JP2006512061A - イントロン融合コンストラクトおよび高発現産生細胞系を選択するための使用方法 - Google Patents

イントロン融合コンストラクトおよび高発現産生細胞系を選択するための使用方法 Download PDF

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Abstract

本発明はDNAコンストラクト、高発現性宿主細胞の選択方法、高率に興味あるタンパク質を産生する方法、および興味あるタンパク質をコードする配列のコピーを複数持つ真核細胞産生方法に関する。ある方法では、興味ある生成物を高いレベルで産生することができる安定したクローンは、形質移入直後での直接選択の一工程から生成される。

Description

本出願は、米国特許法119条(e)に基づき、2002年11月14日提出の米国特許仮出願番号第60/426,095号の優先権を主張し、ここに参照により組み込まれるものである。
発明の背景
発明の分野
本発明はDNAコンストラクト、高発現性宿主細胞の選択方法、高率に興味あるタンパク質を産生する方法、および興味あるタンパク質をコードする配列のコピーを複数持つ真核細胞産生方法に関する。
背景と関連技術の説明
DNAを生きている宿主細胞に機能的な形で導入する方法の発見は、多くの基礎的な生物学的過程の理解への鍵となり、また、重要なタンパク質および他の分子を商業的有用な量で生産することを可能にした。
このような遺伝子移入方法の一般的成功にもかかわらず、所望のタンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞に導入したり発現させたりする効率を限定するいくつかの共通の問題がある。一つめの問題は、遺伝子を受容細胞へうまく移入させる際の知識である。二つめの問題は、遺伝子を含む細胞と、遺伝子を含まないが移入手法によっても生存し得た細胞とを区別することである。三つ目の問題は、遺伝子を含み、遺伝子にコードされるタンパク質を効率に発現する細胞を同定して単離することである。
一般的に、真核細胞内に遺伝子を導入する公知の方法は非常に効率が悪い。培養に供された細胞のうちの少しの細胞だけが生育して外因的に添加したDNAを発現し、さらにそのうちの少しが安定してDNAを持つ。
所望のタンパク質をコードしている生成物遺伝子を組み込んだ細胞を同定するには、通常、同じ細胞に一般的に選択マーカーをコードしている選択遺伝子と呼ばれるもう一つの遺伝子を導入することによって行う。選択マーカーは、抗生物質や他の薬剤に対して耐性を示す酵素、または宿主細胞における代謝または触媒欠損を補う酵素といった、特定の選ばれた培養条件下で宿主細胞が成長または生存するのに必要なタンパク質である。例えば、真核細胞に対して一般的に使われる選択遺伝子は、アミノグリコシドリン酸トランスフェラーゼ(APH)、ヒグロマイシンリン酸トランスフェラーゼ(hyg)、ジヒドロ葉酸リダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(tk)、ネオマイシン耐性、ピューロマイシン耐性、グルタミン合成酵素、およびアスパラギン合成酵素の遺伝子を含む。
選択マーカーをコードする二つ目の組み込み遺伝子の宿主細胞による発現の基本となる一の遺伝子を組み込んだ宿主細胞を同定する方法は、同時形質移入(またはcotransfectation)として引用される。この方法において、所望のポリペプチドをコードする遺伝子および選択遺伝子は一般的に、同時に宿主細胞に導入される。同時形質移入の場合において、所望のポリペプチドをコードする遺伝子および選択遺伝子は、宿主細胞内への導入前に、一本鎖DNA分子または別々のDNA分子上に存在するであろう。Wiglerら,Cell,16:777 (1979)。その結果、所望のポリペプチドをコードしている遺伝子を組み込まれた細胞は、選択遺伝子によりコードされる選択マーカーを合成する細胞が優先的に成長または生存しうる条件下にて細胞を培養することによって同定または単離する。
真核宿主細胞内に導入された遺伝子の発現レベルは、遺伝子コピー数、転写効率、メッセンジャーRNA(mRNA)プロセシング、安定性、および翻訳効率を含めた複数の因子に依存する。したがって、所望のポリペプチドの高い発現レベルは、一般的に一または複数の因子の最適化を伴うであろう。
例えば、タンパク質産生のレベルは、高い転写レベルを与えるであろう「強い」プロモータまたはエンハンサーに遺伝子のコード化配列を共有結合させることによって上がるであろう。プロモータおよびエンハンサーは、転写に関与する宿主細胞内のタンパク質と特異的に相互作用するヌクレオチド配列である。Kriegler, Meth. Enzymol., 185:512 (1990); Maniatisら, Science, 236:1237 (1987)。プロモータは、遺伝子のコード化配列の上流に位置し、RNAポリメラーゼによる遺伝子の転写を促進する。高い発現レベルを示す強いプロモータとして同定されている真核生物のプロモータの中にはSV40早期プロモータ、アデノウイルス主要遅発型プロモータ、マウスメタロチオネインIプロモータ、ラウス肉腫ウイルス末端反復配列、およびヒトサイトメガロウイルス即時プロモータ(CMV)がある。
エンハンサーは結合したプロモータからの転写を刺激する。実際にはエンハンサーは、物理的かつ機能的にプロモータと重なっているにもかかわらず、プロモータと異なりエンハンサーは、転写開始部位から下流域に、またはプロモータから少なからず離れて位置して働く。例えば、前述した強いプロモータのすべてにおいても強いエンハンサーを含む。Bendig, Genetic Engineering, 7:91 (Academic Press, 1988)。タンパク質産生レベルもまた宿主細胞内の遺伝子コピー数の増加により上がりうる。高い遺伝子コピー数を得るある方法は、例えば同時形質移入の際に選択遺伝子に比較して高濃度の過剰な生成物遺伝子を用いることによって、宿主細胞内に遺伝子の複数コピーを直接的に導入することである。Kaufman, Meth. Enzymol., 185:537 (1990)。しかしながら、この方法では同時形質移入細胞のうちの少しだけしか高コピー数で生成物遺伝子を含まないであろう。さらに、そのような細胞と生成物遺伝子コピーを少ししか含まない多くの細胞とを区別するための一般的に適用可能で便利な方法は無いので、所望の高コピー数形質移入体を同定するために、骨の折れる、時間を要するスクリーニング方法が通常は用いられている。
高遺伝子コピー数を得るためのもう一つの方法は、宿主細胞内で自己複製可能なベクターに遺伝子をクローニングすることを含む。このようなベクターの例として、エプスタイン・バーウイルスまたはウシパピローマウイルス由来の哺乳類動物の発現ベクター、および酵母菌2ミクロンプラスミドベクターがある。StephensおよびHentschel, Biochem. J., 248:1 (1987); Yatesら, Nature, 313:812 (1985); Beggs, Genetic Engineering, 2:175 (Academic Press, 1981)。
さらに、高遺伝子コピー数を得るためのもう一つの方法は、宿主細胞内での遺伝子増幅を伴う。遺伝子増幅は、相対的に低い頻度で真核細胞内で自然に起こる(Schimke, J. Biol. Chem., 263:5989 (1988))。しかしながら、遺伝子増幅もまた、適切な選択的圧力に宿主細胞を曝すことによって、誘導または少なくとも選択されるであろう。例えば、多くの場合において、宿主細胞内に増幅可能遺伝子とともに生成物遺伝子を導入し、続いて同時形質移入細胞を段階的に濃度を上げた選択薬剤に曝すことによってマーカー遺伝子の増幅を選択することができる。通常は、生成物遺伝子はこのような条件下においてマーカー遺伝子と同時増幅される。
この目的でもっとも広く使われている増幅可能遺伝子はジヒドロ葉酸リダクターゼをコードしているDHFR遺伝子である。DHFR遺伝子と組み合わせて用いる選択条件は、メトトレキサート(Mtx)添加または無添加のグリシン、ヒポキサンチンおよびチミジン(GHT)欠損である。宿主細胞は所望のタンパク質をコードしている生成物遺伝子とDHFR遺伝子を同時形質移入されており、形質転換体はMtxを含む無GHT培養培地で細胞を一次培養することによって同定される。野生型のDHFR遺伝子を用いるときに適切な宿主細胞は、Urlaub およびChasin, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)を参照して調製および増殖される、DHFR活性を欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系統である。そうして、形質移入した細胞は段階的に濃度を高くしたMtxに曝す。これにより、DHFR遺伝子の複数コピーと同時に生成物遺伝子の複数コピーの合成が引き起こる(Schimke, J. Biol. Chem., 263:5989 (1988); Axelら, 米国特許第4,399,216号; Axelら, 米国特許第4,634,665号)。選択およびその後の増幅を考慮に入れた遺伝的マーカーと遺伝子との同時形質移入に関連した他の文献には、Kaufman in Genetic Engineering, ed. J. Setlow (Plenum Press, New York), Vol. 9 (1987); KaufmanおよびSharp, J. Mol. Biol., 159:601 (1982); Ringoldら, J. Mol. Appl. Genet., 1:165-175 (1981); Kaufmanら, Mol. Cell Biol., 5:1750-1759 (1985); KaetzelおよびNilson, J. Biol. Chem., 263:6244-6251 (1988); Hungら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83:261-264 (1986); Kaufmanら, EMBO J., 6:87-93 (1987); JohnstonおよびKucey, Science, 242:1551-1554 (1988); Urlaubら, Cell, 33:405-412 (1983)を含む。
DHFR増幅方法を他の細胞タイプへ拡大適応するために、メトトレキセート減感受性のタンパク質をコードしている変異型DHFR遺伝子を内在性の野生型DHFR遺伝子を正常数含む宿主細胞と組み合わせて用いうる。SimonsenおよびLevinson, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:2495 (1983); Wiglerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:3567-3570 (1980); HaberおよびSchimke, Somatic Cell Genetics, 8:499-508 (1982)。
他方では、宿主細胞に、生成物遺伝子、DHFR遺伝子、neo遺伝子などの有力な選択遺伝子が同時形質移入されるであろう。KimおよびWold, Cell, 42:129 (1985); Capon ら, 米国特許第4,965,199号。形質移入体はネオマイシン(または関連薬剤G418)を含む培地で細胞を一次培養することによって同定され、そうして同定された形質移入体は、段階的に濃度を増やしたMtxに曝すことによってDHFR遺伝子および生成物遺伝子の増幅について選択される。
