JP2006327364A - 航空機用トイレの尿石抑制装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】航空機用バキューム式トイレおよびウェイスト配管への尿石の付着を抑制する航空機用トイレの尿石抑制装置を提供する。
【解決手段】本発明の航空機用トイレの尿石抑制装置2は、航空機用バキューム式トイレの便器5に洗浄水を供給する配管8に、洗浄水を改質する手段3を設けた航空機用トイレの尿石抑制装置である。
【選択図】図2
【解決手段】本発明の航空機用トイレの尿石抑制装置2は、航空機用バキューム式トイレの便器5に洗浄水を供給する配管8に、洗浄水を改質する手段3を設けた航空機用トイレの尿石抑制装置である。
【選択図】図2
Description
本発明は、航空機用トイレの尿石抑制装置に関し、さらに詳しくは、航空機用バキューム式トイレの便器およびウェイスト配管に付着する尿石を抑制する航空機用トイレの尿石抑制装置に関する。
一般に、水洗トイレに付着する尿石は、バクテリアが尿に含まれる尿酸を分解しアンモニアを生成することにより、排水がアルカリ性となり、尿または洗浄水に含まれるカルシウムが、炭酸カルシウムまたはリン酸カルシウムへと化学反応し、石灰化/堆積したものである。さらに詳しくは、排泄直後の尿のpHは、通常5.5〜6.5の酸性領域にあるが、時間の経過と共に尿素分解酵素であるウレアーゼの影響によりアンモニアと炭酸ガスに分解しそのpHが急速に上昇する。尿と洗浄水との混合液においてはその傾向はさらに大きく、pHが7.5以上になると尿中に含まれるカルシウムイオン、リン酸イオンおよび尿の分解により生成した炭酸ガスとが反応し、水に難溶性のリン酸カルシウムおよび炭酸カルシウムが生成し、これらに尿中の有機物が吸着して、便器、汚水配管(ウェイスト配管)、ウェイストタンク等の尿排水が接触する部分に固着して尿石となる。さらに航空機用バキューム式トイレでは、使用する洗浄水の量も少ないことから排水のpH上昇がより顕著となり、便器およびウェイスト配管等に尿石が、著しく付着・堆積し、ウェイスト配管の内径が半分以下となってしまうことも珍しくない。
従来、民間航空機の水洗トイレに接続されたウェイスト配管の洗浄は、クラッシュアイス及び弱酸を用いた洗浄が行われているが、尿石が徐々に付着・堆積することは防止できず、一旦付着した尿石を分解除去することは、さらに困難であった。このため、機体運用中、乗客が誤って落とした異物が、ウェイスト配管に詰まり、トイレが使用できない事態も発生している。これらの不適合は、ウェイスト配管に尿石が堆積していなければ、防止できた場合が多いと考えられる。
ウェイスト配管に付着・堆積した尿石を除去するため、航空会社ではウェイスト配管を全交換し、取外したウェイスト配管の浸漬酸洗浄を実施しているのが実情である。これは、浸漬酸洗浄に使用した多量の廃液が発生すること、加えて大変な労力を伴う作業であることから、全長30mにも及ぶウェイスト配管へのヘビー・メンテナンスを不要あるいは大幅に軽減することが求められている。
特許文献1は、水洗トイレの防汚および防臭方法として、微生物を含有する洗浄水を便器へ流すことを提案している。しかし、航空機用バキューム式トイレは、使用する洗浄水の量が少なく、長大なウェイスト配管をもつため、このような特殊性をもつ航空機用トイレに、上記方法を適用しても、尿石の付着を抑制し、さらに除去することは困難であり、本質的な解決策にはならない。
特開2000−282539号公報
本発明の目的は、航空機用バキューム式トイレの便器およびウェイスト配管への尿石の付着を抑制する航空機用トイレの尿石抑制装置を提供することである。
上記目的を達成する本発明の航空機用トイレの尿石抑制装置は、航空機用バキューム式トイレの便器に洗浄水を供給する配管に、洗浄水を改質する手段を設けた航空機用トイレの尿石抑制装置である。
航空機用トイレの尿石抑制装置は、洗浄水を改質する手段を有するものであり、航空機用バキューム式トイレおよびウェイスト配管へ、トイレを使用する毎に改質された洗浄水を流すこと、または定期的に改質された洗浄水を流すことにより、尿石の付着・堆積を効果的に抑制することができるものである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
図1は、航空機におけるラバトリーおよびウェイスト配管の配置の一例を示す配置図であり、図2は、本発明の尿石抑制装置の概要を示す説明図である。
