なシグナリング分子の一つである。アデニル酸シクラーゼを活性化または阻害し、それによってcAMPの細胞内レベルに影響を与えるホルモンは、20を超える。細胞シグナリングにおけるその中心的役割のせいで、組織内および細胞内のcAMPレベルを測定することは、常に関心事である。SAMは細胞内のメチル基のドナーであり、DNA、リン脂質、およびタンパク質を含む種々の標的にメチル基を提供する役割を果たしている。組織の機能におけるSAMの重要性の故に、組織内および細胞内のそのレベルを測定することは、常に関心事である。亜ヒ酸塩は、毒性を示す一般的な不純物であり、従って、水中、土壌中および食品中などでのそのレベルを測定することは重要である。これらの例は、細菌およびその他の微生物内で見出される、補調節因子で調節される核酸結合因子の小さな一部しか示していない。補調節因子で調節される既知の核酸結合因子は数百種であり、さらに数百種以上が今後発見される。
本発明者は、補調節因子で調節される核酸結合因子に基づくバイオセンサーの設計をここに記載する。これらのバイオセンサーの全体的な設計を、図20に示す。この設計は、補調節因子で調節されるあらゆる核酸結合因子に応用することができ、従って、バイオセンサーの数多くの変形を行うための一般的な基盤として役立つ。標的の補調節因子の分子によって誘導される核酸−タンパク質複合体の減少または増加を測定することによって、標的の核酸結合タンパク質補調節因子の検出を達成することができる。核酸−タンパク質複合体の形成を検出するためのあらゆる方法論を用いることができるであろうが、好ましい方法は、最近開発された(ハイドック、ティーおよびハイドック、イー、Nature Biotechnology、印刷中、[2002])、配列特異的核酸結合因子についての検出可能な標識を利用する方法である。検出可能な標識を用いて、蛍光強度の変化またはいくつかのその他の検出可能な標識の検出によって、標的分子(核酸結合因子または補調節因子など)の存在がシグナル伝達される。従って、このアッセイは、極めて少ない操作工程数しか必要としなく、高処理形式に適合するものである。図20に示されたアッセイの構成要素を固体表面上(たとえばライトガイドまたは光ファイバーのチップ上)に固定化することも可能であり、それによって固体状態の統合されたバイオセンサーが作製される。
cAMP、IPTGおよびトリプトファンを認識するバイオセンサーの具体例によって、バイオセンサーの設計およびその一般的な性質を説明する。これらの三種の分子は、対応する三種の核酸結合因子:CRP、LacリプレッサーおよびTrpリプレッサーに対する補調節因子である。図21は、cAMPの量の増加に対する、代表的cAMPバイオセンサーの反答を示す。試験溶液は、CAP標識(ハイドック、ティーおよびハイドック、イー、Nature Biotechnology、印刷中、[2002])およびCAPタンパク質を有する二つの核酸構成部分を含んでいた。試験混合物中のcAMPのレベルが、CAPタンパク質と同族の核酸結合エレメントとの結合を十分に導くことができるレベルとなったcAMPの濃度において、蛍光シグナルの大きな変化が観察された。このシグナルの変化は、cAMPの濃度に比例していた(図21)。トリプトファンを検出するように設計された類似のバイオセンサーについても同様の結果が得られた(図22)。この特定のバイオセンサーは、TrpRタンパク質と、TrpR同族核酸エレメントに対応する二つの核酸構成部分との混合物を含んでいた(ハイドック、ティーおよびハイドック、イー、Nature Biotechnology、印刷中、[2002])。cAMPの場合と同じく、トリプトファンの特定の濃度範囲において、TrpRと同族の核酸エレメントとの結合が誘導され、添加されたトリプトファンの量に比例する蛍光シグナルの大きな変化がもたらされた。