この検討からわかるように、所望のタンパク質を高く発現する組み換え宿主細胞の選択は一般的に複数の工程である。初めの工程で、初代形質転換体は、生成物遺伝子および選択遺伝子を組み込んだことで選択される。続く工程で、初代形質転換体は、選択遺伝子高発現レベルに関してさらに選択をうけ、そうして生成物遺伝子高レベル発現に関して無作為にスクリーニングされる。所望のタンパク質の発現レベルが高い細胞を同定するために、一般的には多くの数の形質移入体をスクリーニングしなければいけない。大多数の形質転換体は、所望のタンパク質を最大レベルより少なく産生している。さらに、DHFR形質転換体のMtx耐性は遺伝子増幅の段階を変えることによって少なくとも部分的に獲得される。Schimke, Cell, 37:705-713 (1984)。非選択遺伝子の同時発現の不足については、Woldら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:5684-5688 (1979)で報告されている。DNA増幅の不安定さについては、KaufmanおよびSchimke, Mol. Cell Biol., 1:1069-1076 (1981); HaberおよびSchimke, Cell, 26:355-362 (1981);および Fedespielら, J. Biol. Chem., 259:9127-9140 (1984)で報告されている。
単一工程での組み換え宿主細胞のような直接的選択方法がいくつか示されている。あるものは、生成物遺伝子およびDHFR遺伝子を宿主細胞に同時形質移入して、高濃度のMtxを含む培地で直接的に培養することによってDHFRを高レベルに発現する細胞を選択する手法である。この方法で選択された多くの細胞はまた、同時形質移入した生成物遺伝子を高レベルで発現する。Page and Sydenham, Bio/Technology, 9:64 (1991)。この単一工程の選択方法は、その有用性を制限するある欠点を抱える。選択薬剤を高濃度に含む培地で直接的に培養することによって得た高発現細胞は、成長と特性の維持が不安定である。そのため、長期間産生過程へ用いることに限界がある。Page and Snyderman, Bio/Technology, 9:64 (1991)。Mtx高レベル耐性による単一工程選択は、増幅した遺伝子を含む細胞ではなく、改変したMtx耐性DHFR酵素を持つ細胞、またはMtx輸送特性を改変した細胞を産生するかもしれない。Haberら, J. Biol. Chem., 256:9501 (1981); Assaraf and Schimke, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:7154 (1987)。
もう一つ目の方法は、転写領域の5’末端に生成物遺伝子と3’末端に選択遺伝子を持つポリシストロニックmRNA発現ベクターを使用するものである。ポリシストロニックmRNAの3’末端の選択遺伝子の翻訳は非能率的なため、そのようなベクターは生成物遺伝子の優先的な転写を示し、選択を切り抜けて生き延びるためにポリシストロニックmRNAを多く発現することが必要となる。Kaufman, Meth. Enzymol., 185:487 (1990); Kaufman, Meth. Enzymol., 185:537 (1990); Kaufmanら, EMBO J., 6:187 (1987)。したがって、所望のタンパク質生成物を高く発現する細胞は、特定の選択遺伝子の使用に適した選択薬剤を含む培地で初期形質移入体を培養することによる単一工程において得ることができる。しかしながら、上流のリーディングフレームはメトトレキセート増幅の際に欠損がたびたび起こるので、上流の生成物リーディングフレームの選択マーカーの翻訳への予期せぬ影響によってこれらベクターの有用性は変化する(Kaufmanら, J. Mol. Biol., 159:601-621 (1982); Levinson, Methods in Enzymology, San Diego: Academic Press, Inc. (1990))。後述のベクターは、生成物遺伝子と選択遺伝子の間にピコルナウイルスファミリーメンバー由来の内部翻訳開始部位を組み込んでいる(Pelletierら, Nature, 334:320 (1988); Jangら, J. Virol., 63:1651 (1989))。
単一工程選択の三つ目の方法は、興味あるタンパク質をコードする遺伝子内にあるイントロンを含む選択遺伝子を有するDNAコンストラクトの使用を伴う。米国特許第5,043,270号およびAbramsら, J. Biol. Chem., 264(24): 14016-14021 (1989)を参照。さらに他の単一工程選択方法では、宿主細胞にイントロンを修飾した選択遺伝子と興味あるタンパク質をコードした遺伝子を同時形質移入する。1992年10月15日に公開された国際公開92/17566を参照。イントロン修飾した遺伝子は、イントロンが正確に低効率でmRNA前駆体からスプライシングされるような長さのイントロンを選択遺伝子の転写領域に挿入して作製する。故に、イントロン修飾した選択遺伝子から生成した選択マーカーの量は、実質的には初めの選択遺伝子から生成した選択マーカーよりも少ない。これらのベクターにより一体化したDNAコンストラクトの統合が確実となるが、選択遺伝子として転写の連鎖は起こらず、タンパク質遺伝子は離れたプロモーターにより制御される。
単一の転写単位を持つ他の哺乳類の発現ベクターについて述べられている。レトロウイルスベクターは、内在性のモロニーマウス白血病ウイルス(M−MuLV)スプライス供与体とネオマイシン耐性遺伝子の後ろに続くスプライス受容体部位の間にcDNAを挿入することによって構築された(Cepkoら, Cell, 37:1053-1062 (1984))。このベクターはさまざまな細胞型のレトロウイルス感染に続いて多種の遺伝子生成物を発現するために用いられている。
所望のタンパク質を高いレベルで発現する組み換え宿主細胞を選択する方法は、 Lucasら, Nucleic Acid Research, 24, No. 9: 1774-1779 および米国特許第5,561,053号において、出願人に報告されている。この方法は、選択遺伝子(好ましくは増幅性遺伝子)および選択遺伝子の3’側の生成物遺伝子を含んでなるDNAコンストラクトを隠し持つ真核生物宿主細胞に有用である。選択遺伝子はスプライス供与体およびスプライス受容体により定義されるイントロン内に位置しており、選択遺伝子および生成物遺伝子は単一転写調節領域の転写コントロール下にある。スプライス供与体部位は一般に有効なスプライス供与体部位であり、それによって転写調節領域を用いて生成物遺伝子の発現を調節する。形質移入した細胞が生成物遺伝子を複数コピーするために、または、高い転写活性がある染色体座に単一(または複数の)遺伝子コピーを持つ細胞と同定するために十分な時間、増幅薬剤を含む選択培地にて培養し、生成物をコードしている遺伝子を発現させる。
他の融合発現用コンストラクトが開発されている。例えば、ゼオシン耐性マーカーコンストラクトと緑色蛍光タンパク質の融合が作製されている。Bennet, R.Pら, Biotechniques. 24(3):478-82,1998,3月。そのコンストラクトは、形質移入した真核細胞の視覚的スクリーニングおよび薬剤選択に使用される。
他の例として、優性二機能の選択および増幅性マーカーを用いて形質転換した真核細胞中でヒトプロトロンビンを過剰発現させた。Herlitschka, Sabine Eら, Protein Expression and Purification. 8, 358-364, 1996,7月。この文献では、マーカーは、マウス野生型のジヒドロ葉酸リダクターゼcDNAおよびフレーム内に融合した大腸菌ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子からなる。EMCV非転写領域によって興味ある遺伝子を融合マーカー遺伝子の上流に結合し、ジシストロンの転写単位を形成する。
従来技術を考慮して、選択マーカー(すなわち、DHFRおよびピューロマイシン)と興味あるタンパク質との融合を単一のプロモーターにより発現させることによって、興味ある生成物遺伝子を形質移入した安定したクローンの発現レベルに関して均一性レベルを上げることが、本発明の一つの目的にある。
所望のタンパク質生成物を高レベルに発現する安定した組み換え宿主細胞を選択する方法を提供することがもう一つの目的であり、この方法は実施するのに迅速かつ便利なものであり、スクリーニングが必要な形質移入した細胞の数が減るものである。さらに、クローンまたは安定した宿主細胞形質移入体の集合から、単一および複数単位のポリペプチドを高いレベルで迅速に生成させる目的もある。
活性な組み込み事象に偏りを生じさせ(すなわち、結果として生成物遺伝子を高いレベルで発現するように宿主細胞のゲノム領域内にDNAコンストラクトを挿入した形質転換体を生成する頻度を増やす)、修飾を必要とせずに他種類の生成物遺伝子を取り込むことができる発現ベクターを提供することが付加的な目的である。
発明の要約
したがって、本発明は、5’転写開始部位および3’転写終末部位、一つのオープンリーディングフレーム内に融合した2つの選択遺伝子(好ましくは増幅性遺伝子)および融合した選択遺伝子の3’側の生成物遺伝子、融合選択遺伝子と生成物遺伝子の両方の転写を調節する転写調節領域、スプライス供与体部位およびスプライス受容体部位により定義されるイントロン内に位置する融合選択遺伝子を含んでなるDNAコンストラクト(DNA分子)に関する。スプライス供与体部位は好ましくはここで定義するように有効なスプライス供与体配列を含むものであり、それにより転写調節領域を用いて生成物遺伝子の発現を調節する。
他の実施態様では、本発明は、生成物遺伝子を発現させて、生成物を回収するために、前述したDNAコンストラクトを形質移入した真核細胞を培養することによってなる、興味ある生成物を生産する方法を提供する。
更なる実施態様では、本発明は、前述したDNAコンストラクト(ここで選択融合遺伝子は増幅性遺伝子である)を真核細胞に形質移入して、増幅薬剤を含む選択培地で増幅が起こるのに十分な時間細胞を生育して、そして生成物遺伝子のコピーを複数持つ細胞を選択することを含んでなる、生成物遺伝子の複数コピーを持つ真核細胞を生成する方法を提供する。宿主細胞の形質移入後、ほとんどの形質移入体は、いずれかの選択遺伝子によりコードされるタンパク質の選択表現形質も表すことなく、驚くことに、わずかな割合の形質移入体が選択表現形質の一つまたは両方を表し、そしてそれらの形質移入体のうちの大部分が、生成物遺伝子によりコードされる所望の生成物を高レベルに発現すると考えられる。それ故、発明は、所望の生成物を高レベルに発現する組み換え宿主細胞の改良した選択方法を提供するものであり、この方法は広く多種類の真核宿主細胞に利用可能であり、生来の問題を回避し、現行の細胞選択技術を改良する。
好適な実施態様の説明
定義:
ここで開示される「DNAコンストラクト」は、単離体としてか又は真核生物宿主細胞の染色体又は発現ベクターにおけるように他のDNA分子に組み込まれるか何れかの状態で提供され得る非天然発生のDNA分子又は化学的類似体を含む。
ここで使用される「選択遺伝子」なる用語は、選択される特定の細胞培養条件下での宿主細胞の成長又は生存のために必要な選択マーカーをコードするDNAを意味する。従って、選択遺伝子で形質転換されている宿主細胞は、非形質移入宿主細胞が成長又は生存することができないある細胞培養条件下で成長又は生存することができる。典型的には、選択遺伝子は薬物に対する耐性をもたらし、又は宿主細胞における代謝又は異化欠陥を補償する。選択遺伝子の例を次表に記載する。これらの概説については、Kaufman, Methods in Enzymology, 185: 537-566 (1990)をまた参照のこと。
ここで使用される「融合選択遺伝子」とは、同じオープンリーディングフレームのイントロン配列に挿入された少なくとも2つの選択マーカーをコードするDNAを意味する。
Figure 2006512061
