JP2006508015A - 抗血管形成性タンパク質およびフラグメントおよびその使用方法 - Google Patents

抗血管形成性タンパク質およびフラグメントおよびその使用方法 Download PDF

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Abstract

抗血管形成特性を有するタンパク質、そのフラグメント、および血管形成を抑制または促進するためにこれらのタンパク質およびフラグメントを用いる方法を開示する。

Description

(政府による支援)
本発明は全体または部分において、国立衛生研究所(National Institute of Health)からの助成番号DK−51711、DK−55001により支援金を受けている。政府は本発明において特定の権利を有する。
基底膜は上皮および内皮細胞を担持して成育させる支持構造を与え、そして、筋肉または脂肪を包囲する特殊化された細胞外マトリックスの薄層である(Paulsson,M., 1992,Crit.Rev.Biochem.Mol.Biol.27:93−127)。基底膜は常時細胞と会合しており、そして、基底膜は機械的支持を与えるのみならず分化や増殖のような細胞の挙動にも影響することが明らかにされている。血管基底膜はコラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、フィブロネクチンおよびエンタクチンのような巨大分子からなる(Timpl,R.,1996,Curr.Opin.Cell.Biol.8:618−24)。機能的には、コラーゲンは細胞の接着、遊走、分化および増殖を促進し(Paulsson,M.,1992,Crit.Rev.Biochem.Mol.Biol.27:93−127)、そして、これらの機能を介して、既存の血管から新しい血管を形成する過程である血管形成の間の内皮細胞の増殖と挙動において重要な役割を演じていると推測されている(Madri,J.A.ら,1986,J.Histochem.Cytochem.34:85−91;Folkman,J.,1972,Ann.Surg.175:409−16)。血管形成は複雑な過程であり、そして、内皮細胞の新芽形成および遊走、これらの細胞の増殖、および管様構造へのその分化、および形成中の血管の周囲の基底膜マトリックスの生成を必要とする。更にまた、血管形成は創傷の修復および子宮内膜のリモデリングのような正常な生理学的事象にとっても重要な過程である(Folkman,J.ら,1995,J.Biol.Chem.267:10931−34)。数mmを超えて固形腫瘍が転移および増殖する際に血管形成が必要であることが現在明らかになっている(Folkman,J.1972,Ann.Surg.175:409−16;Folkman,J.,1995,Nat.Med.1:27−31)。腫瘍の大きさの拡大は腫瘍を通過する血液の灌流によるのみならず、新しい毛細血管内皮細胞により産生されるいくつかの増殖因子およびマトリックスタンパク質による腫瘍細胞のパラクリン刺激によっても起こる(Folkman,J.,1995,Nat.Med.1:27−31)。最近、多くの血管形成阻害因子が同定されており、すなわち、アンジオスタチン(O’Reilly,M.S.ら,1994,Cell 79:315−28)、エンドスタチン(O’Reilly,M.S.ら,1997,Cell 88:277−85)、レスチン(Ramchandran,R.ら,1999,Biochem.Biophys.Res.Commun.255:735−9)および色素上皮細胞由来因子(PEDF)(Dawson,D.W.ら,1999,Science 285:245−8)が挙げられる。
IV型コラーゲンは6種の異なるα鎖、α1〜α6として発現され(Prockop,D.J.ら,1995,Annu.Rev.Biochem.64:403−34)、そして、三重らせんに組み立てられる。これは更にネットワークを形成し、基底膜中の他の巨大分子のための足場となる。これらのα鎖は3つのドメイン、即ち、N末端7Sドメイン、中央三重らせんドメイン、およびC末端球状非コラーゲン性(NC1)ドメインからなる(Timpl,R.ら,1981,Eur.J.Biochem.120:203−11)。いくつかの研究によれば、コラーゲン代謝の阻害因子は抗血管形成特性を有し、このことは基底膜のコラーゲンの合成と沈着が血管形成と生存のために重要であるという考え方を裏付けている(Maragoudakis,M.E.ら,1994,Kidney Int.43:147−50;Haralabopoulos,G.C.ら,1994,Lab.Invest.71:575−82)。しかしながら、基底膜の組織化および血管形成におけるコラーゲンの厳密な役割はいまだ十分には解明されていない。
インテグリンは、多くの化合物のための接着分子として機能する重要な細胞表面接着受容体のファミリーである。それらは細胞−細胞または細胞−細胞外マトリックスの相互作用に関与し、共に細胞外マトリックスとの細胞の相互作用を媒介し、細胞をそれに結合させる。インテグリンは、2種の非共有結合膜貫通糖タンパク質サブユニット、即ちαサブユニットおよびβサブユニットからなるαβヘテロ2量体である。すべてのαサブユニットは、すべてのβサブユニットと同様、相互に相同性を共有している。現在同定されている16種のαサブユニット(α〜α、α、α、α、α、α、αIIbおよびαIELb)、および8種のβサブユニット(β〜β)があり、これらは22種の異なる既知の組み合わせを形成する(βとα〜α;βとα;βとα、α、αおよびα;βとαおよびα;βとα;βとα;βとα;βとαおよびαIELb;βとα)。使用可能なインテグリンサブユニットのプールは、インテグリンサブユニットのうちのいくつかについてのmRNAのオルタナティブスプライシングにより更に増大することができる。
インテグリンは一般的に、細胞表面の特定のスポットにおいてインテグリンの濃度が一定の最低閾値を超えている場合にそのリガンドに結合し、接触点(focal contact)または半接着斑(hemidesmosome)を形成する。この低結合親和性と局所接着部の形成との組み合わせにより、インテグリンは、インテグリン分子の濃度に応じて、強弱双方の結合が可能となるのである。
発明の概要
本発明は、抗血管形成性タンパク質およびその生物学的に活性なフラグメントに関する。本明細書に記載するフラグメントは、抗血管形成性タンパク質が別々の活性、例えば抗血管形成活性および抗腫瘍細胞活性を有する領域に細分でき、そしてこれらの別々の活性がより大きいタンパク質分子の細分の際にのみ顕在化することを示す。IV型コラーゲンのα3(IV)NC1ドメインの場合は、このような活性はまた、グッドパスチャー・エピトープの領域外でもある。
本明細書に記載するとおり、これらの活性フラグメントは内皮細胞、特にαβインテグリンを発現する内皮細胞に対して高い特異性を有し、そして、これらのフラグメントはこのような細胞におけるタンパク質合成を阻害する。内皮細胞上のαβインテグリンへの活性フラグメントの結合はマイナス信号を誘導し、これがこれらの細胞におけるタンパク質合成の阻害をもたらす。このことは内皮細胞のみならずすべての細胞型におけるタンパク質合成に影響するラパマイシンにより生じるタンパク質合成の阻害とは異なることが分かっている。このような特異性は、タンパク質合成が望まれない、例えば、本明細書に記載のタンパク質およびペプチドを免疫抑制剤として使用できるような状況において、タンパク質合成を阻害する際に有用であると考えられる。
特に、本発明は腫瘍増殖を抑制する能力を有する配列番号10の単離フラグメントに関する。フラグメントは、T7(配列番号37)、T7突然変異体(配列番号38)、T8(配列番号39)、T8−3(配列番号40)、TP3(配列番号41)またはP2(配列番号42)でありうる。このようなフラグメントは還元、アルキル化または酸化されることができる。このようなフラグメントはまた、別のアミノ酸の代わりに1個以上のシステイン残基を有する。
本発明はまた、アミノ酸1〜5個が置換されており、突然変異フラグメントが腫瘍増殖を抑制する能力を有する、配列番号10の単離突然変異フラグメントに関する。フラグメントはT7突然変異体(配列番号38)、T8(配列番号39)、T8−3(配列番号40)、TP3(配列番号41)またはP2(配列番号42)であるうる。このようなフラグメントはまた、還元、アルキル化または酸化されることができる。このようなフラグメントはまた、別のアミノ酸の代わりに1個以上のシステイン残基を有する。
本発明はさらに、血管形成を抑制する能力を有する配列番号10の単離フラグメントに関する。フラグメントは、T7(配列番号37)、T7突然変異体(配列番号38)、T8(配列番号39)、T8−3(配列番号40)、TP3(配列番号41)またはP2(配列番号42)でありうる。このようなフラグメントは還元、アルキル化または酸化されることができる。このようなフラグメントはまた、別のアミノ酸の代わりに1個以上のシステイン残基を有する。
本発明はまた、アミノ酸1〜5個が置換されており、突然変異フラグメントが血管形成を抑制する能力を有する、配列番号10の単離突然変異フラグメントに関する。フラグメントは、T7突然変異体(配列番号38)、T8(配列番号39)、T8−3(配列番号40)、TP3(配列番号41)またはP2(配列番号42)でありうる。このようなフラグメントはまた、還元、アルキル化または酸化されることができる。このようなフラグメントはまた、別のアミノ酸の代わりに1個以上のシステイン残基を有する。
本発明はさらに、内皮細胞におけるタンパク質合成を阻害する能力を有する、配列番号10の単離フラグメントに関する。フラグメントは、T7(配列番号37)、T7突然変異体(配列番号38)、T8(配列番号39)、T8−3(配列番号40)、TP3(配列番号41)またはP2(配列番号42)でありうる。このようなフラグメントは還元、アルキル化または酸化されることができる。このようなフラグメントはまた、別のアミノ酸の代わりに1個以上のシステイン残基を有する。タンパク質合成はcap依存性タンパク質合成でありうる。細胞はαβインテグリンを発現することができる。
本発明はまた、アミノ酸1〜5個が置換されており、突然変異フラグメントが内皮細胞におけるタンパク質合成を阻害する能力を有する、配列番号10の単離突然変異フラグメントに関する。フラグメントは、T7突然変異体(配列番号38)、T8(配列番号39)、T8−3(配列番号40)、TP3(配列番号41)またはP2(配列番号42)でありうる。このようなフラグメントはまた、還元、アルキル化または酸化されることができる。このようなフラグメントはまた、別のアミノ酸の代わりに1個以上のシステイン残基を有する。タンパク質合成はcap依存性タンパク質合成でありうる。細胞はαβインテグリンを発現することができる。
別の側面において、本発明は、哺乳類組織における血管形成活性を抑制するための方法に関し、この方法は、(a)配列番号10;(b)配列番号10のアミノ酸1〜124;(c)配列番号20;(d)配列番号21;(e)配列番号22;(f)配列番号23;(g)配列番号25;(h)配列番号26;(i)配列番号29;(j)配列番号30;(k)配列番号33;(l)配列番号34;(m)配列番号37;(n)配列番号38;(o)配列番号39;(p)配列番号40;(q)配列番号41および/または(r)配列番号42からなる群より選択される単離フラグメントを含む組成物に組織を接触させることを包含する。このようなフラグメントはまた、還元、アルキル化または酸化されることができる。このようなフラグメントはまた、別のアミノ酸の代わりに1個以上のシステイン残基を有する。
別の側面において、本発明は、哺乳類組織における腫瘍増殖を抑制するための方法に関し、この方法は、(a)配列番号10;(b)配列番号10のアミノ酸1〜124;(c)配列番号20;(d)配列番号21;(e)配列番号22;(f)配列番号23;(g)配列番号25;(h)配列番号26;(i)配列番号29;(j)配列番号30;(k)配列番号33;(l)配列番号34;(m)配列番号37;(n)配列番号38;(o)配列番号39;(p)配列番号40;(q)配列番号41および/または(r)配列番号42からなる群より選択される単離フラグメントを含む組成物に組織を接触させることを包含する。このようなフラグメントはまた、還元、アルキル化または酸化されることができる。このようなフラグメントはまた、別のアミノ酸の代わりに1個以上のシステイン残基を有する。
別の側面において、本発明は、1以上の哺乳類細胞におけるタンパク質合成を阻害するための方法に関し、この方法は、(a)配列番号10;(b)配列番号10のアミノ酸1〜124;(c)配列番号20;(d)配列番号21;(e)配列番号22;(f)配列番号23;(g)配列番号25;(h)配列番号26;(i)配列番号29;(j)配列番号30;(k)配列番号33;(l)配列番号34;(m)配列番号37;(n)配列番号38;(o)配列番号39;(p)配列番号40;(q)配列番号41および/または(r)配列番号42からなる群より選択される単離フラグメントを含む組成物に細胞を接触させることを包含する。このようなフラグメントはまた、還元、アルキル化または酸化されることができる。このようなフラグメントはまた、別のアミノ酸の代わりに1個以上のシステイン残基を有する。タンパク質合成はcap依存性タンパク質合成でありうる。細胞は内皮細胞でありうる。細胞はαβインテグリンを発現することができる。
別の側面において、本発明は、1以上の哺乳類細胞におけるタンパク質合成、腫瘍増殖、および/または哺乳類組織における血管形成を抑制するための方法を特徴としており、その方法は、(a)配列番号2;(b)配列番号6または(c)配列番号10のような単離フラグメントを含む組成物に1以上の細胞を接触させることを包含する。タンパク質合成はcap依存性タンパク質合成でありうる。哺乳類細胞はαβインテグリンを発現することができる。
本発明はまた下記式の単離ペプチドを特徴とする:
LFXNVNXVXNFR(配列番号45)、
ここで式中、Rは水素または1〜17アミノ酸のペプチジル鎖であり、Rは水素または1〜12アミノ酸のペプチジル鎖であり、そして、X、XおよびXは個々にアミノ酸であって、前記ペプチドは腫瘍の増殖を抑制する。Xは、塩基性側鎖を有するアミノ酸または芳香族側鎖を有するアミノ酸でありうる。Xは、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミンまたはアスパラギンでありうる。Xはまた、リジンまたはフェニルアラニンでありうる。X、XおよびXは、独立して親水性側鎖を有するアミノ酸または塩基性側鎖を有するアミノ酸でありうる。X、XおよびXは、独立してシステイン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸またはグルタミンでありうる。XおよびXは、独立してシステイン、セリンまたはアスパラギン酸であり、Xはシステインまたはアスパラギン酸でありうる。Xは、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミンまたはアスパラギンであることができ、X、XおよびXは、独立してシステイン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸またはグルタミンでありうる。Rは1個のアミノ酸またはアミノ酸残基2、3、4、5、6、7または8個のペプチジル鎖でありうる。Rで示される前記アミノ酸またはペプチジル鎖は、(a)P、(b)MP、(c)TMP、(d)TTMP(配列番号46)、(e)FTTMP(配列番号47)、(f)RFTTMP(配列番号48)、(g)QRFTTMP(配列番号49)、(h)LQRFTTMP(配列番号50)、(i)KQRFTTMP(配列番号51)および(j)(a)〜(i)のいずれかの保存的変異体からなる群より選択することができる。Rは1個のアミノ酸またはアミノ酸残基2、3、4、5、6、7、8または9個のペプチジル鎖でありうる。Rで示されるアミノ酸またはペプチジル鎖は、(a)A、(b)AS、(c)ASR、(d)ASRN(配列番号52)、(e)ASRND(配列番号53)、(f)ASRNDY(配列番号54)、(g)ASRNDYS(配列番号55)、(h)ASRNDYSY(配列番号56)、(i)ASRNDYSYW(配列番号57)、(j)ASRNDYSYWL(配列番号58)および(k)(a)〜(j)のいずれかの保存的変異体からなる群より選択することができる。このような単離ペプチドは還元、アルキル化または酸化されることができる。このような単離ペプチドは、1以上の哺乳類細胞におけるタンパク質合成、腫瘍増殖、および/または、哺乳類組織における血管形成を抑制するための方法において使用でき、その方法は単離ペプチドを含む組成物に組織を接触させることを包含する。単離ペプチドは製薬上許容しうる担体と組み合わせることができる。
本発明はまた、以下の特徴、即ち(a)αβインテグリンに結合する能力;(b)内皮細胞の増殖を抑制する能力;および(c)内皮細胞のアポトーシスを引き起こす能力、の1以上を有する、α3(IV)NC1ドメインの抗血管形成性の単離された非グッドパスチャー・フラグメントに関する。単離された非グッドパスチャー・フラグメントは、本明細書に記載するとおり、RGD非依存的な機序によりαβインテグリンに結合する。このようなIV型コラーゲンのα3(IV)NC1ドメインの単離フラグメントを本明細書において記載し、そして、「ツムスタチン(Tumstatin)」と称する。本明細書における用語「ツムスタチン」とは、配列番号10を含む。更に、本明細書において「Tum−1」または「ツムスタチンN53」(配列番号22)と称する別の単離された非グッドパスチャー・フラグメントは、完全長ツムスタチン(配列番号10)のアミノ酸残基54〜アミノ酸244のアミノ酸配列からなる。本明細書に記載する別の単離フラグメントには、「Tum−2」(配列番号23)、「Tum−3」(配列番号24)、「Tum−4」(配列番号25)および「Tum−5」(配列番号26)が含まれ、これらはそれぞれ、完全長ツムスタチン(配列番号10)の残基1〜132(Tum−2)、残基133〜244(Tum−3)、残基181〜244(Tum−4)および残基54〜132(Tum−5)のアミノ酸配列からなる。ペプチドフラグメントもまた本明細書に開示され、これには「T1」(配列番号27)、「T2」(配列番号28)、「T3」(配列番号29)、「T4」(配列番号30)、「T5」(配列番号31)、「T6」(配列番号32)および「T7」(配列番号37)が包含され、これらはそれぞれ、完全長ツムスタチン(配列番号10)の残基1〜19(T1)、残基53〜72(T2)、残基68〜87(T3)、残基83〜102(T4)、残基98〜116(T5)、残基113〜131(T6)および残基73〜97(T7)からなる。本明細書においては、完全長ツムスタチンの更に別のペプチドフラグメントを「ツムスタチン−45−132」(配列番号33)と称し、そして、完全長ツムスタチン(配列番号10)のアミノ酸残基45〜132からなる。本明細書においては、完全長ツムスタチンの別のフラグメントを「Tum−5−125−C−A」(配列番号34)と称し、そして、これは、125位(完全長ツムスタチンの)におけるシステインが部位指向性突然変異誘発を介してアラニンに突然変異しているツムスタチン−45−132からなる。還元、例えばアルカリ還元されているツムスタチンのフラグメントもまた、本明細書においては抗血管形成特性を有するものとして記載する。2種の他のフラグメントは「ツムスタチン333」(配列番号20)および「ツムスタチン334(配列番号21)であり、これらは完全長ツムスタチン(配列番号10)の残基1〜124(ツムスタチン333)および残基125〜244からなる。ツムスタチンの他のフラグメントには、T7−突然変異体(配列番号38、メチオニンが完全長ツムスタチン分子の77位のロイシン残基と置換、そして、イソロイシンが81位のバリンと置換、そして、アスパラギンが83位のアスパラギン酸と置換している)、T8(配列番号39、リジンが完全長ツムスタチン分子の68位のロイシン残基と置換している)、T8−3(配列番号40、リジンが完全長ツムスタチン分子の68位のロイシン残基と置換、そして、79位および85位においてセリンがシステイン残基と置換している)、TP3(配列番号41、リジンが完全長ツムスタチン分子の76位においてフェニルアラニン残基と置換、そしてシステインが83位においてアスパラギン酸と置換している)およびP2(配列番号42、リジンが完全長ツムスタチン分子の68位においてロイシン残基と置換、そして、アスパラギン酸が79位および85位においてシステイン残基と置換している)が包含される。
本発明はまた、以下の特徴(a)αβインテグリンに結合する能力、(b)内皮細胞に結合する能力、(c)腫瘍細胞の増殖を抑制する能力、および、(d)内皮細胞の増殖を抑制する能力がないこと、の1以上を有する、α3(IV)NC1ドメインの抗腫瘍細胞、単離非グッドパスチャー・フラグメントを特徴とする。単離非グッドパスチャー・フラグメントは、本明細書に記載するように、RGD非依存性の機序によりαβインテグリンに結合することができる。1つの単離された非グッドパスチャー・フラグメントは、完全長ツムスタチン(配列番号10)のアミノ酸残基185〜アミノ酸203のアミノ酸配列を含む。完全長ツムスタチンの別のペプチドフラグメントは、本明細書においては「T3」と称し、そして、完全長ツムスタチン(配列番号10)のアミノ酸残基68〜87からなる。完全長ツムスタチンの更に別のペプチドフラグメントは、本明細書において「ツムスタチン45−132」と称し、そして、完全長ツムスタチン(配列番号10)のアミノ酸残基45〜132からなる。本明細書においては、完全長ツムスタチンの別のフラグメントを「Tum−5−125−C−A」(配列番号34)と称し、そしてこれは、125位(完全長ツムスタチンの)におけるシステインが部位指向性突然変異誘発を介してアラニンに突然変異しているツムスタチン−45−132(配列番号33)からなる。還元、例えばアルカリ還元されているツムスタチンのフラグメントもまた、本明細書においては抗血管形成特性を有するものとして記載する。ツムスタチンの他のフラグメントは、T7−突然変異体、T8、T8−3、TP3およびP2を包含する。
本発明はまた、例えば抗血管形成性のタンパク質およびペプチドと相互作用(例えば結合)して、それにより抗血管形成性のタンパク質、ペプチドおよび化合物を評価するための標的を提供する、受容体、結合タンパク質に関する。受容体およびそのサブユニットは、血管形成、腫瘍の増殖および転移、および、内皮細胞の増殖および遊走、および内皮細胞管腔形成を媒介する。これらの受容体はまた、細胞のアポトーシスも媒介する。
特に本発明は、IV型コラーゲンのNC1ドメインのα1鎖であるアレステンに結合することが分かっているインテグリンサブユニットα、α、α、α、βおよびβ、IV型コラーゲンのNC1ドメインのα2鎖であるカンスタチンに結合することが分かっているインテグリンサブユニットα、αおよびβ、そして、IV型コラーゲンのNC1ドメインのα3鎖であるツムスタチンに結合することが分かっているインテグリンサブユニットα、α、α、βおよびβに関する。インテグリン結合により媒介される内皮細胞の血管形成および増殖は、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンを投与することによるか、または、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンの受容体として機能する上記のインテグリンサブユニットに結合する別のタンパク質、ペプチドまたは化合物を投与することによるか、のどちらかにより抑制される。インテグリン結合により媒介される内皮細胞のアポトーシスもまた、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンを投与すること、または、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンの受容体として機能する上記のインテグリンサブユニットに結合する別のタンパク質、ペプチドまたは化合物を投与すること、のどちらかにより抑制される。このような化合物は、抗体、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンのフラグメントまたは部分、または、上記のインテグリンサブユニットに結合するアレステン、カンスタチンまたはツムスタチンの領域を含むタンパク質またはペプチドを包むことができる。
本発明はまた、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンに対する受容体として機能するインテグリンサブユニットを模倣するタンパク質、ペプチドまたは化合物を投与することにより血管形成および細胞増殖を増強、促進または誘導する方法に関する。このようなタンパク質、ペプチドまたは化合物は、使用可能なアレステン、カンスタチンまたはツムスタチン、および、その生物学的に活性(例えば抗血管形成性)のフラグメント、突然変異体、類似体、相同体および誘導体、並びに、その多量体(例えば2量体)および融合タンパク質(本明細書においてはキメラタンパク質とも称する)と相互作用(例えば結合)する機能を有する、選択されたサブユニットからなるインテグリンタンパク質を包含する。このようなタンパク質、ペプチドまたは化合物はまた、8.5×10−11MのKd値および細胞当たり3×10部位のB maxを有するアレステンに結合するヘパラン硫酸プロテオグリカンを包含する。本明細書においては、「使用可能な(available)」とは、インテグリンまたはそのサブユニットまたはフラグメントと接触または相互作用(例えば結合)できる可溶性または循環性のタンパク質を意味する。血管形成および細胞増殖はまた、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチン、またはその生物学的に活性(例えば抗血管形成性)のフラグメント、突然変異体、類似体、相同体および誘導体、並びに、その多量体(例えば2量体)および融合タンパク質(本明細書においてはキメラタンパク質とも称する)に対する抗体を投与することにより増強することができる。このような抗体はこれらの分子に結合し、これによりそれらがそのそれぞれのインテグリン受容体と相互作用して血管形成活性を抑制することを防止する。
本発明はまた、アレステン、カンスタチンおよびツムスタチンおよびその抗血管形成性変異体およびフラグメントと同様の態様で血管形成を抑制する抗血管形成性のタンパク質、ペプチドおよび化合物を同定するためのキットを含む。このようなキットは、インテグリンの適切な(例えばα、α、β等)サブユニット、および後述する実施例において説明する試験の1つを実施するために必要な他の成分を含む。このようなキットを用いて行う例外的な試験には、後に実施例12および28において記載する細胞接着試験および後に実施例26において記載する競合増殖試験を含む。
本発明はまた、IV型コラーゲンのNC1ドメインの1以上のα鎖(例えばα1〜α6)に組織を接触させ、そして、血管形成、腫瘍増殖または腫瘍転移が1以上のインテグリンまたはインテグリンサブユニットにより媒介されるような、組織(例えば哺乳類またはヒトの組織)における血管形成、腫瘍増殖または腫瘍転移を抑制する方法に関する。
より詳しくは、本発明は、血管形成が1以上の内皮細胞インテグリン(例えばαβ、αβ、αβ、αβ)または1以上の内皮細胞インテグリンサブユニット(例えばα、α、α、α、β、β)により媒介されるような、組織における血管形成を抑制する方法を特徴とする。この方法は、アレステンまたはそのフラグメント、突然変異体、相同体、類似体または対立遺伝子変異体に内皮細胞を接触させることを包含する。血管形成は、以下の項目、即ち:内皮細胞の増殖、内皮細胞の遊走、または内皮細胞の管腔形成の1以上を抑制することにより抑制できる。
本発明はまた、腫瘍の増殖または転移が1以上の内皮細胞インテグリン(例えばαβ、αβ、αβ、αβ)または1以上の内皮細胞インテグリンサブユニット(例えばα、α、α、α、β、β)により媒介されるような、組織における腫瘍の増殖または転移を抑制する方法を特徴とし;この方法は、アレステンまたはそのフラグメント、突然変異体、相同体、類似体または対立遺伝子変異体に内皮細胞を接触させることを包含する。腫瘍の増殖は、以下の項目、即ち:内皮細胞の増殖、内皮細胞の遊走、または内皮細胞の管腔形成の1以上を抑制することにより抑制できる。
更に、本発明は、内皮細胞のアポトーシスが1以上の内皮細胞インテグリン(例えばαβ、αβ、αβ、αβ)または1以上の内皮細胞インテグリンサブユニット(例えばα、α、α、α、β、β)により媒介されるような、組織における内皮細胞のアポトーシスを促進または誘導する方法を特徴とし;この方法は、アレステンまたはそのフラグメント、突然変異体、相同体、類似体または対立遺伝子変異体に内皮細胞を接触させることを包含する。アポトーシスは以下の項目、即ち:内皮細胞の増殖、内皮細胞の遊走、または内皮細胞の管腔形成の1以上を抑制することにより促進または誘導できる。
本発明はまた、血管形成が1以上の内皮細胞インテグリン(例えばαβ、αβ)または1以上の内皮細胞インテグリンサブユニット(例えばα、α、β)により媒介されるような、組織における血管形成を抑制する方法を特徴とし;この方法は、カンスタチンまたはそのフラグメント、突然変異体、相同体、類似体または対立遺伝子変異体に内皮細胞を接触させることを包含する。血管形成は以下の項目、即ち:内皮細胞の増殖、内皮細胞の遊走、または内皮細胞の管腔形成の1以上を抑制することにより抑制できる。
本発明はまた、腫瘍の増殖または転移が1以上の内皮細胞インテグリン(例えばαβ、αβ)または1以上の内皮細胞インテグリンサブユニット(例えばα、α、β)により媒介されるような、組織における腫瘍の増殖または転移を抑制する方法を特徴とし;この方法は、カンスタチンまたはそのフラグメント、突然変異体、相同体、類似体または対立遺伝子変異体に内皮細胞を接触させることを包含する。腫瘍の増殖は以下の項目、即ち:内皮細胞の増殖、内皮細胞の遊走、または内皮細胞の管腔形成の1以上を抑制することにより抑制できる。
更に本発明は、内皮細胞のアポトーシスが1以上の内皮細胞インテグリン(例えばαβ、αβ)または1以上の内皮細胞インテグリンサブユニット(例えばα、α、β)により媒介されるような、組織における内皮細胞のアポトーシスを促進または誘導する方法を特徴とし;この方法は、カンスタチンまたはそのフラグメント、突然変異体、相同体、類似体または対立遺伝子変異体に内皮細胞を接触させることを包含する。アポトーシスは以下の項目、即ち:内皮細胞の増殖、内皮細胞の遊走、または内皮細胞の管腔形成の1以上を抑制することにより促進または誘導できる。
本発明は、血管形成が1以上の内皮細胞インテグリン(例えばαβ、αβ、αβ)または1以上の内皮細胞インテグリンサブユニット(例えばα、α、α、β、β)により媒介されるような、組織における血管形成を抑制する方法を特徴とし;この方法は、ツムスタチンまたはそのフラグメント、突然変異体、相同体、類似体または対立遺伝子変異体に内皮細胞を接触させることを包含する。血管形成は、以下の項目、即ち:内皮細胞の増殖、内皮細胞の遊走、または内皮細胞の管腔形成の1以上を抑制することにより抑制できる。
本発明はまた、腫瘍の増殖または転移が1以上の内皮細胞インテグリン(例えばαβ、αβ、αβ)または1以上の内皮細胞インテグリンサブユニット(例えばα、α、α、β、β)により媒介されるような、組織における腫瘍の増殖または転移を抑制する方法を特徴とし;この方法は、ツムスタチンまたはそのフラグメント、突然変異体、相同体、類似体または対立遺伝子変異体に内皮細胞を接触させることを包含する。腫瘍の増殖は、以下の項目、即ち:内皮細胞の増殖、内皮細胞の遊走、または内皮細胞の管腔形成の1以上を抑制することにより抑制できる。
更に本発明は、内皮細胞のアポトーシスが1以上の内皮細胞インテグリン(例えばαβ、αβ、αβ)または1以上の内皮細胞インテグリンサブユニット(例えばα、α、α、β、β)により媒介されるような、組織における内皮細胞のアポトーシスを促進または誘導する方法を特徴とし;この方法は、ツムスタチンまたはそのフラグメント、突然変異体、相同体、類似体または対立遺伝子変異体に内皮細胞を接触させることを包含する。アポトーシスは、以下の項目、即ち:内皮細胞の増殖、内皮細胞の遊走、または内皮細胞の管腔形成の1以上を抑制することにより促進または誘導できる。
本発明は更に、以下のもの、即ち:インテグリンのαサブユニットに特異的に結合する抗体またはペプチド;インテグリンのαサブユニットに特異的に結合する抗体またはペプチド;インテグリンのαサブユニットに特異的に結合する抗体またはペプチド;インテグリンのαサブユニットに特異的に結合する抗体またはペプチド;インテグリンのαサブユニットに特異的に結合する抗体またはペプチド;インテグリンのαサブユニットに特異的に結合する抗体またはペプチド;インテグリンのβサブユニットに特異的に結合する抗体またはペプチド;または、インテグリンのβサブユニットに特異的に結合する抗体またはペプチド、の1以上に組織を接触させることを包含する、組織における血管形成または細胞増殖を抑制する方法を特徴とする。この方法は血管形成または細胞増殖を特徴とする症状を治療するために使用してよい。
更に本発明は、インテグリンのαサブユニット;インテグリンのαサブユニット;インテグリンのαサブユニット;インテグリンのαサブユニット;インテグリンのαサブユニット;インテグリンのαサブユニット;インテグリンのβサブユニット;または、インテグリンのβサブユニット、の1以上に組織を接触させることを包含する、組織における血管形成または細胞増殖を促進または誘導する方法を特徴とする。1以上のインテグリンサブユニットは可溶性の形態であることができ、そしてそれらは単量体、2量体、3量体、4量体、または多量体であることもできる。
本発明はまた、アレステンに対する受容体(例えばαβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン)により媒介される血管形成が疾患の特徴である、脊椎動物における増殖性疾患を抑制する方法を特徴とし;この方法は、アレステン受容体媒介血管形成を抑制し、これにより増殖性疾患を抑制することを包含する。アレステン受容体媒介血管形成の抑制により、腫瘍の増殖、転移の抑制、または、樹立された腫瘍の退縮がもたらされる。アレステン受容体媒介血管形成の抑制は、アレステン受容体媒介血管形成を抑制する分子、例えば、アレステン受容体に特異的に結合する抗体(例えばポリクローナルまたはモノクローナル抗体)、抗体フラグメントまたはペプチドに、増殖細胞を接触させることにより達成できる。
本発明は更に、アレステンに結合する1以上の可溶性受容体を含む組成物に組織を接触させることを包含する、組織における血管形成を促進する方法を特徴とする。
別の側面において、本発明は、カンスタチンに対する受容体(例えばαβインテグリン、αβインテグリン)により媒介される血管形成が疾患の特徴である、脊椎動物における増殖性疾患を抑制する方法を特徴とし;この方法は、カンスタチン受容体媒介血管形成を抑制し、これにより増殖性疾患を抑制することを包含する。カンスタチン受容体媒介血管形成の抑制により、腫瘍の増殖、転移の抑制、または、樹立された腫瘍の退縮がもたらされる。カンスタチン受容体媒介血管形成の抑制は、カンスタチン受容体媒介血管形成を抑制する分子、例えば、カンスタチン受容体に特異的に結合する抗体(例えばポリクローナルまたはモノクローナル抗体)、抗体フラグメントまたはペプチドに、増殖細胞を接触させることにより達成できる。
本発明は更に、カンスタチンに結合する1以上の可溶性受容体を含む組成物に組織を接触させることを包含する、組織における血管形成を促進する方法を特徴とする。
別の側面において、本発明は、ツムスタチンに対する受容体(例えばαβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン)により媒介される血管形成が疾患の特徴である、脊椎動物における増殖性疾患を抑制する方法を特徴とし;この方法は、ツムスタチン受容体媒介血管形成を抑制し、これにより増殖性疾患を抑制することを包含する。ツムスタチン受容体媒介血管形成の抑制により、腫瘍の増殖、転移の抑制、または、樹立された腫瘍の退縮がもたらされる。ツムスタチン受容体媒介血管形成の抑制は、ツムスタチン受容体媒介血管形成を抑制する分子、例えば、ツムスタチン受容体に特異的に結合する抗体(例えばポリクローナルまたはモノクローナル抗体)、抗体フラグメントまたはペプチドに、増殖細胞を接触させることにより達成できる。
本発明は更に、ツムスタチンに結合する1以上の可溶性受容体を含む組成物に組織を接触させることを包含する、組織における血管形成を促進する方法を特徴とする。
別の側面において、本発明は、組織におけるFLIP濃度を低下させる分子に組織を接触させることを包含する、組織における血管形成を抑制する方法を特徴とする。
本発明はまた、1以上のアレステン受容体またはアレステン受容体サブユニット(例えばαβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、βインテグリンサブユニット、βインテグリンサブユニット)に特異的に結合する1以上の分子(例えば抗体、抗体フラグメント、ペプチド)を生物学的活性成分として含有する組成物を特徴とする。組成物は場合により製薬上許容しうる担体を含んでよい。組成物は血管形成活性を特徴とする疾患を抑制する方法において使用でき、この方法は疾患を有する患者に組成物を投与することを包含する。疾患は血管形成活性を特徴とし、組成物は放射線療法、化学療法または免疫療法と併用して患者に投与することができる。
別の側面において、本発明は、1以上のアレステン受容体またはアレステン受容体サブユニット(例えばαβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、βインテグリンサブユニット、βインテグリンサブユニット)を生物学的活性成分として含有する組成物を特徴とする。組成物は場合により製薬上許容しうる担体を含んでよい。組成物は血管形成を促進または誘導するための方法において使用でき、この方法は疾患を有する患者に組成物を投与することを包含する。疾患は血管形成活性を特徴とし、組成物は放射線療法、化学療法または免疫療法と併用して患者に投与することができる。
本発明はまた、1以上のカンスタチン受容体またはカンスタチン受容体サブユニット(例えばαβインテグリン、αβインテグリン、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、βインテグリンサブユニット)に特異的に結合する1以上の分子(例えば抗体、抗体フラグメント、ペプチド)を生物学的活性成分として含有する組成物を特徴とする。組成物は場合により製薬上許容しうる担体を含んでよい。組成物は血管形成活性を特徴とする疾患を抑制する方法において使用でき、この方法は疾患を有する患者に組成物を投与することを包含する。疾患は血管形成活性を特徴とし、組成物は放射線療法、化学療法または免疫療法と併用して患者に投与することができる。
別の側面において、本発明は、1以上のカンスタチン受容体またはカンスタチン受容体サブユニット(例えばαβインテグリン、αβインテグリン、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、βインテグリンサブユニット)を生物学的活性成分として含有する組成物を特徴とする。組成物は場合により製薬上許容しうる担体を含んでよい。組成物は血管形成を促進または誘導するための方法において使用でき、この方法は疾患を有する患者に組成物を投与することを包含する。疾患は血管形成活性を特徴とし、組成物は放射線療法、化学療法または免疫療法と併用して患者に投与することができる。
本発明はまた、1以上のツムスタチン受容体またはツムスタチン受容体サブユニット(例えばαβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、βインテグリンサブユニット、βインテグリンサブユニット)に特異的に結合する1以上の分子(例えば抗体、抗体フラグメント、ペプチド)を生物学的活性成分として含有する組成物を特徴とする。組成物は場合により製薬上許容しうる担体を含んでよい。組成物は血管形成活性を特徴とする疾患を抑制する方法において使用でき、この方法は疾患を有する患者に組成物を投与することを包含する。疾患は血管形成活性を特徴とし、組成物は放射線療法、化学療法または免疫療法と併用して患者に投与することができる。
別の側面において、本発明は、1以上のツムスタチン受容体またはツムスタチン受容体サブユニット(例えばαβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、βインテグリンサブユニット、βインテグリンサブユニット)を生物学的活性成分として含有する組成物を特徴とする。組成物は場合により製薬上許容しうる担体を含んでよい。組成物は血管形成を促進または誘導するための方法において使用でき、この方法は疾患を有する患者に組成物を投与することを包含する。疾患は血管形成活性を特徴とし、組成物は放射線療法、化学療法または免疫療法と併用して患者に投与することができる。
更に別の側面において、本発明は、細胞(例えば癌細胞)がアレステンの作用に対して感受性であるかどうかを測定する方法を特徴とし、それは、以下の工程、即ち:(a)細胞を含有する試料(例えば、哺乳動物から)を準備すること、(b)試料を、1以上の抗体(例えばαβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、βインテグリンサブユニット、βインテグリンサブユニットに対する抗体)と、1以上の抗体の細胞への結合のために十分な時間、そして1以上の抗体の細胞への結合に適する条件下で、反応させること;そして、細胞がアレステンの作用に感受性であれば、細胞−抗体複合体を形成すること;そして、次に(c)細胞−抗体複合体の存在を検出すること;これにより、試料中の細胞−抗体複合体の存在がアレステンの作用に対する細胞の感受性を示すようにすること、を包含する。前記哺乳動物は望ましくない血管形成を少なくとも部分的に特徴とする症状を有してよい。
更に別の側面において、本発明は、細胞(例えば癌細胞)がカンスタチンの作用に対して感受性であるかどうかを測定する方法を特徴とし、それは、以下の工程、即ち:(a)細胞を含有する試料(例えば、哺乳動物から)を準備すること、(b)試料を、1以上の抗体(例えばαβインテグリン、αβインテグリン、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、βインテグリンサブユニットに対する抗体)と、1以上の抗体の細胞への結合のために十分な時間、そして1以上の抗体の細胞への結合に適する条件下で、反応させること;そして、細胞がカンスタチンの作用に感受性であれば、細胞−抗体複合体を形成すること;そして、次に(c)細胞−抗体複合体の存在を検出すること;これにより、試料中の細胞−抗体複合体の存在がカンスタチンの作用に対する細胞の感受性を示すようにすること、を包含する。前記哺乳動物は望ましくない血管形成を少なくとも部分的に特徴とする症状を有してよい。
更に別の側面において、本発明は、細胞(例えば癌細胞)がツムスタチンの作用に対して感受性であるかどうかを測定する方法を特徴とし、それは、以下の工程、即ち:(a)細胞を含有する試料(例えば、哺乳動物から)を準備すること、(b)試料を、1以上の抗体(例えばαβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、αインテグリンサブユニット、βインテグリンサブユニット、βインテグリンサブユニットに対する抗体)と、1以上の抗体の細胞への結合のために十分な時間、そして1以上の抗体の細胞への結合に適する条件下で、反応させること;そして、細胞がツムスタチンの作用に感受性であれば、細胞−抗体複合体を形成すること;そして、次に(c)細胞−抗体複合体の存在を検出すること;これにより、試料中の細胞−抗体複合体の存在がツムスタチンの作用に対する細胞の感受性を示すようにすること、を包含する。前記哺乳動物は望ましくない血管形成を少なくとも部分的に特徴とする症状を有してよい。
本発明はまた、抗血管形成特性を有するIV型コラーゲンのアルファ鎖のNC1ドメインを含むタンパク質に関する。特に本発明は、新規のタンパク質であるアレステン、カンスタチンおよびツムスタチンに関するものであり、そして生物学的に活性な(例えば抗血管形成性の)そのフラグメント、突然変異体、類似体、相同体および誘導体、並びにその多量体(例えば2量体)および融合タンパク質(本明細書においてはキメラタンパク質とも称する)に関する。これらのタンパク質はすべてIV型コラーゲンのNC1(非コラーゲン性1)ドメインのC末端フラグメントを含む。より詳細には、アレステン、カンスタチンおよびツムスタチンは各々が、それぞれ、IV型コラーゲンのα1鎖、α2鎖およびα3鎖のNC1ドメインのC末端フラグメントである。特にアレステン、カンスタチンおよびツムスタチンは単量体タンパク質である。3つすべてがインビボで腫瘍の増殖を停止させ、そしてまた、内皮細胞管腔試験を含むいくつかのインビトロのモデルにおいて毛細管の形成も抑制している。
本発明は、内皮細胞におけるアレステンの受容体としてのインテグリンまたはインテグリンサブユニット(例えばαβ、αβおよびαβインテグリン)を包含し、これらの細胞において内皮細胞のアポトーシスを含む抗血管形成活性を媒介する。アレステンはまた、特異的に結合してマトリックス・メタロプロテイナーゼ2、3および9の基底膜分解活性を阻害し;このような分解活性は血管形成の不可欠な部分である。
本発明はまた、抗血管形成活性を有するIV型コラーゲンのα1鎖のNC1ドメイン、単離アレステンの抗血管形成性フラグメント、単離アレステンおよび抗血管形成性フラグメントの多量体、およびこれらの抗血管形成性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、単離および組換え製造されたアレステンもまた含む。また、単離アレステン、その抗血管形成性フラグメントまたは双方を生物学的活性成分として含む組成物もまた包含される。別の実施形態においては、本発明は、疾患が血管形成活性を特徴とする、哺乳動物における癌のような増殖性疾患の治療方法を特徴とし、この方法は抗血管形成性アレステンまたはそのフラグメントを含有する組成物を哺乳動物に投与することを包含する。抗血管形成性アレステンおよびそのフラグメントはまた、細胞の遊走または内皮細胞の増殖を防止するために使用することができる。また、単離抗血管形成性アレステンおよびそのフラグメントに対する抗体も特徴とする。
本発明はまた、内皮細胞におけるカンスタチンに対する細胞接着受容体としてのインテグリンまたはインテグリンサブユニット(例えばαβおよびαβインテグリン)も包含し、これらの細胞における内皮細胞のアポトーシスを含む抗血管形成活性を媒介する。
本発明はまた、抗血管形成活性を有するIV型コラーゲンのα2鎖のNC1ドメイン、単離カンスタチンの抗血管形成性フラグメント、単離カンスタチンおよび抗血管形成性フラグメントの多量体、およびこれらの抗血管形成性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、単離および組換え製造されたカンスタチンを包含する。また、単離カンスタチン、その抗血管形成性フラグメントまたは双方を生物学的活性成分として含む組成物も包含される。別の実施形態においては、本発明は、疾患が血管形成活性を特徴とする、哺乳動物における癌のような増殖性疾患の治療方法を特徴とし、この方法は抗血管形成性カンスタチンまたはそのフラグメントを含有する組成物を哺乳動物に投与することを包含する。抗血管形成性カンスタチンおよびそのフラグメントはまた、細胞の遊走または内皮細胞の増殖を防止するために使用することができる。また、単離抗血管形成性カンスタチンおよびそのフラグメントに対する抗体も特徴とする。
本発明はまた、内皮細胞におけるツムスタチンの受容体としてのインテグリンおよびインテグリンサブユニット(例えばαβ、αβおよびαβインテグリン)を包含し、これらの細胞における内皮細胞のアポトーシスを含む抗血管形成活性を媒介する。
本発明はまた同様に、抗血管形成活性を有するIV型コラーゲンのα3鎖のNC1ドメイン、単離ツムスタチンの抗血管形成性フラグメント、単離ツムスタチンおよび抗血管形成性フラグメントの多量体、および、これらの抗血管形成性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、単離および組換え製造されたツムスタチンを包含する。また、単離ツムスタチン、その抗血管形成性フラグメントまたは双方を生物学的活性成分として含む組成物も包含される。別の実施形態においては、本発明は、疾患が血管形成活性を特徴とする、哺乳動物における癌のような増殖性疾患の治療方法を特徴とし、この方法は抗血管形成性ツムスタチンまたはそのフラグメントを含有する組成物を哺乳動物に投与することを包含する。抗血管形成性ツムスタチンおよびそのフラグメントはまた、細胞の遊走または内皮細胞の増殖を防止するために使用することができる。また、単離抗血管形成性ツムスタチンおよびそのフラグメントに対する抗体も特徴とする。
詳細な説明
広範の種々の疾患は、望ましくない血管形成の結果である。言い換えれば、ある条件下で、特定の時に、または特定の組織において毛細血管の生育と伸長を停止させることが可能であれば、多くの疾患および望ましくない症状を防止または緩和することができる。基底膜組織化は、IV型コラーゲンのC末端球状非コラーゲン性(NC1)ドメインを介して起こると考えられているIV型コラーゲンネットワークの組み立てに依存している(Timpl,R.,1996,Curr.Opin.Cell.Biol.8:618−24;Timpl,R.ら,1981,Eur.J.Biochem.120:203−11)。IV型コラーゲンは6種の異なる遺伝子産物、即ち、α1〜α6からなる(Prockop,D.J.ら,1995,Annu.Rev.Biochem.64:403−34)。α1およびα2のアイソフォームは、ヒト基底膜中に偏在的に存在している(Paulsson,M.,1992,Crit.Rev.Biochem.Mol.Biol.27:93−127)が、一方、他の4種のアイソフォームは限定された分布を示す(Kalluri,R.ら,1997,J.Clin.Invest.99:2470−8)。
既存の血管からの新しい毛細血管の形成、即ち血管形成は、腫瘍の増殖および転移の過程において必須である(Folkman,J.ら,1992,J.Biol.Chem.267:10931−4;Folkman,J.1995,Nat.Med.1:27−31;Hanahan,D.ら,1996,Cell 86:353−64)。ヒトおよび動物の腫瘍は最初は血管新生しないが、しかしながら、腫瘍が数mmを超えて増殖するためには、それは血管新生しなければならない(Folkman,J.1995,Nat.Med.1:27−31;Hanahan,D.ら,1996,Cell 86:353−64)。血管形成表現型への切り替えには、血管新生刺激物質のアップレギュレーションおよび血管新生抑制物質のダウンレギュレーションの両方が必要である(Folkman,J.1995,Nat.Med.1:27−31)。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は、腫瘍において最も一般的に発現されている血管形成因子である。血管新生した腫瘍は、腫瘍増殖を相乗作用的に促進しうる1以上のこれらの血管形成因子を過剰発現する。VEGFのような単一の血管形成因子を受容体拮抗剤を用いて抑制することは、腫瘍の増殖を停止させるのに十分ではない。多くの血管形成阻害因子が最近同定されており、IFN−a、血小板第4因子のような特定の因子(Maione,T.E.ら,1990,Science 247:77−9)およびPEX(Broocks,P.C.ら,1998,Cell 92:391−400)は内因的には腫瘍細胞と関連していないのに対し、アンジオスタチン(O’Reilly,M.S.ら,1994,Cell 79:315−28)およびエンドスタチン(O’Reilly,M.S.ら,1997,Cell 88:277−85)は腫瘍組織そのものから生じる腫瘍関連血管形成阻害因子である。腫瘍の増殖および転移をこれらの内因性血管形成阻害因子を用いて治療することは極めて効果的であり魅力的な考えであるが、抗血管形成療法に関連するいくつかの潜在的な問題を考慮しなければならない。長期にわたる抗血管形成療法により誘導される遅延毒性、並びに治療中に起こる創傷治癒障害および再生的血管形成の障害の可能性を重大視しなければならない。
インテグリンは、一般的に細胞の細胞骨格に受容体を連結させる短いC末端細胞質ドメインおよびリガンドに結合するための長いN末端細胞外ドメインを有している。αおよびβサブユニットの両方がリガンド結合に関与しており、広範囲に並んだ潜在的リガンドが存在している。いくつかの一般的なリガンドには、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニンおよび種々の型のコラーゲンが含まれる。これらの一部(例えばフィブロネクチンおよびラミニン)は複数のインテグリンにより結合される。コラーゲンIはインテグリンαβ、αβおよびαβにより結合され、コラーゲンIVはインテグリンαβおよびαβにより結合されることが知られている。上皮細胞はインテグリンαβ、αβ、αβおよびαβにより結合される。サイトカイン活性化内皮細胞は、αβおよびαβにより結合され、そして血管内皮はαβインテグリンにより結合される。
本発明においては、血管形成性のタンパク質およびペプチドと相互作用、例えば特異的に結合する細胞表面受容体、特に、抗血管形成性タンパク質アレステン、カンスタチンおよびツムスタチンに結合するインテグリンおよびインテグリンサブユニットを開示する。これらのインテグリンは、新しい抗血管形成性のタンパク質、ペプチドおよび化合物、または、現在知られている抗血管形成性のタンパク質、ペプチドおよび化合物のより強力な変異体およびフラグメント、特にアレステン、カンスタチンおよびツムスタチンのより強力な変異体およびフラグメントを評価するための標的を提供する。特に、本発明は、IV型コラーゲンのNC1ドメインのα1鎖であるアレステンに結合することが分かっているインテグリンサブユニットα、α、α、α、βおよびβに関する。本発明はまた、IV型コラーゲンのNC1ドメインのα2鎖であるカンスタチンに結合することが分かっているインテグリンサブユニットα、αおよびβに関する。更に本発明は、IV型コラーゲンのNC1ドメインのα3鎖であるツムスタチンに結合することが分かっているインテグリンサブユニットα、α、α、βおよびβに関する。他のインテグリンまたはインテグリンサブユニットもまた、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンに結合する場合があり、これらは本明細書に記載する方法を用いて同定されうる(例えば下記の実施例12、26および28参照)。
アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンを投与するか、またはアレステン、カンスタチンおよびツムスタチンに対する受容体として作用する上記のインテグリンサブユニットに結合する別のタンパク質、ペプチドまたは化合物を投与するか、のどちらかにより、血管形成および内皮細胞の増殖が抑制され、または、内皮細胞のアポトーシスが促進または誘導される。このようなタンパク質、ペプチドおよび化合物は、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンの抗体、フラグメントまたは部分、または、上記のインテグリンサブユニットに特異的に結合するアレステン、カンスタチンまたはツムスタチンの領域を含むタンパク質またはペプチドを包含する。「特異的に結合する(specifically binds)」とは、特定の結合タンパク質(例えば抗体または受容体)へのリガンド(例えば抗原)の高い結合活性および/または高い親和性による結合を有することを意味する。例えば、この特異的抗原のそのエピトープに結合する抗体は、いかなる他のエピトープへの、特に対象となる特定の抗原として関連して分子中に存在しているかまたは同じ試料中に存在するものへの、同じ抗体の結合よりも強力である。対象となる分子に特異的に結合する抗体は、弱いがなお検出可能な水準(例えば対象となる分子で観察される結合の10%以下)で他の分子に結合することができる場合がある。このような弱い結合、即ちバックグラウンド結合は、例えば適切な対照群を用いることにより、対象となる分子への特異的抗体結合から容易に識別することができる。
特定のペプチドに対する抗体は一般的に作成されており、所定のタンパク質に対する抗体の製造方法は当業者のよく知るとおりである(例えばAusubel,F.M.ら,(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Inc.,1987,with Supplements through 1999)の第11章、特に11.4.2−11.11.5のページ、(“Preparation of Monocolonal Antibodies”),11.12.1−11.13.4(“Preparation of Polyclonal Antisera”)およびとりわけ11.14.1−11.15.4のページ(“Preparation of Antipeptide Antibodies”)を参照のこと)。オーダーメイドの抗体はまた、多くの入手元、例えばBerkeley Antibody Co.,Richmond,California,USAから購入することもできる。インテグリンおよびインテグリンサブユニットに対する抗体の製造方法もまたよく知られており、このような抗体の製造方法はGallatin,W.M.ら,(米国特許第5,817,515号)およびKim,K.J.ら,(米国特許第5,652,110号;5,652,109号;5,578,704号)に記載されており、その内容はすべて参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書に記載するインテグリンおよびインテグリンサブユニットは、組換えにより、そして可溶性形態で製造することができる。可溶性の受容体およびタンパク質の製造方法は当該技術分野においてよく知られており、可溶性形態のインテグリンおよびインテグリン受容体の製造方法はBriesewitz,R.ら,(1993,J.Biol.Chem.268:2989−96),Kern,A.ら,(1994,J.Biol.Chem.,269:22811−6)、そしてまたGallatin,W.M.ら,(米国特許第5,728,533および5,831,029号)およびDuong,L.T.ら,(米国特許第5,895,754号)に記載されており、その内容はすべて参照により本明細書に組み込まれる。
