JP2006351513A - 直接酸化型燃料電池およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料の利用効率および発電特性に優れた直接酸化型燃料電池を提供する。
【解決手段】カソード8とアノード5とそれらの間に配置された固体高分子電解質膜2とを備える膜−電極接合体1を具備する。カソードは、カソード触媒層6とカソード拡散層7とを含み、カソード触媒層が固体高分子電解質膜側に配されている。アノードは、アノード触媒層3とアノード拡散層4とを含み、アノード触媒層が固体高分子電解質膜側に配されている。カソード触媒層と固体高分子電解質膜との間には、カソード保護層12が形成されており、アノード触媒層と固体高分子電解質膜との間には、アノード保護層11が形成されている。カソード保護層およびアノード保護層は、それぞれ高分子電解質と撥水性微粒子とを含む。カソード保護層およびアノード保護層は、それぞれカソード触媒層およびアノード触媒層に存在する亀裂を被覆するように形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料を水素に改質せずに用いる直接酸化型燃料電池に関する。
携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノートPC、ビデオカメラ等の携帯用小型電子機器は、多機能化に伴い、消費電力や連続使用時間が増加している。消費電力や連続使用時間の増加に対応するために、携帯用小型電子機器に搭載される電池の高エネルギー密度化が強く要望されている。
現在、携帯用小型電子機器の電源として、主にリチウム二次電池が使用されている。リチウム二次電池は、近い将来、エネルギー密度600Wh/L程度で限界を迎えると予測されている。このため、リチウム二次電池に替わる電源として、固体高分子電解質膜を用いた燃料電池が期待されており、その早期実用化が望まれている。
上記燃料電池の中でも、燃料であるメタノールやジメチルエーテル等を水素に改質することなく、そのままセル内部に供給して発電する、直接酸化型燃料電池について、活発な研究開発が行われている。これは、有機燃料の持つ理論エネルギー密度の高さ、システムの簡素化、燃料貯蔵のしやすさの面から、直接酸化型燃料電池が注目されているからである。
直接酸化型燃料電池は、複数の単セルから構成される。単セルは、電解質膜−電極接合体(MEA)およびその両側に配置されたセパレータを備える。電解質膜−電極接合体(MEA)は、固体高分子電解質膜と、その一方の面に接合されたアノードと、その他方の面に接合されたカソードとを含む。カソードおよびアノードは、それぞれ触媒層と拡散層を含む。直接酸化型燃料電池は、アノードに燃料と水を供給し、カソードに空気のような酸化剤を供給して、発電を行う。
例えば、燃料としてメタノールを用いる直接メタノール型燃料電池(DMFC)の電極反応は、以下の通りである。
アノード:CH3OH+H2O → CO2+6H++6e-
カソード:3/2O2+6H++6e- → 3H2
すなわち、アノードでは、メタノールと水が反応して、二酸化炭素、プロトンおよび電子が生成される。プロトンは電解質膜を通ってカソードに到達する。カソードでは、酸素と、プロトンと、外部回路を経由してカソードに到達した電子とが反応して水が生成される。
しかしながら、この直接酸化型燃料電池の実用化にはいくつかの問題点が存在している。
直接酸化型燃料電池の電解質膜としては、プロトン伝導性、耐熱性および耐酸化性の点から、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸膜が使用されている。このタイプの電解質膜は、疎水性のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)主鎖と、パーフルオロアルキル基の先端に親水性のスルホン酸基が固定された側鎖とからなる。このため、メタノールのような分子内に親水性部分と疎水性部分を併せ持つ物質を燃料として用いる場合、その燃料は、パーフルオロアルキルスルホン酸膜に対して良溶媒であり、電解質膜を通過しやすい。つまり、アノードに供給された燃料が、未反応のまま電解質膜を通過し、カソードに達する、いわゆる「クロスオーバー」という現象が生じる。
加えて、アノードおよびカソードの触媒層中には、触媒ペーストを塗布および乾燥する段階で発生した亀裂が残存していることが多い。このため、アノードに供給された燃料がその亀裂を介して、カソードに移動するために、クロスオーバー量が増大する。その結果、燃料の利用効率が低下すると共に、カソードの電極電位の低下を引き起こし、発電特性の著しい低下を招いている。特に、燃料濃度が高くなると、この亀裂を通過するクロスオーバー量が増大する傾向にあるため、現状では、燃料濃度を低く設定する必要がある。このため、大量の燃料を収容できる容器を具備する必要があり、このことが燃料電池システムの小型化への大きな障害となっている。
さらには、固体高分子電解質膜と触媒層との界面接合性に関する問題もある。MEAは、通常、ホットプレス法により製造されている。この方法は、電解質膜をアノードとカソードとで挟み込み、130〜150℃の高温下で、100kg/cm2程度の圧力を加えて、アノードと電解質膜とカソードとを溶着して一体化する方法である。しかしながら、この方法では、電解質膜と触媒層との界面接合性を確保するために、ホットプレス時の圧力を、上記のように高く設定する必要がある。このため、触媒層および拡散層の空孔率が減少し、MEAにおける燃料および空気の拡散性ならびに発生した二酸化炭素の排斥性が低下し、発電特性が低下するという問題が生じる。さらには、拡散層自体の機械的強度が低下するため、拡散層が破損したり、拡散層に局部的なひび割れが生じたりして、拡散層の耐久性が低下する。
