しかしながら、特許文献1記載の液晶表示装置では、反射時の明るさを稼ぐための高透過率のカラーフィルタを採用した場合は、反射表示時はカラーフィルタを2回通過するため表示色彩度は高くなるものの、透過表示時はカラーフィルタを1回しか通過しないので表示色彩度が大きく低下するといった問題があり、また、透過表示時の表示色彩度を上げようと高彩度(低透過率)のカラーフィルタを採用すると、反射時の明るさが大きく低下し、視認性を著しく低下させるといった問題があった。
さらに、特許文献2記載の液晶表示素子では、二つの反射膜を用意することが必要であり、さらに、反射表示時には、後側基板内面に設けられた反射膜と、背面側に設けられた半透過反射板による2つの反射光を利用するので、後側基板の存在による視差の影響を受けて色純度が低下する等の問題があった。
よって本発明は、反射透過両用型カラー液晶表示装置、特に透過表示重視の反射透過両用型カラー液晶表示装置において、製造工程数を増やすことなく、反射表示時の明るさコントラストを維持したまま透過表示時の表示色彩度を向上させることにある。
上記課題を解決するために、本発明の反射透過両用型カラー液晶表示装置は、互いに対向する第1基板および第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に介在する液晶層と、前記液晶層側の前記第2基板上に形成された反射膜と、前記反射膜上に形成されたカラーフィルタとを備え、前記第1基板側から入射した光を前記反射膜によって前記第1基板側へ反射させる反射領域と、前記第2基板側から入射した光を前記第1基板側へ透過させる透過領域とを有する画素領域がマトリクス状に複数形成された反射透過両用型カラー液晶表示装置であって、前記カラーフィルタは、前記反射領域内に開口部を有する。
すなわち、本発明の反射透過両用型カラー液晶表示装置(以下、単に「液晶表示装置」ともいう。)は、カラーフィルタの開口部が、1画素中の反射領域内に位置するように設けられ、透過領域に重ならないように設けられている。
本発明の液晶表示装置では、液晶表示装置背面に設けた光源を利用する透過表示時には、透過領域を透過した光が、カラーフィルタを通過し出射されることで、表示色彩度を満足する明るい表示が得られる。このときに、光源の輝度、第2基板上の透過領域の面積及び形状と、カラーフィルタの彩度や透過率または膜厚を調整することで所望の特性が得られるのである。
透過領域は、通常は、反射膜が形成されていない領域であるが、反射膜の膜厚を薄くして、液晶表示装置背面に設けた光源からの光が透過率90%以上、好ましくは95%以上で透過する領域も透過領域に含められる。また、反射領域は、第1基板側(観察者側)からの光が全反射(反射率100%)する領域だけでなく、第1基板側からの光の一部が透過し、反射率90%以上、好ましくは95%以上で反射する領域も含む。
外光を利用する反射表示時には、液晶表示装置前方(観察者側)から入射した光が、カラーフィルタあるいはカラーフィルタの開口部を通り、反射膜の反射領域部で反射され、再び、カラーフィルタあるいはカラーフィルタの開口部を通過し出射されるので、着色のない出射光と着色された出射光の合成出射光となり、明るい表示が得られる。このときに、カラーフィルタの特性、カラーフィルタの開口部の面積及び形状を適時調整することにより、出射光の明るさや彩度を調整することが可能になる。また、カラーフィルタの開口部を大きくすることで、色純度の高いカラーフィルタを採用することも可能となるのである。
本発明の液晶表示装置は、前記カラーフィルタが、前記反射領域内に複数の開口部を有することが好ましい。これにより、反射表示時において、着色のない出射光が一画素中に分散されて第1基板側へ出射されるので、一画素中の明るい領域が分散され、視認性が向上する。