本発明はまた、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンの受容体として機能するインテグリンサブユニットを模倣するタンパク質、ペプチドまたは化合物を投与することによる、血管形成および細胞増殖の増強または細胞アポトーシスの抑制のための方法に関する。このようなタンパク質、ペプチドまたは化合物には、使用可能なアレステン、カンスタチンまたはツムスタチン、および、その生物学的に活性(例えば抗血管形成性)のフラグメント、突然変異体、類似体、相同体および誘導体、並びに、その多量体(例えば2量体)および融合タンパク質(本明細書においてはキメラタンパク質とも称する)に結合し、これによりそれらがそれらのそれぞれのインテグリン受容体と相互作用して血管形成活性を抑制するのを防止する、選択されたサブユニットからなるインテグリンタンパク質を包含する。アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンおよびその変異体およびフラグメントに結合するタンパク質、ペプチドまたは化合物はまた、アレステン、カンスタチンおよびツムスタチンに対する、またはその変異体またはフラグメントに対する抗体も包含する。このような抗体はこれらの分子に結合し、これにより、それらがそれらのそれぞれのインテグリン受容体と相互作用して血管形成活性を抑制することを防止する。
本発明においては、アレステン、カンスタチンおよび/またはツムスタチンまたはそのフラグメントまたは突然変異体は、単独でまたは組み合わせて、組織における血管形成、内皮細胞増殖、内皮細胞遊走または内皮細胞管腔形成を抑制するために、または、組織中のアポトーシスを誘導または促進するために使用してよく、例えば、アレステンおよびカンスタチンを医薬組成物内で組み合わせ、Tum−4およびT7を組成物内で組み合わせるなどすることができる。アレステン、カンスタチンおよび/またはツムスタチンの組み合わせは、他のコラーゲンドメインまたはNC1鎖、または他の形態の治療、例えば放射線療法、化学療法、免疫療法、または他の活性分子、例えばエンドスタチン、アンジオスタチン、レスチンとさらに組み合わせることもできる。このような分子は、抗アポトーシス性タンパク質、FLIP(FLICE阻害タンパク質、即ちFADD様インターロイキン−1ベータ変換酵素阻害タンパク質)の濃度を低下させる。従って血管形成は、FLIPの濃度を低下させる分子により抑制され、これによりカスパーゼ活性を誘発し、末端アポトーシスシグナルを伝達する。
本明細書に記載したアレステン、カンスタチンおよびツムスタチンに対する受容体は(例えばαβ、αβ、αβ、αβ、αβおよびαβインテグリン)および/またはそのサブユニット(例えばα、α、α、α、α、α、β、β)は血管形成の促進または誘導のために組み合わせて使用することができる。アレステン、カンスタチンおよび/またはツムスタチンに対する抗体はまた、アレステン、カンスタチンおよびツムスタチンに対する受容体およびそれらの受容体サブユニットに対する抗体の場合と同様に、単一の治療方法に組み込むこともできる。
本発明はまた、アレステン、カンスタチンおよびツムスタチン、およびその抗血管形成性変異体およびフラグメントと同様な態様で血管形成を抑制する抗血管形成性タンパク質、ペプチドおよび化合物を同定するためのキットも包含する。このようなキットは、適切な(例えばα、α、β等)インテグリンサブユニットおよび後述する実施例に記載する試験の1つを実施するために必要な他の成分を含む。このようなキットを用いて実施される例外的な試験は、後述する実施例12および28に記載する細胞接着試験、および後述する実施例26に記載する競合増殖試験を含む。例えば、ツムスタチンと同様の態様で挙動するタンパク質、ペプチドまたは化合物を同定するためのキットは、インテグリンサブユニットα、β、α、βおよびIgG(対照群として機能)に対する抗体のような、実施例28の細胞接着試験を実施するために必要な成分および試薬を包含する。キットは場合により、被験化合物および対照群、例えばIV型コラーゲンまたはラミニン−1でコーティングされる96穴のプレートを含むことができる(またはプレートは場合により予備コーティングされうる)。キットはまた場合により、BSAまたは他のブロッキング剤、および接着用の細胞(例えばHUVEC細胞)、並びに細胞を増殖させ、トリプシン処理し、再懸濁し、そして染色するための試薬を含むことができる。
ひとたび潜在的に抗血管形成性の化合物が同定されると、別のキットを用いて、一回目に化合物を同定するために使用したものと同じインテグリンサブユニットとの競合により、抗血管形成活性の消失を明らかにすることができる。このようなキットは後述する実施例26に記載する競合増殖試験においてモデル化される。キットは増殖試験(後述する実施例に記載)において有用な細胞、および、タンパク質形態の適切なインテグリンサブユニットを含む。キットはまた場合により、被験化合物の抗増殖活性への介入におけるインテグリンサブユニットタンパク質の作用を調べるために必要または有用な染色剤および他の試薬を含むことができる。
本発明においては、抗血管形成性を有するタンパク質およびそのフラグメント、類似体、誘導体、相同体および突然変異体を、血管形成媒介増殖性疾患を抑制するためにこのようなタンパク質、類似体、誘導体、相同体および突然変異体を使用する方法に加えて説明する。タンパク質はIV型コラーゲンのα鎖のNC1ドメインまたはドメインの部分を含み、特に、IV型コラーゲンのα1、α2およびα3鎖のNC1ドメインのモノマーを含む。これらのタンパク質は、特に単量体形態にある場合に、癌のインビボのモデルにおける腫瘍の増殖を停止させ、そしてまた、内皮細胞管腔試験を含むいくつかのインビトロのモデルにおいて毛細管の形成を抑制する。
これらのタンパク質はまた、NC1ドメインの接合領域を含んでよい。α1、α2またはα3鎖が好ましいが、その理由はα4、α5およびα6鎖は低減あるいは非検出可能な抗血管形成活性を有していることを示唆する証拠があるためである。一般的に、タンパク質の単量体形態が好ましいが、その理由は6量体の形態では活性は殆ど無いか、または低減されていることを示唆する証拠があるためである。
より詳しくは、本発明は「アレステン(Arresten)」と命名されたタンパク質を説明するものであり、これは、ヒトIV型コラーゲンのNC1ドメインのα1鎖のN末端におけるアミノ酸に相当する約230アミノ酸長のタンパク質である(Hostikka,S.L.ら,1988,J.Biol.Chem.263:19488−93)。
本明細書に開示するとおり、ヒトアレステンはペリプラズムの輸送が可能であり、これにより可溶性タンパク質を結果として生じるpET22bのような、細菌発現プラスミドを用いて大腸菌(E.coli)において産生することができる。タンパク質は、C末端の6ヒスチジンタグを有する29kDaの融合タンパク質として発現する。更に3kDa(26kDaを超える)がポリリンカーおよびヒスチジンタグ配列から生じる。アレステンはまた、pcDNA3.1の真核細胞用ベクターを用いて293腎細胞中において分泌可溶性タンパク質として産生された。この293産生タンパク質はまた、精製または検出のタグを有していない。
アレステンは、処置後2時間もの早期に内皮細胞アポトーシスを誘発し、そしてこの作用は内皮細胞に特異的であり、高用量のアレステンで処置された腫瘍細胞において有意な細胞死は観察されていない。代表的なCD−31染色パターンは、対照のマウスと比較して投与マウスの血管系の減少を示した。腫瘍の切片をPCNA(増殖細胞核抗原)、フィブロネクチンおよびIV型コラーゲンについて染色したところ、腫瘍細胞の増殖または、腫瘍細胞を包囲するIV型コラーゲンおよびフィブロネクチンの含量や構造には差は無かった。
大腸菌産生アレステンは、用量依存性の態様でbFGF刺激内皮細胞の増殖を抑制し、そのED50は0.25μg/mlであった。腎癌細胞(786−O)、前立腺癌細胞(PC−3)またはヒト前立腺上皮細胞(HPEC)の増殖に対しては有意な作用は観察されなかった。エンドスタチンは、アレステンより3倍高値のED500.75μg/mlでC−PAE細胞の増殖を抑制し、A−498癌細胞を抑制しなかった。
内皮細胞の増殖および遊走の特異的抑制は、本明細書に記載するとおり、アレステンが細胞表面のタンパク質または受容体を介して機能することを示している。マトリックス・メタロプロテイナーゼ、即ちMMPの抑制は、バチマスタット(BB−94)およびマリマスタット(BB−2516)と同様に、腫瘍の増殖および転移におけるアレステンの直接の役割を示唆している。
最近の研究によれば、αβ、αβおよびαβインテグリンがEHS肉腫腫瘍から単離されたIV型コラーゲンに結合することが予測されている(Senger,D.R.ら,1997,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:13612−7)。アレステンは、IV型コラーゲンのα1鎖のフラグメントであるため、それがαβ/αβインテグリンを介した内皮細胞結合を媒介する能力について評価されている。インテグリンαおよびβサブユニットに対する抗体を機能的にブロックし、そして、アレステン・コーティング培養ウェルへのHUVEC細胞の結合を著しく低減することが示された(図10A)。アレステン・コーティングしたプレートへの内皮細胞の接着は、α抗体で60%、そしてβインテグリン抗体で70%抑制された。これらの結果は125I標識アレステンを用いた結合試験の結果と合致している。アレステンは、8.5×10−11の高親和性のKd値および4.6×10−8の低親和性のKd値で内皮細胞に結合する。プレートをIV型コラーゲンでコーティングした場合、中等度の抑制が、αへの中和抗体では30%、β抗体では40%、そしてαβ抗体では15%観察された(図10B)。アレステンとコラーゲンIVコーティングプレートとの間の細胞接着の差は、全体のコラーゲンIV分子上の潜在的な別のインテグリン結合部位が原因であると考えられるが、アレステンはαβインテグリンに対して単一の特異的結合部位を与える(図10Aおよび10B)。
アレステンの腫瘍抑制活性はインテグリン、特にαβにより媒介されうる。αβへのアレステンの結合は、以前に別途報告されたとおり、αβインテグリンへのVEGFの依存性により示唆されるように、内皮細胞のVEGF誘導増殖および遊走をダウンレギュレートする(Bloch,W.ら,1997,J.Cell.Biol.139:265−78)。これらの結果を総括すると、アレステンは血管形成カスケード中の種々の段階でその作用を発揮することが示される。αおよびαインテグリンサブユニットに対する抗体はインビボで血管形成を抑制することができることがわかっている(Senger,D.R.ら,WO99/16465)。アレステンは、VEGFおよび/またはbFGFのいずれかの活性を直接抑制することにより機能する。ラットにおけるアレステンの半減期36時間は、臨床使用のために必要とされる用量がエンドスタチンおよびアンジオスタチンのような他のタンパク質阻害因子よりもはるかに低値であることを示唆している(O’Reilly,M.S.ら,1994,Cell 79:315−28;O’Reilly,M.S.ら,1997,Cell 88:277−85)。
本発明においては、カンスタチン、即ちIV型コラーゲンのα2鎖のNC1ドメインを用いて血管形成を抑制し、これは、内皮細胞の増殖および遊走の抑制により、並びに内皮細胞管腔形成の抑制により試験された。カンスタチンは内皮細胞の増殖を抑制し、そしてこれらの細胞のアポトーシスを誘導したが、非内皮細胞の増殖の抑制またはアポトーシスはなかった。カンスタチン誘導アポトーシスは、抗アポトーシスタンパク質FLIPのダウンレギュレーションにより媒介される。CD−31組織学的染色によれば、対照のマウスと比較して投与群の血管系が減少していた。カンスタチンによる内皮細胞の増殖および遊走の特異的な抑制はまた、その抗血管形成活性を、そして、細胞表面のタンパク質/受容体を介してそれが機能していることを示している。インテグリンは、その細胞外マトリックス結合能力、および遊走や増殖のような細胞の挙動を調節する能力に基づいた潜在的な候補分子である。特に、αβインテグリンは、血管形成の間のその誘導およびその乱雑な(promiscuous)結合能力により、カンスタチンの受容体である可能性がある。
本発明においては、ツムスタチン、即ちIV型コラーゲンのα3鎖のNC1ドメイン(Timpl,R.ら,1981,Eur.J.Biochem.120:203−11;Turner,N.ら,1992,J.Clin.Invest.89:592−601)を用いて、インビトロおよびインビボの血管形成および腫瘍増殖のモデルを使用する、血管内皮細胞の増殖および血管形成を調節した。ツムスタチンは腫瘍の血管形成の過程における種々の段階においてその作用を発揮する。ツムスタチンによる内皮細胞の特異的な抑制は、それが細胞表面のタンパク質または受容体を介して機能していることを強力に示唆している。最近、ツムスタチンのC末端部分に相当する19アミノ酸長の合成ペプチドがαβインテグリンに結合することが報告されている(Shahan,T.A.ら,1999,Cancer Res.59:4584−90)。下記の実施例において記載される細胞接着試験の結果は、ツムスタチンが内皮細胞でαβおよびαβインテグリンに結合することを示している。ツムスタチンを、あとで内皮細胞と結合することになるαβインテグリンへのその結合を抑制するためにαβインテグリンタンパク質と共に予備インキュベートすると、ツムスタチンの抗増殖作用が著しく低減した(図22)。このことは、ツムスタチンの抗増殖作用が、少なくとも部分的には増殖内皮細胞の細胞表面上のαβインテグリンへの結合を介して媒介されていることを示している。血管形成はαβインテグリンにより媒介される特定の内皮細胞接着事象に依存している(Brooks,P.S.ら,1994,Cell 79:1157−64;Brooks,P.S.ら,1994,Science 264:569−71)ため、ツムスタチンは、ビトロネクチンおよびフィブロネクチンのようなマトリックス成分との増殖内皮細胞の相互作用を妨害することにより抗血管形成作用を発揮している。ビトロネクチンおよびフィブロネクチンとの増殖内皮細胞の正常な相互作用は、重要な抗アポトーシスシグナルであると考えられている(Isik,F.F.ら,1998,J.Cell.Physiol.175:149−55)。ツムスタチンは増殖刺激された内皮細胞におけるアポトーシスを誘導し、この作用は、ツムスタチンをサブコンフルエントの単層に添加した場合に、即ち細胞が指数関数的に増殖している場合に、最も顕著となる。ツムスタチンは、内皮細胞が活性化される腫瘍血管系に対して選択的である。
「α3(IV)NC1ドメイン」のフラグメントとは、哺乳類IV型コラーゲンのα3鎖のNC1ドメインのアミノ酸配列のフラグメントまたは部分を意味する。このようなフラグメントの例は、配列番号10のアミノ酸配列のフラグメントである。
α3(IV)鎖(ツムスタチン)の分布は、特定の基底膜、例えばGBM、蝸牛のいくつかの基底膜、例えば水晶体前嚢のような眼の基底膜、デスメー膜、卵巣および精巣の基底膜(Frojdman,K.ら,1998,Differentiation 83:125−30)および肺胞毛細管基底膜(Kashtan,C.E.,1998,J.Am.Soc.Nephrol.9:1736−50)に限定されている。しかしながら、この鎖は、腎糸球体間質、皮膚の血管基底膜および表皮基底膜、および、肝の血管基底膜には存在しない(Kashtan,C.E.、上記)。創傷治癒の過程において、α3およびα4鎖以外のIV型コラーゲンのα鎖が組み立てられて新しい毛細管を形成するが、その理由は、これらの2種の鎖が「既存の(pre−existing)」基底膜の成分、即ち皮膚の血管系ではないためである。α3(IV)鎖は正常なヒトの皮膚の本来の成分ではないため、創傷治癒についての損傷におけるコラーゲンの組み立ておよび血管形成の過程はツムスタチンを用いた治療により改変されない。
α3(IV)鎖は、ヒト腎血管基底膜並びにGBMにおいて発現する(Kalluri,R.ら,1997,J.Clin.Invest.99:2470−8)。これらの「既存の」血管は、腎細胞癌のような原発性腎腫瘍の進行に関与していると考えられている。ツムスタチンは、α3(IV)鎖と他のα鎖との組み立てにより媒介される新血管形成を妨害することにより、原発性腎腫瘍の治療において効果的でありえる。腎細胞癌と診断された患者の数は1996年では米国で約30,000人であり(Mulders,P.ら,1997,Cancer Res.57:5189−95)、そして、転移症例の予後は極めて不良である。放射線療法および化学療法の進歩にもかかわらず、治療された患者の長期の生存はいまだ顕著には改善されていない(Mulders,P.ら,上記)。腎細胞癌についての明らかな治療選択肢の欠如は新しい治療方法の開発の重要性を強調するものである。この事実に鑑み、固形腫瘍の新血管形成を標的とすることは、現在、いくつかの動物モデルにおいて有望な結果を示している(Baillie,C.T.ら,1995,Br.J.Cancer 72:257−67;Burrows,F.J.ら,1994,Pharmacol.Ther.64:155−74;Thorpe,P.E.ら,1995,Breast Cancer Res.Treat.36:237−51)。インビボの腎細胞癌増殖の抑制におけるツムスタチンの作用は、この種の腫瘍に対する効果的な抗血管形成性療法としてのこの分子の潜在力を示している。
本発明においては、ツムスタチンは、用量依存的な態様でインビトロのウシ肺動脈細胞の血清刺激増殖を特異的に抑制し、インビトロの腫瘍細胞系統PC−3および786−Oの増殖に対しては影響を及ぼさなかった。ツムスタチンは内皮細胞の遊走を抑制しなかったが、インビトロでマウス大動脈内皮細胞の管腔形成を著しく抑制し、また内皮細胞のアポトーシスも誘導した。ツムスタチンは、マトリゲルプラグ試験(Matrigel plug assay)において、インビボで新血管形成を67%抑制し、そして、6mg/kgにおいては、マウス異種移植片モデルにおいてヒト腎細胞癌(786−O)細胞および前立腺癌(PC−3)の腫瘍増殖を抑制した。これらの結果を合わせれば、ツムスタチンは、血管形成過程における種々の工程を抑制することにより新しい血管の形成を抑制することが分かる。
インビボの研究において、ツムスタチンはマトリゲルプラグ試験において血管形成を抑制し、そして、マウス異種移植片モデルにおいてPC−3腫瘍および786−O腫瘍の増殖を抑制した。ツムスタチンが大型の腫瘍の増殖を抑制したという事実は、特に臨床状況における腫瘍の治療を考慮すれば、有望なものである。
ツムスタチンはグッドパスチャー症候群、即ち肺出血および急速に進行する糸球体腎炎を特徴とする自己免疫疾患についての病原性エピトープを有しているため(Butkowski,R.J.ら,1987,J.Biol.Chem.262:7874−77;Saus,J.ら,1988,J.Biol.Chem.263:13374−80;Kalluri,R.ら,1991,J.Biol.Chem.266:24018−24)、ツムスタチンの短期または長期の投与はこの自己免疫疾患を誘導する可能性がある。いくつかのグループがα3(IV)NC1上のグッドパスチャー自己エピトープの位置をマッピングまたは予測する試みを行っており、N末端部分、中央部分およびC末端部分がエピトープを有すると報告されている(Kalluri,R.ら,1995,J.Am.Soc.Nephrol.6:1178−85;Kalluri,R.ら,1996,J.Biol.Chem.271:9062−8;Levy,J.B.ら,1997,J.Am.Soc.Nephrol.8:1698−1705;Quinones,S.ら,1992,J.Biol.Chem.267:19780−4;Kefalides,N.A.ら,1993,Kidney Int.43:94−100;Netzer,K.O.ら,1999,J.Biol.Chem.274:11267−74)。近年、自己抗体の反応性はα3(IV)NC1のN末端に対してのみであり、腎生存率に相関していることが報告された。これは、組換えキメラコンストラクトを用いて行われた(Hellmark,T.ら,1999,Kidney Int.55:936−44)。疾患関連エピトープもまた、N末端部分の最初の40アミノ酸について同定された。従って、グッドパスチャー症候群に関するエピトープを除去するために、N末端53アミノ酸残基を欠いたトランケーションされたツムスタチンが合成され、そしてこの分子は、マウス異種移植片モデルにおいて786−O腫瘍の増殖に対し抑制作用を示した。更に、この分子はグッドパスチャー症候群の重度の患者に由来する自己抗体には結合しなかった。ツムスタチンN−53(本明細書においては「Tum−1」とも称する)もまた、内皮細胞の生存性を強力に低減した。意外にも、この作用は完全長の分子においてよりもツムスタチンN−53(Tum−1)において、より高値であった。これらの結果によれば、ツムスタチンの抗血管形成性の領域は、N末端53アミノ酸が除去された場合においてさえも保存されていることを示している。
Tum−1以外にも、Tum−2、Tum−3およびTum−4を含む他のツムスタチン欠失突然変異体もまた作成されている。これらもまた、後述する実施例35に記載する。上記の通り、Tum−1はC末端191アミノ酸を含み、N末端53アミノ酸を欠損している。「ツムスタチン333」はツムスタチンのN末端アミノ酸1〜124を含む。Tum−3はC末端の112アミノ酸を含む。Tum−4はC末端の64アミノ酸を含み、これはアミノ酸185〜203を含む(Hanら,1997,J.Biol.Chem.272:20395−401)。完全長ツムスタチンのアミノ酸54〜132の領域はTum−5と称した。本明細書において「ツムスタチン−45−132」と称するTum−5の拡張型は、Tum−5の発現と溶解性を増大させるために作成した。ツムスタチン−45−132は、更に9個のアミノ酸のN末端における伸長部を有するTum−5からなる。更に、ツムスタチン−45−132の突然変異体が作成され、本明細書においては「Tum−5−125−C−A」と称した。この突然変異体は、(完全長ツムスタチンの)125位のシステインが部位指向性突然変異誘発によりアラニンに突然変異した、ツムスタチン−45−132からなる。T1および部分重複するペプチドのセット(T2、T3、T4、T5およびT6)からなる更に別の欠失突然変異体をTum−5から作成した。
これらの突然変異体を以下の表1に示す。
Figure 2006508015
Figure 2006508015
Tum−5−125−C−Aにおいて、完全長ツムスタチン分子の125位のシステイン残基に代わってアラニンに置換されている。
T7突然変異体において、完全長ツムスタチン分子の77位のロイシン残基に代わってメチオニンに置換されており、そして81位のバリンに代わってイソロイシンに置換されており、そして83位のアスパラギン酸に代わってアスパラギンに置換されている。
T8においては、完全長ツムスタチン分子の68位のロイシン残基に代わってリジンに置換されている。
T8−3において、完全長ツムスタチン分子の68位のロイシン残基に代わってリジンに置換されており、そして79位および85位のシステイン残基に代わってセリンに置換されている。
TP3において、完全長ツムスタチン分子の76位のフェニルアラニン残基に代わってリジンに置換されており、そして83位のアスパラギン酸に代わってシステインに置換されている。
P2において、完全長ツムスタチン分子の68位のロイシン残基に代わってリジンに置換されており、そして79位および85位のシステイン残基に代わってアスパラギン酸に置換されている。
Tum−4は、本明細書に記載するとおり黒色腫細胞の増殖(WM−164細胞)を抑制し、αβ受容体に結合するが、この領域はツムスタチンの抗血管形成活性をもたらす部分ではない。これとは対照的に、ツムスタチンのN末端半分を含むツムスタチン欠失突然変異体Tum−2は、抗血管形成特性は示したが抗腫瘍細胞活性は示さなかった。従って、ある実験条件下においては、これらの2種の活性は切り離すことができると考えられる。
図34Aおよび35Aに示すとおり、完全長ツムスタチンおよび欠失突然変異体Tum−1は双方とも等価な抗血管形成活性を示すという事実は、残基1〜53の領域がこの活性のために必要ではないことを示している。完全長ツムスタチンを超えたTum−1の増大した抗血管形成活性は、より大きい完全長の分子とは対照的に、突然変異タンパク質のマイクログラム当たりの活性分子の増大数により合理的に説明できる。
完全長ツムスタチンおよび欠失突然変異体Tum−1およびTum−2がすべて抗血管形成活性を示す(即ち、内皮細胞増殖を抑制しそのアポトーシスを誘発する)がTum−3およびTum−4は示さないという事実は、ツムスタチンの抗血管形成特性は残基54〜132の領域に主に位置していることを示唆している。活性はまた残基132を超えて一部の残基にまで伸長しているが、Tum−3が抗血管形成特性を示すのに十分な抗血管形成の領域を含んでいないことは明らかである。
しかしながら、Tum−4はWM−164黒色腫細胞の増殖を抑制しており(図33Bに示すとおり)、一方Tum−1およびTum−2は抑制しておらず、このことはツムスタチンの抗腫瘍細胞活性は残基181〜244内に存在していることを示している。Shahanら(1999,Cancer Res.59:4584−90)の結果を考慮すると、抗腫瘍細胞活性は残基185〜203内に位置する可能性がより高い。ツムスタチンの抗血管形成活性と抗腫瘍細胞活性の分離は、抗血管形成の分野の大部分の研究がその血液供給の制限により腫瘍を抑制することを指向していることからすれば、意外である。
興味深いことに、欠失突然変異体Tum−1およびTum−2の抗血管形成活性はツムスタチンのものと同等であったため、残基54〜132の領域の抗血管形成活性はまた、完全長の折りたたみツムスタチン分子内にそれが含まれる場合にも有効である。これとは対照的に、Tum−4は抗腫瘍細胞活性を有していたのに対し、Tum−3(Tum−4と同様に残基185〜203を含む)は有していなかった。従って、領域185〜203の抗腫瘍細胞活性は、この領域が完全長折りたたみツムスタチンの部分として存在する場合、または、より大きいツムスタチンフラグメント内(例えばTum−3内)に存在する場合でさえも、使用可能とはならない。この活性は、この領域が分子のトランケーション(後述する実施例に示す)によるか、またはHanら(1997,J.Biol.Chem.272:20395−401)が行ったように代表的ペプチドの合成によるか、のどちらかより曝露される場合にのみ認識されるものとなる。
完全長ツムスタチンの他のフラグメントおよび突然変異体もまた、抗血管形成活性を有している。ツムスタチン−45−132は、非内皮細胞に対しては有意な作用を示すことなく、内皮細胞の増殖を特異的に抑制しアポトーシスを誘発する。これは、親タンパク質から64%トランケーションされているにもかかわらず、244アミノ酸の完全長分子と同様に活性である。ツムスタチン−45−132の抗血管形成作用は、マトリゲルプラグ試験を用いてインビボでさらに確認されている。1μg/mlのツムスタチン−45−132は、マウス異種移植片においてPC−3腫瘍を抑制し、そして新血管形成および微細血管密度を低減することがわかった。内皮細胞表面へのビオチニル化ツムスタチン−45−132の結合が免疫細胞化学により確認されている。免疫沈降実験によれば、ツムスタチン−45−132は競合増殖試験で測定した場合、内皮細胞表面上のαβおよびβインテグリンに結合することが分かった。
更に、アルカリ還元ツムスタチン−45−132は未還元のツムスタチン−45−132と同様に有効であることが分かった。アルカリ還元は、折りたたみタンパク質分子のコンフォメーション構造を維持する役割を果たしている、システイン残基間のジスルフィド結合を破壊する。未還元の分子と比較した場合にアルカリ還元ツムスタチン−45−132で活性の低下がないことは、ツムスタチン−45−132のシステイン結合媒介コンフォメーション特性がその抗血管形成活性に必須ではないことを示している。従って、「突然変異体(mutant)」という用語はまた、還元されているか、または1以上のシステイン残基が別のアミノ酸に突然変異しているか若しくは完全に欠失している、ツムスタチン分子の全体または部分をも意味することができる。
ツムスタチン−45−132の突然変異体であるTum−5−125−C−Aは、(完全長分子の)残基125番のシステインがアラニンに突然変異しているように作成した。この突然変異により、増強されたタンパク質の発現が認められ、そしてこの分子は、この突然変異体が実際はツムスタチン−45−132よりも強力に腫瘍増殖を抑制した、マウス異種移植片の研究における腫瘍増殖の抑制を除き、ツムスタチン−45−132と同等の抗血管形成特性を有している。
これらの活性は更に、合成ペプチドT1、T2、T3、T4、T5、T6、T7、T7−突然変異体、T8、T8−3、TP3およびP2の研究によっても明らかにされた。合成ペプチドのうちT3は、インビボで新血管形成を抑制した。一方、完全長ツムスタチンの20N末端アミノ酸、従ってRGD配列を含むT1ペプチドは、内皮細胞増殖を抑制しなかった。T3は増殖内皮細胞のG停止を誘発することが分かっており、この作用は、T3ペプチドへの曝露前に細胞をαβインテグリンタンパク質と共に予備インキュベートしたところ低減した。T3ペプチドは、その中に含まれる2個のシステインがジスルフィド結合により連結されているか否かに関わらず内皮細胞増殖を抑制した。これは、ツムスタチン−45−132と同様、T3ペプチドの抗血管形成活性がそのコンフォメーション特性とは無関係であることを示している。T3ペプチドの活性は、ツムスタチンまたはツムスタチン−45−132と比較してモル単位で2〜5倍低い。T4ペプチドはT3と重複しており、そして、T4は内皮細胞増殖を抑制しなかったが、これはこれらの細胞におけるαβインテグリンに対する弱い結合を示した。従って、T3配列はT4ペプチドの最初の9残基により伸長され、そして新しいペプチド配列を「T7」と称した。
T7ペプチドは、等モル濃度において、T3よりも高く、そしてツムスタチンおよびツムスタチン−45−132と同等の水準の活性を示した。ツムスタチン、ツムスタチン−45−132およびT7ペプチドは1μMのED50で抗増殖作用を示したが、T3ペプチドは2.5μMのED50を有していた。これらの結果は、T4ペプチドの最初の9アミノ酸はそれ自体抗血管形成活性を示さないが、それにもかかわらず、それらがαβインテグリンに対するツムスタチンの結合に寄与しており、おそらくはこれらの分子間のより良好な相互作用を促進し、最大の抗血管形成活性の達成を助長することを示している。
興味深いことに、T7配列のアミノ酸8〜29はまた、腫瘍細胞抑制活性を示す領域であるアミノ酸187〜207のC末端領域に対してある程度の相同性(50%同一性)を示す。
多くの別のペプチドおよび突然変異体を合成し、癌のインビボ動物モデルにおけるその活性について試験した。これらのペプチドは上記表1に示すとおりであり、そのツムスタチン配列とのアラインメントは以下に示すとおりである。ツムスタチン配列と異なるアミノ酸残基は小文字で示す。
Figure 2006508015
ツムスタチンペプチドT7は完全長ツムスタチンのフラグメントであり、配列内に改変箇所はない。ペプチドT7突然変異体はT7配列に基づいているが、ツムスタチンの残基77、81および83におけるロイシン、バリンおよびアスパラギン酸の代わりに、それぞれメチオニン、イソロイシンおよびアスパラギンを有している。ペプチドT8はツムスタチンの68位のロイシンの代わりにリジンを有している。ペプチドT8−3は2つの別の置換を有しており、ツムスタチンの79位および85位のシステイン残基の各々に代わってセリンに置換されている。ペプチドTP3は76位のフェニルアラニン残基に対して置換しているリジンを有し、システインは83位のアスパラギン酸に対して置換している。ペプチドP2もまたT8−3ペプチドと同様であり、ツムスタチンの68位のロイシンに対して置換しているリジンを有するが、79位と85位のシステインはアスパラギン酸で置換されている。
インビボのマウス腫瘍モデルにおいて、ペプチドT8は毒性を示さず、そしてMDAMB−435ヒト乳癌の同位異種移植片において腫瘍の増殖を抑制した。抑制は体重1kg当たり1mgの1日用量で28%を超えており、2.5mg/kgではほぼ49%であった。興味深いことに、5mg/kgの1日用量では抑制は僅か31%であったが、同じ用量(5mg/kg)を1週間に2回投与した場合、抑制は41%を超えていた。同じ腫瘍モデルにおいて、ペプチドTP3は、1mg/kgを毎日投与した場合は30%超の抑制、1mg/kgを毎日投与した場合は50%の抑制であった。別の実験において、T8およびT8−3は、5mg/kgで投与した場合にそれぞれ50.5%および41.9%で腫瘍の増殖を抑制し、そしてT8−3は1mg/kgでは有効ではなかった。ペプチドP2は、1mg/kgの場合に26.4%、そして5mg/kgの場合に15.9%で、この癌モデルにおける腫瘍増殖を抑制した。
PC3ヒト前立腺腫瘍異種移植片モデルにおいて、ペプチドT7、T8、TP3並びに対照のスクランブルペプチドSP1およびSP2を毎日投与したところ、T8、T7およびTP3は5mg/kgにおいてそれぞれ45%、66.8%および53.2%でPC3腫瘍の増殖を抑制した。SP1およびSP2は31.7および18.7%で増殖を抑制した。週1回5mg/kgで投与した場合、T8は39.5%で腫瘍増殖を抑制したが、週2回投与した場合は僅か8.1%であり、これはMDAMB−435モデルにおける結果を反映している。別の実験において、T8およびT8−3ペプチドは両方とも5mg/kgの用量で35.4%腫瘍増殖を抑制し、79位および85位のシステインがこの生物学的活性にとって必要な二次構造を与えないことを示している。P2はPC3モデル並びにMDAMB−435モデルにおいてより低い用量でより効果的であることが分かり、1および5mg/kgでそれぞれ31.6%および僅か15.9%の腫瘍増殖抑制が見られた。
本明細書に記載するとおり、ツムスタチンペプチド誘導アポトーシスは、cap依存性のタンパク質翻訳の調節に関与する酵素であるカスパーゼ−3の増加と関連している(Maeshima,Y.ら,2000,J.Biol.Chem.275:23745−50;Maeshima,Y.ら,2001,J.Biol.Chem.276:31959−68;Maeshima,Y.ら,2001,J.Biol.Chem.276:15240−8;Bushell,M.ら,1999,FEBS Lett.451:332−336)。インテグリンβ欠損マウス由来の細胞を用いたところ、本明細書に記載する結果(例えば実施例52〜55参照)は、種々のツムスタチンペプチドのタンパク質合成に対する抑制作用が内皮細胞上に発現されるαβインテグリンにより媒介されることが示されている。そのαβインテグリンとの相互作用を介して、ツムスタチンペプチドはFAK、PI−3キナーゼ、AKT、mTORの活性化を抑制し、そしてeIF4E/4E−BP1複合体の解離を防止し、ラパマイシンと同様、内皮細胞におけるcap依存性のタンパク質翻訳を抑制する結果となるが、このような作用は別のマトリックス誘導血管形成阻害因子であるエンドスタチンでは観察されていない。このことは、cap依存性のタンパク質合成の細胞特異的抑制の媒介におけるインテグリンの新しい役割を証明している。従って、ツムスタチンおよび関連ペプチドは、αβインテグリン依存性の、cap依存性タンパク質合成の内皮細胞特異的阻害因子である。
ペプチドおよびタンパク質の3次構造またはコンフォメーションに対する活性の依存性がないことは、医薬品目的のこれらのペプチドおよびタンパク質の設計を容易にするはずである。例えば、T3ペプチドの折りたたみ型と非折りたたみ型、または還元されアルキル化されたツムスタチン−45−132と未還元未アルキル化型の活性に差がないため、所定の発現系においてより高いレベルで発現される、患者における副作用がより少ないほうの型のタンパク質またはペプチドを、あるいは、より可溶性であるほうを使用できる。更に、活性配列の大きさが小さいことは、発現、溶解性、副作用等を操作するためのフランキング配列の付加を可能とする。
従って、本発明のタンパク質およびペプチドはまた、種々の薬学的特性を改善または改変するために修飾してよく、例えば、別のアミノ酸配列を全体のペプチドまたはタンパク質の配列に組み込むことにより、分子に望ましい性質を付与したり、または望ましくない性質を除去したりすることができる。例えば、ペプチドの短い配列は重量単位でその有効性を増大させるが、その有効半減期も低下させる場合がある。例えば修飾によりペプチドまたはタンパク質の生物学的半減期(例えば血清中半減期)を増大させることが望ましい場合がある。タンパク質の半減期を増大させるための種々の方法が当該分野で知られており、例えば、タンパク質のポリエチレングリコール部分への結合、即ちPEGylation(例えば米国特許第4,179,337号;5,166,322号;5,206,344号;Nucciら,1991,Adv.Drug Delivery Rev.4:133−51を参照)およびタンパク質のデキストランへの結合(Maksimenko,1986,Bull.Exp.Biol.Med.(Russian)52:567−9)が含まれる。
抗血管形成活性および抗腫瘍細胞活性は両方とも、グッドパスチャー・エピトープ領域外に存在する。α3(IV)NC1ドメインの「非グッドパスチャーフラグメント」とは、哺乳類IV型コラーゲンのα3鎖のNC1ドメインのアミノ酸配列のフラグメント(例えばタンパク質、ペプチド若しくはポリペプチド)または部分を意味し、ここでフラグメントはグッドパスチャー自己エピトープを含まない。最近、自己抗体が単独でα3(IV)NC1のN末端と反応することが報告された。
抗血管形成領域と抗腫瘍細胞領域のいずれも、古典的な「RGD」(Arg−Gly−Asp)結合部位を含まず、従って、両領域ともRGD非依存性の機序でそのリガンドに結合する。インテグリンまたはインテグリンサブユニットに結合するフラグメント(例えばタンパク質、ペプチドまたはポリペプチド)の能力が「RGD非依存性」であるとは、フラグメントがペプチド配列「RGD」(Arg−Gly−Asp)を含まなかったとしてもインテグリンまたはインテグリンサブユニットに結合できることを意味する。いずれもRGD配列を含まないにもかかわらず、抗血管形成領域および抗腫瘍細胞領域の双方がなおαβインテグリンに結合し、共に内皮細胞に結合する。フラグメント(例えばタンパク質、ペプチドまたはポリペプチド)が「αβインテグリンに結合する能力」を有するとは、フラグメントがこのインテグリンまたはそのサブユニット(即ちαおよび/またはβ)に結合できること、あるいは、このインテグリンまたはそのサブユニットに対する抗体で前処理することでこのインテグリンおよび/またはそのサブユニットへのフラグメントの結合が抑制される結果となる(例えば後述する実施例12または28において示す方法により明らかにされる)ことを意味する。
これらの類似性を鑑みると、(1)抗血管形成領域は内皮細胞の増殖を抑制するが、抗腫瘍細胞領域は抑制しないこと、および、(2)抗血管形成領域は腫瘍細胞を抑制できないが、抗腫瘍細胞領域はこのような細胞を抑制する、ということは意外である。
フラグメント(例えばタンパク質、ペプチドまたはポリペプチド)が「腫瘍細胞の増殖を抑制することの不可能性」を有する、または「腫瘍細胞の増殖を抑制する能力を欠く」とは、フラグメントが腫瘍細胞(例えば培養した黒色腫細胞、例えばWM−164細胞)の増殖を防止しないことを意味する。試験方法は後述する実施例、例えば実施例36、37および38に記載する。同様に、フラグメント(例えばタンパク質、ペプチドまたはポリペプチド)が「腫瘍細胞の増殖を抑制する能力」を有するとは、フラグメントが腫瘍細胞(例えば培養した黒色腫細胞、例えばWM−164細胞)の増殖を防止することを意味する。このような能力の試験方法は後述する実施例、例えば実施例36、37および38に記載する。
フラグメント(例えばタンパク質、ペプチドまたはポリペプチド)が「内皮細胞の増殖を抑制することの不可能性」を有する、または「内皮細胞の増殖を抑制する能力を欠く」とは、フラグメントが内皮細胞(例えば培養C−PAE細胞)の増殖を防止しないことを意味する。このような不可能性を試験する方法は後述する実施例、例えば実施例5,6,7,26,34、36、38等に記載する。
フラグメント(例えばタンパク質、ペプチドまたはポリペプチド)が「内皮細胞に結合する能力」を有するとは、フラグメントが内皮細胞(例えばC−PAE細胞)に結合することを意味する。このような能力を試験する方法はまた、後述する実施例、例えば実施例26,28,37に記載する。
後述する実施例に記載した方法を用いて抗血管形成活性または抗腫瘍細胞活性のいずれかに必要である厳密な最小限の長さを更に明確化するために別の欠失突然変異体を作成することは、困難でも厄介でもない。このような取組みは、所望の活性をなお示す最も小さい可能な分子が所望の活性のためには不必要なアミノ酸を含むより大きい分子よりも重量当たりではより強力であるため、極めて好都合である。
ツムスタチンによる内皮細胞の増殖の特異的抑制は、それが細胞表面タンパク質/受容体を介して機能することを強力に示唆している。血管形成はまた、インテグリンαβにより媒介される特異的内皮細胞接着事象にも依存している(Brooks,P.C.ら,1994,Cell 79:1157−64)。細胞接着試験によれば、ツムスタチンはαβインテグリンおよびαβインテグリンを介して内皮細胞に結合することが分かった。ツムスタチンの抗増殖作用は部分的に、可溶性αβインテグリンタンパク質により回復された。ツムスタチンは、マトリックス成分に対する増殖内皮細胞の相互作用を妨害し、これにより内皮細胞をアポトーシスさせる(Re,F.ら,1994,J.Cell.Biol.127:537−46)。マトリックス・メタロプロテイナーゼ(MMP)は、腫瘍における新しい血管の形成を調節する重要な酵素として関係している(Ray,J.M.ら,1994,Eur.Respir.J.7:2062−72)。最近、MMP−2の阻害剤(PEX)が血管形成を抑制することにより腫瘍の増殖を抑制できることが明らかにされた(Brooks,P.C.ら,Cell 92:391−400)。ツムスタチンはMMPの活性を阻害することを介して機能する。
Petitclercら(2000,J.Biol.Chem.275:8051−61)は、α3(IV)NC1がαβインテグリンを介して内皮細胞に結合することを示しているが、この結合はα3(IV)NC1ドメインのN末端に存在するRGD配列を介していると推測している。しかしながら、このRGD配列はNC1ドメインの部分ではなく、三重らせん領域に由来するものであり、Neilsonら(1993,J.Biol.Chem.268:8402−5)により説明された元のクローン内に含まれる。Petitclercらは、このクローンを用いて293胚性腎細胞においてα3(IV)NC1を組換えにより発現させた。この配列を部位指向性突然変異誘発により除去すると、αβ結合部位が保存され、RGD非依存性の結合機序が示された。
Shahanら(1999,Cancer Res.59:4584−90)は、αβインテグリンに対するリガンドとして残基185〜203を同定し、この相互作用が関連する抗腫瘍細胞特性にとって重要であることを推測している。このペプチドドメインは、HT−144黒色腫細胞のRGD認識部位とは異なるβインテグリンサブユニットに結合することが更に特定された(Pasco,S.ら,2000,J.Biol.Chem.275:32999−3007)。後述する実施例37および38は、ツムスタチンの54〜132残基領域内における別の異なるRGD非依存性αβ(αβまたはβではない)インテグリン結合部位を示している。この第2の部位は腫瘍細胞増殖の抑制のためには必要ではないが、抗血管形成活性のためには必要である。Tum−2は内皮細胞および黒色腫細胞の両方に結合するが、内皮細胞の増殖のみを抑制し、腫瘍細胞の増殖に対しては効果を示さない。残基185〜203を含むTum−4は内皮細胞および黒色腫細胞の両方に結合するが、黒色腫細胞の増殖のみを抑制する。両方のインテグリン結合部位について、可溶性αβタンパク質を用いた競合試験は抗増殖活性を逆転させるために十分である。このことは、ツムスタチン上の2つの異なるRGD非依存性αβ結合部位が2種の個別の抗腫瘍活性を、おそらくは異なるαβインテグリン媒介機序を介して媒介していることを示唆している。本明細書に記載した結果によれば、αβおよびαβインテグリンがツムスタチンに結合し、そしてαβの結合はRGD非依存性である。
欠失突然変異体を用いてインテグリン結合部位を検出するための細胞接着試験を行った。ツムスタチンのN末端部分には、三重らせん非コラーゲン性部分に由来するRGD配列(アミノ酸残基7〜9)が存在する。RGDはαβ受容体に対する結合部位である。しかしながら、この配列を欠いているTum−1はなおαβインテグリンに結合する。従って、この結合部位は185〜203領域について示されたとおり、RGD非依存性である。αβ結合部位に部分的に結合することが示されたこの領域に対する抗体(例えば抗Tum−4抗体)はTum−1のαβ受容体への結合を妨害せず、そしてTum−1の抗増殖作用もまた影響を受けない。更に、C末端αβ結合部位(残基185〜203)を含まないTum−2(残基1〜132)は、実施例38において、細胞接着試験でαβに結合し、そして内皮細胞の増殖を抑制することが示されている。ツムスタチンまたはTum−2をαβタンパク質と共にインキュベートすることにより内皮細胞膜上のαβ受容体を飽和させたところ、ツムスタチンの抗増殖作用は著しく低下した(43〜74%)。このことは、ツムスタチンに対する可溶性αβ受容体の親和性が膜結合αβと比較してはるかに弱く非効率であることを考慮すると、意外である。本明細書に記載した結果によれば、αβ結合部位はアミノ酸54〜132内に位置すると考えられる。
ツムスタチンの抗血管形成活性がαβにより媒介されるということは、VEGFが内皮細胞上のαβの発現をアップレギュレートするという見解と合致している(Sengerら,1996,Am.J.Pathol.149:293−305;Suzumeら,1998,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.39:1028−35)。血管形成はαβインテグリンにより媒介される特異的な内皮細胞接着事象に依存しているため(Brooksら,1994,Science 264:569−71;Brooksら,1994,Cell 79:1157−83)、ツムスタチンの抗血管形成作用は、重要な抗アポトーシスシグナルと考えられる、ビトロネクチンやフィブロネクチンのようなマトリックス成分に対する増殖内皮細胞の相互作用を妨害することにより媒介される。
第2のRGD非依存性部位は、共に内皮細胞および黒色腫細胞上のαβインテグリンに結合するものの、アミノ酸レベルでの185〜203部位との有意な相同性は示さない。αβインテグリンは残基185〜203に結合するが、内皮細胞の増殖の抑制は観察されなかった。
ツムスタチンはインビトロおよびインビボで血管形成を抑制し、その結果、腫瘍の進行を抑制している。この方法を患者に適用するためには、全身投与によるその潜在的毒性または副作用もまた考慮しなければならない。ツムスタチンの分布が限定され、皮膚基底膜には殆ど存在しないという事実は、ツムスタチン処置による副作用の可能性が低いことを示唆している。また、腎臓のような限定された臓器の血管基底膜におけるツムスタチンの存在は、限定された臓器において生じる腫瘍のターゲティングにおけるその潜在的で独特の利点を示唆している。究極的には、遺伝子転移法を用いて腫瘍の血管系においてインビボでツムスタチン遺伝子を発現するための代替法を開発することが望ましい(Kashihara,N.ら,1997,Exp.Nephrol.5:126−31;Maeshima,Y.ら,1996,J.Am.Soc.Nephrol.7:2219−29; Maeshima,T.ら,1998,J.Clin.Invest.101:2589−97)。
α3(IV)鎖の分布は選択された臓器の基底膜に限定されており、従ってツムスタチンは、α鎖の組み立ての抑制によるこの分子の考えうる機序を考慮すれば有害性はより低いと考えられる。更に、α3(IV)鎖は腎臓の血管基底膜において観察されており(Kalluri,R.ら,1997,J.Clin.Invest.99:2470−8)、そしてこれらの血管は腎細胞癌のような原発腎腫瘍の進行に関与していると考えられている。従って、ツムスタチンは他のα鎖とのα3(IV)鎖の集合体を破壊することを通じてこのような腫瘍の治療において有効である。
本明細書においては、「血管形成(angiogenesis)」という用語は、組織または臓器内への新しい血管の発生を意味し、内皮細胞の増殖を含む。正常な生理学的条件下では、ヒトおよび動物は極めて特異的な限定された状況においてのみ血管形成を起こす。例えば、血管形成は通常、創傷治癒、胎児および胚の発生、および黄体、子宮内膜および胎盤の形成において観察される。「内皮(endothelium)」という用語は、漿液腔、リンパ管および血管の内張りとなる平坦な内皮細胞の薄層を意味する。従って、「抗血管形成活性(anti−angiogenic activity)」とは、血管の生育を抑制する組成物の能力を指す。血管の生育は複雑な一連の事象であり、個々の内皮細胞の下にある基底膜の局所的破壊、これらの細胞の増殖、将来の血管の位置への細胞の遊走、新しい血管膜を形成する細胞の再組織化、内皮細胞増殖の停止、および、新しい血管壁を支持する血管周皮細胞と他の細胞との取り込みを含む。従って「抗血管形成活性」とは本明細書においては、これらの段階のいずれかまたはすべての中断であり、最終結果として新しい血管の形成が抑制されることであるものを包含する。
抗血管形成活性は内皮細胞抑制活性を含み、これは、一般的には血管形成を抑制する、そして例えば線維芽細胞増殖因子、血管形成関連因子、または他の知られた増殖因子の存在下で培養されているウシ毛細管内皮細胞の増殖または遊走を抑制する組成物の能力を指す。「増殖因子(growth factor)」とは、細胞の増殖、再生または合成活性を刺激する組成物である。「血管形成関連因子(angiogenesis−associated factor)」とは、血管形成を抑制または促進する因子である。血管形成関連因子の一例は、血管形成プロモーターである塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)のような血管形成性の増殖因子である。血管形成関連因子の別の例は、例えばアンジオスタチン(例えば米国特許第5,801,012号、米国特許第5,837,682号、米国特許第5,733,876号、米国特許第5,776,704号、米国特許第5,639,725号、米国特許第5,792,845号、WO96/35774、WO95/29242、WO96/41194、WO97/23500参照)またはエンドスタチン(例えば米国特許第5,854,205号;米国特許第6,174,861号;WO97/15666参照)のような血管形成抑制因子である。
「実質的に同じ生物学的活性(substantially the same biological activity)」または「実質的に同じかより優れた生物学的活性(substantially the same or superior biological activity)」とは、組成物が抗血管形成活性を有し、そして、標準的な試験で測定されるように、アレステン、カンスタチンおよびツムスタチンと同様に挙動することを意味する。「標準的な試験(standard assays)」とは、抗血管形成活性、細胞周期の停止、およびアポトーシスを評価するために分子生物学分野で使用されているプロトコルを含むが、これらに限定されない。このような試験は、内皮細胞増殖、内皮細胞遊走、細胞周期分析、および内皮細胞管腔形成についての試験、例えばアポトーシス細胞の形態またはアネキシンV−FITC試験によるアポトーシスの検出、漿尿膜(CAM)試験、およびヌードマウスにおける腎癌腫増殖の抑制を包含するが、これらに限定されない。このような試験は後述する実施例において示す。
「アレステン(Arresten)」とは本明細書においては「アレスチン(Arrestin)」とも称し、アレステン配列のアミノ酸配列のフラグメント、突然変異体、相同体、類似体および対立遺伝子変異体、並びに他の哺乳類に由来するアレステン、およびそのアレステンアミノ酸配列のフラグメント、突然変異体、相同体、類似体および対立遺伝子変異体を包含するものとする。
「カンスタチン(Canstatin)」とは本明細書においては、カンスタチン配列のアミノ酸配列のフラグメント、突然変異体、相同体、類似体および対立遺伝子変異体、並びに他の哺乳類に由来するカンスタチン、およびそのカンスタチンアミノ酸配列のフラグメント、突然変異体、相同体、類似体および対立遺伝子変異体を包含するものとする。
「ツムスタチン(Tumstatin)」とは本明細書においては、ツムスタチン配列のアミノ酸配列のフラグメント、突然変異体、相同体、類似体および対立遺伝子変異体、並びに他の哺乳類に由来するツムスタチン、およびそのツムスタチンアミノ酸配列のフラグメント、突然変異体、相同体、類似体および対立遺伝子変異体を包含するものとする。
本発明が、内皮抑制活性(例えば、一般的には血管形成を抑制する、そして、例えば線維芽細胞増殖因子、血管形成関連因子、または他の知られた増殖因子の存在下で培養されているウシ毛細管内皮細胞の増殖または遊走を抑制する、組成物の能力)を有するアレステン、カンスタチンまたはツムスタチンのいずれかの誘導体を包含することを意図するものであることを理解されたい。本発明は、完全なアレステン、カンスタチンまたはツムスタチンのタンパク質、それらのタンパク質の誘導体、およびそれらのタンパク質の生物学的に活性なフラグメントを包含する。これらには、アミノ酸の置換を有するか、またはアミノ酸官能基に結合した糖または他の分子を有するアレステン、カンスタチンまたはツムスタチンの活性を有するタンパク質が包含される。
本発明はまた、アレステン、カンスタチンおよびツムスタチンのフラグメント、突然変異体、相同体および類似体について記載する。アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンの「フラグメント(fragment)」とは、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンのポリペプチドの少なくとも25連続アミノ酸を含む、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンの分子より短いいずれかのアミノ酸配列である。このような分子はまた、クローニングの過程から誘導された別のアミノ酸、例えば完全または部分的リンカー配列に相当するアミノ酸残基またはアミノ酸配列を含んでいてもいなくてもよい。本発明の範囲に包含されるためには、このような別のアミノ酸残基を有するまたは有さないこのような突然変異体は、参照ポリペプチドの天然または完全長の型と実質的に同じ生物学的活性を有さなければならない。
タンパク質の「フラグメント」とは、完全長ポリペプチドの12以上の連続アミノ酸を含む、そのタンパク質よりも短いいずれかのアミノ酸配列である。このようなフラグメントはあるいは、完全長ポリペプチドの連続アミノ酸13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50個を含んでよい。フラグメントは、完全長ポリペプチドの連続アミノ酸51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74または75個を含んでよい。そのような分子はまた、クローニングの過程から誘導された別のアミノ酸、例えば完全または部分的リンカー配列に相当するアミノ酸残基またはアミノ酸配列を含んでいてもいなくてもよい。
このようなフラグメントはまた、ツムスタチン配列に基づいて一般的な活性ペプチドを製造するための以下の式に基づくものであることもできる。アミノ酸60〜100のツムスタチン配列を以下に示し、活性ツムスタチンペプチドとアラインした。配列全体にわたって共通する残基は大文字で示す。
Figure 2006508015
従って、この式に基づいてペプチドを作成し、抗血管形成特性について本明細書に記載したとおりそれらを試験することができる。例えばアミノ酸FまたはK、次いでLF、次いでCまたはSまたはD、次いでNVN、次いでDまたはC、次にV、次にCまたはSまたはD、そして最後にNFとなる配列のペプチドを作成できる。合計で僅か36種、即ち、本明細書に記載する試験法により容易に試験できる数量の、異なるペプチドがこの式で作成できる。
