JP2006338953A - 有機積層膜識別化支援方法および有機積層膜検査方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 複数種類の有機化合物層を積層してなる有機積層膜において、各有機化合物層の識別を可能とする有機積層膜識別化支援方法を提供する。
【解決手段】 検査試料2を透過した非弾性散乱電子Es2のうち、所定のエネルギー範囲のエネルギー損失が生じた損失電子を選択的に検出する。この損失電子の信号強度に基づいて、各有機化合物層511〜515における信号強度分布Ioutを作成する。そして、この信号強度分布Ioutを用いて有機積層膜31の検査を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】 検査試料2を透過した非弾性散乱電子Es2のうち、所定のエネルギー範囲のエネルギー損失が生じた損失電子を選択的に検出する。この損失電子の信号強度に基づいて、各有機化合物層511〜515における信号強度分布Ioutを作成する。そして、この信号強度分布Ioutを用いて有機積層膜31の検査を行う。
【選択図】 図1
Description
本発明は、複数種類の有機化合物層を積層してなる有機積層膜に適用される有機積層膜識別化支援方法および有機積層膜検査方法に関する。
近年、有機EL(Electroluminescence)素子を用いた有機EL表示装置が、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)に代わる表示装置として注目されている。この有機EL素子は、蛍光性を有する有機積層膜の両面に電極(正極および負極)が形成された構造を有している。また、有機積層膜は、互いに化学分子構造の異なる複数種類の有機化合物層(例えば、電子注入層、発光層および正孔輸送層など)から構成され、総称して有機EL層と呼ばれている(例えば、特許文献1,2)。
これらの電極間に電圧を印加すると、有機積層膜から光が発せられる。具体的には、電極間に電圧を印加すると、正極および負極からそれぞれ正負の電荷が注入され、生じた電場により正負の電荷がそれぞれ薄膜中を移動し、再結合する。そしてこの再結合の際に放出されるエネルギーが、蛍光分子の一重項励起状態(分子励起子)の形成に消費され、その発光量子効率の割合だけ、外部に光が放出されるようになっている。なお、このようにして光が放出された後は、エネルギーは再び基底状態へ戻るようになっている。
また、このような有機積層膜を基板上に形成する方法としては、例えば上記特許文献2に開示されているように、膜形成物質を収容した坩堝を成膜装置における真空蒸着室に配置すると共に、基板を一定距離離した状態で坩堝に対面させ、その状態で、坩堝内の膜形成物質を加熱し、膜形成物質の粒子を基板に向けて飛ばし、これにより膜形成物質を基板に堆積させ、有機積層膜を形成する方法が挙げられる。なお、この他にも例えば特許文献3には、インクジェット方式を用いることにより、有機積層膜を形成および配列する方法が提案されている。
ところで、このような有機積層膜を有する有機EL素子を製造する際には、配列形成された各画素(発光素子)の発光特性(輝度、色純度、発光効率、発光量、および耐久性など)を均一にすることが重要であり、このことは有機EL表示装置の製造歩留まりにも大きく影響する。そこで、このような発光特性を均一にするには、各有機化合物層を均一かつ平坦に形成することが必要であり、従来から種々の製造方法に関する提案がなされている(例えば、特許文献4,5)。
しかしながら、各有機化合物層を均一かつ平坦に形成するには、上記のような製造方法に加えて、実際にそのように形成されているかどうかを確実に検査することが不可欠である。そのような検査を正確に行うことができないと、結局歩留まりを悪化させてしまうことになるからである。
ここで、積層膜の膜厚均一性や平坦性を検査する手法としては、分光エリプソメータなどの光学的な手法や、X線反射率膜厚測定、触針式段差・表面形状測定装置などによる手法が挙げられる。しかし、膜膜の積層構造を2次元的に、かつ特定の微小箇所をナノメートル・スケールにて高精度に評価する手法としては、透過電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscopy)を用いるほかない。
ところが、このTEMを用いて、例えば上記有機EL素子の有機EL層のように、化学分子構造が異なる複数種類の有機化合物層から構成された有機積層膜を観察した場合、各有機化合物層を識別することができないという問題があった。これは、TEM像におけるコントラスト生成の主要因としては、材料の違い(主に原子番号の違い)に起因する散乱コントラストや、結晶構造の違いに起因する回折コントラストが挙げられるのだが、有機化合物層の場合、その主成分のほとんどが水素(H)、炭素(C)、窒素(N)または酸素(O)のみから構成されており、また、その構造がアモルファス状態であることから、互いに分子構造が異なる有機化合物層同士であってもそのコントラスト差がつかないのである。
