JP2006346457A - 光照射素子を敷設した寝具枕 - Google Patents
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Abstract
【課題】睡眠中に利用者の頭頚部に光を照射して頚椎部の血流や神経伝達の改善を図り、全身の疲れやコリを解消する、光治療が可能な寝具枕を提供する。
【解決手段】寝具枕の、生体頭頚部との接触部位に発光ダイオード20を敷設する。更に光出射面に偏光板23を設置し、コヒーレント化された光を頭頚部に照射する。また発光ダイオード20に隣接して生体接触検知器を設置し、生体が接触した部位の発光ダイオード20のみを点灯させる。これにより利用者の睡眠中に、睡眠を妨げることなく光治療を行うことができる。
【選択図】図2
【解決手段】寝具枕の、生体頭頚部との接触部位に発光ダイオード20を敷設する。更に光出射面に偏光板23を設置し、コヒーレント化された光を頭頚部に照射する。また発光ダイオード20に隣接して生体接触検知器を設置し、生体が接触した部位の発光ダイオード20のみを点灯させる。これにより利用者の睡眠中に、睡眠を妨げることなく光治療を行うことができる。
【選択図】図2
Description
本発明は光照射素子が生体の頭頚部との接触面に埋め込まれた寝具枕に関する。詳しくは寝具枕中に光照射素子を敷設し、睡眠中に頭頚部に照射素子からの光を照射して、頚椎及びその周辺の血液の流れおよび神経の伝達を改善することにより、全身の痛みやコリなどの不定愁訴の解消を図る寝具枕に関する。好ましくは、照射素子は発光ダイオード(以降LEDと呼ぶ)からなり、更に好ましくはLEDからの光出射面に光偏光素子を敷設し、照射光をコヒーレント化した寝具枕に関する。これにより利用者を時間的にも身体的にも拘束せず、またその睡眠を妨げることなしに睡眠中に利用者の全身の不定愁訴を改善しようとするものである。
通常の成人は、1日の約3分の1は寝ている。睡眠中に当日の疲労を取り去ってやることが望ましく、それが不十分であると疲労が蓄積して体調を壊し、終には疾病に繋がる恐れがある。更には当日の疲労回復のみならず、睡眠中に積極的に生体を刺激して一層の健康改善を図ることが望ましい。これは昼間に専門施設で施療を受けるための時間的な余裕がない、或いはそのための長時間の身体的束縛に絶え難い人にとっては、非常に有意義なものであろう。
寝具枕に関して種々の検討がなされている。これには形状に関するもの(特許文献1)、枕の中にヨモギペレット、ヒノキ油、活性炭、トルマリン或いは機能セラミックスなどを充填して、アロマセラピーや、遠赤外線、磁力線或いはマイナスイオン施療を実施しようとするもの(例えば特許文献2)、微弱電流を生体に流すもの(特許文献3)などがある。しかしいずれも未だ研究開発中であるか、あるいは効果が一部に限定されるなどの理由のため、広く普及するには至っていないようである。更に電子的機能素子としての超音波発振器を埋設したもの(特許文献4)もあるが、これは不眠解消を目的としたものである。これらはいずれも本発明が狙いとする、睡眠中に頭頚部に光を照射して血流や神経伝達を改善し、利用者の全身の不定愁訴を解消しようとするものではない。
特開2005−046553号公報 特開2005−152041号公報 特開2000−316989号公報 特開2003−199831号公報
一方、生体が外部からの種々の刺激に対して反応することは古くから知られている。例えば19世紀中期のドイツの学者、Arndt RudolphとSchultz Hugoは、「アーンツ・シュルツの法則」と呼ばれる、下記を提唱している(非特許文献1)。
「あらゆる刺激は、それが非常に弱い場合には生体を刺激することはない。しかし、あるレベルに達すると生体の反応を促進し、更にある閾値を超えると逆に生体の反応を停止させる」。
渥美和彦、大城俊夫 他編集、「皮膚科・形成外科医のためのレーザー治療」メジカルビュー社、2001年6月10日、p.52