他のフラグメントもまた作成できる。「ツムスタチンN−53」と称する1つのツムスタチンフラグメントは、標準的な試験法による測定によれば完全長のツムスタチンと同等の抗血管形成活性を有していることが分かった。ツムスタチンN−53は、N末端の53アミノ酸が欠失しているツムスタチン分子を含む。本明細書に記載する他の突然変異フラグメントは、本明細書に記載した試験法で示されるとおり、極めて高い水準の抗血管形成活性を有していることが分かった。これらのフラグメント「ツムスタチン333」、「ツムスタチン334」、「12kDaアレステンフラグメント」、「8kDaアレステンフラグメント」および「10kDaカンスタチンフラグメント」はそれぞれ、75ng/ml、20ng/ml、50ng/ml、50ng/mlおよび80ng/mlのED50値を有している。一方、完全長のアレステン、カンスタチンおよびツムスタチンは、それぞれ400ng/ml、400ng/mlおよび550ng/mlのED50値を有していることが分かった。ツムスタチン333は配列番号10のアミノ酸1〜124を含み、そしてツムスタチン334は配列番号10のアミノ酸125〜244を含む。
アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンの「突然変異体(mutant)」とは、等価な参照アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンのポリペプチドのアミノ酸配列と比較してアミノ酸配列においていずれかの変化を含むポリペプチドを意味する。このような変化は自発的に、または人間による操作により、化学エネルギー(例えばX線)により、または化学的突然変異の他の形態により、または遺伝子操作により、または交配または遺伝子情報の交換の他の形態の結果として生じうる。突然変異には、例えば塩基の変化、欠失、挿入、逆位、転座または重複が包含される。アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンの突然変異体は、等価な参照アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンのポリヌクレオチドと比較して増大した、または低減された抗血管形成活性を示してよく、このような突然変異体はまた、クローニングの過程から誘導された別のアミノ酸、例えば完全または部分的リンカー配列に相当するアミノ酸残基またはアミノ酸配列を含んでいてもいなくてもよい。
本発明の抗血管形成性タンパク質の突然変異体/フラグメントは、PCRクローニングにより生成できる。「ツムスタチン333」および「ツムスタチン334」と命名されたフラグメントはこの方法で生成されており、後述する実施例23に記載するとおり、そして図30および31に示すとおり、完全長ツムスタチンよりも優れた抗血管形成活性を有している。このようなフラグメントを作成するためには、PCRプライマーは、プライマーの各セットが全体のタンパク質から既知の配列を増幅するように、既知の配列から設計する。次にこれらの配列をpET22bベクターのような適切な発現ベクター内にクローニングし、発現されたタンパク質は、抗血管形成活性について後述する試験法に説明するとおり試験する。
本発明の抗血管形成性タンパク質の突然変異体/フラグメントはまた、Mariyama,M.ら,(1992,J.Biol.Chem.267:1253−8)および後述する実施例33に記載するとおり、シュードモナス(Pseudomonas)のエラスターゼ消化により生成することもできる。この方法を用いて12kDaおよび8kDaのアレステン突然変異体および10kDaのカンスタチン突然変異体を作成し、これら3つすべては元の完全長タンパク質よりも高い水準の抗血管形成活性を有していた。
アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンの「類似体(analog)」とは、全体のアレステン、カンスタチンまたはツムスタチン分子またはそのフラグメントまたは対立遺伝子変異体と実質的に同じであり、そして、同じかまたはより優れた生物学的活性を有する非天然の分子を意味する。このような類似体は、生物学的に活性なアレステン、カンスタチンまたはツムスタチン、並びにそのフラグメント、突然変異体、相同体および対立遺伝子変異体の誘導体(例えば上記の化学的誘導体)を包含するものとし、そのような誘導体は未修飾のアレステン、カンスタチンまたはツムスタチンのポリペプチド、フラグメント、突然変異体、相同体または対立遺伝子変異体と定性的に同様のアゴニストまたは拮抗剤の作用を示す。
アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンの「対立遺伝子(allele)」とは、参照アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンポリペプチドのポリペプチド配列と比較して天然の配列変異を含むポリペプチド配列を意味する。アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの「対立遺伝子」とは、参照アレステン、カンスタチンおよびツムスタチンポリペプチドをコードする参照ポリヌクレオチド配列と比較して配列変異を含むポリヌクレオチドを意味し、ここで、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの対立遺伝子はアレステン、カンスタチンまたはツムスタチンのポリペプチドの対立遺伝子型をコードしている。
所定のポリペプチドは、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンのフラグメント、突然変異体、類似体または対立遺伝子変異体のいずれかであることができ、あるいは、それはこれらの2以上のものであってもよく、例えば、ポリペプチドは、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンポリペプチドの類似体および突然変異体の双方であってよい。例えばアレステン、カンスタチンまたはツムスタチン分子の短小化された型(例えばアレステン、カンスタチンまたはツムスタチンのフラグメント)を実験室で作製してよい。次にそのフラグメントを当該分野で知られた手段により突然変異させる場合には、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンのフラグメントおよび突然変異体の双方である分子が作製される。別の例においては、突然変異体は、ある哺乳類個体におけるアレステン、カンスタチンまたはツムスタチンの対立遺伝子型として存在することが後になって分かるものとして、作製されてよい。従って、このような突然変異体のアレステン、カンスタチンまたはツムスタチン分子は、突然変異体および対立遺伝子変異体の双方となる。フラグメント、突然変異体、対立遺伝子変異体および類似体のこのような組み合わせは、本発明に包含されるものとする。
例えば、後述する実施例23に記載する大腸菌発現クローニング法により作成されたツムスタチンは単量体である。大腸菌発現クローニング法は、発現されたタンパク質に天然のタンパク質には存在しないポリリンカー配列およびヒスチジンタグを付加するため、それはまた、融合タンパク質またはキメラタンパク質でもある。実施例23にも記載するツムスタチンフラグメント「ツムスタチンN−53」は、完全長ツムスタチンタンパク質のフラグメントおよび欠失突然変異体であり、同じ大腸菌発現クローニング法で作成される場合には、それに付加された別の配列も有し、従って、完全長ツムスタチンタンパク質の融合突然変異フラグメントまたはキメラ突然変異フラグメントである。ツムスタチンN−53のサブユニットが一緒になって、例えば2量体、3量体等となる場合には、ツムスタチンタンパク質の多量体の融合突然変異フラグメントまたはキメラ突然変異フラグメントが生成する。
本発明には、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンと実質的に同じアミノ酸配列を有するタンパク質、またはアレステン、カンスタチンまたはツムスタチンをコードするポリヌクレオチドと実質的に同じ核酸配列を有するポリヌクレオチドが包含される。「実質的に同じ配列(substantially the same sequence)」とは、参照配列と少なくとも約70%の配列同一性を示す核酸またはポリペプチドを意味し、例えば参照配列と典型的には少なくとも約80%の配列同一性、好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも約97%の配列同一性を有する別の核酸またはポリペプチドである。配列について比較した長さは、一般的には少なくとも36ヌクレオチド塩基または12アミノ酸、より好ましくは少なくとも75ヌクレオチド塩基または少なくとも25アミノ酸、更により好ましくは150ヌクレオチド塩基または50アミノ酸、そして、最も好ましくは243〜264ヌクレオチド塩基または81〜88アミノ酸である。「ポリペプチド(polypeptide)」とは本明細書においては、アミノ酸の分子鎖を指し、特定の長さの生成物を指すものではない。したがって、ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質はポリペプチドの定義に包含される。この用語はまた、発現後の修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化等に付されているポリペプチドも包含するものとする。
「配列の同一性(sequence identity)」とは本明細書においては、2つの重合体分子、例えば2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチドの間のサブユニット配列の類似性を指す。2つの分子の両方におけるあるサブユニットの位置が同じ単量体サブユニットで占められている場合、例えば、2つのペプチドの各々におけるある位置がセリンにより占められている場合、それらはその位置において同一である。2つの配列の間の同一性は、一致するまたは同一な位置の数の直接関数であり、例えば、2つのペプチドまたは化合物の配列の半分(例えば長さ10サブユニットの重合体における5つの位置)が同一である場合、2つの配列は50%同一であり;位置の90%、例えば10のうち9が一致する場合、2つの配列は90%の配列同一性を共有している。例えば、アミノ酸配列R10およびR10は6つの位置のうち3つの位置が共通であり、従って50%の配列同一性を有するが、一方、配列R10およびR10は5つの位置のうち3つの位置が共通であり、従って60%の配列同一性を有する。2つの配列の間の同一性は、一致するまたは同一な位置の数の直接関数である。したがって、参照配列の一部が特定のペプチドにおいて欠失している場合、その欠失した部分は配列の同一性を計算する目的のためには数に入れられず、例えば、R10およびR10は6つの位置のうち5つの位置を共有しており、従って83.3%の配列同一性を有する。
同一性は、配列分析ソフトウエア、例えばBLASTNまたはBLASTP(米国政府(“.gov”)の米国国立衛生研究所(“.nih”)の米国国立生命工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)(“.ncbi”)に関するワールドワイドウェブサイト(“www”)において“/BLAST/”ディレクトリ内で入手可能)を用いて測定される場合が多い。BLASTN(ヌクレオチド配列について)により2つの配列を比較する(例えば2つの配列を相互に「ブラスティング(“Blast”−ing)」する)ためのデフォルトパラメーターは、一致に対するリワード=1、ミスマッチに対するペナルティー=−2、オープンギャップ=5、エクステンションギャップ=2である。タンパク質配列についてBLASTPを使用する場合は、デフォルトパラメーターは、一致に対するリワード=0、ミスマッチに対するペナルティー=0、オープンギャップ=11、エクステンションギャップ=1である。
2つの配列が「配列相同性(sequence homology)」を共有する場合、これは、その2つの配列が保存的な置換によってのみ相互に異なっており、そして相互の「保存された変異体(conserved variants)」であることを意味する。ポリペプチド配列の場合、このような保存的置換は、配列内の所定の位置における1つのアミノ酸の、同じクラスの別のアミノ酸(例えば疎水性、電荷、pKまたは他のコンフォメーションまたは化学的性質の特性を共有するアミノ酸、例えばロイシンの代わりにバリン、リジンの代わりにアルギニン)との置換からなるか、または、ポリペプチドの生物学的活性が破壊されない程度までポリペプチドのコンフォメーションまたは折りたたみ状態を改変しない配列の位置に存在する、1以上の非保存的なアミノ酸置換、欠失または挿入によるものである。「保存的な置換(conservative substitutions)」の例は、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンのような非極性(疎水性)残基の1つのもう1つとの置換;アルギニンとリジンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間、トレオニンとセリンとの間のような極性(親水性)残基の1つのもう1つとの置換;リジン、アルギニンまたはヒスチジンのような塩基性残基の1つのもう1つとの置換;またはアスパラギン酸またはグルタミン酸のような酸性残基の1つのもう1つとの置換;または非誘導残基の代替としての化学的に誘導された残基の使用が包含され;ただしこの場合、ポリペプチドは必要な生物学的活性を示す。配列相同性を共有する2つの配列は「配列相同体(sequence homologs)」と称してよい。
本発明は、突然変異がタンパク質またはペプチドの活性を実質的に変化させない、即ち、突然変異が効果的に「サイレントな(silent)」突然変異であるような、本明細書に記載するタンパク質およびペプチドの突然変異体を意図している。このような突然変異体の1つであるTum−5−125−C−Aを本明細書に記載するが、これにおいては、(完全長ツムスタチン分子のうちの)125番目の残基におけるシステインがシステインからアラニンに突然変異している。この突然変異は、その残基においてジスルフィド結合が形成されるのを防止しているが、なおTum−5−125−C−Aはその親分子のツムスタチン−45−132の完全な活性を保持している。
ポリペプチドに関する相同性は、典型的には、配列分析ソフトウエアを用いて測定される(例えばGenetics Computer Group,University of Wisconsin Biotechnology Center,1710 University Avenue,Madison,WI 53705の配列分析ソフトウエアパッケージ)。タンパク質分析ソフトウエアは、種々の置換、欠失および他の修飾に相同性の程度を対応させることにより、同様の配列を一致させる。保存的な置換は典型的には、以下のグループ内、即ち、グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシンの置換を含む。
本発明は更に、アレステン、カンスタチンおよびツムスタチンの化学的誘導体を包含する。「化学的誘導体(chemical derivative)」とは、官能基の側鎖基の反応により化学的に誘導された1以上の残基を有する対象ポリペプチドを指す。このような誘導残基は例えば、遊離のアミノ基が誘導されて、アミン塩酸塩、p−トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはホルミル基を形成するような分子を包含する。遊離のカルボキシル基は誘導されて、塩、メチルおよびエチルエステルまたは他の種のエステルまたはヒドラジドを形成してよい。遊離のヒドロキシル基は誘導されて、O−アシルまたはO−アルキル誘導体を形成してよい。ヒスチジンのイミダゾール窒素は、誘導されてN−イムベンジルヒスチジン(N−imbenzylhistidine)を形成してよい。また、化学的誘導体として、20種の標準アミノ酸の1以上の天然アミノ酸誘導体を含むペプチドも包含される。例えば、4−ヒドロキシプロリンがプロリンと置換してよく;5−ヒドロキシリジンがリジンと置換してよく;3−メチルヒスチジンがヒスチジンと置換してよく;ホモセリンがセリンと置換してよく;そして、オルニチンがリジンと置換してよい。
本発明はまた、抗血管形成性タンパク質、そのフラグメント、突然変異体、相同体、類似体、および対立遺伝子変異体、例えばツムスタチンおよびカンスタチン、またはT1およびT4等を含む、融合タンパク質およびキメラタンパク質を包含する。融合タンパク質またはキメラタンパク質は、組換え発現およびクローニング工程の結果として製造することができ、例えば完全および部分的リンカー配列に相当する別のアミノ酸またはアミノ酸配列を含むタンパク質を製造してよく、例えば本発明のアレステンは、大腸菌中で製造する場合(後述する実施例2参照)、ヒスチジンタグを含む、タンパク質に付加された別のベクター配列を含む。本明細書においては、「融合タンパク質またはキメラタンパク質(fusion or chimeric protein)」という用語は、この型から元のタンパク質の配列への変更も含むものとする。同様の変更をカンスタチンおよびツムスタチンタンパク質に対して行った(それぞれ実施例14および23)。融合タンパク質またはキメラタンパク質は、単一のタンパク質の多量体、例えば抗血管形成性タンパク質の反復からなることができ、または、融合タンパク質またはキメラタンパク質は数種のタンパク質、例えば数種の抗血管形成性タンパク質から組み立てることができる。融合タンパク質またはキメラタンパク質は、2以上の既知の抗血管形成性タンパク質の組み合わせ(例えばアンジオスタチンとエンドスタチン、またはアンジオスタチンとエンドスタチンの生物学的に活性なフラグメント)、またはターゲティング剤と組み合わせた抗血管形成性タンパク質(例えばエンドスタチンと表皮増殖因子(EGF)またはRGDペプチド)、または免疫グロブリン分子と組み合わせた抗血管形成性タンパク質(例えばエンドスタチンとIgG、特にFc部分を除去したもの)を含むことができる。融合タンパク質およびキメラタンパク質はまた、抗血管形成性タンパク質、そのフラグメント、突然変異体、相同体、類似体および対立遺伝子変異体、および他の抗血管形成性タンパク質、例えばエンドスタチンまたはアンジオスタチンを含むことができる。他の抗血管形成性タンパク質は、レスチンおよびアポミグレン(apomigren)(WO99/29856、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)、およびエンドスタチンのフラグメント(WO99/29855、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)を包含することができる。「融合タンパク質(fusion protein)」または「キメラタンパク質(chimeric protein)」という用語は本明細書においては、例えば化学療法剤を送達するための別の成分を含むことができ、ここで、化学療法剤をコードするポリヌクレオチドは、抗血管形成性タンパク質をコードするポリヌクレオチドに連結させる。融合タンパク質またはキメラタンパク質はまた、抗血管形成性タンパク質の多量体、例えば2量体または3量体を含むことができる。このような融合タンパク質またはキメラタンパク質は、翻訳後修飾を介して互いに連結(例えば化学的に連結)するか、または全体の融合タンパク質を組換えにより製造してよい。
アレステン、カンスタチン、ツムスタチン、そのフラグメント、突然変異体、相同体、類似体および対立遺伝子変異体を含む多量体タンパク質もまた、本発明に包含されるものとする。「多量体(multimer)」とは、サブユニットタンパク質の2以上のコピーを含むタンパク質を意味する。サブユニットタンパク質は本発明のタンパク質の1つであってよく、例えばアレステンが2回以上反復されたもの、またはフラグメント、突然変異体、相同体、類似体または対立遺伝子変異体、例えばツムスタチン突然変異体またはフラグメント、例えばツムスタチン333が2回以上反復されたものであってよい。このような多量体はまた、融合タンパク質またはキメラタンパク質であってもよく、例えば反復されたツムスタチン突然変異体は、ポリリンカー配列および/または1以上の抗血管形成性ペプチドと組み合わせられてよく、これは単一のコピーとして存在してよく、または直列型に反復してもよく、例えばタンパク質は全体のタンパク質内に2以上の多量体を含んでよい。
本発明はまた、アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンをコードする1以上の単離されたポリヌクレオチド、並びにこのようなポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞、並びにアレステン、カンスタチンおよびツムスタチンおよびそのフラグメント、突然変異体、相同体、類似体および対立遺伝子変異体の製造方法を包含する。「ベクター(vector)」という用語は本明細書においては、核酸断片を挿入またはクローニングする担体を意味し、その担体は宿主細胞に核酸断片を転移させるように機能する。このようなベクターはまた、転移された核酸断片の複製および/または発現をもたらしうる。ベクターの例には、例えばプラスミド、バクテリオファージまたは哺乳類、植物または昆虫ウイルスに由来する核酸分子、または非ウイルス性のベクター、例えばリガンド−核酸コンジュゲート、リポソームまたは脂質−核酸複合体を包含する。転移された核酸分子は発現制御配列に作動可能に連結され、転移された核酸の発現が可能な発現ベクターを形成することが望ましい。このような核酸の転移は一般的に「形質転換(transformation)」と称され、また、挿入に使用する方法とは無関係に、宿主細胞への外因性ポリヌクレオチドの挿入を指す。例えば、直接の取り込み、形質導入、または、f交配が包含される。外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクター、例えば、プラスミドとして維持してよく、あるいは、宿主ゲノム内に組み込んでも良い。「作動可能に連結した(operably linked)」とは、記載した成分がその意図する態様で機能できるような関係にある状況を指し、例えば、コード配列に「作動可能に連結した」対照配列は、コード配列の発現が対照配列と適合した条件下で行われるような態様で結合される。「コード配列(coding sequence)」とは、適切な調節配列の制御下にある(例えば作動可能に連結した)場合にmRNAに転写され、ポリペプチドに翻訳されるポリヌクレオチド配列である。コード配列の境界は、5’末端の翻訳開始コドンおよび3’末端の翻訳終止コドンにより決定される。このような境界は天然に存在し、または当該分野で知られた方法によりポリヌクレオチド配列に導入するか付加することができる。コード配列には、例えば、mRNA、cDNAおよび組換えポリヌクレオチド配列が包含されるが、これらに限定されない。
クローニングされたポリヌクレオチドがクローニングされるベクターは、それが原核生物において機能することから選択してよいか、または、それが真核生物において機能することから選択される。アレステン、カンスタチンおよびツムスタチンタンパク質をコードするポリヌクレオチドのクローニングおよびポリヌクレオチドからのこれらのタンパク質の発現の双方を可能にするベクターの2つの例は、pET22bおよびpET28(a)ベクター(Novagen,Madison,Wisconsin,USA)および修飾pPICZαAベクター(InVitrogen,San Diego,California,USA)であり、これらはそれぞれ細菌および酵母のタンパク質の発現を可能にする。例えば、WO99/29878およびU.S.S.N.09/589,483が参照でき、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
一旦ポリヌクレオチドを適当なベクターにクローニングした後、これを適切な宿主細胞内に形質転換することができる。「宿主細胞(host cell)」とは、ベクターを用いることにより転移された核酸のレシピエントとして使用された、または使用できる細胞を意味する。宿主細胞は原核生物または真核生物、哺乳類、植物または昆虫のものであることができ、そして単細胞として、または集合物として、例えば培養物として、または組織培養中、または組織または臓器中に存在することができる。宿主細胞はまた、多細胞生物、例えば哺乳類の正常または疾患を有する組織に由来することができる。宿主細胞は、本明細書においては、核酸で形質転換された元の細胞のみならず、核酸をなお含んでいる細胞の子孫も包含する。
1つの実施形態において、抗血管形成性タンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチドは更に、ペプチドをコードするポリヌクレオチドリンカーを含む。このようなリンカーは当業者にとって既知であり、そして、例えばリンカーは少なくとも1つの別のアミノ酸をコードする少なくとも1つの別のコドンを含むことができる。典型的には、リンカーは1〜約20個または30個のアミノ酸を含む。ポリヌクレオチドリンカーは、抗血管形成性タンパク質をコードするポリヌクレオチドと同様に翻訳され、抗血管形成性タンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端において少なくとも1つの別のアミノ酸残基を有する抗血管形成性タンパク質の発現をもたらす。重要な点は、この別のアミノ酸は抗血管形成性タンパク質の活性を損なわないことである。
ベクターへの選択されたポリヌクレオチドの挿入の後、ベクターを適切な原核生物株に形質転換し、そして、株を生物学的に活性な抗血管形成性タンパク質の産生に適する培養条件下で培養(例えば維持)することにより、生物学的に活性な抗血管形成性タンパク質またはその突然変異体、誘導体、フラグメントまたは誘導タンパク質を生成する。1つの実施形態においては、本発明は、後に細菌内に形質転換されるベクターpET22b、pET17bまたはpET28aへの抗血管形成性タンパク質をコードするポリヌクレオチドのクローニングを含む。次に細菌宿主株が抗血管形成性タンパク質を発現する。典型的には、抗血管形成性タンパク質は培養液のリットル当たり約10〜20ミリグラム以上の量で産生される。
本発明の別の実施形態においては、真核生物のベクターは修飾された酵母ベクターを包含する。1つの方法は、プラスミドがマルチクローニングサイトを含むpPICzαプラスミドを使用することである。マルチクローニングサイトはHis.Tagモチーフをマルチクローニングサイトに挿入している。更に、ベクターはNdeI部位または他の適当な制限部位を付加するように修飾されることができる。このような部位は、当業者によく知られているものである。この実施形態により生成された抗血管形成性タンパク質は、1以上のヒスチジン、典型的には約5〜20のヒスチジンを含むヒスチジンタグモチーフ(His.tag)を含む。
アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンを生成する1つの方法は、例えば、配列番号1、配列番号5または配列番号9のポリヌクレオチドをそれぞれ増幅し、これを発現ベクター、例えばpET22b、pET28(a)、pPICZαAまたは他の何らかの発現ベクター内にクローニングし、ポリヌクレオチドを含むベクターを、ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを発現することができる宿主細胞内に形質転換し、形質転換された宿主細胞をタンパク質の発現に適する培養条件下で培養し、そして次に、培養物からタンパク質を抽出および精製することである。一般的に抗血管形成性タンパク質、特にアレステン、カンスタチンおよびツムスタチンを生成する方法の例は、後述する実施例に示すとおりである。アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンタンパク質はまた、トランスジェニックな動物の産物として、例えば、トランスジェニックなウシ、ヤギ、ヒツジまたはブタの乳汁の成分として、または、例えばトウモロコシ内の澱粉の分子と組み合わせられるか連結されたトランスジェニック植物の産物として発現させても良い。これらの方法はまた、配列番号1、配列番号5または配列番号9のサブ配列と共に使用することができ、これにより配列番号2、配列番号6または配列番号10のタンパク質の部分が生成される。これらの方法は、例えば、フラグメントであるツムスタチン−333、ツムスタチン−334、ツムスタチン−N53、Tum−2、Tum−3、Tum−4、ツムスタチン−45−132、およびペプチドT1、T2、T3、T4、T5およびT6の生成のためにも使用した。
アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンはまた、従来の知られた化学合成により産生しても良い。合成手段により本発明のタンパク質を構築するための方法は当該分野で知られている。合成により構築されたアレステン、カンスタチンまたはツムスタチンタンパク質配列は、例えば組換えにより産生されたアレステン、カンスタチンまたはツムスタチンと、一次、二次または三次構造および/またはコンフォメーションの特性を共有しているため、それらに共通の生物学的特性、例えば生物学的活性を有しうる。したがって、合成により構築されたアレステン、カンスタチンまたはツムスタチンタンパク質配列は、例えば組換えにより産生されたアレステン、カンスタチンまたはツムスタチンタンパク質の、生物学的に活性な、または免疫学的な代替品として、治療化合物のスクリーニングにおいて、および抗体の開発の免疫学的工程において、使用してよい。
アレステン、カンスタチンおよびツムスタチンタンパク質は、標準的な試験法で測定されるように、そして後述する実施例において示されるとおり、血管形成の抑制において有用である。アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンは他の細胞型、例えば非内皮細胞の増殖を抑制しない。
アレステン、カンスタチンまたはツムスタチンをコードするポリヌクレオチドは、単離されたDNAまたはcDNAライブラリからクローニングすることができる。本明細書において「単離された(isolated)」とする核酸およびポリペプチドは、更にプロセシングされていてもよい、それらが得られた生物学的原料(例えば核酸の混合物中に、または細胞中に存在する状態)の物質を実質的に含まない(即ち、それらから分離されている)核酸またはポリペプチドである。「単離された」核酸またはポリペプチドには,本明細書に記載した方法、同様の方法または他の適当な方法により得られた核酸またはポリペプチド、例えば本質的に純粋な核酸またはポリペプチド、化学合成により、化学的および生物学的方法の組み合わせにより製造された核酸またはポリペプチド、および組換えにより製造された核酸またはポリペプチドであって単離されたものが包含される。従って単離されたポリペプチドとは、それが通常会合している他のタンパク質、炭水化物,脂質および他の細胞成分を比較的含まないものを意味する。単離された核酸は、核酸がそれに由来する生物の天然に存在するゲノム中で隣接する核酸の両方と隣接する(即ち共有結合する)ことはない。従って、この用語には、例えば、ベクター(例えば自律的に複製するウイルスまたはプラスミド)に取り込まれた核酸、または化学的手段または制限エンドヌクレアーゼ処理により生成した核酸フラグメントのような他の核酸とは無関係な別個の分子として存在する核酸が包含される。
本発明のポリヌクレオチドおよびタンパク質はまた、他の抗血管形成性タンパク質を単離するためのプローブを設計するためにも使用できる。例外的な方法はJacobsらによる米国特許第5,837,490号において提供されており、その内容は参照によりすべて本明細書に組み込まれる。オリゴヌクレオチドプローブの設計は、好ましくは以下のパラメーター、即ち(a)それは、曖昧な塩基がある場合には、その数が最小(「N」)となる配列の領域となるように設計されなければならず、そして(b)約80℃のTを有するように設計されなければならない(各AまたはTにつき2℃、そして各GまたはCにつき4℃を想定)、というパラメーターに従わなければならない。
オリゴヌクレオチドは、好ましくはオリゴヌクレオチドを標識するために一般的に用いられる手法を用いて、g−32P−ATP(比放射能6000Ci/mmol)およびT4ポリヌクレオチドキナーゼで標識しなければならない。他の標識方法もまた使用することができる。未取込の標識は、好ましくはゲル濾過クロマトグラフィーまたは他の確立された方法により除去しなければならない。プローブに取り込まれた放射能の量はシンチレーションカウンターにおける計測により定量しなければならない。好ましくは、得られるプローブの比放射能は約4×10dpm/pmolでなければならない。完全長クローンのプールを含む細菌培養物は、好ましくは解凍し、そして保存溶液100μlを用いてアンピシリン100μg/mlを含有する滅菌L−ブロス25mlの入った滅菌培養フラスコに接種した。培養は好ましくは37℃において飽和状態となるまで増殖させ、そして飽和した培養物は好ましくは新しいL−ブロスで希釈しなければならない。これらの希釈物を小分けにしたものを好ましくはプレーティングし、37℃で一晩増殖させた場合に150mmのペトリ皿中にアンピシリン100μg/mlおよび寒天1.5%を含有するL−ブロスの入った固体細菌用培地上で約5000個の個別の十分分離したコロニーが形成されるような希釈度と容量を求めなければならない。個別の十分分離したコロニーを得るための他の知られた方法もまた使用できる。
次に、標準的なコロニーハイブリダイゼーション操作法を用いてニトロセルロースフィルターにコロニーを移し、溶解させ、変性させ、焼成する。高度にストリンジェントな条件は、例えば1×SSCを65℃で、または1×SSCおよび50%ホルムアミドを42℃で使用する程度に少なくともストリンジェントなものである。中等度のストリンジェント条件は4×SSCを65℃で、または4×SSCおよび50%ホルムアミドを42℃で使用する程度に少なくともストリンジェントなものである。低ストリンジェント条件は4×SSCを50℃で、または6×SSCおよび50%ホルムアミドを40℃で使用する程度に少なくともストリンジェントなものである。
次にフィルターを好ましくは、0.5%SDS、100μg/ml酵母RNAおよび10mM EDTAを含有する6×SSC(20×保存溶液は175.3gNaCl/リットル、88.2gクエン酸ナトリウム/リットル、NaOHでpH7.0に調節)中で穏やかに攪拌しながら1時間65℃でインキュベートする(150mmフィルター当たり約10ml)。好ましくは、次にプローブを1×10dpm/ml以上の濃度でハイブリダイゼーション混合物に添加する。次にフィルターを一晩穏やかに攪拌しながら65℃でインキュベートする。次にフィルターを好ましくは攪拌することなく室温で2×SSC/0.5%SDS 500ml、好ましくはその後、15分間穏やかに振とうしながら室温で2×SSC/0.1%SDS 500ml中で洗浄する。30分〜1時間65℃において0.1×SSC/0.5%SDSを用いた3回目の洗浄は任意である。次にフィルターを好ましくは乾燥し、十分な時間オートラジオグラフィーに付し、X線フィルム上にポジ像を可視化する。他の知られたハイブリダイゼーション法もまた使用できる。次に陽性コロニーを選び、培地中に増殖させ、プラスミドDNAを標準的な操作法を用いて単離する。次にクローンを制限分析、ハイブリダイゼーション分析またはDNA配列決定により評価することができる。
ハイブリダイゼーションのストリンジェント条件は、第1核酸配列の第2核酸配列へのハイブリダイゼーションを可能とする温度と緩衝液組成の条件を指し、その際、その条件が相互にハイブリダイズする配列の間の同一性の程度を決定する。従って、「高ストリンジェント条件(high stringency conditions)」とは、相互に極めて類似の核酸配列のみがハイブリダイズする条件である。配列は、それらが中ストリンジェント条件下でハイブリダイズする場合は、相互の類似性はより低い。低ストリンジェント条件下で2つの配列がハイブリダイズするためには、さらに低い類似性が必要である。ハイブリダイゼーションが起こらないストリンジェント水準から最初にハイブリダイゼーションが観察される水準にまでハイブリダイゼーション条件を変化させることにより、所定の配列がそれに最も類似である配列とハイブリダイズする条件を決定することができる。特定のハイブリダイゼーションのストリンジェントを決定する厳密な条件は、イオン強度、温度およびホルムアミドのような脱安定化剤の濃度のみならず、核酸配列の長さ、その塩基組成、2配列間のミスマッチ塩基対のパーセント、および他の非同一配列内の配列のサブセット(例えば反復配列の小範囲)の発生頻度のような要因も含む。洗浄は、相互にハイブリダイズする配列の間の類似性の最小水準を決定するように条件が設定される工程である。一般的に、相同ハイブリダイゼーションのみが起こる最低温度から、2配列間の1%ミスマッチは、所定の選択されたSSC濃度に対して融点(T)の1℃低下をもたらす。一般的に、SSCの濃度を倍にするとTが約17℃上昇する。このような指針を用いながら、意図するミスマッチの水準に応じて、洗浄温度を実験的に決定することができる。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件はCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel,F.M.ら,eds.,John Wiley & Sons,Inc.,1995,補遺有り)の2.10.1〜2.10.16および6.3.1〜6.3.6ページに説明されている。
高ストリンジェント条件は、(1)1×SSC(10×SSC=3M NaCl、0.3M Na−クエン酸塩×2HO(88g/リットル)、1M HClを使用してpHを 7.0に調整)、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、0.1〜2mg/ml変性サケ精子DNA、65℃、(2)1×SSC、50%ホルムアミド、1%SDS、0.1〜2mg/ml変性サケ精子DNA、42℃、(3)1%ウシ血清アルブミン(画分V)、1mM Na×EDTA、0.5M NaHPO(pH7.2)(1M NaHPO=134g NaHPO×7HO、4ml 85%HPO、リットル当たり)、7%SDS、0.1〜2mg/ml変性サケ精子DNA、65℃、(4)50%ホルムアミド、5×SSC、0.02M Tris−HCl(pH7.6)、1×Denhardt’s溶液(100×=10g Ficoll 400、10gポリビニルピロリドン、10gウシ血清アルブミン(画分V)、水で500mlに調製)、10%硫酸デキストラン、1%SDS、0.1〜2mg/ml変性サケ精子DNA、42℃、(5)5×SSC、5×Denhardt’s溶液、1%SDS、100μg/ml変性サケ精子DNA、65℃、または(6)5×SSC、5×Denhardt’s溶液、50%ホルムアミド、1%SDS、100μg/ml変性サケ精子DNA、42℃、のいずれかにおけるハイブリダイゼーションを採用することができ、高ストリンジェント洗浄は、(1)0.3〜0.1×SSC、0.1%SDS、65℃または(2)1mM NaEDTA、40mM NaHPO(pH7.2)、1%SDS、65℃とする。上記の条件は50塩基対以上の長さのDNA−DNAハイブリッドに対して使用することを意図している。ハイブリッドが18塩基対よりも短いと思われる場合は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の温度はハイブリッドについての計算されたT値よりも5〜10℃低温とし、ここでT(℃)=(2×AおよびT塩基の数)+(4×GおよびC塩基の数)である。約18〜約49塩基対と考えられるハイブリッドの場合は、T(℃)=(81.5℃+16.6(log10M)+0.41(%G+C)−0.61(%ホルムアミド)−500/L)となり、ここで「M」は1価のカチオン(例えばNa)のモル数であり、そして、「L」は塩基対で表したハイブリッドの長さである。
中ストリンジェント条件は、(1)4×SSC(10×SSC=3M NaCl、0.3M Na−クエン酸塩×2HO(88g/リットル)、1M HClを使用してpHを7.0に調整)、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、0.1〜2mg/ml変性サケ精子DNA、65℃、(2)4×SSC、50%ホルムアミド、1%SDS、0.1〜2mg/ml変性サケ精子DNA、42℃、(3)1%ウシ血清アルブミン(画分V)、1mM Na×EDTA、0.5M NaHPO(pH7.2)(1M NaHPO=134g NaHPO×7HO、4ml 85%HPO、リットル当たり)、7%SDS、0.1〜2mg/ml変性サケ精子DNA、65℃、(4)50%ホルムアミド、5×SSC、0.02M Tris−HCl(pH7.6)、1×Denhardt’s溶液(100×=10g Ficoll 400、10gポリビニルピロリドン、10gウシ血清アルブミン(画分V),水で500ml)、10%硫酸デキストラン、1%SDS、0.1〜2mg/ml変性サケ精子DNA、42℃、(5)5×SSC、5×Denhardt’s溶液、1%SDS、100μg/ml変性サケ精子DNA、65℃、または(6)5×SSC、5×Denhardt’s溶液、50%ホルムアミド、1%SDS、100μg/ml変性サケ精子DNA、42℃、のいずれかにおけるハイブリダイゼーションを採用することができ、中ストリンジェント洗浄は、1×SSC、0.1%SDS、65℃とする。上記の条件は50塩基対以上の長さのDNA−DNAハイブリッドに対して使用することを意図している。ハイブリッドが18塩基対よりも短いと思われる場合は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の温度はハイブリッドの計算されたTm値よりも5〜10℃低温とし、ここでT(℃)=(2×AおよびT塩基の数)+(4×GおよびC塩基の数)である。約18〜約49塩基対と考えられるハイブリッドの場合は、T(℃)=(81.5℃+16.6(log10M)+0.41(%G+C)−0.61(%ホルムアミド)−500/L)となり、ここで「M」は1価のカチオン(例えばNa)のモル数であり、そして、「L」は塩基対で表したハイブリッドの長さである。
低ストリンジェント条件は(1)4×SSC(10×SSC=3M NaCl、0.3M Na−クエン酸塩×2HO(88g/リットル)、1M HClを使用してpHを7.0に調整)、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、0.1〜2mg/ml変性サケ精子DNA、50℃、(2)6×SSC、50%ホルムアミド、1%SDS、0.1〜2mg/ml変性サケ精子DNA、40℃、(3)1%ウシ血清アルブミン(画分V)、1mM Na×EDTA、0.5M NaHPO(pH7.2)(1M NaHPO=134g NaHPO×7HO、4ml 85%HPO、リットル当たり)、7%SDS、0.1〜2mg/ml変性サケ精子DNA、50℃、(4)50%ホルムアミド、5×SSC、0.02M Tris−HCl(pH7.6)、1×Denhardt’s溶液(100×=10g Ficoll 400、10gポリビニルピロリドン、10gウシ血清アルブミン(画分V),水で500ml)、10%硫酸デキストラン、1%SDS、0.1〜2mg/ml変性サケ精子DNA、40℃、(5)5×SSC、5×Denhardt’s溶液、1%SDS、100μg/ml変性サケ精子DNA、50℃、または(6)5×SSC、5×Denhardt’s溶液、50%ホルムアミド、1%SDS、100μg/ml変性サケ精子DNA、40℃、のいずれかにおけるハイブリダイゼーションを採用することができ、低ストリンジェント洗浄は、2×SSC、0.1%SDS、50℃、または(2)0.5%ウシ血清アルブミン(画分V)、1mM NaEDTA、40mM NaHPO(pH7.2)、5%SDSとする。上記の条件は50塩基対以上の長さのDNA−DNAハイブリッドに対して使用することを意図している。ハイブリッドが18塩基対よりも短いと思われる場合は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の温度はハイブリッドの計算されたTm値よりも5〜10℃低温とし、ここでT(℃)=(2×AおよびT塩基の数)+(4×GおよびC塩基の数)である。約18〜約49塩基対と考えられるハイブリッドの場合は、T(℃)=(81.5℃+16.6(log10M)+0.41(%G+C)−0.61(%ホルムアミド)−500/L)となり、ここで「M」は1価のカチオン(例えばNa)のモル数であり、そして、「L」は塩基対で表したハイブリッドの長さである。
本発明は、アレステン、カンスタチン、ツムスタチンまたはその生物学的に活性なフラグメント、類似体、相同体、誘導体または突然変異体を用いた哺乳類組織における血管形成を抑制する方法を包含する。特に本発明は、1以上の抗血管形成性タンパク質、または1以上の生物学的に活性なそのフラグメント、または抗血管形成活性を有するフラグメントまたはアゴニストおよび拮抗剤の複合物の有効量を用いて血管形成媒介疾患を治療する方法を含む。抗血管形成性タンパク質の有効量とは、疾患または症状をもたらす血管形成を抑制し、これにより完全にまたは部分的に、疾患または症状を緩解するのに十分な量である。血管形成媒介疾患の緩解は、疾患の症状の緩解、例えば腫瘍の大きさの縮小、または停止した腫瘍の増殖を観察することにより判断できる。本明細書においては、「有効量(effective amount)」という用語は、意味のある患者の利益、即ち該当する医学的状態の治療、治癒、予防または緩解、またはそのような症状の治療、治癒、予防または緩解の速度の増大を示すのに十分な組成物または方法の各活性成分の総量を意味する。複合剤に適用する場合は、この用語は、複合投与が逐次的であるか同時であるかに関わらず、治療効果をもたらす活性成分の複合量を指す。血管形成媒介疾患には、例えば、癌、固形腫瘍、血液由来の腫瘍(例えば白血病)、腫瘍転移、良性腫瘍(例えば血管腫、聴神経腫瘍、神経線維腫、臓器線維症、トラコーマおよび化膿性肉芽腫)、慢性関節リウマチ、乾癬、眼部血管形成性疾患(例えば糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性、角膜移植拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖、ルベオーシス)、Osler−Webber症候群、心筋血管形成、プラーク新血管形成、毛細管拡張症、血友病性関節症、血管線維種および創傷顆粒化が包含されるが、これらに限定されない。抗血管形成性タンパク質は内皮細胞の過剰または異常な刺激の疾患の治療に有用である。これらの疾患には、腸管癒着、クローン病、アテローム性動脈硬化症、硬皮症、線維症および肥厚性瘢痕(即ちケロイド)が包含されるが、これらに限定されない。抗血管形成性タンパク質は胚の着床に必要な血管化を防止することにより避妊薬として使用することができる。抗血管形成性タンパク質は引っ掻き病(Rochele minalia quintosa)および潰瘍(Heliobacter pylori)のような病理学的帰結として血管形成を有する疾患の治療に有用である。抗血管形成性タンパク質はまた、例えば脂肪組織における毛細管の形成を抑制してその拡大を予防することにより、透析移植片血管接触狭窄(dialysis graft vascular access stenosis)および肥満を予防するために使用できる。抗血管形成性タンパク質はまた、局在化した(例えば非転移性の)疾患の治療に使用できる。「癌(cancer)」とは、新生物の増殖、過形成または増殖性の生育または異常な細胞の発達の病的状態を意味し、固形腫瘍、非固形腫瘍およびいずれかの異常な細胞の増殖、例えば白血病で見られるものを包含する。本明細書においては、「癌」とは血管形成依存性の癌および腫瘍、即ち、その増殖(容量および/または質量の拡大)のためにそれらに血液を供給する血管の数量と密度の増大を必要とする腫瘍も意味する。「退縮(regression)」とは、当該分野でよく知られた方法を用いて測定した場合の腫瘍の質量および大きさの低減を指す。
あるいは、血管形成の増大が必要な場合、例えば創傷治癒の場合、または心筋梗塞後の心臓組織においては、抗血管形成性タンパク質に対する抗体または抗血清を用いて、局在化した天然の抗血管形成性のタンパク質と過程をブロックし、これにより組織の萎縮を抑制すべく新血管の形成を増大することができる。
抗血管形成性タンパク質は、それら自体または疾患の治療のための組成物および操作法との組み合わせにおいて使用してよく、例えばアレステンおよびカンスタチンを医薬組成物内において組み合わせることができ、Tum−4およびT7を組成物中で組み合わせることができ、または抗血管形成性タンパク質と組み合わせた手術、放射線療法、化学療法または免疫療法を用いて腫瘍を従来どおり治療してよく、そしてその後、抗血管形成性タンパク質を患者に投与して微小転移の休止期を延長し、残存する原発腫瘍がある場合はそれを安定化させ、増殖を抑制してよい。抗血管形成性タンパク質またはそのフラグメント、抗血清、受容体アゴニストまたは受容体拮抗剤またはそれらの組み合わせはまた、他の抗血管形成性の化合物、または他の抗血管形成性タンパク質のタンパク質、フラグメント、抗血清、受容体アゴニスト、受容体拮抗剤(例えばアンジオスタチン、エンドスタチン)と組み合わせることもできる。更にまた、抗血管形成性タンパク質またはそのフラグメント、抗血清、受容体アゴニスト、受容体拮抗剤またはそれらの組み合わせは、製薬上許容しうる賦形剤、そして、場合により除放性のマトリックス、例えば生体分解性重合体と組み合わせて治療用組成物を形成してよい。本発明の組成物はまた、他の抗血管形成性タンパク質または化学物質、例えばエンドスタチンまたはアンジオスタチンおよびその突然変異体、フラグメントおよび類似体も含有してよい。組成物は更に、タンパク質の活性を増強するか、または治療におけるその活性または用途を補う他の物質を含有してよい。このような付加的な因子および/または物質を組成物に含有させることにより、本発明のタンパク質との相乗作用をもたらしたり、または副作用を最小限にしたりすることができる。更にまた、本発明の組成物の投与は他の治療と同時に行ってよく、例えば化学療法または放射線療法と組み合わせて投与してよい。
本発明は、本発明のタンパク質を含有する組成物に哺乳類(例えばヒト)組織を接触させることによる組織中の血管形成を抑制する方法を包含する。「接触させる(contacting)」とは、局所的適用のみならず、組織中にまたは組織の細胞中に組成物を導入する送達による方法も包含する。
時期を調節した遊離、すなわち除放性のデリバリーシステムもまた、本発明に包含される。このようなシステムは、外科的処置が困難であるか不可能である状況、例えば患者が年齢または疾患の過程そのものにより衰弱している場合、または、危険−利益の分析から治癒より管理が意図される状況において強く望まれる。
除放性マトリックスは、本明細書においては、酵素的または酸/塩基加水分解により、または溶解によって分解されるマトリックス、通常は重合体から製造されるマトリックスである。一旦体内に挿入されると、マトリックスは酵素および体液の作用に付される。除放性マトリックスは望ましくは、生体適合性の材料、例えばリポソーム、ポリラクチド(ポリ乳酸)、ポリグリコリド(グリコール酸の重合体)、ポリラクチド コグリコリド(乳酸とグリコール酸の共重合体)のポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリタンパク質、ヒアルロン酸、コラーゲン、硫酸コンドロイチン、カルボン酸、脂肪酸、リン脂質、多糖類、核酸、ポリアミノ酸、例えばフェニルアラニン、チロシン、イソロイシンのようなアミノ酸、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレンン、ポリビニルピロリドンおよびシリコーンから選択される。好ましい生体分解性のマトリックスは、ポリラクチド、ポリグリコリドまたはポリラクチド コグリコリド(乳酸とグリコール酸の共重合体)のいずれか1つのマトリックスである。
本発明の血管形成調節組成物は、固体、液体またはエアロゾルであってよく、そしていずれかの知られた投与経路で投与してよい。固体の組成物の例は、丸薬、クリーム剤および移植可能な投与単位である。丸薬は経口投与してよく、治療用クリームは局所投与してよい。移植可能な投与単位は局所的に、例えば腫瘍部位に投与してよく、または血管形成調節組成物の全身放出を意図して例えば皮下に移植してもよい。液体組成物の例は皮下、静脈内、動脈内注射用の製剤、並びに局所および眼内投与用の製剤を含む。エアロゾル製剤の例は、肺への投与のための吸入用製剤を包含する。
上記の抗血管形成活性を有するタンパク質およびタンパク質フラグメントは、当業者に知られた製剤方法を用いて、製薬上許容しうる製剤中の単離され、実質的に精製されたタンパク質およびタンパク質フラグメントとして提供することができる。このような製剤は標準的な経路で投与できる。一般的に、複合物は局所、経皮、腹腔内、頭蓋内、脳室内、大脳内、膣内、子宮内、経口、直腸または非経口(例えば静脈内、脊髄内、皮下または筋肉内)の経路で投与してよい。更に、抗血管形成性タンパク質は、化合物の除放性をもたらす生体分解性の重合体内に取り込ませ、重合体を薬剤のデリバリーが望まれる箇所の近傍、例えば腫瘍部位に移植するか、または抗血管形成性タンパク質が緩徐に全身放出されるように移植する。浸透圧ミニポンプもまた、目的部位に、例えば転移増殖箇所に、またはその腫瘍への血管供給箇所内に直接、カニューレを通じて抗血管形成性タンパク質の高濃度の制御デリバリーを行うために使用してよい。生体分解性重合体およびその使用は例えばBremら,(1991,J.Neurosurg.74:441−6)に詳細に説明されている。
本発明のポリペプチドを含有する組成物は、例えば単位用量の注射によるなどして、静脈内に投与することができる。「単位用量(unit dose)」とは、本発明の治療用組成物に関して使用する場合は、対象に対する単一の用量として適する物理的に個別の単位を指し、各単位は液体希釈剤、即ち担体またはベヒクルと組み合わせて所望の治療効果をもたらすために計算された活性物質の所定量を含有する。
本発明の組成物の投与様式には、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および動脈内の注射および注入を包含する。非経口注射用の医薬組成物は、製薬上許容しうる滅菌された水性または非水性の溶液、分散液、懸濁液または乳液、並びに使用直前に希釈再調製して滅菌された注射用の溶液または分散液とするための滅菌粉末を包含する。適当な水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒またはベヒクルには、水、エタノール、ポリオール類(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、カルボキシメチルセルロースおよびその適当な混合物、植物油(例えばオリーブ油)および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルが包含される。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材料の使用により、分散液の場合は必要な粒径の維持により、そして界面活性剤の使用により維持してよい。これらの組成物はまた、保存料、湿潤剤、乳化剤および分散剤のような補助剤を含有してよい。微生物の作用の防止は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等のような種々の抗菌剤および抗カビ剤を含有させることにより確保してよい。糖類、塩化ナトリウム等のような等張化剤を含有させることも望ましい。注射用剤型の遅延吸収は、吸収を遅延させるモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような薬剤の含有により行うことができる。注射用デポ剤型は、ポリラクチド−ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)のような生体分解性重合体中の薬剤のマイクロカプセルマトリックスを形成することにより製造する。重合体に対する薬剤の比および使用する特定の重合体の性質に応じて、薬剤の放出速度を制御できる。デポ注射製剤はまた、身体組織に適合するリポソームまたはミクロエマルジョン中に薬剤を閉じこめることにより調製される。注射用製剤は、例えば細菌保持フィルターを通して濾過することにより、または使用直前に滅菌水または他の滅菌注射用溶媒中に溶解または分散できる滅菌固体組成物の形態で滅菌薬を配合することにより、滅菌してよい。
