JP2006343127A - 代謝性症候群マーカーおよびその利用 - Google Patents

代謝性症候群マーカーおよびその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】代謝性症候群の指標となる有用な診断マーカーおよび診断マーカーを指標とする代謝性症候群の診断方法を提供する。
【解決手段】酸化LDLからなる代謝性症候群の診断マーカーであって、酸化LDLが陰イオン交換クロマトグラフィーにより最も強く保持される画分であり、血液試料中の酸化LDLを測定することを含み、測定工程が陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて酸化LDLを分画することにより行われる、代謝性症候群の診断方法、代謝性症候群診断マーカーとしての酸化LDLの使用。
【選択図】なし

Description

本発明は、代謝性症候群の診断マーカーおよび代謝性症候群の診断方法に関するものである。具体的には、血中酸化低比重リポタンパク質(LDL)を指標とする代謝性症候群の診断方法に関するものである。
低比重リポタンパク質(以下、LDLと称する)は、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞において酸化的変性を受け易く、酸化的変性により酸化LDLとなる。酸化LDLが動脈硬化症の病因において重要な役割を果たしていることはよく知られた事実である(非特許文献1〜5)。酸化LDLは、動脈壁で発見され、泡沫細胞の形成を刺激するのみならず、数々の炎症性反応を誘発することができ、これにより動脈硬化症の発症および進行に関与する(非特許文献4〜6)。最近、血液中を循環する酸化LDLが動脈硬化症の生化学的危険マーカーとして見出され、その血中濃度は循環器疾患で上昇している(非特許文献7〜9)。しかしながら、ヒトにおける血中酸化LDLと他の冠状動脈での危険因子との相関については、明らかにされないままだった。
最近、血中酸化LDL濃度を測定するための免疫学的な方法がいくつか開発されている(非特許文献10〜11)。しかしながら、当該免疫学的方法は、(i)血液検体を分析する際に、各検体を遠心分離してLDL画分を得なければならず、このため、不安定かつ再現性のないアッセイである、また、(ii)マロンジアルデヒドにて修飾されたLDL等の代表的な血中酸化LDLしか検出できないという臨床上適用するには問題点があった。
近年、動脈硬化の危険因子である肥満、高血圧、高血糖および高脂(コレステロール)血症という因子を重複して持つ人は、たとえ個々の異常の程度は軽くても、全く持たない人に比べ、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが格段に高くなるということがわかってきた。このような状態を代謝性症候群と命名し、WHO、米国高脂血症ガイドラインなどで診断基準が定められている。
代謝性症候群はインシュリン抵抗性に強く関連しており、アテローム発生性異脂血症、内臓肥満、高血圧、糖尿病等の冠状動脈での危険因子のクラスターとして認識されている(非特許文献12)。代謝性症候群の診断に当たっては、従来喫煙の有無、血圧(特に平均動脈圧、MAP)、肥満指数(Body mass index,BMI;体重(kg)を身長(m)の二乗にて割り出す)、腰部周囲長/臀部周囲長比(WHR;腰部(最も低い肋骨縁と腸骨稜の中間位置)の周囲長と臀部(最も幅の広い転子 (大腿骨付近の骨突起)の部分)の周囲長との比)、血中の総コレステロール値、トリグリセリド値、HDL−コレステロール値(HDLとは、高比重リポタンパク質を意味する)およびLDL−コレステロール値、糖化ヘモグロビンA1c(HbA1c)値、インスリン値(後述するように、インスリン抵抗性の恒常性モデルアセスメント(HOMA−IR)を用いる)および高感度C反応性タンパク質(hsCRP)、絶食後の血糖値(グルコース負荷後の測定値も含む)、頚動脈の内膜−中膜の厚さ(intima−media thickness、IMT)等、多岐の項目を測定することにより診断していた。また、診断基準も各国によりまちまちであった。
そのため、これら危険因子の全部または一部(特に、リポタンパク質)の測定に代わり得、また正確かつ簡便な新たな診断項目を探索することが医療現場では希求されていた。
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代謝性症候群の異脂血症では小さく、密度の高い(small and dense)LDL粒子が含まれ、これらは容易に酸化される(Hansel Bら、J Clin Endo Metab.、vol.89、p.4963-4971 (2004))。代謝性症候群の患者はまた、循環器疾患を発症するリスクが高いことから(Isomaa Bら、Diabetes Care、vol.24、p.683-689 (2001))、酸化LDL濃度が代謝性症候群に関係しているかどうかを、および酸化LDL濃度の上昇が循環器疾患における加速された動脈硬化症を説明できることを明らかにすることは疾患の予防または治療および診断に重要であると考えられる。
