JP2006506952A - 避妊ターゲット - Google Patents

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Abstract

本発明は概して卵巣特異的遺伝子(O1-180、O1-184およびO1-236)およびそれらがコードするタンパク質に関する。また、生殖組織における細胞増殖性障害または細胞変性障害を検出する方法も提供する。さらにまた本発明は、卵巣特異的遺伝子と相互作用する化合物および/または卵巣特異的遺伝子の発現または活性を調整する化合物のスクリーニング方法も提供する。これらの化合物は避妊薬および/または妊娠薬である可能性がある。

Description

本願は、国際出願第PCT/US02/13245号(2002年4月26日出願)の一部継続出願であり、米国仮特許出願第60/442,164号(2003年1月23日出願)、米国仮特許出願第60/439,781号(2003年1月13日出願)、米国仮特許出願第60/434,165号(2002年12月17日出願)、および米国仮特許出願第60/411,262号(2002年9月17日出願)に基づく優先権を主張するものである。
本発明は概して卵巣特異的遺伝子およびそれらがコードするタンパク質に関する。
生殖発生および性機能は遺伝的に決定される事象と生理学的事象の両方が関与する複雑な過程である。これらの過程がどのような調節を受けるかを特徴づけるには、これらの過程に関与する重要なタンパク質遺伝子産物を同定する必要がある。哺乳類の卵形成および卵胞形成の初期相では重要な分子事象が起こるが、今までのところ、同定され十分に特徴づけられた「候補」調節分子はほとんどない。下垂体から分泌される黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)などのエンドクリン因子と、卵母細胞から分泌されるパラクリン因子は、どちらも卵胞形成に影響を及ぼすことが、いくつかの研究によって示唆されている。FSHおよびLHは、卵母細胞の成長および成熟ならびに卵母細胞減数分裂能力の維持に必要な顆粒膜細胞および莢膜細胞に結合することが知られている。同様に、卵母細胞も正常な顆粒膜細胞機能および莢膜細胞機能に必要な因子を分泌するだろう。卵母細胞の成長は周囲の体細胞(すなわち最初は顆粒膜細胞、後に莢膜細胞)の発育および成長と協調するので、初期段階での分子事象を理解することにより、卵母細胞と体細胞の間の互恵的相互作用を媒介するパラクリン因子、栄養ホルモンの刺激に対する応答能力の発達、卵胞動員の過程および排卵過程の調節に関して、重要な手がかりが得られるだろう。
合成エストロゲンおよびプロゲスチンを含有するステロイドの投与による視床下部-下垂体-性腺生殖軸の破壊は最も古いホルモン避妊法の一つである。しかし、米国医学研究所(Institute of Medicine)の最新の報告では、新しい避妊手段のための戦略を開発することの重要性が強調されている。この報告によると、一部の婦人用長期避妊戦略は、排卵の抑制、受精の防止、または受精卵の子宮内膜への着床の妨害を含む。また、約15%の夫婦は不妊であり、それらの症例の約40%では、女性がその不妊の唯一の原因であると考えられる。したがって、女性不妊の特異的形態の病因を決定するとともに、新しい避妊薬の標的候補となりうる新規卵巣特異的遺伝子産物を同定することは非常に重要である。
卵巣の一機能は、受精および初期胚発生に必要なタンパク質および因子をすべて供給する能力を完全に持っている卵母細胞を産生することである。卵母細胞由来のmRNAおよびタンパク質は、精子核膜、精子核の脱凝縮(プロタミンの除去を含む)、精子DNAでのヒストンの集合およびクロマチン凝縮、卵母細胞の卵成熟の完了および第二極体の放出、雄性前核および雌性前核の形成、雄性前核および雌性前核の融合、DNAの複製、ならびに接合子および初期胚分割の開始に必要である[Perreault(1992)の総説がある]。精子は主としてDNAを含む(すなわち細胞質または核質を含まない)ので、卵母細胞由来の因子が必要であり、哺乳動物における初期受精後事象に必要な因子の多くは卵母細胞の卵成熟中に獲得される(McLayおよびClarke、1997)。卵母細胞は異種精子核または異種体細胞核を効率よく前核に作りかえることができるので、これらの卵母細胞タンパク質は進化の過程で高度に保存されていると予想される(Perreault、1992)。精子クロマチンの修飾にヒストンが関与する点は体細胞と似ているが、これらの過程に関与する他の非ヒストンタンパク質は哺乳動物ではわかっていない。アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の場合、精子脱凝縮の鍵になる因子は、10年以上前に単離されクローニングされたヌクレオプラスミンである(Burglinら、1987;Dingwallら、1987)。精子クロマチン脱凝縮は精子が卵子に進入した後に起こる。アフリカツメガエルの場合、卵細胞質グルタチオンによるプロタミンジスルフィド結合の減少も重要であるが、精子核の脱凝縮を開始するにはヌクレオプラスミン(ヌクレオプラスミンAまたはXnpm2とも呼ばれる)が必要であり、ヌクレオプラスミンがあれば十分である(Philpottら、1991)。酸性の熱安定性タンパク質であるヌクレオプラスミンは、アフリカツメガエルの卵母細胞および卵の核内にもっとも豊富に存在するタンパク質であり、核タンパク質全体の7〜10%を占めている(KrohneおよびFranke、1980a;Millsら、1980)。卵核胞崩壊後に、ヌクレオプラスミン[卵核質に存在するがDNAには結合していない(Millsら、1980)]は卵質中に放出され、そこでプロタミンを強固に結合して、精子進入から5分以内にプロタミンを精子核から取り除くことにより、精子脱凝縮をもたらすように機能する(OhsumiおよびKatagiri、1991;PhilpottおよびLeno、1992;Philpottら、1991)。この過程により、続いて卵子ヒストンが精子DNAを結合することができるようになる。卵子抽出物からヌクレオプラスミンをイムノディプリーションすると精子脱凝縮が妨げられる(Philpottら、1991)。ヌクレオプラスミンとプロタミンとの直接的相互作用がインビトロ実験で観察されたが、その観察から、ヌクレオプラスミンはプロタミンに1:1の比で結合すること、およびヌクレオプラスミン中のポリグルタミン酸区間が、プロタミンへの結合に決定的な役割を果たすことが示唆される(Iwataら、1999)。興味深いことに、卵母細胞核、受精卵の雄性もしくは雌性前核、または2細胞胚の核への精子DNAの注入は精子脱凝縮につながることから(Maedaら、1998)、ヌクレオプラスミンはこれらの段階のすべてで機能することが示唆される。ヌクレオプラスミンは五量体としてヒストンと相互作用することもできる(Earnshawら、1980;Laskeyら、1993)。ヌクレオプラスミンはヒストンH2AおよびH2Bに特異的に結合し、ヒストンH3およびH4を結合するタンパク質N1/N2と共に、DNAでのヌクレオソーム構築を促進することができる(Dilworthら、1987;Laskeyら、1993)。したがってこれらの知見から、卵形成中ならびに卵形成中と受精時に、卵母細胞由来のヌクレオプラスミンは雌性前核および雄性前核と相互作用し、ヒストンと相互作用し、クロマチン構築に何らかの形で必要とされていることが示唆される(Laskeyら、1993;Philpottら、1991)。ヌクレオプラスミンに対して低いホモロジーを持つ「遍在的」タンパク質が哺乳動物およびショウジョウバエ(Drosophila)でクローニングされているが(Chanら、1989;Crevelら、1997;Itoら、1996;MacArthurおよびShackleford、1997b;Schmidt-ZachmannおよびFranke、1988)、哺乳動物での卵母細胞等価オルソログはまだ同定されていない。
卵巣内の基本機能単位は卵胞であり、これは卵母細胞とそれを取り巻く体細胞とからなっている。雌性哺乳動物における妊性は、月経周期の中期に受精可能な卵母細胞を排卵するグラーフ(排卵前)(排卵前)卵胞を卵巣が産生することができるかどうかに依存している(EricksonおよびShimasaki、2000)。卵胞形成と呼ばれるこの過程には、卵巣外因子と卵巣内因子との精密な協調的調節が必要である(Richardsら、1995)。卵母細胞-体細胞コミュニケーションは古くから重要であると認識されてきたが(Falck、1959)、視床下部レベル(すなわちGnRH)および下垂体前葉レベル(すなわちFSHおよびLH)での卵巣外調節ホルモンに関する知識に比して、卵巣内のパラクリン因子およびオートクリン因子については、ほとんどわかっていない。卵母細胞が分泌する因子は、卵胞形成中に、周囲の顆粒膜細胞の増殖を促進し、これらの細胞の早すぎる黄体化を抑制することを示す証拠が、蓄積されつつある(El-Foulyら、1970;Channing、1970)。卵母細胞因子は、ヒアルロン酸、ウロキナーゼプラスミノゲン活性化因子(uPA)、LH受容体、ステロイドおよびプロスタグランジンおよびプロスタグランジンの顆粒膜細胞による合成の制御に関係づけられている(El-Foulyら、1970;NekolaおよびNalbandov、1971;Salustriら、1985;Vanderhydenら、1993;Eppigら、1997a, b)。
最近、卵母細胞内にいくつかの新規調節タンパク質が発見された。トランスフォーミング成長因子b(TGF-b)スーパーファミリーのメンバーである成長分化因子9(GDF-9またはGdf9)はもっとも重要なシグナリング因子の一つである。マウスの場合、GDF-9の卵母細胞での発現は一次卵胞段階で始まり、排卵まで持続する(McGrathら、1995;Elvinら、2000)。雌Gdf9 ノックアウトマウスは3b型(一次)卵胞段階で卵胞形成が妨害され、顆粒膜細胞の成長および分化、莢膜細胞形成および卵母細胞の減数分裂能力の欠損を伴うので、不妊である(Dongら、1996;Carabatsosら、1998;Elvinら、1999A)。また、組換えGDF-9は、ヒアルロナンシンターゼ2(Has2)、シクロオキシゲナーゼ2(Cox2)、ステロイド産生急性調節タンパク質(StAR)、プロスタグランジンE2受容体EP2、ペンタラキシン(pentaraxin)3、LH受容体およびuPAをコードする遺伝子の発現に影響を及ぼす(Elvinら、1999B;Elvinら、2000)。
視床下部-下垂体-性腺軸の鍵タンパク質を同定するために、重要なノックアウトマウスモデルが、卵巣欠損を持つ4つのモデルを含めて、いくつか作出されている。性腺/下垂体ペプチドであるインヒビンが欠損しているマウスは、わずか4週齢で現れる卵巣腫瘍または精巣腫瘍の発症により、続発性不妊を呈する(Matzukら、1992)。II型アクチビン受容体(Acvr2)が欠損しているマウスは成体期まで生き延びるが、生殖欠損を示す。雄マウスには精巣サイズの低下がみられ、妊性の遅延が認められる(Matzukら、1995)。これに対して、雌マウスは初期胞状卵胞段階での卵胞形成に不妊につながる障害を持つ。FSHホメオスタシスにアクチビンが果たす既知の役割と合致して、これらのAcvr2 ノックアウトマウスでは、下垂体FSHレベルと血清中FSHレベルの両方が劇的に低下する。FSHb遺伝子の突然変異のせいでFSHが欠損している雌マウスは不妊である(Kumarら、1997)。しかしこれらのマウスでは、胞状卵胞形成の前に、早期に卵胞形成が妨害される。したがって、FSHは多層前胞状卵胞の形成には必要ないが、胞状卵胞形成への進行には必要である。最後に、成長分化因子9(Gdf9)ノックアウトマウスを使って、卵胞発育のどの段階でGDF-9が必要とされるかが決定されている(Dongら、1996)。卵巣内では、Gdf9 mRNAの発現は卵母細胞に限定され、初期の単層一次卵胞段階で認められ、排卵まで持続する。GDF-9が存在しないと、一次卵巣段階を越えて正常な卵胞を呈示することができない卵巣になる。単層の顆粒膜細胞によって取り囲まれた卵母細胞が存在し、それらは組織学的には正常であるように見えるが、正常な二層型の卵胞は存在しない。単層段階を越えた卵胞は異常であり、異型顆粒膜細胞を含み、これらの細胞の非対称な成長を示す。さらにまた、光学顕微鏡および電子顕微鏡によると、これらのGdf9 ノックアウト卵巣では、莢膜細胞層が形成されない(Dongら、1996;Elvinら、1999)。したがって、体細胞によって合成され卵母細胞成長に影響を及ぼすkitリガンドおよび他の成長因子とは対照的に、GDF-9は体細胞機能に必要な卵母細胞由来成長因子として互恵的に機能する。
本発明は、三つの卵巣特異的およびおよび卵母細胞特異的ポリヌクレオチド配列O1-180(zygote arrest 1 (Zar1)としても知られる)(配列番号1、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号28、配列番号30、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号40、および配列番号41)、O1-184(配列番号3)、およびO1-236(ヌクレオプラスミン(nucleoplasmin)(Npm2)としても知られる)(配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号14、および配列番号43)、それらがコードするタンパク質産物、それらの断片、ホモログおよび誘導体、およびそれらのタンパク質産物と免疫反応する抗体を提供する。これらの遺伝子およびそれらのタンパク質産物は、さまざまな細胞増殖性障害または細胞変性障害に関係するようであり、特に卵巣腫瘍が関わるもの、例えば胚細胞腫瘍および顆粒膜細胞腫、または不妊、例えば早発性卵巣機能不全などに関係するようである。
特定の一態様として、本発明は、性腺組織に特有の核酸分子を提供する。これら特有の核酸は、天然由来のcDNA、ゲノムDNA、RNAもしくはこれらの核酸の一つの断片であってもよく、または、天然由来でない核酸分子であってもよい。この特有の核酸がゲノムDNAであるならば、それは性腺の特定の遺伝子である。一態様において、核酸分子は、性腺に特有のポリペプチドをコードする。他の好ましい態様において、核酸分子は、O1-180のアミノ酸配列(配列番号2、配列番号16、配列番号29、配列番号32、配列番号34、配列番号36、および配列番号39)、O1-184のアミノ酸配列(配列番号4)、O1-236のアミノ酸配列(配列番号6、配列番号9および配列番号42)からなるポリペプチドをコードする。さらに他の態様において、該核酸配列は、O1-180 (zygote arrest 1 (Zar1)としても知られる)(配列番号1、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号28、配列番号30、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号40、および配列番号41)の核酸配列、O1-184(配列番号3)の核酸配列、およびO1-236(ヌクレオプラスミン(nucleoplasmin)(Npm2)としても知られる)(配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号14、および配列番号43)の核酸配列を含む。核酸分子には、性腺の特定のタンパク質をコードする核酸分子に選択的にハイブリダイズする配列または性腺の特定のタンパク質をコードする核酸分子に配列が実質的に類似する配列も含まれ、あるいは、性腺の特定の核酸に選択的にハイブリダイズする核酸または性腺の特定の核酸に配列が実質的に類似する核酸も含まれ、さらには、性腺の特定のタンパク質をコードする核酸分子の対立遺伝子変異体および性腺の特定の核酸の対立遺伝子変異体も含まれる。さらに、性腺の特定のタンパク質をコードする核酸配列の一部を含む核酸分子が提供され、あるいは、性腺の特定の核酸の核酸配列の一部からなる核酸配列の一部を含む核酸分子が提供される。
したがって一態様として、本発明は、O1-180、O1-184またはO1-236に関係する卵巣起源の細胞増殖性障害または細胞変性障害を検出する方法を提供する。もう一つの態様として、本発明は、O1-180、O1-184またはO1-236の異常な発現レベルと関係する細胞増殖性障害または細胞変性障害を、それぞれの活性を抑制または強化することによって処置する方法を提供する。
特定の一態様として、本発明は、薬学的に許容できる担体中に分散したO1-180、O1-184および/またはO1-236発現のモジュレーターを含む医薬組成物を提供する。本モジュレーターはO1-180、O1-184および/またはO1-236遺伝子の転写を抑制または増進することができる。本モジュレーターは、ポリペプチド配列、タンパク質、小分子、またはポリヌクレオチド配列でありうる。具体的に述べると、ポリヌクレオチド配列はDNAまたはRNAである。さらなる態様では、本ポリヌクレオチド配列は、プロモーターに作動的に連結した状態で発現ベクターに含まれる。
本発明のもう一つの態様は、薬学的に許容できる担体中に分散したO1-180、O1-184および/またはO1-236活性のモジュレーターを含む医薬組成物である。本組成物はO1-180、O1-184および/またはO1-236活性を阻害または刺激しうる。本組成物はタンパク質、ポリペプチド配列、小分子またはポリヌクレオチド配列でありうる。本発明の組成物は、核酸配列と、問題となっている他のタンパク質パートナーとの相互作用を遮断または増強しうると考えられる。
本発明のもう一つの態様は、避妊を調整する方法であって、薬理学的に許容できる担体中に分散したO1-180、O1-184および/またはO1-236発現のモジュレーターの有効量を動物に投与することを含み、前記の量が受胎を減少させることのできる方法である。動物は雄でも雌でもよい。
もう一つの態様は、妊性を強化する方法であって、薬理学的に許容できる担体中に分散したO1-180、O1-184および/またはO1-236活性および/または発現のモジュレーターの有効量を動物に投与することを含み、前記の量が受胎を増加させることのできる方法である。
さらにもう一つの態様は、O1-180、O1-184および/またはO1-236発現のモジュレーターのスクリーニング方法であって、O1-180、O1-184および/またはO1-236ポリペプチドを発現させる細胞を用意するステップ、前記細胞を候補モジュレーターと接触させるステップ、O1-180、O1-184および/またはO1-236発現を測定するステップ、および候補モジュレーター存在下でのO1-180、O1-184および/またはO1-236発現を、候補モジュレーター不在下でのO1-180、O1-184および/またはO1-236の発現と比較するステップを含み、候補モジュレーター不在下でのO1-180、O1-184および/またはO1-236の発現と比較した、候補モジュレーター存在下でのO1-180、O1-184および/またはO1-236の発現の相違により、当該候補モジュレーターが、O1-180、O1-184および/またはO1-236発現のモジュレーターであると同定される方法である。
本発明の一特定態様は、O1-180、O1-184および/またはO1-236の活性を調整する化合物を同定する方法であって、単離されたO1-180、O1-184および/またはO1-236ポリペプチドまたはその機能等価物を取得するステップ、O1-180、O1-184および/またはO1-236ポリペプチドまたはその機能的等価物を候補化合物と混合するステップ、およびO1-180、O1-184および/またはO1-236の活性に対する前記候補化合物の効果を測定するステップを含む方法である。
もう一つの態様は、O1-180、O1-184および/またはO1-236の活性を調整する化合物のスクリーニング方法であって、O1-180、O1-184および/またはO1-236またはそのO1-180、O1-184および/またはO1-236結合断片を候補化合物に暴露すること、および前記化合物がO1-180、O1-184および/またはO1-236またはそのO1-180、O1-184および/またはO1-236結合パートナーに結合するかどうかを決定すること、そしてさらに前記化合物がO1-180またはO1-180と結合パートナーとの相互作用を調整するかどうかを決定することを含む方法である。
さらにもう一つの態様は、O1-180、O1-184および/またはO1-236と結合する相互作用化合物のスクリーニング方法であって、O1-180、O1-184および/またはO1-236タンパク質またはその断片をある化合物に暴露すること、および前記化合物がO1-180、O1-184および/またはO1-236に結合したかどうかを決定することを含む方法である。
もう一つの態様は、O1-180、O1-184および/またはO1-236活性に影響を及ぼす化合物を同定する方法である。その方法は、(1)調節可能な1つまたは複数のO1-180、O1-184および/またはO1-236タンパク質/遺伝子、(2)1つまたは複数のO1-180、O1-184および/またはO1-236タンパク質/遺伝子のノックアウト、または(3)1つまたは複数のO1-180、O1-184および/またはO1-236タンパク質/遺伝子のノックイン、を持つトランスジェニック動物の群を用意するステップ、トランスジェニック動物の群に対してそれぞれ対照動物からなる第2の群を用意するステップ、およびトランスジェニック動物群および対照動物群を候補O1-180、O1-184および/またはO1-236調整化合物に暴露するステップ、およびトランスジェニック動物群と対照動物群とを比較するステップ、およびトラスジェニック動物における不妊または妊性に関係する1つまたは複数のタンパク質に対する当該化合物の効果を対照動物と比較して決定するステップを含む。
特定の態様として、本発明は、ペプチド結合対の第1ペプチドと第2ペプチドの結合相互作用を検出する方法であって、選択した表現型を検出するのに適した条件下で少なくとも1つの真核細胞を培養すること[ここに、前記細胞は、転写活性化タンパク質DNA結合ドメインに接合された第1ペプチドまたはそのセグメントを含む第1異種融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列、転写活性化タンパク質転写活性化ドメインに接合された第2ペプチドまたはそのセグメントを含む第2異種融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列(ここでは、第1ペプチドまたはそのセグメントと第2ペプチドまたはそのセグメントとの結合によって、転写活性化タンパク質が復元される)、および復元された転写活性化タンパク質の正の転写制御を受けて活性化されるレポーター要素(ここでは、前記レポーター要素の発現が、選択した表現型をもたらす)を含む]、選択した表現型をもたらすレポーター要素の発現レベルを決定することによって前記ペプチド結合対の結合相互作用を検出することを含み、前記第1または第2ペプチドがO1-180、O1-184および/またはO1-236ペプチドであり、他方が試験ペプチド、好ましくは生殖組織内に存在する選択されたペプチド/タンパク質である方法を提供する。特定の態様では、生殖組織が卵巣または精巣である。
もう1つの態様は、ペプチド結合対の第一のペプチドと第二のペプチドとの結合相互作用を検出するためのレスキュースクリーンである。このスクリーンは以下の諸工程を含む:選択した表現型を検出するためまたはそのような表現型の不存在を検出するための条件下で少なくとも一つの真核細胞を培養する工程(ここでは、前記細胞は、転写活性化タンパク質のDNA結合ドメインに接合される第一のペプチドまたはそのセグメントを含む第一の異種融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、転写活性化タンパク質の転写活性化ドメインに接合される第2のペプチドまたはそのセグメントを含む第二の異種融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列と(ここでは、第一のペプチドまたはそのセグメントと第二のペプチドまたはそのセグメントとの結合によって、転写活性化タンパク質が復元される)、復元された転写活性化タンパク質の正の転写制御を受けて活性化されるレポータ要素(ここでは、前記レポータ要素の発現が、選択した表現型の発揮を妨げる)とを含む)、および選択した表現型の発揮を妨げるレポータ要素の発現に試験ペプチドが影響を及ぼすかどうかを決定することによって、試験ペプチドのO1-180、O1-184および/またはO1-236と相互作用する能力を検出する工程(ここでは、前記第一または第二のペプチドがO1-180、O1-184および/またはO1-236ペプチドであり、その他方のペプチドが試験ペプチド、好ましくは生殖組織内に存在する選択されたペプチド/タンパク質である)。特定の態様において、生殖組織は、卵巣、精巣、精巣上体、精管等である。
さらにもう一つの態様は、O1-180、O1-184および/またはO1-236の結合パートナーを同定する方法であって、当該タンパク質を結合パートナー候補に暴露するステップ、および前記結合パートナー候補がO1-180、O1-184および/またはO1-236に結合するかどうかを決定するステップを含む方法である。
本発明は、卵巣の発育および機能を研究するための、重要なインビトロおよびインビボ試薬を提供する。これらの試薬の考えうる用途は広範囲にわたり、発生の研究道具としての使用から癌に対する治療用試薬にまで及ぶと予想される。これら新規卵巣遺伝子産物の主用途は、婦人の排卵を可逆的または不可逆的に調節するための候補避妊手段を評価および/または開発するための試薬として、それらを使用することである。これらの新規卵巣遺伝子産物は、いくつかの形態のヒト不妊または婦人科癌に関係するこれらのシグナリング経路の構成要素における遺伝子突然変異に関するスクリーニングにも役立つと予想される。また、これらの遺伝子またはシグナリング経路に突然変異を持つヒトの表現型によっては、本発明者らは、これらの新規卵巣遺伝子産物を試薬ツールとして使用することにより、母性効果遺伝子として、卵形成、卵胞形成および/または初期胚形成をさらに研究するための突然変異マウスをいくつか作出しようと考えるだろう。そのようなノックアウトマウスモデルにより、女性の生殖におけるこれらの遺伝子産物の役割に関する重要な洞察が得られ、新しい避妊手段を評価および開発するための実用的試薬としてこれらの遺伝子産物を使用することが可能になる。
本発明のもう1つの態様は、O1-180、O1-184および/またはO1-236の活性および/または発現を調節するモジュレーターについてスクリーニングすることにより不妊症の動物を治療する方法からなる。この方法は、O1-180、O1-184および/またはO1-236の単離したポリペプチドまたはその機能的等価物を得る工程と、O1-180、O1-184および/またはO1-236の該ポリペプチドまたはその機能的等価物と候補化合物とを混合する工程と、O1-180、O1-184および/またはO1-236の活性および/または発現に対する前記候補化合物の作用を測定する工程と、受精または受胎の向上のため該モジュレーターの有効量を対象に投与する工程とを含む。
本発明のもう1つの態様は、O1-180、O1-184および/またはO1-236の活性および/または発現を調節するモジュレーターについてスクリーニングすることにより動物の受胎または受精を調節する方法からなる。この方法は、O1-180、O1-184および/またはO1-236の単離したポリペプチドまたはその機能的等価物を得る工程と、O1-180、O1-184および/またはO1-236の該ポリペプチドまたはその機能的等価物と候補化合物とを混合する工程と、O1-180、O1-184および/またはO1-236の活性および/または発現に対する前記候補化合物の作用を測定する工程と、受胎減退および/または受胎向上のため該モジュレーターの有効量を対象に投与する工程とを含む。かくして、該モジュレーターは、避妊薬または妊性薬(排卵誘発薬)となりうる。
上記の説明は、以下に述べる本発明の詳細な説明がより良く理解されるように、本発明の特徴および技術上の利点をかなり大まかに概説したものである。以下に、本願特許請求の範囲の主題を形成する本発明の他の特徴および利点を説明する。本明細書に開示する概念および特定態様は、同じ本発明の目的を果たすために他の構造を変更または設計する際の基礎としてすぐに利用できることは、当業者には理解されるはずである。また、そのような等価な構築物は本願特許請求の範囲に記載する本発明の精神および範囲から逸脱しないことも、当業者にはわかるはずである。その構成と作動方法の両方に関して本発明に特有であると考えられる新規な特徴は、さらなる目的および利点と共に、以下の説明を添付の図面と一緒に考慮することにより、より良く理解されるだろう。ただし、各図面は本発明を例示し説明するためだけにあるのであって、各図面が本発明の範囲を規定するものではないことは、明確に理解すべきである。
本発明がより完全に理解されるように、添付の図面を参照して、本発明を以下に説明する。
本願に開示する発明には、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、さまざまな態様および変更が可能であることは、当業者には明白である。
本願において、特許請求の範囲および/または明細書中に「を含む(comprising)」という用語と一緒に「a」または「an」という単語を使用する場合、これは「1つ」を意味しうるが、「1つ以上」「少なくとも1つ」および「1つまたは複数」の意味とも一致する。
本明細書で使用する「動物」という用語は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ゾウ、ネコ、イヌ、ラットまたはマウスなどの哺乳動物を指す。特定の態様では、動物はヒトである。
本明細書で使用する「抗体」という用語は、例えばIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEなどの任意の免疫学的結合剤を、広く表すものとする。一般的にはIgGおよび/またはIgMが好ましい。なぜなら、これらは、生理学的状況でもっともよく見られる抗体であり、研究室でも最も容易に作製することができるからである。したがって当業者であれば、「抗体」という用語は、抗原結合領域を持つ任意の抗体様分子を指し、例えばFab'、Fab、F(ab')2、単独ドメイン抗体(DAB)、Fv、scFv(単鎖Fv)などの抗体断片を包含すると理解する。抗体に基づくさまざまなコンストラクトおよび断片を製造し使用するための技術は、当技術分野ではよく知られている(例えば「Antibodies: A Laboratory Manual」(コールドスプリングハーバー研究所, 1988)を参照されたい)。
本明細書で使用する「結合タンパク質」という用語は、特定のリガンドに対して結合親和性を示すタンパク質を指す。結合タンパク質は、別々の相異なる遺伝子から産生されうる。ある与えられたリガンドに関して、特定の遺伝子から産生される結合タンパク質は、受容体のリガンド結合ドメインまたはその可溶性受容体とは異なる。
本明細書で使用する用語「結合パートナー」または「相互作用タンパク質」は、たとえば抗原と抗原特異的抗体、あるいは酵素とその阻害剤のように、特異性を有する他の分子に結合することが可能な分子を指す。たとえば、結合パートナーには、ビオチンとアビジンまたはストレプトアビジン、IgGとプロテインA、受容体−リガンドの組みあわせ、タンパク質−タンパク質相互作用、および相補的ポリヌクレオチド鎖類が含まれうる。用語「結合パートナー」はまた、細胞においてO1-180、O1-236および/または01-184に結合するポリペプチド類、脂質類、小分子類、または核酸類を指すこともできる。タンパク質と結合パートナーとの間の相互作用の変化は、相互作用が起こる確率の増加または減少として、あるいは、細胞−結合パートナー複合体におけるO1-180、O1-236および/またはO1-184の濃度の増加または減少として現われ得る。
本明細書で使用する用語「O1-180結合断片」、「O1-184結合断片」および/または「O1-236結合断片」は、結合パートナーまたは相互作用タンパク質、たとえばポリペプチド、脂質、小分子、または核酸、に結合することが可能なO1-180、O1-184および/またはO1-236の核酸断片および/またはアミノ酸断片をそれぞれ指す。
本明細書で使用する用語「細胞」、「細胞株」および「細胞培養(物)」は、相互に交換可能に使用できる。これらすべての用語はまた、それらの子孫をも含み、子孫は任意およびすべての後代である。当然のことながら、すべての後代は、意図したまたは意図しない変異のため、同じでないことがありうる。異種核酸配列を発現させる文脈において、用語「宿主細胞」は、原核細胞または真核細胞(例えば、大腸菌のような細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、鳥細胞、両生動物細胞、植物細胞、魚細胞、および昆虫細胞)をさし、インビトロにあろうと、インビボにあろうとかまわない。例えば、宿主細胞は、トランスジェニック動物中にあってもよい。宿主細胞は、ベクターの受容体として用いることができ、また、ベクターを複製することができ、および/またはベクターによってコードされる異種核酸を発現させることができる任意の形質転換可能な生物体を含みうる。
本明細書で使用する「受胎」という用語は、雄の精子と雌の卵子の合体、受精を意味する。
本明細書で使用する「避妊」という用語は、受胎の防止または妨害を指す。したがって避妊具は、受胎を防止する任意のプロセス、器具、または方法を指す。よく知られている避妊手段の種類には、ステロイド、化学的障壁、物理的障壁、化学的障壁と物理的障壁の併用、問題にしている生殖抗原に対する抗体を投与するかまたは投与された生殖抗原に対して自然の免疫応答を発生させることによる免疫避妊方法の使用、禁欲および永久的な外科手術などがある。避妊手段は雄または雌に適用することができる。
本明細書で使用する用語「相補的」は、互いにハイブリダイズ(対合)することができるヌクレオチド塩基間の関係を記述するのに使用される。たとえば、DNAに関し、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。
本明細書で使用する「DNA」という用語はデオキシリボ核酸と定義される。
本明細書で使用する用語「cDNA」は、あるmRNA鋳型に相補的でおよびそれに由来するDNAを指す。cDNAは、一本鎖であってもよいし、たとえば、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントを用いて、二本鎖の形態に変換してもよい。
本明細書で使用する「DNAセグメント」という用語は、ある特定種のゲノムDNA全体からは分離されているDNA分子を指す。「DNAセグメント」という用語には、DNAセグメントと、そのようなセグメントよりも小さい断片が包含され、例えばプラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスなどを含む組換えベクターも包含される。
本明細書で使用する「発現コンストラクト」または「導入遺伝子」という用語は、遺伝子産物をコードする核酸を含んでいて、その核酸コード配列の一部または全部が転写を受ける能力を持つ、あらゆるタイプの遺伝子コンストラクトと定義され、ベクターに挿入することができる。転写物はタンパク質に翻訳されるが、その必要はない。ある態様では、遺伝子の転写とmRNAの遺伝子産物への翻訳との両方が、発現に含まれる。別の態様では、問題にしている核酸コード遺伝子の転写だけが、発現に含まれる。本発明では、発現コンストラクトまたは導入遺伝子を指すために「治療用コンストラクト」という用語を使用する場合もある。本発明が、不妊を処置するための治療法として発現コンストラクトまたは導入遺伝子を利用することは、当業者であればわかる。さらに本発明では、発現コンストラクトまたは導入遺伝子を、避妊のための「予防用コンストラクト」として利用する。したがって「予防用コンストラクト」は避妊手段である。
本明細書で使用する「発現ベクター」という用語は、ある遺伝子産物の少なくとも一部をコードしていて転写されうる核酸配列を含んでいるベクターを指す。一部の例では、RNA分子がさらにタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドに翻訳される。また、他の例、例えばアンチセンス分子またはリボザイムを製造する例では、これらの配列は転写されない。発現ベクターはさまざまな制御配列を含むことができる。制御配列とは、特定の宿主生物内で作動的に連結されたコード配列の転写に必要な、そして場合によっては翻訳に必要な核酸配列を指す。ベクターおよび発現ベクターは、転写および翻訳を支配する制御配列だけでなく、他の機能も果たす後述の核酸配列も含むことができる。
本明細書で使用する「遺伝子」という用語は、機能的なタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードする単位を簡潔に示すために用いられる。この機能的用語は、タンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質および突然変異体を発現させるか、またはそれらを発現させるように改造することができる、ゲノム配列、cDNA配列および操作されたセグメントを包含する。例えば、「天然遺伝子」という用語が、自分自身の調節配列を持つ自然界に見いだされるままの遺伝子を指し、「キメラ遺伝子」という用語が、自然界では一緒には見いだされない調節配列とコード配列を含む天然遺伝子ではない任意の遺伝子を指すことは、当業者には知られている。したがってキメラ遺伝子は、異なる供給源に由来する調節配列とコード配列、または同じ供給源に由来するが自然界に見いだされる配置とは異なる形で配置されている調節配列とコード配列を含みうる。
本明細書で使用する用語「性腺の」、「性腺組織」または「性腺」は、雄性および雌性の性器に関係する組織をさしていう。性腺組織は、卵巣および/または精巣に限定されず、卵巣および/または精巣に発達する胚組織をも含みうる。
