JP2006337107A - 核磁気共鳴測定プローブおよび核磁気共鳴測定装置 - Google Patents

核磁気共鳴測定プローブおよび核磁気共鳴測定装置 Download PDF

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清乃理 竹腰
Takamasa Momose
孝昌 百瀬
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Abstract

【課題】 伝送線を介した熱伝導による試料の温度上昇を防止することができ、超低温、例えば1K程度の温度でもNMR測定が可能なNMR測定プローブおよびそれを用いたNMR測定装置を提供する。
【解決手段】 試料を冷却しながら試料のNMR測定を行う核磁気共鳴測定プローブにおいて、液体ヘリウム槽29と、液体ヘリウム槽29内に配置されたRFコイル10と、液体ヘリウム槽29を核磁気共鳴測定プローブ50本体外部から断熱するための真空層2A・2Bと、RFコイルで検出された核磁気共鳴の信号を核磁気共鳴測定プローブ50本体外部まで伝送するために、真空層2A・2Bを通るように配設された伝送線31とを設け、真空層2A・2B内の伝送線31には、断熱のためのコンデンサ11A・11Bを挿入する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、試料の核磁気共鳴(以下、適宜「NMR」と略記する)を発生させるための磁界を発生させる磁界発生装置(超伝導磁石など)に装着して使用され、NMR測定を低温(特に極低温)で行うためのNMR測定プローブ、および、上記NMR測定プローブを磁界発生装置に装着してなるNMR測定装置に関するものである。
NMR法は、有機化合物の構造決定だけでなく、超伝導現象の研究などの物性研究、タンパク質などの生体分子の構造決定、MRI(磁気共鳴映像法)などの医学研究まで幅広く用いられている。
試料のNMRを測定するNMR測定装置では、一般に、超伝導磁石によって磁界を発生させ、この磁界内に試料を配置し、試料のNMRをNMR測定プローブで検出するようになっている(特許文献1〜6)。現在市販されている標準的なNMR測定装置は、Hの共鳴周波数が100MHzから600MHzまでのものである。
このようなNMR測定装置は、主に室温下での測定を対象としており、極低温下での測定を行うことができない。
一方、最近、分子生物学の研究などにおいて、試料(測定対象物)を極低温下に冷却してNMR測定を行うことが要求されている。そこで、極低温下で測定が可能なNMR測定装置が開発されている(非特許文献1参照)。上記のNMR測定装置では、NMRを検出するための検出コイルが、磁場の中心に配置されており、また、極低温部位であるプローブの底部に配置されている。
特開平7−120543号公報(1995年5月12日公開) 特開平7−333311号公報(1995年12月22日公開) 特表2001−513201号公報(1999年5月20日公開) 特開平11−352202号公報(1999年12月24日公開) 特表2003−505698号公報(2001年2月1日公開) 特表2004−512532号公報(2002年5月2日公開) Keith Carduner, Marco Villa, and David White, Rev.Sci.Instrum.55(1),January 1984, "Variable-temperature solid-state nuclear-magnetic-resonance probe for superconducting magnets operating in the range 3-350K", Rev(1984年公開)
しかしながら、極低温下で測定が可能な従来のNMR測定装置は、Hの共鳴周波数が150MHz以下であるため、測定精度が低い。
そこで、極低温下の環境においても測定が可能なNMR測定装置において、H共鳴周波数を、150MHzより高い周波数、例えば300MHzにまで高めることが望まれる。
H共鳴周波数を高めるためには、より大きい磁石を用いてより大きい磁場を発生させることが必要である。そのため、NMR測定装置が大型化する。例えば、3.5Tの磁場を発生させる高さ約50cmの磁石を用いた従来のNMR測定装置(H共鳴周波数150MHz)において、H共鳴周波数を150MHzから300MHzまで高めるためには、7Tの磁場を発生させる磁石が必要となる。そのため、磁石が2倍以上に大型化し、NMR測定装置が2倍以上に大型化する。例えば、NMR測定装置本体の高さが50cmから110cmに増大し、NMR測定装置のプローブが2倍以上に大型化する。
しかしながら、極低温下で測定が可能な従来のNMR測定装置のプローブでは、検出コイルからの信号を伝送する伝送線が、プローブの頂部から引き出されて、室温にある外部の共振回路(共鳴電気回路)に接続されている。そのため、プローブの高さが高くなるに従って、伝送線の長さが増大する。例えば、プローブの高さが110cmの場合、伝送線の長さが1m以上になる。その結果、信号の伝送効率が落ちてしまい、信号損失が増大する。すなわち、伝送線の抵抗成分により、信号強度が弱くなる。また、伝送線がアンテナとして作用して周囲の雑音を拾い、信号強度が相対的に小さくなる(S/N比が小さくなる)。これらの結果、高い測定精度が得られない。
また、伝送線の長さが長くなりすぎると、測定中に伝送線が揺れ易くなる。伝送線が揺れると、共鳴周波数がずれて測定がうまくいかなくなる。また、伝送線の長さが長くなりすぎると、低温測定のためにプローブの温度を室温から低温に冷やしたときに、伝送線の長さが縮み易くなる。このような伝送線の長さの変化は、共鳴周波数の変化をもたらし、測定結果が不安定になる。
なお、伝送線がアンテナとして作用することによって生じる相対的な信号強度の低下を最小にする方法として、伝送線の長さを共鳴周波数の波長のn+(1/4)倍(nは整数倍)にするという方法がある。しかしながら、このような方法は、装置の作成時に寸法の制約を与え、装置の作成を難しくする場合がある。例えば、高磁場を使う場合、共鳴周波数が高くなるために、伝送線の長さの僅かなずれ、例えば数cmのずれであっても、伝送線の長さが共鳴周波数の波長のn+(1/4)倍から大きくずれてしまい、相対的な信号強度が低下してしまう。
そこで、従来の極低温測定用NMRプローブで用いられている長い伝送線を使用せず、短い伝送線を使用した極低温測定用NMRプローブが望まれる。
しかしながら、伝送線を短くすると、試料の温度上昇が発生する。すなわち、室温にある外部の回路とヘリウム温度にある検出コイルとを短い長さの伝送線で繋ぐことになるので、外部の熱が熱伝導の高い伝送線を介して検出コイルに流入し、試料の温度を上昇させてしまう。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、伝送線を介した熱伝導による試料の温度上昇を防止することができ、超低温、例えば1K程度の温度でもNMR測定が可能なNMR測定プローブおよびそれを用いたNMR測定装置を提供することにある。
なお、非特許文献1のFIG.3には、試料コイルLと外部の同調ボックスWとを接続する配線上にコンデンサC1を設けたNMRクライオスタットが開示されている。
しかしながら、非特許文献1のNMRクライオスタットにおけるコンデンサC1は、ほぼ均一な温度に保持された極低温部に設けられており、極低温部と外部とを断熱する役割を果たしていない。