上記のような問題に対処するために、例えば、アノードおよびカソードの少なくとも一方において、その電解質膜との接合界面に凹凸を設けることが提案されている(特許文献1参照)。
特開2003−123786号公報
しかしながら、このような構成では、燃料の利用効率を低下させることなく、優れた発電特性を有する直接酸化型燃料電池を提供することは困難であり、未だ多くの問題が存在している。特許文献1に開示される技術により、電解質膜と触媒層との界面接合性の確保と拡散層へのダメージの抑制、すなわち、拡散層の空孔率の減少、ひび割れまたは損傷を抑制することはできる。しかし、特許文献1に開示される技術は、触媒層の亀裂を介しての燃料クロスオーバーの解決策を提示するものではない。
そこで、本発明は、燃料の利用効率および発電特性に優れた直接酸化型燃料電池を提供することを目的とする。
本発明は、カソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に配置された固体高分子電解質膜とを備える膜−電極接合体を具備し、カソードは、カソード触媒層とカソード拡散層とを含み、カソード触媒層は、固体高分子電解質膜側に配されており、アノードは、アノード触媒層とアノード拡散層とを含み、アノード触媒層は、固体高分子電解質膜側に配されており、カソード触媒層と固体高分子電解質膜との間には、カソード保護層が形成されており、アノード触媒層と固体高分子電解質膜との間には、アノード保護層が形成されており、カソード保護層およびアノード保護層が、それぞれ高分子電解質と撥水性微粒子とを含む、直接酸化型燃料電池に関する。カソード保護層およびアノード保護層は、アノードおよびカソードの触媒層に存在する亀裂を覆うように形成されている。
撥水性微粒子の量は、保護層の触媒層側よりも固体高分子電解質膜側で多くなっていることが好ましい。保護層は、触媒層側に配された第1保護膜と、固体高分子電解質膜側に配された第2保護膜とを含み、第1保護膜は、前記撥水性微粒子を含まず、高分子電解質を含み、第2保護膜は、撥水性微粒子と高分子電解質とを含むことがさらに好ましい。
撥水性微粒子は、フッ素樹脂を含むことが好ましい。高分子電解質は、ホスホニル基、ホスフィニル基、スルホニル基、スルフィニル基、カルボキシル基、スルホン基、メルカプト基、エーテル結合基、水酸基、第4級アンモニウム基、アミノ基、およびリン酸基よりなる群から選ばれた少なくとも1つのイオン伝導性官能基を有することが好ましい。
アノードに供給される燃料は、メタノールおよびジメチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物を含むことが好ましい。
また、本発明は、
(a)カソード触媒層およびアノード触媒層を形成する工程、
(b)カソード触媒層およびアノード触媒層上に、それぞれ、高分子電解質と撥水性微粒子とを含む、カソード保護層およびアノード保護層を形成する工程、ならびに
(c)固体高分子電解質膜とカソード触媒層とを、カソード保護層を介して接合し、さらに、固体高分子電解質膜とアノード触媒層とを、アノード保護層を介して接合する工程を含む、直接酸化型燃料電池の製造方法に関する。なお、カソード触媒層およびアノード触媒層には、亀裂が存在している。
上記工程(b)は、各触媒層上に、亀裂を被覆するように、撥水性微粒子を含まず、高分子電解質を含む第1ペーストを塗布し、第1保護膜を形成する工程と、前記第1保護膜上に、高分子電解質と撥水性微粒子とを含む第2ペーストを塗布し、第2保護膜を形成する工程とを含むことが好ましい。第1保護膜を形成する工程は、第1ペーストを触媒層上にスプレー塗布し、塗布された第1ペーストを乾燥させる工程を含み、第2保護膜を形成する工程は、第2ペーストを第1保護膜上にスプレー塗布し、塗布された第2ペーストを乾燥させる工程を含むことが好ましい。このとき、第1ペーストをスプレー塗布する際の触媒層の表面温度または第2ペーストをスプレー塗布する際の第1保護膜の表面温度を、40〜80℃に制御することが好ましい。
本発明によれば、アノード触媒層およびカソード触媒層に存在し得る亀裂が、それぞれアノード保護層およびカソード保護層により被覆される。触媒層の亀裂を保護層で覆うことにより、触媒層の亀裂を介して、燃料が未反応のままカソード触媒層へ移動する量を大幅に低減することができる。さらには、固体高分子電解質膜とアノードとカソードとを、低い圧力でホットプレスした場合でも、保護層を設けることにより、固体高分子電解質膜と各触媒層との界面接合性を確保し、界面抵抗を低下させることができる。よって、燃料の利用効率を低下させることなく、優れた発電特性を有する直接酸化型燃料電池を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
実施の形態1
