JP2006349592A - マイクロ流体デバイスおよびこれを用いた生体物質検査装置とマイクロ化学リアクター - Google Patents

マイクロ流体デバイスおよびこれを用いた生体物質検査装置とマイクロ化学リアクター Download PDF

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修三 平原
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Abstract

【課題】流路内に微細な突起や溝を敷設したマイクロ流体デバイスは詰まり易い。一方、流路内壁に微細構造の無いシンプルなマイクロ流体デバイスには、旋回流れや平行2相流れを安定に形成する方法が無いという課題があった。
【解決手段】流路周囲の回転対称の位置に電極を備えたマイクロ流路を使用すると、キャリヤー流体に浮遊する試料、あるいは添加した誘電体、あるいは他のキャリヤー流体との2相流に対して誘電泳動力が作用し、試料とキャリヤーは旋回する流れを形成する。流路周囲の鏡像対称の位置に電極を備えたマイクロ流路を使用すると、自然に生じる旋回が制止し、試料とキャリヤーが安定した平行2相流れを形成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ガラス基板やプラスティック基板にマイクロサイズの流路を掘り、わずかな量の試料を扱うマイクロ流体デバイスに係わり、特に、細胞や血液などの特性を調べる生体物質検査装置や、2相流で反応や生成物搬出を行うマイクロ化学リアクターに適したマイクロ流体デバイスとそれを用いた装置に関する。
代表的な生体物質検査装置として、非特許文献1に示される濁度法を原理とする血小板凝集能検査方法が、止血能力の定量的な確認のために広く使われてきた。近年の研究から動脈硬化や糖尿病に起因する血栓に関わる重要な生体内反応が、血小板の数個から100個程度凝集した小さい塊状態から始まることが分かってきており、濁度法ではこの重要な領域を検知できないという欠点が指摘されている。
この欠点を改善するために特許文献1に示される散乱光法が開発され、弱い凝集領域の感度が向上した。しかし、凝集塊が沈んだり試料が壁に付着したりしないようキュベット内で常時スターラーでかき混ぜる必要があり、少なくとも1cc程度の検体試料を準備するために5ccほど採血しなければならない。また、検査前に血液から試料を調製する手間と技術が必要である。
試料の少量化と手間の軽減を目指してマイクロ流体デバイスを利用する特許文献2のような方法が考えられている。この方法はマイクロ流路内に全血を流し、その速度や特定位置での時間を計測する。全血を使うので調製の手間も少なく扱いやすいため、食物や様々なストレスが血液状態に与える影響など、たくさんのデータが取得されている。しかし、マイクロ流路途中の一部に内径数μm程度の特に細い構造を設けるため詰まり易く、検査不能でリジェクトされる検体が多い。また、取得されたデータには幅の広い分布が現れるなど、精度や信頼性に劣る欠点がある。
以上から、生体物質検査装置に使われるマイクロ流体デバイスには、(1)流路内で詰まりを生じやすい(微細構造が原因)、(2)流路内で撹拌する手段が無い、という2つの問題がある。目詰まり防止の点から、少なくとも現状の数μmよりは幅の広い数10μmから100μm幅の一般的な流路で実現することが望ましく、また、マイクロ流路内で簡単に撹拌できる新規技術の開発が望まれている。
一方、マイクロ流体デバイスは、拡散律速である化学反応がサイズ効果により速くなり、微少量を密封状態で扱うため環境汚染が防止でき、温度制御の応答が速く温度分布の無い反応場が得られ、不安定爆発性の試料も安全な環境条件下で管理できるなどの特徴からマイクロ化学リアクターとしての期待も大きい。しかし、反応場である流路が短いという制限があるため、必要な反応時間の確保が難しく、また、マイクロサイズの溶液から目的とする反応生成物や繰り返し使用したい触媒などを分離し回収することが難しいという課題がある。