一般に、民間航空機には、機体内の数箇所に、ラバトリー1が配置され、その内部にバキューム式トイレ5が設置されている。これらラバトリー1の数は、大型の民間航空機ではおよそ10箇所ほどであり、各バキューム式トイレ5は、ウェイスト配管9により航空機後部に設置されたウェイストタンク10に連通されている。このため、航空機最前部のラバトリー1とウェイストタンク10とを連通するウェイスト配管9の長さは約30m以上にも及ぶものとなる。
本発明の航空機用トイレの尿石抑制装置2は、洗浄水の供給タンク6とバキューム式トイレ5を結ぶ給水配管7の途中に配置され、洗面及び手洗い用蛇口への給水配管との分岐点よりも下流に設けられる。これにより、洗面及び手洗い用蛇口へ改質した洗浄水が、給水される虞はない。
本発明において、航空機用バキューム式トイレ5の形式は、特に限定されることなく、公知の減圧式(バキューム式)と水洗式を組み合わせた航空機用トイレである。
本発明の航空機用トイレの尿石抑制装置2は、航空機用バキューム式トイレ5において用便後に使用する洗浄水を改質する機能を果たす手段を有するものである。洗浄水を改質することにより、用便後のフラッシュスイッチを押して、改質した洗浄水が流され、バキュームの力で汚物といっしょにウェイスト配管に吸引される。その際、配管内のウレアーゼ等の尿素分解酵素を駆除すると共に、ウェイスト配管9内の排水が、アルカリ性化することを防ぎ、リン酸カルシウムおよび炭酸カルシウムの発生を抑制することができる。さらにウェイスト配管9内に付着した尿石を溶解し、除去することが期待される。
なお、航空機用バキューム式トイレ5およびウェイスト配管9へ洗浄水の流水は、用便後に限られることはなく、定期的に流してもよく、用便後の流水と定期的な流水を組み合わせてもよい。さらに改質された洗浄水の流水は、バキューム式トイレ5の便器への流水に限られるものではなく、ウェイスト配管9および/またはウェイストタンク10へ、直接、改質された洗浄水を流水することにより、尿石の付着を抑制することができる。
本発明の航空機用トイレの尿石抑制装置2は、洗浄水を改質する手段を有するものである。洗浄水の改質とは、洗浄水が、尿と混合した後、尿石が発生しないようにする改質および/または既に付着している尿石を除去するようにする改質である。洗浄水の改質は、好ましくは、尿排水がアルカリ性化しないようにする改質、尿酸を分解するバクテリアの活動(活性)を低下させる改質、予め洗浄水のpHを低くしておき尿排水のpHを酸性または中性とする改質等が挙げられる。
本発明において、洗浄水を改質する具体的な手段は、好ましくは、洗浄水を改質剤に通水すること、改質剤を滴下すること、または改質剤を定量的に供給すること等により、改質剤を洗浄水へ混合させる構成からなるものである。なかでも、洗浄水を改質する手段は、洗浄水を改質剤に通水することにより、改質剤を洗浄水へ混合させることが、より好ましい。
本発明において、改質剤は、好ましくは、(1)ミュータンスレンサ球菌類、(2)バチルス属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ニトロソモナス属、ニトロバクター属、シュードモナス属から選ばれる少なくとも1種のバクテリア、(3)次亜塩素酸、酢酸、クエン酸から選ばれる酸性薬剤、から選ばれる少なくとも1つである。なお、酸性薬剤の種類は、上記に限定されるものではなく、洗浄水と接触することにより洗浄水を酸性化できるものであればよい。
本発明に好ましく使用されるミュータンスレンサ球菌類は、口腔レンサ球菌の一種で、グラム陽性の通性嫌気性菌であり、血清学的に異なる8つの型と遺伝学的に異なる7つの菌種が分かっており、これらを総称してミュータンスレンサ球菌(Mutans Streptococci)と呼ばれている。なかでもストレプトコッカス・ミュータンス(S. mutans)、ストレプトコッカス・ソブリヌス(S. sobrinus)は、ヒト口腔内から検出され、酸産生能、耐酸性、不溶性グルカン合成能などさまざまな能力から、特に齲蝕の発生との関係が深いことが知られている。このようにミュータンスレンサ球菌類は、酸を産出する機能を有することから洗浄水を酸性化して、航空機用バキューム式トイレおよびウェイスト配管において、尿石を抑制することができる。