核酸−タンパク質複合体の形成を測定するための種々の検出の方法論が、図20に示されたバイオセンサー設計に適応させ得ることを示すために、トリプトファンについての、一つの核酸構成部分のみが検出可能な標識に取り付けられているバイオセンサーを準備した。本発明のこの特定の実施態様によると、TrpR同族結合部位を含む蛍光色素標識DNA成分の蛍光偏光を用いて、トリプトファンにより誘導されるTrpR−核酸複合体の形成を測定した(図23)。トリプトファンの濃度に比例する蛍光偏光シグナルの変化が見られた。このことは、図20に従った設計を利用し、および補調節因子を検出するためのシグナルとして蛍光偏光(または検出可能な単一標識の任意のもの)を用いた、あらゆる核酸結合タンパク質補調節因子のためのバイオセンサーが本発明の範囲内に含まれることを示すものである。
図24は、核酸結合因子を用いたバイオセンサーの設計を示し、この核酸結合因子は、特異的な核酸エレメントに対する親和性を低下させる補調節因子に対するものである。この場合において、補調節因子はタンパク質−核酸複合体の解離を誘導し、補調節因子に依存するタンパク質−核酸複合体の消失によって、検出が達成される。この場合のバイオセンサーは、LacRタンパク質と、LacR同族結合エレメントを含む二つの核酸構成部分との混合物から構成されていた(ハイドック、ティーおよびハイドック、イー、Nature Biotechnology、印刷中、[2002])。IPTG(LacRについての補調節因子)が存在しない場合、LacRタンパク質は同族の標識核酸エレメントと結合し、その結果蛍光シグナルが消光した。濃度を高くしたIPTGが存在する場合、IPTG依存性の蛍光シグナル強度の上昇が見られた。
第一構成部分が固体支持体(マルチウェルプレート)に取り付けられ、そして第二構成部分が検出可能な標識(ビオチン)に取り付けられているアッセイ変形。
検出方式の点での本発明の自由度の高さを示すために、図1Eに示された一般的な設計に従った実験を行った。次のオリゴヌクレオチド(完全に組み立てられると、このものは完全なCAP核酸結合エレメントを含む)を合成した(X=アミノ−dT;B=ビオチン)。
CAP10オリゴヌクレオチドをCAP11オリゴヌクレオチドとハイブリッド形成させて第一核酸構成部分を作製した。CAP12オリゴヌクレオチドをCAP13オリゴヌクレオチドとハイブリッド形成させて第二核酸構成部分を作製した。ハイブリッドを形成させるために、(1)100μLの緩衝液(CAP10/CAP11オリゴヌクレオチドの場合、500mMのNa2HPO4、pH8.6、1mMのEDTA;およびCAP12/CAP13オリゴヌクレオチドの場合、20mMのTris、pH8.0、100mMのNaCl、10μMのEDTA)中で、適切なオリゴヌクレオチドを10μMの濃度で混合し、(2)95℃で1分間加熱し、次いで(3)25℃で1時間冷却した。500mMのNa2HPO4(pH8.6)、1mMのEDTAの緩衝液を含むウェルにつき200μLの第一核酸構成部分(100nM)のインキュベーションを1時間行い、次いで0.1mg/mLのBSAを含む50mMのTris(pH8.0)、100mMのNaCl、1mMのEDTAで洗浄することによって、N−オキシスクシンイミドで活性化した96ウェルプレート(DNA−BIND、コーニング(Corning)社、アクトン、マサチューセッツ州)のウェルに、第一核酸構成部分(二本鎖のCAP10/CAP11の部分的部位)を共有的に取り付けた。固定化された第一構成部分を含むウェルに、10nMまたは20nMの第二核酸構成部分(二本鎖のCAP12/CAP13の部分的部位)の溶液を添加し、次いで250nMのCAPと200μMのcAMPを添加した。室温で1時間のインキュベーションを行った後、ウェルを緩衝液で2回洗浄し、続けてストレプトアビジン結合ホースラディシュペルオキシダーゼ(ピアース(Pierce)社、ロックフォード、イリノイ州)を、製造業者が推奨する希釈度で添加した。30分間のインキュベーションの後、ウェルを緩衝液で2回洗浄し、続けて100μLのTURBO−TMB(商標)ペルオキシダーゼ基質溶液(ピアース社、ロックフォード、イリノイ州)を添加した。この反応を15分間行わせ、100μLの1MのH2SO4を添加して反応を停止させた。CAPとcAMPとを除外したこと以外は同様にして、対照ウェルを処理した。標準的なマイクロプレートリーダーを用いて、サンプルと対照ウェルの450nmの吸光度を読み取った。表2に実験結果をまとめている。CAP/cAMPが存在する場合では、CAPまたはcAMPがない対照と比較して、10nMのCAP12/CAP13における吸光度シグナルに約3倍の上昇が見られた。このように、マルチウェルと酵素に基づく検出形式の有効性が示された。
