JP2006340711A - 核酸構築物、代謝異常非ヒト動物及びそれらの利用 - Google Patents

核酸構築物、代謝異常非ヒト動物及びそれらの利用 Download PDF

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Abstract

【課題】新しいタイプの糖尿病及び肥満モデル動物となり得るトランスジェニックマウス等を提供することを課題とする。
【解決手段】プロモーター、応答エレメント及びエンハンサーエレメントからなるエレメント群から選択される少なくとも1つ以上のエレメントが機能可能なように結合されてなる、ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォームをコードするポリヌクレオチドを含み、かつ、当該ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォームが肝臓X受容体α遺伝子のエクソン5にコードされるアミノ酸配列を少なくとも有する肝臓X受容体αスプライシング変異体タンパク質であることを特徴とする核酸構築物;請求項1〜5のいずれか一つの請求項記載の核酸構築物を有することを特徴とする非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物又はそれらの一部;並びにそれらの利用等。
【選択図】なし

Description

本発明は、核酸構築物、代謝異常非ヒト動物及びそれらの利用に関する。さらに詳しくは、核酸構築物が、プロモーター、応答エレメント及びエンハンサーエレメントからなるエレメント群から選択される少なくとも1つ以上のエレメントが機能可能なように結合されてなる、ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォームをコードするポリヌクレオチドを含む核酸構築物に関するものである。
コレステロールは、生体内における重要な脂質であり、様々な脂質の構成成分でもある。コレステロールは、摂食により腸管から吸収されるか、又は肝臓においてアセチル-CoAから生合成される。生合成されたコレステロールは肝臓から排出され、小腸において再吸収され、血液を介して肝臓に輸送され、再利用される。また、肝臓においては、コレステロールの一部は、胆汁酸へと代謝される。生体内におけるコレステロールレベルが何らかの異常により上昇すると、高コレステロール血症となり、高脂血症や肥満の発症原因となる。これらの高コレステロールに由来する疾患の発症メカニズムについては十分に解明されていない。現在、高コレステロール血症に由来する疾患の治療薬としては、コレステロール合成阻害剤(スタチン系製剤)やフィブラート系薬剤が用いられている。しかし、これらの薬剤による治療は、場合によっては必ずしも充分に満足できるものではない。
コレステロールの再吸収や胆汁酸への変換(コレステロール代謝)はそれぞれの特定のトランスポーター又は酵素により行われている。さらにこれらのタンパク質をコードする遺伝子群の発現調節には核内レセプターの1つである肝臓X受容体(LXR)が関与していることが知られている。
肝臓X受容体(以下、LXRと記すこともある。)には、これまでに2種類のサブタイプ(肝臓X受容体α(以下、LXRαと記すこともある。)、肝臓X受容体β(以下、LXRβと記すこともある。))が存在することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。LXRαは、核内レセプターの1つであるレチノイドX受容体(RXR)とヘテロダイマーを形成し、標的遺伝子の転写制御領域に結合することにより、標的遺伝子の転写を制御することが知られている。
このような状況下、現在、糖尿病及び肥満のモデル動物として、数多くのものが提供されている。例えば、ob/obマウス(レプチンノックアウトマウス)、db/dbマウス(レプチン受容体ノックアウトマウス)は遺伝性肥満モデルとして広く用いられている。これらのマウスは、過食によるエネルギー摂取の増加に加え、エネルギー消費の低下をきたし、高血糖、高インスリン血症、インスリン抵抗性、白色脂肪細胞の重量増加等の表現型が認められる。また当該モデル動物であるマウスは、レプチンの生理機能、薬理機能を含めた糖尿病、肥満の研究に広く用いられている。因みに「肥満」は、正常体重の個体の場合と比べて著しい死亡率増加をもたらし、また、エネルギー摂取(栄養補給)及びエネルギー消費間の慢性的な不均衡、つまりエネルギーの代謝異常により誘発されるものである。
一方、例えば、Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty(OLETF)ラット(Kawano K. et al., Diabetes 1992; 41(11): 1422-1428)、ZDFラット(Zucker L.M. e t al., Ann.N.Y.Acad.Sci. 1965; 131: 447-458)は、肥満、インスリン抵抗性を呈するII型糖尿病のモデルとして広く用いられている。これらの動物は、いずれも膵臓β細胞量の減少が認められるため、II型糖尿病の発症における膵臓β細胞の脆弱性についての研究にも用いられている。
Peet et al.、 Curr. Opin. Genet. Dev. 8; 571-575、1998 島健二、分子糖尿病学の進歩 1999;76-82
しかしながら、既存のモデル動物では、多様なヒト肥満の症状及び糖尿病の病態の全てを網羅することができないため、さらに新しいタイプの糖尿病及び肥満モデル動物の作出が求められており、肥満及び糖尿病の成因究明及び治療研究等にとって必要とされている。また発生工学的手法を用いて開発されたモデル動物の応用研究は、多因子疾患としての肥満や糖尿病の病態解明を可能にするものと期待されている。また、肥満や糖尿病の発症や病態の解明に留まらず、遺伝子治療/再生医療を含む新しい治療法、治療薬の開発に応用されることが期待されるため、不可欠と謂える研究分野である。
本発明では、新しいタイプの糖尿病及び肥満モデル動物となり得るトランスジェニックマウス等を提供することを課題とする。
本発明者らは、かかる状況のもと鋭意検討した結果、コレステロールの代謝調節において重要な役割を担っているLXRαに関し、正常型LXRαによる正常なコレステロール代謝の阻害に関与する新規なLXRαのアイソフォームであるLXRα変異体タンパク質に着目し、ヒト由来の当該LXRα変異体(以下、ヒトLXRα変異体と記すこともある。)遺伝子と、例えば、肝臓において高発現させるようなエレメントとを結合されてなるDNA断片をマウス染色体に挿入し、ヒトLXRα変異体タンパク質を発現するトランスジェニックマウスを作出した。さらに、作出されたトランスジェニックマウスを繁殖させて作出した子孫を用いて鋭意検討した結果、当該トランスジェニックマウスは、高脂肪食摂取により、野生型マウスと比較して顕著に高い体重増加及び血中コレステロール量増加を認め、著しい内臓脂肪の蓄積が観察されること、そして当該トランスジェニックマウスは新しいタイプの糖尿病及び肥満モデル動物となり得ることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.プロモーター、応答エレメント及びエンハンサーエレメントからなるエレメント群から選択される少なくとも1つ以上のエレメントが機能可能なように結合されてなる、ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォームをコードするポリヌクレオチドを含み、かつ、当該ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォームが肝臓X受容体α遺伝子のエクソン5にコードされるアミノ酸配列を少なくとも有する肝臓X受容体α変異体タンパク質(以下、本LXRα変異体タンパク質と記すことがある。)であることを特徴とする核酸構築物(以下、本発明核酸構築物と記すこともある。);
2.ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォームが、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する肝臓X受容体α変異体タンパク質であることを特徴とする前項1記載の核酸構築物
(1)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(2)配列番号1で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列
(3)配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して、95%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
3.前記エレメントが、肝臓特異的プロモーターであることを特徴とする前項1又は2記載の核酸構築物;
4.前記エレメントが、肝臓特異的プロモーター及びそれに対するエンハンサーエレメントであることを特徴とする前項1又は2記載の核酸構築物;
5.前記エレメントが、マウス由来アルブミン遺伝子のプロモーター及びそれに対するエンハンサーであることを特徴とする前項1又は2記載の核酸構築物;
6.ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォームを発現する非ヒト動物又はその一部の製造方法であり、前項1〜5のいずれか一つの前項記載の核酸構築物を非ヒト動物又はその一部に導入する工程を有することを特徴とする製造方法(以下、本発明製造方法と記すこともある。);
7.ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォームを発現する非ヒト動物又はその一部の製造方法であり、前項1〜5のいずれか一つの前項記載の核酸構築物を非ヒト動物の染色体に組み込む工程を有することを特徴とする製造方法;
8.前項1〜5のいずれか一つの前項記載の核酸構築物を有することを特徴とする非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物又はそれらの一部(以下、本発明非ヒト動物等と記すこともある。);
9.前項1〜5のいずれか一つの前項記載の核酸構築物を有することを特徴とする非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物(以下、本発明非ヒト動物と記すこともある。);
10.前項6又は7記載の製造方法により製造されてなることを特徴とする非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物又はそれらの一部;
11.前項6又は7記載の製造方法により製造されてなることを特徴とする非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物;
12.前項9又は11記載の非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物と、前記非ヒト動物と同種でありかつ他の糖尿病若しくは肥満モデルである非ヒト動物との交配により作出されてなることを特徴とする非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物又はそれらの一部;