反応時間を速めるために、特許文献3、非特許文献2のようなミキシングの提案や研究がなされている。一方、別々の試料を含む2つの液体を上流側のY字状流路から合流させ、層流界面が接触している時間内に効率よく反応物質を生成し、下流側のY字状流路で再び2つの液体に分離する特許文献4、特許文献5のような提案や研究がされている。特に後者の方法は、秩序を保ちながら反応が進められ、生成物質や触媒などの分離/回収が容易という優れた利点を持つ。しかしこれ等の方法は、マイクロ流路内部にさらに細かい構造を敷設したり、曲線状の流路を用いたりするため、濃度不均一や試料の付着が生じやすく、さらには流路の詰まりにまで発展しやすいという課題がある。
したがって、マイクロ化学リアクターとして使われるマイクロ流体デバイスには、(1)流路内で詰まりを生じやすい(複雑構造が原因)、(2)シンプルな流路内で撹拌する手段が無い、という2つの問題がある。これらは前述した生体物質検査装置と同じ問題であり、さらには多くの応用分野も含めたマイクロ流体デバイス全体に共通する根本課題である。
特許公開平5−240863 特許公開平2−130471 WO2003/011443 (PCT/US2002/023462) 特許公開2002−001102 特許公開2004−358453 G. V. R. Born:"Aggregation of blood platelets by adenosinediphosphate and its reversal", Nature, vol.194, pp.927-929 (1962) K. Hosokawa, T. Fujii, and I. Endo:"Handling of PicoliterLiquid Samples in a Poly(dimethylsiloxane)-Based Microfluidic Device",Analytical Chemistry, vol.71, no.20, pp.4781-4785 (1999). K. V. I. S. Kaler and T. B. Jones: "Dielectrophoretic spectra of single cells determined by feedback-controlled levitation", BiophysicalJournal, vol.57, pp.173-182 (1990).
以上の背景技術で述べたように、生体物質検査装置やマイクロ化学リアクターに使われるマイクロ流体デバイスとして、マイクロ流路内にさらに細かい構造体を敷設する方法が使われている。しかし、流路の構造や形状の複雑化により不均一濃度の発生、試料や析出物の付着、さらには流路の詰まりを生じ易くなるという課題がある。また、構造や形状がシンプルな流路内で効果的な撹拌や安定な多相流を実現するマイクロ流体デバイスが無いという課題がある。
本発明は、流路の周囲に交流電圧を印加する電極を備えたマイクロ流体デバイスを用い、流路断面の中心点に対して回転対称に配置された電極からの誘電泳動力により流路内に旋回流れを発生させ、また、流路中心線に対して鏡像対称に配置された電極からの誘電泳動力により流路内の旋回流れを制止させ、上記、課題を解決するものである。
本発明は、シンプルな構造の流路内で試料とキャリヤー流体の旋回および旋回制止を実現し、マイクロ流体デバイスに応用の可能性を広げる新規の手段を提供する。特に旋回流れを発生させる手段は、流路内の試料の速やかな混合、浮遊物の沈殿や流路壁への付着の阻止、さらに流路内の目詰まり防止などの点でマイクロ流体デバイスの性能を向上させる。また旋回流れを制止する手段は、特に2相流間の秩序を保つ化学反応に有用であり、反応プロセスの安定化、材料や生成物質の回収効率などの点でマイクロ流体デバイスの性能を向上させる。