すなわち、このコンデンサC1は、試料コイルL(M)と同軸ケーブルEとの間に接続されている(非特許文献1のFIG.3参照)ことから、同軸ケーブルEにおける試料コイルL1側の先端(非特許文献1のFIG.1における「E」で示される斜線部の下端)に取り付けられているものと考えられる。非特許文献1のNMRクライオスタットでは、液体ヘリウム槽Lに貯めた液体ヘリウムからの熱伝導(コールドフィンガーK、ガスケットP、およびコールドフィンガーアタッチメントNを介した熱伝導)によって試料コイルM(L)を冷却しており、また、支持リングRと接する部分の同軸ケーブルEを介した熱リークが支持リングRによって最小化されている。それゆえ、非特許文献1のNMRクライオスタットでは、放射線シールドQおよび支持リングRによって囲まれた空間の温度をできるだけ均一にし、この空間全体を液体ヘリウムの温度に近い温度に保つことで、試料コイルLおよび試料の温度を液体ヘリウムの温度に近い温度に保っていると考えられる。実際、放射線シールドQの温度は、コールドフィンガーKの温度(4K)に近い温度(25K)となっている。そのため、コンデンサC1の両端の温度はほぼ等しいと考えられるので、コンデンサC1は断熱の機能を実質的に有していない。
また、非特許文献1のNMRクライオスタットは、放射線シールドQおよび支持リングRによって囲まれた空間の内部で断熱を行うものではない。非特許文献1のNMRクライオスタットは、真空ジャケットB内の真空層で断熱を行うと共に、同軸ケーブルEを介した熱リークを、支持リングRおよびクランプSを設け、同軸ケーブルEの長さを長くすることによって低減するものである。したがって、非特許文献1のNMRクライオスタットにおけるコンデンサC1は、断熱のために設けられたものではない。
本発明の核磁気共鳴測定プローブは、上記の課題を解決するために、試料に核磁気共鳴を発生させるための磁界を発生させる磁界発生装置に装着して使用され、試料を冷却しながら試料の核磁気共鳴を測定するための核磁気共鳴測定プローブであって、試料を冷却するための冷媒を収容した冷却槽と、試料の核磁気共鳴を検出するために冷却槽内に配置された検出コイルと、上記冷却槽を核磁気共鳴測定プローブ本体外部から断熱するための真空層と、上記検出コイルで検出された核磁気共鳴の信号を核磁気共鳴測定プローブ本体外部まで伝送するために、上記真空層を通るように配設された伝送線とを備え、上記真空層内の伝送線には、断熱のためのコンデンサが挿入されていることを特徴としている。
上記構成によれば、真空層内の伝送線には断熱のためのコンデンサが挿入されている。コンデンサは、伝送線を構成する導電材料よりも熱伝導性が低い誘電材料を電極間に有するため、伝送線よりも熱伝導性が小さい。そのため、外部から伝送線に熱が流入しても、真空層内の伝送線に挿入されたコンデンサが熱流入を概ね遮断するので、外部から伝送線を介して冷却槽に熱が流入して冷却槽の温度が上昇することを防止できる。その結果、超低温、例えば1K程度の温度でもNMR測定が可能となる。
なお、本願明細書において、「真空層」とは、10-3 Torr以下の圧力を持つ空間を指すものとする。
本発明の核磁気共鳴測定プローブは、上記構成の核磁気共鳴測定プローブにおいて、上記冷却槽への熱流入を防止するために、上記冷却槽よりも高い温度に冷却され、上記冷却槽を囲むように配設されたシールド板をさらに備え、上記真空層は、上記シールド板によって複数の真空層に分断されており、上記各真空層内の伝送線に対してそれぞれ、断熱のためのコンデンサが挿入されている構成であることがより好ましい。
上記構成によれば、上記各真空層内の伝送線に対してそれぞれ、断熱のためのコンデンサが挿入されているので、外部から伝送線を介して冷却槽に熱が流入して冷却槽の温度が上昇することをより一層防止することができる。
本発明の核磁気共鳴測定プローブは、上記構成の核磁気共鳴測定プローブにおいて、検出コイルにおける伝送線と接続された側と反対側から、真空層内まで配設された配線をさらに備え、上記真空層内の配線にも、断熱のためのコンデンサが挿入されている構成であることがより好ましい。
上記構成によれば、検出コイルにおける伝送線と接続された側と反対側から、真空層内まで配設された配線にも、断熱のためのコンデンサが挿入されているので、冷却槽よりも高い温度にある、配線と接する部材から配線を介して冷却槽に熱が流入して冷却槽の温度が上昇することを防止することができる。
本発明の核磁気共鳴測定プローブは、上記構成の核磁気共鳴測定プローブにおいて、一端が検出コイルに接続され、他端が接地されたコイルをさらに備え、上記コイルは、検出コイルよりも大きいインダクタンスを有する構成であることが好ましい。
上記の第2のコンデンサを備える構成では、検出コイル(試料を入れるコイル)の両端にコンデンサが挿入されているために、このままでは、検出コイルが、直流としては電気的に浮いた状態となる。そのため、このままでは、試料コイルに電荷が溜まった場合に、検出コイル、第1コンデンサ、第2のコンデンサなどからなる共振回路の共振周波数(共鳴周波数)が不安定になることがある。例えば、核磁気共鳴測定プローブ本体の表面を手で触ると、共振回路の共振周波数が変化することがある。
上記構成では、検出コイルよりも大きいインダクタンスを持つ、接地されたコイルを検出コイルに接続することで、検出コイルが電気的に接地され、共振回路の共振周波数が安定化される。
本発明の核磁気共鳴測定プローブは、上記構成の核磁気共鳴測定プローブにおいて、上記信号出力端は、核磁気共鳴測定プローブ本体における長手方向に沿った先端部に設けられ、上記検出コイルは、核磁気共鳴測定プローブ本体における、中心よりも上記先端部に近い位置に設けられている構成であることが好ましい。
上記構成によれば、信号出力端と検出コイルとの距離が短いため、伝送線の長さを短くすることができる。これにより、伝送線の抵抗成分による信号損失を低減すると共に、伝送線がアンテナとして作用して周囲の雑音を拾うことを防止できる。その結果、高精度のNMR測定を実現できる。また、伝送線の揺れ、および冷却による伝送線の縮み量(絶対値)を抑えることで、共鳴周波数を安定化することができ、その結果、安定した測定結果をNMR測定を実現できる。
また、上記構成では、室温にある信号出力端と、冷却槽内に配置されて冷却された検出コイルとを、短い伝送線で繋ぐことになる。そのため、もし伝送線に何も設けられていなければ、伝送線の熱伝導によって外部の熱が冷却槽内に流入して、冷却槽内の温度が上昇するという問題が発生する。しかしながら、上記構成では、断熱のためのコンデンサが伝送線に挿入されているので、上記の問題を解決できる。
なお、上記構成において、上記信号出力端は核磁気共鳴測定プローブ本体の下端に設けられ、上記検出コイルは核磁気共鳴測定プローブ本体における下部に設けられていることが好ましい。
本発明の核磁気共鳴測定装置は、本発明の核磁気共鳴測定プローブと、試料に核磁気共鳴を発生させるための磁界を発生させる磁界発生装置とを備えることを特徴としている。
上記構成によれば、本発明の核磁気共鳴測定プローブを備えるので、伝送線を介した熱伝導による試料の温度上昇を防止することができ、超低温、例えば1K程度の温度でもNMR測定が可能なNMR測定装置を提供することができる。
本発明の核磁気共鳴測定プローブおよび核磁気共鳴測定装置は、以上のように、試料を冷却するための冷媒を収容した冷却槽と、試料の核磁気共鳴を検出するために冷却槽内に配置された検出コイルと、上記冷却槽を核磁気共鳴測定プローブ本体外部から断熱するための真空層と、上記検出コイルで検出された核磁気共鳴の信号を核磁気共鳴測定プローブ本体外部まで伝送するために、上記真空層を通るように配設された伝送線とを備え、上記真空層内の伝送線には、断熱のためのコンデンサが挿入されているので、外部から伝送線を介して冷却槽に熱が流入して冷却槽の温度が上昇することを防止できる。
したがって、本発明は、伝送線を介した熱伝導による試料の温度上昇を防止することができ、超低温、例えば1K程度の温度でもNMR測定が可能なNMR測定プローブを提供することができるという効果を奏する。