13.前項9又は11記載の非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物と、前記非ヒト動物と同種でありかつ他の糖尿病若しくは肥満モデルである非ヒト動物との交配により作出されてなることを特徴とする非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物;
14.物質が有する抗肥満能力の検定方法であって、
(1)請求項9、11又は13記載の非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物、又は、請求項8、10又は12記載の非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物又はそれらの一部に被験物質を接触させる第一工程、
(2)前記被験物質を接触させた非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物又はそれらの一部におけるヒトLXRα変異体タンパク質の発現量又は当該量に相関関係を有する指標値を測定し、対照と比較する第二工程、
(3)第二工程における比較結果に基づき、被験物質の抗肥満能力を評価する第三工程
を有することを特徴とする方法(以下、本発明検定方法と記すこともある。);
15.物質が有する抗肥満能力の検定方法であって、
前項9、11又は13記載の非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物に被験物質を投与し、当該非ヒト動物の血中コレステロール量の変動有無若しくはその程度を測定し、当該測定結果に基づき前記被験物質が有する抗肥満能力を評価する工程を有することを特徴とする方法(以下、第1の本発明検定方法と記すこともある。):
16.物質が有する抗肥満能力の検定方法であって、
前項8、10又は12記載の非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物又はそれらの一部に被験物質を接触させ、前記被験物質を接触させた非ヒト動物又はその一部における肝臓X受容体α遺伝子のエクソン5にコードされるアミノ酸配列を少なくとも有する肝臓X受容体α変異体タンパク質の発現量又は当該量に相関関係を有する指標値の変動有無若しくはその程度を測定し、当該測定結果に基づき前記被験物質が有する抗肥満能力を評価する工程を有することを特徴とする方法(以下、第2の本発明検定方法と記すこともある。);
17.抗肥満能力を有する物質の探索方法であって、
前項14、15又は16記載の検定方法により評価された抗肥満能力に基づき、抗肥満能力を有する被験物質を選抜することを特徴とする探索方法(以下、本発明探索方法と記すこともある。);
18.前項17記載の探索方法により選抜された抗肥満能力を有する物質を有効成分として含有することを特徴とする抗肥満薬(以下、本発明抗肥満薬と記すこともある。);
等を提供するものである。
本発明により、新しいタイプの糖尿病及び肥満モデル動物となり得るトランスジェニックマウス等を提供することが可能となる。当該トランスジェニックマウスは、肥満を伴う疾患等に対する医薬品・食品等の開発等の分野において有用である。
以下に本発明を詳細に説明する。
本LXRα変異体タンパク質は、例えば、特開2004-357705(公開日:2004/12/24)等にすでに記載されているLXRαのアイソフォームであって、少なくともエクソン5にコードされるアミノ酸配列を有する。代表的な例としては、LXRα遺伝子のイントロン5にコードされるアミノ酸配列が含まれてなるLXRαのアイソフォーム(即ち、本LXRα変異体5Aタンパク質)、LXRα遺伝子のイントロン6内の一部領域にコードされるアミノ酸配列が含まれてなるLXRαのアイソフォーム(即ち、本LXRα変異体6Aタンパク質)等をあげることができる。さらに具体的には、本LXRα変異体5Aタンパク質として、(1)配列番号1で示されるアミノ酸配列、(2)配列番号1で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列、又は(3)配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して、95%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を有するLXRαアイソフォームがあげられる。また、本LXRα変異体6Aタンパク質として、(1)配列番号2で示されるアミノ酸配列、(2)配列番号2で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列、又は(3)配列番号2で示されるアミノ酸配列に対して、95%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を有するLXRαアイソフォームがあげられる。
かかる本LXRα変異体タンパク質は、正常型LXRαが有する、リガンドによる転写活性化能と比較して、弱い転写活性化能を有する。
さらに詳細には、本LXRα変異体5Aタンパク質は、正常型LXRα遺伝子のエクソン5にコードされるアミノ酸配列のカルボキシル末端に相当するアミノ酸残基の下流に、イントロン5にコードされるアミノ酸配列が含まれる以外は、正常型と全く同一の塩基配列を有しており、このアイソフォームのアミノ酸配列は公共データベースに既に登録されている配列と同一である(GenBank Accession No. BC008819)。当該LXRα変異体タンパク質が有する、LXRαのリガンドの1つである22R−オキシコレステロールによる転写活性化能は、正常型LXRαが有する当該転写活性化能と比較して極めて弱い又は認められないレベルである。さらに、正常型LXRαタンパク質と当該LXRα変異体タンパク質それぞれを共発現させたところ、正常型LXRαタンパク質のみを発現させたときに見られるリガンド依存的な転写活性化は著しく抑制される。以上の知見から、当該LXRα変異体タンパク質は、生体内においてドミナントネガティブ的に、正常型LXRαタンパク質による正常なコレステロール代謝の阻害に関与することが理解できる。
上述における「実質的に同一のアミノ酸配列」の定義に関して、一般に生理活性を有するタンパク質のアミノ酸配列が多少変更された場合には、例えば、当該アミノ酸配列中の1又は複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されるような変更があった場合でも、当該タンパク質の生理活性が維持される場合があることはよく知られた事実であり、従って、本明細書でいう「実質的に同一のアミノ酸配列」とは、特定のアミノ酸配列(即ち、配列番号1又は2で示されるアミノ酸配列)と実質的に同等の生物活性が保持される限り、当該アミノ酸配列中の1又は複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたヒトLXRα変異体タンパク質も本発明の範囲に含まれることを意味する。前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個(ここで「数個」とは、2〜約10個程度である。)、又はそれ以上である。かかる改変の数は、当該タンパク質の生理活性が維持される範囲であればよい。より具体的には、配列番号1又は2で示されるアミノ酸配列中の1個以上20個以下、好ましくは1個以上10個以下、さらに好ましくは1個以上5個以下のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたヒトLXRα変異体タンパク質である。このような変異は、例えば、蛋白質が細胞内で受けるプロセシング、該蛋白質が由来する生物の種差、個体差、器官、組織間の差異等により天然に生じる変異であってもよいし、人為的なアミノ酸の変異(例えば、部位特異的変異導入法や突然変異処理等によって、天然の蛋白質をコードするDNAに変異を導入し発現させることにより作出された蛋白質が有するアミノ酸配列中に存在するアミノ酸の変異)であってもよい。
このようなアミノ酸の欠失、置換若しくは付加による変異体タンパク質は、保存的に置換されたアミノ酸配列を含んでいてもよい。これは特定のアミノ酸残基が物理化学的類似性(例えば、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似した性質)を有する残基によって置換されていてもよいことを意味している。このような保存的置換の非限定的な例には、(1)グリシン、アラニン;(2)バリン、イソロイシン、ロイシン;(3)アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、(4)セリン、スレオニン;(5)リジン、アルギニン;(6)フェニルアラニン、チロシンのグループ内での置換のような、脂肪族鎖含有アミノ酸残基の間の置換や極性基の間の置換等が挙げられる。
アミノ酸の欠失、置換若しくは付加による変異体タンパク質は、例えば、そのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子に公知技術である部位特異的変異導入(例えば、Nelson and McClelland、 Methods Enzymol、 216; 279、 1992等、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.、12、9441-9456、1984)、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法)を行うことにより得ることができる。
部位特異的変異導入は、導入したい変異を含む合成プライマーを用いて行うことができる。即ち、プライマーとして前記合成オリゴヌクレオチド及びその塩基配列に相補的な塩基配列を有するプライマーを用いて、正常型LXRαの遺伝子を含むプラスミドを鋳型として、増幅反応を行う。次に、メチル化感受性制限酵素であるDpn Iで処理することにより、新たに形成された変異を有するDNAのみが残る。この反応液を用いて大腸菌XLI-Blue株を形質転換し、アンピシリン含有LB寒天培地に捲く。37 ℃で一晩培養し、増殖したコロニーからプラスミドを単離する。これにより、変異されたDNAを含むプラスミドを得ることができる。上記方法に基づくキットとしては、例えば、QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene社製)等が販売されており、これらを利用してもよい。目的の変異が導入されたことは、その塩基配列を決定することにより確認できる。
さらにまた、アミノ酸配列の欠失、置換若しくは付加を行う方法としては、前記の部位特異的変異導入の他にも、遺伝子を変異原で処理する方法又は遺伝子を制限酵素で開裂し、選択した遺伝子断片を除去、付加若しくは置換し、次いで連結する方法等も挙げることができる。
ここで「正常型LXRα」とは、同一種の生物由来の当該受容体タンパク質のアミノ酸配列において、天然に最も高頻度に出現するアミノ酸配列からなるLXRαを意味する。例えば、ヒト由来正常型LXRαとしては、公共データベースに登録されているアミノ酸配列(GenBank Accession No. NM_005693)からなるLXRαを挙げることができる。