以下に述べるように、本発明によるマイクロ流体デバイスは、流路内に旋回流れや2相流れを安定に形成する用途に有効であり、特に、血小板凝集能や血液流動性を検査する生体物質検査装置、また少量の試料から反応生成物を得るマイクロ化学リアクターに適している。
まず、本発明の説明に必要な、誘電泳動力について簡単に説明する。非特許文献3によれば、誘電泳動力(F)は、粒子(比誘電率ε)が分散された流体中(比誘電率ε)に電界勾配が存在する場合に発生し、電界の極性(電気力線の向き)には関係なく粒子に作用する引力(あるいは斥力)であり
F=2πrεε・Re[CM(ω)]・grad|E| … 式1
ε:真空の誘電率、d:粒子の直径、E:電界ベクトル
と表される。式1から、誘電泳動力(F)は粒子半径rの3乗(または体積)と、クラジウス−モソッティ係数CM(ω)の実数部でありマイナス0.5からプラス1.0までの間の値をとるRe[CM(ω)]と、電界の2乗の勾配である∇|E| の3つの項の積に比例する。
一般には、誘電泳動力を発生するために電極へ印加する電圧として、周波数が約100Hzから100MHzの間の交流を使用する。この周波数範囲の交流電圧を用いると、粒子が帯電している場合に作用する電気泳動力を時間平均の効果によりキャンセルすることができる。また、電極が直に流体に接触している場合に生じる(電気分解などの)電極反応を抑制することができる。
流体を20℃の水とすれば比誘電率εは約78であり、通常の物質では多くても比誘電率εは10以下であるから、水中ではほとんどの物質に、電極から反発する力(斥力)である負の誘電泳動力(F<0)が働く。したがって、流路の周囲に設置した複数の電極から誘電泳動力を作用させると、水に浮遊して移動する試料は電極からの反発力により電極エッジから離れる方向に移動する。
我々はこの誘電泳動の実験を行っていて、次のような現象を発見した。実験では数μm径の樹脂ビーズを試料として水中に分散した液体を用い、図1(a)に示すように、板状の電極2枚のエッジを対向させた位置から平行にずらした配置にして、電極間に交流電圧を印加したところ、一辺が約100μmの正方形の断面をもつマイクロ流路11内に旋回する流れが発生した。つまり図1(a)のように、交流電極40の配置がマイクロ流路11の断面の中心点に対して回転対称であるが、鏡像対称となる中心線は存在しないような場合、交流電源31から交流電圧を印加すると同時に図1(b)のように水(水性キャリヤー液体26)に浮遊する樹脂ビーズ(試料20)が旋回し、粘性抵抗により水(水性キャリヤー液体26)も旋回することを見出した。
次に図2(a)に示すように、マイクロ流路11の流路壁を構成する1つの面に2枚の平行な交流電極40のエッジをそろえて流路の方向へ向くように配置し、2枚の電極間に電圧を印加したところ、樹脂ビーズは電極を配置した流路壁面と逆側の対向面へ押付けられることが観察された。図2(a)の電極の配置は図1(a)とは異なり、マイクロ流路11の断面の中心点に対して回転対称ではなく、鏡像対称となる中心線が1本だけ存在する。このような場合、水中の樹脂ビーズも水も旋回しない。
以上の現象は、計算機解析から誘電泳動力の作用であることが確認された。さらに計算機解析によれば、図3(a)に示すように、マイクロ流路の縦断面に対して鏡像対称、マイクロ流路の縦断面を貫く垂直線に対して回転対称となるように4枚の電極を配置して交流電圧を印加した場合、図3(b)に示すように、樹脂ビーズ(試料20)は流れの方向と直交する軸を中心として旋回する。
さらに、図4に示すY字状のマイクロ流路において、2液体が合流して流れる領域の流路に図1(a)の断面の配置となる電極を設置し、2つの流入口からそれぞれ水性キャリヤー液体26と油性キャリヤー液体27を流した場合には、誘電性液体である油(油性キャリヤー27)への誘電泳動力の作用により旋回する流れを発生する。つまり誘電泳動力は樹脂ビーズのような固体だけでなく、対象が液体であっても作用する。