このように従来の技術では、複数種類の有機化合物層を積層してなる有機積層膜において、各有機化合物層を識別するのが困難であった。よって、各有機化合物層に対する検査を行うのも困難であった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、複数種類の有機化合物層を積層してなる有機積層膜において、各有機化合物層の識別を可能とする有機積層膜識別化支援方法を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、上記有機積層膜において、各有機化合物層を識別して検査することを可能とする有機積層膜検査方法を提供することにある。
本発明の有機積層膜識別化支援方法は、複数種類の有機化合物層を積層してなる有機積層膜において各有機化合物層の識別化を支援するための方法であって、この有機積層膜を含むように作製された検査試料に対して電子線を入射し、この検査試料へ入射して透過した透過電子のうち、所定のエネルギー範囲のエネルギー損失が生じた損失電子を選択的に検出し、この検出された損失電子の信号強度に基づいて各有機化合物層における信号強度分布を作成し、この作成された信号強度分布を出力するようにしたものである。
本発明の有機積層膜検査方法は、複数種類の有機化合物層を積層してなる有機積層膜の検査方法であって、この有機積層膜を含むように作製された検査試料に対して電子線を入射し、この検査試料へ入射して透過した透過電子のうち、所定のエネルギー範囲のエネルギー損失が生じた損失電子を選択的に検出し、この検出された前記損失電子の信号強度に基づいて各有機化合物層における信号強度分布を作成し、この作成された信号強度分布に基づいて、有機積層膜の検査を行うようにしたものである。
本発明の有機積層膜識別化支援方法および有機積層膜検査方法では、有機積層膜から作製された検査試料に対して電子線が入射され、そのうちの一部の電子が検査試料を透過する。このような透過電子のうち、所定のエネルギー範囲のエネルギー損失が生じた損失電子が選択的に検出され、この損失電子の信号強度に基づいて、各有機化合物層における信号強度分布が作成される。
本発明の有機積層膜識別化支援方法によれば、検査試料を透過した透過電子のうち、所定のエネルギー範囲のエネルギー損失が生じた損失電子を選択的に検出すると共に、この損失電子の信号強度に基づいて各有機化合物層における信号強度分布を作成し、その内容を出力するようにしたので、この信号強度分布の出力内容を用いて各有機化合物層を識別することが可能となる。
また、本発明の有機積層膜検査方法によれば、検査試料を透過した透過電子のうち、所定のエネルギー範囲のエネルギー損失が生じた損失電子を選択的に検出すると共に、この損失電子の信号強度に基づいて各有機化合物層における信号強度分布を作成し、この信号強度分布を用いて有機積層膜の検査を行うようにしたので、各有機化合物層を識別して検査をすることが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に実施の形態という。)について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る有機積層膜検査装置の全体構成を表すものである。この有機積層膜検査装置1は、電子線発生部10と、入射レンズ11と、電磁プリズム12と、エネルギースリット14と、電磁レンズ15と、CCD(Charge Coupled Device)ディテクタ16と、信号強度分布作成部17と、検査部18とから構成されており、有機積層膜から作製された検査試料2の検査を行うものである。なお、本実施の形態に係る有機積層膜識別化支援方法および有機積層膜検査方法は、この本実施の形態に係る有機積層膜検査装置によって具現化されるものである。
検査試料2は、上記のように検査対象である有機積層膜を、例えばマイクロサンプリング法やリフトアウト法によって加工することで作製されたものである。また、このようにして検査試料2を作製する際の加工は、全て、例えばマイクロサンプリング機能を有するFIB(Focused Ion Beam)装置内、すなわち真空中で行うようにするのが好ましい。検査試料2に大気が長時間触れたり、加工の際に水分が触れたりするのを防ぎ、有機材料の変質に起因した検査精度の低下を防止するためである。
また、この有機積層膜(有機積層膜31)は、例えば図2に示した構成からなる有機膜積層素子3の一部をなしており、基板30上に形成されたものである。この有機積層膜31は、化学分子構造が異なる複数種類の有機化合物層311〜31n(n;2以上の自然数)から構成されている。