本発明の液晶表示装置は、前記反射膜が、前記液晶層側の表面が凹凸形状を有する拡散反射膜であることが好ましい。これにより、反射表示時において、反射膜による反射光が拡散されてカラーフィルタを透過し、第1基板側へ出射されるので、合成出射光の明るさや彩度が一画素中で均質化され、視認性が向上する。
本発明の液晶表示装置は、前記画素領域に対する前記透過領域の面積比は10%以上50%以下であり、前記反射領域に対する、前記開口部が形成された領域の面積比は5%以上30%以下であることが好ましい。これにより、反射表示時および透過表示時において実使用を満足できる反射透過両用型カラー液晶表示装置が実現できる。詳細には、反射膜が形成されていない領域(透過領域)の面積比率を10%以上とすることで、透過表示時の明るさが確保でき、50%以下とすることで、反射表示時における明るさが確保される。一方、カラーフィルタの開口部比率を5%以上とすることで、反射表示時における明るさが確保され、30%以下とすることで、反射表示時の色面積が確保され、色差判別が可能となるのである。ここで、カラーフィルタの開口部比率は、反射表示時における評価を行うために、反射領域の面積との相対比率で表す。これはカラーフィルタの開口部の大きさは、反射表示に大きく影響するからである。
本明細書においては、表示の最小単位である「画素」に対応する液晶表示装置の領域を「画素領域」と呼ぶ。カラー液晶表示装置においては、R,G,Bの「画素」が1つの「絵素」に対応することとする。単純マトリクス型液晶表示装置においては、ストライプ状に設けられる列電極と、列電極に直交するように設けられる行電極とが互いに交差するそれぞれの領域が画素領域を規定する。また、アクティブマトリクス型液晶表示装置においては、画素電極と画素電極に対向する対向電極とが画素領域を規定する。なお、ブラックマトリクスが設けられる構成においては、厳密には、表示すべき状態に応じて電圧が印加される領域のうち、ブラックマトリクスの開口部に対応する領域が画素領域に対応することになる。
本発明の液晶表示装置は、前記カラーフィルタの開口部内に、透過率が90%以上である透明樹脂が充填されていることが好ましい。これにより、カラーフィルタの開口部の段差が解消されるので、カラーフィルタの開口部近傍における液晶分子の立ち上がりが均一になり、コントラスト(特に反射時のコントラスト)が向上するのである。カラーフィルタの表面には、カラーフィルタの表面の凹凸を平坦化するために、アクリル系樹脂などからなる平坦化膜が積層される。したがって、カラーフィルタの開口部が浅い場合には、平坦化膜により開口部が埋まる。しかし、カラーフィルタの開口部が深い場合には、開口部内に透明樹脂を充填しなければ、開口部における段差が平坦化膜では解消されず、段差が残ってしまう。特にSTN液晶においては、カラーフィルタの開口部による段差の存在により、画素内で液晶分子の立ち上がりが不均一となり、反射表示時のコントラストが低下するといった大きな問題が生じるおそれがある。
透明樹脂は、カラーフィルタよりも透過率が高ければよい。但し、透過表示時の明るさを確保するためには、透過率は高い方が良く、色調補正用の顔料等を透明樹脂に混入する場合でも、透過率90%以上、好ましくは95%以上を確保することが望ましい。
本発明の構成によれば、開口部を有する反射膜と、開口部を有するカラーフィルタとを、それぞれの開口部が1画素中の異なる領域に位置するように、一方の基板上に設けることで、本発明の液晶表示装置を、従来の工程を増やすことなく、得ることが可能になる。
さらに、本発明の液晶表示装置では、液晶表示装置背面に設けた光源を利用する透過表示時には、反射膜の開口部を透過した光が、カラーフィルタを通過し出射されることで、表示色彩度を満足する明るい表示が得られる。
