JP2006337825A - 熱現像感光材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】高感度で、画像濃度が高く、かつ画像保存安定性が改良された熱現像感光材料を提供する。
【解決手段】支持体の少なくとも一方の面上に、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤およびバインダーを含有する画像形成層を有する熱現像感光材料であって、下記一般式(1)で表される化合物を含有する。
Figure 2006337825

【選択図】なし

Description

本発明は熱現像感光材料に関するものである。特に、高感度で、画像濃度が高く、かつ画像保存安定性が改良された熱現像感光材料に関するものである。
近年、医療分野において環境保全、省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・イメージセッター又はレーザー・イメージャーにより効率的に露光させることができ、高解像度及び鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することができる医療診断用及び写真技術用途の光感光性熱現像写真材料に関する技術が必要とされている。これら光感光性熱現像写真材料では、溶液系処理化学薬品の使用をなくし、より簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを顧客に対して供給することができる。
一般画像形成材料の分野でも同様の要求はあるが、医療用画像は微細な描写が要求されるため鮮鋭性、粒状性に優れる高画質が必要であるうえ、診断のし易さの観点から冷黒調の画像が好まれる特徴がある。現在、インクジェットプリンター、電子写真など顔料、染料を利用した各種ハードコピーシステムが一般画像形成システムとして流通しているが、医療用画像の出力システムとしては満足できるものがない。
一方、有機銀塩を利用した熱画像形成システムが、多くの文献に記載されている(例えば、非特許文献1、特許文献1,2参照。)。特に熱現像感光材料は、一般に触媒活性量の光触媒(例、ハロゲン化銀)、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤を含有する画像形成層を有している。熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。そのため、黒色の銀画像は、露光領域に形成される。そして熱現像感光材料による医療用画像形成システムとして富士メディカルドライイメージャーFM−DP Lが発売された。
一方、画像情報がデジタル化され、保存され、必要によっては画像処理され、ネットワークで送信され必要な場所で熱現像感光材料にレーザー出力される画像形成システムが広がってきている。画像形成材料としては、熱現像感光材料が最も好ましく用いられている。レーザー光源として、アルゴン、ヘリウム−ネオン、ヘリウム−カドミウム等のコヒーレント光が用いられている。最近では半導体レーザーの普及が著しい。画像情報は、1本あるいは複数の本数のレーザー光によってスキャニング露光される。このようなシステムが広がるにつれて画像作製速度の高速化が求められてきた。高速化のためにはレーザー出力を高める必要があるが、装置の大型化、高価になってくる問題があり、また高電圧にするとレーザー寿命が短くなるなどの問題がある。熱現像感光材料の高感度化も求められたが、従来はかぶりの増大の問題があり限界があった。さらに、感光性ハロゲン化銀が熱現像後も熱現像感光材料中に残存するため、高感度化すると、熱現像後に画像が室内光などに当たって徐々に黒化してくる問題(本願では「プリントアウトかぶり」と称する)が悪化してくる問題があった。このため、該感光性ハロゲン化銀を減量する検討がなされてきた。しかし、感度と最高濃度を保ちながら、減量することは困難であった。感光性ハロゲン化銀粒子の化学増感法として、一般に硫黄増感法、セレン増感法若しくはテルル増感法が知られている。熱現像感光材料の化学増感剤として、特許文献3の段落番号0030に記載の化合物、および特許文献4に記載の一般式(II),(III),(IV)で示されるテルル化合物が知られていた。
しかしながら、これらを持ってしても未だ感度は十分とはいえず、さらなる高感化が望まれた。
D.H.クロスターベール著「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette第8版、スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp)編集、第8章、第279頁、1989年) 米国特許第3152904号明細書 米国特許第3457075号明細書 特開平11−65021号明細書 特開平5−313284号明細書
本発明の目的は、従来技術の上記問題点を解決し、高感度で最高濃度が高く、熱現像処理後もかぶり悪化の小さい熱現像感光材料を提供することにある。
上記目的は下記の手段によって達成された。
<1> 支持体の少なくとも一方の面上に、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤およびバインダーを含有する画像形成層を有する熱現像感光材料であって、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料:
Figure 2006337825
(一般式(1)において、Chは硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表す。X1は−N(R1)−または−N+(R2)R3-を表し、R1は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R2およびR3はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Y-は陰イオンを表す。X2は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、−OR4または−N(R5)R6を表す。R4〜R6はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。Eは下記一般式(2)〜(5)で表される基より選ばれる。
Figure 2006337825
一般式(2)において、Zは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、−OR7または−N(R8)R9を表し、R7〜R9はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
一般式(3)において、A1は酸素原子、硫黄原子または−N(R13)−を表し、R10〜R13はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
一般式(4)において、A2は酸素原子、硫黄原子または−N(R17)−を表し、R14は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基またはアシル基を表し、R15〜R17はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。Wはベンゼン環に置換しうる置換基を表し、nは0から4の整数を表す。nが2以上である場合は複数のWは同じでも異なっていても良い。
一般式(5)において、Lは2価の連結基を表し、EWGは電子求引性基を表す。)。
<2> 前記感光性ハロゲン化銀が、前記一般式(1)で表される化合物により化学増感されてなることを特徴とする<1>に記載の熱現像感光材料。
<3> 前記X2が−N(R5)R6で表され、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表すことを特徴とする<1>又は<2>に記載の熱現像感光材料。
<4> 前記Eが一般式(3)または(4)で表される基より選ばれることを特徴とする<3>に記載の熱現像感光材料。
<5> 前記Chがセレン原子であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
<6> 前記感光性ハロゲン化銀が金増感されてなることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
<7> 水溶性チオシアン酸塩をハロゲン化銀1モルあたり1×10-3モル以上で8×10-1モル以下含有することを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
<8> 前記感光性ハロゲン化銀の臭化銀含有率が70モル%以上であることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
<9> 前記感光性ハロゲン化銀の平均粒子サイズが0.01μm以上0.2μm以下であることを特徴とする<8>に記載の熱現像感光材料。
<10> 前記感光性ハロゲン化銀の全投影面積の50%以上がアスペクト比2以上の平板状粒子であって、平均粒子サイズが0.3μm以上8.0μm以下であることを特徴とする<1>〜<8>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
<11> 前記感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%以上であることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
<12> 前記感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が80モル%以上であることを特徴とする<11>に記載の熱現像感光材料。
<13> 前記感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が90モル%以上であることを特徴とする<12>に記載の熱現像感光材料。
<14> 前記感光性ハロゲン化銀の平均粒子サイズが0.01μm以上0.2μm以下であることを特徴とする<11>〜<13>に記載の熱現像感光材料。
<15> 前記感光性ハロゲン化銀の全投影面積の50%以上アスペクト比が2以上の平板状粒子であって、平均粒子サイズが0.3μm以上8.0μm以下であることを特徴とする<11>〜<13>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
本発明によれば高感度でかぶりが低く、最高濃度が高く、画像保存中もかぶり増加の少ない熱現像感光材料を提供することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
(一般式(1)で表される化合物)
本発明において一般式(1)で表されるカルコゲン化合物は、感光性ハロゲン化銀の化学増感剤として使用される。
一般式(1)において、Chは硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表し、好ましくは硫黄原子またはセレン原子であり、セレン原子である場合がより好ましい。
一般式(1)で表されるカルコゲン化合物は、ハロゲン化銀粒子上に吸着して該ハロゲン化銀粒子の感光感度を高くし得る化合物である。金増感剤を含有しない場合は、該ハロゲン化銀の銀イオンと結合し、金増感剤を含有する場合は銀イオンおよび金イオンと結合することができる。
式(1)において、X1は−N(R1)−または−N+(R2)R3-を表し、R1は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、もしくはヘテロ環基を表し、R2およびR3はそれぞれアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、もしくはヘテロ環基を表し、Y-は陰イオンを表す。ここで言うアルキル基とは直鎖、分岐、環状の置換、もしくは無置換のアルキル基を表す。好ましくは炭素数1〜30の置換または無置換の直鎖または分岐のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基、1,5ジメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、ソディウムスルホエチル基、ジエチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、ブトキシプロピル基、エトキシエトキシエチル基、もしくはn−ヘキシルオキシプロピル基等)、または炭素数3〜18の置換または無置換の環状アルキル基(例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、もしくはシクロドデシル基等)を表す。また、炭素数5から30の置換または無置換のビシクロアルキル基(つまり炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基であり、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、もしくは更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含する。アルケニル基とは、炭素数2〜16のアルケニル基(例えば、アリル基、2−ブテニル基、もしくは3−ペンテニル基等)を表し、アルキニル基とは炭素数2〜10のアルキニル基(例えば、プロパルギル基、または3−ペンチニル基等)を表す。
アリール基とは、好ましくは炭素数6から30の置換または無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、もしくはo−ヘキサデカノイルアミノフェニルである。ヘテロ環基とは、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子のうち少なくとも一つを含む5〜7員環の、置換または無置換の、もしくは飽和または不飽和のヘテロ環である。これらは単環であっても良いし、更に他のアリール環またはヘテロ環と共に縮合環を形成しても良い。ヘテロ環基として好ましくは5員〜6員のものであり、例えばピロリル基、ピロリジニル基、ピリジル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、フリル基、ピラニル基、クロメニル基、チエニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、モルホリノ基、もしくはモルホリニル基などが挙げられる。
またR1〜R3は置換基を有していてもよく、置換基の例としては例えばハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、もしくはヨウ素原子)、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−ヒドロキシカルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基またはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、シリルオキシ基、ニトロ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、N−ヒドロキシウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルまたはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ヒドロキシアミノ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、もしくはイソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)ジチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基(及びその塩を含む)、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基(及びその塩を含む)、またはシリル基などが挙げられる。なおここで塩とはアルカリ金属、アルカリ土類金属、もしくは重金属などの陽イオンやアンモニウムイオン、またはホスホニウムイオンなどの有機の陽イオンとの塩を意味する。置換基のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基の好ましい炭素数は、上記のX1におけるこれら基の好ましい炭素数と同じである。
本発明において、R1は水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基である場合が好ましく、水素原子またはアルキル基である場合がより好ましく、水素原子である場合が更に好ましい。R2およびR3はそれぞれアルキル基、アリール基またはヘテロ環基である場合が好ましく、アルキル基またはアリール基である場合がより好ましく、アルキル基である場合が更に好ましい。
-は陰イオンを表すが、ここで言う陰イオンとしてはCl-、Br-、もしくはI-などのハロゲンイオン、アセテートイオンなどのカルボン酸陰イオン、ベンゼンスルホナートイオンなどのスルホン酸陰イオン、およびパークロレートイオンなどの無機アニオンなどが挙げられる。本発明においてはハロゲンイオンである場合が好ましい。
本発明において、X1は−N(R1)−を表す場合が好ましい。
式(1)において、X2は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、OR4または−N(R5)R6を表し、R4〜R6はそれぞれ水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。ここで言うアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基とは、先に説明したものと同義であり、好ましい範囲も同様である。またR4〜R6は置換基を有していてもよいが、その例としては先に置換基の例として挙げたものと同じものが挙げられる。本発明においてR4〜R6はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基である場合が好ましく、水素原子、アルキル基またはアリール基である場合がより好ましく、水素原子またはアルキル基である場合が更に好ましい。
本発明においてX2はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、もしくは−N(R5)R6を表す場合が好ましく、−N(R5)R6を表す場合が更に好ましい。
1とX2は互いに結合して環構造を形成してもよい。
式(1)において、Eは式(2)〜式(5)で表される基より選ばれる。
式(2)において、Zは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、−OR7または−N(R8)R9を表し、R7〜R9は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。ここで言うアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基とは、先に説明したものと同義であり、好ましい範囲も同様である。またこれらは置換基を有していてもよく、その例としては先に置換基として挙げたものと同じものが挙げられる。本発明において、式(2)で表される基のうち、Zはアルキル基、アリール基、−OR7または−N(R8)R9である場合が好ましく、アルキル基またはアリール基である場合がより好ましい。
式(3)において、R10〜R13は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表すが、ここで言うアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基とは先に説明したものと同義であり、好ましい範囲も同様である。またこれらは置換基を有していてもよく、その例としては先に置換基として挙げたものと同じものが挙げられる。本発明において、R10はアルキル基が好ましい。R11およびR12はそれぞれ水素原子、アルキル基またはアリール基が好ましく、水素原子またはアルキル基がより好ましく、一方が水素原子で他方が水素原子またはアルキル基である場合が更に好ましい。R13は水素原子、アルキル基またはアリール基が好ましく、水素原子またはアルキル基がより好ましく、アルキル基が更に好ましい。
式(3)においてA1は酸素原子、硫黄原子または−N(R13)−を表すが、本発明においては酸素原子または硫黄原子である場合が好ましく、酸素原子である場合がより好ましい。
本発明において式(3)で表される基のうち、好ましいものはA1が酸素原子、硫黄原子または−N(R13)−を表し、R10がアルキル基またはアリール基を表し、R11およびR12が水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R13が水素原子、アルキル基またはアリール基を表す場合である。より好ましくはA1が酸素原子または硫黄原子を表し、R10がアルキル基またはアリール基を表し、R11およびR12が水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す場合である。更に好ましくはA1が酸素原子を表し、R10がアルキル基またはアリール基を表し、R11およびR12が水素原子またはアルキル基を表す場合である。
10とR11は互いに結合して環構造を形成してもよい。
式(4)においてR14〜R17で表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、もしくはヘテロ環基とは先に述べたものと同義であり、好ましい範囲についても同様である。またこれらは置換基を有していてもよく、その例としては先に置換基として挙げたものと同じものが挙げられる。R14で表されるアシル基としてはアセチル基、ホルミル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、カプロイル基、もしくはn−ノナノイル基などが挙げられる。またこれらは置換基を有していてもよく、その例としては先に置換基として挙げたものと同じものが挙げられる。
式(4)においてWは置換基を表すがその例としては先に置換基として挙げたものと同じものが挙げられる。またWは置換基を有していてもよく、その例としては先に置換基として挙げたものと同じものが挙げられる。
本発明において、Wとして好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、シアノ基、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、ニトロ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基(及びその塩を含む)、またはスルファモイル基などであり、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、チオウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、またはスルホ基(及びその塩を含む)などであり、更に好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、またはスルホ基(及びその塩を含む)などである。
式(4)において、nは0から4の整数を表す。本発明においてnは0から2を表す場合が好ましく、0または1である場合がより好ましい。
式(4)においてA2は酸素原子、硫黄原子または−N(R17)−を表すが、本発明においては酸素原子または硫黄原子を表す場合が好ましく、酸素原子である場合がより好ましい。
本発明において、式(4)で表される基のうち、好ましいものはA2が酸素原子または硫黄原子を表し、R14が水素原子、アルキル基、アリール基、またはアシル基を表し、R15およびR16が水素原子、アルキル基、またはアリール基を表し、nが0〜2を表し、Wがハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、またはスルホ基(及びその塩を含む)を表す場合である。より好ましくはA2が酸素原子または硫黄原子を表し、R14がアルキル基、アリール基、またはアシル基を表し、R15およびR16が水素原子、アルキル基、またはアリール基を表し、nが0〜1を表し、Wがハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、またはスルホ基(及びその塩を含む)を表す場合である。更に好ましくはA2が酸素原子を表し、R14がアルキル基、アリール基、またはアシル基を表し、R15およびR16が水素原子、アルキル基、またはアリール基を表し、nが0を表す場合である。
式(5)において、Lで表される2価の連結基は、炭素数2〜20のアルキレン基、アルケニレン基、またはアルキニレン基を表し、特に炭素数2〜10の直鎖、分岐または環状のアルキレン基(例えばエチレン、プロピレン、シクロペンチレン、またはシクロへキシレン)、アルケニレン基(例えばビニレン)、またはアルキニレン基(例えばプロピニレン)を表す。好ましいLとしては一般式(L1)、または一般式(L2)に示すものが挙げられる。
Figure 2006337825
式(L1)、または式(L2)において、G1、G2、G3、およびG4は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数1〜10のヘテロ環基を表し、G1、G2、およびG3は連結して環を形成しても良い。G1、G2、G3、およびG4として好ましくは水素原子、アルキル基またはアリール基であり、水素原子またはアルキル基がより好ましい。
式(5)において、EWGは電子求引性基を表す。ここでいう電子求引性基とは、ハメットの置換基定数σp値が正の値である置換基であり、好ましくはσp値が0.2以上であり、上限としては1.0以下が好ましい。σp値が0.2以上の電子求引性基の具体例としてはアシル基、ホルミル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、ホスホリル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、カルボキシ基(またはその塩)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルコキシ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアリールオキシ基、アシルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルチオ基、σp値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、およびセレノシアネート基などが挙げられる。本発明において、EWGは好ましくはアシル基、ホルミル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、ホスホリル基、カルボキシ基(またはその塩)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、σp値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、またはハロゲン原子であり、より好ましくはアシル基、ホルミル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルボキシ基、または少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基であり、更に好ましくはアシル基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルボキシ基、または少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基である。
本発明において、式(5)で表される基のうち、好ましいものはLが式(L1)または式(L2)で表され、EWGがアシル基、ホルミル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルボキシ基、または少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基である場合であり、より好ましくはLが式(L1)または式(L2)で表され、EWGがアシル基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルボキシ基、または少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基である場合であり、更に好ましくはLが式(L1)で表され、EWGがアシル基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルボキシ基、または少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基である場合である。
式(1)においてChが硫黄原子である場合、Eは式(3)〜(5)で表される基より選ばれる場合が好ましく、式(3)または(4)で表される基より選ばれる場合がより好ましい。式(1)においてChがセレン原子である場合、Eは式(2)〜(4)で表される基より選ばれる場合が好ましく、式(3)または式(4)で表される基より選ばれる場合がより好ましく、式(3)で表される基より選ばれる場合が更に好ましい。式(1)においてChがテルル原子である場合、Eは式(3)または式(4)で表される基より選ばれる場合が好ましく、式(4)で表される基より選ばれる場合がより好ましい。
本発明において、式(1)で表される化合物は他の有機化合物或いは無機化合物と塩を形成した状態で用いられてもよい。このような塩の具体例としては塩酸塩、臭化水素塩、ヨウ化水素塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、またはp−トルエンスルホン酸塩などが挙げられる。
式(1)で表される化合物のうち、本発明において好ましい化合物は、Chが硫黄原子またはセレン原子であり、X1が−N(R1)−または−N+(R2)R3を表し、X2はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、−OR4または−N(R5)R6を表し、Eが式(3)または式(4)で表される基より選ばれる場合である。より好ましくはChがセレン原子であり、X1が−N(R1)−または−N+(R2)R3を表し、X2はアルキル基、アリール基、ヘテロ環基または−N(R5)R6を表し、Eが式(3)または式(4)で表される基より選ばれる場合である。更に好ましくはChがセレン原子であり、X1が−N(R1)−または−N+(R2)R3を表し、X2は−N(R5)R6を表し、Eが式(3)または式(4)で表される基より選ばれる場合である。最も好ましくはChがセレン原子であり、X1が−N(R1)−を表し、X2は−N(R5)R6を表し、Eが式(3)または式(4)で表される基より選ばれる場合である。
また、本発明の一般式(1)で表される化合物は、金増感剤と併用して用いた場合、特に低かぶりなまま高感度化を達成できる。更にこの時、階調が硬調になるという効果も有している。
次に一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示す。但し本発明はこれらに限定されるものではない。また、立体異性体が複数存在しうる化合物については、その立体構造を限定するものではない。なお、以下の例示化合物中、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基、Acはアセチル基をそれぞれ示すものである。
Figure 2006337825
Figure 2006337825