上記の開示に鑑みれば、本発明を実施する際に、本発明の精神および範囲から逸脱することなく数多くの修正、改変および置換が可能であることは、当業者にとっては自明である。本発明は、上記の実施態様のみに限定されるのではなく、むしろ添付の請求の範囲の領域により限定されるものである。
図1は、本明細書に記載されているような、核酸結合因子または補調節因子についてのバイオセンサーの全体的な設計を示す。1Aは、近接性に基づく検出アッセイを基礎とする基本的な2−構成部分システムを示す。ここで、第一核酸構成部分はエネルギードナーに取り付けられ、および第二構成部分はエネルギーアクセプターに取り付けられる。1Bは、一致に基づく検出アッセイを基礎とする基本的な2−構成部分システムを示す。1Cはバイオセンサーの設計を示し、ここで、柔軟性リンカー分子を介して二つの核酸構成部分が互いに連結されている。1Dは、二つの構成部分が連結されたバイオセンサーの修正型を示し、ここで、連結された構成部分は固体支持体に取り付けられている。1Eはバイオセンサーの一つの型を示し、ここで、第一構成部分は固体支持体に取り付けられ、および第二構成部分は検出可能な標識に取り付けられている。1Fはバイオセンサーの一つの型を示し、ここで、第一構成部分は表面に取り付けられ、および検出方法はその表面の質量の変化の検出を依拠とする。
図2は、図1に図示される設計について、核酸結合因子存在下における期待される蛍光シグナル変化の理論的シミュレーションを示す。
図3は、CAPタンパク質を検出するための、配列番号1から配列番号4の蛍光色素標識オリゴヌクレオチドを示す。
図4は、CAPおよびcAMPが存在する場合(パネルB、曲線2)、CAPが存在しない場合(パネルA)、CAPが存在しcAMPが存在しない場合(パネルC)およびTrpリプレッサータンパク質が存在する場合(パネルD)における、図3に示される核酸分子の蛍光スペクトルを示す。
図5は、対照実験を示し、ここで、CAP結合部位を含む非標識DNA断片がCAPが存在する場合に見られる蛍光シグナルの変化を妨害し、および非特異的DNA断片は蛍光シグナルの変化に影響を与えない。
図6は、蛍光シグナルの変化度がCAPタンパク質の濃度に依存することを示す。
図7は、CAPが存在する場合での、蛍光シグナルの変化の時間依存性を示す。
図8は、CAPタンパク質を検出するために7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸を用いたことを示す。曲線1はCAPが存在しない場合を表す。曲線2は100nMのCAPが存在する場合を表す。
図9は、CAPタンパク質を検出するために異なる波長の蛍光の比率を用いたことを示す。曲線1から9は、それぞれ0nMから150nMにてCAPの量を増加させたことを表す。
図10は、CAPの二本鎖DNACAP1/CAP4およびCAP2/CAP3への結合に与える、核酸結合因子補調節因子cAMPの影響を示す。cAMPが存在しない場合は、検出可能な結合は生じない。
図11はアッセイの設計を示し、ここで、このアッセイのDNA濃度依存性を排除するために、およびこのアッセイを実施するのに必要な時間を短縮するために、長い柔軟性リンカーにより、二つの核酸分子が共有的に連結されている。パネルBは、spacer−18−phosphoramidate部分の1ユニットを示す。
図12は、図11に示した共有結合を伴う設計を用いての、CAP存在下に見られる蛍光シグナルの変化を示す。パネルBは、柔軟性リンカー構築物を用いる、消光の応答時間を示す。