外光を利用する反射表示時には、液晶表示装置前方から入射した光が、カラーフィルタあるいはカラーフィルタ開口部を通り、反射膜の反射領域部で反射され、再び、カラーフィルタあるいはカラーフィルタ開口部を通過し出射されるので、着色のない出射光と着色された出射光との合成出射光となり、明るい表示が得られる。
さらに、カラーフィルタの特性、カラーフィルタ開口部の面積及び形状を適時調整することにより、出射光の明るさや彩度を調整することが可能になることから、色純度の高いカラーフィルタを採用することも可能となる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態では、液晶表示装置として単純マトリクス駆動方式のSTN液晶表示装置を例にするが、本発明の反射透過両用型カラー液晶表示装置は、TFT(Thin Film Trasistor:薄膜トランジスタ)やMIM(Metal-Insulator-Metal )などのスイッチング素子を用いたアクティブマトリクス駆動方式のカラー液晶表示装置にも適用することができる。
図1は、本実施形態の反射透過両用型カラー液晶表示装置を模式的に示す図である。本実施形態の反射透過両用型カラー液晶表示装置は、観察者側(図1においては上側)から、上側偏光板1、第一位相差板2、第二位相差板3、上側基板4、透明表示用電極5a、配向膜7a、STN液晶層8、配向膜7b、透明表示用電極5b、オーバーコート層9、カラーフィルタ10、反射膜11、下側基板12、第三位相差板13、下側偏光板14、導光板151、バックライト161の順序で積層された構造を有する。なお、上側基板4と、下側基板12とは、シール樹脂6を介して貼り合わされて、STN液晶層8が形成される。
本実施形態の液晶表示装置には、上側基板4側から入射した光を反射膜11によって上側基板4側へ反射させる反射領域と、下側基板12側から入射した光を上側基板4側へ透過させる透過領域とを有する画素領域がマトリクス状に複数形成されている。
図2は、反射領域Reおよび透過領域Trとカラーフィルタの開口部との位置関係を示す、カラーフィルタ10および反射膜11の断面図である。ここでは、赤(R)緑(G)青(B)の画素それぞれに、反射領域Reおよび透過領域Trを有する画素領域が形成され、各画素のカラーフィルタ10には、開口部10aが複数設けられており、カラーフィルタ10のそれぞれの開口部10aは反射領域に設けられている。
本実施形態では、下側基板12の片面を覆う反射膜11に、フォトリソ法を用いて、透過用のスルーホール部11aを形成することによって、透過領域Trが形成されるので、透過領域Trは、反射膜11の開口部(光透過領域部)11aと表現することもできる。したがって、本実施形態の液晶表示装置は、一対の基板4,12間に液晶層8を狭持し、表示の単位となる画素領域に、カラーフィルタ10と、開口部(光透過領域部)11aを有する反射膜11が形成された反射透過両用型カラー液晶表示装置であって、前記開口部(光透過領域部)11a以外の反射膜11の領域に、カラーフィルタ10の開口部10aが設けられた反射透過両用型カラー液晶表示装置と表現することもできる。
図3は、本実施形態に用いられる反射膜11を示す平面図であり、赤(R)緑(G)青(B)の各画素領域における反射膜11を示している。反射膜11は、下側基板12上にアルミニウムを1000Å(100nm)蒸着して形成され、フォトリソ法を用いたアルミニウム膜のパターニングにより、透過用のスルーホール部11aが形成される。
本実施形態では、下側基板12上におけるスルーホール部11aの面積は、画素領域における下側基板12上の面積に対して、30%に設定されている。スルーホール部11aの面積比は、本実施形態に限定されず、10%以上50%以下にするのが好ましい。スルーホール部11aの面積比が10%未満では、透過光の利用が少なく透過表示時の画面が暗くなり、50%を超えると透過表示重視型であっても反射表示画面が暗く視認性に問題がでる。