本発明のNMR測定プローブは、試料を冷却しながら試料のNMRを測定するためのものであり、試料をほぼ均一な温度に冷却するために、試料を冷却するための冷媒を収容した冷却槽としてのクライオスタット(cryostat;低温恒温装置)を備えている。最も基本的な構造を持つクライオスタットは、液体窒素や液体ヘリウムなどの冷媒をデュワー(Dewar)瓶に入れ、そのデュワー瓶中に試料を浸すものである。デュワー瓶の材質としては、ガラスや金属が主に使われるが、ガラスは、破損しやすいこと、寸法精度が悪いこと、自作が難しいこと等から、金属を使うことが好ましい。
クライオスタットとしては、液体Nクライオスタット、液体Heクライオスタット、液体He減圧クライオスタット、液体He減圧クライオスタット、希釈冷凍機などを使用することができる。以下にそれぞれの仕組みを解説する。
液体Nクライオスタットは、デュワー瓶の中に液体窒素を満たし、ステンレス鋼などの熱伝導性の低い支持棒等を用いて試料をデュワー瓶中に浸すものである。液体Nクライオスタットは、試料を液体窒素温度(77K)近くまで冷却することができる。
液体Heクライオスタットは、デュワー瓶の中に液体Heを満たし、ステンレス鋼などの熱伝導性の低い支持棒等を用いて試料をデュワー瓶中に浸すものである。液体Heが、液体窒素より小さい潜熱を持ち、液体窒素より高価であることから、液体Heクライオスタットは、通常、液体Heを入れたデュワー瓶に対して、デュワー瓶外部から液体Heへの熱流入を防止する手段を追加した構造になっている。まず、液体Heを入れたデュワー瓶を、液体窒素を入れたデュワー瓶の中に浸す。さらに、デュワー瓶の上方から液体Heへの熱放射を防止するために、液体窒素を入れたデュワー瓶の上部に熱放射を防止するための金属シールドを付ける。こうすることで、液体Heに対する熱流入は、液体窒素を入れたデュワー瓶から液体Heへの熱放射や、デュワー瓶の金属壁、試料の支持棒、測定用導線等を介した熱伝導のみに抑えられ、長時間の測定に耐えられる。液体Heクライオスタットは、試料を液体He温度(4.2K)近くまで冷却することができる。
液体He減圧クライオスタットは、液体Heクライオスタットにおいて、液体Heを入れたデュワー瓶を減圧するものである。これにより、試料を1K程度の温度まで冷却することができる。これは、Heの飽和蒸気圧を下げることによって液体Heの温度を下げるという原理に基づいている。液体Heを入れたデュワー瓶の減圧は、デュワー瓶に排気口をつけ、その排気口から真空ポンプで排気することによって行うことができる。
液体He減圧クライオスタットには、主に2種類あり、1種類は1つの液体He槽(液体Heを入れたデュワー瓶)全体を減圧するものであり、もう1種類は一般に1Kクライオスタットと呼ばれるものである。1Kクライオスタットは、液体He槽を2つに分け、一方の液体He槽のみを減圧し、この一方の液体He槽に対して導入ニードルバルブを介して他方の液体He槽から液体Heを供給するものである。液体He槽全体を減圧するものは、1Kクライオスタットに比べて冷却の効率が悪く、2K程度までしか到達できない。1Kクライオスタットは、Heの供給量や減圧の調整が行い易いことから、通常、1Kまで到達することができる(原理的に1K以下にすることは難しい)。また、1Kクライオスタットは、ヘリウムの補充が自由に行えるため、ヘリウムの補充を繰り返し行うことで、測定を永続的に行うことができるという利点がある。
なお、液体He減圧クライオスタットには、液体Heの顕熱を利用して、液体窒素を用いずに1Kまで到達できるようなクライオスタットも存在する。ただし、このクライオスタットは、構造上、作成が困難である。
液体He減圧クライオスタットは、液体Heを減圧して得られた槽にHeガスを熱接触させて液化し、液化したHe(液体He)を他の槽に溜め、他の槽もまた減圧するものである。液体He減圧クライオスタットでは、0.3K程度までの低温を得ることができる。
希釈冷凍機は、液体Heと液体Heとを混合させると、Heが濃縮相と希釈相とに相分離し、He希釈相には常に6.4%の濃度のHeが存在するという物理的性質を利用したものである。希釈冷凍機は、混合室で液体Heと液体Heとを混合させ、ポンプ等でHe希釈相よりHeを取除くものである。これにより、Heが新たにHe希釈相に溶け込んで、希釈熱を発生し、混合室での液体の内部エネルギーを低下させ、その結果として混合室が冷却される。希釈冷凍機は、1K以下の温度にすることができる。
本発明の実施の一形態のNMR測定プローブについて、まず、図2および図4〜9に基づいて説明する。図2は、NMR測定プローブの全体を示す縦断面図である。図4および図5は、NMR測定プローブの上部を示す縦断面図であって、断面の方向が異なるものである。図6は、NMR測定プローブのプローブ部を示す縦断面図である。図7は、NMR測定プローブを上方から見た様子を示す平面図である。図8は、NMR測定プローブを下方から見た様子を示す平面図である。
本実施形態のNMR測定プローブでは、試料を冷却するためのクライオスタットとして、上述した1Kクライオスタットを用いた。1Kクライオスタットより到達温度の低い希釈冷凍機や液体He減圧クライオスタットを用いなかったのは、本実施形態では共振回路部をクライオスタット内部に入れる構造としたために共振回路の調整作業が難しいので、共振回路の調整作業が容易になるようにクライオスタットの構造を簡素化するため、また、十分な冷却能力を確保するためである。なお、本実施形態のNMR測定プローブでは、Heを用いないので、以下の説明では、Heを単に「ヘリウム」と記述するものとする。
図2および図4〜8に示すように、本実施形態のNMR測定プローブ50は、真空容器1、真空層2A、真空層2B、液体窒素槽3、液体ヘリウム槽4、液体ヘリウム槽29、液体ヘリウム移送口5、ニードルバルブつまみ6、ニードルバルブ7、80Kシールド(シールド板)8、液体ヘリウム導入管9、RF(Radio Frequency;無線周波数)コイル10、断熱用コンデンサ11A〜11D、可変コンデンサ12A・12B、2つのマイナスドライバー13、2つのマイナスドライバーつまみ15、BNC(Bayonet Neill Concelman)コネクター16、2つのフランジ17、液体ヘリウム移送用ポートおよび温度センサー用ポートである2つのハーメチックシール18、温度センサー用ポートであるハーメチックシール19、蒸発ヘリウムガス出口20、液体窒素移送口21、2つの蒸発窒素ガス出口22、真空排気口24、4つのアイボルト25、真空容器1をNMR測定装置本体と結合させるための真空容器ジョイント26、リリーフバルブ27、および熱交換器36を備えている。
本実施形態におけるクライオスタットは、2つの液体ヘリウム槽4および液体ヘリウム槽(試料を冷却するための冷媒を収容した冷却槽)29を備え、これらの一方が減圧される1Kクライオスタットである。液体ヘリウム槽29は、冷媒としての液体ヘリウムを収容し、減圧される槽である。液体ヘリウム槽4は、液体ヘリウム槽29に対してニードルバルブ7を介して液体ヘリウムを供給する液体ヘリウム槽である。ニードルバルブ7を介した液体ヘリウムの供給は、ニードルバルブつまみ6によって制御される。
また、これら液体ヘリウム槽4および液体ヘリウム槽29への熱流入を防止するために、液体ヘリウム槽4および液体ヘリウム槽29を囲むように80Kシールド8が配設されている。80Kシールド8は、液体窒素槽3に接触することで、液体窒素温度、すなわち約80K(正確には77K)に冷却されている。
また、液体ヘリウム槽4および液体ヘリウム槽29と80Kシールド8との間には、液体ヘリウム槽4および液体ヘリウム槽29と80Kシールド8とを断熱するための真空層2Aが設けられている。さらに、液体ヘリウム槽4、液体ヘリウム槽29、真空層2A、および80Kシールド8は、真空容器1内に収められており、80Kシールド8と真空容器1内面との間には、80Kシールド8と真空容器1とを断熱するための真空層2Bが設けられている。本実施形態では、液体ヘリウム槽4・29をNMR測定プローブ50本体外部から断熱するための真空層が、80Kシールド8によって分断された2つの真空層2A・2Bからなる。