本明細書で使用する用語「一致度(identity)」または「類似度(similarity)」は、当該技術において知られるとおり、二以上のポリペプチド配列間の、または二以上のポリヌクレオチド配列間の、配列を比較することにより決定される関係を指す。当該技術において、一致度はまた、ポリペプチド配列間またはポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度を意味し、それは、場合に応じて、そのような配列の並びの一致によって決定される。一致度および類似度はともに、以下に記載される公知の方法によって容易に計算することができる。Computational Molecular Biology, Lesk, A. M.編, Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W.編, Academic Press, New York, 1993; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A. M.およびGriffin, H. G.編, Humana Press, New Jersey, 1994;およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M.およびDevereux, J. 編, M Stockton Press, New York, 1991。配列間の一致度または類似度を決定するため一般に使用される方法には、Carillo, H.およびLipman, D., SIAM J Applied Math., 48:1073 (1988)に開示されるものがあるが、これに限定されるものではない。一致度および類似度を決定する方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムに体系化されている。二つの配列間の一致度および類似度を決定する好ましいコンピュータプログラム法には、GCG program package(GCGプログラムパッケージ), Devereux, J.ら、Nucleic Acids Research, 12(1), 387 (1984))、BLASTP、BLASTNおよびFASTA Atschul, S. F.ら, J Molec. Biol., 215, 403 (1990)があるが、これらに限定されるものではない。
本明細書で使用する用語「相同(の)」は、二つのポリマー(すなわち、二つのポリペプチド分子または二つの核酸分子)間の配列類似度を指す。ここでとりあげる相同率(百分率)の図は、二つのポリマー間の可能な最高の相同性を表わしており、すなわち、一致する(相同の)位置の数が最も多くなるよう二つのポリマーを整合させたときのパーセントホモロジーを表わしている。
本明細書で使用する用語「パーセントホモロジー」は、ポリペプチド間のアミノ酸配列が一致する程度を指す。任意の二つのポリペプチド間のホモロジーは、いずれかの配列の所定の位置において一致するアミノ酸の総数と直接的な関係にあり、たとえば、いずれかの配列においてアミノ酸総数の半分が同じであれば、二つの配列は50%のホモロジー(相同性)を示すという。
本発明のポリペプチド(例えば、O1-180(配列番号2、配列番号16、配列番号29、配列番号32、配列番号34、配列番号36、および配列番号39)、O1-184(配列番号4)、O1-236(配列番号6、配列番号9および配列番号42)に言及するとき、用語「断片」、「類似体」および「誘導体」は、そのようなポリペプチドと実質的に同じ生物学的機能または活性を保持しうるポリペプチドを指す。したがって、類似体は、前駆タンパク質部分の切断により活性化され得て活性な成熟ポリペプチドを生成させることができる前駆タンパク質を含む。本発明のポリペプチド(O1-180(配列番号2、配列番号16、配列番号29、配列番号32、配列番号34、配列番号36、および配列番号39)、O1-184(配列番号4)、O1-236(配列番号6、配列番号9および配列番号42))の断片、類似体または誘導体は、一以上のアミノ酸が保存アミノ酸残基または非保存アミノ酸残基で置換されおり、およびそのようなアミノ酸残基が遺伝コードでコードされていてもよいし、いなくともよいもの、一以上のアミノ酸残基が置換基を含むもの、該ポリペプチドがその半減期をのばすためポリエチレングリコールのような化合物と融合されているもの、あるいは、さらなるアミノ酸が、ポリペプチド、たとえば、シグナルペプチド、あるいは、ポリペプチドまたは前駆タンパク質の精製のため使用されるポリヒスチジン標識のような配列に融合されたもの、であってもよい。そのような断片、類似体または誘導体は、本発明の技術範囲内であると判断される。
本明細書で使用する用語「機能的等価物」は、異なる配列を含むよう作られると同時に、野生型または対照タンパク質の関心のある生物学的機能を発揮する能力を保持しているポリヌクレオチドとして規定される。したがって、本明細書で使用する用語「機能的等価物」は、O1-180(配列番号2、配列番号16、配列番号29、配列番号32、配列番号34、配列番号36、および配列番号39)、O1-184(配列番号4)、O1-236(配列番号6、配列番号9および配列番号42)のトランケーション物、欠失物、挿入物、または置換物を含み、それは、受精および胚の発生において役割を果たすその機能を保持するものである。これはまた、遺伝コードの縮重、すなわち、同じアミノ酸をコードする複数のコドンの存在に対して、成立しうる。一例において、当業者の望むところにより、あるポリヌクレオチドのタンパク質をコードする能力を妨げずに、そのポリヌクレオチドに制限酵素認識配列を導入することができる。他の例において、ポリヌクレオチドは、より顕著な変化を有する機能的等価物とすることができ(および機能的等価物をコードすることができ)る。たとえば抗体の抗原−結合領域、基質分子上の結合部位、受容体などのような構造による相互作用的な結合能力を顕著に減損させることなく、あるタンパク質構造において、ある特定のアミノ酸で他のアミノ酸を置換することができる。いわゆる「保守的」変化は、タンパク質の生物学的活性を破壊しない。というのも、その構造的変化は、タンパク質の設計された機能を発揮する能力を阻害するものでないからである。したがって、本発明者の意図するところにより、本発明の目的をなお果たしつつ、ここに開示する遺伝子およびタンパク質の配列をさまざまに変化させることができる。
「過剰増殖性疾患」という用語は、細胞の過剰増殖によって起こる疾患と定義される。過剰増殖性疾患はさらに癌と定義される。細胞の過剰増殖は、無秩序な成長、分化の欠如、局所組織浸潤、および転移をもたらす。代表的な過剰増殖性疾患には、例えば癌または自己免疫疾患などが含まれる。他の過剰増殖性疾患には、血管閉塞、再狭窄、アテローム性動脈硬化、または炎症性腸疾患を含めることができる。
本明細書で使用する「妊性」という用語は、生殖能力を持つまたは受胎能力を持つという特性を指す。妊性は雄性動物にも雌性動物にも関係する。
本明細書で使用する用語「不妊」は、子孫を妊娠または産出する能力が無いことまたは減少していることを指す。不妊は、雄または雌のいずれにもありうる。本発明において、不妊を強化するか妊性を低下させるため組成物を投与することは可逆的(取消し可能)なことである。不妊の例には、無精子症、精子形成不全を伴う遺伝子疾患(例えば、クラインフェルター症候群および生殖器発育不全)、精子過少症、精索静脈瘤、および低精子数、精子運動性および精子形態に関する他の精子異常、および排卵の機能不全(例えば、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)または慢性無排卵)があるが、これらに限定されるものではない。
本明細書で使用する用語「O1-180」、「Oo1」、「zygote arrest 1 (Zar1)」、「ZAR1」または「ZAR1」は、可換である。Zar1およびZAR1は、それぞれ、マウスおよびヒトのDNA配列を表わす。ZAR1は、マウスおよびヒトのアミノ酸配列を表わす。
本明細書で使用する用語「O1-236」、「ヌクレオプラスミン2(Npm2)」、「NPM2」または「NPM2」は、可換である。Npm2およびNPM2は、それぞれマウスおよびヒトのDNA配列を表わす。NPM2はマウスおよびヒトのアミノ酸配列を表わす。
本明細書で使用する用語「調節(する)」は、機能の抑制、増強、または誘導を指す。たとえば、遺伝子発現の「調節」または「制御」は、遺伝子の活性の変更を指す。発現の調節には、遺伝子の活性化および遺伝子の抑制があるが、これらに限定されるものではない。「調節(する)」または「制御(する)」はまた、タンパク質、酵素、阻害物質、シグナルトランスデューサー、受容体、転写アクチベーター、コファクターなどの生物学的活性を増加または減少させる方法、条件または因子もしくは薬剤をさしていう。この活性の変化は、mRNAの翻訳、DNAの転写、および/またはmRNAもしくはタンパク質の減退もしくは変質の増加または減少であり得、それは、結果として生物学的活性の増加または減少に対応しうる。そのような増強または阻害は、特定の事象の発生、たとえばシグナルトランスダクション経路の活性化、に左右されうることもあり、および/または特定の細胞型のみに現れることもありうる。
本明細書で使用する用語「調節された活性」は、タンパク質の生物学的に活性な形によって調節される任意の活性、状態、症状、または表現型を指す。調節は、生物学的に活性なタンパク質の濃度に作用を及ぼすことにより、影響されてもよく、たとえば、発現または劣化(分解)を制御することにより、あるいは、たとえば、基質の阻害、活性化、結合、または放出を介する、化学的または構造的な変更または修飾としての直接的な作動的または拮抗的作用により、あるいは、さらなる因子を伴いうる直接的または間接的な相互作用により、調節に影響を及ぼすことができる。
本明細書で使用する用語「モジュレーター」は、特定の活性の発現、たとえば、O1-236の活性または発現、O-180の活性または発現、および/またはO1-184の活性または発現を変化させる任意の組成物および/または化合物を指す。モジュレーターは、意図するところによれば、任意の組成物または化合物、たとえば、抗体、小分子、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質からなる。
用語「小分子」は、合成または天然の化合物をさし、たとえば、必要に応じて誘導体化してもよいペプチドまたはオリゴヌクレオチド、天然物またはその他の低分子量(典型的に約5キロダルトン未満)の有機化合物、無機生物学的化合物または無機化合物で天然物または合成物のいずれかの起源のものを指す。そのような小分子は、治療上送達(デリバリー)可能な物質であってもよいし、送達促進のためさらに誘導体としてもよい。
用語「作動的に連結した」は、一つの核酸断片上での二以上の核酸断片の結合で、一方の機能が他方に影響(作用)されるような結合を指す。たとえば、プロモーターがそのコード配列の発現に作用することができるとき(すなわち、該コード配列が、該プロモーターの転写制御下にあるとき)、プロモーターはコード配列に作動的に連結している。コード配列は、センスまたはアンチセンスの配向で制御配列に作動的に連結しうる。本明細書で使用する用語「ペプチド結合対」は、既知の結合親和性を持ち、そのDNA配列がわかっているまたは推定することができる、任意のペプチド対を指す。ペプチド結合対のペプチドは、改変細胞の他のどの成分に対しても、互いに選択的な結合を示さなければならない。
本明細書にいう「薬学的に許容できる担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤、抗真菌剤、浸透圧調節剤、吸収遅延剤などを包含する。医薬活性物質へのそのような媒質および薬剤の使用は、当技術分野ではよく知られている。通常の媒質または薬剤は、それが本発明のベクターまたは細胞と適合しない場合を除き、治療用および/または予防用組成物への使用が考えられる。組成物には追加活性成分も組み込むことができる。
本明細書で使用する用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」、「オリゴヌクレオチド」は、DNAおよびRNAにおける一連のヌクレオチド塩基(ヌクレオチドとも呼ぶ)を指し、2以上のヌクレオチドからなる任意の鎖を意味する。ポリヌクレオチドは、キメラの混合物もしくは誘導体、それらの修飾物、一本鎖、または二本鎖であってもよい。オリゴヌクレオチドは、たとえば、分子安定性の向上、そのハイブリダイゼーションパラメータの向上等のために、塩基部分、糖部分、またはリン酸バックボーンにおいて、修飾または変更されてもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、修飾塩基部分を含んでもよい。そのような修飾塩基部分は、限定されることなく、たとえば、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2-メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6-アデニン、7−メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルキューオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、および2,6-ジアミノプリンよりなる群から選択される。ヌクレオチド配列は、典型的に、遺伝情報を保持し、それは、細胞機構によりタンパク質および酵素を生成させるのに使用される情報を含む。これらの用語は、二本鎖または一本鎖のゲノムおよびcDNA、RNA、任意の合成されたまたは遺伝子操作されたポリヌクレオチド、およびセンスおよびアンチセンスポリヌクレオチドの両方を含む。これは、一本鎖および二本鎖の分子、すなわち、DNA-DNA、DNA-RNAおよびRNA-RNAハイブリッドを含むとともに、さらに、アミノ酸バックボーンに接合する塩基によって形成される「タンパク質核酸」(PNA)をも含む。これはさらに、修飾塩基、たとえば、チオ−ウラシル、チオ−グアニンおよびフルオロ−ウラシル、を含む核酸、または炭水化物もしくは脂質を含む核酸を含む。
本明細書で使用する「ポリペプチド」という用語は、通常一定の配列を有するアミノ酸残基の鎖と定義される。本明細書で使用する用語ポリペプチドは、用語「ペプチド」および「タンパク質」と可換である。
本明細書で使用する「プロモーター」という用語は、細胞の合成機構または導入された合成機構によって認識されるDNA配列であって、遺伝子の特異的転写を開始するために必要なDNA配列と定義される。
本明細書で使用する「精製されたタンパク質またはペプチド」という用語は、他の成分から分離することができる組成物を指すものとし、タンパク質またはペプチドは、その天然に得られる状態と比較して、任意の程度に精製される。したがって精製されたタンパク質またはペプチドは、それが天然に存在しうる環境から解放されたタンパク質またはペプチドも指す。
本明細書で使用する「RNA」という用語はリボ核酸と定義される。
本明細書で使用する「メッセンジャーRNA(mRNA)は、イントロンがなく、細胞によってポリペプチドに翻訳できるRNAを指す。
本明細書で使用する「RNA干渉」または「iRNA」という用語は、問題にしている特定遺伝子を抑制するために用いられるRNA分子である。
本明細書で使用する用語「制御配列」は、コード配列の上流(5'非コード配列)、中、または下流(3'非コード配列)に位置するヌクレオチド配列を指し、それは、転写、RNAプロセッシングもしくは安定性、または連結されたコード配列の翻訳に影響するものである。制御配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、およびポリアデニル化認識配列を含みうる。
本明細書で使用する用語「センス」は、コードmRNA核酸配列と同じ配向にある核酸の配列を指す。「センス配向」でプロモーターに結合されたDNA配列は、mRNAと同じ配列を含むRNA分子が転写されるように結合されている。生成したRNA分子は、しかし、機能的なタンパク質に翻訳される必要はない。
本明細書で使用する、特定のポリヌクレオチドの「アンチセンス」複製物という用語は、ポリヌクレオチドに水素結合することが可能であり、したがって、ポリヌクレオチドの発現を調節することが可能な、相補的配列を指す。それらは、DNA、RNAまたはそれらの類似体であり、上述したような改変したバックボーンを有する類似体を含む。アンチセンス複製物が結合するポリヌクレオチドは、一本鎖の形態でも、二本鎖の形態でもよい。「アンチセンス配向」でプロモーターに結合したDNA配列は、目的とする遺伝子のコードmRNAに相補的なRNA分子が生成されるように、プロモーターに結合され得る。
本明細書で使用する用語「センス」鎖および「アンチセンス」鎖は、同じ文脈で使用されるとき、互いに相補的な一本鎖ポリヌクレオチドを指す。それらは、二本鎖ポリヌクレオチドの対向する鎖同士であってもよいし、また、一方の鎖は、一般的に受け入れられている塩基対合則に従って、他方の鎖から予測することができる。他の態様で明記または定義しないかぎり、任意に、一方の鎖を「センス」とし、他方の鎖を「アンチセンス」とすることができる。
本明細書で使用する用語「有効量」または「治療上有効な量」は、病気または疾患の症状の改善または矯正をもたらす量を指す。
本明細書で使用する用語「治療する」および「治療」は、対象に治療上有効な量の医薬組成物および/またはモジュレーターを、対象の病気および/または疾患が改善するように、投与することを指していう。改善は、症状の任意の改善または矯正である。改善は、観察できるかまたは測定できる改善である。したがって、病気および/または疾患が治療によって改善できることが当業者にわかればよく、該病気または疾患は、完全に治癒しなくともよい。
本明細書で使用する「転写制御下」または「作動的に連結」という用語は、RNAポリメラーゼ開始および遺伝子の発現を制御するための核酸に対して、遺伝子のプロモーターが正しい位置および向きにあることと定義される。
本発明は、三種の新規なタンパク質O1-180(配列番号2、配列番号16、配列番号29、配列番号32、配列番号34、配列番号36、および配列番号39)、O1-184(配列番号4)、O1-236(配列番号6、配列番号9および配列番号42)、それらをコードするポリヌクレオチド配列、およびそれらの断片および誘導体を提供する。O1-180、O1-184、O1-236の発現は、高度に組織特異的であり、主として卵巣組織の細胞で発現される。一態様において、本発明は、卵巣の細胞増殖性障害または卵巣の細胞変性障害を検出するための方法を提供し、それは、O1-180、O1-184またはO1-236の発現を伴う。他の態様において、本発明は、O1-180、O1-184、O1-236の異常な発現に伴う細胞増殖性障害または細胞変性障害を治療するための方法を提供し、それは、それらの各々の活性を抑制または増強する薬剤を使用することによるものである。
数多くの他の卵巣特異的タンパク質が持っている既知の活性に基づいて、O1-180、O1-184およびO1-236ならびにその断片および誘導体も、それらを診断用試薬および治療用試薬として有用にするような生物学的活性を持つだろうと期待することができる。
例えばGDF-9はO1-180、O1-184およびO1-236と同様の発現パターンを持つ卵母細胞発現遺伝子産物である。GDF-9を欠くマウスは卵胞発達の極めて初期の段階、単層一次卵胞段階で不妊である。これらの研究は、GDF-9機能を遮断する薬剤が避妊薬としてヒト女性に有用であるだろうということを証明している。O1-180、O1-184およびO1-236は卵母細胞でGDF-9とほぼ同じ発現パターンを持つので(図2)、上記の知見は、これらの遺伝子産物のすべてのいずれかを欠くマウスおよびヒトまたは他の任意の哺乳動物もまた不妊であるだろうということを示唆している。したがってこれらの遺伝子産物のいずれかまたはすべての機能を遮断すれば、避妊作用が得られるだろう。
卵巣特異的な発現をすることが見出されているもう一つの調節タンパク質は、FSHの下垂体分泌の特異的かつ強力なポリペプチド阻害物質インヒビンである。インヒビンは卵巣濾胞液から単離されている。インヒビンはFSHを抑制するので、雄でも雌でも避妊手段候補として提案されている。O1-180、O1-184およびO1-236も卵巣特異的ペプチドであるから、これらも類似する生物学的活性を持ちうる。インヒビンは一定の卵巣腫瘍のマーカーとして役立つことも示されている(Lappohnら、1989)。O1-180、O1-184、O1-236も卵巣起源の原発性および転移性新生物を同定するためのマーカーとして役立ちうる。また、インヒビンを欠くマウスは、顆粒膜細胞腫を発症する(Matzukら、1992)。同様に、O1-180、O1-184およびO1-236は、出生前スクリーニング法において、発生異常または生殖異常の指標として役立ちうる。
精巣によって産生され雄の胚で起こるミュラー管の退化を担っているミュラー管抑制因子(MISまたは抗ミュラーホルモン)ペプチドは、ヌードマウスにおけるヒト卵巣癌の成長を抑制することが示されている(Donahoeら、1981)。O1-180、O1-184およびO1-236も同様に機能する可能性があり、したがって例えば卵巣癌処置剤などの抗癌剤の標的になりうる。
O1-180、O1-184およびO1-236タンパク質、そのアゴニストおよびアンタゴニストは、哺乳動物(例えばヒト)の妊性を抑制する(例えば避妊薬として作用する)薬剤を同定するために使用できる。また、O1-180、O1-184およびO1-236ならびにそのアゴニストおよびアンタゴニストは、哺乳動物の妊性を強化する(例えばインビボまたはインビトロ受精の成功率を向上させる)薬剤を同定するためにも使用できる。また、これらの卵母細胞発現遺伝子産物または類縁の卵母細胞発現遺伝子産物のアッセイを、不妊の型(例えばこれらの遺伝子産物の活性を解析するアッセイで)または他の疾患(例えば胚細胞腫瘍、多嚢胞性卵巣症候群)を検出するための診断アッセイとして利用することもできる。
I.タンパク質
卵巣の生理機能、受精および初期分割事象に重要な機能を果たしうる他の新規卵巣発現遺伝子を同定することを目指して、本発明者らはサブトラクティブハイブリダイゼーション法を使用した。卵形成、卵胞形成、受精および/または初期胚形成の調節に重要ないくつかの新規卵母細胞発現遺伝子が、本発明者らによって同定された。これらの卵母細胞特異的遺伝子産物の一つ、ヌクレオプラスミン2(O1-236またはNPM2)は、アフリカツメガエル・ヌクレオプラスミン(xNPM2)の哺乳類オルソログである(Burglinら、1987;Dingwallら、1987)。NMP2の207アミノ酸オープンリーディングフレームは、ヌクレオプラスミンまたはヌクレオフォスミンと呼ばれるタンパク質のファミリーに対して高いホモロジーを示した(呼称=種:NPM2 ヒト遺伝子、Npm2 マウス遺伝子、およびXnpm2 アフリカツメガエル遺伝子;NPM2=あらゆる種のタンパク質)。ヒトヌクレオフォスミン遺伝子(NPM1, NO38とも呼ばれる;アクセッション番号M23613)はヒト染色体5q35に位置し、294アミノ酸のタンパク質をコードし、マウス(Npm1、B23とも呼ばれる, アクセッション番号Q61937)およびアフリカツメガエル(Xnpm1またはN038、アクセッション番号X05496)にオルソログを持つ。マウス19番染色体にマッピングされているマウスヌクレオプラスミン/ヌクレオフォスミンホモログNpm3は、175アミノ酸のタンパク質[アクセッション番号U64450(MacArthurおよびShackleford、1997a)]をコードし、ヒトNPM3ホモログ遺伝子(アクセッション番号AF081280)があるようである。Npm2とは対照的に、Npm1およびNpm3遺伝子は遍在的に発現し、マウスNpm2遺伝子の構造はマウスNpm3遺伝子と比べるとかなり異なっている(MacArthurおよびShackleford、1997a)。
本発明において、O1-180(配列番号2、配列番号16、配列番号29、配列番号32、配列番号34、配列番号36、および配列番号39)、O1-184(配列番号4)、およびO1-236(配列番号6、配列番号9および配列番号42)は、サブトラクティブハイブリダイゼーションを用いて、これらのタンパク質を特定した。これらの経路に作用するこれら特定したタンパク質または作用物質はまた、成長刺激因子としても機能し得、したがって、インビトロでの様々な細胞群の生存に有用となり得る。特に、もし、O1-180、O1-184および/またはO1-236が、卵母細胞の成熟にある役割を果たしているならば、それらは、体外受精法、たとえば、成功率を高めることにおいて、有用なターゲット(標的)となりうる。
本明細書において、用語「O1-180遺伝子産物」、「O1-184遺伝子産物」および「O1-236遺伝子産物」は、本来のO1-180、O1-184および/またはO1-236アミノ酸配列(またはRNA(利用可能であれば))と実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質およびポリペプチドを指し、あるいは、内因性のO1-180、O1-184および/またはO1-236に類似する機能的活性を発揮することが可能な点もしくはO1-180、O1-184および/またはO1-236に対して生じた抗−O1-180、O1-184および/またはO1-236抗体と交差反応することが可能な点で生物学的に活性なアミノ酸配列を有するタンパク質およびポリペプチドを指す。
用語「O1-180遺伝子産物」、「O1-184遺伝子産物」および「O1-236遺伝子産物」はまた、それらの本来の相当物と同じような生物学的活性を少なくともいくらか示すそれぞれの分子の類似体をも含む。そのような類似体には、端を切り取った(短小化した)ポリペプチドおよび元のポリペプチドよりアミノ酸の数が少ないポリペプチドがあるが、それらに限定されることはない。
本発明は、完全なO1-180、O1-184またはO1-236分子だけでなく、後述する機能を保っていても保っていなくてもよい、それらポリペプチドの断片にも関係する。分子のN末端を含む断片は、遺伝子操作でコード領域内に翻訳停止部位を作ることによって作製することができる。あるいは、O1-180、O1-184またはO1-236を、プロテアーゼと呼ばれるタンパク質分解酵素で処理することによって、さまざまなN末端断片、C末端断片および内部断片を製造することもできる。タンパク質の断片は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号9、配列番号16、配列番号29、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号39および配列番号42の配列の連続する6個のアミノ酸と同一な連続する6個のアミノ酸またはそれ以上のアミノ酸を含有する任意のペプチドを包含すると理解される。配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号9および配列番号16、配列番号29、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号39および配列番号42の配列のいずれかの、対応する数のアミノ酸と同一な、連続する7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、75、80、85、90、95、100、200個またはそれ以上のアミノ酸を含有する断片も考えられる。断片は抗体の作製に使用することができる。特に有用な断片はO1-180、O1-184またはO1-236のドメインを構成する断片だろう。ドメインは、そのタンパク質の残りの部分がなくても保たれる独立した三次構造を持つタンパク質の一部と定義される。そのような構造は当業者に知られる技術によって見つけることができる。タンパク質をサブチリシン、トリプシン、キモトリプシンなどのプロテアーゼで部分消化した後、ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけてタンパク質断片を分離する。次に、それらの断片をPVDF膜に転写し、マイクロシークエンシングにかけて、それらの断片のN末端のアミノ酸配列を決定することができる。
本明細書で使用する「実質的に純粋」という用語は、他のタンパク質、脂質、糖質、またはO1-180、O1-184およびO1-236に天然に付随している他の物質を実質的に含まないO1-180、O1-184およびO1-236を指す。当業者は標準的なタンパク質精製法を使ってO1-180、O1-184およびO1-236を精製することができる。実質的に純粋なポリペプチドは非還元ポリアクリルアミドゲルで単一の主要バンドを与えるだろう。O1-180、O1-184およびO1-236ポリペプチドの純度はアミノ末端アミノ酸配列分析によって決定することもできる。O1-180、O1-184およびO1-236ポリペプチドには、それらポリペプチドの機能的断片も、それらの活性が残っている限り包含される。O1-180、O1-184およびO1-236の生物学的活性を持つ、さらに小さいペプチドも本発明において使用される。
A.変異体
O1-180、O1-236および/またはO1-184ポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、置換変異体、挿入変異体または欠失変異体であり得る。欠失変異体は、機能または免疫原活性に必要でない一以上の本来のタンパク質の残基が欠けているものである。挿入変異体は、典型的に、ポリペプチド中の末端でない箇所に材料の付加を伴うものである。これは、免疫反応性のエピトープの挿入、あるいは、単なる一残基の挿入を含み得る。末端付加(融合タンパク質と呼ばれる)は、後に解説する。
本発明のポリペプチドには、本明細書に開示する配列およびその保存的変異体が包含される。本明細書で使用する「保存的変異」という用語は、あるアミノ残基の、生物学的に類似する別の残基による置換を意味する。保存的変異の例には、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなどの疎水性残基の1つによる別の疎水性残基の置換、または極性残基の1つによる別の極性残基の置換、例えばアルギニンによるリジンの置換、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置換、またはグルタミンよるアスパラギンの置換などがある。「保存的変異」という用語は、置換ポリペプチドに対して産生させた抗体が無置換ポリペプチドとも免疫反応するという条件で、無置換親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を使用することも包含する。
以下の解説は、等価物を作るため、あるいは、さらに改良された第二世代分子を作るため、タンパク質のアミノ酸を変えることに基づくものである。タンパク質構造において、たとえば、抗体の抗原結合領域または基質分子上の結合部位のような構造と相互作用する結合能力を顕著に失わせることなく、たとえば、ある特定のアミノ酸で他のアミノ酸を置換することができる。そのタンパク質の生物学的機能活性を決めるのは、相互作用の能力とタンパク質の性質であるため、タンパク質の配列において、そして、その基礎をなすDNAコード配列において、アミノ酸のある置換を行うことができ、それでもなお、同様の特性を有するタンパク質をもたらすことができる。したがって、本発明者らの意図するところにより、様々な変更を、遺伝子のDNA配列において、その生物学的有用性または活性を顕著に失わせることなく、行うことができる。
そのような変更を行うとき、アミノ酸のハイドロパシック・インデックス(hydropathic index)を考慮することができる。タンパク質上に相互作用の生物学的機能を与える際、アミノ酸のハイドロパシック・インデックスが重要であることは、当該技術において一般的に理解されている(KyteおよびDoolittle、1982)。認められているところによれば、アミノ酸の相対的なハイドロパシック特性(疎水親水特性)は、結果生じるタンパク質の二次構造に寄与し、それは結果的にタンパク質の他の分子(たとえば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を特徴づける。
各アミノ酸は、その疎水性度と電荷特性に基づいて、ハイドロパシック・インデックスを割り当てられてきた(KyteおよびDoolittle、1982)。それらは以下のとおりである。イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、 システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(-0.4)、トレオニン(-0.7)、セリン(-0.8)、トリプトファン(-0.9)、チロシン(-1.3)、プロリン(-1.6)、ヒスチジン(-3.2)、グルタミン酸(-3.5)、グルタミン(-3.5)、アスパラギン酸(-3.5)、アスパラギン(-3.5)、リジン(-3.9)、およびアルギニン(-4.5)。
当該技術において知られているとおり、あるアミノ酸を、それに近いハイドロパシック・インデックスまたはスコアを有する他のアミノ酸で置換することができ、それにより、類似の生物学的活性をなお有するタンパク質、すなわち、生物学的機能においてなお等価なタンパク質を得ることができる。そのような変更を行うに際し、ハイドロパシック・インデックスが、±2以内にあるアミノ酸同士の置換が好ましく、±1以内にあるアミノ酸同士の置換が特に好ましく、±0.5以内にあるアミノ酸同士の置換がより特に好ましい。
また当該技術において明らかなとおり、類似アミノ酸同士の置換は、親水性度に基づいて効果的に行うこともできる。米国特許第4,554,101号(この引用により本明細書中にその内容が記載されたものとする)の記載によれば、タンパク質の最も大きな局所的平均親水性度(その付近のアミノ酸の親水性度に左右される)は、そのタンパク質の生物学的特性と相関する。米国特許第4,554,101号に詳しく記載されるとおり、次の親水性度の値が、アミノ酸残基に割り当てられてきた。アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アルパラギン酸(+3.0 ± 1)、グルタミン酸(+3.0 ± 1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、トレオニン(-0.4)、プロリン(-0.5 ± 1)、アラニン(-0.5)、ヒスチジン(-0.5)、システイン(-1.0)、メチオニン(-1.3)、バリン(-1.5)、ロイシン(-1.8)、イソロイシン(-1.8)、チロシン(-2.3)、フェニルアラニン(-2.5)、トリプトファン(-3.4)。
明らかなとおり、アミノ酸を親水性度の値の近い別のアミノ酸と置換することができ、それでもなお、生物学的に等価で免疫学的に等価なタンパク質を得ることができる。そのような変更において、親水性度の値が、±2以内にあるアミノ酸同士の置換が好ましく、±1以内にあるアミノ酸同士の置換が特に好ましく、±0.5以内にあるアミノ酸同士の置換がより特に好ましい。
概説したとおり、アミノ酸の置換は、一般に、アミノ酸の側鎖置換基の相対的類似性、たとえば、それらの疎水性度、親水性度、電荷、サイズなどに基づいている。上記特性のいくつかを考慮した置換の典型例は、当業者によく知られており、たとえば、アルギニンとリジン、グルタミン酸とアスパラギン酸、セリンとトレオニン、グルタミンとアスパラギン、バリンとロイシンとイソロイシンがある。
B.ドメインスイッチング
おもしろい一連の突然変異体を、種々のタンパク質の相同領域を置換することによって作ることができる。これは、ある特定の状況において、「ドメインスイッチング」として知られている。
ドメインスイッチングは、異なるが、しかしこの場合、関連するポリペプチドを用いたキメラ分子の生成を必要とする。種々のO1-180、O1-236および/またはO1-184タンパク質またはポリペプチドを比較することにより、これら分子の機能的に重要な領域について予測することができる。そして、これらの分子の関連するドメイン類を交換して、それら領域のO1-180、O1-236および/またはO1-184機能に対する重要性を決定しようとすることが可能である。これらの分子は、これらが本来の分子と異なるキメラである点で、付加価値を有し得る一方、同じ機能をもたらし得る。
C.融合タンパク質
挿入変異体に特有のものは、融合タンパク質である。この分子は、通常、元の分子のすべてまたは実質的な部分を有し、それは、N末端またはC末端において、第二のポリペプチドのすべてまたは一部に結合されている。たとえば、本発明の融合タンパク質は、付加されたタンパク質形質導入ドメイン(たとえば、アンテナペディア(Antennapedia)形質導入ドメイン(ANTP)、HSV1(VP22)およびHIV-1(Tat)があるが、これらに限定されることはない)を含むことができる。タンパク質形質導入ドメイン(PTD)を含む融合タンパク質は、生物膜を効率よく横断することができ、したがって、関心のあるタンパク質(O1-180、O1-236および/またはO1-184またはそれらの変異体、たとえば賦活物質または阻害物質)を細胞中に配達できる(Tremblay、2001、Formanら、2003)。
さらに、融合体の接合部またはその近くに開裂部位を含めると、精製後、非本質的なポリペプチドの除去を容易にすることができる。その他の有用な融合には、機能的ドメインの結合、たとえば、酵素からの活性部位の結合、グリコシル化ドメインの結合、その他の細胞ターゲッティングシグナルの結合、またはトランスメンブラン(膜貫通)領域の結合がある。
D.合成ペプチド
本発明はまた、本発明の様々な態様において使用するためのより小さなO1-180、O1-236および/またはO1-184関連ペプチドを提供する。それらが相対的に小さなサイズであるため、本発明のペプチド類は、常法に従って、溶液中または固相支持体上で合成することもできる。種々の自動合成機が、市販されており、公知のプロトコルに従って用いることができる。たとえば、StewartおよびYoung(1984)、Tamら(1983)、Merrifield(1986)、およびBaranyおよびMerrifield (1979)を参照(この引用により、これらの内容は本明細書に記載されたものとする)。短いペプチド配列類、または部分的に重なるペプチド類のライブラリー(通常、約6から最高約35〜50アミノ酸のペプチドで、ここに記載する選択された領域に相当するもの)を、容易に合成することができ、次いで、反応性ペプチドを識別するために設計されたスクリーニングアッセイにおいて、スクリーニングすることができる。その代わりに組換えDNA技術を採用することができ、ここでは、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現ベクターに挿入し、適当な宿主細胞について形質転換または形質移入し、そして、発現に適する条件下で培養する。
E.抗原構成物