Figure 2006337825
本発明の一般式(1)で表される化合物は、公知の種々の方法により合成することができる。個々の化合物によってその合成法は最適なものが選ばれるため、一般的となりうる合成法を挙げることができないが、その中でも有用な合成ルートを説明する。
《例示化合物8の合成》
クロロメチルベンジルスルフィド1.7gをアセトン20mLに溶解し、セレノ尿素1.1gを加えた。45℃で2時間かくはんした後、氷冷し、析出した結晶をろ取することで例示化合物8を塩酸塩として2.3g得た。
1H NMR(DMSO−d6):δ3.92(s,2H)4.46(s,2H)7,24〜7.40(m,5H)9.45(brd,4H)
《例示化合物15の合成》
4−メトキシベンジルクロリド7.8gをアセトン120mLに溶解し、セレノ尿素5.1gを加えた。加熱還流1時間の後、反応溶液を氷冷し、析出した結晶をろ取することで例示化合物15を塩酸塩として10g得た。
1H NMR(DMSO−d6):δ3.73(s,3H)4.55(s,2H)6.90(d,2H)7.36(d,2H)9.47(brd,4H)
本発明の一般式(1)で表される化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり好ましくは1×10-7モル〜5×10-3モル、さらに好ましくは5×10-7モル〜5×10-4モルである。
本発明の一般式(1)で表される化合物は、水、或いはアルコール類(メタノール、エタノールなど)、ケトン類(アセトンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)、グリコール類(メチルプロピレングリコールなど)、及びエステル類(酢酸エチルなど)などを溶媒として添加しても良い。
本発明の一般式(1)で表される化合物の添加は、ハロゲン化銀乳剤の製造時のどの段階でも可能であるが、ハロゲン化銀粒子形成後から化学増感工程終了までの間に添加することが好ましい。
(有機銀塩の説明)
1)組成
本発明に用いることのできる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された感光性ハロゲン化銀及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀イオン供給体として機能し、銀画像を形成せしめる銀塩である。有機銀塩は還元剤により還元されうる銀イオンを供給できる任意の有機物質であってよい。このような非感光性の有機銀塩については、特開平10−62899号の段落番号0048〜0049、欧州特許公開第0803764A1号の第18ページ第24行〜第19ページ第37行、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号等に記載されている。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。脂肪酸銀塩の好ましい例としては、リグノセリン酸銀、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、エルカ酸銀及びこれらの混合物などを含む。本発明においては、これら脂肪酸銀の中でも、ベヘン酸銀含有率が好ましくは50モル%以上100モル%以下、より好ましくは85モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは95モル%以上100モル%以下の脂肪酸銀を用いることが好ましい。更に、エルカ酸銀含有率が2モル%以下、より好ましくは1モル%以下、更に好ましくは0.1モル%以下の脂肪酸銀を用いることが好ましい。
また、ステアリン酸銀含有率が1モル%以下であることが好ましい。前記ステアリン酸含有率を1モル%以下とすることにより、Dminが低く、高感度で画像保存性に優れた有機酸の銀塩が得られる。前記ステアリン酸含有率としては、0.5モル%以下が好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。
さらに、有機酸の銀塩としてアラキジン酸銀を含む場合は、アラキジン酸銀含有率が6モル%以下であることが、低いDminを得ること及び画像保存性の優れた有機酸の銀塩を得る点で好ましく、3モル%以下であることが更に好ましい。
2)形状
本発明に用いることができる有機銀塩の形状としては特に制限はなく、針状、棒状、平板状、りん片状いずれでもよい。
本発明においてはりん片状の有機銀塩が好ましい。また、長軸と単軸の長さの比が5未満の短針状、直方体、立方体又はジャガイモ状の不定形粒子も好ましく用いられる。これらの有機銀粒子は長軸と単軸の長さの比が5以上の長針状粒子に比べて熱現像時のかぶりが少ないという特徴を有している。特に、長軸と単軸の比が3以下の粒子は塗布膜の機械的安定性が向上し好ましい。本明細書において、りん片状の有機銀塩とは、次のようにして定義する。有機酸銀塩を電子顕微鏡で観察し、有機酸銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短い方からa、b、cとした(cはbと同じであってもよい。)とき、短い方の数値a、bで計算し、次のようにしてxを求める。
x=b/a
このようにして200個程度の粒子についてxを求め、その平均値x(平均)としたとき、x(平均)≧1.5の関係を満たすものをりん片状とする。好ましくは30≧x(平均)≧1.5、より好ましくは15≧x(平均)≧1.5である。因みに針状とは1≦x(平均)<1.5である。
りん片状粒子において、aはbとcを辺とする面を主平面とした平板状粒子の厚さとみることができる。aの平均は0.01μm以上0.3μm以下が好ましく0.1μm以上0.23μm以下がより好ましい。c/bの平均は1以上9以下であることが好ましく、より好ましくは1以上6以下、さらに好ましくは1以上4以下、最も好ましくは1以上3以下である。
前記球相当直径を0.05μm以上1μm以下とすることにより、熱現像感光材料中で凝集を起こしにくく、画像保存性が良好となる。前記球相当直径としては、0.1μm以上1μm以下が好ましい。本発明において、球相当直径の測定方法は、電子顕微鏡を用いて直接サンプルを撮影し、その後、ネガを画像処理することによって求められる。
前記リン片状粒子において、粒子の球相当直径/aをアスペクト比と定義する。リン片状粒子のアスペクト比としては、熱現像感光材料中で凝集を起こしにくく、画像保存性が良好となる観点から、1.1以上30以下であることが好ましく、1.1以上15以下がより好ましい。
有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。
3)調製
本発明に用いられる有機酸銀の製造及びその分散法は、公知の方法等を適用することができる。例えば上記の特開平10−62899号、欧州特許公開第0803763A1、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号、同2001−163889号、同2001−163890号、同2001−163827号、同2001−33907号、同2001−188313号、同2001−83652号、同2002−6442、同2002−49117号、同2002−31870号、同2002−107868号等を参考にすることができる。
なお、有機銀塩の分散時に、感光性銀塩を共存させると、かぶりが上昇し、感度が著しく低下するため、分散時には感光性銀塩を実質的に含まないことがより好ましい。本発明では、分散される水分散液中での感光性銀塩量は、その液中の有機酸銀塩1molに対し1mol%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1mol%以下であり、さらに好ましいのは積極的な感光性銀塩の添加を行わないものである。
本発明において有機銀塩水分散液と感光性銀塩水分散液を混合して熱現像感光材料を製造することが可能であるが、有機銀塩と感光性銀塩の混合比率は目的に応じて選べるが、有機銀塩に対する感光性銀塩の割合は1モル%以上30モル%以下の範囲が好ましく、更に2モル%以上20モル%以下、特に3モル%以上15モル%以下の範囲が好ましい。混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましく用いられる方法である。
4)添加量
本発明における有機銀塩は所望の量で使用できるが、ハロゲン化銀も含めた全塗布銀量として0.1g/m2以上5.0g/m2以下が好ましく、より好ましくは0.3g/m2以上3.0g/m2以下、さらに好ましくは0.5g/m2以上2.0g/m2以下である。
特に、画像保存性を向上させるためには、全塗布銀量が1.8g/m2以下、より好ましくは1.6g/m2以下であることが好ましい。本発明における好ましい還元剤を使用すれば、このような低銀量においても十分な画像濃度を得ることが可能である。
(還元剤の説明)
本発明の熱現像感光材料には有機銀塩のための還元剤である熱現像剤を含むことが好ましい。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質(好ましくは有機物質)であってよい。このような還元剤の例は、特開平11−65021号の段落番号0043〜0045や、欧州特許公開第0803764A1号の第7ページ第34行〜第18ページ第12行に記載されている。
本発明において、還元剤としてはフェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するいわゆるヒンダードフェノール系還元剤あるいはビスフェノール系還元剤が好ましく、下記一般式(R)で表される化合物がより好ましい。
Figure 2006337825
一般式(R)において、R11及びR11'は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表す。R12及びR12'は、各々独立に水素原子又はベンゼン環に置換可能な置換基を表す。Lは、−S−基又は−CHR13−基を表す。R13は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。X1及びX1'は各々独立に水素原子又はベンゼン環に置換可能な基を表す。
一般式(R)について詳細に説明する。
以下でアルキル基と称するとき、特に明記していない場合はシクロアルキル基もこれに含まれる。
1)R11及びR11'
11及びR11'は各々独立に置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり。アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ウレイド基、ウレタン基、及びハロゲン原子等が挙げられる。
2)R12及びR12'、X1及びX1'
12及びR12'は各々独立に水素原子又はベンゼン環に置換可能な置換基であり、X1及びX1'も各々独立に水素原子又はベンゼン環に置換可能な基を表す。それぞれベンゼン環に置換可能な基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、及びアシルアミノ基が挙げられる。
3)L
Lは−S−基又は−CHR13−基を表す。R13は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。R13が無置換のアルキル基である場合の具体例はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ウンデシル基、イソプロピル基、1−エチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、シクロヘキシル基、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基、3,5−ジメチル−3−シクロヘキセニル基などがあげられる。アルキル基の置換基の例はR11の置換基と同様で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、及びスルファモイル基などが挙げられる。
4)好ましい置換基
11及びR11'として好ましくは炭素数1〜15の1級、2級又は3級のアルキル基であり、具体的にはメチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロプロピル基などがあげられる。R11及びR11'としてより好ましくは炭素数1〜4のアルキル基で、その中でもメチル基、t−ブチル基、t−アミル基、又は1−メチルシクロヘキシル基が更に好ましく、メチル基、t−ブチル基が最も好ましい。
12及びR12'として好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基、及びメトキシエチル基などが挙げられる。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基である。
1及びX1'は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基で、より好ましくは水素原子である。
Lは好ましくは−CHR13−基である。
13として好ましくは水素原子又は炭素数1〜15のアルキル基であり、該アルキル基としては鎖状のアルキル基の他、環状のアルキル基も好ましく用いられる。また、これらのアルキル基の中にC=C結合を有しているものも好ましく用いることができる。アルキル基としては例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、シクロヘキシル基、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基、又は3,5−ジメチル−3−シクロヘキセニル基等が好ましい。R13として特に好ましいのは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、又は2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基である。
11、R11'が3級のアルキル基でR12、R12'がメチル基の場合、R13は炭素数1〜8の1級又は2級のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、又は2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基等)が好ましい。
11、R11'が3級のアルキル基でR12、R12'がメチル基以外のアルキル基の場合、R13は水素原子が好ましい。
11、R11'が3級のアルキル基でない場合、R13は水素原子又は2級のアルキル基であることが好ましく、2級のアルキル基であることが特に好ましい。R13の2級アルキル基として好ましい基はイソプロピル基、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基、又はシクロヘキシル基である。
上記還元剤はR11、R11'、R12、R12'及びR13の組み合わせにより、熱現像性、現像銀色調などが異なる。2種以上の還元剤を組み合わせることでこれらを調製することができるため、目的によっては2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。
以下に、一般式(R)で表される化合物をはじめとする本発明における還元剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2006337825
上記以外の本発明における好ましい還元剤の例は特開2001−188314号、同2001−209145号、同2001−350235号、同2002−156727号、EP1278101A2号に記載された化合物である。
本発明において還元剤の添加量は0.1g/m2以上3.0g/m2以下であることが好ましく、より好ましくは0.2g/m2以上2.0g/m2以下で、さらに好ましくは0.3g/m2以上1.0g/m2以下である。画像形成層を有する面の銀1モルに対しては5モル%以上50モル%以下含まれることが好ましく、より好ましくは8モル%以上30モル%以下であり、10モル%以上20モル%以下で含まれることがさらに好ましい。還元剤は画像形成層に含有させることが好ましい。
還元剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、熱現像感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルセバケートあるいはトリ(2−エチルヘキシル)ホスフェートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムやオレオイル−N−メチルタウリン酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム等の界面活性剤を添加して機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。このとき、油滴の粘度や屈折率の調整の目的でαメチルスチレンオリゴマーやポリ(t−ブチルアクリルアミド)等のポリマーを添加することも好ましい。
また、固体微粒子分散法としては、還元剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作製する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm以上1000ppm以下の範囲である。
感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mg以下であれば実用上差し支えない。
水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
特に好ましいのは、還元剤の固体粒子分散法であり、平均粒子サイズ0.01μm以上10μm以下、好ましくは0.05μm以上5μm以下、より好ましくは0.1μm以上2μm以下の微粒子して添加するのが好ましい。本願においては他の固体分散物もこの範囲の粒子サイズに分散して用いるのが好ましい。
(現像促進剤の説明)
本発明の熱現像感光材料では、現像促進剤として特開2000−267222号明細書や特開2000−330234号明細書等に記載の一般式(A)で表されるスルホンアミドフェノール系の化合物、特開平2001−92075記載の一般式(II)で表されるヒンダードフェノール系の化合物、特開平10−62895号明細書や特開平11−15116号明細書等に記載の一般式(I)、特開2002−156727号の一般式(D)や特開2002−278017号明細書に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物、特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系又はナフトール系の化合物が好ましく用いられる。また、特開2002−311533号、特開2002−341484号明細書に記載されたフェノール系の化合物も好ましい。特に特開2003−66558号明細書に記載のナフトール系の化合物が好ましい。これらの現像促進剤は還元剤に対して0.1モル%以上20モル%以下の範囲で使用され、好ましくは0.5モル%以上10モル%以下の範囲で、より好ましくは1モル%以上5モル%以下の範囲である。感材への導入方法は還元剤同様の方法があげられるが、特に固体分散物又は乳化分散物として添加することが好ましい。乳化分散物として添加する場合、常温で固体である高沸点溶剤と低沸点の補助溶剤を使用して分散した乳化分散物として添加するか、若しくは高沸点溶剤を使用しない所謂オイルレス乳化分散物として添加することが好ましい。
本発明においては上記現像促進剤の中でも、特開2002−156727号、特開2002−278017号明細書に記載ヒドラジン系の化合物及び特開2003−66558号明細書に記載されているナフトール系の化合物がより好ましい。
本発明における特に好ましい現像促進剤は、下記一般式(A−1)及び(A−2)で表される化合物である。
一般式(A−1)
1−NHNH−Q2
式中、Q1は炭素原子で−NHNH−Q2と結合する芳香族基、又はヘテロ環基を表し、Q2はカルバモイル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、又はスルファモイル基を表す。
一般式(A−1)において、Q1で表される芳香族基又はヘテロ環基としては5員〜7員の不飽和環が好ましい。好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,4−トリアジン環、1,3,5−トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、チオフェン環などが好ましく、さらにこれらの環が互いに縮合した縮合環も好ましい。
これらの環は置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及びアシル基を挙げることができる。これらの置換基が置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよく、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、及びアシルオキシ基を挙げることができる。
2で表されるカルバモイル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のカルバモイル基であり、例えば、無置換カルバモイル、メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−sec−ブチルカルバモイル、N−オクチルカルバモイル、N−シクロヘキシルカルバモイル、N−tert−ブチルカルバモイル、N−ドデシルカルバモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)カルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−{3−(2,4−tert−ペンチルフェノキシ)プロピル}カルバモイル、N−(2−ヘキシルデシル)カルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−(4−ドデシルオキシフェニル)カルバモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)カルバモイル、N−ナフチルカルバモイル、N−3−ピリジルカルバモイル、N−ベンジルカルバモイルが挙げられる。
2で表されるアシル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアシル基であり、例えば、ホルミル、アセチル、2−メチルプロパノイル、シクロヘキシルカルボニル、オクタノイル、2−ヘキシルデカノイル、ドデカノイル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、4−ドデシルオキシベンゾイル、及び2−ヒドロキシメチルベンゾイルが挙げられる。Q2で表されるアルコキシカルボニル基は、好ましくは炭素数2〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、及びベンジルオキシカルボニルが挙げられる。
2で表されるアリールオキシカルボニル基は、好ましくは炭素数7〜50、より好ましくは炭素数7〜40のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル、4−オクチルオキシフェノキシカルボニル、2−ヒドロキシメチルフェノキシカルボニル、及び4−ドデシルオキシフェノキシカルボニルが挙げられる。Q2で表されるスルホニル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、ブチルスルホニル、オクチルスルホニル、2−ヘキサデシルスルホニル、3−ドデシルオキシプロピルスルホニル、2−オクチルオキシ−5−tert−オクチルフェニルスルホニル、及び4−ドデシルオキシフェニルスルホニルが挙げられる。
2で表されるスルファモイル基は、好ましくは炭素数0〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルファモイル基で、例えば、無置換スルファモイル、N−エチルスルファモイル基、N−(2−エチルヘキシル)スルファモイル、N−デシルスルファモイル、N−ヘキサデシルスルファモイル、N−{3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル}スルファモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)スルファモイル、N−(2−テトラデシルオキシフェニル)スルファモイルが挙げられる。Q2で表される基は、さらに、置換可能な位置に前記のQ1で表される5員〜7員の不飽和環の置換基の例として挙げた基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それ等の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
次に、式(A−1)で表される化合物の好ましい範囲について述べる。Q1としては5員〜6員の不飽和環が好ましく、ベンゼン環、ピリミジン環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、及びこれらの環がベンゼン環若しくは不飽和ヘテロ環と縮合した環が更に好ましい。また、Q2はカルバモイル基が好ましく、特に窒素原子上に水素原子を有するカルバモイル基が好ましい。
Figure 2006337825
一般式(A−2)においてR1はアルキル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、又はカルバモイル基を表す。R2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、又は炭酸エステル基を表す。R3、R4はそれぞれ一般式(A−1)の置換基例で挙げたベンゼン環に置換可能な基を表す。R3とR4は互いに連結して縮合環を形成してもよい。
1は好ましくは炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−オクチル基、又はシクロヘキシル基など)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、メチルウレイド基、又は4−シアノフェニルウレイド基など)、カルバモイル基(n−ブチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、2−クロロフェニルカルバモイル基、又は2,4−ジクロロフェニルカルバモイル基など)でアシルアミノ基(ウレイド基、ウレタン基を含む)がより好ましい。R2は好ましくはハロゲン原子(より好ましくは塩素原子、臭素原子)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、又はベンジルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ナフトキシ基など)である。
3は好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基であり、ハロゲン原子がもっとも好ましい。R4は水素原子、アルキル基、アシルアミノ基が好ましく、アルキル基又はアシルアミノ基がより好ましい。これらの好ましい置換基の例はR1と同様である。R4がアシルアミノ基である場合R4はR3と連結してカルボスチリル環を形成することも好ましい。
一般式(A−2)においてR3とR4が互いに連結して縮合環を形成する場合、縮合環としてはナフタレン環が特に好ましい。ナフタレン環には一般式(A−1)で挙げた置換基例と同じ置換基が結合していてもよい。一般式(A−2)がナフトール系の化合物であるとき、R1はカルバモイル基であることが好ましい。その中でもベンゾイル基であることが特に好ましい。R2はアルコキシ基、アリールオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
以下、本発明における現像促進剤の好ましい具体例を挙げる。本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2006337825
(水素結合性化合物の説明)
本発明における還元剤が芳香族性の水酸基(−OH)又はアミノ基(−NHR、Rは水素原子又はアルキル基)を有する場合、特に前述のビスフェノール類の場合には、これらの基と水素結合を形成することが可能な基を有する非還元性の化合物を併用することが好ましい。
水酸基又はアミノ基と水素結合を形成する基としては、ホスホリル基、スルホキシド基、スルホニル基、カルボニル基、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレイド基、3級アミノ基、及び含窒素芳香族基などが挙げられる。その中でも好ましいのはホスホリル基、スルホキシド基、アミド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレタン基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレイド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)を有する化合物である。
本発明で、特に好ましい水素結合性の化合物は下記一般式(D)で表される化合物である。
Figure 2006337825
一般式(D)においてR21ないしR23は各々独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はヘテロ環基を表し、これらの基は無置換であっても置換基を有していてもよい。
21ないしR23が置換基を有する場合の置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、及びホスホリル基などが挙げられ、置換基として好ましいのはアルキル基又はアリール基でたとえばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−オクチル基、フェニル基、4−アルコキシフェニル基、及び4−アシルオキシフェニル基などが挙げられる。
21ないしR23のアルキル基としては具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、及び2−フェノキシプロピル基などが挙げられる。
アリール基としてはフェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基、4−t−ブチルフェニル基、4−t−オクチルフェニル基、4−アニシジル基、及び3,5−ジクロロフェニル基などが挙げられる。
アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−メチルシクロヘキシルオキシ基、及びベンジルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としてはフェノキシ基、クレジルオキシ基、イソプロピルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、ナフトキシ基、及びビフェニルオキシ基等が挙げられる。
アミノ基としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、N−メチル−N−ヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、及びN−メチル−N−フェニルアミノ基等が挙げられる。
21ないしR23としてはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基が好ましい。本発明の効果の点ではR21ないしR23のうち少なくとも一つ以上がアルキル基又はアリール基であることが好ましく、二つ以上がアルキル基又はアリール基であることがより好ましい。また、安価に入手する事ができるという点ではR21ないしR23が同一の基である場合が好ましい。