真空容器1は、図2に示すように、液体ヘリウム槽4を内部に収容する本体部分1aと、液体ヘリウム槽29を内部に収容する挿入部分1bとからなっている。挿入部分1bは、後述するNMR測定装置本体に挿入される部分であり、本体部分1aより細い径を持っている。
真空層2A・2Bの圧力(真空容器1の内圧)は、より高い断熱効果を得るために10−6Torr(1.3×10−4Pa)未満であることが好ましい。
80Kシールド8は、本体部分1a内部に設けられた第1の部分と、挿入部分1b内部に設けられた第2の部分とからなっており、第2の部分は、第1の部分より細い径を持っている。
液体ヘリウム槽29内には、試料のNMRを検出するための検出コイルとしてのRFコイル10が配置されている。液体ヘリウム槽29には、液体ヘリウムが、外部から、ニードルバルブ7を通じ、さらに液体ヘリウム導入管9を通じて導入されるようになっている。また、液体ヘリウム槽29内部は、フランジ17に真空ポンプを接続して真空ポンプで真空吸引することによって減圧されるようになっている。
真空容器1、液体窒素槽3、液体ヘリウム槽4、液体ヘリウム槽29、液体ヘリウム移送口5、ニードルバルブつまみ6、ニードルバルブ7、80Kシールド8、液体ヘリウム導入管9、マイナスドライバーつまみ15、フランジ17、蒸発ヘリウムガス出口20、液体窒素移送口21、蒸発窒素ガス出口22、アイボルト25、真空容器ジョイント26、およびリリーフバルブ27としては、非磁性金属材料を用いることが好ましい。
NMR測定プローブ50は、NMR用の強い磁場を発生させる磁石(特にワイドボア超伝導磁石)に挿入しなければならないため、上記各部材に用いる非磁性金属材料としては、加工性が高く、JIS(日本工業規格規格)により非磁性材と定められ、かつ広く使用されている、SUS304、SUS316、C1100、C1220、および真鍮(Brass)が好ましい。SUS304は、Feの他にCrを18%、Niを8%含むステンレス鋼である。SUS316は、Feの他に18%のCrと12%のNiとを含み、Moが添加されたステンレス鋼である。C1100およびC1220は、銅伸材である。
本願発明者等の検討によれば、7Tの強磁場を発生させる磁石を用い、液体ヘリウム槽29を液体ヘリウムで冷却した場合、JISにより非磁性材と定められているSUS304あるいはSUS316で液体ヘリウム槽29を形成しても、液体ヘリウム槽29が磁性を帯び、NMRスペクトルに影響を及ぼす(ピークのブロードニングを発生させる)ことが判明した。
これは、液体ヘリウム槽29の製造時にSUS304またはSUS316を溶接するため、溶接時の加熱により、非磁性のオーステナイト鋼であるSUS304,316が、加工誘起マルテンサイト変態を起こし、磁性体のマルテンサイト鋼であるSUS403やSUS410等に変化したことによるのではないかと考えられる。ただし、未加工のSUS316も7Tの磁場中に引き寄せられるという現象が起きたことから、他の原因によって磁性が発生したとも考えられる。他の原因としては、液体ヘリウム槽29を冷却することによって、鉄鋼の分野で使われるサブゼロ処理と同様の変化が起こり、オーステナイト鋼であるSUS304,316が、マルテンサイト鋼であるSUS403やSUS410等に変化したことが考えられる。サブゼロ処理は、オーステナイト鋼であるSUS304,316を、ドライアイスや液体窒素により冷却することで、マルテンサイト鋼であるSUS403やSUS410等にする処理である。
以上のことから、上述した各部材に用いる非磁性金属材料としては、非磁性のステンレス鋼よりも、ステンレス鋼以外の非磁性金属材料が好ましく、C1100、C1220、および真鍮(Brass)が特に好ましい。
従来の非特許文献1のNMRクライオスタットでは、試料コイルL(M)から外部の同調ボックスWまでの伝送線が長いため、電気的なノイズを拾いやすい。特に、高周波でのチューニングやマッチングを取る際の安定性も落ちる。従来の非特許文献1のNMRクライオスタットを用いたNMR装置では、比較的弱い磁場(3.5T)を用いていたため、この点は問題になっていなかった。これに対し、7T以上の強い磁場を用いる場合には、この点が問題になる。
そこで、本実施形態のNMR測定プローブ50では、上記問題を解決するために、共振回路をRFコイル10よりも下部に組み込み、NMR信号をRFコイル10から外部へ伝送する伝送線を、RFコイル10から共振回路を通してNMR測定プローブ50の下端まで配設し、外部のレシーバに繋ぐことで、伝送線の長さを短くしている。
これにより、伝送線の抵抗成分による信号損失を低減すると共に、伝送線がアンテナとして作用して周囲の雑音を拾うことを防止できる。その結果、高精度のNMR測定を実現できる。また、伝送線の揺れ、および冷却による伝送線の縮み量(絶対値)を抑えることで、共鳴周波数を安定化することができ、その結果、安定した測定結果をNMR測定を実現できる。
NMR測定プローブ50は、試料に対して電磁波を照射すると共に試料で発生したNMRをNMR信号として検出するための共振回路を備えている。NMR測定プローブ50が備える共振回路(共鳴電気回路)について、図1に基づいて説明する。図1は、NMR測定プローブ50の共振回路の概略を示す図である。
前述したように、本実施形態では、RFコイル10からの伝送線31をNMR測定プローブ50の下端から取り出す構造となっている。この構造では、短い距離(例えば約20cm)の間で、1KになるRFコイル10から真空層2A・2Bを通じて室温(かつ大気圧)のNMR受信系(レシーバなど)まで繋ぐ必要がある。そのため、RFコイル10からNMR受信系(レシーバなど)までを単純に導線を繋いだだけでは、導線の熱伝導によって試料部の温度上昇が著しくなる。そのため、低温保持時間が十分に取れないことや、温度の上昇が起こることが懸念される。
そこで、本実施形態の共振回路では、真空層2Aおよび真空層2Bでそれぞれ、伝送線31に断熱用コンデンサ11A・11Cおよび断熱用コンデンサ11B・11Dを直列に繋ぎ、熱伝導を小さくしている。
すなわち、NMR測定プローブ50の共振回路は、図1に示すように、試料のNMRを検出する検出コイルとしてのRFコイル10と、RFコイル10との組み合わせによりLC共振を起こすためのマッチング用の可変コンデンサ12Aと、外部(室温部)と液体ヘリウム槽29内とを断熱すると共に共振にも寄与する断熱用コンデンサ11A・11B・11C・11D・30と、調整(チューニング)のための可変コンデンサ12Bと、RFコイル10で検出されたNMR信号を外部のレシーバー(受信装置)へ伝送するために真空層2Aおよび真空層2Bを通るように配設された伝送線31と、RFコイル10から伝送線31を通して伝送されるNMR信号を図示しない外部のレシーバー(受信装置)に出力するためのBNCコネクター(信号出力端)16とを備えている。
RFコイル10の一端とBNCコネクター16との間には、断熱用コンデンサ11A、断熱用コンデンサ11B、および可変コンデンサ12Aがこの順で直列に接続されている。また、RFコイル10の他端と接地部34との間には、断熱用コンデンサ11C、断熱用コンデンサ11D、および可変コンデンサ12Bがこの順で直列に接続されている。また、可変コンデンサ12Bの一端は、接地部34に接続され、可変コンデンサ12Bの他端は、断熱用コンデンサ30を介して、断熱用コンデンサ11Bと可変コンデンサ12Aとを繋ぐ配線に接続されている。