開口部10aを有するカラーフィルタ10の製造には、例えば電着法を用いることができる。電着法によるカラーフィルタ10の製造工程の一例を説明する。反射膜11上に電着用ITO膜(電極)を形成する。フォトリソ法により、カラーフィルタ10の開口部10aの形成領域に対応する位置に、電着用ITO膜を厚み方向に貫通する開口部を形成する。電着用ITO膜上にレジストを形成した後、電着対象となる色の画素領域のレジストを除去する。電着用ITO膜に通電して、電着対象となる色のカラーフィルタ材料を露出した電着用ITO膜に電着させる。このとき、電着用ITO膜の開口部の領域にはカラーフィルタ材料が電着されないので、カラーフィルタ10に開口部10aが形成される。レジストを除去した後、新たなレジストを電着用ITO膜上に形成する。電着対象となる他色の画素領域のレジストを除去する。以下同様にして、他色のカラーフィルタ10を形成する。
本実施形態では、カラーフィルタ10の製造に電着法を用いているが、電着法以外に、顔料分散法、印刷法、染色法等のカラーフィルタの一般的な製造方法を用いて、開口部10aを有するカラーフィルタ10を作成してもよい。
図4は、反射膜11、電着用ITO膜およびカラーフィルタ10を示す平面図である。図4の左側は、一画素の平面図であり、反射膜11上に電着用ITO膜を蒸着、パターニングして、スリット状のITO膜除去部を複数形成した状態を示している。図4の中央は、電着用ITO膜上に赤(R)緑(G)青(B)の各画素のカラーフィルター(CF)を電着した状態を示している。図4の右側は、赤(R)緑(G)青(B)の各画素がマトリクス状に配列された状態を示している。図4R>4に示すように、本実施形態では、反射膜11のスルーホール部11aは、1画素領域の略中央部に形成されている。また、カラーフィルタ11の各画素には、列方向に延びる互いに平行な4本の開口部10aが、反射膜11のスルーホール部11aを挟んで、上下2段にそれぞれ形成されている。カラーフィルタ10が、反射領域Re内に複数の開口部10aを有するので、反射表示時において、着色のない出射光が一画素中に分散されて上側基板4側へ出射される。したがって、一画素中の明るい領域が分散され、視認性が向上する。
反射膜11およびカラーフィルタ10それぞれの最適な開口部面積の割合について説明する。以下、反射膜の開口部比率を“1画素領域の面積に対する反射膜開口部の面積比率”と、カラーフィルタの開口部比率を“1画素領域中の反射膜形成面積に対するカラーフィルタの開口部の面積比率”とそれぞれ定義する。なお、1画素、反射膜の開口部、カラーフィルタの開口部それぞれの面積は、それぞれの領域を基板面の法線方向から見たときの面積、言いかえれば基板面に平行な面内において規定される面積である。
1画素に対する反射膜開口部比率と反射部に対するカラーフィルタ開口部比率とをそれぞれ変化させた液晶表示装置を作成し、反射表示時および透過表示時の光学特性を測定した。結果を図5〜図7に示す。
図5は、カラーフィルタ開口部比率を変化させたときの反射表示時の色再現性を示すグラフであり、カラーフィルタ開口部比率と反射表示時の色面積との関係が示されている。色面積は、色再現性の指標となるものであり、次のように定義される。色面積が大きい程、色再現性に優れると言える。
色面積=RGB各色度座標を結んだ三角形の面積×1000図5に示す測定では、反射膜開口部比率が40%の反射膜を用い、カラーフィルタにはY値が40のものを用いている。
図6は、カラーフィルタ開口部比率を変化させたときの反射率を示すグラフである。図6に示す測定においても、図5の測定と同様に、反射膜開口部比率が40%の反射膜を用い、カラーフィルタにはY値が40のものを用いている。