以下に本発明における一般式(D)の化合物をはじめとする水素結合性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2006337825
水素結合性化合物の具体例は上述の他に欧州特許1096310号明細書、特開2002−156727号、特開2002−318431号に記載のものがあげられる。
本発明における一般式(D)の化合物は、還元剤と同様に溶液形態、乳化分散形態、固体分散微粒子分散物形態で塗布液に含有せしめ、熱現像感光材料中で使用することができるが、固体分散物として使用することが好ましい。これらの化合物は、溶液状態でフェノール性水酸基、アミノ基を有する化合物と水素結合性の錯体を形成しており、還元剤と本発明における一般式(D)の化合物との組み合わせによっては錯体として結晶状態で単離することができる。
このようにして単離した結晶粉体を固体分散微粒子分散物として使用することは安定した性能を得る上で特に好ましい。また、還元剤と本発明における一般式(D)の化合物を粉体で混合し、適当な分散剤を使って、サンドグラインダーミル等で分散時に錯形成させる方法も好ましく用いることができる。
本発明における一般式(D)の化合物は、還元剤に対して、1モル%以上200モル%以下の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10モル%以上150モル%以下の範囲で、さらに好ましくは20モル%以上100モル%の範囲である。
(ハロゲン化銀の説明)
1)ハロゲン組成
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、ハロゲン組成として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀、ヨウ化銀を用いることができる。その中でも臭化銀、ヨウ臭化銀及びヨウ化銀が好ましい。粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を好ましく用いることができる。構造として好ましいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。また塩化銀、臭化銀又は塩臭化銀粒子の表面に臭化銀やヨウ化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
2)粒子サイズ
本発明における感光性ハロゲン化銀の粒子サイズには、2つの好ましい領域が存在する。
一つの領域は、微粒子領域であり、好ましくは0.20μm以下、より好ましくは0.01μm以上0.15μm以下、更に好ましくは0.02μm以上0.12μm以下である。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子の投影面積(平板粒子の場合は主平面の投影面積)と同面積の円像に換算したときの直径をいう。
もう一つの領域は、平均アスペクト比2以上の平板状粒子であって、より好ましくは平均アスペクト比5以上の平板状粒子であって、平均球相当直径が、好ましくは、0.3μm〜8μmであり、より好ましくは0.5μm〜5μmである。本発明における平均球相当直径は、平板状ハロゲン化銀粒子の体積と同体積の球に換算したときの直径をいう。
本発明における平板状ハロゲン化銀の平均厚みは、0.3μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下である。
3)粒子形成方法
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。また、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法、特開平11−352627号、特開2000−347335号記載の方法も好ましい。
平板粒子の形成方法に関しては、前述の特開昭59−119350号、同59−119344号に記載の方法が好ましく用いられる。
4)粒子形状
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子が好ましい。ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い{100}面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数{100}面の比率は増感色素の吸着における{111}面と{100}面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
本発明におけるハロゲン化銀粒子は、平板状粒子であっても良い。
平板状粒子は、エピタキシャル部を有することが好ましい。
「エピタキシー」及び「エピタキシャル」という用語は、銀塩がホスト平板状粒子により制御される配向(オリエンテーション)をもった結晶形であることを指摘するために、当業界で認められた意味において使用される。
平板状ホスト粒子上に増感部位を作るため、エピタキシャル成長により付着させた銀塩を使用することができる。エピタキシャル成長による付着部位を制御することにより、平板状ホスト粒子の選択的局部増感を行うことができる。したがって、1つ又はそれ以上の規則的な部位に、増感部位を設けることができる。「規則的な」とは、増感部位が、予測可能な秩序ある関係を平板状粒子の主結晶面に対して、好ましくは相互に、保有していることを意味している。平板状粒子の主結晶面に対して、エピタキシャル付着を制御することにより、増感部位の数及び横方向の間隔を制御することが可能である。
本発明において、エピタキシャル接合部は平板粒子の頂点部、主表面上もしくはエッジ部に形成されることができるが、好ましくは、頂点部である。エピタキシャル接合部は平板状粒子に少なくとも1つ、好ましくは2個以上、より好ましくは4個以上である。
特に、平板状ホスト粒子の主結晶面の少なくとも1部分では、銀塩エピタキシーを制御し、実質的にエピタキシャル付着を排除することが好ましい。平板状ホスト粒子においては、銀塩のエピタキシャル付着が、粒子のエッジ及びコーナーの少なくとも一方で起こる傾向にある。
エピタキシャル付着を平板状粒子の選定された部位に限定すると、銀塩を平板状粒子の主面上にランダムにエピタキシャル成長により付着させた場合よりも、感度が良化する。
主結晶面の少なくとも1部には、実質的に銀塩のエピタキシャル付着が起こらないようにして、選定された部位に、限定した範囲で銀塩を付着させる。当該付着範囲は、本発明から逸脱することなく広範囲に変えることができる。一般に、主結晶面のエピタキシャル被覆量が減少するにつれて、感度の増大が大きくなる。エピタキシャル成長により付着される銀塩を、平板状粒子の主結晶面の面積の2分の1未満、好ましくは25%未満にすることが好ましい。平板状ハロゲン化銀粒子のコーナーに、エピタキシャル成長による銀塩の付着がなされている場合には、平板状粒子の主結晶面の面積の10%未満、さらに5%未満に制限することが好ましい。ある態様では、エピタキシャル付着は平板状粒子のエッジ表面上で始まることが観察された。したがって、条件によっては、選定されたエッジ部位にエピタキシーが限定され、主結晶面におけるエピタキシーが有効に排除される。
潜像中心を有する粒子を完全に現像すると、潜像中心の場所及び数を決定することができない。しかしながら、潜像中心のすぐ近くより現像範囲が広がる前に現像を阻止し、部分現像された粒子を拡大して観察すると、部分現像部位を明確に見ることができる。これらの部位は、一般に潜像中心に対応し、かかる潜像中心は、一般に増感部位に対応する。
エピタキシーにより付着される銀塩は、一般にハロゲン化銀粒子上でエピタキシャル成長が可能で、かつ写真において有効であることが従来知られている任意の銀塩の中から選ぶことができる。特に、銀塩は、コアーシェルハロゲン化銀乳剤のシェル形成に有効であると従来から知られているものの中から、選択することが好適である。公知の写真学的に有用なハロゲン化銀すべての他に、銀塩としてハロゲン化銀粒子上に析出し得ることが知られている他の銀塩、例えばシアン化銀、炭酸銀、フェリシアン化銀、砒酸銀又は亜砒酸銀、及びクロム酸銀が挙げられる。またこれらの混合物であってもよい。中でも、塩化銀、臭化銀、チオシアン酸銀とそれらの混合物が好ましく、特に少なくとも臭化銀を含有するのが好ましい。
5)重金属
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表(第1〜18族までを示す)の第6族〜第13族の金属又は金属錯体を含有することができる。好ましくは第6族〜第10族の金属又は金属錯体を含有する。周期律表の第6族〜第10族の金属又は金属錯体の中心金属として好ましくは、鉄、ロジウム、ルテニウム、及びイリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10-9モルから1×10-3モルの範囲が好ましい。これらの重金属や金属錯体及びそれらの添加法については特開平7−225449号、特開平11−65021号段落番号0018〜0024、特開平11−119374号段落番号0227〜0240に記載されている。
本発明においては、六シアノ金属錯体を粒子最表面に存在させたハロゲン化銀粒子が好ましい。六シアノ金属錯体としては、[Fe(CN)64-、[Fe(CN)63-、[Ru(CN)64-、[Os(CN)64-、[Co(CN)63-、[Rh(CN)63-、[Ir(CN)63-、[Cr(CN)63-、[Re(CN)63-などが挙げられる。本発明においては六シアノFe錯体が好ましい。
六シアノ金属錯体は、水溶液中でイオンの形で存在するので対陽イオンは重要ではないが、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン及びリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン(例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン)を用いることが好ましい。
六シアノ金属錯体は、水の他に水と混和しうる適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、又はアミド類等)との混合溶媒やゼラチンと混和して添加することができる。
六シアノ金属錯体の添加量は、銀1モル当たり1×10-5モル以上1×10-2モル以下が好ましく、より好ましくは1×10-4モル以上1×10-3モル以下である。
六シアノ金属錯体をハロゲン化銀粒子最表面に存在させるには、六シアノ金属錯体を、粒子形成に使用する硝酸銀水溶液を添加終了した後、硫黄増感、セレン増感及びテルル増感のカルコゲン増感や金増感等の貴金属増感を行う化学増感工程の前までの仕込工程終了前、水洗工程中、分散工程中、又は化学増感工程前に直接添加する。ハロゲン化銀微粒子を成長させないためには、粒子形成後速やかに六シアノ金属錯体を添加することが好ましく、仕込工程終了前に添加することが好ましい。
尚、六シアノ金属錯体の添加は、粒子形成をするために添加する硝酸銀の総量の96質量%を添加した後から開始してもよく、98質量%添加した後から開始するのがより好ましく、99質量%添加した後が特に好ましい。
これら六シアノ金属錯体を粒子形成の完了する直前の硝酸銀水溶液を添加した後に添加すると、ハロゲン化銀粒子最表面に吸着することができ、そのほとんどが粒子表面の銀イオンと難溶性の塩を形成する。この六シアノ鉄(II)の銀塩は、AgIよりも難溶性の塩であるため、微粒子による再溶解を防ぐことができ、粒子サイズが小さいハロゲン化銀微粒子を製造することが可能となった。
さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に含有することのできる金属原子(例えば[Fe(CN)64-)、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法については特開平11−84574号段落番号0046〜0050、特開平11−65021号段落番号0025〜0031、特開平11−119374号段落番号0242〜0250に記載されている。
6)ゼラチン
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンが使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持することが必要であり、分子量は、10,000〜1,000,000のゼラチンを使用することが好ましい。また、ゼラチンの置換基をフタル化処理することも好ましい。これらのゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、粒子形成時に使用することが好ましい。
7)増感色素
本発明に適用できる増感色素としてはハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。増感色素及び添加法については、特開平11−65021号の段落番号0103〜0109、特開平10−186572号一般式(II)で表される化合物、特開平11−119374号の一般式(I)で表される色素及び段落番号0106、米国特許第5,510,236号、同第3,871,887号実施例5に記載の色素、特開平2−96131号、特開昭59−48753号に開示されている色素、欧州特許公開第0803764A1号の第19ページ第38行〜第20ページ第35行、特開2001−272747号、特開2001−290238号、特開2002−23306号等に記載されている。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよい。本発明において増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、脱塩工程後、塗布までの時期が好ましく、より好ましくは脱塩後から化学熟成が終了する前までの時期である。
本発明における増感色素の添加量は、感度やかぶりの性能に合わせて所望の量にすることができるが、画像形成層のハロゲン化銀1モル当たり10-6モル〜1モルが好ましく、さらに好ましくは10-4モル〜10-1モルである。
本発明は分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることができる。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開第587,338号、米国特許第3,877,943号、同第4,873,184号、特開平5−341432号、同11−109547号、同10−111543号等に記載の化合物が挙げられる。
8)化学増感
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、上記カルコゲン増感と組み合わせて金増感法にて化学増感されていてもよい。金増感剤としては、金の価数が+1価又は+3価が好ましく、金増感剤としては通常用いられる金化合物が好ましい。代表的な例としては塩化金酸、臭化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムブロロオーレート、オーリックトリクロライド、カリウムオーリックチオシアネート、カリウムヨードオーレート、テトラシアノオーリックアシド、アンモニウムオーロチオシアネート、又はピリジルトリクロロゴールドなどが好ましい。また、米国特許第5858637号、特開2002−278016号に記載の金増感剤も好ましく用いられる。
本発明においては、化学増感は粒子形成後で塗布前であればいかなる時期でも可能であり、脱塩後、(1)分光増感前、(2)分光増感と同時、(3)分光増感後、(4)塗布直前等があり得る。
本発明で用いられる硫黄、セレン及びテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10-8モル以上10-2モル以下、好ましくは10-7モル以上10-3モル以下程度を用いる。
金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10-7モル以上10-3モル以下、より好ましくは10-6モル以上5×10-4モル以下である。
本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、温度としては40℃〜95℃程度である。
本発明の化学増感剤に加えて公知の不安定硫黄化合物、不安定セレン化合物および不安定テルル化合物から任意に選択した硫黄、セレン、およびテルル増感剤を併用することができる。
本発明の化学増感時に、水溶性チオシアン酸塩(例えばチオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウムなど)を用いることが好ましい。その使用量は任意に選択することができるが、ハロゲン化銀の銀1モル当たり1×10-4モル以上で、さらに1×10-3モル以上で、好ましくは2×10-3モル以上で8×10-1モル以下が、さらに3×10-3モル以上で2×10-1モル以下が、とくに5×10-3モル以上で1×10-1モル以下が好ましい。
また、本発明の熱現像感光材料は、水溶性チオシアン酸塩をハロゲン化銀1モル当たり1×10-3モル以上で、8×10-1モル以下含有することが特に好ましい。
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開第293,917号公報に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、還元剤を用いることが好ましい。還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、アミノイミノメタンスルフィン酸が好ましく、その他に塩化第一スズ、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることが好ましい。還元増感剤の添加は、結晶成長から塗布直前の調製工程までの感光乳剤製造工程のどの過程でも良い。また、乳剤のpHを7以上又はpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することが好ましく、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することも好ましい。
9)1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物
本発明における熱現像感光材料は、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物を含有することが好ましい。該化合物は、単独、あるいは前記の種々の化学増感剤と併用して用いられ、ハロゲン化銀の感度増加をもたらすことができる。
本発明のハロゲン化銀写真感光材料に含有される1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物とは以下のタイプ1、タイプ2から選ばれる化合物である。
(タイプ1)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ2)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
まずタイプ1の化合物について説明する。
タイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子を放出し得る化合物としては、特開平9−211769号(具体例:28頁〜32頁の表Eおよび表Fに記載の化合物PMT−1〜S−37)、特開平9−211774号、特開平11−95355号(具体例:化合物INV1〜36)、特表2001−500996号(具体例:化合物1〜74、80〜87、92〜122)、米国特許5,747,235号、米国特許5,747,236号、欧州特許786692A1号(具体例:化合物INV1〜35)、欧州特許893732A1号、米国特許6,054,260号、米国特許5,994,051号などの特許に記載の「1光子2電子増感剤」または「脱プロトン化電子供与増感剤」と称される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
またタイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(1)(特開2003−114487号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(2)(特開2003−114487号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(3)(特開2003−114488号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(4)(特開2003−114488号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(5)(特開2003−114488号に記載の一般式(3)と同義)、一般式(6)(特開2003−75950号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(7)(特開2003−75950号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(8)(特開2004−239943号に記載の一般式(1)と同義)、または化学反応式(1)(特開2004−245929号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物のうち一般式(9)(特開2004−245929号に記載の一般式(3)と同義)で表される化合物が挙げられる。またこれらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
Figure 2006337825
一般式(1)及び(2)中、RED1、RED2は還元性基を表す。R1は炭素原子(C)とRED1とともに5員もしくは6員の芳香族環(芳香族ヘテロ環を含む)のテトラヒドロ体、もしくはヘキサヒドロ体に相当する環状構造を形成しうる非金属原子団を表す。R2、R3、R4は水素原子または置換基を表す。Lv1、Lv2は脱離基を表す。EDは電子供与性基を表す。
Figure 2006337825
一般式(3)、(4)及び(5)中、Z1は窒素原子とベンゼン環の2つの炭素原子とともに6員環を形成しうる原子団を表す。R5、R6、R7、R9、R10、R11、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19は水素原子または置換基を表す。R20は水素原子または置換基を表すが、R20がアリール基以外の基を表すとき、R16、R17は互いに結合して芳香族環または芳香族ヘテロ環を形成する。R8、R12はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、m1は0〜3の整数を表し、m2は0〜4の整数を表す。Lv3、Lv4、Lv5は脱離基を表す。
Figure 2006337825
一般式(6)および(7)中、RED3、RED4は還元性基を表す。R21〜R30は水素原子または置換基を表す。Z2は−CR111112−、−NR113−、または−O−を表す。R111、R112はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。R113は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
Figure 2006337825
一般式(8)中、RED5は還元性基でありアリールアミノ基またはヘテロ環アミノ基を表す。R31は水素原子または置換基を表す。Xはアルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。Lv6は脱離基でありカルボキシ基もしくはその塩または水素原子を表す。
Figure 2006337825
一般式(9)で表される化合物は脱炭酸を伴う2電子酸化が起こった後に、さらに酸化される事で化学反応式(1)で表される結合形成反応を起こす化合物である。化学反応式(1)中、R32、R33は水素原子または置換基を表す。Z3はC=Cとともに5員または6員のヘテロ環を形成する基を表す。Z4はC=Cとともに5員または6員のアリール基またはヘテロ環基を形成する基を表す。Mはラジカル、ラジカルカチオン、またはカチオンを表す。一般式(9)中、R32、R33、Z3は化学反応式(1)中のものと同義である。Z5はC−Cとともに5員または6員の環状脂肪族炭化水素基またはヘテロ環基を形成する基を表す。
次にタイプ2の化合物について説明する。
タイプ2の化合物で1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(10)(特開2003−140287号に記載の一般式(1)と同義)、化学反応式(1)(特開2004−245929号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物であって一般式(11)(特開2004−245929号に記載の一般式(2)と同義)で表される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
Figure 2006337825
一般式(10)中、RED6は1電子酸化される還元性基をあらわす。YはRED6が1電子酸化されて生成する1電子酸化体と反応して、新たな結合を形成しうる炭素−炭素2重結合部位、炭素−炭素3重結合部位、芳香族基部位、またはベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環部位を含む反応性基を表す。QはRED6とYを連結する連結基を表す。
Figure 2006337825
一般式(11)で表される化合物は酸化される事で化学反応式(1)で表される結合形成反応を起こす化合物である。化学反応式(1)中、R32、R33は水素原子または置換基を表す。Z3はC=Cとともに5員または6員のヘテロ環を形成する基を表す。Z4はC=Cとともに5員または6員のアリール基またはヘテロ環基を形成する基を表す。Z5はC−Cとともに5員または6員の環状脂肪族炭化水素基またはヘテロ環基を形成する基を表す。Mはラジカル、ラジカルカチオン、またはカチオンを表す。一般式(11)中、R32、R33、Z3、Z4は化学反応式(1)中のものと同義である。
タイプ1、2の化合物のうち好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物」であるか、または「分子内に、分光増感色素の部分構造を有する化合物」である。ハロゲン化銀への吸着性基とは特開2003−156823号明細書の16頁右1行目〜17頁右12行目に記載の基が代表的なものである。分光増感色素の部分構造とは同明細書の17頁右34行目〜18頁左6行目に記載の構造である。
タイプ1、2の化合物として、より好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を少なくとも1つ有する化合物」である。さらに好ましくは「同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上有する化合物」である。吸着性基が単一分子内に2個以上存在する場合には、それらの吸着性基は同一であっても異なっても良い。
吸着性基として好ましくは、メルカプト置換含窒素ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズオキサゾール基、2−メルカプトベンズチアゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基など)、またはイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えば、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)である。特に好ましくは、5−メルカプトテトラゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、およびベンゾトリアゾール基であり、最も好ましいのは、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、および5−メルカプトテトラゾール基である。
吸着性基として、分子内に2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する場合もまた特に好ましい。ここにメルカプト基(−SH)は、互変異性化できる場合にはチオン基となっていてもよい。2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する吸着性基(ジメルカプト置換含窒素ヘテロ環基など)の好ましい例としては、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基が挙げられる。
また窒素またはリンの4級塩構造も吸着性基として好ましく用いられる。窒素の4級塩構造としては具体的にはアンモニオ基(トリアルキルアンモニオ基、ジアルキルアリール(またはヘテロアリール)アンモニオ基、アルキルジアリール(またはヘテロアリール)アンモニオ基など)または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。リンの4級塩構造としては、ホスホニオ基(トリアルキルホスホニオ基、ジアルキルアリール(またはヘテロアリール)ホスホニオ基、アルキルジアリール(またはヘテロアリール)ホスホニオ基、トリアリール(またはヘテロアリール)ホスホニオ基など)が挙げられる。より好ましくは窒素の4級塩構造が用いられ、さらに好ましくは4級化された窒素原子を含む5員環あるいは6員環の含窒素芳香族ヘテロ環基が用いられる。特に好ましくはピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基が用いられる。これら4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基は任意の置換基を有していてもよい。
4級塩の対アニオンの例としては、ハロゲンイオン、カルボキシレートイオン、スルホネートイオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、BF4 -、PF6 -、及びPh4-等が挙げられる。分子内にカルボキシレート基等に負電荷を有する基が存在する場合には、それとともに分子内塩を形成していても良い。分子内にない対アニオンとしては、塩素イオン、ブロモイオンまたはメタンスルホネートイオンが特に好ましい。
吸着性基として窒素またはリンの4級塩構造有するタイプ1、2で表される化合物の好ましい構造は一般式(X)で表される。
Figure 2006337825
一般式(X)においてP、Rはそれぞれ独立して増感色素の部分構造ではない窒素またはリンの4級塩構造を表す。Q1、Q2はそれぞれ独立して連結基を表し、具体的には単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、−O−、−S−、−NRN−、−C(=O)−、−SO2−、−SO−、−P(=O)−の各基の単独、またはこれらの基の組み合わせからなる基を表す。ここにRNは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。Sはタイプ(1)または(2)で表される化合物から原子を一つ取り除いた残基である。iとjは1以上の整数であり、i+jが2〜6になる範囲から選ばれるものである。好ましくはiが1〜3、jが1〜2の場合であり、より好ましくはiが1または2、jが1の場合であり、特に好ましくはiが1、jが1の場合である。一般式(X)で表される化合物はその総炭素数が10〜100の範囲のものが好ましい。より好ましくは10〜70、さらに好ましくは11〜60であり、特に好ましくは12〜50である。