可変コンデンサ12A・12Bの静電容量(キャパシタンス)は、2つのマイナスドライバーつまみ15の操作により2つのマイナスドライバー13をそれぞれ回転させることで、調整できるようになっている。NMR測定プローブ50のマイナスドライバー13部分の詳細を図9の縦断面図に示す。マイナスドライバー13は、図9の左側に示すように、平常時にはコイルスプリング14によって上方へ押し上げられている。一方、マイナスドライバー13を回転させていくと、コイルスプリング14が縮んでいき、最終的には図9の右側に示す状態となる。コイルスプリング14は、例えばリン青銅等からなる。また、最大縮み幅は、例えば7mmである。
図1に示すように、RFコイル10は液体ヘリウム槽29内に配置され、断熱用コンデンサ11A・11Cは真空層2Aに配置され、断熱用コンデンサ11B・11D、断熱用コンデンサ30、および可変コンデンサ12A・12Bは真空層2Bに配置されている。
言い換えると、断熱用コンデンサ11Aは真空層2A内の伝送線31に挿入され、断熱用コンデンサ11Bは真空層2B内の伝送線31に挿入され、断熱用コンデンサ11Cは真空層2A内の配線35(RFコイル10と接地部34とを繋ぐ線)に挿入され、断熱用コンデンサ11Dは真空層2B内の配線35に挿入されている。
上記構成によれば、断熱のためのコンデンサが挿入されている。伝送線31を構成する導電材料よりも熱伝導性が低い誘電材料を電極間に有するために、伝送線31よりも熱伝導性が小さいコンデンサが、真空層2A・2B内の伝送線31および配線35(RFコイル10と接地部34とを繋ぐ配線)に挿入されている。そのため、外部から伝送線31へ、あるいは接地部34から配線35へ熱が流入しても、真空層2A・2B内の伝送線31に挿入された断熱用コンデンサ11A・11B、および真空層2A・2B内の配線35に挿入された断熱用コンデンサ11C・11Dが、熱流入を概ね遮断する。それゆえ、外部から伝送線31あるいは配線35を介して液体ヘリウム槽29に熱が流入して液体ヘリウム槽29の温度が上昇することを防止できる。その結果、液体ヘリウム槽29の温度を、1K程度の超低温に保つことができる。したがって、1K程度の超低温に試料を冷却しながら試料のNMR測定を行うことが可能となる。
BNCコネクター16は、真空容器1の外側表面上に配置されている。図示していないが、試料は、試料管に入れられてRFコイル10の内側に挿入されるようになっている。
断熱用コンデンサ11A〜11D・30は、共鳴に必須のものではなく、断熱に必須のものである。つまり、断熱用コンデンサ11A〜11D・30がなくとも、可変コンデンサ12A・12B等の調整によって共鳴を取ることができる。
断熱用コンデンサ11A〜11D・30は、特に限定されるものではないが、熱伝導率が低く、容量が小さすぎず、また、十分な耐電圧を持つことから、セラミックコンデンサであることが好ましい。断熱用コンデンサ11A〜11D・30としては、原理的には、真空層を挟んで金属板を2枚並列させただけの構成を持つコンデンサが、最も高い断熱効果が得られるが、このようなコンデンサは、容量が小さくなりすぎ(現実的なサイズで1pF以下)、共振回路の共振周波数に大きな影響を与えてしまう。そのため、このようなコンデンサは、共振回路に用いるコンデンサとしては適していない。
また、断熱用コンデンサ11A〜11D・30の静電容量(キャパシタンス)は、共鳴周波数(7Tの磁場を用いてH NMR測定を行う場合には300MHz)にほとんど影響を与えないように(共鳴を邪魔しないように)、3pF以上であることが好ましく、7pF以上であることがより好ましい。また、断熱用コンデンサ11A〜11D・30は、十分な断熱効果を得るために、電極間距離が長い方が好ましい。断熱用コンデンサ11A〜11D・30は、電極間距離の長い構成を実現しやすいことから、100pF以下の静電容量を持つことが好ましく、50pF以下の静電容量を持つことがより好ましい。
さらに、断熱用コンデンサ11Aと断熱用コンデンサ11Cとを繋ぐ導線は、両端にコンデンサが接続されて他の導線から分断されているため、そのままでは電気的に浮いた状態になる。そのため、このままでは、RFコイル10に電荷が溜まった場合に、共振回路の共振周波数が不安定になることがある。例えば、核磁気共鳴測定プローブ50本体の表面を手で触ると、共振回路の共振周波数が変化することがある。
そこで、RFコイル10と断熱用コンデンサ11Cとを繋ぐ導線に対して、一端が接地されたコイル33の他端を接続することによって、断熱用コンデンサ11Aと断熱用コンデンサ11Cとを繋ぐ導線を接地している。これによって、RFコイル10が電気的に接地され、共振回路の共振周波数が安定化される。その結果、安定したNMR測定を行うことができる。
このコイル33は、近辺の浮遊容量とともに何らかの周波数のトラップ回路を形成するが、RFコイル10と比較して大きなインダクタンスを持っているため、そのトラップ回路によってトラップされる周波数は、目的の共鳴周波数(例えば300MHz)とはかけ離れた値になる。そのため、NMRの測定にはほとんど影響を与えない。コイル33のインダクタンスは、RFコイル10と比較して大きなインダクタンスを持っていればよいが、100nH以上であることが好ましく、1μH以上であることがより好ましい。
RFコイル10の中心と液体ヘリウム槽29内面との距離dは、十分な断熱作用をもたらすために、1cm以上であることが好ましく、1.5cm以上であることがより好ましい。また、RFコイル10の中心と液体ヘリウム槽29内面との距離dは、伝送線31の長さを短くして信号損失や雑音混入を抑制するために、5cm以下であることが好ましく、3cm以下であることがより好ましい。
伝送線31が設けられた部分における真空層2Aの厚みT1は、十分な断熱作用をもたらすために、1cm以上であることが好ましく、2cm以上であることがより好ましい。また、伝送線31が設けられた部分における真空層2Aの厚みT1は、伝送線31の長さを短くして信号損失や雑音混入を抑制するために、10cm以下であることが好ましく、5cm以下であることがより好ましい。
伝送線31が設けられた部分における真空層2Bの厚みT2は、十分な断熱作用をもたらすために、5cm以上であることが好ましく、10cm以上であることがより好ましい。また、伝送線31が設けられた部分における真空層2Bの厚みT2は、伝送線31の長さを短くして信号損失や雑音混入を抑制するために、40cm以下であることが好ましく、20cm以下であることがより好ましい。
RFコイル10と断熱用コンデンサ11Aとを繋ぐ配線およびRFコイル10と断熱用コンデンサ11Bとを繋ぐ配線を、液体ヘリウム槽29の外壁に対して電気的に独立させ、かつ、真空層2A内の真空状態を保つために、液体ヘリウム槽29の外壁に対して中空の超伝導体(Cryogenic Conductor)32を設け、RFコイル10と真空層2A内の伝送線31および配線35とを超伝導体(Cryogenic Conductor)32を介して接続している。これにより、真空層2A内の真空状態を保ちながら、NMR信号を、逃がすことなく、液体ヘリウム槽29内のRFコイル10から真空層2A内の伝送線31に導くことができる。
80Kシールド8は、その上もその下も真空層(2A,2B)であることから、特に両真空層2A・2Bを厳密に分断する必要はない。そのため、80Kシールド8に穴を空け、空けた穴に対して、樹脂(例えば四フッ化エチレン樹脂)からなる穴開きのジョイント38を取り付け、ジョイント38の穴に伝送線31および配線35を通すことで、断熱用コンデンサ11Aと断熱用コンデンサ11Bとを繋ぐ伝送線31、および断熱用コンデンサ11Cと断熱用コンデンサ11Dとを繋ぐ配線35が液体ヘリウム槽29の外壁に対して電気的に独立するようにした。