この有機膜積層素子3としては、具体的には、例えば図3に示したような構成からなる有機EL素子4が挙げられる。この有機EL素子4は、例えばガラス基板などからなる透明基板40上に、例えばITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウムスズ)などからなる正極電極42と、アルミニウム(Al)、金(Au)または銀(Ag)などからなる負極電極43とが形成され、さらにこれら正極電極42と負極電極43との間に有機積層膜41(有機EL層)が形成されたものである。また、この有機積層膜41は、正極電極42側から順に、正孔(ホール)を供給する正孔注入層411と、この正孔を輸送する正孔輸送層412と、発光層413と、電子を供給および輸送する電子輸送層414とから構成されている。このような構成の有機EL素子4では、発光層413で正孔と電子とが再結合することによって、例えば図3に示した出射光L1,L2ような発光がなされるようになっている。
図1の説明に戻り、電子線発生部10は、検査試料2に対して入射する入射電子線Eiを発生させるものである。
電磁プリズム12は、検査試料2を透過した電子(弾性散乱電子Es1および非弾性散乱電子Es2)のうち、非弾性散乱電子Es2からなる電子線を、その速度に応じて分光するものである。具体的には図1に示したように、この電磁プリズム12内では、低速度電子Es→中速度電子Em→高速度電子Efと、電子の速度が増加するのに従って電子線の曲率が大きくなるので、これにより各電子線が分光されるようになっている。
エネルギースリット14は、電磁プリズム12において分光された各電子線(例えば、低速度電子Es、中速度電子Emおよび高速度電子Ef)のうち、所定のエネルギー範囲の損失エネルギーを有する電子(損失電子)のみを選択的に通過させるためのものである。なお、この損失電子についての詳細は、後述する。
電磁レンズ15は、エネルギースリット14を通過した損失電子の電子線を結像するためのレンズである。また、CCDディテクタ16は、このようにして結像された損失電子の電子線を検出するためのものである。
信号強度分布作成部17は、CCDディテクタ16によって検出された損失電子の検出データDout(信号強度データ)に基づいて、検査試料2の各有機化合物層311〜31nにおける信号強度分布Ioutを作成する部分である。また、出力部18は、この信号強度分布作成部17によって作成された信号強度分布Ioutの内容を出力する部分である。出力方法としては種々のものを適用することができ、この信号強度分布Ioutの内容を、例えばディスプレイ上に表示したり、紙に印刷して出力したり、記録媒体上に記憶したりすることが挙げられる。
また、検査部19は、この信号強度分布作成部17によって作成された信号強度分布Ioutに基づいて、検査試料2における有機積層膜31(具体的には、各有機化合物層311〜31n)の検査を行う部分である。なお、これら信号強度分布作成部17、出力部18および検査部19がなす処理の詳細については、後述する。
このようにして、本実施の形態の有機積層膜検査装置1では、電子線発生部10から入射電子線Eiが供給され、複数種類の有機化合物層311〜31nからなる有機積層膜31を有する検査試料2へ入射する。この検査試料2への入射電子線Eiの電子のうち、弾性散乱電子Es1および非弾性散乱電子Es2は検査試料2を透過し、そのうち非弾性散乱電子Es2は、入射レンズ11を介して電磁プリズム12へ入射する。電磁プリズム12では、このような電子からなる電子線が速度に応じて分光され、分光された各電子線は、エネルギースリット14へ到達する。このエネルギースリット14では、所定のエネルギー範囲の損失エネルギーを有する損失電子のみが選択的に通過し、通過した電子線は、電磁レンズ15で結像され、CCDディテクタ16において検出される。そして信号強度分布生成部17では、検出された損失電子の検出データDout(信号強度データ)に基づいて各有機化合物層311〜31nにおける信号強度分布Ioutが作成され、その内容が出力部18へ出力されると共に、検査部19において、この信号強度分布Ioutを利用した有機積層膜31の検査が行われるようになっている。
次に、図4〜図6を参照して、このような構成の有機積層膜検査装置1において、信号強度分布Ioutを作成する処理の詳細について説明する。
まず、図4を参照して、有機積層膜31での損失エネルギーと損失電子の電子線強度との関係について説明する。図4は、これら有機積層膜31での損失エネルギーと損失電子の電子線強度との関係(電子エネルギー損失スペクトル)を波形特性図で表したものであり、横軸が損失エネルギー(eV)を、縦軸が電子線強度(任意単位)を、それぞれ表している。なお、図中の符号Eで示した損失エネルギーよりも高エネルギー側の波形は、縦軸(電子線強度)のスケールを拡大したものとなっている。