本発明におけるタイプ1、タイプ2の化合物は、感光性ハロゲン化銀乳剤調製時、熱現像感光材料製造工程中のいかなる場合にも使用しても良い。例えば感光性ハロゲン化銀粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前などである。またこれらの工程中の複数回に分けて添加することもできる。添加位置として好ましくは、感光性ハロゲン化銀粒子形成終了時から脱塩工程の前、化学増感時(化学増感開始直前から終了直後)、塗布前であり、より好ましくは化学増感時から非感光性有機銀塩と混合される前までである。
本発明におけるタイプ1、タイプ2の化合物は、水、メタノール、又はエタノールなどの水可溶性溶媒又はこれらの混合溶媒に溶解して添加することが好ましい。水に溶解する場合、pHを高く又は低くした方が溶解度が上がる化合物については、pHを高く又は低くして溶解し、これを添加しても良い。
本発明におけるタイプ1、タイプ2の化合物は感光性ハロゲン化銀と非感光性有機銀塩を含有する画像形成層中に使用するのが好ましいが、感光性ハロゲン化銀と非感光性有機銀塩を含有する画像形成層と共に保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。これらの化合物の添加時期は、増感色素の前後を問わず、それぞれ好ましくはハロゲン化銀1モル当り、1×10-9モル〜5×10-1モル、更に好ましくは1×10-8モル〜5×10-2モルの割合でハロゲン化銀乳剤層(画像形成層)に含有する。
10)吸着基と還元基を有する吸着性レドックス化合物
本発明においては、分子内にハロゲン化銀への吸着基と還元基を有する吸着性レドックス化合物を含有させることが好ましい。本吸着性レドックス化合物は下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
式(I) A−(W)n−B
式(I)中、Aはハロゲン化銀に吸着可能な基(以後、吸着基と呼ぶ)を表し、Wは2価の連結基を表し、nは0又は1を表し、Bは還元基を表す。
式(I)中、Aで表される吸着基とはハロゲン化銀に直接吸着する基、又はハロゲン化銀への吸着を促進する基であり、具体的には、メルカプト基(又はその塩)、チオン基(−C(=S)−)、窒素原子、硫黄原子、セレン原子及びテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基、スルフィド基、ジスルフィド基、カチオン性基、又はエチニル基等が挙げられる。
吸着基としてメルカプト基(又はその塩)とは、メルカプト基(又はその塩)そのものを意味すると同時に、より好ましくは、少なくとも1つのメルカプト基(又はその塩)の置換したヘテロ環基又はアリール基又はアルキル基を表す。ここにヘテロ環基とは、少なくとも5員〜7員の、単環若しくは縮合環の、芳香族又は非芳香族のヘテロ環基、例えばイミダゾール環基、チアゾール環基、オキサゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、トリアゾール環基、チアジアゾール環基、オキサジアゾール環基、テトラゾール環基、プリン環基、ピリジン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、ピリミジン環基、又はトリアジン環基等が挙げられる。また4級化された窒素原子を含むヘテロ環基でもよく、この場合、置換したメルカプト基が解離してメソイオンとなっていても良い。メルカプト基が塩を形成するとき、対イオンとしてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などのカチオン(Li+、Na+、K+、Mg2+、Ag+、又はZn2+等)、アンモニウムイオン、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
吸着基としてのメルカプト基はさらにまた、互変異性化してチオン基となっていても良い。
吸着基としてチオン基とは、鎖状若しくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、又はジチオカルバミン酸エステル基も含まれる。
吸着基として窒素原子、硫黄原子、セレン原子及びテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基とは、イミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基、又は配位結合で銀イオンに配位し得る、"−S−"基又は"−Se−"基又は"−Te−"基又は"=N−"基をヘテロ環の部分構造として有するヘテロ環基で、前者の例としてはベンゾトリアゾール基、トリアゾール基、インダゾール基、ピラゾール基、テトラゾール基、ベンゾイミダゾール基、イミダゾール基、プリン基などが、後者の例としてはチオフェン基、チアゾール基、オキサゾール基、ベンゾチオフェン基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基、トリアジン基、セレノアゾール基、ベンゾセレノアゾール基、テルルアゾール基、及びベンゾテルルアゾール基などが挙げられる。
吸着基としてスルフィド基又はジスルフィド基とは、−S−、又は−S−S−の部分構造を有する基すべてが挙げられる。
吸着基としてカチオン性基とは、4級化された窒素原子を含む基を意味し、具体的にはアンモニオ基又は4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基とは、例えばピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基、及びイミダゾリオ基などが挙げられる。
吸着基としてエチニル基とは、−C≡CH基を意味し、該水素原子は置換されていてもよい。
上記の吸着基は任意の置換基を有していてもよい。
さらに吸着基の具体例としては、さらに特開平11−95355号の明細書p4〜p7に記載されているものが挙げられる。
式(I)中、Aで表される吸着基として好ましいものは、メルカプト置換ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、2−メルカプト−5−アミノチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズイミダゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基、2,5−ジメルカプト−1,3−チアゾール基など)、又はイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えばベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)であり、さらに好ましい吸着基は2−メルカプトベンズイミダゾール基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基である。
式(I)中、Wは2価の連結基を表す。該連結基は写真性に悪影響を与えないものであればどのようなものでも構わない。例えば炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子から構成される2価の連結基が利用できる。具体的には炭素数1〜20のアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、又はヘキサメチレン基等)、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基、炭素数6〜20のアリーレン基(例えばフェニレン基、ナフチレン基等)、−CO−、−SO2−、−O−、−S−、−NR1−、これらの連結基の組み合わせ等があげられる。
ここでR1は水素原子、アルキル基、ヘテロ環基、又はアリール基を表わす。
Wで表される連結基は任意の置換基を有していてもよい。
式(I)中、Bで表される還元基とは銀イオンを還元可能な基を表し、例えばホルミル基、アミノ基、アセチレン基やプロパルギル基などの3重結合基、メルカプト基、ヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシウレタン類、ヒドロキシセミカルバジド類、レダクトン類(レダクトン誘導体を含む)、アニリン類、フェノール類(クロマン−6−オール類、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−オール類、アミノフェノール類、スルホンアミドフェノール類、及びハイドロキノン類、カテコール類、レゾルシノール類、ベンゼントリオール類、ビスフェノール類のようなポリフェノール類を含む)、アシルヒドラジン類、カルバモイルヒドラジン類、3−ピラゾリドン類等から水素原子を1つ除去した残基が挙げられる。もちろん、これらは任意の置換基を有していても良い。
式(I)中、Bで表される還元基はその酸化電位を、藤嶋昭著「電気化学測定法」(150頁−208頁、技報堂出版)や日本化学会編著「実験化学講座」第4版(9巻282−344頁、丸善)に記載の測定法を用いて測定することができる。例えば回転ディスクボルタンメトリーの技法で、具体的には試料をメタノール:pH6.5 ブリトン−ロビンソン緩衝液(Britton−Robinson buffer)=10%:90%(容量%)の溶液に溶解し、10分間窒素ガスを通気した後、グラッシーカーボン製の回転ディスク電極(RDE)を作用電極に用い、白金線を対極に用い、飽和カロメル電極を参照電極に用いて、25℃、1000回転/分、20mV/秒のスイープ速度で測定できる。得られたボルタモグラムから半波電位(E1/2)を求めることができる。
本発明におけるBで表される還元基は上記測定法で測定した場合、その酸化電位が約−0.3V〜約1.0Vの範囲にあることが好ましい。より好ましくは約−0.1V〜約0.8Vの範囲であり、特に好ましくは約0V〜約0.7Vの範囲である。
式(I)中、Bで表される還元基は好ましくはヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシセミカルバジド類、レダクトン類、フェノール類、アシルヒドラジン類、カルバモイルヒドラジン類、又は3−ピラゾリドン類から水素原子を1つ除去した残基である。
本発明における式(I)の化合物は、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基又はポリマー鎖が組み込まれているものでもよい。またポリマーとしては、例えば特開平1−100530号に記載のものが挙げられる。
本発明における式(I)の化合物はビス体、トリス体であっても良い。本発明における式(I)の化合物の分子量は好ましくは100〜10000の間であり、より好ましくは120〜1000の間であり、特に好ましくは150〜500の間である。
以下に本発明における式(I)の化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2006337825
さらに欧州特許1308776A2号明細書p73〜p87に記載の具体的化合物1〜30、1"−1〜1"−77も本発明における吸着基と還元性基を有する化合物の好ましい例として挙げられる。
これらの化合物は公知の方法にならって容易に合成することができる。本発明における式(I)の化合物は、一種類の化合物を単独で用いてもよいが、同時に2種以上の化合物を用いることも好ましい。2種類以上の化合物を用いる場合、それらは同一層に添加しても、別層に添加してもよく、またそれぞれ添加方法が異なっていてもよい。
本発明における式(I)の化合物は、ハロゲン化銀乳剤層(画像形成層)に添加されることが好ましく、乳剤調製時に添加することがより好ましい。乳剤調製時に添加する場合、その工程中のいかなる場合に添加することも可能であり、その例を挙げると、ハロゲン化銀の粒子形成工程、脱塩工程の開始前、脱塩工程、化学熟成の開始前、化学熟成の工程、完成乳剤調製前の工程などを挙げることができる。またこれらの工程中の複数回にわけて添加することもできる。また画像形成層に使用するのが好ましいが、画像形成層とともに隣接する保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。
好ましい添加量は、上述した添加法や添加する化合物種に大きく依存するが、一般には感光性ハロゲン化銀1モル当たり、1×10-6モル以上1モル以下、好ましくは1×10-5モル以上5×10-1モル以下、さらに好ましくは1×10-4モル以上1×10-1モル以下である。
本発明における式(I)の化合物は、水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒又はこれらの混合溶媒に溶解して添加することができる。この際、酸又は塩基によってpHを適当に調整してもよく、また界面活性剤を共存させてもよい。さらに乳化分散物として高沸点有機溶媒に溶解させて添加することもできる。また、固体分散物として添加することもできる。
11)ハロゲン化銀の複数併用
本発明に用いられる熱現像感光材料中の感光性ハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。感度の異なる感光性ハロゲン化銀を複数種用いることで階調を調節することができる。これらに関する技術としては特開昭57−119341号、同53−106125号、同47−3929号、同48−55730号、同46−5187号、同50−73627号、同57−150841号などが挙げられる。感度差としてはそれぞれの乳剤で0.2logE以上の差を持たせることが好ましい。
12)塗布量
感光性ハロゲン化銀の添加量は、感材1m2当たりの塗布銀量で示して、0.03g/m2以上0.6g/m2以下であることが好ましく、0.05g/m2以上0.4g/m2以下であることがさらに好ましく、0.07g/m2以上0.3g/m2以下であることが最も好ましく、有機銀塩1モルに対しては、感光性ハロゲン化銀は0.01モル以上0.5モル以下が好ましく、より好ましくは0.02モル以上0.3モル以下、さらに好ましくは0.03モル以上0.2モル以下である。
13)感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合
別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法及び混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。また、混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましい方法である。
14)ハロゲン化銀の塗布液への混合
ハロゲン化銀の画像形成層塗布液中への好ましい添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳「液体混合技術」(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
(バインダーの説明)
本発明における画像形成層のバインダーは、いかなるポリマーを使用してもよく、好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然樹脂やポリマー及びコポリマー、合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン類、ゴム類、ポリ(ビニルアルコール)類、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリ(ビニルピロリドン)類、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)類、ポリ(メチルメタクリル酸)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(メタクリル酸)類、スチレン−無水マレイン酸共重合体類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体類、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(オレフィン)類、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水又は有機溶媒又はエマルションから被覆形成してもよい。
本発明では、有機銀塩を含有する層に併用できるバインダーのガラス転移温度は0℃以上80℃以下である(以下、高Tgバインダーということあり)ことが好ましく、10℃〜70℃であることがより好ましく、15℃以上60℃以下であることが更に好ましい。
なお、本明細書においてTgは下記の式で計算した。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの質量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)はPolymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup,E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用した。
バインダーは必要に応じて2種以上を併用しても良い。また、ガラス転移温度が20℃以上のものとガラス転移温度が20℃未満のものを組み合わせて用いてもよい。Tgの異なるポリマーを2種以上ブレンドして使用する場合には、その質量平均Tgが上記の範囲にはいることが好ましい。
本発明においては、画像形成層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布、乾燥して被膜を形成させることが好ましい。
本発明においては、画像形成層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成される場合に、さらに画像形成層のバインダーが水系溶媒(水溶媒)に可溶又は分散可能である場合に、特に25℃60%RHでの平衡含水率が2質量%以下のポリマーのラテックスからなる場合に性能が向上する。最も好ましい形態は、イオン伝導度が2.5mS/cm以下になるように調製されたものであり、このような調製法としてポリマー合成後分離機能膜を用いて精製処理する方法が挙げられる。
ここでいう前記ポリマーが可溶又は分散可能である水系溶媒とは、水又は水に70質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合したものである。水混和性の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系、酢酸エチル、ジメチルホルムアミドなどを挙げることができる。
なお、ポリマーが熱力学的に溶解しておらず、いわゆる分散状態で存在している系の場合にも、ここでは水系溶媒という言葉を使用する。
また「25℃60%RHにおける平衡含水率」とは、25℃60%RHの雰囲気下で調湿平衡にあるポリマーの質量W1と25℃で絶乾状態にあるポリマーの質量W0を用いて以下のように表すことができる。
25℃60%RHにおける平衡含水率={(W1−W0)/W0}×100(質量%)
含水率の定義と測定法については、例えば高分子工学講座14、高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)を参考にすることができる。
本発明におけるバインダーポリマーの25℃60%RHにおける平衡含水率は、2質量%以下であることが好ましいが、より好ましくは0.01質量%以上1.5質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以上1質量%以下が望ましい。
本発明においては水系溶媒に分散可能なポリマーが特に好ましい。分散状態の例としては、水不溶な疎水性ポリマーの微粒子が分散しているラテックスやポリマー分子が分子状態又はミセルを形成して分散しているものなどいずれでもよいが、ラテックス分散した粒子がより好ましい。分散粒子の平均粒径は1nm以上50000nm以下、好ましくは5nm以上1000nm以下の範囲で、より好ましくは10nm以上500nm以下の範囲、さらに好ましくは50nm以上200nm以下の範囲である。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。単分散の粒径分布を持つものを2種以上混合して使用することも塗布液の物性を制御する上で好ましい使用法である。
本発明において水系溶媒に分散可能なポリマーの好ましい態様としては、アクリル系ポリマー、ポリ(エステル)類、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリ(ウレタン)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(オレフィン)類等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができる。これらポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。これらポリマーの分子量は数平均分子量で5000以上1000000以下、好ましくは10000以上200000以下がよい。分子量が小さすぎるものは画像形成層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く好ましくない。また、架橋性のポリマーラッテクスは特に好ましく使用される。
(ラテックスの具体例)
好ましいポリマーラテックスの具体例としては以下のものを挙げることができる。以下では原料モノマーを用いて表し、括弧内の数値は質量%、分子量は数平均分子量である。多官能モノマーを使用した場合は架橋構造を作るため分子量の概念が適用できないので架橋性と記載し、分子量の記載を省略した。Tgはガラス転移温度を表す。
・P−1;−MMA(70)−EA(27)−MAA(3)−のラテックス(分子量37000、Tg61℃)
・P−2;−MMA(70)−2EHA(20)−St(5)−AA(5)−のラテックス(分子量40000、Tg59℃)
・P−3;−St(50)−Bu(47)−MAA(3)−のラテックス(架橋性、Tg−17℃)
・P−4;−St(68)−Bu(29)−AA(3)−のラテックス(架橋性、Tg17℃)
・P−5;−St(71)−Bu(26)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg24℃)
・P−6;−St(70)−Bu(27)−IA(3)−のラテックス(架橋性)
・P−7;−St(75)−Bu(24)−AA(1)−のラテックス(架橋性、Tg29℃)
・P−8;−St(60)−Bu(35)−DVB(3)−MAA(2)−のラテックス(架橋性)
・P−9;−St(70)−Bu(25)−DVB(2)−AA(3)−のラテックス(架橋性)
・P−10;−VC(50)−MMA(20)−EA(20)−AN(5)−AA(5)−のラテックス(分子量80000)
・P−11;−VDC(85)−MMA(5)−EA(5)−MAA(5)−のラテックス(分子量67000)
・P−12;−Et(90)−MAA(10)−のラテックス(分子量12000)
・P−13;−St(70)−2EHA(27)−AA(3)のラテックス(分子量130000、Tg43℃)
・P−14;−MMA(63)−EA(35)−AA(2)のラテックス(分子量33000、Tg47℃)
・P−15;−St(70.5)−Bu(26.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg23℃)
・P−16;−St(69.5)−Bu(27.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg20.5℃)
・P−17;−St(61.3)−イソプレン(35.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg17℃)
・P−18;−St(67)−イソプレン(28)−Bu(2)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg27℃)
上記構造の略号は以下のモノマーを表す。MMA;メチルメタクリレート,EA;エチルアクリレート、MAA;メタクリル酸,2EHA;2−エチルヘキシルアクリレート,St;スチレン,Bu;ブタジエン,AA;アクリル酸,DVB;ジビニルベンゼン,VC;塩化ビニル,AN;アクリロニトリル,VDC;塩化ビニリデン,Et;エチレン,IA;イタコン酸。
以上に記載したポリマーラテックスは市販もされていて、以下のようなポリマーが利用できる。アクリル系ポリマーの例としては、セビアンA−4635,4718,4601(以上、ダイセル化学工業(株)製)、Nipol Lx811、814、821、820、857(以上、日本ゼオン(株)製)など、ポリ(エステル)類の例としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上、大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上、イーストマンケミカル製)など、ポリ(ウレタン)類の例としては、HYDRAN AP10、20、30、40(以上、大日本インキ化学(株)製)など、ゴム類の例としては、LACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上、大日本インキ化学(株)製)、Nipol Lx416、410、438C、2507(以上、日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニル)類の例としては、G351、G576(以上、日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニリデン)類の例としては、L502、L513(以上、旭化成工業(株)製)など、ポリ(オレフィン)類の例としては、ケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。
これらのポリマーラテックスは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドしてもよい。
(好ましいラテックス)
本発明に用いられるポリマーラテックスとしては、特に、スチレン−ブタジエン共重合体のもしくはスチレン−イソプレン共重合体ラテックスが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体におけるスチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との質量比は40:60〜95:5であることが好ましい。また、スチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との共重合体に占める割合は60〜99質量%であることが好ましい。また、本発明におけるポリマーラッテクスは、アクリル酸又はメタクリル酸をスチレンとブタジエンの和に対して1〜6質量%含有することが好ましく、より好ましくは2〜5質量%含有する。本発明におけるポリマーラテックスは、アクリル酸を含有することが好ましい。好ましいモノマー含量の範囲は前記と同様である。また、スチレン−イソプレン共重合体における共重合体比などはスチレン−ブタジエン共重合体の場合と同じである。
本発明に用いることが好ましいスチレン−ブタジエン酸共重合体のラテックスとしては、前記のP−3〜P−9,15、市販品であるLACSTAR−3307B、7132C、Nipol Lx416等が挙げられる。また、スチレン−イソプレン共重合体の例としては前記のP−16、17が挙げられる。
本発明の熱現像感光材料の画像形成層には必要に応じてゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は画像形成層の全バインダーの30質量%以下、より好ましくは20質量%以下が好ましい。
本発明における有機銀塩含有層(即ち、画像形成層)は、ポリマーラテックスを用いて形成されたものが好ましい。画像形成層のバインダーの量は、全バインダー/有機銀塩の質量比が1/10〜10/1、より好ましくは1/3〜5/1の範囲、さらに好ましくは1/1〜3/1の範囲である。
また、このような有機銀塩含有層は、通常、感光性銀塩である感光性ハロゲン化銀が含有された感光性層(画像形成層)でもあり、このような場合の、全バインダー/ハロゲン化銀の質量比は400〜5、より好ましくは200〜10の範囲である。
本発明における画像形成層の全バインダー量は、好ましくは0.2g/m2以上30g/m2以下、より好ましくは1g/m2以上15g/m2以下、さらに好ましくは2g/m2以上10g/m2以下の範囲である。本発明における画像形成層には、架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
(好ましい塗布液の溶媒)
本発明において熱現像感光材料の画像形成層塗布液の溶媒(ここでは簡単のため、溶媒と分散媒をあわせて溶媒と表す。)は、水を30質量%以上含む水系溶媒が好ましい。水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなど任意の水混和性有機溶媒を用いてよい。塗布液の溶媒の水含有率は50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が好ましい。好ましい溶媒組成の例を挙げると、水の他、水/メチルアルコール=90/10、水/メチルアルコール=70/30、水/メチルアルコール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メチルアルコール/エチルセロソルブ=85/10/5、水/メチルアルコール/イソプロピルアルコール=85/10/5などがある(数値は質量%)。
(かぶり防止剤の説明)
本発明に用いることのできるかぶり防止剤、安定剤及び安定剤前駆体は特開平10−62899号の段落番号0070、欧州特許公開第0803764A1号の第20頁第57行〜第21頁第7行に記載の特許のもの、特開平9−281637号、同9−329864号記載の化合物、米国特許6,083,681号、欧州特許1048975号に記載の化合物が挙げられる。
1)有機ポリハロゲン化合物
以下、本発明で用いることができる好ましい有機ポリハロゲン化合物について具体的に説明する。本発明における好ましいポリハロゲン化合物は下記一般式(H)で表される化合物である。
一般式(H)
Q−(Y)n−C(Z1)(Z2)X
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0〜1を表し、Z1及びZ2はハロゲン原子を表し、Xは水素原子又は電子求引性基を表す。
一般式(H)においてQは好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は窒素原子を少なくとも一つ含むヘテロ環基(ピリジン、キノリン基等)である。
一般式(H)において、Qがアリール基である場合、Qは好ましくはハメットの置換基定数σpが正の値をとる電子求引性基で置換されたフェニル基を表す。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry,1973,Vol.16,No.11,1207−1216等を参考にすることができる。このような電子求引性基としては、例えばハロゲン原子、電子求引性基で置換されたアルキル基、電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基等があげられる。電子求引性基として特に好ましいのは、ハロゲン原子、カルバモイル基、アリールスルホニル基であり、特にカルバモイル基が好ましい。