「あらゆる刺激は、それが非常に弱い場合には生体を刺激することはない。しかし、あるレベルに達すると生体の反応を促進し、更にある閾値を超えると逆に生体の反応を停止させる」。
渥美和彦、大城俊夫 他編集、「皮膚科・形成外科医のためのレーザー治療」メジカルビュー社、2001年6月10日、p.52
この現象は光についても当てはまり、人体がある適正量の光を浴びると酵素やホルモンが特定の波長の光によって刺激を受け、体内にダイナミックな反応を引き起こし、生物学的な機能が活性化されることは知られている(非特許文献2)。
ジェイコブ・リバーマン著、飯村大助訳「光の医学」日本教文社、平成12年5月25日、p.8
ジェイコブ・リバーマン著、飯村大助訳「光の医学」日本教文社、平成12年5月25日、p.8
特にレーザー光については、単色性で、可干渉性、高指向性を有するため、高出力レーザー光を物体に照射すると被照射体を破壊・切断することは知られているが、本発明者は多くのレーザー治療を経験して行く中で、微弱な低出力レーザー光を頚部に照射すると、頚部とは遠く離れた、例えば腰痛などの不快症状を改善できることを見出した。しかもこの症状改善は照射後に直ぐに被験者及び施術者によって知覚されることから、本発明者は、何らかの刺激物質が筋肉、血管やリンパ管を通して移送されたためではなく、神経等のような情報伝達系に作用したものと推測した。この現象をサーモグラフィーやスペクトで観察したところ、照射後僅か数秒で頭部の血行が、次いで全身の血行が改善されることを認めた(非特許文献3)。
大城俊夫、中枢優先の内科的レーザー治療、日本レーザー治療学会誌、第2巻第2号別冊
大城俊夫、中枢優先の内科的レーザー治療、日本レーザー治療学会誌、第2巻第2号別冊
本発明者はこれを「中枢優先治療」と名付け(非特許文献4)、広く知られるようになったが、その機序については下記のような仮説を立てている。
「全身のどの部位で発生した痛みもそれを感知するのは大脳皮質であり、また各部位に対応指令を出すのも大脳皮質である。そのため心臓から大脳への血管、及び大脳から全身への全神経束が通る頚椎に光を照射すれば、血流増加により大脳の活動を活性化し、次いで大脳からの改善指令が全身に伝達され、不具合症状が改善できるのではないか。特に慢性的な痛みやコリなどの不定愁訴を抱えている生体においては、それが普通の状態であると脳が誤認識しているため、元の健康な状態に戻ろうとする働きを忘れている。そのため単に痛みを感じる患部を治療するだけでなく、この脳の作動を正常の状態にリセットすると痛みが解消できるのではないか」。
大城俊夫著「中枢優先治療で慢性の痛みが治る」ごま書房、2002年7月27日、p.63−77
「全身のどの部位で発生した痛みもそれを感知するのは大脳皮質であり、また各部位に対応指令を出すのも大脳皮質である。そのため心臓から大脳への血管、及び大脳から全身への全神経束が通る頚椎に光を照射すれば、血流増加により大脳の活動を活性化し、次いで大脳からの改善指令が全身に伝達され、不具合症状が改善できるのではないか。特に慢性的な痛みやコリなどの不定愁訴を抱えている生体においては、それが普通の状態であると脳が誤認識しているため、元の健康な状態に戻ろうとする働きを忘れている。そのため単に痛みを感じる患部を治療するだけでなく、この脳の作動を正常の状態にリセットすると痛みが解消できるのではないか」。
大城俊夫著「中枢優先治療で慢性の痛みが治る」ごま書房、2002年7月27日、p.63−77
この仮説に基づき、本発明者は頚部にレーザー光を照射することによって、全身の不定愁訴を解消する装置を考案し、臨床に応用してきた。更に当該治療がギックリ腰や四十肩にも有効なことを見出した。またこの療法を一般家庭でも使用可能な装置として提供した(特許文献5)。これは、従来の疼痛患部に直接レーザー光を照射して治療する治療器の出力が数十から1,000mWのエネルギーレベルであるのに対し、僅か数mW程度のレーザー光を頚部に照射するものである。即ちレーザー光をエネルギー源として細胞を活性化するのではなく、情報伝達手段として利用するものである。これはあたかも100Vの電気はエネルギーとして動力源となるが、mVレベルの電気は信号として伝送される現象に類似している。