真空層2Bと室温部(外部)との間の真空容器1外壁には、可変コンデンサ12A・12Bの静電容量を変えるマイナスドライバーつまみ15を回すための棒を通す機構部37が設けられている。機構部37としては、例えばSwage Lok社製の「Ultra−Torr」を用いることができる。真空容器1外壁は、インジウムシールすることにより、高度な真空を実現することができる。
なお、NMR測定を行うには、共振回路によって、外部磁場中におかれた磁性をもつ試料のエネルギーギャップに相当するエネルギーを持つ電磁波を照射する必要がある。例えば、試料が水素核である場合(H NMR測定を行う場合)、7.0×10gauss(7T)の外部磁場を用いてNMR測定を行うには、共振回路が共鳴周波数ω=300MHzの電磁波を発生させる必要がある。NMR用の共振回路は、単純にとらえると、コンデンサおよびコイルのみからなるLC回路である。共鳴周波数ωは、コンデンサの静電容量をC、コイルのインダクタンスをLとすると、
ω=1/√(LC)
で表される。したがって、可変コンデンサ12Aの容量を小さくすれば、共振回路共鳴周波数を上げることができ、可変コンデンサ12Aの容量を大きくすれば共鳴周波数を下げることができる。
次に、NMR測定プローブ50の冷却方法の一例について説明する。
まず、ロータリーポンプ(真空ポンプ)を真空排気口24に蛇腹を介して繋ぐ。また、ロータリーポンプと真空排気口24との間にターボ分子ポンプを繋ぐ。次いで、ロータリーポンプを作動させて、真空層2A・2Bの圧力(真空容器1の内圧)が1×10−3Torr(1.3×10−1Pa)台の圧力(10−2Torr(1.3Pa)未満の圧力)に下がるまで十分な時間をかけて真空層2A・2Bの真空吸引を行う。
その後、予めロータリーポンプと真空排気口24との間に繋いでおいたターボ分子ポンプを作動させ、24時間以上かけて真空層2A・2Bの減圧を続け、真空層2A・2Bの圧力を、10−6Torr(1.3×10−4Pa)未満にする。なお、真空層2A・2Bの圧力の計測については、真空排気口24とターボ分子ポンプとの間にペニング真空計を繋いでおき、このペニング真空計によって圧力を測定すればよい。
その後、真空層2A・2Bのバルブ(真空排気口24)を閉め、フランジ17にロータリーポンプを繋ぎ、ロータリーポンプを作動させることによって、RFコイル10がある側の液体ヘリウム槽29を10−2Torr(1.3Pa)程度まで真空吸引する。
次に、ヘリウムガスボンベから液体ヘリウム槽29へリウムガスを少し導入して、また液体ヘリウム槽29を真空吸引するという一連のフラッシュ(共洗い)を行う。最終的に、液体ヘリウム槽29の圧力が大気圧以上、特に約1.5気圧程度になるまでヘリウムガスを導入する。液体ヘリウム槽29にヘリウムを充填する理由は、大気を入れたままでヘリウム温度まで冷却すると、試料付近の大気中に存在する窒素や酸素などの不純物(ヘリウム以外の分子)がRFコイル10や試料に付着し、NMR測定に悪影響を及ぼすからである。液体ヘリウム槽29に対してヘリウムを大気圧以上に充填するのは、冷却に伴い液体ヘリウム槽29内のヘリウムの圧力が下がっていき、外部の大気が液体ヘリウム槽29におけるわずかでも漏れのある部分から液体ヘリウム槽29内部に入り込み、ヘリウムに混入してしまうことを防ぐためである。
その後、液体窒素移送口21から液体窒素槽3へ、液体窒素を蒸発窒素ガス出口22からあふれ出すまで入れ、例えば2日程かけて、ヘリウムを入れる前段階となる窒素での予冷を行う。この間は、必要に応じて窒素の継ぎ足しを行う。例えば約半日おきに窒素の継ぎ足しを行う。冷却に伴って、液体ヘリウム槽29内のヘリウムの圧力が下がっていくので、様子を見ながらヘリウムボンベで液体ヘリウム槽29内を加圧し、液体ヘリウム槽29内のヘリウムの圧力が1.5気圧程度を保つようにする。
そして、フランジ17に真空ポンプを接続して、液体ヘリウム槽29内部を真空ポンプで真空吸引することによって液体ヘリウム槽29内部を減圧し、RFコイル10および試料を1Kまで冷却する。
試料部(RFコイル10部分)の温度の計測には、例えば、シリコンダイオード温度計をRFコイルの少し上の内壁に取り付け、この温度計にマンガニン線を繋ぎ、マンガニン線をハーメチックシール18を通じて外部のデータ解析装置(コンピュータなど)に接続すればよい。
なお、液体ヘリウム槽29内のヘリウムガスは、トランスファーチューブをヘリウム移送口5に繋ぐことにより、液体ヘリウム槽29内から蒸発ヘリウムガス出口20を通して外部へトランスファー(排気)することができる。
本実施形態のNMR測定プローブ50は、試料にNMRを発生させるための磁界を発生させる磁界発生装置に装着して使用されるものである。本実施形態のNMR測定プローブ50は、NMR測定装置本体の挿入穴に上方から挿入して使用される。NMR測定プローブ50をNMR測定装置本体の挿入穴に挿入したものが、NMR測定装置として動作する。
図3に示すように、NMR測定装置本体60は、筐体61に対し、筐体61の下面に2つの脚部65が取り付けられ、筐体61の上面に2つの突起部66が形成された構造である。
筐体61の中央には、NMR測定プローブ50を挿入するためのプローブ挿入穴64が上から下まで貫通するように設けられている。また、筐体61内には、上向きの磁場を筐体61内に発生させるための磁界発生装置63が設けられている。磁界発生装置63は、超伝導磁石62と、超伝導磁石62を超伝導現象が起こる温度まで冷却するためのクライオスタットとを備えている。超伝導磁石62としては、特に限定されるものではなく、現在NMR測定装置に一般的に使われている種々の超伝導磁石、例えばワイドボア超伝導磁石を使用することができる。
なお、NMR測定装置本体は、磁界を発生する手段を備えていれば、必ずしも超伝導磁石62およびクライオスタットを備えている必要はないが、NMRを発生させる磁界の強さが強いほど高感度で精密なNMRスペクトルが得られることから、できる限り強い磁界を発生する手段を備えていることが好ましい。強い磁界を発生するためには、超伝導磁石62を用いることが好ましい。
本実施形態のNMR測定装置は、NMR測定プローブ50およびNMR測定装置本体60に加えて、NMR測定プローブ50のBNCコネクター16に接続されたレシーバーを備えている。
上記のNMR測定装置を用いてNMR測定を行う場合、試料溶液をガラスチューブ等の試料管に入れてRFコイル10の内側に挿入し、試料溶液のNMRをRFコイル10で信号(NMR信号)として検出し、得られた信号をBNCコネクター16を介してレシーバーに送り、レシーバーで増幅すればよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
例えば、図1に示す回路では、RFコイル10の片側は接地されており(配線35を介して接地部34に繋がっている)、RFコイル10のもう片側から水素のNMR信号を観測する仕様になっている。しかしながら、RFコイル10の接地されている側に(断熱用コンデンサ11Dと接地部34との間に)新しくマッチング用コンデンサおよびチューニング用コンデンサ(可変コンデンサ12A・12Bに対応)を追加することにより、他の核(例えば、C13やN15)の同時観測が可能な構成とすることができる。
また、上述の説明では、真空層2A内の伝送線31、および真空層2B内の伝送線31の各々に対して断熱用コンデンサ11A・11Bが挿入されていたが、これら断熱用コンデンサ11A・11Bの一方を省略してもよい。ただし、真空層2A内の伝送線31、および真空層2B内の伝送線31の各々に対して断熱用コンデンサ11A・11Bを挿入する方が、液体ヘリウム槽29への熱流入をより一層低減でき、液体ヘリウム槽29の温度を低温に保つことができるので、好ましい。
また、上述の説明では、真空層2A内の配線35、および真空層2B内の配線35の各々に対して断熱用コンデンサ11C・11Dが挿入されていたが、これら断熱用コンデンサ11C・11Dの一方または両方を省略してもよい。ただし、これら断熱用コンデンサ11C・11Dを設ける方が、ほぼ室温にある接地部34から配線35を介して液体ヘリウム槽29へ熱が流入することを防止でき、液体ヘリウム槽29の温度を低温に保つことができるので、好ましい。