好適な選択遺伝子は増幅性遺伝子である。ここで使用される場合、「増幅性遺伝子」という用語は、ある条件下で増幅される(つまり、染色体内又は染色体外形態で生存する遺伝子の更なるコピーが産生される)遺伝子を意味する。増幅性遺伝子は通常はその条件下で真核生物細胞の成長に必要とされる酵素(つまり増幅性マーカー)をコードする。例えば、遺伝子は、それで形質転換された宿主細胞がMtx中で成長させられる場合に増幅されるDHFRをコードしうる。Kaufmanによれば、上の表1の選択遺伝子はまた増幅性遺伝子と考えることができる。一般には増幅性遺伝子であるとは考えられない選択遺伝子の例はネオマイシン耐性遺伝子である(上掲のCepko等)。
ここで使用される「選択培地」とは、選択遺伝子を有する真核生物細胞を成長させるのに使用され、よって選択遺伝子によって供給される成分が欠乏しているか、又は「選択剤」を含む栄養液を意味する。HamのF10(Sigma)、最小必須培地((MEM), Sigma)、RPMI-1640(Sigma)及びダルベッコの変法イーグル培地((DMEM), Sigma)のような処方に基づく市販培地が例示的な栄養液である。また、その全ての開示が出典明示によりここに取り込まれるHam及びWallace, Meth. Enz., 58:44 (1979), Barnes及びSato, Anal. Biochem., 102:255 (1980), 米国特許第4767704号;同第4657866号;同第4927762号;又は同第4560655号;国際公開第90/03430号、同第87/00195号;米国再発行特許第30985号;又は米国特許第5122469号に記載された培地の何れも培養培地として使用することができる。これらの何れの培地にも、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシンTM薬)、微量元素(通常マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は等価なエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。好ましい栄養液には仔ウシ血清が含まれる。
「選択剤」という用語は、細胞に特定の選択遺伝子が欠乏しているため、宿主細胞の成長又は生存を妨げる物質を意味する。選択剤の例は上の表1に示される。選択剤は好ましくは増幅性遺伝子のコピーを増幅させるか又は増幅性遺伝子の複数コピーのゲノムへの組み込みにを生じさせる薬剤としてここでの目的のために定義した「増幅剤」を含み、例えば増幅性遺伝子がDHFRであるならばMtxである。増幅剤の例については表1を参照のこと。
ここで使用される場合、「直接選択」又は「直接培養」という用語は、MTX又はGHTを伴わないか又はMTXを伴う何れかの選択条件に最初にさらし、約250mg/l、400mg/l、600mg/l又は800mg/lから約1g/l又はそれ以上の量で異種ポリペプチドを産生することを意味する。
ここで使用される場合、「転写開始部位」という用語は一次転写産物、つまりmRNA前駆体中に組み込まれた最初の核酸に対応するDNAコンストラクトの核酸を意味し、該部位は一般にDNAコンストラクトの5'末端に又はそれに隣接して提供される。
「転写終結部位」という用語は、通常はDNAコンストラクトの3'末端に提示されるDNA配列で、RNAポリメラーゼに転写を終結させるものを意味する。
ここで使用される場合、「転写調節領域」は、選択遺伝子と生成物遺伝子の転写を調節するDNAコンストラクトの領域を意味する。転写調節領域は通常は構成的又は誘導性であり得、場合によってはエンハンサー(つまり、その転写を増大させるためにプロモーターに作用する通常は約10−300bpのシス作動性DNAエレメント)であるプロモーター配列(つまり、転写を開始させるためにRNAポリメラーゼの結合に関連するDNAの領域)を意味する。
ここで使用される場合、「生成物遺伝子」は、所望のタンパク質又はポリペプチド産物をコードするDNAを意味する。宿主細胞において発現することが可能な任意の生成物遺伝子を用いることができるが、本発明の方法は、また選択又は増幅性遺伝子ではない生成物遺伝子の高レベルの発現を達成するのに特に適している。従って、生成物遺伝子によってコードされるタンパク質又はポリペプチドは典型的には選択された特定の細胞培養条件下で宿主細胞の成長又は生存に必要ではないものである。例えば、生成物遺伝子は好適にはペプチドをコードし、又は鎖長が高レベルの三次及び/又は四次構造を作り出すのに十分なアミノ酸のポリペプチド配列をコードしうる。
細菌ポリペプチド又はタンパク質の例には、例えばアルカリホスファターゼ及びβラクタマーゼが含まれる。哺乳動物ポリペプチド又はタンパク質の例には、例えば、レニン;ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インシュリンA-鎖;インシュリンB-鎖;プロインシュリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;VIIIC因子、IX因子、組織因子、及びフォン・ヴィレブランド因子等の凝固因子;プロテインC等の抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;ウロキナーゼ又はヒト尿又は組織型プラスミノーゲン活性化剤(t-PA)等のプラスミノーゲン活性化剤;ボンベシン;トロンビン;造血性成長因子;腫瘍壊死因子-α及び-β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン;ミューラー阻害物質;リラキシンA-鎖;リラキシンB-鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;β-ラクタマーゼ等の微生物タンパク質;DNアーゼ;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモン又は成長因子のレセプター;プロテインA又はD;リウマチ因子;脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)、又はNGF-β等の神経成長因子等の神経成長因子;血小板誘導成長因子(PDGF);aFGF及びbFGF等の繊維芽成長因子;上皮成長因子(EGF);TGF-α及びTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5を含む、TGF-βのようなトランスフォーミング成長因子(TGF);インシュリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インシュリン様成長因子結合タンパク質;CD-3、CD-4、CD-8、及びCD-19等のCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1からIL-10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞レセプター;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス性抗原、例えばAIDSエンベロープの一部等;輸送タンパク質;ホーミングレセプター;アドレシン;調節タンパク質;抗体;キメラタンパク質、例えばイムノアドヘシン及び上に列挙した任意のポリペプチドの断片が含まれる。
生成物遺伝子は好ましくは宿主中に存在する遺伝子の発現を阻害するためにアンチセンス配列から構成されない。ここでの好適なタンパク質は治療用タンパク質、例えばTGF-β、TGF-α、PDGF、EGF、FGF、IGF-I、DNase、プラスミノーゲン活性化因子、例えばt-PA、凝固因子、例えば組織因子及びVIII因子、ホルモン、例えばリラキシン及びインシュリン、サイトカイン、例えばIFN-γ、キメラタンパク質、例えばTNFレセプターIgGイムノアドヘシン(TNFr-IgG)又は抗体、例えば抗IgEである。pSV.IDPプラスミドを用いて産生できる抗体の例(図4)は上掲の実施例1に提供されるような、抗HER2Neu抗体2C4である。
ここで使用される「イントロン」という用語は、遺伝子の転写領域内又はメッセンジャーRNA前駆体内に存在するヌクレオチド配列を意味し、該ヌクレオチド配列は翻訳の前に宿主細胞によってメッセンジャーRNA前駆体から切除又はスプライシングされ得る。本発明での使用に適したイントロンは適切には当該分野でよく知られている幾つかの方法の任意のものによって、例えば天然に生じる核酸からの精製又はデノボ合成によって調製される。多くの天然に生じる真核生物遺伝子中に存在するイントロンが同定され特徴付けられている。Mount, Nucl. Acids Res., 10:459 (1982)。機能的スプライシング部位を有する人工イントロンがまた記載されている。Winey等, Mol. Cell Biol., 9:329 (1989); Gatermann等, Mol. Cell Biol., 9:1526 (1989)。イントロンは天然に生じる核酸から、例えば、適切な制限エンドヌクレアーゼを用いての天然に生じる核酸の消化により、あるいはイントロンの5'及び3'末端の配列に相補的なプライマーを使用するPCRクローニングによって、得ることができる。あるいは、決まった配列と長さのイントロンを、有機化学の様々な方法を使用して合成により調製することができる。Narang等, Meth. Enzymol., 68:90 (1979); Caruthers等, Meth. Enzymol., 154:287 (1985); Froehler等, Nuc. Acids Res., 14:5399 (1986)。
ここで使用される「スプライシングドナー部位」又は「SD」は、「エキソン」がイントロンの5'に核酸を含むイントロンの5'末端のエキソン-イントロン境界を直ぐに囲んでいるDNA配列を意味する。多くのスプライシングドナー部位が特徴付けられており、Ohshima等, J. Mol. Biol., 195:247-259 (1987)がこれらの概説を提供する。「効率的なスプライシングドナー配列」はスプライシングドナー配列を有するメッセンジャーRNA前駆体のスプライシング効率が定量的PCRによって測定して約80から99%、好ましくは90から95%であるスプライシングドナー部位をコードする核酸配列を意味する。効率的なスプライシングドナー配列の例には、野生型(WT)rasスプライシングドナー配列及び実施例3のGAC:GTAAGT配列が含まれる。他の効率的なスプライシングドナー配列はここに開示したスプライシングの効率を測定する技術を使用して即座に決定することができる。
ここで使用される「PCR」及び「ポリメラーゼ連鎖反応」は、米国特許第4683195号(1987年7月28日発行)に記載されたインビトロ増幅方法を意味する。一般に、PCR法は、増幅されるヌクレオチド配列を含む鋳型核酸に優先的にハイブリダイズ可能な二つのプライマーを使用する、プライマー伸長合成の反復サイクルを含む。PCR法は、全ゲノムDNA、細胞RNAから転写されたcDNA、ウイルス又はプラスミドDNAからの特定のDNA配列をクローニングするために使用できる。Wang及びMark, PCR Protocols, pp.70-75 (Academic Press, 1990);Scharf, PCR Protocols, pp.84-98;Kawasaki及びWang, PCR Technology, pp.89-97 (Stockton Press, 1989)。逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を、スプライシングされたmRNA転写産物とスプライシングされていないものの混合物を含むRNA試料を分析するために使用することができる。イントロンをスパンするように設計された蛍光タグプライマーがスプライシングされた標的とスプライシングされていない標的の両方を増幅するために使用される。ついで、得られた増幅産物をゲル電気泳動法により分離し、適切なバンドの蛍光発光を測定することにより定量する。RNA試料中に存在するスプライシングされた転写産物とスプライシングされていない転写産物の量を決定するために比較を行う。