特願2005−060347号
このように頚部へのレーザー光照射は医療効果が高いものであるが、一方レーザー光のその優れた指向性(集光性)故に、万一光が眼に誤照射されると失明に繋がりかねないと言う潜在危険性を有している。一方近年LEDの性能が向上してきたが、本発明者は、更に光学偏光板を透過させたLED光を頚部に照射すると、レーザー光並みの医療効果が得られることを見出した(特許文献6)。このように偏光処理したLED光を頚部に照射することの施療効果は確認されたが、これらはいずれもそのための時間を利用者に強いるものであり、また不自然な姿勢を要求するなどの身体的な拘束を伴うものであり、忙しい現在生活の中では受け入れられ難い面があった。
特願2006−066689号
本発明者はこれらの課題を改善する装置・方法を鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、約8時間もの睡眠時間中に利用者を特別に拘束することなく、寝具枕内に敷設されたLEDから頭頚部に光を照射するものである。またLEDを帯状或いは面状に配列して照射素子シート(以降シートと呼ぶ)を構成し、かつ接触している頭頚部のみに照射するものである。
(請求項1の手段)上記課題を解決するため、本発明に関わる寝具枕は、生体の頭頚部との接触部位に光を出射する照射素子が埋設され、該照射素子からの出射光が頭頚部を照射するようになして構成される。
(請求項2の手段)また、本発明に関わる寝具枕は、照射素子が、LEDからなることを特徴として構成される。
(請求項3の手段)また、本発明に関わる寝具枕は、LEDの光出射面に光偏光素子を敷設したことを特徴として構成される。
(請求項4の手段)また、本発明に関わる寝具枕は、照射素子の近辺に更に生体接触検知器を敷設し、該生体接触検知器が生体の頭頚部の接触を検知した時に該照射素子を点灯させることを特徴として構成される。
(請求項5の手段)また、本発明に関わる寝具枕は、帯状又は平面状に配列された複数個の照射素子で構成されたシートを、少なくともその一部の照射素子が生体の頭頚部と寝具枕との接触面に敷設されたことを特徴として構成される。
(請求項6の手段)また、本発明に関わる寝具枕は、シート内に更に複数個の生体接触検知器を設置し、いずれかの生体接触検知器が生体の頭頚部の接触を検知した時に、接触を検知した生体接触検知器に隣接する少なくとも一つの照射素子を点灯させることを特徴として構成される。
本発明によれば、次のような優れた効果が発揮できる。
1.本発明の請求項1の発明によれば、寝具枕中に照射素子が埋設されているため、利用者は何らの時間的・身体的な拘束なしに、睡眠中に頭頚部に光照射を受けて、中枢優先治療を得ることができる。
2.また本発明の請求項2の発明によれば、照射素子がLEDからなるため、万一出射光が眼に入っても危険性がない。
3.また本発明の請求項3の発明によれば、LED光出射面に偏光板を設けているため、単色光のLEDからの光をレーザー光並みのコヒーレント光に偏光することができる。偏光光線を生体組織に照射すると、細胞膜の挙動を制御することによって、細胞に生物学的な活性を与え得ることは知られている(特許文献7)。この偏光光線を睡眠中に生体頚部に照射することができるため、何らの身体的或いは時間的な拘束無しに、利用者は中枢優先治療を受けることができる。
特開昭和58−073375号公報
1.本発明の請求項1の発明によれば、寝具枕中に照射素子が埋設されているため、利用者は何らの時間的・身体的な拘束なしに、睡眠中に頭頚部に光照射を受けて、中枢優先治療を得ることができる。
2.また本発明の請求項2の発明によれば、照射素子がLEDからなるため、万一出射光が眼に入っても危険性がない。