図1に、本発明の一実施形態に係る燃料電池に含まれる電解質膜/電極接合体(MEA)の構造を示す。図1のMEA1は、固体高分子電解質膜2と、アノード5と、カソード8とを具備する。アノード5は、アノード触媒層3およびアノード拡散層4を備える。カソード8は、カソード触媒層6およびカソード拡散層7を備える。図1のMEA1を備える燃料電池においては、アノードに燃料が供給され、カソードに空気のような酸化剤が供給されて、発電が行われる。
固体高分子電解質膜2は、アノード5とカソード8とに挟まれている。アノード5において、アノード触媒層3が固体電解質膜側に配されている。カソード8において、カソード触媒層6が、固体高分子電解質膜2側に配されている。
さらに、アノード5およびカソード8の周囲には、それぞれ燃料および空気の漏洩を防止するために、ガスシール材9aおよび9bが配置されている。
固体高分子電解質膜2とアノード触媒層3との間にアノード保護層11が形成され、固体高分子電解質膜2とカソード触媒層6との間にカソード保護層12が形成されている。アノード保護層11およびカソード保護層12は、それぞれ高分子電解質と撥水性微粒子を少なくとも含む。アノード触媒層3およびカソード触媒層6には、通常、亀裂が存在している。
このように、アノード触媒層3およびカソード触媒層6の固体高分子電解質膜側の表面に、それぞれ保護層を設けることにより、アノード触媒層3およびカソード触媒層6に存在し得る亀裂10を被覆することができる。触媒層の亀裂を保護層で覆うことにより、高分子電解質を含む領域の厚みが増加することになる。さらに、保護層中において、撥水性微粒子はミクロな凝集構造を形成している。これらにより、保護層内部を移動する燃料の透過速度を著しく低下させることが可能となる。よって、保護層を設けることにより、触媒層の亀裂を介して、燃料が未反応のままカソード触媒層へ移動する量(クロスオーバー量)を大幅に低減することができる。
また、固体高分子電解質膜とアノードとカソードとを、低い圧力でホットプレスした場合でも、保護層を設けることにより、固体高分子電解質膜と各触媒層との界面接合性を確保し、界面抵抗を低下させることができる。
よって、燃料の利用効率を低下させることなく、優れた発電特性を有する直接酸化型燃料電池を提供することができる。
なお、図1において、アノード保護層11およびカソード保護層12は、全ての亀裂を覆い、かつ亀裂を全て埋めるように形成されている。これらの保護層は、全ての亀裂を覆うように形成されていればよく、それらの亀裂を全て埋めている必要はない。
撥水性微粒子としては、当該分野で一般的な撥水性材料からなるものを用いることができる。なかでも、撥水性微粒子を構成する材料として、フッ素樹脂を用いることが好ましい。化学的に安定なC−F結合を有するフッ素樹脂を用いることで、水分子との相互作用が小さい表面、いわゆる撥水表面を形成することができる。
フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、およびテトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)が挙げられる。
高分子電解質としては、耐熱性、化学的安定性に優れている高分子を用いることが好ましい。中でも、ホスホニル基、ホスフィニル基、スルホニル基、スルフィニル基、カルボキシル基、スルホン基、メルカプト基、エーテル結合基(−O−)、水酸基、第4級アンモニウム基、アミノ基、およびリン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種のイオン伝導性官能基を有する高分子電解質を用いることが好ましい。保護層中の高分子電解質が、上記のようなプロトンを保持し、かつプロトンを遊離しやすい官能基を有しているために、保護層の厚さ方向におけるプロトンの移動性が向上する。よって、燃料電池の発電特性をさらに向上させることができる。
アノード保護層とカソード保護層において、含まれる高分子電解質および撥水性微粒子は、同じでもよいし、異なっていてもよい。
保護層の厚さは、プロトン伝導性を維持するために、できるだけ薄いことが好ましい。例えば、保護層の厚さは、10μm程度あるいは、それ以下とすることが好ましい。
保護層における、高分子電解質と撥水性微粒子と合計に占める撥水性微粒子の割合は、10重量%以上であることが好ましい。
撥水性微粒子の量は、保護層の触媒層側よりも固体高分子電解質膜側で多くなっていることが好ましい。撥水性微粒子の量を固体高分子電解質膜側の方で多くすることにより、触媒層中の三相界面、すなわち活性電極表面を減少させることなく、アノードおよびカソードの触媒層の亀裂を通過する、燃料のクロスオーバー量を大幅に低減することができる。
ここで、例えば、保護層を、撥水性微粒子を含まない第1保護膜と、撥水性微粒子を含む第2保護膜とから構成することにより、撥水性微粒子の量を、保護層の触媒層側よりも固体高分子電解質膜側で多くすることができる。上記2つの膜を含む保護層を、図2を参照しながら説明する。図2は、保護層が第1保護膜と第2保護膜とから構成されるMEAを示す。図2において、図1と同じ構成要素には同じ番号を付している。また、触媒層の亀裂は図示していない。
図2に示されるように、アノード保護層11は、高分子電解質を含み、撥水性微粒子を含まない第1保護膜21と、高分子電解質および撥水性微粒子を含む第2保護膜22とから構成されている。同様に、カソード保護膜12は、第1保護膜23と第2保護膜24とから構成されている。このとき、第1保護膜が、保護層の触媒層側に配置される。