一つの好適なスプライシングドナー配列は「コンセンサススプライシングドナー配列」である。進化的に高度に保存されている、イントロンスプライシング部位を囲むヌクレオチド配列は「コンセンサススプライシングドナー配列」である。高等真核生物のmRNAでは、5'スプライシング部位がコンセンサス配列AG:GUAAGU(ここで、コロンは切断部位とライゲーションを示す)内に生じる。酵母のmRNAでは、5'スプライシング部位はコンセンサス配列:GUAUGUに境界がある。Padgett等, Ann. Rev. Biochem., 55:1119 (1986)。
「スプライシングアクセプター部位」又は「SA」という表現は、「エキソン」がイントロンの3'に核酸を含むイントロンの3'末端のエキソン-イントロン境界を直ぐに囲んでいる配列を意味する。多くのスプライシングアクセプター部位が特徴付けられており、Ohshima等, J. Mol. Biol., 195:247-259 (1987)がこれらの概説を提供する。好適なスプライシングアクセプター配列は、スプライシングアクセプター部位を有するメッセンジャーRNA前駆体のスプライシング効率が定量的PCRによって測定して約80から99%、好ましくは90から95%であるスプライシングアクセプター部位をコードする核酸配列を意味する効率的なスプライシングアクセプター部位である。スプライシングアクセプター部位はコンセンサス配列を含みうる。高等真核生物のmRNAでは、3'スプライシングアクセプター部位はコンセンサス配列(U/C)11NCAG:G内に生じる。酵母のmRNAでは、3'アクセプタースプライシング部位はコンセンサス配列(C/U)AGを境界とする:上掲のPadgett等。
ここで使用される「増幅が生じるのに十分な時間培養する」とは、宿主細胞中の増幅性遺伝子のコピー数(好ましくはまた生成物遺伝子のコピー数)がこの培養前の形質転換細胞に対して増加するまで、増幅剤を含む細胞培養培地においてDNAコンストラクトで形質転換された真核生物宿主細胞を物理的に培養する行為を意味する。
ここで使用される「発現」という用語は、宿主細胞内で生じる転写又は翻訳を意味する。宿主細胞での生成物遺伝子の発現レベルは、細胞中に存在する対応するmRNAの量か、細胞が産生する生成物遺伝子によってコードされるタンパク質の量の何れかに基づいて決定することができる。例えば、生成物遺伝子から転写されたmRNAは望ましくはノーザンハイブリダイゼーション又は定量的実時間PCR法により定量できる。Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory manual, pp. 7.3-7.57 (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)。生成物遺伝子によりコードされるタンパク質は、タンパク質の生物活性をアッセイすることにより、又はそのような活性と異なるアッセイ、例えばタンパク質と反応する抗体を用いて、ウェスタンブロッティング又はラジオイムノアッセイを使用することで、定量することができる。Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory manual, pp. 18.1-18.88 (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)。
発明の実施の形態
興味あるRNA配列のレベルの増加を可能にするために転写配列の安定性及び/又はコピー数を増大させるための方法と組成物が提供される。一般に、本発明の方法は、所望のポリペプチドをコードする生成物遺伝子と融合選択遺伝子の双方を含む発現ベクターを真核生物宿主細胞に形質移入することを含む。
選択遺伝子と生成物遺伝子はゲノムDNA、細胞RNAから転写されたcDNAから、又はインビトロ合成によって得ることができる。例えば、ライブラリーが、選択遺伝子又は生成物遺伝子(又はそれにコードされるタンパク質)を同定するように構成されたプローブ(例えば約20−80塩基のオリゴヌクレオチド又は抗体)を用いてスクリーニングされる。選択されたプローブでのcDNA又はゲノムライブラリーのスクリーニングは、Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)の10−12章に記載されたような標準的な手法を用いて実施することができる。選択遺伝子又は生成物遺伝子を単離する代替手段は上掲のSambrook等のセクション14に記載のPCR法を使用するものである。
本発明を実施する好適な方法は、注意深く選択したオリゴヌクレオチド配列を使用して、選択遺伝子又は生成物遺伝子を含むことが知られている様々な様々な組織由来のcDNAライブラリーをスクリーニングすることである。プローブとして選択されるオリゴヌクレオチド配列は、擬陽性が最小限に抑えられるように十分な長さを持ちかつ十分に明瞭でなければならない
オリゴヌクレオチドは、一般に、スクリーニングされるライブラリー内のDNAにハイブリダイズしたときに検出できるように標識されていなければならない。標識化の好ましい方法は、当該分野においてはよく知られているように、32P標識ATPをポリヌクレオチドキナーゼと共に用いてオリゴヌクレオチドを放射標識することである。しかし、限定されることなく、ビオチン標識あるいは酵素標識を含む他の方法をオリゴヌクレオチドを標識するために使用することができる。
しばしば、融合した選択遺伝子及び生成物遺伝子をコードするDNAの前に成熟タンパク質又はポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有しているシグナル配列をコードするDNAがある。一般に、シグナル配列は発現ベクターの一成分であるか、又は発現ベクターに挿入される選択遺伝子又は生成物遺伝子の一部であり得る。異種シグナル配列が使用される場合、それは好ましくは宿主細胞によって認識され加工(つまりシグナルペプチダーゼにより切断)されるものである。酵母の分泌の場合には、天然シグナル配列は、例えば酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(酵母菌属(Saccharomyces)及びクルイベロマイシス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含み、後者は1991年4月23日発行の米国特許第5010182号に記載されている)、又は酸ホスフォターゼリーダー、白体(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日に公開の欧州特許出願公開362179号)、又は1990年11月15日に公開された国際公開第90/13646号に記載されているシグナルにより置換されうる。哺乳動物細胞の発現においては、対象タンパク質の天然シグナル配列が満足できるものであるが、他の哺乳動物のシグナル配列、例えば同じ又は関連した種の分泌ポリペプチドからのシグナル配列、並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルも適している。このような前駆体領域のDNAは、融合選択遺伝子又は生成物遺伝子に読み枠を一致させて結合される。
図1に示されるように、融合選択遺伝子は一般にDNAコンストラクトの5'末端に提供され、それに(リンカー部位に挿入されるであろう)生成物遺伝子が続く。従って、完全長(非スプライシング)メッセージは、最初のオープンリーディングフレームとしてPURO-DHFR融合を含み、よって安定な形質移入体の選択を可能にするPURO-DHFRタンパク質を産生する。ジシストロン作動性メッセージ中の第二のAUGが哺乳動物細胞中での翻訳の非効率な発動因子であるので、完全長メッセージが相当量の対象タンパク質を産生することは期待されない(Kozak, J. Cell Biol., 115: 887-903 (1991))。
融合選択遺伝子はイントロン内に位置している。イントロンは、多くの真核生物遺伝子内に通常は存在している非翻訳ヌクレオチド配列であり、これは集合的にスプライシングと呼ばれる複数工程プロセスで新たに転写されたmRNA前駆体から除去される。
単一のメカニズムが哺乳動物、植物及び酵母細胞中でのmRNA前駆体のスプライシングの原因であると思われる。一般に、スプライシングプロセスでは、イントロンの5'及び3'末端が正しく切断され、mRNAの生じた末端が、タンパク質合成のために適切なリーディングフレームを有する成熟mRNAが産生されるように精確に結合されることが必要である。様々な天然に生じまた合成的に構築された変異体遺伝子の分析により、5'及び3'スプライシング部位におけるコンセンサス配列内の多くの位置でのヌクレオチド変化が成熟mRNAの合成を減少させ又は止める効果を有していることが示されている。Sharp, Science, 235:766 (1987); Padgett等, Ann. Rev. Biochem., 55:1119 (1986); Green, Ann. Rev. Genet., 20:671 (1986)。また変異の研究により、スプライシング部位を含むRNA二次構造がスプライシング効率に影響を及ぼし得ることが分かった。Solnick, Cell, 43:667 (1985); Konarska等, Cell, 42: 165(1985)。
イントロンの長さがまたスプライシング効率に影響を及ぼしうる。ウサギβ-グロビン遺伝子の大きなイントロン内に異なったサイズの欠失変異を作製することによって、Wieringa等は、正しいスプライシングに必要な最少イントロン長は約69ヌクレオチドであると決定した。Cell, 37:915 (1984)。アデノウイルスE1Aのイントロンの同様の研究により、約78ヌクレオチドのイントロン長が正しいスプライシングを生じさせるが、効率は低いことが示されている。イントロン長を91ヌクレオチドに増加させると、通常のスプライシング効率が回復する一方、イントロンを63ヌクレオチドに切断すると正確なスプライシングを消滅させる。Ulfendahl等, Nuc. Acids Res., 13:6299 (1985)。
本発明において有用であるには、イントロンは、mRNAからのイントロンのスプライシングが効率的であるような長さを持っていなければならない。異なった長さのイントロンの調製は常套的であり、当該分野でよく知られた方法、例えばデノボ合成又は現存するイントロンのインビトロでの欠失突然変異誘発を含む。典型的には、イントロンは少なくとも150ヌクレオチドの長さを有するが、これより短いイントロンは抵抗率でスプライスされる傾向にあるためである。イントロン長の上限は30kB以上までとできる。しかし、一般的な提案として、イントロンは一般的に約10kB長未満である。
イントロンは、インビトロで核酸を修飾する様々な既知の方法の何れかを使用して、イントロン内に通常は存在していない融合選択遺伝子を含むように改変される。典型的には、融合選択遺伝子は、最初にイントロンを制限エンドヌクレアーゼで切断し、ついで、例えばDNAリガーゼ酵素でのライゲーションによって宿主細胞発現のための正しい配向で、生じた制限断片を融合選択遺伝子に共有的に結合させることによって、イントロン内に導入される。
DNAコンストラクトはジシストロン作動性である。つまり、融合選択遺伝子及び生成物遺伝子は共に単一の転写調節領域の転写制御下にある。上述したように、転写調節領域はプロモーターを含む。酵母宿主での使用に対して好適なプロモーター配列には、3-ホスホグリセラートキナーゼ(Hitzeman 等, J. Biol. Chem., 255:2073 (1980))又は他の糖分解酵素(Hess 等, J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968);Holland, Biochemistry, 17:4900(1978))、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
他の酵母プロモーターは、成長条件によって転写が制御される更なる利点を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースを利用する酵素のプロモーター領域である。酵母発現での使用に適するベクターとプロモーターはHitzeman等の欧州特許出願公開73657号に更に記載されている。酵母エンハンサーもまた酵母プロモーターと共に好適に使用される。