Xは好ましくは電子求引性基である。好ましい電子求引性基は、ハロゲン原子、脂肪族・アリール若しくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリール若しくは複素環アシル基、脂肪族・アリール若しくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、さらに好ましくはハロゲン原子、カルバモイル基であり、特に好ましくは臭素原子である。
1及びZ2は好ましくは臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは臭素原子である。
Yは好ましくは−C(=O)−、−SO−、−SO2−、−C(=O)N(R)−、−SO2N(R)−を表し、より好ましくは−C(=O)−、−SO2−、−C(=O)N(R)−であり、特に好ましくは−SO2−、−C(=O)N(R)−である。ここでいうRとは水素原子、アリール基又はアルキル基を表し、より好ましくは水素原子又はアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。
nは、0又は1を表し、好ましくは1である。
一般式(H)において、Qがアルキル基の場合、好ましいYは−C(=O)N(R)−であり、Qがアリール基又はヘテロ環基の場合、好ましいYは−SO2−である。
一般式(H)において、該化合物から水素原子を取り去った残基が互いに結合した形態(一般にビス型、トリス型、テトラキス型と呼ぶ)も好ましく用いることができる。
一般式(H)において、解離性基(例えばCOOH基又はその塩、SO3H基又はその塩、PO3H基又はその塩等)、4級窒素カチオンを含む基(例えばアンモニウム基、ピリジニウム基等)、ポリエチレンオキシ基、水酸基等を置換基に有するものも好ましい形態である。
以下に本発明における一般式(H)の化合物の具体例を示す。
Figure 2006337825
上記以外の本発明に用いることができるポリハロゲン化合物としては、US3874946号、US4756999号、US5340712号、US5369000号、US5464737号、US6506548号、特開昭50−137126号、同50−89020号、同50−119624号、同59−57234号、特開平7−2781号、同7−5621号、同9−160164号、同9−244177号、同9−244178号、同9−160167号、同9−319022号、同9−258367号、同9−265150号、同9−319022号、同10−197988号、同10−197989号、同11−242304号、特開2000−2963、特開2000−112070、特開2000−284410、特開2000−284412、特開2001−33911、特開2001−31644、特開2001−312027号、特開2003−50441号明細書の中で当該発明の例示化合物として挙げられている化合物が好ましく用いられるが、特に特開平7−2781号、特開2001−33911、特開2001−312027号に具体的に例示されている化合物が好ましい。
本発明における一般式(H)で表される化合物は画像形成層の非感光性銀塩1モルあたり、10-4モル以上1モル以下の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10-3モル以上0.5モル以下の範囲で、さらに好ましくは1×10-2モル以上0.2モル以下の範囲で使用することが好ましい。
本発明において、かぶり防止剤を熱現像感光材料に含有せしめる方法としては、前記還元剤の含有方法に記載の方法が挙げられ、有機ポリハロゲン化合物についても固体微粒子分散物で添加することが好ましい。
2)その他のかぶり防止剤
その他のかぶり防止剤としては特開平11−65021号段落番号0113の水銀(II)塩、同号段落番号0114の安息香酸類、特開2000−206642号のサリチル酸誘導体、特開2000−221634号の式(S)で表されるホルマリンスカベンジャー化合物、特開平11−352624号の請求項9に係るトリアジン化合物、特開平6−11791号の一般式(III)で表される化合物、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン等が挙げられる。
本発明における熱現像感光材料はかぶり防止を目的としてアゾリウム塩を含有しても良い。アゾリウム塩としては、特開昭59−193447号記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55−12581号記載の化合物、特開昭60−153039号記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。アゾリウム塩は熱現像感光材料のいかなる部位に添加しても良いが、添加層としては画像形成層を有する面の層に添加することが好ましく、画像形成層に添加することがさらに好ましい。アゾリウム塩の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行っても良く、画像形成層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でも良いが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。アゾリウム塩の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行っても良い。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加しても良い。本発明においてアゾリウム塩の添加量としてはいかなる量でも良いが、銀1モル当たり1×10-6モル以上2モル以下が好ましく、1×10-3モル以上0.5モル以下がさらに好ましい。
(その他の添加剤)
1)メルカプト、ジスルフィド、及びチオン類
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができ、特開平10−62899号の段落番号0067〜0069、特開平10−186572号の一般式(I)で表される化合物及びその具体例として段落番号0033〜0052、欧州特許公開第0803764A1号の第20ページ第36〜56行に記載されている。その中でも特開平9−297367号、特開平9−304875号、特開2001−100358号、特開2002−303954号、特開2002−303951号等に記載されているメルカプト置換複素芳香族化合物が好ましい。
2)色調剤
本発明の熱現像感光材料では色調剤の添加が好ましく、色調剤については、特開平10−62899号の段落番号0054〜0055、欧州特許公開第0803764A1号の第21ページ第23〜48行、特開2000−356317号や特開2000−187298号に記載されており、特に、フタラジノン類(フタラジノン、フタラジノン誘導体若しくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノン及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノン類とフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、フタル酸二アンモニウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウム及びテトラクロロ無水フタル酸)との組合せ;フタラジン類(フタラジン、フタラジン誘導体若しくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジン、6−イソプロピルフタラジン、6−t−ブチルフラタジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジン及び2,3−ジヒドロフタラジン);フタラジン類とフタル酸類との組合せが好ましく、特にフタラジン類とフタル酸類の組合せが好ましい。そのなかでも特に好ましい組み合わせは6−イソプロピルフタラジンとフタル酸又は4メチルフタル酸との組み合わせである。
3)可塑剤、潤滑剤
本発明においては膜物理性を改良するために公知の可塑剤、潤滑剤を使用することができる。特に、製造時のハンドリング性や熱現像時の耐傷性を改良するために流動パラフィン、長鎖脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル類等の潤滑剤を使用することが好ましい。特に低沸点成分を除去した流動パラフィンや分岐構造を有する分子量1000以上の脂肪酸エステル類が好ましい。
画像形成層及び非感光層に用いることのできる可塑剤及び潤滑剤については特開平11−65021号段落番号0117、特開2000−5137号、特開2004−219794号、特開2004−219802号、特開2004−334077号に記載されている化合物が好ましい。
4)染料、顔料
本発明における画像形成層には、色調改良、レーザー露光時の干渉縞発生防止、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料(例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 64、C.I.Pigment Blue 15:6)を用いることができる。これらについてはWO98/36322号、特開平10−268465号、同11−338098号等に詳細に記載されている。
5)造核剤
本発明の熱現像感光材料は、画像形成層に造核剤を添加することが好ましい。造核剤やその添加方法及び添加量については、特開平11−65021号公報段落番号0118、特開平11−223898号公報段落番号0136〜0193、特開2000−284399号明細書の式(H)、式(1)〜(3)、式(A)、(B)の化合物、特開2000−347345号明細書記載の一般式(III)〜(V)の化合物(具体的化合物:化21〜化24)、造核促進剤については特開平11−65021号公報段落番号0102、特開平11−223898号公報段落番号0194〜0195に記載されている。
蟻酸や蟻酸塩を強いかぶらせ物質として用いるには、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側に銀1モル当たり5ミリモル以下、さらには1ミリモル以下で含有することが好ましい。
本発明の熱現像感光材料で造核剤を用いる場合には五酸化二リンが水和してできる酸又はその塩を併用して用いることが好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸又はその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸又はその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどがある。
五酸化二リンが水和してできる酸又はその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やかぶりなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1mg/m2以上500mg/m2以下が好ましく、0.5mg/m2以上100mg/m2以下がより好ましい。
(塗布液の調製及び塗布)
本発明における画像形成層塗布液の調製温度は、30℃以上65℃以下が好ましく、さらに好ましい温度は35℃以上60℃未満、より好ましい温度は35℃以上55℃以下である。また、ポリマーラテックス添加直後の画像形成層塗布液の温度が30℃以上65℃以下で維持されることが好ましい。
(層構成及び構成成分)
本発明における画像形成層は、支持体上に一又はそれ以上の層で構成される。一層で構成する場合は有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤及びバインダーよりなり、必要により色調剤、被覆助剤及び他の補助剤などの所望による追加の材料を含む。二層以上で構成する場合は、第1画像形成層(通常は支持体に隣接した層)中に有機銀塩及び感光性ハロゲン化銀を含み、第2画像形成層又は両層中にいくつかの他の成分を含まなければならない。多色感光性熱現像写真材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。多染料多色感光性熱現像写真材料の場合、各画像形成層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各画像形成層の間に官能性若しくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
本発明の熱現像感光材料は、画像形成層に加えて非感光性層を有することができる。非感光性層は、その配置から(a)画像形成層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる表面保護層、(b)複数の画像形成層の間や画像形成層と保護層の間に設けられる中間層、(c)画像形成層と支持体との間に設けられる下塗り層、(d)画像形成層の反対側に設けられるバック層に分類できる。
また、光学フィルターとして作用する層を設けることができるが、(a)又は(b)の層として設けられる。アンチハレーション層は、(c)又は(d)の層として熱現像感光材料に設けられる。
1)表面保護層
本発明における熱現像感光材料は画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。表面保護層は単層でもよいし、複数層であってもよい。
表面保護層については、特開平11−65021号段落番号0119〜0120、特開2000−171936号に記載されている。
本発明における表面保護層のバインダーとしてはゼラチンが好ましいが、ポリビニルアルコール(PVA)を用いる若しくは併用することも好ましい。ゼラチンとしてはイナートゼラチン(例えば新田ゼラチン750)、フタル化ゼラチン(例えば新田ゼラチン801)など使用することができる。PVAとしては、特開2000−171936号の段落番号0009〜0020に記載のものがあげられ、完全けん化物のPVA−105、部分けん化物のPVA−205,PVA−335、変性ポリビニルアルコールのMP−203(以上、クラレ(株)製の商品名)などが好ましく挙げられる。保護層(1層当たり)のポリビニルアルコール塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3g/m2〜4.0g/m2が好ましく、0.3g/m2〜2.0g/m2がより好ましい。
表面保護層(1層当たり)の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3g/m2以上5.0g/m2以下が好ましく、0.3g/m2以上2.0g/m2以下がより好ましい。
また、表面保護層には流動パラフィン、脂肪族エステル等の潤滑剤を使用することが好ましい。潤滑剤の使用量は1mg/m2以上200mg/m2以下の範囲で、好ましくは10mg/m2以上150mg/m2以下、より好ましくは20mg/m2以上100mg/m2以下の範囲である。
2)アンチハレーション層
本発明の熱現像感光材料においては、アンチハレーション層を画像形成層に対して光源から遠い側に設けることができる。
アンチハレーション層については特開平11−65021号段落番号0123〜0124、特開平11−223898号、同9−230531号、同10−36695号、同10−104779号、同11−231457号、同11−352625号、同11−352626号等に記載されている。
アンチハレーション層には、露光波長に吸収を有するアンチハレーション染料を含有する。露光波長が赤外域にある場合には赤外線吸収染料を用いればよく、その場合には可視域に吸収を有しない染料が好ましい。
可視域に吸収を有する染料を用いてハレーション防止を行う場合には、画像形成後には染料の色が実質的に残らないようにすることが好ましく、熱現像の熱により消色する手段を用いることが好ましく、特に非感光性層に熱消色染料と塩基プレカーサーとを添加してアンチハレーション層として機能させることが好ましい。これらの技術については特開平11−231457号等に記載されている。
消色染料の添加量は、染料の用途により決定する。一般には、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を越える量で使用する。光学濃度は、0.15〜2であることが好ましく0.2〜1であることがより好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、一般に0.001g/m2〜1g/m2程度である。
なお、このように染料を消色すると、熱現像後の光学濃度を0.1以下に低下させることができる。二種類以上の消色染料を、熱消色型記録材料や熱現像感光材料において併用してもよい。同様に、二種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。
このような消色染料と塩基プレカーサーを用いる熱消色においては、特開平11−352626号に記載のような塩基プレカーサーと混合すると融点を3℃(deg)以上降下させる物質(例えば、ジフェニルスルホン、4−クロロフェニル(フェニル)スルホン)、2−ナフチルベンゾエート等を併用することが熱消色性等の点で好ましい。
3)バック層
本発明に適用することのできるバック層については特開平11−65021号段落番号0128〜0130に記載されている。
本発明においては、銀色調、画像の経時変化を改良する目的で300nm〜450nmに吸収極大を有する着色剤を添加することができる。このような着色剤は、特開昭62−210458号、同63−104046号、同63−103235号、同63−208846号、同63−306436号、同63−314535号、特開平01−61745号、特開平2001−100363などに記載されている。
このような着色剤は、通常、0.1mg/m2以上1g/m2以下の範囲で添加され、添加する層としては画像形成層の反対側に設けられるバック層が好ましい。
また、ベース色調を調整するために580〜680nmに吸収ピークを有する染料を使用することが好ましい。この目的の染料としては短波長側の吸収強度が小さい特開平4−359967、同4−359968記載のアゾメチン系の油溶性染料、特開2003−295388号記載のフタロシアニン系の水溶性染料が好ましい。この目的の染料はいずれの層に添加してもよいが、画像形成層面側の非感光層又はバック面側に添加することがより好ましい。
本発明における熱現像感光材料は、支持体の一方の側に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤を含む画像形成層を有し、他方の側にバック層を有する、いわゆる片面感光材料であることが好ましい。
4)マット剤
本発明において、搬送性改良のためにマット剤を添加することが好ましく、マット剤については、特開平11−65021号段落番号0126〜0127に記載されている。マット剤は熱現像感光材料1m2当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1mg/m2以上400mg/m2以下、より好ましくは5mg/m2以上300mg/m2以下である。
本発明においてマット剤の形状は定型、不定形のいずれでもよいが好ましくは定型で、球形が好ましく用いられる。
画像形成層面に用いるマット剤の球相当直径の体積加重平均は、0.3μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上7μm以下である事が更に好ましい。また、マット剤のサイズ分布の変動係数としては5%以上80%以下であることが好ましく、20%以上80%以下である事が更に好ましい。ここで変動係数とは(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100で表される値である。更に、画像形成層面のマット剤は平均粒子サイズの異なる2種以上のマット剤を用いることができる。その場合、平均粒子サイズのもっとも大きいマット剤と、もっとも小さいマット剤の粒子サイズの差は、2μm以上8μm以下であることが好ましく、2μm以上6μm以下であることが更に好ましい。
バック面に用いるマット剤の球相当直径の体積加重平均は、1μm以上15μm以下であることが好ましく、3μm以上10μm以下である事が更に好ましい。また、マット剤のサイズ分布の変動係数としては3%以上50%以下であることが好ましく、5%以上30%以下である事が更に好ましい。更に、バック面のマット剤は平均粒子サイズの異なる2種以上のマット剤を用いることができる。その場合、平均粒子サイズのもっとも大きいマット剤と、もっとも小さいマット剤の粒子サイズの差は、2μm以上14μm以下であることが好ましく、2μm以上9μm以下であることが更に好ましい。
また、画像形成層面のマット度は星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が30秒以上2000秒以下が好ましく、特に40秒以上1500秒以下が好ましい。ベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙及び板紙のベック試験器による平滑度試験方法」及びTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
本発明においてバック層のマット度としてはベック平滑度が1200秒以下10秒以上が好ましく、800秒以下20秒以上が好ましく、さらに好ましくは500秒以下40秒以上である。
本発明において、マット剤は熱現像感光材料の最外表面層若しくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
5)ポリマーラテックス
特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像感光材料を用いる場合には、表面保護層やバック層にポリマーラテックスを用いることが好ましい。このようなポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などにも記載され、具体的にはメチルメタクリレート(33.5質量%)/エチルアクリレート(50質量%)/メタクリル酸(16.5質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(47.5質量%)/ブタジエン(47.5質量%)/イタコン酸(5質量%)コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(58.9質量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(25.4質量%)/スチレン(8.6質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.1質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(64.0質量%)/スチレン(9.0質量%)/ブチルアクリレート(20.0質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.0質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックスなどが挙げられる。さらに、表面保護層用のバインダーとして、特願平11−6872号明細書のポリマーラテックスの組み合わせ、特開2000−267226号明細書の段落番号0021〜0025に記載の技術、特願平11−6872号明細書の段落番号0027〜0028に記載の技術、特開2000−19678号明細書の段落番号0023〜0041に記載の技術を適用してもよい。表面保護層のポリマーラテックスの比率は全バインダーの10質量%以上90質量%以下が好ましく、特に20質量%以上80質量%以下が好ましい。
6)膜面pH
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理前の膜面pHが7.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは6.6以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。
最も好ましいpH範囲は4〜6.2の範囲である。膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。
また、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウム等の不揮発性の塩基とアンモニアを併用することも好ましく用いられる。なお、膜面pHの測定方法は、特開2000−284399号明細書の段落番号0123に記載されている。
7)硬膜剤
本発明における画像形成層、保護層、バック層など各層には、硬膜剤を用いても良い。
硬膜剤の例としてはT.H.James著「THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION」(Macmillan Publishing Co.,Inc.刊、1977年刊)、77頁から87頁に記載の各方法があり、クロムみょうばん、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、N,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)、N,N−プロピレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)の他、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許4,281,060号、特開平6−208193号などのポリイソシアネート類、米国特許4,791,042号などのエポキシ化合物類、特開昭62−89048号などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
硬膜剤は溶液として添加され、この溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳「液体混合技術」(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
8)界面活性剤
本発明に適用できる界面活性剤については特開平11−65021号段落番号0132、溶剤については同号段落番号0133、支持体については同号段落番号0134、帯電防止又は導電層については同号段落番号0135、カラー画像を得る方法については同号段落番号0136に、滑り剤については特開平11−84573号段落番号0061〜0064や特開2001−83679号段落番号0049〜0062記載されている。
本発明においてはフッ素系の界面活性剤を使用することが好ましい。フッ素系界面活性剤の具体例は特開平10−197985号、特開2000−19680号、特開2000−214554号等に記載された化合物があげられる。また、特開平9−281636号記載の高分子フッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。本発明の熱現像感光材料においては特開2002−82411号、特開2003−057780号及び特開2003−149766号記載のフッ素系界面活性剤の使用が好ましい。特に特開2003−057780号及び特開2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は水系の塗布液で塗布製造を行う場合、帯電調整能力、塗布面状の安定性、スベリ性の点で好ましく、特開2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は帯電調整能力が高く使用量が少なくてすむという点で最も好ましい。
本発明においてフッ素系界面活性剤は画像形成層面、バック面のいずれにも使用することができ、両方の面に使用することが好ましい。また、前述の金属酸化物を含む導電層と組み合わせて使用することが特に好ましい。この場合には導電層を有する面のフッ素系界面活性剤の使用量を低減若しくは除去しても十分な性能が得られる。
フッ素系界面活性剤の好ましい使用量は画像形成層面、バック面それぞれに0.1mg/m2〜100mg/m2の範囲で、より好ましくは0.3mg/m2〜30mg/m2の範囲、さらに好ましくは1mg/m2〜10mg/m2の範囲である。特に特開2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は効果が大きく、0.01mg/m2〜10mg/m2の範囲が好ましく、0.1mg/m2〜5mg/m2の範囲がより好ましい。
9)帯電防止剤
本発明においては金属酸化物あるいは導電性ポリマーを含む導電層を有することが好ましい。帯電防止層は下塗り層、バック層表面保護層などと兼ねてもよく、また別途設けてもよい。帯電防止層の導電性材料は金属酸化物中に酸素欠陥、異種金属原子を導入して導電性を高めた金属酸化物が好ましく用いられる。金属酸化物の例としてはZnO、TiO2、SnO2が好ましく、ZnOに対してはAl、Inの添加、SnO2に対してはSb、Nb、P、ハロゲン元素等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加が好ましい。
特にSbを添加したSnO2が好ましい。異種原子の添加量は0.01mol%〜30mol%の範囲が好ましく、0.1から10mol%の範囲がより好ましい。金属酸化物の形状は球状、針状、板状いずれでもよいが、導電性付与の効果の点で長軸/単軸比が2.0以上、好ましくは3.0〜50の針状粒子がよい。金属酸化物の使用量は好ましくは1mg/m2〜1000mg/m2の範囲で、より好ましくは10mg/m2〜500mg/m2の範囲、さらに好ましくは20mg/m2〜200mg/m2の範囲である。本発明における帯電防止層は、画像形成層面側、バック面側のいずれに設置してもよいが、支持体とバック層との間に設置することが好ましい。帯電防止層の具体例は特開平11−65021号段落番号0135、特開昭56−143430号、同56−143431号、同58−62646号、同56−120519号、特開平11−84573号の段落番号0040〜0051、米国特許第5,575,957号、特開平11−223898号の段落番号0078〜0084に記載されている。
10)支持体
透明支持体は二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130℃〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。医療用の熱現像感光材料の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8−240877号実施例記載の染料−1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。支持体には、特開平11−84574号の水溶性ポリエステル、同10−186565号のスチレンブタジエン共重合体、特開2000−39684号や特願平11−106881号段落番号0063〜0080の塩化ビニリデン共重合体などの下塗り技術を適用することが好ましい。支持体に画像形成層若しくはバック層を塗布するときの、支持体の含水率は0.5質量%以下であることが好ましい。
11)その他の添加剤
熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。各種の添加剤は、画像形成層あるいは非感光性層のいずれかに添加する。それらについてWO98/36322号、EP803764A1号、特開平10−186567号、同10−18568号等を参考にすることができる。
12)塗布方式