本発明はまた、抗体の生産に関係する動物の免疫化のため、O1-180、O1-236および/またはO1-184タンパク質またはポリペプチドを抗原として使用する用途を提供する。異なるモノクローナル抗体類とともに、異なるエピトープ特異性を有するプールされたモノクローナル抗体類から本質的になる抗体類が、提供される。モノクローナル抗体は、タンパク質の断片を含む抗原から、当業者によく知られた方法によって、作られる(Kohlerら, Nature, 256:495, 1975)。本発明で使用する抗体という用語の意味するところは、無傷の分子を含むほか、その断片、たとえば、FabおよびF(ab')2で、O1-180、O1-184またはO1-236上のエピトープ決定基に結合することが可能なものも含む。
O1-180、O1-236および/またはO1-184タンパク質、ポリペプチドまたはそれらの部分を、リンカー、ポリリンカーまたは誘導体化アミノ酸を介して、一以上の薬剤または因子に、連結、結合、接合、抱合、または化学結合させることが考えられる。このことは、二重特異的なまたは多価の組成物またはワクチンを生成させるように、行うことができる。また、それらの組成物の調製に使用される方法は、当業者によく知られており、動物への投与に適している、すなわち、製薬的に許容されることがわかる。好ましい薬剤または担体は、キーホールリンペットヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)(KLH)またはウシ血清アルブミン(BSA)である。
1.抗体の生産
ある態様において、本発明は、ここに提供されるO1-180、O1-236および/またはO1-184ポリペプチドに高い特異性で結合する抗体を提供する。したがって、O1-180(配列番号2、配列番号16、配列番号29、配列番号32、配列番号34、配列番号36、および配列番号39)、O1-184(配列番号4)、O1-236(配列番号6、配列番号9および配列番号42)のポリペプチドに結合する抗体が提供される。完全長のタンパク質に対して生成される抗体に加えて、エピトープのコア領域、たとえば、野生型のエピトープおよび突然変異エピトープ、からなるより小さい構造物に対しても、抗体を生成させることができる。
モノクローナル抗体(MAb)は、たとえば、再現性および大規模生産について、所定の利点を有することが認められ、その使用は一般に好ましい。したがって、本発明は、ヒト、ネズミ、サル、ラット、ハムスター、ウサギ、さらにはニワトリ起源のモノクローナル抗体を提供する。調製の容易さおよび試薬入手の容易さから、ネズミモノクローナル抗体がしばしば好ましい。しかし、ヒト化の抗体もまた意図され、同様に、マウス、ラットまたは他の種からのキメラ抗体でヒトの定常領域および/または可変部ドメインを有するもの、二重特異性抗体、組換えおよび遺伝子操作抗体およびそれらの断片も意図される。
本発明による免疫原性O1-180、O1-236および/またはO1-184組成物で動物を免疫し、そして、免疫した動物から抗血清を採集することにより、ポリクローナル抗体が調製される。
抗血清の生産には広範囲にわたる種の動物を用いることができる。抗血清の生産に使用される動物は、典型的に、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、またはヤギである。ウサギは相対的に血液の容量が大きいため、ポリクローナル抗体の生産には、ウサギを選択することが好ましい。
当該技術においてよく知られているように、所定の組成物の免疫原性にはばらつきがあり得る。したがって、しばしば、宿主免疫系をブーストする必要があり、それは、ペプチドまたはポリペプチドの免疫原を担体に結合させることにより行うことができる。具体的な好ましい担体は、キーホールリンペットヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)(KLH)およびウシ血清アルブミン(BSA)である。他のアルブミン、たとえば、卵アルブミン、マウス血清アルブミンまたはウサギ血清アルブミンを担体として使用してもよい。ポリペプチドを担体タンパク質に接合させる手段は、当該技術においてよく知られており、グルタルアルデヒド、m−マレイミドベンゾイル−N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、カルボジイミド、およびビス−ビアゾ化(biazotized)ベンジジンを含む。
当該技術においてよく知られているとおり、特定の免疫原組成物の免疫原性は、アジュバントとして知られる免疫応答の非特異的刺激物質の使用により増強することができる。適当なアジュバントには、サイトカイン類、トキシン類、または合成構成物などのあらゆる可能な免疫刺激性化合物が含まれる。
ポリクローナル抗体の生産に使用される免疫原組成物の量は、免疫化に使用される動物とともに、免疫原の性質によってかわってくる。種々の経路を、免疫原の投与に使用することができる(皮下、筋肉内、皮内、静脈内、および腹腔内)。ポリクローナル抗体の生産は、免疫処置後、種々の時点で免疫した動物の血液をサンプリングすることによりモニターすることができる。
第二のブースター(追加免疫)注射を行ってもよい。追加免疫および力価測定のプロセスを、適当な力価が得られるまで繰り返す。必要なレベルの免疫原性が得られたとき、免疫した動物から採血することができ、血清を分離し、貯蔵することができ、および/または動物をMAbを生成させるため用いることができる。
ウサギポリクローナル抗体の生産のため、該動物から、耳静脈を介して、あるいは心臓穿刺により、採血することができる。取り出した血液を、凝固させ、次いで遠心分離して、全細胞または血塊から血清成分を分離する。血清は、そのまま種々の用途に用いてもよいし、その代わりに、よく知られた方法、たとえば、固体マトリクスに結合された他の抗体やペプチドを用いるアフィニティクロマトグラフィーによって、あるいは、たとえばプロテインAまたはプロテインGクロマトグラフィーを用いることによって、必要な抗体のフラクションを精製してもよい。
たとえば米国特許第4,196,265号(この引用によりその内容は本明細書に記載されたものとする)に具体的にあげられているよく知られた手法を用いて、MAbを容易に調製することができる。典型的に、この手法は、野生型の構成物であれ、変異体の構成物であれ、選択された免疫原構成物、たとえば、精製されたまたは部分的に精製されたO1-180、O1-236および/またはO1-184タンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたはドメインで、適当な動物を免疫することを含む。免疫化構成物は、抗体生産細胞を刺激するのに有効な態様で、投与される。
上述したように、一般的には、動物に抗原を注射する。必要であれば、キーホールリンペットヘモシアニンのような担体分子に抗原を結合してもよい。抗原は、典型的に、アジュバント、たとえば、フロイント完全または不完全アジュバントと混合される。同じ抗原を用いる追加免疫注射は、約2週間おきに行うことができる。
免疫化の後、抗体、特にBリンパ球(B細胞)を生産する可能性のある体細胞を、MAb生成プロトコルに使用するため選択する。これらの細胞は、生検された脾臓、扁桃またはリンパ節から、あるいは、末梢血サンプルから得ることができる。脾臓細胞および末梢血細胞が好ましい。というのも、前者は、分裂する形質芽球の段階にある抗体生産細胞の豊富な源であり、後者は、末梢血が用意に採取できるからである。
しばしば、一群の動物が免疫され、抗体力価が最も高い動物の脾臓が取り出され、脾臓をシリンジでホモジナイズすることにより脾臓リンパ球が得られる。典型的に、免疫されたマウスからの脾臓は、約5×107〜2×108のリンパ球を含む。
次いで、免疫された動物からの抗体生産Bリンパ球は、不死化ミエローマ細胞(通常、免疫された動物と同じ種の一つ)と融合される。ハイブリドーマ生産融合法での使用に適するミエローマ細胞株は、好ましくは、抗体非生産性であり、高い融合効率を有し、および所定の選択培地で成長できなくなる酵素欠損(それは、必要な融合細胞(ハイブリドーマ)のみの成長を支える)を有するものである。
等業者に知られているとおり、多くのミエローマ細胞の中から任意のものを用いることができる(Goding, pp.65-66, 1986; Campbell, 1984)。たとえば、免疫される動物がマウスである場合、P3-X63/Ag8、X63-Ag8.653、NSl/l.Ag 4 1、Sp210-Agl4、FO、NSO/U、MPC-ll、MPCll-X45-GTG 1.7およびS194/5XX0 Bulを用いることができ、ラットの場合、R210.RCY3、Y3-Ag 1.2.3、IR983Fおよび4B210を用いることができ、そして、U-266、GM1500-GRG2、LICR-LON-HMy2およびUC729-6は、ヒト細胞融合に関してすべて有用である。
一つの好ましいネズミミエローマ細胞は、NS-1ミエローマ細胞株(P3-NS-1-Ag4-1とも呼ばれる)であり、それは、細胞株保管番号GM3573を請求することにより、NIGMS Human Genetic Mutant Cell Repositoryから容易に入手できる。他の使用できるマウスミエローマ細胞株は、8-アザグアニン耐性マウスのネズミミエローマSP2/0非プロデューサー細胞株である。
抗体生産性の脾臓細胞またはリンパ節細胞とミエローマ細胞とのハイブリッドを生成させるための方法は、通常、体細胞とミエローマ細胞とを2:1の割合で混合することを含む。しかし、この割合は、細胞膜の融合を促進する一以上の作用因子(化学物質または電気的因子)の存在下、約20:1から約1:1まで変わり得る。センダイウイルスを用いる融合方法は、KohlerおよびMilstein (1975; 1976)によって報告されており、また、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、37%(v/v)PEG)を用いるものはGefterら(1977)により報告されている。電気的に誘発させる融合方法の使用もまた適当である(Goding pp.71-74, 1986)。
融合法は、通常、生存能力のあるハイブリッドを、低い頻度、約1×10-6〜1×10-8で生産する。しかし、このことは、問題とならない。というのも、生存能力のある融合されたハイブリッドは、親の融合されていない細胞(特に、通常、いつまでも分裂を続ける融合されていないミエローマ細胞)と、選択培地での培養により、区別されるからである。選択培地は、一般に、組織培養培地においてヌクレオチドのデノボ(新規)合成を遮断する薬剤を含むものである。具体的な好ましい薬剤は、アミノプテリン、メトトレキセート、およびアザセリンである。アミノプテリンおよびメトトレキセートは、プリンとピリミジンの両方のデノボ合成を遮断する一方、アザセリンは、プリン合成のみを遮断する。アミノプテリンまたはメトトレキセートを使用する場合、ヌクレオチド源としてヒポキサンチンおよびチミジンで培地を補足する(HAT培地)。アザセリンを使用する場合、ヒポキサンチンで培地を補足する。
好ましい選択培地はHATである。ヌクレオチドサルベージ(再利用)経路を作用させることができる細胞のみが、HAT培地において生き延びることができる。ミエローマ細胞は、このサルベージ経路の鍵酵素、たとえば、ヒポキサンチン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(HPRT)を欠くため、生き延びることができない。B細胞は、この経路を作用させることができるが、培養において寿命が限られており、一般に約2週間以内に死ぬ。したがって、選択培地で生き延びることのできる唯一の細胞は、ミエローマ細胞とB細胞から形成されるハイブリッドである。
この培養により、ハイブリドーマの個体群が得られ、それから、特定のハイブリドーマを選択する。典型的に、ハイブリドーマの選択は、マイクロタイタープレートでの単一クローン希釈によって、細胞を培養し、次いで、個々のクローンの上清(約2〜3週間後)を必要な反応性について試験することにより、行われる。このアッセイは、感度がよく、簡単で迅速であるべきであり、たとえば、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、細胞毒性アッセイ、プラークアッセイ、ドット免疫結合アッセイ(dot immnobinding assay)などがある。
次いで、選択されたハイブリドーマを連続希釈し、個々の抗体生産細胞株にクローン化することができる。次いで、MAbを得るため、そのクローンを無期限に増殖させることができる。MAb生産のため、二つの基本的な方法において、細胞株を活用することができる。第一に、元の融合のため体細胞およびミエローマ細胞を提供するのに用いた種類の組織適合動物(例えば、同系マウス)に、ハイブリドーマのサンプルを(しばしば腹腔内に)注射することができる。必要に応じて、注射に先立ち、炭化水素、特にプリスタン(テトラメチルペンタデカン)のようなオイルで動物を刺激する。注射された動物は、融合細胞ハイブリッドによって生産される特異的モノクローナル抗体を分泌する腫瘍を発生させる。次いで、高濃度のMAbを得るため、該動物の体液、たとえば、血清または腹水液を採取することができる。第二に、個々の細胞株をインビトロで培養することができ、ここでは、MAbが培養培地に自然に分泌され、そこから、MAbを高濃度で容易に得ることができる。
いずれの方法で生成させたMAbも、必要であれば、ろ過、遠心分離、および、HPLCのような種々のクロマトグラフィー法またはアフィニティクロマトグラフィーを用いて、さらに精製することができる。本発明のモノクローナル抗体の断片は、酵素(例えばペプシンまたはパパイン)による消化を含む方法により、および/または化学的還元によるジスルフィド結合の開裂により、生成したモノクローナル抗体から得ることができる。その代わりに、本発明に含まれるモノクローナル抗体の断片は、自動化されたペプチド合成機を用いて合成することもできる。
さらに意図するところによれば、分子クローニング法を用いてモノクローナル物を生成させてもよい。このため、コンビナトリアル免疫グロブリンファージミドライブラリーを、免疫した動物の脾臓から分離したRNAより調製し、そして、適当な抗体を発現するファージミドを、抗原を発現する細胞およびコントロール細胞を用いるパンニング(選別)法により選択する。通常のハイブリドーマ法に対するこの方法の利点は、一回で約104倍多い抗体を生産しスクリーニングできることと、H鎖とL鎖の組み合わせにより、新たな特異性が生成されること(それは、さらに適当な抗体を見出す可能性を増やす)である。
一方、本発明に包含されるモノクローナル抗体の断片を、自動化されたペプチド合成機を用いて合成することができ、あるいは、大腸菌において、完全長の遺伝子または遺伝子の断片を発現させることにより合成することができる。
2.抗体接合体
本発明はさらに、一般にモノクローナル型のO1-180、O1-236および/またはO1-184に対する抗体であって、一以上の他の薬剤または作用因子に結合されて抗体接合体を形成するものを提供する。十分な選択性、特異性および親和性を有する任意の抗体を、抗体接合体用の基材として用いることができる。そのような特性は、当業者に知られた通常の免疫学的スクリーニング法を用いて評価することができる。
抗体接合体の具体例は、抗体が検出可能な標識(ラベル)に結合されたものである。「検出可能な標識」は、その特有の機能的特性または化学的特性により検出することができる化合物または要素(成分)であり、その使用により、それが付いた抗体を検出することが可能になり、さらに必要であれば定量することが可能になるものである。他の具体例は、細胞障害性(毒性)因子または抗細胞因子に結合された抗体からなる接合体の形成である。そのような因子は、「免疫毒素(イムノトキシン)」と呼ぶことができる(米国特許第5,686,072、5,578,706、4,792,447、5,045,451、4,664,911および5,767,072号に記載され、この引用により、それぞれの内容は本明細書に記載されたものとする)。
かくして、抗体接合体は、診断薬としての使用のため好ましい。抗体診断薬は、一般に二種類に分けられる。すなわち、インビトロ診断薬用のもの、たとえば種々のイムノアッセイに使用されるもの、そして、インビボ診断のプロトコル(一般に抗体特異的イメージング(画像診断)(antibody-directed imaging)として知られる)用のものである。多くの適当なイメージング剤(画像診断薬)が当該技術において知られており、それを抗体に取り付けるための方法も同様である(例えば、米国特許第5,021,236および4,472,509号を参照、この引用により、両者の内容は本明細書に記載されたものとする)。所定の取り付け方法は、たとえば、抗体に取り付けられるDTPA(米国特許第4,472,509号)のような有機キレート剤を用いる金属キレート複合体の使用を伴う。モノクローナル抗体はまた、およびカップリング剤、たとえばグルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸の存在下、酵素と反応させてもよい。フルオレセインを有する接合体は、これらのおよびカップリング剤の存在下、またはイソチオシアネートとの反応により、調製される。
治療用途および/または診断用途のための放射性同位体には、211アスタチン、14炭素、51クロム、36塩素、57コバルト、58コバルト、67銅、152Eu、67ガリウム、3水素、123ヨウ素、125ヨウ素、131ヨウ素、111インジウム、59鉄、32リン、186レニウム、188レニウム、75セレン、35硫黄、および99mテクネシウムがある。125Iは所定の態様においてしばしば好ましく用いられるものである。99mテクネシウムおよび111インジウムもまた、その低いエネルギーと長期検出に対する適性のため、しばしば、好ましいものである。
組換えO1-180、O1-184およびO1-236一次アミノ酸配列の軽微な改変は、本明細書に記載の各O1-180、O1-184およびO1-236ポリペプチドと比較して、実質的に等価な活性を持つタンパク質をもたらしうる。そのような改変は部位特異的突然変異誘発による場合のように意図的であってもよいし、自然発生的であってもよい。これらの改変によって生成するポリペプチドはすべて、O1-180、O1-184またはO1-236の生物学的活性がまだ存在する限り、本発明に包含される。さらに、1個または複数個のアミノ酸の欠失も、その生物学的活性を有意に変化させずに、結果として生じる分子の構造の改変をもたらすことができる。これは、より広い用途を持つであろうさらに小さい活性分子の開発につながりうる。例えばO1-180、O1-184またはO1-236の生物学的活性には必要とされないかもしれないアミノ末端またはカルボキシ末端アミノ酸を除去することができるだろう。
「誘導体」という用語は、本発明では、対象化合物を修飾することによって製造され、誘導体化された化合物の活性を破壊しない、通常の専門家の技術で製造し使用することができる任意の分子を意味するものとする。誘導体化された化合物の活性を減少させるが破壊はしない上記の基準に合致する化合物は、「誘導体」という用語の範囲に含まれるとみなす。したがって本発明では、O1-180、O1-184またはO1-236の配列と一致する配列のアミノ酸を含む化合物の誘導体は、それが測定可能な量のO1-180、O1-184またはO1-236の活性を保っている限り、O1-180、O1-184またはO1-236の配列と正確に一致するアミノ酸の配列を含む必要はない。
同様に、対抗性(例えば拮抗性)を持つタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを作製する場合も、同じように考えることができる。このことと、O1-180、O1-184またはO1-236突然変異体または類似体の作製が行われうる本発明との間には、関連がある。例えばO1-180、O1-184またはO1-236突然変異体を作製し、O1-180、O1-184またはO1-236活性について試験して、O1-180、O1-184またはO1-236活性にとって重要な残基を同定することができる。ヒト集団に存在し、癌の発生に関連づけられるO1-180、O1-184またはO1-236突然変異体を再現するために、O1-180、O1-184またはO1-236突然変異体を合成することもできる。また、妊性を抑制または強化するために、O1-180、O1-184またはO1-236突然変異体をアンタゴニストとして使用することもできる。したがってO1-180、O1-184またはO1-236突然変異体は、避妊組成物候補および/または妊性強化組成物候補として使用することができる。
II.核酸
用語「O1-180遺伝子」、「O1-180ポリヌクレオチド」または「O1-180核酸」は、上記において定義したO1-180遺伝子産物をコードするDNA配列に実質的に同一の任意のDNA配列を指す。O1-184および/またはO1-236について同様の用語も、本発明の技術的範囲内である。また、当該用語は、そのようなDNA配列と互換性のあるRNAまたはアンチセンス配列も指す。「O1-180、O1-184もしくはO1-236遺伝子またはO1-180、O1-184もしくはO1-236ポリヌクレオチド」は、結合する制御配列の任意の組み合わせを含んでもよい。
したがって、O1-180、O1-184および/またはO1-236をコードする核酸構成物がここに提供され、それは、利用可能なデータベースで当業者に利用可能である。そのようなデータベースには、National Center for Biotechnology Information's GenBankデータベースおよび/または市販のデータベース(たとえば、Celera Genomics, Inc. (Rockville、メリーランド州)から入手できるもの)がある。さらに含まれるものには、利用可能ならば、たんぱく質の異なる形態をコードするスプライスバリアントがある。核酸配列は、天然のものでも、合成のものでもよい。
本明細書で使用する用語「O1-180、O1-184および/またはO1-236核酸配列」、「O1-180、O1-184および/またはO1-236ポリヌクレオチド」および「O1-180、O1-184および/またはO1-236遺伝子」は、ここに提供される核酸、その相同体、および実質的な類似性および機能を有する配列をそれぞれ指す。配列が以下の機能の一つ、卵母細胞の成熟を制御する産物をコードするならば、その配列は本発明の技術的範囲内であることは、当業者の認めるところであり、また、当該技術において標準であるように、そのような配列を得る方法は、当業者に知られていることである。
本発明の特定のポリヌクレオチド類は、O1-180(配列番号1、配列番号11、配列番号13、配列番号12、配列番号28(受託番号AY191415)、配列番号30(受託番号AY191416)、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号40(受託番号AY193889)、および配列番号41(受託番号AY193890))、O1-184(配列番号3)、またはO1-236(配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号14、および配列番号43)タンパク質およびそれらの断片および誘導体をコードする配列を含む。それらのポリヌクレオチドは、O1-180、O1-184またはO1-236をコードするDNA、cDNAおよびRNA配列を含む。当然のことながら、O1-180(配列番号1、配列番号11、配列番号13、配列番号12、配列番号28、配列番号30、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号40、および配列番号41)、O1-184(配列番号3)、またはO1-236(配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号14、および配列番号43)の活性を有するポリペプチドをコードするかぎり、O1-180、O1-184および/またはO1-236の全体または一部をコードするすべてのポリヌクレオチドもまた、ここに含まれる。そのようなポリヌクレオチドは、天然のポリヌクレオチド、合成ポリヌクレオチド、および意図的に操作されたポリヌクレオチドを含む。例えば、O1-180(配列番号1、配列番号11、配列番号13、配列番号12、配列番号28、配列番号30、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号40、および配列番号41)、O1-184(配列番号3)、またはO1-236(配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号14、および配列番号43)のポリヌクレオチドを、部位特異的突然変異誘発に供することができる。O1-180、O1-184およびO1-236に対するポリヌクレオチド配列はまた、アンチセンス配列も含む。本発明のポリヌクレオチドは、遺伝子コードの結果として縮重している配列を含む。20の天然アミノ酸があるが、それらのほとんどが、一より多いコドンによって特定される。したがって、ヌクレオチド配列によってコードされるO1-180、O1-184およびO1-236ポリペプチドのアミノ酸配列が機能的に変化していないかぎり、すべての縮重ヌクレオチド配列は、本発明に含まれる。
用語「実質的に同一(実質的に一致する)」および/または「相同(の)」は、O1-180、O1-184および/またはO1-236アミノ酸配列、またはO1-180、O1-184および/またはO1-236ポリヌクレオチド配列のいずれかを定義するのに用いるとき、特定の対象とする配列、たとえば、(突然)変異配列が、本来のO1-180、O1-184および/またはO1-236からそれぞれ、一以上の置換、欠失または付加によって変化しているが、その正味の効果は、O1-180、O1-184および/またはO1-236タンパク質の生物学的活性を少なくともいくらかそれぞれ保持していることを意味する。一方、DNA類似体配列は、以下の(a)、(b)または(c)ならば、ここに開示される特定のDNA配列と「実質的に同一」および/または「相同」である。(a)DNA類似体配列が、本来のO1-180、O1-184および/またはO1-236遺伝子のコード領域に由来するものである。(b)DNA類似体配列が、生物学的に活性なO1-180、O1-184および/またはO1-236をそれぞれコードする(a)のDNA配列と中程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションすることが可能である。(c)遺伝子コードの結果として(a)または(b)で規定したDNA類似体配列に対し縮重しているDNA配列。実質的に同一の類似体タンパク質は、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%より多く、約100%まで、あるいは、そこから導き出せる任意の範囲で、本来のタンパク質の相当する配列に類似する。類似度がより低い一方で同等の生物学的活性を有する配列は、等価物とみなされる。ポリヌクレオチドの配列を決定するとき、実質的に類似するアミノ酸配列をコードすることが可能な対象ポリヌクレオチド配列はすべて、コドン配列に違いがあるとしても、対照ポリヌクレオチド配列に実質的に類似するとみなされる。
A.相補的核酸
また、本発明は、O1-180、O1-184および/またはO1-236核酸に相補的な核酸を包含する。特定の態様において、本発明は、配列番号で示される配列:O1-180(配列番号1、配列番号11、配列番号13、配列番号12、配列番号28、配列番号30、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号40、および配列番号41)、O1-184(配列番号3)、またはO1-236(配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号14、配列番号43)に相補的な核酸または核酸セグメントを包含する。ある核酸が、標準ワトソン−クリック、フーグスティーンまたは逆フーグスティーン結合相補性則に従って、他の核酸と塩基対合することが可能であるとき、その核酸は、他の核酸に対し、「相補物」であるかまたは「相補的」である。本明細書で使用する用語「他の核酸」は、別の核酸または同じ分子の空間的に離れた核酸を指し得る。
本明細書で使用する用語「相補的」または「相補物」は、たとえ、決してすべての核酸塩基が対応する核酸塩基と対合するわけではない場合でも、他の核酸の鎖または二重鎖とハイブリダイズすることができる連続的な核酸塩基または半連続的な核酸塩基(例えば、一以上の核酸塩基部分が該分子に存在しない)の配列からなる核酸を指していう。ある特定の態様において、「相補的」核酸は、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%の、約100%までの、あるいは、そこから導き出せる任意の範囲の、核酸塩基配列が、ハイブリダイゼーションにおいて、一本鎖または二本鎖の核酸分子に塩基対合することが可能な核酸塩基配列からなる。ある特定の態様において、用語「相補的」は、当業者に明らかなように、ストリンジェントな条件において、他の核酸の鎖または二重鎖にハイブリダイズできる核酸を指していう。
ある特定の態様において、「部分的に相補的な」核酸は、低いストリンジェンシーの条件において一本鎖または二本鎖の核酸とハイブリダイズできる配列からなるか、あるいは、約70%未満の核酸塩基配列が、ハイブリダイゼーションにおいて、一本鎖または二本鎖の核酸分子に塩基対合することができる核酸塩基配列を含む。
B.核酸のハイブリダイゼーション
本明細書で使用する用語「ハイブリダイゼーション」、「ハイブリダイズ」または「ハイブリダイズすることが可能な(ハイブリダイズすることができる)」は、二本鎖または三本鎖分子を形成すること、または、部分的な二本鎖または三本鎖の性質を有する分子を形成することを意味すると解される。
用語「ハイブリダイゼーション」、「ハイブリダイズ」または「ハイブリダイズすることが可能な(ハイブリダイズすることができる)」は、用語「ストリンジェントな条件」または「高いストリンジェンシー」および用語「低いストリンジェンシー」または「低いストリンジェンシーの条件」または「中程度のストリンジェントな条件」に及ぶ。
本明細書で使用する用語「ストリンジェントな条件」または「高いストリンジェンシー」は、相補的配列を含む一以上の核酸鎖間または核酸鎖内のハイブリダイゼーションを可能にする(しかし、ランダム配列のハイブリダイゼーションを排除する)条件である。ストリンジェントな条件は、もしあっても、核酸と目的とする鎖との間のミスマッチをほとんど許容しない。そのような条件は、当業者によく知られており、高い選択性を必要とする用途に好ましい。非限定的な用途には、核酸、たとえば、遺伝子またはその核酸セグメントの単離、または、少なくとも一つの特定のmRNA転写産物またはその核酸セグメントの検出などがある。
ストリンジェントな条件は、低塩および/または高温の条件、たとえば、約0.02M〜約0.15MのNaClによって約50℃〜約70℃の温度で与えられるような条件を含み得る。明らかなとおり、必要なストリンジェンシーの温度およびイオン強度は、一部、特定の一以上の核酸の長さ、目的とする配列の長さおよび核酸塩基含量、該核酸の電荷構成によって決まり、また、ハイブリダイゼーション混合物におけるホルムアミド、塩化テトラメチルアンモニウムまたはその他の一以上の溶媒の存在または濃度に対して決まってくる。
さらに明らかなとおり、ハイブリダイゼーションのためのこれらの範囲、組成および条件は、単に非限定的な例として述べるものであり、そして、特定のハイブリダイゼーション反応に必要なストリンジェンシーは、しばしば、一以上の陽性または陰性の対照との比較による経験に基づいて決定される。想定される用途に応じて、種々のハイブリダイゼーション条件を用い、目的とする配列に対し核酸の選択性の程度をいろいろ変えることが好ましい。非限定的な例において、ストリンジェントな条件下である核酸にハイブリダイズしない関係のあるターゲット核酸の同定および分離は、低い温度および/または高いイオン強度でのハイブリダイゼーションによって達成し得る。例えば、中程度または中位のストリンジェンシー条件は、約0.1〜0.25MのNaClにより約37℃〜約55℃の温度でもたらすことができる。これらの条件下では、プローブおよび目的とする鎖の配列が完全には相補的でなく、一以上の箇所でミスマッチが生じても、ハイブリダイゼーションが起こり得る。他の例では、低いストリンジェンシー条件は、約0.15M〜約0.9Mの塩により約20℃〜約55℃の範囲の温度でもたらすことができる。もちろん、特定の用途に合うよう、上記低いまたは高いストリンジェンシー条件をさらに改変することは、当業者の能力の範囲内のことである。たとえば、他の態様において、ハイブリダイゼーションは、50mMのトリス-HCl(pH 8.3)、75mMのKC1、3mMのMgCl2、1.0mMのジチオトレイトール、約20℃〜約37℃の温度の条件下で達成することができる。利用される他のハイブリダイゼーション条件は、約10mMのトリス-HCl(pH 8.3)、50mMのKC1、1.5mMのMgCl2、約40℃〜約72℃の範囲の温度を含むことができる。
本発明のDNA配列は、いくつかの方法で取得することができる。例えば、本DNAは当技術分野で周知のハイブリダイゼーション法または増幅法を使って単離することができる。そのような方法には、例えば1)ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーとプローブとのハイブリダイゼーションによる相同ヌクレオチド配列の検出、2)発現ライブラリーの抗体スクリーニングによる、共通する構造上の特徴を持つクローン化DNA断片の検出、または3)これらの配列に関係するオリゴヌクレオチドおよびポリメラーゼ連鎖反応技術の使用などが含まれるが、これらに限るわけではない。
本発明のO1-180、O1-184およびO1-236ポリヌクレオチドは、好ましくは哺乳類生物に由来し、最も好ましくはマウス、ラット、ゾウ、ブタ、ウシまたはヒトに由来する。核酸ハイブリダイゼーションに基づくスクリーニング方法は、適切なプローブを入手できるのであれば、任意の遺伝子配列を任意の生物から単離することを可能にする。問題のタンパク質をコードする配列の一部に対応するオリゴヌクレオチドプローブは、化学的に合成することができる。これにはアミノ酸配列の短いオリゴペプチドストレッチが既知でなければならない。タンパク質をコードするDNA配列は遺伝コードから推定することができるが、コードの縮重を考慮しなければならない。配列が縮重している場合は混合付加反応を行なうことができる。これには変性二本鎖DNAの不均一混合物が含まれる。そのようなスクリーニングには、ハイブリダイゼーションを、好ましくは、一本鎖DNAまたは変性二本鎖DNAで行なう。ハイブリダイゼーションは、目的のポリペプチドに関係するmRNA配列の存在量が極めて低い供給源に由来するcDNAクローンの検出には特に有用である。言い換えると、非特異的結合を回避するためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を使用すれば、例えばオートラジオグラフィーによる特異的cDNAの可視化を、その完全な相補体である混合物中の単一プローブへの標的DNAのハイブリダイゼーションによって行なうことが可能である(Wallaceら、1981)。
O1-180、O1-184およびO1-236をコードする特異的DNA配列の開発は、1)二本鎖DNA配列をゲノムDNAから単離すること、2)目的のポリペプチドに必要なコドンが得られるようにDNA配列を化学的に製造すること、および3)真核生物供与細胞から単離されるmRNAの逆転写による二本鎖DNA配列のインビトロ合成、によって達成することもできる。最後の例では、一般にcDNAと呼ばれるmRNAの二本鎖DNA相補体が最終的に生成する。
組換え法で使用される上記3つの特異的DNA配列開発法のなかでは、ゲノムDNA単離物の単離が最も一般的でない。これは、哺乳類ポリペプチドの微生物発現を達成することが望ましい場合には、イントロンの存在ゆえに、特にそうであるといえる。
DNA配列の合成は、所望のポリペプチド産物のアミノ酸残基の全配列がわかっている場合には、よく選択される方法である。所望のポリペプチドのアミノ酸残基の全配列がわかっていない場合は、DNA配列の直接合成は不可能であり、cDNA配列の合成が選択される方法になる。目的のcDNA配列を単離するための標準的手順には、遺伝子発現レベルが高い供与細胞中の豊富なmRNAの逆転写によって得られるプラスミド型またはファージ型cDNAライブラリーの作製が含まれる。ポリメラーゼ連鎖反応技術と併用すると、希薄な発現産物でさえクローニングすることができる。ポリペプチドのアミノ酸配列のかなりの部分がわかっている場合は、標的cDNA中に存在すると推定される配列を再現した標識一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAプローブ配列の製造物を、一本鎖型に変性させたcDNAのクローン化コピーに対して行なわれるDNA/DNAハイブリダイゼーション法に使用することができる(Jayら、1983)。
lgt11などのcDNA発現ライブラリーは、少なくとも1つのエピトープを持つO1-180、O1-184および/またはO1-236ペプチドについて、O1-180、O1-184および/またはO1-236に特異的な抗体を使って、間接的にスクリーニングすることができる。そのような抗体はポリクローナルまたはモノクローナルであることができ、O1-180、O1-184および/またはO1-236 cDNAの存在を示す発現産物を検出するために使用することができる。
iii.発現ベクター
O1-180、O1-184またはO1-236をコードするDNA配列は、適切な宿主細胞へのDNA導入によってインビトロで発現させることができる。「宿主細胞」は、その中でベクターが増殖することができ、そのDNAが発現される細胞である。この用語には、対象とする宿主細胞のどの子孫も包含される。複製中には突然変異が起こりうるので、確かに、すべての子孫が親細胞と同一なわけではないかもしれない。しかし「宿主細胞」という用語を使用する場合は、そのような子孫も包含される。当技術分野では安定な導入(これは外来DNAが宿主中に継続的に維持されることを意味する)の方法が知られている。