本発明の目的は、代謝性症候群の指標となる有用なバイオマーカーおよび当該バイオマーカーを指標とする代謝性症候群の診断方法を提供することである。
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、動脈硬化症の病因において重要な役割を果たしている酸化LDLが代謝性症候群の診断に有用なバイオマーカーとして用い得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のものを提供する:
(1)酸化LDLからなる代謝性症候群の診断マーカー、
(2)酸化LDLが陰イオン交換クロマトグラフィーにより最も強く保持される画分である、上記(1)記載のマーカー、
(3)血液試料中の酸化LDLを測定することを含む、代謝性症候群の診断方法、
(4)測定工程が陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて酸化LDLを分画することにより行われる、上記(3)記載の方法、
(5)酸化LDLが陰イオン交換クロマトグラフィーにより最も強く保持される画分である、上記(4)記載の方法、
(6)代謝性症候群診断マーカーとしての、酸化LDLの使用。
本発明のマーカーを構成する酸化低比重リポタンパク質(LDL)は、トリグリセリド濃度、HDL−コレステロール濃度、腰部周囲長/臀部周囲長比、平均動脈圧、インスリン抵抗性の恒常性モデルアセスメントおよび高感度C反応性タンパク質等の代謝性症候群の要因と相関関係を有することから、酸化LDL単独を代謝性症候群の診断マーカーとして用いることができる。このようなマーカーを指標とする本発明の診断方法は、簡便かつ再現性良く代謝性症候群を診断することができる。
以下の実験例においても詳細に説明するように、本発明者らは119名(男性90名、女性29名;平均年齢57±1歳)の対象者を採用し、その完全な病歴把握および健康診断、血液組成の決定、酸化LDL濃度、頚動脈の二重スキャニングを行った。これら対象者は、冠動脈および末梢動脈での疾患症状はなく、投薬も受けていない。一変量分析から、酸化LDL濃度がトリグリセリド濃度、HDL−コレステロール濃度(逆方向に)、腰部周囲長/臀部周囲長比、平均動脈圧、インスリン抵抗性の恒常性モデルアセスメントおよび高感度C反応性タンパク質に有意に相関することが明らかとなった。ステップワイズ重回帰分析では、酸化LDL濃度がトリグリセリドにp<0.0001の確率にて、また、HDL−コレステロールにp<0.05の確率にて有意に相関した。p<0.0001の確率とは、対象者において酸化LDL濃度の四分位値と代謝性症候群の要因数の累計との間で有意な相関を示すことを意味している。さらに、ステップワイズ重回帰分析は、酸化LDLが頚動脈の内膜−中膜の厚さ(intima−media thickness、IMT)に有意に相関していることを示した(高分解能超音波診断法により測定した)。従って、酸化LDLは、代謝性症候群の診断マーカーとして有用である。
本発明は、血液試料中の酸化LDLを測定することを含む、代謝性症候群の診断方法に関する。
本発明の診断方法を適用することができる対象としては、動物であれば特に限定されないが、例えば、哺乳動物等が挙げられる。哺乳動物としては、例えば、霊長類、実験用動物、家畜、ペット等が挙げられ、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ヒト、サル、ラット、マウス、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ブタ、ミニブタ、無毛ブタなどが挙げられる。好ましくは、対象動物はヒトである。
本発明の検査対象は、特に限定されるものでなく、ヒトにおいては一般の健康診断の対象者であり得る。
本発明の方法に用いられ得る生体試料は、血液試料である。血液としては、全血、血清、血漿のいずれであってもよく、これらは、対象から採取した血液を常法に従って処理することで、適宜、得ることができる。
本発明において、酸化LDLの測定は、ELISA法などの免疫学的手法、イオン交換クロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー法によって行うことができる。その中でも迅速性、定量性および感度に優れた、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)法により測定を行うのが好ましい。