また、伝送線の長さを短くするためには、BNCコネクター(信号出力端)16がNMR測定プローブ50本体における長手方向に沿った先端部に設けられ、RFコイル10が核磁気共鳴測定プローブ50本体における中心よりも上記先端部に近い位置に設けられていればよく、BNCコネクター16の位置は特に限定されるものではない。
本発明に係るNMR測定プローブは、試料をヘリウム温度付近に冷却してNMR測定を行うことができるので、パラ水素マトリクス(固体パラ水素結晶)中に分子を捕捉して高分解能で分子のNMRを測定する方法に用いることができる。
まず、パラ水素の生成方法について説明する。パラ水素は、オルト−パラ水素コンバータを使用してノルマル水素から生成させることができる。オルト−パラ水素コンバータは、例えば、気体導入管および気体排出管を有する反応容器と、反応容器の底部に配置された磁性を持つ金属触媒とを備え、気体導入管の先端が底部以外の位置にあり、気体排出管の先端が底部にあり、反応容器が液体ヘリウムで冷却された構成である。この構成では、ノルマル水素を気体導入管から容器内に導入すると、導入されたノルマル水素が冷却されて液化し底部に貯まった後、底部に貯まった液化ノルマル水素が磁性金属触媒によってパラ水素に変換され、得られたパラ水素が気体排出管から排出される。
なお、実際には完全に純粋なパラ水素を調整することは技術的に難しい。そのため、「パラ水素」とは、0.01%程度のオルソ水素を含む状態を指す。
また、固体パラ水素結晶は、パラ水素を、パラ水素の三重点より低い温度に冷却することによって生成できる。そして、パラ水素の三重点より低い温度で、固体パラ水素結晶を用いて分子を捕捉しNMR測定を行えばよい。パラ水素の三重点は13.8Kであり、一般的に使われる寒剤が、液体窒素(77K)、液体ヘリウム(4.2K)であることから、一般には、分子の捕捉およびNMR測定を行う温度は、液体ヘリウム温度である。
今世紀半ばから現在まで盛んに用いられているマトリクス単離法は、化学反応中間体等の反応性の高い化学活性種を低温固体中に安定に捕捉して分光する手法である。目的の分子を捕捉するためのマトリックス媒質としてNeやAr等の相互作用の小さい希ガスが用いられてきた。パラ水素は永久多極子を持たないため、分子間の相互作用が極端に弱く、前述の希ガス原子と同様に扱うことができる。また、永久多極子が全くないことから、分子間の相互作用が極端に弱く、媒質である水素分子のエネルギー密度が疎であるため、ゲスト分子の緩和がほとんど起こらない。
NMR測定においては、核スピンを持たない分子は、緩和を生じない(NMR信号が検出されない)。パラ水素は、核スピンI=0で核スピンを持たないので、核スピンを持つ分子のNMR測定をヘリウム温度付近で行う際に、その分子をパラ水素マトリックス中に捕捉すれば、その分子のみのNMRスペクトルが得られる。
また、分子を低温にすることで、ボルツマン分布の占有数(population)比が顕著に増大する。例えば、分子を300Kから1Kに冷却すると、ボルツマン分布の占有数(population)比は、e(exponential)の300乗分も大きくなる。そのため、低エネルギー側の原子核数が増え、NMR信号に寄与する原子核数が増えるので、NMR信号の強度が増大する。
また、固体パラ水素の結晶は、六方最密充填構造の綺麗な構造であるため、固体パラ水素結晶に分子を捕捉させれば、均一性の高い試料を調製できる。
また、固体パラ水素は、平均の永久双極子モーメントが全くないために、分子間相互作用が極めて弱く、さらに水素分子のエネルギー密度が疎であるから、ゲスト分子の緩和が遅い。そのため、S/N比を上げることができる。
また、試料の部分を低温にすることで、コイル(RFコイル10)から発生する熱雑音が小さくなることも期待される。
以上のことから、パラ水素マトリクス中に分子を捕捉して分子のNMRを測定することで、高分解能のNMR分光法を実現できると考えられる。
固体パラ水素結晶中に分子を単離して捕捉する方法としては、本願発明者等がこれまでに成功している各種分子クラスターの捕捉方法(例えば、T. Momose, M. Miki, M. Uchida, T. Shimizu, I. Yoshizawa, and T. Shida, J. Chem. Phys. 103, 1400 (1995)参照)、Fajardらが成功しているパラ水素マトリックス中に水(HO)分子を捕捉する方法(Mario E. Fajardo, Simon Tam, Michelle E. DeRose, J. Mol. Struct. 695-696, 111-127 (2004)参照)などを利用することができる。
パラ水素マトリクスを用いた高分解能NMR測定における測定対象分子(パラ水素マトリックスに捕捉する分子)としては、水分子のクラスターや、ノルマル水素中のオルソ水素などが挙げられる。水分子のクラスターの高分解能NMR測定の結果から水分子のクラスターの構造に関する情報を得ることができると考えられる。
また、本発明のNMR測定プローブは、パラ水素マトリックスを用いない他の低温でのNMR測定にも使用できる。
前述した実施の形態に係るNMR測定装置が、液体ヘリウム温度でNMR測定装置として正常に動作することを確認するために、前述した実施の形態に係るNMR測定装置を用いて、液体ヘリウム温度でのH NMR測定を行った。
本実施例では、真空容器1として、本体部分1aがSUS304からなり、挿入部分1bがSUS316Lからなり、本体部分1aの外径が320mmであり、挿入部分1bの外径が70mmであるものを用いた。液体窒素槽3としては、SUS304からなり、容量約7L(リットル)、保持時間30hr(時間)、蒸発量0.23L/hrであるものを用いた。液体ヘリウム槽4としては、SUS304からなり、容量約8L、保持時間5.8hr、蒸発量1.38L/hrのものを用いた。液体ヘリウム槽29としては、SUS316Lからなり、外径が34mmであるものを用いた。液体ヘリウム移送口5としては、SUS304からなる、メス型のバイオネット(bayonet)を用いた。
ニードルバルブつまみ6、ニードルバルブ7、マイナスドライバーつまみ15、フランジ17、蒸発ヘリウムガス出口20、液体窒素移送口21、蒸発窒素ガス出口22、および真空容器ジョイント26としては、SUS304からなるものを用いた。80Kシールド8としては、本体部分1a内部に設けられた第1の部分がC1100からなり、挿入部分1b内部に設けられた第2の部分がC1220からなり、第2の部分の外径が53.98mmであるものを用いた。液体ヘリウム導入管9としては、C1220からなり、直径3mm×厚さ0.5mmのものを用いた。
BNCコネクター16としては、最大許容電圧500V、最大許容電流3Aのものを用いた。蒸発ヘリウムガス出口20としては、直径12.7のかご形蒸気口(ケージポート)を用いた。真空排気口24としては、「ANELVA V−025RV」を用いた。リリーフバルブ27としては、真鍮(Brass)からなる「Swage Lok B−8CP2−1」を用いた。熱交換器36としては、巻き径25mm、巻き数40回、全長3142mmの巻き線を用いた。
また、NMR測定プローブ50の高さを1967mm、NMR測定プローブ50の上端から突起28下面までの距離(NMR測定装置本体60内に挿入されない部分の長さ)を854mm、突起28下面からNMR測定プローブ50の下端までの距離(NMR測定装置本体60内に挿入される部分の長さ)を1132mmとした。