図5および図6に示される測定結果から、カラーフィルタ開口部比率が増加するに従って、反射表示時の色面積が減少するのに対して、反射率は逆に増加することが判る。図5の測定結果から、反射時の色面積が4未満になると、R、G、Bの色度差が小さくなり、特に多色表示した場合、色差が判別し難くなる。したがって、ぼやけた表示となるので、実使用レベルでないことが判明した。よって、カラーフィルタ開口部比率の上限は、色面積が4となる30%とすることが好ましい。
反射表示時は外光を利用するので、反射時の表示品位は、使用するときの環境の明るさに左右される。晴天時の屋外等の非常に明るい環境の下では、反射率が1%程度でも十分認識可能であるが、モバイル機器等で最も使用頻度が高いと思われるオフィス環境下では、屋外に比較し暗いので、表示を認識するために最低限必要な反射率は4%程度と考えられる。図6の測定結果によれば、反射率が4%となるカラーフィルタ開口部比率は5%であるので、カラーフィルタ開口部比率の下限は5%が好ましい。
図7は、反射膜開口部比率を変化させたときの反射率及び透過率の変化を示すグラフである。図7に示す測定では、開口部比率が10%であり、Y値が40のカラーフィルタを用いた。透過率の下限は、バックランプの発光輝度レベル等に左右される。例えば、携帯電話用途の表示装置では、概ね1000cd/m2 の発光輝度が得られるバックランプが用いられる。オフィス環境下及びそれより暗い環境下では、透過時の輝度が10cd/m2 あれば十分認識可能である。したがって、携帯電話用途の表示装置では、反射率が1%程度あれば十分である。図7の結果によれば、反射率が1%となるのは、反射膜開口部比率が10%のときであるので、反射膜開口部比率の下限は10%が好ましい。反射率については、前述の通り、オフィス環境下での使用を前提とした場合、反射率は4%程度必要である。図7の結果によれば、反射率が4%となるのは、反射膜開口部比率が50%のときであるので、反射膜開口部比率の上限は50%が好ましい。
本実施形態の液晶表示装置は、カラーフィルタ10上にアクリル系樹脂のオーバーコート層9が形成されている。オーバーコート層9は、カラーフィルタ10の凹凸表面を平坦化して、液晶分子の立ち上がりを均一にするために形成される。一方の基板にカラーフィルタが設けられ、他方の基板に反射膜が設けられた液晶表示装置の場合、カラーフィルタおよび反射膜上にそれぞれオーバーコート層を形成する必要がある。これに対して、本実施形態の液晶表示装置は、反射膜11上にカラーフィルタ10が積層されているので、カラーフィルタ10上にのみオーバーコート層9を設ければ良く、製造プロセスが簡略化される。また、反射膜として拡散反射膜を用いた場合でも、表面の凹凸がオーバーコート層9により解消される。
図8は、拡散反射膜を有する下側基板を模式的に示す断面図である。拡散反射膜は、滑らかな凹凸形状の表面を有する、アクリル系樹脂などからなる透明樹脂層30と、透明樹脂層30上に積層された反射膜11とから構成される。透明樹脂層30は、例えば次の工程により製造される。下側基板12上に感光性樹脂膜を形成し、フォトリソ法により複数の開口を形成する。さらに加熱処理を施すと、熱だれ現象によって表面が変形し、開口部の角がとれてなだらかな凹凸状の表面となる。反射膜として拡散反射膜を用いることにより、反射表示時において、拡散反射膜による反射光が拡散されてカラーフィルタ10を透過し、上側基板4側へ出射されるので、合成出射光の明るさや彩度が一画素中で均質化され、視認性が向上する。なお、反射膜11を鏡面形成し、光散乱性物質を分散させた透明樹脂からなるオーバーコート膜を散乱層として反射膜11上に別途形成して、液晶表示装置に光拡散機能を付与しても良い。