本発明における熱現像感光材料はいかなる方法で塗布されても良い。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、又は米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F.Kistler、Petert M.Schweizer著「LIQUID FILM COATING」(CHAPMAN&HALL社刊、1997年)、399頁から536頁記載のエクストルージョンコーティング、又はスライドコーティングが好ましく用いられ、特に好ましくはスライドコーティングが用いられる。スライドコーティングに使用されるスライドコーターの形状の例は同書427頁のFigure 11b.1にある。また、所望により同書399頁から536頁記載の方法、米国特許第2,761,791号及び英国特許第837,095号に記載の方法により2層又はそれ以上の層を同時に被覆することができる。
本発明において特に好ましい塗布方法は特開2001−194748号、同2002−153808号、同2002−153803号、同2002−182333号に記載された方法である。
本発明における画像形成層塗布液は、いわゆるチキソトロピー流体であることが好ましい。この技術については特開平11−52509号を参考にすることができる。本発明における画像形成層塗布液は剪断速度0.1S-1における粘度は400mPa・s以上100,000mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは500mPa・s以上20,000mPa・s以下である。また、剪断速度1000S-1においては1mPa・s以上200mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは5mPa・s以上80mPa・s以下である。
塗布液を調合する場合において2種の液を混合する際は公知のインライン混合機、インプラント混合機が好ましく用いられる。本発明における好ましいインライン混合機は、特開2002−85948号に、インプラント混合機は特開2002−90940号に記載されている。
本発明における塗布液は塗布面状を良好に保つため脱泡処理をすることが好ましい。本発明における好ましい脱泡処理方法については特開2002−66431号に記載された方法である。
塗布液を塗布する際には支持体の耐電による塵、ほこり等の付着を防止するために除電を行うことが好ましい。本発明において好ましい除電方法の例は特開2002−143747に記載されている。
本発明においては非セット性の画像形成層塗布液を乾燥するため乾燥風、乾燥温度を精密にコントロールすることが重要である。本発明における好ましい乾燥方法は特開2001−194749号、同2002−139814号に詳しく記載されている。
本発明の熱現像感光材料は成膜性を向上させるために塗布、乾燥直後に加熱処理をすることが好ましい。加熱処理の温度は膜面温度で60℃〜100℃の範囲が好ましく、加熱時間は1秒〜60秒の範囲が好ましい。より好ましい範囲は膜面温度が70℃〜90℃、加熱時間が2秒〜10秒の範囲である。本発明における好ましい加熱処理の方法は特開2002−107872号に記載されている。
また、本発明の熱現像感光材料を安定して連続製造するためには特開2002−156728号、同2002−182333号に記載の製造方法が好ましく用いられる。
熱現像感光材料は、モノシート型(受像材料のような他のシートを使用せずに、熱現像感光材料上に画像を形成できる型)であることが好ましい。
13)包装材料
本発明の熱現像感光材料は生保存時の写真性能の変動を押えるため、若しくはカール、巻癖などを改良するために、酸素透過率及び/又は水分透過率の低い包装材料で包装することが好ましい。酸素透過率は25℃で50mL/atm・m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは10mL/atm・m2・day以下、さらに好ましくは1.0mL/atm・m2・day以下である。水分透過率は10g/atm・m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは5g/atm・m2・day以下、さらに好ましくは1g/atm・m2・day以下である。
該酸素透過率及び/又は水分透過率の低い包装材料の具体例としては、たとえば特開平8−254793号。特開2000−206653号明細書に記載されている包装材料である。
14)その他の利用できる技術
本発明の熱現像感光材料に用いることのできる技術としては、EP803764A1号、EP883022A1号、WO98/36322号、特開昭56−62648号、同58−62644号、特開平9−43766、同9−281637、同9−297367号、同9−304869号、同9−311405号、同9−329865号、同10−10669号、同10−62899号、同10−69023号、同10−186568号、同10−90823号、同10−171063号、同10−186565号、同10−186567号、同10−186569号〜同10−186572号、同10−197974号、同10−197982号、同10−197983号、同10−197985号〜同10−197987号、同10−207001号、同10−207004号、同10−221807号、同10−282601号、同10−288823号、同10−288824号、同10−307365号、同10−312038号、同10−339934号、同11−7100号、同11−15105号、同11−24200号、同11−24201号、同11−30832号、同11−84574号、同11−65021号、同11−109547号、同11−125880号、同11−129629号、同11−133536号〜同11−133539号、同11−133542号、同11−133543号、同11−223898号、同11−352627号、同11−305377号、同11−305378号、同11−305384号、同11−305380号、同11−316435号、同11−327076号、同11−338096号、同11−338098号、同11−338099号、同11−343420号、同2001−200414号、同2001−234635号、同2002−020699号、同2001−275471号、同2001−275461号、同2000−313204号、同2001−292844号、同2000−324888号、同2001−293864号、同2001−348546号、特開2000−187298号も挙げられる。
多色カラー熱現像感光材料の場合、各画像形成層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各感光性層(画像形成層)の間に官能性若しくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
多色カラー熱現像感光材料の場合の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。
(画像形成方法)
1.露光
本発明の熱現像感光材料は、従来公知のいかなる手段で画像露光されても良い。好ましくは、レーザーによる走査露光、およびX線蛍光増感スクリーンによる露光である。
1)レーザーによる走査露光
レーザー光源としては、種々のレーザーを用いることができる。好ましくは、赤〜赤外発光のHe−Neレーザー、赤色半導体レーザー、あるいは青〜緑発光のAr+,He−Ne,He−Cdレーザー、青色半導体レーザーである。好ましくは、赤色〜赤外半導体レーザーであり、レーザー光のピーク波長は、600nm〜900nm、好ましくは620nm〜850nmである。
一方、近年、特に、SHG(Second Harmonic Generator)素子と半導体レーザーを一体化したモジュールや青色半導体レーザーが開発されてきて、短波長領域のレーザー出力装置がクローズアップされてきた。青色半導体レーザーは、高精細の画像記録が可能であること、記録密度の増大、かつ長寿命で安定した出力が得られることから、今後需要が拡大していくことが期待されている。青色レーザー光のピーク波長は、300nm〜500nm、特に400nm〜500nmが好ましい。
レーザー光は、高周波重畳などの方法によって縦マルチに発振していることも好ましく用いられる。
2)X線蛍光増感スクリーンによる露光
本発明の熱現像感光材料は、蛍光増感スクリーンと重ね合わせてX線画像露光を行う医療診断画像形成に用いることができる。蛍光増感スクリーンは、基本構造として、支持体と、その片面に形成された蛍光体層とからなる。蛍光体層は、蛍光体が結合剤(バインダ)中に分散されてなる層である。なお、この蛍光体層の支持体とは反対側の表面(支持体に面していない側の表面)には一般に、透明な保護膜が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
本発明でより好ましく用いられるX線蛍光増感スクリーンは、発光光の50%以上が波長350nm以上420nm以下であるものである。特に、その蛍光体が、2価のEu賦活蛍光体であることが好ましく、さらに好ましくは2価のEu賦活バリウムハライド系蛍光体である。発光波長領域は、好ましくは360nm〜420nm、より好ましくは370nm〜420nmである。また、より好ましくは、同領域に70%以上さらに好ましくは85%以上の発光を有する蛍光スクリーンである。
この発光光の割合は、以下の方法によって計算される。すなわち横軸に発光波長を真数で等間隔にとり、発光フォトン数を縦軸にとって発光スペクトルを測定する。このチャート上の350nm以上420nm以下の面積を全発光スペクトルの面積で割った値を350nm以上420nm以下の波長に発光する割合と定義する。このような波長に発光を有することによって本発明の熱現像感光材料との組み合わせで高感度が達成できる。
このような波長域に蛍光体のほとんどの発光光が存在するためには発光光の半値幅は狭い方が好ましい。好ましい半値幅は1nm以上70nm以下、より好ましくは5nm以上50nm以下、さらに好ましくは10nm以上40nm以下である。
このような発光が得られれば使用する蛍光体には特に制限はないが、本発明の目的である高感度化のためには2価のEuを発光中心とするEu賦活蛍光体であることが好ましい本発明はこれに限定されるものではない。
BaFCl:Eu、BaFBr:Eu、BaFI:Euおよびこれらのハロゲン組成を変更したもの、BaSO4:Eu、SrFBr:Eu、SrFCl:Eu、SrFI:Eu、(Sr,Ba)Al2Si28:Eu、SrB47F:Eu、SrMgP27:Eu、Sr3(PO42:Eu、Sr227:Euなどである。
より好ましい蛍光体としてはMX12:Euの一般式で表される2価のEu賦活バリウムハライド系蛍光体である。ここでMはBaを主成分とするがMg、Ca,Sr等のその他の化合物を少量好ましく含有することが可能である。X1、X2はハロゲン原子であり、F、Cl、Br、Iの中から任意に選択することが可能である。ここでX1はフッ素であることが好ましい。X2はCl、Br、Iの中から選択することが可能であり、これらのいくつかのハロゲン組成を混在させることも好ましく用いることができる。さらに好ましくはX2=Brである。Euはユーロピウムである。発光中心であるEuはBaに対して10-7以上0.1以下の割合で含まれることが好ましい。より好ましくは10-4以上0.05以下である。少量のその他の化合物を混入させることも好ましく行われる。もっとも好ましい蛍光体としては、BaFCl:Eu、BaFBr:Eu、BaFBr1-XX:Euが挙げられる。
蛍光増感スクリーンは、好ましくは支持体、支持体上の下塗り層、蛍光体層、表面保護層より構成される。
蛍光体層は、前記蛍光体の粒子と結合剤樹脂を含有する有機溶剤溶液に分散させて分散液を調製した後、その分散液を支持体(支持体上に光反射層等の下塗層が設けられている場合にはその下塗層)の上に直接塗布、乾燥することにより形成することができる。あるいは、別に用意した仮支持体上にこの分散液を塗布、乾燥して蛍光体シートを形成した後、蛍光体シートを仮支持体から剥がし取って、接着剤を用いてい支持体上に付設してもよい。
蛍光体粒子の粒径に特に制限はなく、通常は約1μm〜15μmの範囲であり、好ましくは約2μm〜10μmの範囲である。蛍光体層中における蛍光体粒子の体積充填率は高い方が好ましく、通常は60%〜85%の範囲にあり、好ましくは65%〜80%の範囲であり、特に好ましくは68%〜75%の範囲である。(蛍光体層における蛍光体粒子の比率は通常は80質量%以上であり、好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。)蛍光体層の形成に用いる結合剤樹脂、有機溶剤及び任意に用いることのできる各種添加剤については、公知の各種の文献に記載されている。蛍光体層の厚みは、目標とする感度に応じて任意に設定することができるが、好ましくはフロント側スクリーンについては70μm〜150μmの範囲であり、バック側スクリーンについては80μm〜400μmの範囲である。なお、蛍光体層のX線吸収率は蛍光体粒子の塗布量によって決定される。
なお、蛍光体層は一層でもよいが、あるいは二層以上から構成してもよい。好ましくは、一層乃至三層であり、より好ましくは一層もしくは二層である。例えば、粒径分布の比較的狭い、粒径の異なる蛍光体粒子からなる層を積層してもよいし、その場合には支持体に近い層ほど粒径が小さくなるようにしてもよい。特に表面保護層側に大粒径の蛍光体粒子を塗布し、支持体側に小粒径の蛍光体粒子を塗布することが好ましく、小粒径のものは0.5μm〜2.0μmで、大粒径のものは10μm〜30μmの範囲が好ましい。また、粒径の異なる蛍光体粒子を混合して蛍光体層を形成してもよいし、あるいは特公昭55−33560号の第3頁左欄3行目〜第4頁左欄39行目に記載されているように、蛍光体粒子の粒径分布が傾斜している構造の蛍光体層であってもよい。通常、蛍光体の粒径分布の変動係数は30%〜50%の範囲にあるが、その変動係数が30%以下の単分散の蛍光体粒子も好ましく用いることができる。
蛍光体層を、発光波長に対して染色することによって好ましい鮮鋭度を出すこころみの行われている。ただしできるだけ染色が少ない層設計が好ましく用いられる。蛍光体層の吸収長は好ましくは100μm以上、より好ましくは1000μm以上である。
散乱長は0.1μm以上100μm以下に設計されることが好ましい。より好ましくは1μm以上100μm以下である。散乱長・吸収長は後述するクベルカ・ムンク(Kubelka−Munk)の理論に基づく計算式により算出することができる。
支持体としては、公知の増感スクリーンに用いる各種の支持体の中から目的に応じて適宜選択して使用することができる。例えば、二酸化チタン等の白色顔料を含むポリマーフィルムもしくはカーボンブラック等の黒色顔料を含むポリマーフィルムが好ましく用いられる。支持体の表面(蛍光体層が設けられる側の表面)には、光反射材料を含有する光反射層などの下塗層を設けてもよい。特開2001−124898号に記載のような光反射層も好ましく用いられる。特に同特許実施例1に記載の酸化イットリウムによる光反射層、同特許実施例4に記載の光反射層は好ましく用いられる。好ましい光反射層としては特開23001−124898号公報の3項右側15行目〜同4項右側23行目までの記載を参考にすることができる。
蛍光体層の表面には表面保護層を設けるのが好ましい。蛍光体の主発光波長において測定される光散乱長が5μm〜80μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは10μm〜70μmの範囲であり、特に好ましくは10μm〜60μmの範囲である。ここで、光散乱長は、光が一回散乱するまでに直進する平均距離を表し、散乱長が短いほど光散乱性が高いことを意味する。また、光が吸収されるまでの平均自由距離を表す光吸収長は任意であるが、スクリーン感度の観点からは表面保護層の吸収はない方が減感が少ないため好ましい。散乱不足を補う意味で、極僅かな吸収性を持たせることもできる。吸収長は、好ましくは800μm以上であり、特に好ましくは1200μm以上である。光散乱長および光吸収長は、下記の方法によって測定した測定値を用いてクベルカ・ムンク(Kubelka−Munk)の理論に基づく計算式により算出することができる。
まず、測定対象の表面保護層と同一の組成を有し、互いに層厚が相違する三枚以上のフィルム試料を作製する。次に、各々のフィルム試料の厚み(μm)と拡散透過率(%)とを測定する。拡散透過率は、通常の分光光度計に積分球を付設した装置により測定することができる。本発明における測定では、自記分光光度計((株)日立製作所製、U−3210型)に150φ積分球(150−0901)を付設して用いる。測定波長は、表面保護層を付設する対象の蛍光体層の蛍光体の主発光のピーク波長と一致させる必要がある。
次いで、フィルムの厚み(μm)と拡散透過率(%)の測定値とを、クベルカ・ムンクの理論式より導出される下記の式(A)に導入する。式(A)は、例えば「蛍光体ハンドブック」(蛍光体同学会編集、(株)オーム社、1987年刊行)403頁の式5・1・12〜5・1・15から拡散透過率T(%)の境界条件の下に簡単に導くことができる。
Figure 2006337825
ただし、Tは拡散透過率(%)、dはフィルム厚み(μm)であり、αおよびβはそれぞれ下記の式で定義される。
Figure 2006337825
三枚以上のフィルムについて測定したT(拡散透過率:%)及びd(フィルム厚み:μm)をそれぞれ上記の式(A)に導入し、式(A)を満足するKおよびSを算出する。散乱長(μm)は1/Sにより定義され、そして吸収長(μm)は1/Kにより定義される。
表面保護層は、また、光散乱性粒子が樹脂材料中に分散含有された構成であることが好ましい。光散乱性粒子の光屈折率は通常は1.6以上であり、好ましくは1.9以上である。また、光散乱性粒子の粒子径は通常は0.1μm〜1.0μmの範囲にある。このような光散乱性粒子の例としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、硫酸バリウム、炭酸鉛、酸化ケイ素、ポリメチルメタクリレート、スチレン、およびメラミンの微粒子を挙げることができる。
表面保護層を形成するのに用いる樹脂材料については、特段の制限はないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、アラミド、フッ素樹脂、ポリエステル等を好ましく用いることができる。表面保護層は、上記の光散乱性粒子を樹脂材料(結合剤樹脂)を含有する有機溶剤溶液に分散させて分散液を調製した後、その分散液を蛍光体層上に(あるいは任意の補助層を介して)直接に塗布、乾燥することにより形成することができる。あるいは別途形成した保護層用シートを接着剤を用いて蛍光体層上に付設してもよい。表面保護層の厚みは、通常は2μm〜12μmの範囲にあり、好ましくは3.5μm〜10μmの範囲である。
さらに、蛍光増感スクリーンの好ましい製造方法およびそれに用いる材料については、例えば特開平9−21899号公報の第6頁左欄47行目〜第8頁左欄5行目、特開平6−347598号公報の第2頁右欄17行目〜第3頁左欄33行目、および同公報第3頁左欄42行目〜第4頁左欄22行目に詳しい記載があり、それらを参照することができる。
本発明で用いる蛍光増感スクリーンは、傾斜粒径構造で蛍光体を充填することが好ましい。特に表面保護層側に大粒径の蛍光体粒子を塗布し、支持体側に小粒径の蛍光体粒子を塗布することが好ましく、小粒径のものは0.5μm〜2.0μmで、大粒径のものは10μm〜30μmの範囲が好ましい。
本発明の熱現像感光材料を用いた画像形成方法としては、好ましくは400nm以下に主ピークを持つ蛍光体との組み合わせで画像形成する方法を用いることができる。さらに好ましくは380nm以下に主ピークを持つ蛍光体と組み合わせて画像形成する方法が良い。両面感材、片面感材のいずれでも組立て体として用いることができる。400nm以下に主発光ピークであるスクリーンは特開平6−11804号、WO93/01521号に記載のスクリーンなどが使われるがこれに限られるものではない。紫外線のクロスオーバーカット(両面感光材料)とアンチハレーション(片面感光材料)の技術としては、特開平8−76307号公報に記載の技術を用いることができる。紫外線吸収染料としては、特開2001−144030号に記載の染料は特に好ましい。
2.熱現像
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80℃〜250℃であり、好ましくは100℃〜140℃、さらに好ましくは110℃〜130℃である。現像時間としては1秒〜60秒が好ましく、より好ましくは3秒〜30秒、さらに好ましくは5秒〜25秒、7秒〜15秒が特に好ましい。
熱現像の方式としてはドラム型ヒーター、プレート型ヒーターのいずれを使用してもよいが、プレート型ヒーター方式がより好ましい。プレート型ヒーター方式による熱現像方式とは特開平11−133572号に記載の方法が好ましく、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒーターからなり、かつ前記プレートヒーターの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒーターとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置である。プレートヒーターを2〜6段に分けて先端部については1℃〜10℃程度温度を下げることが好ましい。例えば、独立に温度制御できる4組のプレートヒーターを使用し、それぞれ112℃、119℃、121℃、120℃になるように制御する例が挙げられる。このような方法は特開昭54−30032号にも記載されており、熱現像感光材料に含有している水分や有機溶媒を系外に除外させることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を抑えることもできる。
熱現像機の小型化及び熱現像時間の短縮のためには、より安定なヒーター制御ができることが好ましく、また、1枚のシート感材を先頭部から露光開始し、後端部まで露光が終わらないうちに熱現像を開始することが望ましい。本発明に好ましい迅速処理ができるイメージャーは例えば特開2002−289804号及び特開2003−285455号に記載されている。このイメージャーを使用すれば例えば、107℃−121℃−121℃に制御された3段のプレート型ヒーターで14秒で熱現像処理ができ、1枚目の出力時間は約60秒に短縮することができる。このような迅速現像処理のためには高感度で、環境温度の影響を受けにくい本発明の熱現像感光材料−2を組み合わせて使用することが好ましい。
3.システム
露光部及び熱現像部を備えた医療用のレーザーイメージャーとしては富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DPL及びDRYPIX7000を挙げることができる。FM−DPLに関しては、Fuji Medical Review No.8,page 39〜55に記載されており、それらの技術は本発明の熱現像感光材料のレーザーイメージャーとして適用することは言うまでもない。また、DICOM規格に適応したネットワークシステムとして富士フィルムメディカル(株)が提案した「AD network」の中でのレーザーイメージャー用の熱現像感光材料としても適用することができる。
(本発明の用途)
本発明の熱現像感光材料は、銀画像による黒白画像を形成し、医療診断用の熱現像感光材料、工業写真用熱現像感光材料、印刷用熱現像感光材料、COM用の熱現像感光材料として使用されることが好ましい。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1.
1.PET支持体の作製
1)製膜
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出して急冷し、未延伸フィルムを作製した。
これを、周速の異なるロ−ルを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4kg/cm2で巻き取り、厚み175μmのロ−ルを得た。
2)表面コロナ放電処理
ピラー社製ソリッドステートコロナ放電処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/m2の処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6mmであった。
3)下塗り
処方a(画像形成層側下塗り層用)
・高松油脂(株)製ペスレジンA−520(30質量%溶液) 46.8g
・東洋紡績(株)製バイロナールMD−1200 10.4g
・ポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテル
(平均エチレンオキシド数=8.5)1質量%溶液 11.0g
・綜研化学(株)製MP−1000(PMMAポリマー微粒子、平均粒径0.4μm)
0.91g
・蒸留水 931mL
処方b(バック面第1層用)
・スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス 130.8g
(固形分40質量%、スチレン/ブタジエン質量比=68/32)
・2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンナトリウム塩(8質量%水溶液)
5.2g
・ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10mL
・ポリスチレン粒子分散物(平均粒子径2μm、20質量%) 0.5g
・蒸留水 854mL
処方c(バック面側第2層用)
・SnO2/SbO(9/1質量比、平均粒径0.5μm、17質量%分散物)
84g
・ゼラチン 7.9g
・信越化学工業(株)製メトローズTC−5(2質量%水溶液) 10g
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10mL
・NaOH(1質量%) 7g
・プロキセル(アビシア社製) 0.5g
・蒸留水 881mL
上記厚さ175μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、片面に上記下塗り塗布液処方aをワイヤーバーでウエット塗布量が6.6mL/m2(片面当たり)になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、ついでこの裏面)に上記下塗り塗布液処方bをワイヤーバーでウエット塗布量が5.7mL/m2になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、更に裏面に上記下塗り塗布液処方cをワイヤーバーでウエット塗布量が8.4mL/m2になるように塗布して180℃で6分間乾燥して下塗り支持体を作製した。
2.バック層
1)バック層塗布液の調製
《塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)の調製》
塩基プレカーサー化合物1を、2.5kg、及び界面活性剤(商品名:デモールN、花王(株)製)300g、ジフェニルスルホン800g、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩1.0g及び蒸留水を加えて総量を8.0kgに合わせて混合し、混合液を横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)を用いてビーズ分散した。分散方法は、混合液をを平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填したUVM−2にダイアフラムポンプで送液し、内圧50hPa以上の状態で、所望の平均粒径が得られるまで分散した。
分散物は、分光吸収測定を行って該分散物の分光吸収における450nmにおける吸光度と650nmにおける吸光度の比(D450/D650)が3.0まで分散した。得られた分散物は、塩基プレカーサーの濃度で25質量%となるように蒸留水で希釈し、ごみ取りのためにろ過(平均細孔径:3μmのポリプロピレン製フィルター)を行って実用に供した。
《染料固体微粒子分散液の調製》
シアニン染料化合物−1を6.0kg及びp−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.0kg、花王(株)製界面活性剤デモールSNB0.6kg、及び消泡剤(商品名:サーフィノール104E、日信化学(株)製)0.15kgを蒸留水と混合して、総液量を60kgとした。混合液を横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)を用いて、0.5mmのジルコニアビーズで分散した。
分散物は、分光吸収測定を行って該分散物の分光吸収における650nmにおける吸光度と750nmにおける吸光度の比(D650/D750)が5.0以上であるところまで分散した。得られた分散物は、シアニン染料の濃度で、6質量%となるように蒸留水で希釈し、ごみ取りのためにフィルターろ過(平均細孔径:1μm)を行って実用に供した。
2)アンチハレーション層塗布液の調製
容器を40℃に保温し、等電点6.6のゼラチン(ニッピ(株)製ABAゼラチン)37g、ベンゾイソチアゾリノン0.1g、水を加えてゼラチンを溶解させた。さらに上記染料固体微粒子分散液36g、上記塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)を73g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム3質量%水溶液43mL、SBRラテックス(スチレン/ブタジエン/アクリル酸共重合体;質量比68.3/28.7/3.0)10質量%液82gを混合し、完成液量773mLのハレーション防止層塗布液とした。完成液のpH値は、6.3であった。
3)バック面保護層塗布液の調製
容器を40℃に保温し、等電点4.8のゼラチン(宮城化学工業(株)製PZゼラチン)43g、ベンゾイソチアゾリノン0.21g、水を加えてゼラチンを溶解させた。さらに1mol/lの酢酸ナトリウム水溶液8.1mL、単分散ポリ(エチレングリコールジメタクリレート−コ−メチルメタクリレート)微粒子(平均粒子サイズ7.7μm、粒径標準偏差0.3μm)0.93g、流動パラフィンの10質量%乳化物を5g、ヘキサイソステアリン酸ジペンタエリスリットの10質量%乳化物を10g、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩5質量%水溶液10mL、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム3質量%水溶液17mL、フッ素系界面活性剤(F−1)2質量%溶液を2.4mL、フッ素系界面活性剤(F−2)2質量%溶液を2.4mL、エチルアクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比96.4/3.6)ラテックス20質量%液30mLを混合した。塗布直前にN,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)4質量%水溶液50mLを混合し、完成液量855mLのバック面保護層塗布液とした。完成液のpH値は6.2であった。
4)バック層の塗布
上記下塗り支持体のバック面側に、アンチハレーション層塗布液をゼラチン塗布量が0.54g/m2となるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1.85g/m2となるように同時重層塗布し、乾燥し、バック層を作製した。
3.画像形成層、中間層、及び表面保護層
3−1.塗布用材料の準備
1)ハロゲン化銀乳剤
《ハロゲン化銀乳剤1の調製》