本発明の治療用組成物は、例えば無機または有機の酸から誘導しうる、その成分の製薬上許容しうる塩を含むことができる。「製薬上許容しうる塩(pharmaceutically acceptable salt)」とは、信頼できる医療上の判断の範囲内において、不必要な毒性、刺激性、アレルギー応答等を伴うことなく、ヒトおよびより下位の動物の組織と接触させて使用するのに適し、そして合理的な利益/危険の比を確保している塩を意味する。製薬上許容しうる塩は当該分野でよく知られている。例えばS.M.BergeらはJ.Pharmaceutical Science(1977)66:1〜において製薬上許容しうる塩を記載しており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。製薬上許容しうる塩には、例えば塩酸またはリン酸のような無機酸または酢酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸と共に形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離のアミノ基で形成)を包含する。遊離のカルボキシル基で形成された塩もまた、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは鉄の水酸化物のような無機の塩基、およびイソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等のような有機の塩基から誘導できる。塩は、本発明の化合物の最終単離および精製の間にインサイチュ(in situ)で、または適当な有機酸と遊離の塩基官能基を反応させることにより個別に調製してよい。酸付加塩の代表例は、例えば、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシメタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩を包含する。また、塩基性の窒素含有基を低級アルキルハライド、例えばメチル、エチル、プロピルおよびブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物;ジアルキル硫酸塩、例えばジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミルの硫酸塩;長鎖ハロゲン化物、例えばデシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭化物およびヨウ化物;アリールアルキルハライド、例えばベンジルおよびフェネチルの臭化物等で、四級化することもできる。水溶性または油溶性または水分散性または油分散性の生成物をこれにより得ることができる。製薬上許容しうる酸付加塩を形成するために使用しうる酸の例は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸、並びに有機酸、例えばシュウ酸、マレイン酸、コハク酸およびクエン酸を包含する。
本明細書においては、「製薬上許容しうる(pharmaceutically acceptable)」、「生理学的に許容しうる(physiologically tolerable)」およびその文法上の変形体が組成物、担体、希釈剤および試薬を指して用いられる場合は互換的に使用されるものとし、そして、悪心、めまい、むかつき等のような望ましくない生理学的作用を最小限にしながら哺乳類に投与することのできる物質を指す。活性成分を溶解または分散させて含有する医薬組成物の調製は、当該分野でよく知られており、製剤に関して限定するものではない。典型的にはこのような組成物は液体の溶液または懸濁液のいずれかとして注射可能に調製されるが、しかしながら、使用前に液体中の溶液または懸濁液とするのに適する固体剤型も調製することができる。製剤は乳化されていることもできる。
活性成分は、製薬上許容される活性成分と適合性がある賦形剤と、本明細書に記載した治療方法において用いるのに適する量で混合することができる。適当な賦形剤には、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等およびこれらの組み合わせを含む。更に、所望により、組成物は活性成分の有効性を増強する少量の補助的物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤等を含有できる。
本発明の抗血管形成性タンパク質はまた、プロドラッグを含む組成物中に含有させることができる。本明細書においては、「プロドラッグ(prodrug)」という用語は、例えば血中の酵素的加水分解によりインビボで急速に変換されて親化合物となる化合物を指す。詳しい説明はT.Higuchi and V.Stella,Prodrugs as Novel Delivery System,Vol.14,ACS Symposium Series、およびEdward B.Roche,ed.,Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Permagon Press,1987に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。本明細書においては、「製薬上許容しうるプロドラッグ(pharmaceutically acceptable prodrug)」とは、(1)信頼できる医療上の判断の範囲内において、不必要な毒性、刺激性、アレルギー応答等を伴うことなくヒトおよびより下位の動物の組織と接触させて使用するのに適し、そして合理的な利益/危険の比を確保しており、その意図する使用のために有効である本発明の化合物のプロドラッグ、および(2)可能な場合は親化合物の両性イオン形態を指す。
本発明の抗血管形成性タンパク質の用量は、治療される疾患の状態または症状、および他の臨床要因、例えばヒトまたは動物の体重および健康状態、および化合物の投与経路により異なる。ヒトまたは動物を治療するためには、約10mg/kg体重〜約20mg/kg体重のタンパク質を投与することができる。複合療法の場合、例えば本発明のタンパク質を放射線療法、化学療法または免疫療法と組み合わせる場合は、用量を例えば約0.1mg/kg体重〜約0.2mg/kg体重にまで低減することができる。特定の動物またはヒトにおける抗血管形成性タンパク質の半減期に応じて、抗血管形成性タンパク質は一日当たり数回ないしは一週間に1回の頻度で投与することができる。本発明は、ヒトおよび獣医科用の両方の用途を有する。本発明の方法は、単回投与並びに同時または長期間にわたる多数回投与を意図している。更にまた、抗血管形成性タンパク質は他の形態の治療、例えば化学療法、放射線療法または免疫療法と組み合わせて投与することもできる。
抗血管形成性タンパク質の製剤は、経口、直腸、眼内(例えば硝子体内または房内(intracameral))、鼻内、局所(例えば口内または舌下)、子宮内、膣内または非経口(例えば皮下、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮内、頭蓋内、気管内および硬膜外)の投与に適したものを包含する。抗血管形成性タンパク質製剤は、好都合には単位用量型で提供され、そして従来の製薬手法により調製される。このような手法には、活性成分および製薬用担体または賦形剤を会合させる工程が包含される。一般的に製剤は、活性成分を液体担体または微細分割固体担体または両方と均一緊密に会合させ、その後必要に応じて生成物を成型することにより調製する。
非経口投与に適する製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および製剤を投与対象の血液と等張とするための溶質を含有しうる水性または非水性の滅菌注射用溶液;および、懸濁剤および濃化剤を含有しうる水性および非水性の滅菌懸濁液を包含する。製剤は、単位用量または多用量の容器、例えば密封されたアンプルおよびバイアル中に提供してよく、そして、使用直前に例えば注射用水のような滅菌液体担体を添加するのみでよい凍結乾燥された状態で保存してよい。用時調製の注射溶液および懸濁液は前述した滅菌粉末、顆粒および錠剤から調整してよい。
本発明のタンパク質の有効量を経口投与する場合、本発明の抗血管形成性タンパク質は錠剤、カプセル、粉末、溶液またはエリキシルの形態とする。錠剤形態で投与する場合は、本発明の医薬組成物は更にゼラチンまたはアジュバントのような固体担体を含有してよい。錠剤、カプセルおよび粉末は、本発明のタンパク質を約5〜95%、好ましくは本発明のタンパク質を約25〜90%含有する。液体形態で投与する場合は、液体担体、例えば水、石油、動物性および植物性の油脂、例えばピーナツ油、鉱物油、大豆油またはゴマ油、または、合成の油を添加してよい。医薬組成物の液体形態は更に、生理食塩水、デキストロースまたは他の糖溶液、またはグリコール類、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールを含有してよい。液体形態で投与する場合、医薬組成物は本発明のタンパク質を約0.5〜90重量%、好ましくは本発明のタンパク質を約1〜50重量%含有する。
本発明のタンパク質の有効量を静脈内、経皮または皮下注射により投与する場合は、本発明のタンパク質は発熱物質非含有の非経口的に許容される水溶液の形態とする。このようなpH、等張性、安定性等に関して非経口的に許容されるタンパク質の溶液の調製は当業者の知るとおりである。静脈内、経皮または皮下注射のための好ましい医薬組成物は本発明のタンパク質のほかに、等張性のベヒクル、例えば塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、乳酸添加リンゲル注射液、または当該分野で知られた他のベヒクルを含有しなければならない。本発明の医薬組成物は、安定剤、保存料、緩衝剤、抗酸化剤、または当該分野で知られた他の添加剤も含有してよい。
本発明の医薬組成物中の本発明のタンパク質の量は、治療すべき症状の性質および重症度、および患者が受けた以前の治療の性質により異なる。究極的には、個々の患者の治療に用いる本発明のタンパク質の量は担当医が決定する。最初、担当医は本発明のタンパク質を低用量で投与し、患者の応答を観察する。本発明のタンパク質の漸増用量を至適治療効果が患者に得られるまで投与し、その段階で用量はさらに増加されない。
本発明の医薬組成物を用いた静脈内治療の期間は、治療すべき疾患の重症度および各患者の状態および潜在的な特有の応答により変動する。本発明のタンパク質のそれぞれの適用期間は、連続静脈内投与の12〜24時間の範囲である。究極的には、本発明の医薬組成物を用いた静脈内治療の適切な期間については担当医が決定する。
好ましい単位用量製剤は、投与される成分の一日当たりの用量または単位、一日当たりのサブ用量、またはその適切な細分量を含有するものである。上記の特定の成分に加えて、本発明の製剤は該当する製剤の形態に応じた当該分野で従来使用されている他の物質も含有してよい。場合により、細胞毒性の薬剤を配合するか、その他の様式で抗血管形成性タンパク質または生物学的に機能性のそのタンパク質フラグメントと組み合わせることにより、二剤併用療法を患者に行ってよい。
治療用組成物はまた、獣医科用途においても現在価値あるものである。特に家畜および血統馬がヒト以外では本発明のタンパク質による治療に望ましい対象である。
リシンのような細胞毒性剤を抗血管形成性タンパク質およびそのフラグメントと連結し、これにより抗血管形成性タンパク質に結合する細胞を破壊するための道具を得ることができる。このような細胞は、多くの箇所、例えば微小転移および原発腫瘍に見られるが、これらに限定されない。細胞毒製剤と連結したタンパク質を、所望の箇所へのデリバリーを最大限とするように設計された態様で注入する。例えばリシン連結高親和性フラグメントを標的部位への供給血管内に、または標的部位に直接、カニューレを通じて送達する。このような薬剤はまた、注入カニューレに結合した浸透圧ポンプを介して制御された態様で送達される。拮抗剤と抗血管形成性タンパク質の組み合わせを血管形成の刺激と共に同時適用することにより、組織の血管形成を増強してよい。この治療法は転移癌を破壊するための効果的な手段を与える。
他の治療法には、細胞毒性剤に連結した抗血管形成性タンパク質、そのフラグメント、類似体、抗血清または受容体のアゴニストおよび拮抗剤の投与が包含される。抗血管形成性タンパク質はヒトまたは動物起源のものでありうる。抗血管形成性タンパク質はまた、化学反応による合成で、または発現系を用いた組換え法により製造することもできる。抗血管形成性タンパク質はまた、単離されたIV型コラーゲンを酵素的に切断して抗血管形成活性を有するタンパク質を精製することにより製造することもできる。例えば、血管基底膜、例えばIV型コラーゲンをプロテアーゼ、例えばMMP−2、MMP−3、MMP−9、エラスターゼによるタンパク質分解に付することにより、本発明のタンパク質およびペプチドを得ることができる。抗血管形成性タンパク質はまた、IV型コラーゲンを分解して抗血管形成性タンパク質とする内因性酵素の作用を模倣した化合物により製造することもできる。抗血管形成性タンパク質の製造はまた、開裂酵素の活性に影響する化合物により調節してもよい。
本発明はまた、抗血管形成性タンパク質、インテグリン、インテグリンサブユニットまたはその突然変異体、フラグメントまたは融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを患者内に導入して調節する遺伝子療法を包含する。遺伝子産物タンパク質の発現のために細胞にDNAを転移またはデリバリーする種々の方法、別称遺伝子療法はGene Transfer into Mammalian Somatic Cells in vivo,N.Yang(1992),Crit.Rev.Biotechn.12(4):335−56に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。遺伝子療法はエクスビボまたはインビボ療法に使用するために、体細胞または生殖細胞系統にDNA配列を取り込ませることを包含する。遺伝子療法は遺伝子を交換し、正常または異常な遺伝子機能を増強し、そして感染性疾患または他の病態に対抗する機能を有する。
遺伝子療法によるこれらの医療上の問題を治療するための手法には、欠損遺伝子を同定し、次いで欠損遺伝子の機能を代替するか、または僅かに機能する遺伝子を増強するために機能的遺伝子を加える治療手法;または症状を治療するかまたは組織または臓器を治療方法に対してより感受性とするような生成タンパク質についての遺伝子を加える等の予防的手法が包含される。予防的手法の一例として、1以上の抗血管形成性タンパク質をコードする遺伝子を患者体内に入れ、これにより血管形成の発生を防止するか;または、腫瘍細胞を放射線により感受性とする遺伝子を挿入し、次いで腫瘍の放射線照射により腫瘍細胞の増強された殺傷がもたらされる。
抗血管形成性タンパク質のDNAまたは調節配列を転移させる多くのプロトコルが、本発明において意図される。抗血管形成性タンパク質と特に関連して通常存在するもの以外のプロモーター配列または抗血管形成性タンパク質の生成を増大させる他の配列のトランスフェクションもまた、遺伝子療法の方法として意図される。この手法の一例は、細胞におけるエリトロポエチンの遺伝子のスイッチを入れる「遺伝子スイッチ(genetic switch)」を挿入する相同組換えを用いた、Transkaryotic Therapies,Inc.,Cambridge,Mass.,にみとめられる。Genetic Engineering News,Apr.15,1994を参照のこと。このような「遺伝子スイッチ」は、これらのタンパク質(または受容体)を通常発現しない細胞中の抗血管形成性タンパク質(またはその受容体)を活性化するために使用される。
遺伝子療法の遺伝子転移法には、3種の大きく分けたカテゴリー、即ち、物理的(例えばエレクトロポレーション、直接遺伝子転移、および粒子衝突)、化学的(例えば液体系担体または他の非ウイルスベクター)および生物学的(例えばウイルス由来ベクターおよび受容体の取込)方法に分類される。例えば、非ウイルスベクターは、DNAでコーティングされたリポソームであるものを使用してよい。このようなリポソーム/DNA複合体は患者に直接静脈内注射してよい。リポソーム/DNA複合体は肝臓内で高濃度化し、そこでマクロファージおよびクプファー細胞にDNAをデリバリーすると考えられている。このような細胞は長期間生存し、従ってデリバリーされたDNAの長期間の発現をもたらす。更に、治療用DNAのターゲティングデリバリーのために、ベクターまたは遺伝子の「ネイキッド(naked)」DNAを直接、所望の臓器、組織または腫瘍内に注射してよい。
遺伝子療法の方法論はまた、デリバリー部位によって論じることもできる。遺伝子をデリバリーする基礎的な方法は、エクスビボの遺伝子転移、インビボの遺伝子転移、およびインビトロの遺伝子転移を含む。エクスビボの遺伝子転移の場合は、細胞を患者から取り出し、細胞培養物中で増殖させる。DNAを細胞にトランスフェクトし、トランスフェクトされた細胞の数を増大させ、次に患者に再移植する。インビトロの遺伝子転移の場合は、形質転換された細胞は培養物中で増殖する細胞、例えば組織培養細胞であり、特定の患者から得た特定の細胞ではない。これらの「実験細胞(laboratory cells)」をトランスフェクトし、トランスフェクトされた細胞は選択され、患者に移植するかその他の用途のいずれかに用いられる。
インビボの遺伝子転移には、細胞が患者体内にある場合は、DNAを患者の細胞内に導入することが含まれる。方法には、非感染性のウイルスを使用したウイルス媒介遺伝子転移を用いて、患者体内に遺伝子をデリバリーするか、またはネイキッドのDNAを患者の部位内に注射することが含まれ、そしてDNAは、遺伝子産物タンパク質が発現している細胞の比率で回収される。更に、本明細書において記載する他の方法、例えば「遺伝子銃(gene gun)」の使用は、抗血管形成性タンパク質の生成を制御するDNAまたは調節配列のインビトロ挿入に使用してよい。
遺伝子療法の化学的方法には、必ずしもリポソームである必要はない脂質系の化合物を用いてDNAを細胞膜を通過して転移させることが含まれる。リポフェクチンまたはサイトフェクチン、負荷電DNAに結合する脂質系陽イオンは、細胞膜を通過できる複合体を形成し、DNAを細胞の内部に提供する。別の化学的方法では、受容体系エンドサイトーシスを用い、この場合、特異的リガンドを細胞表面の受容体に結合させ、それを封入して、細胞膜を通過して輸送する。リガンドはDNAに結合し、全体の複合体が細胞内に輸送される。リガンド遺伝子複合体を血流中に注射し、次に受容体を有する標的細胞がリガンドに特異的に結合し、リガンドDNA複合体を細胞に輸送する。
多くの遺伝子療法の方法論が細胞に遺伝子を挿入するためにウイルスベクターを使用している。例えば、改変されたレトロウイルスベクターをエクスビボの方法で用いることにより遺伝子を末梢および腫瘍浸潤のリンパ球、肝細胞、上皮細胞、筋細胞または他の体細胞内に導入している。これらの改変された細胞を次に患者に導入することにより、挿入されたDNAからの遺伝子産物を提供する。
ウイルスベクターはまた、インビボのプロトコルを使用して細胞に遺伝子を挿入するために使用されている。外来遺伝子の組織特異的発現を指向するためには、組織特異的であることが分かっているシス作用する調節エレメントまたはプロモーターを用いることができる。あるいは、これはインビボの特定の解剖学的部位へのDNAまたはウイルスベクターのインサイチュ・デリバリーを用いて行うこともできる。例えば、インビボの血管への遺伝子転移は、動脈壁上の選択された部位に形質導入内皮細胞をインビトロ移植することにより達成している。ウイルスは遺伝子産物を発現していた周囲の細胞にも感染した。ウイルスベクターは、例えばカテーテルによりインビボの部位に直接デリバリーでき、これにより特定の領域のみをウイルスにより感染させ、長期間の部位特異的遺伝子発現を行うことができる。レトロウイルスを用いたインビボの遺伝子転移はまた、臓器に連絡する血管内への改変ウイルスの注射により乳房組織および肝組織においても明らかにされている。
遺伝子療法プロトコルのために用いられているウイルスベクターは、例えばレトロウイルス、他のRNAウイルス、例えばポリオウイルスまたはSindbisウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、SV40、ワクシニアおよび他のDNAウイルスを包含するが、これらに限定されない。修復欠損ネズミレトロウイルスベクターは最も広範に使用されている遺伝子転移ベクターである。ネズミ白血病レトロウイルスは、タンパク質コア(gag)に入れられ、宿主範囲を決定する糖タンパク質エンベロープ(env)により包囲された、核のコアタンパク質およびポリメラーゼ(pol)酵素に複合した1本鎖RNAからなる。レトロウイルスのゲノム構造は5’および3’の長末端反復(LTR)により囲まれたgag、polおよびenv遺伝子を含む。レトロウイルスベクター系は、5’および3’のLTRおよびパッケージング・シグナルを含む最小ベクターが、ウイルス構造タンパク質がパッケージング細胞系統内にトランスで供給される限り、ベクターのパッケージング、感染および標的細胞への組み込みを可能にするのに十分であるという事実を利用している。遺伝子転移のためのレトロウイルスベクターの基礎的な利点は、大部分の細胞型における効率的な感染および遺伝子発現、標的細胞の染色体DNAへの厳密な1コピーベクター組み込み、およびレトロウイルスゲノムの操作の容易性を包含する。
アデノウイルスは、コアタンパク質と複合化し、カプシドタンパク質で包囲されている直線状の2本鎖DNAである。分子ウイルス学の進歩は、インビボで標的細胞内に新しい遺伝子配列を導入することのできるベクターを作成するためにこれらの生物の生物学的特性を利用する能力をもたらした。アデノウイルス系ベクターは高濃度で遺伝子産物タンパク質を発現する。アデノウイルスベクターは低ウイルス力価においてさえも高い効率の感染性を有する。更にまた、ウイルスは無細胞のビリオンとして完全な感染性を有するため、産生細胞系統の注入を必要としない。アデノウイルスベクターの別の潜在的な利点はインビボの異種遺伝子の長期発現が達成できる能力である。
DNAデリバリーの機械的方法は、融合誘発性脂質嚢胞、例えばリポソームまたは他の膜融合のための嚢胞、DNA配合カチオン性脂質の脂質粒子、例えばリポフェクチン、DNAのポリリジン媒介転移、DNAの直接注射、例えば生殖細胞または体細胞内へのDNAのマイクロインジェクション、空気力学的にデリバリーされたDNAコーティング粒子、例えば「遺伝子銃」において用いられる金粒子、および、無機化学的方法、例えばリン酸カルシウムトランスフェクションを包含する。粒子媒介遺伝子転移法は植物組織の形質転換において最初に使用された。粒子衝突装置または「遺伝子銃」を用いて、駆動力を発生させてDNAコーティング高密度粒子(例えば金またはタングステン)を、標的となる臓器、組織または細胞の貫通を可能とする高速にまで加速する。粒子衝突は細胞、インビトロの系において、あるいは組織または臓器にDNAを導入するためのエクスビボまたはインビボの手法を用いて使用できる。別の方法であるリガンド媒介遺伝子療法では、DNAを特定のリガンドと複合体化してリガンド−DNAコンジュゲートを形成し、DNAを特定の細胞または組織に指向させる。
プラスミドDNAを筋肉細胞内に注射すると、トランスフェクトされマーカー遺伝子の持続性の発現を示す細胞が高い比率で得られることが分かっている。プラスミドのDNAは細胞のゲノム内に組み込まれても組み込まれなくてもよい。トランスフェクトされたDNAの非組み込みは、細胞またはミトコンドリアのゲノム内の相互の挿入、欠失または改変のおそれを伴うことなく、トランスフェクションを可能とし、長期間にわたり最終的に分化した非増殖性の組織内に遺伝子産物タンパク質の発現を可能とする。長期間であるが必ずしも永久ではない治療用遺伝子の特定の細胞への転移は、遺伝子疾患のため、または予防的使用のための治療を可能とする。DNAは周期的に注射することにより、レシピエントの細胞のゲノム内に突然変異を起こすことなく遺伝子産物の濃度を維持することができる。外因性DNAの非組み込みは、1つの細胞内に数種の外因性DNAコンストラクトが存在し、そのコンストラクトのすべてが種々の遺伝子産物を発現することを可能にする。
遺伝子の転移のためのエレクトロポレーションは、細胞または組織をエレクトロポレーション媒介の媒介遺伝子転移に感受性とするために電流を使用する。所定の電場強度の短い電気インパルスを用いて、DNA分子が細胞内に貫通できるように膜の透過性を増大させる。この手法はインビトロの系において、または細胞、組織または臓器にDNAを導入するためのエクスビボまたはインビボの手法と共に用いることができる。
担体媒介のインビボの遺伝子転移は、外来性DNAを細胞にトランスフェクトするために使用することができる。担体−DNA複合体を好都合に体液または血流中に導入し、次に体内の標的臓器または組織に部位特異的に指向させる。リポソームおよびポリカチオンの両方、例えばポリリジン、リポフェクチンまたはサイトフェクチンを使用できる。細胞特異的または臓器特異的であるようなリポソームを開発し、これによりリポソームにより担持される外来性DNAを標的細胞に取り込ませる。特定の細胞上の特異的受容体にターゲティングされたイムノリポソームの注射は、受容体を有する細胞へのDNAの挿入の好都合な方法として使用できる。使用されている別の担体系は、インビボの遺伝子転移のために肝細胞にDNAを運搬するためのアシアロ糖タンパク質/ポリリジンコンジュゲート系である。
トランスフェクトされたDNAはまた、DNAがレシピエント細胞に運搬され、そして原形質内または核質内に残存できるように、他の種の担体と複合体化してもよい。DNAは特別に操作された嚢胞複合体中の担体核タンパク質とカップリングし、核内に直接運搬することができる。
抗血管形成性タンパク質の遺伝子調節は、抗血管形成性タンパク質の1つをコードする遺伝子またはその遺伝子に関連している制御領域、またはその相当するRNA転写物に結合する化合物を投与して転写または翻訳の速度を変更することにより行ってよい。更にまた、抗血管形成性タンパク質をコードするDNA配列でトランスフェクトした細胞を患者に投与することにより、そのタンパク質のインビボ供給源を提供しうる。例えば、抗血管形成性タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターで細胞をトランスフェクトしてよい。トランスフェクトされた細胞は、患者の正常組織、患者の疾患組織に由来するものであってよく、または非患者の細胞であってよい。
例えば、患者から摘出した腫瘍細胞を本発明のタンパク質を発現できるベクターでトランスフェクトし、患者に再導入する。トランスフェクトされた腫瘍細胞は、腫瘍の増殖を抑制するタンパク質の濃度を患者体内においてもたらす。患者はヒトまたは非ヒト動物であってよい。細胞はまた、非ベクターにより、または当該分野で知られた物理的または化学的方法、例えばエレクトロポレーション、イオノポレーションにより、または「遺伝子銃」によりトランスフェクトしてもよい。更にまた、DNAは担体の助けを借りることなく直接患者に注射してもよい。特に、DNAは皮膚、筋肉または血液中に注射してよい。
患者に抗血管形成性タンパク質をトランスフェクトするための遺伝子療法プロトコルは、抗血管形成性タンパク質DNAの細胞のゲノム内、微小染色体内への組み込みを介するか、または、細胞の原形質または核質内の別個の複製または非複製DNAコンストラクトとして行ってよい。抗血管形成性タンパク質の発現は長時間継続してよく、または周期的に再注射することにより細胞、組織または臓器内のタンパク質の所望の濃度または所定の血中濃度を維持してよい。
更にまた、本発明は、新しい抗血管形成性タンパク質を試験するために使用でき、そして、血管形成活性またはその欠如を特徴とするか、あるいはそれに関連する疾患および症状の診断、予後または治療において使用できる抗体および抗血清を包含する。そのような抗体および抗血清は、所望の場合は、例えば心筋梗塞後の心臓組織において、血管形成をアップレギュレートするために使用でき、本発明のタンパク質に対する抗体または抗血清は、局在化する天然の抗血管形成性のタンパク質および過程をブロックして新血管の形成を増大させ、心臓組織の萎縮を抑制するために使用できる。
このような抗体および抗血清は、製薬上許容しうる組成物および担体と組み合わせて、診断、予後または治療用の組成物を形成できる。「抗体(antibody)」または「抗体分子(antibody molecule)」という用語は、免疫グロブリン分子および/または免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、即ち抗体結合部位またはパラトープを含む分子を指す。
抗血管形成性タンパク質に特異的に結合する抗体を用いた受動的抗体治療を用いて、再生、発達および創傷治癒と組織修復のような血管形成依存性の過程を調節することができる。更に、抗血管形成性タンパク質の抗体のFab領域に指向させた抗血清を投与することにより、タンパク質に対する内因性抗血清のタンパク質に結合する能力をブロックすることができる。
本発明の抗血管形成性タンパク質はまた、阻害剤および受容体に特異的な抗体を生成するために使用できる。抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれであることもできる。抗血管形成性タンパク質またはその受容体に特異的に結合するこれらの抗体は、体液または組織中の抗血管形成性タンパク質またはその受容体の量を検出するための当該分野でよく知られた診断方法およびキットにおいて使用することができる。これらの試験の結果を用いて、癌および他の血管形成媒介疾患の診断または再発予測を行うことができる。
本発明はまた、抗血管形成活性を特徴とする疾患の診断または予後における抗血管形成性タンパク質、これらのタンパク質に対する抗体およびこれらのタンパク質および/またはその抗体を含有する組成物の使用を包含する。本明細書においては、「予後方法(prognostic method)」という用語は、疾患、特に血管形成依存性の疾患を診断されたヒトまたは動物の疾患の進行に関する予測を可能とする方法を意味する。本明細書においては「診断方法(diagnostic method)」という用語は、ヒトまたは動物における、またはこれらに対する、血管形成依存性の疾患の存在または種類の判定を可能にする方法を意味する。
抗血管形成性タンパク質は、タンパク質に結合できる抗体を検出し定量化するための診断方法およびキットにおいて使用できる。このようなキットは、インサイチュの原発腫瘍により分泌される抗血管形成性タンパク質の存在下における微小転移の拡大を示す抗血管形成性タンパク質に対する循環抗体の検出を可能とする。そのような循環抗タンパク質抗体を有する患者は、複数の腫瘍および癌を有する可能性がより高く、治療または緩解期後に癌の再発を起こす可能性がより高い。これらの抗タンパク質抗体のFabフラグメントを抗原として使用することにより、抗タンパク質抗体を中和するために使用できる抗タンパク質Fabフラグメント抗血清を生成してよい。このような方法は、抗タンパク質抗体による循環タンパク質の除去を低減し、これにより抗血管形成性タンパク質の循環濃度を効果的に上昇させることができる。
本発明はまた、抗血管形成性タンパク質に特異的な受容体の単離を包含する。組織に高親和性結合を示すタンパク質フラグメントを用いて、アフィニティーカラム上で抗血管形成性タンパク質の受容体を単離することができる。受容体の単離および精製は、抗血管形成性タンパク質の作用機序を解明するための基礎的な工程である。受容体の単離およびアゴニストおよび拮抗剤の同定は、生物活性への最終経路である受容体の活性を調節する薬剤の開発を促進する。受容体の単離により、インサイチュおよび溶液のハイブリダイゼーション手法を用いて受容体の位置および合成をモニタリングするためのヌクレオチドプローブの構築が可能となる。更にまた、受容体に対する遺伝子を単離し、発現ベクターに取り込み、患者の腫瘍細胞のような細胞にトランスフェクトすることにより、細胞型、組織および腫瘍が抗血管形成性タンパク質に結合して局所的血管形成を抑制する能力を増大させることができる。
抗血管形成性タンパク質は、培養腫瘍細胞からの抗血管形成性タンパク質に対する受容体の単離のためのアフィニティーカラムの開発のために使用される。受容体の単離および精製の後にアミノ酸の配列決定を行う。この情報を用いて、受容体をコードする遺伝子を同定し単離することができる。次に、クローニングされた核酸配列を開発して受容体を発現できるベクターに挿入する。これらの手法は当該分野でよく知られている。腫瘍細胞への受容体をコードする核酸配列のトランスフェクションおよびトランスフェクトされた腫瘍細胞による受容体の発現により、内因性および外因性の抗血管形成性タンパク質へのこれらの細胞の応答性が増強され、これにより転移性の増殖の速度が低減される。
本発明の血管形成抑制タンパク質は、標準的な微小化学設備において合成でき、純度はHPLCおよび質量スペクトル分析により確認できる。タンパク質合成、HPLC精製および質量スペクトル分析の方法は当該分野で知られている。抗血管形成性タンパク質およびその受容体タンパク質はまた、組換え大腸菌または酵母の発現系において製造され、そしてカラムクロマトグラフィーで精製される。
未損傷の抗血管形成性タンパク質の種々のタンパク質フラグメントは、いくつかの用途において使用するために合成でき、例えば特異的抗血清の開発のための抗原として、抗血管形成性タンパク質の結合部位において活性なアゴニストおよび拮抗剤として、抗血管形成性タンパク質に結合するタンパク質のターゲティング殺傷のための細胞毒製剤に連結するかまたはこれと組み合わせて使用されるタンパク質としての用途が挙げられるが、これらに限定されない。
抗血管形成性タンパク質の合成タンパク質フラグメントは種々の用途を有する。高い親和性と結合性で抗血管形成性タンパク質の受容体に結合するタンパク質を放射標識し、オートラジオグラフおよび膜結合手法を用いて結合部位の可視化と定量のために用いる。この用途は重要な診断および研究用の道具となる。受容体の結合特性を知れば、受容体に関連する形質導入構造の検討が容易になる。
抗血管形成性タンパク質およびそれらより誘導されるタンパク質は、標準的な方法を用いて他の分子にカップリングすることができる。抗血管形成性タンパク質のアミノ末端およびカルボキシ末端は、ともにチロシンおよびリジン残基を含んでおり、種々の方法により同位体または非同位体標識、例えば従来の手法を用いて放射標識される(チロシン残基−クロラミンT法、ヨードゲン法、ラクトペルオキシダーゼ法;リジン残基−ボルトンハンター(Bolton−Hunter)試薬)。これらのカップリング方法は当該分野でよく知られている。あるいは、チロシンおよびリジンをこれらの残基を有さないフラグメントに付加することにより、そのタンパク質上の反応性のアミノ基およびヒドロキシル基の標識を容易にする。カップリングの手法は、アミノ酸上の使用可能な官能基、例えばアミノ、スルフィドリル、カルボキシル、アミド、フェノールおよびイミダゾールに基づいて選択する。これらのカップリングを行うために使用される種々の試薬には、特に、グルタルアルデヒド、ジアゾ化ベンジジン、カルボジイミドおよびp−ベンゾキノンが包含される。
抗血管形成性タンパク質は、同位体、酵素、担体タンパク質、細胞毒製剤、蛍光分子、化学ルミネセント、生物ルミネセントおよび種々の用途のための他の化合物に化学的にカップリングされる。カップリング反応の効率は、特定の反応に適切な種々の手法を用いて測定される。例えば125Iによる本発明のタンパク質の放射標識は、高い比放射能を有するクロラミンTおよびNa125Iを用いて行われる。反応はメタ重亜硫酸ナトリウムを用いて停止され、混合物は使い捨てカラム上で脱塩される。標識されたタンパク質をカラムから溶離し、画分を収集する。少量づつを各画分から採取し放射能をガンマカウンターで測定する。この方法において未反応のNa125Iは標識タンパク質から分離される。最も高い比放射能を有する画分を保存して、その後の抗血管形成性タンパク質の抗血清に結合する能力の分析に付す。
更にまた、半減期の短い同位体による抗血管形成性タンパク質の標識により、陽電子放射断層撮影またはタンパク質の結合部位を有する腫瘍の位置決めのための他の近代的な放射能分析手法を用いたインビボの受容体結合部位の可視化が可能となる。
これらの合成タンパク質内のアミノ酸の全体的置換により、受容体への結合を増強または低減する抗血管形成性タンパク質の受容体に対する高親和性のタンパク質アゴニストおよび拮抗剤が得られる。このようなアゴニストを用いて、微小転移の増殖を抑制し、癌の蔓延を制限することができる。抗血管形成性タンパク質の拮抗剤は、不十分な血管形成の状況において、抗血管形成性タンパク質の抑制作用をブロックし、血管形成を促進するために適用される。例えば、この治療法は糖尿病における創傷治癒を促進するための治療効果を有する。
本発明は更に以下の実施例により説明されるが、これらは本発明の範囲を制限する意図を全く有さない。他の実施形態、変更およびその等価なものが可能であり、それらは本明細書を参照すれば本発明の範囲を逸脱しないことは当業者には明らかである。
実施例
実施例1:天然のアレステンの単離
アレステンは、ヒト胎盤および羊膜の組織からミリグラム量で発生させることができる。これおよび同様のタンパク質を単離するためのプロトコルは文献に報告されている(例えばLangeveld,J.P.ら,1988,J.Biol.Chem.263:10481−8;Saus,J.ら,1988,J.Biol.Chem.263:13374−80;Gunwar,S.ら,1990,J.Biol.Chem.265:5466−9;Gunwar,S.ら,1991,J.Biol.Chem.266:15318−24;Kahsai,T.Z.ら,1997,J.Biol.Chem.272:17023−32参照)。アレステンの組換え型の製造はNeilsonら(1993,J.Biol.Chem.268:8402−6)に記載されている。タンパク質はまた、293腎細胞において発現させることもできる(例えば、Hohenester,E.ら,1998,EMBO J.17:1656−64中に記載の方法等)。アレステンはまたPihlajaniemi,T.ら(1985,J.Biol.Chem.260:7681−7)の方法に従って単離することもできる。
ヌクレオチド(配列番号1)およびIV型コラーゲンのNC1ドメインのα1鎖のアミノ酸(配列番号2)配列は図1に示す通りであり、GenBankの受託番号M11315に相当する(Brinker,J.M.ら,1994)。アレステンは一般的にIV型コラーゲンのα1鎖のNC1ドメインを含み、そしておそらくは、NC1ドメインの直前の12アミノ酸である接合部も含む。
天然のアレステンはヒト胎盤から、細菌性のコラゲナーゼ、陰イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、HPLCおよびアフィニティークロマトグラフィーを用いて単離した(Gunwar,S.ら,1991,J.Biol.Chem.266:15318−24;Weber,S.ら,1984,Eur.J.Biochem.139:401−10)。ヒト胎盤から単離したIV型コラーゲン単量体は、C18疎水性カラムを用いてHPLC精製した(Pharmacia,Piscataway,New Jersey,USA)。構成成分のタンパク質をアセトニトリル勾配(32%〜39%)を用いて分割した。主ピーク、小さい二重ピークが観察された。SDS−PAGE分析によれば、第1のピーク内に2バンドがあり、第2のピーク内には検出可能なタンパク質はなかった。免疫ブロッティングにおいても第2のピーク中に免疫検出可能なタンパク質はなく、主ピークはアレステンであると同定された。
実施例2:大腸菌中のアレステンの組換え生成
アレステンをコードする配列をα1NC1(IV)/pDSベクターからPCRにより増幅(Neilson,E.G.ら,1993,J.Bio.Chem.268:8402−5)し、その際、フォワードプライマーとして5’−CGG GAT CCT TCT GTT GAT CAC GGC TTC−3’(配列番号3)およびリバースプライマーとして5’−CCC AAG CTT TGT TCT TCT CAT ACA GAC−3’(配列番号4)を用いた。得られたcDNAフラグメントをBamHIおよびHindIIIで消化し、予備消化しておいたpET22b(+)にライゲーションした(Novagen,Madison,Wisconsin,USA)。このコンストラクトを図2に示す。これはアレステンをpelBリーダー配列の下流に、そしてそれとインフレーム(in frame)に位置させ、これにより可溶性タンパク質の原形質周囲の局在化および発現が可能となった。別のベクター配列をアミノ酸MDIGINSD(配列番号13)をコードするタンパク質に付加した。配列の3’末端をポリヒスチジンタグ配列にインフレームにライゲーションした。cDNAの3’末端およびhis−tagの間の別のベクター配列は、アミノ酸KLAAALE(配列番号14)をコードしていた。陽性クローンを両鎖について配列決定した。
アレステンをコードするプラスミドコンストラクトを、まず大腸菌HMS174(Novagen,Madison,Wisconsin,USA)に形質転換し、次に発現のためにBL21(Novagen,Madison,Wisconsin,USA)に形質転換した。一晩培養した細菌培養物を用いてLB培地500ml培養物に接種した。この培養物を、細胞のOD600が0.6に達するまで約4時間増殖させた。次に終濃度1〜2mMとなるようにIPTGを添加することにより、タンパク質の発現を誘導した。2時間の誘導の後、5000×gで遠心分離することにより細胞を採取し、6Mグアニジン、0.1M NaHPO、0.01M Tris−HCl(pH8.0)中に再懸濁した。再懸濁した細胞を短時間超音波処理し、30分間12,000×gで遠心分離した。上澄み画分を5mlのNi−NTAアガロースカラム(Qiagen,Hilden,Germany)に4〜6回、2ml/分の速度で通過させた。非特異的結合タンパク質を8M尿素、0.1M NaHPO、0.01M Tris−HCl(pH8.0)中の10mMおよび20mMのイミダゾールで洗浄することにより除去した。アレステンタンパク質を8M尿素、0.1M NaHPO、0.01M Tris−HCl(pH8.0)中の漸増濃度のイミダゾール(50mM、125mMおよび250mM)を用いてカラムから溶離させた。溶離したタンパク質を4℃でPBSに対して2回透析した。透析の間、総タンパク質のうちの少量が析出した。透析したタンパク質を収集し、約3500×gで遠心分離し、ペレットと上澄みの画分に分離した。各画分のタンパク質濃度をBCA試験(Pierce Chemical Co.,Rockford,Illinois,USA)および定量的SDS−PAGE分析により測定した。ペレット中の総タンパク質の画分は約22%であり、残りの78%は可溶性タンパク質として回収された。タンパク質の総収率は約10mg/リットルであった。
大腸菌発現タンパク質は主に可溶性タンパク質として単離され、そして、SDS−PAGEによれば29kDaにおける単量体バンドであった。別の3kDaがポリリンカーおよびヒスチジンタグから生じ、アレステンおよび6−ヒスチジンタグ抗体の両方により免疫検出された。
実施例3:293胚性腎細胞におけるアレステンの発現
α1(IV)NC1を含有するpDSプラスミドを用いて、pcDNA3.1真核細胞発現ベクター(InVitrogen,San Diego,California,USA)内にインフレームにリーダーシグナル配列が付加されるような方法でアレステンを増幅した。完全長α1(IV)の5’末端からのリーダー配列をNC1ドメインにクローニングすることにより、培地中へのタンパク質の分泌を可能とした。アレステン含有組換えベクターはフランキングプライマーを用いて配列決定した。エラーなしのcDNAクローンを更に精製し、タンパク質の発現を確認するためのインビトロの翻訳試験に用いた。アレステン含有プラスミドおよび対照のプラスミドを用いて、塩化カルシウム法により293細胞をトランスフェクトした。トランスフェクトされたクローンをゲネチシン抗生物質処理により選択した(Life Technologies/Gibco BRL,Gaithersburg,Maryland,USA)。細胞死が観察されなくなるまで抗生物質の存在下、3週間細胞を継代した。次にクローンをT−225フラスコに植え替え、コンフルエントになるまで増殖させた。次に上澄みを収集し、アミコンの濃縮器(Amicon,Inc.,Beverly,Massachusetts,USA)を用いて濃縮した。濃縮した上澄みをSDS−PAGE、イムノブロッティングおよびELISAで分析してアレステンの発現を調べた。上澄みにおける強力な結合がELISAにより検出された。SDS−PAGE分析によれば、約30kDaにおいて単一の主バンドがみとめられた。アレステン含有上澄みは、アレステン特異的抗体を用いてアフィニティークロマトグラフィーに付した(Gunwar,S.ら,1991,J.Biol.Chem.266:15318−24)。主ピークが検出され、アレステン抗体に対して免疫反応性である約30kDaの単量体を含有していた。組換えアレステン約1〜2mgを培養液リットル当たり製造した。
実施例4:アレステンは内皮細胞の増殖を抑制する
C−PAE細胞を10%ウシ胎児血清(FCS)を含有するDMEM中でコンフルエントとなるまで増殖させ、48時間接触抑制させ続けた。対照細胞として786−O(腎癌)細胞、PC−3細胞、HPEC細胞およびA−498(腎癌)細胞を用いた。5分間37℃でトリプシン処理(Life Technologies/Gibco BRL,Gaithersburg,Maryland,USA)することにより細胞を回収した。1%FCSを含有するDMEM中の12,500個の懸濁液を、10μg/mlのフィブロネクチンでコーティングした24穴のプレートの各ウェルに添加した。細胞を5%COおよび湿度95%、37℃で24時間インキュベートした。培地を除去し、0.5%FCSおよび3ng/ml bFGF(R&D Systems,Minneapolis,Minnesota,USA)を含有するDMEMと交換した。未刺激の対照にはbFGFを添加しなかった。細胞を0.01〜50μg/mlの範囲のアレステンまたはエンドスタチンの濃度で処理した。全ウェルに対し、投与時にH−チミジン 1μキュリーを添加した。24時間後、培地を除去し、ウェルをPBSで洗浄した。細胞を1N NaOHで抽出し、ScintiVerseII(Fisher Scientific,Pittsburgh,Pennsylvania,USA)を4ml含有するシンチレーションバイアルに添加した。チミジンの取り込みはシンチレーションカウンターを用いて測定した。結果は図3Aおよび3Bに示すとおりであり、これらは種々の量のアレステン(図3A)またはエンドスタチン(図3B)を投与したC−PAE細胞へのH−チミジンの取り込みを示す一組のグラフである。アレステンはエンドスタチンと同様、C−PAEにおけるチミジン取り込みの抑制を示した。アレステンおよびエンドスタチンを投与した対照細胞の挙動もまた、図4A、4B、4Cおよび4Dに示すが、アレステンは786−O細胞(図4A)、PC−3細胞(図4B)、またはHPEC細胞(図4C)に対しては殆ど作用を示さなかった。エンドスタチンはA−498細胞に対して殆ど作用を示さなかった(図4D)。図3および4における全群とも3組の試料の結果である。
実施例5:アレステンは内皮細胞においてアポトーシスを誘導する
50,000個のC−PAE細胞を12時間、10%FBSを添加したDMEMを用いて、6穴の組織培養プレートの各ウェルに添加した。新鮮培地および5μg/mlアレステンまたは40ng/ml TNFα(陽性対照)を2、4および6時間の時点で添加した。対照ウェルには等容量のPBSを添加した。脱着した細胞および接着した細胞をあわせ、1500rpmで遠心分離した。細胞を結合緩衝液(Clontech,Palo Alto,California,USA)で洗浄し、アポトーシスの指標であるホスファチジル−セリン(PS)外在化をFITC標識アネキシンVで標識することにより、製造元の指示に従って測定した(Clontech,Palo Alto,California,USA)。アネキシン−FITC標識細胞をFACStar Plusフローサイトメーター(Becton−Dickinson,Waltham,Massathusetts,USA)を用いて計数した。各投与につき、10,000個の細胞を計数し、保存した。次にこのデータを標準Cell Questソフトウエア(Becton−Dickinson,Waltham,Massachusetts,USA)を用いて分析した。対照群と比較して、陽性対照のTNFαではアネキシンV染色(アポトーシス)細胞の比率は2時間で約27%、4時間および6時間で約20%増大していた。アレステン投与細胞では、アポトーシス細胞の比率は2時間で約18%、そして4時間および6時間では約23%であった。内皮細胞の形態の変化もまた実験の間に観察され、対照群の細胞は有意な変化を示さなかったのに対し、アレステン投与および非接着細胞はアポトーシスを示す細胞形態の変化を示していた。
実施例6:アレステンは内皮細胞の遊走を抑制する
FBS誘導化学走性に対するアレステンおよびエンドスタチンの抑制作用をヒト臍帯内皮細胞(ECV−304細胞、ATCC 1998−CRL,ATCC(American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,VA,20110−2209,USA))に対し、ボイデンチャンバー試験(Boyden chamber assay)(Neuro−Probe,Inc.,Cabin John,Maryland,USA)を用いて試験した。ECV−304細胞を一晩、10%FBSおよび5ng/ml DilC18(3)リビング蛍光染色(DilC18(3) living fluorescent stain)(Molecular Probes,Inc.,Eugene,Oregon,USA)を含有するM199培地中に増殖させた。トリプシン処理、洗浄および0.5%FBS含有M199中に細胞を希釈した後、60,000個の細胞を、アレステンまたはエンドスタチン(2〜40μg/ml)の存在下または非存在下にて、上側のチャンバーのウェルに播種した。2%FBSを含有するM199培地を化学走性物質として下側のチャンバーに入れた。細胞含有コンパートメントは、孔径8μmのポリカーボネートフィルター(Poretics Corp.,Livermore,California,USA)を用いて化学走性物質から分離した。チャンバーを37℃、5%COおよび湿度95%で4.5時間インキュベートした。非遊走細胞を廃棄し、上側のウェルをPBSで洗浄した後、フィルターをプラスチック刃で掻き取り、PBS中4%ホルムアルデヒドで固定し、そしてスライドガラス上においた。蛍光高倍率視野を用いて、画像処理ソフトウエアPMIS(Roper Scientific/Photometrics,Tucson,Arizona,USA)により操作されたデジタルSenSysTMカメラにより、数種の独立した均質な画像を記録した。代表的な写真は図5A、5Bおよび5Cに示すとおりであり、これらは20μg/mlのエンドスタチンと同様に効果的な2μg/mlにおけるアレステンを示している。細胞は、OPTIMAS 6.0ソフトウエア(Media Cybernetics,Rochester,NY)を用いて計数し、結果は図6に示すとおりであり、これは顕微鏡写真で観察された結果をグラフ型にしたものである。
実施例7:アレステンは内皮管腔形成を抑制する
内皮細胞の形成の抑制を測定するために、マトリゲル(Matrigel)(Collaborative Biomedical Products,Bedford,Massachusetts,USA)320μlを24穴プレートの各ウェルに添加し、重合体化させた(Grant,D.S.ら,1994,Pathol.Res.Pract.190:854−63)。抗生物質を含有しないEGM−2培地(Clonetics Corporation,San Diego,California,USA)中の25,000個のマウス大動脈内皮細胞の懸濁液は、マトリゲルコーティングした各ウェルに移した。細胞に漸増濃度のアレステン、BSA、滅菌PBSまたは7Sドメインを投与した。全試験とも3組で行った。細胞を37℃で24〜48時間インキュベートし、CK2オリンパス顕微鏡(3.3対眼、10×対物)で観察した。次に細胞を400DKコーティングTMAXフィルム(Kodak)で撮影した。細胞をdiff−quik固定剤(Sigma Chemical Compoany,St.Louis,Missouri,USA)で染色し、再度撮影した。10の視野を観察し、管腔を計数し、平均した。結果は図7に示すとおりであり、これによればアレステン(■)は対照と比較して管腔形成を抑制している(滅菌PBS、◆;BSA、△;7Sドメイン、−X−)。十分形成された管腔の代表例は図8Aに示すとおりであり、これは7Sドメインを投与された細胞を示している(100×倍率)。一方、図8Bは0.8μg/mlのアレステンを投与されたMAE細胞における管腔形成が乏しいかまたは全くないことを示している(100×倍率)。
インビボのC57/BL6マウスについてもマトリゲル試験を行った。マトリゲルは4℃で一晩解凍した。次に、これを20U/mlのヘパリン(Pierce Chemical Co.,Rockford,Illinois,USA)、150ng/mlのbFGF(R&D systems,Minneapolis,Minnesota,USA)および1μg/mlのアレステンまたは10μg/mlのエンドスタチンのいずれかと混合した。マトリゲル混合物を21g針で皮下注射した。対照には、血管形成阻害因子を添加しないほかは、同じ混合物を投与した。14日後、マウスを屠殺し、マトリゲルプラグをはずした。マトリゲルプラグを室温で4時間、PBS中4%パラホルムアルデヒド中に固定し、その後24時間PBSに切り替えた。プラグをパラフィン包埋し、切片化し、H&E染色した。切片を光学顕微鏡で観察し、10高倍率視野から血管数を計数し、平均した。
マトリゲルをbFGFの存在下、漸増濃度のアレステンの存在下または非存在下においた場合、血管数の50%低下が、1μg/mlアレステンおよび10μg/mlエンドスタチンにおいて観察された。これらの結果は、アレステンが血管形成過程の種々の工程を抑制することにより新血管形成に影響することを示している。結果はまた、1μg/mlのアレステンがインビボの新血管形成の抑制において10μg/mlのエンドスタチンと同様に効果的であることを示している。
実施例8:アレステンはインビボで腫瘍転移を抑制する
C57/BL6マウスに100万個のMC38/MUC1(Gong,J.ら,1997,Nat.Med.3:558−61)を静脈注射した。26日間1日おきに5匹の対照マウスに滅菌PBS 10mMを注射し、6匹の実験群マウスには4mg/mlのアレステンを投与した。投与26日の後、肺腫瘍の結節を各マウスにつき計数し、2群について平均した。各群で2匹の死亡が記録された。アレステンは、肺結節の平均数を対照マウスの300から200にまで著しく低減した。
実施例9:アレステンはインビボで腫瘍増殖を抑制する
200万個の786−O細胞を7〜9週齢の雄性無胸腺ヌードマウスに皮下注射した。6匹のマウスからなる第1の群においては、腫瘍は約700mmまで増殖した。6匹のマウスからなる第2の群においては、腫瘍は100mmまで増殖した。滅菌PBS中のアレステンを腹腔内に毎日10日間、700mmの腫瘍を有するマウスには20mg/kg、100mmの腫瘍を有するマウスには10mg/kgの濃度で注射した。対照のマウスにはBSAまたはPBSベヒクルのいずれかを投与した。結果は図9Aおよび9Bに示すとおりである。図9Aは10mg/kgのアレステン投与(□)、BSA投与(+)および対照マウス(●)について、700mmから増量した腫瘍容量を示すプロットである。アレステン投与マウスの腫瘍は700から500mmに収縮したのに対し、BSA投与および対照のマウスの腫瘍は10日間で約1200mmに拡大した。図9Bは100mmの腫瘍を有するマウスにおいて、アレステン(□)はやはり約80mmまでの腫瘍の収縮をもたらしたのに対し、BSA投与腫瘍(+)は10日間でほぼ500mmの大きさにまで増大した。
約500万個のPC−3細胞(ヒト前立腺癌細胞)を採取し、7〜9週齢の雄性無胸腺ヌードマウスに皮下注射した。腫瘍は10日間増殖させ、次にバーニヤカリパス(Vernier calipers)を用いて測定した。腫瘍容量を標準的な式(幅×長さ×0.52(O’Reilly,M.S.ら,1997,Cell 88:277−85;O’Reilly,M.S.ら,1994,Cell 79:315−28)を用いて計算した。動物を5〜6匹の群に分割した。実験群には、腹腔内に毎日アレステン(10mg/kg/日)またはエンドスタチン(10mg/kg/日)を添加した。対照には毎日PBSを投与した。結果は図9Cに示すとおりであり、これによれば、アレステン(□)はエンドスタチン(▲)または対照(●)と同等かそれより僅かに良好に腫瘍の増殖を抑制した。実験は反復したが、アレステンの用量は4mg/kg/日とした。結果は図9Dに示すとおりである(アレステン、□;対照群、●)。投与は8日後(矢印)に停止したが、有意な抑制は、更にアレステンを投与しなくても更に12日間継続した。無投与12日の後、腫瘍はアレステンの抑制性の影響を回避し始めた。
実施例10:アレステンの免疫組織化学
腫瘍試験に用いたマウスを投与10〜20日の後に屠殺した。腫瘍を摘出し、4%パラホルムアルデヒド中に固定した。組織をパラフィン包埋し、3μmの切片を切り出し、スライドガラス上に搭載した。切片を脱パラフィンし、再水和し、そして300mg/mlのプロテアーゼXXIV(SIGMA Chemical CO.,St.Louis,Missouri,USA)を37℃で5分間投与した。100%エタノールを添加して消化を停止し、切片を風乾して10%ウサギ血清でブロッキングした。次にスライドを1:50希釈度のラット抗マウスCD−31モノクローナル抗体(ParMingen,San Diego,California,USA)と共に一晩4℃でインキュベートし、その後、1:50希釈度のウサギ抗ラット免疫グロブリン(DAKO)およびラットAPAAP(DAKO)中、37℃で連続2回の30分間インキュベートを行った。着色反応は新しいフクシンを用いて行い、切片はヘマトキシリンで対比染色した。CD−31染色パターンによれば、対照マウスと比較した場合に投与群の血管形成が低減していた。
PCNA染色については、組織切片を1:200希釈度の抗PCNA抗体(Signet Laboratories,Dedham,Massachusetts,USA)と共に室温で60分間インキュベートした。検出は、USAセイヨウワサビペルオキシダーゼ系(Signet Laboratories,Dedham,Massachusetts,USA)を用いて製造元の推奨に従って行った。スライドをヘマトキシリンで対比染色した。フィブロネクチンおよびIV型コラーゲンによる染色は、1:500の希釈度のポリクローナル抗フィブロネクチン(SIGMA Chemical CO.,St.Louis,Missouri,USA)および1:100の希釈度の抗IV型コラーゲン(ICN Pharmaceuticals,Costa Mesa,California,USA)を用いて行った。Vectastain Elite ABCキット(Vector Laboratories,Inc.,Burlingame,California,USA)を用いて、製造元の推奨に従って検出を行った。細胞外マトリックスのPCNA、フィブロネクチンおよびIV型コラーゲンの染色によれば、腫瘍増殖および腫瘍細胞を包囲するIV型コラーゲンおよびフィブロネクチンの含量や構造に差はなかった。