本発明において「アミノ酸同一性」、「塩基同一性」とは、2つの蛋白質又は2つのDNA間の配列の同一性及び相同性をいう。前記「同一性」は、比較対象の配列の全領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象の蛋白質又はDNAは、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。このような同一性に関しては、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.、22(22):4673-4680(1994)を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。尚、当該同一性は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYX-MACや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えば、ホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般的に利用可能である。
本発明における「アミノ酸同一性」はアミノ酸配列基準であって、例えば、約95%以上であることが好ましい。これに対して「塩基同一性」は塩基配列基準であって、例えば、約95%以上であることが好ましい。
本LXRα変異体タンパク質は、ハイブリダイゼーション法やPCR法等により取得することができる。
例えば、ヒト、サル、ウサギ、ラット、マウス等の哺乳類等の動物組織又はそれらの動物由来培養細胞から、Sambrook and Russell;モレキュラー クローニング第3版、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(2001年)等に記載される遺伝子工学的方法に準じてRNAを抽出し、一本鎖cDNAを合成する。具体的には、例えば、肝臓等の組織をチオシアン酸グアニジン等のタンパク質変性剤を含む溶液中で破砕し、さらに当該破砕物にクロロホルム等を加えることによりタンパク質を変性させる。変性タンパク質を遠心分離等により除去した後、回収された上清画分からフェノール、クロロホルム等を用いて全RNAを抽出する。尚、これらの方法に基づいた市販のキットとしては、例えば、ISOGEN(ニッポンジーン社製)、TRIZOL試薬(インビトロジェン社製)がある。
得られた全RNAを鋳型としてオリゴdTプライマーをmRNAのポリA配列に結合させ、逆転写酵素、例えば、RNaseH- Superscript II Reverse Transcriptase (インビトロジェン社製)及び添付されたバッファーとオリゴdTプライマーとを用いて、42 ℃で1時間反応させ、次いで99 ℃で5分間加熱することにより、逆転写酵素を失活させる。次いで、RNaseHにより、mRNA鎖にニックを入れ、該1本鎖cDNAを鋳型にして大腸菌DNAポリメラーゼIにより2本鎖cDNAを合成する。得られた2本鎖cDNAの末端をT4 DNA ポリメラーゼにより平滑化する。平滑化された2本鎖cDNAをpBluescript II vectorやバクテリオファージ、例えば、λgt11、EMBL3等のベクターにT4リガーゼにより挿入し、cDNAライブラリーを作成する。尚、これらの方法に基づいた市販のキットとしては、例えば、cDNA合成システムプラス(アマシャムバイオサイエンス社製)やTimeSaver cDNA合成キット(アマシャムバイオサイエンス社製)等が挙げられる。このようにして作製されたcDNAライブラリーから、例えば、ヒト由来のLXRα変異体5A遺伝子(配列番号3、4、5又は6)の塩基配列の部分塩基配列を有するDNAをプローブとしてハイブリダイゼーションを行う。ハイブリダイゼーションの条件としては、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするようなものをあげることができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、Sambrook and Russell;モレキュラー クローニング第3版、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(2001年)等に記載される通常の方法に準じて行うことができ、また「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、6×SSC(1.5M NaCl、0.15M クエン酸三ナトリウムを含む溶液を10×SSCとする)を含む溶液中で45℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology、 John Wiley & Sons、 N. Y. (1989)、 6.3.1-6.3.6)や、50%ホルムアミド、6 ×SSC、5 X デンハルト溶液、0.5%(w/v) SDS及び熱変性したサケ精子DNA(100 μg/ml)を含む溶液中に、ランダムプライミング法により[α-32P]dCTPで標識された前記プローブ(10 X 106 cpm/ml)を用いて、42 ℃にて一晩保温してハイブリッドを形成させた後、0.1%(w/v) SDSを含む2×SSC中、室温で10分間洗浄し、さらに0.1%(w/v) SDSを含む0.2×SSC中、55 ℃で10分間2回洗浄するような条件等を挙げることができる。尚、洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2×SSCで約50℃程度の条件(低ストリンジェンシーな条件)から0.2×SSCで約50℃程度までの条件(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温(低ストリンジェンシーな条件)から65℃(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
次いでX線フィルム(例えば、Hyperfilm-MP;アマシャムバイオサイエンス社製)又はバイオイメージングシステム(BAS-2000;富士フイルム社製)によりシグナルを検出し、プローブと結合する塩基配列を有するベクターを含む組換え体を得ることができる。
PCR法のプライマーを設計する場合には、例えば、ヒト由来のLXRα変異体5A遺伝子(配列番号3、4、5又は6)の塩基配列から、例えば、以下の条件を満たすように2つを選定すればよい。
1)プライマーの長さが15塩基から40塩基、好ましくは、20塩基から30塩基。
2)プライマーの中のグアニンとシトシンとの割合が、40%〜60%、好ましくは45%〜55%、より好ましくは50%〜55%。
3)プライマー配列において、アデニン、チミン、グアニン、シトシンの分布が部分的に偏らないこと。例えば、グアニン、シトシンが繰り返すような領域は適切ではない。
4)選定されるプライマーに対応する遺伝子の塩基配列上の距離が、好ましくは100塩基乃至3000塩基、さらに好ましくは、100塩基乃至500塩基。
5)各プライマー自身又は2つのプライマー間に相補的な配列が存在しないこと。
プライマーの塩基配列が選定されれば、市販のDNA合成機により化学合成すればよい。
例えば、センスプライマーとして配列番号7、アンチセンスプライマーとして配列番号8で示される塩基配列を使う組み合わせが挙げられる。PCRの条件としては、例えば、反応液中に、プライマーをそれぞれ200 nMになるように添加し、前記で合成した1本鎖cDNAを鋳型にして、例えば、LA Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)及び当該酵素に添付された反応緩衝液を用いてPCRを行う。かかるPCRとしては、例えば、95 ℃、3分間の熱変性後、94 ℃、 30秒間、55 ℃、 30秒間、72 ℃、1分間を1サイクルとして35サイクル程度行う。ここで、前記のようにして合成されたcDNAの代わりに、クロンテック社製クイッククローンcDNA等の市販の各種動物由来のcDNAを用いてもよい。得られた反応液の一部を、アガロースゲル電気泳動により解析し、目的のバンドを、直接又はゲルから切り出した後、TAクローニングシステムによりpGEM-T Easyベクター(プロメガ社製)にクローニングする。挿入されたDNA断片の塩基配列は、ダイターミネーター法により決定し、確認することができる。
このようにして本LXRα変異体タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチド(即ち、本LXRα変異体遺伝子)を取得すればよい。また本LXRα変異体遺伝子を形質転換させる宿主細胞において利用可能なベクターに導入することもできる。例えば、宿主細胞中で自立複製可能なベクターであって、宿主細胞からの単離、精製が可能であり、検出可能なマーカーをもつベクターに、通常の遺伝子工学的手法に準じて組み込むことにより本LXRα変異体遺伝子を含むベクターを構築することができる。本LXRα変異体遺伝子を含むベクターとしては、具体的には大腸菌を宿主細胞とする場合には、例えば、プラスミドpUC19(宝酒造社製)、pBluescript II(Stratagene社)等を挙げることができる。出芽酵母を宿主細胞とする場合には、プラスミドpACT2(クロンテック社製)、pYES2 (インビトロジェン社製)等を挙げることができる。また、哺乳類動物細胞を宿主細胞とする場合にはpRc/RSV、pRc/CMV (インビトロジェン社製)等のプラスミド等を挙げることができる。
尚、本LXRα変異体タンパク質は、天然に存在する生物体から抽出、精製等の操作により、天然タンパク質として調製することができるし、又は、遺伝子工学的手法を用いて組換えタンパク質として調製することもできる。例えば、ヒトの細胞、組織から粗抽出液を調製し、種々のカラムを使うことにより、精製タンパク質を調製することができる。ここでの細胞としては、本LXRα変異体タンパク質を産生・発現しているものであれば特に限定されず、例えば、肝臓由来細胞、腎臓由来細胞等を用いることができる。また、本LXRα変異体タンパク質の中でヒト以外の生物において産生・発現されているものについては、当該生物から調製することができる。本LXRα変異体タンパク質を製造するには、上記ようにして本LXRα変異体遺伝子等を適当な宿主細胞に形質転換し、当該形質転換体(即ち、本形質転換体)を培養して、LXRα変異体タンパク質を産生させればよい。産生されたLXRα変異体タンパク質を通常の方法に従って回収する。回収された本LXRα変異体タンパク質は、目的に応じて適当な方法により精製される。例えば、本形質転換体が微生物である場合には、当該形質転換体は、一般微生物における通常の培養に使用される炭素源や窒素源、有機塩、無機塩等を適宜含む各種の培地を用いて培養される。培養は一般微生物における通常の方法に準じて行い、固体培養、液体培養(試験管振とう式培養、往復式振とう培養、ジャーファーメンター(Jar Fermenter)培養、タンク培養等)等が可能である。培養温度は、微生物が生育する範囲で適宜変更できるが、例えば、約15℃〜約40 ℃の培養温度、pHが約6.0〜約8.0の培地において培養するのが一般的である。培養時間は、培養条件によって異なるが、通常、約1時間〜約24時間である。誘導型のプロモーターを用いている場合は、誘導時間は1日以内が望ましく、通常数時間である。
