JP2006500048A - L−アルドノラクトンの産生 - Google Patents

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Abstract

本発明は、シュードモナス(Pseudomonas)属又はグルコノバクター(Gluconobacter)属に属する微生物によって、L−アルドヘキソースからL−アルドノラクトンを産生する方法、特にL−グロースからL−グロノ−1,4−ラクトン又はL−グロン酸を産生する方法及びL−ガラクトースからL−ガラクトノ−1,4−ラクトン又はL−ガラクトン酸を産生する方法を提供する。

Description

本発明は、シュードモナス(Pseudomonas)属又はグルコノバクター(Gluconobacter)属に属する微生物によってL−アルドヘキソースからL−アルドノラクトンを産生する方法を目的とする。
L−アルドノラクトンのL−グロノ−1、4−ラクトン及びL−ガラクトノ−1,4−ラクトンは、それぞれ、動植物によるL−アスコルビン酸(ビタミンC)の生合成の中間体である。動物におけるビタミンC合成のために提案された経路は、D‐グルコースから始まって、中間体のD−グルコース−6−ホスフェート、D−グルコース−1−ホスフェート、UDP−D−グルコース、UDP−D−グルクロン酸、D−グルクロン酸、L−グロン酸、L−グロノ−1,4−ラクトン、及び2−ケト−L−グロノ−1,4−ラクトンを介して進行して、最終産物のビタミンCに至る。植物のビタミンC合成のために提案された経路は、D−グルコースから始まって、中間体のD−グルコース−6−ホスフェート、D−フルクトース−6−ホスフェート、D−マンノース−6−ホスフェート、GDP−D−マンノース、GDP−L−ガラクトース、L−ガラクトース−I−ホスフェート、L−ガラクトース、L−ガラクトノ−1,4−ラクトン、及び2−ケト−L−ガラクトノ−1,4−ラクトンを介して進行して、最終産物のビタミンCに至る。
ビタミンCの生物工学的合成の実現可能化に関する研究が、「ライヒシュタイン法」が1934年に確立されて以来、長い間が行われてきた。微生物のGluconobacter oxydans DSM4025、Candida albicans、及びSaccharomyces cerevisiaeは、L−ガラクトノ−1,4−ラクトンをビタミンCに酸化する。Saccharomyces cerevisiae及びCandida albicansは、D−アラビノース及びL−ガラクトースからのそれぞれD−アラビノノ−1,4−ラクトン及びL−ガラクトノ−1,4−ラクトンの産生を触媒するD−アラビノースデヒドロゲナーゼを有する。しかしながら、ビタミンCの立体配置に対応する立体配置を有する(C4位及びC5位で)、中間体としての他のL−ヘキソース、すなわちL−イドース、L−グロース、及びL−タロースから、生物学的にビタミンCを産生できる可能性を述べた報告はなかった。
本発明は、場合により反応混合物からL−アルドノラクトンを単離する、L−アルドヘキソースからL−アルドノラクトンを産生できる微生物によるL−アルドヘキソースからL−アルドノラクトンを産生する方法を提供する。
本発明の方法により産生されるL−アルドノラクトンは、L−グロノ−1,4−ラクトン、L−グロン酸、L−ガラクトノ−1,4−ラクトン、及びL−ガラクトン酸からなる群より選択される。
本願で使用される「L−グロノ−1,4−ラクトン(及びその酸性型のL−グロン酸)」又は「L−ガラクトノ−1,4−ラクトン(及びその酸性型のL−ガラクトン酸)」は、物理化学的平衡の結果として酸性型に加えてラクトンの形態も共存する混合物を意味する。
L−アルドノラクトンを産生するための本発明の方法において使用されるL−アルドヘキソースは、L−グロース又はL−ガラクトースから選択される。
かくして、本発明においてL−グロノ−1,4−ラクトン及びその酸性型のL−グロン酸をL−グロースから産生し、L−ガラクトノ−1,4−ラクトン及びその酸性型のL−ガラクトン酸をL−ガラクトースから産生する。