本発明に好ましく使用されるバクテリアは、好ましくはバチルス属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ニトロソモナス属、ニトロバクター属、シュードモナス属から選ばれる一つ以上であり、バチルス属のバクテリアであることがより好ましい。これらのバクテリアは、酸を産出する機能を有することから洗浄水を酸性化して、航空機用バキューム式トイレおよびウェイスト配管において、尿石を抑制することができる。
本発明において、ミュータンスレンサ球菌類または前記バクテリアは、従来公知の微生物剤の製造方法により培養して製造することができる。すなわち、培地、担体に適当量の水を加え、さらにミュータンスレンサ球菌類または前記バクテリアを、好ましくは105〜1013個接種して通常25〜50℃の温度で24〜72時間程度培養して得られる。培養に用いられる培地としては、寒天、魚粉、油カス、フスマ、麦汁などの農水産物およびその廃棄物が挙げられる。担体としては、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、珪藻土、ゼオライト、オガクズなどの無機系または有機系粉末が挙げられる。
本発明において、酸性薬剤は、次亜塩素酸、酢酸、クエン酸、等から選ばれる一つ以上であり、なかでも次亜塩素酸であることが、より好ましい。本発明の酸性薬剤は、ポリエチレングリコール等の水溶性基材に混ぜて、錠剤化するか、所定の大きさの固体物に成形して使用することができる。
図3は、本発明の尿石抑制装置2の一例を示すものであり、洗浄水を給水配管7から改質剤4に通水することにより、改質剤4を洗浄水へ混合させる構成の説明図である。
本発明において、改質剤4は、好ましくは、改質する手段3内に、容器または包装体に封入されて、洗浄水の通水経路に配置する。洗浄水が改質する手段3内を通ると、改質剤4により発生した酸性水および/または改質剤4が、洗浄水にしみ出し、洗浄水を改質するものである。改質剤4を収容する容器または包装体は、洗浄水が改質剤4と接触可能であるものであれば、特に制限されるものではないが、容易に交換が可能であるものが好ましい。
本発明の改質剤4を収容する容器は、好ましくは、その内部に錠剤や粗粒の形態をした改質剤4を内包し、壁面、底部、または蓋部に多数の細孔があり、洗浄水が通水可能となっている。また、改質剤4の包装体は、好ましくは通水可能な布帛またはフィルムにより形成された包装袋であり、織布、不織布または細孔をもつフィルムにより形成された包装袋であることがより好ましい。
本発明の尿石抑制装置2は、用便後に使用する洗浄水が少量であっても充分な尿石抑制効果が得られるという優れた特徴があり、航空機内の限られた水を有効に利用するものである。
本発明の尿石抑制装置2を通して得られた洗浄水を使用する航空機用バキューム式トイレは、便器およびトラップへの尿石の付着が少なく、メンテナンスが容易である。
本発明の尿石抑制装置2を通して得られた洗浄水を使用する航空機用バキューム式トイレに接続されたウェイスト配管は、配管の内壁に尿石が付着することなく、また付着した尿石を除去可能であり、従来行なわれていたヘビーメンテナンスを実施する必要がなくなるか、またはその頻度を低減することが可能である。さらに本発明の洗浄水をトイレの便器から流すだけでなく、直接、ウェイスト配管および/またはウェイストタンクへ、本発明により改質された洗浄水を流水することにより、尿石の抑制効果を増大し、さらに付着した尿石を除去することが期待できる。
本発明の航空機用トイレの尿石抑制方法は、航空機用バキューム式トイレの便器に洗浄水を供給する配管に、洗浄水を改質する手段を設け、改質され洗浄水を使用することにより、尿排水のアルカリ性化を抑制し、尿石の析出を防止する航空機用トイレの尿石抑制方法である。この方法により、バキューム式トイレの便器およびウェイスト配管の内壁に尿石が付着することを大幅に低減することができる。
また、本発明の航空機用トイレの尿石抑制方法は、航空機用バキューム式トイレの便器およびウェイストタンクへ洗浄水を供給する配管に、洗浄水を改質する手段を設け、改質された洗浄水を流すことにより、バキューム式トイレの便器およびウェイストタンクへ付着した尿石を溶解する航空機用トイレの尿石抑制方法である。これにより、付着した尿石を除去することが期待され、従来行なわれていたヘビーメンテナンスを実施する必要がなくなるか、またはその頻度を低減することが可能である。
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定されるものではない。
用便の使用頻度が同程度の水洗トイレを2つ確保し、本発明の尿石抑制装置を用いて改質された洗浄水と、水道水とで比較する。