実施例11:アレステンの循環半減期
ヒト胎盤から単離した天然のアレステンを200gのラットに静脈内注射した。各ラットにはヒトのアレステン5mgを投与した。抗アレステン抗体の使用することにより、循環アレステンの存在について、血清を直接ELISAによって種々の時点で分析した。対照として、血清アルブミンも各時点で評価し、同一量の血清が分析に用いられるようにした。アレステンは約36時間の半減期で血清中を循環していることが分かった。
ラットの別の群に200μgのヒトアレステンを腹腔内および/または皮下注射し、肺、腎臓、肝臓、膵臓、脾臓、脳、精巣、卵巣等における疾患の発生の兆候について調べた。直接ELISAを行い、アレステン抗体をこれらのラットの血清中に検出し、一部の内因性IgGの付着が、以前に報告されている通り腎糸球体基底膜上に検出された(Kalluri,R.ら,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:6201−5)。腎内の抗体の付着は、炎症や腎機能の悪化の兆候は伴っていなかった。これらの実験は、アレステンが非病原性であることを示唆していた。
実施例12:細胞接着に対するアレステンの作用
96穴プレートをヒトアレステンまたはヒトIV型コラーゲン(Collaborative Biomedical Products,Bedford,Massachusetts,USA)のいずれかで、37℃一晩、10μg/mlの濃度でコーティングした。残存するタンパク質結合部位を37℃で2時間、PBS中の10%BSA(SIGMA Chemical Co.,St.Louis,Missouri,USA)でブロッキングした。HUVEC細胞をEGM−2MV培地(Clonetics Corporation,San Diego,California,USA)中、サブコンフルエント(70〜80%)となるまで増殖させた。細胞を穏やかにトリプシン処理し、血清非含有の培地中に再懸濁した(5×10個/ml)。次に細胞を10μg/mlの抗体と混合し、室温で穏やかに振とうしながら15分間インキュベートした。次に細胞懸濁液100μlを各ウェルに添加し、プレートを5%COの下37℃で45分間インキュベートした。血清非含有の培地で洗浄することにより未結合の細胞を除去し、結合細胞を計数した。対照のマウスIgGおよびヒトβインテグリンサブユニットに対するマウスモノクローナル抗体(クローンP4C10)はLife Technologies(Gibco/BRL,Gaithersburg,Maryland,USA)から購入した。モノクローナル抗体αインテグリンサブユニットおよびαβ(それぞれクローンCD49aおよびLM609)はCHEMICON International(Temecula,California,USA)から購入した。
結果は図10Aおよび10Bに示すとおりであり、これらはコーティングされたプレート上の接着HUVEC細胞(y軸)の比率を示すヒストグラム2種であり、ここでは、細胞はマウスIgG(c、対照)またはαまたはβインテグリンサブユニットに対する抗体、またはαβインテグリンに対する抗体と混合した。図10Aおよび10Bはそれぞれアレステン・コーティングおよびIV型コラーゲンコーティングのプレート上の付着細胞の比率を示す。アレステン・コーティングプレート(図10A)では、細胞接着はαサブユニットについて60%の抑制が、βサブユニットについては70%抑制が観察されたのに対し、IV型コラーゲンコーティングプレート(図10B)ではαで30%、βで40%、そしてαβ中和抗体で15%の、より中等度の抑制が観察された。
実施例13:アレステンによるマトリックス・メタロプロテイナーゼの結合および抑制
MMP−2、MMP−9およびこれらの酵素に対する抗体はOncogene,Inc.より購入した。直接ELISAは、前述の通り、ヒト胎盤から単離した天然のアレステンを用いて行った(Kalluri,R.ら,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:6201−5)。MMP−2およびMMP−9は共に特異的にアレステンに結合した。これらは7Sドメインには結合しなかった。この結合は、それぞれTIMP−2およびTIMP−1の結合とは非依存性であった。
アレステンが基底膜を分解する能力を評価するために、マトリゲルを穏やかに振とうしながら37℃で6時間、MMP−2およびMMP−9と共にインキュベートした。上澄みをSDS−PAGEで分析し、IV型コラーゲンのα2鎖に対する抗体を用いてイムノブロッティングした。分解試験の開始時には、アレステンは漸増濃度で添加し、MMP−2活性の阻害を観察した。NC1ドメインはSDS−PAGEゲル中で分割されて26kDaの単量体と56kDaの2量体となり、IV型コラーゲン抗体を用いたウエスタンブロットにより可視化することができた。漸増濃度のアレステンはMMP−2による基底膜の分解を抑制し、アレステンがMMP−2に結合でき、そしてその基底膜コラーゲン分解を防止することが示された。同様の結果がMMP−9についても得られた。
実施例14:大腸菌におけるカンスタチンの組換え生成
ヒトカンスタチンは、細菌発現プラスミドpET22bを用いて、C−末端ヒスチジンタグとの融合タンパク質として大腸菌中で生成した。
IV型コラーゲンのα2 NC1ドメインに関するヌクレオチド(配列番号5)およびアミノ酸(配列番号6)の配列をそれぞれ図11Aおよび11Bに示す。カンスタチンをコードする配列は、フォワードプライマー5’−CGG GAT CCT GTC AGC ATC GGC TAC CTC−3’(配列番号7)およびリバースプライマー5’−CCC AAG CTT CAG GTT CTT CAT GCA CAC−3’(配列番号8)を用いて、α2 NCI(IV)/pDSベクター(Neilson E.G.ら,(1993,J.Biol.Chem.268:8402−5;GenBank受託番号M24766(Killen,P.D.ら,1994))からPCRにより増幅した。得られたcDNAフラグメントをBamHIおよびHindIIIで消化して、予備消化したpET22b(+)(Novagen,Madison,Wisconsin,USA)内にライゲーションした。コンストラクトを図12に示す。このライゲーションにより、カンスタチンをpelBリーダー配列の下流に、そしてそれとインフレームに位置させ、これにより可溶性タンパク質の原形質周囲の局在化および発現が可能となった。別のベクター配列をアミノ酸MDIGINSD(配列番号13)をコードするタンパク質に付加した。配列の3’末端をポリヒスチジンタグ配列にインフレームにライゲーションした。cDNAの3’末端およびhis−tagの間の別のベクター配列は、アミノ酸KLAAALE(配列番号14)をコードしていた。陽性クローンを両鎖について配列決定した。
カンスタチンをコードするプラスミドコンストラクトを、まず大腸菌HMS174(Novagen,Madison,Wisconsin,USA)に形質転換し、次に発現のためにBL21(Novagen,Madison,Wisconsin,USA)に形質転換した。一晩培養した細菌培養物を用いて、LB培地500ml培養物に接種した。この培養物を、細胞のOD600が0.6に達するまで約4時間増殖させた。次に終濃度0.5mMとなるようにIPTGを添加することにより、タンパク質の発現を誘導した。2時間の誘導の後、5000×gで遠心分離することにより細胞を採取し、6Mグアニジン、0.1M NaHPO、0.01M Tris−HCl、pH8.0中に再懸濁した。再懸濁した細胞を短時間超音波処理し、30分間12,000×gで遠心分離した。上澄み画分を5mlのNi−NTAアガロースカラム(Qiagen,Hilden,Germany)に4〜6回、2ml/分の速度で通過させた。非特異的結合タンパク質を8M尿素、0.1M NaHPO、0.01M Tris−HCl、pH8.0中の10mM、25mMおよび50mMのイミダゾールそれぞれ15mlで洗浄することにより除去した。カンスタチンタンパク質を8M尿素、0.1M NaHPO、0.01M Tris−HCl、pH8.0中の漸増濃度のイミダゾール(125mMおよび250mM)を用いてカラムから溶離させた。溶離したタンパク質を4℃でPBSに対して2回透析した。透析の間、総タンパク質のうちの少量が析出した。透析したタンパク質を収集し、約3500×gで遠心分離し、ペレットと上澄みの画分に分離した。各画分のタンパク質濃度をBCA試験(Pierce Chemical Co.,Rockford,Illinois,USA)および定量的SDS−PAGE分析により測定した。SDS−PAGE分析によれば、単量体バンドは約26〜32kDa、最も高頻度には27kDaにあり、そのうち3kDaはポリリンカーおよびヒスチジンタグの配列から生じたものであった。カンスタチンを含有する溶出液をあわせ、PBSに対して透析し、次の試験に付した。SDS−PAGEおよびウエスタンブロッティングにより分析されたカンスタチンタンパク質は、ポリヒスチジンタグ抗体により検出された。カンスタチン抗体はまた、細菌発現された組換えカンスタチンタンパク質も検出した。
大腸菌発現タンパク質は、主に可溶性タンパク質として単離された。ペレット中の総タンパク質の画分は約40%であり、残りの60%は可溶性タンパク質として回収された。タンパク質の総収量は約15mg/リットルであった。
実施例15:293胚性腎細胞におけるカンスタチンの発現
ヒトカンスタチンはまた、pcDNA3.1真核細胞ベクターを用いて293胚性腎細胞中の分泌可溶性タンパク質として産生し、アフィニティークロマトグラフィーを用いて単離した(精製または検出タグを用いなかった)。
α2(IV)NC1(Neilson,E.G.ら,1993,J.Bio.Chem.268:8402−5)を含有するpDSプラスミドを用いて、pcDNA3.1真核細胞発現ベクター(InVitrogen,San Diego,California,USA)内にインフレームにリーダーシグナル配列が付加されるような方法で、カンスタチンをPCR増幅した。完全長α2(IV)の5’末端からのリーダー配列をNC1ドメインにクローニングすることにより、培地中へのタンパク質の分泌を可能とした。カンスタチン含有組換えベクターは、フランキングプライマーを用いて配列決定した。エラーなしのcDNAクローンを更に精製し、タンパク質の発現を確認するためのインビトロの翻訳試験に用いた。カンスタチン含有プラスミドおよび対照のプラスミドを用いて、塩化カルシウム法により293細胞をトランスフェクトした(Kingston,R.E.,1996,“Calcium Phosphate Transfection”,pp.9.1.4−9.1.7,Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel,F.M.ら,eds.Wiley and Sons,Inc.,New York,New York,USA)。トランスフェクトされたクローンをゲネチシン抗生物質処理により選択した(Life Technologies/Gibco BRL,Gaithersburg,Maryland,USA)。細胞死が観察されなくなるまで、抗生物質の存在下、3週間細胞を継代した。次にクローンをT−225フラスコに植え替え、コンフルエントになるまで増殖させた。次に上澄みを収集し、アミコンの濃縮器(Amicon,Inc.,Beverly,Massachusetts,USA)を用いて濃縮した。濃縮した上澄みをSDS−PAGE、イムノブロッティングおよびELISAで分析して、カンスタチンの発現を調べた。上澄みにおける強力な結合がELISAにより検出された。カンスタチン含有上澄みは、カンスタチン特異的抗体を用いてアフィニティークロマトグラフィーに付した(Gunwar,S.ら,1991,J.Biol.Chem.266:15318−24)。主ピークが検出され、カンスタチン抗体に対して免疫反応性である約24kDaの純粋な単量体を含有していた(抗α2NC1抗体、1:200希釈度)。
実施例16:カンスタチンは内皮細胞の増殖を抑制する
ウシ大動脈内皮(C−PAE)細胞を10%ウシ胎児血清(FCS)含有DMEM中コンフルエントとなるまで増殖させ、48時間接触抑制させ続けた。5分間37℃でトリプシン処理(Life Technologies/Gibco BRL,Gaithersburg,Maryland,USA)することにより細胞を回収した。0.5%FCSを含有するDMEM中の12,500個の細胞の懸濁液を、10μg/mlのフィブロネクチンでコーティングした24穴のプレートの各ウェルに添加した。細胞を5%COおよび湿度95%、37℃で24時間インキュベートした。培地を除去し、0.5%FCS(未刺激)または10%FCS(刺激および処置細胞)を含有するDMEMと交換した。対照細胞として786−O、PC−3およびHEK293細胞を用い、同様にコンフルエントまで増殖させ、トリプシン処理し、プレーティングした。細胞を0.025〜40mg/mlの範囲のカンスタチンまたはエンドスタチンの濃度で処理した。チミジン取り込み実験においては、全ウェルに対し、処置時にH−チミジン1mキュリーを添加した。24時間後、培地を除去し、ウェルをPBSで3回洗浄した。放射能を1N NaOHで抽出し、ScintiVerse II(Fisher Scientific,Pittsburgh,Pennsylvania,USA)を4ml含有するシンチレーションバイアルに添加した。チミジンの取り込みは、シンチレーションカウンターを用いて測定した。
結果は図13Aおよび13Bに示すとおりである。図13Aは、C−PAE細胞の増殖に対するカンスタチンの種々の量の作用を示すヒストグラムである。カウント/分で示したチミジンの取り込みはy軸に示す。x軸の「0.5%」は0.5%FCS(未刺激)対照であり、「10%」は10%FCS(刺激)対照である。漸増濃度のカンスタチン処理によりチミジンの取り込みが安定して低下した。図13Bは、非内皮細胞の786−O(斑点棒)、PC−3(直行斜線棒)およびHEK293(白色棒)におけるチミジンの取り込みに対するカンスタチンの漸増量の作用を示すヒストグラムである。カウント/分で示したチミジンの取り込みはy軸に示し、x軸は3種の細胞系統の各々につき、0.5%FCS(未刺激)および10%FCS(刺激)対照、次いで漸増濃度のカンスタチンを示す。全群とも3組の試料の結果であり、棒は平均のカウント/分±平均の標準誤差を示す。
メチレンブルー染色試験も実施した。3,100個の細胞を各ウェルに添加し、上述の通り処理し、次に細胞をOliverら(Oliver,M.H.ら,1989,J.Cell.Science 92:513−8)の方法を用いて計数した。全ウェルとも100mlの1×PBSで1回洗浄し、室温で30分間中性緩衝食塩水(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Missouri,USA)中10%ホルマリン100mlを添加することにより細胞を固定した。ホルマリンを除去した後、細胞を室温で30分間0.01Mホウ酸塩緩衝液(pH8.5)中1%メチレンブルー(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Missouri,USA)の溶液を用いて染色した。染色溶液除去後、ウェルを0.01Mホウ酸塩緩衝液(pH8.5)100mlで5回洗浄した。室温で1時間0.1N HCl/エタノール(1:1混合物)100mlを用いて細胞からメチレンブルーを抽出した。メチレンブルー染色の量は、655nm波長における吸光度を用いて、マイクロプレートリーダー(BioRad,Hercules,California,USA)上で測定した。
結果を図13Cおよび13Dに示す。図13Cは、C−PAE細胞の染料取り込みに対するカンスタチンの漸増量の作用を示すヒストグラムである。OD655における吸光度はy軸に示す。「0.1%」は0.1%FCS処置(未刺激)対照を示し、「10%」は10%FCS(刺激)対照である。残りの棒は漸増濃度のカンスタチンの投与を示す。C−PAE細胞において、染料の取り込みは約0.625〜1.25μg/mlのカンスタチン処置濃度において、未刺激の細胞で観察された水準まで低下した。図13Dは、非内皮細胞HEK293(白色棒)およびPC−3(直行斜線棒)に対するカンスタチンの種々の濃度の作用を示すヒストグラムである。OD655における吸光度はy軸に示す。「0.1%」は0.1%FCS処置(未刺激)対照を示し、「10%」は10%FCS(刺激)対照である。棒は655nmにおける相対吸光度の平均±処置濃度当たり8ウェルの標準誤差を示す。
10%血清刺激内皮細胞の用量依存的抑制が、約0.5μg/mlのED50で検出された(図13Aおよび13C)。カンスタチン用量40mg/mlまででは、腎癌細胞(786−O)、前立腺癌細胞(PC−3)またはヒト胚性腎細胞(HEK293)の増殖に対しては有意な作用は観察されなかった(図13Bおよび13D)。この内皮細胞の特異性は、カンスタチンが特に効果的な抗血管形成剤であることを示している。
実施例17:カンスタチンは内皮細胞の遊走を抑制する
血管形成の過程において、内皮細胞は増殖するだけではなく遊走する。従って、内皮細胞の遊走に対するカンスタチンの作用を評価した。FBS誘導化学走性に対するカンスタチンおよびエンドスタチンの抑制作用は、ヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)に対し、ボイデンチャンバー試験(Boyden chamber assay)(Neuro−Probe,Inc.,Cabin John,Maryland,USA)を用いて試験した。HUVEC細胞を一晩、10%FBSおよび5ng/mlDilC18(3)リビング蛍光染色(Molecular Probes,Inc.,Eugene,Oregon,USA)を含有するM199(Life Technologies/Gobco BRL,Gaithesberg,Maryland,USA)培地中に増殖させた。トリプシン処理、洗浄および0.5%FBS含有M199中に細胞を希釈した後、カンスタチン(0.01または1.00mg/ml)の存在下または非存在下、60,000個の細胞を上側のチャンバーのウェルに播種した。2%FBSを含有するM199培地を化学走性物質として下側のチャンバーに入れた。細胞含有コンパートメントは、孔径8μmのポリカーボネートフィルター(Poretics Corp.,Livermore,California,USA)を用いて化学走性物質から分離した。チャンバーを37℃、5%COおよび湿度95%で4.5時間インキュベートした。非遊走細胞を廃棄し、上側のウェルをPBSで洗浄した後、フィルターをプラスチック刃で掻き取り、PBS中4%ホルムアルデヒドで固定し、そしてスライドガラス上においた。蛍光高倍率視野を用いて、画像処理ソフトウエアPMIS(Roper Scientific/Photometrics,Tucson,Arizona,USA)により操作されたデジタルSenSysTMカメラにより、数種の独立した均質な画像を記録した細胞を、OPTIMIZE 6.0ソフトウエアプログラム(Media Cybernetics,Rochester,NY)を用いて計数した(Klemke,R.L.ら,1994,J.Cell.Biol.127:859−66)。
結果は図14に示すとおりであり、これはVEGFなし(VEGFまたは血清なし)、およびVEGF(1%FCSおよび10ng/ml VEGF)細胞の処置について、そして、0.01カンスタチン(1%FCSおよび10ng/ml VEGFおよび0.01μg/mlカンスタチン)および1.0μg/mlカンスタチン(1%FCSおよび10ng/ml VEGFおよび1μg/mlカンスタチン)の処置について、一視野当たりの遊走内皮細胞数(y軸)を示す棒グラフである。
カンスタチンはHUVECの遊走を抑制し、10ng/mlにおいて有意な作用が観察された。内皮細胞の増殖および遊走の双方を抑制するカンスタチンの能力は、それが血管形成の1より多くの工程において作用していることを示唆している。あるいは、カンスタチンは、増殖および遊走の両方に影響を及ぼしうる刺激内皮細胞に対するアポトーシスシグナルとして機能している可能性がある。アポトーシスの誘導は、アンジオスタチンおよび他の抗血管形成分子において報告されている(O’Reilly,M.S.ら,1994,Cell 79:315−28;Lucas,R.ら,1998,Blood 92:4730−41)。
実施例18:カンスタチンは内皮管腔形成を抑制する
カンスタチンの抗血管形成能力の第1の試験として、肉腫腫瘍から誘導したマウス基底膜タンパク質の固体ゲルであるマトリゲルにおける、内皮細胞による管腔形成を妨害する能力について評価した。マウス大動脈内皮細胞をマトリゲル上で増殖させると、それらは急速に整列し、中空の管様の構造を形成する(Grant,D.S.ら,1994,Pathol.Res.Pract.190:854−63)。
マトリゲル(Collaborative Biomedical Products,Bedford,Massachusetts,USA)(320ml)を24穴プレートの各ウェルに添加し、重合体化させた(Grant,D.S.ら,上記)。抗生物質を含有しないEGM−2培地(Clonetics Corporation,San Diego,California,USA)中の25,000個のマウス大動脈内皮細胞(MAE)の懸濁液をマトリゲルコーティングした各ウェルに移した。細胞は、漸増濃度のカンスタチン、BSA、滅菌PBSまたはα5−NC1で処置した。全試験とも3組で行った。細胞を37℃で24〜48時間インキュベートし、CK2オリンパス顕微鏡(3.3対眼、10×対物)で観察した。次に細胞を400DKコーティングTMAXフィルム(Kodak)で撮影した。細胞をdiff−quik 固定剤(Sigma Chemical Compoany,St.Louis,Missouri,USA)で染色し、再度撮影した(Grant,D.S.ら,1994,Pathol.Res.Pract.190:854−63)。視野を観察し、管腔を計数して平均した。
結果は図15に示すとおりであり、これは、BSA(□)、カンスタチン(■)およびα5NC1(○)の種々の処置の下での対照(PBS処置ウェル)の管腔形成のパーセントとして、管腔形成の量(y軸)を示すグラフである。垂直の棒は平均の標準誤差を示す。この結果によれば、カンスタチンは対照と比較して内皮管腔形成を大きく低減した。
293細胞内に生成したカンスタチンは、用量依存的な態様で内皮管腔形成を選択的に抑制し、カンスタチンタンパク質の1mg添加によりほぼ完全な管形成抑制が観察された(図15)。対照タンパク質、ウシ血清アルブミン(BSA)およびIV型コラーゲンα5鎖のNC1ドメインのいずれも内皮管腔形成に対する作用を有さず、この試験におけるカンスタチンの抑制作用はカンスタチンに特有であり、添加したタンパク質含量によるものではないことを示している。これらの結果は、カンスタチンが抗血管形成剤であることを示している。
実施例19:ERK活性化に対するカンスタチンの作用
カンスタチンの抗増殖および抗遊走活性に関与する分子機序を更に理解するために、20%ウシ胎児血清および内皮有糸分裂促進物質により誘導されたERK(細胞外シグナル調節キナーゼ)活性化に対するカンスタチンの作用を調べた。HUVEC細胞を20%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、100μg/mlヘパリンおよび50μg/ml内皮有糸分裂促進物質(Biomedical Technologies,Inc.,Cambridge,Massachusetts,USA)を添加したマッコイ培地中で一晩培養した。翌日細胞を洗浄し、低血清培地(1%ペニシリン/ストレプトマイシン、100μg/mlヘパリンおよび5%FBSを添加したマッコイ培地)中で4時間増殖させた。4時間後、培地を20μg/mlカンスタチン添加または無添加の新しい低血清培地と交換した。1時間後、血清濃度を20%に調節し、内皮有糸分裂促進物質を終濃度50μg/mlで添加した。0、5、10、25および40分の時点で、細胞をPBSで洗浄し、受動的細胞溶解ミックス(passive lysis mix)(Promega,Madison,Wisconsin,USA)+ロイペプチン、PMSF、NaF、NaVO、β−グリセロホスフェートおよびピロリン酸ナトリウムを用いて細胞溶解した。溶解物のタンパク質濃度を定量化し、12%SDS−PAGEゲル上で分離した。リン酸化ERKのウエスタンブロットは、血清処置および血清+カンスタチン処置のHUVECについて、抗リン酸化ERK抗体(New England Biolabs,Beverly,Massachusetts,USA)を用いて行った。HUVECにおけるERKリン酸化は、増殖因子刺激後5分以内に顕著になった。カンスタチン20μg/mlの処置によりERKの早期活性化は変化しなかった。ERKリン酸化の低下がより遅い時点で観察され、これは数種の有糸分裂促進物質について観察された結果と合致した特徴であった(Gupta,K.ら,1999,Exp.Cell.Res.247:495−504;Pedram,A.ら,1998,J.Biol.Chem.273:26722−8)。これらの観察結果は、カンスタチンがVEGFまたはbFGF受容体により活性化される近傍の事象を抑制することにより主に機能するわけではないことを示している。
実施例20:カンスタチンは内皮細胞においてアポトーシスを誘導する
アネキシンV−FITC標識。カンスタチンの作用の潜在的様式としてアポトーシスを確立するために、アネキシンV−FITCを用いて、外在化したホスファチジルセリン(PS)を標識し、アポトーシス細胞を調べた。0.5×10個のC−PAE細胞、PC−3、786−OおよびHEK293細胞を一晩、10%FBSを添加したDMEM(BioWhittaker,Walkersville,Maryland,USA)中で6穴の組織培養プレートの各ウェルに添加した。翌日、新鮮培地を40ng/ml TNFα(陽性対照)または15μg/mlカンスタチンと共に全ウェルに添加した。対照ウェルには等容量のPBSを添加した。24時間投与の後、脱着した細胞を含む培地を収集し、接着細胞をトリプシン処理し、脱着細胞とあわせ、3000×gで遠心分離した。細胞を洗浄し、そしてホスファチジルセリン外在化(早期のアポトーシスの指標)を、FITC標識アネキシンV(Clontech,Palo Alto,California,USA)を用いて製造元の指示通り標識することにより測定した。アネキシンV−FITC標識細胞をFACStar Plusフローサイトメーター(Becton−Dickinson,Waltham,Massathusetts,USA)を用いて計数した。各処置につき15,000個の細胞を計数し、リストモード(listmode)で保存した。次に、このデータを標準Cell Questソフトウエア(Becton−Dickinson,Waltham,Massachusetts,USA)を用いて分析した。
カンスタチンは内皮細胞のアポトーシスを特異的に誘導することが分かり、PC−3、786−OまたはHEK293細胞系統に有意な作用は観察されなかった。
FLIPタンパク質濃度。HUVEC細胞を上記のERK試験の場合と同様に処理し、0、1、3、6および24時間の時点で採取した。血清処置HUVEC細胞および血清+カンスタチン処置HUVEC細胞におけるFLIPタンパク質濃度を、抗−FLIP抗体(Sata,M.ら,1998,J.Biol.Chem.273:33103−6)を用いて定量し、そしてビンキュリンの濃度を用いてタンパク質の担持量について規格化し、そして0時間の時点のパーセントとしてプロットした。
結果は図16に示すとおりであり、これは、経時的(x軸)にt=0において存在したタンパク質のパーセントとしてのビンキュリン濃度の関数としてのFLIPタンパク質濃度(y軸)のグラフである。カンスタチン処置後1時間においてFLIPタンパク質濃度の低減が認められ、血清刺激後24時間まで持続し、カンスタチンのアポトーシス作用がFas活性化アポトーシス阻害因子FLIPにより媒介されている可能性があることを示していた。内皮細胞はFasおよびFasLの両方を構成的に発現するため(Sata,M.ら,上記)、FLIPのこの低下がカスパーゼ活性化を誘発し、末端アポトーシスシグナルを供給すると考えられる。
実施例21:カンスタチンはインビボで腫瘍増殖を抑制する
ヒト前立腺癌細胞(PC−3細胞)を培養物から採取し、滅菌PBS中200万個の細胞を7〜9週齢の雄性SCIDマウスに皮下注射した。腫瘍を約4週間増殖させた後、動物を4匹の群に分割した。実験群には、PBS 0.1mlの総容量中10mg/mlの用量でカンスタチンを毎日腹腔内注射した。対照には毎日等容量のPBSを投与した。投与開始時(第0日)に、腫瘍の大きさは対照マウスで88mm〜135mmであり、カンスタチン処置マウスで108mm〜149mmであった。各群はマウス5匹とした。所定日における計算された腫瘍容量を処置第1日の容量で割り、分数値の腫瘍容量(V/V)を求めた。結果は図17Aに示すとおりであり、これは投与日(x軸)にわたりプロットした分数値腫瘍容量(y軸)±標準誤差を示すグラフである。カンスタチン処置(■)腫瘍は、対照(□)と比較して僅かにのみ増大した。
第2のPC−3実験においては、PC−3細胞を培養物から採取し、300万個の細胞を7〜9週齢の無胸腺ヌードマウスに注射し、そして腫瘍を約2週間増殖させた後、動物を4匹の群に分割した。実験群(4匹)には、PBS 0.2mlの総容量中3mg/mlの用量でカンスタチン、または同じ容量のPBS中8mg/mlの用量でエンドスタチンを毎日腹腔内注射した。対照(4匹)には毎日等容量のPBSを投与した。腫瘍の長さおよび幅をバーニヤカリパス(Vernier caliper)を用いて測定し、腫瘍容量を標準的な式:長さ×幅×0.52を用いて計算した。腫瘍の容量は26mm〜73mmであり、所定日における計算された腫瘍容量を処置第1日の容量で割り、分数値の腫瘍容量(V/V)を上記と同様に求めた。結果は図17Bに示すとおりであり、これは、投与日(x軸)にわたりプロットした分数値腫瘍容量(y軸)±標準誤差を示すグラフである。対照(□)と比較して、カンスタチン投与(■)腫瘍は僅かにのみ増大し、結果はエンドスタチン(○)で得られたものと同等であった。
腎細胞癌の細胞モデルについては、200万個の786−O細胞を7〜9週齢の無胸腺ヌードマウスに注射した。腫瘍を約100mmまたは約700mmとなるまで増殖させた。各群6匹とした。対照には同じ容量のPBSを与えた。結果は図17C(100mm腫瘍)および17D(700mm腫瘍)に示す。両方の群において、カンスタチン投与(■)腫瘍は対照(□)と比較して実際に収縮していた。
大腸菌中に生成したカンスタチンは、プラセボ処置マウスと比較して、小型(100mm、図17C)および大型(700mm、図17D)の腎細胞癌(786−O)の腫瘍の増殖を、それぞれ4倍および3倍抑制した。重症免疫不全(SCID)マウスにおいて樹立されたヒト前立腺(PC−3)腫瘍について、10mg/kgのカンスタチンは、ベヒクルのみ注射したマウスの55%(1.8倍低値)までに分数値腫瘍容量を維持した。無胸腺(nu/nu)マウスにおいては、処置腫瘍は、プラセボ処置マウスより2.4倍低値であった。腫瘍の大きさの低下はCD−31陽性血管形成における低下と合致していた(後述する実施例29参照)。無胸腺マウスにおいては、カンスタチンおよびエンドスタチンの両方ともより低用量を用いたが、カンスタチン3mg/kgはエンドスタチン8mg/kgと同じ抑制作用を有し、エンドスタチン5mg/kgの用量は腫瘍の増殖を抑制できなかった。すべてのインビボの試験において、マウスは外見上は健康であり、消耗の兆候はなく、処置中に死亡したマウスもなかった。
実施例22:カンスタチン処置マウスに対するCD31免疫組織化学
インビボの腫瘍の大きさの減少は、これらの腫瘍の血管形成に対する抑制的作用を示唆している。異種移植片腫瘍試験の終了時に、マウスを屠殺し、腫瘍を摘出した。腫瘍血管を検出するために、抗CD31抗体アルカリホスファターゼコンジュゲート免疫細胞化学実験をパラフィン包埋腫瘍切片について行った。摘出した腫瘍をメスで切開して約3〜4mmの厚みの数片に分け、次に24時間4%パラホルムアルデヒド中に固定した。次に組織をPBSに移して24時間保持し、その後脱水し、パラフィン包埋した。パラフィン包埋の後、3mmの組織切片を切り出して搭載した。切片を脱パラフィンし、再水和し、そして300mg/mlのプロテアーゼXXIV(Sigma Chemical CO.,St.Louis,Missouri,USA)を37℃で5分間、予備処置した。100%エタノールを添加して消化を停止した。切片を風乾し、再水和し、そして10%ウサギ血清でブロッキングした。次に、スライドを1:50希釈度のラット抗マウスCD−31モノクローナル抗体(PharMingen,San Diego,California,USA)と共に一晩4℃でインキュベートし、その後、各々1:50希釈度のウサギ抗ラット免疫グロブリン(DAKO)およびラットAPAAP(DAKO)中、37℃で30分間連続2回のインキュベートを行った。着色反応は新しいフクシンを用いて行った。切片はヘマトキシリンで対比染色した。
カンスタチン処置腫瘍の腫瘍の大きさの低下は、CD31陽性血管形成の低下と合致していることが分かった。
実施例23:大腸菌におけるツムスタチンおよびツムスタチン突然変異体の組換え生成
IV型コラーゲンのNC1ドメインのα3鎖に関するヌクレオチド(配列番号9)およびアミノ酸(配列番号10)の配列を、図18Aおよび18Bにそれぞれ示す。ツムスタチンをコードする配列をα3NC1(IV)/pDSベクターからPCRにより増幅(Neilson,E.G.ら,1993,J.Bio.Chem.268:8402−5;GenBank受託番号M92993(Quinones,S.ら,1994),M81379(Turner,N.ら,1994)およびX80031(Leionin,A.K.およびMariyama,M.ら,1998))し、その際、フォワードプライマーとして5’−CGG GAT CCG GGT TTG AAA GGA AAA CGT−3’(配列番号11)およびリバースプライマーとして5’−CCC AAG CTT TCA GTG TCT TTT CTT CAT−3’(配列番号12)を用いた。得られたcDNAフラグメントをBamHIおよびHindIIIで消化し、予備消化しておいたpET22b(+)にライゲーションした(Novagen,Madison,Wisconsin,USA)。このコンストラクトを図19に示す。このライゲーションは、ツムスタチンをpelBリーダー配列の下流に、そしてそれとインフレームに位置させ、これにより可溶性タンパク質の原形質周囲の局在化および発現が可能となった。別のベクター配列をアミノ酸MDIGINSD(配列番号13)をコードするタンパク質に付加した。配列の3’末端をポリヒスチジンタグ配列にインフレームにライゲーションした。cDNAの3’末端およびhis−tagの間の別のベクター配列は、アミノ酸KLAAALE(配列番号14)をコードしていた。陽性クローンを両鎖について配列決定した。ツムスタチンをコードするプラスミドコンストラクトを、まず大腸菌HMS174(Novagen,Madison,Wisconsin,USA)に形質転換し、次に発現のためにBL21(Novagen,Madison,Wisconsin,USA)に形質転換した。一晩培養した細菌培養物を用いて、LB培地(Fisher Scientific,Pittsburgh,Pennsylvania,USA)500ml培養物に接種した。この培養物を、細胞のOD600が0.6に達するまで約4時間増殖させた。次に終濃度1mMとなるようにIPTGを添加することにより、タンパク質の発現を誘導した。2時間の誘導の後、5000×gで遠心分離することにより細胞を採取し、6Mグアニジン、0.1M NaHPO、0.01M Tris−HCl、pH8.0中に再懸濁した。再懸濁した細胞を短時間超音波処理し、30分間12,000×gで遠心分離した。上澄み画分を5mlのNi−NTAアガロースカラム(Qiagen,Hilden,Germany)に4〜6回、2ml/分の速度で通過させた。非特異的結合タンパク質を8M尿素、0.1M NaHPO、0.01M Tris−HCl、pH8.0中の10mMおよび20mMのイミダゾールで洗浄することにより除去した。ツムスタチンタンパク質を8M尿素、0.1M NaHPO、0.01M Tris−HCl、pH8.0中の漸増濃度のイミダゾール(50mM、125mMおよび250mM)を用いてカラムから溶離させた。溶離したタンパク質を4℃でPBSに対して2回透析した。透析の間、総タンパク質のうちの一部が析出した。透析したタンパク質を収集し、約3500×gで遠心分離し、不溶性(ペレット)および可溶性(上澄み)の画分に分離した。
大腸菌発現ツムスタチンは主に可溶性タンパク質として単離され、そしてSDS−PAGEによれば31kDaにおける単量体バンドであった。別の3kDaがポリリンカーおよびヒスチジンタグから生じていた。このバンドを含む溶離した画分を後の実験に用いた。各画分のタンパク質濃度はBCA試験(Pierce Chemical Co.,Rockford,Illinois,USA)および定量的SDS−PAGE分析により、走査密度計を用いて測定した。還元条件下、非還元条件下においてツムスタチンの2量体を示していた約60kDaのバンドは、31kDaの単一のバンドに分解された。タンパク質の総収量はリットル当たり約5mgであった。
53N末端アミノ酸を欠失した組換えトランケーションされたツムスタチン(ツムスタチン−N53)を大腸菌中で生成し、前述したとおり精製して別の突然変異体を得た(Kalluri,R.ら,1996,J.Biol.Chem.271:9062−8)。この突然変異体は図20に示すとおりであり、これは、α3(IV)NC1単量体内のトランケーションされたアミノ酸の位置を示す複合的ダイアグラムである。黒丸は、「ツムスタチン−N53」を生成するためにツムスタチンから欠失させたN末端アミノ酸残基に相当する(Kalluri,R.ら,1996,J.Biol.Chem.271:9062−8)。短い棒でマークしたジスルフィド結合が、α1(IV)NC1およびα2(IV)NC1中に存在するとおり配列している(Siebold,B.ら,1988,Eur.J.Biochem.176:617−24)。明確化するために、2つの可能なジスルフィド配置のうちの一方のみを示す。
ヒトα3(IV)NC1に対して作成したウサギ抗体は、以前に報告されている通り調製した(Kalluri,R.ら,1997,J.Clin.Invest.99:2470−8)。モノクローナルラット抗マウスCD31(血小板内皮細胞接着分子、PECAM−1)抗体を(PharMingen,San Diego,California,USA)から購入した。FITCコンジュゲートヤギ抗ラットIgG抗体、FITCコンジュゲートヤギ抗ウサギIgG抗体およびセイヨウワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートしたヤギ抗ウサギIgG抗体は、Sigma Chemicals(St.Louis,Missouri,USA)から購入した。
上記の通り得られた濃縮上澄みをSDS−PAGEで分析し、以前に報告されている通り(Kalluri,R.ら,1996,J.Biol.Chem.271:9062−8)、ツムスタチン発現に関してイムノブロッティングした。一次元SDS−PAGEを、12%分離ゲルおよび不連続緩衝系を用いて実施した。分離したタンパク質をニトロセルロース膜に移し、室温で30分間2%BSAでブロッキングした。残存する結合部位をブロッキングした後、膜を洗浄緩衝液で十分洗浄し、1%BSA含有PBS中1:1000の希釈度で一次抗体と共にインキュベートした。インキュベーションは振とう器で一晩、室温で行った。次にブロットを洗浄緩衝液で十分洗浄し、振とう器を用いて室温で3時間、セイヨウワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートした二次抗体と共にインキュベートした。ブロットを再度十分洗浄し、そして基質(0.01%塩化コバルトおよびニッケルアンモニウムを含有する0.05Mリン酸塩緩衝液中のジアミノベンジジン)を添加し、室温で10分間インキュベートした。次に、基質溶液を注ぎ出し、過酸化水素を含有する基質緩衝液を添加した。バンドを展開した後、蒸留水で反応を停止し、ブロットを乾燥させた。31kDaの単一のバンドが観察された。
実施例24:293胚性腎細胞におけるツムスタチンの発現
ヒトツムスタチンもまた、pcDNA3.1真核細胞ベクターを用いて、293胚性腎細胞中の分泌可溶性タンパク質として生成した。この組換えタンパク質(精製または検出のタグを有さない)はアフィニティークロマトグラフィーで単離し、そしてSDS−PAGEおよびイムノブロット分析により、主ピークとして純粋な単量体型が検出された。
α3(IV)NC1(Neilson,E.G.ら,1993,J.Biol.Chem.268:8402−5)を含有するpDSプラスミドを用いて、pcDNA3.1真核細胞発現ベクター(InVitrogen,San Diego,California,USA)内にインフレームにリーダーシグナル配列が付加されるような方法で、ツムスタチンをPCR増幅した。完全長α3(IV)の5’末端からのリーダー配列をNC1ドメインにクローニングすることにより、培地中へのタンパク質の分泌を可能とした。ツムスタチン含有組換えベクターは、フランキングプライマーを用いて両方の鎖に対し配列決定した。エラーなしのcDNAクローンを更に精製し、タンパク質の発現を確認するためのインビトロの翻訳試験に用いた。ツムスタチン含有プラスミドおよび対照のプラスミドを用いて、塩化カルシウム法により293細胞をトランスフェクトした(Sambrook,J.ら,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,USA,pps.16.32−16.40)。トランスフェクトされたクローンをゲネチシン抗生物質処理により選択した(Life Technologies/Gibco BRL,Gaithersburg,Maryland,USA)。細胞死が観察されなくなるまで、抗生物質の存在下、3週間細胞を継代した。次にクローンをT−225フラスコに植え替え、コンフルエントになるまで増殖させた。次に上澄みを収集し、アミコンの濃縮器(Amicon,Inc.,Beverly,Massachusetts,USA)を用いて濃縮した。濃縮した上澄みをSDS−PAGE、イムノブロッティングおよびELISAで分析してツムスタチンの発現を調べた。上澄みにおける強力な結合がELISAにより検出された。
ツムスタチン含有上澄みをアフィニティークロマトグラフィーに付し、抗ツムスタチンおよび抗−6−ヒスチジンタグ抗体の双方を用いて免疫検出した(Gunwar,S.ら, 1991,J.Biol.Chem.266:15318−24)。ツムスタチン抗体に対して免疫反応性の約31kDaの単量体を含む主ピークが同定された。
実施例25:ツムスタチンは内皮細胞の増殖を抑制する
C−PAE細胞に対するツムスタチンの抗増殖作用を大腸菌産生可溶性タンパク質を用いたH−チミジン取り込みにより調べた。
細胞系統および培養。786−O(腎明細胞癌系統)、PC−3(ヒト前立腺癌細胞系統)、C−PAE(ウシ肺動脈内皮細胞系統)、HPE(ヒト一次前立腺内皮細胞)、HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)、MAE(マウス大動脈内皮細胞系統)をすべてAmerican Type Culture Collectionから入手した。786−OおよびC−PAEの細胞系統は、10%ウシ胎児血清(FCS)、100単位/mlペニシリン、および100mg/mlストレプトマイシンを添加したDMEM(Life Technologies/Gibco BRL,Gaithersburg,Maryland,USA)中に、HPE細胞は、ウシ下垂体抽出液および組換えヒトEGF(Life Technologies/Gibco BRL,Gaithersburg,Maryland,USA)を添加したケラチノサイト−SFMに、そしてHUVECおよびMAE細胞は、EGM−2(Clonetics Corporation,San Diego,California,USA)中に維持した。
増殖試験。 C−PAE細胞は、10%FCSを含有するDMEM中でコンフルエントとなるまで増殖させ、48時間接触抑制させ続けた。C−PAE細胞は第2および第4継代の間で使用した。786−OおよびPC−3細胞は、本実験では非内皮細胞対照として使用した。5分間、37℃でトリプシン処理(Life Technologies/Gibco BRL,Gaithersburg,Maryland,USA)することにより細胞を回収した。0.1%FCSを含有するDMEM中の12,500個の細胞の懸濁液を、10μg/mlのフィブロネクチンでコーティングした24穴のプレートの各ウェルに添加した。細胞を5%COおよび湿度95%、37℃で24時間インキュベートした。培地を除去し、20%FCSを含有するDMEMと交換した。未刺激の対照は0.1%FCSと共にインキュベートした。細胞を0.01〜10mg/mlの範囲の種々の濃度のツムスタチンで処理した。全ウェルに対し、投与開始12時間後にH−チミジン1μキュリーを添加した。24時間後、培地を除去し、ウェルをPBSで3回洗浄した。細胞を1N NaOHで抽出し、ScintiVerse II(Fisher Scientific,Pittsburgh,Pennsylvania,USA)溶液を4ml含有するシンチレーションバイアルに添加した。チミジンの取り込みはシンチレーションカウンターを用いて測定した。
メチレンブルー染色試験においては、7000個の細胞を96穴プレートの各ウェルに入れ、上記の通り処置した。次に細胞をOliverら(Oliver,M.H.ら,1989,J.Cell.Science 92:513−8)の方法を用いて計数した。48時間後、全ウェルとも100μlのPBSで洗浄し、細胞を中性緩衝食塩水(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Missouri,USA)中10%ホルマリンで固定した。次に細胞を0.01Mホウ酸塩緩衝液、pH8.5中1%メチレンブルー(Sigma)を用いて染色した。ウェルを0.01Mホウ酸塩緩衝液で洗浄し、メチレンブルーを0.1N HCl/エタノールで細胞から抽出し、そして655nmでマイクロプレートリーダー(Bio−Rad、Hercules,California,USA)を用いて吸光度を測定した。終濃度5μg/mlのポリミキシンB(Sigma)を用いてエンドトキシンを不活性化した(Liu,S.ら,Clin.Biochem.30:455−63)。
結果は図21A、21Bおよび21Cに示すとおりであり、これらは、種々のツムスタチン(x軸)を投与した場合のC−PAE細胞(図21A)、PC−3細胞(図21B)および786−O細胞(図21C)に関するH−チミジン取り込み(y軸)を示すヒストグラムである。全群とも3組の試料の結果である。ツムスタチンは、用量依存的な態様で20%FCS刺激H−チミジン取り込みを著しく抑制し、ED50は約0.01mg/mlであった(図21A)。また、20mg/mlまでのツムスタチン用量においてさえも、前立腺癌細胞(PC−3)または腎癌細胞(786−O)では有意な抗増殖作用は観察されなかった(図21Bおよび21C)。ツムスタチン処置(0.1〜10mg/ml)群および対照におけるH−チミジン取り込みの平均値の間の差は有意であった(p<0.05)。PC−3細胞または786−O細胞をツムスタチンで処置した場合、抑制作用は観察されなかった(図21B、21C)。それぞれの棒は3組のウェルの平均±SEを示す。この実験は3回反復した。アスタリスクを付した棒は、片側スチューデントt検定においてp<0.05であり、有意なものであった。
実施例26:競合増殖試験
C−PAE細胞は、内皮細胞増殖試験に関して上記の通り、96穴プレート内にプレーティングした。終濃度0.1μg/mlのツムスタチンを室温で30分間、ヒトαβタンパク質(CHEMICON International,Temecula,California,USA)の種々の濃度(0、0.008、0.08、0.8、1.6および2.4μg/ml)と共にインキュベートした。次にこの混合物をウェルに添加し、48時間インキュベートした。次に内皮細胞増殖試験に関して上記の通り、メチレンブルー染色試験を用いて増殖試験を行った。
結果は図22に示すとおりであり、これは、C−PAE細胞による染料の取り込みに対する漸増量のαβと組み合わせた0.1μg/mlのツムスタチンの作用をx軸に示すヒストグラムである。OD655の吸光度はy軸に示す。「0.1%FCS」は0.1%FCS処置(未刺激)対照を、そして「20%FCS」は20%FCS処置(刺激)対照を示す。残りの棒は、αβ単独の対照、およびツムスタチン+漸増量のαβの処置を示す。各棒は、3組のウェルの平均±平均の標準誤差を示す。実験は3回反復した。アスタリスクは片側スチューデントt検定におけるp<0.05を示す。
上記の通り、ツムスタチンは通常は用量依存性の態様で細胞の増殖を抑制する。しかしながら、αβインテグリンタンパク質を添加すると、ツムスタチンの抗増殖作用はαβタンパク質の漸増濃度に用量依存的な態様で逆転し、内皮細胞増殖を抑制するために使用可能なツムスタチンをαβインテグリンタンパク質が効果的に「飽和(saturating)」させていることが示された。2.4μg/ml(3倍モル過剰)のαβは43.1%までツムスタチン誘導抗増殖作用を著しく逆転させた。αβ単独の処置では内皮細胞増殖の抑制は起こらなかった。
実施例27:ツムスタチンは内皮細胞のアポトーシスを誘導する
アネキシンV−FITC試験。アポトーシスの早期の段階においては、細胞膜の内表面から外部への膜リン脂質PSの転移が観察される(van Engeland,M.ら,1998,Cytometry 31: 1−9;Zhang,G.ら,1997,Biotechniques 23:525−31;Koopman,G.ら,1994,Blood 84:1415−20)。外在化したPSは、PSに対する天然の高い結合親和性を有するアネキシンVのFITCコンジュゲートによる染色により検出することができる(van Engeland、上記)。従って、ツムスタチン処置による内皮細胞のアポトーシスは、アネキシンV−FITC標識を用いて評価した。
C−PAE細胞(ウェル当たり0.5×10)を10%FCS添加DMEM中6穴プレートに播種した。翌日、10%FCSを含有する新しい培地を80ng/mlのTNF−α(陽性対照)または0.02〜20μg/mlの範囲のツムスタチンと共に添加した。対照ウェルには等容量のPBSを添加した。18時間投与の後、浮遊した細胞を含む培地を収集し、接着細胞をトリプシン処理し、浮遊細胞とあわせて3000×gで遠心分離した。次に細胞をPBSで洗浄し、そして結合緩衝液(10mM HEPES/NaOH、pH7.4、140mM NaCl、2.5mM CaCl)中に再懸濁した。アネキシンV−FITC(Clontech,Palo Alto,California,USA)を終濃度150ng/mlで添加し、細胞を10分間暗所でインキュベートした。細胞をPBS中で再度洗浄し、結合緩衝液中に再懸濁した。アネキシンV−FITC標識細胞をFACStar Plusフローサイトメーター(Becton−Dickinson,Waltham,Massathusetts,USA)を用いて計数した。各処置につき、15,000個の細胞を計数し、リストモードで保存した。次にこのデータを標準Cell Questソフトウエア(Becton−Dickinson,Waltham,Massachusetts,USA)を用いて分析した。
20μg/mlのツムスタチンは、18時間後にアネキシン蛍光ピークの顕著なシフトを示した。蛍光強度のシフトは、20μg/mlのツムスタチンと陽性対照TNF−α(80ng/ml)で同様であった。2μg/mlのツムスタチンはまた、アネキシン蛍光強度の穏やかなシフトを示したが、0.2μg/ml未満の濃度はアネキシンV陽性を示さなかった。このピーク強度のシフトは、非内皮細胞(PC−3)を使用した場合には観察されなかった。
ツムスタチンはまた、位相差顕微鏡によりモニタリングしたところ、C−PAE細胞の細胞形態を改変した。フィブロネクチンコーティングプレート上で24時間、10%FCSの存在下、ツムスタチン20μg/mlを細胞に投与した後、アポトーシス細胞の典型的な形態学的特徴である、膜の泡状化、原形質の萎縮および染色質の凝縮が観察された。対照ウェルにおいては、細胞は未損傷の形態を示していた。
カスパーゼ−3試験。カスパーゼ−3(CPP32)は、アポトーシスの早期の段階で活性化される細胞内プロテアーゼであり、構造およびDNA修復のタンパク質を分解することにより細胞の崩壊を開始させる(Casciola−Rosen,L.ら,1996,J.Exp.Med.183:1957−64;Salvesen,G.S.ら,1997,Cell 91:443−6)。カスパーゼ−3のプロテアーゼ活性は、標識された基質から分離した発色団(p−ニトロアニリド)の検出により分光光度計を用いて測定した(DEVD−pNA)。
C−PAEまたはPC−3細胞(ウェル当たり0.5×10)を10%FCS添加DMEM中、フィブロネクチン(10μg/ml)で予備コーティングした6穴プレートに入れ、一晩インキュベートした。翌日、2%FCSを含有するDMEMと交換し、37℃で一晩インキュベートした。次に細胞を、2%FCSを添加してTNF−α(80ng/ml、陽性対照)またはツムスタチン(10μg/ml)をも含有するDMEM中のbFGF(3ng/ml)で刺激し、そして24時間インキュベートした。対照細胞はPBS緩衝液で処置した。24時間後、上澄みの細胞を収集し、接着細胞をトリプシン処理し、上澄み細胞と合わせた。細胞を計数し、細胞溶解緩衝液(Clontech,Palo Alto,California,USA)中に4×10個細胞/mlの濃度で再懸濁した。プロトコルのその他の部分は製造元の指示に従った(Clontech,Palo Alto,California,USA)。カスパーゼ−3の特異的阻害剤であるDEVD−fmk(Asp−Glu−Val−Asp−フルオロメチルケトン)を用いて、試験の特異性を確認した。吸光度は、405nmにおいてマイクロプレートリーダー(BioRad,Hercules,California,USA)を用いて測定した。試験は各細胞型につき3回反復した。
結果は図23Aおよび23Bに示すとおりであり、これは種々の処置(x軸)の下でのC−PAE細胞(図23A)およびPC−3細胞(図23B)に関するOD405における吸光度の関数としてのカスパーゼ3活性の量(y軸)を示す一組のヒストグラムである。それぞれの棒は3組のウェルの平均±平均の標準誤差を示す。
20μg/mlのツムスタチンで処置したC−PAE細胞はカスパーゼ−3活性の1.6倍増強を示したのに対し、陽性対照のTNF−αは対照と比較して同等(1.7倍)の増強をもたらした。カスパーゼ−3の特異的阻害剤であるDEVD−fmkはプロテアーゼ活性を基線まで低下させ、測定された活性の増強はカスパーゼ−3に特異的であったことを示していた。非内皮細胞PC−3においては、対照とツムスタチン処置細胞との間にはカスパーゼ−3の活性に差はなかった。
実施例28:細胞接着試験
インテグリンサブユニットα〜α、βおよびαβインテグリンのブロッキング抗体の存在下における、ツムスタチンコーティングプレートへのHUVECの接着を試験した。本試験は、Sengerら(Senger,D.R.ら,1997,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:13612−7)の方法に従って、僅かな変更を加えながら行った。96穴プレートを37℃で一晩、10μg/mlの濃度のヒトツムスタチン、マウスラミニン−1、またはヒトIV型コラーゲン(Collaborative Biomedical Products,Bedford,Massachusetts,USA)のいずれかでコーティングした。次に0.5μg/mlの濃度のビトロネクチン(Collaborative Biomedical Products,Bedford,Massachusetts,USA)を用いてプレートをコーティングした。残りのタンパク質結合部位は、2時間PBS中BSA100μg/mlでブロッキングした(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Missouri,USA)。HUVEC細胞をEGM−2培地中サブコンフルエント(70〜80%)となるまで増殖させ、穏やかにトリプシン処理し、血清非含有の培地中に再懸濁した(1.5×105個細胞/ml)。細胞を10μg/mlのマウスIgG(対照)(Life Technologies/Gobco BRL,Gaithesberg,Maryland,USA)または抗体(ヒトβインテグリンへのマウスモノクローナル抗体(クローンP4C10)(Life Technologies/Gobco BRL,Gaithesberg,Maryland,USA);ヒトインテグリンα〜αに対するモノクローナル抗体(CHEMICON International,Temecula,California,USA);αβインテグリン(クローンLM609)(CHEMICON International)のいずれかと混合し、室温で穏やかに振とうしながら15分インキュベートした。次に100μlの細胞懸濁液を各ウェルに添加し、37℃で45分間インキュベートした。未結合の細胞を洗浄除去し、メチレンブルー染色の後に結合細胞数を計数した。C−PAE細胞は,上記の操作の後に分離実験に用いた。