真核生物に対しても発現制御配列が知られている。実質的に全ての真核生物の遺伝子は、転写が開始される部位からおよそ25ないし30塩基上流に見出されるATリッチ領域を有する。多数の遺伝子の転写開始位置から70ないし80塩基上流に見出される他の配列は、Xが任意のヌクレオチドであるCXCAAT領域である。
哺乳動物宿主細胞のベクターからの生成物遺伝子の転写は、例えばポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス(1989年7月5日公開の英国特許出願公開第2211504号)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及び最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)又はサイトメガロウイルス(CMV)などのウイルスのゲノムから取得されたか、アクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーターなどの非相同哺乳動物プロモーターから取得されたか、又は熱ショックプロモーターから、また生成物遺伝子に通常関連するプロモーターから取得されたプロモーターにより、制御されるが、但し、これらプロモーターは宿主細胞系と適合することが前提である。宿主細胞系に内因性のプロモーター、例えばCHO伸長因子1αプロモーターもまた使用することができる。
SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点をまた含む制限断片として簡便に得られる。Fiers等, Nature, 273:113 (1978); Mulligan及びBerg, Science, 209:1422-1427 (1980); Pavlakis等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:7398-7402 (1981)。ヒトサイトメガロウィルス(CMV)の最初期プロモーターは、HindIII E制限断片として簡便に得られる。Greenaway等, Gene, 18:355-360 (1982)。ウシ乳頭腫ウイルスをベクターとして使用して哺乳動物の宿主にDNAを発現させる系は、米国特許第4419446号に開示されている。この系の変形例は、米国特許第4601978号に開示されている。更に、サル細胞中での免疫インターフェロンをコードするcDNAの発現についてGray等, Nature, 295:503-508 (1982);単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼの制御下におけるマウス細胞中のヒトβ-インターフェロンcDNAの発現について、Reyes等, Nature 297:598-601 (1982年);培養マウス及びウサギ細胞中でのヒトインターフェロンβ1遺伝子の発現について、Canaani及びBerg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79:5166-5170 (1982);プロモーターとしてラウス肉腫ウイルス末端反復配列を使用するCV-1サル腎臓細胞、ニワトリ胚線維芽細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞及びマウスNIH-3T3細胞中での細菌CAT配列の発現について、Gorman等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79:6777-6781 (1982)を参照のこと。
好ましくは、高等真核生物の転写調節領域はエンハンサー配列を含む。エンハンサーは相対的な配向と位置が独立であり、イントロン内において(Banerji等, Cell, 33:729 (1983))並びにそれ自身のコード配列内(Osborne等, Mol. Cell Bio., 4:1293 [1984])において、転写ユニットに対して5'(Lainins等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:993 (1981))又は3'(Lusky等, Mol. Cell Bio., 3:1108 (1983))に見い出されている。哺乳動物遺伝子からの多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核生物細胞ウイルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製開始点の後期側のSV40エンハンサー(bp100−270)、サイトメガロウィルス(CMV)最初期プロモーターのエンハンサー、複製開始点の後期側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化のためのエンハンサーエレメントについてはYaniv, Nature, 297:17-18 (1982)も参照のこと。エンハンサーは、生成物遺伝子の5'又は3'位でベクター中にスプライスされうるが、好ましくはプロモーターからの5'位に位置している。
本発明のDNAコンストラクトは転写調節領域の後に転写開始部位を、生成物遺伝子の後に転写終結領域を有する(例えば図1参照)。これらの配列は当該分野でよく知られている方法を使用してDNAコンストラクト中に提供される。
DNAコンストラクトは、通常は、複製起点(すなわち、一又は複数の選択された宿主細胞中でベクターを複製させる核酸配列)のような他の成分と、所望の場合には一又は複数の更なる選択遺伝子を有しうる発現ベクターの一部を形成する。所望のコード化及び制御配列を含む好適なベクターの構築は標準的なライゲーション法を使用する。単離されたプラスミド又はDNA断片が切断され、仕立てられ、必要とされるプラスミドを産生するのに望まれる形態に再結合させる。
一般に、クローニングベクターにおいて、複製起点は宿主染色体DNAに独立にベクターが複製するようにするものであり、複製起点又は自己複製配列を含む。そのような配列はよく知られている。2μプラスミド複製起点は酵母に適しており、様々なウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般に、複製起点成分は哺乳動物発現ベクターに必要とはされない(SV40起点は、初期プロモーターを含んでいるので、典型的には単独で使用されうる)。
殆どの発現ベクターは「シャトル」ベクターである。つまり、それらは、少なくとも一つの生物クラスで複製可能であるが発現のために他の生物に形質移入できる。例えば、ベクターは大腸菌でクローニングされ、ついで同じベクターが、たとえそれが宿主細胞染色体と独立に複製可能ではなくとも、発現のために酵母又は哺乳動物細胞中に形質移入される。
構築されたプラスミド中の正しい配列を確認するための分析に対しては、形質転換体からのプラスミドを調製し、制限によって分析し、及び/又はMessing等, Nucleic Acids Res., 9:309 (1981)の方法又はMaxam等, Methods in Enzymology, 65:499 (1980)の方法によって配列決定する。
上で検討したようにして調製されたDNAコンストラクトを有する発現ベクターは真核生物宿主細胞中に形質転換される。ここでのベクターのクローニング又は発現に適した宿主細胞は酵母又は高等真核生物細胞である。
糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、生成物遺伝子を含むベクターのための適切な宿主である。サッカロマイセス・セレビシエ、つまり一般的にはパン酵母が、下等真核生物宿主微生物のなかで最も一般的に用いられる。しかしながら、例えば、シゾサッカロマイセス・ポンベ (S. pombe)(Beach及びNurse, Nature, 290: 140 (1981);クリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)(Louvencourt等, J. Bacteriol. 154(2):737-742 (1983))、キヤロウィア(kyarrowia)(欧州特許出願公開第402226号)、ピッチャ・パストリス(Pichia pastoris)(欧州特許出願公開第183070号)、トリコデルマ・レーシア(reesia)(欧州特許出願公開第244234号)、ニューロスポラ・クラッサ(Case等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76: 5259-5263 (1979))、及びアスペルギルス宿主、例えばアスペルギルス・ニドランス(Ballance等, Biochem. Biophys. Res. Commun., 112: 284-289 (1983); Tilburn等, Gene, 26: 205-221 (1983); Yelton等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 1470-1474 (1984))及びクロカビ(Kelly及びHynes, EMBO J., 4: 475-479 (1985))が含まれる。
生成物遺伝子の発現に適切な宿主細胞は多細胞生物から誘導される。そのような宿主細胞は複雑な加工及びグリコシル化活性をなし得る。原理的には、脊椎動物培養からであろうと無脊椎動物培養からであろうと、より高等の真核生物細胞培養が作用可能である。無脊椎動物細胞の例としては、植物及び昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウィルス株及び変異体及び対応する許容可能な昆虫宿主細胞、例えばスポドプテラ・フルギペルダ(毛虫)、アエデス・アエジプティ(蚊)、アエデス・アルボピクトゥス(蚊)、ドロソフィラ・メラノガスター(ショウジョウバエ)、及びボンビクス・モリが同定されている。例えば、Luckow等, Bio/Technology, 6:47-55(1988); Miller等, Genetic Engineering, Setlow, J.K.等編, Vol. 8 (Plenum Publishing, 1986), pp.277-279; 及びMaeda等, Nature, 315:592-594(1985)を参照のこと。様々なそのようなウィルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカNPVのL-1変異体とボンビクス・モリ NPVのBm-5株が公に利用でき、そのようなウイルスは、特にスポドプテラ・フルギペルダ細胞の形質移入に対して、本発明に係るここでのウイルスとして使用することができる。
綿花、コーン、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、及びタバコのような植物細胞培養を宿主として利用することができる。典型的には、植物細胞は、細菌アグロバクテリウム・トゥメファシエンスの、生成物遺伝子を含むように既に操作された所定の菌株と共にインキュベートすることによって形質移入される。A.トゥメファシエンスと共に植物細胞培養をインキュベートする間に、生成物遺伝子が、植物細胞宿主にそれが形質移入されるよう移され、適切な条件下で生成物遺伝子が発現される。加えて、例えば、ノパリンシンターゼプロモーター及びポリアデニル化シグナル配列のような、植物細胞と適合しうる調節及びシグナル配列が利用できる。Depicker等, J. Mol. Appl. Gen., 1:561(1982)。更に、T-DNA780遺伝子の上流領域から分離されるDNAセグメントは、組換えDNAを含む植物組織中の植物発現遺伝子の転写レベルを活性化又は増強しうる。1989年6月21日公開の欧州特許出願公開第321196号。