本発明では、O1-180、O1-184および/またはO1-236ポリヌクレオチド配列を組換え発現ベクターに挿入することができる。「組換え発現ベクター」という用語は、O1-180、O1-184またはO1-236遺伝子配列の挿入または組込みによって操作されたプラスミド、ウイルスまたは当技術分野で知られる他の媒体を指す。そのような発現ベクターは、宿主に挿入された遺伝子配列の効率のよい転写を促進するプロモーター配列を含有する。発現ベクターは通例、複製起点、プロモーターならびに形質転換細胞の表現型選択を可能にする特殊な遺伝子を含有する。本発明での使用に適したベクターには、例えば、細菌で発現させるためのT7系発現ベクター(Rosenbergら、1987)、哺乳類細胞で発現させるためのpMSXND発現ベクター(LeeおよびNathans、1988)および昆虫細胞で発現させるためのバキュロウイルス系ベクターなどがあるが、これらに限るわけではない。DNAセグメントは、例えばプロモーター(例:T7、メタロチオネイン1またはポリヘドリンプロモーター)などの調節要素に作動的に結合した状態でベクター中に存在することができる。O1-180、O1-184またはO1-236をコードするポリヌクレオチド配列は、原核生物または真核生物で発現させることができる。宿主には、微生物、酵母、昆虫および哺乳類生物を含めることができる。真核生物配列またはウイルス配列を持つDNA配列を原核生物で発現させる方法は、当技術分野ではよく知られている。当技術分野では、宿主内で発現および複製する能力を持つ生物学的に機能的なウイルスおよびプラスミドDNAベクターが知られている。本発明のDNA配列を組込むには、そのようなベクターが使用される。
A.選択可能なマーカー
本発明の所定の態様において、本発明の発現カセットおよび/または構造物(コンストラクト)は、核酸構造物(核酸コンストラクト)を含み、その構造物の発現は、その発現構造物(発現コンストラクト)にマーカーを含ませることにより、インビトロまたはインビボで確認される。そのようなマーカーは、細胞に確認可能な変化をもたらすことができ、発現構造物を含む細胞の容易な識別を可能にする。通常、薬剤選択マーカーを含ませることは、クローニングおよび形質転換体の選択に役立つ。たとえば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン、およびヒスチジノールに耐性を与える遺伝子は、有用な選択可能なマーカーである。その代わりに、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tK)のような酵素が用いられる。免疫原性のマーカーも用いることができる。採用される選択可能なマーカーは、遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現されることが可能であるかぎり、それほど重要ではないと考えられる。選択可能なマーカーのさらなる例は、当業者によく知られており、レポーター類、たとえば、EGFP、βgal、またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)を含む。
B.制御領域
1.プロモーター
関心のあるポリヌクレオチド配列の発現を制御するのに使用される特定のプロモーターは、目的とする細胞において該ポリヌクレオチドの発現を誘導することができるかぎり、それほど重要でないと考えられる。したがって、ヒト細胞を目的とする場合、ポリヌクレオチド配列のコード領域を、ヒト細胞において発現が可能なプロモーターの近傍でその制御下にあるよう、配置することが好ましい。概して、そのようなプロモーターは、ヒトまたはウイルスのプロモーターのいずれかを含み得る。
種々の態様において、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)最初期遺伝子プロモーター、SV40初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス長末端反復配列、β−アクチン、ラットインシュリンプロモーター、およびグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼを、関心のあるコード配列の高レベル発現を得るのに使用することができる。発現レベルが所定の目的に対し十分であるならば、関心のあるコード配列の発現を達成するため当該技術においてよく知られている他のウイルスプロモーター、哺乳動細胞プロモーターまたは細菌ファージプロモーターの使用も、同様に考えられる。よく知られた特性を有するプロモーターを採用することにより、トランスフェクションまたはトランスフォーメーション後の関心のあるタンパク質の発現レベルおよびパターンを最適化することができる。
特定の生理的シグナルまたは合成シグナルに応答して制御されるプロモーターを選択すれば、遺伝子産物の誘導可能な発現を可能にすることができる。たとえば、一つの導入遺伝子または複数の導入遺伝子(マルチシストロンベクターを用いるとき)の発現が、ベクターを産する細胞に毒性である場合、該導入遺伝子の一以上の発現を妨げるか低減させることが望ましい。プロデューサー細胞株に毒性の導入遺伝子の例は、プロアポトーシス遺伝子およびサイトカイン遺伝子である。いくつかの誘導可能なプロモーター系を、導入遺伝子産物が毒性である場合、ウイルスベクターの生産に利用できる。
エクダイソン系(Invitrogen, Carlsbad, カリホルニア州)は、そのような系の一つである。この系は、哺乳動物細胞において、関心のある遺伝子の制御された発現を可能にするよう設計されている。それは、導入遺伝子の発現基底レベルが実質的にゼロであることを可能にする一方、200倍を越える誘導能が可能である厳密に制御された発現機構からなる。この系は、ショウジョウバエのヘテロ二量体エクダイソン受容体に基づいており、エクダイソンまたはmuristerone Aのような類似体が受容体に結合するとき、該受容体がプロモーターを活性化して下流の導入遺伝子の発現を生じさせ、高レベルのmRNA転写産物がもたらされる。この系において、ヘテロ二量体受容体の両モノマーは、一方のベクターから構造的に発現され、これに対し、関心のある遺伝子の発現を駆動するエクダイソン−応答性プロモーターは、他のプラスミド上にある。関心のある遺伝子導入ベクターへこのタイプの系を組み込むことは、従って有用である。そして、関心のある遺伝子と受容体モノマー類とを含むプラスミド類をプロデューサー細胞株に同時形質移入することは、毒性の可能性のある導入遺伝子の発現なく、遺伝子導入ベクターの生産を可能にし得る。適当な時期に、導入遺伝子の発現をエクダイソンまたはmuristeron Aによって活性化することができる。
有用となり得る他の誘導可能な系は、最初GossenおよびBujard(GossenおよびBujard、1992; Gossenら、1995)により開発されたTet-OffTM(商標)またはTet-OnTM(商標)系(Clontech, Palo Alto, カリホルニア州)である。この系もまた、テトラサイクリンまたはテトラサイクリン誘導体、たとえばドキシサイクリンに応答して、高レベルの遺伝子発現を制御可能にする。Tet-OnTM系において、遺伝子発現は、ドキシサイクリンの存在下で生じる一方、Tet-OffTM(商標)系において、遺伝子発現は、ドキシサイクリンの不在下で生じる。これらの系は、大腸菌のテトラサイクリン耐性オペロンに由来する二つの制御因子に基づいている。テトラサイクリンリプレッサーが結合するテトラサイクリンオペレーター配列、およびテトラサイクリンリプレッサータンパク質。関心のある遺伝子を、プロモーターの後ろでプラスミドにクローン化する。プロモータは、その中に存在するテトラサイクリン−応答性因子を有するものである。第二のプラスミドは、テトラサイクリン制御トランスアクチベーターと呼ばれる制御因子を含み、それは、Tet-OffTM(商標)系において、単純ヘルペスウイルスからのVP16ドメインと野生型テトラサイクリンリプレッサーとから構成される。かくして、ドキシサイクリンの不在下、転写が構造的に生じる。Tet-OnTM(商標)系では、テトラサイクリンリプレッサーは、野生型ではなく、ドキシサイクリンの存在下、転写を活性化する。遺伝子治療ベクター生産のため、Tet-OffTM(商標)系が好ましいであろう。というのも、プロデューサー細胞は、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンの存在下で増殖することができ、そして毒性の可能性のある導入遺伝子の発現を防止することができるからである。一方、ベクターが患者に導入されるとき、遺伝子発現は、構造的に生じ得る。
種々の活性強度を有するウイルスプロモーターを、発現の必要なレベルに応じて利用することができる。哺乳動物細胞において、CMV最初期プロモーターが、強い転写活性化をもたらすべく、しばしば使用される。導入遺伝子の発現レベルを低くしたい場合、効力の低い改変されたCMVプロモーターもまた使用されてきた。細胞において導入遺伝子の発現が必要な場合、レトロウイルスプロモーター、たとえば、MLVまたはMMTVからのLTRがしばしば用いられる。必要な作用に応じて使用される他のウイルスプロモーターには、SV40、RSV LTR、HIV-1およびHIV-2 LTR、アデノウイルスプロモーター、たとえばE1A、E2AまたはMLP領域、AAV LTR、HSV-TK、およびトリ肉腫ウイルスからのものが含まれる。
目的としない組織への可能性のある毒性または望ましくない作用を減らすよう、特定の組織または細胞において転写をもたらすため、同様に、組織特異的プロモーターが用いられる。たとえば、そのようなプロモーターには、卵母細胞特異的プロモーター:Zp3プロモーター(Liraら、1990)、精母細胞特異的プロモーター:PGK2プロモーター(Zhangら、1999)、および精子細胞特異的プロモーター:プロタミン(Protamine)プロモーター(Peschonら、1987)がある。
ある兆候においては、ベクターの投与の後、特定の時期に転写を活性化することが望ましい。これは、ホルモンまたはサイトカインで調節可能なプロモーター等を用いて行われる。使用することができる、サイトカインおよび炎症タンパク質応答性プロモーターには、KおよびTキニノーゲン(Kageyamaら、1987)、c-fos、TNF-アルファ、C-反応性タンパク質(Arconeら、1988)、ハプトグロビン(Olivieroら、1987)、血清アミロイドA2、C/EBPアルファ、IL-1、IL-6(PoliおよびCortese、1989)、補体C3(Wilsonら、1990)、IL-8、アルファ-1酸グリコプロテイン(ProwseおよびBaumann、1988)、alpha-1 antitypsin(抗トリプシン)、リポタンパク質リパーゼ(Zechnerら、1988)、アンギオテンシノーゲン(Ronら、1991)、フィブリノーゲン、c-jun(ホルボールエステル類、TNF−アルファ、UV照射、レチノイン酸、および過酸化水素により誘導可能)、コラゲナーゼ(ホルボールエステル類およびレチノイン酸によって誘導される)、メタロチオネイン(重金属およびグルココルチコイドで誘導可能)、ストロメリシン(ホルボールエステル、インターロイキン-1およびEGFにより誘導可能)、アルファ-2マクログロブリン、およびアルファ-1抗キモトリプシンが含まれる。
必要な作用に応じて、本発明により、上記プロモーターの任意のものを単独で、または他のものと組合わせて、活用することができる。また、上記プロモーターのリストは、すべてを網羅するものあるいは限定的なものとして解釈すべきでなく、ここに開示するプロモーターおよび方法に関連して使用される他のプロモーターは、当業者の知るところである。
2.エンハンサー
エンハンサーは、DNAの同じ分子上で離れた位置にあるプロモーターからの転写を増加させる遺伝子要素である。エンハンサーはプロモーターのように有機的に構成されている。すなわち、エンハンサーは、多くの個々の要素からなり、その各々は、一以上の転写タンパク質に結合する。エンハンサーとプロモーターとの基本的な違いは、操作可能である。エンハンサー領域は、全体として、ある距離をおいて、転写を刺激することが可能になる必要がある。このことは、プロモーター領域またはその構成要素の場合には、必要がない。一方、プロモーターは、RNAの合成の開始を特定の部位で特定の配向に誘導する一以上の要素を有する必要がある。これに対し、エンハンサーは、これらの特異性に欠けている。プロモーターおよびエンハンサーは、しばしば、部分的に重なり、および隣接し、しばしば、非常の類似するモジュールの構成を有するようにみえる。
任意のプロモーター/エンハンサーの組み合わせ(真核プロモーターデータベース(Eukaryotic Promoter Data Base)(EPDB)より)を用いて遺伝子の発現を駆動することができる。もし、適当な細菌ポリメラーゼが、送達(デリバリー)複合体の一部またはさらなる遺伝子発現構造物のいずれかとして与えられるならば、真核細胞は、所定の細菌プロモーターからの細胞質転写を支えることができる。
3.ポリアデニル化シグナル
cDNA挿入物が用いられる場合、典型的に、遺伝子転写産物の適当なポリアデニル化をもたらすため、ポリアデニル化シグナルを含めることが必要になってくる。ポリアデニル化シグナルの性質が、本発明をうまく実施するために特に重要であるとは考えられず、任意の配列、たとえば、ヒトまたはウシ成長ホルモンおよびSV40ポリアデニル化シグナルが使用される。発現カセットの要素としてさらに考えられるのは、ターミネーターである。これらの要素は、メッセージレベルを高め、およびカセットから他の配列へのリードスルー(読み過ごし)を最小にするよう、機能しうる。
4.組込み(インテグレーション)配列
発現ベクターが細胞内で自己複製することが有利な場合、ベクターに存在する組込み配列、すなわち、レトロウイルス長末端反復配列(LTR)、アデノ随伴ウイルスITR配列により、ベクターは細胞のゲノムに融合してもよく、また、その代わりに、ベクターそれ自身が、DNA複製の起点と、細胞においてベクターの複製を促進する他の配列とを含むことができ、そして該ベクターはエピソームの形態を維持する。例えば、発現ベクターは、必要に応じてDNA複製のエプスタイン−バールウイルス(EBV)起点と、ベクターが導入される細胞においてベクターのエピソーム複製を促進させるためEBVのEBNA-1タンパク質をコードする配列とを含むことができる。例えば、EBV起点と、核抗原EBNA-1コードとを有するDNA構造物は、哺乳動物細胞において、高い複製数で複製が可能であり、および、例えばInvitrogen (San Diego、カリホルニア州)から市販されている。
留意すべき重要なことは、本発明において、適当なタンパク質発現のために、発現ベクターを細胞のゲノムに統合させる必要はないことである。むしろ、発現ベクターは、必要な細胞中において、エピソーム分子の形態で存在することもできる。例えば、所定の細胞タイプにおいて、必要なタンパク質を発現させるために発現ベクターが自己複製する必要はない。これらの細胞は、正常に複製しないが、遺伝子を十分に発現することができるものである。発現ベクターは、非分裂細胞に導入され、そして、発現ベクターの複製なしに、それによってコードされるタンパク質を発現する。
C.遺伝子導入の方法
細胞において導入遺伝子発現の効果を発揮させるため、本発明の発現構造物を細胞に導入することが必要になる。そのような導入は、遺伝子導入のウイルスによる方法またはウイルスによらない方法を用いうる。この章は、遺伝子導入の方法および構成物(組成物)について解説を行う。さらに、当業者に明らかなように、本発明が提供する微生物発現ポリペプチドまたはその断片の分離および精製は、分取用クロマトグラフィーや、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を使う免疫学的分離を含む従来の手段によって行うことができる。
1.非ウイルス性導入
発現構造物を細胞に導入するためのいくつかの非ウイルス法が、本発明により意図される。これらは、リン酸カルシウム沈降(GrahamおよびVan Der Eb、1973; ChenおよびOkayama、1987; Rippeら、1990)、DEAE−デキストラン(Gopal、1985)、エレクトロポレーション(Tur-Kaspaら、1986; Potterら、1984)、直接マイクロインジェクション(HarlandおよびWeintraub、1985)、DNA充填リポソーム(NicolauおよびSene、1982; Fraleyら、1979)、細胞音波処理(Fechheimerら、1987)、高速マイクロプロジェクタイルを用いる遺伝子ボンバード(Yangら、1990)、および受容体媒介トランスフェクション(WuおよびWu、1987; WuおよびWu、1988)を含む。
本発明の特定の態様において、発現構造物は、カチオンポリマーに複合化される。水溶性の複合体であるカチオンポリマーは、当該技術においてよく知られており、DNAプラスミド用の送達系として利用されてきた。この戦略は、可溶性の系を用いるものであり、それは、受容体によって媒介されるエンドサイトーシスを介してDNAを細胞内に運ぶ(Wu & Wu 1988)。当業者に認められるとおり、カチオンポリマーとの複合核酸は、核酸の負電荷を中和するのを助け、エンドサイトーシスによる取り込みを増加させる。
本発明の特定の態様において、発現構造物はリポソーム中に封じ込められる。リポソームは、小胞構造物であり、リン脂質二重層膜と内部の水性媒質とを特徴とする。多重ラメラリポソームは、水性媒質によって分離される多重脂質層を有する。それらは、リン脂質を過剰の水溶液に懸濁するとき、自発的にできる。脂質成分は、閉じた構造物の形成前に、自己再配列をうけ、そして、脂質二重層の間に水および溶解した溶質を捕捉する(GhoshおよびBachhawat、1991)。DNAをカチオン性リポソームに加えると、リポソームから光学的に複屈折の液晶性凝集小滴へのトポロジカルな転移が起こる(Radlerら、1997)。これらDNA−脂質複合体は、可能性のある遺伝子治療用非ウイルス性ベクターである。
リポソーム媒介核酸送達およびインビトロでの外来DNAの発現は、大変うまくいっている。β−ラクタマーゼ遺伝子を用いて、Wongら(1980)は、リポソーム媒介送達および培養ニワトリ胚、HeLaおよび肝がん細胞における外来DNAの発現の実行可能性を明らかにした。Nicolauら(1987)は、静脈注射の後、ラットにおいてリポソーム媒介遺伝子導入に成功した。さらに含まれるのは、「リポフェクション」技術を用いる種々の市販されているアプローチである。
本発明の所定の態様において、リポソームは、赤血球凝集ウイルス(HVJ)と複合化される。これは、細胞膜との融合を促進し、およびリポソームによりカプセル化されたDNAの細胞取り込みを推進することが明らかにされてきた(Kanedaら、1989)。他の態様において、リポソームは、核の非ヒストン染色体タンパク質(HMG-1)とともに複合化または使用される(Katoら、1991)。さらに他の態様において、リポソームは、HVJとHMG-1の両方とともに複合化または使用される。そのような発現構造物が、インビトロおよびインビボでの核酸の導入および発現にうまく利用されてきたことから、それらは、本発明に適用できる。
他の態様において、送達媒体は、リガンドおよびリポソームからなり得る。例えば、Nicolauら(1987)は、ラクトシル−セラミド、ガラクトース−末端アシアロガングリオシドを使用して、リポソームに組み込み、肝細胞によるインスリン遺伝子取込みの増加を認めた。従って、リポソームを用いてまたは用いずに、任意の数の受容体−リガンド系により、治療遺伝子をコードする核酸を、前立腺、上皮または腫瘍細胞のような細胞型に特異的に送達することが可能である。例えば、ヒト前立腺特異的抗原(Wattら、1986)は、前立腺組織における核酸の媒介送達用受容体として用いられる。
本発明の他の態様において、発現構造物は、単に裸の組換えDNAまたはプラスミドからなってもよい。この構造物の導入は、物理的または化学的に細胞膜を透過性にする上記方法のいずれかにより行う。これは、インビトロの導入に特に適用できるが、同様にインビボにも適用される。Dubenskyら(1984)は、CaPO4沈殿物の形態で、ポリオーマウイルスDNAを成体および新生マウスの肝臓および脾臓にうまく注入し、活発なウイルス複製および急性の感染を明らかにした。また、BenvenistyおよびNeshif(1986)は、CaPO4沈殿プラスミドの直接的な腹腔内注入が、形質移入遺伝子の発現をもたらすことを明らかにした。CAMをコードするDNAをインビボで同様に導入し、CAMを発現することが考えられる。
裸のDNA発現構造物を細胞に導入するための本発明の他の態様は、粒子ボンバード(粒子銃)を含み得る。この方法は、DNA被覆マイクロプロジェクタイルを高速に加速して、細胞を殺さずに細胞膜にそれで穴をあけ、それを細胞に入れることができる能力によるものである(Kleinら、1987)。小さな粒子を加速するための装置がいくつか開発されている。そのような装置の一つは、高電圧荷電によって電流を生じさせ、その結果、加速力をもたらすものである(Yangら, 1990)。使用されるマイクロプロジェクタイルは、生物学的に不活性な物質、たとえば、タングステンまたは金ビーズからなる。
2.ウイルスベクターにより媒介される導入
所定の態様において、導入遺伝子は、細胞への遺伝子導入を媒介するウイルス粒子に取込まれる。
典型的に、該ウイルスは、単純に、生理学的条件下、適当な宿主細胞にさらされ、該ウイルスの取込みを可能にする。本方法は、以下に解説するとおり、種々のウイルスベクターを用いて、有利に利用される。
a.アデノウイルス
アデノウイルスは、遺伝子導入ベクターとしての使用に特に適している。というのも、そのDNAゲノムのサイズは中位であり、操作が簡単であり、力価が高く、標的細胞の範囲が広く、感染力が高いからである。おおよそ36kBのウイルスゲノムは、100〜200塩基対(bp)の逆方向末端反復(ITR)によって境界をつけられる。そこには、ウイルスDNAの複製およびパッケージングに必要なシス作用因子が含まれる。異なる転写単位を含むゲノムの初期(E)領域および後期(L)領域は、ウイルスDNA複製の開始により分割される。
E1領域(E1AおよびE1B)は、ウイルスゲノムおよびわずかな細胞遺伝子の転写制御をつかさどるタンパク質をコードする。E2領域(E2AおよびE2B)の発現は、ウイルスDNA複製のためのタンパク質の合成をもたらす。これらのタンパク質はDNA複製、後期遺伝子発現、および宿主細胞シャットオフに関係する(Renan, 1990)。ウイルスキャプシドタンパク質の大部分を含む、後期遺伝子(L1、L2、L3、L4およびL5)の産物は、メジャー後期プロモーター(MLP)によって産出される単一の一次転写物の効果的プロセッシングの後にのみ、発現される。MLP(16.8地図単位に位置する)は、感染の後期において特に有効である。このプロモーターから産出されるすべてのmRNAは、5'三部分リーダー(TL)配列を保有し、その配列は、それらを翻訳のための好ましいmRNAにする。
アデノウイルスを遺伝子治療用として最適化するためには、大きいDNAセグメントを含めることができるよう保持能力を最大にする必要がある。所定のアデノウイルス産物に付随する毒性および免疫反応を減らすことも非常に望ましい。この二つの目標は、アデノウイルス遺伝子の排除が両方の目的にかなうという点で、ある程度共通している。本発明の実施により、治療構成物を比較的簡単に操作する能力を維持しながら、これら両方の目標を達成することができる。
DNAの大きな置換は可能である。というのも、ウイルスDNAの複製すべてに必要なシス因子は、線状ウイルスゲノムのいずれかの末端において、逆方向末端反復配列(ITR)(100〜200bp)に局在化されているからである。ITR'sを含むプラスミドは、非欠損アデノウイルスの存在下で複製できる(Hayら、1984)。したがって、これらの要素をアデノウイルスベクターに含めることは、複製を可能にする。
さらに、ウイルスカプセル化のためのパッケージングシグナルは、ウイルスゲノム左端において、194〜385bp(0.5〜1.1地図単位)の間に位置する(Hearingら、1987)。このシグナルは、バクテリオファージλDNAのタンパク質認識部位によく似ており、ここでは、左端に近いが付着末端配列の外にある特定の配列は、頭部構造へのDNAの挿入に必要なタンパク質への結合を媒介する。AdのE1置換ベクターが明らかにしたところによれば、ウイルスゲノムの左端にある450bp(0〜1.25地図単位)断片は、293細胞においてパッケージングを誘導することができた(Levreroら、1991)。
すでに明らかなところによれば、アデノウイルスゲノムの所定の領域を、哺乳動物細胞のゲノムに組み込むことができ、それによりコードされる遺伝子を発現させることができる。これらの細胞株は、該細胞株にコードされるアデノウイルス機能を欠いたアデノウイルスベクターの複製を援助することができる。また、「介助」ベクター、たとえば野生型ウイルスまたは条件に応じて欠陥のある突然変異体、により複製不全アデノウイルスベクターの補足も報告されている。
複製不全アデノウイルスベクターは、トランスで、ヘルパーウイルスにより補足することができる。しかし、この所見のみでは、複製不全ベクターの単離は可能にならない。というのも、複製機能を付与するのに必要なヘルパーウイルスの存在は、あらゆる調製物を汚す可能性があるからである。従って、複製不全ベクターの複製および/またはパッケージングに特異性を付加できるさらなる要素が必要であった。その要素は、本発明において付与されるように、アデノウイルスのパッケージ機能から由来する。
明らかにされているところによれば、アデノウイルスのためのパッケージングシグナルは、通常のアデノウイルス地図の左端に存在する(Tibbetts、1977)。後の研究で明らかになったことは、ゲノムのE1A(194〜358bp)領域に欠失がある突然変異体は、初期(E1A)機能を補足した細胞株においてさえも、うまく増殖しなかった(HearingおよびShenk、1983)。補足アデノウイルスDNA(0〜353bp)を、該変異体の右端に再結合させたところ、ウイルスは正常にパッケージされた。さらに突然変異分析を行ったところ、Ad5ゲノムの左端に短い反復された位置依存性の要素が特定された。この反復の一複製物は、ゲノムのいずれかの末端に存在すれば、有効なパッケージングに十分であり、Ad5DNA分子の内部に移動すると十分ではなくなることが明らかになった(Hearingら、1987)。
パッケージングシグナルの突然変異物を用いることにより、種々の効率でパッケージされるヘルパーウイルスを作ることができる。典型的に、突然変異は、点変異または欠失である。パッケージング効率の低いヘルパーウイルスをヘルパー細胞において増殖させると、野生型ウイルスに比べて低い率ではあるが、ウイルスはパッケージされ、それにより、ヘルパーの増殖が可能になる。しかし、野生型のパッケージングシグナルを含むウイルスとともに、細胞においてこれらのヘルパーウイルスを増殖させると、突然変異物に優先して、野生型パッケージングシグナルが認められる。パッケージングファクター量が制限されているならば、野生型シグナルを含むウイルスは、ヘルパーに対して選択的にパッケージされる。この選択性が十分に大きいならば、均質に近いストックが得られるはずである。
b.レトロウイルス
レトロウイルス類は、一群の一本鎖RNAウイルスで、逆転写のプロセスにより、感染細胞において、そのRNAを二本鎖DNAに変換する能力を特徴とする(Coffin, 1990)。次いで、生成されたDNAは、安定してプロウイルスとして細胞の染色体に融合し、ウイルスタンパク質の合成を誘導する。この統合により、受容細胞においてウイルス遺伝子配列は保持され、その子孫がもたらされる。レトロウイルスゲノムは、三種の遺伝子、gag、polおよびenvを含み、これらは、キャプシドタンパク質、ポリメラーゼ酵素、およびエンベロープ成分をそれぞれコードする。gag遺伝子の上流にある配列(Ψと呼ばれる)は、ゲノムをビリオンにパッケージングするためのシグナルとして機能する。二つの長末端反復(LTR)配列は、ウイルスゲノムの5'および3'末端に存在する。これらは、強いプロモーターおよびエンハンサー配列を含み、宿主細胞ゲノムでの統合にも必要である(Coffin、1990)。
レトロウイルスベクターを構築するために、プロモーターをコードする核酸を、所定のウイルス配列の位置において、ウイルスゲノムに挿入し、複製不全のウイルスを生産する。ビリオンを生産するために、gag、polおよびenv遺伝子を含む一方、LTRおよびΨ成分を含まないパッケージング細胞株を構築する(Mannら、1983)。ヒトcDNAとともにレトロウイルスLTRおよびΨ配列を含む組換えプラスミドがこの細胞株に導入されると(例えば、リン酸カルシウム沈降により)、Ψ配列は、組換えプラスミドのRNA転写産物をウイルス粒子にパッケージ可能にし、そして、ウイルス粒子は、培養培地に分泌される(NicolasおよびRubenstein、1988; Temin、1986; Mannら、1983)。組換えレトロウイルスを含む培地を集め、必要に応じて濃縮し、そして、遺伝子導入に用いる。レトロウイルスベクターが感染できる細胞のタイプは、広範囲にわたる。しかし、多くのタイプのレトロウイルスにとって、統合および安定な発現には、宿主細胞の分裂が必要である(Paskindら、1975)。
レトロウイルスベクターの特異的なターゲッティングを可能にするよう設計された手法が最近開発された。それは、ウイルスエンベロープにガラクトース残基を化学的に付加することにより、レトロウイルスを化学修飾することに基づく。
組換えレトロウイルスのターゲッティングに対し異なる手法が設計され、そこでは、レトロウイルスエンベロープタンパク質および特定の細胞受容体に対するビオチニル化抗体が使用された。これらの抗体は、ストレプトアビジンを用いることにより、ビオチン成分を介して結合された(Rouxら、1989)。主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原に対する抗体を使用し、それらの表面抗原を保持した種々のヒト細胞の感染が、インビトロでエコトロピックウイルスを用いて明らかにされた(Rouxら、1989)。
c.アデノ随伴ウイルス
AAVは、約4700塩基対の線状一本鎖DNAを利用する。逆方向末端反復配列はゲノムに隣接する。
ゲノム内には二つの遺伝子が存在し、相当数の異なる遺伝子産物をもたらす。第一に、cap遺伝子は、三つの異なるビリオンタンパク質(VP)(VP-1、VP-1およびVP-3と呼ばれる)を生産させる。第二に、rep遺伝子は、四つの非構造的タンパク質(NS)をコードする。これらのrep遺伝子産物の一以上は、トランス活性化AAV転写をつかさどる。
AAV中の三つのプロモーターは、その位置、地図単位、ゲノムで表わされる。それらは、左から右に、P5、p19およびp40である。転写は、六つの転写産物をもたらし、二つは、三つのプロモーターのそれぞれから開始され、各ペアの一方はスプライスされる。スプライス部位は、地図単位42〜46に由来し、各転写産物について同じである。四つの非構造的タンパク質は、明らかに、転写産物のより長いものに由来し、三つのビリオンタンパク質はすべて、より小さな転写産物から生じる。
AAVは、ヒトにおいて、病理学的状態を伴わない。おもしろいことに、効率的な複製のため、AAVは、ウイルス、たとえば単純ヘルペスウイルスIおよびII、サイトメガロウイルス、偽狂犬病ウイルス、そして、もちろんアデノウイルスからの「介助」機能を必要とする。このヘルパーの最も特性がわかっているものは、アデノウイルスであり、このウイルスの多くの「初期」機能が、AAVの複製を援助することがわかっている。AAV repタンパク質の発現レベルが低いと、AAV構造の発現が抑制されることが考えられ、そして、ヘルパーウイルス感染により、この抑制が除かれると考えられる。
AAVベクターの末端反復は、AAVまたはプラスミド、たとえばp201(これは改変AAVゲノムを含む(Samulskiら、1987))の制限エンドヌクレアーゼ消化により得ることができ、あるいは、当業者に知られる他の方法(AAVの公表されている配列に基づく末端反復の化学的または酵素的合成を含むが、これに限定されることはない)により得ることができる。当業者は、よく知られた方法、たとえば、欠失分析により、機能(すなわち安定した部位特異的統合)するのに必要なAAVのITR類の最小配列または部分を決定することができる。また、当業者は、安定した部位特異的統合を誘導する末端反復の能力を保持しながら、どのような配列のマイナー修飾または変更が許容され得るか、決定することができる。
AAV系ベクターは、インビトロで安全および効果的な遺伝子送達用媒体であることが証明されている。これらのベクターは、前臨床段階および臨床段階において、可能性のある遺伝子治療の広範囲な応用のため、エキソビボおよびインビボの両方で、開発、試験中である(CarterおよびFlotte、1995; Chatterjeeら、1995; Ferrariら、1996; Fisherら、1996; Flotteら、1993; Goodmanら、1994; Kaplittら、1994; 1996、Kesslerら、1996; Koeberlら、1997; Mizukamiら、1996)。
肺におけるAAV媒介による有効な遺伝子導入および発現は、のう胞性繊維症の治療のため臨床試験に至っている(CarterおよびFlotte、1995; Flotteら、1993)。同様に、ジストロフィン遺伝子の骨格筋へのAAV媒介遺伝子送達による筋ジストロフィーの治療、脳へのチロシンヒドロキシラーゼ遺伝子送達によるパーキンソン病の治療、肝臓へのファクターIX遺伝子送達による血友病Bの治療、および心臓への血管内皮成長因子遺伝子配達による心筋梗塞の可能性のある治療は、期待がもてそうである。というのも、AAVに媒介される導入遺伝子のそれら臓器における発現は、高度に有効であることが最近わかってきているからである(Fisherら、1996; Flotteら、1993; Kaplittら、1994; 1996; Koeberlら、1997; McCownら、1996; Pingら、1996; Xiaoら、1996)。
d.その他のウイルスベクター
本発明において、その他のウイルスベクターが発現構造物として用いられる。ワクシニアウイルス(Ridgeway、1988; BaichwalおよびSugden、1986; Couparら、1988)、カナリアポックスウイルス、およびヘルペスウイルスのようなウイルスに由来するベクターが用いられる。これらのウイルスは、種々の哺乳動物細胞への遺伝子導入の用途において、いくつかの特徴を与える。
一旦、構造物が細胞内に送達されると、導入遺伝子をコードする核酸は、適当な位置に置かれ、異なる部位で発現される。所定の態様において、導入遺伝子をコードする核酸は、安定に細胞のゲノムに統合される。この統合は、相同的組換え(遺伝子置換)を介して同族体の位置および配向にあるか、あるいは、それは、ランダムで非特異的な位置に統合される(遺伝子増強)。もう1つの態様において、核酸は、安定して細胞内にDNAの別個のエピソームセグメントとして保持される。そのような核酸セグメントまたは「エピソーム」は、宿主細胞サイクルから独立してまたはそれと同期して保持および複製を可能にするのに十分な配列をコードする。発現構造物をどのように細胞に送達するか、そして、核酸を細胞のどこに維持させるかは、使用する発現構造物のタイプに依存する。
iv.診断用途
細胞変性障害という用語は卵巣中の任意のタイプの細胞の喪失を直接的または間接的に意味する。例えば、GDF-9の不在下では顆粒膜細胞の成長に障害があり、それが結果として卵母細胞の変性(すなわち死)につながる(Dongら、1996)。この卵母細胞の死は、顆粒膜細胞の分化をもたらすようである。また、GDF-9の不在下では、正常な莢膜細胞層が卵胞の周りに形成されない。したがって、1つの卵母細胞特異的タンパク質GDF-9が存在しないと、3種類の細胞系統、すなわち卵母細胞、顆粒膜細胞および莢膜細胞に欠損が生じる。同様にして、これらのさまざまな細胞系統の死または分化は、O1-180、O1-184またはO1-236の不在または不正発現による影響も受けるだろう。
O1-180、O1-184またはO1-236の不在または不正発現は、卵母細胞/卵子に、卵子が精子による受精を受けることができなくなるような欠損をもたらすだろう。あるいは、これらの卵母細胞由来因子の不在に付随して、胚が発育しないか、胚形成の初期段階で発育を停止するか、または受精に欠損を示すかもしれない。
したがって、O1-180、O1-184またはO1-236組成物は不妊全般の診断指標または予後指標として利用することができる。より具体的には、点突然変異、欠失、挿入または調節の乱れを同定することができる。本発明ではさらに、O1-180、O1-184またはO1-236発現レベルの変化を検出する、不妊の診断が考えられる。
本発明の一態様はO1-180、O1-184またはO1-236発現の変化を検出する方法を含む。この方法は、発現したO1-180、O1-184またはO1-236のレベルを決定すること、または発現産物中の特異的改変を決定することを含みうる。特定の態様は、O1-180、O1-184またはO1-236の発現で変化が検出される。
生物学的試料は組織または体液であることができる。さまざまな態様には精巣および卵巣から得られる細胞が含まれる。他の態様には、膣液または精液などの体液試料が含まれる。
使用する核酸は、標準的な方法論に従って(Sambrookら、1989)、生物学的試料に含まれる細胞から単離される。核酸はゲノムDNA、分画された細胞RNAまたは全細胞RNAであることができる。RNAを使用する場合は、RNAを相補的DNA(cDNA)に変換することが望ましいかもしれない。ある態様ではRNAは全細胞RNAであり、別の態様ではポリA RNAである。通常、核酸は増幅される。
フォーマットに応じて、興味ある特定核酸は、試料中に、増幅を使って直接同定されるか、または増幅後に第2の既知核酸を使って同定される。次に、同定された産物を検出する。ある応用例では、この検出を視覚手段(例えばゲルの臭化エチジウム染色)によって行うことができる。あるいは、検出には、化学発光、放射性標識または蛍光標識の放射線シンチグラフィーによる、またさらには電気または熱インパルス信号を使ったシステムによる、産物の間接的同定が含まれる場合もある(Affymax Technology;Bellus、1994)。
検出に続いて、与えられた患者に見られる結果を、正常患者および不妊と診断された患者の統計的に有意な基準群と比較することができる。