結果を図24A〜24Dおよび図25に示す。図24A、24B、24Cおよび24Dは、インテグリンサブユニットα〜α、βまたはαβインテグリンブロッキング抗体の存在下におけるツムスタチン(図24A)、または対照であるIV型コラーゲン(図24B)、ビトロネクチン(図24C)およびラミニン−1(図24D)でコーティングされたプレートへのHUVEC細胞の結合を示す4種のヒストグラムのセットである。図25は、ツムスタチンコーティングプレートへのC−PAE細胞の結合を示すヒストグラムである。プレートのコーティングは各グラフの上部に記載し、インキュベートに使用した抗体は各グラフのx軸に示す。BSAコーティングプレートを陰性対照として使用した。
ツムスタチンコーティングHUVEC細胞の結合は、IgGコーティング対照プレートと比較して、抗−α、抗−βまたは抗−αβ抗体により著しくブロックされた。細胞の結合は抗−βと抗−αβ抗体を共に使用した場合に更に抑制された。αβ抗体は80%細胞の結合を抑制し、αまたはβ抗体は対照のIgG処置と比較して54%ブロックした。α抗体は僅かな抑制(20%)しか示さなかったが、サブユニットα〜αに対する抗体は細胞の結合をブロックしなかった。抗−αβ抗体とβ抗体を共に使用した場合に、細胞の結合は91%ブロックされた。
HUVEC細胞の代わりにツムスタチンコーティングプレート上でC−PAE細胞を用いた場合にも、同等の抑制が観察された。IV型コラーゲン、ビトロネクチンおよびラミニン−1でコーティングされたプレートも対照として使用した。αβおよびαβインテグリンはコラーゲンに結合する(Elices,M.J.ら,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9906−10;Ignatius,M.J.ら,1990,J.Cell.Biol.111:709−20)。IV型コラーゲンコーティングプレートへの細胞の結合は、対照IgGと共にインキュベートした細胞と比較して、抗体α(20%)、α(27%)およびβ(53%)に対する抗体により部分的に抑制された。αβインテグリンはビトロネクチンの受容体である(Hynes,R.O.ら,1992,Cell 69:11−25)。ビトロネクチンコーティングプレートへの細胞の結合はαβ抗体により61%抑制された。αβおよびαβインテグリンはラミニンに結合する(Wayner,E.A.ら,1988,J.Cell.Biol.107:1881−91;Sonnenberg,A.ら,1988,Nature 336:487−9)。抗−αおよび抗−α抗体は、それぞれ50%および89%、ラミニン−1コーティングプレートへの内皮細胞の結合をブロックした。ツムスタチンコーティングプレートへの細胞の結合(図25)は、IgG処置対照と比較して抗−β抗体または抗−αβ抗体により著しく抑制された。抗−β抗体と抗−αβ抗体を共に使用した場合は、細胞の結合は更に抑制された。
実施例29:ツムスタチンは内皮管腔形成を抑制する
マトリゲル(Collaborative Biomedical Product,Bedford,Massachusetts,USA)(320ml)を24穴プレートの各ウェルに添加し、重合体化させた(Grant,D.S.ら,1994,Pathol.Res.Pract.190:854−63)。抗生物質を含有しないEGM−2培地(Clonetics Corporation,San Diego,California,USA)中の25,000個のMAE細胞の懸濁液をマトリゲルコーティングした各ウェルに移した(Grant,D.S.ら,1994,Pathol.Res.Pract.190:854−63)。細胞を漸増濃度のツムスタチン、BSA、または7Sドメインのいずれかで処置した。対照の細胞は滅菌PBSと共にインキュベートした。全試験とも3組で行った。細胞を37℃で24〜48時間インキュベートし、CK2オリンパス顕微鏡(倍率3.3対眼、10×対物)で観察した。次に細胞を400DKコーティングTMAXフィルム(Kodak)で撮影した。細胞をdiff−quik固定剤(Sigma Chemical Compoany,St.Louis,Missouri,USA)で染色し、再度撮影した(Grant,D.S.ら,1994,Pathol.Res.Pract.190:854−63)。10個の視野を観察し、実験プロトコルを知らない検査者2人により管の数を計数し、平均した。
結果は図26に示すとおりである。マウス大動脈内皮細胞をマウス基底膜タンパク質の固体ゲルであるマトリゲル上で培養した場合、これらは急速に整列し、中空の管様の構造を形成する(Haralabopoulos,G.C.ら.,1994、Lab.Invest.71:575−82)。293細胞内で産生されたツムスタチンは、BSA対照と比較して用量依存的な態様でMAE細胞の内皮管腔形成を著しく抑制した(図26)。タンパク質1mg/mlの処置後の管腔形成のパーセントは、BSA 98.0±4.0、ツムスタチン 14.0±4.0であった。同様の結果が大腸菌産生ツムスタチンを用いた場合にも得られた。IV型コラーゲンの7Sドメイン(N末端非コラーゲン性ドメイン)は内皮管腔形成に対する作用を有さなかった。ツムスタチンによる最大抑制は、800〜1000ng/mlで得られた。ツムスタチン処置(●、0.1〜10mg/ml)および対照(BSA(□)、7Sドメイン(○))の平均のパーセント値の間の差は有意であった(p<0.05)。各点は3組のウェルの平均±SEを示す。この実験は3回反復した。アスタリスクを付したデータポイントは、片側スチューデントt検定におけるp<0.05の有意差を示す。十分に形成された管腔が7Sドメイン処置において観察された。0.8mg/mlツムスタチンで処置したMAE細胞は、管腔形成の低下を示していた。
新しい毛細管の形成に対するツムスタチンのインビボの作用を評価するために、マトリゲルプラグ試験を行った(Passaniti,A.ら,1992,Lab.Invest.67:519−29)。5〜6週齢の雄性C57/BL6マウス(Jackson Laboratories,Bar Harbor,Maine,USA)を入手した。マトリゲル(Collaborative Biomedical Product,Bedford,Massachusetts,USA)を4℃で一晩解凍した。C57/BL6マウスに注射する前に、20U/mlのヘパリン(Pierce Chemical Co.,Rockford,Illinois,USA)、150ng/mlのbFGF(R&D systems,Minneapolis,Minnesota,USA)および1mg/mlのツムスタチンと混合した。対照は、血管形成阻害因子で処置しなかった。マトリゲル混合物を21ゲージ針で皮下注射した。14日後、マウスを屠殺し、マトリゲルプラグをはずした。マトリゲルプラグを室温で4時間、PBS中4%パラホルムアルデヒド(PBS中)中に固定し、その後24時間PBSに切り替えた。プラグをパラフィン包埋し、切片化し、H&E染色した。切片を光学顕微鏡で観察し、10高倍率視野から血管数を計数し、平均した。全切片ともコード化し、試験プロトコルを知らない病理学者により観察された。
マトリックスをbFGFおよびヘパリンリンの存在下にて、大腸菌産生ツムスタチンの存在下または非存在下においた場合、血管数の67%低下が1mg/mlツムスタチン処置で観察された。高倍率視野当たりの血管数は、ツムスタチンで2.25±1.32、対照で7.50±2.17であった。それぞれの棒は、1群当たり5〜6匹のマウスの平均±SEを示す。ツムスタチン(1mg/ml)は、PBS処置した対照と比較してインビボの新血管形成を著しく抑制した。ツムスタチン処置動物と対照動物の平均パーセント値の間の差は有意であった(p<0.05)。ツムスタチン処置は、片側スチューデントt検定によればp<0.05で有意であった。
実施例30:ツムスタチンおよびツムスタチン突然変異体はインビボで腫瘍増殖を抑制する
500万個のPC−3細胞を収集し、7〜9週齢の雄性無胸腺ヌードマウスの背部に皮下注射した。腫瘍はバーニヤカリパス(Vernier calipers)を用いて測定し、腫瘍容量を標準的な式:幅×長さ×0.52を用いて計算した。腫瘍を約100mmまで増殖させ、次に動物を5または6匹の群に分割した。ツムスタチンまたはマウスエンドスタチンは、その該当する実験群に対し、滅菌PBS中10日間毎日(20mg/kg)腹腔内注射した。対照にはベヒクルを注射した(BSAまたはPBS)。腫瘍容量は、10日間にわたり2または3日おきに計算した。結果は図27Aに示すとおりであり、これは、PBS対照(□)、20mg/kgツムスタチン(●)および20mg/kgエンドスタチン(○)について、処置日数(x軸)に対するmm単位の腫瘍容量(y軸)を示すグラフである。大腸菌中で産生されたツムスタチンは、PC−3ヒト前立腺腫瘍の増殖を著しく抑制した(図27A)。20mg/kgのツムスタチンは、20mg/kgのエンドスタチンと同様に腫瘍増殖を抑制した(図27A)。腫瘍の増殖に対する有意な抑制作用は第10日に観察された(対照202.8±50.0mm、ツムスタチン82.9±25.2mm、エンドスタチン68.9±16.7mm)。ツムスタチンまたはエンドスタチンの毎日の腹腔内注射は、対照と比較した場合、ヒト前立腺癌細胞(PC−3)腫瘍の増殖を抑制した。本実験は腫瘍容量が100mm未満である場合に開始した。
マウスにおける別の樹立された原発腫瘍に対するツムスタチンの作用も試験した。200万個の786−O腎癌細胞を7〜9週齢の雄性無胸腺ヌードマウスの背部に皮下注射した。腫瘍を約600〜約700mmまで増殖させ、次に動物を6匹の群に分割した。ツムスタチンは、滅菌PBS中10日間毎日(6mg/kg)腹腔内注射した。対照にはBSAを注射した。結果は図27Bに示すとおりであり、これは、PBS対照(□)および6mg/kgツムスタチン(●)について、処置日数(x軸)に対するmm単位の腫瘍容量(y軸)を示すグラフである。大腸菌産生ツムスタチンは、BSA対照と比較して、786−Oヒト腎細胞癌の腫瘍増殖を6mg/kgにおいて抑制した(図27B)。腫瘍の増殖に対する有意な抑制作用は第10日に観察された(対照1096±179.7mm、ツムスタチン619±120.7mm)。ツムスタチンの毎日の腹腔内注射は、対照と比較した場合、ヒト腎細胞癌(786−O)の腫瘍増殖を抑制した。本実験は腫瘍容量が600〜700mmである場合に開始した。各時点は群当たり5〜6匹のマウスの平均±SEを示す。アスタリスクを付したデータポイントは、片側スチューデントt検定によりp<0.05で有意であった。
IV型コラーゲンのα3鎖のNC1ドメイン(α3(IV)NC1)の部分は、グッドパスチャー症候群の病原性エピトープである(Butkowski,R.J.ら,1987,J.Biol.Chem.262:7874−77;Saus,J.ら,1988,J.Biol.Chem.263:13374−80;Kalluri,R.ら,1991,J.Biol.Chem.266:24018−24)。グッドパスチャー症候群は、肺出血および/または急速に進行する糸球体腎炎を特徴とする自己免疫疾患である(Wilson,C.&F.Dixon,1986,The Kidney,W.B.Sanders Co.,Philadelphia,Pennsylvania,USA.pps.800−89;Hudson,B.G.ら,1993,J.Biol.Chem.268:16033−6)。これらの症状は、α3(IV)NC1に対する自己抗体の結合を介した糸球体および肺胞の基底膜の破壊により起こる(Wilson,1986,上記;Hudson,1993,上記)。数グループが、α3(IV)NC1上のグッドパスチャー自己抗原の位置をマッピングまたは予測する試みを行っており(Kalluri,R.ら,1995,J.Am.Soc.Nephrol.6:1178−85;Kalluri,R.ら,1996,J.Biol.Chem.271:9062−8;Levy, J.B.ら,1997,J.Am.Soc.Nephrol.8:1698−1705;Kefalides,N.A.ら,1993,Kidney Int.43:94−100;Quinones,S.ら,1992,J.Biol.Chem.267:19780−4(正誤表、J.Biol.Chem.269:17358);Betzer,K.O.ら,1999,J.Biol.Chem.274:11267−74)、N末端、C末端および中間部分の残基がエピトープ位置として報告されている。近年、最も可能性の高い疾患関連の病原性エピトープがN末端部分の最初の40アミノ酸内に同定され(Hellmark,T.ら,1999,Kidney Int.55:936−44)、そしてN末端40アミノ酸に更に限定された。病原性グッドパスチャー自己エピトープに相当する、N末端53アミノ酸を欠失したトランケーションされたツムスタチンを設計した(ツムスタチン−N53)。この突然変異タンパク質を以下の実験において使用した。
200万個の786−O腎癌細胞を7〜9週齢の雄性無胸腺ヌードマウスの背部に皮下注射した。腫瘍を約100〜約150mmまで増殖させた。次にマウスを5匹の群に分割し、10日間、53N末端アミノ酸を欠失した大腸菌産生トランケーションツムスタチン20mg/kgを腹腔内注射した(Kalluri,R.ら,1996,J.Biol.Chem.271:9062−8)。対照にはPBSを注射した。結果は図28に示すとおりであり、これは、対照マウス(□)およびツムスタチン突然変異体N53処置マウス(●)について、処置日数(x軸)に対する腫瘍容量の増大(y軸)を示すグラフである。6mg/kgの大腸菌産生ツムスタチンN−53は、対照と比較して、第4日〜第10日にわたり786−Oヒト腎腫瘍の増殖を抑制した(第10日:ツムスタチンN53は110.0±29.0mm、対照は345.0±24.0mm)(図28)。各点は5〜6匹/群のマウスの平均±SEを示す。アスタリスクを付したデータポイントは、片側スチューデントt検定により、p<0.05で有意であった。
実施例31:α3(IV)NC1およびCD31についての免疫組織化学的染色
7週齢の雄性C57/BL6マウスから採取した腎および皮膚の組織を、免疫蛍光顕微鏡分析による評価を行うために処理した。組織試料を液体窒素中に凍結し、4mm厚の切片を使用した。組織は以前に報告されている間接的免疫蛍光法により処理した(Kalluri,R.ら,1996,J.Biol.Chem.271:9062−8)。凍結した切片を一次抗体、ポリクローナル抗CD31抗体(1:100希釈)またはポリクローナル抗α3(IV)NC1抗体(1:50希釈)、次いで二次抗体、FITCコンジュゲート抗ラットIgG抗体またはFITCコンジュゲート抗ヒトIgG抗体で染色した。免疫蛍光は、オリンパス蛍光顕微鏡(Tokyo,Japan)の下で観察した。陰性対照は、非関連性の前免疫血清で一次抗体を置き換えることにより実施した。
マウス腎において、α3(IV)NC1の発現はGBMおよび血管基底膜において観察された。CD31、PECAM−1の発現は糸球体内皮および血管内皮において観察された。マウス皮膚においては、α3(IV)NC1は表皮基底膜および血管基底膜には存在していなかった。CD31の発現は皮膚の血管内皮において観察された。CD31の発現はマウス腎の糸球体および小血管の内皮において観察された。α3(IV)NC1の発現は糸球体基底膜および糸球体外の血管基底膜において観察された。CD31の発現はマウス皮膚の皮膚小血管の内皮において観察された。α3(IV)NC1の発現は表皮基底膜には存在せず、皮膚小血管の基底膜中にも殆ど観察されなかった。これらの結果は、ツムスタチンの限定された分布の例を示している。
実施例32:ツムスタチンN−53は内皮細胞におけるアポトーシスを誘発する
ツムスタチンN−53の前アポトーシス活性をC−PAE細胞において検討した。細胞の生存性は、MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)試験により調べた(Sugiyama,H.ら,1998,Kidney Int.54:1188−96)。本試験は、活動性ミトコンドリア中でテトラゾリウム環を開裂する生存細胞の能力に基づいた、細胞の生存に関する定量的比色分析である。C−PAE細胞(ウェル当たり7000個)を10%FCS含有DMEM中、96穴プレートにプレーティングした。翌日、TNF−α(陽性対照、80ng/ml)または種々の濃度のツムスタチンまたはツムスタチンN−53をウェルに添加し、24時間インキュベートした。次にMTT溶液(5mg/ml;CHEMICON International,Temecula,California,USA)を10μl/ウェルの比率でウェルに添加し、4時間37℃でインキュベートした。酸−イソプロパノールを添加し、十分混合した。吸光度は、590nmにおいてマイクロプレートリーダー(Bio−Rad,Hercules,California,USA)を用いて測定した。
結果は図29に示すとおりであり、これは、ツムスタチンおよびツムスタチンN−53の漸増濃度(x軸)における細胞の生存性(OD590の関数として、y軸)を示すグラフである。各点は3組のウェルの平均±平均の標準誤差を示す。アスタリスクは、片側スチューデントt検定においてp<0.05を示す。
ツムスタチンN−53は、用量依存的態様で細胞の生存性を低減した。5μg/mlにおいては、ツムスタチンN−53は対照と比較して49.4%細胞の生存性を低減し、この作用は陽性対照として使用したTNF−α 80ng/mlと同等であった。別の実験において、完全長ツムスタチンは5μg/mlで僅か22.5%、そして10μg/mlで60%細胞の生存性を低減したのに対し、5μg/mlのツムスタチンN−53では49.4%であった。意外にも、5μg/mlまたは1μg/mlのツムスタチンN−53は、完全長のツムスタチンよりも内皮細胞のアポトーシスをより誘導している。
実施例33:抗血管形成性タンパク質の突然変異体およびフラグメント
アレステンおよびカンスタチンのフラグメントおよび突然変異体もまた、Mariyamaら(1992,J.Biol.Chem.267:1253−8)のシュードモナスのエラスターゼ消化に従って作成した。消化物はゲル濾過HPLCにより分離し、得られたフラグメントをSDS−PAGEで分析し、上記の内皮管腔試験において評価した。これらのフラグメントには、アレステンの12kDaフラグメント、アレステンの8kDaフラグメント、およびカンスタチンの10kDaフラグメントが包含されていた。更に、ツムスタチンの2つのフラグメント(「333」および「334」)は、PCRクローニングにより生成した。
図30に示すとおり、上記の通り実施した内皮管腔試験では、2種のアレステンフラグメント(12kDa(■)および8kDa(□))およびカンスタチンフラグメント(19kDa(▲))は、アレステン(●)およびカンスタチン(○)よりも大きく内皮管腔形成を抑制した。図31は、ツムスタチンフラグメント「333」(●)および「334」(○)が同様にツムスタチン(▲)を超えた性能を示したことを示しており、ここではBSA(■)およびα6鎖(□)を対照として用いた。
実施例34:内皮細胞およびWM−164細胞の増殖に対するツムスタチンの作用
内皮細胞増殖は、実施例25において上述されたように、H−チミジン取り込みまたはメチレンブルー染色により調べた。C−PAE細胞(2〜4継代)をコンフルエントにまで増殖させ、48時間接触抑制させ続けた。786−O、PC−3およびWM−164を非内皮細胞対照として用い、上記実施例25に記載の通り培養した。HPE(ヒト一次前立腺上皮細胞)をウシ下垂体および組換えヒトEGF(Life Technologies/Gibco BRL,Gaithersburg,Maryland,USA)を添加したケラチノサイト−SFM中で培養した。黒色腫細胞系統WM−164は、Wistar Institute(Philadelphia,Pennsylvania,USA)のDr.Meenhard Herlynから入手し、Herlynら(1990,Adv.Cancer Res.54:213−34)に記載の通り、78%MCDB−153培地、10%L−15培地、10%トリプトースリン酸ブロス、2%FBSおよび50単位/mlインスリン中で培養した。
C−PAE、PC−3および786−O細胞におけるH−チミジン取り込みの結果は、図21A−Cおよび上記実施例25に記載したとおりである。HPE、C−PAEおよびWM−164細胞のメチレンブルー染色は、図32A、32Bおよび32Cに示すとおりであり、これらは、HPE(図32A)、C−PAE(図32B)およびWM−164(図32C)細胞の増殖(y軸)に対するツムスタチン漸増濃度の作用(x軸)を示す、3種のヒストグラムのセットである。結果によれば、ツムスタチンは用量依存的な態様でC−PAE細胞のFCS刺激増殖を抑制する(図21A)。ツムスタチン処置(0.1〜10μg/ml)および対照細胞におけるH−チミジン取り込みの平均値の間の差は有意であった(p<0.05)。PC−3(図21B)、786−O(図21C)、HPE(図32A)およびWM−164(図32C)は、ツムスタチンによる抑制作用を示さなかった。ポリミキシンB(5μg/ml)を添加してエンドトキシンを活性化した場合、ツムスタチンの抑制作用は変化しなかった(図32B)。
興味深いことに、完全長ツムスタチンは、α3(IV)NC1ドメインのアミノ酸185〜203によるこれらの細胞の抑制が報告されている(Hanら,1997,J.Biol.Chem.272:20395−401)にも関わらず、WM−164細胞の増殖に対して作用を有さなかった。このことは、領域185〜203の抗腫瘍細胞活性が、完全長の折りたたみツムスタチンの部分として存在する場合には利用できないことを示唆している。
実施例35:ツムスタチンの突然変異体、Tum−1、Tum−2、Tum−3およびTum−4の組換え生成
α3(IV)NC1ドメインは黒色腫およびその他の表皮腫瘍細胞系統にインビトロで結合し増殖を抑制することが分かっている(Hanら,1997,J.Biol.Chem.272:20395−401)。Hanらは、α3(IV)NC1ドメインのアミノ酸185〜203に対する黒色腫細胞のための結合部位を特定した。この部位に対して作成したモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体は、黒色腫細胞の接着および増殖の抑制をブロックする(Hanら、上記)。Hanらはまた、黒色腫細胞の接着および増殖の抑制の両方に、アミノ酸189〜191内に位置する特定の配列「SNS」が必要であることを同定した(Hanら、上記)。これらの試験において、185〜203 α3(IV)NC1合成ペプチドは、内皮細胞を含む他の細胞型に対して試験されていない。更に、Hanらは、単離したヒトα3(IV)NC1ドメインを使用しなかった。
上述の実施例23およびKalluri,R.ら,1996,J.Biol.Chem.271:9062−8に記載の通り、4種の組換え欠失突然変異体を作成し精製した。ツムスタチンN53としても知られるTum−1は、配列番号10のC末端191アミノ酸からなり、N末端53アミノ酸を欠失している。Tum−1はまた、上記実施例23においても説明されている。ツムスタチン333は、ツムスタチン(配列番号10)のN末端アミノ酸2〜125からなる。Tum−3は、C末端112アミノ酸からなる。Tum−4は、アミノ酸185〜203を含むC末端64アミノ酸である(Hanら、上記)。これらの欠失突然変異体は、上記実施例23に記載の通り、pET22bまたはpET28a(+)発現系(Novagen,Madison,Wisconsin,USA)を用いて大腸菌中で発現した。これらの突然変異体は上記表1に示すとおりである。
実施例36:内皮細胞およびWM−164細胞の増殖およびアポトーシスに対するツムスタチン突然変異体の作用
内皮細胞(C−PAE細胞)およびWM−164黒色種細胞の増殖は、上記実施例25および34に記載するとおり、メチレンブルー染色により試験した。結果は図33Aおよび33Bに示すとおりであり、これは、C−PAE細胞(図33A)およびWM−164細胞(図33B)の相対数(y軸)に対するツムスタチン、Tum−1、Tum−2、Tum−3およびTum−4の漸増濃度(x軸)の作用を示す一組のグラフである。図33Aは、ツムスタチン、Tum−1およびTum−2がC−PAE細胞の増殖を用量依存的態様で抑制したことを示している。図33Bは、WM−164即ち黒色腫細胞系統がTum−1またはTum−2のいずれによっても影響されなかったことを示している。しかしながらTum−4は、この細胞系統に対して抗増殖活性を有していた。以下の表2に示すとおり、15μg/mlのツムスタチンは78.5%C−PAE細胞の増殖を抑制した。Tum−1およびTum−2は、それぞれ65.6および73.3%、C−PAE細胞を抑制した。一方、Tum−3およびTum−4はC−PAE細胞を抑制しなかった。Tum−4のみがWM−164黒色腫細胞を抑制した。50μg/mlのTum−4は、これらの細胞を46.1%抑制したが、C−PAE細胞は抑制できなかった。
Figure 2006508015
組換えツムスタチンおよび欠失突然変異体を、pET22bまたはpET28a(+)発現系(Novagen,Madison,Wisconsin,USA)を用いて大腸菌中で発現した。7000個の細胞を96穴プレートの各ウェルに入れ、15μg/ml(C−PAEの場合)または50μg/ml(WM−164の場合)の組換えタンパク質の存在下または非存在下において、20%FCS(C−PAE細胞)または3%FCS(WM−164細胞)で刺激した。相対細胞数は上記の通りメチレンブルー染色により測定した。データは3組のウェルの平均±平均の標準誤差を示す。N.D.=測定せず。*=タンパク質非存在下と比較してp<0.05(「なし」)。
MTT試験を用いて、ツムスタチン、Tum−1、Tum−2、Tum−3およびTum−4による処置後のC−PAE内皮細胞およびWM−164黒色腫細胞の細胞生存性を評価した。結果は図34Aおよび34Bに示すとおりであり、これは、C−PAE細胞(図34A)およびWM−164細胞(図34B)の細胞生存性(y軸)に対する漸増濃度のツムスタチン、Tum−1、Tum−2、Tum−3およびTum−4(x軸)の作用を示す一組のグラフである。各点は3組のウェルの平均±平均の標準誤差を示す。図34Aは、Tum−1が用量依存的な態様で細胞生存性を低減したことを示している。1および5μg/mlの用量において、Tum−1は細胞生存性の低減についてツムスタチンよりも著しくより効果的であった。Tum−4は、WM−164黒色腫細胞の生存性を低減した唯一の欠失突然変異体であった(図34B)。
アポトーシスは、上記実施例27に記載したとおり、カスパーゼ−3活性を測定することによっても評価した。結果は図35に示すとおりであり、これは、5μg/mlのTum−1、Tum−2、Tum−3、Tum−4、または80ng/mlのTNF−αまたはPBS緩衝液(対照)で処置したC−PAE細胞(x軸)のOD405における吸光度(y軸)の測定値としてのカスパーゼ−3活性を示すヒストグラムである。Tum−1およびTum−2はC−PAE細胞におけるカスパーゼ−3の活性を増大させたが、Tum−3およびTum−4は増大させなかった。
実施例37:内皮細胞上のα β インテグリンに対するツムスタチン突然変異体の結合
ツムスタチン欠失突然変異体でコーティングしたプレートに対するC−PAE細胞の結合を測定するために、上記の通り細胞接着試験を実施した(例えば実施例28参照)。Tum−4に対して作成されるウサギ抗体は、以前に記載されている通り調製した(Kalluri,R.ら,1997,J.Clin.Invest.99:2470−8)。セイヨウワサビペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ウサギIgG抗体は、Sigma Chemical Company(St.Louis,Missouri,USA)より購入した。結果は図36A、36Bおよび36Cに示すとおりであり、これらは、対照IgG、αβ、αβおよびBSAの存在下におけるTum−1(図36A)、Tum−2(図36B)およびTum−4(図36C)でコーティングしたプレートに対するC−PAE細胞の%結合(y軸)を示す、3種のヒストグラムのセットである。Tum−1でコーティングしたプレート(図36A)はまた、抗Tum−4抗体(1:200希釈度)で処置することにより、以前に報告されている(Shahanら,1999,Cancer Res.59:4584−90)αβ結合部位並びにαβ結合部位をブロックした。
αβ抗体は、Tum−1、Tum−2またはTum−4へのC−PAE細胞の結合をそれぞれ55.9%、69.8%および62.6%抑制した。Tum−1、Tum−2またはTum−4でコーティングしたプレートへのC−PAE細胞の結合は、αβ抗体では抑制されなかった。抗Tum−4抗体(アミノ酸209〜244に結合する)を添加した場合、αβ抗体はなおTum−1へのC−PAE細胞の結合を抑制した(図36A)。
ツムスタチン、Tum−1、Tum−2およびTum−4はまた、図37に示すとおりWM−164細胞に結合し、この図は、PBS、ツムスタチン、Tum−1、Tum−2、Tum−4またはBSAでコーティングしたプレートに結合したWM−164細胞(x軸)に関するOD655における吸光度によるメチレンブルー染色の程度(y軸)を示すヒストグラムである。ツムスタチンおよび欠失突然変異体の全3種とも、プレートへのWM−164黒色腫細胞の結合を増強した。
実施例38:ツムスタチン欠失突然変異体の活性の逆転
Tum−1の内皮細胞増殖抑制が抗Tum−4抗体により無効になるかどうかを調べるために、上記実施例26に記載の通り競合増殖試験を実施した。αβインテグリン結合部位を少なくとも部分的にブロックする目的で、Tum−1を抗Tum−4抗体と共に予備インキュベートした。次にこれを内皮細胞増殖試験に用いた。
結果は図38Aおよび38Bに示すとおりであり、これらは、抗Tum−4抗体(1:100、1:200、1:500希釈)(x軸)と共に予備インキュベートされている1.5μg/mlのTum−1(図38A)またはTum−2(図38B)で処置したC−PAE細胞の増殖(y軸)を示すヒストグラムである。それぞれの棒は3組のウェルの平均±平均の標準誤差を示す。実験は3回反復した。アスタリスクは、片側スチューデントのt検定でp<0.05を示す。
Tum−1の抗増殖作用は、これを抗Tum−4抗体または対照ウサギIgGと共に予備インキュベートした場合でも変化しなかった(図38A)。同様に、Tum−2の抗増殖作用も抗Tum−4抗体または対照ウサギIgGの予備インキュベーションによる影響を受けなかった(図38B)。
次にツムスタチンおよびTum−2の抗増殖作用を逆転させる能力についてインテグリンαβを調べた。ツムスタチンおよびTum−2を30分間αβタンパク質と共にインキュベートし、C−PAE細胞に添加し、これを96穴プレートにプレーティングし、増殖培地と共に一晩インキュベートした。48時間インキュベートした後、細胞数をメチレンブルー染色により測定した。図22に示すとおり、そして実施例26に記載したとおり、ツムスタチンの抗増殖作用はαβ可溶性タンパク質の漸増用量に応じて用量依存的に逆転し、そして2.4μg/ml(ツムスタチンと比較して3倍モル過剰)では、αβはツムスタチンの抗増殖作用を著しく逆転させた(43.1%)。αβタンパク質のみでの処置では、内皮細胞増殖は抑制されなかった。図38Cに示す通り、Tum−2の抗増殖作用は、αβ可溶性タンパク質の漸増用量により用量依存的態様で逆転し、そしてTum−2の抗増殖作用は、2μg/mlのαβタンパク質では74.1%著しく逆転した。
次に黒色腫細胞のTum−4の抗増殖作用を無効にするαβの能力を試験した。ツムスタチンおよびTum−4をαβインテグリンタンパク質と共に室温で30分間予備インキュベートし、次に96穴プレート中に増殖しているWM−164細胞に添加した。48時間のインキュベーションの後、細胞数の増加をメチレンブルー染色により測定した。結果を図38Dおよび38Eに示す。ツムスタチンは、WM−164細胞に対し作用を有していなかった。Tum−4の抗増殖作用は、αβ可溶性タンパク質の漸増用量に応じて用量依存的態様で逆転した。2μg/mlのαβタンパク質は、Tum−4誘導抗増殖作用を76.7%まで著しく逆転させた。αβタンパク質のみでの処置は、黒色腫細胞増殖を抑制しなかった。
ツムスタチンの増殖作用をエンドスタチンおよび抗αβ抗体の作用と比較した。等モル量のツムスタチンおよび抗αβインテグリン抗体をC−PAE細胞に添加した。結果は図39に示すとおりであり、これは、y軸上の相対細胞数に対するx軸上のツムスタチン、エンドスタチン、抗αβ抗体およびIgG(対照)の濃度を示すグラフである。各点は3組のウェルの平均±平均の標準誤差を示す。実験は3回反復した。アスタリスクは、片側スチューデントt検定におけるp<0.05を示す。漸増量の抗αβ抗体は内皮細胞の増殖を抑制しなかったのに対し、ツムスタチンおよびエンドスタチンは内皮細胞の増殖について用量依存性の抑制を示した。
実施例39:カンスタチンの欠失突然変異体
カンスタチンの欠失突然変異体を、実施例23および35において上述したとおり構築した。Can−1は完全長カンスタチン(配列番号6)のN末端114アミノ酸からなり、Can−2はC末端113アミノ酸からなる。これらの2種の突然変異体をそれぞれpET22bおよびpET28aにクローニングし、BL21細胞(Novagen,Madison,Wisconsin,USA)に導入してタンパク質の発現に付した。タンパク質は発現クローンから容易に産生され、ベクターに組み込んだポリヒスチジンタグを用いてNi−TAカラムで精製した。タンパク質を漸増濃度のイミダゾールを用いてカラムから溶離させ、次にPBSに対して透析した。透析の間に溶液から生じるタンパク質はすべて不溶性とし、溶液中にとどまるものは可溶性画分とした。可溶性画分を濃縮し、滅菌濾過し、−20℃で保存した。不溶性タンパク質はPBS中に再懸濁し、−20℃で保存した。
増殖試験のために、カンスタチン、Can−1およびCan−2可溶性タンパク質(0.1〜20.0μg/ml)を、増殖中のC−PAE細胞の増殖培地に添加し、これを5ng/mlのbFGFおよび3ng/mlのVEGFに加えてDMEM中の10%FBSで刺激した。結果は図40に示すとおりであり、これは、C−PAE細胞の相対細胞数(y軸)に対するカンスタチン(◆)、Can−1(■)およびCan−2(▲)の漸増濃度の作用(x軸)を示すグラフである。各タンパク質の各濃度は4組で試験した。ウシ血清アルブミン(BSA)を対照の処置として用いた。ポリミキシンBは、エンドトキシン干渉をコントロールするために使用し、そして、培地に添加するポリミキシンBを用いた場合と用いない場合の試験の間に差はなかった。細胞を48時間増殖させ、次に固定し、染色し、密度をBio−Radプレートリーダー(Bio−Rad、Hercules,California,USA)で読み取った。カンスタチンおよびCan−1は、共に%細胞数の用量依存的減少をもたらし、ともに5μg/ml以上の濃度で80%細胞数を低下させた。Can−2は、10μg/mlより高濃度で%細胞数の僅かな低下を示し、最高濃度(20μg/ml)においては、Can−2は33%増殖を抑制した。
アポトーシスは、ApoAlertキット(CLONTECH,Palo Alto,California,USA)を用いて、アネキシンV−FITC試験により調べた。ヨウ化プロピジウムを用いて、アポトーシス以外の態様で死滅した細胞の核を染色した。カンスタチン、Can−1およびCan−2はすべて、1μg/mlより高濃度で内皮細胞のアポトーシスを誘導した。1μg/ml未満の濃度では、Can−1はアポトーシスの誘導において最も強力であった。
抗血管形成活性はインビボのマトリゲルプラグ試験で測定し、その際2μg/mlまたは20μg/mlの不溶性タンパク質、50ng/mlのVEGFおよび20U/mlのヘパリンを含有するマトリゲル0.5mlをC57/BL6マウスの両側腹に同時に注射した。プラグは14日間マウス内に保持してマウスを屠殺し、プラグを切開して固定した。プラグを包埋し、切片化し、H&E染色した。試料を盲検化し、血管を定量した。タンパク質の2種の濃度の間には血管数に差はなかったため、6検体すべてのカウントを平均しプロットした。
結果は図41に示すとおりであり、これは、PBS(対照)、カンスタチン、Can−1およびCan−2での処置に関するプラグ当たりの血管の平均数(y軸)を示すヒストグラムである。カンスタチンまたはCan−1で処置したプラグは、PBSまたはCan−2で処置したプラグと比較して著しく少ない血管を示した。
実施例40:ツムスタチンの合成フラグメントの活性
ツムスタチンのペプチドフラグメント:ツムスタチンのアミノ酸54〜132の領域をTum−5と称した。ペプチドT1、T2、T3、T4、T5およびT6を合成した。T2、T3、T4、T5およびT6は部分的に重複しており、Tum−5内に位置する。ツムスタチン内のこれらのペプチドの位置を図42および以下の表3に示す。
Figure 2006508015
抗増殖活性:ペプチドT2、T3、T4、T5およびT6の内皮細胞(C−PAE細胞)に対する抗増殖活性を調べた。結果は図43Aに示すとおりであり、これは、10μg/mlのT2、T3、T4、T5またはT6(x軸)による内皮細胞増殖の抑制(y軸)を示すヒストグラムである。対照は、未刺激の細胞および20%FCS刺激細胞とする。ペプチドT3は内皮細胞の増殖を有意(p<0.05)に抑制することが分かり、そして、抑制は図43Bに示すとおり、用量依存的であった。図43Bは0.1、1.0および10μg/mlのペプチドT3(x軸)で処置した場合のC−PAE細胞の増殖の抑制(y軸)を示すヒストグラムである。この抑制は他のペプチドを用いた場合には観察されず、また、C−PAE細胞をWM−164細胞に置き換えた場合にも観察されなかった。
インテグリンαβがペプチドT3の抗増殖作用を逆転させる能力について調べた。T3ペプチドを室温で30分間、0、0.001、0.01、0.1、0.5および1.0μg/mlのαβインテグリンタンパク質(CHEMICON International,Temecula,California,USA)と共にインキュベートし、次に終濃度20μg/mlで、増殖培地中96穴プレート中に増殖させておいたC−PAE細胞に添加した。更に48時間インキュベートした後、細胞数をメチレンブルー試験により測定した。結果は図43Cに示すとおりであり、これは、αβインテグリンの種々の濃度(x軸)と共に予備インキュベートしておいたT3ペプチドで処置した場合のC−PAE細胞の細胞増殖(y軸)を示すヒストグラムである。ペプチドT3の抗増殖作用は、αβインテグリンタンパク質と共に予備インキュベートすることにより著しく低下した。αβインテグリンそのものは増殖を抑制しなかった(対照)。
内皮細胞の増殖に対するT3ペプチドの機序を更に評価するために、細胞周期の進行に対するT3ペプチドの作用を分析した。増殖停止および接触抑制された細胞(0時)において、4.1%の細胞がS期にあった。細胞をbFGFで24時間刺激した場合、S期の細胞のパーセントは5.4倍、22.1%まで増大した。最高用量50μg/mlにおけるT3ペプチドでの処置は、S期の細胞のパーセントを13.8%にまで低下させた。これとは対照的に、T1またはT6ペプチドでの処置は、S期の細胞の有意な低下は示さず、T1およびT6による処置では、それぞれS期の細胞は22.3%および21.2%であった。これは最大用量100μg/mlでも同様であった。しかしながら、T3ペプチドの作用は用量依存的であり、S期の細胞のパーセントは、10μg/mlで21.4%、25μg/mlで20.5%であった。G0/G1期の細胞のパーセントは、0時で88.3%、bFGF対照で53.4%、およびT1、T6およびT3ペプチドではそれぞれ57.6%、57.6%および71.0%であった。G0/G1期の細胞のパーセントは、bFGF対照で最低であり、そしてT3処置では上昇し、これは、T3で内皮細胞を処置することで増殖中の内皮細胞のG1停止が起こることを示している。
アポトーシス活性:ペプチドT2、T3、T4、T5およびT6(10μg/ml濃度)を、上記の実施例32および36に記載したMTT試験を用いて、C−PAE細胞の生存性に対するその作用について試験した。結果は図43Dに示すとおりであり、これは、OD595で測定した細胞の生存性(y軸)および合成ペプチドでの処置(x軸)を示すヒストグラムである。ペプチドT3は、Tum−5から誘導した他のペプチドと比較して細胞の生存性を著しく低下させたことが分かる。内皮細胞アポトーシスを誘導する際の陽性対照としてTNF−α(100ng/ml)を用いた。
細胞接着活性。内皮細胞を用いた細胞接着を上記の通り行った。HUVECまたはC−PAE細胞をモノクローナル抗ヒトインテグリン抗体、対照マウスIgG(10μg/ml)または合成ペプチドと共にインキュベートし、予備コーティングした96穴プレート上にプレーティングし、プレートに接着した細胞の数をOD655におけるメチレンブルー染色の測定を用いて調べた。図44Aは、BSA(対照)、抗体なし(対照)、マウスIgG(対照)およびαβインテグリン抗体の存在下のTum−5ペプチド(10μg/ml)でコーティングしたプレートへのHUVEC細胞の結合を示している。細胞接着は抗αβインテグリン抗体により著しく抑制された。対照マウスIgGは、細胞接着の抑制を示さなかった。図44Bは、組換えTum−5ペプチド10μg/mlでコーティングした96穴プレートへのC−PAE細胞の接着を示すヒストグラムである。これらのプレートへのC−PAE細胞の接着は、RGDペプチドと共にインキュベートしても抑制されず、Tum−5への内皮細胞の結合がRGD非依存的であることを示していた。CNGRCペプチドを対照として用いた。
次に、Tum−5コーティングプレートへのC−PAE細胞の接着に対する合成ペプチドT2、T3、T4、T5およびT6の作用を調べた。結果は図44Cに示すとおりであり、これは、Tum−5でコーティングして2.5μg/mlのT2、T3、T4、T5またはT6で処置した96穴プレート(x軸)、またはT3処置したTum−4コーティングプレートへのC−PAE細胞の結合(y軸)を示すヒストグラムである。PBSでの処置を対照とした。Tum−5コーティングプレートへの細胞接着はT3ペプチドにより著しく抑制され、Tum−5との内皮細胞の相互作用においてT3が関与していることを示している。他の合成ペプチドはこの作用を示さず、T3はTum−4ペプチドでコーティングしたプレートへの内皮細胞の接着を抑制できなかった。図44Dは、種々の濃度のT3ペプチド(x軸)のTum−5コーティングプレートへのC−PAE細胞の結合に対する作用(y軸)を示すヒストグラムである。PBSでの処置を対照とした。T3ペプチドは用量依存的な態様でTum−5コーティングプレートへの内皮細胞の接着を抑制することが分かった。
ペプチドコーティングプレートへの内皮細胞の接着は、図44Eに示す通り、T3ペプチドについては、αβインテグリンによって抑制されるのみであり、これは、内皮細胞とペプチドT3の相互作用がαβインテグリンにより媒介されていることを示している。図44Fは、抗βインテグリン抗体と共に予備インキュベートすることによりT3ペプチドコーティングプレートへのC−PAE細胞の接着が抑制されることを示している。しかしながら、抗αまたは抗βインテグリン抗体はT3コーティングプレートへの細胞接着を抑制せず、これは、βインテグリンが潜在的には内皮細胞へのT3の結合およびT3媒介抗血管形成活性の両方において主要な役割を果たしていないことを示唆している。βインテグリン結合部位は、他の非抗血管形成性ペプチド中に存在する可能性がある。
図44Gは、2.5μg/mlビトロネクチンでコーティングしたプレートへのC−PAE細胞の結合がT3ペプチドと共にインキュベートすることにより抑制されなかったことを示しており、これは、ビトロネクチン結合に使用されないαβインテグリン上の異なるドメインにT3が結合することを示している。T6ペプチドと細胞をインキュベートしても、やはり接着は抑制されなかった。
実施例41:ツムスタチンの欠失突然変異体の活性
ツムスタチンの欠失フラグメントを細菌発現ベクターにクローニングし、発現し、ニッケルクロマトグラフィーを用いて精製し、次にインビトロの抗血管形成活性および関連する活性について分析した。タンパク質調製品から混在エンドトキシンを確実に除去するために特別な作業を要した。完全長ツムスタチン、ツムスタチン−N53および2種の更に別の欠失突然変異体(Tum−2CおよびTum−KE)を作成して試験した。欠失突然変異体は、内皮細胞増殖、細胞周期の進行、アポトーシスおよび内皮管腔形成について試験した。分子の内皮細胞特異性を明らかにするために、非内皮細胞に対する活性ツムスタチンフラグメントの作用もまた分析した。これらの活性を以下の表4に総括する。
Figure 2006508015
「コンストラクト」の欄の1〜12は、アミノ酸位置34、67、79、85、122、125、144、178、190、196、236、239において完全長ツムスタチン内に位置する12個のシステイン残基を示す。
ジスルフィド結合は、システイン1および6;システイン2および5;システイン3および4;システイン7および12;システイン8および11;およびシステイン9および10に存在する。
G1:細胞周期停止試験。
Apo:アネキシンV−FITC試験。
Tube:内皮管腔形成試験。
EU:BioWhitaker試薬により測定したエンドトキシン濃度。
ツムスタチン−N53は、これらの試験において最も活性が高いことが分かった。インビトロでツムスタチン−N53は内皮細胞アポトーシスを誘導し、10%ウシ胎児血清(FBS)の存在下で内皮細胞の細胞周期の進行を抑制した。IC50は両方の活性に関して約5μg/mlであり、エンドスタチンは20μg/mlを超える濃度で同じ試験において活性を示さなかった。
ツムスタチン−N53はまた、細胞接着試験においても使用した。ツムスタチン−N53(10μg/ml)は、96穴プレートにコーティングされた場合、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の接着を支持した。αβインテグリンおよびβインテグリンに対する抗体は、図45に示すとおり、HUVECとともに予備インキュベートした場合にこの接着を抑制したが、αに対する抗体は抑制しなかった。従って、ツムスタチン−N53はαβインテグリンおよびβインテグリンを介してその抗血管形成作用を発揮すると考えられる。このことは、上記実施例28に記載した完全長ツムスタチンで観察された結果と合致していた。
ツムスタチン−N53はまた、新血管形成に関するマトリゲルプラグ試験において血管形成を抑制する。ツムスタチン−N53はまた、PC3前立腺異種移植片モデルおよびMDA−MB435乳癌同所移植モデルの両方において実質的な抗腫瘍活性を示す。ツムスタチン−N53(キログラム当たり5mgまたは20mg)を1日2回投与した。これらの後者2種の試験結果は図46および47に示すとおりである。図46は、ベヒクル(対照、○)、ツムスタチン−N53を1日当たり5mg/kg(□)またはツムスタチン−N53を1日当たり20mg/kg(◇)で処置した腫瘍に関する、15日間にわたる(x軸)PC3前立腺腫瘍のmm単位の平均腫瘍容量(y軸)を示すグラフである。図47は、ベヒクル(対照、○)、ツムスタチン−N53を1日当たり20mg/kg(□)、またはツムスタチン−N53を1日当たり5mg/kg(◇)で処置した腫瘍に関する、22日間にわたる(x軸)MDA−MB435乳癌腫瘍のmm単位の平均腫瘍容量(y軸)を示すグラフである。1日当たり5および20mg/kgの用量は同等の抗腫瘍活性を示したため、より低い用量を用いてなお有意な抗腫瘍活性を達成することができる。
第2のグッドパスチャー・エピトープであるGPBは、最近ツムスタチン−N53内の領域にマッピングされた(完全長ツムスタチンのアミノ酸140〜153内)。従って、この領域を除去しながら別の欠失突然変異体を作成した。残基54〜132の抗血管形成ドメインに加えてN末端の9個のアミノ酸を含む、完全長ツムスタチンのアミノ酸45〜132からなる突然変異体のツムスタチン−45−132を作成した。ツムスタチン−45−132は高い濃度の発現を示し、ツムスタチン−N53よりも低用量で細胞周期の進行を抑制する。このことは図48において示されており、これは、PBS(対照)、緩衝液(対照)、20μg/mlツムスタチン−N53、10μg/mlツムスタチン−45−132および5μg/mlツムスタチン−45−132(x軸)で処置した場合の、S期のC−PAE細胞のパーセント(y軸)を示すヒストグラムである。ツムスタチン−45−132もまた、HUVEC細胞接着を支持し、αβおよびβインテグリンに対する抗体により抑制された。このことは図49に示されており、これは、PBS(対照)、αβインテグリン抗体、βインテグリン抗体、αインテグリン抗体、およびBSA(対照)の存在下における、ツムスタチン−45−132コーティング(20μg/ml)プレートへのHUVEC細胞(y軸)の接着(OD595、y軸)を示すヒストグラムである。従って、ツムスタチンの抗血管形成活性はアミノ酸45〜132の領域内にあると考えられる。これらのフラグメントの別の欠失突然変異体、例えば(完全長ツムスタチンの)6番目のシステイン残基が欠失しているツムスタチン−45−132のフラグメントもまた、これらの方法に従って作成した。
実施例42:ツムスタチン−45−132およびTum−5−125−C−Aの発現および精製
完全長ツムスタチンのアミノ酸45〜132からなるツムスタチン−45−132を、C末端6ヒスチジンタグとの融合タンパク質として、発現プラスミドpET28aを用いて大腸菌中に発現させた。大腸菌発現タンパク質を、再折りたたみおよびSDS−PAGE分析の後に、12kDaの可溶性タンパク質として主に単離した。ツムスタチン−45−132は、抗ポリヒスチジンタグ抗体により免疫検出可能であった。Tum−5上に更に別の9アミノ酸(完全長ツムスタチンの残基45〜54)を付加することにより、タンパク質発現の効率および可溶性を増大させた。低エンドトキシン濃度(50EU/mg未満)の可溶性タンパク質のみをその後の実験に用いた。
組換えツムスタチン−45−132もまた、上記の通り、酵母Pichia pastoris内で発現させた。ベクターpPICZαAを用いて、タンパク質がC末端の6ヒスチジンタグに融合するようにツムスタチン−45−132をサブクローニングした。
Tum−5−125−C−A(配列番号34)は、ツムスタチン−45−132の分泌を増強するために、システインからアラニンへの(完全長ツムスタチンの)残基125の部位指向性突然変異により作成した。これを大腸菌中で発現させ、抗ポリヒスチジンタグ抗体を用いたウエスタンブロットにより、同じ分子量サイズで検出した。
グッドパスチャー症候群は、肺出血および/または急速に進行する糸球体腎炎を特徴とする自己免疫疾患であり、α3(IV)NC1に対する自己抗体活性に関わる免疫傷害を介した糸球体および肺胞の基底膜の破壊により起こる。最近、最も可能性の高い疾患関連の病原性エピトープがN末端タンパク質中に同定されており(Kalluri,R.ら,1996,J.Biol.Chem.271:9062−8;Hellmark,T.ら,1999,Kidney Int.55:953−44)、そしてその後N末端の40アミノ酸内に限定された(Hellmark,T.ら,1999,J.Biol.Chem.274:25862−8;Netzer,K.O.ら,1999,J.Biol.Chem.274:1267−74)。N末端ツムスタチン−45−132は、グッドパスチャー自己エピトープ外のツムスタチンの残基45〜132からなる。ツムスタチン−45−132がグッドパスチャー自己抗体により検出されないことを更に確認するために、グッドパスチャーを有する患者の抗血清を用いてウエスタンブロットを行った。この抗血清は高い感度で293細胞発現完全長ツムスタチンを検出したが、大腸菌発現ツムスタチン−45−132およびPichia発現Tum−5−125−C−Aは検出できなかった。このことは、ツムスタチン−45−132およびTum−5−125−C−Aがグッドパスチャー自己エピトープを含んでおらず、これらの組換えタンパク質がヒトへの投与によりこの自己免疫疾患を誘導する可能性が排除される。
実施例43:ツムスタチン−45−132およびTum−5−125−C−Aの活性
ツムスタチン−45−132の内皮細胞増殖、細胞周期(G/S)停止および細胞生存性に対する作用を調べた。
C−PAE細胞に対するツムスタチン−45−132の抗増殖作用を、BrdU取り込み試験により調べた。この試験は、チミジン類似体として[H]−チミジンの代わりにブロモデオキシウリジン(BrdU)を使用する。BrdUは活動的に増殖している細胞において新規に合成されるDNA鎖に取り込まれる。試験は、BrdU増殖試験キット(CalbioChem,San Diego,California,USA)を用いて製造元の指示に従い、若干の変更を加えながら行った。C−PAE細胞を10%FCS含有DMEM中96穴プレートに播種した。翌日、培地を大腸菌発現ツムスタチン−45−132または293細胞中に発現された完全長ツムスタチンを含有するまたは含有しない2%FCS含有DMEMと交換した。次に、プレートを46時間インキュベートし、次に細胞を10nM BrdUで2時間パルス処理した。次に、細胞およびDNAをウェルに固定し、抗BrdU一次および二次抗体と反応させ、次にキットに付属の比色反応を用いて発色させた。次にプレートをプレートリーダー上でOD450において読み取った(Molecular Dynamics,Sunnyvale,California,USA)。
細胞周期に対するツムスタチン−45−132およびTum−5−125−C−Aの作用を、上記実施例4と同様にして試験した。慨すれば、C−PAE細胞を48時間接触抑制により増殖停止させた。次に10個細胞/ウェルで細胞を収集し、5%FCS中のフィブロネクチンならびに組換えツムスタチン−45−132またはTum−5−125−C−Aのいずれかでコーティングされた、12穴プレートにプレーティングした。21時間後、細胞を収集し、70%氷冷エタノール中に固定した。固定した細胞を2%FCSおよび0.1%Tween−20を含有するPBS中で30分間室温で再水和し、遠心分離し,そして同じ緩衝液0.5ml中に再懸濁した。RNase(5μg/ml)消化を2時間37℃で行い、その後ヨウ化プロピジウム(5μg/ml)で染色した。次に細胞をEPICS XL−MCLフローサイトメーター(Beckman−Coulter Instruments,Fullerton,California,USA)を用いて計数した。
細胞の生存性は上記の通り、MTT試験により測定した。
一部の実験においては、完全長ツムスタチンおよびツムスタチン−45−132を更に還元しアルキル化した。慨すれば、6Mグアニジン−HClおよび10mM Tris−HCl(pH7.5)中の2.5mg/mlのツムスタチンまたはツムスタチン−45−132を10mM DTT中50℃で1時間インキュベートした。次に反応混合物を室温に戻し、ヨードアセトアミドを終濃度25mMで添加した。溶液を室温で1時間インキュベートし、5mM HCl(各5時間ごとに2回交換)、そして次に1mM HClに対して透析した。最終生成物中に遊離のチオール基が存在しないことは、Ellman試薬を用いて確認した。非還元ツムスタチン−45−132は、単量体、2量体および他のオリゴマーとして存在することができるが、還元およびアルキル化されたツムスタチン−45−132は、分子量12kDの単量体タンパク質に相当する単一のバンドで移行する。
図50〜52に示すとおり、ツムスタチン−45−132は特異的に内皮細胞の増殖を抑制し(図50Aおよび50B)、細胞周期の停止を誘導し(図51)、そして細胞の生存性を低下させた(図52A、52B、52Cおよび52D)。
図50Aは、0、0.125、0.25、0.5、1.0または2.0μMの濃度(x軸)の大腸菌発現ツムスタチン−45−132(黒色棒)または293細胞発現完全長ツムスタチン(白色棒)で処置したC−PAE細胞を用いたBrdU試験により、OD450で測定した細胞の増殖(y軸)を示す。ツムスタチン−45−132および完全長ツムスタチンの両方とも、用量依存性の態様でC−PAE細胞におけるBrdUの取り込みを低下させた。図50Bは0、0.1、1.0、5.0および10.0μg/mlの濃度(x軸)におけるPichia発現ツムスタチン−45−132で処置したC−PAE細胞を用いたメチレンブルー染色により、OD655において測定した細胞増殖(y軸)を示すヒストグラムである。未刺激のC−PAE細胞を対照とした。ツムスタチン−45−132は用量依存的態様で、20%FCSで刺激されたC−PAEを抑制し、ED50は5μg/mlであった。対照(0μg/ml)およびツムスタチン−45−132(5および10μg/ml)処置の間の差は有意であった(片側スチューデントt検定でp<0.05)。対照のヒト黒色腫細胞(WM−164細胞)を使用した場合、ツムスタチン−45−132の抗増殖作用は観察されなかった。
図51は、増殖中の内皮細胞のG停止を示すヒストグラムである。増殖停止、接触抑制細胞において、細胞の5.8%が0時においてS期であった。細胞を21時間5%FCSで刺激すると、S期の細胞のパーセントは21.5%まで3.7倍増大した。ツムスタチン−45−132での処置により、S期細胞のパーセントは6.0%まで低下した。この作用は用量依存的であり、S期の細胞のパーセントは1μg/mlのツムスタチン−45−132で19.3%、10μg/mlのツムスタチン−45−132で11.3%であった。別の実験において、G/G1期の細胞のパーセントは5%FCS処置対照で最低であり、ツムスタチン−45−132での処置により上昇した。これらの結果は、ツムスタチン−45−132での処置が増殖内皮細胞において細胞周期の停止を誘導することを示している。Tum−5−125−C−Aでの処置はツムスタチン−45−132の処置と同等の結果を示した。