また、保護層をこのような構成とすることにより、第1保護膜がバインダーの役割を担うため、固体高分子電解質膜と触媒層との接合性を十分に確保することができる。
なお、撥水性微粒子の量は、保護層の触媒層側から固体高分子電解質膜側に向かって、徐々に増加していてもよい。このような保護層は、例えば、撥水性微粒子の量が異なるペーストを用いることにより作製することができる。
アノード触媒層3およびカソード触媒層6は、触媒金属を担持した導電性粒子または触媒金属微粒子と、高分子電解質とを主成分とする。アノード触媒層3の触媒金属には、例えば、白金(Pt)−ルテニウム(Ru)合金微粒子が用いられる。カソード触媒層6の触媒金属には、例えば、Pt微粒子が用いられる。触媒層の厚さは、アノードにおいてもカソードにおいても、10〜50μm程度であることが好ましい。
アノード拡散層4およびカソード拡散層7は、それぞれ燃料および空気の拡散性、発電により発生した二酸化炭素または水の排斥性、ならびに電子伝導性を併せ持つ材料から構成される。このような材料としては、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス等の導電性多孔質基材を用いることができる。また、従来公知技術に基づいて、この導電性多孔質基材を撥水処理してもよい。さらに、導電性多孔質基材の触媒層側の表面には、撥水性のカーボン層を設けてもよい。
固体高分子電解質膜としては、プロトン伝導性を有する材料を特に限定することなく用いることができる。
なお、固体高分子電解質膜を構成する高分子電解質および触媒層に含まれる高分子電解質は、保護層に含まれる高分子電解質と同じであってもよい。
アノードに供給される燃料は、メタノールおよびジメチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物を含むことが好ましい。このような炭素−炭素結合を有しないメタノールおよび/またはジメチルエーテルを燃料として用いることによって、アノード反応分極を低減させることができる。また、エチレングリコールを燃料として用いてもよい。エチレングリコールを燃料として用いる場合、エチレングリコールの酸化反応性を向上させるために、エチレングリコールとKOH等のアルカリ水溶液との混合物を燃料として用いることが好ましい。
以下に、保護層の作製方法の一例を説明する。なお、保護層は、この方法以外の方法で作製してもよい。
例えば、上記第1保護膜と第2保護膜を有する保護層は、
(a)カソード触媒層およびアノード触媒層を形成する工程、
(b)前記カソード触媒層および前記アノード触媒層上に、それぞれ、高分子電解質と撥水性微粒子とを含む、カソード保護層およびアノード保護層を形成する工程、ならびに
(c)固体高分子電解質膜と前記カソード触媒層とを、前記カソード保護層を介して接合し、さらに、固体高分子電解質膜と前記アノード触媒層とを、前記アノード保護層を介して接合する工程を含む方法により作製することができる。ここで、前記工程(b)は、各触媒層上に、撥水性微粒子を含まず、高分子電解質を含む第1ペーストを塗布し、第1保護膜を形成する工程と、第1保護膜上に、高分子電解質と撥水性微粒子とを含む第2ペーストを塗布し、第2保護膜を形成する工程とを含む。保護膜は、各触媒層の亀裂を覆うように形成される。
本方法により、触媒層に存在し得る亀裂を、高分子電解質と撥水性微粒子を含む保護層で被覆することができる。このため、触媒層の亀裂を介する、燃料のクロスオーバー量を大幅に低減することができる。
さらに、前記方法で作製された保護層は、触媒層側に配された第1保護膜および固体高分子電解質側に配された第2保護膜を有する。第2保護膜のみが撥水性微粒子を含むため、この保護層においては、撥水性微粒子が、触媒層側よりも固体高分子電解質膜側に多く存在することになる。このように、撥水性微粒子が固体高分子電解質膜側に多く存在するために、触媒層中の三相界面、すなわち電極活性表面を減少させることなく、触媒層の亀裂を通過する燃料のクロスオーバー量を大幅に低減することができる。
工程(a)において、カソード触媒層およびアノード触媒層は、当該分野で公知の方法を用いて、作製することができる。例えば、触媒層は、支持体上に形成してもよい。なお、支持体は、拡散層であってもよい。
工程(b)で用いられる第1ペーストは、例えば、高分子電解質と、所定の分散媒とを混合することにより調製することができる。第2ペーストは、高分子電解質と、撥水性微粒子と、所定の分散媒とを混合することにより調製することができる。高分子電解質および撥水性微粒子としては、上記のようなものを用いることができる。分散媒としては、例えば、高分子電解質および撥水性微粒子の両方を分散できるもの、例えば、イソプロパノール水溶液のようなアルコールを含む水溶液を用いることができる。なお、第1ペーストにおいては、高分子電解質を所定の溶媒に溶解させてもよい。
第1ペーストおよび第2ペーストは、触媒層に、スプレー塗布法により塗布することが好ましい。スプレー塗布法を用いることで、高分子電解質および撥水性微粒子を含むペーストを小さな液滴として、触媒層のミクロな亀裂に、確実に入り込ませることができる。また、スプレー塗布法は、均質で薄い膜を形成するのに有効な手法である。このため、スプレー塗布法を用いることにより、均質な保護膜を形成することが可能となる。