O1-180、O1-184またはO1-236ポリヌクレオチド配列中の他の突然変異は、特定核酸中のヌクレオチド変化を検出することにより、本発明に従って同定することができると考えられる(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,988,617号)。これに関して、例えば蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH;米国特許第5,633,365号および米国特許第5,665,549号、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)、ダイレクトDNAシークエンシング、PFGE解析、サザンまたはノーザンブロット法、一本鎖コンフォメーション多型解析(SSCA)、RNアーゼ保護アッセイ、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO、例えば米国特許第5,639,611号)、ドットブロット解析、変性勾配ゲル電気泳動(例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,190,856号)、RFLP(例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,324,631号)およびPCR(登録商標)-SSCPなどを含めて、しかしこれらに限定されることなく、多種多様なアッセイが考えられる。例えば生物学的液体中の突然変異型遺伝子および癌遺伝子などの遺伝子配列を検出し、定量する方法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,496,699号に記載されている。
さらに、Haciaら(1996)およびShoemakerら(1996)に記載されているようなDNAチップ技術を不妊の診断に使用することもできると考えられる。簡単に述べると、これらの技術は、多数の遺伝子を迅速かつ正確に解析するための定量方法を含む。オリゴヌクレオチドで、または固定化されたプローブアレイを使って、遺伝子にタグを付けることにより、チップ技術を利用して、標的分子を高密度のアレイとして分離し、これらの分子をハイブリダイゼーションに基づいてスクリーニングすることができる。Peaseら(1994);Fodorら(1991)を参照されたい。
ELISAおよびウェスタンブロット解析などの技術によってO1-180、O1-184またはO1-236含量を特徴づけるには、抗体を使用することができる。これは出生前スクリーニングまたは子供を欲しいと思っている人々のカウンセリングに役立つだろう。
他にもさまざまな免疫検出方法のステップが、例えばNakamuraら(1987)などの科学文献に記載されている。免疫アッセイは、その最も簡単かつ直接的な意味で、結合アッセイである。好ましい免疫アッセイの一例は、さまざまなタイプのラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫ビーズ捕捉アッセイである。組織切片を使用する免疫組織化学的検出も、とりわけ有用である。しかし、検出はそれらの技術に限定されるわけではなく、本発明にはウェスタンブロット法、ドットブロット法、FACS解析なども使用しうることは、すぐに理解されるだろう。
本発明の抗体は、多種多様な担体に結合させて、本発明のポリペプチドを含む抗原の存在を検出するために使用することができる。周知の担体の具体例にはガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよび磁鉄鉱などがある。本発明の目的には、担体の性質は可溶性でも不溶性でもよい。当業者は抗体を結合するのに適した担体を他にも知っているか、または日常的な実験によってそれらを確認することができるだろう。
当業者には多種多様な標識および標識法が知られている。本発明で使用することができる標識のタイプの例には、酵素、放射性同位体、蛍光化合物、コロイド金属、化学発光化合物、燐光化合物および生物発光化合物などがある。当業者は抗体への結合に適した標識を他にも知っているか、または日常的な実験によってそれらを確認することができるだろう。
同様に感度の向上をもたらしうるもう一つの技術は、抗体を低分子量ハプテンに結合することからなる。この場合、第二の反応を使って、これらのハプテンを特異的に検出することができる。例えばアビジンと反応するビオチンまたは特異的抗ハプテン抗体と反応することができるジニトロフェニル、プリドキサール(puridoxal)およびフルオレセインなどのハプテンを使用するのが一般的である。
本発明のモノクローナル抗体を抗原のインビボ検出に使用する場合は、検出可能に標識された抗体を診断的に有効な用量で投与する。「診断的に有効な」という用語は、検出可能に標識されたモノクローナル抗体の量が、当該モノクローナル抗体が特異性を示す本発明のポリペプチドを構成する抗原を持つ部位の検出を可能とするのに十分な量で投与されることを意味する。投与される検出可能に標識されたモノクローナル抗体の濃度は、当該ポリペプチドを持つ細胞への結合がバックグラウンドと比較して検出可能になるような十分な濃度であるべきである。さらに、検出可能に標識されたモノクローナル抗体は、最適な標的対バックグランドシグナル比を得るために、循環系から迅速に除去されることが望ましい。一般に、インビボ診断用の検出可能に標識されたモノクローナル抗体の投与量は、その個体の年齢、性別および疾患の程度などといった因子に依存して変動するだろう。そのような投与量は、例えば、複数回の注射を行なうかどうか、抗原負荷量および当業者に知られている他の因子などに依存して変動しうる。
インビボ画像診断法の場合は、利用できる検出装置のタイプが、与えられた放射性同位体を選択する際の重要な因子である。選択される放射性同位体は、与えられた装置のタイプにとって検出可能な減衰タイプでなければならない。インビボ診断用の放射性同位体を選択する際に重要なさらにもう一つの因子は、宿主に対して有害な放射線を最小限に抑えることである。インビボ画像法に使用される放射性同位体は、理想的には、粒子放射を伴なわず、従来のガンマ線カメラで容易に検出することができる140〜250keVの範囲の光子を数多く生成する。
インビボ診断の場合、放射性同位体は免疫グロブリンに直接的に、または中間官能基を使って間接的に、結合させることができる。金属イオンとして存在する放射性同位体を免疫グロブリンに結合させるためによく使用される中間官能基は、例えばジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの二官能性キレート剤である。本発明のモノクローナル抗体に結合させることができる金属イオンの典型例は、111In、97Ru、67Ga、68Ga、72As、89Zrおよび201Tiである。
本発明のモノクローナル抗体は、磁気共鳴画像法(MRI)または電子スピン共鳴(ESR)で行なわれるようなインビボ診断のために、常磁性同位体で標識することもできる。一般に、従来の診断用画像可視化法は、どれでも使用することができる。通常、カメラ撮像にはガンマ線および陽電子放出放射性同位体が使用され、MRIには常磁性同位体が使用される。このような技術に特に有用な元素には、157Gd、55Mn、162Dy、55Crおよび56Feがある。
細胞増殖性障害(cell-proliferative disorder)または高増殖性障害(hyper proliferative disorder)という用語は、周囲の組織とは形態学的にも遺伝子型的にもしばしば異なって見える悪性および非悪性細胞集団を意味する。アンチセンス分子であるO1-180、O1-184およびO1-236ポリヌクレオチドは、さまざまな器官系(特に卵巣など)の悪性腫瘍を処置するのに役立つ。病因論的にO1-180、O1-184またはO1-236の発現の変化と関連する障害はいずれも、基本的には、それぞれO1-180、O1-184またはO1-236抑制試薬による処置に感受性であると考えることができるだろう。
本発明は、卵巣の細胞増殖性障害を検出する方法であって、抗O1-180、O1-184またはO1-236抗体を、O1-180、O1-184またはO1-236関連障害を持つ疑いがある細胞と接触させ、その抗体への結合を検出することを含む方法を提供する。O1-180、O1-184またはO1-236と反応する抗体は、それぞれO1-180、O1-184またはO1-236への結合の検出を可能にする化合物で標識される。本発明の目的のため、O1-180、O1-184またはO1-236ポリペプチドに特異的な抗体を使って、生物学的液体および組織中のそれぞれO1-180、O1-184またはO1-236のレベルを検出することができる。検出可能な量の抗原を含有する標本はどれでも使用することができる。本発明の好ましい試料は、卵巣起源の組織、具体的には卵巣濾胞液または卵母細胞を含有する組織である。疑わしい細胞中のO1-180、O1-184またはO1-236のレベルを正常細胞中のレベルと比較することで、その検査対象がO1-180、O1-184またはO1-236関連細胞増殖性障害を持つかどうかを決定することができる。検査対象は好ましくはヒトである。本発明の抗体は、インビトロまたはインビボ免疫診断もしくは免疫療法を施すことが望ましい任意の対象で使用することができる。本発明の抗体は、例えば免疫アッセイでの使用に適しており、そのアッセイでは本発明の抗体を液相で、または固相担体に結合させた状態で、利用することができる。また、これらの免疫アッセイにおける抗体は、さまざまな方法で検出可能に標識することができる。本発明の抗体を利用することができる免疫アッセイのタイプの例は、直接または間接フォーマットの競合的および非競合的免疫アッセイである。そのような免疫アッセイの例にはラジオイムノアッセイ(RIA)とサンドイッチ(ELISA)アッセイがある。本発明の抗体を用いた抗原の検出は、正順、逆順または同時形式で実施される免疫アッセイ(生理学的試料に対する免疫組織化学的アッセイを含む)を使って行なうことができる。当業者は他の免疫アッセイフォーマットを知っているか、または甚だしい実験を行なわなくてもそれらを容易に識別することができる。
v.治療用途
O1-180、O1-184およびO1-236は生殖管で発現するので、避妊、妊性および妊娠に関して、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドおよび抗体を使ったさまざまな用途が存在する。O1-180、O1-184およびO1-236は月経周期の調節に関与しうるので、さまざまな避妊法に役立ちうる。
また、O1-180、O1-184またはO1-236ポリヌクレオチド配列、ポリぺプチド配列、抗体、その断片またはその突然変異体は、母性ゲノムを破損することによって初期胚形成を抑制または強化するために使用することもできると考えられる。胚発生で表現型を生じる母性ゲノムの破損は母性効果突然変異と呼ばれることが当業者には知られている。2つのそのような例が、ノックアウト技術を使ってマウスで特徴づけられている。どちらの例でも、遺伝子産物は成長する卵母細胞中に正常に蓄積され、初期発生胚でも持続し、その表現型はノックアウト雌の子孫に、その遺伝子型または性別とは無関係に、影響を及ぼす。最初に同定された遺伝子は、MATER(maternal antigen that embryos require:胚に必要な母性抗原)をコードしている。MATERは2細胞段階を超えた発生に必要であり、胚ゲノム転写パターンの確立に関連づけられている(Tongら、2000)。2番目に同定された遺伝子は、胚ゲノムで確立される刷込みパターンの維持および妊娠期間の最後の3分の1で発育中のマウスの成育性の維持に不可欠な卵母細胞特異的DNAメチルトランスフェラーゼDNMT1oをコードしている(Howellら、2001)。他の多くの卵母細胞由来因子も初期胚形成の複雑さをもたらすと思われ、したがって、O1-180およびO1-236は母性効果遺伝子であると考えられる。というのも、これらは初期胚形成の過程で機能するからである。
さらなる態様として、O1-236は、初期胚発生中のクロマチン再構築に関与しうると考えられる。例えば、精子DNAの卵母細胞再構築に必要であり、卵核胞崩壊時に卵質中に放出される哺乳類核タンパク質の存在が、研究によって予測されている(Maedaら、1998)。さらに、卵母細胞は受精時の精子核だけでなく体細胞核も効率よく再構築できることが知られている。例えば本発明者らは、核移植クローニングにおけるNPM2の役割を考察した(Zuccottiら、2000)。(O1-236がコードする)NPM2は、初期胚発生中のクロマチン再構築にとって不可欠な哺乳類卵母細胞中の因子であると予想される。したがって、除核卵母細胞にNPM2を補うことにより、核移植技術によるクローニングが容易になるだろう。
本発明のモノクローナル抗体は、検査対象におけるO1-180、O1-184またはO1-236関連疾患の改善の推移をモニターするためにインビトロおよびインビボで使用することができる。したがって、例えば本発明のポリペプチドを含む抗原を発現させる細胞の数の増加もしくは減少またはさまざまな体液中に存在するそのような抗原の濃度の変化を測定することにより、O1-180、O1-184またはO1-236関連疾患の改善を目的とする特定の治療的措置が有効かどうかを決定することができるだろう。改善という用語は、治療を受けている検査対象におけるO1-180、O1-184またはO1-236関連疾患の有害作用の減少を意味する。
本発明により、正常細胞における発現とは違う形で発現されうるヌクレオチド配列が同定されるので、この配列に対して適切な治療技術または診断技術を設計することができる。例えば、細胞増殖性障害がO1-180、O1-184またはO1-236の発現と関係する場合は、それぞれO1-180、O1-184またはO1-236の発現を翻訳レベルで妨害する核酸配列を使用することができる。このアプローチでは、例えばアンチセンス核酸またはリボザイムを使用して、特定のO1-180、O1-184またはO1-236 mRNAをアンチセンス核酸で遮蔽するか、リボザイムでそれを切断することによって、当該mRNAの翻訳を阻止する。
アンチセンス核酸は、特定のmRNA分子の少なくとも一部に相補的なDNAまたはRNA分子である(Weintraub、1990)。細胞内でアンチセンス核酸は対応するmRNAにハイブリダイズして二本鎖分子を形成する。細胞は二本鎖であるmRNAを翻訳しないだろうから、アンチセンス核酸はmRNAの翻訳を妨害する。約15ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーが好ましい。というのも、それらは合成が容易であり、また標的とするO1-180、O1-184またはO1-236産生細胞に導入する時に、これより大きい分子と比べて問題を生じる可能性が低いからである。アンチセンス法を使った遺伝子のインビトロ翻訳の阻害は当技術分野ではよく知られている(Marcus-Sakura、1988)。
リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼに似た様式で他の一本鎖RNAを特異的に切断する能力を持つRNA分子である。これらのRNAをコードするヌクレオチド配列の改変により、RNA分子中の特定のヌクレオチド配列を認識しそれを切断する分子を設計することができる(Cech、1988)。このアプローチの大きな利点は、それらが配列特異的であるために、特定の配列を持つmRNAだけが不活化されることである。
リボザイムには2つの基本型、すなわちテトラヒメナ型(Hasselhoff、1988)と「ハンマーヘッド」型がある。テトラヒメナ型リボザイムは4塩基長の配列を認識し、「ハンマーヘッド」型リボザイムは11〜18塩基長の塩基配列を認識する。認識配列が長いほど、その配列がもっぱら標的mRNA種だけに存在する可能性は高くなる。そのため、特定のmRNA種を不活化するにはテトラヒメナ型リボザイムよりハンマーヘッド型リボザイムの方が好ましく、18塩基長認識配列は、それより短い認識配列よりも好ましい。
さらに本発明において意図するところによれば、二本鎖RNAが干渉分子、たとえば、RNA干渉(RNAi)として用いられる。RNA干渉は、二本鎖RNA分子を関心のある生物体に単に注射、入浴または食餌によって与えることにより、関心のある特定の遺伝子を「ノックダウン」または阻害するため、使用される。この手法は、トランスフェクションまたは組換え法を必要とすることなく、遺伝子機能を選択的に「ノックダウン」する(Giet、2001; Hammond、2001; Stein P.ら、2002; Svoboda P,ら、2001; Svoboda P,ら、2000)。かくして、所定の態様において、ここに記載する標準的な分子的手法を用いて、二本鎖O1-180、O1-184またはO1-236RNAを合成または生産する。
本発明は、O1-180、O1-184またはO1-236タンパク質が媒介する細胞増殖性障害または細胞変性障害を処置するための遺伝子治療も提供する。そのような治療法は、各O1-180、O1-184もしくはO1-236 cDNAまたはO1-180、O1-184もしくはO1-236アンチセンスポリヌクレオチドを、増殖性障害または変性障害をもつ細胞に導入することによって、その治療効果を達成するだろう。O1-180、O1-184もしくはO1-236 cDNAまたはアンチセンスO1-180、O1-184もしくはO1-236ポリヌクレオチドの送達は、キメラウイルスなどの組換え発現ベクターまたはコロイド分散系を使って達成することができる。標的指向型リポソームの使用は、cDNAまたはアンチセンス配列の治療的送達にはとりわけ好ましい。
ここに教示する遺伝子治療に利用することができるさまざまなウイルスベクターには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、また好ましくは、レトロウイルスなどのRNAウイルスが含まれる。レトロウイルスベクターは、好ましくは、ネズミレトロウイルスまたは鳥類レトロウイルスの誘導体である。単一の外来遺伝子を挿入することができるレトロウイルスベクターの例には、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)があるが、これらに限るわけではない。他のいくつかのレトロウイルスベクターは複数の遺伝子を組み込むことができる。これらのベクターはすべて、形質導入細胞を同定し作出することができるように、選択可能マーカーの遺伝子を伝達するまたは組み込むことができる。目的のO1-180、O1-184またはO1-236配列を、例えば特定標的細胞上のレセプターのリガンドをコードするもう一つの遺伝子と共にウイルスベクターに挿入することにより、そのベクターは標的特異的になる。レトロウイルスベクターは、例えば糖、糖脂質またはタンパク質をコードするポリヌクレオチドを挿入することによって標的特異的にすることができる。好ましいターゲティングは、抗体を使ってレトロウイルスベクターを標的に誘導することによって達成される。当業者は、O1-180、O1-184もしくはO1-236 cDNAまたはO1-180、O1-184もしくはO1-236アンチセンスポリヌクレオチドを含有するレトロウイルスベクターの標的特異的な送達が可能になるようにレトロウイルスゲノムに挿入することができる特別なポリヌクレオチド配列を知っているか、または甚だしい実験を行なわずにそれらをすぐに確認することができる。
組換えレトロウイルスは欠損性なので、それらが感染性ベクター粒子を産生するには補助が必要である。この補助は、例えばLTR内の調節配列の制御下にレトロウイルスの構造遺伝子のすべてをコードしているプラスミドを含有するヘルパー細胞株を使用することによって提供することができる。これらのプラスミドは、パッキング機構がキャプシド形成のためにRNA転写物を認識できるようにするヌクレオチド配列を欠いている。パッケージングシグナルが欠失しているヘルパー細胞株には、例えばψ2、PA317およびPA12などがあるが、これらに限るわけではない。これらの細胞株はゲノムがパッケージされないので空のウイルス粒子を産生する。そのような細胞に、パッケージングシグナルは完全であるが構造遺伝子が目的とする他の遺伝子で置換されているレトロウイルスベクターを導入すると、そのベクターはパッケージングされ、ベクターウイルス粒子の産生が可能になる。
もう一つの選択肢として、NIH3T3または他の組織培養細胞にレトロウイルス構造遺伝子gag、polおよびenvをコードするプラスミドを従来のリン酸カルシウムトランスフェクションによって直接トランスフェクトすることもできる。次に、これらの細胞に目的の遺伝子を含有するベクタープラスミドをトランスフェクトする。その結果得られる細胞は培養培地中にレトロウイルスベクターを放出する。
O1-180、O1-184もしくはO1-236 cDNAまたはO1-180、O1-184もしくはO1-236アンチセンスポリヌクレオチド用のもう一つの標的指向型送達系はコロイド分散系である。コロイド分散系には、高分子複合体、ナノカプセル複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、ならびに油中水型エマルション、ミセル、混合ミセルおよびリポソームなどの脂質に基づく系が包含される。本発明の好ましいコロイド系はリポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボで送達媒体として役立つ人工膜小胞である。サイズが0.2〜4.0mmの範囲の大きい単層小胞(large unilamellar vesicle;LUV)には、大きい高分子を含有する水性緩衝液をかなりのパーセンテージまで封入することができる。RNA、DNAおよび完全なウイルス粒子を水性の内部に封入して、生物学的に活性な形で細胞に送達することができる(Fraleyら、1981)。リポソームは、哺乳類細胞だけでなく、植物、酵母および細菌細胞でもポリヌクレオチドの送達に使用されている。リポソームが効率のよい遺伝子導入媒体であるためには、以下の特徴を持つべきである:(1)目的の遺伝子が、その生物学的活性を損なわれることなく、高い効率で封入されること、(2)非標的細胞と比較して標的細胞に優先的かつ強固に結合すること、(3)小胞の水性内容物を標的細胞細胞質に高い効率で送達すること、および(4)遺伝情報の正確かつ効果的な発現(Manningら、1988)。
リポソームの組成は、リン脂質(特に高相転移温度リン脂質)と通常はステロイド(特にコレステロール)との組み合わせであることが普通である。他のリン脂質または他の脂質も使用できる。リポソームの物理特性はpH、イオン強度および二価カチオンの存在に依存する。
リポソームの製造に役立つ脂質の例には、ホスファチジル化合物、例えばホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシドおよびガングリオシドなどがある。脂質部分が14〜18個の炭素原子、好ましくは16〜18個の炭素原子を含み飽和しているジアシルホスファチジルグリセロールは特に有用である。リン脂質の一例として、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。
リポソームのターゲティングは解剖学的因子と機構的因子に基づいて分類することができる。解剖学的分類は選択性のレベルに基づくものであり、例えば器官特異的、細胞特異的および細胞小器官特異的などである。機構面ではターゲティングはそれが受動的であるか能動的であるかに基づいて識別することができる。受動的ターゲティングでは、洞様毛細血管を含む器官内の細網内皮系(RES)の細胞に分布するというリポソームが自然に持っている傾向を利用する。一方、能動的ターゲティングでは、自然に起こる局在化の部位以外の器官および細胞タイプへのターゲティングが達成されるように、リポソームをモノクローナル抗体、糖、糖脂質またはタンパク質などの特異的リガンドに結合するか、リポソームの組成またはサイズを変えることによって、リポソームの改変を行なう。
標的指向型送達系の表面はさまざまな方法で修飾することができる。リポソーム標的指向型送達系の場合は、ターゲティングリガンドをリポソーム二重層と安定に会合させておくために、脂質基をリポソームの脂質二重層に組み込むことができる。ターゲティングリガンドへの脂質鎖の結合には、さまざまな連結基を使用することができる。
VI.モジュレーターのためのスクリーニング
本明細書で使用する用語「候補物質」は、O1-180、O1-184またはO1-236の活性、発現または機能を調節できる可能性のある任意の分子を指す。候補化合物は、天然の化合物の断片または一部を含み得、あるいは、組合せなければ不活性である複数の既知化合物の活性な組合せとして見出し得る。候補物質は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、小分子などであり得る。提案として、天然源、たとえば動物、細菌、カビ、植物源(葉および樹皮を含む)、および海洋試料から分離される化合物を、有用である可能性のある医薬の候補としてアッセイすることができる。勿論、スクリーニングすべき医薬は、化学組成物または人工化合物から誘導または合成したものでもよい。
候補物質を探す一つの基本的手法は、化合物ライブラリーのスクリーニングである。有用な化合物の特定を「しらみつぶしに」行おうとして、有用な薬剤のための基本的な判断基準を満たすと考えられる小さな分子ライブラリーを、種々の市販の源から、簡単に取得することができる。そのようなライブラリー(コンビナトリアリーに生成させたライブラリーを含む)のスクリーニングは、多数の関連する(および関連しない)化合物を活性についてスクリーニングする迅速および効果的な方法である。活性な、しかしさもなくば不要な化合物のモデルとして第二、第三および第四世代の化合物を作ることにより、コンビナトリアル法もまた、可能性のある薬剤を迅速に進化させるのに向いている。明らかなように、不必要な化合物には典型に毒性の化合物があるが、その毒性を減らすべく改変されてきており、また、不必要な化合物には、典型的に毒性が最小限で効果がほとんどない化合物があるが、他の化合物と組合わせて使用することにより望ましい効果が生じる。
特定の態様において、化学遺伝学(chemical genetics)により作られる小分子ライブラリーを、本発明のモジュレーターとなり得る候補物質を特定するためスクリーニングすることができる(Schreiberら, 2001a; Schreiberら, 2001b)。化学遺伝学は、小分子を用いてタンパク質の機能を迅速および条件に応じて調節する技術である。この基本的手法は、経路を制御しおよびタンパク質に高い特異性で結合する化合物を特定することを必要とする。小分子は、多様性指向合成(diversity-oriented synthesis)、および個々のポリマービーズ上で空間的な分離を可能にするスプリットプール(split pool)法を用いて調製される。ビーズの各々は、原液を生成する化合物を含み、それは、多くの生物学的アッセイに使用することができる。
合理的な薬剤設計の目標は、生物学的に活性なターゲット化合物の構造類似体を作ることである。そのような類似体を作ることにより、元の分子よりもより活性であるかまたはより安定な薬剤を作ることができ、それらは、改変に対してことなる感受性を有し、あるいは、種々の他の分子の機能に影響を与え得る。一手法において、O1-180、O1-184またはO1-236ポリペプチドのような分子について三次元構造を生成させ、次いで、O1-180、O1-184またはO1-236ポリペプチドと相互作用する能力について分子を設計することができる。このことは、X線結晶構造解析、コンピュータモデリング、または両手法の組み合わせにより、達成することができる。同じ手法を、O1-180、O1-184またはO1-236ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドの相互作用分子類の特定に適用してもよい。
ターゲット化合物または活性化物質の構造をつきとめるため、抗体を使用することもできる。原則として、この手法は、続いて行う薬剤設計の基礎となるファーマコア(pharmacore)をもたらす。機能的で薬理学的に活性な抗体に対して抗イディオタイプ抗体を生成させることにより、概して、タンパク質結晶構造解析を回避することができる。鏡像の鏡像として、抗イディオタイプの結合部位は、元の抗原の類似体として期待できる。そして、抗イディオタイプは、化学的または生物学的に生産したペプチド類の貯え(バンク)からペプチドを識別し分離するのに、使用することができる。そして、選択したペプチドは、ファーマコアとして役に立ちうる。抗イディオタイプは、ここに記載した抗体を製造するための方法を用い、抗体を抗原として用いて、生成させることができる。
もちろん明らかなように、本発明のスクリーニング法はすべて、有効な候補を見出すことができなくとも、それ自体有用である。本発明は、そのような候補のためのスクリーニング法を提供するものであり、候補を見出す方法のみを提供するものではない。
本発明では、O1-180、O1-184またはO1-236を刺激するか、O1-180、O1-184またはO1-236の欠如を克服するか、O1-180、O1-184またはO1-236分子の作用を遮断または阻害する活性を持つ化合物のスクリーニングに、O1-180、O1-184またはO1-236および活性断片、ならびにそれらをコードする核酸を使用することも考えられる。これらのアッセイは多種多様なフォーマットを利用して行うことができ、そのスクリーニングが目的としている「活性」の種類に依存しうる。
ある態様では、O1-180、O1-184もしくはO1-236ポリペプチドまたはその断片に結合する化合物のスクリーニングに、本発明を応用する。ポリペプチドまたは断片は溶解状態で遊離しているか、支持体に固定されているか、細胞中または細胞の表面上に発現していてよい。ポリぺプチド側または化合物側を標識して、結合を検出できるようにすることができる。
もう一つの態様として、アッセイでは、天然または人工の基質または結合パートナーに対するO1-180、O1-184またはO1-236の結合の阻害を測定することができる。薬剤の1つ(O1-180、O1-184またはO1-236、結合パートナーまたは化合物)を標識して競合結合アッセイを行うことができる。通常はポリペプチドが標識分子種になる。遊離標識の量と結合標識の量とを対比して測定することにより、結合または結合の阻害を決定することができる。
化合物のハイスループットスクリーニングを行うためのもう一つの技術は、WO84/03564に記載されている。多数の小ペプチド試験化合物をプラスチックピンなどの固体基盤または他の何らかの表面上に合成する。ぺプチド試験化合物をO1-180、O1-184またはO1-236と反応させ、洗浄する。結合したポリペプチドをさまざまな方法で検出する。
精製されたO1-180、O1-184またはO1-236は、上述の薬物スクリーニング技術で使用するために、プレート上に直接コーティングすることができる。しかし、ポリペプチドに対する非中和抗体を使って、固相にポリペプチドを固定化することもできる。また、反応性領域(好ましくは末端領域)を含む融合タンパク質を使って、O1-180、O1-184またはO1-236活性領域を固相に連結してもよい。
O1-180、O1-184またはO1-236遺伝子中に自然突然変異もしくは人工突然変異または野生型を含むさまざまな細胞株を使って、O1-180、O1-184またはO1-236のさまざまな機能的特性を研究し、候補化合物がこれらの特性にどのように影響を及ぼすかを研究することができる。突然変異を人工的に作る方法は、本明細書の他の項で説明する。また、O1-180、O1-184またはO1-236中に生じて不妊につながる、不妊の一因となる、そして/または他の形で不妊を引き起こす自然突然変異も、本明細書の他の項で説明する。そのようなアッセイでは、化合物の生化学的性質を考慮して、化合物を適当に調合し、標的細胞と接触させる。アッセイによっては細胞培養が必要な場合もある。次に、多種多様な生理学的アッセイに基づいて細胞を調べることができる。あるいは、O1-180、O1-184もしくはO1-236または関連経路の機能を探ることができるような分子解析を行ってもよい。
具体的一態様として、当技術分野で標準的な手段により、本発明のポリペプチド、すなわちO1-180、O1-184またはO1-236を使って、酵母ツーハイブリッド解析を行う。ツーハイブリッドスクリーニングは、あるタンパク質の機能を、そのタンパク質と相互作用する他のタンパク質を同定することによって、解明するためまたは特徴づけるために使用される。機能がわかっていないタンパク質(ここではこれを「ベイト(bait)」という)を、GAL4のDNA結合ドメインをも含んでいるキメラタンパク質として製造する。このキメラタンパク質を発現させるヌクレオチド配列を含むプラスミドで酵母細胞を形質転換する。この酵母細胞は、さまざまな候補標的タンパク質をコードするさまざまなヌクレオチド配列に融合されたGAL4活性化ドメインを含むライブラリーに由来する代表プラスミドも含む。もしベイトタンパク質が標的タンパク質と物理的に相互作用するのであれば、GAL4活性化ドメインとGAL4 DNA結合ドメインとがつながれ、その結果、共同的に作用してレポーター遺伝子の転写を促進することができるようになる。ベイトタンパク質と、ある細胞中の候補標的タンパク質との間に相互作用が起こらない場合は、GAL4成分は離れたままであり、レポーター遺伝子の転写を単独では促進することができない。b-ガラクトシダーゼ、HIS3、ADE2またはURA3を含めて、さまざまなレポーター遺伝子を利用できることが、当業者には知られている。また、GAL4成分の相互作用(したがって特定ベイトと標的タンパク質との相互作用)を示すために、複数のレポーター配列をそれぞれ異なる誘導性プロモーターの制御下に置いて、同じ細胞内で利用することもできる。複数のレポーター配列を使用すれば偽陽性候補を取得する可能性が下がることが、当業者には知られている。また、LexAなどの代替DNA結合ドメイン/活性化ドメイン成分を使用することもできる。レポーター遺伝子のトランス活性化をもたらすことができる限り、任意の活性化ドメインを任意のDNA結合ドメインと組み合わせうることが、当業者には知られている。さらに、LexAシステムの場合と同様に、2つの成分のどちらか一方は、他方の成分が存在してそれらが共同してレポーター遺伝子のトランス活性化を可能にする限り、原核生物由来であってもよいことも、当業者には知られている。
ツーハイブリッド実験の試薬類および設計は、このシステムの最新の改良版(Fashenaら、2000)を含めて、当業者にはよく知られている(P. L. BartelおよびS. Fields編「The Yeast Two-Hybrid System」オックスフォード大学出版局、1997)。当業者には、Clontech(カリフォルニア州パロアルト)製のMatchmaker(商標)システムやHybriZAP(登録商標)2.1ツーハイブリッドシステム(Stratagene;カリフォルニア州ラホーヤ)などの市販のベクター、または研究コミュニティを通して入手できるベクター(Yangら、1995;Jamesら、1996)が知られている。これに代わる態様では、哺乳類(Stratagene(カリフォルニア州ラホーヤ)製の哺乳類ツーハイブリッドアッセイキット)または大腸菌(Huら、2000)などの、酵母以外の生物がツーハイブリッド解析に使用される。
ある代替態様では、細胞質ベースのアッセイでタンパク質-タンパク質相互作用を検出するツーハイブリッドシステムが利用される。この態様では、タンパク質を細胞質で発現させることにより、翻訳後修飾が起こるようにし、また転写活性化因子および転写阻害因子をベイトとしてスクリーニングに使用することができるようにする。そのような系の一例は、Stratagene(カリフォルニア州ラホーヤ)のCytoTrap(登録商標)ツーハイブリッドシステムであり、このシステムでは、hSos(グアニルヌクレオチド交換因子)の酵母ホモログであるcdc25遺伝子に温度感受性突然変異を持つ酵母の細胞膜に標的タンパク質が固定されることになる。ベイトタンパク質が標的に結合すると、hSosが膜に局在化し、GDP/GTP交換を促進することによるRASの活性化が可能になる。次にRASは、突然変異型酵母cdc25Hの37℃での生育を可能にするシグナリングカスケードを活性化する。このシステムのためのベクター(pMyrおよびpSosなど)およびこのシステムに関する他の実験詳細は、Stratagene(カリフォルニア州ラホーヤ)から入手することができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,776,689号も参照されたい)。
したがって、本発明のある態様によれば、O1-180、O1-184またはO1-236と相互作用するペプチドのスクリーニング方法であって、試験ペプチド(この試験ペプチドはDNA結合ドメインに融合されている)をコードするDNAセグメントを含む第1核酸と、O1-180、O1-184またはO1-236の少なくとも一部(このO1-180、O1-184またはO1-236の少なくとも一部はDNA活性化ドメインに融合されている)をコードするDNAセグメントを含む第2核酸とを、細胞に導入することを含む方法が提供される。次に、DNA結合ドメインとDNA活性化ドメインとの相互作用をアッセイすることによって、試験ペプチドとO1-180、O1-184もしくはO1-236ポリペプチドまたはその断片との相互作用に関するアッセイを行う。例えば、DNA結合ドメインと活性化ドメインとの相互作用のアッセイは、b-ガラクトシダーゼ発現の活性化であることができる。
一つの代替方法は、組換えO1-180、O1-184またはO1-236によるl.gt11、l.LZAP(Stratagene)またはこれに等価なcDNA発現ライブラリーのスクリーニングである。組換えO1-180、O1-184もしくはO1-236またはその断片は、FLAG、HSVまたはGSTなどの小さいペプチドタグに融合される。これらのペプチドタグは、便利なキナーゼ(心筋クレアチンキナーゼなど)リン酸化部位を持つことができ、あるいはビオチン化することができる。組換えO1-180、O1-184またはO1-236は、32[P]でリン酸化するか、または標識せずに使用して、ストレプトアビジンまたはタグに対する抗体で検出することができる。l.gt11 cDNA発現ライブラリーを興味ある細胞から作製し、組換えO1-180、O1-184またはO1-236と共にインキュベートし、洗浄し、O1-180、O1-184またはO1-236と相互作用するcDNAクローンを単離する。当業者はこのような方法を日常的に使用している。例えばSambrookの前掲書を参照されたい。
もう一つの方法は、cDNAをベクター中の哺乳類プロモーターとポリアデニル化部位の間にクローニングし、それを細胞に一過性にトランスフェクトする、哺乳類発現ライブラリーのスクリーニングである。48時間後に、固定洗浄した細胞を標識O1-180、O1-184またはO1-236と共にインキュベートすることによって、結合タンパク質を検出する。このようにして、目的の結合タンパク質をコードするcDNAを含むcDNAのプールを選択し、各プールをさらに細分し、一過性トランスフェクション、結合およびオートラジオグラフィーのサイクルを繰り返すことによって、目的のcDNAを単離することができる。あるいは、cDNAライブラリー全体を哺乳類細胞にトランスフェクトし、それらの細胞を、プレートに結合させたO1-180、O1-184またはO1-236を含むディッシュ上でパンニングすることによって、目的のcDNAを単離することもできる。洗浄後に付着している細胞を溶解し、プラスミドDNAを単離し、細菌内で増幅し、トランスフェクションとパンニングのサイクルを、単一のcDNAクローンが得られるまで繰り返す。参照により本明細書に組み込まれるSeedら(1987)およびAruffoら(1987)を参照されたい。結合タンパク質が分泌される場合は、一過性トランスフェクト細胞から得られる上清をアッセイするための結合アッセイまたは中和アッセイがいったん確立されれば、同様のプール戦略によって、そのcDNAを取得することができる。上清をスクリーニングするための一般的方法はWongら(1985)に開示されている。