L−グロース、L−ガラクトース、L−イドース、及びL−タロースのようなL−アルドヘキソースは希少な糖であり、基本的に化学的方法により製造され、商業的にはコストの高い化合物である。しかし、L−グロース及びL−ガラクトースの生物学的調製が近年報告されている。G.oxydans DSM4025の酵素AによるD−ソルビトールからのL−グロースの産生が、EP0832974A2に報告された。L−リボースイソメラーゼによるL−ソルボースからのL−グロースの産生は、米国特許第6,037,153号に開示された。L−ソルボースからのL−ガラクトースの産生は、Izumoriら(日本生物工学会の2001年会)により報告されている。
本発明のL−アルドヘキソースからL−アルドノラクトンを産生できる微生物は、Pseudomonas又はGluconobacterから選択されてもよい。好適な微生物はPseudomonas putida又はGluconobacter oxydansである。P. putida ATCC21812又はG. oxydans IFO3293がより好適である。微生物はまた、P. putida ATCC21812又はG. oxydans IFO3293の同定特徴を有する微生物の生物学的及び/又は分類学的に均一な培養物であってもよい。
P. putida ATCC21812株は、アメリカ基準株培養収集局(American Type Culture Collection)(米国、メリーランド州、20852、ロックビル、パークローンドライブ、12301)から入手可能である。G. oxydans IFO3293株は、大阪の発酵研究所研究所(日本国大阪府淀川区十三本町2丁目17−85)から入手可能である、
本願で使用される用語「生物学的及び/又は分類学的に均一な培養物」は、P. putida ATCC21812又はG. oxydans IFO3293以外に、異なる種/属の微生物であるがP. putida ATCC21812又はG. oxydans IFO3293の同定特徴を有するものも包含する。微生物がこのような均一な培養物に属するかどうかの決定は16SrRNAシーケンスの比較に基づく。
微生物「Pseudomonas putida」又は「Gluconobacter oxydans」はまた、国際原核生物命名法に定義されたような、同じ生理化学的性質を有するこのような種のシノニム又はバソニムも包含する。
本発明は、従って、反応混合物からL−アルドノラクトンを場合により単離する、L−アルドヘキソースからL−アルドノラクトンを産生できるPseudomonas属又はGluconobacter属に属する微生物による、L−アルドヘキソースからL−アルドノラクトンを産生する方法、特にL−グロースからL−グロノ−1,4−ラクトン若しくはL−グロン酸を又はL−ガラクトースからL−ガラクトノ−1,4−ラクトン若しくはL−ガラクトン酸を産生する方法を提供する。この方法を成長培養又は静止細胞反応において行う。
かくして、本発明の実施態様は、上記のL−アルドヘキソースからL−アルドノラクトンを産生する方法であって、上記のL−アルドヘキソースからL−アルドノラクトンを産生できる微生物を成長培養又は静止細胞反応において使用する方法を提供することである。
本発明において上述した菌株の変異体もまた使用できる。本願で使用される用語「変異」は、微生物のゲノム配列の改変を意味し、これを任意の便利な手段により誘発してもよい。例えば、化学的突然変異誘発及び紫外線突然変異誘発の後に所望の表現型をスクリーニング又は選択すること、組換え技術によるインビトロでの機能障害性遺伝子の作製を使用して微生物のゲノムにおいて遺伝子の正常対応物を単一及び二重の交差組換えにより置換すること、並びに他の周知の技術などである。Sambrookら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、並びにHarwood及びCutting, Molecular Biology Methods For Bacillus, John Wiley and Sons(1990),pp. 27-74を参照のこと。適切な変異原として、紫外線、X線、ガンマー線、及び亜硝酸などが挙げられるが、これらに限定されない。さらにまた、変異株を、その自然的突然変異によって生じるクローンから、それ自体その目的のために当業者に周知の任意の方法で単離することによって得ることができる。