第1ペーストをスプレー塗布する際の触媒層の表面温度および第2ペーストをスプレー塗布する際の第1保護膜の表面温度は、40〜80℃であることが好ましい。例えば、触媒層の表面に、第1ペーストを塗布する場合、触媒層の表面温度を上記温度範囲内に制御することにより、高分子電解質を含む小さな液滴をその塗布面上で乾燥させながら、高分子電解質を堆積させることができる。第1保護膜の表面に、第2ペーストを塗布する場合でも同様に、高分子電解質および撥水性微粒子を含む小さな液滴を第1保護膜の表面で乾燥させながら、これらを堆積することができる。これにより、保護層自体のミクロな亀裂の生成を回避することができる。ただし、触媒層および第1保護膜の表面温度が80℃を超える場合には、ペースト中の揮発成分(つまり、上記分散媒または溶媒)の蒸発速度が大きすぎるために、保護層内部の高分子電解質の構造および撥水性微粒子の構造が不均一になる。その表面温度が40℃未満では、ペースト中の、揮発成分の蒸発速度が小さすぎるために、保護層が形成された後にも、その内部からに多くの分散媒または溶媒が蒸発する。このため、保護層にミクロな亀裂が生じやすくなる。
工程(c)において、カソード触媒層と、固体高分子電解質と、アノード触媒層との接合は、例えば、ホットプレス法を用いて行うことができる。本発明においては、固体高分子電解質膜と、カソード触媒層またはアノード触媒層との間には、それぞれ、カソード保護層およびアノード保護層が設けられているため、固体高分子電解質膜と各触媒層との接合は、低い加圧条件で行うことができる。このように、低い加圧条件で接合できるため、触媒層の空孔率の低下を抑制しつつ、界面抵抗の低減化を実現することができる。
上記工程(b)において、第1ペーストおよび第2ペーストをスプレー塗布する場合、そのスプレー塗布は、図3に示されるようなスプレー式塗布装置を用いて行うことができる。
図3のスプレー式塗布装置30は、第1タンク31および第2タンク32、第1攪拌機33および第2攪拌機34、第1バルブ35および第2バルブ36、ポンプ37、スプレーノズル38、ボンベ39、アクチュエータ40、ならびにヒータ41を備える。
第1タンク31には、高分子電解質を溶媒または分散媒中に溶解または均一に分散させた第1ペースト42が充填されている。第2タンク32には、高分子電解質と撥水性微粒子を分散媒中に均一に分散させた第2ペースト43が充填されている。第1ペースト42および第2ペースト43は、それぞれ第1攪拌機33および第2攪拌機34により、常に攪拌されている。
第1タンク31または第2タンク32から、スプレーノズル38へのペーストの供給の切り替えは、第1バルブ35および第2バルブ36を用いて行われる。選択されたペーストは、ポンプ37によりスプレーノズル38に供給される。また、スプレーノズル38には、噴出ガスがボンベ39から供給されている。ここで、噴出ガスとしては、例えば、窒素ガスを用いることができる。
スプレーノズル38は、アクチュエータ40により、X軸およびY軸の2方向に任意の速度で移動することが可能である。スプレーノズル38は、触媒層44の上方に設置されている。例えば、まず、第1ペースト42を噴出させながら、スプレーノズル38を移動させ、触媒層44上に第1ペースト42を均一に塗布し、ヒータ41で乾燥して、第1保護膜が形成される。なお、触媒層44は、支持体45に支持されている。
この後、第2ペースト43がスプレーノズル38に供給されるように、第1バルブ35および第2バルブ36を操作する。第2ペースト43を、第1保護膜の上に、上記と同様な手順でスプレー塗布し、乾燥して、第2保護膜を得る。
こうして、第1保護膜と第2保護膜を有する保護層を触媒層の表面に形成することができる。なお、上記のように、第1ペーストの塗布時および第2ペーストの塗布時において、触媒層および第1保護膜は、ヒータ41により加熱されていることが好ましい。
上記では、第1保護膜と第2保護膜を有する保護層の作製方法について説明している。保護層が、高分子電解質と撥水性微粒子を含む単一層からなる場合、上記工程(b)において、第2ペーストを触媒層の表面に塗布し、乾燥することにより、保護層を形成することができる。なお、この場合においても、触媒層への第2ペーストの塗布は、スプレー塗布により行うことが好ましい。また、第2ペーストを塗布するときの触媒層の表面温度は、上記範囲にあることが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明を何ら限定するものではない。
(アノード触媒層の作製)
アノード触媒層に含まれる触媒担持粒子を、平均1次粒子径30nmを持つ導電性炭素粒子であるカーボンブラック(三菱化学(株)製のケッチェンブラックEC)に、PtおよびRuを含む合金粒子(平均粒径30Å)を担持させることにより作製した。ここで、カーボンブラックとPtとRuとの合計に占めるPtおよびRuの割合は、それぞれ30重量%とした。
次に、上記触媒担持粒子をイソプロパノール水溶液に分散させた分散液と、高分子電解質をイソプロパノール水溶液に分散させた分散液とを、ビーズミルで混合することにより、アノード触媒層用ペーストを作製した。このペーストにおいて、触媒担持粒子と高分子電解質との重量比は1:1とした。高分子電解質としては、パーフルオロカーボンスルホン酸アイオノマー(旭硝子(株)製のFlemion)を用いた。
アノード触媒層用ペーストを、ドクターブレードを用いて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート(ニチアス(株)製のナフロンPTFEシート)上に塗布した後、大気中常温で6時間乾燥させて、アノード触媒層を作製した。