もう一つの代替方法は、O1-180、O1-184およびO1-236と相互作用するタンパク質を細胞からの直接単離することである。O1-180、O1-184またはO1-236とGSTまたは小ペプチドタグとの融合タンパク質を作製し、ビーズに固定化する。興味ある細胞から、生合成的に標識されたタンパク質または標識されていないタンパク質抽出物を調製し、前記ビーズと共にインキュベートし、緩衝液で洗浄する。O1-180、O1-184またはO1-236と相互作用するタンパク質をビーズから特異的に溶離させ、SDS-PAGEで解析する。結合パートナー一次アミノ酸配列データをマイクロシークエンシングによって得る。所望により、細胞タンパク質のチロシンリン酸化などといった機能的応答を誘発する薬剤で細胞を処理することもできる。そのような薬剤の一例は成長因子または、インターロイキン2などのサイトカインだろう。
もう一つの代替方法は免疫アフィニティー精製である。組換えO1-180、O1-184またはO1-236を標識細胞抽出物または非標識細胞抽出物と共にインキュベートし、抗O1-180、O1-184またはO1-236抗体で免疫沈降させる。免疫沈降物をプロテインA-セファロースで回収し、SDS-PAGEで解析する。非標識タンパク質はビオチン化によって標識され、ストレプトアビジンを使ってSDSゲル上で検出される。結合パートナータンパク質をマイクロシークエンシングによって解析する。さらに、マイクロシークエンシングに先立って、当業者に知られている標準的な生化学精製ステップを使用してもよい。
さらにもう一つの代替方法は、結合パートーナーに関するペプチドライブラリーのスクリーニングである。タグ付きのまたは標識した組換えO1-180、O1-184またはO1-236を使って、ペプチドライブラリーまたはホスホペプチドライブラリーから、O1-180、O1-184またはO1-236と相互作用するペプチドを選択する。ペプチドのシークエンシングは、相互作用するタンパク質に見いだされるかもしれない共通ペプチド配列の同定につながる。
本発明はさまざまな動物モデルの使用も包含する。例えば、ヒトO1-180、O1-184またはO1-236と他の動物O1-180、O1-184またはO1-236の間に認められる一致はいずれも、それが正常に発現される丸ごとの動物の系でのO1-180、O1-184またはO1-236の機能を調べる格好の機会になる。正常なO1-180、O1-184またはO1-236を発現させることができない突然変異型細胞系を開発または単離することにより、マウスに、卵形成および胚発生におけるO1-180、O1-184またはO1-236の機序およびその役割の研究を可能にするモデルを作出することができる。
試験化合物による動物の処置には、化合物を適当な形態で動物に投与することが含まれるだろう。投与は、例えば経口、鼻腔、口腔、直腸、腟内または局所経路など、これらに限定されることなく、臨床目的または非臨床目的に利用することができる任意の経路で行われるだろう。あるいは、投与は、気管内点滴、気管支点滴、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内または静脈内注射によって行うこともできる。特に、全身的静脈内注射、血液供給またはリンパ供給を介した局部的投与および腫瘍内注射が考えられる。
ある化合物のインビボでの有効性の決定には多種多様な基準が含まれうる。そのような基準には、例えば妊性の向上、妊性の減少または避妊が含まれるが、これに限定されない。
本発明の一態様では、機能的O1-180、O1-184もしくはO1-236ポリペプチドまたはその変異体をコードする機能的導入遺伝子を含むトランスジェニック動物が作出される。O1-180、O1-184またはO1-236導入遺伝子を発現させるトランスジェニック動物、そのような動物から得られる組換え細胞株、およびトランスジェニック胚は、O1-180、O1-184またはO1-236の機能を誘導または抑制する薬剤のスクリーニング、および同定に役立ちうる。本発明のトランスジェニック動物は、疾患状態を研究するためのモデルとして使用することもできる。
本発明の一態様において、O1-180、O1-184またはO1-236導入遺伝子を非ヒト宿主に導入して、O1-180、O1-184またはO1-236を発現させるトランスジェニック動物を作出する。本トランスジェニック動物は、導入遺伝子が発現できるような形でゲノムに導入遺伝子を組み込むことによって作出される。トランスジェニック動物の作出方法は、WagnerおよびHoppe(米国特許第4,873,191号;その内容はこの引用により本明細書に記載されたものとする)、Brinsterら, 1985(その内容はこの引用により本明細書に記載されたものとする)および「Manipulating the Mouse Embryo; A Laboratory Manual」第二版、Hogan, Beddington, CostantimiおよびLong編, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1994(その内容はこの引用により本明細書に記載されたものとする)に概説されている。導入遺伝子の発現は、サイトカインまたはホルモン応答因子のような配列を組み込むことにより調節可能にすることができる。これは、ホルモンまたはサイトカインで調節可能なプロモーター等を用いて行われる。使用することができる、サイトカインおよび炎症タンパク質応答性プロモーターには、KおよびTキニノーゲン(Kageyamaら, 1987)、c-fos、TNF-アルファ、C-反応性タンパク質(Arconeら, 1988)、ハプトグロビン(Olivieroら, 1987)、血清アミロイドA2、C/EBPアルファ、IL-1、IL-6(PoliおよびCortese, 1989)、補体C3(Wilsonら, 1990)、IL-8、アルファ-1酸グリコプロテイン(ProwseおよびBaumann, 1988)、alpha-1 antitypsin(抗トリプシン)、リポタンパク質リパーゼ(Zechnerら, 1988)、アンギオテンシノーゲン(Ronら, 1991)、フィブリノーゲン、c-jun(ホルボールエステル類、TNF−アルファ、UV照射、レチノイン酸、および過酸化水素により誘導可能)、コラゲナーゼ(ホルボールエステル類およびレチノイン酸によって誘導される)、メタロチオネイン(重金属およびグルココルチコイドで誘導可能)、ストロメリシン(ホルボールエステル、インターロイキン-1およびEGFにより誘導可能)、アルファ-2マクログロブリン、およびアルファ-1抗キモトリプシンがある。
導入遺伝子と内在性遺伝子との相同組換えによって内在性O1-180、O1-184またはO1-236を置き換えることが望ましいだろう。あるいは、「ノックアウト」動物を作出する場合のように、欠失によって内在性遺伝子を除去することもできる。典型的には、興味ある遺伝子の一部と選択マーカーとを含む標的ベクターを作製し、胚性幹(ES)細胞にトランスフェクトする。これらの標的ベクターは、hprt陰性ES細胞株にエレクトロポレートされ、HATおよびFIAU中で選択される。正しい突然変異を持つES細胞を胚盤胞に注入して、突然変異型O1-180、O1-184およびO1-236遺伝子に関するキメラを作出し、最終的にはヘテロ接合体およびホモ接合体を作出する。例えば「ノックアウト」マウスにはO1-180、O1-184またはO1-236が存在しないことを利用して、O1-180、O1-184またはO1-236タンパク質の喪失がインビボで細胞に及ぼす影響を研究することができる。
上記したように、トランスジェニック動物および細胞株は、特定の実験で使用されるそのような動物に由来する。この場合、野生型または突然変異O1-180、O1-184およびO1-236を発現できるトランスジェニック動物および細胞株を試験物質に曝すことができる。これらの試験物質を、野生型O1-180、O1-184およびO1-236発現および/または機能を増強する能力、または突然変異O1-180、O1-184およびO1-236の発現および/または機能を減じる能力についてスクリーニングすることができる。
vii.患者に投与するための製剤および経路
臨床的用途が考えられる場合は、意図する用途に適した形態の医薬組成物(発現ベクター、ウイルスストック、タンパク質、抗体および薬物)を製造する必要があるだろう。一般に、これには、発熱物質およびヒトまたは動物に対して有害であるかもしれない他の不純物を基本的に含まない組成物の製造が必要だろう。
一般的には、送達ベクターを安定化し、標的細胞による取り込みを可能にするために、適当な塩類および緩衝液を使用することが望まれるだろう。緩衝液は、組換え細胞を患者に導入する場合にも使用されるだろう。本発明の水性組成物は、薬学的に許容できる担体または水性媒質に溶解または分散された有効量の細胞向けベクターを含む。そのような組成物は接種材料とも呼ばれる。「薬学的または薬理学的に許容できる」という表現は、動物またはヒトに投与したときに有害反応、アレルギー反応または他の不都合な反応を引き起こさない分子的実体および組成物を指す。本明細書にいう「薬学的に許容できる担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤、抗真菌剤、浸透圧調節剤、吸収遅延剤などを包含する。医薬活性物質へのそのような媒質および薬剤の使用は、当技術分野ではよく知られている。通常の媒質または薬剤は、それが本発明のベクターまたは細胞と適合しない場合を除き、治療用組成物への使用が考えられる。組成物には追加活性成分も組み込むことができる。
本発明の活性組成物には、古典的医薬調製物を含めることができる。これら本発明組成物の投与には、どの一般的経路であっても、その経路で標的組織に到達することができる限り、使用することができる。これには経口、鼻腔、口腔、直腸、膣内および局所経路が含まれる。あるいは、投与は、同所性、経皮、皮下、筋肉内、腹腔内または静脈内注射によって行うこともできる。そのような組成物は、通常は上述の薬学的に許容できる組成物として投与されるだろう。
活性化合物は、非経口投与または腹腔内投与することもできる。遊離塩基または薬理学的に許容できる塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合した水中に調製することができる。分散液をグリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物中、ならびに油中に調製することもできる。通常の貯蔵および使用条件では、これらの調製物は微生物の成長を防止するために保存剤を含む。
注射用途に適した医薬形態には、滅菌水溶液または滅菌水性分散液、および滅菌注射用溶液または滅菌注射用分散液の即時調合用の滅菌粉末が含まれる。いずれの場合も、剤形は滅菌されていなければならず、容易に注射器を通過する程度に流動性でなければならない。また、製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、その適当な混合物、および植物油などを含む溶媒または分散媒であることができる。適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散系の場合には必要な粒径の維持によって、また界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、さまざまな抗細菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって実現することができる。多くの場合、浸透圧調節剤、例えば糖または塩化ナトリウムなどを含めることが好ましいだろう。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどを組成物中に使用することによって達成することができる。
滅菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を、適当な溶媒中で、上に列挙した他のさまざまな成分と必要量で混合した後、濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、基礎分散媒と上に列挙したものから選択される他の必要な成分とを含む滅菌ビヒクルにさまざまな滅菌活性成分を混合することによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい製造方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、これにより、活性成分プラス先に滅菌濾過したその溶液に由来する所望の追加成分の粉末が得られる。
本明細書にいう「薬学的に許容できる担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤、抗真菌剤、浸透圧調節剤、吸収遅延剤などを包含する。医薬活性物質へのそのような媒質および薬剤の使用は、当技術分野ではよく知られている。通常の媒質または薬剤は、それが本発明の活性成分と適合しない場合を除き、治療用組成物への使用が考えられる。組成物には追加活性成分も組み込むことができる。
経口投与の場合、本発明のポリペプチドを賦形剤と混合し、非摂取用含嗽剤および歯磨剤の形で試用することができる。含嗽剤は必要量の活性成分を適当な溶媒、例えばホウ酸ナトリウム溶液(ドーベル液)などに混合することによって製造することができる。あるいは、ホウ酸ナトリウム、グリセリンおよび重炭酸カリウムを含む殺菌洗浄剤に活性成分を組み込むこともできる。活性成分は、ゲル剤、ペースト剤、粉末剤およびスラリー剤を含む歯磨剤に分散させてもよい。水、結合剤、研磨剤、着香剤、起泡剤および湿潤剤を含みうる練り歯磨き剤に、治療有効量の活性成分を加えることができる。
本発明の組成物は、中性または塩の形で製剤化することができる。薬学的に許容できる塩には、酸付加塩(タンパク質の遊離のアミノ基を使って形成されるもの)が含まれ、これらは例えば塩酸またはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸を使って形成される。遊離のカルボキシル基を使って形成される塩も、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導することができる。
製剤化が終わったら、溶液剤は、その剤形に適した方法で、治療的に有効であるような量で投与されるだろう。製剤は、注射用溶液、薬物放出カプセルなどのさまざまな剤形で、容易に投与される。例えば、水性溶液剤として非経口投与する場合は、溶液が必要に応じて適切に緩衝化されているべきであり、希釈液をまず十分量の食塩水またはグルコースで等張性になるようにする。これらの特定の水溶液は静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与にとりわけ適している。これに関して、使用することができる滅菌水性媒質は、本明細書の内容を考慮すれば、当業者にはわかるだろう。例えば、1回量を1mlの等張性NaCl溶液に溶解し、それを1000mlの皮下注入液に加えるか、注入しようとする部位に注射する(例えば「Remington's Pharmaceutical Sciences」第15版の1035〜1038頁および1570〜1580頁を参照されたい)。処置対象の状態に応じて投与量には必然的にある程度の変動が生じるだろう。いずれにせよ、投薬責任者は個々の対象に適した用量を決定することになる。さらに、ヒト投与の場合、調製物は、FDA生物製剤局の基準が要求する滅菌性、発熱原性、一般的安全性および純度の基準を満たすべきである。
viii.実施例
本発明の好ましい態様を例示するために、以下に実施例を記載する。以下の実施例に開示する技術は、本発明者らが本発明の実施に際してうまく機能することを見いだした技術を表し、したがってその実施の好ましい形態を構成するとみなすことができるということは、当業者には理解されるはずである。しかし、ここに開示する具体例には数多くの変更を加えることができ、それでもなお本発明の精神および範囲から逸脱することなく、よく似たまたは同類の結果が得られることは、本明細書の開示に照らして、当業者には理解されるだろう。
<実施例1>
cDNAサブトラクティブハイブリダイゼーションライブラリーの作製
Gdf9ノックアウトマウスの卵巣は、卵胞形成の初期障害により、野生型の卵巣とは組織学的に著しく異なる。特に、Gdf9ノックアウト卵巣では単層一次卵胞が比較的豊富で、卵母細胞喪失後に異常卵胞巣が形成される。本発明者らは、Gdf9ノックアウト卵巣でアップレギュレートされる新規卵巣発現転写物をクローニングするために、卵巣組成のこれらの相違を利用し、それらを遺伝子発現パターンの変化と関連付けた。
Gdf9ノックアウトマウス(C57BL/6/129SvEv雑種)または野生型マウスから卵巣を集め、各プールからポリA+ mRNAを調製した。本発明者らは、CLONTECH PCR-Selectサブトラクションキットの変法を使って、Gdf9ノックアウト卵巣中でアップレギュレートされる配列が濃縮されていると予想されるpBluescript SK+プラスミド型cDNAライブラリーを作製した。
ベクターに複数のインサートが挿入されることを防止するために、低いモル比のEagI消化cDNA断片インサートを使ってpBluescript SK+のNotI部位へのライゲーションを行なった。形質転換を行ない、>1000個の独立した細菌クローンを拾い、グリセロール中−80℃で保存した。ライゲーション混合物の残りは、将来行われる形質転換に備えて−80℃で保存した。
<実施例2>
pOvary1(pO1)ライブラリーインサートの初回配列解析
本発明者らは、cDNAライブラリーのpO1サブトラクティブハイブリダイゼーションによって得た331個のインサートの配列解析を行った。Applied Biosystems 373 DNAシークエンサーを使ってこれらのクローンを配列決定した。米国国立バイオテクノロジー情報センターのデータベースを使ってBLAST検索を行なった。DNASTAR解析プログラムを使って新規配列をオープンリーディングフレームに関して解析し、以前に同定された新規配列と比較した。そのデータを表1に要約する。表に示すように、クローンの大半は既知遺伝子であるか、マウスまたはヒトESTに一致した。9.4%のクローンがデータベース中のどの既知配列とも一致しなかった。
Figure 2006506952
<実施例3>
ノーザンブロット解析
ノーザンブロット解析を、当該技術においてよく知られおよび使用される標準的な技法を用いて行った。簡単に言えば、組織からの全RNAを、RNA STAT-60法(Leedo Medical Laboratories, Inc.)により得た。RNAを次の組織から分離した。卵巣、脳、肺、心臓、胃、脾臓、肝臓、小腸、腎臓、精巣、子宮、大腸、前立腺、胎盤、すい臓、および筋肉。RNAのアガロースゲル電気泳動、ナイロン膜への転写、および続くハイブリダイゼーションを、標準的方法(Sambrookら、1989)により行った。
<実施例4>
インサイチューハイブリダイゼーション
卵巣のインサイチューハイブリダイゼーションを、部分的NpmlNpm2もしくはNpm3Zarl、またはO1-184 cDNA断片を用いて上述したように行った(Albrechtら、1997; Elvinら、1999)。「センス」プローブはハイブリダイゼーションを示さなかった(非掲載のデータ)。簡単にいうと、pBluescript SK+またはT-ベクター(Promega, Madison,ウィスコンシン州)中のcDNA断片は、Riboprobe T7/SP6コンビネーションシステム(Promega)を用いて[35S]-dUTPを有するセンスおよびアンチセンス鎖を生成させるための鋳型として働いた。切片を写真感光乳剤に4〜7日40℃でさらした。スライドを現像・定着した後、ヘマトキシリンで対比染色した。
<実施例5>
卵母細胞の採集と胚培養
非SN(surrounded nucleolus)(包囲核)構造の卵母細胞を採集するため、複数の10日齢マウスの卵巣を、説明(Eppig、1978)のとおりコラゲナーゼで消化した。
GV期の卵母細胞のために、成熟した雌の腹腔内に5IUのPMSG(妊馬血清性性腺刺激ホルモン)を注射し、そして、卵母細胞を46時間後に大卵胞穿刺により回収した。
中期II卵母細胞またはインビボ受精胚のために、雌を5IUのPMSGその後5IUのhCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)で処理し、説明(Hoganら、1994)されるように過排卵を誘発させた。受精のために、雌を一夜、種雄と交配させ、翌朝、膣栓を確認した。成熟した中期II卵母細胞および1細胞胚を、hCG処理後18〜24時間で卵管からM2培地(Sigma, St.Louis, ミズーリ州)にヒアルロニダーゼを用いて回収した。hCG後45、55および72時間の胚の採集を、M2培地で卵管を洗い流すことにより行った。24時間培養実験のために、卵および胚を、胚盤胞期への移行(このときM15に移した)までM16培地(Sigma)にて5%CO2下保持した。一つの実験のため、コルセミドを培地に加えて細胞を有糸分裂で停止させた(Sigma #D1925;160 ng/mL)。
体外受精のために、性的に成熟した複数のマウスに5IUのPMSGを注射し、46時間後に卵丘で囲まれた卵母細胞複合体を分離し、5%血清の最少必須培地で17時間培養した。成熟したMII期の卵を、野生型(C57BL/6J x SJL/J)F1マウスからの受精能を獲得した精子と、説明(Eppig、1999)されるように混ぜた。接合体および2細胞期胚の発生を、受精後6および24時間でそれぞれ評価した。
<実施例6>
卵巣発現遺伝子のcDNAスクリーニングおよび発現解析
任意のデータベースにある配列に合わなかったすべてのcDNAについてノーザンブロット解析を行った。加えて、マウスの2細胞胚cDNAライブラリーから主として得られるEST類(例えば、Zar1、O1-184およびNpm2)に合う配列を解析した。EST類のこの最後のグループを解析する理論的根拠は、卵母細胞において高レベルで発現されるmRNAは2細胞期まで存続し得、そして、初期胚の発生(卵の受精または雌および雄の前核の融合を含む)に役割を果たし得るということであった。
新規卵巣遺伝子の初期スクリーニングの結果を表2に記載する。23個のクローンをノーザンブロット解析したところ、これらのクローンのうち8個がGdf9ノックアウト卵巣中でアップレギュレートされることが明らかになり、このことから、使用したサブトラクティブハイブリダイゼーションプロトコールは妥当であったことが示された。また、成体C57BL/6/129SvEv雑種マウス(卵巣RNA)またはSwiss WEBSTERマウス(他の全組織)から単離した全RNAを使ってノーザンブロット解析を行なったところ、これらのクローンのうち、2細胞ライブラリーから配列決定されたESTと一致する2つのクローンを含む4つのクローンが、卵巣だけに発現することが明らかになった(図1)。O1-236断片プローブ(749bp)によって、約1.0kbの転写物が検出された(図1)。現在までに数個のクローンをその卵巣局在についてインサイチューハイブリダイゼーション解析によって解析した(図2)。クローンO1-180(以下Zar1という)、O1-184およびO1-236(以下Npm2という)は卵母細胞特異的であり、一次(単層)前胞状卵胞から排卵に至るまで卵母細胞中に発現していた(図2)。
Figure 2006506952
O1-236遺伝子産物は卵母細胞特異的である(図3)。O1-236は原始卵胞(2型)または小さい3a型卵胞の卵母細胞では発現されなかったが(Pedersenら、1968)、中サイズの3a型卵胞およびすべての3b型卵胞(すなわち最大横断面内で、>20個の顆粒膜細胞が卵母細胞を取り囲んでいる卵胞)の卵母細胞で初めて検出された。O1-236 mRNAの発現は胞状卵胞段階まで持続した。興味深いことに、O1-236遺伝子産物の卵母細胞特異的発現パターンは、Gdf9(McGrathら、1995)および骨形成タンパク質(Dubeら、1998)を含む本研究者らが研究した他の卵母細胞特異的遺伝子の発現に似ている。
<実施例7>
マウスNpm2のクローニング
野生型卵巣およびGdf9ノックアウトZAP Express卵巣cDNAライブラリーを合成し、スクリーニングして、上述した3つのクローンの完全長cDNAを単離した。各完全長cDNAを再びデータベース検索にかけ、オープンリーディングフレーム、開始ATGおよびタンパク質ホモロジーについて解析した。完全長cDNAはノーザンブロット解析から決定されたmRNAサイズに近い。予想アミノ酸配列を使ったデータベース検索により、新規タンパク質の考えうる機能と細胞局在を明確にするのに役立つ重要なドメイン(例えばシグナルペプチド配列、膜貫通ドメイン、ジンクフィンガーなど)を同定することができた。
野生型卵巣またはGDF-9欠損卵巣から作製したMatzukラボラトリーZAP Express(Stratagene)卵巣cDNAライブラリーを、実施例1で同定されたO1-236部分cDNA断片を使ってスクリーニングした(Dubeら、1995)。簡単に述べると、野生型マウスまたはGDF-9ノックアウトマウス卵巣cDNAライブラリーの約300,000クローンを、チャーチ(Church)溶液中、63℃で、[a-32P]dCTPランダムプライムドプローブにハイブリダイズさせた。フィルターを0.1×チャーチ溶液で洗浄し、−80℃で終夜露出した。
マウス卵巣cDNAライブラリーの一次スクリーニングでは、O1-236 cDNA断片により、スクリーニングした300,000個のうち22個の陽性ファージクローンが検出された。これらのクローンのうち、mRNAサイズに近く、2つの独立したライブラリーに由来する2つのクローン(236-1と236-3)を、制限エンドヌクレアーゼ消化およびDNA配列解析によってさらに解析した。これらの独立クローンは984bpのオーバーラップコンティグ(ポリA配列を除く)を形成し、207アミノ酸のオープンリーディングフレームをコードする(図4)。ポリAテールを含めると、この配列はノーザンブロット解析でみられた約1.0kb mRNAに近くなることから、5'UTR配列のほぼ全てが単離されたことが示唆される。ヌクレオチド配列を公開データベース検索にかけたが、有意な一致は得られなかった。しかし、207アミノ酸のオープンリーディングフレームを使ってデータベース検索を行なったところ、いくつかの種のいくつかのヌクレオプラスミンホモログとの高いホモロジーが明らかになった。興味深いことに、O1-236はアフリカツメガエルヌクレオプラスミンと最も高いホモロジーを示す。O1-236はアミノ酸レベルでアフリカツメガエルヌクレオプラスミンと48%一致した(図4)。このホモロジーおよび両遺伝子産物の卵母細胞における発現パターンから判断して、この遺伝子はアフリカツメガエルヌクレオプラスミン[Xnpm2と呼ばれる(MacArthurら、1997)]の哺乳類オルソログであるので、本発明者らはこの遺伝子をNpm2と命名した。よって、以下O1-236はNpm2を指す。
<実施例8>
ヒトNPM2のクローニング
Npm2 cDNA配列を使ってESTデータベースを検索することにより、マウスNpm2に相同な配列を含む2つのヒトcDNAクローンが見つかった。これらの2つのESTの配列解析を行った。これら2つの独立したクローンは923bpのオーバーラップコンティグを形成し、これは214アミノ酸のオープンリーディングフレームをコードしていた。アミノ酸レベルでは、ヒトNPM2はXnpm2およびマウスNpm2に対して、それぞれ48%および67%一致していた(図4)。
さらに、図4に示すとおり、マウスNPM2の207アミノ酸は、アフリカツメガエルNPM2と39.5%の一致度を有する。続いて、ヒトおよびラットNPM2タンパク質は、マウスNPM2と61.4%および81.6%一致した。
カエルと哺乳類のNPM2配列を比較したところ、いくつかの興味深い特徴が認められた。ヌクレオプラスミンはKR-(X)10-KKKKからなる二極性核移行シグナルを持っていた(Dingwallら、1987)。ヌクレオプラスミン中のこれらの塩基性アミノ酸クラスターのどちらかを欠失させると、核への移行が妨げられた(Robbinsら、1991)。マウスとヒトのNPM2配列を解析したところ、この二極性配列は上記2つのタンパク質間で100%保存されていた(図4)。したがって、哺乳類NPM2は核に移行し、主にそこで機能すると予想された。
また、負荷電残基の長いストレッチも、NPM2とヌクレオプラスミンの間で保存されていた。NPM2のアミノ酸125〜144と、ヌクレオプラスミンのアミノ酸128〜146は、ほとんどがグルタミン酸残基とアスパラギン酸残基であり、NPM2では20残基のうちの19残基が、またヌクレオプラスミンでは19残基のうちの16残基がAspまたはGluである。アフリカツメガエルヌクレオプラスミンのこの領域は、正に荷電したプロタミンおよびヒストンへの結合と結びつけられている。したがって、NPM2のこの酸性領域にも同様の機能が予想された。
NPM2配列およびヌクレオプラスミン配列のさらに明らかな特徴は、セリン残基およびトレオニン残基の数が多いことである。NPM2配列は19のセリンと17のトレオニン(すなわち残基の17.2%)を含み、ヌクレオプラスミンは12のセリン残基と11のトレオニン残基(すなわち残基の11.5%)を有した。二つのタンパク質間で保存されていた幾つかの推定リン酸化配列を図4に示す。ヌクレオプラスミンのリン酸化は、その核へのトランスロケーションを増加させ、さらにその活性も増加させると考えられる(Sealyら、1986、Gottenら、1986、Vancurovaら、1995、Lenoら、1996)。同様に、リン酸化はNPM2の活性も変え得る。リン酸化は、NPM2がいつ働くかを制御するように作用することができ、重要な時期(すなわち、雄および雌の前核へのヒストン付加または転写停止時期)までそれを不活性にすることができると考えられる。
推定される特定のリン酸化部位は、例えば、カゼインキナーゼIIである。カゼインキナーゼはIIは、ヌクレオプラスミンと特異的に相互作用し、それをリン酸化する。そして、カゼインキナーゼIIの阻害剤は、アフリカツメガエルヌクレオプラスミンの核への輸送を遮断する(Vancurovaら、1995)。おもしろいことに、予想されるカゼインキナーゼIIリン酸化部位の二つは、カエルヌクレオプラスミン2(Serl25およびSerl77)、マウスNPM2(Thrl23およびSerl84)、ヒトNPM2(Thrl27およびSerl91)の間で保存されている。他のリン酸化部位もおそらく重要であるが、インビボでのカゼインキナーゼII-NPM2相互作用を哺乳動物において予想できる。
マウスおよびヒトのNPM2とアフリカツメガエルヌクレオプラスミンとは、ともにmRNAのレベルで卵母細胞(および卵)特異的であり、最も高い一致度を示すので、哺乳動物NPM2とカエルヌクレオプラスミンとはオルソログであると判断された。
<実施例9>
Npm2遺伝子の構造
マウスNpm2遺伝子を同定するために、完全長Npm2 cDNAの1つ(クローン236-1)を使って、マウス129/SvEvゲノムライブラリー(Stratagene)をスクリーニングした。500,000個のファージをスクリーニングして12個の陽性ファージを同定した。オーバーラップしたこれらのファージクローンのうちの2つ、すなわち236-13と236-14(約37kbの全ゲノム配列)を使って、マウスNpm2遺伝子の構造を決定した。マウスNpm2は9個のエクソンによってコードされ、約6.6kbにまたがっている(配列番号7)。中サイズの2つのイントロン(イントロン4および5)が、この遺伝子サイズの大半を占めていた。開始ATGコドンはエクソン2に存在し、終止コドンはエクソン9に存在した。スプライス供与部位とスプライス受容部位(配列番号7)はげっ歯類動物に見いだされるコンセンサス配列とよく一致し、すべてのイントロン-エクソン境界が「GT-AG」則に従っていた(Senapathyら、1990)。コンセンサスポリアデニル化シグナル配列が、上記2つの単離cDNA中に存在するポリA領域の上流に見いだされた(配列番号5)。
<実施例10>
マウスNpm2遺伝子の染色体マッピング
マウスで遺伝子の染色体マッピングを行うと、マウスの自然突然変異または誘発突然変異に関係する候補遺伝子が同定される。単離された新規卵巣特異的cDNAの機能解析をさらに助けるために、Research Geneticsの放射線ハイブリッドパネル(Radiation Hybrid Panel)を使って、これらのマウス遺伝子をマッピングした。この技術を使ってマッピングされた遺伝子を表3に示す。また、ヒト染色体上のシンテニー領域を同定することにより、これらの新規卵巣遺伝子の1つまたは複数が、これらの領域にマッピングされる既知のヒト疾患の候補遺伝子であると同定されうる。
Figure 2006506952
マウスNpm2遺伝子をマッピングするために、本発明者らは、Research Geneticsの放射線ハイブリッドパネル、ジャクソンラボラトリー戻し交雑DNAパネルマッピングリソース(Jackson Laboratory Backcross DNA Panel Mapping Resource)およびジャクソンラボラトリーマウス放射線ハイブリッドデータベース(Jackson Laboratory Mouse Radiation Hybrid Database)を利用した。最後のエクソン内にあるフォワードプライマー(配列番号17:GCAAAGAAGCCAGTGACCAAGAAATGA)およびリバースプライマー(配列番号18:CCTGATCATGCAAATTTTATTGTGGCC)を使って、マウスには存在するがハムスターには存在しない229bpの断片をPCR増幅した。これらのプライマーを使うことによって、マウスNpm2遺伝子は14番染色体の中央にマッピングされた(図5)。Npm2はD14Mit32との連鎖(LODは11.2)を示し、またD14Mit203とも7.8のLODを持っていた。この領域はヒト染色体8p21とシンテニックである。
<実施例11>
マウスNpm2の卵巣特異的発現
インサイチューハイブリダイゼーションは既述および実施例4のように行った(Albrechtら、1997;Elvinら、1999)。
簡単に述べると、C57B16/129SvEvマウスから卵巣を切除し、PBS中の4%パラホルムアルデヒドで一晩固定した後、処理し、パラフィンに包埋し、5mmに薄切した。断片Npm2をテンプレートとして用いて、[a32P]-dUTPとRiboprobe T7/SP6コンビネーションシステム(Promega)を使って、センス鎖およびアンチセンス鎖を作製した。ハイブリダイゼーションは、1スライドあたり各リボプローブについて5×106cpmを使って、50%脱イオンホルムアミド/0.3M NaCl/20mM Tris-HCl(pH8.0)/5mM EDTA/10mM NaPO4(pH8.0)/10%硫酸デキストラン/1×デンハート液/0.5mg/ml酵母RNA中、50〜55℃で、16時間行った。高ストリンジェンシーの洗浄を、2×SSC/50%ホルムアミドおよび0.1×SSC中、65℃で行った。脱水した切片をNTB-2乳剤(Eastman Kodak、ニューヨーク州ロチェスター)に浸漬し、40℃で4〜7日間露出した。スライドを現像し定着した後、ヘマトキシリンで染色し、マウントして写真撮影を行った。
Npm2遺伝子産物は卵母細胞特異的だった(図6Aおよび6B)。プローブは成長するすべての卵母細胞での特異的発現を示す。卵母細胞特異的発現は初期単層一次卵胞(3a型)に初めて認められ、単層3b型卵胞と、胞状(an)卵胞を含むその後のすべての段階では、発現量が多くなった。「センス」プローブは、この卵母細胞特異的遺伝子のシグナルを検出しなかった。
<実施例12>
NPM2の細胞内局在
抗NPM2抗体を使ったマウス卵巣の免疫組織染色によって、NPM2タンパク質の細胞内局在を決定した。
完全長マウスNPM2タンパク質をコードするcDNAを、PCRで増幅することにより、開始コドンの前にBamH1部位を導入し、停止コドンの前にXhoI部位を導入した。Hisタグ付きNPM2タンパク質を作製するために、このPCR断片をpET-23b(+)(Novagen)にクローニングし、配列決定を行って突然変異がないことを確認した。組換えNPM2タンパク質はpETシステムマニュアル(Novagen)に記載されているように精製した。2頭のヤギを精製Hisタグ付きNPM2で免疫して、特異的かつ高親和性の抗体を産生させた。
卵巣をPBS中の4%パラホルムアルデヒドで2時間固定し、処理し、パラフィンに包埋し、5mmの厚さに薄切した。ヤギ抗NPM2ポリクローナル抗血清を、Common Antibody Dilute(BioGenex)で1:2000に希釈した。同じヤギから得た免疫前ヤギ血清を対照として使用した。すべての切片をUniversal Blocking Reagent(BiogGenex)中で10分間ブロックし、一次抗体と共に室温で1時間インキュベートした。NPM2検出は、抗ヤギビオチニル化二次抗体、ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼ標識、およびNew Fuschin基質(BioGenex Laboratories, Inc.、カリフォルニア州サンラモン)を使って行った。
1〜8細胞胚および胚盤胞を、96ウェル丸底プレートにて、PBS中の4%パラホルムアルデヒドで、2時間固定し、0.85%食塩水で洗浄し、数滴の1.5%アガロースに包埋した。そのアガロース含有胚を脱水し、パラフィンに包埋し、上述のように解析した。