また、上記形質転換体が哺乳類、昆虫類等の動物細胞である場合には、当該形質転換体は一般の培養細胞における通常の培養に使用される培地を用いて培養することができる。動物細胞の場合には、例えば、終濃度が約5%(v/v)〜約10%(v/v)となるよう牛胎児血清(Fetal Bovine Serum; FBS)を添加した液体培地(インビトロジェン社製等)を用いて37 ℃、5% CO2存在下等の条件で培養すればよい。細胞がコンフルエントになるまで増殖したら、例えば、0.25%(v/v)程度のトリプシン/PBS溶液を加えて個々の細胞に分散させ、数倍に希釈して新しいシャーレに播種し培養を続ける。昆虫類細胞の場合も同様に、例えば、10%(v/v) FBSを含むGrace培地等或いはSF-900(インビトロジェン社製)等の無血清培地を用いて培養温度約25 ℃〜約30 ℃で培養すればよい。また、バキュロウイルス等の組換えウイルスベクターを用いる場合、感染後、72時間以内に細胞を回収するのが望ましい。
本形質転換体により産生された本LXRα変異体タンパク質の回収は、適宜、通常の単離、精製の方法を組み合わせて行えばよく、例えば、培養終了後、形質転換体の細胞を遠心分離等で集め、集められた該細胞を通常のバッファー、例えば、適当なプロテアーゼ阻害剤を含むPBSに懸濁した後、超音波処理、ダウンスホモジナイザー等で破砕し、破砕液を20、000 x gで数十分間から1時間程度遠心分離し、上清画分を回収することにより、目的である本LXRα変異体タンパク質を含む画分を得ることができる。さらに、前記上清画分から通常のタンパク精製技術により各種クロマトグラフィーに供することにより、より精製された目的である本LXRα変異体タンパク質を回収することもできる。
本発明核酸構築物は、プロモーター、応答エレメント及びエンハンサーエレメントからなるエレメント群から選択される少なくとも1つ以上のエレメントが機能可能なように結合されてなる、ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォームをコードするポリヌクレオチドを含み、かつ、当該ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォームが肝臓X受容体α遺伝子のエクソン5にコードされるアミノ酸配列を少なくとも有する肝臓X受容体α変異体タンパク質(即ち、本LXRα変異体タンパク質)であることを特徴とする。
ここで「ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォーム」とは、当該ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォームが肝臓X受容体α遺伝子のエクソン5にコードされるアミノ酸配列を少なくとも有する肝臓X受容体α変異体タンパク質(即ち、本LXRα変異体タンパク質)であるが、具体的には例えば、ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォームが、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する肝臓X受容体α変異体タンパク質等を挙げることができる。
(1)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(2)配列番号1で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列
(3)配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して、95%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列
また「エレメント」とは、プロモーター、応答エレメント及びエンハンサーエレメントからなるエレメント群から選択される少なくとも1つ以上のエレメントであるが、例えば、肝臓特異的プロモーター、肝臓特異的プロモーター及びそれに対するエンハンサーエレメント(具体的には例えば、マウス由来アルブミン遺伝子のプロモーター及びそれに対するエンハンサー)等を挙げることができる。
本発明核酸構築物を作製するには、まず上述のように調製された、本LXRα変異体タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチド(即ち、本LXRα変異体遺伝子)の上流に、宿主細胞で機能可能なプロモーター、応答エレメント及びエンハンサーエレメントからなるエレメント群から選択される少なくとも1つ以上のエレメントを機能可能な形で結合させ、これを例えば、トランスジェニックマウス作製用のトランスファーベクター等のベクターに組み込むことにより、本LXRα変異体遺伝子を宿主細胞で発現させることが可能なベクターを構築することができる。さらに、本LXRα変異体タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチド(即ち、本LXRα変異体遺伝子)の下流に転写終結に必要とされるポリA付加配列等を連結させることもできる。
ここで、「機能可能な形で結合させる」とは、本LXRα変異体遺伝子が導入される宿主細胞において、前記エレメントの制御下に本LXRα変異体遺伝子が発現されるように、当該エレメントと本LXRα変異体遺伝子とを結合させることを意味する。使用されるエレメントは、上述の如く、形質転換する宿主細胞内でエレメント活性を示すものであって、例えば、肝臓特異的プロモーター、肝臓特異的プロモーター及びそれに対するエンハンサーエレメント(具体的には例えば、マウス由来アルブミン遺伝子のプロモーター及びそれに対するエンハンサー)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス(SV)40プロモーター等を挙げることができる。また、「トランスファーベクター」とは、宿主細胞の染色体上のランダムな位置に目的のDNA断片を挿入するためのベクターのことであり、当該トランスファーベクターとしては、市販の発現ベクターを利用することもできる。
宿主細胞において機能するエレメントを予め保有するベクターを使用する場合には、ベクター保有のエレメントと本LXRα変異体遺伝子とが機能可能な形で結合するように、当該エレメントの下流に本LXRα変異体遺伝子を挿入すればよい。例えば、前述のプラスミドpRc/RSV、pRc/CMV等は、動物細胞で機能可能なプロモーターの下流にクローニング部位が設けられており、当該クローニング部位に本LXRα変異体遺伝子を挿入し動物細胞へ導入すれば、本LXRα変異体遺伝子を発現させることができる。
本LXRα変異体遺伝子等を宿主細胞に導入することにより、本形質転換体を取得することができる。本LXRα変異体遺伝子等を宿主細胞へ導入する方法としては、形質転換される宿主細胞に応じた通常の導入方法を適用することができる。例えば、微生物である大腸菌を宿主細胞とする場合には、モレキュラー・クローニング第3版(Sambrook and Russell、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、2001年)等に記載される塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法等の通常の方法を用いることができる。また、哺乳類動物細胞又は昆虫類細胞を宿主細胞とする場合には、例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法又はリポフェクション法等の一般的な遺伝子導入法により前記細胞に導入することができる。また、本LXRα変異体遺伝子を、酵母を宿主細胞として発現させてもよい。この場合、好ましくは、出芽酵母(例えば、サッカロミセスセレビシエ)を用いるが、ピキア (Pichia) 等の酵母を用いてもよい。酵母を形質転換する方法としては、例えば、 Itoらの方法(J. Bacteriol. 153; 163-168、 1983)等に記載されている。バキュロウイルスやワクシニアウイルス等のウイルスに本LXRα変異体遺伝子を組み込むには、使用しようとするウイルスのゲノムと相同な塩基配列を含有するトランスファーベクターを用いることができる。このようなトランスファーベクターの具体的例としては、pVL1392、pVL1393(インビトロジェン社製)等のプラスミドを挙げることができる。本LXRα変異体遺伝子を前記のようなトランスファーベクターに挿入し、当該トランスファーベクターとウイルスゲノムとを同時に宿主細胞に導入すると、トランスファーベクターとウイルスゲノムとの間で相同組換えが起こり、本LXRα変異体遺伝子がゲノム上に組み込まれた組換えウイルスを得ることができる。ウイルスゲノムとしては、バキュロウイルス、アデノウイルス等のゲノムを用いることができる。尚、ウイルスをベクターに用いる場合には、上述のように一般的な遺伝子導入法によりウイルスDNAを宿主細胞に導入できるほか、組み換えウイルスを直接、宿主細胞へ感染させることによってもウイルスDNAを宿主細胞に導入することができる。
本発明における非ヒト動物としては、例えば、非ヒト哺乳動物(例、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ウシ、サル等)等が用いられ、なかでもマウス、ラット、モルモット等の齧歯目の哺乳動物が好ましく、とりわけマウス、ラットが好適である。
本発明における非ヒト動物の一部とは、当該動物由来の組織又は細胞であれば特に制限は無く、例えば、精巣周囲脂肪組織、後腹膜脂肪組織、腸間膜脂肪組織、皮下脂肪組織、褐色脂肪組織等の各種の脂肪組織、更には心臓、肺、腎臓、胆嚢、肝臓、膵臓、脾臓、腸、精巣(睾丸)、卵巣、子宮、胎盤、筋肉、血管、脳、髄、甲状腺、胸腺、乳腺等の他の組織等の体の一部が挙げられる。また、当該動物由来の血液、リンパ液若しくは尿等の体液も本発明における非ヒト動物の一部に含まれる。
更に、上記組織、臓器又は体液に含まれる細胞を単離・培養して得られる培養細胞(採取した一代目の初代細胞及び該初代細胞を株化した細胞を含む)や抽出物、のみならず胎生期胚における発生段階の各器官、又は不随する細胞の培養物及びES細胞についても分化・増殖能の有無に関わらず非ヒト動物の一部に含まれる。
本発明核酸構築物を有することを特徴とする非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物(即ち、本発明非ヒト動物)又はそれらの一部(即ち、これらを総じて、本発明非ヒト動物等)は、本発明核酸構築物を非ヒト動物又はその一部に導入して製造すればよい。好ましくは、本発明核酸構築物を非ヒト動物の染色体に組み込むことがよい。尚、前記子孫動物としては、例えば、兄妹交配を行った第n世代(nは1以上)の非ヒト動物等を挙げることができる。
本発明核酸構築物を非ヒト動物又はその一部に導入するには、公知のトランスジェニック動物作製法・遺伝子導入法(例えば、トランスジェニックマウスの作製:例えば、村松正實、山本雅編、「実験医学別冊 新訂 遺伝子工学ハンドブック 改訂第3版」(1999年、羊土社発行)、234−238)、辻本豪三、田中利男編、「実験医学別冊 ゲノム機能研究プロトコール」(2000年、羊土社発行)、222−227等参照)等の通常の方法に準じて実施すればよいが、具体的には例えば、ヒトLXRα変異体タンパク質をコードするDNA断片を非ヒト動物細胞の染色体上のランダムな位置に挿入し、目的のトランスジェニックマウスを作出することが効果的である。当該方法は、マウス、ラット、ウサギ、ブタ等への応用が可能である。