しかしながら、脊椎動物細胞における興味が最もあり、培養(組織培養)中の脊椎細胞の増殖は近年では常套的な手順になった(Tissue Culture, Academic Press, Kruse及びPatterson, 編集者 (1973))。有用な哺乳動物宿主細胞の例は、SV40(COS-7,ATCC CRL 1651)で形質転換させたサル腎CV1細胞株;ヒト胚腎細胞系(293又は懸濁培養で成長するようにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol. 36:59(1977));ベビーハムスター腎細胞(BHK,ATCC CCL10);チヤイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO,Urlaub及びChasin等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 4216(1980));dp12.CHO細胞(1989年3月15日公開の欧州特許出願公開第307247号);マウスセルトリ細胞(TM4,Mather, Biol. Reprod. 23: 243-251(1980));サル腎細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76,ATCC CRL-1587);ヒト頚管腫瘍細胞(HELA,ATCC CCL2);イヌ腎細胞(MDCK,ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2,HB 8065);マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562,ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等, Annals N.Y. Acad. Sci. 383: 44-68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝臓癌株(Hep G2)である。
宿主細胞は、本発明の上述の発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘発し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切に修飾した通常の栄養培地で培養される。
アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shaw等, Gene, 23:315(1983)及び1989年6月29日公開の国際公開第89/05859号に記載されたように、ある種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁のない哺乳動物細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457(1973)のリン酸カルシウム沈殿法を使用することができる。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な側面は、1983年8月16日に発行された米国特許第4399216号に記載されている。酵母中の形質転換は、典型的には、Van solingen等, J. Bact. 130: 946(1977)及びHsiao等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829(1979)の方法によって実施される。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション又はプロトプラスト融合もまた用いることができる。
好適な実施態様では、エレクトロポレーション、リポフェクション又はポリフェクション法を使用して宿主細胞中にDNAが導入される。特に好適な実施態様では、形質移入は実施例3によって例証されているようにスピナ容器で、又は何か他の形態の懸濁培養で実施される。スピナ容器で実施される形質移入はまた「スピナ形質移入」とも呼ばれる。懸濁状態で細胞を培養すると、形質移入の前に、少なくとも約5×10/ml、より好ましくは少なくとも約1.5×10/mlの細胞密度を達成することができる。本発明を実施するために有用なエレクトロポレーション法の概説については、Andreason, (1993) J. Tiss. Cult. Meth., 15:56-62を参照のこと。宿主細胞中にDNAコンストラクトを導入するためのこれらの方法は、DNAを壊して鎖状体を生じうるリン酸カルシウム沈降法よりも好ましい。
ここでの生成物遺伝子を発現させるために使用される哺乳動物宿主細胞は上の定義のセクションで検討したような様々な培地中で培養することができる。培地は、DNAコンストラクトを(染色体内又は染色体外エレメントとして)取り上げた形質転換宿主細胞を選択するために選択的栄養条件又は選択剤をもたらすように処方される。形質転換された真核生物細胞の選択を達成するために、宿主細胞を細胞培養プレート中で成長させることができ、選択遺伝子(従って生成物遺伝子)の一方又は双方を発現する個々のコロニーを単離し、定まった条件下で成長培地中で成長させることができる。温度、pH等のような培養条件は発現に対して選択された宿主細胞でこれまで使用されているものであり、当業者には明らかであろう。
遺伝子の増幅及び/又は発現は、ここで提供された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、例えば、一般的なサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201-5205[1980])、ドットブロット法(DNA又はmRNA分析)、又はインサイツハイブリダイゼーションによって、直接的に試料中で測定することができる。様々な標識を用いることができ、最も一般的なものは放射性同位元素、特に32Pである。しかしながら、他の技術、例えばポリヌクレオチド中への導入のためのビオチン修飾されたヌクレオチドもまた使用することができる。このビオチンは、ついで例えば放射性核種、蛍光又は酵素等のような広範囲の標識で標識することができるアビジン又は抗体への結合部位として作用する。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA-RNAハイブリッド二本鎖又はDNA-タンパク質二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。ついで、抗体を標識して、アッセイを実施することができ、そこでは、二本鎖は表面に結合しており、表面の二本鎖の形成の時点で、その二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。
あるいは、遺伝子発現は、免疫学的方法、例えば組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液のアッセイ法を用いて遺伝子産物の発現を直接定量することができる。免疫組織化学的染色技術では、細胞試料を、典型的には脱水と固定によって調製し、結合した遺伝子産物に対し特異的な標識化抗体と反応させるが、ここで、標識は通常は視覚的に検出可能なもの、例えば酵素的標識、蛍光標識、ルミネセンス標識等々である。本発明での使用に適した特に感受性のある染色技術は、Hsu等, Am. J. Clin. Path., 75: 734-738(1980)に記載されている。
好適な実施態様では、タンパク質の発現は、ここの実施例1に記載されているように、エライザを使用して測定される。
対象の生成物は、好ましくは分泌ポリペプチドとして培養培地から回収されるが、分泌シグナルなしに直接発現された場合は宿主細胞可溶化物から回収することもできる。生成物遺伝子がヒト由来のもの以外の組換え細胞中で発現される場合、対象の生成物はヒト由来のタンパク質又はポリペプチドを完全に含まない。しかしながら、組換え細胞タンパク質又はポリペプチドから対象の生成物を精製して、対象の生成物に関して実質的に均質な調製物を得ることが必要である。第一の工程として、培養培地又は可溶化物を遠心分離にかけて粒子状の細胞片を除去する。その後に、汚染した可溶性タンパク質及びポリペプチドから、例えば免疫親和性又はイオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はDEAEのような陽イオン交換樹脂でのクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を使用するゲル電気泳動;対象の生成物を結合させるプラスミノーゲンカラムクロマトグラフィー及びIgGのような汚染物質を除去するプロテインAセファロースカラムによって精製される。
次の実施例は例証のためにのみ記載するもので如何なる形でも本発明を限定するものではない。ここで引用された特許及び文献は全て出典明示により取り込む。
融合コンストラクト発現ベクターを用いた2C4生成
Lucasら(Lucas BK, Giere LM, DeMarco RA, Shen A, Chisholm VおよびCrowley C. High-level production of recombinant proteins in CHO cells using a dicistronic DHFR intron expression vector. (1996) Nucleic Acids Res. 24(9), 1774-1779.)により述べられたベクター、すなわちSV40プロモータとエンハンサーとの間にイントロン、および興味あるポリペプチドをコードするcDNAを含むベクターを構築した。イントロンは、その3’および5’末端をそれぞれサイトメガロウイルス極初期遺伝子(CMVIE)由来のスプライス供与体部位およびIgG重鎖可変領域(V)遺伝子由来のスプライス受容体部位により境界としている(Eatonら, Biochem., 25:8343 (1986))。生成された転写物の約90%しかイントロンを持たないように、選択したスプライス部位をスプライシングがわずかに低率になるようにする。DHFRのような選択マーカーがイントロン内に結合されると、プラスミドpSV.IDのように、マーカー遺伝子の転写はスプライスされていないいずれかの転写産物から起こり、マーカー遺伝子の発現に比例して生成物遺伝子の発現が亢進されると同時に、マーカー遺伝子と興味あるcDNAの発現間の連鎖が維持され、効率が非常によいということが、以前の研究で明らかにされている。
SV40プロモーター成分の後に続くイントロン内にマウスのピューロマイシン/DHFR融合配列を含むベクターをSV40プロモーター/エンハンサーの後に続くイントロン内にピューロマイシン耐性遺伝子を含むpSV.IPURプラスミド(pSV.IPUR、図1および4)をピューロマイシンORF末端に直後のHpaIにより線状化することによって構築した。マウスDHFR遺伝子の全コード領域を含む564bpのPCR断片を続いて線状化したベクターのピューロマイシン耐性遺伝子の3’側にライゲートした。ピューロマイシン耐性遺伝子とDHFR遺伝子間の終止コドンTAGは部位定方向突然変異誘発によって欠損させ、その結果、発現カセットのイントロン内にPuro/DHFR融合遺伝子を含むpSV.Iプラスミドとした(pSV.IPD、図1および4)。
抗HER2 Neu抗体である2C4の重鎖(HC)および軽鎖(LC)配列のcDNAを図6に示すようにpSV.IPDに挿入した。pSV.IPD.2C4の配列を図7に示す。pSV.IPD.2C4ベクターを用いて集めたデータを表2に示す。
さらに、イントロン内にマウスDHFR配列しか含まないベクター(pSV.ID)を調製した。pSV.IDベクターのDNA配列を図3に示す。このベクターの調製は、ここでは引用として組み込まれている米国特許第5,561,053号に開示されている。このベクター内に、VEGFに対するモノクローナル抗体のHCおよびLC配列を挿入した。pSV.IPD.VEGFベクターの配列を図5に示す。