図52A、52B、52Cおよび52Dは、細胞の生存性に対するツムスタチン−45−132およびTum−5−125−C−Aの作用を示す4種のヒストグラムのセットである。図52Aは、0、3、6、12、25および50μg/ml(x軸)のツムスタチン−45−132(黒色棒)およびアルキル化および還元されているツムスタチン−45−132(白色棒)で処置したC−PAE細胞について、MTT試験においてOD562で測定した細胞生存性(y軸)を示す。ツムスタチン−45−132は用量依存的な態様で細胞の生存性を著しく低下させ、ED50は12μg/mlであった。還元およびアルキル化されたツムスタチンおよびツムスタチン−45−132は、C−PAE細胞の細胞生存性の低下においては、未処置のツムスタチンおよびツムスタチン−45−132と同様の作用を示した。従って、ツムスタチンおよびツムスタチン−45−132の抗血管形成作用は、システイン残基の間のジスルフィド結合から誘導されるそのコンフォメーションには依存していない。
Tum−5−125−C−Aは、図52Bに示すとおり、ツムスタチン−45−132と同様の細胞生存性に対する作用を示した。図52Bは、0、3、6、12、25および50μg/ml(x軸)のTum−5−125−C−Aで処置したC−PAE細胞について、MTT試験においてOD562で測定した細胞生存性(y軸)を示す。
ツムスタチン−45−132およびTum−5−125−C−AのC−PAE細胞の細胞生存性に対する作用は、図52Cおよび52Dに示すとおり、対照のPC−3およびDU−145細胞では観察されなかった。図52Cは、0、3、6、12、25および50μg/ml(x軸)のツムスタチン−45−132で処置したPC−3細胞について、MTT試験においてOD562で測定した細胞生存性(y軸)を示す。図52Dは、0、3、6、12、25および50μg/ml(x軸)のツムスタチン−45−132で処置したDU−145細胞について、MTT試験においてOD562で測定した細胞生存性(y軸)を示す。従って、ツムスタチン−45−132の活性は、内皮細胞に特異的なものである。
実施例44:内皮細胞に対するツムスタチン−45−132の作用
ツムスタチン−45−132は、以下の試験において示されるとおり、内皮細胞のアポトーシスを誘導し、内皮管腔形成を抑制することが分かった。
ツムスタチン−45−132は、アネキシンV−FITC試験により明らかにされるとおり、内皮細胞のアポトーシスを誘導することが分かった。試験は、18時間ツムスタチン−45−132でC−PAE細胞を処置することにより、上記の通り行った。対照はPBSで処置した。ツムスタチン−45−132は5μg/mlにおいて、対照のTNF−αと比較して蛍光強度ピークの顕著なシフトを誘導した。
カスパーゼ−3活性もまた上記の通り試験した。ツムスタチン−45−132の特異性を示すために、特異的カスパーゼ−3阻害剤であるDEVD−fmkを内部対照として使用した。TNF−α(80ng/ml)を陽性対照として使用した。実験は3回反復した。
結果は図53に示すとおりであり、これは、(x軸)対照、対照+DEVD−fmk、TNF−α、TNF−α+DEVD−fmk、ツムスタチン−45−132(1μg/mlおよび10μg/ml)およびツムスタチン−45−132(10μg/ml)+DEVD−fmkのカスパーゼ−3活性(OD405で測定、y軸)を示すヒストグラムである。10μg/mlの大腸菌発現ツムスタチン−45−132でC−PAE細胞を処置することにより、カスパーゼ−3活性の4.5倍上昇が観察された。陽性対照であるTNF−αもまた4.5倍の上昇をもたらした。特異的カスパーゼ−3阻害剤であるDEVD−fmkは、基線レベルのタンパク質活性低下をもたらし、測定された活性の上昇はカスパーゼ−3に特異的であることが示された。この上昇した活性は、ツムスタチン−45−132でPC−3細胞を処置することによっては観察されなかった。
ツムスタチン−45−132はまた、マトリゲル試験で示されるとおり、内皮管腔形成を抑制することがわかっている。マトリゲル試験を上記実施例に記載したとおり行った。慨すれば、HUVECを5μg/mlの大腸菌発現ツムスタチン−45−132の存在下または非存在下においてインキュベートしたマトリゲルコーティングプレート上に管形成させた。BSA処置細胞および酵母発現ヒトエンドスタチン(5および20μg/ml)を対照として使用した。ツムスタチン−45−132は対照と比較して、用量依存的な態様で内皮管腔形成を著しく抑制した。処置後の平均の%管腔分枝形成は、BSA処置で22.7±3.1、ツムスタチン−45−132処置で2.1±2.0であったのに対し、5μg/mlおよび20μg/mlのエンドスタチンはそれぞれ平均で19.4±3.0および7.5±6.0であった。対照と比較して、ツムスタチン−45−132は5μg/mlで内皮管腔形成を著しく低減した。ヒトエンドスタチンは20μg/mlでもツムスタチン−45−132の5μg/mlより低い阻害剤作用を示した。
実施例45:ツムスタチン−45−132の結合活性
ツムスタチン−45−132が内皮細胞上のαβおよびβインテグリンに結合すること、および、結合が「RGD」ペプチド配列には非依存性であることを示す、細胞接着試験を実施した。
細胞接着試験は上記の通り実施した。慨すれば、10μg/mlのツムスタチン−45−132または0.5〜2.5μg/mlのビトロネクチン(Collaborative Biomedical Products,Bedford,Massachusettsk,USA)のいずれかで一晩、96穴プレートをコーティングした。プレートをBSAでブロッキングし、HUVECまたはC−PAE細胞を10μg/mlの抗体または合成ペプチド(合成ペプチド CDCRGDCFC(配列番号35))または合成対照ペプチド CNGRC(配列番号36)のいずれかと共に15分間インキュベートした。細胞をプレートに添加し、45分間37℃でインキュベートした。次にプレートを洗浄し、結合細胞数をメチレンブルー染色により測定した。
大腸菌発現ツムスタチン−45−132でコーティングしたプレートへのHUVEC細胞の接着は、αβおよびβインテグリンに対する抗体により著しく抑制された。αβインテグリン抗体およびβインテグリン抗体はそれぞれ、対照として用いたマウスIgGと比較して47.1%および47.5%細胞接着を抑制した。C−PAE細胞は同等の抑制を示した。
合成ペプチド CDCRGDCFCは5μg/mlにおいて、ビトロネクチンコーティングプレートへの内皮細胞の接着を抑制した。対照ペプチド CNGRCはこのような抑制を示さなかった。しかしながら、細胞を1.0または10.0μg/mlのCDCRGDCFCペプチドと共にインキュベートした場合、大腸菌発現ツムスタチン−45−132コーティングプレートへのC−PAE細胞の接着は抑制されず、ツムスタチン−45−132が内皮細胞上のαβインテグリン受容体上の異なる部位、即ち、以前に報告されているRGD結合部位(Arap,W.ら,1998,Science 279:377−80)とは異なる部位に結合することが示唆された。
可溶性αβインテグリンタンパク質は、ツムスタチン−45−132の抗増殖作用を復帰させた。このことは実施例26において上記の競合増殖試験により示された。ビトロネクチンコーティングプレートをαβ可溶性タンパク質と共にインキュベートし、次に細胞接着試験を実施した。可溶性αβタンパク質は1および2μg/mlでコーティングプレートへのC−PAE細胞の接着を著しく抑制した。次に大腸菌発現ツムスタチン−45−132を30分間、αβインテグリンタンパク質と共にインキュベートし、次に20%FCSと共にC−PAE細胞に添加した。48時間後、細胞増殖をメチレンブルー染色により測定した。ツムスタチン−45−132の抗増殖作用は、漸増濃度のαβ可溶性タンパク質に対して用量依存的に逆転した。1μg/mlにおいては、αβタンパク質は65.9%までツムスタチン−45−132誘導抗増殖作用を著しく逆転させた。ツムスタチン−45−132を用いることなくαβタンパク質のみで処置した場合には、内皮細胞の増殖は抑制されず、ツムスタチン−45−132の抗血管形成活性が内皮細胞表面上のαβインテグリンへの結合により媒介されていることが更に確認された。
内皮細胞表面へのツムスタチン−45−132の結合を更に示すために、ビオチニル化ツムスタチン−45−132を細胞表面標識のために使用した。組換え大腸菌発現ツムスタチン−45−132は、Sulfo−NHS−LC−ビオチン(Pierce Chemical Co.,Rockford,Illinois,USA)を用いてビオチニル化した。10%DMSOおよび5%D−マンニトールを含有する緩衝液中のツムスタチン−45−132を4℃で一晩、12M過剰量のSulfo−NHS−LC−ビオチンと共にインキュベートした。ビオチニル化ツムスタチン−45−132は、このインキュベートの間に析出した。沈殿を蒸留水で2回洗浄し、DMSO中に再懸濁し、次に蒸留水と1:1混合し、約4mg/mlの終濃度を得た。ビオチニル化ツムスタチン−45−132は4℃で保存した。
細胞表面標識のために、サブコンフルエントのHUVEC細胞を、穏やかなトリプシン処理によりEDTAを用いてフラスコから取り出し、次に2%BSA含有DMEMで2回洗浄した。次に細胞をDMEM/BSA中に再懸濁し、ビオチン標識ツムスタチン−45−132またはツムスタチン−45−132を用いない擬似的ビオチン反応産物のいずれかと共に4℃で1時間インキュベートした。次に細胞をDMEM/BSAで2回洗浄し、次に4℃で30分間、ストレプトアビジン−FITC(“Neutravidin−FITC”,Pierce Chemical Co.,Rockford,Illinois,USA)と共にインキュベートした。次に試料をNikon Eclipse E600蛍光顕微鏡で観察し、フローサイトメトリーにより分析した。
ツムスタチン−45−132に間接的に結合したFITCは、懸濁液中のHUVEC細胞の表面上にて検出され、そして、蛍光は接着後の細胞表面上でより小さい斑点パターンで広範に分布していた。ビオチニル化ツムスタチン−45−132の代わりに遊離のビオチンと共に細胞をインキュベートした場合、細胞表面に有意な蛍光は検出されなかった。FITC−陽性、即ちツムスタチン−45−132結合の細胞の数は、ビオチニル化ツムスタチン−45−132の漸増濃度と共に用量依存的に増大し、これは、ツムスタチン−45−132が内皮細胞の表面に結合することを示していた。
実施例46:血管形成および腫瘍増殖に対するツムスタチン−45−132の作用
新毛細管の形成に対するツムスタチン−45−132のインビボの作用を評価するために、マトリゲルプラグ試験を行った。処置の6日後、形成した新血管の数は、PBS処置対照と比較して、5μg/mlの大腸菌発現ツムスタチン−45−132での処置により91%低減した。完全長ツムスタチンのN末端53アミノ酸を欠失したTum−1もまた試験したところ、新血管形成を95%低減した。血管の平均数(3〜4を超えるマトリゲルプラグ)は、Tum−1処置プラグで0.47±0.16、ツムスタチン−45−132処置プラグで0.80±0.16、そしてPBS処置対照で8.81±0.35であった。
ツムスタチン−45−132はまた、腫瘍の増殖を抑制する能力についても試験した。5〜6週齢の約25gの雄性無胸腺ヌードNCRNUマウスに約2×10個のPC−3(前立腺癌)細胞を背部の皮下に移植した。腫瘍は、バーニヤカリパス(Vernier calipers)を用いて計測し、腫瘍の容量を標準的な式(幅×長さ×0.52)を用いて計算した。腫瘍を約50mmまで増殖させ、次に動物を6匹のマウスの群に振り分けた。タンパク質またはベヒクル(PBS、対照)の初期用量をペアマッチングの日(第1日)に与えた。滅菌PBS中のツムスタチン−45−132、Tum−5−125−C−Aまたはヒトエンドスタチンを20日間、1〜20mg/kgの範囲の用量で、1日2回(b.i.d.)毎日腹腔内注射した。対照動物にはPBSベヒクルを注射した。1つの処置では、外科的に移植したAlzetミニポンプを用いてツムスタチン−45−132の連続皮下デリバリーを行った。マウスは毎週2回計量し、腫瘍の計測は第1日より開始した。予測される平均腫瘍容量を計算し、第21日にマウスを計量し、屠殺し、その腫瘍を切開し、光学顕微鏡およびCD31免疫染色により調べた。平均の処置腫瘍重量を平均の対照腫瘍重量で割って1から差し引き、パーセントとして表示することにより、各群に関する腫瘍増殖の抑制とした。
結果は図54に示すとおりであり、これは、ベヒクル(対照、□)、1mg/kgのツムスタチン−45−132(◆)、1mg/kgのTum−5−125−C−A(●)、20mg/kgのエンドスタチン(○)およびミニポンプ処置ツムスタチン−45−132(1mg/kg、△)を用いた処置の、0、5、10、15および20日(x軸)におけるV/V(平均腫瘍容量/初期腫瘍容量)による分数値の腫瘍容量(y軸)を示す線グラフである。タンパク質処置の毒性は、体重変化で判断したところ観察されなかった。ツムスタチン−45−132およびTum−5−125−C−Aは共に、PC−3細胞の増殖を著しく抑制した。ベヒクル注射の対照と比較して、ヒトツムスタチン−45−132は1mg/kgで74.1%(p=0.02)の腫瘍増殖抑制を示し、そしてTum−5−125−C−Aは92.0%(p=0.001)の腫瘍増殖抑制を示した。Alzetミニポンプを用いたツムスタチン−45−132(1mg/kg、24時間)の連続デリバリーもまた、70.1%(p=0.03)の有意な腫瘍増殖抑制を示した。20mg/kgの用量でデリバリーしたエンドスタチン(1日2回、ボーラスインジェクション(bolus injection))は、ベヒクル処置対照と比較して有意な腫瘍増殖抑制を示さなかった。
標準的なストレプトアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ検出系(Vectastain ABC Elite Kit,Vector Labs,Burlingame,California,USA)と共にラット抗マウスVD31モノクローナル抗体(PharMingens,San Diego,CaliforniaUSA)を用いて、PC−3腫瘍異種移植片の凍結組織切片中の腫瘍内微小血管密度(MVD)を測定するためにCD31免疫染色を用いた。内因性ペルオキシダーゼ活性を1%H/メタノールで30分間ブロッキングし、次に室温で30分間プロテアーゼKと共にインキュベートすることによりスライドを抗原回復処理に付した。抗マウスCD31抗体を0.1%TWEEN−20含有PBS中1:20に希釈し、5%正常ヤギ血清/PBS+0.1%TWEEN−20で切片をブロッキングした後、2時間インキュベートした。正常ラットIgGを陰性対照として用いた。免疫ペルオキシダーゼ染色は、Vectastain ABC Elite試薬キットを用いて行った。切片はメチルグリーンで対比染色した。MVDは、低倍率の倍率で腫瘍を走査し、次に個別の微小血管の最大数を含んでいる腫瘍の周囲の3領域を同定し、そして40×の視野で個々の微小血管を計数することにより評価した。平均の微小血管密度を処置群間で比較し、スチューデントのt検定を用いて分析した。
ツムスタチン−45−132の腹腔内注射は、ベヒクル注射の対照と比較してPC−3異種移植片中の微小血管密度を著しく抑制した。低倍率(40×)視野当たりのCD31陽性血管数は、ツムスタチン−45−132処置で6.33±0.54であったのに対し、対照では9.44±1.05であった(p=0.047)。Tum−5−125−C−Aまたはミニポンプ処置ツムスタチン−45−132処置群は、平均血管密度の同様の低下を示した。
実施例47:ツムスタチンおよびツムスタチン−45−132はT3ペプチド配列を介して内皮細胞に結合する
293ヒト胚性腎細胞中に生成したツムスタチンを用いて、組織培養プレートをコーティングした。10μg/mlのT1、T2、T3、T4、T5、T6およびTum−4の存在下において、C−PAE細胞のツムスタチンコーティングプレートへの接着を行った。結果は図55Aおよび55Bに示すとおりであり、これらは、ツムスタチンの種々のペプチドサブユニットの存在下における、293産生ツムスタチンでコーティングされた組織培養プレートへのC−PAE細胞の結合を示す一組のヒストグラムである。PBSおよびBSAをそれぞれ陽性対照および陰性対照として使用した。図55Aは、10μg/mlのペプチドT1、T2、T3、T4、T5、T6、Tum−4の存在下の細胞結合を示す。T3ペプチドは46.4%までツムスタチンコーティングプレートへの細胞接着を抑制した。図55Bは、0.1、2.0または10.0μg/mlのT3ペプチドの存在下の細胞結合を示す。細胞接着の抑制は用量依存性であった。他のペプチドは細胞接着を抑制しなかった。
これらの結果、並びに実施例40の結果(図44Cおよび44D)は、内皮細胞が完全長ツムスタチンのツムスタチン−45−132ドメイン内のT3配列に特異的に結合すること、および、この結合がこれらの分子の抗血管形成特性の原因であると考えられることを示している。ツムスタチンおよびツムスタチン−45−132は他の内皮細胞結合部位を有しており、このことは、T3がαβインテグリン結合を介してのみ抑制するため、T3ペプチドによる内皮細胞の結合の完全な抑制が無かったことを説明している(上記の実施例40、図44Eおよび44F参照)。
実施例48:T3ペプチドはカスパーゼ−3の活性を増強する
T3ペプチドで処置した細胞におけるカスパーゼ−3のプロテアーゼ活性は、標識基質(DEVD−pNA)から開裂した発色団(p−ニトロアニリド)の検出によりスペクトル分析により測定した。50μg/mlのT3ペプチドで処置したC−PAE細胞はカスパーゼ−3活性について3.6倍上昇を示したのに対し、陽性対照TNF−α(80ng/ml)は陰性対照と同等の上昇(4.5倍)をもたらした。10mg/mlのT3ペプチドは1.6倍の僅かなカスパーゼ−3活性増大をもたらし、用量依存的作用を示唆していた。カスパーゼ−3の特異的阻害剤であるDEVD−fmkは基線までプロテアーゼ活性を低下させ、測定された活性の上昇がカスパーゼ−3に特異的であることを示していた。PC−3非内皮細胞においては、対照とT3ペプチド処置細胞との間にカスパーゼ−3活性の差はなかった。
実施例49:T3折りたたみペプチドの合成および活性ならびにS−S架橋の形成
T3ペプチドは2個のシステイン残基を含んでいる。T3ペプチドの2個のシステイン残基の間のS−S架橋の形成は以下の通り酸化により行った。T3ペプチドを10mlの50%アセトニトリルおよび10mM重炭酸アンモニウム緩衝液(pH7.3)に0.25mg/mlの濃度まで溶解した。10mM重炭酸アンモニウム緩衝液(pH7.3)中に溶解した酸化剤である2mg/mlのフェリシアン化カリウムの30μl分液を、5分間間隔で室温で5回添加し、その際、各添加の後に短時間攪拌し、その後2時間室温でインキュベートした。最終生成物中に遊離のチオール基が存在しないことは、Ellman試薬(DTNB、ジチオニトロ安息香酸)を用いることにより確認し、そしてペプチドの2量体およびより高次のオリゴマーが存在しないことは、SDS−PAGE(16.5%)および銀染色により確認した。HPLCをT3ペプチドの最終精製として使用した。アセトニトリル(CHCN)勾配(30分間、20〜60%緩衝液B)を用い、C−18 300A Jupiterカラム(Phenomenex,Torrance,California,USA)にT3ペプチドを適用し、精製した。緩衝液Aは0.1%トリフルオロ酢酸、そして緩衝液Bはアセトニトリル中0.1%トリフルオロ酢酸である。純粋な単量体ピークが各試料で観察されたが、溶出時間が異なっており、ペプチドの疎水性に差があることが示唆された。T3折りたたみペプチドのピーク画分を収集し、SDS−PAGEおよび銀染色により確認した。
結果は図56に示すとおりであり、これは、0、1、10および20μg/mlのT3ペプチド(黒色棒)およびT3折りたたみペプチド(白色棒)で処置した場合の、C−PAE細胞の増殖(0.1%FCSで処置した未刺激の対照細胞のパーセントとして)を示すヒストグラムである。T3非折りたたみペプチドの抗増殖作用はT3折りたたみペプチドのものと異なっておらず、ツムスタチンおよびツムスタチン−45−132を用いた場合と同様、ジスルフィド結合および二次構造はT3活性に必要でないことが示された。
実施例50:ツムスタチンおよび欠失突然変異体の抗血管形成活性の比較
内皮細胞増殖試験を用いて、ツムスタチンおよびいくつかの欠失突然変異体の活性を比較した。組換えツムスタチン(28kDa)、ツムスタチン−45−132(12kDa)およびT3ペプチドを等モル濃度においてメチレンブルー増殖試験で使用した。1μM、2.5μMおよび5μMの濃度において、ツムスタチン、ツムスタチン−45−132およびT3ペプチドは抗増殖活性を示した。しかしながら、T3ペプチド(折りたたみ型または非折りたたみ型のいずれか、上記実施例49参照)は、等モル濃度においてツムスタチンおよびツムスタチン−45−132と比較して2.5倍低活性であった。
二次構造はT3ペプチドのより低い活性を説明するものではなく、この活性のためには別の配列が必要である可能性がある。T2ペプチドはツムスタチンへのαβインテグリンの結合を抑制せず、また内皮細胞の増殖も抑制せず、そしてこの領域はT3ペプチドの活性の増強においては重要ではないと考えられる。一方、T4ペプチド配列は内皮細胞の増殖に対して抑制活性を示さなかったが、αβインテグリンに対しては弱い結合を示した。従って、T4ペプチドから9個の別のアミノ酸を伸長した新しいペプチドを作成した。この9個の残基はT5ペプチドには含まれない。この新しいペプチド(TMPFLFCNVNDVCNFASRNDYSYWL:配列番号37)を「T7」と称し、C−PAE細胞の増殖に対するその作用について試験した。
結果は図57に示すとおりであり、これは、完全長ツムスタチン(黒色棒)、ツムスタチン−45−132(白色棒)、T7ペプチド(交差線棒)およびT3ペプチド(斑点棒)で処置した場合の、C−PAE細胞の増殖(0.1%FCSで処置した未刺激の対照細胞のパーセントとして)を示すヒストグラムである。図57のそれぞれの棒は3組のウェルの平均±SEMを示す。ツムスタチンは5μMの濃度では試験しなかった。
T7ペプチドは、等モル濃度でツムスタチンおよびツムスタチン−45−132と同様の活性の水準を示した。ツムスタチン、ツムスタチン−45−132およびT7ペプチドは1μMのED50で抗増殖活性を示したが、T3ペプチドは2.5μMのED50を有していた。これらの結果は、T4ペプチドの最初の9アミノ酸は抗血管形成活性を示さないが、それらはαβインテグリンへのツムスタチンの任意の結合にとって重要であり、おそらくはこれらの分子の間の良好な相互作用を促進し、最大の抗血管形成活性を獲得しやすくしていると考えられる。
実施例51:合成ペプチドのインビボの抗血管形成活性
新毛細管の形成に対するT3のインビボの作用を調べるために、マトリゲルプラグ試験をツムスタチン−N53(5μg/ml)、T1およびT3ペプチド(10μg/ml)を用いて行った。4〜7倍の高倍率視野から血管の数を計数し、平均した。ツムスタチン−N53処置後の高倍率視野当たりの血管の平均数は0.47±0.16であり、T1ペプチドでは7.41±0.54、そしてT3ペプチドでは0.33±0.16であった。対照では平均で視野当たり8.81±0.35血管であった。ツムスタチン−N53およびT3は、未処置対照と比較してそれぞれ95%および96%新血管形成を抑制したのに対し、T1ペプチドは血管数の有意な低減をもたらさなかった。
実施例52:ツムスタチンペプチドは内皮細胞の全タンパク質合成を抑制する
タンパク質合成の調節は、細胞の増殖およびプログラムされた細胞死、即ちアポトーシスにとって重要である(McBratney,S.ら,1993,Curr.Opin.Cell Biol.5:961−5;Brown,E.J.ら,1996,Cee 86:517−520;Tan,S.L.ら,1999,J.Interferon Cytokine.Res.19:543−54;Gingras,A.C.ら,2001,Genes Dev.15:807−826)。ツムスタチン、基底膜由来α3IV型コラーゲンペプチドフラグメントは、抗血管形成活性を有する内皮細胞特異的な前アポトーシス因子であることが分かっている(Maeshima,Y.ら,2000,J.Biol.Chem.275:23745−50;Maeshima,Y.ら,2001,J.Biol.Chem.276:15240−8;Maeshima,Y.ら,2001,J.Biol.Chem.276:31959−68)。ツムスタチン誘導アポトーシスは、カスパーゼ−3、即ちcap依存性のタンパク質翻訳の調節に関与しているとされる酵素に関わっている(Maeshima,Y.ら,2000,J.Biol.Chem.275:23745−50;Maeshima,Y.ら,2001,J.Biol.Chem.276:15240−8;Maeshima,Y.ら,2001,J.Biol.Chem.276:31959−68;Bushell,M.ら,FEBS Lett.451:332−336)。
従って、ツムスタチンが複数の内皮細胞においてタンパク質合成を抑制する潜在的能力を検討した。ツムスタチンおよびその活性サブフラグメントであるツムスタチン−45−132、T3およびT7ペプチドを使用した。ツムスタチンのアミノ酸45−132は、上記のとおり、大腸菌において組換えツムスタチン−45−132として発現させた(Maeshima,Y.ら,2001,J.Biol.Chem.276:15240−8)。ヒトエンドスタチンは文献に従って酵母内で産生した(Dhanabalら,Cancer Res.59:189−97)。低エンドトキシン濃度(50EU/mg未満)の可溶性タンパク質のみを使用した。ツムスタチンの残基68〜87および73〜97からそれぞれなるT3ペプチド、T7ペプチド、およびT7−突然変異ペプチド(TMPFMFCNINNVCNFASRNDYSYWL;配列番号38)を、文献記載の通り合成した(Maeshima,Y.ら,2000,J.Biol.Chem.275:21340−88;Maeshima,Y.ら,2001,J.Biol.Chem.276:31959−68)。
一次ヒト腎内皮細胞(HRE)をClonetics(San Diego,California,USA)より購入し、REGM中に維持した(Clonetics Corporation,San Diego,California,USA)。他の細胞系統は上記の通り入手して維持した。細胞を24時間血清枯渇させ(0.5%FCS)、T3ペプチド、ツムスタチン−45−132、エンドスタチンまたはラパマイシンの存在下において12〜24時間、10%FCSで刺激した。1時間メチオニン非含有倍地中で細胞を前インキュベートした後、1時間35S−メチオニンで細胞を標識し、トリクロロ酢酸沈殿物中への放射能の取り込みを分析した(Sudhakar,A.ら,2000,Biochem.39:12929−38;Maeshima,Y.ら,1996,J.Amer.Soc.Nephtol.7:2219−29)。片側スチューデントt検定を用いたANOVAを用い、この試験の多重比較における有意差を調べた。p<0.05の水準を統計学的に有意とみなした。
結果は図58A〜58Hに示すとおりであり、これは、種々の処置(x軸)の下での細胞における35Sメチオニン取り込み(y軸)を示す8種のヒストグラムのシリーズである。実験は3回反復し、代表的なデータを示した。それぞれの棒は3組の平均±SEMからなる。図58Aにおいては、C−PAE細胞をT3ペプチド(4.5μM)、ツムスタチン−45−132(4.5μM)、エンドスタチン(4.5μM)またはラパマイシン(100ng/ml)で、12時間(黒色棒)または24時間(斜線棒)処置した。HUVECもまた、24時間(図58B)T3ペプチド(4.5μM)、ツムスタチン−45−132(4.5μM)、エンドスタチン(4.5μM)またはラパマイシン(100ng/ml)で処置した。図58Cにおいては、C−PAEを12〜24時間血清枯渇させ、次に0μM(対照、黒色棒)、4.5μM(水平平行線棒)または22.7μM(斜線棒)のT3ペプチドの存在下で24時間、10%FCSを含有する培地を用いてインキュベートした。図58D〜Hにおいては、PC−3細胞(図58D)、786−O細胞(図58E)、NIH3T3細胞(図58F)、HRE細胞(図58G)およびWM−164細胞(図58H)を24時間、T3ペプチド(4.5μM)、ツムスタチン−45−132(4.5μM)、エンドスタチン(4.5μM)またはラパマイシン(100ng/ml)で処置した。
等モル濃度(4.5μM)において、全ツムスタチンペプチドとも、35S−メチオニン取り込みにより測定した場合、ウシおよびヒトの内皮細胞の血清刺激の24時間後に、25〜30%タンパク質合成を抑制した(図58Aおよび58B)。用量感受性試験においては、ツムスタチンペプチドT3は、22.7μMの濃度で約45%の最大抑制を達成した(図58C)。これらの実験のすべてにおいて、陽性対照であるラパマイシン(汎特異的mTOR/タンパク質合成阻害因子(Berettaら,1996,EMBO J.15:658−64))はタンパク質合成を抑制したのに対し、エンドスタチン、即ち別のマトリックス由来内皮細胞特異的プロアポトーシス因子(O’Reilly,M.S.ら,1997,Cell 88:277−85;Bergers,G.ら,1999,Science 284:808−12;Dhanabal,M.ら,1999,Biochem.Biophys.Res.Commun.258:345−352)はタンパク質合成を抑制しなかった(図58Aおよび58B)。ツムスタチンペプチドは、PC−3前立腺癌細胞、768−O腎癌腫細胞、NIH−3T3線維芽細胞、一時ヒト腎上皮細胞(HRE)またはWM−164ヒト黒色腫細胞のような非内皮細胞においては、タンパク質合成を抑制しなかった(図58D〜58H)。一方、ラパマイシンは、試験したすべての細胞においてタンパク質合成を抑制した(図58A、58B、58D〜58H)。
実施例53:ツムスタチンペプチドは内皮細胞においてcap依存性タンパク質翻訳を抑制する
ツムスタチンによるタンパク質合成の抑制がcap依存性であることを明確にするために、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下においてジシストロン性(dicistronic)mRNAを発現し、そしてポリオウイルスの未翻訳領域に由来する内部リボソーム侵入部位(IRES)を含むプラスミド(pcDNA3−LUC/pol/CAT)で内皮細胞をトランスフェクトした(Beretta,L.ら,1996,EMBO J.15:658−64;Kumar,V.ら,2000,J.Biol.Chem.275:10779−87)。このプラスミドの構築は、ルシフェラーゼ(LUC)の翻訳がcap依存性であるがクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)の翻訳がcap非依存性であるように行う(Beretta,L.ら,1996,EMBO J.15:658−64;Kumar,V.ら,2000,J.Biol.Chem.275:10779−87)。慨すれば、細胞を24時間血清枯渇させ、Lipofectamine Plus(Life Technologies,Gibco/BRL,Gaithersburg,Maryland,USA)を用いて、1.5μgのpCDNA3−LUC−pol−CAT(Kumar,V.ら,2000,J.Biol.Chem.275:10779−87)で一過性にトランスフェクトした(Maeshima,Y.ら,1998,J.Clin.Invest.101:2589−97)。3時間後、細胞を今度は10%FCSの存在下、21時間、T3ペプチド(4.5μM)、ツムスタチン−45−132(4.5μM)、T7ペプチド(4.5μM)、エンドスタチン(4.5μM)またはラパマイシン(100ng/ml)の非存在下(対照)または存在下に処理した。細胞溶解物を調製し、デュアル‐ルシフェラーゼレポーター定量システム(Promega,Madison,Wisconsin,USA)を用いて、ルシフェラーゼ活性を測定した。CAT活性は、14C−クロラムフェニコールと共にCAT酵素アッセイシステム(Promega,Madison,Wisconsin,USA)を用いて測定した。液体シンチレーション計数法を用いて、n−ブチリルクロラムフェニコールの濃度を測定した。
結果は図59Aおよび59Bに示すとおりであり、これは、T3ペプチド(4.5μM)、ツムスタチン−45−132(4.5μM)、T7ペプチド(4.5μM)、エンドスタチン(4.5μM)またはラパマイシン(100ng/ml)による処置の下での、ルシフェラーゼ(LUC;cap依存性翻訳;黒色棒)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT;cap非依存性翻訳;交差線棒)の翻訳に関するレポーター活性(y軸)を示す一組のヒストグラムである。対照と比較した場合のルシフェラーゼおよびCAT活性を示す。これらの実験は3回反復し、代表的データを示した。それぞれの棒は3組の平均±SEMからなる。
ツムスタチンペプチドは、ウシ内皮細胞において37〜39%LUCのcap依存性翻訳を低減し、ラパマイシンと同等であった(図59A)。ここでもまたエンドスタチンはcap依存性翻訳に影響を及ぼさなかった(図59B)。初期に観察されたとおり、ツムスタチンペプチドは非内皮細胞におけるcap依存性翻訳は抑制しなかったが、ラパマイシンは抑制した(図59B)。cap非依存性の翻訳(CAT活性)はツムスタチンペプチドにより改変されなかった。
ラパマイシンは内皮細胞におけるcap非依存性の翻訳を誘導した(図59A)が、このことは、IRES含有mRNA(ポリオウイルス)の翻訳をラパマイシンが刺激することを示唆している以前の報告と合致している(Beretta,L.ら,1996,EMBO J.15:658−64;Gingras,A.C.ら,2001,Genes Dev.15:807−826)。興味深いことに、cap非依存性の翻訳はNIH3T3細胞においてはラパマイシンによって低減したが、このこともまた、この傾向を示唆していた以前の報告と合致している(Beretta,L.ら,1996,EMBO J.15:658−64)。別の実験において、処置および未処置の内皮細胞におけるRNA濃度はノーザンブロットによる試験では不変であり、これは、RNA濃度に対してではなくタンパク質翻訳に対するツムスタチンペプチドの特異的作用を示唆している。
実施例54:cap依存性翻訳およびタンパク質合成に対するツムスタチンペプチドの内皮細胞特異的抑制作用はα β インテグリンにより媒介される
以前の研究は、ツムスタチンによる内皮細胞のアポトーシスが内皮細胞上のαβインテグリンへのその結合に依存していることを示唆している(Maeshima,Y.ら,2000,J.Biol.Chem.275:21340−8;Maeshima,Y.ら,2001,J.Biol.Chem.276:15240−8;Maeshima,Y.ら,2001,J.Biol.Chem.276:31959−68)。従って、cap依存性および非依存性の翻訳に対するツムスタチンペプチドの作用を評価するために、αβインテグリンの発現が欠損している12週齢のマウス(即ち、βインテグリン欠損マウス)およびその野生型対照の肺から内皮細胞を単離した(Hodivala−Dilke,K.M.ら,1999,Clin.Invest.103:229−38)。慨すれば、ICAM−2発現MLECは、磁気ビーズ(Dynabeads M−450,Dynal,Oslo,Norway)にコンジュゲートしたラット抗マウスICAM−2(#01800D,PharMingen,San Diego,California,USA)を用いて増量した。MLECは、40%Ham’s F−12、40%DME−低グルコース、ヘパリンを添加した20%FBS、内皮有糸分裂促進物質(Biomedical Technologies,Inc.,Cambridge,Massachusetts,USA)、グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシン中に維持した。野生型およびβインテグリン欠損マウスの胚性線維芽細胞を調製した(Hodivala−Dilke,K.M.ら,1999,Clin.Invest.103:229−38)。MEFは10%FBS含有DMEM中に維持した。MLECは、形態学的分析により、および内皮特異的マーカーに関する免疫蛍光染色により、均質性について特徴付けられた。3継代〜6継代の細胞を実験に使用した。
結果は図60A〜60Hに示すとおりであり、これは、8種のヒストグラムのセットである。図60A〜60Dは、35Sメチオニン取り込みとしての総タンパク質合成(y軸)を、内皮細胞について(MLEC)(図60Aおよび60B)および野生型(図60Aおよび60C)およびβインテグリンノックアウト(図60Bおよび60D)の同腹仔マウスの胚腺維芽細胞について(MEF)(図60Cおよび60D)示したものであり、ここで、細胞は、ツムスタチン−45−132(4.5μM)、T7(4.5μM)、T7突然変異ペプチド(4.5μM)、エンドスタチン(4.5μM)またはラパマイシン(100ng/ml)で処置した(x軸)。図60E〜60Gは、対照のパーセントとしてのルシフェラーゼ(Luc;黒色棒)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT;交差線棒)のレポーター活性を、内皮細胞について(MLEC)(図60Eおよび60F)および野生型(図60Eおよび60G)およびβインテグリンノックアウト(図60Fおよび60H)の同腹仔マウスの胚腺維芽細胞について(MEF)(図60Gおよび60H)示したものであり、ここで、細胞は、ツムスタチン−45−132(4.5μM)、T7(4.5μM)、T7突然変異ペプチド(4.5μM)、エンドスタチン(4.5μM)またはラパマイシン(100ng/ml)で処置した(x軸)。これらの実験は3回反復し、代表的データを示した。それぞれの棒は3組の平均±SEMからなる。
野生型およびβインテグリン欠損MLECは共に、内皮特異的マーカーであるVE−カドヘリンの発現について細胞接合部および接触点において共に陽性であった。両細胞系統はまた、diI−Ac−LDLの取込が可能であった。ツムスタチンは、対照細胞(β+/+細胞)においてタンパク質合成を抑制したが、αβインテグリンの発現が欠損しているマウス内皮細胞(β−/−)におけるcap依存性タンパク質合成については作用を有さなかった(図60Aおよび60B、60Eおよび60F)。ラパマイシンは、対照およびαβインテグリン欠損マウス内皮細胞の両方においてcap依存性タンパク質合成を抑制し、そして同様の実験条件下においてエンドスタチンはこの性質を示さなかった(図60Aおよび60B、60Eおよび60F)。αβインテグリンを発現する内皮細胞に対するツムスタチンの特異性を明確にするために、αβインテグリンを発現するマウス胚性線維芽細胞(Hodivala−Dilka,K.M.ら,1999,J.Clin.Invest.103:229−38)もタンパク質合成実験において使用した。ツムスタチンペプチドは、αβインテグリンの発現とは非依存的にこれらの細胞におけるタンパク質の合成を抑制しなかったのに対し、ラパマイシンはこれらの細胞におけるタンパク質合成およびcap依存性翻訳を抑制した。(図60C、60D、60Gおよび60H)。
実施例55:4E−BP1の低下したリン酸化をもたらすPI3−k−Akt−mTORシグナリングをツムスタチンペプチドはダウンレギュレートする
タンパク質合成の抑制に関与するシグナリング経路に対するツムスタチンの役割を解明するために実験を行った。内皮細胞を含む種々の細胞型において、インテグリンに結合するリガンドは、種々のシグナリング分子の活性化をもたらす焦点接着キナーゼ(FAK)のリン酸化を誘導する(Vuori,K.,1998,J.Membr.Biol.165:191−9;Rouslahti,E.,1999,Adv.Cancer Res.76:1−20)。リン酸化FAKは、ホスファチジルイノシトール3’キナーゼ(PI3−キナーゼ)およびAkt(PI3−キナーゼの下流)と相互作用してこれを活性化し、細胞の生存をもたらす(Chen,H.C.ら,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:10148−52;Vuori,K.,1998,J.Membr.Biol.165:191−9)。以前の報告によれば、内皮細胞におけるPI3−Kの抑制はタンパク質合成の抑制をもたらす(Vinals,F.ら,1999,J. Biol.Chem.274:26776−82)。
C−PAEを30分間血清枯渇させ、トリプシン処理した。懸濁液中の細胞を15分間T3ペプチド(50μg/ml)とインキュベートし、次に30〜60分間血清非含有条件下においてビトロネクチン予備コーティング皿に接着させた。総細胞抽出液を調製し、抗FAK(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,California,USA;ヤギIgG)および抗リン酸化FAK(Tyr397;Biosource International,Camarillo,California,USA;ウサギIgG)抗体を用いてSDS−PAGEおよびウエスタンブロットを行った(Kalluri,R.ら,1996,J.Biol.Chem.271:9062−8;Maeshima,Y.ら,2000,J.Biol.Chem.275:23745−50;Sudhakar,A.ら,1999,Biochem.38:15398−405;Kalluri,R.ら,2000,J.Biol.Chem.275:12719−24)。同じ実験は、WM−164黒色腫細胞を用いても行った。
結果は図61Aに示すとおりであり、これは、ビトロネクチンコーティングプレートへの結合時間無しでT3ペプチドの非存在下(「0−」棒)、30分の結合時間とT3ペプチド非存在下(「30−」棒)、30分の結合時間と50μg/mlのT3ペプチド(「30+」棒)、60分の結合時間とT3ペプチド非存在下(「60−」棒)および60分の結合時間と50μg/mlのT3ペプチド(「60+」棒)での処置の下における(x軸)、pFAK/FAKの相対密度(y軸)を示す。
PI3−キナーゼ活性は、ホスファチジルイノシトール(PI)のインビトロでのリン酸化により測定した(Ueki,K.ら,J.Clin.Invest.105:1437−45)。C−PAEを30分間血清枯渇させ(0.5%FCS)、トリプシン処理し、15分間T3ペプチド(50μg/ml)と共に予備インキュベートした。次に細胞を30〜60分間ビトロネクチンコーティング皿に接着させ、細胞溶解物は、抗ホスホチロシン抗体を用いた免疫沈降に付した(Upstate Biotechnology,Lake Placid,New York,USA)。連続して洗浄した後、免疫沈降物を0.1mg/mlのPI(Avanti Polar Lipids,Inc.,Alabaster,Alabama,USA)を含有するPI3K反応緩衝液(20mM Tris−HCl、pH7.4、100mM NaClおよび0.5mM EGTA)50μL中に再懸濁した。PI3キナーゼの反応は、5μCiのγ−32P−ATPを含有する200μM ATP 5μLを添加することにより開始した。25℃で20分間の後、反応を停止し、試料を遠心分離し、有機層を除去し、シリカゲル60プレートにスポットし、クロロホルム−メタノール−28%水酸化アンモニウム−水(43:38:5:7)で展開した。リン酸化脂質はオートラジオグラフィーにより可視化した。
結果は図61Bに示すとおりであり、これは、ビトロネクチンコーティングプレートへの結合時間無しでT3ペプチドの非存在下(「0−」棒)、30分の結合時間とT3ペプチド非存在下(「30−」棒)、30分の結合時間と50μg/mlのT3ペプチド(「30+」棒)、60分の結合時間とT3ペプチド非存在下(「60−」棒)および60分の結合時間と50μg/mlのT3ペプチド(「60+」棒)での処置の下における(x軸)、PI3キナーゼ活性(y軸)を示すヒストグラムである。
次にC−PAEおよびWM−164細胞を用いて、図61Aに示すとおり、抗Aktおよび抗リン酸化Akt抗体(Ser473;New England BioLabs,Beverly,Massachusetts,USA;ウサギIgG)によるウエスタンブロッティングを行った。結果は図61Cに示すとおりであり、これは、図61Aと同じ処置(x軸)の下でのpFAK/FAKの相対密度(y軸)を示すヒストグラムである。
mTORキナーゼ試験は以前に記載されている通り実施した(Kumar,V.ら,2000,J.Biol.Chem.275:10779−87)。C−PAEおよびWM−164を血清枯渇させ、Lipofectamine Plus(Life Technologies,Gibco/BRL,Gaithersburg,Maryland,USA)を用いて、HA−mTOR cDNA(Kumar,V.ら,2000,J.Biol.Chem.275:10779−87)で一過性にトランスフェクトし、そして24時間、T3ペプチド(50μg/ml)またはツムスタチン−45−132で処置した。細胞溶解物(150μg)を抗HA抗体(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,Indiana,USA)による免疫沈降に付した。ビーズを20分間30℃で、30μMの冷ATPを含有するキナーゼ緩衝液(25mM Tris、25mM KClおよび2.5mM酢酸マグネシウム)中10μCiのγ−32P−ATPの存在下において、組換えGST−4E−BP1融合タンパク質(Kumar,V.ら,2000,J.Biol.Chem.275:10779−87)と共にインキュベートした。反応を停止し、試料をSDS−PAGEに付し、オートラジオグラフィーで分析した。
結果は図61Dに示すとおりであり、これは、mTORトランスフェクション無しでペプチド処理無し(「−−」棒)、mTORトランスフェクション有りでペプチド処理無し(「+−」棒)、mTORトランスフェクション有りでツムスタチン−45−132処理有り(「+Tum−5」棒)およびmTORトランスフェクション有りでペプチドT3処理あり(「+T3」棒)での処置の下の(x軸)、mTORキナーゼ活性(y軸)を示すヒストグラムである。
血清枯渇の後、C−PAEまたはWM−164は、24時間10%FCSの存在下、T3ペプチド、ツムスタチン−45−132、ラパマイシンまたはエンドスタチンで処置した。細胞溶解物を調製し、7−メチル−GTP−セファロース(Pharmacia Biotech,Inc.,Piscataway,New Jersey,USA)の50%スラリー30μlを添加し、25℃で30分間インキュベートした。樹脂を2回洗浄(洗浄緩衝液:100mM KCl、0.2mM EDTA、7mM β−メルカプトエタノール、20mM Tris−HCl、pH7.4)した後、結合タンパク質をSDS−PAGEにより分離させ、結合eIF4Eおよび4E−BP1の濃度をイムノブロッティングにより検出した(Kumar,V.ら,2000,J.Biol.Chem.275:10779−87)。
結果は図61Eに示すとおりであり、これは、FBSなし、T3、ツムスタチン−45−132、ラパマイシン、エンドスタチンまたはFBSで処置した(x軸)後の、C−PAE細胞におけるeIF4E結合4E−BPIの密度(y軸)を示すヒストグラムである。
PI3−キナーゼおよびAktの活性化に対するツムスタチンペプチドの作用を調べるために、構成性で活性なAkt(CAAkt、野生型AktのN末端に融合したGagタンパク質)のcDNAを構築した(Burgering,B.M.ら,1995,Nature 376:599−602)。組換えアデノウイルスは、文献記載の通り、親ウイルスゲノムと発現コスミドカセットまたはシャトルベクターとの間の相同組換えにより構築した(Ueki,K.ら,J.Clin.Invest.105:1437−45)。アデノウイルスは、1×108プラーク形成単位/mLの濃度で適用し、lacZ遺伝子を有する同じ親ゲノムのアデノウイルスを対照として使用した。組換えアデノウイルスでC−PAE細胞を24時間感染させた後、細胞を24時間血清枯渇させ、pcDNA−LUC−pol−CATでトランスフェクトした。10%FCS含有培地の存在下において21時間、T3ペプチドで細胞を処置した後、細胞溶解物を取得し、ルシフェラーゼ試験およびCAT試験を実施した。
CAT活性に対するルシフェラーゼ活性の結果は図61Fに示す通りであり、これは、対照のlacZ(陰をつけた棒)、構成性で活性なAkt(交差線棒)のcDNAを含むアデノウイルスで感染させた、または全く感染していない(黒色棒)のいずれかであるC−PAEについて、CAT活性に対するパーセントルシフェラーゼ活性を示すヒストグラムである。次に細胞を血清枯渇させ、pcDNA−LUC−pol−CATでトランスフェクトし、10%FCS含有培地存在下においてT3ペプチドで処置した。
ツムスタチンペプチドは、ビトロネクチンへの結合により誘導された内皮細胞におけるFAKのリン酸化を抑制する(図61A)。PI3−キナーゼおよびAktの活性化はまた、ツムスタチンペプチドでの処置により抑制された(図61Bおよび61C)。Aktの下流にあるFLAP/mTORとしても知られているラパマイシン/FKBP−標的1(RAFT1)は、真核細胞開始因子4E(eIF4E)−結合タンパク質(4EBP1)を直接リン酸化する(Brunn,G.J.ら,1997,Science 277:99−101;Gingras,A.C.ら,1998,Genes Dev.12:502−13)。未リン酸化4E−BP1は、eIF4Eと相互作用してcap依存性翻訳を抑制する(Pause,A.ら,1994,Nature 371:762−7)。増殖因子または血清による細胞の刺激は4E−BP1のリン酸化を誘導し、その結果、eIF4Eからのその解離が起こり、翻訳の抑制が軽減される(Pause,A.ら,1994,Nature 371:762−7;Gingras,A.C.ら,1998,Genes Dev.12:502−13)。ツムスタチンペプチドはmTORキナーゼ活性を不活性化し、従って4E−BP1のリン酸化を抑制する(図61D)。4E−BP1リン酸化の抑制はeIF−4Eへの4E−BP1の結合を増強し(図61E)、cap依存性翻訳の抑制をもたらす。αβインテグリンを発現する非内皮WM−164黒色腫細胞をこれらの実験に使用した場合、ツムスタチンペプチドによる抑制作用は観察されなかった(図61Aおよび61C〜61E)。内皮細胞におけるcap依存性翻訳の抑制においてこの経路が重要であることを確認するために、構成性で活性なAktは、組換えアデノウイルスを用いて内皮細胞内で過剰発現させた。ツムスタチンペプチドによるcap依存性翻訳の抑制は、構成的に活性なAktの過剰発現により克服された(図61F)。
これらのデータは更に、αβインテグリン−FAK−PI3−KAkt−mTORシグナリングのネガティブな調節を介した内皮細胞のタンパク質合成の抑制におけるツムスタチンペプチドの関与を示唆している。ツムスタチン/αβインテグリン誘導のネガティブシグナルは、これらの2種の経路の間のクロストークを介して、増殖因子(血管内皮増殖因子(VEGF)等)の発する細胞生存シグナルに逆作用すると考えられる。
ツムスタチンペプチドによるタンパク質合成の調節におけるMAPキナーゼ経路の役割も調べた。ビトロネクチン結合またはVEGF刺激の際の細胞外調節キナーゼ(ERK)1/2のリン酸化は、C−PAEにおいてはツムスタチンペプチドにより改変されなかった。総括すると、これらの結果は、cap依存性タンパク質合成の内皮細胞特異的阻害因子としてのツムスタチンペプチドがαβインテグリンの関与する「アウトサイド−イン(outside−in)」のシグナリングを介して作用すること、および、ツムスタチンの以前に報告されている抗血管形成活性がタンパク質のcap依存性翻訳のαβインテグリン媒介抑制を介して作用できることを確立するものである。
実施例56:MDAMB−435腫瘍異種移植片モデルにおけるT8合成ペプチドの活性
ヌードマウスにおけるMDAMB−435ヒト乳癌同所移植モデルに対する合成ペプチドT8の活性を検討した。
T8(KQRFTTMPFLFCNVNDVCNFASRNDYS:配列番号39)を合成し、HPLCにより90%超の純度まで精製した(<20EU/mg)。50mMグリシン、5mMアルギニン、9%D−マンニトール(pH8.0)の2×緩衝液1:1(v:v)を用いて、注射前にペプチドを中和した。
体重約20グラムの5〜6週齢の雌性NCRNUヌードマウスに、腋窩下乳房脂肪組織パッド中の2×10個のMDAMB−435細胞を移植した。腫瘍が100mmとなった時点で、動物を処置群および対照群に振り分けた。各群は7匹の腫瘍マウスを含み、その各々に耳タグを付し、実験期間中を通じて個体別に観察した。T8ペプチドまたは対照ベヒクルの初回用量をペアマッチング日(第0日)に与え、kg動物体重当たり、1mgおよび2.5mgを腹腔内(i.p.)注射により投与した。マウスは週2回計量し、腫瘍の計測は第1日より週2回カリパスを用いて行った。これらの腫瘍計測値はよく知られた数式であるV=W×L/2を用いて腫瘍容量に変換し、平均の腫瘍容量を時間に対してプロットした。マウスは処置期間終了時に安楽死させた。終了時にマウスを計量し、屠殺し、その腫瘍を摘出した。群当たりの平均腫瘍重量を計算し、(平均の処置腫瘍重量/平均の対照腫瘍重量×100)の値を100%から差し引くことにより、各群の腫瘍増殖抑制(TGI)を求めた。
処置は腫瘍容量が100mmに達した時点で開始した。全群とも26日間1日2回腹腔内注射した。結果は以下の表5に示す。
Figure 2006508015
結果はまた図62に示すとおりであり、これは対照のベヒクル処置(○)、および1mg/kg(□)または2.5mg/kg(◇)のT8での処置の後の種々の日数後の平均腫瘍容量(mm;y軸)を示すグラフである。体重変化により判断して、いずれの群にも毒性は観察されなかった。26日の処置の後、本発明者らの結果では、27量体のペプチドT8は、2.5mg/kgの用量で1日2回処置した場合に47.91%腫瘍増殖を著しく抑制した(p<0.001)。1.0mg/kgの用量で1日2回処置したT8は腫瘍増殖を著しく抑制しなかった。結論として、ツムスタチン配列に由来する小型の合成ペプチドであるT8は、MDAMB−435ヒト乳癌同所移植モデルにおける腫瘍の増殖の抑制において有効であった。
実施例57:MDAMB−435腫瘍異種移植片モデルに対するT8およびTP3合成ペプチドの活性
Tum5合成ペプチドT8およびTP3の抗腫瘍活性を、ヌードマウスにおいてMDAMB−435ヒト乳癌同所移植モデルに対して評価した。T8の投与計画もまた変更した。
天然のツムスタチン配列の突然変異体である合成ペプチドT8およびTP3(KLFCNVNCVCNFASRNDYS;配列番号41)を合成し、HPLCで90%超の純度まで精製した(<20EU/mg)。50mMグリシン、5mMアルギニン、10mM酢酸ナトリウム、9%D−マンニトール(pH8.2)の2×緩衝液1:1(v:v)を用いて、注射前にペプチドを中和した。
体重約20グラムの5〜6週齢の雌性NCRNUヌードマウスに腋窩下乳房脂肪組織パッド中の2×10個のMDAMB−435細胞を移植した。腫瘍が100mmとなった時点で、動物を処置群および対照群に振り分けた。各群は6〜7匹の腫瘍マウスを含み、その各々に耳タグを付し、実験期間中を通じて個体別に観察した。T8またはTP3ペプチドまたはベヒクル対照の初回用量をペアマッチング日(第0日)に与え、記載した用量で腹腔内(i.p.)注射により投与した。マウスは週2回計量し、腫瘍の計測は第1日より週2回カリパスを用いて行った。これらの腫瘍計測値はよく知られた数式(V=W×L/2)を用いて腫瘍容量に変換し、そして平均の腫瘍容量並びに腫瘍比(V/V)を時間に対してプロットした。マウスは処置期間終了時に安楽死させた。終了時にマウスを計量し、屠殺し、その腫瘍を摘出した。群当たりの平均腫瘍重量を計算し、(処置腫瘍比/平均の対照腫瘍比×100)の値を100%から差し引くことにより各群の腫瘍増殖抑制(TGI)を求めた。
処置は腫瘍容量が80mmに達した時点で開始した。週当たり2回処置した1つのT8処置群を除き、全群とも毎日腹腔内注射した。結果は以下の表6に示す。
Figure 2006508015
結果はまた図63に示すとおりであり、これは、対照の処置(○)、および、毎日TP3を1mg/kg(◇)、毎日TP3を5mg/kg(×)、毎日T8を5mg/kg(□)、または、1週間に2回T8を5mg/kg(+)で処置した場合の処置開始後種々の日数(x軸)における腫瘍容量の比(V/Vo;y軸)を示すグラフである。
体重変化により判断して、いずれの群にも毒性は観察されなかった。4週間の処置の後、結果によれば27量体のペプチドT8は、5mg/kgの用量で1日2回処置した場合に、それぞれ31.0%(p=0.07)および41.4%(p=0.02)腫瘍増殖を抑制した。更に、18量体トランケーションペプチドTP3は、1mg/kgの用量で30.6%(p=0.14)および5mg/kgの用量で50.0%(p<0.01)腫瘍増殖を抑制した。従って、ツムスタチン配列に由来する小型の合成ペプチドは、MDAMB−435ヒト乳癌同所移植モデルにおける腫瘍の増殖の抑制において有効であった。
実施例58:PC3腫瘍異種移植片モデルにおけるT7、T8、TP3、SP1およびSP2合成ペプチドの活性
合成ペプチドT7、T8、TP3、SP1およびSP2の抗腫瘍活性を、ヌードマウスにおいPC3ヒト前立腺腫瘍異種移植片モデルに対して評価した。
ペプチドT7、T8、TP3および対照のスクランブルドペプチドSP1(ANMSRNVFFDCTSFPVCQKFLNDTRNY;配列番号43)およびSP2(TFNCVKNYQRLDFTSRFVMDSCANFPN;配列番号44)を合成し、HPLCで90%超の純度まで精製した(<20EU/mg)。50mMグリシン、5mMアルギニン、10mM酢酸ナトリウム、9%D−マンニトール(pH8.2)の2×緩衝液1:1(v:v)を用いて、注射前にペプチドを中和した。ペプチドT7およびT8は、異なる保存ベヒクル中に保存した(T7は25%DMSO/PBS、そしてT8は2mM HCl)ため、異なる保存ベヒクル自体も対照として用いた。