一実施形態では、例えば、血液試料中の酸化LDLは、以下に示す改良した陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AE−HPLC)法により検出することができる。
改良したAE−HPLC法とは、既報(Haginakaら、J Chromatogr B Biomed Sci Appl.、751(1)、p.161-7(2001);Yamaguchiら、Atherosclerosis、156(1)、p.109-17(2001);Yamaguchiら、Eur J Pharmacol.、436(1-2)、p.97-105(2002);Yamaguchiら、Atherosclerosis、172(2)、p.259-65(2004)を参照)の方法において、以下の点を改良したものである:1)陰イオン交換ゲルの物理化学的特性、2)段階的溶出の条件、および3)ポストカラム反応コイルの材質。具体的には、1)表面が親水性の層から構成され、その陰イオン交換基が主に表面近くに配置しているDEAE−陰イオン交換ゲル(Haginakaら、米国特許出願公開US2004019125および特開2004−83561を参照)、2)段階的溶出が、下記溶離液AおよびBを用いて行われること、および3)ステンレス製コイルをテフロン(登録商標)コイルに置き換えた、ポストカラムの酵素反応コイル、である。
以下に改良したAE−HPLC法で生体試料中の酸化LDLを検出する方法を詳述するが、本発明はこれに限定されない。
改良したAE−HPLC法において、例えば、生体試料としてはヒト血液が用いられる。生体試料としてヒト血液を用いる場合、例えば、空腹時の血液を採取し、採取後4時間以内に血漿および血清サンプルを公知の手段により分離し、使用するまで−20℃で保存することにより、安定したサンプルを供給することができる。
血漿および血清サンプルをリン酸緩衝液(PBS)で10倍に希釈し、サンプルの20μlアリコートをAE−HPLCシステムCLASS LC−10Aシリーズ(島津製作所製)に注入する。血漿および血清LDLは、溶離液A(1mM EDTA−3Naを含む20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0))および溶離液B(1mM EDTA−3Naを含む0.5M NaCl)を用いた段階的溶出により分離する。分離は25℃で1.0ml/分の流速で行う。
ポストカラム反応は、各リポプロテインおよびLDL画分中の総コレステロール濃度を決定するために行う。ポストカラム反応は、コレステロール試薬(コレステロールエステラーゼ(122U/ml、0.5mg/L)、コレステロールオキシダーゼ(22U/ml、1.0mg/L)、ペルオキシダーゼ(150U/ml、10mg/L)およびホモバニリン酸(50mg/L)を0.2%TritonX−100を含む20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に溶解したもの)を、0.5ml/分の流速でテフロン(登録商標)コイル(15m×0.5mmI.D.)(45℃のカラムオーブン中)に送液することで行う。溶出画分中のコレステロールは、コレステロール試薬中の酵素と反応し、定量的に過酸化水素を生成し、生成した過酸化水素がホモバニリン酸と反応して、蛍光物質が生じる。
次いで、反応液および0.1M NaOH水溶液を、0.5ml/分の流速でステンレス製の反応コイルに送液し、蛍光検出器(励起波長325nm、放射波長420nm)にて、上記蛍光物質を検出・測定することができる。
上記方法により溶出したLDLの画分は、溶出順にLDL−1、LDL−2、LDL−3のサブ画分とすることができる。これらのサブ画分はapoBを含み、さらにLDL−2およびLDL−3には、apoBの小断片が見られる。最も強く保持される画分であるLDL−3は、アガロースゲル電気泳動による分析を行った場合、サブ画分の中で最も早く陽極方向に移動し、LDL−2およびLDL−1がそれに続く。また、生体外で酸化させたLDLは、LDL−3の画分に相当する。これらのことは、LDL−3画分が酸化LDLに相当することを示している。
従って、例えば、上記の改良したAE−HPLC法を用いる場合、LDL−3画分を検出・測定することにより、酸化LDLを定量することができる。
血液中に酸化LDLが一定レベル以上検出された場合、当該血液の由来する対象は、代謝性症候群に罹患する/している可能性が高いと判断することができる。この場合、血液中の酸化LDL濃度が高いほど代謝性症候群に罹患する/している確率が高いとすることもできる。逆に、血液中に酸化LDLが一定レベル未満で検出された場合、当該血液の由来する対象は、代謝性症候群に罹患する/している可能性が低いと判断することができる。
酸化LDLの血中濃度は、後述の実施例に示されているような4分位値により設定することができる。