3.また本発明の請求項3の発明によれば、LED光出射面に偏光板を設けているため、単色光のLEDからの光をレーザー光並みのコヒーレント光に偏光することができる。偏光光線を生体組織に照射すると、細胞膜の挙動を制御することによって、細胞に生物学的な活性を与え得ることは知られている(特許文献7)。この偏光光線を睡眠中に生体頚部に照射することができるため、何らの身体的或いは時間的な拘束無しに、利用者は中枢優先治療を受けることができる。
4.また本発明の請求項4の発明によれば、生体接触検知器により生体頚部が照射素子に接触している時のみ光が出射されるので、無用な光により睡眠が妨げられることはなく、また無駄な電力消費も無い。
5.また本発明の請求項5の発明によれば、複数個の照射素子がシートとして枕中に敷設されているため、寝返り等によって利用者の頚部が移動しても、何れかの素子が常に頚部に接触できる。
6.また本発明の請求項6の発明によれば、頚部が移動しても生体接触検知器がそれを自動的に追跡して、頭頚部に接触している照射素子のみを点灯させることができる。
5.また本発明の請求項5の発明によれば、複数個の照射素子がシートとして枕中に敷設されているため、寝返り等によって利用者の頚部が移動しても、何れかの素子が常に頚部に接触できる。
6.また本発明の請求項6の発明によれば、頚部が移動しても生体接触検知器がそれを自動的に追跡して、頭頚部に接触している照射素子のみを点灯させることができる。
以下、本発明の実施形態に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
図1は本実施形態における照射素子を内蔵した照射ユニットを敷設した睡眠枕の概観図であり、図2は照射素子がLEDからなり、更に生体接触検知器と一体化させた照射ユニットの断面図である。図3は睡眠枕1内に敷設された複数の照射ユニットからなる照射素子シートの一実施例であり、図4はその電気配線図である。
図1において、睡眠枕1は形態として中央に凹部を有した2列の山並2及び3からなる。これに限定されるものではないが、低い側の山並3の外側面4に約100mmの間隔をもって4個の照射ユニット10(図2に示すように、LEDと光偏光板及び生体接触検知器が一体化されたもの)が配列されている。両端の照射ユニットは睡眠枕の端部から約50mmの位置にあり、従って枕の長手方向の寸法は約400mmである。11は照射ユニットへの供給電力等を制御する制御器であり、照射ユニット10とはケーブル12を経て接続されている。
図2は光照射素子としてのLED20を内蔵した照射ユニット10の断面図である。照射ユニット10は下部本体筒21と上部蓋22から構成され、下部本体筒21は上部蓋22の中に入れ子式に組合せられ、両者ともプラスティック材で射出成形される。蓋22の中央部には、LED20からの光を透過させ、併せて透過光を直線偏光させる透明部材からなる偏光板23が嵌め込まれている。下部本体筒21内には上下方向に摺動可能な中板24が挿入されており、この中板24上にLED20が搭載される。中板24の円周端部には円滑な上下摺動が可能なように円筒状のガイド鍔25がある。
上部スプリング26は上部蓋22の下面と中板24の上面の間に挿入され、下部スプリング27は中板24の下面と下部本体筒21の底上面の間に挿入される。上部スプリングは下部スプリング27より強度が大きい(撓み難い)。従って生体頚部の接触により蓋22が下方に押された時は、まず下部スプリング27が圧縮され、中板24の中央下面の可動電気接点28と、下部本体筒21の底中央上面の固定電気接点29とが接触し、電気的な導通を得る。これにより、当該照射ユニットが生体の頭頚部に接触していることを検知する。
両接点28、29が接触すると、それ以上の下部スプリング27の圧縮は無くなり、更に加えられる押圧では上部スプリング26が圧縮され、蓋22の下面と下部本体筒21の側壁の上面30が接触した時点で部材22は21と密着し、両者間の相対的な移動は停止する。それ以上加えられた押圧は、照射ユニット10自体が寝具枕1の内部へ撓むことにより吸収される。そのため複数の照射素子ユニットを搭載したシート(図3参照)40はフレキシブルな材料からなり、かつその後面(寝具枕の内部)に敷設される寝具枕充填材(図示せず)は適度な弾性力と反撥力を有して構成される。蓋22への押圧が無くなれば(頭頚部が寝具枕から離れると)両スプリング26、27は元の形状に復帰し、電気接点28、29は離脱して電気的な導通は無くなる。すなわち頭頚部が離れた部位の照射ユニット中のLEDは消灯する。