さらに、2液体が合流してから流れる領域の流路が長い構造のマイクロ流路、あるいは反応時間を確保するために非常に遅い流れ速度を用いると、特許文献4、特許文献5で述べられている通り層流が不安定となり、片方のキャリヤー液体が流路壁面を伝って回り込む旋回現象を起こす。しかし、図2(a)と同じ配置とした側面の2枚の平行電極間に交流電圧を印加すれば、流れは安定し、平行状態の2相流を維持したまま廃液流出口まで到達する。つまり図2(a)に示す電極は誘電体固体を逆側の壁へ押付けるだけでなく、平行2相流に対しては図2(b)のように旋回を制止し、流れを安定化する。
以上述べたように、本発明により、流路内に特別な細かい構造を設けることなく、シンプルな構造のマイクロ流路内で試料とキャリヤー液体を旋回させるマイクロ流体デバイスが可能になる。また、流路内に特別な細かい構造を設けることなく、シンプルな構造のマイクロ流路内で、2種類の混ざり合わないキャリヤー液体からなる2相流の平行流れを安定して維持させるマイクロ流体デバイスが可能になる。以降、図1(b)の断面配置の電極を旋回電極、図3(a)の立体配置の電極を横旋回電極、図2(b)の断面配置の電極を旋回制止電極と呼ぶことにする。
本発明は、この旋回電極あるいは横旋回電極、旋回制止電極を用いることが可能な全てのマイクロ流体デバイスに適用されるものである。以下にその応用に適した実施例を示す。
図5は、本発明による旋回電極と旋回制止電極を備えたマイクロ流体デバイスを、生体物質検査装置の中でも特に血小板凝集能検査装置として応用した実施例の全体構成図である。ここでは検査対象である血小板試料21の流れに沿って、血小板凝集能検査装置の動作を説明する。
検査の前処理として、3.8%クエン酸採血を行った被検者の血液から多血小板血漿(PRP)あるいは貧血小板血漿(PPP)の血小板試料21を作成し、第1の送液ポンプ16に備えられた試料リザーバー内で、体温と同じ37℃にてインキュベートする。一方、血小板凝集惹起剤22として、エピネフリン(Epinephrine)0.3μMを作成し、第2の送液ポンプ17に備えられた凝集惹起剤用リザーバーにセットする。
検査は第1の送液ポンプ16の起動で開始する。送液ポンプ16から圧力でマイクロ流体デバイス10の流路へ試料である血小板血漿が送り込まれ、その1分後に第2の送液ポンプ17から血小板凝集惹起剤22が、マイクロ流体デバイス10の別の流路へ送り込まれる。マイクロ流体デバイス内部は、図6に示すようにY字状の流路が形成され、血小板試料21と血小板凝集惹起剤22はそれぞれ第1の流入口12と第2の流入口13から別々に流入してから同じ流路へ合流する。
合流点から下流に向かう領域には、まず横旋回電極42が設置されており、この領域で血小板試料21と血小板凝集惹起剤22が混合され、凝集反応が開始し進行する。血小板凝集の進行とともに比較的大きな凝集塊の沈殿や流路の壁への付着が起きやすくなるが、混合液体はその時点で、すでに旋回電極41に囲まれた領域に進行している。通常の圧力流れでは流路方向へ放物線状の速度分布を生じ、流路の壁に近い部分の液体が停滞して、浮遊物質の付着が起こりやすい。しかし、この旋回電極41の領域では、断面方向への旋回流れが加わるため、壁への付着および沈殿は起こらない。
旋回電極には、壁付着や沈殿を阻止する効果以外に、粒子のサイズに応じて分離する効果がある。図7は、旋回電極領域における旋回の様子を示した流路の断面図である。誘電泳動力は式1に示したように粒子の体積あるいは粒径rの3乗に比例する力であるから、大きい凝集塊24は強い力を受けて大きな半径で旋回し、小さい凝集塊23は小さな半径で旋回する。旋回する半径にこのような違いがあると、図8の流路の縦断面図に示す放物線状の速度分布の影響により、流れ方向への速度は大きい凝集塊24で遅く、小さい凝集塊23では速くなる。その結果、流れの方向へ凝集塊の大きさの順に帯状の分離パターンが生じ、粒度の分析が可能になる。