血中酸化LDL濃度が、約2.5mg/dl〜約5mg/dl(平均値で示すと約4mg/dl)を示す場合は、代謝性症候群に罹患していないと診断することができる。従って、代謝性症候群の判定の目安は、血中酸化LDL濃度が約5.5mg/dl以上、好ましくは約6.0mg/dl以上、より好ましくは約6.5mg/dl以上である。
本発明の方法は、対象が代謝性症候群に罹患する/している可能性があるか否かを、簡便かつ高い精度で判断し得る。例えば、本発明の方法において、代謝性症候群に罹患する可能性が高いと判断された対象に対し、代謝性症候群を予防するための対策(例えば、生活習慣の改善)を講じることができるので、本発明は代謝性症候群を予防するための診断方法としても有用である。
以下に実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
検査試験例
(1)試験検査方法は以下のとおりである。
(a)試験デザイン
26から77歳の121名の治験ボランティアを集め、通常の医療診断、すなわち、完全な病歴把握および健康診断、血清組成、心電図および胸のX線写真診断を行った。
これらボランランティアは、投薬を受けていないし、冠動脈または末梢動脈の疾患症状を示していなかった。しかし、2名の血清クレアチニン値が≧1.5mg/dLを示し、腎不全と診断されたことから除き、残りの119名(男性:90名、女性:29名)について、治験を行った。なお、本治験にあたり、久留米大学倫理委員会の事前の承認を得、かつこれら119名の対象者各人よりインフォームドコンセントを得た。
一夜絶食後の翌朝、仰向け状態で少なくとも5分休憩後、右腕で水銀血圧計を用いて少なくとも2回血圧を測定した。収縮期血圧および拡張期血圧をコロトコフ音の第1点および第5点として測定し、平均動脈圧(MAP)を計算した。絶食血液サンプルを脂質プロファイル測定(酸化LDL、総コレステロール、トリグリセリド、LDL−コレステロール、およびHDL−コレステロール)、糖化ヘモグロビンA1c(HbA1c)、インスリン、および高感度C反応性タンパク質(hsCRP)のため得た後、75gの経口的グルコース負荷試験(75gOGTT)を各人に行った。血漿グルコース濃度を測定するために血液検体をグルコース負荷と同時(0分)、負荷後、60分および120分に採取した。血漿グルコース値の時間と共に増加する範囲(Σグルコース)をグルコース負荷の指標として計算した。本治験エントリー時点での喫煙者およびエントリー前3ヶ月以内に中止した者を含め、喫煙者として定義した。腰部周囲長/臀部周囲長比(WHR)を上記定義にしたがい測定した。インスリン抵抗性は、インスリン抵抗性の恒常性モデルアセスメント(HOMA−IR)を用いて、絶食時の血中グルコースとインスリン濃度から次式により求めた。HOMA−IR=(絶食時の血漿インスリン濃度[μU/mL]×絶食時の血漿グルコース濃度[mmol/L])/22.5。
(b)酸化LDLの測定
ヒト血漿リポタンパク質をYamaguchi Y et al.Atherosclerosis.1998;139:323−331に記載の方法に準じてジエチルアミノエチル(DEAE)型陰イオン交換ゲルカラムを用いた改変高速液体クロマトグラフィーにて段階的溶出にて分離した。即ち、空腹時の血液を採取し、採取4時間以内に血漿および血清サンプルを公知の手段により分離し、使用するまで−20℃で保存した。血漿サンプルをリン酸緩衝液(PBS)で10倍に希釈し、サンプルの20μlアリコートをAE−HPLCシステムCLASS LC−10Aシリーズ(島津製作所製)に注入した。血漿LDLは、溶離液A(1mM EDTA−3Naを含む20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0))および溶離液B(1mM EDTA−3Naを含む0.5M NaCl)を用いた段階的溶出により分離した。分離は25℃で1.0ml/分の流速で行った。この方法では、LDLはその負電荷によりLDL−1、LDL−2およびLDL−3に分画された。カラムに最も強く保持される画分であるLDL−3は、アガロースゲル電気泳動による分析を行った場合、その分子での負の正味電荷を反映して陽極方向へ素早く移動した。LDL−3でのアポリポプロテインBが最も断片化された。さらに、試験管内にて調製した様々な種類の酸化LDLがLDL−3の位置へ移動することから、LDL−3を生体内で循環する酸化LDLとして規定した。本発明者らは、この手法が正確かつ再現性があり(日内精度<3.6%、日間精度<4.9%)、かつ、アッセイに先だってリポタンパク質を抽出することが不要であることから、時間が節約できるということを確認した。
(c)その他の化学的分析