体重約25グラムの5〜6週齢の雄性NCRNUヌードマウスの背部皮下に2×10個のPC3細胞を移植した。腫瘍が60mmとなった時点で、動物を処置群および対照群に振り分けた。各群は6〜7匹の腫瘍マウスを含み、その各々に耳タグを付し、実験期間中を通じて個体別に観察した。ペプチドまたはベヒクル対照の初回用量をペアマッチング日(第0日)に与え、記載した用量で腹腔内(i.p.)注射により投与した。マウスは毎週計量し、腫瘍の計測は毎週カリパスを用いて行った。これらの腫瘍計測値はよく知られた数式(V=W×L/2)を用いて腫瘍容量に変換し、そして平均の腫瘍容量を時間に対してプロットした。マウスは処置期間終了時に安楽死させた。終了時にマウスを計量し、屠殺し、その腫瘍を摘出した。群当たりの平均腫瘍重量を計算し、平均の処置腫瘍容量または容量比/平均の対照腫瘍容量または容量比×100の値を100%から差し引くことにより、各群の腫瘍増殖抑制(TGI)を求めた。
週当たり2回および週1回それぞれ処置した2つのT8処置群を除き、全群とも毎日腹腔内注射した。結果は以下の表7に示す。
Figure 2006508015
結果はまた図64Aおよび64Bに示すとおりであり、これは、種々の処置に関する処置後の種々の日数(x軸)における平均腫瘍容量の比(mm;y軸)を示す一組のグラフである。図64Aにおいては、処置は、T7用保存ベヒクル(○)、T7(□)、T8用保存ベヒクル(◇)、T8毎日(×)、TP3毎日(+)、SP1毎日(△)およびSP2毎日(●)とした。図64Bにおいては、処置は、T8用保存ベヒクル(○)、T8毎日(□)、T8週2回(◇)およびT8週1回(×)とした。
体重変化により判断して、いずれの群にも毒性は観察されなかった(体重減少10%未満)。3週間のペプチドの腹腔内投与の後、結果によれば、27量体のペプチドT8は5mg/kgの用量で45%腫瘍増殖を抑制した。T7は同用量で66.8%腫瘍増殖を抑制し、そしてTP3は同用量で53.2%腫瘍増殖を抑制した。すべての場合において、腫瘍増殖の抑制は、スチューデントのt検定によればそれほど有意ではなかった。スクランブルドペプチドSP1およびSP2は、より低い程度において腫瘍増殖を抑制し(それぞれ31.7%および18.7%)、これは有意ではなかった。
異なる投与計画も検討した。T8は、1週間に2回または1回、5.0mg/kgで投与した場合、腫瘍増殖を著しく抑制しなかった(それぞれ8.1%および39.5%)。従って、ペプチドTP3はPC3ヒト前立腺腫瘍異種移植片モデルにおいてT7およびT8の両方と同様の腫瘍増殖抑制活性を示すと考えられる。
実施例59:MDAMB−435腫瘍異種移植片およびPC3腫瘍異種移植片モデルにおけるT8、T8−3、P2およびSP2合成ペプチドの活性
合成ペプチドT8、T8−3、P2およびSP2の抗腫瘍活性を、ヌードマウスにおいてMDAMB−435ヒト乳癌同所移植モデルおよびPC3ヒト前立腺腫瘍異種移植片モデルに対して評価した。
ペプチドT8を合成し、そして、セリンが各システインと置換している以外はT8と同様の配列を有するT8−3(KQRFTTMPFLFSNVNDVSNFASRNDYS;配列番号40)、およびアスパラギン酸が各システインと置換しているP2(KQRFTTMPFLFDNVNDVDNFASRNDYS;配列番号42)も合成した。スクランブルド対照ペプチドであるSP2もまた合成した。すべてHPLCで90%超の純度まで精製した(<20EU/mg)。50mMグリシン、5mMアルギニン、10mM酢酸ナトリウム、9%D−マンニトール(pH8.2)の2×緩衝液1:1(v:v)を用いて、注射前にペプチドを中和した。
MDAMB−435モデルを伴う試験については、体重約20グラムの5〜6週齢の雌性NCRNUヌードマウスに、腋窩下乳房脂肪組織パッド中の2×10個のMDAMB−435細胞を移植した。PC3モデルを伴う試験については、体重約25グラムの5〜6週齢の雄性NCRNUヌードマウスの背部皮下に2×10個のPC3細胞を移植した。腫瘍が100mm(MDAMB−435モデルの場合)および60mm(PC3モデルの場合)となった時点で、動物を処置群および対照群に振り分けた。
各群は6〜7匹の腫瘍マウスを含み、その各々に耳タグを付し、実験期間中を通じて個体別に観察した。ペプチドまたはベヒクル対照の初回用量をペアマッチング日(第0日)に与え、記載した用量で腹腔内(i.p.)注射により投与した。マウスは毎週計量し、腫瘍の計測は毎週カリパスを用いて第0日より行った。これらの腫瘍計測値はよく知られた数式(V=W×L/2)を用いて腫瘍容量に変換し、そして平均の腫瘍容量を時間に対してプロットした。マウスは処置期間終了時に安楽死させた。終了時にマウスを計量し、屠殺し、その腫瘍を摘出した。群当たりの平均腫瘍重量を計算し、平均の処置腫瘍容量/対照腫瘍容量×100を100%から差し引くことにより、各群の腫瘍増殖抑制(TGI)を求めた。
MDAMB−435およびPC3モデルの結果を以下の表8および9にそれぞれ示す。
Figure 2006508015
Figure 2006508015
結果は図65Aおよび65Bに示すとおりであり、これは、対照処置(○)、T8ペプチド5mg/kgで毎日処置(□)、SP2を5mg/kg(◇)、T8−3を1mg/kg(×)または5mg/kg(+)、またはP2を1mg/kg(△)または5mg/kg(●)について、処置開始後種々の日数(x軸)の平均腫瘍容量(mm;y軸)を示す一組のグラフである。図65Aおよび65Bは、それぞれMDAMB−435およびPC3異種移植片モデルに関する結果を示す。体重変化により判断して、いずれの群にも毒性は観察されなかった(体重減少10%未満)。
3週間のペプチドでの毎日腹腔内投与の処置の後、結果によれば、ヌードマウスにおけるMDAMB−435ヒト乳癌同所移植モデルでは、27量体のペプチドT8は5mg/kgの用量で50.5%腫瘍増殖を抑制した(p=0.002)。更に、T8−3ペプチドは5mg/kgの用量で41.9%腫瘍増殖を著しく抑制した(p=0.008)が、1mg/kgのより低用量では有効ではなかった。P2ペプチドは1mg/kgの用量で26.4%腫瘍増殖を抑制した(それほど有意ではない。p=0.55)が、5mg/kgでは有意な抑制は観察されなかった。更に、スクランブルド対照ペプチドSP2は、5mg/kgの用量では有意な腫瘍増殖抑制を示さなかった。結論として、セリン置換T8変異体であるT8−3は、MDAMB−435ヒト乳癌同所移植モデルにおける腫瘍増殖の抑制においてはT8と同様の活性を有している。
ヌードマウスにおけるPC3ヒト前立腺腫瘍異種移植片モデルでは、3週間のペプチドでの毎日腹腔内投与の処置の後、27量体のペプチドT8は5mg/kgの用量で35.4%腫瘍増殖を抑制した(p=0.036)。更に、T8−3ペプチドは5mg/kgの用量で35.4%腫瘍増殖を抑制したが、抑制はそれほど有意ではなかった(p=0.065)。P2ペプチドもまた腫瘍増殖抑制を示したが、この場合、より低用量のほうが更に効果的であり、1mg/kgで、TGI=31.6%、p=0.54であったのに対し、5mg/kgでは、TGI=15.9%、p=0.265であった。更に、スクランブルド対照ペプチドSP2は、5mg/kgの用量では有意な腫瘍増殖抑制を示さなかった。結論として、セリン置換T8変異体であるT8−3およびアスパラギン酸置換T8変異体であるP2は共に、PC3ヒト前立腺腫瘍異種移植片モデルにおいてある程度の腫瘍増殖抑制活性を示した。それほど有意ではないものの、T8−3はその薬効においてはT8と近似していると考えられる。
すべての参考文献、特許および特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明はその好ましい実施形態を参照しながら特に示し説明したが、当業者の知るとおり、添付の請求項に含まれる本発明の範囲を外れることなく、形態や詳細において種々の変更が可能である。
図1Aおよび1Bは、ヒトIV型コラーゲンのα1鎖のヌクレオチド(図1A、配列番号1)およびアミノ酸(図1B、配列番号2)の配列を示すダイアグラムである。pET22b(+)フォワード(配列番号3)およびリバース(配列番号4)プライマーの位置は二重下線で示されており、pPICZαAフォワード(配列番号15)およびリバース(配列番号16)プライマーの位置は一重下線で示されている。 図2は、アレステンクローニングベクターpET22b(+)を示す模式的ダイアグラムである。フォワード(配列番号3)およびリバース(配列番号4)プライマーおよびアレステンがクローニングされた部位を示す。 図3Aおよび3Bは、内皮細胞(C−PAE)増殖の指標としての、H−チミジン取り込み(y軸)に対するアレステン(図3A、0μg/ml〜10μg/ml、x軸)およびエンドスタチン(図3B、0μg/ml〜10μg/ml、x軸)の作用を示す一組の線グラフである。 図4A、4B、4Cおよび4Dは、内皮細胞増殖の指標としてのH−チミジン取り込み(y軸)に対するアレステンおよびエンドスタチンの作用を示す、4種の棒グラフチャートである。図4A、4Bおよび4Cは、それぞれ786−O、PC−3およびHPEC細胞に対するアレステン(0μg/ml〜50μg/ml(図4Aおよび4B)および0μg/ml〜10μg/ml(図4C))の作用を示す。図4Dは、A−498細胞に対する0.1〜10μg/mlのエンドスタチンの作用を示す。 図5A、5Bおよび5Cは、ヒト臍帯内皮細胞(ECV−304)におけるFBS−誘導化学走性を介した内皮細胞遊走に対するアレステン(2μg/ml、図5B)およびエンドスタチン(20μg/ml、図5C)の作用を示す4種の顕微鏡写真のセットである。図5Aは未処置の対照細胞を示す。 図6は、図5の結果から得られたグラフを示す棒グラフである。図6は、ECV−304内皮細胞の遊走に対するアレステン(2μg/mlまたは20μg/ml)およびエンドスタチン(2.5μg/mlおよび20μg/ml)の各々の作用を示す。 図7は、内皮細胞管腔形成に対するアレステンの作用を示す線グラフである。%管腔形成はy軸に示し、阻害因子濃度はx軸に示す。処置は:無処置(対照、◆)、BSA(対照、△)、7Sドメイン(対照、×)およびアレステン(■)とした。 図8Aおよび8Bは、対照(図8A)と比較した場合の、内皮細胞管腔形成に対するアレステン(0.8μg/ml、図8B)の作用を示す一組の顕微鏡写真である。 図9A、9B、9Cおよび9Dは、インビボでの腫瘍増殖に対するアレステンおよびエンドスタチンの作用を示す4種の線グラフのセットである。図9Aは、10mg/kgアレステン処置(□)、BSA処置(+)および対照マウス(●)について、700mmからの腫瘍容量の増大を示すプロットである。図9Bは、10mg/kgアレステン処置(□)およびBSA処置(+)の腫瘍について、100mmからの腫瘍容量の増大を示している。図9Cは、10mg/kgアレステン処置(□)、エンドスタチン処置(▲)および対照マウス(●)について、100mmからの腫瘍容量の増大を示している。図9Dは、アレステン処置(□)に対する対照(●)の200mmの腫瘍についての増大を示している。 図10Aおよび10Bは、種々の処置(x軸)の下でのC−PAE細胞(図10A)およびPC−3細胞(図10B)に関するOD405における吸光度(y軸)の関数としてのカスパーゼ−3活性の量を示す一組のヒストグラムである。それぞれの棒は3組のウェルの平均±平均の標準誤差を示す。 図11Aおよび11Bは、ヒトIV型コラーゲンのα2鎖のヌクレオチド(図11A、配列番号5)およびアミノ酸(図11B、配列番号6)の配列を示すダイアグラムである。pET22b(+)フォワード(配列番号7)およびリバース(配列番号8)プライマーの位置は二重下線で示されており、pPICZαAフォワード(配列番号17)およびリバース(配列番号18)プライマーの位置は一重下線で示されている。 図12は、カンスタチンクローニングベクターpET22b(+)を示す模式的ダイアグラムである。フォワード(配列番号7)およびリバース(配列番号8)プライマーおよびカンスタチンがクローニングされた部位を示す。 図13A、13B、13Cおよび13Dは、内皮細胞(C−PAE)(図13Aおよび13C)および非内皮細胞(786−O、PC−3およびHEK293)(図13Bおよび13D)の増殖に対する種々の濃度のカンスタチン(x軸)の作用を示すヒストグラムである。増殖は、H−チミジンの取り込み(図13Aおよび13B)およびメチレンブルー染色(図13Cおよび13D)の関数として測定した。 図14は、VEGFなし(VEGFまたは血清なし)、およびVEGF(1%FCSおよび10ng/ml VEGF)細胞の処置に関する、ならびに0.01カンスタチン(1%FCSおよび10ng/ml VEGFおよび0.01μg/mlカンスタチン)および1.0μg/mlカンスタチン(1%FCSおよび10ng/ml VEGFおよび1μg/mlカンスタチン)処置に関する、視野当たりの遊走内皮細胞数(y軸)を示す棒グラフである。 図15は、BSA(□)、カンスタチン(■)およびα5NC1(○)の種々の処置の下での対照(PBS処置ウェル)の管腔形成の%としての、内皮細胞管腔形成の量(y軸)を示す線グラフである。垂直の棒は平均の標準誤差を示す。 図16は、経時的(x軸)にみた、t=0において存在するタンパク質のパーセントとしてのビンキュリンの濃度の関数としてのFLIP(FLICE阻害タンパク質、即ちFADD様インターロイキン‐1ベータ変換酵素阻害タンパク質)の濃度(y軸)のグラフである。 図17A、17B、17Cおよび17Dは、処置日数(x軸)に対してプロットした、分数値の腫瘍容量(y軸、図17Aおよび17B)またはmm単位の腫瘍容量(y軸、図17Cおよび17D)に関するカンスタチン(■)、エンドスタチン(○)および対照(□)のPC−3細胞(図17Aおよび18B)および786−O細胞(図17Cおよび17D)に対する作用を示す線グラフである。 図18Aおよび18Bは、ヒトIV型コラーゲンのα3鎖のヌクレオチド(図18A、配列番号9)およびアミノ酸(図18B、配列番号10)の配列を示すダイアグラムである。pET22b(+)フォワード(配列番号11)およびリバース(配列番号12)プライマーの位置は二重下線で示されている。「ツムスタチン333」(配列番号20)および「ツムスタチン334」(配列番号21)のフラグメントの開始および終了もまた示されている(「*」=ツムスタチン333;「+」=ツムスタチン334)。 図19は、ツムスタチンクローニングベクターpET22b(+)を示す模式的ダイアグラムである。フォワード(配列番号11)およびリバース(配列番号12)プライマーおよびツムスタチンがクローニングされた部位を示す。 図20は、ツムスタチン突然変異体ツムスタチンN−53(Tum−1)におけるα3(IV)NC1単量体内のトランケーションされたアミノ酸の位置を示す模式的ダイアグラムである。黒丸はこの突然変異体を発生させるためにツムスタチンから欠失させたN末端53アミノ酸残基に相当する。短い棒によって印をつけたジスルフィド結合は、それらがα1(IV)NC1およびα2(IV)NC1内に存在するとおりに配置している。 図21A、21Bおよび21Cは、ツムスタチンの種々の濃度(x軸)で処置した場合のC−PAE細胞(図21A)、PC−3細胞(図21B)および786−O細胞(図21C)に関するH−チミジン取り込み(y軸)を示す3種のヒストグラムのセットである。全群とも3組の試料を示す。 図22は、C−PAE細胞による染料の取り込みに対する漸増量のαβと組み合わせた0.1μg/mlツムスタチンの作用をx軸上に示したヒストグラムである。OD655における吸光度をy軸に示す。「0.1%FCS」は0.1%FCS処置(未刺激)対照を、そして「20%FCS」は20%FCS処置(刺激)対照を示す。残りの棒は、αβ単独の対照、およびツムスタチン+漸増量のαβでの処置を示す。各棒は3組のウェルの平均±平均の標準誤差を示す。実験は3回反復した。アスタリスクは片側スチューデントt検定(Student’s t−test)におけるp<0.05を示す。 図23Aおよび23Bは、種々の処置(x軸)の下でのC−PAE細胞(図23A)およびPC−3細胞(図23B)に関するOD405における吸光度の関数としてのカスパーゼ3活性の量(y軸)を示す一組のヒストグラムである。それぞれの棒は3組のウェルの平均±平均の標準誤差を示す。 図24A、24B、24Cおよび24Dは、インテグリンサブユニットα〜α、βまたはαβインテグリンブロッキング抗体の存在下におけるツムスタチン(図24A)、または対照であるIV型コラーゲン(図24B)、ビトロネクチン(図24C)またはラミニン−1(図24A)でコーティングされたプレートへのHUVEC細胞の結合を示す4種のヒストグラムのセットである。プレートのコーティングは各グラフの上部に記載し、インキュベートに使用した抗体は各グラフのx軸に示す。BSAコーティングプレートを陰性対照として使用した。 図25は、ツムスタチンコーティングプレートへのC−PAE細胞の結合を示すヒストグラムである。BSAコーティングプレートを陰性対照として使用した。 図26は、ツムスタチン(●)、BSA(対照、□)および7Sドメイン(対照、○)の種々の量(x軸)の内皮細胞管腔形成(y軸)に対する作用を示す線グラフである。 図27Aおよび27Bは、対照(□)と比較した場合のツムスタチン(●)およびエンドスタチン(○)の処置日数(x軸)に対する腫瘍容量(mm、y軸)への作用を示す一組の線グラフである。アスタリスクを付したデータポイントは片側スチューデントt検定におけるp<0.05の有意差を示す。 図28は、対照マウス(□)およびツムスタチン突然変異体N−53で処置したマウス(●)に関する処置日数(x軸)に対する腫瘍容量の増大(y軸)を示すグラフである。アスタリスクを付したデータポイントは片側スチューデントt検定におけるp<0.05の有意差を示す。 図29は、ツムスタチンおよびツムスタチンN−53の漸増濃度(x軸)における細胞の生存性(OD590の関数として、y軸)を示すグラフである、各点は3組のウェルの平均±平均の標準誤差を示す。アスタリスクを付したデータポイントは片側スチューデントt検定におけるp<0.05を示す。 図30は、アレステン(●)、カンスタチン(○)、12kDaアレステンフラグメント(■)、8kDaアレステンフラグメント(□)および10kDaカンスタチンフラグメント(▲)の種々の濃度(x軸)による内皮細胞管腔形成の抑制(y軸)を示す線グラフである。 図31は、ツムスタチンフラグメント333(●)、ツムスタチンフラグメント334(○)、BSA(対照、■)、α6(対照、□)およびツムスタチン(▲)の種々の濃度(x軸)による内皮細胞管腔形成の抑制(y軸)を示す線グラフである。 図32A、32Bおよび32Cは、HPE(図32A)、C−PAE(図32B)およびWM−164(図32C)細胞の増殖(y軸)に対するツムスタチン漸増濃度(x軸)の作用を示す3種のヒストグラムのセットである。 図33Aおよび33Bは、C−PAE細胞(図33A)およびWM−164細胞(図33B)の相対数(y軸)に対するツムスタチン(◆)、Tum−1(□)、Tum−2(●)、Tum−3(◇)およびTum−4(▲)の漸増濃度(x軸)の作用を示す一組のグラフである。 図34Aおよび34Bは、C−PAE細胞(図34A)およびWM−164細胞(図34B)の細胞生存性(y軸)に対するツムスタチン(◆)、Tum−1(□)、Tum−2(●)、Tum−3(◇)およびTum−4(▲)の漸増濃度(x軸)の作用を示す一組のグラフである。各点は3組のウェルの平均±平均の標準誤差を示す。 図35は、5μg/mlのTum−1、Tum−2、Tum−3、Tum−4または80ng/mlのTNF−αまたはPBS緩衝液(対照)で処置したC−PAE細胞(x軸)のOD405における吸光度(y軸)の測定値としてのカスパーゼ−3活性を示すヒストグラムである。 図36A、36Bおよび36Cは、3種のヒストグラムのセットである。図36A、36Bおよび36Cは、対照IgG、αβ、αβおよびBSAの存在下におけるTum−1(図36A)、Tum−2(図36B)およびTum−4(図36C)でコーティングしたプレートへのC−PAE細胞の%結合(y軸)を示す。 図37は、PBS、ツムスタチン、Tum−1、Tum−2、Tum−4またはBSAでコーティングしたプレートに結合したWM−164細胞(x軸)に関するOD655における吸光度によるメチレンブルー染色の程度(y軸)を示すヒストグラムである。 図38A、38B、38C、38Dおよび38Eは、抗Tum−4抗体(1:100、1:200、1:500希釈)(x軸)と共に予備インキュベートされている1.5μg/mlのTum−1(図38A)もしくはTum−2(図38B)、あるいはαβタンパク質(図38C)で処置したC−PAE細胞、またはツムスタチン(図38D)またはTum−4(図38E)で処置したWM−164細胞の増殖(y軸)を示す5種のヒストグラムのセットである。 図39は、y軸上の相対細胞数に対するx軸上のツムスタチン(●)、エンドスタチン(△)、抗αβ(□)抗体およびIgG(◆)(対照)の濃度を示すグラフである。各点は3組のウェルの平均±平均の標準誤差を示す。実験は3回反復した。アスタリスクは片側スチューデントt検定におけるp<0.05を示す。 図40は、C−PAE細胞の相対細胞数(y軸)に対する、漸増濃度のカンスタチン(◆)、Can−1(■)およびCan−2(▲)(x軸)の作用を示すグラフである。各タンパク質の各濃度は4組で試験した。 図41は、PBS(対照)、カンスタチン、Can−1およびCan−2での処置に関するプラグ当たりの血管の平均数(y軸)を示すヒストグラムである。 図42は、T1、T2、T3、T4、T5およびT6ペプチドの位置を記載したツムスタチンのタンパク質の配列のダイアグラムである。GP−A=第1のグッドパスチャー・エピトープ。GP−B=第2のグッドパスチャー・エピトープ。 図43A、図43B、43Cおよび43Dは、T3ペプチドによる内皮細胞の増殖の抑制(図43A,43Bおよび43C)および内皮細胞アポトーシスの誘導(図43D)を示す4種のヒストグラムである。図43Aは、10μg/mlのペプチドT2、T3、T4、T5またはT6(x軸)で処置したC−PAE細胞の増殖(y軸)を示す。図43Bは、0.1、1.0および10μg/mlのT3ペプチドで処置したC−PAE細胞の増殖(y軸)を示す。図43Cは、種々の濃度のαβインテグリン(x軸)と共に予備インキュベートしておいたT3ペプチドで処置した場合の、C−PAE細胞の細胞増殖(y軸)を示す。図43Dは、10μg/mlのペプチドT2、T3、T4、T5またはT6での細胞の処置後のMTT試験により測定したC−PAE細胞の細胞生存性(y軸)を示す。すべての棒は、3組のウェルの平均±SEMを示す。 図44A、44B、44C、44D、44E、44Fおよび44Gは、抗ヒトインテグリン抗体、マウスIgG(対照)またはペプチドT2、T3、T4、T5およびT6で処置した場合の、C−PAE細胞の接着を示す7種のヒストグラムのセットである。図44Aは、BSA(対照)、抗体なし(対照)、マウスIgG(対照)およびαβインテグリン抗体(x軸)の存在下における、Tum−5ペプチド(10μg/ml)でコーティングしたプレートへのHUVEC細胞の結合(y軸)を示す。図44Bは、10μg/mlの組換えTum−5ペプチド(x軸)でコーティングした96穴プレートへのC−PEA細胞の接着(y軸)を示すヒストグラムである。図44Cは、Tum−5でコーティングし2.5μg/mlのペプチドT2、T3、T4、T5またはT6で処置した96穴プレート(x軸)、またはT3で処置したTum−4コーティングプレートへのC−PAE細胞の結合(y軸)を示すヒストグラムである。PBS処置を対照とした。図44Dは、種々の濃度のT3ペプチド(x軸)のTum−5コーティングプレートへのC−PAE細胞の結合に対する作用(y軸)を示す。PBS処置を対照とした。図44Eは、PBS(対照)、IgG(対照)またはαβインテグリン抗体の存在下のT2、T3、T4、T5またはT6コーティングプレート(x軸)へのC−PAE細胞の結合(y軸)を示す。図44Fは、PBS(対照)、IgG(対照)またはαインテグリン抗体、βインテグリン抗体、βインテグリン抗体、αβインテグリン抗体またはBSA(対照)(x軸)と共にインキュベートした場合の、T3コーティングプレートへのC−PAE細胞の結合(y軸)を示す。図44Gは、PBS(対照)、BSA(対照)または種々の濃度(0.1、1.0、10.0μg/ml)のT3ペプチド、または種々の濃度(0.1、1.0、10.0μg/ml)の濃度のT6ペプチド(x軸)と共にインキュベートした場合の、ビトロネクチン(2.5μg/ml)でコーティングしたプレートへのC−PAE細胞の結合(y軸)を示す。それぞれの棒は3組のウェルの平均±SEMを示す。実験は3回反復した。*p<0.05はスチューデントのt検定による。 図45は、PBS(対照)、αβインテグリン抗体、βインテグリン抗体、αインテグリン抗体、またはBSA(対照)の存在下における、ツムスタチン−N53−コーティング(20μg/ml)プレートへのHUVEC細胞の接着を示すヒストグラムである。 図46は、ベヒクル(対照、○)、ツムスタチン−N53を1日当たり5mg/kg(□)、またはツムスタチンN−53を1日当たり20mg/kg(◇)で処置した腫瘍に関する、15日間にわたる(x軸)PC3前立腺腫瘍(PC3前立腺異種移植片モデル)についてのmm単位の平均腫瘍容量(y軸)を示すグラフである。 図47は、ベヒクル(対照、○)、ツムスタチン−N53を1日当たり20mg/kg(□)、またはツムスタチン−N53を1日当たり5mg/kg(◇)で処置した腫瘍に関する、22日間にわたる(x軸)MDA−MB435乳癌腫瘍のmm単位の平均腫瘍容量(y軸)を示すグラフである。 図48は、PBS(対照)、緩衝液(対照)、20μg/mlツムスタチン−N53、10μg/mlツムスタチン−45−132および5μg/mlツムスタチン−45−132(x軸)で処置した場合の、S期のC−PAE細胞のパーセント(y軸)を示すヒストグラムである。細胞周期試験は10%FBSの存在下に実施した。 図49は、PBS(対照)、αβインテグリン抗体、βインテグリン抗体、αインテグリン抗体、またはBSA(対照)の存在下における、ツムスタチン−45−132−コーティング(20μg/ml)プレートへのHUVEC細胞(y軸)の接着(OD595値、y軸)を示すヒストグラムである。 図50Aおよび50Bは、細胞の増殖に対するツムスタチン−45−132の作用を示す2種のヒストグラムのセットである。図50Aは、0、0.125、0.250、0.500、1.0または2.0μMの濃度(x軸)の大腸菌発現ツムスタチン−45−132(黒色棒)または293細胞発現完全長ツムスタチン(白色棒)で処置したC−PAE細胞を用いたBrdU試験により測定した細胞の増殖(OD450における、y軸)を示す。図50Bは、0、0.1、1.0、5.0および10.0μg/mlの濃度(x軸)におけるPichia発現ツムスタチン−45−132で処置したC−PAE細胞を用いたメチレンブルー染色により測定した細胞増殖(OD655における)を示す。未刺激のC−PAE細胞を対照とした。 図51は、細胞周期の進行に対する大腸菌発現ツムスタチン−45−132およびTum−5−125−C−Aの作用を示すヒストグラムである。S期のC−PAE細胞のパーセント(y軸)を、0時(対照)および0、1、10および20μg/ml(x軸)のツムスタチン−45−132(黒色棒)またはTum−5−125−C−A(白色棒)での処置後について示す。実験は3回反復した。 図52A、52B、52Cおよび52Dは、細胞の生存性に対するツムスタチン−45−132およびTum−5−125−C−Aの作用を示す4種のヒストグラムのセットである。図52Aは、0、3、6、12、25および50μg/ml(x軸)のツムスタチン−45−132(黒色棒)、ならびにアルキル化および還元されているツムスタチン−45−132(白色棒)で処置したC−PAE細胞について、MTT試験においてOD562で測定した細胞生存性(y軸)を示す。図52Bは、0、3、6、12、25および50μg/ml(x軸)のTum−5−125−C−Aで処置したC−PAE細胞について、MTT試験においてOD562で測定した細胞生存性(y軸)を示す。図52Cは、0、3、6、12、25および50μg/ml(x軸)のツムスタチン−45−132で処置したPC−3細胞について、MTT試験においてOD562で測定した細胞生存性(y軸)を示す。図52Dは、0、3、6、12、25および50μg/ml(x軸)のツムスタチン−45−132で処置したDU−145細胞について、MTT試験においてOD562で測定した細胞生存性(y軸)を示す。 図53は、(x軸)対照、対照+DEVD−fmk、TNF−α、TNF−α+DEVD−fmk、ツムスタチン−45−132(1μg/mlおよび10μg/ml)およびツムスタチン−45−132(10μg/ml)+DEVD−fmkのカスパーゼ−3活性(OD405で測定、y軸)を示すヒストグラムである。 図54は、ベヒクル(対照、□)、1mg/kgツムスタチン−45−132(◆)、1mg/kgのTum−5−125−C−A(●)、20mg/kgエンドスタチン(○)およびミニポンプ処置ツムスタチン−45−132(1mg/kg、△)での処置の、0、5、10、15および20日(x軸)におけるV/V(平均腫瘍容量/初期腫瘍容量)による分数値の腫瘍容量(y軸)を示す線グラフである。 図55Aおよび55Bは、ツムスタチンの種々のペプチドサブユニットの存在下における、293産生ツムスタチンでコーティングされた組織培養プレートへのC−PAE細胞の結合を示す一組のヒストグラムである。PBSおよびBSAをそれぞれ陽性対照および陰性対照として使用した。図55Aは、10μg/mlのペプチドT1、T2、T3、T4、T5、T6、Tum−4の存在下の細胞結合を示し、そして図55Bは、0.1、2.0または10.0μg/mlのT3ペプチドの存在下の細胞結合を示す。 図56は、0、1、10および20μg/mlのT3ペプチド(黒色棒)およびT3折りたたみペプチド(白色棒)で処置した場合の、C−PAE細胞の増殖(0.1%FCSで処置した未刺激の対照細胞のパーセントとして)を示すヒストグラムである。 図57は、完全長ツムスタチン(黒色棒)、ツムスタチン−45−132(白色棒)、T7ペプチド(交差線棒)およびT3ペプチド(斑点棒)で処置した場合の、C−PAE細胞の増殖(0.1%FCSで処置した未刺激の対照細胞のパーセントとして)を示すヒストグラムである。それぞれの棒は3組のウェルの平均±SEMを示す。ツムスタチンは5μMの濃度では試験しなかった。 図58A〜58Hは、種々の処置(x軸)の下での細胞における35S-メチオニン取り込み(y軸)を示す8種のヒストグラムのシリーズである。実験は3回反復し、代表的なデータを示した。それぞれの棒は3組の平均±SEMからなる。図58Aにおいては、C−PAE細胞は、T3ペプチド(4.5μM)、ツムスタチン−45−132(4.5μM)、エンドスタチン(4.5μM)またはラパマイシン(100ng/ml)で12時間(黒色棒)または24時間(斜線棒)処置した。図58Bにおいては、T3ペプチド(4.5μM)、ツムスタチン−45−132(4.5μM)、エンドスタチン(4.5μM)またはラパマイシン(100ng/ml)で24時間、HUVECを処置した。図58Cにおいては、C−PAEは、12または24時間血清枯渇させ、次に0μM(対照、黒色棒)、4.5μM(水平平行線棒)または22.7μM(斜線棒)のT3ペプチドの存在下で24時間、10%FCSを含有する培地を用いてインキュベートした。図58D〜Hにおいては、PC−3細胞(図58D)、786−O細胞(図58E)、NIH3T3細胞(図58F)、HRE細胞(図58G)およびWM−164細胞(図58H)を24時間、T3ペプチド(4.5μM)、ツムスタチン−45−132(4.5μM)、T7ペプチド(図58D、図58E、図58H)、エンドスタチン(4.5μM)またはラパマイシン(100ng/ml)で処置した。 図59Aおよび59Bは、T3ペプチド(4.5μM)、ツムスタチン−45−132(4.5μM)、T7ペプチド(4.5μM)、エンドスタチン(4.5μM)またはラパマイシン(100ng/ml)での処置の下における、ルシフェラーゼ(LUC;cap依存性翻訳;黒色棒)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT;cap非依存性翻訳;交差線棒)の翻訳に関するレポーター活性(y軸)を示す一組のヒストグラムである。対照と比較した場合のルシフェラーゼおよびCAT活性を示す。これらの実験は3回反復し、代表的データを示した。それぞれの棒は3組の平均±SEMからなる。 図60A〜60Hは、8種のヒストグラムのセットである。図60A〜60Dは、35S‐メチオニン取り込みによる総タンパク質合成(y軸)を、内皮細胞(MLEC)(図60Aおよび60B)について、ならびに野生型(図60Aおよび60C)およびβインテグリンノックアウト(図60Bおよび60D)の同腹仔マウスの胚腺維芽細胞について(MEF)(図60Cおよび60D)示したものであり、ここで細胞は、(x軸)ツムスタチン−45−132(4.5μM)、T3(4.5μM)、T7(4.5μM)、T7突然変異ペプチド(4.5μM)、エンドスタチン(4.5μM)またはラパマイシン(100ng/ml)で処置した。図60E〜60Gは、対照のパーセントとしてのルシフェラーゼ(Luc;黒色棒)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT;交差線棒)のレポーター活性を、内皮細胞(MLEC)(図60Eおよび60F)について、ならびに野生型(図60Eおよび60G)およびβインテグリンノックアウト(図60Fおよび60H)の同腹仔マウスの胚腺維芽細胞について(MEF)(図60Gおよび60H)示したものであり、ここで、細胞は、(x軸)ツムスタチン−45−132(4.5μM)、T3(4.5μM)、T7(4.5μM)、T7突然変異ペプチド(4.5μM)、エンドスタチン(4.5μM)またはラパマイシン(100ng/ml)で処置した。これらの実験は3回反復し、代表的データを示した。それぞれの棒は3組の平均±SEMからなる。 図61A〜61Fは、8種のヒストグラムのシリーズである。図61Aは、(x軸)ビトロネクチンコーティングプレートへの結合時間無しでT3ペプチドの非存在下(「0−」棒)、30分の結合時間とT3ペプチド非存在下(「30−」棒)、30分の結合時間と50μg/mlのT3ペプチド(「30+」棒)、60分の結合時間とT3ペプチド非存在下(「60−」棒)および60分の結合時間と50μg/mlのT3ペプチド(「60+」棒)の処置の下における、pFAK/FAKの相対密度(y軸)を示す。図61Bは、(x軸)ビトロネクチンコーティングプレートへの結合時間無しでT3ペプチドの非存在下(「0−」棒)、30分の結合時間とT3ペプチド非存在下(「30−」棒)、30分の結合時間と50μg/mlのT3ペプチド(「30+」棒)、60分の結合時間とT3ペプチド非存在下(「60−」棒)および60分の結合時間と50μg/mlのT3ペプチド(「60+」棒)の処置の下における、PI3キナーゼ活性(y軸)を示す。図61Cは、図61Aと同じ処置(x軸)の下でのpFAK/FAKの相対密度(y軸)を示す。図61Dは、(x軸)mTORトランスフェクション無しでペプチド処置無し(「−−」棒)、mTORトランスフェクション有りでペプチド処置無し(「+−」棒)、mTORトランスフェクション有りでツムスタチン−45−132処置有り(「+Tum−5」棒)およびmTORトランスフェクション有りでペプチドT3処置あり(「+T3」棒)の処置の下における、mTORキナーゼ活性(y軸)を示す。図61Eは、FBSなし、T3、ツムスタチン−45−132、ラパマイシン、エンドスタチンまたはFBSで処置した(x軸)後の、C−PAE細胞におけるeIF4E結合4E−BP1の密度(y軸)を示す。図61Fは、対照のlacZ(陰をつけた棒)、構成性で活性なAkt(交差線棒)のcDNAを含むアデノウイルスベクターで感染させた、または、全く感染していない(黒色棒)、のいずれかであるC−PAEについてのCAT活性に対して相対的なパーセントルシフェラーゼ活性を示す。次に細胞を血清枯渇させ、pcDNA−LUC−pol−CATでトランスフェクトし、10%FCS含有培地存在下においてT3ペプチドで処置した。 図62は、対照のベヒクル処置(○)、および1mg/kg(□)または2.5mg/kg(◇)のT8での処置の後の種々の日数(x軸)の平均腫瘍容量(mm;y軸)を示すグラフである。 図63は、対照の処置(○)、および、毎日TP3を1mg/kg(◇)、毎日TP3を5mg/kg(×)、毎日T8を5mg/kg(□)、または1週間に2回T8を5mg/kg(+)投与での処置について、処置開始後種々の日数(x軸)における腫瘍容量の比(V/Vo;y軸)を示すグラフである。 図64Aおよび64Bは、種々の処置についての処置開始後の種々の日数(x軸)における平均腫瘍容量の比(mm;y軸)を示す一組のグラフである。図64Aにおいては、処置は:T7用保存ベヒクル(○)、T7毎日(□)、T8用保存ベヒクル(◇)、T8毎日(×)、TP3毎日(+)、SP1毎日(△)およびSP2毎日(●)とした。図64Bにおいては、処置は:T8用保存ベヒクル(○)、T8毎日(□)、T8週2回(◇)およびT8週1回(×)とした。 図65Aおよび65Bは、対照処置(○)、T8ペプチド5mg/kgで毎日処置(□)、SP2を5mg/kg(◇)、T8−3を1mg/kg(×)または5mg/kg(+)、またはP2を1mg/kg(△)または5mg/kg(●)について、処置開始後種々の日数(x軸)の、ヌードマウスのMDAMB−435ヒト乳癌同所移植モデル(図65A)およびヌードマウスのPC3ヒト前立腺腫瘍異種移植片モデル(図65B)における平均腫瘍容量(mm;y軸)を示す一組のグラフである。図65Aおよび65Bは、それぞれMDAMB−435およびPC3異種移植片モデルに関する結果を示す。

Claims (107)

  1. 下記式:
    LFXNVNXVXNFR(配列番号45)
    の単離ペプチドであって、
    ここで、式中、Rは水素または1〜17アミノ酸のぺプチジル鎖であり、Rは水素または1〜12アミノ酸のペプチジル鎖であり、そしてX、XおよびXは個々にアミノ酸であり、および、ここで前記ペプチドが腫瘍の増殖を抑制する、前記単離ペプチド。
  2. が塩基性側鎖を有するアミノ酸または芳香族側鎖を有するアミノ酸である、請求項1に記載の単離ペプチド。
  3. がフェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミンまたはアスパラギンである、請求項2に記載の単離ペプチド。
  4. がリジンまたはフェニルアラニンである、請求項3に記載の単離ペプチド。
  5. 、XおよびXが独立して親水性側鎖を有するアミノ酸または塩基性側鎖を有するアミノ酸である、請求項1に記載の単離ペプチド。
  6. 、XおよびXが独立してシステイン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸またはグルタミンである、請求項5に記載の単離ペプチド。
  7. およびXが独立してシステイン、セリンまたはアスパラギン酸であり、Xがシステインまたはアスパラギン酸である、請求項6に記載の単離ペプチド。
  8. がフェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミンまたはアスパラギンであり、そしてX、XおよびXが独立してシステイン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸またはグルタミンである、請求項1に記載の単離ペプチド。
  9. が1個のアミノ酸または2、3、4、5、6、7または8個のアミノ酸残基のペプチジル鎖である、請求項1に記載の単離ペプチド。
  10. で示される前記アミノ酸またはペプチジル鎖が下記:
    (a)P;
    (b)MP;
    (c)TMP;
    (d)TTMP(配列番号46);
    (e)FTTMP(配列番号47);
    (f)RFTTMP(配列番号48);
    (g)QRFTTMP(配列番号49);
    (h)LQRFTTMP(配列番号50);
    (i)KQRFTTMP(配列番号51);および、
    (j)(a)〜(i)のいずれかの保存的変異体、
    からなる群より選択される、請求項9に記載の単離ペプチド。
  11. が1個のアミノ酸または2、3、4、5、6、7、8または9個のアミノ酸残基のペプチジル鎖である、請求項1に記載の単離ペプチド。
  12. で示される前記アミノ酸またはペプチジル鎖が下記:
    (a)A;
    (b)AS;
    (c)ASR;
    (d)ASRN(配列番号52);
    (e)ASRND(配列番号53);
    (f)ASRNDY(配列番号54);
    (g)ASRNDYS(配列番号55);
    (h)ASRNDYSY(配列番号56);
    (i)ASRNDYSYW(配列番号57);
    (j)ASRNDYSYWL(配列番号58);および、
    (k)(a)〜(j)のいずれかの保存的変異体、
    からなる群より選択される、請求項11に記載の単離ペプチド。
  13. ペプチドが還元される、請求項1に記載の単離ペプチド。
  14. ペプチドがアルキル化される、請求項1に記載の単離ペプチド。
  15. ペプチドが酸化される、請求項1に記載の単離ペプチド。
  16. 下記式:
    LFXNVNXVXNFR(配列番号45)
    の単離ペプチドであって、
    ここで、式中、Rは水素または1〜17アミノ酸のぺプチジル鎖であり、Rは水素または1〜12アミノ酸のペプチジル鎖であり、そしてX、XおよびXは個々にアミノ酸であり、および、ここで前記ペプチドが哺乳類組織において血管形成活性を抑制する、前記単離ペプチド。
  17. が塩基性側鎖を有するアミノ酸または芳香族側鎖を有するアミノ酸である、請求項16に記載の単離ペプチド。
  18. がフェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミンまたはアスパラギンである、請求項17に記載の単離ペプチド。
  19. がリジンまたはフェニルアラニンである、請求項18に記載の単離ペプチド。
  20. 、XおよびXが独立して親水性側鎖を有するアミノ酸または塩基性側鎖を有するアミノ酸である、請求項16に記載の単離ペプチド。
  21. 、XおよびXが独立してシステイン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸またはグルタミンである、請求項20に記載の単離ペプチド。
  22. およびXが独立してシステイン、セリンまたはアスパラギン酸であり、Xがシステインまたはアスパラギン酸である、請求項21に記載の単離ペプチド。
  23. がフェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミンまたはアスパラギンであり、そしてX、XおよびXが独立してシステイン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸またはグルタミンである、請求項16に記載の単離ペプチド。
  24. が1個のアミノ酸または2、3、4、5、6、7または8個のアミノ酸残基のペプチジル鎖である、請求項16に記載の単離ペプチド。
  25. で示される前記アミノ酸またはペプチジル鎖が下記:
    (a)P;
    (b)MP;
    (c)TMP;
    (d)TTMP(配列番号46);
    (e)FTTMP(配列番号47);
    (f)RFTTMP(配列番号48);
    (g)QRFTTMP(配列番号49);
    (h)LQRFTTMP(配列番号50);
    (i)KQRFTTMP(配列番号51);および、
    (j)(a)〜(i)のいずれかの保存的変異体、
    からなる群より選択される、請求項24に記載の単離ペプチド。
  26. が1個のアミノ酸または2、3、4、5、6、7、8または9個のアミノ酸残基のペプチジル鎖である、請求項16に記載の単離ペプチド。
  27. で示される前記アミノ酸またはペプチジル鎖が下記:
    (a)A;
    (b)AS;
    (c)ASR;
    (d)ASRN(配列番号52);
    (e)ASRND(配列番号53);
    (f)ASRNDY(配列番号54);
    (g)ASRNDYS(配列番号55);
    (h)ASRNDYSY(配列番号56);
    (i)ASRNDYSYW(配列番号57);
    (j)ASRNDYSYWL(配列番号58);および、
    (k)(a)〜(j)のいずれかの保存的変異体、
    からなる群より選択される、請求項26に記載の単離ペプチド。
  28. ペプチドが還元される、請求項16に記載の単離ペプチド。
  29. ペプチドがアルキル化される、請求項16に記載の単離ペプチド。
  30. ペプチドが酸化される、請求項16に記載の単離ペプチド。
  31. 下記式:
    LFXNVNXVXNFR(配列番号45)
    の単離ペプチドであって、
    ここで、式中、Rは水素または1〜17アミノ酸のぺプチジル鎖であり、Rは水素または1〜12アミノ酸のペプチジル鎖であり、そしてX、XおよびXは個々にアミノ酸であり、および、ここで前記ペプチドが内皮細胞においてタンパク質合成を抑制する、前記単離ペプチド。
  32. が塩基性側鎖を有するアミノ酸または芳香族側鎖を有するアミノ酸である、請求項31に記載の単離ペプチド。
  33. がフェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミンまたはアスパラギンである、請求項32に記載の単離ペプチド。
  34. がリジンまたはフェニルアラニンである、請求項33に記載の単離ペプチド。
  35. 、XおよびXが独立して親水性側鎖を有するアミノ酸または塩基性側鎖を有するアミノ酸である、請求項31に記載の単離ペプチド。
  36. 、XおよびXが独立してシステイン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸またはグルタミンである、請求項35に記載の単離ペプチド。
  37. およびXが独立してシステイン、セリンまたはアスパラギン酸であり、Xがシステインまたはアスパラギン酸である、請求項36に記載の単離ペプチド。
  38. がフェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミンまたはアスパラギンであり、そしてX、XおよびXが独立してシステイン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸またはグルタミンである、請求項31に記載の単離ペプチド。
  39. が1個のアミノ酸または2、3、4、5、6、7または8個のアミノ酸残基のペプチジル鎖である、請求項31に記載の単離ペプチド。
  40. で示される前記アミノ酸またはペプチジル鎖が下記:
    (a)P;
    (b)MP;
    (c)TMP;
    (d)TTMP(配列番号46);
    (e)FTTMP(配列番号47);
    (f)RFTTMP(配列番号48);
    (g)QRFTTMP(配列番号49);
    (h)LQRFTTMP(配列番号50);
    (i)KQRFTTMP(配列番号51);および、
    (j)(a)〜(i)のいずれかの保存的変異体、
    からなる群より選択される、請求項39に記載の単離ペプチド。
  41. が1個のアミノ酸または2、3、4、5、6、7、8または9個のアミノ酸残基のペプチジル鎖である、請求項31に記載の単離ペプチド。
  42. で示される前記アミノ酸またはペプチジル鎖が下記:
    (a)A;
    (b)AS;
    (c)ASR;
    (d)ASRN(配列番号52);
    (e)ASRND(配列番号53);
    (f)ASRNDY(配列番号54);
    (g)ASRNDYS(配列番号55);
    (h)ASRNDYSY(配列番号56);
    (i)ASRNDYSYW(配列番号57);
    (j)ASRNDYSYWL(配列番号58);および、
    (k)(a)〜(j)のいずれかの保存的変異体、
    からなる群より選択される、請求項41に記載の単離ペプチド。
  43. ペプチドが還元される、請求項31に記載の単離ペプチド。
  44. ペプチドがアルキル化される、請求項31に記載の単離ペプチド。
  45. ペプチドが酸化される、請求項31に記載の単離ペプチド。
  46. 哺乳類組織において腫瘍の増殖を抑制するための方法であって、請求項1に記載の単離ペプチドを含む組成物に組織を接触させることを包含する、前記方法。
  47. 哺乳類組織において血管形成活性を抑制するための方法であって、請求項16の単離ペプチドを含む組成物に組織を接触させることを包含する、前記方法。
  48. 1以上の哺乳類細胞においてタンパク質合成を抑制するための方法であって、前記方法が請求項31の単離ペプチドを含む組成物に1以上の細胞を接触させることを包含する、前記方法。
  49. 製薬上許容しうる担体と組み合わせられた、請求項1に記載の単離ペプチド。
  50. 製薬上許容しうる担体と組み合わせられた、請求項16に記載の単離ペプチド。
  51. 製薬上許容しうる担体と組み合わせられた、請求項31に記載の単離ペプチド。
  52. 腫瘍の増殖を抑制する能力を有する、配列番号10の単離フラグメント。
  53. フラグメントが配列番号37である、請求項52に記載の単離フラグメント。
  54. フラグメントが還元される、請求項52に記載の単離フラグメント。
  55. フラグメントがアルキル化される、請求項52に記載の単離フラグメント。
  56. フラグメントが酸化される、請求項52に記載の単離フラグメント。
  57. 配列番号10の単離突然変異フラグメントであって、1個以上で5個以下のアミノ酸が置換されており、そして突然変異フラグメントが腫瘍の増殖を抑制する能力を有する、前記フラグメント。
  58. フラグメントが還元される、請求項57に記載の単離突然変異フラグメント。
  59. フラグメントがアルキル化される、請求項57に記載の単離突然変異フラグメント。
  60. フラグメントが酸化される、請求項57に記載の単離突然変異フラグメント。
  61. フラグメントが配列番号38である、請求項57に記載の単離フラグメント。
  62. フラグメントが配列番号39である、請求項57に記載の単離フラグメント。
  63. フラグメントが配列番号40である、請求項57に記載の単離フラグメント。
  64. フラグメントが配列番号41である、請求項57に記載の単離フラグメント。
  65. フラグメントが配列番号42である、請求項57に記載の単離フラグメント。
  66. 血管形成を抑制する能力を有する、配列番号10の単離フラグメント。
  67. フラグメントが配列番号37である、請求項66に記載の単離フラグメント。
  68. フラグメントが還元される、請求項66に記載の単離フラグメント。
  69. フラグメントがアルキル化される、請求項66に記載の単離フラグメント。
  70. フラグメントが酸化される、請求項66に記載の単離フラグメント。
  71. 配列番号10の単離突然変異フラグメントであって、1個以上で5個以下のアミノ酸が置換されており、そして突然変異フラグメントが血管形成活性を抑制する能力を有する、前記フラグメント。
  72. フラグメントが還元される、請求項71に記載の単離突然変異フラグメント。
  73. フラグメントがアルキル化される、請求項71に記載の単離突然変異フラグメント。
  74. フラグメントが酸化される、請求項71に記載の単離突然変異フラグメント。
  75. フラグメントが配列番号38である、請求項71に記載の単離フラグメント。
  76. フラグメントが配列番号39である、請求項71に記載の単離フラグメント。
  77. フラグメントが配列番号40である、請求項71に記載の単離フラグメント。
  78. フラグメントが配列番号41である、請求項71に記載の単離フラグメント。
  79. フラグメントが配列番号42である、請求項71に記載の単離フラグメント。
  80. 内皮細胞においてタンパク質合成を抑制する能力を有する、配列番号10の単離フラグメント。
  81. フラグメントが配列番号37である、請求項80に記載の単離フラグメント。
  82. フラグメントが還元される、請求項80に記載の単離フラグメント。
  83. フラグメントがアルキル化される、請求項80に記載の単離フラグメント。
  84. フラグメントが酸化される、請求項80に記載の単離フラグメント。
  85. 配列番号10の単離突然変異フラグメントであって、1個以上で5個以下のアミノ酸が置換されており、そして突然変異フラグメントが内皮細胞においてタンパク質合成を抑制する能力を有する、前記フラグメント。
  86. フラグメントが還元される、請求項85に記載の単離突然変異フラグメント。
  87. フラグメントがアルキル化される、請求項85に記載の単離突然変異フラグメント。
  88. フラグメントが酸化される、請求項85に記載の単離突然変異フラグメント。
  89. フラグメントが配列番号38である、請求項85に記載の単離フラグメント。
  90. フラグメントが配列番号39である、請求項85に記載の単離フラグメント。
  91. フラグメントが配列番号40である、請求項85に記載の単離フラグメント。
  92. フラグメントが配列番号41である、請求項85に記載の単離フラグメント。
  93. フラグメントが配列番号42である、請求項85に記載の単離フラグメント。
  94. 哺乳類組織において腫瘍の増殖を抑制するための方法であって、前記方法が下記:
    (a)配列番号10;
    (b)配列番号10のアミノ酸1〜アミノ酸124;
    (c)配列番号20;
    (d)配列番号21;
    (e)配列番号22;
    (f)配列番号23;
    (g)配列番号25;
    (h)配列番号26;
    (i)配列番号29;
    (j)配列番号30;
    (k)配列番号33;
    (l)配列番号34;
    (m)配列番号37;
    (n)配列番号38;
    (o)配列番号39;
    (p)配列番号40;
    (q)配列番号41;および、
    (r)配列番号42、
    からなる群より選択される単離フラグメントを含む組成物に組織を接触させることを包含する、上記方法。
  95. フラグメントが還元される、請求項94に記載の方法。
  96. フラグメントがアルキル化される、請求項94に記載の方法。
  97. フラグメントが酸化される、請求項94に記載の方法。
  98. 1個以上のシステイン残基が別のアミノ酸の代わりに置換されている、請求項94に記載の方法。
  99. 哺乳類組織において血管形成活性を抑制するための方法であって、前記方法が下記:
    (a)配列番号10;
    (b)配列番号10のアミノ酸1〜アミノ酸124;
    (c)配列番号20;
    (d)配列番号21;
    (e)配列番号22;
    (f)配列番号23
    (g)配列番号25;
    (h)配列番号26;
    (i)配列番号29;
    (j)配列番号30;
    (k)配列番号33;
    (l)配列番号34;
    (m)配列番号37;
    (n)配列番号38;
    (o)配列番号39;
    (p)配列番号40;
    (q)配列番号41;および、
    (r)配列番号42、
    からなる群より選択される単離フラグメントを含む組成物に組織を接触させることを包含する、前記方法。
  100. 1以上の哺乳類細胞においてタンパク質合成を抑制するための方法であって、前記方法が下記:
    (a)配列番号10;
    (b)配列番号10のアミノ酸1〜アミノ酸124;
    (c)配列番号20;
    (d)配列番号21;
    (e)配列番号22;
    (f)配列番号23;
    (g)配列番号25;
    (h)配列番号26;
    (i)配列番号29;
    (j)配列番号30;
    (k)配列番号33;
    (l)配列番号34;
    (m)配列番号37;
    (n)配列番号38;
    (o)配列番号39;
    (p)配列番号40;
    (q)配列番号41;および、
    (r)配列番号42、
    からなる群より選択される単離フラグメントを含む組成物に1以上の細胞を接触させることを包含する、前記方法。
  101. 1以上の哺乳類細胞においてタンパク質合成を抑制するための方法であって、前記方法が下記:
    (a)配列番号2;
    (b)配列番号6;および、
    (c)配列番号10、
    からなる群より選択される単離フラグメントを含む組成物に1以上の細胞を接触させることを包含する、前記方法。
  102. タンパク質合成がcap依存性タンパク質合成である、請求項80に記載の単離フラグメント。
  103. タンパク質合成がcap依存性タンパク質合成である、請求項100に記載の方法。
  104. タンパク質合成がcap依存性タンパク質合成である、請求項101に記載の方法。
  105. 内皮細胞がαβインテグリンを発現する、請求項80に記載の単離フラグメント。
  106. 哺乳類細胞がαβインテグリンを発現する、請求項100に記載の方法。
  107. 哺乳類細胞がαβインテグリンを発現する、請求項101に記載の方法。
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