微生物は、好気的条件下で適切な栄養分を補充した水性培地中で培養してもよい。培養は、約1.0〜9.0、好ましくは約2.0〜8.0のpHで実施してもよい。培養期間は、pH、温度、及び使用する栄養培地に応じて変化するが、通常1〜120時間が良好な結果をもたらす。培養を実施するに適切な温度範囲は、約13℃〜45℃、より好ましくは約18℃〜42℃である。
かくして、本発明の目的は、L−アルドヘキソースからL−アルドノラクトンを産生できる微生物によるL−アルドヘキソースからL−アルドノラクトンを産生する方法であって、1〜120時間、約1〜約9までの範囲のpHにて、約13℃〜約45℃までの範囲の温度で実施する方法を提供することである。好ましい実施態様では、上記の方法を約2〜約8までの範囲のpHにて、約18℃〜約42℃までの範囲の温度で実施する。
反応混合物中のL−アルドヘキソースの濃度は、他の反応条件に応じて変更することができるが、一般に1g/lから300g/l、好ましくは10g/lから200g/lであってもよい。
培養培地は、同化可能な炭素源、消化可能な窒素源、及び無機物質、ビタミン、微量元素、並びに他の増殖促進因子などの栄養分を含むことが通常必要である。同化可能な炭素源の例には、グリセロール、D−グルコース、D−マンニトール、D−フルクトース、D−アラビトール、D−ソルビトール、及びL−ソルボースが挙げられるが、これらに限定されない。
酵母抽出液、肉抽出液、ペプトン、カゼイン、コーンスティープリカー(corn steep liquor)、尿素、アミノ酸、硝酸塩、及びアンモニウム塩などの種々の有機又は無機物質もまた窒素源として使用してもよい。無機物質として、硫酸マグネシウム、リン酸カリウム、塩化第一鉄及び塩化第二鉄、炭酸カルシウムなどを使用してもよい。
ビオチン、シアノコバラミン、塩酸チアミン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸カルシウム、葉酸、イノシトール、ナイアシン、p−アミノ安息香酸、及びリボフラビンなどのビタミンが、本発明に有用である。
本発明に使用される適切な微量元素は、希少金属、例えば、無機塩の形態のMo、Mn、Cu、Co、及びZn、例としてNaMoO・2HO、ビタミン、アミノ酸、プリン、及びピリミジンから選択される。他の増殖促進因子として、アミノ酸(例えば、トリプトファン又はヒスチジン)、プリン(例えば、アデニン又はグアニン)、及びピリミジン(例えば、シトシン及びチミン)が挙げられるが、これらに限定されない。
反応後、L−アルドノラクトンを、反応混合物から、例えば、薄層クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、又は高速液体クロマトグラフィーなどの種々のクロマトグラフィーの組合せにより回収してもよい。反応生成物は、本発明の反応混合物中に存在するので、精製せずにさらなる反応の基質として使用することもできる。
以下の実施例を、本発明の方法をさらに説明するために提供する。これらの実施例は単なる実例であり、いずれにしても本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1:P. putida又はG. oxydansによるL−グロースからのL−グロノ−1,4−ラクトンの産生
P. putida ATCC21812及びG. oxydans IFO3293を、2.5%マンニトール、0.5%酵母抽出物(Difco)、及び0.3%バクトペプトン(Difco)を含むMB寒天培地上で48時間30℃で成長させた。得られた細胞を、静止細胞反応に使用した。2%L−グロース、0.3%NaCl、1%CaCO、及び1mMフェナジンメタンスルフェートを含む反応混合物(1ml)を、17時間室温でインキュベートした。表lに概略したとおり、L−グロノ−1,4−ラクトン及びL−グロン酸の生成量を薄層クロマトグラフィー(TLC)及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりアッセイした。TLCアッセイを、シリカゲル(キーゼル・ゲル60F254、0.25mm、メルク)、n−プロパノール−HO−1%HPO−HCOOH(400:100:10:1)の溶媒系を用いて実施した。HPLCアッセイを、YMC-Pack ポリアミンIIカラム(150×4.6mmI.D.;YMC株式会社、京都、日本国)及びアセトニトリル−50mM NHPO(67:33)を用いて、210nmにて実施した。TLCプレートを、0.5%KIO溶液で噴霧し、次に四塩基−飽和2N CHCOOH及び15%MnSO溶液の等容量の混合物を噴霧した。産生物のL−グロノ−1,4−ラクトン及びL−グロン酸は白色のスポットとして検出された。