イントロン内にPuro/DHFR融合配列、または2C4および抗VEGFのHCおよびLCのマウスDHFR単独の前述のcDNA配列のいずれかを含むプラスミドDNAは、それぞれリポフェクションによってCHO DHFR−細胞内に導入する。簡単に言えば、形質移入のために、形質移入前日に400万個のCHO DUX−B11(DHFR−)を10cmプレートに播いた。形質移入の日に、Qiagenから入手した25μlのポリフェクトと300μlの無血清培地に4μgのDNAを混合した。混合液を室温にて5−10分間インキュベートして、細胞へ加えた。細胞は、新鮮なグリシン、ヒポキサンチン、およびチミジンを含まない(無GHT)培地にて生育し、24時間後トリプシン処理して、安定したDHFR+クローンを選択するために0−5nMのメトトレキセート(MTX)を添加した新鮮無GHT培地にて選択をする。タンパク質発現レベル測定について行うスクリーニングの第一ラウンドでは、およそ300−400のクローンが選択された。そうして、抗体を高いレベルで発現する各々の発現ベクターから得たクローンは、その後、遺伝子増幅および選択の第二ラウンドに影響するように濃度を変えたメトトレキセートに再曝露した。このスクリーニング工程はすべての入手可能なクローンについて繰り返し、最高では、増幅の第三ラウンドに曝した。pSV.ID由来ベクターを用いた増幅の際に使用したメトトレキセート濃度は、第二ラウンドでは50−1000nM、第三ラウンドでは200−1000nMとした。これらの濃度は一般的に成長限界毒性に達する濃度であり、遺伝子増幅に対して十分な選択圧力がかかるものである。pSV.IPD由来ベクターを用いる際の同程度の毒性に達するために必要な濃度は明らかに低かった。
抗体発現のレベルは、3×10細胞/mlの濃度で、タンパク質加水分解物およびアミノ酸を添加したF12:DMEMベースの無血清培地1mlを24ウェルディッシュに、または同様の培地で96ウェルプレートにそれぞれ100μlを播くことによって測定した。3−4日後の成長培地を回収して、無処理のIgG分子を用いたELISA直接法によって力価を測定した。等しい細胞密度で播かれていない実験では、発現データを規準化するためにそれぞれのウェルで生きている細胞数の蛍光測定を行った。無処理IgG ELISAは、両抗体に共通なフレームワークFab残基配向性のある捕獲抗血清を用いたマイクロタイタープレートで行った。
表2は抗VEGFクローンスクリーニングにおける各ラウンドで単離されたクローンの発現レベル分布を示すものであり、イントロン内にDHFR配列のみを含むプラスミド形質移入体(pSV.ID.aVEGF)、および同じイントロン内にPuro/DHFR融合配列を用いて作製した2C4クローン(pSV.IPD.2C4)の結果を示す。抗VEGFの場合に見られる発現レベルの分布は、イントロン内にマウスDHFR遺伝子しか含まないベクター(pSV.ID)の成績の典型である。スクリーニングの第一および第二ラウンドで同定されたすべての分離株は相対的に発現レベルが低い。初めの選択ラウンドでは、5を超える発現レベルのクローンは単離されなかった。少なくとも増幅の第三ラウンドで、50より大きい特異的生産能力を持つクローンが同定される必要がある。2C4クローンはメトトレキセート(0−2.5nM)に初めに曝した後に選別され、それらのうち最も生産性のあるものは10−25nMのMTX中での増幅第二ラウンドに曝した。この増幅を生き延びた細胞をためて、更なるスクリーニングのために選別前に第三ラウンド増幅に曝した。pSV.IDベクターを対照として、pSV.IPDベクターを用いて発現レベル25までのクローンをさらにスクリーニングの第一ラウンドで同定した。発現レベル25より大きいクローンは、増幅とスクリーニングの第三ラウンド後に母集団の95%を占めた。
実施例1のデータより、選択マーカーとしてPuro/DHFR融合タンパク質を用いると、明らかに低いレベルのメトトレキセートで生産性の高いCHOクローンがより早く、より効率よく単離できることが示された。低い濃度および段階的に増加させたメトトレキセートに曝すことにより、発現性の高いクローンとその後の遺伝子増幅の初期選択が効率よく行うことができることがデータにより示される。細胞は非遺伝子増幅機能を介してメトトレキセート耐性を素早く獲得するので、過剰に高い濃度のメトトレキセートに曝すこと、または曝露の増加はあまり遺伝子発現の増加を引き起こさない。重要なことは、Puro/DHFR融合タンパク質は予想に反してDHFR遺伝子産物の活性を障害する、またはメトトレキセートへの感受性を亢進させ、このことにより、結果として非常に厳密な選択工程となり、選択的機能を介した薬剤耐性獲得にあまり関与しないメトトレキセート濃度での遺伝子増幅を効率よくしていることもデータからわかる。メトトレキセートへの初めの曝露の前に、ピューロマイシンまたはメトトレキセートいずれかの存在下でプラスミドが組み込まれている細胞を選択することにより、DHFR(陽性)宿主細胞への効率的な系を転送させることができる。
実施例1により、発現した抗体の構造が広く特徴づけられた。貯蔵クローンから発現される遊離型の重鎖または軽鎖の増加が不明であるため、pSV.IPDから生成したタンパク質はpSV.IDベクターから生成される抗体と区別がつかない。
Figure 2006512061
対照SDベクターに対するMTX濃度=0−10nM 第一ラウンド、50−1000nM 第二ラウンド、200−1000nM 第三ラウンド。SD−Puro/DHFRベクター=2.5nM 第一ラウンド、25nM 第二ラウンド、100nM 第三ラウンド。
発現レベルは、mg/mlまたは(mg/ml)/蛍光単位である。
この実施例は、MTXへの最小限曝露の後の生産性の高い組み換え細胞系の選択へのPuro/DHFR融合配列の一般的適応を立証するものである。
実施例2
DHFRおよびPuro以外の融合遺伝子を含むpSV.Iコンストラクトを用いた組み換えタンパク質産生。
実施例1に示すように、イントロン領域内に別の選択マーカーおよびDHFRの融合配列を含むコンストラクトも作製した。例えば、ベクターpSVIDを初めとして、ネオマイシン耐性遺伝子(Neo)、ヒグロマイシン耐性遺伝子(Hygro)、グルタミン合成酵素(GS)、チミジンキナーゼ(TK)、またはゼオシン(Zeo)のコード化配列をイントロン内に含まれるマウスDHFR配列の開始部位を持つフレーム内に挿入した。実施例1に記載の部位定方向性突然変異誘発により挿入された遺伝子の終止コドンを取り除いた。選択された宿主細胞の表現型により、実施例1−3に示すような無GHT培地またはMTX含有培地のいずれかを用いて、または適量の択一的選択薬剤を用いて、プラスミドを組み込んだ細胞を選択した。これで得たクローンによる遺伝子の発現は、メトトレキセートレベルに増加があると上がった。
実施例3
スピナー形質移入後のプラスミドSV.IPD.HPおよびCMV.IPD.HPを用いた直接選択
DP12CHO細胞は5%FBS(胎仔ウシ血清)および1×GHT(グリシン、ヒポキサンチン、およびチミジン)を含む成長培地で生育させた。一般的におよそ4日かけた。第1日目、成長培地400mlを入れた500mlのスピナー管に4×10/mlの細胞を播き、37℃で2日間成長させた。第3日目、5%FBSおよび1×GHTを添加した成長培地200mlを入れた250mlのスピナー管に、指数関数的に成長した1.5×10/mlの細胞を播いた。細胞は形質移入前に37℃で1ないし2時間成長させた。この間、無血清成長培地と1×GHTを37℃に温めた。400μgのプラスミドコンストラクトDNAおよび1mlのリポフェクタミン2000(登録商標)(Qiagen)をそれぞれ温めた25mlの無血清培地に希釈して、50mlのファルコンチューブに入れた。チューブの溶液を混合し、室温にて30分インキュベートした。そうして、図13および14にそれぞれ図示したプラスミドコンストラクトpSV.IPD.HPおよびpCMV.IPD.HPを細胞に形質移入した。インキュベーションの終わりに、細胞を含む無血清培地を入れている250mlのスピナー管に、希釈したプラスミドコンストラクトおよびリポフェクタミン2000(登録商標)の50ml混合液を加えることによって形質移入し、37℃でおよそ24時間成長を続けた。第4日目、250mlの形質移入した細胞を1000rpmで5分間遠心分離して、ペレットを回収した。形質移入効率は、形質移入後24時間FACS分析の後にGFPプラスミドを形質移入させることによってモニターした。図8に示すように、このプロトコールでの形質移入効率は一般的にCHO細胞のおよそ55ないし70%であった。
形質移入後、細胞を遠心分離して、ペレットを回収した。そして、SV40またはCMVのいずれか由来のコンストラクトに適する10ないし100nMの濃度範囲のメトトレキセート(MTX)を含む成長培地にペレットを懸濁した。およそ100クローンが直接選択により生き残った。細胞成長培地は3ないし4日ごとに交換した。形質移入からおよそ2週間目に、それぞれのクローンを拾い、MTXを含む成長培地を入れた96ウェルプレートで生育させた。異種ポリペプチド発現レベルをELISAにより評価した。図10−1,10−2,および11に、25nMから50nMのMTX選択結果を示す。図9には、一般的にスピナーフラスコ内で細胞が形質移入されない10nMのMTX選択により得たクローンの異種ポリペプチド発現レベルを示す。
96ウェルプレートで細胞が集密に成長するのにおよそ1週間を要した。集密になったとき、成長培地を除去して、販売されている濃縮細胞培養培地(1×GHTを含みMTXを含まないもの)をそれぞれのウェルに添加した。販売されている濃縮細胞培養培地を添加した第1日目の、細胞により生成されたヒト化モノクローナル抗体を定量するために行うELISA分析の前に、5ないし6日間プレートを33℃でインキュベートする。販売されている濃縮細胞培養培地の連続に希釈した溶液を用いて一般的にELISAを行った。図9,10−1,10−2,および11にヒト化モノクローナル抗体生成物の結果を示す。
CMV由来のコンストラクトを用いた25nMのMTXでの直接選択に基づいた100μg/ml以上の完全なIgGを産生する4つのクローンを96ウェルプレートから6ウェルプレートに、さらに10cmプレートへ規模を上げて培養した。2μg/mlのヒトインスリンおよび1×トレースエレメント(TE)を含む無血清成長培地200mlを入れた250mlのスピナー管に3×10/mlの細胞を播いた。初めは、2日または3日の間隔をあけて培地交換をしながら細胞を継代した。そして、3日または4日の間隔をあけてバイオリアクター評価までの6週間継代培養した。各継代で、細胞生存率および数を計測した。無血清適合の後に細胞成長を測定するために、スピナー管成長実験を行った。第1日目に、2μg/mlの組み換えヒトインスリンおよび1×TEを含む成長培地400mlを入れてある500mlのスピナー管に3×10細胞/mlの細胞を播いた。第5日目まで各日、赤血球沈層容積(PCV)をモニターした。PCVは4日目までに0.4%から0.6%に達した。CMV由来のコンストラクトを用いた25nMのMTX直接選択で得た2つの無血清適合クローンをバイオリアクターにかけた。販売されている濃縮細胞培養培地を用いた2リッターのバイオリアクターを全14日間行った。図12に力価評価のデータを示す。
直接選択により選択されたクローンのELISA分析により、この実施例に示す方法で明らかとなった最も良いクローンは従来の方法により得た増幅性の高いクローンよりより多くの興味ある生成物を産生することが明らかとなった。図16参照。直接選択によって得た2つのクローンの分析により、これらのクローンがバイオリアクター工程においておよそ1g/Lの興味ある生成物を産生することが明らかとなった。形質移入直後の一つの工程の直接選択によりクローンが産生されるため、バイオリアクターにおいて1g/Lの興味ある生成物を産生する安定した細胞系を産生するのに5ないし6週間しかかからず、したがって、およそ3か月の著しい時間短縮につながった。これは、生成物開発の効率にとって重大なことである。