Npm2 mRNAの発現パターンと一致して、NPM2タンパク質は3型段階から胞状濾胞段階まで卵母細胞中で発現していた。ランダム周期マウスでは、抗NPM2抗体が核を強く特異的に染色した(図6C)。卵母細胞核は卵核胞(GV)とも呼ばれる。黄体形成ホルモン(LH)の排卵前サージはGV卵母細胞の成熟を加速し、GV崩壊(GVB)を促進する。マウスにPMSGとhCGを注射して過剰排卵を誘発すると、NPM2タンパク質は卵核胞崩壊後に胞状卵胞の卵母細胞に再分布する。排卵前GVB卵母細胞では、NPM2は卵母細胞の細胞質に均等に分布していた(図6D)。xNPM2は受精後の精子DNA脱凝縮および前核形成に関与することが示唆されているので、この再分布により、細胞質NPM2が受精時に精子核と相互作用するために適正な位置についたことが示唆された。受精後のNPM2発現を調べるために、初期胚を固定し、薄切し、抗NPM2抗体で染色した。接合子では、NPM2は再び核に移行し始めた。図6Eは、一方の前核は形成されたが他方はまだ完成しておらず、多少のNPM2がまだ細胞質に存在するという中間段階を示している。その後のある時点では(図6F)、NPM2のすべてが前核内に存在した。2細胞胚(図6G)および8細胞胚(図6H)では、抗体は依然としてもっぱら核内でNPM2タンパク質を検出した。胚盤胞(胎生3.5日)では、NPM2がかなり低下したレベルで依然として検出されたが、胎生6.5日の胚では、NPM2発現は検出できなかった。
<実施例13>
Npm2ノックアウトマウスの作出
哺乳類卵母細胞発生および初期胚発生におけるNPM2の役割を調べるために、本発明者らはマウスNpm2遺伝子座をES細胞技術を使って破壊した。
翻訳開始コドンを含むエクソン2ならびにエクソン3およびエクソン4スプライス接合部を欠失させるためにターゲティングベクターを構築した(図7A)。エクソン2以外の部分では、残りの配列には他にATGは1個しか存在せず(エクソン6)、このATGは酸性ドメインの下流にあって、二極性核局在化コンセンサス配列の間に位置した。この欠失ターゲティングベクターは、左から右に、2.2kbの5'Npm2ホモロジー、PGK-hprt発現カセット、4.6kbの3'Npm2ホモロジーおよびMC1-tk(チミジンキナーゼ)発現カセットを含む。線状化したNpm2ターゲティングベクターをAB2.1 ES細胞にエレクトロポレートした。HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン)ならびにFIAU[1-(2'-デオキシ-2'-フルオロ-B-D-アラビノフラノシル)-5'-ヨードウラシル]を含むM15培地で、ES細胞クローンを選択した。ES細胞の培養および胚盤胞の収集と注入(Matzukら、1992)。
ゲノムサザンブロット解析のために、Bg1II消化DNAをGeneScreen Plusナイロン膜に移し、エキソン9配列に相当する外部190bp PCR合成断片(3'プローブ)でプローブした。DNAをBamH1で消化した場合は、野生型対立遺伝子とNpm2ヌル(Npm2 tm1Zuk、ここでNpm2 -/-と呼ぶ)対立遺伝子を区別するために、内部200bp PCR合成断片(49bpエキソン1+150bp 5'上流配列)も使用した。これら交雑雑種からの230のF2子孫の遺伝子型解析(図7B、表4)は、通常の1:2:1のメンデル比と一致しており、同様の数の雄および雌のホモ接合体(Npm2 -/-)が得られた。従って、Npm2ホモ接合変異体の雄および雌マウスは生存可能であり、正常な性分化を有しているようであった。これは、Npm2が出生より前には必要でなかったことを示している。
Figure 2006506952
Npm2ホモ接合体として遺伝子型別されたマウスがNpm2を欠いていることを確認するために、野生型Npm2遺伝子のエクソン2にハイブリダイズするcDNAプローブを使って、サザンブロット解析を行った。図に示すように(図7C)、このプローブは、エクソン2を欠失させたホモ接合性(Npm2 -/-)マウスに由来するDNAには、なんのシグナルも検出することができなかった。さらに、Npm2ホモ接合体および対照に対して、Npm2免疫組織化学的解析を行った。ヘテロ接合型対照から得た卵巣にはNPM2タンパク質の発現が認められるが(図8Aおよび8C)、ホモ接合体卵巣中の卵母細胞にはタンパク質は検出されなかった(図8Bおよび8D)。
これにより、Npm2tm1Zuk突然変異はヌル対立遺伝子であり、Npm2ホモ接合体はNPM2タンパク質を完全に欠いていることが確認された。
<実施例14>
NPM2の喪失は雌の不妊および低受胎をもたらす
生殖機能におけるNPM2の機能を調べるために、成体ホモ接合性雑種(C57B1/6/129SvEv)雄または雌マウスを対照ハイブリッドマウス(C57Bl/6/129SvEv)と交雑した。Npm2 mRNAおよびタンパク質の雌特異的発現と合致して、Npm2 -/-雄マウスは妊性であり、精巣に肉眼的または組織学的欠損はなかった。同様に、9匹の雌および雄Npm2 +/-雄の6ヶ月にわたる交雑は、正常な数の同腹子(n=54; 1.00±0.06同腹子/月)(8.98±0.31子孫/一腹)をもたらした。これに対し、14匹のNpm2 -/-雌のうち11匹しか、この期間に妊娠せず、40匹の同腹子をもたらした(0.48±0.11同腹子/月)(2.65±0.24子孫/一腹)。従って、NPM2の欠損は、雌において低受胎および不妊につながる。しかし雄はそうではない。
<実施例15>
Npm2ヌル受精卵中の初期分割欠損
Npm2 -/-雌マウスにおける妊性欠損の原因を決定するために、卵巣をまず形態学的および組織学的に調べた。Npm2 -/-卵巣と対照卵巣の間に肉眼レベルまたは組織学的レベルで相違はなかった(図8Eおよび8F)。Npm2 -/-卵巣には黄体の形成を含む正常な卵胞形成が観察されたことから、これらのマウスでは排卵が起こることが示唆された。
排卵が起こることを確認するために、またNpm2 -/-マウスの不妊および低受胎の原因をさらに調べるために、野生型、ヘテロ接合性およびホモ接合性マウスの薬理学的過剰排卵を行い、卵子を卵管から収集し、実施例5に記載したように、インビトロ培養した。
Npm2ヌル卵のインビトロ成熟および受精は明らかに正常であったが、2細胞段階への分裂が減った(表5)。インビボ受精Npm2ヌル卵は、hCG処理後24時間で回収された。しかし、ほとんど非同時的に断片化し死滅する胚は、hCG後45〜55時間で見られた(図10A、図9A〜9D)。そして、ほとんどのNpm2ヌル胚は培養で胚盤胞期に至らなかった(図10B、図9G〜9H)。従って、Npm2ヌルマウスの欠陥は、胚の生存能力の低下を招くようであった。
Figure 2006506952
<実施例16>
DNA損傷
次に、TUNEL(TdT-媒介dUTPニック末端標識)アッセイを行い、DNAの損傷を測定した。TUNELアッセイは、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)によるもので、蛍光性dUTP接合体でDNAの遊離末端を標識する。
簡単にいうと、卵母細胞および初期胚を卵管から採集し、固定し、透過性にし、そして、TdTおよび標識ヌクレオチドとインキュベートした。次にこれらを洗浄し、デコンボリューション顕微鏡法によって像を形成した。BrDU取込みアッセイのために、十分成長した卵母細胞を、上述のようにインビトロで成熟させ、受精させた。受精後約8時間で、前核を形成した接合体を、50μMのBrDUで補足した培地に移し、一夜培養した(Ferreiraら、1997)。BrDUに対するマウスモノクローナル抗体(Roche, #1170376)を用いる免疫蛍光法により取り込みをアッセイした。
これらの胚の核はTUNEL陽性であったが、DNAの損傷が胚の損失を生じさせたという証拠はなかった。そして、hCG後20時間でヌル雌から採集した1細胞胚は、極体内でのみTUNEL染色を示した(図11A〜11D)。すべての発生不全は、卵が野生型精子で受精されたときに起こった。このことは、初期の胚発生において母系のNPM2が重要であることを示している。
<実施例17>
転写要求性複合体(Transcription-Requiring Complex (TRC))の定量
Conoverら、1991の説明のとおりTRCタンパク質を抽出した。簡単に言うと、初期のS期にあると評価された2細胞胚を、卵管から採集し、35S-メチオニンを含むアミノ酸で補足したM16培地において2時間培養した。1μg/mLのアクチノマイシンD(Sigma #A1410)を添加したものは、負の対照となった。2%トリトンX−100、0.3MのKClおよび50mMのトリス-HCl pH7.4を用いた抽出の後、不溶性タンパク質が帯に残った。これらのタンパク質を電気泳動にかけた。そして、ゲルをイソプロパノールおよび氷酢酸中で固定し、Amplify(Amersham Pharmacia Biotech)中に浸漬し、一夜、X-OMATフィルムにさらすか、または蛍光イメージ形成した(phosphorimaged)。
NPM2を欠く2細胞胚は、タンパク質の転写要求性複合体(TRC)を合成した。このことは、野生型2細胞胚に比べて低いレベル(30%)にもかかわらず(図12)、いくらかの接合体遺伝子の転写および翻訳(Lathamら、1992)を示した。xNPM2について示唆されたように(Mericら、1997)、NPM2は、初期の胚で、特定の母系RNAの翻訳活性化において機能しうることが示唆された。わずかなNpm2ヌル胚が出生にまで至ったため、潜在的な補完機構が存在する。Npm2-/-雌と交配させるときNpm2 -/-雄を用いたため、父系Npm2の転写活性化は関係しなかった。
<実施例18>
WTおよび変異体の卵母細胞および胚の解析
上述(Yanら、2002)したようにホルムアルデヒドで固定した受精していない卵および初期胚の免疫蛍光法を行い、WTおよび変異体の卵母細胞および胚を分析した。
簡単に言うと、卵母細胞を採集し、2〜4%ホルムアルデヒドまたは70%エタノール中で固定し、10%ウシ胎児血清のPBS中でブロックし、トリトンX-100で透過性とし、そして、一次および二次抗体で処理した。洗浄の後、DNAをDAPIまたはTo-pro-3で対比染色し、共焦点顕微鏡法またはデコンボリューション顕微鏡法を用いて画像をとった。以下の一次抗体を使用した。ヤギNPM2抗血清(1:500)、ウサギ抗アセチルヒストンH3(Upstate Biotechnology 06-599;1:200)、ヤギ抗フィブリラリン(Santa Cruz Biotechnology sc 11335;1:100)、マウスモノクローナル抗チューブリン抗体(Sigma T-6793; 1:300)、ヤギ抗ラミンB(Santa Cruz sc-6217;1:300)、マウス抗ハイポアセチル化ヒストンH3(Upstate Biotechnology 06-755;1:500)、ウサギ抗ヒストンH3(Ser10においてリン酸化されたもの)(Upstate Biotechnology 06-570;1:500)、およびマウスモノクローナル抗ヒストンH1(Santa Cruz sc-8030;1/200)。以下の二次抗体を使用した。AlexaFluor594ウサギ抗ヤギ(Molecular probes A-11080; 1:500)、AlexaFluor568ヤギ抗ウサギ(Molecular Probes A-11011; 1:500)、およびAlexaFluor488ヤギ抗マウス(Molecular Probes A-11001;1 :500)。
PMSG処理された野生型雌からの卵母細胞は、顕著な核を包囲するヘテロクロマチンの組織化(SN(surrounded nucleolus)(包囲核)構造と呼ぶ)を示した(図13C)。このSN構造は、進行した卵母細胞の発生に特有であった。というのもSN卵母細胞はより大きく、ゴナドトロピン依存性卵胞に見られたからである。クロマチンの凝縮は、転写のサイレンシング、減数分裂を再開する能力、M期の特徴の出現、および受精後の胚発生能に相関した(Bouniol-Balyら、1999; Mattsonら、1990; Wickramasingheら,1991; Zuccottiら、1998)。野生型の卵母細胞とは異なり、Npm2ヌル卵母細胞のDNAは無定形であり、核の周りに凝縮することなく散らばっていた(図13D)。核小体清澄化の喪失も、これら卵母細胞におけるアセチル化ヒストンH3を検出する免疫蛍光法により明らかにされ(図13E〜13F)、さらに、あまり成熟していいない非SN卵母細胞が、10日齢の未処理マウスから分離された(図13A〜13B)。核小体タンパク質フィブリラリンの位置を特定する免疫蛍光法により、対照では単一の組織化された核小体が認められたのに対し、Npm2ヌル卵母細胞では散らばった核小体様物が明らかになった(図13G〜13H)。これらの異常は、30以上のNpm2 -/-雌から調べた数百の卵母細胞において認められた。従って、NPM2は、卵母細胞発生の最終段階において、卵母細胞の核および核小体のドメインの組織化および卵母細胞クロマチンの凝縮に不可欠であった。
減数分裂は、NPM2の不在下、実質的に正常に進み、中期II停止、紡錘体の形成、染色体分離、または極体の押出しに明らかな欠陥はない(図13I〜13J)。精子DNAの脱凝縮はNPM2なしで正常に起こり、受精の後、核エンベロープに囲まれた母系前核および父系前核の両方が形成される(図13K〜13L)。そして、雄の前核において検出可能な永続性プロタミン2Bはなかった(非掲載のデータ)。最初のS期におけるDNA複製も、NPM2なしで進んだ(図13M〜13N)。しかし、Npm2 -/-卵母細胞におけるように、正常な核小体がNpm2ヌル1細胞胚に存在せず、また、接合体におけるアセチル化ヒストンH3を検出する免疫蛍光法により、対照に比べて核小体の清澄化がないことがわかった(図13O〜13P)。ハイポアセチル化ヒストンH3(これは通常、前核の核小体の周りにできる凝縮クロマチンに結合する)は、検出されなかった(図13Q〜13R)。紡錘体形成を阻害するコルセミドによる処理は、リン酸化ヒストンH3に対して着色する凝縮染色体を有する中期において、野生型(n=34)1細胞胚およびNpm2ヌル(n=28)1細胞胚の両方を停止させた。このことは、最初の有糸分裂は実質的にすべての場合で始まることを意味した(図13S〜13T)。コルセミド処理なしでは、野生型接合体において、前核形成後13〜15時間で紡錘体ができ(図13U)、すべての接合体が19時間で有糸分裂を完了する。一方、Npm2ヌル接合体は、前核形成後13〜19時間から中期紡錘体が認められ(図13V)、それからすぐに断片化が認められた。これは、最初の有糸分裂からの異常な出方を示唆する。NPM2を欠くわずかな多細胞胚が回収された。それらの核は、体細胞リンカーヒストンH1を含んでいる(図13W〜13X)。しかし、それらの核は、胚盤胞期まで相対的に無定形のままである(図13Y〜13Z)。従って、哺乳動物NPM2は、卵母細胞および初期接合体において、ヒストンの脱アセチル化および核小体を包囲するヘテロクロマチン形成にとって非常に重要であった。
<実施例19>
RNアーゼ保護アッセイ
RNアーゼ保護アッセイを行って、18Sおよび28SのrRNAを、野生型(WT)およびNpm2ヌルGV期卵母細胞、中期II卵母細胞および1細胞胚において、定量した。18Sおよび28SのrRNAに対する32P標識アンチセンスプローブを、Ambion MAXIscriptキット鋳型(Austin, TX)を用いて調製した。30の卵母細胞または胚からの全RNAを、Ambion Direct Protect Lysateキットを用いるプローブハイブリダイゼーションのために調製し、次いでプローブとインキュベートし、ヌクレアーゼカクテルで処理し、そして、製造者によって推奨され、説明(Tongら、1995)されるように電気泳動にかけた。保護された断片をオートラジオグラフィーにより検出し、蛍光イメージ形成(phosphorimaging)(Johnstonら、1990)により定量した。
図14に示すように、NPM2の不在下、リボソームRNA含量にはっきりした大きな差はなかった。
<実施例20>
全タンパク質合成
タンパク質合成の絶対率をSchultzら、1978の説明に従って定量した。簡単にいえば、GV期卵母細胞、中期II卵母細胞、および1細胞胚を採集し、250μCiの35S-メチオニン/mLと0.3mg/mLまたは3.0mg/mLの非放射性メチオニンとを含むアミノ酸補足M16培地で2時間インキュベートした。インキュベーションの後、20の卵母細胞または胚を各群からとりだし、新鮮なM16培地で入念に洗い、そして凍結および解凍により溶解させた。20μLの1 ug/uL BSAおよび20μLの10%トリクロロ酢酸(TCA)の添加により、全タンパク質を沈殿させた。ペレットを5%TCAで洗浄し、1MのNaOHに1時間37℃で溶解させ、HClで酸性化し、そしてシンチレーションカウントによりアッセイした。
図15に示すように、WTおよびNpm2ヌル卵母細胞および胚は、同等のカウント数またはレベルのタンパク質合成を示した。
<実施例21>
Npm1およびNpm3を検出するインサイチューハイブリダイゼーション
NPM2と他の「遍在する」ヌクレオプラスミン(Chanら、1989; MacArthurら、1997; SchmidtZachmannら、1988)との一次アミノ酸配列の相同性は低いにもかかわらず、これらのより広く発現されているヌクレオプラスミン類は、卵母細胞および発生胚においてNPM2と機能的な重複を有し得る親核性の負に荷電したタンパク質である。
マウス卵母細胞中のNpm1およびNpm3のmRNAを測定するインサイチューハイブリダイゼーションを、実施例4に記載したように行った。Npm1のmRNAは、NM 008722のヌクレオチド131−551に相当する35S−UTP標識アンチセンスリボプローブを用いて検出した。図16A〜16Fが示すところによれば、Npm1のmRNAは、小卵胞の卵母細胞(A-B)、二次卵胞の卵母細胞(C-D)および大きな胞状卵胞の卵母細胞(E-F)(矢印)において、高度に発現された。切片を明視野(A、CおよびE)および暗視野(B、DおよびF)で示し、それぞれ、組織構造を明らかにするとともに、ハイブリダイゼーションシグナルを強調している。Npm3のmRNAは、NM 008723の41−657に相当するプローブを用いて調べた。図16G〜16Hの示すところによれば、成体の卵巣における卵母細胞のすべての段階においてNpm3のmRNAが検出されたが、レベルは、周りの体細胞で見られる発現により近い(G〜H)。かくして、インサイチューハイブリダイゼーションにより、ヌクレオプラスミン1(Npm1:B23)mRNAとヌクレオプラスミン3(Npm3)mRNAの両方がマウス卵母細胞において発現されることが明らかになった。
<実施例22>
Zar1のクローニング
実施例1のライブラリーからの部分cDNAをサブクローニングし、配列決定し、そしてすべての配列を整列群に分類し、BLASTサーチによって解析した。新規な配列をさらにノーザンブロット解析により解析した。部分325ヌクレオチドcDNAを卵巣1−クローン180(O1-180、以降zygote arrest 1 (Zar1)と呼ぶ)とし、1.4kbの転写産物を卵巣のみにおいて確認した(図17A)。
ZAP-expressマウス卵巣cDNAライブラリーをスクリーニングして、完全長Zar1 cDNAを単離した。ポリAテールを除くと、完全長Zar1 cDNAは約1.4kbで、ヌクレオチド28からヌクレオチド1110までのオープンリーディングフレームをコードしていた。Zar1 cDNAは、例えばマウス16細胞胚cDNAライブラリーのEST(AU044294)およびマウス未受精卵cDNAライブラリーのEST(AU023153)など、データベース中のいくつかのESTと相同である。Zar1cDNA ORFから予想されるポリペプチドは361アミノ酸からなり(図11)、40kDaの分子量を持つ。公共のタンパク質データベースを検索したが、既知のタンパク質ホモログは見つからなかった。二極性核局在化シグナルが333〜350位に見いだされた(配列番号19:Lys-Arg-Pro-His-Arg-Gln-Asp-Leu-Cys-Gly-Arg-Cys-Lys -Asp-Lys-Arg-Leu-Ser)ことから、Zar1は卵母細胞核または胚核に移行しうることが強く示唆される。
マウスZar1遺伝子をクローニングするため、マウス129/S6SvEvゲノムλFix IIファージおよび129Xl/SvJ BACライブラリーの両方を、完全長Zar1cDNAまたはPCRプライマー(配列番号20 5'-CTAGAAAAGGGGACTGTAGTCACT-3'および配列番号21 5'-TGCATCTCCCACACAAGTCTTGCC-3)を用いてスクリーニングした。回収したクローンについて、サザンブロット解析および配列決定によりその特徴を明らかにした。マウスZar1遺伝子(配列番号11)は4.0kbにおよび、エキソン1は当該タンパク質の大部分をコードした。Zar1遺伝子および関連偽遺伝子(Zar1-ps1)の両方は、四つのエキソンを含んだ。関連Zar1-ps1(配列番号12)遺伝子は、エキソン1において13-ntのギャップを含み(図19)、それは、フレームシフトおよびエキソン2における初期タンパク質終結をもたらすと予測された。Zar1特異的プライマーを用いるRT-PCRにより、それが卵巣特異的(卵巣特有のもの)であることが確認されたが、関連遺伝子特異的プライマーによっては、調査したすべての組織において転写物を検出することができなかった。このことは、該関連遺伝子が偽遺伝子(Zar1-ps1)であることをはっきりさせた。
<実施例23>
Zar1の染色体マッピング
全ゲノム放射線ハイブリッドパネルT31(McCarthyら、1997)をResaerch Genetics(アラバマ州ハンツビル)から購入し、製造者の説明書に従って使用した。パネルは照射マウス胚初代細胞(129aa)をハムスター細胞と融合させることによって構築された。Zar1のハムスターホモログの配列はわかっていないので、ハムスターホモログが同時増幅される危険を最小限に抑えるために、本発明者らは、マウス配列の3'非翻訳領域からリバースプライマーを設計した(MakalowskiおよびBoguski、1998)。Zar1遺伝子特異的プライマーは(配列番号20)5'-CTAGAAAAGGGGACTGTAGTCACT-3'および(配列番号21)5'-TGCATCTCCCACACAAGTCTTGCC-3'とした。Zar-1-ps-1遺伝子特異的プライマーは(配列番号22)5'-CTAGAAAAGGGGACTATAGGCACC-3'および(配列番号23)5'-TGCATCTCTCACACAAGTGTTGCT-3'とした。これら2組のプライマーの特異性を、A23ハムスターDNAおよび129マウスDNAで検証した。PCR反応は、1mlの各パネルDNA、1.25UのTaq platinum DNAポリメラーゼ(Gibco, メリーランド州ロックビル)、付随試薬類(0.25mM dNTP類、1.5mM MgCl2、1×PCR緩衝液)および0.4mMの各プライマーを含む最終液量15mlで行った。94℃で4分間の初期変性ステップの後、30サイクルの増幅(94℃で40秒、60℃で30秒、72℃で30秒)を行い、最後に72℃で7分間の伸張を行った。
各遺伝子のデータはJackson Laboratory Mouse Radiation Hybrid Mapper Serverでの解析に供した。両遺伝子は、マウス染色体5の同じ領域に位置した。Zar-1遺伝子座は40cMにあり、二つのマーカーD5Buc48とTxkの間である。一方、Zar-1-ps1遺伝子は、TecとD5Mit356の間の41cMにあり、コード遺伝子座のすぐ遠位にある(図20)。
<実施例24>
ヒトZAR1の単離
マウスZar1遺伝子のヒトオルソログを同定するため、完全長マウス卵巣cDNAをBLASTサーチに用い、ヒトゲノムライブラリーのスクリーニングを行った。ヒトゲノム配列は、非重複データベースおよびヒトゲノムライブラリーの両方から割り出した。完全なヒト遺伝子は4.1kbにおよび、やはり四つのエキソンを含んだ。その四つのエキソンは、マウスZar1エキソン1〜4に対し、それぞれ50%、86%、84%および78%のヌクレオチド相同性を有した。ZAR1遺伝子は、ヒト染色体4p12上にあり、それは、マウス染色体5上のZar1遺伝子座に対し相同(シンテニック)である。その偽遺伝子は、ヒトゲノムにおいては見出されなかった。
<実施例25>
ヒトZAR1の発現
当該技術においてよく知られ使用される標準的な技法を用いてヒトZAR1のRT-PCR分析を行った。以下のプライマーを複数種のヒト組織から得られたcDNAを増幅するため使用した。(配列番号24)5'-GGAGGTGTGGACGAAGAAGG-3'および’(配列番号25)5'-AAGCTGAAGGTGCTGTCGCAGG-3'。GAPDHを対照として用い、次のプライマーを使用した。(配列番号26)5'-TGAAGGTCGGAGTCAACGGATTTGGT-3'および(配列番号27)5'-CATGTGGGCCATGAGGTCCACCAC-3'。
図17Bに示すように、複数組織RT-PCR分析によれば、ヒトZAR1のエキソン1〜4は、卵巣および精巣で独占的に転写されていた。ヒトZAR1のmRNAは、少なくとも1.3kbであり、424アミノ酸の大きなタンパク質をコードすることが予測される。ヒトとマウスのZAR1タンパク質は、58%のアミノ酸一致度(図18)であるが、ZAR1タンパク質のカルボキシル末端部分(エキソン2〜4によってコードされる)は高度に保存されており、マウスとヒトの間で91%の類似度を示した。このことは、ZAR1カルボキシル末端領域は機能的により重要である可能性を示唆する。
<実施例26>
ZAR1におけるタンパク質発現
当技術分野でよく知られておりよく使用されている標準的な技術を使ってウェスタンブロット解析を行った。簡単に述べると、卵巣タンパク質を野生型およびGDF-9(-/-)マウスから単離した。ZAR1に対する抗体を使って、組換えZAR1タンパク質のサイズを天然ZAR1タンパク質のサイズと比較した。図21により、組換えZAR1タンパク質は、GDF-9(-/-)マウスから単離された卵巣に由来する天然ZAR1タンパク質と、同じようなサイズを持つことが明らかになった。
<実施例27>
マウス卵巣におけるZar1の局在
Zar1特異的プローブを使ってインサイチューハイブリダイゼーションを行った。[α-35S]UTP標識アンチセンスおよびセンスプローブを、Riboprobe T7/T3コンビネーションシステム(Promega、ウィスコンシン州マディソン)によって作製した。ハイブリダイゼーションはAlbrechtら(1997)およびElvinら(1999A)に記載されている方法に従って行った。
インサイチューハイブリダイゼーションにより、これらの卵巣内で卵母細胞に局在したZar1の高レベルな発現が明らかになった。卵母細胞内でのZar1の発現は、単層(一次)卵胞段階から胞状卵胞段階まで顕著であったが、原始卵胞段階では発現は認められなかった。Gdf9ノックアウト卵巣では卵胞の発育が一次卵胞段階で停止するために卵胞数が増えるので、より多くのZar1陽性卵母細胞が各切片に検出された(図22)。
<実施例28>
Zar1ノックアウトマウスの生成
マウスZar1ゲノム配列を用いて、ES細胞でZar1遺伝子を突然変異させるターゲティングベクターを生成させた。ターゲティングベクターは、Zar1エキソン1上流の1.5kbのゲノムDNA、選択可能なマーカー(PGKhprt発現カセット)、エキソン1下流の5.5kbのZar1配列、および陰性の選択可能なマーカー(MC1tk発現カセット)を含んだ(図23A)。線状にしたベクターをhprt陰性AB2.2 ES細胞株にエレクトロポレーションした。クローンをHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリジンおよびチミジン)およびFIAU(1-(2'-デオキシ-2'-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)-5-ヨードウラシル)において選択した。そして、クローンからのDNAをサザンブロット解析した。標的化ES細胞クローンを胚盤胞に注入した(Matzukら、1992)。
これらの細胞株の二つを用いてキメラ雄マウスを生産し、それらは、妊性があり、Zar1突然変異対立遺伝子(Zar1 tm1ZukZar1 -と呼ぶ)をF1子孫に伝えた。F1ヘテロ接合体の交雑(図23B)により、分析した32の同腹子から232のF2子孫を得た(52野生型(22.5%)、119ヘテロ接合(Zar1 +/-)(51.5%)および60ホモ接合変異体(Zar1 -/-)マウス(26.0%))。従って、変異対立遺伝子は、予測されたメンデル頻度1:2:1で伝達された。雄(117):雌(114)の比は約1:1であった。
完全長Zar1cDNAを用いるノーザンブロット解析の結果、Zar1 +/-卵巣においてZar1mRNAの顕著な減少が明らかになるとともに、Zar1 -/-マウスの卵巣においては、1.4kbのZar1mRNAが検出されなかった(図23C)。これにより、Zar1 tm1Zuk対立遺伝子は無効対立遺伝子(ヌルアレル)であることが確認された。
<実施例29>
Zar1 +/-マウスおよびZar1 -/-マウスの妊性
Zar1 +/-およびZar1 -/-の雄および雌のマウスは、全体的にも組織学的にも、誕生から成熟期まで異常は示さなかった。Zar1 +/-およびZar1 -/-マウスの妊性を6ヶ月にわたる交配によって試験した。Zar1 -/-雄は正常な妊性(7.4±0.4匹/一腹)を示した。Zar1は精巣でも発現されるため、このことは、Zar1が大まかなレベルにおいて雄の妊性に必須ではないことを意味した。
14匹の雌Zar1 +/-マウスと雄Zar1 +/-マウスの交配の結果、80匹の同腹子(0.95同腹子/月/1マウス)(平均一腹子数7.9±0.3匹)が得られ、それは、野生型マウスの以前の一腹子数(8.4±0.2匹/一腹)(Kumarら、2000)と顕著に異なるものではなかった。従って、Zar1 +/-雌は正常な妊性を示した。これに対し、20匹のZar1 -/-雌マウスと対照雄との交配では、6ヶ月にわたって子ができなかった。従って、ZAR1は、雌の妊性に必須の役割を果たしている。
<実施例30>
ZAR1の細胞内局在性
ZAR1の機能をさらに特定するため、ZAR1抗血清を用いる免疫染色および間接免疫蛍光標識により、卵母細胞および接合体におけるタンパク質発現および細胞内の局在性を調べた。
簡単に言うと、ZAR1抗体を用いて免疫組織化学法を行った。ZAR1抗体を調製するため、部分マウスZar1cDNA(ヌクレオチド151〜1056)をpET23bベクターにサブクローニングし、そして、融合組換えZAR1タンパク質(N末端でT7-標識、C末端でHis-標識)をヤギに注射し、ポリクローナル抗体を生産させた(CoCalico Biologicals, Inc., Reamstown, ペンシルバニア州)。次に、一次抗体(1:1,000に希釈)(Yanら、2002)を用いて免疫染色を行った。二次抗体とのインキュベーションおよび陽性細胞の可視化を、New Fuchsinキット(BioGenex, San Ramon, カリホルニア州)を用いて行った。プレ免疫血清(preimmune serum)を対照区に用いた。
野生型卵巣(図24A〜24B)およびGdf9-/-卵巣(図17C)の両方においてZAR1タンパク質は主に卵母細胞の細胞質に集中していた。インサイチューハイブリダイゼーション分析と合致して、ZAR1タンパク質は、一次卵胞期から胞状卵胞期を通じて存在した(図24B)。
卵母細胞および胚の免疫蛍光分析を行い(Yanら、2002)、タンパク質発現を評価した。ZAR1ヤギ抗血清(ブロック溶液で1/1000に希釈)との反応を1時間行い、次に、3μg/mlのFITC接合抗ウサギIgG(Jackson Immuno Research Laboratories, West Grove、ペンシルバニア州)に45分間さらした。DNAをヨウ化プロピジウム(10μg/ml、10分間)で標識した。陰性の対照試料は、プレ免疫血清(pre-immune serum)で評価した。
さらに、ZAR1タンパク質は、Zar1 +/-マウスから分離した十分に成長した卵母細胞の細胞質のいたるところに分散していた(図24E)。上記ノーザンブロットと合致して、Zar1 -/-雌からの卵巣(図24D)および卵母細胞(図24F)はタンパク質を発生させなかった。減数分裂の再開および中期I(図24G)および中期II(図24H)への進行の後、ZAR1はまた検出された。
次に、受精接合体(受精後24時間で最初の有糸分裂を経ていないもの)を評価し、クロマチンおよび微小管の構造を調べた。上述したように接合体を固定し、透過性にし、ブロックした。すすぎを含むすべての一連の工程を、37℃でブロック溶液において行った。微小管は、抗βチューブリン(3.8μg/ml、1時間)およびFITC接合抗マウス二次抗体(1.3μg/ml、45分間)で標識した。一方、DNAはヨウ化プロピジウム(10μg/ml、10分間)で標識した。蛍光は、空冷アルゴンイオンレーザーシステムを装備したTCS-NTレーザー走査共焦点顕微鏡(Leica Microsystems)を用いて検出した。
ZAR1は、受精後、初期の1細胞接合体の細胞質に存続した(図19I)が、2細胞胚において劇的に減った(図24J)。従って、ZAR1は、一次卵胞期から2細胞胚の形成に至る卵形成のいずれかの段階において機能している。一方、2細胞期における急速なZAR1の消失は、卵母細胞から胚への遷移における非常に重要な役割を示唆していた。
<実施例31>
インビトロでの卵母細胞の成熟および受精
性的に成熟した、ヘテロ接合性の対照およびZar1 -/-雌マウスに、5IUのPMSGを注射し、排卵前の卵胞発生を刺激した。卵丘で囲まれた卵母細胞複合体を48時間後に分離し、5%血清の最少必須培地で17時間培養した。その後、周りの体細胞を除去し、卵母細胞を調べて減数分裂の進行を確かめた。成熟MII期卵を、インビトロで野生型(C57BL/6J x SJL/J)F1マウスからの精子で受精させた。接合体および2細胞期胚の発生を、受精後6時間および24時間でそれぞれ評価した。胚盤胞の形成を5日目に評価した。
<実施例32>
Zar1胚発生
排卵が起こっていることを確かめ、さらにZar1 -/-およびZar1 +/-マウスの不妊および低受胎の原因を調べるため、Zar1 -/-およびZar1 +/-マウスの薬理学的過排卵を生じさせ、そして、卵を卵管から採集し、インビトロで培養した。
簡単に言えば、25日齢のZar1 +/-およびZar1 -/-雌マウスにPMSGを(i.p., 5.0IU/マウス)注射し、48時間後にhCG(i.p., 5IU/マウス)を与えた。次いでマウスを一夜、(C57BL/6J x 129S6/SvEv)Fl種雄とともにかごに入れた。翌朝、卵および/または胚をM2培地に回収し、カウントし、インビトロで最高4日間M16培地(Sigma, St.Louis, ミズーリ州)で培養した。一方、成熟した変異体雌を種雄と交配させ、3.5日目で子宮または卵管を洗い流して胚を採集し、M16培地で培養した。
外来ゴナドトロピンを用いた過排卵は、同じような数の卵母細胞をZar1 -/-雌(34.31±4.12; n=14)およびZar1 +/-雌(31.63±4.78; n=8)からもたらした。また、Zar1 +/-およびZar1 -/-卵母細胞の大部分は、減数分裂を再開し、17時間の培養で中期IIに進行した。
次に、中期II卵母細胞をインビトロで受精させるか、あるいは、種雄との交配後、受精させた。胚を生殖管から回収し、最高4日間培養するか、または3.5日目の成熟した雌から回収した(表7)。対照と同様、Zar1 -/-雌からの卵母細胞のほとんどは、受精後8時間以内に、二つのはっきりとした前核を形成した。しかし、最初の分裂は、Zar1 +/-雌からのインビボ受精胚の89.3%で起こり、Zar1 +/-雌からのインビトロ受精胚の86.5%で起こったのに対し、「はっきりした」2細胞胚(そのいくらかは断片化に見えた)は、Zar1 -/-雌からのインビボ受精胚の20.8%で認められ、Zar1 -/-雌からのインビトロ受精胚の19.1%で認められた。Zar1 +/-マウスからの2細胞胚のほとんどは、培養4日目で、桑実胚および胚盤胞期に進行した(表7)。しかし、Zar1 -/-マウスからの胚は、1または2細胞期に留まるか、退化するかのいずれかであった。成体Zar1 +/-雌の子宮から分離した胚の100%が3.5日で胚盤胞に進んだのに対し、Zar1 -/-雌では、断片化胚、1細胞胚、および単一の2細胞胚しか認められなかった(図25A〜25Bおよび表6)。従って、接合体期での初期の胚分裂の停止が、Zar1 -/-雌の不妊の原因である。
Figure 2006506952
<実施例33>
DNA合成
Zar1 -/-マウスの不妊の原因をさらに明らかにするため、DNA合成を行った。簡単に言えば、Zar1 +/-およびZar1 -/-マウスからの十分に成長した卵母細胞を上述したようにインビトロで成熟、受精させた。受精後約8時間で、雄および雌の前核(PN)を形成した接合体を、50μMのブロモ−デオキシウリジン(BrdU)補足培地に移し、一夜培養した。受精後24時間で、胚を固定し、処理して、BrdUの取り込みを評価した(Ferreiraら、1997)。共焦点顕微鏡を用いて蛍光を検出した。
胚停止のタイミングの分析の結果、Zar1 -/-雌からの停止接合体は、G1を通り過ぎ、うまくS期に入ったことがわかった。母系前核および父系前核の両方のクロマチンが完全に脱凝縮した(図25C)。BrdUは、Zar1 -/-雌からの胚の両方の前核に容易に取り込まれた(図25D)。これは、S期の活性なDNA合成を示唆する。微小管のネットワークは、組み立てられた紡錘器のない間期の構造を示した。インビトロ受精卵母細胞をコルセミドで処理した。この試薬は、微小管を解重合し、細胞をM期で停止させる。予想どおり、コルセミド処理の後、Zar1 +/-雌から得た接合体のすべてがM期で停止した。Zar1 -/-雌からの接合体のほんのわずかだけが同様に停止した。このことは、この群で通常観察される2細胞胚の数に対応していた。従って、2細胞期に進行したZar1 -/-雌からの受精卵母細胞は、低い割合でM期に移行し、しかも大部分が早い段階で、おそらく、S/G2移行期または最初の減数分裂のG2期に、停止した。従って、母系ゲノムおよび父系ゲノムは、個々の前核において分離したままであり、二つの一倍体ゲノムは合体しないままである。これは、受精が完全には起こっていないことを示唆する。
<実施例34>
酵母ツーハイブリッドスクリーニング
酵母ツーハイブリッドスクリーニングを用いて、それが相互作用する他のタンパク質を特定することにより、そのタンパク質の機能を明らかにし、または特徴づけた。