Figure 2006500048
基質としてL−グロースを用いる反応を、2%−グロース、0.3%NaCl、1%CaCOを含む100μlの反応混合物を用いる小静止細胞反応においても行った。ルーリア・ベルターニ(LB)寒天上で、1日37℃で成長させたEscherichia coli HB101もまた、この反応において使用した。産生したL−グロノ−1,4−ラクトン及びL−グロン酸の量を表2に示す。
Figure 2006500048
実施例2:L−ガラクトースからのL−ガラクトノ−1,4−ラクトンの産生
P. putida ATCC21812及びG. oxydans IFO3293をMB寒天プレート上で48時間30℃で成長させた。Saccharomyces cerevisiae ATCC9763を、2%D‐グルコース及び1.8%寒天を含むYN培地(Difco)上で48時間30℃で成長させた。ルーリア・ベルターニ(LB)寒天上で1日37℃で成長させたE. coli HB101もまた、この反応において使用した。得られた細胞を静止細胞反応に使用した。2%L−ガラクトース、0.3%NaCl、1%CaCO、及び細胞(OD600=約20)を含む反応混合物(100μl)を23時間室温でインキュベートした。表3に概略したとおり、L−ガラクトノ−1,4−ラクトン及びL−ガラクトン酸の産生量をTLC及びHPLCによりアッセイした。P. putida ATCC21812及びG.oxydans IFO3293は、S. cerevisiae ATCC9763及びE. coli HB101(両方とも、L−ガラクトノ−1,4−ラクトン及びL−ガラクトン酸を検知できない量で産生した)より、L−ガラクトノ−1,4−ラクトンをL−ガラクトン酸とともにより多く産生した。
Figure 2006500048

Claims (9)

  1. 反応混合物からL−アルドノラクトンを場合により単離する、L−アルドヘキソースからL−アルドノラクトンを産生できる微生物によるL−アルドヘキソースからL−アルドノラクトンを産生する方法。
  2. L−アルドノラクトンがL−グロノ−1,4−ラクトン、L−グロン酸、L−ガラクトノ−1,4−ラクトン、及びL−ガラクトン酸からなる群より選択される請求項1に記載の方法。
  3. L−アルドヘキソースがL−グロース又はL−ガラクトースから選択される請求項1に記載の方法。
  4. 微生物がシュードモナス(Pseudomonas)又はグルコノバクター(Gluconobacter)から選択される請求項1に記載の方法。
  5. 微生物がシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)又はグルコノバクター オキシダンス(Gluconobacter oxydans)である請求項4に記載の方法。
  6. 微生物がシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)ATCC21812又はグルコノバクター オキシダンス(Gluconobacter oxydans)IFO3293である請求項4に記載の方法。
  7. 微生物を成長培養又は静止細胞反応において使用する請求項1に記載の方法。
  8. 1〜120時間、約1〜約9までの範囲のpHにて、約13℃〜約45℃までの範囲の温度で実施する請求項1に記載の方法。
  9. 1〜120時間、約2〜約8までの範囲のpHにて、約18℃〜約42℃までの範囲の温度で実施する請求項8に記載の方法。
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