尚、このようにして本発明核酸構築物が導入された受精卵を偽妊娠させた仮母親の子宮に入れ、出産させた後、得られた産仔の体の一部(例えば尾部先端)等からDNAを抽出し、抽出されたDNAを材料としたサザンブロット分析やPCR分析等を行うことにより、本発明核酸構築物に含まれる目的の外来DNA断片が子孫に伝わっていること(好ましくは、宿主細胞の染色体上に組み込まれていること)を確認する。
さらにまた、例えば、このようにして製造される非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物と、前記非ヒト動物と同種でありかつ他の糖尿病若しくは肥満モデルである非ヒト動物との交配により、さらに新たな非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物又はそれらの一部を作出してもよい。
尚、このようにして作出された子孫(F1)についても、体の一部(例えば尾部先端)からDNAを抽出し、抽出されたDNAを材料としたサザンブロット分析やPCR分析等を行うことにより、本発明核酸構築物に含まれる目的の外来DNA断片が子孫に伝わっていることを確認する。また、例えば、精巣周囲脂肪組織、後腹膜脂肪組織、腸間膜脂肪組織、皮下脂肪組織、褐色脂肪組織等の各種の脂肪組織、更には心臓、肺、腎臓、胆嚢、肝臓、膵臓、脾臓、腸、精巣(睾丸)、卵巣、子宮、胎盤、筋肉、血管、脳、髄、甲状腺、胸腺、乳腺等の他の組織一部又は胎生期胚からのRNA抽出物を材料としたリアルタイムPCR定量解析又はノーザンブロット分析を実施してその結果を比較することによって、LXRα変異体タンパク質をコードするDNA断片遺伝子の発現量の増減を調べることができる。更に、前記体の一部(磨り潰したもの、切片等)又は体液(血液、尿等)を材料としたELISA(Enzyme-linked Immunosorbent Assay)法を実施してその結果を比較することによって、LXRα変異体5Aタンパク質量の増減を調べることができる。
このようにして製造された非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物(即ち、本発明非ヒト動物)において、普通食又は高脂肪食摂取負荷飼育を実施した後、OGTT(糖負荷試験:一定量の糖を負荷した後の血糖値やインスリン値の変動を見る)やITT(インスリン負荷試験:一定量のインスリンを負荷した後の血糖値やインスリン値の変動を見る)、各種血液/尿検査(糖や脂肪の代謝パラメータの解析)、各種病理組織分析(各種脂肪組織、肝臓、腎臓、膵臓、筋肉、血管等の重量変化、またこれらの組織切片を染色し、脂肪細胞、肝臓細胞又は膵ランゲルハンスβ細胞の状態のほか、インスリン量やグリコーゲン量等を観察する)等を実施し、本発明非ヒト動物と野生型非ヒト動物の生理作用の違いを調べる。
その結果、後述の実施例に示すとおり、本発明非ヒト動物(例えば、8週齢)は、高脂肪食摂取を施すことにより、体重増加、血中コレステロール量増加、内臓脂肪の著しい蓄積という所見(例えば16週齢)を示す。これらの所見から本発明非ヒト動物は、コレステロール代謝異常に伴い内臓脂肪蓄積が起こり、肥満という表現型を表わすことが理解できる。
従って、本発明非ヒト動物は肥満を伴う疾患のモデル動物として、例えば、本発明非ヒト動物又はその一部と野生型非ヒト動物又はその一部とを(例えば、リアルタイムPCR定量解析又はノザンブロット解析等の方法を利用して)比較することにより、肥満を伴う疾患の発症状態の違いを知ること、当該組織において発現が誘導若しくは抑制されている遺伝子を同定すること、さらにはその結果から肥満を伴う疾患において発現が変動するマーカー遺伝子を探索すること、延いては疾患の原因因子解明の指標とすること等が可能となる。更に、本発明非ヒト動物又はその一部の胎生期から致死までの期間における、発育分化、発達、生活行動の観察、病理組織学的検査又は生化学的検査を行うことによって、LXRα変異体タンパク質が関与する疾患についても(例えば、「トランスジェニック動物」山村研一他 編(共立出版株式会社))等を参照しながら)より詳細な病態解析を行うこともできる。さらにまた、医薬品・食品又は医薬品候補物質・食品候補物質等の肥満改善効果又は発症予防効果を評価するために用いることもできる。尚、「肥満改善効果」としては、例えば、上述のような肥満の特徴的な症状である、体重増加、血中コレステロール量増加、内臓脂肪蓄積を改善する効果等を挙げることができる。また「肥満改善効果又は発症予防効果」とは、筋肉、肝臓若しくは脂肪組織において解糖や糖新生及び糖取り込みを制御する能力(糖代謝制御能力)、又は脂質合成若しくは脂質分解を制御する能力(脂肪酸合成及び/又は脂肪酸代謝制御能力)を表す。さらには、前記脂肪酸を原料にしたコレステロール合成代謝(コレステロール産生制御能力)、エネルギー(ATP)の産生消費、生体のインスリン感受性を制御する能力もまた、肥満改善効果又は発症予防効果の概念に含まれる。
次に、本発明における検定方法について説明するが、本発明検定方法は、基本的には、
(1)本発明非ヒト動物又は本発明非ヒト動物等(即ち、本発明非ヒト動物又はそれらの一部)に被験物質を接触させる第一工程、
(2)前記被験物質を接触させた本発明非ヒト動物又は本発明非ヒト動物等(即ち、本発明非ヒト動物又はそれらの一部)におけるヒトLXRα変異体タンパク質の発現量又は当該量に相関関係を有する指標値を測定し、対照と比較する、
(3)第二工程における比較結果に基づき、被験物質の抗肥満能力(例えば、肥満改善効果又は発症予防効果)を評価する第三工程からなり、より具体的には、下記の第1の本発明検定方法及び第2の本発明検定方法等を挙げることができる。
上記検定方法において、「被験物質」としては、特に限定は無く、核酸、ペプチド、タンパク質(ヒトLXRα変異体タンパク質に対する抗体を含む)、有機化合物、無機化合物等であり、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子有機化合物、合成ペプチド、合成核酸、天然化合物等が挙げられる。
上記検定方法において、本発明非ヒト動物を用いる場合、当該非ヒト動物は、標準的な食摂による通常の飼育条件又は高脂肪食摂取を与える飼育条件により飼育される。食摂方法については特に限定は無く、自由食摂させるか、又は一定量を一定時間に食摂させる。ここで標準的な食摂としては、各々の動物種に応じて適宜当業者に汎用されている食摂方法を用いればよい。ここで、「高脂肪食摂取」とは、その組成や食摂の条件をコントロールすることで、より効果的に食摂性の肥満の発症を誘導することが可能となる食摂方法である。具体的には単位食摂成分の脂肪分を10−60 kcal%(標準食約35 kcal%)の幅で選択し、さらに植物性脂質に比して動物性脂質を0.5−10倍に調整できる。尚、「高脂肪食摂取」は、一定期間の調整食条件下の飼育期間中の任意の時点を示し、胎生期から致死までの期間において時期及び期間、回数や量を限定するものではない。また、期間中に一時的に2−24時間程度の絶食を実施し、生化学的検査を実施することで病態の変化を観察することができる。さらに好ましくは、食摂条件の異なる動物群にわけて飼育を実施し、常に生活行動や肥満に伴う病態に関わるパラメータ(体重、運動量、血圧、摂食状態、生化学的検査)について各群を経時的に比較観察した上で病理組織学的検査を行う。生化学的検査における項目としては、血糖値、コレステロール量、リン脂質量、トリグリセライド量、遊離脂肪酸、インスリン値、レプチン値及び肥満関連因子の発現量等が例示されるが、これに限定されるものではない。
上記検定方法において、「本発明非ヒト動物又は本発明非ヒト動物等(即ち、本発明非ヒト動物又はそれらの一部)に被験物質を接触させる」とは、被験物質を当該非ヒト動物に投与すること、又は被験物質を当該非ヒト動物の一部に接触させることを表し、当業者に汎用されている方法で実施することができる。被験物質を当該非ヒト動物に投与する場合、その投与方法には特に限定はなく、経口的若しくは非経口的に投与すればよい。非経口的投与方法としては、静脈内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与(ip)、直腸内投与、経皮投与(塗布)等を挙げることができる。
被験物質の形態に特に限定は無く、固体、液体、基剤との混合物、縣濁液又は溶液等として用いることができる。縣濁液若しくは溶液とする場合、水、pH緩衝液、メチルセルロース溶液、生理食塩水、有機溶媒水溶液(有機溶媒としては通常エタノールやジメチルスルホキシドが用いられる。)等を用いる。基剤としてはグリセリン、スクワラン等の油等が挙げられ主に塗布用の被験物質を調製するために用いられる。
上記検定方法において、「ヒトLXRα変異体タンパク質の発現量又は当該量に相関関係を有する指標値」の測定方法としては、当該タンパク質に係る遺伝子産物(具体的に例えば、RNA量)を検出・測定する方法及び当該タンパク質量を検出・測定する方法、下記の肥満関連因子の発現量を検出・測定する方法等が挙げられる。また、ヒトLXRα変異体タンパク質の発現量に相関関係を有する指標値」としては、上記の他に、
(a)高脂肪食摂取での飼育における体重変化;
(b)高脂肪食摂取での飼育時の血中コレステロール量;
(c)高脂肪食摂取での飼育における内臓脂肪蓄積;
等も挙げることができる。
ここで、「肥満関連因子」とは、解糖や糖新生、及び糖取り込みに関わる酵素、脂質の代謝若しくは生合成等の制御に関わる因子、また、これを原料にしたコレステロール合成代謝、エネルギーの産生消費についての制御にもかわる因子、さらに生体のインスリン感受性に関与する因子であり、具体的には例えば、CYP7A1、UCP1、FAS及びACO等から選択される1又は複数の因子が挙げられる。
当該肥満関連因子の発現量の測定を行う場合には、測定対象としてRNAを用いる方法及び測定対象としてタンパク質を用いる方法が挙げられる。
以下各々について詳細に述べる。
(1)測定対象としてRNAを用いる場合:
生体試料としてRNAを利用する場合において、当該肥満関連因子の発現量は、生体試料に含まれる全RNA単位量当りの、CYP7A1遺伝子(マウス由来のCYP7A1遺伝子(Genbank Accession No. NM_007824)、ヒト由来のCYP7A1遺伝子(Genbank Accession No. NM_000780))等)、UCP1遺伝子(マウス由来のUCP1遺伝子(Genbank Accession No.BC012701)、ヒト由来のUCP1遺伝子(Genbank Accession No.U28480))等)、FAS遺伝子(マウス由来のFAS遺伝子(Genbank Accession No. AF127033)、ヒト由来のFAS遺伝子(Genbank Accession No. U29344,U52428)等)又はACO遺伝子(マウス由来のACO遺伝子(Genbank Accession No. AF006688)、ヒト由来のACO遺伝子(Genbank Accession No. AH000843)等)の発現レベルを検出し、これを測定すればよい。