カラーフィルタ10の膜厚が大きい場合、言いかえればカラーフィルタ10の開口部10aが深い場合、カラーフィルタ形成部と開口部10aとの段差が大きくなり、オーバーコート層9ではこの段差を解消できず、平坦化が不十分になることがある。特にSTN液晶層を用いた表示装置では、この段差の存在により、カラーフィルタ開口部10a近傍での液晶分子の立ち上がりが遅れ、画素内で液晶分子の立ち上がりが不均一となるので、反射表示時のコントラストが低下するといった問題が生じる。
図9は、カラーフィルタ部とカラーフィルタ開口部との段差と、反射表示時のコントラストとの関係を示すグラフである。カラーフィルタ部と開口部との段差の測定には、カラーフィルタ10上に成膜される各種膜の平坦性を考慮して、配向処理完(言いかえれば上下基板を貼り合わせる前)の基板を用い、触診計により測定をおこなった。また、色調補正用の顔料のみを添加した透過率95%のカラーフィルタ材料を用いて、カラーフィルタ10の開口部10aに透明樹脂を充填して、段差の調整を行った。
なお、開口部を有する電着用ITO膜を用いてカラーフィルタを形成した場合、カラーフィルタ10の開口部10aに透明樹脂を電着させることができないので、レジストダイレクト電着法を用いて開口部10aに透明樹脂を電着させる。レジストダイレクト電着法とは、電着用ITO上に塗布した感光性樹脂をパターニングして電着用ITOを部分的に露出させ、露出した部分に電着カラーフィルタを形成する方法である。この方法を用いて、RGBの各色のカラーフィルタと、開口部10a内の透明樹脂層とを形成することができる。
図9によれば、段差が小さくなるに従って(すなわち、段差がゼロに近づくに従って)、反射コントラストが向上することが判る。具体的には、カラーフィルタ開口部膜厚(すなわち、開口部20内に充填された透明樹脂層の膜厚)に対してカラーフィルタ膜厚が大きいと、カラーフィルタ開口部10a近傍における液晶分子の立ち上がりが遅れ、逆にカラーフィルタ膜厚に対してカラーフィルタ開口部膜厚が大きくなると、開口部10aにおける液晶分子の立ち上がりが早くなるので、結果的にいずれの場合にもコントラストが低下する。したがって、開口部10a内に充填する透明樹脂の膜厚は、カラーフィルタ形成部との段差が生じないように調整することが望ましい。
なお、本実施形態では、カラーフィルタ10の開口部10aは、カラーフィルタ10を厚み方向に貫通する貫通孔であるが、開口部10aにおける透過率を90%以上、好ましくは95%以上確保することができるならば、深さがカラーフィルタ10の膜厚よりも短い開口部でも良い。
本実施形態の液晶表示装置は、上側基板4および下側基板12のSTN液晶層8側に、それぞれ透明表示用電極5a,5bが形成されている。透明電極5a,5bは、上側基板4上と、下側基板12のオーバーコート層(平坦化層)9上とにITO(インジウム錫酸化物)をそれぞれ蒸着し、エッチングすることによりストライプ状に形成され、互いに交差する領域がマトリックス状の画素電極を形成する。画素の周囲を光吸収性の物質でブラックマトリクスを形成しても良く、これにより光を遮る効果が向上し高コントラスト化に寄与できる。透明表示用電極5a,5bの上に、ポリイミド樹脂を印刷により塗布し、焼成を行うことにより配向膜7a,7bを形成する。さらに、液晶分子のねじれ角が、240°ツイストとなるように、配向膜7a,7bにラビング処理を行う。
上下基板4,12をシール樹脂6で貼り合わせた後、複屈折Δnとピッチを調整した液晶材料を注入することによってSTN液晶層8を形成して、STN液晶セルを形成する。これに、それぞれが所望のdΔnを持つポリカーボネート延伸の第一位相差板2、第二位相差板3および第三位相差板13と、ニュートラルグレイの上側偏光板1及び下側偏光板14とを、各部材の光軸が液晶セルに対してそれぞれ所定の方向になるように貼り付ける。なお、dは位相差板の厚さである。さらに、観察者側に対して反対側に、導光板151およびバックライト161を設けて、液晶セルにバックライト光が入射されるようにする。