総コレステロール値、トリグリセリド値、LDL−コレステロール値およびHDL−コレステロール値は、市販されているキット(和光純薬(株))を用いて酵素的に決定した。HbA1cは、高速液体クロマトグラフィー(HA−8160、アークレイ(株))にて分析した。hsCRPは、ベーリング ダイアグノスティック社からの比濁測定キットにて測定した。血漿グルコース値は、グルコースデヒドロゲナーゼ紫外試験(メルクリキッドグル;関東化学(株))により測定した。インスリンは、ダコダイアグノスティック社からの酵素免疫測定キットにて定量した。
(d)代謝性症候群の要因
Third Report of the National Cholesterol Education Program(NCEP) Expert Panel on Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults(Adults Treatment Panel III):final report(Circulation, 2002;106:3143−3421)によると、代謝性症候群(腹部肥満)は次の5要因に分類されている。すなわち、腰部周囲長(男性:>101.6cm、女性:>88.9cm)、トリグリセリド値(≧150mg/dL)、HDL−コレステロール値(男性:<50mg/dL、女性:<40mg/dL)、血圧(≧130/≧85mmHg)および絶食時グルコース値(≧110mg/dL)にて同定される。しかしながら、日本人は欧米人より一般的に小さいことから、上記基準を適用することは相応しくなく、本発明者らは、WHOによりDiabet Med.2004;21:383−387に提案されたように、WHRを採用し、男性では>0.9、女性では>0.85である場合を腹部肥満と定義した。
(e)IMTの測定
通常の頚動脈のIMT値は、10MHzの変換器を備えた二重超音波診断装置(SSA−380A、東芝(株))を用いて求めた。測定対象者の背景に関する情報を与えていない一人の熟練した技能者が、心周期の拡張期相での断面Bモード画像を記録した。高分解ライン記録器(LSR−100A、東芝(株))を用いて画像を拡大し、印刷した。IMTの測定は、頸部分岐に最も近い1から3cmの場所にある横壁および中間壁の3レベルを精密なスライド式カリパスを用いて前記技能者が行った。これら6回の測定値の平均値をIMT値として採用した。相互および内部の観測変動係数は、それぞれ3.8%、4.2%であった。
(f)統計解析
結果は、平均値±SEMにて表わす。循環酸化LDLレベルにおけるそれぞれの危険因子ポテンシャルの効果について、連続変数(トリグリセリド値、HDL−コレステロール値、WHR、HOMA−IR、およびhsCRP)に対する直線回帰を用いて一変量分析を行った。危険因子と酸化LDL値の相関関係は、ステップワイズ重回帰分析を用いて検討した。代謝性症候群の要因の数によって層別化した酸化LDLの平均値は、共変数を用いて比較した。危険因子、酸化LDL値およびIMT値の相互作用は、ステップワイズ重回帰分析によって検討した。統計的有意性を示す水準としてp<0.05の有意確率を採用した。
(2)結果
(a)対象者
対象者中、非喫煙者は79名で、喫煙者は40名(喫煙者の定義については上記したとおり)であった。MAPは、93±1mmHgであった。平均総コレステロール値、トリグリセリド値、HDL−コレステロール値および酸化LDL値は、それぞれ210±3mg/dL、125±6mg/dL、58±1mg/dLおよび5.2±0.2mg/dLであった。絶食時の平均血漿グルコース濃度、ΣグルコースおよびHbA1c濃度はそれぞれ103±3mg/dL、408±11mg/dL×時間および6.0±0.2%であった。BMIの平均値は23±0.3(体重(kg)/身長(m))であった。
(b)循環酸化LDL濃度と代謝性症候群の誘発危険因子との関係
一変量分析から、図1に示すように、血中循環酸化LDL濃度とトリグリセリド値(r=0.422,p<0.0001)、HDL−コレステロール値(r=−0.469,p<0.0001,逆方向に)、WHR(r=0.317,p=0.0006)、MAP(r=0.11,p=0.0003)、HOMA−IR(r=0.216,p=0.03)およびhsCRP(r=0.312,p=0.0007)との間で有意な相関関係があることが明らかとなった。血中循環酸化LDL濃度は、女性よりも男性(p=0.0016)に、また、非喫煙者よりも喫煙者(p=0.0377)に有意に高い値が示された。しかしながら、総コレステロール値、LDL−コレステロール値、血漿グルコース濃度、Σグルコース値、およびHbA1c濃度には相関しなかった。図1に示した因子について、ステップワイズ重回帰分析(表1、r=0.41)を行った。
Figure 2006343127
この解析から、トリグリセリド値(F=73.1,p=0.001)およびHDL−コレステロール値(F=5.6,p=0.02)は、酸化LDLに対し、有意のままであり、また、それぞれ独立して有意に相関していることが明らかとなった。さらに、図2に示すように、血中循環酸化LDL濃度の四分位値と代謝性症候群の要因の数の累計との間にp<0.0001で有意な関連が観察された。