食餌負荷飼育を実施した後、測定対象としてRNAを用いる場合には、本発明非ヒト動物の各種組織から抽出されたRNAを材料としたリアルタイムPCR定量解析又はノザンブロット解析を実施することによって、肥満関連因子遺伝子の発現量の増減又はこれに連動する他の遺伝子の発現量の動向を調べることにより肥満を伴う疾患の発症状態を知ることができ、延いては疾患の原因因子解明の指標とすることもできる。
即ち、本発明非ヒト動物由来の生体試料と肥満関連因子遺伝子由来のプライマー若しくはプローブとを接触させ、当該プライマー若しくはプローブと結合するRNA量を、ノーザンブロット法、RT-PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション解析法等の公知の方法で測定することができる。当該プライマー若しくはプローブとしては、肥満関連因子遺伝子の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はその相補的なポリヌクレオチドが挙げられる。プライマーとして用いる場合には、通常15bp〜100bp、好ましくは15bp〜50bp、より好ましくは15bp〜35bpの塩基長を有するものが例示できる。また検出プローブとして用いる場合には、通常15bp〜全配列の塩基数、好ましくは15bp〜1kb、より好ましくは100bp〜1kbの塩基長を有するものが例示できる。
(a)ノーザンブロット法を利用する場合には、具体的には、前記プローブを放射性同位元素(32P、33P等:RI)や蛍光物質等で標識し、それを、常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーした被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、形成された肥満関連因子由来のプライマー(DNA又はRNA)と生体試料由来の全RNAとの二重鎖を、前記プライマーの標識物(RI若しくは蛍光物質)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS2000、富士フィルム社製)又は蛍光検出器で検出、測定する方法を例示することができる。また、AlkPhos Direct Labelling and Detection System (Amersham PharamciaBiotech社製)を用いて、当該プロトコールに従ってプローブDNAを標識し、生体試料由来のRNAとハイブリダイズさせた後、プローブの標識物に由来するシグナルをマルチバイオイメージャーTYPHOON(Amersham Pharmacia Biotech社製)で検出、測定する方法を使用することもできる。
(b)RT−PCR法を利用する場合には、生体試料由来のRNAと前記プライマーをハイブリダイズさせ、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。尚、増幅された二本鎖DNAの検出は、上記PCRを予めRIや蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーさせて、標識した疾患マーカーをプローブとして使用してこれとハイブリダイズさせて検出する方法等を用いることができる。また、SYBR Green RT-PCR Reagents (Applied Biosystems社製)で該プロトコールに従ってRT−PCR反応液を調製し、ABI PRIME 7900 Sequence Detection System (Applied Biosystems社製)で反応させて、該反応物を検出することもできる。
(c)DNAチップ解析を利用する場合には、前記プライマー若しくはプローブをDNAプローブ(1本鎖又は2本鎖)として貼り付けたDNAチップを用意し、これに生体組織由来のRNAから常法によって調製されたcRNAとハイブリダイズさせて、形成されたDNAとcRNAとの二本鎖を、本発明の前記プライマー若しくはプローブから調製される標識プローブと結合させて検出する方法を挙げることができる。また、上記DNAチップとして、CYP7A1遺伝子、UCP1遺伝子、ACO遺伝子またはFAS遺伝子の遺伝子発現レベルの検出、測定が可能なDNAチップを用いることもできる。
(2)測定対象としてタンパク質を用いる場合:
(a)生体試料としてタンパク質を含む溶液を利用する場合には、生体試料に含まれる肥満関連因子量を当該肥満関連因子を認識し得る抗体と反応させることによって、当該抗体と結合し得る肥満関連因子量を検出し、測定することによって実施される。肥満関連因子を認識し得る抗体の由来動物種は特に限定は無いが、通常は本発明非ヒト動物と同一種由来の抗体を用いる。肥満関連因子として、具体的にはCYP7A1、UCP1、FASまたはACOが挙げられ、そのアミノ酸配列としては、それぞれ上述の肥満関連因子遺伝子によってコードされるタンパク質を挙げることができる。
上記検定方法における「対照」は、例えば、
(a)当該検定方法で使用される本発明非ヒト動物と同動物種である野生型非ヒト動物を対象として第一工程及び第二工程と同様な工程を実施した場合、又は
(b)被験物質の代わりに対照物質(ポジティブコントロール、ネガティブコントロール)を用いて第一工程及び第二工程と同様な工程を実施した場合等を意味する。
前記(a)の場合、本発明非ヒト動物における肥満改善効果又は発症予防効果が野生型非ヒト動物における被験物質の肥満改善効果又は発症予防効果と同等以上であれば、当該被験物質は肥満改善効果又は発症予防効果を有すると評価することができる。一方、本発明非ヒト動物における肥満改善効果又は発症予防効果が野生型非ヒト動物における被験物質の肥満改善効果又は発症予防効果よりも小さければ、当該被験物質はヒトLXRα変異体に起因する肥満改善効果又は発症予防効果を有さないと評価することができる。
前記(b)の場合、対照物質としては、ポジティブコントロール又はネガティブコントロールが挙げられる。ポジティブコントロールとは、肥満改善効果又は発症予防効果を有する任意の物質を表し、具体的にはコルチコステロイド等が例示される。また、ネガティブコントロールとしては、被験物質に含まれる溶媒、バックグランドとなる試験系溶液等が挙げられる。
対照物質をネガティブコントロールとする場合、被験物質の肥満改善効果又は発症予防効果が対照物質の肥満改善効果又は発症予防効果よりも大きければ、当該被験物質は肥満改善効果又は発症予防効果を有すると評価することができる。一方、被験物質の肥満改善効果又は発症予防効果が対照物質の肥満改善効果又は発症予防効果と同程度若しくは小さければ、当該被験物質は肥満改善効果又は発症予防効果を有さないと評価することができる。
また、対照物質をポジティブコントロールとする場合、被験物質の肥満改善効果又は発症予防効果と対照物質の肥満改善効果又は発症予防効果を比較することによって、被験物質の肥満改善効果又は発症予防効果の程度を評価することができる。
第1の本発明検定方法は、物質が有する抗肥満能力の検定方法であって、本発明非ヒト動物に被験物質を投与し(即ち、接触ステップ)、当該非ヒト動物の血中コレステロール量の変動有無若しくはその程度を測定し(即ち、測定ステップ)、当該測定結果に基づき前記被験物質が有する抗肥満能力を評価する(即ち、評価ステップ)工程を有することを特徴とする。
測定ステップにおいて血中コレステロール量の測定するには、当該技術分野において通常用いられる酵素的免疫吸着分析法キット(Roche Dianostics)による方法等を用いればよい。
第2の本発明検定方法は、物質が有する抗肥満能力の検定方法であって、本発明非ヒト動物等に被験物質を接触させ(即ち、接触ステップ)、前記被験物質を接触させた前記非ヒト動物等における肝臓X受容体α遺伝子のエクソン5にコードされるアミノ酸配列を少なくとも有する肝臓X受容体α変異体タンパク質の発現量又は当該量に相関関係を有する指標値の変動有無若しくはその程度を測定し(即ち、測定ステップ)、当該測定結果に基づき前記被験物質が有する抗肥満能力を評価する(即ち、評価ステップ)工程を有することを特徴とする。
ここで、本発明非ヒト動物等が、非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物の一部(即ち、非ヒト動物由来の組織又は細胞)である場合には、当該動物の一部と接触させるリガンド又は被験物質の濃度は、通常、約0.1μM〜約10μMであればよく、1μM〜10μMが好ましい。また当該動物の一部とリガンド又は被験物質とを接触させる時間は、通常、18時間以上60時間程度であり、好ましくは24時間から40時間程度が挙げられる。
前記被験物質を接触させた前記非ヒト動物等における肝臓X受容体α遺伝子のエクソン5にコードされるアミノ酸配列を少なくとも有する肝臓X受容体α変異体タンパク質の発現量に相関関係を有する指標値が、例えば、血糖値、耐糖能、血中コレステロール量、肝臓トリグリセリセライド量等の値である場合には、次のような測定方法を用いればよい。
血糖値の測定方法としては、当該技術分野において通常用いられるグルコース酸化酵素固定化酵素電極による最大反応加速方法(Glucoroder-NX株式会社A&T製造)等を用いればよい。
耐糖能の測定方法としては、OGTT(糖負荷試験)又はITT(インスリン負荷試験)等が挙げられ、好ましくは、これらの結果から曲線下面積値(AUC:area under the curve)を算出し、その増加をもって耐糖能低下の指標とすることができる。
血中コレステロール量の測定方法としては、当該技術分野において通常用いられる酵素的免疫吸着分析法キット(Roche Dianostics)による方法等を用いればよい。
肝臓トリグリセリド量の測定方法としては、当該技術分野において通常用いられるアセチルアセトン法(Fletcher,M.J.:Clin. Chim. Acta,22,339-397(1968)及びSardesai,V.M.:Clin. Chim. Acta,14,156-161(1968))に記載された方法等を用いればよい。
その他本発明のトランスジェニック非ヒト動物の生化学的解析手法についても、当該技術分野において通常用いられる公知の方法に従えばよい。
さらにまた、本発明検定方法は、例えば、本発明非ヒト動物又は本発明非ヒト動物等(即ち、本発明非ヒト動物又はそれらの一部)に被験物質を接触させる第一工程の前工程又は同時工程として、本発明非ヒト動物又は本発明非ヒト動物等(即ち、本発明非ヒト動物又はそれらの一部)に本LXRα変異体タンパク質のリガンドを接触させる工程がさらに追加されてなる検定方法であってもよい。当該検定方法では、被験物質の前記リガンドに対する拮抗作用性を評価することも可能となる。そして当該検定により評価された拮抗作用性に基づいて選抜される、前記リガンドに対する拮抗作用性を有する被験物質を有効成分とする薬剤は、後述の本発明抗肥満薬に係る説明と同様な投与方法、製剤方法、投与量等によって利用すればよい。
本発明探索方法は、抗肥満能力を有する物質の探索方法であって、第1の本発明検定方法又は第2の本発明検定方法により評価された抗肥満能力に基づき、抗肥満能力を有する被験物質を選抜することを特徴とする。このようにして選抜された抗肥満能力を有する物質は、本発明抗肥満薬の有効成分として使用すればよい。