図10に、本実施形態における各光学素子の軸角度を示す。STN液晶層8の下側基板12側の配向方向15から上側基板4側の配向方向16までに液晶分子がねじれる角度を240°とする。時計回りを正とし、反時計回りを負としたとき、第二位相差板3の遅相軸17に対して液晶分子の上側配向方向16がなす角を120°、第一位相差板2の遅相軸18に対して第二位相差板の遅相軸17がなす角を40°、上側偏光板1の吸収軸19に対して第一位相差板2の遅相軸18がなす角を75°とする。また、下側基板12側の配向方向15に対して第三位相差板13の遅相軸20がなす角を50°、第三位相差板13の遅相軸20に対して下側偏光板14の吸収軸21がなす角を−40°とする。
各レターデーション値の設定は、STN液晶層8(800nm)、第一位相差板2(680nm)、第二位相差板3(180nm)、第三位相差板13(140nm)とし、反射時・透過時にノーマリーブラックモードとなる液晶表示装置を構成する。
本実施形態の液晶表示装置は、開口部11aを有する反射膜11と、開口部10aを有するカラーフィルタ10とが、それぞれの開口部11a,10aが1画素中の異なる領域に位置するように、下側基板12上に設けられている。これにより、本実施形態の液晶表示装置を、従来の工程を増やすことなく、得ることが可能になる(後述の比較例を参照)。
また、一方の基板にカラーフィルタが設けられ、他方の基板に反射膜が設けられた液晶表示装置の場合、カラーフィルタおよび反射膜上にそれぞれオーバーコート層を形成する必要がある。これに対して、本実施形態の液晶表示装置は、反射膜11上にカラーフィルタ10が積層されているので、カラーフィルタ10上にのみオーバーコート層9を設ければ良く、製造プロセスが簡略化される。
さらに、一方の基板にカラーフィルタが設けられ、他方の基板に反射膜が設けられた液晶表示装置を製造する場合、両基板を貼り合わせる際に、貼り合わせ精度が低いので、カラーフィルタおよび反射膜の双方の開口部が重なって形成されるなどの不具合を生じるおそれがある。これに対して、本実施形態の液晶表示装置では、精度の高いフォトリソ法により、カラーフィルタおよび反射膜の双方の開口部が相対的に位置決めされるので、双方の開口部が重なって形成されるなどの不具合を防ぐことができる。
本実施形態の液晶表示装置では、液晶表示装置の背面に設けた光源(バックライト161)を利用する透過表示時には、反射膜11の開口部11aを透過した光が、カラーフィルタ10を通過し出射されることで、表示色彩度を満足する明るい表示が得られる。光源の輝度、反射膜11の開口部11aの面積や形状、カラーフィルタ10の彩度、透過率や膜厚を調整することによって、所望の特性の透過表示が得られる。
外光を利用する反射表示時には、液晶表示装置の前方から入射した光が、カラーフィルタ10またはカラーフィルタ開口部10aを通り、反射膜11の反射領域部(開口部11a以外の領域部)で反射され、再びカラーフィルタ10またはカラーフィルタ開口部10aを通過し出射される。したがって、着色のない出射光と着色された出射光との合成出射光となり、明るい表示が得られる。カラーフィルタ10の特性、カラーフィルタ開口部10aの面積や形状を適時調整することにより、出射光の明るさや彩度を調整することが可能になる。また、カラーフィルタ開口部10aを大きくすることで、色純度の高いカラーフィルタを採用することも可能となる。
また、観察者側の基板にカラーフィルタが設けられ、背面側の基板に反射膜が設けられた液晶表示装置の場合、カラーフィルタと反射膜とが液晶層を介して離れて設けられているので、混色を生じるおそれがある。具体的には、例えば観察者側の基板に設けられた青色のカラーフィルタにより着色された入射光が、背面側の基板に設けられた反射膜により反射され、観察者側へ出射されるとき、観察者側の基板に設けられた緑色のカラーフィルタを通過することがある。この場合、出射光は、青色と緑色が混じって暗くなり、色純度を低下させるおそれがある。これに対して、本実施形態の液晶表示装置は、反射膜上にカラーフィルタが形成されているので、反射表示時に混色を生じて、色純度を低下させるおそれがない。