前記の内容は、当業者が本発明を実施し得るに十分な内容と考える。例示された実施態様は本発明のある側面を例示したものであり、あらゆる機能的に同等な実施態様は本発明の範囲内のものであるため、本発明はここに挙げた実施例の範囲に制限されるものではない。ここに挙げた実施例は、特定の事例に対する請求項の範囲を限定するものではない。実際は、ここに示されおよび記載されたことに加えて、挙げた請求項の範囲内にある発明に対するさまざまな修飾が、前述の記載により当業者に明らかであろう。
pSV.IPD.の構造を概略的に示す。興味あるタンパク質の遺伝子は、ポリリンカー部位に挿入される。 pSV.IPD(配列番号1)の構築に用いられたpSV.IPURプラスミドのヌクレオチド配列を示す。 pSV.IPD(配列番号1)の構築に用いられたpSV.IPURプラスミドのヌクレオチド配列を示す。 pSV.IPD(配列番号1)の構築に用いられたpSV.IPURプラスミドのヌクレオチド配列を示す。 pSV.IPD(配列番号1)の構築に用いられたpSV.IPURプラスミドのヌクレオチド配列を示す。 pSV.IPD(配列番号2)の構築に用いられたpSV.IDプラスミドのヌクレオチド配列を示す。 pSV.IPD(配列番号2)の構築に用いられたpSV.IDプラスミドのヌクレオチド配列を示す。 pSV.IPD(配列番号2)の構築に用いられたpSV.IDプラスミドのヌクレオチド配列を示す。 pSV.IPD(配列番号2)の構築に用いられたpSV.IDプラスミドのヌクレオチド配列を示す。 pSV.IPD(配列番号3)のヌクレオチド配列を示す。 pSV.IPD(配列番号3)のヌクレオチド配列を示す。 pSV.IPD(配列番号3)のヌクレオチド配列を示す。 pSV.IPD(配列番号3)のヌクレオチド配列を示す。 実施例1で対照として用いたpSV.ID.VEGFプラスミドを概略的に示す。 実施例1で用いたpSV.IPD.2C4プラスミド(配列番号4)を概略的に示す。 実施例1で用いたpSV.IPD.2C4プラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例1で用いたpSV.IPD.2C4プラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例1で用いたpSV.IPD.2C4プラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例1で用いたpSV.IPD.2C4プラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例1で用いたpSV.IPD.2C4プラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例1で用いたpSV.IPD.2C4プラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例1で用いたpSV.IPD.2C4プラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例1で用いたpSV.IPD.2C4プラスミドのヌクレオチド配列を示す。 250mlのスピナー形質移入においてGTPプラスミドを一過性に形質移入したCHO細胞のFACS分析を示す。FACS分析は形質移入後24時間行った。 一般的な10nM MTX選択から得たクローンの発現レベルを示す。細胞は市販の形質移入剤を用いて形質移入し、10nMのMTXで直接的に選択した。それぞれのクローンは96ウェルプレートにて生育させた。生成物はELISA前の6日間に収集した。 25および50nMのMTX直接選択して得たクローンにおける、スピナー形質移入で得たSV40由来コンストラクトの発現レベルを示す。アッセイは図9と同様に行われた。 25nMのMTX直接選択して得たクローンにおける、スピナー形質移入から得たCMV由来コンストラクトの発現レベルを示す。アッセイは図9と同様に行われた。 ミニファームにおける力価評価を示す。試料は、毎日採取し、力価のためにHPLCタンパク質A分析に供した。 実施例3に用いたpCMV.IPD.異種性ポリペプチド(HP)プラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例3に用いたpCMV.IPD.異種性ポリペプチド(HP)プラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例3に用いたpCMV.IPD.異種性ポリペプチド(HP)プラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例3に用いたpCMV.IPD.異種性ポリペプチド(HP)プラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例3に用いたpCMV.IPD.異種性ポリペプチド(HP)プラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例3に用いたpCMV.IPD.異種性ポリペプチド(HP)プラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例3に用いたpCMV.IPD.異種性ポリペプチド(HP)プラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例3に用いたpSV40.IPD.HPプラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例3に用いたpSV40.IPD.HPプラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例3に用いたpSV40.IPD.HPプラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例3に用いたpSV40.IPD.HPプラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例3に用いたpSV40.IPD.HPプラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例3に用いたpSV40.IPD.HPプラスミドのヌクレオチド配列を示す。 実施例3に用いたpCMV.IPD.HPプラスミドを概略的に示す。 実施例3で示した直接的選択と一般的な選択との時系列および力価評価を示す。水平方向にそろえることで力価が等しいことを表す。例えば、200/300nMのSV40プラスミド一般的選択法、100nMのSV40プラスミド直接選択法および25nMのCMVプラスミド直接選択法それぞれの力価はおよそ等しい。
【配列表】
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Claims (20)

  1. 興味ある生成物を産生することができる宿主細胞の産生方法において、:
    宿主細胞株に、転写調節領域、融合選択遺伝子配列、および興味ある生成物をコードする遺伝子を含むDNAコンストラクトを移入する;
    選択培地中で形質移入した宿主細胞を直接培養する;
    興味ある生成物をコードする遺伝子の増幅が起こるために十分な時間、宿主細胞を選択培地中で生育させる;および
    少なくとも250mg/lの興味ある生成物を産生することができる宿主細胞クローンを選択する
    ことを含む。
  2. 選択培地に少なくともおよそ25nMのメトトレキセートを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 選択培地に少なくともおよそ50nMのメトトレキセートを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 宿主細胞がCHO細胞である、請求項1に記載の方法。
  5. 興味ある生成物が、抗体、酵素、ホルモン、リポタンパク質、凝固因子、抗凝固因子、サイトカイン、ウイルス抗原、キメラタンパク質、移送タンパク質、調節タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、または該タンパク質の断片からなる群から選択したものである、請求項1に記載の方法。
  6. 前記興味ある生成物がヒト化抗体である、請求項1に記載の方法。
  7. 請求項1に記載の方法に従って産生した宿主細胞。
  8. 興味ある生成物を産生する方法において、請求項1に記載の方法に従って産生した宿主細胞を適切な条件下で培養し、少なくともおよそ250mg/lの量の興味ある生成物を発現させることを含む。
  9. DNAコンストラクトが、5’から3’方向に沿って;
    (a)選択遺伝子および生成物遺伝子の両方の転写を調節することができる転写調節領域;
    (b)転写開始部位;
    (c)スプライス供与体配列を持つメッセンジャーRNAのスプライシング効率がPCRで決定されるような80%から99%であるスプライス供与体配列を含む5’スプライス供与体部位と、3’スプライス受容体部位によって定義されるイントロン内に位置する融合選択遺伝子配列;
    (d)興味ある生成物をコードする生成物遺伝子;および、
    (e)転写終結部位、
    を含む、請求項1に記載の方法。
  10. 培養物から興味ある生成物を回収することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
  11. 選択遺伝子および生成物遺伝子の両方の転写を調節することができる転写調節領域がSV40プロモーターによって決定される、請求項9に記載の方法。
  12. 選択遺伝子および生成物遺伝子の両方の転写を調節することができる転写調節領域がCMVプロモーターによって決定される、請求項9に記載の方法。
  13. 請求項9に記載の宿主細胞および、少なくともおよそ250mg/lの興味ある生成物を含む、細胞培養組成物。
  14. 少なくともおよそ250mg/mlの興味ある生成物を産生することができる宿主細胞を産生する方法であって、;
    (a)選択遺伝子および生成物遺伝子の両方の転写を調節することができる転写調節領域;
    (b)転写開始部位;
    (c)スプライス供与体配列を持つメッセンジャーRNAのスプライシング効率がPCRで決定されるような80%から99%であるスプライス供与体配列を含む5’スプライス供与体部位と、3’スプライス受容体部位によって定義されるイントロン内に位置する融合選択遺伝子配列;
    (d)興味ある生成物をコードする生成物遺伝子;および、
    (e)転写終結部位、
    を5’から3’方向に沿って含むDNAコンストラクトを、懸濁培地中で宿主細胞に移入することを含む。
  15. DNAコンストラクトをリポフェクチンによって宿主細胞内に導入する、請求項14に記載の方法。
  16. 前記形質移入をスピナー管中で行う、請求項14に記載の方法。
  17. 懸濁培地が形質移入時に少なくともおよそ5×10/mlの細胞密度である、請求項14に記載の方法。
  18. 懸濁培地が形質移入時に少なくともおよそ1.5×10/mlの細胞密度である、請求項14に記載の方法。
  19. 興味ある生成物が、抗体、酵素、ホルモン、リポタンパク質、凝固因子、抗凝固因子、サイトカイン、ウイルス抗原、キメラタンパク質、移送タンパク質、調節タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、および興味ある該生成物のいずれか一の断片からなる群から選択したものである、請求項15に記載の方法。
  20. 興味ある生成物を産生する宿主細胞を迅速に選択する方法であって、:
    宿主細胞株に、転写調節領域、融合選択遺伝子配列、および興味ある生成物をコードする遺伝子を含むDNAコンストラクトを移入する;
    選択培地中で形質移入した宿主細胞を直接培養する;
    興味ある生成物をコードする遺伝子の増幅が起こるために十分な時間、宿主細胞を選択培地中で生育させる;
    ことを含む。
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