蒸留水1421mLに1質量%臭化カリウム溶液3.1mLを加え、さらに0.5mol/L濃度の硫酸を3.5mL、フタル化ゼラチン31.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、30℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え95.4mLに希釈した溶液Aと臭化カリウム15.3gとヨウ化カリウム0.8gを蒸留水にて容量97.4mLに希釈した溶液Bを一定流量で45秒間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10mL添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8mL添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mLに希釈した溶液Cと臭化カリウム44.2gとヨウ化カリウム2.2gを蒸留水にて容量400mLに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で20分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10-4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液C及び溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10-4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作製した。
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5mL加え、40分後に47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルホン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10-5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Cをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10-4モル加えて91分間熟成した。その後、分光増感色素Aと増感色素Bのモル比で3:1のメタノール溶液を銀1モル当たり増感色素AとBの合計として1.2×10-3モル加え、1分後にN,N'−ジヒドロキシ−N"−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mLを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10-4モル、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10-4モル及び1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを水溶液で銀1モルに対して8.5×10-4モル添加して、ハロゲン化銀乳剤1を作製した。
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.042μm、球相当径の変動係数20%のヨウドを均一に3.5モル%含むヨウ臭化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。この粒子の{100}面比率は、クベルカムンク法を用いて80%と求められた。
《ハロゲン化銀乳剤2の調製》
ハロゲン化銀乳剤1と同様にして、ただしテルル増感剤Cの代わりに、セレン増感剤Bを表1に示した量を添加して化学増感を施して、ハロゲン化銀乳剤2を調製した。
《ハロゲン化銀乳剤3〜7の調製》
ハロゲン化銀乳剤1と同様にして、ただしテルル増感剤Cの代わりに、本発明の化学増感剤(表1に示す)を銀1モル当たり9.5×10-5モル添加して化学増感を施したハロゲン化銀乳剤3〜7を調製した。
Figure 2006337825
《塗布液用混合乳剤1〜7の調製》
各々のハロゲン化銀乳剤を溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1モル当たり7×10-4モル添加した。
さらに1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物1,2,3をそれぞれハロゲン化銀の銀1モル当たり2×10-3モルになる量を添加した。
吸着基と還元基を有する吸着性レドックス化合物1,2をそれぞれハロゲン化銀1モルあたり5×10-3モルになる量を添加した。
さらに塗布液用混合乳剤1kgあたりハロゲン化銀の含有量が銀として38.2gとなるように加水した。塗布液用混合乳剤1kgあたり0.34gとなるように1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを添加した。
2)脂肪酸銀分散物の調製
《脂肪酸銀分散物Aの調製》
ヘンケル社製ベヘン酸(製品名Edenor C22−85R)87.6kg、蒸留水423L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、t−ブチルアルコール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液Aを得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのt−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液Aの全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液Aを添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はベヘン酸ナトリウム溶液Aのみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液Aの添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調製した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液Aの添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調製した。
ベヘン酸ナトリウム溶液Aを添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.14μm、b=0.4μm、c=0.6μm、平均アスペクト比5.2、平均球相当径0.52μm、球相当径の変動係数15%のりん片状の結晶であった。(a,b,cは本文の規定)
乾燥固形分260kg相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217)19.3kg及び水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製:PM−10型)で予備分散した。
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−610、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1260kg/cm2に調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
《脂肪酸銀分散物Bの調製》
<再結晶ベヘン酸の調製>
ヘンケル社製ベヘン酸(製品名Edenor C22−85R)100kgを、1200kgのイソプロピルアルコールにまぜ、50℃で溶解し、10μmのフィルターで濾過した後、30℃まで、冷却し、再結晶を行った。再結晶をする際の、冷却スピードは、3℃/時間にコントロールした。得られた結晶を遠心濾過し、100kgのイソプルピルアルコールでかけ洗いを実施した後、乾燥を行った。得られた結晶をエステル化してGC−FID測定をしたところ、ベヘン酸含有率は96モル%、それ以外にリグノセリン酸が2モル%、アラキジン酸が2モル%、エルカ酸0.001モル%含まれていた。
<脂肪酸銀分散物Bの調製>
再結晶ベヘン酸88kg、蒸留水422L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、t−ブチルアルコール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液Bを得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのt−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液Bの全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。
このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液Bを添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はベヘン酸ナトリウム溶液Bのみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液Bの添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調製した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液Bの添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調製した。
ベヘン酸ナトリウム溶液Bを添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.21μm、b=0.4μm、c=0.4μm、平均アスペクト比2.1、球相当径の変動係数11%の結晶であった(a,b,cは本文の規定)。
乾燥固形分260kg相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217)19.3kg及び水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製:PM−10型)で予備分散した。
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−610、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1150kg/cm2に調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
3)還元剤分散物の調製
《還元剤−1分散物の調製》
還元剤−1(2,2'−メチレンビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール))10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を60℃で5時間加熱処理し、還元剤−1分散物を得た。
こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
《還元剤−2分散物の調製》
還元剤−2(6,6'−ジ−t−ブチル−4,4'−ジメチル−2,2'−ブチリデンジフェノール)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を40℃で1時間加熱した後、引き続いてさらに80℃で1時間加熱処理し、還元剤−2分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.50μm、最大粒子径1.6μm以下であった。
得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
4)水素結合性化合物−1分散物の調製
水素結合性化合物−1(トリ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィンオキシド)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて4時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて水素結合性化合物の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を40℃で1時間加熱した後、引き続いてさらに80℃で1時間加温し、水素結合性化合物−1分散物を得た。こうして得た水素結合性化合物分散物に含まれる水素結合性化合物粒子はメジアン径0.45μm、最大粒子径1.3μm以下であった。得られた水素結合性化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
5)現像促進剤−1分散物の調製
現像促進剤−1を10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて現像促進剤の濃度が20質量%になるように調製し、現像促進剤−1分散物を得た。こうして得た現像促進剤分散物に含まれる現像促進剤粒子はメジアン径0.48μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた現像促進剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
6)現像促進剤−2及び色調調整剤−1の分散物調製
現像促進剤−2及び色調調整剤−1の固体分散物についても現像促進剤−1と同様の方法により分散し、それぞれ20質量%、15質量%の分散液を得た。
7)ポリハロゲン化合物の調製
《有機ポリハロゲン化合物−1分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物−1(トリブロモメタンスルホニルベンゼン)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgと、水14kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が26質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物−1分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
《有機ポリハロゲン化合物−2分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物−2(N−ブチル−3−トリブロモメタンスルホニルベンゾアミド)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が30質量%になるように調製した。この分散液を40℃で5時間加温し、有機ポリハロゲン化合物−2分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.3μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
8)フタラジン化合物−1溶液の調製
8kgのクラレ(株)製変性ポリビニルアルコールMP203を水174.57kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15kgとフタラジン化合物−1(6−イソプロピルフタラジン)の70質量%水溶液14.28kgを添加し、フタラジン化合物−1の5質量%溶液を調製した。
9)メルカプト化合物の調製
《メルカプト化合物−1水溶液の調製》
メルカプト化合物−1(1−(3−スルホフェニル)−5−メルカプトテトラゾールナトリウム塩)7gを水993gに溶解し、0.7質量%の水溶液とした。
《メルカプト化合物−2水溶液の調製》
メルカプト化合物−2(1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール)20gを水980gに溶解し、2.0質量%の水溶液とした。
10)顔料−1分散物の調製
C.I.Pigment Blue 60を64gと花王(株)製デモールNを6.4gに水250gを添加し良く混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ800gを用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて25時間分散し、水を加えて顔料の濃度が5質量%になるように調製して顔料−1分散物を得た。こうして得た顔料分散物に含まれる顔料粒子は平均粒径0.21μmであった。
11)SBRラテックス液の調製
SBRラテックス(TP−1)は以下により調製した。
ガスモノマー反応装置(耐圧硝子工業(株)製TAS−2J型)の重合釜に、蒸留水287g、界面活性剤(パイオニンA−43−S(竹本油脂(株)製):固形分48.5質量%)7.73g、1mol/L、NaOH14.06mL、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩0.15g、スチレン255g、アクリル酸11.25g、tert−ドデシルメルカプタン3.0gを入れ、反応容器を密閉し撹拌速度200rpmで撹拌した。
真空ポンプで脱気し窒素ガス置換を数回繰返した後に、1,3−ブタジエン108.75gを圧入して内温60℃まで昇温した。ここに過硫酸アンモニウム1.875gを水50mLに溶解した液を添加し、そのまま5時間撹拌した。さらに90℃に昇温して3時間撹拌し、反応終了後内温が室温になるまで下げた後、1mol/LのNaOHとNH4OHを用いてNa+イオン:NH4 +イオン=1:5.3(モル比)になるように添加処理し、pH8.4に調整した。その後、孔径1.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、SBRラテックスTP−1を774.7g得た。
イオンクロマトグラフィーによりハロゲンイオンを測定したところ、塩化物イオン濃度3ppmであった。高速液体クロマトグラフィーによりキレート剤の濃度を測定した結果、145ppmであった。
上記ラテックスは平均粒径90nm、Tg=17℃、固形分濃度44質量%、25℃60%RHにおける平衡含水率0.6質量%、イオン伝導度4.80mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM−30S使用し25℃にて測定)であった。
12)イソプレンラテックス液の調製
イソプレンラテックス(TP−2)は以下により調製した。
ガスモノマー反応装置(耐圧硝子工業(株)製TAS−2J型)の重合釜に蒸留水1500g添加し、90℃で3時間加熱し、重合釜のステンレス表面やステンレス製撹拌装置の部材に不動態皮膜を形成させる。この処理を行った重合釜に、窒素ガスを1時間バブリングした蒸留水582.28g、界面活性剤(パイオニンA−43−S(竹本油脂(株)製))9.49g、1mol/LのNaOHを19.56g、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩0.20g、スチレン314.99g、イソプレン190.87g、アクリル酸10.43g、tert−ドデシルメルカプタン2.09gを入れ、反応容器を密閉し撹拌速度225rpmで撹拌し、内温65℃まで昇温した。ここに過硫酸アンモニウム2.61gを水40mLに溶解した液を添加し、そのまま6時間撹拌した。この時点での重合転化率は固形分測定から90%であった。ここで、アクリル酸5.22gを水46.98gに溶解した液を添加し、続いて水10gを添加し、過硫酸アンモニウム1.30gを水50.7mLに溶解した液をさらに添加した。添加後、90℃に昇温して3時間撹拌し、反応終了後、内温が室温になるまで下げた後、1mol/LのNaOHとNH4OHを用いてNa+イオン:NH4 +イオン=1:5.3(モル比)になるように添加処理し、pH8.4に調整した。その後、孔径1.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、イソプレンラテックスTP−2を1248g得た。イオンクロマトグラフィーによりハロゲンイオンを測定したところ、塩化物イオン濃度3ppmであった。高速液体クロマトグラフィーによりキレート剤の濃度を測定した結果、142ppmであった。
上記ラテックスは平均粒径113nm、Tg=15℃、固形分濃度41.3質量%、25℃60%RHにおける平衡含水率0.4質量%、イオン伝導度5.23mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM−30S使用し25℃にて測定)であった。
3−2.塗布液の調製
1)画像形成層塗布液1−1〜1−7の調製
上記で得た脂肪酸銀分散物A1000g、水135mL、顔料−1分散物35g、有機ポリハロゲン化合物−1分散物19g、有機ポリハロゲン化合物−2分散物58g、フタラジン化合物−1溶液162g、SBRラテックス(TP−1)液424g、イソプレンラテックス(TP−2)液636g、還元剤−1分散物75g、還元剤−2分散物75g、水素結合性化合物−1分散物53g、現像促進剤−2分散物4.8g、メルカプト化合物−1水溶液9mL、メルカプト化合物−2水溶液27mLを順次添加し、塗布直前に塗布液用混合乳剤1〜7のいずれか118gを添加して良く混合した画像形成層塗布液をそのままコーティングダイへ送液し、塗布した。
上記画像形成層塗布液の粘度は東京計器のB型粘度計で測定して、40℃(No.1ローター、60rpm)で28[mPa・s]であった。
Haake社製RheoStress RS150を使用した38℃での塗布液の粘度は剪断速度が0.1、1、10、100、1000[1/秒]においてそれぞれ37、40、38、30、19[mPa・s]であった。
塗布液中のジルコニウム量は銀1gあたり0.32mgであった。
2)画像形成層塗布液2−1〜2−7の調製
上記で得た脂肪酸銀分散物B1000g、水135mL、顔料−1分散物36g、有機ポリハロゲン化合物−1分散物25g、有機ポリハロゲン化合物−2分散物39g、フタラジン化合物−1溶液171g、SBRラテックス(TP−1)液318g、イソプレンラテックス(TP−2)液742g、還元剤−2分散物153g、水素結合性化合物−1分散物22g、現像促進剤−1分散物4.8g、現像促進剤−2分散物5.2g、色調調整剤−1分散物2.1g、メルカプト化合物−2水溶液8mLを順次添加し、塗布直前に塗布液用混合乳剤1〜7のいずれか140gを添加して良く混合した画像形成層塗布液をそのままコーティングダイへ送液し、塗布した。
上記画像形成層塗布液の粘度は東京計器のB型粘度計で測定して、40℃(No.1ローター、60rpm)で35[mPa・s]であった。
Haake社製RheoStress RS150を使用した38℃での塗布液の粘度は剪断速度が0.1、1、10、100、1000[1/秒]においてそれぞれ38、49、48、34、25[mPa・s]であった。
塗布液中のジルコニウム量は銀1gあたり0.30mgであった。
3)中間層塗布液の調製
ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ(株)製)1000g、顔料−1分散物163g、青色染料化合物−1(日本化薬(株)製:カヤフェクトターコイズRNリキッド150)18.5質量%水溶液33g、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩5質量%水溶液27mL、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液4200mLにエアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液を27mL、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液を135mL、総量10000gになるように水を加え、pHが7.5になるようにNaOHで調整して中間層塗布液とし、8.9mL/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で58[mPa・s]であった。
4)表面保護層第1層塗布液の調製
イナートゼラチン100g、ベンゾイソチアゾリノン10mgを水840mLに溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液180g、フタル酸の15質量%メタノール溶液を46mL、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩の5質量%水溶液を5.4mLを加えて混合し、塗布直前に4質量%のクロムみょうばん40mLをスタチックミキサーで混合したものを塗布液量が26.1mL/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で20[mPa・s]であった。
5)表面保護層第2層塗布液の調製
イナートゼラチン100g、ベンゾイソチアゾリノン10mgを水800mLに溶解し、流動パラフィンの10質量%乳化物を10g、ヘキサイソステアリン酸ジペンタエリスリットの10質量%乳化物を30g、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液180g、フタル酸15質量%メタノール溶液40mL、フッ素系界面活性剤(F−1)の1質量%溶液を5.5mL、フッ素系界面活性剤(F−2)の1質量%水溶液を5.5mL、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩の5質量%水溶液を28mL、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径0.7μm、体積加重平均の分布30%)4g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径3.6μm、体積加重平均の分布60%)21gを混合したものを表面保護層塗布液とし、8.3mL/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター,60rpm)で19[mPa・s]であった。
3−3.熱現像感光材料の作製
1)熱現像感光材料1−1〜1−7の作製
バック面と反対の面に下塗り面から画像形成層塗布液1−1〜1−7を用いた画像形成層、中間層、表面保護層第1層、表面保護層第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、熱現像感光材料の試料を作製した。このとき、画像形成層と中間層の塗布液は31℃に、表面保護層第1層の塗布液は36℃に、表面保護層第2層の塗布液は37℃に温度調整した。
画像形成層の各化合物の塗布量(g/m2)は以下の通りである。
脂肪酸銀 5.42
顔料(C.I.Pigment Blue 60) 0.036
ポリハロゲン化合物−1 0.12
ポリハロゲン化合物−2 0.25
フタラジン化合物−1 0.18
SBRラテックス(TP−1) 3.88
イソプレンラテックス(TP−2) 5.82
還元剤−1 0.40
還元剤−2 0.40
水素結合性化合物−1 0.116
現像促進剤−2 0.02
メルカプト化合物−1 0.002
メルカプト化合物−2 0.012
ハロゲン化銀(Agとして) 0.10
塗布乾燥条件は以下のとおりである。
塗布はスピード160m/minで行い、コーティングダイ先端と支持体との間隙を0.10mm〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対して196Pa〜882Pa低く設定した。支持体は塗布前にイオン風にて除電した。
引き続くチリングゾーンにて、乾球温度10℃〜20℃の風にて塗布液を冷却した後、無接触型搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置にて、乾球温度23℃〜45℃、湿球温度15℃〜21℃の乾燥風で乾燥させた。
乾燥後、25℃で湿度40%RH〜60%RHで調湿した後、膜面を70℃〜90℃になるように加熱した。加熱後、膜面を25℃まで冷却した。
作製された熱現像感光材料のマット度はベック平滑度で画像形成層面側が550秒、バック面が130秒であった。また、画像形成層面側の膜面のpHを測定したところ6.0であった。
以上のようにして作製した試料を熱現像感光材料1−1とした。熱現像感光材料1−1とは化学増感剤をそれぞれ表1のように変えて調製したハロゲン化銀乳剤2〜6を用いた試料も同様に作製し、熱現像感光材料1−2〜1−7とした。
2)熱現像感光材料2−1〜2−7の作製
熱現像感光材料1−1〜1−7に対して、画像形成層塗布液を画像形成層塗布液2−1〜2−7に変更した以外は同様にして熱現像感光材料2−1〜2−7を作製した。このときの画像形成層の各化合物の塗布量(g/m2)は以下の通りである。
脂肪酸銀 5.27
顔料(C.I.Pigment Blue 60) 0.036
ポリハロゲン化合物−1 0.14
ポリハロゲン化合物−2 0.28
フタラジン化合物−1 0.18
SBRラテックス(TP−1) 2.83
イソプレンラテックス(TP−2) 6.60
還元剤−2 0.77
水素結合性化合物−1 0.112
現像促進剤−1 0.019
現像促進剤−2 0.016
色調調整剤−1 0.006
メルカプト化合物−2 0.003
ハロゲン化銀(Agとして) 0.10
以下に本発明の実施例で用いた化合物の化学構造を示す。
Figure 2006337825
Figure 2006337825
Figure 2006337825
Figure 2006337825
Figure 2006337825
Figure 2006337825
Figure 2006337825
4.写真性能の評価
1)準備
得られた試料は半切サイズ(43cm長×35cm幅)に切断し、25℃50%RHの環境下で以下の包装材料に包装し、2週間常温下で保管した後、以下の評価を行った。
《包装材料》
PET10μm/PE12μm/アルミ箔9μm/Ny15μm/カーボン3質量%を含むポリエチレン50μmを積層したラミネートフィルム:
酸素透過率:0.02mL/atm・m2・25℃・day、水分透過率:0.10g/atm・m2・25℃・day。
2)熱現像感光材料の露光・現像
熱現像感光材料1−1〜1−7は、富士メディカル(株)ドライレーザーイメージャーFM−DPL(最大60mW(IIIB)出力の660nm半導体レーザー搭載)にて露光・熱現像(112℃−119℃−121℃−121℃に設定した4枚のパネルヒータで合計24秒)した。
熱現像感光材料2−1〜2−7は、富士メディカル(株)ドライレーザーイメージャーDRYPIX7000(最大50mW(IIIB)出力の660nm半導体レーザー搭載)にて露光・熱現像(107℃−121℃−121℃に設定した3枚のパネルヒータで合計14秒)した。
3)写真性能の評価
Macbeth濃度計により得られた画像の濃度測定を行い、露光量に対する濃度の特性曲線を作製した。レーザーが露光されていない部分の濃度をかぶり(Fog)とし、また最高露光量で露光した部分の濃度をDmaxとした。またFog+1.0の濃度を得る露光量の逆数を感度とし、試料1−1の感度を基準とした相対値で表記した。
また、画像保存安定性としてプリントアウト性能を次のように評価した。熱現像処理後のサンプルを25℃60%RHの環境下で、1000ルクスの照度の蛍光灯下で10日間放置し、かぶりの増加(初期と保存後との差△Fog)を測定した。
得られた結果を表1に示した。
Figure 2006337825
表1の結果より、本発明の化学増感剤を用いることによって、高感度でかつ、Dmaxが高い好ましい熱現像感光材料が得られた。さらに、本発明の熱現像感光材料は、プリントアウトかぶりが改善される予想外の結果が得られた。
実施例2.
1.塗布試料の作製
実施例1で用いた熱現像感光材料2−1〜2−7において、還元剤−2を一般式(R)の化合物(R−17)に等モル変更し、ポリハロゲン化合物−2を一般式(H)の化合物(H−17)に等モル変更した以外は同様にして、熱現像感光材料3−1〜3−7を作製した。化合物(R−17)と化合物(H−17)は、それぞれ還元剤−2、ポリハロゲン化合物−2と同様に分散物を調製して添加した。
2.性能評価
実施例1と同様に評価した結果、実施例1と同様に本発明の化学増感剤を試料は優れた性能を示した。
実施例3.