この図において、損失エネルギー=0eVの位置には、電子線強度が大きくシャープなピークPzが現れている。このピークPzは、電子エネルギーを全く損失しない電子(例えば、図1に示した弾性散乱電子Es1)によるものであり、ゼロロス(Zero loss)と呼ばれる。また、このゼロロスPzの高エネルギー側(例えば、10〜30eV程度の位置)には、価電子の集団励起によって生じたブロードなピークが存在し、プラズモンロス(Plasmon loss)Ppと呼ばれる。さらに、このプラズモンロスPpの高エネルギー側(例えば、図中のE0=数百eV程度)には、内殻電子の励起によって生じたピークが存在し、コアロスPc(Core loss)と呼ばれる。
ここで、これらプラズモンロスPpおよびコアロスPcは、各元素に固有の値となっており、下記のようにこれを利用して、信号強度分布Ioutを作成するようになっている。
次に、図5および図6を参照して、図4に示したような電子エネルギー損失スペクトルを有する検査試料2の有機積層膜31において、信号強度分布Ioutを作成する方法の詳細について説明する。
まず、図4に示したような電子エネルギー損失スペクトルにおいて、前述のように、所定のエネルギー範囲の損失エネルギーのみを選択的に検出するようにする。具体的には、特定の元素(例えば、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)など)における内殻電子の励起によってエネルギー損失の生じた損失電子、すなわち上記したコアロスPcの領域の損失電子のみを選択的に検出するようにする。なお、このコアロスPcの領域の損失電子は、本発明における「第1の損失電子」の一具体例に対応する。
ただし、図4〜図6に示したように、電子エネルギー損失スペクトルには、制動放射などに起因した指数関数的に減衰する連続スペクトル(Ib=C・E-r)のバックグラウンドが存在している。したがって、得られた電子エネルギー損失スペクトルから正味の信号だけの信号強度分布像を得るためには、画像演算により、バックグラウンドを除去しなければならない。このようなバックグラウンドを除去する方法としては、3window法とJump Ratio法とが挙げられる。
図5は、3window法によるバックグランド除去方法を用いて、信号強度分布を生成する方法について表したものである。
この3window法では、コアロスPcよりも低エネルギー側において、損失エネルギー値E11を中心とするサイト幅ΔE11内のエネルギー領域における信号強度I11による分布像(プリエッジ像(Pre edge像)D11)、および損失エネルギー値E12を中心とするサイト幅ΔE12内のエネルギー領域における信号強度I12による分布像(プリエッジ像D12)を生成すると共に、コアロスPcにおいて、損失エネルギー値E13を中心とするサイト幅ΔE13内のエネルギー領域における信号強度I13による分布像(ポストエッジ像(Post edge像)D13)を生成する。そしてこれら2つのプリエッジ像D11,D12から、Ib=C・E-rという演算に従ってバックグランド強度Ibをフィッティングして求めるようになっている。よって、このようにして求めたバックグラウンド成分(バックグラウンド強度Ib)をポストエッジ像D13から差し引くことにより、正味の信号だけの信号強度分布像を得ることができる。
また、図6は、Jump Ratio法によるバックグランド除去方法を用いて、信号強度分布を生成する方法について表したものである。
このJump Ratio法では、コアロスPcよりも低エネルギー側において、損失エネルギー値E21を中心とするサイト幅ΔE21内のエネルギー領域における信号強度I21による分布像(プリエッジ像D21)を生成すると共に、コアロスPcにおいて、損失エネルギー値E22を中心とするサイト幅ΔE22内のエネルギー領域における信号強度I22による分布像(ポストエッジ像D22)を生成する。そしてこれらプリエッジ像D21およびポストエッジ像D22から、Is=I21/I22という演算に従って正味の信号強度Isを求めるようになっている。このようにして、正味の信号だけの信号強度分布像を得ることができる。
次に、図7〜図11を参照して、以上のようにして作成された信号強度分布に基づいて、検査試料2の有機積層膜31を検査する方法の詳細について説明する。
ここで、図7は、実施例に係る有機膜積層素子5の構成を断面図で表したものである。この有機膜積層素子5は、基板50上に5層の有機化合物層511〜515からなる有機積層膜51が形成され、さらにその上に金属層53が形成されたものである。また、図8は、本実施例における有機積層膜検査装置1によって生成された有機膜積層素子5の検査試料2における信号強度分布像を示すTEM写真であり、図9は比較例として、従来の方法によって得られたTEM写真である。