(c)循環酸化LDL濃度とIMTとの関係
検査対象者の平均IMT値は、0.59±0.01mm(測定値の幅は0.36〜0.94)であった。ステップワイズ重回帰分析(表2、r=0.41)によると、IMTは、酸化LDL濃度(F=5.2,p=0.025)、年齢(F=49.4,p=0.001)および総コレステロール値(F=5.2,p=0.025)と有意に相関した。
Figure 2006343127
(考察)
上記試験例により、ステップワイズ重回帰分析によると、血中酸化LDL濃度はトリグリセリド値およびHDL−コレステロール値に有意に相関し、代謝性症候群の要因の数に強く関連したことが明らかとなった。小さく、かつ密度の高い(Small, dense:SD)LDLフェノタイプは、最も頻繁に高トリグリセリド血症、HDL−コレステロール濃度の低下およびインスリン抵抗性に付随しており、容易に酸化される(Hansel Bら、J Clin Endo Metab.、vol.89、p.4963-4971 (2004)およびLamarche Bら、Diabetes Metab.、vol.25、p.199-211(1999))。したがって、血中酸化LDLと代謝性症候群との臨床的関連性の分子レベルでのメカニズムの解明が残されてはいるが、SDLDLの増加は代謝性症候群に罹患した患者での酸化LDL濃度の上昇に寄与し得る。トリグリセリドとHDL−コレステロールとの比は、糖尿病患者でのLDL粒子のサイズの指標となることが報告され、トリグリセリド対HDL−コレステロールのモル比が>1.33を示す患者の90%がSDLDLを有していると言われている(Boizel R et al. Diabetes Care.2000;23:1679−1685)。本試験例では、血中酸化LDL濃度はトリグリセリド対HDL−コレステロールのモル比が>1.33を示す者の方が、同比が≦1.33の者よりも高い値(前者が、5.9±0.2mg/dLを、後者が3.5±0.2mg/dL、p<0.0001)を示し、血中酸化LDLが代謝性症候群でのSDLDLと関連する可能性を示した。また、表2に示したステップワイズ重回帰分析から、血中酸化LDL濃度が頚動脈IMT値に有意に関連していることが判明した。ところで、超音波で測定された頚動脈IMTは、循環器系疾患の存在と関連し、臨床上明確な疾患がない患者の循環器疾患発症の予知ができる。また、頚動脈IMT値は動脈硬化症の代理マーカーとして汎用されている(Kastelein JJ,et al.Atheroscle Suppl.2003;4:31−36)。したがって、本発明結果は、血中酸化LDL濃度の上昇が、代謝性症候群患者での加速した動脈硬化症および循環器疾患に対するリスクの増加を説明可能であることを示唆する。
本発明により、酸化LDL、特に血中酸化LDLは代謝性症候群の発症危険因子と密接に関係しているので、当該酸化LDLは代謝性症候群の診断マーカーとして用い得ることが見出された。当該酸化LDLを代謝性症候群の診断マーカーとして用いることにより、有効かつ簡便な代謝性症候群の診断方法が提供される。
一変量分析により解析した血中酸化LDL濃度と代謝性症候群の誘発危険因子との相関関係を示す図である。図中、(a)はトリグリセリド値、(b)はHDL−コレステロール値、(c)はWHR、(d)はMAP、(e)はHOMA−IR、および(f)はhsCPRを意味する。 血中酸化LDL濃度の平均値が代謝性症候群の要因の数によって層別化されていることを示す図である。傾向に対し、p<0.0001。

Claims (6)

  1. 酸化LDLからなる代謝性症候群の診断マーカー。
  2. 酸化LDLが陰イオン交換クロマトグラフィーにより最も強く保持される画分である、請求項1記載のマーカー。
  3. 血液試料中の酸化LDLを測定することを含む、代謝性症候群の診断方法。
  4. 測定工程が陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて酸化LDLを分画することにより行われる、請求項3記載の方法。
  5. 酸化LDLが陰イオン交換クロマトグラフィーにより最も強く保持される画分である、請求項4記載の方法。
  6. 代謝性症候群診断マーカーとしての、酸化LDLの使用。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013257343A (ja) * 2013-09-17 2013-12-26 Biomarker Science:Kk 脳卒中又は脳梗塞の発症リスクの評価方法及び評価用キット

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