1.ハロゲン化銀乳剤の調製
1)ハロゲン化銀乳剤11の調製
下記に従って、平板状ヨウ臭化銀乳剤を調製した。
KBr4.1g、フタル化ゼラチン14.1gを含む水溶液1500mLを40℃に保ち撹拌した。AgNO3(2.9g)水溶液とKBr(2.0g)とKI(0.39g)を含む水溶液を40秒間に渡り添加した。フタル化ゼラチン35.5gを含む水溶液を添加した後58℃に昇温した。その後、第1成長としてAgNO3(63.7g)水溶液とKIを含むKBr水溶液をダブルジェット法で流量加速して添加した。KIの濃度は沃化銀含量が0.5モル%になるように調整した。操作中のpAgを8.9に維持した。途中で六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩とベンゼンチオスルホン酸ナトリウムを添加した。その後、最外層成長としてAgNO3水溶液(7.4g)とKIを含むKBr水溶液を5分間に渡って添加した。KIの濃度は沃化銀含量が10モル%になるように調整した。
この時、pAgを8.9に維持した。通常の水洗を行い、乳剤1kg中に含まれる銀量とゼラチン量がハロゲン化銀乳剤2Aと等しくなるようにフタル化ゼラチンを添加し、40℃でpH5.9、pAg8.4に調整した。
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5mL加え、40分後に57℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルホン酸ナトリウムをメタノール溶液でハロゲン化銀1モルに対して7.6×10-5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Cをメタノール溶液でハロゲン化銀1モル当たり4.5×10-5モル加えて91分間熟成した。その後、分光増感色素−3をハロゲン化銀1モルに対して2.2×10-3モル、増感色素−1と−2をそれぞれハロゲン化銀1モルに対して1.0×10-4モル加え、さらに塩化カルシウムを添加した。1分後にN,N'−ジヒドロキシ−N"−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mLを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10-4モル、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10-4モル及び1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを水溶液で銀1モルに対して8.5×10-4モル添加した。
得られたハロゲン化銀粒子は、平均円相当直径0.95μm、平均円相当直径の変動係数12.6%、平均厚み0.055μm、平均アスペクト比17.2の平板状粒子が全投影面積の80%以上を占めていた。球相当直径は0.42μmであった
2)ハロゲン化銀乳剤12〜17の調製
ハロゲン化銀乳剤11の調製において、テルル増感剤Cを表2に示す化学増感剤に変更して、ハロゲン化銀乳剤12〜17を調製した。得られたハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化銀乳剤10と同様の高いアスペクト比の平板状粒子であった。
3)塗布液用混合乳剤11〜17の調製
ハロゲン化銀乳剤11〜17を用いて実施例1の塗布液用混合乳剤の調製と同様にして、塗布液用混合乳剤11〜17を調製した。
2.熱現像感光材料の作製
塗布液用混合乳剤として塗布液用混合乳剤11〜17を用いた以外は実施例1の試料2−1〜2−7と同様にして、試料3−1〜3−7を作製した。
Figure 2006337825
3.性能評価
富士フイルム(株)製の製XレイオルソスクリーンHG−M(蛍光体としてテルビウム付活ガドリニウムオキシスルフィドを使用。発光ピーク波長545nm)と試料を重ねて、0.05秒のX線露光を与え、X線センシトメトリーを行った。使用したX線装置は、東芝(株)製の商品名DRX−3724HDであり、タングステンターゲットを用いた。三相全波整流方式のパルス発生器で80kVpの電圧をかけ、人体とほぼ等価な吸収を持つ水7cmのフィルタを通したX線を光源とした。距離法にてX線露光量を変化させ、logE=0.15の幅でステップ露光を行なった。露光後に、実施例1と同様に熱現像して、性能評価を行った。
得られた結果を表2に示した。
実施例1と同様に、本発明の化合物を用いて調製した試料は優れた性能を示した。
Figure 2006337825
実施例4
実施例3の乳剤12,および16と同様に、但し化学増感時にセレン増感剤Bまたは本発明の化合物15に更にそれぞれ、チオシアン酸カリウムをハロゲン化銀1モル当たり3×10-3モル、金増感剤塩化金酸をハロゲン化銀1モル当たり6×10-6モル、および硫黄増感剤チオ硫酸ナトリウムをハロゲン化銀1モル当たり5×10-5モル加えて、金硫黄セレン増感を施したハロゲン化銀乳剤21と22を調製した。乳剤12,および16の代わりに乳剤21および22を用いて実施例3と同様にして塗布試料を作製した。実施例3と同様に性能を評価した結果、本発明の化合物を用いた試料は優れた性能を示した。
実施例5
1.バック層、バック面保護層
《ハレーション防止層塗布液の調製》
40℃に保温した水に石灰処理ゼラチン32.7g、単分散ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ8μm、粒径標準偏差0.4μm)0.77g、ベンゾイソチアゾリノン0.08g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム0.3g、青色染料化合物−1を0.06g、紫外光吸収剤−1を1.5g、アクリル酸/エチルアクリレート共重合ラテックス(共重合比5/95)5.0g、N,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)1.7gを混合し、1mol/lの水酸化ナトリウムでpHを6.0に調整し、水にて全体を818mLとし、ハレーション防止層塗布液を調製した。
《バック面保護層塗布液の調製》
40℃に保温した水に石灰処理ゼラチン66.5g、流動パラフィン乳化物を流動パラフィンとして5.4g、ベンゾイソチアゾリノン0.10g、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム0.5g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム0.27g、フッ素系界面活性剤(F−1)2質量%水溶液を13.6mL、アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(共重合質量比5/95)10.0gを混合し、1mol/lの水酸化ナトリウムでpHを6.0に調整し、水で1000mLとしてバック面保護層塗布液とした。
《バック層の塗布》
実施例1と同様に下塗りを施したPET支持体のバック面側に、ハレーション防止層塗布液をゼラチン塗布量が1.70g/m2となるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が0.79g/m2となるように同時重層塗布し、乾燥し、バック層を作製した。
2.画像形成層、中間層、および表面保護層
2−1.塗布用材料の準備
1)ハロゲン化銀乳剤の調製
《ハロゲン化銀乳剤31の調製》
<粒子形成>
蒸留水1420mLに1質量%ヨウ化カリウム溶液4.3mLを加え、さらに0.5mol/L濃度の硫酸を3.5mL、フタル化ゼラチン36.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、42℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え195.6mLに希釈した溶液Aとヨウ化カリウム21.8gを蒸留水にて容量218mLに希釈した溶液Bを一定流量で9分間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10mL添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8mL添加した。
さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mLに希釈した溶液Cとヨウ化カリウム60gを蒸留水にて容量600mLに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で120分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10-4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10-4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作製した。
<化学増感>
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1、2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5mL加え、47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルホン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10-5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Cをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10-4モル加えて91分間熟成した。
N、N'−ジヒドロキシ−N"、N"−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mLを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり8×10-4モル及び1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1、3、4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10-4モル添加して、ハロゲン化銀乳剤31を作製した。
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.040μm、球相当径の変動係数18%の純ヨウ化銀粒子であった。また(001)、{100}、{101}面を有する14面体粒子であり、X線粉末回折分析を用いて測定するとそのγ相の比率は30%であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
《ハロゲン化銀乳剤32〜37の調製》
ハロゲン化銀乳剤31の調製において、テルル増感剤Cの代わりに、セレン増感剤Bまたは表3に記載の本発明の一般式(1)の化合物を用いて、同様にしてハロゲン化銀乳剤32〜37を調製した。
Figure 2006337825
《塗布液用混合乳剤31〜37の調製》
各々のハロゲン化銀乳剤を溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1モル当たり7×10-4モル添加した。
さらに「1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物」として、化合物1と2と3をそれぞれハロゲン化銀の銀1モル当たり2×10-3モルになる量を添加した。
また吸着基と還元基を有する化合物として、化合物(1)と(2)をそれぞれハロゲン化銀1モルあたり8×10-4モルになる量を添加した。
さらに塗布液用混合乳剤1Lあたりハロゲン化銀の含有量が銀として15.6gとなるように加水した。
2)還元剤分散物−3の調製
還元剤−3(1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を60℃で5時間加熱処理し、還元剤−1分散物を得た。
こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
3)ヨウ化銀錯形成剤溶液の調製
8kgのクラレ(株)製変性ポリビニルアルコールMP−203を水174.57kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15kgと6−イソプロピルフタラジンの70質量%水溶液14.28kgを添加し、ヨウ化銀錯形成剤の5質量%溶液を調製した。
2−2.塗布液の調製
<画像形成層塗布液4−1〜4−9の調製>
上記で得た脂肪酸銀分散物1000gに、水、顔料−1分散物、有機ポリハロゲン化合物−1分散物、有機ポリハロゲン化合物−2分散物、SBRラテックス(TP−1)液、イソプレンラテックス(TP−1)液、還元剤−3分散物、水素結合性化合物−1分散物、現像促進剤−1分散物、現像促進剤−2分散物、色調調整剤−1分散物、ヨウ化銀錯形成剤溶液、メルカプト化合物−1水溶液、メルカプト化合物−2水溶液を順次添加し、塗布直前に塗布液用混合乳剤31〜37のいずれか140gを添加して良く混合した画像形成層塗布液をそのままコーティングダイへ送液し、塗布した。
上記画像形成層塗布液の粘度は東京計器のB型粘度計で測定して、40℃(No.1ローター、60rpm)で35[mPa・s]であった。
Haake社製RheoStress RS150を使用した38℃での塗布液の粘度は剪断速度が0.1、1、10、100、1000[1/秒]においてそれぞれ38、49、48、34、25[mPa・s]であった。
塗布液中のジルコニウム量は銀1gあたり0.30mgであった。
2−3.熱現像感光材料4−1〜4−7の作製
画像形成層塗布液として画像形成層塗布液4−1〜4−7を用いた以外は実施例1と同様にして、画像形成層、中間層、表面保護層第1層、及び表面保護層第2層を同時重層塗布し、熱現像感光材料の試料を作製した。
画像形成層の各化合物の塗布量(g/m2)は以下の通りである。
脂肪酸銀 3.34
顔料(C.I.Pigment Blue 60) 0.036
ポリハロゲン化合物−1 0.09
ポリハロゲン化合物−2 0.14
ヨウ化銀錯形成剤 0.18
SBRラテックス(TP−1) 2.83
イソプレンラテックス(TP−2) 6.60
還元剤−3 0.77
水素結合性化合物−1 0.28
現像促進剤−1 0.04
現像促進剤−2 0.01
色調調整剤−1 0.005
メルカプト化合物−1 0.002
メルカプト化合物−2 0.006
ハロゲン化銀(Agとして)(種類を表3に示す) 0.14
以下に本発明の実施例で用いた化合物の化学構造を示す。
Figure 2006337825
Figure 2006337825
3.写真性能の評価
1)準備
実施例1と同様に準備した。
2)画像露光、および熱現像
各々の試料を富士フイルムメディカル(株)ドライレーザーイメージャーDRYPIX7000の露光部に半導体レーザー光源として日亜化学工業のNLHV3000E半導体レーザーを実装し、ビーム径を100μmに絞って画像露光を行った。レーザー光の感光材料面での照度を0および1mW/mm2〜1000mW/mm2の間で変化させて10-5秒で露光を行った。レーザー光の発振波長は405nmであった。熱現像は、3枚のパネルヒータを107℃−121℃−121℃に設定し、搬送速度を調整して熱現像時間を合計14秒とした。
3)写真性能の評価
Macbeth濃度計により得られた画像の濃度測定を行い、露光量に対する濃度の特性曲線を作製した。レーザーが露光されていない部分の濃度をかぶり(Fog)とし、また最高露光量で露光した部分の濃度をDmaxとした。またFog+1.0の濃度を得る露光量の逆数を感度とし、試料4−1の感度を基準とした相対値で表記した。
また、プリントアウト性能を次のように評価した。熱現像処理後のサンプルを25℃60%RHの環境下で、1000ルクスの照度の蛍光灯下で10日間放置し、かぶりの増加(初期と保存後との差△Fog)を測定した。
得られた結果を表3に示した。
Figure 2006337825
表3の結果より、本発明の化学増感剤を用いることによって、高感度でかつ、Dmaxが高い好ましい熱現像感光材料が得られた。さらに、熱現像処理後の画像かぶりの増加も少なる場合が多く好ましい結果が得られた。
実施例6
1.下塗り支持体の作製
1)下塗層塗布液の作製
高松油脂(株)製ペスレジンA520(30質量%溶液) 46.8g
東洋紡績(株)製バイロナールMD1200 10.4g
ポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテル
(平均エチレンオキシド数:8.5)1質量%溶液 11.0g
綜研化学(株)製MP1000(PMMAポリマー微粒子、平均粒径0.4μm)
0.91g
蒸留水 931mL
2)下塗り
実施例1のコロナ放電処理したポリエチレンテレフタレート支持体の両面それぞれに、上記下塗り塗布液をワイヤーバーでウエット塗布量が6.6mL/m2(片面当たり)になるように塗布して180℃で5分間乾燥した。
2.ハロゲン化銀乳剤の調製
1)ハロゲン化銀乳剤41の調製
《ホスト粒子の調製》
蒸留水1421mLに1質量%ヨウ化カリウム溶液4.3mLを加え、さらに0.5モル/L硫酸を3.5mL、フタル化ゼラチン36.5g、2,2'−(エチレンジチオ)ジエタノールの5質量%メタノ−ル溶液160mLを添加した溶液を、ステンレス製反応壷中で撹拌しながら75℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え218mLに希釈した溶液Aとヨウ化カリウム36.6gを蒸留水にて366mLに希釈した溶液Bを、溶液Aは一定流量で16分かけて全量添加し、溶液BはpAgを10.2に維持しながらコントロールダブルジェット法で添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10mL添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8mL添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて508.2mLに希釈した溶液Cとヨウ化カリウム63.9gを蒸留水にて639mLに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で80分かけて全量添加し、溶液DはpAgを10.2に維持しながらコントロールダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10-4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10-4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg11.0のハロゲン化銀分散物を作製した。
得られた粒子は、純ヨウ化銀乳剤であり、平均投影面積直径0.93μm、平均投影面積直径の変動係数17.7%、平均厚み0.057μm、平均アスペクト比16.3の平板状粒子が全投影面積の80%以上を占めていた。球相当直径は0.42μmであった。
X線粉末回折分析による解析の結果、ヨウ化銀の30%がγ相で存在していた。
《エピタキシャル接合の調製》
上記ホスト粒子の銀1モル相当を反応容器に入れた。pAgは38℃で測定して10.2であった。次いで、ダブルジェット添加により、0.5モル/LのKBr溶液及び0.5モル/LのAgNO3溶液を10mL/分で20分間にわたって添加し、実質的に10モル%臭化銀をAgIホスト乳剤上にエピタキシャル状に沈殿させた。操作中、pAgは10.2に維持した。さらに、0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調製し、撹拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg11.0のハロゲン化銀分散物を作製した。
《化学増感》
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5mL加え、40分後に53℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルホン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10-4モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Cをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10-5モル加えて91分間熟成した。その後、N,N'−ジヒドロキシ−N"−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mLを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10-4モル、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10-4モルおよび1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを水溶液で銀1モルに対して8.5×10-4モル添加して、ハロゲン化銀乳剤41を作製した。
2)ハロゲン化銀乳剤42〜47の調製
ハロゲン化銀乳剤41の調製において、テルル増感剤Cの代わりに、セレン増感剤Bまたは表4に記載の本発明の一般式(1)の化合物を用いて、同様にしてハロゲン化銀乳剤42〜47を調製した。
3)塗布液用混合乳剤41〜47の調製
各々のハロゲン化銀乳剤を溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1モル当たり7×10-3モル添加した。さらに1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物1と2と3をそれぞれハロゲン化銀の銀1モル当たり2×10-3モルになる量を添加した。また吸着基と還元基を有する化合物1と2をそれぞれハロゲン化銀1モルあたり8×10-3モルになる量を添加した。さらに塗布液用混合乳剤1Lあたりハロゲン化銀の含有量が銀として15.6gとなるように加水した。
3.画像形成層塗布液5−1〜5−7の調製
脂肪酸銀分散物1000gに、水、有機ポリハロゲン化合物−1分散物、有機ポリハロゲン化合物−2分散物、SBRラテックス(TP−1)(Tg:17℃)液、イソプレンラテックス(TP−2)、還元剤−1分散物、還元剤−2分散物、水素結合性化合物−1分散物、現像促進剤−1分散物、現像促進剤−2分散物、色調調整剤−1分散物、ヨウ化銀錯形成剤溶液、メルカプト化合物−1水溶液、メルカプト化合物−2水溶液を順次添加し、塗布直前に塗布液用混合乳剤41〜47のいずれかを添加して良く混合した画像形成層塗布液をそのままコーティングダイへ送液した。
4.熱現像感光材料の作製
支持体の両面に、下塗り面から画像形成層、中間層、表面保護層第1層、表面保護層第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布した。画像形成層は画像形成層塗布液5−1〜5−7を用いて、中間層、表面保護層第1層、および表面保護層第2層は実施例5と同じ塗布液を用いた。画像形成層の塗布銀量は脂肪酸銀とハロゲン化銀の合計で片面あたり0.57g/m2であった。これを支持体の両面に塗布した。
画像形成層における各化合物の片面あたりの塗布量(g/m2)は以下の通りである。
脂肪酸銀 1.67
ポリハロゲン化合物−1 0.04
ポリハロゲン化合物−2 0.10
ヨウ化銀錯形成剤 0.46
SBRラテックス 2.08
イソプレンラテックス 3.12
還元剤−1 0.33
還元剤−2 0.13
水素結合性化合物−1 0.15
現像促進剤−1 0.02
現像促進剤−2 0.01
色調調整剤−1 0.002
メルカプト化合物−1 0.001
メルカプト化合物−2 0.003
ハロゲン化銀(Agとして) 0.17
Figure 2006337825
5.性能評価
1)準備
得られた試料は、実施例5と同様に準備した。
2)画像露光、および熱現像
(蛍光増感スクリーンAの作製)
<下塗り層の作製>
特開2001−124898号公報の実施例4と同様にして、250μmのポリエチレンテレフタレート(支持体)上にアルミナ粉体よりなる乾燥後の膜厚が50μmの光反射層を形成した。
<蛍光体シートの製造>
BaFBr:Eu蛍光体(平均粒径3.5μm)250g、ポリウレタン系バインダー樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、商品名:パンデックスT5265M)8g、エポキシ系バインダー樹脂(油化シェルエポキシ(株)製、商品名:エピコート1001)2g、およびイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートHX)0.5gをメチルエチルケトンに加え、プロペラミキサーで分散して、粘度が25PS(25℃)の蛍光体層形成用塗布液を調製した。この塗布液を仮支持体(予めシリコーン系離型剤が塗布されているポリエチレンテレフタレートシート)の表面に塗布し、乾燥して蛍光体層を形成した。この蛍光体層を仮支持体から剥がし取って蛍光体シートを得た。
3)光反射層上への蛍光体シートの付設
前記の工程1)で製造した光反射層付き支持体の光反射層の表面に、上記の蛍光体シートを重ね、カレンダロールにて、圧力400kgw/cm2、温度80℃の条件で加圧し、光反射層上に蛍光体層を設けた。得られた蛍光体層の厚みは125μmであり、蛍光体層中の蛍光体粒子の体積充填率は68%であった。
4)表面保護層の形成
厚み6μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の片面にポリエステル系の接着剤を塗布し、ラミネート法で蛍光体層上に表面保護層を設けた。このようにして、支持体、光反射層、蛍光体層および表面保護層からなる蛍光増感スクリーンAを得た。
5)発光特性
40kVpのX線で測定した蛍光増感スクリーンAの発光スペクトルを図1に示した。
蛍光増感スクリーンAは、390nmにピークをもつ半値幅の狭い発光を示した。
(画像露光、熱現像)
上記スクリーンを2枚使用して、その間に試料を挟み、像形成用組立体を作製した。この組立体に、0.05秒のX線露光を与え、X線センシトメトリーを行った。使用したX線装置は、東芝(株)製の商品名DRX−3724HDであり、タングステンターゲットを用いた。三相にパルス発生器で80kVpの電圧をかけ、人体とほぼ等価な吸収を持つ水7cmのフィルタを通したX線を光源とした。距離法にてX線露光量を変化させ、logE=0.15の幅でステップ露光を行なった。露光後に、下記の熱現像処理条件で熱現像処理した。
富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DP Lの熱現像部を改造し、両面から加熱できるようにした熱現像機を製作した。また、熱現像部の搬送ローラーをヒートドラムに変更することによりフィルムシートの搬送が可能になるように改造した。4枚のパネルヒーターを112℃−118℃−120℃−120℃に設定し、ヒートドラムの温度は120℃に設定した。さらに、搬送速度を速めて合計14秒になるように設定した。
6)評価結果
実施例5と同様の評価項目を評価した結果を表4に示した。
その結果、本発明の化合物を用いると比較化合物に比べて少ない添加量で、高感度で、高い最高濃度をもたらし、現像処理後の画像かぶりの上昇も小さいといった好ましい結果であった。
実施例7
実施例6のハロゲン化銀乳剤42,44,および45と同様にして、但し化学増感の開始時にチオシアン酸カリウムをハロゲン化銀1モルあたり5×10―3モル、および金増感剤塩化金酸をハロゲン化銀1モルあたり8×10-6モル、および硫黄増感剤4−オキソ−3−ベンジルーオキサゾリジン−2−チオンをハロゲン化銀1モル当たり3.6×10-5モル添加したあと、比較セレン増感剤Bや本発明の化合物10や11を各々ハロゲン化銀1モル当たり2.4×10-5モル添加して、金硫黄セレン増感を施したハロゲン化銀乳剤52,53,54を得た。ハロゲン化銀乳剤42,44,および45の代わりにハロゲン化銀乳剤52,53,および54を用いて試料を作製し、実施例6と同様にして評価した。その結果、実施例6と同様に本発明の化合物は好ましい結果を与えた。
蛍光増感スクリーンAの発光スペクトルを示す。

Claims (15)

  1. 支持体の少なくとも一方の面上に、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤およびバインダーを含有する画像形成層を有する熱現像感光材料であって、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料:
    Figure 2006337825
    (一般式(1)において、Chは硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表す。X1は−N(R1)−または−N+(R2)R3-を表し、R1は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R2およびR3はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Y-は陰イオンを表す。X2は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、−OR4または−N(R5)R6を表す。R4〜R6はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
    Eは下記一般式(2)〜(5)で表される基より選ばれる。
    Figure 2006337825
    一般式(2)において、Zは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、−OR7または−N(R8)R9を表し、R7〜R9はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
    一般式(3)において、A1は酸素原子、硫黄原子または−N(R13)−を表し、R10〜R13はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
    一般式(4)において、A2は酸素原子、硫黄原子または−N(R17)−を表し、R14は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基またはアシル基を表し、R15〜R17はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。Wはベンゼン環に置換しうる置換基を表し、nは0から4の整数を表す。nが2以上である場合は複数のWは同じでも異なっていても良い。
    一般式(5)において、Lは2価の連結基を表し、EWGは電子求引性基を表す。)。
  2. 前記感光性ハロゲン化銀が、前記一般式(1)で表される化合物により化学増感されてなることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
  3. 前記X2が−N(R5)R6で表され、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表すことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱現像感光材料。
  4. 前記Eが一般式(3)または(4)で表される基より選ばれることを特徴とする請求項3に記載の熱現像感光材料。
  5. 前記Chがセレン原子であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
  6. 前記感光性ハロゲン化銀が金増感されてなることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
  7. 水溶性チオシアン酸塩をハロゲン化銀1モルあたり1×10-3モル以上で8×10-1モル以下含有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
  8. 前記感光性ハロゲン化銀の臭化銀含有率が70モル%以上であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
  9. 前記感光性ハロゲン化銀の平均粒子サイズが0.01μm以上0.2μm以下であることを特徴とする請求項8に記載の熱現像感光材料。
  10. 前記感光性ハロゲン化銀の全投影面積の50%以上がアスペクト比2以上の平板状粒子であって、平均粒子サイズが0.3μm以上8.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
  11. 前記感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%以上であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
  12. 前記感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が80モル%以上であることを特徴とする請求項11に記載の熱現像感光材料。
  13. 前記感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が90モル%以上であることを特徴とする請求項12に記載の熱現像感光材料。
  14. 前記感光性ハロゲン化銀の平均粒子サイズが0.01μm以上0.2μm以下であることを特徴とする請求項11〜請求項13に記載の熱現像感光材料。
  15. 前記感光性ハロゲン化銀の全投影面積の50%以上がアスペクト比2以上の平板状粒子であって、平均粒子サイズが0.3μm以上8.0μm以下であることを特徴とする請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
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