図3は、照射ユニット10を搭載した照射素子シート40を示す。4個の照射ユニットは約100mmの間隔で配置され、両側に50mmの耳部がある。シート40の素材は、ポリエステルやポリイミド等の耐久性のある柔軟なフィルムからなる。
図4に、電気配線図の概略を示す。20aは一例としてのLED20であり、28a〜29aはLED20aの一対の電気接点である。他の3個はb〜dの添え字で示すが、計4個の照射ユニット10で構成されている。制御器11に搭載されたスイッチ13を投入すれば電源接点41a、41bが閉となるが、図4においては、今接点28b/29bのみが閉じられているため、LED20bのみが点灯している。もし利用者が寝返りを打って横を向いた(頭頚部が移動した)時は、頭頚部との接触が解放された接点28b/29bが開となって、LED20bは消灯する。代わりに、例えば新たに接触した接点28c/29cが閉じられてLED20cが点灯する。なお利用者の頭頚部の位置によっては2個のLEDが同時に点灯することもあり得るが、主電源回路の制限抵抗42により総電流が規制されているため、総照射光量はほぼ同じとなる。
従って利用者が目覚めた状態で寝返りを打っても、また横臥した状態で読書をしていても、頭部に接触しない部分のLEDは点灯しないため光が眼に入ることはない。一方睡眠中にうつ伏せになったために接点が作動してLEDが点灯しても、その時は眼を閉じており、LED素子からの微弱な照射光が睡眠を邪魔することはない。
睡眠枕1は、周知の技術(例えば特許文献8)により当業者には容易に作成可能であり、図1に示した形態に限定されるものではない。当該周知技術と組合せて、適度の弾力性を有したポリウレタンフォームからなる芯材に通気孔を貫通させ、その表面は外布で覆い、この外布と芯材の中間で、頭頚部への接触部位近辺にシート40を敷設すればよい。
特許第3403704号公報
LEDは、細胞にダメージを与える紫外線領域を避けて、可視から近赤外にまたがるスペクトルを出すものの中から選定することができる。可視レーザー光線は細胞膜を透過し、細胞質内の小器官に吸収され細胞に光化学反応を起こし、一方赤外レーザー光線は細胞膜に吸収され、影響を受けた原子や分子に回転や振動を引き起こす。このように可視光線と赤外線は、光化学的、光物理学的に生体に対して異なった機序で作用するが、生体の生物学的連鎖反応を通して、細胞や組織に同じような効果をもたらすことが知られている(非特許文献1)。本発明に関わる偏光LED光もこれと同様な効果を有する。1,300nm以下の光は水へ吸収され難いため、発汗に伴う温度上昇などの不快感を増長することもない。また450nm近辺の青色光は鎮痛・鎮静効果を有する。従って400〜1,300nmの波長が利用可能であるが、更に好ましくはヘモグロビンへの吸収が起こらない、600〜1,300nmが望ましい。更に本発明の実施形態では、頚部奥にある頚椎に迄確実に光を到達させるために、人体内への浸透性がよい850nmの近赤外線を採用した。
本発明のLEDは睡眠枕に搭載されているため、出射方向は安定しない。従ってレーザー光のような高い指向性を有するものより、適度な広がりを有するLEDの方が生体頚椎に到達し易く、例えば指向半値角(最大放射強度の半値になる放射光の広がり角度)が20度程度のLEDが選定される。更に本発明の目的は、それをパワーとしてではなく信号源と利用するものであるから、その出力が0.5〜50mWの微弱なものでよい。一般的なLEDは、1個当り数十mWの出力を有するので、生体頭頚部に接触するLEDの数は1〜数個でよく、生体が光照射されることに伴う安全性の問題もない。また枕に埋設するLEDの数も、片面当り1〜10個程度で充分である。偏光板により約40%のエネルギーロスが発生するが、上述したように本発明は光のパワーを利用するものではないため、特別な支障は無い。更に偏光板は直線偏光のもの以外に右円偏光のものも採用できるが、左円偏光のものは適さない。また偏光板の形態についても制約は無く、プラスティックやフィルム形状のものが利用できる。