図13は、LacRタンパク質を検出するために、配列番号12から15のオリゴヌクレオチドを蛍光色素標識したものを示す。
図14は、LacRタンパク質が同族DNA配列に結合したことに起因する蛍光消光を示す。曲線1から7は、それぞれ、LacRタンパク質の量が0nMから200nMに増加したものを表す。
図15は、TrpRタンパク質結合部位の部分を含む配列番号16から19の二本鎖核酸を示す。
図16は、TrpRタンパク質が同族DNA配列に結合したことに起因する蛍光消光を示す。曲線1から5は、それぞれ、TrpRタンパク質の量が0nMから800nMに増加したものを表す。
図17は、二つのタンパクのCAPおよびTrpRの同時二色検出を示す。パネルAは、433nmの励起波長で得られた蛍光スペクトルを示し、パネルBは490nmの励起波長で得られた蛍光スペクトルを示す。曲線1は両方のタンパク質が存在しない場合である。曲線2はCAPだけが存在する場合である。曲線3はTrpRだけが存在する場合である。曲線4はCAPおよびTrpRの両方が存在する場合である。パネルCではパネルAおよびBの結果をまとめている。
図18は、p53タンパク質の核酸結合エレメントの部分を含む、配列番号20から23の二本鎖核酸を示す。
図19は、p53タンパク質が同族の核酸結合エレメント配列に結合したことに起因する蛍光消光を示す。曲線1から5は、それぞれ、p53タンパク質の量が0nMから130nMに増加したものを表す。
図20は、核酸結合タンパク質補調節因子の活性を測定するための、補調節因子で調節される配列特異的核酸結合因子を用いたバイオセンサーの全体設計を示す。 (A)補調節因子の結合がタンパク質のDNA結合活性の増強をもたらすタンパク質の例。 (B)補調節因子の結合がタンパク質の核酸結合活性の低下をもたらすタンパク質の例。 スキーム(A)において、補調節因子のタンパク質への結合が、そのDNAへの親和性を増大し、二つの核酸構成部分(部分的部位)のタンパク質誘導会合をもたらす。この会合によって、核酸構成部分内に組み込まれた蛍光プローブ間の距離が小さくなり、溶液中での補調節因子の量に比例する強いFRETシグナルが生じる。スキーム(B)において、このタンパク質は強い核酸結合親和性を補調節因子不存在下において発揮し、二つの核酸構成部分(部分的部位)のタンパク質誘導会合をもたらす。この会合によって、補調節因子の不存在下で強いFRETシグナルが生じる。核酸結合タンパク質補調節因子がタンパク質に結合することで、同族の核酸エレメントに対するその親和性が低下し、タンパク質−核酸複合体の解離をもたらす。これの次には、二つの核酸構成部分が解離し、溶液中の補調節因子の量に比例してFRETシグナルの低下が生じる。
図21は、cAMPの検出を示す。増加する濃度のcAMPを、2nMのフルオレセイン標識CAP特異的第一核酸構成部分と3nMのdabcyl−標識CAP特異的第二核酸構成部分とを含む混合物に添加した。室温でインキュベーションを2時間行った後、試験混合物の蛍光強度を読み取った。
図22は、トリプトファンの検出を示す。増加する濃度のトリプトファンを、250nMのフルオレセイン標識TrpR特異的第一核酸構成部分と300nMのdabcyl−標識Trp特異的第二核酸構成部分とを含む混合物に添加した。室温でインキュベーションを2時間行った後、試験混合物の蛍光強度を読み取った。
図23は、蛍光偏光を利用してのTrpRの検出を示す。増加する濃度のトリプトファンを、4nMのフルオレセインで標識された、コンセンサスTrpR結合部位を含有する25bpの二本鎖DNAを含む混合物に添加した。室温でインキュベーションを2時間行った後、試験混合物の蛍光異方性を読み取った。
図24は、IPTGを検出するためのバイオセンサーを示す。増加する濃度のIPTGを、50nMのフルオレセイン標識LacR特異的第一核酸構成部分と60nMのdabcyl−標識Lac特異的第二核酸構成部分とを含む混合物に添加した。室温でインキュベーションを2時間行った後、試験混合物の蛍光強度を読み取った。