また、RFコイル10の中心と液体ヘリウム槽29内面との距離dを2cm、伝送線31が設けられた部分における真空層2Aの厚みT1を3cm、伝送線31が設けられた部分における真空層2Bの厚みT2を13cmとした。
また、NMR測定装置本体60として、7Tの磁場を発生させるワイドボア超伝導磁石からなる超伝導磁石62を備えるものを用いた。NMR測定装置本体60の高さを2179mm、筐体61の高さ(挿入孔64の長さ)を1750mm、挿入孔64の径を88.84mm、筐体61の外径を860mm、脚部65の長さを690mm、筐体61下面から磁場の中心までの距離を338.5mm、2つの突起28間の距離を450mmとした。
また、断熱用コンデンサ11Aの静電容量を12pF、断熱用コンデンサ11Bの静電容量を10pF、断熱用コンデンサ11Cの静電容量を12pF、断熱用コンデンサ11Dの静電容量を4.7pF、断熱用コンデンサ30の静電容量を7pFとした。また、可変コンデンサ12A・12Bとして、その静電容量が1〜10pFの範囲で可変である水晶制御形可変コンデンサを用いた。また、RFコイル10として、直径7mm、長さ2cmで、4回巻きのコイルを用いた。この構成では、可変コンデンサ12A・12Bの静電容量を変化させることにより、共振回路の発振周波数を、294.5〜305.24MHzの範囲で調整できる。ここでは、共振回路の発振周波数を、7Tの磁場に対応するH NMRの共鳴周波数300MHzとなるように調整した。
低温においても緩和時間の短いγ−ピコリンを試料として用いた。そして、常温およびヘリウム温度で、前述した構成のNMR測定装置を用いてNMR測定を行った。ヘリウム温度でNMR測定を行う際には、前項で一例として挙げた冷却方法を用いて冷却を行った。
常温ではワンパルス法で、ヘリウム温度では固体スピンエコー法(90度Xパルス−τ−90度Yパルス−τ−FID)で、それぞれNMR測定を行った。固体のNMR測定においては、FID(Free Induction Decay)の減衰が速いので、通常の90度パルスの観測では、RFコイル10によるパルス発生後のレシーバなどによる雑音にFIDが覆い隠されてしまう。そこで、固体スピンエコー法を用いて、RFコイル10によるパルス発生後に充分なレシーバ回復時間を与えて、レシーバのパルスによる雑音が収まってから測定を行った。これにより、減衰の速い(線幅の広い)FID信号を観測することができた。なお、ヘリウム温度でのRFコイル10のQ(Quality factor)値は約120、RFコイル10により発生させるパルスのパルス幅τは約15μsとした。
常温で測定したγ−ピコリンのNMRスペクトルを図10(a)に、液体ヘリウム温度で測定したγ−ピコリンのNMRスペクトルを図10(b)に、それぞれ示す。なお、図10(a)(b)において、横軸はピーク周波数(化学シフト)からのオフセット周波数を表す。
溶液の状態(常温の状態)と固体の状態(液体ヘリウム温度の状態)とでピーク面積を比較したところ、固体の状態では、溶液の状態と比較してピーク面積が約4倍になっていた。この結果から、従来とは異なる方式を用いて、液体ヘリウム温度で、効率よくNMR測定が可能なNMR測定プローブを実現することができたことが確認された。
なお、この実施例では、緩和時間の設定等の条件を十分に最適化できていなかったため、その条件をさらに最適化することにより、さらなる感度向上が期待される。
また、本実施例はH NMRを測定する例であったが、本発明は、任意の原子核のNMR測定に適用可能であり、例えば、13C NMR測定や、15N NMR測定、フッ素19F NMR測定などに適用可能である。
本発明は、有機化合物の構造決定だけでなく、超伝導現象の研究などの物性研究、タンパク質などの生体分子の構造決定、MRI(磁気共鳴映像法)などの医学研究までの幅広い用途におけるNMR測定に利用できる。また、本発明は、低温、特に1K等の極低温でのNMR測定に利用でき、分子をパラ水素マトリクス中に捕捉してNMR測定を行う高分解能のNMR分光法にも応用可能である。
本発明の実施の一形態に係るNMR測定プローブの共振回路の概略を示す図である。 図2は、上記NMR測定プローブの全体を示す縦断面図である。 本発明の実施の一形態に係るNMR測定装置本体の構成を示す側面図である。 上記NMR測定プローブの上部を示す縦断面図である。 上記NMR測定プローブの上部を示す縦断面図であって、図4とは断面の方向が異なるものである。 上記NMR測定プローブのプローブ部を示す縦断面図である。 上記NMR測定プローブを上方から見た様子を示す平面図である。 上記NMR測定プローブを下方から見た様子を示す平面図である。 上記NMR測定プローブのマイナスドライバー部分の詳細を示す縦断面図である。 本発明の実施例において測定されたγ−ピコリンのNMRスペクトルを示すグラフであり、(a)は常温での測定結果、(b)は液体ヘリウム温度での測定結果である。
符号の説明
2A 真空層
2B 真空層
8 80Kシールド(シールド板)
10 RFコイル(検出コイル)
11A 断熱用コンデンサ(断熱のためのコンデンサ)
11B 断熱用コンデンサ(断熱のためのコンデンサ)
11C 断熱用コンデンサ(断熱のためのコンデンサ)
11D 断熱用コンデンサ(断熱のためのコンデンサ)
16 BNCコネクター(信号出力端)
29 液体ヘリウム槽(冷却槽)
31 伝送線
33 コイル
35 配線
50 核磁気共鳴測定プローブ
60 核磁気共鳴測定装置本体(磁界発生装置)

Claims (6)

  1. 試料に核磁気共鳴を発生させるための磁界を発生させる磁界発生装置に装着して使用され、試料を冷却しながら試料の核磁気共鳴を測定するための核磁気共鳴測定プローブであって、
    試料を冷却するための冷媒を収容した冷却槽と、
    試料の核磁気共鳴を検出するために冷却槽内に配置された検出コイルと、
    上記冷却槽を核磁気共鳴測定プローブ本体外部から断熱するための真空層と、
    上記検出コイルで検出された核磁気共鳴の信号を核磁気共鳴測定プローブ本体外部まで伝送するために、上記真空層を通るように配設された伝送線とを備え、
    上記真空層内の伝送線には、断熱のためのコンデンサが挿入されていることを特徴とする核磁気共鳴測定プローブ。
  2. 上記冷却槽への熱流入を防止するために、上記冷却槽よりも高い温度に冷却され、上記冷却槽を囲むように配設されたシールド板をさらに備え、
    上記真空層は、上記シールド板によって複数の真空層に分断されており、
    上記各真空層内の伝送線に対してそれぞれ、断熱のためのコンデンサが挿入されていることを特徴とする請求項1記載の核磁気共鳴測定プローブ。
  3. 検出コイルにおける伝送線と接続された側と反対側から、真空層内まで配設された配線をさらに備え、
    上記真空層内の配線にも、断熱のためのコンデンサが挿入されていることを特徴とする請求項1または2に記載の核磁気共鳴測定プローブ。
  4. 一端が検出コイルに接続され、他端が接地されたコイルをさらに備え、
    上記コイルは、検出コイルよりも大きいインダクタンスを有することを特徴とする請求項3記載の核磁気共鳴測定プローブ。
  5. 上記信号出力端は、核磁気共鳴測定プローブ本体における長手方向に沿った先端部に設けられ、
    上記検出コイルは、核磁気共鳴測定プローブ本体における、中心よりも上記先端部に近い位置に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の核磁気共鳴測定プローブ。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の核磁気共鳴測定プローブと、
    試料に核磁気共鳴を発生させるための磁界を発生させる磁界発生装置とを備えることを特徴とする核磁気共鳴測定装置。
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