図6にもどって、本実施例ではさらに検出感度の向上と試料の少量化を図るため、電極領域の最後段に集束電極44の領域が設けられている。この領域では流路断面の四隅の位置に設置した4つの電極からの反発力により、試料は流路中心の位置に集束する力を受ける。流れ方向へバンド状に分離した血小板凝集塊の一団は、流路断面内の中心に集束し、濃縮された状態で、試料は検出光照射領域53へ向かう。
次に図9を用いて、検出光照射領域での操作を説明する。集束用交流電源32の領域から水性キャリヤー液体26とともに流れ出てくる試料は、流路断面の中心に集束した状態で、小さい凝集塊23が先に、大きい凝集塊24が後になるバンドを維持したまま流れてくる。検出光照射領域53では、ちょうど試料が流れてくる流路中心に焦点を合わせた顕微鏡51が設置されている。
検出光照射領域53に達したバンド構造の試料の流れに検出光52が照射され、その散乱光、反射光が顕微鏡51を通して光センサー54により電気信号に変換され、データ収集解析装置33へ送られる。この電気信号には血小板凝集塊の大きさと密度を反映した光強度と血小板凝集塊の大きさを反映した到達時間に対するスペクトラム、絶対値補正用のマーカー粒子28の検知データなどが含まれており、これらのデータを基にデータ収集解析装置33にて解析、分析が行われ、粒度分布やその他の分析結果が得られる。
以上に述べたように、本発明による、シンプルな流路構造で旋回する流れを発生させることができるマイクロ流体デバイスを用いることにより、目詰まりや検体のリジェクトが無く、信頼性の高い血小板凝集能検査装置を実現する。また、従来装置では不充分であった測定精度を向上し、試料の少量化、装置の小型化の点でも優れた装置を提供する。
次にマイクロ化学リアクターの実施例として、単に層流状態の2相流を安定に流すだけでなく、2次元的に流れの位置を交換する交差2相流の例を示す。
図10は本実施例によるマイクロ化学リアクター基板の平面図である。化学反応をさせるための一方の試料は、第1の流入口12から油性キャリヤー液体27とともに流入し、もう一方の試料は、第2の流入口13からに水性キャリヤー液体26とともに流入する。2つのキャリヤー液体と試料はY字状流路を通り、合流する。
合流した2つのキャリヤー液体は、まず実施例1で説明した旋回制止電極43からの作用を受ける領域に流入し、自然発生の擾乱による旋回を生ずることなく安定な層流状態を維持し、2つの液体内の試料が界面で化学反応を進行させる。この領域での2つのキャリヤー液体の状態を、マイクロ流路11の断面図として図11(a)に示す。
次に、2つのキャリヤー液体が旋回電極41からの作用を受ける領域に入る。旋回電極41の流れ進行方向への長さは、キャリヤー液体の流れの速さで、ちょうど半回転する程度に設計されており、2つのキャリヤー液体はお互いの位置を交換した状態まで旋回する。この領域での遷移途中状態を、マイクロ流路11の断面図として図11(b)に示す。
次に、2つのキャリヤー液体の流れは下流側の旋回制止電極43が作用する領域に入る。ここの領域でも図11(c)に示すような安定な層流状態を維持しながら流れ、下流側のY字流路に到達し、お互いの成分がほとんど混ざらずに2つの流路へ分離して、最後に廃液流出口14と生成物流出口15から回収される。
以上述べたように、本発明のマイクロ流体デバイスは、安定した2相流を形成する。安定した2相流のもとでは試料やキャリヤー、化学反応、熱力学などの条件をうまく選定すると、反応生成物は一方のキャリヤー液体内だけに拡散させ、未反応試料は、もう一方のキャリヤー液体内へ拡散させることが可能になる。したがって、反応生成物や未反応試料の分離、回収が容易なマイクロ化学リアクターが実現できる。