(比較例)
本実施形態の液晶表示装置と対比するための比較例を図11を参照しながら説明する。比較例の反射透過両用型カラー液晶表示装置は、カラーフィルタと反射膜を除き実施形態で説明したものと同じであるので、カラーフィルタと反射膜以外の構成の説明を省略する。
比較例に用いられる反射膜は、図11に示す様に、透過用スルーホール部を形成したアルミニウム膜が1000Å(100nm)の厚さで、図示しない下側基板上に製膜されることにより形成されている。スルーホール部の面積は、画素の30%になるよう設定されている。その上に電着用電極を介してRGBのストライプ状のカラーフィルタが形成されている。
さらに、この比較例では、図11に示す様に、反射膜透過領域(ここでは反射膜スルーホール部)と反射膜反射領域(ここでは反射膜のスルーホール部以外の部分)でカラーフィルタの顔料濃度を変えている。透過領域と反射領域で顔料濃度の異なるカラーフィルタを製造するには、レジストダイレクト電着法が用いられる。この方法を用いて、各色ごとに、顔料濃度の異なるカラーフィルタを透過領域部と反射領域部に形成する。
これにより、反射時の明るさを維持したまま、透過時の表示色の高彩度化を達成する事が可能になる。しかし、透過率の異なるカラーフィルタを透過部・反射部それぞれに形成するので、カラーフィルタ電着工程が増えてしまう。具体的には、RGBのそれぞれについて、反射用カラーフィルタと透過用カラーフィルタとを電着させるために、計6回のフォトリソ工程が必要となる。また、各色について、2種類の顔料濃度のカラーフィルタ材料が必要となり、製造コストが上昇する。これに対して、本実施形態の液晶表示装置では、RGBのそれぞれについて1回のフォトリソ工程を経てカラーフィルタを電着させることができる。電着用ITO膜に開口を設けるためのフォトリソ工程を加えても、計4回のフォトリソ工程でカラーフィルタを電着させることができる。また、各色について、1種類の顔料濃度のカラーフィルタ材料で電着させることができるので、製造コストの上昇を抑制することができる。
比較例では、反射時の明るさを維持する為に、高透過カラーフィルタ(Y=60)を採用しているが、本実施形態の液晶表示装置では、高透過カラーフィルタを用いる必要はなく、例えば前述の実施形態ではY=43のカラーフィルタが使用されている。図12に、比較例と実施形態とでそれぞれ用いられたカラーフィルタの特性を示す。図12に示す色度座標の結果から、彩度の点でも、本実施形態の液晶表示装置が好ましいことが判る。
本実施形態では、下側基板12に反射膜11およびカラーフィルタ10が積層されているが、上側基板4に反射膜11およびカラーフィルタ10が積層されていても良い。本実施形態では、偏光板を有する液晶表示装置を例に説明したが、本発明は偏光板が不要なゲストホスト方式、高分子分散方式の液晶表示装置にも適応することができる。本実施形態では、赤、緑、青の3色によりフルカラー画像を表示する場合について説明したが、マゼンタ、イエロー、シアンの3色によりフルカラー画像を表示しても良い。本実施形態の上側基板4および下側基板12には、フロートガラス、ソーダガラスなどのガラス基板、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック基板を用いることができる。本発明の液晶表示装置は、ストライプ配列、デルタ配列、モザイク配列、スクエア配列などの画素配列が採用され得る。本発明の液晶表示装置は、画素の色相数が4以上であっても良い。