本発明探索方法により選抜された物質は塩を形成していてもよく、当該物質の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)又は塩(例、アルカリ金属)等との塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、或いは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩等が用いられる。本発明探索方法により選抜された物質は、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤等として経口的に、或いは水若しくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤等の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、当該物質を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤等とともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。錠剤、カプセル剤等に混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン,コーンスターチ,トラガント,アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ,ゼラチン,アルギン酸等のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖,乳糖又はサッカリンのような甘味剤、ペパーミント,アカモノ油又はチェリーのような香味剤等が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料に更に油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油等のような天然産出植物油等を溶解又は懸濁させる等の通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水,ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール,D−マンニトール,塩化ナトリウム等)等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール,ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80,HCO−50)等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油,大豆油等が用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル,ベンジルアルコール等と併用してもよい。また、上記の治療・発症予防剤には、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム,塩酸プロカイン等)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン,ポリエチレングリコール等)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール,フェノール等)、酸化防止剤等を配合してもよい。調製された注射液等の医薬組成物は、通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル等)に対して投与することができる。当該物質の投与量は、投与対象(例えば、動物種、年齢、性別、体重)、対象疾患、投与ルート等により差異はあるが、例えば、当該化合物を経口投与する場合には、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき当該物質を約1mg〜約2g程度、好ましくは約1mg〜約1g程度、より好ましくは約5mg〜約50mg程度投与する。非経口的に投与する場合には、当該物質の1回投与量は投与対象、対象疾患等によっても異なるが、例えば、当該物質を注射剤の形で通常成人(60kgとして)に投与する場合、一日につき当該物質を約0.01mg〜約500mg程度、好ましくは約0.1mg〜約50mg程度、より好ましくは約0.1mg〜約10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の非ヒト動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
以下、実施例を挙げてさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下に記載される具体的な操作は、特記されていない限り、例えば、Molecular Cloning 第3版:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York (2001)、Hong,B.L.M.,A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York(1986)等に記載される当該分野において通常用いられる方法に従って実施された。
実施例1 (トランスジェニックマウス作製用の核酸構築物の作製)
マウス由来のアルブミン遺伝子のプロモーター及びそれに対するエンハンサーエレメントを有する遺伝子領域)とSV40PolyA配列(Shiota et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 1992,89,373-377)との間に存在するXbaIサイトに、ヒトLXRα変異体5Aの翻訳領域をコードするDNA断片とをライゲーションにより挿入することにより、pALBe/p−hLXRα5A−SV40PolyAを作製した(図1参照)。作製されたpALBe/p−hLXRα5A−SV40PolyAを制限酵素AatII及びMluIを用いて切断(37℃、1時間)した後、当該切断物を1%アガロースゲルを用いる電気泳動により分画した。分画された目的のDNA断片バンドを前記アガロースゲルから切り出した後、当該DNA断片をフェノール抽出し、当該DNA断片を含む上清画分を得た。得られた上清画分をさらにエタノール沈殿することにより、目的のDNA断片である核酸構築物を回収した。
実施例2(トランスジェニックマウスの作製)
(1)本発明核酸構築物の導入に用いられるマウス受精卵の採取
B6C3F1マウスの雌マウスに過剰排卵を誘発させるために、妊馬血清性生殖腺刺激ホルモン(pregnant mare’s serum gonadotropin;セロトピン:帝国臓器製薬社製)5国際単位とヒト絨毛性生殖腺刺激ホルモン(human chorionic gonadotropin;ゴナトロピン:帝国臓器製薬社製)2.5国際単位とが予め腹腔内投与された個体から、卵巣から子宮までの生殖器官を取り出し、実体顕微鏡下で卵管を引き裂き、卵管中から受精卵を採取した。尚、マウス卵培養用培地としては、M2培地を用いた。
(2)直鎖化DNA断片のマウス受精卵雄生前核への注入(マイクロインジェクション)及び当該DNA断片が導入されたマウス卵(以下、操作卵)の培養
実施例1で回収されたpALBe/p−hLXRα5A−SV40PolyAを制限酵素により直鎖化した後、当該pALBe/p−hLXRα5A−SV40PolyAを、ノマルスキー微分干渉装置を取り付けた倒立顕微鏡(倒立型システム顕微鏡:オリンパス社製)下で、マイクロマニピュレータ(粗動電動マニピュレータに懸架式ジョイスティック3次元油圧マイクロマニピュレータを装着:ナリシゲ社製)、マイクロインジェクター(ナリシゲ社製)、インジェクションピペット及びホールディングピペットを用いて前記受精卵中にマイクロインジェクションを施すことにより、操作卵を調製した。尚、インジェクション用ディッシュとしては、10cmディッシュ(ファルコン3002:ベクトンディッキンソン社製)に培地50μlの液滴を作り、流動パラフィンを重層したものを用いた。これを5%CO2存在下、37℃のインキュベーター中で30分以上静置して保温した。さらに、実体顕微鏡下で、ガラスキャピラリーを用いて操作卵をM2培地液滴中に移した。尚、当該操作卵は、マウス卵管へ移植するまでの間、5%CO2存在下、37℃のインキュベーター中で静置された。
(4)精管結紮雄マウスと正常雌マウスとの交配による偽妊娠マウスの作製、当該偽妊娠マウスへの操作卵の移植及び偽妊娠マウスの出産と産仔の育成
ICRマウス正常雌を偽妊娠させるために、精管結紮雄マウスと交配させた。
上記(2)で調製された操作卵を偽妊娠させたICRマウスへ移植するために、まずマウスを50mg/体重のペントバルビタールナトリウム(ネンブタール:Abbott Laboratories)を用いて全身麻酔した後、両けん部を約1cm切開することにより、卵巣及び卵管を露出させ、さらに実体顕微鏡下で卵巣嚢をピンセットで切開することにより、卵管采を露出させた。次いで卵管当たり10乃至15個の前記操作卵を卵管采に送り込んだ。次いで、卵管及び卵巣を腹腔に戻し両切開部を縫合した後、当該マウスを麻酔から覚醒させた。このようにして調製された雌マウスに出産させることにより、仔マウス(トランスジェニックマウス)を得た。
実施例3 (導入された本発明核酸構築物の検出)
実施例2で得られた仔マウスにおける導入された核酸構築物の存在は、仔マウスの尾から抽出されたDNAを鋳型として当該核酸構築物をPCRで増幅・検出することにより、その存在を確認した。
まず仔マウスの尾の一部を溶解バッファー(100mM Tris−HCl(pH 7.5)、5mM EDTA、200mM NaCl、0.2% SDS、0.1mg/ml Proteinase K)に浸し、55℃で6時間加温した。次いで、当該混合物を遠心分離して、残渣を除去した後、上清画分をフェノール−クロロホルム抽出してタンパク質が除去された上清画分を得た。得られた上清画分をさらにエタノール沈殿することにより、DNAを回収した。
トランスジェニックマウス作製用の核酸構築物が導入されたことを確認するために、PCR法を用いた。当該PCR法はプログラム可能なサーマルサイクラーを用いて行った。
50μl反応液は、1.25unitのExTaq DNA polymerase(タカラバイオ社製)、並びに、センスプライマー(配列番号9)及びアンチセンスプライマー(配列番号10)を各々200nmolと上記のようにして回収されたマウスの尾から調製されたDNAを含む。PCR法の反応条件は、95℃で3分間熱変性した後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、74℃で60秒間を1サイクルとして35サイクルの反応であった。次いで当該PCR法により増幅されたPCR産物を、1%アガロースゲルを用いた電気泳動により、前記核酸構築物に基づくDNAの増幅を確認された。
実施例4 (高脂肪食摂取によるトランスジェニックマウスにおける体重増加)
実施例2で得られた仔マウスに高脂肪食摂取を施したところ、同様に高脂肪食摂取を施した野生型マウスの場合と比較して体重増加が顕著に高く、その差異は約20%である(図2参照)。