図8に示したように、本実施例における有機積層膜検査装置1によるTEM写真では、有機積層膜51における各有機化合物層511〜515が、コントラスト差によって明確に識別できるようになっている。これは、特定元素の内殻電子の励起によってエネルギー損失を生じた非弾性散乱電子Es2の数の差に起因したものである。
一方、図9に示したように、比較例におけるTEM写真では、有機積層膜51における各有機化合物層511〜515が一様なコントラストとなっており、識別できない。
したがって、本実施例における有機積層膜検査装置1によれば、有機積層膜51における各有機化合物層511〜515を明確に識別できることが分かる。
よって、図8に示したように出力されたTEM写真によって、各有機化合物層511〜515は、コントラストの異なる帯状の像として捉えることができるため、目視で各有機化合物層511〜515の膜厚を求めることもできる。また、図10に示したように帯形状の幅(図7中の各z座標z0〜z5の幅)を測定することにより各有機化合物層511〜515の膜厚を求めることもでき、図7に示したように同一膜の異なる複数位置(例えば、Px1〜Px4)の膜厚を調べれば、各有機化合物層511〜515の膜厚均一性について検査することもできる。また、図11に示したように帯形状の一端の凹凸幅ΔZを測定することにより、各有機化合物層511〜515の平坦性を検査することもでき、帯形状同士の境界の幅を求めることにより、各有機化合物層511〜515の界面幅を求めることもできる。
以上のように、本実施の形態によれば、検査試料2を透過した非弾性散乱電子Es2のうち、所定のエネルギー範囲のエネルギー損失が生じた損失電子を選択的に検出すると共に、この損失電子の信号強度に基づいて各有機化合物層511〜515における信号強度分布Ioutを作成し、この信号強度分布Ioutを用いて有機積層膜31の検査を行うようにしたので、各有機化合物層511〜515を識別して検査をすることが可能となる。
また、膜厚均一性や平坦性を高精度で検査できるので、有機膜積層素子の特性も均一化し、製造歩留まりを向上させることができる。よって、例えば有機EL素子の場合、発光特性を均一化することができる。
また、バックグラウンド成分を除去してから信号強度分布を作成するようにしたので、より精度のよい検査を行うことが可能となる。
さらに、真空中での加工によって検査試料2を作製するようにしたので、有機化合物の組成などを変化させることなく、検査することが可能となる。
なお、本実施の形態では、特定の元素における内殻電子の励起によってエネルギー損失の生じた損失電子、すなわち上記したコアロスPcの領域の損失電子のみを選択的に検出するの場合について説明してきたが、例えば図12に示したように、価電子の集団励起によってエネルギー損失の生じた損失電子(第2の損失電子)のみを選択的に検出するようにしてもよい。具体的には、プラズモンロスPpが発生するエネルギー領域(サイト幅ΔE3)の損失電子のみを、選択的に検出するようにする。このように構成した場合でも、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、例えば図13に示したように、炭素元素の内殻電子の励起に起因する吸収端よりも低いエネルギー領域のエネルギー損失が生じた損失電子(第3の損失電子)のみを選択的に検出するようにしてもよい。具体的には、炭素元素のコアロスPcが発生するエネルギー領域よりも低いエネルギー領域(サイト幅ΔE4)の損失電子のみを、選択的に検出するようにする。このように構成した場合でも、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態では、各有機化合物層511〜515の膜厚や膜厚均一性、平坦性などを検査する場合について説明してきたが、他の検査に適用することも可能である。
また、このような検査を行うのは、有機積層膜31を形成後であればどの工程において行ってもよく、さらに検査対象とする有機化合物層511〜515がすでに形成されているのであれば、全ての有機化合物層が形成される前でもよい。
1…有機積層膜検査装置、10…電子線発生部、11…入射レンズ、12…電磁プリズム、14…エネルギースリット、15…電磁レンズ、16…CCDディテクタ、17…信号強度分布作成部、18…出力部、19…検査部、2…検査試料、3,5…有機膜積層素子、30,50…基板、31,41,51…有機膜積層層、311〜31n,511〜515…有機化合物層、4…有機EL素子、40…透明基板、411…正孔注入層、412…正孔輸送層、413…発光層、414…電子輸送層、42…正極電極、43…負極電極、53…金属層、Ei…入射電子線、Es1…弾性散乱電子、Es2…非弾性散乱電子、Ef…高速度電子、Em…中速度電子、Es…低速度電子、Dout…検出データ(信号強度データ)、Iout…信号強度分布、L1,L2…出射光、Pz…ゼロロス、Pp…プラズモンロス、Pc…コアロス、E11〜E13,E21,E22…損失エネルギー値、ΔE11〜ΔE13,ΔE21,ΔE22,ΔE3,ΔE4…サイト幅、I11〜I13,I21,I22…電子線強度、D11,D12,D21…プリエッジ像、D13,D22…ポストエッジ像、D1,D2…信号強度分布像、z0〜z5…z座標、ΔZ…凹凸幅、Px1〜Px4…測定点。