(カソード触媒層の作製)
カソード触媒層に含まれる触媒担持粒子を、上記と同じ導電性炭素粒子に、平均粒径30ÅのPt粒子を担持させることにより作製した。ここで、炭素粒子とPt粒子との合計に占めるPt粒子の割合は50重量%とした。
この触媒担持粒子を用いたこと以外、アノードの触媒層と同様にして、PTFEシート上に、カソード触媒層を作製した。
なお、アノード触媒層およびカソード触媒層には、亀裂が存在することが確認された。
(保護層の形成)
次に、アノードおよびカソードの触媒層上に、それぞれ、保護層を、亀裂を覆うように形成した。
高分子電解質としては、パーフルオロカーボンスルホン酸アイオノマー(旭硝子(株)製のFlemion)を用い、撥水性微粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂微粒子(平均粒径:約1μm)を用いた。
本実施例では、高分子電解質を含み、撥水性微粒子を含まない第1保護膜と、高分子電解質および撥水性微粒子を含む第2保護膜を有する保護層を、図3に示されるスプレー式塗布装置を用いて形成した。
上記高分子電解質をイソプロパノール水溶液に溶解させた第1ペーストを調製した。第1ペーストにおいて、高分子電解質の濃度は、3.0重量%とした。その第1ペーストを、スプレー式塗布装置を用いて、各触媒層上にスプレー塗布した。その後、大気中60℃で1時間乾燥させて、第1保護膜を形成した。
次いで、上記高分子電解質と撥水性微粒子をイソプロパノール水溶液に均一に分散させた第2ペーストを調製した。第2ペーストにおいて、高分子電解質と撥水性微粒子との混合比は、重量比で3:1とした。第2ペーストにおいて、高分子電解質と撥水性微粒子の合計の濃度は、3.9重量%とした。
第1保護膜の表面に、第2ペーストをスプレー式塗布装置を用いて塗布した。その後、大気中60℃で3時間乾燥して、第2保護膜を形成した。このようにして、触媒層側から順に、第1保護膜および第2保護膜を含む保護層を、それぞれ、アノードおよびカソードの触媒層の上に形成した。保護層の厚さは10μmとした。なお、ペーストのスプレー塗布時において、アノードおよびカソードの触媒層の表面温度は60℃であった。
(燃料電池の作製)
得られたアノードおよびカソードの触媒層をそれぞれ6cm×6cmのサイズに切断し、それぞれアノードおよびカソードの触媒層シートを得た。この後、固体高分子電解質膜を中心にして、各触媒層シートを、保護層が形成された面が固体高分子電解質膜に接するようにして積層した。この積層物を、ホットプレス法(135℃、71kg/cm2、15分間)により熱接合して、アノードおよびカソードの触媒層、ならびにその間に配置された固体高分子電解質膜を含む接合体を得た。固体高分子電解質膜としては、パーフルオロアルキルスルホン酸イオン交換膜(DuPont社製のNafion117)を用いた。アノード触媒層におけるPtおよびRuの量ならびにカソード触媒層におけるPtの量は、それぞれ2.0mg/cm2であった。
次いで、この接合体の、アノードおよびカソードの触媒層からPTFEシートを剥がした。
次に、カーボンペーパー(東レ(株)製のTGP−H120)を6mm×6mmのサイズに切断して、アノードおよびカソードの拡散層とした。
アノード拡散層、接合体、およびカソード拡散層を、ホットプレス法(135℃、28kg/cm2、15分間)により接合した。
アノード触媒層の固体高分子電解質膜と接している側とは反対側の面に、アノード拡散層を配置した。同様にして、カソード触媒層の固体高分子電解質膜と接している側とは反対側の面に、カソード拡散層を配置した。なお、アノードおよびカソードの拡散層の触媒層側の表面には、厚さ30μmの撥水性のカーボン層をそれぞれ設けた。
さらに、アノードおよびカソードの周囲に、ガスシール材をホットプレス法(135℃、28kg/cm2、30分間)により熱溶着した。こうして、電解質膜−電極接合体(MEA)1を作製した。
次に、得られたMEA1を、一対のセパレータ、一対の集電板、一対のヒータ、一対の絶縁板、および一対の端板で両側から挟み込み、これらを締結ロッドで固定した。このときの締結圧は、セパレータの単位面積(1cm2)あたり20kgfとした。ここで、セパレータは、その厚さが4mmであり、その外寸が10cm×10cmであった。なお、セパレータの拡散層に接する面には、幅1.5mm、深さ1mmのサーペンタイン型流路を形成しておいた。集電板および端板としては、金メッキされたステンレス鋼板を使用した。
以上のようにして得られた燃料電池を電池Aとした。
アノードおよびカソードの保護層の形成工程において、ペーストをスプレー塗布するときに、各触媒層の表面および各第1保護膜の表面の温度を40℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、電池Bを作製した。
アノードおよびカソードの保護層の形成工程において、ペーストをスプレー塗布するときに、各触媒層の表面および各第1保護膜の表面の温度を80℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、電池Cを作製した。
アノードおよびカソードの保護層の形成工程において、ペーストをスプレー塗布するときに、各触媒層の表面および各第1保護膜の表面の温度を30℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、電池Dを作製した。