実施例5 (高脂肪食摂取によるトランスジェニックマウスにおける血中コレステロール量の測定)
実施例2で得られた仔マウスにおける血中コレステロール量を、市販のキットであるコレステロールオキシダーゼ・HMMPS法(和光純薬)を用いて測定した。その結果、高脂肪食摂取を施したトランスジェニックマウス(同腹子雌)(n=3)の場合は、同様に高脂肪食摂取を施した16週齢野生型雌(n=3)の場合と比較して血中コレステロール量が顕著に高く、その差異は約30%である(図3参照)。
実施例6 (トランスジェニックマウスにおける各種遺伝子の発現解析)
野生型マウスとトランスジェニックマウスとの両マウスの各々の肝臓からのRNAの抽出は、市販のTRIZOL試薬(インビトロジェン社製)を用いて、当該試薬に添付されたプロトコールに従って実施された。抽出された全RNAを鋳型としてオリゴdTプライマー又はランダムプライマーと逆転写酵素(RNaseH- SuperscriptII Reverse Transcriptase (インビトロジェン社製))とを用いて、42℃で1時間反応させた後、次いで99 ℃で5分間加熱して逆転写酵素を失活させることにより、cDNAを合成した。
次に、合成されたcDNAを鋳型にして、各種遺伝子の発現量をリアルタイムPCR法により定量した。リアルタイムPCRは、Universal PCR Master Mix(Applied BioSystems)を用いて、当該キットに添付されるプロトコールに従って実施された。特異的に増幅させるプライマーセット各50 pmolとTaqManプローブ、外来から導入されたヒトLXRα変異体5A遺伝子(配列番号11、12及び13)、CYP7A1遺伝子(配列番号14、15及び16)上記のようにして合成されたcDNA 1 μlとを鋳型に用いて、リアルタイムPCRを実施した。また、同じ鋳型cDNAを用いて、G3PDHのmRNA量も測定した。
図4から明らかなように、ヒトLXRα変異体5A遺伝子の発現は、トランスジェニックマウスの肝臓においてのみ確認された。一方、コレステロール代謝経路の律速酵素であるCYP7A1遺伝子(LXRαの標的遺伝子)の発現は、トランスジェニックマウスの肝臓では、野生型マウスと比較して有意に低下していた。これらの結果から、ヒトLXRα変異体5Aタンパク質は、肝臓においてLXRαの機能を抑制し、かつコレステロール代謝能を低下させていることが明らかとなった。
本発明により、新しいタイプの糖尿病及び肥満モデル動物となり得るトランスジェニックマウス等を提供することが可能となる。当該トランスジェニックマウスは、肥満を伴う疾患等に対する医薬品・食品等の開発等の分野において有用である。
図1は、pALBe/p−hLXRα5A−SV40PolyAの制限酵素地図を示す図である。 図2は、野生型マウス及びトランスジェニックマウス(いずれも8週齢、雌、n=3)に高脂肪食を2ヶ月間摂取させたときの体重変化(○:野生型、■:トランスジェニック)を示す図である。 図3は、野生型マウス及びトランスジェニックマウス(いずれも8週齢、雌、n=3)に高脂肪食を2ヶ月間摂取させた後の血中コレステロール量の測定結果を示す図である。 図4は、野生型マウス及びトランスジェニックマウス(いずれも8週齢、雌、n=3)に高脂肪食を2ヶ月間摂取させたときの肝臓におけるヒトLXRα変異体5A遺伝子の発現解析(マウスCYP7A1遺伝子の発現解析を含む)の結果を示す図である。
配列番号9
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号10
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号11
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号12
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号13
TaqMan PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプローブ
配列番号14
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号15
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号16
TaqMan PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプローブ

Claims (18)

  1. プロモーター、応答エレメント及びエンハンサーエレメントからなるエレメント群から選択される少なくとも1つ以上のエレメントが機能可能なように結合されてなる、ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォームをコードするポリヌクレオチドを含み、かつ、当該ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォームが肝臓X受容体α遺伝子のエクソン5にコードされるアミノ酸配列を少なくとも有する肝臓X受容体αスプライシング変異体タンパク質であることを特徴とする核酸構築物。
  2. ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォームが、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する肝臓X受容体αスプライシング変異体タンパク質であることを特徴とする請求項1記載の核酸構築物。
    (1)配列番号1で示されるアミノ酸配列
    (2)配列番号1で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列
    (3)配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して、95%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列
  3. 前記エレメントが、肝臓特異的プロモーターであることを特徴とする請求項1又は2記載の核酸構築物。
  4. 前記エレメントが、肝臓特異的プロモーター及びそれに対するエンハンサーエレメントであることを特徴とする請求項1又は2記載の核酸構築物。
  5. 前記エレメントが、マウス由来アルブミン遺伝子のプロモーター及びそれに対するエンハンサーであることを特徴とする請求項1又は2記載の核酸構築物。
  6. ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォームを発現する非ヒト動物又はその一部の製造方法であり、請求項1〜5のいずれか一つの請求項記載の核酸構築物を非ヒト動物又はその一部に導入する工程を有することを特徴とする製造方法。
  7. ヒト由来の肝臓X受容体αのアイソフォームを発現する非ヒト動物又はその一部の製造方法であり、請求項1〜5のいずれか一つの請求項記載の核酸構築物を非ヒト動物の染色体に組み込む工程を有することを特徴とする製造方法。
  8. 請求項1〜5のいずれか一つの請求項記載の核酸構築物を有することを特徴とする非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物又はそれらの一部。
  9. 請求項1〜5のいずれか一つの請求項記載の核酸構築物を有することを特徴とする非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物。
  10. 請求項6又は7記載の製造方法により製造されてなることを特徴とする非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物又はそれらの一部。
  11. 請求項6又は7記載の製造方法により製造されてなることを特徴とする非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物。
  12. 請求項9又は11記載の非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物と、前記非ヒト動物と同種でありかつ他の糖尿病若しくは肥満モデルである非ヒト動物との交配により作出されてなることを特徴とする非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物又はそれらの一部。
  13. 請求項9又は11記載の非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物と、前記非ヒト動物と同種でありかつ他の糖尿病若しくは肥満モデルである非ヒト動物との交配により作出されてなることを特徴とする非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物。
  14. 物質が有する抗肥満能力の検定方法であって、
    (1)請求項9、11又は13記載の非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物、又は、請求項8、10又は12記載の非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物又はそれらの一部に被験物質を接触させる第一工程、
    (2)前記被験物質を接触させた非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物又はそれらの一部におけるヒトLXRα変異体タンパク質の発現量又は当該量に相関関係を有する指標値を測定し、対照と比較する第二工程、
    (3)第二工程における比較結果に基づき、被験物質の抗肥満能力を評価する第三工程
    を有することを特徴とする方法。
  15. 物質が有する抗肥満能力の検定方法であって、
    請求項9、11又は13記載の非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物に被験物質を投与し、当該非ヒト動物の血中コレステロール量の変動有無若しくはその程度を測定し、当該測定結果に基づき前記被験物質が有する抗肥満能力を評価する工程を有することを特徴とする方法。
  16. 物質が有する抗肥満能力の検定方法であって、
    請求項8、10又は12記載の非ヒト動物の個体若しくはその子孫動物又はそれらの一部に被験物質を接触させ、前記被験物質を接触させた非ヒト動物又はその一部における肝臓X受容体α遺伝子のエクソン5にコードされるアミノ酸配列を少なくとも有する肝臓X受容体αスプライシング変異体タンパク質の発現量又は当該量に相関関係を有する指標値の変動有無若しくはその程度を測定し、当該測定結果に基づき前記被験物質が有する抗肥満能力を評価する工程を有することを特徴とする方法。
  17. 抗肥満能力を有する物質の探索方法であって、
    請求項14、15又は16記載の検定方法により評価された抗肥満能力に基づき、抗肥満能力を有する被験物質を選抜することを特徴とする探索方法。
  18. 請求項17記載の探索方法により選抜された抗肥満能力を有する物質を有効成分として含有することを特徴とする抗肥満薬。
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