LEDからの適切な出射光量は、利用者(例えば肌の色)や、接触する部位(例えば頭髪を透過する時は光量が吸収減衰する)に依存するため、それらを考慮の上で選定することが望ましい。一方延髄への過度の光照射は好ましくない。そのため一睡眠(或いは一日)当りの頚部皮膚面への有効受光量を3〜120ジュールにすることが望ましい。3ジュール以下では治療効果が期待し難いが、最適な光量は利用者が抱える痛みやコリの程度によって左右される。体調の良好な利用者が予防的に使用する場合は、3〜30ジュールが好ましく、一方強い不定愁訴を抱えた利用者が積極的な改善のために使用する場合は、30〜120ジュールを必要とする。
更にLEDから出射する光量の内、有効に皮膚に照射される光量は寝具枕の構成にもよるため(例えば寝具枕カバーの素材)、供給電源ラインに電力計などの周知の装置を設置し、適切な積算電流量(従って設定照射総量)になれば電源供給を自動的に遮断するようになすことができる。また所定の照射時間で電源を遮断するようにしてもよい。このように利用者の特性や不定愁訴の程度、更には寝具枕構造によって適切な照射時間・照射光量に設定することが可能である。
前記実施例に記載した押圧スイッチは、いわゆるタッチスイッチと呼ばれる、当業者には周知のものであるが、図2の構造のものに限定されるものではない。コイル状のスプリングの代わりに板ばねを利用したものでもよい(例えば特許文献9)。更に本発明の狙いは頚部内部の血液流などを改善することにあるため、美肌効果を狙った光照射装置と違って、表皮全面に渡って均一に照射する必要はない。更に押圧スイッチ自身に発光機能を有していなくてもよく、LEDと押圧スイッチは別の素子であってもいい。また押圧スイッチは生体と直接接触する必要は無く、当該シート40の裏側にあり、シート40を介して生体の接触を検知するものであってもよく、これらの形態も本発明に含まれるものである。また逆に全てのLEDが押圧スイッチ機能を有し、生体の接触を検知して個々に自己点灯するようになしてもよい。
特開平11−213793号公報
更に生体との接触検知は、機械的な押圧検知ではない電気的な静電容量方式のものでもよく、更には温度計などのような、結果的に生体の接触を検知できるものも本発明に利用できる。或いは完全に接触していなくても生体がごく近辺に存在することを検知する近接スイッチとよばれるもの(例えば特許文献10)であってもよい。また反射光により物体の近接を検知する光学スイッチでもよい(例えば特許文献11)。これらの生体の接近あるいは接触を検知するスイッチは当業者には周知の技術である。
特開平06−131953号公報 特開平08−096677号公報
なお反射光方式の近接スイッチによる場合は、LED素子からの光が物体によって一部反射することを利用して物体の接近を検知するものであり、生体への照射機能と生体接触の検知機能を同時に保有させることが出来るが、本発明では全てのLEDが常時点灯して接触を監視しているものではない。そのため今まで作動していた(生体が接触していた)スイッチが作動しなくなった(すなわち生体が移動した)時は、その状況変化(何処に移動したか)を検知するため、今まで発光していなかったLEDも一瞬発光させ、生体とスイッチの接触状況を改めてモニターする必要がある。また定期的に全部のLEDを一瞬点灯し、頭頚部の位置を確認してもいい。
また寝具枕の構造も上述のものには限定されない。快適睡眠のために寝具枕の中に電子冷熱器(ペリチェ素子による)を組み込んだ装置(例えば特許文献12)や、氷や水で積極的に頭を冷す技術が提案されているが、LEDによる発熱を伴う本発明においては、これらの積極的な冷却も有効である。また上述したように、例えば芳香や電磁波類を発する等の種々の生体効果を有した周知技術の枕と組合せることも可能である。