さらに本実施例で示したように、2相液体流路の交差、交換が容易に実現でき、立体的に交差するような複雑な流路ネットワークを平面内に2次元展開できるため、マイクロチャネル基板上でのマイクロ化学リアクターの設計に大きな自由度を与える。例えば何段もの縦続接続や、多数の材料の多段階導入、複雑な反応経路などを要するプロセスに対して、今までに無い柔軟な対応ができ、自由な流路設計が可能である。
(変形例)
本発明の実施例1では、付加的に導入した樹脂ビーズ(誘電性物質)を例にして説明した。しかし水中で誘電泳動力が作用する対象であれば、樹脂ビーズに限る必要は無く、不定形ブロック状の塊でも良い。例えば図12に示したようにスクリュー状の誘電体を使えば、撹拌だけでなく送液デバイスとしても使うことができる。
本発明の実施例2では、血小板を試料とし、その凝集能を検査する装置例を述べたが、試料や目的は他の生体試料であっても構わない。例えば赤血球を試料とするならば、赤血球は柔らかさ(変形能)の違いによりマイクロ流路内で生じる速度差を計測できる。柔らかい試料ほど外側を旋回するため、速度が遅くなるためである。また白血球を試料とするならば、白血球の粘着能の違いによりマイクロ流路内で生じる速度差を計測できる。さらには調製が楽な全血を試料とする血液流動性を検査する装置であれば、従来よりもはるかに信頼性が高く、測定精度も良いデータを得ることができる。
本発明の実施例2では、血小板を試料とし、その凝集塊の粒度分布データを取得する方法について述べたが、ここで用いた旋回流れにより試料を分離する方法は、粒子の大きさだけでなく、誘電泳動力で差が出る他の属性で分離することも可能である。例えば、細胞やバクテリヤでは、同じ試料であっても生きている試料と死んだ試料で細胞膜の活性や生体内代謝物質の種類が変化し、誘電泳動力の作用に差が出ることが知られている。したがって生細胞と死細胞の分離であってもよく、また、多種多様な細胞の混在する試料からその誘電的な属性での分類や個数の分布を調べる用途であっても構わない。
また本発明の実施例2では、送液ポンプによる圧力流れの送液を示したが、送液は圧力流れに限定されるものではなく他の方法でも可能である。例えば、マイクロ流路の流入口と流出口に設けた電極に直流電圧を印加し、電気泳動あるいは電気浸透流を利用して送液する方法であっても良く、本特許の意図を何ら妨げるものではない。交流電圧による誘電泳動力は、直流電圧で駆動する電気泳動や電気浸透流とは相互に影響が無く独立に作用させることができる点が特徴の1つである。
また本発明の実施例2では、図6のように、横旋回電極として上面から見える4電極と背面に隠れている4電極、合計8電極を使う構成を示したが、電極の数に上限は無い。ただし図3に示したとおり、少なくとも上面下面2電極づつ、合計4電極は必要であり、これが下限となる。
また本発明の実施例2では、横旋回電極と旋回電極を用いた領域の下流側に集束用の電極を用いている。しかしこの集束用電極は、本発明の中では補助的な役割を担うだけのものであり、本発明の主旨によれば無くても構わない。
また本発明の実施例2では、試料検出部で光学顕微鏡により照射光の反射光や散乱光を検出する方法を用いたが、もちろん透過光を用いることも可能であり、更には蛍光標識試料と蛍光顕微鏡の組合せや、光学的検知以外の、例えばファラデーケージの通過を検知する静電的な検知や、微小領域の熱応答を利用する検知の方法であっても良く、本発明の主旨は検知方法により制限を受けるものではない。
本発明の実施例3では、水性キャリヤーと油性キャリヤーの2相流として説明したが、本発明の主旨によれば層流を形成する流体の数に制限を与えるものではなく、流体の数は3以上の多相流であっても構わない。
また本実施例では誘電泳動力の作用する対象は固体、液体について述べた。しかし気体もまた誘電率が水より小さい誘電物質であり、水とともに使えば誘電泳動力が作用する物質であり、液体と混ざり合わない流体である。したがって気体と液体からなる気液2相流であっても良く、粘性係数が小さい気体の性質を利用すれば、平行2相流だけでなく互いの流体が逆方向に流れる向流2相流も可能になる。