Claims (11)
- 複数種類の有機化合物層を積層してなる有機積層膜において各有機化合物層の識別化を支援するための方法であって、
前記有機積層膜を含むように作製された検査試料に対して電子線を入射し、
前記検査試料へ入射して透過した透過電子のうち、所定のエネルギー範囲のエネルギー損失が生じた損失電子を選択的に検出し、
検出された前記損失電子の信号強度に基づいて各有機化合物層における信号強度分布を作成し、
作成された前記信号強度分布を出力する
ことを特徴とする有機積層膜識別化支援方法。 - 前記損失電子のうち、前記有機積層膜に含まれる特定元素における内殻電子の励起によって前記エネルギー損失が生じた第1の損失電子を選択的に検出し、
前記第1の損失電子の信号強度に基づいて、前記信号強度分布を作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の有機積層膜識別化支援方法。 - 前記損失電子のうち、価電子の集団励起によって前記エネルギー損失が生じた第2の損失電子を選択的に検出し、
前記第2の損失電子の信号強度に基づいて、前記信号強度分布を作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の有機積層膜識別化支援方法。 - 前記損失電子のうち、炭素元素の内殻電子の励起に起因する吸収端よりも低いエネルギー領域のエネルギー損失が生じた第3の損失電子を選択的に検出し、
前記第3の損失電子の信号強度に基づいて、前記信号強度分布を作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の有機積層膜識別化支援方法。 - 前記損失電子の信号強度に含まれるバックグラウンド成分を除去したうえで、前記信号強度分布を作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の有機積層膜識別化支援方法。 - 前記検査試料は、前記有機積層膜を真空中で加工することにより作製されたものである
ことを特徴とする請求項1に記載の有機積層膜識別化支援方法。 - 前記有機積層膜が、有機EL素子における有機EL層として機能するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の有機積層膜識別化支援方法。 - 複数種類の有機化合物層を積層してなる有機積層膜の検査方法であって、
前記有機積層膜を含むように作製された検査試料に対して電子線を入射し、
前記検査試料へ入射して透過した透過電子のうち、所定のエネルギー範囲のエネルギー損失が生じた損失電子を選択的に検出し、
検出された前記損失電子の信号強度に基づいて各有機化合物層における信号強度分布を作成し、
作成された前記信号強度分布に基づいて、前記有機積層膜の検査を行う
ことを特徴とする有機積層膜検査方法。 - 前記信号強度分布に基づいて各有機化合物層の膜厚をそれぞれ測定し、
各有機化合物層の膜厚測定結果を用いて、前記有機積層膜の検査を行う
ことを特徴とする請求項8に記載の有機積層膜検査方法。 - 前記検査試料の複数の位置において各有機化合物層の膜厚をそれぞれ測定し、
これら複数の位置における膜厚測定結果を用いて、各有機化合物層の膜厚均一性を検査する
ことを特徴とする請求項9に記載の有機積層膜検査方法。 - 前記検査試料の複数の位置において各有機化合物層の膜厚をそれぞれ測定し、
これら複数の位置における膜厚測定結果を用いて、各有機化合物層の平坦性を検査する
ことを特徴とする請求項9に記載の有機積層膜検査方法。
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JP2005160223A JP2006338953A (ja) | 2005-05-31 | 2005-05-31 | 有機積層膜識別化支援方法および有機積層膜検査方法 |
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JP2004279407A (ja) * | 2003-02-25 | 2004-10-07 | Sharp Corp | 有機材料の微細領域分析方法および微細領域分析装置 |
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