アノードおよびカソードの保護層の形成工程において、ペーストをスプレー塗布するときに、各触媒層の表面および各第1保護膜の表面の温度を90℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、電池Eを作製した。
保護層の形成工程において、アノードおよびカソードの触媒層の上に、それぞれ、第2ペーストのみをスプレー塗布して、厚さ10μmの保護層を形成した。このこと以外は、実施例1と同様にして、電池Fを作製した。
保護層の形成工程において、まず、アノードおよびカソードの触媒層の上に、それぞれ、第2ペーストをスプレー塗布し、大気中60℃で1時間乾燥させて、第2保護膜を形成した。次に、第2保護膜の上に、第1ペーストをスプレー塗布し、大気中60℃で3時間乾燥させて、第1保護膜を形成した。このようにして、アノードおよびカソードの触媒層の上に、触媒層側から順に第2保護膜と第1保護膜とを含む保護層をそれぞれ形成した。保護層の厚さは10μmとした。
前記以外は、実施例1と同様にして、電池Gを作製した。
比較例1
アノードおよびカソードの触媒層の上に、保護層を形成しなかったこと以外、実施例1と同様にして、比較電池1を作製した。
比較例2
アノードの触媒層の上に、保護層を形成しなかったこと以外、実施例1と同様にして、比較電池2を作製した。
比較例3
カソードの触媒層の上に、保護層を形成しなかったこと以外、実施例1と同様にして、比較電池3を作製した。
比較例4
保護層の形成工程において、アノードおよびカソードの触媒層の上に、それぞれ、第1ペーストのみをスプレー塗布して、厚さ10μmの保護層を形成した。このこと以外は、実施例1と同様にして、比較電池4を作製した。
[評価]
電池A〜Fおよび比較電池1〜4について、以下について評価した。
(1)メタノールクロスオーバー量
燃料である4mol/Lメタノール水溶液を、流量0.4cm3/分でアノードに供給し、酸化剤である空気を流量1L/分でカソードに供給し、電池温度60℃、電流密度150mA/cm2にて、各電池を発電させた。このとき、アノードから排出されるメタノール量(mol/分)を測定した。そして、メタノール供給量(1.6×10-3mol/分)から、発電により消費されたメタノール量(5.597×10-4mol/分)、および上記したアノードから排出されるメタノール量を差し引いた値を算出し、その量をメタノールクロスオーバー量と定義した。得られた結果を、表1に示す。表1において、メタノールクロスオーバー量は、電流密度の単位(mA/cm2)に換算した値として表している。
(2)電流−電圧特性
燃料である4mol/Lメタノール水溶液を流量0.4cm3/分でアノードに供給し、酸化剤である空気を流量1L/分でカソードに供給し、電池温度60℃、電流密度150mA/cm2にて、各電池を15分間発電した。発電開始15分後の各電池の電圧を測定した。
Figure 2006351513
表1から明らかなように、電池A〜Gにおいて、比較電池と比べて、メタノールクロスオーバー量を大幅に低減することができた。これは、アノードおよびカソードの触媒層中に存在し得る亀裂が保護層で被覆され、その亀裂を介するメタノールクロスオーバーが抑制されたためと考えられる。
また、電池A〜Gでは、比較電池と比べて、発電開始15分後の電圧値が高い値を示した。これは、MEAの作製を、低い加圧条件下でのホットプレス法で行った場合でも、電解質膜と触媒層との界面接合性を確保することが可能となるためであると考えられる。
さらに、撥水性微粒子が、保護層の触媒層側よりも固体高分子電解質膜側に多く存在している電池A〜Eでは、比較的高い電圧値を示した。よって、撥水性微粒子の量を固体高分子電解質膜側で多くすることにより、触媒層中の三相界面、すなわち電極活性表面を減少させることなく、メタノールクロスオーバー量を大幅に低減することができると考えられる。
特に、電池A〜Cの場合には、その電圧値は他の電池より高かった。これらの電池を作製するとき、スプレー塗布する際の塗布面の表面温度を適切な温度範囲内に調整している。このため、高分子電解質を含む小さな液滴、および撥水性微粒および高分子電解質を含む小さな液滴を塗布面上で乾燥させながら、高分子電解質、ならびに高分子電解質および撥水性微粒子を堆積させることが可能となる。これにより、保護層自体にミクロな亀裂が生成されるのを回避できたためと考えられる。
以上のように、固体高分子電解質膜と各触媒層との間に、それぞれ保護層を設けることにより、燃料の利用効率および発電特性に優れた直接酸化型燃料電池が得られることがわかる。
これに対して、比較電池1〜3においては、電池A〜Eと比較して、発電開始15分後の電圧値が小さかった。これらの比較電池には、固体高分子電解質膜と触媒層との間に、保護層が設けられていないか、またはアノード触媒層と固体高分子電解質膜との間またはカソード触媒層と固体高分子電解質膜との間にしか、保護膜が設けられていない。このため、メタノールクロスオーバー量が著しく増大し、電流−電圧特性が大幅に低下したものと考えられる。
比較電池4において、カソードおよびアノードの保護層は、撥水性微粒子を含有していないために、保護層内部を浸透し、移動していくメタノールの透過速度を効果的に抑制することが困難となる。このため、メタノールクロスオーバー量が増加し、電流−電圧特性が大幅に低下したと考えられる。