実施例1
ミュータンスレンサ球菌類を、寒天に塗布し、温度40℃において、60時間培養する。得られた寒天培地をポリプロピレン製不織布に収容し、洗浄水と接触可能な容器に入れ、1時間当たり10Lの割合で洗浄水を得、1つの水洗トイレの便器に定期的に流水する。2ヵ月後、水洗トイレのトラップ内には、尿石の付着は認められない。
ミュータンスレンサ球菌類を、寒天に塗布し、温度40℃において、60時間培養する。得られた寒天培地をポリプロピレン製不織布に収容し、洗浄水と接触可能な容器に入れ、1時間当たり10Lの割合で洗浄水を得、1つの水洗トイレの便器に定期的に流水する。2ヵ月後、水洗トイレのトラップ内には、尿石の付着は認められない。
比較例1
洗浄水として水道水を用いること以外は、実施例1と同様にして、別の水洗トイレの便器に定期的に流水する。2ヵ月後、水洗トイレのトラップ内には、尿石の付着が、認められる。
洗浄水として水道水を用いること以外は、実施例1と同様にして、別の水洗トイレの便器に定期的に流水する。2ヵ月後、水洗トイレのトラップ内には、尿石の付着が、認められる。
1 ラバトリー
2 尿石抑制装置
3 改質する手段
4 改質剤
5 バキューム式トイレ(便器)
6 給水タンク
7 給水配管
8 洗浄水配管
9 ウェイスト配管
10 ウェイストタンク
2 尿石抑制装置
3 改質する手段
4 改質剤
5 バキューム式トイレ(便器)
6 給水タンク
7 給水配管
8 洗浄水配管
9 ウェイスト配管
10 ウェイストタンク
Claims (7)
- 航空機用バキューム式トイレの便器に洗浄水を供給する配管に、該洗浄水を改質する手段を設けた航空機用トイレの尿石抑制装置。
- 前記改質する手段が、前記洗浄水にミュータンスレンサ球菌類を混合させる構成からなる請求項1に記載の航空機用トイレの尿石抑制装置。
- 前記改質する手段が、前記洗浄水にバチルス属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ニトロソモナス属、ニトロバクター属、シュードモナス属から選ばれる少なくとも1種のバクテリアを混合させる構成からなる請求項1に記載の航空機用トイレの尿石抑制装置。
- 前記改質する手段が、前記洗浄水に次亜塩素酸、酢酸、クエン酸から選ばれる酸性薬剤を混合させる構成からなる請求項1に記載の航空機用トイレの尿石抑制装置。
- 前記改質する手段を、さらに、ウェイストタンクへ洗浄水を供給する配管に設けた請求項1〜4のいずれかに記載された航空機用トイレの尿石抑制装置。
- 航空機用バキューム式トイレの便器に洗浄水を供給する配管に、該洗浄水を改質する手段を設け、該手段により改質され洗浄水により、尿排水のアルカリ性化を抑制し、尿石の析出を防止する航空機用トイレの尿石抑制方法。
- 航空機用バキューム式トイレの便器およびウェイストタンクへ洗浄水を供給する配管に、該洗浄水を改質する手段を設け、該手段により改質された洗浄水により、該バキューム式トイレの便器およびウェイストタンクへ付着した尿石を溶解する航空機用トイレの尿石抑制方法。
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JP2005152388A JP2006327364A (ja) | 2005-05-25 | 2005-05-25 | 航空機用トイレの尿石抑制装置 |
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Cited By (1)
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---|---|---|---|---|
JP2014045891A (ja) * | 2012-08-30 | 2014-03-17 | Bast Uwe | 無水小便器システム |
-
2005
- 2005-05-25 JP JP2005152388A patent/JP2006327364A/ja active Pending
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JP2014045891A (ja) * | 2012-08-30 | 2014-03-17 | Bast Uwe | 無水小便器システム |
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