以上述べたように本発明によるマイクロ流体デバイスは、流路内に旋回流れや2相流れを安定に形成する用途に有効であり、特に、血小板凝集能や血液流動性を検査する生体物質検査装置、また少量の試料から反応生成物を得るマイクロ化学リアクターの用途に適している。
旋回流れを発生する電極の配置図 旋回を制止する電極の配置図 横方向の旋回を発生する電極の配置図 2相流旋回用のマイクロ流体デバイス平面図 血小板凝集能検査装置の全体図 血小板凝集能検査装置用マイクロ流体デバイスの平面図 凝集塊旋回領域の流路断面図 凝集塊分離効果の原理図 血小板凝集能検査装置の試料検出部拡大図 マイクロ化学リアクター基板の平面図 マイクロ化学リアクター基板の部分断面図 変形例である送液デバイスの縦断面図
符号の説明
10 マイクロ流体デバイス
11 マイクロ流路
12 第1の流入口
13 第2の流入口
14 廃液流出口
15 生成物流出口
16 第1の送液ポンプ
17 第2の送液ポンプ
18 廃液容器
19 生成物容器
20 試料
21 血小板試料
22 血小板凝集惹起剤
23 小さい凝集塊
24 大きい凝集塊
25 キャリヤー液体
26 水性キャリヤー液体
27 油性キャリヤー液体
28 マーカー粒子
29 誘電体スクリュー
31 交流電源
32 集束用交流電源
33 データ収集解析装置
34 プロセス制御装置
40 交流電極
41 旋回電極
42 横旋回電極
43 旋回制止電極
44 集束電極
51 顕微鏡
52 検出光
53 検出光照射領域
54 光センサー

Claims (8)

  1. 試料とともにキャリヤー流体が流れる流路と、前記流路の断面の中心点に対して回転対称を形成する複数の電極と、からなるマイクロ流体デバイスであって、前記電極間に交流電圧を印加し、前記電極から作用する誘電泳動力により前記試料とキャリヤー流体を旋回させることを特徴とするマイクロ流体デバイス
  2. 前記キャリヤー流体には、前記試料の他にビーズ状あるいはブロック状の誘電体が混入されており、前記誘電泳動力は前記誘電体に作用することを特徴とする請求項1のマイクロ流体デバイス
  3. 前記キャリヤー流体は、水をベースとする第1の流体と、第1の流体と混ざり合わない第2の流体からなる2相の流体であり、前記誘電泳動力は前記2相の流体に作用することを特徴とする請求項1のマイクロ流体デバイスを用いたマイクロ化学リアクター
  4. 前記試料は細胞様の生体物質であり、かつ、前記誘電泳動力は前記生体物質に作用することを特徴とする請求項1のマイクロ流体デバイスを用いた生体物質検査装置
  5. 試料とともにキャリヤー流体が流れる流路と、前記流路の断面の中心線に対して鏡像対称を形成する複数の電極と、からなるマイクロ流体デバイスであって、前記電極間に交流電圧を印加し、前記電極から作用する誘電泳動力により前記試料とキャリヤー流体の旋回を制止させることを特徴とするマイクロ流体デバイス
  6. 前記キャリヤー流体は、水をベースとする第1の流体と、第1の流体と混ざり合わない第2の流体からなる2相の流体であり、前記誘電泳動力は前記2相の流体に作用することを特徴とする請求項5のマイクロ流体デバイスを用いたマイクロ化学リアクター
  7. 試料とともにキャリヤー流体が流れる流路と、前記流路の縦断面に対して鏡像対称であり、前記縦断面を貫く垂直線に対して回転対称である複数の電極と、からなるマイクロ流体デバイスであって、前記電極間に交流電圧を印加し、前記電極から作用する誘電泳動力により前記試料とキャリヤー流体を旋回させることを特徴とするマイクロ流体デバイス
  8. 前記試料は細胞様の生体物質であり、かつ、前記誘電泳動力は前記生体物質に作用することを特徴とする請求項7のマイクロ流体デバイスを用いた生体物質検査装置
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