本発明の燃料電池は、燃料の利用効率および発電特性に優れている。よって、本発明の燃料電池は、例えば、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノートPC、ビデオカメラ等の携帯用小型電子機器用の電源として有用である。また、電動スクータ用電源等にも適用できる。
本発明の一実施形態に係る燃料電池に含まれるMEAを模式的に示す縦断面図である。 本発明の別の実施形態に係る燃料電池に含まれるMEAの保護層を模式的に示す縦断面図である。 触媒層上に保護層を形成するためのスプレー式塗布装置の構成を示す概略図である。
符号の説明
1 電解質膜/電極接合体
2 固体高分子電解質膜
3 アノード触媒層
4 アノード拡散層
5 アノード
6 カソード触媒層
7 カソード拡散層
8 カソード
9a、9b ガスシール材
10 亀裂
11 アノード保護層
12 カソード保護層
21、23 第1保護膜
22、24 第2保護膜
30 スプレー式塗布装置
31 第1タンク
32 第2タンク
33 第1攪拌機
34 第2攪拌機
35 第1バルブ
36 第2バルブ
37 ポンプ
38 スプレーノズル
39 ボンベ
40 アクチュエータ
41 ヒータ
42 第1ペースト
43 第2ペースト
44 触媒層
45 支持体

Claims (10)

  1. カソードと、アノードと、前記カソードと前記アノードとの間に配置された固体高分子電解質膜とを備える膜−電極接合体を具備し、
    前記カソードは、カソード触媒層とカソード拡散層とを含み、前記カソード触媒層は、固体高分子電解質膜側に配されており、
    前記アノードは、アノード触媒層とアノード拡散層とを含み、前記アノード触媒層は、固体高分子電解質膜側に配されており、
    前記カソード触媒層および前記アノード触媒層には、亀裂が存在し、
    前記カソード触媒層と前記固体高分子電解質膜との間には、前記カソード触媒層の亀裂を被覆するようにカソード保護層が形成されており、
    前記アノード触媒層と前記固体高分子電解質膜との間には、前記アノード触媒層の亀裂を被覆するようにアノード保護層が形成されており、
    前記カソード保護層および前記アノード保護層が、それぞれ高分子電解質と撥水性微粒子とを含む、直接酸化型燃料電池。
  2. 前記撥水性微粒子の量が、前記保護層の触媒層側よりも固体高分子電解質膜側で多くなっている、請求項1記載の直接酸化型燃料電池。
  3. 前記保護層が、触媒層側に配された第1保護膜と、固体高分子電解質膜側に配された第2保護膜とを含み、前記第1保護膜は、前記撥水性微粒子を含まず、前記高分子電解質を含み、前記第2保護膜は、前記撥水性微粒子と前記高分子電解質とを含む、請求項2記載の直接酸化型燃料電池。
  4. 前記撥水性微粒子が、フッ素樹脂を含む、請求項1記載の直接酸化型燃料電池。
  5. 前記高分子電解質が、ホスホニル基、ホスフィニル基、スルホニル基、スルフィニル基、カルボキシル基、スルホン基、メルカプト基、エーテル結合基、水酸基、第4級アンモニウム基、アミノ基、およびリン酸基よりなる群から選ばれた少なくとも1つのイオン伝導性官能基を有する、請求項1記載の直接酸化型燃料電池。
  6. 前記アノードに供給される燃料が、メタノールおよびジメチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物を含む、請求項1記載の直接酸化型燃料電池。
  7. (a)カソード触媒層およびアノード触媒層を形成する工程であって、前記カソード触媒層および前記アノード触媒層には、亀裂が存在している、工程、
    (b)前記カソード触媒層および前記アノード触媒層上に、それぞれ、高分子電解質と撥水性微粒子とを含む、カソード保護層およびアノード保護層を形成する工程、ならびに
    (c)固体高分子電解質膜と前記カソード触媒層とを、前記カソード保護層を介して接合し、さらに、固体高分子電解質膜と前記アノード触媒層とを、前記アノード保護層を介して接合する工程
    を含む直接酸化型燃料電池の製造方法。
  8. 前記工程(b)が、各触媒層上に、前記亀裂を被覆するように、撥水性微粒子を含まず、高分子電解質を含む第1ペーストを塗布し、第1保護膜を形成する工程と、前記第1保護膜上に、高分子電解質と撥水性微粒子とを含む第2ペーストを塗布し、第2保護膜を形成する工程とを含む、請求項7記載の直接酸化型燃料電池の製造方法。
  9. 前記第1保護膜を形成する工程が、前記第1ペーストを前記触媒層上にスプレー塗布し、塗布された第1ペーストを乾燥させる工程を含み、前記第2保護膜を形成する工程が、前記第2ペーストを前記第1保護膜上にスプレー塗布し、塗布された第2ペーストを乾燥させる工程を含む、請求項8記載の直接酸化型燃料電池の製造方法。
  10. 前記第1ペーストをスプレー塗布する際の前記触媒層の表面温度または前記第2ペーストをスプレー塗布する際の前記第1保護膜の表面温度を、40〜80℃に制御する、請求項9記載の直接酸化型燃料電池の製造方法。



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* Cited by examiner, † Cited by third party
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