特開平10−277080号公報
更にシートのサイズや、LEDの個数及びその配列間隔は上述の数値に限定されるものではない。本発明は、利用者の頚部深層部の頚椎に偏光されたLED光を照射することを特徴とするものである。従って睡眠中の頭部との位置関係が固定される寝具枕にあっては、LED素子は後頚部が接触する適切な位置の一箇所であってもよい。しかし頭の移動を固定することは利用者に不快感をもたらすものであり、そのような場合は、LEDと押圧スイッチを一体化したものではなく、横方向にLEDと押圧スイッチを交互に配設した帯(線)状のシートも利用可能である。また利用者によっては隆起部が高い方を後頚部に当てることを好む。そのため、図1において、左右両方の山並2及び3に、各々その外側にシート40を敷設することもできる。この場合、どちらが頭頚部に接触しているか各シートに設置された押圧スイッチで自動判定することも可能であるが、別途に切替スイッチを設けて利用されるシートを選ぶようになしてもよい。
更に頭頚部が接触する位置が変わる場合は、縦横にLEDを配した面状のシートが好ましい。このように本発明においては、利用者の症状や年齢、好み、更には寝具枕の形状に対応してLEDの最適な敷設を可能とするものである。また睡眠時の枕に限定したものではなく、例えばマッサージチェアの枕にLEDを配してもよい。後頭部に光を照射していることを利用者に意識させずに、居ながらにして施療できることが本発明の特徴である。また上記説明では光の照射部位は頭頸部としたが、この寝具枕は腰などの、他の患部の施療にも利用できる。また本実施形態では、偏光板を装着したLEDとしたが、これはもっとも望ましい実施形態を提示したものであり、必ずしも偏光板は不可欠ではない。また本発明では、正常な使用状態下(例えばマッサージチェアのように寝返りがない)ではその医療安全性が担保されているため、照射素子として低出力の半導体レーザーも利用可能である。
上述したように本願発明は、生体の中枢である頭頚部へ中枢優先治療を施すことにより、利用者の全身の体調を改善し、QOL(Quality Of Life:生活の質)を向上させようとするものであるが、特にその優れた点は、施療時間として従来は利用されることがなかった睡眠時間に着目したことにある。従って各種の不定愁訴を抱えている現在人に対し、非常に有効な施療方法および装置である。
1 寝具枕 2、3 山並
10 照射素子ユニット 11 制御器
20 LED 23 偏光板
28、29 押圧スイッチの接点 40 照射素子シート
10 照射素子ユニット 11 制御器
20 LED 23 偏光板
28、29 押圧スイッチの接点 40 照射素子シート
Claims (6)
- 生体の頭頚部との接触部位に光を出射する照射素子が埋設され、該照射素子からの出射光が生体の頭頚部を照射するようになした寝具枕。
- 前記照射素子が、発光ダイオードからなることを特徴とする請求項1記載の寝具枕。
- 前記発光ダイオードの光出射面に光偏光素子を敷設したことを特徴とする請求項2記載の寝具枕。
- 前記照射素子の近辺に更に生体接触検知器を敷設し、該生体接触検知器が生体の頭頚部の接触を検知した時に該照射素子を点灯させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の寝具枕。
- 帯状又は平面状に配列された複数個の前記照射素子で構成された照射素子シートを、少なくともその一部の該照射素子が生体の頭頚部と接触するように寝具枕内に敷設されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の寝具枕。
- 前記照射素子シート内に更に複数個の前記生体接触検知器を設置し、いずれかの生体接触検知器が生体の頭頚部の接触を検知した時に、接触を検知した該生体接触検知器に隣接する少なくとも一つの照射素子を点灯させることを特徴とする請求項5記載の寝具枕。
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