マウスZar1の完全長オープンリーディングフレームを、GAL4 DNA結合性融合タンパク質としての発現のため、pGBKT7ベクターにサブクローニングした。卵巣および卵母細胞のcDNAライブラリーを、トランス活性化ドメイン融合タンパク質として発現させるため、pGADT7ベクターにサブクローニングした。この酵母ツーハイブリッド系において、ZAR1とライブラリーcDNAでコードされるタンパク質との相互作用により、トランス活性化複合体が再構成されると予想され、その複合体は、GAL4 DNAに結合し、選択可能なマーカーの転写を促進するものである。ZAR1相互作用性タンパク質を明らかにするため、交配により卵巣cDNA形質転換体をスクリーニングした。コロニーはLeu-/Trp-/Ade-/His-/X-アルファ-Gal選択プレートで成長し、挿入物(インサート)を有する所定の単離されたプラスミドが配列決定された。これらの配列の四つが、Polr2c(DNA依存性RNAポリメラーゼIIポリペプチドC)、Gnb2(グアニンヌクレオチド結合性タンパク質、ベータ2)、Polr2g(DNA依存性RNAポリメラーゼIIポリペプチドG)およびLmol(LIM only 1)に相当した。
<実施例35>
Zar1の無細胞転写/翻訳
Zar1の無細胞インビトロ転写/翻訳を行い、インビトロタンパク質相互作用を確かめた。簡単に言えば、pGBKT7(MYC標識)ベクターおよびpGADT7(HA標識)ベクターを鋳型として使用し、[35S]MetおよびTNT T7 Coupled Reticulocyte Lysate System(結合網状赤血球ライゼートシステム)(Promega, Madison, ウィスコンシン州)を用いるインビトロ転写/翻訳を行った。インビトロ翻訳されたタンパク質を室温で1時間混ぜ、そして、マウス抗MYCモノクローナル抗体またはウサギ抗HAポリクローナル抗体(Clontech)を用いて、相互免疫共沈降実験を行った。
Zar1、Polr2c(DNA依存性RNAポリメラーゼIIポリペプチドC)、Gnb2(グアニンヌクレオチド結合性タンパク質、ベータ2)、Polr2g(DNA依存性RNAポリメラーゼIIポリペプチドG)およびLmol(LIM only 1)のcDNAの無細胞インビトロ転写/翻訳を行った。Polr2c、Gnb2およびLmol1のcDNAをpGADT7(HA標識)ベクターに挿入し、Zar1のcDNAをpGBKT7(MYC標識)ベクターに挿入した。次いで、インビトロ翻訳されたタンパク質を免疫共沈降させ、SDS-PAGEにて分析した。
図26Aおよび27Bは、POLR2C、GNB2、POLR2G、およびLMO1がZAR1に結合することを明らかにしている。
<実施例36>
CHO細胞中でのZAR1相互作用
ZAR1がPOLR2C、GNB2、POLR2G、およびLMO1に結合することを確かめるため、免疫共沈降実験を、一過的に形質移入したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の抽出物を用いて行った。
簡単に言えば、CHO-K1細胞(American Type Culture Collection, Manassas,バージニア州)を10%ウシ胎児血清(FBS)を含むダルベッコ改変イーグル培地/ハム(Ham's)F-12(DMEM/F-12)で培養し、6cmシャーレにおいて90〜95%の集密度まで成長させる。標識タンパク質を発現させるため、ZAR1、POLR2C、GNB2、POLR2G、およびLMO1のオープンリーディングフレームをコードするマウスcDNAを、PCMV-Tag4A/FLAG-CベクターおよびpCMV-Tag5A/MYC-Cベクター(Stratagene, La Jolla, カリホルニア州)に挿入し、そして、LipofectAMINE 2000 (Invitrogen Life Technologies)を用いて一過的にトランスフェクションする。トランスフェクション後24時間で、細胞を採集し、細胞溶解緩衝液(50mMトリスHCl、pH 7.4、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1%トリトンX-100およびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma, Saint Louis, ミズーリ州)中で溶解させ、そして、免疫沈降法およびSDS-PAGEにより分析する。
MYC標識構造物を抗MYC抗体を用いて検出し、FLAG標識構造物を抗FLAG抗体を用いて検出する。
<実施例37>
結合性パートナーの結合のコンフォメーション
ZAR1がPOLR2C、GNB2、POLR2G、およびLMO1に結合することを確かめるため、卵巣タンパク質をマウスから分離する。次いでZAR1抗体を用いて免疫沈降実験を行う。POLR2C、GNB2、POLR2G、およびLMO1に対する抗体を用いてウェスタンブロット解析を行う。
<実施例38>
新規卵巣発現遺伝子を欠くノックアウトマウスの作出
上記で得た遺伝子配列を使って、胚性幹(ES)細胞中のO1-184遺伝子を突然変異させるためのターゲティングベクターを作製する。これらのターゲティングベクターをhprt陰性AB2.1 ES細胞株にエレクトロポレートし、HATおよびFIAU中で選択する。クローンをサザンブロット解析のために処理し、5'および3'外部プローブを使ってスクリーニングする。正しい突然変異を持つES細胞を胚盤胞に注入してキメラを作出し、最終的には突然変異型O1-184遺伝子に関するヘテロ接合体およびホモ接合体を作出する。
O1-184の発現は卵巣に限定されていたので、これらのO1-184ノックアウトマウスは生存可能であるが、これらの遺伝子産物を欠く雌は妊性が変化している(すなわち不妊、低受胎性または超受胎性である)可能性があると、本発明者らは予想する。通常の当業者の能力の範囲で十分に可能な技術を使って、卵胞形成、卵形成または受精に必要な卵巣内タンパク質に関係する形態学的、組織学的および生化学的情報について、突然変異マウスを解析する。これらのタンパク質の不在は妊性が増加または低下した雌マウスをもたらしうると予想される。これらの研究は、同様の特発性表現型を持つヒト生殖状態の検索につながるだろう。
<実施例39>
O1-184トランスジェニック動物の作出
O1-184遺伝子の両側にゲノム配列を配置し、マイクロインジェクションによって受精卵に導入する。マイクロインジェクションを行った卵子を雌宿主に着床させ、子孫を導入遺伝子の発現に関してスクリーニングする。トランスジェニック動物は、爬虫類、両生類、鳥類、哺乳類および魚類を含む(ただしこれらに限らない)多くの動物の受精卵から作出することができる。これらの動物は、O1-184を過剰発現するように、または突然変異型のO1-184を発現するように作出される。
本発明およびその利点を詳細に説明したが、本願特許請求の範囲に規定する本発明の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更、置換、改変を施すことができると解釈すべきである。さらにまた、本願の範囲は、本明細書に記載した態様のプロセス、装置、製造、組成物、手段およびステップに限定されないものとする。本明細書に記載した対応する態様と実質的に同じ機能を果たすか、または実質的に同じ結果をもたらす、既存のまたは将来開発されるプロセス、装置、製造、組成物、手段、方法またはステップを、本発明に従って利用してもよいことは、本発明の開示から、当業者にはすぐに理解されるだろう。したがって、本願特許請求の範囲は、そのようなプロセス、装置、製造、組成物、手段、方法またはステップも、その範囲に包含するものとする。
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卵巣特異的遺伝子の多組織ノーザンブロット解析。O1-180、O1-184およびO1-236プローブを使って、全RNAに対してノーザンブロット解析を行なった。図に示すように、これらの遺伝子産物は卵巣特異的パターンを示す(OV, 卵巣;WT, 野生型;-/-, Gdf9ノックアウト)。18Sおよび28SリボソームRNAの移動位置を示してある。どのレーンも負荷がほぼ等しいことは、18S rRNA cDNAプローブを使って証明された。Br, 脳;Lu, 肺;He, 心臓;St, 胃;Sp, 脾臓;Li, 肝臓;Si, 小腸;Ki, 腎臓;Te, 精巣;Ut, 子宮。 マウス卵巣における卵巣特異的遺伝子のインサイチューハイブリダイゼーション解析。O1-180(図2A〜2B)、O1-184(図2C〜2D)およびO1-236(図2E〜2F)に対するアンチセンスプローブを使ってインサイチューハイブリダイゼーションを行なった。図2A、2Cおよび2Eは卵巣の明視野解析である。図2B、2Dおよび2Fは同じ卵巣切片の暗視野解析である。どの遺伝子も、単層一次卵胞段階(小さい矢印)から始まり胞状卵胞段階(大きい矢印)まで続く卵母細胞における特異的発現を示している。 マウス卵巣におけるO1-236のインサイチューハイブリダイゼーション解析。プローブO1-236(部分Npm2 cDNA断片)を使ってインサイチューハイブリダイゼーションを行なった。同じ成体卵巣切片中のO1-236 mRNAの明視野解析(図3A)および暗視野解析(図3B)。このプローブにより、成長中のすべての卵母細胞で、特異的発現が示される。卵母細胞特異的発現は初期単層一次卵胞(3a型)に初めて認められ、単層3b型卵胞とそれ以降のすべての段階(胞状(an)卵胞を含む)では発現量が多くなる。 アフリカツメガエル(Xenopus laevis)(配列番号15)、マウス(配列番号6)、ラット(配列番号42)およびヒト(配列番号9)のNPM2タンパク質間で保存されているアミノ酸を示している。NCBI芽球リサーチツールおよびMegalignソフトフェアを用いてマウス(m)、ヒト(h)、ラット(r)およびアフリカツメガエルのNPM2アミノ酸配列を比較すると、高い一致度がみられる。アミノ酸間の空白は、整合のためのギャップを示している。種間で一致するアミノ酸は、黒で強調している。保存されている二連核局在配列はアスタリスク(*)で示される。酸性ヒストン結合領域には線が引かれている。 マウスNpm2遺伝子の染色体局在。(上)14番染色体データを示すJackson LaboratoryのT31放射線ハイブリッドデータベースから得た地図。この地図は上端近くにセントロメアを置いて描かれている。隣接する遺伝子座間の距離を、センチレイ(3000)の単位で染色体線の左に示す。いくつかの14番染色体MITマーカーの位置を右側に示す。マウスNpm2遺伝子はD14Mit203とD14Mit32の間に位置する。欠落したタイピングは割り当てが疑わしくない場合は周辺データから推論した。(下)Npm2に連鎖する遺伝子座を含む14番染色体の一部を示すJackson LaboratoryのT31放射線ハイブリッドデータベースから得たハプロタイプ図。遺伝子座は最も近位を上端にしてベストフィット順に挙げられている。黒い四角形はそのマウス断片について陽性と判定されるハイブリッド細胞株を表し、白い四角形は陰性と判定される細胞株を表す。灰色の四角形はタイピングされていない株または不明瞭な株を示す。各ハプロタイプを持つ株の数を、四角形の縦列のそれぞれの下に示す。欠落したタイピングは割り当てが疑わしくない場合は周辺データから推論した。 マウス卵巣および初期胚中のNpm2 mRNAおよびNPM2タンパク質の解析。プローブO1-236(部分Npm2 cDNA断片)を使ってインサイチューハイブリダイゼーションを行った。同じ成体卵巣切片中のO1-236 mRNAの明視野解析(図6A)および暗視野解析(図6B)。矢印および矢じりは、濾胞発生の様々な時期での卵胞から得た卵母細胞におけるNpm2 mRNAの発現を示す。(図6C)3型卵胞から胞状卵胞までの卵母細胞の核内のNPM2が染色された、5週齢のマウスから得た卵巣の免疫組織化学像。(図6D)黄体形成ホルモン(hCG)で誘発した排卵前GVB卵母細胞では、NPM2が細胞質内で一様に染色される(矢印)。LH(hCG)非応答性前胞状卵胞(右上)はNPM2タンパク質が核に局在した卵母細胞を示し続ける。(図6E)受精後、NPM2は前核に局在し始める。1つの前核(矢印)の形成は形成途中であり、一部のNPM2染色はこの初期単細胞胚の細胞質中に存在し続けている。(図6F)NPM2が細胞質にほとんど残っていない発育の進んだ単細胞胚では前核が強く染色される。NPM2抗体は2細胞胚(図6G)および8細胞胚(図6H)の核も特異的に染色する。 ヘテロ接合体交雑から得られる子孫の遺伝子型解析およびNpm2のノックアウトを行うための遺伝子ターゲティングコンストラクト。図7Aは、エクソン2、エクソン3、およびエクソン4の接合部を欠失させるために使用したターゲティング戦略を示す。PGK-hprtおよびMC1-tk発現カセット。組換えは5'プローブおよび3'プローブを使ったサザンブロット解析によって検出した(B, BamH1;Bg, BglII;P, PstI)。図7Bは、Npm2+/-マウスの交雑によって作出したマウスから単離されたゲノムDNAのサザンブロット解析を示す。DNAをBglIIで消化した場合、3'プローブでは野生型の7.5kbバンドと突然変異型の10.3kbバンドが確認される。図7Cは、DNAをPst1で消化した場合、エクソン2プローブは野生型の4.5kb断片だけを検出したことを示す。 野生型、Npm2+/-およびNpm2-/-マウスから得た卵巣の組織学的解析。(図8A〜8D)卵母細胞の核内のNpm2が染色された、6週齢のマウスから得られた卵巣の免疫組織化学像(図8Aおよび図8CはNpm2+/-卵巣;図8Bおよび図8DはNpm2-/-卵巣)。(図8E〜8F)12週齢マウスの野生型卵巣(図8E)およびNpm2-/-卵巣(図8F)から得られた、卵巣のPAS(過ヨウ素酸シッフ)/ヘマトキシリン染色。矢印は大きい胞状卵胞を表す。 卵(分裂中期II)のインビトロ培養およびNpm2 -/-および対照マウスの受精卵からのDNAの蛍光標識を示す。過剰排卵の後、未熟マウスの輸卵管から卵を分離し、インビトロで培養した。培養の45時間(図9A〜9B)、55時間(図9C〜9D)および96時間(図9E〜9F)で顕微鏡下、写真を撮影した。野生型マウスからのほとんどの受精卵は、2細胞または4細胞の胚をhCG後45時間および55時間で形成する(白矢印)。一方、Npm2 Npm2 -/-卵は、分裂して多細胞胚を形成することをほとんどしておらず、野生型の対照に比べて、胚盤胞の形成はさらに少ない。 卵管採集後(図10A)およびそれに続く24時間培養後(図10B)のさまざまな段階に対するインビボ受精胚の卵割百分率を示す。時間はhCG後の時間として示されている。 野生型(図11A)およびNpm2 -/-(図10B)受精卵母細胞はTUNEL陰性である(そのTUNEL陽性極体を除いて)。(図11Cおよび11D)後に、分裂するNpm2ヌル胚内のDNAはTUNEL陽性の着色となる。 35S−標識メチオニン中での培養後、野生型(WT)およびヌル(-/-)2細胞胚から転写要求性複合(transcription-requiring complex (TRC))タンパク質を抽出した。陰性の対照として、アクチノマイシンD(ActD)により転写およびTRC生産を阻害した。 WTおよび変異体の卵母細胞および胚を分析した。野生型またはNpm2ヌル卵母細胞(図13A〜13J)、1細胞胚(図13K〜13V)または8細胞胚(図13W〜13Z)の免疫蛍光分析を、示した抗体を用いて行った。DNAをDAPI(図13A〜13L、13O〜13Pおよび13S〜13Z)またはTo-pro-3(図13Q〜13R)で対比染色した。 リボソームRNAの分析が卵母細胞および1細胞胚において示されている。RNアーゼプロテクションアッセイを行い、野生型(WT)およびNpm2ヌルGVステージ卵母細胞、分裂中期II卵母細胞、および1細胞胚における18Sおよび28SのrRNAを定量した。少量の未処理の完全長プローブは、インジケーターとして働き、消化が完全に進んだことを示した(レーン1および8)。ホスホルイメージャー(Phosphorimager)分析でWTおよびNpm2ヌルのrRNAシグナルを定量すると(すなわち、レーン2と5、3と6、4と7、9と12、10と13、および11と14をそれぞれ比較すると)、0.69〜1.40の範囲の比が得られる。 卵母細胞および1細胞胚における絶対レベルのタンパク質分析が示される。すべての場合、3.0mg/mL非標識メチオニンの添加は、35S−標識メチオニンの組み込みに対し効果的に競合した。 インサイチュー(in situ)ハイブリダイゼーションを用いて野生型マウス卵巣中のNpm1およびNpm3 mRNAを検出した。小卵胞の卵母細胞(図16A〜16B)、二次卵胞(図16C〜16D)、および大きな胞状卵胞(図16E〜16F)(矢印)においてNpm1 mRNAは高度に発現された。切片を明視野(図16A、16Cおよび16E)および暗視野(図16B、16Dおよび16F)にそれぞれ示し、組織構造を明らかにするとともに、ハイブリダイゼーションシグナルを強調している。Npm3 mRNAは、成熟した卵巣の卵母細胞のすべてのステージにおいて検出された(図16G〜16H)。 マウスおよびヒト組織におけるZygote arrest 1の発現分析。図17Aは、野生型組織およびGdf9 -/-卵巣に由来する全RNA中Zar1 cDNA断片を用いたノーザンブロット解析を示している。図17BはヒトZAR1のRT-PCR分析を示す(Br:脳、Lu:肺、He:心臓、St:胃、Sp:脾臓、Li:肝臓、SI:小腸、Ki:腎臓、Te:精巣、Ut:子宮、Co:大腸、Pr:前立腺、Pl:胎盤、Pa:すい臓、Mu:筋肉)。 マウスとヒトのZAR1アミノ酸配列の比較。 Zar1遺伝子とZar-1-sp-1偽遺伝子の比較。エクソンの配列、エクソン-イントロン境界および各イントロンのサイズを示す。2つの遺伝子間で異なるヌクレオチドとコンセンサスポリアデニル化配列に下線を引く。翻訳開始コドンおよび停止コドンを太字で示す。大文字:エクソン配列;小文字:イントロン配列。 Zar1遺伝子(図20A)およびその類縁偽遺伝子(図20B)に最もよく連鎖するマーカーの位置をセンチモルガン(cM)の単位で表すマウス5番染色体の地図。 組換えZar1のウェスタンブロット解析。 PMSG処理した野生型卵巣(図22Aおよび22B)およびGdf9 -/-卵巣(図22C〜22F)におけるZar1の発現を、特定のアンチセンスプローブを用いたインサイチューハイブリダイゼーションにより分析した。同じ卵巣切片について、明視野像(図22A、22Cおよび22E)および対応する暗視野像(図22B、22Dおよび22F)の両方を示している。図22Cおよび22Dの切片の領域を拡大して示す(図22Eおよび22F)。Zar1遺伝子の発現は、初期の一次卵胞(タイプ3a)から胞状卵胞(タイプ8)段階にかけて検出されたが、原始卵胞(タイプ2)、野生型またはGdf9 -/-卵巣において検出されなかった。Gdf9 -/-卵巣において、卵胞数は一次段階の卵胞停止のため単位体積あたり増加し、したがって、より多くのZar1陽性シグナルが各切片において検出された。 マウスZar1遺伝子構造およびターゲティング戦略。図23Aは、ターゲティングベクターを示し、それは、エキソン1(これはATG開始コドンを含む)およびイントロン1の一部をPGK-Hprt発現カセットで置換することによって構築した。野生型(WT)、偽対立遺伝子(Zar1-ps1)および変異(MUT)対立遺伝子を含む標的化ES細胞クローンを、サザンブロット解析により確認し、胚盤胞に注入してキメラ雄性マウスを生産した。該マウスは飼育され、F1 Zar1 +/−の子孫をもたらした。ゲノムDNAのサザンブロット解析(図23B)は、ヘテロ接合交配からの同腹の子孫に由来するものである。図23Cは、野生型、Zar1 +/−、およびZar1 -/-雌からの卵巣mRNAの、完全長Zar1cDNAを用いたノーザンブロット解析を示す。より長い暴露において、関連性の分からないより小さな転写物がZar1 -/-卵巣において認められ、また、野生型マウスにおけるZar1の発現レベルは、Zar1 +/−のレベルの約2倍である。Gapdhを、ノーザンブロットへの等しい負荷に対し、対照として用いた(図23D)。 マウスZAR1タンパク質発現。抗マウスZAR1ポリクローナル抗体を免疫組織化学(図24A〜24D)および免疫蛍光分析(図24E〜24J)に使用し、ZAR1の発現を検出した。Zar1 mRNAと同様に、野生型卵巣においては、ZAR1タンパク質の発現は、一次卵胞の卵母細胞において始まり、卵胞のすべての段階を通じて続く(図24A、24B)。ZAR1は、Gdf9 -/-卵巣においても検出される(図24C)一方、Zar1 -/-卵巣においてはタンパク質は検出されない(図24D)。ZAR1タンパク質は、Zar1 +/−からの十分に成長した前期I停止卵母細胞の細胞質で主として検出された(図24E)が、Zar1 -/-マウスでは検出されなかった(図24F)。ZAR1は、野生型卵母細胞において、ΜI(図24G)からMII(図24H)への推移中、発現され、そして、受精後6時間で集められた1細胞期において、接合体中に存続する(図24I)。しかし、ZAR1の発現は、2細胞期の胚において劇的に減り(図24J)、鮮やかな染色は極体残存物のみにおいてはっきりしている。 Zar1 +/−およびZar1 -/-マウスから誘導される胚の発生。成熟したZar1 +/−(図25A)およびZar1 -/-(図25B)雌を種雄と交配させた。Zar1 +/−雌性マウスからの接合体すべては胚盤胞段階に進行した(図25A)一方、Zar1 -/-マウスからの接合体のほとんどは、1細胞期にとどまったままであり、多くの退化した胚が検出された(図25B)。受精後24時間で、Zar1 -/-雌からの停止接合体を抗βチューブリンおよびヨウ化プロピジウムでラベルし、微小管およびクロマチンの構成をそれぞれ評価した(図25C)。脱凝縮クロマチンが、母系前核および父系前核の両方においてはっきりしていた。加えて、微小管は間期の構成を示し、組立てられた紡錘器はない。第二の実験において、受精接合体を受精後8時間でBrdUを有する培地に置き、一夜、培養した(図25D)。免疫蛍光分析により、S期への移行を示すZar1 -/-雌からの停止接合体の両方の前核のおいてBrdUの組み込みが示された。 Zar1、Polr2c(DNA依存性RNAポリメラーゼIIポリペプチドC)、Gnb2(グアニンヌクレオチド結合タンパク質、ベータ2)、Polr2g(DNA依存性RNAポリメラーゼIIポリペプチドG)、およびLmo1(LIM only 1)のcDNAの無細胞転写/翻訳。無細胞インビトロ転写/翻訳および抗HAポリクローナル抗体(図26A)または抗MYCモノクローナル抗体(図26B)による免疫共沈降からの[35S]Met標識タンパク質のオートラジオグラフ。kDaでの分子質量標準の位置は右側に示される。HA標識POLR2C、GNB2、POLR2G、およびLMO1は、MYC標識されたZAR1に結合する。 ヒト、ハツカネズミ(Mus musculus)、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)およびトラフグ(Fugu rubripes)からのZAR1タンパク質のアミノ酸配列比較。
【配列表】
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Claims (61)

  1. 配列番号11、配列番号13、配列番号12、配列番号28、配列番号30、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41、および配列番号43からなる群より選択される核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチド配列。
  2. タンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド配列であって、前記タンパク質が、
    (a)配列番号16、配列番号29、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号39、または配列番号42をコードするポリヌクレオチド配列、
    (b)配列番号16、配列番号29、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号39、または配列番号42と少なくとも40%の一致度を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列、
    (c)0.02M〜約0.15MのNaClで約50℃〜約70℃の温度のハイブリダイゼーション条件下、(a)のポリヌクレオチド配列とハイブリダイズする単離された核酸分子、および
    (d)(a)、(b)または(c)に相補的である単離されたポリヌクレオチド配列
    からなる群より選択される、単離されたポリヌクレオチド配列。
  3. プロモーター配列に作動的に連結した請求項1または2のポリヌクレオチド配列を含む発現カセット。
  4. 請求項3の発現カセットを含むベクター。
  5. 配列番号16、配列番号29、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号39、または配列番号42のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド配列。
  6. 請求項1または2のポリヌクレオチド配列によってコードされる単離されたポリペプチド。
  7. 請求項5のポリペプチドに免疫学的に特異的に結合するモノクローナル抗体。
  8. 請求項6のポリペプチドに免疫学的に特異的に結合するモノクローナル抗体。
  9. 請求項5のポリペプチドに免疫学的に結合するポリクローナル抗血清抗体。
  10. 請求項6のポリペプチドに免疫学的に結合するポリクローナル抗血清抗体。
  11. 請求項5のポリペプチドに免疫学的に結合するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ細胞。
  12. 請求項6のポリペプチドに免疫学的に結合するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ細胞。
  13. 請求項7、9、9または10の抗体を含む組成物。
  14. 請求項3の発現カセットを含む宿主細胞。
  15. 細胞が真核細胞または原核細胞である、請求項14の宿主細胞。
  16. 請求項1または2のポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック動物。
  17. 動物がげっ歯類、マウスまたはラットである、請求項16のトランスジェニック動物。
  18. 配列番号11、配列番号13、配列番号12、配列番号28、配列番号30、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41、および配列番号43からなる群より選択されるポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック動物。
  19. 薬学的に許容できる担体中に分散したO1-180発現のモジュレーターを含む医薬組成物。
  20. モジュレーターがO1-180遺伝子の転写を抑制する請求項19の組成物。
  21. モジュレーターがO1-180遺伝子の転写を増進する請求項19の組成物。
  22. モジュレーターがポリペプチドである請求項19の組成物。
  23. モジュレーターが小分子である請求項19の組成物。
  24. モジュレーターがポリヌクレオチド配列である請求項19の組成物。
  25. ポリヌクレオチド配列がDNAまたはRNAである請求項24の組成物。
  26. 作動的に連結したプロモーターとポリヌクレオチド配列とを含む発現ベクターをさらに含む請求項24の組成物。
  27. 薬学的に許容できる担体中に分散したO1-180活性のモジュレーターを含む医薬組成物。
  28. 組成物がO1-180活性を阻害する請求項27の組成物。
  29. 組成物がO1-180活性を刺激する請求項27の組成物。
  30. 薬理学的に許容できる担体中に分散したO1-180活性またはO1-180発現のモジュレーターの有効量を動物に投与することを含み、前記の量が受胎を減少させることのできる、避妊を調節する方法。
  31. 薬理学的に許容できる担体中に分散したO1-180活性またはO1-180発現のモジュレーターの有効量を動物に投与することを含み、前記の量が受胎を増加させることのできる、妊性を強化する方法。
  32. 動物が雌である請求項30または31の方法。
  33. 動物が雄である請求項30または31の方法。
  34. O1-180発現のモジュレーターのスクリーニング方法であって、
    O1-180ポリペプチドを発現させる細胞を用意するステップ、
    前記細胞を候補モジュレーターと接触させるステップ、
    O1-180発現を測定するステップ、および
    前記候補モジュレーター存在下での前記O1-180発現を、前記候補モジュレーター不在下でのO1-180発現の発現と比較するステップ
    を含み、前記候補モジュレーター不在下でのO1-180の発現と比較した、前記候補モジュレーター存在下でのO1-180の発現の相違により、前記候補モジュレーターが、O1-180発現のモジュレーターであると同定される方法。
  35. 単離されたO1-180ポリペプチドまたはその機能等価物を取得するステップ、O1-180ポリペプチドまたはその機能的等価物を候補化合物と混合するステップ、およびO1-180の活性に対する前記候補化合物の効果を測定するステップを含む、O1-180の活性を調節する化合物を同定する方法。
  36. O1-180タンパク質またはその断片を候補化合物に暴露すること、および前記化合物がO1-180タンパク質またはその断片に結合したかどうかを決定することを含む、O1-180と結合する化合物をスクリーニングする方法。
  37. (a)(1)調節可能な1つまたは複数のO1-180遺伝子、(2)1つまたは複数のO1-180遺伝子のノックアウト、または(3)1つまたは複数のO1-180遺伝子のノックイン、を持つトランスジェニック動物を用意すること、
    (b)ステップ(a)のトランスジェニック動物に対してそれぞれ対照動物を用意すること、
    (c)トランスジェニック動物および対照動物を候補O1-180調節化合物に暴露すること、および
    (d)トランスジェニック動物と対照動物群とを比較し、トラスジェニック動物における不妊または妊性に対する前記O1-180調節化合物の効果を対照動物と比較して決定すること
    を含む、O1-180活性を調節する化合物を同定する方法。
  38. ペプチド結合対の第1ペプチドと第2ペプチドの結合相互作用を検出する方法であって、
    (i)選択した表現型を検出する、またはそのような表現型の不在を検出する条件下で少なくとも1つの真核細胞を培養すること(ここに、前記細胞は、
    a)転写活性化タンパク質のDNA結合ドメインに接合された第1ペプチドまたはそのセグメントを含む第1異種融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列、
    b)転写活性化タンパク質転写活性化ドメインに接合された第2ペプチドまたはそのセグメントを含む第2異種融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列
    (ここでは、第1ペプチドまたはそのセグメントと第2ペプチドまたはそのセグメントとの結合によって、転写活性化タンパク質が復元される)、および
    c)復元された転写活性化タンパク質の正の転写制御を受けて活性化されるレポーター要素(ここでは、前記レポーター要素の発現が、選択した表現型をもたらす)
    を含む)、
    (ii)選択した表現型の発揮を妨げるレポーター要素の発現に試験ペプチドが影響を及ぼすかどうかを決定することによって、O1-180と相互作用する試験ペプチドの能力を検出すること、
    を含み、前記第1または第2ペプチドがO1-180ペプチドであり、他方が試験ペプチドである方法。
  39. O1-180の結合パートナーを同定する方法であって、当該タンパク質を候補結合パートナーに暴露するステップ、および前記候補結合パートナーがO1-180に結合するかどうかを決定するステップ、を含む方法。
  40. 薬学的に許容できる担体中に分散したO1-236発現のモジュレーターを含む医薬組成物。
  41. モジュレーターがO1-236遺伝子の転写を抑制する請求項40の組成物。
  42. モジュレーターがO1-236遺伝子の転写を増進する請求項40の組成物。
  43. モジュレーターがポリペプチドである請求項40の組成物。
  44. モジュレーターが小分子である請求項40の組成物。
  45. モジュレーターがポリヌクレオチド配列である請求項40の組成物。
  46. ポリヌクレオチド配列がDNAまたはRNAである請求項45の組成物。
  47. 作動的に連結したプロモーターとポリヌクレオチド配列とを含む発現ベクターをさらに含む請求項45の組成物。
  48. 薬学的に許容できる担体中に分散したO1-236活性のモジュレーターを含む医薬組成物。
  49. 組成物がO1-236活性を阻害する請求項48の組成物。
  50. 組成物がO1-236活性を刺激する請求項48の組成物。
  51. 薬理学的に許容できる担体中に分散したO1-236活性のモジュレーターの有効量を動物に投与することを含み、前記の量が受胎を減少させることのできる、避妊を調節する方法。
  52. 薬理学的に許容できる担体中に分散したO1-236活性のモジュレーターの有効量を動物に投与することを含み、前記の量が受胎を増加させることのできる、妊性を強化する方法。
  53. 動物が雌である請求項51または52の方法。
  54. 動物が雄である請求項51または52の方法。
  55. O1-236発現のモジュレーターのスクリーニング方法であって、O1-236ポリペプチドを発現させる細胞を用意するステップ、前記細胞を候補モジュレーターと接触させるステップ、O1-236発現を測定するステップ、および前記候補モジュレーター存在下での前記O1-236発現を、前記候補モジュレーター不在下でのO1-236の発現と比較するステップを含み、前記候補モジュレーター不在下でのO1-236の発現と比較した、前記候補モジュレーター存在下でのO1-236の発現の相違により、前記候補モジュレーターがO1-236発現のモジュレーターであると同定される方法。
  56. O1-236の活性を調節する化合物を同定する方法であって、単離されたO1-236ポリペプチドまたはその機能等価物を取得するステップ、O1-236ポリペプチドまたはその機能的等価物を候補化合物と混合するステップ、およびO1-236の活性に対する前記候補化合物の効果を測定するステップを含む方法。
  57. O1-180の結合パートナーを同定する方法であって、該タンパク質を候補結合パートナーに暴露するステップ、および該候補結合パートナーがO1-180に結合したかどうかを決定するステップを含む方法。
  58. O1-236の活性を調節する化合物を同定する方法であって、
    (a)(1)1つまたは複数の調節可能なO1-236遺伝子、(2)1つまたは複数のO1-236遺伝子のノックアウト、または(3)1つまたは複数のO1-236遺伝子のノックイン、を持つトランスジェニック動物を用意すること、
    (b)ステップ(a)のトランスジェニック動物に対して対照動物をそれぞれ用意すること、
    (c)該トランスジェニック動物の群および該対照動物の群を可能性のあるO1-236-調節化合物に暴露すること、および
    (d)該トランスジェニック動物と該対照動物とを比較し、該トランスジェニック動物における不妊または妊性への該化合物の効果を該対照動物と比較して決定すること
    を含む方法。
  59. ペプチド結合対の第1ペプチドと第2ペプチドの結合相互作用を検出する方法であって、
    (i)選択した表現型を検出するのに適した条件下で少なくとも1つの真核細胞を培養すること(ここに、前記細胞は、
    a)転写活性化タンパク質の転写活性化ドメインに接合された第1ペプチドまたはそのセグメントを含む第1異種融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列、
    b)転写活性化タンパク質転写活性化ドメインに接合された第2ペプチドまたはそのセグメントを含む第2異種融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列
    (ここでは、第1ペプチドまたはそのセグメントと第2ペプチドまたはそのセグメントとの結合によって、転写活性化タンパク質が復元される)、および
    c)復元された転写活性化タンパク質の正の転写制御を受けて活性化されるレポーター要素(ここでは、前記レポーター要素の発現が、選択した表現型をもたらす)
    を含む)、
    (ii)選択した表現型をもたらすレポーター要素の発現レベルを決定することによって前記ペプチド結合対の結合相互作用を検出すること、
    を含み、
    前記第1または第2ペプチドがO1-236ペプチドであり、他方が試験ペプチドである方法。
  60. ペプチド結合対の第1ペプチドと第2ペプチドの結合相互作用を検出すること、
    (i)選択した表現型を検出するためまたはそのような表現型の不在を検出するための条件下で少なくとも1つの酵母細胞を培養すること(ここに、前記酵母細胞は、
    a)転写活性化タンパク質のDNA結合ドメインに接合された第1ペプチドまたはそのセグメントを含む第1異種融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列、
    b)転写活性化タンパク質の転写活性化ドメインに接合された第2ペプチドまたはそのセグメントを含む第2異種融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列
    (ここでは、第1ペプチドまたはそのセグメントと第2ペプチドまたはそのセグメントとの結合によって、転写活性化タンパク質が復元される)、および
    c)復元された転写活性化タンパク質の正の転写制御を受けて活性化されるレポーター要素(ここでは、前記レポーター要素の発現が、選択した表現型の発揮を妨げる)、
    (ii)選択した表現型の発揮を妨げるレポーター要素の発現に試験ペプチドが影響を及ぼすかどうかを決定することによって、O1-236と相互作用する試験ペプチドの能力を検出すること
    を含み、
    前記第1または第2ペプチドがO1-236ペプチドであり、他方が試験ペプチドである方法。
  61. O1-236の結合パートナーを同定する方法であって、当該タンパク質を候補結合パートナーに暴露するステップ、および前記候補結合パートナーがO1-236に結合するかどうかを決定するステップを含む方法。
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